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1964-04-16 第46回国会 衆議院 大蔵委員会税制及び税の執行に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和三十九年二月四日(火曜日)委 員会において設置することに決した。 二月四日  本小委員委員長指名で次の通り選任された。       臼井 莊一君    小川 平二君       大久保武雄君    金子 一平君       田澤 吉郎君    濱田 幸雄君       原田  憲君    藤井 勝志君       小松  幹君    平林  剛君       堀  昌雄君    武藤 山治君       春日 一幸君 二月四日  濱田幸雄君が委員長指名で小委員長に選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和三十九年四月十六日(木曜日)     午後一時七分開議  出席小委員    小委員長 濱田 幸雄君       田澤 吉郎君    藤井 勝志君       吉田 重延君    渡辺美智雄君       有馬 輝武君    平岡忠次郎君       堀  昌雄君    竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         国税庁長官   木村 秀弘君  小委員外出席者         大 蔵 委 員 大泉 寛三君         大 蔵 委 員 木村 剛輔君         大 蔵 委 員 小山 省二君         大 蔵 委 員 只松 祐治君         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      鳩山威一郎君         専  門  員 拔井 光三君     ————————————— 四月十六日  小委員小川平二君二月二十日委員辞任につき、  その補欠として渡辺美智雄君が委員長指名で  小委員に選任された。 同日  小委員田澤吉郎君三月五日委員辞任につき、そ  の補欠として田澤吉郎君が委員長指名で小委  員に選任された。 同日  小委員臼井莊一君三月二十五日委員辞任につき、  その補欠として吉田重延君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員小松幹君同日委員辞任につき、その補欠  として、平岡忠次郎君が委員長指名で小委員  に選任された。 同日  小委員平岡忠次郎君同日委員辞任につき、その  補欠として小松幹君が委員長指名で小委員に  選任された。 同日  小委員平林剛君及び春日一幸君同日小委員辞任  につき、その補欠として有馬輝武君及び竹本孫  一君が委員長指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制及び税の執行に関する件      ————◇—————
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  皆さまの御推挙によりまして、この小委員会の小委員長に就任いたした次第でありますが、税制上また税務行政上幾多の問題がありますおりから、どうか皆さまの御協力によりまして、円滑なる運営が行なわれますように、御協力を特にお願いをいたします。ごあいさつを申し上げます。(拍手)  税制及び税の執行に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。平岡忠次郎君。
  3. 平岡忠次郎

    平岡委員 私は大蔵委員会に上程せられておりまする税理士法改正案に関連いたしまして、主として国税庁長官に対し、重要な質問をいたしたいと思っております。  税理士法改正案のねらいが、官僚支配のおそるべき布石なりとして業界に侵透し、与野党の国会議員の間ではもとより、ようやく世人の注目をも浴びて警戒されてきておるのであります。改正案は単に既存税理士自主権侵害とか、代書屋の地位に転落せしむるの危険性にとどまりませず、この改正案は、実は懲戒権拡大強化によって、国税庁長官が一方的に税理士に対する懲戒処分を決定することにより、裁判の判決を待たずに、問答無用、即日効力を発してその税理士業務を剥奪することができるという、まことに憲法違反もはなはだしい官僚独善法制化をねらうところに最大の重点が置かれていると見られる節があるのであります。税理士本来の、納税者のための代理機能を一転して、官僚支配に奉仕する御用機能に変質せしめようとするところにこそ最大のねらいがあると懸念いたされるのであります。さらに無試験資格認定税務署員に与えることによって、官僚御用化部隊業界への大量投入を企図することでその全きを期している節が露骨に見られることは、民主議会政党政治をゆがめる提案であって、まことに心外に耐えないところであります。私は本委員会がこの危険な改正案を審議せんとする今日、この危険性を具体的に実証し、警告するためにあえて長官に向かって質疑をいたさんとするものであります。  すなわち、私の主要テーマは、税制行政の明らかな行き過ぎに対し天下の関心事となってきました飯塚事件をその象徴的具体例としてここに取り上げ、長官の所信をたださんとするものであります。  冒頭に私の立場をまず申し上げておきましょう。横山委員も過日別の角度においてその立場を明らかにして飯塚事件質問されましたが、私の基本的な立場は、国会議員がこの際に当然負うべき不当な徴税行政に対する護民官的立場と御了承おきを願いたいのであります。しかく官僚独善弊風徴税行政において顕著であり、看過し得ざるものがあると考えるからであります。  まず、長官お尋ねをいたします。頻発する行政通達権法的根拠を明らかにせられたい。国家行政組織法にあるはずであります。長官からお答えを願います。
  4. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 国税庁で発しまする税務執行あるいは解釈についての通達根拠は、国家行政組織法にございますように、上級機関下級機関に対する訓令でございます。
  5. 平岡忠次郎

    平岡委員 お答えのごとく、国家行政組織法第十四条には、長官部下を拘束する通達制定権を明定いたしております。ただし味読しなければならないことは、この通達は当然には国民を拘束するものでないということ、憲法に保障された、国民裁判により理非曲直を明らかにする権利は当然通達拘束力の外にあるものだということであります。飯塚事件で問題になっている一税務官吏税務訴訟を取り下げろなどという強圧は、法治国家の根底をゆさぶるものであって、不法の言動これにまさるものはないのであります。行政権拡大のおそるべき弊風こそわれわれの寒心にたえないところであります。行政は本来行政法律主義にのっとるべきものであります。徴税行政に許されていることは指導行政であって、断じて検察的行政ではないはずであります。  さて、一人の税務官吏の職権は右の行政指導の大ワクの中にあって、しかも権限は極限されており、決して万能を許さないものであります。  しかるに、今回当局飯塚事件にあたって、税務職員権限に極端な拡大解釈をやっている。たとえば一人の税務官吏に対し、一、法人税法による質問検査権、二、所得税法による質問検査権、三、税理士法第三十六条違反に対する質問検査権、四、私文書偽造容疑質問調査権、五、刑事事件の基礎とすべき供述書や聞き取り書の作成権、六、署名捺印強要権、七、外国為替管理法違反調査権、八、保険業法違反調査権等々、ものすごい権限の拡張をあえてしているのであります。大蔵省組織規程によりますると、賦課徴収修正申告の受理は、税務署長権限に属すること明白であります。国税局の直税部長や訟務官の分限に属する事項ではありません。しかるにこの事件では、はなはだしい逸脱行為の連続であり、行き過ぎはまことに目をおおうべきものがあります。  さて、具体的に質問に入ります。まず長官お尋ねしますが、栃木県の今市市にありまする森病院の歴然たる隠し預金二千万円の脱税処理はどうなったかお答えを願いたい。
  6. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 まず、所得税法あるいは法人税法による質問検査権の行使を、ただいまお述べになりましたように八つの方面に拡大解釈をして行使しておるというお話でございますが、税務当局といたしましては、所得税法あるいは法人税法による質問検査権というのは、あくまでも真実の所得を把握するための手段として法律上定められておるところであり、したがって、その目的以外に、たとえば私文書偽造であるとか、あるいは外国為替管理法違反であるとか、保険業法違反であるとか、そういうほかの目的のためにこの質問検査権を行使したという事実はございません。これは私、はっきり御答弁を申し上げたいと存じます。  それから第二の、今市市の森病院の二千万円というお話でございますが、これは私具体的に聞いておりませんので、この場で即座にはお答えをいたしかねます。
  7. 平岡忠次郎

    平岡委員 具体的には聞いていないけれども、かすかに聞いているわけですか。
  8. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 森病院というのを聞いておりません。
  9. 平岡忠次郎

    平岡委員 この問題で長官赤澤さんという人に会ったはずであります。そのいきさつを明らかにされたい。
  10. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これは赤澤さんから、私に電話がありまして、森病院でしたか、ちょっと名前は覚えておりませんが、調査が非常に厳重だ、それで一体どういうことだというような御質問がありまして、その程度でございます。したがって私は、森病院所得内容がどうなっている、二千万円であるとか、あるいは調査した結果がどうだとかいう事実は確かめてもおりませんし、全然知りません。
  11. 有馬輝武

    有馬委員 関連して。これは国会法によりまして、やはり審査の過程におきましては、故意に事実を隠蔽したりまたは誇大にものを言ったりすることは許されないことになっておるはずであります。いまみたいに、長官が知っておるものを知らないというような形で答弁いたしますと、審査を進める上に大きな障害となりますので、委員長のほうにおかれまして、やはりそういう点は事前に警告を政府側にしていただきたいと思います。
  12. 濱田幸雄

    濱田委員長 承りました。  木村長官に申しますが、いま有馬委員からの発言がありましたような次第だから、よく質問に対する御答弁につきましては、率直な御発言を特にお願いいたします。
  13. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私がいま森病院について具体的に存じておらないと申し上げましたのは、ただいまの御質問では、所得が二千万円であって、どうとかというふうなお話でございますので、そういう点については私は何も聞いておりません、こういうことを申し上げたのでございます。私のところへは、こういう陳情と申しますか、税務行政に対する陳情というものはもう毎日ほとんど数え切れないくらいきております。したがって、森病院について陳情があったかないかというふうなお話でございますと別でございますけれども、森病院所得内容に触れるような面については、私は全然質問も受けておりませんし、調査したこともございません。
  14. 平岡忠次郎

    平岡委員 確認いたしますが、赤澤さんからあなたに、そういう電話申し入れがあったことは事実ですね。
  15. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 電話申し入れと申しますのは、この二千万円とかなんとかということではなくて、森病院について調査が行なわれておるが、非常に厳重なようだ、これはどういうことなんだというようなことでございます。
  16. 平岡忠次郎

    平岡委員 そうしたら、森病院に二千万円にわたる隠し預金があるという事実が明白になったら、あなたは部下に命じまして、その理非曲直を明らかにして処置をいたす考えがあるわけでありますね。
  17. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 具体的に二千万円の隠し預金があったとかなんとかいうようなお話は、一切私は承っておりません。したがって、この場でかりにいまお話のように二千万円の隠し預金があったと仮定した場合には、やはりそれは十分調査を綿密にしなさいということは申すことはございますけれども、しかしそうだからどうこうしろということは、これは私が現実に調査しているわけではございませんので、陳情があったからといって下級機関を拘束すると申しますか、束縛するような指示をいたすことは穏当じゃございませんから、それはやっておりません。
  18. 平岡忠次郎

    平岡委員 それでは次にお聞きしますが、長官は、鹿沼税務署内で、つまり今度の飯塚事件に対処する国税庁やり方について、現地税務署では非難ごうごう、批判のあるということを知っておられますか。
  19. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私はこれは一般的に申して鹿沼税務署に対して批判が強いとか弱いとかいうことは存じません。それはたとえば新聞等の論説を見ましても、ある新聞では税務署側に対して同情的なものもあり、また逆のものもあり、いろいろでございますので、一がいに鹿沼税務署やり方に対して悪い面だけしか批判を受けていないということは、私はそう思っておりません。
  20. 平岡忠次郎

    平岡委員 長官、ぼくの質問に対する答えがちょっと違う。鹿沼税務町内国税庁から派遣された人たちが跳梁ばっこすることに対して、鹿沼税務署内において非難があるということを知っているかと聞いているのです。
  21. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 国税庁から鹿沼税務署出向さしておる例はございません。
  22. 平岡忠次郎

    平岡委員 出向じゃない。出張しておる例です。安井君とか、そういう者ですよ。
  23. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 それは国税局ですね。そういうことは聞いておりません。
  24. 平岡忠次郎

    平岡委員 それではさらにもう一つ聞きますが、鹿沼税務署斉藤総務課長が一夜男体山おろしの吹きすさぶ寒風をつきまして、ふるえながら森病院の自宅を訪れて、鞠躬如として偉い人の御伝達に及んだ事実は、長官とどういう関係があるのですか。
  25. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そういう事実は全く私は聞いておりません。
  26. 平岡忠次郎

    平岡委員 聞いておらぬということは、あなたは部下を掌握しておらぬということです。いずれにいたしましても、長官はまだ調査の義務の上に眠っておると私は善意に解釈いたしましょう。つまり調査に着手していないのだという立場を一応私は認めましょう。したがいまして、この二千万円の隠し預金問題を長官自身が調べて当委員会報告してください。すなわち、森病院脱税二千万円の処理、重加算税などの課税状況を再度この委員会長官自身の手で御報告、提出をしていただきたい。当委員会の他の委員諸君の心証にどう映ったか知りませんが、この問題は事実問題でありますから、この究明と処理の結果はぜひとも掘り下げなければならぬと私は信じておることを特に申し添えておく次第であります。  さらに長官に御留意願いたいことは、長官はこの事実をまだ知っておらぬということであればそれでよろしい。ただ私があなたに御留意願いたいことは、飯塚事件職員四人を逮捕せしめた供述者の一人がこの森病院理事者であるという点であります。これは非常に大事なことです。  さらに申し上げましょう。次に、よってもってこの四人が逮捕並びに起訴された供述人の一人として、鹿沼市の御殿山病院並木院長にかかわるレントゲン購入にまつわる脱税容疑処理が残されておるはずです。これを明らかにせられたい。これは御存じですか。
  27. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 最初の、森病院理事者供述者になっておるというお話でございますが、これは税務署調査でございましょうか、それとも検察庁の調べでございましょうか、その点ははっきりいたしません。  それから並木院長レントゲンというお話も私は聞いておりません。したがってこの場ではお答えをいたしかねます。
  28. 平岡忠次郎

    平岡委員 鳩山直税部長は聞いておりますか。
  29. 鳩山威一郎

    鳩山説明員 私も全然聞いておりません。
  30. 平岡忠次郎

    平岡委員 私があえてこの二つの問題をここに持ち出したのは、飯塚君に対する国税庁の不当なる予断を合理化するために弱点を押え恩を売って、上記二名をして国税庁の意に迎合させ、事件のでっち上げや偽証をさせたものと考えられるからです。どうですか、この場合安井君をちょっと出してくれないかな。関東信越国税局の直税部長です。
  31. 濱田幸雄

    濱田委員長 これはいずれあとで相談します。
  32. 平岡忠次郎

    平岡委員 相談するといってもまるで答えがないのですからね。片方では事件が進行しているのです。
  33. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 具体的な事実の問題になりますと、これは一般的に税務調査の際に知り得た事実あるいは検察庁調査段階で知り得た事実、いろいろあると思います。しかしながら、ただいまお述べになりましたように、飯塚会計事務所の四人が起訴になっておって、そういう関係で具体的な事件内容に立ち入るということは穏当でないと私は存じます。  それから、国税庁で何か偽証させておるというような面の疑いがございましたならば、それはやはり具体的にこういう疑いがあるぞということをおっしゃっていただけば、私のほうで現地のほうとよく連絡をとりまして調査をして、この場でお答えをしたいと思います。突然でございますので、そういう具体的なこまかい問題については私のほうで報告を受けておりませんので、さっそくにはお答えをいたしかねます。
  34. 濱田幸雄

    濱田委員長 ちょっと木村長官に私から申しておきますが、いずれ平岡委員からかなり具体的な問題についての御質問もあると思いますが、よくその点につきましてはあなたのほうで責任を持って調査をして、しかるべき機会に答弁をするように特に要望しておきます。
  35. 有馬輝武

    有馬(輝)小委員 いま委員長から政府側に対しまして適切な御指示があったわけでありますが、この件に関しましては、木村長官もまた鳩山直税部長も長期にわたって事件概要について十分調査され、また御存じのはずなんです。それで当委員会としまして、知らぬ存ぜぬという形で問題をただ答弁技術という形で処理してまいりますと、せっかくのいまの委員長の御指摘のようなことが、ただ日にちの問題として先に繰り延べられるだけでありまして、民主的な徴税行政の確立を意図しております本委員会の趣旨にも沿わないことにもなろうかと存じますので、やはり本日におきましても、長官並びに部長御存じのことは、率直に答弁願うという形で進めていただきたいと存じます。
  36. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 事件概要につきましては、ただいまおっしゃったように私ども調査をし、存じております。ただ、いま申し上げたように、具体的な案件の非常にこまかい点になりますと、相当関係者も多く、複雑でございますので、私のほうからすべての事実をここで知っておるというわけにはなかなかまいりません。したがって、税務行政執行に関連して疑念のあるような点を、こういう点はどうだということで、あらかじめお示しいただきますならば、私のほうでそういう点についてはこまかく調査をしてお答えをすることはできると思います。そういう点は私のほうでも調査はこまかくやりますけれども、しかし必ずしもわれわれの調査と、委員方が御希望になるような事項とがびたっと合うかどうか、その点についてはなかなかむずかしい問題がございますので、でき得ればこういった点はどうだということであと調査をしてお答えいたしたい、こういうふうに希望します。
  37. 平岡忠次郎

    平岡委員 あなたの今後の調査のめどになると思いますので、私のほうの知り得た事実を二、三について申し上げます。  十二月の一日、午後の五時ごろ、今市料亭喜八得意先から飯塚税理士に対しまして電話連絡があった。来いということであった。そこに出向きましたところ、森病院の副院長御殿山病院並木院長、それから小西ホテル社長伊藤材木店社長、奈良屋の社長等が参集されて、そのときに森病院の副院長が、今回うちでは二千万円ばかりの隠し預金が見つかってしまった。もちろんそれが飯塚さんの責任というのじゃございませんよ。うちでかってにやったのだから……。しかし正直言って、われわれは飯塚さんなんかどうなったってかまわぬのだ。私の家のことできようお集まり願ったのだ、私の家のことでもう頭が一ぱいなんだよと青い顔をしてふきげんそうに、奇妙な理屈を述べた。
  38. 濱田幸雄

    濱田委員長 速記を止めて。   〔速記中止
  39. 濱田幸雄

    濱田委員長 速記を始めて。
  40. 平岡忠次郎

    平岡委員 その余波が赤澤さんのほうに伝達され、あなたのほうにも連絡があったと思うのですが、この問題は後段のほうはよろしゅうございます。いま言った事実があるのです。御本人の副院長がそういうことを言っておるのですから、あなたの管轄の部下がどこの段階であるか知らぬけれども、この手入れを始めたことは事実であるということを、ここであなたは知ってもらいたいのです。したがってあなたのほうの調査の道は今後残されておるわけです。よろしいですね。  それからその後二月の二十三日になりまして、午後九時ごろですね。飯塚氏は先ほども出ました鹿沼市の御殿山病院並木院長を訪問いたしました際に、次のことを並木氏から聞いておるわけであります。  並木氏のいわく、森病院の件はあっけなく済んじゃった。赤澤さんに連絡して、赤澤さんから木村長官に一本苦情を入れたら、長官から鹿沼税務署連絡がきて、総務課長があたふたと夜森さんのうちに飛んできて、どうも御心配かけてすみませんでしたでチョンですよ。結局森病院の二千万円はパアになりましたよ。飯塚さんもこの流儀でやればよかったのですがねえ。長官御反論がありますか。
  41. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 第一の点は私も今後調査をいたします。第二点は、先ほども申したように、私はいろいろな陳情をしょっちゅう受けておりますけれども、それによって税務執行に携っておる末端を拘束する、あるいはそれに対して大きな影響力を与えて、調査をやめさせるとか撤回させるとかいうようなことは就任以来いたしておりません。赤澤さんからそういう御質問があったことはこれは事実でございますけれども、その結果チョンにしろとか、あるいは何とかということは、これは言ったことはございません。
  42. 平岡忠次郎

    平岡委員 赤澤さんからその連絡があったことは事実ですね。公平を原則としてあなたの信念に生きてきたということはあんたがいまおっしゃいました。その限り私も信用したいと思っておりますが、ただしその赤澤さんからの電話に関連する事案は、いま申したような内容なんで、それがあなたの意思と反して何とか氷解され、くらまされておるという事実は、私のいま述べましたことで、あんたは大方御察知がついたと思うので、克明にこのことをやってくださいよ、いいですか。  ちなみに、赤澤さんのお嬢さんは、森病院理事長の奥さんであります。しかし赤澤さんに対しまして、私は別に恩も恨みもないのでありまして、このことは私にとってたいした意味はないのであります。問題は、脱税容疑者に恩を売って、顧問税理士飯塚君をおとしいれる策謀の道具に使ったという事実は、断じて許されないと思うのであります。どうですか。
  43. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これはいまの森病院以外におきましても、かなり事実が誇張されておるとか、あるいは事実でないことが流布されておるということを私は前々から痛感しておるのであります。脱税容疑者に恩を売って、それで特定の人の悪事をあばくというようなことは、あるべきはずでもなし、またそういうことをやってはおらないと私は思います。ただいまお話になりましたように、何か私と赤澤さんとの間に変な関係があって、そして赤澤さんから依頼を受けてもみ消したというようなことは、これはもうまことに不穏当な話であり、そしてそういううわさをまき散らした人があるかとも私は思いますけれども、私は断じてそういうようなことはやっておりません。そんなことをやるということは、税務の最高の責任者としてあるべきことでもなく、またそういうことがあったとしたならば、これはたいへんな問題でございます。
  44. 平岡忠次郎

    平岡委員 長官はそうでしょう、おそらく……。だけれども、もし私がいま申し上げたようなことについて、たとえば関信越局安井直税部長等が、そうした取り計らいをあなたの命に反してやったというようなときには、当然それは罷免をしますね。
  45. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 それはもちろんそういうことがあれば、監督権を発動して処分をいたします。
  46. 平岡忠次郎

    平岡委員 飯塚氏を消さんとする黒い霧はこれのみにとどまっておらないのです。銀行局長お尋ねをいたします。あなたも飛ばっちりでお気の毒でございますが、ありていにお答えを願いたいのであります。  先ほど並木院長に関する質問でありますが、飯塚君をおとしいれようとするために仕組まれたわなと思われるものに、大同生命関係が出てまいります。私は不審に思われてならないのであります。実は大同生命の当時の上野支店長である今井という人、この人はたまたま関信越局の金子訟務官と中学時代の同窓生であります。この人から本年の二月二十五日に、飯塚税理士電話がありました。その電話内容は、関信越局安井税部長が、大蔵省銀行局へ御殿山病院が四年前に飯塚の口ききで生命保険契約をしたが、何をとまどってのことか知らぬけれども、これは詐欺の疑いがあるから、並木院長を銀行局に喚問して調査してくれという話を持ち込んだ、こういうものであります。思うに、安井税部長は、保険契約の面で飯塚をゆさぶる作戦に出たものと私は解釈しております。しかし、幾ら銀行局が同じ大蔵省の出店でありましても、裁判所の管轄に属する詐欺ということを取り上げるわけにはいかなかったはずであります。高橋さん、そうでしょうな。
  47. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そのだれからどういう電話があったということを私聞いておりませんが、きょう、税理士の問題で御質問がある、一体われわれの銀行関係で何があるだろうかというので、実はとまどったのでございます。たまたま保険課のほうでこの代理店の問題があるということで、調査したものを実はただいま私もここで受け取ったわけでございます。とにかく代理店契約があった。しかしそれは紹介代理店で、いわゆる紹介だけをする代理店でありますが、ここの職員の中にかなりの数の者が、この会計事務所の職員で大同生命の外務員として登録していた者が十数人おります。結局、結論だけ申しますと、好ましくない事例があったとみなされますので、代理店契約を取り消しております。それから、代理店ということでなしに、これは何ら正式の書類に基づくものでありませんが、口頭で、飯塚という人が顧問という名称、顧問を委嘱されたことになっておった。ところが、何ら顧問という成規のあれはないわけでございますので、そういうものは好ましくないということで、顧問ということをすでに取り消しております。その代理店及び業界指定事務所の職員で大同生命の外務員として登録されている者の委嘱を解除しております。この原因は、詐欺というのではないので、そういうことばは使っておりませんが、いわゆる勧誘の場合の話法、話し方、勧誘のしかた、これは募集の禁止規定がございますが、それに触れる疑いがある行為があったということで取り消しをいたしております。
  48. 平岡忠次郎

    平岡委員 いま、あなたのお答えの中に、飯塚が顧問ではなかったということは、飯塚の落ち度ではないのです。というのは、取締役会でできると思って、飯塚を顧問に推戴したが、それはそうじゃなしに、総会の議決に基づかなければならぬということがわかったので、それは顧問ということではないということは、あなたのほうに回答してきていると思います。それは飯塚にとっては、別段、飯塚の側から作為で顧問を詐称したわけではない。この点だけ私のほうから釈明しておきます。  それで、先ほどの続きになりますが、そこで、国税庁は、角度を変えて、並木院長をそそのかして、飯塚は、大同生命の顧問でありながら、保険のあっせんをやっているが、これは保険業法に違反していると上申させた。この上申書をあなたは受け取られておるかどうか。先ばしって、答えはもうさっきやりましたが、事実の経過のうちに、この上申書をあなたは受け取っておりますか、どうですか。事実関係を述べてください。
  49. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そういういきさつは私は存じませんが、これははっきり大同生命の紹介代理店になっておったわけです。ですから、契約を直接することにはならない。その場合には、大同生命の職員出向いて契約をする、そういう意味での代理店でございます。しかしその部下の中に外務員がかなりの数おったという事実はございます。その点は、何かきわめてあたりまえのことのように思います。先ほどの顧問の件につきましても、確かにこれは本人の責任だというのではありません。会社の側から顧問という名称を与えておった。そういう名称を使うことを認めておったわけでございます。ところが、これはいまおっしゃいましたように、成規の手続を経ておりませんので、それは好ましくない、募集取り締まり上好ましくないからというので、これを会社側に注意いたしまして、取り消さしたわけでございます。そのような経過になっております。
  50. 平岡忠次郎

    平岡委員 へでもないことをみんなあなたのほうに言っているわけですな。  もとより、生命保険の代理店は、契約募集の行為はできない、その限りにおいては確かにそうであります。しかし、全国数十万の代理店は通例、募集人登録を兼ねてやっておるわけであります。飯塚氏のこの問題の場合もむろんその例外ではないのであります。したがって、国税庁のねらった目算は当然はずれたわけです。この経過を見ましても、何とでもあらさがしをしようと、六法全書や保険業法、保険会社の定款、規約などをなめるようにめくっている直税部長の姿というものが目に浮かぶようでございます。だれが院長に入れ知恵したか。脱税院長をかり立てて、飯塚包囲陣に一役買わせ、さらに、好漢高橋局長までわずらわせるということになると何ですが、その狂態ぶりは、まさに民主主義議会の良識として当然看過できないところであります。保険業には主務大臣の監督権処分権がございます。銀行局は、大同生命におきゅうをすえてやろうとの国税庁の意図に乗りまして、心ならずも社長に出頭を命じたと私は思います。そこで、先ほど申し上げました今井上野支社長は、一切の責任を自分で負いまして、昭和三十九年三月十六日に辞表を提出いたしました。先ほど申したとおり、彼は同窓の金子訟務官の背信に泣いております。ついで、飯塚税理士も、そこまでいじくられて顧問をする必要はないので、顧問の辞表を書いておるわけであります。ヘビのような執念であります。徴税官僚跳梁のまさに残酷物語ともいうべきものであります。高橋さん、あなたは、心からこの事実を容認しているのですか。しようがないから義理立てでやったという気持ちじゃないのですか。まあ長官の前ですから答えられないでしょうが、どうです。
  51. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私は、この具体的な事件につきまして、そういう紹介代理店の取り消し並びに外務員登録の取り消しというふうなものにつきまして、実のところは——これは保険の関係は二課ございますが、保険担当専門の財務調査官を置いております。そういった非常にこまかいケース、私どもから言いますれば、いわゆる政策に属さない程度のものでございますので、実はきょうになってそういう事実を報告を受けたというだけでございまして、私自身がこの問題についてどうこうせいという指揮をした覚えがございませんが、この理由を保険関係の担当者から聞きましたところでは、何ら圧迫とか何か外部からの依頼とかそういうことではもちろんございませんで、飯塚税理士が保険業法に違反している。そういう募集を行なっている。なぜかと申しますと、それは損金算入にならないものを、これは損金に算入されるということで募集を行なったという点が触れたわけでございます。経営者側が契約者となる、それがまた、その家族が受け取り人になるような、そういう保険契約は、税法上当然経費には認められない。それを損金として認められるんだということでその募集をしたのだ、この事実、大体関係者を調べたところ、どうもそのような事実がある。損金算入できないものをできるということで加入した、だからそれはもう破棄してくれというふうなことになっております。このような事実に基づきまして、大同生命にそれは好ましくない、そういうものを紹介代理店にしておくこと、あるいはその職員を外務員として使っているということは好ましくないから、その登録を取り消すべきだということになりまして、日にちで申しますと、登録をいたしましたのは三十五年三月十五日でございますが、今年の三月十七日に業務廃止をいたしております。何らこれは、どこどこから頼まれたからとかなんとかということではございません。そのような事実があったということであります。
  52. 平岡忠次郎

    平岡委員 あなたもし法解釈に間違いがあって——あなたはいま、損金に算入すべからざるやつをさせたとお答えになっておるわけですね。それを根拠にして飯塚君の保険業者としての権利を剥奪した、そういうお答えでした。しかしこれは重大なことなんですよ。経営者の保険料は損金にはならないのです。また課税要件にもならないのです。そういうことを知らぬでやったなら別だとして、そういうことが明確なんですから、あなたのいまの答弁では私は納得いたしません。まああなたを査問して——何か別途に税金が減らされるとかってに考えて詐欺だと言ったものにすぎないのです。もう一回申しますが、経営者の保険料は損金にはなりません。同時にまた課税要件にもならないのです。これははっきりしているのです。長官どうですか。
  53. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私が聞いておりますのは、大同生命の生命保険契約の勧誘に際してどうこうということではございません。代理店契約を結んでおり、しかもそれによって得る収入の申告というものが非常に低い、一方先ほど銀行局長お答えをいたしましたように、家族であるとか使用人等に非常にこまかく分割されておるので、あるいは場合によっては名義分散をはかって低額に申告をしているんじゃないかという疑問があって調査をいたした、こういうことは私聞いております。
  54. 濱田幸雄

    濱田委員長 本会議散会後に再開することにいたしまして、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ————◇—————    午後五時九分開議
  55. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  小委員長所用のため、私が小委員長の職務を行ないます。  休憩前に平岡委員より質問された事項について、国税庁長官答弁を求めます。木村国税庁長官
  56. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど平岡委員から御質問のありました、主として事実関係の問題につきまして、その後現地連絡をとりまして調査をいたしました結果を御報告いたします。  その第一点は、今市森病院の件でありますが、先ほどお話でございますと、何か森病院に二千万円の脱税があって、それを不問に付すというような——いろいろな前提はございますが、結局不問に付するというような点でございますが、税務署調査いたしました結果は、一体この二千万円という数字がどこから出たのか、税務署にとっては全く架空の数字であるということであります。現在までの調査段階におきまして、二千万円という数字は全く心当たりがないということであります。  それからなおこの病院に対して、筑波おろしの吹く晩に斉藤総務課長がたずねて、そしてこの脱税の件についてはふいにすると、私から何か話があったというようなお話でありましたが、斉藤総務課長は、この森病院がどこにあるかということさえ知らない。したがってむろん行ったことはございません。これはもう本人が明言をいたしております。  それから第二の、並木病院についてでありますが、ことしの三月三十日に当病院から修正申告が出ております。それ以外の、申告されておる分以外のものについては、目下調査中でございます。ただし偽証をしたならば、代償としてこれをふいにしてやるというようなことは、全く無根でございます。  それから第三の、大同生命でございますが、これは私からお答えするのは適当でないかもしれませんが、私実は帰りましてから、銀行局に出されておる上申人の文書等も見、また係官の説明等も聞いたところによりますと、大同生命に対して、ある社の社長、理事、社員が被保険者となって生命保険契約を結んでおるわけでございます。その受け取り人が会社になっておる。これはもちろんこういう種類の保険料につきましては、損金にならないことは税法上当然でございます。ところが勧誘をした飯塚氏は、これがこういう種類の契約を締結すれば、払い込み保険料は損金になるんだ、こういう説明をして勧誘をいたしておる。ところが、税務調査の際に判明いたしましたことは、実際は損金として処理をしておられるのではなくて、別途積み立て金からこの保険料の支出がなされておる、これが事実でございます。ところがこの社長がそういうことを知りまして、これはけしからぬ、損金になるからこういう生命保険契約を結べという勧誘で結んだところが、実際においては何も経費から落としておるのではなくて、別途績み立て金から出しておるじゃないか、これは非常にけしからぬということで、飯塚税理士と、もう一人先ほどお話しのありました現在上野の支店長の今井さんですか、とに抗議を申し込んだ。契約をひとつ解除してくれということを申し込んだんだけれども、どうしてもそれに応じないということで、銀行局の保険課長あてに、この被害者から上申を出しておるのであります。その上申の趣旨は、自分はこういう間違った説明に基づいて、事実を誤認をして保険契約を結んだんだ、したがって、払い込み保険料の全額を返還するように、大蔵省のほうからひとつ働きかけてもらいたい、こういう上申書を出しておるのであります。これが事実でございます。
  57. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 平岡忠次郎君。
  58. 平岡忠次郎

    平岡委員 先ほど赤澤さんとの電話関係において、森病院についてどうも少しきつい調査だからということがあったので、内容はわからぬけれども、そういうことがないようにという趣旨の連絡をした。だが、内容は聞いておらぬということをあなたはおっしゃったですね。そのことがその斉藤総務課長の言かどうか知らぬけれども、森病院の存在さえも知らないというのは、おかしいじゃないですか。
  59. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 いやそれは、私の発言の趣旨を誤解していらっしゃるんじゃないかと思いますが、先ほどの話では、斉藤総務課長森病院をたずねて、そして森病院長に対して私から——私といいますか、木村からこういうことを言ってきておる。ついては今後の分はパーにするというような趣旨の発言をした、こういうお話でございましたから、私のほうは斉藤総務課長電話連絡をいたして、事実を確かめたのであります。その結果、斉藤総務課長は、これは鹿沼税務署総務課長でございますが、今市のこの森病院の所在すらも知らない。ましてやそこへ伺ったことはもちろんないということを申しておるのでございます。
  60. 平岡忠次郎

    平岡委員 病院の所在は知らぬけれども、森さんの——副病院長ですか、それは知っておるのですね、病院の所在を知らぬで。これはそうですよ。変なはぐらかしの答弁は困るよ。
  61. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 副病院長にいたしましても、ともかくそういうことで、斉藤総務課長は伺ったことはないのであります。
  62. 平岡忠次郎

    平岡委員 さらにお伺いしますけれども、最初の話をちょっと……。あなたは赤澤さんから連絡があって、その森病院の件で、その内容は知らぬけれども、赤澤さんからの申し入れば電話で受けたことは明確にしているじゃないですか。それを森病院がないとか、その所在を知らぬという、そういう答弁はないですよ。これはターザンの逆襲だよ。
  63. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私は、森病院という名前を知らぬということを申し上げたのではなくて、斉藤総務課長が、森病院の所在さえ知らない、こういうことを申しておるのです。したがって、森病院へ行ったこともなければ、そこに対してそういう話をしたことはもちろんない、こういうことを明言いたしております。私は森病院の名前は赤澤さんから聞いて存じております。しかし、その内容で、さっき申し上げましたように、二千万円の脱漏があるとかなんとかいうことは、もちろん私は知っておりません。
  64. 平岡忠次郎

    平岡委員 さっき開口一番国税庁長官が言うたことは、これはもうみんなここで聞いていらっしゃる方はわかると思うのだけれども、平岡がいいかげんのことを言った、事実無根のこと、森病院なんて存在せぬことを言ったというふうに取れたんですよ。冗談じゃないですよ。だめですよ。そんなあいまいな変な使い分けはけしからぬですよ。あなた、それじゃ森病院の存在を否定しますか、否定できないじゃないですか、さっき言っているんだから。冗談言うなよ。
  65. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 森病院というのではなくて、実際の名前は英静会というのだそうでありますが、私は赤澤さんから聞いたんでは森病院ということで聞いております。しかしながら、森病院で、これは先ほど速記を読んでいただいてもおわかりになりますけれども、その二千万円の脱漏があるとか、あるいはその調査内容がどうなっておるとか、そういうことは知りません。森病院というのは赤澤さんからお聞きして知っておる、こういうことであります。
  66. 平岡忠次郎

    平岡委員 だからあなたは、その事情、内容は知らぬということをおっしゃったから——あなたはまだ捜査の義務の上に眠っておられるのだから、私がサゼスチョンを与えるからそれを調べてくれということを言っただけの話で、あなたと私の争点が別段食い違ったわけじゃない。それをあたかもこの委員会で私のほうがでたらめを言っているかのごとき誤認を招くような発言はけしからぬですよ。  それから第二番のあなたの発言ですが、並木病院に対して、これは目下取り調べ中ということですか。
  67. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 いま申し上げましたように、修正申告の出た分以外のものについては調査中であります。
  68. 平岡忠次郎

    平岡委員 それじゃその調査の御参考のために私申し上げておきます。並木さんそれ自身は飯塚さんとの関係にからんで当然調査を受けたのですよ。そうしたら、鹿沼税務署が調べていきますと、ほかのとんでもない事件か出てきたわけです。それはレントゲン購入に関する件なんです。レントゲンを実は裏金で買ったわけです。それにもかかわらず借りたことをよそおって月ぎめ三万五千円の賃借料を払ったことにして買い先からそういう領収書を取っておることが発見されたわけなんです。だから私はその点につきまして、鹿沼税務署がどういう処理をしたか、あるいはそのことを知っているかということを先ほど聞いたわけなんです。この点は鹿沼税務署を調べればわかります。処置をしていないでしょう。これは大いに調査をしてケリをつけてください。それをなお飯塚君のところの大貫従業員が指導したと強弁をしている。そういうことでほこ先をかわそうとしている。こういうふうなことはけしからぬ。要するに、この事実をつかまえて痛い尻があるから、国税庁の言うがままに偽証まがいの立場をとって飯塚の包囲陣に一役を買っているという点が私の指摘したい点です。
  69. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 レントゲンの問題も私調査はしてございます。しかしながらこれはただいま名前をあげてのお話でございますが、もちろん御承知のようにわれわれが調査をいたしました結果、個人の所得内容に立ち入って発表をするということは禁ぜられておりますので、お答えはできません。
  70. 平岡忠次郎

    平岡委員 先ほど次の機会に長官報告するということになったのですが、これは大蔵委員会の本委員会でもかまわぬですよ。そこで事実を調査しましたら報告をされるといういきさつになっておるわけですね。それでもし公開の席でそれができないなら、あなたがなお詳しく調べた結果を少なくとも大蔵委員会の秘密会に報告する義務があります。どうしてかというと、このことが飯塚税理士に対する不当弾圧の積み重ねといいましょうか、非常に大きな要件になっておるわけです。ですから私はそのことを要求しているのです。普通のときに、税理士とかあるいは国税庁関係が、秘密とされるべきことに対して何でもかまわずあけすけにしていいというふうには私は考えていない。しかしこれには一人の人の運命がかかっているのですね。無罪とか有罪とかいう、一人の人並びに部下の運命がかかっている。私は当然この要求を引っ込めるつもりはないから、あなたは応諾してくださいますか。
  71. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私が先ほど調査をして洗いざらい全部をここで御説明申し上げる、公表いたしますということを申したのではありません。発表できることとできないことがおのずからございます。したがってたとえ秘密会でございましょうとも、こういう個人の所得内容についてわれわれが職務上知り得た事項をお知らせするということは、これはわれわれの義務違反になりますので、お答えできません。
  72. 平岡忠次郎

    平岡委員 それはおかしい。さっきは応諾したわけです。
  73. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 ちょっと速記をとめて。   〔速記中山〕
  74. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 それじゃ速記を始めてください。
  75. 平岡忠次郎

    平岡委員 長官お答えの第三項、大同生命に関して、並木院長が損金になるという勧誘にひっかかって、ひっかかってというのは語弊があるかもしれませんけれども、つまり事実を誤認してこの保険に入ったのだ。これは私の本意ではない。そこでこの契約をやめたい、できるなら掛け金を取り戻したい、こういう上申をしたというのですけれども、しかしおかしいじゃないですか。確かにこれは損金にはならないですよ。損金にならないのですけれども、同時にこれは課税対象にもならないのですよ。郵便局の積み立て金同様で、損金ではないのですけれども、やはり課税対象にもならないわけです。ですからそのことによって、迷惑をかけることは一つもない。だからその上申はおかしいと思うのです。その後四カ年、まだかけ続けておるのですから、損金になるつもりでかけたら損金にならなかったので、不測の損害を受けたかのごとき上申はおかしい。これは、ばかみたというなら話がわかる。確かに損金にはならないのだけれども、同時に課税要件ではないのですよ。もともと積み立て金から取りくずしてかけるということだからその事実はおかしいですね。
  76. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 税法上損金にならないということは、結局保険料として払い込んだ部分についてはやはり課税をされる、こういうことになります。ところが実際損金で処理をしておったかというとそうじゃないので、先ほど申し上げたように、別途積み立て金でもって処理をしておった。だから本人は損金として処理されておるものと信じ誤認をしておったが、実際にはそうじゃなかった。それで自分はだまされておったということでおこって、いまのような上申に及んだ、こういうことでございます。
  77. 平岡忠次郎

    平岡委員 並木さんに、そういう事実誤認をせしめたためにうんと迷惑になる結果が生まれるなら別なんです、課税の要件ではないのですから。そのことですね。病院長という税法のしろうとが上申書まで出して、そしてこれを調べてくれというようなことはおかしいと思うのです。議論になりますが、そこに何かの作為があったんじゃないかということを私は言っておるのです。高橋銀行局長、せっかくおいで願ったので、いま大同生命の問題がまた出ましたけれども、先ほどおたくに対しまして、上申書はあなたのほうで受け取られたのかどうかという事実関係についてお伺いしたのですが、その点だけひとつお伺いしておきます。
  78. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私のほうにも出ておりますが、三十九年二月十八日付で並木という方から大蔵省銀行局保険課長殿という名前で、実際はこれは保険第一課長のことでありますが、生命保険を担当している者をさしていると思います課長あてに上申書が提出されております。
  79. 平岡忠次郎

    平岡委員 内容はどうでしょうか。
  80. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 かいつまんで申しますると、自分はかつて飯塚という人を、顧問税理士といっておりますが、顧問税理士として自分が使っておった。ところがたまたまその人が保険の代理店をやっておる。その場合に、本人の上申書どおりに言いますと、本来ならば、損金にならないようなものだけれども、しかしこれは自分の特殊技能によって損金としてやる方法がある、盲点を利用してと言っておりますが、とにかく損金処理が自分ならばできるんだと言った。そしておまけに、御丁寧な話ですが、そういう話を聞いたあとで、当時の支部長が同席をして契約を結んだ。その契約を結んだのは、つまり損金処分になるから、したがって年々の利益が、課税額が減るということを信じておった。ところが、あとになって、ある事情によって顧問税理士としての契約を解いた。別の税理士を迎えたわけですが、そうしてあとから調べてみると、損金処分の経理はなされていなかった。それは要するに、積み立て金の処理であって、結局、税金の計算上非常に有利になると思って契約したところが、何のことはない、従来の積み立てた利益金をそのまま払い込みに使っておっただけで、税法上問題はないわけです。その損金処理をされなかったために、それを予期して入った自分としては、損をしたような気持ちになる、おかしな話です。ところがこの人は、自分は税務上の知識はなかったのだ、知識はなかったが、せっかく損金になるというなら入りましょうということで、比較的多額の保険に入った。その保険料をいままで二百数十万円だったと思いますが、払い込んできたから、これをそっくり弁償——弁償をしてくれとまでは言わぬが、払い込んだ保険料を、そっくりそのまま返してもらいたい。そういうふうな指導を大同生命に対してやってくれぬか、こういう趣旨のものでございます。
  81. 平岡忠次郎

    平岡委員 保険に入るということは、反対給付として自分が万一事故があったという場合はそれが補てんされるということですよ。ですから、何から何まで無償ということはあり得ないわけです。保険に初めから入るという意思があるならば、そのことは承知されていると思うのです。ただ、保険にかかったあげく、なお損金に認められないという事態があっては困るというのは、普通の常識だと思うのです。確かにこの保険料は損金にはならないのです。この点は私も争ってないのです。損金にはならないのだけれども、また課税要件にもならないのですよ。ですから、御当人にとっては、何も別段上申書まで書いて、おそれながらと訴えていくほどのことは普通ではないわけです。だから、その点にどうも、別件逮捕じゃないけれども、まあそういうところにも火をつけたいという示唆が背後にあるのではないかという疑いがあることが、私の言わんとするところなんです。この問題はこれでいいんじゃないか。私のほうはそれだけ申し述べればいいわけですから。
  82. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま課税要件にはならないというふうにおっしゃいましたが、これはどういう意味か存じませんが、結局、損金にならないということは、これは税法上はっきりしております。ただ損金にならないとするならば、その部分は課税部分に入るわけです。結局利益となって、たとえば五十万なら五十万払い込んだ保険料が損金になるということならば、課税部分はそれだけ減るわけでございますけれども、損金にならないということになると、その部分に対しても課税をされる。したがってこの社長さんは、損金になるという説明だったものだから、したがってそれだけ税額は減る、こういう誤認をして入られた。ところが事実上損金処理をしてなかったので、それでおこってこういう上申書を出したのだ、こういうふうな上申書の内容になっております。
  83. 平岡忠次郎

    平岡委員 高橋さんとの答弁に食い違いがありますね。
  84. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私が申したのと食い違いはないと存じます。つまり保険に入れば、事故が起きたとき、あるいは満期になれば、保険金が入るのでありますから、その点不利はないのではないかということでございます。これは別の問題でございまして、払い込んだ保険料が自分の年々の課税所得から経費として落ちるということであれば、非常に安い保険に入ったということになると思います。経費として処分したことによって税額が減る、所得が減りますから、それならば自分は有利であろうと思って契約した、ところがあとから調べてみると、うかつであったと書いてございますが、自分は非常に税知識がなかったから知らなかったが、あとから調べてみると、そういう損金処分が全然なされていない。しかも同じ人が税理事務所として経理をやっておられる。その間の事跡を見ろと、損金になっておるものが、なってない。それでどうしたことかと調べてみると、もともと損金として経理されないものなんだ。そうすると、契約のときに、損金処分になる、自分がやれば損金として扱われるんだというので、自分は何かだまされたような気になっておる。もし損金にならないということであれば、そのとき保険に入っていなかったであろう。だから払い込んだ保険料を全部返してくれ、こう言っておるわけでありまして、長官の話と私の話は内容的には全く同一であります。
  85. 平岡忠次郎

    平岡委員 損金とならないであろう。ただし自分が扱えば資産から取りくずしてやるということによって損金となったと同じような効果があるという、多分そういう説明であったとぼくは思うのです。しかし受け取るほうの病院長はしろうとですから、そういう点は勧誘されたときに克明にそれを弁別し、それを考えあげたということではないと思う。ただ問題がこういうふうに非常に発展して、大同生命のほうに火をつけてやれという示唆が働いて、そこにいまの問題が提起されたと私は理解するんですが、この問題は言いっぱなしの聞きっぱなしということで、この辺で時間の節約上ケリをつけたいと思います。  それからちょっと速記をとめていただきたいんですが……。
  86. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 速記をとめて。   〔速記中止
  87. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 速記を始めて下さい。
  88. 平岡忠次郎

    平岡委員 長官、この前にも国税庁の対飯塚の過当調査についての横山さんの質問に対しまして、あなたはそんな大げさなことはないんだということを答弁された、そうでしょう。
  89. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そうです。
  90. 平岡忠次郎

    平岡委員 ところが、あなた自身の答弁はこういうことでした。「六月の下句から九月にかけて法人を二つ、十一月の十九日から十二月十四日にかけて二十九法人、それから相続税一件、それを一法人二、三人でやっております。ただしこの場合に、飯塚税理士のほうで事情を察知されて、税務署調査協力をしないように、相当事務所員を派遣して画策をしておられます。そういう関係で若干日にちが延びておりますが、事実はそういう二千人も動員して調査を大々的にやったということではございません。」こう答えておられる。ところが、あなたの言ったこと自身で、私が積算しましたら、三人ずつで三十日間、それが十一月十九日から十二月十四日までの二十六日といたしますと、それだけでやはり二千二百五十人になるのですね。あなた自身の御答弁それ自体で数において二千二百五十人という計算が出てくるわけです、あなた自身の御答弁の中から。だから一つも横山さんのいい方は不当でも何でもないのです。一税理士をつぶすために——横山さんの質問の時点から現在までまだかかっているのですから、三千人が動員されたことは事実じゃないですか。
  91. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 この前申し上げましたのは、六月の下旬から九月にかけて延べ三十三日間、それからあとは十一月の十九日から十二月の十四日まで約一カ月、一法人当たり二、三名ということを申し上げておるのでありまして、横山委員のほうから御質問のあった当時において、これは延べ二千人になるというお話でございますが、そうはならないと思います。
  92. 平岡忠次郎

    平岡委員 横山さんの質問内容じゃないのですよ。あなたの答えられた一法人二、三人ということで計算しますと、二、三人ですから、三人の場合はいま私が申し上げたとおり二千二百五十人になる。二人の場合は千五百人になるのですよ。あなた自身の答えから計算すればそうなる。
  93. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 十一月の十九日から十二月の十四日までですと、大体一カ月足らずでございますね。そうするとかりに三人で三十日といたしまして、九十人でございますね。
  94. 平岡忠次郎

    平岡委員 それで三十社ですからね。だから二千二百五十人になる。三十社やったんだ、事実。
  95. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 一社当たりこればかりをやっておるというわけではございませんので、一日平均して大体二、三名調査官が担当しておる、こういう延べ日数で私たちはお答えしておるわけであります。
  96. 平岡忠次郎

    平岡委員 「一法人二、三人でやっております。」と速記録には書いてあるのですよ。一法人二、三人でやっておるから、三十法人ならちゃんと二千二百五十人……。
  97. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これは延べを私が申し上げておるのでありまして、毎日一法人ずつかりにやったとして、一法人に三人かかって三、三が九十、端数は出ますけれども九十人、こういう計算をしておるのです。
  98. 平岡忠次郎

    平岡委員 計算はそうかもしれませんけれども、私自身も現地へ行って調べました。私の当たった限りにおいては、やはり一法人文字どおり二、三人ずつかけて、暮れの忙しいさなかですよ、二十五、六日間にやったことは事実なんですよ。ですから、これは誇張でも何でもない。あなたの計算の説明は説明として、飯塚税理士に対して過酷な調査をやっているということは事実なんだ。まあ計数論として、多少あなたと私の立場は違うかもしれないけれども、実際において、一法人、一税理士に対して圧殺的包囲陣をしいたということは事実です。どうですか。
  99. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私は、この前横山委員の御質問に対しても答弁をいたしておりますが、一税理士を圧殺するというような——私はもちろん飯塚さんにはお目にかかったこともありませんし、全然感情的にやっておるわけでも何でもございません。したがって一税理士を圧殺する目的で、何か非常に大がかりにいろいろなことをやっておるというふうにお考えかもしれませんが、私の考えておりますのは、そうではなくて、ある一税理士の事務所が、相当広範囲にわたって統一的な共通した手段でもって脱税の指導をするということが、もし適法だとして見過ごされるならで、これはもう税理士、全国で一万三千人の税理士会員がおられますので、これはもうゆゆしい問題だ。したがってこういう面については、あくまでも黒白をはっきりして、裁判の決定、判決をもらうものはもらって、税務指導の限界というものをはっきりしておかなくちゃいかぬ。こういう信念に基づいて調査をいたしておるのでありまして、別に感情的に、こういう一税理士に対してこれを圧殺しなければならぬというような、そういう偏見なり感情というものは毛頭持っておりません。
  100. 有馬輝武

    有馬委員 関連。一税理士を圧殺することは全然思っていらっしゃらないという答弁であります。しかし、この前から横山君からも質問がありましたけれども、長官が圧殺する気持ちをたとえ持っていなかったにしろ、どこでやったかは別にして、やっておる事実が圧殺するような結果になっておる点を私たちは重視しておるわけです。たとえば、この前も横山君から質問がありましたが、飯塚税理士との契約を取り消すような印刷物を税務署自体が用意して、ただそこに書き込ませるだけという形にしておる。これは、たとえばですよ。飯塚税理士との契約は都合によりというぐあいに、名前も入っていないものを用意しているならば、まだ話はわかる。しかし、そういった特定のものを目ざして印刷物まで用意しているという事態は、いまの長官答弁とは違うのですけれども、その点はどうなんですか。
  101. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これはこの前の委員会のときに、横山委員にも御答弁を申し上げておりますが、もう一回詳しく申し上げますと、昨年の十二月三日に飯塚税理士の関与先代表としまして、四名が鹿沼税務署へ見えまして、二つの申し出をしておられるのであります。その一つは、調査をできるだけ簡単にしてもらいたい、これは納税者としてごもっともだと思う。もう一つは、飯塚税理士と契約を解除して修正申告をしたいから税理士をあっせんしてもらいたい、こういう二点についての申し入れがあったわけであります。そこで税務署長といたしましては、その土地の税理士部会長ほか四名を税務署に招きまして、こういう申し入れがあったがどうしたものだろう、どういうふうにしたらよかろうということを相談いたしておるのであります。そこでその税理士部会の代表の方は、飯塚税理士との解約の事実、それから、ほかの税理士をあっせんしてくれ、そういうはっきりした要望があって、そして税務署長から税理士会のほうにそういう連絡があればやりましょう、あっせんをしましょう、こういうことを答えておるのであります。これはもちろん税理士部会としては当然でございまして、やはり同業者の関与しておる関与先、お得意さんをとるということになりますと、やはり空気としてはおもしろくない。したがって、それがほんとうに飯塚税理士との契約を解除して、そしてほかの者をあっせんしてほしいのだということが確認されなければ、そういうことが関与先、納税者の意思として確認されなければ困るのだ、これはもう私としてもごもっともなお話であろうと思います。そこで税務署といたしましては、契約を解除したという口頭の申し入れだけでは不安だ、やはりあとになっていろいろそういう口頭では、そういう申し入れがあったかないかというようなことになっては困るということで、解約の事実並びにあっせん方の要望についてモデルをつくって、それを税務署に置いておいた。もちろんこれを関与先に配ったというようなことではなくて、置いておいた。何しろこの土地では、二百軒ばかり関与先がございますので、そういう人たちがどっと来てなにすると困るので、まあ一応モデルをいま御指摘になったように印刷をしまして置いておいた。それで実際にそれに記入をして出された方は七人でございます。ところが、これをわれわれのほうで知りましたので、これは外部から誤解を受けるおそれがあるというのでこれを撤去さしております。いずれにいたしましても、当時の関与先からの申し入れ、それから税理士部会との打ち合わせの結果によるものでありまして、飯塚税理士の業務妨害をやってやろうというような趣旨のものでは絶対ございません。
  102. 有馬輝武

    有馬委員 国税庁長官ともあろうものが、いまみたいな答弁をするとは非常識ですよ。それは確かに契約者は事務を簡単にしたいという意思があるかもしれない。あるいはほかの税理士をあっせんしてほしいという気持ちがあるかもしれない。がしかし、たとえ七人しかそれに書かなかったかもしれませんが、それは理由にならないですよ。問題は、そういったものを税務署が用意すること自体に問題があると言っておるのです。その点を伺っておるので、いまの御説明では、普通の常識のある人間が考えたってこんなばかなことを役所でやっていいか悪いか判断できるでしょう。子供だってできる問題です。説明があったら説明してください。
  103. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私が申し上げたのは、いまの税務署長飯塚税理士の業務を妨害するとかなんとかいうそういう気持ちで出したのじゃなくて、いま申し上げたような経過から見て、関与先が税務署に対してそういう依頼をしてきた場合には、それではこれに記入してくれればぼくのほうから税理士部会のほうへ回してあげましょう、こういう趣旨でつくったのでありまして、そういう意味では、必ずしもこの処置が適当であったかどうかということになると、私はかなり誤解を受けるおそれがあるしろものであるということはわかりますけれども、しかしそうだからといって、税務署長が非常に大それたことをやったというふうには考えられないのであります。
  104. 有馬輝武

    有馬委員 少なくとも、誤解を受けるおそれがあるとかなんとかいう問題ではありません。税務署はもちろん国民のための徴税行政ですからサービスを旨としなければなりません。がしかし、そのサービスをする分野としかたというものはおのずから明らかであって、そこら辺について指導するのが国税庁長官のつとめではないですか。これがはたしていいことか悪いことか、必ずしもという表現をつけられたけれども、いいことか悪いことか、この際はっきりしてください。
  105. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 税務署としては納税者から依頼があった場合に、できるだけ希望に沿うて、そして税務の指導なり相談なりというものに対して納税者に便宜を与えるということは、やはり税務署長としては考えなければならぬことだと思います。ただ、たまたまこういう事件の最中に、こういう事件に関連して問題が起きたために誤解を生ずるおそれがあるという意味で、私は先ほど必ずしも適当でないということは申し上げたわけでありますけれども、税務署長がこういうことをやってはいかぬというふうには私は考えておりません。
  106. 有馬輝武

    有馬委員 あなたは必ずしもということを取り消そうとしてないのですけれども、もし一税理士を圧殺する意図がないのであるとするならば、またそういった納税者の便宜をはかることを旨とするならば、全国の税理士の名前を全部印刷して各税務署に全部備えておけばいまの長官みたいな答弁があるかもしれません。それをやってないじゃないですか。だれだれを解約してあれしたいと思いますから——全部そろえてありますか。
  107. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 一般論としてそういう税理士の名簿はもちろん備えておりますけれども、それを納税者に見せてどうですかということはやっておりません。しかしながら、納税者から頼まれた場合に税理士をあっせんする、もちろん特定の税理士では不穏当でございますけれども、税理士会に連絡して納税者の便宜をはかってあげるということは税務署長としてはやはり考えてしかるべきことだろうと思います。
  108. 有馬輝武

    有馬委員 特定の税理士の名前を印刷して解約するような書類を税務署で準備することが妥当かいなかということを伺っておるわけです。
  109. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、狭い土地であって、ある税理士さんの得意先をとったというような誤解を受けるおそれがあるために、税務署に対しては飯塚さんともう契約を打ち切りたい、ついてはほかの税理士さんをだれか紹介してもらいたいという依頼があったわけでありまして、その場合にはこの解約をしたいという税理士さんの名前が出るということはやむを得ぬことだろうと思います。
  110. 有馬輝武

    有馬委員 納税者から特定の人を解約したいと思う、ほかの税理士を紹介してほしいという希望が出るかもしれないけれども、そのときはしかるべく相談してあれすることは必ずしも私は違法ではないと思うけれども、税務署自体がそれを印刷して、特定の個人の名前を書いて、飯塚税理士との契約を破棄することを便宜をはかってやる、そういう行為が妥当かいなかということを伺っておるわけです。
  111. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 妥当かいなかということになりますと、先日お答えいたしましたように、誤解を受けるおそれがあるという点から考えると、必ずしも適当じゃなかったかもしれぬ。しかしながら、この経緯を見てみますと、これは私としてはやむを得なかったところだと思います。
  112. 有馬輝武

    有馬委員 やむを得なかった、必ずしも妥当ではなかったかもしれないが、これは常識としていまみたいな答弁が出るところに問題が存在しておる。この前の横山君から質問があった際にも、長官はいまみたいな答弁をしておられるのですが、きょうも同じことを繰り返しておられるので、小委員長に、この前も本委員会でお願いしておきましたけれども、こういった行為がはたして国家公務員として許されるかどうかという点については、しかるべき人をここに呼んで究明してまいりたいと思いますから、私の関連質問は一応これで終わっておきます。
  113. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 いまの有馬さんの御意見に対しては、できれば国税庁お答えができますと、それによって御了解を願うということにしたいと思いますが……。
  114. 有馬輝武

    有馬委員 いやいや、この前からの答弁を聞いておりますと、私たちは妥当でないと思うがどうかという質問に対して、必ずしも適当ではなかったけれどもやむを得なかった措置である、こういうことがこの国会の審議の過程で繰り返し言われるという点については、どうしても合点がいかないわけです。
  115. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 それでは、その点につきましては、必ずしもというような日本語が適当かどうかと思いますけれども、その点について非常に御意見もあるようですから、あらためて理事会で御相談しまして、そうして適当に善処することにいたします。御了承願います。
  116. 平岡忠次郎

    平岡委員 一税理士を圧殺するなんという意図は毛頭ない、ただしこの税理士を野放しにしておくことは税理士全般に及ぶ、あなたのほうから見れば悪影響があると思うので、そういう点に関心を持っているのだという趣旨のお話がありました。あなたのおっしゃるのは、どんぴしゃりで言いますれば、別段賞与、それから旅費、日当等についてのことであろうと思うのです。ですから、私は、この二点につきまして、税法学上の常識的見解を申し述べさせていただきまして、長官の御参考にしたいと考えるものであります。瞬間的制約がありますので、私の一方的な論述になると思うのですが、それもやはり時間を考慮してのことですから、お許しを願います。  まず、この事件で問題となっている別段賞与とば、利潤分配的なものであります。それは企業における利潤追求過程での労働の積極的役割りを評価して、株主に対する配当と同様に利益分配に参加させるという考え方であります。この点はあなた自身も十分御承知になっていることと思います。ただ私がつけ加えたいのは、現在労働事情というものにつきまして、大企業に全部労働力が集中するわけですね。中小企業者は手不足になるのです。それで中小企業者の自衛的な立場において、やはり運命共同体として連帯性を持たせ、積極的にその企業に参加させる、その利益を配分することで足どめでもしなければしかたがないような現実の情勢があるわけです。ですから、私は、そういう意味におきましては、やはり中小企業者の顧問としてこの問題に取り組んでおられる税理士の方とすれば、こういう問題をやはり積極的に考えていかなければならぬ事態にあると思うのです。私はそういう意味で現在の中小企業者の置かれた立場から必然的なこういう要請が内在しているというふうに考えたいのであります。そのことは別にしまして、従業員賞与を益金処分でやれば法人税を課税されるので、益金処分が決定される事業年度内の見込み利益の約二〇%までは会社の申し出があれば未払い賞与に引き当て計上させていた。それは飯塚君にとっては正しいとするゆるぎない信念から発しているものなのであります。この別段賞与を国税庁当局脱税なりと当初断定いたしました。新聞論調を見ましても、この当局の意を受けまして、別段賞与即脱税という直線的結びつけが目立っておったのであります。ここに興味ある二つの解説書があるわけでありまして、すなわち東京国税局法人税課長後藤清監修の、「法人税実務問題集一〇九」、それから東京国税局法人税課長大池武雄監修、「法人税質疑応答集九七」、後者につきましては、すでに横山君も縷説しておりましたが、この二つの解説書を要約いたしますと、いずれも回答式をとっておりまして、同一内容の設例でございます。異なるところは法人売却の土地三百坪が片方は五万坪になり、譲渡益一千万円が片方は五千万円になっただけでありまして、この二つの著述は同工異曲のものでありまして、異常利益を得たため使用人に臨時賞与を支給し、当該金額を使用人から借り入れ金とした場合の課税関係と両方ともタイトルはうたっておるわけであります。そして問として、以前から持っていた土地が値上がった、これを売却したので当期は巨額の利益が出る予定、そこで(イ)として、譲渡金の一部を役員、全従業員に臨時賞与として支給したいが、損金と認められるか。(ロ)として、支給方法は源泉所得税を差し引いた残りを借り入れるという方法でも認められるか。それに対する答えとして、一つ、役員に対するものは益金処分とされる。二つ、従業員に対するものは損金支出として認められる。三、こうした臨時賞与を損金に認めないということはない。四、異常利益に対する法人税の回避、または利益調節と見て損金支出を否認されることはない。五、支給方法は必ずしも現金であることを要しない。六、源泉税差し引き残額を借り入れ金として処理しても否認しない。以上であります。  ここでは明白に飯塚方式の別段賞与が合法であることをきっぱりと断言しておるのであります。特に重要なことは、この設例では土地の値上がりでもうかった異常な利益であり、従業員の成果に対する分配ではございません。これさえも異常利益の回避調節とは見ないと言っているのであります。一見して奇異に思われるのでありまするが、これはわが国税法が従来からとっている基本的たてまえである法人擬制説の思想に連なるものと私は考えます。法人擬制説の根底思想にあるものは、御承知のとおり法人とは営利追求活動を行なう個人の集合体であって、単なる人格の擬制にすぎない。したがって法人所得の最終的帰属者は構成員である個人であって、法人を独立した納税者とすべきではない。便宜上法人税を課税するとしても、それは個人所得税の前どり、一種の源泉徴収である、この思想があるわけであります。まあ防衛庁からおいでになった国税庁長官が必ずしも税法に明るくないであろうことはしかたがないと思うのですけれども、しかしこの安井部長とか訟務官すら、最初のうちは先ほどの解説書の存在すら知らなかったらしいのであります。日を追ってかかる解説書のあることを知りまして、別段賞与は即脱税だという勇ましいかけ声のほうはきまり悪そうにだんだんと細くなって、かわりに登場してきましたものが一つは支払う意思、二つは受け取ったという認識、三つは預け入れるという意思、四つは返すという意思という詭弁学派的な出まかせ論でありまして、この四点のどの一つを聞いてても別段賞与とはいえないと言い出したのであります。これはすでに税法の権利、義務確定主義の原則や擬制債務の範疇を越えた心理学的領域のことであります。さきの大蔵委員会で前記の解説書のことを横山委員に追及されました長官は、解説書序文で、私見にわたるところがあると断わってあると答弁しております。しかし序文にはこうも書いてあるわけであります。この序に収録してあるものは過去五カ年間にわたり、実際に東京国税局法人税課におきまして文書、それから電話、または口頭で質問を受けたものの中から選んだ。中略。また「税務通信」誌上において発表したものである。この書をまとめ上げた担当者は東京国税局法人課竹本課長補佐、鈴木(和)主査を中心とした板垣審査係長、それから真船、鈴木(一)それから畑山、浅見の各事務官である、として執筆者の責任を明らかにしているのであります。  全国二万人にものぼるところの税理士試験受験者や、たくさんの経理マンはこうした書物を権威といたしまして、手引きといたしておるわけであります。電話や口頭あるいは文書でこうした説明を実際に聞いた納税者は、一体どうなるのでしょうか。税務署に呼び出しを受け、また弾圧的調査段階修正申告を強要された会社は一体どうなるのか。無理やりに会社に対する貸し付け金を意に反して放棄せしめられた従業員はどうなるのか。そうして過去において支払った源泉所得税や、借り入れ金利息はどうしてこれが処理されておるのか、何ら現在処理されておらないではありませんか。日本国税法のもとにおきまして、この種の別段賞与は全国的に行なわれておるのであります。飯塚事務所にだけ脱税と断定して法の公正がこれで保てるかどうか、私は疑問であります。もし当局の言うごとく別段賞与が脱税だということを認めるならば、後藤前課長、大池課長は脱税教唆の元凶であり、前記の七名の事務官はさしずめ共犯ということになります。もしこれらの解説書がなかったならば、別段賞与即脱税論は全国を嵐のように恐怖にたたき込んだと私は思います。何も知らない納税者は何によって救いを求め得るのか。この二冊の解説書の出る以前に、別段賞与を一円も認めなかった税務署の一方的更正処分に対して、税理士としての責任ある見解と確信を述べ、あえて東京地裁に税務訴訟二件の提訴をして、中小企業の救済を求めた飯塚税理士の英断と見識は私は高く評価されなければならぬと思っております。別段賞与が不正経理、脱税だという確信があるのなら、この訴訟の判決を待つべきであります。勝算に自信を失って開き直ったとしか私は考えられないのであります。大弾圧をちらっかせて税務訴訟の取り下げと不正経理の自認を迫るなんというのは、言語道断であります。これが憲法の番人をもってみずから任じなければならぬところの公務員の態度であるのかどうか、私は非常に遺憾と存ずる次第でございます。税務調査に名をかりた犯罪裏づけ捜査をやりながら、訴訟対策に窮して、片や公判の日取りの延期方を飯塚君に申し出た事実があります。こういうことを委員の諸君によく御理解願いたいと思います。  次に旅費日当と水増し給与についてであります。時間の制約上この点についてはなるべくしりをはしょりたいと思っておりますが、  第一に旅費日当について、わが国の旅費制度は、次のように官吏やサラリーマンに都合のよいような二重構造になっているわけであります。カテゴリーの一は、企業主に対するものであります。これは実費弁償主義であります。それからカテゴリーの二は、給与所得者に対するもの、これは給与補充機能を持たせたものであります。給与所得者の旅費日当は生活補給的機能を果たすように制度そのものがつくられておりますが、非課税所得とされておることが特徴であります。そうして法人企業はその自主的判断に基づいて、たとえば重役は航空機、それから課長は一等の汽車賃、社員は二等の汽車賃、宿泊料は幾ら幾らまで、日当一日当たり幾らまでとそれぞれ旅費規定をつくって運用しているわけであります。旅費日当についての法定限度額はいかなる法令、通達にもないことは留意に値するところであります。いかなる通達にもないのであります。本来わが国は法治国であり、租税は先ほど申したように法律に基づいて課税さるべきであります。租税法律主義の原則を確立せよという税理士会からの多年の要望と抵抗の根拠はなぜ生じたか、それは飯塚事件に直面して当局によって吐かれたことばの数々を見ればわかるわけであります。すなわち中小企業者の旅費日当は千円以上は全部脱税として処分すると言っております。これは安井税部長が去年の十月二十八日に言っております。それから同じく九月の二十八日、金子訟務官は、得意先六百社の旅費日当を全部三カ年にさかのぼって修正申告しろと言っておるのであります。これが民主憲法下における国税庁首脳部のことばであると私はとうてい思えないのであります。部下行き過ぎはないかを監督する地位にありながら、この始末であります。下は推して知るべしということであります。千円以上の旅費日当イコール脱税だということは、私は暴論であると思っております。さらに留意すべきことは、国税庁長官のきめた税理士報酬規程には何と書いてあるか。旅費一等実費、日当五千円、それから宿泊料は三千円と明定いたしておるのであります。これは三十六年の三月の認可によるものであります。みずからが運用する税法を知らず、国税庁長官の認可した報酬規程を踏みにじって、飯塚税理士の意に反して、ほとんど脅迫のもとに、三カ年にさかのぼって修正申告をさせました。ここでは直税部長や訟務官がナポレオンばりに、おれが法律なのだという言い方で、強引に三カ年にさかのぼって、長官自身が認めた旅費実費、日当の五千円が、飯塚には不当だということで更正決定させておるわけです。また顧問先六百社についても、三カ年遡及して修正申告を強要し、税理士にとって権限もなければ、説得も不可能な無理難題を押しつけてきました。国会で追及を受けると、長官は、旅費規程をあとからつくってから出張をさせていると強弁しました。事実はそうであるかどうか、全くその反対であります。  提訴されている税務訴訟の争点では、仮装出張だとしながら、旅費、車馬賃を認めて、日当部分だけを全額否認しているのです。これも矛盾であります。仮装出張なら汽車賃なども全部否認すべきではないのか、論理は宙に浮いておるわけであります。また、から出張だといいながら、日当を千円まで認めて修正申告を出せというのはどういうことなのか、これまた論理の矛盾であります。  ついでに、いわゆる水増し給与について一言します。給料の遡及増額イコール水増し脱税給与としていますが、この論理もまことに飛躍しております。たとえば、公務員が団体交渉で賃上げに成功した、新給与体系で三カ月さかのぼって昇給分をもらった。こうした例がかつて水増し給与とか脱税とか呼ばれたことがありますか。給与を一定期間さかのぼって増額支給することは、今日世上一般の常識ですらあります。  以上が当局が鳴りもの入りで宣伝した飯塚はけしからぬといういわゆる飯塚事件の要点であります。はなはだしい独断で直線的に脱税論と結びつけて、その間にあたかも民法、税法等の各条文を悪用して、大規模な不正経理を直接指導し、架空や仮装の所得の脱漏、隠蔽をはかった確証が握られたかのごとく新聞紙上等に発表しておきながら、事実の実態というものはいま申したとおりのものであります。飯塚君は、私が調査したところによりますれば、脱税指導どころか、顧問先の脱税防止のために実に数十項目にわたるところの報告書をもって職員に監査復命させております。脱税指導の事実がないのに、脱税指導の確証があり得るわけがないのであります。私は、この事件の経過のうちで、一回長官にお会いしたがったのです。事を荒立てる必要もないのだし、何とかお互いの意思疎通をはかって、円満に事を落着させたいという念願に立っておりました。それで、一月でしたか、鳩山直税部長のほうを通じまして、あなたにお目にかかりたいということで、あなたが私の部屋までわざわざお越ししてくださるという取りつけがなされました。それで、そのときに、ちょうどその前日か前々日に、私は、飯塚君の事務所が後楽園の近くにございますが、そこに行ったわけです。私自身もその事務所の様子を見ておく必要があると思ったので行きました。飯塚君の事務所の応接間に通されましたところ、汗牛充棟ただならずというほどではございませんが、りっぱな蔵書を持った応接間であります。商売柄税法関係の英文、独文、仏文の蔵書が一ぱいありました。こけおどしのものではない。すべて目を通しておる。ということは、非常に業務の管理がよく行き届いて、自分自身としては、ひまがつくられてあるわけですね。非常に勉強家です。たまたま私は飯塚君の机の上にある本を取り上げてみたら、それはなんとうダクリシナンの「インディアン・フィロソフィー」でした。ラダクリシナンは、御承知のとおりネールのあとを襲いまして現在インドの大統領でございます。私がその書に目をとめたということはいきさつがあるのです。参考までにこの写真を持ってきてみたのですけれども、これはあとでごらんに入れてもいいのですけれども、一九六一年ですから、さきおととしの七月十七日に、大蔵委員の派遣議員団として欧州を回った帰りに、春日一幸君とそれから鴨田君と私、代議士以外の人はそのほかにもいましたが、ラダクリシナンにお会いした時のものです。私は実はタゴールを少し勉強しておったのです。ラダクリシナンはタゴールの門下生で、これは直系の学問を伝承しておられる方といいますか、そういうことで、大使館に特にラダクリシナンに会いたいということで、ほかの代議士も一緒に行ってくれぬかということで行ったわけです。そのときに、大使館員の言うことに、ラダクリシナンは非常に話好きなので、へたをすると二時間くらい押しまくられる、そういうことを聞いたので、別の用もあったので、いわゆるフリーな話のときに、時間もそうなかったので、インド仏教の真髄というものを二分間で話してくれと私言うたわけです。そうしたら、二分間はおろか、にやにや笑っておりましたが、それは「ピュアリファィ・マインドだ」という話でした。そういういきさつがあり、私はラダクリシナン自身に非常に興味を持っておったわけです。ついでですから言いますが、その節になおタゴールのことについて話が出ました。私はそのときに、タゴールの真髄、宗教観というものに対して、私がしょっちゅう愛唱していたことはなんですけれども、——これはタゴールの「フィロソフィー・オブ・レジャー」ですか、「有閑の哲学」ですね、それに書かれてあるエッセンスなんですが、アイ キャンノット バット ラブ マイ ゴッド ビコーズヒー ギブス ミー フリーダムトゥー ディナイ ヒム「私は神が彼を否定する自由を与えるがゆえにこそ神を愛せざるを得ない。」それからゴッドラブズ トゥー シー インミー ノット ヒズ サーヴァントバット ヒムセルフ フー サーヴズオール「神は私の中に彼の下僕を見んよりは、むしろ全てのものに奉仕する神自身を見ることを好み給う。」そういう句を私が申し上げたりして、非常に印象深い一ときを送ったのであります。飯塚君は、最も新しいラダクリシナンの著書を置いて、それが全部読まれておるわけです。それから、飯塚君自身は七十七名の職員をかかえております。この暴風のごとき弾圧下にあって一人の落後者もございません。だから彼は宗教的に徹した一つの信念を持っております。いま申したように、非常に宗教心も厚いりっぱな方です。ですから、あなたに、こんなもんちゃくがあまり進展せぬうちに飯塚事務所をひとつ見ていただければ、すべて国税庁のあなたの部下の誤解が解けるだろう、そういうことを念願し、あなたが私にわざわざお会いくださるのでしたら、何とかそのあと四十分だけ私にプライベートの時間を長官にさらにくださいということを鳩山さんを通じまして申し上げた。ところがあなたは、そんなことなら行かないということで、私との面会それ自体も破談にしたということなのです。私は今日のこうした紛糾が、いま言うたようなひょんな分岐点から変なことになってしまったことをたいへんに遺憾に思っております。  それからもう一つ申し上げておきたいことがあります。長官聞いてくださいよ。飯塚君の業務管理とか、管理組織というものは、みずからもって世界水準を抜くと自負いたしております。というのは、例のサンフランシスコにありますモンゴメリー税理士事務所、日本流で言えば税理士事務所ですが、これは三千人の職員を擁して、大体七万件くらいの会社顧問になっておる。そういう大きな税理士事務所でありますが、その方式を日本で適用したいということで、それから職員の出張とか、そういう問題につきましても、普通の税理士事務所でしたら、午前中Aのところに行ってこい、午後はBのところへくらいのきわめて大ざっぱな出張指令でしょうが、飯塚君のところは分をもって単位にしておるのです。時間じゃないのです。それがびっしりカード化しておりまして、全部得意さんの状況というものは百項目くらいにわたってチェックされるようにしてあり、このことをなしたか、これをやったかということで、マル・チョン方式でそれが全部示されている。だから国税庁はとんでもないものに対して突っかかっていったと私は思っております。こういう事情ですから、あまり変なことにならないうちに、飯塚君の言い分もよく聞いてもらい、こういう国税局の一方的な、あるいはまた安井君あたりがどういう気持ちでやっていったか知らぬですけれども、そういう部下だけの話でなしに、私どもの話にも耳を傾けていただきたかったわけです。ですが、そういう機会も失われまして、今日のような食うか食われるかのような凄惨な争いになったことはたいへん残念に思っております。私はそういう飯塚君の現実も見ておりますので、国税庁が今度は間違ったなという、確信、心証を、たいへん残念なことなわけでありますが、持たざるを得ないわけであります。私はこの問題の進展の途上においてあなたが私に会ってくださらなかったことをたいへん残念に思っておるわけです。大蔵委員とか国税庁長官とかいうものは親類づき合いなんですから、そんな分け隔てすることなしに、かたくなな気持ちを開いて、そういう機会においては最大限御接触を願いたいことを特に希望をしたいのであります。  そういうことでありまして、飯塚税理士事務所の管理組織から、あなた方がどうつついても、決してくずせません、そういう不正をしていないのですから。はたせるかな、新聞にはあのように予告編的に、大々的に飯塚君の脱税指導を宣伝いたしましたけれども、飯塚脱税協力の事実が出ておりません。職員にも出ていない。あえて言うならば、現状四人の拘置は、出ているかのごとく印象づけられるだけの話であります。おそらくクレリカル・ミステークは別といたしまして、私は彼らの無罪を信じております。  私は、きょうの私の質問、論陣を、最後に、国税庁の顧問弁護士である田中勝次郎博士との会見てんまつを付することによって終わりたいと思います。  田中博士は、「国家権力が拷問調査をやる以上防ぎようがない。低姿勢をとって嘆願書を出しなさい。真実脱税ほう助をやったのではないから。今私の書いたこの文章を前文にしなさい。」すなわち、「結果においては、あたかも脱税ほう助を為したかの如く思考せらるる行為があり、深く反省し、かつ恥じている次第でございます」とのいわゆる飯塚嘆願書の、初めの部分の案文は田中博士が書かれたものなのです。それに続く各論は飯塚君自身が書きなさい、気にいらないと思うだろうが、これくらいの表現は入れておいたほうがいいと思うんだ——これか飯塚税理士が不正経理を自認したと、とくとくと鬼の首でも取ったかのごとく長官答弁したり、新聞で騒ぎ立てられた本体の実際上のいきさつでございます。それから、田中博士が飯塚君にこういう前文を書きなさいと言ったのは、十一月二十五日のことであります。それより十三日前に、つまり十一月十二日に、さらに田中博士は、「飯塚君、軽微な職員の過失を上申して何とかこの暴風を避ける方法はないか」と飯塚君に言っております。それで、非常に田中博士が心配され、こういう助言をあえてしたわけですが、飯塚君もこれに応諾したわけであります。これが有名な「職員何某から不正経理の告白を受けました。痛恨に舌をかみつつ上申に及びます。」という上申書のできたいきさつであります。しからばその内容というものはどういうものであったか。相続税申告に際しての注意不足が二件、単純な事務上の過失、監査漏れが四件、飯塚君がたったこれだけのことをさがし出すのに九月二十八日から二カ月以上もかかったのであります。職員に不正がないのですよ。不正を生ずるような構成になっておらぬのです。いまからでもおそくはない、あなたは飯塚事務所にいらっしゃる義務がある。飯塚事務所の実情を見てください。飯塚税理士がどんなに追及しても、泣き落として職員に頼んでみましても、みずから経理事務所としては世界的水準を抜く業務管理だと自負するだけあって、どうしてもかき集めることができなかったのであります。全く驚き入った——いい意味におきまして驚き入った事務所であります。痛恨に舌をかみつつなどというオーバーな表現は、内容乏しきを補うにはそれ以外の表現がなかったからであります。これが真相であります。飯塚事務所では、関与先が所得を隠蔽していやしくも重加算税を受けたとしますと、即日顧問契約を解除するという峻烈ともいえる方針を現在まで守り通してきました。私はこのことを特に強調いたします。そういうことでありますので、国税庁のあなた自身は非常に高酒な方かもしれませんけれども、関東信越局やあなたの部下はあまりにも仕事に忠実過ぎます。飯塚をとっちめることが、先ほど私が申したような税界報における国税庁の権力主義をなお進展させるという、そういう前触れとしてあったというようなことは信じたくございませんが、飯塚事件の扱い方は、しかく簡単に、あなたの予断をもって処理すべきものではないということを私はここに重ねて強調いたし、御善処を願いたいと思います。  時間もちょうど七時になりましたので、きょうはこれでやめますが、なお私に後の機会にまた発言をさせてくださいまするよう、委員長に権利保留をお願いしておきたいと存じます。長官から何か一言ありましたらどうぞ。
  117. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまお述べになりました別段賞与、それから旅費、日当、役員報酬、この三点につきましては、法律上われわれとしては、国税庁といたしましては国税庁としての理論を持っております。ここで申し上げてもよろしいですけれども、時間の関係ということでございますならば、別の機会に私も国税庁のこれらの三点の問題に対する見解を申し述べさせていただきたいと存じます。  それから、私は別に予断を持って飯塚さんについて調査をしたというのではございませんで、私並びに私の部下がこの問題を調査いたしまして、それで私はそういういろいろな観点から説明を聞き、庁内の各首脳部が寄って相談をして、その結果きめた問題でございまして、私の部下が一人で何か偏見を持ってやっておるということには直接にならないと思います。庁の首脳部会議というスクリーンを通して決定をしたことでございますから、そういうことにはならぬかと思います。  なお、この問題は、御承知のように検察局にあり、かつこの飯塚税理士事務所の使用人の方四人につきましてはすでに起訴されておりますので、この点については具体的な事実はおのずから裁判の結果明らかになることと存じます。
  118. 有馬輝武

    有馬委員 ちょっと関連して。いま長官答弁というか所信を述べられた中で、別段賞与の件について、東京国税局の大池武雄監修の「法人税実務問題集」の中で説かれた見解とまた別な見解を持っておる。機会があったならばそれを述べたいといういまの答弁は非常に問題だと思うのであります。少なくともどこのだれがという意味じゃなくて、やはり日本の国税庁として、大蔵省としての税制に対する一貫した態度があってしかるべきだと私は思うのであります。大池が正しい、木村が正しいということは、私たちはここで論じようとはしません。見解の相違があって、そういった形で徴税が行なわれるということについては、これは黙過できませんので、この点については、私の次の質問の機会にあらためて問題にしたいと存じますから、十分そこら辺について、いまの答弁については見解をまとめておいてほしいと思います。
  119. 吉田重延

    吉田(重)小委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後七時五分散会