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1964-05-07 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月七日(木曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 辻  寛一君    理事 内藤  隆君 理事 永山 忠則君    理事 石橋 政嗣君 理事 田口 誠治君    理事 山内  広君       岩動 道行君    佐々木義武君       壽原 正一君    高瀬  傳君       塚田  徹君    野呂 恭一君       藤尾 正行君    保科善四郎君       前田 正男君    松澤 雄藏君       渡辺 栄一君   茜ケ久保重光君       稻村 隆一君    中村 高一君       村山 喜一君    受田 新吉君       山下 榮二君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房国立         公園部長)   今村  譲君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         農林事務官         (大臣官房長) 中西 一郎君         農林事務官         (農政局長)  昌谷  孝君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         農林事務官         (園芸局長)  酒折 武弘君         農林事務官         (農林水産技術         会議事務局長) 武田 誠三君         食糧庁長官   齋藤  誠君         林野庁長官   田中 重五君         水産庁長官   庄野五一郎君  委員外出席者         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一二号)  農林省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第一三号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  厚生省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。茜ケ久保重光君。
  3. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 なかなか厚生大臣も当委員会においで願うのもたびたび機会がありませんので、設置法と直接関連ございませんが、一、二この際、厚生大臣厚生行政についての御所見をお伺いしたいと思います。  その第一点は、ライシャワー襲撃事件に関連して、現在政府精神衛生法改正を意図されておるやにお聞きするのであります。もちろんライシャワー事件というあの事件は、不祥事には違いありませんし、国民としても遺憾の意を表しておることは当然であります。ただしかし、精神障害者のたくさんある中で、一少年が、それも精神病者としてこれをきめつけるにはたしてふさわしい状態であるかどうかということも、かなり問題があるやに聞くのであります。そういったことから直ちに精神衛生法改正して、政府の意図されるように警察権介入を認めることは、むしろ今後の精神衛生行政上、害はあっても益はないというように私ども考えますし、またもちろん精神衛生に関する権威者意見もそうでありますが、われわれしろうと考えましても、戦時中にありましたああいう状態の再現が起こるのではないかという心配もあるわけであります。したがいまして、この際、厚生大臣から、精神衛生法改正の意図が、巷間伝えられるようにはっきりしてまいっているのか、はっきりしているならば、そのよって起こる根源について明快なお答えをお願いしたい、こう思うのであります。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 少し説明になるかと存じますが、実はこの精神衛生法は、昭和二十何年かにできまして、その後、精神衛生の非常な進歩で、全般的にあの法律はおくれておる、改正しなければならぬということは、精神衛生学者あるいは精神衛生関係する人たちが、一様にそういう意見を抱いているのでありまして、いまの日本の精神衛生学界におきましても、あの法律全般についての改正案検討さえいたしておるのであります。厚生省も、この法律相当程度この際手直しをしなければならぬということを前々から考えておりまして、あの事件関係なく、この改正そのものは進んでおった、あの事件の有無にかかわらず、次の通常国会あたりには衛生法全般改正をいたしたい、こういうふうに考えておったのであります。しかし、あの事件が起こりまして、精神病者が、野放しになっておるということは、世間からもう一様に新聞、雑誌その他において非難を受けておるのでありますが、いろいろの事情から、ああいうのが野放しというようなことばで表現するには私は不適当だと思っておりますが、しかし、世間ではきわめてこのことばが受け入れられやすい、したがって、そうか、それは不安なことだという一般的の感じが、国民の間にびまんしてきておるのであります。もう一つ、それに対しまして厚生省あるいは政府精神病対策というものは、実は非常におくれておるのでありまして、私ども遺憾に存じておることは、保健所等があれだけの予防衛生公衆衛生をやっておりながら、精神病関係知識を持っておる人がほとんど配置されておらない、あるいは保健婦にしても、看護婦にしても、医者にしても、この専門知識を持っておる人を配置しておらないということで、病気関係では、最近結核対策もだいぶ進んで、病人もどんどん減ってきておる。一番おくれておるのはこの精神病対策だ、こういうふうに思うのであります。国等におきましても、結核の撲滅に対応して精神病対策をぜひ急速に進めなければならぬということで、御案内のように、国立病院等も、病床の不要になったものは精神病者のほうに転換しよう、こういうふうな時期がきておるのでありまして、もう一昨年来さような方法を進め、三十九年も、少ないながら一応予算としては三百病床精神病に転換するということの方策もいたしております。一方、これらの病床をふやすと同時に、保健所における精神病対策を進めたい。したがって、それにできるだけの専門知識を有する職員を配置したいし、また地方には精神衛生相談所というものも設置し、中央の国立精神衛生研究所機構も拡大し、内容を充実しよう、こういうふうに一般的に精神病対策というものは総合的に進められておる、こういう状態でございます。それで私は、ああいう野放しということばに対する一応の答えとしましては、とにかく国あるいは保健所、要するに病気を担当する厚生省が、精神病実態をもっと把握する必要がある。これはやはり必要だろうと私は思う。病気治療にしても、予防にしても、あるいは予後の指導にしましても、精神病実態を把握することが絶対に必要だ、把握するにはどうしたらいいか、こういうことを私は前々から考えてきたのでありまして、それについては、やはり保健所等が知らしてもらう。ある程度それを自分が調べて知らしてもらう必要がある。したがって、何らかの通報責任をだれかに持ってもらう必要がありゃせぬかということを、私は前々から考えております。現在の精神衛生法では、御案内のように不正をなして、悪事をなして警察の手にかかった者だけは、警察から保健所へ知らせる。またあるいは出所した者は、検察官から通報する。こういうふうに、いままで保健所が知らせるものは、警察官の一部と検察官の一部しかない。それで一般家族、あるいは先生、あるいは友人、あるいは病院関係者医療担当者、こういうものにはいままでそういう義務がない。これはやはり一つ方法でありまして、戦争前のような精神病対策というものは非常に間違っている、こういうことから出発してあの精神衛生法ができて、これからは治療するのだ、そうして精神病というのはそうあぶなくないものだ、こういうことを世間にも宣伝をし、啓発をしなければならぬという方向で、進歩的な考え方によってなったのがいまの精神衛生法である。しかもこれはなおその後の治療対策等進歩から、相当改善をしたい、こういうことで話は進んでおるわけであります。それについて私どもは、ある程度実態把握のために、何らかの通報を受けるような考え方がないかということを検討しておった。  このことと、もう一つは、病床の不足であります。現在われわれの推定で、全国的に二十七、八万人の治療を要する患者がおる。そのうち現にある病床というのは十三万しかなくて、これを無理に詰めて十四万人ぐらい入っておる。しかし、その半分はまた自宅療養ということで、私ども考え方としては、実態を把握するということと、病床をふやす、この二つが精神病対策としてまずもってやらなければならぬ、こういう考え方を持っておりまして、病床のほうは、いままででも相当奨励をいたしまして、すでに一万ぐらいは進んでおります。私ども最後には病床を二十一万ぐらいまで持っていこう、こういうことでいま計画を進めておりまして、病床対策はそういうふうにしてある。もう一つの問題のあるのは通報の問題だ、こういうことでありまして、私はせめて精神病専門に担当している方からは、そういうふうな通報を受けることにしたらどうか、こういうふうな考え方をもっていま進んでおるのでありまして、そういう急ぐような問題は、ひとつこの際やったらどうかという話が政府部内にも出ておりまして、検討をいたしております。しかし、御承知のように、これについては非常な強い反対が出ております。私ども精神病関係者との考え方に相当な開きがございまして、それでも人権侵害になるというふうな考え方でいま反対をされておりますが、私は、これは精神病そのものの、厚生省独自の立場からしてこれを改正したいと思っておるのであります。警察等については、いま関係しておりません。たまたま警察公安委員会からああいう申し入れがあったために、これと結びつけてどうこう、こういうふうな考え方世間でいたしておる。これはまた、以前のような、警察精神病に関与する、こういうことを復活するのではないかというふうな考え方でもって非常に反対をされておりますが、私ども警察がああいうことを申し入れる前から考えておる問題でありまして、この点は私は多少誤解をされておる向きがあると思うのであります。私は、昨日の閣議におきましても、私ども精神衛生法改正しようというのは、警察取り締まり目的としてやっておるのじゃないのだ、したがって、あなた方がこういうことを言えば言うほど私ども精神衛生法改正はめんどうになりますぞということを、実は国家公安委員長申し入れたのでございまして、そういう考え方で、私どもは、取り締まりのために、それを目的としてこれを改正しよう、こういう考え方ではない、こういう基本的の考え方だけいま申し上げておきたいと思います。
  5. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 厚生大臣から精神衛生に対するたいへん該博な御意見を承ったのですが、私どもも、現在の精神衛生法がかなり時日を経まして、いい意味における改正の必要があることは、同感でございます。ただ私は、冒頭に指摘しましたように、これは官僚機構全体がそうでありますけれども、特に治安当局の諸君は、何かあると、事前の責任をどっかへ持っていって、起こった現象からの自分たち自己保身という潜在的な気持ちから、事を取り締まり強化方向へ持っていく習性があります。私どもかつて戦争中には治安維持法という全くでたらめな法律のためにかなり迷惑をこうむった一人でありますけれども、そういう例でわかりますように、よほど注意しませんと、警察権に結びつくとかえって不測の事態も起こる可能性がございます。したがって、今回私どもが問題にしているのは、厚生大臣のおっしゃるように、精神衛生法全般にわたって前向き改正をされることは、当然期待するところであります。ただしかし、そういったことと軌を一にして、ライシャワー事件のようなことがあったことに関連して、いろいろな事情調査ということについては、これは精神衛生面ばかりでなくて、万般にわたってそれぞれの機関——警察という特殊な機構のほうが調査しやすいのですから、ときによっては便利なこともありますけれども、しかし、冒頭に申しますように、警察にこれを関連させますと、非常に越権と申しますか、事を乗り越えて処置する面が多分に出てきますので、私どもは賛成しかねるのであります。ただいま厚生大臣最後のところでおっしゃった、公安委員会からライシャワー事件等を通じて、精神病者に対する取り締まりというか、あるいは調査というか、そういったことをしたいという申し入れがあったけれども厚生省としてはそれに反対である、独自な立場でやっていきたい。たとえば現在保健所がやっているわけでありますね。保健所には、いまおっしゃるように精神科専門医もいらっしゃらない。それも手不足でございまして、なかなか容易ではないけれども、少なくとも保健所の仕事は前向きだと思うのです。精神病者を保護し、これを治療方向に持っていく。なかなかそういっていませんけれども、一応アイデアとしては、保健所精神衛生行政は前向きだと思う。これが警察になりますと、そういうことでなくて、治安維持ということが大きく出ますから、何とかこれを取り締まってということになりますと、これは非常なあと向きであって、戦争中のあの悲惨な状態が出てくる。したがって、関係者はこれをなるたけ表に出したくないということで潜在患者が非常にふえるということになるわけでありますが、そのことについて、厚生大臣のおっしゃった点も、私はすなおにお受けすれば、新聞やその他が発表したように、公安委員会の主張をいれて精神衛生法改正の中に通報という義務と申しますか、そういったことを、警察でなくて、保健所なりあるいは精神衛生関係病院なり、医者なり、医療機関通報するということであれば——これは通報ということについてもかなり人権の問題は付随してまいりますけれども、相手が警察でないという場合には、いま言うように前向き状態でこれを解決するということも、善意に解釈しますならば、まだ了とされますけれども、そこに警察というものが入りますと、それはもう絶対に賛成できない。その点は、閣議決定では、いわゆる患者警察官通報する、あるいは退院した者もこれを警察官通報するということになっておりますが、いま厚生大臣のおっしゃったように、そうではなくて、警察権というものは全然介入しない、こういった報道なりうわさは根拠のないことであって、あくまでも厚生省独自の立場でやるという御決意のもとにいま改正案の作成なりが進んでいるのかどうか、この点をもっと明確にお示し願いたいと思うのです。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 これはただいま申し上げましたように、精神衛生法というものは、そういうことのための法律ではございません。これはあくまで精神病者治療とか、予防とか、指導とか、こういう目的のためにできておるのでありまして、したがって、警察目的とは関係がございません。私どもは、たとえ通報をしてもらうとしても、専門医者から保健所に知らしてもらう、こういうことだけを考えておるのでありまして、警察などという文字がどこへも出るはずもありませんし、そういうものは私どもは了承することはできません。したがいまして、私どもはあくまでも実態をつかむ。たとえば結核と同様、こういうものをよく実態をつかんで、そうして治療目的を達する。ことにいま精神病に対する考え方というものは、相当変わりつつあるのでありまして、なおるのだ、そうしてこれらは私どもとしては世間の偏見を解かなければならぬ、すなわちおそろしいものだという考え方はなくさなければならぬ。たまにはそういうものも出てくることがありますが、大部分はいまりっぱに治療ができるのだ、こういうことをむしろ私ども世間宣伝をいたしたいのでございます。したがって、そういうたてまえであの精神衛生法ができておるのだというふうにわれわれも考えておるのでございまして、警察通報するとか、あるいはだれかが警察にそれを知らせる義務があるのだなどということは、あの法律では全然考えておりません。そのことをはっきり申し上げておきます。
  7. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大体いまの御答弁で了解できます。またそうであるべきであって、私どもしろうと考えでございましても、これは警察なんかに介入させては、それこそたいへんなことになると思うのであります。ぜひ厚生大臣もその点はその意見を堅持されて——おそらく精神衛生法改正という具体的なスケジュールが生まれますと、国家公安委員会なり警察庁あたりから必ずや強く警察介入を慫慂すると私は思うのです。おそらくそれが閣議決定をされたということにもなったのでありましょうし、また新聞等でいち早くこれを取り上げて大きくアピールした点でもあろうと思うのです。御承知のように、朝日新聞は五月四日、月曜日の朝刊の第一面に八段抜きのいわゆるトップ記事でこの問題をあげております。これもおそらくそういった閣議決定というようなこと、あるいはライシャワー事件に関連しての国家公安委員会なり警察庁のいわゆるおかっぴき根性からの意見が強く出たために、こういうことになったと思うのであります。厚生大臣厚生行政に対する強い信念決意には、常日ごろ敬意を表しております。医師会あたりに対する——これは私も意見を持っておりますけれども、この際申し上げませんが、国民医療的な立場から相当な決意と強い信念でやっていらっしゃる点については、敬意を表しておるわけですが、いま当面の問題である精神衛生法改正が、前向き改正ならば、私どもこれに全面的な協力も決してやぶさかではない。しかし、いま心配されましたことが、もしかりにあるとすると、これはゆゆしい問題でございますから、これはとても協力どころか、猛烈な反対をしなければならぬということになります。そこで、この改正の案を今国会中にお出しになる準備と用意があるのかどうか、この点はいかがでしょうか。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 私ども、できたらこの国会にもある程度のものを出したい、こういう希望を持っておりますが、しかし、これは反対もいま相当出てきておりまして、私はこの反対は少しもおそれていない。できるだけ反対をして、この際精神病に対する世間考え方というものをある程度変えてもらう必要がある。すなわち、この反対そのものはそういう面で非常に役に立つということで、昨日も精神病学会の方が大ぜい見えられました。できるだけ反対の論旨を明確にして出していただきたい。そして世間にも新聞にも発表していただきたい。私どもは、これをわれわれだけの考えで強行するなんという考え方はありませんから、いまの関係者の意向も十分取り入れて、そして希望があったら申し出てもらいたい。こういうふうにしたらどうか、あるいはいま世間野放しになっておる、こういうことばが非常に深く、広く広がっておりますから、こういう野放しでないんだということも、あなた方反対することによって世間では相当わかってくるのではないか、こういうふうに思うから、意見も具体的にひとつ出してもらいたい。それで相談をして、話し合いができるならば私は話し合いをつけたい、こういうことで、いま関係者にも申しておるのであります。私どもは、反対を隠して、そしてこういうことをやろうなどとは考えておりません。大事な問題ですから、できるだけ関係者みんなの意見を聞いて、そうしてある程度がまんのできるところで整えば出したい、こういうことで、まだ必ず出す、こういうことも申しませんし、また出さないとも、いま申し上げられない。検討をして、そうして関係者からの意見もひとつ至急出してもらいたいということを申し上げておる、そういう状況でございます。
  9. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 会期もほとんど余すところございません状態でありますから、いま大臣もおっしゃるように、非常に事柄は重大な件でございます。したがって、厚生省自体でりっぱな案を作成されることも当然でありますけれども、やはり問題のある点でございますから、関係者のなるべく多くの意見を徴されまして、できることならば、やはりこれは公的な問題でなくても、精神医学会の方、あるいは現に病院を経営されておる方、そういった方、さらにまた精神病者をかかえている家族と申しますか、そういった人の意見も徴されて、できれば慎重に事を運ばれて、それは早いにこしたことはございませんでしょうが、と言って、また一日、二日を争うことでもないのでございますから、今国会に提出ということはひとつあまりお急ぎにならずに、次の臨時国会なり通常国会でも決して私はおそいと思いません。したがって、私はできるだけ慎重に、世間にいろんな心配誤解を与えないような状態で処置をしていただきたい、こう思うのであります。これは要望でございます。  それからもう一つ大臣にお聞きしておきたいのは、警察への通報、これが閣議決定ということでかなり強く世間に流布しているのです。閣議赤澤君が発言したかどうか知りませんが、閣議の中でこのことが非常に問題になって、一応話し合いができたのではないかと思うのでありますが、これは世間ではいわゆる警察権介入閣議決定されて、法律改正が間に合わなければ、政令でも即座に実行するのだというぐあいに伝えられて、非常な心配を招いておるのですが、その閣議の席において、そういった具体的な話があったのかどうか、この点ひとつ念のためにお聞きしたいのです。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 この問題は、私はあの事件の直後、実はこういうふうな考え方があるのだということを閣議には報告をしておりますが、最近の問題は、あれは別に閣議決定とは思っておりません。こういう話し合いがあって、そうして急ぐものがあったなら出したらどうか、こういうふうな話があっただけで、別段閣議決定というような形をとっておりません。要するに、そういう話し合いをしたということでございまして、少し強く響いておるようですが、出すことをはっきり閣議決定したとか、こういうふうな問題ではございません。これはまだ今後の話し合いの余地があると申しますか、話し合いを要する問題であります。こういうふうに思っております。
  11. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 大体大臣の御答弁で私は了解点に達しますが、ひとつぜひこの点は、大臣も強い態度で警察権だけは絶対介入させない、これだけは堅持していただきたいと思います。  それから少し具体的な問題を局長にお伺いしたいのですが、先ほど大臣もおっしゃったように、精神病院のベッドが、現在表に出ておる患者の数に比較しても、半数しかない。したがって、あと半数患者は、その病状の軽重はあっても、大臣ことばで言えば野放し状態にあるということになるわけですが、そういった中で、私は大臣答弁の中で一つ示唆を受けたのは、全国国立病院——これは名前は国立病院でもなかなか設備なり医者の実情なりでかなり閑散なと申しますか、地方患者からあまり重要視されないで、りっぱな大きな病院はあるけれども国立病院にかからないで一般病院やあるいは個人病院に通う人が多い。したがって、現在の国立病院は、特殊なものは別として、全国にたくさんある中で、かなり閑散ではないかと思うのです。そういった中で、厚生大臣がそういった国立病院精神病院に転換したいというようなことをおっしゃったのですが、私は、これは全面的とは申しませんけれども半数の十何万という精神病者病院に入ることなくして自宅療養なり、あるいは非常に昔からのいろんな形の療養を受けておるということは、これはゆゆしい問題でございますから、ひとつこの際思い切って、予算もかかりましょうけれど、あるいは医者関係もございましょうが、しかし、とりあえず精神病院に転換されるということは、望ましいことだと思うのです。そういう点が、現在のままで可能かどうか、また可能とすれば、これは私ども国会としては予算その他の点については協力すべきだと思うのです。したがって、ぜひそういう方向へ行ってほしいと思うのでありますが、いかがなものですか、ひとつ担当局長のお答えを願いたいと思います。
  12. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 国立病院国立療養所を含めまして、現在精神病のベッドは比較的少のうございますが、特に国立加養所のうちで、精神関係はいま四ヵ所、二千数百ベッドしかございませんが、お話の一番問題になりますベッドのあいておるというのは、いま結核療養所に、かなり結核対策の効果と申しますか、ベッドのあきが目立ってきておるところがございます。それで結核療養所の空床の多いところ、それも長く空床の多いところにつきまして精神転換をやっていこうというような考え方を持ちまして、三十九年度におきましては三百床を一応予定しておったのでありますが、この事態を考えまして、これをもう少し強力にやっていこうというので、五百床にこれを増加する、三百床を五百床にふやす、こういうふうにことしの予算内でやれるだけは努力していきたい、こういうふうに思っております。なお、このほかの国立病院につきましても、百床くらいの精神ベッドを増設していきたい、こういうようなつもりで予算の実施において努力をする。また、三十九年度はこれでやっていきますが、四十年度におきましては、一そうこの施策を推進していきたいと思いますが、結核対策の追撃戦の問題もございますし、いまお話のございました医者看護婦の入手というふうな問題、設備の費用というふうな問題もございますが、できるだけその線で努力するようにいたしておるわけであります。
  13. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 いま療養所が何カ所あって、普通の国立病院は何カ所あって、療養所のあきベッドが幾らで、普通病院のあきベッドが幾らか、その数字がわかったら、概数でもけっこうでございます。
  14. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 国立病院のほうは、八十カ所、二万六千床くらいでございますが、これは大体八三、四%、清瀬病院としては大体普通だと思います。だから、一ぱい入っておると見てよろしいと思います。それから結核療養所が、六万床ちょっとでございますが、それがいま八〇%くらいで、これも全国一般結核療養所の利用率と大体同じくらいでございますが、施設によりますと、相当多くあいておる施設がございますので、そういう施設をいま考えていっておるわけであります。なお、精神療養所が、四カ、二千六百床くらいございますが、これは大体一ぱい近い状況でございます。  そういう状況でございます。
  15. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 これは場所によって、いまおっしゃるようにかなりあいておるところもあるようですから、ぜひそうしたほうへ意をお用い願いたいと思うのです。  それから一般的な病院でございますが、医療法で収容定員の二割が一応収容限度といいますか、しかし、現在は満床からさらに三割も四割もふえておるところがあるようであります。それはやむを得ぬとして、私どもの一番心配するのは、いわゆる私立の精神病院で、相手が精神病者でものが言えない、要求ができないという状態患者でございますので、かなりいかがわしい、といっては語弊がありますけれども、かなり問題を含んでいる病院があるやに聞くのであります。結核患者は、御承知のように患者同盟をつくって、それは一〇〇%はいきませんが、かなり要求等もして改善しておりますが、精神病者はそれ自体がもう中枢が狂っていますから、できない。それをいいことにして、かなり思わしくないような状態もあるやに聞くのであります。この点に対して、現在の私立の病院で、相当政府の監督、といっては語弊がありましょうけれども、しかし、少なくとも指導をして、そうでないような方向へ持っていく責任があると思うのでありますが、その実態をはっきりおっしゃっていただいて、それに対して政府としてはどういうふうに指導されているか、この点をひとつ大臣からお聞きしたいと思います。
  16. 小林武治

    小林国務大臣 精神病院は、一応県の認可がなければできない。したがって、認可をするにつきましては、国できめた一定の基準があって、施設その他は監督しておりますが、現在の実際の取り扱いがどうか、こういう問題でしばしば私どももいろいろの投書とか不平を聞いておるのでありまして、私はお話のようなことがないとは断言できません。しかし、これらにつきましては、保健所等が実際に監査をし指導することになっておりますので、そうひどいものもあるまい、かように思っておるのでありますが、これは世間で始終、精神病者の特質からいって、主張のできない者である、したがって、これが取り扱い等が非常に粗漏になっておるといううわさが出ておるのでありますが、注意はしてまいりたいと思っております。しかし、こういうことは、やはり世間全体がその声を大きくすれば、またわれわれが目で見るよりは自粛をしていかれる、こういうふうに思っておるのであります。  なお、精神病院が、これから私立がいいか公立がいいか、こういうふうな問題も出てきておりまして、一般の私企業の圧迫などという問題もあって、公立に重点を置くのだというようなことはいま申しかねるのでありますが、私どもも、いま国立病院をはじめとして、こういうものの性質からして、市町村立というようなものもできてくれることが非常に望ましいじゃないか、こういう考え方をいたしております。
  17. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 実は私の知り合いの者が、いわゆる良心的な精神病院の経営を考えて、かなり積極的な、意欲的な対策をしたのであります。厚生省で監督されている医療金融公庫というのでございますか、がございますね、その医療金融公庫からかなりお金を借りてやるという予定で話を進めたらしいのでございますが、何ですか、銀行の保証の問題でなかなか進展しなかった。敷地なども三、四千坪用意をして、かなり意欲的にやっていたらしいのですが、金融公庫では金を貸すという態勢をとったけれども、残念ながら銀行の保証の問題でとんざした、こういう例があるのであります。もちろんこれはいろいろございますが、最近の医療金融公庫法の改正で、特殊病院ですか、研究所を持ったりした特殊病院に対しては、医療金融公庫が独自で五千万円ぐらいの融資ができるということだそうでございますが、いまのように精神衛生の問題が非常にクローズアップされまして、しかもなかなか病院設立が進まない。いま大臣の私立、公立の問題もございますが、そこに客観的なその設立に対する保証ができますならば、精神病院も、この際、特殊病院と同じような五千万円までの融資を銀行の保証なしに医療金融公庫が直接責任を持って貸すというような体制ができますならば——もちろん、そういうことをいいことにして、有象無象がいわゆる政府機関の金を乱用するということは防がなければなりませんが、前向きの、ほんとうに精神病対策に対して熱意を持ち、しかも善意な医療業務をしたいというものに対しては、そういった方面も私はこの際思い切ってやったらいいのじゃないか、こういうように思うのでありますが、この点いかがなものでありましょう。
  18. 小林武治

    小林国務大臣 私も具体的の問題は存じませんが、医療法人としまして精神病院をつくりたいというのは、いま方々に希望が出ておりまして、私ども、非常にベッドの増加というものは急を要する、こういうふうに考えておりますので、いまのような問題は検討をいたしまして、とにかく病床のできることに前進のできるようにはからいたい、かように考えております。幸いにしまして、精神病院をつくろうという気分がもう各地方に出ておりまして、私は、この状況をぜひひとつ推進させたい、かように考えております。
  19. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 精神病床の増床につきまして、医療金融公庫も御協力を従来相当しておりまして、毎年大体八千床ぐらいが医療金融公庫の融資によりまして増床せられて、基準を緩和いたしておりますので、ことしはこのベッド数がもう少し多くなるのではないか、こういうふうに思っております。全体の従来の実績から申しますと、増床の半分以上が医療金融公庫の融資によってできている、こういうような状態でありまして、いまのお話しの五千万円以上のものにつきまして直接貸しをやるというような問題でございますが、これにつきましては、大学とか総合病院というようなものに一応限定する予定でございますが、御趣旨の点もありまして、十分研究いたしたい、こう思います。
  20. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 ぜひ積極的な、しかも前向きの行政をお願いします。  次に、インターンの問題について一、二お伺いしたいし、御要望したいと思うんです。私ども、これもしろうとでありますけれども、こういうことは案外しろうと考え心配が、非常に重要なものでございます。私、実は群馬大学の建設と内容の充実には長い間その委員として直接タッチしてまいりまして、大学病院の院長はじめ教授の諸君から非常に深刻な意見を聞いておるのでありますが、従来から、病院長なりあるいは各科の主任教授からインターンの問題についてはいろいろな意見を伺ったり、あるいはまた注意も受けておったのでございますが、何せ私どもしろうとなものですから、いままでこういう席でお尋ねしたり意見を申し上げる機会がなかったのでございますが、ことしはだいぶインターンが騒いでまいりまして、世間的にも非常に問題になったようでございますが、今回も、私、現在インターンをやっている諸君とも何回か懇談会を持ちましたし、現に開業している医者諸君とも話し合いましたし、また、現在在学生諸君からもこの問題についていろいろ意見を聞いたのでございますが、私がそういう懇談をしたり意見を聞く中で思ったことは、こういうことはむしろ医者という専門的な立場の諸君よりも、われわれのように全然しろうとのほうが、そのことを理解するのにいいのではないかという感じがしたのでございます。そこで、私はインターンという制度がいいか悪いかは、もちろん批判いたしません。しかし、私の端的な考えを申し上げますと、もしインターンという制度が——これはアメリカのつくった制度でございますが、あったほうがいいという制度ならば、やはりインターンの身分と給与を考える必要がある。これはアメリカがほんとうに戦後押しつけた制度で——従前、日本の大学の医学部は一般学部よりも一年長い、四年でございましたが、四年で卒業すると、国家試験も何もなくて医者になれた。インターンもなかった。それでもいいのだというならば、私はこの際思い切ってインターン制度を廃止すべきだ。とにかくインターンという制度は置いて、現在一般の大学よりも二年も長くして、しかも一年のインターンをして、さらに国家試験——これは人命を預かる医者でありますから、年限の長いこともけっこうでしょうし、インターンもけっこうでしょうし、試験もけっこうでしょう。しかし、何かしらいまのインターンは非常に問題が多い。したがって、端的に申し上げると、先ほど言ったように、必要ならば私どもは決して存続に反対しません。しかし、もしそうならば、いままで無給で、身分も何も保障しないでおいたことに対しては、私どもはやはり政治的な責任があると思う。したがって、厚生省大臣がインターンはどうしても必要だという結論をお出しになったならば、ひとつ早急に身分の確立と給与に対して責任を負っていただきたい。しかし、また長い間の経験でインターンの制度が必要ないというならば、思い切ってこの辺でやめてもらいたい。そしてかわるべき処置をとってもらいたい。先般自民党の小委員会で案を出していたようですが、私ども拝見して、あれもいいか悪いかわかりません。何か前期に基礎医学で試験をする。後期にまた臨床試験をする。非常に繁雑ですね。これもなかなか容易じゃないんですよ。あれはあれとして、そういう点は全国のインターン諸君の非常な熱望です。さらに、いまの学生諸君が非常な期待をしている。したがって、このいずれかに徹底をすべきだと思うが、厚生大臣は、いますぐこのインターン問題に対してはどのような御意見とどのような態度をお持ちになっているか、これはひとつ明快にする必要があると思いますが、いかがですか。
  21. 小林武治

    小林国務大臣 この問題は、お話しのように、ことしインターンになる方々からのいろいろな要望も出ておりますし、国会でも、衆議院の社会労働委員会で非常にやかましい御論議を呼んだのでありまして、私どもも、厚生省立場として十年以上もあれをあのままにしておいたことは、役所側の怠慢と言われてもしかたがないというふうに考えております。いまのような不確定な立場で置くことは、とるべき態度ではない。こういうことで、あの際私は、ことしはひとつこの問題を解決いたします、こういうお約束をして、それにつきましては、皆さんの意見を聞く必要がありますので、厚生省と文部省、あるいは大学の方々にお寄りをいただいて、いま八人委員会というものをつくりまして、この問題の根本的対策を立てよう。そこで事務当局に対しまして、とにかくこれは予算も相当伴う問題であるし、また医師法の改正にも関係する。したがって、どうしても早くに結論を出さなければならぬ。最近、私は六月一ぱいでひとつ厚生省の結論が出るようにという指示をいたしまして、それに合うようにいまの委員会も開催をしてもらおう、こういうことにいたしております。  お話しのように、身分と待遇についてこの際思い切った手段をとらなければならぬ。われわれとしては、ただいまどうしたらいいかという多少の意見を持っておりますが、これらの審議会にお願いをしておりますので、その結論を待ちたい。こういうことで、結果的に申せば、ことしはこの問題がある程度の解決をする。しかも六月一ぱいぐらいで結論を出してもらいたい。こういうことをいたしておりますので、御了承を願いたいと思います。
  22. 茜ケ久保重光

    茜ケ久保委員 これはやはりそうした政府の態度が一般に全然わかっていないのですね。私は、つい数日前も、現にインターンをしておる諸君と話し合ったのですが、いま大臣のおっしゃった政府決意とそういったあれが、全然わかっていないのですね。したがって、非常に不安な状態になっておりますから、そういったことはある機会に発表されまして、そうした不安を取り除く処置をしてもらいたいと思うのです。私どももちろんいろいろな機会を通じて徹底させますが、いま大臣のおっしゃったように、いずれにせよ、これは専門立場でございますから、私どもしろうとはそのよしあしは申しませんが、とにかくいま言ったようにはっきりとしたものを出していただいて、ひとつすっきりした形で医療行政をやってもらいたい。  と同時に、これは厚生省関係ではございませんが、インターンの問題と関連する問題があります。これは文部省の関係でございますが、各大学病院に無給助副手というのがございます。これも現在非常に問題になっております。これは厚生省の問題ではございませんけれども、もしインターンが存続されることになり、インターンに対して身分と給与を保障されますと、インターンを終えて国家試験に合格し、大学病院においては今後助手、副手等で残る諸君の無給の問題も、非常な問題でございます。最近私が聞くところによると、インターンの問題に関連して、へたすると、各大学病院の無給副手の諸君が診療拒否をするようなところまでいく可能性がないとは番えないと思うのです。現在、御承知のとおり、各大学病院の診療はほとんどこの諸君がやっておるのでありまして、主任教授はたまに回診するというだけで、具体的な外来病院の診療は、ほとんど無給の副手諸君がやっておるようでございますから、そういうことになりますと、いわゆる身分は文部省だが、病院は、そのほうの患者なりその他については厚生行政ですから、そういう問題でございますので、厚生大臣も、直接あなたの管轄ではございませんけれども、インターンの制度を根本的に改革されることを契機に文部省とも連絡をとりまして、無給の大学病院のそういった諸君の身分なり給与についても、ひとつ格段の留意をされまして、ともに解決するような方向で御協力をいただきますように、これは御要望でございますが、ひとつ強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  23. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまの大学病院の無給の問題は、社会労働委員会でやはり同様問題になりまして、インターン問題がある程度かっこうがつけば、当然無給の副手に影響を及ぼす、こういうことは文部省も考え、また大蔵省も考えており、私どもも、その問題がいい影響のあるように相談をいたしております。
  24. 徳安實藏

    徳安委員長 稻村隆一君。
  25. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 私どもは、終始一貫社会保障の立場から厚生省予算の増額を主張してきたのですが、三十九年度厚生省所管の一般会計予算は三千九百八十九億円、前年度当初予算に比べて二〇・四%ふえております。また国の予算の総額に対する厚生省予算の比率は、初めて一二%に達したわけでありまして、これも決して十分とは言えない些少なものでございますけれども、しかし、これだけふえただけは歓迎しなければならぬ、こう思うのです。ところが、予算がふえているのに、むしろ局部的には社会保障が後退している部分が出てくるような情勢になっているわけです。いま茜ケ久保委員も中されましたが、精神病もこれは早急に対策を講じなければならないし、それに対するいろいろ御計画もあるようですから、むろんこれは賛成です。それから公園局を設けるということに対してもあえて反対いたしませんが、しかし、結核対策がどうも私は犠牲になるのじゃないか、こういうことを考える。三十九年度の厚生省の予算措置におきましてそういう点が見られるのは、まことに私は遺憾だと思うのです。というのは、従来、国立療養所の経営費は、国立結核療養所、国立精神療養所、国立脊髄療養所、国立らい療養所、国立療養所看護婦養成費、国立療養所施設費、こういうふうに分かれておったわけです。ところが三十九年度の予算においては、国立療養所経営費、国立らい療養所経営費、それから国立療養所看護婦養成費、国立療養所施設費となっておりまして、らいを除いて結核、精神、脊髄の各療養所経営費が一本化されるようになっておりますが、この理由は一体どういう意味ですか、お尋ねしたいのです。
  26. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 いまお話の、国立療養所のうちで結核と精神と脊髄、これを予算的に一緒にいたしました理由は、脊髄療養所が一カ所、精神療養所が四カ所でございまして、その予算とか定員等もそこで限度がありまして、人員の流用とか予算経費、薬品費等の流用がはなはだ困難である。脊髄療養所が一カ所しかないものですから、一カ所だけの経費でやっていかなければならない。結核のほうで人が余っておりましても、それをほかに使うというようなことができない。薬品費なんかでも、お互いに流用がきかない。こういうふうな立場で、運営にだいぶ困っております。そういうふうな関係から、この療養所の三つを一緒にして予算をつくったほうが、あとの運用に楽だ、こういうふうな関係で、数年来これは研究しておった問題でありまして、それを三十九年度から踏み切った、こういうわけでございます。  なお、先ほど茜ケ久保先生からもお話のありましたように、結核療養所のベッドのうちで、施設によりますと、空床が半分に近いというふうなところ、長い間空床のあるところ、そういうふうなところにつきましては、これを精神へ転換するというふうなことも、一緒にしておりますとやりやすい、こういうふうなことも考えまして、この三つを一緒にすることに踏み切ったわけであります。
  27. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 いま公園局設置には反対じゃないと言ったが、社会党が反対だそうですから、取り消します。  それで、いまの御答弁どうも納得できないのです。というのは、こういうように一緒にしたのは、従来収入ゼロのらい療養所を除いて、これら三つの療養所を将来特別会計に切りかえて、合理化による独立採算を目ざしているのではないか、こういうように私は思っておるのですが、そういうことはないですか。
  28. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 いろいろそういうふうな議論も中には言われる方もありますが、今度の措置は、そういうふうなことを前提として考えたものではございません。
  29. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 独立採算を意図していない、こういうことはかりに了承するとしても、私はそれだけでは納得できない。たとえば小林厚生大臣は、昨年の夏、就任直後の記者会見で、国立病院療養所の二百六十四施設のうち七十九施設を廃止する、こう言っているのですが、その点いかがですか。
  30. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまのことは誤り伝えられておるようでありまして、そういうことは、私ははっきり申した記憶がないのでございます。ときどき聞かれますが、そういう言明をしたことはないということを申しておきます。
  31. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 厚生省は三十九年度予算案作成のときに、国立療養所整備五ヵ年計画を立てた。この計画そのものは大蔵省の認めるところとならなかったのです。その内容は、(イ)は国立結核療養所のベッド六万二千床を四万五千床に減少させる、(ロ)これに伴い国立結核療養所のうち二十施設程度を精神療養所やリハビリテーション施設に転換する、こういうことを意図していると言われておるのですが、この点はいかがですか。
  32. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 大蔵省が認めるところとならなかったといういまの再編成計画、そういうふうな具体的のことまでを云々ということはないと思います。ただ、それよりも、四十五年ごろに結核がどうなるかというふうなことを考えまして、そのぐらいの時点を考えましたときに、いまの六万二千床の結核病床は相当あいてくるだろう、これは結核対策の追撃戦をやりますれば、現在の趨勢等を考えまして、それだけの効果が出てくる、そういうふうなことはいろいろ考えられます。したがいまして、そのあいてくるベッドをどうするかというふうなことは、いろいろわれわれのほうも考えて計画は練っておりますが、まだ最終的な案ができていないという状態でございます。ただしかし、追撃戦に備えまして、結核療養所、いわゆる結核対策の中心は、国立療養所がやっていきたい、またいくべきである、こういうふうに考えまして、全国の各ブロックに一、二カ所の基幹療養所をつくって、いまの療養所を整備していこう。たとえば九州におきましては、福岡にあります、福岡三院と申して、同じところにございますが、その三つの療養所を一緒にして鉄筋化を始めるとか、大阪の大阪療養所と、堺のところにあります大阪厚生園、これを一緒にして一つの基幹療養所をつくる。また東京の療養所と清瀬療養所を一緒にして基幹療養所をつくっていくというような手を打っているわけであります。将来、この基幹療養所整備は推進していきたい。なお、それ以外の療養所につきましても、できるだけ将来のことを考えながら、ベッドの整備を進めていくように努力しているわけでございます。また、先ほどからお話がありましたように、将来のことを考え精神衛生対策の重要性にかんがみまして、精神ベッドに転換というようなことも、花巻とか賀茂療養所というような普通施設において進めておるわけでございます。
  33. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 やはりそれじゃ結核療養所を精神療養所に転換していくという意図はあるのですね。それが困るのです。
  34. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 転換といいますか、たとえば花巻療養所などにおきましては、ベッドがいま二百五十床くらいあるのでございますが、半分くらいしか結核患者が入っていない。これは数年間この状態が続いておりまして、職員等は二百五十床に見合う職員がおるわけでございます。その部分に、いま五十床の精神ベッドを建てております。ですから、結核患者が入ってきますれば、そこにありますベッドに入れるわけであります。しかし、入る見込みがないから、そこに精神関係の人を入れる、あいておる看護婦さんとか従業員を使っていきたい、こういうような考え方でありまして、これが結核対策の進展に伴いまして、漸次切りかえができてくるであろうとは思いますが、転換といいますよりも、一部をこういうふうに変更していくというふうなことでありまして、全部この療養所を精神に切りかえてしまうのだ、そう簡単にはちょっとやれるとは思っていない状態でございます。
  35. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 全部切りかえろとはだれも言わぬのです。精神療養所をふやすために結核のほうを減らすという意図が、そこにあるのです。結核患者は減っていますか。減っていないはずですよ。ぼくは統計のことはあまり詳しくないのですが、私は実はしろうとなんですが、前から国立療養所の方から陳情がありまして、どうも厚生省結核対策を減らすようだということで、患者同盟その他から陳情がある。それを心配して質問するのです。
  36. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 結核対策をこれだけ強力にやり、命令入所、適正医療に関する費用等も大幅に増加しておる。そのほか検診等も強化しておる状態でございますので、その成果に対しまして、死亡数なども、たとえば昭和二十五年は十二万も死亡があったわけでございます。それが三十年ころには五万くらいになりまして、三十七年におきましては二万七千七百八十二人、こういうふうに減っておるわけであります。それから新しく届け出する患者も、二十六、七年ころは五十九万くらいあったのが、三十七年におきましては三十八万に減っております。こういうふうに新患者の発生も減っておりますし、実態調査の結果によりましても、要医療の患者が、二十八年に二百九十二万おったのが、三十七年には二百三万に減っておる。それからその感染源と要入院は、百三十七万が四十六万に減っておる、こういう状態でございまして、要入院患者として推定せられる数が四十六万、したがいまして、病性を把握すると申しますか、自覚するとか、いろいろな状態で入ります患者も減ってくるであろう。現在命令入所等も相当強化せられておりますが、国立療養所につきましても、入院患者が漸次減ってきております。われわれとしては、患者が減ることよりも、できるだけこの療養所を活用することを心がけて入れるように努力するように、県のほうとも連絡して努力しておりますが、しかし、お話しいたしましたように、幾つかの施設ではベッドの利用率が半分に近い、五〇%、六〇%というのが数年間続いている、こういうようなところが何カ所か出ておりますので、そういうところをあいたままでずっと置いておくよりも——もちろん患者がこられればすぐ入れるようにそのベッドは置いてありますが、その横に精神病棟を建てるとか、またずっと空床になっているベッドを精神病床に転換するということは、精神病者の将来性を考えまして、将来の対策として考えていくべきではないか、こういうふうに私たち考えて手を打っているわけであります。先ほども茜ケ久保先生からお話がございましたように、その点はもう少し強化していけというお話も一部にあるわけでありまして、結核対策の推進、その後の状態と見合わせながら、われわれ精神転換と申しますか、精神病棟の施設と申しますか、それもあわせて考えてまいりたいと思っております。
  37. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 現代科学が進歩すれば、それは死ぬのも減るし、それから患者のなおる率も多くなるのは当然ですよ。そうしなければおかしいのです。しかし、私はずいぶん聞いているのですけれども、まだ退院させるべきでないものを、定員の関係で、強制的とまでいかないけれども、退院を勧誘して退院させるということで、まだなおっていないものがずいぶん出ている実例があるわけです。だから、死亡数が減っても、患者が減っても、徹底的に肺結核患者が減るまで、結核療養所の設備等を減らすべきじゃないと思うのです。精神病のものをふやすということは別問題といたしまして。あなたはそう言いますけれども厚生省は、今年度初めて国立療養所の精神転換の経費を計上しているでしょう。今年度予算の厚生省本省の項目の中に、国立療養所精神転換実習費七千円、国立療養所精神転換実習旅費として七十八万四千円、国立療養所精神転換看護婦実習講師謝金四万八千円、合計八十二万九千円が計上されている。具体的に言うと、結核のほうは、職員でも何でも減っている事実があらわれているのです。たとえば三十九年度の定員を見ると、国立結核療養所のほうは、二百十七人減ることになっている。らい療養所は、十九人ふえるのです。看護婦養成所は増減がない、こういうことになっているのです。結核療養所では、すべての患者が言っているのです。看護婦が足りない、それからいろいろな看護人が足らないで、非常に弱っている、そういう陳情をわれわれは何年来受けているわけです。実は私はほんとうはしろうとなんですけれども、この間突然療養所の人たちがやってきまして、ぜひ委員会で質問してくれというので、早急に私きょう質問することになったわけですが、そういう点どうですか。三十九年度予算では、国立結核療養所の定員を二百十何人減らすことになっているじゃないですか。
  38. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 結核療養所につきまして、二百人くらいの減員があることはお話のとおりでありますが、これは一つは、結核療養所の整備費も、従来十億くらいだったところが二十八億くらいにふえまして、整備がだいぶ仕事が多くなった。それから国立病院関係も、同じように整備費がだいぶ多くなった。そういうふうな関係で、療養所におりました営繕関係の技術官を集中的に、能率的に使いますために、地方医務局とか本省に引き揚げました。そういうような関係で減員が形式的には起こっているのが一つ。それからもう一つは、先ほどから申しておりますように、結核療養所に対しましての入院患者が、命令入所等の医療保障の推進にもかかわりませず、漸欠減っておる。現在におきまして、六万二千床くらいの病床を維持するに対する人数が予定してあるのでありますが、入っておりますのが五万を切っておるというような状態でございまして、そこで予算上の定員を計算いたします人数と現実の入院しておる患者数との大きな差があるわけでございます。その差が漸次多くなっている。こういう関係から。仕事の減を考えて、一%足らずの減員をそのほうで計算をやった。実際には二〇%くらいの差があり、さらに拡大しつつあるのでありますが、それを一%くらいとして定員の差を計算した、そういうわけでございます。  なお、精神関係につきまして転換経費を見ておりますのは、結核療養所の中の、先ほど申しました施設によりまして空床の大きなところ、たとえばいま申しました花巻というようなところを、空床があるからといって減員をささぬように、現在の職員をできるだけ利用するようにいたしまして、精神衛生対策ともからみ合わせまして転換をやっておる。この転換をスムーズにやりますためには、看護婦等もやはり精神看護になれなくてはならぬ。医師もできるだけ精神にならさせようというので、そういう勉強の費用も組んで、また建物もつくりかえる費用を組んだ、こういうわけであります。御了承願いたいと思います。
  39. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 そう言いますけれども、精神療養所と結核療養所とは、全然別に考えるべきですよ。何か少なくなったからそれを回すというふうなことは、私はどうかと思うのです。事実、あらゆるところから陳情を受けるのですが、ずいぶん無理な退院をさしておる。あなた、あらゆる療養所へ直接行って調べてごらんなさい。不平満々たるものです。それは予算の少ないところから、一々そう患者の言うとおりにならぬかもしらぬけれども、実際上不平満々たるものです。無理に退院さしているようなところは、そういう現象があるわけです。しかも厚生省の別の資料によると、結核は減っていないのです。これは私は新聞で見た切り抜きですから、新聞に書いたことは全部——それは厚生大臣、言ったことは否定されるかもしらぬけれども、別の資料によりますと、活動性肺結核患者は、三十七年度で約九十七万人、三十六年度より一万人増しているのです。感染性患者は、八千人増している。また、毎年四十万に近い新患者が登録されている、こういわれている。また厚生省患者調査によると、それは結核を含む病気全体の問題ですが、病院、診療所における一日の取り扱い患者数は、人口千人当たりで、三十二年を一〇〇とすると、三十七年一四〇、五年間に四割も患者がふえている。しかもこの期間、医師、看護婦の実動員数は二割しかふえていない。相対的に一割五分の減員にひとしいということになっておる。こういうときに、精神病院転換と称して結核のほうを犠牲にするなんていうことは、私は許されるべきじゃないと思う。あなたは何と弁解しても……。
  40. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 お話の結核療養所につきましても、患者が一ぱいおるところを減床しよう、こういうようなことは考えていないわけでして、ベッドが花巻のように半分も入らぬ、それがずっと数年続いておる、こういうふうなところを転換していこうというふうに考えておるわけでありまして、結核患者を追い出そうというようなことは考えてなく、われわれは追撃戦の拠点として結核療養所は考えていきたい、こういうようなつもりで基幹療養所の整備も始めておるわけでありまして、そういうふうなベッドを減すというよりも、ベッドのあいたところをほかに利用し、精神衛生対策に使っていこうということで、ちょっとその点、全般の問題と一部分の問題とが違う問題があるのではないかと思うのでございますが……。
  41. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 しかし、入れないところがずいぶんありますよ。現に私の知人なんかなかなか入れない。ようやく有力者に頼んで入れてもらった例があるのです。そんなあくなんということはないのです。そっちへ回したらいいじゃないですか。そんな部分的になんという、そんなことは全体から……。
  42. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 そういうような患者さんでいまのあいておる療養所においで願いますれば、われわれのほうは喜んで——患者さんをできるだけ入れるように探しておるくらいな療養所がたくさんあるわけでございますから、特別にどこに入りたいということじゃなく、あいているところにと言われますれば、幾らでもといっていいくらいお引き受けできると思います。そのつもりでわれわれは患者さんを探しておるわけでございます。
  43. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 だから、いま言ったように、厚生省の別の統計によれば、結核患者は全体としてはふえている。これはもっと調べてみますが、ぼくの資料は、新聞で見た資料ですから的確でないかもしれませんが、これは厚生省発表の資料として新聞に出ておったのです。だから、全体としてふえているのですよ。減ってないのだ。しかも伝染性のある者やまだよくなおらぬ者を出しておるのだから、そういう者は完全に治療するまでは出すべきではないのだ。だから、ぼくは独立採算制を考えているのではないかと思うのですが、その点厚生大臣どうですか。そういうことはないですか。
  44. 小林武治

    小林国務大臣 療養所の関係は、独立採算は考えておりません。
  45. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 もう一回数字を申し上げますと、死亡者の関係、これはだいぶ減っておりますが、結核による死亡数は、昭和二十五年に十二万くらいございましたのが、三十年ころには五万くらいになり、三十七年には二万七千七百八十二、こういうふうに昔に比べますとずっと減っておる。それから届け出患者——新しい患者が出ました場合に届けてきますが、それが二十五、六年ころは五十九万という数があったのが、三十五年ころには五十万くらいになりまして、それが三十七年には三十八万三千七百七十三というふうに減ってきておりまして、新しい患者の発生も減っております。また実態調査といいまして、抜き取り的に全国状態を推計する調査がございますが、そのものでも、二十八年には要入院患者が百三十七万日本全体でおられた、こういうふうに考えられておりましたのが、三十八年には四十六万になっておる。これも三分の一くらいに減っておりますので、こういうふうに、いろいろな数字からしまして、結核患者は全体としてこのごろ減っておるというふうに考えていいと思います。それからまたさらに、いまからも、結核患者の減り方がある程度いってとまってくるのではないかというふうにわれわれは考えておるので、そういうようなことで将来の推計をやっておるわけでございます。
  46. 稻村隆一

    ○稻村(隆)委員 それで私は、私どものほうの国立療養所から陳情を受けまして、きょう急に質問することになったから、資料も十分に整えておらなかったわけです。それで、私があとで言った三十二年から七年まで五年の間に、一〇〇から一四〇に統計はふえている。この資料をもっと調べてみます。それでまたあとで質問いたします。  ところで、これは最後の御質問ですが、どうも厚生省のやり方が気に食わぬところがあるのです。たとえば三十九年の定員の増減の問題ですが、現業従業者を減らしているのです。これはいつでも非常に問題なんです。行政職の俸給表の二の現業従業者を減らして、事務長とか課長とかいうものをふやしているんですね。たとえば今度の定員によりますと、事務長が五人ふえる。課長が五人ふえる。課長補佐が八人ふえる。係長が十五人ふえる。それから技術職員が十一人減っておる。一般職員が百七人減っておるんですよ。こういうふうなことは、一体どういうわけか。国立療養所のやり方なんというものは、実に無責任きわまると思う。患者にとって冷酷ですよ。行って実際に調べてごらんなさい。こんなやり方は、私ははなはだけしからぬと思う。課長をふやしたり、事務長をふやしたり、係長をふやしたり、一方技術員を減らしたり、一般職員を減らしたり、百七人も減らすということは一体どういうわけですか。管理者をふやし、一般職をうんと減らしている。それだから、いろいろ下積みの労務者に対する労働強化になるのです。それで患者に当たり散らして、患者が非常にいにくいということになるのです。こういう点、あなた方ほんとうに調べてやっておるのですか。こういう点は、事務官に聞いてもだめです。大臣、あなたどう思いますか。
  47. 小林武治

    小林国務大臣 これははなはだ恐縮ですが、私その向きのことに十分注意いたさなかったのでありますが、よく調査をいたしまして、いま先生のおっしゃられるようなことを調べまして、そういうことは十分反省したい、こういうふうに存じます。      ————◇—————
  48. 徳安實藏

    徳安委員長 次に、農林省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。村山喜一君。
  49. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 第一にお尋ねいたしたいのは、今回の設置法改正の中で、食糧庁の業務一部と二部の仕事が、従来と比較いたしますと、相当大幅に機構の改革が行なわれているようです。この内容を見てまいりますと、いままで総務部において取り扱いをされておりました農産物等の買い入れ及び売り渡しの価格の決定、あるいは基準価格及び標準販売価格の決定という価格決定の条項が、新しい五十条の四号によりまして「買入れ及び売渡しに関すること。」というふうに非常にばく然とした形であらわされておる。というようなことから考えてまいりますると、一体この食糧庁の業務一部、二部の事務の取り扱いの内容の中において、このような形の中であらわしてまいりました場合には、いまでさえも農民は農産物の価格について非常に不安を感じているわけでありますが、そういうような抽象的な文章で表現をされてまいりますならば、貿易の自由化が差し迫ってきている立場からいって、もうこの際、価格の決定等については忘れて、故意に記載をしないでぼかしてやるのではないかという印象を与えるのではないかと思うのでありますが、これに対するところの大臣考え方をお聞かせ願いたいのであります。
  50. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 食糧庁の一部、二部等に関しまして機構を改める点の御指摘でございますが、買い入れ、輸入、それから配給といいますか、そういうものを一貫しよう、一つの需給計画の中に輸入も入りますので、そういうものを一貫して所掌させる、こういう意味からでございます。したがいまして、いま御指摘の貿易の自由化と関連して、農民におきまして、食管制度などを改めて自由化するのではないかという不安があるのではないかという御意見でありますが、私はないとは申し上げません。しかし、いまの食糧管理制度を改めよう——改めるといいますか、撤廃して自由化しようというような考えは、いま全然持っておりませんし、今度の機構改革は、そういう前提のもとに、すなわち米等を自由化する前提としての機構の改革ということではございません。いま申し上げましたような事情からの機構の改革でございますので、そういうふうに御了承を願いたいと思います。
  51. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いま問題になっておりますのは、古米の繰り越しが、大体四十万トンから七十万トンくらいの線で従来繰り越しがされておる。ところが昨年の米穀年度におきましては、五万一千トンしか繰り越し米がない。そういうことで緊急輸入をせざるを得ないということで、十万トンの準内地米の計画を立てて、七万五千トンすでに輸入をされたようであります。そういうような状態の中で食糧の需給状況を見てまいりまするならば、大体一カ月に五十万トン前後の米が必要になるとした場合に、ことしは新米の早食いをしなければやっていけないような需給状況にあるのではないか、こういうようなことを聞くのであります。そうなりまする場合においては、一体ことしの作況によって、どういうような状況が生まれてくるか。昨年あたりは史上第三番目の豊作だということがいわれておりましたが、このような状況になってきたのは一体どこに原因があるのかという問題が、食糧の需給態勢の問題として今後考えていかなければならない問題だと思うのであります。それと同時にわれわれが非常に問題といたしますのは、最近米屋さんあたりが、食管法の第八条ノ四によりまして、購入券を持っていった場合にはこれを拒否できないというのにかかわりませず、いわゆる需給の操作上の関係から一人十キロというワクが与えられているのでありますが、それが実際は六キロとか七キロしか売らない、こういうような状況があらわれているようであります。それだけやみ米が上昇をしている、こういう形であらわれておるわけでありますが、昨年の実績を見てみますと、六・七キロしか実際は配給していない。にもかかわらず、このように古米の繰り越しが少なくなってきたということから考えていった場合に、一体食糧の自給体制という問題を現在の農政の中で進めていく際において、これは来年の米価決定にも大きな影響があるだろうと思いますし、また構造改善事業をめぐる農政等の問題にも関係があると思いますから、いま経済企画庁あたりで検討いたしております中期計画を見てみましても、楽観を許さぬ農業の見通しというようなことで、食糧の自給率も下がるのではないかという見通しが立てられております。こういうような状況の中にありまして、今日までやっておいでになりました日本の農政の方向は、はたして間違っていないのかどうかということについて、われわれは非常に危惧するのであります。昔は三ちゃん農業ということを言われておりましたが、このごろではもう三ちゃん農業ではなくて、二ちゃん農業になっている。まさに老齢化して次から次になくなっていきますし、一ちゃん農業というかっこうになっていく。六百万戸の農家がほとんど兼業化することによって、農家の所得はふえていく。農業そのものの所得はあまりふえないで、兼業面の収入がふえることによって、かろうじて農家の経済が成り立っていく。そして兼業率はますます増大していく。二町五反の自立経営農家の育成というようなことは、はかばかしく進んでいかない。こういうような状態が続いているのが、今日の農政の姿ではなかろうかと思う。としたならば、今日米の不足状態が現実にあらわれてきた。しかもことしは新米の早食いをやらなければならないだろう、こういう状態が出てきているわけでありますが、農業基本法というものは、ここら辺で再検討しなければならない段階にきているのではなかろうかと私は思うのでありますが、そういうような食糧の自給体制の問題に関連をいたしまして、今後の農業の見通し等について大臣はどのようにお考えになっているか、お伺いいたしたいのであります。
  52. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 農業の現在の実態等につきましては、いまお話のあったとおりでございます。しからば農業基本法等を改めていくべきか、こういうお尋ねでございますけれども、私は農業基本法の考え方には間違いはないと思います。ただ基本法のとおりに実際進んでおらぬということは、これまた事実でございます。それに農業基本法におきましては、農業の近代化だとか、あるいは構造改善だとか、あるいは選択的拡大ということをうたっておりますけれども、決して選択的拡大なるがゆえに、いま御指摘の米の増産ということを放てきしているということは全然ございません。食糧の総生産を増大するということも、農業基本法に強くうたっておることでございますが、しかし、選択的拡大、選択的拡大というふうな声が非常に大きかったので、とかく食糧、特に米の生産等をおろそかにするかのごとき感じを一般に持たせた点は、まずかったと私も思います。しかし、米の生産が伸びてはおりますけれども、伸びが少ないという面にはいろいろな点があろうかと思います。すなわち、御承知のように農家の就業者は、非常に減ってきております。いまお話のような状態でございまして、三十七年度におきましても、就業者として、卒業者を入れて七十万から農村を離れております。そのわりあいに、農業人口は減っておりますけれども、農家戸数というものは減っておりません。非常に減り方が少ないわけでございます。でありますので、そういう面から言いますと、適正規模の二町五反の農家がふえていくという率が非常に少ない。こういう点も、農業基本法のめどどおりにいっておらぬということであろうと思います。そういう意味におきまして、米の需給関係におきましても、三十七年におきましても、三十八年におきましても、新米の早食いというような状況できております。そこで本米穀年度につきましても、三十九年産の新米の出回り見込みを入れますならば、総体といたしましては均衡のとれた状況でございます。ただ、去年の生産は、おととしよりも減っております。しかし、政府の買い上げ米といいますか、政府で管理している米は、おととしよりも去年はふえております。したがいまして、民間にあるといいますか、農家の手元等にある米が非常に少なくなっておるということも、その結果出てくるわけであります。でありますので、自由米といいますか、やみ米といいますか、政府の流通に乗ってこない米が減っておる、こういう結果に相なっております。政府の管理している米といたしましては、前年度よりもふえておるわけであります。しかし、全体としては窮屈でありますので、需給計画等につきましても、いまお話がありましたように、輸入を繰り上げて行ないまして端境期の対策を講じておるわけでございます。そういう意味におきまして、実は十キロ配給をいたしておりますが、統計的に見ますならば六・七キロくらいが平均でございますけれども、これは結果的に見た数字でございまして、十キロ配給はくずしてはおりません。でありますので、これを拒否するようなことは、当を得ていないと思います。  そこで、しからば全体として農業政策をどういうふうに持っていくか、こういう結論的なお尋ねだったと思います。私は、先ほどから申し上げましたように、農業基本法の指向する方向というものは、間違ってはおらぬというふうに考えております。でありますが、いまのように非常に農業就業人口は減りつつあって、そして兼業による所得によって農家が生計を営んでおる、こういう現状だと思いますが、それにいたしましても、やはりこの兼業農家の分解といいますか、就労が十分安定するような方途を講ずると同時に、分解の過程におきまして、農業としてやっていける者が農業として成り立つような経営面積を持ってやっていけるような方向指導していかなければならぬ、こういうふうに考えます。そういう面におきましては、就業人口が減っても、これを機械化し、あるいは基盤の整備をして、少ない労働力でもやっていけるような方向に農業を持っていかなければならぬと考えます。そのために、あるいは農業基盤の整備、あるいは構造改善、こういうもので生産基盤を強化していかなければならぬ、と同時に、また流通、価格対策等を考えまして、農家として経営をしていけるような方向へ大筋としては持っていくべきであるという考え方から、御可決を願った予算等にも、そういう筋を中心とした予算を計上して御審議を願ってきたわけであります。たいへんくどくどしい答弁をいたしましたが、考え方といたしましては、いま申し上げたようなとおりでございます。
  53. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 農政のベテランである赤城農林大臣のことですから、よくその事情はおわかりであると思いますが、今日われわれが農村に参りましていろいろ話をしていく中で一番困っているのは、構造改善事業という事業をやり始めて、大きな大砲を据えてみたけれども、引きがねを引くのがいなくなった。だから、農業後継者をどうして農村に確保するかということが問題だ。もういまでは若い人たちは、農業に見切りをつけて都会に出ていく。そしてあまり優秀でない者しか残らない。こういうような農村のいわゆる人口構造のあり方、ここに問題があるわけですが、一体こういうようなものをどうお考えになっているかということをまずお聞きいたしたい。  それと、所得倍増計画というものは、御案内のように工業を中心にして産業構造の変革を遂げていく形でなされているわけでありますが、その所得倍増計画の中で、農業面への投資は十六兆円のうちの一兆円しか予定されていないわけです。そういうような面から考えてまいりました場合に、いま全国の総合開発計画あるいは地方の経済地域計画、このようなものが進められている中で、農業の位置づけといいますか、それを十分な形で取り入れていかなければならないのでありますが、いま各地の工場等ができつつあるその周辺は、太平洋ベルト地帯にいたしましても、御承知のように上等な熟田、熟畑に工場が建てられ、あるいは住宅が建てられ、いろいろな社会施設が行なわれている、そして農業は山のほうに追いやられていく、こういう状態が生まれてきている。ところが、アメリカにおいても、農業人口は減少をして、そして農地も次第に減少していくのだが、総生産量は一向に変わりないのみならず、かえってふえている。こういうのは一体どういうところに原因があるのかということを調べてみれば、これは優等地が残されるというところに最大の原因があるようである。日本の場合には、農地が無計画に工場や団地に変更をされ、劣等地だけが残されて、農地はふえていかない。農業基本法の中においても、この六百万町歩の農地をふやすという計画は一つもなかったわけですから、それが最近工場が次から次に建って、優秀な優等地が残されないで、劣等地が残されている。こういうところに農業の生産性の伸びていかない一つの原因があるのではないかと思うのでありますが、それらに対する対応策というものは、自然の流れの、経済的な現象面としてこれをとらえていくのでなくて、何かそこにアメリカのゾーニングみたいなやり方といいますか、そういう方式を日本の場合にも取り入れていくべき段階が来ているのではないかと思うのでありますが、大臣はどういうふうな構想をお持ちであるのか、説明を願いたいと思うのであります。
  54. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 第一の点、優秀な青年、特に農業者として残っていこうという青年が少なくなっておるということは、お話しのように、まことに農業にとって憂うべき現象でございます。しかし、一面におきましては、伝習農場とかあるいはこのたび文部省関係で設けました農業高等学校、こういうような面で熱心に農業をやっていこう、こういう青年も相当ございまするし、あるいはそういうところに入っておらない者でも、農業を天職といいますか、そういうふうに考えて、後継者としての矜持を持ちながらやっていこうという芽も、相当出ておると思います。要は、農業が成り立っていくような農業ということでありませんと、後継者も農村にとどまりがたくなるのは当然であろうかと思います。でありますので、これは一つの手でもって農業の後継者あるいは青年をとどめておくということは、非常にむずかしいと思います。農業政策全体として、後継者が農業を営んでいけるような態勢を整えていくことが肝心だと思いまして、いろんな面でやっていることも、そこへ集中してやっておると私は考えておるわけでございます。  第二の点の、所得倍増計画等につきましての農業に対する投資といいますか、非常に少ないじゃないか、まことにそのとおりに存じます。でございますので、他方面において倍増的に進んだものを、池田総理のことばで言えば、財政、金融の総力をあげて農業方面に力づけをする、こういうかまえが必要だと思います。実はいろいろ私どもも御非難を受けたりなんかして、かけ声だけじゃないかというふうにも確かに言われますけれども、私は、かけ声だけでも、そういうかけ声が出てきて、そしてその方向へ私どもが引っぱっていくということは、非常に大事なことだ。ですから、かけ声だけだといってこれをつぶしてしまわないで、そのかけ声をほんとうに生かしていくような方向へ経済の成長した部面を農業方面に向けていく、財政、金融面の総力をあげてそのほうへ向けていくという、方向というか、芽を強く持っていきたい、こういうふうに考えております。  そこで、日本の農地もつぶれるし、アメリカのごときは、農業人口が少なくなっても、生産は非常にふえている、こういう原因がどこにあるかということでございますけれども、これは私から申し上げるまでもなく、村山さん御承知のように、やはり日本の農業経営の零細性、これはもういまに始まったことじゃありませんが、それが尾を引いておると思います。でありますので、この零細性から脱却するということが必要だと思いますが、それにいたしましても、具体的に、非常にりっぱな農地等がつぶれ、残ったものが悪い土地であり、あるいは山の奥のほうへだんだん追い込まれていく、こういう現象をどうするか。そういうことにつきましての一つの示唆もいま申し述べられましたけれども、そういう現状にかんがみまして、あるいは新産都市、あるいは都市近郊、こういう面につきましての農業との関連をどうするかということで、実は実態をなお一そう深く調査していく必要がある、こう考えまして、調査費等も置きまして、工業化する近郊の農村を、構造改善も含めてどういうふうに持っていくべきか。そういう点をなお一そう計画的に検討する必要を感じて、調査費等を置いておるわけであります。農業地帯あるいは工業地帯というものをある程度区分するといいますか、立地条件その他から区分していくことが、私は必要だと考えます。そういう意味におきまして、いま建設省のほうからも宅地造成法案というものが出ておりますが、工場地帯あるいは住宅地帯として指定されるべき以外のものは、農業地帯としてこれを育成していく、こういうことが必要であろうと考えます。一つの例を申し上げたのでございますが、そういう区分が必要である。こういうことで調査はなお進めておりますし、そういう方向に持っていきたいと考えております。
  55. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 公定歩合を引き上げて設備投資の需要を抑えていくという形をとられておるようでありますが、東海道線に乗りましてずっと下がってまいりますとおわかりになるように、もうどんどん近郊の農地がつぶれて、便利なところに工場が建っておるわけです。工場だけじゃありません。住宅もそのとおり。そして農地はもうほとんど壊滅状態におちいり、そのあたりの農地を持っておる人は、もう田畑を荒らして草をはやしておっても、ひとりでに土地の値段が上がっていくという形になりますから、そのまま放置して、工場が来るのを待望しておる。こういう農民も出てきておる。このような状態の中で、そういうような工場が来そうにもないところに行きますと、若い労働力がなくなってきて、土地が荒らされておる。こういう状態の中で、日本の農業というものは、今日は非常に憂慮すべき段階にまできておるわけですから、いままでのような考え方で、経済の自然の流れにまかしておくということでは、この問題は解決できない段階にきておるのではないか、もう頭を切りかえていかなければならない段階が現実にきておるのじゃなかろうかと思うので、そういうような点から考えていった場合に、いままでの自立経営農家を中心にする農政の方向というものも——政府案によれば、協業化ということばもあったわけですから、もう少しそこら辺も検討を願いたい。ことに構造改善事業をやっていく中において、一番問題になっておりますのは、財政措置が十分でない、事務費が少ないというような問題もありますが、それと同時に、土地の集団化を進めていく場合に、所有権の移転の登記等が、非常に現行の法令では複雑で困難だ、こういうようなものも簡素化してまいりませんと、せっかくのこの構造改善事業等が実を結んでいかないという点もありますので、そういうような点は、十分善処をお願いを申し上げておきたいと思うのであります。  次に、大事な問題だけ当たりたいと思いますが、改正案の六十九条の三であります。これは営林局の附属機関として国有林野管理審議会が置かれることになります。従来、森林法に基づきまして中央森林審議会があります。この審議会が公聴会等を持ちまして、そして国有林の開放の問題、国有林の利用の問題等について、いろいろ意見を聞いているようであります。なお、基本法に基づきます林政審議会も、総理府に置かれるように相なるようであります。そうしてまた、ここに設置法に基づいて国有林野管理審議会、こういうようなものが置かれるということになってまいりますと、一体この審議会等はどういうような役割りを果たしていく機能を持っているのかということが、問題になってくると思うのであります。この国有林の利用なりあるいは開放の問題に関係をするものが三つもあるということになってまいりますと、一体この設置法の中で言うところの国有林野管理審議会というのは何をするのか、現在ありますところの中央森林審議会との関係はどういうようになっておるのかという点を、まず明らかにしていただきたいのであります。  それと同時に、現在国有林の払い下げの問題をめぐりまして、いろいろな意見が各地で出ているようであります。この前も永山委員から質問がありましたように、国有林のあり方の問題につきましては、林業基本法の政府案あるいは社会党案をめぐり、あるいは政府案の林業基本法では、これは積極的に国有林を活用をするという条項にとどまっている。だから、この際特別措置法をつくって、国有林野を開放すべきであるという議員立法を自民党のほうで出すやにも伺っているのであります。そういうようなことから、現在八百万町歩の国有林をどのように活用をしていくのかという基本的な考え方というものが打ち出されてこなければならないと思うのでありますが、一体政府としては、この国有林は、現在ある姿の中における国有林のあり方の中から考えていくのか、それとも国有林としては、こういうような機能的な役割りを果たさなければならない。たとえば国土保全の問題であるとか、あるいは木材の価格調整の問題であるとか、そういうような国有林が持たなければならない機能的な役割りというものがあると思うのでありますが、そういう立場からこの問題に対処していこうとするのか、こういう問題についての基本的なかまえというものは、一体何であるのかということを明らかにしていただきたいのであります。本会議の席上、池田総理大臣からの言明によりましても、国有林の問題については、民有林の問題にも触れてそのあり方の問題を検討すべきであるという考え方も述べられたようでありますが、そうなってまいりましたら、たとえば青森県のように六三%も林地においては国有林で占められている、そういうような地域があるかと思うと、ほとんど国有林がない地域もあります。近畿地方方面におきましては、ほとんどそういうような国土保全、災害防止のための保安林的な役割りをするものがない地帯もある。そういうようなところは、国が私有林を買い上げてこれを国有林にして、国土保全という立場から考えていかなければならないという構想も、当然機能的な考え方からその構想を進めるとするならば、出てくるはずであります。一体そういうような考え方に立つのか、それとも、現在国有林の独立採算といいますか、現在国有林の果たしつつある役割りという、現実に国有林のある姿の中から問題を考えていくのか、そのいずれをおとりになろうとしているのかということを、原則的な問題でありますので、明らかにしていただきたいと思うのであります。
  56. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 大体御質問の内容と私ども考えていることと同じような感じがいたしますが、森林の持つ機能、これは国有林あるいは民有林、非常に人類にとって重大な機能を持っておると思います。そういう意味におきまして、森林の中でも国で管理している国有林は、やはり水や空気と同じように、人類の共通の福祉のために機能しなくてはならぬものだと思います。一口に言いまするならば、国土保全の機能を非常に強く持っておるわけでございますが、それにつきましては、いまお話がありましたように、民有林まで含めて、民有林を買い上げて保安林というような形でするようなことも必要ではなかろうかという御指摘でございましたが、実はそのとおりに私ども考えておりまして、国有林等につきましても、あるいは交換等により、あるいは買い上げ等によりまして、必要なる民有林は国で買い上げまして、保安林にするというような措置もとっておるわけであります。でありますので、国有林としてのあり方は、大体森林法に規定されておるのでございますが、そういう国土保全の機能が第一に考えられます。  第二には、やはり木材資源として、森林経営という面から、りっぱな木材を供給するという機能を持っておると思います。御承知のように、日本の輸入の三番目か四番目、最近は二番目くらいになっているというようなことも言っているくらいに、木材の輸入は非常に多いのであります。そういう観点からも、木材の需要に応じてりっぱな森林に経営していく、こういう機能が一つあると思います。そういう機能を十分に発揮するように国有林の管理をしていかなくちゃならぬ、こう考えます。しかしながら、国有林の中には、国有林としての国土保全の用途をそう持たないで、むしろ民有に移して、農業の構造改善とか、あるいは畜産面からの草地の造成、これも構造改善の一つでございますけれども、そういう一般の人々の利用に移したほうがより効果的である、こういう面もあろうと思います。でありますので、そういう面につきましては、できるだけ国有林を払い下げるといいますか、そういう措置を講じていきたい、こう考えておるわけであります。ところが、再々御指摘がありましたように、国有林の払い下げ等につきまして、いろいろ問題等もないわけではございません。あまり芳しからざるうわさなども、聞かないわけではありません。そういうわけでありますので、昨年、私は各営林局に、国有林を管理する場合、あるいはこれを処分するにつきまして、その適正を期することが必要であるということから、官民の学識経験者等に入っていただいて、営林局ごとに審議会を設けて、国有林野の管理とか処分についての適正を期したい、こういうわけで、任意的に審議会を設置いたしたのでございます。この考え方は私は適当だ、こういうふうに考えておりますので、今度の機構改革におきましては、これを法制化して、営林局の附属機関として設けて、そしてその審議会から広く官民各界の意見を反映してもらいたい、そして管理、処分等につきましても、具体的に適切な処置をとっていきたい、こう考えますので、審議会を営林局に置くことを法制化する、こういうことについて御審議を願っておる次第であります。
  57. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 第一点の、中央の林政審議会との関連はどうなりますか。
  58. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 国有林野の管理審議会は、いま申し上げましたように、具体的にその管理あるいは国有林を払い下げる場合に適正なりやいなやということの意見を出してもらう、こういうことでございます。中央の森林審議会は、いま林業基本法を提案いたしておりますが、これが成立いたしますならば、林政審議会との関連におきまして、森林法——これは先ほど申し上げましたように大体国有林のあり方等を規定しております。または他の法令の規定によってその権限に属せしめられた事項等について、農林大臣の諮問に応じて答申するということでございますので、国有林のあり方、あるいはまた林野行政のあり方等一般の方針、方向等を審議してもらうという形で、中央森林審議会があるわけでございます。今度の営林局に設置する管理審議会は、具体的に国有林の開放といいますか、そういう場合における適不適を審議してもらったり、あるいは管理の適不適等を見てもらう、こういうもので、すなわち具体性を持っておるわけでございます。
  59. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この国有林開放の動きは、私の鹿児島県でもございます。東北、南九州、そういうところが多いわけでございますが、これはやはりその地帯に住んでいる人たちが、生活の必要性の問題から要求の声としてあげて、私たち構造改善事業等で、その国有林なり、あるいはその他民有林でもそうでありますが、やっていく際において、農地を拡大する、あるいは採草地をつくるとか、そういうような立場からやっていくならば、これは当然やらなければならない問題と思うのです。しかしながら、いろいろ内容を調べてみますと、自分の屋敷の前のほうが国有林で、国有林のほうからは薪炭材もとることはできない、そういうような庭先まで国有林という地域もある。里山を利用するという部門においては、これは非常に要求の度合いが強いと思うのですが、この国有林払い下げの構想を抱いているある地域における内容を聞いてみますと、大体構造改善事業の、農家として二町五反以上持っているところは、国有林は個人には払い下げない。一町程度持っている場合には、残りの一町五反の農地に見合うような国有林の払い下げをする計算をする。それからもう全然そういうような農用地では生産が上がらないようなところでは、自立経営林家といいますか、大体二十町歩程度、これを山地の場合においては林業経営者として経営をしていけば、標準として考えられる。こういうような方式でずっと一人一人を取り上げて計算をしまして、そして青森県では何百町歩、何千町歩、こういうような要求資料をもとにして、それに基づいて国有林の特別開放の要求が行なわれているやに聞くのであります。ところが、片一方農林省の次官通達ですか、これによりますと、傾斜の度合いとか、日当たりその他いろいろな条件を考えて、国有林の払い下げの利用計画を見てみれば、面積にしては八町歩程度しかない、こういうことがよく言われる。一体そういうような自立経営の林業農家と言いますか、前にいろいろ構想もあったようであります。ところが、零細な山林所有者のほうからは、自分たちの山林が取り上げられるということでこれが反対、それから大きな山林経営者の諸君からも、これもまた総スカンを食らいまして、その自立経営林業農家というものは、芽がつぶれたように私は聞いているのであります。そういたしますと、一体今後の具体的な問題として、林業経営という問題は、今度政府が出しました林業基本法の中身には国有林を積極的に活用するという条項がありますが、その中から国有林払い下げの問題が出てくるのかどうかということについては、これは利用権の設定あるいは貸し付け、そういうような問題は出てくるといたしましても、所有権の移転まで含む払い下げの問題は、政府の林業基本法の中からは生まれてこないのではないか。また、現実の問題として、そういうような山村の国有林の払い下げを希望する人たちは、所得も非常に少ない。ただみたいな価格で払い下げをしてもらうんだったら、それは採算がとれるわけでありますが、一体そういうような希望をかなえてやるためには、いろいろな財政的な措置を考えなければならない。とするならば、それにはまず国有林を貸し付けて、そしてそれが成木になって売買をするときに収入がある場合に、土地の所有権を譲るとかいうような一つの具体的な構想というものがなければ、急に払い下げ払い下げと言っても、事実上の問題として山林の経営に当たって経済的な活用ができないというような問題や、あるいは一ぺんは払い下げても、それが大山林地主によってさらに土地が集められていく、そういうような形態が出てくることをわれわれは考えるわけであります。それと同時に、国有林で働いている林野の従業員の人たち、あるいは日雇いその他で働いている人たちの収入の問題も考えなければならない、生活の問題も出てまいりますので、これはやはりもっと基本的なあり方の問題から考えてやらなければならない段階が、現実の段階じゃないか。それを今度国有林の払い下げに対しまして、二十名くらいの国有林野管理審議会というものをつくられまして、各界の意見を聞かれることはけっこうでありましょうけれども、その段階の前に、まだどういうような方向において今後林政の問題を進めていくのか、国有林、民有林の管理の問題についてはこういうふうに進めていくんだという基本的な考え方が先行すべきであって、それができてから、この具体的な問題に取りかかるために機構の改革をされるべきではないか。まだそういうものが生まれてこないときに、先に機構の改革として国有林野管理審議会というようなものをおつくりになる必要はないのではないかと思うのでありますが、その点はいかがでございましょうか。
  60. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 確かに国有林の払い下げの前に基本的な、根本的な方針等を策定するといいますか、きめていくことが必要だろうと思います。そういう意味におきまして、御承知のように、林業基本法の中に、農業基本法の農政審議会と同じような林政審議会というものを設けまして、内閣総理大臣または関係大臣の諮問に応じ、林業基本法の施行に関し重要事項を調査審議する機関、こういう機関を設けておりますので、そういう機関にはかって、あり方等を一そう深く検討する必要があると思います。またそういう林業基本法か成立しないと——なかなか今国会で成立しないということであるといたしますならば——成立させたいのでございますけれども、成立しないとするならば、先ほど申し上げました中央森林審議会というものがございまして、これが森林法によります全国の森林計画とか、保安林整備臨時措置法によります保安林の整備計画等につきまして、農林大臣の諮問に応じて答申をし、または関係行政庁に建議するということに相なっておりますので、こういう審議会等を活用いたしまして、いまの末端で国有林を払い下げる前の一つの方針をなおきめていかなくちゃならぬと思います。現在こういう審議会にはかりませんでも、ある程度の方針は持っておるのでございますけれども、なお慎重を期するといいますか、効果を十分に発揮できるようにするためには、いま申し上げましたような審議会等によりまして、方針等をなお深く練っていく必要があると存じますし、そういたしたいと思っております。
  61. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 あと二点ほどお尋ねいたしたいのですが、日本の国がOECDに加盟をいたしますし、さらに最近は、国連の経済開発機構の中におきましても、第一次産品を中心にする低開発国との貿易の問題が非常にやかましくなってまいりました。それと同時に、アメリカの余剰農産物の問題等も出ておりますように、貿易の自由化の問題との関係でありますが、現在の段階の中で貿易の自由化は、これは日本の農産物が国際的に競争力を持ち得るような段階に到達するまでは自由化しないというのが、基本原則だというふうに承っています。たとえば乳製品の場合等は、自由化がなしくずしの形で行なわれておるのではないか。例のナチュラルチーズあたりは、大手を振って日本に入ってくる。そうしてそこで外国資本と提携をいたしました日本の会社が、たとえば六甲バターというような会社が、日本でそういうような製品をつくってまいりますと、これが国内の製品と比べたら相当な利益をあげておる、こういう形が出てくるということを、乳製品関係ではもうすでに聞いておるわけであります。  さらにまた、飼料協会あたり、これは河野一郎さんが会長だというように聞いておるのでありますが、飼料のほうは自由化の比率がだんだん低下しておる。初めの昭和三十五年ごろは九三%くらいが自由化されていたのが、今日におきましては八八%から八五%程度に下がってきておる。これはアメリカの余剰農産物であるところのいわゆるマイロといいますか、これは自由化品目ではないけれども、そういうものがふえてきた。そうすることによって結局この日本飼料協会というものが生まれて、それの資金はアメリカが六五%持っており、日本は三五%しか持っていないというふうに聞いておるのでありますが、タイであるとかアルゼンチンのトウモロコシのほうをメーズ輸入協会というものをつくって抑えておいて、そうしてアメリカのマイロを輸入するという政策がとられておる。しかもこれは自由品目ではないけれども、その自由化の陰に隠れて、アメリカの余剰農峠物のマイロが最近は非常にすばらしい勢いで日本に進出し始めておるというようにも聞いておるのでありますが、そういうような問題や、あるいはこの前全販連が失敗をいたしましたバイラインというあの鵜の関係のもの等も、いろいろ問題があるやに聞くのでありますが、そういうような外国の農畜産物の日本に対する進出、これはくだものの自由化等の結果は、もうはっきりした数字であらわれておりますが、そういうようなものが、なしくずしの形で、あるいは一定の考え方を持ったものとして、先行的に飼料の輸入等がなされておる。こういうふうに聞いてまいる中において、一体農林省としては、どういうような対策をこれに対してお立てになっておるのかということをお聞きいたしたいのであります。
  62. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 いろいろ具体的な問題等につきましては、お許しを得れば事務当局からも御説明申し上げたいと思います。  基本的な方針はどうかということでございますが、基本的な方針といたしましては、自由化する場合には、関税定率の調整とか、あるいはまた価格的に、国内におきましての財政支持というものとにらみ合わせながら自由化をするということが、根本の方針でございます。御承知のように、日本の農畜産物は、諸外国との競争力が非常に弱いものでございます。所得倍増計画の中間調査の報告等の中にもございますように、非常に弱いのでございます。でございますので、抽象的にいえば、生産性を向上してコストを低くするということがとられなければなりませんが、それを待っておるほど自由化がゆっくりしておるというような状況でもございません。でございますので、自由化する場合には、税金の担税力、あるいは財政的な支持とにらみ合わせながら、それに伴ってやっていくという方針でございます。ただ農産物の中でも、米麦とか酪農品あるいはでん粉、こういうものは、当分自由化ということに踏み切るわけにはまいらぬと思います。いま酪農品等についてのナチュラルチーズのお話が出ましたが、これはずっと前に自由化してしまって、そのままでありますので、ずっときておりますけれども、これからの酪農品の自由化につきましては、十分これを押えていかなくちゃならぬというふうに考えています。その他の品目等につきましては、自由化の波は相当強く来ると思いますけれども、国内対策と相まってやっていきたい、こういうふうに考えます。
  63. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 アメリカのマイロは、東南アジアのメーズ、いわゆるトウモロコシの飼料と比較した場合には、マイロのほうが高くて、そして東南アジアのメーズのほうが安いんだというふうに聞いているのでありますが、そのメーズの輸入協会というのをつくって、東南アジア方面のトウモロコシの輸入を押えて、アメリカの高いマイロを輸入するという、そういうような仕組みが日本飼料協会とメーズ輸入協会との間に話し合いが結ばれて、そのような価格調整をしながらアメリカの余剰農産物の販路を確保するという政策がとられているやに聞くのでありますが、そういうような政策をお認めになっているのはどういうようなところに原因があるのか、この点を明らかにしていただきたい。
  64. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 畜産局長から、その辺の事情を説明いたさせます。
  65. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 ただいまのメーズの輸入の問題とアメリカ産のマイロの輸入の問題でございますが、マイロは主としての生産国がアメリカ合衆国でございます。日本ではマイロのえさとしての使用慣行が従前あまりなかったのでございますが、昭和三十四年ごろからマイロの使用慣行が生じてまいったのでございます。マイロは、一般的にトウモロコシに比べまして飼料成分から見て安価な穀物であるということで、主として養鶏用の飼料として日本で受け入れられるようになったのであります。タイ国メーズよりもアメリカのマイロのほうが高いということはございません。時期により国際市況の変動がございますから、明確にいつもどうというわけには参りませんが、大体マイロのトン当たり価格は、メーズの五%ないし一割程度の割り安の市況をなしておる。それがわが国でマイロが急速に需要が伸びました理由であるわけでございます。タイ国のメーズにつきましては、大体タイ国の生産量の大部分をわが国が輸入をいたしておるのでありまして、タイ国の生産の事情から申しまして、最近はその輸出余力が停滞的であるということから、日本で輸入されます数字の上で見ますと、タイ国のメーズ、トウモロコシの輸入量が停滞的で、相対的に他の国よりも減少をいたしておるという事情がございます。ただ、私どもとしては、国際市況の中ですでにトウモロコシ、マイロともに自由化をされておるのでございますが、できるだけ安い買い付けを行なっていく、そのことによってわが国の飼料の供給価格をできるだけ安く押えていくというような状態の努力というものを要請しておるというのが、現状でございます。
  66. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 タイは政治的なああいうような状態でありますから、輸出の数量その他も不安定な点もあるかもしれませんが、アルゼンチンあたりのトウモロコシの値段とアメリカのマイロとの比較は、どうなんですか。
  67. 桧垣徳太郎

    ○桧垣政府委員 アルゼンチンにつきましても、これも国際市況の動きで年により違うのでございますが、アルゼンチンのトウモロコシの価格水準は、おおむねアメリカの市況に従っておるようであります。でございますから、マイロとの比較におきましては、やや割り高であるという価格関係になっておりますが、アルゼンチンのメーズの価格も、最近は比較的安定的でございますので、ごく最近に、わが国の農業団体が、協同組合貿易ということで年間定量の取引をするということを決定したような次第でございまして、アルゼンチンもわが国に対するトウモロコシの輸出国としては期待のできる一国であるというふうに考えております。
  68. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 問題は、数十万トンのそういう輸入飼料が輸入されて、それがなお非自由化品目である。そういうような中において、自由化された暁においては日本の市場を制圧するのだという意図のもとに、輸入商社等も動いていく場合もあり得るわけです。ただ、そのときの国際的な価格、これは余剰農産物等についてはある程度のアメリカの補助等も行なわれているわけですので、そういう面から将来の価格形成の面においては、現在の時点において五%程度の差があるから、だからこれを輸入をしていくのだということでは困る。日本のいわゆる畜産行政の進め方としては、やはりもっと国内的な立場から考えるべきで、将来、そういうアメリカのマイロあたりを輸入してきますと、それに合わせたような養鶏の飼料等が配合されて、それによって同じような形で青い目の鶏が日本にどんどん入ってくる。それがある特定の会社あたりと提携をして、そして非常に不利な条件のもとで日本の農民にしわ寄せがされる、こういうことになってくることは、私非常に問題があるかと思いますので、これらの自由化の問題については、将来の見通しの上に立って対処していただくようにお願いを申し上げておきたいと思います。  最後に、大臣にお尋ねいたしたい点がございますが、それは臨時行政調査会のいわゆる機構の整理、統廃合の問題であります。大体五月の末ごろから六月にかけまして、いわゆる太田メモを中心にする臨時行政調査会の統廃合班のほうからひとつの見解が出されるのではなかろうかと言われている。この中で二十三の項目について指摘をしたけれども、なお問題としてひっかかっておるのは、統計事務所それから食糧事務所、これらを都道府県に委譲をする問題、あるいはその機構のあり方の問題、あるいは蚕糸局を蚕糸課に格下げをする問題、さらに輸出品検査所は転身をすべきだというような問題等が、まだ残っているようであります。そこでこういう食糧事務所なりあるいは統計事務所の統廃合の問題に対応する農林省の考え方というものを、お伺いをしておきたいのであります。と申し上げますのは、最近各地において、これは統計事務所を中心であるようでありますが、併置とか併任とか、一つの建物の中に統計事務所の管轄と違うものを併置する、あるいは併任職員を置く、こういう措置がなされておるようであります。ということは、現在の統計事務所あたりなりあるいは食糧事務所あたりというものは、これは統廃合をしていくのだ、そういう基本的な考え方があるのではなかろうか。そうでなければ、行政的な措置としてこういう併置出張所の運営についてというような通達などはお出しにならないはずだと思うのでありますが、そういう基本的な考え方の問題、並びに現実におやりになっている行政措置の問題、これはどういうふうに考えたらいいのかということで、私も理解に苦しみますので、行政改革の問題に対する考え方についての御意見を承っておきたいと思います。
  69. 赤城宗徳

    ○赤城国務大臣 最初に統計の問題でございますけれども、農林統計は、農林行政上非常に重大なものでございますので、やはり国が所管するのが私は適当だと思います。農政の重点である生産対策にいたしましても、あるいは構造対策、価格対策、需給対策、災害補償対策等を適正に実施する上に統計調査を利用することが必要でございますので、これは地方自治体、地方庁等に移すよりは、やはり国で掌握しておくことが行政を進める上において必要だ、こう考えます。食糧事務所等につきましても、いまの食糧管理制度を行なっていく上におきましては、やはり国が所掌していくということが必要だと思います。ところで、末端のほうで統合等の問題が起きておるじゃないかということでございますけれども、統計事務所あるいは食糧事務所は県に一つですから、そこではなく、出張所の問題だろうと思います。これは御承知のように、前に設けましてから町村合併がありまして、ごく少数の人々のみの出張所であったり何かする場合がありますので、こういうものを統合し、あるいは場所を変えたりいたしまして、地元の食糧事務所の出張所にするならば、地元の人々の便宜のために、そうしてまた行政事務といたしましては一つの合理化といいますか、そういう必要を感じておりますので、統合整理等を一部分いたしております。交通機関あるいは町村合併等の変化に応じて適切にやっていく、こういう考え方から末端のほうで統合等をやっておる面がございます。そういう意味でございますので、そういうふうに御了承を願っておきたいと思います。
  70. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 最近類火あたりで建物が焼失をした、それを新しく建てるときには、町村合併で市になったようなところ等は、いままで旧町村内におった食糧事務所の職員も一つの建物の中に集めなければ庁舎を建ててやらない、こういうのが大蔵省の考え方であるようであります、そういうようなことから、私のところも現実に火事でそういうような形になっているわけですが、まだ建物も建たないで、市有の建物を借りて、広い講堂のようなところで仕事をしている。ほかの職安関係とかその他の類火をこうむった建物は、りっぱな建物がもうでき上がっている。にもかかわらず、農林省の食糧事務所だけは、ことしの予算の中にも盛られていない。食糧庁のほうに尋ねてみたら、来年には何とかいたしましょう、こういうような調子なんです。そして中に入っている職員は、そうなってまいりますと、併置されておるわけです。さらに併任をされている職員も中にあるやに聞くのであります。そのような形の中で、いわゆる末端におきます食糧事務所なりあるいは統計事務所の出張所あたりか整理統合されて、それは現実に行政機構改革の問題の中でいわれていることと同じような方向にいま動いているのじゃないか、そういうようなことから、非常に不安感を持つ職員等もあるように思うのであります。これらは、やはり行政改革の問題に対応する農林省の基本的なかまえというものが、十分な姿勢がとられていないところにこのようなものがあるのではないかとわれわれにも思われますので、これらの併置、併任の問題については、十分に納得のできるような線で処置を願っておきたいと思うのであります。  それから一つ取り残しておきましたのがございましたので、この点だけ尋ねたいと思いますが、これは会計検査院のことしの指摘の中に出ております。「国の決算と検査」の九九ページにあるのですが、たとえば三十七年の十二月一日に米価の値上げが行なわれ、販売価格、消費者米価の値上げも行なわれた際に、業者の手持ち米が十五万四千トン余りあった。そうしてそれが新価格が適用されて、旧価格との価格差、差益金が小売り業者の分まで含めまして十六億七千百二十六万円という数字になっております。これは専売品である塩などの場合は、当然国のほうに払い戻しをするように事例がなっているのだが、農林省の場合にはそれがされていない。これは早急に改善すべきであるというので、昨年の十一月農林大臣あてに表示された。これは決算委員会でも取り上げられたと思うのでありますが、ことしの米の生産の状況、労働費上昇あたりから考えていきますと、食管会計の赤字も、相当な赤字がまた来年度の米価決定にあたっては出ていくと思います。そうなってまいりますと、消費者米価引き上げという問題が、これは政治的な問題として派生するおそれが十分にある。三十七年度と同じような事例が、ことしあたり起こり得る可能性が強いわけでありますが、現在のような、しかもこういうような内容を聞いてみますと、いわゆる卸問屋さんの持っておるところの量が非常に大きくて、小売り業者が持っておるものよりも相当なウェートを占めているようでありますが、国の政策によって価格が上がって、それだけ労せずして利益をおさめた、そういうような場合には、これに対するところの適正な措置がとられなければ——これは今度食糧庁の業務第二部で取り扱いをされるようになると聞いているのでありますが、そうなってまいりますと、一体これらの措置はどのような措置をおとりになったのか、とっておられないとするならば、どういうふうに今後されていくのか、それを承っておきたい。
  71. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 ただいまお話がございましたように、消費者価格の改定に伴いまして、卸業者、小売り業者が在庫いたしております米穀につきまして、そこに差益が生ずる、またマージンの改定等を行なうにあたりましては差損が生ずるというようなことが、従来から発生いたしておるわけでございます。従来からも、これらの差損、差益につきましては、運営上留意をいたしておるわけでございますが、この公定価格をきめました際は、物価統制令に基づいてやっておったわけでございます。現在のところ、物価統制令で差益、益損に対する徴収の規定というものが削除された段階になっておりますので、法律上これを徴収するということは、実際問題としては困難な状態になっておるわけでございます。本来ならば、これらの差益、差損、特に差益につきましては、政府の消費者価格は最高価格を押えておるわけでございますので、消費者に帰属させるのが本来の筋であるというふうに考えられるわけでございますが、そういう意味におきまして、これまでも売却の調整であるとか、マージン改定時における考慮をいたしておったわけでございます。三十七年度の消費者価格の改定にあたりまして、いまお話になりましたような額が計算上は出るわけでございますが、他方面におきまして、非常に小売り業者の数が、五万六千というふうな多数の業者が控えておりますし、また米が専売品と違いまして、現在配給制度のもとにおきましては、常時一定量保有しなければならぬというような関係で、実際問題といたしましては、これら多数の業者から全部を取り上げるということは、困難な状態になっておるわけでありまして、また、すでに一年を経過いたしまして、その間税金なりあるいは職員の給与に振り向けるというようなことで処理されたという経緯から見まして、なかなか困難じゃないかというふうに考えております。  しかし、いま先生の御指摘になりました今後におきまする措置といたしまして、これらがすべて卸業者あるいは小売り業者に帰属させるということについては、これは不適当というふうに考えておりますので、かりに改定いたしました際におきましては、できるだけこの間におきまするストックの減少をはかるような調整方法をとって政府に帰属するか、あるいは消費者に帰属させるような措置をとるとか、あるいはマージンの改定時期あるいは改定額につきましても、それらの差益を十分考慮いたしまして調整方法をとってまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  72. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 問題は五万六千人ですか、この小売り人の場合には、取り立ても非常に困難であろうと思う。だけれども、この五万六千人の小売り業者の占める不当利益といいますか、その収益は、これは金額も小さいでしょう。卸問屋になるような人々が手持ちをしておった者のほうが、はるかに大きいというふうに聞いておるのですが、そうであるならば、その段階においては、全部であるとは言わないでも、一部でも取り立てるような方法をとることが、行政の公正化じゃありませんか。その努力をされたのですか。
  73. 齋藤誠

    ○齋藤(誠)政府委員 当時におきまして、そういうふうな事態に備えまして、卸の段階におきます売却量あるいはストックが不当にならないようにということで、できるだけ数量の調整につとめたわけでありますが、結果におきましては、先ほど申しましたような一定の配給量を保有するというようなことで、差益を生じたわけでございます。先ほど申しましたように、いま卸、小売りはすべて政府がマージンを統制しておりますけれども、できるだけこれを切り詰めるというようなことで、差益が出ても、差損が出ても、そのマージンの中で調整するというような方法をとっておる経緯もありまして、現実問題としては、卸の差益につきまして、徴収するということは困難ではないかと思っております。
  74. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この問題については、将来の問題とともに、今後消費者米価がかりに上げられるような問題が出てきたときには、必ずこの問題をわれわれは追及をして、問題にしなければならないと思う。これはやはり行政は公正でなければならないと思うのです。一部の人にそういうような不当な利益を与えるべきじゃない。この問題については、今後の善処方を要求いたしまして、私の質問を終わります。
  75. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明八日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三十五分散会