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1964-03-05 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月五日(木曜日)    午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 赤路 友藏君 理事 足鹿  覺君    理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    大石 武一君       大坪 保雄君    加藤 精三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       小枝 一雄君    舘林三喜男君       寺島隆太郎君    藤田 義光君       亘  四郎君    栗林 三郎君       中澤 茂一君    西村 関一君       松浦 定義君    湯山  勇君       稲富 稜人君    林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君  委員外出席者         農林事務官         (農地局管理部         長)      小林 誠一君         農林漁業金融公         庫総裁     清井  正君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業改良資金助成法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八三号)  農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八六号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第九〇号)      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  いずれも内閣提出にかかる農業改良資金助成法の一部を改正する法律案農林漁業金融公庫法の一部を改正する法律案及び北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題とし、前回に引き続き質疑を行ないます。質疑の通告があります。順次これを許します。稲富稜人君
  3. 稲富稜人

    稲富委員 私、農村金融対策の問題を質問するにあたりまして、実は農林大臣お尋ねしたいと思っておるのでありますけれども大臣がおいでになっておりませんので、次官がお見えになっておりますから、政務次官お尋ねいたしたいと思うのでございます。私、政務次官の御答弁にあたりましては、大臣答弁と同様に考えてお受けいたしたいと思いますので、丹羽さんも大臣になったつもりで、責任ある御答弁をお願いいたしたいとお願い申し上げる次第であります。  最初にお尋ねいたしたいと思いますことは、農村金融に対する基本的な問題でございます。この基本的な問題をお尋ねする前に、さらにつけ加えて私申し上げたいと思いますことは、これは日本にかかわらず、世界の農業がそうでございますが、農業が他の産業にだんだん取り残されるということは、農業一つ宿命じゃないか。かような状態の農業に対しては、やはり積極的なる保護対策というものが必要じゃないか。この保護対策はいかなる方法でやるかということはいろいろありましょうが、まずもって私たちは、ほかの産業よりか取り残されていく農業宿命に対しては、積極的な保護対策というものを考えた上に立っての農政というものを樹立することが必要じゃないか、まずこう考えるわけでありますが、これに対する政府の見解を承りたい。
  4. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま稲富委員お尋ねと申しますか、お尋ねよりも、あなたが真に農村を愛し、また農村振興をおもんぱかっていただく、その立場においてのお考えをお述べいただきました。そのお考えの中に、農業振興はあくまで補助対策でなくちゃならぬ、その補助対策にもいろいろの考え方があるけれども、姿勢と申しますか、態度というものは、あくまで補助するという気持でいかなければ農業振興は成り立たない、こういう御意見でございます。ごもっともと存じます。私も政府側に立ちまして、そうしたあなたと同じ考えで、農業振興をはかっていきたいという考えを持っております。
  5. 稲富稜人

    稲富委員 次官補助対策と言われたが、私が申し上げておりますのは保護対策で、その保護対策方法といたしましては、補助の問題もありましよう、あるいは助成もありましょう、あるいは低利の金融という問題も起こってくるわけであります。そういうような意味での保護対策は、いろいろな方法で行なわなければならないじゃないか。特に日本貿易自由化問題等が起こってくる中において、日本農業の大きな課題というものは、この貿易自由化の中において日本農業をどう打ち立てるか、ここに大きな問題があるのじゃないかと私は思う。そういう場合になおさら——これはいろいろ姿は変わりましょうが、いま申し上げましたような、積極的に農業を守るという意味からの施策が必要じゃないか、こういうことを考えるわけであります。これに対しましてその方法といたしましては、いま次官のおっしゃったような、農業に対する補助助成を従来やってきたということも、御承知のとおりでございます。さらに今回一つ金融対策というものが、ここに積極的に叫ばれるゆえんのものは、すなわち、おのずからそこにあるのじゃないかと思うのであります。  そこで、私はお尋ねいたしたいと思いますことは、従来農村に対してはそういうような意味から補助助成というものが非常に行なわれた。ところが、最近のこれに対する対策というものは、補助助成というものから、だんだん融資の道を開いて、融資によって日本農業を何とかして立てようというようなふうに移行しているようにわれわれは考えるわけでございますが、やはり政府もそういうようなお考えを持っておられるかどうか、この点を承りたいと思います。
  6. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま稲富委員から、農業の根本的な保護政策についての御意見が述べられました。やはり御意見にありましたように、温室の中から出て雨風に当たる、いわゆる貿易自由化される中にあっての農業は、あくまで他の産業と違って、力の入った保護政策をとっていかねば成長しないということを考えるものであります。そこで、保護政策のうちには、助成だとかあるいは金融融資の問題もありましょうが、ただいまお話のありましたように、特に政府補助助成の方面から融資方向に変えていきつつあるじゃないかというお尋ねでございますが、やはり保護政策の中でも、融資はりっぱな保護政策だと私は考えております。いままでのような補助政策も必要でございましょうが、もっと根本的にりっぱな株を持った農業基盤のできた農業を打ち立てていきますには、しっかりした保護政策の中の中心はやはり金融政策である、こう見ておるわけであります。あくまであなたと同じように、保護政策の中の大きな柱は金融政策であるという考え方をとっていきたいと思っております。
  7. 稲富稜人

    稲富委員 それではさらにお尋ねいたしたいと思いますことは、もちろん、その保護政策の一環として、農村金融というものが、当然これは考えられることでございましょうが、従来の補助助成というものよりも、金融というものに重点を置いた保護政策をやっていくという、だんだんこういうような切りかえをなさっておるように思われるのでございますが、これに対する根拠はどこにあるのであるか、どういう意味でこの補助助成というものをできるだけ金融によって新しい農村を築こうというような考え方なのか、この基因するところはどこにあるか、この点を承りたい。
  8. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 保護政策の中の補助助成というのは、まあ、私と申しますか、政府考えでは、当然とるべき措置一つでございまするが、それはやはりおなかの減ったときに食物を与えるという、こういう行き方の補助政策よりは、根本的に体質改善と申しますか、しっかりした体力をつくりあげていく、そういう農業を育成するという考えから、金融のほうがしっかりしたものができるんじゃないか。なお、その金融につきましては、どうせ稲富先生から強い御意見も出るでありましょうし、御叱正もちょうだいすることは覚悟しておりまするが、いま政府考えておるような、また今回御審議願っておりますような法律の一部改正とか、公庫法金融政策全般でございますか、そうした考えでは、私の言うようなりっぱな体質改善ができぬじゃないかという御意見がありましょうが、しかし、考え方としては、いま申しましたように、しっかりした体質をつくっていくには、やはり補助も大事でございますが、金融のほうに力を入れていきたい、こういう考えでおるわけであります。
  9. 稲富稜人

    稲富委員 もちろん、この金融というものが体質改善のために考えられるということはもっともであります。ただ問題は、金融というものは、これは当然これを返さなくちゃいけない。返済しなくちゃいけない。返済するということは、非常に経済基盤というものがよくなければ、十分これを果たすことができないという問題も起こってまいります。従来はやはり農村のいろいろな施設、そういうものに対しては、一つの誘い水といいますか、そういう問題で補助助成というものがよく行なわれた。われわれが知るところによりますと、従来の農林省から出ました補助助成に対しましては、あるいは会計検査院等指摘によって、非常にこの補助助成が十分なる使い方がされていないじゃないか。こういうところから、農林省あたりにおきましても、これは補助助成というのは、なかなかいろいろ問題があるから、かえってこれは融資にやったほうがいいんじゃないかというような——もちろん、いま次官の言われたような基本的な体質改善というものもあるかわからぬが、一つは、そういうような点もありはしなかったか。われわれはほんとうからいうならば、農村においては、返済せないでいい、もっと積極的な補助助成というものが非常に必要ではないかということをわれわれは考えるし、農民もおそらくこれは希望するだろうと私は思う。それをなるたけ融資に持っていくということは、ただいま申し上げましたような問題もあるんじゃなかろうかとわれわれは察するわけなんです。こういう点から、その融資に切りかえられた原因というものの一端がそこにもあるんじゃないか、こういう意味で私は聞いておるわけでございますが、この点はどうでございますか。
  10. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 長年稲富先生とはこの委員会意見をともにしてきたのでありますが、いずれのときも、稲富先生の御意見と私の意見考えとは、そう食い違ったことはないのじゃないか。なかったのでありますが、しかし、初めていまだけの問題が、私と稲富先生意見の相違があるわけでありまして、決して、会計検査院等指摘があったから補助のほうを云々、考えを変えたというのは、毛頭考えておりません。全然そうしたことは頭に置かずに、御指摘のありましたように、やはり農業保護政策としては、補助助成ということは非常に大事だというところで、この基盤の整備とか構造改善等には、先生承知のように、相当大幅に補助助成を拡大しております。これは当然やらなくてはならぬことでやっております。しかし、第二段にありましたように、体質改善ということを根本的に考え、新しい農村をつくり上げていくには、どうしても金融政策でいくことが必要である、こういうところでこの金融面改善等をはかり、今度はほんとう農民の血となり、骨となっていくための、先ほど御指摘のありましたように、真に農村体質改善という、自由化にも耐え得るところの農村をつくっていきたいというところで、金融を拡充強化していくことにいたします。  なお、私は、この機会に、せっかく御意見出ましたので、申し上げておきたいのですが、なるほど補助助成のほうは出しっぱなしで、農民受け取りっぱなしでございますけれども金融のほうはお返し願わなければならない。これは当然なことでございますが、しかし、金融考えるときの政府農民に対する心備えと申しますか、態度でございますが、貸したものであるから、返していただくということは当然かもしれませんけれども、しかし、農業に対する金融というものは、返してもらうのだという前提に立って金融をするようなことでは、私は、決して農村は健全なものになっていかない、こう思うのです。返すなというわけではない。返していただかなければなりませんが、返してもらうのだという、そういう前提に立って金融政策考えるべきではない、こう思っております。いわゆる金を貸してあげますから、ひとつしっかりとりっぱな農業をつくってくれ、そういう考えで回すべきだ、こういうように稲富先生にはいつも教育されておりますから、私はそういう考え金融政策を取り扱っていきたいと思います。
  11. 稲富稜人

    稲富委員 実に重大な話を聞いたのでございますが、それではこの問題の締めくくりとして申し上げたいと思いますことは、将来金融対策はやるけれども補助助成の問題に対しては、必要に応じて政府は積極的な考えでやっていくんだ、こういうように解釈をいたしていいわけですね。
  12. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 そのとおりでございます。
  13. 稲富稜人

    稲富委員 さらに、融資の問題でございますが、ただいま丹羽次官は、融資の問題というのは、返してもらうということを考えないで融資をやるんだ、実にこれはりっぱな話でございますが、やはりこれは貸す以上は、借りたものは払うべき義務があるし、貸したものは当然回収すべき義務があるのではないかと私は思う。この点は少し丹羽次官勇み足のような感があるのではないかと思うのですが、やはり今度の金融処置も、返さなくてもいい、返し切れないものは返さなくてもいいという、そんな恩情のある問題ではないだろうと思いますが、やはり政府としては、貸す以上は、返してもらうということは第一の条件でなければならぬと思うのでございますが、それほど政府農民に対して恩情ある態度金融制度をお考えになっておるのであるか、これはいろいろな問題が起こりますので、ひとつ……。
  14. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ことばの足らぬところを補うように、誘導的に御質問いただきまして、感謝にたえないところでございます。なるほど貸したものでございますから、国民のとうとい税金から貸すのですから、責任政府にある。貸したものでございますから、あくまで返していただくことが前提でございます。しかし、貸すときの心備えでございますが、高利貸しが金を貸すときには、金利をつけて返していただくということが目的で、高利貸しは金を貸すわけです。しかし、御指摘にありましたように、農業を育成しようという立場で、りっぱな農業をつくりあげていこうという立場で、金を回す、金融考えるのでございますから、その考え方でありますが、その金を貸して、りっぱに返してくれるような農村になる、そういう農村をつくりあげていただく意味で、私どもは金を貸したい、こういうことでございますので、貸したものは返さなくともいいじゃないかという、そういうところに頭を置いて貸すのではなくて、返していただけるようなりっぱな農村をつくっていただくことを念願して、お金を回すのでございますから、御了承を願いたいと思います。
  15. 稲富稜人

    稲富委員 結局、次官のおっしゃるのはこうなんでしょう。貸すのだから、返してもらわなければいかぬけれども高利貸しに返すような、いやいやで返すのじゃなくて、喜んで返すような、こういう農村をつくりあげたいのだ、これが今回の金融だ、こういう意味でございましょう。その点をはっきり……。
  16. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 そのとおりでございます。
  17. 稲富稜人

    稲富委員 本論の今回の問題に入りますが、いまここに提案になっております改良資金助成法改正の問題でございますが、この内容を見ますると、この貸し付け主体というものは、自立経営農家を育成するということが主体として考えられておる、こういうふうに思うのであります。その点は、やはり自立経営農家を育成するのだ、こういうことに政府立場をとっておるものである、こういうふうに解釈して差しつかえないのでございますか。
  18. 昌谷孝

    昌谷政府委員 私からお答えいたしますが、改良資金助成法は、御承知のように、新しい技術でございまして、農家にぜひ取り入れていただきたい技術の場合、若干の危惧の念があったりして入りにくい点を、こういういわば補助金融資の中間的な性格のもので、そこのところを突破してまいりたいというのがねらいでございます。そういう意味からしますと、貸し付け対象農家は、新しい技術を取り入れてりっぱな農業を育てたいという方に対しましては、私どもはできるだけその要望に応じていくということを念願いたしております。その結果といたしまして、御指摘のように、多くの農家が自立できるような農家に成長していくということは、もちろん終局の願いではございますけれども、当面の問題としては、そういう新しい技術を取り入れて経営を改善していくというところに、直接の重点を置いております。
  19. 稲富稜人

    稲富委員 新しい農業をやっていくという問題は、いろいろあるようでございますが、農業基本法を見ますと、自立経営農家を育成することもうたってある。一方においては農業協業化もうたってある。ところが、今回取り上げられた問題は、農業協業化の問題に対しては、融資方法とは別に積極的な対策はうたってないし、ただ自立経営農家、こういうものを非常に育成するのだというふうに、私たちはこれを見るとうかがわれるのでございますが、その点はどうなっておりますか。
  20. 昌谷孝

    昌谷政府委員 改良資金貸し出しをやります場合、在来もそうでございましたが、なるべく個々農家が個別で新しい技術を取り入れますこともさることながら、周囲の農家と御一緒共同で新しい技術を取り入れられる場合を、むしろ原則的にはそちらのほうに重点を置いてお貸しをしてまいっております。そういったことを通じて協業経営まで将来育つかどうかという問題もここで出てくると思いますが、当面は協業組織というようなところで新しい技術を取り入れられることに、私どもとしてはこの資金重点を置いております。  なお、今回新設をいたします後継者育成資金につきましても、先般御説明申し上げましたように、個別農家の中で後継者が新しい独立部門自分責任で開いていくという資金貸し出し方法とあわせまして、青年諸君共同で新しい技術を取り入れていく、いわば従来の技術導入資金の中にありましたプロジェクト資金というのを、後継者資金の中に独立部門の創設と並べてあげてありますのは、青年諸君にそういう段階から共同であるいは協業組織で、そういった新しい技術を取り入れ、また将来の農業に対する自分の自信をつける、そういったことをやっていただこうということで、必ずしも自立経営にのみ焦点を合わせておるということでなくて、むしろ、技術性格に応じて個別で取り入れられるのはもちろん個別でもやっていただきますけれども、新しい技術の相当たくさんの部分は、数人が気をそろえてやっていただかなければ取り入れられにくい事実が多うございます。そういった点は十分考えてやりたいと思っております。
  21. 稲富稜人

    稲富委員 私たちは、日本農業の将来のあり方というものの大きな問題は、日本農業というものが、自立経営農業としての農家経営をやっていくか、あるいは農業共同経営というものが農家経営主体となっていくか、ここに将来の大きな問題があると思うのであります。農業基本法なんか見ますと、もちろん、農業基本法には共同経営とうたってないけれども協業化という問題を一つ意思表示をされている。この協業化の問題を取り入れたとおっしゃるのか、あるいは共同炊事であるとか、そういうようなある程度の共同作業といいますか、そういうところまでは入れてあるようでございますが、これが経営共同化にはつながらない立場にある。従来地方におきましてはあるいは共同化をやっているところもあったのでございますが、なかなかこれがうまくいかない。ということは、資金に非常に困っている問題がある。こういう問題に対しては今回触れてないということは、やはり共同経営というものは、どこまでも経営主体自立農家経営であって、あるいは炊事場であるとか、そういう一部分的な共同作業として存在することであって、これをもって共同の体系になしたということは、私は言い得ないと思うのでございます。この点は、政府としては、日本農業というものは、自立経営農家中心に育てていこうというような見通しをつけられておるのか、あるいは農業共同経営というものはなかなか困難であるという見通しをつけられておるのか、この点をひとつ承りたい、こう思うわけなんです。
  22. 昌谷孝

    昌谷政府委員 確かに共同経営まで進むことは、いろいろの意味でまだ現状では非常に困難な問題がたくさんございます。私どもといたしましては、構造改善事業近代化施設助成にいたしましても、それからまた公庫資金融資の面におきましても、あるいは各局でやっております奨励事業におきましても、主としてその困難を何とか打開したいという意味で、個々農家の場合には融資でお願いをいたしておりますような事柄についても、共同でおやりになる場合については、特別に補助金を出すといったようなことやって、外形的と申しますか、外部的に、そういう共同化前提となります施設でございますとか、そういうものを外側から援助いたすような方向では、かなり力を注いでやっておるつもりでございます。ただ、何さま問題は、家族経営内部で申せば、その在来の古い秩序の中でおのずから処理できます分配の問題でございますとかいうような問題が、共同経営ということになりますれば一つの現象として表へ出てまいりますので、そういった面で、なかなか現在の農家の実情から申してなじみにくい点が多々あると思うのでございますけれども、そこらの点につきましては、ちょうどこれは非常に行政の限界の問題だと思うのでございます。個別経営内部になかなか行政が立ち入ってあれこれ申すことはでき引いたしませんし、またすべきことで仏ないというふうに私ども考えますので、それと同じ意味で、共同化を必要とする施設なり資金なりの援助は、私ども十分今後も努力を続けてまいりたいと思いますけれども、それを生かしてその主体となってやっていただく方方の気持ちの問題、あるいはその気持ちから関連するいろいろ経営的な処理の問題という問題になりますと、なかなかこれは行政としては立ち入りがたくもありますし、また場合によっては立ち入るべきでない問題も出てまいります。私どもとしてできます援助としては、改良普及制度を通じまして、いまあります共同経営の中の長所欠点をなるべく事例的によく整理をいたしまして、それを今後協業を伸ばしていきたいという方々に、そういったうまくいった事例あるいは成功しなかった事例原因等を情報として提供いたしまして、御参考に供していく、御一緒に問題を考えさしていただく、そういう方向改良普及事業がその問題に立ち入っていくという筋合いが、行政としての順序ではなかろうか、さように考え努力はいたしておる次第でございます。
  23. 稲富稜人

    稲富委員 これ以上あなたに答弁を要求することは非常に困難かと思うのでございますが、ただ、今度の改正法案について私承りたいと思うことは、ただいま局長答弁によりますと、共同経営に移行する一つ方法として、共同作業場、そういうものにも融資するのだということも言われるようでございますが、そのどちらなんですか。やはり自立経営農家を育成するという意味で、その自立経営農家を育成する便宜上の一つ共同作業場であるとか、共同炊事場であるとか、こういう施設融資をするのだ、こういう意味であって、共同経営に移行するための段階としての共同作業場とかあるいは共同炊事場等融資する、こういう意味ではなかろうと思うのですが、どうもあなたの答弁を聞いておりますと、共同経営に移行する段階としての共同作業場に対する融資のようにも受け取れるのですが、その点は基本的な考え方というのはどちらなんですか。私は、どうも自立経営農家を育成するということが基本的な考え方であって、この自立経営農家を育成するために、ある程度の協業化あるいはある程度の共同作業、こういうものに対しては融資をしよう、こういうようなことが今回のこの融資の大体の基本的な考え方じゃないかと思うのでございますが、いまの答弁を聞いておりますと、共同経営のほうに移行するための段階でもあるかのごとき答弁のようでございますが、その点はどちらなんですか。はっきりひとつ承りたいと思います。
  24. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先ほど私が今度の新設します事業について御説明いたしましたのは、後継者資金につきまして、一方で後継者たる農村青年が新しい事業を新規に始める場合を対象といたしておりますが、それだけではやはり今後の農村の推移から見まして十分でないと思いまして、共同で新しい技術を取り入れていく場合をも並べて対象にいたしております。もちろん、生活改善資金のほうで、共同炊事でございますとか、共同育児でございますとか、そういう問題も対象といたしますが、私が先ほど申し上げたのは、後継者資金の中でいまの共同的な技術の導入の問題でございます。なお、基本的な姿勢の問題でございますので、私どもからお答えするのもいかがかと思いますが、基本法ができましたときからいろいろ御議論ございましたけれども、私どもとしては、自立経営協業経営というものをしかく、何と申しますか、非常に違った、いずれかが両立しない存在というふうには、どうも私ども考えにくいわけでございます。自立経営個別経営でりっぱに農業がやっていかれる方は、もちろんそういった方向農業の発展をおやりになるのでございましょうし、相当多くの部分の農家の方は、特に技術が大型化し、また外部サービスがこのように発展をしてまいりますと、個別経営で他人の世話にならずに、あるいは他人と共同しないで、りっぱに農業がやっていけるというような方は、むしろ非常に数が少ないわけで、その他人と共同でやっていく度合いが問題でございまして、古来ありました水の問題でございますとか、苗しろの問題でございますとか、田植えとか、そういった古来あった程度でとどまるものか、もっと突き進んで大型トラクター、コンバインというような体系になった場合の共同化という必要が目の前にございます。この場合に、はたしてこれを完全な自立経営農家といえるのかどうか。自立経営なのか、協業組織なのか。相当部分協業組織ともいうべきものがどの村にも現実の必要として出てきておる。ただ、それがさらに進みまして、個別経営が合体したいわゆる共同経営まで進むという場合が、おそらく先生の一番の御関心だろうと思います。共同経営に進みます場合には、先ほど申しましたような意味でなかなかむずかしい問題がございます。行政で左右できない、外部の奨励とか助長というような問題ではなかなか処理できない、御自分たちでお考えいただかなければ処理のできない、非常に多くの問題をかかえております。そこまで進むか進まないかということは、私は、やはり外部から方針を立てて押しつけるという筋のものではなくて、個々農家がどうやったらりっぱな農業日本で実現できるかという、その中でおのずから農家の選択によって行なわれていく問題で、私どもは、それを自立で個別経営でやろうと、協業経営でやろうと、無差別にむしろ御援助するのがよろしいのではないか。しかし、現実には、共同でおやりになる場合をむしろより優先的に援助の対象としておりますことは、先ほど申し上げたとおりでございます。
  25. 稲富稜人

    稲富委員 その点はっきりしないのは、こうなんですよ。自立経営というものと共同経営というものがある。協業というものはその中間にある。その協業というものをその中間におやりになっていって、それがこの自立経営ともつながりがある。私は、今回の協業というものは、自立経営を育成するための、つまり、自立経営とのつながりのある協業じゃないかと思うのです。ところが、どうもさっきから話を聞くと、共同経営というものも希望によってはなされるのだ。そうなりますと、協業というのは、共同経営へ持っていくための一段階としての協業じゃないか、こういうふうな答弁のようにも思えるわけなんです。それでは私は、一体現在の政府としては、日本農業自立経営主体に置いていこうとするのか、共同経営に持っていこうとするのか、この点が判然としないから、どちらなんですか。私は、今度のやつは、自立経営農家を育成する視点からきた協業の問題であると思うけれども、先刻から局長答弁を聞いておりますと、共同経営に移行する一つ段階であるような答弁もあるので、私、この点を、こんなことで時間をとるのは非常にいやなんですけれども、その点がはっきりしないから、聞いておるわけなんです。だから私は、今回のやつは、自立経営農家主体として考えているのじゃないかということを冒頭から聞いておるわけでございます。その点がはっきりしないから、何回もこれを繰り返しているのです。
  26. 昌谷孝

    昌谷政府委員 お話しの点とさほど違ったことを申し上げているのではないと私は思うのでございますけれども、ものの言い方が不十分なのかと思いますが、共同経営と申しましても、いきなり新天地に共同経営を初めから仕組んでまいりますような場合は別といたしまして、日本の現実の農村の現状から発足してものを考えますと、結局個別経営の充実ということを通じまして、それをさらに発展させていく一つの必要から、農家協業組織なりあるいはさらに進んで協業経営なりを選択されるのだというふうに私ども考えるわけです。したがいまして、見ようによっては、個別経営の育成に片寄っておるという御批判かと思いますけれども、これはやはり個別経営の育成が共同経営の育成のほんとうの基礎になるのだ、あるいは共同経営を必要となさるような段階にまで逐次進んでいかれる場合もありましょうし、個別経営のままでりっぱな農業を完成なさる場合もありましょうし、その辺のところはなかなか一義的にはきめにくい。私どもとしては、そういったことで、なるべくあらゆる機会が個々農家に開かれますように進めてまいりたいということを申し上げておる次第であります。
  27. 稲富稜人

    稲富委員 この問題で聞いておりますと、時間が長くかかりますので、またの機会に譲りますが、要するに、農業基本法にうたっておる協業というものがどういうものであるかということを、私も勉強しますが、あなたもひとつ勉強していただきたいと思うのです。  時間がありませんので、この問題はまたの機会にするとして、先に進みますが、今回の償還期間の問題であります。三年より五年ということに延ばされておりますが、やはり農村経済の今日の状態から見て、できるなら農村金融というものは低利長期だといわれておるのでございますが、これを五ヵ年間に限度をしぼったというのはどういうことですか。もっと長くする必要はないかということも考えられるのでありますが、この償還期間に対してはどういうようにお考えになっておるのですか。
  28. 昌谷孝

    昌谷政府委員 農業改良資金は、沿革的に申しますと、御承知のとおり、個別農家に対して出しておりました営農改善のための各種の補助金がございますが、これらを時代の要請にこたえて、補助金でいくよりも、むしろ貸し付け金でいったほうが、農家にとっても便利がよかろうということで、貸し付け金に切りかえたのが発足でございます。したがいまして、人に金を貸すことでございますから、非常に広義に理解をいたしますれば、もちろん金融だと思います。しかし、制度の本質は、いわば返還条件つきの補助金というように私どもは理解をいたしております。これはたとえて申せば、中小企業の高度化資金あるいは近代化資金がそうでございます。それから少し例が悪いかもしれませんけれども、一連の育英資金などがございます。これらは、広い意味ではやはり金融なんだと思いますけれども一つのはずみ車というような意味で、返還条件つきの補助金というような理解に立ったほうがおわかりいただきやすいのではなかろうかというように考えております。  そこで、その場合、三年がいいのか五年がいいのかということで、いろいろ問題によってそれは違うと思います。したがいまして、今度新しく加えましたようなものになりますと、三年では少し窮屈でございます。すぐに経済効果が出てくるというような性質のものではございませんから、五年というふうに考えたわけであります。五年というのは、いま申しましたように、いわば一種の返還条件つき補助金でございまして、これを取り扱う機関も、御承知のように、県にある特別会計がやっております。要するに、行政機関がこの貸し付け事務の責任を持っておる。いわゆる金融機関ではございません。そういう意味で、そういう行政機関としての事務管理能力の問題なり、それから返還条件つき補助金であるという性格から見て、まず望み得る最長期限が五年くらいではなかろうかというように考えた次第でございます。基本的には、これを含めましてもっと全体としての農業金融のあり方という問題になりますれば、先生のおっしゃいましたように、長期低利ということが、本格的な金融段階ではより好ましいことはもちろんでございましょうが、この改良資金につきましてはそういう考え方でおります。
  29. 稲富稜人

    稲富委員 私が言っておりますのは、改良資金はもちろん県に責任があるにしても、三分の二は国が持つわけでございますので、せっかく三ヵ年間を五ヵ年間に延ばすなら、二ヵ年というけちなことをせぬで、やはり現在の農村経済の回収率からいっても、農村経済というものは、急に回収ができて伸びるものではないのだから、せっかく延ばすなら、五ヵ年くらいのけちなことをせぬで、なぜもっと延ばさないのかということです。延ばされない理由がどこにあるか。たとえば五ヵ年で五十万円借りれば、一年に十万円ということであります。現在の農村経済の状態からして、一年に十万円というような回収ができるか。それで私は、二ヵ年間ということでなくて、なぜもっとそれを延ばすことができなかったのであるか、この点をお尋ねしておるわけです。
  30. 昌谷孝

    昌谷政府委員 返還条件つきの補助金という制度を一応御納得いただきましても、それにしても五年は短いではないか、こういうお話であります。私どもも、県の特別会計の事務管理能力その他がだんだん軌道に乗るに従って、できることならば、もう少し長くいたしたいという気持ちも現に持っておりますので、今後とも検討させていただきたいと思いますが、ただ、ここで一応区切りをつけて考えなければならない問題は、ほかの一連の制度金融との調整の問題でございます。こういった新しい技術あるいは新しい政策的の意図を持って農家にやっていただくことでございますから、昔であれば補助金というようなことを考える内容のものが多いわけであります。それで、こういうことをやりますので、五年以上かからなければいけないような場合の問題としては、やはり本格的な農業金融の対象の問題としてお考えいただくのが、それぞれの制度の位置づけをする上からいって適切なのではなかろうかという意見もございます。それらの意見を十分に検討いたしまして、私どもとしても今後なお改善につとめたいと思います。一応現状では、そういう特別会計の事務管理能力的の問題や、それから他の制度金融との位置づけの問題等から、一応五年でがまんしておこう、この点は、中小企業の無利子貸し付け資金と歩調を合わせたわけであります。従来中小企業のほうは五年で、農業のほうは三年であったのを、それを中小企業と足並みをそろえたところまで延ばしたわけであります。なお今後、中小企業の無利子貸し付け資金とも関連して検討させていただきたいと思います。
  31. 稲富稜人

    稲富委員 従来この制度金融というものがこういう資金に対して十分ではないのだということで、今回のワクの拡大というものが行なわれて、法の改正が行なわれたものだと考えております。でありますがゆえに、制度金融の問題がいろいろあるのじゃなくて、制度金融と別個の問題とこの問題は考えていいのじゃないか。さらに中小企業金融との関係があるとおっしゃるけれども、この農業というものの置かれておる特殊の事情、すなわち、冒頭申し上げましたように、農業というものが他の産業ほど伸びないという、一つ農業の置かれておる宿命という点から考える場合に、中小企業その他の金融制度農業金融というものを常に比較対照して考えなければできないということはあり得ないのじゃないか、そういような考え方自体に、私は日本農業が非常におくれる原因もあると思います。それで、他の中小企業金融の問題とか、そういうものと別個に、農村の置かれておる農村経済の状態からの一つ金融であるということ、制度金融において十分でなかったことを今回の改正によって何とか満たそうとして後、この五ヵ年という償還期間の問題は、近い機会に何とかひとつもっと延長する、こういうようなことを考えてもらう意思があるかどうかということをお聞きしたいと思います。
  32. 昌谷孝

    昌谷政府委員 私も、五年でなければならぬという、別に強い根拠を持っておるわけではございませんで、先ほど申し上げましたような諸般の事情から、現状では一応五年くらいというように考えたわけであります。農林関係の諸制度金融の今後の充実とも十分歩調を合わせまして、抜かりのないように検討いたしたいと考えております。
  33. 稲富稜人

    稲富委員 さらに、この法律案改正実施にあたりまして問題になる点は、地方の都道府県の責任というものがあるわけです。それで、都道府県の特別会計の関係があるので、都道府県がこれに対して積極的な対策をとらなければ、いかに政府がこの法律を通してこれを実施しようとしても、その都道府県においては、農民はその恩恵に浴することが少ないという問題が起こってくる。たとえば前年度の実績を見ましても、この面から見ると、福岡県のような、これはやはり相当な農業県というのは御承知のとおりなんです。ところが、これに対する実績というのは非常に少ない。これは福岡県がこれに対する熱意がないのか、福岡県の財政事情においてこういうことになったのか、知らないのですが、こういう実績があらわれている。こういうような問題に対して、せっかく政府がこの法律案を通して、これによって農村に対するいろいろな施策をやろうとした場合に、県がこれに対する熱意がおる点、こういう点から考えて、今、ない、県に財政措置ができないという場合には、非常にその農民は恵まれないということになってくるのでございますが、こういうような事態に遭遇した場合国は、いかなる方法をとろうという考えを持っているか、お聞きしたい。
  34. 昌谷孝

    昌谷政府委員 在来の蓄積額約三十億円の実績につきましては、いま先生ごらんになりましたとおり、資料の第一ページにございますような府県別の状況でございます。私どもとしては、この法律のたてまえがそうでございますのですが、県が造成いたします費用の三分の二を助成するというのを原則といたしておりますので、県がこれだけにしたいという県の御計画を三分の二援助するという形でこの制度は成り立っておりますから、多少先生のおっしゃったような県による差が出てくるわけでございまして、これはある程度その地方の自主性というような点との関連においてやむを得ない点もございましょうと思います。ただ財政上の理由でそういうことになったのでは残念でございます。私どもとしては、年々新しく県が固有に負担しなければならない三分の一の部分につきましては、年々の地方財政計画におきまして、財政需要の中に織り込んで、交付税なり何なりの算出の根拠にいたしておるわけでございます。三十九年度につきましても、約九億何千万円というものを基本財政需要の中に織り込んで、交付税の配分をしていただくようにやっております。したがいまして、財源的な意味では、一応私どもとしてはできるだけの配慮を払っております。あとその農家の方々の需要なりあるいは県御当局の御方針なりというもので、若干左右はいたしますけれども、なるべくそういうことで極端な差が出ませんようにという意味で、場合によってはあまり数県に片寄ってこの資金が流れませんようにするための配慮も法律上加えてございます。そのようなことで、なるべくそういった、もっともな理由のないアンバランスというものが発生しないように、十分今後とも心がけてまいりたいと思います。
  35. 稲富稜人

    稲富委員 私はこの機会に承りたいのですが、昨年の、実績等によりますと、福岡県が非常に少ないんです。これはどういうような事由になっているんですか。やはり県が資金量において足らなかったのであるか、この実施に対して熱意がなかったのであるか、これに対してはどういうように農林省はお考えになりますか。
  36. 昌谷孝

    昌谷政府委員 必ずしも県の熱意は足らなかったというふうには私考えておりません。ただ、御承知のように、技術導入資金——新しい技術でございますが、農家が比較的にそういった資本的な蓄積が進んでおって、その程度の技術の導入ならば自力でやれるという場合が相当ございます。また、すでに技術水準が相当進んでおって、その地帯ではもう新しくないという事態もございます。そこらの事情で、農家の進みぐあいで、こちらで取り上げております新しい技術が、この資金にたよらなければ入りにくい場合と、その資金に必ずしもたよらなくても十分実力で入っていくような場合がございますので、同じ九州の中でも、比較的農業の進んでおります県が需要が少なくて、比較的農業技術の進み方の不十分な県が需要が多いというような実情を示しておるのは、そういう点が反映しておるのではなかろうかというふうに私ども考えております。
  37. 稲富稜人

    稲富委員 これは、やはり県が積極的にやるかやらぬかによって、農民にこういう制度があることを周知徹底せしめるかどうかという、こういう問題にも非常に影響があると私は思うのです。それで、今後いま言われるようなことで、農民が希望する、これに対して県自体があまり熱意がない、こういう場合は、政府といたしましては、積極的な指導とかそういうような方法によって農民の希望を満たす、こういうような特別措置でもやられる意思があるかどうか、それを承りたい。
  38. 昌谷孝

    昌谷政府委員 先ほどお答えいたしましたように、交付税の配分の基礎になります基本財政需要額の中には、そういった意味で何らそういう差別をつけずに財源措置を講じております。したがいまして、私どもとしては、なるべく多くの県がよりたくさんこなしていただくように、あるいは需要があるのに熱意が足りないというようなことは万ないと思いますけれども、もし先生の御指摘のような点がございますれば、指導等によって十分補ってまいりたいと思います。なお、昨年は地方農政局発足早々のことでもございまして、これの府県別の配分はやらなかったわけでありますが、来年度以降につきましては、地方農政局ごとに十分各県の事情を精査しておくみ取りをいただいた上で、配分を最終的にきめていきたいと思っております。御指摘のような点の是正については、一そうこちらとしても熱意を持って当りたいと思っております。
  39. 稲富稜人

    稲富委員 さらにお尋ねしたいと思いますことは、今回のこの法案によりまして、農業後継者の育成ということに非常に熱意を入れております。これは非常に重要な問題だと思うし、政府の意のあるところはこれを大いに了といたすのでございますが、この問題はこの間予算分科会において質問した問題でございますが、農業基本法第十六条の相続の問題でございます。私が質問したときに、局長は、相続の問題については相続税その他で考えておるというようなお話のようでございました。ところが、その後いろいろお話を聞きますと、政府は、分散相続の問題に対してあまり影響はないだろう、こういうような軽い解釈をしておられる。この農業基本法第十六条の相続問題を非常にうとんじられている、そういう感があるということも聞いているのでありますが、やはりそういうような考え方をなさっておるわけでございますか、その点を承りたいと思います。
  40. 昌谷孝

    昌谷政府委員 この問題につきましては、基本法制定当時からいろいろ御議論をいただいておりますが、私どもは、基本法第十六条の規定そのものは、あれで一つの裁判規範としての役割を十分持っておると思っております。と申しますのは、遺産相続の分割の場合、かりに相続人相互間でトラブルが起こりました場合、農業用資産については、あの基本法十六条の精神が民法の補助規定として働いて、なるべく分散しないように相続財産の分割の場合の取り扱いをする、そういう意味での裁判規範としての補充的役割は、あれで十分果たしておると思うのでございます。ただ問題は、さらにそれから一歩進んで特例的な制度を設ける必要があるかどうかということに相なるわけであります。その点につきましては、事が非常に重要でありますので、私どもとしても、慎重に実態の調査をお願いして続けてまいったわけでございます。この間予算の分科会で私が申し上げましたのは、その調査の一環として出てまいりました報告書によりますと、農地が分散をする原因として、経営者の死亡が直接の原因となって農地が零細分散化するという事例はもちろんでございますけれども、全体の分散する事例の中で占める割合はむしろたいしたことはない。その場合には、おやじさんの目の黒いうちにおおむね片づいておって、それが原因になるという場合は、むしろ事例的には例が少ない。農地が小さくなります圧倒的多数の例は、おやじさんの生きているうちに次男に分けてやるとか、あるいは嫁にいく娘さんに分けてやるとか、そういうことを原因とする、いわゆる生前贈与で分散される場合のほうが、実態的には例が多いという報告書が出たわけでございます。それも私は現在の農村の実情から見てなるほどそうかと思うわけで、したがいまして、民法の相続の規定を制度的に手直しをするということは、いまの農地が零細化していくことをとめる上でさほど効力のある措置ではない。むしろ、生前贈与で散らばっていくのを何とか防ぐことのほうがより緊急の課題であるというのが、その実態調査の結果教えられ方一つのポイントであったわけであります。そこで、今度の税制におきまして、生前贈与の場合に、経営者一人に対しておやじさんが譲り渡す場合を税法上特に有利に扱っていただきましたのも、生前贈与で農地が散らばることをなるべく防ぎたいという気持ちがあらわれた一つ措置でございます。あれだけで事が足りるというふうにはもちろん考えておりませんけれども、そういった実態調査の結果から見合わせますれば、一つ対策ではあろうかと考えるわけであります。この問題は、そういうことで、現在私どもがそういった諸先生方の調査結果で教わりました、農村のおやじの死亡を原因とする農地の零細化の中で、どこをポイントとして考えていかなければならないかという現段階での一つの問題であります。しかし、今後、長年にわたって御議論がある問題でございますから、そう簡単に割り切るわけにはまいりません。今後ともいろいろの場合をもっとよく調べまして、そういった原因が明らかになるのに応じて、それにふさわしい対策を補充していくことはもちろん必要だろうと思いますが、現状で申しますればそういうことだということでございます。
  41. 稲富稜人

    稲富委員 この問題は、いまの局長の御答弁を聞きますと、裁判規範による一つの規定づけということに効果があったというようなことで、非常に消極的なこれに対する観察のようでございますが、少なくとも農業基本法第十六条にはっきり明文をもってうたっているのですから、この問題は、トラブルが起こった場合に何とかなるのだということで解決すべき問題ではないと私は思う。政府はこの条文を生かすために、もっと積極的にこれと取り組んで、たとえば生前贈与の場合といえども、この問題をどうするかという処置があらわれてこなければならぬと思う。現にこの相続問題はもうちまたに起こっておるのです。農業基本法は実施されて四年目になるのです。その間にも相続の問題は日々起こっている。この問題を単なる裁判規範になったから、これによって効果があったのだというような解釈をして、放任しておくという手はないと私は思う。幸いに、今回は農業経営をやっていこうという若い青年に希望を持たせるための法の改正が行なわれるのですが、これと同時に、これに対する相続の問題について、零細化を防ぐための方法をやらなければいかぬ。当然、これに対しては長期無利息の融資等をもって生前贈与の解決の材料にするという積極的な方途が講ぜられなくちゃいけない問題ではないかと思うのです。それをいま言ったようにいままで放任されておるということは、私は政府の怠慢じゃないかと思う。この点は単なる政策上の問題じゃなくて、条文の中に明示された問題でありますから、その条文の中に明示された問題は、農業基本法を実施するにあたって、最も忠実にこれに対する対策をやらなくちゃいけないと思うのです。いま局長が言われたことは、あまり影響ないのじゃないかと考えていらっしゃる、こういうふうに解釈して差しつかえないのじゃないかと思うのでありますが、これはどうも不都合だと思う。何とか早く対策をとって、無利子の長期資金融資する、これによって細分化を防ぐような、生前贈与であっても話し合いの基盤をつくってやる、こういうことが非常に必要じゃないかと思うわけです。この点に対して政府はどういう考えを持っていらっしゃるか。
  42. 昌谷孝

    昌谷政府委員 私、ことばが足りませんで、どうも十分御理解いただきにくかったと思うのでありますが、十六条の規定は、それとして独立の規定としての意義を持っておりますということを申し上げるために、これはこれとして裁判規範としての、民法の補充規定の役割りを持っておりますということをただ申し上げたのであります。それだけでいいということでは毛頭ございませんから、実態調査その他、先ほど申し上げましたような、かなり大規模な調査をお願いをしたわけでございます。そういった調査の結果を待って処理をいたしませんと、これは非常に重要な問題でございますから、軽々にやってはいけないという意味で、慎重な調査を続けておるわけでございます。その調査の結果として出てまいりました第一ポイントが、先ほど申しましたようなことでございましたから、当面そういったことがわれわれとしては一番心がけなければならない点だとして、税法上の措置もとったということでございます。  なお、農林省としては、先般、御承知のとおりでございまして、金融的な面でこの農業用資産の分散を防ぐための措置といたしましては、維持資金の中で、相続関係の分散を防ぐために、資金需要があればそれにこたえていくという措置がございますが、その金利なり貸し付けの条件についての改善を今後やっていく必要があるという御指摘については、私どももそういったことを今後心がけてまいりたいと思います。  なおつけ加えますと、先ほどの調査の結果で、諸学者が指摘いたしました一番緊急なポイントは、結局生前贈与の形で、要するに、おやじの目の黒いうちに農業用資産の行く先については大体話がついているという問題との関連において、たとえば嫁にいく娘さんに農地以外のものを持たせてやる方法であるとか、あるいは次男、三男に高等学校あるいはさらに進んでは大学などの高等教育を受けさせて、農地を分けなくて済ませることとか、むしろそういう配慮が一番有効な措置であろうというのが、その調査研究の結論と申しますか、中間的な結論の一つの示唆でございます。それらの点は、今後自創資金なり何なりの充実とか、あるいはその他の一般的な職業訓練の問題でございますとか、そういうかなり広い範囲の問題として、いろいろ対策考えていかなければならない問題を含んでおります。それらを一ぺんに目ざましくは進みませんけれども、私どもとしては逐次積み重ねてまいりたい、さように思っております。
  43. 稲富稜人

    稲富委員 いま御答弁になりました生前贈与の問題で、あるいは学校へやらせるとか、ほかの財産を持たせて分かれさせる、これもやはり話し合いなんで、それに対する資金が要るわけです。その資金というものはどうしても無理をしてやらなければならない、こういう状態であるから、この問題に対する対策というものは早く樹立すべきだ、こういうことをわれわれは言っておるわけです。これは非常に重大だから軽々にいかないとおっしゃいますけれども、すでに農業基本法が実施されて四年目です。私は、この問題に対しては、一番最初のときから三年間同じことを質問しているのだが、一つも進んでいない。いつまでも検討している。時代はだんだん進んでまいっております。こういう同じことを繰り返さないでいいように、ひとつ来年度の予算面の上において、これに対する対策を納得のいくように講じてもらいたい、こう思うわけでございますが、この問題に対しては次官どうですか。
  44. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 農地が細分化されていくことは、非常におそるべきことであり、阻止すべきことだと思います。そこで、そうした金融財政措置一つ方法としてとられるように、三年前から稲富さんから御指摘があって、検討するということばできょうまで逃げてきた、逃げてきて、方法を立てずに怠慢であったということは、まことに遺憾であります。そこで、先ほど事務当局からも答弁いたしましたように、進んで検討を加えておるようでございますので、来年のときにはこうした御指摘を受けないように、必ず方法を御審議いただく、御意見を伺えるように進んで具体策をきめたいと思います。いままでのまことに誠意の足らなかったことは、お許しをちょうだいいたしたいと思います。
  45. 稲富稜人

    稲富委員 時間がありませんので、公庫の総裁がせっかくお見えになっておりますから、最後に、公庫の問題について二、三お尋ねしたいと思います。  ただいま農村金融の問題がいろいろ論ぜられております。農村金融は、農村経済の伸びの状態からいって、低利長期というものが当然必要である。そういう意味から、合同の改良資金におきましても、無利子の金を貸そうというような思い切ったことまでいっておるわけでございますが、こういう点から申し上げまして、どうしても成長度の鈍い農業金融にあたりましては、将来この公庫の金融に対して金利の値下げというものを当然考えてしかるべきものだ、こう考えるわけでございますが、実際これを運営なさっている総裁としてはどうお考えになりますか。
  46. 清井正

    ○清井説明員 農業金融の本来の性質から申し上げまして、公庫の設立当初から、公庫の貸し付け条件が漸次長期、低利という方向にまいってきていることは、御承知のとおりでありまして、今回の法律改正におきましても、その年限におきましては三十年、一部の種類におきましては三十五年ぐらいのものもございますが、大体三十年ということで、一部の例外を除いてはおそらく一番長い償還期限まできておると思います。私どもといたしまして、実際上の融資の衝に当たりましては、借り入れ希望者からお話を伺うことは、常に貸し付け利子は安くしてもらいたい、償還期限はできるだけ長くしてもらいたい、こういう御希望に接しているわけでございます。現在の農業経営あるいは林業、水産業経営等から見ましても、経営者の負担を見ますと、できるだけ制度金融による貸し付け条件というものを経営者の経営の状況に合うようにいたすということが必要でございますし、また、そういう御希望のあることももっともなことだと思うのであります。したがって、今回の法律改正にあたりまして、私どもは現在借り入れ希望者から伺いまして、こうあるべきだという方向に向かっておりますので、私ども実施に当たるものといたしましても、まことにありがたいと思っているわけでございますが、この問題につきましては、やはり農業経営なり林業、水産業経営の情勢と見合いながら、その情勢に無理のないように、終局的には農業なり林業なり水産業経営にお役に立つように、制度金融の利子の条件をきめてまいらなければいけないということは、これは申し上げるまでもないと思います。私ども実施に当たりました経験から申しましても、ぜひそういう方向へできれば進めてまいりたい、このように考えております。ただ、申し上げたいことは、一気にこれをするということも、実際上なかなかむずかしい場合もございますし、公庫といたしましても、独立政府機関といたしまして運営しておるという筋合いのものでございますので、そういう筋合いにおいて、私自身としては考えていかなければならぬと思うのであります。しかし、たとえば農業金利あるいは林業、水産業金利等の改定を通じて全般的な観点から申しますれば、やはり現在の経営の実態から見て、その経営を助長するという観点からこの制度金融というものを考えていくということは、ぜひ必要なことでございます。実際上貸し付けたあとのいろいろな条件の整備なり条件緩和の問題等が起こりました場合にも、私どもは、経営に当たる人の実際条件をよく見て、無理のないように、私ども金融者としての立場は堅持しながらも、やはり実情に即するということでやってまいっております。また今後もやってまいらなければならない、こういうように考えておる次第であります。
  47. 稲富稜人

    稲富委員 聞きたいのですけれども、時間がありませんので、簡単にお尋ねします。現在公庫に対する貸し出しの申し出と貸し付けとは、十分応ずることができないで、次年度に回しているというような事情もあるように聞いているのでございますが、申し込みに対してどのくらいの率で応ぜられる状態に置かれておりますか。
  48. 清井正

    ○清井説明員 この問題は、実は私ども金融制度が一般の金融機関と違いまして、いわゆる裸の真の希望者の希望というのは、直接に私どもに上がってこない場合があるのでございます。と申しますのは、公庫の融資のワクがそれぞれの種類によってきまりますと、その地方の農政局別あるいは県別に一定のワクというものがきまる場合があるのでございます。そういった場合におきましては、そのワクの範囲内において、それぞれの県当局なりあるいは農政局当局におきまして、末端からの希望者を選択いたしまして、公庫の融資の条件に合うようにこれを持っていくという、希望者をワクに当てはめるという作業が一つあるわけであります。したがいまして、そういうワクのあるものにつきましては、大体ワクに相当する程度あるいはそれをちょっと越える程度というものが、大体公庫に対する融資希望として上がってくるわけであります。公庫の貸し付けは、全部県庁の貸付対象事業調書というものがついてきまして、県庁の手を経なければ私どものところに上がってこない仕組みになっておりますので、すべてそういう場合におきましては、公庫の決定いたしましたワクに相応する、あるいはそれに近いものが上がってくるということになってくる事例が相当多いわけでございます。すべてがそういうわけではございませんが、大部分がそうでございます。したがいまして、毎年度年度末に締め切りますと、貸し付け希望に対して貸し付けることができなくて、翌年度に持ち越すというものが、やはり四、五十億残るわけでございます。総計で申しますと、四、五十億でございますが、中身を少し見ますと、やはりそれぞれ違っておりまして、いま申しましたような土地改良であるとか、自作農資金であるとか、あるいは今度の構造改善資金とか、制度的色彩の強いものは、いま私の申しましたような事情でそれぞれの県できめますから、そう申し込みと決定と違わないのでありますが、ただ、それ以外の貸付決定対象事業調書だけでやっている、たとえば漁船資金とかいうものは、相当大幅に需要が上がってまいります。したがって、個々に見ますと、需要に対して供給ができないといいますか、貸し付け決定ができないで、翌年度までお待ち願いたいということで、持ち越す場合が相当あるわけでございます。そういう場合におきましても、これは三月三十一日で締め切りますからそういうことになるわけでございますけれども、借り入れをお申し込みになる方は、四月一日になれば来年度ということでございますから、そう御迷惑をかけているような実態にはなっておらないのでございます。ただ、それを四月一日から三月三十一日、三月末日で締め切りますと、いま申し上げたような実態が起こることがあるということで、大体総計で四、五十億は翌年度に繰り越すという状況になっております。いずれにいたしましても、私どもといたしましては、希望の多いものに対しては今後貸し付けワクを増加しまして、需要にこたえるようにしていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  49. 稲富稜人

    稲富委員 あなたのところにくるときには五十億くらいのはみ出しができる。しかし、あなたのところにくる前に、地方ではこれはだめだというわけで、ある程度整理して持ってきておるという事情があるということは御存じだろうと思う。そういう点から申し上げますならば、貸し付け全体のワクの拡大ということが、当然考えられなければいけないと思うのでございますが、これに対して将来政府といたしましても十分お考えになる意思を持ってもらいたいが、こういうことをひとつ承りたい。  さらに現在の公庫の貸し付け対象でございますが、だんだん農村の情勢等が変わってきますと、貸し付け対象のごときものももっと拡大する必要があるのではないかと思う。この点も、たとえば今日乳牛とかあるいは牛に対する貸し付けがありましても、あるいは非常に次に期待をされておる豚であるとかいうものについてはこれを受けないとか、こういう問題もあると思う。あるいは果樹なんかの問題においても、私の地方ではあるのでございますが、植木なんかの問題も、従来は植木は単なる隠居さんの仕事だったけれども、現在及び将来においては、団地に対しては植木を植えるとか、あるいは道路に対しても植える、工場にも植える、こういうように人間の生活と直結するような対象に置かれている。こういうようにだんだん用途が変わってくるものに対しては、その用途に応じて貸し付け対象を拡大する、こういうことが当然起こってくるのじゃないかと思うのでございますが、これに対してはどういう考え方を国なり公庫としては持っておられるか、承りたい。
  50. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 お尋ねの第一点の貸し付けワクということになりますが、三十九年度につきましても、昨日も申し上げましたが、相当大幅に増額しておるわけでございます。財政投融資計画全体のワクに比較しましても、はるかに大きな伸びでございますし、他の政府金融機関に比べましても、非常に大きな伸びになっておるのであります。  ただいま総裁のほうにお尋ねのありました需要との関係でございますけれども、これはいま総裁が答えられたとおりでありますが、さらに私どもとしましては、公庫の貸し付け条件がややきびし過ぎる。というのは、たとえば畜産の貸し付けにいたしましても、いろいろこまかい条件をつけておる。これは政策的な金融でございますから、ある程度政策的な目的を達成するために、種々の条件がつくのはやむを得ないわけでございますが、それにしましても、やや条件が多過ぎるというようなものがございます。それからいまお話がありましたようなワクを割り当てる。これは政府資金で、非常に低利の有利な資金でございますから、ある程度の割り当てになると、とてもまかない切れないという問題もございますけれども、そういった点。それから手続が非常に煩瑣である。いま話に出ました県の認定あるいは審査、そのほかに農協、農業委員会、いろんな機関が関係いたしまして、それで手続に非常に長い時間を費やす。それからそのほかに、貸し付け全体の資金の種類がきわめて多くて、その金利が複雑であり、貸し付けの据え置き期間なり貸し付け期間がさまざまで、そういったことからめんどうくさいということで、せっかく借りたいという意欲を持っておる農家を消極的にならせるという傾向があったことは否定できないのでございます。その点が、本来ならば一番大事な改正点であると私ども考えまして、まず金利とか貸し付け期間とか、そういうものを整理簡素化し、手続も最近その簡素化を進めてまいっておりますが、さらに一そう進めてまいりたい。そういたしますと、利用ワクが増加するのではないか。県で押えるというよりも——それは前もって押えてしまうわけですから、わからないかもしれませんけれども、しかし、とにかく潜在的には需要はかなりあるということから、そういった面を簡素化して、一面それに応ずる需要が増大すれば、さらに今後もワクを増大する必要がある、かように考えております。  それから対象の拡大につきましても、ただいまお話がありましたように、現在各種の資金がございますけれども、これだけで十分だとは思っていません。さしあたりいままでやっておりませんでした大規模な養鶏の施設、あるいは大規模な養豚の施設のための資金は新しく貸し出すようにいたしたいということで、検討を進めております。ただいま御指摘がありましたようなものにつきましても、今後検討いたしたいと考えております。
  51. 稲富稜人

    稲富委員 話を聞いておりますと、農林省が非常にわかって、公庫が融通がきかないような話でありますから、公庫総裁見えておりますので、大いに政府の意を体して、思う存分農家の需要に応じて、大胆にひとつ貸していただくように、そういう取り計らいをして、公庫の趣旨が十分生きますように、こういうことにひとつ総裁も努力していただきたいということをこの機会にお願い申し上げまして、私の質問はこれで終わるわけでございますが、最後に公庫の総裁のこれに対する決意をひとつ。
  52. 清井正

    ○清井説明員 ただいま局長からお話申し上げました点、私ども公庫といたしましても、実施の責任者といたしまして十分考えなければならぬことだと思っておるわけでございます。手続の問題あるいは行政庁のそれに対する介入の問題、これはほんとうに借りたい人に長期、低利の金を貸すということが私どもの役目でございます。潜在的な需要がいろいろな障害があってうまくいかないということは、申しわけないのでございますが、中間にそういった障害があるといたしますれば、できるだけ簡素化いたしまして、なまの需要が直接上がってくる、それに対して私たちは誠意をもっておこたえするということで、今後進めていきたいと思う次第でございます。
  53. 高見三郎

    高見委員長 松浦定義君。
  54. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 いま議題になっております金融三法のうちの、北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の問題に関しまして、主として大臣の基本的な考えをお聞きしたいのですが、この点については保留いたしまして、事務当局並びに政務次官等から、いろいろ御意見を承っておきたい、このように考えておるわけであります。  この法律が制定されまして今日まで五ヵ年間、この間におきまするその経過につきまして、いろいろ御説明が提案理由の中であったわけでありますが、二ヵ年間これを延長したい、こういう考え方については、基本的には私は賛成であります。しかし、過去五ヵ年間において、その処置がはたして十分であったかどうかということを考えますと、その二ヵ年延長しなければならぬということは、むしろ政府あるいは農林省責任も相当あるのではないかと考えるわけであります。  資料の中で見ますと、三十四年から三十八年十二月までに六千六百六十七戸というものが該当処理をされた。しかし、まだ今後残された分が五千戸ある。これを二ヵ年間延長して処置したい、こういうことのようにお聞きしておるのでありますが、最初の計画から見ますと、はたしてこれがどの程度の成果といいますか、処理ができたかということを考えてみますと、これは私いま申しましたように、まことに遺憾な点が少なくないと思うわけであります。  いま私どもの手元にまいっております調査室の資料によりますと、昭和三十四年の法制定の際におきましては、その対象農家は約四万戸、主畜経営地帯が八千四百八十二戸、あるいは混同経営地帯として三万八千五百十八戸、そのうちで実際対象となるのは二万八千戸である。これを三十四年から五ヵ年間おやりになったわけでありますが、私が先ほど申し上げました、これから五千戸やれば、大体これでその法案によって農家が非常に安定をしていく、こういうことでありますと、数々が少し違うように実は思うわけでありますが、この間の経過につきまして、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  55. 昌谷孝

    昌谷政府委員 二年延長していただきますにつきまして、今後二年間にどのくらいの農家がこの資金を借り受けたい希望があるかということにつきまして御説明いたしますと、お手元に差し上げました資料の二枚目でごらんいただきますように、三十九年度以降に残ります借り受け希望農家の数は、一応昨年の北海道庁の調査によりますれば、四千六百戸ということに相なるわけでございます。一枚目にございます調書は年度途中につくりましたので、三十八年度の年度末までの実績を見込みますと、そういうことに相なるわけでございます。そういうように、四千六百戸が今後に残される借り受け希望農家であるということが道庁のほうの調査でわかりましたので、これを二年間でやることについて、その可否を十分道庁とも検討いたしまして、二年間で認定は終わるという見通しを得ましたので、二年の延長をお願いした次第でございます。  この法律案を最初に御審議いただきましたときに、この要件にはまります農家の中で、この資金を借り受け希望するであろうというふうに見込みました農家の数は、総体では御説のように二万八千戸でございました。そのうち、要綱で実施をいたしましたものを除いた残りの、約二万五千戸であったかと思いますが、これが法律ができましてからあとの対象農家ということに、当時は一応想定を置いたわけでございます。その後実行を重ねてまいりますにつれて、潜在的には借り受けできる農家の数は、その後年次とともにその地域の農家の総戸数も減っておりますから、若干は減りましたけれども、なお相当数あると思います。しかし、具体的に個々農家について道庁がしさいに希望調書をとりまして積み上げました結果が、どうしても本年度末までに認定が終わらなくて、ぜひこの資金を活用したいという希望を具体的に持っておられる農家の数が四千六百というふうに出ましたので、この数字でこのことを判断した次第でございます。
  56. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 この制度必ずしも私は万全だとは考えていないのでありますが、やはり当初の計画がこのようにおくれたということについては、いろいろ理由があろうかと思います。それでもなおかつ二ヵ年延長して、これの最後の対策を立てたいということについてのいまの御説明は了といたしますが、この実績があがらなかった理由として(1)から(7)まで実はここにあげてあるわけであります。それを見ますと、まず、法律施行の初年度において、施行事務、寒冷地畑作振興地域の指定等がおくれた、あるいは営農改善計画の作成及び資金借り入れ手続がふなれであった、農家に対する趣旨の不徹底から本対策に対する一般農家の積極的な理解が不足していた、開拓営農振興法の適用を受ける開拓者に対する受託金融機関の調整がつかず、とりあえず一般農協と開拓農協へ二重加入した者のみに限らざるを得なかった、あるいはまた負債を有する農家が多く、改善計画の樹立が不可能であった、さらにまた指導体制の整備が不十分であった、それから最後は、資金の借り入れ手続がやや複雑であったこと等があげられる、こういうふうな七項目にわたる理由が実はあるわけであります。ですから、最初からこういう問題があるということがわかっておるから、こういう問題を処理してほしいというようなことが、おそらく法案の審議の過程では出ておったと思うのです。特に開拓者等がこの問題に対して非常に多く期待しておったわけでありますが、開拓者の資金の借り入れ手続等が非常に複雑であった。この複雑であったということは、当然当局としてはおわかりになっておることであるにかかわらず、こういうものがある中でこういう法律ができ、しかも、実行不可能の場合の理由として、なおかっこういうものをあげなければならぬということ、さらにまたこれが残ってきたということでありますから、こういう点、当初計画どおり済まなかったということについての政府責任といいますか、こういう点は、十分今後も努力をして解決していただかなければならぬと思うわけであります。  そこで、きょうは時間もございませんから、私は総括的な質問をいたしたいし、特に大臣に対する問題については保留しておきますが、いま北海道のみに限らず、先ほどからいろいろ御意見もございましたように、開拓者、あるいは既存農家でありましてもD層農家等は、非常に深刻なものがあると思うわけであります。そこで、率直にお尋ねいたしますが、これらの問題に関しまして一番犠牲的な立場に置かれておるのは開拓者であると思います。特に戦後の緊急開拓者になりますと、これはまことに気の毒だという一言に尽きると思うのであります。率直に申し上げますが、戦前、戦後を通じまして、北海道を中心として東北、全国的に開拓者として多くの人が出ております。そういう人の実態が今日いろいろの形で出ておりますが、それに対する対策というものは、なるほど開拓者に対して特別な配慮をする、あるいは金融制度法律等も出ておりますけれども、それだけではどうにもならない状態になっておる、私はこういうふうに考えておるわけであります。特にこの開拓行政というものにつきましては、いずれの機会にも問題になるわけでありますが、もう戦後約二十年になるわけであります。したがって、この開拓行政に対する処置を明確にすべき段階でないか、私はこういうふうに考えておるわけであります。金融に対する複雑な問題を一本にするというお話がありましたが、そのことはそのことで私はいいと思うのでありますが、それよりも、生活を中心にした開拓者の対策というものをこの辺でどう考えるかということ、今日政府考えておられること、特に農林省が主管省としてこれから進めようとする開拓行政考え方について、御意見を承りたいと思います。
  57. 小林誠一

    ○小林説明員 お答え申し上げます。  松浦先生の御質問のとおり、戦後開拓行政は相当長い期間がたっておるわけでございます。いろいろ社会的、経済的、自然的な条件から、不振の開拓者も多く出ておることは、御指摘のとおりでございます。したがいまして、一昨年その実態を調査いたしました。その実態に応じまして新たな振興対策を立てまして、相当まとまった金を融資するということによりまして、経営の発展を期し得る農家になるよう、その対策を講じますと同時に、不幸にして開拓営農としては成り立ち得ないという方々に対しましては、離農金を支給いたしまして他に転業をしていただくということで、離農に対します補助金につきましては、本年度までは三十万円であったのでありますが、増額いたしまして、三十九年度からは一般四十五万円、海外移民の場合は五十万円というふうな離農金を出して、他に転業をしていただくというような措置も、あわせて講じたいというふうに考えておる次第でございます。
  58. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 この開拓行政については、ただやめる人に対してはいまお話しのような手当てをしよう、これは私はわかるわけなんです。これはわかるのですけれども、その場合に、その金が全部持って出られる人なら問題はないわけですが、それが負債のほうへ差し引かれてしまって、出ていくときには何にもなくなった、そうすると、土地を離れてしまったら、もう今度はどうにもならぬというのがほとんどだといってもいいくらいなわけです。ですから、私の申し上げるのは、必ずしも全部が全部の人を対象にあげるというのじゃなく、いまお話しになりましたような条件にある零細農家に対しては、五十万にしようと六十万にしようと、決してその人が再生産をするような形にはならないんだ、それだけでは、私は、政府責任というものは完全ではないというふうに実は考えておるわけであります。  そこで、私は責任論として追及するわけじゃありませんけれども、御承知のとおり、戦前戦後を通じて、主として北海道あたりへ来られた開拓者の人は、大体銀行あるいは会社、商店、そういったような人で、爆撃のために家をなくして来られた人なんです。そういう人でも、中には、ある程度力があり、あるいは親戚に力のある人は、入ったとたんに、一年か二年で帰ってきている。その帰ってきた人は非常に成功しております。どうにも帰るに家もないし、人もないというような人が、そのまま奥地へ入って、今日では電気もなければ水もないというような事態にたくさんおるわけなんです。そういう人の対策については、いまお話しになりましたような程度のものでは、政府責任から言ったら済まされないのじゃないか。特に最近私はよく聞きますが、いろいろな人が東京あたりへ出てきますと、二十年前にわれわれがおった土地がこういうことになったといって、非常に羨望的な気持ちが高まっておるわけであります。もしあのときに何らかの形でここに居すわっておれば、おそらくいまのような五十万や三十万もらって出ていかなければならぬといったような、みじめな生活をしている人ばかりではないと思うのです。率直に申し上げまして、戦争で一番ひどい目にあったのはだれかということでいろいろ検討してみますと、むろん、生命を賭して戦われた軍人の人、あるいはその家族の人が、非常にお気の毒だということはわかります。しかし政府の施策に基づいて、緊急開拓という形で、なれないところへ入っていって、今日そういう状態でおるという者についても、これは、私は、また生活の上からいえばたいへんなことだと思うのであります。ところが、一面には、いま問題になっております農地補償等につきましては、私の、自分の土地を非常に犠牲的な処置をされて困っておる地主の人もありますから、そういう人の考え方については、必ずしも今日のあの対策については不適当だとは思いませんけれども、そのものと、あるいはこれから生活をするという人間的なものと考えましたら、これは私は雲泥の差があると思うのです。だから、率直に申し上げますと、たとえば農地補償の問題等につきましては、あれはマッカーサーの命令によって、無血革命といったような農地改革ができたわけなんです。そのことによって、農民は小作が自作になったということで、今日の農業に対しても非常に貢献しておることは私はよくわかります。しかしながら、その土地を今日やはりその人が耕作するならこれは別でありますけれども、全然耕作するということなしに、その補償をせよということで、しかも数多くの国会議員が先頭に立ってこれを推進されて、そうして何百億あるいは何千億になるかもわからないようなものが、今日議題になっておるわけであります。ところが、戦後開拓者の非常に苦しい人に対して、そういう人の中からだれ一人そういうような運動をしてやろうではないかという人が出てこないというところに、私は非常に遺憾な点が多いわけであります。もしそれをやらないからというのであれば、私どもはもう本日からでも多くの人の署名をお願いして、その実態を当局にお伝えするにやぶさかではない。   〔委員長退席、谷垣委員長代理着席〕 こういう点については、これはほんとう大臣に御答弁願うところでありますけれども政務次官は、それらは片手落ちではないのだ、それは政府責任でない、そういうふうにお考えになるのか。この開拓行政、あるいはこれから畑作農家の中で非常に困っておる農家に対する対策を進める場合の態度として、ひとつ御所見を承っておきたいと思います。
  59. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 重大な政治問題であり、また深刻な訴えでございますが、しかし、それだけに、お答えする、考えを述べさせていただく側としましても、非常に慎重を要するといいますか、真剣な態度でお答えをさせていただかなくちゃならぬと思っております。  ことばに出すのもいやなことばでございます。当然忘れなくちゃならぬことばでございますが、松浦さんから出ましたので、申し上げますけれども、戦後——そういうことばは忘れなくちゃならぬことばと思いますが、その戦後に、生きる道もなく、職もないということで、新しい天地を求め、生きるためにということで、開拓方針をとられたのであります。もちろん、北海道等におきましては、戦前からすでに開拓をしておいでになった方々の中には、相当りっぱに成功しておられる人もあります。しかし、そのいやなことばである戦後、全国的ではございますが、特に北海道等におきましては、そうした方々が、今日内地で暮らしをしていらっしゃる方々と比較すると、比較にならないお気の毒な生活をしていらっしゃる。これに対して政府は全然知らないわけではございませんので、御指摘にもありましたように、またお答えもいたしておりますように、振興対策を立てたり、離農資金を与えたりしてやっておりますが、しかし、これとてもこそくな、きわめて消極的なこう薬ばりのやり方でございまして、それだけでは、御指摘のように、いま困り果てておる開拓者を救う道でないと私は思っておるのであります。だから、これじゃとても食っていけないからというので、その当時さっそくそれを見切りをつけて、内地へ帰り、それぞれほかの職に変わった人は成功しておいでになるが、政府考えに従い、あるいは土地を愛して、何とかなるであろうとがんばった人が深みに深みに入って、そこから抜け出てくることができないで、あえいでおるのが現状なんです。早くそこから出ればよかったじゃないかなんということを言える義理合いのものでもなければ、これは私はおそらく社会問題だと考えておるわけであります。だから、逐一すぐ抜本的な対策をここでこういうぐあいに考えておりますということは、はなはだ遺憾でございますが、持っておりませんが、私どもいま申し上げました気持ちで、社会問題としてこうした方々を救う道——これはだれに責任があったか、あるいは政府がやりようが悪かったか。もちろん、私は、わが国の開拓政策というものは、失敗とまでは、いまの私の立場からはちょっと言い得ないのでありますけれども、成功したものとは考えていない。十分これは責任があると思うわけであります。そこで、あなたもおっしゃいましたように、責任のなすり合いをしているときではない。それ以前の問題、社会問題だと思いまして、大いにひとつ検討を加え、救う道を考えていきたい、こう思っております。いま松浦さんから農地補償の問題が出まして、非常にあなたの御見解の広いことを敬服をしております。それと同時に、また同じような問題で、戦前に国の方針に従って外地に行かれた人が、相当の富をこれは逆に向こうに残してきておる。こういう方々の補償等の問題もある。これは当時の開拓者と逆の立場にあります。これはおそらく社会問題としてわれわれは考えていかなければならないが、まずそうした財産を残してきた人よりも、今日その沼にあってあえいでおられる人を救う道を今後大いにひとつ誠意を持って考えていきたい。これは政府の姿勢であり、私の態度でありますから、御了承を願いたいと思います。
  60. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 丹羽政務次官には丹羽政務次官らしい御答弁をなさるので、気持ちはわかるわけであります。しかし、私はそれではいかぬと思うのです。それはやはりだれの責任でもないから、そのことは何とか善処しようということではいけないと思うのです。自分責任だということによってやることを他が認めるのであって、そういうことでは、政治といいますか、いま言われたような広範なものの処理についての態度としては——政務次官態度としてはお聞きしておきますけれども、こういう点はもっと明らかにして、やはり私どもは国民の代表としてこうしていろいろ意見を言っておるのでありますから、相手は政府自身だけしかないんです。どこへ行ったってそういう話はできないわけでありますから、その相手のほうが、だれの責任でもないけれども努力いたしますということでは、私はいけないと思う。やはり責任であるなら責任というように、そのことによってこれこれをやりたいが、こういう結果であったということが後刻わかってくるなら、これは議論として了承できますけれども、初めからそれじゃやる意思があるのかないのか。先ほどもお話がありましたように、三年前も同じことを言っておるという御指摘があるわけでありますから、そういう点は今度はひとつ大臣にお聞きいたしますが、そういうことで、別に政務次官に言質をどうこうというわけではありませんけれども、私の態度だけ明確にしておきたい。この問題は、幅を広げれば幾らでも幅を広げることができると思うのです。もし幅を広げるとすれば、やはり農地補償等を優先してやるべきものじゃない。いまの外地の問題もありますが、現に自分が生きるか死ぬかという段階にある。土地を取るか取らぬか、そのことによって自分の生活のたしにしようということは——やはり個人の権利だから、追及することはできないと思いますけれども、国の経費でもって補償するということになると、私は、そういう点については明確なものをつくっておかないと、将来問題になると思うのです。私は先ほど申し上げましたように、もうここらで開拓者に対しては、あのときはしかたがないから行ったということも言えますけれども、その原因を追及してくると、やはりそのときにも、爆撃を受けない人、あるいは力のある人は、そのことによって今日非常に振興しておると思うのです。びっくりしておると思うのです。ここへきていまさら手がつかないと思うのです。せめて、いま申しました入るときの五十万よりも、あるいはいままで苦労してやってきたけれども、その代償として働く労働に報いるものがなかったから、生活ができないのですから、借りた金に対して金利をつけて払うとか、あるいは元金を返すためにこれから何十年苦しまなければならないという、そういうみじめなことをさせることはできないと思います。この点はどうしてもこの機会に——これはいま申しておられたように、社会問題として国会では取り上げて——それは全部が全部便乗しては困りますけれども、十分調査の結果、このものについては、金利はむろんのことでありますけれども、元金のたな上げ方式とか、いろいろな形をとって、やはり法律上からいって遺憾のない処置ができると思うのです。そのくらいのことをしたって、いまの日本の経済、池田さんの高度成長政策にひびが入るなんていうことは毛頭考えていない。そういう点で、この問題につきましては、この三法審議の過程においていろいろ関係がございますから、明確な線を本国会において出しておいてもらいたい。次の国会にまたというようなことのないようにしていただきたいと思います。もし、そのことについてできないというようなお話が、いまのようなことで大臣もそのような答弁をされるとするならば——きょうはこの資料がまいっておりませんから、小林さんに対してはいろいろ御意見をお聞きすればわかる面もあろうと思いますけれども、これは政治問題としての関連もありますから、後刻に譲りますけれども、先般もちょっと分科会で申し上げましたが、根釧のパイロットのやり方は、御承知のとおりに、昭和二十七年に制定されまして、三十年か三十一年から入植したと思うのですが、あのときに一戸当たり五百万かけておったのです。   〔谷垣委員長代理退席、委員長着席〕 そうして大体二分の一が補助であり、二分の一が自分の負債ということになった。それを七年度において十何万ずつ返していくということになっておるが、今日あの経過がどうなっておるか。世銀まで借りてやったというやり方が、当時吉田内閣であったと思いますけれども、今後の農業政策、戦後の農業政策としては、これをもって、いま言っておる農業振興なんていうものは、そういうことを議論しなくても、一つのケースが出るということでやったはずであります。ところが、その後さっぱり、国会におきましても、その経過あるいは結果等についての報告が何もない。われわれどもが行ってはときどき見せてもらったり聞きますと、りっぱな処理はなるほど出てまいります。やっておられると思います。やっておられると思いますけれども、その中の移動の人なんかの状態を聞いてまいりますと、これは、やはりそのことがケースとして他の地帯にこれを実行するような段階のものではない。あそこのパイロットをやるための手段、方法にしかならなかったと思います。いまさらそのことを追及するわけにはいきませんけれども、私の言わんとするところは、そういう世銀の金まで借りてやって、農業基本法が制定されるときにがんばられて、これが将来こうなるのだとがんばられても——四年後の今日また同じように、それよりも大きいと思うのであります。そういうものの内容の調査を出してもらうこと、私どもは私どもなりに聞き伝えた資料と調査と突き合わせて、その結果について結論を出していただきたいと思うのですが、もしその結果の出方が私どもが想像しておるような結果であるとするならば、戦後開拓のそうしたものに対する犠牲者の処置が、いま言っておられるようななまやさしいもので終わるというようなことはないと思うのです。そういう点で、私が先ほど申し上げましたように、ぜひひとつそういうものも調査して、なるほどこれは政府責任である——私は、政府責任だということは、何も池田さんの責任、池田さん個人の責任だと言っておるのではないので、やはり国民全体の代表であるものでやるのですから、みんなが認めれば、何千億かけようといいのです。認めないものは、たとえ百万円だってだめだと思うのです。そういう点を明らかにしてもらうのが、われわれ農林関係の法案を審議しておる農林委員会の使命としては他にあるかもしれませんけれども農業問題を積極的に取り上げる、私はそういう精神でやっておるのでありますから、こういう点で資料が今度出ましたら、大臣に出ていただきまして、この点を明らかにしてもらいたい。そうしないと、これからいつまでたっても、金利を五分にした、三分五厘にする、そんなことでどんどん陳情運動をやらしておっても、解決つかないと思います。こういう点について御意見を承りたいと思います。
  61. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 松浦さんが開拓者に対する非常な御熱意を持って、また愛情を抱いて御質問をいただき、政府態度をただしておっていただけるので、また私も開拓者の方々の生活の実態を知らぬわけでもなく、非常によく理解しておる一人でありますから、あなたの御質問に対しては、私はそうした立場で、あなたの態度と私の気持ちとぴったり合っておるのですから、いろいろ私は真剣にいま誠意を持って答えたつもりなんです。しかし、その言い方が誤解されたようで、曲解されたようでございますが、私の言いますのは、責任のがれのことばを言っておるのではない。いまだれの責任だ、かれの責任だといって、その責任を問いただしておるような、なまやさしい問題ではない。だから、もっと積極的に社会問題くらいの考えで取り上げていかなくちゃならぬ。金利をどうとか、あるいは離農資金で云々するというような、なまやさしい問題ではないので、もっと政府責任を持って、社会問題くらいの考えでこの問題に取っ組んでいきたいということを私は申し上げたのでございますから、どうかひとつ御了承を願っておきたいと思います。
  62. 松浦定義

    ○松浦(定)委員 私の質問に明確に答えていただいたのですが、ただ、表現のしかたが文章にするとちょっと都合が悪いように思いましたので、気持ちは十分わかっております。  そこで、農業改良資金助成法の中でも、先ほどもちょっと農政局長からお話がありましたが、無利子の資金を相当出して、今後の農業後継者育成の資金としてこれを無利子でやるということになっておる。私は、それはいいことだと思うのです。しかし、後継者の育成に対してそういう無利子の金をやってもらうということは、前を知らない二、三男あたりは、なるほどりっぱな政府の施策だと言うでしょう。ところが、私どものように、苦しい中を一緒に生活しておったことを知っていると、こういう極端なことを言って子供を喜ばせるような施策をするよりも、ほんとうに苦労してきた親のあと始末をしてから、それをやったほうがいいのじゃないか、曲解すれば、私はそういう考え方なんです。このように無利子の金を出すなら、こちらの無利子の金をもらってもどうにもならないような状態になっておる問題の解決を早期にやるべきだというように、これは関連してひとつ今後の審議をやっていただきたいというように実は思うわけであります。先ほどもちょっと申し上げましたように、開拓地はどこでもそうでありますが、実際私どもが行きますと、全くわれわれがいま質問するような、そういうなまやさしいものではないのです。涙がこぼれるくらいの状態で、ものが言えないのです。何とかしますと言わざるを得ない。そういうときは、われわれが農林大臣か総理大臣になった気持ちで、何とかいたします、いや気持ちはわかると言って、それで来てみると、善処します、努力します、そういうことはちょっとお答えできませんということでは、そのまま言ったらどういうように聞こえるか。私のほうよりも、そちらに対する批判が出てくると思う。そういうことを繰り返すことのないようにしたいということで、私の本日の質問は、主として今後のこの法案審議に対する総括的な意見だというように御了承いただきまして、こまかい点については、後刻この問題の資料が出てまいりますから、その点で審議を進めたいと思います。  以上で私の質問を終わります。
  63. 足鹿覺

    足鹿委員 先ほど来各委員から資料の要求が出ておりますが、それと重複しておらないようでありますので、私からもお願いしておきます。  一つは、都道府県及び市町村の農林漁業金融に対するおもな種目別の利子補給、あるいは損失補償、その他貸付条件緩和措置の調査資料がございましたらお願いいたしたい。これは、先般構造改善事業が実施になりましたあとに、これに関連した資料を御提示願ったことがございますが、それとは別にあると思いますので、お願いいたしたい。  また、これに関連をいたしまして、なかなかむずかしいことではございましょうが、都道府県にあります農業信用基金協会に対する県の援助等がどういうふうに行なわれておるか、また、災害等があった場合に、一時的な預託等を行なって、円滑かつ低利な融資等でいろいろと公共団体が活動しておる事例がありますが、そういうようなものをこの際少しお調べになって、御提示を願いたい。質問のときに申し上げますが、国の責任でおやりになっていくこともけっこうですが、だんだん傾向としては、国が肩をはずして都道府県その他のほうに押しつけていく傾向があります。それらを知るためには重要な資料と思いますので、お願いしたい。  第二は、農林漁業金融制度あるいはこの問題に関連いたしまして、審議会あるいは協議会等を設けた実績があるかどうか、あればその名称、設立の年月日、構成、目的、結論等、参考となるべき事項がございましたら御提示願いたいと思います。  以上でありますが、ちょっと御説明を加えておきますが、最近の農林漁業金融制度は非常に重要度を増しておりますが、その交通整理も今回の提案によって若干はなされたとはいうものの、まだまだ複雑であります。たとえば制度金融と系統農協金融との接点の問題等は非常に問題を含んでおると思うのであります。あるいは各種の年金、あるいは長期の共済事業等、各種の新しい事態が発生しておると思うのであります。それらをいかに検討していくかということは、この委員会に課せられた任務ではありますが、なかなか短時間の間にわれわれが審議を尽くすということも思うようにまいりません。明日もそのために参考人の招致を御決議願っておるわけでありますが、それとてもわれわれが結論を出すわけにはまいりません。でありますので、過去において政府が本格的に取り組んでおるのかどうか、また今後取り組もうとしておるのかどうか、まず、その間にあってどういう取り組み方をしておるかという実績が知りたいのであります。ございましたらぜひわずらわしたいと思います。
  64. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 承知いたしました。できるだけ早い機会に提出いたしたいと思いますが、その中の災害に対する県の資金の預託でございますが、これはしばしば行なわれておることは事実でございまして、調査いたしますが、これはちょっと時間を要するかと思います。
  65. 高見三郎

    高見委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十八分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕