○安宅
委員 ただいま議題になっております
法案について、私は反対の討論をいたします。
日本社会党は、大体本
法律案の中身というものは憲法に違反するものである。しかも公労法に違反するものである、これは労働大臣の言明によって政府の統一見解が出されておるのでありますから、明らかでありますが、公労法に違反することははっきりしておる。さらに労働
組合法、それから賃金の定義その他について言うならば、労働
基準法、そういうあらゆるものに違反するおそれのあるものである。さらに労働
組合法、公労法などによって保障されておる労働
組合の団体行動権、団体交渉権、団結権、こういう基本的な労働者の権利を侵害している。のみならず、ただいまも申し上げましたように、ILO第九十八号条約などの国際的な労働憤行にも違反しておるということを指摘するものであります。
まず冒頭に、反対の理由を明らかにしておきたいと思うのでありますが、その具体的な事実の一つは、公共企業体等の労働者に
適用されている公労法第八条においては、団体交渉の
対象事項として、
退職金あるいは今回の
特別給付金のごとき性格のものが含まれているにもかかわらず、四月二十三日の逓信大蔵社会労働各常任
委員会の連合審査の席上、大橋
電電公社総裁の発言にあったように、国家公勝負等
退職手当法が現に存在するから法定事項である、こういう考え方をもとにしてこの
法案が提出され、制定されんとしていることは明らかであります。この問題は、あなた方政府みずからの発言によって訂正をさせられておるのであります。にもかかわらず、この
法律案をいま強行しようとして、私が発言中に質疑打ち切りの動議が出されるという、まことにもって不届きなやり方が行なわれておるのであります。私は、こういう事態に対して、第一番目に、この問題について反対の理由を明らかにしなければならない義務があると思うのであります。国会の運営も何もかも全部じゅうりんされてしまう、こういうことはあり得ないのであります。政府の解釈が、当然団体交渉を行なって団体
協約できまったものが、予算上、資金上どうにもならぬ、こういう場合には、国会のほうに承認を求めてくる、そうして承認がきまった場合には、これと競合する
法律改正を行なうのが筋道だということを、政府みずからが言明しておきながら、この
法律をいま強行しなければならない理由は全然ないのであります。にもかかわらず、いま多数の自民党の
委員によって採決されようとしている。採決はあなた方が勝つでありましょう。しかし、この矛盾は永久に消すことはできないのであります。私はこのことをまず第一番に指摘したいと思うのであります。
こういう事実は、言いかえるならば、明らかに政府部内、政府機関の見解の不統一をさらけ出したものでありまして、その見解が統一されないまま、しかも労使間で一回の団体交渉も行なわれることなく、本案がきょう
委員会を通過しようとしておる。こういうやり方は、私は労働者階級に対してつばをひっかけたやり方であると思うのであります。(「そんなことはない」と呼ぶ者あり)労働者につばをひっかけたそのつばは、皆さまはそんなことはないと言っているけれ
ども、天にはいたつばと同じであります。将来歴史の流れの中であなた方の顔のまん中にびしゃっとそのつばが必ずかかってくることを、私はこの際明確に申し上げておきます。
およそ、現代社会にあっては、産業の発展とともに当然必然的に労使
関係が生じてくるものであって、その中で使用者と労働者とは、少なくとも事労働条件に関しては対等の立場でもの々言い、し夢も常に労働者の立場が向上するようあらゆる配慮が払われていくことが、近代国家としての当然の姿であり、鉄則であります。それにもかかわらず、このような団体交渉権を否定し、労働者の発言の場を奪い、
法律の施行をもつてこれを変えていこうとするやり方は、これは何回も申し上げますが、きわめて権力的なやり方であるのでありまして、私
どもは絶対にこれを容認することはできないのであります。
さらにもう一つは、いま全電通労働
組合では、このことについて労働
委員会に不当労働行為として救済命令を出すよう申請をしておるのであります。こういう事態が明らかになっておりながら、しかも、政府の統一見解によれば、この不当労働行為は成立するものと見なければなりません。こういう状態において、この
法律をいま本院の逓信
委員会が可決決定をしたということになりますならば、これは悔いを千載に残すものであり、この逓信
委員会は世間からもの笑いになるだろうということを、私はほんとうに心から憂えるものであります。こういうやり方について、第二点における反対の理由であります。
私の反対する第三点の理由はこういうことであります。たとえば善政であるとかいろいろなことを言っておりますが、その
支給する
対象人員、それから
支給する時期、これは
自動化によってやるのでありますから、その時期はあなた方の恣意で選定する権限があるのであります。そうして、今度は
支給する
人員、これもあなたのほうでは団体交渉でやると言っておりますが、その原案をつくるところの権能を持っております。それから今度はだれが
退職手当の割り増しを受けるか、どの人が受けられるかどうかという選別をすることもできるような
法律案であります。幸いに、われわれの追及によってこれは団体交渉によってやるということになっておりますが、こういう
法律はまことに反動的な
法律といわなければなりません。だんだんと突き詰めていきますと、皆さんの結婚の支度金になってたいへんいいじゃないかといって、新聞紙上PRしておるのでありますが、だんだんしりつぼみになっている、もらう人はさっぱりおらなくなっている、ほとんどおらなくなっている、まことにもってけつの穴の小さい逓信官僚の出した、そういうヨシのずいから天井をのぞくような、細い、小さな、何といいますか、善政どころか、まことにもってけちな
法律案であるといわなければなりません。これは羊頭狗肉を掲げる、こういうようなやり方であると私は思うのであります。これはPRとはまるきり反対の、まことにけちな
法案である、こういう意味で私は第三点の反対理由を申し上げておきたいと思うのであります。
特に、この際、私が申し上げたいのは、全電通労働
組合との間に
配置転換協約その他たくさんの
協約がありますけれ
ども、われわれの
質問によって明らかにはなりましたけれ
ども、かりにそのまま放置していたとするならば、労働
組合と使用者側でとりきめたすべての
協約というものは全部無効になるところであったわけであります。こういうようなことではまことにけしからぬことでありまして、実際にこの辺にも、労働者の保護であるとか、また御苦労さんであったとか、こういう性質のものではなくて、
人員整理につながるところの
退職促進法、この
法案の第一条にも書いてあるとおり、
退職を促進する、円滑化する、あなたのほうではそういう
ことばを使っておりますが、こういう
退職促進法である。首切りの
法律である、こういう本質が明らかになっておるのでありますから、この点を私
ども特に強調して、反対する理由の一つに言っておきたいと思うのであります。
この際、最後に言いたいのは、電電事業の第一次五カ年
計画が昭和二十八年以来今日までずっと続けられている中で、精力的に、これまで
電電公社と全電通労働
組合というものは、これらの問題について団体交渉を重ねてきておるのでありまして、言いかえるならば、
電電公社の発展というものは、これら
電電公社に職を持っておる人々でつくられておる労働
組合の寄与するところがきわめて大きいのでありまして、それにもかかわらず、これらの
法律案というものは、政府みずからがせっかくの労働慣行をつぶし、そうして
退職をどんどん奨励していくという、まことに有害無益なものであって、しかも労使間の紛争というものをさらにみずから政府当局がその種をまいている、こういうふうに言っても決して過言ではないと思うのであります。私は、将来こういう労使紛争がいろいろとたくさん起きるということをあなた方に警告いたしますが、これら紛争が起きた場合には、これはあげて、以上申し上げましたような、
法律的にも、あるいは国際労働慣行的にも、あるいはみずから労使慣行を踏みにじろうとする意図を本
委員会で暴露されたごとく、これが間違った考え方によって押し通してきた皆さん方政府当局のすべて責任だ、あなた方が責任を負うべきだということを、私はこの際明らかにしておきたいと思うのであります。
私は、以上のことを警告いたしまして、本案に対するところの反対の討論にかえる次第であります。(拍手)