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1964-02-28 第46回国会 衆議院 文教委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月二十八日(金曜日)     午前十時三十分開議  出席委員    委員長 久野 忠治君    理事 上村千一郎君 理事 小澤佐重喜君    理事 坂田 道太君 理事 長谷川 峻君    理事 南  好雄君 理事 二宮 武夫君    理事 三木 喜夫君 理事 山中 吾郎君       田川 誠一君    床次 徳二君       中村庸一郎君    橋本龍太郎君       原田  憲君    松山千惠子君       落合 寛茂君    川崎 寛治君       實川 清之君    田口 誠治君       楯 兼次郎君    長谷川正三君       前田榮之助君    山本 幸一君       鈴木  一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君  出席政府委員         文部政務次官  八木 徹雄君         文部事務官         (大臣官房長) 蒲生 芳郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君  委員外出席者         議     員 三木 喜夫君         文部事務官         (初等中等教育         局地方課長)  今村 武俊君         労働事務官         (労政局労働法         規課長)    青木勇之助君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     松浦  功君         専  門  員 田中  彰君     ————————————— 二月二十七日  委員前田榮之助君辞任につき、その補欠として  多賀谷真稔君が議長指名委員に選任された。 同月二十八日  委員實川清之君、多賀谷真稔君及び和田博雄君  辞任につき、田口誠治君、楯兼次郎君及び山本  幸一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田口誠治君、楯兼次郎君及び山本幸一君辞  任につき、實川清之君、前田榮之助君及び和田  博雄君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 二月二十七日  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案三木喜夫君外八名提出衆法第二一  号)  学校警備員設置に関する法律案三木喜夫君  外八名提出衆法第二二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する  法律案三木喜夫君外八名提出衆法第二一  号)  学校警備員設置に関する法律案三木喜夫君  外八名提出衆法第二二号)  文教行政基本施策に関する件(岐阜県におけ  る教職員問題)      ————◇—————
  2. 久野忠治

    久野委員長 これより会議を開きます。  三木喜夫君外八名提出市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案及び学校警備員設置に関する法律案、右両案を一括議題とし、提出者から提案理由説明を聴取いたします。三木君。
  3. 三木喜夫

    三木(喜)議員 ただいま議題となりました市町村立学校職員給与負担法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び内容概略を御説明申し上げます。  科学技術の日進月歩する今日、教育拡充発展は、世界各国共通の課題であり、完全なる教育質的充実発展につとめていることは御承知のとおりであります。  しかるに日本の現状を見ますと、教育公務員勤務条件は決して十分とは言えず、相当大きな超過勤務が行なわれ、過重労働に追い込まれているのであります。  すなわち、本来職務内容から不特定雑務まで一切を背負わされ、法律に基づく一日八時間、一週四十四時間内では、とうていその職務を処理することができず、超過勤務を余儀なくされているのが実情であります。  一九五二年における文部省初中局調査によりましても、教育公務員社会教育活動を除いて一人当たり一週十一時間の超過勤務が行なわれており、四人の仕事を三人で処理しているのであります。  教育公務員の絶対不足免許外教科の担当や過大学級によるのはもちろん、受け持ち時間数が多く、これに伴なって、研修、授業準備事後処理、採点などに要する時間が増加しており、さらに、生徒会指導校外指導家庭訪問などの重要な指導に相当時間がかかるためであります。  また、事務職員養護職員給食関係職員、用務員の不足から、調査、統計、給与等事務や出張、集金、給食保健衛生図書等に関する仕事が多く、さらに湯茶接待、清掃、営繕等の不特定雑務が多いことが原因となっているのであります。  以上のような勤務実態は、本来の教育活動を大きく妨げていることはもちろん、教育公務員の私生活まで圧迫し、健康的で人間らしい生活をゆがめているのであります。このような超過勤務現実に存在するにもかかわらず、超過勤務手当すら支払わないことはきわめて遺憾なことであります。教育公務員以外の公務員については、法的根拠に基づいて超過勤務手当が支払われており、またそのために給与の六%に相当する額が予算化されているのでありますが、ひとり教育公務員のみが、超過勤務をしているにもかかわらず超過勤務手当が支払われないのは不当であります。  現実教育公務員超過勤務を行なっている以上、理由のいかんにかかわらず、超過勤務手当を支払うべきであり、このことは労働基準法やその他の諸法令次官通達人事院事務総長の回答、京都地裁判決、千葉県人事委員会判定等から当然のことでありまして、教育公務員のみを例外として認めることは許されないのであります。したがって、この際、所要の改正を行なおうとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及び内容の概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決くださるようお願い申し上げます。  続きましてただいま議題となりました学校警備員設置に関する法律案について、提案理由内容概略を御説明申し上げます。  第一に提案のおもな理由について申し上げます。今日、学校教育法で規定する公立学校の用に供する教育財産管理地方公共団体の長の総括のもとに教育委員会管理するものと規定されています。(地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十三条、「教育委員会職務権限」、第二十八条、「教育財産管理等」、第三十三条、「学校等管理」)そしてこの学校等管理の重要な仕事一つとして教職員宿日直勤務が行なわれているのであります。  教職員宿日直勤務を課する根拠法規とされているのは労働基準法並びに地方公共団体の条令、教育委員会規則等であります。もとよりこの教職員宿日直勤務は戦後に始まったものではなく、旧憲法体制下学校においていわゆる御真影を守るということを主要な任務として古くから行なわれてきたものであります。  しかし、さきに述べましたように学校等管理責任設置者たる地方公共団体教育委員会にあることは明らかであり、一方教職員職務については学校教育法第二十八条において明らかに規定されているのであります。すなわち、「校長は、校務を掌り、所属職員監督する。」「教諭は、児童教育を掌る。」としており、その他、養護教諭事務職員、助教諭についてもそれぞれ同趣旨の規定をいたしております。  したがって、宿日直勤務の通常の内容、主として学校等に係る火災盗難等防止教職員の本来の職務に照らして、その積極的意義を見出すことができないといわなければなりません。しかも現在行なわれている宿日直勤務教職員の主たる職務である教育活動に深刻な障害を与えている事情からして、この際、私ども教職員学校警備に関する負担を抜本的に軽減し、教職員がより一そう教育に専念することができるようにするとともに、学校火災盗難等防止のために専門学校警備員設置する法律を制定することがきわめて至当であり、緊急かつ重要なことと考えるものであります。  そのためには主として教員の現在におけるところの勤務全般的状況について考察し、その具体的な事実の中から本法律制定の必要な趣旨を理解していくことが大切であると考えます。今日、教員は他の産業に従事する者と同じく労働基準法がほぼ全面的に適用されることとなっているとともに勤務時間等については条例で定められていることになっており、大部分の都府県では一週四十四時間、一日八時間と規定しております。しかし勤務実態は、これをはかるに超過していることは文部省調査によっても明らかでありまして、平均一週十時間前後の超過勤務をせざるを得ないのが実情であります。しかもこの数字は調査が可能な項目に照応する勤務時間であって、教育という特殊性からくる教員個々学習研究活動等を含めるならば、さらに実情は多くなっていることが明白に推量することができるのであります。その上にこれらの超過勤務については労働基準法に規定する超過勤務手当を一切支給していないことにも留意する必要があります。また今日の教員勤務実情はその勤務時間が不当に長いというばかりではなく、その内容も著しく官制化し複雑であり肉体的、精神的疲労度を強めているのであります。本文教委員会でもこれまでしばしば請願を受け重要な問題としている就職、入試問題と、これにかかわる補修授業強制的傾向テスト主義傾向等教員に不正常な負担を多くしているのであります。  また雑務に類する事務量が拡大の一途をたどっており、不必要な諸帳簿が増え、金銭の集納事務等教員超過労働の大きな部分を占めているのであります。この雑務といわれる仕事について教育行政者も一般的には好ましくないとしていますが、事実は当局自身がかえって管理面から教員事務量を増していること、また学校給食PTA関係等に関する雑務現実には一挙に除去しがたい実情にあることにも留意する必要があります。  また、教員にとっては労働基準法に規定する休憩時間がほとんど有名無実となっており、年次有給休暇労働基準法第三十九条についても普通一年間に二十日を与えなければならないにもかかわらず、教職員定数等の制約のもとで実情年平均四日前後という実情であることに注目しなければなりません。そのほか当局の計画する各種研究会生活指導クラブ活動等超過労働、休日労働が増大しているのであります。  以上を要約して申し上げますと、教員仕事がその職務である生徒児童教育をつかさどること以外にあまりにも多くの勤務時間と勤務雄を必要または強制されており、労働基準法の規定する近代的な最低の規準をはるかに越え、その異常な精神的、肉体的疲労の結果が教育活動そのものに大きな障害を与えているといわなければなりません。  さらに重要な障害となっていることは、学校警備に関する宿日直勤務ということであります。労働基準法に従うこの宿日直勤務労働基準局通達によって特に「宿直及び日直勤務一定期間における勤務回数がひんぱんにわたるものについては許可を与えないようにされたい」(昭和二三・一・一三基発三三号)「原則として日直については月一回を宿直については週一回を基準とすべきものであり、労働者が一人または二人等の少人数の場合は、別に専任の宿直員を置く等の処置をとらしめられたい」(昭和二三・四・一七基収一〇七七号)としているのであります。しかし、私ども調査したところによれば、この許可規準に反して宿日直勤務現実に行なわれている学校は全国の約半数に達するのであります。二十四県の九千四百九校について調査した結果によると、六日ないし一日ごとに宿直勤務についている学校は五千一校、五三%、日直勤務を月一回以上している学校は六千六百七十九校、七〇・二%となっています。このような宿日直勤務頻度数労働基準法規準に反するということだけではなく、すでに述べた教員超過勤務、休日勤務年次有給休暇のやむを得ざる放棄等事情とあわせるとき、事態はきわめて深刻といわねばなりません。三日に一回、四日に一回という宿直は、年間通算して四カ月、または三カ月を職場で寝起きして学校警備仕事に従事するということであります。もちろんそのような勤務そのものが本来の職場である場合は当然でありますが、さきにも繰り返し述べていますように、教員職務は本来、生徒児童に対する教育であり、所定の勤務時間に密度の高い教育活動を行ない、教育効果をあげるようつとめなければならないのであります。  以上のおもなる理由により、私ども教育質的向上教師の健康と生活を最低保障するために、この学校警備に関する教員宿日直負担を根本的に軽減し、教員教育に一そう専念できるよう、学校警備員設置に関する法律を制定しようとするものであります。  なお、昨年二月広島県において日直中の女教師が相次いで暴漢に襲われるという遺憾な事件が発生したことからもうかがえますように宿日直による学校警備仕事そのものについても、過度の精神的緊張肉体的疲労を伴うものであることをつけ加えておかなければならないのであります。  第二に、本法律案内容概略について御説明申し上げます。  第一条においては、すでに述べました本法律制定の目的を明らかにしたものであります。  第二条は学校並びに学校警備員の定義をしたものであります。ここでいわゆる公立の諸学校に限定いたしましたのは、国立の学校においてはすでに学校警備員設置されていますのであらためて規定する必要を認めなかったのであります。  第三条においては、学校警備員二人以上を置かなければならないとして、学校警備員職務が最低限保障されるようにしたのであります。  第四条は本校、分校とも一つ学校とみなして警備が行なえるようにしたのであります。  第五条は、私立の学校についても公立の例にならい、学校警備員を置くようつとめなければならないとしたのであります。  なお、この法律昭和三十九年四月一日から施行することといたしております。  以上、提案理由内容概略について御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 久野忠治

    久野委員長 以上で提案理由説明を終わりました。両案に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 久野忠治

    久野委員長 この際長谷川峻君から発言を求められておりますのでこれを許します。長谷川君。
  6. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 ちょうど大臣政務次官初中局長が見えておられるようです。同僚議員の御協議を得まして御質問申し上げます。そして資料をあとでお出しいただきたいと思うのです。というのは、この文教委員会においてここ数年間というものは、おもに学校施設の改善に努力をしてきて、それが予算拡充となり、いままで及ばないところにも多少手が及びつつある。早い話が、長い間懸案であった小学校屋内体操場予算さえも、この三十九年度の予算にようやく計上ができた。そのほか学校の諸施設あるいは給食等々、まずまず前進の姿がこの委員会を通じて行なわれておる、こう思うのです。私たちはいまの児童憲章なりあるいは教育基本法なり、そういうたてまえからして、子供を守り、環境をよくするのがお互いの責任である。そこで建物もよくなるだろう、古い時代よりも施設もよくなるだろう、そういうところに私たち努力もあり、また文部省当局のお仕事もある。ところが何としても教育効果というものは、その中で教えるところの先生方の姿勢にあると思う。これはどんな国であろうとどんな世界であろうと否定できません。ここにおいてか、私はちょうど都下のほとんどの新聞がきのう取り上げております。いまの時代にこういうことがあり得るだろうかという疑問を持った記事を拝見して、この際、もし文部省資料が集まっておれば御答弁願いたいし、またなければいずれかの日に資料をおそろえの上で、この席上において御解明願いたい。  それは、ただいま社会党の三木君が提案されたその説明の中にも、学校教育法第二十八条において明らかに規定されているのであるが、「校長は、校務を掌り、所属職員監督する。」「教諭は、児童教育を掌る。」こう読まれておるのであります。それからしますというと、きのうの新聞に出ております目黒区第十中学校のこの記事は一体どういうことか。私たちは国会におります関係上、よく東京都下のいろいろな方々から陳情を受けるのでありますが、この記事を見ますと、目黒第十中学では、いまどき非常な偏向教育が行なわれているということです。ちょっと概略を読ましてもらいますと、東京都の教育庁PTAお母さん方が十二名陳情に上がった、直訴した。さっそく東京教育庁でも実情調査に当たり出した。その要旨は、四十二名の先生のうち、七、八人が偏向教育をしているその説明によると、「ある先生校長に「悪用される」と授業計画書提出しない。このため学力伸びぐあいがわからない。また、社会、理科、美術などの先生の中には、教科書を使わずに教科と関係のない思想教育をしている。」第三に「一部の先生は「日本政府アメリカのドレイ。給食ミルクアメリカではブタの飼料に使っているものだ」と主張、昨年十一日に給食設備を整えたのに、給食をさせない」さらにまた「松川事件裁判のときはラジオを教室へ持ち込み、無罪判決がくだると「人民勝利だ」と生徒にバンザイさせた。ケネディ大統領が暗殺されたときも「結構なニュースだ」と教えた」さらにまた、第五には、「これらの先生は試験のかわりにレポートを出させるのが、題は「人民公社」とか「北海道の冷害」などで、政府アメリカを批判した内容でないとよい成績がもらえない。」こういうことが論点であります。そして陳情した母親の一人は、「先生教育方法を変えてほしいといったため、子ども成績を悪くされた例があったので、教育庁へ直接、訴えることにした」こういうことであります。しかもなおかつ、東京教育庁の話によりますと、この学校は以前にもこうしたことをやったので、二年前に校長を現在の白鳥校長に、改善させるように言い含めて白鳥校長を赴任させた。そして校長談話としては、「三十七年春、ここの校長になるとき一部に偏向教育をしている教師のいることは聞かされてきた。」赴任してきたのです。「そうした先生には授業計画書を出せといっても「校長は悪用する」といって提出しない。教科書関係のない思想教育もしているので注意しているが、校長には指導監督権はないと一向に聞きいれなかった。」先ほどの三木君が読んだ学校教育法にはちゃんと、「校長は、校務を掌り、所属職員監督する。」とある。私は、一体教育を直接担当する人としない人とにかかわらず、いまどきこういうことがこの日本において行なわれているということがはっきりするだけでも、たいへんな教育界に対するショックじゃなかろうか、こう思うのです。いわんやこの学校は四階建てのすばらしい鉄筋コンクリートです。建物は幾らよくつくっても、こういうふうな前時代的な、ケネディ暗殺はけっこうであるとか、松川事件無罪判決のときに、人民勝利だなどということを言うて生徒に万歳をさせるというようなことがあるとするならば、これはとんでもない教育界の恥じゃなかろうか。ここにおいて所管官庁であるところの文部省、いささかでも資料などが入っておれば——しかもなおかつこの学校は前からもこういう話があるというので、新しい校長が二年前に赴任された。しかもなおいつまでもこのとおりとするならば、いささかの材料でもあるならば、この際私は御提出を願い、さらにまた次々に御調査も願い、ときによっては、東京教育長などの談話もありますが、ひとつそういう方々資料どもいただきたい、こう思う次第でありまして、大臣並びに所管局長などにおいていかなるお感じを持っておりますか、ひとつ御解明をお願いしたいと思います。
  7. 福田繁

    福田政府委員 ただいま御指摘になりましたような新聞記事を私も読みまして、非常に驚いたわけでございますが、東京都におきまして、これに似たような事件がかつてほかの学校でも起こったわけでございます。したがいまして、そういう関連におきましても私は非常に重大な関心を持っているわけでございます。ただ新聞だけでありますけれども、その中で私の感じますことは、校長がそういう事実を肯定しているような記事になっていると思います。したがいまして、校長監督も届かず、そうやるべき事柄でない教育が行なわれているという事態は、これはやはり学校運営の問題について相当問題があろうかと思います。そういうことでございますので、また具体的なデータはちょうだいしておりませんけれども東京都の教育委員会に対しまして報告を求めております。東京都の教育委員会でもこれについて調査を始めたようでございますので、具体的なデータ教育委員会を通じてちょうだいして、その上で私どもとしては考えたいと思っております。
  8. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員 私はこういう問題はあまりこの委員会で実は取り上げたくないと思っておるのです。ただいま局長が申されましたところの、ほかの学校でもこういう事件があったというお話でありましたが、去年の東京都の学力調査のときに、中野第九中学において、学力調査答案に、池田総理大臣を殺せ、荒木当時の文部大臣を殺せ、校長の首は門の上になま首にしてかけておけ、こういう答案が四枚も五枚も出たことが、当時いろいろなところで問題になった。しかしその学校に約三十名いる中学校先生の中に十名くらいは偏向教育専門家であるというふうなこともわかっておったが、私は、できれば、そういう事態東京区議会の問題になりいろいろなところで問題になっているけれども、この委員会においてはなるべく問題にしないで、非常識なことであるから、それをわかってもらって、その非常識を適当に是正してもらうようにお話を申し上げ、隠密のうちにとにかく一その後どうなっているか聞いておりませんが、しかし何としても、思想的偏向教育もさることながら、とにかく十四、五、六の子供テロを賛美させるようなこういう答案が、二枚、三枚、四枚じゃない、当時たくさん出ている。これは私は、テロ賛美思想教育以上にもっともっと悪いと思う。これによっては保守党のほうもやられたし、社全党革新陣営も、とにかくテロでは、政治家は終戦後もやられている。現にダラスにおいてはケネディさんもやられておる。こういうことでありますから、あの白紙のような子供たちテロ賛美まで教えるような教育というものは、私はとてもたいへんなことだと思いながら、実はその後の推移も見ておるわけであります。そうした先生方が一体どういうように直りつつあるか、またその学校が、そういうことが地方地方で話題になり、PTAを動揺させ、あるいはその子供たちの進学あるいは精神影響にどんなものを与えているかということで、いささか私は心配しておったのですが、その後しばらく聞いておりましたところが、なおかつこの大東京において、非行少年どころではない、もっともっとひどいことが行なわれるとするならば、これはたいへんなことだと思う。それでありますから、私は、ただいま局長が申されたように、資料というものが東京教育庁のほうからいただけるものならいただき、またわれわれも、それぞれそういう資料に基づいて、大きな意味での対策をひとつ研究もしていきたいと思いますから、どうぞ十二分に監督の上にお集めのほどをお願い申し上げまして、私の発言は終わります。      ————◇—————
  9. 久野忠治

    久野委員長 次に、文教行政基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。山中吾郎君。
  10. 山中吾郎

    山中(吾)委員 ただいま長谷川委員から教育の偏見について事例をもって御質疑があったわけでございますが、教育の本質は、一定思想、型を与えるのが教育でないので、自由な批判力を育て、その素質を引き出すというのが教育でありますから、こういうことが行なわれておるということは私も遺憾に思う。この点については、また文教委員会で真剣に論議をすべき機会を持つべきであると思います。私がきょうお聞きいたしますのは、そういう教育の偏向についての問題と同時に、教育行政の偏向という問題も同時に論議をしなければならない。これも同じように、日本教育が健全な姿において発展をするためには真剣に論議をすべき問題であると常日ごろ考えてきたわけであります。そういう点から考えますと、個々の教師の中に教育の偏向もあると同時に、教育行政にも偏向が生じてきておるのではないか。そういう教育の偏向を是正せしめる立場にある教育行政が偏向すれば、これは悪循環を来たしてどうにもならない。そこで基本的な問題を含んで、岐阜県の事例を含めながら、大臣関係当局にお聞きいたしたいと思うのであります。  私は、教育行政についても、教育行政のモラルというものがだんだん低下しておるのではないか、そういう感じを持っておりますが、戦後日本教育行政の基本的な方針というか、教育行政の基調というものはどこにあるのか、まず文部大臣にお聞きしたいと思います。
  11. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 非常に抽象的なお答えにならざるを得ないと思います。  申すまでもなく、日本教育の基調は、新しい憲法並びにそれに基づいてつくられておりますところの教育基本法、その趣旨にのっとりまして教育を進めていくところにあると思うのであります。
  12. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その点については私も同感でございます。そうでなければならぬと思うのでありますが、政治家としては、あるいは政党としては、憲法の再検討あるいは教育基本法を再検討すべきだということが自民党の考え方の中にあることは周知の事実でありますが、文部大臣としては、この教育基本法を改正をするということについては、この間そういう必要はないと、新聞その他で発表されておりますが、その点は間違いないのですか。
  13. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現行教育基本法につきましても、いろいろな方々からいろんな御意見もあるように承知いたしております。ただ現在ただいまの教育基本法を改正する意思ありやいなやというお尋ねがあるといたしまするならば、私は、この段階において教育基本法を改正するつもりは持っておりません。
  14. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その点前文部大臣の荒木さんとは少し違っておると思うので、改正する御意思がない。荒木文部大臣は再検討すべき問題であるとここでお答えになっておるので、考え方の違いを確認しておきたいと思います。  その場合に、前の荒木文部大臣と私の質疑討論の中で、立法論として改正するということは、これは自由である。しかし文部大臣としては基本法を守る、こういう答弁があって、それは正しい。一つ政治家として当然のことだと思うのですが、かりにそういう場合に全国の教育長会議を招集して、これは教育行政の最高の会議だと思うのですが、文部大臣がそれに対して大臣の立場において日本教育行政の方針を述べる、そういうあいさつの中で、教育基本法は再検討すべきものであると考えるということを述べることは、立法論とは考えないで、私は教育行政の指導に入ってしまっている、そういうふうに考えるのです。教育行政の責任者が正式の教育行政の会議において、教育基本法を個人としては改正する思想があっても、文部大臣あるいは地方の教育長が正式の行政機関の会合において正式の立場のあいさつの中に意見を述べるということは、立法論でなくて行政指導に入ると思うのですが、この点はいかがでありますか。
  15. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 どういう関係で、あるいはどういうつもりでそういうことを述べられたか、私は全然承知いたしておらないのでございます。大臣としての意見を言われることは別に妨げはないと存じますが、前後の関係等から、どんなつもりでおっしゃったのか、その点につきましては私は承知いたしておりませんので、これについての批判は差し控えさしていただきたいと思います。
  16. 山中吾郎

    山中(吾)委員 批判はできないと思うので、むずかしい質問は避けますけれども、質問に答えたのではなくて、正式の方針を述べるあいさつの中に含んで言われていることは事実なんで、ただ荒木さんのことは別にいたしまして、それは個人で雑誌その他に載せるのはいいと思うのです。ところが正式に文部省が招集をしておるその会合に、しかも文部大臣としてのあいさつの中に述べるのは、私は行政方針に入ると思うので、荒木文部大臣関係なくお答え願いたいのです。たとえば、それならば地方の教育委員会において、教育長が行政方針の中で教育基本法の問題については、これは改正すべきものである、したがって教育基本法をあまり尊重しなくてもいいというような演説をすれば、これは個人でないと思う。正式の旅費を出して招集して、公費をもってその会議を開催しておるのですから、私はそれは個人の立法論でなくて、行政方針として中に織り込んであると思うので、一般論としてその点の見解をまずお聞きしておきたいと思う。
  17. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育基本法は改正すべきものである、こういう意見の表明は、私は直ちにそれが行政指導の問題とは関係ないと思う。ただ何ゆえに一体教育基本法を改正しなければならぬか、その点についての事実が問題となれば問題となるのではないかと思う。たとえば、私がこういうことを大いに教育のほうでやるべきである、このように考えました場合に、いまの教育基本法ではどうもその点が欠けておるんじゃなかろうか、こういうふうな考えをいたしました場合に、そのやりたいと思っております事柄を強調する場合に、教育基本法はむしろ改正したほうがいいんじゃないか、こういう意見が立ち得ると私は思う。みだりに何のあれもなく頭から教育基本法を改正すべきであるというふうなことを言うことがいいか悪いか、これはおのずから別の問題だろうと私は思うのであります。ただ実際教育のことを進めてまいります場合に、現在の教育基本法ではどうも足りないところがあるのではないか、このような意味合いにおいて意見を表明することが、直ちに行政指導には私はならぬと思います。
  18. 山中吾郎

    山中(吾)委員 まずそれ以上お答えすることは無理だろうと思いますので、この辺にしておきたいと思いますが、個人の意見を述べるということは私も同じなんです。けっこうなんです。思想の自由なんですから。正式の教育行政機関で公費をもって開催しておる会議における意見発表ということで私申し上げておるのですが、それでけっこうです。  そこで、大臣に直接の関係なしに、たとえば、県の教育委員会が、地方教員組合は地方公務員法によって認められた団体である、その団体を批判するばかりでなしに、その組合から脱退した者は有利に人事を行なうというようなこと、そこまで言わなくても、その職員団体を、公の席上、公聴会その他において否定をするようなことを、教育長教育委員会を代表する責任者が述べるということは、助言指導の立場にある文部大臣とくに、これは適当であるとは思われないと思いますが、当然不適当と思いますが、こういう点についての考え方を、教育行政一般の問題としてお答え願っておきたいと思います。
  19. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 公に認められております職員団体の組合員であるがゆえに不利な取り扱いを受ける、こういうようなことは、私は許されていないと思います。そういうことをもし言っておるとすれば、これはもちろんあるべからざることだと私は思います。
  20. 山中吾郎

    山中(吾)委員 同じことで、たとえば県の教育委員会教育広報とか、公の費用によって出しておる啓蒙文書とか、教育を進めるための。パンフレットその他が出ておりますが、たとえば文部省では教育委員会月報というのが出ておるわけです。そういうものの中に、そういう組合を否定し、そうして脱退するほうがいいというふうな意見を述べるということについては、いかがですか。
  21. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いま申しましたとおりの考え方をいたしておりますので、それともとるようなことを公の立場にある者が言うべきことではないと私は考えております。
  22. 山中吾郎

    山中(吾)委員 個人の出版ならいいと思うのですが、県の場合は県費あるいは国の場合は国の予算で出しておる教育委員会月報その他で、法律上認められておるところの職員団体そのものを非難するということは、私はむしろ違法だというふうに思うのでお聞きしたのであります。具体的事例を言いますと、岐阜県教育委員会教育広報がある。そこに今村地方課長さんがおるけれども、十一月六日の岐阜県高等学校校長会における文部省初等中等教育局地方課長今村武俊氏の講演要旨が、公費によって出したものの中にある。「なぜ教育界に正常化が叫ばれるのか」ということで論議をされておるわけでありますが、こういう中に、今村課長にまずお聞きしておきますけれども、このあなたの演説を見ると、この教員組合というものを、労働組合主義というふうな立場からこれを否定をし、非難をしておるような演説をしておるのですが、その点は事実ですか。
  23. 今村武俊

    ○今村説明員 職員団体を否定するという発言をしたことはございません。ただ、現在の職員団体のあり方が、教育の現場に及ぼす影響について、あるいは教育の現場で公務員として事務を執行するについて、法令違反等のことは関連することがないのかあるのか、そういう事態が、いろいろ戦後の事情のために、誤った事態があるのではないか、かようなことを説明いたしました。
  24. 山中吾郎

    山中(吾)委員 労働組合としては認めておるようなところと認めてないようなところが、あなたのこの演説の中にある。どちらですか。
  25. 今村武俊

    ○今村説明員 労働組合ということば自身からいけば、教育公務員の場合は職員団体でございます。その職員団体が存在するということそのことを否定するような発言をしたことはございません。
  26. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その点はあとで、自治省、労働省来ておられるので、その性格をもう少し深めてお聞きしたいわけですが、労働組合というのは、労働組合法の労働組合——それは憲法論議は別ですよ。しかし二十八条に基づいた労働基本権の若干制限された労働組合、これは認めておるでしょうね。
  27. 今村武俊

    ○今村説明員 さように考えております。
  28. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そのときに、この労働組合主義ということについてあなたが批判をされておるのですが、これはどういう意味で批判をされておりますか。   〔委員長退席、長谷川(峻)委員長代理着席〕
  29. 今村武俊

    ○今村説明員 岐阜県の教育広報資料版にも掲載されておりまするように、私がここで労働組合主義ということばで説明をいたしましたのは、戦後のわが国の教育界において教職員が団結するといえばそれは労働組合という形態においてのみである、かように理解される傾向があったのではないか。しかし諸外国の教職員団体のあり方をいろいろ調べてみると、多元的な価値体系の上に立っていろいろな意味の教職員団体がある。先生のおっしゃる労働組合という性格を持った職員団体もあれば、職能団体という性格を持った教職員団体もある。だから、今後のわが国においては、教職員が団結する場合に、いろいろな多目的な多元的な価値体系の上に立っていろいろな団体があってしかるべきじゃないか、それが結社の自由というものではないか、かようなことを説明したわけでございます。
  30. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは一応それで、あとでまたお聞きしますが、同時に法律主義というものをだいぶ批判をされておる。この法律主義というのはどういうことなのですか。
  31. 今村武俊

    ○今村説明員 教育界において、教育の振興ということをいちずに考えますならば、教育界が問題にするのは法律上の根拠ということだけではあるまい、教育はいかにあるべきかという問題を念頭に置いて考えますならば、われわれ教育者の中に教育規範、と言うと大げさでありますが、単に法規範だけではなしに、法規範をこえた何かの規範がなければならない、そういうものを求めてわれわれ努力しなければ教育の振興というものはあり得ないのじゃないか、にもかかわらず、いろいろな機会に、ただ、何事かあると、さあ法的根拠を示せというような風潮がしばらく続いたわけでございますが、そういうのは脱却して、新しい、もっと教育の理想を求めた教育界のあり方を求めていくべきじゃないか、かようなことを言ったつもりでございます。
  32. 山中吾郎

    山中(吾)委員 普通に戦後の教育行政の基調の中で法律主義というのは、戦前のように勅令によって学校教育関係法令をつくらない、国会の承認に基づいた法律によってすべて定めるというのを法律主義といっているわけですね。あなた、そういうことと違った法律主義を言っているわけですか。
  33. 今村武俊

    ○今村説明員 私がこの講演で用いました意味は、先生のおっしゃいました法律主義と若干違っております。
  34. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その法律主義は、だから法律に基づいてすべての教育関係の規定を定める教育行政。教育そのものが偏向しない、あるいは一定の政治勢力その他に左右されないために、法律主義が出たわけです。そのことばを使って、組合批判を含んでおるものに、先生法律法律ばかり言ってというところのあなたの批判の中に、「相手になぐられても”ならぬ勘忍するが勘忍”といって辛抱するのは道徳規範である。」敵を憎むことなく、これを愛するのが宗教規範であって、こういうものによって行なわれるのが教育の正常化だというふうな説明をしておるのですか。
  35. 今村武俊

    ○今村説明員 それはだいぶ誤解されておるようであります。書いておりますのは、「「人もし汝の右の頬を打たば左の頬を差し出すべし」とはキリストの山上の垂訓であるが、敵を憎むことなく、これを愛するということは、宗教家としてあるべき姿であり、これを宗教規範という。相手になぐられても、”ならぬ勘忍するが勘忍”といって辛抱するのは道徳規範である。相手を愛することまではできないが、自分で辛抱する。これに対して、なぐられたら損害賠償を請求する。これが規範である。法規範には「眼には眼を、歯には歯を」という思想さえ残っている。人間の規範をこのように見るとき、教育者が法規範だけを目標に行動してよいものであろうか、教育者の眼は法規範をこえて、その上に向けられるべきものではないか。」という説明をしておるわけでございます。要するに私がそういう引例をいたしましたのは、われわれが規範として考えておる社会規範の中には、宗教規範もあり道徳規範もある、法規範もある。われわれは複雑な社会の中で生きている。だから、勅令主義に対する法律主義という意味では、戦後の法体系が法律によって規律されていることを毛頭疑うものではございませんが、教育者が教育者として生きていくためには、これらのもろもろの規範を正しく見詰めて、その中で教育とはいかにあるべきかということを考え続けなければならぬであろうということを説明したわけでございます。
  36. 山中吾郎

    山中(吾)委員 一番最初に、あなたの演説の中で、「ジャーナリズムは、私を日教組対策課長という。それは正しい姿の教育界を真剣に考えるとき、」と言って、日教組批判を最初に出して演説している。これは文部省から旅費をもらって行ったと思うんだが、しかも出ておるのは、県費で出しておる教育広報のものだから、私は問題にするのです。そこで、そこから法律主義も出し、それから労働組合主義というものを批判をして、そして教員組合というものをこの校長会あたりに演説をして、そういう影響力をここに載せて、脱退をした者を優先に人事をやるという一連の教育行政の偏向が流れて、おると思うので、影響を私は考えるわけですが、その点について、あなたが普通に使う法律主義でない法律主義を使って——これは普通なら使えない。法律万能思想ということでしょう、あなたのいう考え方を、熟語を正しく言えば。法律主義ということばをここに持ってくること自体に、大体自分は混乱してしまって、いろんな意図が入ってしまうと思うのですよ。それから、組合というものは、そのために、法律的な立場で、経済的な問題、給与勤務条件を主張するためにできておるので、個々の教員というものについての論議とは違うと思う。日教組対策課長と言われておるという演説を最初にしておいて、そうして組合自体があくまでも法律的根拠で権利を主張し、当局と堂々と対等に論議をし、そうして団体交渉をするということは、これは当然法律というものによらなければできないでしょう。だから、この地方教育委員会その他の指導的な主管課長であるあなたが、正当旅費をもらって、こういうところに行って演説したものを、こういう広報に載せる。一連の文部省と岐阜県の教育委員会の中に、教育の正常化という美名のもとに、教育行政の偏向を意図している。これは私は教育行政の偏向だと言うのです。  そこで文部大臣にお聞きしますが、これは私費で出すのならいいですよ。県費なんです。この点について、教育行政というものについては、もし教育の中立性を主張するならば、教育行政そのものも、こういうふうな公費で組合を批判をする姿の中で否定していくような、そういう指導性というものは私は不適当だと思う。その点はいかがでしょうか。
  37. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほど来課長説明を聞いておったのでありますが、私は別にどうも問題とすべき点もなさそうに思うのです。われわれは申すまでもなく、組合の存在を否定するものでも何でもございません。組合の存在ということは少しも否定するものではなく、むしろその堅実な発展を期待しておるものであります。ただ個々の組合がいろいろな行動をとり、いろいろなことをやる場合に、それに対する批判はあり得ることである、その批判を話すことは私は別に妨げない、かように考えております。
  38. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それは公費で出張して、そういう主管課長が行くということ自体の問題と同時に、私は公費で出版をしておる出版物に、現在堂々と法律で認められた組合を批判をしているというふうなことは、教育行政の行き過ぎだと思うのでありますけれども、そういう一つの水かけ論になればそれまでだと思うのです。それならもう少し、自民党の方策、これは政党ですから、自由ですから、私どうということはないのですが、自民党の教員組合に対する何か脱退に関する対策というふうなものがきめられておるように思うのですが、それに人事に関する教員組合の関係について、むしろ脱退した者に対しては優遇するような——これは読んでもいいですが、読みません。これはまずいい。ところが、「文部省の措置すべき事項」ということで、地方の日教組対策の具体的方針の中で、「新教育委員会法に規定された文部大臣の「措置要求」を適正に実施し、文部省指導性を高める。」これはけっこうなことである。ところが、二の、「都道府県教育長をよく握って各種の措置を通じて服務の厳正をはかりそれによって文部大臣教育長の進退について事実上の措置をとる。」これは、教育委員会というものが公選制から任命制になっても法的性格は変わっていないので、この点の事実上の措置をとることを一つの政党が文部大臣に対してもし要求するとすれば、文部大臣はどういうふうにお考えになるのか。あるいは地方の教育委員会に対して、いろいろ人事その他の関係についてのある程度の既定方針を文部省の措置すべき事項としてここに書いておるわけなんですが、この点について、現在の教育委員会というものが、公選制のときの教育委員会と、任命制のときの教育委員会の法的性格は変わっているのか変わっていないのかということが一つ。それから、政党の領袖である人が文部大臣になった場合に、その党の立場と、文部大臣教育基本法を守るという立場で、不当の支配に服してはならぬという教育基本法の十条の関係、この関係についてはどういうふうにお考えになっておりますか、これをお聞きしておきたいと思うのです。
  39. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の任命制度による教育委員会と、もとの公選制度による教育委員会との性格が変わっておるか変わっていないか、こういうことでありますが、これはことばの使い方だろうと思うのでありますが、私は教育委員会としましては、どちらの制度によるにいたしましても、先ほど私が申しましたような憲法、教育基本法、そういうふうな趣旨にのっとって、いわゆる政治的な中立を守って行政を進めていくものと考えております。また、文部大臣に対する御要望なり御注文は、自民党の諸君からもございますし、皆さんのほうからもあるわけです。社会党からもずいぶん御要望もあれば、御注文もある。また自民党からも出ておるわけであります。私は、やはり文部大臣は現在の法律制度のもとにおいて行政をやるべきものでありますから、政党の不当な圧力というふうなものがもしあるとするならば、これに従うべきじゃないと思う。ただ、各政党のおっしゃることが、とるべきものがある、こう考えました場合には、これを採用することはちっとも差しつかえないことであろう、こういうふうに考えております。
  40. 山中吾郎

    山中(吾)委員 社会党は少しもそういうことをしていない。自民党のほうですが、「集団脱退を目途に目標地域の設定、教職員は勇気に欠ける故、なるべく都市単位に集団脱退させることとし、都市単位に目標地域を設定する。」これは脱退促進具体的方策の中に書いてある。自民党の方針ですよ。「教職員を日教組から解放すること。」こういうことも書いてある。それから二に、「公安当局と緊密な連絡をとり、」云々と書いてある。それから三に、「県議会関係の有志と連絡し、必要ある場合の支援体制を整備しておく。」と書いてある。これは、昭和三十五年七月の自民党の日教組組織破壊分裂工作促進のための基本指針に書いてある。これは、火のないところに煙は出ないので、どこかに私はこういう内部の方針が出ておると思う。もしこれがなければけっこうです。社会党はこういうことは絶対にしないですよ。そこで、ここに政党人としての文部大臣と、それから教育の中立性を守っていくための文部大臣としては、他の大臣と違った別のはっきりとした方針を確立しておかないと、現実にこういう問題が出てくるについては因果関係があるんだということを私は申し上げておるのです。この点は文部大臣はどうですか。
  41. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の知らないものをだいぶお読みになったのでありますが、そういうものがあるにせよないにせよ、自民党がどういうことをしようと、これは政党としての自由だろうと私は思います。しかし、文部大臣としては、先ほど申しましたように、行政をあずかる者として、教育の中立性はあくまでも堅持する、この立場において行動すべきものと考えております。
  42. 山中吾郎

    山中(吾)委員 政党は自由であるが、あまりいい政党ではない。ただ、これを文部省の措置という方向に持っていくならば、私は文部省一つの政党の事務局のようになるので、今後ともその点については、私は文部大臣として厳正なる御方針をとっていただきたいために申し上げておるわけでございます。  そこで、具体的に入りますけれども、この間予算委員会の一般質問できっかけだけを申し上げて、あと文教委員会において十分にお聞きしたいと申し上げておきましたが、岐阜版の朝日新聞とそれから岐阜日々新聞記事をもう一度私は読み上げまして、この点について正確な論議をしたいと思うのであります。  まず、朝日新聞の一月の二十五日においてこういう記事を書いてあります。「去る七日と十八日の二回にわたって開いた高教対策協議会の会議で、一、県高教組に加入している教頭、定時制主事については学校実情に応じて異動させる建前で、校長を通じて本人に異動するかも知れないことを伝える。任命制に切替えた以前に職場選挙で選ばれた教頭、主事、主任も異動の対象として考える。一、一般教諭については組合脱退者は本人の希望にそうよう努力して異動させる。という内容の定期異動にからませた新しい教組対策とみられる方針をきめたもの。また、この文書で、“中正な態度”で服務している教員と”組合活動に熱心で偏向的な行動”のある教員も出来るだけ調査して名簿をつくってほしいと望んでいる。」こういう記事が朝日新聞である。それから、岐阜日々新聞のほうではこういう記事を書いております。「春の教員異動をまじかにひかえ、県教委ではさきごろ開いた県高校教職員対策協議会で、人事異動にあたり組合を脱退した教師については本人の希望にそうよう努力する。組合活動に熱心で偏向的な行動のある教師調査し、リストを作成する——との方針を決め、県下各高校長に通達していることがこのほど明らかとなり、県教育界に波紋を投げかけている。」こういう前文のもとに、「県教委が県下高校長に行なった通達の内容は1最近、組合を脱退し正常な教師の服務をしているものについては、異動にあたって本人の希望にそうよう努力する2このため、一月末までに各高校の組合脱退者を調査し、名簿を準備する3この際、できれば各高校で適正な批判力を持ち、中正な態度で勤務している教師、および組合活動に熱心で、偏向的な行動のある教師調査し、同じように名簿をつくる4この調査学校長との面接のうえ調査する、としている。このほか通達のなかには教頭、定時制主事、分校主任については1組合員であるこれらの職にあるものにたいしてははじめ学校長を通じて異動があるかも知れないことを伝え、さらに本人の組合脱退決意のない場合にはブロック説明会の際、考慮する2職場での選挙によって教頭などの職についたもので引き続いて同じ学校勤務している教頭、定時制主事、分校主任をこんどの異動の対象として考える——なども含めている。さらに同協議会では高校管理研究会、教育の正常化対策委員会などの新設も決められており、とくに正常化対策委員会が新しく設けられることになったのはこれまで県下で猛威をふるっている小、中学校教員の組合脱退騒ぎが、同じように県教委の教育の正常化という名のもとに行なわれてきているだけに、県高校教員の間にも県教委の正常化運動が顔を出し、実施されようとしているのは注目される。」こういう文章である。  さらに、その夕刊の記事にも、「県教委がさきごろ開いた県高校教職員対策協議会で人事異動にあたり高教組を脱退した教師については本人の希望にそうよう努力する。また組合活動に熱心で偏向的な行動のある教師のリストをつくる——との方針を決め、県下各高校長に通達していることが明らかとされた」云々、こういうふうに書いておるわけであります。  この新聞記事がもし事実ならば、日本教育行政全体の問題として、黙視することのできない限界を越えた教育教育行政の悪循環が永遠に続いて、日本教育全体の将来に対して憂慮すべき問題があると思うのでありますが、この点についてはどういうふうにお考えになっておるか、いままでの文部省調査のことについてお聞きしておきたいと思うのです。
  43. 福田繁

    福田政府委員 ただいま御指摘のありましたような新聞記事を一部私も拝見いたしました。また、先般山中委員は現地に御調査においでになったようでございますから、いろいろと事情に詳しいと思いますが、私も一応県の教育委員から事情を聴取いたしましたところによりますと、そういう方針を県の教育委員会としてきめたこともないし、また通達を出したこともない、こういうふうな報告を一応受けたわけでございます。したがいまして、そういう新聞記事自体は、はなはだ遺憾でございますが、県の教育委員会がさように報告をいたしております。またその新聞記事に対しまして、県の教育長なりその他の職員がこれを否定するような談話新聞に出ております。それからまた、校長会等の席上においてもこれを否定したということを聞いております。したがいまして、私どもはその問題に関しましては、県の教育委員会が報告したとおりに考えております。
  44. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そんな無責任調査はないと思うのです。教育委員会のほうからは、そういうことはいたしませんと答えるのは当然です。ところが、この記事を書いておる新聞記者は責任を持つと言っておる。私は調査に行って、現にその記者から直接聞いておるのです。そこで、こういう問題を黙過していけば、それは日本全体の教育問題というものは、一体行政が悪いのか、教育が悪いのか、教師が悪いのか、そういうふうなことについての結論は出ないと思う。これはもちろん、われわれ教育長にも会いました。教育長はそういうととはございませんと言っておる。それは当然です。もしあると言えば、たいへんな問題です。しかし、この記事をとった記者自身は——一つ新聞だけじゃない。朝日新聞もとっておる。新聞記者の道義として、ニュースソースはいま申し上げられないけれども、この記事そのものについては全責任を持つと答えておる。そういうことについて、一方的に文部省がいつもにらみをきかしておる県の教育委員会から報告を一方的にとって、そういうことはございませんという無責任な答弁で済まされないと思うのですが、文部大臣はいかがでございますか。
  45. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部省としましてはただいま局長からお答え申し上げました以外にお答えのしようがないと思うのであります。
  46. 山中吾郎

    山中(吾)委員 なお、しかもいけないことには、この人事主管課長である岐阜県の教職員課長は、元文部省の法規係長をしておった課長であって、何か文部省と直結したような行政の感じをこれは与えておる。少なくとも文部省はその疑惑を明らかにすべきことだと思うのです。名前はそちらのほうが知っている、だれだったか——上田課長、しかも文部省の法規係で法律通を向こうへわざわざ派遣をしたような感じを持たれてもやむを得ない。そういう関係にある課長から報告を受けても、私は責任のある調査にはならないと思う。そこで、これはそういう記事を書いたという立場において、そういうことは絶対ないといえば、今度は新聞社の権威にもかかわる。だから両者の関係について、私は国会の権威において両者を呼んで明らかにしておく必要があると思う。そういう行き方をしないと、結果はどうであろうが、日本教育行政は明らかにならない。この点はそういう立場を私は特に、委員長代理で何だが、要望しておかなければ、ならぬと思うのです。なお、これは高等学校関係なんです。ところがその前に小中学校に関して組合脱退と関連をして人事を偏向せしめておるという事例は無数にある。これは田口委員のほうからなおこの機会に事例を出して質問をされるので私は省きますけれども、数年来そういう関係のものが無数にあります。被害者のほうは校長教諭指導主事関係もある。それからそういう者に組合を脱退したならば栄転をさせるというような言い方をしているのは教育委員会の行政官もあれば校長、教頭もある。無数にあります。そういうことの中に、岐阜県の教育界ははつらつたる創意性がなくなっておる。対組合対策というものがそこまでいけば教育というのは萎縮してしまう。その点について、私は単なる組合問題をこえた教育問題として真剣に考えていかなければならぬ問題だと思って取り上げておるわけなんですが、文部当局が一方的に調査をして、そういうことはございませんでは済まされない。あくまでも両者の関係を国会に呼んで聞かなければ、この問題は解決できないということを、ここに私は明確に申し上げておかなければならぬわけであります。  それと関連をしてあとの問題としてお聞きしておきたいのですけれども、自治省と労働省が来ておられるからお聞きしますが、教員組合の性格について聞いておきたいと思う。教員組合の性格というものは憲法二十八条に基づいた組合であるということは労働省いかがですか。
  47. 青木勇之助

    ○青木説明員 いま御質問のとおり、憲法二十八条の規定に基づく団結でございます。
  48. 山中吾郎

    山中(吾)委員 団結と言い、労働組合と特に言わないのは何か理屈があるのですか。
  49. 青木勇之助

    ○青木説明員 現行の労使関係法体系は、先生御存じのように国家公務員法、地方公務員法、公労法、地公労法、労組法というような体系になっておりまして、これらはいずれも憲法二十八条の規定に基づく団結でございます。その名称は国家公務員法、地方公務員法では職員団体その他の組合員というふうになっておりまして、それから公労法以下の労使関係法では労働組合ということばになっております。法律上の名称はそういうふうに職員団体あるいは労働組合、こうなっておりますが、社会通念的な意味から申し上げますれば、いずれも労働組合と言えると思います。
  50. 山本幸一

    山本幸一委員 ちょっと関連して。いま山中委員から岐阜県の唯一ローカル新聞、岐阜日日新聞記事と、それから朝日新聞記事をそれぞれ読み上げられたわけですが、記事の解釈は別にして、県教委が出したか出さぬか知らぬが、いわゆる通達文書なるものの内容は、一字一句も違っておらぬわけです。そこで初中局長は報告を受けたが、そういう事実はない、また校長会議においては口頭でそういう事実のないことを明らかにした、こういう報告を受けておると言われたのですが、単なる報告を受けたのか、それともあなたのほうが積極的にどういう調査をされたのか、その点もう少し具体的におっしゃっていただきたいと思います。
  51. 福田繁

    福田政府委員 そういう新聞記事を私ども見ました。事柄が重大と思いましたので、県の教育委員会のほうにどういうわけかということをお尋ねしたわけでございます。その結果、どの課長だったかちょっと名前を忘れましたが、課長が参りまして、それについてのいろいろないきさつを報告されました。その後県の教育長なりあるいは教育次長が私のところに参りまして、ただいま申し上げましたようなことを私に言ってまいったわけであります。そういうことでございます。それに基づいて申し上げたわけであります。
  52. 山本幸一

    山本幸一委員 私はくどいことを申しません。大体否定的な態度でしょうからあまり深くその点には触れませんが、たとえば具体的な事例をとりますと、岐阜県高山市の教職員組合が全員脱退をしておるわけです。そこで県教組に対して脱退届けが出ておるわけです。その脱退届けの理由を読んでみますと、「私たちがこうしなければならなくなったのは単に教育の問題のみでなく、明らかに政治的な何ものかの力によるものであり、高山市教育委員会や、高山市校長会の圧力でもなく、その背後で糸をひく何者かの力によってであり、その何者かの姿を確認をもってつかみ得ずして敗れ去ることは誠に遺憾であります」こういうこと言っております。これはあとでお見せしますが、この脱退届けの事実からいって、かなりの圧力がなければこういう脱退届けは出さぬと思うのです。これは具体的な事例を申し上げるのですよ。あなたこれに対してどう思われますか。
  53. 福田繁

    福田政府委員 その高山市の脱退の問題につきましては私は詳細を存じておりません。したがって、そのケースについての批判は申し上げる限りでないと思います。しかし、組合に入るか入らないかということは自由でございます。したがって、岐阜県の場合におきましては私どもは自発的な脱退であると思っておりますけれども、いま申されたような何か圧力を加えて、あるいは他の力によって脱退させるということがかりに一般的にあるといたしますれば、それは適当でないというふうに考えます。
  54. 山本幸一

    山本幸一委員 私ども文部省の態度が実にあいまいだと思いますし、それからこういう重要な問題について全然情熱をお持ちになっておらぬように思います。  そこで、私は議論は申しませんが、文部大臣にお尋ねします。いま山中委員が読み上げました朝日新聞、岐阜日日新聞、少なくとも権威のある新聞が、いわゆる通達文書の内容といわれるものは、私が申し上げたように一言一句違っておりません。しかしこれをもあなたのほうは県の報告によってそういう事実はなかったんだ、こうおっしゃっている。  そこで私が文部大臣にお尋ねしたいのは、もしこういう事実があった場合に、文部大臣はどうされますか。これをちょっとお聞きしたいのです。
  55. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 最初に申し上げましたように、組合の組合員であるということで人事上差別待遇をするというふうなことは、これはあってならないことであります。そのようなことを県教委がやっておるといたしますれば、文部省の立場におきまして適当な処置をとる、こういうことになろうかと思います。
  56. 山本幸一

    山本幸一委員 文部大臣、さすがは明快な御答弁で、私も大いにその点については感謝しております。  それでは、こういう事実があるといって新聞が報道しているのです。もちろん新聞は先ほど山中委員が言われたように、ニュースソースについては新聞道義の上から一言も言わぬでしょう。しかし記事責任は持つと言っているんです。そこで大臣にお尋ねしたいのですが、こういうことはその真相あるいは真意を調べる必要があるかどうか、これをお聞きしたいと思います。
  57. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのような通達を出したということがもしあるとすれば、これを私は教育委員会が否定をするということは、よほど大胆なものでなければできないと思います。そういうものを出しておるという事実があるにもかかわらず、これを否定するということは、私はあり得ないことだ、このように思います。
  58. 山本幸一

    山本幸一委員 大臣ちょっとその点あなた誤解しているのです。少なくとも新聞社は記事については責任を持つ、それから初中局長は報告を受けた結果によると、そういう事実はないと確信すると、こうおっしゃる。そこで私はもっとやさしく申し上げているんだ。しからばこういうことがあったらたいへんなんだが、一体両者の意見の食い違いがあったのか、いずれが正しいのか、こういう問題を究明する必要があるのかどうかということをお尋ねするのです。いかがですか、その点は。
  59. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はどうもその事態につきましては、県教委がそういう通達を出しておるということならすべて教員が知っているはずです。そういうような事柄であるにもかかわらず、本省に来まして出したことはございませんということを言い切ります以上、さらにそれを究明する必要はなかろうじゃないか、かように考えます。
  60. 山本幸一

    山本幸一委員 それは大臣おかしいです。そういう考え方はちょっとあなたに似合わぬと思うのですよ。少なくとも、新聞社がこの記事責任を持つと言っている限りは、新聞社は新聞社としての責任を持っているわけです。それを一方の報告だけを聞いて調査が必要ないというようなことは、あなたどうして断言できるのですか。究明するのはあたりまえですよ。これを究明しないのはおかしいですよ。何をおっしゃっているのですか。あなたこれをやるべきですよ。単なる報告を受けるだけでなしに、進んで積極的にやるべきですよ。もう一ぺんお聞きします。
  61. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私はそれほどの必要はなかろう、このような判断をいたしておるわけであります。
  62. 山本幸一

    山本幸一委員 なぜ必要がないのですか。それを聞きましょう。なぜ必要がないのです。
  63. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどからお答え申し上げておるとおりであります。教育委員会がわれわれのところへ来まして、このような事実についてはっきりと否定をするということは、もし事実があるとすれば私はできないことだと思います。それをそこまで言っているわけでございますから、しいてこれ以上究明する必要はないであろう、このように判断しておるわけであります。
  64. 山本幸一

    山本幸一委員 関連質問でこんなに時間をとって申しわけないのですが、私は大臣があくまでも同意をせられなければ、これ以上言ってみたところでしょうがないと思うのですが、長谷川君は委員長代理ではなはだあなたに聞くのはおかしいと思うんですけれども、国会が独自の立場に立って、いま私が申し上げたように一方においてはそういうものをつくった覚えがない、また出した覚えがない。他方、新聞社は、しかも朝日新聞を含めてですから、権威ある新聞社ですね、これは明らかにこの記事責任を持つと言ったのですね。そういうときに文部大臣は、おれはこれ以上やる必要はないとおっしゃる。しかし、国会としてこういう問題の究明をする必要があると思われますか、どうですか。委員長の御意見、特に賢明なあなたですからお聞きしたい。
  65. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員長代理 お答えいたします。  委員長代理ではなはだ不敏でありまして、いずれ理事会等がありましたらだんだんの議論が出ると思います。御了承願います。
  66. 山本幸一

    山本幸一委員 非常にいい御答弁です。理事会がありましたらだんだんの話じゃなしに、理事会ではかっていただいたらいかがですか。
  67. 長谷川峻

    長谷川(峻)委員長代理 その程度のことは考えております。
  68. 山本幸一

    山本幸一委員 了承。それじゃひとつ、あなた今村さんというのですか——先ほど山中さんが三つ出して質問されたのですが、そこで私はここに詳しく出ているので気にかかることがありますから、一言だけお聞きしますが、あなたの講演によると、「憲法第二十六条はいうにおよばず、教育基本法学校教育法教育公務員特例法・教育職員免許法等教育に関する基本的事項は、すべて法律で定められることになった。」そこで大臣は、これらに準拠して教育行政を行なうのだと先ほどからたびたびおっしゃっている。ところがその次に、「しかし、そのことの故に、現在の教育界の不正常化状態を招く結果となった」、これはどういうことですか。こういう法律に準拠して教育行政をやるのだ、しかし、そのことのゆえに教育の不正常化を招いた。このことは明らかに前段の法律準拠を半ば否定したことになるわけですね。これはどう思われるのですか。
  69. 今村武俊

    ○今村説明員 説明がその次に書いてあります。「つまり、「法律を知っているもの」が教育界で必要以上に珍重がられ、「えせ法律論」が教員組合の武器となったからである。」これが理由でございます。
  70. 山本幸一

    山本幸一委員 私は理由よりも、むしろ前段の法律に準拠しなければならぬということを言いながら、そのことが今度は不正常化の原因を招いておる。理由を聞いているのじゃないですよ。このあなたの考え方、法律に準拠するけれども、その法律自体が不正常化を招いている、これは一体どういうことなんですか。
  71. 今村武俊

    ○今村説明員 ただいま説明したとおりでございますが、教育界で戦後の時代をいろいろ考えてみますと、戦前は勅令主義であって、法律による規制ということを知らなかった教育界で、法律を知っているということは確かに便利なことであります。法律を知っている者が、法律を知っているがゆえに重用されるという時代も確かにありました。したがって、何かあるとすぐ一方的な法的な根拠だということで問題を起こす、そういうところに教育界の間違いもあったのじゃなかろうかというのが私の考え方であります。
  72. 山本幸一

    山本幸一委員 君の答弁はおかしいぞ。ぼくの聞いているのは、前段で法律に準拠すべきだと言いながら、後段でその法律そのものが今日の不正常化をもたらした、これは一体どういうことだというのだ。そのことをずばり言えばいい。そんな長々したことを聞かなくてもいいのだよ。
  73. 今村武俊

    ○今村説明員 何がおかしいのか全然わからないのでありますが、やはりわれわれの社会規範には宗教規範、道徳規範、もろもろの規範がある。そのもろもろの規範の中でわれわれは生きておる、こういう実態をつぶさに考えますならば、何をするにもただ法的根拠法的根拠というのはおかしい。法的根拠に支配されない何かがあるというのは正当だと思います。
  74. 山本幸一

    山本幸一委員 私は理解できませんが、あなたがどう説明されましょうとも、この文書によれば明らかに法律に準拠した、その法律そのものが現在の教育界の不正常化をもたらしているのだ、こうきめつけて、あとから道徳論等を持ち出しておられる。その道徳論等についてぼくは何とか言っているのじゃないですよ。少なくとも官吏あるいは公務員法律に準拠しなければならぬ。しかるにその準拠すべき法律を半ば否定するということは、これはあなた官吏や公務員として許されぬことです。それを聞くのです。あとの道徳論のことについてわれわれは聞いているのじゃないのです。それはつけ足りの理由にすぎないのであって、問題は、官吏は——大臣以下公務員が準拠すべき法律をみずから否定するがごと言動を公衆の前でやるということは一体何だ。きれいごとを言うなよ。
  75. 今村武俊

    ○今村説明員 法律はまさに尊重すべきものであり、われわれはそれに従うものだと思います。私が言わんとしておるのは、法律万能主義はいけない。教育界法律万能主義を振り回してはいけないということであります。
  76. 山本幸一

    山本幸一委員 これ以上言いません。言いませんけれども、今村課長、これは反省すべきですよ。法律万能主義であるとかないとかいうことより、公務員として法律を守らなければならぬ、憲法を守らなければならぬその人が、少なくとも意図はどこにあろうと、言動の中で、法律や憲法を否定するような、あるいはそうでなくとも、否定されるように印象づけるそういう発言をするということは、少なくとも官吏として、公務員として注意を要することだと思うのだ。それは反省すべきだと思うが、これ以上言わぬ。またいずれ次の機会に申し上げることとして、関連質問であまり時間をとると本質問のほうに支障を来たすから、これでやめます。
  77. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 今村課長の行政官と政治家の判断、そういう問題については先ほど山本委員から言われた点でありますので、この点は厳密にしなければならぬと思いますから、これは将来の問題として残します。  私は、労働省の法規課長法律論で伺いたいのでありますけれども、先ほど山中委員の質問に対しまして、教員組合が憲法二十八条の団結権に基づく職員団体である、こういうことを言われたわけでありますが、これは地方公務員法の五十二条に明確に出されております。そこで、問題になりますのは、先ほど来山中委員が質問されております問題と関連をいたしまして、不当労働行為との関係でありますが、不当労働行為の不利益取り扱いの禁止が地方公務員法の五十六条に明記されておる。しかし、実際に明記されておりますその不当労働行為の救済に関して非常に不明確な点があると思うのであります。そこで、地方公務員の不当労働行為の救済についての関係説明していただきたいと思います。
  78. 青木勇之助

    ○青木説明員 地方公務員法のほうは私どもの所管でございませんので、自治省から答弁願いたいと思います。
  79. 川崎寛治

    ○川崎(寛)委員 私が聞いておるのは労組法の七条との関連です。
  80. 青木勇之助

    ○青木説明員 先生御存じのように、労働組合法では第七条におきまして、民間の労使関係につきましては不利益取り扱いの禁止、正当な理由なき団交拒否の禁止及び支配介入の禁止、及び委員会等における不利益審査等の場合の発言理由とする不利益取り扱いの禁止、こういう四つの事項につきまして不当労働行為として禁止いたしております。これに違反いたしました場合は労組法二十七条の規定に従いまして、労働委員会の特殊な手続による救済手続が設けられております。その点、地方公務員法ではただいま御指摘のように、五十六条で労組法の七条一号に見合う規定、職員団体の構成員である、あるいは職員団体の正当活動をしたことを理由とする不利益取り扱いの禁止規定がございます。これに違反いたします場合は地方公務員法の規定にあります不利益審査の手続、こういうふうに相なっておると思います。
  81. 山中吾郎

    山中(吾)委員 先ほど法的制度について聞いて、まだ足らないので、自治省にお聞きしたいのですが、その前に労働省に先にお聞きします。  二十八条の団結ということが認められておるとすれば、憲法上の性格は労働組合ですね。職員団体は労働組合法の組合でない——これは別に地方公務員法に基づいて示しておるわけですか。憲法上は労働組合ですか。
  82. 青木勇之助

    ○青木説明員 憲法二十八条の法意につきましては、すでに最高裁の大法廷の判決も出ておりまして、使う者と使われる者の間におきまして勤務条件の維持改善をはかるために勤労者側に団結権が認められている。この団結を社会通念的には労働組合というふうに言っております。したがいまして、そういう意味で労働組合と言えると思います。
  83. 山中吾郎

    山中(吾)委員 その辺は文部省も自治省も皆同じ見解ですね。そこで不当労働行為ということばを普通に使っていることも、これは職員団体に対する場合でも否定はしていないわけでしょう。
  84. 松浦功

    ○松浦説明員 ただいま労働省の法規課長から御答弁がございました法律の裏づけがある不当労働行為というものは、地方公務員法の中では考えておりません。しかしそういう意味でなくて、一般論としての不当労働行為という考え方は、やはり思想的には地方公務員法の中で当然考えているということであります。
  85. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それから、地方公務員の五十六条の不利益取り扱いの禁止の問題があるのですが、岐阜県の場合のように、組合脱退を条件として転任その他を左右するという事実があれば、当然五十六条に該当すると思うのですが、それは間違いないでしょうね。
  86. 松浦功

    ○松浦説明員 これまで委員会で問題になっておりました事実関係については、私どもは存じませんが、その点はあらかじめお許しを願いたいと思います。もしそういう事実があるとすれば、五十六条の規定の精神に違反するということに相なるかと思います。
  87. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そこで事実はこれからの調査であとで出るわけですが、そういう事実がもしある場合、自治大臣としてはいろいろ措置をしなければならない立場があると思うのですが、どういう措置があるか。
  88. 松浦功

    ○松浦説明員 教育公務員関係の問題を含めまして、一般的には文部大臣に技術的助言というような権限が、組織に関する法律の中にたしかあったかと思います。そのほか自治省といたしましては、地方公務員法第五十九条に規定がございまして、この法律によって地方公務員制度の原則に沿って地方公務員行政が運営されるように協力し、及び技術的な助言をすることができるという規定がございます。したがってそういう事実があったということが確認をされた場合に、もしあったといたしますれば、そういう場合には文部大臣と相談をいたしました上で、自治省としてもそういうことは法律違反であるからやらないようにという技術的な助言はできるかと思います。
  89. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしますと、いまのお答えは事前の場合の助言ですね。   〔長谷川(峻)委員長代理退席、委員長着席〕 組合を脱退するということを条件で転任を左右した、不当な事情があったという場合には、それを取り消すことを助言するとかいうことも含んでおるわけですか。
  90. 松浦功

    ○松浦説明員 当然そういう事例も含み得ると思います。
  91. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それからある支部に集団的に脱退をしておるところがあるようですが、われわれの意思によらないで約束をさせて、やむを得ず脱退をいたしますと、文書をもって出しておるのですが、普通の退職その他は家事都合によりと書いてあるのだが、そうでなくて、文書でそういう集団脱退の脱退届を出しておるところがある。これも事実とすれば——決して事実を前提としておる論議を私はしません。法律上聞いておるわけですから……。そういう場合には、やはり組合復帰ということも助言の中に入りますか。
  92. 松浦功

    ○松浦説明員 その辺になりますと、人事行政の正常な運営という問題に入る問題かと思いますので、非常に問題があるかと思います。
  93. 山中吾郎

    山中(吾)委員 文部省にお聞きしますが、そういう意思に反して組合を脱退させられたという事実が明らかになった場合には、これは組合に復帰をさすというような、あるいは意思に反する強制をされたような、法律で認められた職員団体を無視するような事実がある場合には、文部省の立場においては復帰をせしめるようなことも助言をすべき内容に含むと私は思うのですが、どうですか。自治省との関係になると思うが、法律解釈を……。
  94. 福田繁

    福田政府委員 私どもとしましては、具体的に不利益な取り扱いを受けた、あるいは転任をさせられたというようなことがあれば、これは地方公務員法の規定によりまして、その当人が人事委員会あるいは公平委員会に審査を請求することができるわけです。したがってその審査の結果を待って具体的に処置がきまるわけでございます。ただ組合に入るか入らないかという問題は、あくまで個人の責任であろうと思います。したがいまして、文部省として組合復帰とか脱退をしろとか、脱退しろということはもちろんありませんけれども、そういうことはやるべきではなかろうと思います。
  95. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それはまたあとで。——岐阜県の場合を見てみますと、教育の正常化という運動と、事実上組合脱退を強要しておるというのが裏と表になっているわけです。法律で認められた職員団体から出ることが教育の正常化だ、事実上はそういうやり方をしている。教育の正常化というのは一体何ですか。これは今村課長がその点の権威者のようだから課長にお聞きしたい。
  96. 今村武俊

    ○今村説明員 説明員がお答えすべき問題かどうかと思われますが、「教育の正常化とは、憲法をはじめとする諸法令に基づき、教育行政および学校管理の秩序を正し、政治的偏向を排して教育の中立性を堅持し、教育関係公務員としての規律ある服務を確立することにある。」、これは県の教育長が県教組の委員長に答えた回答でありますが、大体こんなところだろうと考えます。
  97. 山中吾郎

    山中(吾)委員 そうしますと、組合の脱退をすることが教育の正常化であるということで裏表の指導をしておるという事実が出れば、これは教育の正常化と関係のない、教育の正常化を美名にした組合否定だということと確認しなければならぬのですが、理屈は別にして、岐阜県の場合は確実にそうなんです。どう見てもそうなっている。個々の問題はまた事例が出ると思いますが、確実にそうなっているのです。そうしてそのときの理屈には、これは自民党の諸君はいつも論議するのですが、日教組の教師の倫理綱領を理屈につけて言っておるようです。そういう倫理綱領を持つ日教組に参加しておるから、それに参加をすることが教育の不正常化である、これを脱退することが正常化だという論理を出している。そういう教育の正常化の論理を出しているのですが、文部大臣はこの点はいかがですか。私は全然無関係の問題だと思うのです。
  98. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 脱退とか加入とかいうこととは私は関係ないと思います。問題は日教組の指導理念としておるものの考え方、思想というところにあろうかと思います。ただわれわれが問題にするのは、日教組がいかなる行動をしておるかというところがわれわれとしていえば問題点となる問題であります。
  99. 山中吾郎

    山中(吾)委員 各県の教員組合は一つの組合としては独立の組合なんで、それを県の教育委員会が、日教組の倫理綱領を口実にして、教育の正常化即脱退だという指導があれば、非常にこれは不適当であると思うのです。その点は大臣も同じ意見だと思いますが、間違いないですか。
  100. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教育委員会として本来個人の自由に属すべきことにつきまして指導するとかなんとかいうことは、適当ではないと私は考えております。
  101. 山中吾郎

    山中(吾)委員 それからさらに高教組もまた同じように脱退、この新聞は、高教組に対する脱退を条件とした人事指導の方針なんです。したがってどうも教育委員会というのは組合否定の指導をやっておるので、そう簡単に水かけ論で終わるような問題でない。何か教育行政全体の中に目に見えない糸が入って偏向しておるように思うので、この点についてはあくまでも真相を明らかにしたいと思いますけれども、一応私の質問は中止しまして、田口委員のほうからその他のいろいろの事例をもって質問を通告されておりますので、そのあとでまた続行いたしたいと思います。
  102. 久野忠治

  103. 田口誠治

    田口(誠)委員 それでは山中先生の質問に関連して伺います。  きょうは地元の議員が三人文教委員会に出ております。私どもは地元だけに内容を具体的に知っておりますから、そういう内容をここに報告を申し上げ、そして善処していただきたいと思うわけです。特に私は先ほどの質疑応答を聞いておりまして、朝日新聞が四段抜き、岐阜日日新聞が六段抜きというような相当大きな問題として取り上げており、しかも取材者が、この記事内容には責任を持つのだ、こういうように言っておるものを、ただ教育委員会なり教育委員長が来て、そういう事実はありませんということで、その報告を聞いただけで調査する必要はないという御答弁があったわけです。私は横で聞いておりましたが、いずれにいたしましても、文部大臣という人格者がお考えになれば、おそらくそういう問題があっても岐阜県の委員会があるいは教育長がそういう事実はありませんと言えば、それは信用すべきではないかというきわめて常識的な判断からそういうお答えがあったと思いますので、私は岐阜県の場合はなかなかそういう常識をもって割り切ることはできないのだということを前提に、これから若干申し上げたいと思います。時間も理事さんからお聞きいたしますると、あまりないようでございますので、私がまとめたものを報告して、大臣あるいは局長の御回答をいただきたいと思うわけでございます。  特に私はこの内容に入ります前に申し上げたいことは、私の報告をいたしますると、校長とかあるいは教頭が非常に浮び上がって、直接に職員組合の切りくずしの行動をしておるというような内容になっております。しかし大多数の校長なり教頭はそういうようなことは全く不本意である、良心的にできないのだという考え方の上に立ちましても、県教委なり地教委なりPTAなり市町村長などから強い圧力があって、そうして組合員の分断工作をするのやむなきに至っているということをここに明確にしておいて、そうして以下報告を申し上げたいと思います。特に私はこういう問題だけにオーバーに申し上げません。私どもはほんとうに調査をした事実に基づいてそれのみ申し上げるわけでございますので、その点も御了承をいただきたいと思います。  なお岐阜県の日教組弾圧の問題は今日始まったものではございません。これは昭和三十四年の専従制限の問題が出来ましたときから始まりまして今日に至っておりまするが、その当時は職員組合と当局と交渉をするときには、隠しマイクを机の中に入れて、一人一人の先生発言を聴取して、そうしてその人たちを不当な差別取り扱いをしようとするような、そういう行動もやっておったという実例があったわけでございます。そういうようなことから今日に至っておりまするが、まことに残念でございまするけれども、当時は一万二千名ほど組合員がおりましたけれども、今日ではその半数にも足らない五千名近いところの組合員に相なっておって、当局としては組合の分断工作に成功しておるということは言えますけれども、私はこの経過を見て、民主主義を助長されておる今日、まことにあってはならない問題である、かように考えまして、以下申し上げたいと思います。  本来ならば、昭和三十四年以来のことを申し上げると一番よくわかるのですけれども、時間の関係上その点は省略をいたしまして、一昨年の八月あたりからのことを、私は文章で縮めてまいりましたので、これを見ながら報告をいたしたいと思います。ちょうど昭和三十七年の八月でございましたが、岐阜県教組の美濃加茂支部の組織の混乱をはかるという行動が起こされまして、そして第二組合をつくらせるという考え方でいろいろと行動がなされたわけでございます。そこで校長さんの名前も私はあえて伏せて某校長と言いまするが、某校長が岐阜県の可児郡可児町の今渡地区の小料理店に可児の教頭二人を招待して、そうしてごちそう政策を行ない、加茂地区においては県教組に刃向かう者あるいは第二組合を結成することに成功をおさめた者は人事の面で優遇する、したがって可児郡でもそういう点で非常にがんばっておるので、こちらのほうでもひとつ努力をしてもらいたい、そうして、現在自分の手元にきておるのはこれに同調する人も十二、三名あるのだと言ってうその氏名を発表して、その方向へ持っていこうといたしておるという事実があったわけであります。そうして、ちょうど十月に行なう学力テストのときにおそらく県教組が何かいろいろと問題を提起してくるであろうから、そのときを動機に県教組加茂支部を全滅させてもらいたい、このときにひとつがんばってもらいたいと言って、校長が激励訓辞を行なっております。結局以上のような経過をたどって分裂工作が始まりまして、さらに昭和三十八年の一月九日には教頭会が招集されまして、そして日教組、県教組を脱退するよう加茂支部の執行部に申し入れてはどうかの意見が出されまして、そのときに良心的な教頭先生は、そういうようなことは行なうべきではないのじゃないか、それはちょっとひどいと言って一応それに反対の意見を述べましたが、残念なことにはそれを押し通すことができず、周囲の圧力と空気によって教頭もまっこうからこれに反対するということができなかったので、不本意ながらもそういうことに努力することを強く決意いたしたようでございます。それから一月十日でございまするが、緊急校長会が持たれましたおりに、教頭から決定を支持することをきめましたということを報告しておりますので、この件については形式的ながら教頭の報告を推進するのだということをきめまして分裂工作を進め、相当数の脱退者を出すことに成功いたしたわけでございます。したがって第二組合の組織化については、県教組のオルグ等が入りまして、良心的な先生方にオルグをいたしまして、大半は居残るということになりましたけれども、そういうような行動がなされたということをここに申し上げておきます。そして特に山間僻地に追いやられるのではないかという、人事の面で責任を持たないというこのことが先生方の頭にきまして、子供を持ったり年寄りを持ったりしておる先生方は、人事の面で不当な取り扱いをされることをおそれまして、やむを得ない理由をつけまして脱退をしております。そのときの脱退理由内容は、やむを得ない理由により脱退をする、こういう理由で脱退届けを出しております。このような組織分断工作がはかられたのでございますが、これは具体的に申し上げるならば、校長が一人一人の先生を呼びつけまして、脱退をしてもらわなければ人事異動のときにはどこに追いやられるか、身分の保障はできない、こういうおどしをかけて脱退の勧誘を行なっております。これらの刺激を受けまして、最初にはこういう問題は本巣郡の某町のほうで第一発をあげることになっておったのでありまするが、某町におきましては一番乗りを加茂、可児地区のほうでやられたいというので、町長さんがたいへん頭にきまして、一番乗りをすることができなかったというので、さっそく四つの学校校長先生を呼びつけて、そして校長先生に、あなた方は日教組を脱退しなさい、県教組を脱退しなさい、こう言って詰め寄ったわけなんです。ところが、校長先生教職員組合に入っておらないから、私どもは組合に入っておりません、こう言ったら、まあ、そうかというようなことで、第二の手段としてとられたのは、その夜電報で各先生を呼びつけ、美濃加茂地区などではこういうような状態で脱退をするようになっておるんだから、先生方もひとつ脱退をしてもらいたい、そして地元の学校や自分の学校に近い学校につとめさせてもらえないとしても県教組、日教組に批判のあるわけではないことの脱退者については優遇をしてやるというような内容のことをほのめかして脱退届けを書かした。こういうような非常に常識で考えられないような行動がなされておるような次第でございます。  そこで、私はこういうような問題がありましたので、これはちょうど昨年の三月の内閣委員会におきまして文部省設置法の改正のときに、こういうような内容を申し上げ、荒木文部大臣にどうなんだと御質問をいたしましたら、まだ聞いておりません。しかし聞いておらないけれども、ただいま先生のほうから説明がありましたような内容が事実とするなれば、それはゆゆしい問題であるから、文部省としても調査、助言する必要がある、こういうような答弁があったわけでございます。私はこの答弁はもっともな答弁だと思ったわけでございまするが、ただ私はそのときに、野党でございまするけれども、一政治家として、岐阜県を恥さらしにしたくないんだ、できるならば県教組が自主防衛という形でこういうようなことを防ぐような行動をしてくれることが一番いいであろうというようなことで、あえて調査の要求も喚問の要求もせずに今日まで至っておるわけでございまするが、いまから考えてみますれば、そのときにそこまでやっておけばよかった、こう思われるわけでございまするけれども、私はきわめて常識的な態度で一政治家として県の恥さらしをしたくない、そうして労働組合というものは自主的に自分たちの組合員の行動をきめさせる場であるから、これはやはりオルグ等を入れて、こういう暴挙に対処する必要がおるのではないか、こう考えまして、利はあえて文部省当局に対してそれ以上の要求をしなかったわけでございます。非常にそのことが今日災いになりまして、ただいま質疑のありましたような内容が各所に起っております。非常に私はその点を残念に思っておりまするが、ただいま申しました範囲内のことにつきましては、文部大臣は荒木さんと同様に、これはそういう事実があるというなればゆゆしい問題であり、そうしてこういう県教委なり教育長に対しては正しい指導、助言をする必要があるというお考えになるかどうかということを、まずこの辺で伺って、次に移りたいと思います。
  104. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 いろいろ具体的な事例をあげてのお話でございます。岐阜県につきましては私もお話を聞いてたいへん参考になりましたが、具体的な問題に対する意見を差し控えさせていただきたいと思います。  私は、組合から脱退するとか、あるいは加入をするとかいうようなことは、あくまでも個人の自由な意思によってなさるべきものであると思うのであります。もしそれを、あるいは教育委員会でありまするとか、あるいは教育委員会の職員でありますとか、そういう立場におる者が干渉がましいことをするということは、これは適当でないと思います。ただつけ加えて申し上げますれば、やはりその組合が世間的にといいますか、どんな評価を受けておるか、どんな行ないをしておるかというようなことが、一面からいいますと、やはり批判を招くわけであります。したがって組合としては、組合の勢力の拡張をはかるということは当然のことでありますし、またそれと反対な考え方をしておる向きが、それに対して反対の働きかけをするということも、これはあり得ることだと思います。問題は、いまのような事柄について県の教育委員会とか、県の教育委員会の職員とか、学校長とかいうふうな者が、その地位、権限をもって臨んでいくというふうなことは、これはよろしくない、このように私は考えます。
  105. 田口誠治

    田口(誠)委員 私は、大臣のお考え方はそれでいいと思いまするし、そういう考え方の上に立って、これはいろいろ決定的な処理を行なっていただきたいと思います。  そこで私は、これは昭和三十八年一月以降の事例も若干申し上げ、そうして私の県でいきますると、二区関係の状態をよく知っておられる楯代議士も来ておられるので、その方面からも言っていただきたいと思いまするが、昭和三十八年の一月三〇日に——私はことば短く申しますが、御嵩の小学校では、校長が、来年度の役員はうちの学校では受けないんだ、もし受ける者があれば、それは転任してもらうんだ、こういうことを言っております。これは不当労働行為になろうと思います。  それから三十八年の二月一日には、姫治小学校校長と教頭より、本日午後六時を期して全部の学校が脱退届を持ち寄るようになっている。姫治小学校だけ残ることはいけないから、脱退届の名前を書き入れるようにした用紙を出して、これに書いてほしいと迫っております。どうしても書かないと言明した先生には、人事については責任を持たないと言っております。そうしてなお数名を除いての脱退書が届いたのでありますが、翌日になりまして、その校長は全部の学校が持ち寄るから云々と言ったけれども、そういう事実がないということが先生方にわかったので、それは校長先生がうそを言ったんだから、きのう書いた脱退届けは返してくださいと言って返してもらって、それを破り捨ててしまった、こういうような経過もあります。  それから春里小学校では、教頭が職員の朝礼のときに非常事態宣言をすると言って、本日午後六時までに分会の態度を明確にしてほしいということを要求した。そこで午後五時三十分から九時三十分ごろまでに先生一人々々を呼んで、校長が脱退を要求した。そうして翌朝、校長は前夜強い圧力をかけたから、今度はごきげんをとって、先生方に昨日は済まなかった、今後はもうああいうことはやりませんと言って、職員にあやまって歩いておる。こういうようなばかげたようなことが事実なされております。  それから二月の二十七日に、上之郷小学校では、午後五時三十分から午後七時ごろまでにPTAの役員全員約二十名が学校へ来て、そして組合について先生方の意見を聞きたいということで、全員が残ってもらいたいということで、暗に臨時総会というようなものを開かしておるという実例がございまます。それから三月の十一日にはPTAの実行委員が再度参りまして、先生方宿直室へ一人一人呼んで、そうして県教組、日教組を脱退をするように圧力をかけております。  それから七月の二十四日には、美濃市の中有知小学校へ、PTAの会長で某政党の青年部の方でございますが、これが押しかけてきまして、組合に残っているような先生はこの学校におってもらうわけにはいかぬ、きょう中に脱退するように腹をきめてほしいということを迫っております。それで夜通し脱退を強要いたしまして、その結果、先生たちは、美濃市の大半が脱退したら私たちも情勢に従うということをその晩は約束をいたしております。夜通しこういうような責めをいたしております。それから七月の二十八日以降、PTAが要望書を持って回って、そうして七月十五日の美濃市連合PTA会長会議では正常化の問題が議題にのぼって、分会長としては校長の決定に従いこれを応援するということをきめたということで、七月の二十八日以降、会長、副会長あるいは書記といったようなメンバーが各先生の自宅を訪れて、そうして脱退を説得して歩いたということでございます。特に人事に関連しての脱退強要でございまするから、共かせぎの先生が主人と妻が遠く離れたりするということは非常に困ると言い、そうして子供を持っておる者、年寄りを持っておる者は、やはりできるなれば同じ市の学校につとめたい、そうして同じ市でなくても、同じ家から通えるところにつとめたいというようなことで、結局そういう人事の面で不平等な取り扱いをされるのだというので、やむを得ないという理由で組合を脱退しておるという実例がございます。  それから最近、脱退強要の実例でございまするが、岐阜市の芥見小学校では、二月七日の夜八時三十分より九時五分過ぎまで、学校より十四キロほど離れた分会長宅を校長PTA会長同伴で訪れて、そうして家族の前で分会長に脱退をさせるようにという要請をいたしております。  時間の関係をにらみ合わしてやっておりまするので、ここで、この書いた文とはちょっと違ったので事実を申し上げまするが、そういうようなPTAの役員さんやら校長さんが自宅を訪れて、そうして先生の留守中に脱退を強要されておりますから、したがってうちにおられるしゅうとさん——お嫁さんが女の先生の場合にはしゅうとさんが、うちの嫁はそんな赤であるか、そんなところへ入っておるのか、それはたいへんなことやというので、帰ってくると同時に、そういう先生を責めて脱退をさせるようにうちの親御さんが努力をされた、こういうことでございます。  それからなお、私はこれでまだ三分の一も申し上げませんが、いずれにいたしましても、これに似たり寄ったりのことがずっと関連的に出てきております。  そこで私、これはここで初めて文部省のほうでもお知りになることだと思いまするが、先般岐阜市で怪文書が流されました。この怪文書はプリントにしまして、組合を脱退する態度云々というようなことを記載した怪文書が流されて、この怪文書の出所、どこから出たのだということは不明でございます。実際に不明でございます。ところがこれを配ったのは校長です。だから校長先生に、あなたはどこからこの文書をもらってきたかと言えば、これは出先は私どもは言うことができないことになっております。こう言って先生方に嘆いて話しておるのです。これはすぐこの間の——これは書類をくりますと日にちがはっきりしまするが、こういう怪文書を最近流しておるのです。したがって現在岐阜県の教育実態は、先生がそういうような戦々恐々とした状態にあるから、やはり文部省がしんから考えられておる正常化の教育というものはいまできないというので常識的な判断だろうと思うわけであります。したがって、私は、こういうような不正常な形においてそうして非常に悪らつな方法をとって、県教委、市町村の教育委員会あるいは、PTAこれが校長、教頭を使って、そうして校長、教頭は全く不本意ですけれども、そのお使いをしなければもうそこに置いてもらえないのだ、こういうようなことで校長は動いておりまするし——中には校長は進んでそういうことに協力して、自分はもう一階級上位の学校へ行きたいという人もございまするが、いずれにいたしましてもそういうふうな状態でございまするから、先ほど大臣のほうから山本さんにお答えになった調査云々の問題も、これは大臣という人格者がお考えになる岐阜県の教育行政ではないのだ、この教育行政をつかさどっておる下部ではないのだという判断の上に態度をきめてもらわなければならないと思いまするし、これは党派を超越して、先ほど長谷川先生からも教育の問題について非常に憂慮される面を発言されておられましたが、私はこれらも含めて徹底的に調査をして、そうして関係者を呼んで喚問をし、是は是、非は非として、ほんとうに日本の民主的な正常な教育行政がとられるような行政を文部省としてとっていただきたい。  この点をお願いをいたしまして、一時ここで私の質問を打ち切ります。ちょっと時間の関係を見ましたので、委員長、あとからまた……。
  106. 久野忠治

    久野委員長 楯兼次郎君。
  107. 楯兼次郎

    ○楯委員 田口君の質問に関連いたしまして、きょうは高碕さんのお葬式があるそうでありますので、二点だけお伺いをいたしたいと思います。  いま社会党の同僚委員からいろいろ岐阜県の実情お話しになったのでありますが、私は率直に申し上げますと、この委員会で格調の高い上品な質疑応答がかわされておるのに似合わしからぬ、そんな上品なものじゃないということです。岐阜県の教育行政の実態というものは、この文教委員会政府委員とわれわれが質疑応答をしておるような格調の高い上品な状態ではないということです。一般的に申し上げることができまするのは、われわれも調査をいたしましたところが、脱退を勧告する人、それから県教組から脱退をする人たち、この人たちは全部自分の意思ではないということです。脱退を勧告する人も、県のほうがうるさくてかなわぬから、ひとつ頼むで脱退をしてもらいたいといい、脱退をする人たちも、先ほど高山市の教組の例にありましたように、市の教育委員会あるいは校長の意思でないということはわかるけれども、涙をのんで脱退せざるを得ない、こういう状態が岐阜県全般の状態であるということを、党派にとらわれずに、公正な立場に立って、文部大臣がよく検討をしていただきたいと思います。  時間がございませんので、私は一つだけの例を申し上げますが、ある村においては、もしこの村から県教組からの脱退者がなければ、四千万円とかの補助金がもらえない。したがって頼むから脱退をしてもらいたい、こういう事例があるのです。そこで、これはあまりにもひどいというので、県教組は人権侵害の救済に関する提訴をいま行なっております。これは文部省でも——大臣は御存じないかもしれませんが、関係官の方は知っておると思うのです。いいかげんなことで人権侵害の救済に関する提訴などというものは行なえないのです。これは現地へ行って聞いてみれば事実なのです。したがって、私が先ほど申し上げましたように、脱退を強要するほうも脱退をするほうの人たちも、みな同じ立場です。私はこんなことは言いたくないのですけれども、私の身分があぶなくなる、頼むから脱退をしてもらいたい。脱退をするほうも、あなたは気の毒だ、そういうことを県から押しつけられてやらなくちゃならぬのだろう、立場がわかるので、涙をのんで脱退をするというのが県の実情である。こういうことをよく考えて、岐阜県の教育委員会教育長がそういう事実はないと言ったからないだろうということでは、公正な教育行政というものは行なわれぬと思います。時間がございませんから、その点を申し上げて、文部大臣の公正な立場に立った善処を望みたいと思います。どうですか。
  108. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私の考え方は先ほど来申したとおりでありまして、公正な立場で判断していかなければならぬと思うのであります。いろいろ具体的なお話もございました。具体的なお話につきまして、いまかれこれ申し上げることは避けたいと思いますけれども、要するに、組合の脱退とか加入とかいうことは、あくまでも個人の自由である、その自由の意思をもって行動すべきであると思うのであります。それを教育委員会とか校長とかいう者が、その職務上の地位を利用して、かれこれ圧迫を加えるということはしかるべからざることだ、これは当然なことだと思うのであります。あくまでも自発的に行動してもらいたいと思います。  先ほど来お話を伺っておりましたところ、私は、岐阜県の名誉のためにももう少し関係者がしっかりしてほしいという気がしてならないのです。学校長の言うことにしましても、教員の言うことにしましても、あまりにも自主性がなさ過ぎるんじゃないかという批判をしたい気持ちもするのであります。同時に、教育行政を担当する者としまして、行き過ぎがあってはならないということを私も十分考える次第であります。皆さまのお話しになりました事例につきましては、とくと参考にいたしたいと思います。
  109. 楯兼次郎

    ○楯委員 いまの私と文部大臣質疑応答を岐阜県の人たちが聞いておれば、だいぶ隔たった感じを受けるというのが岐阜県の実態であるわけです。  それからあと四分ありますから簡単に一つ聞いておきたいと思うのですが、東京新聞の一月九日と十日の夕刊に「教育、その課題」として、私はこの方面はしろうとでありますが、その方面の日本の権威者であります宗像誠也という東大の教授が、勤評実施以来の日本教育は非常に危機に瀕しておる、こういうことを二日間にわたって連載をされております。いまの教育は、小中学校、高等学校はただテスト、テストで、まるで思考力を失った人たちのようにしりをむちでたたかれて機械的な人間になってしまっておるということを、口をきわめて書いておられます。それからそういうような弊害から三ト主義ですか、プレゼント、アルバイト、リベートの三ト——これは全部ではないでしょうが、三トの跳梁がいまや台頭しつつあるのだということをお書きになって警告をしております。二月三日の「週刊文春」では、この論文を受けまして、相当広範にいろいろの論説をまとめておりますけれども、非常に憂慮すべき状態であるしいうことが各般の集合した意見であるわけです。  だから、政府のほうでは、勤評はいいといっておやりになる、あるいは日教組から脱退をすることが教育の正常化である、そういうような意図を持っておられても、現実に時の経過とともに、その逆の弊害のほうがむしろ大きくあらわれてきておるということを指摘されておるわけであります。大臣は、この新聞あるいは週刊誌をお読みになったかどうか知りませんが、もしお読みになっておらなければ、ひとつ読んでいただきたい。あるいはこれをお読みになった方が大臣以外でおありになるならば、この論文あるいは「文春」のまとめたものに対する見解をひとつ聞いておきたいと思います。
  110. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私は、不勉強のせいか知りませんが、まだ読んでおりません。したがって、それについて申し上げるわけには参らないのでありますが、ただ現在の教員生活状況と申しますか、いわゆる三トということばがあるというふうなことは伺ったことがございます。またそういう事実も私は決して否定はできない、よほど学校先生方に気をつけてもらわなければならない要素があるように思うのであります。この点は、教育行政を担当する側におきましても、十分指導をしてまいらなければならぬと思います。同時にまた勤務評定についてのお話でございましたが、執筆者である宗像さんは最初から勤評に反対をしておられた方であると記憶しております。私は、いまのような事態が勤評をやったからすべてそうなったんだ、こう結びつけることはいかがなものであろうか、このように考えております。
  111. 山中吾郎

    山中(吾)委員 御質問をまだ留保しておりますが、きょうは高碕達之助さんの葬儀があるそうで、党の友誼のためにやめなければなりませんので、次回に具体的な事例でもう少し堀り下げなければならないと思いますから、その機会に譲りたいと思います。
  112. 久野忠治

    久野委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三月四日開会することとし、これにて散会いたします。   午後一時散会