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1964-04-21 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十一日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 事理 芳賀  貢君       池田 清志君    大坪 保雄君       加藤 精三君    仮谷 忠男君       吉川 久衛君    小枝 一雄君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       中山 榮一君    野原 正勝君       細田 吉藏君    松田 鐵藏君       三田村武夫君    亘  四郎君       角屋堅次郎君    栗林 三郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       松浦 定義君    湯山  勇君       稲富 稜人君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府事務官         (北海道開発庁         総務監理官)  小島要太郎君         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   崎谷 武男君         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君  委員外出席者         北海道東北開発         公庫総裁    北島 武雄君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地改良法の一部を改正する法律案内閣提出  第七号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を続行いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 土地改良法改正案につきまして、重要な関係がある北海道開発庁長官に、若干の質問をいたしたいと思います。  今回の土地改良法の主要な改正点については、関連事項については長官としても認識されておると思うわけであります。その第一の点は、今回の土地改良法政府改正案によると、土地改良基本計画というものを国が策定する。その場合、長期計画については閣議がこれを決定し、なお決定までの間においては、関係省庁、特に北海道開発庁の場合にはこれに当然合議されると思うのであります。そうなりますと、昭和三十八年から北海道の第二期八カ年計画というのが発足しておるわけでありまして、この八カ年計画の中には、言うまでもなく、農業関係長期計画というものが当然包括されておるわけです。そうしますと、今回の土地改良法改正が行われる場合においては、当然北海道における総合開発の中の農業開発長期計画と、土地改良法によるところの長期計画というものが出てくるわけなんです。そういう場合に、当然、昨年から発足しておる北海道の八カ年計画土地改良法長期計画との調整、あるいは実行等については、重要な関係が生ずるわけでありますので、まず、この点について、開発庁長官から所見を伺いたいわけです。
  4. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、北海道はただいま開発計画を進めております。その中には、お話のように、農業部門ももちろんあるわけであります。一方、農林省のほうが土地改良、またその他の事柄によって農村振興をやっておりますが、そういう場合におきまして、両者の間にもちろんそごがないように、北海道特殊事情農林省におきましても十分認識していただくように、事務当局のほうで十分折衝するつもりでございます。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、関係のある問題としては、北海道開発予算の中では、農業基盤整備事業ということで進めておるわけでありますが、それを区分しますと、土地改良事業農用地開発事業の二様にこれが分かれるわけですね。この土地改良事業農用地開発事業というものは、今回の土地改良法改正関連を持つことになるわけです。したがいまして、この開発計画の中の一部門でありますが、土地改良事業長期計画農用地開発長期計画具体的内容等について、長官からこの際明らかにしておいてもらいたい。
  6. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 北海道におきましての特質と申しますか、これは土地が広くて、気候も内地とは相当違っておりますが、その上灘自身が特殊な構成をしておる地帯が多い。たとえば火山灰地帯であるとか、あるいは強粘土地帯、あるいは泥炭地帯、こういうような特殊なものがございますので、これの土地改良につきましては、特に力を入れておるわけであります。さらにまた、北海道農業としての特質、ただいま米がよほどできるようになりましたけれども、なおかつ、いわゆる畑地耕作、これによほど力を入れなければならないし、また牧畜、そういう意味においての草地開墾、これまた北海道特質ではないか、かように考えます。ただいま申し上げましたような土壌改良、さらにまた、これが利用につきましても努力をしておるわけであります。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 私は、この土地改良事業農用地開発計画内容について、できるだけ具体的に長官から直接答弁をしてもらいたいと思うわけです。たとえば三十七年七月十日に、北海道開発の第二期計画というものが閣議決定をされておるわけでありまして。特にその中の関係部門といたしましては、土地改良事業について、その一が、「生産性の向上と農業経営の安定をはかるため、既着工事業については、経済効果早期発見を期し、極力事業促進をはかるとともに、新たに改良実施する事業にあっては、水田地帯におけるかんがい施設等の更新、畑地帯における排水、客土、耕土改良等耕地条件整備を積極的に推進することとし、約六十万ヘクタールの改良事業実施する。」その二は、「草地農業の確立と畑作農業経営の安定をはかるため、農地および草地造成改良面積約三十五万ヘクタールを目途に、開拓および草地造成改良事業推進につとめる。また、開拓地における基礎施設整備等促進により既入植開拓農家経営の早期安定をはかる。」こういうことになっておるわけであります.、したがって、土地改良事業につきましては、面積において約六十万ヘクタールの改良事業を八カ年計画の中で実行する、草地及び農地開発については、いわゆるこれが農用地開発事業でございますが、これが面積において約三十五万ヘクタールを目途開発造成事業を進める、こういうことに実はなっておるわけであります。したがいまして、土地改良法改正が行なわれた暁においては、この八カ年計画内容計画というものが、すなわち、土地改良事業長期基本計画の中にそのまま取り入れられるということでなければ、これはいけないと思うわけであります。したがって、この点について、先般の農林大臣答弁によりましても、当然重要な関係機関である北海道開発庁長官とも、北海道開発八カ年計画のほうが先に出発しておるのであるからして、あとからつくる計画においても十分熟議して、遺憾のないように処理したいという答弁があったわけでございますが、私が指摘しましたこの土地改良事業六十万ヘクタール、農用地開発三十五万ヘクタールの目標というものを、今後具体的に土地改良事業長期計画の中に織り込んで強力に進めるということについて、長官としての具体的な意見を明らかにしておいてもらいたいわけであります。
  8. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまお尋ねになりますのは、土地改良法との関係だと思いますが、第二期計画におきましてのこの八年の計画の分は、もちろん事務折衝いたしまして、これを織り込まします。  そこで、この計画は一体どういうことか、こういうことになるのだろうと思います。この数字がはたして御要求になりますものと合いますか、どうですか、ちょっと私疑問に思いますが、第二期計画におきまして、三十五万町歩農用地開発する、こういうことにいたしております。また、その計画内容といたしましては、既入植者開墾事業新規開拓事業に伴う開墾事業、合わせて約十二万町歩草地改良事業によるもの二十一万町歩、永年牧草地改良牧草地として使用したものの改良、これが約三万町歩、こういう計画をする、これがただいま十カ年計画土地改良、その中に織り込む計画内容でございます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 農用地開発の点については、いまお述べになったわけでありますが、これを少し内容に入りますと、開拓関係草地改良事業にこれが分かれるわけでございますが、開拓関係十二万町歩の内訳は、既入植者開墾が約三万町歩新規開拓事業が九万町歩ということになるわけです。それから草地改良事業については、計画としては大規模草地改良事業が約五万町歩小規模改良事業が約十六万町歩で、合わせて二十一万町歩、それに加えて永年牧草地改良事業が三万町歩ということで、これがいま長官の言われた点に合致しているわけです。  それで、もう一つは、従来行なわれてきた土地改良事業計画の六十万ヘクタールというのがあるわけでございますが、これはもしあれでしたら、事務当局からでもいいですから、この六十万町歩計画内容というものをこの際明らかにしておいてもらいたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局から説明させます。
  11. 小島要太郎

    小島政府委員 この第二期総合開発計画の中におきます農地及び草地開発に並ぶものとしましての、土地改良推進の部分についてのお尋ねでございますが、この六十万ヘクタールの改良事業につきましては、ただいま私どもの手元の資料では若干不十分と存じますので、この点につきましては、至急に資料を取り寄せましてお答えさせていただきたい、かように存ずる次第でございます。
  12. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。北海道開発庁というのがわざわざあって、一昨年の七月閣議決定で八カ年計画が策定されて、昨年から第二期計画実施に入って、ことしが二年目ですから、その計画基本事務当局が全然知らぬことでは、いかに長官が意欲的であっても、具体的に事業は進まないと思うのですよ。こまかいことを聞いているのではないですよ。六十万ヘクタールの内容はどういうものであるかということを聞いているので、この土地改良法改正と重要な関係があるわけだから、主要な点だけを数字をあげて明らかにしておいてもらえればいいわけです。
  13. 小島要太郎

    小島政府委員 まず、畑地土地改良事業につきましては、ビート振興観点から、また畑作農家経営安定の観点から、積極的な推進をはかるものでございまして、直轄明渠排水事業につきましては、三十九年度におきましては八億九千五百万、耕地整備等団体事業につきましては十二億八千四百万という予算をもちまして、三十九年度の事業をやってまいりたい、かように存じておる次第でございます。
  14. 芳賀貢

    芳賀委員 私の聞いておるのは、三十九年度の内容ではなくて、第二期八カ年計画というものは、閣議決定において、土地改良事業は八カ年で六十万町歩行なう、農用地開発事業は三十五万町歩実施するということが決定になっておるわけです。閣議決定した以上は、これは毎年度の計画の中に事業内容——予算措置はもちろんでありますが、その基本になる計画がわからぬでは、これはたいへんなことになると思うのです。どうですか、長官
  15. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 事務当局でもそれが説明がつきかねるようですが、私考えますのに、ただいまの第二期計画で新しく計画しておるものは、これはもう芳賀さんの持っておられる資料と私の説明したものとはぴったりいたしております。そこで、いままでの計画は一体どうなっているかということですが、ちょうどここへ来ておりますのが、そのほうの主管課長がいませんので、そのためにちょっとわからないようです。しかし、いままで計画どおり進んでおることは、御承知のとおりであります。
  16. 芳賀貢

    芳賀委員 これは佐藤さんからも十分反省してもらいたいと思います。あなたの場合には北海道開発庁長官科学技術庁長官オリンピック担当国務大臣ですから、日当たりのいいところといえば、オリンピックとか科学技術庁ということになっていて、どうも北海道問題が軽視される。だから、われわれは、あまり実力者大臣北海道開発庁長官になっても真剣味が欠けるのではないかという心配を持っておった。ただ、予算要求等については、あなたの子分が大蔵大臣をやっている関係上、その点はプラスになるというふうに考えておったが、基本的な問題について長官がわからぬとしても、当局が把握していないということになると、これは重大な問題だと思うのです。あなたにしても、他日自民党の総裁とか、場合によっては一国の総理を考えておられると思うのです。そういう場合、農業問題を軽視するということは、適格条件に欠けると思うのです。たとえばフランスのドゴール大統領は、食糧自給を考えない国家独立国家とは言いがたいということを彼は表明しておるわけです。そういうことを考えた場合に、いまの池田内閣は、全く食糧自給ということを度外視して、無計画自由化を進めておりますが、こういう点は、佐藤さんとしても、一体自国における農業発展というものをどの程度重要視するかということは、これは笑いごとでないと思うのです。農業発展に政治の力を注げば、国内自給度を高めることはできるわけですが、それが逆現象を呈しているわけです。したがって、こういう点から見ても、北海道地域に限定されておる開発庁としても、事農業の問題、農業開発発展問題等については、十分関心を持って部下を督励して進めていただきたいと思うわけです。  そこで、こちらから申し上げますが、これをたとえば国営道営団体営というふうに区分しますと 国営土地改良事業についてはおおよそ十八万ヘクタール、道営土地改良事業については十七万ヘクタール、団体営土地改良については四十八万ヘクタールということになっておりまして、これは必ずしも六十万ヘクタールと適合はしませんが、この八十三万ヘクタールの面積というものは、水田畑地等すべて合わせた土地改良事業の対象ということになるわけです。それが計画の中ではおよそ八〇%程度に圧縮されるということにはなっておるわけですが、しかし、これを八カ年の間に具体的に実行するということになれば、相当積極的な促進が必要になると思うわけでありまして、これらの点は、やはり将来土地改良法との関係も出てくるわけですからして、審議の中で計画内容というものを明確にして、農林省としてもこれを重視して進めるということが当然であるということで、私はあえて数字内容について長官に質問したような次第でありますが、この点には相違ありませんか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 どうも基本的な問題について事務当局説明も不十分であります。私自身も、ただいまお尋ねになりました計画を遂行するについて、万遺漏なきを期しておりますので、事務当局を督励いたしまして、さっそく勉強することにいたします。  また、基本的な農業についての考え方、これは私も同一の考え方を持っております。ことに北海道の産業につきまして、いろいろ新しいものも考えられますけれども、既入植者をはじめとして、道民の方々がまず農業を自立すること、もうすでに今日は国内における有数な米作地にもなっておりますけれども、さらに畑地のほうにおきましてはまだまだ自立するのになかなか困難がございます。これらの点について特に力を入れて、そうして農業育成強化をはかっておる、こういう実情でございます。この点は施策の面においてもそういうものがあらわれておりますから、これは御了承いただきたいと思います。
  18. 芳賀貢

    芳賀委員 次にお尋ねしたいのは、農用地開発の問題の中の、特に新たな重要課題である草地造成の今後の推進の点について、特に開発庁長官として、畜産農業との関連においてこれをどういうふうに進められておるか、重要な点を伺いたい。
  19. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 ただいまのお尋ね、これは北海道農業特質といたしまして、特に畜産農業に力を入れるべきでないだろうか。幸いに道知事もこういう点については非常な理解がございます。町村君とも十分連絡をとりまして、そして草地改良、これに力を入れておるわけであります。そこで、ことしからは農林省の所管のうちに、草地改良部を試験場に設けることにいたしましたのも、その一つのあらわれでございます。先ほど申しました泥炭地あるいは火山灰地帯その他について、積極的にくふうをいたしておるような次第でございます。
  20. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、草地改良事業が具体的に促進されるということでありますが、政府農林省方針によりますと、たとえば農用地開発事業の場合、これがいわゆる開拓パイロット事業草地造成事業というふうな二様に分かれるわけであります。パイロット事業の場合は、これはもちろん国営あるいは道営事業ということで、国営の場合には直轄事業あるいは代行事業というものは国の負担で行なうわけでありまして、現在は直轄事業についても国の負担率が八〇%ということになってはおりますが、同じ農用地開発事業の中で、パイロット事業の場合にはそういう方式で進んでおる。ところが、草地造成事業の場合においては、農林省方針によりますと、国営事業はこれは行なわない。基本調査については国が負担をして行なうが、事業実施については直轄事業は行なわない。道営あるいは団体営ということでやりたいというような先般の答弁がありましたが、これは北海道開発事業を進める上からいっても重要な点だと思うわけであります。この際、佐藤長官から、この農用地開発事業については、当然のことでありますが、開拓パイロット事業とあわせて、草地造成事業についても、小規模等事業は別でありますが、いわゆる大規模草地造成事業等については、同様に国が国営直轄事業あるいは代行事業等をあわせて行なうという点を、ここで明確にしておいてもらいたいわけでございます。
  21. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 御承知のように、北海道におきましては、パイロットファーム等を育成しておりますので、そういう意味国営のものはございますし、また直営あるいは団体営にいたしましても、内地の場合とはその補助率等も違っているんじゃないか。これは一に北海道特殊性を考慮してそういう処置をとっておるのでありますが、さらに私は、補助率等におきましても、今後の問題としてくふうしてもいいんじゃないか、もう少しくふうすべきじゃないかと思う。ことに先ほど申しますような土地基本的な改良をいたします、たとえば泥炭地であるとか、あるいは火山灰地帯であるとか、強粘土地帯であるとか、そういうところにつきましての入植あるいはその利用、これはなかなか容易ではないと思いますので、その基礎的な条件を整えるのについては、これはやはり国がやるべきじゃないだろうか。しかる上で、そこに入植あるいはその利用を進めていく、こういうことにしたい。そういう場合に一番根本になりますのが、その土地自身土壌自身、これを耕作に適するようにすることが必要でありますが、さらに農道あるいはかんがい用水の確保、ことに飲料水等のない地帯もございますので、そういうことについて、特別に国が指導なり、あるいはものによりましては補助なりすることによって、初めて条件が整うのだろう、こういうことに特に力を入れてまいりたい、かように考えております。これは内地においても同様なことが言える地帯があると思いますけれども、特に北海道においてはこの点を十分注意して、そうしてお世話申し上げることが必要のように考えております。
  22. 芳賀貢

    芳賀委員 そうしますと、別に北海道に限定して私は申し上げるわけではありませんが、本日は北海道開発、この関係お尋ねをしておるので、自然問題が局限されるわけですが、いまの御答弁によりますと、結局農用地開発事業は、内容としては、開拓パイロット事業とあわせて、草地造成事業重要度を同列に置いて、大規模造成事業等については国営直轄あるいは代行等方針で進めるということに間違いないわけですね。
  23. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 この北海道という特殊地域について特にそういうくふうを要するんじゃないだろうか、かように私は考えております。過般来、私は現地を視察してまいりましても、特にこういういま申し上げたような諸点において、やや十分でない、欠くるものがあるようでございます。これを農民自体負担にさすということは、北海道開発、そういうものと取り組む点から申しまして、国もさらに積極的に援助すべきじゃないだろうか、こういう気がしてなりません。ことに泥炭地などの開墾草地改良、これなどは普通一般ではやり得ないことのように実は見てまいりましたので、これは依然として国営事業で進めるべきだろう、かように考えております。
  24. 芳賀貢

    芳賀委員 その点は明確になったわけですが、私たちも、土地改良法改正が行なわれても、すべて北海道公共事業である土地改良事業あるいは農用地開発事業が、改正された土地改良法の全面的な適用とか拘束を受けるというふうには実は考えていないわけです。ただ、この法の改正によって適用を受ける点も出てくるわけでございますからして、その点は、土地改良法改正が行なわれれば、全部北海道農業基盤関係の問題はその適用を受けるというような理解では長官もないと思いますが、この点も大事な点ですから、明らかにしていただきたいと思います。
  25. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 いまの土地改良法で主として問題になっておりますものは、かんがい用水その他共用の施設、そういうものではないかと思いますが、北海道の場合におきましては、特殊な考え方がどうしても必要だろうと思いますので、その点を明確にしておきたいと思います。もちろん、土地改良法ができることによりまして、北海道開懇事業も非常にしあわせする、かように思いますが、北海道特殊事情というものがどの程度それに取り入れ得るか、これはまたいろいろ予算実施にあたりましてくふうを要する問題ではないか、かように私は考えております。
  26. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、具体的な問題ですが、草地開発基本調査が進んでまいりまして、小規模あるいは湿地、牧野等については、事業が進められておるわけでありますが、いま長官の言われた、国営で行なう性質の大規模草地開発事業等については、これは当然着手の段階に入るわけでありますが、その場合、造成事業実施体制というものをどうするか。これは御承知のとおり、北海道開発審議会においても、今後の北海道農業開発あるいは畜産農業発展促進するためには、どうしても飼料資源給源開発というものが大事であるということに論点が置かれておるわけであります。八カ年計画においても、これは昭和三十五年が基準年になっておるわけでありますが、畜産の場合は、特に中心的な乳牛の場合には、基準年の二十二万頭に対して、四十五年の達成年においては約三倍の六十万頭にこれを拡大させる、したがって、牛乳の住産量についても、基準年は大体三十万トン程度でありますが、これを五倍の百五十万トンに拡大する、こういう相当雄大な計画を持っておるわけですから、たとえば乳牛だけでも三倍の六十万頭にするということになれば、それに必要な飼料給源というものを積極的に確保しなければ、結局は外国からの輸入飼料だけに依存するということになるわけです。したがって、今後造成事業をやる場合の実施体制の問題は、すみやかに結論を出す必要があると思いますが、これに対する長官としての構想があれば、この際示してもらいたいと思うのです。
  27. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 その実施体制については、北海道開発審議会におきまして御審議を願っておりますので、その答申を待ってきめたいと思います。  ただいまお説のように、あるいは乳牛、ただ乳牛だけでもいけない、食肉牛を飼育したらどうか、こういう意見もあるようでございます。また、乳牛が非常に多くなったときに、酪農製品をいかに扱うべきか、これなどもいろいろくふうを要する問題があるようであります。ことに大都市におけるなま乳が非常に不足しがちだ、こういうようなわけで、輸送の面においてまでくふうをしなければならない。北海道のなま牛乳を東京へ持ってくるようなことまで実は研究しておるようなわけでございまして、もうすでに福島等からは東京に送れるようになっております。LPGを使っての自動車輸送ならば、これは低温で送れるということでございますから、こういうような特殊な輸送方法も考えて、大都市のなま牛乳、それも不足しないようにする、そうすることが酪農業者の価格を安定させるゆえんだろう、かように実は考えておるわけであります。しかし、その具体的な方法は、いずれ開発審議会において十分議を尽くされ、そしてその答申が出ることだ、かように思いますので、そのほうに譲っておきます。
  28. 芳賀貢

    芳賀委員 できれば長官の構想として承りたかったわけでありますが、いま触れられた問題の一つに、北海道は牛乳の価格が全国で一番安いわけです。先般の大臣告示によっても、一升の価格が五十五円ということで、これは不当に低価格でありますからして、これを打開するためには、長官のいま言われたように、生産地である北海道から集中的に牛乳を、たとえば東京等の大都市に輸送して、そして市乳の消費地帯に大量に供給するという道を開かなければ、この低価格問題というのは解決できないわけです。そうしますと、これを船で運ぶとしても、牛乳のタンカーの造船であるとか、あるいは濃縮して汽車で輸送するにしても、そういう設備というものは当然必要になってくるわけでございまして、これらのことも今後の北海道農業発展一つの具体的方法として、タンカーの製造とかそれらの問題についても、できればすみやかに方向を明らかにして、三十九年度は間に合いませんが、少なくとも四十年の事業計画とか予算措置等については、これは佐藤長官の在任中の一つの業積として、ぜひ方針としてきめておいてもらいたいと思うわけです。この点をひとつ明確にしてもらいたいのです。  もう一つは、事業実施体という問題については、特に草地開発の場合には、機械化の作業がほとんど大部分を占めるわけであります。そうしますと、既存の機械開発の機能といたしましては、農地開発機械公団が一つあります。これは十分の内容を具備しておりませんが、もう一つ北海道生産農業協同組合連合会が主体になって、ここで耕土改良事業とか、小規模草地造成事業であるとか、これらの機械作業をいわゆる北生連が主体になって行なっておるわけです。その成果については、むしろ、北生連で行なっておる事業成果のほうが、事業量にしても、仕事の効率からいっても、成績がいいということになっておるわけです。既存の機能を活用するということになれば、やはりこれも検討の時間は必要でありますが、速急に結論を出して、国営事業を含めて、この草地造成事業等については、実施の体制というものをどうやるかということを明確にしておく必要があると思うわけでありまして、その点をお尋ねするわけです。  もう一つは、二百町歩以上は大規模草地造成事業ということになるわけですが、これを国営でやった場合、この造成された草地をどのように維持管理し、また活用するかということは、これは非常に大切な問題になるわけです。こういう点についても、開発庁として当然その場合にはどう対処するかということが明確にされなければいけない問題でありますので、この点も長官から明確にしておいてもらいたい。
  29. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 第一のなま乳の問題、これはただいま言われるように、輸送がたいへんだと思います。北海道で消費されるものにつきましても、そういう意味で、農道類似の道路を整備するということが急務になっております。また輸送の方法も、最近はかんでなくて、ビニールの袋ができる、この輸送にすれば、容器の返送という手数がなくなりますので、よほど改善を見たと思います。そこで、さらに北海道の青函隧道などができるようになれば、鉄道便による輸送ということも考えられるだろう。これは業者自身も、そのかんの輸送なしに、容器をビニールにすることによって、あきかんの返送ということがございませんから、よほど安くなるのだということで、それもいろいろくふうしておるようであります。先ほどちょっと申しましたように、自動車の使えるところにおいては、LPGを使うことによって低温に牛乳を保ち得る、こういうことで新しい自動車がどんどんできつつあります。これなどは、なま牛乳の輸送において、たとえば福島あたりから東京にもきておるようですし、あるいは東京でできたアイスクリームを名古屋方面に、あるいは大阪方面に送れるようになっております。変質、腐敗、そういうことはこれでりっぱに防げるということでありますので、こういうくふう改良、これもしなければならないだろう。特にわが国一般の牛乳の処理、そういう点から見ますと、輸送がネックになっておる。そのために、飼育しておる人自身が、何だか酪農製品を扱う会社にたたかれておるような感じを持たるれようですが、しかし、輸送を改善することによりまして、そういう点の苦情もよほど改善されるのじゃないだろうか。これは、私、北海道開発ではございませんが、科学技術庁長官の立場において、このことをおすすめしておるわけであります。  さらにまた、第二の問題としての機械化の問題、これは最近の機械の発達の点から見まして、あそこにあります機械公団そのものでは、どうもやや不十分じゃないだろうか、かように考えますので、新しいものと取り組む、こういう意味で調査もし、農林省ともよく話し合っておるわけであります。農林省のほうにおきましても、最近の新しいものを取り入れるというようなくふうをしておられまして、今回の予算ではそういうことが実施されるのではないだろうか。これは申すまでもなく、北海道に小さな竹のはえておる地帯がございます。この地帯などを草地にするためには、新しい機械をそこに入れることがどうしても必要のように思いますので、こういう点もくふうとして取り上げておる。したがって、大体一、二の点は御了承いただけるのではないかと思います。  第三の点につきまして、開墾国営でできたが、それから後の保全あるいはその利用、こういうことについてどうしたらいいか、こういう事柄については、十分関係方面の御理解ある御援助をいただいて、そして開墾したものを十分利用していくつもりでございます。しかし、これもやはり新しい構想のもとに取り組まないと、在来の考えだけでは不十分じゃないだろうか、こういう意味から、知事自身も、今回の旅行を機会に特にデンマークなども十分視察してくると、かように申しておりますので、民営でやることについては異存はないことだと思いますが、そういうことにおきましても十分効用を発揮するようにいたしたいものだ、かように考えております。
  30. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点、補助率の問題ですね。これは国営でやる場合には、現在開拓パイロットが八〇%ということになっておりますが、残余の道営とか団体営の問題もあるわけでございまするし、これは、現行の補助率というものは、必ずしも高率ということにはなっておらないわけですから、この点に対して今後改善するという方向へ行かれるかどうか、この点を明らかにしてもらいたいと思います。
  31. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 これはなかなか基本的な問題がございますので、一概には申し上げかねます。しかし、現状といたしましては、ただいまの補助率、それを維持すること、これはもちろんでございますが、さらにものによりましてくふうの余地はないだろうか、もう少し上げることはできないだろうか。片一方で、開放経済に臨む今日、補助というようなことはなるべくやめてくれ、こういう意見もありますので、なかなか根本的に困難があるだろうと思います。しかし、北海道特殊性、これは十分理解をいただいて、しばらく現状のままで進めること、これが妥当な処置ではないか、かように私は考えております。
  32. 芳賀貢

    芳賀委員 最後に、あと一問で、残りは事務当局に伺いますが、すでに御承知と思いますが、旭川市における木材化学会社が、北海道庁としても開発庁としても、木材化学工業の発展ということに相当重点を置いたわけでございますが、創業後間もなく、成績があがらぬ関係もあって、三月末に操業を中止して、会社更生法による整理段階に入ったわけです。これは土地改良法とは直接の関係はありませんが、北海道における木材資源を活用して木材の化学工業を進めるという方針は、北海道開発計画の中に相当重点事項として掲げられておるわけでございます。したがって、大臣が主務大臣であるいわゆる北海道東北開発公庫等においても、二億の出資あるいは四億五正方円の融資等を行なっておるわけでありまして、こういう点は、開発庁として木材化学会社に直接の監督とか指導の立場はないとしても、北海道の今後の木材化学工業の発展の上から見ると、大きな影響が生じてくるわけであります。したがって、これらの点について、開発庁として、木材化学会社が操業中止をして整理に入った経過と、今後この種の化学工業の育成とか発展等についてはどのような方針で対処されるか、大筋について長官からお伺いしておきたいと思うわけです。
  33. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 北海道木材化学株式会社、これは御承知のように、木材資源を活用するという、たいへん私どもも嘱望した事業でございます。したがいまして、その会社の発足にあたりましても、特別に指導もし、われわれも協力してきた、かように考えております。また、道におきましても非常な力の入れ方であったと思います。私も北海道開発庁長官になりまして第一に視察したのはこの工場でございます。したがいまして、木糖の製造なりあるいはその他の製品等についても、非常な関心を持っております。しかし、今回その第二期計画におきまして、みずから整理の方向へ道を歩んでおります。このことはまことに残念でございます。しかし、ただいま会社更生法を適用されておりますので、その成果を見たいと思いますが、このでき上がりました当時におけるような考え方、どこまでも地方の産業として、また北海道の木材資源を有効に使う、こういうような意味合いにおきまして、この産業は進めていきたいものだ、かように考えてはおりますが、北海道庁として、開発庁として、それはどこまでやれますか。ただいまの経過その他につきましては、開発公庫のほうから説明させたい、かように考えます。たいへん残念な仕儀でございますので、この点を私どもも成り行きを見守っている、かような状態でございます。
  34. 芳賀貢

    芳賀委員 長官の御意思としては、操業中止に至った経過の検討も大事でありますが、今後の方針としては、欠点がどこにあったかということも他日明らかになるわけでありますからして、それらの欠陥を是正する方向に進めて、開発庁としては、将来、この種の木材化学産業というものが、北海道の地域においても確実に発展できるような方向に進めていきたい、こういう御所信と承って差しつかえありませんか。
  35. 佐藤榮作

    佐藤国務大臣 そのとおりでございます。
  36. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣はもうけっこうです。  この点に関係して、北海道東北開発公庫総裁のほうから、いま私が長官に尋ねました問題の経過並びに今後の方針等について、できるだけ詳細に述べてもらいたいと思います。
  37. 北島武雄

    ○北島説明員 お答え申し上げます。  北海道木材化学株式会社に対しましては、北海道東北開発公庫といたしまして、二億円の出資と四億五千万円の設備資金の融資をいたしてまいりまして、昨年の五月に一応工事が完了し、六月から試運転に入ったわけであります。その後、操業に入りましてから、機械の故障が相次ぎまして、操業度は一〇%から二〇%程度の間で暮れごろまでまいったのでございます。この点につきましては、北海道庁におきましても憂慮せられまして、昨年の十二月に、北海道大学の工学部長の大塚教授、それから北海道工業試験所長の緑川博士を団長とする調査団を派遣いたしまして、会社の操業の技術的内容について検討を依頼したわけであります。その結果によりますと、相当の設備についての不完全な点がわかったようであります。調査団の御指摘では、今後さらに二億六千万円の追加設備をいたして補修をする必要があるという結論が出てまいったのであります。なお、そのほかに、従来の設備資金の不足分四千万円がございますので、結局さらに三億円程度の設備投資を要するということがわかってまいりました。それよりも先に、一月になりまして運転資金が欠乏いたしました。そのままでまいりますと、不渡りも出る懸念がまいりました。北海道開発公庫といたしましては、とにかくせっかく全体で二十億の資金を投じてできました、わが国において貴重な木材化学の設備でございますから、何とかこれを補修して完全運転までいたしたいものだと考えまして、とりあえず設備資金、さらに追加設備投資をするにいたしましても、さしあたりの運転資金に一億九千万円を要する状況でございましたので、北海道拓殖銀行と協調いたしまして、当公庫八千万円、拓銀八千万円、合計一億六千万円の運転資金の融資をいたしました。これはもっとも、早急に設備の補修を行ないまして、三十九年の六月一ぱいにフル操業できるまでの補修をする、こういう目算であったわけでございますが、その後会社において手直しをいたしましても、依然として操業度は一〇%ないし、二〇%程度でございました。その後、さらに、この装置の根本でありますところの木材の蒸解がまに基本的な欠陥があることがわかりました。会社といたしても、その三億以外にさらに大きな追加設備が要るということがわかりまして、とりあえずフル操作に至る見込みがとうていないということで、一応会社更生法による開始の申し立てを決意されまして、三月三十日に旭川地裁に申請をいたしたわけであります。翌三十一日には保全処分の命令が出たようでございます。そこで、会社更生法にはいろいろこれからの手続がございますが、六月ごろになりますと、裁判所の関係人の審尋などがありまして、それから管財人の選任、それから更生の開始決定等が一応予想されております。これらにつきましては、目下公庫といたしましても一番の大口の債権者、それからまた北海道庁は、当初御計画なさったほんとうのいわゆる道策会社の中心でございますので、北海道庁とも十分に御連絡、また御指示いただきまして、今後の会社の再建の方策について、私どもも関係人とともに十分協力して、いい案を立てていかなければならぬ、こう考えておるわけでございます。
  38. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま総裁からある程度詳細な説明を受けたわけですが、われわれとして奇異に感ずる点は、事前に公庫等に対して何らかの連絡とか打ち合わせ等が行なわれたかどうかということです。新聞等によりますと、そういうことが全くないままに、重役会議において直ちに会社更生法による申請を行なったということになっておるようですが、われわれとしても、これは道策会社というふうな認識の上にも立っておるわけです。したがって、出資の内容等についても、総裁からも触れられましたが、北海道として二億五千万円、北海道東北開発公庫が二億円、旭川市が三千万円、そのほか、民間では丸善石油が六千万円、東綿の五千万円、国策パルプの三千万円、日綿の三千万円、そういうことで九億八千万円の出資ということにこれはなっておるわけです。また設備資金等についても、いま御説明のありましたとおり、開発公庫から四億五千万円の設備資金が出ておって、さらに興銀、長期銀行、それから拓銀等からもそれぞれ一億二千万円、こういうことにもなっておるわけですから、事態がいかに緊迫したといえども、これらの主要な出資者とか機関に対しては、何らかの事前の打ち合わせとか協議というものがあってしかるべきではないかというふうに感ずるわけですが、その点に対しては総裁はどうお考えになりますか。
  39. 北島武雄

    ○北島説明員 もちろん、公庫は大口の出資者でございますし、北海道庁も最大の株主でございます。道庁におかれましても非常に心配されまして、私のほうでも一体どうなることであろうというふうに、常にその状況は見守っておったわけでございます。北海道庁におきまして調査団を派遣せられて、その結果の御報告を承り、公庫としても、これはある程度他の市中金融機関とも協調融資は必要ではございますが、公庫としても何分の援助をいたさなければならぬ、こう考えておったわけでございますが、その後の操業状況が思わしくないということをおりおり耳にいたしまして、初めて困ったことになったなと思っておったわけであります。しかし、そのまま会社としても何とかして補修されるのじゃないか、こう考えておりましたところ、三月になりまして、さらに北海道庁から、東洋高圧会社の関係会社に東洋エンジニアリングコンサルタントという会社がございます、その会社に、さらに技術方面の調査を依頼してやってもらったわけでございます。その結果が会社にショックだったようであります。会社としては、フル運転しない前におきましては、蒸解がまの欠陥もわかっておったのでありますが、いざフル操業するつもりで、一日五十トンの木材を処理する能力があるわけでありますが、フルに使えるまでの木材確保の運転がきかない、こういうことになりまして、会社としては、事ここに至って何ともいたし方がないということで、三月二十五日に役員会を開いて、更生に入るよりしかたがないということになりました。私のほうにもその連絡があったわけであります。公庫といたしましても、せっかく大事な巨額の国家資金を注ぎ込みました結果でありますので、まことに残念ではございますけれども、会社のそういう申し入れがございましたので、これはもうやむを得ないことだというふうに観念いたしまして、それに承諾いたしたわけでございます。
  40. 高見三郎

    高見委員長 芳賀委員に申し上げますが、御質疑は議題外にわたらないように御注意いただきたいと思います。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 はい。  そこで、この経過についてはおよそわかったわけですが、一番重大な欠点というものについては、設備上の欠陥があったことはもちろん明らかでありますが、もう一つは、企業採算上、たとえば製品が数種類生産されるわけですが、これらの製品の販売とか市場の見通し等についても、会社を設立する以上は、そういう製品の処理がどうであるかということが明らかにならない限り、これは公庫としても、みだりに出資とか融資を行なうべきでないことは明らかでございます。こういう点についてはどういう欠点があったか。  それからもう一つは、会社の設立経緯というのは、これは操業開始までに相当長期にわたっておるのですね。たとえば田中知事の在任中から企図された企業でありますが、その時代の原料とか木材の供給状態と、今日の時点における木材事情というものは、相当変化を示しておるわけです。当時は台風災害等によって、風倒木の処理等が、国有林の立場から見てもあるいは公有林の立場から見ても、北海道としては相当重要な課題であったわけです。利用価値の低い、低品位木材というものをこれに活用するとか、あるいは廃材を利用するということで出発したわけですが、現在の北海道の林業の状態は、むしろ北海道の地域内においても原木等が不足しておるという状態で、町村知事がいま外遊中ですが、北海道の地域に原木を輸入して、そうして現在の北海道におけるいろいろな木材関係の企業の維持をはかる、そういう時期に到達しておるわけですから、原料の給源との関係等についても、いまの時点における事情の変化というものは、相当大きな問題でないかと思われるわけです。したがって、これらの点が十分究明されて、今後その再建の方途が可能かどうかという判断はおのずから出てくると思うわけですが、この問題等についても、公庫として、あるいは道庁とも連絡されておると思いますが、どういう検討を進めておられるのか、あるいは見通し等についてできるだけ明らかにしてもらいたい。
  42. 北島武雄

    ○北島説明員 北海道木材化学株式会社ができましたのは昭和三十四年でございまして、これは、その当時の原木事情と現在とは相当異なるわけでございます。当初三十四年に四億五千万円の資本金でできましたときには、公庫は実は出資いたしておりません。公庫といたしましても、なるほど木材化学はきわめて有用な将来の化学工業であることには違いなさそうだ、それからまた北海道の工業改善にとっても有益な事業である、こういうふうな認識は持っておったようであります。と申しますのは、私、その当時の当事者でございませんので、その当時の記録等によりましてただいま申し上げておるわけでございますけれども、当時といたしましては、確かに有用な事業であるようではあるけれども、はたしてその実験室から直ちにこういう大きく企業化することがどうであろうかという点につきましては、公庫も相当な疑問、懸念を持っておった。この点につきましては、北海道庁とも、あるいはまた各方面とも連絡いたしまして、できるだけ最初はまあ中間テストをやってからやったらいいんじゃないかということでありましたが、大勢としては、とにかく北海道庁の方針として、すぐ企業化できるならしようじゃないかということになりまして、公庫としても最小限度の設備にとどめてはいただきましたけれども、覚悟いたして出資を昭和三十七年に二億円いたしたわけでございます。それとともに、設備資金の融資もいたしたわけでありますが、事ここに至った根本の原因は、私、しろうと考えではございますが、やはり実験室では成功しておっても、それを直ちに大きく企業化することがはたして妥当であったかどうか、こういう点にあろうかと思います。日本に初めての化学工業でございますので、実験室では成功しておっても、それをいままで一トンのプラントでやっておったのを、急に一日八十トンの木材処理ができるような能力にしたわけでございますが、そこにやはり実験上と、それから実際の操業上との錯誤が起こったんじゃないか、こういうふうに考えております。まあ、これはいまから死児の年を数えるようなことで、いたし方ないわけでありますが、事ここに至った以上は、公庫としても多額の資金を投じたのでございますが、これについてある程度やはり切られることは覚悟しなければならぬと思います。更生会社となりますれば、大事な国の資金ではございますけれども、これはやはり他の債権者、株主と同じような負担において、公庫の出資を切られることも覚悟しなければならぬと思っておりますが、はたして今後どのような更生計画ができますかということにつきましては、これは今後管財人が選任されまして、管財人の手によってできるわけでございますから、私どもいまからいろいろ想像するわけにいかないわけでございますが、ただいま御指摘ございましたように、原木の事情というものも現在では非常に変わっておりますので、そういう点につきましては、やはり新しい目でもって見直す必要があるのではなかろうか、行きがかりにとらわれずに、新しい目でもって、この設備をどうしたら最もよく北海道開発のためにお役に立つような利用ができるだろうか、こういう基本的な考え方から検討をする必要があろうかと思います。こういう点につきましては、まだ関係当局者と打ち合わせておりませんけれども、公庫の基本的立場といたしましては、再建をできるだけ御援助したい、それとともに、最近における原木事情、今後の見通し等も十分頭に入れて、関係者の間で適切な更生計画を練っていただきたい、こう考えておる次第でございます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 先ほど委員長の御注意もありましたので、この程度にとどめておきますが、いま総裁からも率直な説明がありましたので、これは慎重に、また積極的に検討を進めていただいて、近い機会に、今後の再建方針等についても、これは国会の適当な委員会等においてまたお尋ねしたいと思いますが、最後に、一点だけ申し上げます。  この地元産業としての性格もありまして、特に旭川地方においては、敷地について、三十五万平方メートルの土地の購入等についても協力をしておるようであります。あるいはまた地元の取引関係等についても、約七千万円程度の不履行の取引が残っておる。これらはまた旭川市等においても鋭意協力して解決につとめておるようでありますが、従業員等についても、二百数十名の従業員が、この操業の突然の中止によって他に転職とかなんとかしなければならぬというような気の毒な事態に立ち至っておるわけです。したがって、これは直接の責任はないとしても、北海道開発の大きな発展計画の一環として、こういう問題が妥当な企業であるということが認められて、それに政府機関からも出資あるいは融資が行なわれておる、北海道庁においてもそういう措置がとられておるということを考えた場合におきましては、直接の責任はないとしても、やはり政治的なそういう配慮とか、今後善処すべき問題は残っておると思うわけでございます。したがって、地元におけるこれらの未解決の問題の処理とか、あるいは希望を持って働いた従業員諸君の今後の配置転換とか、あるいは会社が再建の見通しができて、操業再開に至るような暁にはまた復職するような問題とか、それらの問題等についても、北海道開発庁あるいは北海道庁と十分連絡をとられて、期待に沿えるような再建の方法をぜひ出してもらいたいということを期待するわけでございますが、この点について、総裁並びに開発庁の小島監理官も来ておられますので、両当局から御意見を述べていただいて、それで私の質問を終わりたいと思います。
  44. 北島武雄

    ○北島説明員 会社側からの報告によりますと、三月三十一日に保全処分が裁判所から出ると同時に、二百二十五人の従業者に対しましては、百七十九人と聞きましたが、百七十九人に対しまして解雇の予告を行ない、それと同時に、退職手当と解雇に至るまでの給料を現金で渡しており、これが従業者の諸君に非常にアプリシェートしてもらえたようでありまして、その後トラブルもなく、円満に労務関係が一応整理段階に入ったというように承知いたしております。  今後につきましては、これは管財人がすることでございまして、会社側のなすべきことではございますけれども、私どもも有力な株主並びに最大の金融機関といたしまして、会社側の今後の措置を十分に好意的に見守ってまいりたい、こう考えておるわけであります。むろん、私どものほうで援助できることがありましたならば援助いたすことにやぶさかではないわけでございます。
  45. 小島要太郎

    小島政府委員 北海道開発庁といたしましても、その木材化学が、この北海道の産業開発、工業開発の面におきまして、これが企業として成り立ち得ますならば、それの意義はきわめて大であると、非常に従来から高く評価してまいっておるわけでございまして、その点につきましての見解は、従前と全く変わらないのでございます。これが今後のことにつきましては、一に技術の面にかかっておるのでございますが、それぞれその面の有力な技術者の方々の今後一そうの御研究、御努力に大いに期待をいたしまして、願わくはこの新しい産業が将来うまくいきますように、願ってやまないわけでございます。北海道庁とも今後ともに十分に連絡をとりたいと思っておりますし、また公庫につきましても、事態の推移に即応いたしまして善処してまいることを願っておるわけでございます。  以上、開発庁といたしましてのこの問題に対する見解を申し述べた次第でございます。
  46. 高見三郎

    高見委員長 午前の会議はこの程度にとどめ、午後はおおむね一時半から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時十一分休憩      ————◇—————    午後二時五分開議
  47. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  土地改良法の一部を改正する法律案について、質疑を続行いたします。東海林稔君。
  48. 東海林稔

    ○東海林委員 土地改良法改正につきましては、同僚の角屋、石田、芳賀各委員から、それぞれ重要な点について相当質問がございましたが、今度の改正は相当広範にわたっておりますので、私も数点お伺いしたいと思います。実は赤城農林大臣にもお尋ねしたいと思ったわけですが、きょうは大臣がどうしても御出席できかねる、こういうことでございますので、大臣に対する質問分だけは次会に留保さしていただきまして、きょうは主として事務当局お尋ねしたいと思います。  まず第一点でありますが、この計画を立てて事業をやる場合に、関係者の同意に関する規定のうち、未墾地については今度のたしか第五条の三項かと思いますが、その区域内の未墾地関係者の全員の同意を要するということになっておるようであります。これまではすべて三分の二の同意であったのでありますが、未墾地の分について全員の同意を要する、こういう点について、先日の提案理由の説明なり補足説明を聞いたところによりますと、未墾地からの農用地の造成は、土地の形質及び利用目的を根本的に変更するものでありますからという理由を言われておるわけでありますが、私はこの点あまり納得できないのであります。御承知のように、畑から田にするというような場合も、相当形質の変更なり、利用の実際は変わってくるわけでありますが、未墾地だけについて全員同意をなぜしなければならぬか、こういう点をもう少し詳しくはっきり御説明をお願いしたいと思います。
  49. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 お答え申し上げます。  御承知のとおり、在来の土地改良法の二条で開田、開畑というのがございまして、在来の五条で土地改良事業をやるやり方が書いてございます。そして開田、開畑につきまして、今回の改正におきましては、二条を改めまして、開田、開畑を農用地の造成といたしまして、未墾地からの田畑の造成のみならず、草地を含めまして農用地という概念で、これをつくる仕事を土地改良に包括いたしたわけでございます。そこで問題は、未墾地をあるいは別の概念で申しまして、林地、雑種地を開田、開畑あるいは草地にしてしまう、この場合に、その所有者が自分の意思でそれをやろうという場合には問題ないわけでございますが、三条資格者というものは、地域内に存しますそういう未墾地の所有者、権利者が一応包括されますので、他の、それを持っておる人以外の三分の二で、林の所有者あるいは雑種地の所有者が林からたんぼにされてしまう、こういうことはやはり問題である。在来の土地改良法では御承知のとおり、この制度はございましたが、結局開拓というのは、上からの土地改良事業といたしまして、農地法の買収の上にやるたてまえでできておりまして、こういう未墾地から農用地を造成する形は、実際問題として動いておりませんでした。そこで、こういう申請による土地改良農用地を造成いたします際に、未墾地、林地から畑に変わるというようなときの、土地の使い方を本質的に変える使い方については、その所有者の同意を得てやることが、事態を円滑に進めるし、また意に反して、それ以外の人が、ある人の持っている林をたんぼにしてしまおうじゃないかということを三分の二で強制するということは、どうしても穏当を欠くということで、未墾地につきましては、未墾地の所有者の全員の同意、こういう整理をいたした次第でございます。
  50. 東海林稔

    ○東海林委員 どうもわからないのですがね。たとえば畑をたんぼにするという場合に、あるいは個々の人から見れば、反対の者がある場合もあると思う。それでも三分の二の同意があれば、一応事業としては進めることができる。未墾地だけについて一そういう考えを持つのは若干のひがみがあるのかもしれませんが、どうもいまの政府当局は、山林所有者に対して遠慮したような、特殊扱いをしているような傾向が考えられるのでありますが、そういう点がここに出ているのではないかという気もするわけです。ただいま農地法の四十四条の関係の話がありましたが、農地法の従来の考え方からいえば、農用地として適当な土地は、本人の意思にかかわらず国が強制的に買収できることになっておるわけですね。これは林地あるいは原野にしておくよりは、農用地にするほうが、むしろ本人のためにも収益が増加するという点もありますが、同時に、国土の高度利用という点からして、いわゆる公益的な点からもそれは考えられるということで、強制買収の規定さえ設けているわけです。いまの場合は、土地改良区を設立して開田する場合においても、決して本人の所有権を取り上げるということじゃないのですから、法の規定から見れば、法的にはきわめて弱い規定だと思うのです。にもかかわらず、これだけを特別扱いにするというのは、農地法四十四条以下の規定との関連から見ても、非常につり合いのとれないことじゃないか、このように思うわけですが、いかがですか。
  51. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 御承知のとおり、農地法四十四条で、未墾地を国が買収いたしまして、国の手によりまして農地として人を入れる、あるいは農業を営む者に売り渡す、この形は構成として十分残しておるわけであります。問題は、土地改良の世界におきまして、そういう形以外に、農用地の造成の道をさらに開いてまいりたい、そういうふうに考えました場合に、山林所有者が林地を持っておる、そうして一定の地域を定めて土地改良事業農用地造成をやろうという際に、法律上その地域内におります未墾地の所有者も三条の資格者ということになります。そうして一人分の頭数になります。そこで、その一人の人以外にたくさんの人がおって、三分の二でもってAという人の持っている林をたんぼにしてしまおうときめた場合、そのAという方が御自分でたんぼとして使うという意思があるならば、当然この人は同意をいたしますし、自分でたんぼにして使う意思がない山林所有者は、三分の二でたんぼにしてしまえと他律的に強制しても、それは意味がない。したがって、そういう方があれば、ほかの人がその土地を買うとか、あるいはそこをはずすとか、それ以外の所有者が同意する山林を開発する、林地を田畑にして使う意思のない人を土地改良法の三分の二で強制いたしましても、自分がその畑を耕す気がない場合は、これは全く意味がない。政府が買収いたしまして、農地として第三者に売るなら、これは別でございます。所有の状態が残っておりますので、当然そのように整理することが適当であろう、こういう法律の整理でございます。
  52. 東海林稔

    ○東海林委員 どうもわからないのですが、たとえば畑をたんぼにする場合は三分の二でいい。しかし、いまの御説明のように、たとえば自分としては特殊な果樹とか花をやっておる場合、畑としては自分は利用したいが、たんぼとしては利用する意思がないという場合もあり得ると思うのです。あるいは家族構成の関係で畑なら何とかやれるけれども、たんぼではやり得ないという場合もあり得ると思う。そういう場合においても、三分の二の同意で畑をたんぼにするということが法律的には認められておる。いまの林のときだけそれと違うという点が、いまの説明では私にはわからないのです。どうもはっきりしませんよ。  そこで、もう一つ、突っ込んで聞きますが、たとえば従来自然の野草を刈り取っておった採草地を今度は改良するということにしまして、ある程度機械を入れて開墾もし、そこに播種して人工的に草地を栽培するというような場合も、いまの規定からいうと、農用地の造成ということになると思うのです。私は、いまのそういう点なんかは、天然の草刈り場を今度は改良して、人工的な、農業的な採草地にするというような関係も相当出てくると思いますが、そういう場合を考えると、畑をたんぼにするというようなことに比べて、形質の変更なり用途の変更という点からいえば、非常に軽いと思う。そういう場合すらも、全員の同意ということは、どうも均衡を失しておる。何か山林所有者というものを特別に考えておるんじゃないかという疑念がどうしても解けないのですが、もう少しそこをわれわれの理解できるように説明していただきたい。
  53. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 農業者が土地を田なり畑なりとして利用いたしておる。そこに関係する人々が水を引っぱってその畑を改善しよう、あるいは田から畑に水路等を直して戻そう、これは農業者相互間の三分の二の意思で服していただきたい、それは農業用に土地を使っておるという立場でございまして、全体の立場に立って服していただきたい、こういう考え方一つ持つわけであります。問題は、農業用に使っておらない土地、林地あるいは雑種地がございます。これを、所有者が別な場合でございますが、農業用に使え、三分の二がお前は農業用に使うべきであるという強制をすることの当否でございます。それは農業用に使っておらない、林地として自分は使っていようという方があった場合に、お前は農業にこれを使うべきである、よってこの林地はみんなで一緒になって畑にしてしまおうじゃないか、その多数決に服すべきである、こう考えることが適当であるかどうかというところに、この法律改正の際に実はぶつかったわけでございます。その際の考え方としては、全員同意、つまり、五条三項でございますが、資格者というものを別に考えまして、全員同意ということばを使っておりますが、同意する人を取り込んでいこうという考え方でございます。どうしても同意しない場合には、六条その他で、たんぼとして使おうという方に所有権を移す形においてあっせん、調停、協議の指導をして、その土地農地として使う人の所有権に移して、しかる後にそれをたんぼにする、こういうプロセスを経ることが、所有権の実体との関係からいいまして穏当であろう。やる気がない人の林を第三者の強制でたんぼにしてしまうということは、どう考えても問題がある。先生の御指摘の、その人をはねのけて国が買って、たんぼにして別の人を入れる、これは別問題でございます。その所有の実体をそのままにしておきましてたんぼにしてしまうということは、問題もあるし、適当ではない、こういう考え方でございます。
  54. 東海林稔

    ○東海林委員 局長の答弁は、林地の所有者と農業者というものを判然と区別されて答弁をされているので、私の質問とぴたっとしていないのですが、私が言うておるのは、いまの林地なり雑種地を農用地にする場合に、林地なり雑種地を持っている人の全員でなしに、三分の二の同意があれば、林地、雑種地の所有者の大部分が同意をしたという趣旨においてやるべきじゃないか。私が言っているのは、現在農業をやっている人たちが全部やりたい、しかし、林地や雑種地を持っている人は大部分が反対だ、そういう場合に同じにせい、こういう趣旨で言っているのでは決してないのです。林地や雑種地を持っている人の三分の二ということでいいのではないか、それを特に全員というのはどうも納得できない、こういう趣旨で申しておるのです。何かいまの答弁では、そうでなしに、林地なり雑種地を持っているものと農業者というものを分けてお考えになっているので、少し質問と食い違っていると思いますので、そこを少しはっきり……。
  55. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 おことばを返すわけではありませんが、問題は、林地として使用している人が、その土地農地として使用するところまで引っぱり込めるかどうかという問題でございます。その気にまで持ってこられるかどうか。土地利用の姿を畑から田に変えるということは、その実体を変えるということでございますが、農業を一緒にやっておられる方が自分はここは林地として残したい、あるいは農業を全然やらずに、林地だけを持っておる方、これをその林地所有者の三分の二であろうと何であろうと、その気のない人を他の強制で、極端に言うと、おまえは農業をやれという強制を働かせることがいかぬのだ、あるいはおまえが持っている農業以外の部面を農業に切りかえなさいという強制、端的に申しますと、一つの業を営むことを強制することに相なりますので、その気になる方をこの中に取り込んでくる、これが最も合理的な考え方であろう、かように存じておるわけであります。
  56. 東海林稔

    ○東海林委員 くどいようだけれども、どうもわからないのだが、その場合に、畑をたんぼにしたくないという人も、やはり全員同意ということでないと、あなたの理屈は通らないと思うのです。畑は畑としてやっていきたいのだという人も、三分の二の同意があればたんぼにするという規定になっておるわけです。それといまのお話と何ら変わりがないと思うのですが、本人の意思に反するもの、そういう気のないものをやるといっても、畑作農業ならやりたいけれども、水田農業ならやりたくないという者があるわけです。それをやはり三分の二でやることができるわけです。それと同じことじゃないですか。そこの区別がどう違うのか、そこをはっきりしてください。
  57. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 確かに御指摘の問題点があろうかと思うのであります。先ほど申しましたとおり、田なり畑なりで農業を営んでいるその方が、水一つ取り上げますと、一定の地域でジェリマンダリーになるわけにいきませんので、三分の二で水田にしようというときには、御一緒に水田にすることを強制する、そこまでは在来もやっておりますし、今度の法案もそうなっております。そこで、その次の問題といたしましては、現に林地として使っておるものも、林地として使わないで、おまえ農業として使え、それに強制することも、畑をたんぼとすることと同じだということに相なれば、先生のおっしゃるとおりであります。実は本法を整理いたしましたときには、それは同じとは考えない。そうして林地をたんぼとして使おうという方は、当然同意というか、参加していただけるわけですから、その意思のある方は参加するわけですから、全員同意で、意思のない方だけが残るわけです。意思のない方だけが、全員同意の方式のときに問題になるわけです。自分としては林地として所有して使いたいというものを、他の者の三分の二で、おまえはたんぼとして使え、畑として使えという法律上の強制を課することはいかぬと思う。もちろん、四十四条によって買収してしまう場合は別でございます。現に所有の状態を残しておるわけでありますから、おまえは林地として使わないで、たんぼとして使うべきであるということを他の三分の二で強制することについては、やはり問題があるというふうに私どもは考えております。
  58. 東海林稔

    ○東海林委員 見解は違いますけれども、立法に当たった人間の考え方だけはわかりました。この問題は、幾らやっても同じことのようですから、次に移ります。  次にお尋ねしたいのは、国営とか県営の場合に、申請によらず、国や県が主導権をとって計画を立て、事業をやることができるという規定になったわけですが、私はこれの実益がどこにあるかという点がわからないのです。従来でも一応申請主義ではありましたが、実際に国営でやるとか県営でやるとか、大きい事業につきましては、もちろんこれは国や県が計画を立てて、関係者の中の有力な人たちと話し合って、その人たちの理解のもとに、その人たちが中心になって、関係者の大多数の同意を得て申請する、こういう形だと思うのです。今度はそれでなしに、国や県みずから同意を求める、こういうような趣旨のようでございます。この間の補足説明等を見ますと、高度の技術を要するもの、あるいは受益の範囲の広いものは、そうやったらいいというように書いてあるのですが、これは従来の申請の場合でも、ただいま申しますように、同じ関係だと思うのです。私は、むしろ、こういう土地改良事業のごときは、やはり民主的に下から盛り上がる力でもってやるというのがたてまえでなければならないと思いますし、また、実際問題として、関係者に事業に協力させるという点からいいましても、そこに若干の手数はかかりましても、やはりそういう手続を経るほうが、長い目で見て円満な事業実施にいいのじゃないか、このような見解を持っておるわけです。特に今回、国や県が上から事業計画を立てて進めることができる、もちろん、三分の二の同意は求めるわけでありますが、国や県がみずからそういうことをするという改正をやったのは、一体どういうふうに実益を考えてなされたのか、その点についてお尋ねします。
  59. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 実は、本委員会の前々回でございましたか、石田宥全先生から、各地の土地改良におきまして、地元の納得なしに行なわれたために非常に紛糾を起こしている、ああいう事態を起こすなという御注意がございました。私どももここ数年前からこのことには非常に気を使っておるわけであります。そこで、過去におきましては、先生も御承知のように、法律はどうあろうと、実態としては、国なり県が非常にイニシアチブをとりまして、ぐんぐん地元を引っぱっていって事業をやった。それが必ずしも地元のほんとうの意味の納得の上にできておらなかったというのが、その後の事態におきましていろいろ紛争を起こしている。そこで、この前もお答え申し上げたとおり、あくまでこの土地改良事業というのは、究極に農家のたんぼなり畑にからまる仕事であるから、農民の下からの力によって行なわれるべきである。それを厳正に土地改良法は数年前から全国で実行いたすように心がけておりますという趣旨のことを申し上げました。問題は、その際に、いずれにしろ土地改良事業でございますから、最終的に農民の方々の三分の二、実行面ではもっと高くいたしておりますが、同意なしに仕事をやるということは絶対にあってはならないと私ども考えます。申請による土地改良事業というのは、先生御承知のとおり、十五人以上の者が発起人になって、まずみんなに呼びかけて、三分の二で同意をとって、国なり県にやってくださいと頼む法制に相なっております。そこで、この法制を厳重に守れば守るほど、あるいは国、県がやたらに引っぱっていくということを押えれば押えるほど、一種の先覚者といいますか、そういう者は、不幸にして発起人のない地区においては出てまいらない。法制上は少なくともそうなるわけであります。そこで、出てこないものはしかたがないという立場で考えるかどうかという問題にもなるわけでございますが、出てこないのはしかたがないとすわっているだけでなく、今度は逆に国なり県の立場で、あの地区はやはり思い切って排水したらいいのだ、確かにいいはずだ、そういう判断がもしかりに県なり国の立場からできますならば、これはひとつ上から下へ呼びかけてもいいじゃないか。その場合に、上からがりがりやることは問題でございますから、上で計画をつくってお示しして、三分の二の方の同意を一挙に求めていく。発起人が出なくても上から求めていく。そうして、なるほどそういう計画ならよかろうではないかということで、その地区の三分の二以上の方々の同意で動き出すならば、それもあってしかるべきである。両々相まってしかるべきであろう。要は、その関係の方々の三分の二以上の同意というものを、法の命ずるとおり厳正にとってまいる、そして地についた形において土地改良事業を行なうということが確保できますれば一番理想ではなかろうか。ただ発起人が出て呼びかける場合だけ土地改良事業は行なうのだということも、あまりにも消極的にすぎないか。ことに長期計画等で、ある程度の意欲を持って計画的にやっていこうとすれば、出てこない地区につきましても、国、県の立場で計画をつくってお示しして呼びかけていく、この道を開いていく必要があろう。最近におきまして、先生御承知のとおり、事業が非常に高度化いたしまして、水源等も相当遠くに求めるというような実態が出てまいりましたので、実際問題として、地元の方々の着想と発意で大きな事業がまとまるというのも、なかなかむずかしい面が出てまいっております。非常に雄大な、雄渾な計画は、やはり国、県が立てておはかりするという道も、もう一方の交通路としてあってよかろう。心すべきことは、その三分の二の同意が上からの押しつけになってはならない、その点は重々注意して運用に当たりたい。法制的にも、その点は県知事、市町村長に十分配慮しておるつもりであります。
  60. 東海林稔

    ○東海林委員 いま発起人の十五人がなかなか見つからない場合があるという御趣旨でございますが、国営の何百町歩とか何千町歩以上というもので、十五人の発起人がないという場合は、実際問題として私はおかしいと思うのです。また、発起人が見つからないということなら、面積の小さい団体計のほうがむしろ見つかりにくい傾向になるのです。発起人の点でこの問題を説明されても、私はちょっと納得できません。そういうことだったら、面積の小さい団体営のほうがかえって見つかりにくいのじゃないか。団体営のほうは計画的にはしろうとにはわかりやすいということがあり得るかもしれないが、関係者の数からいえば、県営、国営ほど多くなるはずだし、また面積も多いのですから、十五人の発起人が見つかりにくいということだけでこういうことをやったということだと、どうも私は説明としては不十分じゃないかという気がする。また、一応考えられておる実益というのはそれだけですか。
  61. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 私ども考えておりますのは、十五人が見つかる見つからぬということより、土地改良事業というものの発想と申しますか、計画のイニシアチブと申しますか、それが法制上の問題として、下からほんとうに生まれてくるだけでいいのか、発想はやはり国、県も持っていいのではないかというところの問題点でございます。いわば十五人以上の発起人が発想し、着想して計画の概要をつくって、ひとつこれで計画を立ててくれないかということで、下からの農民から出てくる発想の道と、それから国、県から発想をして、計画をつくってお示しして農民の方々の賛否を問う、こういう道がございまして、実は十五人が見つかる見つからないという問題よりも、土地改良事業の発想、企画を農民サイドにだけ聞いて、国なり県はすわっておるか、あるいは国なり県も発想、着想は持って農民に呼びかけていくか、その後者の道もやはりあってよかろうではないか。在来からございましたのは、開墾、干拓は国営事業で国がまるがかえでやるものでございますから、それをあわせて行なう場合はいいとか、発電と何とかの場合はいいとか、限定的に考えられておった。今度は、事業の性質が大きくて高度の技術を必要とするようなものは、国なり県が発想して農民におはかりするという形で、土地改良事業の着手に入ってまいる。その道はやはりもう少し切り開いてもいいのではないか、こういう考え方であります。
  62. 東海林稔

    ○東海林委員 その計画の発想の問題は、従来とも決して農民自体計画が立っておったのじゃないから、私はその点は同じじゃないかという気がするのです。特に今度の土地改良法改正として、長期計画というものを立てて、国なり県がやはり大きいものについては相当具体的な計画をずっと立てていくのだろうと思います。問題は、その計画に基づいて事業を実際に実施するかどうかというところの発想ですね。それはやはり下から盛り上げるべきじゃないか、こういうように私は考えるのです。計画自体を農民に自分でやれというようなことは、いままでも要求しておらなかったし、今後もそれは困難だと思いますが、計画は長期間ちゃんと立てることになっておるのです。けれども、事業をやるかやらぬかというところの発想といいますか、そういうものは下から盛り上がるといいますか、そういうことのほうが民主的なやり方じゃないか。いまわれわれの常に主張している民主的なやり方で、上から押しつけるというような方法は避けようじゃないかということから見れば、今度の改正としては逆行じゃないかという気がするわけです。もしこの点について政務次官に何か御見解がございましたら、ひとつ承りたいと思います。
  63. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 仕事を起こすのに、民主的な立場から考えますれば、先生御指摘のように、下からそうした気持ちがわいてきて、初めてそれを取り上げるという行き方、これも一つのりっぱな行き方だと考えます。と同時に、ただいま農地局長から申し上げましたように、ある程度県なり国なりがやらせるために水を向けるという、こうした行き方も一つありますので、両方とっていくことが最も好ましいという考えで政府は出しておるようなわけであります。
  64. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、先ほどから私は実益があるかということを聞いておるわけですが、そうすると、政府の考え方としては、今度国営とか県営については、従来以上に国なり県が積極的にもっと責任を持つ、こういうような気持ちもあって、こういうふうな規定を入れたんですか。その点はいかがですか。
  65. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 御指摘になりましたように、責任を持つと申しますよりも、もっと積極的に働きかけるという意味であります。
  66. 東海林稔

    ○東海林委員 どうもあまりぴったりこないのですけれども、次に移ります。  経費の負担関連してでございますが、今度の改正で、排水事業等については、地方公共団体にも法律的にはっきり負担させる道が開かれたことは、一つの前進だと思うわけですが、この経費負担関連しまして、私二、三具体的な問題点、疑問の点がございますので、お尋ねしたいと思います。  一つは、一応土地改良区をつくって、計画ができ上がって、事業進行過程において、御承知のように、土地改良の仕事は最近非常に長年月かかっておりますので、そういう関係で、途中で情勢が変わりまして、たとえば都市周辺等の改良等を計画しておったのが、あるいは新たに工場誘致等の問題が起きたために、相当な面積計画から脱落するというような事例があちこちいま出ておるわけです。その場合に、組合設立からその脱落の時期に至るまでの経費をどういうふうに脱落する者に負担させるか、あるいは負担させずに免除するかというような点がきわめて明確でないために、あちこちで問題を起こしている事例を私は知っておるわけです。そういう点は今度の改正案にはあまり具体的にはっきり出ていないわけですが、どういうような御見解でおられますか、その点をひとつはっきりしていただきたいと思います。
  67. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 最近住宅、工場等が大体近郊都市において非常に活発にできてまいりまして、御指摘のように、国営でやりましょうとも、土地改良区の事業でやりましょうとも、土地改良事業を始めているうちに、そのいわゆる受益地が脱落してまいる。そこで、たとえばその建設費をみんなが反当何千円ということで負担しているうちに脱落してまいると、残った方々がよけいに負うことにならざるを得ないのではないか、こういう問題に非常にぶつかってまいる事例が非常に多くなりました。私どもも、これについては根本的に考える必要がある、かように存じておるわけでございますが、現在私どもの考えております問題といたしましては、法の四十二条に権利義務の清算に関する規定がございます。そこで、在来これは非常に厳重に解釈をいたしておったわけでございますが、やはり事態の推移にかんがみまして、これを活用すべきであるといいますか、これの解釈によってそういう事態を是正していきたい。と申しますことは、要するに、転用して土地改良区から出ていくという方々に対しては、ここでその決済をしていただく。各地におきましても相当活発にこの決済を行なうように相なってきております。私どもの指導もその面を強めておるわけでございますが、したがいまして、おまえ出ていくならば、たとえば残っている方には十年なら十年でとっております分を一挙に繰り上げ償還をする、土地売り上げ代金の中から繰り上げして払ってもらうという形で、国営でも県営でも、土地改良区が農民負担の取りまとめをやっておりますので、取っていただきまして、残った方に影響がいかないように、こういう措置を講ずることによってこの問題に対処いたしたい、また現にやっております。また、各地の土地改良区で激しいところほど、この決済というものは活発に行なわれておる。こういう形で私どもの考えといたしましては、いま先生御指摘の問題は、四十二条によって解決いたしたいと考えております。
  68. 東海林稔

    ○東海林委員 四十二条の第二項の権利を承継するものがないときの問題を私はお伺いしておるわけです。脱落する者の中には、先ほどお話が出たように、本人は初めから土地改良に賛成ではないが、大多数の者が賛成のために、強制的に入っておるという者もあると思うのです。と同時に、工場誘致等にその土地が使われている場合に、各個々の人も実益が多い場合があると思うのですが、しかし、土地改良区がまだ実際に効果を発揮していないわけですから、土地改良区からは何ら実益を受けていなかったという人になると思う。その場合に、従来かかった組合費なり、あるいはそれまでかかった工事費の一部を出せと言っても、なかなか納得しない。実際問題として負担が困難だということになって、私の知っている例なんかでは、しかたがないから地方公共団体が肩がわりした。地域の発展のために工場誘致するのだから、その人たちの分まで肩がわりをして解決したという実例がありますけれども、実際に自分は土地改良区から何も恩典を受けていないということからして、また中には、初めは賛成でなかったが、強制的に入れられたという関係からして、局長さんがおっしゃるようなぐあいにそう簡単にはいかないのです。だから、この法律の権利義務について必要な決済をしなければならぬという趣旨は、これはどういうふうに理解したらいいのですか。それまでかかった事務費並びにその時期までにその事業に投ぜられた専業費までも負担しなければならないということになるのですか。その点はどういうふうにこれを解釈されるのでありますか。いま四十二条の二項でこれを処理するというお答えでありますが、具体的にそれをはっきりしてもらいたい。
  69. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 年々の事務費は、御承知のとおり、一般賦課金として取っておりますものは、払ってなければ、組合のほうから見れば当然未収でございます。これを出ていくときに決済するということは、とりもなおさず払わせることになります。私が先ほど来申し上げておりますのは、建設経費の負担の問題がやはり一番やっかいだろうと思います。それで、建設の負担は、土地改良を始めますときに、事業費が幾ら、負担がどうということをきめて、先ほど来の話のようにスタートするわけでありますから、その数字のきまっております形におけるところの負担金は決済して出ていっていただく、こういう運用を励行いたしてまいりたいという趣旨でございます。
  70. 東海林稔

    ○東海林委員 そうすると、その事業費の負担という場合は、国営事業のように事業完工後において負担を受益者に分割するという場合には、いまの点はどういうふうになるのですか。
  71. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 国営事業等で負担金を農民から取るのを事業完了後にしておるのは、一種の農業政策として、そういう一種の猶予をやっておるわけです。債権はあるのだけれども、取り方を分割払いにするということでございます。したがって、いまのように必要な決済という際には、その農業から脱落——脱落ということばは適当ではありませんが、土地改良区から出ていく場合に、その猶予というものは必ずしも考える必要がない。ことに転用等で収入もある階層でございますれば、こういうことを考える必要はないという立場に立っております。
  72. 東海林稔

    ○東海林委員 もう一つお伺いいたしますが、四十二条の二項の場合は、計画自体としては全体として変更がないが、ただ、従来組合員たる資格を持っておった者が、自分の個人的な理由で脱落していくという場合もあると思うのです。その場合は私は非常にはっきりしているように思うのですが、そうでなしに、先ほど申しましたように、一部工場誘致等によって計画自体の面積が縮小されて、その縮小されたものが一応みんな脱落するというような場合には、どこまで事業費というものの負担をさせるのか、この点は実際問題として非常に問題だと思う。当初の計画から見れば、若干計画というものは縮小されるということになるわけですが、当該部分について、その縮小された経費というものが、縮小された面積と相対するものと考えるのは必ずしも妥当でないように思われる。たとえば水源の工事、ダムをつくって貯水するというような工事は、少しくらい面積が減ったからといって、ダムの規模を減らすとかいうことにはならないはずです。ただ、管水路とかそういうものになれば、面積が変更すれば計画は縮小されますが、水源工事には影響がない場合が多いと思う。そういう場合の負担させるはっきりした基準がないと、常にこれは問題になります。そういう点はどういうふうに考えますか。
  73. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 たいへんむずかしいお話でございますが、私どもの心がけといたしましては、一つの問題は、工事にスタートいたしまして、事情が変わってまいる、その際は、まず第一に、計画変更ということには心がけたいと常に思っておるわけであります。明らかに受益地が変わってくる場合には、計画変更で、その水路なり何なりが切り詰められる部分、これは切り詰めて、よけいな負担をかけて下からよけいに取るややこしいことをやらないのがベターであります。ただ、先生も御指摘になりましたように、ダムあるいはため池等になりますと、すぐさっと切りかえるというわけにもまいらぬ場合もあろうかと思います。この場合には実はいろいろ事例が出てまいりまして、たとえばこのダムの水をそこにできました工場等が使うという場合があるわけであります。この場合等は、私どものことばで再アロケーションと申しますがアロケーションのやり直しをやりまして、同じダムをつくりますけれども、工場側にそのダムを持ってもらうということ、あるいは部分的にできておりますようなものは、使用料という形で実質的にアロケーションを土地改良区でとってしまう、こういう道も考えられる。最悪の場合といたしましては、ダムはできたけれども、なかなかその水を使う人がいないという場合の問題を、私ども実際問題として非常に苦慮しておる。そこで、いま先生御質問の事業費をどの段階でどういうふうに確定するかということになるかと存じますが、私ども四十二条の解釈にあたっては、その時点において確定しておる事業費でこの問題を考えていったならばどうか、かように考えておる次第であります。
  74. 東海林稔

    ○東海林委員 いまの点は、ある程度ケース・バイ・ケースで処理しなければならぬ場合もあるかと思いますが、しかし、処理の基準的な考え方をやはり明示しておきませんと、私が知っておる範囲でもあちこちで問題になっておりますから、ぜひそういう点よく御検討されて、適当な基準を下部までお示し願いたい。この点をひとつお願いしておきます。  角屋君から関連があるそうですから……。
  75. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの東海林委員の質問は、これから土地改良事業を進める場合には、非常に重要な問題の一つでありまして、これは過般私がお尋ねしたときにも、新しく設けることになりました第九十条の二の特別徴収金、この問題と、いまの四十二条の権利義務の承継及び決済、それと第六十六条の地区変更、第六十六条では条文が簡単になっておりますが、「地区内にある土地が、その土地改良区の事業により利益を受けないことが明らかになった場合において、その土地についての組合員の申出があるときは、その土地改良区は、その土地をその地区から除かなければならない。」こういう第六十六条の規定があるのですが、これは今日までの土地改良事業の中で、特定土地改良工事特別会計でやっている、私たちの地域でも起こしているのですけれども、当初予定した受益地区として、あるいは負担の対象としておったもの、その中から、事業推進の過程で第六十六条によるところの地区変更という申請が出てまいります。そうすると、これはやはり事業をずっと遂行していこうという側からの意見もあり、なかなか六十六条の取り扱いが現実にはやはり問題を提起しておる。明らかであるというふうに条文上なっておるけれども、明らかであるかどうかという議論もありますが、いま申しました四十二条、それから六十六条、新設されました第九十条の二、特別徴収金、この関連は、今後の土地改良事業推進の場合にはやはり取り扱い上きちっとしておく必要がある、こういうように従来の土地改良事業推進からも思うわけです。この辺のところ、基本的な見解として少しく明らかにしてもらいたい。
  76. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 いま御質問の九十条の二の特別徴収金は、この前にも御説明いたしましたように、干拓地に配分いたしました際に、たまたまその干拓地が工場立地としていいということで、農民が農業用に安く取得させたものを高く時価で、一般の土地と同じような形で売ってしまった事例がございます。会計検査院等で非常に御注意をいただいておる問題でございますが、今後も太平洋ベルトラインにおきます干拓地等においてはこういう事例が予想されますので、もともと農業をやるから安い負担金で土地の入手をさせたわけでございますが、その農業をやらないで売り払うという場合には、特別徴収金として、かかった経費を限度といたしまして差額が取れるという趣旨の規定でございます。それから六十六条の規定は、地区変更の規定でございます。これも先ほど申しましたとおり、地区を除斥せざるを得ない場合におきまして、第一次的に継続地区等で、あるいは着手早々の地区等で考えなければならないのに、そこが除かれた場合ならば、計画はどう直したらいいか、いわゆる計画変更の問題で、行政庁としては実務的に第一にやれる限りのことをやって、当初の計画を修正すべきであるとは存じます。が、それができない、あるいはある程度できたといたしましても、やはり地区を除斥せざるを得ないという場合には、先ほど申しました四十二条の決済ということの問題を、その除斥される地区におきます組合員等の間では考えてまいりたい、かように考えるわけでございます。なお、四十八条という規定がございまして、それは先ほど申しました計画変更に関する規定でございますが、計画面では四十八条の計画変更、それから地区の扱いの問題として六十六条の問題がうらはらの関係として働いているような関係になっております。
  77. 東海林稔

    ○東海林委員 もう一つ、経費負担の問題でお伺いしたいのですが、河床の変更によって、農業用水の取水口が、いままでのものが役に立たずに、やり直さなければならなくなった、あるいは排水ポンプのいままでのものが役に立たずに、新たに馬力を増して高く上げなければならぬというような問題がしばしば出ておるのですが、新河川法案を見ましても、国が河川工事をするという場合には、そういう用水の権利者の意見を聞くというようなことなしに、独断的に河川工事がやれるというようなことになっておるように私は見たわけですが、そういう場合に国の一方的な河川工事によって、しかも農民にのみそういう負担を全部負わせるというのは、非常に不合理ではないかという感じを私は持っておるのですが、新河川法の合議の際に、農林省として、そういう点について建設省当局と何らか話し合ったことがあるかないか、また、この問題について、農林当局としてはどのような考えを持っておられるか、この点をひとつお尋ねしておきたいと思います。
  78. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 新河川法におきまして、第八条で、「「河川工事」とは、河川の流水によって生ずる公利を増進し、又は公害を除去し、若しくは軽減するために河川について行なう工事をいう。」ということで、流水による公利の増進、公害除去の立場で行なわれますものでございますので、これはこれなりに尊重すべき事業と心得ておるわけであります。そこで、私どもといたしましては、この河川工事が農林関係の仕事に影響なしとしないということで、この河川工事そのものを法律上農林省との協議事項にするということは、これはたてまえ上非常に問題がありますので、覚え書きをもちまして、建設省が河川工事をやる場合、農林省が河川について水利事業をやる場合に、両者は事前に緊密に連絡しましょうという趣旨のことを覚え書きでかわしておる次第であります。  それから河川管理上の許可に関しましては、御承知のとおり、流水使用のための工作物の新築等の許可につきましては、三十五条等で協議にかけておるわけで、全般的にできるだけ法律上の協議事項あるいは覚え書き上の協議事項をもちまして、河川工事によって農業用の施設あるいは農業そのものの営みに影響のないように、事前の相談をもって対処したい、こういう基本的な立場で河川法の制定の際には対処いたした次第であります。
  79. 東海林稔

    ○東海林委員 私、もう一点お尋ねしたわけですが、河川工事をやったために、場合によっては河床が下がったために、取り入れが不可能になる場合があるわけであります。もう一つは、逆に河床が上がって、それで排水が従来のポンプでは不可能になった、あるいは当然やるべき河川の管理を怠ったために、あるいは河床が上がってポンプを増強しなければならないという場合もあり得ると思います。そういう場合の負担を、普通の場合の取水口なり、あるいは排水機械の新設、それに対する補助率と同じでこれをやれということは、非常に無理ではないかと思うのですが、そういう点についてのお考えを承りたいと思います。
  80. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 河川工事で農業施設に影響を及ぼした場合の負担といいますか、賠償といいますかの関係は、実は常々建設省ともいろいろ話し合いもし、ことに河川法施行にも関連していろいろ話し合いはいたしておるわけですが、一つ明らかなことは、河川工事として、たとえばショートカットする、あるいは新設をするというようなことによって、農業用の施設に直接に被害を及ぼした場合、あるいは河川の水路をつけかえることによって支障を生じた場合、これははっきり河川工事の負担において建設省はそういう処理をするということは約束しております。問題は、河床の自然の変化の場合にまではとうてい手が及ばない。こういう問題が一つある。これもその限りにおいてはもっともなことでございます。そこで、いま具体的に発生いたしておりますいろいろな問題は、その明らかなものは問題なく建設省がやる。それから長い間——長い間か知りませんが、利根川において最近何らかの原因によって相当河床が下がった。そのような具体的事例について、私のほうはやむなくポンプで揚げておるというような事例が随所にあるわけでございます、この具体的ケースになりますと、先ほど申した河川工事による被害なのか、自然の被害なのかということがなかなかデリケートに相なります。建設省といたしましては、特にその補償をやるというふうにはなかなか参りかねる。ただ、いろいろな問題で上手どめ工事等をやって、できるだけそういう処理を河川工事の一環としてやるということについては相当協力してくれておるわけでございますが、現実に補償工事的にそれを直すというところまでは、なかなか法律的にも実態的にもはっきりしない面がありまして、必ずしも円滑にいっておらないわけであります。そこで、私どもといたしましては、具体的ケースについてなるべく建設省に話し合いをつけて、向こうでやれる限りのことはやってもらうというのが一つの方法でございます。それからもう一つの方法といたしましては、ことしから実は初めて手をつけてみたわけでございますが、どこにも持っていきようがない形におきます河川の変化、人的といいますか、単に農民の負担、責めに帰しようもない意味における河川の河床その他の変化で、農業用の施設を更新せざるを得ない事例については、一般の土地改良事業とひとつ分けてつくらないかということで、実は用水事業、県営かん排事業というものも、三十九年度県営かん排卒業というようなものを一つの試みとして始めました。これについては補助率も若干変えてみようということで、大蔵省と試験的に一つの道を開いたわけでございます。いまこの問題の実施をめぐりましては、それがわがほうにおきましても同様な問題に相なりまして、自然の河床の変化による農業取水施設の更新事業と、それからまたこの事業をどういう基準で明白につけるかということ自身が、実は土地改良面でそういう制度をつくりました面におきましても問題になっておる。一方建設省のほうでも、なるたけそういうものを何とかしてやりたいという気はあるのですが、自然の変化によるものまで一々直しておったらという立場が一つございます。明確に現在一つ一つ片づいておらないことは遺憾でございますが、法律論といたしましては、いま申しましたように、明らかに河川工事に原因するものは建設省が負担する、自然のものはしない、こういう形に相なっております。私のほうはやむなく、ひとつ別の土地改良の補助体系の事業というものをつくってみよう、その突破口を三十九年度に始めよう、こういう実態であります。
  81. 東海林稔

    ○東海林委員 ただいまもお話がありましたように、私の群馬県でも利根本流は大体河床が下がっておる。ところが、支流の渡良瀬川は上がっておる。片一方は出水で困っておる。片一方は排水で困っておる。一体建設省の河川工事が直接の原因かどうかということがなかなか判定しにくいわけですが、しかし、いずれにしましても、この農民のやった原因ではないのです。それはやはりいまもお話がありましたが、県なり農林省のほうで、この問題は積極的に検討されて、農民が困らないような対策をぜひ確立していただく必要があるんじゃないか。せっかくの機会でございますから、一部三十九年度からそういう点が試み的に一歩踏み出したという点は、たいへんありがたいのですが、もう少し積極的にこの問題は根本的にはっきりさせる必要があるんじゃないか、ぜひ御検討を願いたいと思います。  それでは次に進みます。次は、農業用水の確保の問題について、新河川法との関連においての問題です。私も、第四十三国会で、新河川法について建設、農林の合同委員会がありました際に出てまいりまして、この点は少しお尋ねしたのです。河野建設相から、従来の農業用水はこれをそのとおり尊重する、慣行水利権も尊重するし、かりに届け出の義務はつけてあるが、届け出のない場合これは尊重するというような御回答があり、また今後の必要な農業用水については、最優先的にということばを使っておるが、最優先的にこれを尊重する、こういう答弁が一応あり、答弁の限りでは、ことばの上では私も納得したのですが、実際そういうような点について農林省と建設省の問にはっきりしたお約束ができておるかどうか、この際、この土地改良と重要な関係がございますので、お伺いしておきたいと思います。
  82. 丹羽雅次郎

    丹羽(雅)政府委員 まず、慣行水利権の尊重の問題は、はっきり約束ができております。御承知のとおり、当初届け出制をしいて何年間に整理したいということは、農林省といたしまして強力に反対いたしまして、みなし慣行水利権として、在来どおり法制上のみなし権利とするということにつきましては確定いたしますと同時に、尊重は十分だめ押しをしております。新しい水利について最優先に尊重するという建設大臣の御答弁があったのを私も承知いたしております。これは別に確認というような形でものをやってはおりません。ただ、今回の河川法におきましては、明治時代の憲法から新しい憲法に相なりまして、御承知のように、水利調整の規定が入りまして、新規水利使用者が出た場合の手続が法定されたわけでございます。この法定によりまして、当然必要とする水利権というものは、この手続の上に確保いたしてまいる所存でございます。
  83. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、この問題に関連して、経済企画庁にお伺いしたいのでありますが、利根川は、御承知のように日本でも有数の河川でございますので、新しい河川法がかりに成立いたしますと、これは一級河川として全水利権が指定されるということは当然予想されるところであります。  そこで、お伺いしたいのでありますが、現在の農業用水、工業用水、さらには上水道、利根川の全有効水量が現在どういう状況に、これがどういう割合で活用されておるかという点、さらに現在、御承知のように、矢木沢とか下久保とかいうダムが、いろいろと利根川の有効水量を増加する計画が進行中でございますが、こういう既定の計画が完了した上で、いま申します三つの農業用水と工業用水と上水道用水、この利用の区分がどういうふうに変化するようないまの計画になっておりますか、その点をひとつお尋ねいたしたいと思います。
  84. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 東海林先生のお尋ねの利根川水系の水の利用の問題でございますが、現在利根川水系の水の使用の数字というのは、実はいろいろございますけれども、ラフに申しまして、全体で毎秒八百三十トンございます。毎秒八百三十トンくらいの利根川の水を使っておると承知しております。そのうち、大部分といいますか、九十数パーセントになります毎秒八百トンくらいが農業用水。工業用水、上水道につきましては残りの毎秒三十トンでございます。工業用水毎秒十トン、上水道用水毎秒二十トン程度というのが私どもの持っておる数字でございます。  利根川の水をどの程度まで利用しておるかということでございますけれども、八斗島の下流だけでかりに計算いたしますと、利根川の河口におきまして大体百三、四十億の流量がございますが、八斗島下流のいろいろな用水を合わせまして、十六億から十七億くらいになる。約一二%から一三%くらいが利根川の水を利用しておるということになります。  それからお尋ねの次の点でございますが、矢木沢、下久保等上流にダムをつくった結果どういうことになるかという御質問でございますが、矢木沢と下久保だけをつかまえますならば、矢木沢だけで毎秒十七トンの水を新たに生み出すことになるのであります。そのうち十三・六トン、これは大部分になり、残りはわずかでございますが、十三六トンというものが群馬用水に使われる農業用水でございます。それから下久保ダムでございますが、下久保ダムの水自体は毎秒十六トン、これは上工水用に使われる。それから農業用水の現況は、先ほど申し上げました毎秒八百トンでございます。これがダムが兆成してどうなるかということでございますが、矢木沢、下久保に限らず、全般的に申し上げまして、水資源開発促進法におきます利根川水系の水の需要供給を考えまして、先般基本計画を一応セットいたしました。その数字で申し上げますと、昭和四十五年におきまして、現在よりも毎秒百二十トンくらいの水を生み出すということにいたしております。そのくらいの緊急の需要があるので、それに対処するためにこのくらいのものを供給していかなければならないという目標の数字でございます。この毎秒百二十トンの水を昭和四十五年までに生み出してまいりますが、このうちの約三分の一、四十トンくらいが農業用水に充てられるわけでございます。それから五十トンくらいが上水道用水、三十トンくらいが工業用水、そういうバランスになろうと思います。でございますので、パーセンテージから申し上げますならば、現在におきましては九十数%が農業用水である。四十五年におきましては新たに上流にダムをつくり、増水施設をつくりまして、四十五年までには百二十トンふえます。そのうちの三分の一が農業用水である。ただし、全体のパーセンテージから申せば、もちろん新たな利水が出てまいりますので、パーセンテージは九〇%を多少切るように計算上はなろうと思います。大体そういうことでございます。
  85. 東海林稔

    ○東海林委員 四十五年の見通しをいま伺ったのですが、さらに経済企画庁としては、もっと長期な計画を何か持っておられるのじゃないかというような気もするのですが、利根川水系について、さらにより長期な利水計画というようなものの計画があるのですか、ないのですか。その点をひとつ。
  86. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 水資源開発促進法におきまして、緊急の水需要に対処して広域に開発するという思想で、基本計画をつくるということに相なっておりますが、基本計画と申しますのは、需要供給のバランスのとり得る数字ということになるわけでございますが、私ども一応倍増計画、その他工業用水の計画、上水道の計画、いろいろな計画を積み上げまして、それから出てまいります水の需要というものをかなり計算したわけでございます。それは一応四十五年というところまで大体確からしい数字が実は出てまいります。五十年とかもう少し先のことをとったらどうかということで、作業も実はいたしてみましたけれども、なかなか的確な数字がつかめませんので、一応四十五年——目先数年になりますけれども、一応四十五年ということで、さしあたり水資源開発促進法による水資源の開発を進めてまいりたい、こういうことでございます。
  87. 東海林稔

    ○東海林委員 次に、公共用水域の水質の保全に関する法律の水質基準の設定の問題でございますが、最近鉱山あるいは特に工場の排水等で、非常に農業用水その他が汚濁されるという問題が出て、三十三年に水質保全法ができて、三十四年の三月から施行されるということになっておるわけですが、どうも私の聞いておる範囲では、水質基準の設定が遅々として進まない。全国でまだ四カ所しか指定されていないというふうに聞いておるわけなんです。私は、具体的な問題として、私の近くの渡良瀬の問題があるわけですが、足尾鉱山からの鉱毒水の問題は、御承知のように、明治時代の田中正造先生の時代から非常にやかましい問題でございまして、しかも今日までこれが常に鉱山側と下流農民側で紛争を起こしているというような問題なのでありまして、一日も早くこの水質基準の設定がなされて、水質の保全ができるように期待をしておるわけなんですが、この問題がいままでどういうような経過をたどって今日に至っておるのか、全国における公共用水域の水質の保全に関する水質基準設定の具体的な事例としてお伺いしたわけですが、どういうふうな経過で今日に至っておるかをまず御説明をいただきたいと思います。
  88. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 公共用水域の水質保全の法律ができまして数年になりますが、まだ四つしか川を指定していない。これは事実でございますが、いま渡良瀬川を具体的な例として御質問がございましたので、渡良瀬川についてお答えをいたします。  渡良瀬川につきましては、三十四、五の両年度にわたりまして、詳細な調査を行ないました。ただ、この両年度の調査は大体平水時の調査でございましたので、さらに三十六年度におきまして、水のたくさん流れておりますときの調査をいたしましたが、三十六年度に一応渡良瀬川の調査は終了したわけでございます。普通、河川の水質の調査は通年調査と申しますか、一年がかりでやるわけでございます。それから補足調査に時日を要するというのがよくある例でありますが、渡良瀬川につきましても、やっと三十六年度に調査が完了いたしました。  それから水質のきめ方でございますが、これはなかなか学者先生の間でも実はむずかしい問題でございまして、調査いたしましたこのデータを分析と申しますか、かなり日数を要します。それで、そのデータに基づきまして、ある程度の水質基準案をつくって、専門家にお願いをしておりますが、水質審議会の専門部会におはかりするわけでございます。渡良瀬川につきましては、専門部会の設置が——これは各省推薦の専門委員によって構成するわけでありますが、この部会の設置が若干おくれまして、三十七年の終わりにようやく部会の構成ができまして、三十八年の最初に初めての部会を開きました。渡良瀬川につきましては、三十八年のたしか六月とか記憶しておりますが、現地部会といいますか、現地で住民関係者の御意見を伺ったり、現地の実情を専門委員の方々に見ていただいて、過去に調査いたしましたこのデータに基づきまして、一応渡良瀬川の水質の究明ということを、部会の設置と並行いたしまして、鋭意やっております。やっておりますが、何しろ渡良瀬川につきましては、これは田中正造氏のお話が出ましたが、もっと古くは三百五十年くらい前に初めて、あそこの鉱山は発見といいますか、採鉱されたところでございます。そのころからいろいろな堆積がございます。それと、明治以来いまの企業形態になりましてからもいろいろな紆余曲折がございますが、渡良瀬川につきまして具体的な事例を申し上げて、困難な点を御理解いただければ、けっこうだと思いますが、鉱山廃水が下流の農業用水の取り入れ口にどの程度まで影響するのかという問題が、実がなり議論の分かれるところでございます。鉱業側におきましても、なかなか完全な施設がいままではできておりませんことは事実でございますが、現在操業しております部分につきましては、相当程度金を注ぎ込んで鉱害の防止設備をいたしております。過去の堆積というのは、その間に問題になってくるわけでございます。  それともう一つは、渡良瀬川のオットセイ岩といいますか、ある地点である水質が検出されるわけでありますが、それからさらに下流の農業用水の取り入れ口までにはかなり水量がふえるわけであります。当然希釈されてまいるはずでありますが、現実にはなかなか水量ほどには希釈されない。その間に何か原因があるのじゃなかろうか、こういう議論も出てまいるわけであります。そういうことで、廃水の水質と直接農業用水の取り入れ口の水質との関係というものは、なかなかずばっときめるわけにはいかないという問題がございます。水質保全法そのものが、またこう申し上げますと、ことばは悪いですけれども、加害者対被害者、加害と被害の調整ということを前提にした法律でございますので、この渡良瀬川の水質につきまして、いま申し上げたような事情によりまして、工場廃水と農業用水の取り入れ口の水質、それの及ぼす農業被害、こういう因果関係がかなり学問的にむずかしい問題でございます。これから専門部会でさらに御審議を願うことになるわけであります。こういう事情で、渡良瀬川につきましては、だいぶ予定よりもおくれておることは恐縮でございます。ほかの川につきまして、いま隅田川を全力をあげてやっております。これもなかなかむずかしい問題であります。そのほか、北海道の川等について、近く部会の結論が出るように私どもとしては努力しております。
  89. 東海林稔

    ○東海林委員 相当むずかしい問題だということは私もわかるのですが、しかし、あまり学問的にむずかしい、むずかしいと言っておったのでは、いつまでもこれは解決しないじゃないか。渡良瀬の関係で言いますと、農業用水を下流で伏流水をとるために、ずいぶん金をかけたり、あるいは沈砂地をつくったり、群馬県側あるいは栃木県側でもずいぶんやっておるわけです。化学的にも非常に有毒だという点もありますが、一つは、微粒子によって土壌の表面が硬化して空気の流通が悪くなるという点もあって、これはおそくなればおそくなるほど、そういう被害が累積するということがあるわけです。何とかこれはひとつ——経済企画庁だけを責めるわけにいかないので、実は農林省にも私は一昨年ごろから数回参りまして、お話をするのだけれども、私の受た感じを率直に申しますと、何か農林省も非常に消極的であった。特に前計画部長のごときはきわめて消極的であったという感じを受けたのです。これは非常に困るのでございまして、率直に言って、私は、農林省は農民の立場から大いに主張してもらう、あるいは渡良瀬で言えば、通産省は鉱山側の立場で大いに積極的にやってもらう、そうする中で、経済企画庁がまあ中正な立場で、専門部会なり審議会の御意見によってこれをきめるということにならないと、なかなか解決しないじゃないか。しかも解決しなければ、それだけ被害というものが累積していって、あとでせっかく水質基準がきまったけれども、被害を排除するにはずいぶんと金がかかるというような問題になると思うのであります。  そこで、お尋ねしますが、これまで専門部会は何回開かれておるのか、渡良瀬について審議会がいままで開かれたことがあるのか、ないのか、その点をお答えいただきたいと思います。
  90. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 渡良瀬につきましては、先ほど申し上げましたように、部会を構成いたしましてから、三十八年の初めに部会を一応やりまして、それから三十八年六月に専門部会の現地部会を開きました。その間、専門部会にどういう資料をどういうふうに解析して——実は専門部会におはかりすると申し上げても、その前に各省の調整ということがございますので、専門部会にいきなり渡良瀬の水質についてはどうしたらよろしいでしょうと言うわけにはまいりませんので、一応各省相談ずくの案といいますか、大体各省の考え方というようなところをまとめまして、その上で専門部会においてお願いするということにいたしております。その渡良瀬につきましては、専門部会の開催回数はいま申し上げたとおりでございます。近く各省大体線がそろいますので、その上は、大いに専門家に何回もお願いすることになる、こういうことでございます。水質審議会は、専門部会が終わりました段階に最後の締めくくりにお願いする、こういう手はずにしております。
  91. 東海林稔

    ○東海林委員 次にお尋ねしますが、県からは、たしか昨年の十月ごろ、県としての具体的、数字的なこまかい意見が出ておるように伺っておるのですが、関係省の農林省や通産省からそういう意見なり具体的、数字的な資料をすでに企画庁のほうに提出がありましたでしょうか、まだないのでございましょうか。
  92. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 群馬県当局からは、渡良瀬川の水質を、農業用水の取り入れ口におきまして、銅分でございますが、〇・〇一PPM、百万分の一の百分の一でございますが、そういう要望が出てまいっております。でございますが、県の要望に対しましては直ちに——県の要望としてはもちろん気持ちはわかりますけれども、これはほとんど水質の汚濁量の一〇〇%に近いカットを要求していることになりますので、これはなかなかできにくい問題だと思います。農林省、通産省とはそれぞれ相談をいたしておりまして、大体農林省でございますけれども、御要望の数字は私ども事務的に伺っておるわけでございます。
  93. 東海林稔

    ○東海林委員 そこで、これは専門部会なり審議会を開かなければはっきりしたことにはならないと思いますが、大体いまのところの予定では、審議会を開いて渡良瀬についての結論を出せる見通しは、どの時期というように見込んでおられますか、お伺いしたいと思います。
  94. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 いままで申しましたように、いままでに非常に時間がかかっておりますので、私どもとしてはできるだけ急ぎたいと思います。急ぎたいとは思いますが、これから専門部会の諸先生方の御意見が——実はなかなか専門部会といいましても利害の代表が実質的にはございます。でございますので、かりに農林省、通産省まとった案ができますならば、私どもといたしましては、その案で押し通すと申しますか、できるだけ関係省の納得された案で押し通すくらいの気持ちでおりますけれども、専門部会の審議の模様によっては、あるいは時日がかからないとも限りません。この点を明確に予測できないわけでありますが、できるだけ一、二カ月のうちには専門部会の審議が結論を得られるように私どもとしては努力したいと思っております。
  95. 東海林稔

    ○東海林委員 渡良瀬の問題は一応わかりましたが、それでは三十九年度中に新たにこの水質基準の設定のできるのは、いまのところ、何カ所ぐらいの見込みでございますか。
  96. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 実は三十八年度中に隅田川とか渡良瀬川とか石狩川とか、数本の河川を指定水域に指定して基準をきめるということに、段取りとしては考えておりました。それが三十九年度にずれ込みまして、この数河川は三十九年度のできるだけ早いうちにきめたいと考えております。それからさらに、過去に調査しました河川のうち、いま申し上げたような手続を踏みまして、さらに数河川は三十九年度中に指定に持っていけるもの、さように考えております。
  97. 東海林稔

    ○東海林委員 全国でいま水質基準の設定をしなければならぬ河川は、みんなでどのくらいあるのでございますか。
  98. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 公共水域の水質保全法で、調査河川というのを一応指定しております。それは全国で百二十一ございます。そのうち大体三分の一でございますが、三十八、九年度までに調査をして指定水域にするという一応の段取りを考えておったわけでございます。全国で百二十一のうち三、四十の河川につきましては、三十八年度くらいに調査を完了するということで、一応の調査計画はできて、大体毎年七、八本ずつの河川について調査をやっております。それからいま申し上げたような水質基準の設定自体は、過去におきまして四水域しかやっておりません。三十九年度中もせいぜい十水域くらいになると思いますけれども、この調査が進み、審議会もだんだんと——むずかしい川を先にやっておりますので、数の点では非常に少ない成績しかあがっておりませんが、今後は毎年度に指定の数というものはもっとふやしていけるものと考えております。
  99. 東海林稔

    ○東海林委員 むずかしいほうから始めたと言われますけれども、四年間に四本ですから、年に一本ですね。三十九年度を伺うと、数河川をやりたいという程度ですね。これでは百幾らというようなものをやるには、ほんとうに百年かかる。もっとも簡単なものになれば早いということだろうと思うのですが、これではせっかく法律をつくった意義が非常に薄れると私は思うのです。非常にむずかしい、むずかしいという話がありまして、私もある程度わかるのですが、しかし、そういうことだけでは済まないと思いますので、ひとつ関係各省が十分連絡しまして、すみやかにこの設定のできるように御努力を願いたい。なお、設定しただけではなしに、さらにそれが守られるように十分な指導をお願いしたいと思うわけです。特に農林省は、先ほど失礼なことを言うたようですが、従来はこの問題について非常に消極的であったというような感じを私は抱いておるわけですが、そういうことではなしに、経済企画庁と十分連絡をとって、積極的にこの問題の推進に当たっていただきたい、このように考えるわけですが、その点、政務次官のお考えを承りたいと思います。
  100. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 御説ごもっともと存じますので、今後は御注意のありましたように、積極的な態度で臨ましていただきたいと思います。
  101. 東海林稔

    ○東海林委員 それでは最後にもう一つ、これは政務次官にお伺いします。  ここ数年来、日本の食糧は大体十分なんだというような間違った考え方であったようでございまして、政府当局においても、水田開発とか稲作の改良ということについては比較的消極的であったように思うわけです。土地改良法の中においても、どうも水田開発予算というものがなかなか増額しにくいような状態であったのじゃないかと私は思っているわけです。一つの例は、昨年から始めたビニール水田を二十五町歩ばかり試験的にやったが、非常に成績がいいので、私どもの地方でも、これの希望を持っている者が相当多いです。特に私は、軽鬆地とかあるいは海岸の砂地帯開拓地の不振地区における営農改善というような点から見ても、このビニール水田なんかはなかなかいい施設ではないかと思うわけですが、ことしの予算編成の過程を伺いますと、第一次査定ではこれが全部落とされて、復活でようやく何とかなったという点で、どうも事水田とか米とかいうことになると、予算面でも非常にこれが軽視されるというか、そんなことにあまり力を入れなくてもいいのだという感じがここ数年来あったのじゃないかと思うのです。ところが最近は、御承知のように、米の問題はだいぶ逼迫いたしているわけです。わが党の石田議員が本会議で緊急質問をしようと申し込んでいるのですけれども、あまりそういうことを表向きやられると、さらに米の心配が出てきて困るだろうというような御配慮もあるだろうと思いますが、なかなか質問もお受けにならぬというようなことであります。私どもは、これはやはり非常に重要な問題だと思うのでありまして、今後土地改良法に基づいて土地改良をやっていく上において、そういう点を重視しなければならない、このように思うわけですが、きょうは大臣がおりませんので、政務次官からひとつ、そういう点の御見解を明らかにしていただきたいと思います。
  102. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 米作と申しますか、米をつくるということについて、決して軽視をしたり、また十分足りるなんという考え方をしておったのでもございませんが、しかし一面、御指摘のありましたように、米作ということについてどうも軽く見たような向きもないとは——そういう面も一応認めなくちゃならぬかとも思います。しかし、特に水田土地改良事業についての御意見でございますが、米作における生産性の向上につとめることはもちろんでございますが、引き続き、その生産の維持、増産に資するつもりで、大いに今後力を入れてまいりたい、こう考えております。
  103. 東海林稔

    ○東海林委員 それでは、大臣に対する質問が二、三点残っておりますが、それは後日に譲りまして、きょうはこれで終わります。
  104. 高見三郎

    高見委員長 次会は明二十二日午前十時から開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時三十七分散会