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1964-02-07 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月七日(金曜日)     午後零時四十四分開議  出席委員   委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 赤路 友藏君 理事 足鹿  覺君    理事 芳賀  貢君       伊東 正義君    伊東 隆治君       池田 清志君    大坪 保雄君       加藤 精三君    亀岡 高夫君       仮谷 忠男君    吉川 久衛君       小枝 一雄君    笹山茂太郎君       舘林三喜男君    寺島隆太郎君       内藤  隆君    藤田 義光君       亘  四郎君    角屋堅次郎君       東海林 稔君    中澤 茂一君       楢崎弥之助君    西村 関一君       野口 忠夫君    松浦 定義君       湯山  勇君    稲富 稜人君       中村 時雄君    林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 二月七日  委員松浦東介辞任につき、その補欠として伊  東正義君が議長指名委員に選任された。 同日  委員伊東正義辞任につき、その補欠として松  浦東介君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  前回に引き続き農林大臣に対する質疑を行ないます。中村時雄君。
  3. 中村時雄

    中村(時)委員 民社党を代表いたしまして、農林大臣所信表明に対し、若干の質疑をやってみたいと思っております。質疑であるということよりも、どちらかといえば、私は何もあげ足をとったりどうするこうするという考えは持っておりません。そこで、ただ、その中で、皆さん方考えていることが正常に軌道に乗るように、いろいろその欠陥を私も考えてみたいと思っておるわけなんです。そういうわけで、農林大臣のほうも心して正直にそのままの姿で打ち出していただきたい、こう思っております。  まず第一に私がお伺いしたいのは、過般の総選挙で、池田総理が、農業近代化の革命的な施策を講ずることを再三明らかにいたしましたことは記憶に新しいことでありますが、また農林大臣も、大臣に就任された直後の抱負の中で、革新的農政を展開するのだ、こういう御発言をしていらっしゃいます。この考え方は今日も変わりがないのかどうか。少なくとも革新ということばを使われた以上は、従来の農政から異なるところの前提がなければならないと思っておりますが、本年度農政において現在行なおうとする施策が、昨年ないし一昨年に比して革新的であるという事実を、どういう観点であるのかということをお答えいただきたい、こう思っております。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この間もお話し申し上げましたように、政策の柱といいますか、四つ、五つ掲げておるのでございますけれども、革新的といいますか、画期的といいますか、考え方革新的に持ってきたという点は、私は、農業そのものが弱体的な産業でございますから、自然に従来どおりに放任させておくわけにはまいらぬ、そういう意味におきまして、政府の保護といいますか、助成といいますか、これはまあ必要だと思います。しかし、体質改善をし、構造改善をする、こういう事態に急速に踏み入れておるところの日本の農山漁村といたしまするならば、やはりみずからも立ち上がる、こういう気分も持ってはおると思いますが、なお強めていただきたい、こういう気持ちから、助成を少なくするという考え方も持っておりませんが、やはり金融面、こういう面で、自分で借りた金で立ち上がろう、こういうような気分というものを持ってもらいたい。それについて、単に資力のない者に対しまして自分の資金でやれ、こういうことを言っても、これは無理でございますから、それに対しては、金融の面のワクをふやしたり、あるいは利率を減らしたり、あるいは長期にしたり、自分が借りた金も自分の金なんですから、自分自身で盛り上げるという方向考えてみようじゃないか、こう考えまして、財政投融資金融面方向相当力を入れた。これは革新的とは申し上げられないと思いますが、方向においての一つのポイントだと思います。  それからもう一つは、農業基本法等にもうたわれておりますように、農業近代化——近代化内容につきましてはもう申し上げるまでもありませんが、機械化とかあるいは選択的拡大とか、そういう方向は進めておりますけれども、しかしそれを進める基盤というものがはたして充実されておるかどうか、こういうことを考えますると、非常にほど遠いものがある、こういうふうに感じましたので、従来どおり農業生産基盤を強化拡充するという方針はそのとおり持っておりますけれども、その質といいますか、内容につきまして、単に従来を踏襲した面だけではなく、さらにたとえま選択的拡大ならば畜産方面果樹方面という点をとりまして、そういう選択的拡大が進み得るように、基盤というものを生産方向づけようじゃないか。草地造成などもその一つでございます。そういう面もありますし、あるいは自立経済等は一般的の問題でございますが、少しくそういう点に注意を払っていきたいということでございます。
  5. 中村時雄

    中村(時)委員 具体的な一つ政策の面で取り上げていらっしゃいますが、私は一つ基本的な問題としてこれを取り上げてみたいと思うのです。革新的であるとかあるいは新しい一つ考え方であるというのは、農林大臣は、要するに、社会機構として、日本農業というものは、まだ血縁社会から地縁社会に移行しておるような状態、そういう一つの古い状態の中から、私は、おそらくあなたのお考えは、経済社会に移行、農村自身の形を変えていくということが目的であろう、そういう判断をしているからこそ、革新的ということばを使われたのじゃないか、こう思っているわけであります。一つ一つの具体的な問題は、それを基本にして、農村一つ社会制度のおくれている姿から少なくとも経済社会に移行してみようというところが基本でなかったら、その革新的ということばは使い得ないのじゃないか。その意味においてあらゆる施策というものを講じているのじゃないか、その基本概念をどういうふうにお考えになっているかということをお尋ねしたい。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 基本的に考えまするならば、少しく基本観念からは離れるかもしれませんが、自立経営農家ということを指向しているわけでありますが、そういう面から考えまするならば、それを拡大していきますならば、日本農村経済社会におかれている位置づけといいますか、そういうものを見ますると、確かに、農業そのものも、従来の自給経済的な農業から、やはり一面においては商品経済の中に相当入ってきております。そういう商品経済の中、あるいはまた資本主義経済の中にあるところの農業というものは、本来、他産業、ことに工業方面などと比較いたしまして、太刀打ちするということが本来的に非常に困難だと思います。そういう意味におきましては、やはり農業企業として成り立つような農業ということでなければならない。それをまたさらに進めていきますならば、そういう企業として成り立たなくちゃならぬと同時に、国際的にもいろいろな問題、国際的な関連においての日本農業ということにもなりますので、いまおっしゃったような経済社会としての日本農業という観点から、それに対するひずみとかいろいろな不利な点を除去しつつ、発展あるいは安定をはかる、こういう考え方であるのはいま御指摘のとおりであります。
  7. 中村時雄

    中村(時)委員 御存じのとおりに、社会学的に見た場合、経済社会に移行させていくということは当然だと思うのです。ただし、経済社会一つ農村社会というものを移行しようとするなれば、要するに、経済社会基本というものはやはり労働価値説なんです。だから、農村におけるところの労働というものをどのように評価していくかということが、やはり基本一つ条件としてあらわれてくる。しかも、農業政策を行なう場合には、土地労働資本と、この三つ一つになって一つ経営形態というものが生まれてくる。その中の労働価値というものが、やはり現実都市労働というような価値の問題とが相拮抗するような行き方をとった場合において、やはり農村におけるところの一つの向上という線が生まれてくるのではないか、こういうふうに私は理解しておるわけなんです。  そこで、私はそういうふうに考えるなれば、いま基本的な問題ですから、まず、農林省において今度作成されましたグリーンレポートがあります。そのグリーンレポートがありますれば、当然グリーンプランがそれのもとにあって発してくる。そうすると、ロンググリーンプランというものを考えて、そういう方向に裏づけて考えていく必要が今後はあるのじゃないか。その明確な線があってこそ、一つの路線というものが引かれてくるのじゃないか、こういうふうに私は思っているのですが、これに対してどうお考えになっていらっしゃいますか。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 労働価値労働価値説といいますか、私もある程度これは認めておるのです。ですから、労働価値労働価格と一致するような形で、農産物等においても持っていかなくちゃならぬのじゃないだろうか。俗なことばでいうと、値打ち値段といいますか、労働値打ちが必ずしも労働値段価格に一致していない。こういう面から考えまして、そういう点にも十分考えを置きながらいろいろやっているのでございますが、それにつきましてグリーンレポートが出た。グリーンレポートそのもの現実分析でございますから、これは出た現実のものでございます。これに対する批判はまた別個の問題であります。これに基づいて一つ農業政策が樹立されなくてはならない。樹立されなくてはならぬ場合に、短期的なものでなくて、やはり長期的なものを考えていかなければ十分でないのではないかというお説はごもっともでございます。できるだけ私も、各方面長期的な——これは自由主義経済社会でございますから、計画的なものというよりは、見通しといいますか、見通しに基づいてその年次年次農業政策もやっていく、こういうことが必要だろうと考えております。
  9. 中村時雄

    中村(時)委員 そうしますと、いま言ったように、私は、本来なれば土地問題、労働問題あるいは金融問題を具体的に掘り下げてみたいのですけれども、時間がありませんので、その一つの例に、土地なら土地概念的に集約してみたいと思うわけです。それに農業構造改善事業、あるいは土地基盤整備、あるいは農用地集団化事業、これらにいたしましても、農林大臣は、いまのところ明確にこれが中農主義考えておるのか、大農主義考えているのか、わからないのですが、少なくとも零細農という考え方ではないだろうと思う。そういうような考え方から、中農方式をまず基礎として考えてみても、問題になってくるのは、現在の土地流動化を促進しなくてはならぬことが生まれてくると思うのです。一方、土地国有化方向でなくて、一方においては自立経営の育成をはかろう、こういうふうにいまおっしゃっているのですから、現在の農地法を改正して、小作料統制方式であるとか、あるいは小作地所有制限であるとか、あるいは農地等権利移動の問題であるとか、賃貸借権の問題であるとか、それの規制あるいは借地によって規模拡大をはかるとか、そういうようなことが当然考えられてこなくてはならぬと思うのです。そういう面として農林大臣はお考えになっていらっしゃるかどうか。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、所有形態移動によって経営面積がふえていく、こういうことが望ましいことだと思いますが、現状はこの分析等にもありますように、また御指摘のように思わしくいっておりません。したがいまして、この所有形態でいくか、あるいは流動化を進めて賃貸借のままで経営面積を広げていくか、こういうことをきめるというか、方向をきめなくてはならぬと思います。そこで、私は、現状からいきますならば、やはり流動化のほうに重きを置きまして、所有権移動ということも考えます。考えますが、これで経営面積を広げていくことは、事実上困難な状況でございます。それにしても、それは捨てませんけれども、流動化という方向に持っていくべきではないか、流動化によって経営面積を広げていくという方向に持っていくべきではないか、こういうことで、実際いまその点も検討をさしておるわけでございます。  それから、お話のように、大農経営資本主義経営という形態が、日本のこういう耕地の狭いところでやれるかどうか、やるものがあってもいいと思いますが、そういうのとは離れまして、中農制度でいこう、こういうことにいたしましても、耕作面積制限等は排除いたしましたにしても、生産法人等についても自家労力が二分の一とかそういう制限がありまして、雇用を相当拡大し、また経営拡大するという面においては、まだ農地法等において一つのチェックしておるところがございます。そういうものをどうするか、実は検討中なのでございますけれども、私は、所有形態におきましても、あるいは賃貸借の形で経営規模拡大していく、いずれにいたしましても、両面から経営拡大するような方向に持っていきたい、こういうふうに考えております。
  11. 中村時雄

    中村(時)委員 いまのお話で、少しずつ浮き彫りになってきたわけなんですが、たとえばその権利移動の問題でも、賃貸借権の問題でも、そういうふうに一つ考え方をしぼっていこうという御努力がその頭の中にある、こういうふうに私は判断したわけなのです。ただし、それだけではなくして、また一方においては、基本的には、自立経営目標とか、またもう一つは、離農に対するところの明確な目標とか、そういったことが同時にまた考えられてくるだろうし、同時にまた、国土の総合的な利用とか国有林解放等農用地拡大確保ということが基本的な問題で生まれてくるだろう。だから農地一つを取り上げてみても、このようにいろいろな整備拡大をやらなければならぬという条件がたくさん出てくるわけなんです。そういう事柄に関して、実は時間があったらひとつお聞きしたいと思いますが、これはまたの機会に譲りたい、こう思っております。いま言ったように、基本的な概念はもう少し明確に打ち出されたほうがいいんじゃないか、こういうふうに思っております。だから、その点でまずひとつ十分農林大臣の御配慮を願いたい、こういうふうに考えております。  それから、いま農林大臣に私がどうしてこういうことを聞いたかという理由の一つには、現在の所得倍増計画農業においてはまず第二ラウンドに入ってきたということなんですね。そういうことの上に立って、所得倍増計画については、昨年総選挙の直前の選挙対策であったかどうかは別問題といたしまして、宮澤企画庁長官池田総理に対し、次年度より中小企業農林漁業アフターケア重点を置けとの要請を行なった。池田総理はそれを了承されたということであったのですね。この点を裏から見てみますと、いままでの政府は、農林漁業重点を置いてなかったとも言えるのじゃないかということが考えられる。ともかく、そういうことは、そうした行為があらわれて、所得倍増計画が第二ラウンドに入った、そういうふうに見ていいんじゃないかと思っております。  そこで、大臣にお聞きしたいのは、所得倍増計画目的は、産業間における格差を是正しながら、経済成長を促進することだ、私はそう思っております。しかし、実際には、大企業を中心とするところの集中融資によって今日の高度経済成長が達成されたのではないか、こういう考え方も出てくる。この点に関して大臣はどういうふうにお考えを持っていらっしゃるか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、所得倍増日本全体の富を増すということを考えているとは思いますけれども、その方向でございますが、現状から見ますと、私は、いまのお話のように、業態自体から見れば、大企業中小企業との出産性あるいは所得等についても格差があると思うのです。そういう格差をなくしていく。あるいは地域的に見まするならば、大都市と非常に離れている僻陬の土地、こういうところにおきましては地域的の格差があると思います。格差ということに当たっているかどうかわかりませんが、そういう均衡がとれてないところがある。こういうものを直していく。それからもう一つ農業と他産業との格差を直していく、こういう大体三つ格差を縮小していくということが、私は結果的に日本所得倍増計画がスムーズにいく方向じゃないかと思います。しかし、所得倍増計画そのものが、また輸出とかその他の関係もございますから、そういう面で計画もございますが、所得倍増計画の過程におきまして、いまの三つ均衡がとれるような方向へ持っていくことが、所得倍増計画を遂行していく上において、非常に当を得た政策ではないかと私は考えております。
  13. 中村時雄

    中村(時)委員 その問題にこじつけて言いますと、アフターケアの問題なり、いろいろあるけれども、大企業集中融資をしていったということは間違いないことだ、私はそう思っております。大臣もそのお考えはあろうかと思いますが、そこで、大企業のほうは、国際水準への接近というものは確かに行われたと思っておりますが、しかし、口で言っていらっしゃるように、農村都市との格差というものはそうはいかないと思う。農村都市生産性格差はますます増大しているのではないか、こう見るわけです。また、選択的拡大と言われて、男子の労働力を大いに必要とするところの畜産果樹振興も、労働力都市への流出に伴って、その前途は非常に暗いものがあったと思います。大臣は、この生産性格差及びこれからくる所得格差は、そのようなお考えがあるならば、今後大体何年くらいでこの均衡がとれるという自信があるか、そういう点、ひとつ見通しがあればお答え願いたい。なければしかたがないということですが……。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 都市農村との均衡のとれた生産性あるいは所得格差、これはいかに財政的あるいは金融的に措置をとっても、農業自体が同じまでにいくというわけにはいかないと思います。これは世界的にもそうだと思います。しかし、いまのように、二九%の生産性、あるいは所得の点においては二〇%、これは比較にもいろいろよりますが、この比較は他の製造業との比較でございますが、所得につきましては、そういうところの勤労者との比較で七九あるいは八〇という率が出ておりますが、これをほとんど全部同じようにするということは、実際の問題としてできない。それを縮小してどの程度までに持っていくかということに問題があろうと思いますが、所得倍増計画も立っておりますし、それの中間検討もございますから、四十五年夏を目標としてその格差を縮小していく、こういう目標で進めているわけでございますが、しからばことしはどのくらい縮小していくか、来年はどのくらい縮小していくか、これは先ほどお話がございましたが、ほんとうはそういう一つ見通しを持たなければなりませんが、景気の調整その他で非常に変動がございましたので、その見通しをいま確立して、年次的にどこまで持っていくかということにつきましては、私も自信を持ってお答えする段階ではございません。なお検討を進めてみたいと思います。
  15. 中村時雄

    中村(時)委員 いまお話によると、年次別年次別とおっしゃいますが、先ほど言ったように、ロングプランというものを一応農業のビジョンとして持たせていくということが、やはり一つのあり方ではないかと思っている。そういう観点からお尋ねしておったのですが、それをおっしゃってはいらっしゃいますけれども、もう少しその方向をやはり具体的に明示する一つの明るさはあってもいいのではないかと思っております。  それから、農業基本法が制定されてからもう足かけ四年ですが、しかし、農業専業によるところの自立化の傾向は、事実とは相反するような格好になっている。兼業が全農家の大半を占めてきているし、副業農家の色彩は非常に濃厚になってきております。だから、よくいうところの三ちゃん農業ということも、その中から生れてまいるのですが、ただ一声えることは、農家が非常に女性化、老齢化して、農業労働機械を入れかえていく、そうしてその償却を兼業収入で補っていく方向が現在全国的に広がりつつあるのではないか、このように憂えているわけです。したがって、見せかけだけの近代化は、現在やっているように、たとえば一ヘクタール当たりに対して馬力数〇・五馬力と、機械力導入はまさにアメリカ並みで、そういう見せかけ近代化は私は当然出ていると思いますが、しかし、反面、それは農業経営から生み出された機械化ではなしに、先ほど言った兼業が生んだところの一つの私生児的な近代化であろう、こういうふうに思うのです。農基法の精神からいっても、農業専業によるところの自立化こそ必要であって、農業専業者所得均衡こそが大切であるにもかかわらず、この大臣所信表明を見てみますと、農家経営のつかみ方が、農外所得農業所得との合算において農家経済をとらえており、それによって農村都市との比較をされているように見受けますが、大臣も御承知のとおりに、兼業内容はきわめて不安定なんです。第二次産業部門の景況によっていつ逆転するかわからないような状態であって、このようなつかみ方で農業長期計画を無視されるとするならば、私はたいへんなことがあらわれてくるのではないか、こう思っておりますが、農業政策焦点は、あくまでも農業収入主体とするところの都市との均衡に置くべきものである、こういうふうに考えておるわけなんです。だから、そういう点に関して、私は、いま言ったように、農業政策焦点はあくまでも専業収入主体とするものでなくちゃならぬ、こういうふうに思っておりますが、その点に対してどういうふうに考えておられますか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 お説のとおり、私は、農業所得等につきましては、純農業所得基準として比較し、またそれを基準としてどういうふうにこれを上げていくかということが、正しいといいますか、正道だろうと思います。この報告の中には、先ほど申し上げましたように、分析がございます。動向等につきまして、農業外所得によって相当補っている農家がある、すなわち、兼業農家所得農業外まで含めてこれだけだ、こういう御報告を申し上げたのでございますけれども、政策方向としては、兼業農家をどういうふうにするか、こういう一つの基点といいますか、そういう問題に関連しているものと思います。方向といたしましては、純農業所得が上がるように、純農業生産が上がるように、それでまた、それとの比較において農業政策というものを進めるのが、正攻法といいますか、正当な行き方だ、こう思います。
  17. 中村時雄

    中村(時)委員 いまの問題に関連してもっと内容を深く掘り下げると、おもしろい問題がいろいろ出るのでありますが、時間の関係がありますので、次に、もっと具体的な問題に進んでいきたいと思います。  基本問題はその程度にしておきたいと思っております。農業基本法が制定されて以来、目新しい問題としては、構造改善事業と畜産価格安定対策等に焦点がしぼられる、こう私は思っておりますが、また農業近代化の中心も構造改善事業にかけられておるように大臣考え方としては出てきますので、この事業は今日までのところあまり評判はよいとは私も思っておりませんが、また畜産価格安定制度についても、必ずしも満足すべきものではないと私は思っておりますが、大臣のお考え方はどういうお考え方ですか。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 構造改善事業はまだ三年目くらいでございますので、その結果を的確に把握する段階ではないと思いますが、私率直に言って、そうよくいっていると思いません。ただ、一つは、私どもの落ち度でもございますが、農業構造改善事業というものがどんなものか、こういう一つの解釈ではございません、歴史の流れにおけるいまの農業のあり方をよく説明して、そういう面々から考えて、国内的あるいは国際的に見て、農業体質改善をしなくちゃならぬじゃないかというような時代的要請に迫られておるというようなPRといいますか、趣旨徹底に欠くるところが一面あったと思います。そういう面によりまして、その面をさらに進めていきたいと私どもも考えております。もう一つは、やはり受け入れ側の態勢でございます。受け入れ側の態勢が必ずしも熱意を持って——この時代の流れにおける農村に課せられた要請だというような、ほかの緊迫感はいろいろありますけれども、それをどういうふうに建設していくかということに対する熱意等に欠くる点もあるのではないか、私はこういうふうに考えます。第三は、やはり指導者層の認識でございますか、そういう認識もあろうと思います。そういう点でいろいろ好ましからざる点があったと思います。現実面においてはそういうものを是正しながら、これはどうしても進めたい、こういうふうに考えております。
  19. 中村時雄

    中村(時)委員 いま三つ観点で答えていただいたわけなんですが、たとえば趣旨の徹底を欠いたとか、受け入れの側が熱がない、あるいは指導者層の認識という問題等々によって十分でなかった、こういうふうにお考えのようですが、反面、また別の面が考えられるのじゃないかと思うのです。たとえば、全国的には政府の予定したとおりにいっていない、そのこと自身は大臣も御承知と思っておりますが、多額の費用を投資しても、そこから生産されたところの農産物が、はたして投資資本を償却できるだけの価格が得られるのか、こういう不安が、私は大きな心配になっている点があるのではないかと思っておりますし、農民の負担の大小の問題も、実質的には第二義的な課題と考えられているのでありますが、このことは、構造改善事業を行なうにあたって、各実施市町村から現在いろいろ提出されている計画を見ましても、農産物の価格変動にあまりにもその方々が敏感である、そういう点が私は最も大きな原因になっているのではないか、こう思うわけです。だから、この事業が発足した当時は畜産酪農が大多数であったはずですが、それがだんだん果樹に変わってきている。さらに最近では、好景気だといわれる養蚕にまで移行しようとしている。このことは、価格に対する農民の不安が、計画的な推進に率直にあらわれてきているのではないかと、私はこのように思うのです。少なくとも構造改善事業というものは、このように常に移り変わるような場当たり的な事業ではなくて、日本農業長期展望のもとに推し進められなければならぬのではないか、私はこういうふうに考えているのですが、政府長期需給計画を立てて、それに基づいて構造改善事業を指導する義務と責任が、私はそういう意味からはあるのではないか、こう思っております。だから長期計画なくして——先ほどから私は何度も長期計画ということを言いますけれども、この構造改善も重要なことで、へたをすると、税金の余分のむだづかいになったり、あるいはかえって農村を混乱させる以外何も取り得はないという極端な考えを持ってくるのではないかと思うのです。そこで、大臣は、今年度において事業費は一千万円ですか、それから融資分が一千万円で、両方で二千万円ですか、それによって、この構造改善の趣旨が、今度は、いままで十分でなかったけれども、十分行ない得るのだ、こういうふうにお考えになっていらっしゃるのかどうか、その点をひとつ答えていただきたい。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘の点は、まさにそのとおりだと思います。選択的拡大の農産物の価格に対する見通しが十分でない、こういう点が原因の大きなものだと思います。同時に、いまお話がありましたように、長期展望によってやる、こういうことはもちろん必要でございますし、需給の見通しというようなものによって、長期展望も考えていかなくちゃならぬということもごもっともでございますが、同時に、構造改善事業におきましては、価格の問題もありますが、やはり生産性の向上といいますか、コスト低下といいますか、コスト低下というものも重大な要素であると思います。そういう意味からいいますと、価格の需給の関係の展望ということもございますが、この構造改善によってどれだけコストが低下するのだというような展望も認識してもらいませんと、進み方が、あるいは熱意が十分盛り上がってこないのではないかという気がいたします。でありますので、長期展望という点につきましてはなおいろいろくふうをこらしてみますが、生産性の向上という点も含めて私はやっていきたい、やるときにはそういう展望をもっていきたい、こういうふうに考えます。
  21. 中村時雄

    中村(時)委員 私が質問をした中で答弁の落ちているのもありますけれども、時間の関係でそういうことは蒸し返しはいたしません。  さらにもう一つ畜産酪農対策についてお尋ねしたいのですが、畜産事業団の交付金はことしもある程度ふやしているようですが、大臣は、この事業団が少なくとも畜産の安定的な役割に大きな役割を果たしていると考えているかどうか、その点ひとつ御答弁を願いたい。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは畜産事業団が相当寄与しておるとも思いますけれども、一面まことに不十分だと思います。そういう点におきまして、それをささえるいろいろなものもまた考えていかなくちゃならぬし、事業団そのものも強化していかなければならぬと思います。一つは、御承知のように、豚等におきましては子豚の安定資金というようなものも設けていかなくちゃならぬというような考え方から、新しく発足するつもりでございます。その他、肉類のいろいろな流通過程における畜肉のセンターとか、あるいは市場の問題とか、そういうものも含めて考えなければならぬと思いますが、十分だとはもちろん申し上げられないのでございます。
  23. 中村時雄

    中村(時)委員 十分ではないが、寄与してもおると言うが、その寄与するしかたの取り上げ方が問題だと思うのです。たとえば具体的に言ってみると、一昨年酪農四社によって一斉の乳価の値下げがありましたね。そのときに、全国で十余県にわたって調停が行なわれたのは農林大臣御存じのとおりです。ところが、その後において一件も満足な落着をしたものはないわけですね。前大臣からの公約である乳価復元もいまだに解決しておらぬはずです。言うなれば、事業団は生産者にとってはある意味ではさっぱりプラスになっておらぬ。そういう面でプラスになっておらないのではないかと思っておりますし、またさらに四大メーカーのほうから見れば、在庫や金融の役割を果たしてくれるので、そういう意味では酪農四社のほうは非常にプラスになっておるのじゃないか、こういうように私には見受けられる。だから、そういうふうな事業団というものを今後どうしたらいいかということが一点と、さらにふしぎなことに、現在の市場は脱粉、練乳ともに非常に不足をして、市況は非常に強気を示しておって、販売業者は困惑しておるにもかかわらず、事業団はそのまま現在何の手段方法も講じていない。だから問題は、委託加工による生乳の直接的な取引をどういうふうにして考慮したらいいのか、あるいは本物の安定機関にはこのままの移行ではこの事業団というものはなり得ないんじゃないかとか、農民側の立場から見た場合に、いろいろな疑惑がわいてくるわけなんです。だから、そういう点で、皆さん方が一この乳価復元要求にしてもあるいは委託加工にしましても、政府の命令をきかなかった業者に対して、公共施設内での製品の販売を禁止してみるとか、あるいは事業団の買い上げを拒否してみるとか、あるいはその他行政的にもいろいろな可能な点があろうと思うのです。そういうような事柄を考えて、ほんとうに農民自身がプラスになるような事業団にここで十分考え直さなくちゃならぬじゃないかというところまできているんじゃないかと思っているわけなんです。それに対して農林大臣のお考え方はどうでしょうか。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、乳業メーカー等をできるだけ押えまして、生産者の熱意をこの事業に向けていかなければならぬ、こういうことは常に考えておるわけでございます。そしてその事業団をどういうふうに活用していくかという問題につきましては、これまた十分でない点が多いと思いますが、しかし、事業団におきまして、たとえば価格の問題に関連いたしまして、消費をふやさなければならぬじゃないか、こういうことで、ストックになっておりますバターとかチーズ等の買い上げをしまして、これを学校給食のほうへ安く回す、あるいは牛乳等につきましても、脱脂粉乳による学校給食を量を減らしていって、そしてなま牛乳で学校給食をしていく、いままでは何か余剰の牛乳を学校給食に向けておったのでございますが、余剰でなく、なま牛乳を主体として給食をしていくという方向に変えていこうというような手も打っておるわけでございますけれども、考え方といたしましては、何といたしましても生産酪農民の力をつけていくという方向へ事業団も活用しなくちゃならぬと思います。ただ、いろいろな問題に直面いたしますと、酪農関係農業団体がまだ組織化されておらないし、弱い面があるような気がいたします。方向などもばらばらで、牛乳の問題等につきましてもいろいろまちまちであるという点もございます。そういう面も考慮いたしていろいろな施策を講じていかなければならぬ、こう考えております。
  25. 中村時雄

    中村(時)委員 私の言っているのは、この前の調停をやられていったその結果における問題点であるとか、あるいは今後における事業団の運営をどのような規制ができるかとか、そういう重要なことをお聞きしたのですけれども、その問題はあまり御答弁がなかったようです。しかし、これを一つ一つ言いよりますと何か議論になるようですから、一応省いていきますけれども、そういう点ではひとつ明確に簡単にお答えを願いたいと思っております。  いま学校給食の問題を出されましたが、御存じのとおりに、輸入脱脂粉乳がうまいとかうまくないとかいって、農林省と農業団体との間にいまはでな議論を戦わしているようです。国内生乳が供給できる能力があるならば、うまいまずいという議論以前の問題であって、国産乳を供給すべきであろうと私は考えておるし、アメリカでさえハイアメリカン政策をとる時代であって、脱粉に固執する文部省の態度は私ほどうしてもふしぎに思っているわけなのです。そういう点で、学校給食会というものは不良輸入脱粉の放出を行なっておるといううわさすらあるわけなのです。その使途について、私はいまここではどうだこうだとは申しませんが、たとえばその利益金がどの程度になっているのか、現在はどういう状態であるのか、あるいは学校給食会に対して脱粉の横流しというような問題でいろいろな問題をかもしているような、そういう状態を多々耳にするわけなのですが、農林大臣自身はそういう問題はお聞きになったことがあるかどうか。あるいはそれによるところの利益金の使途はどういう方法をとっておるのか、そういうことをお聞きになったかどうか。またそれに対して農林大臣が、学校給食として、できれば完全給食の方向目的を持って進められようという考え方を持っていらっしゃるかどうか。そういう点をあわせてひとつお答えを願いたいと思う。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 学校給食会のほうの財政といいますか、会計といいますか、そういう内容につきましては、私、詳しいということよりも、実はよく知っておりません。それから脱脂粉乳でなく、完全国内で補っていくというか、まかなってやっていくという方向でございますが、これはいろいろ技術的な問題もありまして、全部なま牛乳に持っていけるかということは——先ほどの長期展望、長期計画的なものをいまつくっておりますが、全部持っていくということは、なかなかむずかしいのじゃないか、しかし、これは逐次なま牛乳にかえていく、ことしよりも来年、来年よりも再来年——ことしも御承知のとおりでございますが、そういう方向で、これが中心なんだ、主軸はここなんだ、脱脂粉乳が主軸で、牛乳は補助的な余剰でまかなうんだという考え方は改めていきたい。方針もそういう方針でございます。
  27. 中村時雄

    中村(時)委員 いま申しましたように、学校給食会の問題は、私はここで、現実にこれはこうだ、これはこういうようになっている、これはけしからぬじゃないか、そういう事柄を申しません。十分に調査をされて、あなたに疑義がある点がありましたらば、その点は明確に事前に、問題の起こらないうちに処理をしておいていただきたい。これは御忠告であります。  それからもう一つは、学校給食に対しましても、逐次それを増大さしていこうというお考えがあるようなので、将来の目的は、やはり完全給食のところまで持っていっていただきたい。これはつけ加えて申しておきたいと思います。  第三番目に、価格対策について一、二幅お尋ねしたいのですが、第一に食糧管理制度であります。大臣が就任当時、生産者米価は消費者米価にスライドさせる、また最近では米価は公共料金ではないと言明されておられますが、このような一連の御発言を振り返ってみますと、消費者米価はどうやら値上げするということに落ちつきそうだと私には考えられますが、これをどう考えていらっしゃるか。また、食管制度の趣旨が二重価格制でございますので、大臣のお考えは、へたをすると、これは食管法違反という考え方も出てまいると思うのですが、大臣はどう思われていらっしゃるか。また食管法を改正される御意見がおありかどうか。  最近の米の需給状況を見てみますと、明らかに逼迫の状況がございます。だからこそ、業務用の米を割当にするとか、外米輸入量をふやすとか、そういういろいろろなことが考えられているようでございますが、ともかく豊作のもとでこういう始末になっている。国民の食生活の動向を見ましても、消費増大というものは、動物たん白だけの消費を増大しているのではなくて、それと相関連しながら、米の消費もまた現在ふえているような状況になっております。とのような立場から考えますと、まだ食管制度は、消費者にとっても、生産者にとっても、非常に大切な制度であるということが考えられてくるわけです。そこで、流通問題のやかましい昨今、米の流通マージンが食管の米の取り扱いだけに対しては最低であることからしても、一部のやみ米を理由とする統制撤廃論というものがちょこちょこと首を持ち上げているようですけれども、食管会計の赤字は、事務費や人件費を除いたらたいした赤字にはならない。これはもう前々から言っていることですけれども、官吏の給料を生産者や消費者の負担に課する現在の食管会計に問題があるのであって、現在の、いま言っているような二重価格構成によるところの食管制度そのものに問題があるとは私は思わないのです。だから、食管会計と食管制度というものとを明確に区別して考えた場合には、現在の二重価格構成をとっている食管制度そのものはやはり存続すべきであって、考えるなれば、食管会計をどういうふうにしていくかということのほうが、私は問題の焦点として取り上げるべきじゃないか、こう考えているのですが、これに対してどういうお考えを持っていらっしゃるか。
  28. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私も、お話しのように、食管の赤字が百億だとか、赤字赤字といわれることは、農林を担当している私としては、非常に不満足といいますか、当を得ていないというふうな感じを持っておるのでございます。食管の制度そのものが、あるいは国民全体に対する一つの社会保障とは申しませんが、物価対策その他からいいましても、そういう役割を果たしておりまするし、生産者の方面に対しましては価格を支持している、こういう役割も果たしておりますので、これは単に赤字が出る一つの制度だ、こういうふうにして農業政策とは離れているんだというふうに考えられるのは、私は遺憾に存じておるわけでございます。でありますので、私は、食管制度というものにつきましては、いろいろの議論もありまするから、なお少し時間をおいて検討いたしてみたいと思うのでございます。それは先ほどお触れになりましたように、生産者米価と消費者米価との関連におきまして、一度私が前に農林大臣のときに検討いたしたこともございました。それからいまの、食管制度と食管会計は別じゃないか、こういう観点からも、前に農林大臣のときに、食管会計に手を加えまして、食管会計のどんぶり勘定を改めて、いろいろな勘定に区分いたしてやったこともございます。そういう意味におきましては、食管制度と食管会計というものをごったにしないで考えていくべきだと思っております。そこで、また両方に関係ありますが、生産者米価と消費者米価との間におきまして、価格の決定方式においては、一定の方式は生産者のほうにはこまかくありまするし、消費者のほうには家計の安定をそこなわないように、こういうことでございますが、その間の関連というものは非常に密着してない、こういううらみもございます。でありますので、私は、その関連というものをもう少し検討してみたらどうかという問題なども、部内においては提示いたしておるのでございます。それと同時に、消費者米価は、これは公共料金ではない、何も公共料金というものに入れる必要ないじゃないか、そのものを買ったり売ったりしているのは公共料金でない、そういうことを言うならば、たばこだって公共料金になってしまうじゃないかといって、公共料金のワクに入れるということは、法律的にも行政的にもおかしなわけじゃないか、しかし、公共料金は一年間ストップする、政府が規制するものといいますか、政府が関与するものは一年間上げない、こういう方針でございますから、公共料金ではない、ないけれども、しかし、政府が関与するものでございますから、一年間当分消費者米価は上げない、こういう方針でございます。ただ、私は閣議のときなどでも率直に言いましたが、いまのように逆ざやといいますか、こういう関係で、生産者の価格は高い、消費者米価はずっと低いという形で、生産者そのものが自分の保有米まで高いから売ってしまって——こういうことはあまりないのですけれども、売ってしまって、そして買ったほうがいいということで、政府買い上げのものばかり非常に多くなる、そういう形で、いまの食管会計のほうにいろいろ支障を来たすということやら、あるいは制度といたしましても、一たん売って、そして安いものを買うというのが一般的になるということになりますならば、これはその方面についていろいろ考えなくちゃならぬ問題もあるのじゃないか。しかし、そういうことがあるとしても、消費者米価は一年間据え置くという方針はその方針です。こういう考えでございます。
  29. 中村時雄

    中村(時)委員 その問題も非常に重要な問題なので、実はもっともっと深く入りたいのですが、時間がいよいよなくなってきたので、国内問題はそれくらいにして、わが国農業の国際関係について一、二お伺いしたいと思うのです。  農林物資の自由化については、大臣もたびたび御所信をお述べになっておられますようですが、重ねてお尋ねをいたしたいのです。すでに昨年までに農林物資の九二%までが自由化されており、残りはわずかに八%になっておりますが、この残り八%はわが国農業経営の主柱ともなっているものだけが残っておる。この自由化はきわめて重大な段階にきておりまして、IMF八条国への移行の問題、またガット、OECDとの関連において、大臣は残る八%の自由化についてどのようにお考えになっておられるのか。たとえばガットの義務免除規定の適用を受けられるとするなれば、何年間くらいそれを守り得るか、こういうことをひとつお尋ねしておきたいのが第一点。  それから、もちろん、自由化をなしくずし的に九二%までおやりになってきたので、また残されたものも将来自由化を覚悟せねばならぬとするなれば、それまでに農業生産性を向上せしめて、国際競争力に耐え得るところの農業経営に育て上げなければならないと思います。これが政治の責任であろうとも考えられるのですが、大臣所信表明の中で、自由化に対応すべく農業近代化は緊急を要する、こう述べられておったようですが、その後段において、農業生産性向上は短期間では効果を得ることはできない、こういう断言も半面においてはしておられます。その辺から私は推察さしていただきたいのですが、自由化の要請は緊急を要する課題であるが、国内農業の投資効果が上がり、国際競争力がつくまでは自由化は行なわないのだ、こういう理解をしていいのか、逆にそうでなくて、国内農業はなかなか国際競争力を持つまでには至らないから、それまでに自由化を行なってしまうのか、その辺を明確にしておいていかないと、現在全国の農民が最もこれに関心を寄せておるのですから、そういう点明確にしていただくことがいいのじゃないか、こう思っておるわけです。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまの自由化率は、全体といたしましても九二%でございまして、残っておるのが八%でございます。こういう形になっていますから、あとの八%は農業のほうだけの自由化ということじゃございませんから、私は、その中で占める農業関係のパーセントは非常に少なくてもいいというふうに見ております。ただ、残ったものにつきまして、重要農産物でありますところの米とか麦とか、あるいは酪農製品とかでん粉とか、こういうものが残っています。これらのものは、ある調査などによりまして、全然手放しで比較いたしました場合に、国際価格といいますか、そういうものと比較いたしますと、米などはたいした違いはないけれども、肉などあるいは牛乳などは五二%から七十何%というようなことになっております。そういう関係でありますので、この重要農産物を自由化して輸入制限等を撤廃するというようなことは、これは当分——といっても、相当の期間といいますか、またいつになるか、これもあれですけれども、自由化は延ばしていかなければならぬ物資だと思います。その他の物資等につきまして、自由化をしていかなくちゃならないものが、まだそれも含めて七十六くらいあると思います。これらを自由化する場合には、いまお話しのように、生産性が向上して国際競争力ができるまでは自由化しない、こういう意味ではございません。その中で、いま重要な農産物等につきましては、そういうようなことに大体は目安を持たなくちゃならぬかと思いますが、そういう重要農産物でないものにつきましては、自由化する前にあるいは自由化をやる場合に、関税率の調整によって国内の農産物の生産を保護していく、あるいは価格政策、財政支出等、これは国内問題でございますから、話し合いをつけて、自由化の波にさらわれないような配慮をしてやっていく、こういう心がまえといいますか、方針でございます。
  31. 中村時雄

    中村(時)委員 いまのおことばを聞いておりますと、自由化に伴って残りの八%はまず安心していらっしゃいということなんですね。そういうふうに理解していいわけですね。この自由化からくるところの問題、たとえばバナナであるとかその他の果実が、青森、長野のリンゴその他の果実にも影響して、大暴落を来たしておる。これは内容はいろいろな見方があるでしょうけれども、一応そういうことも影響していることは事実なんです。ところが、きのう農林大臣はひょっと、何をおっしゃるのかと思ったら、レモンの問題に関しても、何か非常な効果というか、あるいはそれが影響して非常に問題があったのだ、こういうふうな発言をされておられたけれども、バナナなんかは大量に入ってくる可能性を昔から十分持っているわけなんです。ところが、レモンなどは数にしてごらんなさい、賢明なあなただから十分おわかりだろうと思うが、千トンくらいのものなんです。こんなものは早く自由化しておいて、バナナのほうを押えながら将来の展望をはかっていくことが、私はほんとうであったと思う。ところが、それが逆の現象を来たしておる。なぜでしょう。深くは追及いたしません。しかし、せっかくりっぱな農林大臣をかかえているのですから、農林当局においても、そういういろんな批判やいろんないざこざ、端摩憶測の与えられないように、いち早くこういう問題は解決してほしい、これだけ言っておきます。  もう一点、甘味資源に関するビートの問題で、ほかにもいろいろ砂糖行政としての問題がありますが、その一点だけ農林大臣にお尋ねしておきたい。昨年はいろんな問題がありましたけれども、最低生産費として六千五百円というものを出したわけなんです。その当時はキロ当たり大体百三十円から百三十五円くらいだったと思う。ところが、実際にはその後の糖価がぐんぐん上がりまして、一時は百七十円までになったのですが、そういうようなことからそれがカバーできた。だから、できるかできないかわからないために、農林大臣条件までつけていらっしゃったが、実際にはうまく回転がいった。ところが、本年度の北海道のビートの収穫、これは御存じのように百三万トンから百五万トン程度じゃないかと思うのです。それを精製糖にしてみても十五万トンくらいにしかならないという状態です。しかも、それを九工場ですか、それに割り当ててみると、生産量というものはうんと減っている、あるいは同じ程度で、決して増産にはなっていないわけです。増産をされる暁という責任が、北海道における、寒冷地における地下作物農業としての一つ目的と、もう一つ畜産物に対するところの関連性の目的と、二つの問題があったと思う。そういう二つの面から考えても、これは農林大臣の腹の中では、将来も必要だというお考え方があろうと思う。時間がありませんから、私の推測でいきます。そうすると、この問題は、生産者が、今度は一般の物価が上がり、他の農産物の価格が上がると仮定するならば、もっとより高度の要求をしてくると思う。そうすると、生産量は同じである、状態は同じである。今度加工業者から見れば、そういう問題が起こってきて、そういう支払いはおそらくできないのではないかという結果が生まれてくると私は思う。少なくとも農業経営を北海道において行なう場合には、一つプランを立てなくちゃいかぬ。米でもそうです。だから、事前にその価格を設定して、事前にこれを公表してしまう。たとえば四月から植えつけに入るならば、二月に設定してあげる、それがほうとうの親切心だと思う。そういうお考え方があるかどうか。あるいは価格の問題で、おそらく北海道において審議会をつくりましても、いろいろな問題が起こってきて、結局は、毎年そうでありますが、中央に移行されてくるであろうと思う。その中央に移行される場合に、今度の砂糖二法によって審議会をつくることになっておりますが、それはこの前衆議院を通っておるのですから、私はおそらく通ると思います。そういうたてまえからいうと、本年度は谷間ができたのです。だから、その谷間を早く埋めるという一つの方針、それが打ち出されないと、また混乱することになると思う。そういう立場から、将来の増産に対するところのてこ入れ、さらには審議会による価格の設定、そういうような面に関して農林大臣はどういうお考え方を持っていらっしゃるか、時間の関係上まとめて申してまことに申しわけないですが、その三点をお願いしたいと思います。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 何といたしましても、てん菜糖の増産ということが前提でございます。そういう意味におきまして、本年度の予算においてもてん菜糖の増産に対するいろいろな施策を講じております。ただし、いまお話しのように、ことしはもう間に合わないじゃないか、ことしはお話しのように増産どころか、減っております。そういう関係から、価格の決定も、計画に基づいてほんとうは作付前にやったらどうかという御意見は、よく拝聴して検討してみます。これにつきましては、米等についても、御承知のとおりに、戦争中などは作付前に価格をきめたらいいじゃないかということで、きめた年などもございました。しかし、それがはたしてうまくいったかいかぬか、価格の変動等もありまして……。そういうような面もございましたから、作付前というようなことについては検討いたしてみたいと思います。いま結論を出すわけにはちょっとまいりません。ただし、その価格の面につきましては、いまお話しのように、甘味資源法案を出して、昨年度は衆議院を通りました。急速に御審議を願ってこれを通していただきたいと思っております。通りました暁において、価格についての決定をしたい、こう考えております。
  33. 中村時雄

    中村(時)委員 そこらのところは、おそらく近日中に問題が出てくると私は思う。だから、速急の対策をいい意味において考えていかなくてはならぬと思う。たとえば生産者のほうは、これを主体考えているのですから、どうしたって生産費補償方式の方向をとって、こういう姿を打ち出してくる、片一方は自分のところの工場経営観点から打ち出してこられる、そこにはいま言ったように、生産量はふえていないのですから、いろいろな問題が出てくると思う。そういう点は十分配慮をしていただきたい。そのほかいろいろな問題がたくさんありますが、これはまた甘味資源のときにお話しするとして、そのことは早急にお考えを願っておきたい。それから先ほど言ったレモンの問題なんかは、固執することなくして、大臣も十分配慮をして、そんなことでいろんな問題にひっかからないように、これは御注意して、おきますから、速急にその問題の解決をはかられたらいいんじゃないかと思っております。  それから最後に、こういうふうにいろんなこところの人口の三〇%を占める農業は、きわめて重大な時期に現在立たされておる。こうした状態の中にあって、農業の実際の問題と施策を行なっていくのは、農林省の役割だと私は思うのです。農林省の役割はきわめて大きいと言わなくてなりません。と申しますのは、実際に農業施策を進めるのには、大臣、農林省職員の方々の肩にかかっていると言っても過言ではない、こういうふうに見ていいんじゃないかと思っております。その意味で、農林省職員のいろんな問題がたくさんありますが、綱紀の粛正、農林省関係並びに各機関、たとえばいま言った事業団、公団の綱紀の粛正は、絶対に私は必要があろうと思うのです。私の手元にもいまいろいろな民間企業と農林省との関係あるいは職員との関係、そういうものの、悪い意味で言えば悪因襲、あるいはつながり、あるいはその関係機関の乱脈、そういうような問題の資料が幾多出てきております。そういう立場に立って、農林省ではせっかくりっぱな大臣を迎えているのですから、十分あなた自身もそのことを心して、十分責任を持って監督あるいは督戦をしていただきたいし、農林省の方々も、おそらく自分自身の胸に手を当てたらわかっていると思う。そういうような観点から、せっかくのいい大臣を迎えているのだから、そういう疑義の生まれないように、十分気をつけて今後ともやっていただきたい、このように思っております。そういう意味において、きょうは時間がありませんので、簡単でありましたが、基本概念だけの質問に終わらしていただきます。
  34. 高見三郎

    高見委員長 野口忠夫君。
  35. 野口忠夫

    ○野口委員 時間に非常に制約されておりますが、大臣所信表明を中心に質問いたしたいと思うのです。  私は、根は非常にいい男だと自分では思っているのですが、東北の生まれでどうもことばが非常に思いものですから、ひとつ感情にさわらないようにお聞き取り願いたいと思いますが、一応昭和三十九年度の予算の規模でございますが、総額が三千三百五十五億、前年度から八百二十四億の増、三二・六%の増であるということで、お聞きするところによると、三番町あたりで万歳などをなすったかのような話を聞いたりするのですが、総予算に対してこれを見ますと、大体一〇%といわれております。一割くらい。大臣の先ほどのお話によりますと、食管制度の会計は、私どものほうで負うことは非常に……というようなことになりますと、この予算はそれを抜けば大体七%台になってくる。こういう予算規模。非常にお喜びになっているのに、いまさらそのことについて云々することも何でございますけれども、この予算の対象となる農業というものは、ずいぶん長い時をかけて、自然と社会の条件の中で生まれてきた谷間の農業であろうと思うのです。その体質を改善して、構造を改善し、これを近代化していくんだ、そして他産業に比しても劣らないような所得を増していくんだというような、こういう大きなお仕事、総理大臣からいえば、革命的な農政の実施というようなことばで表現されているわけですけれども、国民全体の経済の中から農業施策考えなければならぬし、予算も生まれてくるではあろうと思いますけれども、全体の一割ということでは、現在の農民の現状からいって、農民の期待している農政予算としては、どうもことばのみ大きくて、しかも、その中では農民自体の負担も大きくなっていくような予算計上になっているとすると、これは少し足りない予算ではないかというように思うのですが、一生懸命御努力になった大臣としては、言うことがないほど一生懸命おやりになったかもしれませんけれども、ここで、この予算が農民の期待にほんとうにこたえ得る予算であった、こういうふうに御自信をお持ちになられているか。さらに、これでは足りないからもっと多くして、農民のためにやっていきたいのだというようなお考えであられるのか。その辺ひとつお聞きしたい。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 考え方を最初に申し上げるよりも、先ほどから出ました食管制度の百億の赤字でございますが、私は、これを除いて計算することは、われわれとしてはおかしいと思うのです。大蔵省流や何かから考えれば、何かむだな金を出しているように考えやすいのですが、私のほうから見れば、百億というものは、消費者米価の価格を安定しておるし、生産者から見れば価格の支持をしている。ところが、なぜ赤字赤字といって、これが農業政策と全然離れているようなことにされるのかというのは、実は私は遺憾なんです。大蔵省流からいえば、農林省予算でも減らしたほうがいい、百億の赤字をしょっているのではないか、だから全体として何もそうふやす必要はないじゃないか、こういう感じを持っていますが、私どもとしては、やはり農業政策一つの予算だと思います。そういう点から考えまするならば、去年に対する伸びが一四%が平均なのに、三二%以上になっておるというのは、私はそうがっかりするような、気を落とすようなものではないというふうに考えています。  総予算に占める割合につきましては、私も前に農林大臣をやっているときに、一割突破ということで、一%を主張してそういうふうにやったことがございます。問題は、それでもいいと思っているのかどうかというお問いでございますけれども、私も必ずしもいいとは思っておりませんが、諸般の事情といいますか、歳入の面その他から考えて、農林関係の予算というものは、まず胸を張ってこれでいいというわけにはまいりませんけれども、相当なものと御了解を願ってしかるべきものじゃないか、こう思います。  同時に、農民側についても、負担を重くしているじゃないか、非常に悪く持っていっているようなお感じを受けられたかと思いますが、私はそういう面があればよく了解を求めなければならぬと思いますが、私は農業関係者などの話などを聞いてみましても、まあまあことしの予算はことしとしてはよくやった、こういうふうに受け取っておるわけでございます。そういうことでございますから、内容の質といいますか、量ばかりではない、質の問題だ、こう言われますならば、質の問題につきましては、いろいろ見方もありまするし、批判もあろうかと思います。そういう点につきましても、私といたしましては、相当な配慮をしていま御審議を願っておる、こういうような考えでございます。
  37. 野口忠夫

    ○野口委員 農林予算の全体予算に占めるパーセンテージですが、これは戦後ずっと下がってきているわけです。戦争の終わった直後から五、六年の間はだいぶよかったのでございますけれども、下がってきた。そういうような状態の中で、農村をよくしたいというような考えで、この革命的農政というようなものが選挙の前に大きくアピールされたのだろう、こういうふうに私は思うわけです。革命とまではいかないがというようなおことばもありましたけれども、こうしたことばの前に立って、国民は、せめて戦後あったような状態というようなものを予想しながら、やはり期待をしているのではないだろうか。その前で一割という問題なんですが、全体の予算の分配の中で、三千万に達する農民の施策をやっていこうとする日本の予算の分配が十分の一であるという、この固定されてしまった考え方自体が、私は革命的農政を実施するというようなことばとはまことに遠いのではないかと思う。与えられた課題は、生産を増強しなければならぬ、基盤の整備、技術の高度化、経営の合理化、価格の安定、流通の改善というような問題を持っておって、この問題を実施していく上での予算として考えますと、どの程度に予算額が固定されておるべきかという問題でございますが、やはり年々政治の重点的な方向に従って、予算というものは相当の上げ幅、下げ幅があっていいのではないだろうか。革命的農政の実施ということばでございますから、これは重点中の重点として考えた場合、思い切った予算措置をやはりおやりになるべきではなかったかと思うし、そういう方向に国の政治があるべきではないかというように考えられるわけであります。農民自体がこうした予算を見せられた場合に、なるほどよくやったわいと、農民自身の腹の底に、じっくり政治がなるほど私たちを考えているのだというような希望のわく共感を呼んで、その中から信頼と感謝というようなものが生まれてくることが、池田さんの大好きな愛国心というようなものを涵養する土台ではないか。国を愛する心というものは、他から押しつけてできるものではないのであって、革命的農政の実施という大臣ことばを聞いたときの農民は、そんな国であったらもうだれから言われなくても国を愛すると思ったろう。それが一割の予算ではたしてよいのかどうかということになりますと、私は少し疑問に思うのです。選挙に行って立ってきたわれわれとしては、選挙民の各位から、政治家はうそは言わなかった、なるほどやってくれたわい、こういう声を聞くことが、政治の近代化ということではないか、あるいは政党の近代化というようなことばではないかと私は考えるものですから、予算措置はきまったようでございますけれども、まことにこれはそういう意味では不満ではないかというふうに思うわけです。  御質問を大臣所信表明に求めたいと思うのでございますが、昨日も西村委員から指摘があったところでございますが、六ページのところでございます。きのうお読みになったのでございますが、「他産業からの帰農者を差し引いた昭和三十七年度中の純移動者数は、七十一万人にのぼり、前年度を一三%上回っております。農業就業人口の減少は、農業近代化の契機になるとも考えられます。」ここにあらわされているこの「農業就業人口の減少は」ということば、ところが、そのあとにおける「農家戸数の減少が農業従事者の減少に伴わず、兼業を主とする農家が著しく増加し、全農家数の四割に及んでおります。また農業労働力の老齢化、女性化が進行し、農業経営の後継者をいかにして確保するかという問題も重視しなければならなくなっております。」ここの六ページにあらわれている矛盾というものは、私は非常に問題ではないかというように思うわけなんであります。前段に言われていることは、政府農業基本法の性格というようなものを端的にあらわしているのではないかと思うのですが、政府農業基本法農業就業人口の減少の予測、それなくしては何かなし得ないような、離農対策の基本法らしい傾向を示しているのではないだろうか、この点に非常に問題があるだろうと思うのです。その離農対策の上にのみ成り立つような農業対策の基本法を立てられたあとに、実はそれは減っていないのでありますということがある。この所信表明の中における矛盾点というのは非常に問題であろうと思うのですが、農業就業人口の減少なくしては政府農業基本法の実現ということは不可能であって、近代化というようなものは、何か農民の離農の上に成り立っていくのだ、いわば近代化は離農のあとにくるのであるという考え方基本法の性格を示しているように思うのですけれども、その辺のところをひとつ……。
  38. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そうではございません。離農の上に立って農業近代化するという考え方に立っての農業基本法ではございません。ただ、御承知ように、日本農業人口が多いわりに、世界的に見ますれば、一人当たりの扶養力といいますか、養っていく率が少ないという実情はございます。そういう実情でございますから、生産性を向上し、あるいは農業生活者の生活水準を上げていく、そのために近代化の方策を講じていく、これが農業基本法方向だと思います。でありますから、離農をさしていくことが近代化という基本に立っているのとは逆でございます。ただ、御承知のように、三十七年度等におきましても、農業就業者あるいは家族従業者等で外へ出ましたのが七十一万にもなっておりますし、三十二年から比較すると二百万ぐらい外へ出ているという実情でございます。こういう実情に即して、ある論者は、農業人口さえ減れば近代化がすぐでき上がるがごとき論をする者もないわけではございませんから、私は、それではない、農業人口が減るということを憂えての対策も講じなくてはなりません。これは兼業農業の問題もございます。しかし、農業人口が減っても農業がやれるというような体制にならなければ、近代化という最終目的にはいかないのじゃないかという考えを持っています。だから、農業人口が減ったからすぐ近代化だ、こういう考え方ではない。しかし、農業人口が減ってもやれるようなことに持っていけるのでなければ、農業政策としても当を得ていない面もあるのではないか。こういうことで、農業人口が減れば近代化がそれで終点にいくようなことを言う者がありますから、それに対する反論というわけではございませんが、これは一つのきっかけにはなるが、決して近代化の終点にそこでくるという問題じゃないし、そういう考え方じゃない、間違っている、こういうふうな意見でこれは言っておるのでございまして、農業基本法の精神は、せっかくおっしゃられますけれども、野口さんのお考えは私は間違っておると思います。基本法の精神はそういうものではないのであります。
  39. 野口忠夫

    ○野口委員 そう言わなければ進み得ないのではないかと私は思うのですけれども、私も、農民が離農することが即近代化であるということに申し上げたことをお受け取りになったとすれば、若干訂正しますが、農民の離農を前提として、この近代化を進めていくために、離農を促進しなければならないような傾向になってはこないだろうか。ということは、安定した農家経営を目ざして、自立農家経営というものをつくってやっていくんだ、これはどうしても土地を放す農民を対象としなければなりませんし、当然その予測の上に自立経営というものが成り立っていくんだということが言われると思うのです。それなくして、他に耕地を求めて、私どもの主張するように、新しい開墾等を行なって、新しい土地を与えていくというならばいいのですけれども、継続事業としての開墾事業はあるようでございますが、新しくそのことを始めることについては、いまの農林省として、方向としてはとっていないように私は思うわけでございますので、勢い、やっぱりいまの農民が土地を放さない限り、大臣の言う二町五反以上の農家自立経営というものが生まれてこないであろう。ここにもやはり農村就業人口の減少ということを土台として考えているのではないかと思うし、あるいはまた他産業に比して劣らないところの所得水準を保たせていくんだということの考え方は、やはり農村人口の減少の中で、三人で働いて所得していたものを、一人で働いて所得することによって、その所得は増してくるんだという、こういう経済原則の上に立って、一人の農民の労働生産性の向上を土台として、やはり所得の増の中で、他産業比較して所得が増した、こういう形になっていくのではないだろううかと思うのです。ですから、農業基本法がいうている、他産業比較して、所得水準を上げて格差を是正するという方向自立経営農家の中で求めていこうとする姿は、前提としてどうしても農民の離農を考えていかない限り成り立たないように考えられるから、ここでは「契機」ということばで書いてありますが、農業就業人口の減少ということを、前年度に比べて二二%も上回っておりますというて、喜んでいらっしゃる。そして、それが進行できない困難な条件として、兼業農家とか、あるいは農家戸数が減らないというようなことをここにおっしゃっているんだろうと思うのですが、どうしてもやはり農業就業人口が絶対減っていかなければ、政府農業基本法近代化というものがどうも生まれてこないんだ、いわば零細な農民の犠牲なくしては、残っていった農民のしあわせというものがつくられないというような考え方を与えることになってくるのではないかと思うのです。私は、そういうことが、昨日あたりの大臣の答弁の中で、困った現象として、そういうふうにおっしゃっている中では、そうつかまれると思うのでございますが、間違っていると御指摘を受けたのでございますけれども、大臣も正直に言うてみて、そのことなくしてあり得るとお考えになっておるのかどうか、お尋ねしたいわけです。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま例に引かれましたが、三人の就業者がおった、これが一人になった。一人になったから、三人で総生産を割った場合よりも、一人で割ったほうが生産もふえておるという形だから、人を減らしていくと、いかにも生産が上がったように思うのではないか、それが農業基本法考えておることじゃないか、あるいは私の所信表明考え庁じゃないかと言うが、それは実は逆なんです。三人でやっていたものが一人でやれるということならけっこうじゃないですか。いままで形式的に三人で割ったから、出産性が向上したり生産がふえたという算術的、形式的な割り算をする、そういうことで近代化が進んだとかなんとかいう考え方は逆じゃないか。三人かかっていたものが一人でもやれるというふうに近代化していくということで、初めて農業基本法生産性の向上とか、生活水準が上がった、こういうことにいくのが筋だ、こういう意味で申し上げたわけでございます。でありますから、農業の就業人口が減ってきたということは、これは憂うべき問題でございますが、農業人口を減らしさえすれば形式的に生産性が上がったということが言えるから、離農を進めているのじゃないか、対策を進めているのじゃないかというお考え、御指摘は、これは私に対するあれとしてはちょっと見方が違うのじゃないかということを私は申し上げたわけであります。同時に、農業人口がかりに減らないといたしましても、減らないで農業近代化が進むということになれば、農業人口がもう少し少なくてもいいという、これは逆に結論が出てくる場合もあると思います。しかし、現実においては農業就業人口が減ってきておるのですから、これにやっぱり対策を講じなければなりません。対策を講ずるということになれば、こういう現実も見て、そして人口が減っておる、あとの人々が農業が安定していけるような形にもしなければならないし、また後継者も確保していかなければならないし、あるいはまた他産業に従事する者の生活、雇用の安定という面もはかっていかなければならぬ、こういう面から申し上げておるのでございまして、人口を減らしさえすれば、生産性も上がる、あるいは生活水準も上がる、それだから農業就業人口を減らす政策をとろうとして、農業人口が減ったんだから、それが契機になっておるんだ、こういつておるのかといえば、そうではございません、こういう意味でございます。   〔発言する者あり〕
  41. 高見三郎

    高見委員長 御静粛に願います。
  42. 野口忠夫

    ○野口委員 いまの三人と一人の問題でございますが、三人で生産性を上げるということは、生産過剰ということになってくる。ですから、三人の者が生産を過剰ならしめていく中で、農民の豊作貧乏的な問題があって、零細性があった、こういう問題もあったわけでございましょう。だから、零細の中から農民は離れていく。その離れていった農民を土台として、そして、一人の人に近代化を与えて、その生産性を向上させていくという考え方政府農業基本法考え方であるということは、これは間違いのないところだと思うのですが、いまの農村の人口が多い、三人いる、その三人の者がみんなで生産性を向上してただやった場合は、過剰生産となってくる。その過剰生産の中から、働けば働くほど貧乏になるという零細性は、やっぱりその原因があった。だから、農民の零細性を救うためには、この三人の農民の中から離農していくであろう者を期待して、そうして一人の者に機械を与えて、その一人の人間の生産を上げて、農業というものを守っていくんだという基本法であることを、そのとおりのことをおっしゃっていたのではないかと私は思うのです。ですから、いまのお話で申し上げますと、政府農業基本法考え方を、もう一回抜本的に検討し直さなければならないような次元に立っているのはないだろうか。いまのお話でいえば、ぼくは、そういうことばだけで過ごしても、現実に進めらていく国の政治に対する農民の期待感はそういうものではないわけであります。そういう意味で、農民の離農の上に成り立つ基本法であることを私は確認せざるを得ないのではないかと思うのですけれども、いかがでございましょう。
  43. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 離農の上にではなくて、近代化を進めていく、こういうことでありまするならば、農業人口が過剰になるという結果も出ると思います。それからまた、農業の動向から見て、また所得倍増計画等の進行をめぐりまして、離農といいますか、離農は現実の問題でございます。でありまするから、現実の問題の上に立って、農業基本法方向、精神を生かしていく、これが農政であり、政治だと思います。だから、そういう意味におきまして、わざわざ農業人口を追い出さなければできないのだということじゃなくて、現実面において離農もございます。こういう現実に即して、農業基本法のいわゆる近代化方向を強化していく、これは当然政治の面として考えられることだと思います。だから、追い出さなければ農業近代化できないんだという観点に私は立っているのではありません。農業人口はそう多くなくても済むんだという前提に立って近代化を進めていくというのが農業基本法の精神だ、私はこういうふうに見ております。しかし、現実面においては離農していく人が相当多い、そこでなおさら近代化を促進しなくてはならぬ、こういうのが現実面の対策だと思います。
  44. 野口忠夫

    ○野口委員 離農が予想されないで近代化が進むということでございますが、近代化それ自体そうでありますが、自立農家経営についても、あるいは所得の問題についても、農村人口が過大であるということを土台として農業基本法を策定なすったということ、これが基本法の精神であろうと思うのです。日本農業は零細である。この零細な農民をどうにかせねばならないということの中で考えられてきたのは、その零細性の最大の原因が、農村人口が過大であるということ、耕作面積が少ないということで、これを外国と比較してみて、そういうところが非常に日本農業の零細性を進めているところであるから、ここから離農してくる者をあたたかく迎えるという施策は、これは見るところがありませんけれども、離農していく農民を予想して、それを前提として、とどまっている農民の所得を向上させながら、人口が過大なために起こってきた、いわば過剰生産的な傾向、これは大臣もよくおわかりだろうと思うわけですけれども、酪農の問題にしてもそうです。それから現在だいぶ繭が上がっております。しかし、この繭の値段が上がっておるときに、生産というものを見てごらんなさい。あなたの役所から出しました統計を見ますと、昨年の繭というものは最低の生産です。最低の繭の生産のところで、最高の価格が生まれておるというこの原則、零細性の原因を農村人口が過大であるということからおつかみになってきたということ、このことをやはり考えていかなければならぬということで、離農というものは当然はかるべきであるという立場を前提として考えていくということにならざるを得ないと思う。いまから五年前、繭糸価格が暴落したときに、政府の出しました繭糸価格安定臨時措置法という法律は、農民がよけいつくり過ぎたから、悪いから、二割の桑の木をひっこ抜きなさいという法律だった。そして二割の桑の木をひっこ抜かせて、繭の価格というものがいま上がってきておる。したがって、農民はまた桑の木を植え始め、これを追いかけていく。そして生産が最高に上がったときに、価格はまた最低に落ちてきて、あの当時貫目八百円になりました。大臣のおっしゃる価格安定の最低下限価格の保持は千四百円でした。それが千四百円を割って八百円になって蚕糸界は全滅するのじゃないか、こういうことまで言われて出された法案である。過剰生産であるということだったならば、いわば三人のものによって近代化をし、生産を向上させるばかりでなくて、三人のものが生産をする中から、そういう農民の零細性が生まれてきたということを土台として、政府農業基本法をお考えになったということについては、私は、いまここでそれを曲げて解釈されるという、いわば近代化というものを進めていく中から、農民が自分で希望しながら他産業に転換していく者があるであろう、そのことを待っていてやるという、こういう姿の中で、第二種兼業農家の心配とか、農家戸数が減らないというようなことについて、これが問題点だから、私は最初に言うたように、農業基本法の性格というものが、この一枚の紙の上にその矛盾点を露出しておるのではないかということを御指摘申し上げざるを得ないわけですけれども、いかがでございましょう。
  45. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農業の就業人口がだんだん減っていくという傾向は、農業基本法制定当時ばかりでなく、それ以前から続いておったわけでございます。それが非常に多くなってきたというのは、高度経済成長といいますか、経済成長が高度であったということで促進されたと思います。しかし、そういう事実は、農業基本法の制定当時からも事実として認めておるのでございますから、それを無視して、あるいはそれを考えないで農業基本法ができておるとは私考えません。しかし、いまおっしゃるように、農業人口だけ積極的に追い出せば、離農をしてくれば、それで農業基本法目的というものを達するんだという考え方で、離農をさせることを基点といいますか、それを根拠として農業基本法というものをつくったんだというふうには、私は考えないということでございます。現実面においての農業就業者の離農ということは、いままでずっと続いておるわけでございます。でありますから、このこと一つは、近代化そのものの達成じゃありませんが、近代化一つの拍車というか、どうしても近代化を進めなければやっていけないという傾向にはなろうかと考えるわけであります。  それからいまお話のように、いわゆる零細農というものは、確かに日本農業一つのウィーク・ポイントといいますか、日本農業零細農でいっておるということが、農民自身の生活水準にいたしましても、あるいは生産方面にいたしましても、一つの特徴であろうと思います。この零細性を直していこう、こういうことは当然考えていくべき考え方でございますし、そういう方面基本法などにも、零細性を解除していくというか、少なくしていく、こういう考え方はあるわけでございます。
  46. 野口忠夫

    ○野口委員 これをいつまでもここでやっておるわけにもいきませんが、ただ大臣は、きのうの答弁の中で、兼業農家というものが生まれてきたときの経営農家の自立ということについてはどうかという質問があった場合、これは兼業農家の分解を待って、自然のうちに減少を待っているんだ。ところが、兼業農家というものは、減少する状態は生まれてくるはずがないということを、きのうの質問の中では、政府側もこちら側も明らかにしたはずでございます。大臣は、兼業農家というものが生まれてくるのは、もっと社会保障を充実して、労働者の賃金を上げて、安定充実していけば、その土地を放すということになってくるのではないだろうか。そうした条件は、いまの働く労働者の中には生まれていない。だから、兼業農家というものは、重工業が発展するに従って、零細な農民の所得をせめてそこで補っていこうとする中では、兼業農家というものは、もうすでに全耕地の半分を占めるくらいで、しかも、その所得は、一町五反あるいは二町歩持っている専業農家の方々の所得よりは、兼業農家所得のほうがよろしいというのが村における現状であります。いままで八反歩ぐらいで貧しい農民だといわれておった人が、兼業農家に転じていくに従って、非常に裕福な現金操作が行なわれるようになってきておる。反面、かつて大きな土地を持っているといわれておった、二町ぐらい持っていた農家の方が、その所得の上においてはまことに零細なものに変わってきている。専業農家自体が非常に苦しい状態の中にあるということを言わざるを得ないと思うのです。それ一を見ている青少年がいわば工場に流れてきて、あなたの御心配になるような後継者がいなくなるような農村現状をつくっているとすると、この兼業農家をなくすということは容易ではないという実態の中で、話が進んで、結果的に、大臣の答弁なすったのは、第二次革命でもするほかないのではないかという答弁であったと思うのです。そしてそのあとにおつけになったことは、その辺のところをひとつ教えてくれませんか、こういうことであられたはずなんです。だから、現状のままで兼業農家の戸数を残してこれを進めていくということは、政府農業基本法を実施していく上においては、たとえば離農が一人もなかったと考えた場合に、離農は自然に起こってくるであろうという考え方が、兼業農家を認めることになるかどうか。離農ということは、農家戸数の減少の上に大臣は期待しているのではないかと思うのだけれども、そうではなくて、やがて日本土地の大部分が兼業化していくという方向にいくことも、政府農業基本法の中でこれを認めている、こういうことになるでしょうか。そうではなくて、兼業農家が増大しているということは、もう少し安定した賃金を与えて、完全な労働生産に従事させて、農業収益を高めて、農民として生きていかれるような完全な自主独立の農家経営形態考えていくのが農家らしい農家であるというお考えであったのではないかと私は思うのです。大臣が幾らおっしゃっても、第二次革命でもやらなければだめであるという中で、どうしたらいいであろうか御心配になったことは、やはり農業基本法の中で、日本農業の零細性をなくすための最大の原因として、農村人口が過大であることをいかにするかという問題が前提となって、日本農業の健全な育成を考えていくのだという方針であったということを私は言わざるを得ないのです。  ただ問題は、私は、その次に、この零細性の原因を農業人口過大ということだけにお求めになることが、政府農業基本法の形であるようでございますが、なぜ日本の農民が零細であったかという原因は、人口の過大ということも私はあるだろうと思います。しかし、その他にもっと政治として、学問で言うたならば、人口が多ければ、当然そこは零細になってくることは間違いありませんでしょう。農業という同一職業をみんなでやるんですから、床屋が十軒あったところへ二十軒になったら、確かに困ることはわかり切っておるのです。農業という同一職業を数多い人口がやっておるということは、問題が残るにきまっております。だが、そのとおりに日本農業というものがいままできたのではないのです。過大人口をかかえて生きてきたのです。その中には長い農民の歴史というものが残っておるわけです。この長い農民の歴史の中で、その日その日をほんとうにせんべいをかじるような苦しみに耐えながら、日本の農民は長い時間をかけてこの零細の中にきたのでございまして、そうした観点から、日本の農民の零細性の社会的条件というようなものについては、もう少し考えられた上で、日本農業人口の過大性というようなものを解消するような方向にいくあたたかい農業考え施策というものが、他になければならぬはずだと私は思うのです。その第一の施策が、私は価格であろうと思う。そのような観点に立って、日本農業の零細性の原因というようなものを農林大臣はどんなふうに思っていらっしゃるのか、ひとつお聞きしたいと思う。
  47. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本農業の零細性というものは、歴史的事実でございます。御承知のように、日本農業国として発達し、狭い国土に人口が相当入っておった、こういうこともございますが、これは歴史的な事実でございます。いまのようにせんべいを食べ食べ育ってきたということも事実で、それはそのままいいというわけには人間ですからまいらぬと思います。生きてきたのは生きてきたけれども、よりよく生きていくために考えなければならぬのじゃないか。これは憂いを同じゆうする点で、何も変わったことはございません。そこで、先ほど兼業農家の問題が出ましたが、何もこれは第二次土地改革をやらなければならぬと断定的に申し上げたわけではございませんが、抜本的にやる革命的ということならば、そういうこともあり得るかもしれませんが、いま手をつけるという考えは持っておりません。そうすると、問題は兼業農家でございます。  兼業農家が、農業をしているよりも、他から収入を得たほうが暮しがいいというような事実は、諸所に現われておりまして、現状はそのとおりに私も認めております。ただ、一町とか一町五反の第一種兼業が第二種兼業になる、あるいはまた耕地耕作を全然やめるかどうかという問題でございますが、この問題についての考え方を私は申し上げたのでございまして、それについては、いまお話のように、安定して雇用され、あるいは社会保障制度が確立されて、ほかの業種あるいは業態に入っておっても、老人になっても生活が保障される、あるいは雇用状況もちゃんと安定して、臨時雇いとかという形でなくて、安定していくというもので、その方面に専念するというような人も、そういう制度がもっと強化されれば出てくるものもあるだろう。そういう方面にいく人もあるし、また一面におきましては、そうはいかない、やはり農業というものを捨て切れないんだ、ことに土地の問題については、そういう安定がない場合には、土地を他へ移譲するというようなことはやりかねるんだというようなものもあろうと思います。ですから、私は、兼業農家というものが分岐点にあるというような状況であろうと思うのです。ですから、農業を捨てて、もう専心他の産業に従事するというのにつきましては、雇用条件の確立とかあるいは社会保障制度の拡充強化とかいうことによって、農民として出ていく者も安心してその職業に安定するような形をとってやらなくちゃならないのじゃないか。一面においては、農業に戻りたい、しかし、何といたしましても兼業農家で耕地等が少ないというような場合には、これは共同というような形で農業のほうに寄与してもらう。いまこういうような分岐点といいますか、分かれ目にあろうじゃないか。こういう分析といいますか、そういう見方をきのう申し上げたのであります。しかし、この価格問題が大事だということでございますが、価格問題は大事でございますが、やはり現状が、農業人口が相当他産業に行っているという現状、これはとめろといったってとめるわけにはまいりません。価格をうんと出していけば、それでとまるかといっても、これも限度があろうと思います。全部これを他産業に行っちゃいかぬというような強制力を持つというわけにはまいらぬと私は思いますから、そういう面におきましては、やはり水の低きに流れるがごとく、ある程度は他産業に出るという現状は、現状として見なくちゃならぬ。そういうことにいたしまするならば、農業人口が少なくなっても、農業がやっていける、あるいは生活が安定していけるような方途を講じてやるのが農業政策じゃないか。それにつきまして、価格の問題等も十分考えなくてはなりませんけれども、零細のままで、そうしていまの人口そのままで、外に出るのも出さないようにして、そうして価格だけでこれをやっていけば、そのほうがいいんじゃないかとはおっしゃいませんけれども、まあそういうことも考えたらどうかというふうに私はちょっと聞こえたのですが、もし間違っておったら、私の答弁もまた訂正いたします。
  48. 野口忠夫

    ○野口委員 大臣、長くお話しになるんであれなんですが、私は、いま日本農業の零細化の原因は何にあるかということをお尋ねしたわけでございます。それが人口過大ということだけであろうかどうかということをお尋ねしたわけですが、その中で価格の問題を私考えたいと思うのですが、時間がありませんので、大体、農業基本法の中では、需給均衡価格というようなことをいわれておるわけであります。この需給均衡価格というものは、需給が均衡するような生産と消費の関係がなければ均衡するはずがないとすれば、ここにも、いわば自由主義経済の中で放任をしてきた農産物の自由な販売の中で行なわれるという状態では、需給均衡価格というものが、実際のところはうまくいかないだろうと思うんです。やはり需要と供給とのバランスをとっていく、生産と消費との関係計画的に考えるという必要もあるわけです。そういう中では、当然その価格は、それだけのものをつくった農民の価格というものは、間に合う価格の中でこれは保障されるべきであろうというようにも考えられるわけであります。こういうような働けば働くほど農家所得は向上していくんだという価格保障政策というようなものが、まず農村人口過大という以前に、そういうことについての農業基本法が手を打つ問題がなければならぬと思うのですが、単に需給均衡価格の中にいわば捨てておくような形で価格問題があるわけであります。需給均衡で捨てられておる苦しみは、農民は知っているわけでありますから、そういう意味では、農業基本法の中で第一番に考えらるべき価格政策は、いわば需給均衡生産と消費の中でつり合いがとれるような国の計画施策とがそれに伴っていかない限り、そこではほんとうの意味における農村の零細性を救うという問題にはつながっていかないわけであります。現在の農家所得で最大なものは、ことに安定しておるものは、米価でありましょう。まことに米価は、安定した所得価格保障制の中でつくっていると私は考えます。しかし、農業基本法で示されている成長産業といわれている酪農、畜産、蔬菜、果樹、園芸等のこういう種目にいきますと、全く農業基本法下においても、酪農農民が乳価値下げの中で非常に苦しんだ、こういう問題が絶えず、成長産業だから大いにやりなさいという国の政治の方針に従ってやろうとする農民の上に、この価格の問題がいつもかぶさってきているわけであります。この意味では、日本農業の零細性の原因が、自由放任的な経済政策の中で、農業企業だと称せられ、農産物が商品だとして扱われていく中で、その価格の保障制がないという姿の中で、日本農民の零細性というものは考えられてきたのではないだろうか。そういう意味における価格保障のあたたかい農業政策というようなものが、当然まず、人口が多い、それが流動するような方向をとったほうがいいという形よりは、こういう点においてやはり手が抜けているのではないかということを私は指摘せざるを得ないわけであります。大臣は、米の価格保障については、これはあくまでもやっていきたいということをおっしゃるのですが、乳価についてはどのようにお考えでございましょうか、お尋ねしたい。
  49. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのお話の前段でございますが、農業基本法では需給価格とおっしゃいますけれども、自由価格だと思いますが、価格を需要供給によって野放しにしておくというようなことを指摘されたと思いますけれども、農産物の価格等につきましては、「生産事情、需給事情、物価その他の経済事情を考慮して、その価格の安定を図るため必要な施策を講ずるものとする。」こういうことになっております。それが農産物の価格を全部保障しろ、こういうようなことにならぬと思いますが、価格支持対策につきましては、いまお話がありましたように、米、麦等につきましては、強力な直接あるいは間接統制をいたしておりまするし、あるいはまた、なたね、大豆あるいは畜産事業団による肉類、酪農振興法による牛乳等、いろいろ価格を支持する制度は、農業基本法ができない前からでもやっているので、自由放任の自由取引といいますか、需要と供給だけで価格の決定を待っている、こういう態度ではございませんことも御承知と思います。  そこで、あまりしゃべることは長くなるといけませんけれども、牛乳の問題はどうだ、こういうことでございますが、牛乳につきましては、御承知のように、酪農振興法等によりまして、価格の上限、下限はつくっております。しかし、直接それ以上国の価格保障ということをとっていないのも現状でございます。したがいまして、牛乳の価格につきましては、生産者の団体とメーカーとの間で価格決定というか、きめるわけでございますが、紛争等もございます。その紛争等につきまして、きまったところもございますが、きまらないところもございます。県段階についてあっせん調停することになっていますが、県段階においてあっせん調停できないものは中央に上がってきております。上がってきている面につきましては、私どもは、これはあっせん調停してきめていく、こういうことでいきたいと、こう考えております。
  50. 野口忠夫

    ○野口委員 いまの紛争調停の問題ですが、昨年の十一月にありました乳価の問題ですが、だいぶ担当大臣が、当時の農林大臣がお苦しみになったようです。あの場合、復元措置が行なわれたわけでございますけれども、その経過の中におけるところの生産者と酪農資本家、メーカー側の皆さん方との間における取引の契約というようなことについて、まことにこれはどうもお互いの意思を尊重しない、メーカーの一方的な値下げ通告あるいは契約変更等が行なわれておるわけでございますが、最終的には、そういう問題については農林大臣はあまり権限がないのだというような姿の中で、どうも農民が期待するような農林大臣の乳価決定についての施策がなかったので、混乱を引き起こしてきたように思うのです。いつまた起こらぬとも限らぬような乳価問題について、昨年の経験を土台とし、乳価決定の方法について、あの経過の中においてはメーカー側の一方的な契約更新や値下げ通告等の中で行なわれましたが、ことしはそういうことの起こらないように、正常な状態において生産者とメーカー側とが契約を取りかわし、生産者が間に合うような乳価で取引が終了するような方向に、どのような施策を特におとりになろうとしておられますか。
  51. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 これは第一前提といたしましては、両者の契約事項でございますから、契約にあたりまして、生産者が非常に不利な立場で契約しないように指導していきたい、こう考えております。
  52. 野口忠夫

    ○野口委員 大臣は、昨年も、その紛争の経過の中で、再三ここでそういうふうにおっしゃったのでございますけれども、何分手のつけられないような状態で、その紛争がますます混乱して、長い期間酪農農民とメーカー側との間に争いがあったわけでございますから、そういう事態が正常な姿で行なわれるような方策を絶えず大臣としてもお考えいただいて、乳価問題について、ひとつ慎重にお取り計らい願いたいというふうに思うわけであります。  申し上げたいことはだいぶあったのですが、議論になって相すまなかったと思いますけれども、最後に、学校給食問題についてお聞きしたいと思います。昨日の質問に対して大臣は、なま乳の学校給食ということについて、従来までは余剰農産物の処理というような方向でやったが、今度は食生活の改善あるいは酪農の振興、こういうような問題に変えられてきたというようにお話しになったのでありますが、もう一度その点を伺いたい。
  53. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 昨日もきょうも御質問に答弁いたしたのでございますが、従来は牛乳が余るから、余った牛乳を学校給食のほうに回そうという考え方基本に立っておったと思います。しかし、私は、そうでなくて、なま牛乳を主体として学校給食を行なっていくのだ、主体性をなま牛乳に置いて、脱脂粉乳でやっておるものを逐次減らしていく。先ほど中村さんからも、最終年度に全部やってしまうのか、こういうお話がありましたが、できるだけ多くなま牛乳でやっていく。いまいろいろ計画を立てておるのでございますが、それに対しては設備やいろいろな問題がありますので、最終年度全部というわけにはまだいきかねるかと思いますけれども、ことしよりは来年、来年よりは再来年、なま牛乳の量をふやして、脱脂粉乳の量を減らしていく、こういう方針で進めるつもりでおります。
  54. 野口忠夫

    ○野口委員 いま最終年度とおっしゃいましたが、義務制の学校の一千五百万の学童に完全に実施するまでには何年くらいかかりますか。
  55. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 正確な計算ではございませんが、ちょっとした計算によりますと、全部をやるのには三百五十万石ぐらいのなま牛乳が要るということであります。それで、ことしは御承知のように四十万石。しかし、これを全部にやるということはもっと検討しなければできないと思います。かりに百万石といたしましても、毎年ふやしていって五年くらいというような一応の計算も出ます。しかし、できるだけふやしていくように、諸般の情勢も勘案してやっていく、こういう方針でございます。
  56. 野口忠夫

    ○野口委員 時間がありませんので、追っかけ追っかけ聞くようになりますが、学校給食というものが、一方においては農村の酪農振興対策にもなるわけでございましょうから、その意味では非常にけっこうなことだと思うのですけれども、これはいわば一千五百万の義務制の学校に、食事を通してその体位を向上させていこうとする、国の政治の行なう非常に重要な制度であろうと私は思うのです。この重要な制度は、そういう子供たちを相手にするという姿の中では、その取り扱い等について、いわば公共的な性格を多分に持ってこなければならないと思うのであります。従来までのような、これが利潤追求の皆さんから学童に配給されたり、そこを通って配給されるようなものではなくして、あくまでも公共的な立場に立って、諸般の経費等に赤字を生まない程度において、この学校給食の制度が父兄負担も軽減しながら進んでいけるような、そういう公共的な事業として取り扱うべきであると思うのです。昭和三十九年度から実施のようでございますけれども、本年度の四十万石はどのような取り扱いをされようとするのですか、その点ちょっとお教え願いたいと思います。
  57. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いま公共的な一つの機関をつくってという考えは持っておりませんが、この扱いはいままで業者を通じてやっておったのでありますが、業者と生産者と両方でできるような形に一応して、そして生産者のほうのいろいろな組織や何かの確立を待って、そっちのほうへ多く扱わせる、こういうような考え方で進めております。
  58. 野口忠夫

    ○野口委員 今年度からそのような姿でいくということでありますか。
  59. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そのとおりであります。
  60. 野口忠夫

    ○野口委員 そういうことについては法制化する考えですか。
  61. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 特に法律をつくる考えは持っておりませんが、行政指導でそういうふうにやっていきたい、こう考えております。
  62. 野口忠夫

    ○野口委員 酪農振興専門委員会という委員会が政府の中にございます。それから酪農のそれぞれの生産団体があるわけでございますが、この皆さん方からは、一千五百万の学童に年間安定して牛乳を供給して、体位の向上をはかっていこうとする大きな制度的な施策でございますので、これはやはり単独立法で出すべきであるというような意見が、最終的にはまとまっているような話も聞いております。そうすると、これは全然法律化しないで、行政的な指導で、従来の余剰農産物の処理というような姿と同じ形で行なっていこう——これは大臣、今後長い間かかる問題で、詳しいことはあるいはおわかりにならないかもしれませんが、非常に重要な制度的な問題でございますので、最初の年度から腰を据え、腹を据えて始めていかないと、従来までの余剰処理的な考え方で行なわれていくだけではなかなかむずかしいであろうと思います。したがって、その点は単独立法でこれを行なうような方向大臣検討願って、この通常国会中に御提案なさるような御覚悟をお持ち願うべきではないかと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  63. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、余剰牛乳を学校給食に回すのじゃなくて、学校給食はなま牛乳を主体とするのだ、こういう方針はぐらつきません。その方針をずっと貫いていきます。それから、それを単独立法でどうかということにつきましても、要望等も受けております。しかし、いま私どもが考えておるのは、酪農振興法の中に学校給食に関する法律を挿入して、それでやっていこうと、これは目下検討中でございます。まだ結論は出ませんが、大体そういう方向でやっていこかということを検討いたしております。
  64. 野口忠夫

    ○野口委員 時間が来ましたので、終わりたいのですが、最後に、だいぶきょうは議論のような形になって大臣には済まなかったのですが……。
  65. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いや、こっちも済みません。
  66. 野口忠夫

    ○野口委員 やはり所信表明に対する質問でございますから、私どもは、私どもの考えの中で見解を表明せざるを得ないわけですが、何か私は、大臣のきのうの答弁をお聞きしまして、大臣の誠実な御答弁の姿に胸を打たれておった次第であります。でありますので、私がきょう申し上げたこと等については、これが社会党のというようなことではなくて、やはりここにおるものは、決して国会議員だけの数ではございませんで、三千万農民の声が結集されているんだということをお考えいただいて、御理解をいただきたいと思う点を申し上げたわけでございますが、農民から言わせると、全く希望が薄いという状態はなくなっていないと思います。後継者がなくなって、お嫁さんが来ないということ、これは社会問題化しつつあると思います。私ども、地域を歩いてみると、嫁が来なくて困る。嫁が来ないということは、種が切れるということになるわけです。これはまことにどうもたいへんなことになってしまうのではないかということが、社会問題としていわれておるのでございますので、もう少し腰を据えて、やはり真に農民が何を願い、何を考え——そうした中では、兼業農家などもなくなっていくであろうし、そういう中では、農家戸数の減少というようなこともなくなり、さらに田に希望を持って喜んで行なうところの姿も出てきて、大臣の言うような第二次革命的なものでなくても、私は、当然農民は希望のあるところにみずから動いていくだろう、こういうふうに考えるわけです。どうして農民を燃やすか、どうして農民みずからが希望を持ってやるか、私は、そういう中では、農民の所得というものがほんとうに安定して、ほんとうに持っていかれるものは何かということを考えて、価格問題等については、また価格か、また価格か、価格の話を言われると頭が痛いというようなことでお考えをいただかなくて、ひとつ価格保障制度の確立というふうな方向で、大臣御在任中に実現いただくように御注文いたしておきます。
  67. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 たいへん私も御質問の趣旨を間違えた点もあろうかと思いますが、しかし、真剣なその気持らというものは相通ずるものでございます。そういうことでありますので、私は、単なる議会だけの問題でなくて、全農民の問題である、最後のお話のように、希望が持てるようにしていかなければならぬのが私の責任でもあるし、また国民の一人としての責任でもあろうというふうに考えておりますので、今後とも努力を続けてまいります。
  68. 高見三郎

    高見委員長 林百郎君。
  69. 林百郎

    ○林委員 各委員から、それぞれの立場で、日本農業の問題についていろいろの掘り下げがなされ、質問もなされたと思いますが、私は、やはり日本農業一つの大きな曲がりかどにきておる要因としての農産物の輸入、ことにアメリカの余剰農産物の輸入、貿易の自由化によってもたらされる影響が、日本農業に非常に大きな影響を与えるのではないかというように思われるわけなんですが、昨日の湯山委員に対する農相の答弁によりますと、たいした心配はないだろうというような御答弁だったのですが、きょうの中村委員に対する答弁では、若干その点について農林大臣も心をいたしておるというように受けとめたわけであります。  そこで、農林大臣としては、貿易の自由化による日本農業への影響について、率直にいってどういうようにお考えになっているか。人に言わせるならば、貿易の自由化によって、生産農業としての日本農業は、ことに農政の面では、外国からの輸入農産物をどろいうように市場としてまかなうか、そういう市場農政に質的に変更せざるを得ないじゃないかというようなことすら言っておる人々もありますし、また、農林省の中でもそういうことを主張されている方々もいるようにわれわれは仄聞しておるわけでありますが、ここで率直に農林大臣の所見をお聞きしたいと思うわけです。
  70. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御指摘されるまでもなく、ここに一つの試算したものがございますが、米等につきましては、国内価格と輸入価格とを比較いたしますると、八一・六%から九九・八%、こういう数字が出ております。小麦は七〇・七%から七三・六%、加工用原料乳等につきましては輸入価格が五三・六%から七五%、こういうふうになっていまするし、肉牛あるいは肉豚等につきましては、肉豚等は一〇一・二%から一二八%でありますが、肉牛は五一・一%から八八・五%、こういうことになっていますから、自由化ということを何らの手を打たずに輸入を何かいたしますると、これは国際価格にさや寄せされるということになって、日本農業が壊滅する、こういうような状態に追い込まれる危険性も非常に多いと思います。でございますので、とにかくIMF八条国へ移行するとか、OECDに入るとか、あるいは関税一括引き下げとかいう問題がいま提示されておりまして、その国際的な関係を結ぶということになっています。しかし、私は、この前カナダ、アメリカからソ連を回った去年の九月ごろにも、アメリカで食糧危機会議等がありまして、ちょっと演説しろということでありましたので、私もその席で、日本の先ほどから言われております農業の零細性、日本の農産物が国際的に見れば非常にコスト高になっている、こういう事情をるる説明いたしたのであります。この間の日米閣僚会議等におきましても、そういう問題が出ました。私といたしましては、日本の農産物の中でも、自由化がいま九二%になっていまして、七十六品目くらい残っておりますけれども、米とか麦とか、あるいは酪農とか、あるいはでん粉等につきましては、これは当時輸入制限を撤廃して自由化するというようなことにはまいらぬ農産物でございますから、これはもうずっと続けて自由化という線に入っていくということは、私は避けるべきである。こう考えております。その他の農産物等につきましては、いままで自由化をしたものもございまするし、これから自由化するものもございます。これにつきましては、慎重に検討いたしまして、もし自由化をするという場合には、いままでもそうでございますが、関税定率の調整とかあるいは価格対策等、保護対策を講じて、そうして日本の農産物に自由化の波が手荒く押し寄せてこないような配慮をしていかなくちゃならぬと思います。同時にまた、農業政策といたしましては、一面いま進めておりますように、農業生産性を向上いたしまして、農産物がわりあいに安くできて、しかも手間に合うといいますか、そういうふうな方向に進んでいきたいと思いますが、当面する自由化の問題につきましては、それぞれの措置をとって、あるいはそのときにそういう財政的あるいは関税の税率、そういう方面等を整備して、そうして品目をきめていきたい、こういう態度で進めております。
  71. 林百郎

    ○林委員 所信表明の中に、「輸入の自由化の拡大、関税の引き下げ、輸入量の増加等の国際的要請は強くなることが予想されますので、それらの国際交渉においても、わが国農林水産業の特殊性と現状について十分説明し、諸国の理解と協力が得られるよう努力いたします」こう書いてあるわけなんです。そこで、わが国農林水産業の特殊性というのは、どういうことをさすのか、また、この現状について十分説明し、諸国の理解と協力が得られるよう努力するという諸国というのは、どこをさして、どういう機会にそういうことを大臣としては言われるつもりなのか、お聞きしたいと思います。
  72. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 日本農業が零細性であるという現実の事実、あるいはまた別の方面から見れば、農業人口も多い、こういうことで、いわゆる資本主義経営農業ではございません。農産物を売って賃金を取っておるという形が、いまの日本零細農の姿と思います。そういうことでございますから、農産物を生産するにつきましても、先ほど申し上げましたように、国際価格比較いたしましてまだコスト高、こういう事情を申し述べたわけでございます。どの場所でということでございますが、それは先ほど申し上げましたように、機会あるごとに話しております。ですから、アメリカにおきましても、世界飢餓食糧対策会議という会議にちょっと出ましたときにも、三十分ほどそういう説明をいたしております。あるいはこの間日米合同委員会等におきましても、その話をいたしました。またガット等の交渉の場等もあると思います。そういう国際的な場、あるいは条約を締結するというようなときにおきましても、そういう事情を説明してきたし、また、国内のその担当者というか、国際会議に出る人なども、私が出るとは限りません、そういう人に事情をよくのみ込んでもらって、国際会議に臨むようにしておる次第でございます。
  73. 林百郎

    ○林委員 農林大臣は、貿易の自由化による価格が、国際農産物の価格によってどのように影響されるかという面を先ほどから答弁されているわけですが、これは農林省も関係しております産業構造分科会の農林漁業小分科会の報告書でもおわかりのように、このような価格の影響が、要するに、非常に大規模資本主義的な農業経営をしておるアメリカの余剰農産物が無抵抗で日本へ入ってくることにより、またコスト安のそういうアメリカの農産物が日本に入ってくることによって、日本農業生産にどういう影響を与えるかということの試算があるわけです。これはもう大臣も御承知だと思いますが、たとえば牛肉では三三から四二%に生産が減少する、これはもちろん関税も完全に撤廃されたときの完全な自由化の例だと思いますけれども、牛乳が六二から六七%、麦が五〇から六〇%に下がって、それから農産物全体では二千百億から四千七百億円の生産額の減少を来たすだろう、それによって食糧自給度は三十六年度の八四%から、七三から七八%に低下するだろうということ、これは大臣も十分御承知のとおり、アフターケアに関する農林漁業小分科会の試算でございます。こういう生産面への非常な大きな影響を大臣は考慮をされているのかどうか。そして大臣が、非自由化品目についてはそういう影響があるので、十分慎重な態度をとられると言われておるのでありますが、この二月にはガットの総会がありますし、八月にはIMF総会がございまして、これへは自由化の計画表を提出しなければならないことになっている。これはもう大臣も御承知だと思うわけですが、そういう際に、日本の農林省としては、貿易の自由化に基づく農産物の保護政策についてどのような計画を提出されるつもりか。さっきから言われるように、七十何品目の非自由化品目がありますけれども、このうちの何と何は自由化し、何と何は非自由化品目にそのままとどめるのか、あるいは非自由化品目も漸次このような方向で自由化するということをお考えになっているのか。いずれにしても、これはガットの総会やIMFの総会にはほうかむりでいるわけにいかないので、これに臨む日本の農林省は、また農業政策の責任者である農林大臣は、どのようなお考えなのか、聞かしていただきたいと思います。
  74. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 個別の品目等についての表等につきましては、私いまここに持ち合わせをしておりませんので、ちょっと申し上げることができないのであります。
  75. 林百郎

    ○林委員 資料としてあとでもらえますか。
  76. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 資料としてお差し出しすることにいたします。再々申し上げましたように、大きなといいますか、ウエートの重いものにつきましては、輸入制限等を撤廃するという考えは持っておりません。お話しのように、こういう試算も出ておるわけでございます。自給度も八四から七二%になるというようなことや、価格の面がどのくらい下がるか、これもいま御指摘のように、関税率や何かも全然触れない、価格も現行の輸入価格だ、それから国内的な措置では価格対策等の措置もとらない、こういう大胆にやった試算でございますから、私は、そういうことがなければ、いろいろ国内的な対策とか何かをとらなければ、こういうことが起きるかと思いますが、再々申し上げましたように、自由にほうっておけばこういう形になるというような事情も述べ、そういう全く国内的の対策もとらないでフリーにやるというようなことは、全然考えておりません。ですから、ガットの会議とかあるいはIMF等におきましても、あらかじめ日本の事情を話してありますけれども、そういうところへ出る人等につきましても、この点は強調して、日本農業の特殊性、こういうことを相手方のいろいろな国々にも認識させる、そうして私どもの考えている方針を貫きたい、こう考えております。また、アメリカからの輸入等につきましても、制限しているもの等につきましても、ことばが悪いかもしれませんが、むやみやたらに輸入を進めるという考えは持っていません。
  77. 林百郎

    ○林委員 私が心配して先ほどあげた数字は、日本農業生産の面にまでの自由化の影響についての数字をあげましたのは、これが選択的な拡大品目で、日本農政としては、成長農産物の面として農林省が奨励をしている。これは日本農業生産面の大きな柱になるわけですね。先ほど中村委員もこのことは言われたと思いますが……。その生産が、米ですら九割程度に縮小される心配がある。ましてや他の農産物に至っては、牛乳に至っては三二から四二%くらいに縮小するというような数字が出ていることは、これは見のがすことができないわけです。  そこで、大臣は、アメリカのほうも、こちらの事情を無視して、そうは無制限に貿易の自由化による農産物の押しつけはないだろうというようなことを言われておるのですが、私がここに持っている資料だけでも、たとえばブロイラーの輸入でございますが、これはEECのほうははっきり断わっているわけです。それを、EECに断わられたからといって、日本へどっと入ってきた。こまかい数字はやめにしても、三十八年の七月に二十三トンだったものが、十二月には実に二千トンです。百倍になっているわけです。このブロイラーの二千トンというのは、日本の鶏の肉の全生産量と大体同じ量なのです。日本の一月の生産は二千五百トンですからね。こういう膨大なものががっと入ってきているということ。  それから養鶏の点からも、いわゆるバイライン系の鶏が入ってまいりまして、親鶏が三十八年の一月から十二月に百万羽入ってきておりますが、これが卵を生んでふえまして、大体五千万羽程度を養鶏することになるだろうというようなことになりますと、これはわが国の養鶏の約半数がアメリカ系バイラインの鶏で占められてくるという数字が、もう現実に出ております。  それからマイロの輸入にしましても、三十四年に一万六千トンだったものが、三十八年には実に八十万トンになっておる。日本の大麦やトウモロコシが、採算がとれないからといって農民につくらせないでおいて、漸次アメリカのマイロを入れさせて、そうして日本の配合飼料の大きな柱をマイロにしてしまって、マイロになったら、とたんに配合飼料の値段がぐっと上がってきた。要するに、日本の配合飼料の大きな柱をアメリカが握ってしまって、そうして今度は値段をぐっと上げてきている。たとえばこの二月になって、一月に比べて、配合飼料の値段がトン当たり三千円、マイロが三千五百円、こういう値上がりになっているわけです。このような飼料の値上がりによって、農家の支出増が約百六十五億円という数字も出ておるわけです。こういう日本農業事情を考慮することがはなはだ薄く、私はほとんど考慮しないといってもいい。そういうアメリカの農産物の輸入の増大の中で、農林大臣考えているように、非自由化品目については、これはどこまでも守り通すつもりかどうか。少なくとも本年度のガットの総会あるいはIMFの総会においては、今日の非自由化品目のうちの先ほど大臣のあげられたようなものについては、これは関税の点においても、あるいはその取り扱いについても、非自由化品目として条件を変えないという御主張なのでしょうか。
  78. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 重要農産物等につきましては、輸入制限を撤廃するという考えは持っておりません。その他のものにつきましては、先ほどから繰り返し申し上げておりまするように、関税定率の調整とか、あるいは国内の保護価格対策と相まってといいますか、それで自由化をする場合には自由化をしていく、こういう考えでございます。たとえばいま御指摘のブロイラーが三十八年度三千トンばかり……。
  79. 林百郎

    ○林委員 三十八年の十二月ですよ。これは二千トン……。
  80. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私は、三十八年度中のことを申し上げておるのでございますが、三千トン。国産が三万三千トンでございます。
  81. 林百郎

    ○林委員 一月ですよ、年でなく。年に三万三千トンですか、日本の鶏の肉のあれが。
  82. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 三万三千トンという話を聞いております。これなどにつきましても、近く関税定率の改定というようなことも御審議願うことになるかと思います。これは一つの例でございますが、国際社会に入っておるのでございますから、何が何でも封鎖経済というわけにもまいりません。しかし、日本農業日本の農産物に悪影響のないような形で、自由化するということにいたしましてもやっていく、こういう再々申し上げておるような方針でございます。
  83. 林百郎

    ○林委員 過去の実績からいって、大臣のそういう主観的な意図はわかるけれども、それがいま置かれているアメリカと日本との国際的な関係、経済的な事情、そういうものから守り通せるかどうかということを私はあなたに聞いておるのですよ。あくまでも守る、少なくとも輸入自由化によって、日本選択的拡大の農産物に対してくらいは守っていくのだという信念が貫かれるかどうか。過去の実績が非常に憂うべき状態でありますので、私はそのことをあなたに聞いておるわけです。たとえば非自由化品目の中に果実加工類がありますね、トマトの加工類とか、果実ジュースとか、こういうものはやはり非自由化品目としてこのままとどめられるのですか、自由化なさるのですか。
  84. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 守り通せるか——絶対に自由化はしないのだということで守り通せということですと、私はその点は守り通せません。しかし、重要農産物等につきましては、それは守っていきたい。それから守り通せるかという問題が、国内対策をしないでやるかやらないかということになれば、私は、国内対策を講じてあるいはそれと同時にやる、こういうことで守るというならば、国内的に守れると思います。  それから果実ジュースその他につきましては、いま早急に自由化するという意図は持っておりません。
  85. 林百郎

    ○林委員 早急でないが——ことばが非常に微妙ですから……。国内の施策とまって、自由化の方向もできるだけやるけれども、できるだけ影響のないような施策をとっていくが、それは絶対に現状のままというわけにはいかない。しかし、そのためには、国内の施策を並行して施行していくということでしょうね。  そこで、お聞きしますが、それでは自由化に備える国内の施策、これは所信表明の中にも重要な一つの柱として農林大臣は心しておるようでございますが、それをなるべく具体的にお聞きしたいことと、それからトマト加工類や果実ジュースについては、いますぐ自由化はしないが、本年度中くらいには自由化に踏み切るのですか。
  86. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 現在国内の改良等につきまして手をつけております。でございますから、先ほどお話がありましたように、そういう対策をまってということにいたしたいと思いますから、そういう意味で早急というわけにはまいりません、早急にやるつもりはございません、こういうことを申し上げた次第でございます。
  87. 林百郎

    ○林委員 ですから、国内の諸施策というのは、どういう諸施策を自由化に備えておやりになるのか、それをなるべく具体的にお聞きしたいということです。
  88. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その点につきましては、こまかいことでございますので、トマトあるいはジュースの問題につきましては、事務当局から答弁いたさせます。
  89. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 トマトの加工につきましては、三十九年度予算で加工用トマトの生産合理化の対策というものを若干計上いたしまして、そういった面で生産の合理化をしたい、そう考えております。
  90. 林百郎

    ○林委員 わかったような、わからぬような答弁なんですが、なお具体的にそれじゃ数字を少しお聞きしたいのですが、たとえばバナナの輸入ですが、これは日本のくだもの、果実生産、たとえば長野県のリンゴ、ナシ等の生産に、価格の面で非常に大きな影響を及ぼしているとわれわれは考えておるわけです。それは消費者がくだものを買うことのできる出費の幅というのはきまっていますから、バナナがだあっと入ってきて、くだものを買うことのできる出費の幅の金がそっちに回れば、これは相対的にリンゴやナシを買う金で少なくなりますから、それはそういう面でナシやリンゴの値段に影響してこざるを得ないわけです。大臣は、それは生産が過剰であるからと言う。しかし、選択的拡大で、増産しろ増産しろと言っておいて、できたから値段が下がるのはあたりまえだというのは、いかに弔不親切な話だと思うわけです。具体的にお聞きますが、バナナの輸入は三十八年度は幾らで、三十九年度はどのくらい入れる予想なんですか、量はおわかりですか。
  91. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 事務当局から答弁いたさせます。
  92. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 バナナの輸入量につきましては、三十八年度は大体二十七、八万トンになるだろうと予測しております。それから三十九年の予測はなかなかむずかしいのでありますけれども、たとえば港湾施設の問題とか、あるいは台湾の場合には供給力にも限度があるといわれますし、そういった面で、そうそうこれ以上にはふえないのじゃなかろうかというふうな予測をいたしております。
  93. 林百郎

    ○林委員 大体昨年並みのものは入ってくるということですか。
  94. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 昨年並み程度は入るのじゃないかということです。
  95. 林百郎

    ○林委員 それじゃもう一つ念のために聞きますが、マイロについてはどういうふうになりますか。
  96. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 マイロにつきましては、三十七年の輸入量は、通関統計で見ますと約四十二万トンでございます。三十八年は、まだ輸入年度が終わっておりませんのでわかりません。
  97. 林百郎

    ○林委員 いままでの実績でいいのです。
  98. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 現在までの実績は、大体六十万トン程度までは入っていると思います。
  99. 林百郎

    ○林委員 そんなものですか。
  100. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 マイロについてはそんなものです。おそらく本年全体を通じますと七十七万トン程度にはなると思います。マイロにつきましては、国内にはほとんど生産がないわけでございまして、最近のマイロの国内の飼料関係の伸びから見ますと、将来もマイロの輸入量は増大せざるを得ないのじゃないか、こういうふうに思っております。
  101. 林百郎

    ○林委員 アメリカのマイロにかわる飼料に該当するものは、日本農業ではできないというお考えなんですか。たとえばトウモロコシだとか、大麦だとか、配合飼料の材料がいろいろあるわけです。こういうものは価格の面で押えてしまって、農民は生産の意欲をなくしてしまって、そうして生産できないような状態にしておいて、マイロを入れて、いまの日本農業の実情ではマイロにかわるものはありませんから、輸入を増大しますということは、これは日本農政を担当するものとして、いささか無責任じゃないでしょうか。アメリカの余剰農産物を入れるために、むしろ日本農民の生産を押えていくということを言われてもしかたがないと思うのですが、どうお考えになりますか。
  102. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 その点はちっと思い過ぎじゃないかと思うのです。アメリカのものを入れるために日本のものを押えたということでなくて、日本農業自体が、大麦がそれほど採算性を持たなかったというような形で、一時大麦の転換を、ほかの作物にするというような奨励というか、いたしたことがあります。結果から見れば、そういう話は出るかと思いますが、特にマイロを入れるために日本の飼料作物を押えた、こういうことではないわけでございます。したがいまして、非常に輸入のえさが多いので、いま五八%くらいでしょうか、えさのうちの輸入は……。ですから、自給飼料といいますか、草地の造成等もその一つで、大々的にやろうと思っているのでございまして、日本の輸入量をなるべく減らしていきたい、こういう方針でそれは進めておるわけでございます。
  103. 林百郎

    ○林委員 そうすると、その輸入が増大されると考えられるアメリカ製のマイロが、今月に至って値段がトン当たり三千五百円上がったということは御承知ですか。そういう事実はありますか。
  104. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 マイロにつきましては、昨年の八月ごろから、いわゆる昨年の世界的な穀物の不作の問題、それからソ連の穀物の買い付け等……。
  105. 林百郎

    ○林委員 マイロのことを聞いているんですよ。
  106. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 そういう影響を受けまして、飼料穀物全般に値上がりの傾向がありましたのと、九月の暴騰がありまして、大体昨年の十二月には、四月に一万九千二百十八円程度ということでございましたのが、二万一千八百十五円というように、約二〇%の値上がりを見たことは事実でございます。
  107. 林百郎

    ○林委員 金額にすると、トン当たり三千五百円というのでいいですか。一%というのはどういうことですか。私は金額のことを聞いているのです。
  108. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 比較の時期をどういうふうにとるかということでございますが、マイロの最も安いといいますか、三十七年の安定的でありましたときの年間平均をとりまして、十二月と比べますと、お話のような値上がりの額になっております。
  109. 林百郎

    ○林委員 そこで、日本農業生産できないもの、あるいは日本農業生産量が不足しているものをアメリカから入れているんだ、だからそれは日本農業との関係においてはそう不合理性がないんだということを盛んに言っておられるように思うんですがね。それは農林大臣無理もない、立場がそういう立場だ。そう言われるのは、われわれわからないことはないんですけれども、そういう論法から申しますと、われわれどうしてもわからないのは、これは中村委員も、それから社会党の湯山委員もお尋ねになっておりますが、脱脂粉乳の輸入の問題ですね。これはどうしてもわれわれわかりませんので、お聞きしたいのです。この脱脂粉乳の輸入については、これは法制的に、機構的に、日本がどうしてもこれを輸入しなければならない強制力を受ける何か根拠があるのですか。これは日本政府とアメリカの政府、あるいは日本の輸入業者とアメリカのCCCですかとの間の話し合いでできるものかどうか、お聞きしたい。昔は違います。最近です。
  110. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 別に輸入しなくちゃならないという義務を負っておるものではございません。
  111. 林百郎

    ○林委員 そうしますと、日本で約三百八十万石くらい学校給食になま牛乳が必要だというのに、農村は四十万石だけなま牛乳を入れたから、これは積極的な施策じゃないのじゃないかと思いますけれども、しかし、三百八十万石必要な学校給食のなま牛乳に対して、脱脂粉乳の輸入あるいは在庫量が約八万五千トン、これはなま牛乳に換算して九十九万五千トン、石数にしますと約四百万石以上になると思いますが、そういう膨大なものをなぜ入れなければならないのか。しかも、漸次農林大臣はなま牛乳に切りかえていくと言いますけれども、全学校で給食を実施しても約三百八十万石で足りるわけなんです。しかも、日本の酪農の年の生産は、約二百万くらいずつ非常な困難の中で増産をしているというのに、どうして日本のなま牛乳をわずか四十万石、全学校で給食に必要な量のわずか一割ぐらいしか日本のなま牛乳を使わなくて、そして全学校の給食に使っても余るような量の脱脂粉乳を——しかも子供の八割以上は飲めない。私は、実はこの質問をするために、昨晩自分の娘に聞いたわけです。おまえも学校で脱脂粉乳を飲まされたか、それはお父さん飲まされるが、まずくて、私は便所に行って吐きましたと言っていました。これは何も私の娘ばかりでなくて、聞いてみると、みんな飲めなくて困っているわけです。そういうものを、しかも、さっき農林大臣の話によれば、入れなければならない強制力を法律的にも機構的にも持っておらないというものを、なぜ入れるのか。もしそれだけの余力があるなら、これをもって日本の酪農の振興に意を尽くし、生産価格の点で政府がしっかりと責任を持つような対策をとれば、日本のなま牛乳で私は十分足りると思うのです。どうしてこんなたくさんの量を入れなければならないのか、聞きたいと思います。
  112. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 四十万石にかえようというのは、ことしから例の予算の審議も願っておるわけでございますが、従来の経過がありましたので、いまお話のように、計画としては八万五千トンの輸入計画を三十八年度に持っております。一般用のほうはずっと減らしまして千九百五十トン、こういうふうにいたしております。それで、全部供給量があるからやったらよろしいじゃないかというお話でございますが、一律にそうやることも困難な事情もあります。たとえば北海道は主産地でございますし、また岩手県も主産地、また東京等はそういうものが主産地ではないという面もありますし、輸送の計画やら、あるいはいろいろな設備等の問題もございます。そういう面と勘案いたしまして、数字的にはそれだけ生産するのだから、それをみな持っていったらいいじゃないかという御意見も立ちますけれども、逐次なま牛乳にかえていくということが、混乱を起こさずにやっていける方法だ、こういうことで、実は四十万石というめどをつけて来年はやろうとしておるので、逐次ふやしていく、こういう予定を持っているわけであります。
  113. 林百郎

    ○林委員 それではお聞きしますが、三十九年度の脱脂粉乳の輸入計画はどういう計画ですか。
  114. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのところでは、六万七千七百七十二トンということが計画になっております。
  115. 林百郎

    ○林委員 そうすると、在庫はいまどのくらいあるのですか。
  116. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 在庫は、大体三ヵ月分くらいのランニング・ストックを必要とするということでありますから、二万四、五千トン程度が在庫になっておると思います。
  117. 林百郎

    ○林委員 そうすると、二万四、五千トンの在庫で、三十九年度は約六万トン入れると、やはり八万五千トンの量は三十九年度も確保する、そういうことですか。
  118. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 文部省の計画でございますので、私から責任のある答弁をいたしかねますが、全国の学校に配給をいたします関係上、相当量のランニング・ストックを必要とするそうでございますので、ただいま申し上げました数量の合計が供給量ということではないということでございます。
  119. 林百郎

    ○林委員 そうすると、脱脂粉乳のほうの供給量はどのくらいふえるのですか。
  120. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 これも私どうも責任を持っては申しかねるわけですが、ただいまの供給計画六万七千トンというものが、学校給食用の供給計画と了解いたしております。
  121. 林百郎

    ○林委員 そうすると、三十八年度の供給量は幾らですか。
  122. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 三十八年度の脱脂粉乳の供給量は、これもまだ供給期間の中にあるわけでございますので、確たることは申し上げかねますが、大体六万五、六千トンというような数字になるのではないかと推定されます。
  123. 林百郎

    ○林委員 そうすると、脱脂粉乳のほうの供給量は三十八年度と三十九年度は大体同じだということなんですか。
  124. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 これも文部省の説明を聞きましたところの記憶では、三十八年度はミルク給食の全面実施の初年度でありますために、スタートがおくれたというようなことから、三十八年度計画どおりの供給量がされなかったというようなことで、三十九年度には供給の範囲の拡大というようなことが考えられるというふうなことを聞いております。
  125. 林百郎

    ○林委員 そうすると、六万何千トン脱脂粉乳を配給する、石数にしてどのくらいになるのですか、なま牛乳のトン数に換算して、それを石数にしますと。
  126. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 六万七千トン、石数をどういうふうにして出すか、計算のいたし方でございますが……。
  127. 林百郎

    ○林委員 大体十一、十二倍をして……。
  128. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 小学校は、一食について二十六グラムの脱脂粉乳を供給しているようでございますので、それをなま乳一合で給食に切りかえるという計算をいたしますと、約二百六十万石程度になるかと思います。
  129. 林百郎

    ○林委員 私どもの計算では大体三百万石をこすと思いますよ、六万何千トンの脱脂粉乳というのは。さっき農林大臣は、全学校の給食に必要なのは三百何万石だと言ったでしょう。そうすると、ほとんど脱脂粉乳でまかなわれてしまって、日本の四十万石ぐらいのものは脱脂粉乳の一割四、五分程度、それを入れたからといって、それが一体脱脂粉乳に対する日本の酪農振興施策と言えるのでしょうか。しかも、私が非常に心すべきことと思うのは、先ほどたしか中村委員の話にもありましたけれども、この脱脂粉乳を日本学校給食会が約一五%ぐらい横流しをして、これは腐ったとかいっている、それは二ヵ月もかかってくるのですからね。一グラムのばい菌の許容量が日本のなま牛乳は五万、これは三十万ぐらいですから、もともと糖分が非常に多いのですから、腐ったような形になる。あるいは紙の袋だから破ける。これを横流しする、横流しすると、値段が三倍に上がってくる。それで、われわれの飲んでいるたとえばフルーツ牛乳なんというのは、原価が三円五十五銭、メーカーが十一円七十銭、市販で二十円。コーヒーミルクが原価が三円、メーカーが十一円、店頭小売が二十円、デラックスは七円五十五銭、メーカーが十四円、小売が三十五円というのは、べらぼうなもうけの種になっておるわけです。われわれの聞くところによれば、これによって学校給食会も二、三十億の利益を得ておる。その利益をえさにするかどうか知らないけれども、文部官僚が巣くってしまっておる。私は農林官僚でなくてよかったと思っているのですが、そういう不正と悪の材料になっておる。子供のほうは下痢をする、吐きっぼくなる。それは一グラムの中にばい菌が三十万もいるのですからね。日本の農民がせっかく苦労してつくっているなま牛乳、しかも、父兄の負担もわずか一合八円五、六十銭でいいわけですから、こういう形に思い切って切りかえられないかどうか。私はいろいろ資料を調べてみましたが、日本のなま牛乳が高いとか安いとか言いますけれども、なま牛乳の一合の値段は、デンマークの生産費が三円二十五銭、日本は四円二十二銭で、世界で二番目に安いのです。決して日本のなま牛乳は高くないわけです。しかも、なま牛乳を種にしてバターやいろいろの製品をつくって、その製品の価格の比率は、日本は一〇〇%もうけておる。よその国でなま牛乳を材料にしてバターやいろいろつくってもうけている分は、安いところは四八%のもうけしかしていない。要するに、乳製品のメーカーは非常に大きなもうけをしている。その大きなもうけをしているメーカーが、脱脂粉乳をてこにして、世界で二番目に安いなま牛乳をさらにたたく材料にしている。たとえば長野県なんかでは、昨年八月に一升二円の夏場奨励金を削ってしまっているわけです。こういうことを許しておいて、農民に生産意欲を出せと言っても無理だと私は思うのです。そういう点を大臣はどう考えておるか。脱脂粉乳を三百万石以上も使って、日本のなま牛乳はわずか四十万石くらい入れて、きょうも聞くと、それじゃそれをどうして全部なま牛乳に切りかえていくかというと、農林大臣の答弁ははなはだ心細いのです、五年くらいになりましょうかなんて言っているのですから。ことに選択的拡大で奨励しているものですから、もう少し真剣に……。長野県なんかどうしているかというと、そろそろ酪農はだめだ、だから肉牛にかえろと言っているのです。肉牛にかえたらどうかというと、アメリカから肉が入ってきて、肉の値段が半分になっているでしょう。農民はどこに行っていいかわからない状態なんです。そういう状態の中で、農林大臣はもっと積極的に、悪の材料になっている脱脂粉乳の輸入を阻止して、日本の農民のつくっているなま牛乳を日本の将来をしょって立つ子供たちに飲ませる、こういう方向について、もっと積極的な施策をとる意思がないかどうか。お互いに子供を持つ親の身になってみれば——農林大臣はお年寄りだから、そんな子供は持っていないかもしれないけれども、学校に行ってばい菌の三十万もあるようなものを飲まされて、女の子なんか先生の前では言えないものだから、便所に行って吐いているわけです。そういうことを日本の子供にさせておいて、しかも、農民のつくる牛乳の値をたたいて、私のほうのあれによりますと、酪農の赤字で三十年から三十五年の農民の赤字が三百二十億、とても採算に合わないというような数字が出ておるわけです。一方メーカーのほうの利益は、雪印、森永、明治を合わせて、公に出ている利益だけでも、約二十三億円というような膨大な利益を出している。かまわなければ、われわれは雪印、明治、森永を行政的に押えても、なま牛乳の生産に意欲を持たせるような政策をとることが必要じゃないかと思うわけですが、この点について大臣はどういうようにお考えになりますか。
  130. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 一々ごもっともな御意見でございます。私も別に熱意がないわけではございませんが、切りかえについていろいろ検討をさせたのでございますが、四十万石以上は三十九年度としては諸般の事情から非常に困難だということでございますので、私は四十万石であきらめたのでありますが、しかし、脱脂粉乳を減らしてなま牛乳にかえていく、こういう方針につきましては、再三申し上げておりますように、ぐらつきもしませんし、その方向は強く進めていきたいと思います。
  131. 林百郎

    ○林委員 農林大臣、あなたは非常に人柄が円満なものだから、やはり最後の一線にいくとがまんしてしまう。しかし、この日本農業の危機にあたって、そのあなたの人格の円満さがプラスになるかマイナスになるかということは、われわれは考えなければならないと思います。たとえば大平外務大臣は、平衡交付税をやめてくれれば脱脂粉乳を十万トン入れてまいりますと言った。農林大臣に黙って、ワシントンに行って話しておるんですよ。そういう不届きなことをやって、農林大臣はやむを得ずがまんいたしましたと言ったら、けんかにならない。だから、農林省の機構改革の中では、畜産局や蚕糸局はやめてしまえ、振興一つにしてしまえというような失礼な、皆さんから見たら憤慨にたえないようなことが、平気で通るようなことになると思います。やはりあなたの人格の円満さが、ここではむしろマイナスになってしまうのではないか、やはりけつをまくってもそういうことには戦って日本生産農業を守らなければ、これはたいへんなことになるのじゃないかと思います。  それで、時間がまいりますので、結論を申し上げたいのですが、結局農林大臣が、そういうふうに日本生産農業を守るという考えを腹に入れて戦われれば、日本の一千万の農民はあなたを支持いたしますし、日本の国の自主性を守るという点については、みんなが援助するわけでありますから、もう少しやはり自主性のある平等互恵の貿易をし、ことにあなたの言われるように、日本農業には特殊性がありますので、それをぶちこわさないような、貿易の自由化に対する強力な施策をする必要があると私は思います。これは何も日本だけでとれというわけではありません。西ドイツのフランスとEEC関係から見ましても、コストの高い西ドイツとコストの安いデンマークやフランスなどの農業関係というものは、決して日本とアメリカなどの関係のように機械的にやっておらないわけであります。同じ同盟国の中でも、アメリカの余剰農産物のはけ口を求めるのが日本農政一つの柱になるようなことになってはたいへんだと思いますので、その点について確固たる信念を持って日本農業生産を守られる意思があるかどうか、最後に農林大臣からお聞きして、時間がまいりましたから、打ち切りたいと思います。
  132. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いろいろ御注意もありましたが、私も農業生まれでございますし、責任のある農林大臣でございますので、日本農業、農民を守るためには、こん身の努力をいたします。ただ、さっきちょっと触れましたように、四十万石であきらめたということは、私はことばが悪かったようですが、あきらめたというわけではないのですが、いろいろ諸般の事情を考えて、数字だけを大きくしても、実際に入らないで、途中で中絶してしまったりすると困ると思ってやったのでありまして、あきらめたということばが、何でも言うなりになるという意味にとられると困ります。そういうことではございませんから、しっかりやっていくつもりであります。
  133. 高見三郎

    高見委員長 次会は、来たる十一日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時散会