○只松
委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、
国民金融公庫法の一部改正案に対し、反対の
趣旨を述べます。
まず第一に、この
法案はきわめて時代逆行の
法案であります。戦後二十年も
たちまして、このような
法案をあえて
政府が強行しようとすることは、全く時代に逆行する、こういう一語に尽きると思います。
政府の言うとおり、もし旧
地主の
方々に生活困窮者やあるいはそういう
資金を必要とされる方が多いとするならば、これは他にもそういう類似の、たとえば
戦争で家を焼かれた多くの人々、あるいはまだきわめて少ない
補償しか受けておらない外地からの引き揚げ者、あるいは戦傷者、そういう
戦争でお困りの
方々はたくさんあります。したがいまして、むしろそういう面に主力を注ぐべきだ。と申しますのは、
政府が一億円からの膨大な調査費をかけて委託調査いたしました資料によりましても、旧
地主の
方々は、
一般の
国民よりも生活困窮者は少ない、むしろ生活の安定した者が多い、こういう結果があらわれてきております。したがいまして、いま申しますように当然に不必要なことになり、もしかりに生活困窮者が多いといたしますならば、
政府では先進資本主義国の三本の柱とかなんとかおっしゃいますけれども、わが国ではきわめて立ちおくれておる社会保障制度をもっと早急に拡充して、そしてその社会保障制度の中でこれはやっていくべきである、これがまず第一でございます。
第二に、先ほどから長時間繰り返して御論議がありましたように、
本法は
財政法第二十四条をはじめといたしまして、
財政法に大きく違反をしておる
疑いがございます。第二十四条の「予見し難い
予算の不足に充てるため、」ということは、これは天災、地変など客観的に全く予見しがたいものを想定したものでございまして、本
法案のように二年来論議になり、しかも二年間継続
審議になっておった、こういう
法案であれば、今日こういう
事態になることは当然に予見をされておったことでございます。こういう
事態になるということが予見されないとするならば、それは一党独裁を夢みたり、あるいは大政翼賛を夢みる人々の政治のあらわれであります。今日のように
国会で
審議をしてまいるということになり、いま申しますように二年聞こういうやり方の
審議がされてきたとするならば、当然にそれは予見されておった
事態でございます。それを予見されなかった
事態ということは、
政府の大きな手落ちであろうと思います。したがいまして、このような重要な
法案の
提出に見合う
予算案というものは、あらためて追加
予算に組むべきでございます。特に会期延長などが生ずる、こういうときには、当然に補正
予算を組むべきである。このことを強く要望をいたしておきます。
第三に、すでに最高裁の判決におきまして、二十八年十二月二十三日に
農地改革における
補償の問題について判決が出ております。これはすでに当時の単価において適法に地代が支払われ、また若干の報償がそこに組まれておる。こういう最高裁が判決を下しておることは、たびたび
政府は何かあれば常に最高裁の判決、こういうことを口になさる
政府当局は十二分に御
承知のところでございます。この最高裁の判決にももとるものである、こういうことが第三の理由でございます。
第四に、これは公正の
原則にもとるものでございます。すなわち、
一般の
貸し出しには年九分の利息を取りながら、こういうふうに特別の
災害でもない本
法案の内容のような
貸し出しに対し六分五厘という低利の金を貸す。こういうことは
国民金融公庫法の
目的にもとるだけではなくて、
一般の
金融体系を乱すものであります。これはまた現在中小企業がきわめて苦しい
状態に置かれて、日々多くの企業者が倒産をいたしております。口では中小企業を救済云々、こういうことをおっしゃっておる
政府の口車と矛盾するだけではなくて、商工業者をはじめ他の多くの生活に困窮しておる
国民に対する施策と均衡を失するものでございます。私
たちはこの点からも強く反対をいたしたいと思います。
第五に、自民党
政府は本
法案とは別個に、旧
地主に対しまして、
農地報償金として十年償還の
交付公債を交付しようということを、目下考慮中でございます。おそらくこれは近日中に
法案として提案される、こういう段階に立ち至っております。したがいまして、本
法案は、その
農地報償
法案とともに二重に、あるいは先ほど申しましたように、金利の関係等から見まして三重に、こういうふうにひとり
地主だけに厚い恩恵を与えまして、他の多くの
一般国民に対しまして、
国民のことを顧みない
法案でありまして、私
たちが正しく日本の
国民に対して政治を行なっていく、こういう
立場からは強く反対の意を表さなければならないと思います。
最後に本
法案が、なぜあえてこういうふうに強行され、あるいは繰り返し出してこられようとしておるかということは、旧
地主と深い縁と申しますか、あるいはくされ縁と申しますか、そういう
立場に立たれる——私
たちは率直に言って与党人全部あるいは
政府当局全部じゃなくて、一部の
方々のメンツにとらわれたものではないか、こういうふうに思っております。いわば不急不用の本
法案でありまして、
国民の多くがこの
法案に反対しておるところでございます。これは数年来、こういう傾向はむしろ戦後ずっとこういう法安の出し方が続き、また多くの
国民が反対をしてきておるということに徴しましても明らかなところでございます。
以上のような諸点の理由によりまして、強く反対の意を表しまして、本
法案に反対をいたします。(拍手)