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1964-03-17 第46回国会 衆議院 内閣委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十七日(火曜日)    午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 徳安 實藏君    理事 伊能繁次郎君 理事 辻  寛一君    理事 内藤  隆君 理事 永山 忠則君    理事 八田 貞義君 理事 石橋 政嗣君    理事 田口 誠治君 理事 山内  広君       岩動 道行君    佐々木義武君       高瀬  傳君    塚田  徹君       綱島 正興君    野呂 恭一君       藤尾 正行君    保科善四郎君       松澤 雄藏君    湊  徹郎君      茜ケ久保重光君    稻村 隆一君       大出  俊君    中村 高一君       村山 喜一君    受田 新吉君  出席国務大臣         国 務 大 臣 福田 篤泰君  出席政府委員         内閣法制次長  高辻 正巳君         内閣法制局参事         官         (第四部長)  関  道雄君         総理府総務長官 野田 武夫君         総理府総務副長         官       古屋  亨君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房賞勲部長) 岩倉 規夫君         総理府事務官         (宮内庁長官官         房皇室経済主         管)      小畑  忠君  委員外出席者         内閣法制局事務         官         (総務主幹)  荒井  勇君         宮内庁長官   宇佐美 毅君         専  門  員 加藤 重喜君    ————————————— 三月十三日  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一一七号) 同月十六日  靖国神社国家護持に関する請願荒木萬壽夫  君紹介)(第一二二四号)  同外二件(井原岸高紹介)(第一二二五号)  同外六件(池田清志紹介)(第一二二六号)  同(石井光次郎紹介)(第一二二七号)  同(小川半次紹介)(第一二二八号)  同(小渕恵三紹介)(第一二二九号)  同外三件(奥野誠亮君外二名紹介)(第一二三  〇号)  同外一件(木村武千代紹介)(第一二三一  号)  同外一件(木村俊夫紹介)(第一二三二号)  同(藏内修治紹介)(第一二三三号)  同外二件(小山長規紹介)(第一二三四号)  同(進藤一馬紹介)(第一二三五号)  同外十件(瀬戸山三男紹介)(第一二三六  号)  同(田中六助紹介)(第一二三七号)  同外三件(竹山祐太郎紹介)(第一二三八  号)  同外四件(高橋等君外三名紹介)(第一二三九  号)  同(谷垣專一君紹介)(第一二四〇号)  同(塚原俊郎紹介)(第一二四一号)  同(中島茂喜紹介)(第一二四二号)  同(中村寅太紹介)(第一二四三号)  同(野見山清造紹介)(第一二四四号)  同(長谷川峻君外三名紹介)(第一二四五号)  同外一件(濱地文平紹介)(第一二四六号)  同(細田吉藏紹介)(第一二四七号)  同外一件(益谷秀次紹介)(第一二四八号)  同(三原朝雄紹介)(第一二四九号)  同(山崎厳紹介)(第一二五〇号)  同外二件(山田彌一紹介)(第一二五一号)  同(相川勝六紹介)(第一二六三号)  同外百十七件(秋田大助紹介)(第一二六四  号)  同(岩動道行紹介)(第一二六五号)  同外一件(池田正之輔君紹介)(第一二六六  号)  同外二件(植木庚子郎君紹介)(第一二六七  号)  同外二件(加藤精三紹介)(第一二六八号)  同外二件(木村武雄紹介)(第一二六九号)  同外四件(黒金泰美紹介)(第一二七〇号)  同(小坂善太郎紹介)(第一一七二号)  同外一件(小山長規紹介)(第一二七二号)  同外三件(齋藤邦吉紹介)(第一二七三号)  同外五件(關谷勝利紹介)(第一二七四号)  同(塚原俊郎紹介)(第一二七五号)  同外五件(羽田武嗣郎紹介)(第一二七六  号)  同(藤本孝雄紹介)(第一二七七号)  同外一件(増田甲子七君紹介)(第一二七八  号)  同外三件(上林榮吉君外一名紹介)(第一二  七九号)  同外二件(松澤雄藏紹介)(第一二八〇号)  同(森田重次郎君外三名紹介)(第一二八一  号)  同外一件(逢澤寛君紹介)(第一三〇三号)  同(伊東正義紹介)(第一三〇四号)  同(稻村左近四郎君紹介)(第一三〇五号)  同(大西正男紹介)(第一三〇六号)  同外四件(奥野誠亮君外二名紹介)(第一三〇  七号)  同(久野忠治紹介)(第一三〇八号)  同外一件(小山長規紹介)(第一三〇九号)  同(椎名悦三郎紹介)(第一三一〇号)  同外一件(澁谷直藏紹介)(第一三一一号)  同外一件(高見三郎紹介)(第一三一二号)  同外十件(中川俊思君外一名紹介)(第一三一  二号)  同(永山忠則君外四名紹介)(第一三一四号)  同外二件(毛利松平紹介)(第一三一五号)  同外三件(粟山秀紹介)(第一三一六号)  同(江崎真澄紹介)(第一三四九号)  同(上林榮吉紹介)(第一三五一号)  同(久保田円次紹介)(第一三五二号)  同(久野忠治紹介)(第一三五三号)  同(坂田英一紹介)(第一三五四号)  同外一件(二階堂進紹介)(第一三五五号)  同外一件(小川平二紹介)(第一三六九号)  同(久野忠治紹介)(第一二七〇号)  同外一件(小山長規紹介)(第一三七一号)  同(坂村吉正紹介)(第一三七二号)  同外一件(丹羽兵助紹介)(第一三七三号)  同外一件(南好雄紹介)(第一三七四号)  同(久野忠治紹介)(第一四二二号)  同(田川誠一紹介)(第一四二三号)  同(相川勝六紹介)(第一五〇六号)  同(安藤覺紹介)(第一五〇七号)  国立病院療養所に勤務する医師及び歯科医師  の待遇改善に関する請願小川半次紹介)(  第一二六〇号)  旧軍人等恩給に関する請願相川勝六君紹  介)(第一三〇二号)  同外一件(川野芳滿紹介)(第一三六八号)  靖国神社国家護持に関する請願外四件(押谷  富三君紹介)(第一三五〇号)  同外十六件(山中貞則紹介)(第一三七五  号)  同(上林榮吉紹介)(第一四二一号)  同(上林榮吉紹介)(第一四八五号)  同(上林榮吉紹介)(第一五〇八号)  恩給年金等受給者処遇改善に関する請願(  南好雄紹介)(第一三七六号)  栃木県塩原町の寒冷地手当増額に関する請願(  渡辺美智雄紹介)(第一三七七号)  元満州電信電話株式会社役職員恩給等に関す  る請願中井徳次郎紹介)(第一四八六号)  同(片島港君紹介)(第一五〇九号)  同(金丸徳重紹介)(第一五一〇号)  元南満州鉄道株式会社職員であつた公務員等の  恩給等通算に関する請願田中龍夫紹介)(  第一五一一号)  同(田原春次紹介)(第一五一二号)  金鵄勲章年金及び賜金支給に関する請願高瀬  傳君紹介)(第一五一三号)  建国記念日制定に関する請願外十件(長谷川四  郎君紹介)(第一五一四号)  東京都福生町の横田基地による爆音防止に関す  る請願長谷川正三紹介)(第一五一五号) は本委員会に付託された。     —————————————  本日の会議に付した案件  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法  律案内閣提出第一一七号)  皇室経済法施行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一〇号)  国事行為臨時代行に関する法律案内閣提出  第五五号)      ————◇—————
  2. 徳安實藏

    徳安委員長 これより会議を開きます。  防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案議題とし、政府より提案理由説明を求めます。福田防衛庁長官
  3. 福田篤泰

    福田(篤)国務大臣 今回提出いたしました防衛庁設置法及び自衛隊法の一部を改正する法律案提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  まず、防衛庁設置法の一部改正について御説明いたします。  第一に、第二次防衛力整備計画にのっとり、防衛力内容充実につとめることとし、従来の定員を改め、防衛庁本庁職員を二千九百三十二人増加することとしております。その二千九百三十二人のうち、二千百七十一人は自衛官であり、残りの七百六十一人が自衛官以外の職員であります。  自衛官の増加は、海上自衛隊及び航空自衛隊並びに統合幕僚会議事務局及び統合幕僚学校自衛官でありまして、海上自衛隊における増員は千六百七十二人で、艦艇の増強及び航空部隊整備等のために充てるものであり、航空自衛隊増員は四百九十六人で、飛行部隊等の新編並びに既設の部隊及び機関の改廃を行なうにあたって必要となる人員であります。  自衛官以外の職員増員の七百六十一人は、内部部局付属機関陸上自衛隊及び海上自衛隊等の要員であります。  第二に、従来大蔵省で行なっておりました日本国アメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定第七条第、二項に基づくアメリカ合衆国政府に対する円資金の提供の事務は、事務処理の便宜上防衛庁所掌事務に改めることとし、この事務を防衛施設庁に行なわせることとしております。  次に、自衛隊法の一部改正について御説明申し上げます。  第一に、航空自衛隊整備に伴い第八航空団を新編するとともに、航空団任務遂行の円滑を期するため、航空団飛行群を新編することとしております。  第二に、政府が近く再開することに予定している南極地域における科学的調査について、自衛隊は輸送その他の協力を行なうこととしております。  第三に、自衛隊予備勢力確保のため予備自衛官五千人の増員を行なうとともに、予備自衛官予備自衛官としての矜持と自覚を保持させるため、予備自衛官の呼称及び制服の着用等についての規定整備することとしております。  第四に、友好国との親善関係の増進に寄与するため、自衛隊学校において委託を受けて外国人教育訓練を実施することができることとしております。  第五に、第十師団司令部所在地名を、町村合併に伴い守山市から名古屋市に変更することとしております。  第六に、飛行教育集団司令部所在地を、その任務の円滑な遂行をはかるため、宇都宮市から浜松市に移転することとしております。  以上、法律案提案理由及び内容概要を御説明申し上げましたが、何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  4. 徳安實藏

    徳安委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本案に対する質疑は、後日に譲ります。      ————◇—————
  5. 徳安實藏

    徳安委員長 皇室経済法施行法の一部を改正する法律案国事行為臨時代行に関する法律案の両案を一括議題とし、質疑を継続いたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。石橋君。
  6. 石橋政嗣

    石橋委員 国事行為臨時代行に関する法律案について、いろいろとお尋ねをしたいわけでございますが、最初に、この法案でいう国事行為というのは、憲法上で規定されております天皇国事に関するすべての行為ということになるのではないかと思うわけですが、これは憲法第六条及び第七条に列挙されている行為に限られるものと考えていいわけですね。
  7. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 御質問のとおりでございますが、なお、第四条の二項に規定するものもその中に入るという考え方でございます。
  8. 石橋政嗣

    石橋委員 第七条において、「天皇は、内閣助言承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。」とありますので、第七条に列挙されておりますものは、全部内閣助言承認が必要であるということははっきりしておるわけですが、その他の国事行為については、この点明文がないわけでございますけれども、これについては、あらためて内閣助言承認を必要としないというふうに解釈できるものですか。
  9. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 第七条以外の第六条、あるいは第四条二項にありまする委任という問題につきましても、内閣助言承認を要するという解釈であります。
  10. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、憲法第七条、第六条、それに第四条第二項、ここに列挙されておりますすべての国事行為に関しては、内閣助言承認が必要だということになるわけですが、ここで問題になりますのは、天皇行為の中において、これ以外のものをはたして全部天皇私的行為と考えてよいかどうかということが問題になると思うのです。たとえば、個人的な旅行ではない国内の巡幸といったような問題、外国元首との親書、親電の交換といったような問題、あるいは外国または国内の国家的な儀式への参列あるいは拒否、御名代の差遣、外国元首出迎えといったような行為は、これは必ずしも私的行為というふうには言えない面を非常にたくさん持っておるような気がするわけですが、これらの行為についてはどういうことになるわけですか。
  11. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 いま御指摘のとおりに、憲法における国事行為と定められました以外のものが全部、ほんとうの私的なものと考えにくい点が多々あると思います。もちろん、これが政務に関係してまいりますことは、憲法においても認めていないところでございますけれども、公の、公的な色彩を持つ性質のものは相当あることと考えます。
  12. 石橋政嗣

    石橋委員 確かにいま私が申し上げたようなものの中では、明らかに内廷費でまかなわれているのじゃなくて、いわゆる公費であるところの宮廷費で支弁されておるものがほとんどではないかと思うわけです。そうしますと、これは必ずしも天皇私的行為というふうには言えないと思うわけですが、にもかかわらず、明らかに内閣助言承認を必要とするという規定がない。しかし、実際には相当重要な政治的な意味を持っておる。その辺がちょっと問題になるように思うわけでございますけれども、やはりこの場合でも、先ほど私が申し上げたような場合でも、非常に重要な政治的な意味を持っておるいわゆる象徴としての天皇公的行為については、何らかの形で内閣意思が反映されるべきであるというふうな解釈をとっていいわけですね。
  13. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 お話のとおりでございますが、ただいまも申しましたとおりに、国政に関する権能はございませんけれども、その他儀礼的と申しますか、そういうふうなことで、いわゆる経費から申しますと宮廷費に属するような公的な活動が、現実に存在すると思うのでございます。これらにつきましては、特に影響と申しますか、そういう点を考慮しなければならない場合におきましては、政府とも相談はいたしますが、ここにありますような助言承認という憲法上の形ではなく、現実の場合にそういうような点につきまして協議をすることは、適当なことであろうと考えます。
  14. 石橋政嗣

    石橋委員 その協議というのがどの程度のものになるのかが問題なわけですけれども、特に今度の場合、本法案を制定しなくてはならない理由の中に、海外旅行という場合を想定しておるようなんです。ところが、天皇海外にお出ましになられるという場合に、単なる物見遊山というふうな海外旅行は、私どもとしてはちょっと考えられないわけで、やはり広い意味においては、外交活動の一環というふうなことになる場合が多々あるのではないかと思うわけです。そういうものを、どの程度協議か知りませんけれども、主として天皇意思中心になって行なわれるということになると、これは問題があろうかと思うわけですが、その点御心配ございませんか。
  15. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 前回の委員会の御審議の際に法制次長からお答えしておるところでございますが、天皇が国外においでになることにつきましては、憲法内閣助言承認を必要としないという法的な解釈でございます。したがって、その御遊行に至るまでの道程においては、いろいろな形も想像されるわけでございますが、最終的に意思をきめるのは天皇であるというふうにお答えをいたしておりますが、これは法制上のたてまえにおいてまさにそのとおりだと存じます。
  16. 石橋政嗣

    石橋委員 その点で非常に微妙な問題が出てくるのではないかと思うわけです。たとえば外交処理の職責を有するのはあくまでも内閣なわけですから、それを天皇意思中心に、もし広い意味外交官にかかわるような問題で外国に行かれるというようなことになりますと、やはり一種の政治的な問題に巻き込まれていくような場合が出てくるんじゃないかと思うわけですが、ある国には、行かれるけれどもある国には行かないという場合が出てくるおそれもあります。あるいは元首を迎えるといった場合にも、すべての国の元首、これはいかなる国体を持っておるような場合でも、すべての国の元首はすべてお出迎えになるというふうな華本線でも、きちっと確立されておられるわけですか。
  17. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 外国から元首が公式にわが国を訪問されるという場合におきまして、これは世界のどの国でも同様と思いますが、大体儀礼的にそれに対して答礼をされるということが普通であろうと思うのであります。もっとも非常にたくさんの国賓等が参られる国あたりでは、必ずしもそのとおりにもいってない国があるように思います。したがって、これは国際間のいわゆる親善というような意味の儀礼的な問題でございます。仰せのとおりに、これが最終的に天皇意思というふうに法制的には考えられるわけでございますが、先ほども申し上げましたとおり、その道程におきましては、いろいろな慎重な配慮を要するわけで、わが国におきまするいままでの例といたしまして、たとえば皇太子殿下が御名代外国に行かれる、あるいはその他の皇族が行かれるというときには、やはり内閣と相談いたしまして、内閣も一応その意思をきめておられるわけでございます。そういうことでございまして、この御訪問があくまでも国際親善という儀礼的なことでございますから、それによって国際的な紛争あるいは問題の起こらないような十分な配慮をいたしてまいっておるわけでございます。今後においてもそういう配慮を必要とすることは、申し上げるまでもないことだと考えます。
  18. 石橋政嗣

    石橋委員 その点は非常にまだ私すっきりしないものがあるわけですけれども、まずそこでただしておきたいと思いますのは、内閣助言承認ということについてなんです。これが二つ並べられておるところに非常に疑問を感ずるわけでございますけれども、一体助言とは何だ、承認とは一体何だ。これは旧憲法では輔弼ということばが使われておったと思うのでございますが、輔弼とはどういう関係になるのか。同じようなものなのか。その辺の意味をひとつお聞かせ願いたいと思うわけであります。
  19. 関道雄

    関政府委員 助言承認という二つことばが使ってございますが、これはことば意味としては、助言承認という二つことばがあるために何か別々のことのような印象を与えますが、実は助言承認とは一体となって内閣補佐という意味をあらわしているものだというふうに考えます。輔弼という観念は、昔の旧憲法の時代におきましては、いまと全然憲法考え方が違っておりましたために、そういうふうに臣下が君主を助けるという観念から、輔弼ということばが使われておったものと考えます。
  20. 石橋政嗣

    石橋委員 助言承認とは必ずしも二つ並べて書かなくてもいいような内容だというふうに考えていいわけですね。ところで、それじゃその助言承認の表現ないし、何といいますか、助言承認が行なわれ、この国事行為が行なわれたのだということを形の上で何かあらわす方法が現在はとられておりますか。昔の帝国憲法の場合には、副署という制度があったように記憶するわけですけれども、それにかわる何らかのものが新憲法のもとにおいてはとられておるかどうか、この点をお尋ねしたいと思います。
  21. 関道雄

    関政府委員 ただいまの制度のもとでは、助言承認を受けたということをその文言等によってあらわすようなはっきりした制度はございません。ただ、必ず閣議決定を経ますので、それでそのことがわかるということになっております。
  22. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、助言承認は必ず閣議によってなされるというふうに確認してよいわけですね。
  23. 関道雄

    関政府委員 内閣行為でございますから、内閣としての意思決定をする必要がある。したがって、閣議を経ることになっております。
  24. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、助言承認個々国務大臣単独で行なうとか、あるいは総理大臣のみが行なうということは、ないと考えてよいわけですか。
  25. 関道雄

    関政府委員 助言承認は、常に内閣が行なうわけでございますから、個々大臣がその個々大臣意思として何か補佐のようなことをいたしましても、それは内閣法にいう内閣助言承認には相ならないと思います。
  26. 石橋政嗣

    石橋委員 そこで私は、法制上の不備とまでいえるかどうかと思うのですが、必ずしも閣議によらないというよりも、よれない場合というのがあるのじゃないかと思うのですが、たとえば新内閣成立の際、新たに内閣総理大臣が任命され、その新内閣総理大臣国務大臣を任命する際の天皇の認証に対する助言承認、こういう場合には、まだ閣議というものは成立してないわけですね。内閣総理大臣単独助言承認を与えるという形になると思うのです。そういう場合は、これはどこからそういうことが許される解釈が出てくるわけですか。
  27. 関道雄

    関政府委員 石橋先生の御指摘のとおり、この憲法閣議の全員がそろっている平常の場合しか想定しておりませんので、いまのような場合は、具体的に何条という根拠を発見することはできませんが、その場合の趣旨によりそういうことになっておるというふうに考えております。
  28. 石橋政嗣

    石橋委員 そうすると、そこでくずれてしまうわけなんですが、助言承認は必ず閣議によるのだと、念を押したら確認しておられます。当然だと思うのです。ところが、実際には内閣総理大臣単独助言承認を行なう場合がある。それからほかの例としては、内閣総理大臣国務大臣を罷免するといったような場合にも、閣議の構成に一部欠けるところがある、こういう場合はやむを得ないのだという法律的な例外規定というものがないわけなんです。これは内閣法か何かでそういう例外を認めるというようなことを明文化しておいたほうがすっきりするのじゃないかという感じを持っておるわけですけれども、どうです。
  29. 関道雄

    関政府委員 仰せのごとく、あるいはそういう立法措置を講ずるということも考えられましょうが、すでに慣行も確立しておることでありまして、いまさらという気もいたします。しかし、例の閣議全会一致の議決の方法とか、そういうこともすべて慣行によっておるわけでありまして、いまのようなことも、あるいは慣行としてすでに成立しているというふうに考えてよいかもしれないと存じております。
  30. 石橋政嗣

    石橋委員 慣行として確立しているとおっしゃいますけれども、裁判所はそういう判断を下しておりませんでしょう。一番典型的な例は、第三次吉田内閣の行なった抜き打ち解散、これにおいて、第一審、第二審とも完全に閣議の条件を備えろということを明示して、判示しておるはずです。あなたは慣行として確立しているというけれども、司法権を持つ裁判所のほうが、その慣行を認めておられませんよ。どうですか、それでも確立していると言えますか。裁判所は、必ず閣議全体一致した形で持たれなければいけないという判示をしておりますですよ。
  31. 関道雄

    関政府委員 私申し上げましたのはあるいはことばが足りなかったかと思いますが、必ずしも立法措置をとるということができないということを申し上げたつもりではございません。それからまた、もしかりに内閣法で書けるということであれば、憲法解釈としてはそういうことができないと内閣法でも書けないというようなことを考えまして、そういうことを申し上げたわけでございます。
  32. 石橋政嗣

    石橋委員 この辺どうもまだすっきりしないんですがね。非常に重要な問題なんです。国事行為だから、なおさらのこと私はきちっと明らかにしておかなければいけないと思うのです。あとでまたいろいろと問題が出てくるわけですけれども、助言承認という問題が、国事行為の基本なのです。しからば、その助言承認というのはどういう形で行なわれるのか、これは閣議で行なわれるのだ、そこまではっきりしているけれども、それじゃ閣議とは何ぞや。これはあくまでも閣議であって、個々国務大臣単独助言承認を与える場合もないし、総理大臣単独で行なわれる場合もないはずだ。ところが、実際には単独でやらざるを得ない場合がある。それはやむを得ない、もうすでに慣行になっているということは、先ほど申し上げたような裁判所の判示からいっても、これは慣行として確立したとは私は言えないと思う。この辺は事務当局の答える段階じゃないと思うのですが、総務長官あるいは宮内庁長官として、確かにこれはすっきりしておかなければあとに問題が残るとお思いになりませんか。現に抜き打ち解散ということで、一審、二審とも、これは最高裁までいっておりませんけれども、私がいま申し上げているような疑問を解明してくれていないのですよ。明らかに全会一致でなければ、この要件が備わらなければ助言承認を与えたものとは思えないという判示がなされているのですが、この点何とかしなければならないというふうには思いませんか。
  33. 野田武夫

    ○野田政府委員 ただいま石橋さんの御指摘国事行為の問題でありますが、法制局側の意見といたしまして、これに対する明瞭な規定がないので、そういう場合は、例外として、慣行として認めてやるほかはないということでありますが、私はいまお話を聞きまして、なるほど助言承認に関しての国事行為という場合に、そういう欠陥と申しますか、不備と申しますか、そういうものがあるということは実はできるだけ避けたほうがいいので、それが内閣法でやれるかどうかということば、私法律家でございませんからここで明言はできませんが、やはりそれらについての不備な点は、ひとつ是正して明瞭にすることができれば、御趣旨に沿うことがいいのじゃないか。そのほかのことにつきまして、手続の問題、法規の問題は、法制局その他からお答えいたしますけれども、趣旨といたしましては、私は石橋さんの御意見はごもっともだと思っております。
  34. 石橋政嗣

    石橋委員 これに関連して問題がもう一つあるのです。先ほど私が質問したのに対して、助言承認一体のものだ、これは別々のものではない、したがって、事前の内閣助言によって行なわれた天皇行為に対して事後に重ねて行なわれる承認というような解釈は出てこないというふうにお答えになったかと思うのですが、もう一度私はその点は念を押しておきたいと思うのですが、どうですか。
  35. 荒井勇

    ○荒井説明員 憲法で申しておりますところの助言承認一体として行なわれるものであるという点は、従来からそのような解釈政府としてずっといたしてまいっておったということでございます。それから先ほど石橋先生がおっしゃられました、たとえば国務大臣の罷免について内閣総理大臣一人で助言承認をするということ
  36. 石橋政嗣

    石橋委員 そうじゃない。一人欠けている。全会一致じゃない。
  37. 荒井勇

    ○荒井説明員 そういう御指摘があったわけでございますが、その点は、罷免の対象となる国務大臣というものは、利害関係を持っている人自身であるという意味で、そういう場合に閣議から除斥されるというのは、一般の条理ではないかということが考えられる。  それからもう一つは、憲法六十八条の第二項で特別の規定が書かれておりまして、「内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる。」という特別の規定がある。これと国事行為助言承認という規定とあわせて読みました場合に、憲法の学説の中では、この点については内閣総理大臣単独でもできるということを主張しておられる学説もあるというふうに拝見しております。
  38. 石橋政嗣

    石橋委員 それはおかしいですよ。国事行為の中に、国務大臣の任免ということが入っているのですよ。だから、内閣総理大臣が罷免したことによって国務大臣の免官、罷免というものが有効に行なわれたことにならないでしょう、国事行為があるのだから。天皇承認が必要なんでしょう。そのことを聞いているわけですよ。だから、助言承認という段階において、罷免をこうむる当該国務大臣は除かれた形で助言承認が行なわれるという例があるではないか、その点もどうも法制的にはっきりしていないじゃないかと、私は聞いているのです。そのことはいいです、私は話を先に譲っているのですから。  私がいま聞いているのは、助言承認一体のものである。だから、事前  に助言が行なわれ、また事後において承認が行なわれることはないという御説明ですが、それは間違いないか、こう聞いている。
  39. 荒井勇

    ○荒井説明員 その点は、いままで申  し上げましたとおり、おっしゃられま  したとおりでございます。
  40. 石橋政嗣

    石橋委員 そうすると、その点につ  いても司法と意見が対立するじゃないですか。先ほど私が例示しました抜き打ち解散の場合に、東京地裁も、東京高裁も、どういう判示をしておりますか。事前の助言と事後の承認と両方必要だという判示をしているじゃありませんか。行政府としてはそういう解釈をとっておられても、司法府ではそういう解釈をとっておられないじゃないですか。これは明らかに憲法解釈についてここで異なった見解が、司法府と行政府との間にある。これはこのままにしておいていいですか。いかがです。
  41. 関道雄

    関政府委員 事前の助言と事後の承認と両方必要であるという判決があったことは承知いたしておりますが、それはたしかまだ最高裁までの判断ではなかったというふうに記憶しておりますが……。
  42. 石橋政嗣

    石橋委員 それは私先ほどから申し上げているとおりです。最高裁まではいっていない。しかし、一審、二審ともに助言承認と両方必要だという解釈をしているのです。最高裁までいっていないから、まだ最終的に処理されてないにしても、明らかに行政府解釈とは異なった解釈を一審、二審でやっているということは、問題ですよ。あなた方は、もう確立したものとして助言承認一体でございますときめつけて、慣行が確立したようなことを言っているが、一審、二審でこういう判示が出ていることは問題だと、私言っているんですよ。これが最高裁までいかなかったから幸いだった、問題の解決が先に延ばされた、ほっとしたということで済まないと思うのです。この国事行為という重大な問題に関連するだけに、この点についても、総務長官はひとつよく御検討願いたいと思う。  そこで、別の角度からお尋ねしたいのですが、内閣に対してこの国事行為に関連して天皇のほうから何らかの意思表示といいますか、発議といいますか、そういうものがなされる場合はあるとお考えになっておられますか。
  43. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 過去におきましてはございません。今後もそういうことはほとんどないと思います。
  44. 石橋政嗣

    石橋委員 ほとんどないという程度では、私は危惧を感ずるわけです。この新憲法の精神からいきましても、そういう場合があってはならないんじゃないかと思うのです。明らかに責任は内閣が負うという立場が貫かれておるわけですから、あくまでも内閣助言というものが先行すべきであって、その以前に天皇のほうからの意思表示なり発議が行なわれるというようなことは、憲法の精神からいって不適当だと思うのですが、そうお思いになりませんか。
  45. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 仰せのとおりだと思っております。
  46. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、この問題に関連しまして、天皇内閣助言承認に絶対に拘束されるもの、これを拒否したり、あるいは修正をするというような力はお持ちにならないものと考えてよいわけですね。
  47. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 そのとおりでございます。
  48. 石橋政嗣

    石橋委員 それからいま一つ。内閣助言承認を必要とするということは、内閣以外の助言承認を排斥する意味を持っておるというふうに解してようございますね。
  49. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 仰せのとおり、内閣助言承認という以外のことは考え得られないことであります。
  50. 石橋政嗣

    石橋委員 そこで、この天皇国事に関する行為というこの作用ですが、これは憲法上行政権の一部に属するものというふうな判断に基づいておるものでしょうか。
  51. 関道雄

    関政府委員 天皇の行なわれる国事行為そのものは、これは別に行政、何とかという区画の外にあると考えられたものだろうと思います。
  52. 石橋政嗣

    石橋委員 それは学説としては少数じゃないんですか。いわば田畑教授あたりがとっておられる四権分立説というものに近い考えに立ったお考えじゃないんですか。
  53. 関道雄

    関政府委員 実は先生のおっしゃいますこの分類のどれに入るかということの趣旨と申しますか、そういう御議論の目ざすところというのがはっきりわからなかったものでございますから、そういうふうな答えをいたしましたのですが、これは分け方、分類のしかたでございますから、いかようにも実は学説的には分けられる問題であろうと思います。ただ、それによって、それであるからどうという法律的な問題は、すべて憲法等に規定があるわけでございますから、実は学説における観念上の問題ではないか、とこういうふうに考えます。
  54. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、この点はやはり憲法規定からいって、天皇国事行為も「行政権は、内閣に属する。」という場合の行政権に含まれるという解釈をとらなければ、非常に危険じゃないかと思うのですが、この説が私は多数説だと思っておりますけれども、あなたの先ほどのお答えによりますと、いわゆる少数説である四権分立説とまぎらわしい感じを受けるのですけれども、その点はっきりしておいていただきたいと思うのです。
  55. 関道雄

    関政府委員 私が先ほど申しましたことは全く私見でございますが、それだからといって、この第四権として三権の上に位してこれをどうするとか、そういうような意図を持って申し上げたものではございません。全く観念上の問題でございます。
  56. 石橋政嗣

    石橋委員 観念上のと言いますけれども、現に責任は内閣が負うとはっきりしているんですから、天皇国事行為についても、明らかにこれは行政権の一部と解釈するのが筋じゃないんですか。これはもう事務的じゃなくて、長官のほうからお答えを願いたいと思います。
  57. 野田武夫

    ○野田政府委員 ただいまの石橋さんの御意見でございますが、先ほど法制局からお答えいたしましたとおり、国事行為はすでにもう憲法上明記してあるのでございまして、これが行政権の一部か、またその他の——四権分立とおっしゃいましたが、そういうふうなものであるかという解釈は、これは学者のいろいろの御意見があることと思います。いま政府といたしまして、それが行政権の一部だ、そうでないということは、ここではっきりお答えはできません。なぜとなれば、すべて国事行為内閣の全責任を持ってやっていることでございますから、それが解釈によって行政権であるか云々ということは、これはやはり専門家、学者の意見も、解釈はおのおのまちまちだと思います。政府としていまのところそれがどうだというような確定意見を持っておりません。
  58. 石橋政嗣

    石橋委員 憲法によって「行政権は、内閣に属する。」と明記されておるわけです。しかもこの国事行為については「内閣が、その責任を負ふ。」こういうふうに明記されておるわけです。そういうふうに見ていくならば、私が申し上げているような解釈が成り立たないというほうが、おかしいと思うんですよ。  それでは、ちょっと角度を変えてお尋ねしてみましょう。この「内閣が、その責任を負ふ。」ということは、それでは内閣天皇にかわって責任を負うという意味ですか。
  59. 野田武夫

    ○野田政府委員 内閣天皇にかわって責任を負うということでなくて、内閣自体が責任を負って国事行為が行なわれる、こういうことでございます。
  60. 石橋政嗣

    石橋委員 そうだと思うんです。そうすればなおさらのこと、この内閣の責任、ここからいっても、行政権の一部というような判断が出てくるのじゃないですか。
  61. 野田武夫

    ○野田政府委員 その解釈につきまし  ては、先ほど法制局からお答えいたしましたとおり、おのおのその御意見の基本が、たとえばこれは行政権の一部であるとか、しかし、これは行政権としてその範疇に入れてどうだとかいうことは、これはどうしてもやはり法制上、それからまた行政上、その他の意見がございまして、いま私がここで、それは石橋さんの御意見どおりだということは、私自身はまだ明言するまでいっておりません。
  62. 石橋政嗣

    石橋委員 ずいふんはっきりしないことばかり出てくるわけですが、時間をとりますから、それじゃもう一歩前に進みましょう。この責任を負うという場合ですね、一体内閣はだれに対して責任を負うのですか。
  63. 関道雄

    関政府委員 最終的には国民、直接的には国会に対して責任を負います。
  64. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、憲法の六十六条をごらんになって下さい。「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」、これと同じになるわけでしょう。
  65. 関道雄

    関政府委員 そのとおりでございます。
  66. 石橋政嗣

    石橋委員 「行政権の行使について」と書いてあるじゃございませんか。当然この国事行為も行政権の一部という解釈が、ここでは出てくるじゃありませんか。それでも総務長官、まだ何とも言えないのですか。たよりないですよ、法制局は。
  67. 関道雄

    関政府委員 いまの石橋先生のお話でございますが、先ほどのお尋ねでは、天皇国事行為そのものが行政権かどうかということでございます。いまの問題は、内閣助言承認という問題でございまして、これはまさに行政権の行使であることは、内閣のほうにおいても明らかだと思いますが、結局実質的には天皇国事行為が、事柄の性質からどこに入るかといえば、それは行政権的なものだということはわかりますけれども、天皇そのものは、行政権の機構に属する機関ではございませんので、その行為自体は、行政権の作用ではございません。しかしながら、それの助言承認ということは、内閣行為でございますから、これは行政権の行為であろうと思います。
  68. 石橋政嗣

    石橋委員 しかし、そうおっしゃいますけれども、助言承認なしの国事行為はないじゃありませんか。はっきり言っているじゃないですか。ありますか。それじゃもう一回お尋ねいたします。
  69. 関道雄

    関政府委員 天皇国事に関する行為で、内閣助言承認を欠くものはあり得ないことであります。しかし、天皇行為とそれから内閣助言承認ということは、別個の問題でございます。
  70. 石橋政嗣

    石橋委員 天皇国事に関する行為を私は聞いているのですよ。これは内閣助言承認なしにはあり得ないですよ。何度も言うように、結局これは一体だということになるじゃないですか。  それではもう一つお聞きしますが、内閣は直接には国会に対し、究極的には国民に対して責任を負うことになるわけですが、その責任はどういう責任になるわけですか。道義的な責任ですか、法律的な責任ですか。
  71. 関道雄

    関政府委員 これは内閣が常に国会に対して負う責任と同じでございます。
  72. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、先ほどの六十六条で読み上げましたいわゆる責任と同じだということになるわけですね。
  73. 関道雄

    関政府委員 内閣の責任は、ものによりまして法律的に責任を負う場合もあり、また政治的な責任を負わなければならない場合もあると思います。
  74. 石橋政嗣

    石橋委員 私が聞いているのは、六十六条でいう責任と同じですね、と聞いているわけです。国会に対して責任を負うということですね。
  75. 関道雄

    関政府委員 仰せのとおりでございます。
  76. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、私先ほどから申し上げている説を、結果的には裏づけておることになると思うのです。ただあなたの立場上、それ以上のことが言えないのじゃないかと思うわけですが、できますれば、もう少しはっきりしたことの言える人を連れてきていただきたいと思うのです。それでなければ、長官みずからお答え願いたいと思うのです。  次に、委任の規定についてお尋ねをしたいと思うのですが、私どもがいま審議しております法案の第一条によりますと、「日本国憲法第四条第二項の規定に基づく天皇国事に関する行為の委任による臨時代行については、この法律の定めるところによる。」と明示してありますけれども、それでは、この法律以外のもので委任ということは全然考えておらないと考えてようございますか。
  77. 関道雄

    関政府委員 この法律の第一条に書いてありますところの「行為の委任による臨時代行」というのは、いわゆる講学上、委任代理と言われているような性質の委任によりますところの臨時代行について、「この法律の定めるところによる。」といっておるわけでございます。その他の、たとえば授権代理のような考え方で委任をするということは、あるいはあり得るかと思いますが、それはこの行為とは関係外である、こういうふうに考えます。
  78. 石橋政嗣

    石橋委員 そうしますと、この法案による「行為の委任」というのは、国事行為の全部の委任、それを考えておられるのですか。一部の委任というものは、全然この中にそういう思想は入っておりませんか。これはひとつ長官のほうから……。
  79. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 全部の場合もあり、一部の場合もあると考えております。
  80. 石橋政嗣

    石橋委員 一部の場合というのは、どういう場合が考えられますか。
  81. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 これは天皇のそのときにおける事故の態様、程度等によりまして、具体的なある国事行為を限定して委任するというような場合があり得るということであります。
  82. 石橋政嗣

    石橋委員 だから、どういう場合に、どういう方法によって、そういう委任が行なわれるかと聞いているわけです。
  83. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 たとえば、一定の儀式にみずからお出になることができないような事故がある場合、そのことだけに限ってお出になる、これも委任行為でございますから、その手続は、すべての場合と共通による内閣助言承認によって委任が行なわれるということでございます。
  84. 石橋政嗣

    石橋委員 この法案自体によると、そういう精神がどこにも生きていないような気がするのですね。これは、ざっと法案読んで見ますと、何か包括的な委任、全面委任というような感じを受けるのですけれども、そうじゃないということがはっきりしたわけですけれども、どうもすっきりしないのです。私いろいろと学者の説を勉強してみたのですけれども、大体こういう委任という場合は、一部の委任を予定しているのじゃないか、総括的な委任をこそ考えておらないのじゃないかという説のほうが多いような気がするわけです。それでお尋ねしたのですけれども、どちらにウエートがあるとも言えないわけですか。あくまでもこれは総括的な委任というものが前提であって、一部の委任というものもあり得るという程度の思想じゃないかと思うのですが、その点はどうなんですか。
  85. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 これは両方あり得るという考え方で、たとえば国外に旅行されるような場合に、全面的な委任がなければ困る場合も起こるというふうに考えます。その他の場合におきましては、一部委任というものが多いのではないかと思いますが、その事故の程度によろうと思います。
  86. 石橋政嗣

    石橋委員 旧憲法においては、栄典授与の大権、権能は、一部委任されておったように記憶しておりますが、それは間違いありませんか。
  87. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 私の記憶では、たとえば下級勲章の授与について委任された場合があったと思います。
  88. 石橋政嗣

    石橋委員 今度の場合、そういうことも想定されますか。
  89. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 今後の問題でございますが、たとえばただいまのような栄典の授与等につきましては、ここにございます委任代行というよりも、権限の委任というようなことで、別個の法律によるものと考えておる次第でございます。
  90. 石橋政嗣

    石橋委員 そこで問題が出てくるのです。先ほど私朗読しました第一条「この法律の定めるところによる。」ということですが、この法律によらざる他の法律によっても委任が行なわれるということも、あり得るということになりますね。
  91. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 さようでございます。
  92. 石橋政嗣

    石橋委員 栄典については、あとでまたお尋ねをいたします。  憲法第五条によりますと、摂政が置かれた場合は、摂政は天皇の名でその国事に関する行為を行なうことになっておりますが、本法によって国事行為臨時代行の委任を受けたお方は、天皇の名でやはり行なうのですか。
  93. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 本法は、委任代行という考え方でございまして、天皇の名においてという考え方でございます。
  94. 石橋政嗣

    石橋委員 摂政の場合と同じだというわけですか。
  95. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 さようでございます。
  96. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは、その委任を受けた皇族の方に故障が生じたときには、内閣助言承認によって委任を解除されることになるわけですが、そのあとは一体どうなりますか。
  97. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 もし委任を受けられた方が故障を生じた場合には、この規定にございますとおりに、摂政の順位、すなわち皇室典範十七条に定める順位によって、次の方に委任されるという考えでございます。
  98. 石橋政嗣

    石橋委員 それはあらためて手続をとるということであって、委任を受けられた方がまた委任するということば絶対にないと解釈してようございますね。
  99. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 さようでございます。
  100. 石橋政嗣

    石橋委員 それでは最後に、この法案の最後の六条に訴追の制限という規定があるわけですが、国事に関する行為の委任による臨時代行者には、訴追の制限というものがここではっきり出てくるわけですけれども、天皇自体に対して訴追の制限というか、そういう規定はないように思うのですが、この点はどう解釈しておられますか。
  101. 関道雄

    関政府委員 そういう規定はございません。
  102. 石橋政嗣

    石橋委員 規定はなくたって当然だ、こういうことですか。
  103. 関道雄

    関政府委員 そういうことだと思います。
  104. 石橋政嗣

    石橋委員 そういうことだと思いますと言うけれども、それでは長官にお伺いしますが、どうなんですか、それは法律的にないのですがね。
  105. 野田武夫

    ○野田政府委員 憲法上、天皇の神聖と申しますか、天皇のあり方というものは規定しておりますから、いま法制局がお答えしたように、必然的に特別の訴追の制限を付する必要はない、こういう考えでございます。
  106. 石橋政嗣

    石橋委員 その訴追されない権利というのは、刑事、民事両面にわたってですか。
  107. 関道雄

    関政府委員 刑事のことでございます。
  108. 石橋政嗣

    石橋委員 以上の質疑でまだ非常に不明確な点も多々あります。しかし、ここで私がお聞きしましてもはっきりしそうもありませんので、あとの機会に譲りたいと思うのです。  それで次にお尋ねをしたいのは、この国事行為の一つである栄典の授与に関してです。最近の政府の措置を見ておりますと、どうもこの栄典の授与に関して不法不当な助言承認を与えるおそれがある、こういうように私は感じております。そこで、この法案に関連して一つただしておきたいと思う。昨年の七月十二日、これは国会終了の直後、しかも池田内閣改造の直前です、まるでこそどろみたいに閣議決定とやらで生存者叙勲を復活させた、こういうことを言っております。そのときの張本人は、この委員長の席にすわっている徳安さんが、私は犯人だと思うのですけれども、一体こういうことが許されるのか。これはおそらく私は、天皇をして誤らしめる不法不当な助言承認という結果になるのじゃないか、こう思います。そういう角度から次々にお伺いしてみたいと思うのですが、まず、昨年七月十二日の閣議決定とやらはどういうところから出てきたのか、復活の理由をまずお伺いしたい。それから閣議決定内容をお尋ねしたい。
  109. 野田武夫

    ○野田政府委員 ただいまお示しの昨年七月十二日の閣議決定で、生存者の叙勲を行なうことになったのであります。その基本的な考え方は、現在栄典法、栄典制度というものは存在している、こういう解釈が前提でございます。したがって、御承知のとおりこの栄典制度につきましては、最初の経過から考えますと、七月十二日の閣議決定が大体明らかになってくると思うのであります。昭和二十一年に生存者叙勲を一応停止いたしました。続いて昭和二十八年九月の閣議によりまして、緊急を要するものについては生存者にも叙勲をする、いわゆる一部の解除をしたのでございます。自来現在の栄典制度を続けてやっておりまして、その間今日まで、これに基づきますところの叙勲が大体一万数千人に及んだということと、それから外国元首その他に対する叙勲が、千数百件行なわれております。そういうことで、今日大体諸外国を見ましても、日本と国交を結んでいる各国はほとんど叙勲制度を実施いたしております関係上、内外の事情、特にいままでの経過からいたしまして、この栄典制度がある以上は、もともと栄典制度の目標は生存者の功績に報いるということでございますから、この際国民の最も親しんでおる、また非常に歴史と伝統のあるこの栄典制度を生存者に全部実施することが妥当である、こういう政治的な見解に基づきまして、昨年の七月に、いまお示しのとおり生存者の叙勲に対して全面的にこれを行なうということを閣議で決定した次第でございます。
  110. 石橋政嗣

    石橋委員 法律的な効果については、あとでゆっくりお尋ねします。私がいまお聞きしているのは、復活の理由閣議決定内容です。特にいま閣議決定内容が不明確でございましたが、その点をもう少しはっきりしていただきたいと思います。
  111. 野田武夫

    ○野田政府委員 昨年七月十二日の閣議決定の、開始にあたりましての閣議内容をちょっと申し上げます。  昭和二十一年五月三日の閣議決定において、停止した生存者に対する叙勲を開始するというのが第一。第二は、叙勲は、国家または公共に対し功労のある者を広く対象とするものとし、その基準は別に定める。備考といたしまして、本件に関する経費及び人員並びに機構の改正については、別途予算及び法制的措置を講ずるというのでございまして、生存者叙勲は、昭和二十一年五月三日及び昭和二十八年九月十八日の閣議決定により緊急を要するものを除いて一時停止していたが、栄典制度に対する国民の期待とその事情を考慮し、今回現行栄典制度による生存者叙勲を開始するのが相当であると認めたからである、こういうことでございます。
  112. 石橋政嗣

    石橋委員 その際、位階の制度についても議論をなさったというふうに聞いておりますが、この点の結論はどうなったのですか。
  113. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 位階のほうは賞勲部の所管ではございませんけれども、便宜お答え申し上げます。生存者に対する叙位叙勲が二十一年の五月に、先ほど総務長官のお話のとおり停止になっておりまして、今回復活いたしますのは生存者の叙勲だけであります。したがいまして、叙位につきましては、二十一年五月の閣議決定がそのままでございまして、死残の際に贈られるということになっております。
  114. 石橋政嗣

    石橋委員 いま一応復活の理由閣議内容が明らかにされたわけですけれども、この閣議決定の後に行なわれた池田総理の談話の中に、それに類似した内容が含まれておるわけです。世界各国に共通する制度であり、これら栄典制度に対する国民の期待を考え、すでに相当数の内外人に叙勲があった実情等を考慮して復活した、こういう意味の談話が発表されたように記憶いたしておりますが、この談話の中で私ども最も奇異に感ずるのは、国民の期待にこたえてと称しておるところです。一体栄典に対する国民の期待というものを、どのような客観点な方法によって把握されたのですか。これはちょっとことばが違っておりはせぬですか。与党の期待にこたえてではないのですか。その点いかがですか。
  115. 野田武夫

    ○野田政府委員 与党の期待とおっしゃいますが、私ども政府としての感触は、国民の多数の期待があるということを看取しております。
  116. 石橋政嗣

    石橋委員 国民という名を潜称してもらいたくありません。現に国会の中には三分の一の、こういう方法によって叙勲を復活するなどというのは反対だという有力な勢力があるということをお忘れになっております。私が先ほど申し上げましたように、客観的にどういうふうに国民の期待を把握したか、聞いておるのです。
  117. 野田武夫

    ○野田政府委員 実は生存者叙勲の開始にあたりまして、国民の期待ということがございましたのですが、三十八年の二月に、総理府におきまして世論調査を実施いたしました。その世論調査の結果は、生存者に対して勲章を贈るべきだという意見が、賛成が六五%でございまして、反対は八%でございます。もちろん一がいに言えないというのが五%ありました。そういうことで、大体政府といたしましては、一応世論調査も行なった次第でございます。
  118. 石橋政嗣

    石橋委員 ずいぶん古い資料を持ち出してこられましたが、当時までの政府考え方というのは、あくまでも立法行為によって栄典制度を復活しようという前提になっておったのですよ。そういう情勢の中で国民の意思が、かりにいまあなたが引用されたような数字を信用するとしても、表明されたものであることをお忘れになっては困る。閣議決定であろうと何であろうと、どういう方法であろうととにかく栄典制度をつくれなんということを国民が考えておると思ったら、とんでもない間違いですよ。その辺に私は混淆があると思います。第一、帝国憲法下における大権事項としての栄典と、新憲法下における国事行為として、すなわち内閣助言承認という大前提を踏まえての国事行為としての栄典の授与と、これを同じように考えること自体が問題があるのですよ。過去における閣僚の答弁を見ましても、栄典法審議の際に、担当大臣がいろいろ述べておりますけれども、一つ引用しますと、これは緒方国務大臣の答弁ですが、新憲法下における栄典の授与は、天皇の行なわれる国事の一つではあるが、天皇政府との関与する比重を従来のものと非常に変わってきた。すなわち、栄典の授与は、内閣の強い助言承認に基づいて天皇が行なわれるのであって、考え方が従来と全く違った民主的なものとなっている。これは動かすべからざる栄典についての考え方だと思うのです。それを旧憲法下におけるものをそのままそっくり閣議決定とやらで復活させるなどということは、いかに国民が栄典制度を望んでおったにしても1私は望んでおると必ずしも断定しませんけれども、閣議決定などによってやるということについて、これを承認するなんということは考えられません。あくまでも新憲法の精神に基づいた民主的な栄典制度を望んでおる、こうお思いになりませんか。
  119. 野田武夫

    ○野田政府委員 いま緒方副総理の御答弁を拝聴いたしましたが、栄典制度が、つまり叙位叙勲というものが、旧憲法においては大権事項として行なわれた。この大権事項で行なわれるということが、いまあなたのおっしゃったいわゆる民主政治と申しますか、新憲法の精神にそぐわない。そこで今回の叙勲は、やはり天皇国事行為でありますが、先ほどからるる申し上げたとおり、これに対しては内閣助言承認をもって、内閣が全責任を負うてこの国事行為天皇が行なうことになっております。したがって、手続におきましては、新憲法の精神と矛盾するものではないと私は思っております。また、従来の叙勲の運用につきましても、二十一年と二十八年に、ともに閣議でこれを決定いたしております。  さらに、現行の栄典制度についてのお考えでございますが、先ほど私が申しました世論調査におきましては、先ほどの生存者に勲章を贈るべきかということと同時に、現行勲章をそのまま使うべきかどうかという世論調査もいたしております。これは古い調査ではございませんで、緒方さんの言われたときとだいぶ違って、昨年の二月の調査でありますから、最も新しい調査でありますが、その場合はどうかと申しますと、現行勲章をそのまま使うべきであるという意見に賛成が四一%、新たな勲章をつくるべきだという意見に賛成が一五%でございまして、一がいに言えないというのが一六%ありましたことを申し上げておきます。したがって、この栄典制度自体が、内閣の責任でやらないで、旧憲法天皇の大権事項−これはいま大権事項というものはありませんから、そういうことはあり得ないのでありますが、ただ、内閣が責任をとらないで、一部の特権のもとにこれを行なう、こういうことになりますれば、これは新憲法の精神にそぐわない。しかし、旧憲法と新憲法の問題が、制度そのものについて論議されるということよりも、これを利用する権限、この行為というものが、旧憲法と新憲法と根本的に違っておりますから、したがって、現行の栄典制度閣議で決定いたしましても、必ずしも新憲法の趣旨に沿わないということは、私は考えておりません。
  120. 石橋政嗣

    石橋委員 先ほど引用されました、いままでの勲章でいいかどうかというその投げかけ方、これは国民の受け取り方としては、デザインの問題として受け取っております。そうじゃないですか。勲章のデザインを変える必要があるかどうかという意味で受け取って、そういう回答がなされていると思う。基本的な栄典制度そのものが、いままでのものでいいなどということを言うはずもない。それはおわかりでしょう。それからいま一つ、助言承認で行なわれるのだ、だからこそ、私は心配して言っているのですよ。不当不法な助言承認を与えて誤った国事行為を行なわせる懸念があるから、私はいまお尋ねしているのですよ。新憲法で栄典の授与という行為国事行為規定されておりますけれども、第七条には何と書いてありますか、「国民のために、」と書いてありますよ。それじゃ一体国民がこの栄典制度に全然参画できないということが許されますか。法律行為にもよらない。したがって、国会の意思も問うておらない。従来の栄典法案の中に盛られておった栄典審議会というような制度もない。まるで国事行為にゆだねられているのだから、天皇のなさることだからというそういうことばに隠れて、内閣が全権を握ってやろうとしているじゃないですか。一番悪いじゃないですか。授与の基準も何もみんな内閣の独断でやる。こんな非民主的な方法がありますか。国民は、いまだかつて一度も、旧憲法下においてはもちろんのこと、新憲法下においても、栄典制度というものについて何らの発言権もないのですよ。国会にもかけられない。栄典審議会も設けられない。こんな非民主的な方法がありますか。あなたがおっしゃっていることは空論ですよ。国民は納得しませんよ。天皇国事行為という美名に隠れて、天皇に責任をなすりつけた形で、実際には内閣助言承認というその肝心のところだけ握って全部やろうとしているじゃないですか。こういったことで天皇を誤らせてはならぬですよ。天皇国事行為といえども、国民のために行なうことになっている。国民のためにとは何ですか。どういうふうに解釈されているのですか。国民は、それじゃこの栄典制度についてどういう形で参画するのですか。内閣がかってにきめたものをただもらいさえすればいい、国民はそう考えていると思うのですか。私は、この矛盾についてまずお尋ねをいたします。
  121. 野田武夫

    ○野田政府委員 内閣助言承認によっての国事行為であるということは、もちろんそのとおりであります。いま石橋さんは、内閣がただかってにやって天皇にこれを押しつけて誤らせてはいかぬ、こういう御発言の意味があるようでございますが、私は、やはり内閣は常に国民のために行政をやる。国民のために政治をする。したがって、内閣が全責任を持ってやるということについては、国民の利益に反するという考えは毛頭持っておりません。常に内閣の姿勢というものは、国民のために政治をやるということが本意でございますから、内閣は、ここに出ておりますとおり、国家または公共に対し功労のある者を広く対象としてその基準を定める、こういうことをやっておりますから、つまり一切の私情を排し、公正な態度をとるということになりますれば、私は、国民のためではないという御意見には、決して同意することはできないのであります。
  122. 石橋政嗣

    石橋委員 そんなことを言うのなら、憲法も要らないし、国会も要りませんよ。内閣のやることは全部国民のためだ。内閣に対して白紙委任じゃないですか。私が具体的に聞いているのは、栄典制度の確立についてどのような形で国民は発言権を持ちますかと聞いている。国会にもかけない、栄典審議会もつくらない、内閣のどこかの部局でこそこそつくって、閣議でそれを認めて、それで国民のためになると言っても通用しませんと言っている。国民のためにやると言うからには、何らか国民の発言をくみ入れる機関が要るじゃないですか。一体憲法の第五章六十五条以下に、内閣のいろいろな権限が書いてあります。特に七十三条に列挙してありますけれども、栄典制度について内閣が発議権を持ち、提案権を持つなんて、どこに書いてありますか。全然ないですよ。少なくともこういう重要な問題については、国会にかけて法律行為によってやる。そういう形で内閣助言し、天皇国事行為として行なわれるという形がとられなければいけない。ましてや栄典審議会も設けられないで、内閣という立場で授与の基準をきめるなんというのは、もってのほかですよ。この栄典に伴う弊害というものを一番おそれておるのは、そこじゃないですか。時の権力が都合のいいような勲章、栄典制度をつくって、そして時の権力に奉仕する一部の勢力を喜ばせるために栄典制度が利用され、悪用される、これが一番心配されておるのですよ。それをチェックするために、国会へはかるとか栄典審議会をつくるとかいうことが必要なんじゃないですか。そういうことを一切抜きで、内閣の権限であるかのごとき錯覚におちいっておる。これをもって天皇を誤らしめないとどうして言えますか。また、私ども奇異に感ずるのは、国民の権利義務に直接関係するものではないというような前提に立っておるようですが、これももってのほかですよ。第一、憲法の第三章国民の権利義務の中にも、栄典という問題については触れておるのです。この一事で明らかです。十四条をごらんになったらわかるとおり、国民の権利義務というものに非常に関係があるのです。十四条で禁止されておるところの、いかなる特権も与えないといったようなことが、内閣の独断によって決定されようとしておる、国会にはかることもなく。国民の権利義務に関連してくるじゃないですか。それだけではありません。あなたたちがかってに閣議決定でやられて、そして授与された勲章、そういうものを資格のない人が帯徳用すれば、罰則の規定さえあるじゃないですか。予盾をお感じになりませんか。それでも国民の権利義務に関係ないと言われますか。同じような勲章をつくって、資格のない人がつけてもかまいませんか。そうじゃないでしょう。法律によって処罰されますでしょう。その点いかがです。
  123. 野田武夫

    ○野田政府委員 いま石橋さんの言われるように、栄典制度を新たに国会にかけて審議するということも、一つの方法であります。もちろんそうであります。しかし、内閣自体が自分の全責任において公平無私に基準をきめる——まだいま基準の制定中でございまして、政府がつくった基準がいかにも国事行為として天皇を誤らしめるという御意見でございますが、基準の内容というものはそういうことのないように、国家または公共に対して功労のある者に対して広くこれを対象として、きわめて公平無私に、公正にその基準をきめるということに努力しておるのでございまして、これの制定後、その内容をごらんになっての御批判なら別でございますが、今日の私どもの態度というものは、いまちょうど石橋さんの御心配の点のないように、国民から見ましてもきわめて正当であり、妥当である、何らの疑惑もないように、公平に処したいということに専念して、いま基準の制定に当たっておる次第でございます。私は、御意見としてそれは成り立たないとか、そういうことは違うというのじゃございませんで、栄典制度改正にあたり、生存者の叙勲を開始するにあたりまして、石橋さんのお話も、むろん一つの有効なやり方だと思っております。ただ繰り返して申しますとおり、政府が全責任を持って、国民の何らの疑惑のないように、またこの国事行為がいろいろの批判を受けないように、正しくこれを遂行しようとして、目下私どもは懸命に基準の設定に当たっているのでございます。ぜひ基準の設定をひとつごらん願いたいと思っております。
  124. 石橋政嗣

    石橋委員 公平にとか正しくとか、いろいろことばを並べたって、だめなんですよ。世の中は、内閣の主観で公平だと言ったって通らないですよ。客観的に公平であり、正しいものを生み出すためには、それなりの手続が要ると私は言っている。内閣に、この栄典制度について、法律的にも、政治的にも、道義的にも、全権を委任した覚えはだれもないはずです。かってにあなた方が、おれたちにまかせておけ、正しくやるから、公平にやるからと言ったって、通用しませんよ。そんなことならば、ほかの問題についてだって、全部何のチェックも要らないです。客観的に正しく公平に、そういう制度をつくるためには、それなりの手続が要るじゃないか。それをやろうとしてないじゃないか。ある意味では、旧憲法下におけるよりももっと悪い制度がいま生み出されようとしていると言ってもいい。このことを私は懸念して申し上げている。  それからもう一つは、お答えがない。国民の直接の権利義務に関係ないとおっしゃるけれども、憲法の第三章、国民の権利義務という規定の項に、栄典に関連して一項が設けてありますよ。関係があるのです。そのことだけではなくて、いままた一つの例をあげましたように、法律によって、位階勲等を詐称したり、あるいはその法令により定められた勲章を似せてつくったものを用いたりしたものは、処罰されるじゃないですか。国民の権利義務に重大な影響をもってくるじゃありませんか。それでも関係がないと言えるのですかとお尋ねしているわけです。
  125. 野田武夫

    ○野田政府委員 いまのお話の国民の権利義務の問題でございますが、これはやはり栄典制度と直接の関係はなくて、法規上そういう他の佩用すべからざる者が佩用することその他につきましての規制は、これは当然伴わなければ、何のために栄典制度が復活したかという常識的の問題でありまして、それを国民の権利義務に関連がある、こうおっしゃいますれば、それはそういう議論も成り立つかと思っております。
  126. 石橋政嗣

    石橋委員 大いに関連ありますよ。法律によらないでかってにきめたものを、それと同じものをつくっちゃいかぬ、ぶら下げちゃいかぬ、ぶら下げた者に対しては処罰するぞ、こんな国民の権利義務に重大な関連を及ぼすものはないじゃないですか。法律でつくられたものならばいざ知らず、法律によらずしてかってに内閣がつくったものを、つくったり佩用したら処罰する。国民の権利義務に重大な関係がありますよ。しかも政令によってこの栄典制度を復活するんだ。内閣の命令事項として栄典という制度を確立しておいて、その行為を、いわゆる栄典というものに対して他の人が盗用したり乱用したりしたら法律で処罰するという考え方も、私はおかしいと思うのですよ。政令でつくったものを、処罰の規定は政令ではできないものだから、軽犯罪法なんという法律を使って、法律でこれを処分する、こんなさか立ち議論がありますか。一体勲章というものを政令でつくる。その政令でつくった勲章をつくったりつけたりした者を処罰する規定は、今度は法律、軽犯罪法、こんなさか立ちが許されますか。政治家としてもおかしいと思いませんか。法律的にもおかしいと思いませんか。いかがですか。
  127. 野田武夫

    ○野田政府委員 栄典の問題は、法律上がれこれとおっしゃいますが、これは憲法上も国事行為の中に栄典が入っております。いわゆる憲法上の国事行為の中に栄典というのが入っております関係上、これは法律を全然無視して、何にも法律上の根拠がないのに政府がやっているということは、私は当たらないかと思っております。また、すでに御承知のとおり、昭和三十年には、鳩山内閣当時、褒章制度につきまして、やはり政令でこれを改正しております。これらのこともございまして、法律的根拠が全然ないというようなことは、これは法制局その他でもってお答えすることにいたしますが、私は、やはり憲法上明らかに国事行為の中に栄典ということは入っておりますので、必ずしも全然法律を無視して、ただかってに内閣が栄典制度を今度開始するのだという御議論は、どうかと思っております。また、軽犯罪法の問題その他につきましてのことは、これを法制局から御説明することにいたします。
  128. 荒井勇

    ○荒井説明員 憲法第三章の十四条で栄典の授与について規定があるではないかというただいまの石橋先生の御質問でございますが、この条項は、その栄典の授与がいかなる特権も伴わないという基本原理をうたっておるということでございまして、その栄典の授与に関する制度を法律で規定しなければならないというふうに書いているものでは必ずしもないということが、第一点でございます。  それから軽犯罪法を御指摘になりましたけれども、それは石橋先生もあとから申されましたように、これは法令によって定められた勲章ということでありまして、必ずしも法律だけによって定めるということは予想しておりませんで、法律または命令によって定められた勲章というもの、あるいはこれらを似せてつくったものを用いたという場合に軽犯罪法で処罰するということになっておりますが、これは必ず法律で制定しなければならないという趣旨を書いているものでもございません。  それから憲法七十三条の第六号のただし書きに書いてありますように、政令には、特に法律の委任がある場合においては罰則を設けることができるということもございますし、そのような立法例はいろいろあるわけでございます。趣旨なり状況と若干異なる点はあるかと思いますけれども、政令でその罰則が書かれ、あるいは政令で内容がきめられるというものが法律自体で罰則が規定された対象事項になっているということは、あるわけであります。
  129. 石橋政嗣

    石橋委員 そういうことは詭弁ですよ。第一、十四条に規定されておる栄典に関する規定というのは、いかなる特権も伴わないのだということをうたっているだけにすぎないというけれども、特権を伴うか伴わないかというようなことについて、国会は何らの発言権も持たないということは許されていいですか。そういう判断は、内閣がもっぱらやることになっていますか。そういう規定がどこにありますか。  それから、「政令には、持にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない。」と書いてあるからいいだろう、こういうふうなことを言いますけれども、法律で委任した場合に政令で罰則を設けられるということをきめただけですよ。それをあなたは援用しようとしている。私の言っているのは、勲章などというものを政令できめておいて、何ら法律に基づかずに政令できめたから、委任を受けられない。罰則規定を政令できめられない。そこで今度は飛び上がって法律で罰則だけをきめるというさか立ちが許されるかと言っている。あなたも法律家の、まあ端くれといっては悪いけれども、もっと筋の通った法律論を展開しなさいよ。あなたが出る幕じゃないのです。政令は、法律にゆだねられた場合にはじめて罰則をつくられるという規定があるだけですよ。ところが、勲章は政令でつくった。罰則規定はつくれない。そこで全然別個の軽犯罪法という法律をかってにつくって、それで処罰規定を設ける。こんなばかばかしいことが許されますかと聞いているのです。とにかく筋が通らないのです。あなた方はどんなふうにつじつまを合わせようとしても、筋が通らない。大体国民の発言権を一切封じてしまったという、そこに問題があるのだから、筋が通るはずがないですよ。主権者たる国民というものが大前提にあって憲法がつくられているのだから、その国民が、国会を通じて発言することもできない、栄典審議会で発言することもできない、そういう形の中で内閣がかってにつくった制度が、どうして合理化できますか。それに私は政治家として思い至らなくちゃいけないと思う。前任者の徳安長官が重大な誤まりをしたのだから、賢明なあなたは、そういう間違ったものを踏襲する必要はない。ここでき然とえりを正さなければ、それこそ袞竜のそでに隠れてということばがまた出てくるのです。天皇国事行為だから何でもできるのだ、こんなばかばかしい考え方を持っておるとすれば、時代錯誤もはなはだしいですよ。私は、これははっきりここであやまちをお認めになるべきだと思う。そうして法律によって栄典制度というものを確立すべきだと思います。過去においては三回も提案しているじゃないですか。それ以後においては、本委員会において三党の一致した意見に基づいて法案もできているじゃありませんか。なぜそういう事態を無視するのです。なぜ法律で国民の納得する栄典制度をつくって、みんな気持ちよく受領させてもらえるような、そういう条件をなぜつくれない。徳安長官に至っては、一回もその努力をしておりませんよ。総務長官になる前に内閣委員長になって、一回努力すべきだった。これまた逆コースです。三党で話し合いがついた案だってあるのですよ。しかも現在本委員会における国政調査事項の中には、栄典法案起草に関する件という一項もちゃんと入っております。いまからでもできます。私たちも協力します。あやまちを改めるにはばかることなかれです。こういうでたらめをやったら、みんな国民はおこるのだ。どうですか、その点、総務長官、賢明な総務長官として、間違ったやり方をき然として正す。しかもその態勢はできているじゃないですか。本委員会において、栄典法案起草に関する件、ちゃんとうたってあります。われわれにその用意あり。おやりになったらどうです。法律なんか要らない、そういうお考えは改めたほうがいいのじゃないですか。
  130. 野田武夫

    ○野田政府委員 石橋さんの御忠告はありがたく拝聴いたしました。しかし、この法律論でございますが、いま石橋さんは法律は何も根拠がないということをしきりに力説されておったようでございますが、政府は見解を異にしておりまして、現行の栄典関係法規は新憲法下においても有効である、こういう前提でやっております。したがって、過去において栄典審議が行なわれたということも承知しております。それは新しい栄典制度をつくったがいいという考えのもとに、前三回内閣提案したこともよく存じております。しかし、法律的根拠がないという議論に対しましては、政府は、現在において、現行の栄典諸法規は新憲法下においても有効であるという解釈をしていることが一つ。さらに、先ほど私申しましたとおり、戦後すでに一万数千人に叙勲をいたしております。外国の方に対しても千数百の叙勲が行なわれております。そういうことでありますので、現在の栄典制度に対しましては、非常に、まあひとつの親しみと申しますか、この栄典制度というようなものは、やはり国民が親しみを持つということが非常に大事なことでありまして、また伝統を、ただ古いから悪いというような考え方でありませんで、古いものでもこれはよかろうと思うものはこれを生かすということも、私は一つの行き方じゃないかと思っております。私が申し上げるのではない。諸外国におきましても、フランスでも、イギリスなんかでも、百五十年も六十年も前からの勲章を使っておりますが、現行のいわゆる栄典制度は、日本におきましてもたいへん親しみを持っておる。そこで問題は、新しい栄典制度をつくるとなりますれば、石橋さんの御忠告どおりが当然で、これは私どもの手続措置としてもあたりまえのことでありますが、その考え方も決して私は間違っておると思っておりません。しかし、政府といたしましては、現行栄典制度が生きている。そうしてもうすでに戦後二十年を経過して一万数千人にこの叙勲が行なわれている、こういうことからいたしまして、私どもといたしましては、いまの栄典制度が、石橋さんは手続の問題でございますが、必ずしも新しい憲法下における国民の気持ちに反しているものではない。むしろ親しんでおる。したがって、先ほどの世論調査においても、それが現実にあらわれております。そこで、新栄典法をつくったらいいという御意見は、尊重すべき御意見でございますから、これは新栄典制度をやることがいいとか悪いとか——私は悪いなんて毛頭考えておりません、これは私は非常に尊重すべき御意見と思っておりますが、政府の今回生存者叙勲に踏み切りました理由といたしましては、先ほど申しましたように、もうすでに戦後二十年で、たいへん国民に親しまれておる、また外国の人にも千数百の叙勲をしておる、こういうことを勘案いたしまして、まず現行の新憲法下で生きている栄典制度を活用したらいいのじゃないか、こういう考え方で今回の生存者叙勲をきめた次第でございます。
  131. 石橋政嗣

    石橋委員 法律によることがいいとお認めになっているわけですよ。しかも、その条件はあるのですよ、何度も申し上げるように。自民党さんには異存ない。われわれも協力しよう。おそらく民社党さんだって異存ないと思う。今国会だって、間に合わせようと思えばいまからやったってできるのです、栄典法制定は。なぜ半年、一年を争わなくちゃならぬのですか。悔いを千載に残さないためにも、きちっとした手続をとっておくことがいいのじゃないですか。しかも、法律的に有効だということを盛んにおっしゃいますけれども、間違った既成事実をたてにとって有効論を展開してもらいたくない。この点はいまからやりますが、その前に締めくくりをつけてもらいたいのです。政令で定めた勲章、罰則規定を政令では法律によってゆだねられない限り設けられないものだから、別個の軽犯罪法などという法律をつくって罰則を課するなどということが許されますか。この点はいかがです。
  132. 荒井勇

    ○荒井説明員 先ほどから石橋先生の法律的な御質問の点、二点ございましたが、その中で、憲法十四条第三項の栄典の授与というものが、特権と関係があるのではないかというように私御質問の趣旨を承ったわけでございますけれども、それはいかなる勲等であろうと、勲章であろうと、その他の栄典でありましょうとも、その授与が、特権をいかなるものといえども伴わないというのが憲法の趣旨でございまして、国民の権利に関するではないかという点は、憲法十四条第三項を根拠にしておっしゃられるということには当たらないではないかと考えております。  それから軽犯罪法の点につきましては、その罰則を定めました法令の規定というものが、どのような構成要件を定めているかということにかかわるわけでございます。これは憲法の罪刑法定主義でございますけれども、刑罰法規に定めるところの構成要件というものは、まさに法律またはその他の命令を含めました法令というものによって定められた勲章をその資格なしに用いることがその構成要件であると規定されましたならば、それはそのようなものが当たるということでございまして、それは石橋先生のおっしゃいましたような立法政策論として新たな勲章制度を設けることが妥当であり、その場合にはもちろん法律を新たにつくって定めるべきであるということになりますれば、それば法律により定めるところの勲章ということになりましょうし、現在新憲法の施行後ずっと政府がとってきておりました見解に立ちまして、従前の勲章制度をそのまま使うということが実定制度として行なわれるという場合におきましては、同様にそれは法令により定められた勲章というものに当たるということで。ございまして、この軽犯罪法の規定が、その栄典制度を法律によって定めるべきか、政令によって定めるべきか、あるいは政令で定めることが許されるかということのきめ手になるものではない、こういうふうに法律的には解釈いたします。
  133. 石橋政嗣

    石橋委員 私は、そんなことを聞いておりませんよ。法律の解釈などというと、ことさらにむずかしい、みんなにわからぬようなことを言ってごまかすのですが、私、みんなにわかるように申しますよ。軽犯罪法によりますと、法令によって定められた勲章というもの、そういう概念があるのですね。これがおかしいと私言っているのですよ。この場合の法令というのは、法律もしくは法律に委任されてできた政令と解釈しなくちゃならぬはずなんです。にもかかわらず、この勲章というのは、法律できめられたものでもなく、法律で委任された政令できめられたものでもない。ほんとうに単独の政令ですよ。その全く許されざる政令で規定された勲章、それをつくったり佩用したりしたら処罰されるようなばかなことが許されるかと言っているのです。軽犯罪法の規定そのものに問題があるのです。こんなものは憲法違反ですよ。法律で規定されるか、法律で委任された政令で規定されたものをつくったり佩用したりしたら、それはこれで処罰できるかもしれぬけれども、全然そういう根拠なしにぽかっと政令で出した勲章をつくったから、あるいは佩用したからといって、全然別個の法律で処分するなどという、そんなばかなことがありますか。私はこれは憲法違反だと言っている。しかし、そのことは一応おいても、とにかく国民の権利義務に関係がないと政府が盛んに言うから、おかしいじゃないですか、こういうように権利義務の関係が出てくるじゃないですかと言うのです。あなたたちがかってに政令をつくって、勲章をつくったりつけたりしたら処罰されるという国民の権利を侵害するような重大な規定が、ぽこつとほかの法律でつくられているじゃないですか。権利義務に大いに関係ありますよ。それを権利義務に関係がないから、政令でやってもよろしい、閣議決定でもやってよろしい、そんなばかな議論がどこにありますかと聞いている。総務長官は、自信を持って国民の権利義務に関係ないとおっしゃったでしょう。国民の権利義務に関係あるじゃないですか。国民は、ぽかっと別個にでき上がった法律で処罰を受けるのですよ、これでも国民の権利義務に関係ないですか。
  134. 野田武夫

    ○野田政府委員 石橋さんは私の答弁をどうお聞きになったか知りませんが、私は、国民の権利義務に関係ないというお答えをいたしておりません。お調べになったらわかります。しかし、栄典制度そのものが——いわゆる軽犯罪法その他でもって他の法律の問題とからんできておりますが、栄典制度そのものが、国民の権利義務に関係があるかどうかということになりますれば、それはいま法制局がお答えいたしたとおりでございます。しかし、少なくとも制度があります以上、これに関連するいろいろの場合を想定いたしまして、これに対してその他の関連法規がある。その関連法規に基づけば、いまお話のとおり、やはり国民の権利義務には当然関連があるということは、私もいまのお話でもってよくわかります。しかし、国民の権利義務に関係ないから、したがって閣議決定でやったということが、今度の閣議決定の主たる理由ではないのでございます。そこは誤解のないようにしていただきたいと思います。
  135. 石橋政嗣

    石橋委員 それではいいですよ。私はそれを確認しておけばいいのです。それでは、国民の権利義務に関係がないなどということは絶対におっしゃらないですね、総務長官。
  136. 野田武夫

    ○野田政府委員 私は、国民の権利義務の関係ということを、私自身いまお答えいたしておりませんが、現行の栄典関係の法規が、新憲法下でも有効である。したがって、新しい栄典制度をつくるならば、いまのお話のとおり、もちろん国会の審議を経てやる、また経なくちゃならぬことで、あたりまえのことでございますが、現在行ないます政府の生存者叙勲につきましては、つまり旧栄典制度を活用してやるということでございまして、法律上の何らの根拠がないというお話は、それはそうでない。現行の栄典関係法規というものは新憲法下でも生きておりますから、それに基づいて政府は今回の生存者叙勲に踏み切ったということをお答えしているのでございます。
  137. 石橋政嗣

    石橋委員 その法律によっておらないことははっきりしているのですよ。そのことはいまからやりますから、おきます。国民の権利義務に関係ないというようなことは言わないとあなたおっしゃったのですが、間違いございませんかと念を押しているだけです。
  138. 野田武夫

    ○野田政府委員 栄典制度そのものが、この叙勲の問題が国民の権利義務に直接は関係ございません。しかし、これに関連いたしまして、いろいろ他の法規上の問題が出てまいりますが、今回の叙勲そのものが国民の権利や義務を制限するなどということは、直接はないと私は思っております。
  139. 石橋政嗣

    石橋委員 おかしいですよ。少なくともあなた方が政令以下の、あるいは省令か規則か何か知りませんが、そういうもので勲章というものの瀞度をつくって、その制式を定めてやるわけですよ。ところが、政令で罰則を設けられないものだから、軽犯罪法という法律をほかにぽこっとつくって処罰しようとしていることは、明らかじゃないですか。直接国民の権利義務に重大な関係を持ってくるじゃないですか。法律によらずしてそんなことができますか。この辺にごまかしがあるのですよ。大体憲法というのは、国民の権利というものを基底にしてつくられているのです。その権利義務にいささかなりとも関連あるかのごとき疑いを持たれるだけでも、重大な問題です。あなたは急に引っ込めましたが、政府がいままで盛んにPRしているところでは、国民の権利義務に関係ないと言っていますよ。いま私から別の角度から言われて、関係あるかのごとくないかのごとく言われるのですが、そこのところをはっきりしておいてもらわなければ困る。明らかに国民の権利義務に関連を持ってくるのです。あなたたちがかってに閣議決定とやらで、政令とやらできめた、その勲章をつけることもできぬというような形、そういうところにも問題が出てくるわけです。  もう一つ、それじゃ法律論、有効論そのものに入りましょう。既成事実をもって有効なりという、そういう独断はおやめになっていただきたい。かっての勅令が、法律的に有効だ、この議論は私はおかしいと思う。どういうところからそういう有効論が出てまいりますか、お伺いしましょう。
  140. 荒井勇

    ○荒井説明員 法律論でございますので、私から申し上げますと、この憲法の九十八条第一項におきましては、「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」、こういう規定があるわけであります。そこで問題になりますのは、明治八年の太政官布告でこのような栄典制度をきめておる、その他の旧憲法下の制度が九十八条第一項の規定のふるいにかかるものであるかどうかということが、まず問題点になるわけでございます。その場合に、この栄典の授与ということは、憲法上は内閣助言承認によって天皇国事行為として行なわれるということでございまして、その場合の内閣助言承認というものが、その一定の基準で行なわれるということは、想像できるわけでございますが、それは理論的に申し上げれば、一件一件につきましてその助言承認を考えて、これがいいという考え方ももちろん憲法上不可能ではないと考えるわけでございます。そしてその一件一件助言承認をするということは、法律論として可能であるといたしますならば、その一件一件をきめるのについて一定の内規を定めて行なうということも、法律的には可能である。それをもっと対外的に明らかにして行なうという意味で、それが政令という形で行なわれるということも、必ずしもこの憲法規定に抵触する、この条規に反する、九十八条一項に当たるということにはならないというふうに考えておるわけであります。
  141. 石橋政嗣

    石橋委員 あなたは九十八条をかってな解釈をしておりますが、もう少しすっきりしたものがあるでしょう、七十三条が。七十三条の六号でひとつやっていただきましょう。少なくとも法律に基づかざる政令というものの存在を、憲法は許しておりませんよ。七十三条は空文じゃないですよ。この点はどうですか。
  142. 荒井勇

    ○荒井説明員 ただいま石橋先生指摘になりました憲法七十三条第六号でございますが、この中には、内閣の権能といたしまして、政令を制定することが規定してございます。その政令というものはいかなるものとして制定されるかという点につきまして、「この憲法及び法律の規定を實施するために、」、こう書かれておるわけでございます。すなわち、これを分解いたしてみますならば、それはその憲法規定を実施するために政令を制定すること、及び法律の規定を実施するために政令を制定することということになるのでございまして、憲法上の国事行為というものをいかに実施するかということにつきまして、その基準を定めるということが、法律の規定によってすることは、立法政策論として石橋先生のおっしゃいますような議論ももちろん十二分に成り立つと思うわけでございますが、さればといって、そうでない、直接にこの憲法規定を実施するための政令というものが、憲法上否定されておるかといいますと、憲法上否定されていることはないということでございまして、あとは立法政策としての当否とか、そういう政策の問題であるというふうに考えるのでございます。
  143. 石橋政嗣

    石橋委員 そういう詭弁を弄してはいかんですよ。七十三条で、憲法から直接政令が出てくるなんという思想がどうして出てきますか。大体法律家として、そういう議論が通用すると思っておりますか。根本法たる憲法からそのまま政令が出てくるなんという、そんなことを言ったら笑われませんか。先ほど助言承認一体のものだ、こういう解釈をした。今度の場合は、憲法規定を実施するために、そうして法律の規定を実施するためにと、二つにことさら分けようとする、ナンセンスですよ。私もいろいろな学者の説も調べてみましたが、そんな議論は通用しません。あくまでもこの場合の憲法と法律というのは一体のものだ。あなたがさつき言った助言承認、それ以上に一体のものだという解釈が通用していますよ。だれが考えたって、憲法からそのまま法律をつくらずに政令が飛び出してくるなんという思想があるということを認めるはずがないじゃないですか。長官がさっきから言っている有効有効というのは、まるで憲法からそのまま政令が出てくる、そういった錯覚におちいっての、そういう前提に立っての議論ですよ。憲法に基づいて法律がつくられて、その法律から委任を受けて政令というのが出てくるのです。あなたが有効だというのは、憲法からなまに政令が出てきて有効だと言っているのです。そんなばかばかしい解釈は、絶対に通用しません。有効などというものじゃないです。憲法からそのまま政令が出てくるなんという、そんなことがどうして通用しますか。あなたたちが有効と思っているだけの話で、決して有効じゃない。法律がないじゃないですか。基本法たる憲法から出てきた法律がないじゃないですか。栄典法という栄典に関する法律は、いまだかつて明治以来つくられたことがないのです。勅令が戦後変じて政令となった。ぼこっと政令が出てくる、そういうものは、新憲法で否定されていますよ。こんなばかな解釈で有効論をおとりになることは、間違いです。法律的にも違憲ですよ。閣議決定に基づく政令によって栄典制度を設けるなんということは、違憲です。  これで私は宮内庁長官にも申し上げたいのですが、いままでの議論をお聞きになっておって、とにかく疑惑に満ちておる。私は違憲だと言うけれども、そこまでいかないにしても、少なくとも国民の声というものは一切反映してない。そういう形で国事行為としての栄典授与というものが行なわれるとすれば、たいへんな問題になる。これはもちろん内閣助言承認内閣の責任でおやりになることです。しかし、結果的には、内閣がいわゆる袞竜の袖に隠れてかってなことをしようとしているのですから、これは問題だとお思いになりませんか。天皇を傷つけないためにも、やはりここで慎重な考慮が払わるべきだ、このようにお思いにならないかどうか、お伺いしたいと思います。
  144. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 憲法第七条の十項目につきまして、宮内庁の関係すべきことは最後の九号、十号だけでございます。栄典自体には何ら関与すべき権限はございません。もちろん私見を述べろと仰せでございますれば申しますけれども、栄典ということは、やはり天皇国事行為でございます。これがきわめて慎重に、公正に行なわれることは、われわれも一国民として望むところでございます。そういうことについては、政府は十分配慮なさってお進めなさっていることと考えます。
  145. 石橋政嗣

    石橋委員 第一、栄典の制度について、一歩譲っても、法律をもって規定すべきかあるいは法律以外の政令などをもって規定すべきかはまだ結論が出ていないということが、帝国議会における憲法審議の段階における金森国務大臣の答弁の中にも、はっきり出ているのですよ。とにかく憲法からそのまま政令が出てくるなどという、とんでもない法律解釈を展開して、閣議決定でおやりになるなどということは、私たちの立場からいえば、法律違反、憲法違反である。そこまでいかないにしても、重大な違反のおそれがある、そういう行為はすみやかに正して、先ほどから申し上げているように、この本委員会としても、法律をつくることに協力しようという態勢があるのですから、私は姿勢を正すべきだということを申し上げておきたいと思う。  この栄典制度については、さらに総理府設置法の中で、賞勲局の設置という問題でまた十分にやる機会があると思いますから、きょうはこの程度にとどめます。  最後に、一つ新たな問題を宮内庁長官にお尋ねしたいと思う。  これはすでにきのう申し出ておきましたので、御用意が整っておると思いますが、アメリカの婦人雑誌マッコールに載っております記事に関連してであります。私は、原文の写しもここに持ってきております。一番最初にこの問題が国内において出てまいりましたのは、三月六日の朝日新聞の声の欄、ニューヨーク在住の乾健という青年が、「米婦人雑誌が宮内庁批判」という表題をつけておりますが、投書されておられました。私そのときから関心を持っておったのですが、かねがねいろいろとうわさを聞くわけです。それがかくも公然とアメリカの国内で流布されておるということになりますと、問題だ。そうしましたら、そのうちに日本の国内においても雑誌が扱うようになりました。ここに私は二つ持ってきておりますが、ほかにも出ておるかもしれません。この要旨は、投書を読むことによって大体言い尽きておると思いますので、ちょっと要点を読んでみたいと思います。「私は日本を離れて四年余りになる。その間、美智子妃のニュースを聞くにつけ、国民の敬愛する皇室をいただく、世界でも数少ない国家の国民であることを誇りとしていた。しかるに、当地の米国婦人雑誌「マッコール」の最近号で、たまたま美智子妃をめぐる皇室の記事を読んで驚いた。  皇太子妃となられる前の健康で美しく明るい美智子さんが、いかに変られたか、いかに不幸であるかが詳細に記述され、侍従はじめ宮内庁の前時代的な慣例とセンスが、きわめてあざやかに描き出され、全米婦人読者の前にさらされている。  公式訪問の形でなければ里帰りもできない美智子妃、お召列車の塗装を傷つけぬようツメの切り方まで特別に要求される乗務員、パパ、ママと呼ばれていた浩宮が「今日の国語辞典にないような呼び方」を押しつけられている事実、その他、われわれのまともな感覚では、ほほえましく見える美智子妃の一挙一動をすべて〃よそもの〃視する侍従たち等々、マッコール誌が指摘している前時代的様相は枚挙にいとまがない。  同誌は「かかるがんこな中世的亡者が生き残っているという事実は、まことに驚嘆にあたいする」と述べている。  宮内庁の伝統主義には、日本でもとかくの批判があるようだが、このように外国のあざけりを買うに至っては、外地の日本人は、皇室の話題が出るたびに小さくなっていなければならぬ。若い世代ならずとも、これでは国民のムードとして皇室敬愛の熱意が失われ、無関心が一般化するであろうことをおそれるものである。」、大体こういう投書です。しかも先ほど申し上げたように、私どもも、いっとはなく、何となしにいろんなうわさを聞いてきた。それがこういうふうに公然と、しかも外国において発表される段階において、黙っておっていいはずはないと思います。それで本委員会において、私は正式に国民に答えてもらいたいと思うのです。国民としても非常に心配をしておるこの問題について、宮内庁が何の意思表示もしないというのは、かえって疑惑を増し、もっと不安を増進するもとであると思いますが、そのチャンスを与える意味で私はお尋ねするわけですが、ここに書かれておりますような事実が、一体あるのかないのか、何でしたら一つ一つ私読み上げてもけっこうです。しかし、通告してありますから御用意があると思いますから、あるのかないのか。あるいはまた、このような報道がアメリカの責任ある雑誌に発表された現段階において、何らかの行動をおとりになる意思があるのかどうか。そういうことに関連して、ひとつお答えを願っておきたいと思います。
  146. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいま御質問のございました、アメリカの雑誌マッコール誌にのぼりました皇太子妃殿下に関する記事でございますが、私も原文をさがしておりましたが、ようやく一両日前に手に入りました。まだ全部を原文では読んでおりません。しかし、一部の抄訳でございますとか、その他のことから、大体のことはわかっておるつもりです。  全般的に言いますと、この記事というものは、東宮妃殿下に対する非常な同情の気持ちをもって書かれたというたてまえになっておりますけれども、根本的にわれわれが考えますことは、東宮妃殿下として皇室に入られるにあたって、日本の皇室に対して大きな改革の意図をもって臨まれたという前提のもとに、いろいろな記事が出てきておるようにわれわれには見受けられるのであります。この点は、私は非常な誤解があるというふうに思います。これは、東宮妃殿下のお考えをわれわれが伺っておる範囲におきまして考えますのに、妃殿下は、皇族として伝統ある日本の皇室の精神によって行動したい、同時に新しい時代に即応するために、できるだけの努力をしたいというお考えであると思いますので、決して皇室を改革するというようなお考えは毛頭ないというふうに私は伺っておるわけであります。  ことに皇室におきましては、古来からの神事、祭事、お祭り等につきまして重要なことと考えておりますが、こういう点につきましても、真剣に御勉強になって、御努力になっておるわけであります。そういう次第でございますから、われわれの理解するところでは、そういう前提で記事が書かれておるということば、私は非常な間違いが出てくると思うのであります。もっとも、この記事が全部間違っておることばかりとも申し上げかねます。たとえば、妃殿下が外国皇太子殿下とともにおいでになりましたときの御活動、アメリカにおける御活動、あるいはフィリピンに行かれまして、両殿下でフィリピンの対日感情につきまして非常に大きな貢献をなさった、これは一般のフィリピンの人たちの言うようなこと、あるいは外国の人が日本に参りまして、妃殿下を訪問したときの記事でございますとか、相当事実を調べて書いてございまして、こういう点については、われわれよく調べてあると考えておるのでございます。しかし、われわれの立場を弁解するわけでもございませんし、われわれも決してすべてにおいて万全である、間違いはないと申しませんけれども、どういう根拠でそういう記事になったか、どうしても理解できない点も多々ございます。たとえば妃殿下が御決定の際に、私が、民間からお入りになることに反対して、三度も梓表を出そうとしたというような記事がございますが、実にどうしてそういうことを断定的に書いておるのか、とうてい理解に苦しむところでございます。その他御日常につきましては、書いた人も、宮廷のことはよくわからないけれどもという前提で書いておられる点につきまして、たとえば御実次に容易においでになれない、御両親になかなかお会いになれないような意味のことを書いてございますけれども、こういうものは、戦前と違いまして、そういうことは全然変わってきております。たとえば、そのほか、鉄道におきまする乗務員が、列車に傷がつかないようにつめを切るのを宮内庁が指示しておるとありますが、全然そんなことはございません。どうしてそういうことになったのかわからないわけでございます。なお、ただいまお読みになりました投書の中に書いてございます浩宮様が御両親をお呼びになるパパとかママとかいうことばにつきましても、それは御両親がお考えになっておることで、われわれが一々それに対して申し上げたこともございません。そういうわけで、その他お友達も見えますと、自由にお入りになっておりますし、それは昔から考えますと、ずいぶん変わっておるのでございます。そういうわけで、もちろんわれわれもまだ足りない点がございますけれども、そういうようなことでございまして、特に昨年の御病気を前後といたしまして、直接担当の東宮職の職員の非常な心配、あるいはそれに関する措置ということは、ほんとうに真心からいたしておるのを私もはっきりと見ております。なお、その中に、東宮職の女官たちが、あるいは待従が、監視しておるというようなことも書いてございますが、この女官の人たちは、東宮妃殿下がお上がりになるときに、いままで全然役所に関係のない人を新たに選んでおりまして、ともに妃殿下あるいは東宮職の家風というものを新しくつくり上げていたことで、何も監視的なことが行なわれているとは、われわれは絶対に考えておりません、ただ、東宮妃殿下が、良家のお嬢様から東宮妃殿下に御内定になりまして、内外の視聴を浴びて御結婚の式をあげられ、やがてすぐ浩宮様をお設けになり、その間、諸外国にもたびたび使いなされ、昨年は、特にはっきりと発表いたしましたが、異常妊娠ということを経て、そのほか皇族としての義務を果たされるために非常な努力をなさっております。御勉強についても、たとえばあれほどよく読書なさる方もございませんし、多方面に非常に気を配って、公のことについても全力をあげてなさっておるわけであります。御結婚以来四年余を過ぎましてございますが、急に新しい環境に入られまして、非常に御多忙であり、御努力をなさったということでございます。われわれはもう少しゆっくりお願いすべきであったかもしれませんが、当時の事情からそういうふうに非常なお忙しい日常をお送りになるというようなことで、御病気後の御回復についても、まだ前のような御体重におなりになりません。侍医その他の職員も、全力をあげて一日も早く前のような御健康に御回復になるように検討しておるわけでございます。そういうようなわけでございまして、繰り返して申しますが、われわれもすべてが万全とは申し上げませんけれども、われわれの取り扱いについて、その記事にありますような、どうも想像のつかない理由をたくさんあげられては、われわれもまことに残念なことだと考える次第でございます。
  147. 石橋政嗣

    石橋委員 この雑誌に書かれております記事を読んでみますと、一貫しておるのは美智子妃殿下に対する同情の立場なんです。それを皇居の中で取り巻いておるところの、何といいますか、宮内庁の職員とかあるいは宮家とか旧華族とかいうような人たちが、よそからきた娘さんだ、外からきた娘さんだ、フロム・ザ・アウトサイドということばを使っておりますが、そういう見方をして、事ごとにいびっているのじゃないかという、そういう立場に立って書いておるわけだ。長官が先ほど引用なさった外遊の場合についても、美智子妃殿下の功績というものは非常に大きく、それは事実だとおっしゃいましたが、書いておりますが、そのあとに必ず皮肉が入るのですね。フィリピンの場合でも、フィリピンのある役人が、もっと美智子妃殿下をちょくちょく外に出してあげたらどうです、こんな効果があるのですからというようなことを言ったら、侍従はひきつったような微笑を返すだけだったというような調子で全部貫かれているわけですよ。これがまた、そのまま国民の不安でもあり、不満でもあると思う。アウトサイドというならば、九九・九%の国民みななんですよ。外から来たのだ、私はそういう意識を持つことがもしあるとするならば、問題だと思う。しかも全然ないとは言えないのじゃないかと思うのですね。たとえば国内においてこれを裏づけるかのごとき発言を、いろいろな人がしております。一つ二つの例をあげてみますと、皇太子殿下の御学友の一人という人の談話として、ある週刊雑誌に出ておるのを読んでみますと、「この記事にはこまかい点ではウソもあるし、とるにたらないことも書いてあるが、妃殿下がおやせになったのは事実だし、精神的に苦労しておられるのも事実です。その原因が皇室のまわりにあることもたしかです」、こういうふうに裏づけております。それから日本におります外人の意見として、アメリカの放送会社のABCの東京支局長の談話という形で出ております。これも「この記事はむしろおだやかなものだ。われわれ外人記者も日本の宮内庁記者も、もっといろいろ知っている。宮内庁の幹部は、ビーチ氏が見ているより民主的で、まじめで、楽しむことが好きな人たちだ。むしろ宮家の方々に問題があるのではなかろうか。」こういうことも言っております。そうして事実このマッコールズの原文を読んでみますと、宮家の名前がそのまま出ているのですね。だれがどう言った。さすがに国内の雑誌では伏せておりますが、名前もそのまま出ているのです。そうしますと、どうしても国民一般として、先ほど申し上げたように不安なり、不満なりをかもし出していきます。これは重大な問題だと思いますので、やはり早急に、もしそういうことがあるとするならば、是正していただかなければならぬと思う。そういうようにつとめていただかなければならぬと思います。  それからいま一つ、この筆者は、真実の物語だと自信を持って書き出していますよ。ザ・トルーライフ・ストーリー、そういうふうに、事実だという大前提に立ってアメリカの国内で発表しているのです。これに対して、ただいま本委員会において、国会を通じて国民に釈明の機会を持ったわけでございますけれども、あらためて何らかの意思表示あるいは行動をおとりになる気持ちはございますか、ありませんか。
  148. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 私どもは、いろいろ刊行物その他を、過去においても、外国のも国内のもたくさん見ております。皇室関係の記事というものは、毎週毎週出るだけでもたいへんなものでございます。それを見ておりますと、どうしてこういうようなことになるのか、われわれとしては実に心外な記事がたくさんあります。どうして書く前にもっと事実を調べないのかと思うような一方的な推測記事というものも、ずいぶん出ております。こういう点につきまして、われわれもそういう報道関係者に対しましては、こまかい点を一々やるわけにまいりませんけれども、理解を深めてもらう努力をいたしているわけでございます。しかし、お話しのとおり、すべての全国民が一人残らずすべての問題について同じ見方をするということはなかなかむずかしいので、ときには違った見解を持つ人もあろうかと思います。これはどうもいつの時代でもやむを得ないことでございますが、われわれとしては、そういう方が一人でも少なく、ほんとの皇族方の活動の真髄が国民にもわかっていただくということについて、今後も努力いたしたいと思います。この問題につきましても、どう扱うかということはなかなかむずかしい問題でございます。特に日本におきましては、それを取り上げて二、三の雑誌が扱っておりまして、あるいは皇族なりその他の人の意見も聞いたりいたしております。外国においては、おそらくそういうこともなかなか行なわれないであろうと思います。相当発行部数の多い雑誌でございまするし、われわれはいまここでどういうふうにとは申し上げかねますけれども、そういった外国における誤解を生ずるようなことにつきましては、何らかの方法でこれを解消するようにつとめたいというふうに考えております。
  149. 石橋政嗣

    石橋委員 時間もだいぶおそくなりましたから、私はこれ以上は申し上げませんが、私は、皇室の近代化ということは必要だと思います。新しい憲法の理念に基づく新しい皇室の形というものがあるはずなんです。それはやはり国民との結びつきを強めていく、そういう角度から努力していかれる方がおっても、当然だと思うのですね。それを逆にまわりの者がチェックしていくというようなことは、かりそめにもあってはならない。従来いろいろとわれわれが聞くところは、全部それをチェックする形で聞くわけです。それが先ほども申し上げたような周辺の人たちである、こういうことになりますと、非常に重大でございますので、特に直接補佐の任に当たっておられる宮内庁の長官としては、この点について十分の留意を払っていただくことを最後に要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  150. 徳安實藏

    徳安委員長 田口君。
  151. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 それでは、皇室経済関係についてお尋ねをいたしたいと思います。  今度の法案内容を見ますると、また今年の皇室関係の予算の内容からいきましても、内廷費宮廷費、皇族費、それに新しく建築されるところの宮殿の予算等が入っておるわけでございます。そこで私は、予算の関係ですから、特に皇室関係の予算を審議するということは、なかなかいい悪いという点がむずかしいので、気のついたところだけお伺いをして、率直にお答えを願いたいと思うのです。  まず、いま石橋委員からも、宮内庁の民主化というか、新憲法下における宮内庁の考え方行為というようなものについて、ことばはあまり出しておりませんけれども、強く要望されておったのです。そこで私、今度の予算の内容を見ましても、宮殿の新営というのが入っておりまするが、これは御案内のとおり、戦前は宮城と申し上げておったのを、このことばをなくして皇居というように直しております。したがって、こういうことからいきますると、憲法で宗教の定義づけからいきましても、宮殿の新営という、この宮殿ということばは、何か適当なことばに変えらるべきものであろうと思うのですが、そういう点については別段お考えになっておらないかどうかということを、まず数字の面に入る前にお伺いいたしたいと思います。
  152. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 新しく建てます宮殿でございますが、宮殿ということばが適当かどうかというような御趣旨かと思いますが、私どもも、皇居の中、あるいは東宮御所を含めます赤坂の御用地というようなところに、いろいろな建物がございます。やはり何かそれぞれの目的によります識別をするために、名前をつけないと非常に不便なことが多いのでございます。ただ簡単につけたわけじゃございませんが、宮殿と申しますことが現状においては一番ふさわしいというふうに考えまして、そういう名称を使っておるわけであります。
  153. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 皇室関係の建物がいわゆる皇居外にも建てられており、いろいろな面からまぎらわしいということから、宮殿という名称が一番妥当であるというようなお考え方でいまだに使っておられるのですが、これは私いますぐにこれを変えて云々ということはございませんけれども、先ほども申し上げましたように、宮城という昔のことばが皇居というように変えられております。今日、皇居内の全般の新憲法下における民主的な運営をしてもらうには、一つの名称そのものもやはり最もふさわしい名称を使うことがいいのではないか、こういうように考えて質問を申し上げたのですが、今日のところでは宮殿というのが一番ふさわしいということなら、私はいま代案を持っておるわけではございませんから、これ以上は申し上げませんけれども、やはりそういう関係から、今後この宮殿という名称につきましても、検討していただく必要があるのじゃないか、かように考えておりますので、そういう点を私のほうから希望を申し上げておきたいと思います。  それから石橋先生の御質問に若干関連したことで長官にお伺いをいたしたいと思いますが、もちろん新憲法下における皇居内のいろいろな行事、あるいは通常日の生活状態、宮内庁のそれに携わる職員の態度等は、変わってはまいりましたけれども、まだまだ旧憲法下当時のことが頭の中にこびりついておって、そういう態度が出てきておるようにうかがわれるわけなんです。それで、私はきちっと名前は申し上げません、ぼやけて申し上げますが、ここ三、四年前の国務大臣が皇居へ参りまして、陛下に拝謁をして、そしてそこで一つの行事を行なうときに、宮内庁の役人の方が御案内をしていった。御案内をしていって、陛下のお入りになるところの、会合する部屋へ入る入り口につい立てか何かあったそうでございますが、そこで宮内庁のお役人が、ここで最敬礼をしてください、こういうように国務大臣に言ったようでございます。そこでその国務大臣は、おまえはおれを何だと思っておる、私は宮内庁関係をも担当しておるところの国務大臣である、天皇陛下は神様でも仏様でもないんだから、陛下のおいでとなればそれはどんなふうにでも頭を下げるし、最敬礼もしますけれども、陛下のおいでにならないのに、部屋へ入るのについ立てなんかに頭を下げるのは何事だと言ってがなったら、非常に恐縮をしたということでございますが、この一例を聞いてみましても、まだまだ従来のかた苦しい、私どもから申しますれば悪習が残っておるんではないか。こういうことが先ほど石橋委員からいろいろ心配をして質問をした内容にも関連をしてくるのでございますから、そういう点で、ひとつ長官は今後宮内庁の職員のいろいろ皇居に対するところの仕事に対しての行動面について十分に注意をしていただいて、そうしてほんとうに人間天皇として、また国民の象徴としての天皇、皇居であるという考え方から、もろもろのお仕えをするように、ひとつそういう点を注意をしていただきたい。この点を希望申し上げて、質問に入りたいと思います。  ここへ出ております法案内容からいきますと、二十二年に改正をして今日までそのままになっておる面があるわけでございますが、これは私どもが、この提案説明書によって、どれだけ必要であるか、またどの程度の金額が妥当であるかということはちょっと判断ができませんけれども、長い間改正をせずに今日までおれたということそれ自体が、私としては非常にふしぎでならないわけなんですが、一応提案説明は総務長官から聞きましたけれども、やはりこの内容について、もう少し具体的に御説明をいただきたいと思うのです。これは長官でなくても、一番詳しく説明のできる方でよろしゅうございます。
  154. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ただいまの御質問の趣旨、ちょっとうっかりいたしておりましたが、昭和二十二年以来改正をしなかったという点のように伺いましたが、その点は憲法第八条にございますとおりに、「皇室に財産を譲り渡し、又は皇室が、財産を譲り受け、若しくは賜与することは、国会の議決に基かなければならない。」皇室において他の人に財産を譲渡する、あるいは皇室が財産をもらう、あるいは皇室から財産を賜与するという場合は、そのつど国会の議決を経なければならないという規定がございます。しかし、このことは実際の日常生活においては非常に煩瑣なことになりますので、皇室経済法におきまして、その限度をきめていただいたわけでございます。それが昭和二十二年に皇室におきましては百二十万、これは皇室が受けられたりあるいは賜与される、両方ともそういうことでございましたが、その後皇室から他に賜与される場合につきまして、その限度では非常にそのワクが小さくなった、狭いということから、その後、昭和二十七年まで四年ばかり毎年二百五十万の特別議決をいただいておったわけでございます。それが毎年でございますので、たしか昭和二十七年の法律改正によりまして、毎年議決をいただいておりました二百五十万を加えた三百七十万——賜与額は三百七十万、ただし皇室が受けられるほうは従前どおり昭和二十二年以来百二十万ということでまいって、現在に至ったわけでございます。ところで、その後非常な物価の変動がございました。しかし、そのワク内におきましていろいろ苦心をして操作をいたしておったのでございますが、物価の変動に伴いまして、いずれも、たとえば皇室から何か下さるというような場合でも、ちょっと世間の常識からいうとおかしいような金額にだんだんなってまいったわけでございます。それで今回御審議を願いまして、大体昭和二十二年以来の物価の値上がりというものを調べまして、その物価の値上がりの率だけをかけまして、この限度を高めていただくという案になった次第でございます。ここら辺は、実際問題といたしまして、幅を大きくいたしますと憲法八条の趣旨に合いませんし、少な過ぎても、実際の個々の案件がいまの常識からいうとあまりに低いものになるという点がございますので、われわれといたしましては、ただ物価の値上がりという点を基準にしてこの数字を出したわけでございます。
  155. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 そのことはわかりますが、私のお聞きすることは、そういう物価の上昇から年々金額の増額の必要が出てくるのではないかということが考えられるので、それを何年もほうっておくということはおかしいじゃないかということなのです。何年もほうっておけるような内容なら、私はそういう内容を具体的に承りたい、こういうことを申し上げたのであって、最近のように特に物価が上昇して、あらゆる面について経費のかかる場合には、こういう国会の議決を得なければならない内容のものは、やはり年々提案をして議決をされるのが妥当ではないか、かように考えておりましたのが、何年もほうっておいて、今年出てきたものがございまするから、今日まで長年の間ほうりっぱなしでおけるようなものがあるなれば、私は、金額の面についても相当具体的にお聞きをして検討しなくてはならないのじゃないか、こう考えたからいまお聞きしたわけなんで、それについて何か答弁の補足がございましたら、ひとつ答弁していただきたいと思います。
  156. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 ずいぶん長い間そのままほうっておいたじゃないかという御指摘でございますが、これは率直に申し上げますけれども、皇室が財産を受ける、いわゆる世間で言う献上を受けるというようなことを毎年のように物価にスライドして法案を出すということは、皇室の立場ではたくさん受けるというような印象を与えてもぐあいが悪いのじゃないかというような、これは正直な感じでございますが、そういうことがございまして、過去においてもそういうことについて内部で議論がございましたけれども、これは法律上の定額でございますから、そうしょっちゅう変えるべき問題ではございませんが、ずいぶん年数を経まして、昔のままでは、何か下さるにしても非常に少額のもので、ちょっと世間常識からはおかしいような点も明らかに出てまいりましたので、この提案をいたすわけでございまして、このために私どもは献上をたくさん受けることを期待する、あるいは皇室が多くの——これは内廷費の問題でございますが、内廷費自体も必要な経費だけをお願いしてきたたてまえからいいまして、このワクを非常に広めて、もっと広範囲に使用するというような考えに立ったわけではございません。ただ物価の変動がございますので、それに伴うようなことができるようにお願いいたしたいというだけでございます。
  157. 田口誠治

    ○田口(誠)委員 私は、この改正案を出されたことに反対をしての質問をしておるのでなしに、ただいまの内廷費にいたしましても、これはやはり皇族の方々が十分に品位を保たれるだけの必要な経費というものは、当然やはり計上をして、国会の議決を得なければならないものは国会へ出して、そうして必要経費だけはやはり取らなければならないと思うので、したがって、そういう内容の経費であるだけに、物価が上昇してこれだけでは足りないから、今年はこの程度上げてもらいたいという法案を出されても、ちょっともおかしくはない、それがあたりまえだろうと思うのです。逆に何年もほうりっぱなしにしておいたことが、おかしいのではないか。その当時の金額のきめ方が多過ぎたのではないかというようなことにも、反論的には考えられるわけなんで、やはりあくまでも必要な費用というものは、年々国会に提出されまして、そうして国会の審議を得られることが妥当であろうと思うので、これを何年もほうりっぱなしにしておかれたこと自体に、内容的におかしいものがあるのではないかという懸念があったのでお伺いしたのですが、事こういう問題でございますから、あまりこまかいところまでは突っ込んで聞きませんが、そういうことでお聞きをしたのですから、ひとつ遠慮なしに、内廷費の場合、皇族が品位を保たれるに必要な経費、こういうものは、やはり妥当な金額を国会に出されて審議されたほうがよろしいじゃないか、かように考えておりますので、その点も申し上げておきます。  そこで、今年の予算を見ますると、内廷費宮廷費、皇族費、これに先ほど申しました宮殿の新営が伴いまして、昨年と比較いたしまして十四億二千四百二十三万六千円の増加ということになっておりますが、これは宮殿の新営があるから、特に昨年と比較して予算が多くなったんだろうと思うのです。そこで、これはこまかいことでございますが、先ほど石橋さんが質問申し上げました雑誌の中に記載されておる一項の中で、私ども政治家としてもやはりよく考えてみなくてはならないし、また宮内庁におられる役人の方も、率直にこういう面をどう受けとめて、どういうように今後運営をしていったらいいかということをまじめに考えていただかなくてはならないと思うのですが、言うまでもなく新憲法下になってからの皇室に対する関心とか、皇居に対する国民の関心とか、こういうものがだい、ぶ変わってきておるわけです。したがって、あの雑誌の文章からいきますと、とにかくこれは皇太子、皇太子妃の場合をさして言っておりますが、「英国の王室が持っているような自由と尊厳」がこの御夫妻の中にも最も理想である云々と言ったあとに書いておりますことは、「そして、このような理想的な皇室が得られるかどうかは、今後の問題で、もし得られないようなことになれば」云々ということで、そうして締めくくりとして、もしそうなればいま以上に多くの国民が皇室に対する関心をどう向けておるか、また皇室がどういうような存在にあるかということをここで考えてみなければならないし、そして皇室に対して金をどの程度かける必要があるかということも、やはり考えてみる必要があるのではないかという意味合いのことが書かれておるのです。それで私は、現在の三十九年度の予算に盛られておる宮殿の予算が悪い云々ということを言うのではございませんけれども、こういう考え方の上に立って、今後新しく増築されたり改築されるそれぞれの宮殿建物、こういうようなものにつきましては、やはり雑誌に書かれておったようなことを頭の中に入れて予算の、面を考え、また設計もしていただかなくてはならないと思うので、今年の予算に出された宮殿新営ということは、現在どの程度のものになっておるからどういう程度にしたいのだということも、これはやはり国民の知りたいところでございますから、ひとつこの委員会を通じてその点も説明していただきたいと思うのです。
  158. 宇佐美毅

    宇佐美説明員 先ほど私が御質問に対してお答えいたしましたのは、私の取り違えであったかもしれませんが、憲法八条に基づく費用の制限の点について申し上げました。その他の内廷費、皇族費の増額の点についての御質問ととりませんで、そういうように申し上げたわけでございます。  皇室の財政につきましては、皇室は、古来から非常な節約をし、質素を旨とするというお考えに立っておられます。そういう点からいいまして、予算の編成その他につきましても、すべて現実に真に必要とする限度という考え方でいたしているわけでございます。ことに皇族費、現在で申しますと三宮家の皇族費につきましては、いわゆる品位を保つということが、一体具体的にはどういうことであるか。これは皇族としての品位とぜいたくというものの限界というものは非常にむずかしゅうございまして、その点は各皇族におかれても一つの悩みを持っておられると思うのであります。しかし、今度の皇族費を見ましても、たとえばお住まいでありますとか自動車でありますとか、そういうような臨時に起こる相当大きな経費というものは、ほとんど見てございません。こういうことが起こりますと、毎年の経理が非常に困難な御事情にあるようにも思います。こういう点は、今後検討しなければならない問題として、われわれも検討に着手いたしているわけでございます。  宮殿のほうは、これは国の営造物でございまして、国有財産になるわけでございます。昔の宮殿と違いますことは、この間も申し上げましたが、宮殿という一つの公の儀式を行ない、行事を行ない、公式に接見されるというようないわゆる公的なものと、日常の御生活になるお住まいというものが、一つでございます。そういう点から、これをやはり切り離して、日常の家庭的な御生活というものと、公式の場面というものを少し離して差し上げるのが一番およろしいのではないか。私的のほうのお住まいをつくる場合におきましては、これはあくまでも両陛下でありますれば両陛下、東宮御所でございますれば両陛下の御希望も伺いながら案を立て、そうしてほんとうに家庭としてお安らぎになれるような設計ということを考えたわけでございます。しかし、宮殿のほうでございますと、たくさんのお客をお呼びになり、いろいろな儀式があり、行事がある公的なものでございますので、その取り回しがうまくできますように考えて、われわれは検討いたしておるわけでございます。これからは、昔のようないろいろな貴族とかいうような制度もございませず、お呼びになる範囲もだんだん広まろうと思いますので、昔よりもそういう部屋部屋も相当広く、しかも一つの部屋をうまくいろいろな場面に使えるように、いろいろな配慮をいたしておるわけでございます。ここではやはりそういう行事が国民のため、国家のためになされることでございますので、そういうことに重点を置いて運営をしていきたいということで設計をいたしておるわけでございます。
  159. 徳安實藏

    徳安委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、来たる十九日午前十時理事会、十時半委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十一分散会