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1964-06-12 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第52号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十二日(金曜日)     午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       大久保武雄君    奧野 誠亮君       押谷 富三君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       島村 一郎君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       福田 繁芳君    渡辺美智雄君       小松  幹君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         国税庁長官   木村 秀弘君  委員外出席者         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    中嶋 晴雄君         大蔵事務官         (理財局経済課         長)      塚本孝次郎君         国税庁次長   喜田村健三君         参  考  人         (生命保険協会         会長)     弘世  現君         参  考  人         (日本損害保険         協会会長)   高木 幹夫君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  保険業法の一部を改正する法律案内閣提出第  一一三号)(参議院送付)  公認会計士特例試験等に関する法律案内閣提  出第一五五号)  税理士法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五七号)      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  保険業法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、参考人として生命保険協会会長弘世現君及び日本損害保険協会会長高木幹夫君がそれぞれ御出席されております。  両参考人には御多用中のところ御出席をいただきありがとうございます。  まず、両参考人から当面の保険行政上の諸問題について御意見を述べていただきまして、そのあとに質疑を行なうことにいたします。それでは弘世参考人からお願いいたします。
  3. 弘世現

    弘世参考人 生命保険協会会長をしております弘世でございます。今般保険業法の一部を改正する法律案につきまして御召喚を受けたわけでございますが、保険業法の八十四条の問題について一言申し述べます。  この保険業法八十四条によりまして、保険会社について評価益計上特則として認められることになっておるのでございます。業界といたしましては改正案賛成でありますが、その運用上におきまして慎重な態度が望ましいと存ずる次第であります。その理由といたしまして、まずこの問題に関する過去の経過を少し申し述べたいと存じます。  去る昭和十四年の保険業法の大改正によりまして、現行業法八十六条が新設されて財産売却益評価益計上することになったのでありますが、当時数多くの保険会社が互いに激しい販売競争を展開しまして無理な配当競争が行なわれておったわけでございます。当時の保険会社の中には営業利益自体では満足な利益が出ないために財産売却益評価益を出しまして利益の主たる部分にしていたような会社もありました。このような状態では財産評価下落があった場合直ちに影響を受けまして、経営が危殆におちいるということも見受けられたわけでございます。そのため売却評価差益が生じた場合は一たんこれを準備金積み立てて、経営内容充実をはかり、契約者利益を確保するという趣旨から業法の八十六条が設けられたわけでございます。御承知のとおり生命保険事業長期にわたって経営健全性が要求される事業でございます。一時的に含み益を表に出して契約者に還元することは、必ずしも否定するものではございませんが、そのため将来の不況の際に契約者不測損害をかけるようなことのないよう、常に長期的な観点に立って慎重に対処すべきであると考えます。したがいまして、今回の八十四条の評価益計上に関する運用につきましては、ただいま申し上げましたようにどうぞ慎重な行政指導を重ねてお願いを申し上げる次第であります。  さて本日この機会に、最近の業界で実施いたしておりまする二、三の施策業界からの要望につきまして申し述べたいと存じます。ここ数年来経済成長に伴いまして生保業界も相当の成長を続けてまいりましたが、量的な発展に伴わない経営の質的な面、特に経営効率化にも努力をしてまいりましたところ、最近に至ってその実も上がってまいりましたので、本年四月から発売保険につきましては、経費率引き下げと最近の死亡率低下傾向によりまして五%程度保険料引き下げることができました次第であります。また既契約者に対しましては、新しい契約者との均衡上、契約者配当の増額によりましてその実質的な負担の軽減をはかった次第でございます。また昨年四月から外務員試験制度を実施するとともに、各社とも教育施設充実いたしまして、特に外務員質的向上につとめてきております。しかしながら何と申しましても、生命保険募集組織は長年の歴史を持っておるのでありまして、これの改善はなかなか容易ではなく、すぐには効果が期待できませんが、次第によい方向をとるものと期待しております。しかしなおこの制度内容充実についてはより一そう真剣に取り組んでいきたいと考えております。そのほか契約者苦情処理やサービスの充実のために生命保険相談所生命保険協会に設けるとともに、各社におきましても契約者本位の奉仕のために機構の整備につとめてまいっておる次第であります。商品の種類につきましても拡充につとめまして、たとえば企業年金保険個人年金保険充実定期付養老保険販売災害補償特約を設けるなどしてまいりました。  このように経営の質、量ともに年々改善向上につとめておる次第でございますが、何ぶん生命保険契約長期にわたるものでございまするから、会社が一人前になるというためには、なお十年くらいの期間は必要とすると思うのでございまして、生命保険普及は、まだ決して十分であるとは言えないと思います。  たとえばアメリカと比較いたしまして申しますと、国民所得に対しまする保有契約高割合を三十七年度末で見ますると、アメリカでは一五〇%でございまするが、わが国では簡易保険並びに農協の生命共済を含めまして、まだ九〇%程度でございまして、まだまだ十分でないのが現状でございます。  ところで、生命保険には税制上の措置といたしまして、所得税控除相続税控除制度戦前から行なわれておることは、皆さま承知のとおりでございまするが、生命保険料控除引き上げにつきましては、皆さま方のおかげをもちまして、今年の四月から控除額引き上げがはかられまして、年間に支払われました保険料のうち、二万円までは全額、二万円をこえて五万円までを半額、年間所得から控除されることになった次第であります。  このように税制上の優遇措置によりまして契約者の実質的な負担を軽減することとなったことは、まことに喜ばしいことと存じます。しかし現在のこの金額を、戦前や諸外国の水準に比べますと、まだまだ不十分であると考える次第でありまして、これを西ドイツについて見ますると、西ドイツでは、ほかの特別支出と合算してではありまするが、独身者が一千百マルク、つまり九万九千円、それから夫婦者は二千二百マルク、これは十九万八千円、子女一人につきまして五百マルク、四万五千円、これまで全額控除しておりまして、そのまた超過額に対しましては、半額を控除することになっております。  試みに、戦前わが国の、これは昭和十一年、二年でございまするが、の所得税控除額二百円を現在の物価の倍数四百倍といたしまして換算いたしますると、八万円になるわけでございます。これに比べますと、現在なおその半分にも達してないという状態でございます。  社会保障と並びまして、個人による死亡保障や老後の生活保障のより一そうの充実が叫ばれております今日、生命保険普及をすみやかに欧米並み水準に近づけるために、当面所得税については五万円までを全額相続税につきましては、現行は五十万円でございまするが、百万円まで控除引き上げられることを切に要望する次第でございます。  最後に、最近の消費者物価の著しい上昇がいろいろ国民生活に好ましくない影響をもたらしておるわけでございまするが、物価上昇は、長期契約である生命保険にとりましては特に好ましくないところでございます。わが国経済政策上にも、この点を十分に御勘案くださるよう、この機会お願いを申しあげる次第でございます。  以上、はなはだ簡単でございまするが、私の今日のごあいさつにする次第でございます。御清聴ありがとうございました。
  4. 山中貞則

    山中委員長 次に、高木参考人お願いいたします。
  5. 高木幹夫

    高木参考人 私、損害保険協会高木でございます。  ただいま弘世生命保険協会長からお話がございました最初のこと、すなわち保険業法改正が本委員会におきまして御審議中ということでございますが、われわれ損害保険会社といたしましても、この法案趣旨にはむろん賛成でございます。どうぞよろしく御審議お願いしたいのでございます。なお、この法案実現の暁における運用でございますが、これは何しろ変動の激しい株価のことでございますので、評価益計上ということにつきまして、われわれはきわめて慎重な態度をもって、われわれがまず考え、また監督官庁の御趣旨にまつところ大なるものがあると考えておる次第でございます。よろしくどうぞお願いいたします。  それから、損害保険料所得控除制、これは昨年本委員会におきまして、私どもがまかり出ましたときにもお話が出たのでございますが、その後皆さまの深い御理解によりましてこの制度が誕生いたしましたわけでございます。これはまさに損害保険史上画期的な事柄でございまして、私の理解する限り、各国におきましてまだこういう事例はないはずで、われわれがその最初事例を開いたということでございまして、これは国民と申しますか、被保険大衆といたしましてはむろんのこと、われわれ損害保険業者といたしましても感謝に耐えぬ次第でございます。  この制度は陰に陽に被保険大衆あるいは国民全般付保意欲向上に役立つものと確信いたしまするが、これはとりもなおさずわれわれ国民自身利益であり、ひいては民生の安定にも寄与するわけでございます。またその結果火災保険契約がふえてまいりますれば、損害保険会社営業基盤が拡大され、わが国においてはまだ保険普及度がはなはだ不満足な状態なんでございますが、これが拡大されまして、ひいてはその結果保険料率低下をももたらして、保険契約者一般利益にはね返っていくということになりますわけで、私どもはこの制度創設を心から喜んでいるものでありますが、率直に希望を申し述べさせていただきますならば、今回の二千円という所得控除金額を、さらに引き上げ方向で検討していただきたいということをお願いしたいのでございます。また、いま申し上げますとおり、国民の福祉に密接に関係しておりますので、この制度傷害保険のほうにも適用を拡大していただきたいと切望いたしておる次第でございます。わが国損害保険普及度は、先ほど申し上げましたとおり、いわゆる先進国に比べましてまだきわめて低い状況にありますので、私どもはこの制度を十分活用いたしまして保険普及努力して、もって御期待に沿いたいと存ずる次第でございます。  この機会に、私ども損雷保険業界で、情勢と申しますよりも、いかなることをやっておるか、やったかということについて昨年も皆さんに申し述べたのでございますが、いままたここにあらためて一言御報告かたがた申し述べさしていただきたいと思います。  ちょうど一年前、この委員会に私まかり出まして、きびしい開放経済体制を迎えるにあたって損保業者としてなすべきいわゆる体質改善の諸施策について若干申し上げました。私どもはこの線に沿いまして一生懸命に努力してまいったつもりでありますが、この機会を利用さしていただいて、国民生活に直接関連のあります事柄について若干御報告申し上げたいと思うわけでございます。  その一つは、去る六月一日からかねて懸案の火災保険料率体系簡素化料率引き下げを実施したということでございます。私どもで申します普通物件つまり主として住宅店舗事務所というような対象でございますが、その料率は従来所在土地危険度の大小によってこまかい区分けをいたし、さらに建物構造の良否によって多くの級別に分けておりましたが、このたびは住宅物件につきましては先ほど申しました危険度による土地構造による級別を相当程度簡素化いたしまして、契約者にもわかりやすく、保険会社代理店実務者にとって事務簡素化となるように改正をいたしました。一方最近の損害率地区別に再調査いたしまして、料率低下をはかった次第であります。その結果引き下げました率は、これは日本国内の地域によって一様ではございませんが、全国平均では一〇・六%の引き下げとなりました。またこれに伴いまして住宅以外の店舗事務所などの料率体系、これを調整いたしまして、この引き下げ率は五・九%となった次第でございます。なお、この住宅店舗事務所等のいわゆる普通物件料率引き下げは、昭和二十四年から今日まで十二回行なわれておりまして、全国平均料率は千円について三円五十八銭と相なっておりまして、これは昭和二十四年の千円について十二円八十七銭の三・六分の一、戦前昭和十年から十一年の千円につき五円二十銭に対して約三〇%低くなっておるのでございます。なお、私どもといたしましては、ただいま申し述べました普通物件に対応する工場物件、この料率合理化についても鋭意検討を続けておる次第でございます。  次に、いままで日本で行なっておりませんでした新しい保険創設、その第一は、新価保険、新しい価額保険発売でございます。これは損害保険会社体質改善策といたしまして新分野の開拓につとめてまいりましたが、その一つとして近くいま申し上げる新価保険発売される予定になっております。従来の火災保険では、建物が焼けた場合、焼けた時点における価額つまり古い建物であれば、経過年数による減価を行なった時価によって損害額をきめるというのがたてまえでありますが、これではせっかく保険金を支払いましてももとどおりの家が建てられない場合があるわけでございます。新価保険と申しますのは、この欠陥を是正して、一定の条件を満たせば新築価額損害を査定するものであります。この保険契約者需要にマッチしまして、必ずや大方の歓迎を受けるものとその将来に期待を持っておる次第でございます。なお、新価保険に限らず、総合保険つまり火災危険だけでなしに、その他種々の危険を担保といたします総合保険内容充実など担保危険範囲の拡張によって契約者利益向上を積極的にはかりたいと思っておるのでございます。  次に、私どもといたしまして、要望申し上げたいことがございます。これは損害保険会社における異常危険準備金積み立て不測の大災害が発生した場合に巨額の保険金を支払うのに支障を来たさないよう毎年収入保険料の中から一定割合を長年にわたって積み立てていく制度であります。戦前税法上ほとんど無制限といっていいくらい積み立てが許されておったのでございますが、現在では税法上、免税累積限度正味保険料の一〇〇%、なお船舶保険につきましては一六%となっているのでございますが、四割六分五厘に達するまでの毎年の積み立て率は七%、船舶については一一%を最高としてそれ以後の積み立て率はさらに低減されております。さらに累積額のうち、十年を経過したものはこれを取りくずして、益金に算入することになっております。俗に洗いかえと申します。その結果この準備金累積額は五割程度に足踏みを余儀なくされ、前述免税累積限度一〇〇%、十割という目標には遠く及びがたい状態となっておる次第でございます。  一方、近時における工場機械設備船舶、航空機などの保険対象巨大化考えますれば、現在の積み立て額をもってしては必ずしも十分とはいいがたく、まして原子力保険とか、将来引き受けを予想される地震の保険、風水害の保険等におきまする危険の集中を考慮しますれば、担保力の増大というものは一そう喫緊の事項であるわけでございます。さらにいよいよ解放経済が進められていく中にあって、対外競争力の強化をはかる必要がある。この点からも担保力の早急な充実が要請されております。  以上のような状況のもとにおいて、私どもは税金を支払いつつ異常危険準備金の積み増しに努力をしているのでありますが、現行制度のもとにおいては、所期の目的達成はほとんど不可能であるといわざるを得ないのであります。  つきましては、前述の事情を御賢察いただき、この制度拡充合理化について御配慮をお願いいたしたいと存ずる次第でございます。  以上、私ども業界現状お願いしたいこと、これを申し述べました。
  6. 山中貞則

    山中委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 生命保険協会の方にお伺いします。弘世さんにお伺いしますが、実は先ほどちょっと触れられました、最近物価上昇のために非常に生命保険経営上あまりいい傾向ではないというお話がございましたが、実は私のおやじがやはり生命保険に入っていまして、三十年やっておったら掛け金のほうが高かったような現象が、これは二十年くらい前のことでございますけれども、そういう事実がございまして、私はその後一切生命保険に入らぬこととしておりますが、少なくとも最近のように物価が上がって、二十年、三十年というような長期保険ということは、最近のように衛生思想が発達してなかなか人間が死なぬような場合に、どうも非常に矛盾しているのではないか、こういうふうに考えておるのですが、そういうことについてあなたは日本生命の社長をやっておられますから、いろいろ現実にぶつかっておられると思うのでありますが、そういうような、いまのようなテンポの早い時代に、十年、二十年という間に、池田さんでも所得倍増で十年たてば倍になる。物価はもっと上がるのですが、こういう問題について生命保険代表者としてどんなようなお考えを持っていらっしゃるか、私たちの納得のいくように御説明を願いたい。
  8. 弘世現

    弘世参考人 おそれ入りますが、生命保険の今後のあり方でございますが。——御説のようにインフレというものが一番生命保険にとっては痛いわけでございます。しかしこれは生命保険にとってというよりも、国家的には私は最も忌避すべきものであると思います。安定の経済、そういうもとにあってこそほんとうの繁栄がもたらされるのではないか、こういうように考えております。  御説のように戦争前の契約が今日非常な下落をした。これはもちろんやむを得ないことだと私は考えますが、しかし戦後におきまするいわゆるインフレのことにつきましても、戦争直後から見ますと、相当大きなインフレの波が初めにありまして、それから一応落ちついたのでありますが、最近またインフレ的な傾向が来ておる、かように私は考えております。それにつきましては、生命保険というものは各国とも非常にインフレを防ぐということについては、業界をあげてやらなければならぬということは考えております。ただ、そういうときにこそ保障必要性も出てくるわけでありまして、貯蓄ではない、保障という責任を充実したものが必要になってくるわけでございます。それで最近におきましては、私のほうが五年前からやっておりますが、つまり満期金はかりに百万円なら百万円、しかしちょっと保険料に上乗せをいたしますれば、万一事故があった場合には三百万円まで払うとか、こういう、土台は百万円でありますが、ちょっと色をつけていくことによって三百万円まで払うというような保険を売り出したりしておるわけであります。この点インコレ・ヘッジということもいえるのであります。  それからもう一つは、いまの保険は剰余いたしましたものを配当に回しております。年々配当によりまして保険料実額が下がってきておるような形、一方インフレは進みますけれども掛け金は逆に安くなってくるというような傾向がある。これがはたしていいかどうかということの問題があろうかと思います。むしろそういうものは増加証券と申しますか、その配当によって新しい保険をかけていくというような方向考えられ得ると思うのであります。そういう方法でいく。あるいは最終に、満期のときに配当を全部お渡しするというようなことができるのじゃないか、こういうことも考えていっていいのではないかと思います。まだいろいろその時代時代によりました、その時代に合った商品を今後も売り出していかなければならない、こういうふうに考えております。フランスでもやっておりまするが、アメリカでもニュージャーシー州だけは許可になったのでございますが、いわゆる価値の変わる保険でございます。インフレならインフレだけの保険金額にするという保険ができております。まだ実際にはアメリカでも売っておりません。これはプルデンシャルという会社が非常にそれを研究してやって、ニュージャーシー許可を得たのでございますが、まだ売ってないようでございます。それに対してニューヨーク州のほうは反対で、ことにプルデンシャルと拮抗しておりますメトロポリタンという会社、そのほうでは絶対反対で、そういうことは非常に危険がある、それで反対しております。もしそういうことがほんとうに可能ならば、これはインフレ対策としてできるのじゃないか、こういうふうに考えております。事実フランスでもやっているという話は聞いておりますけれども、つまびらかにはしておりません。そういうことでインフレ自体は非常にわれわれのほうにはおそろしいことでございますけれども、それに対応したお客さまに対して、何かいろいろ新しいものとしてお客さまの需要に応ずるものを考えていかなくちゃならない、こういうふうにも考えております。いまさしあたってできておりますのは、つまり三倍までいざ死亡事故その他によって死亡あるいは病気によって死亡という事実に対してはお払いするという保険ができておるという程度でございます。これでよろしゅうございますか。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから弘世さんにお伺いするのですが、この募集をする場合にインフレの場合がやりいいか、デフレの傾向のほうがやりいいか、これはあなたいろいろ経験なさっておられるだろうと思うので、その傾向としてどういうあれがあらわれておるのか。いまおっしゃるように対策を講じておられますからいろいろインフレの場合にはこうするとか、そういう複雑なことがあるらしいのですが、どうですか、そういうふうな点はどのようにお考えになっておられますか。
  10. 弘世現

    弘世参考人 募集につきましては、私はインフレは決してプラスにならぬと思います。お客さまがこういうインフレ保険をつけてもしようがないじゃないかということがございます。何と申しましても生命保険に関する限りは貨幣価値の安定、経済の安定ということが根本の問題になる。何といっても長期契約でございますので、それを土台にしていかなければならない、こういうふうに考えます。ただちょっと考えますと、クリーピング・インフレーションと申しますか、目に見えないような上がり方のインフレーション、これが一番会社としては有利じゃないかというふうに考えて私アメリカのある学者に話したことがあるのでございますが、そのときにはたいへん怒られまして、いやしくも保険会社の人間が、たとえクリーピング・インフレーションでも、そういうものをあてにするということはけしからぬことだということを言われまして非常に反省をさせられたわけですが、募集自体も決してインフレだから楽だということは言えないと思います。ただ私が申しましたように、クリーピング・インフレーションの場合は募集のほうはわりあいに楽かもしれません。しかしインフレとなってきますと、これはもう私はむしろマイナスではないかと思います。大体そういうことでよろしゅうございますか。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それから戦後御承知のように人間の寿命が延びまして、昔は人生五十ということを言っておりましたが、いまは七十くらいまでは普通になった。こういうことになると、生命保険というものは、大体が概念からいえば、生命に対して保障するようなあれでございますから、そういう点について長寿になった傾向生命保険とはどういうふうに関係がありますか、これも承りたいと思います。
  12. 弘世現

    弘世参考人 長寿と生命保険との関係、これは平均に死亡率が下がったということのおもな部分は、幼児の死亡率が下がった。また背は二十歳前後の肺結核がおもな死因でございましたが、そこに非常にピークがあったのでございます。そういうことが平準化された。それじゃいままで確かに人生五十年、そういうことの計算でもって五十年ということになって、四十幾つか何かになっていたのでございますが、昔でも八十、百歳の人はもちろんおられたわけでございまして、そういうものが平均されてその寿命が伸びた、個個の人がそれだけ伸びたとはいえないと思うのでございます。しかし医療その他によって死亡率は確かに減っております。そういう点では伸びております。結局の理想は自然死以外、老衰以外はないということになれば一群いいと思うのでございますが、そういう落ちついた時代になれば、それだけ保険というものは、つまり死亡率が減れば保険料を下げてまいりますから、それに合わせた保険料になってくる。事実その意味では非常に背から比べまして保険料は下がっております。今日の保険料は、私は欧米に比べて初めて対抗できる保険料と申しましてはあれでございましょうが、少なくとも死亡率におきましてはいままで明治以来ずっとやってきました、未開国から出発しました死亡率から考えますと、欧米並みになったということがいえると思うのでございます。したがって、これによって私ども欧米並み保険料が算出できる。ちょっと違うところは、予定利率が四分になっておりますが、アメリカでは予定利率二分とか、一分五厘ということがありますので、それだけの違いがございます。しかし死亡率においてはほとんど同じになったということは、海外からの外国生保の進出に対しましてもそうひけはとらない、こういうふうに考えております。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お伺いするのですが、これは人生観の違いのことでありますから、まあ生命保険の方に悪いかもしれませんが、世の中で一番大事なのは命だと思うのです。ところが御承知のようにいま非常に繁雑な社会で、生きているということがなかなか困難である。ところが死んでから後まで心配しなければならぬということは、これは政治の欠陥か、あるいは人間社会の欠陥か知りませんけれども、少なくとも人間が一番大事な命のために死んでから後まで心配しなければならぬということは、これは私としては生きているそれ自体が非常にむずかしいのに、死んだ後まで心配しなければならぬということはどうも不幸じゃないか、こう思っているわけです。そこでいま社会保障という問題がやかましくなってヨーロッパ、スイスとかスウェーデンへ行きますれば、病気すればすぐに病院に入れる、子供を生むときにも入れる。それから医療、そういうふうな面についても非常に完備している。日本もだいぶそういう傾向にはなってきましたけれども社会保障ということになると、なかなかまだ完全なことになっていない。そこで私は弘世さん長い間生命保険をやっておられるから、いろいろ聞いておりますが、もう生命保険をかけなければならぬ社会というのは、これは私らは逆にいえばかえって非常に不安定な社会じゃないか、こういうふうに私ども考えておりますけれども、現実には生命保険はどんどん発展して、いま言われるように競争率もひどいようでありますけれども、相当の発展を見ておるという、こういう現実を一体どういうふうな受け取り方をしておられるのか。またいま言われるように、私はいままで生命保険というものをあまり知りませんでしたけれども、百万円の掛け金をして三百万円をもらえるような、そういう保障もしてあって、保障的なことも勘案してやっておられるようですが、一体この点について、あなたは生命保険業界会長をやっておりますし、われわれはしろうとでございますから、よくはわかりませんが、これはわれわれ政治家として、死んでから後までも個人が心配するというようなことは、われわれ政治家にも責任があるようにも考えておりますが、その点は一体社会保障との関係でどういうふうに考えておられますか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  14. 弘世現

    弘世参考人 非常に大きな問題でございまして、私の考え方が正しいかどうかということは、これはまた違うと思いますが、私は社会保障制度というものは、主として国がやることと思いますが、これはなかなか容易でないと思うのでございます。すべての人にそういう保障をするということは、非常にむずかしいことじゃないか。どんな理想社会になりましても、なかなかこれはむずかしいのじゃないかという気がしております。そうすると、まずその国に相応した最低限の保障というものができれば、これは非常にいいのではないか。たとえばいまのスウェーデンとかというところは、非常に社会保障制度が発達しております。確かに非常にりっぱにできているわけでございますが、それでもやはり生命保険会社はあるわけでございます。人間の欲望というものは、最低限だけでは満足できないものである。まあ会社に入りますと、やはりぺいぺいから早く課長になりたいとか、副部長になりたいとか、そういうような、失礼な言い方かもしれませんが、代議士諸公では、大臣になりだいとかいうようなあれが出てくるのと同じように、人間には何かそういった現在より以上のあれを持とうという欲望が出てくるのでございます。ところがスウェーデンあたりの社会保障のあれになりますと、もう老人になってもゆっくりと暮らせる、そのためにそういう意欲がなくなってしまう、今度は無力になるのでございます。だから働くことができても働かないというようなこと、働くことの喜びを失なうというようなこともあるのじゃないか。実はスウェーデンあたりは老人の自殺が非常にございます。もう生きていてもしようがないという自殺が多い事例がございます。そういうことで社会保障というもののできるのは、やはり最低限じゃないかと思うのです。  それからもう一つ私がわが国でもって考えますのは、いわゆる国民健康保険というものはいいと思うのでございますが、いろいろな社会保障の中で、むしろ身体不具者の子供だとか、そういったものの処置だとか、そういうものをほったらかして、ただやたらに厚生年金がふえるというようなことではたしていいのかどうか。これは私自身の考えで、決して生命保険全体のあれじゃないと思いますが、私自身はむしろそういったところにほんとうの国の保障というものが行き渡ってほしい。その上で厚生年金の値上げとかそういうものがあってもいいのではないか。一方に非常に苦しんでいる人、生まれながらにして苦しんでいる人がある。それから孤児も相当多いと思うのでございますが、そういうものを助けないで、ただ厚生年金が上がったのだから、これでもう社会保障は十分だということは言えないと思うのです。まずそういうものの救済のほうが国としては先決じゃないかという気がするのです。とにかくそういうことによって、社会保障というものはどうしても最低限の保障になりますので、それを実際の生活にカバーしていくものはやはり民間の機関でもってそれをカバーしていくことになるわけです。ちょうど簡易保険があって、われわれ民間生命保険企業が相ともに車の両輪のようにいくというような意味でもって、これは一緒に発達していくもの、こういうふうに私自身は考えております。御質問に合っているかどうかわかりませんが……。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 なかなかいい説明だと私は思っております。  そこで時間がありませんから、弘世さんにもう一点だけ、現在生命保険界においてどういう隘路があるか、どういうことが一番困るかということを伺いたいと思います。  それから高木さんにも一点だけ伺いたいのですが、われわれが子供の時分には大きな火事があるとよく火災保険会社がつぶれたものです。私は名古屋の生れでありますが、このごろは、火事の規模からいうと、そう大きなものがなくなったということもありましょうが、そういう話を聞きませんが、最近でも、災害とかそういうものは別として、大きな火事とかあるいは大きな船が沈んだというようなことで火災保険会社損害保険会社等で大打撃を受けて、再起ができないというような危険があるかどうか、これを最近の傾向についてお伺いしたいと思います。  以上をお伺いして、私の質問を終わります。
  16. 弘世現

    弘世参考人 御質問にお答えをいたします。  いま保険業界としまして一番の問題は、やはり生命保険募集の問題であろうと思います。過去におきましては、八十年に近い非常に長い歴史を持っておりますが、国々によって事情が違っておりますが、エージェンシー・システムと申しますか、いわゆるセールスマンの行き方で大体きていたわけでございます。あるいは代理人もしくは代理店というような形できておりますが、それが戦後は非常な社会的な問題からそれがだんだん職員としてやっていくという形にならざるを得ない、つまりある一定の固定給を出さなければならないというようなことになってきているわけです。ところが実際の仕事自体はセールスマンです。そこに非常に矛盾がございまして、これが全部解決できているとは思いません。今後まだいろいろな経過をとって理想には向かっていくと思いますが、外務機構の問題、いま申し上げましたのは、主として外野の報酬の問題になってまいりますが、それとうらはらにやはり外野の機構の問題というものが一つ問題になると思います。  それで戦争でもって壊滅した生命保険業界を立て直す第一歩としましては、とにかく生命保険自体が大数の法則によって初めて成り立つものでありますので、ある保有契約商を持つということが第一義であるということから、かなり過去において無理な募集をしたと思っております。それのうらはらが今日出て、皆さまのお耳にも達しているのではないかと思いますが、こういうものをそれではいけないと思いまして、新しい、つまりもっと進んだ外野の組織とかあるいはその人の選択とかいうことにもっと大きな力を入れていかなければならない。この点は各国とも非常に苦労しております。また国によっては自分のところで会社の雇い人として使っているところもございます。また全然それをセールスマンとしてでき高制で払っていくというところもございます。そういう点でまだ世界的にもいろいろな問題がほかにもあると思います。日本日本なりの社会制度との関連において何か新しいものが出てこなくてはならない。しかも信用をもととしておりますから、最も信用のできる人がセールスマンとして成長しなくてはいけないわけでありますし、それでなければ生命保険事業自体が、むしろマイナスになってくるのじゃないかということを考えておりますので、その点われわれも今後非常に努力をしていかなければならない問題点の一番大きな問題だと実は考えておりますので……。
  17. 高木幹夫

    高木参考人 ただいまの御質問の点について結論を申しますと、まずそういう会社がつぶれるというような懸念はないのです。絶対ではございません、外国ではままあるわけでございますが、それはそもそもが基礎の薄弱な会社であるということと、それから収入保険料つまり料率、これで無謀の競争をやる、そしてしかも経費のほうはそれに対応しない巨額のものを出す。つまり経営がまずい、そういうことからのあれはあるのでございますが、いまは再保険制度、これが世界的に非常に発達しております。大体よほど特殊の大事件、と申しますのは、地震が非常な広範囲にわたって、しかも保険会社がその地震に対する補償を負担していたというようなこと、それは現在ではわが国ではないのです。さっき申し上げましたが、いまそれを経営を危殆に瀕せしめないようにしてやろうという計画で、前向きの姿勢でいま検討しておるのでございますが、現在のところではございません。たとえば大きな船が沈没、火災にあいましても、これは再保険制度というものによって世界的に危険分散をやっておるために、直接関係した会社が全部ひっかぶってつぶれるとかそういうことはございません。まずそういう事故のためのつぶれる危険はないと御安心いただいていいと思います。
  18. 山中貞則

    山中委員長 只松祐治君。
  19. 只松祐治

    ○只松委員 まずついでに火災保険関係の損保の問題をお伺いします。  異常危険準備金というのはどの程度あれば協会として御満足がいく、こういうようにお考えでありますか。
  20. 高木幹夫

    高木参考人 これはさっきもちょっと触れましたが、責任準備金として戦前はほとんど無制限、無制限と申しましてもそんなに無制限に積めるはずはないのでございます。収入します正味保険料の二〇〇%というようなところが大体の目安だったと思います。ただいまは税法上十〇〇%ということに押えられております。実はこれは外国の保険会社なんかと競争場裏に相まみえます場合には、多々ますます弁ずということなのであります。しかも一方において非常に大きな保険責任額というものを負担するということになってまいりますと、これはいよいよ多々ますます弁ずる口でございまして、まあ現在のところでは一〇〇%という税法上の規定で、そこまでは少なくともいかなければならぬと思っておりますが、実際はいけない、そういうことなのであります。幾らならばよかろうかということは、正面から直接にはちょっとお答えいたしかねます。
  21. 只松祐治

    ○只松委員 きょうは政府、与党との論戦ではございませんからあれですが、皆さんのほうはできるだけ多いほうがいいというわけでこれの増大を望んでおられる。そこでお尋ねしたいのですが、戦後この異常危険準備金をお使いになったことはほとんどないわけでしょう。ありますか、もしあればどういうことにお使いになったかひとつお教えいただきたい。
  22. 高木幹夫

    高木参考人 これは保険種目全般で申しますとございます。ことに海上保険関係、つまり船舶とか積み荷、そういうものについてはあるのであります。火災保険については、たとえばまだ積み立て金が非常に少なかった時代、たとえば飯田で大火がございました、ああいうときには使ったはずでございます。いまでも海上保険関係では伊勢湾台風、ああいうときなんかに使っております。
  23. 只松祐治

    ○只松委員 前に多少あったわけですが、このごろはあまりない。私が調べました範囲内でも近ごろそれほどの危険——危険と言えば常に危険はあるわけで、そのためにお互いがこの保険をかけておるわけですから、あると思いますが、いまそれほど大きなそういう危険というものは、少なくとも当面はあまりなかった。将来もよほどのものがない限り使わないだろう、こういうふうに言われております。そのように理解しているわけです。それが一つと、それから生保の場合は相互が中心になりますが、損保の場合は株式というところが大体多いと思います。したがって同じ保険会社でも内容は多少異なりますが、率直な話が、加入するときは何でもかんでもひとつ入ってくれというわけで、非常に熱心に、私たちなんかもいろいろ来られて弱るわけです。私たちは選挙でも終わるととたんに勧誘に来られる。その中には私たちを支持してくれた人がたくさんおられる。ところがいよいよ今度は支払いの段になりますと、お宅のほうは一銭でも安いほうがいい、こういうわけで火事でもあって台所がちょっと残っておれば三分の一残っておる、柱が一本残っておれば幾らということでなかなかお支払いにならない。これはむしろ裁判の原告と被告以上にこの争いというものが激しいのです。生保の場合も多少そうだと思いますが、第三者機関的なものがあって、そこに裁定とまではいかなくても、調停か何か行なうというのが保険業法の円滑な運営のために必要ではないか、私はこういうふうに思います。この前の委員会でも、名古屋の事件をめぐって赤松委員からもそういう話がちょこっとあったわけですが、生命保険よりもむしろ損害保険の場合にこの点は非常に重要だと思うのですが、その点どういうふうにお考えになります。
  24. 高木幹夫

    高木参考人 ただいま初めに御指摘になりましたように、どうぞお入りください、どうぞお入りくださいと言っておいて、いざほんとう保険が役に立つ、つまり災害が起こったときには、できるだけそれをちびろうとする、こういう御説明、これはどうも長年一般の世間の印象に刻み込まれておったということは、これは事実確かにそうでございます。ところが私ども近ごろの考え方といたしましては、保険会社ほんとうの商売は災害のときにてん補金を支払う、これがほんとうの職能だという考え方がだんだんと徹底拡充されておるのでございます。ですから、いまそういう悪名、汚名が流布されているということは、損害保険に従事している者はみんなよく承知しております。これは上下を通じて非常に反省しておりますので、近ごろは、そういうことは皆無とは申しませんが、だんだんと急速に減っておる。ことに何かそういうことが起こりますと、監督官庁、大蔵省のほうに訴えられることがあるのです。訴えると言うと語弊がありますが、おしりを持ち込むということをやられますので、そういうことも間々あるやに大蔵省のほうから承っております。この点は非常に自戒しているわけです。でありますから、いまの第三者的の機関でもって公平にということ、これは実は災害が起こりました場合の災害鑑定人というのが一つの職業として独立しております。でありますから、相当程度災害つまり火事があって災害をこうむったというようなときには、鑑定人に鑑定をしてもらうということが一般に行なわれておるところであります。ごくささいな、金額の低い災害の場合には、代理店または保険会社の者がじかに話し合いできまりをつけることもあるのでありますが、その場合でも、場合によってはむしろ非常に契約者のほうに有利なように取り計らう、係員の気持ちというものがそういうふうに動くということも実際にはあるのです。
  25. 只松祐治

    ○只松委員 上のほうの人は、万事官庁でも何でもものわかりがいいわけですが、下のほうの人は点数を上げようと田当て、なかなかそうものわかりがよくないんですよ。一番国民に関係があるのは、損保の場合は火災保険なんですね。国民と一番密着しているのは。こういう場合、その判定の基準というものは、消防署の火災のいろんな判定が大体支払いの基準になっているのです。私たちもちょいちょい、あまり少ないから何とかかけ合ってくれ、消防署のほうをうんと焼けたことにしてくれといって、ぼくらも立ち会ってやるのですが、大会社の社長ともなるとそういう話は早いわけですが、下の代理店や何かの人はその話が早くなくて、ものわかりがよくない。だから第三者的なものが必要なんじゃないか。原告と被告の争いになったら——入るときは入るか入らないか、拒否する場合にはぼくらのほうが強いわけですよ。一ぺん入ってしまいますと、今度は金を出すか出さないかといえば、金を出す者が強くなることは、子供だってわかる理屈ですね。だから、そういう場合には、たとえば私たちの埼玉には労働組合の労災保険がいまできておりますが、労災の場合には、火災共済は一般火災保険と違い、所属組合の役員と事故現場を調査してというふうに、民主的な労災保険の場合にはこうやって第三者が入って調査する。調査でもこういうことになっているのです。ところが、損害保険はそういうふうでないのですね。だから、きょうとっちめて結論を出すというわけじゃありませんから、それ以上は要望いたしませんが、少なくとも近代的な社会制度にふさわしくやろうというときには、十分ひとつ御検討をお願いしたい、このように思います。  それから生命保険の関係で、生命保険は大体相互というのが趣旨だと思うのですが、相互になってまいりますと、相互会社の発起人なりから——日生は四百五十万ですか、加入者がおいでになる、そこの中から百人ですか、代表を選んで、それから皆さん方が選ばれる、こういう形になっているのですね。ところが、一番最初の出発点はそうであったかもしれないけれども、いま現在は、そういう方だって今度は逆に皆さん方の役員のほうからそういう代表者を選ぶ、こういう形になっていると思うのです。その機構、組織まで時間がございませんからここで全部論じようとは思いませんが、いまのことに関連して、名古屋で両手切断の事件が起きたような場合でも、裁判以外に争う方法がなくなってくる。最後にはそういうことになるわけですが、その前に、ぼくらも聞いていておのおのの言い分があるようでございますが、やはりほんとうに加入者代表を利益代表者として鑑定に参加させる、あるいは加入者も第三者ではなくて利害対立者と見るならば、少なくとも第三者をそこに参加させる、こういうことを考慮していくべきだろう。日本のように社会保障制度が完全でない、非常に立ちおくれておる、こういうときに、火災保険をも含めて、特に生命保険社会保障的な役目が非常に大きいわけです。特に交通事故や何かがこういうふうに激増してまいりますと、災害が一般的な日常茶飯事になってくる。こういうときに皆さん方の果たしておられる役目は非常に大きいと思います。社会保障制度というものは国家がやるわけですが、こういうふうに社会性を持てば持つほど全くの第三者が必要です。ところが、いまの保険業というのは、名前は相互だけれども、やはり大会社対一個人、これも入るときはうるさいほどお見えになるが、入ってしまうとそういうことです。ぜひそういうふうにしてもらいたいと思います。政府のほうもせっかくお見えいただいておりますから、そういうお考えがあるかどうか、またぜひ努力をしていただきたい、こういうことを要望いたしたいと思います。
  26. 弘世現

    弘世参考人 ただいま御質問の点、会社の組織の問題になるわけでございますが、私のほうの会社だけについて申し上げますと、当初よりもだんだんよくなってきていると実は考えております。決して満足すべきものではございませんけれども、当初は一応形をつくるためにとりあえずつくったという形があるのでございます。それも、年数を経るたびに、その地方におけるりっぱな人格の方ということで、しかもこれは社員総代という形でございますから、社員でなければいけない、契約がなければいけないわけでございます。その契約の確かにある、人間的にりっぱな方ということで、これは私のほうで指図するというよりも、それぞれの現地、日本じゅうに散らばっておられるわけなので、現地におきまするみんなの意見を大体とりまして、それによって、こういう方はどうだろうかということに実際のところなっております。それを私のほうでは一応評議員制度というものを持っておりまして、それにおはかりをして、現地もわれわれもこういう方ならけっこうじゃないかと思いますがということで諮問をしまして、その上で公告をするというような形になっておるのでございます。それで、決してこれが完全とは申せないと思います。しかし、私自身は当初よりもよくなってきているという気がしておるのです。  それから、先ほどのいろんな事故その他によっての問題でございます。これは私個人考え方ですが、保険に入っていただいた以上は、何とかして不幸にあった方を全部カバーして差し上げなければならぬという責任を持たなくてはいけないと思うのです。ただ、社員の組合組織になっておりますから、保険自体が大数の法則でできております。そのグループに不当な損害を与えてはいけないということで、そこに問題があると思うのです。ですから、できるだけお払いするということは当然でございますが、それをお払いするには、これはできることかどうかわかりませんが、そういうための何かリザーブを持って、そのグループには直接損をかけない。しかし、別の財源から出すというようなことも、できる方法があればこれも一つの方法じゃないかというふうにも考えるのでございますが、これはさっきの危険準備金的のもっと変わったものかもしれませんけれども、そういったもので出し得るようになれば、そのグループには迷惑をかけないでいけるということになると思います。いろいろなめんどうなことを言っておりますのも、その保険団体の立場において考えなければならぬということにあると私は思います。そういうふうに考えておりますけれども、しちめんどうくさいことを言わずに、損害はてん補すべきだということは、これは原則だと思うのです。そういうことに何かいろいろ今後も考えていく必要があるんじゃないか、こういうふうに考えております。相互制度自体は完全なものではないと思います。しかし、いま私のほうで大体七、八百万の契約者を持っておりますので、これをどういうふうにやるかということにつきましては、なお今後も検討をしていかなくてはならないというふうに考えております。
  27. 只松祐治

    ○只松委員 確かに法律上あるいは形式上そういうものは相互でなっておりますけれども、実質上は、これはお互いに考えればわかるとおり、株式会社とほとんどかわらない、こういう形です。しかも株主がいないだけに、相互会社というものは、ある意味では役員が自由にできる、こういう面もあるやに聞いております。そういう点については、実質的には総合保険の実体を伴って運営できるように、特にそういう最後の争いは裁判以外に第三者機関がないというようなことではなくて、そういうものをつくっていっていただきたい。  それからさっき佐藤さんもちょっとお聞きでございましたけれども、現金や預金は刑といたしまして、土地や物件あるいは株券、そういうものは戦後ずっと値段が上がってきておるわけです。一方物価も上がっておる。生命保険の場合、長期契約が非常に多いわけでありますから、百万かけたのがそのまま百万で、三十年先に一家の安全なんか保障されるわけじゃありません。そういう面についても一つ問題がありますから、今後十分御検討して御高見を伺わしていただきたい。このことを要望して、時間がありませんから、質問を終わります。
  28. 山中貞則

    山中委員長 武藤山治君。
  29. 武藤山治

    ○武藤委員 時間が限られておりまして、二十分間しか私の持ち時間がありませんので、三、四点簡単にお尋ねいたしますから、答弁も簡潔にお願いをしたいと思います。  まず第一は、保険会社準備金をいろいろ効率的に使用する際に、病院とかあるいは住宅、そういうものの取得は現在どんな状況になっておるか。特に、相互的な会社の場合は契約者にできるだけサービスを与える、あるいは恩恵を与える、そういう立場から病院などは大いにつくるべきではないだろうか、こういう考え方からお尋ねするわけでありますが、現況はどんな状況になっておりますか。
  30. 弘世現

    弘世参考人 いまお話しの、準備金で病院を建てるということはなかなかできないような状態でございます。私の会社におきましては、かねてから利益金の一部をさきまして病院を経営しております。今日実はその病院の経営は非常に困難でございます。しかも非常に皆さんから喜んでいただいておるようなわけです。直接準備金を病院へ使うということはどうもちょっとできないような状況になっております。
  31. 武藤山治

    ○武藤委員 現在、保険会社で持っておる病院は全国で幾つあるのですか。それから不動産取得の範囲内で——不動産取得の場合というきちっとした制度がありますから、その範囲内でやる場合に、現在病院が幾つくらいあって、今後そういう方向にさらに支出をしていくという傾向にあるかどうか。契約者サービスという立場から、あるいは保養所とかあるいはどこか温泉地にそういう施設をふやしていこうという傾向にあるのか、それともそういうものはとても会社としては考えられぬ、そういう傾向にあるのか、その辺をちょっと承っておきたいと思います。
  32. 弘世現

    弘世参考人 実は他社のことを私よく存じませんが、特に病院としてのあれはそのほかにはないように伺っております。  それから不動産取得の範囲内でとおっしゃるのはどういうことでございますか。不動産取得の範囲内で病院を持つということですか。——相談所は持っております。  それから最近私のほうで、名古屋で朝日新聞とタイアップをして、いわゆるヘルスセンターというのですか、診断だけをするのです。施術は絶対にしない。だれでも行って見てもらう、どこか悪いように思うのだけれども、どうだろうかということを見てもらう、しかしこれはあなたこれだからこの病院に行きなさい。そこで放してしまう。つまり検査をやるとか、そういうことをたしか七月一日から始める予定にしております。
  33. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは希望なんですが、私はできるだけ契約者にそういう病院施設なり保養所なり、そういうようなものをつくってしかるべきではないかという一応の希望を持っておるわけであります。  時間がありませんから、議論はやめまして、その先に進みたいと思いますが、もう一点は、現存融資の額が非常に高くなっておりますが、全体のワクの中で中小企業に融資をしておる比率というのは大体どの程度になるものでしょうか。もちろん中小企業も昨年から変わりまして、資本金五千万以下ということになりましたから、かなりワクが大きくなると思いますが、どんな程度になっておりますか、その点をちょっと伺いたい。
  34. 弘世現

    弘世参考人 いまはっきりした数字を持っておりませんけれども、いままでは少なくとも重点産業というところに集中しておりました。したがって、中小企業には非常に少なかったと思います。しかし、私どものほうとしては、昨年くらいから中小企業の優秀かつ安全なものに対しましてはなるたけやっていこうじゃないかということでいっております。これは一つは資金の地方還元ということにもなりますので、地方にそう大きいものがございませんので、そういう意味でもむしろこれは奨励していっております。大体他社もそうじゃないかと思っております。はっきりした数字はちょっと私の頭にございませんので……。
  35. 武藤山治

    ○武藤委員 特に現時のような金融引き締めの情勢の中で、中小企業は生命保険に入れば融資を受けられるから、こういうえさで入っておる業者もかなりおるわけですね。ところがいよいよ借りようとなると、財務局へ行ったり、地方財務部へ行ったり、いろいろな手続で容易に借りられぬで、保険に入ったけれども、結局解約をしなければならぬ、こういうような中小企業がかなりあるように私も見ておるわけでありますが、どなたかきょう随行の方で、中小企業に出ておる比率を調査したのございませんか。銀行局のほうにもありませんか。
  36. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 全体的な計数の問題でございますので、お答えを申し上げます。  財務貸し付け金が資産運用の大体五四%くらいを占めておるわけでございますが、その中で直接中小企業向けが件数で二二%くらい、金額で六%でございます。ただし、これは直接でございまして、重点産業にいったものが関連産業を通じて中小企業に流れておるということは事実であろうと思います。
  37. 武藤山治

    ○武藤委員 弘世さん、いまお聞きのように、金額にしたら六%ですね。少少少ないような感じがいたすわけです。そこで大産業は比較的、開発銀行や大きいところから融資が受けられるのでありまして、中小企業の諸君はそういうものを目当てといってはちょっと失礼な言い方でありますが、そういう希望の会社が非常に多いわけですね。符に私どものほうの繊維とかプレスなどの工場ではかなりそういうえさで保険に入っておるが、なかなか今度は手続がむずかしくて借りられぬ。いまの結果のように六%程度しか融資をしておらぬ。これはちょっと比率が低いような気がいたしますので、こういう点について、弘世さん、現時点で、いまの数字の発表を聞いて、今後の方針についてどうお考えでございますか。
  38. 弘世現

    弘世参考人 ただいまのお話でございますが、六%というのは直接というお話でございます。中小企業金融公庫とかそういうところの債券は相当に持っております。そういうものを合わせてどのくらいになりますか、ちょっといまその点をあれでございますが、私は優良な——ことに開放経済下におきまして産業構造が違ってくるのじゃないか。ですから、必ずしも大会社が将来いいということにもなかなかいかないのじゃないかということにおきましては、やはり中小企業にも目を開いていかなければいけない、こういうふうには考えておるのでございますが、六%はちょっと少ないと思います。ただ、ここで非常に問題になりますのは、原資の回収の問題が出てくるわけです。担保力がないとかそういった問題がどうもひっかかりやすいのでございます。これは預かっておる金でございますから、私どもも非常に気をつけますし、当局のほうも非常に厳重にその点は見ておられまして、担保力とか保証力とかそういったものの関係も出てくると思うのでございます。それから数がふえるということになると、審査能力のあれでなかなか一朝一夕にできません。これはだれでもできるというわけにまいりませんので、逐次ふえておりますけれども、審査能力もふやしていかなければならぬ、こういうふうに考えておるのでございます。また小さくはならないと思っております。
  39. 武藤山治

    ○武藤委員 これも弘世さん、希望ということで今後十分検討してもらって、特に輸出関通産業の中で中小企業の比重というものは非常に大きいのであります。さらに中小企業基本法も制定されているし、中小企業の振興ということに国自体も非常に力を入れておる現世でありますから、特段のこれからの御考慮をひとつお願いいたしておきたいと思います。  第三番目に、これは本委員会田中大蔵大臣に強く要望し、またきょうおいでの参考人の皆さんにも堀委員や前委員がいろいろ要望して、財政投融資の資金を保険会社から融資する、こういう制度ができて以来年々ふえてはまいりました。三十九年度は三百十億ですか、従来から見るとたいへん多くはなってきたわけでありますが、それにしても、日本の今日の住宅建設の状況や環境整備の問題などを考えると、まだまだ財政投融資の資金が不足しておる。実はきょうも私どもの地元の市から電話が非常に不足しておる、電電公社を二局つくらなければどうにもならぬ、そこで公社を調べてみたら、そういうところが年々ふえて、いま百七十六カ所もやりたいところがあっても財投の資金が足りぬ、どうにもならぬ、こういうような状況で、国全体の政策が非常な壁にぶつかっておる。したがって、重点産業にどんどん金をつぎ込むのもいいけれども、そこらはこの辺で切りかえて、もっと国の施策に対応して協力するという体制にそろそろ移行してもらいたいものだ。そこで、三百十億の財投への資金を来年度あたりはもっとふやしてもらえぬものだろうか。十月ごろまた予算編成のいろいろ準備が始まるわけでありますが、現在の資金の量、あるいは契約高、そういうような関係からこれがもう大体目一ぱいなんだ、いや、これはもっとふやせるのだ、そこいらの責任者としての見通し、あるいはそういう金の出し方が保険業法から見て好ましい出し方かどうか、そういう点のお考えがありましたら、お聞かせ願いたいと思います。
  40. 弘世現

    弘世参考人 ただいまもお話がありましたように、財政投融資が三百十億というのは住宅公団だけでございます。全体としては五百十億くらいというふうに存じております。そのほかに重点産業には財投にかわるようなものは相当にいっておるわけでございます。ただ問題は契約者にサービスするという意味におきましてなるたけ金利をよくしたいということで、いつも財投が一般投資と同じような金利源ができますればこれは問題ないと思います。そこのかね合いだと思っております。でも大体増加資産の何割かはたしか財投をふやしていくということになるので、全体で二割の線まで将来行かせるようにという何かあれがあったと思うのでございますが、これは大蔵省のほうから、もし何ならばあれしていただきたいと思います。
  41. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 いま弘世参考人からお話しの点は、おそらく増加資産の一割以上を財政投融資で協力していただいて、残高で資産の一割に持っていきたい、こういうことでございまして、そのことをおっしゃっておるのだろうと思います。
  42. 武藤山治

    ○武藤委員 利回りをよくしなければならぬし、九分程度の利子を予定しなければ貸せないとかいう話を前回のときに承ったのでありますが、ひとつできるだけこういう資金は公共的なものに振り向けるという努力を今後も一そう続けてもらいたいという要望をしておきたいと思うのです。  それから損保のほうの高木さんにお尋ねいたしますが、私は従前県会議員当時に、よく県下の交通事故防止の一策として、義務教育の生徒に交通法規というものを一週三十分なり一時間なり入れたらどうだ、そういうような持論を長いこと主張し続けてきたのでありますが、予算がないということでいつもそういう教育費用というものが出せない。こういうような子供たちに交通道徳と申しますか、交通事故防止の教育をするための簡単な教材みたいなものを子供のときから教えていく。特にそれは今後の免許証取得者というものも、いま十年もたったらおそらくもう中学を出たらほとんどが免許証を持つというような時代が到来することはやや予想にかたくない時世でありますから何かそういうようなものをやったらいいのじゃないだろうか。しかしそれは保険会社の責任じゃありません。それをやる場合に何らか保険会社としてそういう地方自治体にある程度資金を、補助的なものが出せないものか。いま学校などで——模範学校では校庭に道路をつくり線を引いて登校のときからすでにもう交通道徳を校庭で教える。そういうような場合にもわずか十万か二十万の命を父兄の負担に待つ、まことに欠乏しておる状況です。そういう交通事故防止費用というようなものを学童用に考えてみることはできないものかどうか、そういう点をひとつ保険会社としても検討できるのではないか、その辺についてはどんなお考えですか。
  43. 高木幹夫

    高木参考人 いまお話しの交通事故防止の点につきまして、これは資金的ではないのでありますが、学校の教材になるものを協会として編さんいたしまして、中学校以上には配っています。小学校には出しておりません。しかしいまお話しの資金的に、そういうことを学校としてあるいは地方自治体としておやりになるというようなことについて資金が必要だというようなときに、これを私ども業者として何分のこれに対する応援をするということは考え得ることだと思います。これはとくとこれからひとつ検討さしていただきたいと思います。
  44. 武藤山治

    ○武藤委員 あと二、三分で刷り当ての時間になりますから終わりますが、最後に弘世さんにお尋ねをいたしますが、いま保険協会で寄付というものがどの程度出ているものなのか。たとえば社会福祉事業に対する寄付、学術、文化、教育に対する寄付、政党に対する献金寄付、こういうようなものがあげられると思いますが、そういうものの寄付の総額というのは、一体協会としてどのくらい出しておるわけですか。というのは、私の調査では昭和三十六年度でしたか千二百五十万円の政治献金が協会から行なわれておるわけですね。官報に出ておるわけです。千二百五十万円の金を二十の会社からどういう形でどういう名目で集めてそれを政党に出しておるのか。それとも寄付金というのを、法人であれば第九条に基づく限度目一ぱいの寄付金を各社からパーセントで割り当てて協会で吸収していくのか。一体寄付金の吸収の仕方を協会はどんな方法でやっておるのですか。そこらをひとつお尋ねしたいと思います。
  45. 弘世現

    弘世参考人 寄付金の総額はちょっといま空で覚えておりませんが、いま正確な数字がないと思いますが、寄付金は協会で割り当てられますのは初めの基礎を一割六分くらいでしたかを全部平等に負担しまして、あとを会社の規模によりまして、これは契約帯並びに——契約高だけでしたかあるいは資産の比率も入っておるかもしれませんが、そういうわけで分担しております。いま全体の金額はちょっと。……大体銀行の十分の一くらいだそうであります。銀行がどのくらいやっておりますか存じませんが、大体業界でランクがあるようでありまして、それによっていろいろな寄付をしているように存じております。それからそのほかにも個々の会社では、それぞれまた別の地方地方の事情もございますしいろいろの問題がございます。プールをしておるようなことはございません。
  46. 武藤山治

    ○武藤委員 会長さんの立場で、政党政治献金というものについて、一体保険会社という性質から見て好ましいと思いますか。またねらいは何ですか。政党なり派閥にまとめた金を出すというねらいは何でしょう。私はどうも理解できないのです。これが社会福祉事業とか教育、学術、ガンの研究所とか、こういうところへ出すことならこれは納得がいきますし、大いに賛成なんですが、政党に多額な金を出すことによってほかへの社会事業や何かへ出す金のワクが狭められてくるわけですからね。そういう点で私はどうも国の監督が非常にきびしく行わなれておる生命保険会社などが、政治献金を多額に出すということはいかがかと思うのですが、会長としてどうお考えになっておりますか。
  47. 弘世現

    弘世参考人 むずかしい御質問で、まあ政治献金というものがいま許されておる。ということは、許されておる以上は献金しないで済めば一番けっこうだと思います。しかしまあいまのところ献金ということは現実にあるのでありまして、これの金額がどうというそれも、共産党以外のところには大体出しているという気がしております。金額の差があるのじゃないかと私思いますけれども、これはなるたけ少ないほうが私どももけっこうだと思います。
  48. 武藤山治

    ○武藤委員 二十分までですからやめますが、いまあなたの答弁の中の認識の違いは、政治献金というものが何か法律上にきめられてあるような感覚のようですが、そういうことはないのですよ。法人税法第九条では寄付金という項しかないのです。その寄付金の中で、政党へ持っていかれるものやら、教育や学術や社会福祉に持っていかれるものという全体のワクが法律できまっているだけですから、政治献金ということばは全然寄付金条上項の欄にはないのですよ。そういうものにウエートをよけいに持っていって、ほかの教育、学術が減らされているというこういう傾向が今日ある。しかも、政府からの監督を非常にシビヤに受けている保険会社が政党なんかに金を出すことはないですよ。今後はそういうことはやめたほうがいい、われわれはそういう忠告をしておきます。銀行はうんと出しておるといわれますけれども、めくらの裏で流しておるのはわかりませんよ。しかし表面的に官報に出ておるのは、銀行は非常に少ないですよ。銀行はちょっぴりしか、五十万くらいしか出していないのですよ。生命保険会社のほうがごっそり出しているのですよ。これは十分検討する必要があります。ひとつ十分考えてもらいたいと思います。  これで終わります。
  49. 山中貞則

    山中委員長 春日一幸君。
  50. 春日一幸

    ○春日委員 二十分の制限がございますから、要点簡略に伺いたいと思います。  まず第一番に、本委員会は所管することが広範でございますので、したがって会期中に保険業法についていろいろと御意見交換をいただくチャンスの少ないことはまことに残念でございますが、きょうもまた時間の制約がありまことに残念でございます。  私は、この際基本的な理念についてわれわれの認識することを申し述べて所見を伺いたいのでございまするが、由来、この保険事業というものは、私は営利事業ではないと思うのでございます。経営の原則はいわゆる給付と反対給付、均等の原則のしに立っておると思うのでございまして、言うならば、保険会社はもうけてはいけないものである。もうけるような、あるいはその資本が著しく増大するような傾向がある場合はすべからくその料率の軽減をはかるべきである、かく考えるのでございます。本日、生命保険におきましては資産総額一兆五千億、損害保険においてはかれこれ三兆円をこえる膨大な資産を擁されておりまするが、このことは支払い準備金等の必要性を満たすためにある一定のかっぷくを備えることが必要ではありましょうけれども、そのことは絶えず被保険者の負担の度合いと会社の資本蓄積の程度にらみ合わせてできるだけ料率の軽減につとめるべきものであると考えておりますが、これについて両代表の御意見はいかがでありますか、この基本的な考え方について伺いたいと思います。
  51. 弘世現

    弘世参考人 御説のとおりだと思います。保険、ことに相互会社の場合を考えますと、大部分がそうなんでございますが、やはり一つの組合組織みたいなものでございますから、確かにそういうふうに保険料引き下げということを第一義に考えているのです。ただ、そこで生命保険の場合は非常に長い期間のものでございますから、あるリザーブというものは当然持たなくちゃならないんじゃないか。極端に言いますれば、その加入者の一果実できたものがその次の加入者に果実が残されることもあり得ると思うのでありますが、それも程度問題だと実は考えております。
  52. 春日一幸

    ○春日委員 時間がございませんから私は簡単に伺います。  当然それは一個のリザーベーションというものはおのずから限界がございましょうが、損害保険の場合は大体一年契約であり、特殊な長期契約等もあるでこざいましょうが、しかし損害の度合いというものも過去の経験が重なって上値の基準というものが算出できると思います。生命保険においても同然のことであろうと考えるのでございます。いまここで損保における資産総額三兆円、また一兆五千億というような生命保険におきまする資産総額を擁しましたときにおいては、やはりこの事業の社会性にかんがみて、かつまたその社会的使命等にかんがみまして、十分ひとつ大蔵省とも御検討あって、どの程度が適正なリザーべーションであるのか、各種の準備率等についても十分御検討があって、できるだけその負担軽減の原則に立ちかえっての御検討をきびしくお願いをいたしたいと思うのでございます。  なお、両業界とも最近それぞれの料率引き下げのことは好ましい傾向でございますが、なおわれわれの判断をもっていたしますと、なおなお引き下げる余地があるのではないかとの印象が深いのであります。御検討を願います。  第二点に、この資産運営の問題でございますが、これは国の政策によって事業収益率というものは非常に変わってまいるのでございます。たとえば火災保険の場合、消防がうんと普及する、あるいは耐火建設がうんと普及すれば、火災の率はうんと減ってくるわけでございますから、したがいまして、こういうような場合におきましては、やはりその資産の地方還元、それから源泉還元、この二つの論理は十分ひとつ運営の実務のしにおいて御配慮願うべきものではないかと思うのでございます。地方公共団体が財政乏しき中において消防設備をうんとやっておりますね。こういうようなときには保険会社利益がそれは逆比例をいたしまして、地方公共団体のそういう防火費用が高まれば高まるほど保険会社利益が増大していく、また生命保険のほうにおいては、医学の研究、あるいは療養施設の拡充、こういう国、地方公共団体等の公的負担が高まれば高まるほど死亡率の減少に伴うてあなたのほうの利益が増大していく、こういう実態を十分率直に判断するならば、私はあなたのその資産の運用はこのような方向に向かって最重点に置かれてしかるべきではないかと思うのでございます。すなわち、損保の資産運用は、地方債うんと買うというようなことが必要ではないかと思います。たとえば生命保険の資産運用なんかは、たとえば病院の建設でありますとか、あるいは医科大学の病理学的原理の研究でありますとか、臨床医学の探求でありますとか、療養施設でありますとか、そういうものを担当しております医療金融公庫もございます。あるいはそういう方面に対する必要なる資金を最重点的に流すのが本来的使命ではないか、私はこういうふうに考えるのでございます。現在一兆五千億のかれこれ六〇%がいわゆる投融資である。しかもそれが電力、鉄、石炭、船舶等、こういうものも私は国の基幹産業としてのその社会性というものはそれぞれ認めるものでございますが、しかし、由来そのような産業資金というものは、増資なりあるいは社債発行なりによってそれは調弁すべきものであって、融資に依存するということは便宜的なものであると思うのでございます。一兆五千億の膨大な生命保険の資金の中からかれこれ六〇%が投融資に回される、そこの中の多くの部分が基幹産業にのみ重点的に行なわれている、財政投融資は全部の一〇%かれこれのものでしかないというような一個の配分は、その損害保険事業というもの、あるいは生命保険事業というものの本来的性格にかんがみて、適正なものではないとわれわれは判断せざるを得ないのでありますが、この点について弘世さんの御見解はいかがでございますか。
  53. 弘世現

    弘世参考人 私は必ずしもそればかりでない、生命保険事業による原資はやはり国の産業に行っていいのではないか、ただもちろん、医療施設その他にも留意すべきものを持つとは思いますが、私は必ずしも全部をそっちに持っていくべきだというふうには考えておりません。やはり国の発展ということのために、生命保険の原資が生きなければいけないのじゃないかというふうに考えております。
  54. 春日一幸

    ○春日委員 損保事業にしろ生命保険事業というものは、本来的にこれは国の経済の発展のために設けられておる事業ではないのでございます。そのことは加入者の利益を確保することのための総合組織というものが本来的なものでございまして、したがってその運営の原則的な理念は、いわゆる給付と反対給付との均等の原則というのが、これは通念として容認せられておるところでございます。すなわちあなた方の事業は、国の産業を発展せしめることのための原資を調達する手段として保険事業というものがあるのではございません。だから私が論じておりますることは、もとより国の基幹産業に対しては、そういうようないろいろな金が投入されていくということは、それらの社会的性格にかんがみて、それは不必要なこととは断定しない。けれども現在の資金分布というものが、そういうようなところにオールマイティ的に圧倒的に、集中的に行なわれておるということについて、再検討の必要はないかどうか。この点を申し上げておる。  私が冒頭申し上げましたように、少なくとも保険金の剰余金、流動資産、そういうようなものは、これは言うならば地方還先、それから源泉還元、これが最優先に考慮せらるべきものであるとするならば、だとすれば、さまざまな政策があなた方の事業の収益率に直結的影響を持っておることにかんがみて、したがってそういう面に向かってその資金運用というものが重点的になされてしかるべきものであるという、すなわち大衆的規模の性格の財政融資、ここをうんとやるとか、あるいは中小企業者が非常に多い、しかもそれらが困っておるとするならば、いま武藤君が指摘されたような面においても、これは商工中金の金融債でありますとか、いろいろなものがありましょうが、そういうようなものの度合いをうんと高めてまいりますとか、地方の金融保証協会に対して、あなた方が相当の出損を行なっていくとか、いろいろなことが私はあり得ると思う。現在電力、鉄、石炭、肥料、造船、化学繊維の問題等は、これは大いに必要ではございましょうが、そういうような原資を調弁することのために、保険事業というものは想定されたものではないのでございますから、本末を転倒されることなく、本来的使命にかんがみて、公正なる資金運用があってしかるべきもの、こういうことを申し上げておるのでありますが、なお御異論ございますか。
  55. 弘世現

    弘世参考人 非常に御示唆を与えられたと私は思います。確かにそういった面も大いに考えるべきだと思います。しかしそれに集中はなかなかできないのじゃないか、こういうふうに考えます。たとえば病院の場合を考えますと、いまの医療給付その他ではなかなかペイできません。そうすると原資が非常に減る可能性もあるいはあるんじゃないか。率直に申しまして私個人の問題でございますが、そういうふうに考えます。そういったいろいろな観点から、実はやりたいこともできなかったことはいままでもございます。実際にそういうことはございます。しかし谷口委員の御発言、非常に傾倒するものであったことをお答えいたします。
  56. 春日一幸

    ○春日委員 私は損保にいたしましても、生命保険にいたしましても、実際、問題が非常に多いんでございますね。この間も本委員会において過大保険の問題でございますとか、保険最高額の問題でありますとか、いろいろ問題が提起されておるわけでございます。現在損保のほうにおいては過大保険制限の規定があると思いますが、生命保険にはそれがない。したがいまして業者間の過当競争の結果、個人が何億というような保険契約を行ないまして、そのことが後日の問題になっておるとかいうような問題もございます。それから現在保険契約が、大体契約した一〇%が解約されておる実態等も、このことは過当競争によって、募集に重点を置いておって、その後のアフターケアというものが列後に置かれておる、こういうようなことが契約者に対してはなはだ不利益をしいておる現状であろうと思うのであります。私は現在の募集第一主義、新規契約募集策第一主義から、すべからく募集後のいろいろな維持管理、指導というかあるいは協力と申しますか、そういうような方面にもあなた方の運営上のお心配りを願わなければならぬと存ずるのであります。  弘世さんに対してまことに失礼でありますが、日生劇場なんかあちらこちらにできまして、とにかく数十億の膨大な資金がそういう方面に使われておるのでございます。私はこういうような問題も、やっぱり大衆の娯楽面を確保することによって、これが健康の増進に寄与するというようなことであったり、これもまた社会的に貢献する面があるという点等も、これは絶無ではございませんけれども、そういうことを言ってみれば、何もかも、何をやったって、パチンコ屋だってみんな社会的に貢献して、おるのです。実際の話が……。だから私は、生命保険会社が何十億というような余剰の資金があるならば、少なくともそれによって無料の療養所をつくるとか、あるいはまた診療所をあちらこちらに安いものをつくって、大衆にやっぱり貢献をするとか——仏性さんのようなわが国第一流の指導者が手がけるにしてはちょっと適当ではなかったのではないかと心ひそかに非難をしておるわけでございますが、今後十分にひとつ御留意を願うて、とにかくこれは純粋の営利事業ではないのである。あくまでも社会的性格、社会的使命というものが非常に荷いのである。余分の金があったら料率を安くしよう。それからまた病気をなくするための施設にひとつ貢献していこう。損保さんのほうだって、もうかるようになったら料率を下げる。またもうかる源泉がそういうような消防施設の拡充強化にあったとしたならば、その重き負担に苦しんでおる、地方債をうんと買うとかなんとかいろいろなもっと合目的な実施のしかたがあると思うのです。  本日の段階において、私は項目別にいろいろ一間一答で意見の交換をいたしたいと思いましたけれども弘世氏の制約で十分質問することができないことを遺憾に存じまするが、次の機会期待いたしまして、私の質問を終わります。
  57. 山中貞則

    山中委員長 何か日生劇場の件で御発言ありますか。
  58. 弘世現

    弘世参考人 日生劇場が非常に問題となって、むだなものをつくったという考え、これは考えようなんでございますが、実はあの土地は前から本社の所有地でございまして、東京における拠点というものがございませんので、あそこの土地を利用しようということでやったわけでございます。それで実はあれをつくる前に何かサービスをすることはないだろうかといろいろ考えたのですが、場所柄やはりああいう便利なところだから、皆さん集まっていろいろ御利用願うものをつくりたいというのが発端でございます。  それから、あの場所柄妙なものをつくりたくないし、日本の玄関みたいなところでございますから、これはひとつできるだけ将来恥ずかしくないものをつくるのか必要じゃないか、こういうふうに考えて、金がかかったと思います。劇場をつくったということ、これは私は何も上級ばかりをねらっているのではないのでありまして、健全かつできるだけ程度の軽いものを、なるたけ多くの人に見ていただきたい。特に私は青少年のために将来役に立つもの、若い人たちのために何か使ってほしいというようなつもりでやったわけでございまして、いま見ますと非常にりっぱに見えますが、私は五年後にはもっとりっぱなものがどんどん出てくるのではないか、全体の水準が高くなってまいりますので、そうではないかと実は考えております。そういう意味で初めに大がかりなものが出たために、ばかにあれはエクスクルーシブなものだ、庶民の行かれないところだというような、これはジャーナリズムが取り上げたことだと思うのでありますが、そういうことになっております。しかし私はもともとそういう意味ではなしに、ああいうところで、もっと青少年がほんとうの意味で高い気持ちを持ってくれたら将来の日本にいいのではないか、こういうふうに考えております。そうした一つのあらわれとしまして、あそこでひとつ児童劇をやって、小学校の生徒たちにぜひ見てもらおうということを、これはつくる前から考えておったのですが、考えて、それは最近にやりました。ところがわりあいに好評のようであります。一部には、あんなところに小学校の生徒を入れたら台なしにしてしまうではないかという心配もあるのでありますが、私は、そうではない、おとなよりも子供のほうが感受性が強いから、その場所に入ればその場所のエチケットなり何なりはおのずからついてくるというので、それをやってみましたところ、大体いいように聞いております。そういうことで、あれも企業でございますから、なかなかむずかしいと思いますけれども、将来これがいい意味で利用されることを心から私は期待しておるわけであります。
  59. 山中貞則

    山中委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席を賜わり、貴重な御意見をお述べいただきましてまことにありがとうございました。厚くお礼申し上げます。  当委員会といたしましては、本日の御意見も参考として、保険制度の一そうの向上のため努力を続けてまいりたいと存じます。  ありがとうございました。  この際、瞬時休憩いたします。    午後零時四十三分休憩      ————◇—————    午後二時三十七分開議
  60. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  公認会計士特例試験等に関する法律案及び税理七法の一部を改正する法律案の両案を二話して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  61. 堀昌雄

    ○堀委員 公認会計七特例試験等に関する法律案についてお伺いをいたします。  まず最初にお伺いをいたしたいのは、この公認会計士の制度が設けられて、すでにかなりの時間がたつわけでありますけれども、この公認会計士が設けられて、それによって設けられていなかった以前と著しく何かプラスになった点というのはどういう点があるのかをひとつお答えをいただきたいと思います。
  62. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お尋ねにお答え申し上げます。  公認会計士制度ができまして、非常に専門的知識の高い資格を要求されます公認会計士が会社の監査に当たることになったわけでございます。したがいまして、会社の経理の健全化と申しますか、会計監査の水準が非常に高くなりまして、その結果、ひいては会社全体の経営の健全化にも資しておりますし、またその監査証明をもって、いわゆる投資者に対して会社内容を明らかにいたす制度をとっておりますので、投資者保護にも非常な効果を及ぼしておると考えております。
  63. 堀昌雄

    ○堀委員 公認会計士の制度がなかったときとできたときとで何かそういう点で目に見えた差がありますか。公認会計士の制度がなくてもやはり監査の制度はあったと思いますから、おそらくその当時でも会社はいろいろな経理上の問題についてごまかしていいということにはならなかったであろうし、そのことは同時に、税法上少なくとも会社経理が税法に適合しているかいないかについては税務当局においても処理をしておったことだと思いますから、そこらの点について特にいまのお話だけではどうも私は特別に何か目に見えた効果があったという感じはしないのですが、具体的に何かありますか。投資家保護ということはあとで私触れますが、投資家保護に必ずしもなっていない点もはっきりしているわけだし、それだけでは私はあまり理由になっていないと思う。何かほかにそういうメリットがあるのかどうか。
  64. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話の点について数字的にどうとかあるいは実際具体的にどうなっておるということは申し上げにくいかと思いますが、従来の計理士の監査を受けておりましたときに比べまして、御承知のように試験の中でも非常にむずかしいといわれております公認会計士の試験を通って資格を得ました公認会計士が監査をいたしますことでありますので、従来に比べて非常に監査も厳格適正になっておると考えておるわけでございます。ただ、具体的に数字的にどういうことかという点についてはちょっとお答えしにくいと思います。
  65. 堀昌雄

    ○堀委員 まあ抽象的には何となくよくなっておるであろうという程度ならば、いま私が伺っておることの正確な答えにはならないわけです。いま非常に厳重な試験を受けて出た公認会計士がやっておるからよくなったであろう、こういうお話が一点あるわけですが、ちょっとお伺いをいたしますが、現在の公認会計士の報酬の状態というのは一体どういうふうになっておりますか。
  66. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 報酬は会社を担当いたしまして監査をいたしましたときに得るわけでございますが、大体一決算期の監査につきまして、一会社約四十万円の報酬を得ておるわけでございます。
  67. 堀昌雄

    ○堀委員 一会社四十万円という話は、資本金が一億でも十億でも百億でも二百億でもそういうことになるのですか。
  68. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 お答え申し上げます。資本金ではなくて総資産額によりまして、報酬額は若干違っております。ということは、資産額の多寡によりまして、監査日数そのものが違ってまいりまして、若干金額は違っておりますが、平均いたしますと、いま局長が申し上げましたように、大体四十万程度になります。
  69. 堀昌雄

    ○堀委員 違うそうですから、それでは平均でなくて、総資産が最低ならば幾らで、総資産が最高のところは一体幾らなのか、それをまずお答えをいただきたい。
  70. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 基本報酬を申し上げますが、総資産が一億円未満の場合は報酬額は十万円以上、一億円以上のところが十五万円以上、五億円以上の場合が二十万円以上、二十億円以上のところが二十五万円以上、百億円以上が三十万円以上、五百億円以上が四十万円以上になっております。これは六カ月を一事業年度とする決算で基準がきまっております。
  71. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、例として伺いたいのですが、資本金百億の会社というのを、どこでもいいのですが設定をしていただいて、そこにおける総資産というのはどのくらいですか。それは業態によっても多少違いがあるかもしれませんが、ただ資産だけで言われたのでは、われわれちょっと会社の規模が見当がつきませんからね。
  72. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 大体総資産に対する資本金の割合が、二割から二割五分程度になろうかと思います。したがいまして、百億以上になりますと、最高の五百億をこすことになります。
  73. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ちょっと国税庁にお伺いをいたしますが、いま資本金百億の会社の税務調査をやっておる延べ人員は、——おそらくこれも決算ごとでありましょう。半期でやるのか一年一回でやるのか私もよくわかりませんが、いまのこの話は半期の決算になっていますが、これは大体どのくらいで調査をしておりますか。
  74. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ちょっと計数を手元に持っておりませんですが、大体の記憶で百五十日ぐらいだと思っております。
  75. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの百億の会社ですと、大体延べ日数百五十日。公認会計士がいまの百億の会社を監査するときは、延べ日数何日ぐらいやっていますか。
  76. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 これは業態によりまして監査の難易がございますから、単純に資本金とか資産総額で監査日数がどうなっておるかということもわからないわけであります。大体平均して、一カ月から四十日程度の日数をかけておると思います。
  77. 堀昌雄

    ○堀委員 四十日かけるということは、これは一人の公認会計士が四十日ですか。おそらく百億の会社は、監査をするのに公認会計士一人ということはないと思います。いま私は税の調査との関連で伺っておるのですが、公認会計士としての延べ日数は一体どのくらいになりますか。延べ人員でもよろしいです。
  78. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いま申し上げましたのは延べ日数でございます。したがいまして、大体平均二人くらいが従事いたしておりますので、純日数はその半分くらいになろうかと思います。
  79. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの問題でわかりますように、公認会計士がある会社の監査をするときに、税の調査ならば少なくとも百五十日を要するものが、四十日でしか行なわれていない。これはやはり十分な調査が行なわれていないという一つのあらわれではないかと思うのです。では、なぜ四十日になるかというと、これは私はいまの報酬の問題に関連があるのだと思います。さっきのお話を聞いてみますと、総資産でいきまして、一億のところは十万円払う、五百億以上のところは四十万円以上だ、こうなっておるわけですね。すでに一億と五百億では異常な相違があるわけですよ。一対五百でしょう。それにもかかわらず会計士の報酬は一対四にしかならないですね。そんなことで、常識論として正確な監査ができると思いますか。一億のところで十万円もらって監査をする、それが適正だということになるならば、一億と五百億は一対五百ではなくて、もっと複雑になると思うのです。要するに支店店舗その他が複雑になっておるわけですから、業態自体としては非常に複雑になっておることは間違いがない。しかしそれを除外して考えても、一対五百と一対四というのは著しくバランスを失しておると思うのです。ただ算術計算をするならば、一億で十万円なら、五百億では五千万円の監査報酬を払っていいという計算にはなるわけですね。こういうような状態で公認会計士制度というものは、いま理財局長は抽象的に何かメリットがあるようなことを言っておられるけれども、メリットがあると思いますか。やってないのじゃないですか。五百億のところを四十日でやっているということは、ほんとうの監査がやられていないというふうに私は理解をするのですが、この点はどうですか。
  80. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 先ほどは公認会計士制度ができてから以後と前との比較で御質問がございましたので、前の計理士の監査でやった時代よりはおそらく非常によくなっておるということを申し上げたわけでございます。と申しまして、いまの公認会計士の監査が非常に完全であるとは私どもも必ずしも考えておりません。なおいろいろくふうをこらしてより完全を期すべきものだと考えております。  なお、一億の会社と五百億の会社との報酬の比例の問題でございますが、お話しのように大きな会社になりますと支店その他で非常に複雑多岐にわたる点もございますが、一億といえども一つ会社形態をとっておりますれば、やはりいろいろな勘定項目その他があるはずでございまして、それが五百億になったから直ちに五百倍になるという性質のものでもないかと考えます。ただその辺の報酬の問題については、実はいろいろ問題がございます。公認会計士協会と、経済界と申しますか財界と申しますか、そういうところといろいろ交渉をいたして決定をいたしておるわけでございます。したがって、この絶対額につきましては、公認会計士協会のもっと上げてほしいという要望、特に最近は物価の値上がりその他人件費の値上がり等ございますので、要望がございまして、交渉をいたしておる金額でございます。ただいまのこのバランスの問題は、やはり公認会計士自体も専門家として一応納得しておる比例の数字かと考えております。
  81. 堀昌雄

    ○堀委員 私が伺っておるのは、要するにこの報酬が多いとか少ないとかいう問題の前に、人間ですから報酬がなければ働けないわけです。こういう低い報酬に抑えられているということは、もし公認会計士が十分な監査をしたくてもできないという客観的な条件をここにつくられているわけでしょう。ちょっとお伺いをいたしますが、日本で世銀借款を受けております主要会社は何社ありますか、お答え願います。
  82. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ちょっといま的確な数字を承知いたしておりませんが、鉄鋼会社その他相当数の会社があると思います。
  83. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでお伺いをしたいのは、私も鉄鋼各社が世銀借款というようなために無額面株の発行をしたり、非常に困難の中でも増資をしなければならぬという状態になっておることを承知をしております。世銀借款を受けておるところは、日本の公認会計士の監査では世銀は承知をしていないはずです。これはアメリカの公認会計士が来て監査報告をしておりますが、アメリカの公認会計士に払われておる報酬は、どこでもけっこうですが、鉄鋼各社を例にとっても幾ら払われているか、ひとつお答えを願います。
  84. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 大体アメリカの公認会計士の監査は、相当のパートナーの組織を持っておりまして、したがいまして大規模な監査をやっております。たとえばたなおろしにつきましても、実地についてたなおろしをやるとか、そういうことをいたしております。したがいまして、監査報酬も相当高くなっております。聞くところによりますと一社一億以上というような監査報酬を払っておるというところも相当あるやに聞いております。それからアメリカの公認会計士につきましては、これは参考でございますが、一時間あたり十ドルから二十ドルの報酬を取っておるようでございます。それから先ほど堀委員から御指摘がありましたように、日本の公認会計士の監査で監査日数がはたして妥当であるかどうか、こういう問題があろうかと思います。われわれのほうとしましても、現在の監査の状況から見て、はたして公認会計士の監査として現在の日数が十分であるかどうか、こういう点につきましても検討をいたしております。さらに正確な監査が要望されるということにつきましても、われわれは調査いたしておるところでございます。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのアメリカの公認会計士の監査報告のあり方についてちょっと触れられましたので、もう少し具体的にお伺いをいたします。大体一社一億円の監査報酬を払っておる。なるほど単価が高いこともわかります。一時間もし十ドルとすれば、一日八時間働けば八十ドル、一日の報酬が約三万円。そこでもし一人と計算をして三万円の報酬で、日本に四十日おれば、いまの十ドルで見て百二十万円ですね。ところが片一方は一億ですよ。いいですか。片一方はいまあなたは大規模なシステムをもって、たなおろしから何までみんな見る。公認会計士の制度というのは一体どこで出てきた制度でしょうか。
  86. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 最初はイギリスでできまして、それからアメリカにきまして、アメリカで発達をいたしまして、戦後日本に入った制度であります。
  87. 堀昌雄

    ○堀委員 日本が公認会計士制度を導入したのは一体どこを模範として入れたのですか。
  88. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 試験制度はイギリスの制度を採用いたしておりますが、制度全体から見ますと、戦後の占領下におきましてこの制度ができたわけでありまして、アメリカ影響を受けてこの制度ができたと言って差しつかえないと思います。
  89. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは試験制度はイギリスだということでございますから、一体イギリスにおける公認会計士の報酬の実情はどういうふうになっているか、御承知ですか。
  90. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 ちょっと調べたのがございませんので、いずれ調べましてから御報告いたします。
  91. 堀昌雄

    ○堀委員 イギリスで初めてできてそこから入ってきた制度でありますから、イギリスの問題も伺いたいのでありますが、日本の場合にはイギリスの公認会計士が来て監査しているという例が少ないのではないかと思います。あるいはあるかないか私はよくわかりませんが、しかし少なくともアメリカから公認会計士が来て日本会社を監査している。そしてそれが大規模にやっているというお話なのですが、いまの一億円くらい払っているというところも、何十人もアメリカから連れてきているとは思わない。おそらく日本の人たちを使って監査が行なわれていると思いますが、具体的には大体何名の公認会計士が向こうから来て、あと助手その他を何人向こうから連れてきているのか。そして日本の助手その他をどういうかっこうで使っているか。また延べ日数についてはどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。
  92. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 具体的な例につきましては、いずれ資料を整えまして御報告申し上げますが、いま御指摘のように、補助者といたしまして大部分は日本の公認会計士が従事しているというのが実態のようであります。ただ責任者は向こうから。パートナーが数人まいりまして、そのもとで補助者は日本の公認会計士が当たるという実態であります。
  93. 堀昌雄

    ○堀委員 延べ日数は大体どのくらいですか。
  94. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 数カ月にわたってやっているという話を聞いておりますが、正確に調べまして御報告申し上げます。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 向こうは数カ月にわたって、日本の公認会計士を相当多数使って、一億円で日本会社の監査をやっている。日本のほうは、何人でやるか別として、一番多いところで四十日くらいで四十万円余り払ってやっている。公認会計士の制度というものがアメリカで信用されているのは、いまのそのようなたなおろしから何から含めて、国税庁の調査よりもさらに上回るような調査を向こうはしているからです。何のためにそんな厳重な監査をしているのですか。
  96. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいま一億も払っている会社があるというお答えを申し上げましたが、これは世銀借款を受けます際に、初めてアメリカ側が日本会社にぶつかりまして、非常に詳しく調べる場合の話でございます。日本の場合の報酬を申し上げましたのは毎決算期のときの金額を申し上げたわけであります。やはり日本人が日本会社を見る点で慣れという問題もあり、片一方は初めてぶつかって検査をするという点の違いもあろうかと思います。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると二回目からは一体幾ら払っているのですか。
  98. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 正確な数字を持っておりませんが、ただいまの話では半分以下の金額だそうでございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 半分としても五千万円ですよ。五千万円と四十万円ですよ。会社の規模も同じですよ。私が聞いているのは、何のために一億の金をかけ、五千万の金をかけて監査をしておるのかということを伺っているのです。それだけの金をとって監査をする以上は、理由があるでしょう。それは一体何のためですか。
  100. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 世銀が金を貸すにつきまして、自分たちで納得のできる程度の監査をするという趣旨だと思います。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 私は何も世銀の問題に限らず、アメリカの公認会計士の制度は、監査をすることについては、それは世銀から頼まれようとどこから頼まれようと、ある一つのルールに基づいてやっていると思うのです。世銀だけやるときは高くとって、一般の監査については安くするというようなことではなくて、これは公認会計士の制度があって、公認会計士が監査報告を出した以上、それについての責任の所在を明らかにするためには、これだけの費用をもってこれだけの仕事をしなければ自分たちの責任を明らかにすることはできません、このことが裏づけになっておるんじゃないですか。そのことは、いうなれば投資家に対する公認会計士の責任の所在を明らかにするためで、その仕事についての報酬は当然必要なものだけはもらいます、それを払わないのなら監査はできません。これは会社に対しての問題ではなくて、投資家のためにこういう制度がある以上、少なくともそこに対する責任の明確化を具体的にあらわした問題だと理解をするのが正当ではないかと思いますけれども、その点はどうですか。
  102. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話の点はそのとおりだと考えます。アメリカにおきましては、公認会計士という制度が長い間かかって非常に発達したと申しますか、権威のあるものになりました。そういう意味で日本の公認会計士もまだ発足口浅いわけでありますが、だんだん権威のあるりっぱなものにしていきたいと考えております。まあいまの公認会計士の報酬等の問題につきましては、一般的に申しまして、私どもも外債の問題等でぶつかるのでありますが、アメリカの弁護士の費用が日本考えるよりとてつもなく高くかかるわけであります。そういう意味で、アメリカで発達し、権威があると認められております公認会計士の報酬が今日よりもかなり高いものであるのではないかと考えております。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 かなりとかいうことでなく、比較にならないのですよ。いまの場合は四十万円と五千万円ですからね。だから私がここで申し上げたいことは、現在の公認会計士制度は、何か試験制度はイギリスの制度を持ってきて、全体の制度のあり方としてはアメリカ考え方に基づいてやっておる。そこらに少し矛盾があるのではないかという感じが矛盾にいたします。ということは、これから少し試験の問題を含めてお伺いをいたしますが、私が昨年ここで取り上げました日本不動産の問題について、公認会計士の監査の状態はどうなっておりますかということでお尋ねいたしましたら、さっそくに監査報告等を調べて返事をするということでございました。一年たって、この間伺いましたら、会計寸を変えて調査をしております、まだ結論が出ておりませんということですね。この間そういう答弁でございました。日本不動産がどれだけの会社か、私もそんなにつまびらかにいたしませんけれども、何人の会計士がどういうことをしておるのか知りませんが、その監査報告が一年たってもはっきり出ないような制度というのは、制度の側に欠陥があるのか、公認会計士そのものに欠陥があるのか、あるいはその公認会計士がそれだけ動けるような報酬が支払われておらないために行なわれないのか、一体どこにそういう問題点があるのかということをお伺いをしたい。このことは、この間も高森産業のような事件が起きて、監査報告のついている会社が御承知のようなかっこうになって倒産をいたしました。いま株価は十何円かになっております。こういうような状態で、公認会計士の監査報告が証取法できめられておって、試験が厳密だから何か会計士の権威は高いかのようになっておりますが、実態は監査してあった会社のその監査事態が一体正当なものであったか、われわれとしては疑問なような監査が実は行なわれている事実がある。そうすると、いまの日本不動産の問題についてはどこに問題があるんですか。一年間もその後あれが出ていないのですが。
  104. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 日本不動産の場合は、いうならば、書類が非常に不備でありまして、収益がいつの時期に発生したかという収益の帰属の問題が明確にならないわけであります。したがいまして目下その点につきまして鋭意調査を続行しております。  それから高森産業の場合は、決算期が七月だったと思いますが、高森産業の運営自体が悪くなりましたのが八月以降だったと思います。その点はなお調査を要するかと思いますが、しかも増資の時期が十二月でございまして、その増資の届け書の監査報告書が、半年決算の場合におきましては、その前の事業年度の監査報告書をつけることになっておるわけであります。したがいまして、前の事業年度終了後に経営が悪化した場合には監査報告書が反映されないというところに問題がある。その点につきましては一つのあらがあるわけであります。これをどういうふうに改正するかという点について目下検討いたしております。日本不動産の場合は、非常におくれて申しわけないと思いますが、そういう事情でありますので、もうしばらく御猶予を願いたいと思います。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 書類の不備ということは、監査をした、後における不備ですか。監査したんでしょう。ところが監査がされておって、その後のことは別ですよ、最終の監査報告が出て、それに基づいて上場されたわけですから。私が議論しているのは、最終監査報告の時点で、この以後のことはむずかしいでしょうが、その時点で書類が不備であったということは、監査自体がきわめてずさんなものであったということにならなければならぬでしょう。どうですか。
  106. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いわゆる表面上の決算と実際の決算との間に食い違いが相当あったことは明らかであります。その間の収益の帰属は資料がなくて明確にならないという点が現在問題として残っておるわけであります。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、監査報告というのは表面上の問題と裏面の問題と二つ問題があるということをいま伺いましたが、どちらを基準にして監査をしたんですか。
  108. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いわゆる当該会社の財務諸表が当該会社経営内容を真正に表示しているかどうかということを監査するわけでございます。したがいまして表面とか裏面ということではなく、全体が監査の対象になるわけでございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのあなたの答弁では、表面上の書類と裏面の書類とが結びつかないという場合ですね。表面と墨画と二本立てということは、率直に占えば、二重帳簿ということですね。二重帳簿があるということは、高森産業の場合もそうであった。その後の経過を見ると、よくわかります。  国税庁にお伺いいたしますが、あなた方のほうでいろいろ税の調査をしておって、いまの二重帳簿の問題が一番大きな問題点だと思うのですが、一体どの程度二重帳簿というものを把握しておりますか。  一般論で恐縮ですが、調査に行きますと、向こうは税のあれと同時に、一応一億以上の会社ならば、そういう監査報告はちゃんと出ておるわけですが、その範囲で私は大体終わらないのではないか。それからいまのお話のように、裏へ入ってみると、事実が違っている。違っているから、今度表に出たのを直させる、否認をする、こういう経緯に実際徴税上の問題としてなるのではないか。そうすると、いまの表面上の帳簿で処理がされるまで、要するに出された青色申告なら青色申告による税に対する諸表は、本来ならばそれと会社の決算報告書は一応一致しておらなければなりません。一致したものが出されるのがあたりまえです。皆さんが調査をする法人の、小さいところは複雑ですから別として、一億でも十億でもいいが、それだけでよろしいというのは何%くらいですか。
  110. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 大体調査課主管の五千万円以上の法人で調査いたしまして、全然非違がないというのが二〇%程度で、あとは、小さな非違まであるのをまぜますと、八〇%ぐらいは更正決定をしているということになっております。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 小さいのをまぜると八〇%——今度は逆にいきまして、かなりこれは問題があるという非違ですね。ごくささいなものはいいですが、一応決算報告を見て、それだけではどうもこの決算報告ではちょっと問題があるということで、決算報告は多少部分的には修正をされなければならぬような、さっきのたなおろし資産の問題その他を含めてですけれども、そういうような状態に立ち至るものは何%くらいありますか。
  112. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 ただいま八〇%と申しましたのは、たなおろし資産の評価の問題であるとか、あるいは経費の期間の配分の問題であるとか、そういったところでの非違、あるいは税法の特典利用の計算の誤りだとか、そういったいまおっしゃったような、若干調査を要するような非違のあるものということで、八〇%ということであります。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 私が伺っているのは、要するに、善意といいますか、税法を思い違いをしておりましたとかなんとかというのは、八〇%から落としてもらっていいと思うのです。率直に言いたいことは、やや意図を持って、要するに、表帳簿と裏帳簿とあると思うのです。その表帳簿と裏帳簿が非常にうまくできておれば、これは国税庁といえども、調査はなかなか困難でしょうけれども、かなりな規模になってきたら、ちゃんと調査をすれば、なかなかそううまいこといくものではないと私は思うのです。だから、その食い違いが出てくる。しかし意図を持って、粉飾決算といいますか、表向きの決算が出されておるのですね。かなりの差のあるものというのは、八〇%という話はそれは多いだろうから、厳密にもうちょっといってみたら、一体どのくらいあるか、こう聞いておるわけです。
  114. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 たとえば重加算税の適用のある法人がどのくらいあるかということになりますと、調査課主管で重加算税の適用のあるものは六・五%でございます。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 重加算税の適用になるというのはかなりの悪質の部分でありますから、その悪質のものとは、それの間は八〇と六ですから、えらい差があるのですが、常識的に私が判断をしても、二〇%やそこらはかなり問題のあるものが私はあるのだろうと思うのです、これは私の推測ですけれどもね。そうすると、しかし、その問題が公認会計士の問題の処理の中でされておるかどうか。監査報告がついたものについてあなた方が調査をして、しかし結果としては、この監査報告だけでは不十分だったという問題は出ておるのじゃないかと思うのです。監査報告というものは、決算に対する監査報告がついた以上、この監査が間違いないものだと公認会計士は一応認めておるわけでしょう。しかし、税法で調べてみたら、それはどうも不十分であったという問題が出ておるのは、かなりあるのじゃないかということを私は、占いたいのです。それは率直にいって、二〇%やそこら程度のものはあるのじゃないかと私は思うのですが、そういう感触で、これはいま突然私は伺っているのですから、正確に答えにくいかもしれませんが、どの程度の感触ですか。
  116. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 われわれのほうで調査にまいります場合には、公認会計士の監査報告ももちろん参考にいたしますが、こちらのほうの調査権限がかなり強い。調査先まで全部調査できる。それから、先ほどのお話のように、日数もかなりかけて調べる。それからまた、公認会計士の監査の場合と違って、こちらは、厳格に期間区分を、課税所得計算をするためにやりますから、あるいはそこでズレが出てくることもございます。必ずしも公認会計士の監査報告と一致するというふうにはあまり——そういうふうな場合も相当あるだろうと思います。ただ、何%くらいそれと離れているかということは、いまここではわかりません。
  117. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、税務署が調査をいたしておりますのは、税金を取るためでありますけれども、その税金を取るための税法によるところのいろいろな会計区分というものと、監査報告で要求しておる会計区分というものは、著しく違っていいということにはならないのじゃないでしょうかね、大体会社の経理でありますからね。それは多少の食い違いがあるかもしれませんが、おおむね妥当なところで一致するというのが原則じゃないでしょうか。どうでしょうか、国税庁。主務局でもいいです。
  118. 喜田村健三

    ○喜田村説明員 大体両方とも真実の所得期間の所得を反映すべきであるという点で、原則として一致すべきであろうとは思います。
  119. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、片方は、国として税金を取るということで責任を持たされておりますから、権限もあるかもしれません。しかし、理財局長に伺いますが、公認会計士は、税務署が行ない得る程度の権限は会計検査についてないのですか。向こうが言っただけの帳簿、それだけ見て、はい、よろしゅうございますということでなくて、疑いがあれば、さっきのアメリカがたなおろしをやるように、どこまででも調べられる権限は公認会計士は与えられていないのですか。
  120. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いわゆる税務職員のような検査権というものはございませんが、監査契約に基づいて監査するわけでございます。たとえば決算書類におきまして売り上げが不当であるという場合におきましては、それについて当然監査上は、いろいろな資料に基づいて、それが正当なものであるかどうかを検討しなければならないということになっております。
  121. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ひとつ売り上げという話が出ましたから、売り上げについて言うならば、公認会計士が監査によって出し得るものも、税務当局が調査によって出し得るものも、同一のものが出ていい、こういうことになりますね。答えてください。
  122. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 売り上げにつきましてはそのとおりでございます。
  123. 堀昌雄

    ○堀委員 売り上げについて同様ならば、これは収入でありますから、おおむね支出についても同様に理解をしていいのじゃないですかね。まあこまかいことは別として、売り上げが同一で支出が違ってきたら、これはさっきのように、真実というのはゆれますからね。どうですか。
  124. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 ただ、税務会計と企業会計におきましては若干の相違がございます。たとえば税務会計上は価格変動準備金というものは損金になっておりますが、本来の企業の会計におきましては——それは扱い上は、損金に落とした場合におきましても、公認会計士は原票をつけないことにはなっておりますが、本来の企業会計におきましては、それは好ましくないということになっております。たとえば減価償却の場合におきましてもそういう点がございます。その点は食い違いはございます。したがいまして、課税所得とそれから財務諸表における純益との間には、絶えず食い違いが出ております。
  125. 堀昌雄

    ○堀委員 それは一つのことですね。要するに、それをどっちに見たかということですからね。その土台になるものは同じでなければいけませんね。間違いありませんね。そうすると、その見方については同じものであるということならば、税務署が見たときに、さっきの次長の答弁のように、重加算税六%については、これはもう明らかに間違っていると思うのですよ。監査報告による決算書とこの内容は間違っていた。要するに、税務署の側が、真実であるかどうかは別として、真実に近いものを立証したから重加算税を取った。真実でないもので重加算税を取れませんからね。要するに、われわれが知りたいこと、大衆や投資家が知りたいことは、その会社の経理が一体真実にどうであるかということを知るために公認会計士の制度があるのですよ。よろしいですか。それが税務署によって真実が明らかにされている、公認会計士のほうの監査によっては真実が明らかにされないというならば——いまの答弁を聞いても、かなり差があるわけですからね。そうなると、一体、公認会計士の制度というものは会社経理の真実を投資家の責任において明らかにするために設けられている制度であるけれども、現実にはそうなっていない、こういうことに私はならざるを得ないと思いますが、どうですか。理財局長、どうです。
  126. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 私、現在、その監査報告書で全然原票がなくてしかも重加算税を取られておるというような具体的な事例を聞いておりませんので、いまここで、そうであるかどうかということにつきましてお答えはできないわけであります。ただ言えますことは、先般われわれのほうで監査日数等につきましていろいろ調査をいたしました。そのときに、現在の大企業に対する国税当局の調査日数と、それから公認会計士の監査日数の間には相当の開きがある。これでは監査というものも十分ではあり得ないからこれを徐々に引き上げていこうじゃないか、こういうように考えております。ただ先生御承知のように、公認会計士は相当能力のある方が公認会計士になっております。そんなに、たとえば二割も重加算税を取られたものが公認会計士では何も原票をつけていないというようなことは、ちょっと私、ここでは考えられないのでございますが、一応調べましてまた御返事をしたいと思うのです。
  127. 堀昌雄

    ○堀委員 そのことは少しこまかいことですからいいですが、私が言いたいことは、あなたはいま、税務署の延べ口数と監査日数は著しく違う。そこで、著しく違うもとは何かと言えば、これは報酬の問題なんですよ、いいですか。片や日本の企業がアメリカに向かっては五千万円の監査報告を出しておるわけですね。そうしていまあなたは、能力のある公認会計士と言われたけれどもアメリカの公認会計士が来て、日本の能力のある公認会計士を何人も使って延べ何カ月にわたって片一方はやるのでしょう。日本の投資家のためには四十日しかやらないというようなことで、これは率直に言って公正な取り扱いだと私は言えないと思うんですよ。なるほどそれはアメリカの報酬の単価と日本の報酬の単価のそれは違うかもしれません。違うかもしれませんけれども、あなたたちが非常にむずかしい試験の制度を置いておいて、ただ試験だけから見るならばまさに選ばれた人たちですよ。しかし、いまの四十万円ぐらいの報酬ということを見ますと、これではたして、選ばれた者が要するに十分な仕事ができるかと言ったら、いまの制度のあり方は、十分な仕事をできないようにしているんじゃないですか。どうなんでしょうか。私は、せっかく公認会計士というものにむずかしい試験をして、要するに能力のある者しか認められないならば、その人たちがほんとうに良心に従って投資家に対して責任を明らかにすることのできる監査をやらせるように政府が考えなければいかぬのじゃないですか。大蔵大臣、この点はどうですか。
  128. 田中角榮

    田中国務大臣 現行制度のままで議論をせられておりますが、いまの公認会計士の制度がまだ日本に採用されてから日が浅い、なじんでおらない。また法律上の問題も、外国でやられておるほど明確な権限を与えられておらない。御承知のように、商法には監査役が監査をするようにいまなっておりますが、アメリカでは監査役は、制度はありますけれども、公認会計士がなる、こういうことになっておりますから、会社内容に対しては、理事者に対して対抗的な立場と権力を持っておりますから、第三者に対しては相当強い信憑性を打ち出せるわけでありますが、日本の法制のたてまえからいいますと、公認会計士という資格法と、それから公認会計士を必要とするというような証取法だけにしかない。ですから、これがアメリカのように公認会計士の監査というものがあらゆる株式会社の公表する決算に対しては絶対的要件であるということの法制が整備されてくれば、アメリカのようにもなるし、またいまのように、四十万円というようなものでやれるものではありません、理事者に対して全く対立した立場になるということになるのであって、だんだん日を追うに従ってまた公認会計士の制度と人員が整備されるということによって、法制上も公認会計士の地位はぐんぐんと重要度を増してくる、こういうふうに考えられるわけです。でありますから、いままだなじみが少ない状態において、すべてのものに対して公認会計士の検査を受けなければならないといった場合、人間が足らないということにもなりますし、制度の発展の過程における現象であります、というふうに理解しております。しかしいまの状態で、いずれにしても証券取引法には公認会計七の監査報告がなければならないというのでありますから、その分だけでももっと実効をあげて、実際上の証取法の規定がそのまま信用せられるようにするにはどうしなければならぬかということを検討してみるべきだというふうに考えます。
  129. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私が前段にこの問題を論じておりますのは、ここには特例試験の問題というようなものが提案をされておりますけれども、当面しておる公認会計士の問題というのは、こんなことは率直に言ってさまつな問題ですよ。一番大事なことは何かというと、一体何のために証取法で、上場会社については公認会計士によって監査報告をつけなければならぬかということをきめておるかというところに立ち返って考えてもらわなければならぬと思うのですよ。いま大臣は証取法にしか規定がないからということを言われましたけれども、証取法に規定があることは重大なことなんですよ。いいですか、いま一般の投資家というものが上場してない会社の株を持つということは、率直に言って例外ですよ。その人たちがそういう上場されていない会社の株を持つことについては、これは証取法も何ら保護を規定していないわけですから、法律にそのことを明記したということは、少なくとも現在日本の投資家がその会社の株を持つにあたっては心配がないということを、法律の定めによってここに確認をしておるわけですからね。これはもうそれだけで私はまず第一段として十分だと思う。投資家に対して保護をするということが証取法の第一条にある、これが大きな眼目なんですから、その眼目を満たすために行なわれているいまの制度がいまのようなかっこうであったのでは、せっかくの制度というものが生きていないと私は判断をしておるわけです。だから制度制度として動かす、これが行政の目的でしょう。だから制度をつくったという中で、制度が目的に合うように運用されるようにするためにもし必要あるならば、政府は法律の改正をする責任があるはずだ。あなたはいまこれからぼつぼつというようなことを言っておられますけれども、そうではなくて、今日すでに公認会計士法ができて何年になりますか。五年や十年じゃないでしょう。
  130. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 昭和二十三年七月に公認会計士制度はできております。いま御指摘がありましたように、アメリカ制度ができましてからすでに七十年程度たっております。そこで日本の場合に一番おくれておりますことは、公認会計士の事務所の形態が、全部が個人形態でございます。アメリカの場合はパートナーの仕組みをとっております。したがいまして非常に大きなパートナーがございまして、その事務所が大ぜいの人員をかかえて監査に従事をいたしております。したがいまして、企業に対しましても相当の独立性を持っておる。まあパートナーになりますから相当の力を持ってまいりまして、企業と対等に監査契約その他につきましても交渉ができるというようなこともあるわけです。日本の場合は個人経営が大部分でございまして、どうしても企業に対する力が弱いというような問題点も現在あるわけです。したがいまして、今後いわゆる公認会計士の事務所の形態を。パートナーの方向に持っていくのか、さらにもっと日本的ないろいろな形態というものが考えられないのか、こういう点につきましても目下検討をいたしておるところでございます。
  131. 堀昌雄

    ○堀委員 検討をいたしておるということですが、それじゃどの方向に向かって検討をするのですか。
  132. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いわゆる個人経営形態というものではなくて、言うならば数十人、数百人の公認会計士が一つ事務所を持って、そこで一つの意思によって監査に当たる、こういうような形態を目ざして検討いたしております。
  133. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣にお伺いいたしますが、公認会計士が企業に従属をしたのでは公認会計士の制度は意味ないのですよ。こんなむずかしい試験なんかやらなくていいのです。計理士でいいのです。公認会計士の制度を置いたということは、少なくともある一つの権威を確立して、企業と対等に処理ができるということを目的としておるわけですからね。そうするといまのようにパートナーシップでも何でもいいです。私は何も一人一人個人であったら企業に従属すると思わないのです、率直に言ったら。そこには何か欠けているものが率直に言ったらあると私は思うのです。しかしパートナーシップになったほうがよりいいでしょう。そのことについて今後そういう方向で検討を進めてもらいたいと思いますけれども、まず、そういうことについて、めどを持ってやっていますか。一体いつまでにそういう制度にして——大体私はこの間からいろいろな問題についてあるべき姿はどうかということで政府側に大いに前向きにやってもらいたいと思っているのですが、それは理財局長、あなたが責任者だから、どのくらいのめどでどういう形で処理をするという具体的な処理がされておるのか。何となくやりたいというふうに思っておるのか。そこらをひとつ具体的に答えていただきたい。
  134. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 いまのアメリカ式のパートナーシップの問題、日本個人的ないまの現状の問題等につきましては、やはりアメリカはその七十年の歴史の中に次第にそういう形がつくられてまいったわけであります。いきなり日本にそれをやれと申しましてもなかなかいろいろな事情があるようでございます。したがいまして、いろいろ検討はいたしておりますが、いつまでにはっきりその方向へ向くというようなところまで検討はまだ進んでおりません。また、いまのお話のように、公認会計士の監査が会社に従属をいたしまするならば、せっかく投資者保護のために公開制度と申しますか、ディスクロージャー制度をとりました意味のないことはお説のとおりでございます。したがいまして、公認会計士の独立性と申しますか、企業と対等でいろいろな交渉をするということは非常に大事なことだとわれわれも考えております。したがいまして、いろいろ公認会計士協会自体をもっと強化をいたしまして、公認会計士協会と財界ともっと対等の、たとえばいまの報酬の問題等につきましても交渉するとか、いろいろな方法があろうと思いますが、そういういろいろな方法もあわせて検討いたしておるわけであります。
  135. 堀昌雄

    ○堀委員 まことに不満足な状態でございます。  そこで、私はひとつここではっきりしておきたいのは、私はここまで本日議論をいたしました以上は、少なくとも現在の監査報告というものと税当局における各種の調査とはどういう関係になっておるかということを、今後の決算期において少し明らかにしてもらいたい。上場会社なら上場会社について一応皆さんのほうで監査報告は出された。当然国税庁は監査報告を見ているわけですからね。その監査報告とあなた方が調査したものとの間に差のあったものについて、報告をひとつ当委員会に出してもらいたい。要するにその程度にするならば、監査報告は真実の問題なんだから、要するにさっき言った準備金がどっちへ入った、損金がどうだというようなことは、これはあとで見ればわかること、そんなことを私は聞いているわけじゃない。会社の経理の実体というものは、監査報告が出した実体とあなたがたが調査した実体と、真実は一つしかないのだから、その差が一体どの程度あるかということが明らかになったときに、日本の監査報告というものの権威のあり方というものは、国税庁のほうを信頼するならばそちらのほうに真実が近い形であるに違いない。それが真実であるかどうかは別としても、近い形があるに違いないから、それから差があるだけは監査報告が不十分であったということになると私は思う。そういう形で監査報告というものを一ぺん点検をしてみて、その結果不十分ならばもっと十分にやらせるような強力な指導を政府は公認会計士にとるべきだ。それができないならば、そういう公認会計士は私はおやめいただかなければしかたがない。そうやってきちんとしたものによってやっていけば、公認会計士も自分たちの職責を守るためにはこれだけの報酬をください、これだけの日数の調査をやらせなさい、それでなければわれわれは監査報告を出しませんということになれば、会社は商取法によって監査をやらなければならぬということをきめられておるから、これは企業の側としても、ひとつ十分監査してください、費用も出しましょう、こういうことに私は問題が発展してくるのではないかと思います。いまのままで、ぬるま湯につかったようなままでこうやってやっておいて、一方ではきびしい三次試験をやってみたところで、私は公認会計士というものは非常に気の毒だと思う。ずいぶん苦労してなってみたところで、さっきのお話のような報酬の程度であったら、実際これらの人が一生懸命やったのに対して値しておるかどうか私は問題があると思う。報酬自体の単価にも問題があるし、この人たちの能力を使わせないという制度にも問題があるわけですから、この人たちが良心に従って仕事ができるような道を私はやはり政府の責任において開いてやるべきだ、どう考えますが、いまの私の提案について、大臣、いかがでしょう。
  136. 田中角榮

    田中国務大臣 公認会計士の監査と国税庁の監査を比べるということは、これは大蔵省の内部ではできることでございますが、税の問題は公表できないということでございますので、これを数字をもってこの会社がこういう実情でございましたという公表はできないわけでございます。しかし公認会計士の制度拡充しなければならぬというのはあなたの御説のとおりでございます。四十万円程度で一体めんどうな試験をやる、こう言いますが、現在は四十万円程度でございますが、将来はアメリカのように公認会計士というもののウエートが非常に大きくならなければならないのだ、こういうことを前提にいたしておりますから、試験もやらなければならないということになるわけであります。しかも報酬は、四十万円というよりも、これからもっと大きなものにならなければならないわけであります。例を言うと、東京電力とか八幡とか、三百万や五百万でもって一体監査ができるわけがないのでありますから、そういうところになぜそのままにしておるのか、こういいますと、やはり公認会計士の制度そのものが日なお浅く、なじみも少ないし、同時に法律で要求するほど完ぺきな体制が整っておらないということであります。おらなかったら一体いつやるのか、年次計画をつくるのか、こういうことでございますが、まあ年次計画でもつくって、どの状態になったらやれるのかということを当然つくるべきだと思います。  それから千九百名くらい公認会計士がおる、こう考えて、上場会社が千七百社もある、こういうことになりますと、いまの日本の資本金だけでも三兆八千億、時価にして七兆四千億もある上場株であります。この内容を商取法が命ずるままに、ほんとう国民大衆に一切の責任を持ち得るほど公認会計士制度が発達しており内容充実しておるかというところに問題があるわけであります。でありますから、私は将来の理想的な像としては、あなたが先ほど御指摘になったように、やはりアメリカのように第三者に対しては、投資家に対しては公認会計士の報告というものは絶対である。そのかわり公認会計士も相当な報酬を得なければならぬし、同時に、責任も法律上の責任を当然負うようになるわけであります。でありますから、そういうところまでこなければならないのですが、いますぐそういうところまでいけないので、できるだけ体制整備をやってまいります、こういうことでございます。  御発言がございましたから、日本の企業がこれからどれくらいふえるのか、公認会計士が法律の規定に基づいて絶対的に責任を負える体制には一体いつごろなるのかという問題は、大蔵省として早急に検討いたします。
  137. 堀昌雄

    ○堀委員 大体そういう方向でけっこうですが、前段は、私は何もある一つの特定の会社内容についてそれを公表しなさいと言っておるわけではありません。しかし、少なくともその千七百の上場会社について国税庁が税の調査をするときは、必ず決算報告が出たあとなんです。決算報告も出てないのに税金を取るわけにはいかないのですから。その決算報告には上場会社は監査報告がついておるわけですから、その監査報告に、ここについて問題があるというようなことがついておるのもありましょう。問題があるというようなことがついている。それといまの国税庁の調査によって出た真実との間がおおむね一致しておるものについては私は言うわけではありませんが、率直に言って、それがそういう形で確認されたことがないと思うのです。だから一ぺんその点を——いまは国税庁のほうはともかく自分たちの税金を取るだけのことをやっているだけであって、それが監査報告とどうなっているかということについては、別に意を用いて税の調査はしてないと思うから、これからは、やることは同じことだから、ひとつ公認会計士のやった監査報告というものと、あなた方がやった真実を追及した会社の経理というものが、どういう関係になっておったかということを、あわせて調査をしてもらいたいということなんです。そうして調査をした結果、監査報告の欠点というものはどういうところにあるのだということが大蔵省自体として把握をされてくるならば、そういう監査報告はこれからこうしなければいかぬじゃないかということで、それを受けて理財局は公認会計士を指導しなければならぬと思うのです。それだけの有機的な機能を働かして公認会計士の制度というものの存在をひとつ価値あるごとくにしていただきたい、こういう要望なんであって、私は何もこまかいことをここで委員会に報告しなさいということではありませんから、ひとつ次の決算期がくるものから国税庁もその方針で見てもらいたいし、理財局もあわせてその問題について国税庁と協力をして、監査報告のあり方というものを、いまの徴税の調査の中から出た真実との関係において、これで十分なのかどうかという点について調査を進めて、そうしてそれによるところの報告をここへ出してもらいたい、こういうことですが、大臣それならできるでしょう。
  138. 田中角榮

    田中国務大臣 報告書というようなものにして出せるかどうかわかりませんが、大蔵省の内部としては、理財局と国税庁が協定をして、絶対にこれを漏らさないということで調査をすれば、比較はできると思いますし、大体出る結論はもうあなたも御存じだと思いますし、私も大体は想定できるのであります。でありますから、これから公認会計士というものをどう拡充していくかという具体的な問題もあわせて検討していきたいというふうに考えます。これはもう公認会計士がすべて責任を持ってアメリカのようにやるということになれば、数が少ないということでもって、どうにもならないわけであります。いままでのように、四十万円程度でやろうということでありますから、人数がふえちゃ困るというような場合もありますが、これを徹底的に、七兆四千億の上場株式の会社を全部責任あるようにやるということになったら、これはもういまの時限ではどうにもならない。そうするとやはり補助員というものが必要になってくる。しかし、補助というものは、資格のない者を補助員に使うわけには参りません。これは会社の機密に関するものでありますから……。これに対して一体どういう制度上の資格を与えるかという問題も出てくるのでありますから、先ほども申されたとおり、もう十五年も十六年もたっているわけですから、そういう問題に対して真に証取法が要求するような実をあげるためにどうあるべきかという問題に対しては、真剣に検討いたします。
  139. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでわれわれとしては、報告をしてもらいたいということが一点ですが、やれば、どういうまずい点があったかということと同時に、それを担当した公認会計士もあなた方のほうでわかるわけですよ。そうしたら、その人にあなた方のほうへ来ていただいて、あなた方のやった問題については、こういう点は不十分でありました、次の決算のときにはこういうことのないようにしてもらいたいと注意をしてもいいと私は思うのです。その程度の監督権というものは大蔵省にあるでしょう。どうですか。
  140. 田中角榮

    田中国務大臣 ただいまの御発言に対して、仮装それから隠蔽等がある会社がございます。そういうものに対しては重加算税が課されるわけでございますから、こういうケースのものにつきましては、監査報告と比較は簡単にできるわけでございますので、そういうものはやってみたいと思います。
  141. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、私に言わせれば、公認会計士の一種の考課表といいますか、実際にたくさんの人が、試験を通ったらあとは何もないのですよ。著しく不当なことが行なわれれば別です。この前の高野時計におけるがごときことが起これば、これは別です。こういう非常にはっきりしてきた問題は別ですが、しかし、大なり小なり問題があるのではないかと私は思うのです。何もそのことによって私はいま公認会計士を責めようとは思っておりません。問題は二つありますよ。ということは、そういう問題が起こった場合、本人に能力がない場合もありますね。実際には公認会計士試験を通ったからといって、すべての公認会計士が非常に高い能力があるとは判断できないと思うから、能力がない場合もあります。これはしかたがない問題です。しかし、多少情を知っておっても、いまのような事情のために、ある程度知らなかったようなかっこうでやっている場合もあるかもしれません。もう一つは、費用や日数が足らないために、調査をしたくてもできなかったという場合もあるかもしれません。これらの問題は一応分析をしてみる必要があります。そうして明らかに一生懸命やっておるけれども、費用が足りなくて調査が不十分であったというならば、調査をできるような方向に、これはやはりあなた方のほうも指導しなければいかぬ。そこまで来なければ、いま大臣が言われるように、アメリカのような状態にしたいといっても、ほうっておいたらならないですよ。いまは力関係が完全に違うのだから……。だから、その力関係を、多少でも公認会計士のうしろを押して、少なくともあるべき監査報告をやらせるようにするためには、政府は政府なりの行政指導というものを行なわない限り、ほうっておいてはいまから何十年たってもなりませんよ。だから、それにはひとつ政府のそういうはっきりしたかまえを明らかにして、少なくとも、いまの国税庁の協力のもとに、監査報告の実態を調べて、そうしてその点が、いまの公認会計士に能力がないというならこれはしかたがないですよ、あるいは公認会計士が情を知っておって理外なことをしておるというならこれもしかたがない。けれども、まじめにやっておるけれども、不十分な点があるというならば、それはそれとして、いまの情を知ってやっておるというならば、それなりにおのおのの段階に応じて何らかの措置はあって当然しかるべきだと思うのです。そういう点について、私は少なくとも、せっかくこの制度日本に導入されて、そして制度として今後——ことに証券の問題については、私は今度日をあらためて証券問題を一日やらしていただきますけれども、この問題の背景になっておるものは、やはり大衆が現在の投資というものに対して不安感を持っておるということが非常に大きな問題ですから、そういう不安感を除去する点からいっても、この問題は、単に公認会計士だけの問題ではないのです。日本の資本市場をどうするかという非常に大きな問題につながっておるというきわめて構造的な基本問題につながるわけですから、本日は初めてこの公認会計士制度の基本的な問題について論議いたしましたけれども、その点は十分ひとつ真剣に責任を持って対処していただきたいのです。いかがですか。
  142. 田中角榮

    田中国務大臣 公認会計士制度は必要である、これを拡充していかなければならないという基本的な考えに立っております。公認会計士がしかし現実に即応して、膨大化しつつある企業の内容を監査をして、第三者に対して責任を負えるような体制にするために、公認会計士の報酬はどうするか、公認会計士そのものをどうするか、また補助員制度をとるとしたならばそれを一体どうするか、これは法制上の問題もございますし、行政指導もありますし、いずれにしましても、監査役というような内々の者でもって、第三者が信用しないという制度にかわって、公認会計士制度を採用したわけでありますから、これが充実のために格段の努力をいたしたい、こう思います。
  143. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、少し試験の制度の問題についてお伺いをいたします。  現在公認会計士の試験は一次試験、二次試験、三次試験、こういうふうなかっこうになっておりますね。そこで最近の例でもいいですから、一次試験、二次試験、三次試験の、どこかの年度を限って、受験者及び合格者、要するに第一次試験から受けて——これは滞溜しておる人が次々に受けることですから、一次試験が何人で、そのうちの何人がどうでこうでということはわからぬかもしれませんが、ある一年度を限って、その年の一次試験の合格者、二次試験の合格者、三次試験の合格者ということについてお答え願いたい。
  144. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 では申し上げます。  三十八年度でございますが、第一次試験の受験者数が四百五十一名、合格者が七十六名、合格率二八・九%、第二次試験、同じく三十八年度、受験者二千二百七十七名、合格者百三十一各、合格率五・八%、第三次試験、三十八年度の第一回が、受験者数五百九十九名、合格者五十二名、八・七%、第二回受験者数六百五十一名、合格者数四十三名、合格率六・六%、以上でございます。
  145. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと伺いをいたしますが、一次試験を受けられる資格者というのはどういうことになっておりますか。
  146. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 第一次試験は、公認会計士法第六条「第一次試験は、第二次試験を受けるのに相当な一般的学力を有するかどうかを判定することをもってその目的とし」ておりまして、国語、数学及び論文について、これを行ないますが、受験資格は別にございません。
  147. 堀昌雄

    ○堀委員 ですから、一次試験というものは全然条件がついていないから、学歴のいかんを問わず、どういう人でも一次試験は受けられる、こういうことになりますね。
  148. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 そのとおりでございます。
  149. 堀昌雄

    ○堀委員 公認会計士制度が実施をされて昭和三十八年まで一次試験の合格者は何名ありますか。
  150. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 昭和三十八年度まで合計九百七十九名でございます。
  151. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、二次試験を受ける資格のある者。
  152. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 第二次試験は一次試験の合格者及び公認会計士法によって一次試験を免除された者、こういう者が受験できることになっております。
  153. 堀昌雄

    ○堀委員 免除された者というのについてちょっと言ってください。
  154. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 新制大学を卒業した学力以上を持っておる者、新制大学を卒業した者でございます。
  155. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると現在は新制大学の——これは大学だけでいいですか。学部、学科は関係ないのですね。新制大学を卒業した者は全部二次試験を受ける資格がある、それ以外は全部一次試験を受けなければ二次試験を受ける資格がない、こういうことに理解をしてよろしいですか。
  156. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 そのとおりでございます。
  157. 堀昌雄

    ○堀委員 二次試験を受験した者は、この制度発足以来最近まで何名ですか。
  158. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 三十八年度までに三万一千三百七十七名でございます。
  159. 堀昌雄

    ○堀委員 その受験者の中で合格をした者が何名ですか。
  160. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 二千四百四十名でございます。
  161. 堀昌雄

    ○堀委員 比率を。
  162. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 七・八%。一次試験は合格率が全体で一四・四%でございます。
  163. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、いまの問題で明らかになりましたように、新制大学を卒業した者は、すべて公認会計士の二次試験が受けられるというように門戸が開放されておるが、三万一千三百七十七人試験を受けて二千四百四十人、その率はわずか七・八%しか二次試験に通っていない。  二次試験を通った人は何らかの資格がありますか。
  164. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 二次試験を合格いたしまして三年間のインターンをやりますと、三次試験を受ける資格を取得できます。
  165. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで二千四百四十人はすべてインターンをやったでしょうか。どうなっていますか。
  166. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 合格者のうちインターンをやっていない者が大体一割程度ございます。
  167. 堀昌雄

    ○堀委員 一割程度がやっていないということですから、二千人ぐらいは実はインターンをやっているのですね。  そこで今度は三次試験でありますが、三次試験について、これまでの受験者総数と合格者総数、それから比率、お答えを願いたい。
  168. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 受験者数は一万四百二十二名、合格者千百八十九名、合格率が二・四%。  なお、このうちで二次試験合格者以外の検定合格者がございますので、それを区別して申し上げますと、二次試験合格者は受験者総数三千八百五十八名、合格者九百三十九名、合格率二四・三%ということになります。
  169. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとどうもよくわからないのですが、さっき私が伺いましたら、二次試験を通った者が二千四百四十名、こういうふうにお答えになっているのですが、いいですね。ところがいま三次試験を受けた中で二次試験を受けた者が三千八百五十八名になったということはどういうことでありますか。
  170. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 三十六年度から三次試験が年に二回行なわれております。三十六年、三十七年、三十八年と一年に二回行なわれておりますので、延べ人員にしますとそういうことになります。
  171. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとこの一万四百二十二人の中で三千八百五十八名というのが二次試験を通った人。そうすると二次試験を通らないで受けた者があるわけですね。これは一体どうなっていますか。
  172. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 検定試験というのが昭和二十九年から六回行なわれております。その検定合格者が六千百六名、それから検定免除者というのがございます。検定免除者で試験を受けましたのが四百五十八名ございます。  合格率を申し上げますと検定合格者二百四十八名、合格率四・一%、検定免除者四百五十八名中合格者二名、合格率〇・四%。
  173. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまの検定試験を受けた人というのはどういう人たちですか。それからいまの検定免除者もあわせてその資格条件等を……。
  174. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 検定試験を受けましたのは計理士、税理士及び税務代理士、それから大学等の商学に関する科目の教授、助教授または講師、それから行政機関において会計検査、銀行検査、法人税または会社その他の団体の財務に関する行政事務を直接担当する職にあったもの、それから銀行、信託会社、金融機関その他特別の法律によってつくられました法人であって、資金の貸し付け、運用、会計に関する事務を担当する地位であって課長またはこれに準ずる以上のもの、こういうものが大体試験を受けた者でございます。
  175. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの六千百六人というものは非常にバラエティーに富んだ人たちが中に入っているわけですね。いまいろいろな項目がございましたね。それをちょっと項目別に答えていただいて、項目別の受験者と合格者と比率をちょっと伺いたいわけです。これはこの試験の性格に非常に関係がある。
  176. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 検定試験の合格率でありますが、計理士の受験者が千二百七十二名ございました。合格者は五百八十三名。合格率が四五・八%、その他が一括してございますが、その他が受験者総数二千五百四十一名、合格者九百二十四名、合格率が三四・六%、こういうことになっております。
  177. 堀昌雄

    ○堀委員 その他が総括されているという点はちょっと問題があるのです。なるほどあなたのほうは公認会計士、計理士の問題だからそういうあれをしているようですけれども、試験の側からいうなればそういうことではないはずです。特例、いわゆる検定試験なるものがいまのそういう法律で定めた受験資格、どういう関連にあるかということはつまびらかにしなければなりません。これは何か資料はないですか。
  178. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いま手元にございませんが、資料をつくりまして……。
  179. 堀昌雄

    ○堀委員 資料がないと言うが、いま手元にないだけで大蔵省にあるでしょう。すぐ取り寄せてください。私はまだあと一時間ぐらいやりますから、その間には間に合いますから、至急取り寄せて、その中身を報告してください。  そこで次へ参ります。今度は検定試験免除者が四百五十八名、これは二名だけ通っているというのですが、この検定試験免除者とは一体何ですか。
  180. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 先ほど申し上げました検定試験の受験資格で、その受験資格である職に十四年以上あった者、そういう者が検定試験免除者になっています。
  181. 堀昌雄

    ○堀委員 四百五十八名でありますが、大体試験をやっても一人も通らぬときがほとんどのようですが、何回試験をやって、どういうようなかっこうで二名通ったのか、ちょっと答えてください。
  182. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 試験は六回やりました。どういうようなかっこうというのは、どういう質問でございますか。
  183. 堀昌雄

    ○堀委員 要するに、六回やって、一ぺんに二名通ったときがあるのか、六回のうちで四回はゼロであって、あとの二回に一名ずつ通ったのか、確率として二つしかないのですが……。
  184. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 私いまちょっと間違えておりました。検定試験は六回でございますが、三次試験は昭和二十九年から検定試験免除者が受験をいたしております。したがいまして、行ないました試験は十三回でございます。そのうち合格者が出ましたのは四回目に一人、五回目に一人ということになっております。
  185. 堀昌雄

    ○堀委員 大体いまの問題で一つ明らかになりました点を申し上げますと、何か特定な職にあった者が十四年間いたということは、あなた方の考えでは何かしんしゃくをしてもいいのではないかという考え方につながるのですが、十四年やった人でこれだけ十三回の試験で二人しか通らなかったということは、そういう職にあった者で十四年以上いたことが、この試験については無価値であるということをあらわしていますね。四百五十八分の二ですから、〇・四%です。どうですか。価値あると判断しますか。これはまず理財局長にお伺いいたします。
  186. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話のように、〇・四%の合格率でありますから、非常に合格率の少ない、むずかしい試験だということになるわけでございますが、要するに、こういう職に十四年あった方々たちにとっては、この筆記試験はかなり通りにくいものであったということだと思います。
  187. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとこれはどっちに問題があるのですか。十四年在職しておる者を試験免除者にするということに問題があるのか。試験がむずかし過ぎるということに問題があるのか。あなた方はどっちだと判断していますか。
  188. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いわゆる検定試験を受けないで、三次試験を受け得る資格を与えたわけでございますが、結果的には、それらの者が三次試験に合格する能力が不足しておった、したがって、その者が勉強をしなかったとか、またはその能力がなかったとか、その辺はちょっと判断が困難でありますが、ともかくいずれにしても勉強しなかったのではないかというふうに考えております。
  189. 堀昌雄

    ○堀委員 試験のほうがむずかしくないということが前提になるならば、そういうものを免除したことは誤りです。どっちかです。二者択一です。どっちかで答えてもらいたい。大臣にも、これは判断ですからお答え願いたい。試験のほうがむずかし過ぎるということなら、この免除の制度は残しておいていいと思うのです。しかし試験があたりまえなんだ、むずかしくないのだということなら、この免除の制度は即刻やめてもらいたい。どちらかにしてもらいたい。このような事実を放置しておくわけにまいりません。
  190. 田中角榮

    田中国務大臣 塚本君は、いま自分がつくった試験ですから、あまりむずかしくない、勉強を要しないと言うのでしょうが、私はこの種の国家試験の制度をずっと見ておりますと、試験問題は非常に専門的で、むずかしいものである。これは一級建築士の試験でも非常にむずかしい。少し専門化し過ぎている。ですから大学でその講義を担当している人でも、実際に試験を受けるとみな受からぬ、事実こういう例がたくさんあります。こういういままでの例を考えると、私は試験問題が少し専門的というか、むずかしいのではないか、このようにも考えられますが、私もまだよくわかっていないのですが、いま私が判断すればそういう判断です。
  191. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの答弁は試験のほうがむずかしいということですから、試験のほうがむずかしいというのなら、それなりにまたあとで論議いたします。  それでは四百五十八人の免除者の内容を言ってください。たまたまいまいみじくも大臣は大学の教授をしておった人でもと言われたが、教授、助教授が十四年やっておったような人の中にあるのか、この四百五十八名の内訳をちょっと言ってください。
  192. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 これは現在うちのほうで資料をとっておりませんので、免除者の内訳は——たとえばそれが計理士の職に十四年以上おったのか、大学の先生を十四年やっておったのか、いろいろございますが、その内訳は現在資料がないわけでございます。
  193. 堀昌雄

    ○堀委員 統計にとった資料はないでしょうけれども、受験をした者は、申請をして書類を出しているはずだから、いまから調べようと思えば調べられるでしょう。
  194. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 いまから統計を集計すれば出るかと思いますが、そういう統計をとっておりませんので、現在手元に資料がないわけでございます。時間をかしてもらえば、ある年度について集計をすることは可能でございます。
  195. 堀昌雄

    ○堀委員 時間ですが、来週の火曜日に公認会計士を参考人として呼ぶことになっておりますから、火曜日までにいまの四百五十八名の少しこまかい点について、大学教授は経済学部の教授なのか、商学部の教授なのか、要するに計理士なのか、銀行の支店長等を十四年やった者なのか、この四百五十八名の内容について資料として御提出いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  196. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 ある年度につきまして統計をつくりまして、来週の火曜日に提出いたします。
  197. 堀昌雄

    ○堀委員 ある年度ということは、これは四百五十八名が平均して十三回ずつ受けておれば、四十人くらいにしかならない、十三分の一というのでは統計的な観察もやや不十分でありますから、少なくとも三年なら三年くらいのところを限って、特に合格者は一体どうなっているのかを含めて調査をして、資料としてひとつ出していただきたいと思います。
  198. 山中貞則

    山中委員長 そのようにはからいます。
  199. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、私のいまの質問の経過でやや明らかになってまいりました点は、まず第一点に、やはり三次試験というものは一体どういう目的でやられているかという点についてやや不審な点がございます。そのことは、率直に言って試験のための試験になっているのではないかという感じがするのです。私が前段で公認会計士制度の諸問題の論議をいたしましたのは、ここに一つ非常に重要な関係があるのですが、実は単に会計とかそれだけのことが通ればいいという技術的な問題だけになると問題があるので、率直に言って、実はこの試験の中でその人間をある程度見きわめてもらわないと、要するに会計の専門家必ずしも公認会計士として適当かどうかという問題の余地が残されていると思います。そうなるとその人間の判断ということになりますならば、ごく少数の試験官だけで、要するに一名か二名の試験官だけで試験をして、その結果によって判断をするということになりますと、やや技術的なものに流れやすい。そこで現在行なわれております三次試験の実態をちょっと御報告をいただきたいと思います。名前は要りませんけれども、どういう形で、どういう資格を持った人たちが、どういう方法で、どういう試験をして、どういう採点をして、どういう経過によってこれが合格になるか。
  200. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 現在三次試験の科目は、財務に関する監査、分析その他の実務、これは税に関する実務を含みますが、科目としましては七科目、七問問題を出しております。会計に関する監査二問、それから分析二問、それからその他の実務が三問、そのうち税に関する問題が一問、そこで試験委員は一問一人を当てておりますから、七名が試験委員に任命されております。そのうち五名は公認会計士、二名が会社の重役になっております。その七名の方が試験問題をつくりまして、問題を出し、採点をした上で、公認会計士審査会で当否の決定をいたしております。
  201. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの五名は公認会計士ですか。
  202. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 そのとおりでございます。
  203. 堀昌雄

    ○堀委員 一番最初の第三次試験を受けるときは、それじゃどうだったのですか。一番最初の三次試験というものは、公認会計士がないときですから……。
  204. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 これは試験委員は公認会計士審査会が推薦をいたしまして、大蔵大臣が任命することになっております。したがいまして、公認会計士がいなかったときにおきましては、それ相応の適当な方を選んで選出したものと思っております。調べてまた御連絡申し上げます。
  205. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっとお伺いをいたしますが、いまあなたは実態を言ったと思うのです。公認会計士が五名、重役が二名というのは実態で、法律的な用語ではありませんね。法律的な用語としてはそれじゃこれはどうなっておりますか。
  206. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 公認会計士試験委員ということになっております。
  207. 堀昌雄

    ○堀委員 公認会計士試験委員は、公認会計士審査会が任命するのでしょう。それについては、どういう者を任命するかというルールがあるのでしょう。そのルールのところを言ってください。
  208. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 公認会計士法第三十八条の第二項に規定がございまして、試験委員は、試験を行なうについて必要な学識経験を有する者のうちから、試験ごとに公認会計士審査会が推薦をする、それに基づいて大蔵大臣が任命するということになっております。
  209. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これはたまたまいま公認会計士が五名、重役二名ということなのか。何かルールがないと、公認会計士審査会が必要と認める学識経験者なんといったって、幾らでもあるわけでしょう。内規なり何かを持っているのじゃないのですか。何にもないのですか。何となくきめるのですか。
  210. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 内規というのは別にございませんが、御承知のように第三次試験は会計実務の試験でございます。したがいまして、学者というのはその実務の試験の試験委員としては不向きでございます。実際に会計の実務をやっておりますのは公認会計士でございます。勢い公認会計士から多くを選ぶということになっておるわけでございます。
  211. 堀昌雄

    ○堀委員 どこの試験の時点でもいいから、一回、その試験委員の名前と、過去の経歴等について——五名と二名のいまのこの分で答えてください。
  212. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 現在の試験委員を申し上げます。  公認会計士鈴木貞一、公認会計士津田六郎、公認会計士近山仁郎、日本興業銀行常務取締役梶浦英夫、公認会計士太田哲三、公認会計士井口太郎、帝人株式会社管理本部調査役忠佐市、以上七名でございます。
  213. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでお伺いをいたしますけれども、この五名の公認会計士の方は、さっきの分類の中で、普通に二次試験を受けてこられた方が何名、それから検定試験、試験免除者というような分類に分けますと、どの範疇で受験をされた方ですか。
  214. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 昭和二十四年から二十九年の間に特別公認会計士試験というのが行なわれております。この特別公認会計士試験に合格された方でございます。
  215. 堀昌雄

    ○堀委員 五名ともそうですか。
  216. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 そのとおりでございます。
  217. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いま正規の二次試験、三次試験を受けた者は一人も試験委員の中にいないわけですね、全部が、その特別試験を受けた人ばかりが五名いるというのは。この特別試験というのは、さっきの六千百六名の中でしょう。その特別試験というのは、これ以外にまだ別にあるのですか。
  218. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 先ほど申し上げました試験以外の試験でございます。
  219. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと新しい事実でございますが、そのこれ以外の試験ですね、どうもこの中には計理士等も含まれていたと思いましたから、私はこれは検定試験の中に処理されておったのかと思ったけれども、その特例試験の実態についてちょっと御説明願いたい。
  220. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 特別公認会計士試験は、昭和二十四年から二十九年の間に十一回行なわれております。受験者総数は一万五千百七十一名、合格者は千四十二名、合格率六・九%、この受験資格は計理士、税理士及び税務代理士、それから大学等の商学に関する教授、助教授または講師その他財務または会計に関する地位にあって課長またはこれに準ずる者以上に相当する者が受験資格を与えられておったわけでございます。
  221. 堀昌雄

    ○堀委員 その千四十二人の中で、ただいまの計理士、税理士、税務代理士、大学教授その他の分類はどうなっておりますか。
  222. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 先ほど同様に、計理士の数字はございますが、その他が一括してございますから、いずれすぐ調べて連絡をいたしますが、そういう分類で申し上げますと、計理士は八千四百六十一名受験をいたしまして、合格者が五百八十九名でございます。合格率七・〇%、その他が六千七百十名、合格者四百五十三名、六・八%ということになっております。
  223. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、ここで私、ちょっといまの話を伺ってわかったことは、計理士や税理士については、この二十四年から二十九年の間には特例試験が十一回あった。しかしそれは単にその人たちだけではなくて、さっきの検定試験の受験者と同じ資格の者が特例試験も受けておる、こういうことになっておったわけですね。そうすると、この当該年度においては、同じ年に三次試験も受けられたし、この人たちは特例試験も受けられた、こういうことになっておるわけですね。
  224. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 そういうことにはならないのでございまして、二十九年以後におきまして検定免除者というものができたわけであります。
  225. 堀昌雄

    ○堀委員 検定免除者は二十九年以後、それから検定試験を六千百六人が受けたのは、それじゃいつですか。
  226. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 この特別公認会計士試験が終わったあと、二十九年以後に検定試験が行なわれたわけです。
  227. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると現在でもこのいまの検定試験を行なって、この人たちは三次試験が受けられる条件が開かれておるわけですね。昭和二十九年以後も経理士、税理士その他いまの全部の範疇に属して特例試験の受験者であった人は、検定試験を受けて、そうして三次試験が受けられるという仕組みが、依然として制度として残っておるわけですね。
  228. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 検定試験の制度昭和三十二年を最後に廃止になっております。
  229. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの四百五十八名の免除試験は、それじゃいつから始まっていつに終わったのですか。
  230. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 三次試験の受験資格を与えたわけでございますが、それは昭和二十九年以後現在も続いております。
  231. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、検定試験はなくなったけれども、さっきの検定試験の受験資格者で、その職に十四年以上あった者は、依然として試験免除者としてずっと残ってきておる、こういうことですね。
  232. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 昭和三十二年七月三十一日現在において、十四年以上の経験年数を持っておる者、そういう者に限定されております。
  233. 堀昌雄

    ○堀委員 それはなぜそういう限定をしたのですか。
  234. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 それは昭和三十二年に検定試験が終わりましたので、その時点において経験年数を基準に検定免除という制度を設けた、こういうように理解をいたしております。
  235. 堀昌雄

    ○堀委員 じゃ検定試験というのはなぜ設けられたのですか。
  236. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 まあ実務を相当長くやっておりますので、そういう者に対して三次試験を受ける一つの道を開いてやるという意味でつくられたものと思います。
  237. 堀昌雄

    ○堀委員 それじゃ三十二年になぜ廃止したのですか。
  238. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 本来公認会計士試験というものは、一次、二次、三次というのが正しい姿である。したがって三十二年に廃止したものと考えます。
  239. 堀昌雄

    ○堀委員 この試験の制度を見ておりますと、思想が非常に一貫していないんですよ。特例試験をやりましたね。特例試験は何かしらぬこれは別の試験だからというのでやめたんですね。そして今度の検定試験にした。率直に言えば、検定試験というものをつくるのなら、要するにこの人たちについては、検定試験という試験をしたら、三次試験を受けられるということは、二次試験に該当するわけですね。だからその二次試験に該当するものが検定試験であったと理解をするならば検定試験がずっと行なわれて、三次試験に道が開かれていたってちっともかまわなかったんじゃないか、積極的にそれをやめなければならぬほどの理由はなかったんじゃないか、三次試験を受けるということについては同一の資格なんですから、条件なんだから。要するにいまのこの試験の経過をさっきからずっと伺っておって明らかになりましたことは、三次試験の受験者というものは、非常に制限をされておりますね。二次試験ですでに五・八%くらいにふるい落とされてきて非常に制限をされておる。しかしあなた方が今度この法案を提案しているような考え方に立つならば、何もここでこの検定試験をやめて、三次試験を受ける道をふさぐ必要はなかったんじゃないか、私はこういうふうに考えるのですが、大臣どうですか。この試験のあり方が、私は、どうも何というか試験のための試験というような感じがしてしかたがないのです。いわゆる本来の公認会計士として必要にして十分なるものを調べるのだということならば、私は、機会をできるだけ広く設けてしかるべきではないか、そんなに門を狭くする必要はないと思うのですがね。その点について大臣いかがですか。
  240. 田中角榮

    田中国務大臣 一本が一番すんなりしておっていいわけでございますが、必要やむを得ざる事態があれば、特別な救済制度をつくるということでいろいろなものがあったわけであります。しかし、それを一次、二次、三次という一本にしなくとも、検定試験制度をそのまま残しておいてもいいじゃないかという御主張でございます。これは高等学校に進む場合、中学卒業の資格のない者に専検の制度があったように、残しておけばいいじゃないか、こういう御議論でございます。  また、もう一つの御議論は、やめておってまた今度特例試験のようなものをやるじゃないか、こういうことにつながっての御発言でございますが、先ほどから申し上げましたように、本則は一本のほうが一番すんなりしておる。しかし、いままではやむを得ずやってきたのですが、できるだけ一本にしたいという考え方でございますが、今度経理士との問題がありまして、また必要やむを得ざる事態が出てまいりましたので、その間だけまた特例試験をやって、できるだけ早い間に本則に戻そうという、こういう考え方であります。
  241. 堀昌雄

    ○堀委員 この試験の経緯を見て明らかなように、昭和二十九年まで特例試験をやりまして、一応かなりの方が通ったわけですね。そうして通って、そこで検定試験の制度を新たに設けて、そうして第三次試験を受けさせるようになったということは、やはりそれではしかたがなかったという過去における例があるのですね。要するに、特例試験でやってみたけれども、必ずしもその人たちが希望したようになかなか通らない。そこで、そういう要求があったから検定試験の制度ができた。検定試験の制度ができて幾らか、あまりよくは通っておりませんけれども、まあまあ幾らか通った。それでここらでどうもあまり受ける人がないからというようなことでやめたのなら、それはそれでいいと思いますが、また突然今度は特例試験、政策の中に一貫性がありませんね、全然。どうですか。あなたもそう思われるでしょう。政策の中に一貫性がなかった。どうですか。
  242. 田中角榮

    田中国務大臣 一貫性がないわけではないのです。一貫しておるのです。これはもう一次、二次、三次、試験一本でいきたいということでございますが、今度計理士制度を廃止して、公認会計士に道を聞くという特殊な事情がここで生じたわけでございます。でありますから、この問題が片づけば、また今度は一次、二次、三次という一本の制度になるわけでございますので、先ほどもその意味で申し上げたのです。必要やむを得ざる事態に対処して特例試験を設けざるを得なかった、こういうことでございます。
  243. 堀昌雄

    ○堀委員 ことばというものは便利なものですから、それはどうにでも言おうと思えば言えるのですが、冷静に、客観的に見てみますと、確かにこの問題については、きわめて紆余曲折があるのです。しかし、私がここまで議論を発展させてきて明らかになっております点は、この試験はややむずかし過ぎるような感じがいたしますし、特に、三次試験について私がちょっとわからないのは、こういう話を実は公認会計士の方から聞いておるのですよ。この間、私、公認会計士の方にお会いしたときに、実は公認会計士の三次試験というのは少しむずかし過ぎます、もう少しやさしくして通りやすくしたらどうかと思う、こういうお話を実は聞いたわけです。しかし、私はその話を聞いてちょっと意外に思っておることは、その試験委員の中に公認会計士が五名おられたのでは、一体どういうことなのか、ちょっとその点、率直に言ってわからない。今度ここに公認会計士の方がお見えになったらこの点はつまびらかにしたいと思いますが、それなら、この方たちが七名中五名おるのですから、皆さん合議の上で、せめてこの程度でいいのではないかというようなことになったっていいのではないか。何も基準はないんですよ。試験ですから試験問題の出し方できまるだけです。要するに採点のほうはあるいはこの答えに対して何点と出るかもしれません。しかし、むずかしい問題を出すか、少し楽な問題を出すかということは、この七名の試験委員にまかされておるわけだから、試験をどの程度にするかということは、公認会計士の五名の方がその気になっておやりになるならば、かなりできるのじゃないかと思うけれども、大蔵省は何かこれについてワクか何かきめていますか。
  244. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 ワクはきめてございます。公認会計士審査会が試験をやるわけでございまして、公認会計士審査会の中に試験の主任委員というのがございまして、それが各試験官のつくりました問題に目を通しまして、バランスのとれたところで試験問題を調製をいたしております。別に基準とかワクとかいうものはないわけでございます。
  245. 堀昌雄

    ○堀委員 現在における公認会計士審査会のいまのメンバーとその役者その他についてお教え願いたい。
  246. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 会長が荒井誠一郎、元会計検査院院長であります。それから委員を申し上げますと、慶応大学の教授の中西寅雄、都民銀行の頭取である工藤昭四郎、それから東京大学の教授石井照久、それから三菱倉庫株式会社相談役大杉達雄、十条製紙株式会社社長金子佐一郎、株式会社芝浦製作所専務西野嘉一郎、経団連事務局長堀越禎三、それに大蔵省理財局長が加わっております。
  247. 堀昌雄

    ○堀委員 いま伺った公認会計士審査会の方は、私が拝見をしたところでは、いずれもそういう方面にたんのうな人だと思いますけれども、この人たちは何も公認会計士のきわめて高度のそういう技術的な問題に非常に精通しておられるかといえば、必ずしもそんなに——石井さんのような大学の先生はその御研究になっておる分野についてはそうかもわかりませんけれども、各種非常に間口の広い問題でありますから、必ずしもそういう特殊な専門家だとは私は理解をいたしません。一般的な学識経験者という判断に立っていいのではないか。ですから、この人たちが採点をなさるにしても、いまの試験委員が採点したものをここで判断するのでしょう。にしても、この判断はかなり常識的な判断をされることになる。ということになると、この問題はやはり試験委員の手に試験の難易というものはかかっておる、こういうことになると思う。そこで私が伺いたいのは、これまでのこの経緯をずっと見ておりまして、あと資料をいただいてもう少し検討してみなければなりませんけれども、この三次試験がなぜこんなに通りにくいのかという点は、一体どこに問題があるとあなた方は考えておりますか。これは受けるほうが不勉強でしょうがないのだ——またさっきの問題に戻るようですけれども、やっぱり試験がどうも少しむずかしいし、試験方法にも問題があるのじゃないか、こう私は考えますが、その点についてどうですか。
  248. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 現在三次試験は筆記試験一本で行なっております。先ほど申し上げましたように三次試験は会計実務を試験をするわけでございまして、公認会計士となるに必要な会計に関する専門的な応用能力を持っておるかどうか、こういうことを判定する試験でございます。したがいまして、その試験のあり方としまして、筆記一本ということに問題があったのではなかろうか。したがいまして、今回の法律の中には、口述試験を追加をするということによって能力の判定を合理化しようじゃないか、こういう新しい規定が入ったのでございます。これによって能力の判定は相当合理化されるのではないかというふうに期待いたしております。
  249. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの筆記試験と口頭試験と今度は併用になるそうですが、そのウェートは一体どの程度になりますか。
  250. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 おのおのの科目について筆記で検査をし、さらに口頭で検査をするということになりますから、いうなれば半々ということになろうかと思います。
  251. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、私はもう一つ、大臣、この試験につけ加えてもらいたいものがあるのです。いまは技術的なことばかり試験しているのですが、技術のたんのう者必ずしもこういう実際の問題に対して、私が前段で申し上げたように、投資家保護に徹するそういう責任の明確なものを持っておられるかどうか。要するに、その人間としての問題点というものを、私はもう少しここで比重をかけてみなければならないのではないだろうか。そうすると、その点については、こういう方以外の一般的な学識経験者が、そういう実務以外のそういう総合的な判断のできるような部分も、試験科目の中に新たに設けられていいのではないか。実務に関する技術的な問題についてだけは筆記試験と口頭試問があります。それは明らかに実務に関するものだけでありまして、実務のたんのう者必ずしも私は公認会計士として責任が全うできるかどうかについては、率直に言って、今後の皆さんの調査の経緯によって明らかになると私は思うのです。だから、私はここで少し強調しておきたいことは、こういう試験と同時に、一般的に公認会計士として必要なる素質といいますか、そういうものを含めての社会的な教養といいますか、そういうものを一本ここへ口頭試問のようなかっこうで入れる必要があるのではないか、私はこういうふうな感じがいたしますが、三次試験というのは、これは最終の最も重要な試験でありますから、その点について大臣いかがでしょう。
  252. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げましたように、そういうことを加味して口頭試問を行なうようにしたわけであります。私は、いままでのこの種の試験というものは専門化し過ぎておって、どうも非常に狭い視野のものであるというふうにも理解いたしておりましたから、だんだんと公認会計士の持つ重要性、また高度の判断力、こういうことから言いますと、これは例からいっておかしいかもわかりませんが、私などは公認会計士になれると思っておりますが、試験をするとどうも通るか通らぬかということで、いままでのこの種の試験はみなそうです。ですから、口頭試問を入れたということは、非常に前進的なものであります。それより一歩進めれば、あなたがいま御指摘したように、もっと何か公認会計士に必要なものがあれば、また能力判定に具体的に非常によろしいというものがあれば、それを追加するというように、だんだんと合理化されていくべきものだと考えます。
  253. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの大臣の答弁は私ももっともだと思います。なぜかというと、試験というものは一体何のためにあるかという問題から考えていかなければならないと思うのですね。要するに、世の中の学校の秀才必ずしも社会に出て実際に間に合うかどうかというと——もちろん間に合う人もたくさんあります。しかし——おそらく大蔵省のお役人は、おおむね成績のいい方向から出てきた人が多いでしょうけれども、こっち側にすわっておるほうは、必ずしも私はトップできたような人ばかりではないと思う。これは適当でなければ取り消しますけれども、要するに問題は、学業の成績というか、試験だけの結果で通ってきた者だけがオールマイティではないのだということが、私は実社会では立証されておると思う。そこで、その点を、私は公認会計士制度というものが重要であれば重要であるだけ、いまの大臣のお答えのような方向が、今後考えられてこなければならないと思います。そこで、そういう幅の広い視野に立ってこの問題を考えるということになりますと、私は今回皆さんが提案をしておられるこの特例試験等に関する問題については、新たな角度があっていいと思っているのです。それはどういうことかと申しますと——資料まだ来ませんかね。いまからいろいろな経緯を持った方の受験をされた内容を明らかにいたしますけれども、さっきのお話しのように、大学教授であっても公認会計士は通らない場合もあるし、あるいは長年銀行その他で経理を専門にやっておった人だって通らない場合だってあるというのが現在の実態でありますから、総合的な判断に基づいて公認会計士としての能力があるということになれば、そういう人はコースのいかんを問わず、三次試験を受けられて、そしてそこで公認会計士になっていいと思うのです。あなた方は過去に何回もそういう制度をつくってきたわけですね。一ぺん特例試験をつくって、その次には検定試験によって、三次試験を受けさせて、今度はまた特例試験に逆戻りなんですよ。そういうふうに紆余曲折しなくても、要するに検定試験があって三次試験が受けられるということで、その試験のあり方というものについては、私がいま言ったような総合判断ができる三次試験がここに新たに設置される段階にきておるわけですから、そういうことをするならば、何もそう特例試験ということをやらなくても、その中における能力のある人は、十分に三次試験の中で公認会計士として働いていただける道が開けるのじゃないか、こういうふうに私は判断をするわけです。特例試験を設けるということは、公認会計士の側からするならば、何か別途な試験によってできたものが出るんじゃないかという感じを持つのは私はやむを得ないと思うのです。同時に試験を受けられた方にしても、やはり特例試験でなったというよりも、フェアに三次試験でなったほうが、率直に言って肩身も広いと思います。だからそうなるならば、この特例試験という問題ではなくて、三次試験のあり方を、そういう人を含めて可能なような方向にやることのほうが問題なんであって、三次試験というのは、ある一つのワクをきめて試験のための試験でこうしなければいかぬというようなそういう考え方は、少なくとも本日私が論議をしてきた中ではやや新しい方向に、今後のあり方は公認会計士制度というものとの関連において考慮を払われてしかるべきだと思いますし、それについては、大臣から今そういう前向きの姿勢での御答弁があったわけです。そうするならば、この際この条文を見ますと、三次試験とこの特例試験とはほとんど差がない条文になっているわけです。差のないような条文を書くのなら、何も別にしなくても同じものにして、しかしそこにもうちょっと総合判断の場所を設けるならば、計理士の皆さん、あるいはそれに類した、さっきの検定試験を受けられた各種の資格の人たちが公認会計士になれる道も開かれるし、そしてそれはフェアな道によって堂々となられたことであって、これについては公認会計士の皆さんといえども何ら異論をはさまれることはないのじゃないか。そこで初めてこの問題が、政府の希望するように、公認会計士も計理士もともに反対することなく、日本の会計制度というものがあるべき会計制度方向に一歩前進する道を開くことになる、私はこういうふうに考えるわけです。その点について、私どもはこれからその修正案等についてはすみやかに検討を進める考えでおりますけれども考え方として、そういう方向について大臣のお考えを承りたい。
  254. 田中角榮

    田中国務大臣 二つに分けてお答えをいたしますが、これからの公認会計士の試験の内容、やり方、こういうものに対してはより合理的にしなければならない、そういう方向で検討すべきであるということに対しては同感でございます。  もう一つは、特例試験というものをやらないで、現在ある一次、二次、三次試験というものの中に包含をして、三次試験の内容をもう少し合理的にすることによって特例試験を設ける必要はないではないかこういうことでございますが、公認会計士の内容を高めるためにも、公認会計士の将来の認定試験は一次、二次、三次の一本の形態でやるのだということは貫いておるわけであります。今度の特例試験は、いままで特例試験をし、検定試験をし、また特例試験をしたじゃないか、というものではなく、長い歴史を持っておりました計理士というものはなくなるわけでありますから、計理士をなくするためには、当然公認会計士の資格を持つような実力を持つ方々には特別な試験を、特例試験の制度を、ある一定期間認めまして終止符を打とう、こういうことでありますので、ひとつ事情を分けて考えていただきますと、第三次試験をもう少し計理士が通りやすいようなことにして、特例試験を設けなくてもいいじゃないかという議論は、本来の公認会計士の内容充実のためにある一次、二次、三次試験をやわらかくするというふうになりますので、やはり一次試験、二次試験、三次試験は、合理的なものとしてこれを貫いてまいり、今度の特例はある一定期間に限って計理士の経過措置と申しますか、公認会計士の資格を有する人を、そのままで放置できないということで、救済的な立場で本制度お願いしておるわけでありますから、事情ひとつ、そういう意味で分けてお考えいただいて、御賛成いただきたいと思います。
  255. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっといまの大臣のお答え、前段のほうについて、私は何も試験をやすくしなさいと言っておるわけではない。実態に即したようにしたらどうかということであって、いまの試験の制度は、あるべき公認会計士の制度と実態的に少し離れておるのではないかという感じがするし、あなたもそこでそういう答弁をしておられるわけです。だからやすくしなさいということではなくて、要するに能力のある人は通るようにしましようということです。いまは能力があっても通らない人だってあるのです。そういう問題があるから能力のある人は通るようにしたらどうかということであって、私はやすくしなさいということは一つも言っていない。何も公認会計士のレベルを下げて大量生産しようというような気持ちは毛頭ないのです。私は先ほどから言うように、投資家の保護ということを第一に考えて、そのためには公認会計士の責任と能力と資質に期待しておるわけですから、レベルアップを期待こそすれ、レベルダウンは期待しない。しかしそのレベルアップということは、単なる小さな実務——実務も非常に重要ですが、実務だけではないのではないかということも、私は今後の皆さんとの協力の調査の中で明らかになってくると思うのです。その実務だけによって出てきた人が、いま何をやっておるか。すでに日本不動産の問題にしても、書類が不十分であるにもかかわらず監査報告が出されて、それによって上場されて、多数の被害者が出た、これは重大問題です。そういう事実があるのだから、私はそういうことでなくて、もっと総合判断によって能力のある人になっていただきたい、こう言っておるわけです。そうするとあなた方の今度の特例試験だって、これは大いにやすい試験をやろうということじゃないはずだと思うのです。やはり権威のある公認会計士をつくるための特例試験なんでしょう。特例試験だって同じ考えでやるというなら二つにしないで一つにして、私の提案したような、あるべき会計士制度としての合理的な試験に改善されたその試験に参加させたってちっともかまわないじゃないかと私は言いたい。私はこの法律案の中に論理的な矛盾を感じておるわけです。おまけにしんしゃく点というものが、この中には設けられるようになっております。ところがしんしゃく点の問題については、すでに今日まで論議をしたように、あなた方が昭和三十二年にともかく検定試験を受ける人たちの中で、当時にあって十四年以上在職しておるものについては免除資格を設けたわけです。免除資格を設けて試験をしたら二人しか通らないということは、もし同じようなかっこうで試験をするならば、そのことは十四年の経験年数というものは、あまり効果のないものであるということを、このことは客観的に証明をしておるわけです。十四年の経験年数というものが効果があるものなら、四百五十八人が受けて二人しか通らないなんということはナンセンスですよ。だからそうなると私は単なるそういう経験年数だけのしんしゃく点とするのではなくて、そういうものを総合的に判断をする口頭試問が設けられるならば、経験年数はたとえ十年であっても能力のある人は通られるでしょうし、二十年あったらそれだけの点数をあげるなどということは私はやや合理的でないような気がしてしかたがないのです。そのことは決してあなたが言う前段のレベルを高いものにしておくということではなくて、一面的には、その客観的な事実は、レベルダウンをさせるということに通じてくるわけです。そういう感じがいたしますので、私が言いたいことは、要するに一次試験、二次試験、三次試験の制度をくずしなさいとは言っていないのです。それはそれとしてあってよろしい。しかしあなた方が今後特例試験の対象として考えておられる人が幾らかあるわけです。その人たちに特例試験を受けさせるのならば、この前のように戻って、一応検定試験をその人たちが受けて、三次試験が受けられるような道を開いて、そうして処理をしたところでちっともかまわないじゃないか、こういうことです。私は何も一次、二次、三次試験の体制をくずしなさいということを言っておるのではない。これはかつてやった制度です。これは検定試験をやって、三次試験が受けられるようにする。ただ今度違う点は、その三次試験というものは——この前の検定試験を受けたときには四・一%しか通っていないわけですね。しかし今度やるときはもうちょっと通るようになるでしょう。総合的な判断というものが加えられるならば、これまでのただ試験のための試験というものからやや幅が広がるだろうということになってくるのではないか、私はこう考えるから、何も特例試験というものでなくて、そういう同じコースの中に包含をするというほうが制度としても合理的ではないだろうか。こういうことで前段のあるべき公認会計士の第三次試験のあり方というものを変更する中で、同じ制度の中での処理をしたほうで特例試験などという別表のものを設けるよりも合理的であるということを私は主張したい。そのほうがおそらくいまの問題については公認会計士の方も計理士の方も反対が少ないのではないか。まあこれらについては一応われわれの考え方を具体的に明らかにして、火曜日に参考人の方にお伺いをいたしますけれども、そこでもう一つお伺いをしておきたいのは、特例試験をもし行なうと仮定をいたしまして、過去のこの例のパーセンテージで一体どのくらい通ると皆さん予想しておりますか。パーセンテージです。
  256. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 特別試験をいたしましてどの程度の合格者が出るかというお尋ねでございますが、たいへんむずかしい問題でございます。特例試験自体は、前から御説明いたしておりますように、ただいまの第三次試験よりも楽な試験にする考えはございません。したがいまして、特例試験をやることによって非常に合格者がふえるというようなことを期待はいたしておりませんが、といってどの程度のものになるか、これは過去の先ほどから申し上げておりますような率等で推定をしていただくほかにちょっと方法はないと考えております。  それからなお先ほど先生のおっしゃいました公認会計士というものは、実務と申しますか、専門的な知識以上に公認会計士としての非常に大事な人柄と申しますか資質が必要であるというお話はまことにそのとおりだと思います。私どももそういう必要を痛感をいたしておりますが、大臣もそういうふうな答弁をいたしたわけでございます。私ども技術的に考えまして、さてそういうことになりまして一体そういう能力の判定の試験ができるかどうか、これは非常にむずかしい問題だと思います。おそらく裁判官等の試験につきましても資質、人柄というような問題は非常に要求される問題であって同じ問題だと思いますが、非常に能力のある人とおっしゃるその抽象的にはたいへんごもっともな点をどういう基準でだれがどういうふうにして判定すれば最も客観的にみんなが納得できるかどうか、私ども技術的に考えてたいへんむずかしいように実は考えております。したがって私どもが今度の第三次試験に口頭試問を加えましたのは、いままでの筆記だけの試験をより合理的にしたいという気持ちからでありまして、おっしゃるようにいままでよりはより幅広く合理的にはなると思いますが、やはりあくまでもその実務、専門的知識の判定を合理的にするための口頭試問でありまして、先生のおっしゃるような、それをこえました一般的な資質、能力、人柄等を判定するつもりはないわけで、おそらく技術的にたいへんむずかしい問題じゃないかと思います。
  257. 堀昌雄

    ○堀委員 私はあなたのいまのお話——もちろん私もむずかしいと思いますけれども、こういうことじゃないでしょうか。会社でも入社試験をしますね。そのときに口頭試問しますね。要するに私ども人間というものは、どの世界で仕事をしておられたとしてもあるレベルに達した専門的な能力を持っておられる方は、私はやはり人間としてのある程度の価値判断というものは備えられておる。常識的な問題として。そうするとそういう人たちが——一人では困りますよ。しかし五人くらい、私どももそう考え、皆さんもこういう人はりっぱな人だ——早い話が、この公認会計士審査会の皆さん、こういう人はなかなかりっぱな人だと思うのですよ。そういう審査会の皆さんが、さっき何名という話でしたか。
  258. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 九名でございます。
  259. 堀昌雄

    ○堀委員 この九名の審査会の方が一人ずつ口頭試問をいろいろな角度についておやりになれば、私はその人たちのそういう資質はある程度平均した形において十分判断できるのじゃないか。だから技術的にはきわめて抽象的ではありますけれども、しかし私ども率直に言って人と対していろいろやりますときに——大蔵省のお役人と私ともこうやって論議しますね。いろいろなことをやっている中で、この人はやはりなるほどなということは、私どもやっていてわかりますよ。これが私は口頭試問というものだと思う。それはこっちの能力とそっちの能力との関係がありますから、だからそこについては、私はさっきの審査会のような方は十分そういうことが判断できるだけの学識経験のある、人間としての資質をお持ちになっておる方だから、そういう人が少しいろいろ話をしたら、それは大体わかりますよ。それは抽象的といっても、その採点が著しく片寄って、片方が百点で片方が三十点というようなことにはならないと思う。だから、あなた方は技術的にむずかしいというけれども、私はいまの制度を活用をして、その試験の中に、審査会の全員が無理ならば、九名のうち五名なら五名の方が出席をされた、そういう口頭試問を一項その中へ加えることによって、総合的な判断というものへの道は開き得る。私は技術的にもそう考えます。大臣、どうでしょうか。
  260. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから、第三次試験の何か内容を変えることによって、特例試験を排除できる……。
  261. 堀昌雄

    ○堀委員 そのあとはいい。第三次試験だけにして、特例のことは触れないでけっこうです。
  262. 田中角榮

    田中国務大臣 三次試験の内容は、むずかしいことでございますが、その道があれば、より合理的に探求をいたすべく努力いたしますと、先ほど申し上げておるとおりでございます。
  263. 堀昌雄

    ○堀委員 だからその中にはいまの私が提案したようなそういう学識経験者、公認会計士審査会の現在の委員のような方が五人なら五人で口頭試問をされるようなことで——それは実務じゃないですよ。要するに一般的な経済問題であるとか、各種の角度から口頭試問をしていただいて総合的な判断を下すような口頭試問のあり方も、いまのあなたの合理的な考えの中に入るでしょうね、こう聞いておるのです。
  264. 田中角榮

    田中国務大臣 三次試験は恒久的な制度でございますから、特例試験のような内容ではなく、別な角度からも特例試験の中には口頭試験を入れたわけでございますから、恒久的な第三次試験の中にも口頭試験を入れることがいいという結論になれば、そのように将来なるかもわかりません。
  265. 堀昌雄

    ○堀委員 今度第三次試験に口頭試問は入ることになったのです。ただ、その口頭試験が、実務に関する問題についてだけ筆記試験と口頭試問をやるから、私はそれは人物試験という表現がどうかわかりませんが、総合判断を下すような口頭試問をひとつ加えたほうがいいではないかという提案をしておるわけですね。それは、だから合理的な三次試験のあり方の中に今後含めてもいいでしょう、こう聞いておるわけです。
  266. 田中角榮

    田中国務大臣 大体理解いたしております。これが実務試験というよりも一次、二次ではありませんから、三次試験、最終ですから、最終試験の要求というものは、より高度な広範な統轄力というか、判断力というか、そういうものに——実務に限ってのみということは狭い考え方だと思います。
  267. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、そういう三次試験ができましたならば、私は特例試験をやらなくても、そういう試験を受けたらその人たちが十分合格される道が、今度は開かれると思っておるのですよ。だから、特例試験というものをやって——いま理財局長はこれから幾ら通るかわからぬけれども、過去の歴史をお考えいただきたいというわけですね。過去の歴史でいけば、過去の特例試験というのは八千四百六十一人の計理士の方が受けて五百八十九人通って、七%しか通ってないわけですね。皆さんは今度、依然として七%で五回しか試験をやらないというのでしょう。三年間で計理士制度はやめます——いまこの特例試験を希望する人は予想として何名ぐらいありますか。
  268. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 現在計理士として営業をいたしておりますのが約二千名でございます。それから計理士の登録を受けて会社等に勤めておる方が約千名。それ以外にたとえば学校の教員であるとか、またはその他一般官庁に勤めておる方で登録はできないが、登録延期者として計理士になり得る資格を持っておる方が約千名ばかりでございます。したがって四千名が受験資格を与えられるということになりますが、そのうち何名受けるかというのは、ちょっと予想ができません。
  269. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ちょっと補足説明さしていただきたいと思いますが、先ほどのお尋ねのどの程度の合格者が出るかという点は全くわからないのでございますが、ただ前の試験と今回の試験と非常に違います点は、今回は計理士会がみずから計理士制度を三年後にはなくするということを決心されての試験でございます。したがって、計理士会では、ただいま私どもの聞いておりますところでも非常な勉強を始めておられるようでございますから、そういう意味からいいまして、過去の一応の例のパーセントはあるわけでございますが、そういう点が非常に違っておるということだけを申し上げておきます。
  270. 堀昌雄

    ○堀委員 こっちのほうからちょっとやじが飛んだために追加の答弁が出ましたが、まあそれはいいです。私が非常に心配をしております点はこういうことなんです。なるほど非常に勉強されることは私もたいへんけっこうだと思います。しかし、非常に勉強をされたら、過去における七%が一体何%まで上がるかという問題ですね。非常に多目に見て倍になったと考えましょう。一五%と一応考えましょう。そんなことはなかなかないのではないかと思います。いまのこの試験というものはなかなかむずかしいですから、実務ばかりやっていらした方がちょっとやったって、たいへんです。率直に言って。私は代議士に出て六年になっているから医者の実務から離れておりますけれども、少なくとも大学を昭和十六年に出て昭和三十三年まで十七年間、医者として診療に従事しておりました。しかし、その私がいま医師の国家試験をこれから勉強して受けなさいと言われて受けて、はたして通るかといったら、率直に言って私も自信がありません。それはなぜかというと、医師の国家試験というものはどういうかっこうになっておるかというと、各科全部をやることになっておるわけです。外科から内科から産婦人科から病理から何から全部やっておるのですね。しかし、実務というものはそんなに全部要らないのです。その中における要点だけを十分理解されて、窓口の広かったのが今度は奥行きが深くなるわけです。窓口の広いままでは医者としては通用しないのですよ。国家試験というものは、まさに一つのレベルを判断しているだけであって、それから医者として勉強してそれなりの専門家にならなければ、まともな医者にならないということは、皆さん御理解いただけると思うのです。だから、計理士の皆さんがこうやって開業しておられたり、あるいは会社につとめておられるということは、それなりの専門的なパートについての仕事をやっていらっしゃるのでしょうから、非常に幅の広い問題について——まあ医師の国家試験と多少違いますけれども、窓口は狭いでしょうから、やはりこれはなかなかたいへんな問題です。試験勉強というものはむずかしいですよ。年とったら、第一記憶力が悪くなりますよ。いま一次試験、二次試験というものを受けてくる方は二十代の人が多いですから、まだ記憶力がいいですけれども、五十代の人だったら、きのうしたこともきょう忘れるということになるくらいです。これは生理現象ですから、率直に言ってやむを得ないのですよ。そういうことになると、いかにこの試験を受けることが、少くとも年齢の高い層にとってむずかしいかということは明らかです。ちょっと伺いますが、いま開業しているこの二千人の計理士の年齢分布を調べたことがありますか。
  271. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 平均年齢は約五十二歳であります。
  272. 堀昌雄

    ○堀委員 平均年齢五十二歳ということであれば、これはまさに記憶力は下降の線に乗っておりまして、試験勉強なんていったって、率直に言ってたいへんですよ。だから、そういうふうな状態を見ますと、最高上がっておそらく一五%ぐらいにしかならないでしょう。そこで、いま当面問題になられる方は、おそらく開業しておられる二千人の計理士の方が一番問題で、そのあと、登録しておられて会社につとめておられる方があるいはお受けになって、三千名ぐらいが大体予想されるのではないか。このあとの千名はまあどの程度になるかわかりませんが、一応三千名と考えたとしますならば、過去の例よりして倍の一五%通ったと仮定して、四百五十人ということになる。あとの方は全部計理上ではなくて税理士に強制的にやらされます。よろしいですか。ここに政府が十分考えていただかなくてはならない点がある。計理士会の皆さんは計理士という制度は今回やめてもよろしい。やめてもよろしいということには、現在開業しておる二千名の人たちが、せめて半分なり六割なり七割なりが公認会計士になれるということならば、多数の方がいいのならば、少数の方はやむを得ないでしょう。民主主義の原則ならそうなると思うのです。ところが三千名受けて一五%しか通らなくて、八五%が排除されて税理士の資格になって、これから計理士の会計的なそういう仕事ができないことになるということになれば、私は計理士の皆さんはいま賛成をしておられるけれども試験結果が明らかになったときには猛烈な反対運動が起こるであろうと思うのです。これは重大な問題なんです。私は、政府が計理士の方に対してはやや安易な試験が行なわれるかのごとき感がするような発言をされ、われわれに向かっては公認会計士のレベルの高い試験をしますという表現がとられておる。これがもし同じ試験——試験は一つなんですから、どっちかが動かなければどっちかが裏切られることになる。ここにいまの公認会計士と計理士の争いの問題点が私は象徴されておると思うのです。試験がやすくなるということについては公認会計士は反対だ。試験がやすくならなければこの問題について計理士は反対なんです。そうするならば、この問題を合理的に解決をする道というのは私は一つしかないと思う。その一つとは何ぞやというと、少なくとも計理士の皆さんの中で、試験は試験としてあっても、総合的な判断においてあるべき公認会計士制度に適した人だけは私は前向きに救ってあげるべきだと思うのです。しかし、それでない人たちは、あるべき公認会計士の制度という判断からしてこれは御遠慮願わなければならぬと思うのです。これはしかたがない。それをどうするかという方法論がこの特例試験の問題として出ておるのですが、その試験は今回で打ち切られることになるのでしょう。どうですか。
  273. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 最後の点の、五回で打ち切られる点は、お話のとおりでございます。ただ、私どもは、公認会計士のほうに向いては今度の試験は第三次試験と同じようにむずかしい試験である、計理士のほうに向かっては非常にやさしい試験で大部分が救われるというような説明は決していたしておりません。計理士会に対しましても、法文の条文が第三次試験の条文と同じように書いてあるということでわかりますように、やはり高度の専門的知識を要求いたしておるわけでございます。ただ、先ほど先生もお話ありましたように、経験年数の長い方のしんしゃく点をそれに加えるということにとどまっておるわけでございます。したがいまして、お話のような、誤解のもとで計理士会がこれにいま賛成しておられるというふうには考えておりません。  それから、本来の第三次試験のように、先ほどお話のございました人物と申しますか能力と申しますか、そういう意味の評価を入れることによって救われないかというお話でございますが、実は従来からの、沿革的に申しますと、いろいろな案がございまして、面接試験を加えて面接試験によって公認会計士になる道を開く、あるいはもう少し筆記的になりますが、論文を出させて、その論文によって人物なり能力を判定するという案があったわけでありますが、いずれも先ほど申し上げましたように、趣旨はそのとおりだと思いますけれども、技術的にそれを客観的に判断するだけの確実性がない。したがって、これを受け入れる側の公認会計士側として、そういう不確実な、客観性のない試験では受け入れられないというような経緯があったことはあるわけでございます。したがいまして、先生のおっしゃるのは一つの案だとは思いますが、おっしゃるような案では公認会計士協会のほうも満足しませんでしょうし、なかなかむずかしい問題だと考えます。
  274. 堀昌雄

    ○堀委員 五回しか試験がないわけですから、あなた方は別にやすい試験をするとは言っていないかもしれませんけれども、計理士会の皆さんにすれば、すでに現在二千人計理士として働いておる人が計理士でなくなるのですよ。率直に言うと、この人たちにとっては重大な問題なんですよ。この重大な問題が、結果としてこの二千名と、登録されて会社におる方を千名私は入れておるわけですから三千名はいますけれども、このうち二千人の一五%というと三百人ですから、二千人の中で三百人は公認会計士になれますが、千七百人が外ワクになったときに、その人たちが、ああ、けっこうでございました、われわれは喜んで税理士になりましょうということになるかならないかというのは、今後の重大な問題点なんです。そこで私が申し上げておるのは、何もそういうような方法によらなくても、いまのこの計理士の資格を持っておる人たちについては、ひとつ受験の資格を与えましょう。受験資格だけは、たとえ向こう五年なら五年、十年なら十年いいですよ、与えましょう、その間にひとつ三次試験はお受けなさい、必要によっては、検定試験を一回やってもよろしい、過去におけるような検定試験をやってもよろしいから、検定試験を受けてごらんなさい。——ちょっと伺っておきますが、過去における検定試験の合格率というものはどうなっているのですか。
  275. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 検定試験は、受験者が合格で三千八百十三名、合格者が千五百七名、合格率は三九・五%です。
  276. 堀昌雄

    ○堀委員 いまの三九・五%、約四〇%、検定試験なら通っているわけですね。そこでその検定試験を通った方が、もちろん三次試験を受けて、あと何%通るということは別ですけれども、要するに検定試験をやるならやって、三次試験を受けられる資格を与えておくならば、その人たちはたとえ今度の五回の試験に落ちたところで、資格があるんだから、あと十年なら十年間にほんとに勉強してやられる方は勉強して、いまの総合的な判断ができる条件になれば、能力のある方は通れるようになると思うのです。そうやってもう少し道を開いておいて、計理士制度の全廃ということに踏み切るならいいですけれども、五回の特例試験をやって、おそらく結果は予想する以上には出ないのです。一五%というのは、私は現在より倍に見ているのです。しかし倍になる可能性はないと思うのです。過去の例を見まして、これは単なる少数の試験じゃないのです。大数観察ですから、その大数観察でもし非常に狂うなら、試験がやすくなった。これが三〇%も通るということになったら、試験が変わったということです。それは私たちは明らかに公認会計士を裏切ったことになる。だから私は多少幅を見て、倍ということは大きいですが、その倍に見ても、二千人の中で三百人しか通らないという試験を考えたときに、三年でその資格を打ち切るということは、その時点において非常な混乱が生じてくるということは明らかだと思うのです。だからこの問題は、私ども日本の会計制度を整理をしたいという点については、皆さんと考えは同じです。公認会計士と計理士の争いをやめてもらいたいということについては同じです。同じ基本線の上に立っておって、私はそうやっていまの論議をしておるのは、より合理的にこの人たちの間に話し合いの到達点を求めるほうが政治に携わる者のわれわれの責任ではないかと思っているのです。技術的な問題ではないのです。今後三年目にまたもやこの問題は、附帯決議がつこうが、何がつこうが、二千人の中の二百人しか救済されなかったときには、この問題はそのままでは済まないと思います。その点についてこの次には私は計理士会の皆さんにはっきりだめを押します。しかし幾らだめを押しても、その人が答えても、現在は民主的な世の中ですから、計理士会はその出られた代表の一人の判断だけで処理できるものではないと私は考えます。二千人の中の三百人だけが優遇されることによって解決をしないということならば、もっと解決する道が開かれるべきではないか。だから私が提案をしていることは、何も私はあなたに、ここでよろしいと答えてくださいと言うのじゃないのです。ただ私は問題点を明らかにしておきたいということです。私の言っておることは、三次試験を受けるということについての機会を、計理士のいま資格を持っておる皆さんに少なくとも十年なら十年開放すれば、平均年齢が五十二歳の方が十年たったら六十二歳になる。平均年齢六十二歳の方がこれから公認会計士になりましょうということは、これはなかなかたいへんなことですから、平均年齢ですからちょっとわかりませんけれども、大体のところ目安はつくと思います。その十年間機会を開くことは必要ではないか。それを特例試験で十年もやるということにはならない。そうすればこれは三次試験、あるべき公認会計士の制度に向かっての制度をしいて、その中でこの人たちができるだけ救済できるような措置を講じながら、前向きに問題を発展させていこうという道を開く必要がある。これが政治を担当する者の責任として考えるべきことではないか、いまの特例試験のこのあり方を公認会計士が反対しておられる、こういうことになることは明らかです。いまの法律の制度でいくならば、公認会計士審査会の推薦した方たちになれば、おそらく今度も三次試験と同じように、公認会計士の人は五人なら五人、その他学識経験者が二人ということになるのじゃないですか。どうなりますか。特例試験の試験委員の構成は同じじゃないですか。同じでなければおかしい。同じであるならば、私は過去の経験から見てそんなにそれがやすくなったりする可能性はないと思う。どうですか。この試験委員というものは、いまの第三次試験の構成と変わりますか。公認会計士が五名、その他の学識経験者が二名、その構成が変わるかどうかお伺いいたします。
  277. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 最終的に決定しておるわけではありませんが、特にいまのところ変えるつもりはございません。なお先ほどお尋ねがありましたので、御参考までに申し上げておきますが、ただいまの計理士の年齢別分布を申し上げますと、三十一歳から四十歳までが二二%、四十一歳から五十歳までが三七%、五十一歳から六十歳までが二九%、六十一歳から七十歳までが一六%、七十一歳以上が三・六%ということになっております。  それから計理士について、第三次試験の検定試験か何かを置いて道を開いておいたらどうかというお話でございますが、ただいまのところ十四年の経歴その他によりまして、大体計理士の七割程度の者が第三次試験を受ける資格を持っておるのでございます。  それから計理士は、現在計理士で主たる収入を得ておられる方よりも、税理士のほうの収入で生活をしておられる方のほうが多いようでございまして、税理士を主たる職業としておられる方が計理士の中の約九割以上を占めておるという調べがございます。
  278. 堀昌雄

    ○堀委員 現在計理士の方が税理士をやっておるから、計理士はなくなってもいいということなら問題はもっと早く解決していると思うのです。税理士をしておる人の九割が、やはり公認会計士として生きたい希望を持っておられるから、問題がここまで残ってきておるわけでしょう。いまのものは検定試験がなくても七割の方は三次試験の受験資格を持っておるのですから、この人たちが三次試験を受けられて、そうして合理的な三次試験の制度になるならば、何もいろいろな手間をおかけなくても問題は解決するのじゃないか。だから私は重ねて言いますけれども、特例試験をやるのは、法律の条項を読んだら、率直に言って、しんしゃく点というのが少しあるだけで、ほとんど第三次試験と同じなんです。そうするならば、今度は試験制度を要するに合理化しようということを大臣もここで確約をしておられるわけですから、そういう方向に向かっていくならば、しんしゃく点とかなんとかいう問題よりも、ばるかに科学的、合理的な筋の通った判断の中で救済をされる方たちが出てきていいんじゃないかと思うのですよ。要するにこれまでの二次試験の合格率が大体八・七%くらいだというのが、三次試験は私は二〇%くらい通ったっていいと思うのです。すでに二次試験でもう五・八%にふるわれておるのですから、その中の二〇%ということは、要するに五・八%ですから二・九%、最初の二・九%しか三次試験に通らない。だから千人受けて二十九人、非常に少ない数なんです。それほど少ない数なんだから、三次試験というものがそういう総合的な判断をすることによってこちらが少しゆるくなりさえすれば、私はいまの七割の受験資格を持っておられる方も、十分この中で救済の道が講じられ、そうして試験においてはその人たちはずっと受けられるわけですから、すでに七割の受験資格がある方は資格を切る必要はない。そのままで行けばいいのですから、あと十年でも十五年でも受けられる。しかし現実に年齢別分布を伺ってみますと、五十才以下という方が大体五〇%です。しかしこれから十年もたちましたならば、実際は形は変わってくるわけです。新しく計理士は出てこないわけですから、そういうことになるならば、計理士の制度というものはいま三年でやめてもよろしいということになってくるのではないか。だからそこらについては私どももこれからそういう考え方で、これらの業界の意向も打診しながら前向きに検討していきたいと思います。要するに私ども考えておることも政府の考えておることも与党の考えておることも、基本線では同じなんですよ。要するに日本の会計制度というものが整理をされる、きちんとされる、しかしあるべき公認会計士の方向に向かって前向きに行こうということについては共通しているわけでしょう。両者の争いをやめようということについても共通しておる。計理士制度というものが整理をされるという点については共通をしておる。残っておるものは何かというと方法論なんです。しかしその方法論においては、私はきょう少し長時間にわたりまして論議をしたように、問題点は多数残されておるわけです。ですからその点はひとつ十分今後審議経過の中でぜひ政府側も謙虚にわれわれの声に耳を傾けて、要するにこれらの業界がスムーズなかっこうでわれわれの願う方向に解決がつくような努力を今後とも続けてもらいたい、こういうふうに私は思う次第でございます。  資料についての報告は、終わったあとでひとつ報告をしてください。大臣、それについて、最後にあなたの御見解を聞いておきたい。
  279. 田中角榮

    田中国務大臣 なぜ特例試験を設けるかということをひとつお考えいただきたいと思います。筋三次試験の中で区別をしないでやることがいいのか、特例試験をやることがいいのかということを考えますときに、政府は特例試験ということでやることが正しい、より合理的である、こう判断をしたわけであります。それはなぜかと言いますと、あなたがいま言いましたように、この特例試験というものは計理士制度の廃止に伴う特別の経過措置を行なうものである、こういう立場を明らかにいたしておるわけであります。でありますから、これが受験資格というものは、御承知のとおり、計理士というものに区切っておるわけでございますが、第三次試験ということになれば、計理士に対する特典というものを与えられないわけでございます。でありますから、これが計理士だけが受験資格だということがくずれてくる場合、いろいろな問題が起きます。同時に計理士というものに十年間も受験資格を与えるということも、あなたの考え方としては私もわかりますが、しかしこういう問題に対しては、いつの日にか区切りをつけなければならない、いわゆる一次、二次、三次という試験の体制はくずさないでやる場合には、やはり三年間ということにしたわけであります。五年間にしてはどうかというようなことも考えてみたのですが、こういう問題に対してはやはりある時期五回も試験を行なうという三年が適当であるという考えでございます。  それからもう一つ、しんしゃくを行なうことを考えておるわけでありますが、本制度の中で第三次試験で多数の人が受けるときに、そのしんしゃくを受ける方が同一の状態でもって試験を受けるということは好ましい姿ではないということも御理解いただけるかと思います。いろいろな問題を考えまして、これだけの歴史のある計理士制度が廃止になるという場合に、第三次試験の中でこれを行なう資格を与えるんだということは、非常に何か計理士のためになるようなふうにも思われますけれども、しかし実態の問題としますと、やはり三年間というような区切りをつけて特例試験を行なって、その中でしんしゃくを行なうということのほうがより合理的だ、こういう判断に基づくものでございます。
  280. 堀昌雄

    ○堀委員 私も、大体やめようと思ったけれども、これまた一、二逆戻りしてしまった、いまから三時間もやることはとてもたいへんですからあれですけれども、率直に言ってちょっと論理的でない点があるのです。それはどういうことかと言いますと、特例試験というものが非常に別の試験のようですけれども、別の試験じゃないということなんです。同じような試験だということです。そうするとあとメリットが残るのは、率直に言うとしんしゃく点の問題だけなんです。しかし、そういうしんしゃく点を与える与え方がいいのか、私が提起しておるように総合的な判断をする場所でそれを評価をしたほうがいいのかと言えば、私は総合的判断をするほうがより科学的だと思うのです。しんしゃく点という経験年数だけの問題は、私はここですでに論議をし尽した問題なんです。ですから、経験だけの問題ではないんだ。だから経験よりも能力のほうを評価をいたしましょう、あるべき公認会計士の制度というものは、経験だけがものを言っているんじゃないんですよ。能力が先に出るということですからね。その点では能力を評価することを第一にするというのが試験の制度ではないかということになれば、そのほうがより科学的である。ただ私が言っていることは、そうやって同じ試験をして、しかしその中で、計理士の人たちの問題については比重の置き方を口頭試問と実務試験については、さっき経済課長はフィフティ・フィフティと言いましたけれども、それらについても同じ試験なんですから、実務試験に次ぐ口頭試問についてはウエートは六〇、四〇、筆記試験を四〇に見ましょうということになれば、その中で計理士諸君に対する救済措置は十分に行なえる。第三次試験がそういうかっこうで今後五年なら五年、計理士の皆さんにはそういう特例の道を開きましょう。しかし試験は同じ試験です。口頭試問の上で筆記試験をやるということは安くなるということはないですから、そうすれば、その方法論として口頭試問のほうに比重を少しかけてあげるならば、そのほうがいまの計理士の実態から見て適当じゃないか、こういう問題の提起をし、あわせて総合的な判断もこの上に加えましょうというならば、私は私の提案しておることは、きわめて科学的合理的客観性の沿ったものだと考えておるわけです。あなたもいま政府ですから、私の質問にいまそうは答えられないでしょうから、これ以上私は答弁を求めませんけれども、私の意のあるところは皆さんもそれなりにおわかりいただいたと思いますので、一応私の質疑は終わりますが、報告だけはひとつしておいてください。
  281. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 先ほど御質問のありました検定合格者、計理士その他の以外で九百二十四名合格しております。その内訳を申し上げますが、急ぎましたので非常に大ざっぱな分類になっておりますが、税理士が三百十五名、それから銀行、会社員が三百十三名、それから公務員が二百二十二名、公社員が五名、その他が六十九名ということになっております。
  282. 堀昌雄

    ○堀委員 大学の教授、助教授という人は、その中ではどこに入るのですか。
  283. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 国立大学は公務員の中に入っておりまして、私立大学はその他の中に入っております。
  284. 堀昌雄

    ○堀委員 火曜日でけっこうですが、大学の教授、助教授等の状態をひとつ、その試験を受けられた人数、国立その他でもいいです。それからそれの合格率のところをあとでひとつ資料にして火曜日までに提出願います。
  285. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 ちょっと資料的に困難かと思いますが、できるだけ調べまして提出いたします。
  286. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  287. 山中貞則

    山中委員長 藤井勝志君。
  288. 藤井勝志

    ○藤井委員 開放経済体制下の現在の日本経済にとって、公認会計士制度創立の趣旨からかんがみまして、その重要性が非常に深まっていると思うのであります。そういうときにあたって、このたび公認会計士に特別試験を中心として法律の改正がされるにあたりまして、私は問題を試験制度にしぼって、しかもすでに論議が相当尽きておりますので、きわめて簡潔にお尋ねをいたしたいと思います。  その前に、私も公認会計士制度そのものが、やはり本来の使命を達成するためにはその身分の独立性、その身分の保障、こういう問題について基本的に検討すべき幾多の問題があることを抽象的なことばでありますけれども指摘して、ひとつ今後大蔵当局の御検討を願いたい、このようにまず前提に希望を申しておきます。  ところで私は、今度試験を新しく設けられまして、すでに同じような趣旨の特別試験が十一回行なわれた。ところが今度計理士をなくするというこの条件のもとに、特別試験を行なうという趣旨の大蔵大臣、関係当局の御説明を聞きまして、その点は十分理解をいたしました。ただここに、経験年数をしんしゃくをする、これを政令にゆだねられておるという点でございます。一応やむを得ないたてりであろうと思うのでありますけれども、この政令にゆだねられておるその政令の内容が、非常に幅が広くなれば、公認会計士制度そのものをくずしてくるというようなおそれがあります。それはまた計理士協会のほうでもたいへん関係者が心配をしておられますように、横すべりになだれ込むということになって、ようやく戦後十数年たった公認会計士制度、しかも国際経済社会の一員としての日本の公認会計士制度水準がようやく軌道に乗りかけた今日、それをくずすような結果になるというこの心配と、反対に非常に試験がシビアーになることによって、従来のような試験と変わらないということになれば、計理士の制度はなくなったけれども称号が許されて、現在計理士の名前において生計を営んでおる生活権の問題に非常に大きな影響を受ける。どちらから考えても非常に関係者が心配をし、われわれも政治家として心配をしなければならない、このように考えますので、この点は先ほどから質疑応答は出ておりましたけれども、念のためにもう一度お尋ねを申し上げたいと思います。
  289. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お尋ねのしんしゃく点のしんしゃくの方法について政令で定めることといたしておるのでありますが、過去の特例試験、特別会計士試験においては、経験年数二十年以上の者についてしんしゃく点は百点満点について最高で十五点といたしたのであります。その範囲内で一年について何点というふうに比例加算式のしんしゃくをいたしたわけであります。今回はこれを三十年以上の者に対して、百点万点につき十五点を最高のしんしゃく点として、同じような一年ごとの比例加算方式をとりたいと考えております。
  290. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は、すべて制度というものはやはり相対的なものであって、長短いろいろ議論があると思う。差し引き、よりプラスな方向にお互いが知恵をめぐらして、頭を使って制度改善をやってくる、そこで今度も私は一歩の改善のくふうを当局側はここに提案をされておる。先ほどから、人間が人間を判定するわけでありますから、やはり試験制度は完ぺきではない、そこに口述試験を入れていく、こういうことに今度の改正の中にうたわれておるわけでありますが、私は、公認会計士制度現状から言えば、次のような心配は要らないと思うのでありますけれども、またやはりあまり人物評価に重点を置き過ぎると主観的な判断に陥ってきて、結局客観的な基準というものが行なわれない。人物鑑定機という奇妙なものができれば、これはもう合理的にぴしゃっといきましょうし、あるいはまた高嶋易断の人相見というものを採用すればまた一つの尺度もできましょうけれども、そういうわけにもまいりません。そこで私は、この関係はなかなかむずかしい問題ではないかと思うのでありますけれども、今度の公認会計士制度改正が計理士と公認会計士との長年の問題を解決して、実力のある公認会計士を救済といいますか、いや、むしろ大いに時代が要求する公認会計士として、りっぱに働いてもらうためには、やはり実務関係を中心とした口述試験だけではなくして、人物考査を中心とした口述試験もあわせて行なうべきではないか。それもあまり行き過ぎますと客観性を欠きますから、試験官の主観にとらわれて公平な判断ができないおそれもありますから、程度の問題はよくお考えいただかなければなりませんけれども、人物考査ということをある程度加味した口述試験を考慮すべきではないか、このように考えますが、当局の御見解はいかがでありましょうか。
  291. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 お話のとおり、先ほどもお話が出ましたが、公認会計士としては、専門的知識以上に人格的と申しますか、能力と申しますか、人間的な資質が大事であることはお話のとおりでございます。したがいまして、そういう意味の試験ができますことがたいへん望ましいと思いまするが、これまた藤井先生御指摘のように、これが幅広くなりますと非常に客観的な基準というものがむずかしい。したがって、むしろ主観的な恣意的なものに流れやすい点であります。したがいまして、その辺をいろいろ考えまして、大臣も先ほど御答弁をいたしましたが、そういう点も加味できますかどうか、公認会計士審査会等とも十分相談をいたしまして、前向きの方向で検討さしていただきたいと存じます。
  292. 藤井勝志

    ○藤井委員 私は、最後にひとつ、やはり先ほど御答弁をいただいたわけでありますけれども、この公認会計士制度が生まれることによって計理士制度がこれに吸収をされていく、その経過措置として十一回の特別試験が行なわれたところが、その試験を行なってきて、今日すでに公認会計士制度ができてから十五年たって、またここに問題が提起され解決されなければならぬということは、なかなかこの計理士の問題が簡単に片づかないということが、過去の経過から見て非常に私は心配をいたすわけでございます。したがってこの点についてはひとつ事務当局、もう一度そういったことについては十二分に手配をいたしておる、措置ができる、こういったことの御見解を承りたい。というのは、私は先ほどもちょっと触れましたように、こちらを立てればあちらが立たない、あちらを立てればこちらが立たぬというかっこうで、資格試験でありますから、その資質が低下しないように試験を持っていくためには、そうたくさんの人がこれに収容はできない、そうすると相当の数の人が脱落をする、しかもこれは今度は三年限りで一応計理士という称号は使うことができなくなる、こういうことに相なっておるわけでございますから、そこら辺のかね合いですね、なかなか私は御苦労が多いと思うのでありますが、これについてひとつ局長の御答弁をお願いいたしたい。
  293. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 この法律案を踏み切りますときに一番心配をいたしたところは、御指摘のように三年たった後に計理士制度を廃止することができないようなことがありますと、この法案提出の意義の大半が実は失われるわけであります。したがいまして、その点は計理士協会に対しましても十分に説明もいたしましたし、われわれとして非常にだめを押すと申しますか、念を押してまいったつもりでございます。したがいまして、われわれといたしましては、この法案提出が計理士制度の廃止ということを前提としての特別な措置であるということを十分配慮いたしまして、三年後にまた再び同じ問題が起こらないような慎重な配慮をいたしたいと思います。
  294. 藤井勝志

    ○藤井委員 最後に私は繰り返すようでありますが、希望を述べて質問を終わります。この公認会計士制度というものは、いろいろの角度からこれが制度の完ぺきを期さなければならぬ。試験制度もその一つの手段である、一つの方法である。したがって私はウエートを試験をむずかしくする、こういった行き方よりもむしろ公認会計士そのものの身分の保障、あるいはまた待遇の問題、こういった点について、時代に沿うたりっぱな制度の確立に十二分のひとつ御研究を願い、できるだけ早い機会にその結論を出していただきたい。これを重ねて要望いたしまして、質問を終わります。
  295. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。坊秀男君。
  296. 坊秀男

    ○坊委員 藤井委員の質問に関連して一言大臣にお尋ねを申し上げます。  以下私のお尋ね申し上げますことはやや角度が違っておりましたが、堀委員の質問によって、これに対する大臣はじめ大蔵当局の御答弁によって大体私は本法を策定された当局の御意思というものは納得がいくのでございますが、念のために質問をするのでございまするから、その点ひとつお含みおきを願いたいと思います。  本法案によりますれば、一番大事な点と申しまするか、立法の主眼をなしておりますのは、計理士に公認会計士に登用の道を開くということが一点であろうと思います。それからもう一点は、公認会計士制度というものを整備し、そして監査水準というものを引き上げていく、これが第二点であろうと思います。この一点と二点とがからみ合って本法案が策定されたのであろうと思いますが、そこでいろいろ当局からの御答弁の中にもありましたが、片や計理士を公認会計士に登用していくということは、これはあくまで暫定的、一時的な措置である、かように思うのです。ただ、しかし、単に計理士を救済的の意味で公認会計士に入れていくということなら、これは期間が長ければ長いほどいいと思うのです。四十二年三月三十一日なんという期限を切らずに、長くやっておればおるほど私はいいと思う。ところが、他方におきまして、公認会計士制度というものを監査制度を確立をしていって監査制度水準を上げるということは、そんなゆうちょうなことではない。この制度をよくしていくということは、これはできるだけすみやかなものでなければならない。またすみやかであるべきものだと思います。  それから二つの要請が、一方は長ければ長いほどいい。他方はすみやかでなければならない。二つの矛盾したところの要請が、この法案においてりっぱに調整されておる。ここは私は非常に敬意を表しております。そういう意味におきまして、非常に大事な点は、この計理士を公認会計士に登用するところの特例試験が三年間であって五回やるということと、それから計理士制度を完全に廃止をするということがやはり四十二年三月三十一日ということで軌を一にしておる。ここに妙味がある。まさにこれはうらはらの関係であろうと思うわけです。二つの矛盾した概念を特定の期間によって調整したということにこの法案の非常な重点があろうと思うのであります。したがいまして、この二年間の期間というものは、他の法律で本法は何年何月何十日まで存続するとか、何年何月幾日に廃止するとかいった、単なる期限を切ったものではないと思うのです。本法における期限なり期間なりというものは、この法律案の最も重要なる要素をなしておるんだと思います。さような意味におきまして、今後三年たったときに、あるいは各方面からの要望がひょっとしたらあるかもしれない。あるかもしれないときに、その特例試験の執行の期限というもののだけを切り離して引き延ばすというようなことがあったならば、この法律を殺してしまうものだと思う。その点について大蔵大臣はどういう御決意をなすっていらっしゃるか、このことについてお聞きをしたいと思います。
  297. 田中角榮

    田中国務大臣 いまあなたが申されたとおりであります。この法律を提案をするまでには非常にむずかしい問題がございましたがここまで踏み切ったわけでございます。これが四十二年三月三十一日以後に延びるということになれば、この法律を出す趣旨は失われるわけであります。でありますから、非常に紛争が長いこと続いておった公認会計士と計理士の問題に対して終止符を打つ、こういう考え方に立って相当勇気を持ってこの法律案を提案したわけでございます。でありますから、一方においては公認会計士の制度も、内容もふさわしいものにしなければならないということと、もう一つは、証取法に基づく公認会計士の持つ権限に対して計理士が多年叫んできたものに対して、最終的に道を開いて、四十二年の三月三十一日には計理士制度も廃止になりますし、またこの措置も終わるものだ、こういうことで政府は深い決意を持ってこの法律案の御審議を願っておるわけでありますので、政治的な情勢その他によってだらだら延ばされるというようなことは将来に許さるべきことではないという考え方に立って御審議をいただいておるわけであります。
  298. 坊秀男

    ○坊委員 大臣の御答弁によりまして大体納得いたしましたが、大蔵大臣としては非常に春秋に富むとともにまた政治性にも富んでいらっしゃる。これは非常に私は敬意を表しておりますがそこで、いま決意を承ったのでありますけれども、念のために、この法律の中にはらんでおる事項は延期するということを排除しておる。はらんでおる事項によって延期が許されないんだ。もし延期するというとこの法律を殺してしまうものであるということを大臣確認されますか。
  299. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、これがもし四十二年三月三十一日以後に延長せられるようであれば、この法律を出した意味は全く失われる、こういう表現で申し上げておるわけでございます。
  300. 山中貞則

    山中委員長 竹本孫一君。
  301. 竹本孫一

    ○竹本委員 だいぶ論じ尽くされましたので、私は三つだけ結論的な問題について簡単に御質問をいたしたいと思います。  財務書類の監査証明に当たる人の社会的地位を高め、また監査水準の全般的な質的向上をはかるということにつきましては、非常に御苦心をなさっておりますし、御説明もだいぶいただきましたけれども、そのことと今度計理士を格上げするという問題とはどういうふうに結びつくかという問題であります。
  302. 田中角榮

    田中国務大臣 全く同じなのでございます。公認会計士制度というものを拡充しなければならない、その資質の向上等をはからなければならない、これは、もう申し上げるまでもないことでございます。あらゆる角度からこれらの施策を行なわなければならないわけでございます。そのためにこそ第一次、第二次、第三次の試験制度があるわけでございます。この問題と計理士の廃止に基づきまして特例試験を行なうという法律というものは背反はしないのであります。先ほどから申し上げておりますとおり、計理士制度の廃止という歴史的に非常に大きな時期に際会をいたしまして、多年懸案になっておった計理士のほうからは、公認会計士と同じように証取法による監査の権限を与えよという強い動きもあったわけでありますし、いままでも、この法律によって試験を受け、公認会計士になった方もたくさんあるわけであります。いよいよ計理士の制度が廃止になるという歴史的な時期に際しまして、公認会計士の力をお持ちになる方は、特例試験制度を置きまして、ここに道を開こうということでございますので、先ほども申された、試験を甘くして何でも皆救済をするんだということではございません、こういうことを申し上げておりますとおり、公認会計士の資質の向上内容充実と本法との関係は相反することではなく、また、反しないように措置する意図に出ずるものであります。
  303. 竹本孫一

    ○竹本委員 いま大臣の御説明を聞いておりますと、公認会計士の制度拡充するというおことばがございましたけれども拡充するということと今度の格上げの問題とは一致いたしますけれども、質的な向上という問題と計理士の救い上げの問題とは、必ずしも相反しないとかなんとかいうことではなくて、ぼくは相当相反することじゃないかという心配から問題を伺っておるのでありまして、拡充するという問題ならばわかりますけれども質的向上に反しないとか一致するとかいうことは、まだ十分納得ができないわけであります。  そこで、一つお伺いいたしますけれども、大体計理士というものは、いままでは付則によって認められたいわゆる付則的存在であります。ということは、法のたてまえからいっても、計理士の実力と申しますかあるいは重要性といいますか、社会的な信用と申しますか、全体がレベルを一つ下に下げて、付則的な系列において考えておったのではないか。したがって、その実力等についても、計理士の評価というものは会計士よりも、何割引きか知りませんけれども、相当下げて考えておられたし、いまでもおられるのではないかということは、いかがですか。
  304. 田中角榮

    田中国務大臣 下とか上とかいうことを現実的に比較をされないで、ひとつ事実に基づいて見ていただけばよくわかるわけであります。  計理士制度はあったわけであります。そして、新しい要請に沿いまして、二十三年に公認会計士という新しい制度ができました。公認会計士というものは万全でなければいかぬ、こういうことで、試験制度をとりながら今日に発展をしてまいったわけでございます。でありますから、過去にあります税理士とか計理士とか、またいろいろな方々が、新しい制度である、万全の体制であらねばならない公認会計士になるためには、試験制度を設けて、だんだんと資格を与えてまいったわけでございます。ところが、計理士の問題に対しては歴史的な問題がございまして、長いこと、公認会計士もさることながら、公認会計士とわれわれと一体どこが違うんだ、こういう争いがずっとあったわけでございます。争いがあるという事実に対しまして、計理士にこれを与えるということになれば、一級公認、二級公認、三級公認というような、そういう制度もございます。ございますけれども、公認会計士という制度がいかに重要であるかということに対しては、一、二級というようなものであってはいかぬ。一本の公認会計士制度、こういうことを貫く以上は、何らかその計理士との間の紛争を解決しなければならない、こういうことが事実でございます。そういう意味で、公認会計士よりも計理士が下風に立つものであるという認定ではなく、この事実に徴しまして、新しい一本の公認会計士制度の中にこれを採用するという場合に、どういう制度があるのかということでいろいろ考えた末、特例試験の制度で最終的に終止符を打とう、それはちょうど、時あたかも四十二年の三月三十一日で計理士の制度が切れるんだ、こういうことで、最終的な措置として考えたわけでございます。
  305. 竹本孫一

    ○竹本委員 関連いたしますから第二の問題に入りますが、日本の会計士の問題でございます。先ほど来いろいろと論議が尽くされておりますので、くどくどと申しませんけれども、税務署からも必ずしも信用されない。あるいは税務署で調査された場合には、違った結論が出る場合もあるというような論議が行なわれました。世銀のほうからは、従来の行きがかりもありまして日本の会計士というものを、信用してない。あるいは特殊な事情によって相手にしてないということのようでございますけれども、結論的に申しまして、日本の会計士の制度あるいは会計士というものは、国際的にはどの程度の信用をいま持っておると考えるべきであるか、この点について……。
  306. 塚本孝次郎

    ○塚本説明員 現在日本の公認会計士の地位につきましては、漸次国際的な信用が高まってきております。先般ある企業が、英国におきましてある債券を発行しようという場合に、英国の会社が、日本の公認会計士でもいいじゃないかというようなことを言ったという話を、最近聞いております。アメリカにおきましても、漸次——日本に来ておりますアメリカの公認会計士に対しましては、外国公認会計士制度というものがあるわけでありますが、日本人が外国に行った場合にその制度がないわけであります。これを認めてもらうようにいろいろ働きかけを行なっておりまして、だんだんその方向に向いてくるんじゃないか。したがいまして、日本の公認会計士というのは漸次国際的な信用が高まっておりますけれども、先ほど御指摘がありましたように、国内的に見ましてもまだいろいろな問題がたくさんある。たとえば監査日数の問題であるとか、あるいは経営形態の問題であるとか、いろいろな問題がたくさんありますので、そういうものを解決しながら、漸次国際的な信用を高め、日本の中における社会的な信用というものも高めてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  307. 竹本孫一

    ○竹本委員 重ねて伺いますが、いま英国の例をあげられましたけれども、英国のそれ一つだけじゃ困りますので、英国以外に、一体日本の公認会計士がそのまま通用すると申しますか、信用されておるようなケースは一体どれだけあるのか。もちろん歴史が浅いという点もありますから、一がいには申されませんけれども、それにいたしましても日本の会計士の国際的な信用度、評価というものはどの程度であるかということは、これから開放経済に向かう場合に特に重大な問題でありますから、その点重ねてお伺いいたしたい。  さらに、時間を倹約する意味でまとめて申しますが、今回特例試験の制度をとっていくというようなことになれば、その少ない評価がますます少なくなって、日本の公認会計士の将来に非常な致命傷を与える心配はないか、この点について、大臣ひとつ……。
  308. 田中角榮

    田中国務大臣 外債の発行等で、日本の公認会計士の監査証明をつけていま幾多のものを出しておりますし、また検討もいたしておりますが、税関係とか経理関係で、日本のものが劣るというふうにはいわれておりません。いままで転換社債を出すとかいろいろな問題でも、公認会計士が出したものをそのまま認めておるということでございます。ただ国際機関、特に世銀というような場合は、アメリカを顧問のようにしておりまして、長い歴史がありますので、そういう意味で嘱託のようにしてアメリカ人が来る、こういうことはございます。  それから、アメリカから飛行機を買うとか、また延べ払いをするというものもございますが、大体は、日本の公認会計士と話をしてよろしゅうございましょう、また、アメリカ式にスタイルを変えて、もう一ぺんそのまま打ち直してくれないかというようなことをやっておりまして、私は、必ずしも日本の公認会計士が世界的にレベルが低いものだという評価をされてはいないと考えております。  それから、公認会計士の会がございまして、先年東京で行なわれました。カナダ等との交歓もありまして、日本の公認会計士の地位はとみに上がりつつある、このように評価してよろしいのではないか。  それから、今度の、計理士の方々を特別試験によって公認会計士に登用する資格を付与する試験を与えても、私は、これが試験をやすくするとかそういうことではないのでありますから、日本の公認会計士の地位とか名声とか評価とか、こういうものを傷つけるというものでは絶対なく、またあってはならない、こう考えております。
  309. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、先ほど申しましたように、国際的なレベルでこれからものを考える、国際的な信用を中心にものごとを考えるということが開放経済下のわれわれの一番大事な課題であると思いますので、そういう考え方から、その角度から考えますと、今度の制度にはよほど無理がある。そこで一番最初にお尋ねした問題にもう一度返りますけれども、そしてまた第三の私の質問点になるわけでございますけれども、結局この制度は、経理士制度をやめるんだという特別な事態が生まれたので、非常緊急の特別の処置だ、こういうふうにも受け取れますし、それからまた経理士、会計士のあり方から申しまして、開放経済下のあり方から申しまして、レベルを上げなければならぬという大きな要請、最重要の要請にもこたえなければならないという点もありますので、この二つの要請に対して一体どちらに重点を趣くのであるか、この点をもう一度よく承っておきたいと思います。
  310. 田中角榮

    田中国務大臣 どちらに重点を置くのかというふうになかなか考えられない問題でございます。フィフティー・フィフティーというふうにお答えをしたようでございますが、確かに公認会計士の内容充実して世界的なレベルにしなければならぬ、こういうことはもう不動のことでございます。同時に、経理士の制度が廃止になるということも現実として動かし得ないことでございます。こういう問題を、制度をゆがめず、質は向上しながら現実問題を処理していくというのが政治のむずかしさだと思いますが、その調和点の最高なるものがいま御審議を願っておるものだと御理解をいただきたい。
  311. 竹本孫一

    ○竹本委員 最高の政治的表現で答弁をされたので、なかなか理解がむずかしいのですが、そこで最後に、もう一つだけお伺いいたします。  第三点は、その相矛盾するような政治的要請を二つ巧みに解決していこうということでございますが、そうなりました場合の今度の特例試験の問題でございますが、簡潔に結論を承りますが、結局先ほど堀委員も非常に追及をされておりました点でございますけれども、試験をやる場合には、たとえば会社の就職採用試験のようなもので、採用するために試験をするのか、あるいはこれから断わるのに一度試験をして、断わる口実をつけるために試験をする場合もあります。ここで三千名あるいはそれ以上のものがありますが、その経理士を今度の試験は切り捨てるためにやるのか、あるいは救い上げるためにやるのか。その両方、どちらも考えないで無色透明、厳正中立で試験だけやってみるのか。この三つのうちのどれに重点がありますか。これだけ承っておきたい。
  312. 田中角榮

    田中国務大臣 切り捨てということではございません。それから、すべてこれを登用してしまうというのでもございません。厳正中立ということばが一番当てはまるかもわかりませんが、少なくとも公認会計士制度というものは非常に重要な問題であります。私は、これからの公認会計士制度というものはたいへんな重要度を持つものだと思います。そういう意味で公認会計士制度拡充しながら、内容充実せしめながら、その基本線はくずさないで、現実的に経理士の制度が四十二年の二月三十一日でなくなる、しかもその中には有資格者が相当おられる。こういう方に対して特例試験という、政府が仲裁役といいますか、合理的な調停案、調和点を解決するように、そういう状態で出したわけでございますから、そこはひとつどうぞ現実を十分見ていただけばおわかりになると思います。しいて言えば、公認会計士のほうは絶対に内容を悪くするという考えはないのですから、これは問題はないわけです。ただ、税理士さんのほうに対して救済もしない、切り捨てもしない、どうするのかということは、当然有資格者に対しては特例試験でやりたい、こうすることが、内容が同じで特例試験だけということは一体どういうふうにプラスがあるのかといえば、長い歴史的な計理士制度がなくなるときに、こういう単行法を出してやることだけでも政治的にも効果もありますし、制度が最終的な段階においてかかる立法処置を行なうということは、政治的にも錦上花を添えるというか、いずれにしても効果は相当ある、私はこういう考え方でございます。
  313. 竹本孫一

    ○竹本委員 だいぶむずかしい。しかしこれが一番大事な。ポイントでございますからもう一度お伺いいたしますが、特別に今回これだけ大騒ぎをして問題を起こして特例試験をやるという以上は、政府としては何らか特別の政策意図、政治的意図がなければならぬと思うのです。その意図は一体切り捨てることにあるのか、あるいは救い上げることにあるのか。何も全然関係ないということになるならば、何のために特別の措置を講ずるのかということになりますので、この機会に、どちらに重点を置いてやるのか、どこがねらいであるのか、また結果としての政策効果の問題から見ましても、どちらの効果を期待しているのか、したがって政策意図はどこにあるのかということについては、もう少しはっきり言明しておいていただく必要があるのではないかと思います。
  314. 田中角榮

    田中国務大臣 会計監査を公認会計士一本にいたしますために、この法律で計理士を三年後にはやめる、こういう考え方を明らかにいたしたわけであります。公認会計士制度、税理士制度というものがいろいろ紛淆して困っておったということはもう御承知のとおりでございますので、かかる措置をやることによって三年後には計理士制度を廃止するのだ、こういう大きな政策意図があるわけであります。
  315. 竹本孫一

    ○竹本委員 三年でやめるから、私がここで申すのは、それを救っていこうというのか、あるいは三年でやめるけれども切り捨てようということを意図されているのか、この点がさっぱり御答弁でははっきりいたしません。こういう重大な問題でございますので、やはりこの問題については、政府の基本的な政治政策意図というものを明確にされるように希望いたして私は質問を終わります。
  316. 山中貞則

    山中委員長 金子一平君。
  317. 金子一平

    ○金子(一)委員 税理士法改正法案につきましては、すでに同僚の小山議員から逐条的に詳細な質疑応答もございましたので、私は、時間の関係もございますから、重複を避けまして別な観点から若干の点につきまして政府の考え方をただしておきたいと思います。  今日の租税制度は、これは国税の大部分がそうでありまするけれども、納税者と税務官公署の相互信頼を基調とした申告納税制度がとられているわけでございまするけれども、しかし、税務執行の実際について見ますと、必ずしもそこのところは法の理想としているようにうまくいっていない。やはり取る者、取られる者という気持ちから起こるいろいろなフリクションが常時起こっているわけでございまして、この間に処して税理士の諸君が果たされる公共的使命と申しますか、社会的使命と申しますか、適切な円満な納税をやってもらうための役割りというものは非常に高く評価しなければならぬと私は思います。しかしながら、同時に考えてやらなければならぬことは、いま申しましたような税理士の公共的使命ということのほかに、やはり税理士も納税者の委嘱を受けて税務代理をやり、書類の調製をやり、あるいは相談に応ずるわけでございますから、やはり私は税理士がほんとうにそういった使命を自覚して働きやすいような体制を税理士法でもとってやらなければいかぬと考えるのでありますが、こういった観点から納税者の正当な権利、利益を擁護するという点につきまして、今回の改正税理士法ではどういう配慮を加え、どういう改善を行なっておるか。従来からいろいろな要望が各方面から出ておりまするけれども、こういった点について改正の要点を簡潔にひとつ承りたいと思います。
  318. 泉美之松

    ○泉政府委員 税理士の制度につきましては、お話のように税務官庁と納税者との間におきまして適正な納税義務の実現に努力するという意味におきまして、税理士の方の公共的な使命は非常に高いわけでございまして、それと同時にお話のように納税者の依頼を受けてやるわけでございますので、納税者の正当な権利を擁護するために税理士の方がおつとめになることはもちろん当然でございます。そこで今回の改正におきましては税理士業務の範囲につきまして、従来申告納税の所得税、法人税、相続税あるいは贈与税、地方税で申告納税ではございませんけれども固定資産税、事業税、こういった特定の税目についてだけ税理士の独占業務として扱われておったのでございますが、この点につきましては御承知のとおり三十七年以来間接税等におきましても申告納税制度がとられまして、日本の納税制度全体が大きく申告納税制度を中心に運営されるということになってまいっておりますので、その点を考慮いたしまして税理士業務の範囲を拡張いたしまして申告納税制度——国税、地方税のうちの、たとえば法定外普通税であるとか、あるいは登録税、印紙税とかといったように税理士さんの関与を必ずしも適当としないような特定の税目を除きまして、その他の税目全般に税理士業務を拡大いたしまして、そういった申告納税制度のとられている多くの税目につきまして税理士の方が業務を行なうことができる。同時に納税者の方はそういった税目について税理士の方の援助を受けることができる、このようにしたのが大きな眼目でございます。同時にそれぞれの規定におきまして、たとえば税理士の方が付随業務として会計業務を行なうことができる。これは従来からそういった考え方はとられておりましたけれども、会計業務というのは独占業務でないので会計士の方もできれば公認会計士の方も、また税理士の方もできるという解釈だけであったのを、今回税理士法自体におきまして付随業務として会計業務も行なうことができる、こういうふうにいたしまして、税理士の方がその会計業務と同時に納税者のために申告書、申請書その他税務官庁に提出する書類を作成することができるんだというようなことを明らかにいたしまして、そういった税理士の独占業務というものの範囲を明確にして、納税者が信頼して税理士の方に仕事を頼むことができるというようにいたしたのでございます。また、従来税理士の資質の向上につきましてはいろいろ問題のあったところでございますが、今回制度的に定期的な研修を税理士会において行なう。それによりまして納税者が安心して税理士の方に依頼ができるというような制度にする、こういった事柄等を取り入れまして、その税理士の方の業務の範囲を拡大し、明確にし、また資質の向上をはかるというようなことにしたのと、さらに納税者から税務相談に際しまして税理士の専門的意見を求められた場合に、税理士の方がそういった点について審査証明の制度を設けまして、納税者の方が信頼してその税理士の方に見てもらう、それを税務官庁に提出することができる、こういったような制度も取り入れたのでございます。そういった面におきましては、納税者の方が今後そういう新しい制度が加えられることによって大いに利益を得ることができるものというふうに考えておるのでございます。
  319. 金子一平

    ○金子(一)委員 たとえば調査の事前通知を厳格にひとつやってくれとか、あるいは更正決定の通知も税理士に通達してくれとか、いろんな要望がかねがね出ております。私はこういった問題は今回の改正で、ある程度のものは片づきましたけれども、まだ未解決のままに残っておるものがたくさんあると思うのであります。たとえば、調査の事前通知のごときは、調査の内容いかんによってはあるいはできない場合もあるかもしれぬけれども、更正決定の通知なんていうことは、これは代理権の授受の範囲いかんによっては私は今後やはり取り上げて考えられたらいいのじゃないか。そうして少しでも税理士が納税者の代理人として、またその資格を持って働きやすいように今後ひとつこういった点についての御検討をいただいたらどうかということを感じております。  それから次に、いま税務執行の面で税務行政上一番の隘路と申しますか、困難を感じておられるのは、やはり中小企業問題だろうと思います。なかなか税理士を雇うだけの、あるいは依頼するだけの余裕はない、税の知識は全然ない、税務職員もなかなかかゆいところへ手の届くような指導ができかねるというような多数の中小企業、零細企業の皆さんが国税、地方税を通じてでございますけれども非常に困っておられる。しかもそういった間隙に乗じてもぐりと申しますか、にせの税理士がばっこし、あるいはまた民商の働きかけがあって、全国的な反税運動がまま起こりそうなこともあるというような状況だと私は承知いたしておるのでございまするが、今回の改正に関し、こういう点についての配慮はどうなっておるか、また制度の問題としてでなくて、運営の問題としてこういった点をどう考えておられるか。従来からいわゆる臨時税理士制度などというものができておりまして、相当こういった穴を埋めるために非常な努力をしておられる。また税理士の諸君自身も申告期等におきましては無料で奉仕して一生懸命努力しておられた事実は承知いたしておりますけれども、私は徴税当局あるいは大蔵当局自身がこういった面について、これは税制ともあわせ考えてもらわなければならないことは、この前の当委員会で私が申し上げましたとおりでございますけれども、この税理士制度改正に関しましてこの点をいかように考えておられるか、また今日の税理士の数がどんなふうになっておるか、はたして普通のノーマルな状況で、こういった方々の要請にこたえられるような状況になっておるのかどうか、そこら辺の点もひとつお答えをいただきたいと思います。
  320. 泉美之松

    ○泉政府委員 最初の調査の事前通知とか、あるいは更正決定の通知の問題からお答え申し上げたいと存じますが、試査の事前通知につきましては、御承知のように現在規定がございまして、納税者に通知する場合におきましては、それに関与しておられる税理士の方にも通知するということになっておるわけでございます。この点につきましては、査察とかそのほか脱税等のこと、あるいは令状をもらって行くまでに至らないけれども、非常に脱税の疑いの濃い場合、こういう場合にまで通知することはできかねるのでございますけれども、しかしそういった場合以外の場合におきましては、できるだけその事前通知を励行することが望ましいと考えられておるのでございます。現在の段階におきましては、そういう点でむしろこの規定が税務署あるいは国税局によりまして、必ずしも統一的に行なわれておらないという点が問題でございますので、その点は国税庁のほうにおきまして、実行問題としてこの励行をはかるようにしていただくことがまず先決問題ではないか。今回の改正におきましては、先ほど申し上げましたように、税理士の独占業務として対象になる税目を広げたことに伴いまして、調査の事前通知を行なう税目の対象も同様に広げたわけでございますが、制度といたしましては、今後の実行によってその点がさらに改善され、その改善のぐあいを考えまして、今後制度的に相当検討すべき点があれば検討いたしたい、かように考えるのでございます。  なお更正決定の通知の問題につきましても、本人に通知するだけでなしに、代理人たる税理士の方に通知したらどうか。まことにごもっともの御意見でございますが、更正決定通知の効力の問題等もからんでおりますので、代理人だけ通知するという、御承知のように弁護士の場合におきましては、弁護士の方だけに通知することによって効力発生ということになっておりますが、これらの点は、弁護士の場合には訴訟遂行という点で特殊の性格を持っております。税務の場合に、代理権を尊重するというたてまえはけっこうでございますが、どの範囲まで行なうべきかということにつきましてはなお問題がございますので、今後検討をいたしたいと考える次第でございます。  それから中小業者の税務の問題が今日の税務行政の上において大きな問題になっておりますことは御承知のとおりでございます。この問題はどちらかというと、国税庁のほうでお答えいただいたほうが適当かと存じますが、制度の問題として私のほうから申し上げますと、お話のように、中小企業の場合の税務行政の問題につきましては、まず第一には税制がもっと簡素な、わかりやすいものになって、中小企業の方も税法がわかるというような方向税制そのものを持っていく、これが基本であろうと存じます。先般も申し上げましたように、次の通常国会におきましては、法人税法及び所得税法の全文改正を行ないまして、いまのわかりにくい税法をわかりやすいものにいたしたい、そのような努力をいたしたいと考えておるのでございます。  それから税理士法といたしましては、お話のように従来臨時税理士の制度がございまして、これにつきましてはいろいろ御意見のあるところでございますけれども、先ほどお話がございましたように、納税者で所得の少ない人は税の知識も乏しければ、また税理士の方にお願いしてそれだけの報酬を払うだけの力もないという人もおられるわけでございます。これらの点につきましては、お話がございましたように、毎年所得税の申告納税の時期におきましては、税理士会の方に無料で奉仕をしていただきまして、おかげをもちまして申告納税の適切な運営がはかられておるわけでございます。今後ともそういった制度を続けていただきますとともに、また市町村役場、農業会等におきまして、そういった臨時税理士の制度で申告納税の運営を助けていただく。これはぜひ必要であろうと思うのでございます。そういうことによって、お話がございましたように、民主商工会などのような反税的な運動を押え、そして税務行政が円滑に運営されていくということになるものと考えておる次第でございます。
  321. 金子一平

    ○金子(一)委員 数のほうはまだお答えがございませんでしたけれども、たとえば今度の改正案では、事務所を一カ所に統一するということになっておりますが、やはり附則を十分活用されて、全国的なアンバランス、地区的なアンバランスが相当あると思います。そういう点はひとつ十分に税理士の働きやすいように、納税者の便利なように考えてやっていただきたいということをつけ加えておきます。  それから前々からでありますが、しばしば税理士業務の実情を見ておりますと、使用人と申しますか、従業員と申しますか、大勢使っておるために、監督上いろいろ問題が起こるような場合もあるようですが、この税理士の使用人に対する監督のあり方について、どういうふうに考えておられるかを伺いたい。
  322. 泉美之松

    ○泉政府委員 先ほどお尋ねのございました税理士の数は、三十八年十二月末現在におきまして、一万三千百五十六名と相なっておるわけでございます。ところで税理士の方の援助を受けるところの納税者と申しますと、御承知のように法人数が六十万、そのほか事業所数が百万、それから最近は所得税の中で、譲渡所得あるいはその他の所得のウエートが非常に高くなっておりまして、そういった人たちの申告も、租税特別措置法の特例等がいろいろございますので、そういった特例の適用を受けるにつきましては、税理士さんのお世話になることが多いわけでございまして、そういったのがやはり数十万ございます。そういった点を考えますと、現在の一万三千百五十六名ではまだ不足である。先ほど申し上げましたように、臨時税理士といったような制度にも頼らなければならないという問題があるわけでございます。  次に、お尋ねの税理士業務をやっていく場合におきましては、実情を拝見いたしますと、まず財務諸表を作成して、その企業の業態を明らかにする、これが相当大きなウエートを占めておりまして、そのために使用人の方を相当たくさん使っておられる事例が多いようでございます。ところが使用人が非常に多くなりますと、いかに有能な税理士さんの方でございましても、それをすべて総括して仕事をやっていくということは、なかなか骨が折れるわけでございます。つい使用人まかせになりかねないというおそれがあるわけでございます。それではやはり納税者の信頼にこたえるゆえんではないと思われます。そういう意味におきまして、使用人について十分監督をしていただいて、使用人が間違ったことをしないようにお願いしたいのでございます。今回税理士法改正にあたりまして、四十一条の二に、使用人に対する監督義務を規定いたしました。もちろんこれには罰則の規定もございませんけれども、しかしこれはいわば使用人を使う使用者としての当然の義務でもあろうかと思いますけれども、特に法律に規定をいたしまして、御注意を促し、税理士の方の自覚を求めておる次第でございます。ただ、それではいかなる監督を行なうべきかということになりますと、これは法律で規定することはなかなかむずかしゅうございます。したがいまして、税理士会におきまして会則を設けまして、税理士会において自主的にどういうふうな監督を行なうかということをおきめいただくのが望ましい、かように考えて会則の規定におきましてそういう規定を設けることをお願いいたしておるわけでございます。
  323. 金子一平

    ○金子(一)委員 いまの問題に関連して、先ほど公認会計士の質疑の際にパートナーシップの問題が出ておりました。従来から、私の記憶に誤りがなければ、税理士法人というものが成り立つかどうかというようなことで議論をされたことがあったやに記憶いたしております。税理士法人ができるか、あるいは法人は単に税理士をあっせんするということを業としておるのか、これは別にいたしまして、両方の場合があろうかと思うのでありますが、私はこの問題は、むしろ法人、個人の課税の問題からこういった問題が大きく取り上げられてきたのじゃないかと思うのでありますが、あなた方ももうそろそろこの問題については結論を出さなければならぬ時期にきております。どういう形態がいいのか、今後どんどん税理士さんに活躍してもらう場合に、パートナーシップの行き方もあるのだろうし、その他の行き方もあるだろうが、いままで問題になっておったようなものに対する主税当局の考え方、これをちょっと関連して伺っておきたいと思います。
  324. 泉美之松

    ○泉政府委員 いわゆる税理士法人の問題につきましては、昨年税制調査会の税理士特別部会が開かれました際に、いろいろ検討をいたしたのでございますが、御承知と思いますけれども、法人みずからが税理士業務を行なうことを事業目的に掲げておる場合には、登記所におきましてそういう法人の登記はお断わりいたしておるわけでございます。したがってそういう税理士法人はないわけでございます。ただ使用人を雇用して、税理士業務を行なうことを明記はしておりませんけれども、会計経理に関する各種の業務を行なうことを事業目的として掲げまして、それに付随する業務として、使用人たる税理士をして事実上税理士業務を行なわせる、あるいは他の税理士をあっせんして、これに税理士業務を引き受けさせることをする法人がございます。それがいわゆる税理士法人の問題でございまして、これにつきましては税制調査会におきましても、いろいろ検討をいたしたのでございますが、弁護士につきまして法人を認められておらないと同様に、税理士のような仕事も委嘱者との間の個人的な信頼関係に基づく面が非常に多いのでございます。そういう意味におきましては、法人を認めるべきかどうかという点にはなかなか問題がございます。これを外国の制度で見ますと、ドイツにおきましては、制限いたしておりますけれども税理士法人の制度がございます。そこでわれわれといたしましても、この問題をいろいろ考えたのでございますけれども、そういう法人を認めることの社会的要請がどの程度あるのかどうか。それからまた、そういう法人を認めることによって、先ほどお話のように、アメリカの公認会計士のパートナーシップのようにうまくいくかどうか。またそういう法人を認めることになると、かえっていわゆる一人の税理士の方が仮装的な法人格を持つようになりはしないか、こういった点をいろいろ考慮する必要がございますので、それらの点につきましてはなお今後検討すべきである、いまにわかに税理士法人を認めるということに踏み切ることができなかったのでございます。今後お話のように、社会的な事態の進展に応じて検討をしてまいりたい、かように考えるのでございます。
  325. 金子一平

    ○金子(一)委員 今度の改正の大きな眼目の一つは、税理士の業務の範囲の整備、権利義務の規定の整備というような点であろうと思います。いま一つは、公認会計士についても問題となったような試験制度改正だろうと思うのであります。一体この改正によってどういう点が合理化されたのか、それから他の国家試験とどういう点が違うのか、あるいは歩調を一にして直したにすぎないのか、そこら辺の点をこの際明確にされると同時に、試験制度改正は、従来の制度のもとで受験しようと思っておった諸君にとっては非常に大きな影響があるわけでありまするけれども、もちろん如才なくこの点については経過措置を十分考えてあると思うのでありますが、一体受験生のそういった不安は一掃されたと考えていいのかどうか。この点を明確にして御答弁願います。
  326. 泉美之松

    ○泉政府委員 税理士試験の制度につきましては、問題が二つございます。一つは一般的な試験の問題と、一つは特別試験の問題でございます。  これを分けて申し上げますと、最初の一般的な試験制度につきましては、御承知と思いますけれども、従来は試験を受ける人の資格を制限いたしまして、その制限された資格を持った方だけが受験できる。そうしてその場合には、試験科目が五科目ございますけれども、科目別の合格制度をとっております。ところがこういう制度になりますと、一科目ずつとっていこうということになりますので、受験者が非常に多くなりがちでございます。そういたしますと、試験をするほうもとかくむずかしい試験を出しまして、合格者を厳選するという傾向になりがちでございまして、過去の実例を見ましても、一年で全科目に合格する人はきわめて少ないというような制度になっております。結局暗記力にたよるという傾向があるわけでございます。先ほど公認会計士の制度の問題のときにもございましたように、試験というのは必ずしもその暗記力があるからそれでその資格があるというものではございません。税理士の仕事というものは、結局企業の実態を把握いたしまして、それを所得税なり法人税の申告書を作成するという点にございますので、そういった点からいたしますと、税法を暗記していることが必要なのではなくして、税法を見ながら、その税法に基づいて判断をして、当該企業の申告書を作成していく点に使命がございますので、暗記力にたよる試験にすることは適当でないということから、どのように試験制度合理化するかといろいろ検討いたしたのでございますが、受験生が相当多うございますので、一つだけの試験で済ますのはなかなか困難が伴います。  そこで予備試験と本試験とに分けまして、予備試験におきましては、一応常識的な問題を出しまして、常識的な試験である程度ふるいにかけまして、人数を少なくして、本試験を行なう。本試験のほうもマルチョイ式の簡単な試験と、それから専門的な事項についての筆記試験、こういうふうにいたしまして、専門的な事項の筆記試験につきましては、税法を備えつけまして、その税法を見ながら税務の応用能力を試験するというふうに改める。そういうことがむしろ税理士の方に要求される資質を試験するのに最も適した方法ではないかというふうに考えられますので、そういう制度に改めたわけでございます。  こういうふうに制度を改めますと、従来ございました科目試験免除の制度がなくなってまいりますのと、それから一科目ずっとっていけば合格できるという制度がなくなります。そのために従来から税理士試験を受けようとして努力されておる方、あるいは五科目のうち何科目か合格されておる方、こういう人にとりましては非常な変革になりますので、経過措置を設けまして、まず一科目以上合格しておられる方は、予備試験を受けなくても今後五年間は本試験だけ受ければよろしい、それからまた従来合格している科目と新しい試験の科目と同一のものについては試験を受けなくてもよろしいというような経過措置を設けまして、そういう不安のないようにつとめたつもりでございます。私どもとしましてはずいぶん努力いたしたつもりでございますが、受験生の方から見ればあるいはまだまだ不十分だという御意見があろうかと思います。少なくとも私どもとしてはそういった経過措置は万全の措置を講じたつもりでございます。
  327. 金子一平

    ○金子(一)委員 主税局長の御苦心のほどは十分承りましたが、ただ一つこの際、受験生諸君の既得権あるいは期待権の擁護という立場からお考えいただきたいと思うのは、従来大学当局で大学院の学生の募集に際しまして、修士の学位を有する者に対しては税理士試験の一部免除をやるという広告をして、また在学生の中にはそのことを期待して入学した者も相当あるようであります。こういった場合は少なくとも現在四月一日に入学しておる、あるいは年末に大学院に入っておるという者につきましては経過措置の特典に浴させるようにするのが妥当じゃないか、こう私は考えるのでありますが、この点明確な御答弁をいただきたい。
  328. 泉美之松

    ○泉政府委員 その前に、先ほど申し忘れました点がございますので一言申し上げておきたいと存じますが、そのように予備試験、本試験、本試験も一次と二次というふうにしたということは、いかにも試験をむずかしくして、その試験に合格する人を少なくしようとする意図があるかのごとく解される向きがあるのでございますが、決してそうではないのでございます。先ほど申し上げましたように、そういう試験にすることによって税理士となる資質を有する人を合格させてあげたいという気持ちで、いままでのようにいたずらに暗記にたよる試験でございますと暗記力の旺盛な人だけが合格して、非常に実務にも詳しいし、税法を見ながらなら非常に正確な答えができる人でも暗記力がないために答えが正確にできないというような人も救うことができ、かえってそれが税理士の業務を行なう上においていいというふうに考えておるのでございます。したがって試験は決してむずかしくなるのではなくてかえってやさしくなることのやり方のほうが、そうして総合的判断から見たほうが、その人を合格させるかいなかということにおいて好ましいというふうに考えておるのでございます。  次に、お話のように従来大学院の修士課程を経まして、財政学であるとか、経営学であるとか、あるいは経済学であるとかいったような学科を修めました者につきましては、それらの科目についての試験免除の制度がございます。そのためにそういう大学の募集広告に応じて入学しておられる方がございます。それは今回の改正でそういうことを期待して入学したにもかかわらずそういう資格を奪われるということになりましては、大学自体はおそらく得をしたということにもなり、またそういうことを期待して入った学生としては非常に困るというような御意見もございます。これはまことにごもっともだというふうに感じております。したがって、そういう点につきましてはしかるべき措置がとられることが望ましいというふうに考えておるのでございます。
  329. 金子一平

    ○金子(一)委員 今回の試験制度改正で税務職員の試験の問題に関連して相当各方面で論議が行なわれましたが、私は率直に言って、税務官吏なるがゆえに特別の恩典を与える必要もないし、かといって特に不利な扱いをする必要もない、これは各国の例もあることだから、このバランスを見て考えられたらいいと思っておるのでありまするけれども、ただこの問題に関連して一言申し上げておきたいのは、従来は税務職員につきましては、終戦後はもちろんでありまするが、戦前から特別のむずかしい仕事に関与しており、誘惑も多い仕事に関与しておるというようなことで特別の待遇を与えられておったのです。一生税務官吏としてつとめようということで税務官署に飛び込んだ人が好きこのんで飛び出したくなるはずはないと思う。最近の処遇の状況を見ると必ずしもこの点は十分にいっていないようです。特別職階というものがあったようでありますが、いまはああいったものはどこへ吹き飛んだのかわからないような状態であります。こういった処遇の問題についても、これは大臣に特にお考えいただきたいのでありますけれども、優秀な税務官吏を職場にしっかりと確保せぬ限りは、税理士の方々の協力も納税者の方々の協力も得られないわけであります。試験の問題につきましてはもう時間もありませんのでこれ以上突っ込んで申しませんけれども、いまの処遇の問題について一言大臣の御見解を承っておきたいと思います。
  330. 田中角榮

    田中国務大臣 私も税務署の問題につきましては、大蔵省に入りましてから最重点的な施策一つとしてこれを検討してまいったわけでございます。あなたがいま御指摘になりましたように特別職その他の問題等給与の問題に対して人事院に相談をしたり陳情をしたりいたしたこともございます。特に大蔵省には税務署の職員とそれから税関の職員がおりまして、非常にむずかしい専門的な仕事をしておりながら、求められることだけ多くて与えられることの非常に少ない状態に対しては、十分実情を把握しながらこれが職場に定着して重要な任務を遺憾なく果たしていただきたいという考え方で各般の施策を行なっておるわけでございます。今年度特別な昇給も多少していただいたり、また専門官の制度を設けてもらったり、いろいろなことをいま考えております。  この税理士の問題は処遇という問題だけではなく、私が考えましたのは、世界各国ともそうでありますけれども、その仕事を専門にやっておるのでございますから、特別の試験をしなくともある一定の経験年数を積めばその道の全くの専門家でございますので、これらの資格試験に対しては特別の配慮をしてもこれが税理士の制度をくずすものではなくこれは当然のことだという考え方で今回の一部改正お願いをしたということでございます。
  331. 金子一平

    ○金子(一)委員 税理士の懲戒につきまして今度はだいぶ規定を整備されました。一般的に与えておる印象では、今度は税理士の取り締まりをやかましくやるのではないか、こういう印象を与えておるようでありますが、私の承知しておるところでは、公認会計士法その他の法律と足並みをそろえて、弁護士、公認会計士等の職業的専門家並みの扱いをしようということでやっておられるだろうと考えておるのでありますが、その点についてのお考え方と、それからもう一つ、ただその場合でもちょっと気になるのは、懲戒について、懲戒の審査会ですか、今度できることになっておるのでありますけれども、長官がかってに審査会の議決に左右されないで懲戒処分ができるのじゃないかというふうに考えられておるのでありまするが、この点についての明確な御回答をいただきたいと思います。
  332. 泉美之松

    ○泉政府委員 税理士の方に脱税相談など税法あるいは税理士法に違反する行為がありました場合に、懲戒を行なうことになるわけでございますが、この懲戒処分につきましてはいろいろ問題がございますが、一つは従来懲戒の効力につきましては明文の規定はなかったのでございますけれども、欠格要件等の規定などからいたしまして、確定したというときにその効力が発生するというふうに解されておったのでございます。そういたしますと、国税庁長官が懲戒処分を行ないますと、それに対して審査請求が出まして、審査請求を行ないました上で、裁判に係属することになるわけでございますが、そういたしますと、裁判で確定するまでの間に御承知のような現在の裁判の状況ございますと、相当長年月を要するわけでございます。そのためにたとえば半年の業務停止という処分をいたしましても、その処分がされましてから裁判が確定して、それが実際上業務停止になるまでに数年かかる、こういった事情がございまして、そういったことは税理士法だけそういうふうに解されておるのは適当でないので、ほかの公認会計士などの制度からいたしましても、それは行政処分があったときに、行政処分としての効力を発生するというふうに解すべきであるというふうに直す。と同時にそういうふうにいたしますと、従来税理士の方に対する懲戒処分は国税庁長官の権限とされておったわけでございますが、その運営をより一そう客観的に権威あらしめるために懲戒審査会を設けることが適当であろうというふうに考えられましたので、税制調査会の答申にもございますとおり、今回税理士懲戒審査会の制度を設けることにいたしたのでございます。この懲戒審査会の制度につきましては、国税庁長官は、「懲戒処分をしようとするときは、税理士懲戒審査会の意見をきかなければならない。」というふうに規定されておるだけなために、意見さえ聞けばどういう懲戒をしてもいいんではないかというような解釈をされる向きがあるようでございますが、この点につきましてはさようなつもりでおるわけではないのでございまして、こういう審査会が設けられますと、国税庁長官はその審査会の意見を十分尊重してやっていくことは当然でございます。したがって審査会の意見がどうでもあれ、国税庁長官がかってな処分をするということは当然考えられないことでございます。その点は御心配ないことと思いますが、なおそういった趣旨を一そう明らかにする必要はあろうかと存じます。幸いに長官がここにおられますので、その運営に当たる長官からお答えいただいたほうがよろしいかと思います。
  333. 金子一平

    ○金子(一)委員 時間もございませんので、最後に、これは大臣に要望しておきますけれども、いろいろ問題がたくさん残っております。税別調査会の答申の問題も幾つかまだ検討を要するような問題もある状況でございまするが、しかし今度の改正法によりまして、そういった未解決の問題の相当部分が取り上げられてまいりましたことは、これは非常に大きな進歩だと私は思います。税務代理士ができましてから二十数年、税理士制度になってから十数年たっております。当初は、大蔵当局が手取り、足取り、まあこまかいところまで指導するというか、干渉するというか、そういったかっこうでやってきたのでありますが、最近は、とにかく報酬の問題にいたしましても、いろいろな問題にいたしましても、だんだんと税理士会なり、その連合会の自主性を重んじて、今後の税理士制度運用に大きくプラスさせようという意図は十分わかるのでありますが、ただ制度というものは、これはもう恒久的なものじゃありませんで、日日動くものでありますから、こういった点についても、今回の改正は、これは非常に妥当な改正であろうかと思うのでありますが、二、三ぜひこういう点はこの際入れてもらいたいという点は、ございますけれども、おおむね妥当なところであろうと思いますが、そういった意味合いにおいて今後もこの制度改正について十分御検討がいただきたい。それがひいては適正円満な税務の運営を実行できるかどうかにつながってくる問題である。かように考えます。
  334. 田中角榮

    田中国務大臣 税理士制度が納税者と国との間に入って、いかに大きな作用をしておるかということは、もう御説のとおりでございまして、これが整備拡充合理化という問題に対しては、積極的に対処してまいりたいと考えます。いろいろの問題がございますが、今回の改正で全部が全部、万全なものになったとは考えませんが、引き続きまして国民の要請にマッチするように、税理士制度拡充強化に資してまいりたい、こう考えます。
  335. 山中貞則

    山中委員長 春日委員、やむを得ず関連質問を許しますが、一問だけにお願いします。
  336. 春日一幸

    ○春日委員 聞き捨てならぬから、やむを得ず関連質問をいたしますが、私は与党質問というものは、おのずから節度と限界というものがあると思う。私は、いまただ時間が長いからということでこれを非難するわけではない。ただいま金子君の質問の中には、税理士法改正に関して重大なる幾つかの山を提起された。これについて当局の答弁がなされておる。たとえばそこの中に今後の試験制度を暗記能力のテスト方式から応用能力のテスト方式に変えていくというここの問題について、いままで税理士と当局との間、あるいはわれわれ野党と当局との間の折衝の過程においては、なかなか解決の見ていなかった問題もあるし、なおかつそのことは条文の上に、私の記憶する限りでは載ってはいない。たとえばここに税法規を試験場に完備して、そうしてその便宜をはかるということがいわれておりますけれども、われわれの聞くところによりますと、そういうことは膨大な国費を要することであるから、非常に困難であるというふうに言われておったと思うのです。一体法律のどこにそれが書いてあるのですか。いま金子君の質問に対して、それは完全に消化してしまっておるかのごとき御答弁なんです。そういうことなら何も問題がないと思うのです。だからそういうようないよいよ試験がむずかしくなるのだということに対する税理士側の非難は、そういうような法規を十分に完備して、そして十分応用自在の答案がそこで書けるのだ、こういう条件が完備されたというようなことは、現在の法律から受ける判断ではそういう理解は成り立ちがたい、こういうような問題について与党が質問をして、もうやるのです、そういうことにしておりますと言われておるのですが、どこの法律にそういう条文が書いてあるのか、それが第一点。そういうことをやるのだったら法律に明記して、いたずらに問題を起こさぬ先から私は明らかにしておいたらよろしかったと思うのです。  それから第二点は、これは政党政治において、少なくとも政府が提案をする以上は、与党との連絡会議において、与党政調会は、当然この法案について確信を持って、これでなければならぬという条件のもとに私は提案がされておると思うのです。ここに将来税理士たらんとして大学院に入った者であって、修士の資格を持つ者、こういうものに対しては試験の一部を免除するということが望ましいとするならば、なぜその法案を出してこないのですか。いまここでこういう問題がいろいろ論議の過程になり、与野党を通じてそれぞれの意見を取り入れて完璧にしようと思っておるときに、与党がこういう問題を取り上げて、そうして与党と一緒に出した提案者がそういうふうに修正する方向だと言ってしまったら、何でも与党と野党との間で意見を戦わすという場面がなくなってしまうのじゃないですか。あなた方がこういう問題について、与党といえども必要な質問をされることは私は妨げないけれども、こういうような政治問題になっており、いままで与党が十分聞いてはいない、政府もそれに耳を傾けなかった、全国の多くの学生がしばしば陳情してきておる問題をいまあなたが直すということだったら、なぜ陳情にこたえてその処理をしないのか。私はそういうようなことば不謹慎だと思う。少なくとも、与党と野党との関連においていろんな問題が政策論議をされておるのであるから、解釈を要するような問題とか、解決されておる問題とかいうようなものは、やはり一個の伝統と慣習と前例とがあるのですから、すべからく与党の八百長質問によってそれをこなしてしまうということは慎まれてしかるべきものだと思うが、いかがでありますか。
  337. 泉美之松

    ○泉政府委員 まず第一に、本試験の場合におきまして税法を試験場に備えつけて試験を行なうという点につきましては、お話のとおり法律には書いておりませんけれども税制調査会の答申の一〇ページのところに「法文を示して行なうことを考慮する。」というふうにございます。私どもといたしましては、税理士法の十七条で税理士試験の執行に関し必要な事項は大蔵省令で定めるという規定を設けておきまして、その大蔵省令におきまして、いまのように本試験の場合には税法を試験場に備えつけて行なうものだということを規定いたしたいと考えておるのでございます。  それからその次の点でございますが、大学の修士の問題、これは実は私どものほうには御陳情がなかったのでございまして、その意味でどうも春日委員のおしかりを受けるような結果になりまして、まことに恐縮に存じますが、事態は、私どものほうにそういう陳情がなくて、他のほうにそういう陳情が多くなされたというようなことに基づくものでございます。そのために政府のほうからその点を修正する方向ということを申し上げにくかったのでございます。
  338. 春日一幸

    ○春日委員 私の質問はいずれ十六日に行ないますけれども、ただ私は一個の政治道義として注意を喚起しておきたいのでありますが、とにもかくにも法律案の不備な点を補完するとか、あるいはまたこれを修正するとかいうような論議は、これは与党と政府との間でなすべき筋合いのものじゃございません。少なくとも国民の権利義務に触れるところの重大な法律でございますから、政府は確信を持って完璧のものを出してこなければならぬ。それは野党に相談して足らざるところがあるならば話し合いの中においてこれを修正する、さらに補完する、こういうような経過をたどるのが政治道義というものであり、少なくとも議会政治の本質的なあり方だと私は思うのです。しかるに、こういういろいろと与野党賛否の意見の対立しております問題について、何らか問題をいなすようなかっこうにおいて、野党の質問に先がけて問題点に触れて全部こなしてしまうというようなやり方は適当ではないと思う。猛烈な反省を求めて私の質問を終わります。      ————◇—————
  339. 山中貞則

    山中委員長 参考人出席要求の件についておはかりいたします。  来たる十六日、公認会計士特例試験等に関する法律案及び税理士法の一部を改正する法律案の両案について、それぞれ参考人出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  340. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、来たる十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時四分散会