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1964-02-06 第46回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月六日(木曜日)     午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 高見 三郎君    理事 小山 長規君 理事 坂田 英一君    理事 谷垣 專一君 理事 長谷川四郎君    理事 赤路 友藏君 理事 足鹿  覺君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    大石 武一君       大坪 保雄君    加藤 精三君       亀岡 高夫君    仮谷 忠男君       吉川 久衛君    小枝 一雄君       笹山茂太郎君    舘林三喜男君       寺島隆太郎君    内藤  隆君       野原 正勝君    八田 貞義君       藤田 義光君    角屋堅次郎君       栗林 三郎君    東海林 稔君       中澤 茂一君    楢崎弥之助君       西村 関一君    野口 忠夫君       松浦 定義君    湯山  勇君       稲富 稜人君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (農地局長)  丹羽雅次郎君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         食糧庁長官   齋藤  誠君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   庄野五一郎君  委員外出席者        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 二月四日  委員伊東隆治辞任につき、その補欠として篠  田弘作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員篠田弘作辞任につき、その補欠として伊  東隆治君が議長指名委員に選任された。 二月三日  保安林整備臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第四六号)  中小漁業融資保証法の一部を改正する法律案(  内閣提出第四九号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件      ————◇—————
  2. 高見三郎

    高見委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。主として前回の農林大臣の説明に対する質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  3. 湯山勇

    湯山委員 ただいま委員長から御発言のございましたように、先般の大臣の御所信の御表明に対しまして、若干の質問をさせていただきたいと思います。  まず、さきの解散前の臨時国会あるいは特別国会等において、農業に対する施策は、革命的なあるいは革新的な施策をやるのだという総理の言明がございました。従来、画期的な施策をやっていくとか、あるいは飛躍的な施策を行なうのだとか、そういう表現がしばしばございましたけれども、革命的あるいは革新的、こういう表現を使われたことは、きわめて私は特徴的なものであると思います。  そこで、三十九年度から特にそういう意味での革新的な施策、こういうものをやっていくというお心がまえ農林大臣はお立ちになっておられるのかどうなのか。もしそうだとすれば、それは、革新的というようなことばは従来と大きく方向を変えていくということでなければならないと思うのですが、その点に関するお考えもあわせて承りたいと思います。
  4. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのお話のように、画期的とかというようなことばを使っておりましたが、あまり革命的というようなことばはオーバー過ぎたような気がいたします。革命ということになると、まるっきり現状を転換するといいますか。裏表に変わったようなことに一般にはとられます。常識的には少しオーバー的に革命的と言ったようですが、総理も革新的と途中で改めたようでありまするし、革新的な気持ちでというような気持ちをあらわしたものと御了承願って、私は、画期的とかそういう意味農政を推進していきたい、こう考えたわけであります。  しからば、従来の方向相当大きく違っておるかといえば、そう大きく違っておるとは思いません。しかし、方向づけとして、従来も考えないわけではなかったと思いますけれども、たとえば土地基盤整備ということを私は強く政策一つに打ち出しておりますけれども、その土地基盤整備も、従来は従来どおりに踏襲していた傾向がございました。しかし、何といたしましても、農村事情相当変貌いたしております。農業就業人口も減りつつありまするし、あるいはまた米麦のほかに果樹畜産のほうへも相当方向づけをしております。同じく土地改良ということでありましても、近代化といいますか、機械化あるいは選択的拡大方向に沿うように、そういうところに重点を置いて土地改良などもやっていくように、こういう方向に変えたわけでございます。  あるいはまた第二の農業構造改善等につきましても、実態となかなか沿わない面もありまするし、盛り上がり場所によってはありますけれども、場所によってはない、こういう情勢でありますから、こういう面についての推進しいいような方向へ強化していく、こういう面。  第三の点につきましては、御承知のように、また農業農山漁村民生活を安定してよくやっていけるような方向に近づけなければならないと同時に、国民食糧をあずかっている関係から、流通価格対策等について前進を進めていく、あるいはまた考え方として、農業は他産業に比較いたしまして脆弱な基盤にあるし、また農業そのものが、日本農業ばかりでなく世界的に見ましても、他産業と同じような進め方をし得るというのには非常に困難な状況にありますから、そういう面において農業に対して国が相当これを助成していく、こういう考え方は全然改めようとはいたしません。が、同時に国内的にはそういうふうに他の産業との均衡を得たような方向へ持っていくのに骨が折れる。一方国際的には、貿易の自由化その他国際的な農業の波にさらわれざるを得ないような国際関係状況にあります。そういう意味におきましては、政府も十分に農業等に力をいたさなければならないと同時に、この変貌する農山漁村に対しまして、農山漁村人々もみずからの体質改善であるから、みずからもこれは立ち上がらなければならぬ時期に際会している。こういう点から考えますると、いま申し上げましたように、国の助成というものを改めるとか減らすという気持ちは持っておりませんけれども、同時に、自分もひとつ自分資金によって体力を増強していこうという盛り上がりといいますか、そういう気分が出てきてもらいたい。そういうことによって国の農業政策も生きていくのじゃないか。そういう面から、その方面盛り上がりということを期待いたすのでございますけれども、ただ期待だけでは困ります。それからまた自分で負担する、自分から金を出していくという力ももちろん少ない農山漁村状況でございますから、資金を獲得して、その資金を投入して近代化あるいは体質改善というような方向へ持っていくのが、より以上この体質改善に力をつけるゆえんじゃないか。こういう意味におきまして、財政投融資あるいは金融面相当力入れまして、資金のワクの拡充あるいは金利の低下、あるいはまた貸し付け条件簡素化、こういう方面に力を入れて、みずからも立ち上がるのだ、しかし立ち上がる力がなかなかないから、金融によってひとつこれは長い期間に償還していくという形で体質改善をしていこう、こういうような方向へ持っていくべきじゃないかということで、財政金融面、ことに金融面において力を入れる。  これらを総合してみますると、まあ革新的——革命的とは私はとても言い得ないと思います。見方によって革新的でないという見方もございましょう。そういうことであれば、何も革新的ということばには私はこだわりません。しかし、方向といたしましては、いま申し上げましたような方向で変わりつつある農村、変貌しつつある農村実態に即して、農業政策方向相当、まあ変えるというほどではございませんが、方向づけにおいていささか、新味とは言い得ないかもしれませんが、重点を置いた、こういうようなことでございます。
  5. 湯山勇

    湯山委員 ただいま大臣の率直な御表明によりまして、お考えのところはよくわかりました。  ただいま大臣から御答弁をいただきましたような意味のことがこの間の御所信表明にもございまして、それによりますと、いま実際に日本農業が当面しておる大きな壁、あるいは個々の農家が非常に将来に対して不安を持っている、そういうものに対する取り組みが、はたしてこれでできるかどうかということについて、むしろ大きな不安を持つものでございます。大臣の御所信は、ただいまお述べいただきましたようなことがこういう形で述べられておりました。他産業との格差は、金融引き締め等の影響を受けてだんだん縮まってきておる。近代化は次第に進んでおる。農家所得も伸びておる。生産性生活水準もおおむね順調に向上しておる。労働力減少農業近代化楔機である。トラクター等もふえておる。一町五反以上の農家は着実にふえてきておる。それから畜産果樹中心に経営の高度化も進んできておる。高所得農家が次第に力強く形成されてきておる。ただ心配なのは、いまの状態では人口減少が直ちに近代化につながらない。農業人口は減っても戸数は減らない。あるいは後継者確保に問題がある。こういう点にはお触れになっておりますけれども、総体的には今日までの行き方を肯定されて、むしろこれを称賛しておるというような印象さえも受けまして、その中に、ほんとうにいまの農業はこういう状態ではいけない、いま何とかしなければいけない、言葉で言えば、そのために革新をしなければならないのだ、こういう意欲が若干見られないのではないかということを感じましたので、最初のような質問を申し上げたわけであります。そこで、私は結論から先に申し上げますれば、幾らかの新味というような程度ではなくて、やはり革新的な政策をこの際打ち出すべき段階ではないかということを中心にして、大臣お尋ねをしてまいりたいと思います。  まず、農家生活、経営しておる農業の将来の問題はあとにいたしましても、一体日本農業使命は何かというような点についても、明確にされていない点があると思います。私ども、従来農業使命というのは、大きな使命食糧確保であるということを言われておりましたし、大臣の御所信の中にも、食糧生産食糧の供給という使命を達成していくということが述べられておりますが、一体食糧自給に対してどういうお考えを持っておられるのか。こういう点はわかり切ったようでなかなか明確にされておりませんでした。イギリス等においても大体五〇%は自給しておる。西ドイツはああいう状態の中で、日本と同じように兼業農家が多いというようなことを言われながらも実際には七三%程度食糧自給を達成いたしております。そこで、政府の根本的な政策一つとして、食糧自給するのだというおかまえなのか、あるいはできるだけ自給して、足りない分は輸入するのだという心がまえなのか、その辺をこの際明確にしていただきたい点だと存じます。
  6. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 この間の所信表明の中で、総体的に言えば非常に楽観ムード的な所信表明でないかという第一点でございましたが、実は決してそう楽観しておるわけではありませんで、あのときも申し述べましたように、三十七年度におきまして、いささか格差の縮小とか、あるいは生活水準の点で、他産業、ことに製造業などに比較して上がっている面がありまして、ちょうど農業白書といいますか、年次報告の御審議を願っておりますが、そういう面で三十七年度の問題がありましたので、三十七年度においてはそういうふうに幾分よくなってきておる、しかし、全体として見れば、決して他産業との格差が是正されるということでなく、問題が相当これからも残っておる、こういう意味で申し上げておったのでございます。ただ問題は、他産業との格差もありますけれども、農業自体をずっと振り返ってみて、明治の初め、あるいは昭和の当初の農業恐慌時代、それから戦後、こういうものから考えてみれば、農業自体としては、その当時よりは相当進んでおる、推進されておる、しかし、全体として均衡のとれたものではないというような意味を申し述べておいたわけでございますので、その点御了承願いたいと思います。  そこで、一体食糧というものを充足するのが、農民あるいは農業としての政策一つ使命ではないか、こういうお尋ねでございますが、先ほど申し上げましたように、私ども農山漁村生活の安定、こういうことを深く重点的に考えていくと同時に、国民食糧を充足させる使命といいますか、させなければならぬということは、当然考えなければならぬ問題でございます。特に戦後、農民努力といいますか、そういうことによって、戦後の非常な混乱状況食糧不足時代を克服して、食糧相当充足されてきた。これが大きく言えばいまの日本経済成長基盤をなしておることに寄与しておる。これがそうでなくて、食糧が充足されないで、国内が不安である、あるいはまた食糧輸入日本の外貨を相当使わなければならぬ事情だということでありまするならば、日本経済成長というものがこういうふうには達せられない、こういうふうに私は認識しておるわけであります。そういう意味におきまして、やはり日本食糧というものは日本で充足し得るような政策方向を続けていくということには、私は御同感でありまするし、その方針で進めておるわけであります。安いものがあればどこからでも買っていこう——これは米麦等農産物も、資本主義社会におきましては一つ商品でございます。商品でございますが、ほかの商品と同じように、安いものを買って、高くつくならつくらぬでもいい、こういうようなことは、私は間違いだと思います。そういう意味におきまして、やはり国民食糧というものは、自給していく方向相当強く続けてまいりたい。ものによりましては、国際的な流通商品的なものがございますから、そういうものは別といたしまして、主要食糧等におきまして、充足していく、こういう方向にもっていくことは従前と変わりがないし、御意見にも賛成でございます。
  7. 湯山勇

    湯山委員 それで、一体どの程度自給するのか、あるいは主食については完全に自給するのだ、全体の食糧については何%程度自給する、こういうことについてお考えがおありでございましょうか。もう一度申し上げますと、主食については完全に自給していく、その他のものを含めた全体の食糧についてはどの程度自給していく、こういうことについてのお考えがおありでございましたら、お伺いいたしたいと思います。
  8. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 米等につきましては、ほとんど自給程度にいっております。あるいは所得倍増計画そのものが、計画としてそのままとは言いません、一つの目標的なものを農業におきましてはもっておりますが、これなども御承知のように、米をどの程度に増産していこうというそのテンポはもとどおりではございませんけれども、決してこれを捨てておくというわけではございません。そういう意味におきまして、主食等、その他食糧自給をどの程度ということでございますが、現在は食糧全体といたしまして大体八四%ぐらいの自給率を持っています。ただ、食糧の点につきましても、いろいろ、嗜好といいますか、変化は消費者のほうでも来たしております。でありますので、どの品目をどうとるかということも、食糧としての自給率は大体八四%というふうになっておりますので、その程度をくずさないでいきたい、こういうふうに考えてどります。
  9. 湯山勇

    湯山委員 主食については大体自給体制をとっていきたい、全体としては八四%程度、現在の率は維持していきたいという大臣の御表明で、そういう食糧自給するという体制をつくっていくことのためには、単に商品としての農産物という評価だけではなくて、国のそういう政策を実施していく、こういう意味自給体制をつくることに対する国の財政負担というものは、プラスアルファとして考慮にお入れになってこの体制をお進めになっていかれるのか、あるいはそうではなくて、それは自然に商品としての評価をしていく中でやっていくのだということでしょうか。私は食糧自給ということは必ずしも楽観できない。現在の三カ年続いた米の豊作の中で、やはり二十五万五千トン来年度米の輸入をしなければならない。麦に至っては、国内買い上げよりも多い数量輸入計画されている。こういう状態でございますし、国際的な食糧需給状態から見ましても必ずしも楽観できない。そしてまた、いつ、どこででも足りないものは買えるということも、先般のソ連小麦買い付け等に見られるように、必ずしもほしいときにほしい数量が入るという体制でもない。こういうことを見てまいりますと、自給体制の確立ということのために国の資金を出す、こういうことも考えていいのではないかと考えますが、大臣のお考えはいか、かなものでしょうか。
  10. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 もうすでに御承知だと思うのでございますが、たとえば先ほど申し上げました土地改良ということなども、もちろん草地の造成とか、畑地を選択的拡大方面に沿うて、あるいは畜産、あるいは果樹のほうに振り向けよう、こういう気持ちは持っておりますが、同時に、米なら米につきましても、諸般の研究、あるいは土地改良等におきましても、集団的に米の栽培ができるような方向へ持っていく。それでまた、大きな機械等入れて、生産性も向上できるような形でやっていく。あるいはまた、いまの食管制度につきましては、いろいろ問題もあり、ときにはこれに対する財政面からの非難等もありますけれども、これは大きく見れば一つ価格支持対策でもあると私は思うのです。決してこれが農業政策ではないと断定するわけにはまいらぬと思います。その他、そういう方面でこまかいことをいえば、ライス・センターをつくってみるとか、いろいろ財政的にも、生産性が上がって、そしてまた増産といいますか、そのほうも上がるように、こういう方向予算等につきましても相当の支出をいたしておる。麦等にいたしましては、一部転換というような関係で、少なくなってきておる部面もございますけれども、これをいま全部やめるというような方向ではございませんで、やはり麦等につきましても、それぞれ生産性を向上して生産が上がるように、こういう点を考えておるわけでございます。お話のように、大部分といいますか、米はいま自給率九九%でございますけれども、大部分のものを輸入に仰いだらいいじゃないかというようなことでありますと、お話のような、ソ連アメリカからの小麦買い付け、中共のカナダあるいはアメリカからの小麦買い付けというようなことが出てきて、充足し得ない面もあり得ると思います。でありますので、先ほど申し上げましたように、輸入に依存して、そして国内食糧の充足を怠ってもいいのだという考えは毛頭持っておりませんし、また、充足するためのいろいろな政策はむしろ強化していく、こういうふうにお考えになっていただきたいと思います。
  11. 湯山勇

    湯山委員 いま基盤整備についてお触れになりまして、土地改良等を進めていくのはいまのような政策の一環である、麦作についても生産性の向上、あるいは生産が上がるように努力をしていくのだということでございました。大臣のいま御表明になった土地資源、あるいは生産基盤の問題、これは非常に力を入れておられる問題でございますから、この点に触れてさらにお尋ねいたしたいと思います。  それは、今日いろいろな政策がとられておりますけれども、しかし、実際には農家が混迷しておる、見通しが立たない、そういうことから、土地資源に対する考え方もまたまちまちではないかというように感じます。大臣のおっしゃったような、まとまったすっきりした形で土地というものを考えておるのではなくて、ある向きはこれは収益対象として考えておる。そうあるべきだと思いますけれども、相当多数の農家がそれを収益対象としてではなくて、むしろ資産価値対象として保有している、こういう傾向がきわめて強い。ここらに私は、農政として、土地改良に金を入れる、あるいはその他そういう施策をやるということじゃなくて、はっきりした心がまえ農政全体を貫いていなければならないのではないか。その具体的な例をお尋ねしてもいいのですけれども、時間の関係でこちらから申し上げます。お示しいただいた資料で見ますと、麦作につきまして、一番多かったのは昭和二十五年の百七十二万町歩でございます。ところが、先般いただいたグリーンレポートによりましても、昭和三十七年にはそれが五十万町歩減りまして百二十四万町歩であり、三十八年には百十四万町歩と、毎年十万町歩程度麦作付面積が減っております。麦だけではなくて、冬作全体につきましても、三十七年には作付面積で百八十九万町歩、それからそのまま放棄されておる不作付、これが二百三十七万町歩、それから三十八年は百七十二万町歩作付でございましたから、十万町歩以上減っておるわけでございます。その理由はどこにあるということについて、グリーンレポートはこう述べております。決してこれは他の作物に変わったのではなくて、不耕作、放棄するものが多い。しかも、その不耕作、放棄が以前には二反、三反、五反という零細農家であったのが、五反から一町五反程度に拡大されてきている、そういう農家がむしろこういうような冬作を放棄している、こういうことをグリーンレポートは述べておるわけでございますが、こう見てまいりますと、せっかく土地基盤整備に力をお入れになって、一町五反以上の農家が着実にふえておるということをあるいはいい材料としてお考えになりましても、現実の状態がこうなっておるのでは、これはきわめて重大な問題でないか。さらにまた、たとえば八郎潟に二百九十一億の資金を投入されて、大体一万七千四百三十町歩程度の干拓をされておりますけれども、二万町歩と見ましても、それの五倍以上の冬作が毎年放棄されていっておる。これで一体生産の増強、あるいは麦も主食としてこれを確保していくのだ、こういう政策が進められるかどうなのか。こういうことを私は、むしろいまの基盤整備を非常に重要にお考えになっている農政の中であればあるほど、重要に考えるわけでございますが、一体その原因がどこにあるか、どうしてそうどなるのか、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  12. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 麦作等につきましては、四、五年前でございましたか、麦作の他作物への転換ということを勧奨いたしましたので、そういう面で麦作相当減っておると思います。しかし、価格面においては予算はどうかということでございますが、支持価格をもって、上げろということにはなるかもしれませんが、支持を一応しているわけであります。そういう意味で、グリーンレポートでは、他作物への転換はないというわけではないが、非常に少ないということであるかと思います。畜産方面などに回った面も相当あろうと思います。問題は、不耕作地相当あるじゃないか、それをどう考えているのだ。放棄しているものがある。これは事実そういうことになりますが、いま御指摘のように、土地所有に対する執着といいますか、一つの例を申し上げますと、農業生産法人という道も開いたのでありますけれども、なかなかこれがはかばかしくございません。あるいは第二種兼業人々農協等土地を信託するというような方法も開いたのでございますけれども、これも御承知のように実際には十三件くらいしかいまございません。まだ始まったばかりで、ようやく去年あたりから、全国の農協の半分くらいが、農協の規約の中に信託を受けるということに改正しましたから、これはある程度進んでいくと思いますけれども、現在のところは進んでおらぬ。それもやはり土地に対する執着心といいますか、第二種兼業にはなっているけれども、その雇用先における生活の安定といいますか、雇用の保障といいますか、これがまだ十分でないという、受け入れ面が実際整っておりません。そういう点から考えると、また農業に戻る機会もあるかもしれぬというような懸念から、不耕作のまま、荒らしたままで、第二種兼業のほうで収入を得ているという面も現実にあると思います。あるいはまた、さきに申し上げましたような農協に対する信託というようなことでも、将来また耕作する場合あるいは就業していく場合の不安とか、あるいは小作料、賃貸料というような問題もあろうかと思います。原因はいろいろあろうかと思います。あろうかと思いますが、現実にそういう面が出ておることは私も承知しております。新潟県などでもある市では、数十戸家屋をそのまま、土地もそのままで、山村で出ていっておるというような例なども聞いております。こういう面はまことに私どもも寒心にたえないというか、憂えております。しかし、一面においてまだ悪い面もあるが、いい面においては、再々御指摘申し上げましたような一町五反、あるいは二町、あるいは二町五反程度農家がふえておるという面もある。だから、明暗二つながら存在しておるというのが現在の農村状況で悪い面を見ますると、悪い面も相当ないわけではございません。ただ私は、これは考え方の基礎でございますが悲観面、悪い面を目をおおって見ないというのは、これは態度として悪いと思います。しかし、そればかりで悪いのだ悪いのだ、もう農村というものはつぶれてしまうのだというような悲観面ばかりに持っていくと、これは望みも希望もなくなって、やはり日本農政あるいは農民のためにもならぬ。いい面もあるのだ、いい模範的な地区もできているのだ、こういう面も出して、そうして希望をつながせるということも、農業の指導者というわけではございませんが、私どもの立場としてはとらなくちゃならないかというふうに考えておるわけでであります。  そこで、いまの土地基盤整備等におきましても、そういう不耕作等が出ないように、私は、国営にいたしましても県営にいたしましても、土地改良法なども御審議いただくことにいたしますが、末端まで一緒になって集団化したり改良をしていくという方向相当予算を出して、そういう不耕作の面をなくしていこう、これも土地改良をしていく考え方の中に織り込んでおるといいますか、考えながら方向転換していく、こういうことでございます。  また、御指摘の八郎潟等も、現在どういうふうに人を入れてやっていくかということにつきましては強く考えておりますが、これは単に人に入ってもらう農業面ばかりではございませんで、やはり一つの町として、村としての他の方面との設備といいますか、建設といいますか、そういうものと総合して、そうしてせっかく予算を投入してできたものが有利に働けるような計画を立案しておるわけでございます。御注意のような点も私も頭に入れて、特にそういうのをなくしていくような方向に一段と進むべきだ、こう考えております。
  13. 湯山勇

    湯山委員 大臣のお考えはそのとおりだと思います。私どももこういうことをここで申し上げておるのは、少しでも農家の人あるいは農業関係の人が明るい希望を持って進められるということのために申し上げておるわけで、その点は全く同じだと存じます。  そこで、いまの八郎潟の問題はただ例に引いただけであって、あれだけの大きな資金をつぎ込んでやって、なおかつ冬作放棄の何分の一の土地造成しかできない。それよりもっと現在ある生産基盤というものを活用できるような施策はないものか、こういうことに大きな意欲をそそいでいただきたいという意味合いからでございます。  そこで、そういたしましても、一町五反以上の農家が着実にふえておるということについては、このグリーンレポートも述べておりますように、実は決してそうじゃなくて、むしろ一町五反以上の農家がふえる分と減る分とがございます。そのふえる分と減る分との差というものはだんだん少なくなっていく。一%にもいま足りなくなってきている。ですから、その点も楽観できないし、もっと重大な問題は、転落農家という階層がだんだん上へ上がってきている。五反以下あるいは一町以下、今度は一町五反歩以下、やがては二町もそういう運命にあうのじゃないかというような心配も出てきておるのがいまの実情でございまして。少なくとも所得倍増計画で二町五反以上の自立農家を育成する、二町五反ならば必ず安定してやっていける、そういう青写真がはっきりすることが大事だと存じます。  そこで、そういうことに入る時間もございませんから、さらにいまの基盤整備に関連しての構造改善でございます。これは大臣考えでは、いろいろな評価のしかたがあると思いますけれども、どの程度うまくいっておられるか。政府計画と、それから実施したものについてもその質の問題がございます。これらを勘案していって、まあまあ六十点くらいとか、七十点くらいとか、四十点くらいとか、そういう評価ができると思いますが、大臣はどの程度だと御判断になっておられますか。
  14. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 先ほどからいろいろお話がありまして、私も、生産も上がり、生産性も上がり、所得もふえるような形でやっていくという考え方は同感でございます。そういう意味におきまして、中間層といいますか、一町五反程度のものが迷っておる、農業に戻るべきか、農業を捨てるべきか、こういう現象もあろうと思います。しかし、全体といたしましては、ふえている面もございまするし、二町五反、まあ百万戸というような倍増計画の当初の計画もございます。そこで、その面積等につきましては、またこれは機械的にきめられるべきものではございませんで、いろいろ地方の実情とか何かによりますから、一律にはいきませんが、平均その程度に持っていきたいと考えておるのでございますが、そういう点で構造改善事業も進めておるが、構造改善事業の成績を、点数をつけたらどのくらいになるか、これはなかなかむずかしくて、私も点数をつけにくいと思います。まだ始まったばかりでございますし、そうしてまた、構造改善も盛り上がらないで、実は何といいますか、拒否できないですけれども、している者もあります。また特に進めておる面もございますが、何しろ御承知のように、農業でございますから、短期決戦ができませんで、一年に一回ずつですから、始まってから三年くらいですから、一年々々短期的にそのメリットといいますか、効果というものをはかりにくいものでございます。しかし、考え方として、私は、構造改善というところでこう指定された、指定を受けてやっていくというものばかりを、広義においては構造改善とは考えていませんで、すべてがもう構造改善といいますか、体質改善しなくちゃならない段階にあるのだ、その中で指定されたものの成績はどうか、こういうお尋ねだと思いますけれども、まあ軽々にどの程度と申されませんが、私は、悪いところ、いままでよくいかないところを直し直しやっていけば、これは相当一つの効果をあげられるものだ、こういうふうには考えておりますけれども、いま点数づけはちょっと私も採点できないような状態であります。
  15. 湯山勇

    湯山委員 現在の構造改善の進め方は、展示一カ所やって、それに見習っていけというような体制をおとりになっておられますが、はたしてそういう行き方がいまの大臣お話の趣旨に合うかどうかでございます。構造改善というものは、現在もう客観的には好むと好まざるとにかかわらず進めつつある。そしてその中でただ指定地域、パイロットというようなものをサンプル的にやっておって、これにならってやっていけ、展示的な効果をねらって進めておられる。それがいいやり方かどうかというのは、いまの大臣お話との間に、私はもう一ぺん検討する余地があるのではないかということを感じるわけでございます。と申しますのは、自立経営農家の育成という、小規模の、しかも労働集約的な、そして家族経営、それだけに安全性はあると思いますが、大臣のおことばをかりれば、何とか、農業の王様ですか、そういったような、とにかく安定した、こじんまりした、自立労力でやっていくという形態、それでいて、いまのようにサンプルをつくってこれにならってやっていけという現在の進め方、これではたして目的が達成されるかどうか。家族経営ということになれば、先ほど申し上げましたように、持っている土地収益対象として持つ場合もあるし、それから自分の資産として持っていくという考え方、どちらも個人の選択にまかせられる、こういう形態、そして、また、構造改善も地域指定でいく。それがいいのか。そうじゃなくて、もはやもうできるだけ大規模にやっていくのだ。したがって、労働は集約的じゃなくて、労働節約、労働を節約していくのだ。したがって、その間には、むしろ協業化とかあるいは大規模経営、こういうものが必要であって、当然創意なりあるいは計画なり経営なり、そういうものが重視されていく。そこで、構造改善を進めていくにあたっても、見本をつくってこれにならっていくというのではなくて、すべてが客観的な条件をつくって、その中で進めていかれるものはどんどん進めていかれる。つまり、そういう条件を政策としてはつくっていく。一つ一つを引き抜いてサンプルにしていく、こういうあり方、ここらにいま大きく検討しなければならない問題がある。そこで、いま申し上げましたように、もし小規模のいまの自立農家をつくっていくのだ、自家労力でやっていくのだ、構造改善は、ただ一つ一つの地区をともかくも引っぱって、横断道路を一人ずつ連れていくようなやり方で渡っていく、こういう行き方では、実際は農業の新しい時代に対応する、あるいは基本法でいう生産性所得格差の是正、これはできない。ここで方向を大きく変えて、そして大規模な労働節約の経営のそういうあり方に変えていく。それから構造改善も、一人ずつ連れて渡るような渡り方じゃなくて、こういうきちっと信号なら信号をつくって、いけるものはどんどん自分でやっていく、こういう形に変えていく。こうなってくれば、私は、これは確かに革新的な農業政策だ、農政の革新だということが言えると思うのです。そういうふうにしなければならないのじゃないか。いまの大臣の御答弁の中にもそういう要素が多分にあったと思います。そういう転換をこの際おやりになるお考えはございませんでしょうか。
  16. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまのような一人一人を引っぱって二町五反に持っていくという考え方でなくて、やはり構造改善の基本的な考え方は、全体としてたとえば近代化とか、あるいは選択的拡大とか、あるいは従来の生産を上げていくとか、こういう全体的な考え方から、構造改善というものは、個人個人の体質改善よりも、体質改善ができるような環境というか、そういうものをつくっていくという、いまの湯山さんのお考えが基本的だと思うのでございます。実際問題として、そういう個々の生活に追われておったり、いろいろな面が出ていますから、自分たちがどうなるんだ、自分たちがどうするんだという考え方がありますが、自分たちがどうなるんじゃない、どういうふうにしていけるような環境というか、農村づくりといいますか、そういうものをつくっていくかというのが、政府としての考え方でないか、私はそういうふうに考えております。先ほどから申し上げておりますように、構造改善の指定地区ばかりが構造改善ではありませんで、たとえば土地改良で、全国に相当の、八百億近くの予算などもことしありますが、そういう方面一つのこういう方向へ持っていって、労力も省いていけるし、生産も上がっていく、あるいはまた大きな機械も入れられるんだ、そういうことになれば、個人個人ではなかなか容易ではございませんが、共同で大きい機械も操作できるというような基盤というか、そういうものをつくっていくという方向に、土地改良を私は考えておるのでございますので、構造改善の指定地区等におきましても、考え方としては、個人個人の生活もよくやっていけるような、耕作面積なども広がるような形に持っていかなければならぬと思いますが、その基本は、やはり全体として農業というものがよりよくやっていけるような、そうして個人個人の生活も安定できるような方向に持っていく、そういうふうに考えております。でありますので、いま構造改善等におきましても、御承知のように、町村合併されまして、もとの数カ村など一緒になっておりますから、それ全体をやるというのは、国としての予算関係もありますし、また、合併しましたから、各部落部落にバラエテイがあるわけです。そういうので、ある地区においてひとつ構造改善をやろう、しかし、ほかのほうにはまた違った意味において同じ町村でもやらなければならぬ、こういう面がありますので、いままでは一町村一カ所というようなことでありますが、一カ所に限らない、二カ所程度やりたい熱意があるならば、これはやってもらおうじゃないか。ことしは四百くらいは出ておりますけれども、そういうような方向で、あるいは水利の関係、あるいは土地状況関係、いろいろ山村地帯もありましょうし、そういう地元の状況に応じて弾力的に、そしていまお話しのように、みんな生活がやりいいほうに直接入ってくるというより、そういう環境というか、基盤といいますか、そういうものをつくって、そうして何とか農業というものがやれる、考え方としてはそういう考え方を持っておるわけであります。
  17. 湯山勇

    湯山委員 いま私のお尋ね申し上げたことと、大臣の御答弁いただいたこととの間に、若干ズレがありますのは、私は、国の政策、国の公の課題と自立農家の育成、そういういまのあり方との間には矛盾がある。あるというよりも、矛盾ができやすい状態にある。だから、いまの自立農家の育成ということだけにとらわれないという考え方が必要ではないかということが一つであります。第二は、いまの構造改善については、一人ずつ渡す行き方ではなくて、指定地域をつくってそれにならえというのではなくて、全体どこでもがそういう環境の中でやっていけるような、そういう政策をとらなければならないのではないかということで、この点については、基本的な考え大臣も同感だとおっしゃいましたので、あとのほうはそれでそうだと思います。それならば、やはり構造改善を進めていく上についての共通な問題点、共通な要求は、国の政策の中で一挙に解決してやるということが必要であると思います。個々の地域についての問題もありますけれども、全体の課題はそれを国として解決していく。  そこで、構造改善について採点をしてみますと、大体こうじゃないかと思います。パイロット地区で、九十二の中で七十四が実施、三十七年で二百地域の百七十四が実施、三十八年で三百の中の二百二十九が実施。だからこの数だけから言えば、七十点かそこらになると思いますけれども、質的なものを見ていきますと、私は五十点にも足りないのじゃないかということを感じます。それは、先般も、千葉の成田市がパイロットで模範的だということをよく言っておりましたけれども、お聞きになられたかと存じますが、これはとうとう返上になったのじゃないかと思います。その他のところにおきましても、結局構造改善を進めていく上において一番問題なのは、価格保障がない。選択的拡大をやっていく、果樹をやり、畜産をやっていく、いずれにしても価格保障がないから、どうしても踏み切れない。これがもう全部の共通の悩みでございます。そうすると、ここで従来の価格政策だけではなくて、構造改善を進めていく上においての価格対策、価格安定対策というものがしつかりしなければ、幾らいい計画を立ててもそれは結局足踏みをする。あるいは指定産地にしてことしの野菜をどんどんつくらせる、ところが、ことしの野菜なんかは目も当てられない。それから酪農家もそうでございます。豚だって、決して今後安定していくということじゃなくて、心配な点があらわれております。それからリンゴも、あとでお尋ねいたしますけれども、決して楽観できない。ミカンにしても、ことしのわせのミカン、さらに生産者と流通機構をあずかっておる仲買い、卸、小売り、それらとの関係はだんだん変わりつつあります。そこで、いろいろありますけれども、農民の率直な受け取り方、構造改善を進めていく市町村の端的な希望としては、選択的拡大をはかっていく構造改善で、国がそれを指導してやらしていく作目については、はっきり価格保障をしていただきたい、それがなければ構造改善は進まない、こういう声は大臣にもずいぶん入っておると思います。たとえ構造改善が非常にうまくいっておるところであっても、この要望は非常に強いものがあると思いますが、それについて大臣はどのようにお考えでございますか。
  18. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 さきにお話がありました、自立農家ということばかりではだめじゃないかといいますけれども、やはり農業の形態は、自立農家のほうが私は一番適しておる、こういう考えで、その方向は順守していきたいと思うのでございます。  そういうような面からまた離れても、構造改善の欠陥は、流通対策といいますか、農作物の価格保障が確立されていないのじゃないか、そういう不安があるじゃないかということは確かにそういう面があろうと思います。しかし、これは構造改善に力を入れるばかりでなくて、農林漁業全体に対してやはり価格を支持するといいますか、こういうことが大事だと思います。ただ私は、これも御質問から離れるかもしれませんが、農業国民食糧を充足するというような大きな使命を持っておりますと同時に、選択的拡大というほうの農作物等は、一面国際的商品というような形にも幾ぶんなりかけております。そういう意味におきまして、やはり国際競争に勝てるような——保障という面もありますが、一面においてはやはり生産性を向上して国際競争に負けないような形に持っていくということも、また農政として大事な問題じゃないか。しかし、そのために、現在の非常に基盤の弱いところの日本農産物を、生産性を向上すればいいのだというだけでほうっておくわけにはまいりません。やはり価格の支持といいますか、これにつきましては、一つの制度は大体できておるのです。御承知のように、米でも麦でも畜産でも、その他大体はできておる。しかし、その程度が非常に弱いじゃないか、こういうことでございますが、全部保障するというのは無理だと思うのです。やはり商品化しておるのでございますから、米は生産費補償制度をとっておりますが、何から何まで生産費を補償しろと言っても一まあ私からくどくど申し上げませんが、商品として工業生産品と農業生産品を比較いたしますと、工業生産品のほうが大量生産もできますし、コスト低下もできます。それと比較して農産物というものは、そういうコスト低下の面でも非常に骨が折れるわけでございます。やはり一つの交換経済の中に入っておりますから、コスト低下で安いものと、労力のかかるものとを比べると、どうしても自由経済の面においては農産物をそのまま捨てておけば引き下げられる、こういう傾向にあると思います。でありますから、農産物に対しましては相当支持をしていかなければならないという結論になってくると思います。その支持程度につきまして、十分ではなかろうという御意見はあろうと思います。そういう面につきましては私どもも苦労いたしておるのでございますが、たとえば畜産等につきましても、畜産事業団等に出資をふやしたり、あるいは子豚の安定資金をやったり、あるいは野菜の安定生産等、いろいろ手を打っております。これは十分とは言えないと思いますが、何から何まで全部国で補償しろ、こういうところまではいきかねると思います。しかし、価格安定といいますか、価格を支持していくということに対しましては、私どもも十分力を注ぐといいますか、意を用いなくてはならない、こういうふうに考えております。
  19. 湯山勇

    湯山委員 当面の課題である構造改善を進めていくために、その構進改善と取り組んでおる当事者が、価格安定、価格の保障がなければやれないということを訴えておるので、この機会に私は価格対策というものをもう一ぺん検討する必要があるのじゃないかということを申し上げたいわけです。大臣がおっしゃっておられるように、それではどの農作物も全部一律に同じような形で価格保障をするかどうか、これは問題があると思います。これには検討の余地がありますけれども、少なくともこういうことは言えるのじゃないか。米とか麦とか、そういうもの、あるいはやや幅のあるイモとかでん粉とか豚肉とか、こういうもの、それから非常に変動の多い野菜とかくだものとか、そういうグループに分けてもよいと思うのです。そういうものを区分するにもせよ、ともかくもそれぞれに応じた価格保障がなされなければ、幾ら基盤整備をなさり、生産性を上げるといっても、元来農業というものは、技術的に幾ら技術が進んでも、天候その他に支配される不安定な要素がございます。それからまた需要についても、需要の弾性値というものは非常に少ない。だから政策として進めていくためには、こういった価格保障というものが確立されていなければ、安定した基盤を持っていながら、いつまでたっても生産はきわめて不安定だ、これでは農業はやっていけない、こういうことになりますので、いまのようにどれもこれも全部を米と同じようにするというのではなくて、米に類した直接統制をするものは何々、それに準じた扱いをするものは何と何と何、それからその次の段階でやるものはこれというような段階とやり方を変えても、少なくとも再生産確保するだけの保障はしていく、これが私は農政の基本でなければならない、こう思います。自立農家を育成していくということを肯定したにしても、あるいは農業の構造改善を進めていくにしても、ここから出発しなければ、これでは農政はないんじゃないか。現によく引き合いに出されるドイツでございまけれども、そのドイツにおいても、それらのいま申し上げましたような諸政策によって、大体農業生産は百七十億マルクでございますが、それに対して六十ないし七十億マルクが、いまのような補助金だとかあるいは支持価格、それらの政策によって振りかえ所得になっている、こういうことが発表されております。日本だってできないという問題じゃないし、やらなければならない問題でございますが、この際私どもも全部を米と同じようにせよというようなことは申しません。そうじゃなくて、それぞれのいまのような大づかみなグループによって、一貫した価格支持政策について再検討をする必要があるのではないか、このように考えますが、大臣のお考えを伺いたいと思います。
  20. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 構造改善地区というか、そこだけにというように私は受け取りましたので、それはちょっと違うじゃないか。農業全体として価格支持といいますか、安定政策を行なっていく、こういうことでやっていく、ということならば、私は当然まだ進めなければならぬと思います。現に制度は私はできていないとは言えない。米にいたしましても麦にいたしましても、あるいはでん粉の最低価格というか、そういう一つの標準価格もありまするし、生糸等につきましてもありまするし、あるいは畜産の安定、畜産事業団によるもの、あるいは今度子豚の安定資金とか、いろいろな面でやっているが、それが非常に足らぬじゃないか、いまのドイツの例などから引いても手薄じゃないか、こういう御意見ということでございますれば、私もそう思っております。でございますから、価格対策ということは農政の大きな柱だと思いますので、十分力をなお入れていかなくちゃならぬと思います。構造改善事業だけというふうにちょっと聞きましたので、先ほど申し上げたようなことでございましたが、そう御理解願います。
  21. 湯山勇

    湯山委員 大臣のお考えは、それについてはやっていかなければならないということでございますから、それについては、いまのように繭は繭、イモはイモ、なたねはなたねというようなことではなくて、全体の農作物をそういうグループに分けて、繭とイモとは同じグループに入れるなら入れてもいい、そういうことで、ともかく安心して将来を見通して農業をやっていける、そういう実質の伴った——ただ法律ができても、全く効果のないものもずいぶんございます。今回の野菜の値下がりに対するあの対策等も、生産安定の基金協会ですか、それによる補償金、こういう制度も全く用をなしていないわけですから、制度をつくるのと、その制度が実際に目的が達せられるような実質を持っている、こういうものをぜひこの際御検討願って確立していただきたいと思います。  それと、さらに牛乳の扱いでございますが、日本では牛乳の扱いが少しまだ、ああいう価格対策がありますけれども、放任され過ぎているのではないでしょうか。将来牛乳は主食の中の重要な一端を占めるもの、こういうことは常々言われきたことでございますし、酪農を進めていく意味もそこにあると存じます。そうすると、そういう食糧として重要な位置を持つ牛乳について、いまのように相当自由放任で置くというのではなくて、もっとこれに対して国が関与する、価格についても米麦主食並みの扱いをする、こういう体制がとられなければならないのではないかというように感じますが、これについてどのようにお考えでございましょうか。
  22. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 牛乳の消費も、数年前から考えますと、ずいぶんふえておりますし、各家庭等につきましても、牛乳の占める率がだんだんふえていると思います。そこで、牛乳の価格について、米のような一つの価格保障制度といいますか、そういうものをやるかどうか、これにつきましては、相当研究といいますか、検討いたしませんと、いま直ちにそういう方向に持っていくというわけには私はまいらぬと思います。そこで、少なくとも価格について何か政府が介入するというか、そういう面で生産者のために味方になるといいますか、そういう形のものがほしいのじゃないか、あるいはそうする考えがあるのかどうか、こういうお尋ねだと思います。いまの酪振法では、御承知のように、当事者の契約がうまくいかぬ、こういうことで、紛争といいますか、そういう場合に、あっせん調停という制度がございますので、現在におきましても、それが農林省のほうにきまらないであがってきているものも数件ございます。何といたしましても、自由取引の商品でありますが、一つは、やはり国民の、もちろん主食ではございませんが、食糧の中のウエートもだんだん進んできておりますから、これに対してどういう措置をとるかということにつきましては、いろいろ検討いたしておりますが、それ以上にいま何か押えるといいますか、介入するかどうかという問題は、まだ検討中でございます。一面におきましては、いまの消費が夏、冬違っておったり、あるいは消費を拡大していくという面と、生産方面でいろいろな設備等につきまして、国からも金を出したりして助成していく、こういう両面から牛乳の価格が安定するような方法を考えておるのが現段階でございます。
  23. 湯山勇

    湯山委員 食糧としての重要度がだんだん大きくなってきている。将来もっと大きくなるわけで、いま直ちにどういう——具体的には確かにそうだと思いますが、将来、これもばく然としたことばで言えば、牛乳に対する取り扱いをもっと大切にしていく、重要に考えていく、これだけはぜひやっていただきたいと思いますが、これはいかがでございましょうか。
  24. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 畜産とも関係いたしますし、食糧としての観点からも大事にしていく、いろいろ見当もつけ、大事にしていくという考えにつきましては、御同感でございます。
  25. 湯山勇

    湯山委員 この際、ついでに、牛乳に関連してお尋ねいたしますが、学校給食になま牛乳をさらに拡大して実施していく、なま牛乳の学校給食を拡大していく、こういうことでございますが、これは将来全生徒児童に対してなま牛乳給食を行なうという方針で拡大されるのか、余乳処理という観点から、現在の状態ではこれくらいやれるからやっておくという観点に立ってなま牛乳給食を拡大していかれるのか。私は、当然、これは大きい立場から見れば、全児童生徒に国産のなま牛乳給食をやる、これでなければならないと思うのですが、それについてのお考えと、やるとすれば、何年間で全生徒児童になま牛乳給食を完全に実施するという御計画なのか、お考えがあれば伺いたいと存じます。
  26. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 なま牛乳を学校給食に向けていくということの考え方あるいは政策といたしましては、従来と変えたわけであります。従来は余剰牛乳だから学校に回すという考えで進めてきたのでありますが、今度からそうじゃない、学校給食になま牛乳をやるのだ、余剰だからやるんじゃないんだ、脱脂粉乳をだんだん減らしていくんだ、こういう方向といいますか、考え方は従来とは違ってきておるわけでございます。  そこで、これを全部にやるには何年間かかるということでございますが、いろいろ計画も持っていますし、計算もしていますが、全部にやるということにつきましては、なかなか計画上むずかしい面もいまあります。ありますが、方向といたしましては、ことしは四十万石でありますが、毎年毎年なま牛乳をふやしていき、脱脂粉乳を減らしていく、これに変えていく、こういう進め方をいたしております。それで、この計画を何年間というようなことは、いまちょっと計算がなかなかむずかしい検討でありますので、それは申し上げられませんが、方向はいま申し上げたようなとおりでございます。
  27. 湯山勇

    湯山委員 学校給食のなま牛乳給食に対するお考え方は、確かにこれは革新的であるということを認めたいし、その考え方については私どももたいへんけっこうなことだ、敬意と賛意を表したいと思います。ぜひこれを早く全面的実施になるように——このことについてはいずれ法案等の中でお尋ねいたしたいと思いますから、それだけにいたしまして、いま構造改善の問題から発展してきたわけですが、これは担当局長さんからでもけっこうでございますが、あとで資料としてお出しいただきたいのでございますが、構造改善事業が理想的に行なわれているという地域、これは具体的な名前をあげてひとつ資料としていただきたいと思います。そうでないと、これは現在実施しておるところでも、条件のいいところ、積極的な意欲のあるところはやっておりますけれども、あとだんだん少なくなっていくんじゃないか。それから構造改善の最重点である土地の交換分合などというものはほとんど行なわれないで、農道と区画だけ先にやっていく、こういうことをやっておる。さらにもっとひどいのは、こうやって農道と区画だけやっておけば、将来宅地にするのにぐあいがいい、こんな構造改善もなくはないわけです。こういうことで、非常に問題が多いと思いますので、そういう資料をひとつぜひいただきたいと思います。
  28. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 ただいま御要求の資料、さっそく提出させていただきます。
  29. 湯山勇

    湯山委員 では次に、貿易の自由化について、これも大臣が先ほど御指摘になられましたので、お伺いいたしたいと思います。  三十八年の四月に自由化の大綱が実施されまして、今白砂糖を入れて九二%の自由化が行なわれている。その輸入農産物国内農産物を圧迫する場合の措置については、農業基本法においてはっきり示されております。現在の貿易自由化日本農業に及ぼしておる影響についてどのように把握しておられるのか、そしてまた、それについてどのような対策をお持ちになっておられるのか、一々の例をあげる時間もございませんから、抽象的でございますけれども、お伺いいたしたいと思います。
  30. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 貿易の自由化は、いまお話がありましたように、農産物についても九二%くらいになっておりまして、あと残っておるのが七十六くらいの品目であります。いままで自由化するにあたりましても、先ほどからるる私からも、またお話もありましたように、日本農産物というものは国際競争力の弱いものでございますから、手放しで自由化するというわけにはまいりませんので、関税率の調整とか、あるいは先ほどから出ている価格の問題、こういうものができてといいますか、確立しないで手放しに自由化ということは、農産物については非常に困難であります。これは国際的な会議におきましても、あるいはその他におきましても、国内におきましても、私は強く言っているところでございます。ですから、米とか麦とか、あるいは酪農品とか、あるいはでん粉というようなものなどは、これは自由化というようなものは、もしやるとしても相当な年月を要するし、いまそういうものに手をつけるというような考えは持っておりません。その他の農産物等につきましても、先ほど申し上げましたように、関税率で調整するとか、関税一般引き下げという問題もございますが、しかし、関税率の調整とか、あるいは生産性が向上するか、価格支持をしていく、こういう対策と相まってやっていかなければならぬ、こういう方針は堅持して折衝もいたしておりまするし、そういう方向でまた進めていきたい、こう考えております。
  31. 湯山勇

    湯山委員 現実に輸入農産物国内農産物を圧迫している、そして価格の低落を招いているとか、あるいは生産を低下させるおそれがある、あるいは現実に生産を低下させておるという事例がありますか。あれば、これは事務当局からでもけっこうでございますから、御答弁いただきたいと思います。
  32. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いままで自由化したために圧迫も相当こうむっているというのは少ないと思いますが、たとえばバナナが自由に入ってくるので、リンゴの価格が下がってくるんじゃないか、これは非常に言われておりますけれども、私は直接的だとは考えておりません。バナナをたくさん食べるという面もあるかと思いますが、一面においてはリンゴ等が非常に増産された、こういう面ともからまっておると思います。ですから、いままで自由化したものでそうその影響があるというようなものは考えられませんが、レモンでしたか、レモンを輸入しまして、相当圧迫いたしましたので、これは自由化をあとで取り消した、こういう事例はございます。その他につきましては、私は、私の調べあるいは聞いておるところによりましては、いままでのところで、そう圧迫しているというふうには見ておりません。
  33. 湯山勇

    湯山委員 先般の日米貿易経済委員会で、大臣から、レモンの自由化に対する要請に対してこれを切り返しておられますし、それからブロイラーですか、これについても、国内農家を守るために御努力になったということを新聞紙上で拝見いたしまして、たいへん感謝すべきことだと思っておりますが、ただバナナの自由化相当影響があるんじゃないかと思います。と申しますのは、リンゴがことしあたりでは老木園で一アール当たり五万円くらいの収入しかない。なかて、おくてにいたっては、全く半値以下になっているという事実。ナシとかモモとか二十世紀等も、やはりそれの影響を受けて、これじゃ手間賃も出てこないのじゃないか、あるいは生産も少なくなりつつある。干しブドウはブドウを圧迫している。こういうことは、程度によりますけれども、現象としては出てきているんじゃないかというように私は判断をいたします。  なおまた、こういう段階で、あるいは台湾からポンカンを入れるとか、それから玉ネギをどこからか輸入するとか、そういう動きもある。あるいは実際に輸入された脱脂粉乳はもちろんああいうとおりでございます。こういう問題は程度はいろいろありますけれども、これだけいろいろな品物が動いておる今日の国際経済情勢の中で、影響がないということは考えられないことだと思います。  そこで、そういうことに対して非常に鋭敏に対策を立てていただかなければなりませんし、そういうことが基本法の中にもはっきり出ておりまして、そういうことに対する価格保障その他で価格の安定をはかっていく。それをやってもなおかつ「競争関係にある農産物の価格が著しく低落し又は低落するおそれがあり、その結果、その生産に重大な支障を与え又は与えるおそれがある場合において、」いまの価格政策でもってはまだどうにもならないという場合には、「関税率の調整、輸入の制限その他必要な施策を講ずるものとする。」こう基本法にございます。いまそのことについての検討をしていただく段階ではないかということを私ども感じますし、また特にリンゴをつくっておる農民の方たち、あるいはナシ、モモ、ブドウ、ミカン、こういうところからも非常に強い陳情もございます。これについて何らかの対策を講ずる必要があるとお考えになられますか、あるいはその必要はいまのところないんだというようにお考えでございましょうか。
  34. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 御承知のように、一つは、消費者物価という面もありますし、消費の面もありますので、ある程度入れるという面もございます。しかし、それがいまお話のように重大な影響があるかどうかということでございますが、全然影響なしとは私は見ておりません。これはお話のように影響はあると思います。でありますので、自由化の影響につきましては、できるだけ影響を少なくするような対策は講じていきたいと思います。リンゴ等の例が出ましたが、リンゴ等につきましても、一つは非常な豊作という面もございます。そういうことで、これを科学的な方法で貯蔵していくというような対策なども講じて出荷を調整する。あるいは運送面等につきましてもいろいろ考えていく。あるいはまた干しブドウ等の例も出ましたが、干しブドウをブドウ酒につくってしまうじゃないかということで、私のところに文句が出ました。これを法律や政令で禁止するというわけにはまいらぬが、行政指導で、輸入する場合に、そういうものに回してはいかぬぞ、こういうことでこれを押えていく、こういうようなことなども考えています。その他、自由化という問題、その一面においては消費者物価の対策もあるし、消費の嗜好にも合うものである場合もありますから、その方面考えなくてはなりませんが、生産者の面に対しまして、自由化の影響というものをできるだけ除去していくという対策は、またそれとは別個に考えていかなくてはならぬ。一、二の例でございますが、そういう方法も考えておるわけでございます。
  35. 湯山勇

    湯山委員 時間が大体まいりましたので……。きょういろいろお答えいただきました中で、今日まで進めてきた農政というものでは、これで農民やあるいは農業自体に決して明るい見通しを安心して手放しで与えられるものではない。なおさらにやらなければならないことがたくさんあって、その一つの大きな課題は、価格を支持する、安定させるというところにある。さらにまた、基盤整備にいたしましても、ほんとうに農民農業をもって生計が立っていけるという、そういう見通しが立って、初めて土地資源が実際に収益対象として活用されていく。それらのための構造改善を進めていくということについても、なおたくさんの問題があって、それらと取り組んでいかなければならない。これについて、従来の踏襲ではなくて、牛乳給食についての考え方転換に合ったように、さらに、ただ自立農家ということにこだわらないで、もっと大きな視野に立って——それから構造改善も、パイロット指定地域というものは必ずしもうまくいっていない。これをよくしていくためには、やらせるんじゃなくて、進んでやっていけるような環境をつくっていく、そういうかまえが必要ではないかというようなことについて、御意見を伺ってまいりました。大臣からそれぞれ誠意ある御答弁をいただきましたが、最初に返りまして、いまのような実情と、いまのようなことを考え合わせてみますと、やはりこれは決してオーバーなことばではなくて、少なくとも革新的な施策というものが必要ではないか、こういうことをさらに大臣に御要請申し上げたいと思います。  それから、最後になりましたが、前々から懸案になっておりましたことで、現在強い要請のあることを一点だけ伺いまして、終わりたいと思います。それは、長雨災害に対して、農業協同組合がいろいろ協力もするし、それからそのためのいろいろ収入減もございました。その対策でございまして、昨年の長雨について、いろいろ災害対策の経費、生産意欲を喚起するとか、種子対策とか、指導とか、いろいろな経費も使っておりますし、また具体的には保管料、手数料等の減収がございます。これらについて、私も本会議において、そういうことについて政府は当然考えなければならないのではないかということを申し上げたときに、当時の農林大臣は、まだ幾らどうなっておるかわからないし、現在そういう要請もないから、要請があって内容がはっきりしたら、適当に対処するという御答弁をいただいております。衆参両院の災害対策委員会でも、これについては決議もございました。そういうことを考え合わせまして、農協等政府の代行をやった分に対して、政府も責任を持ってやらなければならないのではないか。また、国にかわってそういう経費を使ってやったようなことについては、それぞれ応分の——これは補助とか何とかでなくて、負担をする。何と申しますか、義務と申しますか、そうするのが適当ではないか、かように考えます。そこで、ぜひ今回の補正予算等でこれに対する分担を明確にして、これを交付するという措置をとっていただきたいと思いますが、これはお考えになっていただいておるのかどうか、ぜひそうしていただきたいという希望でございますが、いかがなものでございましょうか。
  36. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 実は農業倉庫といいますか、協同組合で入庫している期間が、米にいたしましても非常に短くなりました。そういう点で保管料等を少し出したらどうかということがありまして——米のほうでございますが、今度保管料を実際に合うように、過去三カ年に満たなかった場合には、期間を長くして、それに満ているようにしてやろうという措置はとっております。麦につきまして、非常に不作だったから、これについて入庫が足らなかった。これをすぐに政府で出すか出さぬかという問題は、附帯決議等あったと思いましたが、非常に私は考えてみなくてはならぬ問題が相当あると思うのです。そこで、これはどういうふうにするかという結論はまだ出ていません。農協等も大体三月ごろに決算を全国的にやるようでございます。西日本においても、この問題を非常に大きく取り上げておるようでございます。そういう決算面なども見て、非常にひどいということでございますならば、これはまた不振農協、倒産と——中小企業のように倒産ということになれば、またこれは不振農協の再建というような形の手も打たなくてはならぬと思いますが、いまのところは、倉庫の手数料の収入というのは、大体農協の二%程度の収入じゃないかと思いますが、それが半分くらいの程度の一%くらい、そのためにいますぐに入庫が少なかったから災害対策としてそこに出すか出さぬかということについては、いろいろ検討する余地があろうかと思いますけれども、三月の決算等も見たりしてやっていかなくてはならぬ。ですから、かりにやるとしても、いま補正予算でどうこうということには私はできかねると思います。この点につきましてはさらに慎重に検討いたしたい、こう考えております。
  37. 湯山勇

    湯山委員 もう一言、いまの問題でございますが、集荷機関という政府のやるべきことを代行しているということで、それによる損失の補てんでございますから、それは補助というような考え方でなくてお考えいただきたいと思いますし、それからもう一つは、決算を見てからということでございますが、これは御存じのように、農協で決算というのは、それによる赤字というようなものはあまり出さない。これはたなおろし等の操作で、経営がうまくいっていないということを公表することは、とてもそれはできないことでございますから、三月末の決算から赤字だとかそれでどうだとかいうことは出てこないわけです。そこで、どうしても事実保管料、手数料、あるいは裏作の指導なり、それらで使った費用の実態を見て御考慮を願わないと、年度末の決算でということになると、これはまたたいへんやっかいになってまいりますので、その点等もお含みの上、御善処を願いたいと思います。  それでは以上で終わります。
  38. 高見三郎

    高見委員長 西村関一君。
  39. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいま同僚湯山委員からるる質問があり、大臣の御答弁があったわけです。本第四十六回通常国会においても、本委員会におきまして農林大臣から所信表明がございました。その所信表明につきまして、若干の質問をいたしたいと思うのでございます。できるだけ湯山委員質問と重複することは避けてまいりたいと思いますけれども、若干重複するところがあるかもわかりませんが、なお先ほどの御答弁との関連においても掘り下げて、できるだけ御親切に御答弁をいただきたいと思うのでございます。  大臣所信表明のプリントの八ページでございますが、七ページの終わりから「したがいまして、政府といたしましては、農業基本法に即して農業近代化施策を総合的に実施し、農業生産性及び農業従事者の生活水準を向上させつつ農業の総生産の増大をはかるとともに、このような農家らしい農家が今後農村の中核として育成されるよう真剣な努力をいたすことが、重要な責務であると考えられるのであります。」このように仰せになっておるのでございますが、「農家らしい農家」というのは、一体どういうものを想定して大臣はお述べになっていらっしゃるのか、まず、その点からお伺いをしてみたいと思うのです。
  40. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 まあ抽象的に言えば、安定した農家ということでございますが、具体的に言いますならば、耕作面積が相当安定するような耕作面積を持って、そうしてまた、農業基本法にあるような選択的拡大といいますか、そういうものをも含めて経営がやっていける、こういう農家でありたい。ですから耕作面積から言いますと、いろいろ議論もありましたが、二町五反程度の耕地が必要ではなかろうか、こういうふうに考えております。収入につきましては、これはいろいろまああろうと思います。どの程度——農業所得だけでも六十万以上というような標準などもあるようでございますが、なかなか具体的にこれならばということは申し上げられませんけれども、標準はいま言ったようなあたりの標準で農業経営ができるように、少ない労働力、三人くらいの労働力で二町五反程度を経営していく、こういうような農家であれば、大体諸般の事情、ほかの事情とも関連があると思いますが、やっていけるのではないか、こういうめどを持っているわけであります。
  41. 西村関一

    ○西村(関)委員 ただいま大臣は、耕作面積二町——また二町五反と後ほど仰せになりましたが、これを単位とする安定した農家経営をやっている農家、こういうことでございますが、その次のところにも大臣お触れになっていらっしゃいますように、農村の青少年の夢を託するに足るような農村もしくは農家の実際というものがございませんと、これは後ほども触れてまいるつもりでございますが、日本農業の将来をになって立たなければなりません次の世代、農業の世継ぎとなる青少年が農村に残っていかない。現在も残っていかない状態が続いておる。これは大臣所信表明の中でお触れになっておられますが、そういうような点と関連いたしまして、農家らしい農家というものを造成していくということが、農政の非常に大事な一つの柱ではないかと思うのでございます。  ただいまごく概念的に、二町五反歩の経営面積を持つ安定した農家、こういうようなおことばでございましたが、農業基本法の指向いたしまするところは、向こう十カ年の間にいわゆる自立経営農家、粗収入百万円を目途とする二町五反の経営面積、三人くらいの稼働力を持つ農家を百万戸つくっていこう、こういうところに政府は目安を置いておられるわけでございますが、そういう点と関連をいたしまして、そのような大臣の言われます農家らしい農家、自立経営農家というものが、現在の段階においてはたしてつくられる希望が持てるかどうか。希望が持てるものならば、青少年は農村に踏みとどまるのでございますが、現在は、大臣も触れておいでになりますように、日本農業の老齢化、女性化というものが加速度的に進んでいっておる。こういう状態において、次の農業のにない手である農村の青年が農村に残らないというのは、一体どういうところに原因があるかという点と関連をいたしまして、大臣のきわめて高い次元における農業政策の構想をお伺いいたしたいと思います。
  42. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 十カ年の目標でいまお話のような方向を各方面から進めておるわけでございますけれども、現在の段階におきまして、農業就業の労働力といいますか、これが外へ出ていくことは、先ほども申し上げ、いまも御指摘のあったとおりで、三十七年度等におきましても、中高卒といいますか、そういうものも含めて七十一万くらい出ております。そういう面で農業就業者が減りつつある。したがって、十カ年目標のいまの二町五反、あるいは百万円、あるいは労働力三人の方向に行くか、いかない面、暗い面も出ておりますが、先ほども申し上げましたように、そういう方向へ向かいつつある面も出ておる。でございますから、政府政策よろしきを得、また農民自体も、御承知のように全く土地を捨てていくというわけにはまいらぬ者もあります。兼業農家等で少ない耕地等におきまして捨てていくという面もありますけれども、相当耕作しておる人が全く農業を捨てていくということはなかなかあり得ない。しかし、捨てていくということよりも、もっとそれに密着してやっていけるような高度の農業政策があるかどうか、こういうことでございますけれども、私は、こういう手を打ったらこれでそうなるという一つの手というものはなかなか困難だろうと思います。でありますので、この間私の所信ともいうべきようなものを申し上げましたように、総合的にそうしていきたい。ことに耕地の面積等を広げるということにつきましては、三年前に農地法の改正をいたしましたが、それだけでは十分でない。政策といたしましては、やはり基盤整備していくという意味におきまして、末端まで土地の取得ができいいような土地改良あるいは集団化、また土地取得資金——これは農地の価格の問題にもよりまするし、手放すか手放さないかという問題もあります。そういう問題もありますから、資金をふやしたからすぐ二町五反の目標に向かっていけるとも考えられませんが、そういう点も考えていかなければなりませんし、それからまた、湯山さんに申し上げたのでございますけれども、生産性の向上というものとあわせて価格対策も考えなければならぬ。あるいはまたそれへもっていくために、何といたしましても経営する資金が足りませんし、なかなか自分資金を調達するというわけにはまいりませんから、やはり公庫資金、系統資金、あるいはまた改良資金等無利子の資金もありますが、そういう資金の手当て等によって、みずからも立ち、また政府のほうにおきましてもそういう方向へ持っていく。その一つのあらわれとしては、いろいろ御批判もありますが、農業構造改善という考え方で、それを一つのてこといいますか、ジャンピングボードといいますか、何か知らぬが、そういうもので総合的にそういう方向へはぜひ持っていかなければならぬ。高度のというわけにはまいりませんが、そういう考えで進めていきたい、こう思っておるわけであります。
  43. 西村関一

    ○西村(関)委員 政府農業政策一つの柱は、いま申し上げております。また大臣のお答えいただいております自立経営農家の育成、つまり農家らしい農家を育成していくのだという点と、もう一つは、構造改善事業にあろうかと存じます。しかしながら、この農家らしい農家を育成するということの半面、農家らしい農家になれない中農あるいは零細農の問題をどうするかという点があとに残ってくると思うのであります。いわゆる農家らしくない農家の問題、この問題に対しても、農業基本法には協業ということばが用いられてございますけれども、しかし、これはきわめて限定されたものでございまして、基本はやはり自立経営農家の育成というところに置かれておるように思うのでありますが、それにいたしましても、政府のお考えになっておられますような自立経営農家が、暗い面もあるが、明るい面もあるという大臣ことばでございます。これはものごとには両面がございまして、私もその明るい面を否定するものでもないし、できるだけその明るい面を推し広げていくために、政府施策が成果をあげるように願うものでございます。先ほど申し上げましたように、農村の青少年は、今日の農村日本農業に夢を失いつつある。これは高度の第二次第三次産業の発達によりまして、多数の農村の青少年がそれらの産業に吸収されていくという現在の経済成長政策のもたらす結果であろうと存じますけれども、しかし、それにいたしましても、中核はやはり農村に残って次の日本農業を背負って立つ、これはただかけ声や意気込みだけではできません。ややはり実体が伴って、その実体が伴うところから彼らに希望を与えていくということがなければならぬと思うのでございますが、その点やはり私は、まだ敏感な青少年に訴えるところのものが欠けているんじゃないか、政府の基本的な農業政策がまだ青少年にアピールするだけのものになっていないということが言えるんじゃないかと思うのでございます。たとえば農地の移動の問題にいたしましても、一町五反の農家を二町五反にしようと思えば、一町歩の農地の移動をしなければなりません。まあこれがために農協法や農地法の改正が行なわれたのでございますけれども、しかしながら、現実にはそういう農家らしい農家をつくるための農地の移動がどれだけ行なわれたか。むしろ農地は工場用地となり、あるいは宅地の造成のために転換せられ、あるいはその他の施設に変えられていってしまっているという状態で、真に農家らしい農家を育成するための農地の移動がどれだけ現在まで行なわれてきておるか、これは統計等数字をお示しいただければ明瞭になると思いますけれども、全体として考える場合に、それはまだしもという感じが私にはするのでございます。現に政府がお考えになっておられますような、十カ年の間に百万戸の自立経営農家を育成するということになると、かりに一町五反から二町五反にしようとすれば、二戸当たり一町歩の農地の移動をしなければならない。これを百万戸といたしますれば、かりに一反歩三十万円といたしましても、三兆円からのばく大な資金が要る。これに対する利子もばく大なものである。こういうものに対する目安がどこにも見当たらないという場合に、これはやはり計画としては机上の計画に終わってしまう。農村農民の人たちも、また農家の青少年たちも、はたして自分たちは二町五反の自立経営農家農家らしい農家のワクの中に入れるだろうか、自分のうちはなれるだろうかというような点に対して、きわめて端的な疑問を抱くというのが私は当然ではなかろうかと思うのでございますが、そういう点に対しても政府のいろいろ御苦心になっていらっしゃる点はわかりますけれども、施策の面、また予算の面におきましても、非常にまだ弱いという感を率直に申し上げなければならぬと思うのでございます。そういう点に対して、大臣は、はたして農家らしい農家、自立経営農家を育成する点についてのどれだけの御確信を持っておいでになるか、どれだけの抱負、経綸をお持ちになっていらっしゃるか、その点からまずお伺いいたしたいと思います。
  44. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 いまお話しのように、非常にむずかしい問題でございます。ほかの人が所有している、ほかの人が耕作しておるというところでございますから、これを合併するといいますか、片方へ移させるということにつきましては、非常に問題がありますから、むずかしい問題だと思います。しかし、私は、実態はもう西村さんも御承知でしょうが、二町五反という方向へ持っていかなくちゃならぬと思いますが、それ以下でも、兼業でも収入においてより以上の収入を得ているという農家がございます。しかし、そういうのは農家らしい農家ではございませんから、いずれどちらかに分散していくようなものであろうと思います。そこで、私は、土地の高度利用といいますか、二町五反に相当するようなものが必要と思いますが、表面の面積はそれだけなくても、たとえば裏作あるいは集団化といいますか——私は、今度の予算におきましても圃場整備相当力入れておるのでありますが、これはいま実態は、各農家の農地というものが分散しておって、東西南北みなばらばらでございます。ですから、土地改良等をする場合におきましても、ひとつ強力に集団化を進めて、同じ面積でも労働の効率あるいは生産性のあがるようなことにするためには、集団化をする、だから、土地改良の場合には必ず集団化を条件というような形にする。それとはまた別といたしましても、圃場の整備等によりまして集団化を進めていく。ですから、必ずしも二町五反なくても、二町五反に相当するような基盤をつくっていくということも一つ方向でなければならない、こういうふうに考えております。それからまた、形式的に二町五反、こういうことで、作物といいますか、そういうものの種類等にもよります。あるいはまた集団化の場合に相当機械も導入できる、こういうような基盤に持っていきたい。そういう基盤になって、やはり青年等におきましても一つの近化的な機械を操作していくんだという気持ちになりますと、気分の上においてもよほど違うと思います。あるいは後継者の問題等につきましても、後継者をどうするかということにつきましては、いろいろ各方面の意見等も聞いておるのでございますけれども、これは、それだから後継者が安定して地元に落ちつくという決定的なものでございませんけれども、経営の面におきましてやはり後継者が責任を持つといいますか、自分農業を主体的にやっていけるんだ、親がかりとかなんとかいうことでなくてやっていけるんだ、こういうことも必要でなかろうか。そういう意味で、改良資金等におきまして、いままで技術導入資金だけであったのでございますが、後継者が養鶏なら養鶏を自分でやる、その面についてはおれが責任を持ってやっていく、またおやじさんなどと、じゃおまえやってみろというような話し合いでもできる場合に、じゃ資金が必要だという場合に、責任を持って自分でひとつやっていくというような資金なども融通してみたらどうか、そういう意味で、農業改良資金等においても、技術導入ばかりでなく、後継者が責任を持って事業をやるという方面にも無利子の金を回していこうじゃないかというようなことなども一つの方法でございます。何も決定的なものでございませんが、そういうような面なども考えて、まあ農家らしい農家という方向へこの手で持っていけるというわけにはまいりませんけれども、協業の点等も考え、あるいは信託制度の問題なども、これが手離せるような方法——というのは、やはり第二種兼業のようにいきましても、何か雇用先が安定していないと、また戻らなくちゃならぬのじゃないかという気持ちも持っておりますから、これも信託までもいかないで、手離しもしない。こういう面もありますので、そういう面なども考えて、雇用の安定ということもよほど強化していけば、土地を広げたいという者に広がる余地もまたできてくるのじゃないか。まああれやこれやいろいろで、お尋ねに対してこれという的確な御答弁もできませんけれども、いろいろな面で考えておるわけであります。
  45. 西村関一

    ○西村(関)委員 十カ年間に二町五反を目途とする自立経営農家を百万戸育成していくのだという政府の構想は、必ずしもそうこだわらぬ、二町五反なくたって、近代的な技術を入れ、多角的に経営することことによって農家らしい農家をつくることができるのだ、だから必ずしも耕作面積にこだわらぬのだというような御答弁のように伺ったのでございますが、私は、二町五反ということさえも、耕作面績としてはまだまだ狭いというふうに考えておる一人でございます。大かたの日本農政学者もそういう意見だろうと思うのでありますが、諸外国の例から見ましても、スウェーデンあるいはスイスのような山の多い国でありましても、耕作面績は十町に近いし、西ドイツにいたしましても同様でございますが、諸外国の例から比べましても、アメリカの問題は別問題といたしましても、耕作面績が非常に狭いということが日本農業の決定的な弱いところであるというふうにいわれておるのでございますが、それでも、二町五反ということは、一応の目途にされたにかかわらず、それにこだわらぬのだ、そういうこともなかなか急にできないのだから、そういうことにこだわらなくて、むしろそれを集団的に協業化していくのだというようなおことばでございますが、そうなってまいりますと、私は農政一つの柱がくずれてくると思うのです。やはり生産基盤整備拡充という点から申しますならば、個々の農業経営の規模というものは、おのずから政府としては一応の目安をおきめにならなければならない。二町五反ということを目安になさったならば、それを貫いていくような政策を出していかなければならないと思うのでございますが、その点がどうもいまの大臣の答えでは、そうやっていくのだが、あまりそれにこだわらないで、それ以下でもいいのだというような、失札でございますが、きわめてあいまいな御答弁であったように私は伺ったのでございます。そういう点についてもう少しはっきり、二町五反にしていくのだ、あくまで、意欲的にやっていくのだ、隘路があるならば隘路を切り開いて、そうしてそれをやっていくのだということを言っていただけるならば、農民も安心いたしますし、われわれも納得がいくのですけれども、それにこだわらぬのだということを言われると、どこに一体目安が置かれているのだ、昭和四十五年度の農家らしい農家というものは、一体どういうところに目安が置かれているのだ、そういう点を所管大臣としてはっきり示していただきたいと思うのでございます。
  46. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 私が申し上げたのは、二町五反にこだわらないということじゃないので、二町五反でなくたって、現状において収入を得ている農家もある、これはいずれ分散するだろう、そういう実態にちょっと触れたわけでございます。別にこだわらぬという意味ではございません。また、その経営面積を四町歩という学者もありまするし、もっと大きいほうがいいという方もあります。大きくありたいのは大きくありたいのですけれども、ただ、私が申し上げるのは、机上で四町ならやれるといっても、四町にするのにはどうしたらいいのだ、二町五反にするという目標を立てて——目標は幾らでも立ちますけれども、現実に私たちがやろうとしているのは、二町五反に持っていくのにはどうしたらいいかという問題で苦心しているわけでありまして、四町や五町や、それはいろいろ学者等の見方によりましてあろうと思います。しかし、二町五反へ持ってくるのに骨が折れている、こういう意味で申しておるので、決してそれを放棄しているとか目標を捨てておるというわけではございません。そういう方向で、いま申し上げました土地改良の問題にいたしましても、圃場の整備の問題にいたしましても、あるいはその他の政策にいたしましても、そこへ持っていきたいという意欲のためにいろいろなことをやっておる、こういうことに御了解を願いたいと思います。
  47. 西村関一

    ○西村(関)委員 どうも私には納得がいかないのでございますが、二町五反ということは一応の目安としてきまっている。しかし、それにいくのにはなかなか問題があって苦労しているのだ。苦労していらっしゃるのはわかります。しかし、苦労しているだけでは済まされません。やはりひとつ何とかこれを切り開いていくためにこうするのだという点をお示しにならないと一それは二町五反以下でもやっている農家があることは知っておりますし、今日兼業農家は四割以上になっている。そういう状態において——兼業農家の問題はあとで触れたいと思いますけれども、まず農家らしい農家大臣がお考えになっていらっしゃるならば、どういう形態のものを農家らしい農家とお考えになっていらっしゃるか、それに到達するためにはどうすればいいという具体的な施策をお持ちになっていらっしゃるか、その点を伺っているのでございます。あれこれお話がございましたけれども、もう一つ私にははっきりのみ込めないので、農地の移動の問題一つ取り上げてみましても、事実それができていないし、またできようとも思われない。こういう状態に対して、政府はそういう農業基本法をお出しになるときの構想を一応お考えになるお考えがあるのか、あるいはこれを貫いていくためにはどうしたらいいというふうにお考えになっていらっしゃるか、そういう点をひとつ日本国じゅうの農民諸君にはっきりこの際大臣からおっしゃっていただかぬと、いまの御答弁では私はおそらくだれも納得できないと思うのです。いかがでございましょう。
  48. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 そういう方向転換しているわけでございませんし、そういう方向へいろいろな政策で裏づけしているということも御了解願っていると思いますが、申し上げましたように、たとえば土地取得資金というようなものも低利にやっている。構造改善事業などもそういう方向へ持っていくためにやっておりますし、また土地改良等におきましても、そういう方向へ持っていく。しかし、土地を全面的に政府で買い上げて、そうして片方へやるという第二次土地改革みたいなことをやればこれは簡単だけれども、その点につきましてはいろいろな問題がありますから、こういう面はよほど慎重に検討しないと——そういう構想、考え方ということぐらいはあります。考え方ぐらいはありますが、そういうことが実現できるかできないかという問題につきましては、いろいろ問題があると思いますので、簡単に言えば、第二次農地改革でもやって国の管理にでも移して、そうしてやめる人はやめていく。ふえる人はふえてくるというような土地の再配分でもやれば、これは私は簡単だと思います。しかし、そういうことがやり得る情勢かどうかということを考えますと、逐次やはり十カ年のうちにその方向に持っていく手を一つ一つ打っていく以外になかろうと私は思うのです。もしいい案がありましたら私も教えていただきたいと思います。
  49. 西村関一

    ○西村(関)委員 私、大臣にお伺いいたしておりますのは、いやがらせとか、あるいは大臣を困らせるためにやっているのではなくて、事実農業基本法が施行せられましたときに、一つの大きな農政の柱をお出しになった。それがすでに三年になって、今日そういう方向さえも見出されないという点に疑問を抱きます。これは私が疑問を抱くだけではなくて、天下の農民諸君がその点に疑問を持っている。確かに大臣お話しになったような明るい面も全然ないとは申しませんし、それを助長することにやぶさかではございませんけれども、二町五反を目途とするところの自立経営農家、一カ年の粗収入百万円の自立農家を百万戸育成するという大構想、それに近づけるだけの施策が、農業改善事業といい、あるいは土地改良事業といい、あるいはまたその他の全般的な農業施策の面からいって、この一つの目標に向かって近づかしめるところの一つ一つの手だというふうには、なかなか受け取れない節が多いのでございますから、私はあえてこの点をお伺いしたのでございます。しかし、これ以上この点について二お伺いいたしますことは、ほかの問題もございますから、また他日お伺いするといたしまして、次の問題に移りたいと思います。  大臣は、三十八年度の農業年次報告の中で、六十万円以上の農業所得を上げているところの農家の比重は九%になったということが述べられております。そういうところに、いま大臣お話になりましたような自立経営農家農家らしい農家の芽が出てきておるんだ、いわゆる大臣お話になります明るい面があらわれてきておるんだというふうに、私はすなおに年次報告を読ましていただいたのでございます。しかし、そのような年次報告部分があるといたしましても、私のお伺いいたしておりますのは、農家らしい農家、いわゆる自立経営農家というものは、その経営の規模なり——経営の規模に  ついてはいまお話がございましたが、生産の内容なり、あるいは生活の水準なり、どういうところに一応の目安が置かれておるか、来年度の目標としては、どういうところに置いてこの芽をより育てていこうとなすっていらっしゃるのであるか、つまり、六十万円以上の農業所得を上げている農家の比重は九%になったというのでありますが、これをさらにどの程度まで引き上げていこうとするか、生産の面において、生活の水準の面におきまして、来年度の目標はどこに置いているか、あるいはまた目標達成年度においてはどの程度までいくのがいいとお考えになっておられるか、具体的な年次計画といいますか、そういう点について、三十八年度の農業年次報告の中のこの項に関連をいたしまして、これから先の本年、三十九年度はどうか、あるいは四十年度はどうかというふうに、大臣の仰せになります明るい面をどういうふうにより育てていこうとなさるか、より推し広げていこうとなさるか、そういう点を明らかにしていただきたいと思います。
  50. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 六十万以上の農家は、いまお話がありましたように、三十五年度は三・五%でございましたが、三十七年度は九%、三十六年は五・三%でございますから、四%くらい伸びておるわけでございます。これをどういうパーセンテージまで持っていくかということは、総合的に検討いたしませんと、パーセンテージで示せとおっしゃられても、非常にむずかしい問題で、いま私の率直に答えるあれはございませんけれども、いま三十六年から七年、こういう率でいけるようにしたいとは思っていますけれども、それを的確に何%というふうにはちょっとお答えいたしかねると思います。  それから経営面積の問題でございますが、先ほどもお触れになりましてて、いまもお話がありましたが、この点なども、土地改良などでそういう点を考えたらいいじゃないかということで、いずれ土地改良法なんかも御審議願うと思いますが、私は、そういう土地改良なども、経営の面積が多くなるような方向でいきたいというので、現実的にはたとえば土地改良いたしましても、耕地整理組合の時代と違いまして、いままでやってなかった末端まで区画整理、換地処分でもやる、換地処分までやるということになるならば、あるいは一反歩、二反歩のものは、金で清算して、そして集団化したり経営面積をふやしたりという方向に回すことが、換地処分の従来のやり方でございます。そういう面なども、経営面積をふやす一つの方法であるというふうに考えております。ただ、所得の伸び率をどのくらいを目標としているか、パーセンテージで言えとおっしゃられても、ちょっとこれは私もいいかげんなことを申し上げられませんし、なかなかむずかしいので、答弁には困るわけであります。いままで伸びてきたような伸び率で伸していきたい、こういうふうには考えております。
  51. 西村関一

    ○西村(関)委員 私のお伺いしておりますのは、農業生産の内容、それから所得の内容、生活の内容、それからたとえば他の産業、第二次産業あるいは第三次産業に従事しておるところの人たちの生活と比べて、あるいは所得と比べて、どの程度まで上昇することを目安に置いておられるか、そういう点でございます。その点は大臣にもお考えがあろうかと思うのでございますが、私の伺っておりますのは、このパーセンテージの問題だけでなくて、内容の問題について大臣のお考えを伺っておるのでございます。
  52. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 生産性の問題からいいますると、これは農業の自然的、経済的といいますか、社会的といいますか、そういう制約がありますから、同じところに持っていくというわけにはまいらぬと思います。二七から二九・八に上がりましたが、それをどの程度まで持っていくか、同じに持っていけるというわけには、これは農業実態から同じにはいかないと思います。  それから所得の面でございますが、これは他産業の従事者、製造業者等がよく比較に出されますが、それとの比較におきましては七三%から八〇%、農業外の所得など合わせるとそういう率が出ております。これはやはり同じというわけにはまいらぬかと思いますけれども、七、八〇%まできておるのでございます。これはほとんど同じくらいに近づけるような方向に持っていきたい、こういうふうには考えております。
  53. 西村関一

    ○西村(関)委員 私の伺っておりますのは、農業所得を含めての農家の収入のバランスを申し上げておるのじゃなくて、いわゆる農家らしい農家大臣の言っていらっしゃいます。そうしたまた、明るい面としてこれから伸ばしていき得る可能性があると大臣がお考えになって、報告をしておいでになります面につきまして、農業外の収入は別問題といたしまして、農家それ自体が農業によって得る所得というものと、他の農業以外の産業に従事する者の所得との格差を縮めていこうというのが、農業基本法ができた大眼目であったはずであります。その点に対して、やはり年次計画というものが農林省においてはなければならぬと思うのです。第一年度はこう、第二年度はこう、すでに三年度になっておるのでございますが、昭和三十九年度においてはどう、どの程度農家らしい農家を引き上げていくのだという具体的な計画がやはりなければならないのじゃないかと思うのでございます。もちろん、自然的、経済的制約があるということは言うまでもございませんが、それだけに農業は他産業と比べて保護をしていかなければならぬ。保護政策をとらなければ、これは自由経済の中でほったらかしにしておきましたならば、農業は衰微の一途をたどるほかはないのであります。その点について、農業はこういう制約があるから七〇%、八〇%でよかろうというのでは、農業政策にならぬと思うのです。そういう点に対して、やはりいろいろな御苦心があろうと思いますけれども、大臣といたましては、そういう点についてどういう目安をお持ちになり、どういう具体的な施策をお考えになっていらっしゃるか、こういう点をお伺いをいたしておるのでございます。
  54. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 おっしゃるとおりでございます。農業と他産業とまる裸でかけ足させろと言っても、これはとても及ばぬものでございますから、やはり農業に対しての国の力づけといいますか、そういうものを持っていかなければならぬということは、私もそう考えております。御同感でございます。  そこで、それについては年次計画というようなものを持っているか、これは他産業との関係もございます。他産業の伸びもありますし、農業の伸び、あるいは農業所得の伸びといういろいろな関連もございますので、七〇%、八〇%で満足だということではございません。私も、その点においては、他産業に従事している勤労者等と同じような所得に持っていきたい、こういうふうに考えておることはもちろんでございます。ただ、それでは三十八年度にはどれくらい、三十九年度にはどれくらい、こういう具体的計画があるかということでございますけれども、まあ所得倍増計画のあれも、一つ計画というよりも、農業については特にめどだと思います。目標だと思います。その目標でもいいから、ひとつここで示してみろ、こういうことでありますけれども、これは先ほど申し上げましたように、何%というようなめどは検討中でございまして、いま申し上げる段階ではございませんが、農業と非農業のどの部分均衡を問題として考えていくかという問題とか、その他いろいろそういう問題がありますので、実は農政審議会にかけて、そういうめど等も検討いたしたいと思っておるのでございます。いま直ちにこの席で、どの程度のめどということを申し上げることは、私もできないのです。ぜひ最終年の十年後の目標にはもっていきたいと思いますけれども、年次別にどういうふうにということは、残念でございますが、まだ検討できておりません。
  55. 西村関一

    ○西村(関)委員 それは農政審議会にはまだおかけになっていらっしゃらないのですか。おかけになるお考えであるということなのでございますか。
  56. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 農政審議会にかけて検討していきたい、こう思っております。
  57. 西村関一

    ○西村(関)委員 そこで、農家らしい農家を育成していこう、せっかく芽が出てきた、六十万円以上の農業所得をあげている農家の比重が九〇%になって、自立経営農家としての希望を幾らかでも抱くことができるようになった、こう報告されているのでございますから、この芽を伸ばしていくために、この明るい面を推し広げていくために、政府の具体的な御施策を伺ったのでございますが、農政審議会にかけていろいろ諮問をした上でということでございますから、これ以上のことはお伺いをいたしません。ただ、この農家らしい農家を育成していこうという大臣のお考えの中には、農業の中におけるエリート意識と申しますか、一つのチャンピオンをつくっていこうというお考えがあるのではないかと思われるのでございます。ところが、このエリートになれるところの、チャンピオンになれるところの農家というものは、きわめて限られておるのでございます。先ほど大臣もお述べになりましたように、農業外の収入によってようやく生活をささえているところのいわゆる兼業農家というものが年々歳々ふえつつある傾向でございます。しかも第二種兼業農家がふえつつある現状でございます。こういう問題、農業外の収入によって生計を立てているところの農家、あるいは農業外の収入さえも安定していない、自由労働等によってようやく生活の資を得ておるところのきわめて零細な農家、いわゆる農家らしからぬ農家の問題を、一体政府はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。こういう問題に対していままであまり明確にお示しを受けなかったと思うのでございます。私どもは零細農切り捨て政策あるいは零細農いぶり出し政策というようないやなことばで批判を申し上げておりましたけれども、農家らしい農家になれないところの農家に対する施策をいまだかって農林当局はお示しになったことがないと私は思うのでございます。農業人口減少は、三十七年度におきまして、純移動は七十一万人、前年度より一二%上回っておると、大臣所信表明の六ページにお述べになっていらっしゃいます。このように農業人口は減っておりますが、また、この同じ文書の六ページから七ページにかけまして、農家戸数の減少農業従事者の減少に伴わない、いわゆる兼業を主とする農家が著しく増加し、全農家数の四割を占めておるということも指摘されておるわけでございます。また、農業労働力の老齢化、女性化が進行し、農業経営の後継者をいかにして確保するかという問題も重視しなければならない。これはただ単に後継者養成のための若干の補助金を出すということぐらいでは私は解決できないと思うのです。もっと農政の根本的な姿勢を改めなければ後継者は出てこないと思うのです。そういうところに大きな憂いがあると思うのです。こういう老齢化、女性化の問題に対して、政府は一体どうこれを解決しようとなすっていらっしゃるか。いわゆる三ちゃん農業、おじいちゃん、おばあちゃん、おかあちゃん農業、特に兼業農家の場合には、奥さんにたんぼをつくらして、だんなさんは月給取りになって生活をささえておる。だからといって、農地を手放して、家をあげて農業外の仕事に移っていくということも、今日の労働事情、今日の賃金事情からいって、とてもそれは望めない。中学を卒業した若い青少年たちは、幾らでも、どこへでも働き口があって、むしろ求職よりは求人のほうが逼迫しておるという現状でございますから、どんどんどんどん行ってしまう。家庭を持って子供の三人もあるような中年の農業一脈でやってきた人は、ほかの会社や工場に使ってもらおうといったって、雇ってくれるところはない。こういう現状になっておって、政府のお考えになっていらっしゃるところの自立経営農家を育成していくという面と相合わない、ずれているところができてきておる。こういう多数の農家らしからぬ農家に対して、どういうような施策を講じていこうというお考えですか。ほったらかしにしておくというなら、それもしかたがないが、ほったらかしにしておくのでは、これはあんまり芳しいことだとは言えません。一体これをどう処理していくというふうにお考えになっておりますか。かって池田総理は、自然に解決していくのだ、日本の経済の高度成長発展の中で、自然に解決していくのだというような答弁をしておられますが、現在解決していないじゃありませんか。ますます日本農業の老齢化、女性化は進んで、大臣もここにお述べになっておられますように、日本農業の将来は実に暗いものがある。明るい面を見出そうと私も努力をしたいのでありますが、非常にこの点に対して暗い面がある。こういう点に対して、兼業農家の処置とともに、将来の見通しをどういうふうにお立てになっていらっしゃいますか。
  58. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 こういう議論もあります。人口が減ってくるから、近代化がすぐできるような意見を言う人もないわけではないと思います。しかし現実に農業人口が減ったからそれですぐ近代化になるのだというふうには私は考えておりません。むしろ憂うべき面もあります。しかし、一つの契機にはなります。でありますから、いま老齢化、あるいは女性化を具体的でなく言えば、日本農業というものが重労働から解放されて、少ない労働力で、かりに女性であってもやっていけるような農業に持っていってこそ、初めて近代化だとかなんとか言えるのじゃないかと思います。これは非常に抽象的な問題でございますが、そういうふうに考えておるのでございます。  ところで、いま第二種兼業の問題がありまして、先ほどもちょっと申し上げたのでございますが、これは分解するというか、いずれ分解する段階にあると思います。農業に戻るか、あるいは他産業に入ってしまって農業を離れていくか、こういう分解する過程にもあろうかと思います。そこで、これは農政ばかりで解決できる問題ではない。やはり雇用面あるいは社会保障制度の問題、そういう面で、第二種兼業として他産業に入った人が、その他産業の中で安心して雇用関係が続けていける、あるいはやめてからも相当生活の保障があるというようなことに、雇用関係あるいは社会保障制度関係が充実されていきまするならば、これは農地を放して、もうその方面に専念するというような形もありますので、これは農政と同時に、雇用関係、あるいは雇用の機会を与えるといいますか、機会を与え、またそこへ入った場合には安定するというような、一方にはそういう政策を進めていかなくちゃならぬと思います。同時に、そういうことになりまするならば、自分の零細な農地はもう手放してもよろしいということにもなれば、土地取得資金・あるいは土地改良その他の中に包含して、二町五反の経営規模に進むという方面で、その土地が流れていくといいますか、流動化していく、こういう面もあろうかと思います。  そこで、現実の問題といたしましては、雇用の安定というのが一番大事だと思いますが、農業面から言いますならば、せっかく信託制度などもありますので、信託制度に対するネック等も排除して進んでいく、あるいは農業生産法人の制度もございますので、そういう方面を進めていく、こういうことが考えられると思います。ですから、一面にはやはり雇用の安定、社会保障制度の充実を期して、分散過程にありますけれども、いずれに定着するかということをきめるような方向に進め、一面においては経営規模の拡大、一面においては兼業農家の判断の岐路に立っておるその判断をはっきりさしていけるような政策をとっていくべきではないか、こういうふうに考えております。
  59. 西村関一

    ○西村(関)委員 大臣の後段にお述べになった点は、私は同感なんです。そうありたいと願っております。しかし、現状は、いまの雇用関係、低賃金と企業合理化のあらしに吹きまくられているところの日本の現在の状態、また、社会保障制度の点から申しましても、政府は社会福祉国家をつくり上げていくのだという点を政策の大きな柱にしておられますが、今日の社会保障制度は、いまさら私がここで申し述べるまでもなく、きわめて低いものであって、今後社会福祉国家として名実ともにふさわしいものにしていくということは、国民が皆願っているところで、われわれもそのことは強く政府に要求しているところでありますが、現状の場合は、いま大臣お話になりましたような希望を持つことはきわめて困難である。農民がそういう希望を持つということは困難である。第二種兼業農家が判断の岐路に立って、農業をやめて他の産業一本に、家族をあげて農地を手放して移っていこうという決心をするには、きわめて困難な状態にあるという点等考え合わせまして、いま大臣のお述べになりました点はまさしくそのとおりでございますけれども、事実それは現在においては行なわれない。だからこそ、兼業農業がふえていっておる。もしそれができるようなことでありますならば、何も三反や四反のたんぼにかじりついて農業をやっていかなければならぬ理由はないはずである。それをせめて飯米だけでもつくっていかなければ、工場あるいは事業場において得られる賃金だけでは家族を生活さしていくことができないという現状でございます。また、いつ何時企業合理化のあらしの中で首切りされるかわからぬという不安におびえている人たちが、せめて農地だけでも保っていこうと、かじりついてやっておるというのが現状ではございますまいか。そういうことを考えに置かないで、いま大臣のお述べになったような点をもって兼業農家の問題の解決をはかっていくのだと仰せになりましても、遠い将来は知りません、またそうなることを望みますけれども、この数年の間にそういうことが実現できるとはとうてい考えられません。まして、前段において、老人や女性でも農業ができるようになったのだ、それだけ機械化して日本農業は楽になったのだ、それだけ進歩したのだと言わんばかりのおことばでございましたが、あまりにも大臣日本農村農業実態をお知りにならない、きわめて残念なおことばだと思うのでございます。いまの農家のおかあさん、主婦、老人がどのような思いをしてたんぼを耕しているか。それこそもう手にあかぎれやひびをきらして、そうして休むひまもなく、家庭をかかえながら農耕に従事している。夜の寝る間もさいて農耕に従事している。そして、せめて飯米だけでも主人の収入の足しになるためにということで、実になみなみならぬところの苦労をして農業をやっているのであります。それは、日本農業近代化して楽になったから婦人でもやれるんだというような言い方では、農家の主婦はとうてい承服しないと思うのです。そういう点はもう少しあたたかみを持って、大臣はこれらの実態をよく見きわめてお考えをいただきたいと思うのでございます。
  60. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 たいへん私の話を誤解されたようです。私は、老人や女性もやっているから近代化した、こういうことは申し上げませんで、実態は西村さんと同じようによく知っているのです。ですから老人や女性がやっている気の毒な実態というものは、私も身にしみて感じております。ただ、私は、農業近代化するという場合に、目標というか、抽象的に申し上げれば、女性でも農業をやっていけるようなものに農業というものがなっていけば、それは近代化したと言えるんじゃないか、こういう意味で申し上げたので、それを誤解されてはたいへん私も困りますが、いま老人や女性もやっているから近代化したとは絶対に考えておりません。苦しみも何も知っております。女性でもやれるくらいに生活も改善され、そうしてまた機械も入り、耕地も整理されてやれるようなことになったら、初めて近代化したと言えるんじゃないか、こういうことを申し上げたので、現状においては、決してそう近代化しているとかなんとかということを申し上げているわけではございませんから……。
  61. 西村関一

    ○西村(関)委員 私の誤解の点は、はっきり認識を改めていきたいと存じます。大臣は、私以上に農業の経験があり、農家農村のことは御存じのお方でございますから、たいへん失礼なことを申し上げて申しわけございませんでしたが、さっきのおことばが私にひっかかりましたから、はっきりさせるために私は申し上げた次第でございます。  そういう点につきまして、現状はそうでございます。現状は非常に苦しい状態、これは大臣よく御承知のとおり、兼業農家から抜け切れないというのが現状でございます。その点、どういうふうにしてこれを切り抜けさせるか。いま大臣お話になりましたように、第一種、第二種兼業農家は、兼業農家をやめて専業農家になるか、あるいは他の産業に全家をあげて移っていくか、その関頭に立つ過程にある、こういうことを言われましたが、私は、そういうようなことが例の政府所得倍増計画の中にもうたわれておったと思うのでございまして、いわゆる経過的非自立家族経営というようなおことばばで、あるいは完全非自立家族経営というようなことばで述べられておったと思うのでありますが、まだしかし、われわれの見通しといたしましては、兼業農家を解消するということは困難である。むしろ、日本農業のにない手として、兼業農家に対する施策もあわせ考えるということのほうが、実態に即した農政のあり方ではなかろうかと思うのでございます。兼業農家に対する農政のあり方につきましては、先ほど申し上げましたように、あまり政府としてこういう考え方でおるのだということを伺っておりませんので、これはどっちかに行く過程にあるのだ、やはりいずれかに分解する過程にあるのだというようなことで、これはかって池田総理もそういう御答弁をなさいましたが、そういうことでは、私はこの兼業農家の問題は解決つかないと思うのでございます。これはやはり何としても専業農家になることを期待するわけでございますけれども、現実の政治のあり方としては、そういう言い方だけでは、現実の四割になるところの兼業農家の問題は解決つかない。いわゆる農家らしからぬところの農家大臣のおことばを逆にして申しますなら、農家らしからぬところの農家の問題も、やはり日本農業のにない手の一部であるという見地に立ちまして、これをどうするかということが、農政一つの大きな問題点ではなかろうかと思うのでございますが、もう一度この点に対して大臣のお考えをお伺いいたします。
  62. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 確かに御認識のとおり、私もまた見ていますように、四割の兼業農家というのは岐路に立っておると思います。ですから、一面においては、その判断を早くでき得るように、すなわち、専業的に他産業に入るか、あるいは専業的に農業に戻るか、こういう判断がつけられるように、一面においてまだ不備であるという社会保障制だとか、雇用安定の制度だとかいうものを拡充し、強化していくということが、一つの判断を早める道だと思います。しかし、そういうことにおきましても、なかなかお話のように決してそれが急速に行なわれるというわけでもございませんし、非常な重労働をしながら自家用の食糧生産しておる、こういう形で農業をいたしておると思います。そこで、これは農業全般の問題だと思いますが、私は、兼業農家を切り捨てるとか、それに対して農業政策を行なわないとかいう考えは毛頭持っておりません。やはり農業として苦しみながら主婦やその他の家族がやっておるので、これは農業の形態がいろいろあろうと思うのです。私は、一般的な専業農家としては、やはり二町五反以上の経営をやる、しかし、都市近郊とかなんとかいうことになりますと、これは面積等は狭くても、多角的といいますか、都市近郊に沿うたような農業形態というものもあり得ると思います。そういう面の指導等もして、面積は少なくても収入が上げられるというような形に、また農業の経営形態というものを持っていくべくいろいろやっております。  もう一つは、やはり何といたしましても、せっかく農地の信託、農協の信託制度だとか、あるいは、生産法人というようなことの道も開けておりますので、こういう方面も奨励といいますか、推進させて、そういう人も包含して、農業生産法人の中でやっていけるようなふうになりますれば、これは労力の面等でも相当省ける面もあろうかと思います。収入の面がはたしてどうかということにつきましては、これはまた検討の余地もあろうかと思いますが、まあ大ざっぱに申し上げまするならば、この方面に対しましても、いろいろな面から対策といいますか、農政としてもやっていかなければならない。これを絶対に捨てていくというような考えでおるのではいけない、こういうように思っております。
  63. 西村関一

    ○西村(関)委員 いろいろ御苦心のあるところは十分に察することはできるのですが、この問題を解決するためには、やはり生産基盤整備拡充を行なう、農業近代化をはかっていくということにあろうかと思います。大臣のお答えもそういうところに、ことばをかえれば一致するのではないとか思うのでございますが、それにつきまして、政府財政投融資、他の産業に対する財政投融資とこの農業に対する財政投融資との現状はどうなっておるのか。農業がこの面において私はまだ十分だとは考えられないのでございますが、数字的に農業及び農業関係するいわゆる生産基盤整備拡充、それから農業近代化等に対する予算の面はともかく、財政投融資の面から申しまして、どのくらいの伸びを示しておるか、お伺いをいたしたいと思います。
  64. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 なお事務当局から数字的に申し上げたいと思いますが、三十九年度の予算等におきましては、土地基盤予算は非常に増大いたしております。それから内容等におきましても、量的というか、質的に相当変化いたしておると思います。農業基盤あるいは近代化予算の総ワクで言いますならば、御承知のように三二%の伸びをしております。これは食管のものも含めてでございます。  それから財政投融資の面におきましては、膨大な人口と非常に大事な農業に対する金融面の措置は、私も満促すべきものどころか、膨大な他産業に対する財政投融資と比較すれば、ほど遠いものだと思います。しかし、それにいたしましても、御承知のように、系統金融とかあるいは組合の金融とか、そういう面では農林漁業金融公庫のワクなども千七十億にいたしましたし、近代化資金のワクも六百億にして相当ふやしましたし、あるいは改良資金のワクも四十五億というふうにふやしまして、金利の面も九段階を四段階に直した。できるだけ三分五厘の線にいまの土地基盤整備等も含めて入れてきた。あるいは無利子のものも四十五億ある。こういうことで相当力入れておるつもりでございますが、他との比較の数字はあるいは事務当局から答弁させるかもしれませんが、比較いたしまして十分とは申し上げられないけれども、ことしといたしましては、予算的あるいは財政金融面相当力入れてきておるということは、私からも言い得ると思います。
  65. 西村関一

    ○西村(関)委員 いまの大臣の御答弁につきまして、事務当局からお答えをいただきます時間がございませんので、資料として後ほど提出していただくようにお計らいをいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
  66. 丹羽兵助

    丹羽(兵)政府委員 御要求のものは提出させていただきます。
  67. 西村関一

    ○西村(関)委員 私は、なお構造改善事業あるいは食糧の需給の問題等について質問を申し上げたいと思って、多少の用意をいたしてまいりました。また湯山委員質問に対する大臣のこれらの問題に対する御答弁についても、なお解明しなければならない点があるように存じておるのでございますが、しかし、時間の余裕もございませんし、これはまたこれ以上この問題で質問をいたしますと、大臣が参議院においでになるのにここからすぐ行っていただかなければならぬことになって、人道上の問題でありますから、私は、これはまた法案の質問等を通じまして御質問申し上げたいと思いますが、最後に、一点だけお伺いをいたしまして終わりたいと思います。  一つ大臣所信表明の中で私の遺憾に思いましたのは、内水面漁業の振興に関することが一言も触れてございません。予算の面から申しましてもきわめて微々たる状態でございます。内水面漁業は、現在いろいろな工業の発達、立地条件の変化等によりまして、非常に苦しい状態に置かれておる。この内水面漁業の窮状は、大臣も御承知のとおり非常にひどいものでございます。やはり政治の面に携わる者といたしましては、日の当たる場所にある産業を、そしてまた非常に重要な部面を重点的にやっていくということでございますが、日の当たらない場所に置かれておる人たち及びその産業、いわゆる斜陽産業に対しまして、心を用いていく、あたたかみのある政治を行なっていくということが、私は必要だと思うのでございます。内水面漁業の現状に対して、これをどう育成していくお考えなのか。具体的なことについては、私は法案の審議のときに伺いますけれども、一言その点について大臣の御所信を承っておきたいと思います。
  68. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 ごもっともでございます。所信表明の中には確かに漏らしましたけれども、私も内水面の近くに住んでおる者の一人といたしまして、実情もよく知っておりますし、琵琶湖とか霞ヶ浦とか、そういう内水面漁業対策ということにつきましても、予算面等にも出ておるはずでございます。こういうものもゆるがせにしてはいけませんし、なおこういう面に力を注いでいきたい。ことに予算面にもある程度対策を立てております。そういうふうに御承知おきを願いたいと思います。
  69. 西村関一

    ○西村(関)委員 以上で私の質問を終わりたいと思いますが、最後に、私は一言大臣に申し上げたいと思うのでございます。  実は、私、先年西ドイツに参りましたときに、ドイツ連邦共和国の社会民主党の領袖でありますアイヒラー、これはゴーデスベルグ綱領を起草したドイツ社民党の第一人者でございます。彼に会いましたときに、ドイツのいまの——当事アテナウアー内閣の農業政策に対する野党の立場はどうかということを質問いたしました。農業基本法が通過したその翌年、ドイツの与党政府は一躍農林予算を倍にしておるのであります。野党の社会民主党は、この政府のやり方はあまりにも農民を甘やかし過ぎる、あまりに重きを置き過ぎるといって、われわれ野党側が攻撃しなければならないような状態だということを述べておったのでございます。私はその点と考え合わせまして、日本の現在の状態、現政府予算の内容から申しまして、大臣がお気ばりになって、相当な農林予算の面の増強はございましたけれども、しかし、いまなお当時の西ドイツの状態と比べましたならば、農林予算のパーセンテージは非常に低い。もっともっと踏み切って農林予算を増強しなければいけないというふうに考えるのでございます。本腰を入れ農政に当っていただかなければならない時期であると思います。先ほど来私の触れてまいりました、きわめてわずかな一、二の問題点だけから申しましても、私は政府の奮起を促したいという気持ちが非常に強く動いておるのでありまして、われわれは野党の立場から政府に協力することを惜しむものではございませんが、これではあまりにもひどいという感がいまなおしておるのでございます。最後にその点について大臣のお考えを伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。
  70. 赤城宗徳

    赤城国務大臣 予算の面等につきましては、お話のような点があろうと思います。しかし、量ばかりでなく、また質という面も考えていかなくてはなりませんし、またいろいろな点において強力に農政を推進していきたいと思います。質問の中におきましても、非常に御真剣な気持ちで私に対する質問がございました。私もよく身に感ずるものがございます。一そう日本農民のため、農村のため、あるいはまた日本のためにも努力いたしたいと思いますので、どうぞ一段の御協力を私のほうからお願いいたします。
  71. 高見三郎

    高見委員長 次会は、明七日午前十時三十分より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時四十一分散会