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丹羽(雅)政府委員 実は、本委員会の前々回でございましたか、石田宥全先生から、各地の
土地改良におきまして、地元の納得なしに行なわれたために非常に紛糾を起こしている、ああいう事態を起こすなという御注意がございました。私どももここ数年前からこのことには非常に気を使っておるわけであります。そこで、過去におきましては、先生も御
承知のように、法律はどうあろうと、実態としては、国なり県が非常にイニシアチブをとりまして、ぐんぐん地元を引っぱっていって
事業をやった。それが必ずしも地元のほんとうの
意味の納得の上にできておらなかったというのが、その後の事態におきましていろいろ紛争を起こしている。そこで、この前もお答え申し上げたとおり、あくまでこの
土地改良事業というのは、究極に農家のたんぼなり畑にからまる仕事であるから、農民の下からの力によって行なわれるべきである。それを厳正に
土地改良法は数年前から全国で実行いたすように心がけておりますという趣旨のことを申し上げました。問題は、その際に、いずれにしろ
土地改良事業でございますから、最終的に農民の方々の三分の二、実行面ではもっと高くいたしておりますが、同意なしに仕事をやるということは絶対にあってはならないと私ども考えます。申請による
土地改良事業というのは、先生御
承知のとおり、十五人以上の者が発起人になって、まずみんなに呼びかけて、三分の二で同意をとって、国なり県にやってくださいと頼む法制に相なっております。そこで、この法制を厳重に守れば守るほど、あるいは国、県がやたらに引っぱっていくということを押えれば押えるほど、一種の先覚者といいますか、そういう者は、不幸にして発起人のない地区においては出てまいらない。法制上は少なくともそうなるわけであります。そこで、出てこないものはしかたがないという立場で考えるかどうかという問題にもなるわけでございますが、出てこないのはしかたがないとすわっているだけでなく、今度は逆に国なり県の立場で、あの地区はやはり思い切って
排水したらいいのだ、確かにいいはずだ、そういう判断がもしかりに県なり国の立場からできますならば、これはひとつ上から下へ呼びかけてもいいじゃないか。その場合に、上からがりがりやることは問題でございますから、上で
計画をつくってお示しして、三分の二の方の同意を一挙に求めていく。発起人が出なくても上から求めていく。そうして、なるほどそういう
計画ならよかろうではないかということで、その地区の三分の二以上の方々の同意で動き出すならば、それもあってしかるべきである。両々相まってしかるべきであろう。要は、その
関係の方々の三分の二以上の同意というものを、法の命ずるとおり厳正にとってまいる、そして地についた形において
土地改良事業を行なうということが確保できますれば一番理想ではなかろうか。ただ発起人が出て呼びかける場合だけ
土地改良事業は行なうのだということも、あまりにも消極的にすぎないか。ことに
長期計画等で、ある
程度の意欲を持って
計画的にやっていこうとすれば、出てこない地区につきましても、国、県の立場で
計画をつくってお示しして呼びかけていく、この道を開いていく必要があろう。最近におきまして、先生御
承知のとおり、
事業が非常に高度化いたしまして、水源等も相当遠くに求めるというような実態が出てまいりましたので、実際問題として、地元の方々の着想と発意で大きな
事業がまとまるというのも、なかなかむずかしい面が出てまいっております。非常に雄大な、雄渾な
計画は、やはり国、県が立てておはかりするという道も、もう一方の交通路としてあってよかろう。心すべきことは、その三分の二の同意が上からの押しつけになってはならない、その点は重々注意して運用に当たりたい。法制的にも、その点は県知事、市町村長に十分配慮しておるつもりであります。