○高橋
参考人 私、
日本基督教婦人矯風会の高橋と申します。
このたびの
風俗営業等取締法の改正案につきましては、大きな関心を寄せております。これは矯風会の態度でもありますし、それから婦人団体国会活動連絡
委員会と申しまして、YWCA、
日本婦人有権者同盟、全国地域婦人団体逮絡協議会、
日本看護協会、婦人国際平和自由連盟
日本支部、そうして矯風会の六団体で組織しております婦人団体国会活動連絡
委員会が一貫した態度で、この法制定に対していろいろ運動してきたものでありますが、いろいろと
風俗営業が問題になっておりますけれ
ども、この
法律が上程されるようになったのは、新聞報道などでも私
ども拝見いたしますと、昨年秋の国家公安
委員会の席上で、非行
少年の
温床である深夜
喫茶を何とかしなければならないというような話し合いが出て、それから
法案がまとめられ、今日に至ったのだと思いますけれ
ども、そのこと自体は非常に私
ども喜ばしいことだと思って、賛成しているのでございます。
改正点を見ますと、従来解釈があいまいでありましたカウンター越しに客の接待をする
営業、バーなどを言うのでございましょうけれ
ども、それも
風俗営業に該当させましたり、条例によって
風俗営業の制限範囲をより一そう明確にしたこと、そしてまた飲食店
営業者の違反行為に対して、公安
委員会が処罰を可能にしたという点、そしてまた、飲食店の深夜
営業違反者の罰則を新しく設けたことなど、非常にいい点だと思います。特に私
どもとして喜ばしく思いますのは、第四条の三に年少者に関する禁止行為を特に新しく設けたことでありまして、
風俗営業や、それから飲食店の深夜
営業の二つの業態、ともに十八歳未満の者を客として立ち入らせたり、あるいは客の接待をさせてはならないということをうたったことは、従来地方の条例では規定されておりましたようですけれ
ども、その点を、元締めであるこの本法で取り入れられまして、一そうその趣旨が生かされるようになったと思いまして、
ほんとうにけっこうだと思います。特に私、矯風会でございますので、矯風会の
立場から申し上げますと、うれしく思いますのは、二十歳未満の客に酒類を提供してはならないということを規定したことは非常にけっこうなことだと思います。すでに大正十一年の昔に、
未成年者飲酒
禁止法ができまして、
未成年者の飲酒が禁止されておるのでございますけれ
ども、なかなか
社会の習慣として守られない面もあるように思っておりますが、ここで重ねて禁止をうたいましたことは、
未成年者の禁酒という趣旨が徹底されるようになると思いまして、はなはだうれしく、けっこうなことだと思っております。どうか、この点がよく守られるように、
ほんとうに祈るような気持ちで思っているものでございます。非常にけっこうなことばかりの今回の改正なんでございますけれ
ども、それでもなお私
どもとしては不服でございまして、もっといい改正がされなければならないと欲ばっているのでございます。
以下、少し欲ばった面を申し上げてみますと、まず、第三条のところで、都道府県は条例によって
風俗営業の業態、いろいろなことを、必要な制限を定めることができるというふうになっております。この条文のところで、今回の改正のうたい文句であります。深夜
喫茶業を禁止することもできるということになるのだと思いますけれ
ども、これは条例へゆだねますよりも、本法ではっきり禁止したほうが、より一そう趣旨が生かされるのではないかと思います。条例にゆだねられますと、各県の事情によりまして、あるいはそのいろいろな
関係とか、圧力とか何かが出てまいりまして、禁止に踏み切れないところも出てくるのではないかと思います。そのようになりましたら、せっかくここで深夜
喫茶を
規制するという改正の趣旨が失われてまいります。ですから、ぜひ本法で取り扱っていただきたいのでございまして、先ほどの年少者に関する禁酒行為のところでも、条例では前から規定されておりましたのを、わざわざ本法に取り上げてはっきり禁止という項目になったわけでございます。そのことは
ほんとうによかったことだと思うのでございますので、これに伴って、ぜひ、深夜
喫茶の禁止というものを、本法に取り入れられないということはないと思うのであります。そうしてまたその三条のところで
営業の
場所も制限することができる、その
場所の制限ということで深夜
喫茶が禁止できる、県によっては禁止できるということになるのでございましょうけれ
ども、
東京都では二十三区内は禁止すると、
東京都の公安
委員長が発言なさいましたけれ
ども、それでは二十三区外のことはどうなるか。区内のほうで禁止されたら新しい
都市のほうに、武蔵野とか、立川のほうとか、あちらのほうへどんどん深夜
喫茶がまた移るようになるかもしれません。ですから非行
少年の
温床であると、先ほどから皆さま深夜
喫茶はよくないということをたくさんおあげになりましたけれ
ども、とにかく深夜
喫茶を全面的に廃止するように本法でうたっていただきたい、そのように思うのでございます。深夜
喫茶を廃止したからといって、今度はそれにかわるもっと変なものが出てくる、たとえば酒食提供のすし屋とか、そば屋とかに深夜
喫茶的な、いかがわしいような、
風俗面で問題になるようになるかもしれないというような御
意見もあるように聞いておりますけれ
ども、そのときはまたそれが非常にたくさん出てまいりましたら、この
委員会なり、どこなりで対処していただきたいと思うのであります。
大体普通の
人間のあたりまえの生活というのは、昼間はせっせと働いて夜はゆっくり休んでそうして寝て、そうしてまたあした朝起きて勤務にいそしむ。それが
人間の生活のあたりまえのあり方だと思います。そのあたりまえのあり方をくつがえすような、妨げるような環境があちこちにあることが非常に嘆かわしいことだと思うのでありまして、外国の中では、非常に清潔な国だと言われる国などにおいては、夜はせっせとかせいだり遊んだりする人はいなくて、店はどんどん締まってしまい、町は暗くなって旅行者にはつまらなく、味気なく感じられるところがあるように聞いておりますけれ
ども、
日本でもあまり夜の町、繁華街の繁盛ぶりというのは、
人間の普通の生活からいえば望ましい状態ではないのですから、ぜひ必要である
場所だけは許可なりなんなりで特定の例外として残すようにして、深夜の
営業というものは行なわれないようにしたら、ずいぶん犯罪が減りますでしょうし、飲酒による事故も減ってくるのではないかと思います。一挙にそこまで
法律で改正するということは無理でございましょうけれ
ども、いまは無理にしても、とにかくそのようにすれば、清潔な
社会、国家になるであろうということを前提にして、それに一歩前進のために深夜
喫茶を全面廃止して、そうしてそれをぜひ本法に取り入れていただきたい。これが私
どもの
考えでございます。
そのほか私が非常に今回の改正で残念に思いますのは、これが深夜
喫茶問題のみに終わりまして、ほかに問題となっておりますいかがわしいものについて何にも含めてないことでございます。
昨年の秋にこの法の改正が取りざたされましたときに、矯風会では、さっそくトルコ風呂その他いかがわしいものもこの項目に加えていただきたいと要望いたしました。三回も要望いたしたのでございますけれ
ども取り上げていただけませんでした。これは何も今回だけではございませんで、何年も前からそう主張しておりますし、毎年の大会でも決議して要望しておるのでございますけれ
ども、一向に取り上げていただけません。そういうふうに、今回
風俗営業法の改正が問題になりましたときに、先ほど申しました婦人団体国会活動連絡
委員会でもさっそく取り上げて要望いたしましたり、陳情したり、請願運動をしてまいりましたけれ
ども、このまま深夜
喫茶の改正のみできょうにまで至っているわけでございます。
トルコ風呂のことは御承知の方も多いと思いますけれ
ども、利用者のほとんどが男性でありまして、そうして裸の男性を、半分裸体のトルコ嬢がマッサージをし、そうしてその
場所が個室であるわけであります。この個室だということが非常に問題になると思います。
実は、
社会浄化の旗を掲げて運動をしてまいりました矯風会のすぐ隣のところに、
トルコぶろがあるのでございます。見せてもらったことがあるのでございますけれ
ども、狭い廊下のわきにずっと部屋が並びまして、その部屋の中には蒸しぶろとかそれから浴槽、ベットがございます。そしてその部屋の正面に掲示がございます。その掲示の内容がずいぶん問題だと思います。こういう公開の席上で申し上げるのは非常にはばかられるのでございますけれ
ども、あえて申し上げますれば、その掲示には、
一つ、マスターベーション、
一つ、性的行為、その他ちょっとございましたけれ
ども、そういうことはしてはいけないことだからしないこと、そういうような趣旨の掲示がございました。それがどの部屋にも張ってあるのでございます。わざわざ張ってあるところに問題があるのだと思いまして、何もそういうことがなければ張る必要はないわけであります。案内員の人は、
うちの社長は
東京の会長をしているから何も変なことはしていないですよと力説しておりましたけれ
ども、その矯風会の隣の
トルコぶろは、
東京都トルコ浴場協会の会長のものでして、都内に十幾つもあるのだそうです。隣のものははなはだ小規模なほうの
一つだそうでありまして、もっと大きくりっぱなものを会長さんは幾つも持っていらっしゃるんだそうです。マッサージの女の
人たちは免許状を持っているのですかとこちらが聞きましたら、持っていないけれ
ども、長年やっているから、お客さんの悪いところはわかるらしいですよ、何しろ馬乗りになって力一ぱいやるんですからねという答えなんです。これは私
どもから見ますと変な感じを受けたような次第なんでございます。料金は、張ってあるのには、一コース大体一時間ぐらいだそうですけれもど、八百円、それからサービス料三百円をちょうだいします。と書いてございます。これは最低料金、いわゆるマル公でございまして、聞くところによりますと、この上にスペシャル・サービスとかタブル・スぺシャルとかいろいろあるんだそうです。トルコ嬢の給与というもののは固定給が非常に低いか、あるいは全然固定給がなくて、
あとは全部サービス料が収入になるので、ですからトルコ嬢たちは自分の収入が多くないと困りますので、サービス料の高しものを客にしてくれるように、すなわちスペシャルとかダブル・スペシャルをしなくては彼女たちの生活が成り立たないのですから、暗にそれを客が望んでくれることを望むわけでございます。また
指名されることを願うのですね。この次に来たときには私を
指名してください、そうでなければ彼女たちの成績に
関係するわけです。この
トルコぶろがどこに多いかといいますと、昔の赤線にかなり多くあります。大体密室で、
一つ一つの部屋ですけれ
ども、
ほんとうに、見ました感じが密室というような感じでございました。外から遮断されているような密室で、はだかの男性のからだを半裸の女性がマッサージをして、そうしてそれは金のやりとりがからむ、そういうような状態は、そこで
売春行為あるいはその助長行為が行なわれると私
どもが勘ぐってもしかたがない状態だと思います。
こんなに私
どもから見れば問題が多いと思います
トルコぶろが、銭湯と同列扱いで
公衆浴場法の適用しか受けておりません。昭和二十三年にできた
公衆浴場法で、新しくできてだんだん繁栄しつつある
トルコぶろを律しようとせられるのが無理だと思います。先年私
どもが、担当官庁である厚生省の環境衛生課をおたずねしましたときに、係の方は、
風俗常業法でやってもらいたいんだというようなことをおっしゃっていらっしゃいました。今回また問題になりましたのでおたずねいたしましたところ、厚生省では風営法に入れてもらいたい、そうして警察で取り扱ってもらいたいというような御意向でありましたし、警察庁のほうは厚生省で扱うのがいいんだと、お互いに押しつけ合いっこしているような感じを私
どもは受けました。先般の参議院の国会答弁でも、係の方たちはお互いに相手のほうだ、相手のほうだとおっしゃっているように私は聞いたのでございます。それが今回何か漏れ聞くところなんでございますけれ
ども、厚生省が担当なさるというようになったとかいうことだそうです。私はこれでは
規制力が弱いと思います。大体厚生省の下部機関で、保健所がお扱いなさるわけですけれ
ども、保健所の仕事というのは非常に多くて、そして仕事の分野が広いですし、おもな仕事は公衆衛生面が担当ですから、お
ふろ屋の検査と申しましても、温度はどうか、それからよごれているのはどうか、衛生面はどうか、そのような問題はなさいますでしょうけれ
ども、風紀面はどうかというのは、保健所の管轄としてはお門違いのような感じが私
どもはいたします。私といたしましては、警察の担当にして、そして個室はなくして、
営業時間を制限しなくてはいけないと思います。
営業は夜の二時、三時までやるのでございます。矯風会の隣のところでも十二時に締めますけれ
ども、まあ終わるのは二時過ぎですね。女の子たちは住み込みですかと聞いたら通いだ、通いだったらどこに住んでいるか知りませんけれ
ども、国電はありませんし、毎日タクシーででも帰るのかしら、とにかくずいぶん夜おそくまでやるものだな
——これは隣の
トルコぶろでして、あるいは終夜
営業をするほかの
トルコぶろもあると思うのです。十二時前で終わるような
トルコぶろはないはずであります。とにかく警察で担当していただきたいと思います。それから、これは警察とは管轄違いでしょうけれ
ども、トルコ嬢たちに正当な固定給を支給すべきだと思います。最低賃金制を確立して、これはトルコ嬢に限らないと思うのでございますけれ
ども、とにかく彼女たちの生活を保障するように当局として指導していただきたいと思います。
トルコぶろトルコぶろと申しまして、トルコが御本家でありますけれ
ども、トルコに行って見た人の話を聞きましたけれ
ども、トルコの
トルコぶろ自体は、女には女、男には男のマッサージ師をつけます。そして大部屋でやるのだそうです。先ほどのボーリングでも出ましたけれ
ども、
トルコぶろそのものは、蒸しぶろ
そのものは、悪い
営業だというわけにはいかないと思います。健康保持によろしいというのでございましたら、千円とか千何百円というのは、私
ども庶民の感覚ではずいぶん商いと思いますけれ
ども、それをお払いになれる方があるのでございましたら、健康保持のためだけに、純粋に
トルコぶろを使用なさるんだったら、それはそれでよろしいと思いますけれ
ども、それでしたら個室の必要もありませんし、それから深夜に
営業するなどというのは、健康保持の面から申しましたら、かえって夜中の二時、三時にするなどということは、健康増進のためには逆効果だと思うのであります。
風俗営業法を見ておりますと、マージャン屋とかパチンコ屋も
風俗営業で
取り締まり対象にしてありますが、それよりももっと風紀面で問題になります
トルコぶろを見のがすということは、どうしても私
ども納得はできません。現在のまま認めておくのでしたら、あれは赤線復活だと申しても言い過ぎではないと思います。
売春防止法はざる法だとおっしゃいますけれ
ども、ざるの穴を
一つふさぐ
意味でもぜひ
トルコぶろは
規制していただきたいと思います。
ボーリング場も見てまいりましたけれ
ども、値段が高いようでございます。一回一回はそんなに
——そんなにといっても
程度がございますが、高くございませんけれ
ども、あまりおもしろいものですから
あとを引きまして、結局千円くらい使ってしまうようになります。そして射幸心をそそられますので、あれがいわゆる私
どもが
考える
スポーツと見なされるかどうかわかりませんけれ
ども、かりに
スポーツと見なすことができましても、深夜
営業をする必要はないと思います。やはり
営業時間を制限いたしまして、暴力団のたまり場になったり、それから犯罪の
温床となるような要素をいまの
うちになくしておいたほうがいいと思います。
興行場法に入れるなり
風俗営業法に入れるなりして、とにかく
規制していただきたいと思います。
それからいかがわしい業態としては
ヌードスタジオがございますけれ
ども、これは
風俗営業法の
取り締まり対象にして国家が公に認めた
営業とみなすことすら私は不適当だと思います。ですから刑法ですか、何ですか、とにかく
法律でびしびし摘発していただいて、これの存在を認めないという方針を確立していただきたいと思います。
最後に、もう
一つ私の
意見を言わせていただきたいのでございますけれ
ども、それはいろいろな問題に対する当局の態度、
姿勢の問題であります。深夜
喫茶とか
トルコぶろその他、好ましからざる商売の繁栄ぶりは前からいわれておりましたけれ
ども、それの
取り締まりの第一線にあらわれます現場の
方々は、
取り締まりに非常に苦労されていらっしゃいまして、
法律の網をくぐって
営業する悪質
業者に手を焼いていらっしゃったのだと私は推察いたします。そのような状態を幹部の
方々はどういうふうにお
考えになっていらしたのだろうか、そう思うのであります。
それからもう
一つ、私
ども民間団体はよくそのことを主張し、要望いたしますけれ
ども、声が小さいのか、とにかくなかなかお耳に達しませんで、なかなか実行していただけませんでした。今回の深夜
喫茶のこの問題にしましても、国家公安
委員会の席上から話が始まって、急速に今回の
法案上程に至ったことは非常に喜ばしいことでございますけれ
ども、それはそれとして、一方現場の声、そしてまた民間の有志のわれわれの主張にも耳を傾けていただきまして、いれるべき
意見はすみやかにいれて、そして
取り締まりの実をあげていただきたいと思うのであります。当局の
姿勢いかんによっては、たとえ
法律が完全でなくても、相当の効果をあげられるはずだと思います。たとえば広島県では、暴力とか
売春の
取り締まりをかなり徹底的になさって、ずいぶん効果があがったように私
ども聞いておりますけれ
ども、どうか当局の
方々が、しなくてはならないこと、それからなすべきことだということには熱意を示されまして、不健全な
営業が国家として認められないという態度を強くいつも持っていらっしゃって、そして前進なさってくださるように、それをお願いする次第でございます。