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1964-03-26 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十六日(木曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 原田  憲君 理事 藤井 勝志君    理事 坊  秀男君 理事 吉田 重延君    理事 有馬 輝武君 理事 堀  昌雄君    理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       大久保武雄君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    金子 一平君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    島村 一郎君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    野原  覺君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      山際 正道君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十六日  委員木村剛輔君及び渡辺美智雄辞任につき、  その補欠として馬場元治君及び中村梅吉君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員中村梅吉君及び馬場元治辞任につき、そ  の補欠として渡辺美智雄君及び木村剛輔君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  金融に関する件      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は山際日本銀行総裁参考人として出席しておられます。  参考人には御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございます。  まず今回の公定歩合引き上げに関する諸問題について山際総裁から御意見を述べていただき、そのあとに質疑を行なうことといたします。  では山際総裁にお願いいたします。
  3. 山際正道

    山際参考人 御承知のとおりに、日本銀行では去る三月十七日に公定歩合日歩二厘引き上げを決定いたしまして、翌十八日から実施いたしたのでありますが、ここに至るまでの経済金融情勢推移等につきまして、概略を御説明申し上げたいと存じます。  わが国経済は、昨年初めから景気が上昇に転じましたけれども、以後生産はかなりの勢いで増勢を示しまして、このために国際収支面では、昨年夏あたりから貿易収支が、輸出の好調にもかかわらず、生産増加に伴う原材料等輸入需要増大によりまして、基調的な赤字に転化いたしたのでございます。これに加えまして、貿易外収支構造的赤字増大や、米国の金利平衡税法案の提出に伴う長期資本流入の頭打ちなども懸念されまして、経常収支長期資本流入を加味いたしましたいわゆる基礎的収支におきましても、昨年十月以降は赤字に転ずるに至ったのでございます。また物価の面におきましても、消費者物価が三十六年以来最近まで一貫して騰勢を持続し、通貨価値の安定という見地から見ましても、見のがすことのできない問題と考えられるに至ったのでございます。  かかる情勢にかんがみまして、日本銀行は昨年秋以来、債券売買操作等引き締めがちに運営いたしまして、金融政策の運営を全体として引き締め基調に移してまいったのでありまするが、事態推移にかんがみまして、昨年の十二月に預金準備率引き上げを行ない、日本銀行として、はっきり金融引き締めに転じたことを宣明いたした次第でございます。さらに本年一月に入りまして、銀行貸し出し増加額を一定のワク内に押えまして、その措置を実施することによって、銀行信用膨張抑制することといたしたのでございます。私どもといたしましては、昨年来の生産増勢には、銀行貸し出し増加がかなり影響しておる点を重視いたしまして、当面は以上の措置によって銀行貸し出し態度を是正し、それを通じて生産の落ちつき、輸入の減少を期待しながら、なお注意深く事態の進展を見守ってまいったものでございます。この結果、銀行貸し出し態度につきましては、年明け後引き締まりの方向に転じつつあるやにうかがえるのでありまするが、それにもかかわらず現在に至るまで企業の根強い増産態度には、まだ慎重化の気配が明白にうかがわれませんで、これがために生産は引き続いて増勢基調を持続しておりまして、輸入もまたその増勢に格別の変化が見られるまでには至っていないのでございます。引き締め措置がとられました後も、生産がかように衰えを見せないという原因につきましては、昨年来の銀行貸し出し増高の結果、現在企業手元流動資金がかなり潤沢となっておる、また企業金融上、まだそれほどの逼迫を感ずるに至っていないという状態にあると同時に、いわゆる企業間信用膨張が相当可能な状態にあったこと、並びに最近における企業損益分岐点の高まりや市場シェア拡大意識の強まり等から、企業がその増産態度をなかなか改めるに至っていないということなどに、その原因があろうかと思われます。  かかる情勢にかんがみまして、日本銀行は、まず季節的に金融市場の引きゆるみます四月−六月につきまして、債券の売り戻しを若干多目に行なうことによって、金融市場が一−三月に引き続いて引き締まりぎみに推移するように運営していく方針を固めたのでありますが、さらに引き締め政策徹底をはかるために、冒頭に申し上げましたとおり、今般公定歩合の二厘引き上げを実施いたした次第でございます。今回の公定歩合引き上げ措置は、昨年末以来の引き締め政策の円滑な浸透をはからんとしたものではありますが、基本的には、わが国が四月一日からIMF八条国に移行し、いよいよいわゆる開放経済に入るにあたりまして、現在の国際収支基調をなるべくすみやかに改善いたし、もって円の信任をより強固ならしめんとするところにあったのでございます。日本銀行としては、今回の措置によりまして、引き締め効果がなるべくすみやかに浸透し、国際収支改善物価の安定がはかられんことを期待いたしておる次第でございます。政府におきましても、輸入担保率引き上げ現地貸し規制等各般措置を応じられつつありまして、この点私どもとしても意を強くいたしておる次第でございます。私は、産業界及び金融界が今回の措置の意図するところを十分理解されまして、これに協力が得られまするならば、必ずや所期の効果が実現せられまして、事態改善を見るものと確信をいたしておる次第でございます。  ただ今回の引き締めは、過去におけるように、在庫調整とか設備投資抑制とかを通じて、引き締め効果が比較的すみやかにあらわれました場合と違いまして、現在のわが国経済が、かつて経験しなかったような種々のむずかしい問題をかかえておりまするので、その調整には十分な決意を持って当たることが必要であろうと考えておる次第でございます。たとえば最近の生産増勢は、在庫投資設備投資が過熱的に膨張しておるということによってもたらされたものではなく、個人消費や官公庁の需要ども含めて、需要が全体として根強くふえつつあるというためでありまするし、また企業の側でも、これまでの巨額な設備投資の結果、いわゆる損益分岐点が趨勢的に高まってきておりまするので、収益上操業度を落としにくいという事情にあることも、その原因になっておるように思います。  国際収支面におきましても、貿易収支については、金融引き締めによってその均衡をはかり得ることと信じておりまするが、それにしても最近の輸入には思惑的な在庫積み増しのための輸入が少なく、反面消費財輸入が従来に比べてその比重を高めてきておりますので、過去の引き締め時のような輸入が急速に減ることを期待しにくいという事情もあるように思います。さらに最近の国際収支悪化要因のうちには、貿易外収支構造的赤字増大という問題も含まれておるのでありまして、貿易外収支を含めて、経常収支を全体として改善せんとするためには、各般施策が並行して講ぜられることが望ましいと考えております。  また消費者物価騰勢につきましても、その抑制のためには、基本的には何と申しましても金融政策による総需要調整が前提とならねばならぬことはむろんでありまするが、消費者物価上昇は、単なる商品受給上のアンバランスによるものばかりではなく、労働需給構造変化とか、一部消費財供給体制中小企業生産性向上の立ちおくれとかいったような原因に基づく面も少なくないのでありまするから、その面における対策につきましても今後十分に検討してまいる必要があるものと考えております。  今回の引き締めにあたりまして、私どもとしては特に中小企業の問題に深甚な注意を払ってまいっております。解放経済への移行、労働需給構造変化に伴い、中小企業合理化近代化は、単に中小企業にとって死活の問題であるにとどまらず、わが国経済にとり喫緊の要請でもあるものと信じております。また引き締めのしわが中小企業に寄せられる懸念もないといたしませんので、日本銀行といたしましては、引き締めしわ寄せによって、健全な中小企業が破綻を生ずるようなことは絶対避けなければならぬと考えておりまして、この点はすでに引き締め開始後再三再四、本行本支店等に対してはむろんのこと、各金融機関に対しましても、中小企業金融に十分な配慮を払うように要請を続けており、またその趣旨で指導をいたしてまいっておるのでありまするが、今後ともその金融問題につきましては、できる限りの配慮を続けたいと考えております。この点につきましては、政府においても各種の措置を講ぜられておるのでありまするが、私どもといたしましても、政府十分連絡をとりつつ、万遺憾なきを期してまいる覚悟でございます。このようにわれわれの当面する問題は、なかなかむずかしい問題が多いのでありまするが、日本銀行としては政府と協力しながら、事態改善にできる得る限りの努力を続けてまいる覚悟でございます。ことに開放経済を迎えるにあたりまして、経済安定的成長を維持するために、中央銀行の責務が一段と増大してまいります点につきましては、私どもといたしましても、この際覚悟を新たにいたしておる次第でございます。今後とも事態推移に応じまして、金融政策を十分弾力的に適実に運用いたしてまいりたい考えでおります。同時にまた経済界及び国民一般におかれましても、わが国が現在当面しておる事態重要性を十分認識せられまして、貯蓄の増強、消費の節約、国産品普及等の面からも、事態改善に協力せられんことを要望いたしておる次第でございます。  以上、最近の経済金融情勢推移につきまして、概略を御説明申し上げました次第でございます。
  4. 山中貞則

    山中委員長 続いて質疑に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。佐藤觀次郎君。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際総裁から最近の経済状況の御説明がございましたが、その前に重要な問題は、最近田中大蔵大臣からもいろいろ意見がございまして、中央銀行としての日本銀行あり方について、日銀法改正ということが問題になっております。これは伝えられるところによりますと、田中大蔵大臣ばかりでなく、やはり当の山際さんも、現在の中央銀行あり方についての改正意見を持っておられるという話でございますが、私たちの考え方とすれば、まあ山際さんは日銀の最後の牙城であるというように考えておるわけでございまして、あなたがもし日銀法改正を意図されるというならば、一体いまの田中大蔵大臣と同じ意見改正をされるのか。これは金利の問題、金融の問題に関しまして、非常に大きな重要な問題がございますので、その率直な御意見をまず伺いたいと思います。
  6. 山際正道

    山際参考人 私は過日、参議院の予算委員会におきまして、戸叶委員からの御質問がございまして、日本銀行法改正することについてどう思うかというお尋ねでございましたので、私は、内容を申し述べる機会はございませんでしたけれども日本銀行法改正することは必要だと考えるということを申し述べたのでございますが、その一番感じております要点は、はなはだ私事で恐縮でありますが、日本銀行法昭和十七年に、私が当時大蔵省銀行局長をいたしておりまして、立案の衝に当たりましたものでございますから、何分にもすでに太平洋戦争に突入をいたしまして、この体制に対処するために——当時は御承知のとおり国家総動員体制でありました。そのもとにおいて最も有効に中央銀行が働くためには、どうしたらよろしいかという観点が主になりましてできましたいわゆる戦時立法的色彩が非常に強い法律でございます。条文をごらんになりますと、もう第一条からその趣旨はおわかりだろうと思いまするが、戦争を終了いたしましてすでに二十年に近く、しかもその途中におきまして相当重要な改正がございました。しかしそれは非常に部分的でございまして、すなわちそれは、日本銀行政策委員会というものをあの法律の中に入れておるのでございます。そうして相当の自主性をこの政策委員会に与えまして、戦後の事態に対応するようにということになっておるのでございまするが、あたかも木に竹をついだような、ていさい上のつながりの十分でないところがございます。全体といたしまして現在の日本銀行法は、いかにも古めかしい装いでございまするので、戦後の体制、なかんずく開放経済体制に入っていこうという際の中央銀行法律といたしましては、いろいろ検討を要する点もあり、また全体としての装いが、総動員体制は当然に排除すべきものでありまするので、それらの点からいたしまして、この日本銀行法改正の必要はつとに感じておった次第でございます。すでに御承知のとおり、昭和三十五年でございましたか、金融制度調査会にこの改正の議が付議せられまして、両三年にわたりまして非常に詳細な調査が進められておったのでございます。しかしなかなか結論に到達いたしませんで、今日までに至っておるのでございまするが、私はこの新しい一つの段階を迎えました際に、その新しい観点をも加えまして、もう一ぺん再検討いたすことは必要だろうと考えております。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 金融で大事なことは、御承知のように日本銀行中立性ということが第一にあげられると思うのでございますが、これはイギリスのイングランド銀行などは、中央銀行は御承知のように非常に力強くその機能を発揮しておりますが、どうもこの間田中大蔵大臣は、銀行金融政策というものがある以上は、責任政治だから、当然政府責任を負うべきだというような御意見がありまして、あなたのいままで言っておられる日本銀行中立性ということについては、それを認めないようなことばがございました。あなたが改革されるという日銀法改正の中には、日本銀行中立性という問題については、どんなようなお考えを持っておられますか、伺っておきたいと思います。
  8. 山際正道

    山際参考人 田中大蔵大臣からいろいろ御発言があったということでございまするが、実はこれらの点につきましても、まだ私は内容についてお話し合いをいたしておりません。私の考えておりまする限りのことで申し上げまするならば、私は日本銀行中立性を保持するという点をもっとはっきり書く、あるいはまた通貨の安定といったような表現を十分に表明するということは、今後の中央銀行あり方としてふさわしいことであると考えておるのであります。むろんそれに対する政府の一般的な監督権は、これはむろん保持せらるべきでありましようけれども日本銀行自体として、中央銀行としての権能を法律によって中立的にお認め願うということは、今後の経済体制考えてまいります上からいたしましても、私は最もよい体制ではないかと考えております。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 ちょっと話が飛ぶのでありますが、きのう山際総裁新聞記者会見の中で、いま大蔵委員会で問題になっております歩積み、両建ての問題について、政府がいろいろ規制をしなくても、炭行の内部のほうで自分からやったらどうかというような御意見が述べられております。しかし今日まで大蔵省銀行局を通じて、歩積み、両建てについてはたびたび指令や注意があったにかかわらず、いまなおその根絶ができないという現状でございます。総裁考えられるようななまぬるいことで、いまの歩積み、両建てというものがなくなるものであるかどうか。このことについては、御意見があろうと思いますが、その点はどういうようにお考えになっておりますか。これは現在の重要な問題でありますので、総裁から伺っておきたいと思います。
  10. 山際正道

    山際参考人 金融機関歩積み、両建ての問題につきましては、昨年の秋でありましたか、私が当委員会に伺いましたときにお尋ねがございました。私は、これは実質的に中小企業等金利負担を減少する意味において、ぜひとも実行する必要があるという考えを申し上げました。その後、この問題が渡辺公取委員長意見陳述にからみまして、公正取引委員会の問題にも現在なっておりますことは、御承知のとおりでございます。私どももできるだけ公取大蔵省とも協調をいたし、また十分その一緒の調査等にも参加いたしまして、この問題の絶滅を期しつつあるわけでございますが、どうも思いますのに、なかなか経済的な環境という点が大きく関係いたしまして、法律規定だけでは、十全の効果を期待しにくい。根本は、金融機関がその使命を自覚いたしまして、こういうことをするのは恥とするという状態まで持っていきませんと、その節度を越えたような歩積み、両建てをなくするということは、なかなかむずかしい問題ではないかと思います。これを法律的にはっきり書きまして、こういうものはいい、こういうものは悪いということが網羅的に書けますれば、これも一つ方法だろうと思いますが、ことばの性質上、節度の問題、程度の問題という部分が非常に多いものでありますから、これはなかなか実は処理しにくいであろうと考えております。私もいろいろな点で、この問題を消滅いたしますることにはきわめて賛成でございますので、私どもといたしましては、金融機関がほんとうに自覚をいたしまして、みずから自粛自戒をいたしまして、節度を越えたこの種のものをしないということになりますならば、実は一番望ましい形だと思いますので、その点を力説しておるような次第でございます。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際さんは善意な第三者のことばで申されるのでございますが、ここにも高橋銀行局長が来ておりますが、この問題は先国会から大蔵委員会で問題になりまして、歩積み、両建てをどうやってやめさせるべきかということについて、われわれのほうも金融小委員会を開いて討論したり、いろいろやっておりますが、いまの時代というのは、昔の時代と違いまして、簡単に上のほうからこういうことを命令するからとか、こういうことをやるからと言って、なかなか実行しにくい。ましていま総裁がおっしゃるように自粛すべきだと言っても、いまの時世はそんな甘っちょろい時世ではないと思うのです。これは山際さん御承知のように、ずっと長い間大蔵省におられて、いろいろその衝に当たられた方でございますから、むしろその昔と現在と比べますと、いろいろ御意見があると思うのでございますが、こういう中小企業を痛めつけるような、法にかなわぬような歩積み、両建てという問題は、やはり何らかの形でやめさせなければならぬと思うのでございますが、これについてのそういう消極的な意見じゃなくて、何かこうやればこうなるのじゃないかというような名案がおありかどうか、この際承っておきたいと思います。
  12. 山際正道

    山際参考人 歩積み、両建て状態を、節度を越えて実行しておりますものに対しまして、これを法制的に規制するということは、それも一つのお考えであろうと実は考えておりますが、私も幾たびかその問題を考えてみましたけれども、これはなかなか法制的に規制するようなうまい文言が、実はまだ浮かび上がっておりません。公正取引委員会措置によってやるということも、むろん一つ方法でありましょうし、また御指摘のようにうまい規定方法がありますれば、これによって規制の基準を立てるということも否定すべきではないと思いますけれども、これはなかなか徹底を欠くので、要は一番大事なのは、金融機関自身がそういうことをしない、そういうことをするのは恥だという気分に持っていくことが、根本的な解決だろうと実は思っておりますのですから、むろん私どもは、政府並びに公取と協調いたしまして、この問題の調査に当たっておるが、ただいま私ども立場におきましては、いま申し上げましたようなことで、なかなか法制的のうまい制度はちょっとまだ思いついていないという状態でございます。
  13. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 いろいろ同僚委員からも質問があると思うのでございますが、これは権威のある日本銀行立場として、こういうような慣習が早くなくなって、そういうような金融界歩積み、両建てというようなことが早くなくなるような施策を、ぜひひとつやってもらいたいと思うのであります。  それから先ほど金利調整の問題でいろいろ御意見がありましたが、御承知のようにこの一月、二月は、日本では戦後最高倒産者も出ておるし、それから不渡り手形も出ております。これは一昨年の金融ストップ以来、いろいろな経緯がありましたが、私は少なくともこういう問題は、やはり高度成長という一つの急激な計画経済のような形が生まれて、そのためにいろいろひずみがここに出てきておると思うのでございますが、いまの経済事情では、先ほども総裁が言われましたように国際収支貿易外収支赤字が非常に多いので、なかなか黒字にならぬ。しかも中小企業は統計にあらわれているだけでも、最高であると同時に、実際にはもっともっと憂慮されるような現状でございます。そういうような場合に公定歩合引き上げをやられたのでございますが、そのしわ寄せが大きな企業に行かないで、中小企業にどんどんそのひずみが行くのではないか。おそらく三月危機をかすかにのがれて、また五月、六月ごろにその経済危機があるのではないかということがいわれております。これは架空的なことでなく、現実にそういうような形が出てくるのじゃないかということが心配されておりますが、総裁はそのことをどのように解釈されておりますか。お伺いしたいと思います。
  14. 山際正道

    山際参考人 最近起こっておりまするいろいろな経済上の困難な問題は、経済成長が過去において非常に早過ぎたということから生ずる一つのひずみであったことは私は否定いたしません。できればこのひずみを矯正することによりまして、経済成長を安定的に継続したいというのがわれわれの念願でございます。その調整策を講じます場合に、ややもすれば中小企業へのしわ寄せが起こりはせぬかということは、実は私も最初から懸念をいたしておった点でございます。したがいまして昨年の十二月にいよいよ日本銀行引き締め政策に転換するという際に、特に私はこの点を念を押しまして、また中小企業関係金融機関の人々にもお集まりを願って、特に中小企業へのしわ寄せが過当に、当然及ぶべからざるものにまで及ぶことがあっては、これはまかりならぬことであるから、十分配慮を願いたいということをお願いいたしており、またその後も機会あるごとにそれを要請いたしておるのでございます。のみならず、私は特にその点を考えまして、直ちに全本支店へ通知をいたしまして、どうか今回の場合においては、特に労をいとわず個々の一つ一つの相談に応じて、極力健全なる企業が巻き込まれていくことのないように配慮をしてもらいたい、所在の金融機関と十分な連絡をとって、万遺憾なきを期してもらいたいということを、繰り返し実は要請いたしております。及ぶ限りのことは、これらの本支店におきまして実行せられつつあると思うのでありますが、ただいま御指摘のようにやや倒産、不渡り等の目立つ状態にありますことは、まことに遺憾であります。しかし今後もなおこの点は十分に配意いたしまして、いつも申しておりますことばでありまするが、最小限度の摩擦、最小限度の犠牲においてこの調整を実行したい、かような配慮をいたしておる次第でございます。
  15. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 公定歩合引き上げということでなくて、そのほかにもいろいろな原因があって、今日必ずしも楽観はできないような経済情勢になっておりますが、今度の公定歩合引き上げについては、昨年の国会におきましても総裁に私が質問いたしましたときにも、公定歩合引き上げについては、総裁としてはあり得るような考えを受けとめたのでありますが、ただ問題は御承知のように、田中大蔵大臣、いわゆる池田経済政策というのは低金利政策をやっておった手前、日銀山際さんたちのお考えのような方向に持っていくまでには、いろいろな困難があったというようなことを承っておるわけでございますが、今度の公定歩合引き上げの問題について、政府とどのような折衝があったか。公定歩合引き上げは、日銀独立でやることになっておりますけれども、何といっても金融の大きな問題になるのは、大蔵省側に責任があるので、当然そういう問題があると思うのでありますが、そういう点については世間にいろいろ伝えられております。まことに言いにくい話でございますが、山際さんは自分の職を賭して戦ったといわれております。これはいままでのいきさつ上、良心のある山際さんが当然施行すべきことをやっただけだと思うのでありますが、そういうような点について、できるだけのいきさつや御意見をこの際承っておきたいと思うのでありますが、いかがでございますか。
  16. 山際正道

    山際参考人 昨年の暮れでありましたか、私も当委員会に出頭いたしまして、いまお尋ねの点についてお答えをいたしたことがあったかと記帳いたしまするが、その際に、やはり経済調整の手段として金利操作を行なうということも、むろん一つ方法として考えるのであるけれども、全体として見渡すと、何となく現在の日本経済状態には、その基盤において強固でない点がある。したがってあまり大きなカーブを切るということは、これは思わぬ破綻を生ぜしめる、誘発するおそれがあるから、なるべくそこのところは、できるだけは回避したいという趣旨のことを申し上げたように思うのでございます。むろん脆弱な基盤ということの中には、単に中小企業ばかりでなく、相当大企業等も含んで、全体として日本経済の基盤がそれほど強固にはなっていないということをおそれたわけでございました。自来すでに数カ月たっておりまして、すでに引き締め体制には産業界もある程度の覚悟を固め、またそれに処するの道につきましても、大体体制を整えつつある段階にきたと考えましたので、開放経済に入るに先立ちまして、この時期においてこの金利操作を用いますことは、全体としての調整効果をあげるにおいて適当であるという判断で、実はいたしたような次第でございます。事柄の性質上、私は常に金利操作の点につきましては政府意見調整をしながら、今日まで参っております。過去において私は、自身十数回も金利操作をいたしましたが、いずれの場合においても、常に政府と完全な意見の一致に到達いたしました上で実行いたしておりますので、今回の場合でもまたそのとおりでございます。何ぶんにも事柄の性質上、きわめて機密裏に進行いたす措置でございますから、巷間いろいろな憶測も行なわれておるようでありますが、やはり私は、従来どおりの考え方と従来どおりの措置で、今回の実行をいたしたのでございます。  政府との関連意見調整等につきましては、御承知のように本行の事務当局は、一定機関におきまして、大蔵省の事務当局と常時折衝をいたして、意見調整時代の分析調査を続けておりますし、また常時開いております政策委員会には、大蔵省代表として委員が列席しておられます。私もまた大蔵省首脳部等ともしばしば会見をいたしておりまして、情勢等の推移をお互いに意見を述べ合い、またこれに対処する方策について話し合いをする機会は十分にあるわけでございまして、だんだんにその意見が近づき、その機運が醸成されまして、今回の公定歩合引き上げということになったわけでございますので、その間の過程におきましては、十分にその議を尽くして、意見の一致を見たと御理解を願ってけっこうだと思います。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように日本金利は、世界で一番高いといわれております。そこでいままで低金利政策政府でもとられ、また今度のいきさつについては、特に池田総理、それから田中大蔵大臣も、金利引き上げ公定歩合引き上げということを、極力避けるような態度でございましたが、もし総裁の言うとおりに早くやれば、公定歩合一厘の引き上げで終わったのではないか、おくれたために、政府がじゃまをしたから、かえって二厘の値上げをせざるを得なかったというような、こういう声もあるわけでございますが、この点についてはどのように考えておられますか、承っておきたいと思います。
  18. 山際正道

    山際参考人 私は、政府が唱えておられるいわゆる低金利政策と、日本銀行経済調整の手段として行ないます金利の操作の問題とは、別の事柄であろうかと実は思っておるわけであります。一番大きな違いは、政府のいう低金利政策は、比較的長期の趨勢といたしまして金利の水準を下げていこうというお考えだろうと思うのであります。日本銀行が行ないます金利操作は、むしろ短期的に、景気の波なり経済のひずみを調整するという措置でございます。おのずからその目的とするところは異なっておろうかと考えるわけであります。この意味におきまして私は、低金利政策の、あるいは修正であるとか、あるいはその撤回であるとかいったような意見は、実は政府との折衝においても聞いておりません。でありますから、折衝の過程においてはその種の問題は別に起きませんで、私は政府のいわゆる低金利政策というのは、そういう趣旨のものと理解をいたしまして、日本銀行金利操作自身には、支障のない事柄であろうと考えてまいった次第でございます。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間がありませんから、あとは同僚の議員からいろいろ質問があるかと思いますから、それ以上はこの問題について言いませんが、もう一つ問題になっておりますのは、銀行の合併論であります。御承知のように田中大蔵大臣考え方は、日銀法改正銀行の合併論——銀行合併論ということで問題になりまして、先日も御承知のように第一銀行と朝日銀行が合併して、これについていろいろ波紋を与えておりますが、総裁銀行の合併のことについてどのようにお考えになっておりますか、その点もひとつ伺っておきたいと思います。
  20. 山際正道

    山際参考人 経済全体を安定的に成長させる上、もしくは調整を加える上において、企業の合併提携等の問題は、これはやはり行なわるべき調整手段だろうと考えております。むろんその意味におきまして、金融機関もその例外ではあり得ないと考えます。ただ沿革的に考えますと、戦前、戦時中を通じまして、金融機関の合併ということは相当促進されております。そこで自来今日まで、そうたいして新しいものもふえておりませんので、いわゆる合併をいたしましても、なおかつ、あとそれが積極的にプラスになるような条件を備えた銀行の対峙というものは、私は現在の銀行界には比較的少ないと考えております。合併は、もちろんそれによって金融能力がふえ、また十分経済的な奉仕の役割りがふえるような合併でなければ、意味をなさぬわけであります。したがって一番大事なことは、その合併をしようとする当事者間に十分その趣旨の理解があり、それによって能率が増進するという場合が、最もふさわしいことであろうと思うのであります。この意味におきまして私はむろん、当事者の見解におきましてその種の基準に合致いたしますものにつきましては、これは大いに促進、協力するのがよろしいと考えておりますが、現状から考えまして、強制的に合併を促進する段階にはないのではないかというふうに判断をしておるわけでありまして、当事者の十分な成算のもとに行なう合併措置については、これはむろん協力すべきものと考えております。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように戦前から戦後にいろいろ銀行法の改正がございまして、各県、各地方地方に応じて適当な銀行の割り当てをやるような政策がとられました。昔の銀行というのは、——最近はだいぶ昔と変わらなくなってまいりましたけれども、大銀行というものはいろいろその首脳部が変わったり、それから銀行の組織というものは変わったような状態が出てまいったのであります。そこで大蔵省は、——いままでは銀行あり方を、なるべく合併をすすめないで、できるだけ独立した銀行としての整理をしてきたのでございますが、最近は、大蔵大臣がそういう主張をしてきたのには、何か理由があるのじゃないか。少なくとも銀行の新しい編成ということになってきたのじゃないかと思われますが、その原因は、ただいま産業の合同ということもあるということも申されましたけれども、何かそこに意図的な問題があるのじゃないか、私たちはそういうふうに考えますが、総裁はどのようにお考えになっておられますか、これも承っておきたいと思います。
  22. 山際正道

    山際参考人 各種の理由もありましょうけれども、私が最も重点を置いて理解しておりまする点は、銀行間における過当競争というものが相当熾烈にあるということが指摘されております。その過当競争の弊害を除去するためには、やはり合併という方法一つの有力な手段としてあり得るのではないかという点が、その理論の基本をなしておるのではないかと思うのであります。むろんそういう場合も私はあり得ると考えますけれども、いずれにいたしましても、今日までの成立の経過を経ました銀行現状から申しますると、よほど当事者間に十分協力、協調の意思がございませんと、かえってその合併が後にあだをするということもあり得ることでございますから、これは慎重に計らうべきであろうと考えております。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 もう一点お伺いしたいのですが、御承知のように日本銀行は——この前も高橋銀行局長に話したのですが、大銀行は本店はむろんのこと、支店の銀行でも町の中枢部、たとえば銀座とか日本橋とか、中枢部の一番目抜きのところに大きな支店を設けて、本店に劣らないような大きなあれを求めておる。おそらく世界にはこういう例がないと思うのでございますが、こういう傾向、つまり銀行が都市の目抜きの通りを占領して、しかも本店に劣らないような大きな建物を建ててやっておるというような状態は、世界にはどうもあまり例がないのではないかと思うのでありますが、そういう点について、日本銀行はそういう権限もありませんし、そういうことをどうこうせいということは申しませんけれども、こういう傾向というものは、銀行本来のあり方として一体順当なものであるか、あるいは外国に比べて、ロンドンとかあるいはパリとかあるいはニューヨークというようなところに比べて、たとえば東京などの大銀行の支店があれほど櫛比して出ているというような、この矛盾をわれわれは感ずるのでございますが、そういう点については山際さんはどのような考えを持っておられますか。これも私はこの間銀行局長に伺ったのでございますが、山際さんの御意見をひとつ承っておきたいと思います。
  24. 山際正道

    山際参考人 ただいま御指摘の点は、私どもといたしましても平素から実は銀行に対して注意をいたしておる点でございます。その趣旨は、銀行がその信用をそのおります目抜きの場所であるとか、あるいは建物の大きさであるとか、内部の装飾がきれいであるとかということによって誇示する、あるいはそれによって信用を増すという時代は、もうすでに日本は経過しておると思うのであります。もっと預金者は実質的な点に注目いたしまして、銀行の良否を判断しておると思うのであります。かたがた銀行の資産の運用から申しましても、今日相当多額のものを不動産に固定するということは、運営上もいかがかと実は考えます。さような対外的な配慮や、また内部的の資産運営の点からいたしましても、もうそろそろこの辺で従来の考え方には、やはり反省を持ってもいいのではないかというふうに実は考えておりますが、金融界においても漸次そういう機運は起こりつつあるやに私は察しておりますが、時を経まするならば、漸次その風も改まってまいるかと考えております。
  25. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 最後に、先ほど総裁からいろいろ経済事情の必ずしもよくないということと、国際収支の黒字ということはなかなかむずかしい問題であるというような、楽観のできないような御事情を説明していただきました。そこで今度の公定歩合引き上げで、金融引き締めがまた強くなる。そのために必ずしもそのひずみが大企業でない、中小企業にいくということは、ほぼ想像ができるわけでございます。また一面において、急激に国際収支が黒字になる情勢もないということになれば、日本経済は必ずしも楽観ができない、明るい面は出てこないだろう。同時に日本国際収支といま持っておる十八億ドルは、やがて十六億台ぐらいになるのじゃないかという悲観論も出ております。そこで情勢がこのままに推移してまいりますならば、また再び公定歩合引き上げをやられる、こういうようなことが起きるのじゃないかということをわれわれは考えるわけでございますが、現存の経済の行き方と、あるいは六、七月の経済危機、そういうものとを勘案されまして、再び公定歩合引き上げをやられる御意思があるかどうかということを——これは予測でありますから、いまから総裁はおそらくそんなことは知りませんとおっしゃるだろうと思うのですが、このままでどういうような結論になるかということについての御判断なり、またそういうような見通しなりを伺っておきたいと思うのであります。
  26. 山際正道

    山際参考人 ただいま御指摘のごとく、現在の日本経済が当面しております段階は、一面においては、生産の過当な増大による国際収支の悪化ということがある反面において、これの調整過程において中小企業へのしわ寄せということが非常に懸念されるというような、二つのなかなかむずかしい面を持っておることは、御指摘のとおりでございます。それがどうしてもこの二つを巧みに調節しながらまいりませんことには、日本経済全体の立ち直りはなかなか困難であるということになりますので、目下それをやっておるわけでございます。一般的に申しますならば、金融は相当強力に引き締めております。その手段としては、公定歩合引き上げであるとか、あるいはその他窓口指導であるとか、あるいは準備率の引き上げであるとか、各種の方法を取りまぜてやっておるわけでございますが、他面、特に中小企業への配慮ということをいたしまして、一面においてこれが巻き込まれませんように、いわゆるそのしわ寄せがここに集中いたしませんような配慮もやっておるわけでございます。でありますから、単一の事柄で全体を解決するということはなかなか私はむずかしいと思います。そこにいわゆるきめのこまかい施策をいたしまして、大筋は引き締めでいくけれども、具体的にこまかい配慮によって、そういう特殊な事態には備えながら、進んでいくということであろうかと実は思うのであります。  そこで今日の引き締め状態を続けていって、再度公定歩合引き上げによらざるを得ないようなことにならぬかというお尋ねでございますが、私どもといたしましては、むろんその点は今後の情勢次第とは申し上げるわけではありますけれども公定歩合引き上げの点に関しましては、実は三十二年の場合も三十六年の場会も、一回の引き上げで大体回復することができました。今回もむろん私といたしましては、この程度の措置で回復いたすことを念願し、またそれをめどにいたしまして操作をいたしておりますので、現在の段階において、さらにこれを引き上げなければならぬ事態に追い込まれるであろうというような事態は、実は予想しておらないのでございます。
  27. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 山際さんは、すでに八年近く日銀総裁としていろいろ仕事をやっておられるわけですが、日本銀行中立性にかんがみ、また今日まで自分の主張をされてやってこられたと思うのでありますが、どうかせっかくの日銀総裁でありますから、ひとつ政府のいろいろな宣伝や政府政策に利用されないように——そんなことはおこがましい話でございますが、断固とした立場でやっていただくことを要望いたしまして、私の質疑を終わります。
  28. 山中貞則

    山中委員長 平林剛君。
  29. 平林剛

    ○平林委員 私は、いま同僚佐藤委員からもいろいろお尋ねがございましたので、初めに日銀法改正の問題について、総裁の御見解を承っておきたいと思うのであります。  これは先ほどお話がございました公定歩合引き上げ措置をとられた時期、あるいは今日までの日銀の態度などから見まして、日銀中立性自主性というのは、今後もきわめて重要な地位を占めるだろうと私は考えますものですから、今度の国会におきまして、あなたがお話しになりました日銀法改正は、その方向についてそういう意味で重視をしておるわけであります。山際さんは三月九日の参議院予算委員会におきまして、現在の日銀法昭和十七年制定のもので、実態に即さなくなっておるから、これを全面的に改正する必要があり、すみやかに検討したいという趣旨を述べられました。大蔵大臣も同じように、この人の持論でありますけれども日銀法改正を強調いたしまして、山際さんの発言もあったものだから早急に成案を得たい、期せずして、従来いろいろの経緯はございましたけれども日銀当局の責任者であるあなたと、大蔵省責任者である大蔵大臣との意見は、日銀法改正という方向においては意見が一致しておるのであります。しかし従来の経緯から考えてみますと、日銀総裁と大蔵大臣の考えておる改正の方向については、同床異夢という感じがすると私は見ておるのでございますけれども、あなたの日銀法改正を行ないたいという御発言の前提は、先ほどの御説明でわかりましたけれども、具体的にはどういう方向をさしておるのか、これをひとつ御説明いただきたいと思うのであります。昔、といってもついこの間、金融制度調査会において出された答申が、一応私どもの頭に上がるのでありますけれども、あのことをさしておられるのかどうか、具体的な改正の方向についてどういうお考えを持っておるかお示しをいただきたい。
  30. 山際正道

    山際参考人 日本銀行法改正いたしまする場合において、どういう内容考えておるかというお尋ねでございまするが、実はただいま御指摘のございました金融制度調査会に、昭和三十五年でございましたか提出いたしました日本銀行側の意見というものは、当時私も十分に参画をいたしまして、検討いたしました問題でございまするから、あれに関しまする限りは、いまだに考えは変わっておりません。たださらにつけ加えたいと私思いますることは、あの当時今日の経済状態が、いわゆる開放体制に今日の段階において入ってくることを予定しての研究ではなかったのでございます。率直に申しまして、その点の検討はまだ現実の事態からだいぶ遠いと考えられておったために、十分に検討されてはいない、この点の検討はこの際もう一ぺん私はつけ加えるべきではないかと思うのであります。たとえば内容を申しまするならば、近来の金融は相当国際性を増しております。国際金融社会において中央銀行が相当発言力を持ち、また行動の自由を持って外国と提携しながら、大きく経済の安定に働きかけるといったような機能を持つ必要があると思いまするが、それがはたして現在の日本銀行法の認めておる範囲でよろしいかどうか、私はもう少しこれは考え直す余地が多いのではないかと実は考えております。また一面において、通貨制度の問題がいろいろまだ不安定な状況にございまして、今日ほどはっきりした観念で、日本銀行通貨価値の安定にその主たる精力を注ぐといったような体制を、十分に考えておりませんでした。だんだん申し上げましたように、総動員体制のもとにおいての立法でございまするから、その点においての配慮が十分ではなかったかと実は考えております。今日の場合、従前の日本銀行条例とか、あるいは兌換銀行券条例等にありましたような金融制度本位に立ち返るということは、なかなか困難でございましょうけれども、しかしながら何らかの形において規定が整備されまして、その規定に基づいて、日本銀行は当然の職務として、その価値の安定に努力すべきであるというような検討を加えますことは、やはりこの際において、中央銀行法をいじる場合において、当然なすべき配慮ではないかと思うのでありまして、従前の提出しております日本銀行側の意見に加えまして、この新情勢に応ずるさらに遺漏なきを期するための再検討ということが、私はこの際望ましいことだと考えております。
  31. 平林剛

    ○平林委員 いろいろ改正の方向についてお話がございましたけれども、私が特に重点を置いてお尋ねしたい点は、従来の日銀大蔵省との見解が分かれていた点でございます。この点について大蔵大臣は、日本銀行中央銀行としての中立性を確保するということは言うまでもない、しかし金融を含めた経済政策全般の最終の責任政府にある、そういう意味では絶対的な日銀中立性というのはむずかしい、大蔵大臣と関係なしの中立性などは存在しない、という趣旨のことをしばしば述べられておるのであります。このことばから察しますと、金融制度調査会の答申の際に意見の分かれた、いわゆるA案とB案と仮称いたしますれば、A案を採用したいという気持ちであることは、この口裏から察することができるわけでございまして、かりに日銀法改正を全面的に行なっていくということになりますと、当然この問題にぶつかってくると思います。その場合に、あなたが改正したいという意見を持ち出された事情はわかりましたけれども、この点につきましては日銀総裁として、どういう御見解をお持ちでございましょうか。
  32. 山際正道

    山際参考人 ただいまも申し述べましたとおりに、当時私は日本銀行立場といたしまして、どちらかと申しますと、いわゆるB案程度で大蔵大臣の職責というものは十分に全うできるものではないかということを考えまして、むしろそちらに賛成する態度であったわけでございます。この点は私はいまだにそう思っておりますので、この際に別に考えは変えておりません。私は、中央銀行の運営上、前段にも申し上げましたが、重大な問題についてはやはり大蔵大臣と意見を十分交換し、認識を一にしてかかるということが、その効果の上から申しましても、また国民全体の経済の安定から申しましても、必要であると考えますので、いかに私自身の、あるいは言い方が悪いかもしれませんが、日本銀行自身の責任に属することでありましても、重要な関連事項につきましては、常に政府と緊密な連絡を保つべきであるという考え方を実は持っておるわけでございます。たてまえといたしましては、私はそれで十分であろうと思います。あとは運営上それがいかに十分にできるかということにおいて確保すればよいのではないか。これは一つ法律規定があるからどうという考え方よりも、むしろその程度にとどめて、あとは運営にまかせるという立法のほうが、賢明ではないかと実は考えております。
  33. 平林剛

    ○平林委員 そこで私は、日銀法はすみやかに改正をされなければならぬ、また改正をしたいという方向におきまして、なお政府日銀当局の間に重要な点の一致が、必ずしも持たれているとは思いません。ところが大蔵大臣は、この改正の方向を進める手段につきまして、今度は従来のように三年間かかって答申を受け、三年間それをあたためておくというやり方をとらずに、改正の方向に持っていきたい、具体的にいえば金融制度調査会というものに再諮問するという意思はございません、と述べているわけであります。これは諸般の事情からいいまして、日銀当局と話し合いをすれば調整できるものだという理解をしておるようであります。ところが先般、日銀総裁は記者会見において、いまの日銀法改正金融制度調査会に早く委嘱するなり、あるいは検討してもらうことが望ましいということを述べられておるわけでございまして、改正の手続、改正意見をまとめていく方向につきましても、見解を異にしておるわけでございますけれども、この点はどういうやり方で調整をとられていくお考えでございますか。
  34. 山際正道

    山際参考人 御指摘の点につきましては、過般の両事務当局の会合におきまして、とにかく両方からいろいろ意見を持ち寄って、事務的な検討をまず下ごしらえしていこうということを申し合わせておるわけでございますが、私が過般の新聞記者会見におきまして、もう一度金融制度調査会意見を聞くのがいいのではないかと実は言いましたゆえんのものは、前段御説明申し上げましたように、その当時考えられなかった情勢というものが、何がしかつけ加わっておるのではないかということを思うのでございます。ところがこの点に関しまする私の考え方も、実はまとまっておりません。むしろこれは多くの人々の賢明なる意見に耳を傾けることが必要ではないかと思いまするので、そういう新情勢と申しまするか、かつて討議せられなかった、そしてまたこの新事態において起こってくるであろう問題について、少なくとも御検討願うということが必要なのではないかという考えで申し上げましたようなわけでございます。むろんこれは法律案を立案せられる責任者であられる政府のお仕事でありますけれども、望むらくはそういうことが考えられてしかるべきではないかということを私は申し上げました次第でございます。
  35. 平林剛

    ○平林委員 大体日銀法について私お尋ねしたい点は以上であります。  次に、先ほどお話がありました公定歩合引き上げ措置に関連するいろいろの見通しにつきまして、二、三お尋ねしておきたいと思うのでありますが、今回とられた公定歩合引き上げ措置は、その時期においてたいへんタイミングがおくれて、むしろおそきに失したのでないかという批判がございます。少なくとも昨年準備率の引き上げを行なって、本年当初におきまして銀行の貸し出しの規制、いわゆる窓口規制を行なったあの当時に公定歩合引き上げをやったならば、もっと効果があがったのでないかという批判がございますけれども、この点につきまして、時期がおそくなったのでないかという批判に対して、どういうお考えをお持ちですか。
  36. 山際正道

    山際参考人 タイミングがおそきに失したのではないかという御意見がありますことは、私もよく承知いたしております。さきにも申し上げましたとおり、昨年の暮れに準備率を引き上げましたときにさえも、すでにその問題は提起されておったわけであります。が、あの当時私が何ゆえにその措置をとらなかったかということに対する説明といたしましては、先ほど申し上げましたように、いかにも経済基盤において弱点があるように思われるので、あまり急激なカーブを切ることが、かえって不当な弱いところへのしわ寄せを誘起いたしまして、混乱を生ずるのではなかろうかということを実は説明いたしましたので、その時期を少しずらしまして、相当この体制にもなれてきた、相当の備えも、何と申しますか、いわゆる織り込み済みの状態になっておるという事態と、いま一つは、前向きに考えまして、開放体制に臨んで、国際的に円の価値の信任を厚くするという見地からいたしまして、ちょうどこのころに行ないますることが、むしろタイミングを得ているものだという判断のもとに、今回実行いたしましたような次第でございます。
  37. 平林剛

    ○平林委員 そこでこの公定歩合引き上げ措置、従来の措置にあわせて今後も金融引き締めの姿勢というものは、長期にわたって強化されていくというお話がございましたけれども、今回の公定歩合引き上げ効果は、いつごろ出てくるのかという点でございます。政府のほうでは短期決戦ということばを使いまして、大体金融界では量的の引き締めが徐々にきいてくる時期、あるいは貿易収支のきざしについても好転するのは、大体五月か六月ごろ出てくるのではないかという意味で、短期決戦という趣旨を述べられておりますけれども日銀総裁としての見通しはいかがでございましょう。
  38. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの点は、なかなか判断に苦しむ、むずかしい問題でございまするが、今回の引き上げを必要といたしました理由が、先ほども申し上げましたが、前回、前々回の場合と異なりまして、単一な、重点がどこにあるということがはっきりいたしておる場合とは、ちょっと実は様子が変わりますので、いろいろな点においていろいろ調整を要すべき問題が多いということから考えまして、もしこれを抽象的に申しますならば、結局において企業の経営の合理化をはかり、その体質を改善するというところまでいかないと、今後展望される開放体制に備えての、十分なる安定的措置はできにくかろうという考え方に立っております。それからいたしますると、国際収支の均衡回復と申しましても、昭和三十二年の場合、三十六年の場合には、約半年で実はその徴があらわれてまいったのでありますけれども、今回は事柄の性質上、いま少しく実は時間がかかるのではないかと思っておるのであります。政府は、国際収支の見通しにおきまして、輸出入六十二億ドルの線で三十九年度は平衡する、均衡をはかるというお考えのようでございまするが、おそくも、それには私どもの方針も合致させまして、年度内の均衡ということは、貿易収支においては実現させたいものという考え方でやっておりますけれども、この点は、ちょっとまだ公定歩合引き上げが始まったばかりでございまして、今後の見通しを判断いたしますには、材料が十分でないという状態にある次第でございます。
  39. 平林剛

    ○平林委員 最後に一つだけお尋ねしておきたいと思うのですが、いまお話のように、昭和三十二年当時の景気過熱は在庫投資原因であった、三十六年は設備投資のふくれ上がりが原因であった。今回は、本日御説明になりました諸般の事情が潜在をしておる。特に生産増勢がなお高まっておる理由につきまして、個人消費その他の例をあげられたわけでございますけれども、私はこれは自分の持論でございますが、こういう状態におきまして、産業界においてもあるいは金融界においても相当自粛をしていかなければ、今日日本の置かれておる構造的の病気というものは、回復せないのじゃないか。ところが口では開放経済体制に移向する段階であるからということを申しまして、きびしい情勢を訴えておりますけれども、一方においてはまだまだ、一般の国民消費という趣旨ではなくて、大きな会社あるいは事業等におきまする浪費というものが、目に余るものがあるように思うのであります。たとえば先般国民生活白書で発表されました広告費の膨大なこと、また最近における法人の交際費です。いわゆる機密費、贈答費、接待費というような交際費は、引き続き漸増しておるわけであります。例を申し上げますと、昭和三十八年度におきましても三千八百億円というぐあいに、私は、この交際費というのは税制上の問題もあるでしょうけれども産業界あるいは大企業におけるところの心がまえそのものに欠くる点があるのではないか、こう思うのでございます。政府としてもそういう趣旨を一部いれまして、今度の税制改正におきましては、ある程度損金に算入しないという税制上の措置はとりましたけれども、もし日銀総裁が大きな意味で今後の自己資本充実なり、あるいは国民の考えなりを強調せらるる場合におきましては、こういう問題につきましても、どういう配慮が必要か、金融政策上何かとるべき措置はないか、こういう点についてお考えをお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  40. 山際正道

    山際参考人 御指摘の点につきましても、実は私は全く同感に考えておるのでございます。ただそれを日本銀行が行ないます金融政策によって端的に矯正してまいる手段といたしましては、なかなか直接的には少ないのでございまするけれども、いまやっております金融引き締めも、いわば直接間接に企業もしくはそれを取り巻く社会環境の総需要を鎮圧するという趣旨でございまするから、やはりその方向への効果は相当多いものと考えておりまするが、そのほかに、私どもといたしましては、いま申し上げました貯蓄の増強であるとか、あるいは国産品の普及であるとかといったような問題を大きく要請いたしまして、これは主として国民及び経済関係各位の良識に訴えるということに相なりますけれども、つとめてその声を大にいたしておるような次第でございます。今後も御趣旨の点については私も十分努力いたしてまいりたいと考えております。
  41. 山中貞則

    山中委員長 有馬輝武君。
  42. 有馬輝武

    ○有馬委員 最初に総裁にお伺いしたいと思いますことは、先ほど佐藤委員並びに平林委員からも御質問がありましたが、今回の公定歩合引き上げの時期の問題についてであります。  少なくとも昨年七月ごろから貿易収支基調的に悪化をきざし始めまして、それに対して日銀としても警戒的な態度をとられたことは当然でありますが、その際にどのような配慮をされたのか、私はまずお伺いをしたいと思うのであります。先ほど、佐藤委員に対するお答えの中にも、ただ公式的な態度ではなくて、きめのこまかい施策を積み重ねていくことが必要だというような御答弁があったように記憶いたしておりますが、その際にはどのような規制が必要であると考えられたのか。そしてその貿易収支の悪化に対してどの程度と見ておられたのか、その辺について最初にお聞かせいただきたいと存じます。
  43. 山際正道

    山際参考人 御指摘のように昨年七月ごろから、国際収支の面において多少の懸念は出ておったのでございまするが、当時私が考えました点は、実は今日ほど深刻には考えておりませんでした。ちょうどその前の設備投資の行き過ぎから、いろいろ経済界引き締めにあいまして調整をいたしてまいりましたが、これは自主的に相当調整が進むものという判断で対処いたしておりましたので、あの当時私どもは、主として債券の売買の面におきまして、金融引き締めぎみに運営するということでおさまってくるものであって、当然その合理的配慮企業自身が調整態勢を続け得るものと実は考えてまいったのでございます。したがいまして当時、配慮といたしましては、まあその程度の、いわゆる量的引き締めのはしりでございますけれども、その程度の配慮でやっておればよろしいかと実は考えておったのでございまするが、その後の経過を見ますと、なかなかそれでは企業の地産意欲はとまりません。むろん熾烈な競争ということの結果であろうと思いまするけれども、具体的方法としては、あるいは企業間信用を増大させる、あるいはまた借り入れ金によって資金の手当てをふやす、この点につきましては、私は昨年下期における銀行貸し出し態度にも反省を要するものがあったろうかと思うのでありますけれども、相当の資金を手当てして、いわゆる企業の流動性を相当高める対策に出たわけでございます。この企業間信用膨張と、それからいわゆる企業の流動性が高くなってきているということは、今回の引き締めに際しましても、企業調整に対する抵抗力が強まっておるということの証左になっておる次第であります。実はそういう方面に問題が移ってこようということは、昨年七月当時には、私自身として率直に申し上げまして考えておりませんでした。そこでいま申し上げました程度の配慮をいたしたにとどまったわけでございます。
  44. 有馬輝武

    ○有馬委員 当時としては七月ごろとしては買いオペをしぼるなり、あるいは貸し出し限度額を引き下げるなりの措置で、対処し得ると考えられたわけですか。この点をいま一度お聞かせ願います。
  45. 山際正道

    山際参考人 昨年七月ごろは、私はいま申し上げましたように、企業の自主的な調整努力に期待をいたしておりましたから、いまお示しのありましたような程度の措置で足りるのではないかと実は考えておったのでございます。
  46. 有馬輝武

    ○有馬委員 昨年十二月十六日から預金準備率引き上げをされましたし、また一月から新窓口規制を行なわれたわけでありますが、この七月から十二月の移りかわりについて、基本的に預金準備率引き上げなりあるいは新窓口規制を行なわなければならなくなった事態について、どのように把握された結果、これを行なわれたのか。その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  47. 山際正道

    山際参考人 いま申し述べましたような事情によりまして、昨年の下期におきましては、企業の自主的な調整に反省を促すなり、あるいはまた金融機関貸し出し態度に反省を促すなりということで、実はしのげるというつもりで今日まで推移いたしたのでございます。しかしそれではとうていしのぎ切れないと考えましたので、昨年の十二月にまず準備率の引き上げをいたしました。年を改めまして一月に新しい窓口規制によって、貸し出し増加額規制に着手したという段取りになっておるのでございます。
  48. 有馬輝武

    ○有馬委員 この預金準備率引き上げと新窓口規制によりまして、日銀総裁が意図された効果がどのようにあらわれたと把握しておられるか、この点をお伺いしたいと存じます。
  49. 山際正道

    山際参考人 まず当面の目的といたしまして、金融機関貸し出し態度は、大体私どもの期待いたしました線に落ちついてまいったと見ております。ただ実際問題といたしまして、いま申しましたような企業の流動性が相当高いとか、あるいは企業間信用膨張の余地がなおあったというようなことで、借り手側の企業自身のほうでの、つまり需要側の抑制という点において、それだけでは足らぬという現象がだんだん出てまいりましたので、今度はどうしてもそっちのほうを押えないと、両々相まって調整がむずかしいという判断に立ちまして、三月の公定歩合引き上げという段取りにいたしたわけでございます。
  50. 有馬輝武

    ○有馬委員 当時、企業の資金需要をそのままにして、こういった措置だけにたよられた、いわゆる供給側のみしぼろうとされた点に、私は足りない面があったのじゃないかと思うのですが、当然そういった点について配慮すべきであったのにかかわらず、配慮されなかった理由についてお伺いしたいと思うのであります。
  51. 山際正道

    山際参考人 いわゆる景気のだんだん上昇してまいりました過程におきまして、やはり企業間の信用の膨張ということが一番大きな要素になっておったと考えまして、これを相当抑え込みまするならば、それでもって自然需要者側に対しましても影響をもたらし得るという観測であったわけであります。ところがいま申し上げましたとおり、なかなか流動性も高く、また企業自身の企業間信用膨張の態度が改まりませんために、案外それに対する企業側の態度の変更ということも起こりませんで、ここはどうしても今度は直接に需要者側のほうへ影響するような措置をとらなければ、事態改善できぬという考えに至りましたわけでございます。当時といたしましては、私としてはやはり銀行の信用の膨張ということが、一番重大な要素であったと認識いたしましたわけでございます。
  52. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの点につきまして、当然高度成長政策がとられておりまして、しかもここ数年の膨大な設備投資の結果から、やはり資金需要というものについては、非常に上向きカーブを描いておる事態については、現在も、また当時の状態も、ほとんど変わりない状態にあったのではないか。そういう点で、日銀が把握される情勢というものについての見方に、非常に甘い点があったのじゃないかと思うのでありますが、そこら辺については、いまの御答弁ではちょっと足りないような気がいたしますので、その点についていま少しお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  53. 山際正道

    山際参考人 金融調整をいたしまする場合に、供給者ばかりでなく、需要者の状態というものを配慮すべきことは、これはもう当然のことでございまして、それについての私どものあとう限りの調査は進めてまいっておったと思います。何分にも一番私が意外でありましたのは、やはり企業間信用膨張が相当、かくも膨張し得るかというくらいに膨張してまいって、これは非常に統計がむずかしいのでありますが、ある種の統計によりますと、御承知のようにもう十五兆円に達しておるということが言われておりますけれども、そういうような方策も、実は当時はそれほどまでに膨張しようとは予想しておりませんでした事柄でございます。これらの点にかんがみまして、これだけでは防ぎ切れないと思いましたので、今度は直接需要者に影響を持つような端的な措置に出たという経過でございます。
  54. 有馬輝武

    ○有馬委員 どうもその点が納得がいかないのですけれども、すぐ今回の措置に出たということに結論を急がれるわけでありますけれども、私がお伺いしたいのは、総裁もお話のように、その資金需要については、当然何らかの配慮が必要であると思う。その情勢を見ておられた企業間の信用膨張についてだけお話がありましたけれども、当無供給側だけで考えても効果は期待できない。もうわかっておったはずなんです。その点についていま一度お聞かせをいただきたいと思うのであります。
  55. 山際正道

    山際参考人 先ほど申し上げましたとおり、昨年末準備預金の準備率を引き上げました際にも、すでに公定歩合引き上げたらどうかという議論がございましたことは、私も十分承知いたしております。それに対する私の考え方は、先ほど申し上げましたように、なるほど経済界の基盤に相当脆弱な点がありますので、あまり急カーブをとることは、かえって必要以上の摩擦を生ずるのではないかという点の配慮があったということは、事実そのとおりと率直に申し上げた次第でございます。
  56. 有馬輝武

    ○有馬委員 急カーブをとることを避けられた点については、あとでまたお伺いをいたしますけれども、この預金準備率引き上げなり新窓口規制が、効果に、何といいますか、傾斜があることは当然日銀としては予想されたであろう。私が傾斜と申し上げますのは、確かに銀行の貸し出しが締まってきたことは事実でありまするけれども、それが中小企業なり零細企業に対してしわが寄ってきたのではないか。確かに支店の融資ワクを削ったり、あるいは自分の銀行が主たる取引をしないところをしぼったり、あるいは選別融資をやったりというような形が出てきましたが、その結果は、中小企業だけにしわ寄せがきて、結局大企業生産計画なりあるいは投資計画を改正するという動きが出てこなかったのじゃないか。具体的なあらわれといたしましては、一月の生産が前月比で三・二%もふえておりますし、一−三月の生産増加が昨年の十−十二月並みになっておる。こういう状態日銀が企図されたことと逆になっているのじゃないか、こういう事態に対しまして、私はやはり過去数年間の事態に対して、メスを入れるという配慮が必要だったのじゃないかと存じますが、この点は、中小企業に対する配慮をどのようにされたか、この点をお伺いしたいと思うのであります。
  57. 山際正道

    山際参考人 第一は、何ゆえに供給者側の態度をいま少しく探索しなかったかというお話だろうと思いますが、その点につきましては、私は企業経営者の側におきましては、実は非常な無理をして増産を続けておるのじゃないかというふうに観察いたしておりました。増産のそういう無理にもおのずから限界のあるべきことを考えておったわけでございます。ただそういう状態においても、どうしてもシェア競争その他の立場において生産も増大する、あるいはいろいろな意味におけるコスト・アップを、増産体制によってコストの低減をはかるというような方策に出てくるということが、これほど強いとは実は思っておりませんでした。自来の経過を見ておりまますと、なかなかその勢いが強いのでありまして、もう供給者側における量的資金においては、これで一つの限界に達したかと思いましたので、今度はそれに加えて、需要者側の反省を求めるということにいたしましたようなわけ合いでございます。  第二のお尋ねは、中小企業に対する配慮についてのお尋ねでございますが、これは実は私が基盤が脆弱であると申しておりました点のやはり重要な要素と考えておりましたので、この点につきましては、特に昨年の暮れの措置をとりましたときに、中小企業を担当しておる各種の金融機関の代表者に参集願いまして、どうかこれに対する配慮を十分手厚くして、簡単にしわ寄せをしたり、あるいは連鎖反応的にその被害をこうむるようなことがないように、十分の配意を依頼いたしたのでございます。先ほども申し上げましたように、当時本支店に通牒いたしまして、一々所在の金融機関と相談をいたしまして、具体的に労を惜しまず、一つ一つについての相談をして、そういう弊害が起こらぬようにという配慮を求めたわけであります。今日までのところ、中小企業の不渡り、倒産等の現象は相当出てまいりましたけれども、一々その事例を調べますると、実は他に深い傷を負っておる人々が、残念ながらこの際においてその傷を露呈したというふうな状態でありまして、単なる金融引き締めによって巻き添えを食ったというようなものは、まだ出ておらぬように思います。しかしこの点は、何月危機、何月危機と申しておりまするけれども引き締めの続く限りは当然配慮すべき問題であろうと思いますので、要は労をいとわず、一つ一つの相談相手となって、そのような不当な被害を受けぬようにという配慮をして進みたいと考えております。
  58. 有馬輝武

    ○有馬委員 いま総裁から、労をいとわない、配慮を加える、またそのように動かれたというお話でございましたけれども、少なくともこのような状態で締めていると、結局選別融資なり何なりという形で、各行が恣意的に動くことが予想されておりますし、いまの御配慮では一応のリミットがあることも総裁、十二分に御承知のはずであります。当然予想されることに対して日銀が果たし得る役割りというものは、そこら辺にあるのじゃないかと私は思うのでありますが、いまの御答弁は、そのときにすでに当然予想されておることでありまして、それに対してどのような配慮をされたのか。ただ各行に対する指導なり相談なりということで、このような状態を防げると思われたのか。その点についてくどいようでありますけれども、お聞かせをいただきたいと存じます。
  59. 山際正道

    山際参考人 ただいまのお尋ねの点についでございますが、中小企業へのしわ寄せということは、現在の段階においてややもすれば起こり得る事柄であることは私も当初から考えておりました。極力その方針に対して配慮を行なうということは、実は当初から十分考えたつもりでございます。そして一つ一つ中小金融機関とよく話し合いをいたしまして、具体的の事例について日本銀行の所在の店がそれに参加をいたしまして、いろいろなしわ寄せの防止なりあるいは存続なりについての配慮に出るということは、所在の店においてやっております。現にそのような相談の結果、幾たびか連鎖反応的な影響を受けるのを防ぎ得たという事例も支店から報告されております。この配慮は、私はきめこまかく具体的に一つ一つやっていくのが適切ではないかと考えております。同時に、御承知のように中小専門金融機関に対する財政資金の配慮政府のほうからもされて、金は出ております。しかし総体として、一々その金融機関の相談相手になり、また企業者の相談相手になって連鎖反応を防止するということは、私どもの店舗といたしましては当然の配慮考えておりますので、そのような配慮を進めております。
  60. 有馬輝武

    ○有馬委員 いま、昨年七月からの経緯についてお伺いをいたしたのでありますが、先ほどの佐藤、平林両委員質問に対するお答えにいたしましても、この間の経緯についてはきめのこまかい措置をとって、急カーブを描くことはできるだけ避けたというような趣旨のお答えで一貫しておるようであります。しかし私たちが見ておりますと、昨年九月ごろとられた警戒的な態度、買いオペをしぼったり、貸し出し限度額を下げたり、あるいは十二月の預金準備率引き上げ、それから一月の新窓口規制、こういったものがやはりそのときどきで時期を失しておる。平林委員も指摘いたしましたように時期を失したきらいがある、この点はいなめない事実だと私たちは思うのであります。ではなぜそういう事態になったか。そのような情勢と見なかったというようないまのお答えでありますけれども、この点はあとで私たちはお尋ねいたしますが、日銀法改正もつながってまいります。日銀中立性ということが言われながらも、けさの新聞でしたか、記者会見でお話しになっておった。あるいは総裁自体のおことばでなかったかもしれませんけれども、今度の公定歩合引き上げについても、一月ごろが最も適当な時期ではなかったか。すべてが二、三カ月ずつおくれてきた。この経緯については、やはり日銀中立性ということを言われながらも、時の政府によって強要されるといいますか、今度の日銀の御努力については十二分にわかりながらも、タイミングを失したという点で、時の政府にあまり顧慮され過ぎる点があったのではないか、こう見ざるを得ないのであります。この点についての御見解をいま一度お伺いいたしたいと存じます。
  61. 山際正道

    山際参考人 各種の日本銀行のとった措置のタイミング問題についてのお尋ねでございますが、私の立場といたしましては、各種の判断に立ちまして、みずから考えまして、その時期が最も適当と考えましたときに適当と思われる施策を実行してまいったつもりでございます。むろんこれらに対するいろいろな御批判もあり得ることでありますし、またその御批判に対しましては、今後なお十分尊重いたすべきものと考えますけれども、御指摘のございました昨年来の施策の進行につきまして、私自身考えましてそこらがころ合いであると考えて実行いたしたような次第でございます。
  62. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、日銀調査機能として、そのときどきの情勢については正確に把握され、また総裁自体としてのお考えも十二分にあったと思うのです。それではいま一度具体的にお伺いいたしますが、一月にやられた場合とこの三月とどちらがよかったのでしょうか。
  63. 山際正道

    山際参考人 私といたしましては、公定歩合引き上げによって全体に大きな制約を加えますことは、今回の場合がちょうどころ合いであったと思いまして実行いたしたわけでございます。
  64. 有馬輝武

    ○有馬委員 これはいま一度お尋ねしても同じ答弁をされるだろうと思いますので、世の良識の批判に待つよりほかないと思うのであります。少なくともその意味で時期を失した、この原因についてやはり除去する努力が払われていかなければならぬと私は思うのであります。  それでは重ねてお伺いいたしますけれども、先ほどの佐藤委員に対する御答弁でもあったと思いますが、こういったきめこまかい措置を次々にとらざるを得なかったその根本原因は、現在の内閣が進めております高度成長政策にどこかひずみがあるから、日銀が動かざるを得なくなるのではないか、このように思うのでありますが、その点についての総裁の御見解をお聞かせいただきたいと存じます。
  65. 山際正道

    山際参考人 私は、日本経済の持つ体質に応じまして、世界の先進諸国との比較において、高度に成長を遂げつつあるその要素は十分にあるものと思いますが、この成長の速度があまりに急速に過ぎますると、その環境との調整において周囲に摩擦を生ずるということも当然考えられることでございまして、いま起こっております国際収支の問題であるとか、あるいは物価問題等も、この成長の過程において生じた一つのひずみと理解しておるのでございます。現在は、政府の御見解もいろいろあろうと思いますけれども、統制経済というわけではございませんので、そこで一定の計画に従う措置をとっていく場合に、よほど気をつけないとひずみがちょいちょい起こり得ることは、当然予定してかからぬといけないと思いますので、そのひずみを調整し、取り除いてまいるのが、日本銀行の持つ重要な役割りと考えますが、その趣旨におきまして努力いたしておるわけでございます。
  66. 有馬輝武

    ○有馬委員 ことばじりをとらえるようでありましたらお許しをいただきたいと思います、そのひずみがちょいちょい起こるのではなく、現在進められております高度成長政策自体が、このような大きなひずみを予想しておったわけであります。その点について総裁としてどのようなお考えを持っていらっしゃるのか。それとあわせて、現在まで池田内閣が進めてまいりました低金利政策といいますか、国際金利にさや寄せする方向をどのように見てこられたか、この点についてもあわせてお聞かせをいただきたいと存じます。
  67. 山際正道

    山際参考人 成長の速度の問題に対しましては、私は機会あるごとに均衡を得た成長が必要である、言いかえれば、安定した成長が必要であるということを申しておりました。これによってしばしば経済界にも働きかけておるようなわけでございます。ただいわゆる統制経済といったような経済の進め方ではございませんからして、なかなかその十分な均衡が保たれませんので、ちょいちょいひずみがあらわれてまいるということは、先ほど申し上げましたとおりでございます。  いま一点お尋ね高度成長自体に当然ひずみが予見せられておるという点については、私は必ずしも実はいまでもそう思っておりませんが、この高度の速度の問題でございますので、この速度が速過ぎますと、四囲の経済条件がなかなかその経済速度になじみませんために、随所に摩擦現象を起こしまして、それがあるいは物価の騰貴となり、国際収支の悪化となるということが起こると実は思いますので、それを調整してまいるのが私どもの任務と考えてやっております。あれを進めたら必ずこういうひずみが出るということを当初から予見したかというお尋ねでございますると、そこまでは私どもは実は予見していなかった。ということは、いわゆる計画経済、統制経済でございませんので、初めからそこまで予見するということはむずかしいと考えております。現象のあとを追って必要な措置をとっていったということに相なろうかと思います。
  68. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に、先ほどお二人からも触れられました日銀法改正の問題についてお伺いしたいと存じますが、先ほど総裁は、金融の国際性に適応するということと通貨調整機能について、やはり日銀法改正して再検討すべき時期にきておるのではないかというお答えでありました。私たちが憂えることは、田中大蔵大臣の長岡談話にもはっきりいたしておりますように、とにかく政府日銀に対する指示権というものを強めようとするところに政府の意図があることは、これは巷間の事実であります。そういう事態を百も御承知総裁が、いまあげられたような理由でもって、時を同じくして日銀法改正の必要があると発言された点について、私たちは疑問なきを得ないのであります。どうしてこの政府日銀中立性を大きく侵していこうとする——それは確かに田中大蔵大臣は、日銀の権能を強めていくのだというようなことを表面に出しておりますけれども、その過程において、いま申し上げましたような企図があることはもうはっきりいたしております。その中で同時に、あのような発言をされて、先ほど平林君は同床異夢とまことに的確な表現をされたのでありますけれども、その同床異夢がとんでもないことになることも、総裁としては当然考えておられると思うのであります。そういう点で、日銀中立性をどのようにして堅持していこうとしておられるか、この点についてお伺いをいたしたいと存じます。
  69. 山際正道

    山際参考人 先ほどのお尋ねの一点に実は低金利政策についてのお尋ねがありましたのを、つい私お答えを落としました。この問題につきましては先ほど佐藤委員からもお尋ねだったと思いまするが、一応長期的な政策方向と日本銀行の行なう金利調整の操作とは、おのずから違うということをお答え申し上げたように思います。それによって御理解いただきたいと思います。  次に、日本銀行法改正の問題でございますが、私は政府の指示権がなければならぬとか、あるいは政府監督権をもっと強化していかなければならぬという方向においての日本銀行法改正は、実はその必要を考えておりません。むしろだんだん申し上げるとおり、いかにも古い戦争中の遺物をなるべく新しい事態に早く衣がえしたいということが主でございますが、あわせて新しい情勢に応じた、新しい機能もそこにつけ加える必要があるのではないかという点も考えております。御承知のように総動員体制のもとにおいて成立いたしました日本銀行法でございますから、どちらかと申しますと、たとえば政府の認許可事項にかかるような事項が非常に多いのでありますが、これは当時の体制からいえば必要があったと思うのでございますけれども、今日から見ればそれがはたして必要であるかどうか、これらの点も含めまして、それらの点につきましては、さきの金融制度調査会に対する日本銀行の見解ということで実は表明しておると思うのでありますが、そのほかにまた新たなる観点も必要ではないか。それらを十分検討の上での改正が望ましいと実は考えておりますので、その点を率直に考えまして——たまたま政府責任者がどういうふうなお考えを持っておられるか、それによってどう牽制されるかという点まで、私が配慮いたしませんでしたのは事実でございます。もし法律案が提出されますれば、当然国会においての十分な御審議もございましょうし、実はそこまでは何ら考えませんで、率直にお答え申し上げたような次第でございます。
  70. 有馬輝武

    ○有馬委員 その総裁のお答えは、どうもちょっと時期的な面でも、しかも田中大蔵大臣あるいは政府が従来持っておった考えについては、十分おわかりのはずだと思うのです。少なくとも日銀法改正という点については、総裁としてそういった十分な配慮があってなさるべき筋合いのものだ、また当然それを配慮してあの御発言があったと私は思うのであります。そういった御発言がきっかけとなって、特に金融政策経済対策というものは高次の統一性を持っていなければならぬとかいうような押しつけがましい態度の中で、せっかくの総裁の意図というものがゆがめられるおそれが多分にある。それで私はお尋ねしておるのですけれども、その点でその中立性を堅持していかれる御自信があるのかどうか、最後にお聞かせをいただきたいと存じます。
  71. 山際正道

    山際参考人 お尋ねの点に関しましては、私は現在日本銀行法によって認められております立場というものは、どこまでもこれを守るべき性質のものであって、これを権力によってより小さくすることは適当でないというふうに考えております。
  72. 有馬輝武

    ○有馬委員 終わります。
  73. 山中貞則

    山中委員長 堀昌雄君。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 二点だけお伺いをいたします。第一点は証券対策の問題でございますが、山際総裁は現在の株の価格は一体これでいいのかどうか、現在の株価がこういう状態にある背景は一体何なのか、お伺いをいたしたいと思います。
  75. 山際正道

    山際参考人 御承知のとおりわが国におきましては、株価を決定する方式は、取引所機構において自由なる価格形成を望んでできております。したがって現在あります株価は、関係者、当事者、その他の人々の自然の評価、そのあらわれであると理解すべきものと考えております。現在の株価が、しからばはたして私ども考え日本経済の実情に合うかどうかという問題につきましては、私は株価を対比しては実は考えておりません。日本経済現状改善されれば、自然それに対する評価も高くなるであろうと考えておりますけれども、実はその両者を結びつけていまの株価が適正な地位にあるかどうかという点についてはまだ考えておりません。
  76. 堀昌雄

    ○堀委員 いまおっしゃるとおり、私は株価というものは取引上における公正な取引のあり方できまるということが原則だと思います。ところが実は最近御承知のように共同証券というものができて、日本銀行から三森さんがこの社長になられております。過般の公定歩合操作の際には、共同証券は相当多額の買い出動をいたしておりまして、これまで公定歩合引き上げられて、それが株価に反映をしなかった例はございませんけれども、今回においては千二百円台を維持するための人為的な操作が行なわれた事実がございます。山際さんはこれで株価が公正な取引によって自由な価格できまったとお考えになりますか。
  77. 山際正道

    山際参考人 私は共同証券の設立目的が、そもそも資本市場の育成であるとか、あるいはまた株価の混乱の防止であるとかいう目的を持って、経済界自身の自発的意思によって設立されたものを非常に実は多といたしている立場にございます。今回の問題でございまするが、共同証券がそれ自体の立場において株界の大きな経済条件の変動による混乱を防止するということに働きますということは、やはりその設立趣旨一つの目的であろうと思いますので、これは共同証券のなすところにまかしておけばよろしいという気がいたしましたのであります。何としても一般証券界もその他の業界におけると同じように大きな混乱、変動を避けていくために私ども配慮をするということは、やはり当然必要な配慮でないかと考えます。これによって私は今回の措置が、取引所の機能を阻害しているというふうには考えておりません。
  78. 堀昌雄

    ○堀委員 私は取引所の機能を阻害しておることを伺っておるのではありません。いま前段で、総裁は株価というものは自由な取引のあり方によって形成されるのが至当だとお答えになった。私も資本主義社会ではさようだと思っておりますのに、共同証券というような形のものができて人為的に株価を操作をするということは、私は資本市場の育成に決してプラスにならないという判断を持っておるわけであります。特に、なるほど千二百円台というものが一体この際適当かどうかという問題が実は私はあると思います。御承知のように国際収支の状況あるいは金融引き締めの状況、さらにその金融引き締めになりますならば企業のビヘービアは増資のほうに向かっていくというような状況、もっぱら資本市場を圧迫するような条件をつくりながら、そのしりぬぐいを共同証券にさせるというこの考え方は、かつて私は当委員会総裁とも論議をさせていただきましたが、まさに公社債担保金融と同じ性格のものではないかというふうに考えておるわけであります。そこで当然株価というものが自然の形で動いたときに初めて底を入れるところで底が入り、それから上向きになる、これが資本主義社会の原則的な動きではないかと私は思うのでありますけれども、そこにこれまでのやり方に対していろいろと小手先的なものを行なうために、自然の姿が阻害をされて、かえって適当でない価格の生まれ得る余地もあるのではないか。これは金融等についても、しばしば私は総裁との間に、現在の日本金融状態が決して自由な状態になっていないということも、日本金融の大きな欠陥の一つであるという論議をいたしてまいったわけでありますけれども、その点について一体どうお考えになっておるのか、もう一回重ねてお伺いをいたしたいわけであります。
  79. 山際正道

    山際参考人 ただいまお述べのありましたように、共同証券といったような性質の機関は、自由な株式取引市場のたてまえから申しますならば、緊急の場合にのみ許される例外的な形態であろうと考えております。したがってこれがいかなる目的のために、いつ、どの段階において出動をするかということは、実は最も判断のむずかしいところでありますけれども、いろいろと変化の大きく予想される際に無用の混乱を防止するということは、この段階においてやはり考慮さるべき点の一つであろうと思いますので、そのことのために最小限度共同証券がもしなし得ることがあるなら、それはまたそれで証券全体の発達のために必要な事柄であろうと思うのでございまして、この限界をどこに持つかということは、具体的に非常にむずかしい問題でございまして、共同証券当事者も非常にその点は苦慮しておられるように伺っております。
  80. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私は、これまでたびたび証券問題を総裁に伺いました。そのときに総裁は、いつもはっきり言明しておいでになったのは、日本銀行としては、そういう株価の問題については、あまり考慮はしていない、ただし恐慌的と申しますか、一般的な動揺を来たすような変化のあるときには、日本銀行としても考えざるを得ない、こういうお話を聞いておりまして、私はもっともだと思っておりました。そうすると現在は、そういう恐慌的な段階にきておるということなのでございましょうか。実はこれまで公定歩合操作において、総裁みずからがこのときに証券問題について言及をされた例は私はたしかなかったと思いますので、これまでそういうことを公定歩合操作のときに御発言になったことがあったかなかったか。今回は十八日の定例記者会見で、優先的に資金の援助を見ると御発表になっておりますけれども、このような措置が一体適当であるのかどうか。その二点についてお伺いいたしたいと思います。
  81. 山際正道

    山際参考人 私が従来株価の問題についてとりました態度については、御指摘のとおりでございます。ただ例外的に私がこの問題に触れましたのは、昨年ケネディ大統領が死去しました際の混乱を防止したいという気持ちと、実は今回の公定歩合操作におきましても、先ほど来だんだん申し上げておりますとおり、必ずしも経済界に脆弱点なしとは言い切れない状態でございましたので、よって生ずる過大なる、何と申しますか、変動、混乱というものは、やはりあらかじめ防止する措置考えておくのが至当であろうという配慮から出ましたのでございまして、それ以外に何ら他意はないわけでございますし、ある程度の株価の値下がりは、むろん当然と実は考えておったのでございます。
  82. 堀昌雄

    ○堀委員 現在の様子を見ておりますと、千二百円台という旧ダウがともかく一つの関門のようになりまして、それを下げないために共同証券は盛んに買い出動しておるようであります。片方で金融をどんどん引き締めながら、共同証券に対してはかなり融資が次々と行なわれるようでありますけれども、この間、三森社長は、日本経済新聞に出ておりました記事によりますれば、このような特別的な日本銀行配慮は、今後も維持されるものと思うという発言すら出ておるわけであります。私は大蔵委員会におきまして、これまで大蔵大臣に対して、共同証券に対する融資というものは、一体どういう形で出るのかということを尋ねましたところが、これはやはり日銀の窓口規制のワクの中で、市中銀行に出されたものが行なわれる範囲であるという答弁を得ておるわけであります。そうすると、それでなくとも金融を皆さんのほうで引き締められておる条件の中で、今後さらに協調融資が二百億、三百億とされるというようなことは、片方では金融引き締め、片方ではどんどん証券市場に金を流し込むなどということは、適当でない措置ではないか。いまおっしゃるように、非常に異常な事態に対しては、私はこれは当然行なわれる措置考えますから、今回のような場合には、あるいはやむを得ないという考え方も成り立つかわかりません。しかし今後引き続き増資が行なわれ、協調融資が行なわれて、一体どこまでいけばこれが解決づくかということについては、この問題は最初に触れましたように、来年度およそ六千億に近い増資も予想される。この問題は単にそういう一時的な問題ではなくて、日本経済の構造的な問題と、それに伴う供給過剰の問題に本質的な問題点があるのに、それを維持するために共同証券が日本銀行から出てくる金をたよりに買っておるなどということは、私は世界の証券市場で、このような適当性を欠く取り扱いのあるところはないと思うのでありますが、今後共同証券に対して日銀を通して、間接的ではありますが、結局融資が行なわれるのでありましょうが、窓口規制を行なっておる以上は、その融資先については当然日銀としても大体了承されることだと思うのであります。共同証券に対する日銀の融資の態度についてお伺いをいたします。
  83. 山際正道

    山際参考人 先般申し上げましたとおり、共同証券というものが現実に発動する場合のいろいろな条件というものは、その場合に制定はむずかしいにいたしましても、やはりその限界があろうと思います。その限界において出ます場合には、日本銀行はやはり全体の証券市場なり金融界なりの安定のために、資金を放出するということになろうと思います。その他の場合にどう考えておられるか存じませんけれども、何でも共同証券の行なう操作のための資金は、必ず日本銀行が供給するというわけではございません。これという場合には本来の使命と私は考えておりますけれども、そこで共同証券が出ます場合の資金的のめんどうは、日本銀行としては相当見るということを申したわけでございます。
  84. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいまの問題はけっこうなんです。今後の問題として、これは資本金だけでは実は買っておりません。協調融資が非常に大きな部分になっております。協調融資は市中銀行が共同証券に貸し出しをしておるわけでありますが、これは窓口規制をやっておられる現在では、百億も二百億もが協調融資で出るならば、これらの市中銀行日銀から借りますときには、まあこれは自己の金だけでやっておるのなら問題はございませんが、しかしそうじゃなくて協調融資が土台になっておるから、もちろん出資金もありますけれども、協調融資のほうがはるかに大きいわけであります。したがってその協調融資でいく場合には、日銀もこれは承知をされておることだと思うのであります。そこで片方で金融引き締めを行ないながら、片方で協調融資でやはり日銀がめんどうを見られるわけです。これはオーバーローンになっていなければ、私はこれほどやかましいことは申しません。預金者自身の金で行なわれることならば、これは問題が別でありますけれども、オーバーローンになっている状態の中で、日銀が出しておる資金がそちらへ流れるわけでありますから、きわめて重大な問題だと考えておるわけでございます。今後とも増資をし、その増資をもとにしながら協調融資がだんだんとふくらんでいく。一体どこまでいったらいいのかという問題があと出てくるわけであります。日銀総裁は共同証券の今後のそういう問題は、田中さんは千億でも幾らでもというような大きなことを何回もおっしゃいました。私はそう簡単なものではないと思うのでありますが、一体どこらをめどとして協調融資その他に応じられる意思があるのか、その点を伺っておきたいと思います。
  85. 山際正道

    山際参考人 先ほどもお答え申し上げましたとおり、日本銀行が共同証券の活動に対して相当の協力をするという場合、市場安定のために緊急事態において出動したというふうなときに行なわれると私は考えております。したがいましてその他のことのために、もしそれが資金を必要として協調融資の方法に出ましたといたしましても、それは日本銀行が共同証券に寄せておる希望の範囲外でありますので、それらの問題については、その際は普通の銀行の融資の範囲で考えてしかるべきかと考えます。さらに、しからばそういうことのために一体幾ら金が要るかという見込みでございまするが、これは私は事柄の性質上何とも計算がいたしかねる。千億要る、あるいは五百億で足りるというような大胆な計算はなかなかできないのでございますが、まあやはり事態の必要に応じて、緊急事態に処するためには応援をする、しからざるものについては日本銀行の範囲外だ、こういうことになろう、それによって判断してまいるよりしかたがない、こう考えております。
  86. 堀昌雄

    ○堀委員 では最後にもう一点だけちょっと伺っておきますけれども、実はこの前大蔵大臣がここで、公定歩合の問題について論議をされました報告について、大蔵省日銀で共同して特別監査を行なうという答弁がございました。私は前の大蔵委員会で、現在の銀行検査ではこの問題の行政的な指導は不十分だから、特別の調査員を設けて全般的にやるようにという布望をいたしておきましたけれども、これに日銀が一枚加わるということを実は大蔵大臣が発言をしておられますので、日銀としては、やはり一種の行政指導のようなものでありましょうが、そのあり方については大蔵省とどのような関係でおやりになるのか。一緒におやりになるのか、別個におやりになるのか。そうしてその結果等についてはどういう形でそれを反映をされるのか、その点をちょっと伺っておきたいと思います。
  87. 山際正道

    山際参考人 銀行調査あるいは検査等に関して、日本銀行がいかなる立場において手伝い得るかというお尋ねかと考えるのでありますが、これは日本銀行は各取引銀行との間に契約を結んでおりまして、契約上当然なし得る権限として、必要な範囲の調査並びに検査を行なっておるわけでございます。大蔵省と提携をいたしまして、ある特定の目的のために監査を進めるというような場合におきましても、むろん協力をいたすのでございますが、日本銀行が単独でいたしまする場合、あるいは共同でいたしまする場合も、日本銀行の職員はいま申しました取引者との間の契約に基づく範囲内において、その権限を実行するという範囲にとどまるかと考えております。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 そういたしますと、大蔵大臣の答弁とややニュアンスが異なるように思いますけれども日銀としては日銀独自の範囲で契約に基づいて行なわれるだけであって、大蔵省が行なうそれらとは別個のものと理解をしてよろしゅうございますか。
  89. 山際正道

    山際参考人 過去の事例におきましても、大体特定の目的を相談いたしまして、その目的のためにあるいは共同であるいは単独に調査に当たるというのが、従来実行いたしてまいった点でございます。ただいまのお尋ねに関連いたしましては、日本銀行職員は官吏ではございませんし、いわんやその権限を持った当然の職権を実行し得る立場にはございませんので、なし得ることは相手方の契約に基づきまして、納得づくで調査に当たるという範囲でございますので、おのずからその制約に従うわけでございます。大蔵省のほうにおいても、むろんその制約の範囲は存じておられますので、その範囲において大蔵省の行なら検査なり調査に手伝い得る場合には、協力を求めるということになっております。日本銀行といたしましては、その範囲において協力をいたしておるわけでございます。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 その具体的な経過はわかりました。  そこで最後に、先ほども一応お答えが出ておりましたけれども、少なくとも不当な歩積み、両建てについては、これを排除するかまえで、それらの指導をなさるお考えがあるのかどうか、この点だけをお伺いをしておきたいと思います。
  91. 山際正道

    山際参考人 節度を越えました歩積み、両建てについては、当然これはやめるべきものであるという強い態度で指導いたすつもりでやっております。
  92. 山中貞則

    山中委員長 春日一幸君。
  93. 春日一幸

    ○春日委員 日本銀行中央銀行として行使されるさまざまな金融政策の中で、わけてこの金利政策というものは中央銀行政策の基本的な、かつ正当的なものとして、これが特に活用されなければならぬと考えておるところでございます。したがいまして今回日本銀行総裁がとられた公定歩合二厘引き上げ措置は、金融情勢にかんがみ一個の英断であるとして、われわれはこれを理解いたしております。しかしながら今回の引き上げにつきましては、日銀総裁政府首脳部と十分連絡をとってこのことを行なったと言われてはおりますけれども、われわれが国会における審議の実態に徴しまするのに、総理大臣は低金利政策を堅持されておりました。また大蔵大臣も同様でございまして、これはしばしば本委員会において、あるいは本会議におきまする質問に対しても、公定歩合引き上げについては消極的でございました。こういうような国会論議に徴しまして、今回ここに二厘引き上げが行なわれたということは、何となくやぶから棒というような印象を受けたのでございました。このことは、われわれが判断をいたしまするのに、日本銀行総裁わが国中央銀行責任において、またその円価値を護持せなければならないという至上責任の上に立って、もはやがまんがし切れなくなった、だからみずから職を賭してでも、いわば進退をかけてでも、このことに踏み切った、こういうぐあいにわれわれはこれを見ておりまするし、また一部新聞論評もその間の消息をそのごとくに伝えておるのでございます。私はこの際、いままで国会におきまして論じられたその金利政策質疑応答の実証と、それから今回日銀がとった態度、この事柄について国民の前に日本銀行総裁のその決意とその心境、これをわれわれは明らかにしていただきたい。
  94. 山際正道

    山際参考人 日本銀行金融調節の手段といたしまして、金利政策を中心に大いに考えてまいらなければならぬということは、御指摘のとおりだと考えております。したがいましてこの政策の活用自身につきましては、非常に慎重であるべきは当然でございますので、私は将来これを上げるとかこれを下げないということを前において約束するかのごとき言説をいたしましたことは、つとめて避けておりまして、ございません。今回の引き上げをいたしましたにつきましても、十分に政府当局——私の相談相手は大蔵大臣であるのでありますが、大蔵大臣とはお話し合いをし、各種の情勢からいたしまして、この際上げざるを得ないという認識が統一せられまして、そこでこの結論に到達いたしました。その間に十分に意思の疎通がありましたことは御安心願ってよろしいかと考えます。ただ事柄の性質上、大いに機密を要します点で、あらわれました事実だけをごらんになりますと、いかにも突然のようにおぼしめすかもしれませんけれども、それは事柄の性質上、機密のうちに事柄が進められていたということの結果かと存じます。
  95. 春日一幸

    ○春日委員 とにかく財政と金融とは一体である、一体のもとに運用されるということを、しばしば総理も大蔵大臣も述べておられる。また山際総裁もそれを述べておられる。そういう中において国会論議では、公定歩合引き上げは行なわないのだ、開放経済に立ち向かう日本経済のためには、やはり金利コストを引き下げる国際競争力強化のためには低金利政策だと言っておいて、そうしていきなり公定歩合引き上げ、しかも二厘のいわばショッキングな引き上げ、こういうことになってまいりますと、これは何となく国民を欺くみたいな感じがいたします。幾らこういうような画期的な政策をとるについては機密を要することとは言いながら、政府並びに大蔵大臣は公定歩合引き上げる意思はないかと言うと、その意思はないと言う。そうしておいてやぶから棒にいきなりばっと二厘引き上げるというようなことは、これは金融と財政の一体のもとに運用していくと言うて日銀総裁も、総理、大蔵大臣も論じておきながら、まるで支離滅裂というか、国民をだますというか、私はあまりに国会軽視もはなはだしいと思うが、この点のところの御判断はいかがでありますか。
  96. 山際正道

    山際参考人 ただいま御指摘の点は、私と大蔵大臣のいろいろな協議あるいは見解の交換という際においては、私は別に将来を拘束されておりません。たまたま意見の一致を見ましたので、一致した線において実行したということにとどまるわけでございまして、実は国会その他においてどういうようなお話をなすっていらっしゃいますか、私は直接には大蔵大臣から一度も承っておりませんのですが、私としてはいま申し上げたような経過で決定いたした次第でございます。
  97. 春日一幸

    ○春日委員 私はこの際、では別の角度から質問をいたしたいと思うのでありますが、今回の二厘の引き上げの問題は、何といっても日銀がその手段と時期とを誤ったのではないか。いまの同僚諸君の質問に答えられておるところによって判断をいたしましても、何といっても経済動向の分析と判断、これを誤った。しこうしてこの公定歩合二厘引き上げの問題だって、このような手段をとるべき時期というもの、やはりこれが誤られているのではないか、その印象が深いのでございます。申し上げるまでもなく生産上昇、それから企業間信用膨張企業業績の悪化、こういうようなものは昨年の秋以来非常に顕著な動向でございまして、こういうような動向に微するに、これはあなたは大ベテランでありますから、当然事前的な予防的な措置というものは、やはり金融調整手段として、これは早期にとられてしかるべきものでございましょう。また私がここで申し上げるまでもなく、日銀金融政策の中で基本的で正当的なものは、何といってもこれは金利政策であり、公開市場政策でありますとか、準備預金政策というようなものは、要するにこの金利政策の補完的なものである、補強的なものである。したがってあのようなさまざまな、経済的に国際収支の逆調、これが不安ムードが高まってきておる、物価上昇も依然としてとまらない、だから何とかしなければならぬというような声が、国会の中でも高いのでありますし、また論者はそのことを強く主調しておったのであります。特にまた国会においても昨年の暮れあたり公定歩合引き上げ、これをすみやかにやるべしと強く論ぜられておったのでありますから、私は日銀としては当然そのような基本的、正当的手段を尽くして、予防的、事前的措置をとるべきである。あの当時とられた公開市場操作でありますとか、あるいは預金準備荷の引き上げというようなものは、あの当時に判断をいたしましても、まあ効果が十分期待でき得ないということは、これは金融政策の専門家ならばみなそのように一様の見通しに立っておりました。そんなことをやったってだめなんだ、だからこの際心理的効果と基本的効果をねらうために、やはり一律的な量的規制ができるような、そのような金利政策をとるべきである、公定歩合引き上げるべきであると言っておったと思うのです。にもかかわらず昨年これをやらなかった。そうしてその補完的なものを先にやって、基本的なものをあと回しにし、そうしていまこれをやることによって経済界金融界、わけて中小企業に大いになる衝撃を与えようといたしておる。私は日銀総裁としてのこの責任は非常に重いと思うが、これに対する何らかの御反省はありませんか。
  98. 山際正道

    山際参考人 昨年の秋以来、日本銀行金融調整のためにとってまいりました措置についての経過は、前段のお尋ねに対しまして私は申し答えたつもりでございます。まあ時期を失したかどうか、またその手段をそのときにおいて誤ったかどうかということについては、いろいろ御批判もございましょうけれども、私といたしましては、先ほどもお答え申し上げましたとおりに、ちょうどよい時期においてちょうどよい政策を行なって、今日までまいったというふうに実は考えております。なお御意見の点は今後十分に参考に資したいと思います。
  99. 春日一幸

    ○春日委員 私は円価値の護持というこの至上命令を正当に理解されますならば、やはりこの事前的措置、予防内措置というものに対して、その完璧が期せられなければならぬと思うのでございます。このことは昨年すでに国会においてその問題を指摘し、物価の値上がり、国際収支の逆調、企業間信用膨張、これは何らか措置をとらなければならぬ。本委員会においても論ぜられ、各委員会においても論ぜられました。そういうようなときこそ、やはりそのような基本的な本質的な措置をとらるべきである。なれば、私はこの際立場をかえてお伺いいたすのでありますが、昨年おとりにならなかった何か積極的な理由があろうと思います。とるべしとるべしと、業界においても、あるいは経済金融の専門家たちが、そのことを声を高くして叫んでおりました。あるいは十二月中にとられるかもしれない、あるいは一月にとられるかもしれないと推測がされておりました。ところがあえてそのことがとられなかった。昨年とってはならなかった理由は何であるか、この際ひとつ御説明を願いたいと思います。
  100. 山際正道

    山際参考人 ただいまお尋ねの点につきましては、先ほどもお答え申し上げた次第でございますが、今回の金融引き締めを必要とするに至りました事情に関しましては、前回、前々回の場合と違いまして、その原因なり様相なりが著しく異なっております。そこで前回、前々回のように、世論の向かうところも必ずしも帰一しておらず、この原因の分析に関する判断もなかなかまちまちでございまして、実にその真相を把握しにくい状態にあったわけでございます。当時行ないましたことは量的引き締めに過ぎまして、あまり経済基盤が健全でないときに、大きなショックを与えたり急カーブを切ることは、かえって必要以上の摩擦なり犠牲なりを出すのではなかろうかという判断から、私はそれをあえてとりませず、まず準備率の引き上げその他によって引き締めの方策をとるべきことを明示するとともに、漸次その情勢をいろいろとつくってまいったという経過に相なっております。
  101. 春日一幸

    ○春日委員 私はあなたの参議院におきまするこの問題についての御答弁も詳細に読ませていただいて、研究をいたしておるのでありまするが、それによりますると、いま御答弁のように、経済基盤が弱い。わけて中小企業経済基盤が弱い。したがってそういうドラスチックな手段を講ずることによって、中小企業へ倒産、不渡り、こういうような一波万波の悪影響が起こることを十分警戒されて、そうして昨年としてはこれをやられなかった、こういうぐあいに理解をいたしておるのでございまするが、大体においてそのようでございまするか。
  102. 山際正道

    山際参考人 大体お述べのとおりでございます。
  103. 春日一幸

    ○春日委員 だといたしまするならば、現在のこの時点ならば中小企業に対してそのような一波万波の悪影響を及ぼすような心配はないという、何らかの反対のその保証がございまするか。私は昨年の十二月以来、中小企業の破産倒産、不渡りの続発、こういうものは一様の増勢を続けておると思うのでございます。昨年の十二月、本年一月においてはその心配があったからやらなかった、ところが本三月の時点においてはその心配はないというその実証は何でありますか、これを御説明願いたいと思います。
  104. 山際正道

    山際参考人 私は金融引き締めを必要とする理由なり、その趨勢なりというものは、当時に比べますると今日ではよほどその趣旨が浸透してまいっておると思うのでございます。したがって各企業家におきましても、その態勢に備えるだけの準備なり覚悟なりというものが、だんだん整備されつつあると思うのでございますので、もうこのころ合いを見はからいまして、開放経済に向かうにあたりまして、ここでその態勢を整備するのは適当な時期であろうと考えました次第でございます。
  105. 春日一幸

    ○春日委員 御答弁が私の質問に対して正面の御答弁にありませんので、私は開放経済全体として云々ということを伺っているのではございません。現実にわが国中小企業というものが、このドラスチックな手段によって相当の衝撃を受け、そのことによってさらに金融梗塞のしわが寄せられて、中小企業の経営条件、金融条件をさらに悪化しつつあると思っておるのでございます。一月はそういうことをおもんぱかってなされなかった。いまこれをなされた。だとすれば、情勢というものには何らかの変化があるのであるか。あるいは情勢変化なくんば、そのような中小企業者を対象とするところの何らかの特別の金融政策というものを用意されておるのであるのか。この点を伺いたいと思うのでございます。御答弁を願います。
  106. 山際正道

    山際参考人 御指摘の点につきましては、先ほどお答え申し上げましたとおり、引き締め開始の当初から細心の注意を払いまして、中小企業がこれによって不当のしわ寄せを受けないようにという配慮のもとに、出発をいたしたのでございます。その後におきましても、自来声を高くいたしまして、大中小を問わず企業界全体として、この引き締めに備える態度を早く整えてもらうようにつとめてまいったわけでございます。しかもこの中小企業の点につきましては、政府とも十分連絡いたしまして、中小企業金融専業機関に対する資金手当等も、時を逸さず実行されますように打ち合わせをいたしまして、漸次進んでおりますると同時に、われわれのほうといたしましても、先ほども申し上げましたとおり、きめこまかく労をいとわず、個々のケースにつきまして所在の金融機関等々と十分連絡いたしまして、極力その影響を少なからしめることに努力を続けておる次第でございます。その点は、今回の引き締めにあたりまして、私の最も腐心もし、注意もいたしてまいっておる点でございます。
  107. 春日一幸

    ○春日委員 そういう政策中小企業にしわが寄らざるよう、また寄った場合にそれを排除するための何らかの措置政府に向かって要請なされておる、適当でございまするが、しかし本委員会において、特に日銀に対して要望いたしておりますことがございます。これは一個の懸案事項に相なっておりまするが、こんなときにこそすみやかに総裁の英断をもって、踏み切っていただきたいと思うのでございます。それはすなわち、中小企業専門金融機関——相互銀行でありまするとか、信用金庫でありまするとか、そういうような機関に対して、日本銀行は貸し出しのワクを設定せらるべきではあるまいかということでございます。現在日本銀行の貸し出しは、都市銀行に集中的になされておるのでございまするが、しかしながらこのような措置によりまして、現実的には基盤の弱い中小企業者、そうしてこのような引き締めが私は反射的に資金需要というものを増大してまいると思うのでございます。したがいましてその結果、中小企業にそれがはね返って締めつけられてまいります。だとすれば、こんなときにこそかねて総裁の念頭にもあったと思うのでありまするが、相互銀行あるいは中小企業関係の金庫ですね。信用金庫、こういうものを日本銀行が直接取引を結んでいく、そこに日本銀行の金を流していく、彼らをしてそのような資金源供給の態勢を打ち開いていく、これはかねての懸案でございまするが、いまこそその懸案の解決すべきときではないかと思うのであります。総裁の御見解はいかがでありますか。
  108. 山際正道

    山際参考人 わが国経済界における中小企業重要性、またその内容なりその規模なりの増大してまいる趨勢に対しまして、この問題が金融調整日本銀行の取引対象といたしましても、漸次重要度を増してきておりますることは、私もよく承知をいたし、そのつもりで対処をいたしております。したがって中小金融機関に対する預金取引、貸し金取引等も、前向きの姿勢で逐次その内容の充実に従い、その規模の増大に伴いましてその数をふやしております。漸次その態勢を推し進めまして、いまお話のように中小金融の疎通という点についても、大いに将来役立ってもらいたいという意図のもとに進んでまいりたいと思います。
  109. 春日一幸

    ○春日委員 従来正常なる情勢のもとにおいて、日銀の方針として取引の漸進的増大をはかられてまいったということは、いま御答弁によって承知をいたしましたが、私の申し上げておりまするのは、日本銀行がその資金使途を明示して、これはすべからく中小企業金融に充当すべし、こういうことで中小企業の特別資金ワクを設定して、第一番目にはそのような中小企業金融の専門機関、そういうところに流していく、第二には、現在の市中銀行分を特にそういうような特別ワク——イヤマークのついた金を出していく、こういったような方法をあわせてとらるべきであると思うが、これについてお考えはいかがでありますか。
  110. 山際正道

    山際参考人 日本銀行の行ないます金融調節の措置は、一般金融界を原則として対象といたしておりますので、自然一般金融界に最も影響の多い措置をとりまして、その取引を実行いたしておるわけでございます。さような一般的対策のほかに、個別な、起こるいろいろな現象に対して、資金をどうして流すかというような問題につきましては、これはある場合におきましては、私どもの資金よりは、政府資金のほうが適当な場合もございますし、また各市中銀行、地方銀行その他の金融機関におきましても、中小企業金融部門というものがだんだん増大をいたしております。その金融の疎通をはかるということもございます。状態に応じ、機宜に適した措置をとりまして、その方面の金融の疎通にも貢献をしていきたいということをあわせて考えている次第でございます。決してこれを日本銀行において軽々しく感じておるわけではございません。
  111. 春日一幸

    ○春日委員 時間がまいりましたので、最後に一問して終わりたいと思います。私は総裁に申し上げとうございます。総裁も日々御研究のことと思うのでありますが、いま総裁政府資金を流さるべしというようなところに、一個のアクセントを置かれておりますけれども、事実上政府関係三機関に流したところで、どんなにたくさん流したところで大体一千億とか一千五百億とかというような増量しか考えられないと思うのでございます。それもまた飛躍的な増量でございます。けれども今日中小企業が使っております資金量は十九兆五千億の四〇%といたしますれば、ざっと八兆円でありますから、この八兆という膨大な金額でもなお足らないというそのさなかに、千億や千五百億加えたところで絶対量に対する比重は変わらない。スズメの涙、焼け石に水のそしりを免れないのでございます。したがいまして金融全体の中において、これは本委員会でも論じておりますとおり、金融機関の貸し出すところの貸し出しシェア、これを大企業偏重の現状中小企業にも均てんできるように、漸次是正していくところにあると思うのでございます。五分五分にすれば、現在八兆円使っておりますが、二十兆円の規模の中において十兆ということに相なりましょう。一躍にして政府の金に関係なくして、二兆円の資金量を確保することができるのでございます。こういうようなものは法的規制が必要ではございましょうけれども、事実上そういうようなものは、現在の政治情勢のもとにおいてはできません。したがって日本銀行総裁が、いわゆる日本銀行中小企業金融を重視して、そういうようなところに日本銀行の金を注いでいくのだというその姿勢を示されることが、心理的効果としてすべての市中金融機関にいい影響を与え得ると思うのでございます。こういう意味で、いま相互銀行内容よきもの、あるいは金庫連合会等にお取引の中で資金が流れておるようでありますが、どうかこれを積極的に、もう少し意欲的に、しかもまた当面しておる困難を政策的に解消いたしますことのためにも、できるだけ中小企業の資金増、これを日銀政策の一環の施策としてひとつ強力に取り上げていただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  112. 山際正道

    山際参考人 御承知のようにわが国経済界におきまして、中小企業の占める地位が年々重大さを増しておりますにつきまして、一般金融機関におきましても、当然その融資対象として、この種のものを相手にいたします分野がだんだんと拡大しつつございます。私は一般金融界金融疎通をはかることによりまして、当然それらのルートを通じて、中小企業の方面への資金的な循環が起こり得ると考えておりますが、何ぶんにも中小企業自身の問題はわが国金融界経済界におきまして、非常に重要な地位を占めつつあることは、私も全く御同感でございます。今後におきましても、その点は一般金融調節をいたしてまいります上におきまして、十分配意してまいりたいと考えております。
  113. 春日一幸

    ○春日委員 終わります。
  114. 山中貞則

    山中委員長 これにて山際日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  委員会を代表いたしまして、委員長より一言ごあいさつを申し上げます。参考人には御多用中のところ、長時間にわたり御出席をいただき、忌憚のない御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本会議散会後再開することとし、暫時休憩いたします。    午後一時十四分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕