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1964-06-11 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十一日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君    理事 辻  寛一君 理事 内藤  隆君    理事 永山 忠則君 理事 石橋 政嗣君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       岩動 道行君    壽原 正一君       高瀬  傳君    塚田  徹君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       保科善四郎君    前田 正男君       松澤 雄藏君    湊  徹郎君       渡辺 栄一君   茜ケ久保重光君       大出  俊君    中村 高一君       村山 喜一君    受田 新吉君       山下 榮二君  出席国務大臣         国 務 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         総理府事務官         (恩給局長)  増子 正宏君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      平井 廸郎君  委員外出席者         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  総理府設置法等の一部を改正する法律案内閣  提出第八一号)  恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正す  る法律案内閣提出第一〇一号)  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び  薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第一五九号)      ――――◇―――――
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  総理府設置法等の一部を改正する法律案恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案、及び国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案の三案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がございますので、これを許します。大出俊君。
  3. 大出俊

    大出委員 佐藤人事院総裁にお伺いをしたいのでありますが、昨年の八月十日に、人事院から、給与に関する報告勧告ということで、つまり報告勧告が出されているわけでありますが、私は、実は人事院ができたころから考えてみまして、最近どうも私の知る範囲の人事院報告勧告あり方は、多少傾向が変わってきているように思うのです。おそらくことしもぼつぼつ調査に入っておられる時期だろうと思いますので、そういう点から確かめておきたい問題がございます。  まず、この給与に関する報告勧告根拠になります法律事情につきまして、どういうふうにお考えになっているかということ、つまり非常に民間給与比較というものが重点になっておりますけれども旧来の経緯並びに法律自体内容解釈等からいきまして、どうも必ずしもそういうことではないのじゃないかという気がするのであります。したがって、まずもって根拠になる法律等について、どういうふうなお考えを持っておられるのか、冒頭にお尋ねをいたしたいわけであります。御答弁いたしかねる点があるとあれですから、もう少し詳しく申しますが、国家公務員法の二十八条並びに六十四条、それから、どうもここまで言ってしまえば質問することもないのでありますが、一般職職員給与に関する法律の二条等が、おそらく根拠になっているのじゃないかと思うのでありますが、それらについて、どういう理解のもとに作業を始め、報告勧告に至る経過と申しますか、この辺の考え方をひとつ伺っておきたいと思うのです。
  4. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまおあげになりましたような条文内容は、あらためて申し上げるまでもございませんけれども、本来の根本、すなわち法律現行制度を離れて考えてみますと、人事院として給与勧告するにあたっては、あらゆる経済情勢その他から、あるいは公務員生活状態その他を総合して、白紙の上に公務員給与はかくあるべしということがはじき出されれば、これは私は理想だと思う。ところが、公務員法のいまおあげになりました条文、あるいは給与法の条文等におきましては、まあそこまで踏み切っておらない。一応そこに取り入れるべき条件というものをあげていらっしゃるわけです。それにはまたいろいろあがっているということもすでにお気づきのとおりでありますけれども、その中で最も客観的に、かつはっきりとつかまえ得るものとしては、これも御承知のとおりに、大体民間給与というものが一つの大きなめどになる。これの中には生計費どもおのずから反映しておるだろうということで、民間給与重点を置いて、それと公務員給与との格差をはじき出して、その格差を埋めるというところが一番手がたいことであることは、おわかり願えることだろうと思います。そういうような趣旨から、近年ずっと人事院におきましては、民間との格差というものを大きな基準として、それを埋めていくというたてまえでまいっておると思うのであります。これでありますと、きわめて基礎資料としてもはっきりしておりますし、どこから見ても一本も指をさされないという手がたい根拠にもなっておりますからして、にわかにこれを変更するというだけのまた根拠もない。したがって、今日のところでは、私どもその従来のやり方を踏襲いたしてまいっております。
  5. 大出俊

    大出委員 もう一ぺんいまの点をはっきりさせていただきたいのでありますが、いま私があげました国家公務員法の六十四条によりますと、「給与準則には、俸給表が規定されなければならない。」そして二項に「俸給表は、生計費民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、」、こういうことになっているわけでありますね。したがって、その前の定めは、つまり公務員法二十八条などでありますが、「俸給表に定める給与を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、」という表現が二十八条の表現でありまして、六十四条との関連からいきますと、五%の増減の必要が認められるとき、そしてそこに至る過程の取り上げ方としては、「俸給表は、生計費民間における賃金その他人事院の決定する適当な事情を考慮して定められ、」こうなっているのでありますから、旧来もそうであったように、生計費重点が置かれなければならぬ筋合いではないか、少なくとも相当生計費ウエートがかかっているのではないか、こういうふうに私は理解を長らくいたしているわけでありますが、実はこの辺の事情をもう少し一歩突っ込んでお聞きをいたしたい、こういうふうに私は思っているわけです。
  6. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 こまかいことは給与局長からお答えさせますが、ただいまも申しましたように、この民間給与というものの中にはおのずから生計費が反映されておるというたてまえが、ひとつ考えられるわけで、そこで民間給与を主としてとらえておるわけでございます。なお、これもいまさら申し上げるまでもなく、御承知のとおり、生計費の面も、一定の高校卒独身者十八歳程度というようなところで、一つのささえの意味で取り入れているというのが現状でございまして、これはたびたび御説明申し上げたとおりであります。
  7. 大出俊

    大出委員 くどいようですが、そのたびたびの説明が、どうも法律条文をすなおに解釈をされておらないのではないかという気がするのです。つまり生計費に相当なウエートが置かれなければならず、かつ調査方法等については、このような調査をしなければいけないという規定はないのですから、そうなりますと、この条文にありますように、生計費というものが前に出されて、かつ民間給与を云々、こういうことになっているのでありますから、そうなりますと、どうもつけたりのように――いま突っかい棒のようなことを言われましたが、本来そういう性格のものではないのではないかというふうに理解をしているのであります。なぜこういうことを私がくどく言うかと言いますと、ここの理解を誤ると、衆議院、参議院におけるたび重なるこの種の問題についての論争、この議事録等からいきますと、民間給与というものを常に追っかけていくのが公務員給与である、これが、理論的に正当化されてしまいそうな気がするわけであります。そういうことをこの法律条文は明らかにしているものではないかという理解を――私は二十三年の十一月三日に人事院ができたときから、官公労の事務局長最初から三年八カ月やっておったりしておりますから、前浅井総裁ともやりとりもしたいきさつがありますし、総司令部ともさんざっぱらこの問題についてはマーケット・バスケットをつくった当時のいきさつから聞いておりますが、どうも私は、当時はあくまでも生計費というものが重視をされている、こういう理解をしているのです。ところが、最近の衆参両院やりとりをされている内容は何かと言えば、民間給与との比較という点にいってしまう。いま総裁の言われることばの中で気になるのは、民間給与というものが生計費というものを根底にしている、したがって、民間給与との比較の面で生計費が見られているのだというような御答弁があるのでありますが、そんなことを言いだせば、これは民間給与との比較の面で、生計費であろうと、物価であろうと、いずれの会社にしてもそれが反映しないところはないのですから、それは当然何がしか加味されている。しかし、民間給与決定にあたってのやりとりを、私も本職のほうですから、よく知っているのでありますけれども、おのおの角度が違い、論理が違い、経過が違うというかっこうで民間給与がきまっております。そうなると、人事院という立場においてこれが一番正しいのだというあり方というものが、やはり必要になってくる。そうなると、生計費という面でやはり民間給与にその種のものは含まれているからということがあっては、人事院立場というものはまずいのではないか、もっと人事院立場が強調されなければならぬのではないかというふうに思っていますから、くどいようですが、そういう意味でもう一ぺん御答弁いただきたい。
  8. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 そういうお気持が当然あるということを前提といたしまして、私の気持も実は白紙考えればそういうことであろうという意味で、一番最初に申し上げたのはそのつもりで申し上げたわけです。したがって、公務員法条文も、そういうつもりで読めば、それは読めないことはないじゃないかというお話になってきたのだと思います。しかし、一方において現実的な立場から見ますと、やはりなるべく多数の方々に十分に納得していただくという線を打ち出すためには、また手がたい基礎というものがものを言う。したがって、民間給与がこれだけになっているからせめてここまで追っつけていただきたいということは、また現実に見れば、非常にアピールするわけですから、そういう意味で、今日の段階ではやはりこれが一番着実な行き方であり、そうしてたとえば施行期日などの面でも、少なくとも完全に値切られないところまで持っていくことというのが、まず今日の段階では考えるべきことではないか。そして最初に申しました理想というものは、それを持ち続けていくというふうにあるべきだというふうにいまのところは考えております。
  9. 大出俊

    大出委員 総裁の時間が限られておりますので、そうもあまり長い論議をしてもしかたがありませんが、私がいま主張しておりますように、そういう考え方から結果的に、実際の生計費調査の面と、それから俸給表をつくり上げて年齢別にながめてみたときにあらわれる生計費というものとの差が、極端にあらわれてきている部面ができる。しかも、それが公務員の各等級別の分布の状況からいきまして、きわめてたくさん公務員諸君がおられるところは、どうもふつり合いになっている。どうも中だるみになっている。これは何を原因とするかというと、つまり生計費というものが十分重視されないのでそういう結果が出てきている、こういう気がするのであります。もちろんこれは人事院も、私に言わせれば一つのワクの中で仕事をしておられるように思いますから、そういう意味では予算というものがからみますので、無理からぬ点も私もわからなくはないのだが、そのことはむしろ公にして、人事院力足らずということであるならばどうするかということにいかなければ、現実に生きている人間のことでありますから、そういう面で私はここはもう少しはっきり言うたほうがいいのではないかという気がしたのですが、いまのような御答弁であれば、それは気持ちの上では言外にあるところをくみ取る以外に道がない、こういうふうに私は思うのであります。  そこでひとつ承りたいのでありますが、今日人事院作業に入っておられる状態といいますか、この点について、いまどういうふうに進めておられるのか、概括御説明いただきたいと思います。
  10. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 例年調査時期が、四月ということになっております。ことしもそれを踏襲いたしました。したがいまして、四月現在で公務員側及び民間側給与実態調査をやりまして、目下その資料が集まりつつあるという段階でございます。したがいまして、その手順は、昨年と大体同様な手順とお考えいただいてけっこうであります。
  11. 大出俊

    大出委員 その四月という点について一つ例をあげて申し上げますが、御回答を承りたいわけであります。やはり昨年も四月に例をとってやっておられるわけでありますが、四月の時点調査をした結果に基づく人事院算定は、民間のほうは七・五%上回っておる、こういう理解だったと思うのであります。ところが、その後、これは例になる、ならぬという理論の上のやりとりはありますけれども、三十八年四月の二万七千九百五円という金を一〇〇とする。そして五月の時点が二万八千二百七十円であります。もちろんこれは毎月勤労統計に出てくる数字であります。したがって、これは一〇一・三という数字になるのであります。さらに六月という月は、二万九千百二十三円であります。そうなりますと、一〇四・四という数字になるのであります。そういたしますと、六月と四月というものをながめたときに、約四・四%の上昇率が見られるのであります。かりに六月までということになりますと、七・五%プラス四・四ということに数字上はなってまいりますから、一一・九%ということになるのであります。これは何を意味するかといいますと、つまり春の時期に賃金が上げられまして、その上げたものが数字にあらわれてくる実態をさしている。こういう理解を実は公労協関係の各公社、現業の理事者諸君はいたしている。そういうとらえ方をいたしておる。そういうことは、公労委の席上で明らかになっている。そういたしますと、人事院がとった四月は七・五%であり、六月の時点ということになりますと、プラス四・四%ということになる。こういう現実が現にあるわけでございますが、この辺のズレについては、どういうふうにお考えになりますか。
  12. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これは専門家に私が申し上げるのはたいへん恥ずかしいのでありますけれども、端的にわれわれが考えまして、大体最近月々民間賃金が上がっているということは、事実であります。それに合わせるとなると、わがほうも月々勧告をして月々改定をしていただくということにならざるを得ないわけです。それは申すまでもなく実際上の問題としては考えられないわけでございますから、四月という時期をとらえて、そうしてせめてその四月の時点までさかのぼってカバーしていただく。それは四月までさかのぼれというお話がありますけれども、わがほうは五月で追いついてもらうということでやっておりまして、その後の変化というものは、これはまた非常に格別の、物価のものすごい上昇があるということになれば、わがほうとしてそれは知らぬとほったらかしておくというわけにはいきませんから、その際はその際として考慮する必要がございますが、普通の賃金上昇としては、やはり次の段階調査ということでカバーせざるを得ないというのが、率直な考え方ではないかと思います。
  13. 大出俊

    大出委員 もちろん毎月勤労の例からいいますと、五百人以上の事業所ということについて、数字に詳しい瀧本さんが隣におられるのでつけ加えておきますけれども、その意味でそこに誤差が出てくることは当然でありますが、そのことを理解せずに言っておるわけではないのであります。しかし、ズレが当然出てくるということは、だれにも予測のつくことであります。つまり、いま総裁答弁をされたのからいきますと、せっかく春に各民間企業賃金引き上げをやった。その結果というものは、常に大多数の部分は一年ずれてしまうということになる。もちろん四月に手取りという形で集計されて支払われている事業所もありますから、その部面は入っております。しかし、大かた部面がどうも一年おくれになってしまうということになってくると、この面で公務員給与というのは、民間企業は上がっても、一年間は据え置かれる結果になってしまうし、先ほどのお話にありましたが、民間給与が対幾ら幾らだからという算定方式自体が、ずれてしまう方式なんです。生計費中心ではないのですから。そうなってまいりますと、二重に大きなズレを生じて、したがって、公務員はそれだけ苦しい思いをして生活している、こういう結果になってくると私は思うのであります。そこで、かつて何も四月という月を調査月にしないで、三月を使っていた時期もある。そうなりますと、これは絶対動かせない筋合いのものではない、こういうことになる。したがって、その辺のところがどうかということが一つと、それからもう一つは、五月という月はゴールデン・ウィークがあるから、稼働日数が減ることも事実であります。さらにもう一つ新規採用ということの就職が民間会社にたくさんありますから、全体の賃金の総平均からいきますと、落ちてきておることは事実です。しかし、毎月勤労統計の面で出てくる正確な数字ではないけれども、この中からそれらのものを相殺をして、一体どのくらい春の賃上げの支払われる時期というものをめぐってのズレが出てきておるかということを計算する方法が、全くないとは私は考えておらないのでありまして、われわれの側であっても、これらのズレを調整をしながら数字を出しておる例もあるわけですから、そこのところをどういうふうにお考えになっておるのかということを二点目に承りたい、こういうふうに考えるわけです。
  14. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 調査月をいつにするかという問題は、これはもういろいろ考え方がございます。たとえば五月にすればどうだ。五月にすれば休みが多いからかえって損だというような条件が、そのこと自体に伴いますから、これを四月ということできめたということは一つの行き方で、これはまたそう容易に調査月を動かすということはなすべきことでない。なまじっか六月にずらすということになりますと、今度は十何カ月勧告だというような批判が出てまいりまして、簡単なことでは済みませんから、したがって、この四月のたてまえは、私は今日までそれでよろしい、今度もそれでまいったわけですが、しかし、先ほど申したように、その後重大な経済上の変化が起こってくるようなことについては、常に私どもは関心を持ってそれを見守っておるわけです。ただいま御指摘の点については、私ども注意は怠らないつもりでおります。
  15. 大出俊

    大出委員 これはちょっと少し言い方が悪いようで恐縮ですが、注意は払っておるというのですが、注意払いようがないのですね。つまり皆さん調査をされておる基準になっておる四月の月、ここで出てくるのは、四月一ぱいで払われた金を対象にするのですから、そうなりますと、四月に払われていない限り、四月に調査月を求める根拠――いま調査資料が集まっておるのは四月なんですから、例を申しますと、食品関係森永明治、グリコ、ロッテ、古谷とか、カバヤとか、全日食だとか不二家だとか、たくさん食品関係民間企業がございますが、これは森永が四千三十六円上がっている。明治が四千二百五十円上がっている。以下ずっと上がっておるのですが、これは四月にはびた一文払われないのですよ。全部五月、こういうことになる。それから電機関係が、三千六十八円ばかり上がっておる。松下から始まって電機関係産業の日立にして毛、あるいは富士通信機にしても、あるいは八欧電機にしても、ずらりと全部これは四月の二十八日から二十九日、この辺にかけて全部確定をしておるわけです。なお、その中には東芝なんかもそうでありますけれども職務給部分が入っておりますから、この俸給体系をめぐる配分その他をめぐる問題では、半月ないし一月ずれておるところがたくさんある。これらの電機関係も非常に上がったところでありますけれども、ほとんど全部と言っていいくらい四月には入っていない。さらに石油関係比較的に早くきまっておりますが、半数くらいは四月に出てくるかもしれないが、あとはみんな五月になってしまう。こういう事情に今日置かれておると、私は理解いたします。金属関係の中でも、もちろんこれは早くきまったところが多いのでありますけれども、なおかつ五月に相当ずれてきておる。さらに保土谷化学などという化学部門なんかも――保土谷化学化学産業の中でも一番ずれたわけです。日東化学なんかもずいぶんずれてきたのですが、これらはみんな五月に入ってしまう。こういうことになるわけです。大どころを拾ってみても、ほとんどがそういうことになっておる。そうなりますと、本年の春の賃金が上がったというところは、四月にはごく一部分が入ってきて、大多数は五月から六月にずれておるというのが、例年とは極端に違う本年の特徴なんです。四月以降に選挙があったわけでもないですし、ゆっくり皆さん賃金を引き上げてくれ、上げる、上げない、こういう論争をしてきておるために、こういう結果が生じておるわけでありまして、かってない現象になっておる。したがって、本年四月をとらえられたのでは、国家公務員諸君生活状態というものは、本年の物価上昇等とあわせ考えたときに、これは話にも何にもならない状態になってしまうと思うのです。そうなると、つまり国家公務員生活を守る意味における一番大きな責任を持っておられる人事院立場が、このことがわからずして四月に調査月を求められておるとも思えない。先ほど重大な変化があればということなんだが、物価の上の重大な変化があればこそ、民間賃金はかってなく上がっておるのであります。つまりそれはいまお話にあるように、人事院物価調査をやるのではないのですから、あくまでも生計費も、あるいは物価も、民間給与比較という面でのみ人事院考えているのだとすれば、当然民間賃金動向が、生計費物価とあわせ考え重点にならざるを得ない。その民間賃金動向が、ほとんど五月以降にずれてしまうということが明らかなのに、にもかかわらず、四月に根拠を求めるということは、これはどういうことがあろうと、私は、許される筋合いのものではない、こういうふうに考えるので、ここのところを明確にしていただきたいわけです。
  16. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おっしゃることは重々わかるのでありますが、しからば、六月調査として七月実施でいいかということは、また反対の考え方として出てくるわけであります。その中間のところにほどのいいところを求めなければならぬのじゃないかというところに、われわれの苦しみがあるわけです。そういう点は、まだこれから――勧告するともしないともきめたわけではありません、データがそろわないのですから。問題点として重要な問題点だと思いますから、これはむしろいろいろお教えを受けて、われわれの参考にさしていただきたい。確かにそのおっしゃることはわかるのです。
  17. 大出俊

    大出委員 人のいい総裁のことですから、私は、あまり意地の悪い質問はしたくないのですが、いま言われる、それなら七月実施でいいかというお話なんですけれども人事院が五月実施といい、あるいは何月実施といった場合に、めったにどうもそのとおりにななったことはないのであります。どうも十月実施ということでずらされてきている。そういうふうなことなど考えますと、いま言われる、その七月実施になってもいいかということは、私は、言いわけにはならぬと思うのです。ですから、現実にこれこれのずれが事実としてある。これは、今日の日本の政府が、池田さん以下の方々が、本年は池田さんも前に出られてものを言われたんですから、事実は百も二百も御存じなはずなんですね。四月の十何日まで延びておって、あのときには民間の方々は、公労協賃金の決定をみんな待っておったのです。そうなりますと、その組合が、ああいう結論が出たことによって、ぽつぽつ息切れしたからまとめようとか、そうそう待てないからまとめようとか、なお待とうとか、こういうふうに動いたのであります。その前にきまったところというのは、鉄鋼くらいなものなんだ。鉄鋼の比較において造船が多少出ていたということくらいですからね。そうなりますと、ことしの場合は、明らかにいまだかつてない、従前の例によれない事情がある。そうなりますと、この辺のところを勘案をするあり方、行き方というものは、ことしくらい天下に大義名分が立ち、言いわけが与えられている年はないと私は思う。だれにもわかるのであります。四月に入らない。そうなると、人事院としては、一番やりやすい、内閣を説得し――説得しということは、法規上は必要はないのかもわかりませんが、常日ごろ、どうもコップの中のあらしを巻き起こしながら進んできている人事院ですから、そういう点から考えますと、コップの中のあらしにしても、どのくらい荒れているという理由は、世の中にわかるのですから、私は、そういう意味で、ことしは大英断をふるっていただいて、まして人事院なんてないほうがいいなんと言う方々もいる世の中ですから、やはりはっきりここで正しい姿、現実をとらえて、事実をだれも否定する人はないのですから、こういうふうな形で、ひとつ作業を進めていただくように、五月の月は、ゴールデン・ウィークがあるからといいますけれども、これも技術的には算定のしょうがあるわけですよ、ないわけじゃないのです。ただ手数がかかるからということで、手数をいとわなければできる。労働省だって統計をとっているわけですからね。だから、そういうふうにお考えを願えないかと申し上げているのです。それだから、七月実施でもいいのだということを言っているわけじゃないのです。なおかつ、従前の実施月でやることは可能なはずです。かくかくの理由で五月にずれる、六月にずれるところがあるからこういうふうにしたという言い方はできるわけですから、その辺のところを私は、はっきりもう少しお答えをいただきたいと思います。
  18. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 問題点として十分承知しているところでございます。おっしゃることも十分わかります。したがいまして、そういう点を含めて、今日非常に心を悩ましておると申しますか、検討を続けておるわけでございます。いろいろお気づきがございましたら、お持ち寄りを願いたいと思います。
  19. 大出俊

    大出委員 じゃ、その点は、まさに一つの大きな中心なんで、これをはずされると――ことしの春の賃金引き上げというのは、物価動向その他に即応してたいへんに上がったという認識をしているのでありますが、それが入らないということになると、勧告意味をなさないといってもいいほどの結果を生じると思うので、御検討をいただけるという理解でよろしゃうございますか。
  20. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 十分検討いたすつもりでございます。
  21. 大出俊

    大出委員 それからもう一つ人事院が何月から実施したいというふうに報告並びに勧告をされた場合に、いつも実施月がずれるのでありますけれども、ここのところはどういうふうにお考えでありますか。
  22. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 これはもう去年でもさんざん、どういうふうに申し上げますか、まことに遺憾であるというようなことを申し上げてきたわけであります。ですけれども、そういう一ぺんのまことに遺憾であるということばだけでは私はないのでございまして、努力もずいぶんいたしました。この間も申し上げたのですけれども、総務長官などもずいぶん御協力いただいた。しかも、とうとう結果においては思うようにいかなかった。私どもは、もう一息というふうに望みをつないでおります。ことに、ことしは、いま御指摘のようないろいろな条件もありますので、もっといい――もっといいどころじゃない、従来とは全然違った結果が出るのじゃないかという期待を持っています。
  23. 大出俊

    大出委員 総裁が大体一時間ぐらいというお話なんでありますので、こまかい点についての御質問というよりは、大筋を承っておきたいというふうに考えているのですが、そこで、人事院調査方式それ自体、これは私は、こういうふうにしなければならぬというきめられたものがあるというふうには思っていないのであります。そういう意味で、今日、日本に大きな労働団体が三つ四つありますけれども、合わせて約九百万ぐらいの組織の人員がおるのでありますが、この方々が、一昨年、昨年あたりからひとしく欧州並みの賃金にせよということを前面に掲げているのであります。そうなってまいりますと、やはり日本の公務員賃金全体をつかさどる意味人事院という立場からすると、少しそういうところに目を向けて、一体日本の賃金というのは国際的に見てどの辺のところにどうなっているかということあたりは考えていただかないと、私は、人事院の責任が負えない結果になるんじゃないかと思っているのですが、そういう意味で、最近は、名目賃金比較あるいは実質賃金比較というようなことでの各国との賃金比較がいろいろな方々から出されておりますが、一体この辺はどういうふうにお考えになっているのですか。
  24. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 率直に申しまして、われわれは、一般職公務員給与をおあずかりしているわけでありますから、公務員給与としてあるべき姿ということを追求することは、当然でありますが、一般の民間賃金のいわば相場をここでリードしていこうというようなことは、もちろんこれは出過ぎたことでありますから、われわれの立場としては考えるべきことではないと思っております。ただ、公務員給与のあるべき水準ということについて、最初に申し上げましたような基本の考え方を持ちながら、現実に適合した方法を従来とっておるわけであります。その現実に適合した方法としては、今日の方法というものはまず適当であろうということでまいっておる次第でございます。
  25. 大出俊

    大出委員 私が申し上げているのも、公務員は何も日本だけにいるのじゃないのでありまして、世界各国に公務員がいるわけであります。そうなりますと、政令二〇一号でわれわれのストライキ権なりあるいは団交権なりがなくなって、そこで人事院ができたという、二十三年十二月三日の人事院発足のいきさつからして、やはりどうしても各国の公務員賃金というもののあり方、このあたりにも目を働かせていただく必要がある。各国の公務員賃金というものをもし調べてみようという気になるとすると、各国の民間賃金というものも調べてみなければならなくなる。大それたというお話なんだが、決して大それたことではない。そういうふうに私は考えているのであります。したがって、一体どのくらい名目賃金比較あるいは実質賃金比較の面で日本の賃金は低いのかということを考えて、どうも低くないというパンフレットが流れたことがありましたが、そのパンフレットも読んでみたのだけれども、外国の諸君と突き合わせてみて、どうもでたらめ過ぎるという結果が生じた例もあるのでありまして、その辺のところを私は皆さんがいま考えておくことも、いろいろな方面から人事院勧告をめぐっては、高いのじゃないかとか、あるいは押えるべきであるとかいう意見があるのでありますから、そうではないのだということを人事院立場で明らかにする意味からも、私ははっきりさしておく必要があると思います。陰で、どうも総評などの出している賃金白書などを見て感心しねえなどと言っているだけでは済まないわけでありますから、その辺のところを、もし御見解があれば、承っておきたいわけであります。
  26. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 先ほどことばが少し足りませんでしたけれども、大それたと申しましたのは、一般の民間賃金をも含めての問題として、それの相場づくりをやるというような意味での考え方は、われわれとしては大それた考え方として、とっておりません。おあずかりしておる一般職公務員の方々を常に対象として考えておる。それにつきましては、もちろん外国の公務員がどういう給与を受けておるか、これは隣に給与局長もおりますけれども、これは常に調べております。しかしまた、おことばにもありましたように、それぞれ国によって実情は違いますから、もちろん日本の実情と合わせながら考えなければなりませんけれども、そのくらいの考慮は払ってきておるわけであります。
  27. 大出俊

    大出委員 まあこまかい数字を申し上げても、時間の関係で意味がございませんから、申し上げないことにします。  そこで、多少内容的な重点を伺いたいのでありますけれども一つは、給与体系の中だるみというものを -俗にいう中だるみでありますが、私は非常に心配するのであります。さっきも申しましたように、等級別分布をながめてみると、われわれ中だるみと感ずるところの、しかもこれは中堅層であり、今日の公務員の仕事の中核をなしている方々の賃金が、上の方々と下の方々と比較して、特に上の方と言ったほうがいいかもしれませんが、極端に低い、こういうふうに私は理解いたします。そのことがいろいろな事情を実は生んでいるのでありまして、あまりにもひどいじゃないかという気持ちがあると、とかく職員組合の運動の面等で激しさが加わるのはあたりまえであります。そういうふうな点で、政策的に見て、どうも人事院勧告にあらわれるこの辺の方々の給与改善がゆがめられているのじゃないかという気が率直に私はするのでありますが、さらに言えば、どうも予算との関係で逆算をしているのじゃないかと思われるような節もあるのでありまして、そういう点について御答弁を承りたいわけです。
  28. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 私どもといたしましては、率直にあらゆる資料をそのままに使いまして、適切だと思われる給与体系をつくってきておるつもりでありますけれども、しかし、それに対しては、いまおことばにありますような御批判もいろいろ聞いております。その他、われわれのやり方については、あらゆる角度からの御批判がございます。そのたびごとに私どもはそれを傾聴いたしまして、そうして常に反省を加えながら改善に改善をつとめておるわけでございますから、いまおっしゃいましたような御批判も、ほかからも伺っております。十分さらにこの次の勧告の際には検討してまいりたいと考えております。
  29. 大出俊

    大出委員 ほかからもというお話しがありましたが、私も実は国会の議事録なるものをずっと読んでみたわけです。ずいぶんいろいろな意見が繰り返されているのであります。そこで特徴的に言えることは、官民比較の面から見まして、二等級等の例をあげますと、これは国会の議事録にもありますけれども民間よりも四・三%低いという、しかし上げているのは六・五%。それから三等級が、ほとんど差がないという数字が出ておりまして、六・三%上げている。四等級が、一〇・八%低いところで六%上げている。六等級は一一%低いわけでありますが、六%しか上げていない。さらにもう一つ問題は、官民比較の場合の対応等級との関係でどういう比較をされているかというと、一等級は、これはまあ比較をしないのでありますが、二等級は、五百人以上の規模の企業との比較。三等級以下は、五百人以上の企業と五百人以下の企業の組み合わせ、こういう形の比較、こういうふうになっているのであります。そうなりますと、調整をはかるのでありますから、三等級は二等級に引っぱられるのですから、そこを何とか手直ししてならさなければならない、こういう現象が出てまいります。さらに下のほうは、初任給が民間はどんどん上がっておりますから、上げなければ役人のなり手がない。ここの調整をいたします。まさにまん中だけが完全にたるむという結果になってしまうというわけであります。このことは、生計費の面から見ても明らかだと思うのでありますが、これはまだほかに申し上げたいこともありますからあとに譲りますけれども、そういうふうな点から、おそらく総裁がながめても、給与局長がながめられても、このあたりが大きく中だるみをしておるということ、そのことは生活が非常に苦しいということ、このことについて知らないはずはないと私は思います。そうなってくると、かつて多少の手直しらしきことをやったことがありますけれども一つ手をつけるとばく大もなく予算がかかることは事実であります。公務員分布がここだけ多いのですから。予算がかかるからということで上げたくないというか、上げることに抵抗がある。そういう意味人事院の側でつまり人事院調査が正しいのだという主張をされるとすれば、それは正しいように合わせたのではないか、こういうふうに思うわけでありますが、もし御異論があるとすれば数字をあげて申しますけれども、そういうふうに見られる節々がありますので、私は、このあたりについて質問が繰り返されておりますけれども、しかし、結論らしいものが出ているのではないのですから、この際ひとつこういう事情になっている本年の状況にかんがみまして、はっきりしたところを御答弁願えないものかと思います。
  30. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 お金のほうの側、すなわち予算のほうから考えて逆算して、特定のところに不穏当な体系を築き上げたというようなことは全然ないことは、お察しいただけることだと思いますが、しかし、この官民の格差というものを一つのめどにしておるということは、これは御批判はありましょうとも、私どもとしては一応の大きなめどにしておるわけでありますが、その格差の中で、これを調整しなければならぬ。その調整の際には、やはり給与体系としてすっきりした形をわれわれとしては目ざしながらやっておるわけであります。その結果、あるいははからずもあるところにたるみが出てくるということは、これは御批判があるところですが、それはそういうことがあるかもしれません。それは十分心に入れて漸次改定をしていく。もうすでに過去においてもいろいろな御批判に応じて改定したところがあることは、御承知のとおりであります。その気持ちで今回も臨みたい、こういうことでございます。
  31. 大出俊

    大出委員 いまの中だるみなんですが、私はいろいろな経験がありますけれども、大阪に中央郵便局という郵便局があるのです。二千人ばかり人がいるのですけれども、この郵便局で局長さんが、この大阪の二千人の自分の局員を、この方は多少数字に明るい方であって、生活実態と合わせて調べていっている例があるのです。これなんか見てみますと、総裁にあまり詳しい数字は申しませんが、大体郵便局に入って八、九年から十年、多い人だと十一年くらいたっておりますが、年齢的に二十七、八歳から三十二、三歳、多くて四十五歳までの人、このあたりがどこからどう考えても五、六千円生活をしていく上に金が足りない。そこから上の人たち、それから入ってきたばかりの人と比較してみて、どうしてもそういう結果になる。長年局長をやっておられて、職員生活実態を心配されて、いろいろ調べておられて、そういうデータを出されているのであります。こまかい数字を申さぬでもおわかり願えると思うのですが、   〔委員長退席、辻委員長代理着席〕 つまり官庁に入られて大体二十七、八から三十二、三それから四、五、このくらいのところの方々が、どうも三十わずか前で、おれはどこかほかのほうをさがしていきたいなんということを言い出す。なぜかというと、民間に入られた方々と比較して、同じ学校を出て、同じ資格で入っても、片や官庁、片や民間ということでこれだけ違ってしまってはどうもということで、先行が心配になって、最近は民間のほうに人の需要も多いためにやめてしまうという人が、ずいぶんふえてきている。これは現実ですね。これはどこからくるかというと、先ほど申し上げた給与の大幅な中だるみとみられる点からくる。それから生活実体として御本人にはね返る。ここに問題の焦点があると私は考える。そういたしますと、この辺のところに手をつけずに放置されていく、ないしは多少申しわけ程度に手を加えようとする、これでは事済まない段階ではないか。だから、政府要路の諸君にも真に理解を求める立場から、この辺の実態を明らかにして、これこれ低いのだということを言わなければならぬ時期に来ているように思うのですが、その辺の政策的な面について、どうお考えになりますか。
  32. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 現実の面は、おことばにもありますように、大体の批判というものはよく承知しておりますす。私どものところにも、各公務員諸君から、一日に数百通のはがきや手紙が参ります。私は、活版刷りのものはあまり読みませんけれども、綿々とペンでつづったものは、できるだけ目を通しております。数字をあげてまでのものもずいぶんありますので、実情は十分承知しておるつもりであります。したがいまして、そういうものを常に心に置きつつ、先ほど申し上げたような心がまえで臨んでまいりたい、そういうことでございます。
  33. 大出俊

    大出委員 もう一ぺんくどいようですが申し上げますが、人事院が三十八年一月現在の学歴別・年齢別の月給与平均額というのを出しておられますね。これは本年になってから出されておりますか。
  34. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 三十八年の一月の資料は出しております。と同時に、三十九年につきましても、同様の調査をやっておりまするので、この結果は近くまとまる予定でございます。
  35. 大出俊

    大出委員 そうしますと、三十八年の一月現在のような形、最終的にはこれしかないわけですね。
  36. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 現在のところは、三十八年の資料です。
  37. 大出俊

    大出委員 そうしますと、これで見るよりしかたがないことになるのでありますが、これと、それから生計費ですね。人事院がかって発表している標準家族構成なんというものもあります。一人世帯から五人世帯までの年齢が出ていたりします。これによりますと、男子が二十七歳、女子が二十三歳の夫婦であって、この二十七歳の平均給与額が大学卒で一万九千円。人事院の、エンゲル計数等も入っておりますけれども生計費、二人世帯が二万四千二百六十円。そうなりますと、これはどうも給与の面と生計費の面、実態が合っていない。だいぶ給与が低いという勘定になるのであります。三人世帯の場合、三十ぐらいで子供さんが三つぐらいの人がいて、三万二千六百円の標準生計費。これが平均給与額でいきますと二万四千円。四人世帯の場合、三十五歳で奥さんが三十一歳、七歳と三歳の子供さん、平均給与が三万二千円、人事院の標準生計費は三万八千四百五十円。例をあげればきりがありませんが、こういうふうな形になっている。このあたりは、理論はわかるのですよ、人事院のほうでいろんな理屈をつけておられることはわかるけれども生活実態というものを考えたときに、明らかにこれは今日人事院が出しておられる、体系の改善という表現で出しておりますけれども、どうも実際に生活していく面からいくと、ほど遠い状態に置かれている、こういうふうに思うわけであります。この辺のところは、どういうふうにお考えになっていますか。
  38. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 私のほうから申し上げても、すでに百も御承知のことでございますが、言いわけがましいので申し上げませんが、われわれのほうとしては、先ほど総裁が申し上げましたように、現在の、これは民間一般の賃金もそうであろうというように思うのでありますが、わが国賃金水準そのものになるかもしれません、必ずしも十分なものであるとは考えておりません。しかし、これは公務員賃金も、独走するわけにまいりません。やはり民間と合わせていく。そのとき、先ほど仰せのように中どころがどうも考慮が足らないのではないかというようなお話でございますが、結果的にあるいはそういう批判を受ける場合が多いのであります。われわれとしましては、先ほど総裁が申し上げましたように、そういう点は――ことし勧告するようになるかならぬかわかりませんけれども、一応われわれとしては、あるものとして作業の準備をいたさなければなりませんが、十分に注意いたしまして、その辺の考慮を第一に考えたい、このように思います。
  39. 大出俊

    大出委員 これはぜひ考えていただかなければならぬから申し上げるのでありますけれども、中労委が三十八年六月に全産業対象に賃金事情調査というのをやっております。御存じだと思いますが、これは抽出調査ですから、一つの傾向、モデル賃金的なものという考え方になりますけれども、これなどを見ますと、人事院も十八歳の単身生計費を取っておられますけれども、十八歳が一万四千七百九十一円であり、二十歳が一万七千四十九円、二十二歳が一万九千五百四十一円、二十五歳が二万五千四百五十円、三十歳が三万四千百四十七円、三十五歳が四万四千七百七十八円、四十歳が五万七千八百五十四円、四十五歳が七万九十三円、五十歳が八万三千九百五十一円、こういうふうな数字が出ております。これは公労協の諸君のモデル賃金比較をやってみても、公務員の方々を比較してみても、ずいぶんとかけ離れた感じがするのです。それらのこともおそらく気がついていない皆さんではないと思いますから、だめ詰めみたいなことはいたしませんが、資料として今日信用するに足るものが方々に出ておる。してみると、このあたりで旧来いろいろ批判があるところをぽつぽつ改善をしていく気持ちがあるということはわかるのでありますが、民間実態その他から見て、ますます公務員が気の毒過ぎるという感じを私は持つのであります。そういう点から、直すべきところは予算がかかっても直すという英断をふるう必要があるのではないか。極端なことを言えば、それが悪ければやめてしまうということでもいいので、一ぺん公務員賃金というものを勧告権のある人事院がはっきりしてみる必要があるというふうな気がいたすのであります。これはおのおの立場があって、言うべくして行なえない面があるのはわかりますけれども、そう言わざるを得ない程度に、今日特に行二の体系などをながめてみると、めちゃくちゃな気がする。したがって、そういう点でもうちょっと人事院の側から、調査に入っておる今日の段階で、何と申しますか、前向きでことしはこうするというところがあっていいのではないかという気がするのですが、いままでのお話を聞いていると、どうも昨年と変わらぬような気がするので、この辺でもう一ぺん総裁に御答弁いただきたいと思います。
  40. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 はでなことを申し上げても、またこれが結果においてどうなるかという点もございますので、あえてきわめて現実的なことを申し上げているわけでありますが、その心にひそめておる気持ちというものは、ただいまおことばの中にありましたような気持らをもって臨んでおるということを申し上げておきます。
  41. 大出俊

    大出委員 ところで、いまの問題と多少からみますけれども、公労委が今回裁定を出しておりますが、ここで取り扱っておる数字は、百人以上の事業所をとっているというふうに考えていいのではないか。ところで人事院旧来言ってきておりますのは、五十人以上ということで、対応等級で比較するときには、差しかえて五百人以上をとってみたり、五百人以下と組み合わせてみたり、五十人というところによってみたり、いろんな組み合わせをしておられますけれども、これにも私は文句を言えば意見がありますけれども、それはそれとして、百人以上、少なくとも公労委がそういう方式をことしは明らかにしておるのでありますから、裁定理由書に書いてあるのですから、それらのことを勘案して、ぼつぼつ人事院立場というものを鮮明にされていいのではないかと考えるのでありますが、これらのところはどう考えますか。
  42. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 われわれとしては、相当注目すべき事実であるというふうに見てまいっております。しかし、御承知のように、今回の調査は、従来どおり五十人以上ということになってやっておるわけであります。この五十人以上は、五十人以上にまたそれ相当の理屈を持って臨んでおる。これもここであらためて申し上げるまでもなく、先刻御承知のところでありますから申し上げませんけれども、そういう立場で進めております。しかし、そういう現実があるということだけは忘れないでおきます。
  43. 大出俊

    大出委員 五十人以上をとるのと百人以上をとるのとでは、極端な差が出ることは御存じのとおりです。先ほどの中労委の三十八年六月の賃金実態調査なんかも、百人以上を対象です。そうなってまいりますと、私は、百人以上というのは、おそらくその辺の機関の常識になっているんじゃないかという気がするのであります。それに対して人事院が一段階低いということになると、それだけ組み合わせる方法その他いろいろありますが、私は、ずいぶん控え目に遠慮してものを考えても、このあたりくらいのところはせめて何とかしなければ、公務員諸君はあまりにも気の毒過ぎるという気がするのであります。まあ注目すべき資料、こういうふうな御答弁なんですが、注目すべき資料という意味についてはいろいろあろうと思うけれども、少なくとも明確に何人以上のところをとってこうだということを裁定書に書いているということになりますと、これは注目すべきところではなくて――もちろん、公労委の中がいいかげんだということなら別です。そうでない限りはも私は、一つ基準を示しているというふうに思うのであります。そういう点から考えて、やはり私は、どうしてもことしは五十人以上ということではなくしていただきたいのです。単に注目すべき資料が出たというだけでなしに、もうちょっとお考えはないでしょうか。
  44. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 従来は、注目すべき資料としては、逆に毎勤の三十人以上というようなわずかのほうの資料もあるわけであります。そこにあわせて百人以上という、これは最近の資料ですから、相当注目に値するものであるという気持ちでおります。
  45. 大出俊

    大出委員 それから公務員賃金と公労法適用組合あるいは適用職員、こういうところをとって、たとえば郵政省の職員と一般公務員、あるいは専売公社の職員と一般公務員、あるいは国鉄職員と一般公務員、こういうふうなところの賃金事情について、まあパーシェ式とか、フィッシャーとか、ラスパイレスとか、いろいろ総計の方式があるようでございますけれども、いずれをとられても御自由ですけれども人事院あたりがながめてみたところ、どの程度のところが適当かということを調査されたことは、――政府御当局でもけっこうでございますが……。
  46. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 御指摘の点につきましては、もちろん人事院の権限だけではできないことでございまするので、当然ほかの資料を借用いたして研究はいたしております。そういう研究の結果、非常に大ざっぱでございますけれども、この公労委の仲裁裁定がございまして今度上がるでしょうが、その以前の状態におきましては、公務員のベースはほぼ公社現業の水準に近づいて、ある種の現業よりは多少公務員の水準のほうが高くなる、このように理解いたしております。しかし、今回の仲裁裁定の結果によりますると、今回七・五、六・五あるいは九・五というふうにベースが上がるわけでございます。また、それだけの差が出てまいってくるであろう、このように思っております。
  47. 大出俊

    大出委員 ラスパイレスでとっている資料なんですが、この政府資料ですけれども、例の今回の公労委勧告の出る以前の状態における公務員賃金比較の面で、国鉄だとか郵政だとかというところと公務員とは、あまり差がないのではないかというように私は思うのでありますが、その辺はどういうふうにお考えですか。
  48. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 公労委でも、比較ということはずいぶん苦労されておるように仄聞しておるのですが、やはりどういう比較が適切なのかということが一方にございます。しかし、資料等の関係で必ずしも適切な比較が十分にはできかねるのでありますけれども、今回の公労委の仲裁裁定で上がります前のいまの状態におきましては、公務員と、部分的に見れば違っておるところもございますけれども、大体において同程度の水準になっておる、このように思っております。
  49. 大出俊

    大出委員 総裁の時間がちょうど約束どおり一時間ぴたりになりましたから、最後に一つだけお願いをいたし、簡単に御答弁をいただきたいのであります。  七千八百七十七円の勧告が出たときも、総司令部と政府と参議院の人事委員長である千葉さんとの間を飛び回った時代があるのでありますが、当時GHQの課長がアメリカへ帰っておって、ソルター氏がやっておった時代でありますけれども、さんざっぱらやって実現を見なかった勧告なんであります。つまり今日まで人事院が一生懸命勧告をされたのですが、ずいぶんきらわれたり、未実施になったりという苦い経験が続いてきた。そこで、何とか人事院勧告をし、それが尊重されるようになったその時代からのものを、今度は以前と比べて調べてみると、どうも人事院の行き方が少し変わったのではないか。つまり生計費などに重点を置いていくと、どうしても高い勧告になってしまう。したがって、生計費が前面に出て、民間給与比較その他人事院の決定する事項、こうなっているのですけれども民間給与比較ならばどこからも文句は言われないからということで、そちらのほうに重点がいってしまい、しかも対応等級その他のところでいろいろ――これは理屈は成り立ち得るのですから、いろいろな理屈が言えますけれども、これは非常に苦しいところではないかと思いますけれども、そういうところで一応の理屈立てをしながら、今日一応人事院勧告を何とか実施してきている。それでもなお方々から文句を食う。勧告が出て、すぐ日経連が大きく反対をするというふうなことが続いている。したがって、私は、あっちに気がねをし、こっちに気がねをし、かろうじてぎりぎりの線で出したいという意識でいろいろ数字をいじられて、勧告ないしは報告をする、このつらさはわかるのですけれども、それだけではぼつぼつ事済まない段階になってきて、それを続けていると、さあ団交権をよこせ、ストライキ権をよこせということに必然的にならざるを得ない、こういう結果になってまいりますから、ことしあたりは、行政調査会にしてしかり、さらにILO特別委員会にしてしかり、これだけずいぶんこの種の問題が論議されている時期にきているわけですから、ひとつ人事院のいにしえから今日を振り返っての、ある意味では一つの決算をする時期であろう、こう思うわけであります。したがって、なるほどと、いずれにも左右されずに、この辺のことはこうしなければならぬのだというところあたりをやはりお出しをいただきたいものだという気がいたしますことと、あわせて職員の代表が総裁ないしは給与局長にといって詰めかけていくような場面もあるいは出てくるかもしれないけれども、置かれている実態等も御存じなんですから、できるだけ意見は聞き、取り入れるべきものは入れていくというふうな態度が、私は望ましいと思うのでありますが、最終的に総裁から御答弁をいただきたいと思います。
  50. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 いまおことばにありますように、私どもとしては、高くなり過ぎるとか、あるいはその他の環境を考慮しながらやっているのではございませんで、国民大衆からなるほどと思われるようなところをねらってやっているということは、御了承願えると思います。ただいまのおことばにもありましたように、私どもは、常に公務員諸君の代表の方々とは密接に、ひんぱんにお会いして、その御意向は常に伺っているわけであります。もちろん、おっしゃるとおりのことがそのまま実現はいたしませんけれども、しかしながら、その御趣旨をくみながら臨んでいることを御了承願いたいと思います。
  51. 大出俊

    大出委員 お約束どおりの時間でございますので、あと給与局長さんに何点かお聞きしておきたいのでございます。  人事院がやっておられる非常に大きな特徴点の一つだと思うのでありますけれども、標準生計費の問題がございます。標準生計費の問題について、どうも六十円というのは低過ぎるのではないかという意見が、旧来からたくさんあるのであります。これは食料費、それから住居、光熱、被服、雑費等分けておられます。このあたりについての理屈は、私はある程度わかっているつもりでありますけれども、最近方々に給食センターなどというものができて、七十くらいのたくさんの中小企業の方々を集めて、八千人からそれ以上の規模で給食センターを厚生年金資金などの還元を受けながら発足をいたしております。これらの内容を最近私も調べているのでありますけれども、大体朝食が五十円、昼めしが六十円、夕食は七十円、このくらいが、給食センターなどがやっておる給食一食分の料金なんです。誤解があるといけませんが、給食センターなるものは、市なり県なり厚生年金資金なりというものを出させて、合わせて自己資本を入れて、自分の会社で設備をして食堂をつくるよりは安くつくということで金を出しているわけでありますから、その意味で、もとをとろうとか、利益採算をあげようとかいうことではないのであります。そうなりますと、この五十円、六十円、七十円という金額は、ほぼ原価に近いものでまかなわれている、こういうことになっているのでありますが、カロリーは大体三千カロリーくらいとっておりまして、この点は人事院算定等よりはるかに高いのであります。それでいまのような金額である。ところで、これは八千人の規模のものを大工場みたいなところで一ぺんにつくるのですから、うんと安くできているわけであります。したがって、二人世帯なら二人世帯でつくるものよりは、はるかに金はかからない。だから、これを二人世帯なら二人世帯に引き直していけば、相当な金になる。つまり逆にものを言えば、実態に即してみても、標準生計費の六十円というものにはきわめて大きな問題がある、こういうふうに私は理解をするのでありますけれども、今日これを多少手直しをする気持らがないかどうか。あわせてエンゲルなんかについても、池田さんの言われる三九もありますし、人事院の言われる四四、四三というようなものもありますが、調査方式がいろいろあるのでありますから、どうということをいまここで特段言おうという気持ちはないのでありますけれども、あわせ考えて、ぽつぽつ人事院としてこの辺も何とか手直しをするようにしないと、あまりにも低過ぎるではないかということがますますつのってくるというふうに思いますので、そういう点について、ひとつ見解を承りたいと思うわけです。
  52. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 標準生計費につきましては、従来の数字を踏襲するということはいたしません。あくまでわれわれが使用し得ます最新の資料によりまして、たとえば厚生省でやっておられますところの国民栄養調査の結果、国民平均でどのくらいのカロリーをとっておるか、これを単身者に直してみるとどのくらいのカロリーになるか、そういうことを結果から詳細に計算いたしまして、そういう数字を用いる。同時に、総理府統計局の家計調査の結果に基づきまして、一般にどういう商品、どういう食物を、どういう銘柄のものをどの程度とっておるか、あるいはそういう頻度が非常に大きいかというようなことを、客観的に数字を用いましてつくるということをやっております。これは方法としては従来からそういう方法をとっておりますけれども、われわれは、現在のものがこれで完全にいいというふうには思っておりません。したがいまして、これは絶えず研究をいたしまして、さらによりよいものをつくってまいらなければなりませんけれども、われわれの考えております標準生計費の中の食糧費というものは、あくまで国民一般の大多数の方々の消費事情というものが、大体そういうことであるというようなところをねらってやるという制約がございますので、すべてを外食によってまかなうということには、いささかまいらないのじゃなかろうかと思いますけれども、御指摘のような点につきましては、十分検討してみたいと思います。
  53. 大出俊

    大出委員 そこでひとつ承りたいのですが、官民比較の面で、議事録によりますと、官のほうが民よりも高いという部面があるということを答弁の中で給与局長自身言われているのであります。そういう点について、どの辺が民間よりも官庁のほうが高いのか、例をあげておいていただきたいと思います。
  54. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 公務員給与水準を民間に合わすという場合に、ある特定のものを除いて比較するということは、必ずしも適切でないと思います。もっとも徴税とかあるいは公安というような官にしかないものがございますので、これは比較のしようがない。そこで民間にも官にも公にもあるというようなものはどういうものであるかと申しますと、たとえば教育関係の教官でありますとか、あるいはお医者の問題、あるいは看護婦、医療職員、こういう方々がおるわけでございます。われわれは、民間における、すなわち私学の教授なり助教授など、教育職員給与というものが適正なものだとは思っておりません。しかし、現実にはあるのですから、調査はいたします。その調査の結果によりますと、私学の教官のほうが一般的に低いということが出てまいっております。その比較をいたします場合にも、たとえばすでに国立の大学の定年を経過されました者が、恩給、退職年金をもらいながら私学の教授をされておるというような方もおります。こういう場合には、両者を合わせての給与ということで大体評価されておるようでありますから、その中の給与だけをとりますと、非常に低いものになる。そういうものは除きまして、本来私学の初めからの職員であったような教育職員を調べる、こういうことをやっております。また看護婦につきましても、これは公務員のほうが結果的には高い、民間の看護婦のほうが低いという事情が出ております。医療職員等につきましても、多少その傾向がございます。
  55. 大出俊

    大出委員 いまの話の中に、数の面からいきますと、看護婦さんなどというのは非常に多いわけです。私は、この間厚生省に寄っていろいろ調べてみたのですが、看護婦さんの正規の資格を持っている方々が、現実に四十二万五千人くらいいるのですが、四十二万五千人いる有資格の看護婦さんの中で、さて現実に稼動されている人、働いている方々は、約十八万ちょっとなんです。この稼動していない方々のプールの中から、厚生省がいろいろな方法を講じて年に二千人くらいを吸い上げて稼動率をふやしている、こういう現実一つある。一方東京の医師会の渡辺会長さん等が強調しておられますが、副看護婦とか副助産婦という形で、厚生省の保助看法に基づかざる方々を養成していこう、こういう方々が今日どのくらい働いているかというと、十万六千人くらい働いている。一方十八万ちょっとの有資格の看護婦さんの方々が働いていて、資格のない方々が十万六千人、この十万六千人がどういうところに働いているかというと、国立あるいは公立の病院にはあまりいません。精神病院なんかには多少います。こういう事情にございまして、あとは民間の病院なり医師会関係の病院等々に十万六千人の方々の大多数がいる、こういう実態にあるのであります。厚生省は何と言っているかというと、副看護婦という名称を使うことは間違いだ、禁止したいのだけれども、登録専有も法律根拠がないのでできないから、保助看法に一項をこしらえて制定するかというようなことを言っているのであります。これは正規の資格でないから安く使えるということで、きわめて給料が安い。私はそういう点等を横浜について調べてみたのですが、はっきりそれが出てきているのであります。港湾病院とか横浜産院とか一ぱいありますけれども公務員の場合には、今日二万三千三百六十二円という平均なんです。ところが、民間の場合は、一万九千六百四十九円、このくらいになっているはずです。これは八十何%かにあたりますが、これだけの差がある。民間の低い理由は、調査方法等によるというふうに私は理解をするわけです。私は小さい範囲を調べたのでありますけれども、そういう数字が出てまいります。したがって、単に民間が低いのだと言っておられますけれども、そうではない、実態はこうなっているという点について、私は御見解を聞かせていただきたい、こう思うわけです。
  56. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 民間におきまして、御指摘のように免許のない方々が相当働いておられるということは、仄聞いたしております。私どものほうでは、これは看護婦だけに限ったことではございませんが、調査をいたしますときに、職種の定義をいたしますときに、免許制度のある職種につきましては、免許制度があるものについてだけこれを調査するということにいたしておりますので、出ております数字は、そういう数字でございます。もし免許がなくても同様の職務に従事しておられる方をかりに調べたとすれば、おそらく低い数字が出るのではないか、かように考えております。
  57. 大出俊

    大出委員 昨年の勧告では、看護婦さんの初任給を他に比較して大幅に上げておられますね。いまこの看護婦さんの問題をめぐって、国民医療という問題でありますから、看護婦の設置基準その他から言って大騒ぎが起こりつつあるわけです。算定基準からいうと、四病床で一人ですが、これは何できめたかというと、日本の患者さんの総数を有資格看護婦の総数で割ったのが基準なんだから、科学的でも何でもない。そういうことから、看護婦さんの夜勤ばかりが続いて、いま言われる無資格の看護婦が入ってきて、有資格者はますます労働条件が悪くなってくる。チーム・ナーシングということを言われておりますけれども、ますます過酷な状態に追い込まれてくる。こういうことから、免許証を持っておっても看護婦さんをやらないで、ほかの会社へ行って働くという方々が、最近はことに多い。したがって、どうしてもこういう点はもう少し御研究をいただいて――これは医療三表とからみますから、他との均衡その他も出てまいります。十五表もあるのですから。しかし、本来の行一の俸給表だけではなしに、たくさんの俸給表が次々にふえたのは、それぞれ必要があって、その方面からの意見が出てきてふやしてきたというのが歴史だと私は思う。そうなってくると、現実に即さないこの種の問題については、やはり手を加えていかなければ社会一般の事情に合わない、こういうふうに思うのでありますが、これらの点についてのとらえ方を、どのようにお考えになっていますか。
  58. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 御指摘のように、公務におきましても、看護婦さんの勤務というのが非常にきつい。私どものほうといたしましては、民間比較をしてみますと、公務のほうが高いのでありますけれども、しかし公務の中における、たとえば行政職関係の補助職員である女子等の職務内容と看護婦さんの職務内容比較してみた場合に、相当看護婦さんに負担がかかり過ぎておるというようなことは、十分承知はいたしております。そういうことがございますので、過去におきましても、あるいは不十分であるという御指摘はあるかもしれませんが、われわれとしては、こういう方々の給与を上げるという努力をしてまいったのであります。今後におきましても、これは現在の公務における看護婦さんの数の状況等を見ますと、いまのままでいいかというと、なかなかそういかないだろうというふうに思いますので、いろいろな観点から、看護婦さんの勤務形態なり、あるいは俸給表上なり、いろいろな改善のしかたはあると思いますけれども、そういうことで、これは十分に考えていかなければならぬ問題であるというように考えております。
  59. 大出俊

    大出委員 時間の関係もありますから、もう一つ御質問をして終わろうと思いますが、行二の職員俸給表について、これはいつになったらどうなるのかということを私は非常に心配をするのでありますけれども、例を上げて申し上げたほうがいいと思いますから申し上げますが、生計費のほうは、二人世帯が二万四千二百六十円、先ほど申し上げたとおりなんでありますが、行二の俸給表年齢別平均額が二万四千二百六十円になるところは一体どういうところかといいますと、四十四歳か四十五歳ぐらいにならなければ平均額に達しない。それ相当の理由があって行二俸給体系ができておるのでありますけれども、それにしてもあまりどうも生活実態とはかけ離れ過ぎているという気がするのでありますけれども、これらについて、今回の調査にあたっての方針、こういうふうなものの中で、どういうふうにお考えになっているのか、承っておきたい。
  60. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 行二の問題につきましては、各方面からしばしば御指摘があったとおりでございます。われわれは、ことしの民間給与調査をやります際に、その点も十分検討いたしまして、従来よりも調査いたしまする職種の範囲をだいぶ広げまして、この結果どういう数字が出てまいりますか、それを一応のめどとして考えなければならないと思っておりますが、ただ行二の職員の方は、中学校なり高等学校を卒業してすぐ公務においでになるという場合はわりあい少ないのでございまして、中途からおいでになるという場合が多いのであります。そういう場合に、われわれは中途採用者の初任給をきめますのに、人事院規則等でいろいろのことをやっておりますが、そういうことについても、またいろいろ御批判があるわけであります。そういう点につきましても、この四月から若干緩和をいたしまして、実際採用します場合の俸給金額を高くできるようにいたしたのでありますが、今後にわたりましても、行二職員給与の改善につきましては、これはよほど考えなければならぬ。あるいはPW――いまPWと言いませんが、いろいろな行二相当の職種が民間にもあるわけでありますが、いろいろなところで相当こういう給与が上がっておるという実情があるようでございます。そういうことに着目いたしまして、十分検討したいと考えております。
  61. 大出俊

    大出委員 これはあとで話せばいいようなものですが、いまちょっと出ましたから瀧本さんに聞いておきますが、PW――プレヴェーリンク・ウェージというのは地域的に考えてきたことなんだから、そうすると、比較の面で、いまはそう言わないのだがというのですが、いまはどういうふうにやっておられるのですか。
  62. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 現在は、PWというのは廃止いたしたわけであります。これは労働省のものであります。私が申し上げたかったことは、失対事業におきまする賃金というような面でも、相当の上昇があるようでございます。そういうものと比べました場合、やはり公務に正式に雇用されて働いておられる方々でございますので、そういう面のことも十分考慮に入れなければならない、このように考えております。
  63. 大出俊

    大出委員 PW問題というのは、議事録に残りますから念を押しておいただけで、意味はありません。  最後に、これは質問じゃないのですが、総裁にせっかくおられるので締めくくりにものを言っていただきたいのですが、大体いまから調査を始めておられて、いつごろどういうめどで集計をされ、勧告という運びになるのですか。
  64. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 大体集計の終わりますのが例年七月の末ごろになっておりますが、これはことしも変わりないと思います。したがいまして、勧告をするということになりますと、大体昨年あるいは例年のとおりというのが、めどになるのではないかというように考えております。
  65. 大出俊

    大出委員 この調査をされて、一ぺん中間的にこういう集計だというようなことを報告する気はないですか。
  66. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 御意見として承っておきますが、従来はやっておりませんことは、御承知のとおりであります。
  67. 大出俊

    大出委員 いろいろ苦労されて勧告を出されるわけですが、どうも人事院が出した数字を方々持ち歩かれて、さていろいろな壁にぶつかって、どうも出てきたように進まないということに旧来なっておる事情を私は仄聞をしているのでありますが、もう少し早く人事院は、こういう集計の結果こういうことになったのだというようなことを新聞に発表するぐらいのことをやって、もしそれが変わって出てくれば、どうもこれは原因がどこかほかにあったのだ、こういうことにしたほうが、ぼくはそろそろいいのではないかという気がする。そうしないと、いつになっても、一番最後には政治的勧告になってしまう、こういう心配があるのであります。したがって、最終的に出た結果からまた大騒ぎをしてみてもしかたがないので、総裁にいまのうちにお断わりしておきたいのですが、そのあたりの配慮をことしあたりはお考えいただいてもいいのじゃないかという気がするので、その辺について、出た結果を大胆に、実施時期その他についてもひとつ勧告として出して通していく、こういう決意のほどを伺いたいわけなんです。
  68. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 十分拝聴しておきます。
  69. 徳安實藏

    徳安委員長 国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する質疑は、終了いたしました。     ―――――――――――――
  70. 徳安實藏

    徳安委員長 本案に対し、辻寛一君外二名より三派共同提案にかかる修正案が提出されております。     ―――――――――――――  国家公務員に対する寒冷地手当、  石炭手当及び薪炭手当支給に関  する法律の一部を改正する法律案  に対する修正案  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。  第二条第四項の改正規定中「百分の八十」を「百分の八十五」に改める。     ………………………………… 本修正の結果必要とする経費は、約四億六千万円の見込みである。
  71. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、提出者より修正案の趣旨の説明を求めます。辻寛一君。
  72. 辻寛一

    ○辻委員 ただいま議題となりました国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   国家公務員に対する寒冷地手当、   石炭手当及び薪炭手当支給に関   する法律の一部を改正する法律案   に対する修正案   国家公務員に対する寒冷地手当、  石炭手当及び薪炭手当支給に関す  る法律の一部を改正する法律案の一  部を次のように修正する。   第二条第四項の改正規定中「百分  の八十」を「百分の八十五」に改める。  御承知のように、寒冷地手当は、寒冷地に勤務する職員が、冬期間において特に必要とする防寒、防雪等のための諸経費を補なうものとして、俸給及び扶養手当合計月額の八〇%を最高とし、最低一五%までの五段区分により支給されておるのであります。しかしながら、この百分の八十という最高支給率は、昭和二十四年本法制定以来、寒冷地在勤職員の切実な要望があったにもかかわらず、一度も改定されることなく今日に至っておるのであります。と申しますのは、この間最高支給率はそのまま据え置かれておりましても、幾たびか俸給額の改定増額が行なわれておりますので、寒冷地手当支給額も事実上は増加してまいったからかとも考えられるのであります。しかしながら、この間物価上昇も顕著な事実でございますし、特に最近における物価上昇は著しく、また現実に寒冷地在勤職員の防寒、防雪経費が著増の傾向にあるのでございます。  これらの点を考えまして、この際最高支給率を百分の八十から百分の八十五に改め、したがって、各級地とも百分の五程度の増額はしていただこうという趣旨で、本修正案を提出いたした次第でございます。  よろしく御賛成をお願い申し上げます。
  73. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて修正案の趣旨説明は終了いたしました。  本修正案は予算を伴うものでありますので、この際、国会法第五十七条の三の規定に基づき、内閣の意見を聴取いたしたいと存じます。大橋労働大臣。
  74. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する修正につきましては、院議として決定される以上、政府としてはこれを尊重する所存であります。
  75. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、山内君より発言を求められております。これを許します。山内君。
  76. 山内広

    ○山内委員 この際、人事院総裁に一言だけお伺いしておきたいと思います。  国会も、政府も、人事院勧告を尊重し、そのとおり実施することは当然であります。ただ、ただいま提案者から述べられましたような理由に基づいて、いま修正案が議決されようとしておるわけであります。そこで、これが決定いたしました場合、これは一日も早く支給してもらいたい、こういう国会の意思であります。今年度からこの実施が間に合うように諸般の手続を完了されることができるかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  77. 佐藤達夫

    佐藤(達)政府委員 おことばの点は、国会の御意思としてこの法案が成立いたしますれば、本年に間に合わすつもりであります。
  78. 徳安實藏

    徳安委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、辻寛一君外二名提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  79. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  80. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては、原案のとおり可決いたしました。  これにて国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案は、修正議決すべきものと決しました。
  81. 徳安實藏

    徳安委員長 なお、本案に対して山内広君外二名より三派共同提案にかかる附帯決議を付すべしとの動議が、提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。山内広君。
  82. 山内広

    ○山内委員 ただいま議題となっております国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきまして、提案者を代表いたしまして、提案の趣旨を簡単に申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   国家公務員に対する寒冷地手当石炭手当及び薪炭手当支給に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   本年三月十二日付の人事院勧告をもつてしても、類似した気象条件をもつ寒冷地域間における級地区分には、なお、適正を欠くものがあると認められるので、政府は、すみやかに、人事院をして調査研究せしめ、その是正措置を講ずべきである。   右決議する。  御承知のように、寒冷地手当支給地域区分につきましては、従来からその不均衡が指摘され、その是正については、しばしば当委員会及び参議院内閣委員会において、附帯決議を付してこれがすみやかな解決を要望してきておるのでありますが、今日に至るも適切なる配慮がなされないことは、きわめて遺憾であります。最初人事院は、本年三月十二日内閣総理大臣に対し、市町村合併等に伴って生じた不均衡のある百十六市町村に関して、支給地域区分の是正について勧告をしておるのであります。しかし、改正案の審議を通じて明らかにされましたように、この勧告をもってしても、なお類似した気象条件を持つ寒冷地間の級地区分には適正を欠くものが認められるのであります。また、級地区分の不均衡は、地方自治行財政上にも影響を及ぼしておるやにも思われるのであります。このような実情にかんがみまして、政府は、すみやかに人事院をして調査研究せしめ、その不均衡の是正措置を講じていただきたいというのが、その趣旨であります。  何とぞ御賛同あらんことをお願いいたします。
  83. 徳安實藏

    徳安委員長 趣旨説明は終了いたしました。  直ちに採決いたします。  山内広君外二名提出の附帯決議を付すべしとの動議について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  84. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本動議は可決いたしました。  なお、本案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じます。これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なしと認め、さように決しました。      ――――◇―――――
  86. 徳安實藏

    徳安委員長 引き続いて恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案及び総理府設置法等の一部を改正する法律案について質疑を続行いたします。田口誠治君。
  87. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について、若干質問を申し上げたいと思います。  本案については、村山委員から法案の内容について相当突っ込んだ質問もございましたので、私は、なるべく簡単に御質問を申し上げ、また要望を申し上げておきたいと思います。いずれ本案の採決のときには、修正する附帯決議もあるようでございますので、私は、その附帯決議案中に盛られていない部分を、やはり質問の中で消化していきたい、かように考えております。  そこで、先ほど来給与の問題につきましてもいろいろと質問がありましたように、日本の労働者の賃金にいたしましても、あるいは恩給の扶助料にいたしましても、生活実態というものを勘案をして支給されておる段階であるわけでございます。したがって、私はそういう点から考えてみますと、労働者の方は、労働者の団体をつくってそれぞれ会社と交渉し、あるいは国家公務員の場合には、人事院民間給与との格差是正という形で勧告をされて、年々ベースアップがされておりますけれども、この恩給の恩恵を受けるもろもろの人たちは、物価上昇に伴って給付金が引き上げられておらないということから、生活面に大きく響いておるわけでございます。したがって、まず最初に野田総務長官はじめ御認識をいただきたいと思いますことは、旧軍人の恩給に対しましては、終戦後一時停止になっておりましたけれども、これは昭和二十八年に復活をいたしまして、ちょうどそのときには基準ベースからいきますと、一万円ベースが決定されたわけでございます。国家公務員給与は、一万三千五百八十七円でございまして、三千五百八十七円という格差が出ておったわけでございます。そこで次に、三十年に一万二千円に給付金が引き上げられました。そのときには、国家公務員給与ベースは一万五千六百六十八円でございまして、三千六百六十八円の格差が出ております。それから昭和三十三年には一万二千円ベースの基準算定におかれておったものを、一万五千円に引き上げられたわけです。このときには、国家公務員給与ベースが一万九千三百九十円ということに相なっておりまして、四千三百九十円の格差があったわけでございます。そこで昭和三十七年に大改正がされまして、一万五千円のベース基準支給されておりましたものを二万四千円のベースに引き上げられたわけです。九千円の引き上げになったわけです。こういう法律の改正にはなりましたけれども、そのときの公務員賃金ベースというものは、二万七、八千円ベース――これははっきりしたことがわかりませんが、七、八千円ベースだったと思います。したがって、四千円近くの格差があったわけでございます。そうしますと、昭和二十八年にこの旧軍人の恩給が復活し、一万円ベースから出発をいたしまして以来、三千五百円から四千円の開きが、国家公務員との格差になっているわけでございます。そこで問題は、昭和三十七年に九千円の引き上げをされましたけれども、しかし内容に至りますと、昭和三十七年の七月一日には、その半額しか引き上げがされなかった。昭和三十八年の十月一日には、七十歳以上の人にのみこの二万四千円ベースが支給されただけで、その他の人は支給されなかった。ちょうど三十九年の今年、ようやく二万四千円ベースの全額が引き上げられて給付される、こういう段階になっているわけでございます。  そこで私が申し上げたいことは、ただいま数字を並べて申しましたように、昭和二十八年以来三十七年の改正までは三千五百円から四千円が、国家公務員のベースと給付金の格差でございましたけれども、昭和三十七年度の改正は、昭和三十九年にならなければ二万四千円という全額給付にならないということになったので、そこで現在の給与ベースというのは、あとから附帯決議案が出されますときの数字は約三万円という数字になっておりますけれども――私は端数はちょっと記憶しておりませんが、たしか三万一千円か二千円になっていると思うのです。そうなりますと、ちょうど昭和三十七年の改正で九千円引き上げて二万四千円のベースにした、この数字は、昭和三十七年度に全額給付をして初めて昭和二十八年以来の国家公務員との格差の一均衡を保てた、こういうことになる。ところが、それを三年かからなければ増給しないということになりましたので、非常に格差が開いてきているわけであります。今日現在でいきますと、四千円という開きでございますれば、二万七千円か八千円ベースに引き上げられておらなければならない、こういうことでございますから、昭和二十八年に恩給法が復活されまして以来の国家公務員との格差考えてみましたときに、現在は該当者は非常に不遇な取り扱いをされていると言っても過言でないと思う。このことをまず銘記をしてもらわなくてはならないと思うわけでございます。したがって、昭和三十九年にようやく三十七年度の改正が全額増給されるということでございますから、今度の臨時国会あたりには、次の改正案が出なければ非常に格差が開いていくということになりますので、そういう点を考えられまして、今後どうされるのかということをまずもってお聞きをいたしたいと思います。そして私の申しましたいまの数字に間違いがあれば、訂正していただいてもけっこうでございますが、ひとつ御所見をいただきたいと思います。
  88. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 恩給額と公務員給与との比較を拝聴いたしましたが、私も存じておりまして、相当開きがあることも事実でございます。しかし、いまお話にありましたとおり、恩給が一時停止されておりまして、その後、二十八年に復活してまいりましたが、自来その点は政府も当然恩給額の増額をしなくちゃならぬという考え方で、これもいまお話しのとおり、数回手直しいたしております。しかし、現在の恩給額が適当かというと、私も田口さんと同じで、どうしてもこれは今日の経済情勢その他のいろいろな理由からいたしまして、増額すべきだという考え方を持っております。その方法といたしましては、この前の委員会で申し上げましたとおり、今回三十九年度におきましても、私は相当増額したいという希望を持っておりましたが、これも田口さんがいまお話しになりましたとおり、三十九年の七月に従来の年齢制限を廃止いたしまして、全面的に二万円ベースになる、こういうことでございましたので、いろいろの財政支出その他のことを考慮いたしまして、三十九年度においては増額の問題を御審議願えなかったのでございます。しかし、どうしてもこれは手直ししなくちゃならぬということになりまして、恩給局に審議室を設けました。この審議室の目的は、特に恩給増額ということを指標といたしまして調査する。したがって、現在の政府の立場といたしましては、当然現在の恩給額を増額すべきであるという立場をとっておりまして、これらの処置をいたした次第でございます。
  89. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 局長のほうからも、いまの点について、もう少し具体的にお考え方を説明していただきたい。
  90. 増子正宏

    ○増子政府委員 田口委員から先ほど恩給の基礎になりますいわゆるベースといいますか、その変遷につきまして御指摘があったのでございますが、ただ、この機会に申し上げたいと思いますのは、恩給法の改正関係でベースと言っておりますのは、恩給金額のいわば水準というような意味ではございませんでして、恩給は、御承知のように退職時の俸給を基礎にして年額を算定するわけでございますが、その年額算定基礎になる俸給の一つの特色づけとしまして、何万円ベースというようなことをかりに用いているわけでございます。したがいまして、いわゆる一万二千円ベースと申しまするのは、退職公務員給与のうらで、いわゆる基本給といったものの合計額がほぼ一万二千円であった当時の俸給表を、恩給法上も仮定俸給として用いるという意味でございますので、たとえば一万二千円と申しましたときに、公務員の平均給与は一万二千何百円であった、したがって、そこに幾らかの格差があるというようなものではございませんので、大体在職公務員に用いられておった俸給を、その時点において恩給法基礎俸給として利用するというようなことでございます。しかしながら、いずれにいたしましても、今日の恩給の基礎になっております俸給と、それから在職者の給与基礎になっております一般職俸給表と比べますと、そこに格段の差がありますことは、事実でございます。その点につきましては、御指摘のところに異議はないわけでございます。  なお、この恩給年金額をどのように扱うかという問題は、実は非常にむずかしい問題でございます。言うまでもなく、退職時の俸給を基礎にした年金でございますから、やめまして数年たちますうちに、在職者の俸給表は漸次上げられて高くなる、あるいはその間に物価が上がり、あるいは生活水準等も一般的に相当向上するという事態が起こってまいります。そうしますと、退職時の俸給を基礎にした恩給年額では、その現在の時点における諸般の情勢からいたしますと、ふつり合いが生じてくる。これは当然のことでございます。その場合に、そのふつり合いをどの程度に是正すべきであるかということが、従来から問題にされている恩給法のベースアップの問題であるというふうに私ども考えるわけでございます。この点につきましては、先ほど御説明がありましたように、従来は、在職公務員のいわゆる給与の改定とは若干のズレをもちまして恩給年額の改定が行なわれたということでございます。その相違を田口委員は格差九千円というふうに表現になったのでございますが、必ずしもそういう格差ということではなしに考えましても、いずれにしましても、差があるわけでございます。その差については、従来のように在職者の俸給の何年おくれで、あるいは極端な場合には、在職者の俸給が変わったら、とたんに恩給法基礎の俸給も変わるという、いわば機械的なリンクの方法も、もちろん考えられます。また、その後の情勢をいろいろ勘案して、ある期間を置いて変えるということも、もちろん可能でございましょうし、あるいは在職者の給与ということを全然離れまして、一般的な物価水準でございますとか、一般国民の生活水準の上昇の度合いというようなものを何らかの率で把握いたしまして、この率がある程度上がった場合に、恩給の年額も改定するという方法考えられるのでございます。それらの点につきましては、先ほど総務長官から申し上げましたように、私どもとしましても、現行法の基礎になっております恩給のいわゆるベースというものは、ぜひとも近い機会に改定しなければならぬのではないかというふうに考えておるわけでございますが、この改定のしかたあるいは基準等につきましては、なお相当研究しなければならぬ問題がございます。特に先般からいろいろ話が出ておりますように、今日の在職公務員の今後の退職における場合の措置は、すべて共済組合法による長期給付という形で行なわれておるわけでございます。具体的な問題としては、おそらくこの長期給付にも同様な問題があるわけでございますが、それらとの関連もございます。そういった万般の点をよく検討いたしまして、私どもとしましては、できるだけ早い機会に適切な結論を得たい、かように考えて努力している次第でございます。
  91. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 恩給と一口に申しましても、これは画一的には言えませんし、この引き上げ等の問題を審議するについて、非常にむずかしいデリケートな面があろうと思います。ただ私は、旧軍人の戦傷病者とか戦傷病死者の遺族に対する扶助料、こういうものにつきましては、一般民間労働者の給与とか、公務員給与と同じように、現在の段階ではまだ生活給の域を脱しておらないので、物価上昇で非常に生活難になっておるのであります。こういう点を考慮に入れて引き上げを行うべきだと思うのです。したがって、いま御答弁のありましたのは、一般公務員の場合なんかの旧来からとっておる恩給と、それから共済年金に変わった場合と、そういう点を勘案しての主張が多かったように思いますけれども、私は特にここで強調しておきたいことは、ほんとうに戦争で一家の柱を失ななって、そして子供をかかえて生活をしていく。その家族の方に対する扶助料、あるいは傷を負うて不具者になって、働こうと思っても自分に生活力がない、そうした人たちの恩給、扶助料というものは、年金というものは、よほど物価上昇を勘案してやらなければならないのじゃないか、こう考えておりまするので、先ほど指摘いたしましたように、昭和二十八年には、これを一般公務員との比較をいたしてみますると、わずか三千五百八十七円でしたけれども、今日の場合では非常にその格差が多くなっておるのだ。昭和三十七年度の改正のときに、昭和三十七年度から実施をして始めてその開きというものが大体保たれてきたのですけれども、それが三年がかりで昭和三十九年のことしにならなければ全額増給されないということでは、私がただいま申しましたような該当者は、非常に困っておられるので、そういう点を勘案してこの改正の急を必要といたしておるわけなんです。そういうような点について仕分けして考えていただければ、おのずからこういう問題というものの結論が出てくると思うのでございますが、その点について、局長はどういうようなお考えで、将来どうされようとされておるのか、もう少しその点を具体的に触れて御説明をいただきたいと思います。
  92. 増子正宏

    ○増子政府委員 いま御指摘の、いわゆる戦傷病者とかあるいは戦歿者の遺族等に対する処遇としての恩給年額の問題ということでございますが、恩給法のたてまえからいいますれば、いわゆる戦争犠牲者と申します場合には、戦地における公務の傷病者もしくはその傷病者が死亡した場合の遺族ということでございます。したがいまして、いわゆる扶助料の点でいいますれば、公務扶助料ということでございます。それからいわゆる傷病恩給ということでございますれば、特に軍人のみに限定されるものではなくて、一般文官の問題も当然あるわけでございます。したがいまして、恩給法のたてまえからいいますれば、いわゆる戦傷病者のみにつきまして、あるいは戦歿者の遺族のみにつきまして格段の重点を置くという点につきましては、必ずしも簡単な問題ではないというふうに思うわけでございます。もちろん終戦後二十八年以来の改正におきましては、この戦歿者の遺族の公務扶助料でありますとか、あるいは特に公務傷病の中でも、戦傷病者につきましては、若干の特別な配慮が行なわれておりますけれども、なおまた、御質問の中にお触れになりましたいわゆる今日の二万四千円ベースというのも、実は戦傷病者関係あるいは公務死亡の、いわゆる戦歿者の遺族の場合のみに二万四千円ということでございまして、その他の恩給につきましては、二万円ベースといわれておるものでございます。この程度の差があるわけでございます。それで、この差をさらに御指摘のように、物価の状況とかあるいは生活実態に即応してこの辺を遺憾のないようにするということになりますと、それではその他の恩給の算出の基礎とどのような差をつけるかということになりますと、恩給法のシステムの上からいいますと、非常にむずかしい問題ではなかろうかというふうに私ども考えるわけでございます。なお、いわゆる生活が困難であるという点に着目いたしますと、もちろんそれがいろいろな意味で戦争の結果であったということからいいますと、お気の毒な点が非常にあるわけでございますが、そういった生活困難あるいは現実における生活上の苦しさというものを、恩給法は一体本来どの程度考えてきたのかという問題がございます。恩給の本質等につきましては、特に申し上げるまでもないと思いますけれども、恩給の原則からいいますと、現に生活に困っているか困っていないかという点は、実に本質的な要素にはなっていないというふうに考えられるわけでございます。そこに現実における生活難をどの程度考えるかということになりますと、やはり恩給制度というものの中にまた違った要素を織り込んでくるということになりはしないだろうか。まあそういった問題がいろいろございます。したがいまして、御説のように、特に戦傷病者とかあるいはその遺族とかにつきまして、私ども恩給法の体制の中で、その特質に応じた処遇は今後ともいろいろ研究していかなければならぬと思っておりますけれども、その生活の保障というような点でことさらにこの点に重点を置いていくということは、よほど困難なことではなかろうかというのが、現在の私ども考え方でございます。
  93. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 まあ答弁内容もよくわかりますが、それはいま答弁の中にもありましたように、全部金額も一率でございませんし、それぞれ見るところは見てはありまするけれども、大体においてそれは生活実態からいくのだということに定義づけられてはおりませんけれども、やはり引き上げる点そのものというものは、何といってもそれにならっていかなければならぬ、これはずっと二十八年から以来の内容を見ましても、大体それになってきておる。三十七年のときに九千円上げたというようなことは、聞こえはよかったけれども、中身を見たら三年がかりでないと上がらぬのだ、こういうことになったので、私は、こういう踏みはずしを分析をしてみますると、ちょうどそのときには参議院の選挙もあるし、そうして相当恩給を受けておられる団体の方の陳情も多かったし、それやこれやのことが手伝ったんだろうと思いまするが、それにいたしましても、聞こえだけよくて中身のないというようなことでは、私は満足できないと思うので、したがって、そういう満足がいかなかったから、昨年は戦争未亡人に対する一時金の問題等が別に要求されて、国会も通過したというようなことは、やはりこの恩給の三十七年の改正のときに、そういう点に不備があった、こういうように私は思っておるわけなんでございますので、今後この問題を取り扱う場合には、そういう点に十分意を置いていただきたいと思います。  それから、これは直接関係はありませんけれども、関連は確実に持っておられまするので、一言人事院の、まあ総裁はお見えになりませんけれども、ひとつ局長のほうから、この問題についてどういうような考え方をしておられるかという点について御説明をいただき、これはもちろん過去の昭和二十八年以来の歴史を勘案して、そうして将来のあるべき姿について、やはり給与問題を取り扱っておられる人事院としての御意見をこの際承っておきたいと思います。
  94. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 人事院といたしましては、現在在職しておりまする公務員給与の是正ということにつきましては、先ほどから御論議がありましたように、公務員法公務員の労働基本権を制限してありまする代償として勧告を行なう非常に強い責務があるわけです。恩給並びに退職年金という問題につきましては、公務員法公務員の退職年金というものがいかにあるべきかという勧告をする責務がございましたので、人事院としましては、昭和二十八年、国家公務員の退職年金というものはかくあるべしという勧告をいたした次第でございます。そのときには、やはり国家公務員というものは、終生公務にささげまして、そしてその間、民間労働者と違いました公務員であるがゆえの各種の制約等もある、そういう中で一生を公務にささげるという観点から、これは特に国がそういう配慮をする必要があるのじゃないか。これは公務員法でも、そういう考え方であったわけであります。そこで人事院といたしましては、そういう趣旨に従って、これは国が給付する制度というのがよろしいというので、恩給という形で勧告をいたしたのでございます。しかし、政府並びに国会におかれまして、その考え方は、やはり最近の風潮として民間一般の社会保障制度の一環として考えるほうがよろしいということで、この考え方の転換があったわけであります。しかし、現在の共済組合年金の中身の大部分は、人事院勧告いたしたものと同じでございます。  そこで、人事院といたしましては、退職者の年金というものは、所得能力の減耗を補う意味のものでございまするから、退職時における所得能力の減耗ということを基礎にして考えるのが適当である、このように考えておる次第であります。ところで、これは貨幣価値が違うとか、あるいは在職公務員給与ベースが違うとか、いろいろの問題が起きてきたわけでございます。人事院の退職年金の勧告におきましては、そういうものは変わらないという前提でこの勧告をいたしたのでございます。その退職時における所得能力の減耗に応じましてその支給考えるということであったのでありますが、現実にはいろいろ貨幣価値の変化等もあるということになりまして、これはやはり大筋としましては、何らかの意味におきましてこれを回復する必要があるであろう、このように人事院考えておる次第でございます。ただ、それをどういう方法でやるかというようなことにつきましては、これはいろいろ方法があろうと思いまするし、冒頭に申し上げましたように、現在におきましては、人事院は在職公務員給与勧告とは多少違った意味で退職公務員の年金問題に関係いたしておるという事情もございまして、内閣のほうに設置されておりまする年金制度連絡協議会というのがございます。そのほうに人事院も参画いたしまして、積極的に御助力を申し上げておる、こういう次第でございます。
  95. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 恩給の性格からもいろいろむずかしい面がございまするが、この問題は、スライド制の採用というようなことは全然お考えになっておらないのか。それとも恩給というものの性格からいって、矛盾をするものであるかどうか。いままでにそういうことを全然お考えになっておらなければ、そのとおり御答弁いただけばいいし、それから矛盾するという点があれば、その点を指摘していただけばいいと思いますが、その点について、ひとつ御意見をいただきたいと思います。
  96. 増子正宏

    ○増子政府委員 ただいま御質問の点、実は先ほど申し上げましたところでお答えを申し上げたつもりでおったのでございますが、ただ御質問の趣旨は、いわゆるスライド制というものの内容でございますが、スライド制という場合に、一体何にスライドするか、これはおそらく在職公務員給与ということをお考えになっておられるのかと思いますが、この在職給与のベースにスライドさせるという場合におきましても、いわゆる機械的に、片方が上がった場合には全く同時的に恩給の基礎俸給が上がるというような場合と、それからそこに何らかの修正とかあるいは一定の条件を付するというような場合も、あろうかと存じます。そういう点で従来とっておりましたところは、先ほども御指摘になりましたように、一応在職公務員給与ベースということを念頭に置いておりましたけれども、その間実施の時期等につきましては若干のズレがあるということでございますけれども、それをしも大体在職給与にスライドさせる考え方だということでございまするならば、従来ともそのようなことでまいっており、今後ともこのようなことは絶対ないというようなことは、全く申し上げられないわけでございます。先ほど申し上げましたのは、そのような意味における在職者の給与ベースだけでいいのか、そのほかに物価とかあるいは生活水準というようなものをどのように考慮すべきか、あるいはそれらの間をどのように調整すべきかというような点につきましては、私ども今後研究を進めてまいりたいと申し上げたわけでございます。したがいまして、御質問は、そういう意味の恩給年額の増額改定というようなものが、恩給の本質からいって矛盾するのかどうかという御質問であったかと思いますけれども、私どもは、先ほどから申し上げているような趣旨におきまして、それをあえて矛盾するというふうには考えていないわけでございます。
  97. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私が特にこの問題で人事院のほうからも御意見をいただいたのは、これはどうなるかわかりませんけれども、ILOの問題が審議されておりまするが、政府原案の形で、若干こまかいところは修正されましても、大まかなところは通るといたしますれば、今度は内閣直属に人事局が設けられる。それから総務長官は国務大臣になる。こうなりますると、総務長官というものは、総理府関係の仕事もやらなくてはいかぬし、そしていま大橋さんがやっておる労働関係の仕事もやらなければならないのだが、さてそのときに、公務員賃金等に取り組む場合に、これは人事院勧告権、調査権というものが残っていきまするし、そして、そうかといって人事局が今度は公務員の交渉の窓口になって交渉するということになりますると、自然的にこれは人事院とそれから人事局との関係は分離されても、一応血を通わせておらなければならぬようなかっこうになるわけであります。あまり血を通わせ過ぎると、内閣直属であるために、人事院の自主性を失わしめるということにもなるわけでございまするし、特にこの恩給問題を取り扱う場合には、やはり生活実態というものを除外して引き上げを検討するわけにはいかないわけでございますので、こういうような形になりますると、これは将来できるかもわかりません総務長官即国務大臣ということからいって、私はこの点で調和のとれたものをやはり大臣としてやらなければならないと思うので、そういう点から考えてみますると、非常にそこらの辺がむずかしいわけなんです。したがって、先ほどの総務長官の答弁で、現在の恩給の給付金というものは十分でないから、これを引き上げる必要があるという抽象的な御意見はありましたが、もう一度お答えをいただきたいことは、ただいま私が申しましたような関係から、これはいろいろ人事院と連絡もとる必要があるということから、私は、ただ恩給は恩給として、総理府は総理府として、一方的に案を決定するということが、むずかしくなるのじゃないかということが考えられるので、その点についてのお考え方をひとつお示しをいただきたいと思います。
  98. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 田口さんは、いま御審議願っているILOの条約が通過した場合は、総理府に人事局ができる。そこで人事局と人事院との関係が非常に密接になるのだから、恩給問題もそういう何か血の通った方法で、人事院との関連はどうなるかというようなことですが、もとよりこれは仮定のことでございますから、人事局ができるかどうかわかりませんけれども、人事局ができた場合には、もちろん政府の給与の窓口となって、それらの問題を処理します。しかし、ただいま局長から、公務員給与に恩給がスライドするということはどうだ、必ずしも全面的にスライドするものではない、現職の公務員と退職者に対する恩給制度というものは、本質的に相違があるから、必ずしもこれがスライド制を用いるということは、全面的な妥当性はないのだ、しかし、多少の関連はある、こういうお話でございます。私も、大体いまのお話しのように、恩給制度と現職の公務員給与というものの関連を、これはスライドするとかスライドせぬとか申しましても、恩給のベースを上げるということは、やはり現職の公務員給与ベースというものを参考にする必要があると思う。それから実生活の云々がございましたが、直接いまの生活水準云々ということの結びつきは、形式的には別にいたしまして、実質的にはやはり物価上昇経済情勢なんというものを勘案するということは、関連があると思っております。したがって、恩給のベースを改定する場合に、人事局ができた場合に、人事院と何か相談してやるかどうかというようなことまで――これは総理府の恩給局で取り扱いますから、そこまでは参りませんが、いろいろなものを参考にして、また資料提出を頼むこともありましょうし、それはいろいろ連絡をとる場合がございましょうが、相当参考にするというふうなことはあり縛るわけであります。そういう観念で。しかし、恩給のベースの改定にあたりましては、結論といたしましては、総理府の恩給局が、先ほど申しましたそのためにつくりました審議室の調査に基づいてやりたい、こう思っております。
  99. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それでは議事進行に協力してこれで終わりますが、ただいま申しました質問の中には強い要望が入っておりますので、そういう点をひとつ消化をしていただきたいし、将来ILOの問題がどうなるかわかりませんけれども人事院としても、この恩給の問題には関心を持っていただいて、そうして助援する場合には助援をしていただかなくてはならないと思いますので、その点を要望申し上げまして、私の質問を終わります。
  100. 徳安實藏

    徳安委員長 受田新吉君。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 私、この法案に関係して、各方面から行き届いた質問をさしていただきたいと思います。  私、最初に、先般来議論されていることでずばりと答えを出していただきたい問題点があります。それは恩給並びに年金の性格論、減損能力を補てんするという立場のお説を中心にしておられるようでありますが、恩給と共済組合制度の年金とには、そのおい立ち等から多少の相違があります。多少といっても、もっと大きな相違があるかもしれませんけれども、しかしながら、これは大体公務員が退職後保障される年金という点については共通の問題でございますので、これを同じ角度から検討するほうがむしろ妥当ではないかと思いますので、お答えを願いたい点があります。  退職時の給与事情基礎にしてその後の生活を保障するというこの国家公務員法第百七条の規定は、その後の経済生活を保障するということは、物価上昇その他の経済事情変化に応じた意味経済生活の保障という意味であるかどうか、これは人事院立場からと、総務長官の立場からと、両面からお答えを願います。
  102. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 先ほども田口委員にお答え申し上げましたように、人事院といたしましては、恩給制度という形で昭和二十八年の勧告をいたしたのであります。そのときの考え方は、先ほど申しましたように、所得能力減耗に対する補てんをするという趣旨と人事院解釈しておったわけでございます。しかし、現在におきましては、退職年金ということで、これは政府並びに国会においてそういうふうにおきめになったのでございます。そこでそれから先の解釈ということになりますると、これはやはり現行法を所管しておられるところの大蔵省ということに相なろうか、このように考えております。
  103. 増子正宏

    ○増子政府委員 御質問の点は、恩給法の上におきましては、法文上必ずしも明確な規定はございません。したがいまして、いわば恩給の性格等に関する一般的な考察、あるいは学問的な理論、そういうものによらざるを得ないと思うのでございますが、現在までのところでは、国家公務員法に従来恩給ということで、退職者に対する恩給という章がございましたが、その条章の規定が、共済組合法に恩給を転換せしめました場合に若干の改正が行なわれておりますけれども、その基本的な趣旨においては、まずそう変わっていないというふうに考えまして、その前提で申し上げますと、やはり退職当時の条件を考慮して、その後における生活の維持に寄与せしめるということが目的になろうかと存じます。したがいまして、その退職時の条件というものをどの程度に把握するか、この範囲によりましても、いろいろと変わってまいろうかと存じます。なお、その後のいわゆる一般的な経済事情の推移というようなものも、どの面でどの程度把握するかということは、実際問題としていろいろあろうかと存じます。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 退職年金制度、もとは恩給制度でありますが、これが三十四年に改正されたわけです。恩給ということばを退職年金に切りかえられたわけなんですけれども、これは当然のことです。国家公務員法改正当時のペンション議論で、相当人事院は御理解願っておると思います。この退職年金という形に切りかえられたことは適切である。ところが、退職年金に対しては、人事院はあまり積極的に国会へ、また内閣に対して、意見の申し出をされておらぬ。一度二十八年に勧告をされておるだけです。一般公務員給与の場合は、物価上昇民間給与上昇等に伴うて適当に勧告をされているのであるが、退職年金のほうは一向勧告されておらぬ、この退職年金も、一般公務員給与民間給与とのバランス等で上昇勧告をされると同時に勧告されるということであるならば、事実上スライド制が完備するものとして筋が通るわけです。なぜ退職年金のほうはいつまでも放任してあるのか。百七条、百八条の規定が設けてあるのにかかわらず、現職公務員のベースアップのほうだけを勧告して、このほうをなぜ取り残してきたかということをお答え願いたい。
  105. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 先ほどもお答えを申し上げましたように、人事院は、御指摘の公務員法百七条、百八条によりまして、昭和二十八年に意見の申し出をいたしたのでございます。そこで人事院としては、その人事院勧告が適切であるということを十分御説明申し上げたのでありまするけれども、これはやはり国会における最高判断によりまして、これを共済年金制度というふうにお改めになった。その所管も人事院以外のところに移るという結果に相なって、公務員法と共済年金法とつなぎはつけてございます。しかしながら、それはわれわれの見るところによりますると、それほど密着したつなぎのようにも考えておりません。やはり現行退職年金制度を所管しておられるところにおきまして適切に運用されるということが、これは第一義である。現に退職年金制度をどういうように運用するかということにつきましては、審議会等もあるのでございます。そういう十分御審議になる機関が整備されております。で、われわれといたしましては、現行の退職年金制度を大きく変更する必要があるというような場合には、これは人事院として当然この条文に基づいて勧告権を発動して意見の申し出をするということになろうと思いますけれども、現行法の範囲内において処理できる、しかも審議会等も整備しておるという実情におきましては、そこまで人事院がいたすことは必ずしも適当でない、このように考えております。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 そこが非常に考え違いだと思うのです。私どもは、人事院の存置を大いに要望している。人事局のようなものをつくって、政府のそのときの御都合主義で人事をやってもらってはたいへんなので、公正な第三者機関としての独立性を持った人事院なるもののそういう従来の権限を堅持するということは、私たちの強く願っているところなんです。その人事院が、今度国会のほうへ適当に、あるいは政府のほうへ適当にやってもらいたいというような、国家公務員法に明記してある百七条、百八条の規定をあまりに無視されているということは、たいへん心外だ。しかも、この第百七条は、退職後における適当な生活が維持できるということを前提にしているのであって、昭和三十一年七月の公共企業体の共済組合制度ができて、たとえば国鉄に例をとっても、国鉄が一万五千円ベースでそのまま押えられている。こういうととは適切な生活が維持できる水準であるかどうか。これはちょっと考えられてみてもおわかりのことだと思うのであります。そういうことで、退職後の適当な経済生活ができるような保障を退職年金で裏づけするという態度を、ちゃんと勧告権があるわけでございますから――たとえばいま指摘した三十一年の一万五千円ベースが現在適当であるなどとは、とてもお考えになっておらぬと思う。そのつど人事院勧告権を行使する、こういうところにいくのが、法律のたてまえからいって当然ではないですか。
  107. 瀧本忠男

    瀧本政府委員 先ほども申し上げましたように、現在できております退職年金制度というものは、共済組合で運用いたす、こういう形に、運営自体が人中院が勧告いたしたものと変わっておるのであります。内容につきましてはほとんど同じでございますけれども、この性格が非常に変わっておる。そういたしまして、先ほども申しましたように、この共済年金等の運営につきましては、審議会等もできておることでございます。形式的にはなるほどおっしゃるように残ったように見えますけれども、現在の共済年金が公務員法に言う退職年金であるというつなぎはつけてありますけれども、それは公務員法百七条でいっております退職年金とは違うのであります。これは言い過ぎかもしれません。少なくともそういうふうに考えられる。したがいまして、われわれといたしましては、この問題につきましては、十分御協力申し上げるという態度をとりまして、たとえば現在年金制度連絡協議会等ができておりまして、いまおっしゃるような問題を中心にいろいろ御研究が進められておるのでございますが、そういうときには、人事院は積極的に参画いたしまして、十分審議に御協力申し上げる、こういうことをやっておる次第で、その辺の関係を御了承願いたい。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 人事院勧告した案に沿った、大体それを尊重したような形で共済組合法というものができておる。その国の負担と個人の負担の比率などが、人事院のよりも国の負担がはるかに減っておるという問題などもあるけれども、雇用関係なども十分考慮して、雇用人までも一貫して吸収するという考え方ども、大体共済組合法があれで生かしておる。こういうことから、もし共済組合法なるものが勧告の線を逸脱しておるようであるならば、さらに新しい案をお出しになってそれを是正させる手もある。勧告は終始生きているのです。法律条文は生きているのです。退職年金制度に何らかの欠陥があるとするならば、いつでもいい、勧告をする権限が人事院にあるのです。いまからでも勧告する権限がある。そういうことを考慮されないで、ただ単に法律ができたからというような形で、人事院が責任のがれをされてはいけない。百七条と百八条の規定を十分生かされるということは、終始忘れてはならぬと私は思っている。御注意申し上げておきます。  それで総務長官、政府が非常に熱心にやっているからということであるが、私多年ここの委員会で提唱しております国民年金局を厚生省に、また公務員年金局というものをつくって、恩給局及び大蔵省にある共済組合制度をこの公務員年金局に包含して、そこで恩給受給者と共済年金受給者と総合的に救済するような行政機関を設けてはどうか。これは七、八年前から私提唱していることなんですが、その提唱したのが、やっと国民年金局は厚生省にできたけれども、こちらのほうは依然として恩給局と大蔵省に分れている。そうして公務員年金なるものがばらばらになっておる。そうして恩給のほうは国家が保障することができるけれども、共済組合のほうは、退職後の保障ということは、これは現職の公務員に掛金を増額して旧退職者、先輩を助けるというような制度でもつくらぬ限りは、国が財源の補充をすることができないという特別会計になっている。こういうところに非常に矛盾がある。これをひとつ一括して公務員年金局のようなものを設置して、そこで公務員の退職者の優遇措置を終始怠らず考えるという考え方をお持ちではないですか。
  109. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 私も、受田さんのお話のとおり、いまの制度がばらばらになっておりますから、なかなか統一した対策というものがまあしにくいといいますか、そういう欠点があると考えます。そこでこれはまあいわゆる仮定で、まだ審議の経過ではわかりませんが、今度総理府に人事局ができる御承知の案が出ております。その人事局の案の中には、いま大蔵省がやっておりますところの共済年金の取り扱いも人事局でやる、こういうたてまえになっております。また一面、いま総理府に公務員の年金制度の連絡協議会がありまして、そこでは先ほど人事院から申しましたとおり、各役所の担当、また関係の者が集まりまして、これは昨年の十二月できましたが、今日そういう問題も含めて検討しようということでやっております。私も、大体受田さんの御意見の体制は、相当考えなければならぬ問題だと思っております。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 考慮すべき問題であるとお考えのようでございますから、その考慮すべき問題を具体化していただきたい。いまただ単に恩給問題審議室なるようなものが、恩給局の内部にちょっぴりできておる、それから公務員年金制度の連絡協議会なるものができておる、それだけの形式的なものでこの大問題の解決はできません。もっと高度の政治性を発揮して、もっと強力な機関とさせなければならぬと私は思うのです。いま、公務員年金制度の連絡協議会なるものはどのような作業をしておりますか、それから恩給問題審議室はどういう仕事をしておりますか、具体的な進捗状況をごく簡単に御答弁願いたいのです。
  111. 増子正宏

    ○増子政府委員 公務員年金制度連絡協議会につきましては、私から実は申し上げるのは筋違いのことかとも思いますが、一応そのメンバーとなっておりますので、御質問の点を私が承知しておる範囲で申し上げたいと存じます。  この連絡協議会のいわば議長は、総理府総務副長官でございます。なおメンバーは、公務員制度調査室長を初めとしまして、恩給局長、それから人事院給与局長、大蔵省の主計局長、それから厚生省の年金局長及び自治省の行政局長等がメンバーになっておるのでございまして、これはねらいとしましては、先ほど総務長官から申し上げましたように、公務員の年金制度が、現在恩給とかあるいは共済組合制度の長期給付等に分かれております。いろいろな意味でそれぞれ違った内容になっておりますので、今後のこの改善等につきまして、それぞれの所管のほうからその意見を持ち寄りまして、でき得べくんば統一的な体制を整えたいということで、昨年の十二月に設置を見ましてからすでに三回程度の協議会を持ちまして、それで各年金制度における問題点提出し合いまして、現在までそれぞれの意見を交換いたしておるわけでございます。その際に、もちろん外国制度の内容等につきましても、議題にいたしまして検討をしてまいって今日に至っておるわけでございます。  なお御質問の中に、恩給局の恩給問題審議室の作業状況ということでございましたが、この点につきましては、もちろん恩給局の所掌事務に限られるわけでございますので、恩給法を中心にいたしまして、この年額の改定等における現在までの問題点及びそれの今後における取り扱いの方法等につきまして、いろいろと、これは必ずしも単純な作業にまいりませんので、関係の資料等を集めまして、これはもう一週間に一、二度会議を開くというようなことで、局内におきましても大いに重点を置いて現在進めておるところでございます。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 総務長官、現在の公務員の退職者の二万円ベースないし公務扶助料、傷痍軍人等の二万四千円ベースというものの取り残された問題、また国鉄などには三十一年の法改正で一万五千円のままに残されておる、こういうような現状は、今回も改正案が出ておらぬところを見ると、今年度もこのままでやられるということなんですが、総務長官としてはこれは適当でないということをはっきり言えますか。
  113. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 必ずしも適当ではないと思っております。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 総務長官は、現状を適当でないと御判断されておる。したがって、これをどう直されるかということについての方法には、現職のベースアップにスライドして上げる方法と適切な別の方法とがあるということを先ほど答弁されておったようでございます。現職の公務員のベースアップに少なくとも一段階あるいは二段階下は常についていかないと、これは退職後の生活の保障という形にはならぬとはお考えになりませんか。そのとおりにずばりと三万一千円なら三万一千円ということでなくとも、少なくとも一段階あるいは二段階下のところまでは追っかけていくのでなければ、経済生活の保障にはならないというお考えはないですか。
  115. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 現在の公務員給与ベースも、おそらくいまお話しのとおり、実生活に照らし合わしてこれを考えていることは間違いありません。その現職の公務員給与制度と恩給というものは、本質的に多少の相違があることもおわかりになると思います。したがって、現在の現職の公務員給与ベースにスライドをしていくということは、私は先ほども申し上げましたが、必ずしもこれは全面的にスライドしていくことは妥当でない。しかし、いやしくも経済生活に寄与しようというのですから、スライドするとかせぬではなくて、やはり実生活を、物価問題とか諸般の経済情勢とかを勘案して、この恩給ベースを改定していくべきだ、こう考えております。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、三万一千円ベースとして、少なくとも二万七千円か二万九千円のところまでは大体追っかけていかないと、経済生活の保障にならないというお考えはあるわけですね。大体それに近いところまでいっておらぬと、いまのように離れたのでは、適当でないというお考えはおありですね。
  117. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 これらの問題につきましては、いま恩給局長が御答弁申しましたとおり、審議室でやっております。したがって、私自身はまだ知恵を出しておりませんけれども、審議室の結果を見まして、私の判断を加えたいと思っております。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 あなたは、私の要望に非常に近い線を持っておられると思います。そういうことをはっきりお答えになるのはむずかしいと思いますが、少なくともそこまでやらなければ、経済生活の保障になっていないのです。そうして現職の公務員だって、先輩がやめた後に悲惨な暮らしをしているのは、見るに忍びないと思うんですよ。自分もまたその身になると、自分の身をつねってそう思いますよ。そういう意味で、長く御苦労された、有形無形の国家の産業、社会に寄与された先輩公務員を優遇するという考え方は、現職の公務員も一貫した考え方だと思うんです。退職後の悲哀を感ぜしめないような、ひとつ願わくば現職公務員のベースアップに非常に接近した形のスライド制を実施するという方向をもって総務長官が善処されんことを、私は要望いたします。いかがでしょうか、総務長官。
  119. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 受田さんの御意見は、非常に尊重すべき御意見だと思っております。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 共済組合法の適用を受ける人は、先輩の保障まで現職の公務員は負担をし切れません。これはついこの間衆議院を通ったあの法案を見ても、国が五七・五、御本人が四二・五です。したがって、先輩の引き上げに対する保障をするほどの能力はありません。そこでやはり恩給法の適用を受ける皆さんに対する国の責任を果たすと同時に、共済組合法の適用を受ける先輩の皆さん方に対してのそういう財源というものは、やはり国家が責任を持つべき立場のものであると思いますが、御所見はいかがでしょう。
  121. 平井廸郎

    ○平井(廸)政府委員 総務長官からお答えをいただく前に、私からちょっと共済制度の問題について申し上げたいと思います。  御承知のように、共済制度は、確かに公務員制度としての一面を持っておりまして、その限りにおいては恩給法からの継続という面があるわけでありますが、同時に、社会保険の一環という形で、他の社会保険とのバランスからも議論されておるところでございます。したがいまして、先生の御意見のように国がすべてベースアップの財源を持つということは、公務員立場から見て望ましいことであることは当然でございますが、いま直ちにそういう方向で必ず結論が出せるかどうか、なお今後の検討問題としていま検討中のところでございます。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 いま課長さんの申された問題については、国に対する奉仕者としての立場と一般社会保障の問題を、分離して考慮すべきものではないかと私は思うのです。だから、公務員の退職年金と一般社会保険その他の問題とは、別系統として考慮すべき問題ではないかと思いますが、これは政治的判断ですから、総務長官にお伺いいたします。
  123. 野田武夫

    ○野田(武)政府委員 共済年金制度が恩給から分かれてできましたのは、いま大蔵省から申しましたとおり、やはり社会保険の意味も相当加わっていることだと思っております。しかし、少なくとも、いま受田さんのおっしゃるとおり、やはり相当国家が財源を奮発するという気持ちがなければ、理屈ばかり言っておってもなかなかいかないという感じは、私も感じております。しかし、これは要するに財源問題その他でありますから、私が申したからといってすぐ大蔵省がどうするかわかりませんが、感じ方といたしましては、もちろん社会保険制度を加味しておりますから、他の保険制度との均衡を保つべきことも十分わかりますが、同時に、いま受田さんのおっしゃった議論からして、国家が相当な腹をもってこれに対処しなければいかぬ、こう考えております。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 非常に腹が据わっておるようでございますから、そういう意気込みでひとつやってもらいたいし、この連絡協議会の結論も早く出してもらいたいし、恩給問題審議室等でも十分検討してもらって、この問題の早期解決をはかっていただくように要望を申し上げておきます。  もう一つ非常に重大な問題があるのでありますが、今度の改正の中に具体的な問題が入っておるわけです。この遺家族処遇の中で、英霊の奥さんが経済上のやむを得ない事情等で終戦後結婚して、またもとの英霊のほうに帰ったといった人は、援護法の適用を受けることにしておる。これは当然恩給法の公務扶助料による恩典に浴すべきじゃないかと思って、これは多年この委員会でも主張しておったわけでございますけれども、これが援護法に入った理由をひとつお聞かせ願いたい。
  125. 増子正宏

    ○増子政府委員 ただいま御質問の点でございますが、恩給法上の遺族の失権事由につきましては、私からいまさら申し上げるまでもなく受田先生はじめ皆さま御承知のとおりでございますが、いわゆる戦没者の妻の場合でございますが、これが婚姻によってその籍を抜けるというような場合には、失権の事由ということになっているわけでございます。なお、そのほかに養子縁組みの場合でありますとか、その他あるいは処刑等が行なわれた場合におきまして、失権とされるわけであります。この失権をいたしました場合に、ある事情があったときにそれを再び回復させるかどうかということは、単に妻のみの場合でなくして、ほかの失権の事由との均衡も考慮しなければならぬわけでございます。そういう意味におきまして、恩給法上の取り扱いといたしましては、現在のところ、これを改正すべきであるという結論は、私どもは得ていないのでございます。ただ、援護法におきましては、援護法が出発しましたときの事情、その後における援護法の改正の経過というような点からいいまして、援護法の内部においての不均衡といいますか、気の毒な点をなるべく改善するという趣旨によりまして、今回の改正が行なわれることになったというふうに承知しておるわけでございます。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 こうした問題のほかに、今度の改正で戦地加算などをある程度考慮されて、沖繩などを取り上げられている問題、これらについても一応適切であると思います。それから今度できるだけ援護法のほうで残った問題を救済しようとして、二つの法律を兼ね合わせて漏れた問題の処理に熱意を示しているということについても、私は共鳴をします。  ただここで最後に一つ問題になるのは、満州国の公務員であるとか満鉄職員立場にあった人々が、滞日ケース、日浦ケース等でいろいろまだ不利な問題が残っておる。たとえば満日ケースであれば、十七年という年限で打ち切られておるという問題、それからシベリア抑留期間などが全然通算の対象になっておらないという問題、終戦時在職しておらなければ恩典に浴していない、終戦直前にやめた人々の処遇の問題、だれが見ても公務性においては日本と平等の立場にあるこれらの問題等について、なぜこれほどの問題をこの改正の中に取り入れることができなかったのか、ひとつお答えを願いたいと思います。
  127. 増子正宏

    ○増子政府委員 外国政府職員あるいは外国特殊法人職員期間の通算に関連する問題として数点おあげになったのでありますが、これらの問題の取り扱いにあたりまして、あらゆる事態を考慮いたしますと、確かに御指摘のように、ある部分ではふつり合いではないか、これは片手落ちではないかという御意見は、ごもっともだと思うのでありますが、ただし、恩給法のいわゆる公務員期間といたしまして、公務員でなかったものをどの程度同様に扱うかという問題は、実は恩給法の法体系から言いますと、やはり例外的措置であります。そういう意味におきまして、この扱いにつきましては、あるいは私どものかってな考えかもしれませんが、恩給法の従来のあり方あるいは基本的な考え方の線にできるだけ沿うて、そうしてそれを逸脱することを避けるというような趣旨から、改正案を考えておるわけでございます。したがいまして、そういう点を除外して考えますれば、あるいは受ける人々の利益というような点から考えますれば、おそらくもっともっといろいろなことをしなければならぬのじゃないかと思うわけでありますが、それらは、いま申し上げましたような意味である一定限度に限ったということでございます。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 それらの問題をこれから検討してもらうことだろうと思いますが、今度の改正案で非常にいい点を取り上げてもらっておるのは、傷病軍人の妻の加給の幅を広げられたことです。これは恩給法が、ある程度社会政策的なものを取り上げた、ワクを広げた一つの英断であると思いますし、恩給法を旧式の観念で判断しないで、そういうところにどんどん目を向けられておる点については、大いに共鳴するものですが、ところが、この傷病年金受給者の妻に対する家族加給制度の問題に関連して、あの昭和二十八年の恩給法改正のときの傷病軍人の傷病等差の問題が、今日の段階では当然考えられなければならない問題になってきておる。たとえば一項症を一〇〇とした場合の計算で、四項症、五項症あたりは――いまの段階では、もう非常な重症度を優遇するだけでなくて、四項症、五項症程度のもの、あるいは六項症、七項症等にも、ひとつ等差を是正して優遇措置をとる、そういう改正も考えなければならない問題があるのじゃないか、これについてひとつお答えを願いたいと思います。
  129. 増子正宏

    ○増子政府委員 傷病恩給のいわゆる傷病等差といいますか、各段階におけるその間差のきめ方についての御意見と拝承いたしますが、これをどの程度に変えていくか、言いかえますと、どの程度が最も合理的であるかという問題につきましては、実は専門家の中にもいろいろな意見があるわけでございます。現在におきましては、専門家の御意見も徴して、一応この制度を現行のように定めておるわけでございます。これを改正いたしますことにつきましても、さらに慎重な検討が必要ではないかというふうに考えております。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 慎重な検討をされて、すみやかにいい妥結点を出していただきたい。  あわせて、この傷病軍人関係の恩給では、増加恩給をもらっておる人が、公社職員等になって、退職のときに、公社職員の最終俸給を基礎にした年金をもらう際に、新しい改定年金になった場合には、増加恩給分を削ってしまう、いずれかを選択しなければならぬという問題にぶつかっておる。しかし、傷病軍人が普通恩給プラス増加恩給をもらって公社職員等になった場合に、何十年春勤務してやめるときに、昔の普通恩給と増加恩給を選ぶか、あるいは増加恩給を捨ててでも新しい制度の年金をもらうかという問題になってくると、これは答えはすぐ出るのです。そんなばかげたことは引き受けられないと、すぐに出るはずなんです。この際に、新しい公社職員として退職した後の新しい改定恩給をもとにして、増加恩給の部分だけは、これは傷病に対しての手当でございまするから、それを生かしていく道を考えるべきではないか。これをひとつ、大事な問題で、当面する該当者が相当出ておりますので、お答え願いたい。
  131. 平井廸郎

    ○平井(廸)政府委員 ただいまの御質問は、共済組合のほうで救済するか、恩給のほうで救済するか、二通りの救済方法があるわけでございまして、共済組合の立場からいいますと、現在の国家公務員共済組合法、それから公共企業体職員等共済組合法、若干立で方が異なっておりまして、その間利害得失いろいろあるわけでございます。その問題の一環として、ただいまの増加恩給の問題等ございまして、それだけを切り離して直ちに措置し得るかどうか、ちょっと私どもただいまのところ問題を承っただけで判断いたしかねますので、今後の問題として御意見のほどを拝聴いたしまして、検討いたしたいと思います。
  132. 受田新吉

    ○受田委員 最後に質問します。いまのような問題がころがっているのです。公務障害を受けた人が勤務に従事するということは、非常に崇高なことなんです。崇高な勤務をされた人に、公務障害部分の分は捨ててしまえなどといういき方は、これは問題なので、新しい退職年金制度でも、そういう障害年金という規定が別にあって、二〇%ないし三〇%の増加部分が俸給にくっついておる。こういうことを考えていただくときに、当然増加恩給部分というのを抹殺すべきものじゃないと思うのです。新しい年金制度に基づく退職年金を設けると同時に、増加恩給部分は公的障害年金に相当するものとしてこれを生かしていくということで、今度の新しい問題を討議される連絡協議会等でこれを十分検討しておいていただきたい。そして願わくは、恩給亡国論などと七、八年前ごろから盛んに叫ばれて、先輩を優遇する案を出すと、いろいろとたたかれた時代と違って、いまやこの国会でも超党派でこの先輩優遇案を提唱する段階に来た、非常に喜ばしいことですが、こういうときに、ひとつ政府が思い切った施策をとられて、強力な国民年金局のようなものを設置され、そうして各種の年金関係のものを公的性格を持つものだけを特別の形で取り扱いをする、この問題と熱心に取り組んでいただきたいことを要望しておきます。  終わります。
  133. 徳安實藏

    徳安委員長 恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案に対し、質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  134. 徳安實藏

    徳安委員長 これより討論に入るのでありますが、別に申し出もございませんので、直ちに採決をいたします。  恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  135. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  136. 徳安實藏

    徳安委員長 なお、本案に対して辻寛一君外二名より三党共同提案により附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者より趣旨の説明を求めます。辻寛一君。
  137. 辻寛一

    ○辻委員 ただいま議題となりました恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案に対する自民、社会、民社、三党共同提案にかかる附帯決議案について、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。   恩給法の一部を改正する法律等の一部を改正する法律案に対する附帯決議案   現在現職公務員給与ベースは約三万円となっているが、退職公務員の恩給の基礎となるベースは、公務死亡・傷病恩給関係が約二万四千円、普通恩給関係が約二万円となつており、その格差の是正は遺族未処遇、傷恩間差の是正、抑留加算等の問題とともに従来から重大な懸案となっている。   政府はこの格差是正のために、恩給及び共済制度の適用をうける戦争犠牲者、退職公務員等の給与ベースを現職公務員給与ベースの上昇にスライドさせるような適切な方途を検討すべきである。   また、公務員の退職年金制度が恩給制度から共済組合制度に移行した経緯にかんがみ、昭和三十六年の閣議決定にもとづいて定員化された常勤的非常勤職員の定員化前の在職期間について通算措置を検討すべきである。   右決議する。  御承知のとおり、現職公務員給与は、民間給与との格差、また生計費上昇に基づいて、人事院が政府並びに国会に勧告を行ない、その勧告をもとに改善措置が講ぜられてきているのであります。しかるに、退職公務員給与のベースアップについては、調査し、勧告する機関もなく、ただ政府が恩恵的に予算を考慮して措置しているにすぎないのであります。すなわち、退職公務員のベースアップというその処遇問題について、基本的な施策が樹立せられていないのであります。そのことが、今日いろいろ恩給諸問題を複雑にしていると考える次第であります。すでに衆参の内閣委員会においても、スライド制の確立について検討が要望されておりますが、この際、あらためて政府にその検討を要望し、あわせて定員化された常勤的非常勤職員の定員化前の在職年についても、その通算措置を検討されるように要望しようとするものであります。  何とぞ御賛同あらんことをお願い申し上げます。
  138. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて趣旨説明は終了いたしました。  直ちに採決いたします。  辻寛一君外二名提出の附帯決議を付すべしとの動議について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  139. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本動議は可決いたしました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  141. 徳安實藏

    徳安委員長 次会は、明十二日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後一時三十八分散会