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1964-08-31 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    七月十八日  徳安實藏君が委員長辞任した。     ………………………………… 昭和三十九年八月三十一日(月曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長代理 理事 伊能繁次郎君    理事 辻  寛一君 理事 内藤  隆君    理事 永山 忠則君 理事 石橋 政嗣君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       井原 岸高君    野呂 恭一君       福田  一君    藤尾 正行君       前田 正男君    湊  徹郎君       岩動 道行君    稻村 隆一君       大出  俊君    只松 祐治君       中村 高一君    成田 知巳君       村山 喜一君  委員外出席者         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         警  視  監         (警察庁刑事局         長)      日原 正雄君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         検     事         (刑事局長)  津田  實君         郵政事務官         (電波監理局         長)      宮川 岸雄君         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 七月二日  委員岩動道行君、松澤雄藏君及び渡辺栄一君辞  任につき、その補欠として高橋等君、坪川信三  君及び齋藤邦吉君が議長指名委員に選任さ  れた。 同月十三日  委員高橋等辞任につき、その補欠として大倉  三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大倉三郎辞任につき、その補欠として高  橋等君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員高橋等君及び徳安實藏辞任につき、その  補欠として大平正芳君及び福田一君が議長の指  名で委員に選任された。 同月二十四日  委員齋藤邦吉辞任につき、その補欠として井  原岸高君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員山田長司君及び受田新吉辞任につき、そ  の補欠として松井政吉君及び西村榮一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員松井政吉辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。 八月十日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として受  田新吉君が議長指名委員に選任された。 同月三十一日  委員壽原正一君及び山田長司辞任につき、そ  の補欠として岩動道行君及び成田知巳君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員成田知巳辞任につき、その補欠として只  松祐治君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十六日  農地被買収者等に対する給付金支給に関する  法律案内閣提出第一七四号) は本委員会に付託された。 同日  一、行政機構並びにその運営に関する件  二、恩給及び法制一般に関する件  三、国の防衛に関する件  四、公務員制度及び給与に関する件  五、栄典に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  公務員給与に関する件(人事院勧告問題)  国の防衛に関する件(基地問題)      ————◇—————
  2. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 これより会議を開きます。  去る七月十八日、徳安委員長辞任せられましたので、理事間の御協議によりまして、私が委員長職務を行なうことに相なりましたので、よろしくお願いを申し上げたいと存じます。      ————◇—————
  3. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 本日は、公務員給与に関する件及び国の防衛に関する件について調査を進めます。  まず、去る十二日の人事院一般職職員給与改定に関する勧告につきまして、人事院当局より御説明を求めます。人事院総裁佐藤達夫君。
  4. 佐藤達夫

    佐藤説明員 人事院といたしましては、国家公務員法等の条文に基づきまして、今回、去る十二日に一般職国家公務員給与改定につきましての勧告国会及び内閣に提出いたしました次第でございます。  その概要を御説明いたしたいと思いますが、申すまでもなく、人事院といたしましては、毎年四月現在で民間給与公務員給与を調べまして、これを比較してまいっておるのでございますが、本年も四月現在におきましてその官民給与格差を調べた次第でございます。その結果、総合格差において民間のほうが公務員よりも八・五%給与において上回っておるということが明らかになりましたので、人事院といたしましては、この八・五%という格差をこの五月にさかのぼって公務員について埋めていただきたいということを御勧告申し上げた次第でございます。  なお、この格差の取り方につきまして、一つことしは例年と違ったところがございますのですが、これは、従来民間給与を調べますについて、人事院は、事業所規模五十人以上というところをつかまえまして、これを調べておったのでございますが、今年は、企業規模が百人以上というところで民間給与をとらえまして、そして公務員給与との比較をいたした次第でございます。これは理由は御承知のとおり、本年の五月に公労委によりまして、国鉄、専売その他五現業等に対する仲裁裁定が行なわれたのでございますが、公労委が、ことしは人事院の従来やっておりましたような官民格差をとらえてこれを埋めるというたてまえをおとりになりました。そしてその場合に、民間給与を調べる基準として、企業規模百人以上ということをおとりになったわけであります。当然この公労委裁定の対象となります五現業職員は、実は一般職公務員でございます。われわれのお預かりしておる一般職公務員根本においては同じ性質人々であるわけであります。そういう点をも勘案いたしまして、ただいま申しましたように、公労委のとりました企業規模百人以上ということを人事院の場合においてもとりますことは適正であろう、合理的であろうということで、さようにいたした次第でございます。  なお、一般のこの勧告に関する調査段階におきまして、例年のとおり職員の諸団体、これは非常に熱心にいろいろな要望を提起されてまいったのでございますが、ことしの一つの特色と見られますのは、官庁側役所側においても、この給与改定要望が各方面から相当強く人事院に対して持ち出されたということであります。これは、よほど官庁側において、公務員の確保あるいは新規採用という面においてお困りになっておるというような情勢が察しられた次第でございます。  そこで今回の勧告内容でございますが、先ほど申しましたように、全体の総合におきましては、官民格差は八・五%でございます。その中での操作になるわけでございます。  第一点といたしまして、何と申しましても今回私どもといたしましては、俸給表改善に重点を置くべきであろうということに着目いたしまして、そしてそれに関連して諸手当等について相当こまかい改善を加えたつもりでございます。そういう内容でございます。俸給表引き上げは、平均におきまして七・九%ということになっております。これは新聞等に伝えられております給与改善のパーセンテージでございます。この七・九%の改善は、すべての俸給表のすべての等級にわたって手当をしておるつもりでございますが、特に大学教官、それから研究職員、それから医師などについて特別の配慮を加えております。  次に、一般の問題として下位等級人々に対する引き上げ率は、特にこれを高くいたしましたつもりでございます。  なお、初任給が当面の相当重要な問題になっておるのでございますが、初任給につきましては、民間も非常に上がっております。かたがた民間等との均衡をはかりますために、大学卒、短大卒につきましては、二千円上げました。それから高校卒につきましては、千七百円引き上げております。なお、教官初任給については、さらにその上に考慮を加えた次第でございます。  次に、昇給間差額、これについてもできるだけ改善をはかりまするとともに、特に中位等級について配慮をいたしました。  次に、行政職俸給表の(一)につきましては、地方機関などのいわば出先の機関職務段階に適応させますために、現在の三等級と四等級との間に新たに一つ等級を設定いたしました。つまり現在の四等級というのはいろいろな職種が混在しておりますので、これをさらに合理的に分けていくのがよかろうということから、現在の四等級を実は二つに分けて、そしてその上のほうの部分を新しい三等級というふうにいたしました次第でございます。  次に、それに一面において関連はいたしますが、行政職の(一)、教育職の(一)、研究職医療職の(一)などの俸給表の中から、それぞれの一等級に当たる部分を一括して指定職俸給表というものに移しました。すなわち指定職俸給表を新たにつくりまして、これらの俸給表の中から一等級の者を指定職俸給表に移したわけでございます。  なお、昨年の改正によりまして、事務次官、大学学長に対しまして、いわゆる一官一給与給与体系が一部できまして、特号俸というものがございましたが、今回その特号俸に当たる官職の幅を広げまして、これはやはり指定職俸給表の中を甲乙に分けまして、甲にいたしたのであります。それで先ほど申しました各俸給表からひっこ抜いてまいりました一等級指定職俸給表の乙ということにいたしました。  俸給表の中で、一応それだけの根本的な改定をいたしておる次第でございます。  それから号俸の間引きというものを一昨年やったのでございますが、それに関連いたしまする最終調整措置といたしまして、一部の職員については、次期の昇給期間を三カ月短縮するというような措置も考えておる次第でございます。  以上が、俸給表関係改善でございます。  なお次に、諸手当等についての改善要点だけ申し上げます。  第一は、期末手当勤勉手当でございます。これも官民格差に照らしまして、六月、十二月の期末手当をそれぞれ〇・一月分、三月の勤勉手当を〇・一月分増額することにいたしております。  次に、宿日直手当でございます。これも引き上げまして、勤務一回について現行の三百六十円となっておりますのを四百二十円、なお土曜日から引き続くものにつきましては、現行四百二十円を五百四十円の範囲内で支給できるように改めております。  なお、法務省関係の登記を扱っております法務局の出張所などにおいて、これは例外的勤務ではございますが、常直勤務というものをやっております。これについて別段の給与制度がありませんでしたので、今回これらの人々について月額三千円の範囲内で宿日直手当の一種として常直勤務に対する手当支給するということに考えております。  それから第三は、初任給調整手当でございます。これはその支給期間を来年度から延長いたしまして、理工系のものについて現在三年以内で打ち切られるものを五年以内に延ばしました。それからその他の現行二年以内になっておりますものを三年以内に延長した次第でございます。  第四といたしまして、通勤手当でございます。これは現在交通機関等を利用する場合の支給額算定の際に、百円だけは控除しておりました。これは民間でもやっておりませんし、その他公共企業体等においてもそういうことはやっておりませんので、この百円の控除は廃止することにいたしました。その他自転車を使用する場合等についても、それ相当手当をいたしております。  第五は、現業職員等勤務の実情から申しまして、年末年始に働いた人々に対し、休日給を支給できるようにいたしました。  六番目でありますが、そのほか行政職俸給表の(二)の一部の職種につきましては、初任給のきめ方を改善する。その他研究室長でありますとか、地方機関課長等に対する俸給特別調整額適用区分改正などの合理化をはかっております。  以上で俸給、諸手当改善を申し上げたわけでありますが、これらを合わせますと、先ほど申しました民間に見合う給与改善が行なわれるということになるのでございます。  最後に、勧告におきましては、この実施期日を申しておるわけでございますが、これはたびたびこちらでも御説明申しましたように、人事院勧告基礎となっております官民格差は四月を基準として出しております関係上、少なくとも五月一日からこれを実施して、民間給与公務員給与を追いつかせていただきたいという趣旨でまいっております。今回の勧告におきましても、五月一日から実施お願いしたいということになっておるわけでございます。  これはつけ加えて申し上げますけれども、御承知のとおりに、過去四年、常に人事院勧告では五月一日ということを申しておるのではございますけれども、諸般の事情からこれが十月一日に実施が繰り下げられてきております。ことしはすでに五年目になるわけでございます。いま申しましたような基礎から、根本考え方から申しまして、ぜひともこれは五月一日から勧告どおり実施できるようにという強い念願を私たちとしては持っております。特にことしは、先ほど申しましたように、ことしの五月における公労委裁定人事院と同じような官民格差をとっております。その格差を四月から埋めるということで、完全にこれは実施されておるわけであります。それらとの均衡の問題をことしは相当深刻に考えていただかなければならないのではないかというふうに感じております。  次に、この勧告実施に要する経費は、これは一般職のわれわれのお預かりしておる国家公務員関係だけでありますが、本年度において約二百七十一億円と人事院としては見込んでおります。  以上、勧告関係でございますが、それからもう一つ、このほかにことしは実は国家公務員住宅整備拡充について、総理大臣あて要望書を提出いたしました。これはもう昨年も総理大蔵大臣には申し上げてきたのでございますが、いかにも国家公務員住宅施設がまだ不備でありますために、世帯を持っております中堅職員、これが非常に困っておる。さらに私ども人事院といたしまして、公務員試験の願書を受け付けておるのでございますが、志望者は、大てい独身寮か何か住宅施設がありますかということを尋ねてまいります。遺憾ながらこの役所にはそういうものはないと申しますと、せっかくの志望者が逃げてしまいますというような痛切な経験を持っております。各省にもそういう御経験があると思いますので、かたがた公務員寄舎の現実の施設拡充整備について、一そう政府の御努力をお願いしたいという趣旨で、要望書を提出した次第であります。  以上が、大体の今回の勧告要点であります。どうぞ国会の適正なる御判断によりまして、これが勧告どおりに実現いたしますように、特にここでお願い申し上げます。
  5. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 これにて説明は終わりました。  質疑の申し出がありますので、これを許します。永山忠則君。
  6. 永山忠則

    永山委員 いまのお話で公共企業体職員のほうは格差を四月から埋めるよう実施するというふうに言われましたが、それはそのようになっておりますか。
  7. 佐藤達夫

    佐藤説明員 そのとおりであります。
  8. 永山忠則

    永山委員 それでは、どういうわけで四月一日から実施するように公務員のほうはなさらないのですか。四月を基準として計算されているのですから、四月から実施するようにということがむしろ妥当だ、基準は四月にとったのですからね。それを五月に慣例によってずらす必要は私はないと思うのです。ことに今回公共企業体職員が四月から実施するといった以上、やはり歩調を合わせて同様な勧告をさるべきであると考えるのですが、なぜ五月にされたのですか。
  9. 佐藤達夫

    佐藤説明員 これは釈迦に説法になるかと思いますが、たびたびそういう問題は当委員会においても御指摘いただいて、一般にもまたそういう意見がございます。しかし、人事院といたしましては、ともあれこの施行期日をはっきり表現するという措置をとるようになりました最初から、五月一日ということでいっております。これは四月一ぱいにおける格差ということをねらって、そうしてそれを埋めるということから、五月一日からせめて埋めていただきたいという、おそらく趣旨であろうと思います。しかし、いま御説のように、その点はなお根本の問題として検討いたしたいと存じますが、ともあれ私どもといたしましては、ことしはぜひ五月から少なくともやっていただきたいということを強くお願いしておるわけでございます。
  10. 永山忠則

    永山委員 慣例に堕することなく、四月一日からやるというふうに、強く今後はおやりになることを特に要望いたしておきます。  企業規模を百人以上に公共企業体のほうはやっている。ところが、人事院のほうは事業所規模の五十人以上と合わせておやりになっているわけですが、やはり公共企業体と同じように百人以上の事業規模ということでやるべきではなかったか。やはりその点も歩調を合わす必要はないか、私はこう思うのですが。
  11. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただいまの御指摘でございまするが、公共企業体等労働委員会のほうでは、労働省の三十六年度の資料をお使いになっております。それで議論なさっておるのでございますが、三十六年の資料からある程度の推算を加えまして、ことしの四月現在の数字を推定されてお使いになっておる。事業所規模では、十人以上という一つ統計があるわけでございます。そういう基礎統計企業規模百人のところでくくってみたということになっておるわけでございます。人事院でやっております調査は、事業所規模五十人ということでやっておりますので、その点多少労働省統計性質が違っております。しかしながら、この事業所規模五十人以上の事業所の中から企業規模百人というところをくくって、今回は企業規模百人というところを問題にいたしたわけでございます。そこで、御指摘のように公共企業体等労働委員会が使っております資料は、三十六年度の労働省調査でございまするし、人事院で用いましたものは、人事院が本年調査いたしました資料でございますので、そこに若干資料の違いがあるということと、それから公共企業体等労働委員会でお使いになりましたものは、過去の三十六年の資料にある程度の推算を加えて本年の四月を考えておられるということ、人事院でやっておりますものは、本年四月ずばりであるということでございます。そこで、御指摘の点は確かに問題があろうかと思いますので、今後やはりその点は、御指摘の点を含めまして十分検討を加えていかなければならないと思っております。
  12. 永山忠則

    永山委員 それでは事業所規模五十人以上を企業規模百人以上ということで総合してやったということと、公共企業体職員給与算定にあたって、華十六年を基準として推算した企業規模百人以上の事業所比較したら、どうなるのですか。結局人事院のほうが低くなるのですか。五十人以上という分を加えて総合するから、そうすると、企業体のほうの基準が高くて人事院のほうの基準が低いという結果を来たすのではないか、これを総合した場合。
  13. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただいまの御指摘でございまするがこれは両者の統計基礎の違いがございまするし、的確なことは申せないのでございまするけれども事業所規模五十人以上のほうが、事業所規模十人以上の場合よりは、さらにおそらくは高い数字が出るのではなかろうかという感じを持っております。しかしながら、これはまだ資料等が十分研究できるほど整備されておりませんので、確定的なことは申し上げがたいのでございまするが、どうしても事業所規模の低いところをとりましたものよりも、事業所規模の高いものをとった中で、さらに企業規模百人以上ということでとりました統計のほうが、多少高いものが出るのではなかろうかと考えております。そういう点も今後調べてみまするが、ただいま公共企業体等労働委員会で使った資料のほうが高い数字が出るのではなかろうかという御指摘でございまするが、われわれは、むしろこれは反対ではなかろうか、このように考えております。
  14. 永山忠則

    永山委員 それでは、次までに両方の計算の、どちらが高くつくかということに対しての資料をひとつ出してもらいたい。われわれは、どうしても公共企業体のほうの分が高くついているのじゃないかと思います。それに持っていって、五月一日から勧告というようなことでは、やはり非常に均衡を失するという憂いがある。ことに本年は四月一日からやらなければ——旧来五月一日にやっては十月にされているのだから、逆に四月一日からやるという政治的配慮ぐらいを総裁は持っておらなければならない。政府が五月一日をさらにずって十月にするようなことがあれば、断固この委員会を通さぬ。というのは、米の値段を上げようとする、国鉄を上げようとする、すべての物価がまた上がろうとしている。そういう状況のときに十月からやるということになることは、断固承服できないですから、その意味においても四月一日から勧告されなかったことは遺憾でございますが、一応いまの資料をいただきましてさらに質問をいたすことにして、これできょうは終わりたいと思います。
  15. 伊能繁次郎

  16. 村山喜一

    村山(喜)委員 きょうは給与担当大臣も見えておりませんので、ただ人事院に対しまして一、二点問題点だけを指摘申し上げる程度にとどめたいと思うのでございます。  第一の問題点は、いま触れられましたように、四月一日付で調査措置をとりながら、これが五月以降において適用すべきである、こういうような措置をとられるのは、そこに一カ月間のズレを初めから見込んで、人事院が考えてはならないいわゆる原資の問題という問題に左右をされた考え方というものが、この給与勧告の中に出ておるのではないか。それがいままでの慣習であったといっても、その調査の時点がいつであったか、これによってそのときの正しい官民比較をとりながらこれに対応する給与改善勧告するというのが、人事院として公務員の生活を守るという立場をとるならば、それが正しい方向ではなかろうかと思うのでありますが、ただいまの永山委員に対する御答弁を承っておりますと、どうも納得ができないわけであります。この点については、もっと明快な答えを初めにお聞かせ願っておきたい。
  17. 瀧本忠男

    瀧本説明員 四月調査でございまするから四月ということは、これは一つ考え方としてあるわけであります。しかしながら、いろいろな考え方がございまして、給与水準が上がるというのは、ある特定月に断層的にずっと上がるというようなことになるのか、あるいはいろいろ給与の上がり方等は、たとえば労働組合の闘争というようなものを通じて上がるという場合もありましょうし、また労務需給関係等から賃金が上がっていくという場合もありましょうし、これを年間を通じてみますると、四月現在である程度上がるということはございますが、やはり各月ともそれぞれ上がってまいる、こういうようなものでございます。  そこで、へ理屈になって恐縮でありますが、それでは四月からやればそれで適正かというと、これまた、見方によると、四月現在の上がったものは、すでにもし三月に調査すればその何分の一かは上がっておったであろうというようないろいろなことがあるわけで、四月に調査をやれば、四月からやるのはおかしいので、むしろその前からやるべきであるというような議論もあり得るわけであります。この点につきましてはいろいろ議論がございまして、かつて人事院が五月説をとったのは、四月分ということで調査をいたしたのでありますが、その四月分で調べました結果を一番近い時期である五月から、こういう気持ちで五月ということで勧告お願いをするということを始めた次第でございます。  そこで現在の状態は、過去四回にわたりましてこの点をお願いしてまいったのでありますけれども、いろいろの御都合で、先ほど総裁が申し上げましたように、これが繰り下げられておるということがございます。そこで現在の人事院といたしましては、そういう状況のもとにおいては、まず五月と申したのでございますから、五月実施ということを、そこまでやっていただきたいということを当面の目標といたしまして、従前どおり五月ということでお願いいたしたのでございますが、ことしは報告等におきまして、その間の事情を訴えて、先ほど総裁がこの席でお願い申し上げたようなことを強調しておるわけでございます。  以上のように御了承を願います。
  18. 村山喜一

    村山(喜)委員 当面の要求ということでこうしたということでございますが、いままでも五月一日実施という要請をしながら、十月一日に何回もけられておる、こういうようなことから見たら、人事院の力関係でそこまでしか要求ができないような気持ちも、わからないでもありません。しかしながら、理論的にこの問題は筋を立てていけば、四月の調査時点でやったところ、官民比較においてこれだけの差があったというのですから、それは四月一日からさかのぼってやるというのが理屈としては当然立たなければならぬ、そういうふうに私は考えます。しかし、ことしはもう一つの要素があります。御承知のように、春の賃金引き上げの戦いが行なわれまして、民間賃金が総評で調べたところでは一四%、それから日経連で調査いたしました賃金上昇額は一二・四%、そういうようなものが、ことし春の賃金引き上げの運動がおくれて妥結をした、五月から六月にかけて妥結をしたということになってまいりますと、この人事院調査官民比較は、四月一日現在でやったということになりますと、それらの賃金の上昇分は今度の人事院勧告の中には入っていない、こういうように見て差しつかえございませんか。この点を明らかにしておいていただきたいと思います。
  19. 瀧本忠男

    瀧本説明員 従来の人事院は、事業所規模五十人、企業規模も五十人、すなわち五十人の線で一応官民比較をいたすということをやってまいったのであります。ここ十年近くそういう比較をやりまして、国会等で最終的にそれを御承認願っておるというところでございます。そこで、もし従前どおりの方法でやったとしたならば、官民格差はどれだけ出たであろうかということも、計算をいたしております。その計算によりますと、七・六%の官民格差というものが、もし五十人の事業所規模で、従前と同じようなやり方でいたしたとしますならば、出るのであります。今回は事業所規模五十人、企業規模百人以上で比較をいたしましたからこれが八・五%、こういうふうに出たのでございます。すなわち五十人の企業規模から百人の企業規模に変えましたことによりまして、〇・九%高くなっておるということがございます。また特別給も、企業規模を百人にいたしますことによって、これは五十人規模でやったより多く出るのでございます。その両者をあわせて考えますると、約二%以上という、五十人規模でやった場合と百人規模でやった場合との差があるわけであります。そこで、われわれといたしましても、春闘のおくれということを一応問題にいたしまして調査をいたしたのでございます。その結果、この調査というものは、ある一定時点で、たとえばある特定の日に六千事業所を全部調査するということは、事実上できるものではございません。やはり時間をかけて、ある一定の一カ月間にずっと調査をしていくというようなことしかございません。そうして、この初めのほうで調べたときにはまだきまっていなかったのが、あとのほうで調べるときまっておったというような事情もございます。そこで、多少そういうことがございますけれども、ことしの民間企業調査では、春闘のズレということが事実上あったわけでございまするから、それがどれだけおくれておるかという事情を調べたのでございます。その結果、春闘がおくれて、四月分として支払われるはずであるけれども、四月調査、四月分として人事院が実際に調べたすでに支払われた分の中には含まれていない。春闘の結果さかのぼって支払われることになっておるというものだけを調べてみますると、これはそういう事業場だけの賃上げ率を見てみますると、人事院調査によりましても一三%くらいあるのであります。ただしかし、それは全体から見ますると限られた事業場でございまするので、これを全事業場に直し、しかも従業員の数を問題にいたしまして平均いたしてみますると、春闘のおくれ分というものは、一・九%ぐらいであります。そこで、われわれは企業規模を百人以上にするということを今回断行いたしたわけでございまするが、それは公企体との関係もございまするけれども、そういうことをいたしたわけでございまして、そういう観点から見まするならば、五十人規模で従前やっておったとして春闘のおくれを問題にしたよりも、多少有利な方法をとった、こういうことを考えておる次第でございます。
  20. 村山喜一

    村山(喜)委員 これは全く話が筋違いですよ。というのは、大体公務員の適正な事業規模というのが、五十人というずっと昔、まだ日本の産業が発達していない、いまから十年ぐらい前の話をそのまま据え置いてきたことが問題であって、今度ようやく百人程度の規模にまで、これはやむを得ずされたかもしれませんが、とにかくされたということだけは進歩です。しかしながら、公務員の実態から考えたら、五百人以上の事業規模というものに対応していかなければならない、そういうような考え方で私たちはおるわけです。それを百人にしたことによって、手当まで入れたら二%程度上がったから、春闘のおくれの全産業に直した場合の上昇率一・九%と操作した場合に、なお事業場の百人規模にふやしたことによってその部分のほうが高いから、それで満足をしているというような説明では、これはどうも納得がいかない。この分だけは、明らかに一・九%分だけは、民間産業に比較をしてなおそれだけ低く押えられておる、こういうことがはっきりわれわれには言えるわけです。そういうような点も是正しようという考え方がなかったということは、あまり上げ過ぎてはいけない、原資がどうなるだろうか、そういうような、政府当局が考えるようなことを人事院が頭の中に置いて作業を進めているところに問題点があるのではないか。その点は意見になりますので、指摘だけしておきます。  その次に、ここで一番問題になりますのは、いわゆる十八歳から二十歳の段階におきます男子の理論生計費の求め方であります。御承知のように、今回高卒の給与が一万四千百円、八等級の二号俸、こういうことで押えてあるわけでありますが、これがいわゆる人事院の標準生計費の積算基礎から裏づけをされているわけです。この内容を見てまいりますと、食費が一食六十四円六十八銭、まあ一ぱいのラーメンを食べたらそれで終わる。毎日ラーメンを食べなければならないような食費計算で押えてある。一日百九十四円四銭、こういう人事院の食料費の押え方、これは国民の平均のカロリーの取得率、エンゲル係数から見ましても、国民の場合には三九%、それが公務員の場合には四一%のエンゲル係数ということにしてある。この人事院が精巧に組み立てましたマーケット・バスケット方式の机上計算によりますと、小麦粉が五グラムとか、マグロ十グラムとか、牛肉八グラムとか、ネギが三十グラムとかいう組み立て方をして必要なカロリーを算出しております。ところが、実際公務員がそういうようなことで自分一人で生計を維持するということになった場合に、市場に買いものに参りまして、そういうようなふうに品物を買い入れてそれによって生計を営むことができるかということになってまいりますと、そのような小麦粉を五グラムとか、マグロを十グラムとか、そういう単位で買いものができる店を私たちは知らない。人事院は、そういうような店を、こういうようなところにあるのだからこういうようなところで買いなさいという指導でもされるつもりなのか。そういうような五十九の品目で組み立てられました人事院の理論的な熱量二千六百九十カロリーというカロリー、あるいはたん白質の押え方、これらは一体現実的に国民が納得をし得るものとしてこういうような形でよろしいというようにお考えになっていらっしゃるのか。その点を自信がおありであるならば、御説明を願いたいと思う。
  21. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただいま御指摘のマーケット・バスケットでございまするが、これは昨年は二千六百六十カロリーというものを一応基準につくったわけでございます。本年は二千六百九十カロリーといたしておるわけでございます。このカロリーもかってにきめておるのではないのでございまして、老若男女合わせまして平均的にどのくらいのカロリーを一日に消費しておるかという数字が、厚生省の国民栄養調査の結果出てまいるのであります。それを成年男子に換算をする換算のしかたはどうやったらいいかということも、その調査の結果発表に付帯して数字が出ております。そういうものを用いまして成年男子に換算をしてみますると、今年は二千六百九十カロリー、こういう数字になったのでございまして、これは国民一般が消費しておる状態をとらえてきた——かってにこれを低くしたり高くしたりしておるものではございません。そこで、この二千六百九十カロリーをどういう食品でとるのがよろしいか。これもかってにきめるわけではないのでありまして、厚生省の国民栄養調査の結果、穀類あるいは魚介類、あるいは肉・乳・卵類、野菜・海草類、そういうふうに食品をある程度の分別に分けまして、そういう分別に量あるいはカロリーでどのくらいとっておるか、国民栄養調査の結果によればどのくらいとっておるかということを、そちらのほうから数字をきめてまいるのであります。そしてさらにこの具体的な食品名の摂取量ということになりますると、これは総理統計局の生計費調査でどういう食品をどういう頻度で、あるいはどういう量を使っておるという、そちらのほうから導いてまいりまして、それを庄縮した形で、すなわち国民全体が消費しておる実情を庄縮した形でここに出してまいるということで、このマーケット・バスケットはつくっております。しかし、消費者の嗜好は非常に多種多様なものでございますので、それを全部問題にするわけにまいりません。庄縮するという形がどうしてもその間にあるわけでございます。いま申しましたように、このマーケット・バスケットというものはかってにつくるものではないので、いまのような経過を経ましてつくったものであります。形の上では非常に少量ずつが出ておるようでありますが、これをさらに整理して、たとえば一週間のマーケット・バスケット、あるいは一カ月を単位にしたマーケット・バスケットをつくるということも、可能でございます。そういうことをわれわれやってもいいのでありますが、従前から一日単位で一応表示しておる。何もこういう割合で少しずつ——五十グラムとか三十グラム買ってきて生活をしろという趣旨ではございません。一日単位でつくっておりまするので、それを従前の経緯を踏襲して、一日単位の数字をお目にかけておる次第でございまするが、これをもとにいたしまして、月間ではどれだけの食料費だということで、五千九百円というものを出しておるわけであります。人事院でつくっております標準生計費というものは、これは食料費はただいま申し上げましたようにマーケット・バスケットからつくりまするし、住居光熱費、被服費、雑費等は、これは総理統計局の生計費調査の結果に一定の換算乗数を乗じまして、そうして導くということで組み立てておる全体の数字でございます。したがいまして、そういう場合に全体の数字に対して食料費が幾らであるか、これはエンゲル係数と言ってもいいでありましょうが、いわゆるエンゲル係数というものと多少性質が違うのではなかろうかということでございまするので、エンゲル係数自体を人事院の標準生計費の場合に問題にするのはあまり当たらないのではなかろうか。たとえばただいま申し上げましたような話の中で、昨年よりことしのほうが三十カロリーカロリーがふえております。食料費のところでふえております。食料費のところをふやすと、これは全体に対する食料費の割合というものは、比率としては高くなる。内容をよくすればかえって高くなる。エンゲル係数は低いのがよろしいという一般原則と背反した結果になるというような問題も含んでおります。そこでわれわれは、直接それを問題にしていただくのはあまり適当ではないのではなかろうかというように考えております。また、この標準生計費は、一応十八歳男子、単身者の給与をきめまする目安として、これに見合わして計算をいたすものでありまして、これでこの生活内容を規制しようというような趣旨のものではございません。あくまで園児一般の生活を集約してみると、こういう状態になる、そこまでは、どうしても試験採用によりまする十八歳の採用者は、毎月の給与で一応きめるのが適当ではなかろうか、そういう見合いに使っておる数字でございまして、これで生活内容をこういうふうにしろということを規制しようというつもりのものではございません。
  22. 村山喜一

    村山(喜)委員 まあ、ほかに収入がなければ、この勧告に基づいて給与が決定をされる。そうしたら、その給与によって生計を営む者は、いかにあなた方が理論的な説明を加えられようが、この給与範囲内において生活をしていかなければならない。なぜかならば、公務員法によって、他の給与その他をもらう職につく場合には上司の了解を得なければならない、許可をもらわなければならないということになっている。そういうような点から考えていった場合には、私はもちろん人事院が決定をいたします生計費換算乗数の押え方というものにも問題はあると思いますが、それ以上に問題がありますのは、この十八歳程度の男子の生計費だけを打ち出すために使われているところの換算乗数という計算方式も、いわゆる合理化をする道具としてあなた方が使っておる、こういうふうに印象づけられるわけです。なぜかならば、これを具体的に一人一人の独身者に当てはめてみた場合に、たとえば人事院が算出いたしました住居・光熱費というものが、二千六百七十円ということになっておりますね。二千六百七十円、この金額で三畳の間借りが一体できるか。どういうようなところでそういうような家を探すことができるのか。住宅も用意しておるのであれば、それは可能性がありましょう。しかし、公務員住宅政府においてやるようにしなさいという勧告だけを今度は行なって、住宅手当という問題も見送っておる。そうしてなお二千六百七十円で住居・光熱をまかないなさい、これでまかなえるはずだ、こういうようなことや、シャツ一枚分の被服しか見ていない。また雑費の中身を見てみると、非常にいいかげんな雑費の数字が羅列してあるにすぎない。理論的には一定の換算率をかけ加えて出しましても、実際にこれを受ける者がどういうふうにして生活をするのか、親の仕送りによって十八歳、二十歳の公務員は生活をするのが当然である、こういうような考え方の裏づけに使われているような気がしてならない。一人前の人間、公務員としてその生活を保障するという立場には立っていないのじゃないか、こういうようなふうに考えます。これらの問題はまた後ほども触れてまいりますが、しからば、これらの人事院の標準生計費で示す一人世帯から五人世帯までの生計費に対応する公務員号俸をずっと見てまいりますと、大体二人世帯の標準生計費が保障されるには、十八歳の高校卒公務員に採用され、順調に吏員になりまして、そうして十三年間かからなければ二人だけの生計を営む給与をもらうことができない、こういう計算になるようであります。そういたしますと、公務員は三十一歳にならなければ結婚をしてはならない、結婚ができないという給与になる。それから子供が生まれますのには、採用後十八年、三十六歳になって初めて一人の子供を持てる。それから四人世帯になるためには、二十四年目にならなければそれだけの生活ができない。だから、社会的な標準世帯であります五人の場合の生計費は、五等級以上の役付にならない限り、正常な生活を営むことができない、こういう給与体系になっているようであります。とするならば、一体人事院が出される公務員給与に対するところの勧告考え方の中には、おまえたち低い地位にあるところの公務員は人並みの生活はしなくてもいいのだ、こういうような思想があるのではないか。なぜかなれば、三十一歳になってようやく結婚ができる。そうしてまた十八年しなければ子供も二人は持てない、こういうような給与体系で、公務員が専念してその職務に励む態勢ができるのかどうか、これは非常に大きな問題だと思うのですが、人事院は、その公務員一人一人の問題を真剣にお考えになっているのか。課長級、三等級以上のところは大会社に対応させまして、非常によく見た数字を当てはめておる。ところが、その下のほうになりますと、係長クラスのところは逆に低く給与を算出いたしまして、賃金体系としては対応さしておる。こういうようなことが、数字をはっきり見てまいりますと出てまいるわけでありますが、一体人事院総裁は、この問題について、公務員給与はどういうふうにあるべきかという基本的な考え方をお持ちにならないのか、その点をお聞かせ願いたい。
  23. 佐藤達夫

    佐藤説明員 私ども、一人一人の公務員諸君の声も十分に聞いております。特に給与勧告の前になりますと、いろいろ窮状を訴えたお手紙をいただくわけであります。これらにつきましては、活版刷りのもの、謄写版刷りのものについては私は読みませんけれども、綿々とペンをもってつづられたものは、私自身としてはいずれもこれを目を通して読んでおるわけであります。それらの個々の方々のお訴えを聞いていますと、ほんとうにこれは身を切られるような思いがいたします。それはほんとうにそう思います。ただし、私ども根本考え方に立ち返ってまいりますと、ほんとうに理想をいえば、公務員そのものをつかまえて、他の民間給与その他にかかわらず、公務員公務員としてその体面を維持しつつ十分な生活をしていくためにはどのような給与が必要であるかということを白紙に考えることは、私は一つの理想だろうと思います。さらに民間との比較をするについても、国の企業ほど大きな企業というものは日本国じゅうにないわけでありますから、大企業中の大企業のものと比較しなければならないのじゃないか、またそれが正しいのじゃないかというような気持ちも、率直に申しまして私は抱いております。ただし、今日の公務員法のたてまえは、御承知のように、民間給与というものを相当重く比較の対象として取り上げております。また、今日の日本全体の賃金水準ということから申しましても、公務員だけを飛び離れて理想的な給与体系に持っていくということは、これはまた別の考え方があるわけであります。したがいまして、ただいまの公務員法のたてまえに従って、そして民間給与との比較ということを表に立てまして、なおその裏づけとして、ただいま給与局長が申しましたように、せめて十八歳の独身というところの初任給については、標準生計費を算定して、これを割らないように保障しなければならぬというたえまえでまいっております。ただいま御指摘にありました二人世帯、三人世帯、四人世帯ということは、表には出ておりませんけれども、しかし、われわれはこの給与表をつくるにつきましては、それらの人々の生計費というものも頭に置きながら、これは気の毒じゃないか、何とかできないかということでやっております。まあ期末、勤勉等をかけ合わせて何とかなるのじゃないか、きわめて率直に正直に申しますけれども、そのくらいの心配りはやっておるのであります。でき上がりについて、公務員諸君から見られれば御不満のあることは重々承知しておりますけれども、しかし、民間給与を調べます場合には、民間にはやはり低い賃金において働いておられる方もあるので、また、そういう人々からの投書も、私どもの手元には相当参っておるわけであります。そういう点をも大きな目で勘案いたしますと、やはり現行公務員法のたてまえを当分は尊重せざるを得ないのじゃないかということになりまして、御不満はあっても、われわれはその基準の中でできるだけの努力をしてここに御勧告を申し上げたということに尽きるわけであります。したがいまして、そういう御不満もあることでありますから、せめて実施期日くらいは五月にさかのぼって完全にやっていただかぬことには、とても公務員はたまりませんということをお願いしておるわけであります。
  24. 村山喜一

    村山(喜)委員 総裁のおっしゃる実施期日の問題は、これは私たちも全く同感で、政府がもしうそを言わないのであるならば、人事院勧告を尊重するのであるならば、当然五月一日に実施しなければならない。もしそれをやらなければ、池田はうそつきだということで、国民的な大きな宣伝が行なわれることになると私は思っている。そういうような点から、人事院としても、今日まで人事院はILOの問題をめぐりましてかなえの軽重を問われてまいりましたが、公務員の立場に立ってあなた方が努力をされる気持ちもわからないではありませんが、この勧告実施時期の問題については、人事院総裁をはじめ人事官の皆さん方が全力をあげて当たっていただかなければならないことだと思います。この点は強く要請を申し上げておきたいと思います。  そこで、先ほどちょっと触れました対応等級の取り方の問題ですが、これの中で、今回本省の課長あたりは、新しい俸給表で二等級ということに相なりました。ほんの一部しかなれません特権的な官僚であります本省の課長、部長、局長、こういうようなところでは、民間の大会社の課長、支店長、工場長、部長の賃金と比較をして、上に格差が大きく出るような対応のしかたをしている。その結果行政(一)の三等級比較表で見てみますと、六千一円という水増しをしてはじき出した結果、それに反対の五等級の係長クラスのところでは七千二百十四円というものを値切って、官民格差を小さく押えて、下のほうに格差が小さく出るような操作をしている。これが今日、下のほうは平均賃金の引き上げ率はだいぶ上がりましたけれども、実際の引き上げ額は上のほうがますます大きくなって、下のほうが薄い、いわゆる上厚下薄といいますか、そういう賃金体系に拍車をかけているのじゃないか。それを一つ一つ例を取り上げてみますと、最低の引き上げが、たとえば行政職の(一)の俸給表で見ますと千六百円、最高の引き上げ額が一万三千九百円、こういうような開きが出てきている。一体人事院は、そういうような操作をして下のほうに冷たい比較方法をなぜおとりになるのか。やはりそういうようなことではなしに、係長級は係長級、一般の中堅の吏員は中堅の吏員で、それ相当の五百人程度の規模のところと比較をするような給与体系をとらなければ、下積みになっている公務員の生活は守れないで、上の特権的な地位にある者だけは優遇されていく、こういうような形がこれからもずっと続けられていくということになりますと、これはたいへんな問題だと私は思う。なぜこういうような対応等級の取り方をされたのか。この点は事業規模の押え方との問題等にも関係いたしますので、この際お答えを願っておきたい。
  25. 瀧本忠男

    瀧本説明員 ただいま行(一)の例でお話があったのでございますが、この俸給表上で、現行等級を二等級といたしております。それからまた現行等級一等級となっております。そこで現行等級は、従前の現行等級と同じような官民比較をしたのではないかという御質問でございますが、それはやっておりません。現行等級現行等級は、従前の官民比較のやり方と同じことをやっておるのであります。新しく設けます三等級は、特に比較をいたしておりません。これは現行等級と四等級の中間程度につくりました、新しい、特に比較をいたさなかった一つ等級でございます。そこで、上のほうの等級と下のほうの等級で多少違ったことをやっておるのではないか、たとえば現行等級というところは、五百人以上の事業所における課長また五百人未満の事業所における事業部長、工場長というような人を合わせまして、それで比較しておる、一段階ずらして集めまして、それを比較しておる。下の一般の係員等については、五百人未満のところだけを問題にしておるというようなことをいま御指摘になったと思うのでありますが、われわれは、この官民対応をさせるやり方等につきまして、現在やっておるのが完全な方法だとは思っておりません。しかしながら、これは現在の状態においては、やはり次善のものであろうというように考えております。これは、企業の規模を全然無視して、そうしてその事業所で課長と称しており、あるいは係長と称しておったら、それを全部一まとめにして平均を出せ、こういう議論もあるのでございまするけれども、それはやはりちょっと乱暴な議論になるのではなかろうか。現在わが国の事業所におきまして、企業別の賃金の格差が漸次狭まりつつありますということはございますけれども、この事業所の規模だけを特に問題にするという点は、あるいはほかの面から考慮すればなおいいかもしれませんけれども、少なくも大きい事業所と小さい事業所というものにおいては、その仕事量も違いまするし、すべての点で責任の程度、職務の複雑の程度というものはやはり違うと判断するほうが常識的であろう、このように思っておるのでございます。  そこで、わがほうでは、現在五百人以上と五百人未満で一応区分をしておりまするけれども、そうしてそれとわがほうの公務のそれぞれの等級を対応はさせておりまするけれども、これが全然規模を無視して対応さすということが適当かどうかということになってまいりますると、必ずしもいま直ちにそういうわけには参らないというように考えております。  そこで、全体的に各等級改善いたしまする際に、これは上下等級の間にはそれぞれまた関係がございまするし、また俸給表が異なりまする場合におきましても、なおかつその間の関係といいますか、均衡というものを全然無視してその俸給表をつくるということは、事実上できるものでございません。そういう全体の中におきまして、われわれは、大体民間に見合いますようなやり方をして俸給表改善につとめておるのでございます。  ただいま御指摘の行(一)で、今度改善したところで一番低いところは千六百円だとおっしゃったのでございまするが、八等級の一号が千六百円の改善、二号が千七百円の改善、三号が千八百円の改善、四号が千九百円の改善でございまして、五号以上は八等級は全部二千円以上、七等級も二千円以上、すなわち行(一)の俸給表につきまして二千円以下のところは、四号俸残っておるだけでございます。したがいまして、大体において二千円以上の改善になっておるということと、それから各等級をごらん願いますれば、たとえば六等級で申してみますると、六等級の十号俸というところは二千六百円の上がりになっておりまするが、十三号俸となってまいりますると三千二百円、それから十五号俸になってまいりますると三千九百円、十六号俸になってまいりますると四千二百円、こういうふうに一つ等級の中におきましても、今回は上位号俸のほうを非常に手厚く金額の引き上げをいたしておるのであります。五等級については、十号俸のところは三千百円、十二号俸のところは三千四百円、十五号俸のところで四千二百円、十七号俸のところで四千八百円というように、各等級につきましてもこまかい配慮をいたしまして、上位号俸はよくしておる。たとえば現行等級の初号というところは三千六百円の改善でございますが、四等級、五等級、六等級で、たとえば四等級の九号俸以上は三千六百円以上の引き上げでございまするし、五等級になってまいりますると、十三号俸以上は三千六百円以上の引き上げになってまいりますし、また六等級になれば十四号以上が三千六百円の引き上げというように、個別にごらん願いますれば、われわれのやっておりますことは、上位等級だけを特に力を入れてやったというのではないのでありまして、全体的に今度の俸給表改善は努力いたしておるのでございます。たとえば上位等級をふくらましておるではないかというような御指摘でございますけれども、特にそういうことを力を入れてやったと申しますよりも、やはり公務におきまする、たとえば次官あるいは外局の長官というようなところも、これまた大切な一つ職務でございます。そういうところをほったらかしておいてよろしいというものでもございません。したがいまして、そういうものはやはりあるべき姿に持っていくというように努力いたしたのでございますが、そういうものとあるいは各省の局長というものを全然切り離して、その間に大きな断層をつくってよろしいというものでもございません。そういうこともございまして、そういう点から上のほうとの関係で全体を関係づけたという点がございますので、御指摘のような御批判も出ようかと思うのでございますが、全体的に見まするならば、ただいま申し上げましたように、特に上位等級に力を入れたというのではないのでございます。中位等級あたりの改善にも相当の力を用い、また今回やりましたことは、各号俸間の昇給間差額昇給額というものを漸次広げ、ないし最終号俸まで金額の多いものをつくったことによりまして、今後こういう等級を漸次通っていかれる方々は、より有利な昇給曲線をたどり得るということにも配意してあるのです。  全体的に、弁解がましくなりますが、御了承願いたいと思います。
  26. 村山喜一

    村山(喜)委員 時間の関係もありますので、もうやめますが、今度の行(一)の、いまの給与局長説明を承ってはおりますけれども、たとえば千六百円から二千三百円、その程度の引き上げ額の人員というものは、十四万五千二百三十九人、その対象人員からいったら六一・四%、六一・四%の諸君は、行(一)の平均の賃金上昇額二千四百二十二円よりも下回っておるわけです。そうして一万数千円も上がるような諸君も出てきておる。最高引き上げ額は一万三千九百円、こういうような押え方で、先ほど私が、対応の取り方の中で二等級以上は五百人以上の企業規模だけを取り上げて、五百人未満のものはその対象としては取り上げていない。それ以下の三等級以下は、全部そういうような五百人未満も対応措置として取り上げておる。そこら辺に人事院のものの考え方、下のほうには薄く上のほうは実態に合うようにしていくのだ、こういうような一貫した思想的なものがなお抜け切らない状態がはっきり出ている。このことは、勧告内容を分折していけば、否定できない事実なんです。一般公務員は低賃金で使うべし、上級の公務員は、やはり国家権力との関係においてそれらの任務を達成せしめていかなければならないから、不平や不満を起こさせないようにわりあいによくしていかなければならない、こういう思想があるから、公務員関係の諸君から、今度のやつは上に厚く下に薄い給与体系ではないか、なるほど率だけはよくなったけれども、全体的に見たならば、六割以上のものが平均賃金よりも上がらない、こういう実態が出ているということが指摘できるわけです。手当の問題等につきましても、部分的にはよくなった点も確かに認めます。しかしながら、まだまだ解決をしなければならない点が、一つ一つ取り上げてまいりましたならば、あります。  時間も限りがございますのでこのあたりでおきますが、最後に人事院総裁に一言だけお伺いをいたしておきたいと思いますのは、今度こういうふうに公務員給与改定が行なわれることになりました場合に、八・五%の二千七百九十二円という公務員の賃金上昇が行なわれるということになりますと、当然これに関連して恩給者の給与改定といいますか、物価の上昇にスライドした分だけは考えるとか、あるいは公務員給与改定の分に伴う措置として、同じように人事院としても勧告をする権限があると思うのでありますが、これらについてはどのような方向をお考えになっておるか、その一点だけをお答え願いたい。
  27. 佐藤達夫

    佐藤説明員 ただいまの恩給の問題は、私どものところにも各地から強い要望が参っております。しかしながら、いま勧告ということばがございましたけれども、恩給関係につきましては、実は総理府の総務長官が主管ということになっておりますが、そういう関係で私どもはわき役的にその辺をひとつ何とか推進してまいりたいというような気持ちでおります。正面切って勧告を申し上げるという立場にはございません。しかし、できるだけ何かの形でやはりそれらの方々の声も十分実現できるように持っていきたいという気持ちを、私個人としては持っておる次第であります。
  28. 村山喜一

    村山(喜)委員 総理府総務長官のほうが主役で、あなた方はわき役だという考え方でもよろしいのでございますが、そういうような問題が提起されてきた場合に、人事院のほうとしては、ただ総裁一人が考えているだけではなくて、それに対応する準備態勢というものがあるかどうかということだけをお伺いしておきたい。
  29. 佐藤達夫

    佐藤説明員 その点はおっしゃるとおりでありまして、給与局等におきましても、総理関係を中心としてずっと協力申し上げております。これからもさらに強く協力を申し上げるというつもりでございます。
  30. 村山喜一

    村山(喜)委員 終わります。
  31. 伊能繁次郎

  32. 岩動道行

    岩動委員 この機会に人事院総裁にお伺いをいたしておきたいと思いますが、先般の国会におきまして、寒冷地手当に関する法律が当委員会で可決をされました際に、われわれ内閣委員会といたしましては、附帯決議をいたしました。それは寒冷地手当の級地のアンバランスを是正すべきである、こういうことでございましたが、その後これに関しまして、人事院のほうとしてはどのような作業を進め、また今後是正に関する勧告はどういう見通しであるのか、この点について伺いたいと思います。
  33. 佐藤達夫

    佐藤説明員 御指摘のとおり、せんだって各級地にわたり相当大幅な改定勧告を申し上げたのであります。われわれとしては、できるだけの資料に基づいて正確を期したつもりでございますが、いろいろまた地方によってはお考えが出てまいり、またこちらで附帯決議のありましたことも、これはそのとおりでございます。われわれといたしましても、何もそれが絶対に正しいという不遜な考え方を持っているわけでありませんから、謙虚にさらにこれに再検討を加えていきたいという心組みでおります。ただしかし、率直に申しまして、ただいままでの段階では給与勧告のほうに忙殺されておりましたので、これからさらにあらゆる方面の資料を集めまして、また改定の御勧告を申し上げる以上は、それ相応のしっかりした根拠をつかんだ上でないと、私どもの立場としてはやれませんので、そういう覚悟でできるだけ資料の収集等によって検討を続けていきたいと考えております。
  34. 岩動道行

    岩動委員 御趣旨はわかりましたが、もうすでに明日から九月に入って、秋になります。やがて冬が参りますので、この冬には新しい追加された是正によって、山奥にある寒冷地帯の人々にも十分その恩恵が行き渡り、ぜひそれに間に合うように作業を進めていただきたいことを、特にこの機会に御要望申し上げておきます。
  35. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 次に、基地問題に関し質疑の申し出がありますので、これを許します。中村高一君。
  36. 中村高一

    ○中村(高)委員 本年の七月二十日に起こった御殿場の日本婦人の射殺事件でありますが、これはアメカリの沖繩から来ておる海兵隊の兵隊が、御殿場の勝又ゆきという四十五歳になる婦人を射殺をいたしておるのでありますが、基地内においてたびたび問題が起こっております。人権に関する問題でありますので、政府はこれに対しどのような処置をいたしておりますか、その経過を御報告願いたいと思います。
  37. 日原正雄

    ○日原説明員 静岡県の米軍の富士キャンプにおける婦人の射殺事件につきまして、警察側の捜査といたしました経過の概要を御説明いたしたいと思います。  七月二十日一時三十五分ごろ御殿場市の米軍富士キャンプにおいて、米第三海兵師団第九海兵連隊第二大隊F中隊一等兵マニュエル・A・カバラビアスが午前、零時からの燃料タンク地区の動哨勤務に従事中、射場管理部隊資材置き場の器材幕舎付近で同地区内に侵入した勝又ゆきさんを発見し、二回ほど「ホールト」と英語で、さらに日本語で「とまれ」と言って停止を命じましたが、被害者がとまらなかったので、所携のウィンチェスター一二口径散弾銃を用い、約三十五フィートの距離から弾丸一発を発射いたしまして、散弾七個を命中させた事件であります。被害者は、その後手当のために収容した御殿場市中畑の富士病院において血管損傷による出血により、同日午前七時十八分死亡しました。  静岡県警察では、事件発生後午前一時五十五分ごろ、同キャンプ通訳からの連絡によりまして、直ちに現場に臨場するとともに、米軍側に合同捜査の申し入れをいたしまして、現場の実況検分、被疑者の取り調べ、被害者の死体解剖というような必要な捜査を遂げまして、七月三十一日事件を静岡地検に送致をいたしました。なお、米軍側の公務証明書及び犯罪通報は、七月二十一日米軍富士キャンプ司令官から静岡地検沼津支部長あてに送達されております。  警察の捜査状況は、以上のとおりでございます。
  38. 中村高一

    ○中村(高)委員 この問題は、日本の警察でも調べて、共同捜査をしておるということを、われわれも現地に参りまして調べたときに聞いたのでありますが、結局は、これは米軍のほうの裁判に付するということで、日本の裁判のほうは不起訴に結果はいたしておるようでありますが、この事件の内容が、四十五歳の婦人が基地のほんの部に入っていったというようなことで、一体射殺をしたければならないかどうか。これはもう全く了解ができないのでありますが、日本の政府で取り調べたときには、一体どういう経過なのか。入ってはいけないというならば、出ていけと言えば、日本の婦人でありますから、何も抵抗することもなかったろうと思うし、出ていけとか、あるいは場合によったら衛兵が連れて出したってできることであります。わずか三十五フィートの近くで射殺をしてしまうというようなことは、全くその衛兵のやり方がわからないのです。英語で二度とまれと言ったって、日本の農婦ですから、わからなかったかもしれない。それからあと日本語で一回とまれと言ったと言うのでありますけれども、これもそのくらいのことで一体人を殺してしまうのでしょうか。とまれと英語で二度言って、日本語でとまれと言った。とまらなかったらぶち殺してしまうというようなことが、実際そんなことが公然と行なわれて、日本の政府もああそうですか、三度言ったのじゃしかたがなかった、そんなばかなことはないじゃないですか、われわれはどうもおかしいと思うのです。現地に行ってみますと、境がわからないのです。富士のすそ野のあの広いところで、どこが基地なのやら、あの近所の人なんかでも、あんなところ、基地だか何だかわからない富士のすそ野のようなところで、そういう境界やなんか、人間なんかだれでも入れないという厳重なものじゃない、だれでもちょっと入れるようになっている。間違えたのではないかと思われるのですけれども、あまりにどうもやり方が殺され損で、あまりに日本の政府もあっさりし過ぎているように見えるけれども、アメリカに対してやり方が不都合じゃないかというようなことに対しても、私は当然抗議すべきだと思うが、政府は一体こんなあっさりしたことで解決してよろしいのでしょうか。
  39. 津田實

    ○津田説明員 ただいまお尋ねの事件の処理に関しましては、御承知のように、日米の地位に関する協定によりまして「公務執行中の作為又は不作為から生ずる罪」というものに当たるわけでございますので、第一次裁判権はアメリカ側にありとして、日本側は不起訴の処理をいたしました。なお、この件につきましては、公務執行中のものであるということにつきまして、アメリカ側からいわゆる公務証明書を七月二十五日に提出してまいりました。検察庁におきましては、これがしからざるところの反証があるかどうかということを慎重に検討いたしましたが、本件が公務の執行の過程において行なわれた行為であることは間違いございませんので、先ほど申し上げましたような処理をいたしておる。ただ、本件の行なわれました過程におきまして、この動哨である、歩哨であるところの一等兵が準拠いたしましたいわゆる歩哨の守則というものの当否につきましては、なお十分検討いたしておりますので、その守則の内容そのものに不適当な点があれば、日米合同委員会を通じましてしかるべき措置をいたしたいというふうに考えておりまして、目下その点は、検討中でございます。
  40. 中村高一

    ○中村(高)委員 そのことに対して、遺族の扶助とかあるいは本人の補償とかというようなことに対しては、どういう扱いになりますか。
  41. 沼尻元一

    ○沼尻説明員 本件につきましては、刑事上、民事上の問題がありますが、民事上の問題としては、ただいま地位協定の十八条五項事案ということで、米側と補償について協議をいたしております。
  42. 中村高一

    ○中村(高)委員 どうぞそのあと始末についても、政府はひとつ十分考慮して対策を立ててもらいたいと思うのであります。  もう一つ同じような事件が、これは岩国の基地で八月十六日に日本の兵員クラブ勤務の杉本正男という四十七歳の男が、これは鉄砲ではなくて拳銃でありますか、何か刀ですか、米兵が持っておるものだと思うのでありますけれども、刃物で刺殺された事件があるのでありますが、これなどは、この日本人が勤務から帰ろうとして自転車置き場に行ったところが、その米兵が自転車に手をつけておったので、それはおれのだからとでも言うたと見えるのですが、それだけでいきなり凶器をもってその場で突き刺されて、何メートルか自分ではってそのまま現場で死んでおるのでありますが、いままでも岩国の基地ではバーのマダムが殺された事件がありますが、これなどは犯人が南ベトナムか何かに行ってしまって、そうして向こうで自動車の事故か何かで死んだとか言うて、そのままになっておる事件であるそうであります。それから橋からほうり投げられて、これは死んだわけではないでしょうけれども、そういう事故があったり、自転車などは始終乗り捨て乗り逃げが行なわれるというのでありますが、この事件については、一体犯人などはどうなっているのか、また日本政府はこれに対してどんな調べが行なわれておるのか、御報告を願いたいと思います。
  43. 日原正雄

    ○日原説明員 岩国基地内の日本人従業員刺殺事件について、警察側の捜査態度、措置を御説明申し上げます。  この事件は、山口県の米海軍岩国基地のMACS第四部隊の一等兵チャールズ・R・シュウエアキングでございますが、八月十六日午前一時ごろ飲酒の上、基地内の兵員クラブ横自転車置場南西角付近で、兵員クラブの従業員杉本正男さんに対しまして、所携の軍用ナイフ——ケイバーナイフでありますが、それで同人の左背部の方向から胸部の付近に深さ二十センチメートル、幅三センチメートルくらいの刺傷を与えて、出血多量で死亡させるに至ったものでございます。  山口県警察では、午前一時三十八分ごろ基地の通訳から事件発生の届け出を受けまして、直ちに基地内外の出入車両の検問を行なう等初動措置をとるとともに、現場に急行いたしまして、日米共同捜査を実施いたしました。そして現場検証、死体の解剖被疑者の取り調べ等、必要な捜査をいたしまして、八月二十四日殺人罪で山口地検に事件を送致いたしております。なお、被疑者の身柄は、米軍側で基地内に拘禁しております。犯罪通報は、八月十八日同基地の憲兵隊長から地検の岩国支部あてに送達をされております。今日までの調べでは、この米兵の殺人の動機その他については、飲酒の上でありまして、確かな動機、理由、状況等を覚えておらないというような供述になっております。ただ白いシャツを着た日本人の男をナイフで突き刺したということは認めておりますが、警察段階の調べでは、それ以外の状況につきましては、ほとんど断片的にしか記憶していないというような供述になっております。  なお、お話の中にありましたベトナムから来た米軍兵士による強盗殺人事件、これにつきましては、その犯人は前線に行っておりまして、拳銃で心臓を撃って自殺したというふうな報告を受けております。
  44. 中村高一

    ○中村(高)委員 この岩国のは、御殿場のとは違って、公務でなくして酔っぱらってやった、全然公務に関係ない事故でありますから、当然日本側で起訴して、これは裁判に付することだと思うのでありますが、そういう場合には、日本のほうに身柄を移さなければ、またどこかに行ってしまうというおそれもあると思うが、身柄をすみやかに日本のほうで拘置するとかというようなことは当然行なおなければならぬと思いますが、いかがでありますか。
  45. 津田實

    ○津田説明員 ただいまの事件でございますが、この事件は、もちろん施設区域内で行なわれたものではございまするけれども、公務と全く関係のない事実のように思われるわけです。もちろん目下検察庁で捜査中でございますが、ただいまのところでは公務には無関係でございますので、当然日本側に第一次裁判権があります。日本側において処理すべきものと考えております。  この被疑者の身柄の措置でございますが、これは地位協定の十七条の五項の(C)という規定がございまして、これによりますと、アメリカ側において最初にそのカストディーを持った、管理をし出した被疑者については、起訴するまではその管理を続けるという趣旨の規定になっております。ただいまのところは、その趣旨の規定によりまして、アメリカ側が身柄を管理いたしておる。もちろんこの基地内の拘禁所において拘禁いたしておりますので、この施設内に自由に歩き回っているわけではございません。しかも日本側の要求に従いまして何どきでも日本側に連行してまいるということになっておりますし、現実にそのようにいたしております。これは全くこの地位協定によるものでございまして、その意味におきまして、日本側においては拘禁をいたしておらない次第でございます。
  46. 中村高一

    ○中村(高)委員 この事件も補償の問題等が当然起こってまいりますし、組合でも政府を通じていろいろ要請をしておると思うのでありますが、慰謝料の請求とかあるいは損害の請求、こういうようなことに対しては、防衛庁のほうでどういう扱いをしておられますか。
  47. 沼尻元一

    ○沼尻説明員 この事案に関しまして、防衛施設庁といたしましては、在日米軍司令官に対しまして、八月十八日に厳重に申し入れをしますとともに、あわせてこういう事件が二度と起こらないように全軍に指示してもらいたいということ、また遺族に対する補償の万全について要請したわけでございます。  これに対しまして、司令官からは書信をもって深い遺憾の意を表するとともに、また本人に対しても丁重な弔意が述べられ、また全駐労等から要望がございました従業員の安全をはかるため、さらにさらに一そうの努力をするというようなこと、また遺族に対する補償についても、でき得る限りの措置をするというような回答があった次第でございます。  本件は、十八条六項の公務外の事案として、防衛施設庁としましても軍側にできる限り最高度の補償をするよう要請する考えであります。
  48. 中村高一

    ○中村(高)委員 ついででありますから防衛庁にもう一つ御答弁願いたいのでありますが、それは町田地区にアメリカの飛行機が落ちて四人死んでおります。最初になってようやく補償金が死んだ人にだけは下がったようでありますけれども、家を焼かれたほうもまだ全然補償ができてないというし、入院をして、中には家族がみんな、子供と細君が病院に看護におって生活にも困るというような家庭もあって、まだ入院者も何人かおるのでありますが、いまだに、この問題は解決されておらないというのでありますけれども、どうしてこの問題の解決がおくれているのか、これもあわせてお答え願いたい。
  49. 沼尻元一

    ○沼尻説明員 この事故に関しましては、被害件数が非常に多うございまして、当庁が受理した件数は五十八件でございますが、うち五十五件については、合計いたしますと二千数百万円の補償金を支払っております。残る財産補償等について目下手続中でございますが、これが、おくれておりますのは、この事故にあいました被害者の中に、家主と借家人との関係が微妙な問題がございまして、借家人と家主との関係を円満に解決するため、町田市等が中に入ってこれまでいろいろと苦労を重ねてきたわけでございますが、最近に至りましてようやく解決の曙光が見えてきましたので、その線に従って私たちは米側に交渉し、解決いたしたいと存じております。そういうことで財産補償のほうがおくれておったわけでございます。
  50. 中村高一

    ○中村(高)委員 まだ入院をしたり、負傷をしたりした人は相当数が多いのですけれども、お調べになっておられると思いますが、それは一体どうしていままで捨ててあるのですか。
  51. 沼尻元一

    ○沼尻説明員 入院患者等に対しましては、そのつどお払いいたしておるわけでございますが、入院等に要する費用あるいは休業補償等は、一定の期間を限って払っているというような関係もございまして、何日間入院するか、あるいは何日間休業するかというようなことは、これは結果として見なければわからない面もございますので、入院費用等に必要な費用は、その過程において全部処理しております。
  52. 中村高一

    ○中村(高)委員 どうも被害者のほうから訴えてきておりますのは、たくさん指摘してきておりますけれども、こまかくなりますから、いずれこれはまた文書なり何なりで要求いたしますから、そのほうの処理をしていただきたいと思います。  それからもう一つ、郵政省関係についてお尋ねをしておきたいと思います。おいでになっておりますか。——一般的な騒音の問題については、明日防衛庁の長官がおいでになったときに質問をすることになっておりますから、一般的なことについのお尋ねするのではありませんが、その中で、郵政省関係ではテレビの料金を当地周辺の  一部の人に半額にいたしておりますけれども、これはどういう基準で半額にしておるのか。また、その距離ですね、距離の縦二キロ、横一キロという標準は、何によってきめられたのか、この点をひとつ郵政省のほうから御答弁願いたいと思います。
  53. 宮川岸雄

    ○宮川説明員 お答えいたします。  この受信料の免除の問題につきましては、放送法の三十二条によりまして、郵政省がその基準を認可いたすことになっておるのでございまして、その認可によりましてNHKのほうで実際の区域を定める、こういう形になっております。それで、ただいまご質問のございました点は、その基準の問題であると了承いたしますが、この基地周辺のテレビ、ラジオに対しまして、基地に発着いたします航空機等によりまして、騒音のために非常にそれが見にくくなるという問題につきましては、かねがねそういうような御意見なり、また国会等におきましても御質問があったのでございます。それでわれわれといたしましても、これをやはり科学的に調べる必要があると思いまして、厚木地区におきまして、それの実際の障害がどのように起こるかを調査いたしたのでございます。その結果によりまして、この騒音——航空機の発着によりますところの騒音が、騒音といたしましてテレビの音のほう、またはラジオの音声のほうが聞きにくくなっているということがわかったのでございます。それではどの程度が聞きにくくなっているかということにつきましては、さらにこれを調べてみますると、少し技術的な用語を用いまして恐縮でございますが、普通ラジオ、テレビの場合におきましては、約七十ないし八十フォンと申しておりますが、その程度の音の強さで聞いております。それに対しまして屋外から屋内に音が侵入してまいりますので、ややこれよりも高く、八十ないし九十フォン程度のものを一応受信障害を受けていると判断してもよろしいかという結論が出たのでございます。しからばその程度のものが実際の基地の場合におきましてどういうふうになるかということをさらに検討いたしました結果、基準といたしまして、やはり滑走路の方向につきまして長くなるわけでございます。この滑走路を離着する場合に問題が起こりますので、滑走路をそれぞれ短辺と長辺につきまして延長いたしまして、その周辺が基地の外縁と接触いたします点からそれぞれ長辺のほうにつきましては二キロ、短辺のほうにつきましては一キロということを一応の範囲と定めたのでございます。しかもその基地と申しますのは、米国軍隊及び自衛隊法によって定められております自衛隊のジェットの航空機を考えておりまして、朝の五時から二十四時までをとりまして、それを十九等分いたしました一時間におきまして航空機の発着が一日に五回以上あるというような基地を基準といたしまして定めたような次第でございます。そういうような次第でございますので、一応まあ音ということに着目いたしまして、テレビの場合におきましては半額、それからラジオだけを聞く——乙種料金制度といっておりますが、このラジオだけを聞くことになっております受信者につきましては全額、テレビのほうが三百三十円でございましてその半額、ラジオのほうにつきましては一カ月五十円でございますから、その全額を免除する、こういうような規定を定めまして、これを先般の国会等におきまして、NHKの予算審議の過程におきましても御議論をいただきまして、この認可をするように相なりました。その結果、先般NHKに対しまして基準を認可したような次第でございます。
  54. 中村高一

    ○中村(高)委員 いまの御説明を聞きましても、障害が八十とか九十くらい以上であるというようなことでありますが、これは最近のF105ですね、あれがまだ来ていない時代の基準であって、現在では百三十何フォンとかいう、とにかくたいへんな音で、最初きめられた、調査した当時とは実情が非常に違いますから、さらにひとつ郵政省のほうでは御調査を願って——もう最近では音のひどさ、それから映像のひどさは非常なものでありますから、ひとつ現状を調査していただきたいことと、それから滑走路の接着点から二キロとかあるいは横に一キロとかいうようなものも、これは無理です。いまのような大きな音になれば、よほどこれは広げてやらなければならない。これもひとつ検査をしてもらいたい。それからどうしても私は、どの程度で押えるかというような場合には、これはしかたがないから地方自治体で市町村単位にでもしてもらわなければ、同じ市町村において、隣まで来て、隣は半分になって、その隣は同じ状況であっても全然これは恩典にあずかれないということも不公平でありますから、せめてこれはまあ同じ自治体というようなやり方も考えてもらわなければいけないのじゃないか。それから半額というようなけちなことではなく、現在ではもうとにかく耳をろうするような騒音でありまして、いずれ明日大臣などにも詳細にわたって申し上げるつもりでありますが、こういうひどい形になって、半分でがまんをしろというようなことでなく、思い切ってやってもらわなければいけないと思います。きょうも大雨で基地から洪水が流れる。ひどいもので、町がまるで水浸しになる。基地周辺ではこんな迷惑を受けておるわけでありますし、いろいろな身体に対する障害、これはもうお医者さんを連れて私たちは詳細に調査しまして、データもつくりましたから、身体に及ぼす障害、いろいろのことから考えたならば、テレビの料金くらいを政府がまけてやるということは、基地周辺の住民に対する当然のことじゃないかと私は思うのであります。こんなものくらいできないはずはないと私は思うのであります。どうかそういう点については、現地を調査していただいて、もう一度その基準の再検討を願いたい。これだけを申し上げておきます。
  55. 宮川岸雄

    ○宮川説明員 確かにおっしゃいますとおり、そういう基地の状態というものはやはり刻々と変わってまいると思いますので、いますぐにこれを変更するというようなことも——国会を通じましてできました直後でございますので、適当な機会にそういう調査をいたしまして、その基準の適否というようなものについては調べて、実情に即するようにやってまいりたいと思います。  なお、半額か全額かの問題につきましては、これはNHKの全体の経営状態というようなことともにらみ合わして、それがどの程度に——またいま自治体全部というようなお話もございましたが、そういうようなことになりますと、どのくらいに波及いたしますか等も考えて、できるだけ御趣旨に沿ってやっていきたいと思います。
  56. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 田口誠治君。
  57. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいまの東富士における勝又ゆきさんが米兵から射殺された件について、関連して質問をいたしたいと思います。  ただいまの答弁を聞きますと、公務であったにしろ、人命を奪った者が無罪になるというようなことは、私は、非常に人道上の問題として今後考えなくてはいけないと思います。そういう点から特にお聞きをいたしたいと思いますが、この問題は双方が共同捜査という形をとっております。ところが、この共同捜査ということは、ことばだけの共同捜査であって、米軍、また日本の警察官が、それぞれ一つの事件に対して並行して調査をしたということであって、一緒に終始調査をして、結論を出したというものではないわけなのです。したがって、私は、おそらくその調査の結果は、米軍の調査した調書の内容と、それから日本の警察官が捜査された内容と食い違いが出てきておると思うのですが、そういう点について、ひとつ明確にしてもらいたい。
  58. 日原正雄

    ○日原説明員 この事件は、共同捜査のたてまえでございますが、米軍側が調べました調書も私どものほうへいただきまして、なお共同で取り調べを行ないまして、不審な面につきましては、さらに警察側だけの単独の調査、捜査、取り調べも行なっております。  食い違いの点でございますが、私どものほうのいままでの取り調べでは、米軍側の調査で足りない点をさらに突っ込んで日本側で取り調べておりますが、特に食い違った点はございません。ただ、米軍側の調査あるいは共同捜査だけでは十分に明らかにし得なかったところを、さらに捜査を補充している、こういう形でございます。
  59. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私どもが聞いておりますその内容が、いまの答弁と若干違っておりますのは、日本の警察官のほうは、一応捜査はいたしましたけれども、米軍の捜査調書というものに重点を置いて調書がつくられたというように聞いておるのですが、そういうことはございませんでしたか。それはないということを言い切れますか。
  60. 日原正雄

    ○日原説明員 この事件で一番の問題は、殺人の意思あるいは未必の故意があったかどうかという点が一つの問題、もう一つは、発砲することそれ自身についての問題、こう二つあると思いますが、いまの殺人の故意の問題につきましては、私どものほうの警察における段階での取り調べでは、ついに認めることができないで、そういう意味で、傷害致死ということで検察庁に事件を送ったようなわけでございます。この点につきましては、私どものほうと米軍の調べと大体同じ結論になっていると思います。
  61. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいま大体同じという表現でございますので、これ以上追及しても同じような答弁であろうと思いますが、将来こういう問題が起こらないようにするために、今後当局側はこういう問題に対して相当真剣に取り組んでもらわなければならないと思います。  そこで殺意の意思がなかったということでございますが、お聞きをいたしたいのは、散弾銃というのは、何メートル先でどの程度たまが散るのかということです。こういう点についてお聞きしたいと思います。
  62. 日原正雄

    ○日原説明員 この散弾銃の試射実験をいたしたのでございますが、その結果で申しますと、これは七月二十二日に試射をいたしたわけでございますが、標的を定めて十フィートから五フィートごとに四十五フィートまでの距離をとって、それぞれの位置から発射いたしたわけでございますが、三十五フィートの位置から発射した弾痕が、との事件の場合の死体の受傷状況とほぼ近い状態である、それから発射の際に、薬莢が一、二メートルの地点に、右前方に落ちるということを確認して、この事件では三十五フィートの位置から撃ったものというふうに認定したわけでございます。
  63. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 たまは直径一メートル散発するのですか。そうではないでしょう。人に危害を加えられる速度といいますか、それは何メートルくらいまでいきますか。
  64. 日原正雄

    ○日原説明員 試射実験で私どものやりましたのは、犯罪現場の状況とあわせてどの程度の位置から撃ったかということを確認するために撃ちましたので、詳細な記録はただいま持ってきておりませんので、ちょっとお答えいたしかねるのでございます。
  65. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいまの答弁のような考え方から試射試験をされたのですが、試射実験をしたとすれば、殺意がなかったとすれば、おどしに横に向けて撃った場合がありますが、横に向けて撃った場合でも、たまが散発する、その場合に、その散発するたまそのものの人を撃ち殺すことのできる速度というか、何メートルまで力があるかということをためさなくては、試射にならないと思うのです。それがわからぬということでは、これは試射実験をしたということになりませんが、その点はどうなのですか。
  66. 日原正雄

    ○日原説明員 ただいまのような御質問を予想しておりませんでしたので、試射実験の詳細な記録を持ってきておりませんので、また後ほど御答弁させていただきたいと思いますが、殺人の故意の問題につきましては、私ども段階までにおきましては、足元をねらって撃ったということで、殺人の故意の点は本人の供述からはどうしても得られなかったということを申し上げたわけでございます。
  67. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 散発銃でしょう。だから、足元に向けて撃っても、散発するのですから、たまはやはり足元だけに落ちないわけです。そうすれば、胸にもいけば頭にもあたるということになるでしょう。だから、いまその資料がないと言われれば、きょうはこれ以上質問したってだめですけれども、日をあらためてこの点は明確にしておかなくちゃならないと思います。  先ほど中村委員のほうからも質問のありましたように、岩国においては刃物で刺し殺し、そしてなお、昨年でございましたか、外部で殺人をいたしまして、その兵が結局ベトナムに行って自殺をしたという答弁をされたけれども、当時の情報からいきますと、自殺ということではなしに、その人はベトナムで死んだんだからあとはわからぬということになっておるのです。そういう結果でございますので、私ども、この富士の演習場の射殺事件については、調査に行って米軍の態度とかそういう点をいろいろ観察してまいりましたが、いずれにいたしましても沖繩から来た兵は非常に荒っぽいわけなんです。特に御案内のとおり、アメリカでは人種差別が現在においてもはなはだしく行なわれておって、そして国内でもこの問題が大きな論戦となって闘争が展開されておるのでございますが、アメリカ軍から言わせれば、敗戦国である黄色人種の日本人などは、犬かネコくらいな考え方でおって、人間の一人、二人は撃ち殺したとてそんなに悪いことをしたのではないというような人種差別の考え方からきておる面があろうと思うのです。私どもはそういうように察してきたわけですが、捜査のほうとしては、そういう点についての考え方の上に立っていろいろこの問題を取り上げて考えられてきたことがあるかないかということをお聞きいたしたいし、検察庁のほうにおいても、こういう問題についてどうお考えになっておられるか、この際お聞きをしておきたいと思います。
  68. 津田實

    ○津田説明員 私ども承知しております範囲におきましては、ただいまのような人種的偏見ということが、この施設区域におけるいろいろな事件の動機になっているというふうには、私どもは考えられません。したがいまして、これはあくまでも起こった不幸な事件であり、それが犯罪であるとすれば、当然日米いずれにしても処理をしなければならぬ。本件におきましては、富士のキャンプの司令官から静岡の検事正に対しまして、この点については軍事裁判所において審理をする。審理をするにつきましては、その年月日、場所を通知するということを通知してまいりました。アメリカ側におきましても、先ほど申し上げましたように、第一次裁判権は日本側にはないといたしましても、アメリカ側の第一次裁判権として当然の措置をするというふうに処置しているわけでありますから、さような点はいまのところは見受けられないというふうに考えております。
  69. 日原正雄

    ○日原説明員 私どものほうとしては、あらゆる事件につきまして厳正な捜査をするということで、一切ほかのことを顧慮せずに厳重にやってまいっているつもりであります。今後もその方針でまいりたいと思います。
  70. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 ただいまの答弁は抽象的でわかりませんけれども、これは明らかに現地に行きますと、私はどの方面からどういう話を聞いたということは、いろいろ差しさわりがありますから申しませんけれども、非常に米軍の日本人に対するところの態度というものが悪いということなんです。その悪いということは、とにかく敗戦国の黄色人種の日本人くらいは、すなわち犬やネコのような考え方を持って、人間の一人、二人は撃ち殺したとてそんなに悪いと考えておらぬという、こういう思想を持っておるということから、こういう事件が方々で続発しておるのでございますから、私は、こういう問題を今後なくするということになりますれば、やはり常々とそういう点は米軍のほうに意思表示をして、そうして米軍隊の教育からひとつやってもらわなければならないのじゃないか、かように考えております。これは意見になりますので、これ以上つきません。  そこで、これは公務中であり、いまの協定に基づいていくと、無罪ということになったのだが、それではもし日本の演習場なんかに立ち入りをした場合に、こういう問題はどの程度の罪になるのか、これをまずお伺いしたいと思います。
  71. 津田實

    ○津田説明員 仮定の問題でございますので、はっきりは申しかねるわけでございますが、問題といたしましては、日本の場合におきましては、やはり正当防衛なり緊急避難という問題が一番問題になろう。そうでなければ、先ほど警察庁から申しましたように、これは傷害致死という結果になるかもしれないというふうに考えるわけです。しかしながら、これはこの施設区域を条約上認めております場合に、施設区域の中の管理はアメリカの軍の規則によって行なう。したがいまして、その軍の規則によっているかどうかという問題と、さらにその軍の規則によっているとしても、その軍の規則が適当であるかどうかという問題は、日本側として当然関心があるのみならず、ものによってはその是正を要求しなければならないというふうに考えておりますので、その意味におきまして、先ほどお答え申し上げましたように、今回の措置が歩哨の守則に従っているものかどうか、従っていたとしても、その守則そのものが適当であったかどうかということにつきまして、慎重に検討いたしておりまして、今後の処置をきめたいというふうに考えておる次第であります。
  72. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 米軍の関係とは切り離してひとつ答弁をいただきたいのですが、日本の自衛隊が持っております演習場には、立ち入り禁止の札が立っております。これはいまの富士の演習場の場合でも、米軍も日本の自衛隊も立ち入り禁止の札が立っているわけです。そこにひょろひょろと入っていって結局射殺されたということなんですが、日本の自衛隊の持っている演習場に立ち入り禁止の札が立っておったにもかかわらず、日本人が何の目的もなしにその中にふらふらと入っていったということに対する処置は、日本の法律からいうと、どの程度の罪になるかどうかということをお聞きしておる。
  73. 津田實

    ○津田説明員 ただいまの設例の場合でございますが、これはその自衛隊の演習場、つまり施設の中に入ったという場合に、自衛隊の歩哨がとった態度についての問題でございます。その場合に、不幸にして傷害致死というようなことが起こったというような場合にどうなるかということでございますが、これはその自衛隊の歩哨がいかなる趣旨によってその行為をしたかということが問題で、すなわち、御承知のように、刑法におきましては、正当防衛あるいは緊急避難という規定がございます。したがいまして、たとえばその入った者の行為が自衛隊の隊員の生命身体あるいは重要な財産に対しまして行なわれたものであって、それを防衛するためにほかに方法がなかったということであれば、そういう行為をいたしてもこれは正当防衛として罪にならないという場合があり得る。また、緊急避難に当たる場合もあります。あるいはそういうことを誤って、そうでないのにそうだと思ったという場合には、いわゆる誤想防衛という規定によって処置されるという場合もございます。したがいまして、その入った者の相手方の場合場合によって処置がきまることでございまして、これは自衛隊の演習場等の場合に限らず、個人の宅においてもそうでございます。個人の宅において夜へいを越えて入ってくる者がいた場合に、それがいかなる目的かわかりませんが、それに対してある種の防衛行為をした場合に、それが正当防衛になるか、あるいは緊急避難になるか、誤想防衛になるかということと全くそこは同じでございます。
  74. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私は、こういう問題についてしつこくお聞きをいたしたいのは、自衛隊の持っておる演習場には、マツタケの出るところもあるわけです。禁止区域のあるところにはマツタケの出るところもある。だから、そこにマツタケがあるということになれば、禁止区域と札が立ててあっても、ほとんど十人が九人までがこそこそと入ってとりに行きます。とった先に、またその先にあれば、こそこそと行ってまたとるわけであります。こういうような場合に、結局どういうような刑罰がされるものかということをお聞きしておるのです。それで、特にその点を引き合いにとりたいと思いまするのは、東富士の場合には、新聞等でも書いてありまするように、勝又という婦人はやはり幾分脳に故障のあるというようなことも聞いておりますので、そういう人であれば、禁止区域である、ないというようなことの判断をせずに、ふらふらっと入っていく場合もあるわけなんです。だから、全然そういう意識なしにふらふらっと入っていった者が、英語と日本語の両方で誰何されたとて、これはそのときにとる処置もよう考えられませんし、ごたごたとしておるうちにぽんとやられて死ぬ、こういうことになるのですから、私は、この問題はよく考えてみますると、非常に大きい問題であろうと思いますので、ただいま引き合いにお聞きをするのですが、何だか私どもの調べた範囲内では、そういうマツタケの例を引きましたが、そういう程度のものは、どちらかといえば軽犯罪法程度のものであるというように聞いておるのですが、いかがでございますか。
  75. 津田實

    ○津田説明員 ただいまの例で申しますと、はっきりわかりませんが、これはおそらくマツタケをとるという、とるほうの側の人は森林窃盗ということになり、通常の窃盗よりも比較的軽い処罰になるということだろうと思います。それに対しまする処置としてどうなるかというと、それは重要な財産のなにでもありませんし、また身体に対する侵害でもありませんから、その場合の防衛する側、つまりいまの設例で申しますと、自衛隊側の処置としては、これに発砲するとかいうようなことはあり得べからざることである。したがいまして、もしそういたしましたとすれば、それは防衛、つまり正当防衛範囲を逸脱した行為になるというふうに、設例としては考えられます。
  76. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 国外的な問題については、こういう機会に何か検討されたのですか。もしこれが国外であった場合にはどうだということです。
  77. 津田實

    ○津田説明員 国外におきました場合に、ただいまの米軍のような事件ということになりますと、これはその国と国との問題ということで、その協定の内容いかんということが当然問題になるわけでございます。その意味におきましては、はっきりお答えもできませんし、またその受け入れている国の法制いかんということにもかかわることでございますので、この点はちょっとはっきり申し上げかねます。
  78. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 きょうは、私が最も重要だと思って聞こうとする資料がありませんので、お聞きすることができませんが、いずれにいたしましても、日本の自衛隊の場合に、ただいま例を引きました脳に故障のある人が禁止区域にふらふらっと入っていった、あるいはマツタケをとりに入った、こういうような場合には、全くこれは軽犯罪法で処理をされる程度のものであるけれども、米軍の場合は人命を奪ったということなんです。私は、これは非常に大きな問題として日本の国民は関心を持って今後とも考えていかなくてはなりませんし、当局としては、こういう問題については、相当真剣にこの処理方法について検討していただかなくてはならないと思うのです。これだけの差があるわけなんですから、私はあの事件は非常に遺憾な事件だと思いますが、いずれ私は、機会を見て資料を出していただいて、ほんとうに殺意がなかったのかどうか。これはどうしても疑問でならないわけなんです、散弾銃であるから、これは横に向けておどしに撃ったとて、たまはあたるということになるのですから、そういうことを考えてみれば、殺人の意思があったかないかということは、私はおのずから出てくると思うのです。おそらくそういう点については試射実験をされておって数字は出ていると思うけれども、いまその数字を出されては、殺人の意思ありということに結局答弁としてなるわけだから、私は答弁じょうずでいまのような答弁があったと思いますが、いずれ資料を提出してもらってまた質問をいたしたいと思います。  きょうはこれで終わりたいと思います。
  79. 伊能繁次郎

    伊能委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は、明九月一日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会をいたします。    午後零時五十九分散会