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1964-04-02 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二日(木曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 辻  寛一君    理事 内藤  隆君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 石橋 政嗣君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       岩動 道行君    佐々木義武君       高瀬  傳君    塚田  徹君       藤尾 正行君    保科善四郎君       松澤 雄藏君    渡辺 栄一君       稻村 隆一君    大出  俊君       中村 高一君    村山 喜一君       受田 新吉君    山下 榮二君  出席国務大臣         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         総理府事務官         (行政管理庁行         政管理局長)  石川 準吉君         運輸事務官         (大臣官房長) 佐藤 光夫君         運輸技官         (港湾局長)  比田  正君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         運輸事務官         (自動車局長) 木村 睦男君         自治事務官         (大臣官房長) 松島 五郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         運輸事務官         (海運局参事         官)      高林 康一君         日本国有鉄道参         事         (総裁室法務課         長)      上林  健君         専  門  員 加藤 重喜君     ――――――――――――― 四月一日  金鵄勲章年金及び賜金復活に関する陳情書外二  十七件  (第二八八号)  同外二件  (第四〇一号)  同外六件  (第四四四号)  国旗記念日制定に関する陳情書  (第二八九号)  在外資産補償に関する陳情書  (第二九〇号)  同  (第三五四  号)  同  (第四四九号)  水戸対地射爆撃場早期返還に関する陳情書  (第二九四号)  同(第四〇五号)  同(第四〇六号)  同(蜷四四七号)  F一〇五D戦闘爆撃機横田基地移駐に伴う騒  音防止対策に関する陳情書  (第二九六号)  建国記念日制定に関する陳情書  (第三五五  号)  同  (第三五六号)  同  (第三五七号)  同  (第三五八号)  同  (第三五九号)  同(第四〇  二号)  同  (第四〇三号)  基地問題解決に関する陳情書  (第  三六〇号)  臨時行政調査会蚕糸局整理縮小案反対に関す  る陳情書  (第三六一号)  同  (第四四六号)  青少年の非行化防止対策に関する陳情書  (第三六四号)  内地疾患旧軍人の国家補償に関する陳情書  (第三七  八号)  靖国神社の国家護持に関する陳情書  (第四〇四  号)  渡良瀬川遊水池米軍演習地反対に関する陳情  書  (第四〇七号)  戦争傷病者有期恩給終身恩給改定に関す  る陳情書  (第四二八号)  中小企業省設置促進に関する陳情書  (第  四四五号)  水戸対地射爆撃場におけるF一〇五D戦闘爆撃  機の演習中止等に関する陳情書  (第  四四八号)  恩給年金受給者処遇改善に関する陳情書  (第四五〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  運輸省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二〇号)  自治省設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第三四号)      ――――◇―――――
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  運輸省設置法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大出君。   〔委員長退席伊能委員長代理着席
  3. 大出俊

    大出委員 三月の三日に港湾労働等対策審議会答申書が出されておりますが、冒頭に、その取り扱いについて、今日の段階を簡単に御説明いただきたいと思います。
  4. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 港湾労働対策の問題につきましては、私どもとしても非常な関心事でございまして、しこうしてまた難問題でございますので、港湾労働等対策審議会に諮問をいたしまして答申をいただきましたが、私ども拝承いたしまして、大体その答申の趣旨に従ってやれるものからやるように、私どもといたしましては労働省と協議しながら、あの答申の線に沿って、できるだけすみやかに港湾労働者の問題について対処いたしたいと思っております。
  5. 大出俊

    大出委員 政府が関与するという性格のものではないと思いますけれども賃金源泉になっておりますのは港湾運送業運賃料金で、港湾運送事業法の手続によってきめられるものだと考えておりますが、またこれは認可料金という性格を持っておりますから、その意味では政府のウエートというのがきわめて大きいのじゃないかと思うわけであります。そこで、適正な労働条件の保障、そのための運賃料金国際性という意味で、どういうふうにお考えになっておるか、御見解を承りたいと思います。
  6. 比田正

    比田政府委員 国際的に見ますと、日本港湾料金は低いことは事実でございます。概括いたしまして、世界の大きな港の大体三分の一ぐらいでございます。それは平均してでございます。大きなところは七、八倍でございます。それから日本より少ないところもありまして、平均いたしまして大体世界の有名な港の三分の一、向こうが三倍というのが、現状でございます。
  7. 大出俊

    大出委員 それでは承りたいのですが、日本賃金比較をするという意味では、それらしい相手国を選ぶ必要があると私は思うのであります。その意味でサンフランシスコの場合には十四・五ドルという形になっておるようでありますし、ニューヨークの場合には十六ドル、いずれもトン当たりであります。オーストラリアあたりで四ドルないし五ドル、マニラでさえ四ドル払っておるという実情でございますが、日本の場合には一ドルないし、一・五ドル、こういうかっこうなんです。いま答弁されておりますが、三分の一などというような筋合いのものではないというふうに私考えるのでありますが、もう一ぺん再答弁いただきたいと思います。
  8. 比田正

    比田政府委員 私はいま大きな港を平均いたしまして申し上げたので、誤解があったかと思いますが、それでは数字をもって申し上げます。倍率で参ります。横浜を一といたしますと、ニューヨークは六・七倍であります。ロスアンゼルスは七・四倍、ロンドンは二・七倍、それからハンブルグは二・八倍、ロッテルダムは二・五倍、ボンベイは一・二、シンガポールは一・七、バンコックは〇・六、香港は〇・八、シドニーは九・〇、これらを算術平均いたしますと、三・五くらいになります。
  9. 大出俊

    大出委員 いまの料金は、付帯料金のほう、たとえば検数のようなものはどうなっておりますか。
  10. 比田正

    比田政府委員 ただいま申し上げたのは、おもなものは船内荷役料、それに検数、検量合わせたものであります。
  11. 大出俊

    大出委員 付帯料金は含まれておりますね。
  12. 比田正

    比田政府委員 含まれております。
  13. 大出俊

    大出委員 たとえば横浜なんかの場合で、平均雑荷と称するものは、付帯料金を抜きますと、百八十円くらいです。そういう実情からいきますと、いま港湾局長言われるような全体の比較という面から、極端に低いというふうに考えられるわけです。いま言われるような付帯料金その他を入れての比較は、三十六年統計でいくと、アメリカに対して八・六分の一。ですから、こういうふうなきわめて低過ぎるという現実について先ほど私が質問申し上げたのですが、そこを言いたいわけです。それはもう一つの面からすれば、最近の積み取り比率等の関係から見て、貿易外収支にも大きな関係がある筋合いだと思うのです。これについて少し前向きの見解をいただきたいと思います。
  14. 比田正

    比田政府委員 先ほどの港湾労働等対策審議会答申によりましても、画期的に港湾労働を近代化いたしまして、また港湾運送事業も、集約その他を近代的に強力に進めるということになっておりますので、私どものほうといたしましては、その線に沿うて努力いたすことはただいま大臣からお話し申し上げたとおりでございますけれどもまず当面、御承知のとおり、料金の問題は、値上げ申請がございます。これにつきましては、公共料金ストップ令もございますけれども、ただいま私ども実情調査しております。また、あわせて利用者業者との話し合いも進んでおる最中でございます。これがもし適当な数が出ますれば、必ずしも上げないというふうには事務当局考えておりませんで、関係の各省、経済企画庁とも御相談いたしまして、経済閣僚懇談会等におはかりいたしまして、例外措置の中に入るものだというふうに考えて、ただいま審査中でございます。また、さきの問題に対しましては、これはやはり答申が出ましたので、この答申の精神を尊重いたしますと、かなり幅の広い港湾料金値上げになるだろうと思います。したがいまして、その中の大部分を占めますところの賃金も、当然改善いたすのであろうというふうに考えております。
  15. 大出俊

    大出委員 そこで大臣にひとつ伺いたいのですが、今日の積み取り比率から見て、過去の八割くらいが日本船であった時代と違うわけでありますから、そういう意味で、こういう大きな格差がありますと、当然貿易外収支に大きな影響がくるという筋合いだと私は思うわけでありますけれども、今日の段階でどの程度の赤になるか、この辺についてはっきり御答弁を願いたいと思います。
  16. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 相当な積み取り比率海運赤字は相当なものになりますが、数字はいま……。
  17. 大出俊

    大出委員 大臣の御答弁でははっきりいたしませんので、再度質問をいたしますが、一つは、年間五億トンくらいの総トン数があるわけでありますけれども、私は外国船使用というものは大体その半分をこえているのじゃないかと思う。そういう点からいたしますと、大体トン当たり十六ドルを例にとれば、十六ドルと付帯料金を入れての一・五ドルとの差、これに五億トンのかりに半分が外国船であるとすれば、五億トンに二分の一をかけたものくらいが、私は赤になる筋合いだというふうに理屈の上からは考えるわけでありますけれども、そういう意味で御答弁願いやすいように申し上げているのでありますが、大体積み取り比率をどのくらいに見ておられるか、総トン数をどのくらいとながめておられるのか、その上で貿易外収支において赤はどのくらいになると見ておられるのか、その点を御答弁願いたいと思うわけであります。
  18. 高林康一

    高林説明員 現在の積み取り比率は、輸出につきましては、大体四八%程度日本船、輸入につきましても、四六ないし七、これが現状でございますけれども、本年度見通しといたしましては、それよりまたさらに若干下がってくるという見通しでございます。  それから港湾経費赤字でございますけれども、これは三十七年度につきまして申し上げますと、これはIMFの立て方でやっておりますけれども港湾経費では三十七年度一億六千二百万ドル、これは概数でございますが、一億六千二百万ドルの赤字でございます。そのうち、いわゆる港費——その他港湾経費の中には、たとえば船用油、船の燃料油、いろいろそういうものもございますが、港費だけをとってみますれば約二千二百万ドル、荷物費では六千一百万ドル、これが大体の内訳でございますが、三十七年度では一億六千二百万ドル、本年度見通しといたしましては、大体港湾経費におきまして、船用油を入れまして約二億ドルちょっとの赤字になる見通しでございます。
  19. 大出俊

    大出委員 もう一点だけ聞いておきたいわけですけれどもポートチャージ、つまり桟橋の使用からブイだとかあるいは入港税、水そういうふうなものがありますが、この外国比較の面で見た場合に、これは国または公共団体に入っていく筋合いだと思いますが、このあたりはいまの点とあわせてどうなっておりますか。
  20. 比田正

    比田政府委員 ポートチャージにつきましては、いろいろな種類がございます。水先料引き船料係船料、とん税、灯台税入港税いろいろなものがございますが、各国のおもな港を見てみまして、これを勘案するのはなかなかむずかしいものですから、一定の船が入ったとしまして、それが一定時間係留したというときの比較をいたしますと、日本横浜として、大体同じでございますが、考えましたときに、日本との対比は、平均いたしまして約三・〇三倍という結果が出るわけでございます。具体的に申し上げますと、ニューヨークは二・六七倍、ロサンゼルスでは二・一二倍、ロンドンでは港が非常に奥にありまして、百マイルもありまして、これは九・七倍、ハンブルクでは川をさかのぼります関係で、パイロットの多いものですから四・三倍、その他平均いたしまして、いまお話ししましたような三倍になっているこれは港の川口からの場所とか、従来の慣習とか、港の形とかで、引き船をたくさん使うところは高い、あるいは水先案内を使うところは高い、さまざまでございますが、平均いたしまして日本の約三倍という数字が出ております。
  21. 大出俊

    大出委員 そうしますと、いずれにせよたいへんな赤が出るわけでありますけれども、これは今日のドル事情その他から見て、そう簡単に軽視できない筋合いなんでありますけれども運輸大臣のお立場から考えて、この辺については一体どういう措置をおとりになる必要があるとお考えになりますか。
  22. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 なるべくその差を縮めるべく、値上げのできるものは値上げをしたい方針でございまして、現に岸壁使用料あるいはとん税等につきましては、値上げを現在いたしております。また岸壁使用料も、いっときに上げるのはいろいろな関係上むずかしい。順次上げていきまして、なるべくそういう差額のないように努力いたしたいと考えております。
  23. 大出俊

    大出委員 私は実は横浜なものですから、比較的港のことについては知っているつもりなんでありますけれども横浜あたりも、ことしはずいぶん前向きに、労働者福祉の問題も含めながら、上屋改善なりいろいろやっておりますけれども、どうもやはり国の側の折半出資というような問題もありますから、御努力をもう少しいただかなければ、今日内閣のいわれる高度成長云々という筋書きとも合ってこない筋合いでもありますから、その辺のところをひとつ大臣のほうから、どうお考えになっているかを御答弁いただきたいのです。国の支出という面です。
  24. 比田正

    比田政府委員 大臣がお答えする前に、こまかいことがありますので、私のほうから申し上げます。  港湾の設備に対しましては、五カ年計画をつくることになっておりまして、大きな港は大体拡大されると思いますので、今後それができれば心配がないと思います。それから港湾の五カ年計画というのは、埠頭等基本的な施設でございますから、付帯いたしますところの港湾労働の問題になっている上屋の諸施設等については、起債でやっておりますが、従来は便所とか洗体場とかは入っておりませんでした。これは私どものほうでは行政指導をいたしまして、上屋の一角にそういうものをつくれ、そのまま起債をやるからというように、これから話を進めていきたいと思っております。それからはしけ労働者が、近い将来はしけ居住禁止になりますと、住宅の問題があるわけであります。これはいろいろなやり方がございまして、まず土地は公共団体等に話しまして、ごあっせん願う。これは無償というわけにはいかぬでしょうが、とにかく安く貸してもらうとか、建てるほうは、公共団体にも、一部横浜等においてはお願いいたしまして、現につくっておりますが、これももっと強力に進めていきたい。これは業者自体の問題でございますので、会社自体はいまの料金の中からトン一円、福祉厚生に関する資金も積み立てておりますので、こういうものも利用いたしたい。それから雇用促進事業団等にもお願いしておりますので、各般のほうから五カ年とか三カ年とかの計画を立てまして、計画的にことしから進めていったらどうかということで、いま立案中でございます。そういうことでございますが、港湾荷役料を上げますときには、国際収支関係いたしますのは、船内だけでございます。あとのものは関係は全然ないけれども船内を上げればほかも上げなければいかぬということで、他の種目とのバランスと、また他産業とのバランスを見て考えていきたいと思っております。  施設使用料のほうは、先ほどお話いたしましたような状態ですから、施設使用料を上げたほうがいいと思います。しかしながら、急激に上げることは非常に困ります。またはね返り日本船にくるわけであります。外国船から取る分はけっこうなんでございますが、日本船はね返りが非常に多うございまして、御承知のように、海運再建整備の初期でございますので、これは慎重に考えていかなければならぬということで、総合いたしまして、とにかく前向きで合理的なものに直していくということは、私どもは大いに促進したいと思っております。  ブイの話で先ほど例がありましたけれども岸壁とかブイにつきましては、六大港におきましては、それぞれ二倍半に昨年の九月に引き上げまして、それを二年の期間で上げようということになっております。パイロット料金も、五割すでに上がっております。またさらに上がる予定もあるようでございますので、逐次改善されまして、一、二年ではむずかしいと思いますが、やがては世界の水準に近づけるように私ども努力すべきだと思っております。
  25. 大出俊

    大出委員 そこで問題になるのは、荷主方々港湾労働等にある業、この方々の非常に細分化されている事情等いろいろありますけれども伊藤忠であるとか丸紅、三井、三菱とか、大きなところはたくさん横浜なんかにはありますけれども輸出入だけでなしに、移出という面がありますから、総体的に見た場合に、たとえば船内荷役にしてもそうでしょうけれども、国際的に見て貿易外赤字が出ても、荷主の皆さんの側にすればそれでももうかっているということだろうと思うのですが、そういうことだから上げない、こういうふうに私は理解しているわけです。してみると、簡単に運輸大臣は先ほど何とか上げていくのだというふうに言われるけれども、それとの関係でそう簡単ではないからこそ、今日まで放任をされてきたというふうに考えるわけなんであります。それについて、もう一ぺんそのあたり見通しをどうお考えになっておるか、具体的な例もありますけれども、とりあえずお答えいただきたい。
  26. 比田正

    比田政府委員 おっしゃるような具体的な問題は確かにございますけれども、徐々にいくであろうと大臣が申されましたように、一ぺんに上げましても、いろいろ一たとえば労賃に関する限りは、他産業とのバランスもございます。それから荷主反対がありますと、たとえ大臣が権限を利用してやるといたしましても、非常にまずいわけでございまして、やはり荷主が納得したもの、また荷主として出し得るものをきめまして、改定していくべきだと私どもは思います。お話のように、移出のほうをやっておるということもございますけれども輸出に関する限りは一ドルを争う問題でございますので、国内で費用があまりかかると、国際競争に負けますので、輸出につきましては、私どもは非常に心配しております。国内につきましては、おっしゃるようなことが確かにあると思いますので、港湾料金を上げましたときに物価指数にどれだけ影響するかというのは、ただいまいろいろ試算している段階でございます。したがいまして、大臣からの御答弁は、これは徐々にやるのだというふうに言ったのだと、私は思っております。
  27. 大出俊

    大出委員 本来なら、徐々にもっとやっていかなければならぬ筋合いだと私は思うのです。つまり一九四九年五月二十七日に採択をされているILOの内国運輸委員会の決議があるわけでありますが、この年次からいたしまして、だいぶ時間的には経過をしておるわけでありますが、雇用恒常化という問題ももちろんでありますし、つまり運賃源泉雇用源泉になっております料金の問題、運送料の問題、こうなってくると、いまおっゃることは、ある意味ではわかるわけでありますけれども、それだけに困難があって、今日実現をしていない。だからこそ、港湾労働等対策審議会どもできたし、答申も出た、こういう筋合いなのでありますから、その面で私は、いま言われる荷主その他の方々に対しての運輸省なら運輸省という立場に立っての説得なり、あるいは上げるということが、今回の時期をおいては行ないにくい面が出てくるように思いますので、そういう意味で先ほどのように申し上げておるので、簡単に徐々に上げますというだけでは私は納得いたしかねるので、それらの点について、どういう処置をとるかくらいは構想として明らかにしていただきたいと思うわけであります。大臣、どうですか。
  28. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 お説のとおり、この問題は、単に輸出とか物価とかという問題だけでなく、なかなかめんどうなことでございますから、慎重に考えまして、徐々に、御指摘のあったような外国港湾チャージに匹敵するように上げていきたい。いま具体的に行政指導をいかにしてやるかということは、結論的な研究は立っておりませんので、ちょうどいいときに港湾労働等対策審議会の結論が出ましたので、それは大体私ども考えているような基本問題の考え方でありますから、それをよく検討いたしまして、労働省その他と協議いたしまして、私ども考え方を行ないたいと思っております。
  29. 大出俊

    大出委員 ところで、三十六年の夏に港湾料金改定がございましたね。公聴会は開かれておるわけでありますが、これが今日どうなっておるかということ。−荷主七十二団体等いろいろ話し合いが、おそらく行なわれておるのだろうと思います。四月のこの時期に大体上げるという目途で進めておられるのだと思いますけれども、その場合に、先ほど申しました船内の分、これは非常に悪条件が重なっておる。私も何べんか見て回っておりますが、そういう事情にありますので、特に上げなければならぬと思っておるのであります。沿岸なりはしけなりという問題もございますけれども、その辺のことについて、今日どういうふうに推移しておるのか。現場の荷役に携わる諸君の非常に大きな関心事でもありますので、できればこの機会に、言える範囲でけっこうですけれども、明らかにしていただきたいと思います。
  30. 比田正

    比田政府委員 船内のほうはあとから出まして、先に御承知のように沿岸はしけ賃金改定が出てまいったのであります。船内は御承知のように計算もむずかしいものでございますから、原価計算その他で手間取ったようであります。そこで運輸省といたしましても、そういう申請をすでに受けておりますので、この問題を現地あるいは利用者、それから港湾運送業者の三面にわたりまして、調査いたしております。ただ調査だけではいけないのでありまして、先ほども申しましたように、できるならば荷主船主との間の話し合いもっけさしたいというので、ただいまそのほうを進めさしております。先に申請がありました沿岸はしけにつきましては、聞くところによると、相当の歩み合いができておりますし、私のほうでもいろいろ試算をいたしまして、せんずるところ、われわれの査定案と言ってはおかしいが、そういうものを持っていなければなりませんから、そういう考え方とどうやら近づきつつあるというのが、現状でございます。それから船内のほうにつきましては、これは船主へのはね返りが非常に多いわけであります。船主はいま非常に困っておりますので、船主のほうがかなり難色を示しましたが、最近におきまして、話し合いをしようじゃないかということになりまして、事業者とただいま話し合いを始めたところでございます。この点につきましても、私どもといたしまして調査いたしまして、いかに定むべきかという案をつくりつつあるわけであります。やがてきまるのじゃないか。きまりました場合には、先ほどのような処置をとりまして、物価、一般大衆に及ぼす影響もあまり大きくない、また中小企業であって、非常に経営に困っておるというような点が、この間の公共料金ストップの案の中の除外してもよろしいというケースに当てはまるであろうと私ども事務当局考えておりますので、関係各省とも御相談の上、確認いたしまして、このくらいならよかろうということならば、また政府のほうに御決定願うようにいたしたいというのが、ただいまの段階でございます。
  31. 大出俊

    大出委員 昨年、実は船内料金改定されておるわけですね。そういう関係でいろいろ調べてみますと、そのことを理由に相当反対をしているという向きがあるわけなんですけれども、私どもの調べてみた限りでは、改定をしたといってみても、もともと悪条件の山積している船内荷役ですから、そういう面では、そのことを理由にするというのはおかしいというふうに私は考えているわけでありますが、いま言われた中でも、多少どうもむずかしいというニュアンスが受け取れるのですが、もうちょっとそこのところを一もしどうにもならぬというようなことであるとすれば、それなりの方法をわれわれはわれわれなりに考えなければならぬと思っているやさきですから、もう少し突っ込んだお話を願いたいと思います。
  32. 比田正

    比田政府委員 ただいま申し上げましたのは、運輸省部内の事務的な措置でございますので、これをもうしばらく日にちをいただきましたならば、どちらかにお話しする機会があると思うのでございますが、いまのところは、調査がほぼ終わりかけているという段階でございまして、この席におきましてあまりはっきりしたことをまだ申し上げる段階になっておりませんが、絶対に上げないのだという方針は、とっておりません。しかし、必ず上げるのだということも、まだ申しておりません。
  33. 大出俊

    大出委員 それだから再度質問しているわけなんですが、かりによしんば運輸省の中でこうこうこういうことにしたいというふうに出してみても、ほかの、通産その他から横やりが入るというような前例もなかったわけではないのですから、そういう意味でやはり運輸省の側のしっかりとしたこの問題に対する考え方を承っておかぬと、あとまたせっかく努力して進めていっても、とんでもないところから横やりが入って運輸省がへなへなと折れてしまう、こういうことになりかねない面が考えられるのですが、くどいようだけれども、念を押しておるわけであります。
  34. 比田正

    比田政府委員 その御心配につきましては、私ども調査もいたしますし、情報もあります。またいろいろ説明も受けておりますので、そのつど中間的に関係の各省には説明しております。いまの段階では、とんでもない話だという議論は起こっていないようでございます。
  35. 大出俊

    大出委員 次に、雇用安定の問題なんですが、これも関係がありますので、聞いておきたいと思う。もし、労働省その他の関係も出てまいりますから、無理であるということであれば、その旨御答弁をいただけばいいのでありますけれども、所管の港湾局でありますので、そういう意味でひとつ質問を申し上げたいわけでありますが、今日、日雇い労働者が圧倒的に多い状態なんですけれども、大体どのくらいになっているかということについて、御存じですか。横浜と特に限らぬで、全体でけっこうです。
  36. 比田正

    比田政府委員 常用が八万八千四百五十二名、日雇いが千百二十二万六千人、これは延べ人員でございます。前のほうは実人員でございます。これは三十七年末のものでございます。
  37. 大出俊

    大出委員 そこでひとつ承っておきたいのは、おそらく答申案をめぐっても問題になるところだと思うのでありますけれども、常用と日雇いのまん中に、まあ横浜流に言えばギャングに対する浪人組というわけですけれども、たとえば一口十四、五名の方々が、わかりやすく言えば作業の班みたいなものでありますけれども、やみで十人ぐらいの人を持っておって、それが抜け道を使って作業に入っていくというかっこうがとられていて、これは関係各省でなかなかわかりにくい。これがきわめて多い部分を占めている今日の事情であり、かつ業の皆さんのほうが、これは関係官庁にも相当責任があると考えているのでありますが、この方を非常に珍重するという状況があるわけでありますけれども、これらのものが一体どのくらいあると考えておられますか。
  38. 比田正

    比田政府委員 労務の数につきましては、先ほどお話ししたのも、労働省の正式の資料をいただいてお話ししたわけでございますけれども、ただいま御指摘の点は、私どももあるようには伺っております。そこで、労働省の直接の御関係でございますので、いろいろお尋ねいたしたのでございますけれども、なかなかしっかり把握できがたい状態にあるということでございまして、遺憾ながらただいまここで数字を申し上げる資料はございません。ただ、これはあっていいことではないと思いますので、極力そういう行政指導はしていきたいというふうに考えております。
  39. 大出俊

    大出委員 私は、この港湾労働等対策審議会の石井先生の答申案をめぐって、これは関係港湾局の皆さんのほうもぜひ力を入れていただきたいと考えておりますのは、非常に乱れているわけですね、港湾労働という面で。日雇いがあり、常用があり、まん中にボスというとこういう席でどうかと思いますけれども、桜木町の駅前に立っておりますと、朝あぶれが出る。ところで十人なら十人を持っている親方がいて、さて一口荷役に何人か足らないというと、さっと出てきて、いろいろなことをして引っぱっていってしまう。だから、どこへどうして入っていてどうなったか一このことは何を意味しますかというと、表に出ないために、本来ならば労働者福祉のために払うべき金、先ほどの御答弁にありました一円というような金も、やみからやみになってしまう年間百万くらいしか横浜はないのですからね。そういうことを黙って見ているということになると、実際には百五十万ぐらいのものがあってしかるべきものがなかったり、したがって、労働者福祉厚生施設等の面からやり得る施設もできない、こういうことがたくさんあるわけです。そこのところを答申も多少ついておられるように見受けるわけですが、残念ながらよくできている答申であり、今日の段階ではりっぱなものだというふうに考えますけれども、要所要所を、ぼかさざるを得ない実情にはあると思うのだが、ぼかしている。その点を監督される官庁の立場から補足をし、実際には答申をめぐって審議会が出し得なかったことについて、わかっておるのだから、何とかせにやならぬということを考えていただかなければならぬ筋合いだと思うのですが、そういう面でひとつ御配意が願えるかどうかという点について、実は承っておきたかったのであります。
  40. 比田正

    比田政府委員 おっしゃるとおり、この答申は非常に高い次元と申しますか、最終の姿のようなものがかなりある。   〔伊能委員長代理退席、委員長着席〕 そして議論の最終には、お話のような細目もいろいろ出たようであります。そこで、この答申の趣旨はあくまで体してわれわれは進むのでありますが、そこまでいかない問題がたくさんあるわけであります。非常に大きな方針が書いてあって、それはどうするかと言ったら、各省でこれから考えなさいという会長さんのお話もございましたので、そういうものは手間どると思います。しかしながら、いまほうっておけない問題につきましては、御趣旨のとおり、いまからでもいろいろ対策を、行政指導もできることでございますから、いたしたいと思っております。これにつきましては、主管の労働省ともよく相談いたしまして、できるだけいまの御懸念のないように進めたいと思います。
  41. 大出俊

    大出委員 いまの点は、実はもう少し詳しい御答弁を賜わりたいのでありますけれども、所管の関係もありますから、この委員会にあらためてまた労働省関係の法案もございますから、そういう点でさらに皆さんと御相談の上、御答弁をいただきたい点がございますが、そういう面で、いまの点はそのくらいにいたしておきます。  次に、問題は労働安全について、これは労働省の所管だというふうに言い切れない面が私はあると存じているわけであります。そこで、港湾労働者の労働災害というものは、御存じのとおり、全産業にわたって見て、私も長く総評なんかにおりましたからわかっているのでありますけれども、非常に高過ぎる。これは現実であります。しかも賃金が安過ぎる。だからよほど尾羽打ち枯らさぬと港湾労働者になり手がないということで、事実私は非常に詳しい表を持っておりますが、せっかく外国船がたくさん入ってきておっても、口数が足りない、こういう日にちが一カ月のうちに何日も出てくるわけです。これは、なぜかというと、港湾労働者がいないわけですよ。そういうことを考えますときに、労働安全については、よほどの措置をお考えいただかぬと、人道上の問題でもある。さらに、荷役その他が完全に参りませんと、輸出入その他にも関係が出てまいります。そういう点から、この点について、ひとつ労働安全の点検委員会みたいなものをむしろつくって、内容については労働省にまかすとしても、関係局のほうで検討されるということがあってしかるべきだ、こう考えているわけでありますが、その点について御意見を賜わりたい。
  42. 比田正

    比田政府委員 御指摘のとおりでございまして、確かに港湾労働の労務災害は非常に多うございます。ずば抜けて多いと申し上げてよいと存じます。数字は御承知と思います。そこで、安全対策に対しましては、この答申の中にもかなり多く書いてございます。これがなくても、私どもは従来から当然やるべきだと考えておりまして、硫黄荷役のような問題が起きましたときには、私どもは第一線に出まして、現地に働いておる方々の御希望どおりに大体処置いたしたつもりでございますが、今後もいろいろな問題が起こりますので、委員会をつくる点につきましては、また労働省とも研究いたしますけれども、前向きの姿勢で安全対策を貫きたいというふうに考えております。
  43. 大出俊

    大出委員 安全対策を前向きの姿勢でというような御答弁をいただいたので、そこで再度申し上げたいのでありますが、かつて横浜、川崎、特に横浜に事件がありまして、クレゾールを積んで入ってきた船の荷役をやって、たいへんなやけどをしたという事件が、かつて私横浜におったときに起こりまして、これをめぐって、これは三十四年ぐらいだと思いますけれども、そのときに、横浜川崎港湾労働安全会議というのができたわけであります。ところが、いまはそれがないのであります。そのときの構成は、県、市、運輸、労働、それから海上保安庁、水上警察というようなものが入って、安全度を高める意味会議を招集して、危険な荷役はしないということで、ようやく何とかこれは港湾の安全問題が軌道に乗るかなと私は希望を持ったわけでありますが、その後これが開かれないということで、自然消滅をさせてしまったわけでありますけれども、これは運輸省等、関係局のほうが開く筋合いでありまして、それが開かないというかっこうになったわけであります。労働組合があるわけでありますが、組合が強過ぎるからとかなんとかいうことは、私は理由にならぬと思うのでありまして、こういうよき先例が事実あるのを、関係官庁が開こうとしない。そしてつぶす方向に持っていった。私はきわめて大きな責任があろうと思うわけでありますが、こういうことを御存じであるかどうか。
  44. 比田正

    比田政府委員 港湾の安全に対します協議会ないしは委員会につきましては、ただいまでは港湾労働安全衛生会議というものを中央に持ちまして、地方でもそれをやらせるということになっております。その運用につきましては、いろいろ関係各省も入りまして、また業者とか関係者も全部入るのですが、その開催の度数とか、その指導方針が、必ずしも積極的でないかもしれません。これはよく調べまして、実情を把握したいと思います。
  45. 大出俊

    大出委員 つまり、いま御答弁があっても、それが全然行なわれていないところに問題があり、横浜なんかも調べてみましたが、ごうごうたる不満が荷役団体のほうにあるわけでありますから、そこで、その荷役団体の不満をさらに聞いてみますと、かつての安全会議なんかはどうなったのだというような話をしますと、関係官庁の皆さんが、組合がやかましいことを言うので開かなくなってしまった、こういうことなんですが、私は、港湾労働者というものは、皆さんが考えておられるほどたいへんにやかましい筋合いのものでなくて、旧来は「花と竜」式にものを考えておったのでありますが、それを近代式に変えようという努力をしておる最中で、したがって、そういうところに力点を置かないで、安全衛生度を高めるというところに力点を置いていかないと近代化しない、こういうことになると私は思いますから、形式的な意味でなしに、実際に開かれて、それが効果ある活動をしていくというところに、私は行政指導の面で大きな責任があると思いますが、この点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  46. 比田正

    比田政府委員 労働省とも打ち合わせまして、いまおっしゃるような空気でありますれば、これは大いに積極的にやりたいと思います。ただ、聞いてみますと、全国組織があって、各港に組織がある。その各港の組織が、あるところは非常に熱心にやっておるところもあるそうでありますが、ある港はあまり開かれていないというようなところもあるようでありますので、そういうあまり開かれていないようなところは、大いに促進したい。また、港湾労働者に対しまして、私どもは別に特定の感情は何も持っておりません。たとえば、硫黄荷役のときは、率先して労働組合の方を入れるべきだということを主張したのは、運輸省でございます。この点も、特に偏した考えは絶対に持っておりませんので、よろしく御了解を願いたいと思います。
  47. 大出俊

    大出委員 先ほどちょっと落としたのですが、つけ加えて明らかにしておいていただきたいのは、さっき私が申し上げました常用、日雇いのまん中にある、優先班あるいは浪人組などと言っている地元のことばがありますけれども、こういう人たち、非常に重宝だから使っているのですが、この種のことは、いままででもどなたもわかっていることだと思うのでありますが、この答申性格等から見まして、この種の不適格な、というと言い過ぎになるかもわかりませんが、それなりの便利は与えているのでしょうけれども、こういう不明確なものを整理されるとか、切るとか、あるいは常用化してしまうとか、何らかの形で登録をさせて、常用化するとか表へ出す、こういうことについてはお考えであるかどうか。
  48. 比田正

    比田政府委員 答申案の内容も登録制でございまして、日雇いは四分の一以内にしろというようなことも書いてございますので、これをどっちかにきめるというようなことは、当然その際には行なわなくちゃいかぬと思いますので、ただいまからの経過措置といたしましても、将来はそうなるのだという思想のもとにやるべきだと考えております。
  49. 大出俊

    大出委員 この安全点検について、結論めいたことになりますが、この安全点検委員会が危険だと認めて合い図を送った場合に、あぶないということであれば、これは引き揚げるわけでありますが、この場合の賃金の保障措置なんというようなものもやがて出てくると思うのでありますけれども、先ほど例にあげました安全会議などでは、それらの問題が議題にのぼり、そういう例も出ているのでありますけれども、これらについては、どういうふうにお考えになりますか。
  50. 比田正

    比田政府委員 ただいまのところ、その問題につきましては、特に私といたしましては検討いたした結果の成案は持っておりませんが、御趣旨に従うようにいろいろ将来検討いたしたいと思います。
  51. 大出俊

    大出委員 いまのお話で、その積極的にやっているところとやっていないところとあると言われるので、積極的にやっているところは、積極的という意味は安全度というものを慎重に考えるということでありますから、危険であればさせないということにつながるわけでありまして、そうなると、賃金は一体どう保障するのか、こういう問題は当然出るので質問したのでありますけれども、今日ないということであれば、将来に向かっては、飛び抜けて危険率が高いということをお認めのようでありますから、そうなると、そういう問題が間々起こります。これについてやはり保障措置を講じなければ、ILO決議の雇用の恒常化なり保障なりというものとも抵触をしてくるというふうに私思いますから、十二分にお考えおきいただきたいというふうに考えるわけであります。  それから次の問題は、外国の例、たとえばサンフランシスコなんかの場合は、私も行ってみましたが、太平洋船主協会とそれから国際港湾倉庫労働組合というのがありまして、その両方の間に協定が結ばれていて、中間に日本にあるような小さい業者諸君が介在をしない、こういうシステムになっていて、日本流に訳せば、雇用所というのがあって、そこに荷役をやる方々が集まる、それを配置をするのは組合の側がやる、こういうかっこうで行なわれているわけであります。そうなりますと、金は一体どうなるかというと、トン当たり十四・五ドルが組合に払われるというかっこうになっているわけですね。つまり中間的な搾取がない形がとられている。したがって、労働者福祉施設その他も非常に前進をしている、こういう現実があるわけですね。そうなりますと、今日異常な状態に置かれている港湾労働者賃金、これを考えますと、この答申にもありますけれども船内居住なんかたくさんある。これはやむを得ず船内居住をしているのでありまして、金があればやる必要ないのでありますから……。そういう状態をながめてみて、港湾局という立場から考えて、日本船内居住の問題等を含めて、一体どういうふうにお考えになってきたか、承りたいわけです。
  52. 比田正

    比田政府委員 前段のアメリカの太平洋側の港湾関係の問題につきましては、私どもさように聞いております。しかしながら、これは国もいろいろ違います。各国千差万別だと思います。したがって、日本日本で一番いいやり方がどうであるかということを研究いたしたいというふうに考えております。  それから船内居住禁止ということになりましての住宅の対策につきましては、先ほども御説明いたしましたように、事業者がみずからやるべきであるという原則でございますが、公共団体、あるいは雇用促進事業団、あるいは福利厚生協会等にも御協力を願いまして、一日も早く住宅を与えたいというふうに考えております。
  53. 大出俊

    大出委員 港湾福利厚生協会の組織を御存じだと思うのでございますが、この内容なんですけれども、旧来の例からいきますと、労使——労働のほうも、全港湾の金田委員長も入ったりなんかしているような関連もあったようですけれども、実際には入る姿にはならない、形式的なことになっているわけでありますが、これはやはり行政措置でやれるというふうに私は考えているのでありますが、やはり相当対等にものが言えるようにしていただかぬと、さっきのお話にありましたトン当たり一円の労働者の厚生関係の費用——港湾福祉分担金という名称がついているようでありますが、この港湾福祉分担金のようなものにつきましても、さっき申し上げたやみからやみに流れている方々がたくさんいるのでありますから、横浜の場合、大体年間百万くらいの金が入ってくる、積み立てられるはずなんでありますけれども、とてもじゃないが、働くほうの側の計算からいきますと、その程度の額ではないのでありまして、そういう意味で、もう少し対等にそれらのことが話し合えるような行政指導をおやりになる気はないか、この点について承りたいわけです。
  54. 比田正

    比田政府委員 ただいまの港湾福利厚生協会、これにつきましては、中央と各港にあるのは御存じのとおりでありますが、いずれの場合におきましても、労働組合の代表というものも出て参与している、参加しているという形になっておるわけでございますが、お話のように、出ても対等に話せないのだということは、私は初めて伺いました。もしそういうことがあれば、参加した以上は対等に発言できるのは当然でありますので、行政指導をさようにいたしたいと思います。
  55. 大出俊

    大出委員 御説明いたすまでもないと思いますが、港湾労働であるといっても、荷主業者あるいは労働者という関係が、お考えになっているように簡単なものじゃないわけであります。したがって、そういう結果が出てくるのでありますから、ここで御説明すると長くなりますから、これはいずれお調べをいただいて、私が申し上げたことはでたらめを言っているのじゃないのでありますので、調べていただければすぐわかることであり、かつ、できればやはり皆さんが一ぺん出てこられて、代表的港である横浜あたりをもう少し調査をしていただきたい。そうすれば、一目瞭然に、もう話にならぬ悪い条件で働かされているのがわかっていただけると思いますから、ぜひそういうふうにお願いをしたいと思うわけであります。  それから次の問題は、この港湾労働者の登録制の問題なんですけれども、社会的に身分、地位があるような形における登録、つまり、ほかに行った場合でも、ほかでもすぐ雇えるというような形の登録のあり方でないと、身分保障にもなりませんし、そういう点でこの点の改善をお考えになっているかどうか、承りたいわけです。
  56. 比田正

    比田政府委員 登録制の問題につきましては、主として労働省にやっていただくように話を進めておりますけれども、もちろんわれわれの関係でございますから、ただいまのような御希望がありますならば、労働省に話したい。また、しかるべき代表からも、そういう申し入れがあるかもわかりません。御趣旨はよくわかりました。
  57. 大出俊

    大出委員 もう少し知っていただきたいと私は思うのでありますが、港湾労働手帳が、法的には個々の人に渡されることになっているはずであります。ところが、これもお調べいただければわかると思いますが、個々の方々がお持ちになっていない。つまり業者方々が一括して保管しておって、個々の方が見せてくれと言っても見せない。これが大半の現状です。法律違反だということなんですから、本来ならば、これは適法であるように指導されてしかるべきものなんですね。そうでないところに、まさに労働者労働条件がいろいろな形で搾取をされる、と言うと言い過ぎかもしれませんが、低賃金になってしまっているという、こういう面もあるのであります。これらはもうおそらく御存じないことはないと私は思うのだが、いまのお話を聞いていると、どうもあまりよく御存じないように思うので、こういう実情について調査をされたことがあるかどうか、たくさんありますので、聞いておきたいと思います。
  58. 比田正

    比田政府委員 ただいまの労働手帳を事業者が一括して預かっているというお話でございますが、そういうふうになっているということも聞いております。これは私どもの説明を聞いているところでは、海上で労働したりいろいろなことで、陸上の労働と違って、落ちれば海の中ですから拾えませんから、預かっておりますということになっておりますので、私どもは、そのとおりただいま解釈しております。
  59. 大出俊

    大出委員 気の毒な方々が多いので、念のためにつけ加えておきますが、見せてくれということで本人が行っても、お前なんか見る必要はないのだ、こういうことになっちゃっているのだから、その点は、そういう理由は非常につけやすい理由だとは思いますけれども、現実と大きくかけ離れておりますから、ぜひひとつ調査をなさって、適正な行政措置行政指導をおやりいただく責任があるのではないかと思いますので、その点つけ加えさしていただきます。  それから日雇いを四分の一に押えるという答申が出ているのですけれども、当面四分の一ということも一つの前進的方法だろうと思います。しかし、どのくらいの期間でそれじゃやっていくかという期限ですね。さらに将来は常用にしていただかぬと、るる説明申し上げるまでもなく、港湾労働性格からむずかしい問題がたくさんありますので、その辺のことについて、答申をめぐる論争なり、あるいは受けての港湾局の考え方なり、その辺のところを承っておきたい。
  60. 比田正

    比田政府委員 登録制につきましては、四分の一まで以下を非常勤、これは期間は何も書いていないわけです。したがいまして、一年か、一カ月か、毎日かということは、何も指示されておりません。この点は、よく考えて各省においてやれという会長さんの御指示でございます。また、広域港湾ごとにと書いてあるわけでありますが、広域港湾ということばはいま正式にはありませんので、初めて出てきたことばなので、一体どこまで広げるのかという範囲の問題もありますから、それらをあわせまして労働省と相談いたしまして、具体的にきめたいと思います。理想の姿は、おっしゃるように日雇いがないことでございますけれども、ただ、今後とも日本に集中的に船が入ってくるという状況は、ある程度続くだろうと思います。そういうことも考えますと、やはりこのぐらいの御処置は当然と考えております。
  61. 大出俊

    大出委員 さっき申し上げましたように、せっかくのいい答申を出していただいておりますので、その意味では働いている諸君は感謝しているところだと思いますけれども、いま御説明にありますように、非常に重要なところが何となくぼけてしまっているという、こういうところが所々に見受けられる。これはしたがってやはりけじめをしかるべくつけてもらわないと、改善への意欲が、業者のほうにも生まれてこない、こういうことになりますから、監督官庁の立場から、ぜひそういう点を御配慮願いたい。  それから同じことでありますけれども港湾労働者の労働時間なんかも、答申をながめてみますと、これまたきわめてあいまいになっているわけであります。作業内容によっていろいろ違いますが、やはり安全、衛生などということも、医学的に御検討いただく措置もとっていただいて、その上で、時間規制がないわけでありますから、こんなばかなことはないわけで、拘束を八時間なら八時間、実働を七時間なら七時間ということを最高にするならするということをやはり規制をしていただかないと、これまた非常に夜間作業がのべたらに行なわれるという問題等が出てまいります。これらについては、どうお考えになりますか。
  62. 比田正

    比田政府委員 ただいま申されました一貫しての労働対策につきましては、他産業の労働、労働問題全般とのかね合いにおきまして、労働省の御指示に従っていきたいというふうに考えております。運輸省側としては、荷役ができればけっこうなんでございますから、労働省のお考えにまちたいというふうに考えております。いろいろ関連するところが多うございますので、私のほうからのお答えは、ただいまいたしかねます。
  63. 大出俊

    大出委員 就労日数なんかもやっぱりはっきりさしていただかないと——これは労働省というよりは、むしろ担当の仕事をしておられる側がそれなりの指示、サゼスチョンをしなければ、労働省としてもたくさんの産業を持っておりますから、気がつかぬ面がたくさんあります。就労日数の保証の問題を、ILOでも恒常化ということで決議をしていることでありますからそれらの関連でどういうふうにお考えになるかということ。  さらにもう一点、夜間荷役の廃止の問題と日曜、祭日等が休めるようにしてもらいたいという問題が、たくさんいままで要求としては出ているのでありますが、今日そういうことは一切めちゃくちゃでありますけれども、それらについてはどういうふうにお考えになりますか。
  64. 比田正

    比田政府委員 日曜祭日に荷役をいたしませんで休みになりますと、これは船も非常に困りますので、やりますとしても、休日制というものを設けた上で振りかえて休むとか、いろいろなことが考えられるのでありますけれども、一日の労働時間を何時間にするかということとあわせまして、これは労働省におきめ願いたいと思っておりますが、私どもとしては、船が来たらいつでも荷役できる態勢にはいたしたいと思います。ただ、それと労働時間のかみ合わせの問題になりますので、検討いたしたいと思います。
  65. 大出俊

    大出委員 さっき、ちょっと触れましたけれども横浜における状態を調べますと、荷役をする人の側が足りないわけでございまして、穴だらけになっているわけでありますが、そういう点では、やはりいまの時間だとか就労日数だとかの保障、あるいは料金とからむ賃金あるいは福祉施設というものを考えないと、荷役が円滑にいかない、こういう問題が出てまいります。こういう意味では、港湾に対する国の補助、これを相当真剣に考えるべきである、私はこういうふうに考えておるのですが、これらの問題について、もう一ぺん明らかにしておいていただきたいと思います。
  66. 比田正

    比田政府委員 答申案にもありますように、港湾運送事業におきますところの国と事業者との関係は、あくまで原則としては事業者がすべてを負担していくべきである。しかし、その間には料金の問題もおのずからある。料金の中の大半は賃金でございますので、料金問題と、それから会社の経営方針ということになりまして、国がもしてこ入れをする必要があるならば、過渡期において何かすることがあるならばするべきであるという程度答申でございます。したがいまして、これは全貌がわかりませんと、そのどれとどれを国が助成するかということはきまりません。融資するなり補助を与えるということになると思いますが、したがいまして、全体の方針がきまりましたときに、これとこれは国としてはこういう財政措置を講ずることが必要だとなれば、やらなくてはいかぬということは考えております。
  67. 大出俊

    大出委員 作業する側からすると、いまの状態はどうも荷物に合わせて人を使うというかっこうになりますから、したがって、ぬれても変質しないものであれば、どしゃ降りのときであってもなんでも荷役をするということになる。本来ならば、そうではなくて、人というものを考え荷役考えるということにならなければいかぬわけであります。そうなってきますと、現状は、港湾労働安全衛生規則というものが厳として法的に存在するのでありますが、全くこれは無視をされているということになる筋合いだと思います。労働安全衛生規則等についても同様なわけでありますが、こういう点については、基準法を守らせるという立場から、やはり強力な行政指導をするようにしなければ、働いている側はこれはたまったものじゃないわけでありますが、それらについては、どういうふうにお考えになっておりますか。
  68. 比田正

    比田政府委員 労働基準法に照らしまして行政指導をいたすべきことは、もちろんであります。この所管は、労働省というふうに考えております。私どももまた、それの関係は全然ないとは申しませんが、それぞれの立場において指導すべきものは指導する、根本原則はさようでございます。
  69. 大出俊

    大出委員 これは大臣に承ったほうがあるいはいいかもしれませんが、港湾の管理運営に関する機構の問題なんでありますけれども、非常にロスタイムが多い。ロスが多い仕事なんでございまして、輸入手続が行なわれて、さて税関あるいは関係の市、さらに倉庫、倉庫へ入れる許可というふうな、いろいろな規則の関係がありまして、とにかく文部省以外のところは全官庁が関係しているのが港でありますから、そうなりますと、これは一カ所五日ずつ三官庁やりますと、十五日かかる、こういう実情に置かれているわけであります。したがって、品物の積みおろしができなくても、乗せられなくても、船は出港命令で出てしまって、港の外に行ってしまっている。そうなると、上屋からはしけに積んでその船を追っかけていって沖で荷役をやる、こういうことが続けられているわけですね。だから、その意味では、このロスタイムをなくする官庁機構というものをもう少し運輸省という立場で御検討をいただいて、一本化されてこのロスを少なくする、こういうことにしていきますと、ずいぶん時間的にゆとりが出てくる。そういうことを考えなければ、なかなか港湾労働安全衛生規則なり、あるいは夜間荷役なり、どしゃ降りの中の荷役なり、あるいは休日なり、こういうふうなものは考える余地がないような実情も見られる。してみると、いま私が申し上げましたようなことについて、港の輸入、輸出をめぐるこれらの手続、これだけでも、ひょっと間違うとすぐ二十日ぐらいたってしまう、そういうふうなところに気がついておられぬはずはないと思うのでありますけれども、将来に向かってどうお考えになるか、承っておきたいと思います。
  70. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 いま御指摘のような不便があることは、われわれも非常に痛感いたしております。と申しますのは、日本の経済機構そのものが、世界的に非常に変わってきた経済事情によることと、それから日本の経済が御承知のように画期的に伸びましたことによりまして、いろいろな不合理、摩擦が起こっておるのは事実でございます。この点につきましては、いま行政調査会におきまして、いま大出委員の御指摘のような点の不便を除くことにするのには機構をどういうふうにすればいいかということにつきまして審議しておりまして、あるいは一元化なり、あるいは委託にするなり、いろいろな点について答申を待っておるのが実情でございまして、御指摘のような不便のあるということは、認めざるを得ないところであります。
  71. 大出俊

    大出委員 もう一つだけ例をあげておきますると、はしけをつくるのは運輸省の許可でできるわけですね。さていま大臣がまさにおっしゃられるとおり、経済が伸びていくということの中で、はしけをどんどん大型化しなければやっていけない、こういう実情にありますね。そこで、その建造許可申請運輸省にどんどん出されていく。運輸省はどんどん許可をしてしまう。その結果、さて今度は横浜市なら横浜市のほうは、困ってしまうわけです。大きなはしけが、全然市が知らないうちにいつの間にかできてしまう。さあそうなると、はしけだまりなんというものは全然ないということで、危険な状態がいろいろ派生して出てくる、こういう不合理がずいぶん多いわけでございまして、こういう点についても、市の港湾関係者もいるのでありますし、国の関係者もいるのでありますから、やはり単なるお役所仕事でなしに、相互関連を持たせて、先ほど国の費用ということを私が強調しているのもそこに理由があるのでありますが、もし運輸省が大型はしけをどんどん許可されるなら、横浜港湾事情はよくわかっておられるはずなんだから、してみれば、こういうことではしけだまりをつくってこうするということにしなければ、働く側はたまったものじゃないわけでありますから、さらに仕事は停滞する、こういう結果を来たします。この点についても、どういうふうにお考えになっておるか、承っておきたいと思います。
  72. 比田正

    比田政府委員 はしけだまりの問題というのは、六大港だと思いますが、横浜の例を申されましたが、港湾計画は、港湾法によりまして管理者がつくって運輸大臣が承認するという形をとっておるわけであります。そこで、従来は外国船が入ってくる、大きな一万トン級が入ってくるから埠頭をふやしてほしいという要求ばかり出てきているわけであります。私どもかねがね心配しておりましたが、最近のような事情になりまして、管理者の方にもよく話しましたが、管理者も最近の事態を認識いたしまして、今度できます五カ年計画では、大きな埠頭ができたら必ずあれの中に船だまりを二つくらいつくるというようなことで、御指示のあるところをカバーしていくように計画を進めておる最中でございます。これからはそんなに心配はありません。従来は、おっしゃるとおりの姿があったと思います。
  73. 大出俊

    大出委員 それから、横浜は、いま新予算等で、港湾厚生センターをつくるとか、内容なんかにしても、休養施設、あるいは簡易診療所、娯楽室、仮眠所をつくって、ようやくいま走り出そうとしているわけであります。予算的に一億三千万くらい、延べ坪九百坪ということでやっているわけであります。県の協力も得ております。それから、港湾労働者の大桟橋休憩所というのがあそこにあると思いますけれども、その建物、あるいは隣りの港湾労働会館などというものをもう少し改築改革をし、有効利用ができるようにということで、千七百万くらいの予算も考えておるようでありますし、社団法人の横浜港湾厚生協会なんというもの、これなんかについても、まあ営利を目的とした部分がございますが、いろいろありますので、それらのこともひとつあわせ考えて、何とかうまく労働者施設等に使えるように、現在苦労しているのでありますし、新しい例のセンター・ピア、新しい港という意味でございますが、万国橋のところにあるのでありますが、これなんかでも、三千万の金を何とか捻出をして、県の協力も得てやろうということで、拡大をし、発展をする港湾事情に合わせて苦心惨たんをしているのが実情だと私は見受けるわけですが、そういう点で、いまお話のような点について、より一そう国の側からも——六大都市で、六大港である横浜港が、厚生施設で今日一番立ちおくれているという現実は、ほめられた筋合いのものじゃないわけでありますから、ぜひひとつそれは行政指導の面その他で強力な指導力を発揮していただきたい、こういうふうに思うわけです。
  74. 比田正

    比田政府委員 御説のとおりでございます。そのような行政指導を従来もやってまいりましたが、今後も一そう強めてまいりたいと思います。
  75. 大出俊

    大出委員 もう一つ港湾局に特に考えていただきたいと思うのは、着岸荷役、つまり岸壁につく荷役の場合は、便所その他といっても、あるいは休憩所等についても使えるわけでありますけれども、沖荷役の場合は——しかも外国船がどんどんふえる。先ほどの御説明のとおりでありますが、なおふえる。この場合に、開放しないのです。つまり、外国船というのは上げてくれないわけだから、沖で荷役をやっているうち、どうもこういう席で恐縮なんですけれども、便所を使わせろといったって使わせてくれない。そうすると、水は飲めない、便所は使えないということで、一日じゅうこらえていなければならぬ。こういうたいへんなことになっているわけです、現実に。だから、その外国船に一カ所だけ開放せよという要求が、なぜ悪いか。これはILOその他の条約の関係からいっても、当然やらなければならぬ明確な規定があるのです。ところが、現実には全然やらない。それを運輸省が放任しておくということになると、荷物と荷物の問というかっこうになっているのですから、そういうふざけた話はないと思うのです、どこから考えても。これはそこまで運輸大臣の権限なり何なりで明らかにしていかないと、働く人たちにすればほんとうに人道上の問題なんですから、気がついておられるのかどうか、承りたいわけです。
  76. 比田正

    比田政府委員 そのお話は伺っております。いま外国船というお話でございましたが、日本船でもそういうケースがあるわけでございます。そこで、船内に入ってどんどんやってよいのか——外国船になりますと、いろいろ問題がございます。また、日本船でも、そう言ってははなはだ何ですが、いろいろ知らない人が入ってくると、彼らの言うことばをそのまま申しますれば、盗難のおそれがあるとか、いろいろなことを言っております。そこで、何とかしてそういったはしけでも開放して、荷役作業中のそういうものをあわせて運航してみたらどうかという話も出ておりますけれども、いずれにしましても、海の上でございますので、非常にやりにくいわけでございます。この問題は、何とか研究しまして解決したいと思いますが、これはなかなかむずかしい問題なんです。ほかの問題と違いまして、理屈ばかりでもいきませんが、何とか努力いたしたいと思います。
  77. 大出俊

    大出委員 これは理屈ばかりではいかないだけに困るのです。人道上の問題なんですから、理屈で便所を使わぬというわけにはいかぬので、そこのところをどうしても考えていただかなければならぬ。全部がそうですから、ぜひそういうようにしていただきたい。  これは念のためにつけ加えておきますが、ILO三十二号条約というのがあるわけですね。これは港湾に関する条約ですが、昭和三十七年に神奈川県議会がそれを認めておるわけです。そういう点もありますから、本来ならば、法的に押せる筋だと考えます。これは人道上の問題だと思いますので、早急に解決をしていただくよう重ねて申し上げておきます。  最後に、大臣一つ伺っておきたいのであります。いまの問題もそうでありますし、先ほどの福祉施設の問題もそうでありますけれども、今日の港湾労働者事情というのは、私横浜に長くおります関係で、あまりにもひど過ぎることを目で見ているわけです。夜の十二時を過ぎますと、桜木町駅前には、翌朝の港の仕事あるいは夜間作業にこれから出ようという期待でぶらぶらしている方がたくさんいる。まさにこれは十二時過ぎに多いわけでありますが、この方々は、安いしょうちゅうなどをやっと飲んで寒さをこらえながら、仕事を待っているというかっこうです。朝五時に行っても、この方々は同様にたむろしている。こういう事情で、家のない方々がたくさんあるわけです。これは泊まれれば船内にでも行きたいのですが、船内に泊まる力も持っていないということから、何とかかんとかして安いしょうちゅうでも飲みながらぶらぶらしているより手がない。こういう形の方々がいまなお毎夜のようにいるというのが、横浜の桜木町周辺の実情です。そうなると、一方では、さっき申し上げましたが、表は特に説明をいたしませんでしたが、一口十四、五人で仕事をする形で雇われていく方々が、一カ月に何日も人がいないというような実情がある。これだけ荷役需要があるのに、しかもこういうふうな低賃金状態に置かれてどうにもならぬということを考えてみたときに、これは明らかに国の政治の責任だというように考えるわけです。さっき申し上げた幾つかの例でも明らかなとおり、とにかく料金の問題、あるいは港湾その他の施設の問題、あるいは福利厚生施設の問題等々山積しているわけでありますが、いま申し上げた例のようにやっているはずは絶対ないというふうに考えます。ですから、それらのものを早急に片づけて、かつ、千載一遇の好機だと考えられて、答申もせっかく石井先生以下の御努力で出たわけでありますから、あの中でぼかされている点をむしろ積極的につけ加えていただいて、前向きでこの答申案というものをお使いをいただき、そして幾つかの今日あげた事情改善をしていただく、こういうのが責任ある運輸省立場であろうと思いますので、そういう観点から、最後に大臣より御答弁をいただきたいと思います。
  78. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 冒頭申し上げましたように、この答申というものは、われわれが期待をいたしております答申でございまして、予算措置をもってやらねばならぬものにつきましては予算の獲得に努力し、労働省と共管と申しますか、協議せんならぬものにつきましては協議いたしまして、私どもは、一日もすみやかにこの港湾労働の問題について、前向きの姿勢で解決いたすべく努力いたす所存でございます。
  79. 大出俊

    大出委員 別の問題になりますが、運輸大臣に承っておきたいのであります。  国鉄の鶴見の事故が起こりまして、たくさんの方々がなくなり、かつ、重傷であれ以来今月なお療養している方方がたくさんおられるわけでありますけれども、先月の六日に、大臣は、黒金官房長官とともに鶴見事故で死亡された方々の遺族の方、それから重傷者の家族の方、この方々が出てこられまして、お目にかかって陳情書を差し上げて、お願いをしたのでありますが、私も地元のことであり、やむを得ず立ち会ったのでありますけれども、そのときに大臣のおことばは、衷心から御同情申し上げるということで、あわせて官房長官からのお話は、この種のことについては、上のほうでできるだけ話し合いましょうねというお話がありまして、その方々は非常に感謝をして帰られたわけなんであります。ところが、さっぱり物事が前向きに進みませんで、遺族の方々の中から十人ばかり、裁判を起こすということを今日遺族会の中で論議いたしていることを私は聞いているのであります。あれだけの大事故があり、固く会その他でも安全輸送の問題が取り上げられているさなかに、その始末がつけかねて裁判ざたが起こる、しかも十件も起こるというようなことがあっては、私は国の政治の責任を問われると思いますので、そういう意味から、大臣にこの問題の解決についての具体的なお考えを聞きたいわけなのであります。
  80. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 あなたが一緒においでになりまして、遺族等のお話を承りまして、私も、さっそくに国鉄に向かいまして指示をいたし、善処法を要望いたしておいたのでございますが、いまだそういうことになっていないということは、まことに遺憾でございます。さらに一そう督促と申しますか、警告をいたしまして、一日もすみやかに、せめて遺族だけでも慰めのできるように努力いたしたいと思うわけであります。そのときの話によれば、大体順調に解決しつつあるという、私の警告に対して国鉄当局のお答えがあったものですから、私は順調にいっているものだと確信いたしておりましたが、いまお話を承りまして、まことに遺憾千万でございますので、さらに厳重に申します。
  81. 大出俊

    大出委員 さらに承りたいのでありますけれども、当時なくなられた方々が、外人二名の方を含み百六十人、二名差し引きまして百五十八人ということになります。そこで大体百人足らずの方の支払いを済ましたという段階で、なお六十名近い方々が残っている。中にはもちろん市大の学長さんの三枝さんなどのほか、まだいろいろいらっしゃるようでありますし、なお三十六名の方が遺族会をつくっておられまして、この三十六名の方は、会長である方に白紙委任のようなことになっておりまして、その方が国鉄のほうにいろいろ話をしている。ところが、問題はこの三十六名だけでなくて、そのほかの十七名の方も、これまた全く未解決のままになっているわけであります。ずいぶん早くから、東鉄あるいは国鉄公社に何回も遺族の方々が出かけてきて話を続けてきているようでありますけれども、私は、当初遺族会というぬものができるころにちょっと聞きましたが、この種のことはなるべく遺族の皆さんが悲しみに暮れているときでありますので、できるだけその方々だけで国鉄のしかるべき方々と話をして話をつけていくのがいいのじゃないかというふうに思って、側からいろいろ言われましたが、遺族の方々のおやりになるままに、私ども経過だけあとから聞いているのでありますけれども、今日の段階は、遺族の方々の中には、カンカンにおこってしまって、提訴にまで及ぼうという準備をしている方も出てきている。こういう事情でありますので、私もやむを得ず実はこの席で大臣なり国鉄の関係者の皆さんの御答弁を賜わらなければならぬと考えたわけであります。  そこで具体的な質問を申し上げたいのでありますが、国鉄の石田総裁にお目にかかりたいということを、遺族の方々が東鉄交渉の結果、どうもあまりつれない返事なので、業を煮やして申し入れをしたわけです。そこで、国鉄総裁のほうからの御答弁は、多少色よい返事といいますか、皆さんに合わせる顔がない、そこで人命を金で刻むのはまことに恥ずかしく思うが、ほかに方法がないので、まことに申しわけないが、遺族側において要求額を計算をして提出していただきたい。私のほうから一方的に幾らという額を提示したのはたいへん申しわけないけれども、急いだのでそういうことになったのだということで、さらに石田さんは、この問題について家族の方々から裁判などに持ち出されるということは、国鉄としてまことに恥ずかしいことである。だから、そういうことにならないように円満な話をいたしたいということで、そのかわり、カンプロマイズということばを使っておりますが、つまり妥協ということでありますが、妥協してくれ、こういう話だったそうであります。いまここで私が読み上げておりますのは、遺族の方々が出かけていってお目にかかったときに、総裁の言われたことをたどたどしく筆記したものでありますけれども、たくさんの方が行かれたそうでありますから、私は行っておりませんが、間違いないと思います。総裁がそう言われたので、遺族の方々は非常に感激をして、それまでずいぶんつらいことを言われてきたけれども、総裁はやはり思いやりを持ってものを言ってくださっているというので、たいへん感謝して帰られた。そこでさっそく弁護士さんその他に相談して、要求を計算して、提出をするために国鉄にお伺いをした。ところで、国鉄の法務課の方で小林さんという方のところへ行って、いろいろ資料を出して話をした。ところが、これまたいろいろ書いてありますけれども、ずいぶんひどいことをここで言われておるのであります。この方の言うことによれば、国鉄はホフマン方式の複式計算をしている。内示額はすべてその計算によっているので、これ以上のものはどんなことがあっても出せないということを言われた。裁判所に行って判例をいろいろ調べてきた。それによると、生計費は、たとえば三万円なら三万円取っている人は、ほとんど三万円全部生計費に使っているんだ。ここでちょっとホフマン方式について説明しておきますと、収入と生計費との差をとるわけでありますから、三万円の人は、たとえば二万円で生計しておれば、その差は一万円になるわけであります。そういう計算方式が裁判の判例にずっとあるのでありますけれども、そういう差額はほとんどないのだというむちゃくちゃなことを言われて、しかし、それではまずいから、得べかりし利益というものはないんだけれども、国鉄は世間から見れば、非常にいい額を出してあげているんですということで、もし裁判に皆さんが持ち出されるのであれば、最高裁まで行ってでも争いますからということで、悪くいえば、少しおどかされたという感じを受けた。この遺族の中に横浜地方裁判所の判事をやっておられて、つい最近やめましたが、高橋さんという方がおられまして、自分でこの種の事故の判決を何べんも出してきた人でありますから、カンカンにおこってしまわれて、裁判所の立場からすればということで、計算方式その他についての説明を、年配の方でありますから、腹を立てたようでありますけれども、小林さんという方に逆に説明をしてあげた。結果的には、小林さんという方がしどろもどろになって、しまいには、おわびのしるしにやっているので、そういうような基礎ではないというような話をされたようでありますけれども、そういうことを経て、こういう方方では話にならぬというところから、実は大臣にお目にかかって、ああいう場面が出てきたわけでありますが、その後大臣なりあるいは黒金官房長官から国鉄にお話があったものというふうに考えて、再度——二回目でありますけれども、前に一ぺんしか会っておりませんので、国鉄総裁にもう一ぺんお目にかかりたいということを遺族の方方の代表者からお願いをしたそうでありますけれども、さあさっぱり石田総裁が会っていただけぬという、こういうことで、非常にとほうにくれて相談を持ちかけられているのでありますけれども、まずこの辺で、一体国鉄公社として監督をする大臣という立場からお考えになって、とにかく石田総裁が遺族の代表の方々に初めて会われて、たいへんどうも申しわけないといというころから始まって、裁判を起こされるようなことがあったら国鉄の恥だということから、だからそういうことで話し合いをしましょうということを言われて、資料を出しましょうということも言われて、そのかわり妥協してくれとまで言われておるとすれば、再度会いたいということについて、法務課長さんあるいは課付の方に会ってくれなどというような非礼な話はないというふうに私は考えるのですが、このあたりに対するまずお考えを承っておきたいと思います。
  82. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私も、全くあなたのおっしゃるとおりであれば、非礼きわまることであると思います。私はよくさらに注意いたします。
  83. 大出俊

    大出委員 そこで私はもう一ぺん承りたいのですが、国鉄公社の方もおられるようでありますけれども、一体石田さんがどういう理由で会わぬとおっしゃっているのか、聞きたいわけです。
  84. 上林健

    ○上林説明員 遺族の代表の方々から総裁に会見したいという申し込みがございまして、いつだか日にちは記憶しておりませんが、総裁としては、とにかくその前に御遺族の方に会われまして、よくお話を承り、御遺族の方々は非常に気の毒だ、早く謝金の話をつけまして一日も早くお支払いしたいという気持ちでございますから、よほどの事情がない限りお会いしないなんということはないと思います。その事情といたしましては、私まだ承知しておりませんが、よほどの事情がない限りは、お会いできないという理由はないと私は思っております。どういう事情か、具体的にはまだ承知しておりません。
  85. 大出俊

    大出委員 それじゃ再度承りたいのですが、石田総裁に遺族の方々が会っておられる日にちは、これを見ますと、二月三日なんですね。二月三日に本社総裁の応接室でお目にかかっておって、私がさっき申し上げたようなお話をしておられるわけです。今日四月の二日になるのですか、そうなると、これは二カ月にもなるわけですね。その間、遺族の方からお願いをしたけれども会ってくれない、こういうことなんで、私も選挙区の関係があって、横浜なものですから、その地区の人に頼まれて、実はこの種のことはあくまで遺族の方々と国鉄とでされておったのですけれども、やむを得ず国鉄総裁の秘書室に電話を入れて、こういう訴えが遺族の方々からあるので、何としても会っていただきたいのだということで事情の説明をしておいたのですが、後ほど永山という秘書室の方から電話が、私のところではありません、私の秘書にありまして、どうしてもお目にかかれない。したがって、法務課長にでも会っていただきたい、こういう話なんです。そうなりますとこういうふざけた話はないと私は思うのです。どういう事情があるかわかりませんが、遺族の方々があれだけ困られて、しかも何はともあれ三十六名もまとまっておられるわけです。しかも、その中には横浜地裁の判事をやっておる方もあるのですから、そういうことを単に秘書課の方から、お目にかかれません、法務課長に会ってくれ、こうお伝えをいただきたいという、しかも直接話してもだめ、私から申し上げてもだめ、こういう非礼な回答のしかたというものはないと私は思うのです。まさに一片の誠意もないと断定せざるを得ないのでありまして、そういうばかなことがあり得べきじゃないのに、なぜそういうことになっているのか、ここが私はわからないから聞いているのです。
  86. 上林健

    ○上林説明員 前に総裁に遺族の方がお会いになりまして、そのときに、どのくらいの謝金額を請求したいのか、御遺族の方からひとつお出し願いたい。何日ぐらいか、約一月近くかかりまして、それから資料をお出し願ったわけでございます。ですから、まだ二カ月、日にちはよく存じておりませんが、長期間ではないと思います。しかし、私のほうとしても、詳細に事務的に一応御遺族からいただきました資料につきまして検討させていただきまして、それから総裁に御説明をしたわけでございます。したがいまして、できるだけ早く解決したい、こういう趣旨から、なお早く御遺族の方々に、できれば機会を早めて早い機会にお会いしたいという、こういう考えは、総裁も変わっておらないはずであります。
  87. 大出俊

    大出委員 担当の課長の上林さんが日にちも覚えておらぬなんというふざけたことだから、そういうことになると思うんですね。私は、あなたが受け取った受け取りを出されているものまで、全部持っておるんですよ。小林参事ですか、二月二十八日に資料をみな出されているんですよ。そうしますと、これはあれじゃないですか。三月一ぱい何もしなかったことになる。そうでしょう。先ほど申しましたように、二月三日に総裁に遺族の方が会われて、総裁からそういうお話だったから、大急ぎで、みんな遺族で忙しいいろいろなことがある中を集まられて、聞くところによると、近所の弁護士その他を頼んだり、判事であった高橋さん等をお願いをしたりして計算をして、それをさらに検討をして、ようやく二十八日に出しているわけですね。そうなりますと、それ以降としてきょうで一カ月と五日ばかりたっているわけですよ。そうしますと、三日に会って二十八日に持っていったんですから、二十五日間でやっと仕上げて持っていった。それが一カ月こえたにもかかわらず、国鉄の総裁は今日に至っても全然会おうとしない。これが私はどうしても理由がわからぬのですが、皆さんがおっしゃるなら、これは総裁に本日でも明日でも出ていただいて明らかにしていただかぬと一これは私は衆参両方の議会の中で議事録をずっと読んでみたんだけれども、鶴見事故の遺族補償問題については、ほとんど触れておらないんですよ。一件ばかり河野さんがやっておられるのがありますけれども、しかしそこまでの補償云々のこまかいことは入っていない。そのままなんですね。これは世の中があれだけ大きな騒ぎを起こした政治的、社会的な大きな問題であって、それが今日六十人に近い方々が、中には三人も四人もなくなっている方がある。私は、念のために秘書を使って全部調べて持ってきたんです。たいへんなものですね、この内容を見ると。それを今日まで総裁は一ぺんしか会ってない。しかも言われるとおり持ってきているのに、一カ月以上たっても総裁は会おうとしない。これはどこから考えても、国会で別な角度で答弁している答弁と、誠意、不誠意について全くうらはらですよ。そういうことが世の中で許せるかという問題です。しかも、将来も鶴見事故が起こるかわからぬような答弁をされておるわけです。こういうことがほっておけますか。
  88. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 いま先生のお話を聞いておりますと、総裁は、最初に会いまして、非常に誠意のある態度でみずから解決をしよう、またいろいろ双方の言い分もあろうかと存じますが、いずれにいたしましても、国鉄側の責任で事故が起きたことは事実でございますし、先例等もございますが、いずれにしても、総裁は誠意を持って解決したいということを申しております。なお、御遺族の立場等を考えますれば、もちろん双方の歩み寄りということは必要かと存じますが、一日も早く解決するということが、最も緊急な問題でございます。したがいまして、できれば裁判等で長くかかるということは、決して好ましいことではない。国鉄の内部事情もいろいろあろうかと存じます。また総裁が、どういう理由で会見申し込みに対して会わなかったか、私存じませんが、いずれにいたしましても、総裁が当初熱意を持って解決しようとしておりますし、それからやはりなるべく早い機会にじきじきお会いいたしまして、少しでも進めるというのが私は適切だと存じますので、運輸省立場といたしまして、国鉄当局に、遺族のお申し出があれば、なるべく便宜をつけて早い機会にお会いするように指導いたしたい。
  89. 大出俊

    大出委員 そこで承りたいのですけれども、国鉄の皆さんが努力をされて、あれだけの事故が起こった結果であるから当然とはいいながら、ずいぶん苦労しておられることは、私もその点は認めております。しかし、なくなられて線香のかおりも消えない時期に行かれて、しかも一日何べんも行かれて、言っていることが、ずいぶんとひどいことを言っているわけですね。私は供述めいて申しわけないけれども、事が前進しないからそこまで私のほうも努力してみたのですが、すでに解決をしてしまった方、それから解決をしていない方、この方々が、ここに一ぱいあるのですけれども、どういうことを言ってこられたか、どういうことで調印をされたかということを、ずっと聞いてみたのです。そうしたら、話にも何にもならぬようなことがたくさん出てくるわけですね。もう解決したからといって、じゃ満足しているのか、あるいは気分的にいいのかというと、額の問題じゃないのです。この方々はカンカンになっておこっているわけです。聞いてみると、言うにことを欠いてということなんですね。ここにたくさんありますが、一、二の例をあげますと、幾らがんばってもこれ以上は出ないのですよ、だから、早く判こを押したほうがおためです。裁判所へ出しても国鉄はびくともしないのです。そんなことでお金をお使いになるだけばかばかしい話で、元も子もなくなりますから、早く受け取って銀行にでも入れておけば、利息もつくのですよ。よけいなことを言うなということを言っておりましたけれども、そういう話ですよ。とにかく判こを押してくれと言ったって、そんなばかな、お前のほうで一方的に提示をしてきて、銀行へ預ければ利子がっくと言う。よけいなことを言うなということでけ飛ばしたという人が出てきたのです。一例をあげれば、名古屋監理局のほうから行った人だそうですけれども、どういう計算方式か計算方式を見せてくれと、その方に聞いたのですよ。ホフマン方式というので計算されていて、これは裁判その他にかかっても、判例からいって絶対に間違いないという話をされたということから、国鉄はこういう意味でできるだけのことをしたのだから、これ以上あなたのほうで何と言われてもびた一文も出ないのですという話をした。そうしたところが、それじゃその計算方式を見せてくれと言ったら、うっかり見せれば私の首が飛ぶから見せられぬ。それじゃ計算方式はないのだ、そんなものに判こを押せるかと言ったら、私が首になってもいいとおっしゃるなら見せます。こういう話なんですよ。そんなことを言ったって、判こをついてしまって、将来ほかの方々が国鉄のほうと交渉をしてよけい取ったらどうするのですかと言ったら、そうすれば、それに見合ってあなたのほうもよけい出るからいいじゃないですかと話をされたのですね。ここに三、四十ありますけれども、これはあまり国鉄の皆さんにも申しわけないから遠慮をいたしますが、話にも何にもならぬようなことを言われているわけですね。これを見ますと、子供たちが先に出たというのですが、子供といっても二十歳をこえた方々ですから何ですけれども、もしも小さな運送会社だったら、あなた方はどうします。親が死んだら子供しかいないのです。しようがないのですが、これは一銭も取れないじゃないですか。相手が国鉄だからこそ、これだけの金が出るのですよ。だから早くおもらいなさい。こういうばかげた話はないのです。そういうことでも、泣く泣く調印している人もたくさんいるのですよ。遺族会ができることを知っておって、高橋判事さんその他の人のことも知っておって、そしてそういう話をしたら、遺族会は金を取られるだけですよ、こういう話をして、そんなことをしたって、出ないものは出ないのです。だから、とにかくもらったほうがあなたは得ですよ。かりにふえれば、あなたも一緒にふえるのだから、費用がかからぬでいいじゃないか。どうせ遺族会ができたって、金を取られるのだからということを言われたという訴えが手紙できております。調べてみると、こういうことばかりなんですね。そのたいへんなときに御努力をなさっていることは十分に私もわかりますけれども、人手が足りなかったこともわかります。急がなければならぬこともわかります。わかりますけれども、こういうことについては、悲しみのどん底におられるのですから、よほど慎重にものごとを考えて言うてくれぬと、これはやはり国の政治の問題にもなります。人道上の問題にもなります、社会問題にもなりますから、そういう点があるということになると、一片の提示額を出されてしまって、これ以上びた一文出せません。計算方式も説明もしない。一体どういうことでこういう金が出ましたか。それも私からは言えません。ただ判こをついてくれ。金は払います。こういうことでは、だれが考えても世の中は通らぬですよ。ところで、遺族会がいろいろやったら、一ぺんしか総裁は会おうとしていない。会ったら非常に親切なことをおっしゃった。遺族の方が書いているのを見ると、そのときに、総裁のことばの中には、私はそう思っています、しかし、なかなか機構というのはむずかしくて、私にも嫁もしゅうとも小じゅうともいるのです、こういうふうに言われているのです。そうすると、しゅうと、小じゅうとというのは、だれのことか。運輸大臣はしゅうとか小じゅうとか何かわかりませんが、どうしても会わぬという理屈がわからぬ。運輸委員の方々に会って直接聞いてみたのですが、石田総裁は会っちゃいかぬということを言われたのじゃないかという話がいろいろ出ている。そうなると、これは一体だれが言ったかという問題になるわけですが、そこでもう一ぺん——運輸大臣と、黒金官房長官が遺族の代表にお目にかかったときに、遺族の方がいままでのふんまんから、国鉄職員が言ったことから何から話をされたら、黒金さんは、大臣のおられる前で、こういうことはできるだけ高いところで話し合うようにいたしましようよということを話されて、遺族の方がありがとうございますと言って帰られたわけです。それでいざ高いところで話そうとしても会わない、こういうことになるから、もう理屈や金の問題ではない。どうでも裁判をするのだ、五年でも十年でもがんばってやらなければ、死んだせがれも浮かばれぬという方々が、資力のある方の中から出ているわけです。私は、政治の共同責任の立場からいっても、そういうぶざまなことをすべきではない、ここのところを言いたいのだが、石田総裁を呼んでいるのだが、お見えにならぬ。ほんとうのところは総裁からお答えを求めたいのだが、総裁がいないので、運輸大臣から答弁を願いたいと思う。世の中にこんなばかなことは許されませんよ。
  90. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 監督局長が申しましたように、ごく早い機会に総裁に私自身も会いますし、それから代表の方にもお会い願うように努力いたします。そうしてその結果、総裁の話し方等につきまして、あらためて私は運輸大臣としての所見を申したいと思います。
  91. 大出俊

    大出委員 国鉄当局の言われていることが、下の方々から上の方々までの間に二転、三転もしているのですね。うちに来られた方は何と言ったかというと、ホフマン方式でやっています。多少聞きかじった人が、それは複式計算をすればこういう判例も出ているじゃないかと言ったら、国鉄は複式計算をしているのだ、こう言う。それに対して、今度は資料を持っていって専門家が追及していったら、そうじゃございません、最終的には国鉄方式だ、こういうことですね。二転、三転ずるわけです。そうなってくると、これはホフマン方式ではありませんよ。でやっているのは、旧来の累積です。私に言わせれば、科学的根拠も全くないのだから、だからホフマン方式も何もあったものではないのだけれども、こういうことを言っている。いま大臣がそういうふうに言われるけれども、実は安心ならぬのですよ。とにかく国鉄に話して会うようにしますと言う。いままで放任をされておいたのですから、してみると、単にそうしますじゃ、事済まないと思う。もう少し、皆さんがこれをどういうふうに解決しようとお考えになっているかということを聞きたいのですよ。一方的に提示をした。話し合いも何もしないで、提示をして、国鉄はこれをのめと言っているだけです。それでは世の中はいくものではない。内容も見せていないのに、これでうんと言ってくださいといっても、それは無理でしょう。そこらの点はどう考えているのですか。
  92. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 国鉄総裁が、あなたが会わぬのはけしからぬというから、それは全くあなたのおっしゃるようにけしかりませんから、私は会うように努力します。おまえはそれまでそういうことを知らなかったかといわれれば、実際いま初めて承るので、私はもうあなたと一緒に官房長官と会ったときに言ったから、解決したものと心得えておったのですが、いま初めて聞くので、ただいまお答えすることより、現時点においては私としては答えようがありません。もしそれ、国鉄総裁が運輸省その他についての考え方について何かありまして、国鉄総裁の態度が会わないというようになっておるなら、これは私の責任でございますから、私はそれに対して責任はとりますが、全然知らないことでありますから、いまの時点におきましては、さよう申し上げるよりお答えのしようがないと思うのでございます。
  93. 大出俊

    大出委員 これは弱ったことなんだけれども大臣と遺族の方と私も立ち会って会ったのは、先月の六日なんですよ。そうすると、それからでも一カ月近いわけなんですよ。そうしますと、それは大臣、幾ら何でも、あのとき、遺族の方に衷心より御同情申し上げておりますとおっしゃったのです。しかも上のほうで話し合ってということだったのですから、その後公社は一体なくなった方々の遺族補償はどうなったんだ、それぐらいのことはやはり大臣が言うていただいて、それで、いやまだ全然あれから会っていないというなら、促進しなければいかぬじゃないかと言われなければ、これはただあなたが同情したというだけで終わってしまったのでは、その意味での責任が私はあると思うのです。それ以来知らなかったということも、どうも公社の方々にしたって、大臣にその点は連絡しないのですか。
  94. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 そういう連絡は、まだありません。そこで私は、そういうことがあり得る話じゃないと思っているから催促もしなかったので、全く聞いてみれば言語道断でございます。そういう点で、すぐ私は国鉄総裁に、どういう意図であるか、本日にでもそれぞれ聞きまして、適当な機会に御返事いたします。
  95. 大出俊

    大出委員 公社の方がお見えになっておるから、二、三承っておきたいのですけれども、国鉄公社の遺族補償問題の基礎というのは、一体どうなっているのですか。科学的根拠があるのかないのか、ひとつ知らせてください。
  96. 上林健

    ○上林説明員 賠償の基礎というのは、国鉄の責任事故で死亡した場合、こういう意味でございますか。
  97. 大出俊

    大出委員 はい。
  98. 上林健

    ○上林説明員 国鉄の責任事故で旅客がなくなられた場合の賠償責任の額の算定でございますが、結局過去の実例の集積ということでございます。その場合に、なくなられた御家族の御構成、それから御年齢、御収入その他の諸般の事情、この四点を勘案いたしまして、それを実際のケースに当てはめておるわけでございます。ただしその場合に、次の三点を考慮しております。一つは慰謝金に対する世間の考え方といいますか、換言いたしますれば人命尊重の思想、それから物価騰貴、それから慰謝金問題に対して、国鉄自身が単に過去の因習というのではなくて、前向きの姿勢でやる、こういう点を考慮してやっております。たとえば最近では、三河島の例でございます。三河島の場合にも、やはりいままでの過去の基準に当てはめてはおりますが、しかし、以上のような三点を考慮しておりますが、今度の鶴見事故の場合におきましても、さらに一段とこの点を考慮しているわけであります。それからホフマン式といわれますけれども、ただホフマン式が、機械的に計算機に入れればガチャガチャと出てくるような方式ではございません。先生御専門ですからよく御承知かと思いますが、非常に多くの条件もしくは要件がございます。これを全部考慮に入れなければいけません。ところが、その要件と条件というのが、必ずしも客観的ではございません。もしこれが裁判所でしたら、一つ一つ証拠に基づいてやるのですけれども、私どもとしては、一々証拠調べなんかやる余裕もございません。一刻も早く解決したいということで、やはり過去の集積並びに最近のこういう傾向を入れて、やはり客観的に、あるいは社会通念としてこのぐらいなら妥当だというようなことでもって御遺族とお話をして、この程度でお許しを得たい、こういう気持ちでございます。
  99. 大出俊

    大出委員 いまその資料を検討するひまもないようなことをおっしゃるけれども、私も忙しいのですよ。しかし、簡易生命表がここにありますが、これを見れば、死んだ方が何歳で、これからどのぐらい生きるかというのは、一目りょう然なんですよ。それから収入というのは、とってみればわかるのですよ、全部資料を出されているのだから。私も全部やってみたのです。そうすると、ホフマン方式で計算して簡単に出るのです。複式でも、単式でも、年額でも、月額でも出るのです。だから、国鉄の提示額も、しかも積算をした要求額も、遺族の方が弁護士を使っておやりになっても、私のほうで計算してやってみると、同じなんです。そうすると、あなたが受け取りを書いておられる。三十九年二月二十八日ですよ。そうすると、担当のあなたが責任者ならば、いずれにしても、受け取っておいてこれをいままでほうっておくというふざけた話は、事実問題としてないでしょう。そうすると、あなたが個々に言われるなら、個々のように計算すれば全部出てしまうのだから、収入は幾らあって、生活費は幾らかかるという基礎に基づいて誤りがなければ、あと計算の方式なんですよ。しかも裁判所の判例というも  のは、私も調べてみていますけれども、事故の問題の大審院の判決は、大正十五年の一月からあるのですよ。しかも、今回の場合は、本人は無過失なんです。過失は全然ないのです。差し引き勘定は行なわないはずです。そうなると、違いというものは、ホフマン方式でいくか、それとも国鉄さんのわけのわからぬ、といっては言い過ぎがあるけれども、長年の事故に基づいた、累積によるか、科学的根拠によらざるもの、これによるかという一つの分かれ道が一つ。ホフマンでいくならば判例がたくさんあるのですけれども、三十七年の最高裁の判決では、複式計算で妥当であるという結論が出ているわけだから、そうなると、複式計算の年額か月額かという、五%の利息の計算のしかたという問題が出てくるわけです。明らかなんです。そうなると、皆さんが今日まで国鉄方式と称するものをいろいろ言われるけれども、では国鉄方式というものは、科学的に見て妥当普遍性のある計算方式かといったら、事実問題としてその説明はできないでしょう。だから、それらのことについても、この時期までくれば、日々事故が起こっているのだから、しかも人が死んでいるのだから——たくさんの方々でない、何人かがなくなるからそのままになってしまうのだと思うけれども、そうすると、抜本的に国鉄の犠牲者に対する賠償という問題について、いかなる基準が正しいかということを、判例もずっと私は調べてみました。そうなると、それらのことがわかっていないはずはない。であれば、それらについても皆さん方も検討をされて、やはり遺族の方が納得するように計算の方式も示して、しかも遺族の方々の要求があれば、総裁が言うようにコンプロマイズしてくれということばのとおり、遺族の方々だって、承服しないとはだれも言っていないのです。ただ、その前に国鉄の皆さんの誠意のほどが何よりもほしいのです。だから、そこのところを皆さんのほうで考えてしかるべきじゃないかというふうに思うのです。ですから、あなたがいま言われる、なかなか資料を計算して云々という余裕もなかったというけれども、それは私たちだって、ひまで遊んでいるのじゃないのですから、やってできることが、専門家のあなたにできないことはないのです。そうしてみると、まさに不誠意の一語に尽きると思う。そういう点について、担当者ということであれば上林さんから、近い将来に向かってどういうふうに事を運ぼうとされているか、この席上で私ははっきり聞いておきたいのです。
  100. 上林健

    ○上林説明員 先生が言われましたように、国鉄の現在やっておりますのは、過去の集積から前向きの姿勢で計算しているのでございますが、これが客観的に一番いい案だということは、毛頭考えておりません。ただ、遺族から出されたいわゆるホフマン式と称する方法についても、いろいろ問題点がございます。これは先生に申し上げるのは非常に恐縮ですが、たとえば生活費の控除とか、あるいは余命年数の問題、それから単利か複利かの問題、あるいは遺族の相続の問題、いろいろ問題がございます。したがって、私ども国鉄といたしましても、この際社会通念として最も妥当な線はどこか、こういうふうな線で、この程度で御遺族のお許しを得たい、こういう額でもってやってまいりたい、こう思うわけです。総裁からも、とにかくよく御遺族のお話を聞いて解決しよう、こういう指示を受けておりますので、こういう線で努力していきたいと考えております。
  101. 大出俊

    大出委員 社会通念上とあなたは言われるのだけれども、何を基準に社会一通念と言われるのですか。
  102. 上林健

    ○上林説明員 その社会通念と申しますのは、結局、たとえばほかの交通事故の場合、ほかの交通機関による責任事故の場合、こういうものも一つの例かと思います。それから、一昨年の十二月、最高裁の判決が採用いたしましたホフマン方式、これも一つの基準かと思います。そういった個々のいろいろなデータを勘案いたしまして、この辺が、御満足はいただけなくてもまあやむを得ないものとしてお許しをいただける線ではないか、そういう線を出していきたいと思います。
  103. 大出俊

    大出委員 私は、普遍妥当性のあるものというのは、世の中には裁判所があり、争いが起こって判例がたくさんあるのですから、その判例のよって来たるところが、普遍妥当性のあるものと考えていいと思うのです。つまり、交通事故であろうと、飛行機事故であろうと、何であろうと、幾ら幾らとあなたは言われるけれども、それで相手方が納得するかどうかという問題があるのです。裁判になったりする場合もある。判決が出れば変わるのですよ。そういうものを称して普遍妥当性と言われるなら、さっき私が言ったように、線香が立っているところに再三再四通って、損をしますよと言って、若い遺族の方をおどかす、と言ったら言い過ぎかもしれぬが、そういう状態で判こをつかせたのが、普遍妥当性があるということにはならぬのですよ。  そこで私のほうから申し上げますが、大正十五年一月二十六日に、大審院の判例が出ているわけですね。これは判例集がありますから、見ていただけばわかりますよ。大審院民事判例集というのがありまして、その五巻の七十一ページに、平野さんが書いているのです。これがホフマン方式採用の最初の判決なのです。あとはホフマン方式で計算してはいかぬという否定した判決は、一つもないのです。そこへもってきて、このホフマン方式のものがずっと続いてきて、下級審では複式、単式両方使って、複式の判決もあり、単式の判決もたくさんある。昭和になってからでも、昭和十五年の八月七日に出ている複式判決も、実際問題としてはあるのです。これはもう枚挙にいとまがないくらいたくさんありますよ。一番最近のこの種の方面を研究をされている権威ある筋の言い分としては、最高裁判決の三十七年十二月十四日のものがあるわけです。これは第二小法廷の判決ですよ。これでいきますと、原審は、一年ごとの複式になっているわけです。この複式計算方式が上がっていったわけです。一年ごとの複式で、月ごとじゃないのですよ。上がっていって、この原審判決が相当であるという最高裁第二小法廷の判決が出たわけです。そうすると、それは判例としては、複式が一番妥当であるという最高裁の判決なのですから、今日はこのことをもって普遍妥当性があると言っていい段階なのです。月別でやればもっと高くなりますよ。最高裁三十七年十二月十四日の判決は、原審どおり複式で妥当であるという判決が出された。しかもそれは年ごとであるということだから、遺族の方々のものを見ると、年ごとに計算されたわけです。だから、収入の基礎、生活費の基礎が違わなければ、この最高裁判例というものは、普遍妥当性があるものというふうに考えていいと私は思っているわけです。これに抗弁するだけの資料というものが、国鉄の皆さんのほうにない、単に長年やってきた、そのつど起こったことについてやってきたものの集積であって、何となく家族がたくさんいて困っている人にはよけいとか、金がある人には少なくとか、そういう取捨選択は科学的ではないのですから、国鉄の場合は、ホフマン方式否定の反論の根拠にはならぬのです。だからこそ、臨時鉄道法制調査会ですかの中でも、学者から問題が出て、国鉄の事故賠償についての計算というのはいいかげんだ、と言ったら悪いかもしれぬが、そういうことになるのではないか。だから、科学的な基準をつくるべきではないかということが言われているわけでしょう。その調査会などは、そういう方向で将来この賠償問題の基準をつくろうとしておるわけでしょう。それはなぜかというと、国鉄の計算方式が科学的根拠がないからです。しかも、最高裁その他から出ている判決等からいっても、普遍妥当性がないからですよ。三河島事件のときにも、私は総評の副議長でしたから、調査団長として調査をしていますから、よく知っていますよ。しかし、今日、一昨年の時点とは違うのだから、しかも地裁の判事の方などもおって、自分で判決を出した方もおるのだから、こういう方にしてみれば、裁判をやろうと言いますよ。それらのことを考えて、事を起こすのばかりが能じゃないのだから、せっかく国会その他の配慮によって、鶴見事故のようなものを二度と起こさないようにということで、運輸大臣、国鉄総裁以下皆さん努力をされて今日まできているのですから、もう少しここのところを、われわれがこんなことをこういう席で言わぬで済むように、今日までこれだけ期間があったのだから、なぜ、国鉄の方々が努力をされて、本人たちが納得をするような形で、遺族の立場にもなって考えて解決をしなかったのかということが言いたいわけです。つまり、そういうやりとりをここでしていることをお聞きになって、国鉄の皆さん、あるいは運輸大臣立場で、どうしてもこれは、十人もが裁判を続けるなんというぶざまなことにしないで、政治の場に立つ方々が、片づけなければならぬ責任があると私は思うのです。そういう意味で私は、しかと、どうするという責任ある答弁がほしいわけですがね。
  104. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は、国鉄に対して、国鉄の当面の責任者である総裁以下の処置を聞きまして、それが政治的に見てはなはだしく不当であるならば、それを改正するのにやぶさかではありませんが、ただいま申したように、また国鉄としての最終の決定はいたしておらないのでございます。そのときに、こうせしめるということはいかがかと考えております。
  105. 大出俊

    大出委員 国鉄公社の側からも、私は御答弁をいただきたいのですがね。
  106. 上林健

    ○上林説明員 実はこの間御遺族に総裁が会いまして、そして私が指示を受けている点は、方向としては、やはり先生のおっしゃる趣旨と同じ方向でございます。したがいまして、そういう方向で検討をいたしてみたいと思います。  ただ、先生にこういうことを申し上げるのは釈迦に説法でございますが、やはりホフマン方式をいままで採用しているのは、裁判上で争うというならともかくとして、そういう趣旨ではございませんで、これを実際に適用する場合に、三つの点で不合理な点がございます。  一つは、生活費の控除でございます。これは、たとえば三分の一控除するか、三分の二控除するかによって、慰謝金の額が倍になるわけであります。裁判の場合には、証拠調べがあります。しかし、実際のお話し合いの場合には、こういうことをやるわけではございません。やはり実情に適した線でお話し合いをしなければならぬ。たとえば国鉄の場合、大学生は大学生、三年生なら三年生というので、みんな一律でございます。しかし、生活の事情はみな違うわけでございます。それからやはり個人的な事情もおありのはずです。したがって、なくなられた大学生がみんな同じでいいかどうか。これはホフマン方式では解決できないと思います。  それからもう一つ、複利方式でやるのではなくて単利方式でやる。これは単利方式ですからホフマン方式というわけですが、複利方式、いわゆるライプニッツ方式がはたしていけないのかどうか。これは学説によりましていろいろ意見がございます。  それからもう一つ、第三点でございますが、ホフマン方式で計算してみた場合、相続という観念がございます。ところが、同じ相続者でも、たとえばおとうさん、おかあさんが健全でおられて、独立の生計を営んでおられる場合、それから残された御家族が妻とか未成年のお子さんという場合、そういう場合でも、相続上では一律に相続されるはずでございます。しかしながら、慰謝金という面から見ると、やはり生活の事情という点も加味せざるを得ない。その点は、公平と申しますか、そういうことも考慮しなくてはならぬのではないか。ホフマン方式というのは、あまりにも機械的である。機械的であるがゆえに、いろいろ考慮の余地はあるということを逆に申されるわけでございますが、総合的に勘案して、この辺が一番妥当という線でもって解決していかなくてはいかぬのだ、こういうふうに思っておるわけであります。  先生にこういうことを申し上げるのは釈迦に説法でございますが、方向としては、先生からお話がございました線でやっていくつもりでございます。
  107. 大出俊

    大出委員 言っておられることは、私もよくわかります。それで、この問題を、裁判だ、云々だといって争うというようなことは、私、個人的に考えて、やっぱりよくないのではないかというふうに考えているのです。  そこでこういう事件のあとで、この種のことで五年も十年もというのはよくないのではないか。それよりも、確かに東大の加藤さんも言っておられるように、ここまでくれば、長年の伝統でやってこられたことであっても、ホフマン方式というようなこともあるのですが、国鉄の賠償問題についての基準というものは、私は再検討してしかるべきじゃないか、こういうふうに考えるのです。そこで、たとえば例をあげれば、二十四才で二万六千円の月収がある人の場合と、二十六才で二万九千五百二十円の収入がある人の場合と、これは犠牲者とその遺族の関係の父母あるいは姉妹、兄弟などというものの関係で、皆さん方の算定している額は、二十四才で二万六千円の人と二十六才で二万九千五百二十円の人を比べて、若くて収入の少ない方のほうによけい金額が出て、若い方々のほうが収入も少ないのだが、高くなっている。これはホフマンでいけば、明確に逆になりますね。そういうことも実際問題としてありますから、そうすると、一々その場合に家族の方々の収入状況その他や何かを国鉄方式で考えてというふうに言われても、科学的な基礎ということになると、なかなかむずかしい問題が出てきます。つまり国鉄の算定方式について、一ぺん再検討する時期に来ているのではないかというのが一つと、それから、いずれにしてもああいう事故があって、しかもこれだけ日にちがたっていて、まだ争いが続く、将来も続くということはよくない。だから、そういう意味では、いま言ったように、総裁みずからが妥協をしましょうという話をしているわけだから、そうしてみると、一方的に提示したという形だけで、再度こういうものが出されても、それに対して話し合いの場を国鉄総裁がおつくりにならぬということはよくない。そういう中で、遺族の方方の納得するいずれかの線をお互いに努力して求めて、円満に解決していく、またしていただかなければならぬと私は思うので、その点でひとつ御配慮を願えぬかということを、責任ある立場大臣が御配慮いただけぬかということを、さっきから申し上げているので、事を好んでものを言っているのではないから、誤解なく御判断を願いたい。最後に、その点について責任を持って御解決をいただくというふうに示していただききたいと思います。
  108. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私も、あなたのおっしゃることは当然と考えておりますが、第一次責任者である総裁がいかなる態度をとるかによりまして、私のとるべき態度はまた違うと思います。
  109. 大出俊

    大出委員 それではこれで終わります。      ————◇—————
  110. 徳安實藏

    徳安委員長 この際、自治省設置法の一部を改正する法律案をあわせて議題とし、質疑を継続いたします。村山喜一君。
  111. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 初めに運輸省設置法の一部を改正する法律案の中身につきまして、若干の質問をいたしまして後、公営企業並びに私営バスの公共料金値上げ問題を中心に、関連して自治大臣にもお尋ねをいたしたいと考えるわけであります。  まず第一の問題は、今回運輸省が提案をいたしております法案の中身の問題でありますが、第二港湾建設局の管轄区域内にありました静岡県を、今回第五港湾建設局に、新設をした上、移すということになっているわけであります。これを港湾建設局の事業量の比較をいたしてまいりまするならば、昭和三十八年度におきまして、第二港湾建設局の事業量は六十三億一千何百万円でございますが、これが三十九年度におきましては八十二億余りに相なって、増額約十九億円ということに相なっているようであります。ところが、新たに設置されます第五港湾建設局の事業量は、伊勢湾の高潮対策事業の問題等にも関連をすることになるわけでございますけれども、三十八年度は大体六十億、それが三十九年度においては新設をするということになりながらも、四十四億何がしということになりまして、前年度比較いたしますならば、約十五億というものが減少をするということになってくるわけであります。そういう点から考えまして、伊勢湾港湾建設部を昇格さして、第五港湾建設局にしなければならないというのが、事業量の上から見た場合においては、どうも納得ができないというふうに見られるわけでありますが、この辺のいきさつについて説明を願います。
  112. 比田正

    比田政府委員 事業量の比較は、ただいま御指摘のとおりでございますけれども、伊勢湾港湾建設部でただいま一番大きい仕事は、名古屋、四日市の防潮堤の問題でございます。名古屋の例をとりますと、三十八年度は約五十億の事業費がございましたが、これがほぼ完成に近づきまして、三十八年度までに九〇%を終わっております。したがいまして、あと残りました名古屋の高潮防波堤の事業は、約十億しかありません。これだけでも四十億は減っておるわけであります。かてて加えて、名古屋のみならず、四日市もそうでございますが、中京経済圏を維持いたしますための港湾設備は、将来非常に大きなものがございます。また名古屋は、隣の衣浦湾に衣浦港というのがございまして、この辺の工業地帯の開発のために大きな工業港、商港をつくるわけでございますけれども、このほうの予算も、今後非常にふくれてまいります。かような観点から、事業費は、外観上は、前の高潮事業が三十九年度で終わってしまいますので、その最終年度でわずかになってくる関係で、額としては減少しておりますけれども、今後の計画考えますと、よその建設局あるいはそれ以上に大きな仕事が出てくる公算がございます。この計画につきましては、新五カ年計画がきまりますと、総ワクがはっきりいたすというような前提でございます。
  113. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この第一港湾建設局は、工事事務所が六つある。第二が、いままで十のが九つになる。第三も十ありますし、第四は十三あります。ところが、伊勢湾の港湾建設部の場合は二カ所、それが今回第五港湾建設局になるということによりまして四つになる、こういうふうに伺っておるわけですが、そういう目的からいたしますならば、将来の見込み増という問題はあるかもしれないけれども、現実的に見た場合には、この工事事務所の数からいっても、はたしてこれを昇格させる必要性があるのかないのかということについては、もっと明確な説明を願わなければならぬ。この点は、どうもほかの建設局に比べて非常に数が少ないのじゃないか、こういうことが、第一言えるのじゃないかと思うのです。  それと、いま問題になりますのは、港湾建設にいたしましても、あるいは道路の開設にいたしましても、工業用水の問題にいたしましても、これまた最近非常に大きな問題になっております。課題として地域開発の問題があると思うので、この地域開発が、静岡県を中部経済圏、名古屋に入れていくという考え方をとられる場合においては、いまの建設局をそちらのほうに所管を移していくという考え方も正しいと思います。しかし、静岡県の場合には、この東駿河湾を中心にいたします工業整備特別地区というものが設定をされて、この場合には、これは国土総合開発の中において、一体中京圏に属することになるのか、それとも、京浜地区を中心にする経済圏に入るような形において産業の発展をはからなければならないのかということを考えてまいりまするならば、この静岡県の総合開発計画考え方としては、東京、横浜、こちらのほうの経済圏に属するような形で地域の総合開発計画というものが立てられているんじゃないか、こういうふうにわれわれは受取っておるわけです。この地域の総合開発計画の問題は、自治省の所管でもありますので、主務大臣の一人として、自治省大臣はどういうふうにお考えになっているのか、この点もあわせて御説明を願いたいのです。特に工業整備特別地区が、全国に六カ所ですか、ある中で、この点が取り上げられておりますので、この点をお尋ねをしたいわけです。これが第二の問題。  第三の問題点は、私、静岡県庁にいろいろ問い合わしてみたのでありますが、いろいろ国の出先機関であります地方支部局が、それぞれ縦割りの行政の必要性から設置されているわけであります。その中で、いろいろ分けてみますと、たとえば鉄道にいたしましても、これは運輸省になりますが、鉄道管理局の場合は、熱海からこちらのほうは東京のほうに入っている。向こうのほうは名古屋のほうに入っている。あるいは、農林省関係の地方支分部局は、東京にある。財務関係は、名古屋にある。そして、郵政関係は名古屋、さらに、運輸省関係の他のものについては、名古屋になっているようでありますが、名古屋に行って解決ができるような形で、すべて仕事が済むならばそれでもいいけれども、どうしても本省に行かなければ解決がつかないという問題が非常に多い。そうなってくると、きょうは名古屋に出かけ、そうしてまた引っ返してきて今度は東東に出かけてこなければならないというようなことで、西に行ったり東に行ったり、途中にはさまれた県では、サンドイッチみたいに非常に苦労をしているということであります。こういうような形で、行政のロスという問題が出ておると私は思うのでありますが、そこで、これはやはり行政管理庁にお尋ねをしなければならないのは、こういうような地方支分部局たるところの性格を持っておりますこれらの行政の第一線の機関の問題が、それぞれ六ブロックあるいは七ブロック、八ブロックあるいは九ブロック、十ブロック、十一ブロック、さらに二十八、こういうようにそれぞれ性格的に分類をされて、分割をされて置かれているわけです。しかしながら、これらの問題の中で、地方行政の総合的な運営との関係において、今後考えられなければならない問題点があるわけでありますが、このような立場から見た場合に、この名古屋のほうに置かれるところの第五港湾建設局というものが、はたして正しいか、それだけの緊急性が今後において生ずるものかどうかということについては、検討をされたものだと思いますので、その点から行政管理庁は、緊急性の問題についての御説明と、その地方支分部局のあり方の問題についての考え方を、地方行財政との関連性において説明を願いたいと思うのであります。まず、その三点をお尋ねしておきたい。
  114. 比田正

    比田政府委員 まず最初の、港の数が第五港湾建設局では、ただいまは二つであって、清水を入れまして、また、本年から新設されました衣浦港を入れまして、四つでございます。これはおっしゃるとおりでございますが、第一港湾建設局が六つございますが、これらの中には、事業量の非常に小さいのもございます。それで、先ほど申し上げましたように、将来の時点におきましては、非常に事業量が多くなってまいりますので、四つでも、第一港湾建設局または第二港湾建設局よりも、将来は事業量が多くなるという見通しでございましたので、それを局に昇格いたしたいということでございます。  それから、二番目のほうは、自治省の御関係もございますけれども、私どもといたしましては、中部経済圏を考えますときには、やはりその隣接いたしましたところも同時に考えるほうがよかろうということで、御指摘の東駿河とかあるいは三河の工業地帯というようなものは、かなり接近いたしておりますので、中部経済圏の一環として考えていきたいというふうに考えております。それから、東京のほうは、非常に膨大でございますので、首都圏内ということで大体処理をいたしていくほうが、広域の経済圏、それに伴う公共投資の考え方としてよろしいのではないかというふうに考えておるわけでございます。  第三の、名古屋に局がございまして、地元の方とかあるいは事務所の者が、名古屋に行き、かつまた東京に来るということにつきましては、この第五港湾建設局でいたしております仕事は、直轄事業でございまして、国の工事のみを主として取り扱っているわけでございますから、清水の工事事務所の者は、自分の局が今度は名古屋のほうにいくということになりまするが、これは第五港湾建設局長が受けて、一括して本省と事務連絡あるいは交渉をいたしますので、横浜にまいりましても、名古屋にまいりましても、同じだろうと思います。また、関連いたしました、いろいろ地方の公共団体関係がございますが、おもな陳情等は、従来もすべて全部東京に来られているようでございます。あとは事務的な打ち合わせが若干あるようでございますが、この点につきましては、名古屋に行っていただければ、第五港湾建設局から管内一括いたしまして本省に取り次ぎなり交渉をいたすということになっておりますので、西に走り東に走るというための大きな支障はないというふうに考えておるわけでございます。  運輸省から一応それだけお答えいたします。
  115. 石川準吉

    ○石川政府委員 御指摘のような経済圏の観点からと、地方支分部局のあるべき管轄区域、地域的な区域をいかに調整するかは、重要な問題の一つと思いまするが、ただいま御指摘のような点は、この伊勢湾の港湾建設部の改編につきましては、行管としても検討を加えましたのでございますが、その主たる要件は、伊勢湾台風のあと、応急の工事がほぼ完了に近づき、今後は恒久的にこの東海三県、名古屋、四日市、衣浦の三港に加えまして清水港をあわせて管轄する第五の建設局を置きますことは、既存の第一から第四の港湾建設局の管轄を検討してみますと、御承知のごとく、伊勢湾台風以前、この地域は横浜の第二建設局の管轄下にございましたが、この際もしこれをもとに戻すならば、横浜の第二建になりましょうし、あるいは隣接の第三の建設局に回しますならば神戸ということになりますが、そのいずれをとりましても、運輸省におかれまして現在御予定の事業量等は、その局が相当過大なものになるという点が、一つの判断の要点でございます。事業量の増減は、今後取り上げられる予算との関連もございましようし、現実に立てられます事業計画そのものに規制を受けることでございますが、一応全体の規模といたしまして、現在存在する四つの港湾建設局にもう一局を加えることは、必ずしも全国的に見て、かつまたその事業の性格より見まして、他の多少監督的な作用を持っておるとか、あるいは地域の総合開発的な、普遍性のある地域開発のような出先機関とは多少違いまして、特定された事業の執行を主としたる地方支分部部局でございますので、それらあわせ勘案してこの改正を認めた次第でございます。
  116. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 自治大臣お見えになっていらっしゃいますが、この静岡県の総合開発の問題を、私、静岡県庁に問い合わしたのです。そういたしますと、東駿河湾の工業開発、これを最重点として考えて、沼津、三島の地区の工業整備特別地区の設定をやって、これを先にやらなければならない。もう一つは、御承知のように浜松地区の開発計画があったわけですが、これは一県でそんなに二カ所も出すわけにはいかぬ、こういうようなことから、静岡市から東寄りのほうの開発をまず進めようという計画のようであります。そうなってまいりますと、当然経済圏がいずれに属するかということが問題になってこなければならないと思うので、そのような立場から、通産省の場合等は、東京に第一線機関の支分部局があるということになっておる、そういうような点を考えてまいりますと、なるほどいま説明のように、この港湾建設局というのは、直轄事業を主体にする事業体でありますから、そういうような点においては打ち合わせをする必要性はさほどないと思いますが、しかしながら、いずれにいたしましても港湾を建設し、あるいは道路を整備する、こういうような問題は、その地域の総合開発計画に関連があることは言うまでもないわけです。そういたしますと、現在静岡県でやっている港湾の補助事業等も、調べてまいりますと、十四港もあるというようなかっこうであります。このような立場から、一体総合開発計画の上において、これらの問題をどういうふうにとらえておいでになるかということを、自治大臣からお聞かせを願っておきたいと思うわけです。
  117. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 御承知のとおりに、地域開発、また新産業都市の指定は、内閣で基本方針を示しまして、それに基づいて建設計画を立てましたものを今度は総理大臣が承認するという形になっておりますが、計画自体は、言うまでもなく、経済企画庁でやっておるわけでございます。私は、まだ静岡県内の実態というものは十分つまびらかにいたしませんが、自治省では、いまの論点になっております地域は、東海ブロックと考えておるのでございます。大体前段からずっと述べておられまする、御質問になっておりまするとおり、だんだん各省でもって出先機関を強化してまいりますことは、その当該省にとっては非常に便利であるし、事業もやりやすいことになるでしょうけれども、やはり自治行政を尊重いたします立場から申しますると、連絡があまり密接にいっておらぬと困ることが起こるのでございまして、私どものほうでは、地方行政連絡協議会法案というものを実は準備しております。何のためかと申しますると、やはり縦割り行政というだけでは、所管省の計画は進み、能率はあがるかもしれませんけれども、やはり地方行政の面から考えますと、横の連絡が十分できなければなりませんので、この法案によって、地区ごとに、国の出先機関、またそこの自治体の担当者等とよく協議できる一つの機関をつくっていかなくてはならぬ、かように考えておる次第でございます。
  118. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 そこでこれは運輸省にお尋ねをいたしますが、行政の事務配分の問題をめぐりまして、臨時行政調査会におきましても検討をされておるし、あるいは地方制度調査会の答申はすでに出ておるわけです。そういうような立場からいくならば、道路とか河川とか港湾とか土地改良とかというようなものは、これは直轄工事の大部分は、もう府県の関連行政として都道府県にまかして総合的に実施したほうがいいじやないかという説が、非常に強いわけです。そうなってまいりますと、やはり直轄工事の中で残さなければならないものというのは、特別に大がかりな、大規模なものであって、特別な技術を必要とするもの、こういうようなものが直轄工事として残らなければならないだろう、こういうふうに考えてまいりますならば、一体現在直轄工事にしなければならない、そして今後その事業量はふえていくのだという説明でありますから、その点から私はお尋ねしているわけでありますが、その直轄工事と補助工事の基準線の引き方というものをどういうようにお考えになっているのか、この際お尋ねをしておきたいと思うわけであります。
  119. 比田正

    比田政府委員 直轄工事と補助工事の線の引き方でございますが、直轄工事は、ただいま御指摘のあったとおりでございまして、それを実施するためには、非常な技術を要するとか、あるいは大規模のものであるとか、あるいは特殊の施設を要するとか、というようなことを主体として全国でやっております。港湾法に基づきまして、港湾の事業は補助事業でもやれるわけでございますから、また直轄事業をいたしますときには、港湾管理者である公共団体の長の協議が必要とされております。したがいまして、ただいまやっておりますものは、全部協議済みのものでございます。この第五港湾建設局の中の各港につきましても、こういう大規模な仕事は、公共団体がもし国から移管してやるとしても、新たに人も雇わなければいかぬし、技術者も雇わなければいかぬ。いろいろしゅんせつ船その他の非常に高価な施設も要るし、また熟練した指導員も要るということで、地方公共団体ではやりにくいから直轄でぜひお願いしたいというものだけにしぼっております。したがいまして、今後も、野方図に直轄工事の事業をふやそうといたしておりません。  ところで、第五港湾建設局になります管内のあげられました四つの港につきましては、非常に地盤が悪いとか、非常に大規模の工事だということで、非常に困難な工事が多いわけでございますが、これらにつきましては、公共団体側から、ぜひ国でやってもらいたいということが発案がありまして、私どもは採択をいたしておるわけであります。御主張のとおり、移せるものは全部移したい。同じ名古屋の中でも、四日市の中でも、小規模な工事とか、あるいは軽易な工事であって県でもできるものは、補助工事も併用してやっておるわけであります。直轄工事とか、いま申し上げたような特定なものだけを取り上げてやっておるわけであります。
  120. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 特定なものの線の引き方が、大規模なもの、特殊の技術を要するもの、特別な施設を要するものといいましても、今度は、厳密な科学的な区分というものが、非常にむずかしいと思うのです。この直轄工事を行なっている港に工事事務所を置かれているわけですが、この補助事業等を調べてみますと、先ほど言いましたように、静岡は、十四港も補助事業をやっておるわけです。今回その二事務所が開設し、直轄で行なわれることになるわけでありますが、この静岡を中心にして東と西とに分けてみますと、どう見ましても東のほうにウエートがかかっておるわけです。県あたり考え方として、そして補助工事の施行港を調べてみましても、東のほうに十港あり、西のほうに四港しかない、こういう形になっておるのです。そこで、私が先ほどお尋ねをしたのは、そういうような地域の経済開発という問題と直轄工事との関連性の問題を、この際総合的な意味で把握をしていかなければならないのであるけれども、表面に出てきたこういうような数字からいうならば、どうも縦割りの行政だけはスムーズにいくけれども、横とのつながりが十分でないじゃないかということを私は考えておるのですが、この際、総合開発の問題のあり方についてお尋ねをしたわけです。その点は今後いろいろな行政制度改革の問題に関係がありますので、そのときにさらにお尋ねをすることにいたしまして、内容的な問題でちょっと質問をしておきたいと思うのでありますが、運輸省の定員の問題であります。  一般会計の予算書の中で、定員が二万六千四百八十三人、それに特別会計の中で七千七百八十五人、合わせますと三万四千二百六十八人、運輸省設置法の八十三条によるところの定員は三万二千五百六十一名、こういうことになっているわけであります。そこでその差が一千七百七人ということになります。このうち一千六百九十八人は地方事務官としての国家公務員で、自治法附則の第八条によるところの職員である。これは特に陸運事務所の自動車検査登録特別会計に属する職員であります。それでいわゆる地方事務官ということになっておるので、運輸省の設置法にいうところの定員からは除かれているわけであります。身分は国家公務員、そして実際の指揮監督の形式上の権限が都道府県の知事にある。しかしながら、業務内容は運輸省の内容をやっておりますから、都道府県の監査委員等は、これに対して監査をすることはできないようになっている。こういうような形の中で今日なお地方事務官というものが残されて、自治法の附則によりまして、そのような形で定員が現在千六百九十八人もある。これは本来なれば当然地方公共団体の職員であるというのが正当であるというたてまえのもとに、地方自治法というものが生まれている。しかしながら、当分の間地方事務官という形で残しておるがゆえに、設置法の職員ではない、こういうことになっているように受け取るわけであります。そこで運輸大臣なり自治大臣、こういうような特別な地方事務官というものが存在をして、これを今後どういうふうにやっていくんだというお考えをお持ちになっているのか。今回の法律案の提案の説明並びに改正の条項によりますならば、こういう一千六百九十八名の問題は、定数の改正の中に出ていません。ですから、そのような面からいうならば、当然これは地方自治団体のほうに移管をされる職員であるのか、この点をはっきりしておいていただきたいのであります。
  121. 佐藤光夫

    ○佐藤(光)政府委員 大臣答弁する前に、いま先生の御指摘の事実について、一応経過を申し上げておきたいと思います。  いまお話しのように、今回御審議を願っておる定員のほかに、地方自治法附則第八条による、われわれは政令定員といっておりますが、地方事務官、技官等を合わせまして千六百九十八人が、三十九年度の予算に計上されておることは、いま先生御指摘のとおりであります。これはお話しのように、地方自治法の附則の規定によりまして、当分の間政令によって指定された事務について官吏をもって行なうという地方自治法附則の精神によってなされておるところでございますが、御承知のように、これは地方の道路運送法及び道路運送車両法の施行に関する事務が、われわれの所管の関係でございまして、従来この行政がどういうふうにあるべきかということが、国会等においてもいろいろ御論議がありました結果、こういうふうな措置がとられ、それが現在まで及んでおるという次第でございます。
  122. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 道路運送車両法に基づいてそういう経過になっておることは、わかっておるのです。私は経過を聞いているのじゃなくて、自動車登録とか、検査とか、路線の認可というような問題は、これは道路交通行政との関連において考えなければならぬことは言うまでもありません。そういう立場からいった場合に、法律が暫定的にこれを認めておるわけですから、当然な姿としては、そういうような地方自治法の立場からいうならば、都道府県にすみやかにそういう権限を委譲される。そうでなければ、その自治法の附則の八条によるところの職員などは、こういう形でいつまでも運輸省設置法の定員の中にも入らないわけですからね。いま特別会計が設定をされた、そういう新しい時限から考えて、運輸大臣、自治大臣は、どうお考えになっておるのかをお答え願いたい。
  123. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 ただいま事務当局から申しましたように、暫定的のものでございまして、根本はおそらくは行政改革等、今度の行政調査会において出るのじゃないかと思いますが、いずれにいたしましても、現状がいろいろな点において不合理であって、あなたのおっしゃるように、自治法できめておることにやることが好ましいかはわかりませんが、行政の実情はただいま申し述べたような次第でございますから、しばらくこの形態をとるよりほかはしようがないと考えております。
  124. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 先ほどの御質問の、総合間発についてはお答えいたしませんでしたが、私どもは何も勢力拡張を考えておるわけではないのでして、ただ、やはりこういう問題の実情を一番よく把握している府県が中心でやって、先ほどおっしゃるように技術的にどうしても国の技術を用いてやらなければいかぬというものは、直轄でやる姿が私どもは望ましいと考えておりますから、いつでも国の出先というものをできるだけ府県に統合するということを、自治省としては主張はしてきておるわけであります。ですから、いまの問題につきましても、実は自治省としては、自治行政の面へ吸収され、統合すべきものだと判断はいたしますが、しかし、やはり運輸省には運輸省のいろんな理由もあってのことであると私も承知いたしております。しかし、本質的にはそういうふうな見解を自治省としてはとっておる次第でございます。
  125. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この問題は非常に大きな問題でございますので、今後具体的な移行の問題等も、第十次の地方制度調査会等において検討されて出されることになりますし、あるいは臨時行政調査会でいま取り組んでおるわけでございますので、それらを見ながら将来あるべき姿のものにしていかなければ、ただ縦割り行政だけが進んでくるようでは、住民に対してサービスができないかっこうになりますので、今後善処方を要望申し上げておきたいと思います。  さきに質問をいたしました港湾建設局の問題で、もう一つお尋ねいたします。  それは定員の問題でありますが、三十八年と三十九年の定員の増減関係を調べてまいりますと、事業量はふえたにもかかわらず、第五港湾建設局を設置してなお十二名の定員減ということになっているようであります。しかも第二のほうは百二十名の減員で、第五のほうに百二十一名新たに増員をするということになる。そうなってまいりますと、これは現場の建設局関係の職員が、異動をしなければならないということになります。なお過員になりました十二名は、本省その他に振りかえるということでありますが、それがうまくいく見通しがあるのかどうか。特に長いこと第二建設局の工事事務所等で働いた人たちが、今度第五のほうに移らなければならない、こういうふうになってまいりますと、そこら辺の移りかわりがスムーズに行くかどうかという見通しの問題について、説明を願っておきたいと思います。
  126. 比田正

    比田政府委員 ただいまの中で、前年度の定員よりも本年度が減っておりますのは、一部は本省、一部は、港湾技術研究所というのが別途にございますが、そのほうに定員を振りかえたわけでございます。  それからまた、第二港湾建設局等が減りまして、第五港湾建設局が増になりますけれども、これらの人事異動につきましては、従来ともそうでございますが、まず宿舎はおおむね官舎を与えております。それから転任の時期等も、夏休みあるいは四月というような時期を選びまして、教育の途中にある子弟にも困らないような時期を選びまして、配置転換をいたしているわけでございます。  また、この設置法がきまりませんでも、建設局部内だけの相互の異動は、この法律にかかわらずできるわけでございます。見通しと申しましては何でございますが、名古屋あるいはその他の第五港湾建設局管内になるべき伊勢湾港湾建設部管内の中には、一部は四月一日付で異動を終了したものもございます。大体スムーズにこのことは半ば進み、また今後も進み得るというふうな見通しをつけておるわけでございます。職員から特段の異議申し立てもございませんし、おおむね円満に配置転換をやっております。
  127. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 いまの局長の説明の中でちょっとふに落ちない点があったのですが、法律の通過の有無にかかわらず、すでに異動を開始しているような話ですけれども、これは何ですか。
  128. 比田正

    比田政府委員 これは、内部の港湾建設局から港湾建設局に人事異動をいたしますことは、可能でございます。定員にはどこの局でも数名ずつゆとりをとっておりますから、その範囲内で年度末のいま申し上げたようないい時期にそれぞれのところに配置転換した実例もございます。こう申し上げたわけでございます。
  129. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 この問題はその程度でおきますが、次は、この前伊能委員からも質疑がございました公共料金の問題をめぐる都内のバス事業の問題でございます。これは当日、綾部運輸大臣は非常にお困りになった答弁をしておいでになる。しかもあくる日の新聞を見てみますと、そういうような行政訴訟が起こされたら、国のほうが敗訴するだろうと言われたような内容の記事が出ておりました。そこで、運輸行政をあずかるあなたが、そういうような立場をとっておいでになるということは、きわめて重大な問題でございます。しかも、今度は公営企業という立場から考えてまいりますならば、非常に赤字が累増をしてにっちもさっちもいかないような状態に相なってきておるということも、報告がされておるわけであります。この内容を調べてみると、三十七年度は累積赤字が二百五十億になる。そうして交通関係は七割も赤字になる。さらに病院事業が五割、水道関係は三割が赤字だ、こういう見通しに三十七年度においてすでになっておる。三十八年度はさらにそれが拡大をしていく。東京の場合をいろいろ調べてみますと、東京の交通局の場合におきましても、三十八年度赤字額は、およそ百三十億円程度になるだろう、こういう見通しを立てておるようであります。  そこで、そういうような状況のときに、バス運賃については、公共料金値上げしないという立場から、掘え置きをしておる。このために、公営企業体の運賃収入の減が四十八億円といわれておる。こういう状況の中で、一体今後どういうような手を打って、都市交通の、この住民への奉仕、サービスという面を確保していくかということが、非常に重大な問題としてわれわれの前にあらわれてきております。この問題は、自治省設置法の中にありますように、審議会を設置して、これから検討して、将来の問題をきめることも必要でありましょう。しかしながら、それは将来の問題に対する審議会の設置であって、当面差し迫っている、火事の状態になっている場合を考えますならば、これは何らかの措置をしなければならないというのは、内閣の責任ではなかろうかと思うわけであります。  そこで私は、そういうような立場で、一体今日の時点においてどういうような解決の方法をもってそれぞれ交渉をしておられるのか、また閣議の中においてどういうふうに努力をしておられるのかということを、両大臣から承っておきたいと思うわけであります。
  130. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 私は、まず一番最初に、あなたが引例になりました訴訟についての見通し等について、新聞紙上に出たようなことにつきましては、雑談のうちにただいま御発言になったような意味のことを記者に聞かれるままに申しましたが、それは何も、裁判の結果でございますから、裁判を予断するようなことを確定的に申し上げたわけではないのでございますから、御了承願いたいと思います。  それからいまの問題の、公営事業に対する現在の対策はどうかということでございますが、これは一体このことによって得る収入が得られないためにどのくらいの赤字になるか、それではその赤字をてん補するためにはどうすればいいかということを、大蔵省、自治省、運輸省寄りまして、目下検討をいたしております。そうして六大都市、ことに東京都の場合におきましては、非常に大きな予算を都自体が持っておりますから、何とかやりくりをやっていってもらいたいというのが、大蔵省の考え方のようでございます。われわれとしては、その具体的な結論は、三省の事務当局の間においてせっかく詰めて検討中と申し上げるよりほかしかたがないと思っております。
  131. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 自治省としては、全く困った問題だと思っておるわけでございます。この前も伊能委員の御質問に対してお答えいたしましたが、おそまきではありますけれども、地方公営企業制度調査会をつくって、今後公営企業というものはどうあるべきかという根底にメスを入れませんと、いつまでたってもものの解決はできない。しかし、いまこの火事をどうするのだという御質問になりますと、いま運輸大臣も申されましたとおりに、とりあえずの手当てをしなければならぬ。公共料金がストップになりましてから後の赤字が、すでに四十八億とおっしゃいましたが、そのとおりあるわけであります。これは日ごとに加わっていくわけでございます。  そこでただいま運輸大臣がおっしゃいましたとおり、三省のほかにさらに経済企画庁、そこにもいろんな考え方があって、こういう措置をとっておるわけでございまするので、目下協議中でございます。ただ、私どもといたしましては、単に借金をする、起債ということで解決いたしましても、先になったら借金というものはやはり返さなければならぬ性質のものでございまするので、今度は自治省としては、これが将来自治体に大きな禍根として、重荷として残らないように、よく関係各省と協議をいたしまして、早急に善処いたしたいと考えております。
  132. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 問題は、善処の中身なんですよ。だから、せっかく三省間、あるいは経済企画庁まで入れまして打ち合わせをしておられる。火のついたような状況の中に現在あるわけです。困ったことだというのは、これはわれわれ国会議員も含めて、国民全体がみんな困ったことだと思っておる。思っておるそれを実行していくのは、やはり政府です。それを解決する責任は、政府にある。そういうような立場から、このような百三十億も東京都の交通局が赤字を出すような状況になってきたその原因は一体何かということを調べてみますと、問題点が非常に私はあると思うのですが、御承知のように、七つの理由をあげておりますね。七つの中で、人件費の増大というのも、もちろん一つの要素になっておる。しかしながら、そのほかの財政悪化の理由の中には、第一にバス料金改定がおくれていることが一つ。第二には諸物価の高騰による経費の増大。それから第四が、路面の渋滞による収入の減少と経費の増大。さらに企業経営の近代化の不徹底。さらに首都交通近代化のための地下鉄建設に伴う経費の増大。あるいは借り入れ金利の増大。こういうような理由をあげて東京都の交通局も言っておる。これは公営企業全体に言えることなんです。そうなってまいりますと、バス料金の問題にいたしましても、あるいは諸物価の高騰による経費の増大という問題にしても、これは一企業として企業内において解決ができる問題じゃないわけです。そういう立場から見た場合に、合理化していくというならば、この七つの理由の中で、ただ人件費を削り落として、そうしてそれを労働者にしわ寄せをするということしか、この企業自体の中では解決がつかない。あるいは一般会計の中からその特別会計のほうに補助なり、あるいは何らかの措置をする、そういう程度しかできない。ところが、東京都のようなところは、そのようなことも若干できるかもしれないけれども、いなかの中小都市になりますと、地方自治体の一般会計そのものが今日においては非常に窮屈でありますから、そういうような特別会計に補てんをしようと考えても、それが現実にはできない。こういう状態の中にきておるわけです。とするならば、これを解決していくというのは、一日も早く解決をしなければにっちもさっちもいかぬという状態にありますので、協議を願っておるのでしょうが、それはいつごろまでと見通しをつけておいでになるのか。われわれが聞くところによりますと、大蔵省関係においても、何らかの措置を講じなければならないだろうというので、相当な動きがあるやに聞いておるのでありますが、運輸大臣なり自治大臣が交渉をされていく中において、三省間の協議をされている中で、解決の見通しをいつごろまで立てておやりになる考え方でやっておいでになるのか、明らかにしていただきたい。
  133. 綾部健太郎

    綾部国務大臣 あなたがおっしゃるように、火事がもう火がついておるのでございますから、なるべく早くやりたいという考え方で、私どもはせっかく三省の事務当局の間で案を練るように指示し、またできるものと期待いたしまして、なるべく早くやりたいと考えておりますが、なかなか大蔵省が金を出してくれないので、全く弱っておるというのが実情でございます。私は、これが、そもそも自由経済のもとにおきまして、一方的に上げるものを押える、こういうことをやるということは、行政のあり方としては非常にまずいやり方であると思う。しかし、これがより高度の政治性と申しますか、より大事な、一般の消費物価の値上がりというものについての影響のほうが国政上重要なりと考えましたので、私どもは一日も早くそういうムードを押えて物価安定に寄与するのが、さらに重要であると考えまして、私は不満ながら閣議の決定に同調いたしまして、せっかくでき得る限りの努力をいたしておるというのが、現状でございます。もういかように言われましても、どうも全く参っちゃったというのが、実情でございます。
  134. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 綾部運輸大臣の申されたとおりでございます。
  135. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 運輸大臣のほんとに困っておられる答弁は、よくわかります。しかし、自治大臣は、今度法案をお出しになっているわけですね。だから、そういうような審議会をつくっていくんだという方向は、われわれも条件によっては認めますよ。しかしながら、それを隠れみのにするような形に、その問題を通してそれですりかえていくんだというようなことになってきますと、これは重大な問題です。ですから、やはりその法律案を通すまでの間に、あなたは新しい新進気鋭の大臣として、その問題に解決のめどを立てるような決意を御表明をしていただかなければ、国民は困るのです。その点どうですか。
  136. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 この間なったばかりの私が、率先してこうです、こうですと言うことははばかるわけでございまして、いま運輸大臣のおっしゃるとおりと申したわけですが、自治省は自治省としての立場はあるわけでございまして、私どもは、この調査会と、焦眉の急である、ただいま火事とおっしゃったが、この問題とは、全然別に考えておるわけでございます。当面の問題につきましては、運輸省のほうはストップするほうですけれども、私のほうはストップされるほうでして、実は非常に身近にこの問題を考えて、一日も早く解決をとあせっておるわけでございまして、ただいま三大臣のほかに、私経済企画庁長官と申しましたのは、宮澤長官も、これは早く解決しなければならぬといって、ずいぶんあせっておられるようでございます。ですから、これは遠からず切り離して、政府のほうで責任を持ってこの補てんを考えていくことになりましょうが、ただ先ほどちょっと申しましたとおりに、じゃあひとっこれだけ起債でまかなうかということでは、自治省としてはやっぱり困るのでありまして、それがやはり先になって自治体の大きな負担として残ることになりますと、問題を持ち越したというだけでございますので、自治省は自治省として、ただ何でも補てんすればいいのだということだけでは片づきませんので、まあ少しブレーキになるかもわかりませんけれども、この問題もあわせてこの際解決したいと思えばこそ、いろいろ議論をしておる最中でございます。
  137. 村山喜一

    ○村山(喜)委員 赤澤大臣の誠意については疑いません。しかしながら、やはり切り離してやるという考え方も、基本的に正しいわけでありますから、了承いたしますが、問題は賃金の問題等々とからまって非常に早急に解決をしなければならぬ。しかも企業体だけで解決できる問題とできない問題と、いろいろあるわけです。政治の全体の姿の中でこの問題を取り上げていかなければならぬ。路面の渋滞の問題なんか、これは建設省の問題になってくるわけです。そういうような意味から言うならば、当然これは閣議において調整決定をすべき重大なる問題であろうと思う。したがいまして、その問題について解決のめどを立てていただくためには、今後大蔵大臣の出席等も願わなければ、自治省の設置法の問題等についての最終的な結論は、私は出し得ないと思いますが、ひとつその前にぜひ運輸大臣は、もちろん民間の関係の運輸行政についても、あるいは公営企業体の運輸行政についても、そういうような面から指導をされる立場にもありますし、自治大臣は地方のそういうような状態を解決する当面の責任者でもありますので、両大臣ひとつさらに知恵を出し合って、迫力をかけて解決をしてもらうように要望を申し上げまして、終わります。
  138. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明三日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会