運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-05-07 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月七日(木曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    岩動 道行君       大泉 寛三君    奧野 誠亮君       押谷 富三君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       島村 一郎君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平林  剛君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣法制局長官 林  修三君         内閣法制局参事         官         (第三部長)  荒井  勇君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         農林政務次官  丹羽 兵助君  委員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房臨時農地等         被買収者問題調         査室長)    八塚 陽介君         農林事務官         (農地局管理部         長)      小林 誠一君         国民金融公庫副         総裁      酒井 俊彦君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 本日の会議に付した案件  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第四〇号)      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  国民金融公庫法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。佐藤觀次郎君。
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 田中大蔵大臣質問いたしますが、この法案は、御承知のように、参議院で二度も流れて、まことにやっかいな法律でありまして、お互いにこんなことで二度も三度も問答するのはいやでありますが、法律が出るならばやはりわれわれの根拠も言わなければなりません。ことに今度は、御承知のように三月三十一日に予算がなくなりまして、それでもってこの法律が出たのでありますが、その点はどういうように解釈されておるのか、私はまず御質問したいと思います。
  4. 田中角榮

    田中国務大臣 今度は三月三十一日までに必ず通していただける、こう考えておったわけでございますが、遺憾ながら四月になったわけでございます。三月の末まで通らなかったので、予算は御承知のとおり失効いたしました。しかしこの法律が必要であるというたてまえは変わっておりませんので、この法律を通していただきましたら、三十九年度の予備費から支出をいたしまして、本法の精神にのっとりたい、こういう考えでございます。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 法制局の人来ておられますか。一体こういう例があるのでしょうか。われわれは議員立法を出すときには、予算のないような法律は、だめだといって政府は断わるのでありますが、自分のほうでやるときにはかってに予算がなくても予備費でやるというような、こういうことはどうも私はいただけないのでありますが、法制局はどういうような解釈を持っておられるのですか。また、前例があったら教えていただきたいと思います。
  6. 荒井勇

    荒井政府委員 そのお尋ねの点につきましては、政府側といたしまして、当初から予算の基礎のない法律案提出申し上げたということではございませんで、昭和三十八年度予算関係法律案ということで、一月に決定をいたしまして、提出をいたし、当然年度内に成立さしていただけるものとこう考えたのでございまして、その意味で全然予算的な措置がない、裏づけがないという法律案をお願いしたというものには当たらないと存じております。このような事態はきわめて例が少ないといえば少ないことでございます。しかし予算的な裏づけなしに法律案を出した前例はあるかと言われますと、政府として出しましたときの状態はいま申し上げたようなことでございますので、そこは御了承をいただきたいと思います。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私がお伺いしたいのは、まれであっても、一体そういう例があったかどうかということをひとつ伺っておきたい。こういう例が一体あったのかなかったのか。また希有であっても、現実にこういうときにこういう法律がありましたという例を示していただきたい。
  8. 荒井勇

    荒井政府委員 いままで立法の結果予備費使用いたしました例といたしまして、昭和二十六年の政府提出でございますけれども、農林漁業組合再建整備法施行に伴いまして、予備費予算的な措置を講じたというような例がございます。それから同年に宗教法人法施行に伴いまして、予備費使用するのやむなきに至った、こういう例もございます。それから二十七年に南方連絡事務局設置法提出され、国会で議決を得まして、その結果として予備費使用するに至った、こういうような例はそのほかにもいろいろございます。
  9. 堀昌雄

    堀委員 関連して。いまの一つだけでいいですから、どういう時期にどういう形で出したのか、予算が初めからなかったのかあったのか、今回のような例と同じようなのかどうか、そこをひとつ具体的に答弁をしてもらわないと、そういう例がありましたというだけではわからない。ひとつ具体的に答弁してください。一つだけでいいです。
  10. 荒井勇

    荒井政府委員 比較的最近の例で申し上げますと、引揚者給付金等支給法昭和三十二年の法律百九号として公布されております。本件国会に付託されましたのは同年の三月の二十二日でございまして、予算閣議決定及び国会提出という時期よりだいぶおくれて提出されたわけでございます。その場合に給付金自体記名国債で交付するという措置をとったわけでございますが、そのために若干の事務費を要したわけでございます。その事務費につきましては、同年一月に提出いたしました予算では計上されておりませんで、予備費でこれを支出いたした。こういうような一例をあげよということでございましたら、そういうようなことでございます。
  11. 堀昌雄

    堀委員 それは目的がちょっと違うでしょう。いまのは交付公債か何かを出す法案であって、その公債発行に伴う事務費がたまたま計上がされていなかった。要するに今回のは出資をするという金自体に問題があるのであって、出資をする金自体予算にないものを予算支出目的とした法案があったかどうかということが問題なんであって、これは例になりません。同じ例があるなら出してください。
  12. 荒井勇

    荒井政府委員 各種の行政組織を新たに設ける、それは調査会であるとか、いろいろな例がございますけれども、そういうような場合に、その調査会なりその行政組織を設けるための全体の経費予備費でまかなわれているというような例はあるわけでございまして、その経費の全額が予備費によったかどうかという点でその例があるかどうかというお尋ねでございましたら、そういう例はあるということでございます。
  13. 堀昌雄

    堀委員 どうも答弁になりません。私が聞いておるのは、今回の法律というのは、一般会計から二十億円を国民金融公庫出資するという法律案ですから、そのこと自体は要するに予算上の資金使用することを目的としておるということになっておるわけです。いまの調査会をつくったりその他のことは、調査会をつくること自体目的であって、それに伴って事務費その他を要するということであるならば、これはちょっと法律趣旨が違うわけです。だから、私が伺っておるのは、一般会計予算の中から当然支出をされるべき性格出資その他に関するこのような例がこれまでにあったかどうか、こういうことを聞いておるわけです。
  14. 荒井勇

    荒井政府委員 そういう御趣旨お尋ねにいままで的確にお答えしておらなかったかと存じますが、たとえば災害立法等で例を見ますと、昭和三十三年九月の水害による公立の小学校及び中学校の施設災害復旧に要する経費についての国の負担に関する特別措置法昭和三十三年法律百九十一号でございますが、それは学校の施設災害復旧に要する経費について、その国庫負担の特例を設けまして、それだけ当初の普通の国庫負担に比較して多い財政負担をし、財政支出をすることを目的とした法律でございますが、これも十二月に国会に付託されまして、同月中に成立し、そのような財政支出追加自体目的とする法律案であって、その成立の暁において予備費使用によって措置されたというようなものもあるわけでございます。
  15. 堀昌雄

    堀委員 それも例にならないです。災害というのは予測せられざるものに対する資金の流用でありますから、これは本来的に足らなければ予備費を使うのはあたりまえのことなんです。そうじゃないでしょうか。あなたは少なくとも法制局の第三部長なんだから、中学生でもわかるような、ごまかしたようなかっこうで例示を出されても、ここでは通用しないですよ。だれが聞いても納得するような例があるかどうか、なければ、ありませんと言うよりしようがないでしょう。
  16. 荒井勇

    荒井政府委員 ただいまのお尋ねの点は、これまでに例があるかということでございましたら、的確に本件相当するような例はないと私は思います。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いま法制局で言われるように、こういう例はないのです。そこで、この予備費をこういうふうに使われるということは、田中さんはもののわかった大蔵大臣でありますけれども、これは無理じゃないか、もともと国民金融公庫で金を貸すということに私は無理があると思うのです。これは財政法違反疑いもあるし、支出する予算の、これは財投になると思うのですが、こういうものがどうもこういうふうにかってに解釈されてやられるということは、将来に悪い例を残すのではないかと考えるのですが、その点大臣は一体どのようにお考えになっておられますか。
  18. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、予算を初めからつけてございまして、二年目でございますから、三月三十一日には通していただける、こういう前提に立っておるわけでございます。ところが国会の御事情で、われわれの予期、期待に反しまして今日に至っておるのでございますから、提出者の側であるところの政府といたしましては、国会の御審議の都合でありますので、いかんともなしがたいところであります。そういう状態でございますから、本法を必要としないということでありますれば別でございますが、提出をした当時と同じ立場本法必要性を訴えておる立場におきましては、これが財政法とか国の法律に背反するものでもありませんし、通していただければ、予備費使用ということになるわけでございます。いまも堀さんから質問がございましたが、こういう例外のものがあるのか、こういうことでございますが、私もこれと同じ例はないと思います。これは政府から出資をするようなときに反対をされるような例がなかったわけであります。でありますから、政府出資をしようということに対して今日まで慎重な御審議をいただいてまいったわけでございますので、これが通りましたら、ひとつ予備費支出でまかないたい、こういう考えでございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 田中さんが野党の大蔵大臣ならばいまの御意見はいいのですが、与党は絶対多数を持っているのですから、それだから、おそらく通るだろうというのなら、これは三月三十一日までに通さなければならぬ法律だったと思うのです。それが通っていないところにやはり無理がある。私はそういう点で、三月三十一日というのは大蔵当局も御存じだったと思いますが、それを通さずして、五月になったら、この法律を通してくれと言われても、ちょっと無理じゃないか、私はそう思うのですが、大臣、どうですか、その点は。
  20. 田中角榮

    田中国務大臣 私は提案者といたしまして、一日も早く御可決いただきたいという立場だけでございます。国会が慎重御審議いただいておるということでございますので、国会に対して批判がましいことを申し上げる立場にないわけでございまして、いまもなおすみやかに御審議いただくことをお願いいたすわけであります。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一つ財政法違反疑いのあるようなものは遺憾であるということと同時に、何でこの法律国民金融公庫に押しつけたかという問題です。これは私は、国民金融公庫性質から考えまして、非常に悪い例だと思うのです。しかも旧地主であったという理由で金を貸すということは、いままでに例のないことであって、大臣、この点はどういうふうにお考えになるのか。酒井さんが来ておられますが、国民金融公庫として例のないことだと思うのですが、こういうようなことをやれば、私たちはせっかく国民金融公庫が全国的に普及いたしまして、ようやく国民の中で国民金融公庫のありがたさを知ってきているときに、こういう例外的な法律を押しつけるということはけしからぬことだと思うわけでございますが、その点大臣及び国民金融公庫総裁酒井さんとしては、どんなふうにお考えになっておるのか、伺いたいと思います。
  22. 田中角榮

    田中国務大臣 本件を立案する過程におきましては、農地買収者金融公庫というもののほうがいいということもございました。ただこれは量が非常に多く、二百億とか三百億とかという前提に立っての考え方だと思います。政府といたしましては十分考慮いたしました結果、他の金融機関から資金の融通を受けられない方々生業資金ということでありまして、政府関係機関の中でちょうど国民金融公庫はそういうために設立されている機関でありますので、国民金融公庫窓口をつくることが一番合理的だという考えに立ったわけでございます。
  23. 酒井俊彦

    酒井説明員 ただいまのお尋ねでございますが、先ほど来大蔵大臣からるるお述べになりましたように、何らかの政策的な金融をする必要があるという御決定でございます。私のほうといたしましては、御承知のように、政府金融機関でございまして、政府のそういう施策に協力をすると申しますよりも、それを実行する機関でございまして、過去におきましてもそういう意味におきまして、引揚者国債担保貸し付けでございますとか、更生資金貸し付けでございますとか、いろいろ金融をいたしております。ただ、この貸し付けをいたしますために、一般普通貸し付け資金を食われて、これを実行するということになりますと、問題があるわけでございます。そのために特に政府から二十億の出資を下さる、そのワク内でやってくれ、こういうことでございますから、国民金融公庫といたしましては、他の金融機関から金融を受けられない方々であって、たまたま旧地主で被買収者であるという方に対して生業資金貸し付けるということでありますから、私のほうの公庫性格に何ら反するものでもございませんし、これによって公庫金融が非常に曲がるとか、そういうものではないと思っております。
  24. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 先ほど大臣は、便宜的に二十億以内の貸し付けだから、国民金融公庫にお世話願ったと言われますが、これは法規上からは重大な欠陥があるのではないかと思うのです。先刻政府農地買収者補償について、これは農林省とそれから総理府との間に意見のありましたあの法律が、どうも総理府になるようでありますが、私たちは、国会審議過程の中でやはり筋を通してやるべきだ、特に国民金融公庫のように全国的にたくさんの支店を持ってようやく本来の使命を果たしつつある今日において、たとえ二十億のようなわずかな資金でありましても、内容の全然違った、原則的には旧地主であるという、こういうとんでもない、国民公庫とは全く性質の違うようなこういう名目でこういう補償の金を貸すということは、将来に禍根を残すのではないかという心配があるのでありますが、こういう点についても大臣はどのようにお考えになっておられますか。私たちの納得のいくように、ひとつ御説明を願いたいと思います。
  25. 田中角榮

    田中国務大臣 国民金融公庫が何か特別なものに貸せる機関であるという前提に立っての御発言のようでございますが、国民金融公庫というものは他の一般金融機関から生業資金を借りることのできない人たちでございますから、日本人であればだれでもいいわけでございます。でありますから、そういう意味中共から引き揚げてきた方も国民金融公庫、それからまた災害でもってお困りになっている方も国民金融公庫、また恩給担保でもって借りている方も国民金融公庫、こういう零細資金ということでございます。これが農地買収者といっても日本人でありますから、日本人であって農地買収者であった、こういうだけでございますから、国民金融公庫がそういう人たちのためにこそあるのだ、こういう考え方もあるわけでございます。でありますから、国民金融公庫平均貸し出しが百万円とか百五十万円とか、また百万円以下とかというようなものからはずれて、農地買収者に限っては何百万円貸してもいいんだ、こういうことになると国民金融公庫としては問題はありますが、そうではなく、五十万円以下は六分五厘というような零細貸し付けを行なうというのですから、国民金融公庫はこういう業務のためにこそある、こういうことでございます。これからもなお、零細でどうしても国民金融公庫窓口が適当だという方々に対しては、また国民金融公庫を使うということでありますから、そういう意味でひとつ御理解をいただきたいと思います。
  26. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 酒井総裁に、国民金融公庫貸し出し基準と、どういう人に貸すのが原則になっておるかということを、大臣の前でひとつ堂々と説明してもらいたいと思う。
  27. 酒井俊彦

    酒井説明員 基準の問題でございますが、まず第一は、かつての農地改革によりまして農地買収された方、またはその相続人の方でございます。そうしてこの方が一定の生業を営むその計画もあり能力もある、しかも返済能力がある、これは国民金融公庫法の条文に照らして、普通貸し付けと同じでございます。そういう方々であって、普通の金融機関からの金融が受けられない、つけにくいという方につきまして、限度は二百万円でございますが、六分五厘の利率の適用をいたしますのは五十万円以下、一人一回限り六分五厘を利用する、こういうことで、その他の条件につきましては普通貸し付けと同じような条件でやりたい、かように思っております。
  28. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私の聞いておるのは、国民金融公庫から農地買収者へ貸す基準ではなくて、国民公庫本来の貸し出しはどういうことでやっているかということをお伺いしたいのです。そんな農地買収者を聞いているのじゃないのです。
  29. 酒井俊彦

    酒井説明員 一般貸し付けますものは、これは普通貸し付けのことを申し上げてよろしゅうございますか、——さっきから申し上げましたように、恩給貸し付けとか引き揚げ者国債担保貸し付けとか、更生資金貸し付けとか、いろいろございますけれども、大きな部分は恩給普通貸し付けで、そのうちでも普通貸し付け一般的なものでございます。そこで、普通貸し付けについて申し上げますと、貸し付け対象といたしましては資本金が千万未満の方、それから借り入れ金がおおむね最大限五千万以下の方、もっとも割引手形を除いて二千五百万円というぐらいのところ、これが最大でございます。それから従業員にいたしますと、製造業におきまして従業員が百人、それから商業、サービスでは五十人というぐらいの層をねらっております。それから貸し出し限度といたしましては二百万円を限度といたしております。これは個人でも法人でも二百万までしか貸せないことになっております。なお百万未満の人に対しましては担保を徴しないことが原則でございまして、保証人貸し付けております。百万をこえますと原則としては担保をとりますが、どうしても担保を提供できないでお困りの方は、それ相当保証人があって、返済能力が確実だという場合には担保をとらないで貸すことができるわけでございます。もっとも業種によりまして、たとえば遊興娯楽といったような若干の業種につきましては、政府機関から金融をすることが適当でないというふうに考えられますので、そういうものについては金融を差し控えております。その他はいま申し上げましたような基準でございます。それからもう一つ国民大衆に貸すということでございまして、外国人には貸せない、第三国人には貸せない、さようなことが普通貸し付け基準のおもなものであります。
  30. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 それで、実際は資金最は潤沢ですか。国民金融公庫には旧地主に貸すような余分な金があるのですか。
  31. 酒井俊彦

    酒井説明員 これは考えようでございまして、ことしは相当政府のほうから金をつけていただきましたけれども、御承知のような経済情勢でございまして、あるいは相当足らぬという事態が出てくるかもしれません。しかし目下のところ今年は相当資金運用部あるいは簡保から資金を拝借することができますので、とりあえずこれでやっていける。ただ経済情勢がどういうふうに変化いたしますか、それで、引き締めの影響等零細中小企業等がまた非常に困ってくれば、そこで資金が不足いたしますので、その際はまた資金運用部等にお願いすることがあるかもしれません。そこで、さっき申し上げましたように、そういう貴重なお金でございますから、そちらのほうから農地買収者金融をいたしますと、一般のほうに影響がございますので、政府のほうとしてもそういう点をお考えくださいまして、農地買収者に対する貸し付けは別のワクで、別に金を出してやろうとおっしゃっておりますので、この法案によりまして一般のほうの貸し付け影響がくる、かようなことはあり得ないというふうに考えておるわけでございます。
  32. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ質問をすればするだけ非常に疑問が出てくるわけです。  田中大蔵大臣説明を聞きたいと思うのですが、農地の被買収の人だけに金を融通したり補償をなされるように聞いておりますが、そうすると戦争で死んだ人や家が焼けた人、あるいは在外資産を持った人は同じように戦争によって犠牲になられた方でありますが、そういう人に対してはどのような比例で補償をされるのか、この点をひとつ将来の問題として伺っておきたいと思います。
  33. 田中角榮

    田中国務大臣 御承知のように軍人遺家族に対しては処置をいたしておりますし、引き揚げ者に対しても五百億の措置をいたしました。その上なおどうするかということで、遺族国債担保貸し付け国民金融公庫でやっておるわけであります。なお母子家庭につきましても貸し付けを行なっておりますし、恩給担保貸し付けも行なっております。引き揚げ者に対しましては国債担保貸し付けをこの金融公庫で行なっておるわけであります。なお更生資金といたしましては、更生資金貸し付け昭和二十四年の六月から始めているわけであります。なお、更生資金の再貸し付け中共から帰った方々には引き揚げ者貸し付けというような金融制度上の措置を行なっておるわけでございます。その上農地買収者にも、これらの方々と同じように幾ばくかの貸し付けを行なおう、こういう考え方に立つものであります。
  34. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点重要な問題ですが、台湾や朝鮮や、それから満州に資産を持っておった人の処置はどういうふうになされるのか、これに関連してお伺いしておきたいと思います。
  35. 田中角榮

    田中国務大臣 在外財産補償という問題につきましては、引き揚げ者に対して、先ほど申し上げたとおり五百億円の給付を行なっておるわけでございます。いまの状態においては、政府はこれらの在外財産に対しては、戦争によるものでございますので、法律上の補償の責任はないという見解に立っておりますが、これらの問題に対しても調査をする必要があるということで、昭和三十九年度の予算総理府審議室を設けまして、ここで在外財産問題等に対して現在調査を進めておるわけでございます。
  36. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 旧地主に対して過酷であったということは、今日になってみるとわかるわけです。しかし御承知のように、もうすでに戦争が終わって約二十年にもなって、うしろ向きのこういうことをやるということは、いろいろな弊害が起きる。そのときになって一々取り上げていては際限がないと思うのでありますが、こういう点について、やはりどこかでポイントを合わせぬと、いつまでたっても戦後処理というものが長続きして、そして処理ができないような形になるのじゃないか。それだから、こういうような法律も二度も流れて、また同じような審議をやる、こういうことはほんとうに残念なことでありまして、大臣もおそらくこういうことはしたくないでしょうし、われわれもこういうことはあまり質問をしたくないと思うのでありますが、現実に出てくれば、やはりいろいろ情勢も変わってまいりますので、そういう点について、うしろ向きであることについては私は非常に残念に思うのですが、大臣は一体こういう法律を喜んで受けておられるかどうか、これをひとつ率直に伺いたいと思います。
  37. 田中角榮

    田中国務大臣 ある意味では、うしろ向きの政策にはもう大体線を引くべきであるという国民各位の考え方に対しては理解ができます。私自身もいつまでも、いつまでもこのような状態がだらだら続くことは好ましくないという考え方も理解できるのであります。しかし同時に、戦争の犠牲ということが非常に大きかったわけであります。また戦後の急激な改革というものに対しても犠牲があったことはいなめない事実でございます。でありますから、現在の状態と将来の国力の状態考えるときに、やはりもう過ぎ去ったものにはふたをするのだという考え方と同時に、もう一つは悠久の将来を考えるときに、これら国やわれわれのために犠牲になった方々に対して、ある時期に何らかの処置をとるということも政治上配慮されるべきことであります。でありますから、イタリアとか西ドイツとか、戦いに何回か敗れた国は、立ち上がるために前の問題を一つずつ解決する、こういうことが政治の大きな重点となっている国もあるわけであります。またそうすることによって、犠牲者も何らかの納得をする。またそれが将来の国力の培養に、われわれお互いの生活にプラスになるということもありますので、いつまでも、いつまでもこの問題をだらだらと考えておるということを打ち切るということだけでなく、やはりわれわれのためになったものに対しては、どこかで解決をするということもあわせて考えていくということが、やはり政治のむずかしさであり、また正しい行き方だ、こう考えられるわけでありまして、すべてのものを解決するといっても——出てきたものを一つずつ現在の財政力や国力に合わせて国民の納得を得られるような状態で解決していくということが必要ではないか、そういう考えのもとに立って本法案の御審議をいただいておるわけであります。
  38. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 これはこの法案と直接関係がないのですが、きょうの新聞の発表によりますと、突如としてビールや二級酒の自由化をきめたということが出ておりましたが、大臣は一体これについてどういう考えを持っておられるのですか。時節柄ちょっとお伺いをしておきたいと思います。
  39. 田中角榮

    田中国務大臣 ビール及び二級酒等の基準価格の撤廃ということでございますが、この問題に対しては、本委員会でも去年何回か御質疑があったわけでございます。当時少し早くやりたいという考え方もあったのでございますが、時あたかも総選挙が行なわれたというようなことで、こういうときをはずして考えるべきであるとということで、非常に慎重に検討してまいりました結果、国税庁としましては、もうここらで基準価格を撤廃したいということでありましたので、私も事情を聞きまして、基準価格の撤廃というものが値上がりを招来するものであるということであれば、十分考えなければならないけれども、これがだんだんと自由化になって下がり、いい品が国民に低廉に入るということであるならば、撤廃してよろしい、こういう結論を出したわけでございます。何日後に撤廃するかは私つまびらかに承知いたしておりません。
  40. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点だけ、六月一日から上げるということを国税庁の長官のお話では発表いたしておりますが、私が一つ心配しているのは、ビールでも酒でも有名なメーカーのものはどんどん上がって、それから名前のないようなものが、いまの基準価格が撤廃されると非常に下がるのではないか、そういう点についてどういう処置をされるのか。その点の心配はないのか。私はおそらく有名なメーカーのほうは、いろいろな点で上がって、あまり有名でないような二級酒とかビールは下がってくるような傾向があるように思いますが、その点の心配はないのかどうか、伺っておきたいと思います。
  41. 田中角榮

    田中国務大臣 基準価格の撤廃によって販売価格が上がるというようなことのないように業界とも十分話し合いをするようにという注意をいたしでいるわけでございます。業界と主税局及び国税庁とで十分話し合いをしまして、そういう心配も大体ない、こういう考え方に立ちまして、基準価格の撤廃をやったわけであります。そういう意味で、特に中小の酒屋などが困るということがあってはいけないので、設備近代化資金が使えるようにということで業種指定も行なったわけでございます。これから金融その他いろいろな面でも助成策を講じてまいるつもりでありますので、御指摘のような状態を招来しないように格段の配慮を続けたいと思います。
  42. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ物価の値上がりのムードがありますが、牛乳が上がったり、ビールが上がったり、酒が上がったりというような行政にならないように政府は十分低物価政策を行なわれるようにお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  43. 山中貞則

    山中委員長 卜部政巳君。
  44. 卜部政巳

    ○卜部委員 若干くどいようになるかもしれませんが、まず第一条の関連でいろいろと諸先輩が質問をしておりますが、三十八年六月二十四日に堀委員から少数意見趣旨というものが述べられて、今日までのこの審議過程というものが提案の中に明らかにされているわけであります。このように、だれが見ても、そしてまた国民が理解できないような問題をさらに提案をしてきたところの理由について、ひとつ明らかにしてもらいたい。
  45. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほども申し上げておりますとおり、現在も、それから一月も、昭和三十七年に提案したときも同じ考えに立っているわけでございます。農地買収者方々で、他の金融機関から生業資金を借り得ない方々、これを何とかしていかなければいかぬ、こういう考えはいまも変わっておらないわけでございます。
  46. 卜部政巳

    ○卜部委員 ですから大臣、よく聞いていただきたいのは、私はちょっとことばを省略したうらみがあるのですが、この第一条の関連ということを申し上げたわけです。第一条は、明らかに国民大衆をさしておるわけであります。何も農地買収者云々というかっこうだけが大衆ではないではないか、だからこそ少数意見が出たんじゃないか。だから現実に国民も納得できないままにこれが廃案——審議過程云々といいますけれども、廃案みたいなものですよ。そういうことになっておるのになぜまた政府は、ああそうでありますか、じゃこれはもう出すべきじゃありませんということでひっ込めるのがあたりまえなのに、なおかつ出してくるところに、私はことばをきびしく言えば、センスを疑いたいと言っているのです。同じことでありますなんて言ったって答弁になりません。何か理由があるのですか。
  47. 田中角榮

    田中国務大臣 理由があるからお出しして御審議いただいておるのであります。どうも国民大衆ということを狭義に解釈しておられるようでございますが、法制上のそういう表現は日本国民、こういうことでございます。でありますから日本国民であって左の事項に該当する者はすべて含む、こういうことは当然の解釈でございます。でありますからそのしぼりをかけておりますものは、銀行その他一般金融機関から資金の融通を受けることのできない国民全体、こういうことでございますから、この中に農地買収者が入って一向法律上おかしくはないのであります。農地買収者だけを特別に扱う、特別の感覚で割り切っておられるようでございますが、そうじゃないのです。普通貸し付け、特別小口貸し付け災害貸し付け遺族国債担保貸し付け母子家庭貸し付け恩給担保貸し付け、引き揚げ者国債担保貸し付け更生資金貸し付け更生資金の再貸し付け中共引き揚げ者という特定の人もみんなこれに入っているのです。でありますから第一条と農地買収者の買し付けというものが背反するというようなものではないのであります。農地買収者というよりも日本国民であって他の金融機関から生業資金を借りることができないで時あたかも農地買収者であったというにすぎないのでありますから、そういう問題はこの第一条と何ら背反はしないのであります。二年間も審議をしてまだ通らぬものをなぜまた出してきたかというのでありますが、何とかして農地買収者の苦しい方々生業資金を出してあげたい、こういう気持ちに立っておることが第一であります。必要であるということでございます。しかも、衆議院は二回も通していただいておるわけでございますので、今度は参議院先議でお願いしようかとさえ思ったのであります。必要性を感じておるから御審議を願っておるのであります。二回だろうが三回だろうがILOはもう全然審議もしないという状態でありましたが、やはり必要であるということで何回もお出しをしておるわけであります。そういう意味政府の真意をひとつ御理解いただきたい、こう考えます。
  48. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣にちょっと申し上げたいことがあるわけですが、普通貸し付けの中には甲種と乙種とあり、さらに母子、引き揚げ者、遺族、なんとか言いますが私は重々知っておりますよ。じゃ大蔵大臣にお伺いいたしますが、そういうふうなかっこうの中で業務方法書が変更されたということになっていますが、この業務方法書がいつどのようなかっこうで変更されたかお伺いしたいと思うのです。大蔵大臣がそういうふうにおっしゃったからお伺いしたい話はまた別にありますが、まずそれをお尋ね申し上げたい。
  49. 田中角榮

    田中国務大臣 恩給と、その他一つばかり業務方法書を変えて特別貸し付けをしたというようなことがあるようでございますが、他は昭和二十四年から三十六年までにいろいろな利率の変更その他をやりまして今日に至っておるわけでございます。私がいま申し上げたものは国民金融公庫窓口が至当であるということで、だんだん業務が拡充をされていった。と同時に農地買収者をこれに加えるということになれば、国民金融公庫の業様が拡大せられるわけです。またこの次に何か出てくるかもわかりません。やはり何としても生業資金を借り出すことができないというような方々が出てくる場合には、そういう業務も国民金融公庫の中に入って業様が拡大されていくわけであります。つまり農地買収者貸し付け窓口国民金融公庫にしても何ら問題はないわけであります。これから幾つも出てくることがあり得るという前提でお考えになれば、おわかりいただけると思います。
  50. 卜部政巳

    ○卜部委員 若干脱線をしたようですから、すぐ本論に移りますが、その前にその問題が出ましたので、ちょうどいいときでありますから、業務方法書が変更されたという内容を、資料として提出をされたいと思います。従来までのたとえば普通貸し付け甲種、さらには普通貸し付け乙種、普通貸し付け金は個人が二十万、法人五十万というのがありますね。さらに母子、引き揚げ者それから遺族、まだたくさんありますが、そういうやつをひとつ具体的に出していただきたいと思います。  そこで大臣にお伺いいたしますが、大臣は得々としてそういうものがある、今後も出てくることがあるだろう、こういうことをおっしゃいました。この農地買収者の問題を保護していかなくちゃならぬというそのことについて、これが大衆だと言われたわけですね。では、先ほど佐藤委員のほうから指摘をされましたときにも、大臣はいまの業務方法書をずらっと並べて、こういうのもあります、こういうのもあります、ただ農地被回収者を対象にしているのではなく、みんなにも配給しておりますなんて言っておりますが、それじゃ広島の原爆にあった方々に対しては、まだ援護法もできていないような状態の中で、さらにまたそういう人たちを何としても救っていこうというようなそういう配慮も、この大衆の中に入ってもいいのではないか、こういうふうに考えるわけですが、この点どうでしょう。
  51. 田中角榮

    田中国務大臣 被爆者につきましては、原子爆弾被爆者の医療等に関する法律がございまして、これらの方々に対しては医療補助等を行なっておるわけでございます。これらの方々が何らかの商売をするというようなことで、何らかの処置をしなければならないということになれば別でございますが、身体虚弱であり療養中であるということで、この方々に対してはいままで療養給付とか医療給付とか、こういう問題が主になっておりまして、生業資金貸し付けるというようなところまで、いま大きな問題となっておるとは考えておらぬわけであります。その前に、この農地買収者問題が片づかないうちに、産炭地の問題で、産炭地の中小企業はもうたいへんな状態であるので、特別に国民金融公庫措置を求めるという何か御決議が三党の申し合わせか何かございまして、私が特に国民金融公庫に指示をしまして、産炭地の方々に対して特別貸し付けワクをつくって差し上げたということがございます。そういう意味生業資金が必要であるということで、ちょうどこの国民金融公庫法に適合するものは、国民金融公庫窓口で処理したい、こういうことでございます。
  52. 堀昌雄

    堀委員 関連して。いま大臣がおっしゃった産炭地向けの特別貸し付けワクか何かをつくっておやりになったということですが、ちょっと具体的に公庫のほうから、どういうワクをつくってどういう措置がなされたか、それをお答えいただきたいと思います。
  53. 田中角榮

    田中国務大臣 ワクをつくったというのは間違いだそうでございますが、ワクをつくったと同じような措置私はできればワクをつくってやりなさい、こういうことでございましたが、ワクは通ならかったけれども、特別に特利を適用しまして、特別な処置をしたということは事実でございます。
  54. 堀昌雄

    堀委員 公庫側が特別な措置をした内容とそのことに基づく特別の貸し付け額の総額と、いま特利と言われるのですから金利が特別に安かったのでしょうが、その点をちょっと……。
  55. 酒井俊彦

    酒井説明員 産炭地につきましては二つございます。  昭和三十五、六年ごろから非常に産炭地の整理、統廃合というものが起こってまいりました。それで、一番最初産炭地の貸し付けを始めましたのが、三十七年の七月に石炭対策関係閣僚会議決定がございまして、炭鉱の休廃止に伴う移住転業を余儀なくされました中小企業、商業及びサービス業でございます。これにつきまして、国民金融公庫から普通利率で事業資金を融資するについて、特別に審査のほうを少し手心を加えて、なるべく親切にやってくれということで、そういう御了解がございました。そこで、七月三十一日の閣議了解でそのことがきまりましたので、大体そのめどとしては一億円くらいをめどにして、親切にそういうものを扱ってくれ、こういうお話がございました。そこで、それを実行いたすわけでございます。  それから、同年の十一月二十九日に石炭対策大綱というものが閣議決定になりまして、十二月十四日に大蔵当局からお話がございまして、当庫といたしましては、十二月二十二日に、産炭地中小企業者特別融資取扱要領を制定いたしました。これは炭鉱の計画的な終閉山でございますが、その終閉山に伴いまして、その炭鉱に対して売り掛け金を持っておるものが、その売り掛けの全部または一部分の回収が困難だという中小企業者の方々、あるいは炭鉱の終閉山に伴いまして、移転または転業を余儀なくされまして、もうその炭鉱だけではだめで、そこで商売できなくなったというような方がほかに転業されるとか、あるいは移転されるという場合に、特別に六分五厘の低利融資を行なうということにいたしたわけでございます。  その実行いたしました支所は、前者の普通貸し付けによります貸し付けをいたしております支所が、ことしの三月現在で八支所、特利適用をいたしております支所が、三月現在で十四支所ございます。それで、その金額残高、件数を申し上げますと、前に申しました普通の貸し付けを適用いたしましたもので貸し付けておりますのが、九月末現在で残高四百二十五件、金額にいたしまして一億二百五十七万五千円、それから六分五厘の低利を適用いたしましたものが二百四十三件、一億一千百四十二万四千円、合計いたしまして六百六十八件、二億一千三百九十九万九千円、かような数字になっております。もっとも、これは申し込みがありましても、どうしても計画が立たない。もう移住、転業ということをおっしゃいましても、全然計画がない。返済はどうしても不可能ということで、否決になりましたものがほかに九十九件、七千万ばかり別にございます。事実はこういうことでございます。
  56. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま関連質問がありましたが、では続いて今度は別の角度からちょっとお伺いをしたいと思うのです。審議会の現在の構成、さらにその役員はどうなっておるか——まあ構成は規定されておりますから、役員の氏名はどういうふうになっておりますか、お伺いをしたいと思います。
  57. 酒井俊彦

    酒井説明員 国民金融審議会の委員は、具体的に申し上げますと、大蔵省の銀行局長と通商産業省の中小企業庁長官、これは当然委員にしております。そのほかの委員方々のお名前を申し上げますと、まず商工中金の理事長の北野重雄さん、それから大阪商工会議所会頭の小田原大造さん、それから農林中金の理事長をしていらっしゃいます楠見義男さん、それから地方銀行協会会長をしていらっしゃいます静岡銀行の平野繁太郎さん、それから成蹊大学の学長をやっておられます野田信夫先生、旧軍人恩給関係の全国連合会理事をしております稲岡新さん、それから元東京新聞にいらっしゃっていまフリーでございますが、福良俊之さん、それから青色申告会をやっておられます林商店の店主の林慶之助さん、この十人が委員の具体的な氏名でございます。
  58. 卜部政巳

    ○卜部委員 この審議会がいつこういうふうな法案に対して——ここにあります業務の内容を変更しようとするわけでありますが、この点に対していつそういう議決を行なったのかをお伺いいたしたい。
  59. 酒井俊彦

    酒井説明員 本件に関しては別段議決はございません。これは別に業務方法書を変更するわけでもございませんし、審議会の議決を要する事項でもございませんので、いたしておりません。
  60. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣が十二時までということでございますから、大臣のほうにも集中したいと思います。先ほどの続きで申し上げますが、大臣は産炭地の問題を取り上げているとおっしゃられました。そういたしますと、原爆なんかの問題については、生計を営むというかっこうではなくて、むしろ生活補助並びに医療補助という形に重点を置いておるということを指摘をされたわけです。大臣の冒頭の答弁を聞きますと、国民大衆の中で困っておる被買収者という問題についてどう処理していかなくてはならないかという、政府のあたたかい思いやりが云々ということを言われたわけです。そうなれば、この前にやはり原爆で悩んでおる人々を助ける、いわゆる原爆被災者の援護法、こういうものをつくってやることが正しいのではないか、私はこういうふうに思うのですが、この点はどうでしょう。つくる意思がありますか。
  61. 田中角榮

    田中国務大臣 援護法等をもし必要とすれば、厚生大臣がお考えになると思いますが、いままで各省大臣からそういう予算要求を受けたことは私は記憶いたしません。いまの国民金融公庫のようなものを使って生業資金を出せというようなことはなかったわけです。国民金融公庫生業資金でございます。いままでの医療費とか療養費とかそういうものを増額できないか、一般のもの以外に何とかできないかとか、また非常にむずかしい病気でありますから、各大学の方々が高度な医術で臨床をするような方法はないか、そういう場合の費用を一体どうするかというような問題は私も承知をいたしておりますが、原爆にあった方々生業資金というようなものは私初めて伺ったわけであります。
  62. 卜部政巳

    ○卜部委員 いや、生業資金という、いまちょっと話が脱線をし過ぎてピントが合わなかったかもしれませんが、このいわゆる被買収者に対しては生業資金ということでこの国民金融公庫の中で処理をしていきたい、これは政府の親心ですね。生業資金としてはそういうかっこうなんでしょう。しかしながら、原爆等によって苦しんでおられる方々に対しては、国民金融公庫とは別の角度で申し上げますが、ではそういう援護法などをつくっていこうとする親心はないのか、そういう人々に対する援助の手は差し伸べないのかという角度で私は質問しております。その点はどうですか。これとからめて、被買収者も困っておるから生業資金はこういうことにしてやろう、こういうことなんですが、原爆被災者のほうはこういう法律が適用できなければ、そういう法律をつくってやろう、そういうことは考えておりませんか。やろうという意思はありませんか。
  63. 田中角榮

    田中国務大臣 私は財政担当でございますので、各省の要求があればこれに対して対案をつくって結論を出すような立場にあるわけでございます。原爆被災者援護法につきましては自由民主党のほうで研究をしておられるようであります。厚生大臣からこの問題で結論が出たということはまだ承知をいたしておりません。まあこういう問題は厚生大臣のほうがより的確な答弁ができると思いますので、あとで、御質問がございましたことを厚生省にはお伝えしておきます。
  64. 卜部政巳

    ○卜部委員 大臣はえらい被買収者が困っておるから生業云々だということを言われておりますが、現在までに農林漁業金融公庫からだいぶん貸し付けを行なっておるわけです。この貸し付けがどのように行なわれておるのかを把握されておりましょうか。同時に、その中には自作農維持創設資金などというものがあって、その資金の中で現在は大農が土地を買い占めるというような方向へ向いておるような状態もあるわけなんですが、その面とからめたこの被買収者の問題をどういうふうに解釈されておるか。
  65. 田中角榮

    田中国務大臣 国民公庫一般貸し付けの中で農地買収者である人に幾ら貸してあるかということは調査いたしておりませんので、いま申し上げるわけにはまいりません。
  66. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういう状態で、率直に申し上げて、現在のいわゆる大農と目され、さらに被買収者といわれる方々はかなり援護されておるわけですよ。それをさらにここでもって廃案になりそうなものを再度提出するところに私は問題があると思う。その点大臣どうなんですか。撤回するあれはどうですか。
  67. 田中角榮

    田中国務大臣 いまちょっと短い時間で調査をいたしたわけでございますが、農地買収者ということで国民公庫からは金は出ておらぬそうでございます。ただ、農地買収者方々の中でもう農業から転向されてしまって、営農というのじゃなく他の職業につかれた方々には一般貸し付けの中で幾らか貸しておるでしょう、こういうことでございます。こまかいことは国民公庫側からお答えをいたします。
  68. 酒井俊彦

    酒井説明員 先ほど大蔵大臣からお話しいただきましたように、私どもといたしましては農地買収者であった方々に幾らお貸ししておるか、あなたは農地買収者ですかというようなことをよく確かめてから貸すということをやっておりませんので、まことに遺憾でございますが、農地買収者であっていまほかの生業をやっておられる方に幾らくらい出ておるかということは的確につかめておりません。なお、農業自身に対しては私どもは金融をいたしませんし、そういうものがあることは確かだろうと思いますけれども、それが何件で何ぼ出ているという的確な調査はいたしておりません。そこまでお客様にお聞きしていないものですから……。ただ、農業自体には貸しておりません。
  69. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういうふうにわからないような状態の中で、大体そういうふうな人も入っておるということなんでしょう。それなのになおかつ改正してまでやろうとする必要はないのじゃないですか。大体農林漁業金融公庫の中にも自作農維持創設資金というのがある。この趣旨は離農する場合とかさらに離農してはいかぬようにこれを貸し付けるというようになっている。ところがいまごろはどういうことかというと、大農が小農の農地を買い取るために使われるようなかっこうになっておるのじゃないですか、実際問題としては農地取得資金貸し付けることに重点を置いておるようなかっこうになっておるのじゃないですか、この点はどうですか。農林漁業金融公庫、これは高橋銀行局長のほうから……。
  70. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 農林漁業金融公庫から農地買収者に対してはすでに国家資金の融通が行なわれておるじゃないかというような御趣旨と、それから大農が小農の土地を買収するということに低利の資金を貸しておるのじゃないかという二点のお尋ねだと思いますが、確かに被買収者でありましても継続して農業を営んでおります者に対しましては農林公庫から貸し付けをやっております。ただそれは調査上買収されたものであるかどうかということまで融資の基準に何ら関係はございませんから、それがどれだけの金額にのぼっておるかということは申しませんが、これは相当の数でございます。百七十五万世帯が被買収農家でございますから、全体の農家の中でかなりの割合を占めております。それに対しては相当の融資を行なっております。しかし、土地の取得資金についてみますと、必ずしも昔の大農が小口の零細農家を買収するというふうな傾向だけではないと思います。これは戦後十数年を経ていろいろ事情が変化しておりまして、土地を取得するのがかつての小作人である、それがむしろ旧地主のものを買収する場合だって一向かまわないわけであります。一定の型は何らございません。  それともう一点、農林公庫があるのだから十分な措置が行なわれておるじゃないかという点につきましては、国民公庫で今度法案が通った場合に対象といたしますのは、農業自身を目的とするものには国民公庫は貸しませんから、もとは旧地主であって、現在はすでに商売をかえて非農家になっておる、そういう者を対象にいたします。これらの数がどのくらいにのぼっておるか、今度の調査である程度のものはつかめておると思いますが、かなりの数の者がすでに農業以外の業についておるということも確かでございます。ただし、圧倒的に多いというわけではございません。したがいまして、全体のうちのある一定割合の方々を対象にする、その中で、いろいろ申し上げておりますように生業資金金融を受けるのに困難を感じておる者、そういう方々を対象に融資をいたそうというわけでございます。
  71. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。堀昌雄君。
  72. 堀昌雄

    堀委員 いまの副総裁の御答弁非常に不満です。実はこの法案は三十七年の三月十五日に当委員会に提案になりまして、私どもここで何回も議論してきたのです。特にこれは昨日も議論がありましたけれども、何も農地買収者には貸さないというように国民金融公庫はなってない。ですから、あなたのおっしゃったように農地買収者の人はたくさんこの中で借りておるわけです。そこで、われわれは一体それはどのくらいありますかと聞いたらあなたはわかりませんという答弁だった。わかりませんというのは、三十七年三月十五日以前については私はやむを得ないと思う。しかし、この法案提出をされて今日に至る間の普通貸し付けの中に農地買収者に該当した人があるかないかは、こういう法案が提案された以上当然それを調査する義務が国民金融公庫にあると思う。一ぺん出してください。三十七年三月十五日以後に一般貸し付け普通貸し付けにおける農地買収者が対象であるものは何件か、一作当たり金額は幾らか、残高は幾らになるかをお答え願いたい。それがなければこの法案審議するだけの必要はありません。それだけの熱意を国民金融公庫が持ってないのですから、わけもわからずに金を貸そうというわけにはいかない。
  73. 酒井俊彦

    酒井説明員 おっしゃるように法案は三十七年の国会から提出されておりますけれども、まだ成立しておりませんので、私どもの窓口といたしましても、お客さまにあなたは農地買収者でございますかというようなことを証拠を求めて関係のないことをお聞きするわけにいきませんので、したがって、そういう詳細な調査をいたしておりません。生業資金をお貸しするのに必要にして十分な最小限度の事項をお聞きして、これは融資できるかどうかという判断をさせておりますので、それ以外のことを立ち入ってお聞きするような指導をいたしておりませんので、いまわかりませんと申し上げたわけであります。
  74. 堀昌雄

    堀委員 われわれここで何回も聞きましたね。そうしたらあなたは調査していない、なるほどそれは金融の対象としてどうしても必要なことではないかもしれない、しかしこの法案がずっと毎年審議されているわけですから、それについては国会であなたは何回も答えているわけでしょう。そのつどわかりません、わかりません。最初のときはわれわれもわかりませんで済んだかもわからないのですが、今日いつまでもわかりませんでは、これはちょっと済まないですよ。なぜかというと法案がやめになっているならまあよろしい、やめになっていないのですよ。いいですか。だから全体の中に一体現在は一人も借りていないのかと言ったら、あるだろうと言うんですよ。あるだろうというだけではっきりしなかった。われわれは何回もはっきり出しなさいと言った。それなら少なくともわれわれが要求した以後のものは調べるのがあたりまえじゃないですか。
  75. 酒井俊彦

    酒井説明員 実は私のほうの貸し付け残高は八十数万件ございます。
  76. 堀昌雄

    堀委員 全部必要ないのですよ。私は三十七年三月から新たに貸し付けたものの中でどうだと聞いている。
  77. 酒井俊彦

    酒井説明員 それはまことに申しわけないのでありますが、ただいま申し上げましたように、窓口にいらっしゃるお客さまに対して、この法案成立しない前にあなたは農地買収者ですかというような貸し付けに関係のないことをお聞きして調べるというようなことをすることはいかがかと思いまして、的確な数字をつかんでおりませんけれども、おそらくかなり現在の貸し付けの中に被買収者もいらっしゃるだろうということは——これは推定でございますから、こんな席で申し上げましても、そんなものはおまえの推定だということになりますけれども、いるんじゃないかと私は考えております。ただ、的確にそれが何件で幾らになっておるかということをここではっきり言えとおっしゃられれば、そういう数字を持っておりませんので、まことに遺憾でございますが、お答えいたしかねるわけでございます。
  78. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま堀委員のほうから関連質問がありましたが、そうすると副総裁、これはちょっと委員席のほうからやじが飛んでいますが、たいしてこれを通そうとする熱意はないということで確認してよろしゅうございますか。
  79. 酒井俊彦

    酒井説明員 さようにお考えいただくとはなはだ困るのでございまして、これは先ほど来大蔵大臣がおっしゃっておりましたように、何らかの措置をする必要があるということで、ぜひ御審議の上すみやかに可決していただくことを私どもは望んでおるわけでございます。
  80. 卜部政巳

    ○卜部委員 しかし、副総裁がどのような御答弁をなされようとも、一応そういう積極的な誠意がないということだけは国民の前に明らかにしておきたいと思うのです。その点は一応保留しますけれども、私はそういう印象を深く刻み込みながら次に入ってまいります。  農林政務次官が十二時三十分までということでありますので、農林政務次官にお伺いをいたしますが、高橋銀行局長が先ほど御答弁なされておりますけれども、自作農創設維持資金がどのように活用されておるのか、むしろいまごろは農地取得資金のほうにウエートがあるような感じがするのですが、その点はいかがでしょうか。
  81. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 もちろんお尋ねのように、農地取得資金のほうにも御協力はちょうだいいたしておりますが、これはあくまで小さい規模の農家が、小規模の農業では日常できませんので、自分の努力によって農地を広げていこう、こういう方向に中心を置いて取得資金をお借りしているような次第でございます。被買収者があるいはまた昔のように大きな地主になろうという考え方農地取得には使われていない、私はこういうふうに解釈をしております。
  82. 卜部政巳

    ○卜部委員 では政務次官にお伺いいたしますが、私も資料を持っておりますが、政務次官のほうで持っておられる資料は——小さな農家の方々がその拡大をするために取得資金を使っておられるというふうに御答弁されておりますけれども、現実はほんとうにそれでいいのですか、間違いありませんか。政務次官として間違いがあれば、私はこれは問題がありますよ。
  83. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 私は決して先生のお尋ねに誠意のない答弁はしてないつもりでございます。あくまで農業規模を小さい百姓ができるだけ拡大していくために、そうしてまたそうした資金政府機関による土地取得の融資に待とう、こういう方向でやっておるのであります。詳細につきましては、事務当局が来ておりますから、私のお答えしておる精神と現実が違うようなことになりましてはたいへんでございますから、事務当局に内容等につきましては御説明させていただきたいと思いますが、精神はさように承知しております。
  84. 小林誠一

    ○小林説明員 農地等の取得資金でございますが、このワクは本年度は百七十五億でございます。先ほども政務次官から御説明いたしましたとおり、現在非常に経営規模が小さくて弱っておるというのが日本農業の現状でございますので、したがいまして、自立経営になるような線まで何とか金がなくて弱っておられる農家の方に取得資金を提供しようという考え方でおるわけでございます。したがいまして、その取得資金につきましては、先ほども申しましたように、経営の安定あるいは向上ということを目途に運用をいたしておるわけでございます。
  85. 卜部政巳

    ○卜部委員 高橋銀行局長お尋ねをいたしますが、その中に被買収者に該当するのが大体何十件くらいあるのか。これは大体把握された中に立っての銀行局長の御答弁のように私は思えるのです。その点についてこのような農地取得資金ほどのくらい現在の被買収者の人に貸し付けられておるのか、この点の調査はされておりますか。
  86. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 そういうふうな調査はいたしておりません。新しく他人の農地を取得しようとする人がかつて土地を提供した人であるのかないのかということを特別に調査いたすということはやっておりません。そういう調査をするということは、調査を目的だけならいいのですけれども、そうでないと、相手に変な、何かそれが融資の上での条件にでもなるのかという疑惑をむしろ与えることになるのではないかと私は思います。そういう調査をいたしておりませんが、先ほども申しましたとおりに、何しろ農地買収者の数は百七十五万という数にのぼっております。これは農家全体の数からいってもかなりの割合でございますから、当然に農地等取得資金の借り入れをなす者の中には相当数あるのではないか。しかし、旧地主であるがゆえに特に手放した土地を優先的に取得を認める、取得の資金を認める、そういうことはやっていないわけであります。考え方はいろいろございましょうが、私どもとしては、現在の状況において、土地の拡大をはかっていく、つまりいままでの一町くらいの規模でやっておったのでは、いわゆる農業の近代化というものは進まない、もっと耕作単位も広げていかなければならぬ、こういう観点から、ある意味においては奨励的な意味もかねて低利の資金を融通している次第でございます。
  87. 卜部政巳

    ○卜部委員 では私その点を頭の中に入れながら副総裁質問いたしますが、生業として農業を営む人には国民金融公庫から貸さないということを言われましたね。どうなんですか。
  88. 酒井俊彦

    酒井説明員 純農業に対しては国民金融公庫金融をいたしません。ただ、農業の範疇でございますが、酪農とか園芸、これには若干出ております。しかし純農業というものには私のほうは金は貸さないことになっております。
  89. 卜部政巳

    ○卜部委員 そこで、そういうふうになりますと、自民党の政府がやっております選択的農業の拡大などというものが入るわけですね。そうでしょう。そういう種類が入るわけですね。どうなんですか。
  90. 酒井俊彦

    酒井説明員 果樹園芸あるいは酪農、そういうものに対しては、これは他の一般金融機関から借り入れができない、これは政府機関で特別に設立された機関もございますが、そういうものからも十分借りられないというものに対しては、金融いたしておりますから、おっしゃるような純農業を政府が近代的な酪農とか園芸とかに切りかえていくのが選択的農業の政策の一環であるとすれば、そういうこともやっておるということになるわけでございます。
  91. 卜部政巳

    ○卜部委員 そこで高橋銀行局長答弁とのからみ合わせが出てくるのです。いいですか。被買収者には調査はしてないけれども貸し付けておる、こうなるわけですね。そうすると、土地をそういう人たちがどんどん買い込んでいるわけなんですね。そうして今度は選択的の農業の拡大だからといってまたこの金から借りられるということになるのですね。現実にいえばそういうことです。その中の調査がなされていないということは、これは一体どういうことなんです。そういうことでは私は困ると思うのです。その点を明らかにしてもらいたい。その点の区分を明確にしてもらいたい。
  92. 酒井俊彦

    酒井説明員 別に農地買収者に対してどれだけ出ておるかということは調べてございませんが、いま申し上げましたような、そういった豚を飼うとか牛を飼うとかいうようなものに対する貸し付けは、全体の金額にしまして一・三%程度、十三億くらいに当たりますが、そのくらいの金が三十八年度、四月から十一月までの間に、出ております。
  93. 卜部政巳

    ○卜部委員 堀委員のほうから質問された中でも答弁が何か積極性を欠いていますが、少なくともそうした——いわゆる生業資金は別なんですけれども、国民大衆全体に対してのあたたかい、思いやりのある政治というもの、さらにそれに対する法律というものもまだ考慮されない段階の中では、この問題のみに関して二重にも三重にも、さらにまた次には農地報償などというものが出てくる、こういうからみ合わせが、ほんとうのことを言って私にはわからないですよ。その点に対して高橋銀行局長のほうからもえらい長々と答弁がありましたが、そういう点をやはり明確にした上に立って、私は国民大衆に対するほんとうの思いやりのある政治というものは、そうあらなければならないと思うのですが、どうなんですか、この点は。——もう今回はやめにしようじゃありませんか。次期の国会くらいでどうですか。そんなことじゃ話になりはしませんよ。じゃ、その内容を明らかにしてください。現実にあるのですから。それを明らかにされない限りは、もう話になりません。どうなんですか、明らかにできますか、調べられますか。そんなに二重にも三重にも、農地報償でやり、さらには土地取得でやり今度は金融公庫でやる、こんなものを二重にも三重にも援護されるということはないですよ、ほんとうに。どうですか。
  94. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 この二十億の融資の対象をどう選ぶかということは、非常にむずかしいのでございまして、的確にこまかい基準はつくっておりません。実際に申し込みも受け付けておりません。どういうふうな基準が一番実情に合うかということがきめられませんので、通ったあとで申し込みを受け付けますが、ある程度受付を見た上で、どのような基準が一番いいか——大体どのくらいの件数あるいは金額が申し込まれるか、いまのところは見当がつきません。二十億というワクでございますが、従来の例ですと非常にまちまちでございまして、債券の担保貸し付け——交付公債担保にして貸し付けをやる例を振り返ってみましても、全体の交付された交付公債に対して一・九%しかないような場合もありますし、一四%くらいになっている例もございます。今度のこの二十億は、おそらく原則としては現在農業をやっていない人が対象になるわけでございますから、これらは人数の上では、農業をそのままやっている人は調査によりますと六割足らずでございまして、四割強の方がすでに転業している。その中にはサラリーマンもおりますし、必ずしも商業、工業等に従事しているわけではございません。したがって、割合としては、すでにかなり対象はしぼられておるわけでございますが、さらにその中で非常に一般的な基準から考えても当然国民公庫の融資の対象になる者、むろんこれは一方で農業を営みながら片方で片手間に何か商業をするというのは原則として省かれておりますので、そうでなくて、言ってみれば完全に農業から転業し商工業に従事する者というものが対象になる。それらの中で他の金融機関から金を借りにくいということになりまして、しかも生業のための意欲が十分ある、金が足らない、こういう方々を選んでいきたいと思っております。でありますから、いまから、他の金融機関政府金融機関等にも金を借り、いろいろほかの恩典にあずかりながらなおかつこの金を利用するといったケースが多く出るかという御質問に対しましては、それはきわめて例外の場合でなかろうか。もちろんこれはまだきまっておりません。いわゆる農地の報償制度ですかそういうものがどうなりますかまだきまっておりませんので、それを前提にしてお話しできませんが、この問題としてはいろいろ重複するというようなケースは比較的少ない場合であるというふうに考えております。
  95. 卜部政巳

    ○卜部委員 銀行局長のほうから長々と答弁がされましたが、端的にひとつ資料を要求いたします。農地取得資金の中にどのような人が——どのような人がといったらおかしいのですが、言うならば何町歩保持者、同時にこの点についての問題を明確にしてもらいたいと思うのです。この資料をひとつ提出してもらいたいと思います。国民金融公庫貸し付けの中で、わからないとかなんとかいっても、これは調査したらわかりますから、被買収者に属する人が何人おるのか、こういう点を調査をして提出をしてもらいたいと思います。わからぬことはないのです。調べたらわかるのです。そこで私は率直に申し上げますが、自作農維持創設資金というのがありまして、これは小さな農業の方々が離農をされないように貸すわけですね。ところが、今度の農地取得資金というのは、どう調べてみても、政務次官もおわかりだと思うのでありますが、いまはむしろ昔の大農に属する分断の人がこれを収得しつつある。そして小さな農業の方々は大体離農をしておる。京阪神だとかそこら辺に職を求めて就職をしているという現実があるわけです。そういう点がありますので、その点がわからないということは絶対にないと思います。その点ひとつ資料要求いたしたいと思いますが、委員長。いかがでございましょうか。
  96. 山中貞則

    山中委員長 いまの資料要求、最大限にいれたいと思いますが、資料をつくる前提の、貸し出しにあたってのそういう基準による調査を実施していない以上は、できない分野のものがあると思うのです。ただ、自作農維持創設資金の中の貸し出し残高の帳簿別分類その他は可能と思いますが、小林君、それはできますか。
  97. 小林誠一

    ○小林説明員 できるだけあつめてみます。
  98. 山中貞則

    山中委員長 できるものはつくらせます。
  99. 卜部政巳

    ○卜部委員 それでは農林政務次官に伺いますが、農村に対する配慮をいろいろと政府にやっていただくことについては、私は大賛成です。しかし、そういうような一部の人々に突き上げられていやいや出す法案であったり、また一部の人々の勢力を温存するための法案であったりすることについては、私は大反対であります。それで政務次官に伺いますが、いま一般の農家の方が一番望んでおるのは、そんなわずかな金ではないと思うのです。これこそ価格安定法を、アメリカなんかもやっておるわけですが、やるべきだと思うのです。その点、政務次官は、価格安定法をつくるという御意思がありますか、ひとつお伺いしておきたいと思います。
  100. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 やはり現在の農民の生活を安定し、また農民生活を向上していくには、御説のように、一番問題は価格の安定ということであると私も認めております。しかし、今日の農産物価格の安定ということは、非常にむずかしいのです。そしてまた、これはそのもとは流通機構から変えなければならぬ、御説のようなことでございまするから、できるだけ農産物の価格の安定については熱意をもってやっております。しかし、いま申し上げたように、これは非常にむずかしいことでございますので、誠意をもって、やれないからと言っておらずに、やれる方面からどんどんと前向きの姿勢でつとめてまいりたいと思っております。しかしこういうぐあいに、中には畜産物価格安定法とか農産物価格安定法というものもこしらえていただきまして、それに基づいてやっておりまするが、範囲が狭うございまするので、もっと広めつつ安定をはかっていきたい、かように考えております。
  101. 卜部政巳

    ○卜部委員 価格安定はむずかしいというようなお話ですけれども、アメリカ経済においても、第一次大戦後における恐慌などが来ないように、第二次大戦後においては、高技術、高生産の中における農村に対する思いやりから価格安定法ができてきておるわけですね。これは説明するまでもないと思うのです。日本政府がそのことに真剣に取り組むなら、私は率直に言ってできないことはないと思うのです。その点、むずかしいとかなんとかいうことをおっしゃいますが、いま言うような農地報償なり、さらにはこういう改正などを行なっていく、こういう間違ったような方途をとるのではなくて、筋の通った、ほんとうに日本人が魂をゆすぶられるような政策をやることが望ましいと私は思っています。  いろいろと申し上げたいことがありますが、あとに質問者が続いておりますので、私はこれで終わりますが、あとからの資料によりましてなおかつ質問を続けていきたいことを申し上げ、保留いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。
  102. 山中貞則

    山中委員長 平林剛君。
  103. 平林剛

    ○平林委員 いろいろ同僚議員がお尋ねをしておりますし、またこの法案についての質疑は、過去の国会において何回も議論されたことでありますから、なるべく重複を避けてお尋ねをいたしたいと思います。  農地の被買収問題についてその実態を調査する作業が行なわれておったと思うのでありますけれども、そのときに出された答申があると思うのですが、その経過についてちょっと初めに説明をしていただきたいと思います。
  104. 八塚陽介

    ○八塚説明員 ただいまお話しになりました調査についてでございますが、これは二度ございまして、答申に関連いたします調査は、通称いわゆる工藤調査会の調査でございます。それから昨三十八年度の調査は、約一億八千万かけてやったのでございます。それは今年の三月三十一日に一応調査を完結いたしまして、その調査をどういうふうに読んでいくかということで検討を続けておるわけでございます。
  105. 平林剛

    ○平林委員 私は昭和三十七年五月二十二日の農地買収者問題調査会答申というのを資料としていただいたわけでありますけれども、そうするとこれは第一回の調査の結論である、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  106. 八塚陽介

    ○八塚説明員 そうでございます。
  107. 平林剛

    ○平林委員 この調査をするために、一億八千万円ですか、その経費をお使いになったというわけですか。
  108. 八塚陽介

    ○八塚説明員 先ほども申し上げましたように、三十八年度に行ないまして、おおむね三十九年の三月に調査を終わりましたのが、一億八千万円使いました調査でございます。三十七年の工藤調査会の調査は、ちょっと数字を忘れましたが、それよりはるかに少ないサンプルで、したがいまして少ない額でやった調査でございます。
  109. 平林剛

    ○平林委員 いまお話のありました工藤調査会あるいはその後の調査によりまして使用された調査費の具体的使途の内訳といいますか、内容について明らかにしていただきたいと思います。
  110. 八塚陽介

    ○八塚説明員 最初に、順序は前後いたしますが、三十八年に行ないました調査につきましては、買収世帯と一般世帯と分けましてそれぞれ対比をするというような設計をまずやりまして、実態調査を行なったのでございます。それ以外に、世論調査と申しますか、被買収問題について一般にどういうふうに考えておられるかというような調査を行ないました。なお、実態調査に関連いたしまして、被買収者の現在の生活状況と申しますか、所得あるいは家計簿の実態がどういうふうになっておるかというような調査を行なったのでございます。なお、それ以外に従来の農地買収者の問題の経過にかんがみまして、かなり基礎的な調査を別に委託をいたしてやったのでございます。そのうちの一番大きい実態調査につきましては、中央調査社に対しまして約一億で、実態調査は約一億二千四百万、生活状況調査は約一千万、世論調査は三百四十万、そのほか基礎的な調査といたしまして五百八十万ということで、その他印刷、事務費等で一億八千九百万ということで三十八年度予算に基づきます調査をやったわけでございます。工藤調査会当時の経費につきましては、いま手元に資料がございませんので、後刻御報告申し上げますが、一千万足らずであったと思います。二年にわたってやったのではないかと思います。
  111. 平林剛

    ○平林委員 その中央調査社というのは何ですか。
  112. 八塚陽介

    ○八塚説明員 これは特別の財団法人でございまして、この調査は全国をそれぞれ区分けをいたしまして、かつ層別に各戸を抜き取りで、サンプルで調査したわけでございます。したがいまして、全国でそれぞれ一万戸ずつ調査対象にいたしております。その際に全国に手分けをして、各戸にあたって調査票の書き込み調査をいたしたわけでございます。そういうように全国的にサンプル調査をするのにきわめて適切な体制を持っておる調査専門の法人でございます。
  113. 平林剛

    ○平林委員 責任者、それからその構成、場所、そういう点について説明してください。
  114. 八塚陽介

    ○八塚説明員 責任者の名前はあとですぐ調べて御返事いたします。日比谷公園の市政会館の中にございますそういう調査専門の団体でございます。ここへ委託をしたわけでございます。
  115. 平林剛

    ○平林委員 それはおかしいじゃないですか。一億二千四百万円もの経費をかけて調査を依頼するところの責任者がわからぬということは、まことに奇怪なことだと思うのですよ。私はこれが発端となっていろいろな話が始まるわけですから、責任者くらいは知っていて、これだけの大きな金額をかけて調査する責任者、その構成をあなたがつかんでいないということは、まことに無責任だと思います。すみやかにその返答をしてもらいたい。
  116. 八塚陽介

    ○八塚説明員 わからないと申しますのは、実は私が現在の段階でわからないのでございまして、私どものほうが調査を委託いたします段階では、こういう調査をするのに適当な団体であるというふうに判定をいたしたわけでございますから、いますぐ調べまして御返事を申し上げたいと思います。
  117. 平林剛

    ○平林委員 私は、農地買収者問題の調査については、かなり問題がありますから、そういう意味ではこれを調査する人たちについて少なくとも偏見があってはならない、また利害関係者が入ってもらっては困る、公正な運営がされなければならないという立場で強い要望を国民大衆もしておると思うのです。そういう意味では、その実態を調査したところがどういう機関であるかということは、やはりわれわれが今後判断する場合に重要な資料に相なるわけです。責任者はわからなくても、大体の資本金だとか、どのくらいの規模を持っておるところというくらいはわかっておるでしょう。名前はわからなくても、その法人資本金、それから構成というようなその規模についてはいかがですか。
  118. 八塚陽介

    ○八塚説明員 申しわけない次第でございますが、中央調査社自体につきましては、私、ただいまの段階でちょっと存じておらないので、あとで申し上げたいと思います。
  119. 平林剛

    ○平林委員 私は、この問題について、ただいまのような政府の取り組み方、それから調査を依頼したところが即答できないような状態でありますというと、これを取り扱う方法についてもまさしく妥当であるかどうかという点について大きな疑問を感ずるわけです。そういう意味では、この法律案——こういう調査に基づいて、いろいろ政府においても考えられ、与党でも苦心をされておると思うのでありますけれども、どうも国民立場から見るときわめて奇怪なことである、ひいては法律案自体に対してもそういう意味から大きな疑問が生まれてくる重大な問題だと私思います。本来ならばここでもう質問はやめるわけでありますけれども、私ちょっときょう歯が痛くて、ほかの問題もありますからあとでその報告を受けることにいたしまして、次の問題に移ります。   〔「質問中にその中央情報社の内容を調べてくれなければ」と呼ぶ者あり〕
  120. 山中貞則

    山中委員長 承知いたしました。
  121. 平林剛

    ○平林委員 昭和三十七年五月二十二日に俗称工藤調査会のほうから答申が出されまして、私もこの答申を一読いたしたわけであります。いろいろ書いてありますけれども、大づかみに言うと、工藤調査会の結論としては第一において「政府は、農地改革により農地買収された者であって、現状において(1)生活上又は生業上困難な状況にある者に対し、生業資金の貸付の措置を講ずる(2)その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対し、育英その他の制度の運用において配慮を加える等必要な措置をとることが適当である。」これが一つの結論のようになっておりますし、もう一つは「なお、農地改革が被買収者に与えた心理的影響が強く残っていることは調査の結果からも明らかとなっているが、それにしても、巨額な金銭を被買収者に交付することは諸般の情勢上適当でないとする見解が多かった。」これが要約するとこのときの結論になると思うのであります。ただいまわれわれが審議をしております法律案はこの答申との関係においてはどういう関係になっておるのでございましょうか。これは大蔵省、政府提案者の側からお答えをいただきたいと思います。
  122. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 お答えします。  本来申しますと、先ほど来この法律案の提案の理由、また御質問に対します大臣答弁にもありましたように、被買収者の中で生業資金を借りることのできない方に対して特別にやろう、こういうことでございますので、農地報償の問題等とはお尋ねの点全然——全然ということはございませんけれども、一応この法律案とは関係がないわけでございます。したがいまして、大蔵省の提案といたしましては、先ほど大臣が御答弁を申し上げましたように、政治的の考慮からいたしまして、そうした気の毒な方に対しましては、何とか特別に適当な低利の融資のできるような方法を講じたい、こういうことが提案の理由になっておるわけでございます。それで、農地買収者の調査等につきましては、そういう意味におきまして、全然関係はないとは申しませんけれども、現在被買収者において生業資金にも困って立ち直りができないという方について特別の措置をしたい、こういう考え方でございます。
  123. 平林剛

    ○平林委員 政府の提案理由は何回も読みました。だからそんなことはお答えいただかなくてもわかっておるわけです。読んでみたけれどもよくわからないというだけのことでありまして、それは読みました。私のお尋ねしておりますのは農地買収者問題調査会の答申に、先ほど読み上げました前段第一、第二の条項が結論として出されておりますが、この答申の結論と今回提案をされている法律との関係はいかがでございますか、こういうわけでございます。
  124. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 工藤調査会とこの法律案を提案したことの関係でございますか。——これは私も詳しいことは十分知りませんでしたが、一応大体並行的にこの調査と関連いたしましてこの法案政府が提案した、こういういきさつになっておるようでございます。詳しいことはもし何でしたら当時の関係者の中から事務当局に答えさせます。
  125. 平林剛

    ○平林委員 私は、この工藤調査会の答申に「生活上又は生業上困難な状況にある者に対し、生業資金の貸付の措置を講ずる(2)その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対し、育英その他の制度の運用において配慮を加える等必要な措置をとることが適当である。」と書いてあるわけですから、この法律についても大体同じようなことがあるからそれとの関係を聞いておるわけです。こういう答申があったので、政府はこの法律案を議会において何回も廃案という状態であったけれども、さらに御提出になったのですかと親切に聞いておるわけです。
  126. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 初めのいきさつから申しますと、工藤調査会の答申が出たのが三十七年の五月でございまして、それからこの法律案が衆議院に付託されましたのは三月です。つまりこの法律案のほうが先につくられた。その点、調査会をせっかく設けながら、その答申が出ないうちに政府のほうから法律案が出てしまったということについて多少問題があったことは事実のようであります。つまり調査会のほうに御不満があった。しかし実際に答申が出てみますと、いまの生業資金に関するところは結局は政府がとった措置を認めたような、そういう措置をとりなさいというふうなことになっておる。そういう結論がございましたので、何回か流れましたけれども、この措置は工藤調査会の答申にもそういうふうな結論が出ておりますからそれを尊重いたしまして、何回も国会でお退けになりましてもそれで出してきておる、こういうふうに考えていただきたいと思います。
  127. 平林剛

    ○平林委員 政務次官にお尋ねいたします。前に出したことは私責めていやしませんからよけいな弁解はしないでけっこうです。そうすると、昭和三十七年五月二十二日に調査会から私が先ほど読み上げましたような前段の結論が出て答申をされた、そこで、諸般の事情も考えてこの答申を尊重して本法律案を提案した、こう了解してよろしゅうございますか。
  128. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 さような考え方で提案したわけでございます。
  129. 平林剛

    ○平林委員 そうすると、いままで答申が出る前に出された案と今回提案をされた法律案との間には違いがありますか、ありませんか。
  130. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 最初三十七年に提案したのと全然内容は同じものでございます。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  131. 平林剛

    ○平林委員 そこがおかしいと私は言うのです。前に出された法律案と答申が出されたあとの法律案とは違いがない、全く同じものであるということになりますと、「その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対し、育英その他の制度の運用において配慮を加える」この必要な措置につきましてはどういうふうになったのでしょうか。
  132. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 実はその育英資金の問題につきましては、御承知のように文部省のほうにおいて制度を設けておるわけでございますが、当時文部省とも検討の結果、文部省としては特別にそういう方々にそういう制度を設けることについては消極的な考えであったというようなことからこの問題ははずしておったような事情になっております。
  133. 平林剛

    ○平林委員 国民金融公庫のほうでは、その規定によりまして、育英資金貸し付けなどにつきましては取り扱っておらないように承知しておるわけですけれども、そうですか。
  134. 酒井俊彦

    酒井説明員 私のほうでは、育英資金等は、恩給担保の場合には、特別な法律がございまして、出せますけれども、それ以外のものは取り扱っておりませんし、今度の法案でもそれを取り扱うつもりはございません。
  135. 平林剛

    ○平林委員 私は、農地買収者だけが育英資金やあるいは子弟を学校にあげるための経費国民金融公庫で取り扱え、こう言うわけじゃございません。しかし、現在国民相当数が、子弟を進学させるためにかなり多額の金額を必要とする、こういう場合に何らかの措置をとるべきだという持論なのであります。そこで、せっかくこういう答申がございまして、これはこのことのためじゃございませんけれども、農地買収者に対してもこういうことをやったらどうかということがある際には、全般的な国民の育英資金についても相当の考慮を加えられる措置がとられていいのじゃないか。今回出されている法律案はあまりよくないけれども、そういうことについて、これを契機にやるということは大いに奨励すべきことだと思うので、国民金融公庫からもそういうことをおやりになったらどうだろう、そういう貸し付けをおやりになったらどうだろう、こう思うのでございますけれども、なぜできないのですか。
  136. 酒井俊彦

    酒井説明員 実は、国民金融公庫法によりまして、私どもの貸し付けは、生業資金で、その事業計画が立ち、返済能力がある、つまり事業資金貸し付けるということでございまして、法律上の制約がございます。育英資金等は消費資金に相なりまするので、私のほうの立場としてはそういう金融はできないという性格を持っております。ただ、先ほども申し上げましたように、恩給に関しましては、恩給担保に関して法律が別にございまして、そういう育英資金も出せるという法律がございますので、施行いたしておりますが、それ以外のものにつきましては、さような消費的な金融をすることは、法律でできないことになっております。
  137. 平林剛

    ○平林委員 私、この法律につきましては、やや飛躍をするところがあるかもしれませんけれども、この育英資金貸し付けにつきましては、何らかの措置を講じて、国民全般の利便に資するという措置政府はとるべきである、こう考えておるわけであります。そこで、このことにつきまして、いろいろの角度から検討してみたのでありますけれども、一つの方法としてこんなものがあるのじゃないかと思って、政府に提起をしておきたいと思うのです。  銀行局長にお伺いしますが、子供銀行というのがございますね。子供銀行というのは、現在どのくらいの規模になっておりますか。私の承知しておるところでは、少なくとも三千億円ないし四千億円程度になっておると承知をしておるわけですが、子供銀行の預金総額について明らかにしてもらいたい。
  138. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 ただいまその数字を持ち合わせておりません。それはすぐわかることでございますから、調べてお答えいたしますが、三億円までなっておるか。いまおっしゃいましたのは、おそらく子供郵便局から子供銀行、子供信用金庫に至るまで全部をさして言われたのじゃないかと思います。数字の点は確かめてお答え申し上げます。
  139. 平林剛

    ○平林委員 私、前に政府が出された資料では、正確な数字は記憶しておりませんけれども、三千億円をこえておると記憶をしております。これをひとつあなたのほうでお調べになっていただきたい。いま全国の小学校、中学校におきまして毎月日をきめて子供の預金というものをやっております。そうして子供銀行として総括して一つのまとまりができておるはずであります。調査するときに、その金額の総額だけでなくて、これによって貯蓄されたところの金額をどういう方面に対して預金をしておるか。中には農協に預金をしておるところもあります。市中の信用金庫に納めておるものもあります。市中銀行にやっておるのもあります。私は詳しいことはわかりませんけれども、その実態も調べてもらいたいと思うのであります。  そこで、この子供銀行というものは、一般の預金とは違うものだ。預金としては変わりはないけれども、その性格から見て、子供の小づかい銭あるいはいろいろなお小づかいなどをもらってためたやつを預金をした零細なものであるし、そしてそれはきわめて純真なものである。そういう意味から考えますと、ある意味では、こうした預金については、私は、いろいろな方面に活用することを考えてやっていいのじゃないか。この金をごっそり一般の専業資金に回してしまうというようなことではなくて、育英資金とか、あるいはその運用によりましては、子供たちの中で貧困家庭の者がありますから、そういう方面に得た利得を回す処置を講ずるとか、何らかの手段を講ずること、これは私は、最近の実情から見て政府においても検討する必要があると思いますし、また育英資金について国民がたいへん苦難を感じておるときに、国民金融公庫法律を掲げて貸さぬというような段階においては、政府でも積極的に検討してもらいたい、こう考えておるわけですが、いかがでしょうか。
  140. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 御承知のように、育英資金は文部省で主としてやっております。年々資金も出しておりまするし、いま相当有効に活用されておることは御承知のとおりでございますが、いまのお話まことに私も同感でございますが、実は地方でいろいろやっておりまする点で、たまたま私の郷里では、信用金庫の理事長がそういう問題に非常にあれされておりまして、お得意さんに対する特別なあれとしてそういう制度を考えておられるということを、この間私ちょっと聞いてまいりましたが、こういう問題も非常に大事な問題でございますので、ぜひひとつ研究をさしていただきたい、こう考えております。
  141. 平林剛

    ○平林委員 私は、国民金融公庫ワクの中で農地買収者に対して二十億円貸し付けるなんということよりよほどいいことだと思うのです。さっき大蔵大臣はこれも一つの政治だと言われたけれども、むしろほんとうの政治は、こうした問題について政府が検討し、ほんとうに育英資金が必要である家庭あるいは国民に対して積極的にこの零細な貯蓄の、しかも子供たちの純真な気持ちを生かして、その方面に利用されるという金融政策というか、そういうことをひとつ積極的に考えてもらいたい。農地買収者に対して二十億円の生業資金というようなことを考える前に、もう少し頭を働かしてもらいたいということを申し上げておきたいと思うのであります。  次に、もう一つの問題についてお尋ねをしたいと思います。結局、農地買収者がこうした報償の問題について、いろいろ政治的な動きをやり、また、政府与党もだいぶ苦しくなってきて、大きな政治問題になるという政治的な背景というのは幾つもあると思うのでありますけれども、その一つに、買収をされた土地が、それを受けた人たちによって転売をされていく、そしてそれが相当の価格として利便を受ける、つまり用途以外に売買が行なわれまして、そうしたことがまことにふつり合いだ、こういう趣旨もあると理解をしておるわけでございます。問題は農地以外には転用しない、またそういうようなことは本来の趣旨でないということから、政府がこうした問題について配慮をしておれば今日のような問題にはならなかったではないか。  それからまたもう一つは、最近の土地の値上がりが急激であるということが旧地主の不満であるということが想像できるわけでありますから、そういう意味においては地価対策ということが政府において積極的に取り組んでおらなければならなかった点だと思うのであります。私は最近の地価の値上がりにつきまして国の経済全般から見まして、あるいは国民生活の実態から見てきわめて憂うべき現象だと思うのでございますが、政府においてはこの土地の高騰の状況についてどういう御見解を持っておりますか。
  142. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、御承知のように当初農地を解放いたしました当時には、農地以外の用途の変更に対しましていろいろの制限があったようでございますが、いつでございましたか、その点が多少緩和されたように私は記憶をいたしております。そういう点がただいま御指摘のような意味合いにおきまして、被買収者相当な刺激を与えることは事実でございます。しかしすでに今日といたしましてはそういう制度にいたしておりまするので、もとにまた返すというわけにもいかないのじゃないか。そこで何とかこれに対する措置を政治的に考慮しなければならぬということが、いま政府並びに党といたしましては問題になっておるような次第でございます。
  143. 平林剛

    ○平林委員 大体昭和三十年の四月から昭和三十八年九月末までの間に土地というものは六倍の値上がりを示しておる。これは統計上でございまして、国民はうちを建てたい場合に土地の値段が高くて困る、国民の生活に重大な圧迫を与えていることは政府においても御承知のとおりでございます。また各地域において実際には投機の対象になって、そのために異常な上昇率を示し、あるいは公共事業をやる場合でも円滑な運営ができない、各都市の健全な発展も阻害されておる、こういう実情でたいへん憂うべき象現だと思いますけれども、あなたはいかがですか。
  144. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 農地の問題に対しましては非常な問題が起こっておりまして、これに対して何らかの政治的措置をしなければならぬということを考えておりまする意味合いからいきまして、いま御指摘のような点につきまして、私ども御同意を申し上げる次第でございます。
  145. 平林剛

    ○平林委員 私はさっき建設省の人に来てもらおうと思ったのですが、時間もないからそこまで進むかどうかと思ってあえて呼ばなかったのですが、建設省の計画局で出しておる「宅地問題とその対策」という本を読んでみたのです。そうしたらこの現在の地価が高騰することは自由経済の前提のもとでは一般的に決して憂うべき現象ではないと書いてある。物価の騰貴は本来憂うべき現象でないと書いてある。そこでどうも政府のこういう地価対策に対する考え方というのがどうも安易でないか、こういうような考え方でおるから地価の高騰を押えることはできないのじゃないかということを感じたのであります。あなたは私と同じようにこれは憂うべき現象だというふうに同感をされたわけでありますけれども、政府の関係当局においてそれぞれこんなふうに見解が違うということはどういうわけですか。
  146. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 建設省のそういう意見に対しましては、いま御指摘されたので承知したのでございますが、御承知のように公共事業といたしますものにつきましては、地価が非常に急激に上がりまして、そのために予算でも土地買収にうんとかかる、またなかなか土地を入手することがむずかしいというようなことで、強制収用の問題が戦前には相当厳格に行なわれておったのでございますが、戦後はそういうことがきわめてルーズになりまして、そのためになかなか事業が十分に行なわれないということは私は建設省自体でも非常に痛感しておられることと実は思うわけでございます。そういうことで結局何とかして公共事業等をいたしますために、その事業が一日も早く行なわれる意味合いにおきましては、いまの公共事業に対します土地等の強制収用の法律を強化するということで、それがいま提案されておるように承っておるわけでございますが、そういう意味合いからいきますと、私はどうも建設省のそうした物価の上昇はむしろ憂うべき問題ではないという結論を出されているのにつきましては、私はいささか疑問を持っておるわけでございます。とにかく今日特に土地の値上がりが非常に激しいということは、政府におきましても党内においても一致した意見だ、こういうふうに考えておりますので、建設省のそういった意見がどういう形で出ましたかちょっとはっきりわかっておりませんけれども、私個人の考えとしましては何とかこれらに対しては適当な措置を講じていかなければならぬということを考えておる次第であります。
  147. 平林剛

    ○平林委員 一九六四年四月建設省計画局で出した「宅地問題とその対策」というプリントをひとつ読んでください。いろいろ書いてあって、必要な施策を盛られておりますけれども、基本的な考え方は、土地の高騰というのは憂うべき現象ではない、自由経済ではあたりまえだという観念から打ち出されているのです。私はそういう意味からこういう問題をとらえるということが根本的に間違いである、真剣味が足りなくなってくる、こういうことに相なるのではないか、これはあなたのほうの所管ではありませんけれども、これに関連をしてちょっと検討してみますと、こういうことが書いてあるのはまことにけしからぬと思っているわけであります。最近の地価の値上がりが急激であることは旧地主の不満であって、しかもそれが今度のような措置を要求しあるいはその他のことを政府に迫っておるという一つの理由にもなっておるわけであります。そういうときに少なくともこれを所管する建設省がこんな態度でいろんなことを考えておる。私は今日の土地の値上がりというのは農地改革の結果ではないと思う。要するにほんとうの意味の政治の貧困がこういう地価の高騰を招いたものだと思うのであります。ですからそれを国民金融公庫貸し付けの中にそういう理由が発展してもめたりすることはまことに不当なことだ、こんな法律案はそういう意味では今度の国会でもわれわれが結論を与えないことが最も理性に合ったそしてまた常識的なものであるというふうに考えておるわけでありまして、政府のほうもほどほどにあまり熱を入れないほうがよろしいと考えているわけであります。  そこで問題はそういうところにまいりましたけれども、こうした地価の異常な値上がりに対して私と見解を異にする大蔵省当局においては地価抑制について積極的な手をあなたのほうで考えられるべきものは考えていくべきものだと思うのでありますけれども、地価抑制の方法について大蔵省として当面考えられる点はどんなものがございましょうか。
  148. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私が答弁をするのはおかしいのでございますが、土地の価格そのものというふうになれば、これはやはり建設省でお考えになっていただきたい。土地の値上がりの中には、都市周辺等における、たとえば宅地の予定地などの値上がりが非常に急激な一つの原因が、仮需要にあるということをいわれております。実際にその本人が使うという需要ではない、値上がり期待のために投機目的で土地を買うというものがある。ですから、金融的な意味におきましても、そういったものを、これはなかなか実態は把握できないでしょうけれども、金を貸して、目的は違った目的で借りても実際は土地を買っておるというふうなことがあるといたしますと、こういったことはやはり融資を押えるということも必要でございましょう。またもう一方に、たしか今度の国会ですでに通ったのだと思いますが、土地の譲渡所得に対する課税が従来非常に甘かったのであります。空閑地税云々でなくて、譲渡所得そのものに対してたしか半分しか課税対象にしない。しかも価格そのものがしばしば実際の譲渡価格をはるかに下回った価格で申告されておる。だから、ほんとうの意味での税金はごく一部しかないというふうな矛盾があった。今度は何か三年でしたか五年でしたかはっきり知りませんが、ある短い期間の間に手放した場合、譲渡した場合は、そういう特典は認めないというふうになりましたので、若干改善されたと思います。しかしこれは、やはり相当に税制上の措置などで考えていくことが、そういう仮需要による土地の騰貴を防ぐ一つの手段になるのではないか。外国の事情なんか見ましても、やはり空閑地税などをやっておるところも幾つかございます。そういうことを大蔵省として考えるならば、主としては税法上の措置考えるのが一番適当ではないかと私どもも、専門違いのことについて何ですけれども、そういうふうに思っております。
  149. 平林剛

    ○平林委員 主税局は来ていませんか。——私の言いたいことは、国民金融公庫の中でこういう貸し付けワクをやるとかやらないとか議論をする前に、この地主の、被買収者たちの要望しておる根本的な問題をなぜ積極的に解決せぬかということなんです。土地の高騰がある。それならば土地の高騰について政府はどういう手を打つか、これからも現状に合わせてどういう手が必要かということを考えるのが優先しなければならぬ。それが根本じゃないかということを申し上げておるわけです。また、かりにこういう土地が転売をされて、それが社会的な不当利得として見られるというならば、それに対して断固たる手を打ったらどうか。そういうことが政治ではないかということを申し上げているのです。二十億を貸すとか三十億を貸すなんということを三回の国会に議論し、われわれも何回にもわたって質疑をして、それでもなおわからぬというような頭では、私は政治というものはとれないのではないかということを強調したいわけなんです。その意味では政府にこうした問題について——大蔵省も、こういうことを出す前に、そういうことを相当研究されなければいけない。しかる後にこういう法律案を出したらどうですかと言いたいのですよ。ほんとうをいえば、この地価の騰貴を押えるためには、いま銀行局長も畑違いの話を少しされまして、地価増価税とか空閑地税とか、いろいろな大蔵省としても考えなければならぬ点があるわけです。そうした問題について、どういう見解か。これはこうだから、あれはこうだから、だからやむを得ずこうなったのだというくらいのことがなければ、この問題について真剣に議論する気にならぬですよ、ほんとう言ったら。私はどこか考えの置きどころが違うのじゃないかと思うのです。  ほんとうは主税局に税の問題について私はこれからお尋ねしたいと思うのですけれども、いないようですから、またあとでやることにいたしまして、この辺できょうは終わっておきたいと思います。
  150. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 先ほどの子供銀行のことについて、総額だけとりましたから申し上げますが、いわゆる子供銀行的なもの、つまり子供銀行の銀行という名前はつかなくても他の金融機関等合わせまして厳格な意味での子供銀行の金額は、百八十七億九千六百万円でございます。これは三十八年六月末の数字でございます。それから別に学校単位で旅行の積み立て等いわゆる学業預金というものがございます。これが百二十一億八千九百万円でございまして、合計いたしまして約三百九億円、この総額を通常子供銀行預金の預金金額と称しております。
  151. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 先ほどの平林委員質問の中で答弁を保留されておりますので、答弁していただきます。八塚調査室長。
  152. 八塚陽介

    ○八塚説明員 先ほどは不勉強でまことに申しわけございませんでした。先ほども申し上げましたように、今回の調査は実態調査と生活状況調査、世論調査その他基礎調査というふうになっておりまして、非常に金額のかさむ実態調査は、これは都道府県を通じてやったわけでございます。生活状況調査つまり農地買収世帯と一般世帯の生活の状況を比較するというような調査、あるいは一般に世論がどういうふうに考えておられるだろうかという調査、この二つを、先ほど財団法人と申し上げましたがそれは間違いでございまして、社団法人の中央調査社というところに委託をしたわけでございます。その中央調査社は、時事通信の長谷川才次さんが代表者になっておられまして、中央調査社関係七名とその他大学の先生あるいは各通信社の方であるとかあるいは地方紙の代表の方であるとかいう方が六名、計十三名が理事ということで、中央では約六十名のスタッフ、各県にはそれぞれ支部がございまして、一、二名ずつくらいのスタッフを持っております。もちろんこれは中央調査社でございますから別のものでございますが、主として時事通信の通信網といいますか全国的な網をある程度利用するというようなかっこうになっておりまして、私どものほうでも全国的なそういう世論調査であるとかそういうものをやる場合にそういうものを使っておるということでございます。前回の工藤調査会の際も、もちろん設計その他は専門調査委員の都立大学の小山先生だったと思いますが、指導があったわけでございますが、やはり中央調査社を使っておる、今回もやはり使ったわけでございます。
  153. 平林剛

    ○平林委員 いま銀行局長が話された数字に私が手元で調査した数字と大きな食い違いがありますから、私のほうも調査をしてみたいと思います。ただ、先ほど申し上げましたように、その預金先の調査、それからこれについて政府として検討してもらいたいという私の要請につきましては、後日またその結論をお聞かせいただきたいと思います。
  154. 吉田重延

    ○吉田(重)委員長代理 本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時二十分休憩      ————◇—————    午後三時十七分開議
  155. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  質疑を続行いたします。竹本孫一君。
  156. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は予備費の問題を特に伺ってみたいと思います。  御承知のように、今度二十億円を二百億円の予備費の中から出そうということでございますけれども、本委員会におきましても、若干論議をされておるわけでございますが、私はまだ納得がいかないので少し掘り下げて伺いたいと思います。  最初に、大蔵次官もいらっしゃいますから伺いたいと思いますけれども、今度の二十億円を予備費から出すということについて、憲法八十七条あるいは財政法等の問題について大蔵当局は何らの疑問を持っておられない、全く合憲的なものだというお考えでありますか、伺いたいと思います。
  157. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 この問題につきましては、大臣からも御答弁がありましたように、すでに二回も継続して提案されており、三月三十一日までに通していただくという予定のもとにこの法案提出したことは御承知のとおりでございますが、不幸にしてそういうことになりませんので、繰り越し明許の期間が切れましたので実は予算がなくなった、こういうことでございます。これは全く大蔵省といたしましては予期していない関係でございましたので、ここで予備費の中から支出しようということにしておるわけでありまして、大蔵省といたしましては、その問題については一応やむを得ないという考え方のもとにやっておるわけでございます。もしこの法案が通りますれば、これは御承知のとおり義務支出になりますので、これに対する支出をいたさなければなりませんので、そういたしますればやはりとりあえずは予備費の中から支出するほかに手はない、こういう考え方でおるわけであります。
  158. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいま、やむを得ないのでというおことばがございました。あるいは若干政府としても疑問を持っておられたのではないかと思いますけれども、私は、法律的に見てこういう重大な問題について、大体最近憲法を軽視する傾向もありますけれども、十分論議をされておるのではないか、あるいは少なくともいろいろ疑問を持たれていたのではないかと思いますから、そこでもう一ぺん重ねて、やむを得ないと言われた理由をひとつ承りたいと思います。
  159. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 ただいま申し上げましたように、義務支出になりますから、どうしても直ちに補正予算をするというわけにもいかないのでございます。とりあえずは予備費で出す以外には手がない、こういうことでございます。
  160. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの次官の御答弁に対して、法制局のお考えを伺いたいと思います。
  161. 荒井勇

    荒井政府委員 ただいま政務次官が御答弁になりました点で、財政法二十四条にいう「予見し難い予算の不足に充てる」という事態は、政府として昭和三十八年度予算関係法律案としてお願いをしておりました。予算関係法律案というのは、予算法律との関係が密接な関係のもとに議決されるということは、唯一の立法機関としての国会として、当然期待するのが至当であるということでありまして、いまの政務次官の御答弁になりました点に尽きるかと存じております。
  162. 竹本孫一

    ○竹本委員 それではさらに念を押して伺いますけれども、そうすると大蔵省にいたしましても法制局にいたしましても、この二十億を予備費から出すということについては、憲法上あるいは財政法上何らの疑義を持っていないままに出したのでございますか。
  163. 中尾博之

    ○中尾政府委員 本件は三十七年度予算を三十八年度に繰り越しまして財源措置を講ずる前提のもとに、法案をお願いをいたしておったのであります。しかるに年度内にこれが成立を見ないままに現在になっておりますが、この事態法案をお願いするとき、あるいは三十九年度の予算を編成いたします際に予見しがたき事情でございます。これは一にかかりまして国会のお考えにございますので、もちろん国会が御審議になるのでございますから、場合によっては年度内に上がらない、あるいは上がる、あるいは御否決になるということは考えられることでございますが、それを予算編成の際に予見いたすことはできない次第であります。したがいまして、現在になりますと、この法律成立いたしますとその財源を必要といたしますので、それに対しましては予備費をもって対処するということは、予見しがたき経費に充てるための予備費使用といたしまして、憲法あるいは財政法趣旨に照らしまして、別段何の支障もないわけでございます。そのような見解に立っておる次第でございます。
  164. 竹本孫一

    ○竹本委員 繰り越しの結果並びに予見しがたいということの問題については、あとで十分に吟味をするといたしまして、私がいま伺っておりますのは、大蔵当局並びに法制局において二十億の金を予備費から出すということについて、憲法上も財政法上も何らの疑義がないのだという確信のもとに出しておられますか、あるいは先ほど政務次官が御答弁になりましたように、若干の疑義はあるけれどもやむを得ずということで出されたのであるか、その点を、憲法の解釈等につきましても、少し慎重にやらなければならぬという立場で、たいへん念を押した意味で伺ったのです。全然疑問を持たないで出しておられるのかどうかということです。
  165. 中尾博之

    ○中尾政府委員 予備費使用といたしまして、本件成立いたしました際にその支出措置をとりますことは、憲法上並びに財政法上、法理論的には何ら疑念はございません、疑義はございませんという考えでございます。なお先ほどございました御答弁を、私実はいままいりまして聞いておりませんが、政府といたしましては当初は繰り越し予算をもって措置する予定であったわけであります。そういうことからきますと予定と違っておりますが、一方それに対処しまして予備費使用するということにつきましては、何ら法律上疑義はございません。
  166. 竹本孫一

    ○竹本委員 それでは少し具体的に伺いますが、最初に予備費というものが、従来御承知のように予算支出予算超過支出、昔は悪いくせで責任支出というものがございました。私は今度の二十億円の支出のしかたというものは、全く無責任な池田内閣で、初めてつくられる無責任支出になるのではないかという点を心配いたしておるわけであります。そこでちょうど大臣もお見えになりましたからもう一度伺いたいのでありますが、二十億円の金を予備費から出すということについて、憲法上、財政法上、何らの疑義がなくこの問題をお出しになったかどうか。あるいは若干の疑義はあるけれどもやむを得ずということで出されたか。その点についてもう一度大臣から承りたいと思います。
  167. 田中角榮

    田中国務大臣 予算編成時におきましては、三月三十一日までに法案が通るという見通して——見通しというよりも、そうお願いしたいということでおったわけでございます。ところが今日になったわけでございますので、これは私のほうからは予見できなかったことでございます。予見し得ない事態ということになりますから、私は現在の段階において予備費支出しても法令違反になるというふうには考えておりません。おりませんが、予備費というものはできるだけ、国会開会中などは特に予備費支出というものに対しては厳密な態度をとらなければならないわけでございますから、この法律案がいつ通していただけるかという問題もからむわけでございます。これが国会中にすぐ通していただいて、直ちに支出をしなければならないということになるのか、まだ法律案の行くえが定かでございませんので、いろいろの状況をいま想定をして検討いたしておるわけでございます。
  168. 竹本孫一

    ○竹本委員 大臣の御答弁は後半大事なところでちょっと明確を欠きましてよく理解できませんので、さらに別の角度からいろいろお尋ねいたしますが、やや具体論に入ります。  この予見しがたきというのは、だれが予見し得ないかということについて伺いたいと思います。すなわち池田内閣予算編成のときに予見しなかったのか、田中大蔵大臣が予見しなかったということであるのかどうか。予見しがたきと書いてありますが、英語でアンフォーシーと書いてありますが、だれによって予見しがたきという解釈をとっておられますか。
  169. 中尾博之

    ○中尾政府委員 予算を編成いたします場合にだれがということではございませんで、通常の管理能力を持って予算編成に当たるべき者といたしまして、その注意義務をもって予見し得べきものであるかどうかということであろうと存じます。本件はそういう見地に立ちましても、繰り越し予算をもってお願いをする立場にあったわけでありますが、それが国会によって、あるいは年度内に御議決がいただけないかどうかということを予測することは、これはできないわけで、手続的にできません。政府といたしまして、国会のお考えによるところでありまするから、これが予測できない次第であります。これが確実に年度を越すということが予測できるという問題ではないわけであります。その判断はいま申し上げましたようなことで、だれということではございません。予算編成にタッチいたします者の通常必要とする判断の能力に応じた判断をもって、という意味であろうと解釈しております。
  170. 竹本孫一

    ○竹本委員 私の解釈では、ただいま次長の御答弁とだいぶ違いまして、ここにいわれる予見しがたきというのは、そういう予算編成のときに内閣の見通しが狂ったとか、あとでちょっと政策上の行き違いが出てきたというような、そういう場合を含むと解釈していいのですか、もう一度伺います。
  171. 中尾博之

    ○中尾政府委員 本件は別に政策上の考え方が変わっておるということ、あるいはそれが見通しに沿うたということではございませんので、立法前提といたしておりますので、その立法の結果は国会の御議決にかかわるところでございます。国会におかれまして、年度内にこれを御議決にならぬ、あるいは御否決にならぬ。要するに採決されないということを、あらかじめ予見するということはできないということを申し上げておる次第でございます。
  172. 竹本孫一

    ○竹本委員 それでは国会が少し荒れて、大体間に合うように通るつもりの予算が通らなかったといったような場合はみな予備費でまかなうということは、憲法上許されますか。
  173. 中尾博之

    ○中尾政府委員 予算が通りませんと予備費もございませんから、支出ができない次第でございます。
  174. 竹本孫一

    ○竹本委員 それでは、財政法第三十六条の三項ですか、事後のすなわち次の常会において予備費支弁の調書を提出しなければならぬという規定があるようです。そこで、財政法との関係においてさらにこの予見しがたきということの意味を究明してまいりたいと思いますが、財政法のそういう解釈があるのは一体何のためにこれがあるか、この財政法三十六条を一体どう解釈しておられるか承りたいと思います。
  175. 中尾博之

    ○中尾政府委員 御質問趣旨本件との関連において正確に把握しておるかどうか、いささか自信がございませんが、三項自体といたしましては、支出いたします予備費国会におきまして予算をもって認められておるところの制度でございますが、これはその目的あるいは支出目的支出目的に対する金額の割り当て等が、いわば未定のままに支出が行政府と申しますか、予算を執行するほうの側にまかされております。したがいまして、あとでこれを、ちょうど予算を編成いたしまして、本来の経費予算を組んだ場合と同じような妥当性を求めるために、事後に承諾という制度を設けておるものと解しております。ちょうど条約の場合と対応する規定であるというふうに解しておる次第でございます。
  176. 竹本孫一

    ○竹本委員 そういたしますと、この場合、二十億円、国民金融公庫法の改正につきまして、次の常会まで待たなければならないような理由が特にありますか。すなわち、この国会で別の方法においてこれを論議し、予算についても説明する十分な時間とチャンスとがある。それをわざわざこの財政法予備費考え方というものはその国会では説明ができないんだ。あるいはその国会においては予見しがたき事情で全然説明もつかなかった、あるいは思ってもいなかった、だからあとで出して、その内容について説明をするということがいってあるわけです。でありますからこの財政法の規定から見ても、いまの予見しがたきということの内容が裏から解釈できるわけで、すなわち予見しがたいというのは、あとから調書を提出してこの説明をしなければならないというもの、説明ができない項目について予備費というものはあるのです。私の解釈はそうです。この国民金融公庫の場合に、こういうことをあとからわざわざこの国会を開いておる最中に、あるいは会期も延長されようというこの段階において、特に次の常会まで待って案の内容を説明したり、予算のことを考えたりしなければならないような事情がありますかということです。
  177. 中尾博之

    ○中尾政府委員 第三項の規定は、予備費というものは先ほど申し上げましたように、本来の経費予算とは異なる歳出権限の形式でございますので、それを補うための手続と解しております。その手続は予備費支出いたしました以後国会はすぐに開かれる場合もございましょうし、一回開かれる場合、二回開かれる場合もございましょうが、そこは事の便宜に従いまして、しかしあまりおそくなってはいけませんので、定期という意味で次の常会において国会提出するという規定になっておるものと解しております。なお予備費をもって支出する予見しがたいというものは、財政法の解釈といたしましては、予算を作成する場合の判断のことというふうに解しておる次第でございます。
  178. 竹本孫一

    ○竹本委員 具体的に承りますけれども、この国民金融公庫法の二十億円の問題について、予備費から出して、あとから次の常会において調書を提出されるわけですか。
  179. 中尾博之

    ○中尾政府委員 予備費をもって使用いたしましてやることになると存じますが、必ずしも予備費だけに限るかどうか、その時期等の関係もあり、あるいは予備費がどうなるかという問題もございますから、ここでこうであるという形に予備費をもってとお答えするわけではございませんけれども、予備費をもって支出いたしました以上は、次の常会において国会に調書を提出いたしまして、その承諾をちょうだいいたすという手続をとることになる次第であります。
  180. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで問題はその裏からの解釈でわかるように、われわれがいま国会でこれだけ審議をする、また、審議をする時間的余裕を持っているのに、なぜわざわざ次の常会まで待ってこの調書を受け取って説明を聞かなければならないような予備費によるかということが問題ではないですか、その点はどうですか。
  181. 田中角榮

    田中国務大臣 竹本さんが言われておりますのは、いま開会中でございますから、この法律が通ったら予備費使用などをやらないで、追加予算を出せ、こういうことにしぼられると思います。これは三月三十一日までには通ると思っておったが、今日になりましたし、何月何日までに上げてやるから、ひとつまだ国会が会期があるのだから、補正予算を組め、こういう議論になるとよくわかるのですけれども、まだいつお通し願えるかということが見通しがつかないのでございますから、でありますから私たちのほうといたしましては、国会の会期はこの十七日までしかないわけであります。でありますから十七日くらいで通って、会期延長もないということになれば法律義務が生ずるわけでありますから、予備費使用等を考えるか、次の国会を待って補正予算を組むかという問題は考えなければならない問題と思います。いままだそうではなく、三月三十一日までに通していただきたいと思っておったものが今日までになったということであって、その間にもうわれわれが審議をしているときに並行して補正予算を組めばいいじゃないかという議論は——存在するかとは思いますけれども、そうはいたさないわけであります。
  182. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっと大臣の前の説明をもう一度伺いますけれども、予備費が二百億あるのでその中から二十億出す、ぼくはこういう御説明だと思いますが、それは間違いないですね。
  183. 田中角榮

    田中国務大臣 この国会に補正予算提出して、同時に審議をいただくという考えはいまのところ持っていないわけであります。でありますから、この法律が制定をせられますれば、補正予算を組むか、また予備費支出かいずれかになるわけでございます。いまの段階においては予備費支出をもって行ないたい、こういう考え方をきのうもきょうも申しておるわけでございます。  予備費支出をすることは違法だ、こういう考え方でございますが、法律義務が生じたものに対して予備費支出をやることは、昭和二十五年以来やっておることでありますから、違法性はない、こういう政府考え方を申し上げておるわけであります。
  184. 竹本孫一

    ○竹本委員 法律的に予算支出しなければならぬ義務ができるということと、その義務ができたものを予備費から出すか、補正予算を組んで出すか。それは問題が別ですから、いまの大臣のは——先ほどの御答弁のときには何だか国会に責任を預けたような御答弁でありましたし、それからいまの御答弁もちょっと支離滅裂な感じもいたしますし、かりに二十億円出すということがこの法案が通って法律的に義務ができたとしても、その財源の捻出の方法については、やはりまた憲法の定めるところによって財源は考えていかなければいかぬと思うのです。そういう意味で、大臣はいまもそう御答弁になりましたし、従来も予備費から出している、こういう御答弁になりましたのでそれは重大な問題だ。私に言わせればこれは憲法違反の疑いが十分にある。そういう意味でいま問題をお尋ねしておるわけです。  そこで、どうも要領を得ませんからもう少し突っ込んで申しますが、大臣も先ほど申しましたけれども、国会の開会中に予備費によっていくということが大体根本の問題だと思います。その点は法制局のお考えをちょっと伺いたいと思いますけれども、いかがですか。
  185. 荒井勇

    荒井政府委員 国会の会期中に予備費使用ができるかという点でございますが、その点につきましては、従来経費支出が非常に——もちろん財政法二十四条にいいますように、予見しがたいものであるという予備費の要件を備えておりまして、かつ非常に緊急やむを得ないというような場合に、一定の閣議決定等で基準を定めたところによりまして、国会の会期中においても予備費支出をするということがございまして、この点は財政法の規定に伴いまして、次の常会には国会提出を申し上げ、そしてその分につきましては、いままでいずれの件につきましても御承諾を得ておる、こういうことでございまして、これは財政法上できないということではないと存じております。
  186. 竹本孫一

    ○竹本委員 あとで国会に報告するとかいう問題は、もう法の規定しておる問題でございますから特に問題でないのでございますけれども、私がいま問題にしておるのは、一つは政治的にこの国会で十分論議ができ、説明をし、あるいはさらに言うならば予算を追加して出す時間的余裕もあるのに、何をあわてて予備費支出ということを言われるのであるか、そこが問題であります。  それから法律的にもう一つ法制局にはっきりよく伺いたい点は、国会開会中に予見しがたいということの問題にまた返ってまいりますけれども、一体どこが予見しがたいのでございますか。先ほどおっしゃいましたそれは、三月三十一日、年度内にこの関係のものが通るだろうと期待したと言われる。しかしそれは政府のお考えであって、あるいは野党に言わせれば初めからこれは通らない、あるいは通さないということは確定的であったかもしれない。そういう主観的な問題で法律の解釈をかってにしてはいけないと思うのです。予見しがたいというのは、池田内閣が予見しがたいなんて書いてない。これは客観的に予見しがたいのです。でありますから、政府の見込みが違ったとか、あるいは通していただけるならこんなことはしなかったというようなことは、全くこれは政治的には無責任な答弁で、厳粛な憲法の解釈、八十七条の解釈として、予見しがたきということをもう少し厳格に、厳粛に考えなければならぬと私は思うのです。  そこで予見しがたいというのは、私のほうから申し上げますけれども、一体そういう事態が起こるということが予見しがたい場合がある。特にその事態が予見しがたいということのほんとうの内容は、どういう項目に幾ら金が要るのか、特に確定した目的、すなわち目的の限定ができないということなんです。法制局はどうですか、そうじゃありませんか。
  187. 荒井勇

    荒井政府委員 財政法二十四条あるいは憲法八十七条に規定しております予見しがたいということは、主観的に見て予見しがたいということであるか、客観的に見て予見しがたいということであるかという点につきましては、竹本委員あるいは先ほど政府委員の側から説明がありましたように、客観的に予見しがたいというもので考えるべきであるという点は同様の考えを持つ者でございます。その点につきまして、憲法上国会の占める地位というものから考え、そうして法律予算というものが相互に矛盾抵触するという状態というものは、国権の最高機関としての国会、唯一の立法機関としての国会が客観的に普通に考えまして、予見し得ないところではなくして、それは国権の最高機関といたされましては、法律予算の不一致というようなものは極力避けて措置をなさるというふうに期待をするのが合理的なことであり、また客観的なことではないかというふうに考えます。この財政法二十四条等にいうところの予見しがたいというものの事態には当てはまらぬのではないか——これは単にどの特定の内閣ということではございませんので、一般的に申し上げますと、そういうことになるのではないかと思います。
  188. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの解釈には納得できませんが、政府法案を出される場合、あるいは予算を出される場合において、それが通ることを期待されることは当然でございますけれども、期待されたとおりにいくかいかないかということは全く別な問題で、その点を何か期待して出したら、あるいはそれが予定が狂ったから、これは予見しがたいのだ、こういうようなことを言ったのでは全く議論になりません。  しかし時間がありませんから、なるべく集約をして申し上げて、もう一度伺いますが、予見しがたいというのは、客観的に予見しがたいのであって、主観的に予見しがたいという意味ではない。これははっきりしましたね。  そこで第二に、客観的に予見しがたいということの中に、池田内閣が予見しがたかったということが入るかどうかということを承りたい。
  189. 荒井勇

    荒井政府委員 法文の書かれている趣旨はただいま申されましたようなことであると思いますが、その場合に憲法八十六条の規定によりまして、内閣予算提出権を持っておるということでありまして、それの一時的な判断をだれが行なうかという点になりました場合には、予算提出権を持っているところの内閣である。しかしながら、それは国会は唯一の立法機関であり、国権の最高機関という立場から、その予算に対してこれを修正し、変更するという権能は持っておられるということでございまして、それは国会の御判断が提出した内閣の判断と違うという場合には、国会予算の修正ということも理論的にあり得る、こういうことだと思います。
  190. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの答弁はさっぱり要領を得ませんが、私が聞いているのは、客観的に予見しがたき場合のみが予備費を使うことができるのだ。それはもう法制局でも御異論はない。次にはこの内閣がもちろん三月までに通る予定で関係事案を出された、あるいは予算も出された、法案も出された。しかし通らなかったということは、内閣の見込み違い、あるいは政府の目算の違いということであって、それは客観的に予見しがたきということの中に入るか入らぬかということは、この問題のポイントだと思うのです。私が聞いておるのは、法制局の純客観的な中立的な立場において、一つ内閣の見込み違いということが一般論として客観的な意味の予見しがたきものの中に入るかどうかということを聞いておる。その点だけ返事してもらいたい。
  191. 荒井勇

    荒井政府委員 その点は先ほど申し上げましたところでございまして、その内閣は憲法に議院内閣制度をとっております以上、多数党というものを背景にして組織されているということ、それからそのような内閣予算提出権を持っているということ、それから法律予算の不一致というものは、唯一の立法機関であり、国権の最高機関であるという立場からしますと、そう起こり得べき事態と合理的には考えられないという、そういうような三つの理由から申し上げまして、別に主観的な意味の判断ということでなしに、客観的に見てそういうふうに考えるのは合理的であるということでございます。
  192. 竹本孫一

    ○竹本委員 合理的には考えられないということでございますけれども、むしろ合理的に考えれば、つけてある予算は四月一日からはなくなるのだということのほうがよほどはっきりした事実でもあるし、また先ほど来の話に返りますけれども、内閣のほうで出した案が予定のとおり通らないこともあり得るし、国会が荒れることもあり得ると考えることのほうがよほど合理的で、それに対して何らの準備もしてないでそれで予見しがたいということで予備費を出す。さらにそれを国会に責任を半分持ってくるような考え方をするということは、非常にルーズな一つの解釈から次々に大きな問題が出てくると思うのですけれども、私はどう考えても内閣の見通しが誤ったのだ。大蔵大臣は先ほど来いろいろ言われますけれども、三月三十一日、年度末までに通ると思ったのが通らなかったのだ、こういうことを言われるが、これは要するに池田内閣というか、あるいは大蔵大臣の見込み違いじゃないですか。客観的に合理的に通らない場合もあり得るのだと言われるならば、むしろあり得ることについて備えることのほうが合理的なんじゃないですか。
  193. 荒井勇

    荒井政府委員 その点につきましては確定的にこの法律は通らないものであるということが予見できたかどうかということでございまして、それは神様でも予見し得なかったのじゃないか、こう思うわけであります。
  194. 竹本孫一

    ○竹本委員 通る場合と通らない場合と両方考えるほうが合理的じゃないですか。国会審議というものは政府の都合によって年度末までに全部の法案が上がるように努力をするにしてもそのとおりいかない場合があると考えるほうがより合理的で、そういかなかったから予見しがたきなんだ、しかもそれが合理的なんだということは、二重のごまかしだと思いますが、いかがですか。
  195. 荒井勇

    荒井政府委員 ただいま御答弁申し上げましたとおりでございます。
  196. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。春日一幸君。
  197. 春日一幸

    ○春日委員 私は問題を整理してひとつ御答弁を願いたいと思うのでありますが、たとえばこの法律に必要なる財源というものは三月三十一日に消滅をいたしております。なくなっております。このことは客観的な歴然たる事実になってあらわれてまいっております。それから三月三十一日までにこの法律案が上がらなかったという事実関係もまた明白でございます。このような認識の上に立って、この法律に必要なる財源はいかに措置すべきか、こういうことをあらためて判断をするといたしまするならば、予見とか予見でないとか、こういう問題は全然なくなってしまって、いまこの法律をわれわれは審議しておる、政府提出法案審議しておる。しかしながらこの法律に対する財源というものはなくして審議しておる。しかも国会は開会中である。必要であるならばこの予算措置はすることが不可能ではない。すなわち政府は第一次補正予算提出することができるのである。だからこの予備費の使途については一個の制限がある。財政法において、憲法において、制限があるので、制限のもとにおいて予備費はそれぞれ利用、活用されてしかるべきものである。いま国会が開会中であって必要な予算措置は講ずればでき得る立場にありながら、あえてそのことをなさずして、憲法、財政法に違反をする疑いのあるそのような予算措置をこじつけ理論をもってここに押しつけてまいるということは、これは適当ではないとはお考えになりませんか。この点について大臣の御答弁を願いたいと思います。  問題を整理いたしますと、この財源が三月三十一日になくなっておるのである。それからこの法案は三月三十一日以前にも成立をしていないし、現在も成立をしていない。予算なしでわれわれ審議しておる。ところが財政法はとにもかくにもそのような予備費の利用については一個の制限を付しておるわけであります。すなわち政府は予見し得るところの財源についてはそれぞれ予算措置を講じなければならないといたしておる。国会開会中だから予算措置を講ずることができるにもかかわらず、あえてそのことをなさらぬ理由は何であるか。この点を明確に願いたい。
  198. 田中角榮

    田中国務大臣 三月三十一日に二十億円の財源が失効したというところに非常にウエートを置いて御議論になっておられますが、また予備費自体についても制限のあることは言うを待たないわけであります。しかし現在もう五月になっておるのでありますから、失効のことをいってもしようがないわけであります。これは実際問題として国会がこの法律をそういう条件下においてもなお成立をせしむる、こういうことでありますから、成立をした場合には法令によって政府は義務を負うわけであります。歳出義務を負うわけであります。でありますから、その歳出に対して国会開会中だから補正予算を組みなさいという議論もあります。もちろんそれが一番合理的であります。しかし政府予備費支出をもってこれに充てたいということに決定をした場合、予備費の制約に対してこれは非難をする、こういう議論を展開しておられますが、政府国会開会中であってもまた予備費使用することは違法ではない、こういう考えを持っておるのであります。これは昭和二十九年四月十六日に閣議決定をやっておるのでございますが、この中に五項しるしております。その三項に、「法令又は国庫債務負担行為により支出義務が発生した経費」と明らかにしておるわけでございますから、春日さんや竹本さんが、そうであっても開会中だから補正予算を組んだほうがより合理的だと言うならわかるのですが、補正予算のみが唯一の道であって予備費使用することは違法であるという議論は首肯できないのであります。
  199. 春日一幸

    ○春日委員 そういう春日君たちの言うことも理にかなっておるがわしらの言っておることも変じゃない、こういうことでは私は問題の解決にならないと思うのですね。私は伺いますが、憲法の、予算を組まなければならないという政府に対する義務を明確に規定いたしておりますその条項、これの正統的解釈は何であるか。責任ある法制局からひとつ御答弁を伺っておきたい。どういうふうになっておりますか。この憲法の解釈を明らかにしていただきたい。閣議のごときものが憲法の解釈を恣意的に白を黒と言いくるめることは許されておりません。そのようなものは憲法違反であって、そのような内閣は総辞職しなければならぬ、逮捕し、投獄しなければならぬ。
  200. 荒井勇

    荒井政府委員 国の財政処理につきまして、憲法第七章では重要な原則を定めているわけでございます。そのうち予算と通常いわれておりますそのうちの歳出予算というものにつきましては、憲法第八十五条で、国費を支出するものは「国会の議決に基くことを必要とする。」ということをいっておるわけでございます。それの具体的手続は八十六条に規定され、そのまた特例規定が八十七条に規定されておる、こういうことでございます。その予備費の場合におきましても、憲法八十七条が書いておりますように、「国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。」ということで、この予備費自体昭和三十九年度予算に計上されて国会の議決を経ておるわけでございます。その予備費支出すること自体内閣の責任であるということ、それから憲法八十七条ではもう一つ予備費支出については、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない。」とありまして、その国会の承諾を得る段階で国会の政治的あるいは法律的な各種の覊絆というものを受けるわけでございます。それでその国会の議決に基づいている予備費支出であるという場合におきましては、憲法八十五条が国費の支出についての大原則を書いております。その趣旨には合致するわけでございまして、あとその内閣の責任でという場合に、その責任がどれだけしょい切れるかというような問題、あるいは事後の国会の承諾というような場合にどういう問題が起こるかというような、そういう政治的な問題が起こることは私どももあり得るということは考えますが、それはともかく、憲法が規定しております原則であるところの「国会の議決に基くことを必要とする。」というワクの中のものである、こういうふうに考えます。
  201. 竹本孫一

    ○竹本委員 ちょっと大臣に議論を進めるために伺いますけれども、両方考えられるが、しかしまあこの際は予備費でいくというお考えのようでございますが、したがってこの二十億の問題を第一次補正として出すというお考え大蔵大臣にはないわけですか。
  202. 田中角榮

    田中国務大臣 この法律が通過をいたしまして直ちにこれを支出しなければならぬということもないわけでございます。支出の時期等に対しては国会でまだ御議決になるときに御意見も付されるかもわかりませんが、いずれにしましても、時期等は政府が判断をして適当な処置をいたすわけでございます。直ちにこの法律が通過をし、直ちにこの法律義務を履行するということになれば予備費をもって支出するということになると思いますし、またこれが時間がありまして災害等があったりして予備費使用できないというようなことになれば補正予算を組むということになりますし、そういう問題はこの法律が通ってからの事態に対処して考えたいと思います。
  203. 竹本孫一

    ○竹本委員 どうもだんだん御答弁が混乱してわからなくなりました。整理いたします。結局この問題、金を出す時期が少し時間的余裕があれば予備費によらずして補正予算を組んで、災害でも起こればそれとあわせて一緒に出すというお考えのようでありますけれども、先ほどのお話では補正予算ではやらないで予備費でいくとおっしゃいましたが、大臣答弁が二つに受け取れる。結局必ず予備費でいくのかあるいは補正予算を組んでやる場合もあり得るのか、どちらですか。
  204. 田中角榮

    田中国務大臣 この法案が直ちにでもお通し願えるということになり、しかもこの法律義務を忠実に行なうということになれば予備費使用ということが一番早いことである、こう思うわけでございます。しかし、この法律がもっと時間がかかるとかいうことであって、災害等によって予備費使用できないような状態になれば、当然補正予算を組んで財源を確保しなければならぬ、こういうことになるという事実問題をすなおに申し上げておるわけでございます。
  205. 竹本孫一

    ○竹本委員 そこで補正予算の問題はさらにあとで質問いたしますけれども、補正予算を組む時間的余裕があれば場合によっては組むかもしれない、しかし、当面は法律が通って金も相当早く要るということになれば予備費による、こういうことでございます。そう了解してもいいですね。そういう場合に、そういう目的のために予備費支出するということが憲法並びに財政法上許されるかどうかということでございますが、先ほど来議論しておるところ、法制局長官が見えたようですからあらためてまとめて伺います。  憲法八十七条あるいは財政法にいっておる予見しがたきというのは、われわれの解釈では客観的に予見しがたいということである、それについては第三部長も異論はないようであります。これはおそらくだれも異論はないと思うのです。そこで次の問題は、その客観的に予見しがたきということの中に、政府の見通しが狂った場合にそれがその中に入るのかどうかということがいまポイントであります。私どもの解釈によれば、池田内閣が期待をし、あるいは大蔵大臣が予定をしておったとおりに国会審議が進まなかったために、三月三十一日、年度内にうまくいかなかった、それがために今度はしかたがないから予備費から出していこう、それはたまたま予見しがたき事情のうちに入るのだ、こういう御解釈でございますけれども、われわれは先ほど申しましたように、あくまでも客観的に予見しがたきということであって、その客観的にという場合には、内閣法案を出して、その法案が通過することを期待したとか、努力したがそううまくいかなかったというようなことはその中には入らない、客観的な災害が起こったとか、あるいは昔でいえば戦争が起こったとか、そういう場合には予見しがたきなんです。しかし、内閣の手違いあるいは見込違いといったようなものはこの予見しがたきのうちには全然入らない。通る場合もあるだろう、通らない場合もあるだろうというようないろいろな議論も出ましたけれども、国会審議というものは政府の予定どおりいく場合もありますし、いかない場合もありますし、いかない場合にはいかない場合に応じてそれに即応した態勢をとるべきであって、それが予見しがたきということで救われるなんということは考えられぬ話です。法制局長官の意見をまとめて伺いたい。
  206. 林修三

    ○林政府委員 予見しがたきというのは客観的な問題であることはおっしゃるとおりだろうと思います。ただそこで、問題の国民金融公庫法の問題でございますが、政府法案を出しますときには、当然に三十八年度中に成立することを政府としては期待をして、予算も三十八年度予算があるわけであります。またそれに間に合うくらいの時期に実は出したわけでございます。ただそれがいろいろの都合で現在まで通過しておらない。ただ、ここで現在の状態あるいは今後の状態考えますと、かりに——かりにと言うと語弊がありますが、国民金融公庫法国会を通過して成立した場合にどうなるかという問題、その場合においては三十九年度には予算がないということ、しかし、そこでそういうものを出すということを予定した法律が通った、ところが三十九年度はまさに予見しがたき事情が起こったといわざるを得ないのじゃないかと思うのであります。そこにいきます過程において内閣があるいは見通しを誤ったのか、国会における御審議が、こう言ってはなんでありまんが、非常に時間がかかったとかいろいろな実情がございましょうけれども、現在におけるあるいは今後における法律ができ上がったときの状態を客観的に考えれば、どうもそれは法律があるのにそれに基づく予算がない、したがって、法律を忠実に執行しようとすれば、何らかの方法によって予算支出しなければいかぬ、その場合に先ほど私大蔵大臣の御答弁を聞いておりましたが、非常に急速に出す必要がある場合には予備費以外に方法はないのじゃなかろうか、時間があれば補正予算ということになるだろう、そういうふうに私は思います。
  207. 竹本孫一

    ○竹本委員 法制局長官に重ねて伺いますけれども、財政法のいろいろの規定等を見ましても、予備費を出すということはいわゆる予見しがたき事情による場合、しかもその予見しがたい事情によって予備費を出したら、御承知のように財政法の三十六条その他においても調書を出さなければならぬ。しかもそれは次の常会に出すわけですね。ところが問題は、次の常会まで待たなければ説明がつかないような、国民金融公庫法の場合には、事情であるかどうかということなんです。この国会で十分審議ができる。この国会で十分説明もでき、何でもできる。会期が延長されればなおさら十分できる。これは別にいたしましても、とにかくこの国会で十分説明がつく。あるいはほかのことばでいいますと、補正予算を出すだけの時間的余裕も十分ある。それを何で予見しがたきという無理な解釈をして予備費で逃げていこうとするのか、その点が憲法の解釈としては非常にふまじめな態度だと思う。財政法や憲法の解釈からいって、開会中にとくに予見しているでしょう。予見しがたきじゃない。この経費は予見しがたきじゃないのだ。ちゃんと説明がついておる。この時点ではっきりしておる。目的も確定しておる。そういうようなものについて、何で予見しがたいですか。
  208. 林修三

    ○林政府委員 実は先ほどお答えしたことの繰り返しになるわけでございますが、国民金融公庫法成立した場合のことを考えれば、法律があって、法律上には二十億というものは義務費になります。その義務費について財政措置がないという状態がここに存在するわけです。その場合に、それを施行するとすれば予備費でいくか補正予算でいくかという二つの方法になるわけであります。予備費をそういう場合に出して憲法違反であるということには、これは私はならないと思うのです。やはり三十九年度においては予見しがたいものとして予算に組んでいない、そういう状況でございます。したがって、それをその際にそういう状態が発生した場合に予備費支出することそれ自身、政策的議論はこれは別でございますが、私は、法律的に申せば、それは憲法違反でない、かように考えます。
  209. 竹本孫一

    ○竹本委員 この場合は法律論だけでいきましょう。政策論は一応別にいたしまして……。たとえば三月三十一日に通らなかった。しかし四月一日に金を出さなければならぬとかというような場合ならこれはわかりますよ。予見しがたい。しかしいま十分に予見して、これから予備費を使うか、あるいは先ほど大臣も言われたように、できれば補正予算でやったほうがいいんだという御意見もあります。そういう場合の問題で、しかも時間的に十分論議をできる余裕もまだあるじゃないですか。私がいま言っていることをしぼって言いますと、国会開会中で補正予算を組むだけの時間的余裕も十分あるに、どうして予見しがたきという予備費で問題をまかなっていこうというのかということを私は言っている。これはまかなっていくほうがベターであるとかベターでないという問題ではなくて、憲法の厳密なる解釈からいって許されない問題である。そこが問題です。
  210. 林修三

    ○林政府委員 予見しがたいというのは、実は当初予算編成の際の予見しがたいということだと私は思います。したがいまして、そのあとにおいていろいろ財政需要が生じた場合に、それを国会開会中であるから補正予算を組む、あるいは予備費で出すということは、これは大きな意味でいえば、私は政策的問題だと思います。したがって、過去においても実は国会開会中に予備費支出があった例もございます。それからこれは今度の例にぴったり当てはまる例ではございませんが、国会開会中、年度開始後に国会予算を伴うような法案政府あるいは議員から提出されました場合に、直ちに補正をせずにそれが成立してから予備費支出した例もございます。そういう例もあるわけでございます。したがいまして、今度の例と実はぴったりはいたしません。ぴったりはいたしませんけれども、国会法律案が提案されておって、しかも予算が要ることがわかっておって、それについての補正が出されなかった例は幾つかあるわけでございます。その場合に、そういう法律案成立した場合には実は予備費で支弁した例もあるわけでございます。そういう例からいいましても、これは私は憲法の間違った運用じゃない、かように考えます。したがいまして、先ほど来申しましたように、政策的議論は別でございますが、純粋に法律論でいえば、そういう状態において、予算のない状態において予算を要する法律成立した。それを出す方法として、緊急を要するからとして予備費を出すということは私は法律的には許される、かように考えます。
  211. 竹本孫一

    ○竹本委員 長官の御答弁は、大きな意味でいえばとか、ぴったり合わないとかいうことをおっしゃいますけれども、これは法律的用語じゃありません。厳密な意味法律的な用語で答弁をしていただきたい。すなわち、予備費で今回の問題を片づけるということは大きな意味では望ましくないとかいろいろおっしゃいますけれども、われわれは厳密な意味でこれはやはり憲法違反であるという心配をするものであるから、まじめに議論をいたしておるわけであります。でありますから、もう少し厳密な意味で、この目的が限定をされて、はっきりした目標があって、はっきりした問題についてまた十分予算を組むだけの余地があって、それで予備費を使うということは許されない。ベターの問題じゃありません。許されないのだという法律解釈をぼくは持っているので、それに対して厳密な意味で——大きな意味とかでなくて、厳密な意味でそれが許されるというならば、ひとつ許されることを言っていただきたい。  なお、将来、こういう場合にこれが許されるということが原則が確立すれば、当然許されたる合法的、合憲的行為でありますから、今後もたびたび繰り返されるであろうが、それが繰り返されるということについて法制局は何らの疑問も持たれないのですか。  第三に、例があるとおっしゃいましたが、たとえば何年ごろにどういう例がありますか、一つでもよいからおっしゃっていただきたい。
  212. 林修三

    ○林政府委員 例でございますが、例は幾つかあるのでございます。午前中これは政府委員からお答えしたかと思いますが、一つの例をあげれば、三十四年でございましたか、炭鉱離職者臨時措置法案提出され、炭鉱離職者の就職を容易にするための労働福祉事業団に対する出資金支出、こういうようなものが、国会において法律案提出され、それに伴う予算がないという状態のままに国会法律が議決された、それを予備費支出したという例があるわけでございます。そのほかにも例はあるようであります。  ただ、さっきぴったりしないと申しましたのは、つまり政府としては予算のある年度内に法案を出してそれが年度内に通過しなかったというような実例は、ちょっとあまり私も記憶をいたしません。しかし法案があって、その法案に伴う財政措置国会に同時に出されなかった例は幾つかあるわけであります。それは今回の例と同じではないかと実は思うのでございます。  それでそういう場合に、そういう法律成立した場合にそれを予備費支出することが憲法違反かどうかという、これは法律論として申し上げますが、法律論で申せば、私はやはりこれは予見しがたき事情に基づくものだといわざるを得ない、かように考えるのであります。
  213. 竹本孫一

    ○竹本委員 法制局長官のほうでは、予見しがたきの問題の解釈について、私が先ほど来言っておりますように、予見しがたきというのは客観的であって、その内容はむしろ災害その他の自然現象的なものだ。そして内閣の見込み違いということは全然入らない。あるいは国会審議がどうなるとか、うまくいったとかいかなかったとかということは、事情の中には数えるべき問題ではないということを私言っておるのでございますけれども、長官の御意見は、政府がこの法案をうまく通して三月末に年度内に片づけようと思ったがそれが通らなかったということが、予見しがたきということのうちに入るのですか。
  214. 林修三

    ○林政府委員 これは結局三十九年度における財政支出として考えた場合に、三十九年度においてこの国民金融公庫法成立したという状態考える。その関係で三十九年度予算においては予見しなかった、この事実はどうも否定できないと思います。その場合には、その事情がいまおっしゃるようにあるいは政府の不手ぎわかあるいは何かわかりませんが、しかし三十九年度において法律があり、しかもそれが当初予算に見込み得なかった事情に基づく財政支出であるという事情は、これは私はやはり同じようにあるのじゃないか、かように考えます。
  215. 竹本孫一

    ○竹本委員 それでは法制局長官は、三月三十一日をやかましく言うということは、裏から申しますと、四月以降には国会はなくなっておるということの議論のようですけれども、そういう前提ですか。
  216. 林修三

    ○林政府委員 いや、別にそういうことは何も言っておりません。つまり三十八年度を経過したあとには三十八年度予算施行し得なくなった、そういう状況があるわけでございます。つまり三十八年度においては財政措置がしてあった、ところが三十九年度においてはその財政措置がない、そういうことを申し上げたわけでございます。
  217. 竹本孫一

    ○竹本委員 三月三十一日までに法案が通らなかった、しかし四月以降においても国会審議を続けておるのでありますから、四月以降に国会があるという現実に即して議論をしなければならぬと思うのです。それから予算を、三十八年度予算を繰り越して使うことにしておったけれども、それがなくなったのだから予見しがたきと、こういきたいところでしょうけれども、そうじゃなくて、予算は三十八年度の予算でなくても、三十九年度予算あるいは三十九年度追加予算でけっこうなんですから、その辺はどうなんですか。
  218. 林修三

    ○林政府委員 つまり現在における状態考えれば、現在の国民金融公庫法はなお未成立で、政府から提案しておりまして、その御審議を願っておる、これが二十億円の財政支出を要することは明らかでございます。この場合の措置としては、もちろん補正予算提出する方法もございます。しかし過去においての例を幾らか申し上げましたように、予算を要する法案が、補正予算提出なしに、あるいは当初予算にもそれが見込まれておらずに、そのまま成立をして、しかもそれが予備費支出されたという実例があるわけでございます。当時においてもそれが憲法違反ではないと考えられて行なわれた、そういうことは実は法律論としては同じことだということを申し上げておるわけであります。現在において補正予算提出する方法はないというわけではもちろんございません。しかしそれは政策論の問題になるだろうと私は思います。
  219. 竹本孫一

    ○竹本委員 ぼくは補正予算のほうでいかなければ絶対だめだという意見ですから、そういう意味で聞くわけですけれども、国会の開会中に補正予算を組むだけの時間的余裕があり、特に会期が延長になる場合、あるいはまた先ほど大臣の言われた、この法案が通りましても直ちに貸し付けを始めるというわけじゃなくて、時間的な余裕があって、しかもあるいはその実施が秋までおくれるかもしれない、こういう場合に、昔でいえば緊急処分みたいな形で、これを予備費でやらなければならぬという理由は絶対にないです。そういうことは許されない。そこで長官にもう少し学問的に伺いますけれども、国会開会中に十分審議ができる時間的余裕があるのに、しかも補正予算を出さずして予備費によってよろしい、あなたはそういう御解釈のようですけれども、そういうことを学説的に日本で認めておる学者はおりますか。
  220. 林修三

    ○林政府委員 財政法に関する学説というのはわりあい少ないわけでありまして、(竹本委員「いや憲法」と呼ぶ)憲法につきましても、そこまで詳しく論じている学説はわりあいに少ないと私は思います。したがいまして、私いまちょっと記憶いたしません。しかしこれはいままでの実例を申し上げますれば、(「長官一人の解釈じゃだめだ」と呼ぶ者あり)いや、私一人ではないと思います。新憲法になりましてから、この例をごらんになれば、国会閉会中に予備費支出された例は実にたくさんあるわけでございます。その場合において、もちろん緊急に支出を要するというたてまえで出されたものと思いますけれども、しかし緊急性からいえば、国会は一日だって補正予算は通過するじゃないかという御議論があれば、実はそれは程度問題になります。程度問題になりますか、過去においてもしばしば予備費支出は行なわれている。予備費としてのワクのある範囲においては、その範囲のことは憲法上は許されるのじゃないか、予見しがたい支出であるという要件があればいいのじゃないか、さように考えておるわけでございます。過去においても当然にそういう予備費についての国会の事後の御承認はお願いして、事後承認は得ておるわけでございます。そういうように、いわゆる国会開会中に予備費支出をした例は非常に数があるということを申し上げたわけであります。これは憲法違反ではないとわれわれは考えております。従来国会でもそういうたてまえで御承認になっておると思います。
  221. 竹本孫一

    ○竹本委員 長官のわれわれということばの中にだれがおるのか、長官以外には全然わかりませんが、それでは一つだけ私のほうから例を申し上げますれば、宮澤俊義先生が「日本國憲法」にこれに類したことを書いております。次のようにいっております。少しですから読み上げます。「本條の趣旨は、あらかじめ支出の必要が豫見されないために、目的の限定なしに豫見しがたい豫算の不足に充てるものとして豫備金を設けるにあるから、」これから先が大事なんですが、「現實に豫備金を支出する目的が確定したときに、國會が開會中であり、その承諾を得ることが可能である場合に、この豫備費を使うのは、本條の趣旨には反する」「この場合は、豫備費を使うべきではなく、むしろ豫算の修正を國會に提出するのが本筋であろう。」これは宮澤俊義先生の「日本國憲法」七百三十ページに書いてある。宮澤さんという人は、御承知のように憲法の説明というものはわりあいにあいまいもことしたところが多い人なんだけれども、そのわりあいにこれははっきり書いてある。宮澤先生でさえもこれだけはっきり言っておる。法制局長官、そのほかにこれに反対の学説を明快に論じておるというような例があるならば承りたい。
  222. 林修三

    ○林政府委員 これは結局、憲法の解釈としては、私どもとしては先ほど申し上げたような考え方を実はしておるわけであります。特に従来の実例を見ましても、比較的軽微なものとかあるいは法律上の義務的経費というようなものにつきましては、国会開会中においても支出することが行なわれております。これは旧憲法時代におきましてもいろいろ議論があったところでございますが、旧憲法時代は、どちらかといえば、わりあいに追加予算というものがひんぱんに出された例がございます。したがって予備費支出された例は比較的少なかったかと思います。少なかったと思いますが、それでも旧憲法時代にも行なわれておりました。それで新憲法になりましても、大体この予備費を、予見しがたい費目であれば国会開会中といえどもその必要性に応じて支出することは、私は憲法違反ではないと考えます。政策的な議論としての御意見は、これは私はあろうと思うのであります。あると思いますが、私は法律論としてはいいのじゃないか、かように考えます。特に従来の実例を見ましても、非常に軽微なもの、あるいはルーティン的なもの、それから義務的経費、こういうものにつきましては、予備費のある範囲においては国会開会中にも支出されております。これは私は、従来国会も御承認を願っておりますし、認められたことじゃないか、かように考えます。
  223. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいまの御説明でもまだ納得ができないわけであります。もう一度念を押して伺いますが、国会開会中であって——開会中でも二つの場合はあるいは許されるかもしれません。すなわち、一つは問題が全く軽微で、補正予算を組むということは、いたずらに手続のめんどう、繁雑を繰り返すだけだというような問題は、社会の常識からいって問題ないと思うのです。それからもう一つの場合は、国会が開会中といってみても、実はもうあしたかあさってか終わるのだということで、補正予算はどうしても間に合わないのだという場合には、これもあるいは許されるかもしれません。しかし、今回のように国会が開会中であって、目的ははっきりしておって、十分審議のできる時間的余裕があり、またはあり得るときに、これをわざわざ避けて、そうして予見しがたきということで予備費でいこうということは、全く憲法上許されないと私は思うのでありますから、あらためてもう一度伺います。
  224. 林修三

    ○林政府委員 結局これは、法律論としては、国民金融公庫法がここに成立した場合に、結局財政措置がないという状態においてそれを出すことは予見しがたき要件に合うかどうか、そこに問題の焦点があるわけであります。それをとっていえば、それはやはり予見しがたいと言わざるを得ないのじゃないか、しかも財政措置がないということだと思います。その前提として、法案の御審議中に補正予算を出すべきであるかどうかということは、これは私は政策論だと考えるわけであります。
  225. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう一度あらためて伺います。予見しがたきというのは、どこが予見しがたいのですか。
  226. 林修三

    ○林政府委員 三十九年度においてこの国民金融公庫法成立した暁において二十億円を国民金融公庫に対して出資するということは、三十九年度予算においては予見しがたき事実である、かように思います。
  227. 竹本孫一

    ○竹本委員 でありますから、それはいま四月、五月にかけて国会がないような場合には、そのまま話がわかりますと言うのです。しかし、いま国会をやって——三月の時点における問題だけを長官は言われるけれども、いま五月の国会をやっているのだから、その時点でこの問題を取り上げておるわけですから、その時点で予見しがたきということに当てはまるかどうかということを伺っておる。
  228. 林修三

    ○林政府委員 これは純粋に法律論を申し上げますから、そのおつもりでお聞き願いたいと思います。  法律案予算とは必ず並行しなければならないものではございません。行き方としては法律案が通ってから予算を出すということも、これは考えられるわけであります。あるいは財政措置をすることも考えられます。あるいは並行して財政措置法律案を出すことも考えられます。これは政策的な問題だと思います。したがいまして、現状において国民金融公庫法が御審議を願っておるその状況において、三十九年度には実は財政措置がない、こういう状態において必ず補正予算を出さなければならないという憲法上の要請はないと思います。これは政策論だと思います。次に国民金融公庫法成立した暁において、三十九年度に財政措置がない、これも明らかな事実です。それは三十九年度予算において予見しがたかったことも明らかな事実であります。その場合に、その支出予備費でいくか、国会を召集し、あるいは国会を待って補正予算でいくか、これは政策論で、法律的には予備費支出する条件に当たる、かようにいわざるを得ないと私は思うわけであります。
  229. 竹本孫一

    ○竹本委員 そうすると、長官の場合には、三月の時点において予見しがたかった。そのことが四月になっても五月になっても予見しがたきということになるのですか。いまは事情が違うでしょう。長官の言われる点は、三月についてはそのとおりだと思うのです。しかし四月になっても五月になっても予見しがたいかどうか。もちろん私は三月の場合でも、政府の見込みが違うとか、見込みでそうだということは政府の主観的な問題であり、あるいは主体的な努力の問題であるから、これは客観的に予見しがたきということの中には入らないという解釈でありますから、その点は立場が根本的に違いますけれども、それを一応別にしても、三月においては予見しがたかったかもしれない、しかし四月、五月、いま国会で論議をしておる最中においてなお予見しがたいということによって予備費でいこうということは、これは法律上全くむちゃな解釈です。
  230. 林修三

    ○林政府委員 その点は実はさっきから申し上げたことと同じことになるわけでございますが、つまりかりに四月、五月の現在においてある法律案が出されて、それについて実は予算措置がない。予算を要するにかかわらず予算措置がないという法案が出されたと実は同じ状態だと思います。その場合に必ず補正予算をつけて出さなければならないかどうかということは、先ほど申しましたように、私は政策論だと思うわけであります。したがいまして、現在において財政措置はないわけです。そういう状態のままにおいて法律成立した暁においては、やはりこの財政措置に関する限りは、三十九年度当初予算においては予見しがたかった事情というものは、やはり四月であっても五月であっても同じことじゃないか、かように考えるわけでございます。
  231. 春日一幸

    ○春日委員 関連して。それは、法制局長官の言われることはむちゃくちゃですよ。大体予算の中には本予算と補正予算と二種類あるのです。本予算の編成期のときには予測しがたかった、予見しがたかった、これは認めます。けれども、三月三十一日になって、この財源が消滅をした時点に立って政府はこの法案を出しておるのだから、したがいまして、この法律が通過したら、これに対する財政措置はないのである。したがって、これは予備費から出すか、あるいは新規に国会にその財源措置の協賛を求めるか、二つに一つしかないでしょう。だから私はここで予備費の本質というものを掘り下げて的確に解明してもらいたいと思うのだが、これは憲法八十七条でありますか、予備費というものの性格が明示されておると思うのです。これは予見しがたき——いま竹本君が言うたように、主として客観的に、それは現象的には災害的なもの、こういうものに充当することのために大まかに国会の協賛を得てそういう項目を計上しておいてそのような事態に備えることができる、こうなっておるのですよ。だから予算には本予算と補正予算というものと二つある。この事実の上に立って判断をしまするならば、なるほど本予算においては予見しなかった、ところが三月三十一日過ぎたら、四月一日から、この法律成立したらこれに対する財政措置が必要であるということは、これは予見できることなんです。予見できたら補正予算を組むのが当然であって、直ちに予備費から充当するということは、予備費というものを、予見しないもの、自然災害を念頭に置いて設定しておる趣旨にかんがみて、そういう詭弁は許されぬじゃありませんか。なるほど前例として石炭国会において一つの例がございますけれども、そのことは、政府からそういう案を出したわけじゃないのですね。その当時三党間において話し合いがあって、こういうことを共同修正しようという三党間の合意に達してあのような便宜的措置がなされたわけなんですね。ところが本法案については、これは自民党の中においてもごく一部の諸君、綱島君を中心とするごく一部の諸君がこれを通せと言ってがんばっておるにとどまって、多くの諸君はこの問題についてなお批判的である。わけて社会党、民社党においては、これはもう決定的に反対意見を三年間にまたがって強く開陳してきておるのですね。だからあなたは石炭対策に対してあの当時こういう便宜的措置をとったことが一個の前例であると言っておられるけれども、議会政治は民主政治、政党政治。その政党政治の中において三党共同修正というような形でなされた場合と、すべての党が、与党の内部においてすら大きな反対論のあるこの情勢において、こういう問題について国会の協賛を求める必要がない、こういうような断定を下すというようなことは、あまりに一人よがりで、早合点とも称するものであって、許されるべきものではない。特に補正予算を組めば予算委員会を開かなければならない。予算委員会においてまたさまざまな論議がある。ことさらにこれを避けることのために便宜な方法を選んでおるとしか見られない。私は、憲法の各条章に違反をしてこういう重大な問題を便宜に甘んじて憲法を曲げるというようなことは許されることではないと思う。ただいま田中大蔵大臣も、必要とあれば補正予算を組むにやぶさかではない。またそういう方法もあり得ると言っておられる。だとすれば、憲法の番人とも目されるべき、まだそれだけの機能を果たされてはいないけれども、大体においてそういう職責にあられるあなたとしては、この池田内閣はきょうあってあしたはないかもしれぬが、ところが日本の議会政治というのは悠久なんです。だからあなたは便宜的な解釈によってこの憲法の解釈を私してはならぬと思う。予算というものは本予算と補正予算が厳然として存在するということにかんがみて、われわれは三月三十一日以後においては財源がないということを予見——予見じゃない。歴然事項である。この上に立ってあなたのようなでたらめなめちゃめちゃなそんな答弁をされるということは、国政を毒することはなはだしい、大いに反省の上、あらためて御答弁を願いたい。
  232. 林修三

    ○林政府委員 先ほどから申し上げましたとおりに、実は私は政策論としてはいろいろ御議論のあるところだと申し上げております。しかしいわゆる憲法論、法律論として私の立場からそれに限定して申し上げておるわけでございます。結局憲法が予見しがたき経費の不足に充てるため云々といっておりますものは、これがいわゆる補正予算を組み得る状態の場合には、予見しがたき経費の不足というものはあり得ないということでありますと、いわゆる補正予算は実は理論的に言えばいつでも組み得るわけであります。かりに国会がなくても、国会を召集して補正予算を出すことは可能なんです。そうすると、予備費支出するべき場合というのは、実はあり得ないこういうことにも逆にいくとなってまいります。しかし、憲法はそういうことをいっているのではなかろうと私は思います。やはりこれは、当初予見しなかった事情が生じた場合に、予備費をあらかじめとって、その範囲から出してもよろしい、法律的に言えばこういうことであろうと思うわけであります。そこで現存の状態においてこの国民金融公庫法の御審議の状況を考えれば、もちろん補正予算を出す方法も一つの方法でございます。しかし先ほど申しましたように特に本予算成立したあとにおいて財政措置を要するような法案は、常に補正予算と一緒に出されたかというと必ずしもそうではないわけです。それは出された例も幾つかあるわけです。成立した暁においては結局財政措置をしなければならぬわけでございますが、その財政措置は結局予備費でそのまま補正予算を組むかという二つになるわけであります。これをどちらを選ぶかということは、私は結局政策論じゃなかろうか、かように考えておるわけであります。
  233. 春日一幸

    ○春日委員 その政策論というものは、これは言うなれば多数の横暴ということです。私はかく考えると、反対ならば反対でいいじゃないか、こういういまのけんか棒ちぎりみたいな態度で、自民党は、こういうふうに考えていることは正しいと思う、君たちが違うと思っているなら違うと思っていたらいいじゃないか、こういう態度なんです。そういうことは許されませんよ。大体憲法の解釈というものは二様、三様にできる問題じゃない。それは宮澤さんも特にそういう見解を明示されておるが、少なくとも憲法学者もこういうような場合はやはり予算を組んで国会の承認を求めることが至当だと明示しておるのです。これは他の学者の見解も求めていけば私はおのずからこういうことだろうと思う。宮澤さんほどの方がそうそう間違った意見を立てられるはずがないと思う。あなたは私たちたちと言っておられるが、あなた以外にそのような説にくみする人は実際問題としてあり得ないと思う。だから予備費の正確なる性格の解釈というものは一体どういうものですか。これは読んで字のとおりじゃありませんか。予見しがたい場合その支出に充てるために国会の承認を得て予備費というものを設定することができる、こう言っておるのです。だからそれの使途というものはおのずから予見しがたい。その原資にこれが充当しなければならぬことはおのずから制約があると思うのです。どこへ使ってもいいという筋合いのものじゃない。だから予見し得るような場合は相前後してもいいかもしれない。それは同時に出さなければならぬという特別の規定はない、こう思うけれども、しかし実際的には予算の伴う法案を出したときにはその裏づけとなる予算を付して提出してくることはこれは慣例ができておる。これは普通の慣例である。守らなければならぬ慣例である。出し得ないとすればそれは異例な事柄であって、そういう悪例を法律事項としてうそぶいてもらっては私は問題の解明にはならぬと思うのです。だから私はこの問題は黒いものは黒い、白いものは白いという正しい法制局立場に立って、三月三十一日以降はこの法案成立をすればこれに対する財政措置というものはいずれかの方法をとらなければならぬ。こういうような場合は憲法議会において宮澤さんのごときオーソリテイがやはり予算を付して国会の承認を求めてしかるべしと述べておるし、またそのような方法をとることも至当であると、やはり国務大臣大蔵大臣として田中さんも述べられておるところなんだから、したがってあなたいまからでもおそくはないじゃありませんか。先国会においては第二次補正予算、第三次補正予算をどんどん組んで、必要とあらば承認を与えてきておることでもあるし、やはり国会を尊重するということからこういうような問題はやはり憲法、財政法に基づいた執行というものがあってしかるべしである。またそういう方向に向かって法制局というのは法律解釈を明示してしかるべきである。それだけの責任はあると思う。どうでもいい、政府がやっていることならどうでもいいという、そういう悪い前例をなしくずし的につくっていけば、これは将来の事態おそるべきものが実際予測できる。あなたの責任は重いですよ。あなたの自分かってな解釈によって憲法学者の解釈がみなくつがえってしまってどんどん前例をつくっていく、それが悪例となって今後日本の財政、予算の編成、こういう国政審議というものを毒していく責任を感じてもう少し反省して、そうして私はけじめというものをきちっときめてもらいたいと思う。私はそんなでたらめで国政がなし得る筋合いのものではないと思う。こんな歴然たる事項があなたの詭弁によって言いくるめられて、われわれがそれで下がったとなっては、われわれの職責は果たしがたい。単なるわれわれ一個の問題じゃない。大蔵委員全体の責任も非常に重い。与党の諸君も幾らかは興奮してもらわなければ困る。
  234. 林修三

    ○林政府委員 私は実は憲法論、法律論を申しておるつもりでございまして、事の好ましいか好ましくないかについては、実は私は触れておらないつもりでございます。法律論、憲法論として申せば、どうも先ほど申しましたように結局現状の状態において考えれば予算措置を要する法案予算を伴わないで出ているという状態であります。こういう状況で、別に憲法必ずしも予算を伴う法案予算をつけて出せということは申しておりません。むしろあるいは場合によっては法律成立してから予算措置をするということも当然考えられるわけでございます。その場合の財政措置としては予備費考えられますし、あるいは補正予算というものももちろん考えられるわけであります。まあ国会の御審議を得るという意味で補正予算が好ましいという御議論は、これはあると思いますけれども、しかし純粋に法律的に予備費支出し得る条件に当たるかどうかということは、その点だけを私が御質問を受けると、先ほど来申し上げましたとおりにそれはやはりその点は当たると言わざるを得ない状況でございます。その点は御了承を願いたいと思います。
  235. 竹本孫一

    ○竹本委員 だいぶ議論が尽くされてきましたけれども、結論的に長官とわれわれとの考えは根本的に違います。この議論は別なところで続けなければなりませんが、集約をいたしますと、予見しがたきというのは客観的な問題であって政府の一部の人の考え方や主観的な問題でない。第二に客観的に予見しがたいということでなくて今度は補正予算によるべきだと思うのでありますけれども、この予備費をどうしてもここでやらなければならぬというときにもう一つ問題になるのは、先ほど来あまり触れておりませんけれども、宮澤さんの学説にもありましたように目的の限定がない場合に何に使うのか。どんな事件が起こるのか、どんな災害が起こるのかわからないから、そのための予備費なんですね。今度のように国民金融公庫のためだという目的が非常にはっきりしておる、目的が非常に限定されておる、こういう場合。それからもう一つは、国会審議をやる三月までにはそのことは別といたしまして、四月、五月のいまの段階、いまの時点で考えるならば、十分に国会の承認を得る、あるいは審議を得るだけの時間的余裕がある場合に、予備費に逃げるということはこれは予備費の乱用であって、憲法や財政法に違反するものであるという解釈であります。  そこでこの問題についてのわれわれの見解はさらにあらためて論議をいたすといたしまして、最後的に大蔵大臣にもう一度念を押しますが、これはそういう意味で私はやはり憲法を守り財政法を守るという立場に立って謙虚に補正予算として出直すべきであるというふうに思いますけれども、そのお考えは絶対にないのか。もう一つ、もし今回これを予備費でやるということを強行される。しかもいまの法制局説明によれば、憲法について何らの疑義もない、確信を持って憲法違反でなくてやるということになれば、こういうことはきわめてイージー・ゴーイングに何度も繰り返されることになると思いますけれども、そのような立場においてこういう予備費の使い方を今後もやられる御意思であるか、この点を伺いたいと思います。
  236. 田中角榮

    田中国務大臣 本法律案成立後は予備費支出をするか、また補正予算で御審議を願う時期があるのかという問題に対しては、現在まだいずれともきめてはおりませんが、先ほど申し上げましたように、この法律案をすみやかに実施をするということになれば、予備費使用一つの方法であるという考え方に立っておるのでございます。先ほどいろいろな御議論がございましたが、政府予備費に対しては明確な考え方を持っております。これは決算委員会、大蔵委員会また予算委員会等で絶えず議論になったものでございますので、あなたはいま予備費使用ということをもしやった場合、違憲性があり違法性があると言われましたが、私はこの法律案が通ってこの二十億を三十九年度の二百億の予備費の中から支出をするとしても、合憲であり、適法であるという考え方は持っておるのでございます。それは客観的にどうかというような問題ではなく、予備費は広く予算の不足に対して使用するものであるから、いかなる経費に対しても、内閣が必要と認めれば使用し得るわけである。しかし、内閣が必要ありと認めたからといって、いかなる経費に対しても予備費使用が全く自由であるというわけではない。この不自由な、全く自由でないという制限に対しては、予備費は予見しがたい事由によって予算が不足を生じた場合に、その不足を補うものである。憲法第八十七条にいう予見しがたい予算の不足とは、実質的には財政法第二十九条に規定する補正予算の要件とおおむね同一である。したがって、その予見しがたい必要の事由は、予算作成後に生じたものでなければならない。予算編成前または編成の途中に発生した事由に基づくものであれば、当然予算に組み入れらるべきものである、こういう考え方を持っておりますので、予算編成後、すなわち国会提出をした後に起こったものは、予見しがたきというこの解釈をとっておるわけでございます。でありますから、この法律が通った場合、予備費支出するか補正予算を出すかは別にしまして、予備費でもし支出をするとしても、違憲ではない、こういう考え方をとっておるのであります。
  237. 竹本孫一

    ○竹本委員 もう終わりたいと思いますけれども、いまの最後のところこそわれわれが言っておることであって、私その文章を見ておりませんけれども、後半の精神は、われわれの言っておることをそのまま言っておるのじゃありませんか。すなわち、予算審議国会で十分審議をする時間的余裕もあるしするような場合には、予備費を使ってはならぬということをそこにいまうたってあるじゃありませんか。
  238. 田中角榮

    田中国務大臣 もうちょっと申し上げます。時間があれば全部でも申し上げたいのですが、予備費使用は例外とすべきでありまして、国会予算審議を無視することがあってはならないという原則でございます。その原則条件は、ある経費国会が削除した、また減額をした、こういう場合があります。その復活を予備費使用によって行なってはならない、こういう原則をつくっておるわけでございます。この問題は大蔵省だけでもってかってにきめたものではなく、長い間国会審議過程においていろいろこの種の問題が起きましたときに、政府法律論として統一見解を行なって国会に申し上げておることでございます。(「その種本は何です」と呼ぶ者あり)内閣の統一見解です。
  239. 竹本孫一

    ○竹本委員 いまの大臣が読まれたものは、いまお話しのように、われわれはいまの読まれた内容が大体われわれがいま主張しておることをそのまま原則的に認めておる。私が最初に集約をしましたとおり、むしろ政府のお考えでなくて、われわれの考えとして通るのではないかと思いますが、これは時間もありませんので、この辺で終わりたいと思います。  もう一つ特に大臣に伺っておきたいのは、そういう意味で、国会開会中であっても、そして問題がはっきりしておっても、十分審議をする時間があっても、場合によっては予備費の中から使うということを前例として今後もやられる御意思がありますか。
  240. 田中角榮

    田中国務大臣 そういうことを前提にはいたしておりません。先ほどからも御議論がございましたように、国会審議を尊重するというたてまえを政府はとっておりますから、その問題によって、また財源が確保できるというような場合、審議機関があるというような場合には、補正予算を出すということも、これはもう当然のことでございます。が、しかし、予備費から支出をしなければならないというような状態が起きた場合は、先ほどから法制局長官も申したとおり、予備費使用もでき得るという立場をとっておるだけであります。
  241. 竹本孫一

    ○竹本委員 この辺で一応終わります。
  242. 山中貞則

    山中委員長 堀昌雄君。
  243. 堀昌雄

    堀委員 法制局長官にお伺いしますが、法律予算の関係については、先例を尊重しますか。
  244. 林修三

    ○林政府委員 ちょっと御質問の御趣旨でございますが、これは内閣の方針としてそうするのか、政策としてそうするのかとおっしゃる御趣旨か、いわゆる憲法的にそういうご趣旨かということによって、ちょっとこれはお答えが違ってくると思います。
  245. 堀昌雄

    堀委員 両方区別して答えてください。
  246. 林修三

    ○林政府委員 これは従来の慣例で申しますと、大体予算法律案とは、いわゆる予算を要する法律案は並行して国会に提案されて御審議を願っているような状況になっております。これは一つの慣例だろうと思います。ただ、これについては過去においていろいろ御議論もございます。予算を要する法律案は、まず法律案を出して、それを通してから予算を出すべきである、それを事前に法律案を出すべきであるというような御議論のあった時代もございます。それから逆にいいますと、予算が前に提出されて、だいぶおくれてから法律案が提案された実例もございます。過去の実例はそういうふうになっております。これは憲法上から申せば、実は私はそこを厳密に縛る基準はないと思います。
  247. 堀昌雄

    堀委員 いや、私がいま伺っておるのは、同時に出すかどうかということではなくて、法律予算の関係というものは、これは率直にいって事実いろいろ問題があるわけです。ただ私がいま聞いているのは、法律予算の関係ですね。そういう一つのセットになった関係というものは、先例がもしあるとするならば、その先例に従って取り扱うことを正しいとするかどうか、適法とするかどうか、こういうことです。
  248. 林修三

    ○林政府委員 この先例尊重というのは一つの行き方でございますが、それは必ずしもいわゆる直ちに慣習法ということになっていないものも幾らもございますから、先例は普通は尊重すべきではございましょうが、先例によっては好ましくない先例もございましょうし、これはやはりケース・バイ・ケースで考えていくほかはないと思います。
  249. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、先例が好ましくないときは先例によらない、こういうふうに理解をしていいのですね、好ましくないという挙証がない限りは。そうすると、その先例に準ずるのだということが大体慣行だというふうに私は理解をいたしますが、それでよろしいか。
  250. 林修三

    ○林政府委員 特に国会におけるいろいろな御審議については、非常にいままで先例が尊重されてまいっております。したがいまして、先例は一つ国会のルールの御解釈である場合もあるわけでございます。そういう意味においては、特に先例は、原則としては私は尊重されるべきである、かように考えます。しかし先例でも、あるいは好ましくない先例もあろうかと思いますから、その場合にはその先例と違うことももちろん考えられます。要はケース・バイ・ケースで考えていくほかはないと思います。
  251. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、その好ましくないという先例に違う取り扱いをするときは、好ましくないということを挙証する必要が出てくると私は思うのです。あなたはいま、好ましくないときは先例に従わない、こういうわけですからね。だから、好ましくないということについての挙証をする責任がありますね、その先例に従わない場合は。
  252. 林修三

    ○林政府委員 挙証するという意味でございますが、いわゆるほんとうに証拠を立てるというだけの厳格な意味まではもちろん私は必要ないと思いますが、先例はこうだけれども今度はこう考えてこうしたということは、やはり普通は御質問があれば言うべきであると思います。
  253. 堀昌雄

    堀委員 いまのあなたの話だいぶ変わってきたのですが、好ましくないということが一つの限界ですよ、いいですか、あなたそう答えているわけです。いわゆる好ましくないのであれば、その好ましくないということは、こういう事由ですから好ましくないです、こういうことにならなければ、好ましくないということばは生きてこないでしょう。だから、こうこうこういう理由に基づいてこの先例は好ましくはございません、こういうことを述べる必要があるわけでしょう。まあ法律的に私は挙証と言ったけれども……。それはあなたの言う先例に従わない積極的理由として提出する義務がありますね、あなたのことばの解釈からすれば。どうでもいいということになれば、先例を尊重するということにならないじゃありませんか。だから、あなたは、原則としては先例を尊重する、ただし先例が好ましくない場合には先例には従わないことがあり得る、こう答えたですね。そうすると、好ましくないということは、こうこうこういう理由でこの先例は好ましくありません、こうならなければいけませんよ、そうですね、原則論から。
  254. 林修三

    ○林政府委員 それは一々そういうことを申すかどうかは別としまして、先例と違うというやり方をしたのはどういうわけかという御質問があれば、これはこういうわけでございますということは当然言うべきだと思います。
  255. 堀昌雄

    堀委員 その次に、順繰りに外堀を少し埋めさせてもらいますけれども、予算を必要とする法案予算がなくして内閣は提案することができるのかどうか。予算を伴うことが明らかである法案内閣予算のない場合に提案をすることができるのかどうか。法律的な見解はどうですか。
  256. 林修三

    ○林政府委員 予算のない場合とおっしゃる意味でございますが、ちょっとその意味がはっきりのみ込めませんけれども、従来の普通の慣例では、予算を要する法案は大体同時に並行して、必ずしも時間的に同時ではございませんが、大体並行して予算を出しておるというような例にはなっております。しかし、先ほどちょっと申しましたように、これについてはいろいろと議論がございまして、まず法律案をきめてからあとで予算を出すべきであるというような御議論もあるわけでございます。これはいろいろ考え方もあると思います。したがいまして、法律的にいって予算を要する法律案予算なしに出す、予算はあとから追っかけていく、その法律案ができてから予算考える、あるいは財政措置をとる、こういうことは別に憲法上も法律上も間違っておらないと思います。
  257. 堀昌雄

    堀委員 いまの予算が追っかけるとか追っかけないとかいうことではなくて、要するに、この例でもそうですか、「公庫資本金は、二百二十億円とする。但し、国会の議決を経て、これを増加することができる。」こういう二百二十億円と二百億円との差だけがこの法律案ですね。これは予算を必要とすることはだれが見ても明白ですね。これほど明白な予算を必要とする法案が、予算がないときに出せるのかどうかということですよ。これはこの法案の具体的な問題じゃないんです。いま私が言っているのは原則論ですからね。原則として、昭和三十九年の予算にはそういうものの項目はなかった。過去のことは別としてですよ。そういうときに、三十九年度に法律が通って、附則によってその施行は公布の日からであるときめられた法律が出せるかどうかということですよ、予算のない場合に。
  258. 林修三

    ○林政府委員 法律的には私は出せると思います。
  259. 堀昌雄

    堀委員 法律的に出せるということになると、これは何が根拠になりますか。予算の中にはその項目がない。しかしその支出目的としたものを法律的に出せるその根拠は何ですか。予算をどうするかということは、その場合初めから予備費目的として出すということですか。
  260. 林修三

    ○林政府委員 それは結局法律が通ったあとにおいて財政措置考えるということは理論的には当然あり得るということでございまして、その場合に、必要に応じて財政措置をする、あるいは場合によっては予備費を出す、あるいは場合によっては次の国会において補正予算を組む、そういうようなことも理論的に考えられるわけでございます。
  261. 堀昌雄

    堀委員 いまのあなたの話を聞いておりますと、法律案というものが、要するにあなた方の思うように国会を通るとかなんとかいう前提がないとちょっとおかしくなるのじゃないですか。予算がついていないところへ予算を必要とする法案が出せる、法律的にできるとあなたは言いましたね。そうして、いまの場合は、財政措置を講ずるか、あるいは次の国会において補正予算をつくるか、あるいは予備費だ、こう三つ言いましたね。三つ言ったけれども、いまの場合はどこでもいいということにならぬでしょう。公布の日から発効するという法律が出ているとすれば、その時点で即座に必要としてくるわけでしょう。そういう場合には私はこう考えますよ。この問題を離れて、原則的な議論ですけれども、予算を伴う法案予算を伴わずに提出されるということは、私は法律的にはナンセンスだと思う。あなたは法律的に可能だと言うけれども、その場合には法律的はナンセンスなんじゃないですか、政府が提案する場合には。
  262. 林修三

    ○林政府委員 法律的には私はナンセンスということはないと思います。その法律案成立した暁において実際に財政措置を必要とする場合に、必要な財政措置がされておればいいわけですから、法律案だけが先行してもナンセンスということはないと思います。
  263. 堀昌雄

    堀委員 財政措置がその時点で講じられればいい、こういうわけでしょう。そうすると予算なくして財政措置がいつでも講じられるのですか。それはあと同時に補正予算提出するなりその他の措置がなければいかぬのじゃないですか。予算裏づけなくして法律だけがかってにぱっぱとひとりでできるのですか。あなたのいまの法律論からいったならば、予算の背景なくして法律案はどんどん出せるということが——法律原則としてならいいですよ、これは非常におもしろいのですが……。
  264. 林修三

    ○林政府委員 その法律案の内容いかんにももちろんよるわけでございまして、予算を要する法律案であっても、あるいは年度の半ば以降に支出してもいいような法律案の内容もございましょうし、一般的に……(「公布の日からですよ」と呼ぶ者あり)公布の日からでも、かりにいまの国民金融公庫法のように、一回出資をすればいいということで実は内容が終わるものもございます。その出資の時期については、公布の日から法律施行しても、公布の日に直ちに出資をしなければならないというものでないものもあるわけでございます。そういうように法律案の内容によっていろいろ分かれてまいりますから、法律案が通ったあとで財政措置をしても私はそれはかまわないと思います。
  265. 堀昌雄

    堀委員 いまの答弁によりますと——それでは現実問題に返しますが、要するにこの法案が通っても出資はいつでもいいわけですね、一般会計から出資するのは。公布の日からということは、そうときに出資をしなくてもいつ出資してもいい、こういうことなんですか。これは非常に問題が変わってきますからね。
  266. 林修三

    ○林政府委員 公布の日から施行するという意味は、公布の日に必ず出資をしなければならないという法律的な意味ではないと思います。政府出資をすることができるという法律が公布の日から施行されたということでございまして、国民金融公庫の必要に応じて出資をするということだと思います。
  267. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、必要としなければ出資をしなくてもいいですね。いいですか、そこをはっきりしてください。
  268. 林修三

    ○林政府委員 これは二十億増資するということでございますから、増資しないでいいということではないわけでございます。ただ時期について公布の日に即日しなければならないという意味を受けておるものではないということを申し上げたわけでありまして、この法律の内容からいえば、政府が二十億円出すということを内容とした法律が公布の日から施行されたという意味で、それは結局政府の財政上の都合もございましょうし、あるいは国民金融公庫資金繰りの都合もございましょうし、いつ出資をするかという日にちを選択する裁量は私はあると思います。
  269. 堀昌雄

    堀委員 そうするとその出資をする時期は、最大限いつまではいいですか、どういう幅があるのですか、あなたはともかく幅があるということを示したのですから、幅の限界を示してください。
  270. 林修三

    ○林政府委員 これは私財政当局ではございませんから、この法案については実は私ちょっとお答えできないのでございまして、大蔵当局に……。(「法律的に言ってください」と呼ぶ者あり)ほんとうに法律的に言えば、二十億円ということについては、年度の限界は実はないわけでございます。場合によっては予算成立しなければその実行が四十年度になるということだってあり得ると思います。そういう意味だと私は思います。
  271. 堀昌雄

    堀委員 そこまで伺えば、前段はけっこうです。  その次に大蔵大臣にお伺いをいたします。昭和三十八年の一月の十八日に昭和三十七年度補正第二号一般会計予算閣議決定をされましたね。その中に、この国民金融公庫の二十億円は、三十七年度予算でありますけれども、繰り越し明許を国会に求める決定をしておるのです。そこで、この繰り越し明許を決定した理由は何か。
  272. 田中角榮

    田中国務大臣 三十七年度予算の会期中にこの法律案が通らなかった場合を考えまして、繰り越し明許をいたしたわけでございます。
  273. 堀昌雄

    堀委員 あなたは、いま昭和三十七年の会計年度中に、この公庫法が通らないということを予見して、三十八年一月十八日に繰り越し明許を政府としては決定をしたということですが、もう一回それを確認をいたします。そのとおりかどうか答えてください。
  274. 田中角榮

    田中国務大臣 先ほど申し上げたとおりです。三十七年度の会計年度中に通らないかもしらぬ、こういうことからでございます。
  275. 堀昌雄

    堀委員 そこで一体国民金融公庫法は、この時期には国会に提案されましたか。
  276. 田中角榮

    田中国務大臣 三十八年一月三十一日に提出をいたしました。
  277. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、今回と同じ状況ですね。まだ出していない法案を、三月三十一日までに通らないということを予想して、あなた方は三十八年の一月十八日の閣議で繰り越し明許を求める決定をして、法案は一月三十一日に提出した。その理由は、いまあなたが言ったように、国会を通らないかもしれないということを去年の一月十八日には予見をしたわけです。それではなぜそのときにはそういう予見をしたのですか。
  278. 田中角榮

    田中国務大臣 当時の状況から見まして、通らないかもしらぬ、こう思ったわけでございます。
  279. 堀昌雄

    堀委員 なぜ通らないと思ったか。
  280. 田中角榮

    田中国務大臣 なかなか慎重御審議をいただいておる経緯がございますので……。
  281. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、要するにこのことは、三十八年一月十八日の閣議では、少なくとも過去の経緯にかんがみて、一月三十一日に提出する法案が、三月三十一日まで会計年度があるわけですが、二カ月たっても法案が通らないということをあなた方はすでに前例として予見をし、それで閣議で決定したわけですね。そうして繰り越し明許にして、本年度に持ってきたということは、このことはイコール三十八年度予算が三月三十一日で終わるということは、同じ一月十八日当時においては同じ条件であったわけです。去年もことしも同じ条件です。ところが昨年はあなた方は通らないかもしれないということをすでに予見しておった。要するに、これまで議論になった「予見し難い予算の不足に充てるため、」ということは、少なくともその時点は閣議決定の時点なんですよ。そこはこれまで確認されてきた。予見されざる予算の不足というものを、あなた方は三十八年の一月十八日に予見をしたから繰り越し明許にしたわけです。ところが本年度においては、これは同じ条件なんです。去年もことしも同じです。あなたは、昨年は予見をしたと言った以上、過去の慣例からするならば、ことしも予見しなければならない。予見をするとすれば、どういう措置をとられるべきかというと、三十九年度予算にこれは当然計上されなければならない問題なんです。これは昨年繰り越し明許にしていなければ、この議論は成り立ちませんよ。しかし昨年に繰り越し明許をしたという前例は、そういう過去の状態から予見をして、そうして繰り越し明許にして、問題を処理してきた。本年も予見をして、三十九年度予算にこれを計上しておれば、この問題は当然解決しているわけです。これは主計局の重大な失態だと思う。あわせて大蔵大臣の重大な失態である。どうですか。
  282. 田中角榮

    田中国務大臣 三十八年の一月は、これは通らないこともあり得る、こういうことも考えたわけでございます。ですから、繰り越し明許にしたわけであります。三十九年もなぜやらなかったか、こういうことでございますが、繰り越し明許は二年でできなくなる。そうすると三十九年度の予算になぜ組まなかったか、こういうことでございますが、これは私も国会議員をもう十何年もやっておりますから、前とは違いまして——それから実際は、この法律案は、去年の十月ごろには通るだろう、こういう見通しもあったわけでございます。これは二回も衆議院の本会議を通っているということでございますから、そう思っておったら、解散をしてしまった。だから解散がなければ通っただろう、こういう気持も私にあったわけでございます。でありますから、一年前の審議を十分お尽くし願わなかったときと、もう少なくとも衆議院でもって二回も採決をいただいて、本会議も通って、参議院に送られたという時点においては感じが相当違うわけでございます。そういう意味で、今度は通していただけるだろう、こういう希望を持ったわけでございます。  予見の問題でございますが、三月三十一日までに法律が通らないことがあり得るということは予見できるわけでございます。通らないことはあり得る、しかし通らないと予見することはできないわけです。これはもう国会の独自の権能でございますから、通らないことがあり得る、こういう考え方は私たちにはわかりますが、国会方々の御審議でございますから、通らないということを予見するわけにはなかなかまいらない、こういう違いがございます。
  283. 堀昌雄

    堀委員 いまのおかしいですよ。通らないという予見をしたから繰り越し明許にしたとあなたは言ったじゃないですか。いま言ったでしょう。
  284. 田中角榮

    田中国務大臣 かも……。
  285. 堀昌雄

    堀委員 かもかしれないにしても、それで繰り越し明許にしたでしょう。かもしれないということは、それはかもしれないでいいですよ。繰り越し明許にした理由は、通るということに確信がなかったということでしょう。そのことは、昨年すでにそうであった。これは過去のこの法案の経緯をちょっと申し上げますけれども、この法案は、第四十国会の三月十五日に提出をされて、この国会では審議未了になりました。その次に四十一国会提出されて、またもや審議未了になりました。四十二国会においても継続審査になっておったけれども、これも審議未了になりました。過去に経緯があるから、あなたのほうではそういうことを予見したのじゃないですか。だから、少なくとも予見したから繰り越し明許になったわけです。そういうことと昨年とことしと違うということは理由にならないですよ。そこで私がさっき法制局長官にちゃんと原則を確認してあるわけです。予算法律の関係については慣例に基づくということになれば、当然やはり一月三十一日に法案提出するときにすでに事前に予算措置はされておるわけですよ。そうして、いまの通らない場合に対してでも予算措置がちゃんとできているから、この問題はそのときには問題はなかった。ところが今回は三月三十一日までで予算が切れることは明らかである。これは、過去の例からすれば予見し得ざる予算の不足じゃないのですよ。これは当然法案提出するときにもそうであるし、それから予算をつくるときだって、昨年度においてそういう例がある以上、この問題をやはり生かして考えるのがあたりまえですよ。この場合はどうですか、あなたがさっき言った好ましくない先例ということになると、昨年延ばしたのは好ましくない先例ということになるのですか、そこをひとつ好ましくない先例かどうかちょっと伺いたい。
  286. 林修三

    ○林政府委員 いまお話を聞いておりますと、昨年の例とことしの例はちょっと違うのじゃないか。場合が少し違うのじゃないか。いま堀先生のおっしゃる趣旨について言えば、ことしは年度内に通らないかもしれないから、三十八年度の予算から初めから落として三十九年度予算に組んだらよかろうというような御趣旨に受け取れましたが、政府としてはそこまで踏み切るわけにはいかなかった。やはり三十八年度の予算措置はあるわけでありますから、これを生かしていこうという趣旨である。二回に分けて繰り越し明許にすることは、これは国会の御決議があって、好ましくない姿であるというのでこれはちょっとできない。そういう趣旨で、三十九年度としてはやはり背水の陣でいくという以外に方法がなかったのじゃないかと思います。
  287. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  288. 有馬輝武

    ○有馬委員 法制局長官に立法論の問題としてお伺いいたしたいと思うのでございますが、財政法におきましては、先ほどから竹本委員、春日委員堀委員からも詰めて論議がされておりますので、重複することを避けたいと思いますけれども、この場におりませんで他の委員会におりましたので、その点は御容赦をいただいて御答弁をいただきたいと思うのであります。  私がお伺いしたいと存じますことは、ただいまの堀委員質問でも明らかにされましたように、この国民金融公庫の二十億については財政法の第二十四条にいう予備費、いわゆる予見しがたい予算の不足でないことはきわめて明瞭であります。とするならば、私は当然第十八条による措置か、あるいは第二十九条による補正予算、この措置かをしなければ第三十二条違反になると思うのであります。にもかかわらず、法制局長官が、ただいままでの答弁では必ずしも違法ではないというような答弁をしておられる根拠と、あえて二十四条なりあるいは二十九条なりで予備費、補正予算というように明快な規定が置かれたこの財政法を貫く精神に今度の措置というものは違反するのではないか、このように考えますが、この点についての明快な御答弁をいただきたいと思います。
  289. 林修三

    ○林政府委員 予備費の規定は御承知のように憲法八十七条に根拠がございまして、「予見し難い予算の不足に充てるため」云々という予備費を設けることができるという規定になっておる。それで、この場合の予見しがたい予算の不足ということでございますが、財政法ではすでに予備費のほかにいわゆる補正予算の規定を置いております。この予見しがたいということを非常に厳密に考えていきまして、つまり、補正予算を組み得る状態であれば予見しがたいものにはならないのだというふうに見ていきますと、極端に言えば、予見しがたい予算の不足ということはほとんどあり得ないことになります。補正予算というのは常に組めるわけでございまして、国会が開かれておらなくても、国会を召集すればいいわけです。しかし財政法なり憲法はそれほど厳密なことをいっているのではなかろうと思います。結局財政法二十九条の補正予算を組む要件と予備費支出する要件は、大体同じような——少し違うところもございますが、並行的な要件で考えているのではなかろうか、つまり予見しがたいというのは、当初予算を編成する際に予見しがたかったという事情があれば、これは憲法の八十七条あるいは財政法の二十四条の要件に当たる、かように考えているのではなかろうか、私はかように解釈いたすわけであります。さような観点からいたしますと、現在の国民金融公庫法状態考えますと、まさに三十九年度予算の編成においては予見しがたかった事情になります。この場合の財政措置を補正予算でやる方法はもちろんあると思いますけれども、しかし予備費支出することも必ずしも違法ではない、かように考えるわけでございます。
  290. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、少なくとも法の明快なといいますか、法の解釈についてシビアであるということが法制局長官に期待される最大のものだろうと思うのです。にもかかわらず、あえて第二十四条で予備費の条章を設け、第二十九条で補正予算の条章を設けてあるのに、大した違いはないというその御答弁は、法制局長官の答弁とは私は受け取れないわけであります。少なくとも、ただいまも申し上げましたように、予見しがたいものでなかったことは明瞭でありますから、私はあくまで財政的な措置というものは、この財政法に従って行なうのが筋であって、こじつけによって問題を処理していくということは将来に大きな禍根を残す、このように考えるのですが、いまの点いま一度御答弁を願いたいと思います。
  291. 林修三

    ○林政府委員 いまの点でございますが、法律の規定は厳格な解釈をすべきものであることは当然でございますが、しかしその第二十九条と第二十四条を見ました場合に、大体同じような要件と申しましたのは、第二十九条はいわゆる予算作成後に財政需要が生じた場合に補正予算を組み得るという規定でございます。予算作成後に新しい財政需要が生じた場合には補正予算を組み得る。これは組むべしとは必ずしも書いてございませんが、組み得るということになっております。これは一方に予備費という制度があることもやはり考えていることだと思うのであります。いわゆる予算作成当時までに予見しがたい経費の不足が生じた場合には、予備費を設けてその予備費をもって支出し得るという制度がございますために、結局この補正予算のほうもそういう場合にある程度裁量的な形で規定をしている、かように考えるわけでございます。したがいまして、厳密に、さっき申しましたように、補正予算を組み得る場合には必ず補正予算を出せということになりますと、実は予備費支出する場合というのはきわめて例外的な場合しかないことになります。それを財政法は要求しているのではないだろうということは先ほど申し上げました。結局予算作成当時、予算編成当時に予見しがたい事情があるものについてはやはり予備費支出し得るのだ、憲法八十七条、財政法二十四条はそういう前提でできているのではないか、そういうふうに解釈していいのではないか。それで、今度の国民金融公庫法の場合が予見しがたい事情であったかどうかということが問題でございますが、三十九年度における財政措置として考える場合には、やはり予見しがたかったというふうに考えざるを得ないのではないかと思います。
  292. 有馬輝武

    ○有馬委員 二つの問題があると思います、いまの御答弁には。現在まで先ほど堀委員が述べられたような経緯をたどってきておりまして、決して予見しがたいものでなかったということは、これはもうだれが見ても明瞭であります。それに対して、その予見しがたかったというのは大蔵省の怠慢でありまして、常識的に考えて決して予見しがたいものでないことはきわめて明瞭であります。その前提の上に立って法制局長官までが第二十四条と第二十九条を解釈される。法の番人としてあなたはきわめて不適格なといいますか、不適当な発言をなされておる。こういう大蔵大臣答弁のようなあやまちをおかさないためにあなたがある。それを、逆になっておる。ここに一番大きな問題がある。あると同時に、第三十二条というものは、それでは、どういうことでこの規定が置かれておるのですか。
  293. 林修三

    ○林政府委員 三十二条は予算目的使用の制限の規定でございまして、一定の要件のある場合以外は予算目的外に流用しあるいは移用してはならない、こういう性質からできていることだと思います。
  294. 有馬輝武

    ○有馬委員 次にお伺いしますが、それでは第十八条を厳密に——これは歳入歳出予算の概算についての内閣の責任がうたわれておりまするが、これもいまあなたが御答弁になったように、幅広く、ゆるやかに、かってに解釈していい条章ですか。
  295. 林修三

    ○林政府委員 私はどの条章でも別にそういう幅広く解釈していいというふうなことを申し上げているつもりではございません。第十八条は、言うまでもなく、当初予算の編成の手続をきめたものでございまして、いわゆる概算と予算の作成という二重の段階を経て当初予算を編成する手続を書いたものでございます。大体一年度間の財政需要を見積もって、それに対する財政収入を考え予算をつくるという考え方を持ったものであります。
  296. 有馬輝武

    ○有馬委員 といたしまするならば、これは先ほどから議論が分かれておるところでありまするけれども、少なくとも常識的に見て予見し得る予算支出でありまするから、当然これは第十八条によって年度当初に予算編成の際に処理すべき問題ではなかったのですか。
  297. 林修三

    ○林政府委員 ここは、一つは政策問題にも入ってまいりますけれども、結局三十八年度においては三十七年度の予算の繰り越し明許ということで三十七年度中に財政措置がしてあったわけであります。したがいまして、これを三十八年度中に確実に通らないと三十九年度に——あるいは三十九年度になって支出してもよろしいということであれば、これは当然に三十九年度予算に編成すべきものだろうと私は思いますが、しかし政府考え方としてはやはり三十八年度中にぜひともこれを支出したい、そういう考え方で来たものだと思います。しからば、先ほど堀先生からも御質問ございましたが、三十七年度のときには繰り越し明許をとったじゃないかという問題がそこへ出てくるわけです。なぜ三十八年度では繰り越し明許の方法をとらなかったかということになろうかと思います。これは繰り越し明許を二年にわたってとるということが財政法上許されるかどうかということは問題のあるところでございますが、これは国会の御決議の趣旨もあって、好ましくないということにされておりますので、これはやらない、そういう考え方で来ていると思います。しからば、結局、この一月において予算を本国会に出し、あるいはこの法案国会に出す時点においての考え方としては、二つの考え方があったわけでございます。一つは三十八年度中にぜひとも通らなければこれは財政措置がなくなるという問題、一つは三十八年度中に絶対に通らないという見通しがつけばこれは三十九年度予算に組む、そういう二つの方式があったわけでございますが、これは大蔵当局は前者を選んだものと考えているわけであります。
  298. 有馬輝武

    ○有馬委員 私がお伺いしておるのは、これは賛成できないことであるけれども、大蔵省にそのような期待感があったにしても、二つのものの考え方が予見される場合には、やはり法にのっとった筋道をとることが、これは政府として当然の措置ではなかったろうか。もしそれを怠った場合には、やはり筋道としてはこの財政法にのっとって措置がなされるべきではないか。こういうことをお伺いしておるわけです。
  299. 林修三

    ○林政府委員 この三十九年の予算を編成する時期においての考え方、あるいはこの法案提出する時期においての財政措置のつけ方の考え方、これにはいろいろ御批判もあるかと思います。しかしそれは実は過去の事実でございまして、現在においてこの国民金融公庫法の状況を見ました場合に、これがかりに国会を経過して成立した場合において、これについての財政措置が三十九年度にないことは、これは明らかな事実であり、そうしてこれは三十九年度予算編成当初において予見しておらなかったことも明らかな事実であります。予見しなかったのは間違いであるとおっしゃれば、これはまた別問題でございますが、そういう問題はありましょうけれども、政府としてはやはり三十八年度に通るというような考え方でおったわけでありますから、これは予見しなかった。予見しなかったという状態があることは、これは明らかなことであります。そうすれば、結局法律解釈としては、先ほど私が申しましたように、予備費として出すことがいいか悪いかという政策問題は御批判のあるところだと思いますが、法律論としては支出可能の範囲に入る、こう言わざるを得ないのじゃないかと思います。
  300. 有馬輝武

    ○有馬委員 あなたは政策論議というものを都合のいいときには論じられて都合の悪いときにはそれは政策論議でありますから、大蔵省当局でお考えになっていいというようなものの言い回し方をされるところに今回の財政措置の大きな矛盾があるわけです。その矛盾をあなたは是正していかなければならぬ。その責任があると思うのです。政府と一緒になって詭弁を弄せられる、法の解釈を曲げられる、これは許されないことだと思うのです。委員長、いまの論議でお聞きのとおりなので、われわれは法制局長官が常に法律のシビアーな解釈、運営、こういうものにわれわれに指針を与えるものだと信頼して本日もおいでを願ったのですけれども、田中大蔵大臣のお先棒をかつぐ立場にあられるのでは、これはきわめて不適当である。こういった状態では審議を続けられませんので、暫時これは理事会を開いていただいて取り扱いについて協議をしていただきたい。
  301. 山中貞則

    山中委員長 続行願います。
  302. 有馬輝武

    ○有馬委員 これを要望して私の関連質問を終わります。
  303. 堀昌雄

    堀委員 いままでの議論で、あなたは予見し得ざる不測というのは客観的だと言われましたね。そうすると、昨年度には客観的に予見をしたのです。いいですか、昨年度も予見をして、過去の例がそうなっている場合に、これは予見をし得たもので予見をし得ざるものにはならないでしょう。主観的には別ですよ。あなたはこの面ここで竹本委員質問に答えて客観的だと答えておりますね。客観的であったから三十八年の一月十八日の閣議は繰り越し明許にしたのです。客観的事実に基づいたから繰り越し明許にしたのであって、今度は客観的事実は同じような条件で過去ずっと続いてきておる。この法案についてあることを、それを主観的に三月三十一日までに通したいのだといったって、それは政府の一方的な希望であって、客観的な問題というのは、法案国会に提案をされたらそれがいつ通るかということはわからないというのがあたりまえじゃないのですか、客観的には。どうですか。
  304. 林修三

    ○林政府委員 法律案は、御提案を申し上げたあとは、それはもう国会の御審議にまつことでございます。いつまでに通そうといったってそのとおりにいくものでないことはこれは明らかであります。時期を予測できないことはおっしゃるとおりでございます。ただ、先ほど私が客観的に見た場合に云々と申し上げましたのは、結局現在の状態において、国民金融公庫法とこれに対する財政措置考えた場合に、昭和三十九年度においては財政措置がしてない、これはもう明らかな事実でございます。これはやはりそういうことを予見しなかったことに基づいてこういう財政措置がしてない、そういう状態と見ざるを得ないんじゃないか。つまり、三十九年度においてそういう財政措置はしてございません。それについてこの国民金融公庫法成立してその対策を立てなければならないという状態になった場合に、それは了見しがたい経費の不足だ、こういわざるを得ないんじゃないかと私は思うわけです。
  305. 堀昌雄

    堀委員 予見しがたい経費の不足といわざるを得ない、こういう表現ですね。いわざるを得ないというのは、それは予見しがたいものであるというんではなくて、こういう経緯があって政府が十分な財政措置を怠っておったために、そういう予見し得ざる不足ということにつじつまを合わせよう、こういうことですね。法律的に純粋に解釈をするならば、私がいま問題を提起をしてきたように、客観的な事態に基づいて、要するに予見する問題が出てくるわけですから、恣意的な判断じゃないですから……。客観的事実に基づいて昨年度は繰り越し明許をしたんですね。このことは厳然たる事実があるわけです。本年も去年も同じ一月三十一日に法律案を提案されているが、去年そういうことができたということは、去年は予見し得た事実なんです。そのことは客観的な事実なんです。予見したということは、すでに本年度においては客観的事実になっているわけですね。その事実があって、本年度その客観的事実に基づけば当然財政措置が講じられるのが私は当然の筋道だと思う。ところが、その筋道を怠っておったために、今日に至ればなるほど財政措置がしてない。今日に至ったときに予見せざるものになった。それじゃ三月三十一日はどうだったのですか。
  306. 林修三

    ○林政府委員 三月三十一日にこの法案成立しておれば、その日に支出できた……。
  307. 堀昌雄

    堀委員 三月三十一日の時点では。
  308. 林修三

    ○林政府委員 時点ではとおっしゃいますが、その意味が——その日に法案成立しておれば支出可能でございます。したがいまして、その日の時点においてはまだ法案が通るか通らないか、これはそのときにおいてどう客観的に見るかによってきまってくることだと思います。
  309. 堀昌雄

    堀委員 いまのは答弁にならないですよ。要するに、私が言いたいことは、昨年度は予見をしたんだから、本年度も同じ予見の上に立つならば、率直に言うならば、三月三十一日に通らなかったなら、原則として内閣はこの法律案を一ぺん撤回しなければならないのですよ。そうして再度予算措置を講じてから出してくるんなら、いまの問題は解決する。方法論をいま言っているわけですが、これが一点です。  二点目の方法論は、ともかく予備費をこれに流用することについてはわれわれ絶対反対です。予備費というものはそういう性格のものではない。そこで、さっきあなたがいみじくも言ったように、出資するのは法律はなるほどそういうように純粋に解釈すれば公布の日からとなっているけれども、いつ出資をするかまでは規定しておらぬのだからという解釈をあなたはここではっきりしたんだから、そうすると財政措置を講じてから出資すればいいです。そうなるならいまの問題は解決するわけです。  そこで国民金融公庫にお伺いをいたしますけれども、昨日田中委員が論じられたことと同じ問題がここにあると思う。この法律は一体何をここで言っているのかといったら、二十億円を出資をするという法律なんですよ。あなた方がきょうここへ出された「国民金融公庫による農地買収者貸付取扱要領」なるものは、この法律とは何も関係ないじゃないですか。関係がありますか。あなたのほうの国民金融公庫は、いまこの法律が出ることは出資金がふえるということなんだから、関係ないんじゃないですか、ありますか。
  310. 酒井俊彦

    酒井説明員 厳密に法律的な意味で申しますならば、その法律案の提案の趣旨に書いておりますように、ただ国民金融公庫の基礎を強化するというために二十億いただくわけでございますが、昨日も申し上げましたように、農他被買収者のために特別に二十億円を融資する、それを出資がなくてもやれということも一つの方法かもしれませんけれども、そういたしますと、その分だけいまの一般普通貸し付けワクが食われてくるということで、幸い二十億円を出資をするから大体そのワクでそういうことをやってみぬか、そういう政府からのお話がございましたので、この法案の通過を待ちまして、農地買収者に対する特別措置給付を始めたい、かように考えております。いまお配りいたしました業務方法書も、これによっていますぐやれということができないわけじゃありません。けれども、さっき申し上げましたように、そうなりますと、資金的に不足を生ずるということがございますので、そういう関連で申し上げているわけでございます。
  311. 堀昌雄

    堀委員 法制局長官は他に用事があるかもしれませんから、あなたの分だけを先に質問して切り上げていきたいと思います。  要するに、あなたのいまの発言の中から、予備費支出することは違法ではないかもしれないとあなたは言いたいだろうけれども、適当ではないということになると私は思うが、違法ではないけれども必ずしも適当ではないという見解をここで明らかにしてもらいたい。
  312. 林修三

    ○林政府委員 これが適当であるかないかということは一つの政治的判断になることでございまして、国会の御批判によってあとの予備費の——かりに予備費支出があった場合にそれを国会がどういうふうに御判断になるか、事後承認の場合、ということであるべきことで、私としては予備費として出し得る項目であるということを申し上げる程度で実は御了承願いたいと思います。
  313. 堀昌雄

    堀委員 大臣、いまの問題ですが、あなたも政治家ですから、道があるなら——私は、そういうかっこうで予備費支出する先例はないということを午前中に明らかにしておるのです。だから先例がないことがこうやって先例になることは、まず財政法の会計単年度主義というものや、それに伴ってつくられた繰り越し明許の制度というものは、要するにやはり一つの会計年度において問題を処理しようという精神が財政法に流れておるわけですから、その繰り越し明許をやったけれどもそれでもだめだった、それから継続費でもなければ、要するに事故操り越しでもないということになれば、私はやはり財政法趣旨からすれば単年度主義というものが貫かれるべきだ。昨年度あなた方が繰り越し明許にしないでおれば私はこれはまた話は別だと思う。昨年度に繰り越し明許にしてなければ、当然三月三十一日までに通らなければ予備費を使わなければならぬという事態になって、そういうかっこうでずっときて、ことしもそうなったというなら、これはまた問題は別です。去年繰り越し明許にしたということは、少なくともこの取り扱いについてはやはり財政法を尊重をしてそのワクの中で考えようとしたことは明らかなわけです。そうすると、さっき法制局長官の発言があったように、公布の日からということになっておるのは、必ずしも公布された日に出資をしなければならぬということじゃないという法律解釈があるなら、財政措置についてはあとで補正予算を出されるときに処理をすればいいことであって、いまの資金的な問題は、昨日あなたは出資をしないと逆ざやになるということを言われたわけですけれども、そんなことにならないのですよ。国民金融公庫法の二十二条の二で借入金という定めがある。「前項の貸付金については、利息を免除し、又は通常の条件より公庫に有利な条件を附することができる」。こういう明らかな規定が国民金融公庫法にあるのですから、政府は無利子の金を貸したっていいわけです。だからそういうことができるような仕組みになっておるのだから、出資そのものの問題については、当然これだけ議論になっておる今日では、私は適当な時間まで出資の問題は延ばして、貸し付けの問題はいろいろな経緯があるならば、この法律がもし通ったとしたら——私は何もこの法律が通らなくたってこの業務方法書でやったって問題はないと思っておるけれども、筋としてはこういう予備費使用に先例を開くことは適当でないとわれわれは判断しておるわけです。大蔵大臣どうですか。あなたの政治家としての立場で良識のあるところを見せていただきたい。
  314. 田中角榮

    田中国務大臣 分けて御答弁申し上げますが、この法律が通った場合に、二十億を三十九年度からの予備費支出をすることが違法性があるかどうかという問題については、違法性はありません。また適当であるかどうかという問題につきましても、早くこの法律趣旨を生かすということになれば、予備費使用も妥当であるというふうに考えます。がしかし、政治的な立場からということになれば、国会開会中である、またこれが相当長期間国会が延びるというようなことであれば、補正予算を組んで国会審議にゆだねるということも、非常に前向きの姿であるということは政治的にはよくわかります。このいずれをとるかという問題については、この法律が通りましたら十分慎重に検討しながら、適切な支出をしなければならないという考えでございます。  それからさっきの資金運用部資金でどうかというような問題がございました。これは資金運用部資金も六分五厘の利子を払わなければならぬという問題がございますので、やはりこの法律政府が出したものでございますが、通過をすると、国会の意志決定がなされて政府法律義務を負うわけでございます。でございますから、できるだけその国会の意志を尊重する、こういうことになりますので、これが通ればできるだけ早く法律趣旨を尊重したいということを考えたわけであります。
  315. 堀昌雄

    堀委員 そういうことになれば、それは国会の意思ということになるようですから、これは私どもひとつあとで、理事会を開いていただいて、附帯決議をつけることにしたいと思うのです。公布はそうなっておるけれども、この取り扱いについては予備費使用することなく、補正予算をもって処理をされたいという附帯決議をつけることによって、国会の意思を明らかにするならば、あなた方はその意思に従うということになると思います。私は非常にこだわるようですけれども、やはりだんだんと財政法というものを、実はあの手この手でなしくずしに行政当局が自由に行ない得る方向に解釈して行なっておるやり方については、やはりわれわれとしては率直に言って納得できないのです。そこで運用の問題ということ、いまのここで法制局長官が明らかにしたのは、運用の問題が残されておるわけです。公布の日から出資をしなくてもそれは法律上はかまいません、この点明らかになったわけですから、あと運用の面ということになるならば、ここには政治的な判断が入っていいわけです。その政治的判断というものは、やはり少なくとも憲法が明定をし、財政法が明定をしている字句を正しく尊重する方向に取り扱ったって実害がなければいいわけです。実害の問題についてはちょっと公庫にお伺いしますが、業務方法書についてはこういうかっこうで出た。国会が通ればこれをやることはちっともかまわない。それでは財源の問題は、あなた方はいま二十億の金がこなくたって、本年度の計画の中で資金計画というものがあるはずです。その本年度の計画、貸し付け金の総ワクはいま一体幾らになっていますか。
  316. 酒井俊彦

    酒井説明員 いろいろな貸し付けワクがございますが、一応普通貸し付けにつきましては、三十九年度は千七百五十五億、総貸し付けでございます。それから恩給担保貸し付けにつきましては百八十七億、その他の諸貸し付け十五億三千七百万、合計いたしまして千九百五十七億三千七百万という貸し付けを予定しております。ただしこの今年度の計画におきまして、農地買収者に対する二十億の計画は、一応まだ出資をいただいておりませんので、その額の中に計画をいたしておりません。
  317. 堀昌雄

    堀委員 一般貸し付けについての千七百億の貸し付けワクがある中で、二十億の措置は、いまできようと、秋まで運用の処理でしようと、ワクがある以上私はこれは可能だと思います。公庫どうですか。二十億の問題については、出資がたとえ秋にもしなるかもしれないとしても、公庫資金繰り、運用上は私は可能だと思います。どうですか。
  318. 酒井俊彦

    酒井説明員 御承知のように、国民公庫法の規定によりまして、予算に付属する諸計画に従って国民金融審議会で毎四半期の計画額をきめまして、その範囲内で実行いたしてまいります。したがいまして、その計画の中に農地買収者のこれを織り込めということであれば、絶対にできないということはございません。けれども政府から毎四半期にいただく金は、資金運用部にいたしましても簡易保険にいたしましても非常に金が詰まっておりまして、限定されておる。そこでこれ以上になかなか金をいただけないというならば、その四半期におきまして実行いたしますとすれば、新たに普通貸し付けのほうに予定しておいた分をそれだけ減少しなければいかぬというような事態も起こってくるのじゃないかと思います。それから六分五厘の金利をつけて資金部等から借りておりますが、これを五十万以下六分五厘で貸すと、人件費も出ないというような点もあって、やはりわれわれといたしましては出資をちょうだいいたしましてからこれを実行いたしたい、かように考えております。  それでは絶対できないかというと、法律的に絶対に不可能だということは申し上げられません。
  319. 堀昌雄

    堀委員 法律的な問題はもう明らかですよ。こんなことできないことはないです。要するにあとは政策的な処理の問題ですから、大蔵大臣どうですか。いまの問題は二十億を一ぺんにみな借りにくるわけではない。これが通ったからといっても、それは徐々に借りにくるわけですし、千七百億も一般貸し付けワクがあるのですから、その問題は弾力的な措置は十分可能だと思う。少なくともあなた方としてはこういう無理をしなくても当然秋なりには補正予算を組まなければならぬ事態があるわけです。ちょっと財政当局に聞きますが、さっきからいろいろ議論になった医療費の緊急是正の問題が、いまあなた方の間で話に出ておると思うのですが、これが大体具体案が出ると、これこそまさに予見せざる費用が出てくるわけです。これを予備費でまかなうかどうか、さきにちょっと一ぺん聞いておきたい。もし厚生省から医療費の緊急是正として要求があった場合には、大蔵省は予見せざる費用で、予備費で出しますか。
  320. 田中角榮

    田中国務大臣 いま厚生省と大蔵省の事務当局で事前に連絡しておるのでございます。これがいまだ決定を見ない状況でございますので、どこから出すということは申し上げられませんが、決定をして予備費支出ということが適当であれば、予備費支出ということになると思いますし、予備費ではまかなえないというような大きなものであれば、別に財源措置考えなければならぬということで、いまはまだ全く未定でございます。(武藤委員「裁定も出る。」と呼ぶ)
  321. 堀昌雄

    堀委員 いま武藤君が言っていますように公労協の仲裁裁定もそのうちに出ますが、これも予備費ではなかなか出せないかもしれません。予備費でやれる範囲はやるでしょう。これもやはり予見せざる予算の不足でしょう。さっきからの予備費の問題で二通りありますね。超過額による不足と使途が計上されてない場合の不足。いまの公労協の問題についてはまさに超過分ですよ。不足の超過になるわけですからね。こういうことがずっと並んでくると、当然ことしの秋には場合によっては補正予算を組まなければならぬという必然的な状態になると思うのです。予備費災害に百億と見て、あと二百億しか皆さん方のほうでは流用できるものはないのですからね。そこにとにかく公労協の賃金アップの問題なり、いまの緊急是正の問題なり出てきたら、二百億円ではまかなえないですね。だからこれは補正予算というのは当然政府は秋には出さざるを得ない、こういうように判断をするわけですが、そうすればあなた方はこの出資については秋まで延ばして、その間はひとつ運用の面で処理することができないのかどうか、私は非常にこだわるようだけれども、率直に言って、財政法政府に守ってもらいたいと思うのです。そのくらいのことができるなら財政法を守ってもらいたい。あなた、大蔵大臣としてどうですか。
  322. 田中角榮

    田中国務大臣 財政法を守らなければならぬということはもうそのとおりでございますし、政府もそう考えております。  それから、秋まで待てないのかということは、待てないとは言えないわけであります。が、しかし現実問題としまして非常にいい政策として、また当然やらなければならないということで、政府は二年間も御審議をいただいて待っておったわけでございます。でありますから、この法律が通っていよいよ国会の意思表示がなされるということになれば、できるだけ早くこういう国民に対する恩恵的な施策はなすべきであるという問題が一つあるわけでございます。そのときに千九百億の中で何とかできないかということですが、国民金融公庫零細方々にお貸ししている金でありますから、一銭でも一円でも原資は大いにほしいところであるという現実にぶつかるわけでございますから、こういう現実をいろいろ取捨選択をしてできるだけいい時期にすみやかに実施をしたい、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  323. 堀昌雄

    堀委員 私がだいぶ譲歩をして、少なくとも運営の面で、こういう点、われわれはやめたらどうかといっても、もう一つ率直に言って、ひっかかる。いまできるだけ早くという話もあるから私はその点の取り扱いについては政治家田中角榮にひとつ信頼をしてこの問題のケリをつけたいと思うのですが、ただこれはひとつ事務当局にはっきり言っておきたいと思うのですけれども、それは大臣の段階は別として事務当局としては、昨年繰り越し明許にしたものをことしぼっておいたという点については問題があると思う。やっぱりこれは、昨年繰り越し明許にしたということは、本年度予算に計上しておいても、三十八年度中に通ってしまうならこの予算が不執行になってもかまわぬと思う。法律が先行して終わればそれでいいのであって、私はその程度の配慮を事務当局はすべきではなかったかと思う。昨年繰り越し明許にしないのなら、これはストレートに予備費を使わざるを得ませんでしたということで先例になるわけですから、ことしの問題ではなくて昨年の問題としてすでに起きただろうけれども、ことしの問題にはならなかった。取り扱いについてはどうしてもその点は、大臣に政治的な責任はあるけれども、取り扱い上の問題については事務当局は、こういう点についてもう少し考えておく必要があったのではないか。このことについては大臣が責任者であるわけでありますから、私は答弁は要りませんけれども、少なくとも今後事務当局はやはり財政法の定めた範囲において、あなた方何か前例を処理したならばその前例前例として生かしていかないと、前例と今回が違うということでは、私どもは納得ができない。繰り越し明許が簡単にできるんだと思っているようだけれども、繰り越し明許も新たに予算をつけたと同じことなんですよ。三十八年度予算をつけたと同じことで、ただ手続上これを繰り越したというだけで、例外規定であって、原則でも何でもないんだということは十分確認をしておいてもらいたいということを私は申し添えておきたいと思います。終わります。
  324. 山中貞則

    山中委員長 これにて本案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  325. 山中貞則

    山中委員長 これより討論に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  326. 只松祐治

    ○只松委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、国民金融公庫法の一部改正案に対し、反対の趣旨を述べます。  まず第一に、この法案はきわめて時代逆行の法案であります。戦後二十年もたちまして、このような法案をあえて政府が強行しようとすることは、全く時代に逆行する、こういう一語に尽きると思います。政府の言うとおり、もし旧地主方々に生活困窮者やあるいはそういう資金を必要とされる方が多いとするならば、これは他にもそういう類似の、たとえば戦争で家を焼かれた多くの人々、あるいはまだきわめて少ない補償しか受けておらない外地からの引き揚げ者、あるいは戦傷者、そういう戦争でお困りの方々はたくさんあります。したがいまして、むしろそういう面に主力を注ぐべきだ。と申しますのは、政府が一億円からの膨大な調査費をかけて委託調査いたしました資料によりましても、旧地主方々は、一般国民よりも生活困窮者は少ない、むしろ生活の安定した者が多い、こういう結果があらわれてきております。したがいまして、いま申しますように当然に不必要なことになり、もしかりに生活困窮者が多いといたしますならば、政府では先進資本主義国の三本の柱とかなんとかおっしゃいますけれども、わが国ではきわめて立ちおくれておる社会保障制度をもっと早急に拡充して、そしてその社会保障制度の中でこれはやっていくべきである、これがまず第一でございます。  第二に、先ほどから長時間繰り返して御論議がありましたように、本法財政法第二十四条をはじめといたしまして、財政法に大きく違反をしておる疑いがございます。第二十四条の「予見し難い予算の不足に充てるため、」ということは、これは天災、地変など客観的に全く予見しがたいものを想定したものでございまして、本法案のように二年来論議になり、しかも二年間継続審議になっておった、こういう法案であれば、今日こういう事態になることは当然に予見をされておったことでございます。こういう事態になるということが予見されないとするならば、それは一党独裁を夢みたり、あるいは大政翼賛を夢みる人々の政治のあらわれであります。今日のように国会審議をしてまいるということになり、いま申しますように二年聞こういうやり方の審議がされてきたとするならば、当然にそれは予見されておった事態でございます。それを予見されなかった事態ということは、政府の大きな手落ちであろうと思います。したがいまして、このような重要な法案提出に見合う予算案というものは、あらためて追加予算に組むべきでございます。特に会期延長などが生ずる、こういうときには、当然に補正予算を組むべきである。このことを強く要望をいたしておきます。  第三に、すでに最高裁の判決におきまして、二十八年十二月二十三日に農地改革における補償の問題について判決が出ております。これはすでに当時の単価において適法に地代が支払われ、また若干の報償がそこに組まれておる。こういう最高裁が判決を下しておることは、たびたび政府は何かあれば常に最高裁の判決、こういうことを口になさる政府当局は十二分に御承知のところでございます。この最高裁の判決にももとるものである、こういうことが第三の理由でございます。  第四に、これは公正の原則にもとるものでございます。すなわち、一般貸し出しには年九分の利息を取りながら、こういうふうに特別の災害でもない本法案の内容のような貸し出しに対し六分五厘という低利の金を貸す。こういうことは国民金融公庫法目的にもとるだけではなくて、一般金融体系を乱すものであります。これはまた現在中小企業がきわめて苦しい状態に置かれて、日々多くの企業者が倒産をいたしております。口では中小企業を救済云々、こういうことをおっしゃっておる政府の口車と矛盾するだけではなくて、商工業者をはじめ他の多くの生活に困窮しておる国民に対する施策と均衡を失するものでございます。私たちはこの点からも強く反対をいたしたいと思います。  第五に、自民党政府は本法案とは別個に、旧地主に対しまして、農地報償金として十年償還の交付公債を交付しようということを、目下考慮中でございます。おそらくこれは近日中に法案として提案される、こういう段階に立ち至っております。したがいまして、本法案は、その農地報償法案とともに二重に、あるいは先ほど申しましたように、金利の関係等から見まして三重に、こういうふうにひとり地主だけに厚い恩恵を与えまして、他の多くの一般国民に対しまして、国民のことを顧みない法案でありまして、私たちが正しく日本の国民に対して政治を行なっていく、こういう立場からは強く反対の意を表さなければならないと思います。  最後に本法案が、なぜあえてこういうふうに強行され、あるいは繰り返し出してこられようとしておるかということは、旧地主と深い縁と申しますか、あるいはくされ縁と申しますか、そういう立場に立たれる——私たちは率直に言って与党人全部あるいは政府当局全部じゃなくて、一部の方々のメンツにとらわれたものではないか、こういうふうに思っております。いわば不急不用の本法案でありまして、国民の多くがこの法案に反対しておるところでございます。これは数年来、こういう傾向はむしろ戦後ずっとこういう法安の出し方が続き、また多くの国民が反対をしてきておるということに徴しましても明らかなところでございます。  以上のような諸点の理由によりまして、強く反対の意を表しまして、本法案に反対をいたします。(拍手)
  327. 山中貞則

  328. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)委員 ただい議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案に対しまして、私は自由民主党を代表して賛成の意見をごく簡単に申し上げたいと存じます。  終戦後の昭和二十一年十二月に施行せられました自作農創設特別措置法によりまして農地を手放しました地主は、全国で約百七十六万世帯に及ぶのでありますが、そのうち一ヘクタール未満の小地主が、実に八二%に達しておるのであります。その中には戦争に応召いたしまして外地にあったために、やむなく人に貸し、不在地主として土地を買収されるなど、終戦直後の混乱期とは申せ、短期間内に農地改革が実施をせられましたために、いまから考えるとはなはだ気の毒な地主の方が数多くあったわけでございます。またその手放した土地の買収価格にいたしましても、反当たり七百円とか八百円、東北地方においては三百円、四百円というふう、現在をもってしては考えられないほどきわめて低い価格でありました。北海道のごときは一反歩当たり十五円というところもあったと言われるほどであります。当時祖先伝来の土地を奪われたため、これを苦にして自殺をした者とか発狂した者とかが続出をして、一面また大きな社会問題となったことも事実であります。その後土地ブームなどによって手放した田畑が数十倍、数百倍というような高値で売買をされておるというような現実は、旧地主方々にとっては大きなショックになっておることもまた見のがせない事実であります。  農地買収者調査会昭和三十七年の五月に出しました答申におきましても、農地改革により農地買収された者であって、現在生活上または生業上困難な状態にある者に対して、生業資金貸し付け措置を講ずることを答申しております。のみならず、その子弟を進学させるのに困難な状況にある者に対しましても、育英その他の制度の運用について配慮すべきであるということさえつけ加えて政府に答申をしておるのでございます。また引き揚げ者に対しての更生資金というふうな制度があり、その累計額が八十五億円、引き揚げ者債券担保貸し付けが六十五億円というふうな類似のケースも現在まであるのであります。  これらの点にかんがみまして、この法案成立させてその期待に沿うことは、私は諸般の情勢からきわめて妥当なものであると考えます。また本法案と同一内容の法案が去る三十七年の第四十一回国会及び三十八年の第四十三回国会におきましていずれも衆議院を通過し、参議院で継続審査あるいは審査未了となった経緯もございます。この法案に対して賛成反対という意見については、過去三年来それぞれの立場から意見が出尽くしており、これ以上多言を必要といたしません。  結論といたしまして、わが自由民主党は本法案はまことに適切妥当な措置であると認め、全面的に賛意を表するものであります。(拍手)
  329. 山中貞則

    山中委員長 竹本孫一君。
  330. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただい議題となりました国民金融公庫法の一部を改正する法律案に対し、私は民主社会党を代表して、反対の意見を申し述べたいと思います。  第一に、この法律案は表面的には国民金融公庫資本金二百億円を二十億円増額して二百二十億円にしようというのでありますから、取り立てて問題にすることはないようでありますけれども、それが農地買収者に対する二十億円の特別融資に関連をしており、従来国会審議をたびたび求めながら、なおかつ通らなかったいわくづきのものでありまして、賛成いたしかねるわけであります。  すなわち、国民金融公庫は銀行その他一般金融機関から資金の融通を受けることを困難とする国民大衆に対して、必要な生業資金を供給することを目的とするものでありまして、低利に融資をしようというならば、全部の庶民のために低利の生業資金を供給すべきであって、農地買収者に限って特に低利の資金を供給するというがごときは、この公庫法の精神に反するものであります。  第二に、昭和三十七年五月の農地買収者問題調査会の答申にもありましたように、被買収者世帯の収入は一般に比べて必ずしも低くないのであります。そこへ、今回は一方では旧地主報償を大規模に行なう計画も具体的日程にのぼってまいりました。それと並んでさらにこの措置を必要とする理由がどこにありましょうか。戦争による被害や犠牲は全国民が一様に受けておりますので、旧地主にだけ特に優遇措置を講ずるとなると、一般代衆との間に不公平を生ずるおそれがあるのであります。他の戦争被害者や犠牲者が一斉に補償や報償を要求するような事態になりましたならばどうなるかということも考えなければなりません。  第三に、終戦後のインフレのために、ほとんどただのように手放された農地を、最近の土地価格の暴騰のために、これを買い受けた者がさらに転売をすることによってばく大な利益を得ている現実を見せつけられておる旧地主方々の心情には同情すべきものもありますけれども、しかしながら昭和二十八年十二月の最高裁判決によっても、農地改革の合憲性は確認をされており、この問題はこれで一応完結をいたしたものであります。いまさらうしろ向きにこの政策をとるべきものではありません。  第四に、予備費の二百億の中から二十億円を出資するという問題につきましては、憲法上あるいは財政法上先ほど詳しく論議がされましたように、われわれはあくまでもこれは憲法第八十七条並びに財政法に違反するものであると認めて、賛成するわけにはまいりません。  以上の理由によりまして、私は本案に対して強く反対の意見を表明するものであります。(拍手)
  331. 山中貞則

    山中委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決いたします。  本案を原案のとおり、可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  332. 山中貞則

    山中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただい議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  333. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  334. 山中貞則

    山中委員長 次会は、来たる十二日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後六時二十三分散会