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1964-06-03 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月三日(水曜日)    午前十時三十八分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 佐々木義武君    理事 辻  寛一君 理事 内藤  隆君    理事 永山 忠則君 理事 石橋 政嗣君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       岩動 道行君    塚田  徹君       綱島 正興君    野呂 恭一君       藤尾 正行君    保科善四郎君       前田 正男君    松澤 雄藏君       湊  徹郎君    渡辺 栄一君      茜ケ久保重光君    有馬 輝武君       稻村 隆一君    中村 高一君       村山 喜一君    山田 長司君       受田 新吉君    山下 榮二君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  石川 準吉君         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 津田  寛君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         法務事務官         (矯正局長)  大澤 一郎君         検     事         (保護局長)  武内 孝之君         法務事務官         (入国管理局         長)      小川清四郎君         公安調査庁長官 吉河 光貞君         公安調査庁次長 宮下 明義君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         農林事務官         (畜産局長)  檜垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         食糧庁長官   齋藤  誠君         水産庁長官   庄野五一郎君  委員外出席者         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 六月三日  委員山田長司辞任につき、その補欠として有  馬輝武君が議長指名委員に選任された。 同日  委員有馬輝武辞任につき、その補欠として山  田長司君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三号)  法務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五九号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  農林省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。有馬輝武君。
  3. 有馬輝武

    有馬委員 官房長にお伺いいたしますが、それはここ数年来の農林省機構改革についてであります。私、よその委員会にいて見ておりますと、毎年内閣委員会には各省設置法がかかりまして、その内容は、何といいますか、重箱すみをほじくり返したみたいな機構いじりというものが行なわれておるように見受けられてならないのであります。やはり中央省庁機構整備につきましては、行政調査会で鋭意検討が加えられておりますが、私は、機構改革というものは、もとより生きものでありますから、生きものであるがためにそのときどきに応じて検討しなければならないことも一面ではわかりますけれども、しかし、単なる機構いじりというものは行なうべきではない。やはりそのそれぞれの機構を生かしていくということがなければいけないんじゃないかというふうに考えております。その意味でお伺いをいたすわけでありますが、ここ五年以内に行なわれた農林省機構改革の中で、主要な改革がどのように行なわれて、その理由はどういうものであったかを、この際お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  4. 中西一郎

    中西政府委員 お尋ねの点につきましての大きな方向といいますか、われわれ行政を担当する者の心がまえとしましては、ただいまお話しがありましたとおりの心がまえでやるべきことだと思います。近視眼的な便宜的な措置ということで、重箱すみを突っつくというような態度は、とらないほうがいいというふうには感じております。  ここ数年の行政機構改革農林省に関しまして一番大きなことといいますか、農業基本法ができましてからの行政体制を整えるという趣旨でやりました点について申し上げますと、やはり何といっても一番大きいのは地方農政局設置だったと思います。まだ発足して一年しかたっておりませんけれども、諸外国農業生産性が上がっておる、それに日本も急速に追いつかなければいかぬというような観点で、構造改善等も積極的に進めておるわけですが、さらに流通機構整備ということにも心がけるという趣旨で、従来の府県行政補助金行政だけでは間尺に合わない、広域的な視点での行政も必要であるというようなことで取り運んできたのが、地方農政局設置であります。そのほか、それぞれの行政機関の中におきまして、機動力問題等変化、あるいは農業生産事情変化等に即応しまして、出先機構を統合するとか、さらに能率的な仕事をやるための配置がえをするというようなことにも力を注いできております。さらに本省機構について申しますと、蔬菜、果実等選択的拡大という使命をにないまして、園芸局設置してまいったわけですが、これもまだ年を経ておりません。そういう意味で、いわばしにせである蚕糸局等に比べますと、仕事自身が円滑な軌道に乗ったと言いがたい点がございますが、ここ数年の間には、やはり基礎資料も固めまして、新しい生産選択的拡大趣旨に合うような運営ができるようにしてまいる必要があろう、かように考えております。  将来の問題としてはまた別にいろいろございますけれども、当面いままでやりましたおもな事項について申し上げますと、以上のとおりでございます。
  5. 有馬輝武

    有馬委員 いまおあげになりました地方農政局の問題と園芸局二つの問題に関連してだけお尋ねをいたしたいと思いますが、少なくとも地方農政局設置の際には、やはりいま官房長が述べられましたように、地域農業の振興ということ、あるいは流通機構整備なり、あるいは府県自体で全般的な視野からとらえられない問題について検討を加えていくというような意味で、積極的な意義を持たせて発足され、また当時の官房長をはじめといたしまして、農林省の幹部が、その意欲を具体的にあらわすというような意味で、地方農政局長に出ていかれた。そういった経緯、熱意についてはわからないでもないのでありますが、しかし、当時から論議されておりましたように、私どもは、地方農政局というものが、現在の農地局なりその他の機構をフルに発展させないで、ただ単に屋上屋を重ねる結果になるのじゃないか。農政が、他の行政と同じように地域住民なり生産者農民の便宜をはかる、受益者のために機構が存在する、そういう立場から見ると、逆に屋上屋を重ねることになるのではないかということを強く指摘いたしたのでありまするが、この地方農政局が置かれて、日はまだ浅いといいながらも、ある程度の経過を経てまいったわけでありますから、いま申し上げましたような点で、地域農業発展なりあるいは流通機構整備なりで、この地方農政局を置いたことによって具体的に成果をあげておられるならば、それをお聞かせいただきたいと思うのであります。まずこれからお答えをいただきたいと思います。
  6. 中西一郎

    中西政府委員 地方農政局をつくりまして、一つは、いままでの補助金行政といいますか、権限に基づきます行政のほかに、サービスといいますか、農業構造改善等に見られますような指導あるいは誘導といったようなサービス行政を強化するという趣旨も、入っておったわけです。とにかくつくって見まして一年を経過してきたわけですが、その間二部行政ではないかという批判も受けております。地方新聞等の紙面にも、そういうふうな批判が出た時期もございます。われわれとしましては、発足当初のことでもありますし、権限委譲についての段取りはつくっておりましたけれども、そう短期間に仕事が全部末端で円滑に処理できるというふうにもなりかねまして、発足して当初の半年ほどの間は、そういう御批判も甘受せざるを得なかった事情もございます。しかし、おいおいに権限委譲についても段取りを進めております。ただ、本省に留保せざるを得ない行政事務というものもございますわけで、たとえば全国的な団体指導、監督あるいは助成、さらにいろいろな施設につきましての全国的な調整を行なわなければいかぬというようなものもございます。また、特別会計仕事等もございます。あるいは検査業務といったものもございます。そういうようなことで、性質上地方に委譲し得ないものもあるのですけれども、大きく言いますと、相当の事業の分量、あるいは補助金配分等につきまして、各局に従来属しておりました仕事を大幅に下におろしつつあります。たとえば具体的に申しますと、補助事業件数で申しますと、約六五%の件数を委譲しております。さらにそれを金額で申しますと、七九%の金額を委譲しております。ただ、先ほど申し上げましたように、初めのうちのふなれもございまして、県当局の話を地方農政局で聞いて、さらによくこなれてないというような問題につきまして、県当局がさらに東京に出向いてこざるを得なかったというような遺憾な事例もございますけれども、来年あたりからは、そういうことのないように、当初設置趣旨のとおりに運びたいという強い決意を持っておるわけでございます。
  7. 有馬輝武

    有馬委員 ことばじりをとらえるわけではありませんけれども、私は、たとえば補助事業で六五%、金額で七九%移された。その委譲したということが問題なんじゃなくて、それが地域住民のために、地方農政局の問題が論議されましたときに期待したように、どのようにプラスしてきたかということをお尋ねしておるわけです。その点については、もちろん時間の問題はあります。わかりますが、設けて年を越すと、やはりそれなりにいままでの隘路というものが打開され、そして農政が、特に地域農業発展のために具体的に前に向いているのだという形が出てこなければ、せっかくの機構をいじった意味がないと思うのであります。そういう意味で、たとえばグリーン・リポートに、地方農政局を設けて、地域農業発展ではこのような形が芽ばえ始めたとか、そういう点が記録されておりましたならば、それをお聞かせ願いたいと思います。
  8. 中西一郎

    中西政府委員 お話しは、地方農政局設置功罪のうちの功というお尋ねだと思うのですけれども、この点につきましては、若干時間がかかってくると思うのです。その準備が完了して成果がわれわれ確認できるまでには時間がかかると思うのですけれども一つの点は、これはよく言われることですけれども一つ府県の中での農業生産物——米麦等は当然全国的に流通しますが、その中で流通し、加工されておったようなくだものにしましても、水産物にしましても、最近の配置からいいますと、他府県流れているのが非常にふえております。そういう意味で、広域的なものの流通、加工の段階を経てさらに消費者段階にいくという大きな流れは、やはり地方農政局というような単位で見ていきませんと、実態把握に欠けるところがございます。特にことしの予算では、地方農政局面接関係ではございませんが、統計調査部に約百八十名ばかりの人員を配置しまして、生鮮食料品肉類等も含めまして、流通調査をやることにいたしております。そういうことと相まって、地方農政局地域経済農業経済把握ということに一つの強みが加わってくるのではないかと思っております。また、土地基盤整備にいたしましても、この問題は、県営とか団体営の問題をとらえましても、やはりそれにつながる大きな基幹的な工事が数県にわたるものというものもあるわけであります。むしろそれが大きな生産性向上のよりどころとなっているわけですが、そういうことをやります場合に、ほかの省との関係、電気あるいは工業用水といった関係でのほかの省の地域的な行政というものと調整をとりませんと、農林省だけでそれがうまくいくという筋合いのものでもございません。そういう意味で、地方農政局というものが、土地基盤整備はもちろんですけれども、その上に立って流通段階消費段階というものをからみ合わせてみることによって、総合的な地域開発ということもあり得るのではないか。また、新産都市あるいは低開発地域開発というような問題も、相当広域に起こっております。それの及ぶところは、当該県のみならず、数来にわたっております。そういう地域全体としての流通変化、あるいは労働力の移動、あるいは農業構造変化というようなものを的確に把握していく必要があるわけです。そういう意味で、いままでのところは、まさに出発点でございますから改善すべき点が多かろうと思いますが、いましばらく現状でやってみまして、その上で功罪の判断をいたし、前向きの形にやりかえるべき点はやりかえていくというふうに考えておるわけでございます。
  9. 有馬輝武

    有馬委員 いまお答えの中で二つだけ関連してお尋ねをしたいと思うのでありますが、官房長がおあげになりました、たとえば土地基盤整備、数府県にまたがるような問題についても、少なくとも地方農政局が設けられます前にも、地方農地事務局でやっていたし、またやり得たわけです。そういう問題について、事あらためて地方農政局ができたから数段進歩したのだというような見方は、私はあまりしてないわけです。それといま一つは、生鮮食料品なりあるいは肉類なりの広域的な流通、その問題についてでありまするが、地方ではどこがそれを統括しておられるのですか。
  10. 中西一郎

    中西政府委員 二つお話しでしたが、一つ基盤整備の問題、農地事務局当時と実態が現段階ではさほど変わっていないという御指摘は、甘受せざるを得ないと思うのです。ただ、大きな方向としましては、主産地形成といいますか、選択的拡大といいますか、従来やってきました米麦主体ということでなく、農地に限らず、農用地も含めまして、草地改良、牧野と、いろいろな観点も含めての基盤整備というふうにつくり変えていくのが正しい方向ではないか。特に大きな意味の主産地形成ということをやりませんと、それを原料として使います加工業の能率にも関係しますし、そういう意味で、新しい観点からの土地基盤整備あり方というものを追求してまいりたいと思っている次第でございます。それから、生鮮食料品等につきましての仕事の受け口でありますが、当面流通調査を一億円ほどの予算でやりますのは、統計調査部でいたします。それの成果をどう使うかということは、統計調査と別に、地方農政局あるいは本省行政やり方関係してくるわけで、地方農政局では主として、まだ陣容は十分であるとは言いかねますけれども経済課等がございます。そういうところでそれを生かしていくということを心がけておるわけでございます。
  11. 有馬輝武

    有馬委員 官房長がお認めになりましたように、土地基盤整備の問題にしましても、前地方農地事務局でやっておりましたこととほとんど大同小異である。少なくとも私は地方農政局が、いま官房長お答えになりました意味で設けられる意義があるとするならば、旧農地事務局の所在地に農政局をそのままつくるというようなきわめて便宜的というか、イージーな形じゃなくして、日本地域農業はどうあるべきか、また実態はどうあったから、今後の農政は、たとえば九州においてはこうだ、北海道においてはこうだ、東北においてはこうだというような方向が定められて、そうしてその地域に応じたところの農政局というものが設けられたならば、まだ意味があると思うのであります。ただ単にかつて農地事務局があったから、そこに地方農政局を置こうというようなイージーな形で機構いじりをされた結果が、いまおっしゃったように、時間の問題があるといたしましても、事あらたまって見直すような結果が出てこない結果におちいっておるのじゃないか、こう思わざるを得ないのであります。私古いことをほじくり返して申し上げておりますのは、機構いじりというものはそのときどきにただ便宜的に行なうべきではないという立場から、一つの例として官房長があげられた農政局の問題でお伺いをいたしておるわけであります。これは流通の問題にいたしましてもそうでありまするが、たとえば私ども流通の問題を取り上げますときに、生鮮食料品なり、特に魚の問題について、水産庁農林省のこの流通の問題に対するものの考え方、資金のおろし方、冷凍工場ひとつつくるのを見ておりましても、あるいは貨車の配置等にいたしましても、何のためのどのような方向流通という問題を把握しておられるか、多大な疑問なしには見ておられないのであります。そういう問題について、一元的に農林省ですべての生産物流通を今後どのように持っていこうとしておられるのか、この際お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  12. 中西一郎

    中西政府委員 御指摘の点は、包括的に申し上げますと、農林省の戦後の行政の中で一番欠けておった点で、現在でもいわばウィーク・ポイントについての御指摘のように思うわけです。従来、工場あるいはその周辺の生産段階いろいろ力を入れておったわけでございますけれども、大きな目で見ますと、商品大量流通あるいは大量仕入れというような時代に入りつつあるわけで、そういう意味で、商品の質の高度化とかあるいは消費単位大量化というようなことに即応したような流通段階あり方なり、それに対する政府の力の入れ方、主としてサービス行政といいますか、コンサルタント的な、あるいは誘道的な役割りが多かろうと思いますけれども、そういう点についての統一的な視野からの機構は、まだ十分に確立されていないと思います。現段階としましては、先ほど言いました統計調査部についての生鮮食料品流通調査、さらに地方農政局経済課中心としますいわば広域な物の流れ把握というようなことを通じまして、次第に行政あり方も固めていく。まず実態把握が何よりも大切である。その上でそれに即応した行政あり方外国流通事情と全く違った形もございますし、きわめて日本的なものだと思うのですけれども農業協同組合等役割り等も含めながら、日本的な流通行政あり方というものを打ち立てるために、現在の新しい機構というものを役立ててまいりたい、かように考えております。
  13. 有馬輝武

    有馬委員 引き続いて官房長お尋ねいたしたいと思いますが、根本農林大臣のころだったと思いますけれども、当時統計調査部あり方について、いろいろ行政改革の問題とからみ合いまして再検討され、そしてその結論といたしまして、今後の農政骨格をつくる意味におきましても統計を充実しなければならないという意味で、統計調査の対象も年々拡大されまして、いまでは統計調査部というのは、魚の骨まで数えているのじゃないかと思うくらい広範な仕事をするに至っております。それが見ておりますと、たとえば地域において、各県において、これも一元的ではなくて、その地域地域において出張所の統廃合を考えるということを行なっておりますが、いわゆる農政骨格として統計を重視するという考え方については、その後も農林省当局は変わっておらないと思いますけれども、そういった観点から、出張所等をいじる理由がどこにあるのか、この際お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  14. 中西一郎

    中西政府委員 出張所をいじるいじり方でございますが、現在のところ、一つのところへ隣の地区にあります出張所併置するという併置やり方と、合併させるというようなやり方とをとっておるわけです。そのいわばねらいでございますけれども、だんだん機動力もふえてまいりまして、それに伴って職員を集中してそれぞれの仕事配分を考えるということによりまして、だんだん増大してくる仕事の処理の円滑化をはかるというのが、一つのねらいであります。それは裏から言いますと、職員労働過重を軽減するということにも役立っておると思います。さらに、すでに御承知のように、統計調査関係末端出張所施設は、実に古いものが多くて、整備されてない状況でございまして、逐年予算をとりまして営繕にも力を入れてきておりますけれども、こういう機会にそういう職場環境もよくしていくということに重点を置いておるわけであります。現在のところ、併置出張所の数は約四十八、それから共同市場調査は、約十九ございます。大きな方向としてはただいま申し上げたようなことで、先ほど申し上げました流通調査というようなものも加わりますし、経済調査というものもだんだん密度を正確にしてまいります。そういうことに対応して、従来の坪刈りを主にした、作報と言いましたが、作報的な色彩から、経済流通中心を置いた統計調査部というものに切りかえていく、その過程併置なり統合なりがあるというふうにお考え願いたいと思います。
  15. 有馬輝武

    有馬委員 統計調査近代化という点については、官房長のおっしゃる意味はわかるのでありますが、その近代化方向というものが職員に負担をかけることにおいてのみ強行されておるという実態は、見のがし得ないと思うのであります。先ほどいろいろな物品も整備されたとおっしゃいましたけれども出張所で各人に単車が全部行き波っておるところがどこにありますか。せいぜい一出張所一台ですよ。そういう中で、一町村でやっていたものを四、五カ町村集めて、自転車をえっこらえっこら踏みながら、いま中西さんが言われたような調査ができると思いますか。言われておることと実態とはまるきり逆なんです。そういったものが整備されて、その上で考えられるなら話はわかる。現在七百八十幾つある出張所を将来百五十くらいに整理統合されるとかいうような企図があるやに聞いておりますけれども、そういうことをしたならば、現在の施設実態からいたしまして、これは完全にお手あげになります。また、出張所施設整備をおっしゃいましたけれども、私は、仕事実態に応じて施設というものは考えられるべきであって、施設のために機構というものが仕事実態から離れた形で持っていかれる、これはまるきり話が逆だと思います。その点どうなんですか。
  16. 中西一郎

    中西政府委員 非常にものごとを単純化して申し上げてかえって失礼をいたしましたけれども、現在併置等をやります場合には、それぞれの出張所実態について地元職員の意向を調査した上でやるということで、逐次やっておるわけでございます。地方実態を考えないで、中央から押しつけて併置するというような態度は、とっておりません。そういう意味合いで、七百八十幾つあります出張所につきまして、先ほど申し上げましたように、現在のところ四十八と申し上げましたが、そういうようなテンポで、地方の実情に応じてでき得るところから順次やっていくという漸進的な方法をとったわけであります。その過程で、予算等との関連も考慮しながら、新しい情勢に応じた活動ができるようにということを心がけておるわけでございます。
  17. 有馬輝武

    有馬委員 漸進的に悪い方向に進めていらっしゃるのです。実態と離れた方向に進めていらっしゃるのです。施設の問題をおっしゃいますけれども、戦後二十年間、とにかく倉庫のひさしの中とか、便所の横っちょとかに置いておいて、いまごろ施設整備も何も——これは歴代の農林大臣、のうのうとよくも委員会などに顔をさらすと思うくらいに、統計職員から言わせるならばそういう状態にほうっておいて、いまころ施設整備もへったくれもありはしません。農林省出先とはとても思えないようなところに置いておいて、国の重要な統計調査事務をやらせて、いまごろになって施設整備するのだから出張所を統合するのだとおっしゃっても、これは通りませんよ。そしてそれを統合した結果が、仕事の能率があがればいいのですよ。いま申しましたように、自転車をえっこらえっこら押して数カ町村へ行ったら、行き帰りだけで一日暮れてしまいます。ですから、統計職員は、うちに仕事を持って帰ってやっているというのが実態です。官房長もよく御存じのように、統計調査部職員が、結核の罹病率は一番多いのですよ。それはそういった仕事実態の中から出てきておる。機構というものは、やはり農政を生かす意味において考慮されなければならないし、地域実態に応じて考慮されなければいけないはずなんです。それをただ単に漸進的にとおっしゃいますけれども一つ方向がぴしっとしておって、そしてそのほうが効率的なんだ、職員の負担も軽くするのだ、農政の基本方向をきめる上において、統計がこういった形で行なわれていけば一番効果的に成果をあげ得るのだという点がおありならば、私たちも納得するわけであります。それなくして、ただ単に機構いじりをやり、出張所の統廃合をやる。しかも地域の意見を聞きながらとおっしゃいましたけれども、近ごろ地域の意見を聞くような空気は、全然ありません。まだ私たちのころは、心臓が強いから、ぎゃあぎゃあ言いよった。近ごろは上意下達しかないのです。上から押しつけるしかないのです。ものを言えば、あれはということになっておる。そういう空気の中で、どうしてはっきりものが言えますか。地方の各県の所長は、あなた方のおっしゃることをそのまま職員に押しつけておる。職員の言うことをあなた方に伝える機関には、今はなっていません。私は、そこら辺について再検討をいただきたいと思うのです。職員のためというよりは、ほんとうに農政統計成果をあげるような形でものを考えていただきたい。何も七百八十幾つを百五十にするのを頭から否定しておるのではなくて、私は実態仕事にそぐわない形に逆もどりするという立場からお尋ねをいたしておるわけなんです。  それで、大臣お見えになっておりますので、大臣にお伺いいたしたいと思うのであります。今回も食糧研究所を少しいじっておられるようでありますが、今度のウイルス研究所を設けなければ、食糧研究所で研究はできないのですか。
  18. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 動物のウイルス等につきましては、従来の機関をもって相当研究を続けておりますけれども、植物につきましては、まとまって研究をいたしておりません。しかし、ウイルス病に対しましての研究は重大なことでございますので、今般植物ウイルス研究所を設置して、その研究を十分生かしていきたい、こういうふうに考えて御提案を申し上げた次第であります。
  19. 有馬輝武

    有馬委員 いま大臣から御答弁になりましたようなことでは、新しい機構を設ける具体的な理由にならないと思いますので、官房長から、特にこの研究所に植物ウイルス研究所を併置した理由について、お聞かせいただきたい。それは食糧研究所でできないのかという角度からです。
  20. 中西一郎

    中西政府委員 植物ウイルス研究所は、ただいま大臣から申し上げましたようなことで、主として圃場で発生する農作物の病害に着目しまして、農作物のほかに樹木等についてもウイルスが発生いたしておりますが、当面この基礎研究を総合的にやる機構がございません。そこで千葉に土地を求めまして、そこへ新しい研究所を設置するということでございます。大体の被害額は、これは推計でございますけれども、一口にいって四、五百億円の被害があるといわれております。そういう意味で、緊急性もあるわけであります。食糧研究所との関係では、これは圃場段階でのウイルスに対する防除あるいは予防ということに重点がございまして、圃場を離れてからのこと、あるいは早期の段階での病害虫と性質を異にしている点に重点を置いて、現段階では基礎研究をいたしたいというのがねらいで御提案申し上げた次第であります。
  21. 有馬輝武

    有馬委員 やや性質を異にしておるかもしれませんけれども、食糧研究所でウイルスを取り扱えないという、その理由はあるのですか。
  22. 中西一郎

    中西政府委員 食糧研究所のほうでウイルスについての、いわば応用研究をそれぞれの部門でやっていただくことは差しつかえないと思うのです。また、今後植物ウイルス研究所をつくりましても、その権限を排除するものではございません。ただ、総合的な基礎研究を圃場の分に重点を置いてやりたいということで、食糧研究所では必ずしもはまり切らない面がございますので、そういう意味で植物ウイルスの基礎研究に重点を置いてやろうという考えであります。
  23. 有馬輝武

    有馬委員 はまり切らない理由が、ちっとも具体的にわからないのですが……。中西さん、私の質問は意地が悪いですか。意地は悪くないでしょう。いま少しはまらない理由を明らかにしてください。
  24. 中西一郎

    中西政府委員 一つの点は、先ほど申し上げました基礎研究と応用研究の差、応用研究といいましても、食糧研究所の場合には、穀類なら穀類の形態になりまして、あるいは加工食品というような段階でのコクゾウムシをどうするかというようなことについての研究をやっているわけでありますが、農作物全般についての圃場における成育過程をとらえるということには、食糧研究所は的確でないと思います。そこで、農業生産から一貫しての基礎研究を植物ウイルス研究所でやるわけであります。そこから出てきました理論に基づきまして、穀類以降の段階ですけれども、食糧品になったものについての応用研究は食糧研究所でやっていただく、こういう分担でございます。さらに圃場の基礎研究以外の圃場段階での応用研究ということになりますと、農業技術研究所でやっていただく、そういう分担でございます。
  25. 有馬輝武

    有馬委員 いまの例でもわかりますように、私は行政管理局長にお伺いしたいと思うのでありますが、先ほども農林省官房長にもお尋ねいたしたのでありますが、私ども、この内閣委員会以外の、よその委員会から見ておりますと、毎年各省設置法がこの内閣委員会にかけられまして、その内容を検討いたしますと、いまの食糧研究所と植物ウイルス研究所を併置するんだというような形で、重箱すみをほじくるような機構改革というものが行なわれておるように見受けられてなりません。これは私のひが目かもわかりませんけれども、しかし、毎年各省設置法が本委員会にかかって、本委員会の各位の御労苦をわずらわしておるのをはたから見ておりまして、何だかへんちくりんな気持ちがいたすのであります。行政機構改革につきましては、もちろん、機構それ自体が生きものでありまするから、行政実態に即応して機構をいじることも必要でありましょう。しかし、本来ある機構を生かすということについて、やはり行政管理局等の御指導があってしかるべきだと思うのでありますが、毎年毎年このような機構いじりが行なわれることを黙って見ておられるその行政管理局の御見解について、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  26. 石川準吉

    ○石川政府委員 突然のお呼び出しで十分用意してまいりません点がございますことは、あらかじめお許しをいただきたいと思いますが、一般的な機構、定員の査定のやり方は、すでに諸先生御承知のとおり、例年、予算編成時におきまして、概算予算提出と並行して、行政管理庁において審査すべき対象、すなわち、国家行政組織法に準拠いたしました行政機関の新設あるいは廃止、改正等を審査査定するのでございますが、その実は、御指摘のとおり、例年、行政需要とかあるいは何か新しい経済上の必要に対応した行政機関の新設あるいは増強という、ふえる部分が非常に各省庁より出てまいりますが、減らすほうにつきましては、比較的出てまいっておりませんのでございます。正確な数字をここえ持ってまいりませんでしたが、別途の機会にすでに別の委員会等では申し上げたかと存じますが、終戦後一挙にふえたものは、数次にわたっての行政整理で機構、定員とも相当な改正、整理をしてまいっておりますので、必ずしも無策に各省の御要請をのんでまいったとは申せないと思うのでございます。ただ、そういう御指摘のとおりの傾向がございますので、もう一度抜本的な合理的体制をとるために、第五次行政審議会の結論によって、ただいま臨調において御審議があり、この秋には全面答申をいただく予定でございますが、当然その中にはもう少し基本的な再整備を要するものが取り上げられて、整理した形の答申をいただけるものと期待いたしております。今日までの私どもの査定の状況は、抽象的に先ほど申したとおりで、確かに御指摘のような御議論は免れがたい点が多かろうと思います。ただ、臨調の答申を受けましてからは、これが受け入れ態勢を十分に整備をして、御指摘のような既住における弊害があるとすれば、これにつきましては十分な努力を払って、無秩序にふえた分につきましては、相当な整理統合を断行すべきではなかろうかと思っております。  一応お答え申し上げます。
  27. 有馬輝武

    有馬委員 管理局長にはきょう突然おいでを願いましたので、もちろん資料等については、私、要求もいたしませんし、また、私、内閣委員会所属でございませんので、非常に的をはずれた質問が多かろうと存じますが、そういう意味で、的確な資料を要求いたしません。ただ、いま御答弁にありましたように、毎年毎年各省の要求をのんでおられる態度を見まして、私どもは、臨時行政調査会を内閣が設けられた企図をどのように行管として把握しておられるか、その意図がはっきりしないのであります。各省の要求が出てくれば、毎年毎年このような形で各省設置法の提案を見送っていく。行管として、各省庁の機構に対して基本的にどのような態度を持っておられるか、この点をお聞かせをいただきたいのであります。
  28. 石川準吉

    ○石川政府委員 正確な数字を持ちませんが、本年度におきましても、各省庁の機構、法律で定めるべき部局等につきましても、相当な査定を加えたわけでございますし、農林省につきましては、特に定員増はおおむね配置転換をもって増員を抑制するような措置をお願いいたしております。その他の省全部を通じましても、申し上げましたように、過去数年前までは、戦後の行政整理、機構縮小、あるいは非常に新しく出ました、特に予算との関係もございますが、行政需要の非常に伸びたものは、やむを得ずそれは容認せざるを得ないと思います。その間における査定方針は、確かに御指摘のように、机上査定というべきものでございました。これらの弊害を除去するために、実は、昨日全国管区地方局長を集めまして、ただいまも各局、長のみ残して、第二日目の会議におきまして、来月より三カ月の間、例年と変わった実態調査等、各地方支分部局を中心としまして、機構とその持っておる所掌事務、定員の現況でございますね、こういうものの実態を調べ上げまして、真に合理化すべきものがあれば、その実態に基づいて、臨会の答申等とにらんで、一大整理をもしやる要があれば、方針を変えてやりたいと考えております。中央の省庁につきましても、別途管理局を中心に現状をよく検討いたしまして、多角的な視野から再検討を加えたいと思っております。
  29. 有馬輝武

    有馬委員 私がお尋ねいたしておりますことは、臨時行政調査会というものを設けてこの答申を待つということであり、そうしてその答申を尊重する政府態度がはっきりいたしておりまするならば、少なくとも臨時行政調査会が設けられた間においては、答申があるまでは、一切の各省の機構いじりは許さないというような基本的な態度があってしかるべきではないか。行管として各省の機構はこうあるべしという一つの青写真を持っておいでならば、その中で検討していくならまた話は別でございます。臨時行政調査会調査会だ、われわれはこういった形で各省の機構をながめていくんだというものを持っておられるなら別だ。しかし、一方では臨時行政調査会の作業を進めてもらいながら、毎年毎年このような重箱すみをいじくるような各省の機構いじりを認めておられるような態度についてはわかりませんので、そこいら辺についてお伺いをしておるわけです。けさの新聞を見ますと、この臨時行政調査会の太田班が、基本的な態度についてまとめておるようでありますし、また、基本的なその態度についても、七項目についてあげておるようであります。それで、私は、こういった基本的な態度が行管にもあって、そうしてこれを認めておられるのか、この点をお伺いいたしておりますので、そのような角度から御答弁をいただきたいと存じます。
  30. 石川準吉

    ○石川政府委員 お尋ね趣旨はよくわかるのでございますが、正直に申し上げまして、今日まで過去数年間は、各省の要求のまにまに、ケースバイケースで査定したのが実情でございます。しかし、二回におきまして、臨調とは別に、私どものほうの監察局のほうでは、すでに十数年、各省のおやりになっておる運営の実態を調べて、逐次その上実相を明らかにした集積がございます。それから行政管理局といたしましては、国家行政組織法それ自体の検討すべき点も、だんだんに研究いたしております。今度の臨調のいままで御発表の中間報告等は、私は、まだ詳細これを検討するいとまを持ちませんですが、われわれとしましても、組織法自体の改正を基礎に、御指摘のような弊害を臨調の答申と同時に除去すべく、いろいろと検討いたしておる最中でございます。
  31. 有馬輝武

    有馬委員 そういった御意図があるならば、臨時行政調査会の最終的な答申があるまでと、それからいま行管でまとめておられる行政機構に対する基本的な最終結論が出るまでは、今後一切各省の機構いじりは許さない、こういう明確なる態度を本委員会において、この場でしていただきますようにお願いをいたしますが、局長の御答弁をいただきたいと思います。
  32. 石川準吉

    ○石川政府委員 その点につきましては、山村長官が、別の機会におかれまして、緊切な各省の行政事情に対応したる改革の要望に対しましては、臨調の全面答申をまつことなく容認をする、こういう方針はお許しをいただくように、数次の機会に表明をされております。と申しますのは、それぞれの省におきまして、いろいろ机上査定といえども実相を聞きますと、やはり経済の成長あるいは客観情勢の推移に伴いまして、当然改廃すべき部分がある。こういうものも、相当厳密に査定したつもりでございます。
  33. 有馬輝武

    有馬委員 ちょっとも厳密に査定されておりませんので、私はこのようなお尋ねをいたしておるわけです。  農林大臣お尋ねいたしますが、閣僚の一人として、この臨時行政調査会をどのように把握されて今度の農林省設置法を出されたのか、この際お聞かせいただきたいと思います。
  34. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 行政調査会の答申は、私どもといたしましては尊重していかなければならぬ。でありますので、この答申を待って機構改革をするのが、筋だと思います。ただ、農林省関係のものは、ことし急に出したわけではございませんで、昨年から問題になっておったのが、昨年国会を通過いたしません。昨年におきまして、行政調査会の結論を待たぬで緊急にやっていきたい、こういう案になって、それがことしのいまの国会にまた継続して御審議をお願いしておるような次第でございます。原則といたしましては、私どもは、できるだけ現在の機構を有効適切に運営する、また機構改革する必要があるといたしまするならば、学識経験者の集まりであるところの調査会の結論に従ってやっていくということが筋道じゃないか、こういうふうには考えておりますが、現在御審議願っておるのは、それ前か、あるいはそれと並行したころにぜひ早く改めたいという動機から、こういう案を出して御審議を願っている次第であります。
  35. 有馬輝武

    有馬委員 筋道を通されるならば、私は、この農林省設置法の一部を改正する法律案は、今国会でお引っ込め願いたいと思うのです。前からかもしれませんけれども、先ほど大臣自体が御答弁になりました、また官房長から御答弁になりました食糧研究所とウイルス研究所の併置の問題にいたしましても、私ども伺っておりまして、的確な機構いじり理由というものは一この際臨調の答申を待つ前にやらなければならないというには、よほどの理由がなければならぬわけですが、それを感じられないわけです。やはり閣僚の一人として、臨時行政調査会を設けられましたならば、その答申を待ち、それを尊重するという態度がなければ、私は抜本的な意味での行政機構改革というものはできないのじゃないかと思う。歴代の内閣がこの行政機構改革を手がけながら中途はんぱに終わってしまったその根本は、いま申し上げましたような態度にあるのじゃないか。それをまた見のがしておる行管も行管だ。行き当たりばったりで、ただトンネルになっていればいいという行管であったら、これは行管のレーゾン・ゲートルは何もありはしません。やはりそういったところにはっきりとしたメスを注ぐ、こういう態度があってしかるべきだと思うのでありますが、大臣と局長の再度の御答弁をいただきたいと存じます。
  36. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 行政調査会等において審議していることは、非常に根本的な大きな問題を中心としていると思います。私どものほうでいま御審議願っている問題は、先ほどお話にありましたが、何か重箱すみをいじっているようなことじゃないかということがありましたが、実は大筋から言いますならば、そういうような見方もあるかと思いますが、農林省自体といたしましては、小さいようなことでございますが、実際問題としてぜひそういうふうに改めたいという検討の結果、御審議願っておるわけでございます。でございますので、有馬さんのように、こういう方面にベテランといいますか、相当末端までよく知っている方の御意見というのは、貴重でございますが、しかし同時に、農林省全体をいたしまして、臨時行政調査会の結論を待たずに最小限度ぜひ改めたい、こういう考え方から出しておりますので、引っ込めろなんて言わないで、ぜひこれを通していただくように私からもお願いしておきます。
  37. 石川準吉

    ○石川政府委員 農林省は、本年度行管において査定したのでは、むしろ非常に少ないほうに属するようでございまして、有馬先生は非常に詳しいと思いますが、私どもの存じません研究機関等につきましては、私どもは十分な知識を持たぬ点もございますが、いずれも、小なりといえども厳密に事務的には査定をいたして決定をしたのでございます。すでに御説明が終わっておるのでございますから、重ねて申しませんが、本年度の農林省設置法改正案としては、あまり大きなものは少ない省に属すると考えております。しかし、御指摘の点は今後十分に肝に銘じまして、検討いたしたいと存じます。
  38. 有馬輝武

    有馬委員 大臣や局上長が言われるように私はちっとも詳しくないから、ここに来て何年ぶりかでお伺いをしておるわけです。ですから、詳しくない者がわかるような行政機構いじりでないと困るのじゃないか。お詳しい方がああこれならというやつは、臨調にまかせるべきです。  それじゃ、私はいま少し具体的にお伺いをいたしますが、先ほどの官房長の御答弁にありました園芸局設置について、生産選択的拡大に見合って園芸局設置されたわけでありますが、たとえばこれを五年あるいは十年と限りまして、肉類とかあるいは生鮮、果樹、こういったものの需要と、その需要に見合うところの生産指導をどのようにしておられるか、これは関係局からでもけっこうでありますが、大まかな数字についてお聞かせをいただきたいと存じます。
  39. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 園芸関係の問題について、お答えいたしたいと思います。  果樹につきましては、御承知のとおり、果樹農業振興特別措置法がございまして、これに基づきまして長期見通しを立てております。現在の長期見通しは、四十六年を目標に見通しを立てております。この見通しの内容を簡単に申しますと、全体としては果樹は需要も生産も相当伸びる。ただ、いままでの傾向を将来に延ばしてみますと、むしろ需要の伸びのほうが大きくて、生産がそれに追っつかないというような傾向が見られるわけでございます。したがいまして、農林省といたしましては、果樹の振興につきまして、この線に即して生産の振興をはかっていきたいということでございますが、現在まで実施中のものといたしましては、果樹の植栽なり育成についての資金関係が、まず一番基本問題でございますので、これにつきましては、農林漁業金融公庫における融資、これを漸次拡大しつつ実施しております。ことしのワクは約四十億を予定しております。それから構造改善事業、これは農林省全体として大きな事業でございますが、この中におきましても、果樹を基本幹作物とする構造改善事業は、非常にウエートを増しつつあります。たとえば三十九年度の新規事業を新規地区について申しますと、基幹作物の中で、米がその基幹作物となっているものは約百四地区ございますが、それに対しまして、果樹関係は百四十五地区というふうに、むしろ米よりも相当ウエートが大きくなっているという状況でございます。  それからもう一つの重点事項といたしましては、果樹園の造成につきまして、現在のやり方は、将来の果樹の動向を考えてみました場合に、機械化といったようなことが非常に重要な問題になると思いますが、それが必ずしもそれに対応したような造園が行なわれていないということで、果樹園の造成の合理化ということに力を入れていきたいということで、ことしはわずかでございますが、約五千万円の予算を計上いたしまして、そういう事業の推進を今後引き続いてはかっていきたい、こう思っております。そういったことが基本になっておりまして、その他現在あるいは今後進めていかなければならぬものといたしましては、たとえば流通なり加工の合理化、あるいは輸出の促進、それから従来から問題になっております果樹共済事業の早期実施、そういった面の推進をはかっていきたい、こう考えておるわけでございます。
  40. 有馬輝武

    有馬委員 いま御説明になりましたものを数字で、基準年度はどこでもけっこうでございますが、四十六年度の生産量をどの程度にされるのか、トータルでけっこうですから、見込みをひとつ。基準年度は、三十三年度なら三十三年度に置いてお聞かせをいただきたい。
  41. 酒折武弘

    ○酒折政府委員 長期見通しにおきます一応基準の年次を三十四年に置きまして、ここでの栽培面積が二十二万八千町歩でございます。この中で大きなものといたしましては、リンゴが六万町歩、それからミカンが五万六千町歩といったようなものが大きいわけでございます。これに対しまして、四十六年度見通しは、栽培面積四十万六千町歩、ミカンは十三万七千町歩、リンゴが八万町歩、そういったものがやはり大きい項目になっております。
  42. 有馬輝武

    有馬委員 官房長お尋ねしたいのですが、園芸局でこういった構想を立てられておるのを、いわゆる需給の関係から農林省として総合調整されるのは、どこでやられるのですか。
  43. 中西一郎

    中西政府委員 それぞれの品物別に生産計画が立てられるわけでございますが、交通の基盤といいますか、土地利用がそれの根っこになるわけでございます。そういう意味で、地域別の見通しとは別に、全国的な土地利用の計画の中で、それぞれのものについておさまるかどうかという検証が必要となりますので、その点は官房で行なっております。
  44. 有馬輝武

    有馬委員 官房で行なっておられるならば、こういった需給の見通しを立てられて、園芸局で進めておられる基盤整備なり何なり、それがあるにもかかわらず、たとえばバナナを大量に輸入したり何かする、そこら辺の指導は、どういうことになっておるのですか。
  45. 中西一郎

    中西政府委員 輸入計画自身は、それぞれの品目につきましての需給なり価格の実態から見て、輸入割り当てのものについては、数量を取りきめますし、自由輸入のものについては、国内で財政的な援助をどうするか、あるいは関税をどうするかというようなことで対処しているわけです。それと国内生産とからみ合わせまして、長期目標としては、特に需要の増大するような農産物あるいは食料品についての見通しの中で、それぞれの役割をきめてまいるというのが、大きな筋の需給なり生産の見通しの立て方でございます。
  46. 有馬輝武

    有馬委員 筋はそうですか、その筋とまるっきり逆のことをずっとやっておられるわけですが、それはどういうことですか。
  47. 中西一郎

    中西政府委員 その大きな筋に何といいますか、短期的には摩擦的な現象はございますけれども、そういう点を中期的あるいは長期的にはなだらかにしていくというような行政的な配慮を行ないながら、全体を取り進めていくというのが、基本の方針であります。
  48. 有馬輝武

    有馬委員 これは国内甘味資源についても同じでありますけれども、なだらかとおっしゃいますけれども、たとえば去年の国会の休会中に砂糖の自由化をやってのけられた。そういったことが、果樹についても、何についても言えるわけです。農政方向というものが、どこにあるか私はわからない。ですから、いま園芸局お尋ねしたわけですが、生産の意欲を阻害するようなことをやっておりながら、ただスローガンだけは、果樹の振興をやるのだ、選択的拡大中心的な柱は園芸だというようなことをおっしゃる。そこら辺に、私は農政方向がどこにあるかわからない。私たちがこの農林省設置法を論議するについては、やはり農林省方向というものがはっきりしておって、将来の五年後、十年後の米の需給についてはこうなるのだ、果樹はこうなるのだ、肉類はこうなるのだ、魚の輸送については、保管については、加工については、こういうことが行なわれるのだ、だから、こういう機構が必要なんだという角度から農林省機構改革が出てくるならば、話はわかりますけれども、やっておることはばらばらで、ただ機構だけを重箱すみをほじくるように改めて、ウイルスの研究をやりますというのでは、率直に申しまして、どこに焦点があるのかわかりません。私たちがこの機構改革について望みたいことは、農政方向というものをきちっと立てられて、農業基本法にうたわれている——農業基本法については、私ども問題がありますけれども政府政府なりに、その基本法に基づいて農政方向はこうだ、だから、このように機構を合わせていくのだというのであれば、話はわかるのです。  それでは続いてお伺いをいたしますが、毎年の米の輸入をずっと見ておりますと、輸入先が毎年毎年変わっておりまして、ことしイタリアから入れたと思うと、来年はどこだというふうに、輸入先をどんどん変えられる事情について、食糧庁長官官房長からお答えをいただきたいと思います。
  49. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ここ最近の食糧の輸入につきましては、そう輸入先別を変えておらないのでありまして、大体食糧事情も安定したような最近の趨勢にかんがみまして、準内地米としましては、台湾米が唯一の輸入先になっております。それから外米についてはビルマ、タイ、それから砕米についてはカンボジア、ベトナム、これが大体従来からの主要な輸入先でございます。本年度は、準内地米につきましては、輸入の交渉が台湾との関係におきまして非常におくれたわけであります。そこで、十三万トンの当初輸入計画の中で、大体台湾から期待をいたしておったわけでありますが、それが非常におくれてまいった。そこで米の買い付けには時期を要する関係もありまして、加州米とスペイン米、これが準内地米として輸入先を考えまして新しく買い付けた。その後におきまして台湾との交渉がまとまり、台湾米を入れる、こういうことになっております。  それから、あとの外米につきましては従来どおり、タイ、ビルマ、カンボジア、ベトナムから輸入することにいたしております。
  50. 有馬輝武

    有馬委員 食糧庁長官から、わりと安定したということでございましたけれども農林大臣にお伺いしたいと思いますが、最近の米の動き、これは御承知のとおりでありまして、予算委員会でも石田君がお尋ねをしておりましたが、端境期の対策は、いまみたいな形で十二分と思っておられるのですか。
  51. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いま食糧庁長官から御答弁申し上げた意味は、ここ数年といいますか、去年あたりまで非常に安定してきておった、こういう意味で、輸入先等も大体おのずからきまってきたと申しますか、そういうことを申し上げたと思います。ことしの米の需給等につきましては、再々申し上げておりますように、端境期にその年の米を食べていく、こういうような形が両三年続いておりますが、そういう意味で、よほど三十九年なら三十九年産米に食い込むというような状況だと思います。そういうことでございますから、輸入等につきましても、加州米等について早く手当てをいたし、その後また台湾との話がつきましたので、そういうほうを進めて端境期の対策をいたしていきたい。端境期の保有も、予算委員会等で申し上げましたように五十万トン以上は持てるような状況でございますので、端境期対策に不安なからしめるような措置をとってきておるわけでございますが、現在のところ、いまの措置を確保していきますならば、私は、端境期に混乱が起きるような、あるいは不安が起きるようなことはないであろう、こういう見通しでございます。
  52. 有馬輝武

    有馬委員 四月半ばに、十キログラム配給を受けにいくと、六・五キログラムしか配給してくれなかった、こういう実態がありましたが、食糧庁長官、これは御承知だろうと思います。期末の古米持ち越しは幾らぐらいになりますか。
  53. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 本米穀年度でございますか。——大体本米穀年度の当初持ち越していったくらいの量が、本米穀年度の期末にも持ち越されるであろう、三十九米穀年度も、期首におきまして古米が五万一千トン、本米穀年度におきましても、古米は大体それと同じくらいの量になると思います。大体古米のほかに、御承知のように、最近は九月、十月でうんと新米が出回る。政府の持ち越しとしては、全体の量が問題になるわけであります。その数量は三百万トン以上になります。
  54. 有馬輝武

    有馬委員 農政の問題にあまり立ち入ることは、本委員会の審議の進め方ではありませんので、これ以上お尋ねいたしませんが、私は、大臣のおっしゃった五十万トンを確保するということは、なかなか困難な状況にあるのではないか。また、本年産米の見通しを見ておりますと、これは東北は別かもしれませんが、私のところなんかでは、早場なんかが、高温のために苗の時代にすでに分けつを始めまして、早期出穂がありまして、なかなか早場の獲得についても困難が横たわっておるのではないか。そういたしますと、私がここでお尋ねしたいのは、これは消費者米価のスライド制の問題については予算委員会で石田君が尋ねておりますので、ここで繰り返して申し上げませんけれども、私は、食糧管理法というものは、生産指道守から始まりまして、検査、買い入れ、保管、確保、すべてが一貫して初めて食糧管理法というものが維持でき、そして管理法によって米が確保できる。しかも、やはり買い入れ価格については、一般の物価に見合って生産費を補償するものでなければいかぬし、そういう点から考えまして、やはり生産意欲をそぐような言辞があってはならないし、食糧管理法の体系についてこの際何か変化があるのではないかというような印象を一般に与えるということは、大きな問題だと思うのであります。そういう意味合いにおいて、決して楽観できないような状況の中において、大臣がスライド制の問題なんかを取り上げられたその企図について、全然わからぬわけです。いま一度その基本問題についてだけ、食糧管理法に対する大臣のものの考え方だけを、この際お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  55. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 基本的な態度は、いまの食糧管理法というものを堅持すべきだ、こういう私は基本に立っておるわけでございます。ところが、御承知のように、三、四年前から相当これは自由にすべきだ、もうすべて自由の時代に、食管と自動車の免許だけですか、こういうものだけを政府が押えているというようなことは、もうやめたらいいのじゃないか、こういう世論が非常に強かったのでございます。しかし、私は、こういうことは軽率にそういう方向へ走るべきではない。それがことしの事情などを見ますると、なおさら私の考え方が当たって——またあなた方の考え方もそうだったと思いますが、当たっているような感じがいたします。   〔委員長退席、伊能委員長代理着席〕 そこで私は食管法というものをこのまま堅持するということならば、食管法の円滑なる運営といいますか、いまお話しのように、生産から検査から、あるいは買い上げから保管から流通から、そしてまた消費者の面において、消費者の家計の安定を維持していく、こういう一貫したものを確保する意味におきまして、生産者のつくる米も消費者の食べる米も、米としては違いないわけであります。でありますけれども、やはり生産者にはできるだけ生産費に見合ったもの、消費者には家計の安定というようなものを、こういう別別の立場からできてはおりますけれども、この間に私はある程度関連というものは持っていいものではないか、そうでなくて、すべて関連を持たないで別々のものだというような形でこれを続けていくということになれば、これは相当財政面や何かから破綻を来たすというようなことにもなりかねない。それでは食管の制度というものは維持ができない。そういうことから考えますならば、ある程度の関連を持って、スライドということばが非常に誤解を招いたようでもございますが、消費者米価が上がったその分だけは生産者米価もある程度上がってもいいというような感じを持つべきだし、生産者米価が上がった場合に、ある程度政府の負担外に消費者も負担してもいいのだ。永久に消費者米価は固定しておくのだ、上げないのだというような形にしておきますると、私は、この食管制度というものも必ず堅持できなくなるようなおそれがあるのではないかと心配しましたから、これは就任の当初、非常にそういうような生産者の米価と消費者の米価との間に関連を持たして考えていくということが必要じゃないか、そういう検討をしたらいいじゃないか、こういうようなことを事務当局にも命じ、記者会見等におきましても、質問がありますので、そういう考え方を述べたわけです。食糧が不安なときにというような御指摘でございましたが、私は不安とは思いませんが、とにかく前よりは窮屈になっています。そういうときに、ことさらにそれを言い出して惑わすといいますか、不安をよりつのるような意図で申し上げているわけではございません。原則的な考え方です。ですから、いつでも会見のときには、ただし消費者米価を上げるというようなことはことしはやらぬということを必ず念を押しておりますし、また、生産者米価は上がるはずだ。これは物価の面におきましても、労賃の点におきましても、そういう方式でやっておりますから、幾ら上がるかは別にしても上がる、こういうことを念を押して記者会見等にも言っておるのでございますから、理論的に問題もありましょう。しかし、ことさらに因縁つけるというより、非常に私も悪いことを言ったような形といいますか、決して有馬さん、因縁をつけているとは思いませんが、理論的な問題だと思いますけれども、どうも農林大臣が騒がすんだ、騒がすんだというふうに言われますと、やはり騒ぐような結果になるかと思います。そういう点、私も十分注意しながら発言しておるのでありますが、私の考え方の基本を申し上げておったわけでございますし、また考え方の基本が私と違いますような御意見も、承っております。でございますので、そういうことがいいか悪いかというようなことについて検討をしてもらいたい、こういうふうな考え方でございます。
  56. 有馬輝武

    有馬委員 私は、農林大臣のきまじめさというものが、はしなくもああいう雰囲気をつくったんだというふうにあたたかく理解はいたしておりますが、しかし、いまの答弁の中にもありましたように、財政的な理由もあって食管法自一体云々というような、このものの考え方というものが、歴代農林大臣の中にやはり多かれ少なかれ受け継がれてきているのではないか。それが大蔵省に対する遠慮になったりして、消費者米価も云々ということばになって出てくるのではないか、私は、このようにも見ておるわけです。ですから、少なくとも三兆円をこえるような国の予算の中で、いまの食管特別会計の赤字とよくいわれますけれども、赤字ではないのでして、大臣がよく言われるように社会保障的なものでありますから、そういうことを遠慮しないで、ぴちっとしておるということが、やはり食管法を堅持する一番かなめになっていくのではないか、このように考えるわけです。ですから、それと同時に、本問題の中心点であります、これは先ほどお尋ねいたしました統計にいたしましても、園芸局にいたしましても同様でございますが、食糧事務所等についても、地方実態に即応する機構にしておくという、この根本的な態度をこの際明らかにしていただきたいと思うのです。具体的に申しまするならば、統計調査事務所と同じように、食糧事務所の出張所についてもこれを統合するよう指導はしておられないと思うが、出先の事務所長なんかは、これを一緒にしたらいいじゃないかというような構想をちらほら出したりなんかしますので、中西さんのほうから、農林官房としてはそういう指導は絶対にしていない、また将来もさせない、こういう基本的な態度をこの際明らかにしていただきたいと思うのであります。
  57. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 ちょっと前段のことで、私のほうから申し上げてみたいと思います。財政的な問題でございますが、食管の制度というものが、一つの大きな米に関する制度でもあり、あるいはまた消費者にとっては社会保障制度そのものではございませんが、そういうようなにおいといいますか、傾向がある。ですから、大事な制度だと思うのですが、御承知のように、財政的に触れたくありませんが、予算を編成いたしますと、必ず社会党のほうでは、食管の赤字が千億以上だ、それにとられてほかの農政なんかはちっともやっていないじゃないか、こういうようなことを始終言われるわけです。ですから、私は、いや、しかし、これは大きな制度なんだから、それを予算から除いてしまったのでは話にならないので、これもひとつ考えてもらいたい。そのほかに、ほかの予算を裏づけしたいのだ、こういうふうに申し述べておるわけでございますが、そういう意味におきましても、私は、ほかのほうの農政の費用というようなものを相当裏づけしなければ、考えておる農政が前進いたしません。そういう面におきまして、食管の赤字と私も考えておらないのでありますが、食管の費用というものが、ある程度まではこれでいいけれども、もう天井知らずにいくということになると、これはちょっとその面からの制約が、おのずから好むと好まざるとにかかわらず出てくるということも、一面頭にあるわけでございます。でございますが、私は、大蔵省に遠慮してとかなんとかいうことでなく、そういう意味においてさっき財政問題に触れたのでございまして、遠慮とかそういうことではございません。財政的な負担というものも、政府の負担があまりに大きくなり過ぎるということになると、これはやはり問題が起きてくる。そこで、ときどき消費者米価などを上げるというような形も出てくるのでございますが、その上げる方式について——いま上げるというわけではございませんが、何かいい考えはなかろうか。それについてスライドということばがいいかどうかわかりませんが、関連づけにおいて考える面があるのではなかろうか、こういうことを実は考えたわけでございます。少しよけいなことを申し上げたかもわかりませんが、そういう気持ちでおりますことだけは、御了承願いたいと思います。
  58. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま食糧事務所出張所の統廃合のお話が出ました。食糧事務所につきましても、その機能につきましては、先生の御激励を受けましたように、われわれといたしましては充実強化していきたいと考えております。ただ末端出張所配置につきましては、御承知のように、最近におきまする市町村の合併が進行し、あるいは農協の合併が進行しというふうなことによりまして、同じ担当農協の区域あるいは市町村内におきまして出張所が混在しておるというようなことで、地元のほうから何とか実情に合わせるようにやってもらいたいというような要望がありましたり、また出張所といっても一人しか職員がいないというようなところにつきましては、あるいは地方の実情によりましては、効率化する意味におきまして人数をもう少し有機的に活用するような方法が必要であろう、こういうふうに考えまして、末端出張所段階につきましては、食糧庁といたしまして、一応のいま申し上げたような実情なり、あるいは能率を高めて、食糧事務所の機能を強化する、こういう方向出張所の統廃合を行なっておるわけでございまして、これは計画的にどこにするとかいう性質のものではありませんけれども、いま申し上げたような趣旨で現実には対処いたしておりますし、今後もその考えでおります。
  59. 有馬輝武

    有馬委員 最後にお尋ねをいたしますが、一つは、大臣が天井知らずとおっしゃいますけれども、たとえば昭和四十五年度でも、千三百万トンぐらいにしかなりはしません。天井知らずになるわけはないのでありまして、限界があることははっきりいたしておるのでありまするから、いまみたいなことはあまりおっしゃらないで、その筋一本で進んでいただきますように、私はこの点を強くこの際要望をいたしておきたいと思います。  それから食糧庁長官、町村合併なり農協の合併なり以外には、絶対にやらないと受け取ってよろしゅうございますか。
  60. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 それに加えまして、たとえば申し上げましたように、たった職員が一人であるというような出張所は、出張所として意味をなさないような場合もあり得るわけであります。そういう意味で、三人なり五人なりが一緒になったほうがより効率的に活用できるというような場合もございますので、職員の融通につきましては、もちろん何らの不安もないような措置を講じながら、そういう出張所につきましてもあわせて考えていきたい、かように考えております。
  61. 有馬輝武

    有馬委員 食糧庁長官がそのような考え方を持っておられるのに、出張所で一人とか、あるいは町村が合併したとか、農協が合併したとかいうような例がないのに、地方の事務所長でそれを拡大解釈して、四、五カ町村を一緒にしようなんという動きもありますから、これだけは絶対にとどめていただくように、この際明らかにし、そして長官の答弁をいま一度確認をいたしておきたいと思います。
  62. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 食糧事務所長会議等におきまして、いま申し上げたような趣旨は、私も職員に対しまして、食糧事務所の今後のいき方等もありますから、十分徹底をはかって、いま申し上げたようなことを徹底いたしておりますので、いまお話しになりましたように、上から計画的にこうしなければいけないとか、あるいは何カ所にするのだというようなことについては、いま考えておりません。
  63. 有馬輝武

    有馬委員 くどいようでありますが、ここでおっしゃることと現地でやることは別々なことをやりますので、あえてくどくなるのですが、現地の要望があり、いま長官が言明になったような条件が整わない場合には、絶対にございませんというぐあいに、いまの長官の御答弁の中から受け取っておきますから、ひとつその線を再度事務所長会議その他の際には十分把握できるように御指示をいただきたいと存じます。  以上で私の質問を終わります。
  64. 伊能繁次郎

    ○伊能委員長代理 永山忠則君。
  65. 永山忠則

    ○永山委員 私は、農林行政を最も信頼をいたしており、尊敬すべき農林大臣、さらに農民も慈父のごとく慕っておる農林大臣に、レモンの抜き打ち自由化の問題に関して質問をいたすことは、まことに心外でございますが、すでに赤城農林大臣は、昭和三十一年ごろのレモンの自由化のはなはだしい弊害があることに気づかれまして、三十三年農林大臣におなりになりましたときに、この自由化を廃止なさったのでございますが、しかるに今回また突如として、全く寝耳に水でございます。事務当局も知らないし、もちろん党の関係者も知らないときに、突如として閣僚懇談会でこれを抜き打ち的に自由化をされる。ことにその際、自民党のほうの野原農林部長及び農産物非自由化対策の小委員長である小枝君から、酒折局長を通じまして、ひとつ十分実情を検討の上で慎重に御考慮を願いたいという申し出をしたにもかかわりませず、一日の余裕も与えず直ちにこれを官報へ出してしまうというような暴挙が行なわれておるのでございますが、その真相と、またどうしてもそれをやらねばならぬ事由がどこにあるか、どういうわけでそれをやるべきであるか、やることによってどういう利益が農村にあり、消費者大衆にあり、国にあるか、この点をひとつはっきり御説明を願いたいのでございます。   〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕
  66. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かにいま御指摘のように、三十一年にレモンの自由化を実施しましたが、三十三年に私が農林大臣になりましたときに自由化を撤廃してもとに戻したこと、そのとおりでございます。しかし、御承知のように、その後国際的な協定等が活発化した、そういうことで、日本も貿易の自由化の一面におきまして、ガットに加入するとか、あるいはその他いろいろな国際的機構に加盟しております。そういう面からいたしますると、貿易の自由化ということを強く国際的に——アメリカばかりではございません、国際的に要請されているわけでございます。そこで自由化品月も九十四くらいになっておりますか、農林物資につきましても、その程度になっております。七十数品目を農林物資としては自由化いたしております。こういうような情勢下にありますので、農林関係は、御承知のように農林水産物は国際競争力が非常に弱いものでございますから、できるだけこれは自由化のほうへ入らないように、拒否といいますか、いたしておる態度を続けております。しかしながら、全然どの品目も自由化しないというわけにはまいりませんので、逐次自由化していくものがございます。果樹でいえば、バナナなどもその例でございます。そういうような関係でございますが、自由化の根本方針からいいますならば、米麦等非常に主要なもの、あるいは酪農製品、この中でもナチュラル・チーズなどというものはずっと前に自由化してしまったものですから、そのままになっておりますが、これからでは、酪農製品あるいはでん粉等は、これは自由化を押えておりますが、政府が扱っているものあるいはその他重要の農産物等については、自由化を大いに進めていくという態度を堅持しておるわけであります。そのために、農産物等につきましても、逐次自由化すべきもの、あるいはもう自由化してもいいというような、一つのまあ分類的な——確定的なものではございませんが、分類的なものをもちまして、そのときどきに対処していくということにいたしております。もっとも、それにつきましては、外国との競争力が弱いのでございますから、あるいは関税の面において、あるいは国内の対策等によって生産性を上げ、競争力を増しつつ自由化をしていくという方針は進めておるわけでございます。そこで現実に自由化する場合に、事前にそういう対策と並行しながら自由化する物質もございまするし、あるいはまた事後にそういう対策をまた講じていくという面もございます。たとえばバナナの点などにつきましては、五〇%の関税率をだんだん下げていくということに方針がきまっておったのでございますけれども、リンゴの相場が下がったということにバナナが直接因果関係はないと私は思いますけれども、しかし、間接に影響がないとは考えられません。そういう面で、関税率を引き下げることをやめた。これは議員提出でありますけれども、そういうような現状であります。  そこで、レモンの問題でございますが、レモンにつきましては、これはもう自由化してもよろしいのじゃないかというような案は、持っておったわけでございます。しかし、あの時期に自由化というような考え方は持っておりませんでした。たまたま党の政調会長あるいは総務会長等も来ておりまして、経済閣僚懇談会という形で、話題が非常にあちらこちら飛びました。たとえばコンニャクの輸入あるいはノリの輸入問題、そういうところから、コンニャクもノリももう自由化したらいいじゃないかというような議論などが出ました。その中で最も強く出ましたのが、レモンを自由化していいのじゃないか、作付面積が少ないからというわけではございませんが——永山さんのお調べでは二百町というようにいつか聞きましたが、私のほうでは、百四十四町くらいの全国の栽培面積、あるいは栽培の戸数においても千二百戸くらいに見ておったわけでございます。その場でそういう話が出たわけじゃございません。それからまた、自由化すると、いままで大体独占的に流通のもとがなっておったように私もあとで聞いたのでございますが、そういうようなものがはずれてくれば、消費者に対しての価格も下がるのじゃないか。そうすると、生産者のほうへどういうふうに影響するかというようなことを、もう少し見ておりませんとわかりません。かりに半値以下に日本生産者価格が下ったといたしましても、温州ミカン以外の果樹類と比較いたしますならば、これは採算がとれる。それだけに、これに対しての措置は講じなくてはならぬけれども、そういうことであるならば、少し措置を講じてやれば、これはやっていける、自由化したためにこれがつぶれる、こういうようなものじゃないのじゃないかというようなこと、これはあとからの検討でございましたが、前々からそういう検討も内々いたしておったわけでございます。しかし、実はあの時期にレモンを自由化するということを予定していたわけではございません。いろいろお聞き及びのような情勢から、経済閣僚懇談会で自由化するということにいたしたものですから、それならその方針で進め、生産者の対策は生産者の対策としてまた考えていけばいいのじゃないか、こういうことから自由化に踏み切った、こういう事情でございます。
  67. 永山忠則

    ○永山委員 自由化をはからねばならぬという理由は、国際的要請があるから、できるだけ自由化を多くやるというだけのものでありまして、特にこれをやることが物価対策上必要だという意味もないじゃないですか。というのは、大体この需要関係というのが、八割が営業関係の需要で、二割が一般消費なので、特定需要者が多いわけです。極端にいえば、高級料理店が主として使っているというような問題であって、国民の物価政策の上から見て、対策上急いで、一日を待たずしてやらなければならぬという物価上の問題は全然ないわけです。それから国際的要請だといっても、これは自由化率はないのです、ゼロですよ。レモンという品目もないのです。品目もないし、自由化率もないし、物価対策の上から見ても、必要ないわけです。ただ自由化率が、レモン以外にかんきつは四つあるわけです。レモンあるいはオレンジ、グレープフルーツ、プラム、四つ合わせて一つの自由化率になっておる。それで一つ取り出して、レモンだけが自由化品目がないのです。自由化率もないわけです。それをこの場合急いでやらねばならぬという理由も何もないし、のみならず、そんなことなら、大臣がすでに就任されたとき、御存じのように、自由化をしたために、どうしても向こうはサンキストが一手販売社ですから、一手販売社がダンピングするにきまっているじゃないですか、独占資本だから。これを自由化しておいて入れるのを少なくしろといえないし、向こうは日本農民の生産がつぶれるまでやりますよ。対決できぬじゃないですか。幼稚園の生徒と大学生にかけ足をせよといって、ピストルを撃って進めというて、あとから手を出そうといったって、方針を立てようといったって、あとから道はありはしませんよ。前なら、幼稚園の子供を大きくして競争する手は幾らでもあるのです。にもかかわらず、ピストルを撃ってかけ足を命じていったならば、強い者はどんどん行くにきまっているじゃありませんか。前にもダンピングしたじゃないですか。一挙に三倍量以上のものを持ってきて、そこで生産者のレモンというものは無価値になって、輸送力さえ確保できないから、海へ捨てなければならぬ。あるいは自分のうちのふろに入れるというような状態までいって、瀕死の状態になった。だからして、この自由化を取りやめたのが赤城大臣じゃありませんか。そうして、今日自由化率もないし、さらにレモンという自由化品目もない、こういうのを唐突として、しかもよく話し合っていこうというにもかかわらず、一日も待たずして官報へ出さねばならぬということは、だれがどういつでも、サンキスト独占資本の利潤と横暴、日本に猛滅をふるわせる以外に何もないということなんですよ。そのほうで、もし日本の商社で手を組んでおるのがおるとすれば、その商社の利権のために利用されたということ以外は、どうしても受け取れぬ結果になるのでありますから、私は、この際農林省設置法をあげようというときでございますから、何もこの問題に対してだけ強くは言いませんけれども、別にあらためた機会に——大臣だけの問題じゃありません、これは何といっても通産大臣、企画庁の関係がコンビでやったことですから、機会を見てひとつ十分究明せねばならぬときがあるかと考えますけれども、大臣の言われるように、やらねばならぬという理由は、いまの説明を聞いたのでは、国際貿易の要請があるからというだけの問題なんです。それだけの問題で踏み切るということは、実に大胆不敵であるし、暴政もこの上ひどいものはない。ことに語るに落ちておるじゃないですか。農産物の自由化は、これは体質が弱いのだからなかなかできぬのだ、もう九二%以上いっているのだから、よほどこれを厳密に検討して、生産性を高揚して競争ができるような体質改善をしてからやるようにするという基本方針だということを言っているじゃないですか。バナナのように全然関係のくだものがないのでも、いろいろ論議をして、関税を七〇%に上げたのですよ。いろいろ議論している。抜き打ちにやったのは、これだけじゃないですか。そうしてそれがリンゴその他果樹にも影響するというので、政府は五〇%に関税率を下げようというのを、絶対に七〇%以下下げることは許さぬというので修正までしているでしょう。そういうようにして、互いに生産者と行政当局とはよく相談をしながら、そうして不満はありながら手を握ってやっているのが、現状じゃないですか。砂糖の自由化だって、甘味資源特別措置法という法律を出して、これは国会で流れましたけれども、次につくったでしょう。そういう法律まで出して甘味資源の育成、保護ということをやって砂糖の自由化をやっている。あの自動車産業はどうしているのです。自動車産業でも、特別振興法、特振法をいま出しているでしょう。商工委員会でやっているじゃないですか。ああいう大資本に対しても、政府は七十億の金を出している。体質改善をしてから自動車の自由輸入をしようというのじゃないですか。そういうときに、何らの対策もせずして、唐突として、しかもすでに経験のあること一ないのじゃありません、経験はある。もう理屈はないのですよ。競争にたえないところの品物を持っておって、向こうがたくさんのものをダンピングをしておろしてきたら、つぶれる以外ない。どんな理屈をつけたって、更生する道はないのですよ。ただ一つある。それは自由化を取り戻す以外ない。自由化をやめるということ以外ない。それ以外方法のつく道はありませんよ。私は、そういうような立場にあるこのレモンの関係を、どういうわけで一日を待たずしておやりになったかということに対して、大臣のいまの説明では全然承服することはできません。ただ非常に遺憾でございますけれども、サンキスト独占資本に振り回されている日本行政だということを、これを残念ながら言わざるを得ない結果であると思うのでございますが、この場合、大臣は自由化をやめるという強い決意をなさるかどうか。さらにこれに対してどうお考えになっているかをお聞きいたします。
  68. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 おことばを返すわけじゃありませんが、レモンは高級果実に入る。それは日本のレモンも同じです、そういうことを言えば。ただ、競争力が確かに弱いので、過去三年間にわたって相当の施策を施してきたのでありますが、私は、競争して、この自由化によってつぶれるというふうには見ておりません、先ほど申し上げましたようにいまレモンを自由化してかりに半値になっても。街頭では、七、八十円しておったのが二、三十円になっているようです。物価対策からいえば、これは非常に効果があったと思います。全然物価対策に効果がなかったとは見られないと思います。しかし、それはいずれにいたしましても、自由化したらつぶれてしまうのだ、これは早計じゃないかと思います。先ほどの試算によりまして、半分になっても日本のほかの果実よりはいいのでございますから、なお生産対策として方法を強化していくような形にすれば、優に果樹としてやっていける。私はこういうふうに見ておるわけでございますので、そういう生産対策につきましては、過去三年間のいろいろな実績もありますから、それに見合って方法を講じていきたいと思います。でありますので、私は、この自由化をいま取り消すというような考え方は持っておりません。
  69. 永山忠則

    ○永山委員 これは理屈じゃないのですから、すでに大臣みずからが御経験なさったのでありますから、あの当時四キログラム三百円が三円まで落ちたんですよ。生産地から消費地へ輸送する輸送賃もありはしないですよ。向こうは自由競争ですもの、多量に入れて、そうして内地品が立ち上がることができぬように持ってくるのは、当然じゃありませんか、これが自由競争じゃありませんか。それを半値ぐらいでとまるだろうというのは、全く空論ですよ。すでに前にそうでなかったじゃないですか。一個一円ですよ、四キロ三円ですよ、当時。そうして消費者価格は四十円を下らなかった。向こうは自由競争なんですから、太刀打ちできぬ日本産品をどんどん入れて圧迫して、農村の生産をこれができないようにするということは、彼らの常套手段じゃないか。それをせないだろうと考えるところに、根本的な間違いがある。そういうことがあるから、そこで準備をしなければならぬというのがあたりまえじゃないですか。太刀打ちできぬものに対して、何らの準備なくして、そうしてこれを自由化したならば、立ち上がれぬということは事実じゃないですか。観念的に半分くらいに下がる程度にするだろうということじゃない。すでに前にもうレモンの木を切らねばならぬということでどんどん切る態勢に入った。そして生産は激減いたした。慈善的につくる者はおらぬですよ。利潤が上がらずしてつくる者はおりませんよ。農村が生産意欲を失うたときは、米だっていま少ないでしょう。農林省の米の生産行政が適正でないから、米のようなものでさえも減退しているときに、将来の見通しのないところのレモンの生産確保なんか、できるものじゃありませんよ。基本問題については、いろいろ議論はありますよ。そういう観点で農村はこれを自由化をしても心配ないだろうということは、強弁にすぎないです。ことに大臣は、アメリカとの閣僚懇談会のあとで新聞で発表しているでしょう。レモンの自由化はいまやらぬ。将来は考えるが、やらない。そのかわり輸入ワクは拡大していこう。ミカンを買えばレモンの自由化をやってもいい。こういうことを強くマーフィー農務次官と話をしたということを当時の新聞で出しているでしょう。そうして過去三カ年間にわたってかんきつの試験場を広島、和歌山、鹿児島に置いて、レモンの系統調査をして、品質向上試験をしておる。さらに、去年はまた広島県の瀬戸田にもレモンの試験地を設けておる。そうしてまた熊本、広島、兵庫の三カ所には、レモンの催色、後熟倉庫を設置をした。これは酒折局長がこの間説明をいたした。こうしてレモンの生産に拍車づけて、生産農民がほんとうに意欲に燃え上がって、生産は急ピッチで進んでおった。あの統計の古いものを出して、そうして生産農民はわずかだ、生産量はわずかだ、いずれもみな半分ですよ。農林省の出しているものは、みな半分だ。そういうようなことで、この生産農民の死命を制するというようなことは、この場合どんなことがあってもひとつおやめを願わねばいかぬ。あなたが計画的にやられたんじゃない。あのときに閣僚懇談会に出たから、観念的にまあ心配なかろうというのでおやりになったんだが、よく調べてみたならばこれは大問題だから、これはもう一ぺん再検討して自由化をやめるという政治があっていいではないか。これこそ善政です。正しい政治です。正しい政治に生きようじゃありませんか。われわれは、そういうようなものの自由化を無準備に、何ら予告なくして、そうして体質の弱いものに対して唐突にやるという必要は、一つもない。私は、通産大臣がおられるときにこの暗躍したところの商社等の問題は触れますけれども、大臣はそのことには関係ないと思う。ただ、農村の立場においてひとつ考えを直してもらいたいということだけを念願いたしておる。私の声ではございませんよ。農民の声だということを忘れてはいけません。農民は深く大臣を信じておるのでありますよ。画期的な農村政策とは何か。画期的に農民の首を切るということが、画期的政策であってはいけません。画期的政策というのは、生産性を高めて、体質を向上して、そうして自由化に対処できる態勢に、すみやかに農村の体質改善をするということですよ。この準備を勇敢に画期的にやるということですよ。首を切るということを画期的にやることじゃないですよ。私は、いま一度大臣が再検討をされることを要望をいたしまして、次の機会に論議を続けたいと存じております。
  70. 徳安實藏

    徳安委員長 村山喜一君。
  71. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 五月七日のこの委員会で私が農林大臣お尋ねをいたしましたときにお答えをいただきました内容と、いま有馬委員の質問に齋藤長官がお答えになった内容との間に、現在行なわれている食糧事務所の出張所の整理統合の実情がちょっと食い違っておりますので、この点について、私は一点だけ問いただしておきたいと思うのであります。  私がこの問題を取り上げましたのは、食糧事務所並びに統計事務所の出張所の整理統合と併置併任の問題について当日限り上げまして、それに対しまして農林大臣から、町村合併、交通機関の変化に応じて、地元の人々の便宜のために行政事務の合理化を進めていくのだという御答弁を当時はいただいた。今日は齋藤長官から、農協の合併、それと地元の方々からの要望にこたえて、一人しかいないような出張所は、これを廃止して、有効に活用をして、機能を強化していくのだというお話でございました。ところが、現実に私の選挙区におきましては、吉松町という町があります。これは農家人口が、全人口の半数以上をこえる町であります。この出張所を強引に廃止するのだということで話が進められておる。そこで、農協の隣に出張所がございますが、そこには職員が四名おります。この四名の職員が、その吉松町の農協とタイアップをいたしまして、非常に活躍をいたしているのでありますが、隣町の栗野町からコンパスではかったときに十四キロの範囲内にある、だから、これは廃止すべきであるというのが、鹿児島の食糧事務所長の強引な押しであります。そういうようなことから、地元では、ひとつ農協が主体になって、この際そういう廃止に対する反対運動を農民決起大会を開いてやろうじゃないかというようなところまできておる。また、もう一つそういうようなところがあります。それは国分市の近くに霧島町という町があります。ここも農家入口が全町の六割以上を占める農村地帯であります。ここにも四名の職員が、農協の隣の建物の中に入ってやっておる。そういうところが現実に廃止をされようとしておる。一体これは、先ほどの説明と、どういうふうにわれわれは理解をしたらいいのか。地元に行ってみますと、そういうような動きが出てきている。だから、私は、有馬代議士が先ほども申しましたように、この本省の計画というものは、先ほど齋藤長官も言われましたように、計画的にやるべき筋合いのものではないのだ、こういう話でございましたが、現に昨年から鹿児島県では、三十二の出張所を廃止するために強引な計画が進められている。これは一体どうしたことか。さらに今度川内市というところ歩農協合併をやりました。農協の合併は促進すべきだと思っている。しかしながら、その都市部にある市の農協が、いままで四つの農協があったのを統合して、それぞれいままであったところには支所を置くようにしたわけです。下東郷であるとか、永利、水引、高江というような地域にそれぞれ農協がありまして、そうして米麦を入れる倉庫も、政府指定の倉庫もございます。そして農民はそこに参りまして、もみの乾燥の程度を調べて下見検査を受ける。それによって今度はいつ刈り入れをしたらいいかということで相談をして刈り入れをやり、そうして農協の機械を使って脱穀をやり、倉庫の中に入れる、こういうような仕事をいままでやってまいった。ところが、今度はそういうような地帯からこの出張所がなくなりますと、農民は洋服に着がえて町までバスに乗って出かけていかなければならぬ。こういう結果が出てきているわけです。そういうような状態が一方に出てきておりますので、この川内におきましては、支所がありますが、支所は白アリでたいへんな老朽した建物でありまして、その建てかえ増築をするために九十万円の予算がことしついていると聞いている。その九十万の予算で建物をつくって、いままで四カ所におったものを一カ所に集めていくのだという方針だという話であります。ところが、この四カ所のいままでありました食糧事務所の出張所におきましては、借り賃が五百円、一カ月二千円の経費で済むわけであります。九十万円の金をかけてやるだけの予算があるならば、私は、この前の委員会で申しましたように、大口というところは類火の災害をこうむって焼けてしまって建物がない。それを早急につくってくれといっても、それは金がありませんというので市の建物に雑居しているような、こういう状態のほうに金を回さないで、そういうような整理統合に、しかもそれは農民に喜ばれているか、その現地の人たち、地元の人たちの要望はどうかといえば、先ほど御答弁をいただいたのとはまるきり反対であります。このような計画が強引に押し進められているのは、一体あなた方はどういう行政指導をやっておいでになるのか。農民大会でも開いて、この廃止については反対だというのろしを上げなければ、あくまでもおやりになるつもりなのか。その点についてお伺いをいたしておきたいと思うのであります。
  72. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいま鹿児島県内におきまする出張所の統廃合についての現状をお話しがございましたが、私もその間の詳細を明らかにいたしておりませんので、的確なお答えはできかねるかと存じますが、先ほどから申し上げましたように、先般農林大臣からも御答弁がありましたように、われわれとしては、市町村の合併であるとか、あるいは職員が非常に少ないところといったようなことで、その後交通関係事情も変わってまいりましたので、行政能率あるいは業務能率を高めるような意味におきまして、出張所の統廃を進めていったらいいのじゃなかろうか。進めるにあたりましては、中央から目標数を示すようなことはしないで、それぞれの出張所におきまして、事務所長がそれらの事情を勘案してきめるというふうにいたしておるわけであります。現在のところ、私どもいまお話になりましたことについて詳細を知りませんので、もしそういう事態がございますならば、十分私のほうでも調べまして、また機会をあらためて御答弁申し上げます。
  73. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いまのお話、いまここでお聞きしたわけでございますが、私どもの方針につきましては、先ほど申し上げたとおりでございます。行き過ぎや妥当を欠くようなことは、調べた上で改めさせます。
  74. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 ぜひその点はそのように措置していただきたいと思います。これはただ職員だけではありません。農民の人たちが非常に不便をこうむる。農民のために食糧庁の行政というものをやはり考えていただかなければ、ただ形式的にコンパスで十四キロの範囲内にあるからここはつぶせとかいうような、そういうしゃくし定木の行政をやってもらったのではたまらないわけですから、ぜひ善処方を要望申し上げておきたいと思います。  それからもう一点でございます。これは、御承知のように、昨年鹿児島の食糧事務所の庁舎が新築落成を見ました。そこでこの所長室あたりにあります備品、装飾品等に対して、業者から多額の寄付がなされた。所長室の壁にかかっております絵画であるとか、あるいは机、いす、これは金額にして約二十万円程度だ、こういうふうに言われておるわけでありますが、これは本庁もこの寄付については認めている。こういう話を現地の管理者はいたしております。そこで認めているとすれば、これは物品管理法の第二十三条、第二十四条の規定によって受納する手続をとっていなければならない。その手続がとれているものがどうか、この点を承っておきたいのであります。それからなお、最近は町の声として、そういうような業者の倉庫に政府保管の米穀が農業倉庫から移されている。こういうようなうわさが飛んでいる。というのは、やはりそのような落成に際して寄付金を業者が集めてやったがために、そういうことになっているのじゃないかといううわさであります。落成式のときにも、たいへんなサービスが行なわれたというふうにも聞いております。こういうような状態は正しいことではなくて、昭和二十三年一月三十日の閣議決定に違反をする事項である、こういうように考えますが、この寄付として受けました物品の管理については、どういうふうになっているのか、この際お尋ねしておきたいと思います。
  75. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 食糧事務所等が落成いたした際に、いろいろ関係のところからそのような寄付の申し出があるというようなことも、承知いたしております。食糧庁といたしましては、とかくそういうことがいろいろの問題になる可能性もありますので、厳にそういうことのないようにということで、実は所長会議におきましても、そういう指導もいたしております。いまお話しになりましたような件については、いま初めて聞きましたことで、さっそく調べまして、正当な手続となるように是正いたしたいと思います。
  76. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 閣議決定では、官公庁における寄付金等の抑制についてという立場から、原則として寄付は受けてはならない。ただし主務大臣が弊害がないと認めたときは受けられる。しかし、この場合においても、物品管理法の二十三条、二十四条によって正しく処理しなければならない、こういうふうになっておる。ところが、そのような物品が現に存在をするということは、しかもそれを本庁は知らない。一体これはどういう行政が行なわれておるのか、こういうふうに私たちは思わざるを得ない。したがいまして、先ほどから齋藤長官並びに赤城農相がお話になりますように、食糧事務所あるいは統計事務所の出張所の統廃合の問題につきましては、住民の要望を十分尊重して、その上に立った行政を進めていただきますように要望申し上げて、私の質問を終わります。
  77. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  78. 徳安實藏

    徳安委員長 本案に対し内藤隆君外二名より、三派共同提案にかかる修正案が提出されております。     —————————————    農林省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案   農林省設置法の一部を改正する法律案の一部を次のように修正する。附則第一項を次のように改める。  1 この法律は、第十七条の改正規   定及び第二十二条の三の次に一条を加える改正規定を除き、公布の日から施行し、第十七条の改正規定及び第二十二条の三の次に一条を加える改正規定は、公布の日から起算して三月をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第九十一条第一項の表の改正規定及び附則第二項の規定は、昭和三十九年四月一日から適用する。     —————————————
  79. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、提出者より修正案の趣旨の説明を求めます。内藤隆君。
  80. 内藤隆

    ○内藤委員 ただいま議題となりました農林省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案につきまして、提案者を代表してその趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に配付してありますので、朗読を省略させていただき、その要旨を申し上げます。  本改正案は、植物ウイルス研究所の設置に関する規定及び門司市を北九州市に改める規定を除き、「昭和三十九年四月一日」から施行することとしてありますが、その期日はすでに経過しておりますので、これを「公布の日」に改め、定員に関する改正規定は、本年四月一日から適用することとしようとするものであります。よろしく御賛成をお願いいたします。
  81. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて修正案の趣旨説明は終了いたしました。     —————————————
  82. 徳安實藏

    徳安委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入るのでありますが、別に申し出もございませんので、直ちに採決いたします。  農林省設置法の一部を改正する法律案について採決をいたします。  まず、内藤隆君外二名提出の修正案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  83. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、本修正案は可決いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  84. 徳安實藏

    徳安委員長 起立総員。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて農林省設置法の一部を改正する法律案は、修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  85. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  86. 徳安實藏

    徳安委員長 次に、法務省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がございますので、これを許します。稻村隆一君。
  87. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 法務省設置法の一部を改正する法律案は、定員増加の問題ですが、定員増は五百八十六人、本省三百八十六人、うち検察庁九十一人、公安調査庁二百人増員するということになっております。この問題につきましては、もうすでに山内委員、村山委員、田口委員から詳細に御質問がありましたし、また、法務当局からもいろいろお答えがあったわけであります。私は、法務省の仕事が非常に多忙であるし、重要な問題でありますから、特に犯罪検挙は、現在の世相に徴しまして、徹底的にやらなければならぬと思うのです。ところが、公安調査庁で二百人ふやす。これは私は全く無用だと思うのです。かえってこれは弊害が非常に多いんじゃないか、こう私は考える。第一、いろいろ御答弁の中にありますが、増加した二百人のうち、八十人を右翼団体の査察のためにやる、百二十人を左翼の査察のために使用する、こういうことになっておるわけです。これは往年の特高と同じですよ。特高警察というものがあって、右翼係、左翼係というものがあった。当時は治安警察法というものがあった。いま治安警察法はないけれども、破防法がある。これは厳格に言って憲法違反ですよ。一つ団体を対象として査察をして、それを犯罪検挙の対象として査察をするなんて、これはもう基本的人権をじゅうりんするもはなはだしい。共産党は天下の公党ですよ。それを査察をするために公安調査庁の調査員をふやすとか、公安調査庁が必要だなんということは、私は根本的に間違った考え方だと思う。これは幾ら弁明しても、特高と同じなんです。私は、自分のことを言うのはおかしいですけれども、かつて特高警察にひどい目にあった。学生時代に私は自分の村に帰った。当時は大地主があった。それでその大地主に小作料を納めるために、多くの小作人は自分の娘を売って納めておったわけです。私も地主のむすこですけれども、学生時代に、二十三くらいのときですが、帰ってみて非常な不合理に憤慨いたしまして、農民組合をつくったのです。そうしたら、直ちに——その当時は特高というのはなかったが、高等警察の対象になって尾行をされて、就職もできなければ、いわゆる主義者として——私は初めは社会主義なんて知らなかった。いわゆる当時吉野作造とかああいう人たちのデモクラシーの信者だった。ところが、だんだん農民組合をつくったために主義者にされちゃって、とうとう一生就職もできない。農民運動をやらざるを得ない運命に立ったわけです。それから昭和三年の三・一五の事件です。そのときに、労働農民党が田中内閣によって解散させられた。治安維持法は、まだ改正治安維持法ではなかったから、そう重いものではなかったのですが、やっぱり十年以下です。破防法と同じです。最高十年だっと思ったのですが、大阪で検挙されてひどい拷問を受けた。それから新潟に連れてこられまして裁判になって、検事は十年の求刑をしたのです。ところが、証拠がないものですから無罪になっちゃった。こういう経緯もあるのです。実際公安調査庁なんというものが、共産党や右翼を対象として査察の仕事をやって、そして破防法を適用するというようなことになれば、これはもう特高警察とちっとも変わらない。これは法の前にすべて平等ですよ。共産党は天下の公党ですよ。暴力行為をやって犯罪を犯す、あるいは革命的な一つの暴力的な手段によって政権の獲得をやる、こういうふうなことは、一般刑法で厳格にやれば、幾らでも罰することはできるのです。これは共産党だけが暴力をやるわけじゃない。右翼だけが暴力をやるわけじゃない。至るところに暴力が横行しておる。たとえば法務大臣は、河野邸を焼いたこととか、あるいは野坂氏を襲撃したというふうなことを問題にしておるけれども、これは大臣であろうが、政党の首領であろうが、法の前には平等であって、何も特別に、河野邸を焼いた者があるからそれに対して特別の処罰をしなければならぬとか、野坂参三氏をやったから特別のあれをしなければならぬとかいうのじゃない。そんなことはない。至るところに放火とか、暴行とか、脅迫が行なわれておる。そういう場合に、現刑法によっても、断固として、どんな有力な者であろうとも、どんな者であろうとも、これを検挙して厳重に処罰することがむろん必要です。それをやりさえすれば、特別なそんな共産党相手とかなんとかのために、公安調査庁などが人員をふやしてやる必要はない。明瞭に憲法違反ですよ。法務大臣、どう思いますか。あなたも、私と同じように監獄に入った御経験がある。いわゆる勝者が敗者をかってにさばく不当な裁判によって、数年間監獄におられたでしょう。そういうことは、私はよくわかると思うのです。こんな共産党を相手の、天下の公党に対して特別査察をして、そうして検挙しようなんというものは、私は絶対必要ないと思うが、どうお考えになりますか。
  88. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 戦前の特高警察につきましてのいろいろ御所感でございますが、これはいま私は、それに対して別に賛成とも反対とも申し上げない次第でございます。破防法の施行につきましては、すでに議会の御決議で法律となって、長年施行されております。決して憲法違反ではないと確信をいたしております。なお、破防法に基づく刑罰事件に関しまして、その検挙はこの調査官がいたすのではございません。一般の検察官の所管でございます。ただいまお話の調査官は、破防法によりまして規制を必要とする団体または団体の活動に対しまして、規制をしようとする場合、そういう調査に当たる者でございます。多少お尋ね意味と違うかもしれません。しかし、この規制の対象になっておったもののいろいろな行動につきましては、問題が問題でございまして、その実情を把握するということが、きわめて必要でございます。そのゆえに、公安調査庁が破防法の成立後できまして、今日まで経過をいたしておるのでございます。その人員の増加につきましては、破防法の適用を受けます団体が増加し、その調査対象が非常にふえておる次第でございます。したがって、その調査を適確にいたしますためには、対象が非常にふえ、またその対象の団体の非公然化、こういう問題も進んでおりますので、これを人権を侵害しないように、また公共の秩序、安全のために調査しますためには、慎重なる行動、配慮をし、また適確を期さなければならぬ。そのためには、破防法施行以来、公安調査庁の増員というものは比較的少ないのでございます。現状を見まするに、どうしても増員が必要である、こういうふうに思って提案をいたしました次第でございます。
  89. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私は、共産党は天下の公党だから、調査の対象としてやる必要はないというのですよ。村山委員も言っておりますけれども、内閣調査室もあるのですから、そういうふうなものが、いろいろな国内の政治団体調査とか、そういうことを徹底的にやればいいのです。公安調査庁当局がそういうことをやって——何も直接公安調査庁が検挙するわけではないでしょう。けれども、それは検挙の基礎になるのです。いろいろ間違った調査もするし、報告もするし、大体それはできるものではありませんよ。かつては特高時代に、巡査がしまいには大学教授の思想を取り締まった。そういう時代が出てきますよ。だから、何のために共産党を目標にして調査をする必要があるのか、それをお聞きしたい。
  90. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 特高も警察の一部でございます。非常に間違ったことをやったのも、警察の一部でございます。それから、警察の中でも、調査の対象によりまして、いろいろ部局や専門家があると存じます。同じく、破壊活動は特殊のものでございますから、そういう問題に精通し、その事情に精通した特殊の調査機関があるということは、これまた必要やむを得ないことでございまして、そのゆえに公安調査庁というものができ、調査官を置いている。もうすでに相当長い経過を経て、今日その制度になっている次第でございます。それで、共産党を調べる必要があるか。共産党が破壊活動をして、規制すべき団体であるということは、破防法に基づきまして、決定によって認められておるところでございます。暴力的破壊活動をする疑い十分にありと、きまっておるわけでございます。
  91. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 破壊活動をやるというのは、何も共産党に限ったことではない。至るところにある。どうして共産党だけ対象にするのです。共産党を対象にするのなら、社会党も自民党も対象にしなければならぬ。なぜ共産党だけ対象にしなければならぬか。どういう事実によって、どういう理由によってするのか。
  92. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 社会党と共産党と、われわれは、全然その意味で同じと見ておりません。ほかにいろいろの団体がございますが、破防法に基づいて規制すべき団体と認定する手続の方法が規定してありまして、その規定によってやるわけでございます。右翼団体でもそうでございます。暴力をふるった者をみんな破防法によって調査をするわけではございません。暴力をふるう目的にも、いろいろ相違があるわけでございます。その区分がございます。なお、具体的な事実が必要ならば、政府委員をしてお答えいたさせます。
  93. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それがどうしてもわからない。共産党とか特殊な右翼団体だけを対象として調査をする、そういうことがわからない。どういうわけでそれをやるのか。
  94. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 先ほど、公安調査庁は古い特高の復活ではないかというようなおしかりを承りました。しかし、公安調査庁は、特高とは全く性格を異にする国家機関でございます。  第一点といたしまして、終戦前におきましては、治安維持法というような結社法が行なわれておりました。国体変革、私有財産の否認というようなことを目的、内容といたしまして、結社活動をやるという者一切を処罰するような結社法でございましたが、破防法は、刑法で明確に規定されている各種重大な犯罪を政治目的をもって行なう、自己の政治的主張を貫徹するために、刑法に規定されている各種重大な犯罪をあえてするというような犯罪を取り上げまして、これを明記し、暴力主義的破壊活動という概念で総括しておるわけであります。しかも、こういう暴力主義的な破壊活動が、最近団体組織をもって行なわれる、自己の政治目的を貫徹するために、団体組織によって暴力主義的な破壊活動を行なうというような傾向が見えてまいりました。したがいまして、暴力主義的な破壊活動に対しましては司法処分をもって臨みますが、その根源である団体に対しましては、司法処分をもってしてはこれを規制することができない。したがいまして、警察とは全く別個の機関である公安調査庁というものを実施機関といたしまして、この団体に対する規制処分を請求する。しかも、証拠を集める公安調査官は、絶対に人を引っぱる強制力は持たないというような配慮をいたしまして、しかも破防法二条、三条では、調査の行き過ぎを戒める厳格な規定もございます。また、公安調査庁の長官が上司のお許しを得まして公安審査委員会に規制の請求をいたしますと、準司法的な手続によって公安審査委員会で事案の内容が審理される。さらに、公安審査委員会が規制処分を決定いたしましても、これに不服の場合は訴訟に訴えて争うことができるというようなたてまえになっておるわけでございます。絶対に旧特高とはその根本的な性格を異にするものであると考えておるわけでございます。  次に、日本共産党をなぜ調査するのか、これは憲法違反ではないかというようなお疑いが、御質問にあるように承る次第でございますが、いかなる団体といえども、自己の政治目的を貫徹するために暴力主義的破壊活動に訴えるというのは、結社の自由の極端なる乱用でございます。こういう結社の自由を乱用した行動に対しまして、公共の福祉を維持する観点からこれに必要、かつ、相当な規制を加えるということは、憲法でもいささかの抵触をする余地のないものであると考えております。特に日本共産党につきましてだけ私ども調査の対象としているのではないのでございまして、調査の対象にはみだりにすべきものではない。よほどの容疑のある場合に、それを部内におきまして責任を持って指定いたしまして、その団体についてのみ調査をやる。かってに公安調査官が自分一人の思惑でいろいろな政治団体や政党について調査をしてはならぬというように、しぼって運用しておる次第でございます。日本共産党につきましては、遺憾ながら、同党が、昭和二十六、七年ごろ、内乱の正当性、必要性を主張しまして、あるいはその実行の準備といたしまして、全国各地において集団的暴力活動を計画、企図する等、暴力主義的な破壊活動を行なった疑いがきわめて深いのでございまして、これはすでに御承知のことと存ずる次第でございます。しかも、同党はその性格を捨てておらぬ。将来も反復継続してこの種破壊活動に出るおそれがあるというような団体と考えまして、これに必要なる資料をもってそういうふうに私どもは一応指定いたしまして、破防法に基づいて日本共産党の調査をいたしておる次第でございます。
  95. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それは治安維持法と破防法の違いは知っていますよ。そんなことは百も知っておる。しかし、一定の団体を目標として、犯罪の危険があるというので調査をして、一つの法律を適用してこれを罰するのだから、それは法律の内容は違っても、結局は同じようなものです。それから私は、共産党の弁護をするわけでも何でもない。弁護する理由も義務も何もない。私は、憲法上の自由を擁護するために言っておる。共産党だけを対象として、共産党だけが暴力をやる——暴力をやるところはほかにたくさんありますよ。保守党なんかも暴力団を使ってやるし、危険性がある者はたくさんある。場合によっては社会党だって、いろいろなストライキなんかのときには、こういう問題も発生するかもしれぬ。それを特別共産党だけを区別して、暴力をやるものは査察をするなんということは、これは間違いです。それからあなた方は共産党はすべて暴力革命をやるというようなことを言っているけれども、そんなことはないですよ。たとえば中ソ論争にもあらわれているのだけれども、この点はもっとよく勉強してくださいよ。警察当局はよくわかりませんで、そうして自分の主観的な観念から人を取り締まるとか、天下の公党たる団体をあらかじめ犯罪の容疑があるとして査察をするようなことは、天下の公党を侮辱したものです。現に現代科学が非常に進歩して核戦争の時代になってきたから、内乱から核戦争に発展する危険性が十分あるのですよ。それだから、フルシチョフが一つ——何もフルシチョフの理論には賛成でも何でもないのだが、つまり現代科学が発展して、階級闘争、内乱も核戦争になる。そこで自分が一番きらいなアメリカとも妥協をして平和共存をやっていこう、そう言うのですよ。必然的な科学の進歩の結果なんです。これは本質なんです。暴力でも何でもない。現在においては、階級闘争、内乱が国際戦争に発展する危険性が十分あるのだ。そうすると、共産主義も資本主義もない。もとがなくなってしまう。つまりそういう科学の進歩から、共産党が方針を変更しているのです。だから、いままで西欧のような、共産党の理論ではなかった、いわゆるデモクラシーの発達した国においては、共産党でも、国会の多数を通じて政権をとる道があるということを、イタリア、フランスあたりは言い出したのです。それをソ連が承認しているのです。そういう道がある、こういうことを言っている。ですから、共産党だけが暴力をやるにきまっているのだというのは間違いです。暴力を振うものは、政治的にいろいろな右翼団体と結んだりして、暴力でもって何かやろうという傾向は、これは共産党だけじゃない、保守党にもどこにも十分あるのです。そういう傾向の全部を査察しなければならないことになるのです。しかも私は申し上げておきますが、いま公安調査庁全員で千八百十五人だというのです。これに二百人増員して幾らになりますか。これは田口委員の質問に対しまして、あなた方の御答弁では、十一万の党員、十万の民主青年同盟員、それに朝連及びその傘下が十九万ある。そんな多数の者を査察ができますか。これは事実上効果はないですよ。そうかといって何十万人にもふやす——五万人にも十万人にも公安調査庁の調査員をふやすということは、できるものじゃありませんよ。千何百人で何十万の人をどうして査察できますか。それはかつてのある独裁国家のように、またある独裁国家でやっているように、徹底的にやるには、民衆の間にスパイ組織をつくって相互に報告させる。こういうことをやったら別ですよ。こんなことをやったって効果はありませんよ。何の効果がありますか。その点どうです。
  96. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お説は効果なしと言い、私どもは効果があると信じている。それから核兵器が発達したから内乱が起こらない、これは私ども全く同意いたしません。それは世界戦争的のものは起こりにくいということは、私は肯定いたしますが、内乱的の革命、武力革命、こういうものとは関係ございません。現にあれから幾らでも方々でクーデターが起こっているじゃありませんか。何もクーデターをやったら核戦争に発展するときまっているわけではない。核戦争に発展するからクーデターを控えるといわけではありません。フルシチョフのことばも、私の知っている限り、何にもそういうことは因果関係がない。それから警察でも、怪しい人一人に一人ずつつけるというわけじゃないのです。そうかといってオール・オア・ナッシングで、何十万人おるからゼロがいいというものじゃないのです。現に相当な調査もできておりまして、役に立ちます。あらゆる共産党員、あらゆる民青同盟員を一々尾行するわけでもない。相当な効果をあげておりますが、現在人員では不足でございますので、非常に切り詰めまして、ほかにも増員を要するものがたくさんございますので、要求をして御審査を願っておる、こういう次第でございます。
  97. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それはすべての内乱が核戦争に発展するというものじゃないのです。危険性があると私は言ったのだ。ラオスやベトナムくらいではそれはならぬかもしれぬが、あれが発展していってごらんなさい。だんだんそれが核戦争に発展する危険性を持っているのですよ。たとえばベトナムの戦争が朝鮮事変みたいにずっと長く続いてごらんなさい。マッカーサーの回顧録にあるように、マッカーサー元帥はあのとき核兵器を使うことを主張したわけでしょう。だんだんあれがどろ沼に落ちて、あれが発展していって、そうして中共が人海戦術をやる。これは一つの想定ですが、そういう可能性があるということなんです。私はそういうことになるというわけじゃない。その点誤解のないようにしてもらいたい。そうすれば、アメリカは、もしソ連が出ないとしたら、あるいはあのベトナムの内戦がずっとどろ沼におちいれば、戦術的な核兵器を使うかもしれないですよ。そうしたら、もしソ連が出てきた場合に、これは全面的な核戦争に発展する危険性を持っているのですよ。キューバの内乱の問題は、核戦争になるところじゃなかったですか。だから、すべてが核戦争になるというのじゃないのだ。小さなものはなりませんよ、お互い常識があるから。けれども一つの内乱がだんだん発展していけば、核戦争になる危険性が出てくるというわけだ。それだから、核戦争というものを避けるために、そこに平和共存の理論というものが生まれた。近代科学の発達によって、共産党内に議会主義が生まれたというのです。そういうことを言っている。あなたは私の言うことを誤解している。それから何度も繰り返して言いますけれども、私は、何十万の人間を調査するなんということは、全く効果がないと思う。そこで村山委員の御質問にあったように、内閣調査室があるでしょう。内閣調査室はすべての日本国内における政治情勢の調査をしているのだから、そこで調査をやればいい。必要なときには、その調査を借りればいい。内閣調査室は、共産党の調査もみんなしている。こういう調査というものは一元化して、そうして優秀な人材を集めて、そこで正確な調査をやればいい。それを公安調査庁が僣越にも調査をして、そしてあいつは赤だとか、あれはどうだとか、あの団体はこうだとかやることは、私は特高時代に逆戻りすることだと思う。人の自由に干渉し、そして憲法に認められた一つ団体をあらかじめ危険なものと認定をして、そしてそれを査察の対象にするなんということは、私は、これは憲法上重大な問題だと思っているのです。
  98. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 私は、少しも誤解していないのです。内乱がいろいろ発展しまして核戦争になることが絶無であると言っているのじゃないのですよ。内乱から発展して核戦争になるというケースは全然ないなんということは申し上げているのじゃない。と同時に、内乱があったら必ず発展して核戦争になるということは、おそらく間違いじゃございませんか。内乱があったら必ず発展して核戦争になるということは、間違いでしょう。また、全然ならぬとも言えないわけだから、核戦争になるから、すべての者が内乱はこわいからよす、こういうことには、私は世界情勢はなっていないということを言っている。核戦争になるときまっているから、どんな内乱もない、クーデターもない、革命もない、こうはいかない。核戦争になる危険があり、核兵器が発達しても、そういう破壊活動というものはあり得るということを、私は申し上げているのです。そういう次第でございますから、私は、革命的暴力を用いる計画が世の中に絶滅したとは思わない。私ではございません、政府は思わないのでございます。こういうものに警戒する必要はあると思います。  それから、内閣調査室があればいい。内閣調査室は一体何をやるのですか。それは覚えておりませんが、きわめて少ない人数でやっておる。そこで、あそこは政治情勢全般の検討をやっておりますので、それは政治情勢に関係いたしますから、破壊活動も全部調査しております。それで十分だという仰せは、それこそおかしい。何人もいなくちゃ調査できないとおっしゃる。何百人いたって、その一部でいいじゃないか、これはいかがでございましょうか、そうはいかないのであります。
  99. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私の言うのは、警察や検察当局がそういうふうなことをやるのは、弊害がある、危険があると言うのです。ああいう一つ団体、憲法上許されている公党を、それは暴力をやる危険があるといって査察をやるなんということは、これはいかぬと言うのです。内閣調査室をもっと充実して、これは一元化して——たくさん分ける必要はない。これは官僚の最も欠点である。一ところに一元化して、そこで共産党の調査でも何でも、必要に応じてやったらいい。何も警察当局がやる必要はない。そんなことをやったら、必ず弊害が出ると私は思う。  それから、共産党の問題でありますが、一体共産党がなぜそれでは中国やソ連で勝ったかということは、中国やソ連の社会情勢を見ればわかるのです。日本のようなデモクラシーの発達した国で、共産党が暴力によって——合法的な党なら、共産党もしかたがないのです。暴力で政権をとるなんという素地は全然ない。これは議論になりますけれども、歴史を見ても明らかなんです。ロシアで共産革命が起きた。ロシアは農奴国家です。自由がないでしょう。全くツアーの独裁国家で自由がない。しかも民衆が困っておった。そこに共産党が暴力革命、政権をとる素地があったのです、いいとか悪いとかは別問題として。日本にはその素地はない。中国はどうか。中国は軍閥政治で、民衆は塗炭の苦しみにおちいっておった。そこに、日本の軍閥がばかなことをやって、さんざんむちゃくちゃをやった。そういうことで中国に共産党の暴力革命が起きた。これは善悪の問題ではないのです。これは起こらざるを得ない実情にあった。ところが、日本のような、現在はデモクラシーが発達しているし、元来デモクラシーが発達している国では、暴力革命なんか起きない。ヨーロッパを見てもそうでしょう。日本の、現在人民主権の憲法がある、デモクラシーがある、そういうところで、共産党の暴力革命が成功することはないですよ。そう思いませんか。そんな認識によって、ソ連や中共などと同じように考えて、そして日本のいまの段階において、明治憲法のもとにおいてすらなかったのですから、共産党が暴力革命をやって政権をとるなんという可能性がありますか、どう思いますか。
  100. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまのは御議論のようでありまして、御質問ではないようです。大体共産党といっても、マルクス・レーニン主義でも、資本主義が燗熟して、それから共産主義に移るという公式論があるようであります。しかも資本主義は、共産党の側からいえば、ブルジョア民主主義の状態でないといけない。ブルジョア民主主義という状態で階級闘争を起こし、独占資本に反対する。そういうことから革命が起こるという公式論がある。いまお話しのように、ソ連や中共はそうじゃない。マルクス・レーニンの説は、歴史的に見ればたいへん間違っておるという批評があるくらいでありまして、あなたのお話も、個人として一理あると伺っておるのです。しかし、チェコのような革命は——チェコは、お話しのような中共やソ連のような国ではなかったと思う。ですから、中共の前のシナ大陸の状態でございますか、あるいはソ連の少なくとも十月革命の前の状態、それと同じでなければ革命が起こらぬ、私はそうも断定するわけにもいかぬ。そう断定する科学的の根拠はないと思うのです。
  101. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それは事実が示しておりますよ。ここであなたと私とが、その立場上、危険性があるとかないとか、これは主観的な問題です。事実衆力革命が起こっておるところは、デモクラシーの発達しないところなんだ。これはアラブを見ても、どこを見ても、デモクラシーのあるところでは、暴力革命が発展する余地がないのです。これは歴史上の事実です。現実ですよ。世界の事実ですよ。だから、日本では、中共やソ連のような、あの暴力革命が発生する可能性は全然ない。西欧社会もそうですよ。イタリアとかフランスのようなデモクラシーが長い間発達した国は、共産党といえども暴力革命の余地がない。議会を通じて政権をとると言い出した。そういう議論の問題じゃない。事実の問題です。あなたは、業務大臣として、共産党を取り締まろうなんというのは、はなはだ認識不足です。一体あなたは、マルクス・レーニン主義をどう思っておりますか。マルクス・レーニン主義を悪いと思いますか、いいと思いますか、お尋ねしたいと思います。
  102. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 私は悪いと思います。それ以上の議論はしません。
  103. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それだからぼくは困ると言うのです。ぼくは一定のものに善悪というものを見ない。ツアーの農奴制をなくして、ロシアをよくしたのは、レーニンの行き方ではなかったか。私はレーニン主義者じゃないが、レーニンの本を読んでおります。レーニン全集をみんな持っております。レーニンは言っておるのですよ。われこそは祖国を愛する者だ、ツアーヤ貴族は祖国を愛さないと言っておる。そこで、あの農奴の状態のおくれたロシアというものを、アメリカと並ぶ近代国家に発展せしめたということは、レーニンという偉大な愛国者がいたからですよ。ただし、レーニン主義とかマルクス主義というものは、これは人間の一つの理論というか、信仰です。フイフイ、キリストと同じように、信仰の問題です。キリスト教でもそうです。仏教でも、フイフイ教でも、そうです。学問とか宗教というものは、すべて善悪の二つを含んでおる。正しい点と間違った点と時代おくれの点、これをみんな多く含んでおる。それだから、私はロシアでは共産主義革命は必然だったと思うのです。それだからこそ、ロシアはあれだけ発達した。日本は決してそうだと言えませんし、それだからといって日本もああいうようにしなければならぬというばかなことを、共産党みたいに言うのじゃないのです。しかし、ロシアではそれ以外に方法がなかった。それが一番正しい愛国的な方法であった。レーニンは偉大なる愛国者です。しかも、レーニン主義やマルクス主義には、さっき言ったように多くの真理と間違いを含んでおる。仏教もそうです。キリスト教もそうです。儒教だってそうです。一つの理論とか思想とかは、そういうように見なければ間違いが起こる。絶対善とか悪とかそんなものはない。たとえばマルクスの思想だってそうでしょう。マルクスの経済理論というものは、何でもない。リカードやアダムス・スミスを勉強して、それから発展したものである。マルクス主義の哲学は、ヘーゲルの唯心弁証法から発達したものではないですか。私はマルクス主義じゃないけれども、率直に言って、マルクス主義から多くの正しい点を発見します。悪だなんて言わない。多くの時代おくれの点、間違った点があれば、これはやはりカットしていかなければならない。そういうふうにものを見ていかないといけない。マルクス・レーニン主義が悪だから、これを取り締まらなければならぬ、仏教が悪だから取り締まらなければならぬといっても、仏教は悪だから取り締まらなければいかぬといったソ連あたりでも、全然効果がなかった。とうとう手をあげて——仏教じゃない、宗教だ。宗教というものは共産主義にとって悪だというので、徹底的に弾圧をしたが、効果がないのでやめた。それと同じようなものです。一個の学問としてマルクスの思想とかレーニンの思想を悪だとかいって取り締まる。そういうことを信じている団体はけしからぬといって、特別な抑圧を加えなければならぬという、そんな理由は全然ない。あなたの考えは根本的に間違っておるんですよ。
  104. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいまのおことばを伺いまして、この前のあなたの御質問は、相当親切心を欠いているんじゃありませんか。あなたのお説のとおり、何が善か悪かということになると、私も七十五年この世の中に生きておるんですから、そのぐらいのことはわかっている。それなら、御質問も悪か善かと、お聞きにならぬほうがいい。それをお聞きになるから、私は総合点をつけて、悪だと言ったのです。ピンからキリまで悪だ、そんなことを言っておるのじゃありません。誤解はありませんから、御安心ください。  それから、ソビエトが近代的国家だということには、私は御同意いたしません。
  105. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 ソビエトは近代国家であるということには同意しないというのですか。工業国家を近代国家というんじゃないですか。封建的な農奴制とか、あるいはそういうものは封建国家だけれども、工業が発達しておる、近代国家じゃないですか。それから政治だってそうですよ。あなたはソビエトを知らないのです。よく研究をしないで、取り締まる者が悪く言っておる。革命の歴史を見てごらんなさい。革命をやったときは、イギリスのようなあのデモクラシーの国でも、クロムウエルが独裁をやったところのチャールズ一世という封建暴君を倒して、フランスでは自由、平等の旗じるしでやったのです。ソ連は、一時過渡的な形で独裁制をとったが、だんだん最近はデモクラシーになってきたのです。デモクラシーといっても、むろん日本とか西洋国のような、デモクラシーまでいかないけれども、少なくともだんだんデモクラシーになりつつある。政治形式だけは、西欧的な一つの政治的なデモクラシーのあれを採用しつつある。そういうふうになってきている。近代国家であることは間違いありませんよ。封建国家なんですか。
  106. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 だから、近代国家でないというのです。私どもは、少なくとも近代国家と称するものは、自由な選挙によって、自由な議会ができなければならぬと思うのです。公正な、自由な裁判がなくちゃならぬ。まだいろいろ条件がございましょうが、このぐらいは少なくとも不可欠条件です。あなたのお話では、独裁からやっとそういうふうなことになりかけたとおっしゃる。それだから、私は、形容すれば、十八世紀国家だ、こう言うのでございます。
  107. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そんなことはないのですよ。これは議論になるが、一体日本はそれでは自由な選挙が行なわれているかといえば、買収、供応が行なわれておる。そんな理想的なものはないんですよ。だんだん選挙もやっているのだから、選挙に対する強制がなくなるとか、刑罰がなくなるとか、これはデモクラシーになりつつあるのだ。これは幾ら議論したってしようがないので、近代国家になりつつある。間違いないですよ。それは完全なものでないですが、デモクラシーの方向に向かいつつある。そんな議論はよしましょう。あなたは知らないのだから。ソ連は、あなたよりか私のほうが知っているのだから。そこでこれはよしましょう。とにかくそういうマルクス・レーニン主義が危険な思想だとか、悪いとか、ソ連が近代的国家じゃないというような、そういうふうな偏見で治安当局が取り締まられたらたまらぬ。私はそれを言いたい。  次に、私は、田口委員だったか村山委員だったかの質問に対して宮下政府委員お答えになっておる中に、石岡説明員もそう言っておられるが、民主主義についていろいろ言っておられる。「右翼関係団体調査を従来より以上に強化いたしませんと、ほんとうに民主主義的な国家の建設ということができないということを痛感いたしております。」それから石岡説明員も、民主主義と盛んに言っておる。村山委員とそれから山内委員、それから田口委員の質問に対して言われた民主主義とは、どういうことですか。民主主義のあなたの考えを聞きたい。取り締まり当局が、民主主義を守るために必要だと言っているのですから。
  108. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 宮下次長が御答弁申し上げた民主主義は、日本国憲法に規定されている民主主義でございます。
  109. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そのとおりですが、日本国憲法にある規定というのは、どういう規定ですか。
  110. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 規定自体で十分明らかであろうと考えております。
  111. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 憲法上の民主主義というのは、私から言うのもおかしいが、憲法二十条から二十八条まで、信教の自由、集会、結社、言論の自由、思想の自由、それから学問の自由、それから二十八条に規定する労働者の団結権、これが私は民主主義じゃないかと思うが、どうですか。
  112. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 ただいま御指摘のとおり、基本的人権、ことに言論、表現の自由、団結権、政治結社の自由は、民主主義の重要な要素でございますが、憲法が規定しております民主主義は、日本の国家機構全部について、基本的人権も含めて規定されているものと考えております。
  113. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そこで私は、共産党に対して特別な取り扱いをするということは、これは憲法上のそうした民主主義の原則を侵すものだと思う。特定の団体を、これは危険だというふうな先入観で、これを査察して、犯罪の対象にするということは、私は憲法上の自由を侵すものだと思う。
  114. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 憲法に抽象的に規定されておりまする民主主義、その民主主義における自由も、これを破壊する者に対しては、断固として戦って守ってまいらなければならないというふうに考えております。憲法も、公共の福祉のためにはこれを制約する場合もある。また、国民すべての努力によってこの自由は守り抜かなければならないというふうに規定されているところと考えております。暴力をもって政治目的を貫徹しようとする者は、民主主義の最大の敵であると私は考えている次第でございます。
  115. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 だから、もとへ戻るんだが、一体暴力で政権をとるとだれが言っているんだ。中ソ論争で、中共が政権の移動は暴力革命しかないと言っている。日本共産党は中共の線だという話だが、よくわからないけれども、だれが公然とそういうことを言っているのか。日本共産党が言っているのですか。日本共産党は、綱領の中に暴力革命をうたっておらないはずだよ。
  116. 吉河光貞

    ○吉河政府委員 先ほども御答弁申し上げましたとおり、日本共産党が昭和二十五、六年のときにおきまして、日本において現実に内乱を実行することの必要性、正当性を主張しました。この内乱を達成するための準備として、各種の暴力主義的な破壊活動を行なった客観的な容疑がございます。かように考えておる次第でございます。
  117. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 共産党の弁護を何もする必要はないのですが、しかし、そんなことは、そういうふうな暴力的な行為をやれば、断固としてこれは普通の刑法でやればいいのです。厳重に処罰すればよろしい。そういうことが一回あったからといって、たいへんな費用を使って、特定の政党に対して査察をしなければならぬ——右翼だって同じだと思うんですよ。一つの対象を査察することはいけない。そういうことをやった場合は、普通の刑法で徹底的にやれるのだ。人を殺したら死刑もあるのだし、一般刑法で無期懲役もある、十年もある。何も特定の公安調査庁がそれを査察して、破防法の対象にすることはしなくてもいいんだ。そんなことをする必要はちっともない。そういうことをやることによって、憲法上の自由を侵すと私は言う。憲法の基本的人権を侵す、学問や思想の自由を侵すということになる。それからあなた方は、しまいには、昔ちょうど巡査が大学教授の思想に干渉したと同じように、必然に個人の思想まで干渉してくるようになる。共産党だ何だと言っているけれども、見分けがつかない。間違うことがある。だれが共産主義者か、全知全能の神でなければわかるわけはない。それだから、いまの刑法でもってそういう暴力行為をやる者は幾らでも罰することはできるのだ。そういう場合に、共産党の基本的な研究もしないで、そうして共産党を取り締まるとか、いや何とかといって、実効はあがらぬじゃないですか。千何百人でもって何十万を査察するなんて、できやしない。私は重ねて言いますが、村山委員が言われたとおり、警察の調査があるんだし、内閣の調査室を持っているんだし、そういうものに統合して、内閣に大きな調査の機関を設けてそれにまかせる。治安当局がそういうふうなものをやるということは、学問の自由、思想の自由、信仰の自由を侵す最もいかぬことだと思う。こういう点、私の経験から、これはどうしても危険である、危惧にたえない、こういう考えを私は持っておる。これは幾ら繰り返したって尽きないでしょうけれども、時間もだいぶ過ぎて御迷惑だからやめようと思いますが、したがって、こういう無益な、国費を使って二百人の調査員をふやして、右翼に八十人、左翼に百二十人なんて、そんなばかなことをやる必要は絶対にない。何の役にも立たない。私はそう申し上げたい。
  118. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 ただいま、共産党の調査は警察がやればいい、内閣調査室がやればいいとおっしゃった。調査ということは必要とお認めになっているわけですな。そうすると、それは法務省がやって悪い、警察がやっていい、これは私は承服できない。これはそれぞれの適当と認める機関でやるべきだ。しかも、そういうことは、もう何年も、議会の御承認を得て、その行き方できているわけです。御議論は御議論ですが、私は同意いたしません。警察がやってもいい、内閣調査室はやってもいい、公安調査庁はやってはいかぬ、これはどうも私は承服できないのであります。調査はやってもいいとおっしゃる。それからもう一つ、刑罰に触れたら罰したらいい。これは世界の通念に反しておると思う。計画的に内乱を計画するような人間の団体、グループに対して、その動向をあらかじめ察しまして、必要な手段をとるために調査するということは、もう必要なことである。それが何かやったならば罰すればいい。それはとうてい大きな治安というものは維持し得ないのであります。そのお説には賛成いたしません。
  119. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私の言うのは、いろいろ調査をやるのは、二つ、三つに分けないで、内閣調査室にまかせる。そうすると、動向はあらかじめわかるのじゃないですか。内閣調査室が一切の調査をやればいい。そんなことは警察はやる必要はない。法務当局はやる必要はない。そこで内閣調査室で一切やって、そうしてそれを連絡をとって、そうしてそういうような不穏な行動があったならば、あらかじめ用意するのもいいでしょう。警察当局や公安調査庁などというところが特高まがいのことをやるということは、これは必ず弊害を残すというのだ。過去の特高と同じになるのだというのが、私の見解なんだ。それだから、こんなものは必要がない。二百人ばかりふやして、どれだけの有能な人が集まるか知らないけれども、百二十人ばかりで、あるいは八十人ぐらいの人で、右翼は単純だからいいけれども、左翼のほうは非常に複雑なんだ。思想上のいろいろな問題があれしているのだから、百二十人ばかりで査察をしたって、十分な査察はできない。それよりも、内閣に一大調査機関をつくって、一切の政治問題の情報を集めるということにしておけば、そういうふうな危険を未然に防止もできるし、その情報を借りればいい。警察当局がやるのは間違っている。それはいかぬと言うのだ。憲法上の自由を侵す、そう言うのです。
  120. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 内閣調査室の問題ですが、いま申し上げたようにきわめて少ないのです。お話しのように、あの人数でできっこございません。それはひとり破壊活動団体調査ばかりではない。政治情勢全体の調査をやる。私は人数を覚えておりませんが、百単位のものではございませんでしょうか。とてもそれでできるわけはないのです。そうすると、やはり一大拡張をしなければならない。そうすると、調査官みたいなものが、何百人か何千人できるわけになります。それがどう違うのでしょう。警察はやってはいかぬ、公安調査庁はやってはいかぬ、内閣はやってもいい、同じものです。どうも私にはお説がよくわからないのです。それですから、人数が少ないからだめだとおっしゃるなら、もっと調査官をふやすようなことをお考え願いたい。
  121. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 これでやめるけれども、ぼくの言うのは、法務当局が一定の団体を目当てにして、いろいろな思想問題、あるいはいろいろな問題を調査するということは、どうしてもこれは思想の自由、信仰の自由を侵す結果になる危険性があるというのです。過去のいろいろな日本の社会運動の取り締まりの実績に徴して——官僚の考え方は、いまでも昔でも同じです。ちっとも変わらない。官僚というものは権力機関のあれだから。むろん官僚無用論を唱えるわけではないけれども、必要であるけれども、官僚というのはいつでも権力者を守るためにいろいろなことをやるのです。その官僚が、いろいろな思想の問題、いろいろな問題にタッチすることが、非常な弊害と、憲法上の自由を抑圧することになるから、内閣調査室にやらせろというのです。客観的に、正確な調査をする。そうすれば弊害にならない。思想弾圧になるような弊害はないと言うのです。現に公安調査庁は、いろいろな問題を起こしているじゃないですか。ここで申し上げることはないけれども国会の委員会でも、いろいろな人権じゅうりんの事実とかが問題になった。そういうふうないろいろな悪評が非常にありますよ。この材料を私調べてきたのですが、忘れてきましたが、そういうふうなことよりも、内閣調査室が、そういう警察権を行使しないものが、詳細に、客観的に調査するのが、一番情報も集まるし、円滑にいくと言うのだ。警察やあれなんかが行ったら、ほんとうの情報が入らぬ場合が多い、そういう点を私は言う。非常な弊害を生むからいかぬと私は言う。幾ら言ったってしょうがないから、あなたと水かけ論になるだけだが、私は、公安調査庁などというものは百害あって一利がない、こんなものはだめだ、ふやす必要がない、こういう考えを私は持って質問しているわけであります。私の過去の経験から、それだけ私は申し上げておきます。
  122. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 いろいろ御意見が出まして、それに対する私の考え方も大体申し上げて、もうこれ以上申し上げることもございませんけれども、内閣調査室も官僚なんです。それだけは申し上げておきます。
  123. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 官僚だけれども、警察権を持たぬ官僚だよ。警察権を持つと、いろいろな弊害がある。内務官僚は、特高なんかつくって取り締まりをやって、日本を変なほうへ引っぱっていって、日本を破滅させた原因をつくっておる。
  124. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 それは初めから多少誤解があるようですが、内閣調査室は、警察権は持っておりません。拘引したりいろいろなことをする権能はないのです。処罰の場合は、別の警察権や検察権が発動いたしますので、決してございません。内閣調査室も、私は、この場合弁護も何もいたしませんが、やっぱりあれをやる場合には、警察官出身の人が入ったり何かしていろいろやりまして、その点は御議論に反対するというのではなくて、できるだけ政府が注意して、人権じゅうりんがないようにやる。その気持ちで注意してやっておりますことは、調査室であろうが、警察であろうが、すべて同じでございます。それは人間のやることですから、ときにいろいろ議論を起こすことはございましょうが、それは同じ気持ちで、いまでは特に憲法の人権に関する条章を非常に重んじてやっている。その気持ちだけは申し上げておきます。
  125. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私は、最後に申し上げておきますが、警察権を持っている者が、いろいろな思想上の調査とかそういうものをやることが、弊害を生むというのです。だから、それをやめろと私は言うのです。同じ官僚だって、警察権を持たない官僚は、そういう弊害はない。大蔵省やそれから通産省や農林省の役人は、日本の思想善導だなんといって、日本を変なほうへ引っぱっていかなかった。内務省官僚だけが、警察権を持っておるから、いろいろな弾圧、取り締まりをして、その結果が日本を非常に反動的な方向へやって、軍閥をばっこさせる一大役目をやった、そうして日本を破滅させた、そういうことを言っておる。法律論をやっておるのじゃない。政治論をやっておる。だから、私は、過去の日本の失敗から考えて、警察権を持つ者が、思想とかそういうふうな領域に入ってかれこれやることがいかぬ、危険だ、こういうことを私は申し上げる。だから、この二百人の公安調査庁の増員なんというものは必要ない。それが必要なら、内閣調査室の調査員をふやしたほうがよろしい。そのほうがよほど効果がある。予算のないところに、内閣調査室もふやす、警察のあれもふやす、こっちもふやすなんて、それは全くむだな話だ。だからして、内閣に充実した調査室を設けて、そこで一切調査する。そうすれば、警察はいつでもそこから情報をとれるのだ。  それから、なるほど警察権を持たぬというけれども、事実上警察権とつながっているのだ。公安調査庁それ自体は持っていないけれども、それとちゃんと一心同体の関係にあるのだから、そういう関係で、同じことです。危険ですよ。こういうふうな公安調査庁だけをふやすための設置法の一部の改正なんか、絶対私は反対だ、こう言うのです。  それを私は申し上げまして、私の質問を終わります。
  126. 徳安實藏

    徳安委員長 受田新吉君。
  127. 受田新吉

    ○受田委員 時間が進行していますから、能率をあげて短時間に片づけます。  賀屋大蔵大臣、 (発言する者あり)私が大蔵大臣と申し上げるのは、かつて私は、あなたが日比谷公会堂で大蔵大臣当時ごあいさつをされたのを静かにお聞きして印象に残っておるからでございます。法務大臣としていろいろと抱負経論もおありだと思いますが、今度お出しになったこの設置法改正の中で、第二と第三の改正点については、一応私納得させていただきます。特に監獄法に基づく刑務所の位置の変更などが、その明るさを取り返すための御努力のあとが見られるという点、また、入国管理事務所の出張所設置する件についても、便宜供与をするという意味において、それぞれ肯定をさしていただきます。ただ、先ほど来議論されておる第一の改正点の定員増に基づく公安調査職員の二百名という大幅増員の問題、これは非常な問題がひそんでいると思うのです。私はここでちょっと伺いますが、この詳細なる表を拝見いたしまして、公安調査官の四等級、五等級、六等級をそれぞれ大幅に増員しておるのでございますが、一体これはどういう職種の人をどこから取り上げて御採用されようとしておるのか、お答え願います。
  128. 宮下明義

    ○宮下政府委員 昭和三十七年度予算におきまして、公安調査官八十七名の増員がございました。その際にも、公安調査官としてふさわしい人たちを考えまして、その採用をいたしました。今回も大体そういうことを考えておりますけれども、大体主体といたしましては、大学を卒業いたしましてある程度の経験を経ておる人たち、それから法務省の他の機関がございます。入国管理局とかあるいは検察事務官とか、それから警察庁の警察官、その他から適当な人たちを選考いたしまして充足をいたしたいというふうに方針を立てておるわけでございます。
  129. 受田新吉

    ○受田委員 いろいろなところから寄せ集めになるということになりますね。検事を御採用になる御予定はないわけですか。
  130. 宮下明義

    ○宮下政府委員 この二百人の増員は、ただいま御指摘のような公安調査官の比較的下級のほうの職員でございますので、検事を充てる考えはございません。検事は、充足検事の定員がございまして、公安調査庁にも検事の身分を持った者が入ってきておりますけれども、一定の数がございまして、この中には検事は入っておりません。
  131. 受田新吉

    ○受田委員 充て検制度にはいろいろ問題があることを、私しばしば委員会指摘さしていただいております。給与の問題なども、検事の給与で乗り込んでおる、こういうことも給与体系を乱しておる。外務省の大公使は、大公使の給与をもらっておっても、また本省に帰れば、本省の給与に立ち返っておる。検事だけがそういう道をとっておるということは、非常に問題があると指摘しておるのですが、きょうはその問題には触れません。けれども、法務省のお役人には、いろいろな方面から人材をお集めになる関係で、そこにバラエティに富んではおりましても、統一を欠くという欠点もあるわけです。この職員採用に対する構想の中にも、よほど検討をされる面がひそんでおると思います。なぜこれだけの増員をしなければならないのか。せめてある程度の定員増ということであれば、やむを得ないと了解できない節もないのでございますけれども、一挙に二百人も増員するということには、何か大がかりの捜査網を布陣するというような印象を与える。破防法の対象となる人々を調査するために、非常に大がかりな網を張る、こういう印象を与える危険があると思うのです。これを徐々に、なしくずしに毎年定員増をはかっていかれるということであったならば、国会をごまかす道もあったわけでございますが、あまりにも正直に一ぺんにお出しになったというところに問題がひそんでおる。私、その点を指摘しておきます。  次に、法案の第二の改正点の刑務所の根っこの法律であるところの監獄法に関係して、ちょっとお尋ねしたいことがあるのです。監獄ということばは適当かどうか。まだ法律ががんとして生きておるのですが、大臣、監獄ということばは残酷ですね。これを名称変更の御用意はないでしょうか。
  132. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 これはまことに恐縮でございますが、しろうと法務大臣、監獄法という名前が生きているということで、すでにびっくりしておるのです。その法はまだ改正になっていない……。まあ名前は何でもよろしいようなもんでございますが、どうもまだぴんとこないのでございます。そういう点も、今後は十分留意してまいりたいと思います。
  133. 受田新吉

    ○受田委員 法務大臣は、監獄法の名称変更の用意ありという御意思が表明されたと了解いたします。  そこで、憲法第三十六条には、拷問及び残虐刑の禁止規定が、厳として存在しております。死刑は残虐刑かどうか、お答え願います。
  134. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 これは残虐刑であるかどうかということを私は、専門的にお答え申し上げるような刑罰法令のほんとうの知識を、正直申しまして、持っていない。必要なら、それは法務省の責任ある答弁として、適当な人をまたなにいたします。ただ、死刑ということが非常に残酷なものであるという感じは、相当社会に広く持たれておる。そういうことが動機になって、死刑廃止論ということもずいぶんいわれておると思うのでございます。しかし、結論的に、残酷な行き方であるから死刑を廃止するかどうかという問題につきましては、一方、死刑を科せられる人が多くは殺人行為をやったわけでございます。殺人行為を防ぐためには、死刑の廃止が必ずしも適当であるかどうか。死刑になる人の立場のみを考えるのでは不十分ではないか。社会全般の安全秩序ということを考え、ことに人に殺される、こういうようなことがないようにすることは、また非常に重大でございます。むろん死刑のみがそれを防いでおると申し上げるのじゃないのでございますが、死刑を廃止するということ、それは非常に問題じゃないか、これもまた多数の人が考えているところではないかと思います。いま私は忘れましたが、日本のある相当な調査にいたしましても、まだ圧倒的に、死刑廃止に賛成するよりは、死刑存続の意見の人のほうが多いというような事例もあります。これはしかし、また世界的にもいろいろ問題があるわけであります。死刑を廃止している国もありますし、存続している国もあります。一たん死刑を廃止しても、また旧に戻すとか、戻さなければならぬというような議論になる国もございまして、これは一つの研究課題である。ただ、現状におきましては、死刑廃止がよろしいと結論するまでには至っていないのじゃないか、こういう感じを持っているわけであります。
  135. 受田新吉

    ○受田委員 北欧の三国をはじめ、オランダ、ベルギー、その他福祉国家として世界に誇っている国は、死刑が廃止されております。アメリカは、数州にわたって死刑が廃止されております。イタリアは、一度廃止したが、復活した。いろいろな理由はありますが、死刑が残虐な刑であるということは、国際的通念からもはっきりしている。むしろ死刑にするのであるならば、長期にわたる苦痛を継続的に持続せしめるところの無期刑という道もあるわけであります。また、死刑をやったら、あと救う道がない。吉田老人が、あの執念をもってついに再審請求の時期についての規定を用いて、刑の執行を終わってはるか後に青天白日の身となったこともある。殺してしまったら、あとからほんとうの姿を認める道がないということも考えられるわけです。賀屋先生、幸いにして戦犯の難をのがれられて、今日台閣に列して再び国政に御精励しておられるのでございますが、私は、おそらく御一緒に苦労をされた多くの戦犯の方々が紋首刑に処せられたその思い出は、先生の胸中深く去来して生涯離れがたいものがあると思うのです。裁判というものが絶対に間違いのないものだとは決して言えないということについても、先生御自身が御体験されておると思うのです。その意味で、死刑については、憲法三十六条の規定の残虐刑に当たるという判断からも、私は、少なくともこれは廃止論を十分検討していただく段階にきておるのではないかと思います。賀屋先生が御在任中に、死刑廃止の刑法改正案をお出しになり、刑訴法を改正される、こういうことをおやりになっていくとすれば、後世に非常にいい功績をお残しになると思います。これは取り返しのつかぬ問題であると思います。  現に、死刑の刑の確定した者が、死刑の執行を待っている人がどのくらいあるのか、法務省で調査した数字をお示し願いたいと思います。死刑執行前の死刑確定者。
  136. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 お答え申し上げます。  本月一日現在で六十五名あります。
  137. 受田新吉

    ○受田委員 これは刑訴法に基づいて、法務大臣の執行命令が出なければ執行できない、命令が出ますと、これを五日以内に殺さなければならない、こうなっておりますが、これは歴代の法務大臣がなかなか執行命令を出さぬ、印判をつかぬ。自分が印判をつくと、五日後に殺されるわけですから、手がふるえて印判がつけないという説も流れておるのであります。法務大臣御就任後、印判をつかれたものがあるかないか。
  138. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 私は、受田さんのお説に非常に感動するのでございます。しかしながら、また問題は、自分の感情のみによらずして、冷静、公平に考えなければならぬと思います。裁判に間違いがあり得るということは、人間のやることでありますので、私も肯定いたします。しかし、人間の判定によらずして、世の中の秩序を保たなければならぬ最終決定をいたす道が、ほかにないのでございます。たとえを言って恐れ入りますが、病気の治療でも、医者の誤診もあれば、いろいろしくじることもあると思います。しかし、医師によって病気の治療をし、死を防ぐということは、いまの社会でとり得る最善の道であろうと思います。そういう意味におきまして、裁判制度が確立され、できるだけりっぱな裁判官並びにその裁判に関係します検察陣、弁護陣、こういうものを最善の努力でそろえまして、裁判が間違いないようにするという努力をしますとともに、決定をしましたらそれに従ってやるということは、また社会秩序維持の大きな根本であろうと存じます。私も、日本の刑法ではございませんが、とにかく無期禁錮、死刑一歩手前——仲間で死刑になった人もずいぶんあります。こういう慣習から申せば、おことばは非常に身にしみるのでありますが、しかし、死刑が残酷であるとしても、かりにそれが殺戮、殺人行為を防ぐのに役に立つとしますれば、罪なくして殺されるという、より一そうな残虐、この問題も非常に重要ではないか、かように考えます。そうしてこの問題は、お話のごとく重大問題でございますから、私も、感傷によって判断するということは相当に慎むべきことじゃないかと思います。  いま死刑の判を押したか押さないかということですが、私、これは申し上げないことにいたします、申し上げないほうがよろしいと思います。それで、いま法制審議会におきまして刑法の全面改正を審議しておりまして、そこで冷静にその道に学識経験の深い人が討議をされておるところでありまして、私はその討議を見守りまして、その結果によって善処したい、かように考えております。
  139. 受田新吉

    ○受田委員 私、死刑執行命令を出されるということは、やはり行政事務の進捗をはかる上においては、その意味からいえば刑の確定した分はどんどん執行命令を出していく、こういうのをどんどんためて、六十何人がたまるまで残しておくということは、行政事務が遅滞しておる、怠慢であるということも、正式に言えば言えるわけでありますね。しかし、行政事務の怠慢である、大臣が印判をつかないでいつまでも残しておく、次の大臣に回していく、こういう傾向が残っているほど、死刑執行ということは重大な問題であるということがわかっていると思うのです。簡単な問題ではない。それで、賀屋さんは感傷に走らない冷厳な人間性を一方に持とうと配慮されながらも、感傷にとらわれている面もあるという両面を私はお持ちになっていると思うのでありますが、大臣御在任中に印判をお押しになる可能性が薄いのじゃないかと、私は判断します。それはあなたがお押しにならなくてもいいと思います。私、別に強制しません。あなたの御在任中には、印判を押さない大臣であったとしてもけっこうでございますから、私は、その行政事務の渋滞を責めておるわけじゃありません。この問題は、人間を殺すのですから、その点は功徳を施す意味でお押しにならなくてもけっこうです。  それでもう一つ、絞首刑という刑は残虐刑かどうか、首を絞めてたらんとぶら下げる刑の執行方法。もっと軽く安楽死する道があるのではないか。これの御研究の道を開かれたかどうか。殺し方の研究をされたかどうか。
  140. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 死刑を存続しますと、その執行の方法ということが重大な問題になると私も考えます。電気であるとか、斬首、銃殺と、現在いろいろな方法がとられておりますが、私どもも間近かに死刑の執行を感じておりますので、何が一番残酷でないかいろいろ考えますが、われわれは、生理的に、心理的に、何がどうかという断定する資料も持っておりませんでしたので、こういう問題につきましても、学識経験のある、権威ある機関で調査するほうがいいのじゃないか。できるだけ残酷でない方法をとるという考えは、もちろん持っております。どちらがいいということを言いますのには、私どもいわばしろうとが言うのは、言ってもいいと思いますけれども、まずそれは多数の権威ある専門家の決定を待つのがいいのじゃないかと考えております
  141. 受田新吉

    ○受田委員 私、死刑囚の留置されている拘置所を見せてもらいましたが、絞首台だけは見せていただけませんでした。これはやはり良心的に見せていただけなかったのだと了解して引き下がりましたけれども、絞首刑そのものは、やはり首をくくってぶら下げるわけですから、これは何分か後に死を確認するというやり方は、残酷で、安楽死の形ではないと私は思うのです。やはり安楽に死を選ぶ道がほかにありはしないか。これは研究してあげなければいけません。いつまでも古い制度をそのまま生かして、また残っているからというので、研究もしないで絞首刑にするのだ。ぶら下がるということだけでも、がたんとショックでくびれ死ぬんだそうですから、残酷です。ぶら下がった姿を見てごらんなさい。やはりほかに安楽にして死ねる道がある。その研究を法務省はしてあげなければならぬと思うのです。静かな姿勢で安楽に死んで棺おけに入るという道を研究してあげる、これは事務的に大事な問題ですから、人道的な問題ですから、怠ってはいけません。研究を御要望申し上げておきます。大臣、よろしゅうございますか、絞首刑の研究は。
  142. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 よく承っておきます。
  143. 受田新吉

    ○受田委員 次に、青少年の犯罪、しかももう平然と人を殺すという無鉄砲な犯罪を防止する方策として、いろいろ手があると私は思います。少年法は、二十歳までの未成年者に特別の保護規定を設けている。保護処分規定をどんどんつくっている。また満十八歳未満については、死刑の執行を他のものにかえる不定期刑も用意してあり、いろいろと便宜をはかっております。しかし、少年法そのものについて、ひとつ検討する時期が来ているのじゃないか。二十歳という民法第三条の成年齢は、ソ連などはすでに十八歳をもって成年としており、十九歳の国もある。二十一歳の国もありますけれども、社会法学的に、自然法学的に見て、満二十歳というのはすでにおそきに過ぎるのではないかという見解を持っているのでございますが、この点について、ひとつ御見解をただしておきたいと思います。
  144. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 刑事上の責任をとる年齢という問題は、きわめて重大な問題と思います。普通の身心の成熟が一人前になる、これは平たいしろうとのことばで、いつかという問題になりますと、現在犯罪を犯す未成年の人の犯罪を犯す手口、やり方、その状況を見ますと、これはおとなも顔負けみたいなものもあるわけです。そういう見地からして責任年齢を下げるということは、非常にうなづかれるのでございます。しかし、この責任年齢ということはきわめて重大でございまして、いろいろ説もあるようでございます。地域的に、人間の成熟発達が気候の差異によっても違い、いろいろ条件で違いましょうから、変化のあるのもあたりまえでございます。また、一定のくぎづけ年齢で、すべてその国の国民は十八歳、二十歳あるいは二十何歳ときめることについても、身心の発達でも非常に個人差が多いわけでありますから、どうも適当でないという考えもあります。それで中間年齢を設ける。もう問題なく責任のない年齢と必ず責任のある年齢、たとえば十八歳以上二十歳未満、こういうものを設けて、そこに何らかくふうをいたしまして——これは検察あるいは裁判その辺にいろいろくふうが要ると思います。そして責任を完全に負わせる、ある者は負わせない、あるいはある程度に負わせる、いろいろと構想がございましょう。そういうふうな行き方で責任についての中間年齢層を設けるという考え方もあるようであります。なお、私どもしろうととして痛感しますのは、現在の自動車事故、現在犯罪がふえた、二倍半にふえたといいますけれども、そのふえた一倍半は交通事犯であります。運転の資格が、車によりまして十八歳以上、あるいはそれ未満でも認めておるものもある。その能力は認めながら、それに対する責任のほうは年齢が違う、これなどおかしいじゃないかという議論があり、一見私どもは非常にうなづかれるのです。いま研究を開始しておりますが、何さまこの責任年齢ということは、一つの基本的の大きな観念、考え方になりますから、まだ結論を得るに至っておりませんが、これは非常に研究しなければならぬ問題だ、かように考えております。
  145. 受田新吉

    ○受田委員 研究しなければならない大事な問題だと、私も思います。特に恩給法などでは、恩給受給権者の未成年の子が、二十歳までは受給権がある。ところが、援護法関係はみんな十八歳になっている。それから児童福祉法、労働基準法を見ても、十八歳、十六歳、十四歳、深夜業は十四歳と、もうばらばらになっておる。しかし、こういうところである程度の基準があると私は思うのです。援護法と恩給法でその受給権を十八歳と二十歳にする、そのことが間違っておるので、同じ戦死者の遺族の子供さんで、一方は二十歳までもらえる、一方は十八歳で打ち切っている、これは日本の政治に非常に大きな矛盾があると私は思うのです。やはりそこは成年齢をどこをもって基準とするかという、法務省の高い観点からの結論が出ておらぬところにも原因があると思うのです。大臣、よろしゅうございますね。成年齢の検討を十分していただきたい。  なお最後に、司法修習生の修習を終えた者が、裁判官になり、検察官になり、また弁護士になっていく。そこでお尋ねします。裁判官。検察官の需給状況はどうなっているのか、どのくらい定数に過不足があるのか。また、弁護士の分布図が現在のところ都市と地方でアンバランスだと思いますが、適正であると思うのかどうか。法務省が調査した結果に基づいて御答弁願います。
  146. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 政府委員よりお答えいたします。
  147. 津田寛

    ○津田政府委員 五月一日現在でございますが、検察官のうち、検事の定員は千五十二人でございまして、欠員は十人でございます。副検事は、定員が七百五十二人でございまして、欠員が二十二人ということになっております。それから裁判所の関係につきましては、これは若干古いのでございまして、大体本年の当初でございますが、判事の定員は千二百五人に対しまして欠員が三十二人、判事補は、定員五百二十二人に対しまして欠員が十一人、簡易判裁所の判事が、定員七百十人に対しまして欠員二十七人という状況でございます。  なお、お尋ねの弁護士の地方分布の問題でございます。これはいま正確な数字は手元にございませんけれども、大体の傾向としまして、現在約六千人くらいの弁護士のうち、東京及び大阪、その周辺に大部分が事務所を設けておられるということでございまして、おそらく東京と大阪、その周辺で四千人くらいになるのではないかと思うのでございます。したがいまして、地方は二千数百人程度であると思いす。ことに中程度の人口の県におきましては、かなり弁護士の数が少ないというのが実情でございまして、この点が現在の司法制度における一つの問題になっている。この点につきましては、御承知の臨時司法制度調査会におきましても、その対策をただいま検討いたしておりますので、いずれ本年の八月の調査会の終了時期までには、適切な対策が出るものと考えております。
  148. 受田新吉

    ○受田委員 政府が司法修習生でお手伝いをして養成した分がみな民間に流れていく、こういう形では、国費をもって弁護士を養成するという意味では一応筋は通りますけれども、みんな弁護士になるだけで、判事や検事の欠員がいつもひそんでいるところに問題があるわけです。それは処遇の問題があるのか、あるいは業務量が膨大で苦痛が大きいというような問題がひそんでおるのか、私は何かがあると思うのです。それから民間の弁護士の中から判事や検事を採用しようとしても、給与というものが、弁護士期間を通算すれば途中から相当高いところへ割り込めるのでございますが、弁護士勤務期間を計算に入れないような方法をとっているのじゃないですか。つまり判検事の不足の原因がどこにあるか、また弁護士の中から人材を簡抜する方法として、どのような方途を考えておられるか、お答えを願います。
  149. 津田寛

    ○津田政府委員 司法修習生を修了した者のうち、裁判官、検察官の志望者が弁護士に対する志望者に比べまして少ないことは事実でございまして、そのために現在裁判官あるいは検察官の定員の充足について困難を感じていることは、御指摘のとおりでございます。その原因はきわめて複雑でございまして、この原因につきましても、臨時司法制度調査会で十分調査がなされたわけでございますが、ただいま御指摘の給与の問題もございます。それから職務の内容の複雑、困難、あるいは事務量の過多というような点もございます。あるいは弁護士に比べますれば、任地が制限される。相当の場合には相当な場所に転任をしなければならぬ。そういうことによりまして、子弟の教育に非常に困難を感ずるというような問題、あるいは何と申しましても、自由職業という弁護士に対しまして、裁判官あるいは検察官はやはり自由という点に欠けるところがある、そういうような問題で、現在の青年層に魅力が少なくなっているというような点もあるのではないかということが考えられるわけでございます。その最後に申し上げました点は、これは職業の宿命的な問題で、これを解決することはきはめて困難でございますけれども、そのほかの問題は、施策によって解決のできる問題であるということが考えられるわけでございまして、そういう点につきまして、臨時司法制度調査会におきまして、適当な施策を考えたいというのが現状でございます。
  150. 受田新吉

    ○受田委員 臨時司法調査会の答申をまって適当に処理したいということでございますが、これは法務行政上の大問題ですから、大臣御在任中にぜひ解決していただきたい。よろしゅうございますか。  それからもう一つ、最高裁の判事、これは法務大臣御自身が最高裁の判事の任命をするときは、弁護士会の推薦とかいろいろある。そういうときに、だれが見ても適切な人というふうなことで、一方の圧力に屈することのないような任命をされなければならぬ。そこで最高裁の判事の任命基準は、どういうところに置いておられるか。最高裁の判事は、国務大臣と同じ給与をもらっておられます。これは法務大臣が手続上の責任者でございますから、最高裁の権威を維持するために、最高裁判事の任命基準をどこに置いておられるかの御答弁を願って質問を終わりにいたします。
  151. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 最高裁判所の決定は、最終の決定でございます。したがって、最高裁の判事をどういう人にするかということは、きわめて重大なことでございます。したがって、いま仰せられましたように、給与その他の問題も最高の待遇をいたしております。これは内閣が任命することでありまして、形の上では法務省の直接のあれではございません。しかし、実質的に法務に関係しておりますので内閣の任命に対しまして何か貢献し得るような場合には、むろんその点は心がけておる次第でございます。任命基準は法律に規定してありまして、それ以上の内規的なものはないようでございますが、知識、経験、人格、あらゆる角度から見まして、内閣におきまして最大の注意をもって検討して任命をいたしておる次第でございます。
  152. 受田新吉

    ○受田委員 ちょっとはっきりしないところがあるのですが、その基準は、結局裁判官出身者、あるいは検察官出身者とか、弁護士出身者、あるいは大学の教授などで、最高裁の判事として適当な人というのでいろいろな層から取り上げられておられると思いますが、そういうものを、あるものに片寄らないで大所高所から選定をされておるのかどうか、そこをちょっとお聞きしたかったのです。
  153. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お話のように、各種の経験ということは必要でございます。在野法曹、あるいは検察、あるいはキャリアの裁判官、いろいろの要素が必要であると思います。また同時に、専門といたしましても、あるいは公法的の専門、民事あるいは刑事の専門、こういうふうな必要なる知識が十分に反映し得るような組織、こういうことの考え方は十分にいたしておるわけであります。
  154. 受田新吉

    ○受田委員 終わります。
  155. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  156. 徳安實藏

    徳安委員長 本案に対し、内藤隆君より修正案が提出されております。     —————————————    法務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案   法務省設置法の一部を改正する法  律案の一部を次のように修正する。   附則を次のように改める。     附 則   この法律は、別表四の改正規定を除き、公布の日から施行し、別表四の改正規定は、公布の日から起算して一年をこえない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、第十三条の十七の表の改正規定は、昭和三十九年四月一日から適用する。
  157. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、提出者より修正案の趣旨の説明を求めます。内藤隆君。
  158. 内藤隆

    ○内藤委員 ただいま議題となりました法務省設置法の一部を改正する法律案に対する修正案について、その趣旨を御説明申し上げます。  案文はお手元に酎付してありますので、朗読は省略させていただき、その要旨を申し上げますと、本改正案は、法務局、少年院及び刑務所の位置等を改める規定を除き、「昭和三十九年四月一日」から施行することとしておりまするが、その期日はすでに経過しておりますので、これを「公布の日」に改め、定員に関する改正規定は、本年四月一日から適用しようとするものであります。  何とぞ御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。
  159. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて修正案の趣旨説明は終了いたしました。
  160. 徳安實藏

    徳安委員長 これより原案及び修正案を一括して討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。村山喜一君。
  161. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 私は、法務省設置法の一部を改正する法律案に関して、日本社会党を代表いたしまして、反対の討論を行ないたいと思います。  反対の最大の理由は、五百八十六名の増員中、公安調査官を二百名も増加しようとしていることにあります。左右両翼対策なる名のもとに、公安調査庁が国民の思想調査、行動調査を行なっておることは言うまでもありませんが、これらは憲法によって保障されている国民の基本的人権に重大な関係があります。本来左右両翼対策といい、治安対策というものは、最小限度にとどめ、国民生活の安定を中心に、正しい政治を行なうところに力点を置くべきであります。現在のように、経済政策の失敗から物価高と中小企業や農業の疲弊を招き、汚職、選挙違反、派閥争い等によって政治不信の風潮をみずからつくり出しておきながら、これが対策として公安調査官を大幅に増員し、国家権力を強化しようとすることは、本末転倒もはなはだしいと言わなければなりません。  しかも公安調査庁といい、警察庁といい、内閣調査室といい、同様な内容、方法によって治安対策に当たっており、いまここに二百名の増員がなされたといたしましても、並存しておる限り、さらに治安強化に名をかりて増加の要求が引き続いて出てくることは明らかであります。これらの治安対策の国家機関は、統合整理され、国民の民主的統制下に置くべきであります。  以上の立場から反対の態度を表明して、討論を終わります。
  162. 徳安實藏

    徳安委員長 山下榮二君。
  163. 山下榮二

    ○山下委員 私は、法務省設置法の一部を改正する法律案に対しまして、民社党を代表して反対の討論を行ないます。  本案全体としては、必ずしも一われわれは部分的には必要な面もあると思うのでありますが、たとえば名古屋あるいは福岡における刑務所の位置変更、すなわち、老朽化した刑務所の改築、または八戸市、尼崎市及び坂出市の出入国管理事務所の庁舎を設置する等は、最近の出入国者の増加等により必要なことであろうと考えられるのであります。しかし、公安調査庁に二百人という多くの人員を増加するということに対しましては、わが党はどうあっても理解できがたいのであります。なぜならば、御承知のとおり、わが国は文化国家あるいは民主国家とお互いが自認しながら、そうして基本的人権がきわめて尊重されなければならない今日、公安調査という名のもとに、特定の団体や思想の調査を行なうために二百人という大幅人員の増加ということに対しましては、わが党は断固反対せざるを得ないのであります。  ここに民社党を代表いたしまして、公安調査庁の増員に対しまして、以上わが党の立場を申し上げまして、反対の討論を終ります。
  164. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて討論は終了いたしました。  採決に入ります。法務省設置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  まず、内藤隆君提出の修正案について採決をいたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  165. 徳安實藏

    徳安委員長 起立多数。よって、本修正案は可決決定いたしました。  次に、ただいまの修正部分を除く原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  166. 徳安實藏

    徳安委員長 起立多数。よって、修正部分を除いては原案のとおり可決いたしました。  これにて法務省設置法の一部を改正する法律案は修正議決すべきものと決しました。  なお、本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  167. 徳安實藏

    徳安委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  168. 徳安實藏

    徳安委員長 次会は、明四日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後二時四十六分散会