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1964-04-14 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十四日(火曜日)     午前十時四十分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 内藤  隆君    理事 永山 忠則君 理事 八田 貞義君    理事 石橋 政嗣君 理事 田口 誠治君    理事 山内  広君       佐々木義武君    壽原 正一君       高瀬  傳君    塚田  徹君       野呂 恭一君    藤尾 正行君       保科善四郎君    前田 正男君       松澤 雄藏君    渡辺 栄一君      茜ケ久保重光君    稻村 隆一君       大出  俊君    山下 榮二君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         外務事務官         (大臣官房長) 高野 藤吉君         外務事務官         (大臣官房会計         課長)     谷  盛規君         労働政務次官  藏内 修治君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (大臣官房労働         統計調査部長) 大宮 五郎君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働基準監督官         (労働基準局賃         金部長)    辻  英雄君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  榮作君  委員外出席者         専  門  員 加藤 重喜君     ————————————— 四月十一日  傷病恩給の不均衡是正に関する請願荒木萬壽  夫君紹介)(第二二四八号)  同(植木庚子郎君紹介)(第二二四九号)  同(小笠公韶君紹介)(第二二五〇号)  同(小川半次紹介)(第二二五一号)  同(大平正芳紹介)(第二二五二号)  同(菅野和太郎紹介)(第二二五三号)  同(小枝一雄紹介)(第二二五四号)  同(河本敏夫紹介)(第二二五五号)  同(澁谷直藏紹介)(第二二五六号)  同(正力松太郎紹介)(第二二五七号)  同(白浜仁吉紹介)(第二二五八号)  同(關谷勝利紹介)(第二二五九号)  同(田中龍夫紹介)(第二二六〇号)  同(田村良平紹介)(第二二六一号)  同(竹下登紹介)(第二二六二号)  同(谷川和穗紹介)(第二二六三号)  同(地崎宇三郎紹介)(第二二六四号)  同(中島茂喜紹介)(第二二六五号)  同(野見山清造紹介)(第二二六六号)  同(原健三郎紹介)(第二二六七号)  同(松田竹千代紹介)(第二二六八号)  同(松山千惠子紹介)(第二二六九号)  同(渡邊良夫紹介)(第二二七〇号)  同(井原岸高紹介)(第二四二六号)  同外一件(宇野宗佑紹介)(第二四二七号)  同(田中六助紹介)(第二四二八号)  同(高見三郎紹介)(第二四二九号)  同(渡海元三郎紹介)(第二四三〇号)  同(藤井勝志紹介)(第二四三一号)  同(古川丈吉紹介)(第二四三二号)  同(保科善四郎紹介)(第二四三三号)  同(森下元晴君紹介)(第二四三四号)  同(小沢辰男紹介)(第二五二三号)  同(木村武千代紹介)(第二五二四号)  同(齋藤邦吉紹介)(第二五二五号)  同(砂田重民紹介)(第二五二六号)  同(田口長治郎紹介)(第二五二七号)  同(井村重雄紹介)(第二六五一号)  同外一件(大橋武夫紹介)(第二六五二号)  同(久野忠治紹介)(第二六五三号)  同外一件(草野一郎平紹介)(第二六五四  号)  同(笹山茂太郎紹介)(第二六五五号)  同(辻寛一紹介)(第二六五六号)  同(粟山秀紹介)(第二六五七号)  傷病恩給改善に関する請願荒木萬壽夫君紹  介)(第二二七一号)  同(小笠公韶君紹介)(第二二七二号)  同(小川半次紹介)(第二二七三号)  同(大平正芳紹介)(第二二七四号)  同(菅野和太郎紹介)(第二二七五号)  同(河本敏夫紹介)(第二二七六号)  同(澁谷直藏紹介)(第二二七七号)  同(正力松太郎紹介)(第二二七八号)  同(關谷勝利紹介)(第二二七九号)  同(田中龍夫紹介)(第二二八〇号)  同(田村良平紹介)(第二二八一号)  同(竹下登紹介)(第二二八二号)  同(地崎宇三郎紹介)(第二二八三号)  同(中川俊思君紹介)(第二二八四号)  同(中島茂喜紹介)(第二二八五号)  同(野見山清造紹介)(第二二八六号)  同(原健三郎紹介)(第二二八七号)  同(松山千惠子紹介)(第二二八八号)  同(渡邊良夫紹介)(第二二八九号)  同(井原岸高紹介)(第二四三五号)  同(宇野宗佑紹介)(第二四三六号)  同(押谷富三紹介)(第二四三七号)  同(田中六助紹介)(第二四三八号)  同(高見三郎紹介)(第二四三九号)  同(渡海元三郎紹介)(第二四四〇号)  同(古川丈吉紹介)(第二四四一号)  同(森下元晴君紹介)(第二四四二号)  同(小沢辰男紹介)(第二五二八号)  同(木村武千代紹介)(第二五二九号)  同(砂田重民紹介)(第二五三〇号)  同(今松治郎君他一名紹介)(第二五三一号)  同(有田喜一紹介)(第二六〇七号)  同(井村重雄紹介)(第二六五八号)  同外一件(大橋武夫紹介)(第二六五九号)  同(久野忠治紹介)(第二六六〇号)  同(草野一郎平紹介)(第二六六一号)  同(笹山茂太郎紹介)(第二六六二号)  同(長谷川峻紹介)(第二六六三号)  同(田邉國男紹介)(第二六六四号)  同(辻寛一紹介)(第二六六五号)  同(粟山秀紹介)(第二六六六号)  靖国神社国家護持に関する請願外四件(八木  徹雄君紹介)(第二四一一号)  同(浦野幸男紹介)(第二五七八号)  旧軍人等恩給に関する請願外一件(宇野宗佑  君紹介)(第二四一二号)  国立大学教官待遇改善に関する請願赤城宗  徳君紹介)(第二四一三号)  同(塚原俊郎紹介)(第二四一四号)  同(西村直己紹介)(第二四一五号)  同(三田村武夫紹介)(第二四一六号)  同(玉置一徳紹介)(第二五一六号)  同(四宮久吉紹介)(第二五八一号)  同(椎熊三郎紹介)(第二五八二号)  同(鈴木一紹介)(第二五八三号)  同(砂原格紹介)(第二五八四号)  同(中垣國男紹介)(第二五八五号)  同(長谷川保紹介)(第二五八六号)  同(赤路友藏紹介)(第二六九一号)  同外一件(大橋武夫紹介)(第二六九二号)  同(椎熊三郎紹介)(第二六九三号)  同(中馬辰猪紹介)(第二六九四号)  同(中川俊思君紹介)(第二六九五号)  同(畑和紹介)(第二六九六号)  同(古川丈吉紹介)(第二六九七号)  同(穗積七郎紹介)(第二六九八号)  靖国神社国家護持に関する請願外八件(古川  丈吉紹介)(第二五一二号)  同(二階堂進紹介)(第二五七九号)  世界大戦終戦記念日制定に関する請願(遠藤三  郎君紹介)(第二五一三号)  建国記念日制定に関する請願永山忠則紹介  )(第二五八〇号)  元南満州鉄道株式会社職員であった公務員等の  恩給等通算に関する請願外二件(内海安吉君紹  介)(第二五八七号)  同外一件(大石武一紹介)(第二五八八号)  同(長谷川峻紹介)(第二七〇〇号)  北海道開発局職員増員等に関する請願外二件  (泊谷裕夫紹介)(第二六九九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  労働省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第六〇号)  外務省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第五六号)  在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外  公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律  の一部を改正する法律案内閣提出第五七号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  労働省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山内広君。
  3. 山内広

    山内委員 今度の労働省設置法は、労働研修所を主体とした、あまり内容としては大きな問題になるようなものはないわけでありますけれども、若干関連してお尋ねしておきたいと思います。  実は、研修の問題につきましては、この委員会でもかつて取り上げたこともありますが、この方向に向かっての努力が今回の設置法にあらわれておるのであります。この点は、私敬意を表したいと思います。どうぞひとつ労働災害等いろいろな問題の解決に、この研修所の成果があがるように期待をいたしたいと思います。ひとつ御努力いただきたいと思います。  そこで、まず最初にお尋ねしたいことは、前に賃金部設定いたしますときに、設定の理由として、労使ともにいろいろ研究資料になるようなものを与えるのであって、決して片寄った考え方はないという労働大臣の御答弁があったわけであります。そこで私どもも、ああいう臨時調査会作業のさなかではありましたけれども、この賃金部必要性を認めて、これには賛成いたしたわけであります。その後約二年の歳月を経ておりますが、どういう作業が進められておるのか、その実態をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。これは事務当局でけっこうです。
  4. 辻英雄

    辻政府委員 一昨年の春賃金部が設立されたわけでございますが、賃金部として行なっております行政の基本的考え方は、ただいま先生お話がございましたような趣旨でございます。内容といたしましては、最低賃金制実施ということでございまして、これにつきましては、賃金部設置以来第一になされましたのは、石炭鉱業における最低賃金決定でございます。さらに最低賃金関係につきましては、賃金部設置以前から、中央最低賃金審議会におきまして、最賃制の今後の進め方につきまして種々御検討願っておったわけでございますが、昨年の八月に御答申がありまして、ただいまその御答申具体的実施のための細目の調査等をいたしまして、さらにその具体的な実施についての中賃の御答申を近くいただけるような運びになっております。  さらに新しい第二の問題といたしましては、賃金体系賃金制度に関する問題でございます。これにつきましては、最近の雇用労働事情が変わってまいりまして、一例を申し上げまするならば、経済成長いたしまして、雇用に対する需要が大きく、特に若年労働者の不足ということがいわれておるわけでございます。その中で、今後そういう労働事情変化等の中で、賃金体系というものをどのように考えていったらいいかということが、労使の共通の問題点でございますので、昨年の秋に学識経験者お願いをいたしまして、現在における賃金制度実情あるいはその問題点等を御検討いただきまして、できましたものを一般に提供して御参考にするというようなことをお願いいたしておるわけでございます。なお、その間事務当局といたしましても、世上問題になりますところのそういう賃金制度が、具体的にどのように行なわれておって、あるいは最近の雇用事情変化に伴いましてどういうふうに改められておるかというような点についての実情資料、あるいは退職金等につきましても、そういう資料、その他の資料提供ということをいたしておるわけでございます。  第三に、最近の国民経済成長に伴いまして、経済の中における賃金ということが、いろいろ論議をされております。これにつきましては、労働省としましては、そういう国民経済的な観点における賃金問題ということについての労使の理解を得ますために、資料提供ということをいたしておるわけでございます。  概略申し上げますと、賃金部で現在いたしておりますところの仕事の要点は、以上のような点でございます。
  5. 山内広

    山内委員 最低賃金の問題あるいは賃金制度の問題、そういうことについては、またあらためてお尋ねいたしますが、けさ実は新聞を見まして、生産性本部が、労働生産性の発表をきのういたしました。それを見まして、非常に私奇異の感じを抱いたのであります。総合的には九・八%という伸びを発表しておるわけですが、労働省と二%も違っておる。わずかに生産性の問題でこんなに違っては、いろいろこれからこの資料に基づいて仕事をやる場合に、大きな影響をもたらすわけです。どうして労働省の算定と生産性本部のそれとが違うのかということで、若干は私も資料を繰ってみました。ところが、なるほど計算のしかたに大きな相違があるわけです。それはいずれが正しいのか、いずれが正確のものか、そういうことの議論は抜きにして、同じ問題を取り扱ってこういう差が出るということは、好ましいことではないと思うのです。そこで、労働省のおとりになるのと、あるいは生産性本部その他いろいろなところでこの問題を取り上げておるわけですが、どうしても同じような数字が出なければいけない。とり方ならとり方、そういうものも一定して、数字にそれほどの狂いのないものを出してこられないと、どっちがいいのか、計算基礎から議論するようでは困ると思うのです。この点については、どういうお考えを持っておるか、お聞かせ願いたい。
  6. 辻英雄

    辻政府委員 生産性指数につきましては、省内では統計調査部で所管をいたしておりますので、統計調査部のほうからお答え申し上げます。
  7. 大宮五郎

    大宮政府委員 先生指摘のように、現在では労働省指数生産性本部指数と二つ出ておるのでございますが、労働省指数は、生産性本部指数がまだ出ない前からやっておりまして、昨年までは、生産性本部のほうの指数がまだ軌道に乗っておりませんでしたので、労働省としては、速報的な意味で従来の数字を発表しておったわけでございます。その間若干の違いが出ておるわけでございますが、これはすでに御承知のこととは存じますが、いろいろ原因がございます。主としては、労働省のほうが雇用指数のほうで頭数のほうの指数をとっておる。それに対しまして生産性本部のほうは、労働時間を考慮した労働投入量指数になっておる。そこに若干のずれが出てきておるわけであります。確かに御指摘のように、いつまでも両方を発表していくということは、指数性質は違うとは申せ、利用者側としては不便かとも思いますので、生産性本部のほうが軌道に乗ってまいりましたならば、私どもとしても、技術的には生産性本部指数のほうがよろしいのではないかと思っておりますので、一本化してまいりたいと思っております。
  8. 山内広

    山内委員 わずか一〇%の範囲内の中で、二%も違うというと、これは大きな問題ですから、ぜひ話し合いを進めて、接近したものをつくるようにしていただきたいと思います。  ところで、これと関連しての質問でありますけれども労働省賃金研究会というのが設けられておる。これは一体設置法のどこにあるのかと思って調べてみましたところが、公式な設置法機関ではないわけです。そこで、これもまた、設置法上から見ると、私非常に不思議な感じを持つわけですが、その研究会のメンバーを見ますと、なるほどりっぱな人たちばかりで、この組織そのものには私別に異議はありませんけれども、一体こういう時代に研究会——あなた方の設置法を見ましても、いろいろな角度から審議会あるいは調査会、そういうようなものをたくさん持っておるわけです。何のためにこういう賃金研究会というものをつくらざるを得なかったのか、そういう点についての回答を願いたい。
  9. 辻英雄

    辻政府委員 お答え申し上げます。  先ほども若干申し上げましたが、日本の従来のいわゆる年功序列型と言われます賃金制度につきましては、雇用労働事情が変わってまいりまして、労使それぞれの中でも、このままではぐあいが悪い、しからば今後の経済の発展の方向、あるいは雇用事情変化、あるいは技術革新等に伴います労働需要の質の変化というような角度から、どう持っていったらいいのかということが、実は労使の大きな悩みでありまして、それぞれに御検討にもなり、私どもといたしましても、事務的にはいろいろ勉強をいたしておった次第でございます。ところが、事の発端が、いわば先ほど申し上げましたような日本経済の構造の変化に伴いまして出てまいった大きな問題でございまして、学問的にも検討を要する問題であるというように考えた次第であります。そういう意味で、大所高所から、学問的な観点を含めて、今後どういうふうに推移していくものであるか、あるいはその前提といたしまして、どういう事情が起こって従来の制度変化してまいるのかということを検討する必要がある、かような判断に立ち至ったわけでございます。したがいまして、事の性質が、いわば非常に学問的な性格の問題でございますので、先生先ほどおっしゃいましたような、学識経験者の方に学問的な、基本的な検討お願い申し上げるというのが、趣旨でございます。したがいまして、手続的にも、会をつくるというよりも、個々の学識経験者にただいま申し上げましたようなことの検討お願いをするという手続をとってやっておる次第でございまして、お集まりになって御検討になったり、あるいは一人の委員の方がレポートを書かれたり、実際にもいたしておるわけでございます。そういう意味で、わかりやすく俗称賃金研究会と、かように申しておるわけでございます。  なお、労働省の既定の機関の中でそういうことをやるのに適した機関があるかどうかというような御趣旨お話でございますが、先ほど申し上げましたような趣旨で、従来の機関の中には、このようなことを直接学問的にお願いをするのに適するというものもございませんので、いま申し上げたような手続で処理をいたしている、かような事情でございます。
  10. 山内広

    山内委員 美辞麗句を並べると、そういうことになるのです。けれども、いまの置かれておる急迫した春闘も控えて、いろいろ賃金の問題が議論されているこの現実の中を踏まえて、学的にも、また御承知のとおり、設置法に基づくものすらも私どもはチェックしようとしているときなんです。こういう学者を集めた賃金研究会、どうもこのことは——あと大橋さんの発言についての質問もしたいと思いますけれども、こうかみ合わせてみると、何かしらこの点ではちょっと賃金統制のにおいがないわけでもない、こういうことで、こういうものの必要性があるならば、具体的に設置法ではっきりと設けられたほうがよいと思うのです。おそらく研究会といえども、この経費は労働省が負担しておやりになっているでしょう。そうしませんとできるわけでもないし、そういうことになれば、予算の執行からいっても、あなた方われわれに相談もしないで、国会にはからないで、かってに権威あるものを、設置法と同じようなものをつくって、そうしてそれの答申を待っておるというようなことであれば、みずからあなた方の怠慢というか、こういうものに責任をなすりつけるきらいがないとは言えないと思うのです。そういう意味で、こういう研究会などは、必要があったならば、設置法に基づいて国会の承認を経てつくってもらいたい、このことを希望いたします。  さて、いまお話しのありました最低賃金法ですが、賃金研究会委員であります大川委員の「賃金制度検討の視点について」という報告書も、実は見せていただいております。学的にはりっぱなものと思いますけれども、非常に抽象的であって、これが現実賃金問題を考える場合、はたしてあなた方のお役に立つかどうか、ちょっと私も疑問があるわけです。そういうことで、いまの最低賃金法によって作業を進めておると思いますけれども、その基本的な方向をどこに求めておるのか。いまの経営者業者間協定方式というものを固執しているのか。これを固執している限りにおいては、なかなか最低賃金は出ないと思うのです。中小企業組織は弱い。したがって、働く人の意思がこの中になかなか反映しにくい。そして、いろいろ意見を言えば長くなりますけれども業者間協定方式というものは、最低賃金法の基盤になるとは考えられない。この前大橋大臣は、三年間くらいの実績を見て再検討いたしますと、非常に気の長いお話をしておりますが、そういう意味で、もう少し具体的に、現実的に作業の進められている方向を示してもらいたいと思います。
  11. 辻英雄

    辻政府委員 最低賃金法昭和三十四年に施行されましてから数年間経ているわけでありますが、いまの最賃法のこれまでの施行の経過では、先生指摘のように、業者間協定が中心であったわけでございます。したがいまして、業者間協定によりまして最低賃金というものが普及しましたそれなりの意義はきわめて大きいとは存じますけれども、同時に、あるいは産業別にアンバランスであるとか、あるいは地域的にアンバランスであるとか、あるいは設定過程におきまして関係労働者意見が反映されにくいというような欠陥があったわけでございます。そこで、一昨々年以来、中央最低賃金審議会労使三者で御検討になりまして、昨年の八月十四日に「最賃制の今後の進め方について」という御答申をいただいたわけでございます。その御答申基本的な考え方は、今後の日本経済全体の成長の中における最低賃金役割り、特に中小企業における低賃金労働者の保護のためにおける役割りを強調いたしまして、具体的な手段といたしましては、最低賃金を優先的に対象とすべき業種考える、最低賃金の額のおよその目安考えるということを一つの柱といたしております。それと並びまして、従来のように業者間協定方式でなくて、現行の最低賃金法に書いてございます労使協定方式、あるいは職権方式というものも活用していくということが、基本になっておるわけでございます。その答申がございまして、その答申実施のための先ほど申し上げました業種の選定と目安決定という作業に、ただちに中賃としては九月以降着手されまして、ただいま実態調査あるいはそのために必要な調査実施をされております。かたがた、その過程におきまして、既存資料による検討公労使三者で行なっていただいておるわけでございまして、比較的近い時期に対象業種、あるいは賃金額目安についての御答申が得られるものと考えております。その基本的な方向は、先ほど先生お話がございましたし、私どものほうの大臣もしばしば申しておりますとおり、逐次職権方式のほうに移しかえていく。その全体の移しかえをやって、経済成長なり、ある程度の最賃の普及ということができた段階で、もう一度最賃法について適当かどうかを検討すべきである、かような考え方でおります。
  12. 山内広

    山内委員 最低賃金のきめ方には、いろいろ方法があると思います。いまお話のあった業種、あるいは産業別地域別、いろいろ要素が加わって、なかなかこれはむずかしい問題だとは思いますけれども、これは私まだそう深くそうだという断定はできませんけれども、一応は公務員初任給、高校を卒業して十八歳で独身で就職した場合の生計費というものを基礎に立てて、公務員の給料はきまっているわけです。そういう意味で、理論生計費でもって最低賃金を規定するということになれば、計算は非常に早いし、あなた方の机上でできると思う。一応そういうことをお考えになったことはありますか。
  13. 辻英雄

    辻政府委員 先ほど申し上げました中央最低賃金審議会で、昨年の御答申を出されました過程におきましても、生計費を具体的にきめてやるかどうかということは、三者の中でもたいへん御議論になったわけでございます。御承知のように、生計費につきましては、いま先生指摘のような国家公務員の初給の賃金生計費はございますけれども、一般に妥当する生計費が何であるかにつきましては、戦後以来いろいろまだ御論議の尽きないところでございます。そこで、現実最低賃金額の目安をつくりますときには、そういうものも考慮に入れてつくるのだというふうに御答申の中にもうたわれておるわけでございますが、それだけできめるという形は、現実のところ、その時点にはまだ達していないと考えております。
  14. 山内広

    山内委員 終戦後、困難な日本経済の再建でいろいろ問題があったわけですが、特に画期的な考え方として、同一労働同一賃金ということが、終戦後非常に強く叫ばれた時代がありまして、これは労働基準法の第四条にも規定しておるとおりですね。女子と男子とは、性別が違っただけでは賃金の格差はできない、こういうことで、女子の賃金というものがかなり問題になった時代がありますけれども、その後、いつの間にかこの問題がだんだんと影を薄くしまして、いまあなた方の提出されておる資料の中を見ましても、女子の賃金というものが極端に悪くなっておる。男子に比べてほとんど半分、そういう数字が出ておるのですが、この女子の賃金についてどうお考えになり、将来、これらの労働基準法第四条に基づき、男子と差別的取り扱いをしてはならないというこの基本法に対して、どういう努力を払うつもりですか。その点についてのお考えを伺いたい。
  15. 辻英雄

    辻政府委員 事務的にお答え申し上げます。  労働基準法の第四条にございます趣旨は、基準法施行当初から、終始私どもも国民に対して普及徹底をはかってまいっておるつもりでございます。現実の男女格差の数字をただいま先生からお話がございましたが、私どもの持っております数字で、一例といたしまして毎月勤労統計調査の製造業の定期給与におきまする男女格差を昭和三十年ごろから見てまいりますと、若干テンポはゆるいかと思いますが、おおむねは縮小する方向にまいっております。昭和三十年には、男対女が四一・四、若干途中で下がりまして三十三年には三九・五、三十八年では四三・一、かような数字になっております。なお、男女同一賃金を実現していきますためには、やはり一つの賃金体系の近代化ということが重要であることは、これはILO条約の男女同一賃金に関する勧告の中にも出てまいっております。そういう意味で、一方におきましては、この法律に対する違反は厳重に取り締まりますとともに、賃金体系の近代化ということに関連しまして、逐次浸透さしていくべきであろうというふうに考えておるわけでございます。
  16. 山内広

    山内委員 それでは、最初の質問に出ました生産性の配分率の問題について、お聞きしたいと思います。十二月の何日でしたか、労働大臣は重要な発言をしておりますけれども、配分率の問題については一言も触れておらない。しかし、私ども賃金考える場合に、これは非常に大事なことだと思う。これはもう総評あたりからも資料が出ておりますけれども、欧州並みの生産性の向上を見たいということは、これは池田さん自身がいばっておるのですから、間違いない。ただ、その配分については、日本労働者は、三〇%ちょっと出た三三%くらい。しかし、欧州各国を見ますと、五〇%以上六五%くらいというのが、一般の承知しておるところであります。したがって、いま賃上げ賃上げと騒ぐというと、何か労働者が大幅に自分たちの賃金だけを上げるように印象を受けておりますけれども、向上した生産性の分配の問題、分け前の問題、そういう意味では、この配分率というものはもっと科学的に、また現実的にも究明されなければならない問題だ。金額にすれば相当大きな額ではあるけれども、どんどん生産性を高めて、経営者労働者がアンバランスにならないように分け前を分配しようというのですから、こういうことは、当然の要求であると私は思っておる。これについて、労働大臣がおいでになりませんから、次官あたりでもいいのですが、ひとつ含蓄のあるところを……。
  17. 藏内修治

    ○藏内政府委員 確かに配分率におきまして日本が欧米各国に比べて低率にあることは、山内委員指摘のとおりであります。しかしながら、この基礎にありまする日本経済構造、産業構造といいますか、あるいは金利の問題であるとか、その他いろいろ考慮すべき、改善をすべき問題がまだございまして、それらを逐次改善していきませんと、直ちにいま配分率を向上させるというわけになかなかいかないのじゃないかと思いますが、労働省といたしましては、労働者保護というたてまえから、つとめてそのように努力をいたしたいと思っております。  なお、細部につきましては部長から……。
  18. 大宮五郎

    大宮政府委員 ただいま政務次官からお答え申し上げましたとおりでございますが、確かに分配率の数字そのものにつきましては、日本は、欧米の主要国に比べますと、低くなっております。すなわち、昭和三十六年の製造業における分配率は三五・三%となっておりますが、アメリカでは五四・八%、イギリスでは五六%といったような数字になっております。なお、日本よりもおくれた後進国をとりますと、三〇%そこそこの国が多いわけでございます。このように、分配率につきましては、数字の上から申しますと、経済の発展の非常に進んだ国におきましては、比較的高い水準に達しており、経済のおくれており、そしていま発展しつつある国においては、低い数字になっておるというのが実情でございます。これの理由につきましては、先ほど政務次官がお答え申し上げましたように、発展過程におきましては、そういう国々では、いろいろな資本の蓄積をはかってまいらなければならないので、そのための減価償却費、あるいは金利負担等の資本費負担分が多くなるために、このような形になるということが、一般的にはいわれておるわけであります。賃金そのものにつきましては、日本賃金水準の上昇率というのは、先進諸国に比べましても、一番高いほうの部類に入っておりまして、この辺のところをいろいろ考えてみますと、今後の問題は、なお、経済成長との関係でいろいろ考えなければならない問題もあるかもしれませんが、現在までのところ、日本経済成長に応じて賃金改善されてきておるということは、ほぼ言えるのではないかと思います。
  19. 山内広

    山内委員 いまの次官の御答弁でも、事務当局の答弁でも、すでにこの配分率が低いということはお認めになっておるわけです。しかし、池田総理に言わせると、日本経済は非常に伸びた、また欧州並みになったと、非常に誇らしげに言っておられる。これで三五・三%というお話でしたが、アメリカは五四・八%、イギリスは五六%、半分まではいきませんけれども、極端に差が開いているわけです。これは一体、現在の日本ではどれぐらいの配分率をもって妥当な線だとお考えになりますか。
  20. 大宮五郎

    大宮政府委員 どれぐらいが妥当な水準かということは、現在の段階では、経済の今後のあり方の問題と関係してくるわけでございまして、現在企画庁を中心といたしまして、今後の日本経済発展のしかたというものの見当をつけるために、中期経済計画の見通しを立てておるわけでございますが、その中で、学識経験者の御協力を得まして、その経済全体の中で勤労者の受け取る分、あるいは資本蓄積に回る分等が、どういう配分であることが今後の日本経済成長に適しておるかといったようなことを、目下検討中でございます。中期経済見通しができ上がりますと、そういった経済全体の中でのいろいろな関係の数字が、見通しとして参考になるようなものが出てくるのではないかと思っております。
  21. 山内広

    山内委員 そこで、たとえば産業構造、あるいは金利の問題、資本の蓄積、そういういろいろな要素が加わって、なかなか一ぺんにこの配分率はできない、しかしだんだん高めていくというような話でしたが、この産業構造というのは、池田さんのおやりになった高度経済成長政策の結果なんです。金利というものも、これは政策でもって、政府の方針でやり得ることなんです。そうしますと、これらのもろもろの問題というのは、あげて政治の責任であって、配分率を高めるという働く人の側の要求というものは、何も無理な要求ではない。これにマッチするような政策を合わせてこそ、初めて春闘というものは解決する。ただこれは、この間も私ちょっと奇異な感じがしたのですが、緊急質問のとき、各大臣は、被害の甚大なことを言って、権力で押えようという一つのムードをつくられた。しかし、あれなども考えてみれば、ちょっと話が余談にそれるかもしれませんが、公労法の十七条だって、ただ労働法の権利の主張ができない、免責の問題だけであって、十七条違反だからといって、すぐそのことを刑罰で処するということはできないはずなんです。公労法の規定の中に処罰規定がないのですから。それをもっておどかしている。ですから、こういう政策は、もう少し労働省のほうでも、配分率はこうなっておる、低いのだ、もっと公平に、せめて半分半分ぐらいにやってやらなければいかぬ、それぐらいのデータを出して、そうして大臣経営者を啓蒙しないと、いたずらに春闘というものが激化するだけだと思うのです。  あと、労働大臣にお聞きすれば一番いいのですが、これはどうせ事務当局のお書きになった文章だと思いますので、私この際、十二月の二十七日かに行なわれました労働省発表の大臣の発言について、事務的な点をお聞きしておきたいと思います。十二月二十七日に、大橋労働大臣は、賃金問題で労働大臣の談話を発表されました。これについての要旨を新聞とそのほか印刷物で拝見したのですが、なかなかりっぱな、まああなた方としてはそつのない発表をしております。ただ、この中で、私、非常に奇異な感じをしたのは、最後のほうですが、生産性の高い部門においては、その成果の一部をできるだけ価格の引き下げに振り向ける機運をつくり、また生産性の低い分野では、労使協力して生産性向上につとめると、こうあります。これは労働大臣がかってにお話しになったのでなくて、あなた方が原稿をお書きになったと思うのですが、そう理解してお尋ねしてよろしいですか。(発言する者あり)大臣答弁だそうですから、それじゃ大臣来たときお聞きしましよう。大臣来るまで待ちます。——大臣の御都合もあるそうですから、大出氏に質問を譲って、またお見えになってからいたします。
  22. 徳安實藏

    徳安委員長 大出君。
  23. 大出俊

    ○大出委員 それでは、大臣がお見えになるまで少し事務的な点について承っておきたいのですが、最近の「年齢勤続別賃金実態」という資料をいろいろ調べてみますと、非常に日本の若い労働者層がふえてきておりまして、イギリスあたりが、二十五歳未満の若い労働者が大体二二・九%くらいに対しまして、日本の場合には、四五・七%くらいの数字になっているわけであります。特に若い層が賃金が極端に安いというふうに考えておるのでありますが、千人以上の製造業関係をとりまして、二十歳から二十四歳くらいのところで、これは三十七年四月統計ですから、一年くらいズレがありますけれども、大体一万八千七百十五円というのが男子の賃金の平均になっておる、こういうことなんですが、さらに女子労働者の場合は、同じ二十歳から二十四歳、しかも千人以上というところをとりまして、一万三千三百七十五円という金額になっているわけでありまして、きわめてその格差が男女の間に大きいわけでありますけれども労働省のほうのものの見方、考え方という面で、男女の差別賃金という面については、どういうふうにお考えになっておりますか。
  24. 大宮五郎

    大宮政府委員 御指摘のような男女の賃金は、年齢の若いところではほぼ同じでございますが、年齢が進むに従いまして男女の間の差が大きくなってまいります。ただいま先生御引用になりました関係の資料から申し上げてみますと、千人以上で十八歳未満の女子の賃金は、定期給与だけでございますが九千六百九十九円、それに対しまして男のほうは九千八百三十八円となっておりまして、その辺はほとんど差がないのでございますが、年齢がずっと進みまして、男子の賃金が一番高くなります年齢層である五十歳から五十九歳をとりますと、男子が四万四千九百十八円に対して女子が二万五千八百七十四円ということになっております。こういうふうに見てまいりますと、おのずからわかることでございますが、年齢が進むに従いまして、男女間のみならず、いろいろ労働者の資格、種類等によりまして、仕事に差がついてまいるわけでございます。そういう点で、より責任の重い立場、また強い労働に従事し、技能の高い水準を必要とするような仕事に従事する者が多い種類のものは、年齢が高くなるほど賃金が高くなりまして、そうでない種類の労働者の賃金は、年齢が進みましてもそれほど上がらない、こういうことで差がついてきておると思われます。したがいまして、これは単に男と女であるがゆえについている差ではなくて、仕事その他によりまして、ほかのことで差がついておる、こういうふうに解釈しております。
  25. 大出俊

    ○大出委員 いま言われた資料は、いつの資料か明らかにしてほしいのでありますが、十七歳くらいのところで、同じ千人以上の場合に、男子の場合九千七百六十円です。ところが、女子の場合には九千六百二十六円で、お説のとおり大した差はないのでありますが、十八歳から十九歳のところになりますと、男子の場合に一万四千四百九円、女子の場合には一万一千四百十九円ということで、すでに三千円から差がついてしまう、こういう現実があるわけです。したがって、いま言われることだけであるかどうかという点に一つ私は大きな疑問があり、かつ私は、御存じのとおりの立場ですから、職場をよく知っているのでありますが、大して差がない、特に民間の場合において。そういう場合でも、こういう差別賃金が行なわれている。私は明らかな差別賃金と目されるものが数多いというふうに考えているわけでありますが、そういう面で、近代国家社会といわれる今日の日本の中で、そういうことが行なわれていいはずがない。してみると、労働省あたりがこれに対する見解を打ち出さないと、同じような労働をしておる、質量ともに同様であっても、その会社の賃金体系の男女の相違がこういう結果を生むということになりかねませんから、この点について、実はひとつ御見解を賜わりたいと考えているわけでありまして、いまのような答弁では、全く現実に即さないというふうに思っておりますので、再答弁をいただきたいと思います。かつ、いま私は企業規模別年齢別賃金、製造業、三十七年四月ということで申し上げているのですが、お話しの資料は、何年の年次をとっておられるかということも、あわせてお答えいただきたいのです。
  26. 大宮五郎

    大宮政府委員 ただいま申し上げました資料は、三十七年四月に行ないました特定条件賃金調査の全産業の男女別の労働者の資料でございます。なお、男女同一賃金に対する考え方そのものにつきましては、基準行政のほうの考え方が、解釈としてはよろしいと思いますので、賃金部長のほうから答えさせていただきます。
  27. 辻英雄

    辻政府委員 実態につきましては、ただいま統計部長からお答え申し上げましたが、私どものほうといたしましては、労働基準法施行の過程におきまして、男女同一賃金という点につきましては、非常に重点を置いて監督指導いたしておるわけでございます。手元にございます資料について申し上げますと、昭和三十七年に監督実施をいたしました事業場数が二十万以上あるのでございますが、そのうち男女同一賃金につきまして違反を発見いたしましたのは、八件でございます。発見いたしたものは、直ちに是正をいたさせております。なお、先ほどお答え申し上げましたように、単に違反の取り締まりということだけではなく、積極的にそういう指導をするということはきわめて重要なことでございまして、私どものほうもやっております。なお、この問題につきましては、婦人少年局におきましても、直接、あるいは都道府県にあります婦人少年室等を通じまして、熱心に指導いたしておりますが、なお今後ともそのように努力いたしたいと思います。
  28. 大出俊

    ○大出委員 発見したものが八件、こういうことなんですが、事実私どものほうでいろいろ調べている中では、非常にたくさんあるわけです。特に婦人層の方々と話しをしてみると、口頭で調べてみてもすぐわかる程度にたくさんあるわけです。これは労働省という立場でなかなか具体的にやりにくい点もあろうということはわかりますけれども、そういうものをアピールしていただかぬと、民間企業のほうはなかなか直さないと思うのです。安く使えるに越したことはないという考え方になりますから、ぜひその点は積極的に御指導をいただきたい、そのように考えるわけです。  それから、なぜこういうことを言い始めたかといいますと、いま当面の大きな問題になっていることしの春の賃金引き上げの運動があるわけでありますが、これをめぐって、このところ、国会の本会議におきましても大きな問題が出ているわけです。ことしの場合に例年と様相が違うのは、若い層の方々が非常に真剣に賃金を上げてくれと言っている。これは若い層の方々に会ってみれば、一番よくわかるのであります。したがって、そこのところを正確にとらえていただかないと、政府の賃金に対する取り組み方が誤りをおかすと思うので、質問をしたいわけでありますが、そこでいまお話しの資料に基づいて考えてみますと、先ほど例にあげましたように、英国あたりの若い層の分布比率とそうでない層の比率とを比べてみまして、特に日本の場合は、極端に最近は若い層がふえてきている、こういう現実にあります。今日の日本賃金体系賃金事情というものは、年功序列型という形のものがとられています。もちろん、最近職務給云々の問題なども大きくなってきておりますけれども、したがって、いま言われる仕事の質と量という問題で、主として仕事の質的に高いところを預かっているのは、実は男女を問わず若い層なんです。横文字がわからなければ運転できない新しい機械が、どんどん入っているわけです。八幡の五年計画のあとを見てもわかるとおりであります。そうなると、生産の中心は若い層に移ってきている、こういうことなのです。してみると、これと年功序列型賃金体系といわれる日本賃金との関係において、将来の賃金のあり方はどうあるべきかということについて、むしろ昨年の十二月二十七日の、最近の賃金動向についてという大臣談話でコストインフレを云々するよりも、その前にこの種のことを明らかにしなければならぬ責任が労働省にはあるのですが、その点についての御見解を賜わりたいと思います。
  29. 辻英雄

    辻政府委員 ただいま御指摘のございました若年労働者に対する労働需要の増加というものは、たいへんなものでございまして、御指摘のとおりでございます。それに伴いまして、初任給を一例としてとってみますと、昭和三十八年の初任給は前年に対して約一一%、三十七年は二三%、三十六年は約二三%というような上昇でございまして、労働需給関係から申しましても、そのような動向にあると考えております。したがいまして、そういう若年層の企業の中に占める役割りの増大ということと労働需給関係とを反映しまして、賃金体系を従来の年功序列型から逐次職務、能力に応ずる方向に切りかえるというのが、一般の動向でございますし、私どももそのように考えております。ただ、実際問題として申しますならば、年功序列賃金も、長い歴史の中で成立したものでございますし、それなりの役割りを果たしてきた面もあるわけでございまして、それらを含めて、今後の経済あるいは雇用労働事情の推移等を含めて事実がどのように推移するか、あるいはその中でどう対処していくかという点につきまして、基本的な検討を先ほど申し上げました賃金研究会お願いをいたしておるわけであります。ただ、実際にも、先生から御指摘がありましたように、民間におきましてもそういう職務給の導入というようなことも行なわれておりますので、その事実につきましては、私どもも、資料をもって労使にお伝えしておるというところでございます。
  30. 大出俊

    ○大出委員 石黒さんはドイツに長くおられましたし、岡部さんも英国に長くおられたわけですから、そういう点でおわかりのことだと思いますが、欧州各国の例を見ましても、産業別の横断賃率的な、つまり労働市場における一つの相場がきめられているという事情があります。いま賃金部長の言われる年功序列型賃金との関係において、日本にもやはりそういう賃金相場というもの、賃率という形が確立をされないと、指導のしようがないというのが、今日の日本賃金事情だと思うのです。だから、たとえば欧州並みの賃金をよこせとものを言っても、さて名目比較、実質比較、いろいろありますけれども、なかなか論議が同一土俵で戦わされないという問題が出てくる。その辺について労働者としてどうするかという見解がなければ、いま言われるように、それなりのウエートを持ってきた、あるいは役割りを果たしてきた年功序列型賃金だと言われても、現に実情に即さないことを皆さんが認めておりながら、しかも何ら方策がないということになると、若い労働者層というのは納得しない。したがって、激しい賃上げ運動が起こるということは、当然なわけです。それらをもっと合理的に皆さんのほうで、しからば旋盤工なら旋盤工というものはということで、一つの指導方向というものを明らかにしないと、単に処分云々ということではものごとは進まないのですから、そういう点について、もう一度、年功序列型賃金というものと、欧州並みの賃金をよこせと全労の諸君まで言っている世の中に、しからばその基準はどこに求めているかという点を考えていなければならないはずなんだから、お考えを承りたいと思います。
  31. 辻英雄

    辻政府委員 私は、事実を申し述べたつもりでおるわけでございますが、今後の方向としては、先生指摘のように、経済成長に伴いまして、あるいは雇用労働事情の変更に伴いまして、逐次職務に応ずる賃金という方向に動いていくであろうし、現実にも動きつつあるというふうに理解いたしております。
  32. 大出俊

    ○大出委員 事務的に聞いたということではこれは済みませんが、しかし、大臣がおくれるということですから、いまの問題とからんで一つ質問しておきますが、とにかく二十五歳未満の諸君が四五・七%日本の産業に存在する。さらに二十五歳から三十五歳までの方々が二五・八%存在するということになりますと、七割をこえる方々が三十五歳未満の若い方々ということになる。しかもその方々の賃金が年功序列賃金という形をとってきた日本賃金体系であるがゆえに、欧州各国、アメリカに比べて極端に低いという数字的な明らかな事実があるわけですね。そうなると、賃金を上げなければ、この若い方々は生活に困窮を来たすということは事実です。そうなると、そこのところから考えてみて、賃金を今日上げないという、政府はゼロ回答を続けているのですけれども、これらについて、数字的に、理屈の上から言って、賃金部長といわれる立場の辻さんは、どうお考えになりますか。
  33. 辻英雄

    辻政府委員 当面の春闘の賃金の問題につきましては、ただいま公労委におきまして調停が進行しておりますので、それが具体的にどうこうという答弁は、私どもとしては差し控えさせていただきたいと思います。
  34. 大出俊

    ○大出委員 そういう答弁をお願いしようというのではない。いま言うように、七割をこえる方々が若い層である。ところで、先ほどの御答弁によれば、つまり日本は年功序列型賃金を持っている、欧州型にはなっていない。してみると、明らかに賃金格差は極端なものが欧州との間にはある、特に若い層にある。そうなってくると、これは理論的にいって、上げる必要があるという考え方に立たなければ、生活の実態からいって筋が通らぬではないか、こういうことですから、春闘とからめぬで御答弁願いたい。
  35. 辻英雄

    辻政府委員 先ほど私が、最近における初任給上昇の数字を申し上げましたが、ただいまの労働需給関係の事情、本年度における新規学卒の初任給等につきましても、方向としては同様の方向にございまして、初任給、つまり若年層における賃金の上昇の割合のほうが、中高年層における賃金の上がり方よりも大きいということは、この数年の事実でございますし、今後もそういう動向が続くものだというふうに見ております。
  36. 大出俊

    ○大出委員 ところで、いま初任給の話が出ましたからですが、八幡製鉄あたりの高校卒初任給が、いまのところ一万五千円、それから官庁の初任給が、一万二千円なんです。公労協平均で申し上げてもいいのですけれども。そうなりますと、今日民間の初任給と官業、特に公労協の初任給と比べてみて、どういうふうにお考えになりますか。
  37. 辻英雄

    辻政府委員 公労協の初任給なるものを、実は私手元に数字を持っておりませんが、三十八年におきます中卒の初任給は、全国平均で男子が九千九百十円、女子が九千七百八十円、高校につきましては男子が一万三千二百五十円、女子が一万二千六十円というのが、三十八年度の初任給でございます。
  38. 大出俊

    ○大出委員 そうしますと、民間比較との関係で、初任給を上げるということは当然だということになる、いまの数字から言いまして。
  39. 辻英雄

    辻政府委員 国家公務員の問題につきましては、御承知のように、人事院のほうで御検討になって御判断になる。それから公共企業体の関係におきましては、労使で御判断になり、折り合わない場合には公労委で御判断になるというふうに思っておりますので、この際このときに、具体的にどうすべきかということを私が申し上げますのは、出過ぎたことになりますので、差し控えさしていただきます。
  40. 大出俊

    ○大出委員 どうも大臣がいないと、何か答弁をされると出過ぎることになってうまくないのですが、そういう点はそれでけっこうですから、あまり出過ぎることを心配しないで御答弁いただきたいと思うのであります。  ところで、モデル賃金という形のものが今日あるわけでありますが、多くを説明する必要はないと思いますけれども、このモデル賃金をとってみると、年齢かつ勤続、扶養家族ということで、全産業と公労協との比較という面で、きわめて大きな開きがあるわけであります。大臣が来られる前に、事務的な面でこの辺のところを明らかにしておいて、なるべく大臣の答弁を少なくしていこうと思うのであります。  そこで、年齢十八才の公労協基準内のモデル賃金は、一万二千九百三十円になるわけであります。さらに二十歳になりますと、一万四千八十七円になります。二十二歳で一万五千五百九十七円という数字になります。それから二十五歳で一万八千九百六十九円、三十歳では二万五千百五十一円、三十五歳になりますと三万——これは国鉄等の昨日の新聞に出ておりました談話等にもございますが、たいへん低いのでありますけれども、三十五歳で三万七百三十円、四十歳では三万六千八百九円という数字です。これを全産業別と比較をいたしますと、下のほうは十八歳というところで一万四千七百九十一円、約二千円ばかりの開きであります。二十歳で一万七千四十九円、三千円ばかり開くわけでございます。二十二歳になりますと一万九千五百四十一円ですから、約四千円開くわけであります。さらに二十五歳になると二万五千四百五十円ですから、さらに五千円をこえる開きになる。三十歳になりますと、何と全産業平均モデル賃金は三万四千百四十七円でありますから、九千円をこえる開きになってまいります。三十五歳になりますと四万四千七百七十八円でありますから、一万四千円全産業平均のほうが上になる。そこで国鉄のようにわずかの時間に五十も六十も信号を見て走っている人が、三十二くらいで、しかも十八年も勤めていて二万七千円だなんということができ上がる、こういう実情にあるわけです。比較しやすいからモデル賃金をとったわけでありますけれども、してみると、今日賃金部長という立場で、全産業、あるいは公労協、あるいは公務員をながめてみて、一体公労協の賃金というものは、数字の面の比較からいって、どの程度のところに置かれているかという点について、どういう御見解をお持ちかということを聞きたいわけであります。
  41. 辻英雄

    辻政府委員 年齢別賃金につきましては、先生のおあげになりましたのも一つのモデルであろうと思いますが、いろいろの見方がございます。ここに実際の年齢別賃金の平均の数字がございますので、お答え申し上げますと、昭和三十七年の調査で若干古くなりますが、千人以上の規模で、十八歳未満が九千七百五十円、十八歳から二十歳が一万四千五百二十円、二十歳から二十五歳が一万八千六百十一円、二十五歳から三十歳が二万四千七百五十二円、三十歳から三十五歳が三万二千八百六十六円、三十五歳から四十歳が三万七千三百七十四円、四十歳から五十歳が四万二千五百七十二円、こういうような数字に相なっております。これは平均値でございまして、具体的には職務の内容なり何なりの事情労使が具体的に御判断になるべきだと思います。千人以上の平均値を申し上げますと、以上のようなことであります。
  42. 大出俊

    ○大出委員 ところでそうなると、民間賃金の動向からいきまして、人事院が勧告されたときに、これはマーケット・バスケット方式をとっていろいろやっておられますけれども、あの勧告のときに、六月と四月のズレを計算に入れないでも、七・五%の変動といっているわけです。そうすると、いま辻さんの説明している内容を逆算して、そういう数字になりますか。
  43. 辻英雄

    辻政府委員 ちょっと御質問趣旨がわかりかねますのと、これは全産業の千人以上の平均値でございますので、私は便宜実例を申し上げたわけでありますが、人事院の場合は、もっともっと下の規模まで調査いたしておりますので、直接の比較はいたしかねると思います。
  44. 大出俊

    ○大出委員 ずいぶん安いところをとられたように思ったので、したがって、人事院ベースくらいじゃないかという気がして聞いてみたわけです。ところで、いまそういう数字のとり方があるという説明なんですけれども、私がものを言いたい中心は、またまたあなたに言うと出過ぎると言うかもしれぬけれども、全産業と公労協と比べて、かくも賃金が公労協側は低いという実態を、数字的に、労働者という立場でもう少し前向きにものを言う必要がありはせぬか。ところが、政府の組織機構の一環だからということで、なるべくそういうことについては表に出さない、言わない、こういうことであってはまずいのじゃないかという気がする。かって福永さんが労働大臣のときに、政府がこうであっても、われわれはできるだけ前に向くから、うしろから押してくれ、かくて賃金部なるものをつくらしてくれというお話があった。その賃金部ができて、賃金部長が存在するのに、どうもうしろばかり向いておって感心しない。その点、再度御見解を明らかにしていただきたい。
  45. 辻英雄

    辻政府委員 お話のように、労働省としましては、民間、公企体を含めまして、賃金実態がどうなっているのかということを正確に把握をいたしまして、それを資料として国民に提供するというのは、きわめて大事な仕事でございます。従来とも、統計調査部等におきまして、統計をつくって、結果を公表いたしております。賃金部でも、賃金一般に関する資料の公表をいたしておりまして、これによってひとつ国民の御批判、御検討を得たいというように考えるわけでございます。
  46. 大出俊

    ○大出委員 十二時に大臣が来るというお約束なんですが、ちょっとお調べをいただきたいのですが……。  大臣おられませんので、いま事務的に少し質問をしていたのですが、当面の春闘の問題がございますので、私は冒頭に申し上げておきますが、昨年の三月十五日に同じように公労協のストライキがあったわけでありますけれども、当時大臣の御努力をいただいて、御存じのように何とかストライキを回避して、国民に対する迷惑を避けてきたわけであります。この大臣の当時の御努力は、私は十二分に知り過ぎているわけでありますが、その意味では感謝もしているわけでありますが、今回も本会議答弁を聞いておりますと、他の大臣各位の御答弁と労働大臣の御答弁との内容のニュアンスが違うのでございまして、私はその違いは何を意味するかというと、担当大臣という立場で、いろいろな問題はあるけれども、なおかつこの際春闘というものを、公労協のストライキというものを目の前にして、国民に迷惑をかけないという、そういう収拾というものをひとつ考えておられるのではないかという気がしながら聞いておったわけでありますが、例をあげれば、他の方々が、今回のこの公労協のストライキというのは明らかにスケジュールによったところの闘争のための闘争だと言わぬばかりの言い方に対して、ストライキ宣言を発してストライキをやるということだから、結果的にはスケジュール闘争と言われてもしかたがないのではないかと思いますという、つまり大臣みずからがそうだとは言い切らぬという答弁をされておられるし、かつ、仲裁移行の問題についても、確かに職権仲裁というものは違法なストを調停する制度ではないと言っておられるけれども、調停期間中にこの種の論議をすることは間違いだという言い分になっているし、最後に言われておることは、国民に対する迷惑ということを考えれば、何とかしてこれは回避するようにお願いしたい、こういう形の話になっているわけであります。大臣みずからがお話しになったのだから……。そこで私は、この段階までくれば、さてどうするかということになってきている段階だと思うわけでありますが、つまり回避のためにひとつお願いをしなければならぬという気持ち、これは具体的に一体どういうふうに実現をされようとされるのか。私も、この際、でき得ればおのおの要求するところがあり、立場があろうけれども、収拾をはかるべきであるという見解に立ちますので、そういう点から御質問申し上げるわけですが、まず大臣の、ひとつ具体的にどのようにお考えになっているかという、いまの時点におけるお考えを聞きたいわけです。
  47. 大橋武夫

    大橋国務大臣 このたびの春闘の一つとしての十七日のストライキというものは、まことに遺憾にたえない次第でございます。これが万一実現いたしまするようなことがありましたならば、国の経済、国民生活に非常な打撃を与えることになり、また賃上げを要求いたしておりまする労働者諸君に対しましても、かえって国民のきびしい批判が起きてくるのではなかろうか。いずれにいたしましても、これは労使双方にとり、国民にとり、まことに不幸な結果を招くものと存じまして、私は、あらゆる手段を尽くしてこれを避けようという基本的な考えは持っておるわけでございます。  しかしながら、御承知のとおり、この問題は、春闘の主たる目標であります大幅賃上げについての折衝の段階において起こってまいりました問題でございまして、これは純然たる労使間の賃金の問題が中心でございます。この賃金の問題につきまして、労働省といたしましては、当事者間の話し合いによって解決をしていただくか、当事者間の話し合いが不幸にして妥結しないという場合におきましては、公労法の調停の手続によって結論を出していただくというべき問題であると考えるのであります。かような見地から、すでに二月の十五日に組合側は公労委の調停を申請され、目下調停手続が進行中でございます。近く調停の期間も切れるところでございますので、一応調停を申請された組合とされましては、まず間近に控えておるこの調停の結果をお待ちになるというのが筋道ではなかろうかという感じを受けておる次第なのであります。もしこの調停の結果には期待することができないということでございましたならば、その後に残されておる解決への道というものは、これは仲裁手続以外にはないわけであります。したがって、私は、賃上げを要求される組合側におかれまして、問題のすみやかなる解決を本心から御希望になるということでございましたならば、その最終解決への道であるところの仲裁への移行ということを組合みずからがお考えになるということが、この争議の解決をすみやかならしめる唯一の道ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございまするが、しかし、ただいまの段階においては、まだ私のさような考えがはたして組合の御同意を得るかどうか、組合員諸君の御了解を得られるかどうか、これは私にも自信のないところでございます。
  48. 大出俊

    ○大出委員 昨年の例をもう一つ申し上げますが、昨年も、黒金官房長官、さらに大橋大臣、このお二人の方との間に公労協が長い間交渉を続けて——まあ皆さんは会見と言われるかもしれませんが、続けてきたところなんですが、そこで調停に持っていくということはやりたくない、つまり長引くからだ、こういう黒金さんのお話があり、私どももそのことを承知をして進めたところが、とたんに調停に持っていってしまったということで、そういうおかしなことはないじゃないかということで話を煮詰めたところが、私のはからざるところでそういう問題が起こってしまった、私の本心ではないという黒金さんのお話もあり、いってしまったものはやむを得ぬということで、その調停期間をなるべく切り上げて仲裁に移行をして問題解決をはかろう、こういう話になっていたわけであります。ところが、なかなか今度は政府の側は仲裁に持ち込まない。政府の側という意味は、三公社というのは、公社というものがありますが、その他の五現業は、直接の雇用者は政府なんです。そうなりますと、直接の雇用者である政府の側が、直接の担当者をして仲裁に持ち込ませようとしない。昨年は、これが延びてしまった原因になります。三月の十五日にストライキという問題が起こったわけですが、三月十四日に労働大臣みずからが前面に出て、仲裁に持ち込みますということを公に発言をされて、そのことをわれわれも信頼をして、かつ当時組合の諸君も信頼をして、結果的に十五日のストライキは中止をした。その間、参議院の藤田藤太郎さん等とも、大臣は何べんか話をされているはずです。そうなりますと、いまの時点になって、事は逆に組合側が仲裁に持ち込みなさいと言われても、政府側に持ち込みなさいとわれわれが言ったときになかなか持ち込まぬで、ぎりぎりにいって大臣みずからが前面に出て持ち込みますと言った、こういうことなんですから、時の情勢によっておのおのの立場が変わるので、いま大臣が言われたことは理屈だと思うのです。その意味で、問題は理屈でないところで片づけなければ、この春闘というものは片づかない。大臣がおられぬところで、今日置かれている各産業の若い層が非常にふえてきている今日の事情、 つまり四五・七%以上の方々が二十五歳以下であり、三十五歳以下の方々が七割を越えている産業事情から見て、どうしても賃金を上げろという意欲は強いのですから、ことしの場合は、そうなると、なおのこといま言われた昨年の理屈ではなしに、幾つかの方法をと言われたのだけれども、具体的にしからばどういう方法で片づけるか、収拾をはかるかという段階であろうと私は考えているわけです。そういう意味で、私の聞いているのは、使用者として、雇用者としての政府の立場、ここでものを言ってもらわぬと、制度の問題についてまた議論をしなければなりませんから、そういう意味でひとつ突っ込んだ話を承りたい、こういうふうに考えるわけです。
  49. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、労働大臣といたしまして、雇用者たる政府の立場で今日ここでものを言う立場にはないと思っているのであります。ただ、私の判断をしておるところでございまして、それによりますると、雇用者としての政府といたしましては、成立しておりまする予算等に縛られておりまする関係上、賃上げの問題についてこの際数字の回答を出すということになりましても、その幅というものがとうてい問題にならぬ小さなものじゃないか。おそらくこの段階で具体的な数字を示すということは、不可能であろうと思うのであります。したがって、問題は仲裁裁定の結果に基づかなければ、政府としては数字の問題に入れない、こういう状況にあるようでございます。そこで、私先ほど申し上げましたるごとく、現在の段階においては、ストそのものは何ら問題解決の道にはならない。むしろストによって国民の反感を招くというようなことが万一にもあるとすれば、これは賃上げの問題にはかえってマイナスの結果を招くことになりはしなかろうか。そういう意味からいっても、戦術としてこの際賃上げを真剣に考える以上は、組合の側もストを回避されるほうが有利であり、また正しいのではなかろうか。そうなってくると、すみやかに仲裁に入るということが、これが解決を急ぐ唯一の道であろう、こういうふうに私は見ておるということを申し上げたわけでございます。
  50. 大出俊

    ○大出委員 ストライキの問題、ストをやめたほうがいいのではないかという問題は、あとから申し上げようと思いますが、その前に、いま言われたつまり成立をした予算、それに縛られている、したがって、裁定を待たなければ云々、こういうお話しなんですが、今日の段階で各公社、現業に対して政府が回答しているのは、初任給引き上げ六百円ということに尽きるわけですね、これだけなんですから。ところが、さて初任給というものは、先ほども事務的な立場で質問をしていたのでありますが、昨年の十二月二十七日に大臣が発表された最近の賃金の動向についてというものの中でも、この四年間で初任給は倍になっているというふうにお書きになっているわけです。しかもさっき事務当局で例を申し上げましたが、民間の初任給というものは、いまの官業の初任給に比べてはるかに高い。そうなってまいりますと、初任給の引き上げということ自体は、これは引き上げなければ、官庁、特に現業に新規卒業者等の人が来ない。横浜の横浜中央郵便局が、つい最近、先月のことですが、内勤五人、外勤三人の募集をした。ところが、何と内勤五人募集したところに一人しか来ない。いろいろさがしてやっとあと二人見つけたけれども、五人の募集に三人という実情です。現実初任給引き上げをやらなければ人を得られないという、今日の官庁の給与の実態です。したがって、初任給引き上げをやるのはあたりまえです。そうしなければ成り立たないのですから。そうすると、今日の六百円の初任給引き上げは、明らかに賃金の引き上げではないわけです。そうなると、賃金引き上げについてはびた一銭も出していないという、昨年の十月に要求書を提出をして以来半年になるのに、しかも回を重ねて交渉を申し入れてやってきているのに、全くもってゼロ回答であるということであっては、しかも調停委員会に移行をした段階でも、調停委員会の中には、使用者の代表の方々が全部出ているわけですが、この中でも今日までゼロが続いているということになると、政府は全く誠意を示さずして、組合がやることだけは一方的にやめてくれという、これは私は筋が通らぬと思う。半年にもわたってゼロしか出さぬということになれば、人事院勧告によって公務員も上がっている、民間のほうも上がっている、こういう事情の中で、どうしてもやはり問題は今日あるようなことに落ちつくのはあたりまえのことです。してみると、ここで政府が誠意を示さなければ、ストを回避しろということを言うこと自体が無理だ、こういうふうになるので、そこのところをもう一ぺん明らかにしていただきたい。これは使用者ということでなくて、労働大臣ということでけっこうです。
  51. 大橋武夫

    大橋国務大臣 各企業体の代表が公労委の場において現実にどういう発言をいたしておりますか詳しくは存じませんが、要するに私が外部から見ておりまして感じるところは、おそらく使用者側としては、あれ以上具体的な数字を出すことは事実上不可能であろう、こういうことでございます。したがって、現在の段階において解決への道を急ぐということは、最終の解決手段であるところの仲裁の手続へできるだけ早く入るということ以外にはないのではなかろうか、これについては、私は、労使どちらの発議でもよろしゅうございますが、要するに現在の段階では、労使双方が同意されて、そしてこの問題を仲裁に持ち込むという手続に出られることが一番適当ではないかということ以外には、ちょっといまのところいたしようのないような実情でございます。
  52. 大出俊

    ○大出委員 大臣のいまの答弁を聞いておりますと、ずばりと御答弁いただきたいのだが、本会議で池田さんが職権仲裁はやらぬと言って、大臣もまた職権仲裁という制度は云々という理由づけをされて、これは言い切ってはおらぬと思いますけれども、やらぬと言わんばかりの話をされておる。そうなると、公労法の手続上残された制度は幾らもない。つまり二カ月という期間が切れれば、労使双方のいずれかが仲裁に持ち込むことができる、こういうことになりますね。あるいは調停が不調に終わるということになれば、これまたいずれかが持ち込めるということになる。そうすると、いまの大臣の言われたことを突き詰めれば、十六日で二カ月の期間は切れるわけです。そうでしょう。大臣に私が公労協の諸君と会ってくれんかという話をしたのは、二月十四日の日です。なぜあのときに申し入れをしたかといいますと、大臣はしきりに調停期間中にストライキとは何だと言われるけれども、調停期間中にストライキと言われたくないからこそ、公労協の諸君は二月十四日の日にあなたに会見を申し入れてお目にかかったわけですね。私も同道しました。そのときに大臣は、決裂と言わぬで待ってくれとおっしゃった。しかし、そういうわけにまいりませんということを言って公労協の諸君は帰った。つまりそれは二カ月という調停期間があるから、したがって、その間は待たなければならぬ。して見ると、これは世の中の常識だから待たなければならぬ。皆さんにまた調停期間中にストライキをやるとは何だと言われるから、待たねばならぬ。こういうことで十四日の日に大臣と別かれて、十六、十七というところで調停申請を各組合がされたわけですね。そこで十八日の総会がそれをきめたわけです。そうなると、十六、十七日に出しておるのでありますから、それから起算いたしますから、少なくとも今月の十六日になれば二カ月たってしまいます。ストライキということを言っているのは十七日でありますから、明らかに二カ月の調停期間が過ぎたところ、こういうことになるわけですね。したがって、いま大臣が言われるところの趣旨の一つ、つまり調停期間過ぎということになれば、仲裁移行というのは十七日以降ということになってしまう。つまり大臣あるいは政府が関係当事者に、郵政省なりあるいは公社なりに仲裁に持ち込みなさいと、どうせ裏のほうで御指示をなさるのでしょう。さて仲裁に持っていくとしても、十七日過ぎである、十七日を含む十七日過ぎである。したがって、そのことは当面の紛争の解決にはならぬ。それ以外の方法があるとすれば、早めに調停のほうを打ち切って、調停不調ということにして持ち込むという方法がある。いま言われた答弁を聞いていると、その辺ではないかという気がするのだけれども、一体そこはどう考えているのですか。ほかに方法がないのだから……。
  53. 大橋武夫

    大橋国務大臣 現在の段階におきましても、組合側がほんとうに問題の早期解決ということをお考えになり、公社もそれをお考えになれば、事態としては仲裁に持っていく以外に道はないわけですから、両者の話し合いによって今日ただいまでも仲裁に移行できるわけでございます。私は、当事者双方がほんとうにこの事態を国民のために避けるというお考えに立って処理していただきたい、そうすればおのずから道は開ける、かように確信をいたすのであります。
  54. 大出俊

    ○大出委員 いま言われたおのずから道は開けるというても、開けるようにしなければ道は開けないのでありまして、一体どうすれば開けるかという、そこが実は問題のポイントだと私は考えているわけです。おのずから開けるといって、両者腕を組んで黙っているうちに、時間切れになってストライキに突入した。戦後最大の規模である三十七組合、三百万のストライキが起こってしまったという結果にきてしまうわけです。だとすれば、それまでの間に、おのずから道が開けるのではなくて、開かなければならぬことになる。それが昨年の三月十四日に、大臣みずからが前面に出られて、仲裁に持ち込みますという意思表示をされて、それを組合の諸君に信頼せよということで解決をした。これはつまりおのずから道が開けたのではなくて、開くべき努力をして開いたということなんですね。だから、いまこの段階で、先ほどあなたが口にされた使用者としての立場ではなくて、労働大臣としての立場と言われるならば、なおのこと、この問題はおのずから開かれるのではなくて、開くべき努力をしなければならぬということになると思うのですが、その開くべき努力とは、さっき口にされた中に幾つかあるのだが、法律的に方法はないではないかと私は言っているのだから、それらのところをあなたは一体いずれの方法を考えておられるのか、言うべきだと私は思います。
  55. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、基本的な考え方といたしましては、国鉄の運営にいたしましても、あるいは郵便の運営にいたしましても、これは労使双方が国民に対して負うておる責任だと思うのであります。労働大臣が負っておる責任ではありません。したがって、私は、労使双方が自己の責任というものを理解され、国民に対する自己の立場というものをお考えになりましたならば、いかにしてこのストライキを避けるかということを、労働大臣が何とかしてくれるだろうというような考え方でなく、国民に対する自分らの当然の使命、当然の役目としてみずから話し合って考え出すというだけの熱意を持っていただくべきものだ、それが労働争議解決のほんとうのあり方だ、こう私は考えておるのであります。かような立場から私はものを申し上げております。
  56. 大出俊

    ○大出委員 それならば、もう少しずばり言いますが、いま言われることばの中には、労使双方が国民に責任を負う立場だから、労使双方が頭をしぼり、方法を講じて解決をはかる熱意が必要だ、こう言われる。われわれは前から何べんも大臣お話しをしてきているところですが、組合側の諸君としてはずいぶん熱意を持ってやっておるのだというふうに私は見る。それなればこそ、昨年の十二月に賃金改訂の要求を出して以来、半年にもわたって綿々と続けてきておるわけであります。ずいぶん気の長い話で、ずいぶん忍耐強い話だと私は見る。にもかかわらず、では当局側の答弁というものは何かということになりますと、最後のところは奥歯にもののはさまったようなことになって答弁ができない。なぜ答弁ができないかといえば、明らかなように、予算総則もあり、当事者能力を全く欠いておるから答弁ができないわけです。だから片づかないわけです。国鉄総裁の石田さんが、調停委員会に呼ばれて何を言ったかといえば、制度に問題があると言い切っておるでしょう。もっとも、石田さんのような性格の総裁だからこそ、はっきり言ったのだと思う、そうでなければ、なかなか言えませんよ。制度の欠陥だということを明らかにしておる。つまり当事者能力がない郵政省であり、国鉄であり、専売公社である。ここに問題が解決しない理由があるのです。いつの場合でも、長年の例にあるとおり、必ず問題解決のときには閣議が開かれ、関係閣僚の懇談会が開かれて、労働大臣が入り、官房長官が入り、そういう中で相談をされて、さて大蔵大臣の了解も得てということで問題が解決の方向に動いて、それが上からのお墨つきをいただきましたからということで、団交の席上で明確に確認をしているわけですからね。ようやくおりてまいりましたからと当事者は言っておるのです。そういうことで解決しておるのでありますから、いま労働大臣は、労使双方が国民に責任を負う立場から、知恵をしぼって努力して片づけろと言われるが、片づける能力のない使用者に片づけろと言われることのほうが無理がある。してみると、政府という立場でお墨つきを下げ渡さなければやれない制度なんだから、欠陥は認めるとしても、今日の時点の緊急性を考える場合に、国民に責任を負うのは、一体政府みずからも責任はあるのかないのか、明らかにあるだろうと私は考える。だからこそ、総理以下が全部出られて、本会議であれだけの答弁をされたのだと私は思う。被害状況もつまびらかにあれだけ説明された本会議なんて、寡聞にして聞いたことはない。つまり三公社の場合はともかく理屈の立てようはあるかもしれぬけれども、五現業については、直接政府が雇用者じゃないですか。そうなってくると、これについては、いま大臣が言われるように労働大臣のみにたよるわけではないけれども、やはり政府の労働問題を担当される責任ある立場という意味で、この問題の解決に大臣は責任を持つべきだと思いますがね。
  57. 大橋武夫

    大橋国務大臣 むろん私は、これは労働問題ではないというわけではありません。労働問題でありますから、私としても十分にこれについては責任を持たなければならぬとは考えておるのであります。ただこの問題においては、先ほど来申し上げましたごとく、労使双方と申しましたが、使用者——公団というものは、考え方によりましては各省大臣の代理者のごときものです。使用者としての各省大臣があるわけでございます。これらの方々が、たとえば鉄道なら運輸大臣において、どれだけの被害があるか、予算の状態はどうか、賃金問題についてはどうか、こういうことは、常に運輸大臣がお考えになっておられるわけでございますから、運輸大臣、また郵政ならば郵政大臣、それぞれの使用者を監督する各省大臣の方がおられますので、その省において十分にお考えをいただくべき事柄であろう。したがって、仲裁に持ち込むという問題については、まず問題解決のためにこれらの各省が公社に対してどういうふうにすべきかということを指導されるべきでございますから、それについてのある程度のお考えがなければならぬと思うのです。すべて労働省から何か言ってくればそのとおりやればよろしいというような考えでは、この事態はなかなか解決できないのではないかということを申したわけでございます。
  58. 大出俊

    ○大出委員 とはいいながら、先ほど大臣の話は、予算とのからみ合いがあるから、つまり調停委員会を通じても、直接の使用者である郵政省なりあるいは国鉄なりというところから金を出すわけにはいかぬと、あなたはおっしゃるでしょう。はっきり言い切ったでしょう。しかもその前に、今月の初めに労働大臣が公労協の代表の諸君と会ったときに何とおっしゃったかというと、調停段階で金を出すわけにはいかぬと、そのときもあなたのほうから言っているのですよ。その当時は、それはまずい結果になるということを言っているのです。まずい結果という意味がいまようやくわかったのだけれども、つまり予算のワクがある。だから、それをひとつ考えた場合に、調停の段階で直接の使用者のほうから調停委員会に出ているのですから、私のほうは幾ら出しますと言えばいい。ところが、先ほどのお話では、それを言わせることは予算との関係があってまずいんだというのが、大臣の言い分でしょう。そこまで意識をされずにお話しになったのだろうが、すでにさっきの御答弁の中で、あなた自身が責任を負ってしまっているじゃないですか。したがって、予算についてそういうことで出すわけにはまいらないから、私は早く仲裁に持っていって解決したほうがいいと思うのだという見解を述べられた。責任ある労働大臣として述べられた。しかも、私は雇用者という立場でなく、労働大臣として申し上げると言っておられる。そこで私が質問しているので、あまり腹を立てぬでいただきたい。してみると、予算的に、今日調停の段階で直接の使用者をして金を出させるわけにはいかない、だから仲裁に持ち込んでもらいたいというお考えをお持ちならば、その仲裁というのは方法は幾つもあるじゃないか。職権仲裁をおやりにならぬというなら、二つしか残らぬじゃないかということについて私が質問したら、あなたの言われるには、労使双方が国民に対して責任があるのだからと言って突っ放す。それでは冒頭に言われたことと矛盾すると思う。ですから、ここのところはお互いに冷静な判断の上に立って、国会という立場に立って——国会だって国民に責任を負っているのだし、政府だってもちろんそうなのだから……。そういうことになると、プラスアルファがついて、何と二月二十四日には閣議でもって統一見解などという話までされて、さすがに全労あたりからも、そういうふざけた話があるかということを言っている。つまり賃金の引き上げ問題が政治問題に転換させられたという気が私はするのですが、そういうことであるやさきだけに、なおのことこの際政府が責任を負って、かつ労働大臣もその中の大きなウエートを持っていただいて、そこで問題の収拾に当たっていただくという熱意のほどがいただきたいのですが、この点はどうですか。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは速記録をお調べいただけばわかると思うのですが、私は、金を調停段階で出すわけにいかぬ、各省も予算に縛られておるから出すわけにいかぬと言ったのじゃなくて、出すわけにいかないと私は外部から判断をしておる、こういうことを申した。私の決心を申したのではなくして、私がさように観測しておる。したがって、私の観測によれば、これが解決のためには早く仲裁に移行すべきじゃなかろうか、こういうふうにこの段階を私は認めておる。したがって、こうした段階におきましては、労使双方が仲裁に移行するということについて権能を持っておられるのでございますから、その権能を用いられるということが、国民に対する職責からいっても当然だろうと思いますので、労使双方が、そうした問題についてすみやかに話し合いをしていただくべき余地がまだありはしないか、こういうことでございます。したがって、私のほうで職権でやるつもりはいまのところございません。
  60. 大出俊

    ○大出委員 話はわかりましたから、簡単に最後にもう一つだけ——まだ中途はんぱで、たくさんあるので保留しなければいけませんが、一つだけ質問しておきます。  しからば、あなたの観測によれば、労使の使のほう、雇用者のほうは、仲裁に持ち込むという件について、持ち込みの意思がおありだとあなたは観測されているのですか。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、この際問題解決の道であるといたしましたならば、政府の部内において、各省にもできるだけ話を進め、そしてそういう問題についてもお考えをいただきたい、こう思うのであります。ただし現在の段階におきましては、仲裁に持ち込むという結果を生みますためには、組合側の同意というものが必要でございますから、その点はひとつ大出さんから十分に組合にお話しをいただきたいと思います。
  62. 大出俊

    ○大出委員 いま申し上げたように、法治国家として禁止されておるストが云々という大臣の話もあり、先ほども言われたが、調停期間中云々という話もあり、たくさんありますから、これらを明らかにしておきませんと、まさに国民に責任を負う国会の大問題です。しかもいま最後に言われた、私のほうにもという話がありますが、これらについてもこれからものを申し上げなければならぬことになりますので、私は質問を保留をいたします。
  63. 徳安實藏

    徳安委員長 明日この質疑は継続いたします。      ————◇—————
  64. 徳安實藏

    徳安委員長 次いで、外務省設置法の一部を改正する法律案を議題といたします。  なお、在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案も、あわせて議題といたします。  質疑の申し出がございますから、これを許します。伊能繁次郎君。
  65. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 外務省設置法の一部を改正する法律案並びに在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由については、先般外務大臣からお伺いした次第でございますが、この点について、他の事務的な問題は関係の当局のほうからお伺いをいたしますが、外務大臣に、今回の外務省設置法の一部改正法律案について、第一点から第六点までありますが、そのうち特に第一点、第二点について、アジア局の賠償部を廃止する、そうして経済協力局に移す。と同時に、情報文化局に新たに文化事業部を設置する、こういうような御提案であります。何か私どもとしては、一つの部を廃止して、さらに情報文化局という本来の仕事の中へ文化事業部を設置するというような点については、若干当初の法案の説明理由では不備な点もあるやに考えられますので、この点、両者の問題について、その必要性等について明確な御説明を賜わりたいと思う次第であります。
  66. 大平正芳

    大平国務大臣 まず、賠償部の廃止でございますが、御案内のように、賠償の仕事は、一応ビルマの賠償を最後といたしまして、計画は全部終了いたしたわけでございまして、実施面だけが残されておるわけでございます。実施の仕組みも、既往の賠償の軌道の上に乗せてまいりますならば、円滑に消化される見通しができましたという実態的な発展が一つと、それから御承知のように、わが国の賠償は、ただいままではわが国の海外経済協力の柱といたしまして、重要な役割りを果たしてきております。この賠償が、一九六九年にはピークに達しまして、それから漸減の方向をたどる予定になっておるわけでございます。したがって、これからの経済協力は、賠償と関連のない、あるいは賠償を伴わない本来の経済協力一般につきまして、わが国として施策するところがなければならないわけでございます。そういう意味で、賠償の残務を合わせて経済協力の視野から総括してまいるという必要を感じましたので、賠償部を廃止する、そしてこれを経済協力局に統合するというようにさしていただこうと思っておるのが、第一点でございます。  それから、第二点の情報文化局に文化事業部を設置することでございまするが、情報文化局は、御承知のように、情報の仕事と文化宣伝の仕事を担当いたしておるわけでございます。本来、この二つの仕事は異質な仕事でございまして、一人の局長が統括をいたします場合には、実務の処理の上にいろいろの不便が起こってきたのでございます。御承知のように、海外との文化交流が激しくなってまいりますと、それに伴う人事の交流も自然ひんぱんになってまいりまして、一人の局長がそれを掌握いたします場合に非常に多忙をきわめるということになってまいりましたので、本来情報と文化とは別の局が担当するのがいいと思うのでございますけれども、一応情報文化局に文化事業部というユニットを設けさせていただきまして、そこのチーフが文化関係の交流事業について責任を一応持つというようにさしていただきますならば、情報関係の仕事によりよく弾力性を発揮できると考えたわけでございます。定員から申しまして増加ではございませんで、そのような仕組みをつくって、責任の所在をはっきりさせていただくというようにいたしますならば、現在われわれが経験いたしておりまする事務処理上の困難が緩和されるのではないか、かように考えお願いいたしておるわけでございます。
  67. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 いまのお話では、「情報文化局においては、左の事務をつかさどる。」といって、一と二があり、一と二は従来から異質の仕事と目せられるべきものであった、したがって、今回この機会に実質的に双方の仕事の能率をあげるためには、分けたほうがいいということでございますが、その当否をいまここでどうこうということでなくて、私がここでお尋ねをしたいのは、文化事業部というものが今回つくられますと、われわれがときおり外国へ参りました節に、ことに今回のオリンピックなどの問題で感じましたことは、外務省を中心とするいわゆる文化事業の仕事と、運輸省あるいは通産省等の観光、貿易等、それらの密接な関係の仕事がどうも外地においてばらばらにやられておるというような傾向が、非常に強いと私どもは思うのです。ことに昨年、われわれ個人的な事情ではありましたが、国会の特別委員長と私でオリンピックを中心とした外国における宣伝その他情報等の関係の事情も若干は調べてまいったのでありますが、特にその感を深くいたしますので、こういう文化事業部というようなものがここに新設せられる際においては、それに関連の関係各省の仕事の連係等について、よほどうまい仕組みなりうまい連絡なりを考えられないと、せっかく金を使っても、どうも能率があがらぬのではないかというような感じをいまから持つわけでありますが、その辺について、文化事業部設置に関して大臣のお考えも伺っておきたい、こう思うわけであります。
  68. 大平正芳

    大平国務大臣 ごもっともでございます。非常に航空機が発達し、電波交流が発達してまいりました今日、ひとり外務省並びに外務省以外の政府機関ばかりでなく、民間の会社、銀行、団体等の対外的な接触が非常に激しくなってきておると思うのでございます。前々でございますれば、外務省がそれを一元化いたしまして海外に当たるというようなゆうちょうなやり方で間に合っておった段階もあったのでありますけれども、いまはそういうことよりも、むしろ非常に活発な、官民を通じての対外経済、文化、人事、科学、情報その他の交流がひんぱんになってきておりますので、それはそれ自体として活発にやっていただくようにして、そしてそれの協調がうまくいかないで非常に摩擦が起こるとか、あるいは能率が阻害されるとかいうことを、外務省の立場でいろいろ調整あんばいしていくというような心組みでございます。したがって、外務省以外の政府機関がこういうことをやってもらったら困るとかいうような、家父長的に外務省のほうでいろいろ制約するという気持ちは毛頭ございませんで、それは大いに活発にやっていただき、その間のコオーディネーションをうまく外務省のほうでハンドルするというような心組みでまいりたいと私は思っております。
  69. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 大臣のたいへん明快な御回答で、私ども心からそのお気持ちを多とするわけでありますが、現実はどうもそういってないのではないか。と申しますことは、私は心からそうありたいと考えますが、私の知る限りにおいては、たとえば運輸省が、先般運輸省の観光関係を主体とする在外機関についての在外機関会議をいたしました際に、外務省あるいは在外公館の関係の向きとの連絡がほとんど円滑にいってない。通産省のほうのジエトロその他との関係は私はつまびらかにいたしませんが、また一方情報文化関係の、オリンピック、あるいはその他の貿易関係、あるいは文化の海外との情報交換等について、常時の会合というようなものは、外務省を中心として、国内においても、あるいは海外においても、持たれておるのかどうかという点を考えますと、どうもそういう点も持たれておらないで、ばらばらに行なわれておる。たとえばオリンピックの宣伝等についても、外務省は外務省としてパンフレットを個々にばらまいており、運輸省は運輸省でやっておる。また、貿易に関連したものについては、通産省がジエトロとして、あるいはその他の関係でやっておるというように、どうもその辺がうまくいかない。この点は、かつての国際文化事業部でしたか、ああいうようなものと同じものかと思いますが、こういうものができる機会に、そういったものは今後どういう連絡をはかり、いま大臣が言ったような考え方で外務省としても、在外機関をして十分能力を発揮せしめると同時に、その連絡と能率化についても何か具体的な形を整えないと、大臣考えのような形に進まないのじゃないかという点を心配しておるわけですが、現状はそういった連絡等について一体どうなっておるか。官房長あるいは関係の方でおわかりになれば、伺いたい。
  70. 高野藤吉

    ○高野政府委員 御指摘の点は、過去におきましていろいろ難点がございましたので、いままで情報部の一課として文化関係をやっておりまして、人手不足、それから財政上の措置も必ずしも十分でなかったということで、今後とも人をふやしまして、文化事業部ということで、いままでは情報局長が全部そういうようなことをやりまして、会議にも出られませんし、いろいろの儀式にも出られませんでしたが、今度は文化部長が、独立の資格におきまして、運輸省の観光局ともいろいろ御連絡申し上げて、そういう点のいままでの欠点、弱点をなくすために、今度は独立さしていただきまして、人員も振りかえてふやしていただき、そういう点をできるだけカバーして、運輸省の観光局とも連絡して、今後大いにやっていきたいというような趣旨でございます。
  71. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 大臣並びに官房長のお話を伺って非常に満足をいたした次第でございますが、さらにひとつ、こういう点については、私は、海外においては、外務省の在外公館が中心になって遠慮なくこの種の連絡その他会合を催されて、ほんとうに能率よくやっていただきたい。ことに、外務省以外の在外機関は、何としても若い連中なり、手の少ない関係でやっておりますから、全体のことがわかりかねる事情もあるかと思いますので、どうぞこれは内外にわたってやっていただきたい。  ついては、いま文化事業部を増員されるというお話しでございましたから、従来のままから増員になると、どのくらいふえるかっこうになりますか。
  72. 高野藤吉

    ○高野政府委員 現在の文化課の定員は十七名でございまして、それに六名増員いたしまして、二十三名になります。第一課は部長を含めまして十二名、第二課は十一名、そういうふうに考えた次第でございます。
  73. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 次に、第三点の移住あっせん所の問題についてちょっとお伺いしたいのでありますが、私、従来の経緯は存じませんが、先般移住事業団が設置せられたとき、昨年でありましたか、理想的には、そのときに、これらの問題の処理も全部できて、名実ともに移住事業団に仕事が移るのが適当ではなかったかと思うのでありますが、これらの点がおくれた事情、並びにこれらの移住事業団に土地から建物全部を出資して、今後は移住事業団というものが移住局その他との関連において十分活発にできるのだろうと思いますが、この五十人の定員というものは、そのままなくなってしまうわけですか。
  74. 高野藤吉

    ○高野政府委員 五十人の定員は、外務省から減りまして、同時に事業団の定員がそれだけふえるというかっこうになります。
  75. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 次に、第四点の経済協力開発機構日本政府代表部の問題でありますが、これはすでに先般条約としても衆議院は通過いたしたようでありますが、昨年私がパリに参りました当時、十名前後でしたか十数名でしたか、経済協力開発機構の日本政府代表部の母体となるべき機関がすでに設置をせられておりまして、私ども参っていろいろお話を伺い、たいへん忙しい仕事をして、非常に熱心に各般の代表部設置の準備並びに今後の仕事の問題等についても御努力をされておられましたが、今回この法律案が成立いたしますと、定員その他仕事の関係は、どういうようになるのか、その辺を一応お伺いしたい。
  76. 高野藤吉

    ○高野政府委員 お説のとおり、現在までは、パリの大使館で実際上の事務を行なっておりました。今回設置法を通していただけますれば、それからOECDの条約が通過後は、パリに新しく経済協力開発機構日本政府代表部を設けまして、大体現在お願いしている定員は十六名で、その内訳を申しますと、もちろん大使、それから参事官三名、書記官これは一等、二等、三等書記官、それから官房関係四名。新規増員は九名になっておりまして、そのうち他省が三名。振りかえでいままで定員がついているのを純増いたしませんで七名。合計十六名で、他省からは大蔵省、通産省、運輸省、経済企画庁各省からお出向き願って、一体となってこの仕事をやる。そういうふうに考えております。
  77. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 第五番目の問題は、外務省職員の定員改正によって特別職三人、一般職二十六名、計二十九名の増員とありますが、その内訳は大体どんなものでありますか。
  78. 高野藤吉

    ○高野政府委員 二十九名の増員の内訳は、特別職三名、これはいまお話し申し上げましたOECDのパリの日本政府代表部大使一名、それからルーマニアに新しく大使館を設けますので、この大使が一名、ケニア大使館が、大使がふえまして一名、それからハンガリーの大使が一名で、四名になりますが、現在ハンガリーは公使でございますから、純増で三名の特別職の増加でございます。  一般職は二十六名でございまして、本省の増加が二十三名、在外公館が五十三名の増で、新設公館が二十名、既設公館が三十四名、昇格公館が一名減、合計七十六名の増になりますが、移住あっせん所の関係で、先生の御指摘になったように、五十名が九月一ぱいで減になりますので、一般職は合計二十六名、特別職は三名で、合計二十九名ということに相なります。
  79. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 これは毎回外務省関係の法律案の審議の際に問題になると思うのですが、どうも私通覧してみまして、在外公館の方々は、時期的にはたいへんお忙しい関係で、非常に人手も足らぬ面もあり、あるいは時期的には現在の定員では不十分だというようなかっこうにもなっておるのではないかと思いますが、ことにここに掲げられましたケニアであるとか、ルーマニアその他昇格したああいう地域の方面は、大使になられても、定員が非常に少ないので、はたして仕事がうまくいくかどうかという点も心配されるのですが、形式だけ大使館にしても、名実ともに伴ってないような感じをときおり受けるのですが、その辺の人員配置について、外務省としてはどうお考えになっておられますか。
  80. 高野藤吉

    ○高野政府委員 お説のとおり、新しい公館を開きますと、館長並びに書記官、それから外務省の特殊事務として電信事務が非常にございます。それから文書、会計、それからいろいろ在外邦人のお世話とか、旅行者のお世話とか、隠れたいろいろな仕事がございます。しかし、新しい館を開きますと、大国は別といたしまして、大体三名ないし四名でまかなわなければならぬという点で、ある時期においては非常に過重な負担をかけている面がございますが、これも予算の関係、定員の関係で、われわれといたしましては、逐次改善していきたいと考えております。
  81. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 次に、在外公館の名称及び位置を定める法律及び在外公館に勤務する外務公務員の給与に関する法律の一部を改正する法律案の提案理由の内容を拝見したわけでありますが、さいぜん御説明がございましたそれには、公使館から大使館への昇格三館、総領事館から大使館への昇格一館、総領事館の新設一館、領事館の新設三館及び総領事館分館の新設一館を規定する、かように示されてありますが、このうち私、特にちょっと伺いたいことは、総領事館の新設、ボンに総領事館を設置する一方、デュッセルドルフには総領事館の分館を置かれる、こういうように御説明があるようでありますが、この点は、仕事的には領事館の経済的な仕事あるいはその他の領事館本来の仕事もあられるかもしれませんが、デュッセルドルフとボンとを考えましたときに、ベルリンの総領事館、それからハンブルグの総領事館との関係から、ボンに総領事館を置いてデュッセルドルフには分館にされたというような関係について、一応詳細に伺いたいと思います。
  82. 高野藤吉

    ○高野政府委員 御指摘のとおり、大体欧州大陸におきましては、大使館で領事事務をやっております。ロンドンは総領事館は別にございますが、ボンに置きまして、またデュッセルドルフに置いたということは、ボンにおきましても領事事務がございますが、デュッセルドルフはすぐ領事館ないし総領事館を置くということは、いろいろな関係で差し控えまして、その分館をつくる。そのためには、母体が大使館になければならない。ボンにはまたボンの必要がございますが、デュッセルドルフに分館を置くには、大使館に総領事館という母体がないと分館というものはできない。初めから領事館を置けばよかったのですが、とりあえず分館で控え目にあそこに領事事務をやる——承知のとおり、現在デュッセルドルフはハンブルグと並びまして日本の貿易関係、輸出入関係の商社が非常に多いので、いろいろ領事事務がございまして、デュッセルドルフの方がボンまで来ると一日つぶれるというので、各方面から御希望がございまして、あそこにとりあえず分館を置くということから、そのためには母体としてボンの大使館に総領事館を置きまして、その分館としてデュッセルドルフに置く、そういうかっこうでお願いしているわけでございます。
  83. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 現在ボンのような——いまロンドンのお話も伺いましたが、首都に総領事館が併置されておるというのは、ボン、ロンドンのほかに、アメリカはニューヨークに置かれておるようでありますが、その他バンクーバーにも置かれておるようでありますが、特に何か首都所在地に置かなければならぬ、ボンに置かなければならぬ——どもは、何か経済的にはデュッセルドルフに置かれるほうが適当ではないか、これはしろうと考えでありますが、そういう感じがするのでありますが、その辺の御説明は、どういうことになりますか。
  84. 高野藤吉

    ○高野政府委員 御指摘のとおりでございまして、イギリスに総領事館というのが戦前からございまして、これは英法の関係で、大使館と領事事務は別だ、必ず別にやれということで、戦前から、イギリスにおきましては大使館と領事館を別に置きまして、事務所も別にして、スタッフも別でございます。しかし、ほかの国におきましては、大体大使館の中に領事部というようなものを置きまして、書記官が領事ないしは総領事を兼任しているというかっこうでやってきているわけでございます。しかし、それでも最近は、パリにおきまして在留民が多くなったため、総領事館を置いたほうがいいという空気もございますが、原則として大使館の領事部というものでまかなってきている次第でございます。したがって、ボンにおきましてもその方針でいきたかったのでございますが、デュッセルドルフに分館を置くという必要性が起きましたので、ボンは総領事館、しかし、これは特別の公館を持ったり、特別の事務所を持つのでございませんので、ボンの大使館の中に、実質は領事部でございますが、名前は総領事館というかっこうで置く、そういうような経緯でございます。
  85. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 そうすると、分館と本館との仕事の関係は、いまお説のように、デュッセルドルフからボンまで来ると往復一日かかるというお話でございましたが、特別な仕事以外は、大体の仕事はデュッセルドルフで支障なく行なわれるのかどうか、その辺はいかがです。
  86. 高野藤吉

    ○高野政府委員 大体領事事務は、分館に全権を委任してやりたいというような考えでございます。
  87. 伊能繁次郎

    ○伊能委員 私の質問は、以上で終わります。
  88. 徳安實藏

  89. 永山忠則

    永山委員 この外務省設置法一部改正で、賠償部を廃止して経済協力局に移すということになっておりまして、経済協力局は、資本財を主とするわが国の生産物及び役務の供与であって、相手国の経済開発への寄与という点においてこれを強く推進するということでございますので、私も賛成でございますが、しかし、その間、えてして経済協力をやる場合において、ブローカーやあるいは右翼が介在するというようなことは、まあ絶対にないように努力をされなければなりませんが、とかくいろいろなことをいわれておりますが、この点に関しては、大臣はき然としてこのようなことはないし、またさようなことは断じてやらせない、そういうものは厳に排除するという強い決意をお持ちでございますか。
  90. 大平正芳

    大平国務大臣 私といたしましては、事賠償ばかりでなく、経済協力一般につきまして、いま永山委員がおっしゃったような心がまえでおるわけでございます。すなわち、われわれが清潔な手で処理しないと、根底がくずれると思うのでございます。私は、外務省の諸君に、技術の巧拙よりも何よりも、まずクリーン・ハンドでやろうじゃないか、これが経済協力の一番大切な眼目だと思っておるわけでございまして、幸いにただいままでのところ外務省関係でそういった非違は私はなかったと思っておりますが、今後なお一そう戒めまして、そういったことのないようにつとめてまいる決心です。
  91. 永山忠則

    永山委員 私もそれを信じておりますが、韓国の学生騒動が起きましたのは、金鍾泌が日本の要人に会った二日目から起きておるという事実があるのであります。さらに韓国の国会においても、何か経済協力の中に不純なものがあるのではないかということを指摘して論議をいたしたというようなことを承っておるのでございますが、韓国国会でどういうことが論議をされたか、さらにまた学生騒動の原因はどこにあったのであるか、こういう点について御存じでございますか。
  92. 大平正芳

    大平国務大臣 私も詳細なところまでは承知いたしておりませんが、私どもが把握し得たところでは、今回の学生運動は、対日国交正常化それ自体に対する反対というのではなくて、対日外交に臨む態度と申しますか、政府の対日外交姿勢に対する不満というものが、一つあったと思うのでございます。  第二点といたしましては、請求権問題で私と金鍾泌さんとの間で大綱の合意が得られたわけでございますが、その合意の裏に何かあったのではないかという疑惑、そういったものが疑惑として問題になったのではないかと思うのでございます。その点につきましては、これは請求権問題はあくまで請求権問題の解決でございまして、たとえばそれに対して、その裏に李承晩ラインはその取引としてやめるのだというような密約があったとかないとか、そういうのは一切ないわけでありまして、請求権問題解決の大綱は、国会で私が御報告申し上げた以外何もないわけでございまして、それは、事態がだんだんはっきりしてくると私は確信いたしております。  それから経済協力の形で請求権の問題の処理をしようということでございますが、これは永山先生も御承知のように、対韓懸案というのは一括して解決する仕組みをとっておりますので、請求権問題で大綱の合意を見ましたけれども、これは一応の合意でございまして、すべての懸案が煮詰まりまして、そしてすべてを同時に一括して解決するという方式日本政府は堅持いたしておるわけでございます。したがって、そうしない限り、この請求権問題も解決しないわけでございます。いま一応の経過的な合意を見ておるにすぎないわけでありまして、したがって、一括解決して、そうして国会の承認を得なければ、これが動かぬわけでございますから、この経済協力にからんで何かあるなどということは、論理的にも考えられないことなんでございまして、そういった点は、事態を解明することによって、そういう誤解を持っておる方々があれば、だんだんと私は御了解がいくのではないかと思っております。
  93. 永山忠則

    永山委員 私は真相はわかりません。わかりませんが、韓国の議会で、与党の閲寛植が質問をいたして、何かこの経済協力の中に黒幕があるということを言い、さらに野党の金俊淵が強くこれを主張して、あるいは一部政治資金に流れたというようなことを議会で言っているというのですが、そういう事実があるかないか。速記録を調べて、そういうことはないと思うのですが、そういうことがまことしやかに国内に伝わっておるということが、これが要するに学生騒動に火をつけた大きなものじゃないか。学生騒動の中心は、お説のような外交方針の基本問題に関してであると思いますけれども、それらのものが一そうに火をつけたのではないかということが非常に言われておりますので、この点もお調べになると同時に、厳に注意をされて、そういうデマは、とにかく一掃するまで最善を尽くさなくてはならぬと思うのであります。さらに金鍾泌は、その学生に向かいまして、国防ラインはもう堅持するんだ、日本の言う低潮線は認められない、どこまでも直線基線を堅持する、金・大平メモというのは、外交文書でないから効力を持つものではないということを学生へ話して了解を得ておるということも、確実な方面から聞いているのですが、そういうようなことを言わなければ学生をおさめることができないというような情勢にあることは、ただこの交渉の基本的態度の問題以外に大きなる問題が存在してはいないかという誤解が、十分存在をしておるというように考えられますし、特に最近伝わるのには、梨花女子大学の生徒八千人が、おしろいをつけることをやめて、これを李ラインを守る警備艦建造へ寄付するという申し合わせをいたしたというようなことが伝わっておる。そのことは、反日運動へ転化する大きな原因になる。こういうような一連の運動が起きておるということは、これはただ単に交渉の態度の問題でなしに、いろいろのデマが拍車をかけているんじゃないかということを私は憂慮するあまりに、十分ひとつ、そういうことが言われているのですから、それらを、ないことはないようにはっきりPRをされまして、この政府の言われる経済協力関係が、厳密に正しく指導的立場で推進されるということを期待をするものでありますが、それに対する大臣の信念をお伺いいたしまして、私は質問を終わりたいと思います。
  94. 大平正芳

    大平国務大臣 冒頭にも申し上げましたように、事経済協力の問題ばかりでございませんで、すべての仕事がそうでございますけれども、えりを正して清潔にやらなければいかぬ、そうやらないと、根底がくずれてまいる危険があると思うのでございます。私は、それを厳に自分で慎んでおるつもりでおるわけです。  それからいろいろ誤解、デマがあるということでございます。真実はあくまでも究明し、真実はあくまであらわにして、そういった誤解は解消することを期待いたしておりますが、私どもといたしましても、そういう誤解が生じないように、できるだけPRに万全を期したいと思っております。  それから第三点の国防ラインの問題でございますが、国防ラインをしくとかしかないとかいう問題は、韓国の問題でございまして、私どもが関知したことではないのでございまするが、ただ、日韓の間におきましては、そういうものは認められません。何となれば、漁業交渉、漁業協定というものをなぜやっておるかと申しますと、朝鮮海域における漁業の操業を規制するのは、漁業協定以外にないのでありまして、その合理的な協定をつくろうということでそもそも出発いたしておるわけでございます。したがって、この漁業協定ができますならば、それによってのみ両国の操業が規制される、それ以外のものによって規制されるはずはないわけでございまするから、したがって、われわれはそのように了解をいたしておるわけでございます。しかし、韓国と第三国との間にどういうことをやられますか、これは私どもは干渉する立場にございません。対日韓の間におきましては、新しくできる漁業協定によって漁業の操業を規制しよう、こういうことの努力をいたしておるわけでございます。で、そういう漁業協定ができましても、その国防ラインがしかれたらどうするんだということでございますが、私どもそれは関知しないところでございます。漁業協定以外に漁業を規制する権威は、日韓の間におきましてはどこにもないわけであります。第三国との間は、私は関知いたしません。そのように御了解をいただきたいと思うのでございます。  それから漁業以外で公海の上で排他的な権力を行使するというようなことは、これはもともと国際法上認められないことでございます。初めから私どもそれは認めていないわけでございます。その点もあわせて御了解をいただきたいと思うのでございます。要は、これは非常にむずかしい外交案件なのでございまして、しんぼうが要るわけでございますが、あなたが御指摘のように、われわれの態度は常に正しく、かつ、合理的でなければならぬと思っております。いろいろ曲がった報道、デマなんかに迷わされるつもりはございません。終始まっすぐにいきたいと思っております。
  95. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明、十五日午後一時より理事会、一時十五分より委員会を開くこととし、これにて散会いたします。    午後一時二十二分散会