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1964-05-28 第46回国会 衆議院 地方行政委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十八日(木曜日)    午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 森田重次郎君    理事 渡海元三郎君 理事 中島 茂喜君    理事 永田 亮一君 理事 藤田 義光君    理事 川村 継義君 理事 佐野 憲治君    理事 安井 吉典君       大西 正男君    奧野 誠亮君       亀岡 高夫君    亀山 孝一君       久保田円次君    登坂重次郎君       村山 達雄君    森下 元晴君       山崎  巖君    秋山 徳雄君       阪上安太郎君    重盛 寿治君       千葉 七郎君    華山 親義君       細谷 治嘉君    栗山 礼行君       門司  亮君  出席国務大臣         国 務 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         警察庁長官   江口 俊男君         警  視  監         (警察庁交通局         長)      高橋 幹夫君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁交通局         交通企画課長) 宮崎 清文君         建設事務官         (道路局次長) 三橋 信一君         専  門  員 越村安太郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  道路交通法の一部を改正する法律案内閣提出  第一三八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 森田重次郎

    ○森田委員長 これより会議を開きます。  道路交通法の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。華山親義君。
  3. 華山親義

    華山委員 現在提出されております道路交通法改正につきまして、罰則規定がございますが、いろいろな面におきまして、罰則が加重されるわけでございますけれども道路交通法につきまして、いずれも刑事罰であって、行政罰がないということは、これは何らかの根拠があって、お考えがあって、こういうふうになすっていらっしゃるのでありましょうか、お聞きいたします。
  4. 宮崎清文

    宮崎説明員 御指摘のように、行政法規過料を設けておる例も多少ございますが、従来のわが国の立法制度におきましては、概して行政法規罰則行政罰を設けておりますのが通例でございまして、道路交通法を制定いたしますときも、従来の慣行に従いまして、行政罰でこの違反担保することといたしたわけでございます。
  5. 華山親義

    華山委員 いまいまのやつは全部刑事罰じゃございませんか。
  6. 宮崎清文

    宮崎説明員 失礼いたしました。行政刑罰でございます。懲役とか禁錮とか罰金という行政刑罰であります。正確に申しますと、行政罰ではございません。
  7. 華山親義

    華山委員 そういたしますと、一ぺんでもそういうことになりますと、通俗のことばで言われるところ前科一犯ということに相なりますね。
  8. 宮崎清文

    宮崎説明員 通常の場合はさようになります。
  9. 華山親義

    華山委員 私は、とにかく仕事をやりまして間違いがあった場合に、どういうことでも前科一犯というふうなことになるということは過酷なのではないか、ある部分につきましてはこれを過料のほうに移すべきではないか、やはり刑罰というものは寛厳よろしきを得なければいけないのであって、そういうふうにすべきであると思うのですが、お考えいかがでしょうか。
  10. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 いまの御意見は、確かに今後いろいろ検討しなければならない問題かと思っております。確かにそういう面がありますので、一時私ども警察庁におきましても、諸外国の例等をいろいろ検討いたしましたところ、現在の交通法規等違反防止のための担保の手段として、必ずしも刑罰だけにたよるということではすべてが担保を期しがたいということで、総合的な見地からこれらの問題に対処すべきではないかというので、いわゆる切符制といわれましたものについてもいろいろ検討いたしましたが、現在の刑罰法の体系にかんがみまして、一応の検討にとどめたわけでございますが、今後につきましてはさらに総合的な立場から検討いたしたい、こういうふうにいま考えております。
  11. 華山親義

    華山委員 この七十四条、七十五条等に雇用者及び管理者責任規定がございますが、このたびの改正によりまして、こういう雇用者及び管理者責任につきまして罰則もございますが、これは加重されておりますでしょうか。
  12. 宮崎清文

    宮崎説明員 御指摘雇用者義務につきましては、今回は罰則の引き上げはいたしておりません。
  13. 華山親義

    華山委員 どういうわけでございますか。
  14. 宮崎清文

    宮崎説明員 現行法におきましても、たとえば七十五条の罰則でございますが、罰則条文といたしましては百十九条で「三月以下の懲役又は三万円以下の罰金」ということになっております。これは、道路交通法罰則におきましては、ひき逃げとか酔っぱらい運転とかを除きました一番高い罰則になっております。これで一応担保できると考えております。
  15. 華山親義

    華山委員 スピード違反ということにつきましては、いろいろ罰則は加重されておるように思いますが、いかがになっておりますか。
  16. 宮崎清文

    宮崎説明員 最高速度違反は、現行法におきましては酔っぱらいあるいは無免許運転と同様の罰則でございまして、六ヶ月以下の懲役または五万円以下の罰金になっております。今回はこれを引き上げることは考えておりません。
  17. 華山親義

    華山委員 そういうスピード違反をさせるようなことをさせてはならないというふうに規定してあるのでございますから、スピード違反をさせたようなものは、運転手と同様に重い刑であっていいと思いますが、いかがなものでございますか。
  18. 宮崎清文

    宮崎説明員 七十五条は、一般刑法理論で申しますと教唆幇助の場合以外に、容認行為、つまり自分の雇っている運転手がみすみすスピード違反をやることがわかっていながらそれを黙認しているというような場合に主として働く規定でございます。したがいまして、これはあまり例がないと思いますが、雇用者がおまえはスピード違反をしてもいいから早いところ行ってこい、かりにこういうようなことを言ったといたしますと、それは一般刑法理論教唆罪が成立いたしまして、そちらのほうで処断されることになろうと思います。
  19. 華山親義

    華山委員 事例として聞きますが、何時何分までにあそこの家に行って帰ってこい、こういった場合に、それはスピード違反をしなければできないという場合にはいかが相なりますか。
  20. 宮崎清文

    宮崎説明員 これは非常にむずかしい問題でございまして、その途中の交通状態であるとか、道路の状況であるとか、あるいは信号機の数、あるいは信号機の間隔の時間とか、いろいろ複雑な問題がございますので、それらをすべて勘案いたしましてもとても行けないような短時間であるとすれば、それはあるいは教唆幇助ということに相なるかもしれませんし、容認になるかもしれませんが、なかなかその立証は困難かと思われます。
  21. 華山親義

    華山委員 私は、現実にそういう違反をした者が罰せられて、 いまおっしゃいましたとおりなかなか立証が困難だということで処罰されないということは、労働者に対して酷であって、雇用者に対して寛大だと思う。そういうふうな場合につきましては、形式犯的なものでもいいから、処罰するわけにはまいりませんか。
  22. 宮崎清文

    宮崎説明員 最後の御指摘の点につきましては、いわゆる両罰規定というものがございまして、被用者——雇われております者が雇用者業務に関しまして違反をいたしました場合の一定の違反行為につきましては、雇用者も罰せられる、かような規定がございます。
  23. 華山親義

    華山委員 それは罰金でございましょう。
  24. 宮崎清文

    宮崎説明員 雇用者の場合は法人も含まれておりますので、罰金でございます。
  25. 華山親義

    華山委員 片方がたとえば非常な違反をやりまして懲役一ヵ月となった場合には、雇ったほうはどのくらいの罰金でございますか。
  26. 宮崎清文

    宮崎説明員 これは量刑の問題になりますので、個々ケースにつきましていま手元にちょっと資料を持っておりませんのでお答えしかねますのですが、個々ケースによってそれは異なると思います。
  27. 華山親義

    華山委員 現在、とにかく労働者は、雇用者の命ぜられるままのような行動をとるのが現状であるから、雇用者の処罰というものはもっと厳格であり、形式的にそういうことがあったときには、やはり雇用者についても相当な厳罰で臨まなければいけないのじゃないか。私は雇用者につきましてこの法規全般として寛大であるように思いますけれども、そういうふうなことにつきまして、このままでいいというふうにお考えになるのでございましょうか。
  28. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 最近におきまして、私どもはいろいろな違反の形態あるいは事故の実情にかんがみまして、それぞれの根源についてメスを加えるということで、雇用者義務違反あるいは適正な運行管理をしているかどうかという点について、十分私どもといたしましても捜査範囲を広げているわけでございます。したがいまして、それらの点につきまして十分私ども捜査の徹底を期することによりまして、過去におきましても具体的な事例において管理者にその責任を追及したこともいろいろ私ども事例として持っておりますが、そういう点については今後ともにただいま御指摘のような運転者のみではなくて、その事業全体を管理している運行管理というものからやはり問題を考えていくという方向で、現在の法規を十分活用していけるものというふうに確信をいたしておりますが、将来についていろいろな問題が起きれば、そのときにおいて考慮しなければならない問題であるかというふうに考えております。
  29. 華山親義

    華山委員 私は現在の労働条件労働者の置かれておる立場から言いまして、どうしても雇用者のほうが強くなる、そういうところにおきまして、原因を追及しまして、そこからよくやってまいりませんと、どうしてもこういう交通違反の問題が起きると思いますので、雇用者に対するところの、あるいは管理者に対するところ予防的措置といいますか、予防的な罰則を強くするということが必要である、私はどうしてもそういう気持ちがいたします。これは私の考えでございますけれども、その方面の御研究を願いたいと思います。  それから整備についてでございますが、整備につきまして、雇用者についての責任がこの道路交通法ではないようでございますが、これはどういうわけでございますか。どろよけのことは書いてございますが、ほかのことはあまり書いてない。どういうわけですか。
  30. 宮崎清文

    宮崎説明員 車両整備につきましては、一般的には道路運送車両法の系統で、それの規定がございます。したがいまして、道路運送車両法のほうにおきましては、雇用者とか使用者というより、むしろ自動車現実に使用する者をとらえまして、整備責任を課してございます。
  31. 華山親義

    華山委員 どろよけのことだけ書いてありますが、どろよけはどういうことですか、整備ですか、何ですか。
  32. 宮崎清文

    宮崎説明員 どろよけは車両そのものの構造ではございません。これはむしろ運転者他人に迷惑をかけないで運転しろという、そういう注意義務として課しておる規定でございます。
  33. 華山親義

    華山委員 私はあまりよくない、整備されない自動車運転するために、たとえばブレーキがきかなくて人を傷つけるとか、あるいは故障を起こしてそのあとの車が停滞するとか、いろいろな問題があると思うのでございますが、警察当局といたしまして、この方面につきまして、運輸省その他のほうとどの程度の交渉をされ、また注文をしておられますか、お伺いいたしたい。
  34. 宮崎清文

    宮崎説明員 車両整備につきましては、先ほど申し上げましたように、運輸省の所管でございますが、これは御指摘のように、道路交通の安全にも非常な関係がございますので、運輸省関係部局と私たちは常時緊密な連絡をとって問題の処理に当たっております。  なお、その前に御指摘になりました車両整備に関する雇用者責任でございますが、道路交通法におきましては、車両保安基準に合致していない、いわゆる整備不良車両を禁止いたしております。これは運転した者も罰則の適用を受けますが、両罰規定がかかっておりますので、雇用者がこの両罰規定によって罰せられることもございます。
  35. 華山親義

    華山委員 両罰規定がございますけれども、両罰規定といいましても、これはたとえば法人ということになりますと、これはだれも、罰金さえ出せばいいということになる。両罰規定におきまして、管理者個人刑罰を受けることはございますか。
  36. 宮崎清文

    宮崎説明員 法人の場合におきましては、その代表者が罰せられることになります。それから個人使用者を使っております場合は、もちろんその当該個人が罰せられます。
  37. 華山親義

    華山委員 代表者自分の金で罰金を出すなり、自分のさいふで出すのでございますか。あるいはまたその代表者懲役なり禁錮になるようなことがあるのでございますか。
  38. 宮崎清文

    宮崎説明員 先ほど申し上げましたように、現在の日本の法制におきます両罰規定法人も含まれておりますので、原則はすべて罰金刑以下でございます。したがいまして、代表者懲役なり禁錮になる形はまずなかろうかと思われます。それから罰金をだれが払うかという問題は、ちょっと私も承知いたしかねますので……。
  39. 華山親義

    華山委員 私は、いろいろこまかな点をお聞きいたしますけれども、その根源を絶つ意味から、雇用者あるいは管理者、そういう者に、予防的な意味刑罰を課するというたびたびのお話でございますから、やはり同じような罪、私は体刑までもいっていいと思う。その意味で、この道路交通法改正がそこまで及ばなかったということにつきましてはたいへん不満でございます。  もう一つお伺いいたしますが、過労ということでありますが、過労状態におきまして運転手運転いたしました場合におきましては、これは間違いがあれば別でございますが、間違いのない程度において、ふらふらして運転したという場合におきましては、これはどんなことに——何かあるのでございますか。
  40. 宮崎清文

    宮崎説明員 まあ過労程度が問題でございますが、一応現行法におきましては、過労のために正常な運転ができないおそれがある状態車両運転いたしました場合には、違反行為と相なります。
  41. 華山親義

    華山委員 刑罰はございますか。
  42. 宮崎清文

    宮崎説明員 ございます。過労のために正常な運転ができないおそれがある状態運転をいたしました場合には、罰則がかかるということになっております。
  43. 華山親義

    華山委員 過労、そういうふうな状態運転をさせていたという雇用者または管理者につきましてはどうなりますか。
  44. 宮崎清文

    宮崎説明員 雇用者または運行管理者等に対しましても、過労運転をさせた場合には一応処罰されることになります。
  45. 華山親義

    華山委員 処罰されるといいますと、どういうことでございますか。
  46. 宮崎清文

    宮崎説明員 これは道路交通法の七十五条の二項に条文がございますが、「単価等の逆行を直接管理する地位にある君は、当該業務に関し、車両等運転者に対し、」——いろいろございますが、たとえば過労の理由によって「正常な運転ができないおそれがある状態車両等運転することを命じ、又は車両等運転者がそのような状態車両等を逆転することを容認してはならない。」こういう規定がございまして、これに違反いたしました場合には、先ほど申し上げましたように、三ヵ月以下の懲役または三万円以下の罰金に処せられることになります。
  47. 華山親義

    華山委員 それは出発の場合でございましょうね。出発したあとの途中におきまして、いろいろな故障があって、またいろいろなことがあって、そして運転手がどうにもならないというふうな場合に、なお、その運転手が逆転していた場合には、雇用者管理者には罪がないということになりますか。
  48. 宮崎清文

    宮崎説明員 ただいまの規定は、御指摘のとおり、雇用者があらかじめそれを承知している場合でございます。したがいまして、出発したときには正常な状態で出発して、その後何十時間か走っておりまして過労状態になったという場合には、これは必ずしも雇用者なり運行管理着が罰せられることにはならないかと思います。
  49. 華山親義

    華山委員 自動車運転手は、大体一日に何時間くらい仕事をするということが正常な運転をすることに差しつかえないのであって、何時間以上たつとこれは過労であるというふうな科学的な御見解でもございますか。
  50. 宮崎清文

    宮崎説明員 この点は通常労務管理の問題と関連するかと思われますが、いま私たちのほうでは、科学警察研究所というのがございまして、疲労度測定について鋭意研究中でございます。
  51. 華山親義

    華山委員 鋭意研究中で、これはけっこうなことでございますが、一体現在どの程度にお考えになりますか。十二時間程度でいいのか、八時間以上こしては過労になるのか、そういう点はいかがなふうにお考えになりますか。
  52. 宮崎清文

    宮崎説明員 これは運転者の置かれている環境、またその業務内容その他によっていろいろと違う場合があると思われますので、一がいには、何時間以上運転すれば必ず過労状態になるということは申し上げにくいのではないかと思われます。
  53. 華山親義

    華山委員 それじゃ科学的なことを研究したってしょうがない、そういうことになると思いますが、そういうことは別にいたしまして、しかし、とにかく現在あやまちをおかした運転手は非常に過労者が多いということを言われている。またそういうふうな医学的研究もなさっている。私は特に他人に迷惑を及ぼす、危険を及ぼすような、こういうふうな労働者、そういう勤務者につきましては、私は労働基準の面を一般労働基準法で拘束することは無理なんじゃないか、労働基準違反しなければそれでいいんだということでは、これは私はいけないんじゃないか。他人に非常な危険を持っているところの、爆弾をかかえてやっている仕事でございますから、私は警察庁のほうといたしましても、科学的な研究をなすっていられるそうでございますから、そのことによりまして、これ以上の労働運転手の人にはさしてはいけない、こういうふうな勧告なり何なりが労働省にあってしかるべきだと思いますが、この点について長官の御意見を……。
  54. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 おっしゃることはその精神において全く同感でございますが、労働行政として、労働基準法の面でなかなかつかまえにくいのと同様に、交通の面からもいろんな、同じ運転をするといっても、タクシーの場合、トラックの場合、あるいは長距離の場合というような、いろいろ条件が違いますので、一律には何時間以上は過労だというようなことを、私のほうで科学的には研究はしておりますけれども、早急には客観的なものを出すのはむずかしかろう、こう考えます。しかし実際上は、具体の事例をとらえた場合におき便しては、ただふらふらして運転をしているというのも、これは一斉取り納まりではつかまります。しかし、そうでなければ過労かどうかというのは、何らかの事故を起こすとかどうとかいう場合にしか実際はわかりません。そういうものがわかりました場合の措置は、労働関係なり、あるいは雇用者のほうなりには厳重な警告を与える。私の知っている事例におきましては、そのために一つ会社が、会社自身がだめになったというような事例もございまするので、私たちとしても労働条件がどうこうという観点もありますけれども、それ以上に交通事故というものをなくするという観点からは十分手を打っているつもりでございまするし、将来もやっていきたい、こう考えております。
  55. 華山親義

    華山委員 相手が、運転するものがこれが機械なんです。それから、その機械の操縦によって、普通の工場におけるところ危険等と違って、これはほかの人にたいへんな危害を及ぼすものでございますので、私は労働基準の面におきまして、運転手が、運転をする人が過労におちいらないところ限度、そういうふうな限度を、現在科学的な研究をなすっていらっしゃるのでございますからおきめになりまして、検討なさいまして、それをこの法律の中に神人ができなくとも、運転手については、この限度が適当なのであるということを、これを雇用者にも示して、そしてそれ以上にはやらせないように何らかの法的措置、そういうものがあってしかるべきではないか、私はそういうふうに思いますが、そういう方向で今後警察庁当局には、せっかくなすっている科学的研究を活用される意味でも、そういう方向でやっていただきたいと思うのでございますが、長官の御意見をひとつもう一度お伺いしたい。
  56. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 ただいまおっしゃったようなことは、実際上の行政指導の面においてはやっているわけでございますが、法的措置としてこういうものを十分書き込んだらどうかという御意見かと思います。疲労度というものが科学的な研究の結果、ちょうどここに酒酔いというか、酒気帯び逆転ということばがございますが、それにカッコ書きをしてアルコールが何度以上というような調子のものがございますが、ああいう形で何らか人の疲労度というものが客観的な数字によって出るというような段階になりませんと、法律の中にこれこれ以上のものは疲労とみなして、それをさした者、あるいはしている者は罰するんだというようなわけにはいかないかと思いまするが、まあ科学も進歩している今日でございますから、あるいは近い将来において研究の結果、そういう測定というものができ、かつ世間が納得し得るような標準というものができまするならば、取り込むことが当然なことだ、こういうふうに考えます。
  57. 華山親義

    華山委員 ただいま課長さんがおっしゃいました科学的研究というのは、まさにそのことではございませんですか。そうでなければまさに長官のおっしゃったように、ある段階では線を出して、その線の範囲内でひとつ労働をしてもらおう、こういう御趣旨で科学的研究をお進めになっておるのではないかと思いますが、そうではございませんか。
  58. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 さようでございます。
  59. 華山親義

    華山委員 そうでございましたならば、その科学的研究を大いに進められて、そして一つ単独法なり特別法なりで、これ以上の労働をさせる、運転をさせるということはやめてもらう、こういうことまでやっていただかなくてはならぬのじゃないか、そういうふうなことで、これはよけいなことになりますけれども、現在のタクシー代なり、あるいはそういうふうなものが、労働の過重、そういうことによって危険を一般大衆に及ぼすような賃金またタクシー代ということであればこれは間違いでございます。むしろどうしても労働時間はこれ以上の労働をさせてはいかぬ、大衆に迷惑を及ぼすということであれば、これに見合うような料金であってしかるべきものではないか、単にその経営体の規模、経営体財政内容だけで云々できないのじゃないか、私はこういうふうに考えまして、できるだけひとつ科学的根拠労働時間等につきまして、運転手過労におちいらないように今後御研究を願いたいと思います。  それから伺いますが、先ほどから両罰ということをおっしゃいますが、これにつきまして私はなはだ疑問に思いますが、これにつきましてお尋ねをいたしませんでしたし、また確答もいただきませんが、一体罰金刑だけでいわゆる両罰というものの目的が達せられるものでございましょうか。たとえば管理者が悪いということで罰金刑に闘われて罰金を出す、その際に、その会社が金を出してやる、それだけでは何にもならないのじゃないか、その点についてお考えを伺いたい。
  60. 宮崎清文

    宮崎説明員 これは刑罰法規の問題でございますので、本来ならば法務省当局がお答え申し上げるのが筋かと思いますが、私の承知しております限りにおきましては、先ほどから申し上げましたように、一般的に両罰規定の場合には、法人なり雇用者なりの、一般的な監督に対する責任から発しておるものと思われますので、特に具体的な危険等につきまして、これも先ほど申し上げましたように、教唆幇助したというような場合には、それぞれの罰則規定に準じてこれは罰されることになっておりますので、そのような具体的な場合につきましては、あるいは懲役を課される場合もあろうかと思いますが、一般的な監督範山内におきまする責任におきましては、現在の罰金刑が相当ではなかろうかと、私はかように承知いたしております。私は専用象ではございませんので、専門的なことはよくわかりませんが、私の承知しております限りではそのように思います。
  61. 華山親義

    華山委員 お聞きをいたしたところ雇用者及び管理者につきまして、私はこの罰則の面から予防的措置罰則を課せられることは軽いと思う。現存の情勢におきまして、そういう血につきましてさらに雇用者及び管理者責任というものをもっと強く打ち出していただきたい、こういうように希望いたします。  それからひき逃げが非常に悪質なものがありまして困るわけでございますが、ひき逃げというものの現実にあったこととこの検挙数とはどんなふうに相なっておりますか。
  62. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 ひき逃げの件数を御説明申し上げますと、昭和三十八年度におきまして人身事故と物件事故と両方あるわけでございますが、人身で申し上げますと死亡が五百十四件、それに対しまして検挙をいたしました件数が四百十四件ということになっておりまして、検挙率は八〇・五%ということでございます。重傷が二千百四十三、軽傷が八千九百七十六、それぞれの検挙の件数は七二%、七五%、こういうことで、平均いたしまして人身の検挙件数は七五・三%ということでございます。人身の事件は約一万一千六百件ございまして、いま申し上げたように検挙件数が八千七百六十一件、七五・三%という数字でございます。これは三十七年度に比べて総体といたしましては一・八%の検挙率の増加ということになっております。
  63. 華山親義

    華山委員 私心配するのでございますが、いろいろな点で刑罰を重くいたしますというと、ひき逃げがますます多くなるのじゃございませんでしょうか。これが確かに検挙されるということであれば私はいいと思いますけれども、七五%の検挙率、これは私は相当の成績だとは思いますけれども刑罰が重くなるとますますこわいからひき逃げしてしまう。そういうふうなことについての御心配、予防的意味で、ひき逃げすると重刑になるのだということを、何か予防的な措置でなすったことがかえって逆になるようなことはないものでございましょうか。
  64. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 間々そういう例はございます。ひきまして、これはたいへんだというので逃げる。しかしこれは元来人間の問題としては最も恥ずべき行為でありまして、法律規定しておりますところの現場の救護措置をするということは、運転手の基本的な問題として当然やるべきことでありまして、これらのひき逃げに対する罰則を強化したからひき逃げがふえるということでは、これは一般国民の水準の問題ということにも関連いたします。もちろんそういうことの具体的な実例はございますけれども方向といたしましては、私どもはひき逃げ事犯の予防といたしましては、やはり罰則を強化していくということが一つの要求であるというふうに考えております。
  65. 華山親義

    華山委員 あなたのおっしゃることは正しいと思いますよ。そうだと思います。しかし現実にひき逃げをするような人というものは、教養の低い人なんです。また現在におけるところ運転をしている人は、あなたのおっしゃるようなりっぱな紳士ばかりではない。そういう場合に、私はこのひき逃げの罰則を高くすることに反対するわけではありませんけれども、検挙率というものがうんと高くて、ひき逃げをすればつかまえられるのだ、こういうふうな域に達しませんというと、私はかえってひき逃げを多くするようなことになりはしないかということを心配して申し上げるのでございますが、ひき逃げに対しましての検挙率を高めるというふうなことにつきまして、特にこの罰則を高めたという機会に強化されなければいけないと思いますが、何かそういうふうなお考えはございますか。
  66. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 確かにおっしゃる点はよくわかります。したがいまして、私どもは単に罰則を強化したのみではいけない、結局ひき逃げをしたら損だ、必ず検挙されるということでなければ、すべての犯罪の防遏にはならないわけであります。これは単にひき逃げばかりの問題ではなく、一般犯罪につきましても、その犯罪を検挙することがやはり防犯の第一の手段でございますので、私どもといたしましても、ひき逃げ事犯の検挙の体制というものに対しましては、できるだけ捜査体制を充実するということで、先般来増員をお願いいたしましたものの中から、それぞれ必要な数字の捜査専従員を設けまして、あるいは関係府県の連絡を強化することによって、それぞれの府県間の捜査の協助体制を強化する、あるいはパトカー等の機動力をつける、あるいはいろいろな現場に遺留されましたところの鑑識のいわゆる科学捜査という面についての体制を強化をする、あるいは犯罪捜査のための予算をふやす、こういうようなことで、いわゆるひき逃げの捜査体制の強化というものにつきましては、本年度の重点といたしまして種々具体的な努力をいたしているところでございます。
  67. 華山親義

    華山委員 私の心配することのないようにひとつお願いいたしたいのでございます。  それから話が変わりますが、地方にも東京にも交通安全協会というものがございます。交通安全協会というのは、あれは何かこう自動的に各府県に一般的にできておるものでございますか、あるいは警察のほうで御指導をなすってああいうものをおつくりになったのでございましょうか。
  68. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 交通安全協会はもうずっと昔からございますが、全国的な組織として東京に連合会があり各都道府県に都道府県単位の交通安全協会があることは御承知のとおりでございますが、これは別に法律があって、それによってつくっているということではなしに、歴史的にいつごろからできたものかということはちょっと存じませんけれども、昔はほとんど警察部長なり、警察の関係者がその責任者としてやっておったというようなことからすれば、初めできた当初は、あるいは警察側の強い要請によってできたのじゃなかろうかと想像いたします。しかし戦後におきましては、ああいう性質の団体というものは、あくまでも行政責任者そのものがやる性質のものじゃないということから、ほとんど例外なしに、現在におきましては民間のそういう面の有識者あるいは業界の関係者というような方がこれを運営されて、その補助的な機関にはもちろん警察出身者なんかが入っておりますけれども、現在におきましては警察がこれを強制して、警察の思うままに運営をしているというような状態ではございません。
  69. 華山親義

    華山委員 地方によって違いましょうが、交通安全協会の経費というものは、どんな金が集まってできておるものでございましょうか。
  70. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 御指摘のように、地方によって多少の差はあると思いまするが、原則として交通関係している、たとえば自分で車を持っている者、あるいは車を運転している者等の会費が主になっております。
  71. 華山親義

    華山委員 私も地方におりましたときに、民間の人が会長か何かになりまして、私は役人だったのでございますが、私と警察本部長が副会長かなんかをやらされておりましたのでございますが、そのとき、これは警察庁のお仕事でないというならば、それでもやむを得ないかもしれませんけれども運転手の方々から会費を取るというふうなことは、私はその当時思わしくないなと思っておったのでございますが、運転手から金を取ることはやめるというふうな御指導はできませんでございましょうか。
  72. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 会費を運転手から取るということについても、自家用運転手であれば自分個人で出すということになりましょうし、雇われ運転手であれば、それを雇っている会社なり、団体なりが出すということになると思いまするけれども、その辺のことはここで取ることが適当であるかどうかということについては結論を申し上げる段階じゃないと思いまするけれども交通安全協会の事業そのものが、交通に従事している運転手等に、ことばとしてはおかしいのですけれども自分たち自身の出したもので自分たち自身の交通安全のために役立つようなものとしてはね返ってくるというような運営にできるだけしていきたい、こういう面で私たちは指導していきたい、こう思っております。現在におきましては、まあ蛇足でございましょうが、不本意なことですけれども、正規な予算の足らないところをカバーするというようなことに相当部分が使われているということは事実でございますので、そういう面も、もちろん皆無にはできませんけれども、しかし交通安全協会の存立のほんとうの目的というものは、交通安全事業そのものでございますから、自分たちの出し合った金が自分たち自身の利益にはね返ってくるというような事業を推進していきたいということ、それからこういう公的なものについては、補助金というようなことも考えられましょうし、安全協会自身の会費以外の収入、たとえば事業収入というようなものも考えていって、なるたけ不満のないような運営に持っていきたいというのが私たちの気持ちでございます。
  73. 華山親義

    華山委員 いまのお話、私何も角立てて言うわけじゃございませんが、そうしますとやはり警察のほうは、交通安全協会にある程度の指導とかなんとか、そういうこともできる立場におありになるわけでございますか。
  74. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 指導と言ってはおこがましいかもしれませんが、いろんな団体はどこかの役所の系統につながるわけでございます。そういうつながり方からいうと、交通安全協会というものは、第一義的には警察とつながるものであるし、また人的な構成においても、その事務員等には警察から入っている者もたくさんございまするし、また現在交通安全協会のやっかいになっているというのは警察が多いというような意味から、指導ということばはいかがかと思いまするけれども、その運営の方向というものについては、こちらの考えというものが相当大きなウエートを持っているということは費える、こう思います。
  75. 華山親義

    華山委員 交通安全協会のいたします交通安全週間の施行であるとかなんとかいうことを、警察本部や県庁、市町村でやるというふうなことが不適当ではない場合も多いわけでございまして、そういうような経費につきましては県庁がこれを支出いたしまして、名前を交通安全協会でやるというふうなこともやっておりますので、私はいい会だと思うのでございますが、いまは少なくなったかもしれませんが、二、三年前までは農村、いなか等に参りますと、交通安全協会の交通標識が立っている。どうしてそういうことをやるのかと申しますと、公安委員会のほうでは指定してくれないけれども、このほうがいいと思ってということで、その土地の、町や市の人が安全協会でやっている。またはなはだしいのになりますと、運転手会という名で標識が立っている。そして、どうもわれわれが立てると引き抜かれて困るから、公安委員会で立ててくれというようなことを言うのでございます。私非常に混乱をいたしていると思うのでございますけれども、あの標識を立てるというふうなことは、これは民間の人がかってにできるものなのでございますか。
  76. 宮崎清文

    宮崎説明員 法律で定められております道路標識は警察または道路管理者しか立てられないことになっております。
  77. 華山親義

    華山委員 そうしますと、この道は静かに歩けというふうな安全協会等の標識も、あれは法律的には違法なんでございますね。
  78. 宮崎清文

    宮崎説明員 法律に基づくものではございません。ただそれを設置することが、したがって直ちに違法になるかどうかはまた別の問題でございます。
  79. 華山親義

    華山委員 別問題だというのは、どっちなんでございますか。違法なんでございますか、違法ではないのでございますか。
  80. 宮崎清文

    宮崎説明員 道路交通法上、あるいは道路法上定まっております道路標識は、一定の様式を持っております。様式がきまっております。それ以外に類似の標識を立てる場合には、あるいは道路標識の効用を妨げるような場合には禁止されております。あるいは屋外広告物法等による条例の規制を受ける場合もあります。いろいろな法令で道路に物を立てたり置いたりすることが規制されておりますが、これらの規制に違反しない限り必ずしも違法にならないと考えます。
  81. 華山親義

    華山委員 そういうものがめちゃくちゃに立ったのでは困るのではないですか。違法でないからどうでもいいのだということになって、はなはだしい——そんな場合はないと思いますが、父兄会が立てるとか、あるいは運転手会が立てるとか、いろいろな標識が立ったのでは困るのであって、違法でないということでなしに、そういうものはいけないのだ、立ててはいけないのだということにならないのでございますか。
  82. 宮崎清文

    宮崎説明員 その禁止の理由でございますが、道路交通法におきましては、先ほども申し上げましたごとく道路標識とまぎらわしい、道路標識を見間違いさせる、こういうものは道路交通法で禁止いたしております。
  83. 華山親義

    華山委員 そうしますと立ててもいいのでございますね。各人かってに立ててもいいのでございますね。
  84. 宮崎清文

    宮崎説明員 道路標識まがいのものは、いまも申し上げましたように禁止規定に触れると思います。これはなぜかと申しますと、道路標識の効用をそこなう場合が大部分でございますから。
  85. 華山親義

    華山委員 私は、民間の人が、あるいは民間団体が、そういうものを立てることは一切いけないという意味ではないのでございますけれども、やはり道路につきましてほんとうに調査をされて、必要なものは必ず立ててやる、官の経費で立ててやる。民間の人々の意見運転手意見、そういうものを聞いてそうして必ず立ててやる、そういうことをやりまして、むやみやたらに各人があるいは民間団体が標識を立てるというふうなことは、なるべく抑制するような方向、これは財政の面もありましょうけれども、そういう方向にいくべきではないだろうかと思いますが、どういうものでございますか。
  86. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 いまの問題につきましては、数年前からいろいろ問題になっております。それらの点について、たとえばよく広報手段、PRの手段として、警察署長が出しておりますいろいろな警察官の姿をしたようなものがあった例もございます。現在も一部残っておるところもございますが、そういうようなものに関連をいたしまして、道路の上にありますものは、法律的にきまった正規のものでこれを処理するというのが望ましいという趣旨で、警察署がPRのために出すものも一時的なものはもとよりそのときの状況によりますが、許容すべきでありますけれども、永続的にわたるようなものにつきましては相当に考えなければならないというので、路上にあります種々のそういうまぎらわしいもの、あるいは路上交通にいろいろな影響を与えると思われるようなものについては、これを整備していくという方向で、通牒も出しましてなるべく整備するという従来の経緯もございます。したがいまして、いま華山委員の言われたような方向で、私ども現実的には指導をしているわけでございますが、ときにはぜひ必要な場合においては、いわゆる啓蒙の手段としてそういうものを立てるというような場合もございますが、指導の方針といたしましては、いま申し上げたようなことで指導いたしておるわけでございます。
  87. 華山親義

    華山委員 それにつきまして、地方に参りますと運転手会というふうな名前で立っておるのがございます。これは運転手さんが自分運転の場合に、ここは非常にあぶないとか、あるいは気をつけてもらいたいとか、運転手の体験あるいは勘によって出したものだと思うのでございますが、そういう道路標識の立て方とか、そういうふうな運転の実務に当たっている人の意見を聴取するというふうなことが現実には行なわれておりましょうか。
  88. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 交通規制等をやる場合におきましては、私どものいわゆる官側の一方的なやり方というのは、必ずしも道路交通の実情に適合しない、その道路上を利用いたしておりますところの利用者の意見を聞くということが一つの要件であります。ただしかし、もとより利用者ばかりの意見ではならないわけでございまして、いま御指摘になりましたような点についてはいろいろな方法で利用者の意見を聞いて、そして車を運転している者の立場から見ても妥当である、あるいは警察の取り締まり、啓蒙する立場から見ても妥当であるというような方法を選んで、そういう方向で私どもは極力ややっておる次第でございます。
  89. 華山親義

    華山委員 これで最後にいたしますが、交通安全協会にいたしましても、あれは理事でございますか、会議に出てくる人は大体学校の先生であるとか、警察の方であるとか、会社の重役さんであるとか、県庁の役人であるとか、そういうことになっておりまして、現在運転をしている人、一番交通安全について責任が重大であり、責任がかかってきているところ運転手意見というものがあまり入っていないのじゃないか、そういうふうな状態でございます。今後警察のほうで御指導をされるということでございますので安全協会等につきまして、現に逆転しつつある人たち意見が反映するような御指導をひとつお願いいたしたいと思います。  これで終わります。
  90. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 お答えいたします。  ただいまの御議論を承って、私も全く同感いたすものでございます。ただ交通安全運動は、若干のものがいかにあせってみたところで実効はあがりませんので、だれかれの差なく、最も効果的に実効をあげ縛る者を網羅いたしまして、そしてその場所場所で事故を防いでいくというのが一番賢明でもあるし、やらなければならぬと考えております。そこで先般来交通基本問題調査会で一つの答申を出しております。これを何らかの形で一日も早く実現するという努力を私たちはいまいたしつつあるわけでございますので、その中にいま先生が御指摘になっておる問題が非常に重要な意義を持って取り上げられておるわけでございます。「地域社会おける交通安全思想の普及徹底方策」というのをすでにお読みいただいておると思いますけれども、その中に「地方公共団体は地方自治法に基づき交通安全保持に関して有する責務にかんがみ、交通安全思想の普及徹底に努めること。」これは自治省としても、当然地方公共団体に関連いたしますので非常にこの問題については責任を感じておるわけでございますが、さらに「交通安全思想の普及運動の推進母体として、自動車保有者及び運転者を組織すること。」ということも入れておるわけでございます。全く御指摘のとおりでございますが、こういう問題につきましてはみな実際知恵を出し合って、現状では実効があがっておらぬわけですから、これにつきましては御説も十分考慮いたしまして、そうして一日も早くこういう形をつくりたいと考えております。
  91. 森田重次郎

    ○森田委員長 栗山礼行君。
  92. 栗山礼行

    ○栗山委員 別な委員会に入っておりまして、建設者の道路局の御関係の方にたいへん御迷惑をおかけいたしました。おわびをいたします。  お尋ねを申し上げる点は例の車両制限令に対する問題で、ぜひともお伺いいたしておきたい、このようなことで御迷惑をおかけいたしましたわけです。御承知の車両制限令がしかれましたゆえんのものについても、わが国の道路の問題あるいは運輸行政の問題、特に警察の交通行政の観点から、日本の実態のやむを得ないものとしての制限措置をされた、このように理解をいたしておるのであります。ただしその事柄は、制限令でございますから年限も付されておりまして、いわゆる一つの総合行政と申しますか、そういう観点からこれをどのように進めてまいるか、おのずから大きな役割りと内容があったと承知いたしておるわけです。御案内のとおり、はやもう三年が経過するという段階になってまいっておるのであります。三年を振り返ってみて、この制限令の処置として、建設省及び各省の関係機関において、この問題をどのように対処されてきたか、なかんずく建設省の道路行政といたしまして大きなウエートを持っておると思うのであります。わが国の道路行政をながめてみて、日本の経済社会の実態に対処してどのように新しい方向づけをするか、これは厳粛な日本の政治の課題でございますことは申し上げるまでもございません。こういう点から、建設省が意欲的にこれらの問題にお取り組みをいただいたと承知いたすのでありますけれども、私はこの三年間を振り返って、特に大きな期待とウエートを持っております建設省のこの種の道路行政についてどのように御配慮と施策を行なっていただいたか、こういう点についてお尋ねを申し上げたい。
  93. 三橋信一

    ○三橋説明員 お答え申し上げます。  ただいま先生の御指摘のございましたように、そういう観点車両制限令というものを昭和三十六年につくったわけでございます。ちょうど昭和三十六年と申しますと、第三次の道路整備五ヶ年計画を三十六年から発足いたさせまして、その規模二兆一千億でございました。その際にたまたま——道路法が昭和二十七年ごろできまして、車両制限の政令をつくるという根拠はあったのでございますけれども、何せ道路整備がそれほど進んでおらない、そういう状況下におきましてただ一方的に通行を制限するということでは、これは片手落ちではなかろうかという議論もいろいろございました。したがって、道路法が二十七年にできましたが、そのままえんえんと延びてまいった。しかしながら二兆一千億という道路整備五ヶ年計画を三十六年度から発足させるという時期にあたりまして、たまたまその当時非常に狭い道路で大きな車が走りまして、そのために人身事故がかなり起きたという事態も現実にはございました。それらの条件がいろいろマッチいたしまして、思い切ってひとつ三十六年度から車両制限令を発足させようということになったわけでございます。その後車両制限令におきましては、御案内のとおり路線バス、路線トラック、いわゆる路線系統の運輸事業の車、これについては社会的影響もかなり大きいから、これだけは三年間猶予しようということで、昭和三十九年の七月三十一日まで適用を延期するという措置を講じておりました。その間におきまして国からの補助もいたしましたし、また道路管理者、つまり都道府県なりあるいは市町村でございます。そういうところにおきましてもおおむね本年度まで約二百億の事業を行なってきております。その事業と申しますのは、おもに拡幅をする、あるいは退避所を設置する、そういうような事業をやってまいりました。  それから、それと並行いたしまして、道路管理者の側、警察の側、それから陸運行政の側、この三者がバス路線、あるいは路線トラックの走っております道路につきまして、具体的に検討を加えまして、これは各県で行ないますと同時に、中央におきましては、各省の間でそういう集まりをいたしまして、具体的に検討してまいりました。そのようなことによりまして、バス路線を太い道へ移す、あるいは一方通行の措置をとる、そのようにして今日まできておるわけでございます。  現在の状態をついでに申し上げます。大体一日前に各県からデータをとりましたところによりますと、全国で約二千キロ程度の支障個所がございます。そのような状態に相なっております。
  94. 栗山礼行

    ○栗山委員 経過並びに施策の内容をお伺いいたしましたわけで、かなり制限令の意図する状態について、道路行政の上においても、二百億の金を投じて拡幅問題やその他の問題に取り組んでまいった、こういうきわめてけっこうなお話を伺ったのでありますが、それはそれなりに大きな成果があろうかと思うのです。お尋ねをいたしますことは、現在まだ全国に車両制限の違反に屈する道路が相当あろうと思うのでありますが、そこにバス等が常々と闊歩して運行をいたしておる、こういうふうな事実をわれわれも承知をするわけでありますが、道路局のほうは、いま何千キロくらいこの種の道路を手がけられていないか、この点についてひとつ資料がございましたらお話をいただきたいと思います。
  95. 三橋信一

    ○三橋説明員 ちょっとお尋ねの点が、私あるいは誤解しておるかもしれませんけれども車両制限令が適用されておるのは、これは全国の道路でございますが、その中で路線系統のバス、トラックが現在は適用が猶予になっております。それをはっきりと適用したら支障を起こすところがどのくらいかというお尋ねでございましょうか。——それについてお答え申し上げますと、先ほど申し上げましたように、いま直ちに車両制限令を適用するといたしますと、その延長は約二千キロ支障個所があるということになっております。
  96. 栗山礼行

    ○栗山委員 ありがとうございました。これは制限令の意図いたしておりますのは、たとえば大型の通るところというのはおのずから制限しなければならぬ。したがって、大型バス、大型トラックというようなものについては猶予した、こういうことになりますが、おのずからそこに現実的な、対処する形としては、大型に対して規制をするとか、たとえば小型バス化の方向等も持って、それに応急的な対処をする問題が必然に起きてきょうかと思うのでありますけれども、それらのことについて、各省と御協議をなさったことがあるかどうか、あるいはそういう一つの実績の事実を見ることができるか、それをどのように把握されていらっしゃるか…。
  97. 三橋信一

    ○三橋説明員 お答え申し上げます。あまりはっきりした実績と申せるかどうかはちょっと自信がございませんけれども、バスを小型化した実績で私が承知しておりますのは、東京の阿佐ケ谷付近で小型にした実例を聞いております。それからもう一つ、これは自動車の小型化という問題ではございませんが、車両制限令が三十六年にできまして、以後そのように道路と車の関係で大きさが合わないというような路線については、免許をいたしておりません。そういう実績も一つございます。私の承知しておることは、実はそこいらでございます。
  98. 栗山礼行

    ○栗山委員 制限令の除外規定をいたしておるわけでありますから、おのずからそこに大型バスが通るというこもやむを得ない、こういうことに理論上、実際上発展する可能性がございまするけれども、それに対しましては、おのずからそういう一つの暫定処置をとっていかなければならない。たとえば私どもいなかにおるのでございますが、幅の狭いところ、十分な道路でないというようなところは、まことに通行上危険を感ずる。その道路でなければ通行困難だ、こういう条件も出てまいるわけでありますから、そういう場合は、私ども考え方では、待避所の設置というような問題等も検討して、そういう施策の補強策を講ずる、こういうことも望ましい姿の一つであろうかと思うのでありますけれども、建設省はそれらの条件についてお取り組みになったかどうか、その点についてひとつ……。
  99. 三橋信一

    ○三橋説明員 先ほど、制限令ができましてから約二百億程度の金を道路管理者が投じておると申し上げましたのは、相当部分が退避所でございます。退避所を三百メートルごとにつくればある程度条件緩和ということにもなりますので、おおむね三百メートルごとに退避所をつくるということで、補助も相当いたしましたし、また道路管理者側において、県なり市なりの単独費を用いたという実績がございます。  なお、車両の幅につきまして、これは運輸、警察、建設三者が中心になっていろいろ相談をいたしておりますが、通産省あたりへもそういう意見を申したことはございます。しかし、残念ながらバスの営業、特に地方のバスの営業の関係からと思われますけれども、大型の都会における中古バスを買っていくという事例がかなり多いようでございます。そういうような経営上の問題と申しますか、そこいらのほうはあまり効果があがっておらぬ、遺憾ながらそう申さざるを得ないというように判断しております。
  100. 栗山礼行

    ○栗山委員 どうなんでしょう。建設省が見られて、いわゆる退避所の設置の問題でありますが、全体必要とする退避所設置は何カ所ぐらいと想定をされておるか。いまの三百とは、そういう中からの最も重要だというような一つ方向で、予算との関係もございますけれども、おやりになっているのかどうか。あるいはまた、将来退避所の設置問題については、道路行政としてはどのような方向づけをしようというお考えを持っていらっしゃるのかどうか、こういう点についてちょっとお伺いいたします。
  101. 三橋信一

    ○三橋説明員 いま申し上げましたのは三百メートルでございまして、三百メートルごとに退避所を設置すればある程度条件のかなう道路がかなりございます。そういうものにつきまして、従来道路の補助体系の中で特殊改良という補助体系がございます。それによりまして退避所設置の補助をしてまいったわけでございます。それを先ほど申し上げたわけでございまして、全国で幾つぐらいつくればいいかということはちょっと私どもつかみかねますが、先ほど申し上げました約二千キロの支障個所がある。この中にはいわゆる市街部と申しますか、主として大都市でございますが、市街部の支障個所が約八十キロ近くございます。残りは市街部とは関係のない部分でございます。その市街部と関係のない部分、約二千キロになりますが、これを最低限車両制限令に即応するような規格まで改良するということにいたしますと、概算いたしまして、約百十億ぐらいの金でできるのではなかろうかというふうに考えております。
  102. 栗山礼行

    ○栗山委員 先ほどお答えをいただきました地方におきます制限令の適用範囲道路というようなことになると思いますが、そこらにやはりこの制限令が設けられた後における交通事情ということによって地方からバス申請が出てくる。したがって運輸省は、この種の問題もあるが、これを許可する、こういうような内容等も私どもはお伺いするわけでありますが、これは何カ所ぐらい認可してどうだというようなお尋ねをするのではなくて、運輸省のそういう処置というものについて、この種の制限令下においてそれが妥当なる処置であるか、あるいはそれが一つの総合施策の方向としてのいわゆる運輸省独自の態度であるかどうか、こういうふうな点について御所見を伺っておきたいと思います。
  103. 三橋信一

    ○三橋説明員 所管が運輸行政の問題になりますので、私どもあまりはっきりしたお答えがちょっとなしかねる面もございますが、バス路線等を免許いたします際には必ず道路管理者意見を聞いております。私どもの知っております限りでは、制限令ができましてから、抵触個所になるようなバス路線というものは免許しておらない。したがって、そういう個所を通るような路線で免許申請が出てまいりました場合には、それを行政指導等によってルートを変える、あるいは場合によりましては道路管理者が待避所等を設けるというような措置をとりまして、条件を満たすようなかっこうにして免許をしておるというふうに承知しております。
  104. 栗山礼行

    ○栗山委員 先ほど申し上げましたように、三年間の経過というものは目前に迫ってまいりまして、いろいろ各省間で御検討あるいは独自の御検討をされたことと思うのでありますが、こういう三年間を経過して、今後これをどのようにするかということも一つの課題になってくると思うのですけれども、この時点において建設省は関係各省との間におけるどのような話し合いあるいはどういう取り組みをされておるか、これは建設省の立場でけっこうでございますから、お聞かせをいただきたい。
  105. 三橋信一

    ○三橋説明員 ただいまのお尋ねの点でございますが、三年目の七月三十一日がもうそろそろ口前に迫ってきております。そこで私どもといたしましては、現在この三年間でどのような状況になったか、現時点における状況を把握することにまずつとめました。それの結果が概略先ほど申し上げたような状況でございます。そこで、これらを今後どう処置するかというのがお尋ねの中心だと思います。これにつきましては、各県あるいは中央においては、先ほど申し上げました三省においてかなりひんぱんに打ち合わせをやっております。しかしながら私どもといたしまして、この制限令の趣旨というものは、これは交通安全あるいは人命を尊重するというような意味からまいりまして、ただ野放図にゆるめるべきではないというふうに考えております。といって現実に路線バス等におきましては、都会においては相当の人が利用しております。またいなかにおいては一日に二回、三回しか走らないというような地方もございます。バス以外に交通機関がないというような場所もございます。そこらを勘案いたしまして、先の見通しを持って若干の猶予はやむを得ないのではなかろうかというふうに考えておりますけれども、その結論につきましては、いましばらく各省並びに建設省内部で相談を進めたいというふうに考えております。
  106. 栗山礼行

    ○栗山委員 私はこれ以上お尋ね申し上げることはよしたいと思いますが、ただ要望だけ申し上げて御検討をお願い申し上げたいと思います。  関係各省の意見を率直に私は伺ったのでありますが、制限令の趣旨とするところについて十分沿わない要素も相当あるようであります。また私どもも、これについて多くの意見を寄せておるわけであります。また聞くところによりますと、何かセクト的な、責任のなすり合い的な要素も必ずしもないことはないというような議論等もお伺いをいたすのであります。中心は、いまおっしゃいましたけれども交通安全というような問題だけのことではなくて、やはりわが国の経済、産業発展の一つ観点からこれをとらえていかなければならぬということでありまして、建設省のほうがやはり道路行政としての意欲的な条件を取り組んでいただき、その上でその輸送行政の実をあげていただく、こういうことでなければだめなんだという結論を私は持っておるわけであります。延長の問題は別といたしまして、それはそういう角度から、単に時間がきたからひとつそれにピリオドを打つ、こういう内容でなくて、その実を示す内容関係各省と御検討いただいて、これの成果をはかる努力をせめて願いたい、こういうことをお願い申し上げます。いろいろありがとうございました。時間がございませんから二、三点だけ警察庁にお尋ね申し上げて、お答えをいただきたいと思います。  交通裁判制度の問題についてお伺いいたしたいと思います。長官でも局長でもどちらでもけっこうでありますからお答えをいただきたい。  最近のような交通の煩瑣から、必然に交通違反行為というものが激増してくる。これに対処する方向そしてこれをできるだけ簡素化する、こういう趣旨のもとに、いわゆる切符制度によります簡素化の行政処分の処置をとられた、このように私は理解をいたしておりますが、その実態をながめますと、いろいろ問題があるやに私は承知するわけであります。一つは、やはりあまりにも本人の申し出あるいは実情というものを十分反映されないいわゆる裁判自体のあり方という点に問題があるのではないか。いろいろ法律家の意見によりますと、全く一つの裁判それ自体の冒涜ではないか、形式化した内容に進んでおるのではないか、こういう意見も補足して指摘されておる論者もあるようであります。いま一つは、あまりに簡易化されまして、本人の実情なり苦情というものが反映されなくて一方的に処断される、こういう傾向から、勢い違反をいたしました者が行政罰について金で割り切って、これを違反行為という自覚を深めるということでなくてマンネリ化する。来たかホイサということでありまして、そういう割り切り方をするという弊害が顕著に行なわれておるのでないか、こういう考え方もいたすのでありますが、今日の交通裁判制度について、あるいは実情についてどのように把握されておるか、こういう点についてお尋ね申し上げたいと思います。
  107. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 事は裁判に関する問題で、独断的な見解は避けたいと思いますが、一応私どもの現在考えております問題点について御説明をしたいと思います。  御指摘のとおり、現在行なわれておりますところ交通事犯に対する即決処分というものにつきましては、必ずしもこれが裁判の権威を保持しているものであるかどうか、あるいはその結果について、はたして違反者に対して十分刑罰としての権威を確立してあるかどうか、こういうような点については、確かに問題があるかと思います。  そこで、私どもといたしましては、やはりこれらの交通事犯の現在の社会的な実態というものに照らしまして、やはり違反を防止するためにはいかなる制度を取り入れたらいいか。もし違反をした場合においては、この再犯防止のためにいかなる手段をとったらいいかというような点について、いろいろと諸外国等の例を見て検討いたしておるわけであります。また裁判所の関係におきましても、あるいは法務省等の関係におきましても、いろいろこれらの問題については真剣に検討いたしておるようでございます。  そこで、一つ考え方といたしましては、そういう交通事件の処理のための司法制度全体についてメスを加えて、いわゆる交通裁判というようなものの制度を基本的に考えるかというのが一つであります。あるいは現在行なわれておりますところの即決処分をさらに拡充いたしまして、これを全国的にやっていくが、しかし、その中の罪種につきましては、これにかけるものについてもっと限定をしていったらどうだろうか、こういう議論もあるわけでございます。したがって、先ほど来議論に出ておりました刑罰でなくて、いわゆる過料であるとか、あるいは通告処分というような制度を取り上げて、筒切に問題を処理するというために、現行のいわゆる切符制度よりもさらに簡易化されたものの罪種の範囲考えていまのような問題を検討するかどうか、こういうような問題があるわけでございますが、しかしそこで問題になりますのは、この種の違反を犯したときに金で解決すれば、すべてが終るんだというような一つの誤った考え方になってもいけないという半面の配慮もあると思いますので、これらの点を総合的に考えて、交通秩序の保持をするために、違反に対する予防と処罰と、それからこれの手続について現状に即するような考え方をとるかというふうな点については十分検討をいたしたい、こういうふうに考えております。
  108. 栗山礼行

    ○栗山委員 いまの即決裁判という事態が、局長がお述べになりましたような適正な処置であるかどうか、こういう点については本質的に非常に問題があると思います。同時に、これの違反を犯しました対象者というものが、問答無用だといって一方的に押しつけられるという一つの受け取り方を、その正否は別といたしまして、受け取るのじゃないか。ここにたいへん問題点が介在する、こういうことに相なってくる。言うならば悪循環だ、こういうことで金にのみこれを理解して、一つの犯罪としての、あるいは違反行為としての内容の自覚性というものを本質的に喪失してしまう、こういう関係等を生んでおるということからながめますと、そこには公平性の問題と、それからそういう真に改める、注意をするという点を含めてこれの問題を処理するということでなければならない、こういう感じがいたすのでありますから、いまの簡潔な即決処分というところにどうも無理があるように私は考えるのであります。  そこで前回の衆参両院におきましても附帯決議をいたしましたが、苦情処理機関と申しますか、そういうものについてやはり検討を加えて、これについての一つの方策を立てていただこうというようなことがその附帯決議の趣旨とするところではないか、こういうふうに考えるのでありますが、実情からかんがみまして、その種の苦情処理機関というものを設けるという考え方で御検討願っておるかどうか、この点についてお伺いを申し上げます。
  109. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 苦情処理の問題につきましては、ただいま御指摘のような場合における苦情処理も一つの重要な問題かと思います。現在といたしましては、私どもも現行の制度の中でできるだけ苦情の処理をしていくという方法をやはり考えるべきではないだろうかということで、それぞれの問題についていろいろと苦情処理的な機関を設置しておりますが、必ずしもこれらに対する人員の問題とか、あるいは運用の問題で十分制度の趣旨を生かし得ないという問題もありますので、やはり御指摘のような趣旨で、苦情処理という問題をも含めて、適正な処理ができるということを前向きでねらっていくという趣旨から言えば、さらに制度の基本にさかのぼって考え直してみるべき時期にきておるのではないだろうか、こういうふうに考える次第でございます。
  110. 栗山礼行

    ○栗山委員 御意見だけ伺ったのでありまして、ぜひひとつ検討を深めていただいて、そういう適正な機関が将来設けられまして、公正と、そして交通惨禍というもの、あるいは違反行為というものを減少させる方向に努力するということが、やはり基本的な姿勢でなくてはならぬ。このように考えますので、せっかくの御検討と施策の実現の方向づけをお願いを申し上げたい。こういうことでこの問題を終わってまいりたいと思います。  次の問題は、いろいろ議論されたのでありますが、私は二重罰という問題について、その本質を理解できると思います。行政罰刑事罰というその内容構成によって、そういうものが生まれてくると思うのでありますが、また一面見ると、非常に大きな矛盾と食掛というような事態になると思うのであります。収入が減ずる、あるいは皆無であるというような一つの事態になって、免許を取り上げられて、加えてこれに一つ行政罰とする。また罰金、こういうような事態についてあまりに混乱を来たす、あるいはまた制度的に非常に無理な内容をもたらす面があるのではないか、こういう一面が考えられると思うのでありますが、この種の二重罰について基本的な問題の考え方は理解できるのでありますけれども、具体的な内容について、やはりいま少しこの問題の実情に沿わない面について、これを検討されておるかどうか、あるいはこの点についてどういう見解をお持ちになっておるかということをお伺い申し上げます。
  111. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 行政処分の運用の問題かと思いますが、私ども行政処分の運用につきましては、これらの運用の適正を期するということが制度の趣旨であります。したがいまして私どもも最近と申しますか、ここ二、三年いろいろ行政処分の実態というものについて調査いたしました。一つの問題は、やはりそれぞれの県によって行政処分を受ける諸基準といいますか、標準が必ずしも統一していない。この問題につきましては、最近の交通警察の実態が広域化しているということから考えて、各府県の不均衡を原則的に統一するために統一的な基準を考えなければいかぬというので、そういう点については着々と種々の基準をつくり、施行をし、改めるというようなことでやっておるのであります。  さらにもう一つは、行政処分がきわめておくれるという問題でございますが、これはやはり行政処分の性質から、取り消しもしくは停止等の、権利の剥奪と申しますか、非常に影響するところが多いので、慎重にやっているという点もございますが、反面、またこれらの点についての体制が十分でないということで、行政処分を担当する体制といいますか、免許行政に関連をする体制の強化というようなことを充実して、いまの行政処分の迅速適正化ということをはかっておりますが、しかし実際の実態を見ますと、必ずしも運用よろしきを得ているとは私ども思っておりません。したがって、この行政処分の運用の問題については、今後具体的な例、その他全国的な水準あるいはやり方というようなものについて総合的な見地から、先ほど来御指摘のような、刑罰の問題あるいは違反を防止するための措置の問題、あるいは講習制度との関連等の問題というような総合的な問題から違反防止に重点を置いていく、あるいは教育的な安全教育を推進していくというための一つの問題というような見地からとらえていきたいというふうに考えまして、現在真剣に検討いたしておるところでございます。
  112. 栗山礼行

    ○栗山委員 お説を伺う限りにおいて、その基本的な考え方について私との相違はございません。ただ、それを具体的にどのような一つ方向づけをするかということ、こういうことがいまの時点で最も急務じゃないか、こういうことでございますから、せっかく可及的すみやかに、いまの御検討の実施の方向に御努力をお願い申し上げたい、こういう要望を申し上げまして、この問題を終えたいと思います。  最後に、私も勉強が足らないのでありますけれども、アメリカで行なわれておるということを承知いたしておるのでありますが、ポイントシステムを実施して、やや合理的なシステムだ、こういうことを伺うのでありますが、交通局のほうではポイントシステムについてどのようにお考えになり、あるいは御検討されておる内容がございましたら、ちょっと教えていただきたい。
  113. 宮崎清文

    宮崎説明員 ただいま御指摘のありましたポイントシステムは、先生の御承知のように、アメリカの大部分の州で採用いたしておりまして、相当の成績をあげていると聞いております。  内容を簡単に御説明申し上げますと、運転者違反をやりました場合に、その違反の形態に応じましてそれぞれ点数を与えまして——これはもちろん将来の危険度から算定いたしました合理的な点数をそれぞれ与えまして、その点数が一定の点数に達しましたときに取り消しをするとか停止をする、こういう制度でございます。  この制度をとりますと、先ほど局長が申しましたように、府県によって差が出るというようなことがなくなる。それから相手方も、自分がこれだけの違反をしてこういうふうになったのだから、あらかじめどういう処分を受けるかということが予測される、こういう点で非常に合理的な制度じゃなかろうか、かように考えまして、わが国におきましてもこれを近い将来に採用すべく目下検討中でございます。
  114. 栗山礼行

    ○栗山委員 どうもありがとうございました。
  115. 森田重次郎

    ○森田委員長 それでは、大臣がお見えになりますまで、このままで暫時休憩いたします。    午後零時十六分休憩    午後零時二十三分開議
  116. 森田重次郎

    ○森田委員長 再開いたします。  質疑を続行いたします。佐野憲治君。
  117. 佐野憲治

    ○佐野委員 道路交通法の一部を改正する法律案の具体的内容は三点に分かれると思います。  その第一点は、国際道路条約加入に基づいてキープレフト制度を採用するということ、それと関連して、国際運転免許証及び国外運転免許証に関する制度を規定する、これが第一点だろうと思います。第二点におきましては、車両交通方法に関する規定を改める、運転免許制度の合理化をはかるための所要の規定整備するということ。第三点には、交通事故の場合の事後措置義務違反並びに酔っぱらい運転の禁止違反、不正免許証所持に関する罰則を強化しておる点、この三点にかかわるわけであります。  私、とりあえず、まず国際道路条約加盟に基づくキープレフトの問題につきまして、いろいろ先般来各委員から質疑が行なわれておりますので、この機会に当局から確認を得ておきたいと思うのです。  と申しますのは、国際道路条約加入に伴いまして、わが国における道路の現況、道路交通の実情から考えてみましても、これを全面的に受け入れるということは、種々の困難を伴っておることは言うに及ばないと思います。特にキープレフトの問題につきましては、わが国のように歩道、車道の区別のない混合交通道路状態に直面いたしましたときには、たとえこの原町を採用いたしましても、実際的に適用することになってまいりますと、ほとんどが適用除外例に該当するのじゃないか、かようにも考えますし、当局の言明もほぼそれに近いようなお話であったのでありますが、ここで確認しておきたいのは、現在においても、名神自動車専用道路におきましてはそれに近い実施が行なわれておるわけでありますが、この条約加盟による道路法の改正が実施されましたときにおいてはどのような道路がこうしたキープレフトの採用の対象になるか、これに対する当局の考えをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  118. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 名神高速道路におきますような車両の通行方法は、いわゆる国際道路条約におきます理想的な形態としてのキープレフトの原則だと思います。ただすべての道路について、名神高速道路と全く同じような車両帯があるわけではございませんので、それらの点について、特に歩車道の区別のないようなところ、あるいは歩車道の区別があっても道路の幅員の狭いようなところにつきましては、なるべく車両道路の左側に沿うて進行する。したがいまして道路のセンターラインの中央部分をなるべく多くあけておく通行方法をとっていくということが、一般道路についていわれることかと思います。したがいまして通行帯のレーンマークの明らかであります名神高速道路のような正確な追い越し単線、あるいは左側車線というものがないような道路におきましては、あれだけの明確な通行方法はとれないと思いますが、それに近いようなやり方でできるだけ左側を通る、そうして中央の部分をあけておくというのが実情であるかと思います。ただしかし、都内のような非常に道路交通量の多いようなところにつきましては、現在とられておりますような通行帯の指定というようなものによって自動車が通行をする場合がありますので、その例外をなすということはいえると思います。
  119. 佐野憲治

    ○佐野委員 ですからここで確認したいのは、現在この法律改正されまして、そうした制度が採用されたとしても、第二十二条の二項ですか、それに基づく公安委員会の指定によって現在の通行帯そのものをやはり尊重しなければならない。ですから適用除外になるのがほとんどだ、かように考えてよろしいかどうかという点と、第二点は、そうした法律の実施に伴って、たとえば道路五ヶ年計画の策定内容におきましても、そうした国際条約の受け入れ体制、そういう道路構造というものをやはり必要としてくるのではないか。そういう点につきまして、建設省とどのような話し合いが現在まで進められ、どのような方向に沿って国際条約の受け入れ体制を確立していくか、この点をお聞かせ願いたいと思います。
  120. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 第一点につきましては、現在のそれぞれ公安委員会の指定しております通行方法になると思います。したがいまして、それぞれ各県の公安委員会が従来の通行方法を十分検討いたしまして、従来の通行方法によるほうが交通能率が上がるというふうに判定をいたしておる場合には、そういう方法が優先するというふうに考えておりますので、それをしも私どもが強制するというようなことは考えておりません。  第二点の道路整備の問題につきましては、今回のキープレフトの原則にわれわれが踏み切った大きなゆえんのものは、将来の道路整備の基本的な道路構造の考え方が、いわゆる名神高速道路と同じ片側二車線、歩車道の区別をつけるという道路を大体道路構造の基準としているということに建設省も基準を置いておりますので、そういう面から見て、いわゆる名神高速道路と同じ種類の道路が今後の道路整備の基準になります場合においては、キープレフトの原則を採用することは何ら支障もないし、むしろそうするほうが通行者の利便であるというふうに考えまして、私どもといたしましても将来の道路整備上の考え方を考慮に入れてこういう原則に踏み切った次第でございます。
  121. 佐野憲治

    ○佐野委員 次に第三十三条の改正点ですが、踏切での故障の際に対する措置であります。現在バス、トラック等については、保安基準に基づく運転規則によって規定されておるわけですが、しかし今度新しく臨時規定と言っては語弊がありますけれども、こうした規定が挿入されるということになりますと、これに対する義務づけあるいはそれらに対する準備、これらに対してはどういう指示をなしておられるのか、この点をお伺いしておきたいと思います。
  122. 宮崎清文

    宮崎説明員 ただいまの御質問は、たとえば非常信号灯を自動車に備えつけるという義務はどこで課するかという御質問だと承りましたが、この点につきましては、現在のところ指摘のように事業用自動車にしか設置義務が課されておりません。現状におきましては非常信号灯で簡便かつ効果が非常に確実なものが必ずしも完全に開発されておりませんので、この開発を待ちまして行く行くは義務を課するようにいたしたい、こういう点で運輸省と話し合いをしております。
  123. 佐野憲治

    ○佐野委員 発煙筒なんかは営業用自動車の場合は義務づけられておるわけですけれども、そういうことがやはりある程度まで必要となってくるのではないか。運輸省においても、踏切支障装置としてそういう点も考えておるようにも聞いておるわけですけれども、そうした場合にやはり義務づけをしないと、踏切の途中において故障が起こるとかいろいろな問題が出てくるわけです。そうした場合におきまして、たとえば一体何をもって信号とするか、そういう点にも一つの統一した基準がなければ非常に混乱が起こるのではないか。やはり営業用自動車だけでなく、自家用自動車等におきましても、法律にそういう規定を設ける以上義務づける。しかもそれが安全のために当然とらるべき措置として、赤旗を用いるとかあるいはどういう方法をとるにいたしましても、そういう一つの基準がなければ逆に波乱が起こるのではないかという点も考えられますので、こういう規定を挿入されるにあたりまして、皆さんとしてもそれらに対していろいろ検討なされただろうと思うのですが、そういう点について早急に義務規定を置くことが大切じゃないか、かようにも考えるので、皆さんとしてはどういう点に対して運輸省と検討をやっておられるか、もう少し具体的にお聞かせ願いたいと思います。
  124. 高橋幹夫

    高橋(幹)政府委員 この点につきましては、確かに御指摘のとおり、私どもとしても非常信号を行なうべき場合の統一的な方法とか、あるいは非常信号を行なうための発煙筒等の種類あるいは性能等について一定のものにするということが望ましいわけであります。そこで、それらの点につきましても、いろいろ私ども運輸省等とも相談をいたしておるわけでありますが、一応人を乗せており、また運送しておる車両構造から見て必要なものというので、いままで大型バスあるいは大型の貨物というようなものについては義務規定を置いて発煙筒を携帯させておるわけでありますが、自家用車全部、小型の自動車全部にまでそれを義務化する場合においては、その携帯させるべきものの内容等についても十分検討しなければならぬというようなことで、現在国鉄が開発いたしました踏切支障装置と同じようなものをさらに開発して、これをつけさせるというようなことを総合的に検討して、現在の段階ではできるだけ行政指導をして、そうして車体構造に定着装置させる場合においても、これが最上のものであるというものが十分開発された暁におきましては、それを義務的につけさせるというようなことを考えておるわけでございます。将来に対しては、十分御説のとおりのような方向でわれわれ検討いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  125. 佐野憲治

    ○佐野委員 やはりこうした規定を挿入する場合には、混乱が起こらないように検討をされて、一つの基準が示されてから法律改正が行なわれるべきじゃないか、かようにも考えるわけであります。  次に、百七条の免許証の返納についての改正規定についてお尋ねしておきたいと思います。現行法では、「公安委員会は、免許の効力を停止したときは、当該処分を受けた者に当該処分に係る免許証を差し出させ、これを保管することができる。」となっているのを、改正案では、「免許証をその者の住所地を管轄する公安委員会に提出しなければならない。」こういうぐあいに義務規定を置いておりますし、かつ返還の際においても、「停止の期間が満了した場合においてその提出者から返還の請求があったときは、直ちに当該免許証を返還しなければならない。」ということになっておるが、このような改正をせられた理由は一体どこにあるか、その根拠をお聞かせ願いたいと思います。
  126. 宮崎清文

    宮崎説明員 現行法におきましては、御指摘のように、運転免許を取り消された場合には返納義務を課しております。それはなぜかと申しますと、これは一種の社会実態から申されるわけでありますが、免許を取り消したにもかかわらず、その免許証だけを持っておりますと、それをあるいは改ざんして悪用するという事例が間々ありますので、それを防止する意味において、免許が取り消された場合に免許証の返納義務を課しておるわけであります。ところが免許を停止する場合はどうかと申しますと、免許の停止期間中は免許を取り消されたと同一のことになりますので、両者の均衡を失するという意味から、今回停止の場合にもやはり提出の義務を翻してその乱用、悪用を防止いたしたい、かように考えまして改正いたしたわけであります。  それから第二点の、「提出者から返還の請求があったときは、」というのを入れましたのは、これはことばの性質上当然であろうかというところから入れたわけでありまして、別にそれ以上の深い意味はございません。
  127. 佐野憲治

    ○佐野委員 しかし、こうした中にも公安委員会の権限の強化ということが非常にきわ立っておるわけですが、罰金が科せられておるという点に対しても、もう少し法そのものの不備その他において改正しなければならぬ問題点がたくさんあるだろうと思います。にもかかわらず、こういう点を特に挿入され、しかもいままでは返還を請求した場合には当然返還しなければならないというような民主的な規定を置いておるのを、あえてこうした官僚的な規定に変えなくてはならないという理由がいまの答弁ではほとんど見当たらない、もう少しこういう点に対する配慮というものをもってもらいたい、かようにも考えるわけです。  大臣がお見えになりましたので、私、大臣にまずお尋ねいたしたいと思いますのは、きのうも深川におきまして職務尋問中ある運転手に対する発砲事件があったわけであります。このことは前川の委員会にも少し触れてお尋ねしておいたのですが、三月六日には大阪におきまして白タク運転手に対する射殺事件も起きておるわけです。こういう点につきまして一体どのような処置をとっておられるか。大阪における白タクの射殺事件につきましても、検察当局は業務上過失致死の疑いで捜査を進めておるし、警察のほうは刑法三十六条にいう正当防衛であるという解釈をとっておることが新聞紙に報ぜられておったわけですが、こうした問題に対しまして、最近警察官によるピストルの発砲事件が相当ひんぱんに起こっておるのではないかということに対して、大臣はどのようにこの問題に対して理解をしておられるか、お聞かせ願いたいと思います。
  128. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 警察官が単に威嚇のためであれ、拳銃を使用するということは、よほど容易ならぬ事態が予想されるわけでございまして、特にこういうことにつきましては、警察のみならず検察庁、裁判所を通じて非常に事柄を重く見ておる次第でございます。正当防衛という限界がどこまでということは、やはりいろいろ検証いたしまして、具体的な問題点が明確にならなければ何とも言えぬ次第でございます。しかし、いやしくも拳銃を発砲することによって、警察官が何らかのそういう行動に出ました場合は、その点に集中しても特別にその事柄を検討しておりますし、これは将来にわたっても誤解などを起こさないように、十分にわれわれとしても配慮は常々いたしておる次第であります。
  129. 佐野憲治

    ○佐野委員 警察官職務執行法の七条には武器の使用に対するきびしい規定があります。警察法の施行令の十三条に基づく規程におきましても、警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範が生まれておるわけです。こうした内容を読んでみましても一体警察官の使用武器とは何だという解釈、定義を下した条項をほとんど見出すことができないわけですが、一体武器とはどういうことなのか。同時に日本の国民は自衛隊並びに警察官を除きましては武器の携帯が禁止されておるわけでございます。ほかの一般の国民は、武器を持てない、しかるに警察官並びに自衛隊には、そうした武器が与えられておるわけであります。そうした場合に、これの使用及び取り扱い規定というものはもう少し厳格な規定を置く必要があるのじゃないか。現在は読んでみましても、これはいろいろな規定が述べられておりますけれども、実際問題として警察官の行動そのものを規定するという規定がほとんどないわけです。ですからこういう問題が具体的に起こってまいりますと、当然、これは正当防衛なりあるいは緊急避難に該当するのだ、そういう判断をしたんだということになってもやむを得ないという規定になっておって、こういう武器に対する定義を明確にし、武器の取り扱い使用に対するもう少し厳格な規定というものを設ける必要があるのじゃないか、かようにも考えるのですが、大臣はどのように思っておられますか。
  130. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 武器とはどういうものであるかという定義は、私も常識的なお答えはできますが、これは重大な問題でございますので、事務当局からお答えをすることにいたさせます。  それから、武器を携帯しておって絶対に使ってはならぬということであっては、そういう拳銃なんか持たせざるに越したことはないのでございまして、昔は巡査、おまわりさんといえばサーベルをぶら下げておった。これは抜いて切るようなものでなくて、あれは切れなかったものでございます。やはり一つの威厳を示すためにつっておおったのかどうか私はつまびらかにしませんが、それと同じ意味で武器を携帯しておるのだったら、むしろ持たぬにしくはないと思います。しかし実際全国に十五万人も警察官がおりまして、武器を携帯しておるのはその中で全部ではありませんけれども、それがやたらに発砲しておるということではございません。もちろん警察官が練習のとき以外に、そういう場合に一発でも拳銃をぶつ放したということになれば、その一発が必ず新聞に大きく出ることは当然でございます。ですから、実際に武器を使用した例というものは、武器を持っておるのにもかかわらずきわめてまれにしがなかった。しかもそのきわめてまれな例でさえ、実は警察官の武器使用というものが限界を越えたかどうかということについては、実に綿密にこれを検討いたすわけでございます。ですから私の考えといたしましては、いまの法規で大体不当な使用というものは起こり得ないというふうに判断をしておる次第でございますが、なおそのほうは第一線を担当いたしております警察庁のほうでも考え方を持っておると思いますので、そのほうからまた重ねて御説明を申し上げたいと思います。
  131. 江口俊男

    江口(俊)政府委員 私たちのほうで何を武器と考えておるかということにつきましては、拳銃は間違いなく個々の警察官の持っておる武器だというふうに考えておりまするが、それ以外の警棒、警杖というようなものにつきましては、普通は用具という取り扱いをしております。しかし使い方によっては武器として使うというものでもございますので、場合によってはそれも武器になることがございます。それから特別の場合におきまして催涙ガスというようなものも武器という観念に入る場合もあろうかと思いまするが、そういうものについての何が武器であるかということを一括して規定しているものはございません。ただ御承知のように、警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範というようなものや、警察官警棒等使用及び取扱規程という個々の具体的な装備品の使い方についての規程をこしらえて、そのことの使い方を制限をいたしております。しかしただいまおっしゃいましたように、警職法の七条の武器使用の限界のさらにその内部というか、それを制限した規範を内部ではこしらえておりまして、警職法では法律的にここまでいけるという観念がございますけれども、実際に使う場合はそれ以内の、ことばをかえて言えばそれよりも遠慮をした使い方をせいということで、あやまちのなるたけ少ないようにという用心をしてやっておるわけであります。  それから、ただいま御指摘になりました具体的の事件でございますが、大阪府の白タク運転手、不幸にして警察官が射殺した形になるわけでございまするが、あの場合、警察として、もちろんこちらに落ち度はないかということで捜査をいたしまして、捜査の結果は検察庁に報告することになっておりまするから、われわれのほうの調べではこういう調べだということで、最後の判断というものは公平に検察庁でやってもらうということで、現在検察庁が慎重に審議をしておられる段階でございますが、御質問の、こちらはどう考えているかということであれば、こちらのほうは、あの場合は正当防衛である、こういう考え方をしているわけでございます。
  132. 佐野憲治

    ○佐野委員 関連でありますので、とめたいと思いますけれども、やはり警察官にこうした権限が与えられており、そうした権限の行使に対して、もっときびしい規定がやはり必要になってくるのじゃないか。たとえば白タクの場合にいたしましても、それが停車しておったかどうか、自動車の番号その他把握することができ得なかったかどうか、あえてピストルまでも撃たなければならなかったかどうかということになってきますと、やはり大きな問題があるのじゃないか。行政法規は、そうした意味における行政者の権限をずいぶん具体的に羅列してありますけれども、例示してありますけれども、しかしながら、そういうことによってこうむる行き過ぎなり、そうした権限の逸脱なり、これを取り締まる行政法規というものはほとんど少ないわけであります。特に警察官の場合におきましては、そういう点に対するもっときびしい規定が必要になってくるのじゃないか。私どもは、内閣できめられておるこの警察官けん銃警棒等使用および取扱い規範の第二条並びに第四条、第七条、こういうのを読んでみましても、やはりこれでは、一方的な解釈によって何ら警察官の権限を規制するという規定じゃないだろうと思うのであります。どの場合でも、最悪の場合は正当防衛であり、緊急避難ということを主張し縛る余地が残されておる。しかも警棒の使用の場合におきましても、武器として使用する場合と、警棒として制止のために使用する場合と、それらに対する明確な規定も設けられていない。こういうことにななってまいりますと、人権に対するいろいろな問題が起こるのじゃないかという点を、ひとつ十分御認識していただきたい。また別の機会に、具体的な問題を通じましてこの問題の討議を深めさしていただきたいと思います。  次に、道路交通法の一部改正をめぐりまして、各委員から連日、いろいろな角度から意見がかわされてきたのでありますが、そうした質疑内容を通じてみまして、私率直に感じましたことは、現行法規そのものにも多くの欠陥と不備を持っておる。このことは、昭和三十五年に、私もこの委員会で本法が提案されましたときにも論議いたした経験を思い起こすわけですが、やはり最初の提案の趣旨におきましては、道路交通の基本法を作成するのだ、非常に美しいことばでつづられておったわけですけれども内容をいろいろ検討していくにつれまして、これは道路交通取締法にしかすぎないという性格が明らかにされてまいっただろうと思います。もちろん昭和二十二年にできましたところ道路交通取締法、昭和二十八年にできましたこれに対する施行令、その間附則もずいぶんありますし、あるいは時代の趨勢その他から、しかも法と施行令との間に重複あるいは矛盾した条項もありましたので、これを統一して道路交通法という名のもとに提案されてまいったにすぎないじゃないかということも、私たちは痛感いたしたわけですが、そうした中でも、早急に提案された関係上、現行法そのものの中にもやはり矛盾と欠陥がなおもぬぐい切れないほど載っておるだろう、かようにも思っておるわけですが、その点も、各委員から指摘されましたが、私はそうしたことと関連いたしまして、やはりこの法律そのものの中で感ずる一つのことは、たとえば道路交通そのものに関するところの役所を見てまいりましても、警察があり、あるいは建設省があり、運輸省があり、あるいはまた厚生省あるいは文部省あるいは法務省、こういう形に役所が分かれているだけではなくて、それぞれのもとにおけるところ法律もまた非常に多岐にわ.たっておるわけです。たとえば道路法あるいは道路運送車両法あるいは道路運送車両の保安基準あるいは少年法、消防法あるいはまた自動車の排気ガスに伴う公害に基づく法律等々、考えてみますと非常に多岐にわたっておるわけでございます。しかも道路交通法そのものを読んでおりましても、こういう関係する法律との間の総合性なり一貫性というものが欠けてしまっておる、こういうことを痛感するわけです。ですからどうしてもやはり交通法規そのものの持っておる内部的なものを改正していく努力も大切ですけれども、総合的な、一元化された道路交通体系というものをやはり持つ必要があるのではないか。そういう点が、昭和三十五年の本法成立にあたりましていろいろ考慮されただろうけれども、法的にこれが体系化されていないというところに多くの問題があるのではないかということを、各委員の質疑を通じて痛感いたしたわけですけれども、この点に対して大臣は今後どのような方針をもって臨まれるか。私も、三十五年の本法が通過しましたときの衆議院決議に基づきまして、交通閣僚懇談会が開かれ、三十六年には道路交通基本問題調査会が設置される、あるいは臨時行政調査会がこうした問題に対して積極的に取り組んでおる。そういう政府の一応の努力を了とはいたしますけれども、やはりこの法律そのものの中に、そうした総合、一元化された体系としての法律を必要とするのではないか。そういう点が欠けているために、いろいろな会議の中である程度の成果はあげますけれども、根本的な解決がやはりはばまれておる、かようにも考えるので、道路交通法をもう少し基本法としての性格を持たせる、関連法規との関係を明らかにする、そういう形の道路交通法というものが必要になってくるのではないか、基本法が必要な段階をいま迎えているのではないか、かようにも考えるので、大田の所見を承っておきたいのでございます。
  133. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 交通事故が激増するのをどうして防ぐかということについては、とにかく関係がある者ひとしく肝胆をくだいておるわけでございまして、これに対してサボタージュしておるわけでは決してございませんけれども、しかし残念なことには、数字がまことに逆行していることを示しておるわけでございます。そこで、だから交通基本法をというおことばでございましたが、ただ基本法をつくったから交通事故がなくなるというのなら、私はすぐにも提案をしたいという気持ちです。しかしながら、その交通事故が起こる原因は一体何だ、その穴をふさぐためには、そんな法律一本でできるかどうかということになりますと、なかなかむずかしい問題をはらんでおりまするので、実はついこの間、ただいま御指摘になっておる交通基本問題調査会の答申なるものが出てきた、これが三月の末でございますから、これをどうして具体化するかについて、いま総理府で盛んに検討しておる過程であると私は考えております。この一〇〇ページに余る資料というものは、実に綿密に書いてあって、これがこのとおりぴちっと何らかの形で行なわれるということになれば、よほど交通状態というものは根底から変わってくるとも考えられるわけでございます。しかしこれを一本の法律にするということがいいか悪いかということは、また政府のほうでもいろいろ検討はいたしますけれども、しかしながら、ずっと私拝聴しておりまする御議論、皆さま方の御不安というものは、全部この基本問題の調査会に案となってあらわれておるわけでございますので、私どもといたしまして、一日もこの問題の解決をゆるがせにしておるわけではございません。この問題を解決いたしますために、この答申というものを尊重いたしまして、そして根っこからいろんな諸制度をひっくり返してみる、そして皆さんの御納得のいくような立法措置も必ず近く実現しなければならぬと考えておる次第でございますので、いまの段階では、それにぜひ御期待をいただきたいと申し上げるよりほかないわけであります。
  134. 佐野憲治

    ○佐野委員 道路基本問題調査会の答申案を私どもも読ましていただきましたけれども、経営問題その他、島田会長の性格、あるいは政府の諮問の内容にもよるでしょうけれども、決して道路交通の基本に対する取り組みとしての考え方の問題ではないんじゃないかということも感じますし、それから行政管理庁が陸上交通の緩和並びに事故防止に関する行政監察結果に基づく勧告、こういうのをずいぶん各機会ごとに出されておりますし、それらの集大成されたものが私たちの手元にも、国会図書館に行けばずいぶん目につくわけです。そういう具体的に勧告されておることがやはり実行できないという問題、それからもう一つは、やはり法そのものが、いま大臣のことばの中にも不安に感ずるのは、事故防止の取り締まり法規である、こういう考え方が強く出ておるんじゃないか。それでは過去における道路交通取締法でけっこうなんで、この取締をとって道路交通法という規定をする意欲的な作業を進められてまいりましたのは、道路基本法としての性格を持たせたい、道路交通のあり方に対して、あるいは道路交通の経済的効率的なあり方は一体どうあるべきか、こういうものがやはり法の中にうたわれていなければ、道路交通法としての体系化がなされてこないんじゃないか。たとえばアメリカの統一車両法、あるいはスイスの交通法典、これらの中にもそうした意欲的な努力が見られておるわけですけれども、しかし今日の交通行政のように、このように多岐にわたり、多岐の役所に関係があり、かつまた多岐の法律がそれぞれ施行されておる、そういうのがやはり一元化して、しかも将来の道路交通のあり方はどうあるべきか、こういうことを明確にしなかったら、単なる取り締まり法規に堕していってしまう性格を持っておるんじゃないか。こういう点に対して、大臣としても少し腰を据えて、取り締まりという問題だけでなしに、あるべき道路交通行政、これらに対して一体どうしたら法体系が一貫されたものがっくり出せるか、こういう努力をひとつ内部においても続けていただきたい、かように要望しておきます。  時間もありませんので、第二点として、私はやはりこの法律そのものの欠陥と同時に、順法精神を政府は非常に強調しておられる。ですから、順法精神という面からもこの法案の内部を見てまいりまして、私、大臣にもひとつ、要望と申すよりも、大臣自身は道路交通法をお読みになっておるかどうかということをまずお尋ねしてみたいと思うのです。この道路交通法をもし大臣がお読みになったら、おそらく十分間お読みになれば、頭が痛くなって、何が何だかわからぬ、どっかのクイズでもやっておるんじゃないかという錯覚を持たれるくらい難解な文章に私は満ちておるだろうと思うのです。このことは、たとえば大臣おひまがあれば、三十一条を読んでもらいますならば、たとえば路面電車を追い越す場合の規定が書いてあるわけでございます。これは毎日新聞の「余録」にも載っておりましたし、各新聞紙にも取り上げておられますので、あるいは御存じかもしれませんけれども、この文章だけを読んでみますと、一体どうすればいいのか全く判断に苦しむ。しかも一行ごとに「当該」ということばが入ってきておる。当該、当該、当該、これは一体何のことだろうか。はなはだしいのは、五十一条をお読みになりますと、当該ということばが二十個所もあるわけです。こういうことになってまいりますと、ほとんど理解に苦しむというのが私この法律の特徴じゃなかろうか、かように考えるわけであります。しかも十六歳、十八歳から運転免許が取得できるわけです。十六歳、十八歳の少年が、この法規を一体どうして読むことができるだろうか、こういう疑問すら持つわけです。ある大半の法学部の先生が試験を受けて落第をしたというのは、昭和三十五年のときの本委員会においても参考人から指摘があったことですが、それほど難解に満ちておるわけです。こういう点も考えまして、あるいは文部省における交通道徳なり交通法規に対するいろいろな教育ということも政府は取り上げておられますけれども、一体学校の先生でこれを読める人がどれだけおるだろうか、理解を持つだろうか。あるいはまた、私、取り締まり警察官に対しましてもやはりこの前の委員会において指摘しておったのですが、一体警察官の中でさえも、たとえば東京の警視庁の一般の警察官のうちで、自動車運転免許を持っているのが三〇何%ですか、この程度にしかすぎない。地方の場合はもっと率がいいそうですが、そういうような形になってきておることの中で、いろいろな問題もありましょうけれども、私はやはりこの法律の持つ難解さ、これはどうしても改めてもらわなければ困るのではないか。先ほど来の委員会では、長官からも、イギリスのハイウェイコードに以たような、もっとわかりやすい、しかもだれでもがわかるような規範をつくって、これを一般に周知させたい、この法律を読まなくても、このハイウエイコードを読めばわかるようにしたい、こういう発言があったのですが、いかし、法を守らなければならない、法を順守しなければならない、こう強調しておられる中にあって、法律は読んでもむずかしいから国民は読まなくてもいいんだ、この安易な解説書さえ読めばわかるんだということでは、やはり法そのものとしての存在価値から問題が出てくるんじゃないか、私かように考えるわけです。  第二の点としては、非常に抽象的なことばがずいぶん出てきておるわけです。この点は、先ほど午前中の委員会におきましても華山委員から、過労とは一体何であるか。こういう判断そのものが、心理学的にも医学的にも非常にむずかしいんじゃないか。そういうことばがずいぶん条文の中に出てくるわけです。あるいは運転免許の場合における適性検査試験。一体適性とは何であるのか、これも非常にむずかしい問題だろうと私は思うわけです。そういうことを何らの基準も設けることなく挿入、成文化されておる。ですから、ここに一つ問題が起こるのではないか。このことは、国鉄あるいは自衛隊あたりにおきましては、適性検査なりあるいは過労に対しても相当研究が進んでおる役所だと思いますけれども、私は先般国鉄のある問題で地方の局長さんとお会いしたときにも、国鉄の中における過労に対するいろいろな規定があるわけです。しかし、その過労という解釈が非常にむずかしいということを局長自身も言っておるわけです。たとえば診断書をつけてまいる、過労だから休ましてくれ、こういう場合も、今日の国鉄におきましては、医者の診断書を付してきたとしても、過労として休むことは、正常な勤務に対する意思がないものとして処罰の対象にしておるのだということも言われるわけです。と同時にまた、本人は過労じゃないんだ、当然運転ができるんだ、こういうぐあいに出勤をしてまいりましても、当局とすれば過労だからこれをやめさせる。しかしながら、その場合におきましても、当然欠勤しなければならないにもかかわらず過労を押して出勤してきたものだから、これも行政処分の対象にするのだというようなことが行なわれていることに対して、あれをあずかる者として、この解釈に非常に苦しんでおられたわけですが、同じことがやはり脅えるのではないか。自動車運転の順守事項にしても、あるいは雇用者の順守事項の中にも、こういう問題が出てまいるわけですけれども、こういう問題ももう少し明確にするということが、画然法としてなされなければならない正義ではないか、かように感ずるわけです。  それと関連いたしまして、たとえは運転の順守事項にいたしましても、あるいは停車あるいは駐屯、こういう規定にいたしましても、最高速度に対する制限事項を見てまいりましても、いろいろな規定が挿入もされておりますし、あるいはこの法律による命令あるいは規定によっていろいろな制限がつけられておるわけです。しかしこのことも三十五年の本法の審議のときにもやはり問題にいたしたわけですが、こういうことは前の取締法のときにも、あるいはその施行令の中にも取り上げられておるわけです。そういう規定が一体どのような根拠に基いて置かれているのだろうか。実際運転している者の立場から考えてまいりますと、そういう規定に対する科学的な根拠——こうなんだからこのようなことが必要なんだという規定をやはり設けておる。その根拠が明らかにされていないと思う。ただ何メートル以内にしろ、何十キロなんだ、それを守らなければ違反なんだ、処罰なんだ、こういうような規定の置き方ではなくて、そういうものがなぜ必要になっておるのか、どこに根拠があるのかということを明らかにされる必要があるのではないか。そういう点が一つ欠けておる。ただ不用意に——不用意ということではなくて、従来からとられているからそういう規定を挿入するのだということであっては、守られない原因を法律そのものがつくっておるのではないかということを私は考えるわけであります。  第三点として、法律が非常に多義的な解釈を持っておるわけです。大臣も忙しいので、私条文を読み上げるのは差し控えますけれども、第七十二条の場合におきましても、第七十二条の条文を大臣がお読みになりますと、この条文そのものを一体どう解釈するか。たとえば交通事故におけるところの救護義務と報告義務をきめてあるわけです。同じ条文の中に救護をなした場合におきましてはこうこうこういう報告義務規定しておるわけです。ところが、実際問題として、そういうものをもう少し理解をしてまいりますと、いろいろな問題が出てきます。単にこれはしろうとだけでなくて、法律の専門家の間にすらも問題が起きてまいっておる。すなわち併合非というものがとられておる。前段の義務規定違反をした、だから当然後段にいたしましても、その処罰と併合するのだ、もとは一つだけれども、おのおの異なった義務が課せられておるのだ、このような解釈をする場合と、そうじゃない場合、これは多義的に解釈される。専門家すらも判断に迷う。しかもそれが併合罪という形をとってきますと、他の刑法なりあるいは特別法との関連を見ましても、いろいろ疑問が出てくるというようなことがこの条文の中にもずいぶん出てきておるわけです。あるいは罰則の場合におきましても、倍加罪をとっておられる。一体倍加罪をとるのは、倫理的、道徳的に予防措置としてこういう規定を取り上げられておるのか。あるいは刑法理論上こういうことが妥当だとして取り上げられておるのか。こういう点に対しましてもやはりその是非を検討しなくてはならない問題が含まれておる、かように考えるわけです。  ですから、ここで大臣に私総括してお尋ねしておきたいのは、そういう意味においてもう少し法律そのものをわかりやすくするということ、あいまいな規定では解釈が分かれるということ、抽象的な表現をもう少し具体的に成文化する、あるいは政令の基準の中にこれを明確化するということ、取り締まり法規は、法規としてもう少し科学的根拠を待つ規定によって当事者を納得せしめるということを含めて、しかも加重罰、併合罰という、基本的人権にも非常に大きな影響を持つ刑罰の適用を、その是非の討議というよりも、安易な形でこれに採用してきておる。もちろん交通事故の激増する今日の情勢からくる一つ措置ではありましょうけれども、もっと本質的にそうした問題を検討すべきではないか。ですから、現行法の内部的なそういういろいろな問題を解決して、ほんとうの順法精神というものを守らせる。このために大臣としてはどのような解釈を持っておられるか。私たちは、近い将来において、少なくとも大臣の責任においてそうした問題を解決する、こういう考え方のもとに検討を進められる意思があるかどうかということをこの機会にお尋ねしておきたいと思います。  私も、この法案を提案しておりますからには、言うまでもなく道路交通法は読んでおるわけでございます。御案内のとおり、私ども頭が悪いから、なかなかわかりにくいところがあるわけであります。この間参議院でも、この解釈がなかなかむずかしいので、結局マグネットの鉄板に豆自動車がついているようなものまでぶら下げて説明を聞くと、ああわかったということになる。しかし、いろいろなものを文字で表現しようと思っても、日本語の不備のせいか何か存じませんけれども、どうしてもこういう表現になってしまうのではないか。まことに残念でございますが、こういう点についてもっとぱきっと、たとえばこの条文はこうしたら一目瞭然で法の趣旨が徹底するというような名案でもございましたら、また御教示にあずかってそのとおりにいたしたいと思います。いまいろいろ御議論のありました点は、先ほど私ちょっと申し上げましたけれども、基本問題調査会の答申でも、実は子供がこういうけがをするのは児童遊園地がないからだから、児童遊園地をつくれとか、いろいろなことがいわれているわけであります。基本法、つまりハイウエーのハイウエーコードみたいなものをつくることは何でもないことでありますけれども、ハイウエーコードだけでものが解決するわけのものでもございませんし、根っこからやるにはいろいろな問題を含んでおるということは御案内のとおりであります。ただいまの御質疑の要旨はよくわかりましたので、そういうことは十分尊重しながら、この問題解決については具体的な方策を着々立ててまいりたいと思いますので、私どものいまやっておりますところは一応了としていただきたい、かように思う次第であります。
  135. 佐野憲治

    ○佐野委員 実は総括的にもう少し突っ込んで大臣に質問して、お話も承りたいし、私たちの要望も提案したいと思っておったのですが、なかなか緊急な事態でもあり、大臣の出席を求めておる会合あるいは委員会もあるそうですから、私は差し控えますが、私がいまあえて大臣の答弁をもらうよりも具体的な問題を提起いたしましたのは、一つは、道路交通法を基本法としての性格に整備して高めていただきたいということと、もう一つは、内部的に持っておるいろいろな問題点を整備する、このために大臣は、各省にまたがるいろいろな困難な問題がありましょうけれども、ひとつ率先これに取り組んでいただく、このことの決意をお伺いしたいので、大臣の御意見を聞くよりも私のほうから説明的にいろいろ申し上げたわけですから、その点をひとつ御理解願って、どうしてもやはりいま申し上げました線に沿って、大胆としてこれの整備なり改善なり具体的方策の樹立に向かって進んでいただきたい、このことを要望して終わります。
  136. 森田重次郎

    ○森田委員長 他に質疑はありませんか。——なければ、本案についての質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  137. 森田重次郎

    ○森田委員長 午後二時三十分から再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時四十七分開議
  138. 森田重次郎

    ○森田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  道路交通法の一部を改正する法律案を議題とし、議事を進めます。  本案についての質疑は午前の会議において終了たしております。  これより本案を討論に付するのでありますが、別に討論の申し出もありませんので、直ちに採決いたします。  道路交通法の一部を改正する法律案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  139. 森田重次郎

    ○森田委員長 起立総員。よって、本案は、原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  140. 森田重次郎

    ○森田委員長 この際、藤田義光君、川村継義君及び門司亮君から本案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、本動議を議題とし、その趣旨説明を求めます。藤田義光君。
  141. 藤田義光

    ○藤田(義)委員 ただいま議題となりました道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきまして、私は自由民主党、日本社会党、民主社会党の三党を代表してその趣旨を御説明いたします。  まず最初に、案文を朗読いたします。    道路交通法の一部を改版する法律案に対する附帯決議(案)   最近におけるわが国の交通事故の激増と交通渋滞の頻発の状況にかんがみ、政府は、本法の施行にあたり、とくに左の諸点についてすみやかに適切な対策を講ずべきである。  一、 道路交通行政に関する総合的施策を迅速かつ強力に策定推進するため、警察庁運輸省、建設省、通商産業省等交通関係ある行政機関相互間の連絡調整を徹底すること。  二、 道路交通に関する法体系を整備するとともに、法令における難解かつ多義的な表現をつとめて平易、明快にし、あわせて大都市の交通事情に対処するための規制につき検討すること。  三、 罰則の適用にあたっては、本法の趣旨に則り、個々の具体的事案を慎重に検討の上、適正な法の運用をはかること。  四、 道路交通法違反事件の実情にかんがみ、交通事犯の処理については、刑事罰のみによることなく、交通事犯の行政罰手続への一部移行をはかること。  五、 歩行者に関する事故が多発している現状にかんがみ、歩行者に対する通行方法の指導ならびに年少者に対する保護者の責任の自覚を高めるなど交通道徳の確立につとめるとともに、交通安全教育を強力に推進すること。  六、 キープレフトの原則の採用にあたっては、わが国の道路交通の実情に即するよう(とくに歩車道の区別のないところにおいて)慎重に検討の上実施すること。  七、 安全な交通を確保するため、交通安全施設等(ガードレール、道路照明、跨道橋、安全島、道路標識、信号機等)を早急に拡充整備し、そのための十分な財政措置を講ずること。  八、 物件の路上放置、青空車庫による違法駐車等道路の不正使用およびネオンサイン、広告板等の違法工作物を排除し、交通環境を整備すること。  九、 雇用者および車両運行管理者に対して、本法の趣旨に則り、その雇用する運転者に対する給与制度、労働時間、休養施設等労務管理の改善に特に意を用いるよう強力に指導すること。  一〇、 ダンプカー等大型自動車運転車の資格年令および運転経験期間等につき再検討すること。  一一、 運転免許試験の方法の改善、指定自動車教習所の充実強化等運転免許取得制度をすみやかに改善すること。  一二、 運転免許に対する取消および停止の処分の全国的な斉一化と迅速化を図るとともに、違反者に対する講習制度の活用について効果的な制度を検討すること。  一三、 道路交通の安全と円滑をはかるため、地方自治体に諮問機関として、交通安全対策委員会を設けるよう指導すること。  右決議する。  以上が案文であります。  次に、提案の趣旨を御説明いたします。  あらためて申し上げるまでもなく、現下の道路交通の状況は、まことに寒心にたえない重大段階に到達いたしておりまして、いまやわが国最大の社会問題になろうといたしておるのであります。都市における交通の渋滞と麻痺は申すに及ばず、交通事故による貴重な人命の損傷は、全国的に激増の一途をたどっているのでありまして、きのうの新聞にも報道されてありますように、本年度全国の交通事故による死者は五月二十六日現在すでに昨年同期より五百八十九人も多く、五千名を突破いたしました。このような最悪の事態の到来を深く憂慮し、当委員会におきましては、去る第三十四国会における道路交通法制定の際の附帯決議、あるいは第四十回国会における交通の安全と円滑並びに事故防止に関する決議、並びに道路交通安全施設の急速な整備に関する決議等におきまして、道路交通問題の解決が現下最大の政治的、社会的並びに人道上の問題であって、一日も放置することの許されないゆえんを具体的事実に即して超党派て指摘いたし、強調してまいったのであります。  私はこの際、同じ道路上を国有あるいは公営、私営等の各種交通機関が走っておる。あるいはまた運輸省が独占しておりまする各種乗りものの免許の機構に関する根本的な再検討、あるいはまた先ほど佐野委員の質問に対する赤澤国家公案委員長の答弁にもありましたとおり、交通基本問題調査会がいろいろ具体的な答申をいたしておりますので、これらを勘案いたしまして、過去幾たびかの国会の決議とも十分照合されまして、この際、赤澤国家公安委員長の手元におきまして、思い切った対策をひとつ作成していただきたいと考えるのであります。  しかるに、その後の事態の進展は、どうもこれらの決議等がありましても、道路交通対策の一元的運営あるいは交通安全諸施設の整備充実とそのための財政措置、大量輸送対策等の樹立あるいは交通安全教育の徹底、道路整備の早急な促進等の諸点におきまして、遺憾ながら満足すべき現状ではございませんことは、政府におきましても御承知のとおりであります。したがいまして、本法の施行にあたり、従前の決議と重複するところもざいますけれども、ただいま案文で申し述べました諸点につき、特に政府がその全機能をあげ、すみやかに抜本的な対策を講ずるよら強く要望してやまない次第でございます。  以上が本決議案の趣旨であります。  何とぞ各位の御賛同をお願いいたします。
  142. 森田重次郎

    ○森田委員長 本動議について採決いたします。  本動議のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  143. 森田重次郎

    ○森田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案は藤田義光君外二名提出の動議のごとく、附帯決議を付することに決しました。  この際、赤澤国務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。赤澤国務大臣。
  144. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 ただいま御決議をいただきました道路交通法の一部を改正する法律案に対する附帯決議につきましては、政府といたしましては、誠意をもってその実行に当たることをお約束いたします。
  145. 森田重次郎

    ○森田委員長 おはかりいたします。ただいま議決されました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  146. 森田重次郎

    ○森田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  147. 森田重次郎

    ○森田委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十八分散会