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1964-03-26 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十六日(木曜日)     午前十時五十九分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    大石 武一君       加藤 精三君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       舘林三喜男君    内藤  隆君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤田 義光君    松田 鐵藏君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       川俣 清音君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    野口 忠夫君       松浦 定義君    湯山  勇君       稲富 稜人君    玉置 一徳君       林  百郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局長)   崎谷 武男君         総理府技官         (科学技術庁資         源局長)    橘  恭一君         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   青鹿 明司君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      丸山 文雄君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      森田  進君         運輸事務官         (気象庁総務部         企画課長)   大見 和雄君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月二十六日  委員大石武一君、栗林三郎君及び中村時雄君辞  任につき、その補欠として三田村武夫君、川俣  清音君及び玉置一徳君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員川俣清音君及び玉置一徳君辞任につき、そ  の補欠として栗林三郎君及び中村時雄君が議長  の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四六号)  林業信用基金法の一部を改正する法律案内閣  提出第八五号)(参議院送付)  酪農振興対策等に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  いずれも内閣提出にかかる保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案及び林業信用基金法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告があります。これを許します。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 昨日に続いて質疑を行ないたいと思いますが、基金に対する出資額が、地方公共団体あるいは民間林業者等が当初予定した出資額を大幅に上回っておるという現実は、これは一体何に基因するかということを明らかにしてもらいたいと思うわけです。結局、債務保証対象が、林業関係の主として中小零細企業に向けられておるということである限り、現在林業関係中小零細企業経営が自然に苦しくなって、相当借り入れ金に依存しなければならぬ、そうして信用を裏づけするための基金債務保証に依存するという、そういうあらわれが、結局は基金出資して、債務保証してもらう裏づけを行なうということに、これは当然なると思うわけでございます。ですから、単に出資がふえたからということで喜ぶべきことではないと思います。  そこで、お尋ねしたいのは、最近における林業関係関連中小産業というものは、どういうような経営実態に置かれておるか、要点だけでいいです。その点を述べていただきたいと思います。
  4. 田中重五

    田中(重)政府委員 中小企業一般経営が苦しいということ自体は、これはお説のとおりであろうと思います。また木材製造業におきましても、その点につきましては同様であろうと存じます。中小企業としての木材製造業は、もともといわゆる中小企業としての通常のたてまえで申しますと、一千万円以下、三百人以下というようなことでありますだけに、その受信力も弱いということはございます。  まず、木材製造業実態と申しますと、これは先般の委員会でも申し上げましたように、製材資材として入手すべき原木が高い。それから一方、その高い原木を入手して製造した製材品は安い。いわゆる原木高製品安ということに苦しんでおるということを、一つ実態として申し上げることができると思います。これはやはり中小企業としての木材製造業過当競争過剰馬力、それがやはり一つの大きな原因でございます。  そこで、このような企業の形態をそれぞれ適切な助成をもって改善をしていかなければならぬ必要があると考えられるのでございまして、この点は、やはり今後提案をいたしたいと考えております林業基本法の重要な対策一環になるかと存じます。ところで、この林業信用基金への依存度が高いということ自体は、中小企業としての木材製造業の窮迫を物語っておるわけであります。しかし、これをお説のような中小企業保護対策一環というふうにすぐ結びつけて考えるのはいかがかと存じます。もともと、中小企業自体受信力が弱い。そのような階層を対象として、基金を造成することによって、保証つき融資考える。結局は林業経営改善というところに主眼があるわけでございます。林業経営改善というところに主眼があるからこそ、昨日のお話にもありましたように、国有林野事業特別会計余剰金をもってその資金の一部に充てるというような措置をしたことでございます。中小企業実態という御質問については、そんな見解をとっております。   〔委員長退席小山(長)委員長代理着席
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは林業関係中小企業は窮迫しておらないというのですね。経営が困難におちいっておらないという判断に立っておるわけですか。
  6. 田中重五

    田中(重)政府委員 経営が困難におちいっておらないと断定をいたすわけではございませんけれども、基金出資自体は、いま申し上げましたようなところに置かれている、こういうふうに思います。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 私は、中小企業実態が現在どうなっているかということを尋ねておるのです。
  8. 田中重五

    田中(重)政府委員 中小企業全般実態としては、やはり中小企業全般が当面しておる、経営のいろいろな理由によるところの困難性というものは、木材製造業といえどもやはり同じような状態でありますということは言わざるを得ません。こう考えるわけであります。この木材製造業に対する考え方としては、いま申し上げたような考え方である、こう申し上げておるわけであります。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 別に基金に無理に結びつけて答弁しなくてもいいのです。現在木材関係中小企業の現況は、一般中小企業の中においても特に困難性を露呈しておるわけですね。これはあらゆる観測から見ても、そういうことになっておる。資本力の面においても、経営後進性の面においても、たとえば木材関係従業員賃金水準の点から見ても、あらゆる面から見て、これでいいという点は一つもないと思うのです。そういうことになると、中小企業全体の置かれた立場の中においても、特に木材関係林業関係中小企業というものは、非常に経営が困難である。このまま放置しておいた場合においては、非常に困難な事態に当面するということは、これはもう判断されておるところであります。そういうふうな考えを持っておらないですか、長官としては。
  10. 田中重五

    田中(重)政府委員 中小企業としての木材製造業実態がどうかという点を、ほかとの比較において御質問であるというふうに考えますと、木材製造業の場合は、何といいましても製材でございますから、加工度が低い、それだけに利潤も少ない、またそれだけに過当競争が行なわれておるというようなことになっております。しかも、その製材品コストの中に、高いといわれる原木代の比率が七、八割も占めるというようなことでありますから、そこで原木調達、そのためのコスト、そういうものが製材業の成績に重大に影響してくるという実態は、木材製造業の特徴として言えるかと存じます。そういう意味合いからいいまして、この原木調達という点に特にこの基金が協力をすることによって、その経営改善をはかっていくという考え方に立っているわけでございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 最近の中小企業の場合は、たとえば賃金関係からいうと、中小企業賃金水準が過去に比べて相当上昇線をたどっておるわけです。ところが、林業関係企業においては、賃金水準はそれほど上昇しておらぬという事実があるわけです。そうでしょう。そこで、一体製材工場の平均的な賃金水準はどのくらいですか。
  12. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、後刻資料で御提出を申し上げたいと思っております。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 長官として、およそどのくらいと考えておられますか。やや正確なところを……。
  14. 田中重五

    田中(重)政府委員 製材工場規模に応じまして非常に多様でございますが、そういう規模別に調査してございますので、それを後ほど提出をいたしたいと考えております。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 全然わからぬでも困るじゃないですか。長官がわからなければ、だれか担当の部長でもいいのですが、現在の木材関係中小企業実態がどうかという場合に、それを打診する場合には、やはり企業内における従業員賃金状態がどうなっておるかということが、大きな判断の材料になると思うのです。
  16. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は、重ねて申し上げますけれども、後ほど資料で御報告したいと思っております。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、先ほど長官から、経営困難な原因一つとして、原木高製品安が災いしておるという話がありましたが、一体林野庁長官として、現在処理されておる原木等原料高だ、高過ぎるという判断に立っておるのですか。
  18. 田中重五

    田中(重)政府委員 原木高先ほど来申しておりますのは、製材価格に比べて原木高だというふうに申し上げておるわけであります。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、中小企業を安定の方向に向けるためには、現在よりも原木価格原料費というものを軽減してやらなければ、企業の安定ができないということになるわけで、これは重大な点だと思うのです。
  20. 田中重五

    田中(重)政府委員 現在の製材品は、内地原木に依存するところの製材品と、それから外材の輸入によるところの製材品、それがそれぞれ交流しておるわけでございます。それで、内地原木資材として製材事業を行なっておりますのは、おもに内陸の製材業者であります。そういう工場において生産される製材価格と、その入手される原木価格との比較先ほど来申しておるわけであります。  そこで、その原木高状態を解消していくためには、やはり原木供給の面の改善をはかっていく必要がある。これが先ほども申し上げました林業基本対策の重要な一環でございまして、日本林業全体の総生産を高めていくことで木材需要にこたえていくために、その改善をはかっていくのが大きなねらいであります。  それから一方、製材価格につきましては、それぞれの製材工場の適正な利潤で販売のできるような価格、そういうもので安定をさせていく必要がある、こう考えておるわけでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 結局、原木高ということを強調されて、それでは原木価格を引き下げる必要があるのではないかという議論に発展するわけですね。そういう場合、たとえば国有林野立場から判断した場合に、昨日も指摘した点でありますが、原木供給事業から見て、製品安だからそれに見合って原木価格を下げるというようなことはでき得るのですか。一体生産原価とかそういう合理的なコストというものを全く度外視して、製品市場価格が安いから、逆算して原木価格を下げれば中小企業が安定する、そういう判断の上に立った場合に、はたして適正な林野事業運営というものができるかどうか。あるいは一般民有林等にしても、結局これは原木供給生産者立場にあるわけですね。それが製品市場価格から逆算して、原木の値段を下げるということになった場合に、一体生産者としての林業者経営とか所得の状態がどうなるかということは、これはやはり一番大きな問題として先に考えなければならぬ点だと思います。そういうような点についてはどういう判断でいくわけですか。一般業界からは、原木高製品安という声が常に起きておるわけでありますが、それをうのみにして行政を進めるということになると、非常に国民に迷惑をかけるということに、林野行政立場から見ると、なると思うのであります。問題の本質は、一体国有林野事業とか林政の中において、今日困窮しておる中小企業というものをあくまでも保護していかなければならないかどうかということにもなると思います。
  22. 田中重五

    田中(重)政府委員 原木価格につきましては、これは原木取引市場価格というものがございます。原木としての取引価格というものがそれぞれの取引市場で成立しておるということでございますから、そこで、製材価格から逆算をした原木取引価格がきまってくるということには相ならない、そういうふうに考える次第でございます。そこで、原木高製品安ということば先ほど来申しておりますのは、それはまさに木材製造業あり方と、それから日本林業におきます木材生産供給力の低さ、そういうものからそのような事態が出てまいっておる、こう考えていいと思うわけでありますが、そのような事態に対しては、過当競争のような状態改善をはかり、一方原木供給の面におきましては、総生産を高めていくことによって供給力をふやす、そうしてできる限り需要に均衡するような供給力を培養していきたい、こういうことでございます。その中で国有林役割りにつきましては、国有林が総供給の中で一定の割合を占めて供給をいたしておるのでございますが、その供給状態をできる限り持続的、安定的に、しかも供給増加方向でそれが行なわれるように、国有林野事業生産能力を培養してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 もう一点。結局、中小企業経営困難性というのは、過当競争からも生じておるわけですね。ですから、これをそのまま放置しておくというわけにはいかぬわけです。  それからもう一つは、原木供給源を拡大するといっても、それは簡単にできないことですね。乱我、過伐をやれば、これは一時的に供給力は強いかもしらぬが、長期的にいうと、これは非常なマイナスになるわけでございます。そうなりますと、当然、全く零細な数多い現在の企業体というものをある程度近代化する態勢に持っていく必要があると思うわけです。そういう点については、一体林野庁として指導してやるのか、あるいは通産省の本来の行政責任として行なうものであるのか、どういう判断をなされておりますか。あくまでもそれは木材関係のある企業だから、最後までこれをしょい込んでいかなければならぬという考えの上に立っておるか、その点はどうですか。
  24. 田中重五

    田中(重)政府委員 中小企業としての木材製造業でございますから、言うまでもなく、通産省の所管の範囲でもございます。それで、一応林野庁といたしましては、いままでのあり方からいいましても、原木供給の面で、それが安定した価格あるいは量において供給されていく、あるいは製品の販路を広げていく、そういうような面での行政指導分野がございます。一方通産省といたしましては、これは中小企業一般という面から見ました場合の、特に金融、税制その他の面での助成分野があろうかと存じます。それぞれ両々相待って、国有林の育成をはかっていこう、こういうことに相なると思います。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 たとえば現在の零細な設備であっても、過剰設備というような傾向になるわけですね。ですから、それを正常な形に直すということになれば、あるいは零細な企業整備とか統合とか共同化とか、そういう方向は当然不可避的にとらなければならぬと思うのです。そういう場合に、それらの企業整備とか統合とか共同化方向に対して、これはあくまでも自主的にやる筋合いのものではあるが、そこまで林野庁として踏み込んで問題の解決に当たるつもりであるか。あくまでも国有林というのは、資源の造成と原料供給任務が大きいわけですからして、その分野をどこに区切りをつけるか、こういう点は将来起きてくる非常に重要な点だと思うのです。その点はいかがですか。
  26. 田中重五

    田中(重)政府委員 その問題につきましては、結局結論的には、林野庁といいますか、農林省と、それから通産省のいわば共管というような形で、相互が密接に行政の面で相連繋しながら進めていく必要がある、こういうふうに考えますし、それからいまおことばの中の国有林というお話がございましたが、国有林は、そういうような一般林業政策の中における一つ役割りを果たすという意味において、総生産の増大、そうしてその供給持続的拡大という面を担当するということに相なるかと思います。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 基金法でもう一点ですが、今回の改正は、追加出資の場合には予算の範囲内でこれを行なうという改正でありますが、これは政務次官にお尋ねしますが、今国会においては、政府出資公団公庫事業団等については、との追加出資の条項と、もう一つは、監事規定強化についての改正が出されたわけです。先般も、公庫法改正の場合には、監事権限強化については一部修正したわけでありますが、この基金の場合には、公団公庫等とは幾ぶん性格は違いますけれども、しかし、その運営実態というものは、政府出資というものが中心になって行なわれるわけですからして、政府としては一斉に各公団公庫公社事業団等監事規定強化を意図されたわけでありますが、基金の場合は、この監事規定をさらに強化するというような改正の必要は感じておらないのかどうか。これは政務次官から明らかにしてもらいたい。
  28. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいまのお尋ねでございまするが、一応政府出資するのでございますから、そういう考え方も今後において考えていくときに生じてくるかと存じます。しかし、現在の段階におきましては、御案内のように、監事に関する規定を設けるように行政管理庁から勧告が行なわれましたのは、現に行政管理庁の監察の対象となっており、事業性格上、公益性の最も強い公社公団とか、あるいは公庫とか事業団について、行政管理庁からただいまお説がありましたような御指摘があり、勧告があったのでありまして、基金に対しましては、その勧告対象になっていないのであります。といって、対象になっていないというだけでは考えられません。基金は、御案内のように、公社公団等通常全額に近いものが政府出資の法人であるのに対しまして、都道府県の出資だとか民間出資が相当にのぼっておりまして、その業務内容も、金融機関融資についての債務保証にとどまっておるのでありますから、公社公団等事業内容と比べましては、相当相違があるようであります。  次に、もう一つ理由は、基金債務保証の実施については、出資者意見を反映するために、諮問機関としての評議員会基金法の第二十七条、第二十八条に定められておりますのと、さらに出資団体代表者よりなるところの非常勤理事制度が同法の第十七条二項によって設けられております。ただいま申し上げましたこれらの制度の活用によりまして、業務の円滑な運営は十分できると考えますので、現在のところ、監査制度を設ける必要を感じておりませんので、その点を明らかに申し上げておきたいと思います。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、行政管理庁から勧告があれば設けるようにするわけですか。
  30. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま私が申し上げましたように、今回の行政管理庁からの勧告は、さきに申し上げたような公団公社事業団公庫というようなものが中心勧告されたのでありまして、基金は指摘される対象外になっておるということも一つの事実でございますが、ただそれだけではなくして、あとで申し述べました二点、これによって監査制度を設ける必要はない、こう考えておるのでございます。ただ行政管理庁から勧告があればやるという考え方は全然しておりません。さよう御承知願います。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは勧告が出た場合でもやらぬということですね。そういう必要はないということでがんばるのですね。
  32. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 現在の政府考え方といたしましては、行政管理庁から勧告がございましても、ただいま申し述べましたあとの二つの理由、つまり、いわゆる公社公団等事業内容が違いますのと、出資内容等も全然違っております。と同時に、評議員制度もありますし、非常勤理事制度というものもございますので、十分民意の反映された運営ができていくと確信しておりますから、勧告がございましても、それを受けるつもりはないわけであります。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは監事は要らぬということですね。
  34. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 監事は、法第十八条に基金業務監査するということが定められておりまして、業務監査する使命をになっておりますので、決して必要がないとは思いません。ただ、私の聞き違いかと思いますし、あまりにも想像し過ぎた答弁になったかと存じますが、今回行政管理庁が指摘しておりますようなやり方ですか、監事動き方の必要はない、こういうことでございます。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 だから、要らぬと同じじゃないですか。たとえば評議員会があるとか、これは出資者から選ばれて出ておるとか、非常勤理事が何人かおるからそれでだいじょうぶだと言いますが、これらの丹羽さんの言われた機関は、いずれも業務執行者の側じゃないですか。監事というのはそうじゃないでしょう。業務監査するということが第十八条の第三項に明らかになっているわけですが、監事にはやはり固有任務というものがあるわけですね。しかも、理事長監事農林大臣任命ということになっている。理事理事長任命ということになっている。だから、あなたのお説を聞くと、理事長もしっかりしておるし、非常勤理事もまじめにやっておるし、出資者から選ばれた評議員というものがあるから、絶対に心配がない、監事なんか要らぬということになると思うのですね。私たちの問題にしているのは、公庫法改正の場合にも、ことさらに監事権限として、監事監査の結果、必要と認めた場合は総裁または主務大臣意見を述べることができるというようなことをわざわざ法律改正の中でうたう必要はないではないか、それらのことは、当然監事固有任務であり、行なうべき責任の事柄であるので、ああいうものをわざわざ法律につけ足したところで、そういうものがなくても従来からやれることなんだから、必要はないじゃないかというのがわれわれの主張だったのです。ただ、主務大臣意見を述べる場合にも、総裁を経由しなければならぬというのが、政府改正案でできたので、それは国会の審議において削除したのですね。だから、私の言うのは、監事規定というのは、「業務監査する。」というふうに簡単に述べられておるが、しかし、それはことさらに条文上権限強化をうたわなくても、監事業務監査した結果は、これは理事長に対して強力な意見を述べる必要があると感じたり、あるいは主務大臣である農林大臣に対して監事から直接意見を具申する、こういうことは現行の規定においても十分やり得るから、改正の必要はないというのであれば、これは話はわかるですよ。行管勧告がないからやらぬとか、評議員がおるからやらなくてもいいということでは、これは主体的なあれにならぬじゃないですか。だから、ここはどう考えておるのですか。現在の規定で十分である、監事が適正な監査をして、業務運営中に問題があるとしたら、理事長にも当然意見を述べて指摘することができる、あるいは主務大臣に対して監事立場から具体的な意見を述べることができるのだから、改正の必要はない、そういうことであればわれわれは了解しますよ。
  36. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま芳賀委員から申されましたそのとおりの意見でございまして、公社だとか公団だとかと性格が明らかに違っておりますので、当然監事にそれだけの使命もあり、責任があるわけでございますから、あらためてここにそういうものを規定する必要はない、これでやっていけるわけでありまして、芳賀委員のお説のとおりでございます。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 そうであれば、あなた、そんなものを長々と読み上げる必要はなかったんじゃないですか。行政管理庁勧告がないからやらぬとか、非常勤理事が何人かいるからだいじょうぶだとか、評議員がいるからいいとか、そういうものは本質からはずれているのですよ。公社であっても、公団であっても、基金であっても、監事としての本来的な任務というものは変わりはないのですよ。かまどが小さいからたいしたことはやらぬでもいいとか、かまどが大きいから責任が重いとかいうんじゃないのですよ。責任とか任務というものは、その事業内容の大小にかかわるものではないと思うのですよ。ですから、こういう点は、丹羽さんが私の説に全く同感であるとすれば、これは別に追及する必要もないのですからして、その点を明らかにしておいてもらえばいいと思うのです。  次に、保安林整備の期限延長について、若干お尋ねしておきたいと思いますが、今回の改正を見ると、これは従来十カ年の時限であったのが、それが四月三十日に現行法の期限が終わるということになるわけでして、さらに十カ年間これを延長するというのが改正の趣旨でありまして、われわれは、これに何も反対するわけではないが、今後十年間延長するということであれば、今後のわが国の森林の中における保安林の整備あるいは拡大というものに対して、やはり十カ年の長期的な計画というものが明らかにされなければならぬわけであります。しかも、今度の改正の趣旨を聞きますと、これは従来の国土保全を十分にやっていくということはもちろんでありますが、もう一つは、国民経済の発展に伴って、特に水資源の開発、確保をはかるために、保安林の拡大が必要であるということが、この改正の新たなる趣旨に加えられておるわけです。そういうことになると、従来も水源涵養等の大きな目的で保安林というものは設定されておったのでありますが、さらに積極的に水資源の確保とか開発ということになれば、従来よりも相当具体的に、積極的に保安林の事業というものを展開していかなければならぬということになるわけであります。それであるならば、今後この十カ年の将来に向かって、具体的にどういうふうな施策を進めていくかということを、この際明確にしてもらいたいと思うわけです。
  38. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林整備臨時措置法の一部を改正する趣旨といたしましては、いまお説の、この法律の附則第二項の「十年」を「二十年」にするという一点でございます。それで、今回この改正を必要と認めました理由につきましても、いまお説の中にございました、今後水の急激な需要増大に対処いたしまして、水源涵養保安林を中心に保安林の整備をはかりたい、しかも、この水需要の要請がきわめて緊急であるだけに、ここに十年という期間を限定して、この期間のうちにその整備をはかりたいということでございますが、そこで、その内容といたしましては、現在の保安林整備臨時措置法にございます保安林整備計画、これをそのような趣旨に基づきまして整備をはかっていきたいということになります。  その内容として、まず、保安林の指定、解除の問題、それから保安林内の森林施業の問題、それから保安施設事業の適正実施の問題、さらには保安林の管理の適正、その次に国によるところの買い上げ、それの計画、そういうものが内容になるわけでございまして、三十九年度におきましては、その十カ年計画の内容を策定するための予算を要求しておるわけでございます。それで、その保安林整備計画を樹立する事業を本年度行ないまして、それによってその内容を具体的かつ明確にいたしたい、こう考えている次第でございます。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 それでは、この十カ年計画というものは最近策定される見込みなんですか。
  40. 田中重五

    田中(重)政府委員 法律改正に基づきます十カ年計画は、昭和三十九年中には樹立を終わりたい、こう考えております。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 従来まで、三十八年度末までの保安林面積は、国有林が百九十四万三千二百二十三町歩、民有林が二百二十三万九千五百三十五町歩、合計四百十八万二千七百五十八町歩ということになっておるわけですが、この中で問題になる点は、この保安林整備臨時措置法に基づいて民有林の指定保安林を買い上げるというような業務が相当な比重を占めておるわけですが、これが十カ年間で五百六十六件、十九万九千七百五十四町歩ということになっておるが、これは当初計画はどういうことになっているのか。
  42. 田中重五

    田中(重)政府委員 現在の保安林整備臨時措置法に基づく保安林整備計画、その中で計画をいたしました予定は五十万町歩でございます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 そうすると、五十万町歩の計画に対して約二十万町歩ということになるわけですからして、計画に対して大体四〇%程度の達成率ということにしかならぬと思うわけです。今後また十カ年間この制度を延長したとしても、特にこの買い上げ措置のような場合には、従来の実績が計画に対して四〇%程度であるとするならば、今後はどのような計画を立てるわけですか。過去の実績に近いようなそういう計画を立てるとすれば、十年たってもそうこれは伸びないと思うのです。やはりこういう点に対して具体的にどう対処するかということは、当初から明らかにしておく必要があると思うのです。
  44. 田中重五

    田中(重)政府委員 ただいま申し上げましたように、計画が五十万町歩でございましたが、三十八年度末においてほぼ二十万町歩、四〇%の達成率、こういうことになります。それで、この現在の成績がこういうような状態でございましたのは、やはりその買い上げ対象の地域が、たとえば共有地であって、その権利関係整備されていない、あるいは第三者の権利関係が介入をしておる、あるいは境界が錯綜いたしておる、そういうような理由で、対象地として考えながら、所有権の移転というような面で問題があったということもございますし、また一方、近年の木材価格の高騰というようなことから、その価格についての相互の話し合いがなかなかつかなかったというようなこともございます。さらには、この買い上げにつきまして、従来とも文書、しおりあるいは短波放送その他、その趣旨の徹底をはかるための手段をいろいろ講じてはまいりましたけれども、その点もなおまだ十分であったとも言いかねる面もございます。そこで、今度新しい計画に基づきました場合、この計画の中で一応の目標といたしましては、二十五万町歩を考えております。十カ年に、二十五万町歩のうち、ほぼ八万町歩は国有林との交換で進めてまいります。したがって、十七万町歩はこれを買い入れていきたい、こういう考え方でございます。その場合に、現在の買い入れ計画を、さらに今度の改正の趣旨であるところの水資源の確保、水源涵養保安林の培養を中心としていくという観点に立ちまして、そういう面から再検討をいたしまして、その計画を進めたい、こういう考え方でございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 結局、現在四百二十万町歩の保安林があるわけです。ですから買い上げ措置はその五%程度にすぎないわけですね。そういうことであるならば、買い上げということにあまり重点を置かないで、その指定を受けた民有の所有者の希望等があった場合には、これは当然買い上げてやる必要があると思いますが、あまり無理に買い上げる必要はないのじゃないかと思うのです。これは、保安林の諸般の法律上の根拠というのは、森林法の規定によるわけでありますが、国有林の中の保安林を設定することは自由にできるわけでありますが、民有林等についても、判断して必要と認めた場合には、農林大臣の指定とか、また地元関係者が関係都道府県の知事を経由して指定の申請をやるとか、そういう道が明らかになっておるわけですから、今後十カ年計画を進める場合には、やはり積極的に国土保全とか国民経済の発展のためにという、そういう公共的な立場から、相当強力に、必要な保安林の指定とか確保というものはやれると思うのです。そういうことで進めなければ、これからの拡大はなかなか困難じゃないかというふうに考えるわけです。  もう一つ、交換の問題でありますが、これは指定保安林と国有林との交換の場合においても、指定した民有の保安林の対価と国有林の価額との間に二分の一、いわゆる倍額範囲においては交換がなされるということになっておるが、これは従来の業務の経験上妥当な交換の限界であるかどうか、その点はどう考えていますか。たとえば、ヘクタール三十万円の価値があるという場合に、現在の規定は、倍額の価値までは交換できるということになれば、国有林の六十万円の価のものと指定した民有林の三十万円のものと交換ができるということなんでしょう。交換の対価上の措置というものに対して、経験上どういうような考えをお持ちでしょうか。
  46. 田中重五

    田中(重)政府委員 まず、御質問の第一点でございますが、現行の法律にも強制買い上げの条項がございます。しかしながら、いままでの実績でいきますと、その条項を適用しての買い上げというものは一件もないのでございまして、すべて話し合いによるところの買い上げということでございます。確かにお説のとおりに、森林法の整備もございますし、山林所有者の良識の発達といいますか、この保安林についての制限の順守あるいは義務の履行、そういう点についても考え方は進んでまいっております。ですから、そういう面では、保安林の指定によって、あるいはもろもろの保安林に対する要請がございますが、そういう面の強化によってその保安林の機能が十分に発揮されるように、その機能に即して保安林が価値を発揮するように指導をいたしてまいるのが順序だと思います。なおまた、重要流域におきます上流地域におきましては、やはり民有にまかせておいたのではなかなか保安効果が期しがたい、保安施設事業その他の事業はあるにいたしましても、そこの管理の適正、そういう面につきましても、やはり国でこれを所有をいたしまして、国が管理をしてまいるという必要性を考えなければならない場所があるわけでございます。そういう部分については国が担当する、こういう考え方でございます。  それから第二の交換の問題でございますが、お説のとおりに、普通国有財産と民有の財産との交換は、差額が高いものの四分の一以内ということになっておるのでございます。それに対して、保安林整備臨時措置法では特例が認められまして、農民等の共用しておる農用地その他については、二分の一までは認めるということがあるわけでございます。いままではこれに基づいた交換の実例はございませんが、その必要性があるとすれば、今後の仕事を進めていく上においてあるいはそういうことが出てくるかもしれません。その前に、これが二分の一になっておるというのは、保安林の重要性を認めて、交換しやすいようにということになっておるわけでございます。高いとかどうとかいう問題ではない、こう考えておる次第でございます。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 現在の保安林の種類は、水源涵養林から始まって、風致保安林まで十一種類に分かれておるわけですが、特に今回の延長が水源涵養を中心として行なうということであれば、たとえばこの保安林の種類の中の水害防備保安林であるとか、干害防備保安林とか、これらは、下流にダムが設置されておるような場合、当然ダムの上流地点の水害とか、あるいは干害によってダムの保水量が平常どおり確保できないというような事態がしばしば起きるわけで、いずれも保安林ですから、重要度に変わりはないとは言えるわけですが、特に重点的に水資源の開発、確保ということになれば、水源涵養とあわせて、水害防備林とかあるいは干害防備林等についても、重点的な計画を進める必要があると思いますが、これらの十一種にわたる保安林等については、どういうような重点的な配慮で今後計画を進めていく考えであるのか。   〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林は、それぞれ指定の目的に即して機能するように進められているわけでございますから、水害防備林あるいはその他防雪保安林、そういうのもそれぞれ重要でございます。ただ、やはりその地域の産業、経済あるいは住民の生活安定の基盤として最も重要であるのは、水源涵養保安林あるいは土砂流出、崩壊防備林、こういう保安林が最も虚妄性を持っておりますだけに、現行の保安林整備臨時措置法におきましても、保安林整備計画はこれを中心に立てるということにいたしておるのでございます。以下十数種類の保安林につきましても、申すまでもなく、それぞれ必要な管理の措置行政上とっておるということでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、手続上の問題ですが、申請によって保安林の指定を受ける場合に、必ず関係都道府県の知事を経由しなければならぬということになっておるのは、一つ行政的な経路ではあると思うが、そういう点に障害がないわけではないと思うのです。たとえば地元関係者が、これは保安林に必要であるという判断で知事に申請を出しても、知事がこれを適当と認めない場合においては、農林大臣まで申請が回ってこないということになるわけでしょう。ですから、そういう経路も存在していいが、直接たとえば地元の営林局長を経由して長官にそれが進達されるとか、そういう経路があっても差しつかえないのではないかと思うのですが、そういう点についてはどう考えておられますか。
  50. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林の指定につきましては、いまお説のとおりに、その必要性を認めた地区の住民からの申請でやられるわけでございますが、そういう場合に、知事といたしましては、やはりその県民の生活の向上、福祉等に責任を持つはずでございますので、その地域の県知事の公正なもとになされる判断がやはり必要だ、そういうふうに存じます。また、そのような判断が下されるような指導を平素林野庁といたしましても進めてまいりたい、こういうように考えております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 これは具体的な問題もあるわけですが、たとえば地元の関係者が、公有林に対して、町有林とか市有林とかいう公有林の一部を必要上ぜひ保安林にしてもらいたいというような要請が強い場合であっても、公有林の場合はなかなか市町村が応諾しない場合もある。これは各地にそういう事例があると思います。ですから、これは相手方が了承して、関係者そろって申請しなければならぬということにはなっておるが、現地において、たとえば公有林が、当然それを応諾すべきにもかかわらず、なかなか協力しない、熱意を示さないというような場合に、行政的にどういう解決の方法があるのですか。
  52. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林が指定されるためには、一定の予告の期間を置いて、その利害関係人がその指定について意見を申し述べる、いわば公聴会と申しますか、そういう機会も設けられておりますので、少なくともその申請が出ました場合に、そこで知事が却下してしまうということには相ならない、こう考えております。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、指定の問題はまだ問題がありますが、この解除の場合に、ますます保安林の重要度が高まるということになれば、現在の指定保安林を解除するということは、従来よりもよほど慎重を期する必要があると思います。そうでないと、せっかく指定をしても、また制度上期限延長までやって、一方においては適宜に指定の解除が行なわれるということになると、全体的に見て、保安林の拡大とか高度の公共性を発揮するということは、なかなかできがたいと思うのでありますが、今後解除の取り扱い等については、十分慎重を期して、たとえば現地の調査等も直接行なって、はたしてこれが解除すべきものであるか、必要性のないものであるかという適正な判断は、ぜひ行なわなければならぬと思うわけです。こういう措置については、今後適正な判断をどういう形でやるつもりですか。
  54. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林の解除につきましては、これは確かに御説のとおり、十分に慎重を期さなければならない。ことに土地の高度利用ということで土地の開発が進んでまいりますと、それだけに保安林の機能というものはますます重要視されなければならない。したがって、この保安林の解除は、十分に慎重に進められなければならないと思います。それで、解除の方針といたしましては、保安林が目標となっておる場合に、他にかえ地がないのかどうか、必ずその土地が必要なのかどうか、その判断も必要でございます。それで、もしその土地を解除の上、何らかの用途に使うにしても、その保安林が解除されても災害の防除が期待できるだけの代替施設、そういうものをそこに設定するという条件が必要でございましょうし、そういう点をいろいろ考えまして、保安林の解除にあたっては、それぞれその重要度において分類をいたしまして、その地帯として最も重要な保安林はつとめて転用を避ける、もし避けられない場合は、いま申し上げましたような代替施設の強化をはかることによって、将来の災害に備えるということで進めてまいりたいと考えております。その点につきましては、すでに保安林を解除しなければならない場合の方針を昭和三十六年に林野庁から長官通達で出してもおります。保安林の整備、それからその機能の維持の適正を期しているということでございます。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 私が特に指摘しておるのは、最近たとえば農業構造改善事業等に名をかりて、安易な措置国有林の処分等が行なわれておるわけですね。これは戦後の食糧増産のための緊急開拓等についても、当時の事情からやむを得ない点もあるとしても、国有林の大幅な農地への開放等が十分の成果をあげてはいないわけですね。開拓行政は失敗したというのが各方面の一致した意見でありますが、その結果が、農耕不適地のようなそういう林野も、農耕地として所属がえをして開墾はやったが、そこにやはり農業の経営はできないということで、それが全く放置されて、また国有林へ所属がえで戻ってきたような事例もずいぶんあるわけです。ですから、保安林の整備の機能の重要性というものを感じて、今後そういう事業を拡大するとするならば、現在の国有林の高度利用とか処分等についても、十分その慎重を期する必要があると思うのです。これは単に長官林野庁の職員の皆さんだけが幾らがんばっても、自民党の権力のもとにおいて方向を曲げられればしょうがないとしても、やはりその担当者として、かくあらねばならぬという明確な方向というものは、随時随所において打ち出してもらいたいと思うわけです。それがその圧力に屈して全く無抵抗で、いや必要なところはどこでもお上げしますとか、あるいは政治的な判断とか、はなはだしい場合においては選挙の道具にこれを用いて、そうして国有林をあたかも私有物のような考えでこれを処理するような、そういう動きがあることは、これはまことに遺憾にたえないと思うのです。そういう点は、やはり国有林を守る立場にある長官はじめ皆さん方が、明確な態度で進んでもらわなければいけないと思うのです。一体、一方においては保安林を拡大する、一方においては国有林の無計画な開放をする、こういう動きが一致するのですか。丹羽さんはどう考えていますか。
  56. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 保安林解除の手続、また事務的に処理いたしておりますしかたにつきましては、長官から御答弁申し上げたようなわけでありますけれども、一面におきまして保安林をいろいろたくさんの意味をもって拡大していきたい、こういうときに、保安林を解除し、山を荒らすようなことは、これは大いに慎んでいかなければならないと思います。そこで、農業規模の拡大等、実際においてそれが農業の規模の拡大に使われていくということについては、これはどうしても考えていかなくちゃならぬことでございますが、御指摘のようなことで大事な国有財産、国有林が左右されないように、厳重に慎んでまいりたいと思っております。それと同時に、ただ国有林だけでなくして、民有地における保安地区もございますが、近ごろ保安林解除の申請がたいへん出てくるのです。いま長官が申し上げましたように、政府におきましても、解除すべきかどうかということを相当調査いたしまして、慎重に取り扱っておるはずであります。と同時に、いままでは県とかあるいは出先等の意見を書類上で聞いて、それでこれに手当をして必要やむを得ないものというようなことをやっておりましたけれども、今度、先日来は、地方、出先の意見を軽視するわけでも疑うわけでももちろんありませんが、もっと広く国の立場に立って、これを許可すべきかどうか、現場調査、実地調査をいたしまして、地方の具申と違いはないかということをやりまして、適切な処置をしておるのであります。芳賀先生からの御指摘にありましたことにつきましては、厳重にこちらも考えてまいりたいと思っております。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 いま申し上げたわが国の森林あるいは林業等の問題については、社会党としてはすでに森林基本法を用意して、実は政府林業基本法の早く出せるのを待っておるわけなのです。その際、政府案、社会党案を国会審議の場にのせて、十分根本的な論議を尽くさなければならぬと思いますけれども、ここで一つ明らかにしてもらいたい点は、農林省の次官通達あるいは林野庁長官の通達か明らかでありませんが、地方に対して、地方の国有林開放の動きについてはこれを刺激しないようにしろ、そういう問題について当局の態度を明らかにしないようにせよという、まことに消極的な、われわれとしては理解に苦しむような指令を流しておるというふうに承知しておるわけですが、それは一体どこから出されたのですか。
  58. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまお説のような趣旨の指示なり通達なりは出してはおりません。それで、近年の農業の発展に伴うところの農業構造改善事業のための必要な土地であって、たまたまその近傍に存在する国有林野で、これを農業用地に当てることが望ましいというふうに、その地域の住民、市町村、あるいは地方農政局、県等が考えました場合には、国有林野をその用に供することができるという方針につきましては、そのとおりに昨年の次官通達で出しているわけであります。そのような農業用地に国有林野を活用していくという方針につきましてはもまたその他中央森林審議会等の答申もございます。これはこれで農業の発展の段階に対応するものとして考えてまいりたい、こう考えている次第であります。考え方はそういうことでございまして、いわゆる開放論を刺激しないようにとか、あるいはそれに迎合するとか、そういうことは絶対にございません。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうのが断じてないとすれば、これはいいわけです。しかし、地方にまいりますと、そういう説も流布されておる。もし万一そういう指示が流れておるとすれば、これは結局運動する側から見れば、これはもう政府の態度が非常になまぬるいから、時間がたてばものになるんじゃないか、こういう安易感と期待感を与えることになると思うのです。ですから、これはきょう軽々とここで方針を打ち出せとは申しませんが、非常に重大な問題です。特に林野庁としては、歴代長官は、御承知のとおり、林野出身というか、技官の長官がずっと歴代林野の行政を担当してきておるわけですね。いわゆる事務官僚に渡さぬというかまえでいままではきておるわけですが、それだけに十分国の森林を守るという立場から、やはりこれは明らかな態度を示して、将来に悔いを残さぬようにしてもらいたいと思います。  基本的な問題については、いずれ十分機会を得て論議しなければならぬ問題ですが、私の言ったこの点については、そういう通達が出てないとすればいいですが、しかし、これは地方にそういう動きが相当あるわけです。ですから、十分これは注意を要する点ですからして、事務次官でも長官でもいいですが、地方においてのそういう無計画な、無方針な国有林開放の動き等については、厳正な態度で臨むべきである、むしろ、こういう地方を鞭撻するような指示を与える必要があると思いますが、これは丹羽政務次官として必要であるとお考えになりますか、どうですか。
  60. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 御意見のように、当然必要だと考えております。また、さような、先ほど御指摘のような書類は、出していないと申し上げております。ただ、農業の規模の拡大、構造改善等、真から農民福祉になり、農民のどの点から考えましても必要であり、国として措置をとっていくというようなこと等は、当然考えてまいりたいと思っております。当然国有財産の保護の考え方から、国有林の確保ということにつきましては、先生の御意見同感でございますから、十分考えていきたいと思っております。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 では、時間ですから、午前の分はこのくらいにして、あとを保留しておきます。
  62. 高見三郎

    高見委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十四分休憩      ————◇—————    午後四時二十九分開議
  63. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  64. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私は、午前の同僚委員質問に引き続きまして、ただいま審議中の保安林整備臨時措置法の一部改正並びに林業信用基金法の一部改正法律案に対し、質問いたしたいと思いますが、最初に、保安林整備臨時措置法の一部改正に関連をして、基本的な問題からお尋ねをいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、保安林整備臨時措置法が生まれましたのは、昭和二十八年の大災害のあと、災害防止の意味と、もちろん保安林の体制的な整備、こういう重要な目的から、急遽保安林の整備臨時措置法が制定されたものと判断をいたしておりますが、しかし、保安林の整備の中で一番力点になっております水源涵養保安林という問題を考えてまいりまして、保安林の治水機能というものを正します場合には、何といってもその前提として、わが国の経済発展の中で非常に重要な資源である水資源状態はどうなっておるか、あるいはどこまで科学的に北海道から九州までの全水系別あるいは全地域別の調査がなされておるのか、こういうことがやはり基本的に問題だと思います。それは全国総合開発の計画を立てます場合でも、あるいは特定地域の開発を考えます場合にも、新産都市の問題にせよ、あるいは低開発地域の問題にいたしましても、やはり基本的な資源として、水の問題がそれぞれの地域においてどういろ条件にあるのか、そういうことが科学的に究明されて、どういうスケールのものをどの程度に導入できるかということに密接に結びつくのだと思う。そういう前提を十分検討せずに、四大工業地帯を中心にしたような、今日のような無計画な工場の配置がなされてまいりますと、御承知の地下水の過剰くみ上げ、そのことによる地盤沈下その他の問題が生じてくるということをわれわれはすでに経験しておるところであります。したがいまして、今日保安林整備臨時措置法の十カ年間延長を考えます場合には、やはり今後増大をする水資源の確保の一環として、重要な役割りを果たしていこうというのでありますから、したがって、まずその大前提として、水資源の問題に対する今日的な把握がどういう現状にあるか、こういうことが非常に重要なことだと思うわけであります。  そういう点で、私は、まず、日本の水資源の問題につきましては、御承知のとおり、昭和三十六年三月二十二日、第五十九回の資源調査会で審議、可決されました資源調査会報告第十九号「日本資源問題」という中の第二編のところで、日本の水資源というものを取り扱っておるわけでありまして、それを日本の水資源資料としていただいておるわけでありますが、この際、この点について、科学技術庁から、この問題を議論された経緯、日本の水資源の今日的な現状というもの、そしてこの報告書が作成された以降において、水問題についてさらに新しい姿勢で対処されてきておるのかどうか、こういうふうな点についてお伺いをいたしたいと思います。
  65. 橘恭一

    ○橘政府委員 お答えいたします。  先ほどおっしゃいました資料は、「日本資源問題」という報告の中の水の部のことと存じますので、一応その作成の経緯を申します。  これは昭和三十六年の三月に取りまとめましたレポートでございまして、資源調査会ができましてから十年ぐらいの間の作業を要約したものでございます。したがって、そのバック・データはボリュームにして十倍ぐらいになるのでございますが、一応昭和三十六年に取りまとめたわけです。それによれば、水の需給の想定が非常にむずかしいものである、そういうような主張が根本的に貫かれているわけでございます。  現状といたしましては、雨量を過去の平均から常に想定するわけでございますが、年間千六百ミリの雨量といたしますと、約六千億トンの雨が降る。もちろん、この六千億トンというのは、雨の量によって五千五百から七千億トンと実際には変動するものでございますが、一応雨量を前提として六千億トンとかりにした場合に、まず蒸発等で約二千四百億トンぐらいのものが飛んでしまうわけです。あと大量出水のものがありまして、使い切れないでさっと海の中に入る、そういうものが約千六百億トンぐらいあるであろう。差し引き利用可能量は約二千億トンぐらいあるものと一応想定されます。現状としまして、大体その利用可能量の中で、これも目安でございますが、六百億トンぐらいは利用しておる。水の計量は電気のように正確にまいりませんので、水そのものは供給源が雨であり、また、使うほうも計量関係比較的不正確でございますから、水量というものは、かなり大幅なレインジがあるものと御解釈願いたいと思います。  なお、こういう数字は、常に測定方法等を研究していかなければいけないのでございますが、その後どういう新しいことをやっておるかという御質問に対しましては、先ほど申し上げました予測の困難な水の需給、それがひいては水の需給管理にもつながるわけでございますが、そういう関係の調査を現在もやっており、また過去にもやってまいりました。現在は、たとえば淀川水系をサンプルにしまして、電子計算機を最終的に手段として活用し、そういう水の需給予測あるいは需給管理、それに役立つような方式を確立すべく、目下調査中でございます。  それからやはり一つの問題として、用排水の合理化に関する調査、これは利根川とかそういうところで、早期栽培をやって、水のピークをずらせるとか、そういう水の使用合理化に関する調査もやっております。これはもう完了いたしました。  それ以外に、治山治水に関する防災問題治山治水関係の調査で、これは一つの河川につきましておおむね三年ぐらいをかけまして、森林の水源涵養機能という面から、あるいは河川の河道変遷というような面、これは比較的水そのものにつながるわけですが、あとは流域の土地条件、水害が起きるとすれば、どういうところに起きるであろうという水害地形の問題等をやっておるわけであります。いまの治山治水関係は、筑後川、木曾川、石狩川、吉野川とやりまして、それぞれかなりの所見を得ておるわけでございます。  その他、資源調査会の始まった当初のころは、水資源の開発方式、そういうものに関する専門調査もやり、これらはもうかなり前のことでありますが、熊野川、琵琶湖の総合開発、総合利用とか、そういうことも手がけてまいりました。最近の新しい状況としましては、そういう電子計算機を使ったのが一番の問題と、それからあとは治山治水関係で、いろいろ洪水の機構等についての新しい所見を得つつあるということでございます。とりあえず……。
  66. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 経済企画庁にこの問題に関連してお伺いしたいのですが、これは池田内閣の所得倍増計画の十カ年の計画の中で、経済の発展に見合って、水の需要量というものは、これは工業用水、あるいは上水道関係、あるいは下水道、あるいはまた第一次産業でありますけれども、農業用水関係、いろいろそういうアロケートが当然なされるわけでありますけれども、そういう配分の問題も含んで、所得倍増計画では、当初年度の水資源需要の問題についての各項目別の水をどういうふうに考えており、十年後にはそれがどういうふうにある面については増大をしていく、そういう検討をされているのか。当然そういうことになれば、それに即応する、先ほどお話しになりましたそれぞれの流域別、地帯別のいわゆる水資源のロスされていく部面について、それをより高度的に利用するという面の対策というものが関連して出てくるかと思うのですけれども、経済企画庁は総合官庁でありまするから、今日水の問題というのは、これは農林省であれば、主として農業用水関係に配慮をされるでありましょう、また通産省であれば、工業用水関係に配慮をされる、建設省であれば、河川という関係を通じて治水、利水面の方策について配慮をしていくというふうに、各省それぞれ担当する部面はありますけれども、これが相互緊密に連携されてやられておるかどうかという問題は、これを大胆に聞かなければならぬところでありますけれども、そういうことは第二といたしまして、経済企画庁として、総合官庁として、水資源の問題、これを所得倍増計画の当初年度における計画、十年後における推移というものにマッチして、それに即応した対策を総合的にどういうふうに考えておられるのか、これをお伺いしたいと思います。
  67. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 ただいま先生のお話の、全国の水の総合開発の問題でございますが、これは所得倍増計画に伴いまして、今後十年間に工業用水はたとえばどのくらい、人口はどのくらいふえて、どのくらい飲み水が要る、こういう一応の想定はございます。一応の想定はございますが、先ほど科学技術庁からもお話がありましたように、全国で六千億という雨量があって、そのうち河川に実際利用できるのは二千億といたしまして、それを高度に活用すると申しましても、全国地域別に相当事情が違うわけであります。これは、先生お話の国土の総合開発にいたしましても、地域別開発にいたしましても、水が基本となることはもちろん事実でございます。でございますので、資源としての水の調査、それからお話に出ました水を扱う官庁組織の合理化の問題、これはかなり古くからきわめてむずかしい問題として扱われておりまして、その後、先生のおことばを借りますならば、新しい姿勢に対処するために一応水を緊急に開発する必要があって、かつそれを広域にやらねばならない、こういう地域を限りまして、そういう水系を限りまして、一応水資源開発促進法並びに公団法という新しい姿勢ができた。それに伴いまして、これは二の次というお話でございましたけれども、各省の調整をやりまして、もちろん、治水の関係は建設省、従来からの農業用水の関係は農林省、新しく出てまいります工業用水につきましては通産省、飲み水につきましては厚生省、それぞれ主張がございます。それから水の問題は、御承知のとおり上流にダムをつくりまして、中流を通って下流に持ってくる、こういうものでございますので、地域開発、総合開発の関係から、いろいろな問題があるわけでございます。その辺は、ただいまのところ、水資源開発促進法で広域にかつ緊急に開発する必要のあるところとして指定いたしました利根川水系、淀川水系につきまして、大体各省、各府県調整をして、所得倍増計画に伴います水需要に対処してまいりつつある、かように存じております。
  68. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 非常に抽象的に答えられたのですが、経済企画庁は数字を相当重視される官庁でありますから、所得倍増計画の当初年度における工業用水、あるいは農業用水、あるいは文化的な生活のための所要の飲料水その他、それが十年後においてどういうふうに推移していくか、そういう数字的なものについて、少し指摘していただきたいと思います。
  69. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 四十五年にどの程度まで水の利用が見込まれるか、こういうことでありますが、水に関しましては、実はスタートの現況がなかなかむずかしいものでございますから、それを一応抜きにいたしまして、四十五年までに将来需要として伸びますものを一応いろいろなデータから推計したものがございます。四十五年には、将来の水需要といたしまして、農業用水が年間約七十億トンでございます。工業用水が百四十億ぐらい。水道用水が約三十億ぐらい。もっとも、これは河川に依存する水の量だけを申し上げたのでありますが、大体そのような数字になってまいります。
  70. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 当初年度の数字がちょっとなかったのですが、参考までに所得倍増計画の当初の数字を……。
  71. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 一般に所得倍増計画の当初年次の水の利用の現況でございますが、これは実はいろいろな水系がございます。方々で有力な水系がございます。そのうちの一つを申し上げることになります。これによりますと、いまの河川に依存しておるものだけを申し上げますが、農業用水で三百四十五億トン、工業用水で三十四億トン、水道用水で三十八億トン、合計四百十七億トン、これが河川水に依存しておる水の量でございます。
  72. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの数字からいきますと、私が控えた数字に誤りがあるかどうかわかりませんけれども、農業用水と水道関係では、むしろ当初年度のほうが数が多いようになっているのはどういう理由ですか。
  73. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 失礼しました。四十五年度までに増加する、伸びる量だけを申し上げた、先ほどの数字はそういう数字でございます。
  74. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 わかりました。  この際、気象庁に少しお伺いいたしたいのですが、わが国の気象の観測体制、これはもちろん国の観測体制ばかりでなくて、県の観測あるいは試験場の観測、こういうものも当然あるわけです。最初に国の甲、乙、丙、丁というふうな観測所があり、またそれに無人のロボットの測量計等もあるようでありますが、それらの国の行なう観測体制の全体的な配置、そういうものについて、まず御説明願いたいと思います。
  75. 大見和雄

    ○大見説明員 お答えいたします。  昭和二十八年に北九州及び近畿地方を襲いました豪雨災禍を機会に、山岳地帯の観測施設を増強する計画を臨時的に立てまして、現在ではロボット観測施設が全国に二百六十ございます。それから、その他の観測施設といたしまして、甲、乙、丙、丁合わせまして二千二百十六ございます。これらの配置は、おおむね百平方キロメートルに一点ということを一応の基準といたしまして配置いたしました。特に重要と思われる個所につきましては、七十平方キロメートルに一点ということにいたしまして配置いたしております。その配置で、百平方キロメートルに一点という状況では、誤差はおおむね一五%程度にとどまるだろうという事務的な推計がございます。それから七十平方キロメートルの個所につきましては、一〇%程度にとどまるだろうということに推計いたしております。今後は、河川の流域の開発等々とにらみ合わせの上、漸次七十平方キロメートル一点の個所を増加する、こういう方針でございます。
  76. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 気象庁の観測体制の配備では、たとえばこれから開発さるべき重要河川、そういう重要河川の水資源判断に即応した観測体制の問題もありましょうし、また災害の頻度等からいわゆる台風予報、そういうふうな観点からの要請と、二面が私はあるのではないかと思いますが、それらの調和というものは、今日の観測体制の配備の中ではどういうふうに考慮されておりますか。その点をお伺いしたいと思います。
  77. 大見和雄

    ○大見説明員 それらについても配備いたしております。たとえば三十九年度の予算要求等につきましては、主として南九州における川内川、肝属川等に重点を置いておるわけでございますが、これらに台風等に対する配慮をしたのでございます。既設のものにつきましても、これまでの気象実績と申しますか、そういうようなものを検討いたしまして、なるべく調整のとれた配置にいたしておるつもりでございます。
  78. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 再び科学技術庁に帰りまして、科学技術庁から河川別に資料として「附表1」という「一次利水度」の一覧表が出ております。これは年間のものと夏季のものとに分けて出ておりますけれども、この流域の仕分けは総数幾つにして仕分けしておるわけですか。
  79. 橘恭一

    ○橘政府委員 流域の仕分けは東北、関東、中部、近畿、中国・四国、九州、六つに仕分けております。
  80. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 河川別総数。
  81. 橘恭一

    ○橘政府委員 河川別は、全部で百二十四河川でございます。流域別には、東北が二十三、関東、中部が二十三、近畿が十六、中国が二十六、四国が十四、九州が二十二、合計百二十四。
  82. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの河川別の分け方は、特別に何か理由があるのですか。
  83. 橘恭一

    ○橘政府委員 特別の理由はございません。たとえば近畿と申しましても、この場合、兵庫県の加古川のごときは中国のほうに入っております。この分け方は、地図作成の原図に従うわけでございます。話がややこまかくなるのでございますが、流域面積に対して雨が何ミリ降ったか、面積に何ミリを掛けますと、降った雨の総量がわかるわけであります。その流域面積をきめるときに、山の稜線をずっと測定していってきめるものですから、普通の府県別の境とは必ずしも合っていない。それは便宜的に全国の稜線を対象にして区分けした地図を使いまして、その地図そのものの地域分類にたまたま従ったわけであります。いわゆる地理学でわれわれが習いました何地方というのと必ずしも合っていませんが、何ら振り分けの意味はございません。
  84. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 私がこういうことをなぜ尋ねるのかというと、科学技術庁の先ほど申し上げました水資源調査、これに基づく報告書、その中で水収支の概算をして、百二十四流域別の総括編として流域別一次利水の概況、こういう集約がなされている。百二十四流域数別に一応の観察が行なわれておるわけであります。ところが、御承知の保安林整備臨時措置法関係で、保安林の整備計画を考える場合には、二百十六の地域に分けて考えておる。そうしますと、林野というのは、あらゆる観測をすべてやるわけでありませんでして、水資源の総合判断というものは、これはもちろんほかのいろいろなデータも使うかもしれませんけれども、さしあたって総括的にまとめられたものということになりますと、おそらくいま申しました流域別の一次利水の概況というのが一番参考にしやすい。しかも、比較的権威を持った資料になるのではないか、こういう感じがするわけですが、これはむしろ林野庁のほうにお伺いをしたほうがいいかもしれませんけれども、いま申しましたこの流域別一次利水の概況、この場合の百二十四流域数別にまとめられたもの、保安林の整備計画の場合には、全国を主として流域によって二百十六の地域に分けて、それぞれのところで保安林の整備計画を立てる、この結びつきはどういうふうに理解をしたらよろしいでしょう。これはむしろ林野庁立場からひとつお伺いしたいと思います。
  85. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまお話のとおりに、この保安林整備計画で基礎としております流域は二百十六の地域でございまして、それで、その中には、いまの百二十四流域でございますか、これは含むと同時に、さらにもう少し規模の小さい流域が入ってきておるということで、最初の計画樹立のときに採用されましたこの地域をそのまま踏襲しておるということでございます。
  86. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの林野庁長官の御説明では、こういうふうに理解してよろしいですか。科学技術庁でいろいろ分析検討したそういう流域別の百二十四の仕分けとは全然独立して、別個に林野庁自身の保安林整備という立場から二百十六に分割をした、こういうことでございますか。
  87. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま申し上げましたように、二百十六地域の中には、いまお話の百二十四を含むと同時に、さらにその保安林の配置上必要であると考えられる、この百二十四流域に落ちておる部分が入ってきておる、こういうことでございます。
  88. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 もう一度科学技術庁のほうに返りまして、附表2の水田と林野の水連関、こういうことで一覧表が出ておるわけですが、この表の利用価値といいますか、利用の問題について、ひとつ簡単に御説明願いたいのであります。
  89. 橘恭一

    ○橘政府委員 初めにお断わりいたしたいのでございますが、この百二十四流域に関するリポートは、そのねらいは、このような手法によって河川ごとにその当事者がもっと正確な水域、最近の水域を当てはめていろいろやるという、こういう一つの手法を試算してみたのが、一番ねらいでございます。  さて、附表2の水田と林野の水連関と申しますのは、赤棒が水田単位当たりの必要水源面積、それに対して森林の必要な面積、そういうものを黒線で出して比較した、したがって、赤線が延びておりますところは、つまり、必要面積だけまだ森林の面積がない。そういうところではどうしているかという疑問が起きるのですが、たとえば四国方面にありますように、ため池等をうまく使って差額をやっている。そういう関係をマクロに見る表でございます。なお、このデータをつくりましたときに、水の収支、降った雨がどう使われるかというのは、実は全部バージンの新しい雨を各水田に使う、そういうことで利用度をはじいているものでございますから、高低の差が、上から下へ水が流れて、同じ水で両方へいくような場合でも、それぞれ新しい雨で使う、そういう仮定を置いて計算したわけでございます。その点で、利水度がそういう意味合いで実際より多く出るというのは、前提からそうなっております。ですから、附表2としましては、こういうような一つの手法によって林野面積そのものの過不足をあるマクロに見る一つ資料になる。ただ、それは面積そのもので、その森林が非常にまばらにはえておるような場合ですと、やはりこれは面積はあれど木がないということで、非常にぐあいが悪い、そういう土地の状況があるわけであります。
  90. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま科学技術庁の資料をもとに若干聞いているのですが、端的に言って、たとえば名古屋を中心にして、これからさらに工場をどれだけ伸ばす能力があるのか、あるいは北陸のほうで、たとえば新産都市なら新産都市を指定する場合に、どれだけの工場用水を使い得る工場配置ができるか、こういうようなことをいろいろ考える場合に、一体基礎資料はどの程度に整備しているのかということで、われわれがそういう立場から問題を判断したいと思って、いろいろなものを見てみるが、なかなかそういうものがない。これも百二十四に区分して水系別にいろいろやっているけれども、単なる指標であって、それ以上にはなかなか出ない。そうすると、経済企画庁にもう一度お伺いしたいのだが、全国の総合開発計画、あるいは特定地域の開発計画とか、新産都市とか、あるいは低開発地域とかというものに、どの程度のスケールの工場を認め得るかという判断をする、少なくとも水資源問題に関する一番権威のあるデータというのは何によるのですか。
  91. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 いまお話の、木曾川を例にとりますと、木曾川でたとえば流量が幾らということは、これはいままではわかります。流量は季節によって変動が起きますけれども、そこにどういう施設をして、水をどういうようにとるか、それをまたどういうようにパイプで持っていくか、そのコストが幾らかかるか、そういったところが非常にデリケートな問題になってまいると思います。単に水があるから用水型産業を持ってきてもいいというように、簡単に割り切れる問題でないのでありまして、ことに最近のように、電気のほうも、あまりダムつくりが効果的でないということになりますと、電気は、あまりダムが魅力がないということになって、金を出し惜しむというか、出さないということになりますと、それならばダムをつくる金を工業用水、飲み水が持つわけですが、農業用水もその間若干出てまいりますが、いずれにいたしましても、むしろ水があるとかということでなくて、どういうふうに水をつくって、どういうふうに運んでいくか、その金はどのくらいかかるかというところが、実は問題になってまいる。これは私が申し上げるまでもないわけでありますが、ですから、全国の総合開発にいたしましても、また特殊な地域の開発にいたしましても、どのデータを見ればそういう工場立地の見当がつくのだろうということは、私どももなかなかすぐに、たとえば科学技術庁のこれこれを見ればいいというわけにまいらぬと思います。実際問題として、先ほど申し上げました工業用水ならば、将来の需要の増大を見越しまして、どの程度の価格でダムをつくり、工業用水を供給できるかということは、通産省系統でそれぞれ調べておるわけであります。飲み水につきましては、人口の増加に伴いまして、将来どの程度のコストで、どの程度飲用をまかなうだけの水がその地域でつくれるかというようなことは、当事者が責任を持っておるわけでありますが、各県その他調査しておるわけです。そういう調査の結果まとまって、建設省その他の治水の関係、流量の関係、そういったところを調整して、一つのダム計画あるいは河口ぜきというような計画もございますが、そういうことになってまいるというようなこともございますので、いろいろな調査のデータが集積されて、初めて工場立地その他について的確な判断ができるというふうに考えております。
  92. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 これはいまお話しのように、年度によっていろいろ雨量の関係は違うかもわかりませんけれども、一応過去二十年とか三十年の気象観測があれば、一つの流域の中で、そこにいろいろな河川も幹川、支川あるでしょうけれども、そういう地帯で工場考える場合に、水の与えられた与件として、洪水、それから河川、さらにこれは過度にくみ上げることには問題がありますけれども、地下水の関係、それから海水、これは今日新しい研究課題としていろいろ出てきていますけれども、一応これはこの場合別にいたしまして、そういう与えられた与件というものについて、どの程度に精密なデータができておるか、そこの点を私は出発点として聞いておるわけです。だから、いまの点は、工業用水道をどこに取水口を置いて、そして取り入れて、どこに運ぶ、こういう問題ももちろんあります。また、多目的ダムの建設によって、年間の雨なら雨の量というものを、農業用水に必要なかんがい期の水も満たさなければなりませんし、非かんがい期を通じて工業用水もコンスタントに考えなければなりませんけれども、利水以前のその地域における水の全体的な量というものが、さっきの気象の観測体制の整備ということとも関連をいたしまして、どの程度に綿密なものが整備されておるかどうかということを私はお伺いしておるわけです。それは経済企画庁に、たとえば名古屋を中心にした地帯、あるいは静岡なら静岡を中心にした地帯、三重県なら三重県を中心にした地帯、ある地域の総合的な開発を考える場合のまず前提条件の水資源というものは、これだけのものが過去のデータから期待できるものがどこまで綿密なものがあるか、利水に至る前提の水の資源というものについてお伺いしておるわけです。それはどの程度のものがあるか。
  93. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 利水の前提といたしまして、たとえば木曾川の水の量、それがどういうふうに変動するかといったような問題は、むしろ、従来日本の河川災害ということが非常に問題でございました。大体利用できるような河川につきましては、建設省が、むしろ災害、治水の面でございますが、水量その他十分なデータを持っておるものと思いますので、これはむしろ建設省から答弁するのがほんとうかもしれませんが、そういうふうに承知しております。
  94. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いずれにしても、私は、いまのようないろいろなことを通じて、水資源というものが、これからの経済の発展の中では、工業の面でもあるいはお互いの日常生活の面でも、非常に重要な問題であるにもかかわらず、経済企画庁あるいは科学技術庁、通産省、農林省、建設省、こういうそれぞれの持ち分があるのでしょうけれども、全体として水資源に対する総合的なやはり資料整備といいますか、そういうものが欠けているんじゃないか。また、それがだんだん精密化していくということ、そういう過程というものが必ずしも系統的に組まれていない、こういう感じを率直に言って受けるわけです。たとえば保安林整備臨時措置法というものを十年間延長する。そして水源涵養保安林を中心にして、午前中の長官の説明によりますと、たとえば国の買い上げについても、二十五万ヘクタールくらい予定するんだというようなことで、その場合に、それぞれの東北なら東北、北海道なら北海道、あるいは四国、九州、いろいろな地帯で、いまある保安林よりもさらにプラスして、どれだけの保安林の指定をやらなければならぬ、そのうちのどれだけのものを国が買い上げなければならぬという、保安林の流域別の整備計画をつくる場合に、その保安林の流域の整備計画をつくるねらいは何であるのか、それは当然、経済の発展に見合うその地帯の水資源の将来の需要状況が、どういうスピードでどういうふうに増大をしていくのだろうということと無関係に、今後十年間の保安林整備というものは考えられていないと私は思うが、林野庁長官、そのとおりじゃないですか。
  95. 田中重五

    田中(重)政府委員 午前中も申し上げましたように、保安林の整備を緊急に、かつ計画的に進める要があるというふうに考えておりますのは、特に今後における水需要の急激な増大に対応をするわけでございます。それで、どれだけの水の需要が現在よりもふえるという見通しに立つのかということになりますと、いま経済企画庁あるいは科学技術庁からもお話のございましたように、そのものずばりの、きわめて精度の高い量を把握するという段階には立ち至っていないかもしれません。結局は、それに対する近似値といいますか、そういうものでなおがまんしなければならないというものが確かにあると存じます。しかしながら、現在の段階で現在の段階なりに把握し得るというような資料は、やはりそれぞれ流域ごとにその地域の水に対する依存量、それからその地域におけるそれぞれの経済発展に伴うところの用途別の依存量は、ある程度これは近似値として把握ができる。そういうもろもろの経済計画の前提として、各流域ごとにやはり資料があるわけでございますので、経済企画庁なり、そういう官庁における総合的な数字も、そういうところから積み上げられたものが資料になっているというふうに見てもいいと思うのでございます。  そこで、そういうような流域別の水の需要量に対して、この森林の保水機能が持つところの供給量をそれぞれ計算をいたしまして——そのしかたについては、あるいは後ほど御質問があるかもしれませんけれども、もちろん、水源涵養保安林のみでその流域の水の依存量を全部供給するというたてまえに立っているわけではございません。それはなおやはりダムなり、あるいはまた水だめといいますか、その他の供給のしかたもあるかと思いますが、少なくともその程度の森林面積、そうしてその森林面積が、その指定目的である保安機能を達成するためのいろいろな保安林の管理、それが適正に行なわれる場合には、この程度は期待できるという数量は出てくるというたてまえに立って、そういうたてまえから、この流域における森林の特に水源涵養機能に期待しなければならない、その面積を一応算出するという考え方に立っているわけであります。
  96. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 林野庁長官お話も、わかったようなわからぬような話なんですが、先ほどお話が出ておりましたように、日本の主として雨による水の資源というものは六千億トンと想定をして、大体その三分の一近くが現状として使われておる。あと四千億トン近くのものが、あるいは蒸発をし、浸透し、あるいは河川を通じて海に流されていく。一つの、いわば水の最高度利用ということからいけば、工業用、飲料水用、農業用という形でない形でそれがロスされている。したがって、そういうものを、水資源需要の増大に伴って、最高度利用をしていこう、そういう場合に、保安林の果たすべき利水機能は何であるか、これが一つの問題なんです。水需要増大に伴ってさらにもっと一般的に保安林の整備をやらなければならぬということ、この法律をさらに延長しようとする目的も、やはり今後の水需要の増大に伴って、さらに——五十万ヘクタール買おうと思ったのが、国の買い上げも二十万ヘクタール程度である。私は、主として水源涵養保安林を取り上げておりますけれども、これは一号、二号、三号までが主たる比率を占めておりまして、四号以下というのは、総体的に少ないわけですが、ここで言うのは、主として水源涵養保安林というものに力点を置いておりますが、他の保安林がそれぞれ重要な役割を果たしているということを否定するわけではない。いま申しました今後の水資源需要増大傾向にタイアップして、保安林の整備をさらに充実しなければならぬ。そういう場合の、保安林の指定を通じて、ある流域においてさらに保安林を増大しなければならぬという算術計算の基礎はどこに置くのか、これが一つの問題なんです。林野庁から「流域別保安林現況表」をいただいておるわけです。これは国有林、民有林を通じて、各河川別に、地区別に一号から三号まで、四号以下ということで、ずいぶんこまかく出ておる。われわれはこういう一覧表を綿密に調べてみたときに、全国的な流域別の保安林の配備状況というものが、科学的にわれわれが納得し得る配備状況になっておるかどうかという点は、林野庁にずっとおったわけじゃありませんから、実際に分析する手が率直に言ってないわけです。だけれども、こういう一覧表を見た場合に、北海道から九州まで、今日保安林として四百数十万ヘクタールのものが指定をされて現存しているのだけれども、全国的な配置から見て、合理的な、そういうわれわれの納得し得る科学的基礎に基づいて保安林というものが配備されておるのかどうか、それが一つのやはり問題だと思う。今日の国有林であるとか、民有林であるとかいう、そういう所有形態別の理由その他によって、保安林として当然整備しなければならぬ条件のものが、いまだにいろいろな社会的、経済的その他の条件によって、保安林として整備されておらない、こういう山林もあるのかどうか、まあおそらくあるのだろうと思います。それで、そういう点で、こういう詳細なデータをいただきます場合に、ただ十年間でこれだけやってきた、これから十年間でさらにこれだけやりたいということだけでこの問題を考えていいのかどうか。特に水源涵養林に力点を置いておりますけれども、これからの水資源需要の増大という、地域別のそれぞれのこれからの発展の経緯というものに即応して、保安林機能を果たすために、今日の配備状況が合理的であるのかどうか。あるいは今後五年、十年を展望して、より合理的にするためには、地帯別に、保安林の二百十六の整備計画についても、やはり再検討が科学的な基礎に基づいてやられる必要はないのか、こういうふうなことがやはり重要な問題だと思うのですが、この点いかがですか。
  97. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまのお話はまことにごもっともだと存じます。それで、将来の水需要の増大に対応し、かつまた、その後も瀕発するところの災害の防止に対応しながら、この保安林の整備をさらに十年間延長して、緊急かつ計画的に整備してまいりたいという考え方に立っているわけでございます。その場合に、現在の保安林の配備の状況、これが決して十分ではない。それで、特に水源涵養保安林について考えました場合に、森林の利水機能について先ほどお話がいろいろ出ましたが、要するに、この利水機能と申しますと、洪水の場合にその水位を、また渇水時にはその必要な水を不足なく供給するというところに、森林の利水機能が求められるゆえんがある、こういうふうに考えるわけであります。そういう意味合いにおきまして、少なくともいままでの保安林の配備について、配備された森林については、それぞれなりにその利水機能を果たしているというふうに考えるわけでございますが、それがなお十分でないということと、さらに、先ほどお話がございました今後十年くらいの将来を目標にした場合には、経済企画庁のお話でも、大体六割程度の増加を想定しなければならないというお話がございます。そういうような水需要の増大に対応しまして、二百十六地域について、それぞれの流域ごとにその水依存量を計算をする、そうしてその依存量に対応し得る可能な限りの保安林の配備をそこではかっていく、さらに、それの管理の適正を期していくというのが、この保安林整備計画のねらいでございます。そういうふうな考え方に立って、ここに緊急にその配備をはかる必要がある、こう考えている次第でございます。
  98. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ちょっとざわついていて、さっぱり十分落ちついて答弁が聞けないのですけれども、詳細な、二百十六の流域別の一号から三号あるいは四号以下、これが国有林、民有林についての一覧表をいただいておりますが、参考までに、北海道、東北、関東、東海、近畿、中国、四国、九州、こういう地帯別に、山林面積の中における保安林の占めるパーセンテージ、そのパーセンテージの中で国有林がどれだけ占めておるか、これをひとつ参考までに御説明願いたいと思います。
  99. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの御質問を地域別に申し上げますと、まず北海道でございますが、北海道の森林面積が五百四十四万ヘクタール、それに対して保安林の占めます割合は……。
  100. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 パーセンテージでけっこうです。全山林面積の中で、保安林面積は何%で、その中で国有林は何%……。
  101. 田中重五

    田中(重)政府委員 北海道で一四%、それから東北六県でございますが、これが一六%、それから関東が二一%、それから北陸が二九%、それから山梨、長野の両方で三三%、それから東海地方で二八%、それから近畿で  一〇%、それから中国で一六%、四国で一四%、九州が七%、全国平均で一六%、こういうことになっております。
  102. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 そのうちの国有林のパーセンテージは……。
  103. 田中重五

    田中(重)政府委員 国有林の占める率を申し上げますと、先ほど申し上げました地域刑に、北海道では国有林が八%、それから東北で一二、それから関東で一二、それから中部地方、北陸と東海を合わせて申し上げますが、八、それから近畿で三、中国で二%、四国が三、九州が三、全体の平均で八%、こういうことでございます。
  104. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いま長官あとで述べられた国有林のやつは、山林面積全体に対して国有林の保安林面積、こういうことですね。
  105. 田中重五

    田中(重)政府委員 そういうことです。
  106. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの数字というのは、ただ数字だけから一覧しては議論はできないのですけれども、先ほど申し上げましたように、保安林の大部分は、水源涵養保安林の一号、それから二号、三号のものでほとんど占めておるわけです。そこで、これから十年間、保安林整備臨時措置法が延長されたとして、詳細に言えば、二百十六の流域別に保安林の整備計画を再検討して、そして新しい保安林の指定等もやっていく、場合によっては、要請によって合理的なものは保安林の一部解除もやっていく、こういうことに相なるわけですけれども、新しく保安林の指定をやろうという、いまの地帯別の十年間の計画というものは、おおよそどの程度に考えておられるか。
  107. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、午前中も御答弁を申し上げた次第でございますが、この三十九年中に新しい保安林の整備計画を樹立いたしたい、こう考えております。それで、この中で、保安林整備計画の内容一つとしての保安林の指定につきましては、これからの作業にかかる問題でございますが、一応百万ないし百五十万ヘクタール程度のものを考えております。
  108. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 大体の地帯別には、まだそこまではおりてないということですか。
  109. 田中重五

    田中(重)政府委員 地帯別につきましては、なおこれからの検討事項となっております。
  110. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 この保安林の整備計画というのは、中央森林審議会のいろいろ議論も得るわけですけれども、保安林の指定をやる場合の基本的な方針というのは、どこに置いておるのですか。新しくいままであった保安林に、さらに指定で保安林を増加していく、二百十六の流域別に増加をしていく場合の科学的な根拠というものは、どういう分析とどういう計算によって、ここにこれだけの保安林をふやさなければならぬのか。この中央森林審議会等にかける場合の根本的な科学的根拠というのは何になるわけですか。
  111. 田中重五

    田中(重)政府委員 この指定の詳しい根拠につきましては、指導部長から御説明を申し上げます。
  112. 森田進

    ○森田説明員 先ほど来御説明いたしましたように、全国を二百十六の主として流域ごとに区分した地域ごとに、さらにその地域におきまして主要な河川の第一次支流域ごとに、林地から供給いたします水の量と、林地に依存いたします水の収支関係を計算いたしまして、それを各流域ごとに総計いたしました結果に基づきまして、林地に依存いたします水の量と林地から供給いたします水の量との過不足量を算出いたしまして、この不足量に対しまして、林地から供給いたします水の量の増加を保安林の配備によりましてはかるわけでございますが、私どもが考えております森林の利水機能といたしまして、この水源涵養保安林を取り扱います際に一番重視いたしておりますのは、森林土壌の降水の浸透能力でございます。御承知のように、林地に降りました雨は、樹冠によって遮断されますものと、地表を流下いたしますものと、それから地下に浸透いたしまして、地下水となって流出いたすものとに大別できるわけでございます。いままで森林の利水機能につきまして各地で試験されました資料に基づきますと、森林の土壌と申しますのは、ほかの無林地の土壌に比べまして、水の浸透能力が非常に高いわけでございます。この森林土壌のそういった性格を利用いたしまして、地下水として浸透いたします量を増加させる、すなわち、地表流下の量をそれだけ減少いたす効果を期待いたしておるわけでございます。一般の森林につきまして、その森林土壌一般にそのような効果が期待できるわけでございますが、保安林に指定いたしますことによって、立木竹の伐採の制限あるいは生草、落葉枝の採取の禁止、あるいは樹根の採堀あるいは開墾の禁止といったように、地表の処理につきまして制限ないし禁止をすることになっておりますので、いま申し上げましたような森林の土壌の浸透能力は、一般の森林よりもさらに高いものが期待できるわけでございます。いま申し上げましたように、普通林と保安林との土壌の浸透能力の差、すなわち、地下水として降水を流下せしめ得る量の差異に着目いたしまして、保安林を増加配備することによりまして、水の有効供給量を増加させるというのが基本的な考え方でございます。
  113. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ぼくの質問に必ずしもポイントが合っていないようでありますけれども、いま部長からお話がありましたので、保安林の利水機能という問題で少しお尋ねしたいと思いますが、いま部長からもお話しのように、樹木によって遮断をされる面、それから土壌の表面を流出していく面、さらに地下に浸透して地下水として流れていく面、こういう三つに大別できるということは、これはそのとおりだと思います。問題は、こういう森林の利水機能というものについて、日本の場合に、林業試験場あるいは大学でもいろいろ研究があるようでありますけれども、系統的に北海道から九州までのそれぞれの立地条件に合わしてどれだけ森林の利水機能、そういう面についての組織的な研究が今日までなされてきているのか、樹種により、あるいは木の高さ等により、あるいは樹木の間隔等の影響により、土壌の被覆をしておる場合、あるいは被覆の層の薄い場合、あるいは土壌の土質のいろいろな条件、実際に保安林の伐採の制限というものを御承知のようにやっておるわけでありますが、そういう伐採制限の中で、ある流域のある保安林について、一定の年齢の樹齢にきたものについて、保安林の伐採を許可するというふうな場合の許可の科学的基礎というものを、どの程度のものをどの年次に伐採を許可するかというふうな判断の問題もありましょうけれども、保安林といいますか、山林の利水機能というものについての今日の林野庁としての科学的な試験データ、あるいは各大学等の補完としての試験データというものについては、どの程度まとまったものがあるのか、その点についてひとつ御説明願いたいと思います。
  114. 森田進

    ○森田説明員 ただいま森林の利水機能についての従来の試験結果のお話でございますが、林業試験場におきまして森林の利水機能の試験を継続いたしております。この森林利水試験地は、現存におきましては山形県、群馬県、岡山県、宮崎県の四カ所にございます。このほか、各大学でもいろいろな研究をやっておられるわけでございますが、森林の状態による差異、すなわち、有林地、無林地、あるいは牧野等の差による水の流出率、あるいは増水率の試験、それからいま申し上げましたような森林の状態の差異による年流出壁の差異、あるいは最小流量の変化、特に渇水時期における流量の変化、それから土壌の孔隙量、それから容水量、降水の浸透能の差異等について、いろいろ試験が行なわれておるわけでございますが、このいままでの試験結果を要約して申し上げますと、まず第一に、無林地は有林地に比べまして、出水時の増水量が大きいということが明らかにされております。それから無林地と有林地の流量を渇水時において比較いたしてみますと、各日の最小流量の範囲比較いたしますと、有林地のほうが無林地に比べて、渇水時においては流量が大きいということが明らかにされております。また、保安林、普通林、無林地につきまして、土壌の孔隙量、それから容水量、浸透力等を調査いたしました結果によりますと、土壌の容水量、浸透能ともに保安林のほうが大であるという結果が出ております。  以上でございます。
  115. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 いまの部長の話は、一般論としての結果を述べられたわけで、たとえばある地域で、二百十六のうちのある地域で、水の夏期における、あるいは年間における流出の状態というものを推定をする場合に、いま言った四カ所ばかりのデータあるいは各大学の研究の資料というふうなものを見て、大体平均位でそれぞれの地域の推定をする場合に当てはめるわけですか。
  116. 森田進

    ○森田説明員 先ほども申し上げましたように、土壌の浸透能の大小に着目いたしておるわけでございますが、この土壌、特に土壌の生成状態から土壌分類をいたします作業は、林野庁におきましては、従来から造林事業におきまして適木を適地に植える必要性から、森林土壌の調査をいたしております。もちろん、全国的にこの調査が完了いたしておるわけではございませんけれども、そういった森林の土壌調査の結果と、先ほど申し上げましたような試験地の土壌型との相関関係におきまして、土壌調査の結果、あるいは、さらにそれを演繹いたしまして、地形図等から地形解析をいたしました結果に基づきまして、先ほど申し上げました試験結果にある程度の近似値を求め得るというように考えております。
  117. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 ある流域で保安林の指定を受けた相当な面積があって、そこで保安林の伐採制限はあるけれども、一定の樹齢以上になったある程度の面積の伐採をやった。そういうことによって、全体の流域の中の一つの面積についての伐採をやる。いままでの試験のデータの中から、相関関係として、一つの方程式式なもので、そういうことによる洪水の、一定量のものが降った場合の流失の速度というものが、どの程度の量、どの程度早まる、こういうことまで推定ができる段階にあるわけですか。
  118. 森田進

    ○森田説明員 各流域につきまして、ただいまお話のございましたような関係が直ちに算定できるという状態には、残念ながらまだございません。
  119. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 部長はどの程度御承知かどうかわかりませんが、私自身も、そういう点は昔はある程度専門的にやったのですが、いまはそういうことをあまり専門的にやっておりません。要は、私の聞きたいのは、先ほど日本の水資源、それぞれの地帯別、流域別の水資源のもとになるものを最高度に利用していこうという方策、そういう中において、日本の山というのは、御承知のように、国土の中で大体七割近く占めておるわけですから、したがって、山の水資源の総合的利用ということに果たさなければならぬ役割の重要な一環として、保安林という問題があると私は思う。また、そういう形の中で、従来の四百万ヘクタールをこえる保安林に、さらに、長官の御説明によりますれば、できれば百五十万ヘクタール程度のものを新しくプラスしていきたい、こういうことだろうと思うのです。問題は、そういう場合に、今後の地域の経済開発のプログラムと見合って、保安林の整備計画の地帯別のアロケーション、つまり、二百十六の保安林整備計画、保安林指定というものが、いかなる科学的根拠によってなされるかというその重要な要素の中に——その地域の経済の発展、その中で、従来の水の需要量よりもさらにプラスされてくる新しい要素というものを、今後十年間にどう見込むか、そういう問題と見合って、保安林の新しい指定というものがやはり考えられなければならぬのじゃないか。単に林野庁という立場において、あるいは農林省という立場だけで、保安林の現状の配置というものが適正であるかどうか。あるいは今後保安林の十年間の整備の地帯別の配分というものが、合理的であるかどうかということには必ずしもならないのであって、あるいは中央森林帯議会で議論する場合も、中央森林審議会という立場で保安林の新しい指定のアロケーションを考えていいのかどうかということになると、私はいささか問題があるように思うので、きょうは経済企画庁や科学技術庁等も呼んで、日本の重要な水資源のこれからの総合的利用という面で、一つの役割を果たす保安林の整備計画、これからの十年間の整備計画、あるいは従来の保安林整備計画の再検討という問題が、単に従来の惰性で十年間延長してもらって、そうしてあるものは国で買い入れ、あるものは交換をし、あるものは指定で、保安林の性格に伴ういろいろな諸制限をやっていくということだけでは終わらないのじゃないかというふうに思うのでありまして、そういう点では、私は、ずいぶん詳細な保安林の現状についての資料をいただいたのですが、これがはたして合理的であり、これに上積みすれば今後の十年間の計画も合理的であろうというわけにいかない感じが、率直に言ってするわけであります。残念ながら、それを綿密にここに問題があるというまでの検討は私はしておりませんけれども、そういう検討が、これが十年間延長される場合には、基本的に必要な段階に来ておるのではないか、こう思うのですが、いかがですか。
  120. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまのお話は、全くお説のとおりだと考えております。  それで、今後新しく保安林整備の計画を樹立いたします場合には、いままでの保安林の配備の状況、それにつきましても、十分に再検討を加えてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  121. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 きょうは幸い経済企画庁や科学技術庁のほうに来ていただいたわけですけれども、保安林整備臨時措置法というのは、これは林野庁の仕事だというふうに簡単にはいかないと私は思いますから、きょうお忙しいところを来ていただいたわけですが、これから法が一部改正されて成立する場合に、十年間従来の一つのルールの上に乗って、それに上積みされて、保安林の指定が、二百十六の整備計画の改定なり何なりを通じてやられていく、その考え方はやはり林野庁的な色彩が相当強いものになりはせぬか。最近国有林の開放問題だ、やれ何だというようなことが、林野問題として出てきておりますけれども、しかし、私は、それぞれの地域における水資源の問題というものの中で、国有林であると民有林であるとを問わず、果たさなければならぬ重要な役割、科学的なそういう役割を全然リフレクトして、そうして無計画あるいは無方針にそういうことが論ぜられるということは、大きな誤りだと思うし、こういう保安林の整備計画なり何なりを議論する場合には、ものごとはやはり一つの科学的根拠に基づいて、それぞれの地域における合理的な総合開発のあり方は何か、そこでやはり国有林が果たさなければならない役割、あるいは民有林が果たさなければならない役割というものを合理的に考えていく、それが地域開発だし、そのことを計画的に総合的に考えるのが経済企画庁だろうと思うのです。そういう点では、林野庁の従来からこういう機能として持ってきております保安林、さらにこれから整備していこうという保安林の計画というもの、これを単に林野庁や中央森林審議会だけにゆだねるのではなくて、これについては、従来も協力しておられると思いますが、科学技術庁もあるいは経済企画庁も、水資源の総合的利用あるいは今後の需要の増大に伴うところの保安林の果たすべき役割の強化という点で、積極的に協力すべき立場にあるし、また共同してやらなければならぬ立場にあろうと思いますが、その点、経済企画庁、科学技術庁はどう考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  122. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 仰せのとおりに考えております。
  123. 橘恭一

    ○橘政府委員 全く仰せのとおりと思いますが、われわれも使命が非常に重大だということをいまさら痛感しております。
  124. 高見三郎

    高見委員長 この際、午後七時まで休憩いたします。    午後五時五十九分休憩      ————◇—————    午後七時二十分開議
  125. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。角屋堅次郎君。
  126. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 夕食前に保安林整備臨時措置法改正に関連をいたしまして、日本の水資源問題について、いままでの経済企画庁あるいは科学技術庁、農林省等の把握状態について、いろいろお尋ねをしてきたわけでありますが、それらの質疑を通じて感じますことは、今後の経済開発の重要な基礎条件であります水資源の問題について、内閣として総合的な、しかも各地帯別、流域別にもっと綿密な資料整備、こういうことがやはり必要だと痛感をするわけであります。これは各省にそれぞれまたがっておりますが、今後これらの総合調整をどうするかということを真剣に検討されて、全国の総合開発あるいは地域の開発計画に即応する体制の整備に遺憾のないようにしてもらいたいと思います。  そこで、そういう前提に立って、日本の水資源の利用の増大、それに即応するためには、今後ともさらに保安林の整備を急がなければならない。それらの保安林の整備のためには、先ほども指摘しましたように、二百十六の流域別にそれぞれ保安林整備計画というものを立てるわけですが、これからの経済の発展に即応して、それらの計画についても、科学的な基礎に基づいて検討すべきものについては積極的に検討を行なうということが必要だろうと思います。私は、保安林整備臨時措置法という、こういう臨時立法的な性格で保安林問題を取り扱うということが、適切であるかどうかということが今日考えられていいんじゃないか。もちろん、民有保安林の政府買い上げという、そういう問題も内容的に含まれてきますけれども、たとえば治山十カ年計画あるいは治水十カ年計画、こういうふうな長期的な計画の中で、治山事業、治水事業がなされていく、それと密接不離の関係にある保安林整備という問題が、臨時措置法というふうな臨時立法でなくて、むしろこれは単独立法になるか、あるいは森林法等の他の基本法的なものに含まれるかは別として、やはり恒久的な立法の中で保安林の整備についての十カ年計画ということになるか、あるいは具体的には、十カ年計画の中で前期五カ年、後期五カ年という、治山治水等で今後考えておるそういう構想でやるかは別として、この際は十カ年延長ということで済ますにいたしましても、今後の検討問題としては、恒久立法的な性格の中で、保安林整備の十カ年計画ないしは前期五カ年、後期五カ年、さらに具体化したものをつくるような、そういう構想のもとでの法体制の整備という段階に、やはり進んでいかなければならないのじゃないか。今日十カ年の延長をやりましても、十年後はどうするのだという問題が直ちに提起されるわけでありますが、言うまでもなく、水資源の高度利用という面から見ますと、保安林の役割りというものが、将来ともに続くわけであります。したがって、そういう観点から、今後の検討の問題としては、臨時措置法的な性格を、恒久立法というたてまえに立ってどう法整備をするのかということが、今後検討さるべきだと思いますが、この点は、むしろ林野庁長官よりも、丹羽政務次官のほうからお答えを願いたいと思います。
  127. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 やはり国民生活が変わり、また産業が振興してまいりますと、先刻来御質疑がありましたように、水の使用量というものが膨大なものになってくると考えなくちゃなりません。と同時に、その水源の確保ということも、非常な重要性を帯びてまいりますので、御説のように、臨時措置法的なことでは、私はこれは十分なことはいけないと思います。これは御説のとおりだと思います。そこで今回は、お話に出ましたように、十年延長させていただくことにいたしましても、将来においては恒久的な、保安林整備と申しますよりも、保安林維持という立場に立って検討をしていくことがいいかと思って、大いに御説のような考えで検討をしてまいりたいと思います。
  128. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 保安林の整備は、言うまでもなく、今後ともに必要なものについての量的な拡大ということは、当然考えておられるわけでありますし、また推進しなければならないと思いますが、同時に、やはり質的向上というものを、同僚委員質疑を通じてもありましたように、さらに進めていかなければならぬと思います。その場合に、治山事業というもの、これは、治山の十カ年計画の前期五カ年計画が本年度でいよいよ終わろうという段階にくるわけでありますが、この際、治山十カ年計画の前期四カ年、新しくもう一年加えて五カ年の推移を見て、私どもが判断をしますところでは、従来の災害の頻度あるいはまた最近の物価その他の問題に関連しますが、工事単価の値上がりその他から見て、治山十カ年計画については、事業量あるいはそれに見合う予算、こういう問題については、根本的にやはり検討しなければならぬ段階にきているのじゃないか、こういう感じも、率直に言っていたしておるわけでありますが、過去の実績と将来の展望という問題について、これは政務次官でも担当の林野庁長官でも、いずれでもけっこうでありますが、御説明を願いたいと思います。
  129. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま御質問にございました、保安林整備計画の中におきます保安施設事業という名で表現をいたしております治山事業、これは保安林整備計画の中で計画をしておる。そうしてその計画は、治山治水緊急措置法に基づくところの治山十カ年計画の中へほうり込まれまして、昭和三十五年度以降十カ年計画をもって進めてまいったわけでございます。これを前期五カ年、後期五カ年に分けまして、その当時の予定を申し上げますと、昭和三十五年度から五カ年計画、つまり、三十九年度までに国有林、民有林を合わせまして七百二十九億円、それから昭和四十年度から四十四年度の五カ年間に九百三十八億円、合計いたしまして千六百六十七億円の治山投資を行なうという計画で進めたわけでございます。その内容といたしましては、一応昭和三十四年度末に存在いたしました荒廃地約三十二万ヘクタール、それから年々その当時から発生を予定されました四千八百ヘクタールの新生荒廃地、そういうものを緊急に治めていく、そういう計画で進めたわけでございます。  ところで、この昭和三十八年まで、つまり、前期の四カ年の実績が、対五カ年で見ますと、三十五年から三十八年の間に、すでに国有林、民有林を通じまして六百三十億の投資をしたわけでございます。これは対五カ年計画といたしまして八六%の進捗率になったわけでございます。これは計画いたしました以後の労賃あるいは資材費の値上がり等がございまして、事業を積極的に進めたために、このように投資額の相当多きをみたわけでございます。  それで、現在の考え方といたしましては、昭和四十年度以降に始まる後期五カ年計画に対しましても、この際再検討を加えまして、これは治水十カ年計画との関連も考えながら、相互の調整をはかって、新しく治山治水の長期計画を樹立するということに現在いたしております。  現行の治山十カ年計画の進捗状況については、以上のとおりでございます。
  130. 角屋堅次郎

    ○角屋委員 あと川俣委員からさらにいろいろ御質問がありますので、私は、たくさんまだ問題は議論としては残るわけでありますが、たとえば、災害対策特別委員会で議論をしたときにも、ダムの堆砂問題というふうなことがございまして、これは山林の果たすべき保安機能との関連で、長野その他のいろいろな災害の際に、特に指摘されて、堆砂に伴うところのダム機能の低下、あるいは堆砂に伴うところの災害の増大というふうな問題がいろいろ議論をされた。やはりこの保安林の整備というものは、単に水の資源の確保ばかりでなしに、そういうダム機能等の向上のためにも、やはり試験調査等を通じて、その役割りというものを明らかにしていかなければならぬというふうな問題もありますが、それらの問題についても、さらに理論的な点でどういう究明が今日なされようとしておるのか。これは数年来非常に問題として議論をし、特に長野県選出の方々からは非常に真剣に議論された問題であります。また、保安林の問題にいたしましても、指定を通じ、あるいは最近の動向の中で、解除にいかなる基準を持ってこれに公正に対処するのかというふうな点で、最近の動きにはやはり十分警戒をしなければならぬ問題等もありますし、また、従来からの伐採調整資金の問題や、保安林の指定に伴うところの助成その他の措置内容についても、いろいろ議論すべき点が多いのであります。いま議論されております二つの法案については、基本的にそう大きくわれわわが異論を唱える問題はないのでありますけれども、しかし、午後以来議論しておりますように、もっと大きな視野から日本の水資源の問題、その中で果たさなければならぬ保安林の役割り、その役割りについて、もっとやはり科学的調査に基づいて、今後の地域開発、全国総合開発にマッチできる、そういう条件というもの、これは林野庁だけでは整備できませんよ。政府自身でもっと整備する。そういう中で、保安林の量的な拡大と同時に、質的な向上という問題について、もっとやはり予算的にも、重視すべきものについては、治山の計画についても再検討を通じて強化していく、こういう点については今後一そう努力されるように強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  131. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま角屋委員から、非常に高い次元に立っての保安林整備の必要について御意見がございました。ごもっともと思います。御意見に従いまして、十分政府は努力をいたし、御説のように完ぺきを期してまいりたいと存じます。
  132. 高見三郎

  133. 川俣清音

    川俣委員 基金について、質疑が打ち切られる予定だそうでございますので、残されております二点について、先にお尋ねをし、保安林について、続いて質疑をいたしたいと存じます。  基金の問題で問題として残されておりますのは、基金法に基づいて、理事長理事並びに非常勤理事が役員とされておりますが、民法及び商法の規定によりますと、法律辞典の解釈によりますと、理事とは法人を代表するものであるという学説、通念がございます。そうなりますと、この基金非常勤役員であります理事もまた、商法、民法の規定から見まして、特別に指定のない限り、基金を代表する理事であるという解釈になるのではないかと思うのですが、農林省の見解を承っておかなければならないと思います。基金の運用上、問題の発生するところでございますから、この点明らかにしていただきたい。
  134. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 たいへんむずかしい御質問をいただいたわけでありますが、といって、お答えをせぬわけにいきません。御説にありましたように、民法によれば、理事はすべて法人を代表する、これはいま聞きまして初めて私も知ったようなわけであります。しかし、基金においても常勤理事もやはり同様に代表権を持つかどうか、こういうお尋ねのようでありますが、基金理事は代表権を持たない、こういうように私どもは解釈しております。事務当局からさように教えられておるわけであります。代表権は理事長に専属しておりまして、理事理事長に事故があるときに限って代理をする、こういうように事務当局は考えておると私どもに言っておりますので、さように私は考えております。
  135. 川俣清音

    川俣委員 特別な法律規定がある場合には、民法よりも特別法が優先することはそのとおりだと思います。しかし、規定がない場合は、やはり民法の規定及び商法の規定が通念として利用されると思うのです。ところが、この法律は、その点がすこぶる明確を欠くのではないか。したがって、民法の規定による理事と見なされるおそれがあるのではないか。そういうところから、もう少し明確にしておく必要があるのではないか。確かに、あとのほうの条項で理事長代表者であることは明瞭になっておりますが、理事もまた代表の資格があるんだというのが民法の解釈でありまするし、そういう意味で、やや不十分じゃないか。ここであえて質問をいたしておりまするのは、そういう点を明確にしておくことが、今後の運用上必要なのではないか、こういう意味でお尋ねをいたしておるわけでございます。
  136. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただ、この基金法法律の条文によりますると、第十八条に理事長基金を代表するということが明文化されておりまして、「理事は、理事長の定めるところにより、理事長を補佐」する。そして「理事長に事故があるときはその職務を代理し、理事長が欠けたときはその職務を行なう。」こういうように法律には書かれておりまするので、私ども先ほど申し上げましたような解釈のしかたをしております。なおまた、公庫法の第九条三項との関係があるようでございまするが、政府が先生のお尋ねに対してお答えを申し上げたような見解をとっておりまするその法的根拠といいますか、事務的根拠につきましては、私よりも事務当局がよく知っておりまするから、そちらから答弁させていただきたいと思います。
  137. 丸山文雄

    ○丸山説明員 ただいまの御質問につきましては、政務次官が御答弁いたしましたように、十八条にそういう規定がございます。それともう一つ理事長以外には代表しないという観点に立って、整理されておる規定がございまして、いわゆる「代表権の制限」に関する規定でございますが、この規定の中には、「基金理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表権を有しない。この場合には、監事基金を代表する。」と書いてございます。したがいまして、いずれの角度から見ましても、理事長以外の理事は代表権がないということになろうかと思います。
  138. 川俣清音

    川俣委員 明瞭じゃないのです。法律を変えれば一番よろしいでしょうが、そこまでいかないにいたしましても、明快な解釈をして、この運用はかくするんだという言質を得たい、こういうことなんです。修正までするには及ばないだろうと思います。本来ならば、特別法によって、理事は代表権がないんだと書ければ一番明瞭なんですけれども、そこまで至らないとすれば、基金理事は代表権がないんだという政府の言質を得ればそれでよろしいのですよ。そうすると誤解がないであらう、こういう意味ですから、御答弁願いたい。むずかしいことを聞いて混乱さしておるのではないのです。明快な答弁をもって運用をしていく、これでいいと思うのです。それであれば、農林大臣がそういう指揮をすればよろしいのです。本来であれば、基金理事は代表権を持たないのだと明瞭にしておくことが大事だと思いまするけれども、運用の妙味を発揮するとなれば、これは大臣の認可を要する事項でありますから、運用はかくするんだ、こういう言明があれば、私はこれ以上むずかしい問題を追及する意思はないのです。そこが政務次官に大臣代理としてお尋ねしている理由なんです。
  139. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 川俣委員の御説のとおりでございます。そのとおり運用してまいります。
  140. 川俣清音

    川俣委員 第二問でございますが、農林省も林野庁も、政府も、あげて最近林業及び農業の近代化ということを盛んに強調されております。もっともなことだとも存じます。林業の近代化ということはどういうことなんですか。私は、近代化というのでありますから、機械化し、能率化していくということであろうと思います。大体そうだろうと思います。そうすると、林業なども、製材から一貫作業をやることが能率化であり、近代化であるとされております。流れ作業をやっていくことが近代化であるし、機械の効率をあげる近代化である、こういわれておりますが、そうじゃないのでしょうか。政務次官、どうでしょうか。
  141. 田中重五

    田中(重)政府委員 林業の近代化と申します場合に、いまお話のように、流れ作業をすることをさすかどうかということは、いろいろ問題があろうかと存じます。いずれにいたしましても、林業後進性は御承知のとおりでございますので、もろもろの面におきます合理化、近代化をはかって、その生産性を高めていく必要がある、こういうふうに考えている次第でございます。
  142. 川俣清音

    川俣委員 たぶんそうだろうと思います。しかも、資源の不足な木材を有効利用するためには、そういう方法をとるのは当然だと思うのです。ところが、基金のほうでは、そういう合理化をするというと、資金の融通をしないという規定になっているのですね。箱にするならば、箱のところは融資対象にならない、あるいはフローリングするにしても、あるいは木材のうちでいろいろ選択をして板をつくるまでは資金の対象にするけれども、板を有効に使うように区分けをするような作業のほうは融資対象にしない、こういう規定ですが、一体合理化に賛成なのか。合理化するやつは必要な資金の融通をしよう、おそらく合理化に対して金融措置を講じようというのであろうと私は理解をしておる。ところが、そういう流れ作業の一貫作業のうちの部分は、これは金融対象にしないのだということになると、そういう方法をとっておるものはだめだ、金融措置を講じない、奨励の方向じゃないのだ、こう言われるような感じがするわけです。そういう感じはしませんか。私はそういう感じがするのです。たとえばきのう問題といたしましたように、この資金の対象になるのは木材製造業だけであって、合板製造業は入らない。あるいは木箱製造業は入らない。チップは入るかというと、ある部分は合板に使うのだ、ある悪い部分はチップにするのだ、チップは入るけれども、ほかの合板にするところは入らないのだ、あるいは木箱にする分類の部分は入らないのだということになると、木の有効な利用ということも、ここでストップをかけるような感じがするわけです。そういう意味じゃないのだ、一次産業だけだ、こういう意味かもしれませんけれども、どうもこの点が、農林省及び林野庁が言っておられます合理化の方向あるいは木の高度利用という面から言うと、この金融とは相矛盾するのではないかという感じがするのですが、この点について、もう一度御答弁願えればそれでよろしいと思うのです。そういう意味ではないのだろうと思うけれども、非常にそういう誤解をされやすいことが通常のようになっておりますし、誤解を招くのであろうと存じますので、あえてこの際明快な答弁を要求するのでございます。
  143. 田中重五

    田中(重)政府委員 この林業信用基金がねらいといたしておりますところは、林業の近代化、合理化をはかる。国有林野事業の剰余金三億円をそのために用立てるというゆえんのものは、これが林業の振興ということにつながっているという前提に立っているということでございます。そこで、林業範囲とは何か、これを一応限定してかかる必要がある。その場合に、この林業範囲につきましては、いろいろ説はございますけれども、この法律で特に条を改めまして、林業範囲を確定をしておるわけでございます。その場合に、やはり林業に直結する業種ということになってまいりまして、そこで現在の段階では、製材業という一次加工までを一応考えたということになるわけでございます。また、その範囲のものが特にこういう林業信用基金というような制度に負うところが多いといいますか、その範囲のものが受信力が弱いので、このような制度に対する期待が大きいというところにあるわけでございます。
  144. 川俣清音

    川俣委員 少しもの足りないけれども、あまり追及すまいと思います。しかしながら、今後だんだん木林資源が枯渇してくるときに、その木材をいかに有効に活用するかということになってまいりますと、その木の本質に基づいて、いろいろな角度から効率利用していかなければならないのが実勢だろうと思うのです。そういう場合に、ここまでは融資対象になる、流れ作業のここからは切断していかなければならないのだ、こういう融資のしかたについては、合理化の反対の方向を指示しているようにも見えるし、いやあくまでも合理化を進めるのだと言いながら、金融措置としてはそこまで及ばないのだ、切断されるのだということになると、木材の利用の面からいきましても、合理化の面からいきましても、流れ作業をやる途中まではいいが、その途中の先は融資対象にならないのだ。そうすると、それはやるなというわけではないけれども、金融的には保護がない、融資対象にならない。途中まではなるけれども、それからは一貫作業、流れ作業をしていっても、ここからはだめだとストップをかけられるおそれがあるわけです。おそれがあるのじゃなくて、そういう処置なんですね。それではどうも合理化の方向とは違うのじゃないかという疑問が出てくるのは私だけじゃないと思う。そこで、合理化と金融措置をどう調整していくかということは、さらに検討を願うことにして、私の質問はこれで終わろうと思いますが、どうですか、政務次官
  145. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 やはり木材産業の合理化と申しますか、完全な合理化をしていくのには、先生の御意見のようにしていかなくちゃならぬ。途中まできて、途中から世話人というか、めんどうを見る者がかわるということは、木の節ができるようなかっこうで、完全なものではございませんが、ただいま長官の申し上げましたような答弁で、そこまで完全に手が伸びていないことは、現在は遺憾に思いますので、今後はひとつ大いに検討いたしまして、流れがよくいくように努力いたしたいと思います。
  146. 川俣清音

    川俣委員 それでは基金に対する質疑はこれで切りまして、保安林の本論に入りたいと思います。まず、委員長からの御指示によりまして、長く時間をかけないようにという注文でありますので、そういう順序でお尋ねしたいと思います。  そこで、一番問題になるのは、やはり法文の解釈だと思います。ほんとうの政策論争はいずれ機会があるかもしれませんので、あと回しにいたしまして、法律の解釈で疑義がある点を明らかにしていきたいと思うのであります。  本法は緊急に保安林を整備するためとあります。緊急というのはどういう意味であるか。この前の十九国会では、緊急とは緊急に処置を要する必要性を強調したものでありまして、年限を定めて計画的に、しかも、可及的すみやかに行なうという意味でございます。こういう説明がなされております。いまでもやはりこの説明には変わりがないと思いますが、政務次官、いかがでございましょうか。
  147. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 変わりは全然ございません。
  148. 川俣清音

    川俣委員 そこで、お尋ねしますが、緊急に処置を要するというのでありますから、十カ年以内に完成をしたいということであったと思うのであります。ところが十カ年で完成できなかったということは、緊急でなかったということになるのですか。この点がわからないのです。十カ年で完成しなければならないというのに、十カ年で完成できなかったということは、林野庁の怠慢なのか、予算措置としての怠慢であるのか、この点を明らかにしなければならぬ。そうでなければ、また延長しても、ただ時間を浪費するだけだと思う。ほんとうに緊急を要するという意味でありますならば、そのような処置を講じなければならないと思う。政務次官、そうじゃないですか。そこで、ほんとうに緊急を要するならば、この前も緊急を要するということで、十年で完成するのだ、こう言われたのですが、十年で完成できなくて、もう十年、こういうわけです。一体どっちが怠慢なんですか。林野庁にその能力がないために、農林省が能力がないためにおくれたのか、あるいは怠慢でおくれたのか、あるいは予算措置が十分でなかったために、やろうとしたけれども、計画どおり進行しなかったのか、この点明らかにしないと、法律を延ばしましても無意味になる、御答弁願いたい。
  149. 田中重五

    田中(重)政府委員 昭和二十九年の現在の法律は、その趣旨といたしまして、まさにお説のとおりの、緊急に保安林を整備するという必要で制定を見たわけでございまして、そうしてその計画に盛られました保安林の配備については、先般来質疑の中にも出ましたように、一応計画の四百五万町歩を達成するところの配備の実行を見たわけでございます。ただ、その後の国の経済発展に対応するところの水の需要の急激な増大、この需要に対応して保安林の配備状況を考えまする場合に、なお不十分である面が非常に多いということ、さらにはその後の頻発を見ました災害の状況から見ましても、水源涵養保安林を中心とした保安林の整備を、今後一そう緊急かつ計画的に進めていく必要があるということが一点と、それからその中の国の買い入れによります買い入れ計画につきましては、計画のほぼ四割程度の実行状況でございますが、これについてきょうの午前にもいろいろ御説明申し上げましたような事情もありまして、いまの実績にとどまっておりますけれども、これを先ほど申し上げました水源涵養保安林を緊急に整備していくという観点に立ちまして、再検討いたしました上で、当面十カ年の間にさらにその整備充実をはかりたいということがこの提案の理由でございます。
  150. 川俣清音

    川俣委員 そこで、大蔵省から主計官がおいでになっていますので、この法律についての解釈を聞きたいと思うのですが、この法律は、緊急に整備をする必要を強調いたしております。しかも、時限立法でございます。時限立法というのは、その時限内に完成しようという法律の趣旨であります。そういたしますならば、法律に基づいて予算編成をするのが、大蔵省に与えられた任務だと思います。法律の命ずるままに予算化することが大蔵省の任務だと思いますが、大蔵省は、第一条の緊急に保安林を整備するということに重点を置いておられますか、あるいは四条の毎年度予算の範囲内にという点に重点を置いておられますのか、その回答によりましては、本案の修正の必要が出てくると思います。そうでなければ、大蔵省をなかなか制約するわけにはいかない。無効な法律であるならば、われわれはあえてこれを延長する必要もないであろうと思うが、大蔵省の見解を明らかにしていただきたいと思う。どっちに重点を置いておるのか。重点の置き方が四条ということならば、四条を廃止しなければならぬだろう。時限立法でありますから、おそらく期限内に完成しようという趣旨の提案だと思います。これは政府提案でありますから、閣議決定でありますから、大蔵省は閣議決定に従わなければならぬ義務を持っておると思いますが、おそらくこれに腰をかけて、予算の範囲内だから、十年であろうと、二十年であろうと、三十年であろうと、予算の範囲内においてそれは措置すればいいのではないかというのが、従来の大蔵省のたてまえでございますが、一体どちらに重点を置いて予算措置を講ぜられたのか。この法律では二十年の間に完成しようということでありますが、いや、そうじゃないのだ、予算の範囲内においてやるのだ、こういう考え方も出てこないとは限らぬと思う。なかなか大蔵省はそういう点はずるいですから、そこで明らかにしておいてほしいと思うのです。
  151. 青鹿明司

    青鹿説明員 もちろん、保安林整備法の趣旨といたしますところは、保安林の整備でございますので、そこに重点があることはもとよりだと存じます。ただ、現実の問題といたしまして、これを実行いたします際には、御承知のように、財源の許す範囲内でまず国有林の財源的な負担をいたすということになっておるわけでございますし、それで及ばない場合には、一般の会計からの繰り入れができるという規定が特別会計法にございますので、その際の国有林特別会計の経理状況なり、あるいは一般会計の財政状況なり、これはもちろん勘案せざるを得ないと思うのでございますが、やはりそこは極力法の趣旨に即しまして、できるだけの努力をしてまいりたい、かように考えております。
  152. 川俣清音

    川俣委員 できるだけの努力なんということじゃない。法律では緊急を要するというのだから、これを撤回するのなら別ですよ。予算の範囲内においてやるので、緊急ではないのだ、緊急であろうとも予算の範囲内ということに重点を置くならば、そういう解釈をされるならば——どうしても緊急だというならば、本委員会において予算の範囲内というものをとらなければならないと思う。大蔵省は目を白黒させるかもしれないけれども、これは予算の範囲内というのをとられたらたいへんなことになると思いますけれども、あまりこれに重点を置き過ぎて、立法の趣旨をじゅうりんするようであるならば——立法府は、こういう趣旨で立法の必要があるのだという政府の案に対していま審議している。せっかく立法府が立法しましても、行政府が予算の範囲内でということに重点を置くならば、置かさないように法律改正をしなければならぬということになる。そうでなければ本法案の趣旨が成り立たないと思う。成り立たない法案ならばあえて審議する必要はないじゃないかという議論になってくる。そこで、あえてお尋ねをしておる。あなた方は予算の範囲内においてにきまっておりますが、それもわからぬことはない。しかし、十年といい、あるいは二十年という——これはそういう経験がなければ別ですよ。十年で完成できなかった、もう一ぺん延長するという問題ですからね。これは十分予算的措置を講じておるならば完成できたのか、あるいは林野庁や農林省が怠慢で、あるいは能力がなくて、できなかったのかというと、能力がないのではないのだ、おそらく予算措置が十分でなかったのだということになっておるようでありますから、そこでお尋ねしておる。一体十年で完成できなかった責任はどこにあるのですか。大蔵省にあるのか、農林省にあるのか、この点を明瞭にしておいてもらいたい。そうでなければこの法律の延長が意味をなさない。また、延長しても完成できないようだったら無意味なんです。立法府は非常に責任がある。社会党とか自民党とかではなく、立法府全体として責任があるのです。
  153. 青鹿明司

    青鹿説明員 いままでの実績が確かに当初の計画に及ばなかったことは事実だろうと思いますが、ただそれがはたして予算の範囲内でということのためにできなかったのかどうかという点につきましては、私も実は本年初めて国有林の予算を持ちまして、過去のことはよく存じませんけれども、おそらく従来の国有林の収支状況等を考えてみますと、予算のためにできなかったのだとは考えられないのでございます。それ以外にいろいろの事情があるとは存じますけれども、やはり国有林自身の経営上の問題あるいはその後木材価格が非常に高騰いたしまして、なかなか民有林の所有者が買収協議に応じなかったというような事情があったのではないかと想像いたすわけでございますけれども、少なくとも過去の実績につきましては、予算が少なかったために実績が非常に下回ったということは、そのすべてが予算の責任ではないのではないかというふうに考えておりますので、先ほども御答弁申し上げましたように、もちろん、この法律の趣旨は私ども十分承知いたしまして、政府提案いたしたわけでございますので、この趣旨にたがわないようにいろいろ努力をすると申し上げる以外に、ただいまのところ、ちょっと申し上げようがないわけでございます。
  154. 川俣清音

    川俣委員 おそらく予算措置が十分でなかったために完成できなかったということは、大体明らかだと思う。予算が消化できないという事態もないようですし、予算を残してあるというような事態もないようです。不足であったということで進行できなかったということが明らかのようでありますから、どうも予算が十分でなかった。なぜ予算をつけなかったかというと、いや、四条に予算の範囲内とあるから予算をつけなかった、こう逃げるだろうと思うのです。そこで、先に路線を敷いて逃げられないようにということで、あなたに質問した。どっちに重点を置きますか。そこで、また延長されるのですけれども、もしまた二十年で完成できないなら、もう恒久立法にするか何かしなければならぬわけです。あるいは予算の範囲内においてというようなことを削除するか、あるいは緊急というようなことでなくて、もっと緩慢でもいいのだ、こういう法に変えるか、どっちかしなければ、立法府の責任は私は明らかにならぬと思う。自分で法律をつくっておって、できないような法律をつくっておったのでは、これは無責任のそしりを免れないと思う。そういう意味であえてあなたにお尋ねするのです。あなたは一体どっちに重点を置いておりますか、もう一度お伺いいたします。
  155. 青鹿明司

    青鹿説明員 先刻も申し上げましたことを繰り返して申し上げることになると思うのでございますが、やはり法律自身の趣旨を尊重するということは、われわれ財政当局としては当然であろうかと思います。そこで、予算の範囲内の解釈の問題でございますけれども、形式的には、これはもちろん予算の範囲内でしか執行できないわけでございますが、しかし、実際どういうつもりで予算を編成するかという、われわれの財政編成の態度の問題であろうと思うのでありますが、これにつきましては、もちろん国有林の財政状況がどうなるかという点が一番問題点でございますので、極力合理化につとめまして、この計画の遂行に支障がないように、林野庁ともども私ども努力すべきであろうと存じておりますが、今後とも財政面からこの計画が制約されるということがないようにつとめてまいりたいと存じております。
  156. 川俣清音

    川俣委員 私はあえてこれをたびたび繰り返すのは、前に第十九回国会の本委員会において、この点を非常に懸念をいたしまして、全会一致で附帯決議を付しております。その趣旨は、私ここで時間がないから読み上げませんけれども、まず、この趣旨に基づいてすみやかに実行すること、それから、保安林制度というものは、恒久的な保安林制度を確立すること、それから、「国土保全、災害防除の徹底を期するため、治山施設、造林、林道事業並びに海岸その他の防災造林事業強化拡充を行うこと。」「国土綜合利用の見地から、林道の利用開発を一段と積極化して本来の機能を充分発揮せしむると共に、併せて開拓事業との関係をも考慮して、これが強化促進に寄与し得るよう更に一層の考慮を払うこと。」「民有保安林を買取る場合、不必要にその個所を拡張する事なく、評価については公正慎重を期し、所有者に不安の念を抱かしめざるよう留意すること。」最後に、「森林資源の過伐を防止し、併せて森林の保安的機能の確保に資するため、パルプ用材、抗木、電柱等につき、利用の合理化、未利用資源活用の徹底的強化を期すると共に、止むを得ざる不足分については外材の輸入をし、貿易方式についても検討すること。」こういう附帯決議がなされておりまするし、参議院におきましても、ほぼ同様な決議が行なわれまして、促進の決議が行なわれておるわけでございます。これは国会の意思であることは間違いない。しかも、多数決じゃなくて、全会一致の決議でございます。こういう決議に従わないのは、一体林野庁なのか、あるいは大蔵省なのか、明らかにしなければならぬと思うのです。あえてお聞きする理由はここなんです。(「それは政府だよ」と呼ぶ者あり)いや、政府でもけっこう。政府だということになると、政務次官に聞かなければならぬということになる。
  157. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 十年また期間を延長していただくというのは、最初の計画が全然できなかったからというのじゃなくして、先ほど御説明申し上げたように、いわゆる規模の拡大も新しい計画も含まれて、必要に応じてそういうお願いをしておるわけであります。しかし、御指摘になりましたように、計画どおりいっていないのは事実でございます。そこで、決して林野庁怠慢でもなければ、熱意がなかったわけでもない。相当やったはずなんです。私から言いにくいことでございますが、それは大いに予算が関係しておった向きはあったろうと想像いたします。ただいま大蔵省も答弁いたしておりまするように、予算の範囲内といってはありまするけれども、それによって事業が阻止されたり、進捗状態が云々されることがないように配慮すると言っておりまするし、また、この予算の範囲内といっておりましても、予算を御議決いただくのは国会でございますから、決して行政に云々されるとは考えておりません。今後私どもも予算獲得のためには皆さま方の力をかりて、そうしてまた事業が進捗していけるように大いに努力いたしたいと思っておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
  158. 川俣清音

    川俣委員 われわれの予算の修正権があるならば、あえてこういう質問はしないのです。だが、修正権が国会にあるなしの議論がありますから、権限のあるのは立法なんですね。そこで、立法上大蔵省を制約するような法文に変える必要があるんじゃないかという議論にならざるを得ないのです。  それでは、大蔵省も、いま主計官じゃちょっと返事ができないでしょう。大臣を呼ばなければならぬということになると、時間がかかりまするから、政務次官政府を代表して——予算編成は法律に従わなければならない、法律に従わない予算編成なんというものはないのです。だから、この予算というものは、法律行為を達成するための予算、こういうふうに読みかえなければならぬと思うのでありますけれども、そういう意味で、なお保安林整備については積極的に予算化について努力するというならば、あえて私はこれ以上追及しないのです。
  159. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいまお教えをいただきましたように、読みかえるくらいの精神で予算の獲得に努力いたしまするから、さよう御承知を願います。
  160. 川俣清音

    川俣委員 大体この程度でこの問題については終わります。  次の問題であります。先に法文のほうをお尋ねをします。一条では「森林」という表現を使っておりますが、あとのほうになりますると、「森林等」ということで、森林及び原野その他の土地を含めて「森林等」こういうふうになっておりますが、「森林等」と「森林」の相違、また保安林原野というものがあるのではないか。「森林」とは、これは林野庁規定によりますると、叢生ぐあいが三%以上なければならないというように規定をしておるようでございます。したがって、原野と森林とは明らかに林野庁は区別をしておられるはずであります。前の「森林」というのは、従来の「森林」を意味するものでございますか、やはり「森林等」という意味でございますか、この点を明らかにしてほしいと思います。
  161. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、第四条で、「国は、第二条第一項の保安林整備計画に基き、毎年度予算の範囲内において、森林及び原野その他の土地(以下「森林等」という。)」こういうように書いてございます。それで、保安施設事業等を行なう場合は、これは必ずしも森林そのものの状態のみならず、原野等、そういう状態の土地もございますので、こういう表現になっている次第でございます。
  162. 川俣清音

    川俣委員 答弁は少し足らないようですけれども……。  次に、基本的にお尋ねしますが、林業政策全体から見まして、問題は非常に多いと思います。というのは、従来農林省がとってまいりました林業政策は、資源培養、森林の効用に重点を置いた、いわゆる人命の保護、あるいは民衆の保健、あるいは産業の基盤擁護というような立場をとって、資源保護にかなりの重点を置いた林業政策が行なわれてまいりましたが、戦争から戦後にかけまして木材需要が非常に強烈になってまいりました結果、林業政策は、木材供給源としての林業政策に変わってきたわけでございます。それだけに、一面において資源的な林業効用を度外視するような風潮がなしとは言えないのでございます。そこで、あらためて保安林の整備計画が打ち立てられなければならなくなった、私はそう理解をいたします。そこで、お尋ねをしなければなりませんのは、毎年頻発する災害を防除するために、保安林を整備強化することが強く要請されております半面、整備強化策は、指定件数を必ずしも拡大することではないようでございます。保安林の指定件数を必ずしもふやすことではないのではないかと思われます。むしろ、保安林としての適性を欠くようなものは廃止しなければならぬものもあるのじゃないか。わずかな小部分を保安林といたしていましても、保全機能が十分発揮されない。ただ単に指定されておるにとどまるような保安指定もあるようでございます。もちろん、これが風致保安林であるとか、あるいは魚つき林であるとか、あるいは社寺林に付属する土地というように、小面積で保安林の機能を達成させるというものもありますけれども、本法の対象になるような制限保安林は、小面積では保安林の機能を発揮することはできない、国土保全の事業を達成することはできないということで、林野庁では流域別の保安林整備計画を立てておられるようでございます。そうしてまいりますと、件数をふやすことではなくして、保全機能を完備しようという方向に今度は保安林計画を進めていかれるように説明されておるわけであります。私は、これはごもっともだと思うわけでございます。今後流域別に保安機能を発揮させよう、国土保全を達成をさせよう、あるいは下流の都市の工業用水、またはますますふえてまいるであろう飲料水筆の、国民生活上必要な水資源供給するという意味における保安林の整備というものが、緊急欠くべからざる要求として起こってきておると思うのです。こういう水資源の確保ということになってまいりますと、水面積では下流の工業用水、飲料水などは確保できない。下流における需要の旺盛なものに対して、わずかな面積の保安林では、当然その機能の発揮ができないことは明らかであります。そこで、おそらく上流の流域を拡大をして、保安林を指定していかなければならない方向をたどるであろう。そのためには、民有保安林等も買い上げていかなければならないというのが本法の趣旨であろう、私はそう理解をしておるのですが、私の理解が誤りでありますかどうか、政務次官からひとつ御答弁願います。
  163. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 御意見のうちにもありましたように、保安林の性格から申しまして、また種類から申しまして、小規模たりとも維持していかなければならぬ、残していかなければならぬところもあるかと思います。しかし、全体的な考え方は、ただいま先生がおっしゃいましたその精神に間違いないと考えております。そのとおりでございます。
  164. 川俣清音

    川俣委員 そこで、お尋ねをしなければならぬのは、民有保安林につきましては、免税の措置等を講じておりますが、この民有保安林の存在は、町村については何らの措置が講ぜられておらぬ。保安林の機能は、下流の工業地帯あるいは都市地帯の水資源の確保に重点が置かれておるわけでございます。すなわち、保安林は下流の住民及び産業の保護のために設けられるものでありますが、保安林の所在市町村にとりましては、何の恩恵がないばかりでなくて、持っておるところの山林地が無税ということになって、財源の収入の道を閉ざされるものである。たとえば風致保安林であるとかそういうものでありますれば、その村の利益のために存在するものですから、これは別です。制限保安林のような重要保安林になりますと、山の奥ではそんな保安林にあえて指定してもらいたくないのだ。わずかの面積しかない山村において、膨大な保安林地として指定されることはありがた迷惑だということになる。負担こそ増せ、収入がないことになる。上流地帯はそれだけ土地がないのですよ。それを唯一の財源にしようとするときに、保安林だ、地租免除ということになる。従来は国有林であった場合でも、地租免除のところだから所在町村交付金というものの算出方法がないということで、国有林地内であっても所在町村に対する交付金がなかった。これは私がこの前からやかましく言いまして、ようやく林野庁も踏み切りまして、いまでは保安林に対しましては所在町村交付金を出しておりますけれども、この算出の方法が、保安林という機能だから——固定資産税に当たる部分を所在町村交付金として払おうというのが、国有財産所在町村交付金の意味なのです。したがって、免租になるようなところは固定資産税がないのだから払わせないというのが従来のたてまえだったのを、ようやく払わせるようになりましたものの、町村にとりましては、経済林でないから収入はなし、土地そのものへの税金がかけられないということでありますので、これについては何らかの救済策を講じなければならぬのじゃないか。ただ単に所在町村に対する交付金だけでは不足なんじゃないか。わずかな面積であれば、それもがまんできるでしょう。下流の住民のために幾らか利益になることであれば、ある程度まではがまんしようという町村もないことはないと思いますが、面積が膨大になってまいりまければ、被害もまた甚大なんです。貧弱な町村です。東京みたいなところはいいですけれども、貧弱な山の中の町村、それよりも財産のないところが課税できないということになってまいりますならば、貧弱町村はますます苦しくなるのじゃないか。これは下流のほうの利益のためですから、むしろ利用税等をかけてはどうかと思いますし、国が処置するということにもならなければならぬ。全体のための国土保全としては国がやるが、あるいは下流の都市、産業があわせて利用税を払う、そういう措置を講じなければならないと思いますが、農林省並びに大蔵省の見解を承っておきたいと思う。
  165. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま国の方針によりまして保安林を持っておる、そこで、保安林の所在の市町村が非常な犠牲を払っておる、これを何か保護助成をしていかなければいかぬという御意見、ごもっともだと思います。そこで、御指摘にもありましたように、措置を講じております。不完全なものではございましょうが、とっておりますので、まず、事務当局からどのようにして市町村に手当をしておるかということを御説明さしていただきたいと思います。
  166. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林所在市町村の保安林に関する限り、固定資産税が免除になっているということは、お説のとおりでございまして、その分の減収については、一応措置といたしましては、そのために減収になるところの基準財政収入を上回る需要額、その分についての交付金が算定をされ、交付されるということで、一応理屈は合うわけでございます。しかしながら、  一方、お話のとおりに、保安林の整備によってその利益を受けるものは下流地帯でございますから、そこで、その下流地帯の受益者が、その受益の程度に応じてそれをその上流のほうへ還元していくという考え方も、まことにもっともだと存じます。ただ、その受益の範囲、あるいは受益の程度、それの測定がなかなか技術的に困難であるという面もございますので、なお十分に検討を進めていきたいと思っております。
  167. 岡田純夫

    ○岡田説明員 いま林野庁長官からお話のありましたとおり、国有資産所在市町村交付金等につきましては、これはそのまま普通固定資産税並みのものが交付されます。一方、一般民有林につきましては、基準財政収入の計算上非課税でありますから、それを差し引いたところの、いまのお話のように基準財政需要額との差額、それの七〇%でございますけれども、いま提案いたしておりますところの交付税法の改正案が通過いたしますと、七五%までは補てんされます。それからまた、そういう民有林等の多いような山間地に対しましては、交付税を傾斜配分いたしておりまして、来年度もさらに六十億ばかり強化いたしたい、かように考えておりますから、それらと相まちまして措置できる、かように考えております。
  168. 川俣清音

    川俣委員 そういう意味で、民有林を買い上げる理由になって、民有林では現行交付税を七五%から七〇%加味するというのでございますが、山村というものはそれくらいの援助ではいかんともしがたい状態であることは、御承知のとおりであります。しかしながら、これらの山村あるいは町村の長年の森林育成の努力によって、森林資源というものが保護され、それが水源林になっておる。長年の努力です。わずかな努力じゃないわけです。これに対して報いるところがなければならぬのではないか。膨大な利益を得ようとする水資源でございます。したがって、貴重な水資源を保全をしてくれるこの地域に対して何らか報いるところがなければならぬのであります。しかも、裕福であれば別にして、恩恵を受ける下流のほうが裕福であって、利益を提供するほうが貧弱だという状態なんです。利益の提供者が貧弱で、受けるほうが裕福であるという、こういう状態は、自治省としても好ましくない状態であろうと思うのです。何らかの措置を講じなければならぬのではないでしょうか。  そういう意味で、国有林として買い上げるということについて、自治省があっせんされれば別にして、なかなか民有保安林などの買い上げについては、町村などが渋るのもあるようでございます。なかなか協力してくれないところもあるようでございます。そういう意味で、保安林にすること自体所在町村では渋るという状態が出てまいります。この保安林を充実させようとする趣旨と異った意見が町村から出てまいりますのは、救済手段が十分でないからではないかと私は思うのです。御趣旨はわかるけれども、われわれを犠牲にするなという声が出てきます。それが協力されないゆえんだと思います。そういう意味からも、国としてもっと進んだ救済策を講ずべきではないであろうか。山村は貧弱な町村である。それが下流の最大の幸福をもたらしているのでありますから、一番いいのは私は利用税だと思います。利用税というものがある。しかし、そこまではなかなか踏み切れないであろうと思いますから、財政当局ばかりでなくて、自治省も、この森林資源を保持しておる、恵まれない山村に対して、特別な施策を講ずべきである。そのことは保安林の整備に大いに役立つであろうということを申し上げて、役立つには役立つけれども、犠牲にしてはならぬのではないかという意味でお尋ねしておるのですが、もっと善処の方法がないものでしょうか。
  169. 岡田純夫

    ○岡田説明員 下流と上流の問題でございますが、普通交付税は一応地方団体の財源であるという考えからいたしますと、いわば下流のほうの税金がふえて、上流のほうがただいまのように非課税になってくるというような結果から、逆に申しますれば、交付税は下流のほうが減ってまいって、上流のほうがふえてまいる。したがって、交付税において下流から上流のほうへ還元しているというような考え方もできるではないか、かように思っております。なお、そういうような観念論以外に、具体的措置といたしましては、特別交付税におきまして、低湿地の市町村が大半でございますので、低湿地の市町村に対しては特別交付税を本年度も相当の力を入れて配分いたしたつもりでございます。なおさらに、こういうふうな山間地に着目いたしまして、辺地整備債、これが昨年度までは十億でございましたけれども、本年度は十五億にいたしました。総合的な施策を講じてまいりたい、当然山村あたりに重点的に配分するようにいたしたい、かように思っております。
  170. 川俣清音

    川俣委員 不十分ですけれども、さらに努力をされないと、保安林整備の目的が達成できないであろう、こういうところから、山村にも日本全体の国民生活のために進んで協力を願う、協力をされたからには、その犠牲に対して報いるところがなければならないということで結論にしたいと思うのですが、保安林整備の一番難関でありますのは、山村における貧弱自治体の財政のことについて努力を払っていかなければならぬ。自治省ばかりでなくて、林野庁もまた努力を払わなければならぬだろうと思いますが、林野庁長官の御答弁を願いたいと思います。
  171. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林の整備を進めてまいります上に、山村の住民の福祉については特に考慮を払わなければならない。今後その点に十分留意して進めてまいりたい、こう考えます。
  172. 川俣清音

    川俣委員 保安林整備について特に考えられますことは、昭和三十五年から六、七、八年とかけて高度成長が農村にもたらしたものは、急激な労働力人口の流出でございます。特に山村は、単に人口の流出ばかりでなくて、戸数の激減になってあらわれてきておりまして、住民の不足があらゆる仕事の障害になるばかりでなくて、農業にも大きな被害を与えている。高度成長の中で、多くの住民を持って、低廉な労働賃金でありましたものが、都会に流れてくることが所得倍増上必要だといわれておりましたが、最近の趨勢は、むしろそれが農業の発展ではなくして、逆に農業を大きく阻害する要因となってきております。このことが、また林業経営の上にも大きな不幸をもたらしておるのではないかと存じます。今後造林計画をいたすにいたしましても、保安施設をいたすにいたしましても、なかなか山村においては安価な労働力が得られなくなってきた。そういうことで、なかなか昔のように安価な労務提供のできなくなってきた今日におきましては、保安林施設につきましても多大の経費をかけざるを得なくなってきたということが、保安林整備をおくらしておるゆえんだと思う。大蔵省などは、昔のとおり安い賃金で得られるのだろう、労働力も豊富であろうと言われておりましたけれども、最近は山村ほど人口及び戸数の流出が激しくなってきた。そういう中において、あらためて遠い地域に労働力を運ばなければならないということになると、保安施設にいたしましても経費高になる。なかなか進行しないという事態が起こってきておるのではないか。そういうところからも、予算化については十分の措置をとらないと、また取り残されて、せっかくの保安林整備事業というものが進まない。そのうちに災害が起きて、また反省をしなければならないという政治責任も起こってくのではないかと思いますから、十分にいまのうちに予算措置を講じまして一だんだん労働力が不足になり、人口が希薄になったところへ事業をするよりも、いまのうちに、これらの住民が存在するうちに、生存するうちに処置しなければならぬのじゃないか。これはほんとうに言うに足らないですよ。里から山の奥へ人を運んで仕事をさせるということは、なかなかできることじゃない。これを予算の範囲だといって遅々とやっておったのでは、とてもこれは達成できるものじゃないと私は憂うる。そのうちに災害が起きたらどうなるか。まことに膨大な国費をむだに使わなければならないという事態が起こるであろうことは、多年の災害でわかっておる。台風のルートであります。しかも雨量の多い日本であります。峻厳な地帯であります。こういう地帯においては、すみやかに処置することが必要だと思う。治山をはじめとして予備工事をするところに、水源地を培養しなければならないという重大な運命を負わされておるのであります。手おくれになればなるほど完成がおくれるということをひしひしと感じる。政務次官などは次官をやめるからいいのだというふうにのんびりとしておるけれども、国民はそういうわけにはいかない。やめるわけにはいかないのだから、ひとつその点で政務次官の決意をお伺いしたい。
  173. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 保安林整備のためにきわめて適切な御意見を聞かしていただきまして、そのとおりと思います。先ほどお教えいただきましたように、読みかえの精神で大いにひとつ予算の獲得に努力をいたしまして、整備をはかっていきたいと思っております。
  174. 川俣清音

    川俣委員 林野庁にお尋ねをしますが、民有保安林につきまして、従来も補助助成をするという考え方が出ておりますが、これは保安林地帯について義務を課しておるから、あるいは制限をしておるから、弁償的な意味で助成をしておられるのか、あるいは禁伐にしておるために、禁伐の損害を補償するという意味での補償なのか、補償の意味が徹底しておらない向きがございます。税法上は免除になりますが、単にそればかりでなくて、保護助成の必要があるというところから、金銭的に補償のような支払い方をしておりますが、これはどういう意味なのであるか、その算出の基礎はどこに置いておるのであるか、お尋ねをしたいと思います。
  175. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林の補償につきましては、禁伐林と単木択伐作業の保安林の二つが対象になっております。これに対しては、その森林の所有者が、そういう保安林に指定されたことによって、通常受けるべき損失を補償するという考え方でございます。
  176. 川俣清音

    川俣委員 次にお尋ねしなければならぬのは、流域別に広範に保安林を買い上げておることは、民有林をあえて買い上げていかなければならない理由が理解できないということからの反対も相当ございます。ここで民有林の買い上げについて、その理由を明らかにしてもらいたいと思う。私あえてこんなおそくまでこの問題をお聞きしますのは、与党からも早く終わるようにという御催促でありますけれども、保安林については、国民の権利義務に関係がある問題であると同時に、国民からひとしく理解をされなければこの保安林の整備というものが達成できない、広く理解を求めなければこの事業は達成できないのでありますから、私のために質問しておるのではなくて、国民に協力を願わなければならない。ただ法律を通せばいいのだということでは済まない。ほんとうに国民の理解を求めなければこういう問題は達成できない。多数決で通せばいいのだという問題ではないのであります。できるだけ全会一致で、国の強い要請だという関係ができなければ、この目的を達成できないと思って、あえて私たちは時間をかけておる。何もむだにかけておるつもりではない。そういう意味で、民有林に対して買い上げなければならない理由を私は私なりに理解しておりますよ。理解しておりますが、林野当局の意見を明確にしておいてほしい、こう思うのです。
  177. 田中重五

    田中(重)政府委員 民有保安林を国で買い上げる対象地域といたしましては、水源涵養保安林並びに土砂流出防備林と土砂崩壊防備林の三つでございます。それで、これらの保安林につきましても、こういう保安林の森林施業あるいは保安施設事業の適正な実施、あるいはまた保安林の管理の適正その他の面で、保安林の維持について、民有林の場合にもいろいろ助成指導の道はございます。ただ、特に地域によりましては、重要流域の上流地帯において民有林のままでおきますれば、いま申し上げたようないろいろの保護助成の道はあるにしろ、なおかつ保安林としての機能を発揮することがむずかしい、特にその維持管理上の面で、国がこれを国の所有において管理することが、さらに保安林の機能を発揮させることに適切である、そういう方向でなければその目的を達成し得ないと考えられる地帯がやはりあるわけでございます。そういう分については、国の責任において管理をしなければならぬ、こういう考えで、買い上げの対象として選んでまいる、こういうことでございます。
  178. 川俣清音

    川俣委員 よくわかりました。そこで、こういう問題が起きてくるわけです。国有林にしても、民有林と同じような弊害が起きるのではないか。なぜかならば、国有保安林について立木処分をするというようなことをいたしますならば、民有林であっても同じゃないか。国有林責任を持ってあと地の培養、あるいは伐採地における表土の流出あるいは災害予防等を講じながら、国は採算的でなく伐採をするのだという意味ならば、民有林にしておるものを国有林にしなければならないという理由になるだろうと思います。ところが、国有林になって立木処分をするように民間に処分をさせるのであれば、民有林であっても何も支障がないのではないかという議論もあるようです。そういうところから、民有林をあえて買い入れに進むことについての反対も起こってくるようでございます。またもう一つ、せっかくいままでは水源林培養のため造林などについては、国が一般会計でやったのに、最近は公団、第三者造林をやらしておる。そういうことであるならば、あえて民有林であってもいいのじゃないかという議論も出ておるようでございます。これらの議論に対して、これはやはり一つの世の中の流れとして、そういう議論がありますから、これに答えなければならないと思いますので、あえて質問をいたしておるわけでございますが、御答弁願いたいと思います。
  179. 田中重五

    田中(重)政府委員 保安林の中でも、確かに立木処分はございますが、そういう場合の立木処分の条件といたしまして、その保安林の保安機能を阻害しないようなもろもろの制約といいますか、条件をつけて、そうして売り払っているわけでございます。したがって、その条件を十分に順守するということが励行されますれば、立木処分といえども、必ずしも排除しなければならないということはないと思いますが、往々にして、そういう場合には、必ずしも適正な伐出が行なわれていないという場合もあるかと存じますので、十分にその点は厳重な監督を実施してまいりたい、こういうふうに考えている次第でございます。  なお、公団の水源林造林につきましては、これはやはり保安林内の仕事ではございますけれども、先ほど申し上げましたような、あえて国の所有にして管理しなければならないという程度の緊要性を持たない場合には、民有のままでその施業にまかせるという場合もあるわけでございます。
  180. 川俣清音

    川俣委員 公団の造林については、前はこういう分収でなくして、国が、国土保全のための水源林の培養であるからということで、一般会計で負担をして造林計画をやっておったことがあるわけです。これを一歩後退いたしまして、官行造林になり、分収造林になり、さらに公団造林に進んできたわけであります。そういうところからいって、一体保安機能を十分に発揮させるためにやっておるのか、あるいは独立採算にまかしてもいいということでやっておるのかということが疑問になってくるのです。一方、保安林整備のためには犠牲を払わなければならないということで、あえて国が買わなければならぬということを強調しておきながら、一方においては公団造林でもいいんだ、あるいは分収造林でもいいんじゃないかという考え方の間に、矛盾ができてくるのではないか、こういう意味でお尋ねしているのですが、長官考えはどうか、さらにお伺いしたい。
  181. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの森林開発公団が造林をやっておりますのは、お説のとおりに、保安林として指定された個所あるいはその予定地に水源林造成を行なっておるわけでございます。このような仕事は、かつては補助事業として水源林造成ということで行なわれた時代があったのでございますが、この水源林造成の重要性にかんがみまして、これを補助事業のままでまかせました場合には、あとの下刈り以下の管理についても、その森林所得者の自己の負担において進めなければならないということがございます。それに対しまして、公団造林の場合には、新値のみならず、あとの管理保育につきましても、その経費の先行負担といいますか、これを公団において負担をいたすために、補助事業の場合よりはさらにその管理が徹底できる、行き届くというような有利な面があるという考え方に立っているわけでございます。そういう意味合いからいいまして、水源林造成のような重要な仕事につきましては、かつてのような補助事業よりは、現行制度のほうに利点があるのではないかというふうに考えております。なお、公団の分収造林につきましては、十分に検討を進めてまいりたい、こう考えている次第でございます。
  182. 川俣清音

    川俣委員 この質問で終わりたいと思いますが、前の十九回国会委員会のときにもかなり強調されまして憂慮された問題は、経済的には価値が低いが、国民経済的には非常に価値の高い保安林を国有林野が買い上げるということになると、経済ベースに合わないことになるのではないか。やはり独立採算制の強い制度のもとにあるところの国有林というものが、経済林と不経済林というか、国土保全の意味からいうならば非常に経済性の高いものでありますけれども、経営からいけば不経済的なこの保安林の占める面積が大きければ、林野特別会計というものは非常に窮屈な事業体となるのではないかということを憂えて、一般会計でこれを買ってはどうかということが、前回の保安林整備のときに問題になったのでございます。その当時は運営を見た上でさらに考慮いたしましょうという答弁になっておるようでございますが、現にいまの国有林野事業会計はかなり赤字で悩んでおるようでございます。一方において伐採をさらに進めていかなければ経営が困難だという状態も起こってきております。もちろん、原木の必要から伐採をするなら別ですが、経営が困難だから資源を伐採するというふうなことは、国有林の性質からあるものではないと私は思います。そういう意味からも、だんだん財政的に窮屈になってまいります国有林野事業会計としては、国土保全という使命をになっております保安林等につきましては、国有林野事業が実施の面において担当することはいいでしょうが、むしろ、企画庁とかあるいは一般会計で保安林整備事業を行なうべきではないか。国土保全という意味が強調されればされるほど、下流の産業の発展のために、あるいは下流の都市の工場の工業用水達成のために、国土保全という使命をになう保安林であるとするならば、これは一般会計によるか、特別会計の制度によるか、むしろ、これらの予算は企画庁の予算として組みかえて、実施の面では林野庁が引き受けるというような方法が考えられるべきではないかと思うのです。独立採算のものにおいてこういうものを持たせるということは無理ではないか。企画庁の水資源局はいかに考えておりますか。
  183. 崎谷武男

    ○崎谷政府委員 水資源開発促進法におきまして、もっぱら水資源の開発をするにあたりまして、水源の保全、涵養と相まってということをはっきりいっております。水資源開発促進法におきまして、利水の必要で水を開発いたします場合に、治山治水に対して十分な考慮を払わなければならないというふうになっております。したがいまして、水資源開発促進法の運用につきまして、治山治水あるいは水源の涵養というようなことにつきまして、十分に各省相談してまいるわけでございます。したがいまして、いまのお話の負担の問題その他につきましては、十分に各省間で調整した上で、間違いなく運用してまいりたい、かように考えております。
  184. 川俣清音

    川俣委員 一言警告をして、終わりたいと思います。  保安林整備は、緊急措置として臨時立法ができたわけでございまして、その目的が達成できないで十年間むだに経過したというわけではないが、なお進捗率半分にも達しないという状態、今後災害防止の上からも、あるいは水源保持の上からも、必要の度合いはさらに増してきておるのでございまして、さらに保安林を強化整備していかなければならないという理由で、本法がさらに延長されるわけであります。いたずらに延長することなく、その実施を要望するために私どもは協力いたしたいと思うのでございまして、この予算化のためには、この委員会の審議の経過を十分予算の実現の上にあらわしていただかなければならない。そうでなければ法律をもてあそぶものだと断言せざるを得ない。ただ法律だけ通し、実行はやらないんだということであれば、これは意味をなさない。そういう意味でなく、可及的すみやかな措置が必要だということが、法律以上に国民の要望でございますから、その要望を達成していかなければならないということを警告をしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  185. 高見三郎

    高見委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。      ————◇—————
  186. 高見三郎

    高見委員長 この際、池田清志君外二名から、酪農振興対策等に関する件について決議すべしとの動議が提出されております。  趣旨弁明を許します。池田清志君。
  187. 池田清志

    ○池田(清)委員 私は、自由民主党、日本社会党及び民主社会党の三党を代表いたしまして、現下喫緊の急務でありまする酪農振興対策について、決議案を提出いたします。  まず、案文を朗読いたします。    酪農振興対策等に関する件(案)   政府は、酪農等振興の緊要性にかんがみ、生産者生産意欲が一層向上されるようすみやかに左記各項の実現に努めるべきである。    記  一、酪農経営の安定のため、現行の飼料政策を根本的に再検討するとともに、この際、特に政府手持飼料価格の引下げに努め、政府管理の飼料確保に努めること。  二、三十八年十月一日以降値下げされている生産者乳価が復元されるよう目下進行中の中央調停において、可及的すみやかに妥結を見るよう努めること。  三、学校給食の用に供する牛乳については、全児童生徒に対し国内産のものを計画的に供給するよう措置すること。  四、昭和三十九年度(四月一日以降)原料乳及び指定食肉の安定基準価格の決定にあたり、畜産物価格安定法の趣旨に基づき、生産費(含自家労賃)と再生産を確保することを旨として、適正な価格を決定すること。  右決議する。  理由につきましては、諸君が十分御承知でありまするから、省略させていただきます。  どうぞ全委員の御賛同をお願いいたします。(拍手)
  188. 高見三郎

    高見委員長 おはかりいたします。  池田君外二名提出の動議のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  189. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  ただいまの決議について、政府の所信を求めます。丹羽農林政務次官
  190. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま満場一致で酪農振興対策に関する御決議がなされました。政府としましては御決議の趣旨を大いに尊重いたし、今後善処するように検討いたしたいと考えます。(拍手)
  191. 高見三郎

    高見委員長 なお、本決議の関係当局への参考送付等の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じまするが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  192. 高見三郎

    高見委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、明二十七日午前十時から、理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後九時七分散会