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1964-03-06 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月六日(金曜日)    午前十時十七分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 足鹿  覺君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       大石 武一君    大坪 保雄君       加藤 精三君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    小枝 一雄君       舘林三喜男君    寺島隆太郎君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤田 義光君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    松浦 定義君       湯山  勇君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         水産庁長官   庄野五一郎君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  前田 利一君         外務事務官         (アジア局賠償         部長)     卜部 敏男君         農林事務官         (水産庁漁政部         長)      和田 正明君         参  考  人         (東京大学経済         学部教授)   大内  力君         参  考  人         (東京大学農学         部助教授)   加藤  讓君         参  考  人         (東京農業大学         講師)     服部 知治君         参  考  人         (協同組合短期         大学講師)   三輪 昌男君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月六日  委員伊東隆治辞任につき、その補欠として三  池信君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八三号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八六号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第九〇号)  農林水産業の振興に関する件(日韓漁業交渉問  題)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農業改良資金助成法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案、以上三案を一括して議題といたします。  去る三日の本委員会の決定に基づき、本日は右三案の審査の参考に資するため、農林金融制度のあり方、問題点等中心に、参考人の御意見を聴取することといたします。  御出席参考人を御紹介申し上げます。東京大学経済学部教授大内力君、東京大学農学部助教授加藤讓君、東京農業大学農学部講師服部知治君、協同組合短期大学講師三輪昌男君、以上四名の方々でございます。  参考人各位には、御多忙のところ当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。広い角度から率直な御意見を賜わりますようお願い申し上げます。  それでは大内参考人からお願いいたします。
  3. 大内力

    大内参考人 私が大内でございます。きょうここで議題になっておりますのは、公庫法改正その他の件でございまして、それぞれのこまかい問題点というものも拾えばいろいろあるかと思います。しかし、その点はまた後に加藤さん以下御専門の方も来ておられますから、そういう方々からもいろいろ御意見があるかと思いますので、私は多少総論的になりますけれども、農業金融のあり方なり、あるいは農業金融問題点なりというものについて、日ごろ考えております一端を申し上げまして、御参考に供したいというふうに思うわけでございます。  今度のこの改正の御趣旨を拝見いたしますと、要するに農業金融というものを一方では拡大すると同時に、他方では、たとえば利子率を下げるなり、あるいは償還期間を長くするなりいたしまして、農業のために便宜をはかる、こういう御趣旨かと拝察したわけです。そのこと自体はもちろんある意味でたいへんけっこうなことでございまして、それが農業のためにもちろん役立つということは、私も認めるのにやぶかさではないわけです。ただ、今日の日本農業のいろいろな状態、ことにここ二、三年非常に進んでまいりました農業構造改善事業、こういうものとの関連において考えますと、ただこういう農業金融についての多少の手直しをする、こういう程度のことではたして十分かどうか、それで今日の日本農業が持っております問題によくこたえ得るかどうか、こういうことになりますと、私は率直に申しまして非常に大きな疑問を持つのでございまして、事を農業金融に限りましても、もう少しいわば抜本的な農業金融考え方というものを取り入れませんと、おそらく今日の問題には対処できないのではないか、こういうふうに考えております。  そこで、このことにつきまして多少私の考えておりますことを申し上げたいわけでございますが、主として申し上げたい点は二点ございます。  一つの点は、農業金融というものを農業政策全体の中で、どういうふうに位置づけるかということです。それはどういう意味かと申しますと、皆さまもよく御承知のとおり、特に最近の農業政策体系の中におきましては、一口で申し上げますと、補助金から金融へとよく世間でいわれておりますが、必ずしもそれは補助金を削った——削られたものもございますけれども、しかし、必ずしも補助金が全然なくなったということではございませんが、少なくとも農業金融というほうに相当強いウェートをかけまして、それによって農業政策を展開していこう、こういう考え方がここ数年来非常に強くなってきているように思われる。そういう意味できょう問題になっております農林漁業金融公庫のいろいろな資金の運営というものも非常に拡充されてまいりましたし、そのほかに農業近代化資金をはじめといたしまして、いろいろな政策的な金融ないし、いわゆる制度金融というものが拡大されてきたわけです。こういう金融的な措置、それはいずれにせよ低利資金農民に対して供給する、こういう役割を果たしてきたわけでございますが、こういう金融的な措置が、もちろん今日までの農業の展開というものに役割を果たさなかったわけではないのでございまして、それはそれなりに一応の成果をあげたと言うことができるかとも思います。ただ、われわれがいろいろ農村を回ってみますと、どうも私は率直に申し上げますと金融という手段では解決できないような問題というものが、非常に大きくなってきているのではないか、また今日まで行なわれてまいりました金融を拡大してくるという政策が、これからたいへんむずかしい問題を生むような、そういう事態がだんだん予想されるようになってきているのではないかという感じを持つのでございます。そういう意味で、この農業政策の中で農業金融というものをどういうところに位置づけ、それにどの程度の力を持たせるか、そして金融以外の政策でどれだけそれをカバーするか、こういうことを今日抜本的に農業政策体系の中で考え直してみるということが、どうしても必要になっていくのではないかというふうに思うのです。そのことをもう少し金融だけに限りまして具体的に申し上げますならば、たとえば構造改善事業というものが御承知のとおり各地で手をつけられておりますけれども、しかしこれに対しましては農民側からは非常な狐疑逡巡とでも申しますか、なかなかそれについていけないという動きがかなり強くなってきているように思われます。最初の一年、二年のところはかなりすでに成果のあがっておりますような、そうしてかなり積極的な村が選ばれて、パイロット地区ないしは一般地区として指定されておりますから、まだしも構造改善事業というものが動いていたわけですが、これからおいおいに一般の村に広げていくという段階になりますと、村の農民の側には、とうていこういうものではついていけないという、そういう気持ちがますます強くなってきておるように思われまして、いずれの県の状態を見ましても、だんだんこの構造改善事業をいままでのような速度で広げていくということが、非常にむずかしくなってきておるというふうに言わざるを得ない。  ところでこの構造改善事業が、そういうふうになかなか農民側から受け入れられないような状態になってきております理由は、もちろんいろいろあるわけでございまして、一つではございませんけれども、しかしその中のかなり大きな部分は、農民としては構造改善事業をやろうといたしますと、相当大きな借金を背負わなければならない、こういうことに対してかなり深刻な不安を持っておるわけでございます。しかもこの借金という点について申しますならば、すでに構造改善事業が始まります前までにも、たとえば戦後土地改善事業が行なわれましたり、あるいは農業改良資金が導入されたり、そのほか有畜農家創設とか、あるいは災害ということもございましょうが、いろいろな形で農民借金というものは相当多くなってきております。さらにその上に構造改善事業をやるとすれば、またかなりの額の借金を負わなければならない、こういうことに対して農民は非常な不安を持っておると言っていいと思います。農家借金が現在どのくらいの大きさになっておるかとか、あるいは構造改善事業をやった場合にどのくらいになるかということは、これはもちろん地方によっても違いますし、農家ごと相当違いますけれども、たとえば水田地帯におきましても、おそらく農林省がお考えになっておりますような構造改善事業をやるといたしますと、少なくとも一反につきまして十万円ないしはそれ以上の借金を負わなければならないということになるかと思います。したがって、先ほど申しましたようないままでの借金を加えますと、さらにそれが多くなるわけでありまして、したがって一町歩なり二町歩を経営しておりますような農家といたしましては、百万円をこえるような借金を負わなければならない、こういうことになるわけであります。もちろんそういう借金に対しましては、利子は非常に優遇されておりますし、最近では据え置き期間にいたしましても、償還期間にいたしましても、かなり農業に対して有利なような配慮はなされておりますけれども、しかしそれにもかかわらずやはり借金をはたして返せるものかどうかということに対して、農民は必ずしも自信が持てないというのが実情だろうと思います。しかもこのことは単に農民心配をしておるだけのことでございませんで、われわれから考えましても、この問題は非常に大きな問題のように実は思うのでございます。  それはなぜかと申しますと、これから先の日本農業動きというものをいろいろ予想してみますと、おそらく大部分作物につきましては、いままでのようにはなかなかいかないのではないか、こういう感じを持つからでございます。今日すでに御承知のとおり、たとえば一番景気がよかったといわれております果樹作をとってみましても、まだ非常に強気で、状態がかなりいいのは、おそらくミカンだけでございまして、ほかの果樹はすでに軒並み悪くなってきております。すでにナシとか桃とかいうのは二、三年前からすでに下り坂に入っておりますが、昨年あたりからはブドウやリンゴまでかなり状態が悪くなってきておる。そうしてこれからどの程度速度自由化が進むかということは、いろいろまだ見通しが十分立ちませんけれども、しかし全体として日本のいわゆる開放体制というものが進んでまいりますならば、はたして日本果樹作が従来のような有利な地位を維持し得るかどうかということは相当疑問でございます。しかも他方では果樹園の新植というのは御承知のとおり大体年々八%ずつくらいふえておるのでありまして、したがって数年たちまして新植されましたものがなり始めるということになりますと、供給は非常に増加をしてくるという問題を持っております。そういう果樹状態をひとつ考えましても大きな問題がございますし、もう一つその果樹と並びまして、日本成長農産物といわれておりましたたとえば酪農を考えてみましても、これもいわゆる市乳供給飲料乳供給につきましては、それほど輸入との競争というものを心配する必要はないかと思いますけれども、少なくとも加工品につきましては非常に大きな心配があると言っていいと思います。率直に申しますと、おそらくこれがかなり自由化されてくるということになってまいりますと、私は加工乳というものを日本のような条件の中で生産することがはたして可能であるかどうか、また可能であるといたしましても、はたして賢明であるかどうかということには相当疑問を持っておりますけれども、いずれにいたしましても、すでに酪農にいたしましても、昨年あたりから、乳価が必ずしも農民には有利になっていませんで、むしろ飼料高であり、牛乳安だ、こういう形で、農民から申しますと酪農の将来に対しても相当の不安を持っております。いわんや肉畜、たとえば牛肉とか、豚肉とか、あるいは鳥肉というようなものになりますと、将来の見通しというものについては、農民相当強い不安を持っております。しかもこれは必ずしも杞憂ではないと申し上げたほうがいいと思うのであります。  他方、米のようなものを考えますと、これはもちろん価格は比較的安定しておりますし、それからこれはおそらく自由化されたといたしましても、それほど強い影響を受けない作物だと言っていいと思いますが、しかし同時に、米について申しますならば、これをそんなに価格が高くなるということを期待することはもちろんできませんし、それから構造改善で多少の生産の合理化をしたからといって、それほど所得が非常にふえるというわけにはまいりません。一反所得が十万円にも十五万円にもなるということはとうてい望めないことでございまして、そういうことを考えてみますと、やはり借金をしながら構造改善をやっていくということにつきまして、農民相当な不安を持っておるということは、必ずしも根拠のないことではない。むしろ相当理由のあることだというふうに思うのであります。  そういう意味で、単に農民に金を貸してやれば、それで農業構造改善ができるだろうというふうに考えるとしたら、私はそこには相当大きな疑問があると言ったほうがいいのではないかと思うわけであります。もちろん私も金融が全然必要でないというように申し上げておるわけではございませんで、金融でもって解決し得る問題につきましては、金融を十分に活用するということを考えるべきであろうかと思います。しかし同時に、農業政策は言うまでもないことでございますが、金融だけでは成り立たないわけでありまして、そのほかにつきましての施策が十分に伴いませんならば、金融というものはかえって農家に対しましては借金を背負い込ませ、したがって将来は元利の負担農家経済を圧迫し、悪くしますと農民を没落させてしまう、こういうたいへん不幸な結果を招く、そういう危険性を持ったものであるということを、十分認識しておかなければならないと思うのであります。  そして率直に申し上げますならば、ほかのいろいろな農業政策というものが必ずしも今日まで十分に行なわれておりません。たとえば価格政策一つをとってみましても、御承知のとおり米につきましてはかなり十分な価格政策が行なわれておりますが、ほかの作物につきましては十分な価格政策というものが必ずしも行なわれていないわけであります。また先ほどから申し上げております開放体制の中で、農産物をどういうふうに取り扱うかという問題につきましても、必ずしも具体的な案ができているとは言えないわけでございますし、農民に対してこれだけのものを必ず将来に対して保障する、こういうものは与えられていないわけでございまして、いたずらに不安を大きくしているという状態にあると言ったほうがいいと思います。さらに構造改善の問題といたしましては、言うまでもなく土地問題をはじめといたしまして、いろいろ多くの問題が残っておりますが、そういう問題にいたしましても十分な対策が講じられていないわけでございます。多少これは言い過ぎになるかと思いますが、多少言い過ぎた誇張した言い方をあえていたしますならば、どうも私は最近の農業政策体系の中では、農業金融だけが独走をしているという感じをいなめないのでございます。こういう農業金融独走をしてきたということによりまして、むしろ農業に対して非常にむずかしい問題を背負わせているのではないか、こういう不安を私としては持つわけでございまして、そういう意味金融の問題を考えますときに、まず農業政策全体の体系の中で、農業金融をどういうふうに位置づけるか、こういう問題を十分国会の場におきましても御検討をいただきたい、こういうことが第一番目に申し上げたい点でございます。  第二番目にもう一つ申し上げたい点は、農業金融に今度は限定をいたしまして、農業金融というものが活動する場なり、あるいはその活動する場に応じました農業金融のあり方なり、こういうものにつきまして、やや総括的なことを一、二申し上げてみたいわけでございます。それは結論的なことを一口に申し上げますと、こういうことでございまして、今日農業金融というのが、先ほど来申し上げてまいりましたように非常に拡充されてきたわけでございますが、実は拡充されてくる中で、私はかなりやっかいな問題を金融としても生み出してきたように思うのでございます。そのやっかいな問題を生み出してきたということをさらに整理をして考えてみますと、二つの側面があるかと思うのでございますが、一つ側面は、先ほど申し上げましたこととも関連いたしますが、本来金融でやるべきではない、あるいは金融以外の方法でやったほうがいいというふうに考えられるものまでが、金融で処理されるという形になっている。あるいは金融でかりに処理するとしても、全く別の金融制度というものを考えるべきであろうというふうに考えられるものまでが、既存のいわば農業金融体系の中に無理やりに押し込められている。こういう形になっているところに、一つ農業金融としての問題点があるように思います。第二番目の、他のもう一つの問題は、農業金融そのもの体系として非常に乱れてまいりまして、そしていわば交通整理ができなくなってしまったような状態になっておりまして、そのために資金がうまく流通しないというような問題を引き起こしているのではないか、こういう問題、つまり一口で言ってしまいますならば、農業金融交通整理が十分にできていないという面があるように思うのであります。  そこでまず第一の問題から申し上げますと、私が考えておりますのはこういうことでございますが、現在農業金融、ことに農林漁業金融公庫仕事の中に入っておりますもので、金融でやるということが必ずしも適当でないというふうに私が考えますものは、主として二つございます。一つはいわゆる基盤整備、つまり土地改良事業中心といたしました基盤整備のための費用というものでございまして、これは御承知のとおり公庫資金のかなり大きな部分を今日占めておりますけれども、これを金融でやることがはたして適当かどうかということに、まず私は疑問を持っております。もう一つの分野は、土地取得資金でございまして、つまり農家経営地を拡大いたしますために土地を買い入れる、これは従来公庫自作農創設資金から始まりまして、公庫資金でももってまかなわれてきたわけでありまして、今度の改正では金利を下げる、たしか下げることになっていたと思いますが、とにかくそういう資金公庫が扱ってきておりますが、これはもちろん金融でやることは、私は異存がございませんけれども、しかし、はたしてそれを公庫金融というシステムに乗せるのが適当かどうかということについては、非常に疑問を持つものでございます。  そこで、まず第一の土地改良事業のほうから申し上げますと、これは第一番目には、金融そのものの問題よりは、土地改良事業のいままでのやり方そのもの相当大きな問題があるように思うのでございます。それはどういうことかと申しますと、言うまでもなくこの土地改良事業というものは、今日まではいわば三段がまえになって行なわれておるわけでございまして、いわゆる幹線事業は国営でやる、それよりやや小さいものは府県の負担でやる、そして最後の一番地元のところを土地改良区が担当をする、こういう形で三段がまえになっておりまして、そして最後土地改良区の担当分につきましては、地元負担分公庫金融措置でめんどうを見る、こういう組織でやってきておるわけであります。しかしこういう三段がまえでやっているということが、実は土地改良事業のような、ことに水利の問題にそれが結びつていまいりますと、とうていこの狭い範囲でやるべきことではございませんで、大きく申しますならば、全体としての国土計画との関連においてやらなければならないことでございますし、少なくとも村の範囲ではとうてい処理できないような、非常に広範な事業になってくるものでございますが、そういう性質のものを三段がまえで、いわばばらばらにやりますために、今日までの実績を見ますと、実は非常に能率の悪いことが至るところで起こっているといったほうがいいと思います。  たとえば、ある場合には国の事業のほうだけが先に進んでしまいまして、しかも県のほうは予算がないということで、県の事業が非常におくれるというようなことから、せっかくできました幹線工事が何の役にも立たないで、何年か眠ってしまうということも起こります。あるいは逆に、地元段階ではいろいろ仕事が進んでまいりましても、県の仕事がそれに伴わないということになりまして、せっかく地元で進み始めました仕事が途中でストップしてしまったり、あるいは地元でやりましたことが、当分の間は効果が生まれない、こういうような非常にばらばら動きを示してまいりまして、そのために非常に非能率的になっているという問題が起こってきているわけでございます。  そういうことにも非常に大きな問題がございます上に、さらにこの構造改善事業が始まりましてから、はなはだ奇妙な現象が起こったわけでございます。それは御承知のとおり、同じ土地改良事業をいたしましても、それが構造改善の中に入りますと七割が国庫補助だ、こういう形になりますために、地元負担は相対的に少なくて済む。ところがその構造改善に指定されました地区のすぐ隣のところ、あるいはそれに接続しているところでありましても、構造改善事業の中に入りませんと、従来の土地改良事業でやるしかないわけでございますから、せいぜい四割しか国庫負担がつかない、こういうことになりまして、したがって今度は一つの村の中でも、土地改良事業の進み方が非常にばらばらになってまいりまして、ますます全体としての統一がとれなくなってしまう、こういう問題が起こってきているわけでございます。  そういう意味で、この土地改良事業というものをいままでのような三段がまえの方式でやること自体が、非常に大きな問題だと私は思いますし、それからこれを今度は金融の問題として考えました場合に、なるほど土地改良事業をやりますならば、一応生産性があがるから、将来農家はその生産性のあがった分から借金を返していくことができる、こういう計算は抽象的に考えると成り立つように思われます。しかしこれをやや具体的に考えてみますと、今日のようにまだ農家整理がつきませんで、一方では専業農家もあり、他方では兼業農家もある、したがってまた農業に対する意欲もいろいろに違っている、こういう農家が入りまじっているという状態を考えまして、土地改良事業というものを一つ取り上げてみましても、土地改良事業の場合には御承知のとおり、個別的な農家ごとにやるというわけにもまいりませんから、専業農家だけ取り出して土地改良事業をやってやるというわけに参りません。当然専業農家も兼業農家も含めまして、全部の土地改良事業をやらなければならぬ、こういうことになりますが、農家のほうのその土地改良事業というものに対します意欲なりあるいは評価というものは、きわめてまちまちでございます。したがって、どの農家にもひとし並みに借金を背負い込んで土地改良事業をやれ、こういう形にいたしましても、それでは必ずしも農家の足並みがそろわないということになってまいります。また結果におきましても、なるほど土地改良事業が行なわれて生産性があがったといたしましても、その影響の受け方というものは、また農家ごとに非常にまちまちになってまいります。したがってある農家からいえば借金を返すことは何でもないということになるかもしれませんが、他の農家にとっては借金を返すのはなかなか容易なことではないということにもなるわけでございまして、そういう意味で、この土地改良事業のような共同的に大規模にやらなければならない事業を、個別的な農家借金という形でやらせること自体が、非常に無理な考え方だというふうに私は思うのでございます。  したがって土地改良事業につきましては、私はむしろこういうことを考えているわけでございます。それはとにかく国が全体としての国土計画をまず立てて、それからそれを地方計画に細分してまいりまして、そしてとにかく基本的な基盤川整備に関する限りは、国が全責任を食ってやるべきだというふうに考えます。そしてもちろんその費用は全部さしあたりは国庫が負担するということになりましょうが、しかし、将来その土地改良事業の効果があがってまいりまして、個々の農家の収益がそれでふえてくるという結果が出てまいりましたときには、その収益の一部分を受益者負担というような形で回収をする、こういうことはもちろん考えるべきであろうと思いますけれども、いずれにせよ、今日ちょうど道路をつくったり何かいたしますのと同様に、まず国庫の責任において、あるいは公団でもかまいませんが、とにかくまず国の責任において全体としての工事を遂行いたしまして、そしてその費用は後に生産性のあがったところでそれに応じて回収をする、こういう方式を考えることがしかるべきものでございまして、いまのような金融という方式でやることは、先ほど来申し上げてまいりましたような理由で、私はたいへん無理だという感じを持っております。  第二番目には土地取得資金についてでございますけれども、これは今日は公庫資金が三分五厘で貸し出される、こういう形でもって一応与えられておりますが、ただそのワクそのものは非常に小さいものでございまして、現実にわれわれが村へ行ってみますと、公庫資金を利用いたしまして農民土地を買っておるというケースは、むしろきわめてまれだと言ったほうがいいくらいでございまして、しかも土地取得という問題につきましては、御承知のとおり単に金だけの問題では解決し得ないような、いろいろむずかしい問題が出てきていると言ったほうがいいと思います。  申し上げるまでもないことでございますが、今日一方ではいわゆる自立経営として伸びていきます農家は、もちろん経営規模を拡大していかなければならない、こういう必要性を持っているわけでございます。他方におきましては、すでに七割以上の農家が兼業化しておりますが、そういう兼業化している農家の特に比較的大きなもの、たとえば一町とか一町五反程度でも今日では兼業化している農家相当多うございますが、こういう農家ではある意味では土地相当もてあましておるわけでございまして、とてもそれだけの経営を兼業をやりながら、しかも維持していくということは困難になってきているわけでございます。ただそういう兼業化していきつつある農家の方は、これもまたなかなか農地を手放すというところまでは踏み切れないでいるわけでございます。したがって、ある場合にはいわゆるあらしづくりをするというような方法で維持してまいりますし、ある場合にはいわゆる請負耕作というような——これは農地法の脱法行為であるかどうか、その辺はむずかしい問題でございますが、とにかく一種の小作に出すような形にいたしまして、それを何とかごまかしてはおりますけれども、しかしなかなか農地そのものは手放すまい、こういうことを考えているわけでございます。ところで農地そのものを手放すまいというふうに農家が考えますことにつきましては、もちろんいろいろな理由がございます。ある場合におきましては、たとえばいまのところは兼業をしてほかの職業についていても、その職業が必ずしも安定的でない。特に病気をしたり年をとったりしたときに困るかもしれない、あるいは失業したときに困るかもしれない、あるいはまたその職業から得られる賃金なりその他の収入が必ずしも十分ではないというようなことから、とにかく農地を維持しておいて、いざというときに備えたいというような、いわば貯金のような意味を持った農地の保有、こういうものがもちろん一面ではあると思います。  第二番目には、ことに都市の近郊なりあるいは新産都市なり、工業化の著しいところはそうでございますが、将来の地価の値上がりというものを予想いたしまして、いまのところは必要ないけれども、もう少し持っていればもっと高く売れるだろう、そのときまでは持っていたほうが得だという計算に立ちまして、土地を手放すまいとする動きが非常に強く出ている、こういうふうに言ったほうがいいかと思います。  第三番目に考えられますことは、あるいは場合によっては農地を売ってもいいというふうに考えている農家もございます。ことに比較的純農村地帯ではそうでございます。ただ最近の傾向といたしましては、こういう純農村地帯では、農地の値段が必ずしも有利には動いていない、むしろ下がりつつあるというのが一般だと言っていいと思います。そのことをもう少し突き詰めて考えてみますと、農地を売ってもいいというふうに考えております農家が、このくらいの値段で売りたいというふうに考えている。つまり売り手としての農地についての評価と、今度は経営規模を拡大しようとしている農家が、このくらいの値段ならば土地を買っても何とか採算がとれそうだというふうに考えております。いわば農地の需要者側の土地についての評価というものは、だんだん食い違ってまいりまして、それだけにますます農地の売買が困難になってくる、こういう問題があるように思うのであります。  そういうふうに農地の問題というのが、いろいろな側面にからんできておりますから、これはもちろん単なる農業政策だけでは解決できない面もございます。先ほど申し上げました第一なり第二の問題を考えますと、これは当然社会保障の拡充なり、あるいは全体として国土計画をきちんときめまして、どこまでが工業地帯であり、どこまでが純農業地帯であるかというけじめをはっきりさせるという、そういうかなり大きな政策的な手というものを考えてまいりませんと、単なる農業政策ではとうてい解決することができない面が多いかと思います。しかし同時に、いま申しました特に第三の点に関連して申し上げますと、これは私はある意味でたいへん重要な問題だと思います。つまり今日のようにそういう理由で農地の流動性が非常に妨げられておりまして、すでに兼業化いたしまして生産性の非常に落ちております農家土地をかかえ込んで、他方では専業農家として経営を伸ばしたいというふうに考えております農家が、そのために経営を拡大することができないで足踏みしている、こういうことは国全体としてはたいへん損失でございます。つまり土地の利用という点からも損失でございますし、農業構造改善を進めるという点から申しましても、たいへん大きな損失でございます。したがって農業政策としては、何とかして農地の流動性を高めてやるということを考えなければならないと思うのでございますが、ただこれはいま一部で言われておりますように、農地法のたてまえをゆるめまして、そして土地の小作関係というものを自由にしていく、こういうことさえ許せば、土地の流動化ができるというふうには私は考えないのです。それはなぜかと申しますと、昔の農業でございますならば、どうせ農業はおもに手労働でやっていたわけでありますから、土地を借りるにいたしましても一年間でも二年間でも、とにかく借りたほうが得だという計算が成り立つわけでございます。しかし今日の農業あるいはこれからの農業は、御承知のとおり、土地改良事業から始めまして、農道をつくるなり、排かん施設をつくるなり、とにかく土地に固定するような投資というものを非常に大きくいたしませんと、農業としては成り立たないわけであります。そうなりますと、いずれにせよ小作権をゆるめてしまいまして、そして短期でもいいからとにかく土地の貸借を認めるというような体制をとってみましても、本格的に経営を拡大しようとする農家から見れば、そんな一年や二年土地を借りてやったのではどうすることもできない。固定投資をすれば、少なくとも十年とか二十年とかいう長期にわたって耕作権が安定していない限りは、耕作することはできないということになります。他方土地を貸すほうの農家からいえば、やはりいつでも自分が必要となったときには土地を取り戻せるという条件がないと、なかなか貸せない、こういう問題を持っているわけでございまして、したがって単に農地法のワクをゆるめれば土地の流動性が出て、問題が解決できるとは私にはとうてい考えられないわけでございまして、やはり農地の流動性を高めていくためには、本格的に考えますと農地の所有権を移転させるということを考える以外にはないと思うのであります。  その所有権を移転させるということを考えます場合には、ところで農地を売るほうの農家の立場から申しますと、もちろん土地価格がなるべく高いほうがいいわけでございます。しかもこれは政策的に申しましても、私はできるだけ農地の価格を高くすべきだと思うのでございます。なぜならば、そういう兼業農家の離農をなるべく促進いたしまして、これを整理するということから申しましても、あるいはそういう転業をしていく人たちに対しましてできるだけ資金を与えまして、そして転業を円滑にするということから考えましても、農地の価格を押えればいいということにはならないわけでございまして、むしろできるだけ土地を高く買ってやるという措置をとったほうが万事円滑にまいりますし、そのことがまた政策的にも望ましいことかと思います。しかし他方、経営を拡大するほうの農家の立場から申しますと、もちろん地価はなるべく安いほうがいいわけでございまして、これはもちろんその土地の利用のしかたによっていろいろ計算は違ってまいりましょうけれども、一口で言ってしまえば安ければ安いほどいいということになります。先ほど申し上げましたように今日では、そういう供給側の要求している価格と需要側の要求する価格との間に、非常に大きな食い違いがあるということがあるわけでございます。そこで、そういう食い違いを一番手っとり早く解決いたしますためには、もちろんいわゆる二重価格制がとれれば一番望ましいわけでございまして、売り手からは高く買ってやって、買い手には安く売ってやるということができれば、一番望ましいことでございます。しかしそれは簡単にはいかないのでございまして、小さい面積ならばそういうことも可能でございましょうが、相当大規模に、たとえば二百万町歩とか三百万町歩とかいう土地が動くということを考えますと、とうていそんなことをやっておりましては財政がつぶれてしまいまして、問題にならないことかと思います。したがってこの問題はやはり私は基本的には、金融という方式で解決する以外にはないというふうに思っておりますけれども、ただその金融は、いま申し上げましたような農地の全体の問題の大きさというものを考えてみますと、いままでの公庫のやり方のように、ただ低利資金を比較的長期にわたって貸し出す、こういう程度で、しかもいままでのようなワクの程度でもって解決できるかと申しますと、私はそれはおそらく不可能ではないかと思うのでございまして、この点につきましてはもっと抜本的な新しい農地金融の構想というものを立てるべき時期にきているのではないかというふうに思うのでございます。  それにつきましては、これは全く私個人の私案でございまして、十分練れているものではございませんが、ついででございますから御参考までに私の一つの私案を申し上げさしていただきますと、こういう方法をひとつ考えてみたらどうかということを考えております。それは国が直接やってもよろしゅうございますし、あるいは特別の農地金庫のようなものをつくってもいいと思います。そうしてその金庫は農地を取得する資金を貸し出すわけでございますが、しかし貸し出しの形式は、直接現金を貸し出すという形にいたしませんで、むしろ農地証券を発行いたしまして、その証券を交付することによって農地を買い上げるということにする。その場合には、先ほど申しましたような理由で、土地価格をできるだけ有利にきめてやったほうがいいと思います。望むらくは、たとえば水田の場合でも、一反を三十万円ぐらいにしてやれば、かなり土地の売り手が出てくると思いますが、そういう程度価格を保証いたしまして、農地証券でこれを交付する。その農地証券につきましては、市場利子をつけてやる。今日で申しますならば、おそらく七分とか七分五厘とかいう利子になるかと思いますが、その程度利子をつけてやりまして、もちろん証券市場で流通性があるような措置を考えてやるということにする必要があるかと思います。そういたしますならば、農地を売った人たちは、その証券を持っておりますならば、貯蓄として持っている場合にはとにかく利子が入ってくるわけでございますし、それはほかのいろいろな有価証券を持っている場合とほとんど変わらないということでございますれば、別に損失を受けることにはもちろんならないわけでございます。それから現金化したいということになりますならば、その農地証券を市場で売れば、いつでも現金化できる、こういうことになりますから、それによって売り手は別に何ら損害を受けないという体制が一応できるかと思います。そして他方におきましては、その農地証券は、私はできればこれは永久公債にしたらいいというふうに考えております。つまり公債は必ずしも期限を限る必要はないわけでございまして、たとえばかつてイギリスにございましたコンソル公債のような、つまり政府はいつでも償還することができる、政府の便宜において買い上げ償還という形で、市場から引き上げてそれを償還することはできますが、しかし政府が特定の時期を限って償還の義務は負わない、こういう形の証券にしておくことが一番適当ではないか、長期にわたって保持いたしますために、それが一番適当ではないかと考えるわけであります。  それから他方におきましては、土地を買いたい農家に対しましては、もちろんその土地を買わせるわけでございますが、これに対しましては先ほど申しましたように、農地をすぐ二重価格にいたしまして、安く売り渡すということはできません。したがって先ほど申しましたたとえば三十万円なら三十万円という買い上げ価格で買わせるわけでございますが、そのかわりこれに対しましてはできるだけ低利の長期の資金というものを考えるべきだろうと思います。この長期の資金というのも、いま公庫でお考えになっておりますような三十年ぐらいというのは、私は農地取得資金としては短か過ぎると思います。ヨーロッパですでにございますような、たとえば七十年から百年ぐらいの長期年賦資金というものをまず考えるべきであろうと思います。それから利子はなるべく安いほうがいいわけでございますが、農地証券の利子が七分五厘であるといたしますと、政府がある程度利子補給をするといたしましても、おそらくそうひどく下げることはなかなかむずかしいと思います。望むらくは、四分なりあるいはその程度利子をつけまして、ただむしろそれを非常に長期の償還という形をとることによって、農家負担をなるべく小さくする、こういう構想を考えてやったらどうか。そしてその農地の償還金がだんだん入ってまいりますに応じまして、農地証券を少しずつ償還をしていく、買い上げ償還という形で償還をしていくというやり方をいたしますれば、かなり農地の移動に対応いたしますような金融措置というものができるのではないかというふうに私は考えております。もちろんこまかい技術的な点まで十分考え尽くしたわけではございませんが、基本的な構想として、たとえばそういうような一つの新しい金融方式というものを開発をすべきではないか、こういうことが私の考えでございます。そういうわけで、いま申しました土地改良資金と農地取得資金というものは、いままでの金融のワクからはずすべきだというふうに私は思うのでございます。  それ以外の問題につきましては、あと残る問題は、先ほど申し上げましたようにいわゆる交通整理という問題であります。この交通整理ということは、言うまでもなく一方では公庫金融というものがございます。この公庫金融は、いままで非常にこまかくいろいろ分かれておりまして、ややこしくなっていたわけでございますが、今度の改正法律案を拝見いたしますと、かなりその点は整理されるようでございます。しかし問題は公庫資金だけではございませんで、他方それにもう一つ農業近代化資金というものがくっついております。さらに農業協同組合が行ないますいわば共同金融とでも申しますか、あるいはいわゆる系統金融というものが別にあるわけでございます。しかもこの系統金融も、もちろん短期のものはほかのものと重複いたしませんけれども、中長期の系統金融になりますと、近代化資金なりあるいは公庫資金なりと重複する分野というものがいろいろ出てまいりまして、しかもまた今度はその近代化資金それ自体は、皆さんも御承知のとおり、これはたいへん複雑な仕組みを持っておりまして、いろいろ複雑に、金利についても差が多少ついておりますし、償還条件についてもいろいろな差がついておりまして、非常に複雑なことになっております。その上さらに府県がそれぞれのいわゆる制度金融というものを行なっておりまして、これが加わってまいります。したがって今日農村に参りますと、公庫資金、近代化資金、府県のやります制度金融、それから系統資金というものが入りまじってまいりまして、しかもそれがそれぞれいろいろな差を持って、つまり条件に差がついて農家に入ってくるわけでございます。しかし農家のほうは、それがあまり複雑になっておりますために、一体ある一つ事業のために金を借りるのは、どういう資金を借りてどういうことになるのか、ちっともわからないような状態になってきております。しかも農家の手元に入ってしまいますならば、どのみち一つの金として入ってくるわけでございますから、別に金に色分けがついているわけではございませんから、したがってはたしてこういう非常に複雑な制度ができているということがどれほどの意味があるのかということが、まず疑わしいように思われます。またいま申しましたような資金がいろいろ複雑になってまいりまして、一定の資金のワクが足りなくなって、他方資金がそれに加わるということになりますと、ある農家はわりあいに有利な資金を借り得たのに、他の農家は同じ目的で金を借りても全然不利な資金になってしまうというような、でこぼこが非常に出てまいりまして、そのために農家がなかなか計画的に金を借りていくということができないような体制になっていると思われるわけであります。したがってこの点につきましては、もう少し明確な整理をしていくべきだと思います。  私は、いわゆる中長期資金と普通言われておりますたとえば果樹園造設とか、あるいはいろいろな家畜導入とか、固定設備の設置、あるいは機械の導入、こういうものにつきましては、個々の農家が行なう限りにおきましては、なるべく公庫がこれを担当すべきものであろうというふうに思います。したがってむしろ近代化資金の一部分をできるだけ公庫のほうに吸収をしていくという形で、まずその中長期資金の分野を整理すべきではないかというふうに思います。ただしそういう固定施設なり機械なりにつきましては、農家が個別的にないしは農家の任意組合が持つという形のほかに、市町村なりあるいは農業協同組合なりが持つというものは相当ございます。この農業協同組合が持つものにつきましては、もちろん協同組合はできるだけ自分の資金でこれをファイナンスするということを考えるべきであろうと思います。それからいわゆる短期資金というものにつきましては、これはできるだけ協同組合が自立的に行なうべき分野だろうというふうに私は思うのでございます。ただこの分野につきましては、御承知のとおり今日では非常にこの金利が高いということが問題になっております。この点では非常に利子にアンバランスが生じておりまして、これは日本全体がある程度そうなんでございますが、特に農業金融におきましては、中長期の資金のほうが利子が安く、短期資金が非常に利子が高い、こういう変なアンバランスな形が生じております。したがって協同組合につきましては、できるだけ協同組合の体制そのものを立て直すということによりまして、金利を下げさせるという措置が必要でございますし、また場合によりましては、これに対してある程度国が援助をしてやるということを考えなければならないかと思いますが、いずれにせよ短期資金は協同組合になるべくやらせる、中長期資金はなるべく公庫資金に吸収をしていく、こういう形にいたしまして、その中間にございます近代化資金という妙なげたばきの金融制度というものは、私はなるべくやめたほうがいいというふうに思います。近代化資金というものは、これはほかの機会に、衆議院の予算公聴会でも申し上げたことでございますが、私はあの制度には反対でございまして、ああいう協同組合の金に政府が個別的にげたをはかせる、こういう形でそれを利用するということは、協同組合の自主性を非常にそこなうことでもございますし、他方政策の責任という点から申しますと、非常にこれがあいまいになってしまいまして、たとえば近代化資金の貸し付けがうまくいかないというような場合に、それは一体政府の責任なのか、協同組合の責任なのかということが、はっきりしなくなってしまう。こういう難点を持っておりまして、私はああいうげたばき金融というものは、ぜひ整理すべきだと思います。したがって交通整理はそういう意味で、公庫と系統との間にできるだけはっきり分野を分けまして、そしてその分かれた分野についておのおのできるだけすっきりした形の金融体制、こういうものをつくるという方向に持っていくのが必要ではないかというふうに考えておるわけでございます。  以上、与えられました時間を多少超過いたしまして恐縮でございますが、しかも必ずしもまだ十分申し上げたことにはならないと思いますが、ことばが足りませんでしたところは後ほどまた御質問でもございますならば補わしていただくことにしまして、一応私の申し上げることはこれで終わらせていただきます。(拍手)
  4. 高見三郎

    高見委員長 ありがとうございました。  次に加藤参考人
  5. 加藤讓

    加藤参考人 農業金融制度の基本問題を中心意見を述べよということでありますので、現在の農業金融というものがどういうプリンシプルといいますか、どういうたてまえで貫かれるべきであるかということについて、簡単に意見を述べたいと思います。  現在の農業政策一つの大きな柱といいますのは、自立経営の育成強化、こういうことにあると思います。自立経営とは一体どういうことかということを金融の面で言いますならば、通常の金利水準を負担し得るほど資本の生産性を高めるような農家だ、そういう経営のものをつくるということではないかと思うのであります。自立経営を考えます場合、すべての農家が自立経営になれるということはだれしも考えないでありましょうし、またそういう能力を持っている農家といえども、金を貸しさえすれば、一、二年のうちに直ちにできるというふうには考えられないと思うのであります。農業においては、ほかの産業と違いまして、資本を投じても何年かの猶予期間を置かなければ、採算の帳じりが合わない、こういったような問題がございますので、そういったことにつきましては据え置き期間、あるいは償還期限なり、こういうことで対処すべきであって、金利水準として将来これだけの猶予期間を置けば、あとは通常の金融市場における金利水準をペイし得る、こういう経営になれるかどうか。そしてなれるという経営者能力及び自信、あるいはその条件というものを持っている農家を積極的に育成すべきではないか、こう考えるわけであります。  現在非常に低利で資金が出されておるわけでありますけれども、こういうことは、私のいま申しました自立経営の育成という点について、一体どういう問題があるかということを考えてみますと、第一には、自立経営になれるような農家も、そういう非常に安い金利で金が借りられるために、自立経営になって通常の金利水準を払おうという精神が麻痺されるのではないか、自主性というものがスポイルされるのではないかと思います。そうしてただ金利が安いために、自立経営になろうというはっきりした意思と決意と能力が伴わなくても、だれでも借りられるということになりますと、当然平等に、つまり少ない金額が割り当てられて、そのために、本来ならば伸びられるような農家が十分伸びられない、こういう結果になりはしないかと思うのであります。  昨年、農林漁業金融公庫の委託で、全国農業会議所が「農家の投資動向と制度金融に関する調査」、こういう調査をやっております。これは約三千五百ほどの農家に対してアンケートを出しまして、これによってそれぞれの農家が一体どのような投資計画を持っておるか、そうしてそれに対して金額は一体どのくらいを考えているか、用途はどういうものか、金利水準はどのくらいならば払えるか、こういうふうな調査をやっているのでありますが、この調査によりますと、約七、八割の農家が投資計画というものを持っておりまして、それを平均しますと、一戸当たり大体七十万ないし八十万、こういうことになっております。もちろん個々の農家によりましては、百万円だとか二百万円だとか、あるいはそれ以上の投資計画を持っているものもあります。それを自己資金でまかなえる分を差し引きまして、どれだけ借り入れに依存しているかといいますと、そのうちの大体七割、つまり金額にしまして五十万円前後、こういうことがアンケート調査によってわかっているわけであります。そうしてこのアンケート調査によりますと、金利が一割三分でも借りたい、あるいは一割一分でも借りたい、六分五厘なら借りたい、こういうふうなそれぞれの金利水準によってどれだけの投資意欲を持っているかということを同時に調査しておりますが、それによりますと、六分五厘なら借りてもよいという農家が大体七、八〇%になっております。そうして一割一分でも借りよう——これは大体農業協同組合の金利というものを前提にして考えていると思います。それからまた一割三分というのは、大体銀行から借りるというようなことを考えているのだと思いますけれども、一割三分でも、あるいは一割一分でも借りたいというのが——これはもちろん系統にもよりますし、あるいは地帯別あるいは階層別の差はありますけれども、大体五%から一〇%がそういう意向を持っているわけであります。ところが現在のようなやり方でやりますと、そういうふうな自分に十分な自信があり、経営能力のある農家すら、これだけの金を借りたいと思っても、悪平等に分割されるために、それだけの金が渡らないのではないかという点が、第二の欠点になるのではないか、こう思います。  第三の欠点としましては、つまりはっきりした見通しもないけれども、とにかく銀行の金利よりも安く借りられるから、自分の金は貯金とか預金として預けておく。そうして有価証券を買う。金は補助金をもらうとか、あるいは制度融資にあずかるという形で、農業資金のほうはよそからの借り入れ資金によってまかなう、こういうふうな傾向が出ているのではないかと思うのでございます。  農林省は「農業及び農家の社会勘定」といったふうな調査をやっておるわけであります。これは農業白書にも出ておりますけれども、それによりますと、少し簡単になっている。たとえば貯蓄というようなものは、資産の売却というようなものも含んでいるのです。ですからこの貯蓄というのは、必ずしもその年における所得から消費を差し引いて残った貯蓄ではないという意味で、その貯蓄からそういう資産の売却による分を引いて、その年間の所得からどれだけの貯蓄がなされたかいう計算をしております。固定資本投資ということの中にも、土地を購入したとかあるいは動物を購入したというふうに、確かにその農家にとりましては、私経済的に見ますと資本の蓄積になったけれども、しかし農業全体ということで見ますと、甲の農家から乙の農家に移ったということになりまして、農業全体から見れば必ずしも資本の純形成にはなっていないという数字がありますので、それを差し引いてその年の貯蓄と、それからその年に預貯金であるとかあるいは有価証券とかいう流動資産を一体どれだけふやしたかという数字について、三十年と三十七年を比べてみますと、三十年は貯蓄がまだ二千百三十三億円、それに対して流動資産の増加分は千七百三億円、大体八〇%が流動資産の増加に振り向けられていったということになっておりますけれども、三十七年について見ますと、私の計算によりますと、その年度内に所得から行なわれた貯蓄というのは四千八百十六億円であります。これに対して流動資産の増加というのは五千三百七十六億円、こういうふうに年間の貯蓄をすべて流動資産の増加、預金であるとか、有価証券であるというふうな流通資産の増加に向けまして、なお足らないで、結局は減価償却であるとか、資産売却であるとか、あるいは補助金とか、公庫融資、近代化資金その他の制度融資、その他の融資というふうなものから流通資産の増加に向けられていく、こういう計算が成り立つわけであります。  もちろんこれは全体の数字につきまして計算してみると、そういうことになるということでありまして、個々のそれぞれの農家の階層において、あるいは地帯別によっていろいろあると思うのでありますけれども、試みに農林省の農家資金動態調査というものを見まして、その現金部分だけについて、経営面積の階層別についてそういうものを見てみますと、大体一町から一町五反、それから一町五反から二町、二町以上、こういう農家におきましては、自分の年間の貯蓄から自分の固定資産に向けておるというふうな計算が出ますし、それ以下の一町未満の三つの階層につきましては、流通資産の増加のほうが年間の所得から生まれた貯蓄よりも多い。こういうふうな計算になっておるわけでありまして、これを考えてみますと、どうも現在の制度金融というものがあまりにも低利に融通するということで、したがいまして自分の金は外に回すけれども、自分の農業資金のための金は、むしろ補助金であるとかあるいは制度融資というものによっておんぶしている、こういうことになるのではないかと思うわけであります。これはその少ない資金というものの配分というものが、必ずしも私が最初に申し上げましたような、自立経営の育成という目標に向かって配分されていないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。  もう一つの問題は、現在農業人口というものが非常な勢いで流出しておりまして、一体将来どのくらい、どの農家農業に残って、そして農業のために専心するかということが非常に問題であると思います。こういう長期の国の金を貸すという場合には、はたしてはっきり後に残るという保証がないと、貸すべきではないのではないかというふうに考えるわけです。いま申しましたように、非常に金利が安いわけでありますから、預金の金利よりも安いわけでありますし、それから現在のような物価水準というものを考えますと、こういう金利水準ですと、結局実質的な金利負担というものはゼロである、あるいはゼロ以下である、こういうことになっているわけでありますから、そういうはっきりした見通しも決意もない農家にまで金を貸すということになるのではないか、こういうふうに思われます。そこで、そういう農家でも金を借りて、あるいは将来は工場の敷地であるとか、宅地に売るとかいうことをひそかに考えておったとしましても、それだけの金を借りて土地改良なら、土地改良というものに投資しておきますと、それだけ土地の生産性というものは高まるわけでありますから、それを宅地あるいは工場の敷地として売却する場合についても、補償価額をつり上げるという一つの根拠になるわけでありますし、それから実際に売るまでの間の過渡的な農業を営んでいる期間の所得というものを上げる効果はある。そういう意味でとにかく借りておこうということで借りるということもあり得るのではないか。もちろん工場とか宅地に売る場合には、高い値段で売れるわけでありますから、元利合計払うということには心配がない。それから貸す金融機関にしましては、元利合計を回収するには絶対安全である、こういうことでありまして、貸し手からしましても借り手からしましても、私経済的には何ら心配はないわけでありまして、収支は心配ないわけであります。しかしこれを国の金をそういうふうに使っていいのか、あるいはもっとほかのほうに有効に使うべきではなかったのだろうか、こういうふうな考え方、つまり国民経済的な観点から見ますと、少ない資金というものをそのように使うということに対しては、相当問題があるのではないか。  一体それではどういう農家に見きわめをつけて貸すかということになりますと、これはちょっと軽々には私見というものを簡単にまとめることはできないのでありまして、ただ一つ参考になるようなものを申しますと、たとえばアメリカの農家更生資金、ファマーズ・ホーム・アドミニストレーションという政府の資金がありますけれども、それが金を貸す場合には、借り入れの際に経営主の奥さんが署名する。これはつまり農業というのは、農業経営と家計というものが密着しておりまして、普通の企業経営のように分化されていない。そこでそういう農業経営に金を貸す場合には、そのワイフのしっかりした理解というものを経営に持っておらなければならぬ。こういうたてまえから、そういうことをやっているのだということを私も聞いたことがございます。現在のような将来一体あと継ぎが、自分の長男が農業をやるのかどうかということが心配であるというような時代になってきますと、その農家のあと取りというようなものが借り入れをする場合に、責任を負うというようなことがはっきりしておる。つまりあと取りは農業を続けてやる意思が認められるというようなことを確かめた上で、国の金というものを貸すべきではないか、こういうように考えます。  結局要しますと、一番私の言いたいことは、農業においてもはっきり階層原理というものを貫いて、金融というものを価格政策であるとか、あるいは土地政策というもののしわを金融に寄せて、本来ならば価格あるいは土地政策のほうで処理すべきものを、ただ金利を安くするということで補いをつける、そういうようなことで金融をやるべきでなくて、金融には金融の原理、原則というものがあって、むしろその原則を守らない場合には、金融はかえって農業及び農民をスポイルするのではないか、こういうように考えるわけです。基本的なことだけについて申し上げました。(拍手)
  6. 高見三郎

  7. 服部知治

    服部参考人 最初に私の考えておる立場みたいなことを申し上げたいと思います。  私は国民経済を健全に発達させるいう観点に立ちまして、主要食糧を国内で自給するという農業基本政策の上に立って、すべての考えを統一して、その考えの一環としての農業金融を考えてみたい。そしてそれによって農業の発達、つまり農業の拡大再生産をはかる、そういう拡大再生産をはからなければ、農家個々の個別経済にとっても役に立たない、そういう金融を考えております。  それからもう一つ金融を考える場合に、金融専門だけでもって考えても、金融の実態というものは今日ではつかめないのではないか、いわゆる金融機関の金融だけを論じても、金融の正体を正確につかむことができないのではないかと考えますので、それには国際為替関係、あるいは国家の財政あるいは財政投融資、これが二番目、三番目には価格政策、この三つのものと関連させて金融政策というものを考えてみなければならない、実体をつかめない、そういうふうに考える。以上二つの観点において、二、三意見を述べてみたいと思います。  そこで、まずこの国際為替関係とか、国の財政とか、財政投融資とか、価格政策、そういうものに関連させて、金融の一番土台であるといいますか、金そのものにつきまして、現在貨幣信用制度というものは、一体農業に有利に作用しているのかしていないのかということを見る必要があると思います。  御承知のように日本銀行券というのは管理通貨でありまして、金と交換できない、不換紙幣でございます。したがいましてその国内的な位置は、いま申し上げましたように発行準備のない、日銀には金は財産として所有しておりますけれども、それは交換準備に当てられていない。そういうところから出ておる日本銀行券でございまして、極端な言い方でありますけれども、やり方によっては無制限に日本銀行券を発行できるということも言えないこともない、そういう性質の日本銀行券、札であると思うのです。たしか閣議で、現在発行限度が一兆二千五百億円か何かきめておるわけでありますけれども、現在発行されておるのはそれよりはるかにこえて一兆四千四百億、昨年の暮れの三十日には二兆三千億円と見られておるというようなわけでございます。こういう貨幣制度を国際的な観点で山際日銀総裁が、昨年の九月十二日に毎日新聞でもって、国際協調金為替本位というふうな、準備ともつかない、国際協調という表現をしておりますが、これにつきまして私研究不十分で、どういうふうな意味か、なかなかよく読み取れないものでありますが、もしこれを日本の在外保有の金あるいはドルが在外支払いに充てられるというふうなものであるとしたなうば、あるいは国際協調ドル為替本位制だというふうにも言えないこともないと思うのであります。つまり国際的には最終的にドルまたは金でもって決算するのだということになると思うのでございます。そこで、日銀なり政府が健全な金またはドルの在外の所有高はどのくらいかということも発表しておりますが、それは大体二十億ドルが理想的ではないかと日銀などは言っておりますが、実際には、新聞の報道などによりますと、いろいろの計算もたくさんあってよくわかりかねるのでございますが、五億ドルないし十五億ドルというふうなことをいわれておるのが現実でございます。  それで日本銀行券というのは、御承知のようにずっと増発の傾向にございます。いわば静かなインフレーションの進行だと言ってもいいのではないかと私は思うのです。静かなインフレーション——インフレーションということは円の価値が下がるということでございます。対外的には円安で損になるということになります。この数年間の日本銀行券の発行高を調べてみますと、三十五年の末、十二月三十一日には一兆二千三百四十一億円出ておりました。三十六年の十二月の末には一兆四千八百一億円出ておりました。三十七年の十二月三十一日には一兆七千四百五十九億円出ておりました。昨年の暮れには二兆五百七十四億円出ておりました。この暮れの三十一日というのは必ずしも一番最高ではなくて、大体暮れの三十日が最高になっておるので、その最高を取り上げてみますと、三十六年の三十日には一兆七千九十七億円、それから三十七年に入りましては、暮れの三十日が日曜日なものでございまして、二十九日が一兆九千六百九十一億円、おととしの暮れにすでに二兆円発行に迫っておったわけでございます。去年になりまして、暮れの三十日が二兆三千八百十二億円というふうに発行されておって、たしか政府のきめておりました一兆二千五百億円をはるかにこえておるような実情でございます。これを、何によって日本銀行券が増発されておるかということを現象的に見ますと、主として日本銀行の貸し出しでございます。これは毎日の新聞の夕刊に、日本銀行の帳じりというのが発表になっておりますが、そこから引用してみますと、先ほどの三十五年の末の日本銀行の貸し出し高を見ますと、五千二億円でございます。発券高が一兆二千億円に対して、貸し出し高は五千二億円になっております。三十六年の年末には、一兆四千八百億円の発券高に対して、貸し出し高は一兆二千八百四十五億円ということになっております。それから三十七年の十二月末には、一兆七千億円の発券高に対して、貸し出しが一兆二千八百五十一億円、三十八年、昨年の暮れにおきましては、二兆円に対しまして一兆一千五百五十六億、暮れの三十日には一兆四千五百四十三億円と、これはまさに発券高も日本の史上最高であり、貸し出し高も史上最高だということになっております。  こういうふうに見まして、これをもう一つ日銀の発表によりますと、日銀の貸し出し高がふえるときは、どちらかというと国債が減っておる。たとえば、三十七年というのは国債が減ったのですが、三十七年六月末には国債は四百六十六億円で、七月末には二百五十七億円、年末になってぐんとふえまして三千七百八十三億円になりますが、貸し出し高は三千億円ばかり減っております。貸し出し高が三千億円減ると国債が三千億円ふえるという、必ずしもここに因果関係があるわけではございませんが、現象的にはそういうふうにあらわれております。さらに三十八年に入ってみましても、暮れの三十一日には一兆一千億円と貸し出しが減ると、国債は三千四百六十億円とふえ、三十日はその逆で、一兆四千億円の貸し出しになっておりますと、国債は一千三百五十四億円、三千億円貸し出しがふえると三千億円国債が減る、そういうふうな現象形態になっております。それで三十八年は、大体一兆四、五千億円の発券に対して一兆二、三千億円の貸し出しということになっておるわけでございます。  それではこの貸し出しというのが、一体どういうのかと申しますと、先ほどの不換紙幣でございますかう、われわれのほうではこういうのを信用創造というふうなことばも使ったり何かしておりますが、これは主として日本銀行から十三の都市銀行その他有力な銀行に対する貸し出しでございまして、日本銀行がこのためには担保を持っていくわけでございます。その担保は日銀の再割引適格手形というふうなものでございまして、それはいわゆる標準ものでは大体日歩一銭六厘という利子になっておる、これも公表されておるものであります。そういう日銀の再割引適格商業手形というふうなものを発行できるのは、どういう会社であるかということは私どもにはわかりません。  こういうふうに日銀の貸し出しを見ましても、三十五年の五千二億円かう、三十七年になりますと一兆五千億円というふうに伸びて、約三倍に日銀の貸し出しがふえております。この日銀の貸し出しは、先ほど申し上げましたように、極端な言い方をすれば、発行準備のない札を無制限に発行できるような性格の金を三倍発行したということによって、大企業の企業意欲がどんどん盛んになります。そこで資金需要もたいへんふえまして、その当時コールが日歩四銭もした、四銭をもっとこえたというようなうわささえ出たような状態でございます。そういうふうになってみますと、そういう高利を払えるような企業でなければ、金は使えないという考えが出てまいります。そこで金融機関ばかりではございませんが、一般に、金を使う場合には、こういう金利を払えるような、したがって金融機関が算定した利子を払えるような利潤をあげる、そういう企業でなければ金を使う資格がない、ないしはそういう企業経営は継続できないというような考え方が出てくると思うのであります。  そこで、今度はそういう金融機関で金を借りて使った大企業は、どういうふうになっておるかと申しますと、そういう大企業の価格というふうなものは、金利を出発点、土台にして、まず金利を払う、その次は電力料を払う、その次は運賃を払う、自動車の償却費を払うというふうに、価格をきめるのに一つ一つ割り出して価格をきめて、現実には小売り価格で、小生産者のものではそういうふうに価格を割り出してみても売れないような小売り価格になるものもあるにもかかわらず、そういう大資本のものはそれでどんどん売れていくというふうなかっこうになる。しかも電力の例でもわかりますように、こういう価格できまるのは、電力では配電区域というものを一社で一区域をきめております。そして電力料もこれはたしか公定で、しかも冬季料金とか夏季料金とかいうふうにきまっておって、八%の税金もこの電力料に加算されておる。そして税金よりももっと強く徴収しているわけでございます。税金なら所得がこれこれしかないからこれこれまけてくれということもありますが、電力料はメーターでもってぴちっと出てまいりますから、電力料をまけてくれまけてくれというのだったら、そういう企業はやめたらどうかというような、きわめて合理的な徴収法をしておるわけであります。しかもその電力会社は日銀からもおそらく借りているのではないかと思いますし、または電源開発のための外資の導入もやっております。また財政投融資も入っておるのではないかと思うのでございます。  こういうふうに見てまいりますと、この静かなインフレーションの進行の中で、大資本本位の投資がなされておるのではないかというふうに考えられます。価格政策も大資本本位にできておりはしないか。そうなってくると、一体農業というのはそういう経済の中で、どういう位置に立たされているのかということでございます。これを一言にしていえば、農業にだけ自由化ということを言っておるように考えられます。大企業ではちゃんとした統制があるにもかかわらず、農業だけが自由化にさらされておるというふうに言ってもいいのでないか。またことばを変えてみれば、大経営中心の傾斜生産的な金融政策価格政策をとられ、また貿易政策をとられておるにもかかわらず、農業だけは自由だというふうな実情ではなかろうかと思うのでございます。  ところが農業というふうなものは電力のように、これだけの資本を投じてこれだけの水力、これだけの火力を供給すれば、これだけの電力が発電できる、そういうふうな機械的生産ではございません。そのことは皆さんよく御承知のとおりでございますが、農業というものは農家の生産意欲とか、それから農業生産自体が機械的生産でございませんで、生物的生産と申しますか、有機的生産でありまして、技術というものがたいへん重要な役目を果たすものであり、さらに気候というふうな条件も作用するものでございますから、かりにここに大規模に機械化したとしまして、個々の農家の生産性は高くなったとしましても、この前に述べました価格政策、その他の政策がうまく調和して作用しないときには、農業全体の生産は落ちるのではないか、そんなふうに私は考えます。  それにもかかわらず、現在の土地改良費その他を含めて見ましても、設備投資というふうなものは農業は非常に原始的だといわれているように、まだ足りないというふうに見られております。こういういわば農業は他産業と比べてみますと、まことに小企業であります。その小企業は自由化によりまして、個々の農家でもって競争して生産性を上げるというふうなことは、ある程度可能性はあったにしましても、農業と他産業との競争、あるいは輸入農産物との競争というふうなことは、きわめて抵抗力の弱い企業経営ではないかと私は考えております。こういう抵抗力の弱い農業を、私企業的な個別農業経営的な一面だけを見て、そして弱いものを先ほど言ったように金融機関的にはじいて商業ベースに乗せて、これこれの金利を払えないものは、そういう農業経営は弱い経営だからやめろというわけではないでしょうけれども、必然的に没落するのだというふうな考え方でいったために、まず大豆の生産がたいへん破滅に近い状態になり、次に大麦がそういう状態になり、最近新聞の報ずるところによれば、畜産も米もそういうような危険にさらされておるのではないかというふうに考えます。それはまさに私企業的な観点に立って、国民経済的な観点に立たない自由化論ではないかというふうに考えざるを得ないのであります。そこで農業はますます弱体化して、また思想的に農民の間に農業劣等感というものが出てくると同時に、国民全体の間に農業劣等感というふうなものが出てくる。こういう劣等感が農業の内外から生まれてくる。こうなるとまさに日本農業の危機ではなかろうか。思想的にもうすでに生産意欲が衰えている。こういうことはたいへん重大なことではなかろうかと私は考えます。  そこで金融機関の方面の人たちは、農業金融についてどう言っているかという第三番目の問題に入りますが、農業金融は相互金融をやったらどうかということをしきりに言うわけでございます。もちろんその金融のほかに制度金融としての公庫資金のこともございますが、この相互金融ということは簡単に言ってしまえば、農山漁村で集めた金を農山漁村で使え、こういうことだと思います。しかし私の考えるところによりますと、農家の貯金というものは、消費者の貯金と同じように、保険金の意味を持っておるものでありまして、ことばを変えて言いますと、それは生命保険とか、火災保険とか、その他天災に対する保険金の意味相当に濃いということでございます。最近農村には民間保険もだいぶんたくさん入っておりますし、また農協共済とか農業共済がもうだいぶ発達しておりますけれども、では資本家的な企業のように火事が起きたら、すぐ数日のうちに大きな工場が建つか、大きな事務所が建つか、農家ではそんなことはできません。かりにいま普通の自作農の中堅農家の規模の家を建てるとしても、五、六百万円から一千万円ぐらいかかる。屋根のふきかえだけでも百万円、二百万円かかるような状態で、それに安全な火災保険というものは農家ではかけられません。これが実情でございます。  そういう意味で、かりに農協の貯金が昨年三月末で一兆二千五百四十六億円あったとしましても、そういう保険的な意味なものでありますから、これは大いに大事に運営するというのが農業協同組合の任務であって、長期低利に簡単に回せるというふうには言えないと私は思うものであります。しかもその金額たるや一兆二千五百四十六億円ありましても、国民貯金全体が二十六兆円あるわけです。わずかに五%前後だということでございます。昨年の十二月がだいぶふえていって、二兆円貯金を農協ではやっておりますが、昨年の暮れには一兆五千六百億円に達したのです。これもわずかに全国民貯金の五%ぐらいにしか相当しないと思うのでございます。だからこういう金は、いわゆる金利かせぎの金ではない。したがって農家ではこういう金はなかなか自分の農業に投資しないで、貯蓄するというような方向へ出ていく、こういうところに農家の貯金の特殊性というものがあるわけで、だがらこういう農家の貯金を、先ほど申しましたようにまだ不安定な経営規模であるところの農家に、長期に低利で貸せるというふうなことは考えられない。むしろこれは大いに安全に保護する必要がおる、私はそんなふうに考えております。したがってこういう相互金融論というものは、むしろ農協側からは理論的には出ておっても、腹の中からはすぐ貸せますよというふうにはなかなか言い切れない性質のものだと思っております。  そのほか、こういうふうに農協自身が自分の貯金を持っていてもなかなか貸しにくい性質の金であり、その上に農村には消費者金融というものがございません。ないにひとしいということでございます。住宅公庫もあってないにひとしい。国民金融公庫またしかり。それから公益質屋というふうなものもあってない。そうするとそういう消費者金融の要求も、農民からは農協金融に出てくるわけであります。しかし先ほど申し上げましたような性質の金のために、農協ではこれにすぐに右から左へと応ずるわけにいかないというような実情でございます。  こういうふうな、農村で集めた金は農村で使えという相互金融考え方が出ておりましたもので、それがだんだん強くなりまして、昭和二十八年に農業手形が廃止になったのだと思います。農業手形というのは日本銀行が再々割引をしてくれるものでありまして、先ほど一番最初に申し上げましたように、大きな会社は都市銀行その他地方の有力銀行を通じて、日本銀行から一兆四千億も五千億も借りておるにかかわらず、農業手形はわずかに、どのくらいですか、いまちょっと記憶ございませんが、数千万円だと思いますが、それを借りておったのですけれども、農協に金がたまったから、もうこれは農協で自まかないしろということになったのも、相互金融論的な考え方から出ておるのではなかろうかと思うのでございます。  そこで簡単に結論的に申し上げますと、こういうような貨幣信用制度、国際為替関係、財政と財政投融資、それから公定価格政策というふうなものをとられて、しかもその上で金融資本の計算したところの一定の金利を支払えないような経営には、あまり金が出ないというふうになってくると、現状では大体普通の金融農業には出ないのがあたりまえだと思います。ですから、そこでは勢い財政投融資が必要になってくるということであります。農林漁業金融公庫には、御承知のように昨年の三月現在で二千七百八十五億円という程度でございますが、これも他の財政投融資と比較してみるとごくわずかで、これに単位農協が貸し出しておるところの——これはどういう性質か、性質を一々究明しないで全部ひっくるめておおまかに見て、六千三十七億円というふうなものを加えても、農村へ出ている金というものは約九千億円未満なのでございます。そうするといわゆる相互金融制度金融合わせたものが、とにかく九千億くらいしかない。しかし他産業に投資されたものはどのくらいかというと、さっきの二十三兆円というふうなものはほとんど出ておって、そのほかに日本銀行から一兆何千億も借りておるというふうなかっこうになっておりますから、ただ貯金だけから見ても、他産業への貸し出しと農協、公庫の貸し出しと比較してみますと、農協、公庫の貸し出しはわずか三・八%にしか当たらないという計算になるようであります。したがって農業自体として、他産業と違った特殊な性格を持っておって、しかもそれが非常に弱体であるというふうなものを、私企業的に個別経済として競争させる、そして自由化に野放しに出すということは、これは農業をますます弱くすることであって、もしもこれを電力資本と同じように価格を公定し、それから保護育成することができるならば、だいぶ違った農業になるのではなかろうか。しかも電力を外国から買ったらよかろうと言う人はそうないだろうと同じように、食糧を自由に外国から安ければ何でも買ってよいのだという考え方は、私は国民経済的見地に立つ限り、これは危険だと思うのでございます。そういう意味でありまして、これも極端な比喩的な言い方でありますけれども、農業金融も電力金融並みに、ないしは電力金融以上にやる必要があるのではなかろうかというふうにも考えておるわけであります。  もう一つ最後に申し上げたいのでございますが、一般金融論というふうなものから入りますと、札というものは一つ一つ色分けないしは性質がきまっておるものではありませんから、一万円札を持っていけば、だれでも一万円の品物を買うことができるのですけれども、その札が資本になって働き出してくると、今度はその札はものを言ってくる。単なる一万円という額面だけではなしに、ものを言ってくる。したがいまして財政投融資の場合におけるところの、その財政投融資のもとになる資本がどういう性質のものであるかによりまして、その財政投融資の性格もきまってくるというふうに思うのでございまして、単にこれを一律に、これも札であるから金額さえこれこれならば、これこれの性質を持つというふうには、量だけで決定されない性質もある。したがいましてこれも最後に結論的に申し上げますと、もっと量的にも条件もよくして農業金融をやる必要があり、少なくとも電力くらいにやったって、国民経済的に見ればちっともおかしくないと考えることと、その原資の問題で、性質を研究なさって農業金融を進めることが、たいへん大事ではないか、そんなふうに考えるものでございます。以上でございます。
  8. 高見三郎

    高見委員長 次は三輪参考人
  9. 三輪昌男

    ○三輪参考人 ばらばらですが、感じておりますことを幾つか申し上げてみます。  一つ農業金融政策というものを考える場合に、ほかの農業政策のさまざまな手段との体系性がほしい、そういう感じが非常に強くします。農業金融の場合は、長期低利の資金が必要であるということが、一般に認められるようになっておりまして、たいへんけっこうだと思うのですが、しかしそれではどの程度長期低利であればということを問題にしますと、なかなかむずかしい。なぜむずかしいかというと、いまの状態では特に価格が不安定でありまして、こういう価格の不安定な状況の中では、一体いかほどの低利、いかほどの長期であればいいかということは、なかなか考えにくい、こういうことだろうと思います。極端な話、農産物価格が全体として非常に高い水準にあり、農業経営で相当のもうけが得られるようであれば、何も長期低利の資金を必要としないということも言えるわけです。その点、現在では長期低利の資金を大量に供給しなければいかぬといわれておりまして、たいへんけっこうだと思うのですけれども、しかしある意味では、金融政策に非常に重みがかけられていて、何か長期低利の資金を一定限度出せば、農業の近代化はなるというふうな感じがしないでもない、そういうあり方のように思います。そうではないのであって、やはり価格政策その他の農業政策との関連で、農業金融政策のあり方というものは考えていかれなければいけないのじゃないか、これが一点です。  それから次に、とは言い条、農業政策を全体として体系的に推し進めていくということは、なかなかむずかしいわけです。いま農業政策の全体としてのあり方を前提にして考えますならば、いま考えられておりますような長期低利の資金をいまよりももっと大幅に出していかなければ、とても農業の近代化ということはできないのじゃないだろうかというふうに感じます。これが第二点です。  それにさらに関連をしまして、最近痛感することなんですが、いまの農業金融の融資の体制というのは、いろいろと金融機関の側で店を広げまして、それで、借りたい人はどれでも選んで使いなさい、自由に選んで使いなさい、こういう形になっています。ところが、それをめぐってはひとつあとで申しますが、あまりにも融資の体系が複雑過ぎて、農家としては利用しにくいという問題がありますが、もう一つここで申し上げたいのは、いまの農業経営というものは、こういう低利な資金があるから自由に選んで使いなさいと言われて、かりに自由に選んで使ったとして、はたしてどの程度までひとり立ちしてうまくやっていけるだろうかという点に、若干疑問があるということです。つまり、ほかの産業の場合には、そういうふうに融資の一定の窓口を広げておきまして、自由に利用しなさいと言えばそれで済むと思いますが、農業の場合には、なかなかほかの産業のようにはいかないのじゃないか。つまり、かなり手をとり足をとりして、この貸し付けをしたあとのいわばアフターケアまで気を配ってやっていかなければ、なかなかひとり立ちできない、そういう状況にあるのじゃないかというように思います。その点、ほかの産業の金融の場合と農業金融の場合とでは、考え方を変えてみなければいけないのじゃないかということです。これが一つです。  それから、あと少し技術的な問題にも入っていくわけですが、先ほどちょっと触れました融資の制度があまりにも複雑であるという問題については、希望としては、融資制度をできるだけ簡素化したいものだということを感じます。貸す側はいろいろありまして、融資制度は非常に複雑である。しかし農家にしてみますと、一たん借りてしまえば、返すもとは一つなわけです。農家の融資制度についての希望を尋ねてみますと、口をついて出てくるのは、ことしは幾ら返せばいいということが自分ではなかなかわからないというのです。融資が一つにまとめられていれば、それは簡単にわかるのであって、できるだけそういうふうにしてほしいものだ、こういうふうに言われます。いま融資制度が複雑でありまして、非常に極端な言い方をしますと、農業近代化をやっていく道にもいろいろある、そういうことが言えそうなんです。つまり、同じ畜産経営をやるにしましても、公庫の畜産経営拡大資金を利用すればある利子でやれる。ところが、近代化資金を利用すると六分五厘で、幾らか高いというわけです。農協の金を借りると一割以上になる隣の人はうまいこと情報をキャッチして、安い利子の金を借りて、安い利子の道を通って近代化のほうに進む。ところが、ぼんやりしている人は、船に乗りおくれて、一割何分の農協の高い利子の金を借りて、乳牛を導入しているというふうな状況がある。これは農家が勉強して選べばいいというふうなことではありましょうけれども、もう少し政策の立場でこれを整理して、近代化に進んでいく道は一つであるというふうな形にならないものか、こういうふうに感じます。  それから、融資制度の複雑さということが、融資要務あるいは融資機関の側の融資体制の事務の繁忙化をもたらしている。そのために、私がさっきいいましたような、必要と思われるアフターケアのほうが弱くなっているというふうな問題が感じられます。先日某県の県庁に参りまして、近代化資金を県庁の段階でどういうふうに扱っているかというお話をいろいろ聞いてみましたところ、五十万円以上の借り入れ申請に対しては、県の審査会がある前に、担当課の職員さんたちが分担をして全部調査して歩くのだ、こういうお話でした。私、そのとき幾らか冗談めいて言ったのですが、そんなことをしていたら、調査旅費のほうが利子補給の金額よりも多くならないですか——まさか実際には多くなっていないのでしょうが、しかし、利子補給というのはたいしたことはない。その何割かは調査旅費に使われる、こういう実態がどうもあるらしい。この近代化資金の場合には、融資の元本は農協から回る。国ないし地方の財政が負担するのは利子補給だけなんです。その利子補給額を全額処理するために、いわば融資機関がやるのに近いような管理のしかたをしている。これは決して義務づけられて各県とも一様にそうやっているというわけではないようでありますけれども、しかし、大なり小なりそれに近いようなことがやられている。いかにもむだではないかというふうな気がしますが、そうではなしに、 つまり、農協の資金を元本として使って金融政策をやっていくということ、これのよしあしについては、私も別に意見を持っておりますが、かりにこういう近代化資金のいまのようなやり方がとり続けられていくというふうに考えた場合に、一々県庁の職員さんがそんなめんどうなことをするのではなしに、実際の運用は農協にまかせて、利子補給額はまとめてぽんと農協に渡して、それで終わりにするといったふうなことが、一体考えられないものだろうか、そういうことを痛感させられるのです。その点はさらに言いますと、たとえば公庫融資の場合、非常に複雑な資金種類がありまして、これは今度大幅に整理をするように進められておるようで、ある意味でけっこうだろうと思うのです。つまり、資金種類をこまかく分けて、何々に使う金、何々に使う金、その場合には利子は幾ら、期間は何年、一々非常にこまかい。そんなこまかいことをやらないで、もう少し大まかに、実際の借り入れ者に近いところの融資機関で、融通を持って貸し付けができるような体制が考えられていいのじゃないか。いまあまりにも末端から中央に至るまで、かりに二十万円なら二十万円の金が、何の太郎兵衛のところにいって、それがどういうふうに使われているか、実際返ってくるものかどうかということが、末端から中央の段階まで、みんなが承知しないと気が済まないという形になっている。そんな必要はないのではないだろうか。つまり中央段階では、おおよそこういった資金がこういう形でどのくらい出ておって、それはどの程度の効果をあげているかということが、総体としてつかめればいいのであって、実際にその金が何の太郎兵衛に貸されて、償還の場合はどうであるかということは、ほんとうに第一線の末端の融資機関の窓口でやればいい。つまり、もう少し弾力的な運用を、この農業金融の融資制度の場合には考えていてほしいものだということを感じるわけです。  その技術的な側面について、結論的なことを一言だけ申し添えますと、いまは農業金融の融資機関というものは、融資のこまかい事務処理に忙殺されているような感じがするのです。実際必要なのは、そんな事務的な仕事ではなしに、貸したあとのアフターケアの仕事が実際に必要なのじゃないか。つまり、事務処理面でのそういう複雑さを、もう少し簡素化して、融資した金が実際に生きた形で使われて、農業近代化がほんとうにできるような体制というものを、これは単に融資機関だけではなくて、もう少し総合的な、いわゆる指導体制というものが必要だということでもあると思うのですが、考えられていいのじゃなかろうかということでございます。  農業金融の基本問題に触れた一番基本的な部分については、大内先生、加藤先生から言われたことで私も全く同感でありまして、それにつけ加えて申し上げることはあまりないので、もっぱら技術的な観点で申し上げたわけです。(拍手)     —————————————
  10. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人各位の御意見の陳述は終わりました。  これよりただいまの御意見に対する質疑に入ります。質疑の通告がありますのでこれを許します。足鹿覺君。
  11. 足鹿覺

    足鹿委員 ただいまの諸先生方のお話、たいへんありがとうございました。それに関連をし、あるいはお話しになった点等について、諸先生方から二、三御意見をお聞かせいただければ幸いかと思います。  今度拡大された改良資金、無利息の資金についての御意見はなかったようでありますが、これらのあり方について、政府の現在考えております今度の改正はきわめてちゃちなものでありまして、三年とか五年とか、それも二万とか三万とか五万という金が主でございまして、ほんとうの農村の衣食住、特に生活環境の悪い農村、特に老朽農家の改築等については、ないよりましだとは思いますが、あまり役に立たないのじゃないか。もっとそういった面に積極的な施策の手が伸べらるべきじゃないかという気がするのですが、これらの改良資金のあり方等について、諸先生方から御意見がありましたら、この際承っておきたいと思います。  なお旧債処理対策について、どのような御意見を持っておいでになりますか。現在の農村の実情は、実際入ってみますと、いろいろな金を借りる、それは借りかえをしていく、こういう実態になっていると思うのであります。実際に旧債がどの程度あるかということは、昔の農業恐慌当時の負債整理というような形とはちょっと違った形になっていると思いますが、実際は相当旧債の重圧に苦しんでいる。これを安い金利の金に借りかえて、経営負担を軽くし、あるいは生活資金に使ったものの重圧から解放してやるということが、必要になるのではないか。要するに旧債対策、旧債処理をどうすればいいか、そういった点についてまとめて諸先生方から御所見を承りたい。  それから制度金融のあり方についての大内先生のお話は、われわれも非常に共鳴する点が多く、貴重な示唆を受けたわけでありまして、たいへん感銘いたしておりますが、これに関連をいたしまして高率低利の問題が提起されまして、私どもこれを痛感しているのですが、現在の系統農協の金融事業のあり方といいますか、これは系統外融資に相当流れている、これはいなめません。数字が物語っているわけです。つまり農協側にしてみれば高率の資金運用をやっていけば、それだけ低利融資の余裕が出てくる、あるいは組合なら、単協の場合は単協運営の健全性が増してくる、こういうことになるわけであります。ところが資金運用については、農林省令その他で耕土を持ってはいかぬ、あるいは株式を取得してはいかぬ、いろいろ制約を加えておりまして、なかなか思うようにならない、そういう矛盾があるようであります。農協としても経済体でありますから、そう簡単に短期の資金といえども低利に回すことはできない。問題は高率運用低利融資ということが叫ばれながら、なかなかそれは行ないがたいような実情になっているというところに、農協金利の引き下げ問題の一点があると思う。  それから近代化資金の場合は、大内先生のお話にありましたとおり、全く私も同感なんでありますが、いろいろ国が補助金をやるように干渉する。先ほどの三輪先生のお話にもありましたように、金を貸すのにまるで補助金をやるようなつもりで干渉する癖が残っている。そういう気持ちがわれわれはする。だからむしろ金利補給等は農協なら農協に、金融機関に一括やってしまうというようなことも考えられてしかるべきではないかと思うわけでありますが、とにかく国の干渉があまり多過ぎるという気を持っているのであります。もっと近代化資金等のあり方について、国の干渉を排し、利子補給等については農協に一括交付していくというような一面も道を開いて、そして経営自体の運用益を十分に得て、その余裕をもって金利をもっと引き下げていく。あるいは系統農協の三段階制の簡素化の問題等、根本問題はたくさんございますが、時間もありませんし、これは他日政府に対してただすつもりでありますので、要するに系統農協の金利引き下げ対策はどうあるべきか、この点を一つ伺いたい。  最後に、先ほど加藤先生のお話が中心であったと思うのでございますが、自立経営を中心に御意見を述べておられた。現在漁業金融制度の場合におきましては若干認められておるようでありますけれども、富農は金を借りる余裕もありますが、また金融を受ける対策資格も持っておるわけでありますが、貧農漁民というものは、次の段階には償還能力を持つに至るであろうけれども、現在はない。現在は個々の農家として見た場合にはない。しかしこれがある一つの共同化の過程を通ずるとか、あるいは他にいろいろな経営にくふうをこらすとか、近い将来には償還能力が出てくるというものがあっても、これに対する融資の道というものは現在あまり開けておらない。若干の共同施設を言う人もおりますが、これらのものに対して無担保、無保証の融資制度というものが講じられなかったならば、いつまでたっても貧農漁民は貧農漁民として放置されるのではないか、そういうことを痛切に感じておるわけでありますが、そういう点についての御所見はないのでありましょうか。以上四点をお尋ねいたします。
  12. 大内力

    大内参考人 いま四つ御質問がございましたが、一番最後の点は加藤教授に対するものでございますから、後ほど加藤教授にお譲りをいたしまして、直接私に向けられましたのは第三点の系統金利の引き下げについてどう考えるか、こういう御質問であったかと思います。したがってますそれから私の責任上お答えしたいと思いますが、私は農協の今日の貸し出しが、いまの足鹿先生のお話のようにうまくまいりませんで、農協資金というものの大部分が系統外に流れてしまう、こういう問題に関連いたしましては、いろいろ幾つかの問題があると思います。  一つは、いまの御指摘のございました金利の問題というのがむろんございますけれども、しかし私は金利のほかに、先ほど三輪さんからのお話にもございましたように、今日の農協のいわば貸し出し体制というものが全く整っていないしたがって農協が個々の農家に貸し出しをいたしますときに、その農家についての十分な審査をすると申しますか、つまりどの程度の能力があり、どの程度の見込みがあるかということについての審査をする能力も、ほとんど今日の農協は持っていないと言ったほうがいいと思います。もちろん例外的な優良な農協については多少そういう体制がありましょうが、大部分の農協はそういうものを持っておりません、いわんや先ほどお話のありましたような貸し出したあとのアフターケアというようなことになりますと、全く農協は今日体制が整っておりませんで、それをほとんどやり得ないような状態にあるわけであります。こういう農協の末端の貸し出し体制が非常に弱体だということから、農協はともすれば非常に安易な資金運用に走らざるを得ないわけでございまして、つまり危険が大きいというわけで、なるべく農家に対する貸し出しを控えまして、そしてむしろ安全性の大きい信連に対する預金なり、あるいはほかの金融機関に対する預金なりを選ぶ、こういう形にならざるを得ないし、そしてまた農家に貸し出す場合には、たとえば二十万円とか三十万円とかいう狭いワクをつけまして、それ以上は貸さないようにするとか、あるいは貸し出す場合に連帯保証人をとるとか、いろいろな制約をつけまして、その貸し出し体制の弱体なところを補おうとするわけです。そのためにまた農家としてはなかなか借りられないという問題が出てくる。したがって一つの解決すべき問題といたしましては、私はやはり農協の末端の体制を整備する必要があるというふうに思うのでありまして、そのためには何と申しましても末端の農協をある程度規模を大きくいたしまして、経済力を強化するということと同時に、いままで農協というものはともすれば農民に奉仕するものだから、たとえば農協の職員なんというものは、なるべく賃金は安くても奉仕しなければいかぬのだというような、妙に誤った理念が農協に非常に強かったかと思います。これは私は根本的な間違いだと思うのでございまして、何も職員がただ働きをいたしまして農家に奉仕をするということが、農協のいくべきことではございませんで、やはり農協は最大に能率をあげるということによって、農民に奉仕すべきである。そのためにはすぐれた職員を育成しなければならぬわけでございまして、そのすぐれた職員に対しましてはしかるべき待遇を与えるのがあたりまえのことです。そういう意味で農協の職員の待遇をよくいたしまして、十分な能力を持った職員をそろえて貸し出し体制を整備していく、こういうことが、第一に解決さるべき問題ではないかと思います。  それから第二番目に、金利の問題について申し上げますと、今日の農協の金利というのは、御承知のとおり一割をこえるのが普通でございまして、一割二、三分にまで達していることが多いかと思います。これは今日の農協の採算から申しますと、そういうことにならざるを得ないということのようでありますが、しかし他方農協が貯金として集めております資金コストというものを考えてみますと、これは農家の貯金は御承知のとおり貯蓄性が非常に高いわけでありまして、定期預金のようなものが高うございますから、普通の銀行よりは資金コストがかかっていることは確かでございますが、それでもおそらく五分くらいの資金コストならば、大体貯金の勘定には合うものではないかというふうに思います。そういたしますと、五分なら五分のコストで集めました資金を一割何分でなければ貸せないという、つまりマージンが非常に大きいのは、やはり農協にとって大きな問題だというふうに思うのであります。それはおそらくは、一つは農協の、ことに末端が非常に零細でございまして、経営状態が必ずしもよくない農協が非常に多い。しかもほかの経済事業におきましてことに十分な経営ができないものですから、いわばほかの経済事業のいろいろなしわ寄せを信用事業に乗せるということによりまして、ようやく採算をとっている、こういう仕組みに農協の経営がなっているように思うのであります。その不健全さが、金融にしわ寄せされているのではないかというふうに私は考えております。したがって末端の農協の規模を相当大きくするということ、それからほかの経済事業と信用事業との会計をきちんと分けまして、そしてたとえば経済事業資金を使ったときには、やはり信用事業に対しては一定の利子を払う、こういう形でもって、それぞれ独立の会計に整理をしていく、こういうことをしながら、だんだんとその金融の面においても合理化をいたしますならば、おそらく七分五厘とか八分とかいうような、いまの近代化資金程度の金利のところまで農協の金利を下げることは、私は可能であろうというふうに考えております。  しかしそれでもどうしてもまだできないということでございますならば、それは当面政府がめんどうを見なければならないということになるかと思いますが、その場合には、私が先ほど申し上げましたように近代化資金のように、個別にげたをはかせるという形にいたしまして、そして個別的に政府がそれに対して非常に強く干渉を加えるということは、望ましくないと思います。一つの方法といたしましては、戦前日本でやっておりましたように、戦前は御承知のように産業組合中央金庫というものが、半額政府出資でございまして、三千万円の資本金のうち、千五百万円を政府が出しておりまして、しかもこの政府出資分につきましては設立後十五年間配当を免除する、つまりただの金を出資する、こういう仕組みを持っていたわけでございます。たとえばそういう一つの方法を考えるべきでございまして、系統に対して一定のファンドを持たせまして、そのファンドに対しましては一定の期間は配当なり利子なりを免除してやる、こういう形にしながら系統の資金を援助して、系統の金利を下げさせる、こういう方向に指導をしていくほうが、系統金融というものを健全に育てるゆえんではないかというように考えております。  第三点につきましてはそれだけでございますが、あと第一点と第二点につきまして簡単に私の考えていることを申し上げたいと思いますが、改良資金の点につきましては、先ほど加藤教授のお話もございましたが、私も金融という形をとりますときに無利子の金を貸すということは、ある意味でははなはだおかしな考え方だというふうに思うのです。金融というのは、その金利についてはできるだけ市場金利というものをいじらないほうが私もいいと思います。そういう意味では無理に利子を下げる、ことに預金金利以下に下げるということであれば、加藤さんの言われたように私もたいへん問題だと思いますけれども、いわんや無利子にしてしまう、そういうのが金融だという考え方には、どうも私は納得できない点が多いのであります。  改良資金が導入されました一つの動機は、御承知のとおり農家がいろいろ新しい技術を採用いたしますときに、従来補助金でもってそれをカバーしながらやらしていたわけでございますが、昭和三十年でございましたか、補助金整理するというたてまえから、この改良資金というものが、ことに技術導入資金というものができたわけでございます。しかし本来そういう新しい技術を採用させる、あるいはそれを奨励する、こういう点で考えますと、無利子の金を貸すというやり方は、あくまでもこそくなやり方だろうと私は思います。むしろ農家にとっての問題は、その新しい技術を採用することに関連いたしました危険というのが、一番大きな問題なのでございまして、もしその新しい技術を採用いたしまして、それが成功するものならば、利子がついても、農家は将来十分返せるはずのものであります。ただ、はたしてそれが返せるか返せないかということが、農家にとっては非常に不安である、新しい技術を採用しても失敗するかもしれない、そのときは、金を借りたのではにっちもさっちもいかなくなる、こういう不安が残るわけでございまして、そういう不安に関連して言えば、無利子であっても、農家は万一失敗したときには金が返せなくなりますから、困ることには変わりがないわけであります。  そういう点を考えますと、そういう技術導入ということに関連して申しますならば、むしろ政府が危険負担を考えてやるということ、つまり新しい技術を採用して、成功すればそれでいいし、もし万一失敗したときにも、この分までは政府がカバーしてやる、補償してやる、こういう制度をつくっておくべきでありまして、それさえできれば、普通の金融のワクの中で十分処理できることではないか。いままでそういう損害補償という考え方が、農林省あるいは国の政策にはなかったわけでございまして、ついでに申し上げますと、私は構造改善事業でもそういう考え方を導入することが非常に重要だということを、前から農政審議会でも主張してきているわけでございますが、依然として実現していただけないわけでございますが、そういう考え方を入れることを避けて、いわばこそくな手段で改良資金というものを考えられてきたのではないか、こういうことを感じますので、それを申し上げたわけです。  それから第二点につきましては、旧債の借りかえなり、あるいは旧債の処理ということは重要だと考えます。ただ、この点について申しますと、一括していま農家が持っております旧債を何もかも処理してやるということが、はたして必要であるかどうか、あるいは処理することが必要であるといたしましても、その処理のしかたには幾つかの区分けが必要ではないかというふうに考えます。先ほど申し上げましたように、今日すでに兼業化が非常に進んでおりまして、ことにあと継ぎはもう農業をやる意思がないという農家相当ふえておりますが、こういう農家の場合には、かりに旧債を持っておりましても、それを処理してやったから農家として発展するという見込みはまずないと思います。したがって、そういう農家の場合の旧債の処理というのは、むしろ離農を促進してやる。たとえば先ほど申しましたように土地を高く買い上げてやる、こういう形でもって資金を与えることによって、旧債を処理させるというのが一つの方法かと思います。それに対しまして、専業農家として伸びようとしておる農家に、旧債の負担が非常にかかっております場合には、それをできれば一時たな上げにしてやるなり、あるいは長期低利の償還計画を立てさせて、それを政府が補償してやるなり、こういうことを考えるべきではないかと思います。特に旧債の負担というのが非常に重大な問題になっておりますのは、御承知のとおり一つは災害地でございます。ひどい災害を受けた地帯でございますし、もう一つ非常に大きな問題になっておりますのは、戦後の開拓地でございます。この災害地とか開拓地につきましては、いま申し上げましたように、特にこの問題は非常に重大だと思いますが、災害地につきましてもいま申し上げましたような区分けをいたしまして、整理を考えていくべきであろうと思いますが、特に開拓地につきましては、率直に申しまして私は、戦後の開拓政策というものは御承知のとおり大部分が失敗であったというように考えております。今日われわれが見てまいりましても、成功しておる開拓地の例というものはきわめて少のうございまして、大部分農家は、戦後開拓者として入った、入ったけれども営農は少しもよくならない、しかも借金だけは背負い込んでしまって、借金が返せないから出ていくわけにいかない、こういうことで開拓地の農家の非常に多くのものは、今日非常に悲惨な状態にあるということは御承知のとおりであります。このことは十分考えるべきことでございまして、政府があれだけの開拓政策をやって、農民を入れたわけでございますからいま農民がそういうふうに困っておることについては、やはりあと始末をする義務が私は政府にあるだろうと思います、それにつきましては、やはり開拓地につきましてもう一ぺん根本的な調査をいたしまして、そうして将来営農として伸び得るところは、相当資金を入れて伸ばしてやることを考えるべきであろうと思いますが、どのみち伸びる見込みのないようなところに、いつまでも借金だけで農家をつなぎとめておく、こういうようなはなはだ不合理な政策をいつまでも続けていくことには、私は反対でございまして、そういうところはいさぎよくあきらめまして、旧債はたな上げにしてやって、そうして転換の資金なり、あるいは転換の手段についても十分にめんどうを見てやって、早く開拓地の問題を解決すべきであろう、こういうことを考えております。
  13. 加藤讓

    加藤参考人 第四の問題が私に直接向けられた質問だと思いますので、まずそれについてお答えしたいと思います。  私の言わんとしたところは、経済政策と社会政策とをはっきり分けて考えるべきであるということを言っておるわけでございます。そうして、要するに金に限度がありますから、結局その金をいかに有効に使うかということであります。そこでうかうかすると六百万農家全部が、そういう自由化というものにいろいろの段階においてどういうふうに対処するかということによって、問題はありますけれども、極端な場合を考えますと、総倒れになるというふうな危険性があることを考えました場合に、早急に自立経営の伸びる芽というものを伸ばすべき施策をとるべきではないかということが本旨であります。そこで経済政策的な観点から、つまり農業金融というものを考えろ。そこで問題が残ったいま御指摘になりましたような貧農といわれるような方々につきましては、これはやはり社会政策ということでカバーすべきじゃないか。やはり最初の農業金融という形の中で、その二つの問題の違うものをはっきり整理しないで、一括して取り扱うことは非常に危険だということを考えておるわけでございます。現在とにかく貧しい状態にあるといいましても、将来伸びる見通しがはっきりあるところにつきましては、これはまた私はそういう農家に金を貸すなと言っておるわけではないのでありまして、その場合に一体伸びる見通しがあるのか、あるいは将来に対するはっきりしたビジョンを持って、それに対する計画を持って、その計画に対する裏づけとしての能力があるかということが何にあらわれるかといいますと、それは一般大学の入学試験のように、試験をやるというわけにまいりませんので、結局将来ある程度の猶予期間を置けば、これだけの金利を払える実力といいますか、プランを持っておるということに表現されるのではないか。そこの基本があいまいであると、金融金融としての効果を全く果たせないことになるのではないかということを考えております。現在資産を持っていないとか、所得水準が低いということだけできめられることではない。これは考え方だけの問題でありますけれども、そういうことを申したわけであります。  それから第三の系統金融の問題でありますけれども、これはいろいろな面から考えられるのでありますが、とにかく預金、あるいは債券を発行して集めた金、それは預金者及び債券保有者に金利を支払います。それからその預金を集めたものを貸すというときの費用が重なってまいります。それにまた危険負担というものが合わさりまして、結局貸し出しの金利が、資金供給する金融機関側の望ましい金利水準というものがきまるわけでありまして、その貸し出しの金利水準を引き下げるためには、いま申しましたような個々の構成要素をいかにして引き下げるかということになるわけであります。まずその預金の金利ということになります。農業協同組合は一般の金利よりも一厘ずつ高い金利で預かってもいいということになっておるのであります。これがもし同じ金利であるならば、農業協同組合に預けられる農民の金が、ほかの金融機関に流れはしないか、そういう配慮もあると思います。そういう農民考え方一つの問題があると思います。これは自分たちの組合であって、その組合から金を借りるのだから、自分たちの金を預けるのだという考え方に立てば、貸し出し金利をほんとうに低くしなければ経営が成り立っていかないというのであれば、そういう理解を農協に対して持つならば、預金の金利が少なくても預けるというふうになるのじゃないか、こう思うわけであります。実際上、もし農業協同組合というものが農業経営というものにほんとうに理解があって、農民に金を単に書類の上での審査だけでなく貸す。貸したあとも、三輪さんが言われたアフターケアというものをやられて指導金融に徹するならば、そういう金を借りた場合の貸し出し金利負担というものだけは金利負担ではなくて、あとにつけ加わってくるサービスというものが、これは実質上金利を引き下げるような意味を持っていますから、実効金利としてはむしろ低い。自分がむしろ農協に預金しておけば、また借りるときにはめんどうを見てもらえるとか、あるいは市場その他に関する情報とか、いろいろなことで農協が役に立つということなら、預金の金利が少々下がっても、低くなっても、農協に預けることは無意味ではない。一般金融機関より安くても、郵便貯金より安い金利でも、農協に預けよう、こういう協同組合の理念というものを農民が持てば、あるいは持つだけの機能を農業協同組合が果たしていれば、農民は農協に対して安い金利でも預けるだろう、その点は金利を引き下げる一つの手になるだろうと思うわけであります。  それから中間の、いま大内先生が言われましたマージンの問題でございますけれども、現在末端の単位農業協同組合におきましては、いろいろな事業をやっているわけです。そこで、信用事業でもあるいは倉庫事業でももうけているけれども、ほかの販売事業や購買で損をしている。そこでどんぶり勘定的にカバーしている。なぜそういうふうに一方ではもうかるが、一方では損するかということになると、これは具体的にはいろいろ問題があるかと思いますけれども、一般的に私考えますと、それぞれの事業がそれぞれの違った種類の仕事である。同じ組合がやれば、一つ事業がもし適正規模であるならば、他の事業は適正規模以上であるか以下であるということになると思うのであります。そこで、そういう多種の事業をやります場合には、それぞれの事業の性質を考えた適正規模を考えていく。その適正規模がうまくカバーされるだけの統合をやらなければならぬと思うのです。だから一つの村あるいは一つの単位行政的な村であるというだけで、一つの村に農協があれば、その行政村というものの経済規模に応じて、ある事業にとってはその農協では少し規模が小さ過ぎるということになると思います。そうするとその事業は、その農協にとってはむしろ経理的にはマイナスになるのじゃないか。したがって行政村に縛られる必至はないわけでありまして、その営む事業の種類に応じて、それぞれの適正規模を考えて検討し直して、もし多種の事業をやるのであれば、それの最小公倍数みたいなもので一つの農協をつくる。そうしなければ中間のマージンというものは引き下げることはできないだろう。そのように協同組合をもし合併して合理化を行なうことができますと、これはいい事務機械も導入できましょうし、いい給料を払って有能な人を雇うこともできて、農協もうまくいくのではないかと思うわけです。それからそういう預金者及び債権者に対する利子とプラス、そういう直接、間接の経費以外に、今度は貸した金が一体元利合計間違いなく返済されるだろうか、そういう危険負担金融機関としては支払われる金利の中に含めるわけであります。その危険負担ということに関しましては、やはり農産物の生産に伴う不安定の問題であるとか、あるいはそれに基づくわけでありますけれども、農産物価格の不安定というものがありますならば、やはりそれぞれに応じた保険の措置があるでありましょうし、そういうことで、そういう危険負担をカバーすることになるのではないかと思うのです。根本はそういう貸す相手の農民に貸すか——本来ならば貸すべき組合員である農民に貸すのか、あるいはそういうものを有価証券なりあるいは関連産業に融資するのか、その二つの選択に立っておるわけでありまして、一方の農業のほうを——私のことばで言いますと、いまの自立経営ができて、そのペイし得るだけのものはペイするということの基礎ができていない場合には、やはり農協といいましても二つのふるいにかければ、片方に行くという可能性があると思います。一つの営利的な企業体である以上は、そういうことがあると思います。そこで基本的な問題になりますと、自立経営というものをつくる貸す相手がしっかりしているというような基盤をつくるべきではないかと思います。  それから、もしかりにそういうことがなくても、農業協同組合が何らかの形でいろいろ国あるいは地方公共団体の恩恵を受けている。先ほど大内先生が言われましたように、産業組合中央金庫の設立の際から、いろいろな意味での国家の保護とか恩恵を受けておる。そういうことがありましたけれども、現在でもそういうことを考えますと、農業を専門にしておる金融機関である以上は、預金をもって集めた金は、少なくとも何%は農業のために貸しなさいというふうな規制を——これは少し統制的になりますけれども、そういうことだってやろうと思えば考えてもいいのではないか、そういうふうに考えます。  それから戦前、勧業銀行が農業のための不動産銀行でありながら、農業のために貸さないという事態が、資本主義の発展の過程で出てまいりました。その場合の一つの打たれた手といたしましては、当時の大蔵省預金部に勧業債券を引き受けてもらう。これは非常に低利で引き受けてもらったわけです。そのかわりそういう形で引き受けたものは、産業組合であるとか、あるいは耕地整理組合であるとか、あるいは地方公共団体に対する貸し付けというふうに、農業に直接関係したものとか、あるいは農業に非常に関係の深い分野に対する貸し付けに貸しなさいというひもつきで引き受けたわけです。現在でも農林債券が資金運用部で引き受けられておる場合には、そういうひもつきです。こういう用途に向けなさいということだってやろうと思えばできないわけではないし、現在やっておるかどうか私は知りませんが、そういうことだって考えられるのではないか、そういうふうに思うわけであります。  第一の改良資金の問題でありますけれども、だれにそういう金を貸すかというセレクションの問題でありまして、いまの農業技術者を養成する、あるいは後継者を養うという場合に貸しても、たとえば国立大学の農学部を卒業した卒業生は、一人当たり何万円か何十万円かの国の金が使われておる。しかしその農学部を卒業した学生が、直接に農業に関係のない仕事に従事したといったって、人間を束縛することはできないわけでありますから、現在そういう傾向もないわけではないと思います。たとえば自衛隊で飛行機の技術を習得した人が、民間の航空会社に高い給料で雇われていくということも、人間を縛れないということになれば、それを防ぐことはできないと思います。ですからそういう農業改良資金ができましても、それで農業の後継者がほんとうに得られるだろうという確信がはたして持たれるかというと、私は必ずしも持てないのではないかと思うわけです。だれが農業の後継者としてやり得るか、あるいはやり得るだけの能力を持っておるかということは、現在の経済制度のもとにおきましては、結局価格の原理で、プライス・メカニズムといいますけれども、それで見る以外にない。それは将来ある程度の猶予期間、農業固有の自然的条件に根ざした一定の猶予期間を見ておけば、そのあとでは通常の金利水準でもっても十分負担できる。それだけのファイトを持っておるような農家に貸すということ以外になるのではないか。ですからやりたい人が悪平等のために金を借りられなくて、伸びる芽がつまれておるというふうなことをまず排除することが第一歩ではないか。そこで残った問題として、しかるべき社会政策、あるいは離農政策をどういうふうに行なうか、あるいはその離農者に対する資金をどういう形で融通するかということは、いろいろの問題がありますけれども、まず第一歩としては、私はまずプライス・メカニズムというものを利用するべきであろう、そういうふうに考えております。  第二の旧債の整理の問題でありますけれども、これは大内先生から十分御見解をお述べになりましたが、私も同じ意見でございます。
  14. 大石武一

    ○大石(武)委員 ちょっと大内教授にただいまの関連でお伺いしたいと思います。農業の系統金融の問題でありますけれども、これはお説のように一割以上の高い金利で農民に貸しておるようですが、ところが農民は御承知のように一番経済的に貧困な階級でございますし、またその農協の系統金融の金というのは、ある程度農民のふところから出ておる金であります。したがって、農協の系統金融の金を貸す場合には、当然どこよりも安い金利であることが望ましいし、またそうでなければならぬと思うのでありますが、しかるに現実は反対でございます。これにつきましては、ただいま大内教授がいろいろな原因と対策をお述べになりましたけれども、それだけではたして十分であるかどうかということを、もう一ぺんお伺いしたいと思います。と申しますのは、末端の貸し出しの事務体制と申しますか、その整備が大事だ、それには農協も大きくしなければならぬ、それはごもっともだと思います。しかしそれだけではたして全部が終わってしまうのか。それをやって金利が七分なり八分なりに下がらない場合には、政府が手を打たなければならないのではないか。政府が手を打つのはけっこうでございますけれども、はたしてそれだけで十分であるかどうかということについて、御意見をひとつ伺いたいと思うのでございます。
  15. 大内力

    大内参考人 はたして十分であるかというような御質問の趣旨が、ちょっとよくわからないのでございますが、私の申し上げました前提になっておりますことは、先ほど来加藤さんからもお話がありましたように、ただ金利を人為的にむやみに下げればいいというふうに私は考えておりません。ことにいまのように預金金利以下に下げなければ困るというような考え方は、金融としては非常におかしい考え方でありまして、そうなりますと、さっき加藤さんからお話がありましたように、農家は自分の金は使わないで、もっぱら政府の金を使う、こういうことになってしまいまして、かえって資金の効率も悪くなりますし、農民を経営者として非常にスポイルするということにならざるを得ないものだと思います。したがって、少なくとも預金金利より高い、農協の定期預金が五分六厘でございますならば、貸し出し金利はそれよりも高いのが当然だろうと思います。したがって、その十分であるかどうかという御質問の中で、農家がたとえば七分なり七分五厘なりという金利を負担して、それで経営が成り立たないという問題があるといたしますならば、それはもう金融という手段では救いようがないものであって、したがってそれを救うのには、先ほどからいろいろお話がございましたように、たとえば価格政策なりあるいは経営の合理化なりという問題、そちらに政策的な重点を移していくということによって解決する以外にないのであって、それ以下に金利さえ下げれば問題が解決するというふうにとうてい考えられないわけであります。先ほど私が申し上げましたのは、もし農協の体制が十分整備できれば、うまくいけば七分五厘くらいならば貸し出せるのではないか、これは全くの腰だめでありまして、そうこまかく農協の経理を分析したわけではございませんし、いわんや合併したらどうなるかということはなかなかわかりませんので、腰だめでございますが、七分五厘くらいで貸し出そうと思えば貸し出せるのではないか。それでどうしても農協がやれないということならば、七分五厘程度のところまでは政府がめんどうを見てやったらいいのではないか、こういうことでございまして、その程度でむしろ資金を利用して十分にやっていき得るような経営、こういうものができなければ私は自立経営じゃないと思いますし、しかもその自立経営を育成するのには、繰り返して申し上げますならば、ただ金利を下げさえすれば自立経営ができる、そういう考え方を私はとらないのでございます。
  16. 大石武一

    ○大石(武)委員 私の御質問申し上げているのは、そのようなことではないのです。つまり一割以上のいまの農民に対する金利、これは高いというお説でございますが、私もそう思います。これを何分に下げなければならぬかとか、何分以下に下げなければ自立経営ができないかということをお聞きしておるのではなくて、どうすれば金利が下がるか、その下げることが大事だと思ます。一番貧困な農民、しかもその農民から預かっている金を高い金利で農民に貸すということは、非常に不合理だと思います。それについては御同感であろうと思います。それをどうして下げるかというと、それには先ほど二つの案をお述べになりました。つまり末端の貸し出し体制の強化、それから政府の補助と申しますか、政府の処置と、この二つをお述べになりましたが、それだけで十分であるかということを申し上げたわけです。私はそうは思わない。もう少し系統機関のあり方に考えるところがないか、そういうことは当然おわかりだろうと思いますが、あえてお触れにならないのか、そういう点について、何かもう少し方法がありはしないかということでお聞きしたのでございます。  もう一つは、私の聞き違いかもしれませんが、末端の農協、単協におきまして、信用の金融事業と経済の事業を一緒にやっている。そこで片方で損をしても、片方でよければいいではないか、片方でもうけて、片方に金をつぎ込んでもいいのではないかというお話でございましたが、これは聞き違いであればなんですが、そういうことは一番危険ではないかと思うのです。右手には信用金融事業を、左手には経済事業を、そしてこの二つのどんぶり勘定でやるということは、一番危険ではないか。金融機関は金融機関、経済機関は経済機関としてはっきり区別して、別の系統でそれを相助けていくということが、一番大事ではないかと思います。
  17. 大内力

    大内参考人 最初の問題につきましては、おそらく私も多少触れたつもりでございますが、十分でなかったかと思いますので、多少補ないをさせていただきますならば、単なる貸し出し体制の強化だけでいいというふうに申し上げたつもりではございませんで、やはり農協の適正規模化ということがまず問題かと思います。  なおそれにつけ加えまして、前には触れなかったわけでございますが、おそらくいまの御質問の背後には、系統全体としての段階性なり何なりを、どういうふうに考えたらいいかという問題をお持ちの上での御質問ではないかというふうに理解いたしますが、その点で申しますと、私も経済事業と信用事業とはかなり性質が違うのではないかというふうに考えます。また最終的にどうしたらいいかというふうにそう簡単にはいかないのでございますが、少なくとも金融事業につきましては、私は信連段階というものは要らないだろうというふうに考えております。したがって、単協が十分強化されまして、今日一部で進んでおりますように、郡単位なりあるいは市単位程度、組合員数が八千人から一万人くらいのそういう単協というものができてまいりますならば、おそらく県の連合組織というものは要らないだろう。ただ農林中金は、全体としての資金の調整もございますし、農林債券を通じまして外部資金を導入するという問題もございます。したがって、農林中金というものは、残らざるを得ないのではないかというふうに思います。  それから第二の点につきましては、私はおそらく二つの考え方があるのではないかと思います。一つは、先ほど加藤教授もちょっと言われましたが、いわゆる信用組合分離案でございます。つまりアメリカ式に信用組合は信用組合として独立させる。他の協同組合は経済事業だけと申しますか、あるいは信用事業以外の事業に限る、こういう形にするほうがいいという考え方であります。これはさっき加藤教授のお話にもございましたような適正規模論という考え方から申しますと、そういうものは確かに一理がございまして、信用事業の適正規模と経済事業の適正規模というものは必ずしも合致しない、したがって別の適正規模にするためには、それぞれ分けたほうがいいという考え方にもなると思います。  それから先ほどちょっと御指摘がございましたいわゆるどんぶり勘定でございますが、これはおそらく一応の経理としては、今日どこの単協でも計算は一応分けた事業勘定を立てまして、経理をしているのが普通だと思います。ただ私が申し上げました趣旨は、たとえば経済事業でいろいろ流動資金を利用するという場合には、事実上農協が持っております資金を使っております。ところが、それではそれに対してきちんと利子を信用事業のほうに払っておるかと申しますと、必ずしも払っているとは言えない。あるいは出資金に対する配当を出したり、あるいは役員なり職員なりの俸給を計算する、あるいは人件費を計算する、あるいはその他の共通経費を計算する場合に、必ずしも経済事業に十分な負担をさせないで、そういうものは信用事業に非常に大きな分を負担させて、もっぱらこういう形で経理をしているのが単協の状態ではないか。いわゆるどんぶり勘定というのはそういう意味で申し上げたわけでございまして、単協がかれこれごちゃごちゃにしているという意味では必ずしもないわけです。  ところで、そういう弊害を避けますためにも、一応の考え方として、信用組合を分離するという考え方がございますが、ただ私が多少それに疑問を持っておりまのは、先ほど来申し上げましたように組合金融というものは、単に事務的に金を貸せばいいというものではないと私は思うのです。やはりいろいろな意味で、その貸し出したあとのアフターケアをいたしまして、相当農家のめんどうを見てやらなければならない。そのめんどうを見ることの中には、技術指導もございましょうし、経営指導もございましょうが、そのほかいろいろな、たとえば農家が必要とする資材を供給するなり、機械を供給するなりというような、経済事業関連いたしましたような、そういういろいろなめんどうの見方もおるわけでありまして、金を貸すということと、そういうほかのいろいろな事業というのが有機的に一体化いたしませんと、アフターケアというものはなかなかできない。そういう場合に、組織は二つになりましても、二つの組織がうまく連系してやれば、それでいいようなものでございますが、ただ現実の問題といたしましては、どうしても団体が二つに分かれますと、おのおのなわ張りができてまいりまして、なかなか有機的に共同するというようなことは、言うべくして行なわれないという弊害が他面では出てくるのであります。こういう点から申しまして、やや折衷案でございますけれども、やはり総合単協というものは総合的にしておいたほうがいいのではないか。しかしもう少しその内容的な経理の区分というものはきちんとする。ことにいま申しましたような人件費とかその他の共通経費の割り振り、内部における経済事業が利用する資金についての利子の支払い、こういうものについての経理方式というものをもっときちんとさせるということから、さしあたり合理化をはかるべきではないか、こういうふうに考えております。
  18. 高見三郎

    高見委員長 以上で参考人の御意見に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、非常に貴重な御意見をお述べいただきまして、三法案の審査の参考に資するところがきわめて大なるものがあったと存じます。まことにありがとうございます。  本会議の都合もございますので、この際暫時休憩をいたしまして、おおむね午後二時前後に開会をいたしたいと思います。    午後一時五分休憩      ————◇—————    午後二時二十三分開議
  19. 高見三郎

    高見委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  農林水産業の振興に関する件について調査を進めます。  日韓漁業交渉問題について、農林大臣から発言を求められております。赤城農林大臣。
  20. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 日韓漁業交渉につきましての現在までに至る経過及びわがほうのこれに臨む態度等につきまして、御報告、御説明申し上げます。   〔委員長退席、小山(長)委員長代理着席〕  昭和三十六年の十月に始まりまして現在に至るまで、四十数回に及びまして日韓予備交渉、漁業関係の会合が開かれております。双方から具体案を出し合って討議が行なわれておるのでございますが、その経過等について御説明申し上げます。  今日まで問題になった点を申し上げますと、これはわがほうの態度でもございますが、第一番目には、李ラインの撤廃を前提として漁業交渉の妥結をはかる、こういう方針で進めております。  それから漁業専管区域でございますが、漁業専管区域につきましては、わがほうにおきましては、十二海里という国際先例等に従っていこう、こういうことでございますけれども、韓国側は四十海里を主張しております。そこで、この点ははっきりまだ妥結になっておらぬ点でございます。それからいまの漁業専管区域をはかる基線でございますが、この基線につきましては、ジュネーブにおける条約案あるいは議決した点等につきまして、わがほうにおきましては、低潮線を原則とする、こういうことを主張しております。しかし、一九五八年の、あるいは六〇年のジュネーブにおける会議で議決された点等もありまして、海岸線が複雑で島の多い——日韓の交渉に当てはめれば、韓国の南海岸及び西海岸につきましては、直線基線によることもやむを得ない、こういうふうに考えておるのでございますけれども、その直線基線の引き方につきまして問題がございます。その直線基線は国際通念に合致した合理的なものでなければならないし、また一方的に韓国側から主張しまして日本の主漁場を取り込むようなものであってはならない、こういう主張をいたしておるのでございます。韓国の原案によりますると、著しく広大な海域が専管水域になって、国際通念に反する点が多いのでございます。あるいは日本漁場の主漁場を専管水域に取り込むというような点もありますので、この点につきまして一致を見ませんで、争っておる、残っておる点がございます。  その次には、専管区域の外側に共同規制海域を設けるかどうか、こういう問題でございます。これはもちろん公海自由の原則に基づいた公海でございますけれども、最近におきまする状況から見まして、海域内の魚類を公正に、平等に、また実施可能な線で魚族の保存ができて、両方の漁業が公平に行なわれるということでありますならば、規制区域を考えてもよかろうというような運びをいたしております。けれども、この点につきましても、専管区域の線の引き方等につきまして一致いたしておりませんので、この点も、歩み寄りというものは、いまのところございません。  それから第三番目には、専管区域あるいは共同規制区域というものを設けた場合におきまして、そこに出漁するところの漁船の隻数等をどういうふうにきめていくか、こういう問題が懸案になっておるのでございますけれども、これまた専管区域の線の引き方等がきまっておりませんので、出漁する漁船の数等について決定といいますか、妥結の線に入っておりません。  それからもう一つは、韓国の漁業が非常に劣勢でありますので、それを育成していくという意味におきまして、漁業協力の資金日本の民間側から貸与するという問題が議題になっておりますけれども、これにつきましては、向こうの申し入れはありますけれども、こちらからはそれにつきましての回答はまだ出しておりません。そういう面が残っております。  そういうたくさんの問題をいわゆる専門家会議で交渉をいたしておるのでございますけれども、韓国側は、そう言っては失礼でございますが、出先の交渉に当たっている、いわゆる六者会談のメンバーの人たちが、どこでどうきめるという判断を下す権限をあまり与えられていないようでございます。そういうような関係で、四十数回いわゆる専門家会議を続けてきておりまして、ある程度は歩み寄った点もございます。たとえば四十海里の専管水域というものを、十二海里というようなことに向こうも折れてはきておりますけれども、しかしまだ、十二海里の宣言をする、はっきりそれをそうするというようなことなどを言い切り得ない、こういうようなことでございます。そういうような状態でありますので、なお専門家会議を継続して煮詰まってからでないと、上級会談というものに持っていくには早いんじゃないか、こういうような気持ちがいたしておりましたので、そういう主張をしておったのでございますが、たまたま韓国側から、専門家会議をいつまでやっておっても、決心をするというか、決断をする段階に入らない、だからその上の、いわゆる上級会談といいますか、上級会談をして、そうしてきまるならきまる、きまらないならきまらないというようなことにしたいものだというようなことを、外交ルートを通じて大平大臣のほうへ申し入れがあったわけであります。大平外務大臣から相談がありましたので、私のほうといたしましては、上級会談として農林大臣が出るといたしましても、議題は専門家会議において論議されている議題以外には出られないぞ、たとえばいま申し上げましたような専管水域の基線の問題、もとの線をどこからはかるかという問題とか、あるいは専管区域をどの程度に、どういう線で認めていくかということ、あるいは共同規制水域を設けるとするならば、どういうところにこれを設けるか、あるいは船の数等についての話、あるいは漁業協力というものは最後になるだろうけれども、そういう専門家会議において議題となっておること以外に、特に政治的に、何か非合理的というか、そういうきめ方をする高級会談であってはならないので、専門家会議議題を筋を通して話し合うという会談ならば応じてもいいんじゃないか、こういうことを外務大臣に話しましたので、外務大臣のほうから、いわゆる上級会談といいますか、それに応諾する返事を韓国側にいたしまして、韓国側におきましても、外務大臣の返事を受けて上級会談に移そう、そういうことになりました。  ただ、私のほうといたしましては、御承知のように、いままでの予備交渉が一方において本格的な交渉にも移るということでありますので、漁業交渉というものは、日韓会談において不可分の問題であるので、漁業の問題がきまらないのに、ほかの問題だけきめてしまって、これを置き去りにするというようなことはとるべき態度ではない。何といたしましても漁業の問題が解決することが前提であるというようなことを外務大臣に申し入れてあるわけでございます。そういう経過をもちまして、近くいわゆる上級会談といいますか、上級会談に入ろう、こういう段階にあるのでございます。  以上が日韓漁業交渉における経過の大要でございます。
  21. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 本件に関して質疑の申し出があります。これを許します。楢崎弥之助君。
  22. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 ただいま大臣から今日までに至る漁業交渉の経過を聞いたわけですが、確認をしておきたいのですけれども、新聞の報道するところによると、十日から閣僚会議が開かれる、並びに十二日から予備会談を本会談に切りかえる、並行してやっていく、そのスケジュールに間違いありませんか。
  23. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 十日から漁業関係のいわゆる閣僚会談といいますか、これをやる、それと並行して十二日から日韓の正式交渉をする、こういう運びを外務当局のほうできめておりますので、そういうふうに進めるつもりでございます。
  24. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 大臣は、去る二月五日の午後に、これは後宮アジア局長、庄野水産庁長官も同席された上で、大平外相とこの漁業交渉の基本問題について打ち合わせをされたと聞いておりますが、そのときに、この漁業問題は、単に日韓両国間だけの問題ではなくして、国際的に及ぼす影響が非常に大きいので、交渉の妥結を急ぐあまり国際慣行を度外視してまで政治的解決を急ぐことは避けて、慎重な態度で交渉を進めるということで、大平外相と意見が一致したと聞いておりますが、そうでしょうか。
  25. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そのとおりでございます。
  26. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、ただいま大臣の経過報告で聞きますと、重大な問題はほとんど何も煮詰まっていないではありませんか。専管水域の問題あるいは共同規制水域の問題、規制内容の問題あるいは漁業協力の問題、全部懸案事項が残っております。そうすると、それをそのまま高級政治会談に持っていくのではなしに、まず専門家会議で煮詰めて、いままでどおりの国際慣行でわがほうはやっていく、そうしてそれが煮詰まった上で、政治会談に持っていくという当初の農林大臣のお考えは、ここでその方針は変更された。これは政治的な解決以外にないということで、いま大臣の御返事のありましたような今後のスケジュールが組まれた、そのように私は思わざるを得ないのです。農林大臣のいままでの考え方と、その方針の変更があったと思うのですが、どうでしょうか。
  27. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 方針において変わりはございません。手続等について変わったのでございますけれども、閣僚会議をするといたしましても、国際的な慣行、国際的影響、そういうものを曲げて政治的な交渉をしようということではございません。とかく世間では、政治交渉というと、何か足して二で割るような、つかみできめるようなことに考えていますが、私どもが政治会談をやるということは、やはり筋の通った、国際慣行にも沿うて、あるいは国際的の影響をも考えて、そうして専門家会議でいつまでもきまらぬ問題はきまらないままで、政治会談で専門家会議において主張したと同じような主張をして、これをきめるような運びにしていきたい。ですから、その場合においてもしもこまかいことできまらぬようなことがありますならば、また専門的におろすといいますか、並行的に専門家会議にまた移すこともございます。たとえば日ソの漁業交渉等におきましても、委員会を開いていくと同時に、政治的に、大臣同士で話し合うというようなこともございますので、政治会談に移すからいままでの方針を曲げたということではございませんで、いまの方針を堅持して交渉を進めていく、こういう意味でございますから、方針においては変わりございません。
  28. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 方針において変わりはないけれども、手続の方針が変わった。それは確かにそうです。懸案事項を残したまま閣僚会議に持っていこうということは、確かにいままでのあなた方政府の考えておられる、少なくとも農林省、水産庁が考えておる方針とは変わったと私は思う。手続が変わるということは、私は方針が変わらざるを得ないと思うのです。内容を含んでおりますからね。したがって、いまの農林大臣のお話からいうと、閣僚会議は専門家会議の延長みたいなものに聞こえる。専門家会議の延長だと考えていいんでしょうか。それが一つと、同時に、どのくらいこの閣僚会議の期間を考えてあるか、それもお伺いしたいのですが、その期間内にいろいろ専門的な問題が起これば、再度専門家会議に移して、そういう高級のあれをお休みにして、専門家会議に再度移す、こういうふうにいま御答弁を聞いたのですが、そのとおりでしょうか。
  29. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 まあ、閣僚会議といいますか、高級会談といいますか、高級会談は専門家会議の延長かということでございますが、延長といえば延長でございますが、専門家会議議題になった問題を議題としてやっていく。同時にまた、専門家会議においては筋を通した主張をこちらではしておるわけでございますから、そういう点においては筋を通した話を進める、こういう方針でいこう。それから期間がどれくらいかかるか、これはちょっと当たってみないとわかりません。とにかく専門家同士の会議におきまして、向こうは決断できないのです。決断できないから、より上の者が出てくれば決断すべき権限を持ってくるかというふうな期待といいますか、そういう考えは私ども持てますけれども、どれくらいまでそこできめられるものか、実際に当たってみませんと態度はわかりませんから、期間はどれくらいということをあらかじめ申し上げることは、いまできません。当たってみないとわかりません。
  30. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 私は、この十日から行なわれる政治会談、閣僚会議、こういうものが、いままでの専門家的な立場から進められておる交渉を、政治的に妥協といいますか、そういうふうに持っていかれる可能性が非常に多いのではなかろうか。これはいままでの農林大臣あるいは水産庁の考え方と違うのではなかろうか。何かそこに、このようなスケジュールに、手続の変更でもけっこうです、方針の変更でもけっこうですが、こういう変更を来たさざるを得ない事情が何かあったのか。何か圧力があったのか。たとえば与党の内部の韓国ロビーと申しますか、そういう圧力、あるいは広く先月末のラスク・アメリカ長官の訪韓、あるいは日本におけるいろいろな話し合い等々の一連の圧力があって、いままでのあくまでも専門家会議で煮詰めていくという方針が、急にこういうふうに変更されて、高級な政治会談に持っていく、これを政治的な妥協に持っていく、そういうふうになったのではなかろうかという危惧はあるのですが、再度大臣にお答えを願いたい。
  31. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういう疑いがあろうかと思いますが、そういうことではございません。たとえばいわゆる韓国ロビーと称せられるところから圧力があったのか、あるいはまたラスク国務長官あたりから圧力があったのかということでありますが、私のほうといかしましては、御承知のように、四十数回専門家会議をやっていても、こちらからこういう案を出して、向こうで折れた点もあります。ですから、専門家会議も、これは交渉ごとでございますから、専門家会議におきましても、筋の通った意味においての歩み寄りというものはあるわけです。幾らか歩み寄った点がございます。しかし、決断がどうしてもできない面、こちらが主張しても、向こうがそのとおりにいうことを聞かぬといいますか、そういう点などもありまして、いつまでやっていてもこれは同じだというような面が出てきましたので、一応その面を決断できる者の立場で——これは、決断は私のほうでは専門家会議にまかしてあるのですけれども、向こうでは決断できる立場ではないように聞いております。私はずっと当たったのではございません。そういうようなことではまずい。せっかく向こうから高級会談をしようというようなことで、決断ができるような者が出てくるということならば、これは話も進むのじゃないか、そういう意味で、高級会談に応ずることを私は外務大臣に応諾したわけでございます。でございますから、何か変な圧力とか、うやむやのうちにいわゆる政治的といいますか、政治的交渉で、つかみでものをきめようというような考え方ではございません。
  32. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは大体四十何回も会議を重ねられて、たいへん御苦労なことでしたが、よくそんなに長い間決断のできない者と話を続けられておったと、いま実に心外なんですけれども、そういうことはさておいて、過去そんなに長い間煮詰めてまとまらなかったものが、この一週間や十日の間に専門家的な立場でまとまるということは、私は困難であろうと思う。そこに大臣が言われた、よくいう、足して二で割る方式までいかなくても、政治的な妥協がはかられるのではないか。専門家的な立場で進められるならば、この閣僚会議はあるいは再び決裂する可能性もあると私は思うのですが、見通しについていかがでしょうか。
  33. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは当たってみないとわかりませんが、決裂する可能性もあろうかと思います。あるいはまた会談の中でうまくきまらぬ場合には、先ほど申し上げましたとおり、専門家会議になお詰めさせるという面もあろうと思います。三十七年の十二月からずいぶん交渉を続けてきましたが、向こう側が相当折れてきた点もあるのです。そういう点もありますから、ですから、骨折りをかけておりますけれども、わがほうの委員にもたいへん御苦労をかけておるわけでございますが、決裂といいますか、きまらない場合もあり得ると思います。
  34. 小山長規

    ○小山(長)委員長代理 楢崎君、時間を考えてやって下さい。
  35. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは時間がありませんので、先に進まざるを得ぬのですが、交渉の問題点となっている点について、若干の質問を続けたいと思います。  専管水域について、これは二月十日予算委員会でわが党の井手委員からも質問があったのですが、領海が三海里か六海里かという点についても、いまのところ、ジュネーブの例の海洋会議の正式決定はないけれども、一応そういう方向で六海里説をとってやっておる。それから外側に六海里、これは実績のある国はそこには入り会い権がある。これがジュネーブの例の一九六〇年の会議の動向ですが、そういう点について、いまその領海の点で話し合いはどの程度進められておるのですか。
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 その点につきましては、三十八年の七月上旬でございますか、専管区域を十二海里とすることが最近の国際慣行であるということで、これを主張いたしました。向こうは先ほど申し上げましたように、専管水域を四十海里とするということを言ってきましたので、それには同意ができない、日本側としては十二海里だ、こういうことにしてありますが、これにつきましても、正式な言明を向こうではまだいたしておりません。こういう点が先ほど申し上げた踏み切れない一つの点でございます。  領海の点についてはまだ相談をいたしておりません。大体日本では三海里というのがいままでのあれでございますが、六海里というようなことにきめるということにもまだ話は進んでおりません。十二海里の中に領海をも含めての専管区域ということで進めていきたいと思います。
  37. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それではやはり二月十日に問題になっておりました裁判管轄権の問題あるいは入り会い権の問題も、全然話になっていないわけですか。
  38. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 入り会い権の問題は、領海の問題がきまれば、もちろん専管水域の中でできるのでございますけれども、これは実績がある場合に十年間か入り会い権があるというようなきめがございますので、これを主張しておるわけでございますから、これは専管水域がきまればそういうことが問題に相なるはずです。ただ、その領海が三海里か六海里かということがきまりませんから、専管区域が六海里になるか、あるいは九海里になるか、入り会い権の問題はそういうことになると思います。
  39. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 では領海の点、あるいはそれと同時に裁判管轄権の問題も、今度の閣僚会議の重大な議題になりますか。
  40. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 裁判管轄の問題は、これは外務省のほうできめるわけですが、共同規制区域につきましては、お互いに旗国が裁判権を持つということになりまするし、専管区域におきましては、お互いにその所属国が持つということが例になっておるようでございます。これは大体話し合いが進んでおるわけでございますが、こういうのもやはり含まれると思います。
  41. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは、残念ながら先に進まざるを得ぬわけですが、直線基線の引き方、これが非常に問題であろうと思うのです。先ほどの経過報告でいいますと、一九六〇年のジュネーブ会議の動向でわがほうは主張しておる。それで、低潮線を原則とする直線基線を引く場合には、一九六〇年の領海及び接続水域に関する条約、これの四条にあるわけですね。特に四条の二項に前記の基線と書いてありますが、前記の基線というのは直線基線のことですが、前記の基線を引くにあたっては沿岸の一般的方向から著しく離れて引いてはならず、またその線の内側にある水域は内水制度に服させるため領土と十分密接に結びついていなければならない、こうあるわけですね。この考え方がいわゆる国際慣行の考え方であろうと思うのです。そうすると、直ちに問題になるのは、いわゆる済州島あるいは釜山周辺の島の多いところが問題になろうと思います。特に済州島の基線の引き方については、これでいくと基線の対象にはならないと思うのですけれども、韓国側は済州島も含んだ直線基線を考えておるようですが、この点については絶対に譲れないと思いますが、どうでしょう。
  42. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 基線の引き方については、いろいろな線の引き方がございまして、これは現在専門家会議でも折衝中でございまして、どういうふうにするかということについては、折衝の過程においてきめられる問題だと思いますので、いまどういうふうにということは申し上げる時期ではないと思います。
  43. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 その直線基線を引く場合に、島と島との間隔は、国際慣例では大体どのくらいを限度としておるのですか。
  44. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 これにつきましては、英国・ノルウェー、あるいは英国・アイスランドといったような先例がございますが、ここに御指摘になりました領海及び接続水域に関する条約、これは日本はまだ批准してない条約でございますが、それに、いま御指摘のように、低潮線を原則とする、ただし、沿岸に沿って沿岸線が深く出入りしている湾とか岬とかがあって、非常に屈曲が多い、もしくは切れ込みが多い、あるいは沿岸に沿って至近の水域内に島がある、そういった場合には、適当な点を結ぶ直線基線をとることができる。それで、いま大臣のお答えになりましたように、低潮線を原則とするが、韓国でいいますと、南のほうとかあるいは西のほうに非常に島が多い、屈曲が多い、それでどの島を結んでいくかということで折衝中でございます。それで、この問題は折衝中でございますので、大臣からお答えがあったように、いまここでお答えすることはできないわけでございますが、やはりその本土と一般方向に沿わなくちゃならぬ、そういうような限定がございます。
  45. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 時間がありませんか、答弁もなるたけ簡単にお願いいたします。  この直線基線がきまった場合には、漁業協定の中に明記されますか。
  46. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 当然明記します。
  47. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは次に移ります。  共同規制水域の問題ですが、この共同規制というのは、いろいろ問題がおるところでございますけれども、一冊に名族の保存、資源保存という観点からこれは論ぜられているわけですが、いま進められておる日韓間の共同規制水域というものは、これは近接する第三国との関係でどの程度意味があるか。第三国を規制する何ものもないではないか。第三国が規制を受けなかったら、いわゆる自由に行動できるから、魚族保存という点からあまり意味がないではないか。第三国との関連をどのように規制上考えておられるか。
  48. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 共同規制区域をどうするかということは、その基本になりまする専管水域の外ということで、専管水域はやはり基線によって専管水域の幅がきまってくるし、さらにその外にどういう規制区域を置くかということで、基本は、やはり基線をどう引くかということにあると思います。それから規制水域におきまする共同規制というのは、先ほど大臣がお答えになったように、やはり両方に公平でなければならぬ。魚族保存に資する、こういうようなことになりますので、両国間の問題でございますし、公海でございますので、御指摘のように第三国に対する効果はない、こういうことでございます。
  49. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、一生懸命やられておりますけれども、大事なところでしりが抜けるのじゃないですか。これは第三国との関係を考えなくては、重大な問題だと思うのです。非常にしりが抜けることになりゃしませんか。第三国との規制の問題は、十分考えられた上やられる必要があろうと思います。
  50. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは実例御承知のように、日本とソ連との間の規制区域は、A区域ばかりでなく、B区域まで規制区域になっております。それから日米加条約においてもこれがございます。そういう関係でございますから、第三国関係は当事者間できめて、第三国関係がそこにだいぶ入ってくるとかなんとかという場合に、それの国とも交渉しないと、目的は達しないと思います。現在におきましては、両国間できめるならばきめていくというのが、当面の問題だと思います。
  51. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 済州島の近所は一番いい漁場ですが、あそこに住みついておる定着性の魚はいいけれども、回遊性の魚は、アジ、サバなんかそうでしょうが、規制がたいへんむずかしいと思うんですね、特に中国がそばにありますから。私は、第三国の規制の問題については、真剣に考えなければ底が抜ける、こういうように思うわけです。  時間が来ましたので、先に進みます。問題の指摘だけにとどめますから、答弁を簡単にお願いしたいのです  特に済州島の南のほうあるいは対島のかいわいは、九州あるいは山陰から小型の漁船が出ております。いま問題になっておるのは、大きな漁法だけが問題になっている。一番零細な漁民と関係のある対島かいわいあるいは済州島の付近の共同規制については、九州、山陰の零細漁民にとっては死活の問題であろう。これは一々聞きたいけれども、時間がないから、一点だけ聞いておきます。  もし共同規制の対象になると、締め出される船主が出てこようと思う。そういう除外された船主に対する補償というのは当然起こりますよ。だから結論としては、共同規制というのは、十二海里外の、なお二十八海里というような全面的な共同規制なんか設けるべきではない。いまのような考えで進みますと、除外される日本の船主が出てくると思う。そうすると、むしろいまのような交渉なんか進めないほうがいい。極論すると、現状のままのほうがいいというような結果にならぬとも限らぬですよ、締め出される漁船にとって。そういう除外漁船に対する補償の問題をどのように考えておりますか
  52. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 禁止区域というものを設ければ、そういうことになろうと思います。しかし、共同規制区域で共同で規制するということにいたしまするならば、日本の実績というか、日本の実績をそこなわないようになるので、そういう主張を続けておるわけでございます。そういう意味におきましては、共同規制区域に入ったほうが、専管区域よりも——禁止区域は絶対許しません。共同規制区域でそういう措置をとりたい、こう思っております。
  53. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 だから、いまの交渉を進めたって、漁民にとっては現状以上にはならないと言うのですよ。むしろ、せいぜい実績をがんばり通すというくらいでしょう。共同規制でいく、あるいは禁止区域ができればなおさらですが、いまより上になることはない。減るのだ。だから、いまのような交渉はやめるべきです。よほどこれは考えていただかなければならぬと思うのです。  それから、私は昨年も質問をしておったのですが、いわゆる拿捕漁船に対する賠償の点、これは、日本側はそのつど留保しておるのです。その留保をずっとしてきておるという方針に変わりございませんか。
  54. 卜部敏男

    ○卜部説明員 請求権を留保いたしておることに変わりございません。これは外務当局でもそういうふうにしております。
  55. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、漁船の問題についていままではそのつどやられておったが、外務省はやってないでしょう。最近の拿捕漁船についてやっておりますか。これはいつまでやって、いつからやっていないのですか。
  56. 卜部敏男

    ○卜部説明員 一番最後に拿捕されましたのは第二十二佐代丸でございますが、一月の二十九日でございまして、さっそく抗議し、かつこれに対する損害賠償、補償のクレームを留保してございます。
  57. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 じゃやっておられるわけですね。  では、漁業協力の点で言われておる金額は、幾らになるか、まだわかりませんか。この漁業交渉でやっている漁業協力は、いわゆる請求権でやっておる無償三億、有償二億、別に民間べース一億ドルというあれが大体きまっておるのですが、それとの関連はどうなるのですか。その請求権の問題の民間ベースの中に含まれると思うのですが、それは全然別個なんですか。
  58. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 三億、二億とは別個です。
  59. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 三億、二億じゃなしに、三億、二億の別に民間ベースが一億あるのですよ、請求権の問題で。
  60. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 それとは別個です。
  61. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それは別個ですか。——そうすると、いまの請求権で論じられておる無償三億、有償二億、別の民間ベース一億のほかに、漁業協力をやるというのですか。
  62. 卜部敏男

    ○卜部説明員 三億、二億というのは、政府がお約束するわけでございます。そのほか、一億ドル以上という普通の民間のものがございます。そのうちから漁業協力のものを使う。一億ドルは三億、二億の中には入っておりません。
  63. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、いまの大臣の御答弁と違うのです。いま請求権問題で話しておる民間ベースの協力の中に、漁業交渉でやっている漁業協力の金額は入るのですか。いま大臣は別個と言われた。外務省と違うじゃないですか。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 違っておらないと思いますが、三億ドル、二億ドルという大体の話はついておる。正式にはまだきまっておりません。そのほかの一億ドルというのは、まだ話がついてない。内諾的の話もついてない問題だと思います。その中に漁業の協力というものが含まっておる、こういうことです。
  65. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 そうすると、確認しておきます。それでは、いま請求権問題でやっておる民間ベースの経済協力の中に、わがほうとしては、漁業協力の内容も含めてというわけですか。これは大事な問題ですよ。大臣が答えなくちゃ。
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 専門のことですから……。
  67. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 簡単な問題じゃないですか。数字の問題ではなくて、態度の問題です。大事な問題ですから、事務当局ではだめです。大臣の責任ある答弁を聞かなくては。
  68. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 事務当局で話して、私が責任を持てばいいじゃないですか
  69. 卜部敏男

    ○卜部説明員 三億、二億というのは、無償、有償の経済協力でございますが、そのほかに、民間ベースの経済協力というものが一億ドル以上あり得るという、大体の話し合いになっておるわけです。そこで、今度漁業協力ということになりますと、いまの民間の一億ドル以上のところから、それを使って協力をやる、そういうことにかろうかと存じます。
  70. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 なろうかと存じますと言うが、あなた方の態度を言っておるのですよ。いまの答弁では納得できないですよ。
  71. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま外務省の説明員から答弁したとおりでございまして、その中から漁業協力の金を出す、漁業協力のことがきまれば、それから出す、こういうことでございます。
  72. 楢崎弥之助

    ○楢崎委員 それでは確認しておきますが、漁業協力の点は、請求権問題でやっておる民間ベースの経済協力一億ドル以上というものに含めて、これを考えていくという態度ですね、日本側としては。
  73. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そのとおりです。   〔小山(長)委員長代理退席、委員長着席〕
  74. 高見三郎

    高見委員長 仮谷君。
  75. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 私に与えられた時間が二十分しかありませんから、端的に二、三の問題を大臣にお伺いします。  十日から閣僚会議が開かれるし、十二日から従来の予備会談が正式会談に切りかえられる。そして、並行して交渉の進展をはかるという両国の意見が一致したように聞いております。このことは、いよいよ日韓会談が大詰めに近づいたような感じを国民に与えておるのであります。日韓交渉の正常化は、わが党の基本的な態度でありまして、会談の早期妥結は、もとより私も望むところでありますが、しかし、交渉の成否が、現時点においてはかかって漁業会談であると考えられるだけに、日本漁民にとっては、きわめて重大な問題であるし、したがって、関心もまた非常に大きいと思うのであります。  そこで、伺いたい第一点は、ただいま大臣の御報告でも、いままで事務的折衝といいますか、予備交渉と申しますか、とにかく現時点においては、両国の主張は依然として平行線である。しかも、相当の距離があるようであります。こういう段階において閣僚会議が開かれて、一体何の話し合いをするのかということを私は心配するのであります。どうも韓国ぺースに引き込まれ、ことばは悪いかもしれませんけれども、知らず知らずのうちに、いわゆる政治的解決というものに引き込まれるおそれがあるのじゃないかということを実は心配をいたすのでありますが、この閣僚会議に臨まれる大臣の決意というものをまずはっきり承っておきたい、かように考えております。
  76. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほどからも他の委員の方に御答弁申し上げておったのでございますが、四十数回にわたってやっておりますけれども、なかなか結論に達しない。で、閣僚会談といいますか、そういうものを開くことになったのでございますが、そのために足して二で割るための会談ではなくて、専門家会議等におきまして、向こうの代表等で取り切れない面が相当あるように察知されるのでございます。実際は、たとえば十二海里の専管区域等につきましても、もうそれでいいはずなのに、この専管区域ということを向こうできめられない。そういう立場の人と予備折衝を続けておっても、きまるところもきまらぬじゃないか、それじゃ高級会談でもう少し権限を持っておるものと話を進めたらどうか。でありますから、議題は、何といたしましても専門家会議において議題としておる問題できまらない問題、こういう問題が議題となりますので、それとかけ離れて何か特別の取りきめをするということではございません。
  77. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 専門家会議議題と離れて特別な取りきめをしないという大臣のお考え方はよくわかりました。  ところで、従来の漁業の政府折衝と申しますか、交渉なんかをずっと見てみますと、ややもすると、国際先例とか、あるいは水産資源の保護といったような名のもとに、漁民に対しては、いささか一方的に無理じいできたという印象を与えておると思うのであります。特に今回の場合は、いわゆる日韓正常化ムードの犠牲にされるのじゃないかということを漁民は非常に不安に感じておるのでありますが、そこで、以下具体的に一、二の問題を承ってみたいと思うのであります。  専管水域は十二海里というのは、ただいま承ったのでございますが、まず、その十二海里の専管水域を確保することによって、漁業あるいはそれに従事する漁業者の従来の権益と申しますか、そういうものは維持確保されるかどうかという問題が第一点。  また、この十二海里は、国際条約に照らしても、もとより当然のことでありまして、これはあくまでも堅持されなければならない問題だと思っておりますが、大臣は、あくまでも堅持される決意で臨まれるかどうか、重ねて承っておきたい。
  78. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 向こうは四十海里を主張しておるのでございますが、わがほうでは国際慣例、条約により十二海里、これはあくまで堅持いたします。ただ、先ほど申し上げましたように、その基線の引き方等におきまして、私どもの主張を向こうが応諾しない、こういう面がありますが、私のほうの主張を通して十二海里の基線を——専管区域をつくる、こういう方針は変わりないわけであります。  それから、なお事務当局から申し上げたいと思いますが、十二海里の専管区域ができたら日本の漁業に非常に悪影響があるかというお尋ねでございますが、悪影響のないようにいたします。
  79. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 御意見わかりましたが、大臣もいま申されますように、問題は、十二海里の基線の引き方であります。これはあくまでも国際慣行と申しますか、国際条約の趣旨に沿ってわれわれは解決をしてもらわなきゃならぬ。このことは、ひとり今回の韓国問題にのみとどまらずして、多くの外交問題を日本の漁業は持っておるのでありまして、今後のそういう先例となる重要な問題でもありますので、したがいまして、この基線の引き方と申しますか、これについては、ひとつ十分な決意を持って、確信を持って臨んでいただきたいということをお願いをいたしておきたいと思います。  時間がありませんから、もう一点、次に共同規制の設定についての問題であります。この問題は、資源保護という観点において、従来の外交交渉においても必ずしも意見の一致は困難であったと思う。これは考え方の相違でありますから、おそらく一致をしない。それだけに、俗に言う、いわゆる足して二で割るという安易な方式がとられやすいのであります。このことを私どもは一番憂えておるのでありますから、この点、ひとつ大臣の決意を率直に伺っておきたいと思うのであります。
  80. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 共同規制区域は、この問題と離れて、一般的に申し上げましても、ただ足して二で割るということでなくて、やっぱり共同の資源を持続的に持っていくという意味におきまして、幾ぶんがまんをしなくちゃならない面はあると思います。しかし、この問題、いまの当面しておる問題等につきましては、私どもは、私どもの従来からの実績をそこなわれないようにしながら、資源の保存を続けていく、こういう方針で進めておりますし、また進むつもりであります。
  81. 仮谷忠男

    ○仮谷委員 時間がありませんから、私の質問はこれで終わります。なお漁業協力費の問題についても、少しく伺ってみたいと思ったのですが、先の質問もありましたからやめます。  ただ、最後に、われわれは日韓会談早期妥結をもとより望むものであり、けっこうなことだと思うのでありますが、このことは、決して拙速をとうとぶという意味じゃございません。この点をよくお考えいただきたいということと、将来に禍根を残すことのないように、国民の納得する、漁民の納得する解決に最善の熱意と努力を払われるよう、特に農林大臣にお願いをいたしておきたいと思います。  終わります。
  82. 高見三郎

    高見委員長 中村時雄君。
  83. 中村時雄

    ○中村(時)委員 大臣に質問する前に、和田漁政部長にひとつ資料の提出を願いたい。あなたは、一般にいわれる和田私案なるものを、韓国側に対して、交渉の過程における日本側の考え方というものを、一つの文書にして提出をしたことがあるかどうか、それを一点お聞きしておきたい。
  84. 和田正明

    ○和田説明員 昨年の十月でございましたか、日本側の案を提案をいたしましたが、文書で提示をしたことはございません。
  85. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、そのときの提案を当委員会に詳細に資料として出していただきたい。
  86. 和田正明

    ○和田説明員 具体的な外交交渉の内容にわたりますので、私としてはちょっと提出をするという御返事はいたしかねます。
  87. 中村時雄

    ○中村(時)委員 あなたが部長であって、外交上の責任者としてそういうことをやられたかどうか、それだけの責任を政府から与えられたかどうか。また、その問題が文書になって韓国側にいっているはずなんだが、少なくとも韓国側にそういうふうな提示をしておきながら——基本はあなたのところから出ておるはずです。それがいま言ったような方向で、当委員会に云々ができないという理由はどこにあるのか、それをはっきりさしておいていただきたい。
  88. 和田正明

    ○和田説明員 私は、現在の予備交渉の漁業問題の日本代表という資格を政府から与えられておりますので、漁業交渉に関する限りは外交交渉権を与えられて、その範囲において、日本政府としての案を私から、私の口から提案をいたしました事実はございますが、その内容は、現在進行しておる交渉の問題でございますので、お答えできません。
  89. 中村時雄

    ○中村(時)委員 その問題に対して、われわれとしては、あなたの私案というもの——一般に私案というのはおかしいのですけれども、そういうようなうわさで、大体のことはわかっているのですけれども、なおかつ明確に——それでは、そういう機密事項でないところの問題だけは、明確にここで出しておいていただきたい。
  90. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 和田漁政部長が、予備会談におきます漁業交渉の政府代表として、公式、非公式に向こうと話し合いを進めておることは、御承知のとおりでございますが、その段階におきまして、口頭でいわゆる和田私案と称するものが向こうに話してございます。その問題は機密にわたるか機密にわたらぬか、一括して全部機密にわたる、こういうことに相なりますので、この段階で、これを具体的に御返答するということはできないと思います。
  91. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それほどがんこに言うのであったら、どこがどういうふうに機密事項であり、どこがどういうふうに機密事項でないか、そういうような判断をはっきりさして、機密事項でないものを出してもらいたい、こう言っているのです。
  92. 庄野五一郎

    ○庄野政府委員 交渉につきましては——いま機密と申しましたのは、交渉中のことでございまして、どこが機密にわたるとか——一括した、関連したものばかりでございます。そういう意味で私は申しておるわけでございます。
  93. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、委員長にお願いしておきます。これはいろいろな問題を含めているのですが、近い将来の機会においてこの問題をもう一度取り上げて、そして和田漁政部長並びに水産庁長官を呼んで質疑をさしていただきたい、こう思っております。
  94. 高見三郎

    高見委員長 中村君の申し出につきましては、さよう取り計らいます。
  95. 中村時雄

    ○中村(時)委員 先ほどからの農林大臣の御説明によりまして、大体政府の基本方針というものは、一応概念的にはわかったわけです。十日から開かれる漁業に関する閣僚懇談、あるいは十二日からの日韓本会議、そういうことも明確になりましたし、十三年にわたる日韓会談がすみやかに妥結され、そうして李ラインが撤廃されて、安全操業をやっていきたい、これはおそらく全国民の希望であろうと私は思っております。そういう意味において、私は、この会談は非常に期待をされておるものであると考えております。ただし、二、三点問題があると私は思うのです。専門的な問題あるいは技術的な問題の中からこういう問題を集約すると、やはり一番問題になってくるのは、基線の問題だろうと思っております。その基線の問題を通じて、領海の問題なり、専管水域の問題なり、共同規制の問題なり、そういう問題が生まれてくるだろうと思う。ところが、派生的に生まれてくるいろいろな問題は、相手方も妥協しておるのだという農林大臣のお話があって、それが何と何であるかということは、ここではお聞きいたしませんけれども、この三つの問題が一番骨子になっておると思うのです。この骨子になっておる三つの問題は、実は何一つ妥結をしていない、こういう状態だろうと思うのです。  そこで、三つの問題に関して各委員から、あるいは予算委員会等において十分論議もされておりますが、私は、時間がありませんから、一点だけお聞きしておきたい。それは共同規制の問題です。この共同規制の問題に対して、日本側は——というよりも、国際法からいって、これは決定的なものではありませんけれども、二十八海里線を唱えているように聞いておるのですが、二十八海里線の基本というものは、大体どこから割り出してつくられていったものかどうか、その点を農林大臣からお答え願いたい。
  96. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 先ほど他の委員の方に御答弁申し上げましたように、初め韓国側は専管水域を四十海里、こういうことを言っていました。私のほうはそれを認めないということで、向こうは引っ込めた形でありますので、四十海里の以内において共同規制水域を設けよう、こういう話が進められておるわけでございます。これは元の李承晩ラインよりずっと引っ込んでおります。場所によっては、向こうで違うところを出してきたところもありますけれども、それはこっちでけっておりますが、初めの四十海里専管水域にしようというところに根拠があったと思います。でありますから、十二海里を引いて二十八海里、こういうことになるわけでございます。
  97. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、基本的に共同規制という問題は、いま言ったように、ただ単に、十二海里があったから、それを引いて二十八海里ぐらいに言っているのだろうというお話があったのですが、四十海里というものは認めない、こういうお考えが一つ出たわけですね。それと、一体政府の腹としては、大体共同規制水域というものをどのくらいに目標を置いて考えていらっしゃるのか。
  98. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 場所によっては政府は認めないところもございますし、全部でございません。場所によっては四十海里以内におきまして、前の総督時代の線などもありますし、トロールとか底引き禁止区域とか、いろいろあります。そういういろいろな線等を勘案いたしまして、四十海里以内において話し合いができれば話を進めるということでございますので、まだそれも進んでおりません。
  99. 中村時雄

    ○中村(時)委員 共同規制という問題は、私は少なくとも平等の原則の上に立って生まれてくると思うのです。間違っていたら訂正さしていただきますけれども……。そうすると、そういう問題の平等の規制ということは、結局資源の永続性の問題になってくると思うのです。資源の永続性の問題になったら、出漁数の制限の問題も出てくるでしょう。その内容の中に、具体的にはあるいは漁獲量の問題も出てくる。操業の方式の問題も出てくるだろうし、そういういろいろな問題がおそらく私は多分に出てくると思うのです。そこで、そういう問題の専門的な、技術的な面、これは事務当局の問題になりますが、そういう専門的な、技術的な面でそういう問題を取り上げて、妥結点に達しているものがあるかどうか、それをお聞きしておきたい。
  100. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 種族の保護の点におきましてきまっておりますことは、船の大きさをどれくらいにするかという問題、あるいは網の目をどういうふうにするかという問題——これは少し残っている面もあります。それから光力をどれくらいにするか、こういう点はきまっております。それから、規制区域を設けてどういうふうにやるか。漁獲量は、サケ、マスなどと違って、非常にむずかしい問題で、きめるとすれば、船の隻数等できめていくということになろうかと思います。この点は全然まだ話が進んでおりません。
  101. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、実際には、ほんとうをいえば、そういうものを積み重ねていって、それからいま言ったトップ会談といいますか、頂上会談といってもけっこうですが、そういう会談に入っていくのが望ましかった。しかし、韓国側がそのことが権限がないので、トップ会談に移すということになれば、少なくとも専門家として、日本側はその原則的なものをもってこれに当たっていくに違いないんです。だからこそ、私は和田さんに先ほど言ったように、資料を提出せいということは、おそらく事務当局の技術家なり専門家というものは、こちらの一つの案というものを私は持っていると思うのです。持っていなかったら交渉はできないと思います。しかし、それがあくまで機密事項だという仮定をされるならば、一応その問題はその問題として取り除いておきましょう。あとでお聞きすることにします。  そこで、私は問題をはっきりさしておきたいのは、もう一つ、この共同規制の問題に対して、先ほども楢崎君から話がありましたが、韓国側とかりにこれが妥結されたとしても、韓国側と日本側との問題なんですね。そうすると、第三国側、特にあの済州島付近というのは、御承知のように、サバやアジが遊動しているわけなんです。台湾のほうから生まれて、そうしてずっと向こうへ向いて出ていく。そうすると、冬場においては、それで一応規制がきるでしょうけれども、夏場に入ってくると、今度はそれが中国側に寄ってくるんです。その場合に、今度はこっちのほうは規制されているから、出ていくことはできませんが、向こうのほうからはかってほうだいということになってくるおそれもあるんです。そういうような事柄は、将来ほかの東南アジアにおいても、特に最近は御存じのように、今月ですか、来月ですか、カナダとの漁業交渉の問題がありますね。それに対しても、不平等という立場をとって日本側はいままで追求しているわけですね。そうしてこれがまさに撤廃されるであろうという推測をわれわれは持っている。その重要な時期にこういう規制のしかたをやっていって、はたしてそれとの関連の上からいって、農林大臣は十分正しいと思われるのかどうか。
  102. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 アブステンションといいますか、禁漁区域等を一方的に設けるのは、カナダの場合は向こうの実績をいっているのでございますが、そういうことは不平等である。ですから、私は、共同規制区域という場合には、やはり平等でなくちゃならぬ、そうして実施可能、こういう面でやるべきだと思います。でございますから、禁止区域を設けられて、そこへ入っちゃいかぬというようなことになれば、これはいまのカナダの交渉などに非常に影響があると思いますから、それは絶対に私どものほうでは受け入れないといいますか、拒否します。しかし、共同規制のための平等であり、公平であるということであるならば、これはよかろうと思います。ただ、第三国の問題であります。さっきもお話がありましたように、第三国が入ってくるという場合には、これは第三国から見れば規制を受けておりませんし、公海ですから、これは第三国が入る可能性はございます。当事者は、そこはお互いに限られたものだけの船しか行きません。そういう場合には、やはり第三国も入れなくちゃならぬ場合が起きるかとも思いますが、現在の段階においては日本と韓国だけでそれをきめていって、第三国まで入れるということまでは考えておりません。
  103. 中村時雄

    ○中村(時)委員 たとえば、具体的にいいましたら、中華人民共和国というものがあるわけなんです。これは日本とは何も平和条約は結んでないわけですね。そうすると、これを規制するとか入れるとかいっても、実際の現実の問題としては、私は、おそらく不可能に近いんじゃないか、こう思うわけなんです。現実の問題としてはそれが出てくるわけなんですね。それらに対してどういうお考え方を持っていらっしゃるか。
  104. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま中共ですか、この間は民間協定でいろいろできておりますが、政府間としての漁業協定というのは、これはちょっとできません。しかし、現実にはこれは入ってくることもあろうと思います。でございますので、そういうものは先のことでございますので、いまどうこうということは申し上げられませんけれども、それに対処することも将来は考えなくちゃならぬ、こう思っております。
  105. 中村時雄

    ○中村(時)委員 将来はといっても、いますぐの問題でしょう。大体皆さん方の腹の中では妥結をしたいという意味があるからこそ、会談を開いていく。そうすると、妥結をされたら、すぐその問題が出てくるわけですね。
  106. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 そういうことができてきても、政府として相手方になるわけにはいきませんから、私の考え方から言えば、いまの民間協定の問題をそっちへ拡大していくかどうか、こういう問題がございましょうけれども、どうも政府として、いま条約を結んでそれに参加する、三ヵ国条約というようなわけには参りません。
  107. 中村時雄

    ○中村(時)委員 これは非常に重要な問題で、本来ならば、これを取り上げたらえらい問題が起こってくると思うのですけれども、一応これは取り上げませんが、一応その点は十分配慮しながら、この問題の決着点を明確にしておいていただきたいと思います。  それからもう一つ、先ほど外務省からも話が出ましたが、二月二十日に佐代丸事件というものがありましたね。これは韓国に拿捕されたわけです。拿捕してしまったほうは、李ライン内に入っているから拿捕したのだということを言うに違いない。先般はソ連において抑留された漁船もあるわけであります。それはみな協定内において云々されておったから拿捕したのだ、つかまえたのだというのでしょう。それは昔の特高ではないけれども、必ず言いわけはするわけでありますが、われわれのほうとしては、そこに入っていないという主張を当然いたします。そのことを争ってみてもしかたがないので、この会談をさなかにして、こういうことがわかっておりながら、二月二十日にこういうことをやっておる。以前拿捕されたときには、たとえば韓国のほうでは、米を代替にして拿捕者を日本のほうへ送還するなんてごまかし方をやってみたり、あるいはもみでなくして精米でこっちへ送ってくれというようなだまかし方をしてみたり、いろいろな事件があったわけであります。ところが、会談を間近にしてまた再びこういうようなことをやっている。しかも、私は外務省へたずねて行って、また韓国の大使にも会ってみて、いろいろな話をしてみたが、そのときには、近日中に必ず通知をしますと言っている。これに伴って、十二名に対してその後どういうような状況で、どういうような現況になっているかということを説明願いたい。これは外務省でけっこうであります。
  108. 前田利一

    ○前田説明員 ただいま御指摘の佐代丸の件につきましては、先ほども賠償部長が御答弁申し上げましたように、韓国側に即時釈放送還するように申し入れを行なったわけでございますが、その後、たまたま金顕哲特派大使が日本に来訪しまして、総理を訪問するというような機会がございました際に、総理からも、特にこの点につきまして、きわめて友好的な雰囲気のもとに会談を進めようという際にこういう拿捕事件が起こるということでは困る、即時釈放してくれということを申されたわけでございまして、金顕哲特使もそれにこたえまして、帰国次第韓国政府の首脳部に池田総理からそういうお話があったということを申し伝えると約して、帰ったわけでございまして、われわれ事務当局も、随時その即時釈放方を申し入れておるわけでございます。また一昨日、韓国側が漁業に関する閣僚会談について正式の回答をよこしました際にも、特に大平外務大臣から、この佐代丸の全員即時釈放について強く申し入れられた経緯もございまして、われわれとしましては、これがじんぜんと日を過ごし、関係者の方に御心配をかけているということをまことに遺憾に思っておるわけでありますが、そういう随時の申し入れに対して、必ずや近く吉報がもたらされる、こんなふうに考えております。
  109. 中村時雄

    ○中村(時)委員 吉報がもたらされるというのは、向こうから何らかの意思表示があったのですか。
  110. 前田利一

    ○前田説明員 代表部から私どもに対しまして、内々には、この件についていろいろと日本側からもお話がございますので、即時釈放ということが実現するように、代表部としても累次にわたって意見具申をしておる、その辺はむずかしいところでございますけれども、われわれに期待を抱かせるに足るだけの返事をしておるわけでございます。また、これは先ほど申し忘れましたけれども、先般、日本の運搬船が韓国の標流中の水上飛行艇を救助した、乗り組み員四名を救助したというようなこともございまして、これが韓国側の新聞にも非常に歓迎されておるやのこともございまして、これにひっかけましても、また佐代丸の人たちを早目に返すように、こう言っておりまして、その点も、韓国側はさっそく本国に伝えたということも申してまいっておるわけでございます。
  111. 中村時雄

    ○中村(時)委員 答弁で余分に時間をとられましたので、この問題はあとで結末をつけたいと思います。  最後に、大臣に、いまの問題に関連して一点だけお聞きしたいのですが、この拿捕に伴う賠償の問題ですが、漁船がいままで百八十二隻、一万二百トンですか、その他の被害を含めて十億円程度、期待的な利益金を含めると数倍になるかもしれません。そういうような状態になっておるのですが、この賠償問題も同時に一括して解決をはかる御意思を持っていらっしゃるかどうか。
  112. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 これは漁業関係にも関係がありますが、全体の関係から、この請求につきましては、正式交渉等において当たるはずになっております。
  113. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それでは、一々個々の問題は、大臣は知るだけのことは知っていらっしゃるだろうが、専門的なこまかい問題は残念ながらまだ御承知じゃないかもしれません。そこで、この会談に臨むにあたって、基本的な態度として、大平外相と協議の結果、新聞で発表されたことがあります。それは、漁業問題は、単に日韓両国間だけの問題ではなく、国際的に及ぼす影響が大きいことから、この問題はおそらく共同規制の問題ともからんでくるだろう、そこで、交渉の妥結を急ぐのあまり、国際慣行を度外視してまで政治的解決を急ぐことは避けて、慎重な態度をもって交渉を進めることに意見の一致を見た、こう言っていらしっしゃるわけなんです。このことは、私は非常に重要なことであると思うのです。実際に国際慣行を無視せずして、こういうふうな正常な立場で——私は交渉そのものには賛成であります。一刻も早く妥結してもらいたい。しかし、こういう姿の中にあなたが果たしておる事柄は、これを基本にしてあくまでも貫き通していただきたい、その決意だけを明確にしておいていただいて、私の質問は時間の関係で終わることにいたします。
  114. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまお読み上げになったような態度で折衝に入るつもりであります。
  115. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それから続いて、一、二問だけ外務省北東アジア課長にお尋ねしたいのですが、いまの佐代丸の問題で、実は家族の方に対しての補償の問題なり手当の問題が、具体的にどういうふうな方向をとっておるか。それから見通しとして、ただ希望的条件だけでは私は済まされぬと思います。希望的条件はいつもあるのです。ありながら、実際にはそういう結果が出てこない。だから、そういうような点で何か明確にわかっておるならば、発表しておいていただきたいと思います。
  116. 前田利一

    ○前田説明員 ただいま先生から御指摘の留守家族に対する見舞金の支給の問題につきましては、実は水産庁のほうの所管でございまして、おそらくそういったきまったしきたりによりまして行なわれておるものと考えておりまして、外務省のほうといたしましては、的確に御説明申し上げかねるわけであります。
  117. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それではきょうは時間がありませんので、これでやめますけれども、的確に御説明申し上げることができませんでは困ると思うのです。的確に御説明が申し上げられるというふうに十分あなた方配慮しながら、ほんとうに真剣にこれは取り組んでもらいたいと思います。  以上で質問を終わります。
  118. 高見三郎

    高見委員長 次会は、来たる十日、午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十五分散会