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1964-03-25 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月二十五日(水曜日)     午前十時四十八分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 臼井 莊一君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    宇都宮徳馬君       大泉 寛三君    奥野 誠亮君       押谷 富三君    金子 一平君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    砂田 重民君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       塚田  徹君    濱田 幸雄君       福田 繁芳君    藤枝 泉介君       三田村武夫君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    小松  幹君       佐藤觀次郎君    田中 武夫君       只松 祐治君    野原  覺君       日野 吉夫君    平林  剛君       松平 忠久君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         大蔵事務官         (主計局法規課         長)      相澤 英之君         大蔵事務官         (関税局長)  佐々木庸一君         大蔵事務官         (理財局長)  吉岡 英一君         大蔵事務官         (管財局長)  江守堅太郎君         大蔵事務官         (銀行局長)  高橋 俊英君         大蔵事務官         (為替局長)  渡邊  誠君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     安嶋  彌君  委員外出席者         外務事務官         (アジア局北東         アジア課長)  前田 利一君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    村井 七郎君         大蔵事務官         (主税局総務課         長)      志場喜徳郎君         大蔵事務官         (理財局外債課         長)      原  秀三君         日本開発銀行総         裁       平田敬一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十五日  委員天野公義君、臼井莊一君小川平二君及び  押谷富三君辞任につき、その補欠として谷川和  穗君、島村一郎君、塚田徹君及び三田村武夫君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員谷川和穗君、塚田徹君及び三田村武夫君辞  任につき、その補欠として天野公義君、小川平  二君及び押谷富三君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  国立学校特別会計法案内閣提出第八二号)  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第四二号)  食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案(  内閣提出第六四号)  自動車検査登録特別会計法案内閣提出第六六  号)  国の会計に関する件  外国為替に関する件      ————◇—————
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  国立学校特別会計法案日本開発銀行法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案及び自動車検査登録特別会計法案の各案を一括して議題といたします。  この際、大蔵大臣より金融機関のいわゆる歩積み、両建て問題について、その後の経過につき発言を求められているので、これを許します。田中大蔵大臣
  3. 田中武夫

    田中国務大臣 歩積み、両建てにつきましては、かねてから当委員会において委員皆さんからこれが解消について特段の配慮をするようにという御発言もございますし、また大蔵省といたしましても、歩積み、両建て排除という問題に対しては真剣に取り組んでおるわけでございます。すなわち、先ほど公定歩合の二厘引き上げが行なわれた直後に、特に中小企業に対して歩積み、両建て排除が必要であるということに留意をいたしまして、金融面におきましては、日銀総裁をその直後に大蔵省に招致をして、国も日本銀行も、また金融機関も一体となって、中小企業金融のために特別な配慮をせられるように要請し、応諾を得て、諸般の体制を整えておるわけでございます。  歩積み、両建てにつきましては、特に池田総理大臣閣議で私に対し、歩積み、両建て排除に対し、適切な措置をとるように命じられたわけでございます。同時にこれを機会に大蔵省及び日本銀行特別銀行調査班のごときものをつくって、抜き打ち的随時監査を行なうことによって歩積み、両建て排除し、中小企業実質金利負担軽減等に対して格段配慮をするようにという特別な発言がありましたので、その趣旨を体し、銀行局より日本銀行に対し連絡をせしめ、この趣旨による随時検査を行なうことによって、歩積み、両建て排除方向に効果をあげてまいりたい、このように考えて措置しておるわけでございます。  なお、かかることは当委員会において、特に春日委員等毎度政府を御鞭撻賜わっておりますので、その御発言趣旨も十分体しまして、実効をあげるべく努力をいたしておる次第でございます。
  4. 山中貞則

    山中委員長 議題となっております各案件について質疑の通告がありますので、これを許します。卜部政巳君。
  5. 卜部政巳

    卜部委員 では、昨日に引き続きまして質問を行ないたいと思いますが、大臣もおいででございますので、ひとつ大臣質問をいたしたいと思います。  昨日の審議過程の中で、この国立学校特別会計法案が、文部省、さらには大学側意見などというものを十分に参酌せずして、ただ財政的な意味合いから、これを一方的に押しつけ、強行しておるということが明らかになりました。大臣といたしましては、日本の将来の教育あり方、さらに次代をになうべき私たちの若い世代の人々から十分な意見を聞くことなく、これを強行したといういきさつについて、御答弁を願いたいと思います。
  6. 田中武夫

    田中国務大臣 国立学校特別会計新設は、財政的な面からのみの理由をもって提案をいたしておるのではないわけでございます。明治初年から長いこと続いておりますこの学校制度問題等につきましては、識者の間に、つとにいろいろな方向に対して検討をせられてきたわけでございます。また大蔵省主計当局及び文部当局の間にも、いろいろな意見交換が長いこと行なわれてきたわけでございますけれども一つには独立会計になるということについて、何か独立採算制にウエートを置かれて、授業料等がこのために上げられてはならないというような意見が巷間ございますので、これらに重点を置くものではないし、また特別会計に移行することによってかかることが行なわれるおそれはないということをいろいろ考えていただくために、今日まで日の目を見なかったというのでありまして、あなたのように御専門にいろいろ御検討になっておられる方々も、その過程において、一体国立学校制度がいまのままでいいのかということに対しては、いろいろ御勘考になっておられたと思います。これはもう各党においても長いこと検討せられた問題でございますが、いろいろな問題がございますので、そういう問題に対して、政府の真意を明らかにして、また特別会計をつくる以上、その目的を十分達成せしめたいということで、今日まで日の目を見なかったにすぎないわけでありまして、ときあたかも昭和三十九年度の予算編成を契機にして新制度を発足せしめたということでございます。  いまの一〇%ないし一四、五%程度の予算が対前年度比ふえておるという——一四・二%でも、いろいろの状態から予算規模が多過ぎるという議論のある中で、学校にいかに重点を置いても、このような予算制一度の中では、画期的な施設拡充もできないわけでございますし、そういう意味でより自主的、弾力的に運営をせしめ得る態勢整備するということで特別会計に移ったわけでございます。  ダム特別会計海湾特別会計治水特別会計道路特別会計特別会計になって悪かった例が一体あるかないか、これは例を見れば明らかな事実でございます。治水などに対しては大蔵省は確かに反対しておりました。財源のない治水特別会計になるということは、工事費を得る目的をもってかかる制度をやるのだということで議論になりましたが、今日になれば、治水五カ年計画というものの特別会計がいかに国民の負託にこたえておるかという事例をもってお考えいただければわかるわけでありまして、やはり学校特別会計新設は画期的なものである、歴史的なことである、こういうふうにお考えいただいて、まず御賛成賜わって、しかもその発足した新制度の将来に対していろいろかくあるべし、こうあるべしという御意見は十分拝承いたしたいと思いますが、これはどさくさにまぎれて、大蔵省の一方的な考え方によって新設に踏み切ったものでないということだけはひとつ十分理解をいただきたいと思います。
  7. 卜部政巳

    卜部委員 大臣は十一時から参議院の本会議に出られるということでございますから、ひとつ大臣とのお別れに際して——と言ってはおかしいですけれども、出ていくわけですから、申し上げておきたいのですが、いまの大臣のおことばは、なるほどもっともらしく聞こえて、そうではないのですよ。私が最初に指摘をいたしましたように、いわゆる十分な意見の参酌なり、さらに文部省との折衝の中で行なわれていないということ、これは率直に申し上げて、昨日の会議の中で明らかになったのです。そうすると、蒋介石が悪いのでなくて取り巻きが悪いということになりますが、あなたも雲上人のようなかっこうに漸次なりつつあるという指摘もできるのでありますが、そのことは別といたしまして、ともかく大臣に率直に申し上げますが、四十一年以降に、いわゆるベビー・ブームの終戦後の終戦子というのが大学にずっとあがってまいりますね。これは四十一年になると、それが大学に大きくしわ寄せされてくる。そういう点につきまして、これに必要な予算、さらにはこの点の見通し、この点に対する対策等については十分配慮ができるのだという確約をされるならひとつしてもらいたいと思います。
  8. 田中武夫

    田中国務大臣 ヨーロッパの先進国等におきましては、高校卒業生から大学にいく人は一〇%ないし一五%、こういうことが通例でありますが、戦後日本は一大改革を行ないまして、大学だけでも五百以上の大学をつくっておる。世界で一番学校制度に対しては前向きな態勢であることは、六・三・三・四制の新制度を採用したこと自体によっても明らかな事実でございます。これは比較として、明らかに数の上においても、予算の上においても、また進学比率においても、特に高校全入運動が起こっておるという事実、世界に例のないほど教育重点が置かれておるし、国民の関心も非常に高いものであるということは、私は十分評価できる問題だと思います。私自身が、かかる現況にありながら、いまの一般会計の中で一五%の対前年度総額に対して二〇%ずつふやしたとしても、最重点事項として取り上げておったとしても、なかなかうまくいかないわけであります。国立療養所の問題にいたしましても、病院等にいたしましてもそうでございますが、土地はべらぼうもなく大きく持っておっても、戦前の兵舎がそのまま病室になっておるとか、学校にそのまま転換されておるとかいうような事実に目をおおうわけにいかないわけであります。私もそういう意味で、ひとつ思い切ってここで施設の改良その他充実をはかるためには、かくあること以外に逆なし、こう断じてやったことでございますので、特別会計法が成立いたしますれば、これらの国民的要望にこたえて十分施設等拡充整備をはかって、将来の人づくりに支障のないように格段配慮を行なうつもりでございます。
  9. 山中貞則

    山中委員長 大臣、けっこうです。
  10. 卜部政巳

    卜部委員 では昨日に引き続きまして質問を申し上げます。  先ほど大臣が云々されておりますが、これもまた率直に申し上げて、十分な私の質問に答えるあれがなかったわけです。ともあれ、これは事務当局と昨日来質問を行なっておるわけでありますから、その点でひとつ話を進めていきたいと思います。  そこで昨日も申し上げましたように、ことにまた委員長にもお願いいたしておきましたように、十分な意見がこの法案の中に盛られていない、こういう趣旨からいたしまして、参考人等も呼んでいただくことになったわけなんですが、私は率直に言って、この点について大蔵省のほうからこの法案にどのように自治の問題などを盛り込む、こういうことについて配慮したのか、また同時にどのような自治がその中に盛り込まれておるのかをお伺いをしたいと思うのです。自治の問題ですね。いわゆるそういう意見がこの法律の中に十分に入ったとおっしゃっていますから、その意見がどのようなところの条文に入っておるのかということをひとつお伺いをしたい、こう思うのです。  具体的に申し上げますが、条文にはまだ入っていっておりませんが、充実を期する、こうなっておりますね。そして充実をはかるために、こうなっておりますが、いま大臣がおっしゃったように、港湾、道路の場合におきましては、いわゆる充実計画というものがちゃんとこれに備わっておるわけです。同時にまたこれに伴うところの促進法というものがちゃんと用意をされておる。ところが実際問題としては、この法案についてはそういうものが一つもないじゃないか。そうすると、そういう意見一つ反映されていないだろう、こういうことにもなるのだろうと思うのです。そういう点でそういうものがどういうように反映をされておるのかという質問なんです。
  11. 中尾博之

    中尾政府委員 お答えいたしますが、この特別会計法考え方によりまして、昨日も申し上げましたように、施設整備近代化あるいは集中あるいは合理化と申しますか、効率化と申しますか、そういうものが促進されるということを期待いたしまして、それを促進いたしまするのに必要だと思われる措置を講じておるわけでございます。それがただいまお話のございました整備計画、これは文部省の内部におかれましていろいろの計画を立てておられるということでございます。それの促進に資する、それを最も早く実施するというのに役に立つということをねらっておる次第でございます。もちろんこの特別会計にいたしましたからと申しまして、それだけですべてが解決するわけではないので、主力はやはり一般会計から財源を十分に入れましてこれを促進するのでございまするが、それに加えまして、先日来申し上げましたようないろいろな財産の利用促進という面あるいは剰余金の面あるいは起債の面といったような点からこれをさらに促進してまいる、こういう考え方でございます。
  12. 卜部政巳

    卜部委員 いまちょっと中尾さんのおっしゃっておることなんですが、あまりぴんとこないのですけれども、そういう計画があるわけですか。充実計画というものがあるのですか。同時にまたそうした面におけるところの促進法——促進法ということじゃないにしても、その中にある法文だけでもってすべてが律せられるということにはならぬと思いますので、そういう点について何かあるのですか。
  13. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 法律に根拠を置きました全体的な整備計画というものは現在ございませんが、概算要求等の段階において作成をいたしまして、大蔵省からも大体の御了解を願っております年次計画はございます。それは施設につきましては全体的に年次計画を持っておりますし、設備につきましては、原子力関係設備その他重要なものにつきまして年次計画を立てて予算積算をいたしておりまして、三十九年度の予算もその計画に従って積算をされているわけでございます。
  14. 卜部政巳

    卜部委員 では、あとからその問題につきましては、資料要求をいたしたいと思います。  一つ伺いをしておきたいのは、これは一月二十三日だったと思いますが、内藤次官大河内会長、これが今度の会計制度につきまして文部省大学、三者の交渉で、大学側意見を十分に反映してもらいたい、こういうことで申し入れを行ない、了承をされている、こういうことになっておりますが、結果的には大蔵省文部省との間に覚え書きが締結されて、それを大学に送付をしているという状態だけであって、意見が十分に反映をされていないということであります。この点は事実ですか。
  15. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 国立大学協会から一月二十三日に文部大臣あて意見書が参っております。この内容は、昨日もお話がございましたように、国大協としてこの問題を検討するに十分な時間がなかったことは遺憾であるということを述べておりますが、この制度全体の趣旨につきましては、これを了承するという態度でございます。この内容をごらんいただければおわかりかと思いますが、全体的にはこれを肯定するという態度でございまして、若干の要望を付しているわけであります。今回御提案申し上げております特別会計法案は、国大協のこの御要望趣旨を大体盛り込んでいるというふうに私ども了解をいたしております。若干国大協要望と違う点もございますが、たとえば、国立大学とその他の高等専門学校等々を区別するとか、あるいは借り入れ金による施設整備の対象を病院以外にも及ぼしてもらいたいといったような一、二の点を除きまして、国大協要望には全般的に私ども沿っているものというふうに考えております。  なお、昨日来文部省国立大学側との間に十分意見交換が行なわれていなかったのではないかというような趣旨の御質問があるわけでございますが、私ども短時間ではございましたが、十分意見交換を行なったというふうに考えております。経過を申しますと、昨年十二月十九日に国大協事務次官以下出席をいたしまして、国大協役員会第六常置委員会、これは財政関係常置委員会でございますが、この第六常置委員会出席をいたしまして、この特別会計制度の概要について御説明をいたしまして、その際にも大体の雰囲気としては賛成するという方向であったわけであります。さらに十二月二十三日に、国大協の第六常置委員会並びにこの特別会計に関する専門委員会が持たれて、そこに大学学術局長、私ども等出席をいたしまして詳細に御説明を申し上げて、ここでも大体御了解を得ておったのであります。しかし国大協といたしましては、正式な態度表明はその際は一応留保されておったわけでありますが、一月二十三日にただいまお話のございました意見書が正式に文部省提出されたわけであります。その内容が大体この法案に盛り込まれているということにつきましては、ただいま申し上げたとおりであります。  なお、その後この法案閣議決定をいたします前日に、文部事務次官国立大学協会会長でございます東京大学学長をたずねまして、内容について説明をし、その了解を得ております。また下がりまして三月三日に特別会計制度に関する小委員会が持たれたわけでございますが、その席に私も出席をいたしまして御説明をし、大体の御了解は得ているということでございます。ごく一、二の点を除きまして国大協の御要望の御趣旨がこの法案の中には盛り込まれていると考えております。  それからこの特別会計趣旨等につきまして、昨日中尾次長からもお話がございましたように、大学側が若干の懸念を持ったということは事実でございますが、その懸念の主たる内容は、独立採算制を企図するものではないか、あるいは授業料の値上げを企図するものではないかといったような点、その他でございますが、ただいま申し上げましたこの点につきましては、そういう趣旨のものではないということを大蔵省文部省の間におきまして確認をいたしまして、そのことを大学側にも伝えましてその了承を得ている次第でございます。
  16. 卜部政巳

    卜部委員 私はこの会議の進め方として、同じ問題にこだわることなく進めていこうと思いますが、ただ、いま安嶋さんのほうからおっしゃられたことばでもって納得して前に進むわけにはいかないわけです。いまいろいろと日にちを追って国大協との関係さらに文部省——文部省はもちろんいま答弁になったわけですから問題はないのですが、十分にその意見を吸い上げ、かつまたその中では慎重な配慮がなされたかのごとき答弁がなされているわけです。しかし率直に言って、昨日も申し上げましたけれども、中教審の答申をめぐり、同時にまたそのことから派生をして、この大学財政あり方については、調査会制度等を設けて慎重に検討すべきであるというのであれば、文部省自体は国会の中でむしろその調査会の設立ということを提案すべきであるにかかわらず、そういうものを無視しておる。と同時に、先ほど来から申し上げておりますように、大学側との折衝において、各大学意見を十分に反映せしめるような時期的な余裕を与えていないということもこれまた事実であろうと思うのであります。同時にまた国大協あたり意見を述べておりますが、安嶋さんはすべてというまでにはならないまでもこれが十分にいれられておるというようなことを言っておりますけれども現実にそういうものがいれられておるのですか。あとから明らかにしていきたいと思いますが、実際問題として明治四十年にできた特別会計のいわゆる高邁な理念に立ったところのあり方などというものは全然無視されておるじゃないですか。私はそれにせよということで言っておるわけじゃありませんが、そういう問題に全然触れられていない。と同時に、いま申し上げておりますように、この法文の中でも何が何だかさっぱりわからぬ、すべて省令だとか政令にゆだねていこうとするような内容が明らかにされておるということが指摘できると思うのです。先ほど来具体的な問題に触れてまいりましたけれども、一月の二十三日に内藤次官大河内学長がこの問題について十分話し合ったといったこと自体についても、現実に話し合っていないじゃありませんか。ただそうした形の中で、大蔵省文部省両者の間で取りかわされた覚え書き大学側に出しておる、こういう状態だと思うのです。  そこで、ひとつ明らかにしていただきたいのは、そういうような覚え書きがつくられておるかどうか、これは事実あると学長が言っておる、公開しなければ見せるということも言っておりますから、あることは事実だと思うのです。そういう面で、秘密といってはおかしいのですが、両者に取りかわされた覚え書き内容をつまびらかにしていただきたいと思います。もちろんここでもって言えない、言えないというよりも、長く十一項目にわたって述べることができなければ、これは資料要求として委員長のほうにお願いしたいと思いますが、あることについてどうか、この点をお伺いいたします。
  17. 相澤英之

    相澤政府委員 国大協がことしの一月二十三日、会長大河内さんの名前で国立学校特別会計制度についての意見を出しております。そしてこの意見において特別会計運用に際していろいろと注文が出ておりますが、これは大体におきまして特別会計法をつくります際に、法案の中に盛り込まれておるわけでございます。そうしてその法案に盛り込まれない部分につきまして、両者間に覚え書きとして国大協要望にできるだけ沿うような方向でこの特別会計運用する方針を明らかにしたわけでございます。国大協特別会計運用につきましての要望は、非常に多くの項目にわたっておりますが、おもな点について、それがどのように特別会計法に実現されておるかということについて申し上げます。  一つは、「剰余金、国有財産処分収入等の特別会計固有の財源があることを理由として、一般会計からの支出を削減してはならない。」という点でございます。この点はこの特別会計に積み立て金を設けていることで一応解決をはかったわけであります。つまり残ったらば一般会計からの繰り入れを削減するということであってはならないということで、一般会計からの繰り入れは予算繰り入れといたしまして、歳入がふえあるいは支出が減りまして剰余金を生じた場合には、それを積み立て金として積み立てる、こういう制度を設けたわけでございます。  それから「この会計においては、大学における研究と教育の円滑な遂行を可能ならしめる見地から、一時借入金・繰越・予算の流用・継続費等の諸点において弾力的な措置が考慮されなければならないこと。」、この点につきましては、一時借り入れ金の借り入れはこの特別会計法案に盛ってございます。繰り越しは当然でありますし、また予算の流用におきましては、これは実行上の問題でありますが、できるだけ弾力的にやるということになっております。継続費につきましては、この特別会計法の施行令ではっきりと規定を置いております。  それから「この会計に属する国有財産の利用ないし処分は有償としてこの会計に帰属し、一般会計の財産を使用または所管換する場合は無償とすることを原則とする。」、つまりこの特別会計の財産を処分する場合は有償で、一般会計からもらう場合は無償だ、こういうことでございます。これはきわめて異例な取り扱いで各会計間の財産のやりとりはすべて有償にするのが原則でございますが、特にこの特別会計におきましては、大学の財産を有効に活用する、大学財政の基盤を確立するという見地からこの御要望に沿いまして、もらう場合には当分の間原則として無償であるということを明らかにしております。そうしてこの財産を他の会計に譲渡する場合には当然有償でございます。これは規定は書いてありませんけれども、当然でございます。  それから「この会計は、施設整備促進するために適当な条件のもとに財政投融資資金の受入れを行ないうるものとする。」これは御要望は、学校全体の施設整備だと思いますが、この法案におきましては、病院施設整備に限っております。このことは他の病院以外の事業、つまり純粋に教育研究の目的のための施設につきましては、借り入れ金をして施設整備いたしましても、それを償還すべき財源、収入というものが、将来にわたって期待することが非常に困難である。それを無理に強行いたしますと、御懸念なすっている授業料の値上げとかその他の手段に訴えざるを得なくなる、そういったようなことがございますので、この財政投融資資金の受け入れは病院施設整備のために限って法案で規定いたした次第でございます。  それから「この会計では、いわゆる建交換を行なうに必要な予算枠を設け、国庫債務負担行為をなしうるものとする。」これは建て交換を行なうに必要な予算ワクは、予算にもちろん計上しておりますし、国庫債務負担行為としましても、病院の建設に、たとえば三十五億の債務負担行為のワクを計上しております。  それから「この会計剰余金は、全額この会計財源と、歳入予算超過分の一部は、積立金として積立て、施設整備のために歳入に繰入れうるものとすること。」これはこのとおりに法律で規定をいたしております。  それから「歳入超過額については、弾力条項を設け、予算の円滑な運営をはかることとすること。」、これも特別会計予算総則におきまして、国立学校特別会計の歳入が増加した場合におきましては、その歳入増加のため直接必要とする経費に充てられるようになっております。これによりまして、たとえば病院の医療収入がふえました場合には、病院の薬その他の医療費の増額に充てることができるようになるわけであります。  以上、大体この特別会計法または施行令に盛り込み得るものはすべて盛り込みまして、盛り込み得ないものについて両省の間で覚え書き交換したわけでございます。これは特に文部省から強い要望がございまして、覚え書きの形で残したわけでございます。  その一点は「この特別会計は、国立学校内容充実を図り、かつ、今後における整備促進する趣旨のものである。」特別会計法に一点この特別会計目的を示しておりますが、それには簡単に「国立学校充実に資するとともに、」云々という点で、非常に簡単な文句になっております。しかしながら特別会計法は、この会計の経理に関する技術的法律でございますので、そもそもこの特別会計法の設置の目的はいかんということについて、くだくだしく述べるということは例になってございません。この「充実に資する」というような表現も、実は他の特別会計法には全然ないところでございまして、その点われわれといたしまして、十分慎重に検討いたしましたのですが、とにかくこの会計設置の目的を明らかにするためには、ぜひこのような表現を設けてほしいという文部省の強い御要望もございまして、法制局とも相談して、特にこの「充実に質する」というような表現を盛り込んだわけでございます。  なおそれを補足いたしまして、覚え書きでは「この特別会計は、国立学校内容充実を図り、かつ、今後における整備促進する趣旨のものである。」ということをうたったわけでございます。  第二点は、「この特別会計は、国立学校会計の独立採算を目的とするものではない。したがって、特別会計にしたことを理由として授業料等の値上げを意図することはない。3、この特別会計に属する不用の財産を処分して、その収入を国立学校内容充実にあてることを容易にするため、今後においても必要がある場合においては、建交換を行なうに必要な予算と国庫債務負担行為の計上を図ることとする。4、この特別会計の歳出予算の移流用については、教育研究の実情に即して弾力的な取扱いをするように努めることとする。」以上の四点でございます。
  18. 卜部政巳

    卜部委員 長々と条文にわたって、特に大学側意見を十分にこの中に参酌したということで答弁がなされておりますが、私はまだ条文に入っていないわけです。ただし私はその中の一つの例をとってみても、借り入れ金の場合などにいたしましても、実際問題として、いま大学側としては、これが病院に限るなどという考え方を持っていなかったことは事実だろうと思うのです。ところが、大蔵省のほうはそういうような形をやっておる。ことにまた、第二条の場合におきましては、率直に言って、大学側自体でさえも言っておることは、いわゆるこれは大学支配の道具に供せられないかという心配がある。第二条なんかも、単なるそういう法文でもって規制をしておるなどということが多々あるのです。それが、十分意見が参酌され、——あとから具体的に入っていきたいと思いますが、そういうようなことで、これが全部うまく反映をされたとかいうような姿というものは、率直に申し上げて私は詭弁だと思うのです。そういう面で、最初私が申し上げたように、覚え書きの問題に触れまして、最後にちょっと四点ほど申されておりますが、私はいま覚え書きの問題に触れていきたいと思うのです。それでその覚え書きというのは相澤さん、四点ですか。
  19. 相澤英之

    相澤政府委員 さようでございます。
  20. 卜部政巳

    卜部委員 委員長にお願いいたしたいと思いますが、いま四点の問題について早口でおっしゃられておりますので、筆記ができなかったわけであります。これはひとつあとからプリントでも何でもけっこうでございますが、両省どちらのほうでもかまいませんが、資料要求といたしたいと思いますが、いかがなものでしょうか。
  21. 山中貞則

    山中委員長 相澤君、いまそこの資料を差し上げなさい。
  22. 卜部政巳

    卜部委員 では、引き続いてでございますが、昨日からいろいろと申し述べられ、かつまた、今日においてもいろいろと申し述べられておるところですが、ともかく、会計の問題のみを中心にして、その施設がよくなるのだとか、そういうようなことを盛んにおっしゃっておるわけでありますが、では、そういう面において、大学自治あり方という問題については一つも触れられておらないわけですね。そういう面について、先ほど第二条の中でも私ちょっと指摘をしたのですが、大学支配になるような気配が率直に申し上げてあります。第二条の中にありますように「この会計は、文部大臣が、法令で定めるところに従い、管理する。」こういうことであります。明治四十年に出たところの特別会計のそれによりましたら明らかにその点については弾力性、自主性、そういうものが十分に盛り込まれておるわけなんですが、そういうものを一つもこの中に盛り込んでいないわけです。そういう問題についての懸念はないのか、この点をひとつお尋ねいたしたいと思います。
  23. 中尾博之

    中尾政府委員 お答えいたしますが、いわゆる大学の管理という問題が別途大事な問題として論ぜられておることは十分承知しておりまするが、本法案における第二条の「この会計は、文部大臣が、法令で定めるところに従い、管理する。」とございますこの管理の意味は、それとは関係がございません。現在は文部大臣が歳出を管理いたしております。歳入は一応文部大臣が管理をされますが、形式的には大蔵大臣が管理をいたしておるわけであります。それから資産でございますが、学校の資産も現在文部大臣が国有財産法上管理いたしておるわけでございまして、それが使わないことに相なりますれば、大蔵省において管理をいたしまして、大蔵大臣が管理することに相なります。ところが、今回は特別会計にいたしまして、その関係でもっぱら大蔵大臣あとへ引きまして、文部大臣が歳入、歳出、資産というものを法令上の関係で管理する、こういうことであります。これは主として歳入金と歳出金と、それから財産の管理、しかもそれはそれぞれの会計法あるいは国有財産法、そういった法令におけるところの管理体系における管理権の問題でございます。別段従来と変わりはない次第でございます。
  24. 卜部政巳

    卜部委員 これは明治四十年に西園寺内閣が出した特別会計についてですが、この法第一条の中では、大学の自主独立というために大学予算を自主的に計画できることが明らかにされ、かつまたこれを使用し得る、大学自体のための配慮というものが十分に加味されておるわけです。そういう面については、いま率直に中尾さんのほうから御答弁があったところから見ますと、これはもう明らかに文部省が一括にしてすべての支配権といってはおかしいが、管理権を持つのだ、そしてそれを歳出、歳入については大蔵省が所管でもってこれに携わるのだ、こういうことを言っておられるのです。そういうような形の中で、現在鹿児島をはじめとする各大学で講座省略、すなわち大学の格差が強められ、かつ反対するものには弾圧が加えられ、教育自治と思想の自由が侵されてきつつあるではありませんか。そういう点について、実際問題として、ただ、いまあなたがおっしゃったように、全然そういうあれはないのだというようなことでは、私は納得できないのです。  そこで、ひとつお伺いをしたいのですが、いま申し述べておるいろいろな問題からしまして、今後の大学充実の見通し、それから学問の研究発表に必要な予算の増分、さらには四十一年度におきますところの大学生の急増が出てまいります。これはベビー・ブームと言われておりますが、大学に必要な予算の増分がどのように見込まれ、かつ計画されておるのかをひとつお伺いをいたしたいと思います。
  25. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 明年度の国立学校関係予算でございますが、これは一般会計にありましたときと多少組みかえて比較をしないとわからないわけでございます。組みかえた後で比較をいたしますと、前年度の予算に対しまして二二・六%増ということになっております。それで、教育研究に関係いたします狭い部分をとってみましても、学生経費では前年度の二〇%増、教官研究費では一五%増、そのほかに、たとえば心理学に実験講座等をいたします等の措置を講じておりますし、かつまた光熱水量等の増額をはかっておりますので、実質的には教官研究費も二〇%以上の増額になっておるというふうに考えております。かつまた、その他の設備費におきましても、一般設備費を新規に計上いたします等の措置を講じて、内容充実をはかっておるわけでございます。  なお、大学生の急増に伴う予算措置についての点でございますが、これは四十一年度以降の問題でございますので、したがいまして、私どもその具体策を現在検討中でございまして、結論を四十年度の概算要求をいたします際までに出しまして、前向きで対処していきたいというふうに考えておる次第でございます。
  26. 卜部政巳

    卜部委員 最後のほうからひとつ質問をしていきたいと思いますが、この覚え書きの中にあります問題といたしまして、「この特別会計に属する不用の財産を処分して」云々とこういうことがあるわけです。率直に申し上げて、なぜ四十一年度の問題を私が指摘をするかといいますと、国立病院の問題にしてもしかりですが、独立採算ではないと言いながら、企業会計的なかっこうになってまいりますと、当然にそういう面におきましてしわ寄せがされてくる。そうした面におきまして一般会計からの繰り入れが年々減っておるのが現状なんです。率直に申し上げて、初めは、今回におきましても八〇%などと言っておりますけれども、将来においては六〇%、五〇%というように減る傾向が私はあると思うのです。その点で四十一年度の問題を指摘をいたしたわけであります。なおこの中で安嶋さんのほうから、大学施設云々、こういうようなことも申されておりますけれども、率直に申し上げて、設備はどの大学とどの建物を改築し、何を新築をするか、こういうことがやはり明らかにされなければならぬと思うのです。現在そういうものが当然予定線上に浮かび上がっておると、私はこのように考えるわけでございますが、ひとつその点も御答弁を願いたいと思います。
  27. 安嶋彌

    ○安嶋政府委員 文教施設費の積算は、これはワクの積算でございまして、予算編成の段階におきましては、どこの大学の何学科の建物を整備するといったような積算はいたしておりません。これがきまりましてからその実行計画、実施計画につきまして大蔵省と協議をいたしまして、具体的な内容を決定するということになっております。それから設備につきましても、これは概算積算上特定されておるものと特定されていないものとございまして、特定されておるものは特殊設備、それから特別に大型の設備でございます。一般的な設備につきましては、これは文部省が実行上各大学の需要を考慮して配当するということになっております。      ————◇—————
  28. 山中貞則

    山中委員長 連合審査会開会の件についておはかりいたします。  国立学校特別会計法案について、文教委員会から連合審査会開会の申し入れがあります。これを受諾し、連合審査会を開会するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  それでは、委員会は暫時休憩いたしまして、直ちにこれより大蔵委員会文教委員会連合審査会を開会いたします。    午前十一時三十七分休憩      ————◇—————    午後一時三十六分開議
  30. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き大蔵委員会を開会いたします。  質疑を続行いたします。平林剛君。
  31. 平林剛

    ○平林委員 委員長はじめ各位の御了解を得まして、ただいま議題になっている法案に関連をし、大蔵大臣並びに銀行局長に対して私は若干の質問をいたしたいと思います。  初めに社内預金の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。私のきょうお尋ねしたい点はきわめて簡単なことでありますが、まず順序として社内預金の現状について政府から御説明をいただきたいと思うのであります。
  32. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 社内預金は労働省でできるだけ近い現況を調べるために今回かなり合理的な抽出調査法をやりまして、その結果推計でございますが、金額といたしましては大体四千七百億円余りというふうな状況でございます。
  33. 平林剛

    ○平林委員 私の承知しているところでも社内預金の実施事業場数は全国で三万三千、預金労働者数は約四百十万、預金の総額がいまお話がありましたように四千七百四十億円程度になっているわけであります。これは私は最近の経済情勢から見まして、今後かなり重視をしていかなければならぬ点があると思うのでありまして、あらかじめ政府の見解をお尋ねしておきたいと思うのであります。  これらの社内預金は銀行預金等と比較いたしまして、銀行の検査あるいは支払い準備金制度がないなどから見まして、預金者保護という立場からやはり欠陥があるのではないか、この点について大蔵大臣としてはどういう配慮を今後されていくか、伺いたいと思います。
  34. 田中武夫

    田中国務大臣 私は社内預金というものはできれば歩積み、両建てのように全廃したいという議論でございます。しかし実際問題は理論的にまいらないということで、法律で制限をしてやむを得ざる規定を置いているわけでございます。それが非常に乱に流れて金利が非常に高くなる。それからなお員外者といいますか、社員以外の人々の退職金まで預かっている。しかしそれはあなたがいま指摘されたように、銀行と違って準備金の制度もありませんし、非常に不安定なものであることは事実であります。高利に引っぱられてついに元も子もなくしてしまうという場合もありますし、銀行に比べれば不安定なものであるということは事実であります。でありますから、やむを得ないといっても労働、大蔵両省と十分連絡しまして、とにかく社内預金という制度をやむを得ず認めた、といって限度を越してはならない。そしてその制度を認めている以上、それに対してやはり優先債務といいますか、預金者の保護ということに対しても考えていかなければならぬ。これはあまり考えますと、ますます乱に流れてしまう、こういう問題にもなるので、なかなかそのことはむずかしいところでございますが、労働省との間には十分意見の調整を行なっておるわけであります。
  35. 平林剛

    ○平林委員 もう一つ、預金等の取り締まり法によれば、社内預金が認められますのは労働基準法に定める労働者に限られる。ところが現状は、役員、退職者、労働者の家族というところまで預金をしておるという現状のように聞いておるわけであります。特に預金金利も高いということになりまして、かなり問題がある。特に私、いま申し上げました現状は、預金等取り締まり法にも触れるのではないかと思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  36. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 大体のことはいま御質問のとおりだと思います。私ども、労働基準局長と銀行局長の名前で先般通達を出しておりまして、ただいまのような御見解と同じ趣旨で、乱用してはいかぬ。いま御指摘の家族とか退職者——退職者については若干問題がございます。役員というのは経営者でございますが、労働基準法によって労働者から預っていいという規定がある。それについていろいろな労働者保護の精神が書いてあるわけですが、役員が自分の会社に預けるということについては、これは労働基準法の精神に反するではないかということ、それから退職者につきましては、これは新しく退職した者から受け入れるということになると、出資の受け入れ等の禁止に関する法律に触れるわけでございます。ただ、退職時までにすでに持っておったものをそのまま預けぱなしにしておくということは、新しい受け入れでないという法律解釈からいきますと、一応違法ではないが、大体雇用関係がないわけでございますから、そういうものをいつまでも預かっておくということは適当でない。これは税法上は差別しておりまして、一カ月まではいいがそれ以上たちますと、例の免税の申告をしても特典を受けられないというふうに差別しております。そういう点でいいのですけれども、とにかく退職者なども好ましくない。家族その他親睦団体というようなことで従業員にあらざる者の預金を預かることは、法律の精神からいって好ましくないし、場合によってはその出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律に抵触するものである。こういう解釈をとって、労働省も基準監督局を通じて監督いたしますし、私どものほうの出先機関である財務局等におきまして、それぞれの地におけるたとえば商工関係の団体等につきまして厳重にそういう指導を行なうようにいたしております。
  37. 平林剛

    ○平林委員 そこで、ことしの一月二十四日大蔵省銀行局長と労働省の基準局長と連名で出された労働基準法第十八条に規定する貯蓄金管理についての通牒が、地方においてかえって問題を起こしておるわけであります。そこで、いま高橋銀行局長がお答えしたことで尽きるわけでありますけれども、私もう一度その点を念を押して確認をしておきたいと思います。つまり一つの事業所を退職した者、退職者については、原則としてはそこでケリをつける。もしやむを得ない場合にはそのまま預け入れておくことは多少は目をつむったとしても、今後新たに預け入れるというようなことはならぬ、またこの通牒の趣旨は退職者については一応ケリをつけてもらいたい、こういう趣旨であるということを明らかにしてもらいたいと思うのです。
  38. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 全く御意見のとおり、退職者につきましては、暫時、他の方途に振りかえる間まではよろしいけれども、必要以上にそのまま据え置くというようなことは絶対に好ましくございません。また新しく預け入れるとすれば、これは法律に抵触する疑いがあるとして禁止すべきものである、このように考えております。
  39. 平林剛

    ○平林委員 それでは次の問題に移ります。  きょう私がお尋ねしたい点は、過般新聞等におきましても掲載をされておりましたし、予算委員会の分科会においても議論されたことがあります不動信用金庫の問題についてであります。私、時間を節約する意味におきまして今日までの経緯について会議録その他から承知したところを列挙いたしますので、確認をしてもらいたいと思います。不動信用金庫の預金が短期間に激増した、昭和三十八年五月から昭和三十八年九月までに激増したということから、関東財務局が疑問を持って昭和三十八年十月に検査に着手した、その結果後藤観光株式会社に対する不当融資約十三億円と得人預金があることを発見をした、後藤観光が倒産したことから端を発して、十月ごろから事実上の支払い停止状態となり、自来不動信用金庫の収拾問題に、大蔵省筋の要請もあって、全国信用金庫連合会、全国信用金庫協会、東京信用金庫協会の三団体がしばしば協議した結果、全国信用金庫協会会長の小野孝行氏が処理を一手に引き受けて、中央信用金庫が不動信用金庫から委嘱を受けた形でその代行をつとめた、昭和三十九年三月三日、不動信用金庫が解散するまで支払いを代行してきた、中央信用金庫が支払いを代行した額は約四億円、なお十二億八千万円の預金は払い戻しをされないで解散清算に移されているのが現状である、こういうふうに私先般の会議録全般を通読いたしまして承知をいたしたのでありますが、この経緯、私が申し上げましたような点は、おおよそ誤りございませんね。
  40. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 おおよそ誤りございません。そのとおりでございます。
  41. 平林剛

    ○平林委員 そこで私は、この不動信用金庫問題の処理を振り返ってみまして感ずることがあるわけであります。第一は、金融機関の指導監督の任に当たる大蔵省の行政指導が適切を欠いていたのではないか、第二は、処理の中心になった三団体もいたずらに時日を空費して所期の処理目的を達せず、この処理にあたっては最も拙劣な解散清算に持ち込んで一般の預金者に不信感を植えつけているのではないか、私はこの二つの点を重視すべきだと思うのであります。特に御承知のように信用金庫の数は全国で五百三十余りある。信用金庫に対する預金率も最近は相当の増加率を示してまいりました。そのときに、この種の問題が起こりますと、私は信用金庫の社会的な信用問題が発生すると思うのであります。同時に、預金者保護という立場におきましても、現状は一般の預金者あるいは特別の預金者を含めて預金者保護という立場が確保されていない。第三には信用金庫の解散というのは、これは初めてのことと私は承知しておるわけでありますが、このときとられた大蔵省当局の監督指導につきまして私はいささか疑問がある。同時に、もしかりにこういう問題が将来起きた場合の指針にもなるわけでありますから、そういう角度で私はこの問題について政府に対し注意を喚起しておきたい、こう思うのであります。  お尋ねをいたしたい点は、この不動信用金庫の問題処理にあたって大蔵省当局は当初どういう基本的な考え方で指導なさったのか、具体的な指導の事実をあげて御説明をいただきたいと思うのであります。
  42. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 金融機関の健全性の保持ということは行政監督上一番大切な眼目でございます。これはすでに久しい以前からとられておりますところの預金者保護の精神に基づくものでございまして、預金者の保護ということが何よりも金融機関の大切な最低の要件である、その点から申しまして、全額を支払わずして解散に至るようなことはできるだけ避けなければならないと思います。そういう観点からこの不動信金の実情をつぶさに調査いたしましたところ、いわゆる一般預金者の、つまり多数善意の預金者の預金に比べて必ずしも善意とはいいがたいいわゆる導入預金とおぼしきものの金額があまりにも大きいということでございます。そこでこれは実際の人員といたしましては四谷地区における千数百名の一般預金者、善意の預金者がございましたが、これに対しては絶対に迷惑をかけてはいけないということが一つの基本でございます。できることならば、そのほかの預金についてもできるだけの支払いをしたいのでございますが、しかしその中身を、資産状態を洗ってみますと、御承知のように十二億数千万の導入預金とほぼ同額のものが後藤観光という一会社に融資されておりまして、それはネットでそのくらいの金額になるわけです。これは後藤観光がもう倒産寸前にある、おそらく実情——どもは後藤観光なる会社を立ち入り検査をすることができませんので、実態はつかめなかったのでございますが、後になりましてこれは破産の手続をとることになりました。一部の話によりますと、相当まあ何といいますか、事業の手を伸ばし過ぎた関係か、高利の金をかかえておったらしい。非常に無理な金繰りをやった結果倒産に至った。そしてそれに対する融資の担保というものは非常にわずかである。金額が十二億数千万円であるのに、そこから担保の処分等によって回収し得るものはきわめてわずかであるということで、九割程度はもう損に出るということでございます。それで金庫の側に対しましては、ただいまおっしゃいました信用保持の見地からいかが扱うべきか、これは業界全体の問題であるから、十分相談してもらいたいということで協議をさせましたところ、何回か会議などを催しましてやった結果、信用金庫の協会の意向としては、いわゆる導入預金に対してこの際必ずしも救済的な支払いをする必要はないと認める、ただし善意の預金者に対してはすべて協会全員の責任において支払いを全部いたしたいということでございました。そういうことで、先ほどのお話のように、最後に協会長であるところの小野孝行氏が責任者となりまして中央信金が実務上の問題を処理するということになりました。その結果は、善意の預金者に対しては預金帳と引きかえに支払いをします、ただし預金帳を買い取るような形になります、預金、帳を買い取りますが、その預金は不動信金に対する預金でございますから、必ずしも相当部分とれないかもしれない、それはまあしかたがない。そのとれない部分につきましては信用金庫の中で有力なものがこの損失負担をしようじゃないか、こういうことになりました。だいぶそのことにつきましては手を尽くしまして、全部の支払いを完了したわけでございます。所在不明でごくわずかの件数が残っている程度でございまして、あとは全部支払っております。導入預金につきましては、これは解散せざるを得ませんので、解散の結果生ずるであろうところの資産をその率によって分配する、もっとも中央信金が買い受けました預金証書は当然不動信金に対する権利としてあるわけでございます。分配を請求する権利がありますが、それは場合によって放棄する、請求しない、その分だけ導入預金者に対する支払い率を高くしても差しつかえない、そういったことで個別に導入預金者と交渉に入りたい、こういうふうな経過でございます。
  43. 平林剛

    ○平林委員 大蔵大臣、これは初めてのケースですから、私がこれから指摘する問題点をよく頭に入れてときどきお答えをいただきたいと思うのであります。  高橋さんがいま説明をされた中で、担保が非常に少なくて預金者の保護という点において十分なことができないという点、これはまたあとで私申し上げます。それから導入預金については救済する必要がないということで——政府の見解じゃないと思うのでありますけれども、救済する必要がないということでこういう処理があったという説明がいまあったわけであります。そこで私は基本的問題としてお尋ねしておきたいと思います。導入預金はもちろん法律に禁ぜられておることですから、いけないことです。それを犯せば罰則がつく、これは法律の定めるところであります。しかし導入預金があると確認をされた場合におきましても、導入預金であるがゆえに金融機関がこれを支払わなくてもよいという法律的根拠がございますか。
  44. 田中武夫

    田中国務大臣 支払わないでいいというのじゃなく、実際支払う能力がない、こういうところでございます。
  45. 平林剛

    ○平林委員 私はこの問題について言っているのじゃない。今後の問題もあるから、大蔵大臣としての見解をこの問題を離れて基本的に聞いておきたいということなんです。
  46. 田中武夫

    田中国務大臣 導入預金をしてはならないという法律上の制約はありますけれども、導入預金であろうが何であろうが、いずれにしても預金をした者に対する支払いの義務はあるわけであります。ただ導入預金の場合には一般の預金者と違って、条件が違うわけであります。裏利息を払っているとか、いろいろな問題があります。ですからそういうものが優先順位において善意な一般預金者と差があることはやむを得ないことでありますが、支払わないでいい、没収に値するものだというような解釈は絶対に法律上はあり得ないことであります。
  47. 平林剛

    ○平林委員 導入預金の取り扱いについて大蔵省の方針、その基本的な考え方については、ただいま大蔵大臣から述べられたとおりでございまして、私も大体においてそれが原則であろうと思います。ただ今回の問題について、先ほど申し上げましたような経緯から問題が発生をいたしたわけでございますけれども、いろいろ大蔵省筋の示唆もあって、その処理をまかされた三団体におきましていろいろ協議した結果幾つも案があった、最終的には中央信用金庫の小野孝行さんがおれがやってやるということで、責任を持って四億円で処理をとりあえずはかったのですけれども、協議の段階においては幾通りか案があって、三団体それぞれ意見が違っていたということを私は聞くのでありますけれども、これは事実なんですか。
  48. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 こういうむずかしい問題でありますので、その経過においていろいろな意見が出てくるということは当然に考えられることであります。私どもはそういった意見経過というものはあまり重要視いたしません。最後にその三団体の全会一致の意向であるとして私どものほうへ申し出てきたものが一つ意見である、こういうふうに承知しております。きまるまでの過程においていろいろな意見が出るのは当然のことであると思います。
  49. 平林剛

    ○平林委員 経過は重視しない、最終的に出たものを見て判断したと言われる。しかし私は、先ほど大蔵大臣が基本的な考え方説明されたのはあなたもお聞きのとおりだと思う。いいですか、そうすれば三団体において具体的検討をした結果幾つも案があるときには、あなたは直接指導の責任者としてその報告をあらかじめ受けて、これはこうだ、あれはこうだという指導をしなければならぬ。私はその点あなた方の指導で欠けている点があるのじゃないかと言うのであります。三案について経過は重視しないというお話だけれども経過をお聞きになりましたね、それじゃその経過についてそれぞれの案について大所高所に立ってあなた方としてはどういうような意見を述べられたのですか。
  50. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 正直なところを申し上げまして、私は経過について詳しいことは報告を受けておりません。何か書きもので後日そういった途中経過が出たという話もありますが、本来そういうことはあまり好ましいことではありません。というのは、それぞれ自分の立場というものがございますので、協会内におけるそれぞれの自己の利益とからんだ発言等もございます。そういうものを一つ一つどもが重視していくというわけにはいかないのであります。報告がありましたときにもこういう線を出しました。一般の善意の預金者についてはあくまでも私どもが責任を持ちたい、しかし御承知のように導入預金者に対してまで支払いの義務はないわけです。不動信金の資産をもって払うということは当然であります。残余財産がかりに二割あればその二割を支払う。三割あれば三割払うというのがたてまえであります。導入預金者としては平等の権利を持っていると思います。問題は、切り捨てられるであろうところのものをどうするか。それを一般善意の預金者については当然の義務はないのだけれども、義務のない第三者が事実上の支払いをして差し上げる、こういうことでございます。導入預金者に対して特に冷遇するという問題じゃなくて、一般預金者に対して本来ならば得られないところのものも義務のない第三者が立てかえて支払う、しかもその第三者は場合によって、本来請求を受ける権利のあるものまで放棄してもいい、ここまでいって信用金庫の名誉を、信用を保ちたい、こういう考えでございますから、私どもとしてもその考え方が適当であると思いまして、特に向こうの考え方に対して変わった行政指導をしたわけではございません。大体私どもその考え方が最も常識的な線ではなかろうかと思ったわけであります。
  51. 平林剛

    ○平林委員 この処理をまかされた三団体が協議をして幾つかの案ができ上がった。その案そのものは大蔵省銀行局でいろいろ検討したんだけれども、あなたのことばをかりると、それぞれの立場があるから利益にからんだものもある。かりに三案をA、B、Cとしましょう。A、Bにそれぞれ利益にからんだものがあった、しかるにC案にはなかった、やはり私はこれは一がいに否定することはできないと思うのであります。あなたのことばにからむと、それぞれの処理についてそれぞれの団体の思惑があったのではないかという疑いを持つのであります。そこでA、B、Cとあった三案のうち、C案というのは一番低いのですね。四億円で処理をされておる。それであなたいま言われたように、一般の善意の預金者、導入預金の疑いがないものとこう区別をされておりますけれども、私はこの処理案全般をながめてみますと、どうも一番へたなやり方をしているんじゃないか。あなた、これは最善と考えたと言われるけれども、私に言わせると一番へたな解決のしかたをしたんじゃないか。大蔵大臣が当初説明されたように、こういう問題について預金者保護、あるいは信用金庫の信用という角度から見て、へたな結果になっている。そこに作意はなかったかもしれませんけれども、結果から見てそういうことをうかがうことが私はできるわけであります。  そこでお尋ねしますけれども、一説によると、これも風聞でありますからわかりません。しかしこの処理の中心に当たった中央信用金庫に対して、不動信用金庫の所在地である新宿区四谷にその支店設置を認めようとするといううわさがあるのでございますけれども、そういううわさを耳にしたことはございませんか。またそういううわさの根拠になるべきものがございますか。
  52. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いわゆるうわさというような形ではございません。これは推量し得ないことでありません。それはどういうことかといいますと、いま解散になりまして、これから財産を整理する。貸し金がございます。普通預金と相殺したようなものは除きまして、三億数千万の一般貸し付けがある。しかしこれも必ずしも全額回収し得るものではなくて、安全を見込みますれば、大体推計で二億ぐらい、それからごく一部でございますが、担保処分等が進めば、後藤観光からの分も若干入る。しかし整理をできるだけ早く進めませんと、経費ばかりかかりまして、だんだんと元金が減ってくるわけであります。問題になりますのは、その最後に残る建物はともかくとして、土地でございますけれども、土地が、非常に小さいものでございますけれども、とにかく店が一軒あったわけでございますから、不動信用金庫の本店——これは本店しかございません。それの土地、建物も処分して、返済財源に充てなければならぬ。その処分するにあたって、一体だれがそれを買うかという問題がございますので、そういうことにつきまして、場合によってはほかの適当な買い手が見つからない場合に、不動信金が買い取るということも考えられる。買い取るというのは、ただ有利に買い取ってあげるためには、せめてそこに支店ぐらい認めてもらうということでなければ、何のために買い取るのかわかりません。特にそこの不動信金は消滅してしまうわけであります。信用金庫がその土地になくなるという点からいいまして、そういうことも考えられるのじゃないか。しかし私どもは中央信金の理事長から、そういう申し出をいま受けておるわけではございません。ございませんが、資産処分にからんで、またその土地に信用金庫の店がなくなったという事実とからみ合わせて、いままで中央信金としては非常な犠牲を払っておることは確かでございます。この処理に当たりまして、相当つらい仕事であったろうと思います。ただ単に経済的な問題でなしに、精神的な負担も非常に大きなものだ、そういうことも考え合わせますと、考えられないことではないと思います。
  53. 平林剛

    ○平林委員 結局私がお尋ねしたように、不動信用金庫の所在地である新宿区四谷周辺に、中央信用金庫の支店を認めてもらいたいということはうわさでなく、実際問題の動きとしてあるということですね。その点はどうですか。
  54. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは大蔵省がそういう申し出を受けたというのじゃなくて、資産の処分をどうするかということから、そういうことも考えられるということを申し上げたので、その事実として、そういうことを向こうが非常に強く希望しているというようなことではないのであります。ただだれかに土地、建物を処分しなければ清算ができませんから、そうすればこれは常識的な線として、いままでもあそこのところにかりに出張所のようなものを設けまして、事務処理上やむを得ずそういうことをやっております。そういうことから推量のできることである、そういう申し出がもしあれば、私のほうで考える余裕はあるという事実を申し上げているわけです。
  55. 平林剛

    ○平林委員 この点は私あとで触れます。ただそういう裏づけといいますか、そういう動きがあったがために、三案の中で中央信用金庫の小野孝行さん提唱による四億の処理が採用された。同時にこの不動信用金庫についてなるべくなら解散手続があったときでも、その認可をなるべく延ばしておいて預金者保護の立場からもっと有効な処理のしかたがあったのにかかわらず即日解散手続の承認をしてしまった。私はこの問題の処理の背景にこういう問題があるのでないか、またそういう疑いを持たれると思う。私はそれゆえにこの問題について大蔵省の指導監督のやり方が、どうもわれわれの批判の対象になるのでないかという気持ちを持ったのであります。  そこで問題は、いま銀行局長は導入預金があった、こう言われるのですけれども、導入預金があったという根拠ですね。特に不動信用金庫において導入預金は支払わないということで問題があるわけでありますけれども、この導入預金についてどういう根拠でそれが導入預金であるという判断をなさったか。その点が私は少し疑問でありますから、事情をお話しいただきたいと思うのであります。
  56. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 通常導入預金というのはなかなかわかりにくいものでございます。この場合に、最終的に解放になるようなことになったのも、先ほど申したように、導入預金の金額が普通の預金に比べて大き過ぎるという問題、それは最初からリストがつくられておった。きわめて異例なことだと思いますが、これは導入預金であるとして当の利害関係者である後藤観光の社長後藤文二、それが認めたものがあるわけでございます。百八十五口に分かれておりますが、実際の人員ははるかに少なくて三十数名程度であると思います。その中には実際の名前でない者がかなり多うございますので、それもすぐにはわかりませんでした。名寄せその他をやってみますと人数はその程度である。後藤文二なる人物は後藤観光の社長であって、この不動信金の常勤でございません、非常勤ではありますが、理事をやっておった。不動信金の理事長は、名前、肩書き等については何ら後藤観光とは関係がなかったのですけれども、実体的には後藤文二のいってみれば使用人のような立場にあったということがあとから判明したわけであります。でありまして、その理事長と後藤観光の社長とは組んでやっておったことである。その間の事情を最もよく知っておる人物はこの二名であると思うのでございますが、この二名が署名したといいますか、確認をしたものです。これは一回だけではございません。あとになりまして個人的にはあなたの預金は導入預金でありませんというような証明書を書いたりしておりますが、しかしまたそのあとで、あの証明書は実はうそである、私の最初に書いた百八十五口の導入預金はまさしく間違いなく自分の会社に導入したものであるということを確認しております。ほんとうは導入預金であるかないかという議論はむずかしくて、裁判所へ持っていってもなかなか容易に解ける問題じゃございません。当事者が一番よくその事情を知っておるものと思います。その意味におきまして私どもは一応そのリストによって導入預金として間違いないものと判断をいたしたということでございます。
  57. 平林剛

    ○平林委員 この導入預金のリストの問題についていまお話がございました。いろいろ経緯があるように判断をされます。そしてこの問題の処理にあたって、大蔵省筋でも導入預金のリストでもつくれば救済資金が出るというような示唆をしたのではないか。それで、おぼれる者はわらをもつかむという気持ちで、導入預金のリストをつくって処理してもらおうというような根性でつくり上げたものでないかという疑いもいまのお話から推測されるわけであります。ただ問題は、いまあなたがお答えになった中で重要な点は、この百八十何口かは導入預金であると判断をしたとあなたは言われましたけれども、これは政府、つまり大蔵省銀行局長としてまさしくこれは導入預金であると判断をされたのですか。その点は重要だと思うのです。判断をされたのかどうか。
  58. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 非常に厳格な意味で、たとえば裁判所がくだす判決においてそう判断したというふうな意味ではございません。つまり私どもにも実態はわからない。わからないけれども当の自分の会社に金を導入した人、おそらくその裏では特利の約束も当然にあったと思います。その本人がそう認めた、しかもそれは一回だけではない。自分の供述、自分の書いたものに間違いないと言った以上、一応そういうものであると推測する——私訂正いたします。判断するといいますと、何かきめつけたようになりますから、私はそういうふうに推測したと言葉をかえておきます。
  59. 平林剛

    ○平林委員 そうでなければならぬ。あなたが判断したということになれば、もうこの百八十何口かは導入預金であるというらく印を押すことになるわけですね。そこであなたが一歩退いて推測したと言われたことも問題があると思う。大体あなたがいまお話になった後藤観光の何がしという人、あまり信用しておらぬようなお話がありましたけれども、それが出したりスト、それの話を通じて推測するということ自体に誤りがないとはいえない。そこで私は銀行局長にお尋ねしますけれども、導入でないと思われるものについては支払いをしなければならない、あなたもそういうふうに前におっしゃったという記録がございますけれども、その考えはいかがですか。
  60. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 どのような角度から見ましても導入預金ではないと確実に判断されるものは、善意の預金者として、たとえ支払い能力がなくても第三者が支払うという措置をとっておるのでございますから、それは信用金庫の全体の信用のためにあえてそういう措置をとるということでありますので、そういうものと同列に扱われてしかるべきものであると思います。ただしこの導入預金のリストに載ったもののうちに、同じ導入預金らしきもののうちでもいろいろニュアンスの差はあるんじゃないかと思います。たとえば非常に確実にこれは導入預金になるのだということを意識して預金をした者もあるでしょうし、中にはそれほどの事情をあまり深くは知らない、大体少しおかしいとは思いながらも預けたという例外的なものもあるのではないかと思います。
  61. 平林剛

    ○平林委員 そういう程度のものであるにかかわらず、大蔵省銀行局としてこれを導入預金であると推測をし、それに籍口して預金者の利益が守られないということに相なりますというと、あなたのその発言もやはり相当の指導上の責任はあると思うのです。たとえばもし導入預金でないという判定があったときに、今日まで支払いを延期し、またそれに多大の迷惑をかけた、これに対して大蔵省に対して損害賠償なりあるいはそうでないものをいままであなたのことばの中にもありましたけれども、導入預金だというらく印をつけた。そうなれば一つの名誉棄損でもあります。かりにそういう責任を問われた場合でも、あなたはこれは推測してそういうふうに示唆したんだと言って、責任を持ちますか。
  62. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私どものほうから、これが導入預金だと言ったのは事実に反するわけでありまして、経営の管理等に当たった方々がみな寄り集まって、これは導入預金として扱おうじゃないか、こう言われたのに対して、私どものほうはそれ以上のことは言えない、それがそうでないということを私どもは調べる権限も何もございません。方法がないのです。金融機関に対する立ち入り検査権はありますけれども、一般人預金者等について私どもがこれを調べるという権限もございません。ですから客観的に見てそういうものとして扱うのに格別の支障を感じない、私どもとしても大体同感であるというふうに扱ってきたわけです。私どものほうがこのリストを導入預金として扱うべきだということを強調したのではないのでありまして、しかし、いまお話しのようなことで中に間違いというものがあるいはあるかもしれません。あるかもしれませんが、おそらくちょっと考えまして、何の恨みもないのに、後藤文二なる人物あるいは三輪理事長という信用金庫の理事長が、導入預金のリストにわざと載せるということはない、そうは考えられないでしょうか。故意に導入預金扱いすることはない、自分が導入したものなんですから、その点はよく知ってのことでないかと思います。ですから、かりにお気の損な事情の者があったといたしましても、そのために支払いを受けることがおくれた、こういたします。しかし、それは何ら損害賠償というようなものには当たらないんじゃないか、当然受けるべき支払いの権利というものは、不動信用金庫の財産から受けるべきだ。第三者から受ける権利はないわけですから、それに対する損害賠償ということはないんじゃないかと思います。
  63. 平林剛

    ○平林委員 どうも高橋銀行局長考え方が、この処理の指導につきまして、私は預金者保護という立場において消極的なものを感ずるわけです。あなたのお話にもありましたように、そうでない者もあるかもしれません。あるいは事情を知らなかった者もあるかもしれない。そういうものがあるかもしれないということを考えながら、これについてやはり積極的な解決、預金者保護という立場から指導するという態度に欠けておるものがあるのではないか、こう思うのです。あなた、どうですか。
  64. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 私はそのように考えません。と申しますのは、いままで金融機関というものは大蔵省の監督——中に信用組合のように県知事の監督に属しているものもありますけれども、とにかく何か非常な保護を受けておるんだ、だから金融機関は今回のように、いかに乱脈なる経営を行なっても絶対大丈夫だ、むしろそういうふうな悪弊があったのではないか。今回初めてこういう問題から倒産に至りましたが、金融機関であるがゆえにどのようなばかばかしい貸し出し、放漫なことをやっておっても、絶対つぶれないんだというのはむしろ間違っておる。導入預金者というものは、中に職業的なものがおるわけです。非常に悪質な者がむしろその盲点をついておる。言ってみれば金融機関の窓口を利用して、その舞台を利用してうまい汁を吸っておるという者があるようでございます。これは業界の方々もそういった導入預金者みたいなものがときどきある、それにうまいことしてやられるというふうなことがある、そういう者とはこの際はっきりと対決をしてもいいんじゃないかという考えがあったわけです。それが全部の意見であったかどうかは別といたしまして、結論はそうなっておる。そういう考え方に対して私たちもある程度同感であるという感じを持っております。いかなる者もすべて金融機関の名前のもとに一〇〇%の保護を受けるべきである、受けられるというふうには思いません。しかしそのような事情のない善意な預金者に対しては、いかなる場合においても、できるだけの保護を加えるのが私どもの責務ではないかと考えております。
  65. 平林剛

    ○平林委員 私が指摘をしておるのは、悪質な導入預金の常習者のことを言っているんじゃないのです。あなたがいま言われたように、事情をよく調べてみると、そうでないかもしれぬという人たちは、やはり保護されなければならぬということを言っておるわけです。それからあなたが得た資料の中でも知らぬところがあるようですね。あなたはまだこの経緯についてつまびらかでないところがある。だからそんなことを言っているんだと思うのです。この点はもう少し研究をして、いま最後にお話がありましたように、善良な預金者であった者についてはすみやかに処理を進めるべきだと思いますけれども、いかがですか。
  66. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その残された、導入預金の表に載った方々の預金の始末につきましては、今後もおそらく小野孝行氏を中心に個別な折衝によって進められると思いますが、しかし原則的には大体二割か三割か知りまんが、残余財産の評価にもよりますが、その程度のものをまず払うということで個別折衝に入りたいというふうに聞いております。最初からこれは導入預金である、ないという区別をうまくできるものかどうかにつきましては、私どもも監督の立場からもこれはなかなかさばきにくい問題じゃないか。実際その衝に当たる人にとってみれば、神さまでない限り、これは絶対的に白である、黒であるというふうにきめつけることのきわめて困難な、むしろ不可能とも言うべき問題ではないかと私どもは思っております。
  67. 平林剛

    ○平林委員 私はこの処理をめぐって、大蔵省の指導の中にも欠くる点があったということを指摘しましたが、そのうちのもう一つの問題は、不動信用金庫を結果的に倒産に導いて、この解放を認可さしてしまったという点にあると思うのです。もちろん悪質な導入預金に対しては、やはりき然とした態度があっていいと思うのですけれども、そうでないものまで巻きぞえを食ったという点においては問題が残るだろうと思うのです。特に不動信用金庫の解放登記を待ってもらいたいという要請があったのにかかわらず、二週間の余裕期間も待たないで即日これを認めておるのです。この解放登記を即日許可したというような点に一つの問題がある、そして、なぜ不動信用金庫の解放を急いだのか、こんなに急がなければならなかったのか、少なくとも幾つかの案があり、問題があると考えたならば、認可するのは大蔵省の都合でできるわけで、期間をおくことができるわけですから、その間においてなぜ適当な処理をしなかったかという点がやはり問題として残る、なぜ急いだかという点があると思うのです。これは即日登記を認可してしまったという理由はどこにあるのですか。
  68. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 形式的には申請が出て、非常に早く認可いたしました。しかしそういうふうなことになるということは、それ以前から十分に連絡を受けておったわけであります。それから、三団体のほうから、あるいはその代表者のほうから違った意見があるということは、その当時においては何ら私は承っておりません。これは全体の一致した意見である。いま御質問に言われた、もっと待ってもらいたいというのは、比較的大口の導入預金者の何か弁護のようなものを頼まれておった人から陳情を受けたことはございます。しかし、そのようなものに特に配慮しなければならぬ、何かいい案でも持っていればいいと思うのですけれども、そうではなくて、要するに事態をもっと引っぱっておいて、何か導入預金着側に有利な方法が出てこないかというような気持ちとしか受け取れませんでした。私どもはそれに対して、そういうことよりも、やはり協会側の意見を尊重すべきであるし、それは十分に事前に連絡を受けておりましたので、形式的には非常に早い認可でございましたけれども、実質的には何ら突然のことではございません。
  69. 平林剛

    ○平林委員 高橋銀行局長はときどき何の根拠もなく、預金者の中にはおかしいものがあるというような言い方をされるのですが、そういう先入観、偏見というのが問題をこじらせるのです。非常にあなたは無責任だと思う。そういうことを言う根拠があれば別ですよ。単なる信用問題だけでそういうお答えをするというのは私は間違いがあると思うのです。特に不動信用金庫のなくなったあとに中央信用金庫の代理店、支店が認められるということなどは、私はやはりこの処理をめぐっての情勢の中から穏当を欠くものがあると思うのでございまして、いま前段にお答えになりましたように、解決すべきものは解決していくという積極的な熱意が見られない限り、相当考えなければならぬ問題があると思うのであります。特に銀行局長に聞いておきたいのですけれども、この不動信用金庫の処理をめぐって中央信用金庫が零細資金のほうを払い戻したということは、私はある意味では優先順位としていいと思います。しかし事実上相当の数の預金者が中央信用金庫のお得意になったという事実は指摘できると思うのです。  それからもう一つはかりに不動信用金庫のなくなったところで中央信用金庫が営業権を持つことになれば、その営業権の対価というものはかなりに踏んでいいものじゃないかと思う。そういうことを考えますと、財源にいい案があれば別だというお話もありましたけれども、そういう点も配慮しながら、あなたのほうでこの問題についても預金者保護の立場から積極的な指導をしてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  70. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 預金者の実際の人員としては千数百名ぐらいでございますが、法律関係は別でございますけれども、零細な善意の預金者には事実上実際に全部立てかえて払っておる。たてまえは預金を振りかえるというようなことでございましたけれども、実際には全額の払い戻しをした例のほうが非常に多い。ですから不動信用金庫が新しい預金者なり、何なりお得意さんとしてつかんだものの数は比較的少ないというふうに私どもは見ております。現金で支払いをしてしまったもののほうが圧倒的に多いのでございます。  それからまた店の始末でございますが、私は、中央信金のいままでの経緯にかんがみて、そうするのが一番自然ではないかというふうに思いましたけれども、しかしそれをきめているわけじゃない。もしそういうことについて協会内部等におきまして非常に不満があるということであれば、私はそういう事情も勘案してきめなければならぬと思う。いずれにいたしましても、その店の処分というものはなるべく早いほうが導入預金者にとっては便利でございます。かように考えております。
  71. 平林剛

    ○平林委員 あと一問でやめます。たとえば現在処理されている四億円、これは数千口の零細預金者の問題でございますけれども、かりにある預金者が返してもらえないということを理由にして破産の申告を訴えた場合には、これが確定すれば一たん処理された零細な預金者にまで迷惑が及んでくるという結果になるわけであります。こんなことはすまいと思いますけれども、かりにそういうようなことが進行いたしますと、すでに支払い済みの零細預金者に対しても影響がこないとは言えません。私はそういう意味から考えまして、この問題の処理をめぐってまだ幾つか指摘すべき点は残っておりますけれども大蔵省銀行局においても、今度の処理をめぐって私どものこういう批判があったということも頭に入れながら善導してもらいたいということを希望いたしまして、私の質問はこれで終わりにしておきたいと思います。      ————◇—————
  72. 山中貞則

    山中委員長 この際、国の会計及び外国為替に関する件について調査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。武藤山治君。
  73. 武藤山治

    ○武藤委員 いよいよ日韓会談もたいへん進捗をしてまいりましたので、特にさいふのほうを預かる大蔵省にいろいろな角度からお尋ねをしてみたいと思うわけであります。  最初に大蔵大臣にお尋ねをいたしますが、韓国に対する無償三億ドル、有償二億ドルということは、すでに政府部内では確定をした数字なのか、その点を明らかにしてもらいたい。
  74. 田中武夫

    田中国務大臣 これは、日韓交渉が正式に妥結した場合にはそのように決定をするということで合意に達しておるというふうに理解をしております。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 そこでその三億ドルのほうの内容でありますが、どういう積算の基礎で無償三億ドルという計算が出てきたのか、それを明らかにしてもらいたい。
  76. 田中武夫

    田中国務大臣 これは私がその積算の衝に当たったわけではありませんからつまびらかにいたしませんけれども、しかしこれは積算ということでこまかく積み上げたということよりも、先方側がもっと非常に大きい数字——私も十分こまかいことは承知いたしておりませんが、一説には十何億ドルとかいうような要求があったわけでありますし、こちらのほうは、そういう問題に対しては証拠のあるもの以外はなかなかできないということで、長いこと十何年間もやっておるのでございます。しかし韓国というものが、御承知のとおり三十六、七年間同一の国家を形成しておったものが、この戦争の終結の結果分離をして、新しく独立をしたという特異な事情にありますので、無償三億ドル、有償二億ドルということで日韓交渉のすべてが片づくという円満妥結の状態になったらそういたしましょうということで合意に及んだわけでありまして、どういう内訳か、どういうふうにして合意に達したかということは申し上げられないと思います。その間の事情を簡単に一つの例をとって申し上げれば、当時の郵便貯金とか簡易生命保険とか未払いの賃金とか、そういうものを戦後の物価に換算すると相当多いものになるからというようなこともあるようでございます。いろいろな要求があったようでございますが、そういうことよりも、お互いがもう少し高度な立場で、いろいろ過去の特別な事情がありますから、まあひとつ三億ドルの無償というふうにおおむねの合意ができておると理解いたしております。
  77. 武藤山治

    ○武藤委員 私が尋ねておるのは、そういう高度の政治的判断で三億ドルがきまったということはすでに前国会における予算委員会でも耳にしておるのでありますが、さいふを預かる大蔵省とすれば、たとえばこういうものと、こういうものと、こういうものとの項目を全部あげて、個々の数字はわからぬでも、全体としてこれをひっくるめて三億ドルということで了解をとるのだ、何かそういう項目くらいはあると思います。全く項目もなくて、総理大臣大蔵大臣が相談をして、まあ向こうがこれだけ言ってきたのを三億ドルならまあまあよかろう、こんな大ざっぱな形で三億ドルの賠償がきまるとは考えられない。そこで三億ドルの根拠を明らかにしろといっても無理でしょうから、その三億ドルの基礎にはどんな項目を含んでおるのか、その項目だけでも明らかにしてもらいたい。
  78. 田中武夫

    田中国務大臣 請求権につきましては、御承知のとおりいろいろなことを具体的に申してきたわけであります。これは徴用時代の賃金の未払い、それから恩給を一体どうするのか。いまなお未払いになっているものがあるわけであります。一生を九十歳まで生きると仮定して、現在の改定ベースにした場合幾らになるとか、それから郵便貯金の問題、簡易生命保険の問題いろいろございます。そういうものがたくさんあるわけでありますが、中には戦時中日本でなくなった人に対して慰謝料を一体どう払うのか。当時は自動車の事故でもってなくなったというふうに計算をしてみても、日本がいっているような金額じゃないというようなこまかい要請はあるようでございますが、そういうことをどこまで詰めてもなかなか詰まる問題ではありません。それにもう二十年もたっておる問題でありますから、なかなかそううまくいきませんので一まあ外交というものは御承知のとおり、これは賠償とか請求権とかいう問題になると、向こうは非常に高く言うし、こちらは出したくないということでいきますので、なかなか合意に達する金額に対して理屈をつけるということは一つけてつけられないことはないでしょうが、なかなかむずかしいということは御承知いただけると思うのです。今度はそれよりももう少し飛躍をしておりまして、有償、無償の援助を行なうことによって、請求権等は自然消滅をするということでひとつ宣言をしよう、こういう非常に新しいやり方を外務大臣考えられたわけでございますので、三億ドルという無償が、向こうの請求権の要求項目の何に値するのかということは言い得ないわけでございます。全然別な角度から、別な立場において三億ドルの無償をやろう、こういうことになっておるわけでございます。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 事務当局がそこにいらっしゃいますから、ちょっとお尋ねいたしますが、あなたたちは国民の税金というものを支出する場合に、総理大臣なり大蔵大臣なりが内容のわけのわからない、高度の政治判断によって、おまえこれだけさいふから出せ、こう言われればそれに何ら疑問も感じない、抵抗もしない、そうですかと言ってその金額をのむのですか。役人としてのあなたたちの態度ですね、これをひとつ聞かしてもらいたいのです。
  80. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいま大蔵大臣から御答弁申し上げましたとおり、権の法律問題あるいは事実問題を詰めておると申しますか話し合いをしておる段階におきましては、いろいろな項目につきましてお互いの法律関係、あるいは事実関係意見交換をしておったわけでありますが、今回の無償三億ドル、有償二億ドルの経済協力という問題は、そういう法律関係、事実関係をいつまでやっておっても両国間の問題の解決にならないということで、新しい観点できめられた金額でございます。したがってわれわれとして、事柄によりまして筋の通った計算で出てくる問題もありますが、こういう非常に高度の政治的判断を要する問題につきましては、そういう大所高所から判断をされた金額によることは当然だと考えております。
  81. 武藤山治

    ○武藤委員 吉岡さん、いま、中には筋の通った計算も出てくるものもあるがと、その筋の通った計算が出てくるものとは一体どういうものをあなたたちはいま把握をしておるのか、それをまず第一に明らかにしていただきたい。
  82. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 多少申し方が悪かったかと思いますが、事柄によりましては単価があり、かけ算があり、当然出てくるというような性質のものもあると申し上げたのでありまして、今回のこの経済協力のような事柄はそういう性質のものではないということを申し上げたわけでございます。
  83. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、先ほどの答弁の筋の通った計算のしかたできちっと出るものもあるというのは、今回の三億ドルの問題の中に含まれているという意味じゃないのですか。そういうものは全然なくて、今度の三億ドルの場合には、全く計算の基礎は大蔵省としてはわからぬ。もう高度の政治的判断で、おまえ出せというので、ただそういう事務上の処理をするというにすぎない、こういう態度ですか。
  84. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいまおっしゃったとおり、事柄の性質上そういう事柄の性質だと思っております。
  85. 武藤山治

    ○武藤委員 そこで大蔵大臣、御存じのように韓国と貿易をやったときのこげつき債権が今日まだ残っております。そのこげつき債権というものは、一体今度の三億ドルの合意に達する場合にはどうなるのか、これをひとつ……。
  86. 田中武夫

    田中国務大臣 オーブン勘定として四千七百万ドルばかり残っておると思います。この金額に対しましては、貿易の金額でありますので、この日韓交渉を契機にしまして、一定期間にこちらへ支払っていただくということで合意に達しておるわけであります。
  87. 武藤山治

    ○武藤委員 確認いたしますが、これは貿易じりのこげつき債権であるから、お互いが今度の請求権を一切消滅させるという合意に達しても、これは別勘定として、この四千五百万ドルは取り立てる、今後もこれをもらうんだ、こういうことになりますか。
  88. 田中武夫

    田中国務大臣 オープン勘定の残額四千万ドル余につきましては、別個に当然支払っていただく、こういうことでございます。向こうも支払います、こういうことでございます。
  89. 武藤山治

    ○武藤委員 中国との貿易の場合と、韓国の貿易との場合の勘定の扱いは同じですか、違いますか、それを一つ
  90. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 中国と申しますと、台湾の関係でございますか、それとも中共の関係……。
  91. 武藤山治

    ○武藤委員 中共。
  92. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 中共は、これは現金決済のシステムになっておりまして、向こうから輸入した場合には代金を支払いますし、輸出した場合には一件ごとに代金を受け取る、こういう関係になっておるのでございます。韓国の場合には、昭和二十五年からオープン勘定決済のシステムをとっておりまして、お互いに輸出入を帳簿に載せまして、その差額が二百万ドルをこす場合には、こした分について現金で決済するというたてまえをとっておるわけでございます。ただし、韓国が一時日本の貸し越し残高につきまして支払いをいたしません時期がございまして、それで現在四千五百万ドル余の貸し越し残高になっておりますが、これにつきましては、三年ほど前に新しく協定を結びまして、四千五百七十二万九千ドルをこしました分につきましては翌月の十日までに支払う。また当月におきまして、さらに貸し越し残高プラス二百万ドルをこしておる分については直ちに支払うという協定ができておりまして、その協定は現在まで順守されておる次第でございます。
  93. 武藤山治

    ○武藤委員 私はしろうとでよくわからぬのでありますが、韓国取引の勘定だけMOFを使って、中国などの場合は、業者は輸出入銀行を使うのですが、そういう差を、国交回復をしていない国の場合に同一取り扱いをしないというのは、一体どういう根拠でそういうことになるのか、それを明らかにしてもらいたい。
  94. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 オープン勘定は、決済は戦後占領時代に日本が外貨資金をほとんど持っておりませんものでしたから、現金の受け渡し、受け払いができませんものでございますから、非常に多くの国々とオープン勘定協定を結びまして、それによって決済をしておったのでございます。しかしながら外貨準備が蓄積されてまいりますとともに、この二国間の支払い協定方式というものは逐次撤廃されまして、それからIMFの規約から申しましても、この二国間の支払い協定というものはできるだけ早くやめろということになっております関係もございまして、逐次整理をいたしまして、現在最後に残っておりますのが韓国とのオープン勘定でございます。したがいまして、この撤廃につきましてはしばしば韓国側と交渉もいたしましたし、かつ三年ほど前にオープン勘定残高の支払いにつきまして韓国側と交渉いたしました際も、両国はできるだけ早くこの支払い協定をやめるように協議するという条項もございまして、私どもとしてはしばしばその後も韓国側に申し入れをしておる次第でございます。今回IMFの八条国移行に伴いまして、やはりこの日韓のオープン勘定は八条国移行につきまして義務違反になりますから、これは両国で協議しておるということで、一応留保というかっこうになっておる次第でございます。したがいまして、中国あるいは北朝鮮その他韓国以外のすべての国の決済は現金決済ということになっておりまして、何ら差別的な取り扱いはしておらないのでございます。  それから輸出入銀行の金融の点について申し上げますと、これは延べ払い輸出につきまして政府の輸出許可のありました分につきましては、輸銀の資金をつけるということになっておりまして、これも特別な差別待遇は国によっていたしておりません。
  95. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣にお尋ねしますが、MOF勘定になっておるこのこげつき債権が、八条国移行になると義務違反になる。こういうような性質のものを、いつごろを目途にしてこれを解決しようと韓国と交渉しておりますか、大臣のお考えをひとつ……。
  96. 田中武夫

    田中国務大臣 どのように交渉しておるかという交渉の内容をこまかくは承知いたしておりませんが、日韓の国交が正常化されればIMF八条国移行に際しましても特認事項になっておるのでございますから、早急にかかる措置はやめなければならないということでありますので、正常化を機会にして解消さるべきだということだと思います。
  97. 武藤山治

    ○武藤委員 四千五百七十二万九千ドル程度の借金が払えない韓国の経済状態というものを、大臣はどのように認識をされますか。
  98. 田中武夫

    田中国務大臣 これはいまやって払えないのではなくて、昭和二十五年からの非常に古いものであります。特に朝鮮事件等がありまして非常に向こうが急激に南北に分かれたり、また疲弊をしたり、そういういろいろな問題があります。外貨事情もそう新興国として余るほどあるわけではないわけでありまして、その後三十六年にただいま為替局長から申し上げましたとおり、新しく発生するものに対しては発生主義で全部清算をする、しかもその協定どおりに行なわれておって、まあ何と申しますか、こげつき債権と言っておりますが、大体そういうものだと思います。たな上げになっておるこげつき債権というものは、できるだけ早い機会に正常な状態をつくるためにも返済が望ましいということを考えます。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 昭和三十六年の四月二十二日に交換公文を作成して以来今日まで、こげつき債権は何ぼ返済になりましたか。返済の金額は幾らにあたりますか。
  100. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 韓国側は四月二十二日の協定以後は着実に四千五百七十二万九千ドルをこす分につきましては、協定どおりきちんきちんと支払ってまいっておるのでございます。したがいまして、一九六一年につきましては一千七十七万二千ドルを払っております。六十二年につきましては五千九百八十五万五千ドルを支払っております。それから昨年の六三年につきましては四千七百八十一万三千ドルを支払っております。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 それは局長、いまの答えはおかしいですね。交換公文できめたこげつき債権総額が四千五百七十二万九千ドルでしょう。それをいまあなたは六二年に五千九百八十五万ドル、六三年が四千七百八十一万ドルというのは、現在の残額は四千五百万ドルでなくて、たいへん少なくなっておるわけですか、現在は幾らですか。
  102. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 これは四千五百七十二万九千ドルをこす分を、毎月向こうが決済した金額の総計をただいま申し上げたわけでございます。したがいまして、現在の残高もやはり二月末で四千五百七十二万九千ドルということになっております。この分はこげつきで、協定によりましてこの分をこす分について向こうは現金決済するということになっておりますものですから、残高は依然として残っておるわけでございます。
  103. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしてみると、こげつきは一銭も払われていない、こういうことですね。私が聞いておる答えはそれなんですよ。これはいまのは貿易額ですね。  そこでついでにお尋ねしますが、過去三カ年間の韓国との輸出入実績、これをひとつ明らかにしてください。
  104. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 オープンの収支を申し上げますと、オープン勘定では六一年に受け取りが、要するにこれは帳簿上の問題でございますから、帳簿上で三千二百三十七万二千ドル、支払いが千九百七十五万五千ドル、六二年につきましては受け取りが八千四百十二万二千ドル、支払いが二千百八十八万六千ドル、六三年につきましては受け取りが六千八百四十万七千ドル、支払いが二千六百二十六万九千ドルということでございます。  それから輸出入につきましては、これはアメリカの援助資金等によって現金で買い入れて韓国側が決済した分がございますので、輸出入の貿易額は為替統計によりますと、一九六一年につきましては輸出が七千三百八十三万八千ドル、輸入が二千一万四千ドル、差し引き当方の五千三百八十二万四千ドルの輸出超過になっております。六二年につきましては輸出が一億一千五百八十二万六千ドル、輸入が二千四百六十五万一千ドル、差し引きいたしまして九千百十七万五千ドルの輸出超過になっております。六三年につきましては輸出一億三千二百七十七万ドル、輸入は二千四百十二万四千ドル、差し引き一億八百六十四万六千ドルの輸出超過となっております。
  105. 武藤山治

    ○武藤委員 大蔵大臣に先ほど答弁を願ったのでありますが、大臣、このこげつき債権は今回の日韓会談の請求権消滅に関する事項の中には完全に含まれませんね。しつこいようですが、もう一回確認をしておきます。
  106. 田中武夫

    田中国務大臣 四千五百万ドル余いま残っておるわけでありますが、この金額は全然別に支払っていただくこういう合意に達しておるわけであります。
  107. 武藤山治

    ○武藤委員 次に、閉鎖機関の特殊清算状況についての中で特に韓国に関係するものでありますが、朝鮮金融組合連合会の資産が今日閉鎖機関に凍結をされておるわけであります。それの経過、現状、これからこれをどのように処理をするか、こういう点についてひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  108. 田中武夫

    田中国務大臣 朝鮮金融組合連合会の終戦時の国内資産は十三億六千五百三十八万九千円、国内債務は二億四千五百二十一万二千円、国内資産の内訳は、現金及び預金二百二十一万三千円、国債が二億八千万円、株式等が十億八千二百万円、それから未収金等四万三千円、不動産、什器等三万四千円、計十三億六千五百三十八万九千円、こういうことになっておるわけでございます。現在、清算は実質的にはほとんど終了いたしまして、資金十二億九千百八十五万四千円、昭和三十九年二月二十九日現在でございますが、これを保有しております会員の名称、各会員の出資額等が確定できないと在外資産、負債等が不明であるために、清算が結了できないという状態であります。
  109. 武藤山治

    ○武藤委員 いま大蔵大臣事務当局から渡されたメモを読み上げたとおり、当時朝鮮にあった金融組合連合会か十二億四千万円——いまの大臣のは十二億九千万と差があるのでありますが、私が持っておる資料が間違いなのか、大臣の資料が間違いかわかりませんが、ともかくそれだけの金が閉鎖機関にある。これは今回の日韓会談によって一体どういう処理がなされるのか、これもお互いの請求権を消滅するという相殺の勘定に入るのか、その点は一体どのように話し合いを進めてまいりましたか。
  110. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいまお尋ねの件は、韓国側からの日本に対する請求項目項目があったわけでございますが、その第四に、韓国に本社、本店または主たる事務所があった法人の在日財産の返還請求という項目がございます。その項目の中の一つとして、そういう請求と申しますか話がございましたが、私どもの持っております法律的な解釈と異なる点がございまして、両方の意見が合わないままでおるわけでございます。
  111. 武藤山治

    ○武藤委員 事務局に一つ尋ねてから大臣答弁を求めますが、韓国側から要求された八項目、これをひとつ議事録にとどめておきたいので、一から八まで発表してください。
  112. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 韓国側の対日請求要綱、いわゆる八項目内容を申し上げます。  第一は、「朝鮮銀行を通じて搬出された地金と地銀の返還を請求する。本項の請求は一九〇九年から一九四五年までの期間中日本が朝鮮銀行を通じて搬出していったものである。」  それから要綱の第二は、「一九四五年八月九日現在の日本政府の対朝鮮総督府債務の弁済を請求する。」という項目でございまして、この中に郵便貯金あるいは貯蓄債券、簡易生命保険あるいは海外為替というものが入っておるわけでございます。  それから第三は、「一九四五年八月九日以後韓国から振替又は送金された金員の返還を請求する。」という項目であります。  第四は、「一九四五年八月九日現在韓国に本社、本店又は主たる事務所があった法人の在日財産の返還を請求する。」ただいま申し上げました項目であります。  それから第五は、「韓国法人又は韓国自然人の日本国又は日本国民に対する日本国債、公債、日本銀行券、被徴用韓人の未収金、」あるいは損害補償あるいは恩給関係その他非常に多くの項目が入っておるわけでございます。  第六は、「韓国人の日本政府又は日本人に対する権利の行使に関する原則。」という抽象的な項目であります。  第七は、これら請求に伴う諸果実の返還の項目であります。  第八は、この請求の支払い方法について、六カ月以内に支払ってほしいという項目でございます。
  113. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいま報告のありましたとおり、第四項目の請求事項の中の韓国にあった本店または支店の在日財産、これも韓国側の請求の中に含まれておるようでありますが、一体この十二億四千万円はどういうことになりますか。
  114. 田中武夫

    田中国務大臣 日韓交渉が正式にまとまれば一切の要求はなくなる、こういうことが前提でございますので、請求権が消滅するわけであります。でありますから、その後は日本政府のものになるのだろうというふうな気持ちもいたしますけれども、貸借関係、相手方の事情もまだ不明でありますので、こういう問題の調査と相まちまして慎重にこの帰属をきめるということになると思います。
  115. 武藤山治

    ○武藤委員 日本政府のものになるかもわからないし、あるいは慎重にこれから帰属をきめる、こういう答弁でありますが、一体この十二億四千万円は、日韓会談が締結された後にどこに帰属すべきものであるか。当時の朝鮮金融組合連合会というものは京城に本部があって、当時の役員なども日本に現在おるわけですね。おるのは御承知になっておるでしょうね。もし日韓会談後、締結された後におけるこの金の行くえというものは、どう処理することが妥当であると事務当局はお考えですか。従来皆さんの処理をしてきた慣例から見てこれはいかがですか。
  116. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 現在朝鮮金融組合連合会が保有しております資金は、十二億九千百万円で、十二億四千万というのは少し昔の数字かと思います。御承知のように、朝鮮金融組合連合会は現在清算過程にございまして、了することがはなはだ困難でございます。それは出資者の名称、人数あるいは在外関係の韓国にあります債権、債務というものが一切不明でありまして、国内にあります資産、負債というものを整理いたしまして、現在保有しておる金額が十二億九千百万円ということでございます。したがいまして、清算が終了いたしまして分配すべき金あるいは第二会社に移行すべき金というものはまだ未定であるわけであります。したがって、これをどういうふうにするかということも、まだ検討すべき段階にもないと思うわけでございますが、日韓関係が始末がつきまして、韓国にあります債権、債務というようなものを調べることができる、あるいはどういう人たちがこの組合員であったかというような構成がわかるという後において慎重にきめるべき問題だというふうに考えております。
  117. 武藤山治

    ○武藤委員 慎重にきめるべきものであることは当然でありますが、従来の慣例、取り扱い上の慣習があるわけですね。こういうものはどう処理するのが最も妥当であろうか、そういうややの目安は一案、二案、三案といろいろな案が考えられますが、どれをやるかは別ですよ、それは大臣の決裁や何かもあるでしょうし、いろいろ高所から見た政治的な判断などということばがありますから、そんなことでどうなるかわかりませんけれども、何かこういうものが考えられるという範囲のものは一案、二案、三案とあるんじゃないですか。そういうものもまだ検討したことはございませんか。考えたこともありませんか。
  118. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 どういうふうにこれを処分するかということを、大蔵省の今後のとるべき方針という角度で検討したことは実はまだないのでございますが、私ども事務当局が考えております点は、もしも清算額が確定をいたしまして、そうして韓国側の請求権もこれに対してないという段階になりましたならば、清算で確定いたしました金額を韓国側に返すべきいわれはもちろんないわけでございます。したがいまして、これを何らかの方法において利用するということになりますが、その際これを国庫に帰属さすべきかどうかという点につきましては——朝鮮金融組合連合会というのは六百余りの朝鮮にございました金融組合、産業組合等の団体が構成しておる連合会でございまして、その単位組合には日本人あるいは朝鮮人の方々の預金が入っておったわけでございます。そしてその預金をしておられた日本人の方々は、現在日本に引き揚げてきておられる。そういった問題とも関連をいたしまして、単純にこれらの金を韓国が請求権がないからもう返さぬでよろしい、返す相手がないから国庫に帰属させようという割り切った立場と、引き揚げてきた日本人の方々の預金が実質的にそれに関係があるんだという関係とも関連いたしまして、今後慎重に検討いたしたいということを申し上げておるのでございます。
  119. 武藤山治

    ○武藤委員 これはもう少し時日が経過をしてからさらに質問をしたいと思います。  次に、接収貴金属の中に当時朝鮮人が出したものが含まれておるのかおらぬのか、この点はいかがですか。
  120. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 接収貴金属の返還問題につきましては、接収貴金属等の処理に関する法律というのが出ておりまして、法律を施行いたしました三十四年の五月三十一日から五カ月以内に請求をしたものに対してその内容を審査して返すべきものは返すということになっておるのでございまして、現在までに六百二十七件の請求が出ております。そのうち韓国人から出た請求は一件ございました。ただその内容は、法務省が没収をいたしました貴金属について返還をしてくれという内容のものでございまして、接収貴金属等の処理に関する法律に基づいて返還すべき内容のものでございませんでしたので、これを却下いたしております。それ以外にはございません。
  121. 武藤山治

    ○武藤委員 現在の接収貴金属の保管数最、それを今日の金額に面した場合どういうことになるか、金額と数量をひとつ明らかにしてもらいたい。
  122. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 接収貴金属等の処理に関する法律を施行いたしましたときに接収いたしました貴金属の評価額でございますが、金におきまして約四百十七億、銀で約百八十億、白金で八億、ダイヤが七十二億で、約六百八十二億。三十四年の六月に日本銀行にございました接収貴金属の量は、ほぼ六百八十二億というふうに見ておるのでございます。
  123. 武藤山治

    ○武藤委員 現在どのくらいあるかということをお尋ねしておったわけでございますが、それは三十四年の数字でございますね。あとで現在の数字を出してもらいます。  それともう一つ特別会計予算書の九二ページに、造幣局の予算項目の中に接収貴金属未返還品というのがありますね。これはこの接収貴金属とどういう関連を持っておるのですか。造幣局の特別会計にある貴金属の項目と……。
  124. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 造幣局の特別会計の中にありますいまお話しの勘定は、造幣局が進駐軍に接収されました貴金属で目下接収貴金属等の処理に関する法律に基づいて返還を請求中のものだと思いますが、私、その点よく存じませんが、おっしゃったものはそうだと思います。
  125. 武藤山治

    ○武藤委員 これは予算書の九二ページに明らかに記載されておるわけでありますから、後日これは一体どこの進駐軍に接収されておるのか、どういう形態の実態を持つものであるか、ひとつ明らかにしてもらいたい。  それからもう一つ、先ほど韓国人から一件没収されたものもこの中に含まれている、こういう答弁でありましたが、これは没収をされたものであるからということで、全然返還の必要はないものであるかどうか、この点はいかがですか。
  126. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 進駐軍が接収をいたしました貴金属を返還するというのが、この法律に基づいて現在私どもがやっておる仕事でございます。それと全然別の問題として、法務省が没収をしたものはこの法律に基づいて返還をすべきものではない、したがってこの法律に基づいて返還の請求をなされましたものにつきましては、これを却下したということであります。
  127. 武藤山治

    ○武藤委員 しかしあなたのほうの預かっておるこの貴金属の残の中には含まれておるわけですね。全然別に保管しておるわけですか。管轄はどこですか。
  128. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 先ほど申し上げました私どもが現在保管しております貴金属の中には含まれておりません。
  129. 武藤山治

    ○武藤委員 それから先ほど三十四年六月現在のは約六百八十二億円とおっしゃいましたが、現在は幾らになりますか。
  130. 江守堅太郎

    ○江守政府委員 現在は約二百七十億でございます。
  131. 武藤山治

    ○武藤委員 あと質問者が時間が詰まっておりますから、項目だけ指摘しておいて後日ゆっくりまたお尋ねをしたいと思いますが、外国為替資金特別会計の中で韓国へのこげつき債権は一三三ページの資金の中に含まれているものなのか、どうなのか。この勘定科目のどこに入っておるのかということを、ひとつ明らかにしてもらいたいのです。
  132. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 韓国に対する債権は外国為替資金の運用として保有しておるものでございますから、外為会計の資産の部に入るわけであります。
  133. 武藤山治

    ○武藤委員 資産の部というと何ページのどこに入っておるか、ちょっと指摘願いたいのですが。貸借対照表の資金の中に含まれておるのか、どこに入っているのかということがこれでは見当らぬわけですね。どこに入っておりますか。
  134. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 ちょっと予算書を持ち合わせておりませんから、後刻御説明申し上げたいと思いますが……。
  135. 武藤山治

    ○武藤委員 それではいま調べている間に、大臣が手持ちぶさたで退屈でありましょうから次の質問に進みたいと思います。  大平外相は、過般十九日の松本七郎氏の質問に対して、有償二億ドルは海外経済協力基金から支出をする、こういうことを本会議場を通じて明らかにしたわけでありますが、大蔵大臣、海外経済協力基金の中から有償二億ドルを韓国に出そうというのでありますか。
  136. 田中武夫

    田中国務大臣 有償の二億ドルは経済協力基金を使うということでありまして、大体金利は三分五厘、それから七年間の据え置きを含んでほぼ二十年、こういうことでございます。
  137. 武藤山治

    ○武藤委員 海外経済協力基金の目的、これは一体大臣どういうことですか。そういう目的と韓国への今回の融資、援助ということが一体マッチするのですか。
  138. 田中武夫

    田中国務大臣 経済協力基金は、御承知のとおり将来日本の輸出市場の確保とか、また新しい世界観から、お互い先進工業国が相携えながら、低開発国やその他に対して経済援助をいたして、その地域の経済発展を来たすことによって、双方が将来の利益を確保するということに立っておるわけでございます。日本と韓国の間も、近隣の友邦でありますし、しかもそれよりも長い間同一国家を形成しておった国であります。その意味で、新生韓国の経済開発のために日本が経済協力基金から応分の経済協力を行なうことによって、両国とも将来の利益を確保するということでありますから、私はこの基金から出すことはいいことだし、またこの法律目的達成に資することだ、このように考えます。
  139. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣は海外経済協力基金の性格、目的を読んでおらぬから、そういうことを言うのです。海外経済協力基金は、特に東南アジア等の国々へ融資をし、これらの輸出余力を拡大をして日本の輸出を増進しようというねらいから生まれたものでありますよ。一体韓国は東南アジアに含まれるのですか。大体今回の無理押しをしてきめる日韓会談のあと始末としての融資ということになるならば、当然私は別途考えるのが筋だと思うのです。あるいは賠償等特殊債務特別会計、こういうようなものから特別な融資を考えるべきであります。海外経済協力基金の中から、韓国へのそういう政治的高度な判断に基づくわけのわからない金を出すということは、私は体系を乱すものであると思うのです。特に一定のワクを持つ海外経済協力基金の中からさらに韓国へ二億ドルを出していくといういき方は筋を困乱させるものである、体系を乱すものである、こう私は考える。海外経済協力基金から出すということは、大平外相は大蔵省と十分協議の上で発言をしているのですか。
  140. 田中武夫

    田中国務大臣 御承知の海外経済協力基金法の第一条、「海外経済協力基金は、東南アジア地域その他の開発途上にある海外の地域の産業の開発に寄与するため、その開発に必要な資金で日本輸出入銀行及び一般の金融機関から供給を受けることが困難なものについてその円滑な供給を図る等のために必要な業務を行ない、もって海外経済協力を促進することを目的とする。」と書いてございますので、私は東南アジアに限っておるということではなく、経済協力基金というものは日本が経済協力を行なうという国々に対してはこの法律で十分考えておるものと考えます。私はまた近い機会に、いまいろいろ御議論がございますが、東南アジアだけではなく、アフリカとかまた南米とかいろいろな国々に経済協力基金を使うという場合でも、この第一条の条文はそういうことを予想しておるものであって、韓国に対する経済協力費を経済協力基金から支出をするということが妥当性を欠くものではないというふうに考えます。
  141. 武藤山治

    ○武藤委員 それは大臣こじつけですよ。それでは海外経済協力基金法の条文を直しますか。低開発地域における海外投資という形に条文を直してあるなら別ですよ。そういう意図があるならばまた別です。しかしいまの条文のままでやるというのは、やはり主眼は、柱は東南アジアを開発していこうという考え方から生まれた法律ですよ。ですからそういう体系を乱すということはそういう第一条の規定の精神に反するばかりではないのです。貸し方、運営のしかた、これも海外経済協力基金で行なっている融資のしかたと今度の二億ドルを出す場合の使い方とでは性質がえらい違うのです。海外経済協力基金は、いままでは三井、三菱や住友、そういう財閥系統の会社ができて、銅山の開発をやるとか、そういうものがいままでの資金量の使い方を見ると非常にウエートを占めているのです。今度の場合は政府政府へ出すのでしょう。韓国の政府へ二億ドルぱっと出して、プラント輸出でも何でもないのでしょう。あるいはプラント設備拡充するための技術援助でもないのでしょう。そういう個々の何に使うかということは別にきめてないのでしょう。韓国へやる二億ドルは何と何に使うためにやるのですか。それではその内容を明らかにしてください。
  142. 田中武夫

    田中国務大臣 まだ日韓交渉は交渉継続中でございまして、大体において無償三億ドル、有償二億ドル、こういうことをいっておるわけでありまして、こまかい技術的な問題はこれから日韓交渉の最終段階までにやる問題でありまして、いまあなたが言われたような問題は十分解決できる状態で決定をするものだと考えております。現在の段階において議論になっておりますのは、大平外務大臣の経済協力基金を使ってやるという政府発言に対して違法性があるかどうか、妥当性があるなしという問題だけが事実問題として提起されておりますから、この法律をつくった当初の考え方は東南アジアに限ってはおらないと思います。少なくともその他の地域ということでございます。よしんばこの法律をつくるときに東南アジアを主目的にしてつくったものであっても、その後情勢の変化によって、適合するそういう組織、法律がある場合に新しいものをそれに加えていくということは違法性はないわけであります。
  143. 武藤山治

    ○武藤委員 大臣、私は違法だとは言っておらないのですよ。筋を乱し体系を混乱させる好ましからざる処置だ、しかるにその二億ドルをいかに使うかという内容質問に対しては答弁できないじゃありませんか。そういうまだ日韓会談がどうなるかということがわからないうちに、出すほうはもう海外経済協力基金から出すのですということを一国の大臣答弁するに至っては軽率じゃありませんか。もっと煮詰めて、日韓会談はこうなって、二億ドルはこういう開発、こういう経済的な発展のために使うという具体的なプログラムができてから、これはこういう項目で出そうということが事の順序じゃありませんか。そういう順序をわきまえずに、大平外相が本会議で海外経済協力基金から出すと言うからには、かなりの根拠がなければいかぬ。そこで私はお尋ねをしておるのです。したがって、その二億ドルを何と何と何にどう使うかという一応の話を進めておるのか、これをもう一回伺っておきたいと思います。
  144. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 無償三億、有償の二億、——有償の二億のほうは大筋といたしまして海外経済協力基金から出すということになっておるのでありますが、具体的なプロジェクトその他につきましては、まだ一切話をしておらないわけであります。しかしながら、これを供与する場合におきましては、基金の業務方法書に定める範囲内、それから対象事業としては当然基金法に定められてありますところの開発事業に貸し出す、こういうことになると思います。
  145. 武藤山治

    ○武藤委員 大筋として海外経済協力基金から出すということになっております、こういう答弁ですが、だれがきめたのですか。あなたたちがそういうことをきめて、一応外相の耳に入れたわけですか。そうしてああいう答弁になったのですか。それとも正式に閣議でそういう決定がなされておるのですか、その点はいかがですか。決定の経緯についてひとつ明らかにしてください。
  146. 田中武夫

    田中国務大臣 まだ経済協力基金から正式に出すということも閣議決定しておるわけではありません。いずれにいたしましても、有償二億ドルということでございます。有償二億ドルに対しましては三分五厘、七年据え置き、二十年程度ということでありますので、現在ちょうど韓国の経済援助をし、しかも現行法で三分五厘という規定が経済協力基金にございますし、また二十年以上も必要と認める場合はやることもできるという、こういうものがございますので、出すとすればそこからだ。しかもこれは、日韓交渉が正式にまとまったときの話でございますので、いまの御注意もありますし、まとまるまでの間、まだ時間があるようでありますから、そういうこまかい問題に対しましては十分検討いたしまして、国会で十分答えられるようにしておきたいと思います。
  147. 武藤山治

    ○武藤委員 それでは、ただいまの問題は十分答えられるように、早急にひとつ検討して、次回の日韓問題の質問のときにひとつ大臣から明らかにしていただきたいと思います。それから最後に、吉岡さんにちょっとお尋ねいたしますが、理財局長は昨日午後四時から外務省で韓国側の代表李さんと金さんという人たちとお会いをいたしておりますね。そこでお会いして、まずこれからの手続事項について打ち合わせを行なった。これからどんな手続をするということに話し合いが進んだのですか、ちょっとお尋ねいたします。
  148. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 御承知のように、従来日韓会談の中に幾つかの委員会がございまして、その中の一つに、一般請求権の委員会があるわけでございます。その一般請求権の委員会を今回再開したいという要望がございまして、昨日その顔合わせと申しますか、最初の会合をいたしたわけでございます。ただいまお話のありました手続等についてきめたというお話は、これも従来の慣例でございますが、今後の会議をいたしますにつきまして、用語は何語にするとか、そういう意味の手続をきめたのでありまして、今後いつ開くか等のことについてはまだきまっておりません。
  149. 武藤山治

    ○武藤委員 新聞の報ずるところによると、次回からは実質審議に入る、次回とは一体いつと予定を立てましたか。さらに実質審議という場合の内容は何をあなたは担当としておやりになりますか、それをひとつお聞かせ願って質問を終わりたいと思います。
  150. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 ただいま申し上げましたように、次回いつ開くかということはきまっておりません。私どもの考えといたしましては、ただいま両国の農相間に漁業問題の会議が持たれておりますが、その進行状況とにらみ合わせてという感じでおります。
  151. 武藤山治

    ○武藤委員 先ほど伺った為替局長答弁がまだ済んでおらぬ。焦げつき債権は予算上どこに措置してあるか、このことをお聞きして終わりたいと思います。
  152. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 この予算書の外国為替資金特別会計貸借対照表という項目がございますが、その中の借方、すなわち資産の部の特別決済勘定貸という中に入っております。この特別決済勘定と申しますのは、通常オープン勘定と申しておるものでありまして、韓国の分、それからアルゼンチン、それからブラジルに対する貸し越しで、現在償還を受けつつある部分の債権残が合わせてこの勘定項目の中に入っております。
  153. 山中貞則

  154. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 大臣にお伺いいたしますが、日韓会談の長い過程を経て、大体大詰めにきたように考えられますが、田中さんは大蔵大臣として池田内閣の重要なポストにおられます。会談はいろいろあると思うのですが、大詰めにまいりましたか。
  155. 田中武夫

    田中国務大臣 日韓交渉は現在引き続いて行なわれております。私はその当事者ではございませんが、現在すぐいつごろきまるという段階にはないと思います。
  156. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そこで、私は日本側から言うのでありますが、御承知のように新聞の情報でありますからわかりませんが、向こうのほうの野党は議員を総辞職する、それからソウルをはじめあらゆる地点で非常に大きな反対の運動が起こっておることは御承知でございますか。
  157. 田中武夫

    田中国務大臣 新聞できのうあたり見たように覚えております。
  158. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 人ごとのように言わぬように、やはりあなたは日本大蔵大臣でございますから、こちらのほうの立場も十分に考えてもらいたい。これは重要な段階にきておるのではないか。私はきょうは請求権の問題であとでいろいろお尋ねいたしますけれども、韓国の情勢は、われわれ日本人も現地に行っておりませんからなかなかわかりませんけれども、少なくとも日韓会談の妥結という問題は日本にとって相当大きな問題だということが考えられるので、あらゆる地点でも反対があるわけです。こういうことを考えると、このまま日韓会談がいって、かりに日韓会談を成立させたというときになると、また朴政権のような反対派が出てきてクーデターをやるような危険がないとは限りませんけれども、そういうことまで考えてやっておられますか、伺います。
  159. 田中武夫

    田中国務大臣 これは私がお答え申し上げるよりも外務大臣からお答えするほうが適当だと思いますが、いまの朴政権というものは合法政権であります。いまから半年や一年くらい前は、クーデター軍事政権であるからだめだ、こういう御質問もございました。しかし、その後総選挙を行なって、ちゃんとした民主政権が確立をしたわけでございます。しかもそのものがまだ不安だということになれば、まあそれは外国のことでありますから、そう先までは考えることはできないと思います。現在の状態では正常な政権であるということは間違いないわけでありますので、十何年間にわたって日韓交渉を続けてきておるわけでありますから、もう時としては大体熟した時ではないかと考えます。しかし、それをやったために朴政権が云々、こういうことはこれは外国のことでありまして、現在ある朴政権というものは正当なりっぱな政権である、こういうことは間違いないことでありますので、日韓交渉はお互いが合意に達し得れば当然妥結すべきことだと考えておるわけであります。
  160. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 御承知のように、いまの朴政権というのは、たとえばアメリカの副大統領のジョンソンがかわったのと違いまして、これは御承知のように、クーデターをやったその人が一年半、自分に都合のいいような政権をつくってかってな独裁をやって、そうして今度大統領になったわけですが、私たちは、前々から民主政権でおられる人ならいいけれども、軍人なんかがかってに武力で革命をやって、それで一年半自分の都合のいいようなことをやって、そしてあとで、今度大統領の選挙をやったんだから、だいじょうぶだというようなことは、そのこと自体として非常にけげんな感じがするわけであります。実はこの問題は、野田卯一君が御承知のように韓国へ視察に参りまして、これは自民党の諸君が五人ばかり行きまして、非常にいい政権だ、実にりっぱにいっておるんだということを、盛んにわれわれは吹聴を聞きました。帰ってきたら、あくる日、朴政権は御承知のようにああいうクーデターをやったような、朝令暮改どころか、実にわれわれとしてはけげんな思いがするのでありますが、私どもは最近韓国へ行っておりませんからわかりませんけれども、そういう事態が絶対に起きぬという保証はできないと思うのであります。こういうような国となぜ無理をして早く、こんな日韓会談をやらなければならぬかということについてへ田中さんは政治家としていま重要な大臣をしておられますから、どういうような認識を持っておりますか、この点を伺いたいと思います。
  161. 田中武夫

    田中国務大臣 戦後初めての訪韓議員団、その中に私もおったわけであります。その間の事情はよく知っておりますが、佐藤さん、十分おわかりになっておって御質問しておられると思うのですが、外国のことをあまり心配し過ぎるというようにも考えられるわけであります。外国との交渉につきましては、国際的に認められておるということであればそういうことが重要でありまして、国内的なことは、あまり先までいろいろなことを考えることは——多少政治的配慮の中にあるとしても、そういうことをこういう日韓交渉等で言うのは、私はいいことじゃないのじゃないか。これは皆さんも、選挙をしない中共政権との間に国交を開け、こういうことを言っておるわけであります。これは事実に徴してそういうことを言われるわけでありますから、カストロ政権に対しましても、またソ連でも、また新興国家などというものは、日本のように、昔のように大命降下とか、きちっとしたことがあったとか、また戦後は憲法に基づいて選挙を受けたとか、日本のように非常に歴史が長く、しかもちゃんとした法律、憲法にのっとってやっておるあなた方から、またわれわれから見ますと、いろいろなことも思いたくなるかもわかりませんけれども、それと日韓交渉の相手であるということとは全然別でありまして、私たちは少なくとも一年前には、朴政権は軍事政権であった、選挙の洗礼を受けておらぬじゃないか、こういうことでありましたが、今日は選挙の洗礼も受けておりますし、りっぱな政権だと私は考えておるわけであります。どうもそういう、人の国の主権に対していろいろなことを言って外交交渉さえも進められないということになると、たいへんなことでありまして、私は国連でも、世界の大多数がりっぱな政権として認めておるものに対してはすなおにそういう態度をとって、初めて国際親善、国際友好というものが進むのだと思うわけであります。新興国などでは、実際毎日のようにクーデターが起こるというような新聞も見るわけでありまして、それが起きなくならなければ国交回復ができない、経済援助もできないというような考え方は、多少思い半ばに過ぎるじゃないか。私たちは、やはり隣国である韓国の将来というものを十分考えながら、われわれが協力をすることによってお互いに利益を得ようという前向きな考え方でいくことが正しいのではないかというような観点に立っておるわけであります。
  162. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 まだ朴政権ができてから二年足らずでありますが、もしそういうような論拠でいえば、中共は御承知のようにもうすでに十数年の、歴史を持ち、七億の人口を持ってやっておる国であります。そういう国とは——死んだ高碕さんなどは心配して、政経分離という形で貿易をやっておられますけれども、そういうところに矛盾があると思われますが、しかし、私は田中さんにもう一つ、ちょうどいいおりだから伺っておきたいと思うのでありますが、あなた方が韓国から帰られたあくる日革命が起きたというその瞬間、あなたはどういうような認識で韓国を見てこられたか。あいにくここに野田さんがおられませんが、そのころの情勢を思い返すと、あなたの判断は、内地にお帰りになったときには、あくる日革命が起きると思っておらなかったと思うのでありますが、そういうところの思い出をひとつ伺っておきたいと思います。
  163. 田中武夫

    田中国務大臣 すでに三年有半の月日をけみしておりますので、私印身もさだかに記憶をいたしておるわけではございませんが、私は戦前にも韓国、当時の朝鮮に参ったことがあります。朝鮮の事情は大体知っておるつもりでありますが、当時の状況から考えまして、人口六十万の京城が三百万にふくれあがっている。わずか二十万、三十万であった釜山が二百万にもなんなんとしておる。山の全くてっぺんまで仮設バラックができておる。しかも、台風常襲の地帯でありまして、日本人と三十六、七年の間同じ国家を形成してきた方々の状態を考えて、よくこの苦労に耐えておるという事実に対しては、新しい立場で認識をしてまいりました。国は異なったといいながら、同じ国家を形成してきたお互い同士で、これはやはり日本が援助ができるならばできるだけしたほうがいいというふうにも考えたわけであります。私たちは帰ってきて——非常に太平無事であるというような御認識のようでございますが、私は当時自由民主党の総務会で話をいたしまして、全く限度一ぱいになっているんじゃないか、隣国のこのような経済状態や事実に目をおおうてはならない、私はそういうことを申し上げたわけでありまして、太平無事だという——あくる日革命が起きると予想したわけではありませんが、何かはだにそのようなことを感じたことをいま覚えております。
  164. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 大蔵大臣になるような人でございますから、野田卯一さんとは多少考え方は違っておる、こういうようにこれはあれしまして、実はその前にいろいろ伺いたいことがありますが、請求権というものが——これはだいぶ前になりますが、何で韓国へ日本は請求権をとられなければならぬか、その根拠を御説明願いたいと思います。
  165. 田中武夫

    田中国務大臣 御承知のとおり対日平和条約第四条の規定をもとといたしまして、韓国側から対日請求権が提起をせられて、その問題の解決に十数年の歳月を経ておるわけであります。
  166. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 そこで、三億ドルの無償の金をとられるということは一これは日本国民の税金からとられるわけでありますけれども、何でそういうものを支払わなければならぬのか。日本と韓国との間には歴史的な問題もある。これは明治四十三年、伊藤博文の時代に合併になったのでありますが、これは歴史的なことであって、いまさらどうのこうのと言われても——韓国ばかりでなくて、朝鮮全体になれば考える余地もある。それから、三年ぐらい前に、北ベトナムと南ベトナムのときにも、請求権の問題があって、日本はあのとき、社会党が反対していたにもかかわらず——御承知のように、いまでは北ベトナム、南ベトナムの情勢は非常にひどい状態になって、結局日本の賠償は捨てたような形になっておりますけれども、こういうような結果が起きはしないか。私はそういう点で、やはりもう少し高い政治的な次元でこういう問題を考えなければならぬのじゃないかということを心配しておるわけでありますが、そういう点については、田中大蔵大臣はどのようにお考えになっておられますか、ひとつ私たちがわかるように、なるほど自民党ならやらなければならぬだろうというような、納得のいくぐらいの御説明を願いたいと思います。
  167. 田中武夫

    田中国務大臣 私は国民財政を預っておる立場でありますので、少なくとも健全財政を堅持していかなければならないし、国内的にも社会保障の問題、文教の問題、社会資本の問題等々、歳出の要求は多大であるにもかかわらず、乏しい財政を理由にしてがまんをしていただく立場におりますので、少なくともゆえなくして韓国といえども国民の血税を支払う、これを贈与するとかという考え方に対しては強い反発を感じます。しかしそのような状態である財政当局者といえども、日韓交渉の妥結があったならば、財政的負担であるけれども、この支出に応じなければならないという考えに立った理由は、言うまでもなく韓国と日本というものが長い歴史の中にあって、お互いほんとうに兄弟と同じ立場におったわけであります。長いことであります。しかも戦いに敗れた直後、平和条約の規定にもありますとおり対日請、求権というものが存在する法律的な根拠もございますし、それよりも同じ国の国民であったものが、戦後は日本は何とかこのような状態にまでなりましたし、逆に韓国の諸君は日本の覊絆から脱して新生韓国を建設しましたけれども、南北に分かれ、まさに兄弟かきに相せめいでおるというような状態になったわけであります。しかも私が先ほど申しましたとおり、新興国家として旗を上げたけれども、経済的には豊かならざる状態を続けておるわけであります。私たちはそういう事実と長い歴史的なお互いの両国民のつながりを考えますときに、ここでお互いが仲よくして共通の利益を得るためにも、日韓の国交正常化というものは一日も早くはからなければならない、はるかに遠い南方諸国とももうすでに国交回復をしてから長い時間がたっておるにもかかわらず、他人のけんかよりも肉親のけんかというようなものが特に仲直りしにくいというような例にもあるとおり、ただ一つの隣国である韓国との間に、十数年の歳月を経ながら、なお国交の正常化ができないということは悲しいことだと私は考えておるわけであります。そういう意味で長い将来を考えるときに、国民の血税を支出することによって、なお大きな利益がもたらされるとしたならば、私たちはこの際やはり前進的な体制をとらなければならないという考えのもとに日韓交渉の妥結に進んでおるわけでございます。
  168. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 田中さんのいろいろの説明はわかりますが、なぜ日韓会談がこんなに長引いたかということは、御承知のように北朝鮮というのがございまして、これもやはり日本の隣国でありまして、いろいろと日本の経済とつながりのある国であります。そこで田中大蔵大臣は北鮮の問題はどんなようにお考えになっておられるのか、私らも行ったことはありませんから知りませんが、韓国はなかなか経済的に苦しいけれども、北鮮のほうは非常に経済的にうまくいっておる。中共やソ連よりも建設の仕事がうまくいっておるという事情を承っております。そういうような国をわざわざ含まないで、非常に困った、どうにもならぬような韓国と会談をやって妥結するということは、これは日本人のためでなくて、あるいはアメリカの圧力でこういうことをやらされているのじゃないかというようなことを、私は日本人として心配しておるわけでございます。少なくとも北鮮という同じような立場にある国を日本は認めないで、一番経済的に困っているような韓国とだけ会談をやって妥結するというようなことは、将来に禍根が残りはせぬか。少なくともその点については田中大蔵大臣は、向こうの地に行かれて非常によく事情を知っておられますから、そういう点については大臣はどんなようにお考えになっておりますか、これも伺っておきたいと思います。
  169. 田中武夫

    田中国務大臣 北鮮と南鮮が統一をせられている状態であることは好ましいことであります。私たちはそういう状態で日韓交渉が続けられればなおいいことだとは思いますけれども、実際それができないうちはやらない、こういうことも多少これは考えてみなければいかぬと思うのです。これはきれいなことばでありませんが、日本人の中には昔借金を払うときに、親とけんかしているうちは払わぬでいい、こういうようなことがあったのですが、払うのがいやだからそういうことを言うわけじゃないでしょうけれども、実際一つずつでも片づけるということは、これは前進体制であります。理想は確かに高々と持たなければなりませんから、少なくとも南ベトナム、北ベトナムが一緒であることは望ましいし、西ドイツと東ドイツが一緒であることは望ましい。ドイツの統一ができないうちは西ドイツと国交回復をしちゃいかぬ、こういう議論にはならぬわけであります。これは例がたくさんあるわけでございまして、一つずつでもお互いが国交正常化をはかっていくという考え方は、私はやはり当然のことだろうと思う。私は四年ばかり前に韓国へ行ってきましたが、韓国に六十万の軍隊がおるわけであります。この六十万のうち五十何方は三十八度線のざんごうの中に入っておる。こういうことを聞きまして、南北というものは、同一民族でありながらなかなかたいへんだな、いつの日にかこれが一つになるだろうと、まさに天を仰いで嘆息したのが事実であります。そういう事実を私は知っておるだけに、やはり韓国が正式な国際的に認められておるりっぱな国として成長しておるのでございますし、われわれと一つかまのめしを食ってきた間柄でありますから、お互いの間でも一日も早く仲よくしようという考え方は、私は国際的にも民族的にも日本人の考え方自体としても正しいやり方だというふうに考えております。どうぞひとつ理解をいただきたいと思います。
  170. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 この韓国の問題は、そういうような考え方でおやりになっておる、それはあなたのお考えですからけっこうでありますが、それなら北鮮に対して一体どういうような気持ちを持って将来対処されていくのか、私たちの考えておるのは、この韓国と北鮮との問題の解決が将来非常にむずかしくなるのじゃないか、かえってこれがために朝鮮統一ということを阻害するのじゃないかということを心配しておるわけでございますが、御承知のように最近の経済の事情を見ますと、なかなか北鮮のほうにも日本の貿易の関係がありまして有利に運ばれておる、こういう事情も承っておりますが、こういう点についてはどういうようにお考えになっておりますか、承っておきたいと思います。
  171. 田中武夫

    田中国務大臣 北鮮は、御承知のとおり、いま日本——そんな例をとってはなんですが、北海道が独立したようなもので、これは国内問題であります。だから韓国に私は参りましたときに、咸鏡道知事とか平安道知事、こういうような北鮮の知事も任命しております。これは韓国の国内事情でありまして、私たちは北鮮をどうしようといってもどうもできないわけであります。六億、七億の民を持つほどの現実的な中共に対しては、御承知のとおり民間ベース、政経分離でやっておりますが、北鮮は六億もおりませんし、そういう意味で北鮮をいまどう考えてもなかなかうまくいかぬということでございます。私は韓国の問題を研究したときがございますが、日本が三十何年間で一体どこへ投資をしたのか、こういうことを考えましたら、御承知のとおり北鮮にはうんと投資をしておるわけであります。鴨緑江のダム、それから鉱山地帯でありますので、鉱山に対しては鉄道を敷いてやっておる。工場施設、その他山岳地帯であって、水力資源があり、人口が非常に少ない、五、六百万人。南鮮は御承知のとおり三十七、八年かかって日本人がたんぼをよくし、ノリを広め、それから山に松の木を植えて、朝鮮松がだめだから日本松というふうに、いろいろと特殊な努力をしたけれども、南鮮には人間が二千何百万もおって、投資は北鮮のほうによけいされておった。私は自分で韓国へ行ってきて感ずるのは、北鮮から請求権を求められるというようなことよりも、北鮮にはよく投資をしたものだなという考え方をしみじみと持ってきました。私はいまそういう感じだけを申し上げられるわけでありまして、北鮮との国交の問題とか北鮮との貿易の問題とか、そういう問題に対していま申し上げられる段階にはないわけであります。
  172. 佐藤觀次郎

    ○佐藤(觀)委員 同僚議員の質問がありますから、これで最後にいたしますが、私ども考え方では、ほんとうに韓国との会談を妥結するということがはたして日本の将来のためになるかならぬかという問題はいろいろ立場も違ってわからない点がありますけれども、ただ私は自分の直観ではどうも悔いを千載に残すというような感じがするわけです。そういう点であなたの御意見はいろいろとわかりましたけれども日本が五億ドルの請求権を渡してあとでしまったということにはなりはしないか、あるいは韓国の政情不安のために妥結をしたらどぼんといったというような危惧がありはしないかということを憂えておるわけですが、その点は現在の時点において田中大蔵大臣はどんなように考えておられますか、これを最後に伺っておきます。
  173. 田中武夫

    田中国務大臣 私は韓国の朴政権というものは少なくともりっぱな合法的な政権であり、国際的にも認められておる政権であり、日本が日韓交渉を妥結するとして適当な政権であるというふうに考えます。  いまあなたの、せめて乏しい中から無償億徳ドル、有償二億ドルの援助をしようというのでありますから、できるだけ相手側の状態も考え、念には念を入れろというお話は、私もよく理解できるわけでありますが、日本の国内の問題ではなく、国際的な外交場裏における問題でありますので、日本が少なくとも有償、無償の援助合わせて五億ドルを隣国である韓国に差し上げることができるように国力が回復したのだという事実等もあわせ考えていただきまして、やはり経済協力基金なども何の関係もなかった地球の果ての国々にも経済協力をしなさいといろいろ御鞭撻もある現在でありますから、三十何年間も一緒におった韓国のためによかれかしと思って、日韓交渉による援助を行なうということに対しては、ひとつ将来のためにも超党派で御賛成をいただきたい、ほんとうに心からそう思います。
  174. 山中貞則

    山中委員長 日野吉夫君。
  175. 日野吉夫

    ○日野委員 いま大蔵大臣のだいぶ浪花節的な話を承ったのでありますが、これは有償二億、無償三億と先刻来いわれている国民の血税を出すということでありますから、大蔵大臣としてはただ、いまのようなことでは出せないのじゃなかろうかと思うのであります。大蔵省のたてまえは、いつも金を出すときは資金効率を考えておる、経済効果を考えておられるのですが、海外経済協力基金から三分五厘、据え置き七年、二十年の期間でこれを出すということで、新生韓国の経済援助、両国の将来の利益を確保する一やはり一つの経済的な効果を考えておられると思うのですが、この中で漁業協力資金というものがその内容もはっきりしていないから私はあと事務当局から伺うとして、このくらいの金を出して不安がないのですか。いま朝鮮には非常に生活に困った農民、なかんずく漁民がひどいといわれているが、この諸君はほんとうに餓死寸前の姿を呈しているということが聞かれる。大臣もかつて見てまいって、革命が起こるかもしれぬという印象を持ってきたといま言われているが、そういう事態が起こっておりますし、いま朝鮮の野党は別な一つの反対運動の団体の対日低姿勢外交反対国民闘争委員会というものをつくって、大いに反対運動をしている。そういたしまして、その領袖である野党の国会議員がすでに辞表を提出したとも伝えられておる。こういう状況のもとに、こういう金を——ほんのわずか五億ドルじゃないかという話もありましょうけれども、出して何を期待しようとなさるのか。単にいま言われたような一衣帯水の韓国に将来の経済復興を期待して出してやるというような気持ちだけではいかぬと思うのですが、こういう状況のもとで国民の血税であるところの金を出して何らかの不安がないのかどうか、ひとつ大蔵大臣に朝鮮の見通しを聞きたいと思います。
  176. 田中武夫

    田中国務大臣 もちろん投資をする場合に、国内的には一銭たりとも国民の血税であるという考えで投資効率を考えることはけだし当然であります。経済援助をする場合も、これがより効率的に働きまして、将来ともに日本の好意に対して喜ばれるような事態を招来することに留意することもけだし当然であります。また投資をする以上、将来これが日本のためにもはね返ってくるように十分考えなければならぬことも言うを待たないわけであります。また朝鮮半島の問題を考えますときに、韓国の国情が実際に日韓交渉の妥結に国をあげて向かっておることは好ましいことでありますし、望ましいことではありますが、しかしこれはこちらのほうとしてはいかんともなしがたいわけであります。これは相手のある話であります。こちらはゼロから出まして、だんだんだんだんということで二億ドル、三億ドルということになった、向こうは十何億ドルがだんだんだんだんそこまできたわけであります。日本人はせめて有償、無償五億ドルになっても、これだけばく大もない金を支払うのだから、支払う側に立ってもう少し慎重であれと皆さんは言っておられる。韓国の野党はとにかく三億か五億でもってきまりをつけるとは何事だ。中には私が行ったときは、これは全く個人的な話でありましたが、ひどい話も聞きました。爆撃のさなか十万人以上の人命が失われたという問題を持ち出されて、一人百万円とすれば千億じゃないかという話も出ました。そういう立場から非常に強い反対を行なっておるのでありましょう。私はそういう意味で、お互いの立場でいろいろ問題はあるにしましても、もうすでに日韓交渉は十数年の歳月をけみしておるのであります。西ドイツと東ドイツはこれから百年間話がつかぬかもわかりません。しかし日本と韓国との問題はそうではないと思うのです。お互い三十六、七年間も同一国民であったわけです。お互い兄弟、親子の間に十二、三年も争ってこれ以上話がつかないとすれば、もうここらでいいとするのが、日本人の常識じゃないかと思います。私はそういう立場でお話を申し上げておるのでありまして、政府自体が両国の友好親善のために、将来百年のことを考えて、いま日韓交渉を進めておるのでございますから、私は、こまかい問題に対しては、韓国に対して何に使うとか、どういうものにこれを採用するかというようなことは、全然まだ話が詰まっておりません。おりませんが、日本人が韓国に対して支払い者側に回っておるのでありますから、支払うことが多いのだというようなことを考えるには、韓国とあまりにも親しい関係にあるのだという歴史的な事実というものをやはり前提として、この問題は考えていくべきだ、このように政府も理解しておるのであります。
  177. 日野吉夫

    ○日野委員 大蔵大臣は依然として一衣帯水の朝鮮民族との平和をあがなう代償として出すような一つの考えが強いのでございますが、これは大蔵大臣として資金の効率なり、経済的な代償効果を一応考えておるといたしますならば、南朝鮮に何の資源があって、将来何で日本の利益になるという考えをお持ちでございましょう。農林水産資源以外にはない。また安い労働力はありますよ。安い労働力は、日本は戦時中にも朝鮮から労働力を相当移動させて使った経験がありますから。こういう状況のもとで全く資源のない地域であるから、経済的に見てはほとんど、戦争当時と違って安い労働力を収奪するような考え方は、もう今日は許されない。そして一面には、もし朝鮮との交易が行なわれ、農産物、水産物の貿易の関係やいろいろの問題が出たならば、これは国内に及ぼす影響が、むしろ逆効果になりはしないか。日本の農民、漁民——現に韓国のノリが日本の沿岸の零細漁業者を圧迫して問題を起こしておることは、御承知のとおりでございましょう。私は、この経済効果には何らの期待ができない。むしろ国内に大きい問題を引き起こすおそれさえあると思っているのでありますが、こういうことを大蔵大臣はどう考えておられるか、ちょっとその点を。
  178. 田中武夫

    田中国務大臣 御承知のとおり外交の、日韓交渉の当面の責任者は外務大臣であります。どうも外務大臣も答えられないようにむずかしい御質問をいただいて、恐縮しておるわけでございますが、私は、先ほども申し上げたとおり、日本財政をあずかる立場でございますので、国民の税金に基づく支払いに対しては、厘毫といえども配慮しなければならない立場にあるものであります。でありますが、日韓交渉に対しては歴代内閣が十数年にわたって交渉をしてまいったものでございますし、政府といたしましても、早期に日韓交渉を妥結をし、日韓交渉で支払うという側の問題だけでなく、一衣帯水である、また隣国である日韓両国の友好に資したいという国交調整の問題があるわけでございます。国内にも御承知のとおり法的地位の問題等で非常にむずかしい状態にある方々も五十万も六十万も現在現に存するのでありますが、私は、そういう意味でやはり政府が前向きでこの問題に対処するという考えは誤りではないと考えております。同時に私も自由民主党所属の議員でありますが、自由民主党自体も日韓交渉を早期に妥結をして、できるだけ早く両国の国交を調整したいという党議をきめて国民に訴えておるのでありますから、私は、経済問題や韓国の持つ経済的地位その他の問題もさることながら、やはり戦後二十年近くもたっておる事実に徴しまして日韓の国交の正常化は一日も早くすみやかであるべきだという考え方に立っておるのでございます。  経済的な問題に対しては、ノリの問題は農林大臣でございます。ノリも昔はよく入ってきて、朝鮮ノリというものは非常にうまいものであります。そういう意味で、朝鮮ノリに対しても(「日本のノリはまずいか」と呼ぶ者あり)日本のノリはうま過ぎる。実にうまいわけであります。しかも菓子などにノリを巻くというのは朝鮮ノリの岩ノリということであったわけでありますが、そのノリは御承知のとおり千葉の浦安の職人が行ってみずから韓国に植え付けた歴史があるわけであります。そういう意味で日韓交渉がまとまればノリの問題その他あるでしょう。あるでしょうが、そういう問題もまた農林大臣、適当にうまくおやりになると思います。そういうこまかい問題ばかり一つずつ考えておって、日韓交渉の大道を開くことにちゅうちょしてはならぬ、これが政府全体の考え方でありますので、私も閣僚の一人としてこう御答弁を申し上げておるわけであります。
  179. 日野吉夫

    ○日野委員 いかにもこっちは大所高所からものを考えないというおしかりのような感じがするのでありますが、少なくともこういう不安定な状況のもとにおいてそれの見定めもなく、何かひとつ急速にこれを進めようとする空気をわれわれは察知するのであります。現に朝鮮に大きな不安があるということです。先ほど来、軍事政権だが、その後選挙によって民主主義の国会を持つ政権になったと言いますけれども、ここに何らの不安のない政権だとは大臣も考えておらないでございましょう。野党がいま総辞職するという、新聞はこれを支持した論評を掲げておる。学生はもう先頭に立って現にデモをやっておる。きょうあたりの情報でも各地で大規模のデモが起こっておるということをわれわれは聞くのでありますが、こういう状況のもとに、これは経済的にいまの大臣の考えのように大きなプラスにはならないにしても、これはもうゼロまではがまんするとしても、大きなマイナスがある場合は、ひとつ真剣に考えてみなければならない。大蔵大臣として金を出してそれは期待ほどの効果はなかった、ゼロだ、ここまではいまのような気持ち、国民は承知しませんけれども、あなたの気持ちのようなことで、ゼロまではしかたがないんじゃないかとしても、マイナスが起こる場合には、大蔵大臣としてこれに反対しなければならぬのじゃないか。閣議等にもあなたが出ておるんだから、その点を十分考えて事に対処しなければならない。現に、革命が起こるかもしれない、あるいは野党が全部なくなって総選挙をやらなければならぬかもしれない。総選挙になって、野党があるいは勝つかもしれぬ。そういう場合には政権の交代でしょう。革命ですね。革命政権というものは前政府のやったことは、国際関係は別として踏襲しない。日本がかつてベトナムの賠償に、鶏三羽に二百億の賠償をやったことがあるでしょう。いま革命政府ができておる。そうして今日の対日感情がどうなのか大臣も知っておるでしょう。もうすでに金鍾泌氏はベトナムから台湾を回って日本に来て、いろいろ裏で画策しておることも明らかなことであります。こういう非常に危険な一つの要素を持った国です。同時にいま国連で、あなた方は合法的に認められた政権だということをたてまえにして主張いたしておりますが、国連における韓国の地位というものも一体どうなるか考えてごらんなさい。これは一九四八年に、当時五十五カ国でもって構成した国連で四十八対六で韓国が認められておるはずです。棄権は一票です。いまどうかというと、百十三カ国にふえているでしょう。しかもフランスのドゴールの動き等から、この秋の国連総会における韓国の地位というものはどういうものかということも、これは見通しをつけてみなければならないのではないかと思うのですが、これらの点を総合勘案してみる場合非常に危険だとわれわれは考える。資金効率が少ないぐらいはがまんするとしても、ゼロになるか、むしろマイナス要素が出てまいるのではないか。革命が起きたらマイナスになるでしょう。踏み倒したほかにまた大きな賠償の要求が出てくるか、何が出てくるかわからぬ。しかも、ことに大きいマイナスは、わが党は北鮮をも考慮に入れた交渉をやるべきだというのでありますが、北鮮は全然考慮の対象にもなっていない。むしろ北鮮を刺激しますよ。いま韓国に援助をしてこの条約を成立させることは北鮮を刺激する。北鮮と中国の関係は御承知のとおりでしょう。同時に、こういう大きなマイナスは別としても、大体ほんとうの相手として、相手にするに足る韓国であるかどうかの見きわめもつけずにやられることは、私は非常に危険だと思う。こういう関係からマイナス要素が大きい場合は、あなたはどういうふうにこの日韓会談の妥結に対して意見を持っているのか。あなたの持つ意見のいかんでは、やはり閣議等に大きく大蔵大臣発言というものは影響をするのでありますから、あなたの考えを聞くが、依然として韓国との平和を買う代償として五億ドルの資金を出すのにやぶさかでないという大襟度を持って臨まれるのか。そういう危険要素、不確定要素、そういうものがあるといたしますならば、ひとつそれらを十分考えてみるという考えなのか。あなたの最後の考えをお聞きしたい。
  180. 田中武夫

    田中国務大臣 先ほどからるる申し上げておりますとおり、私は閣内においては国民財政をあずかっておる立場でございます。私の立場としては、出さないで済むものなら一銭も出してはならぬ、こういう考えでございます。同時に国のため、国民のため、民族のために、出すべきものはやはり勇気を持って出さなければいかぬ。大蔵大臣は金を勘定しているだけの商売ではないわけであります。そういう意味で、財政の責任はまことに重いわけであります。私はその意味において、あなたがいまお考えになられたようなことを十分考えました。できるならば、出さないで済むならばと、こう思って考えたわけでございます。また内閣も十分それを考えた。考えましたから、十何年間もかかっておるのであります。これは事実が証明しておるのであります。ものには限度があります。ものには際限があるわけであります。でありますから、ものを考えるゆえに前進をちゅうちょをするということも確かに必要でもありますし、私は、国民の側に立ってあなたがそうしてるる申し述べられる心情に対して十分理解いたします。私はそういうことも十分考えたわけでありますが、これは私の考えだけではなく政府か一ここでまとまるかまとまらぬかは相手のある話でありますし、外交の問題はなかなかそう簡単にはいきませんけれども、お互い合意に達する状態であるならば、お互いに一日も早く国交の正常化をはかろうという既定方針を政府はきめておるわけであります。私もいろいろの立場で言いたいこともありますし、また私の考えもございますが、政府としていろいろ考えて決定をした以上、もしこの日韓交渉が正規にまとまり、国会で批准が得られるということであるならば、財政の当局者としても、これはやはり両国の外交上の協定に対しましては財政的支出に応ぜざるを得ない。またそうすることが内閣の考えた政策を実行することでありますから、——しかしその結果マイナスがあってはどうかということでありますが、マイナスのないように万々の配慮をいたすつもりでございますし、その上なおあるかないかということは、これは責任の地位に立っておる政府与党が、後世国民に批判をされることであります。同時に価値判断をされることであります。十数年の歳月をかけてきて最後のどたんばになっておる今日でありますので、両国がすなおな気持ちでまとまるならば、私は一日も早く国交の正常化に進むべきだという考えを持っておるわけであります。
  181. 日野吉夫

    ○日野委員 十何年間かかった難交渉でありまするから、それは大臣の言うとおりでございますが、その終末にきて幾多の新しい条件が発生して混乱しているとき、急いできめなければならぬという態度もまたわれわれには解せないものがあるのであります。もう少し朝鮮の国内の事情なり、いま問題になっている北鮮、中国等の関係なり、国連における今後の成り行き等を見通しをつけて、そうしてこのどたんばでどさくさに、火事場どろぼう式に、こそこそっとやるような態度は捨てて、特に大蔵大臣として多額の賠償を伴う問題でありまするから慎重な態度で、ひとつ閣議等においても後世に悔いを残すようなことのないような方法をとるように、ひとつ慎重を期した発言をしてもらいたい、こういう要望をいたします。漁業協力資金の内容等、まだまだこまかい事務的なことはありますが、その点は残してそういう態度で臨まれることを要望して私の質問を打ち切っておきます。
  182. 山中貞則

  183. 卜部政巳

    卜部委員 まず最初に、韓国に拿捕されている漁船さらにまたこれに伴う漁民、この損害を把握しておられると思うのですが、総額で大体幾らぐらいになっておるものかお知らせを願いたいと思います。
  184. 田中武夫

    田中国務大臣 韓国によるわが国漁船の拿捕は、昭和二十二年から、三十九年一月までに三百十七隻、二万二十六トンにのぼっております。このうち未帰還のものは百八十一隻、一万四百五トンであります。沈没をしたものが二隻、百二十九トンでございます。これらの拿捕及び抑留に対しまして、わが国がこうむった被害額は、政府関係機関による正式の調査、算定がなされておらず、妥当な金額を算定することは困難でございますが、大日本水産会内に設けられている日韓漁業協議会の作成した資料によりますると、船体、機関、装備、これは帰還船を除いてでございますが、積載物、義務的出費及び推定収益を合計しまして、三十八年度末までに約七十四億円と推定されておるわけであります。
  185. 卜部政巳

    卜部委員 この損害は当然損害賠償請求ができると思うのですが、政府はいま大体どういう方向で請求をしておりますか。
  186. 田中武夫

    田中国務大臣 これはいま赤城農林大臣がやっておりまして、私はまだその内容を聞いておりませんので、聞いてからお答えを申し上げます。
  187. 卜部政巳

    卜部委員 続いて、この国内の問題でありますが、この拿捕等を含めて保険事故金、まあ保険事故と称する特殊保険制度、こういう点と、さらに拿捕船の補助金等の問題について支払われた補助金があると思うのですが——これは明確な金額は、私のほうは把握しておりますからよろしゅうございます、この点について、これも同じくこの損害賠償の請求の中に含んで請求をするのだろうと思うのですが、その点はいかがなものでしょうか。
  188. 田中武夫

    田中国務大臣 先ほどの問題も含めて申し上げます。請求権問題の解決に当たって拿捕漁船に対する請求権をどうするか、こういうお話でありますが、韓国による漁船拿捕はわが国に対する不法行為でありますから、わが国といたしましては韓国に対して請求権を有しているわけでございます。したがいまして、日韓会談におきましてもわが国としてはこの請求権を留保しておる次第でございます。  それから、大体保険に入っておりますが、保険に入っておらない、零細な者に対しましては、これは非常にむずかしい問題がございましたけれども、去年の予備費で幾ばくかの見舞い金を出したということでございます。また船員に対してはそうでありますし、船主に対しては代替船建造ということに対して特別な配慮を行なっておるわけであります。
  189. 卜部政巳

    卜部委員 ただいま大蔵大臣のほうから、そのように十分な配慮がされておる、当然拿捕された人々、さらに漁民に対する配慮が行なわれておることについては私も了といたしますが、この問題が出ましたので、私は若干角度を変えて質問してみたいのは、この二十九年の十一月二十二日、東シナ海で操業中の第三十一山田丸が、国府海軍に属すると認められるところの軍艦の不法な銃撃を受けて、有名な被災事件として出てきております。私も、過日の予算委員会において今澄君がこれを取り上げたために、この結果というものを実は注目をして見ておったわけであります。私の手元にも十分な資料が届いております。ところが、どうしたのでしょうか、急に立ち消えになりました。私はこの点について明確になっておりませんので、この点をひとつ皆様方に、といったらおかしいのですが、大蔵大臣質問をしたいと思います。大蔵省だけではなくて、外務省のほうもおいでになっていると思いますので、この点に対する的確な御回答を願いたい、このように思っておるわけであります。  そこでこの問題でありますが、まず加害者のいわゆる加害軍艦が国府のものであるかどうか、この点は確認されておるのでしょうか、どうなんでしょうか。——大蔵大臣、ちゃんとここにあるのです。これは予算委員会でも大蔵大臣おられたでしょう。この問題についてもかなり問題が提起されたところです。それでこの中にもありますように、すでにこのことについては外務、大蔵両省も承知である、そのためにこの点について蓬莱漁業なるものが遺族から誓約書とるわけであって、詳細なことは発表できない云々ということがあるわけであります。こういう点について大蔵省が知らぬということはないはずなんですね。その点はどうなんでしょう。
  190. 田中武夫

    田中国務大臣 この前どなたかからそのような御質問がございました。私が答えてはおらないと思います。大平外務大臣が答えたと思いますが、私がいま記憶しておりますのは、二十隻くらいの何かでございまして、それに対してはバナナか何かをこっちによこす。その売り払い代金で片づけるということになっておるのだ、そうしてそのバナナは一隻か二隻来ただけであとは来ない、それが現状だということをいま私はうろ覚えに覚えておるわけでありまして、これは要求があれば事務当局で取りそろえまして、私は明確にお答えをいたします。
  191. 卜部政巳

    卜部委員 大臣がわからないというのは確かにそうでしょう。だけれども、私はこの問題はたいへんな問題だと思うのです。率直に言うなら、ここで社会の片隅で泣いておられる未亡人の方がおるのですよ。現実に即死をしたところの井筒高義さんの妻なんですが、この方が当時の外務省なり大蔵省のほうからは、調査をした上に立って十分な補償をするということをいわれておるのです。ところがそういうものが現実に、単にこれを受け取らなかったならばあなたは不利になりますよという脅迫めいたものが、しかも意味のわからぬ蓬莱漁業協会ですか、こんなわけのわからぬところの、いわゆる商会のほうから出されておる。政府が当然補償すべきものをこういうところがやるという問題が私はわからないのです。  そこで大臣はおわかりにならないと言われるのですが、では、この点についての補償は行なったのでしょうか、どうなんですか。
  192. 田中武夫

    田中国務大臣 はなはだ恐縮でございますが、それもわからないわけでございまして、取り調べましてお答えいたします。
  193. 卜部政巳

    卜部委員 私、大臣に申し上げたいのですが、実は今澄さんがこの問題を予算委員会で取り上げられて、先ほど申し上げたようにすっと消えていっておるわけなんですね。率直に言ってそれじゃ一つ問題があるのじゃないか。でありますから、外務大臣がおいでになればまた別ですけれども、外務大臣大蔵大臣がやはりそろった中でこの問題をはっきりした形で私は答弁をしてもらいたいと思いますし、同時にこの問題についてはただ今日だけの質問で終わるのではなくて、政府がやはりそうした韓国の問題でもこういうふうなあれをやっておるのですから、しかもその中では外務省なりさらには大蔵省の中でもって調査の結果適当な措置をいたしますというようなことを言いながら、今日までそれを支払っていない、こういう責任的な問題もあろうと思うのです。こういう点で単なる答弁としての問題ではなくて、十分これを考慮してもらいたい、こういうふうに思いまして、その点がわからないということですから、発言を保留いたします。私はこの問題のみを追及しようと思っておりましたために、ほかの資料は持っておりません。以上でもって私の発言は終わりますが、この問題に関する限りは後刻十分に論議するということをひとつお認め願いたい、こういうふうに思います。
  194. 山中貞則

    山中委員長 有馬輝武君。
  195. 有馬輝武

    ○有馬委員 李ラインの問題についてお伺いをしたいと存じますが、日本の漁船が拿捕されて以来、十数年に及ぶわけでありますが、この間のおもな話し合いの経緯についてお聞かせをいただきたいと思います。
  196. 前田利一

    ○前田説明員 お答え申し上げます。李承晩ラインが一九五二年の一月十八日に宣布されまして、直ちに日本政府としましては、そういう公海上に一方的に管轄権を及ぼすようなことは、全く不法不当であるということで、強く抗議いたしまして、それ以来韓国側による、李承晩ライン侵犯のかどによる拿捕が起こり、また追跡、銃撃等の不法行為の発生するたびに、日本政府といたしましては韓国側に対し、そのつど厳重抗議いたしてまいっておるわけでございます。抗議の際に、その拿捕によりましてこうむった一切の損害につきまして、賠償請求をする権利を留保しつつ今日に至っておるわけでございます。なお先ほどの御質問、御答弁の中にも出てまいったわけでございますが、日韓会談の請求権委員会の中に従来船舶委員会というものが設けられまして、韓国側の日本に対する、朝鮮置籍船あるいは朝鮮の水域に戦後入ったものを返還しろという要求に対しまして、船舶委員会議題といたしまして、わがほうからの拿捕漁船に対する返還要求というものも議題に入りまして、日韓会談の討議の過程におきましても、この日本側の拿捕漁船の返還を要求してまいっておるわけでございます。
  197. 有馬輝武

    ○有馬委員 そのつど折衝を繰り返してきたということでありますが、両国の話し合いのネックになった点はどのような点であったか、その点をつまびらかにしていただきたいと思います。
  198. 前田利一

    ○前田説明員 拿捕漁船につきましての折衝の根本的な難点と申しますか、見解の相違は、韓国側はいわゆる李承晩ライン、その後に至りましてこれを平和ラインというようにも呼んでおりますが、この平和ライン、李承晩ラインというものが国際法上の先例にも合致し、法的な根拠もある。資源保存海域として韓国側が管轄権を有することは法的に有効である。これを侵犯する日本漁船の行為が不法なことであり、これを裁判し、これを没収することは韓国側の正当な権限行使の内容をなすものである、こういうことで、李承晩ラインを不法不当とし、それに基づく日本漁船に対する不法行為を全く根拠のないものとする日本側の主張と正面から対立いたしております点が、拿捕漁船の問題についての根本的な難点である、こう考えております。
  199. 有馬輝武

    ○有馬委員 その折衝の経緯において李政権それから張政権並びに現存との間に移り変わりがあるか、変移があるか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
  200. 前田利一

    ○前田説明員 お答え申し上げます。  李承晩大統領の時代におきましては、いわゆる反共であると同時に反日というような政策が強く掲げられており、そのあらわれといたしまして、李承晩ラインについての取り締まりも非常に厳重をきわめておった。韓国側に言わせれば李承晩ラインを侵犯した日本漁船を拿捕して裁判にかけ、船は没収する、乗り組み員はこれに実刑を科してきわめて長期にわたって抑留生活をしいる、累次にわたる日本側からの釈放要求というものも受け入れられなかったというような経緯がございますが、これが李承晩政権の退陣の後に張勉政権に変わり、さらに一九六〇年の五月に成立いたしました軍事政権になりましてからは、従来の日本との関係についての考え方が大幅に変わってまいりました。できるだけすみやかに日韓の善隣友好関係促進したいということで先方も熱意を示してまいりました結果、拿捕の数、不祥事件の数においてもよほど減少してまいりますと同時に、不幸にして拿捕されたり裁判にかけられたりする事件が起こりましても、こちらからの要請にこたえまして執行猶予というような形あるいは刑期満了前に身柄を釈放して送還してくる、あるいは裁判にかける以前に船ごと返してくるというような事例は、李承晩時代に比べてはよほどに増加してまいっておるように私どもは考えております。
  201. 有馬輝武

    ○有馬委員 後宮局長がお見えになったようでありますが、最初にお伺いをいたしたいと存じますことは、当委員会の審査についてどのような考え方を持っておられるか、お伺いをしたいと思うのであります。  私は、昨日条約局に本委員会出席するようにということを要求いたしました。条約局長ということでお願いをいたしましたが、現在各委員会において、特に外務委員会において審査が行なわれておりますので、大臣はもとより局長についても出席が不可能であるというお話でありましたから、それにかわる人でけっこうでございますということで審査を進めてまいりました。ところがこの時間になりましてもお見えにならない。審議が渋滞する。その経緯について、まさか本委員会を軽視しておられるとは思いませんけれども、明らかにしておかれたいと存じます。
  202. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 もちろん当委員会を軽視するとかいうことは全然ございません。御承知のとおりいま漁業の農相会談が行なわれておりまして、その関係省との協議、それから準備の書類の作成で縛られておりまして、現在まで来られませんでしたことについて、深くおわびいたします。
  203. 有馬輝武

    ○有馬委員 外務省は一人もいなくなっておるわけじゃないはずです。ほかに理由がなければいまの御説明では納得ができません。理由を明らかにしていただきたいと思います。
  204. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 先ほど申し上げました理由以外に、特にこの委員会を軽視して出なかったとかそういうようなあれは全然ございません。
  205. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの御説明ではわからないからお伺いしておるわけです。私はさっきも申し上げましたように、決して無理を申し上げておりません。大臣出席してほしいということを言っておるわけじゃありません。局長に出ていただきたい、局長がお忙しいということでありますからそれにかわる人でけっこうでございますということで、須之部参事官と前田課長出席するという通知がありながら、すでに委員会の経緯は御存じのはずなのに、今まで出てこられなかった理由について、明らかにしていただきたい、こう聞いておるわけです。
  206. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 私のほうは先ほど申しました漁業交渉の準備その他で各省との打ち合わせ等がございましたので、前田北東アジア課長が一番詳細によく知っておりますので、かわりに出席させておったわけでございまして、いままたぜひ局長みずから聞くことがあるから出てこいということでございましたので、仕事を打ち切りまして出てまいった次第でございます。
  207. 山中貞則

    山中委員長 アジア局は前田北東アジア課長も同じ局内の課長ですから、問題は条約局だと思うのですよ。だから後宮局長そのものは別段——いま急拠知らされて来たのだと思うのです。そのつもりでやってください。おっしゃる非難はもっともです。
  208. 有馬輝武

    ○有馬委員 条約局長にお伺いしたいと思いますが、いま前田課長から李ラインの問題についての折衝の経緯をお伺いいたしたわけでありますが、両国の話し合いがつかなかった理由についての御説明がありました。この間に、私も実は昭和三十一年に当時の金代理公使というのですか、等とも折衝いたした経緯もありまするし、またアメリカ大使館にこの問題について話をしにまいったこともあります。そういった経緯を通じてお伺いしたいと思うのでありますが、この問題についてアメリカ側はどのような動きをしたのか。私は何も政府が自主的な交渉を進めておる際に他国の介入云々という意味ではなくて、少なくともアメリカの、たとえば年間二億五千万ドルに及ぶ援助、こういった点からいたしましても、その意図があれば当然この問題についても両国の話し合いの、折衝過程で果たし得る役割りがあったのではないかと思うのであります。そういう点で、この間にアメリカ側がどのような動きをしたのか、また、日本からこの件について相談をした経緯があるのか、ここら辺についてお聞かせをいただきたいと思います。
  209. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 李承晩ラインが設定されました当時、これはアメリカも当時中南米諸国と同じような問題をかかえておりました関係もございまして、韓国側の注意を喚起すべく相当働きかけておったように承知いたしております。しかし御承知のとおり、李承晩大統領及びそのあとの韓国政権も絶対に政策を変えないで現在に至った次第でございまして、その間アメリカといたしましては、特にこの李ラインの問題あるいは船舶拿捕の問題について、韓国側に具体的のケースについて働きかけたというような事例は承知しておりません。ただ一般的に、こういうことがあるから早く漁業交渉を妥結して、こういう問題を抜本的にできるだけすみやかに解決するようにという一般的な希望の表明はございましたが、特に具体的の拿捕事件等については、最初の李ライン設定当時以後は、別に何ら韓国側に対して特に働きかけているというようなことは承知しておりません。
  210. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの後宮局長の御答弁で大体その間のニュアンスはわかるのでありますけれども、それにしても、他の問題については非常に積極的なアメリカが、この問題について非常に消極的であった理由が解せない面が多いわけであります。アリソン大使のときであったと思いますが、名前は忘れましたが、たぶんグラハム代理大使、当時の公使ではなかったかと思いますが、すでに拿捕事件が起こりましてから四年経過いたしておりましたのに、この件に関する私どもの問いに対して、現在調査中である、このような言明をいたしておったのであります。あなた方と一緒に育ちました森島守人君もその席に当時同席いたしておりましたが、森島君が、有馬君、ちょっと言い過ぎじゃないかと言うぐらいに、私はこの件について詰問をいたした記憶があるのでありまするけれども、このような消極的な態度をアメリカ側がとってきた意図はどこら辺にあったのか、外務省としてはどのように推測をされておったのか、そういった消極的な態度をこれやむを得ずとして看過してこられたのか、ここら辺の経緯についてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  211. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 先般の中間報告の場合に大臣からも申されましたとおり、この日韓交渉全般の早期妥結ということにつきましては、米国は機会を見まして非常に強い希望表明はいたしておりましたが、各個の問題につきまして、ちょうどインド、パキスタンの間のカシミール問題とか、ああいう問題に具体的解決条件とかそういう問題まで踏み込んできたのに比べますと、日韓関係につきましては、全然そういう介入をしてきていない状況でございます。これは他国の外交政策の動機の推測になりまして、公開の席ではあまり深く立ち入ることはいかがかと思われますが、やはりへたに立ち入ることによってかえって逆効果を生ずる、双方から感謝されるよりか、むしろ双方から恨みを買うというようなところから、一般的に非常に慎重な態度を持してきているような気がいたしております。
  212. 有馬輝武

    ○有馬委員 単純に双方から恨みを買うからというような受け取り方をしておられたわけでありますか。
  213. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 それ以上、李ラインの問題について特に日本側に冷淡だったとか、その理由いかんとかいうことについては、どうも思い当たる節がないのでございます。
  214. 有馬輝武

    ○有馬委員 少なくともこれは国をあげての大問題であります。そして外務省としても積極的に折衝を続けられ、その間に当然、アメリカの韓国に及ぼす影響について十二分に知っておられる外務省が、ただぼう然とその消極的な態度をながめておられた、これはどうも解せないと思うのでございます。当然そこにしかるべき判断があり、またその判断に及ぶ動きというものがあったと思うのでありまするが、ただ消極的であったというのではなくして、ほかに理由があったのではないですか。
  215. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 やはりアメリカといたしましては、この種の問題につきまして深く立ち入らないほうがいいんじゃないか、特に朝鮮戦争が進行中の場合には、韓国との関係で韓国を特に刺激するようなことを避けるというような考慮もあったのではないかというふうに思っております。
  216. 有馬輝武

    ○有馬委員 私は、むしろ韓国に対すると同時に、私どもがよく憶測し過ぎるというぐらいに非難される場合もあるわけでありまするけれども、NEATO結成なり何なりの背景に利用されたのではないか、弱い漁民がその犠牲にされてきたのではないか、一般から見れば、あるいは、うがち過ぎた見方かもしれませんけれども、そういった受け取り方をせざるを得ない雰囲気があったと思うのでありますけれども、その点について局長の考え方をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  217. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 アメリカといたしましても、先ほど申しましたとおり、中南米諸国が非常に大きな漁場保護ラインを設定いたしまして、これに厳重に終戦後から抗議をし続けてきたりしておりましたので、日本が李承晩ラインのもとに犠牲になっていることについては、一般的な同情の念は始終表明しておりましたので、自分の政策目標のために日本が李承晩ラインで苦しめられているのを看過する、そういうような気配は感じられなかった次第でございます。
  218. 有馬輝武

    ○有馬委員 それでは外務省としてはその態度に対してどのような働きかけをしてこられたわけですか。
  219. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 これは会談全般につきまして米国側の介入を導入するような態度に出ますことは、たとえ特定の問題についてあるいは有利な場合がありましても、結局全般的に第三国の干渉によって交渉ができたというような非難も招くことになりますので、全般的に大局的見地から、この日韓交渉については米国をはじめとして第三国の介入はむしろこちらから遠慮する、そういう態度でずっと来ております。
  220. 有馬輝武

    ○有馬委員 参考までにこの際お伺いしたいと思うのでありますが、ベトナムの賠償の有償、無償のその後の動きについて、おも立った件でけっこうでございますが、お聞かせをいただきたいと思います。どういった工事が進められ、どういった点に役務が提供されておるかというような点について、お聞かせをいただきたいと思います。
  221. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり、ベトナムに三千九百万ドルでございましたか、賠償が日本の生産物及び役務で支払われることになっておりまして、一番顕著なものといたしましては、先般第一期工事を竣工いたしましたダニム・ダムの建設があったわけでございまして、よく一部に、問題と申しますか、疑われておりますように、軍事的な建設とか、そういうようなものに使われないように、これは御承知のように賠償部で各契約を認証いたしますので、そのときにそういうことのないようによくチェックしてやっている状況でございます。
  222. 有馬輝武

    ○有馬委員 その他の点について二、三お聞かせをいただきたいと思います。顕著なものでけっこうです。
  223. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 恐縮でございますが、これは実は賠償部が主管でございまして、実は私こまかいところまで承知いたしておりませんので、ダニム・ダム、それからそれ以外といたしましては、若干消費資材等もあるいは出ていたのじゃないかと思っておりますが、詳しくはあとで資料を取り寄せてまた御連絡いたしたいと思います。
  224. 有馬輝武

    ○有馬委員 それからこの際藤崎局長にお伺いをいたしたいと思いますが、サンフランシスコ条約が結ばれました過程におきまして、これは何回も問いただされたことでありますが、北京政府か台北政府かという判断は、日本に自主的にまかされたのかどうか、この点をこの際明らかにしていただきたいと思います。
  225. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 サンフランシスコ条約の規定上は仰せのとおりでございます。
  226. 有馬輝武

    ○有馬委員 日本政府の自主的な判断にまかされたということでありますが、当時吉田書簡によって明らかにされておりますことは、条約の適用範囲を、現在国民政府の支配下にあり、また今後支配下に入るべき領域といたしておりますが、第十条で中華民国の国民を規定いたしまして、「台湾及び澎湖諸島のすべての住民及び以前にそこの住民であった者並びにそれらの子孫」と限定をいたしておりますが、今回のフランスの中共承認に伴いまして政府が明らかにしております態度、この吉田書簡にあらわれ、そして台北政府を選んだそのときの政府考え方と、現在のフランスの中共承認があったあと考え方、これとの関連についてお聞かせをいただきたいと思います。  これは外務大臣からお伺いすべきことではありますが、これは外務省としても当然一致した見解として持っておられるはずでありまするから、この際明らかにしていただきたいと思います。と申しますのは、私どもは、この日韓会談の問題につきましても、北朝鮮ということを念頭に置かないでものを考えるわけには参らないのであります。そういった意味合いにおきまして、いまの点を、これは論議され尽くした問題でありまするけれども、現時点における外務省の考え方をお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  227. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 仰せのとおり、日華平和条約におきましては、国民政府との間に、この条約の施行地域については、国府が現に、あるいは将来支配する地域に限るということになっておりますが、日本が中華民国と戦争状態に入り、そして中華民国全体との間に平和条約を結んで平和関係を回復したという立場を当時とっておりました。ですから、要するに、中華民国については、全中国の政府であるという立場をそのときもとっておりましたし、フランスが中共を承認いたしました現在においても、その立場は変わっておらないわけでございます。現在の時点においては、その立場はずっと維持せられておるわけでございます。  ところが、韓国につきましては、御承知のとおり一九四八年の国連総会の決議によりまして、はっきりと、いまの大韓民国政府というのは、三十八度線以南と申しますか、休戦地域線以南の地域における唯一の政府、こういうことになっておりますので、その点今度日韓交渉をいたしますにつきましても、南の半分の政府との間に国交正常化の交渉をするというたてまえになっておりまして、その点中華民国の場合と違うわけでございます。もちろん、韓国政府といたしましたら、憲法その他で自己が全朝鮮に支配権を及ぼす全朝鮮の政府という立場はとっておりますが、国交正常化の交渉におきましては、国連の決議に基づきまして、南鮮だけの政府という立場で交渉を進めておる次第でございます。
  228. 有馬輝武

    ○有馬委員 直接関係はございませんけれども、先ほど、中華民国が唯一の政権であるという考え方については現在も変わっていないという後宮さんの御答弁でございました。といたしますと、国連で新しい事態が発生した場合には、簡単に申し上げますと、その節考慮するという外務大臣答弁は、そこからは出てこないと思うのでありますが、その点の関連はどうなんですか。
  229. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 大臣の御答弁趣旨は、現在においては、日華平和条約を締結したときの立場は変わっておらない。ただ国連に中共が加入する、代表権が認められるようなことになったら、そのときは、それによって自動的にどうということではなくて、それを一つの要素として中国問題を考えるときに考慮する、そういう御趣旨であったように了解しております。
  230. 有馬輝武

    ○有馬委員 その考え方が、実は先ほどお伺いいたしました吉田書簡によって、当時日本政府がサンフランシスコ条約にとった態度が、世界現実にそぐわないものであった、その流れを再び時期的に判断を誤る——バスに乗りおくれるとか乗りおくれないとかいう問題ではなくて、そういう形で進めていくことが、日本の真の意味の外交の樹立ということに大きな障害になるのではないかと思うのでありまするけれども、その点についての局長としての見解を明らかにしていただきたいと思います。
  231. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 非常に大きな問題でございまして、あるいは一事務当局答弁の権限の範囲外かとも存じますが、大臣等の答弁されております御趣旨は、現状においては、日本の対支態度を変える必要はない。しかし、国連尊重のたてまえを外交の基本原則としておりまする日本としては、いわゆる大臣のおことばを使えば、国連に祝福を得て中共が入るような、代表権が認められるような事態になれば、それはそれを一つの新しい要素として考える。国連尊重という日本の外交の基本原則とのにらみ合わせでそういうふうに答えられたものと存じます。
  232. 有馬輝武

    ○有馬委員 私がこの問題をお伺いいたしますのは、少なくとも当時とった日本態度というものと、今回の日韓会談というものがやはり軌を一にするのではないか。そういうことで、世界の大勢にそぐわない、おくれをとるといいますか、現実離れのした孤立したアジアの中の日本あるいは韓国という形に追い詰めていくのではないか、こう見ておるのでありまするけれども、そこら辺について、そこは違うのだという外務省のお考え方がおありでしょうから、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  233. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり、中共の場合には四十八カ国あるいはもっと多くなったと思いますが、ございますが、北鮮の場合は十九カ国でございますのに対して、韓国のほうを承認しております国が七十三カ国ぐらいもある。フランスも中共を承認いたしましたときに、中共を承認することは自動的に北鮮を承認するものではないということをはっきり韓国にも通告している。そうして中共を承認している国であっても、韓国を承認している国が数カ国ある。こういうような状況でございますので、フランスによる中共の承認が、広い意味においてアジアのいろいろな分裂国家の形成に長期的に見て何らかの影響を与えることがないとは言い切れないと思いますが、現在の段階におきましては、韓国の地位は国連によって認められ、そうして七十九カ国によって認められておる韓国の地位というものは、国際的には非常に確立しておりまして、北鮮の地位と比べものにならない確立した地位を持っております。そうして現在のところ、これがゆらぐ傾向はまだ全然見られませんので、この段階において、韓国と国交正常化の交渉を進めることは現実に合している、そういうふうに解しているわけでございます。
  234. 有馬輝武

    ○有馬委員 世界の各国の動きをへっぴり腰で見て行動する、この日本の外交それ自体が常に時期おくれなものになる。現実離れのしたものになる。こういう経緯をたどってきておりますことは、中共の問題についても同断でございます。それをおそれるがゆえに、今度も松井国連大使がアフリカ諸国の実情の調査に出かげる。この行為と、いまあなたのおっしゃったことは矛盾しているじゃありませんか。どうなんですか。矛盾しておりませんか。重要事項指定方式にしてきた、アメリカに追随してやってきた、それが現在くずれつつある。当然くずれることが予想される。その事態が再び南北の朝鮮の問題にも訪れることは歴史の流れとして当然予見され得るところなんです。私は、外務省のこういった世界の動きに対する基本的な考え方をお伺いしておるわけであります。
  235. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 外務当局といたしましても、及ばずながら情勢判断等について甘過ぎたとかいろいろな批判をよく仰ぐわけでございますが、そういうことのありませんように、日韓交渉につきましても、韓国、朝鮮半島をめぐる周囲の状況を十分にらみ合わせながらやっておるつもりでございます。そうして、先ほど申し上げましたとおり、韓国の国際的地位につきましては、目下のところ変動がなく、国際的にはしっかりした地位を保っておるので、これと交渉を進めても差しつかえないという考慮に立ってやっておるわけでございます。
  236. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に請求権の問題についてお伺いしたいと思いますが、その内容につきましては、先ほど同僚委員の諸君からも質問がありましたので、重複することを避けまして、支払い期限の問題でありまするが、現在折衝中のことでありますので、日本側の態度、また韓国側の態度をつまびらかにすることも問題があろうかと思いますが、むしろあるいは借款についてたとえば日本側はどの程度の分割払いを考えて折衝しておられるのか、また借款について韓国側は当然長期を希望するし、日本側は短期のものを希望する、この食い違いがあると思うのでありますが、一応のめどをどこら辺に置いておられるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  237. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 支払い期間につきましては、これはすでに一昨年いわゆる金・大平了承線というものが発表されましたときに発表になりましたとおり、有償、無償ともに十年間ということになっております。  それから今度は有償、すなわち借款のほうの償還期限につきましては据え渇き期間を含んで二十年、経済協力基金から支出する、そういうことになっております。
  238. 有馬輝武

    ○有馬委員 借款の利率についてはどうなっておりますか。
  239. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 当時の合憲で経協基金の一番有利な利率として年率三分五厘ということになっております。
  240. 有馬輝武

    ○有馬委員 次に韓国の現在進めております五カ年計画ですか、そう呼び得るものかどうか知りませんけれども、その見通しについてどのように見ておられるか、この際お聞かせいただきたいと思います。
  241. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり軍事政権ができましたときに、従来から個々にありましたいろいろな開発計画を総合いたしましていわゆる五カ年計画、非常に野心的な五カ年計画ができまして、軍事政権といたしましてはそれの遂行に非常に努力したわけでございますが、輸入が多いのに比して輸出が伸びなかった。たまたまそこへまた例の米の不作、麦の不作とが重なりましたために計画どおり実施されず、昨年になりまして計画を大幅に下向きに修正いたしまして現実に合うように直しております。それでその後の生産状況等を見ておりますと、工業生産等も期待どおりの年率どおりは上がっておりませんが、徐々に上がっておる。特に輸出が少しずつ昨年あたりから伸びてきておる。そういうことでございますので、当初の目標のようなスピードと規模の成功はできなくても修正された規模ペースによってどうにかやっていけるのではないかというふうに見ております。
  242. 有馬輝武

    ○有馬委員 私が先ほどベトナムの賠償について若干お伺いいたしましたのは、この賠償につきましてもその額なりあるいは支払いの方法なり期限なり——これも問題でありますか、それが効率的に運用されるかどうか、こういう点を十分配慮に入れながら当然外務省としては折衝しておられると思うのであります。またそれなくしては意味がないと思うのであります。そういう意味でこの五カ年計画について十二分に把握しておられるのかどうか、いまの御説明ではちょっとたよりない感じがいたすのでありますが、その中でこの五カ年計画を遂行するにあたって、韓国としては外資にたよっておる部分が非常に大きいことは御承知のとおりでありますが、今度のこの賠償と関連して、韓国側としてはこの五カ年計画を遂行するその資金源としての外資の中で今度の話し合いのものをどのように配慮しておるのか、これは向こうさんでなければわからないといえばそれまでのことでありますけれども、当然そこら辺の見通しといいますか、それがあって外務省としては進めておられると思いますので、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  243. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御質問の最初のほうにございました日本の有償、無償の供与がほんとうに効率的に使われるようにという点につきましては、従来諸国と結びました賠償協定あるいはタイの特別円協定等にございますように、実施細則によって、そうしてほんとうに効率的な使途に使われるように両方が協議してやっていくことになると思うのでございまして、ほぼ漁業についての見通しもつきました段階において、ぼつぼつその実施細則の面の交渉に入るという段階に来ているわけでございます。まだ公式のあれではございませんが、韓国側の新聞等に発表されております向こうの企画庁等の発表を見ましても、消費財を主として入れて、そしてインフレを押えるほうに主力を注ぐか、あるいは資本財をプロジェクトベースで入れる、主としてそういうプロジェクトの資本財の輸入に使うということにつきまして、政府部内でだいぶ論争があったようでございますが、最近におきましては主として資本財を入れる、こういうふうにきまったように承知しております。まだ公式のルートを通じて向こうの実施細則についてその点どういうふうなプロジェクトに使うかという案は、実施細則の交渉が近く始まりますので、そのときに明らかになるのだろうと思っております。  それからもう一つあとのほうの御質問にございました……。
  244. 有馬輝武

    ○有馬委員 けっこうです。  次にお伺いいたしたいと存じますことは、借款の返済についての見通しを、先ほど佐藤委員からも焦げつき債権の問題等について、あるいは武藤君からも御質問があったのでありますが、はっきりとした見通しを持っておられるのかどうか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  245. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 お答え申し上げます。  韓国五カ年計画の総投資額といたしましては米貨換算で約二十四億七千万ドルを——これは総投資額でございます。内外資合わせてそれだけを見込んでおります。そのうち外資といたしましては約六億八千万ドルを見込んでおることになっております。  先ほど御質問ございました、日本の有償、無償をこの五カ年計画とどういうふうに組み合わせているかという点でございますが、これは実は機会あるごとに先方にも照会しているのでございますが、先方の答えは、自分の国の五カ年計画については自分のほうで別途調達した外資内貸によってやるのだ、日本からもらう有償、無償の金はその五カ年計画の資金計画の外ワクとして、そのプラスアルファとして使うのだ、そういう立場を繰り返しております。
  246. 有馬輝武

    ○有馬委員 その弁済についての見通しはどうなんです。
  247. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり、先方は外貨事情が非常に苦しゅうございますので、返済能力の問題についていろいろ懸念のあるのは当然でございます。現在の貿易金融のやり方を見ておりましても、先方はこのごろは非常に良心的に輸入を押えまして、そうして自分の外貨の支払える範囲で信用状を出す、そういうふうな政策をとっております。先方の説明といたしましては、日本からもらう有償、無償によって生産がふえ、貿易がふえることによって日本からの借款を返済していくのだ、そういうふうに言っております。
  248. 有馬輝武

    ○有馬委員 次にお伺いしたいと存じますことは、韓国の対日感情の把握についてであります。私は、外務省としてどのような手段を通じてこれを把握しておられるのか、この際お聞かせをいただきたい。たとえば世論調査等でありまするけれども、朝鮮日報に出ました世論調査で、学生の世論調査をやりましたところ、二十歳前後の学生たちが、今度の日韓会談についても日本側に誠意がないというような見方をしておる者が九〇%をもこえておりまするけれども、そこら辺について、韓国の世論というものを的確に把握してかからなければ、もちろん政情その他についても同断でありまするけれども、問題が非常に大きかろうと思います。そういう点について、いかなる手段を通じてこの世論調査につとめておられるか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  249. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり諜報活動的なものはいまできませんので、結局先方の世論を見る方法といたしましては、新聞雑誌等に発表される先方の世論調査の結果あるいはアンケートの結果、あるいは向こうの要人あるいは在野の人方との個人的な接触によって得られる感触、そういうものにたよっておるわけであります。
  250. 有馬輝武

    ○有馬委員 最後にお伺いしたいと思いますが、今度の金鍾泌氏の来日に際して政府としてはいかなる資格として金氏を見ておられるのか、これをお聞かせいただきたいと思うのです。
  251. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 御承知のとおり金鍾泌氏がベトナム、タイ等に参りましたときは政府特使の資格を持っておられましたのですが、日本では単に民主共和党の議長日本で申しますと幹事長というような職に当たるわけでございまして、われわれもそういうふうに見ているわけでございます。
  252. 有馬輝武

    ○有馬委員 政府の今回の動きを見ておりますと、これは当然外務委員会でも本日質疑が行なわれたと思いますが、私は単なるそういったものとしての扱いを越えておるのではないかと思います。少なくとも二国間の重大な問題について、こういった資格の人が重要な役割りを果たすという点については、歴史的にも大きな問題を残すのじゃないかと思いますが、この点についての外務省の御見解を伺いたいと思います。
  253. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 そういう御議論も当然でございます。外務省といたしましてもその点留意いたしまして、特に外務大臣訪問も儀礼的訪問ということにいたしまして、実質的な交渉等は全然しなかったわけでございます。一昨年、金鍾泌氏が中央情報部長の現職にありますときに、外務大臣と面会されていろいろ交渉の話をされたようなことで旧知の間柄でございますので、儀礼訪問の申し出がありました以上これを受けてそれにこたえた、それだけのことにしたわけでございます。
  254. 有馬輝武

    ○有馬委員 新聞その他の報道機関の伝えるところは全部誤りなのですか。
  255. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 外務大臣との会談に関する限り、双方の国内の政情等に関するいろいろな談話はございましたけれども、具体的な交渉案件の話は事実全然ございません。
  256. 有馬輝武

    ○有馬委員 外務大臣はじめ政府要人が会っておることはもう巷間に毎時報じられておるところなんです。その果たす役割は何にもないんだとこの際言い切れますか。
  257. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 金鍾泌氏も与党幹事長として参りましたので、いわゆる交渉のムードづくり的のことはするつもりであったように聞いておりますが、それ以上政府当局者との話し合いにおいて具体的の交渉をする、そういうことはやっておらぬと承知しております。
  258. 有馬輝武

    ○有馬委員 いいかげんな言いのがれはよしなさいよ。実際やっておるじゃないですか。いまの答弁をはっきりもう一度繰り返して言えますか。
  259. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 私、確実に承知しておりますのは、外務大臣との会談の内容でございますけれども、これにつきましてはもう全然そういう交渉ということはやっておりません。
  260. 有馬輝武

    ○有馬委員 終わります。
  261. 山中貞則

    山中委員長 堀昌雄君。
  262. 堀昌雄

    ○堀委員 少し出入りをしておりまして、一部重複をするところがあるかもしれませんが、御了承いただきたいと思います。  先ほど大蔵大臣は、有償二億ドルの韓国に対する借款の条件は、年利三分五厘、七年据え置き、二十年償還ということになるというお話しでございました。海外経済協力基金、これは担当は企画庁のようでありますが、大蔵省でわかる範囲で答えていただきたいと思うのですが、どうもこれまではそういう例がないと思うのですが、これまでの貸し付けの例をひとつ伺いたいと思います。
  263. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 ただいままでに経済協力基金が貸し付けました案件は十四件ございます。期限につきましては、短期のものもございますし、それからたとえば昭和五十一年が期限になっておるというような長期のものもございます。貸し付け、出資の別から申しますと、すべて貸し付けになっておるのでございます。
  264. 堀昌雄

    ○堀委員 昭和五十一年というのは、貸し付けてから期間何年ですか。
  265. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 ラオスにつきまして五・七五%、十四年というのが、いまのところ最長でございます。
  266. 堀昌雄

    ○堀委員 大体一般的な金利は、これまで輸出案件について四ないし五%、期間は、いまのラオスが十四年で最長ということのようでございますね。金利の最低は、これまでのところは四%以下のものはありますか。
  267. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 四%というのは、日本電気のメキシコ向けマイクロ・ウェーブの設備の輸出につきまして、十年四%という例がございます。
  268. 堀昌雄

    ○堀委員 四%以下は、ないようでございます。そこで私は、海外経済協力基金から出すということは、当面それはやむを得ない方法であるかもわかりませんけれども、これまでの本来の東南アジアその他の、この海外経済協力基金の定めるところによって貸し付けをしてきたものが、利率においても最低は四%である、期間においても最長が十四年である。ちょっとあわせて伺っておきますが、据え置き期間の最長は、これまで何年ですか。
  269. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 据え置き期間は、いままで定めた実例はございません。
  270. 堀昌雄

    ○堀委員 これまでは、据え置き期間は定めた例がない、ところが韓国にだけは、金利三・五%、据え置き期間が七年、借款期間二十年、まことに異常な取り扱いであると私は思うのですが、そういうことが、もしここで行なわれるとするならば、今後、海外経済協力基金というものは、これに右へならえするようなかっこうになるんじゃないか。これは韓国だけ特別扱いをするということであるのかどうか、その点をひとつ伺います。
  271. 田中武夫

    田中国務大臣 もしそのような状態で妥結をするとすれば、特別扱いというような考え方でございます。
  272. 堀昌雄

    ○堀委員 なぜ特別扱いをしなければならないのですか。
  273. 田中武夫

    田中国務大臣 そこが日韓の特別な状態というところでございます。日本でもって分離をして独立をしたような国はないわけでありまして、日韓の間にある特殊な状態であるということがその意味で言えるわけでございます。
  274. 堀昌雄

    ○堀委員 もしそういうことになると、今後台湾が金貸せということになったら、同じように分離独立をした国ですから、韓国にはこれでやるんなら台湾にもよこせと言われたら、これはどうしますか。
  275. 田中武夫

    田中国務大臣 それはもし言われたときの話でございまして、現在まだそういうことがありませんから、日台交渉ということはないわけでありますので、そういうことを想定してお答えするわけにはいかぬわけであります。
  276. 堀昌雄

    ○堀委員 それはいまなければということですが、いまのあなたの答弁からすれば、日本の領土であったものが独立をしたんだ、そこからもしそういうことが起こるならば、これは特別扱いだとあなたが言うわけだから、同じケースから同じことが起これば特別扱いをするというのは、これはあるなしの問題でなしに、論理から言えば当然そういうことになるじゃないですか。
  277. 田中武夫

    田中国務大臣 これは論理的でいく問題じゃないのです。バイ・ケースでいくわけであります。だからその事項事項が出てきたときにケース・バイ・ケースで考えていくということであります。
  278. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとバイ・ケースということは非論理的であるということですね、いまの言い方からすると。まあどうせこれはきわめて非論理的な問題だと私は思っておるのです、すべてのこれまでの取り扱いから見て。だからそれはそれでいいといたしますが、そこでこれはこういうことになっているのです。海外経済協力基金法では二十一条の二で「その開発事業に係る事業計画内容が適切であり、その達成の見込みがあると認められる場合」に金を貸すことができる、こういうことになっているのです。ですが、こういうふうにいろいろな金を貸すという場合に、何に使うかということはわからないんじゃないですか。これは二億ドル貸すときに何に使うのかということがわかりますか。
  279. 田中武夫

    田中国務大臣 まだそういうこまかい問題に対しては最終的にきまっておらないわけでございます。それがきまって、経済協力基金の条項に適合するように、いろいろな計画をお互いに両国の間で話し合いができるということであれば、それでいいと思いますし、そうではなく、また全然現行法で抵触をするような状態で基金から出さなければならぬということに最終的にきまれば、法律改正ということになるわけでありますし、そういう問題に対してはまだ未確定であります。
  280. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話二つあったと思うのです。要するに、これからのことだということはわかります。これからのことだということはわかるけれども、そのいろいろな条件、内容が協力基金法に合致しないときは法律のほうを変える。こっちを変えるのですね。要するに、そうするとこの問題は海外経済協力基金からそういうものを貸すということのほうが大前提になって、そうしてそっちのほうに合わすように法律のほうも変える。いまそういうふうな答弁に聞いたのですが、そう理解していいですか。
  281. 田中武夫

    田中国務大臣 全く未確定でございますということが前提になっておるわけでございます。でありますから、最終的決定をする段階において、法律に適合するような方法でやりたいということは、こちらは考えておりますが、相手のある話でありまして、どうしてもこの法律条文ではのみにくいというような状態でもし決定をした場合、第二に、しかもその状態であっても海外経済協力基金から出すということがもしきまれば、法律改正ということもあり得るということを申し上げたわけであります。これは前にガリオア、エロアの問題のときに、産投会計法の改正をお願いしましたから、そういうものも含めて仮定の問題として申し上げたわけでありますが、現在の状態では海外経済協力基金法の規定に基づいてやれるというふうに、そうなることをこいねがっておるわけであります。
  282. 堀昌雄

    ○堀委員 ところがこの間大平さんはこういうふうに答えておられるのですね。いろいろ新しいくふうについて触れられて、「無償経済協力は三億ドルを十年間にわたり日本国の生産物及び日本人の役務により供与し、また、長期低利借款は二億ドルを十年間にわたり海外経済協力基金より供与することとなったのであります。」断定的なんですがね。これは外務大臣にちょっと来てもらわないと困るのだけれども、いまのあなたのおっしゃるようなふうに報告していないのですよ。これは「長期低利借款は二億ドルを十年間にわたり海外経済協力基金より供与することとなったのであります。」こうなっておる。十年間です。これはあなたのほうと全然答弁が違う。どういうことですか。
  283. 田中武夫

    田中国務大臣 私が聞いております段階におきましては、大体二億ドル、三分五厘、七年の据え置き期間を含めて二十年程度ということを聞いておりますが、その後毎日日韓交渉をやっておりますから、当事者である外務大臣が十年間ということであれば、そうなればなお経済協力基金に適合するわけでありますし、私もそうあればいいとは思いますけれども、その間の問題に対しては、その大平外務大臣発言は私は開いておりません。私は前に事務当局とお互いの間で話をして、大体こういうことだという外務省当局の意向を聞いておるのでありまして、十年間という発言は、どういう根拠に基づいて言われたか、私はわかりません。
  284. 堀昌雄

    ○堀委員 外務省にちょっとお伺いをいたします。  これはこの間の大平さんの本会議における報告なんですよ。公式な報告でちゃんといま私が読み上げたように、「長期低利借款は二億ドルを十年間にわたり海外経済協力基金より供与することとなったのであります。」少なくとも、二月十九日現在においては、こういうことが決定をされておるということなんですが、外務省どうなんですか。
  285. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 中間報告にございます十年間と申しますのは、借款後供与していく期間が、十年間にわたって供与するということでございます。それから先ほど大蔵大臣のおっしゃいましたのは、その供与された借款の償還期間が二十年、据え置き期間七年を含む、そういうことでございます。
  286. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この「二億ドルを十年間にわたり海外経済協力基金より供与する」というのは、機械的に割るならば、一年に二千万ドルずつを三分五厘で貸して、それを七年据え置き二十年というので、十年間二千万ドルずつを貸すのだ、こういうことに大体理解をしていいわけですか。
  287. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 一応そのとおりでございます。
  288. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、前段の「三億ドルを十年間にわたり」というものも、やはり同じように年三千万ドルずつで十年間ということに理解をしてよろしいですか。
  289. 後宮虎郎

    ○後宮政府委員 当時金・大平会談のときに、各年度の支払い額までこまかく話は入っておりませんでしたが、大体そのときの会談の了解と申しますか、はっきりした了解ではございませんが、話し合いの空気といたしましては、大体平等にこの三億ドルを年間に分ける、そういう勘定でございます。
  290. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、先ほどから議論になっておりましたオープン勘定の四千五百万ドルですね。そうするとこれはさっきの八条国移行については適当でないという問題が生じておるということですが、適当でなければこの中から落とすということになりますか。いま年三千万ドルずつでいくと、最初の年はゼロだった。二年目に千五百何方ドルかを落として、残りを無償で渡す、こういうふうに理解をしてよろしいですか。
  291. 田中武夫

    田中国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、この有償、無償とは別に、できるだけすみやかに返済をしていただくという考え方でございます。
  292. 堀昌雄

    ○堀委員 有償、無償とは別にできるだけすみやかにということは、要するに、一ぺんこちらから渡すものは渡す。それからまたもらうものはもらう。片一方は十年、十年、非常にはっきりしているわけですね。そっちのほうはできるだけすみやかにで、条件はつかないわけですね。
  293. 田中武夫

    田中国務大臣 それは最終的に日韓交渉が確定をするときまでに、その問題もあわせて決定したいということであります。   〔委員長退席、原田委員長代理着席〕
  294. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、最終的にきまるときまでには、これは期限が確定をするというふうに理解をしてよろしいですか。——そこで私は、ここで非常に問題になると思いますのは、毎年三千万ドルずつ——ところがここはこういうふうになっておるのですね。「無償経済協力は三億ドルを十年間にわたり日本国の生産物及び日本人の役務により供与し、」こうなっておるわけですね。これは金を渡さないことになっておりますね。そうすると、いまの韓国の状態というのは、非常にドルが不足をしておるわけですね。御承知のようにきわめてドルが不足しておる。ドルが不足しておるところへ、おそらく長期低利の借款のほうも、事実的にこれは金でいくよりもどっちかというとやっぱり物になるのじゃないか。いまの物及び役務ということになるのじゃないかと私は思うのですが、そうすると実質的にドルが上向こうへいかない。これはドルということではなくて、生産物であり、役務であるということになると、この四千五百万ドルのほうは、これは返してもらうのはドルで返してもらうということでしょうね。これはどうなっておりましょうか。
  295. 田中武夫

    田中国務大臣 もちろんドルで返していただくということでございます。
  296. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、これは今後の問題でありましょうけれども、率直に言って非常に私は問題が残るのではないかと思う。要するに韓国の外貨事情からしても、これまでも、さっきのお話のように長い間四千五百万ドル余りのものが焦げつき債権として残っておるわけですね。だからいろいろ新聞や何かの伝えるところでは、どうも三億ドルというけれども、事実は二億五千万ドル強ですか、で、要するに差し引きのかっこうということにするのでなければむずかしいのではないかというような報道が実はされておるわけですけれども、私もそうなると、いまのあなた方のお話のようにドルで返せということになると、なかなか返らないのではないかと思うのですが、これは見通しとしてはどうですか。
  297. 田中武夫

    田中国務大臣 実際問題としては、あなたの考えられることもよくわかります。わかりますが、これは貿易の問題でございますから、貿易の代金をお互いに、向こうから買う場合にはドルで支払う、こっちの売るものもドルでもらう、現在両方の間では四千四百何万ドルというものが残っておるわけであります。でありますから、これに対しては日韓交渉がもし妥結をすることになれば、こちらも払うものに対してはきちんと計画が出るのでありますから、返してもらうものも何年間でもって幾らずつ返してもらう、こういうことになるわけであります。しかし、その間において貿易が、こちらが向こうからよけい物を買う、入超ということがあれば、三十八年度も御承知の四千五百万ドルのうち千万ドルくらいこっちが物を買っておりますから、オープン勘定も減っております。そういう意味で、年間で返すと言えば、その間において輸出入の関係でこちらが入超になればそれで消えるということもあり得るわけであります。同時にこれはまだわからぬ問題でありますが、いよいよ最終段階において支払うものを差し引くようなことも、当然こちら側としては出る問題だろうと思いますから、これはまだ全然未確定の問題でありますので、出すものだけ出して債権確保ということに対しては国民に顔向けのできないようなことは当然あるべきでないし、さようなことは考えておりません。だから出るものも入るものも債権確保に対しては万全の体制をとるということでありまして、これらの解決の方法は私は現実的にはあるという考えであります。
  298. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、一応今日までの段階としては、有償二億ドル、無償三億ドルと、要するに五億ドルはこちらから向こうに行く。しかし四千五百万ドル余りのものをはっきりもらう。無償、有償、区別はありますけれども、差し引き四億五千万ドル余りというのがネットだということにはもう間違いがないというふうに、その点だけは確認してよろしいわけですね。
  299. 田中武夫

    田中国務大臣 やれるものは三億ドルであります。三億ドルから四千四、五百万ドルとりますから、実際払うものは二億五、六千万ドルということになります。あとの二億ドルは有償でございますから、よしんば二十年になっても利息もいただきますし、元金も返していただくということでありますので、そのように理解していただきたいと思います。
  300. 堀昌雄

    ○堀委員 その場合に、韓国の今後の状況というのは、率直に言って非常に困難があると私どもは思うのです。それはアメリカがすでに四十五億ドル近くのものをつぎ込んでも、依然として韓国というのは経済的な諸条件が整わないわけです。これは整わないはずだと思う。あれだけの小さな国で、工業生産が非常に不十分な状態の中であれだけの軍備を持っていれば、これは成り立っておればおかしいのであって、私は成り立たないのがあたりまえだと思っております。そういう成り立つ条件の非常に困難なところに一年に五千万ドルの金が入ったら、韓国が非常に復興するかというと、私は大したことはないと思うのです。当座の朴政権のささえにはなるかもしれませんけれども、長期的な問題としては、冷静な立場から見てまだ非常に問題のある条件だと思っておるわけです。そうしてみると、今度はどういう問題が残るかというと、いまの有償は七年据え置きですからいまの問題じゃないでしょう。しかし先に行くと、今度はこれの返還のほうがまた焦げつくという事態が、おそらく私は来るのではないかと思う。そこらのところ、もしこれがそういうかっこうで焦げついたら、この前のオープン勘定のように、またここへ積み上がっていくということになりかねないのじゃないかというふうに私は思うのですが、そういうふうな問題については、さっきの輸入、輸出の関係でそれは落とすのだというようなことで物を買わざるを得ないということになるのじゃないか。これは非常に先のことですから、いまから議論をするのは適当であるかどうかは別として、ものごとの考え方としてみれば、私はそういうことが起こる可能性は十分にあるのじゃないかというふうに思うのですが、こういう貸し付けの返還というものはどういう形で受け取ることを政府は考えておるのでしょうか。
  301. 田中武夫

    田中国務大臣 有償、無償という問題は、まず大前提として日韓の国交正常化、こういう一つの大きな目的があるわけでございます。それから有償の問題に対しても、二十年でありますから相当先のことだと思いますが、少なくとも日韓の国交正常化をやりまして、これから韓国の経済発展にも資したいという考えでありますので、ドルの借款をよしんば行なったといたしましても韓国はりっぱに再建するだろう、またそうあることによって日韓国交の正常化をやった大きな価値もありますし、またそういう意味で隣国の経済発展ということをこいねがっておるわけでありますから、そういう大きな立場で、韓国に二億ドルのものをやったらまた二十年後には焦げつく、こういう考えを前提にしないで、焦げつかないように経済発展をすべく、日本としても大いにひとつ協力をしていくという考えでいていただきたい、こう思うわけであります。これは私たちも、いま、はたして十五年後、二十年後ということになりますと、たいへん先の話であります。絶対だいじょうぶだと思ったウジミナス等がああいうことになっておりますし、外国に対しての低開発国援助という問題もなかなか簡単な問題ではないわけであります。ないけれども、やはり新しい国際的な感覚からいっても、主要工業国は低開発国に対していろいろ投資をしたり、経済援助をしたり、技術援助をしたりすることによって、地球上のすべての人類の福祉の向上をはかろうという大きな立場もございます。そういう意味で十分御理解のある堀さんですから、いま私にそれを聞かれてもなかなかむずかしい問題でありますので、最終的にきめるとしたら、債権確保に対してはやはり十分配慮をしたいというふうに考えます。
  302. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、これは事務当局にお伺いいたしますが、最近の韓国のインフレの状況というのは一体どの程度でしょうか。
  303. 吉岡英一

    ○吉岡政府委員 全体につきましては外務省からお答えするほうが適当かと思いますが、物価指数を持っておりますので申し上げますと、一九六一年の三月の卸売り物価の平均が一一一でありましたのに対しまして、一九六三年の十一月に一六二になっております。
  304. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、この二年半余りの間に約五〇%というおそるべきインフレが韓国では起きておるわけですね。これは為替局長なら知っておるでしょうが、いま世界で二、三年間に五〇%のインフレのある国というのはどこでしょうか。ほかにありますか。   〔原田委員長代理退席、吉田(重)   委員長代理着席〕
  305. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 私の存じております国では、ブラジルが韓国以上の大きな物価騰貴を示しております。
  306. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでいみじくも田中大蔵大臣が、ウジミナスもああいうことになったという発言をされておるのですが、まさにこの韓国のインフレとブラジルのインフレは非常に近い状態にあるわけです。ウジミナスも、初めはあんなことになると思わないでスタートを踏み切ったら、まさにどろ沼に足を突っ込んだようなかっこうがいま起きて、しかしどうにもならないからやらなければならない。しかしこのインフレというものによってわれわれも困っておるのは、これは大蔵大臣も切実にお感じになっておると思うのです。そうすると、いまの韓国に金を貸して、そうして経済力を復興させるとかなんとか言いましても、このインフレがともかくある程度落ちつかないことには、これはやがてはまた同じことになると思うのですよ。そこで一つ伺いますが、いま韓国との貿易の関係でレートは一体どういうことになっておるのですか。二年半で五〇%もインフレがどんどん進行していく中で、どういう形でやっているのか。
  307. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 韓国との間の貿易は主としてオープン勘定でドル建てで行なわれておるわけでございます。
  308. 堀昌雄

    ○堀委員 ドル建てばいいですよ。ドル建てだけれども、ドルと韓国の貨幣というのは、そうするといまのこういう形で動いているということになるのですか。
  309. 渡邊誠

    ○渡邊(誠)政府委員 日本はドルで売り、韓国もまたドルで日本に売る。要するに建て値につきましてはドル建てでやっておるわけでございますから、韓国の内部で日本から輸入した物資を幾らで売っておるかというようなことは、これは韓国の中での問題でございます。なお韓国はIMF平価の設定がございませんので、幾らのレートで国内で扱われておるかということにつきましては、つまびらかにいたしておりません。
  310. 堀昌雄

    ○堀委員 交換はドルでするから、そのことはいいです。しかしいま日本は産物なり役務なりを向こうに提供するわけでしょう。こちら側としての価格はドルでいきますからいいですけれども、韓国の中へ入れば、これは韓国の通貨価格に当然換算されていくわけでしょう。それの土台の中で生産が起こる。しかしインフレが起きて、返すころになったときに、これに対して韓国は、そういうインフレの中でドルに建て直して返していかなければならないでしょう。インフレのスピードのある分だけ、われわれが貸した分よりはたくさんのものを韓国は返すことに、経済の原則として結果においてなるのじゃないですか。
  311. 田中武夫

    田中国務大臣 日韓間におきましては、一億何千万ドルという貿易をやりまして、現在でもちゃんと決済はついておるわけでありますから、これから十年、二十年後の韓国がますます悪くなるということは、隣国の日本としては、そうあってはならないという、もう少し好意ある立場で考えてあげる、それで日本も韓国も互いに栄えていくという考え方に立っておりますから、日韓の国交正常化によって、日本が有償、無償の援助をするということも、韓国経済の再建に対しては大きく資するものだと私は考えておるわけであります。特にまた、いままでの考え方だけではなく、将来国連貿易開発会議でいろいろ問題になっておりますように、世界じゅうが、お互いに共同の責任において人類すべての福祉の向上をはかろうという考え方に立っておりますから、いまの考え方だけではなく、やはり韓国も将来日本と同じように相携えながらりっぱな経済成長を遂げていくものだ、またそうあるべきだという考え方に私は立っておりますから、いま無償、有償合わせて五億ドルのうちの二億ドルがインフレでもってどうにもならぬで返せない、そういうことであれば、日本と韓国との将来における貿易決済もできないという前提に立つわけでありますから、私は、そうはならない、またそうしてはならないのだという考え方で考えておるわけであります。
  312. 堀昌雄

    ○堀委員 私は希望的観測は自由だと思うのです。しかしやはり私は、政府というものは国民の利益を守らなければならぬと思います。そうすると、希望的観測とともに、冷静な客観的な分析もあわせて行なわなければ、政策の誤りを来たすのではないか。だからそういう諸条件がないところ、現在インフレのないところに対しては、有償で供与することについて、今はないけれども今後は起こるかもしれないなんという議論は私はしたくありません。しかし現実にこの三年間に異常なインフレーションが起きておる、年率にして一五%ぐらいのインフレーション、三年で五〇%ですからね。そういうものが起きておるのをどうやってとめるという何らかの確固たる韓国側の政策があるとか、あるいはそういう客観的諸条件があるというなら、私もあえてそこまでどうこう覆う意思はありませんけれども、いま韓国のいろいろな諸問題を調べてみれば、韓国のインフレーションを押え得る条件というものは私はないと思う。すでに外貨事情が非常に悪くて、そうして韓国自身の状態というものは、食糧にしても絶糧農家が非常にたくさんあるというような事態である。アメリカから余剰農産物をどさどさ入れる。これが入り過ぎるものだから米の価格やなんかが下がってしまって、農民はますます困るという実に複雑な経済状況を呈しておるわけです。だから韓国の問題というものを正常な形で見ようという形に誤りがあるのであって、そうではなくて、このいびつな状態の韓国というものを見ながら、それに対して日本の国家的利益を守るということにならないと、これは私は先に行って食い違いが必ず出てくると思う。言うならば、個人間の問題でもそうですが、金を貸してくれというので金を貸す。返してもらえるときはいいわけですけれども、返せなくなるとたいていどういうことが起こるかというと、こっちは貸しておりながら、借りたやつが返さないでおいて催促をするといって悪口を言うような結果が起こる。これは個人間でもそういう問題があるわけですね。だからこういう問題については、客観的な冷静な判断というものの上に諸条件が考えられない限り、あなた方のほうがよかれと思って一生懸命にやったとしても、よくないという結果が生まれるおそれもあるわけですよ。だからあなた方のお話を聞いていると、よくなってもらいたい、こうしてもらいたい、ああしてもらいたいという希望的条件ばかりです。しかしよくなる見通しですね。第一、日本だって最近のインフレはなかなか押えにくいということなんです。しかし日本の場合には政策の誤りだから、政策を直せばインフレを押えることはそう困難ではない。しかし韓国の場合には、政策の誤りではなくて構造的な問題になっているわけですから、そう簡単にいかないのではないか、こういうふうに私は判断するわけです。だから将来の問題等は除いて、いまの韓国のこの状態、これは大蔵大臣は正常だと思いますか。
  313. 田中武夫

    田中国務大臣 財政当局者としましては、いやしくも債権確保のために万全の態勢をとらなければならぬことは、お説のとおりでございます。私もそう考えております。しかし韓国のいまの状態が悪いからよくするために少しお手伝いをしようという気持になっていただきたい、こういうところでございます。しかもまんざら他人じゃないのであります。三十何年間も同じ国家を形成してきて、兄弟のような間柄にあったわけであります。そういう意味で、ただ金銭的な価値判断だけで日韓の交渉の問題は考えることはできないだろう。いまからちょうど十八年前の日本だって、専門家が来て三年間もかかって検討して、日本はどんなにてこ入れしてもうまくいかぬ、こういうことを言われたわけであります。極東委員会に対して正式なレポートが出たわけでありまして、私もそんなことがあるものかというので国会議員に立って出てきたのであります。こんなことがあるものか、こういうことで十七、八年後の今日の日本が築かれていると思います。われわれと同じ生活を三十何年もやってきた優秀な民族であります。新しい国家を形成して生みの悩みはあると思う。しかし東洋民族の中で優秀な民族として将来は必ず立ち上がっていくであろう。あれだけの文化と歴史を持つ民族が将来破局的なインフレ的な経済をやるとは私は考えていないわけであります。またそうでなくて、実際お互いが協力し合うことによってほんとうに韓国の経済もよくなる。それがアジア民族の幸福につながっていくのだという高い立場からもお互いは見なければならぬと思います。私たち自身にもあの実際つらい中で戦争に負けたものが罰金を払うというのがわれわれの昔の考えでありましたが、そうではなく、戦いに勝ったアメリカが日本に対して賠償を免除したり、またガリオア、エロアでもって金や品物をつぎ込んだ、そういう過去をわれわれがまざまざと持っておるのでありますから、ただ経済的な考え方だけで対岸の火事だ、このままにしておいたのではとてもうまくいかぬだろう。日本が三億ドルや五億ドル入れても立ち上がることはできないだろうというような考え方からだけ見ることができない状態にあるのではないか。やはり人類的な立場も、東洋民族というお互いの立場も十分考えながら、しかも債権確保をしなければならぬ、こういうところに政府の苦衷があるわけであります。こういうふうに非常に苦衷を持ちながら努力をしておるにもかかわらず、なかなかどうも政府の意思の通らぬことは悲しいことであります。
  314. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私は、やはり朝鮮の民族の皆さんが開発をされてしあわせな暮しをする権利もあると思います。それは世界のすべてのものが協力をすべきだと私も思います。しかし、ここで韓国の構造的な問題というのは、いま世界的に見てよくわかる例があるわけです。イタリアをごらんになればよくわかりますけれども、イタリアも同じようにやはり半島なんです。そして北部のほうは工業開発が非常に進んで、非常に高い生産力を持っておる。ところが、御承知のように南部はやはり韓国と同じように農業状態であって、非常に開発がおくれておる。しかし、イタリアは分割をされておりませんから、北側の生産力をもって南側にいまどんどん投資をし、開発をして、御承知のような目ざましい発展を遂げておるわけです。ところが今度はドイツの場合を見たら、ドイツは御承知のように西ドイツのほうが工業生産のほうで、東ドイツは農業生産です。これが二つに分割されておるために、東側には非常に大きな問題が出てくる。私は昨年ベルリンに行ってみて、まことにあの壁というものの悲惨な姿を見ましたけれども、あそこでは東から西へ動いていく。韓国では南から北へ、日本をワンクッションにして動いていく。この姿を見ますと、やはりほんとうに朝鮮の人たちの将来の平和、しあわせ、経済の開発を考えるというならば、イデオロギーの問題はさておき、そういう経済的な原則、構造的な諸問題が解決をされることなくして、いまのような形で二分をされて、そうしてそこに過大な軍備をそういうことのために持ち続けておる状態のほうに問題があるのであって、これを正すことなくして朝鮮の国民全体がしあわせになれる可能性はない。韓国の人たちがしあわせになれる可能性はないと私は思うのです。だから、このことはいろいろとイデオロギーの問題もありましょう。しかし、われわれはやはりそういう朝鮮の人たち、韓国の人たちがしあわせになる権利をもっと尊重する必要があるのではないか。そのことは経済というものの基本的な原則に立って朝鮮の統一というものができない限り、韓国の開発ということは、これは日本が過去において行なえたような条件にはならない。そういう構造的な問題をやはり政府は十分に認識をしておかなければ、ただ、いまのような基本的な原則だけが私は韓国の人たちをしあわせにするものだとは思わないわけです。だからこれらの客観的な情勢の中でインフレーションが起こっておるということは、やはり私はそういう構造的な問題からしわが寄っておるということであるから、その点をふまえて政府がやはり大きな見地からこの問題を進めない限り、まあ田中さんも若いし、私も若いのですから、これからひとつ二十年、お互いにがんばって、健康に注意をして、国会議員であるならば二十年先の今日、この経過がどうなったかということは、これはまたその日に議論をすればわかる。少なくともそのときにどちらの発言が正しかったかということは、歴史が証明すると思う。しかしその歴史の前に今日までのいまのイタリアあるいは韓国と朝鮮人民共和国あるいは西ドイツと東ドイツ、こういう問題を考えてみるならば、私は二十年を待たずして、もう少し政府がそういう高い角度から考え方を進める段階に来ておるのではないか。そうしたときに初めて私はこういう無償、有償の供与をわれわれはもっと安心をして全国民的な立場でもろ手を上げて賛成できる条件が出てくるのではないかと思うのです。まあ、これは見解の相違でありますから、私、答弁は求めません。これは私たちが二十年先にまた田中さんとこの場所で相まみえてそれを確認するということでいいと思いますが、私はこの点については十分自信がある。政府はそういうことでいままでここまできておって、なかなかそうはいかないかもしれませんが、しかしそういう背景の中で問題は考えておいてもらわないと、ただ一方的にああなってほしい、こうなってほしいという希望的観測だけで処理をされることは、厳に国家的、国民的利益のために慎んでもらいたいということを要望いたしまして、私の質問を終わります。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕
  315. 山中貞則

    山中委員長 日韓問題の質疑で議題が中断いたしましたので、再び国立学校特別会計法案日本開発銀行法の一部を改正する法律案食糧管理特別会計法の一部を改正する法律案及び自動車検査登録特別会計法案の各案を一括して議題といたします。質疑を続行いたします。只松祐治君。
  316. 只松祐治

    ○只松委員 開銀総裁にお尋ねをいたしますが、開銀の設立の目的は那辺にあるか、ひとつお聞かせをいただきたい。
  317. 平田敬一郎

    ○平田説明員 開発銀行は昭和二十六年に設立されたのでありますが、銀行法に示しておりまするごとく、日本経済の再建と産業の開発、発展をはかるという目的を持ちまして、市中銀行の金融だけでは不十分なところを開発銀行が担当しまして、日本経済の発展をはかるということが大目的になっておる次第でございます。
  318. 只松祐治

    ○只松委員 開銀法の十八条に業務の範囲というものが定められておりまして、そのことで今回改正になるわけでございますが、たぶんその制定のときに閣議において了解事項のような形で次のようなことがあるわけでございます。  日本開発銀行の運営については、同行がわが国の経済自立、産業の開発等今後の重要経済施策を推進するため必要な産業資金供給上に占める重要性及び政府金融機関としての使命にかんがみ、政府の産業、交通及び金融に関する総合的政策及びこれに基づく基本計画に順応せしめるものとする。  なお日本開発銀行の定款に右の趣旨の規定をおかしめるよう措置するものとする。  こういうことがあるわけでございますが、今日提案になりましたものを見ますと、いままでの開発銀行のいま申されました目的あるいは設立当初のそういう諸般の了解事項、あるいは意義とだいぶ異なってくるように思いますが、その点はどういうふうにお考えになりますか。
  319. 平田敬一郎

    ○平田説明員 今回は、御承知のとおり主たる改正は、土地造成に関する融資につきまして道を開いていただくということでございます。現行法でございますと、土地造成を需用者と申しますか、その土地を使う人がみずから造成をしてそれを工場等の用地に充てる場合は、融資ができるのでございますが、先に土地を造成する会社ができまして、その会社がみずから造成をして、それを売り渡すためにつくる場合、その資金は現行法では供給できないたてまえになっております。しかし御承知のとおり、新産都市その他日本の産業用地がたいへんな不足を来たしまして、各地で造成されつつあることは御承知のとおりでございまして、これを民間企業の形でやる場合に、開発銀行が融資いたしまして、合理的な造成ができるということになりますと、これはとりもなおさず産業の開発、発展に非常に寄与するのじゃないかということでございまして、そういう趣旨からいたしまして、今回の法律の改正をお願いしている次第でございます。開銀の本来の目的に反するものではございません。漸次そこまで拡大する必要が生じてきたと私ども存じておる次第でございます。
  320. 只松祐治

    ○只松委員 いままでの貸し出しを見ましても、電力あるいは海運、石炭、化学関係、そういうものがずっと述べられております。したがいまして、開発銀行の設立の趣意、目的というものは、そういうものにあることは理の当然でございます。そういうことと、もちろん土地というものは、そういう産業の開発に大きな関係を持っておりますので、無関係ではございませんけれども、そういう設備に投資することと、土地を造成するということとは、おのずから目的が変わってくる。拡大解釈をいたしますと、そういうことと関連を持つことは当然でございますけれども、これはものの解釈を拡大をしていくと、いろんな場合に数限りなく広がっていくわけでございます。私が申しておるのは、そういういままでの開銀の目的、あるいは運営と、土地を造成するということとは、大きく異なってきはしないか。こういうことを言っておるわけですが、その点違わないかどうか、重ねてお尋ねをいたします。
  321. 平田敬一郎

    ○平田説明員 この開銀の本来掲げておりまする目的には、当然即応しておることと考えております。ただ業務の範囲は、御承知のとおりいままでできなかったことを拡大していただこうということでございますので、そういう意味におきましては、若干の拡張になると理解していただきたいと存じます。
  322. 只松祐治

    ○只松委員 これは見解の相違で、目的が違わないということなら、それ以上の論議はいたし方ございませんが、いままでの目的と、それからやってきた事業と、今回の土地造成ということでは大きく目的が異なってくる、このように思います。  そこで次にお尋ねをいたしますが、土地を造成する、いろいろ土地の造成のしかたもあるわけですが、港湾の土地造成もあれば、新産都市の土地の造成もあるし、住宅都市の土地の造成もいろいろございます。今回提案をされましたその内容は、那辺にあるかお尋ねをいたします。
  323. 平田敬一郎

    ○平田説明員 土地造成と申しますが、開銀の趣旨からいたしまして、当然住宅用地等は含まないで、主として産業の用に供する土地の造成を対象にする考えでございます。  先ほども申し上げましたように、土地造成が各地で行なわれておりまするが、その様子を見てみますと、やはり民間企業が中心になりまして、株式会社の形態で能率的に土地造成をやれば、もっと効率的にいくんじゃないかという節があちこち見受けられますので、そういう道を開きまして、土地造成を有効適切にできるようにしよう、こういうのが主たる今回の改正の趣旨でございます。
  324. 只松祐治

    ○只松委員 主たると、こうおっしゃいましたけれども、その主たるということをどういうふうにして見分けられますか。たとえば新産都市のために土地をつくった、こういうことをいたしましても、いまのように政府が産業の急速な発展、あるいは新規投資というものを抑制してくる。そういたしますと、せっかくつくった土地でもなかなか使用者がない、こういう事態が当然に将来も起こってくる。いまたくさん土地がつくられて、そういうところも部分的に随所に見受けられます。しかし今後もあると思う。これはまたあとで関連してお伺いいたしますが、そういたしますと産業開発ではなくて、住宅に回そう、こういうことも場所によっては起こってくることもある。そういう、いわゆる新産都市のためか、あるいは産業開発のためであるかどうか、住宅のためであるかどうか、どうやって見分けて皆さん方お貸しになるつもりですか、ひとつお伺いをいたします。
  325. 平田敬一郎

    ○平田説明員 お話の点は、現実に土地造成に対しまして融資をする場合の、率直に言いまして大きな問題でございます。私ども計画をしさいに調べまして、はたして造成された土地が確実に利用されるかどうか、そういった点につきましても、十分審査を加えまして、その上でケース・バイ・ケースに適切な判断をくだしてまいりたい。率直に申し上げまして、多くの場合は相当部分が進出会社、あるいはそこの需要する企業がきまっておる場合もございます。しかし一部なお未確定のような場合もございます。そういう場合につきましては、大体におきまして全体がそう遠からず利用されるという状態であるかどうか、そこは審査の際に十分判断を加えまして、適切を期する考えでございます。
  326. 只松祐治

    ○只松委員 十分審査するということでございますけれども、その審査も、政府の方針が御案内のようにときどき変わるし、あるいはまた国際情勢その他ももちろん変わってまいります。土地造成というのは一年にしてできるわけではございません。二年、三年先、あるいは将来にわたってできる。やっとできたら方針が変わったりすることもあるでしょう。土地造成の場合には、単なる工場の新設その他と違って、長期的な展望をしなければならないので、当然にいわゆる審査というものもいわば思惑がはずれることがたくさん起こると思います。そういうことはどうやって皆さん方のほうでお見分けになるか、あるいははずれた場合にはどうやって責任その他をおとりになるのか、ひとつ明らかにしていただきたい。
  327. 平田敬一郎

    ○平田説明員 個々のケースの場合につきましては、十分調べて、そのケースごとに適切な判断をくだすというよりほか申し上げることはございませんのですが、大体におきまして工場の適地というものは、そうたくさんあるものではございません。やはり衆目の見るところおのずから帰一と言っては言い過ぎでありますが、やはり見解が大体統一されてきつつあるようでございます。しかし問題は、お話のとおり、ときには少し早くなったりおくれたりする。これは若干の経済の波動に応じてあり得ることでございまして、その辺のところは個別案件でよく見る必要があろうかと思いますが、まずよく審査を加えますれば、そんなにはずれることはあるまい、ないように努めたい、かように考えております。
  328. 只松祐治

    ○只松委員 大きくはずれることはあまりないということでございますが、私はあり得るだろう、こういうふうにいろいろの角度から考えて思っておるわけです。その場合にはどうやって責任をおとりになりますか、ひとつ重ねてお尋ねをいたしておきたい。
  329. 平田敬一郎

    ○平田説明員 責任の問題というと非常に抽象的でございますが、私どもは企業体に貸し付けするわけでございます。貸し付けた金額が、はたして確実に償還されるかどうか、そこで問題が出てくるかと思いますが、この問題はひとりこういう問題だけでなくて、一般の企業の設備投資に対しても、たくさん個々に私ども調べて融資いたしておりますが、その問題と別に変わりはないというふうに考えております。
  330. 只松祐治

    ○只松委員 次に、貸し出し先の問題でございますが、融資先は、どういうふうなところにお貸しになる予定か、また、順位等がありましたら、ひとつお示しをいただきたい。
  331. 平田敬一郎

    ○平田説明員 御存じのとおり、少し大規模な工業用地は、むしろ、府県、地方自治団体がみずからやっている部分が相当ございます。それから、そのほかにいろいろな形で行なわれておりまするが、やはり私ども、地方公共団体がやる場合につきましては、これは別途政府資金が、資金運用部から貸し付けて行なわれることになりますので、そのほうでやってもらう。開銀で担当いたします分野は、株式会社の形態で土地造成を能率的にやる場合、大体におきまして、民間企業体が主体になってやる場合を中心に考えております。ただ、実際問題として、土地造成は御存じのとおり、免許その他の問題がございますので、地方公共団体が出資をして、特別の会社の形でやるという場合が、実際は相当考えられるんじゃないかと思いますが、そういったような企業体がやる場合に、開発銀行は融資しようということでございます。
  332. 只松祐治

    ○只松委員 そこが一番問題だと私は思うのです。主として民間にと、こういうことでございます。民間でどういうふうな形で行なわれて現在まできたか、あるいは、将来行なわれるか、こういうことを考えてみればすぐわかりますが、まあ地方の名士、別の意味じゃ小ボス、こういう人たちが、そこの開発何とか公社とか、あるいは何とか事業団あるいは何とか会社、こういうものをでっち上げます。そうして、その人たちが名を連ねて、そこの土地造成なり開発をする、こういう形のものが非常に多いように見受けます。そういたしますと、私が前お尋ねをいたしましたように、そういういわば幽霊会社みたいなもの、実体のないもの、こういうものに金を貸す。そして、土地の開発造成を行なわせる。いやしくも国家の金、政府の金をそういうきわめて不安定なもの、しかも別な面から見れば、特定のそういう小ボスのようなものになぜ貸す必要があるのか。いま言われましたように、非常に必要なものであれば、地方自治体が資金運用部から借りてそこでやる、こういうことが通例であるといわれておりますが、そういう道があるならば、なぜ特に開銀のほうからこうやってそういうものに貸さなければならないか、私は、そこがたいへんにこの改正の危険な点である、こういうふうに考えるが、その御所見を承りたい。
  333. 平田敬一郎

    ○平田説明員 御指摘のように、現在いろいろな公社という形で、いろいろな方面で土地造成が行なわれることは、お話のとおりでございます。しかし、この公社の形態は、実はお話のとおり、率直に申し上げまして、責任の所在がはっきりしないところがある。したがいまして、私どもは、そのままの形で融資する考えはございません。ただし、公社の場合におきましても、公社を解散いたしまして、はっきりした責任のある企業体、株式会社形態に切りかえまして、そこで責任関係が明らかになるという場合に取り上げよう。その際に、いま申し上げましたように、府県や市町村が、免許その他で関係ございますので、やはりある程度の出資をして、会社をつくるといったようなことは、実際の問題としてかえっていい場合もございますので、その程度のものは含めて考えていこう。したがいまして、企業の経営者等におきましても、単に名前を連ねてい乙だけでどなたが中心になってやっておられるかわからない、こういったような企業体には融資する考えはございません。責任関係が明らかである場合に限って融資する考えでございます、私、いまからこういう道を開きますと、おのずからそういう方たちで企業体ができまして、土地造成が合理的に行なわれる、それをねらいといたしておるということでございます。
  334. 只松祐治

    ○只松委員 機械工場であるとか、あるいは化学工場であるとか、こういう製造工場の場合には、新しく設立する場合に、いろいろな危険性がありましても責任の所在というものは明確です。ところが、いま開銀総裁もおっしゃいましたように、こういう土地の造成というのは、悪い面から見れば、土地ブローカー、こういうものを考えれば想像がつきますけれども、土地をつくるまでは、そういう名士の名前やなんかを並べていろいろな形で資金を集めて、見せ金等をつくってつくります。しかしこれが、たとえば先ほど申しましたような悪い例からするならば、いろいろな政府の施策その他と異なってきて売れないというような場合で、なかなかその土地会社の運営がうまくいかない、こういうような場合、あるいは、大部分は売ってしまって、あと残って、いわゆる製造工場ではございませんので、そこの中の名を連ねておった人がやめたりあるいは死亡したりいろいろなことで、その責任の所在がだんだん不明確になってくる、こういうふうなことが非常に多く想像されると私は思うのです。したがいまして、普通の製造工場と違う、こういうところに金を貸すということは、相当厳重にしなければならない。ところが、そういう規定は何もなくて、いままでのこういう電力やあるいは海運やあるいは石炭産業等に貸したと同じようなワクの範囲内の貸し方として、ただ同列に並べて、そういうところに貸す、こういう一項を設けることは、きわめて危険きわまりないものと私は思います。先ほどから総裁のほうも若干の危険性があることはお認めになっておりますけれども、私は、一〇〇%こういうふうに貸すのが悪いということを申しておるのではございませんが、貸すならば、こういうふうにただ、いままでと同じように羅列するのじゃなくて、もっとそういうところを明確にする、あるいは、ここでうたうことができないならば、ここのところに項をあげて、この貸し出しについてもっと厳重な規制をする、こういうことを当然に考うべきだと思いますが、そういう点について、今後努力される意思があるかどうか、ひとつお尋ねいたします。
  335. 平田敬一郎

    ○平田説明員 私どもも、この問題につきましては、いろいろお話しのような点も検討いたしたわけでございまして、第一、場所もやはり相当選定をする、それから、規模もあまり小さいものじゃなくて、一般規模以上に限ろう、それから、企業体も、やはり私ども開銀のいままでの審査の経験から見まして、妥当な企業体を選ぼう、そうしまして融資をしていこうというわけでございまして、どっちかと申しますと、開発銀行には審査の専門家がだいぶたくさんおりまして、むしろきびし過ぎるくらいな非難をあっちこっちで受けておりますが、やはり同じような態度で、さらに一そうよく注意いたしまして、審査を厳重にいたしまして、お話のような点がないようにいたしたいと存じます。それで、開発銀行の融資は、償還が確実なものに限られておりまして、これはもう私の責任でございますので、遺憾ないようにつとめる考えでございます。
  336. 只松祐治

    ○只松委員 そこで、その堅実か堅実でないか、あるいは将来に対する確かな見通しがあるかどうか、これは総裁を信頼しないというわけじゃございませんが、単なる感じなんかでは私たちはだめだと思いますが、そういう基準を設ける意思があるかないか、それから、もしないとするならば、具体的にどういうことをもってというか、たとえばそこの知名の士が名を連ねておるからだいじょうぶ、あるいは、そこの大きな会社の社長がそこに名を連ねておるからだいじょうぶ、こういうふうなことで御判断になるのかどうか、その基準は那辺にあるか、お尋ねいたします。
  337. 平田敬一郎

    ○平田説明員 基準についてはいまいろいろ検討しておりますが、もちろん開発銀行の融資の基準はできるだけ具体的なものをつくる考えでございます。これは大体先ほどから申し上げましたことをさらに改善を加えまして、基準に即した融資をやっていく考えでございます。しかし何と申しましても、見通しの問題にもからまってきますので、個々のケースについて十分審査を加えまして、適切な判断を下していくようにつとめたいと考えております。
  338. 只松祐治

    ○只松委員 先ほどから言っておりますように、機械製造工場その他と違いますから、それなりの基準を設けられる御意思がありますかどうか、重ねてお伺いいたしておきます。
  339. 平田敬一郎

    ○平田説明員 私どもたくさんの業種についていろいろ融資いたしておりますが、やはり非常に問題のある業種、それから複雑な場合には、融資についてさらに一般的な方針のほかにいろいろな基準を設けて遺憾なきを期しております。この土地造成の問題につきましては、御指摘のとおり、特にいろいろな角度から誤りなきよう基準を設けまして、遺憾なきを期する考えでございます。
  340. 只松祐治

    ○只松委員 次に、開銀の基準金利は六分五厘ですか、のようですが、いま開銀の金利関係はどのようになっておりますか、お尋ねをいたします。
  341. 平田敬一郎

    ○平田説明員 開銀の基準金利はいま一般基準金利で八分七厘でございます。ただし例外が相当ございまして、たとえば電力とかそれから海運、石炭等につきましては六分五厘の特別金利を適用いたしております。ただ、この土地造成の分は一般の金利並みの八分七厘を適用する考えでございます。
  342. 只松祐治

    ○只松委員 そういう基準金利、特別金利の金利の定め方はどういう考え方あるいはどういう手順を経ておきめになっておりますか。
  343. 平田敬一郎

    ○平田説明員 貸し付けの条件、金利等につきましては実は開銀総裁が決定するということになっておるわけでございますが、一般の基準金利は市中銀行との関係を考えまして妥当なところできめる、大体興長銀その他長期金融機関の市中金利をよく見まして、それよりも若干低目なところ、大体それに近いところで決定するという方針でいたしております。最初は一割でございましたが、二回にわたって引き下げまして現在は八分七厘でございます。  それから特別金利につきましては、これは一極の政策的な要素あるいはその事業自体の性格、それから計画自体国民経済的意義といったような観点を取り入れて決定いたしておるわけでございますが、このほうはやはり政府の重大方針に即応してやるというたてまえにいたしておりますので、政府十分意見交換した上で、多くの場合政府の経済政策的な要請に即しまして金利をきめておる、こういうことにいたしております。
  344. 只松祐治

    ○只松委員 政府の意向を聞くということは開銀の性格上当然なことでございますが、これは政府から要望があった場合に、そういう特別金利というものをお立てになるのか、あるいはそうでなくて、皆さん方のほうできめて政府のほうにそういうことを要望され、連絡をされるのか、どっちでございますか。
  345. 平田敬一郎

    ○平田説明員 非常に一般的に重要な場合で特別金利を適用する場合には、むしろ閣議了解とかあるいは大蔵省関係省間の話し合いとか、そういったようなことに基づきまして、その意見をよく承りまして決定するということになっております。
  346. 只松祐治

    ○只松委員 今度日銀は二厘の公定歩合の引き上げをやったわけでございますが、この公定歩合の引き上げはこういう基準金利、特別金利にどういう関連がございますか。全然今度引き上げる意思はございませんか。それともこれに関連して引き上げになりますか、お尋ねしておきたい。
  347. 平田敬一郎

    ○平田説明員 私の銀行は一年以上の長期貸し付けに限られておりまして、長期の金利につきましては別段変更がないようでございますので、いまのところ変更する考えはございません。
  348. 只松祐治

    ○只松委員 池田内閣は、きのう本会議で総理も今度の公定歩合の引き上げは一年以上に及ぶ、こういうことをおっしゃっております。で、相当長きにわたると思いますが、そういうふうになりましても将来引き上げるという意思はございませんか。
  349. 平田敬一郎

    ○平田説明員 今度の金利引き上げが比較的長きに及ぶということと、長期金利の貸し付け条件というものはちょっと違った問題のようにも思いますが、おそらく政府においても長期金利についてはいまのところお動かしになる考えはないようでございます。したがいまして、開発銀行としても動かす必要はないのじゃなかろうかと考えております。
  350. 只松祐治

    ○只松委員 委員会のほうに出てまいりました開銀の法律案説明書を見ましても、貸し出しの中に「その他」という項がありまして、それに非常にたくさんの六百十四億円のものがございますが、その「その他」の内訳はどういうふうになっておりますか。
  351. 平田敬一郎

    ○平田説明員 委員会に出しました業種は、おもな業種を列挙しましてその他一括して掲げておりますが、たとえば最近やっておりますのは、私鉄の地下乗り入れといったような私鉄の関係、それから繊維の関係でも合成繊維の関係その他業種は実は相当いろいろな方面に及んでおります。特に地域開発、地方開発並びに輸出産業、それから新技術の開発といったようなことに最近力を入れておりますが、こういう分野におきましてはいろいろな業種がたくさんございます。
  352. 只松祐治

    ○只松委員 そこで、これはひとつ資料要求をいたしておきますが、六百十四億という非常に膨大な金、それが「その他」という一項でぽんと片づけられておる。これはたいへんなことでございまして、この「その他」の項について項目をあげて資料を提出していただきたい。それからついでに資料提出をお願いいたしておきますが、電力、海運その他項目はたくさん並べてありますけれども、その中でもそうこまかくはないと思いますので、各会社別に貸し出し先を調べて御提出をいただきたいと思います。それよろしゅうございますか。
  353. 平田敬一郎

    ○平田説明員 業種別の分類は、別途毎年統計をとりましてつくったのがございますから後ほど申し上げます。  それから個々の会社別の融資は、率直に申しまして相手方の信用に関します問題でございますので、提出を差し控える慣例にさせていただきますように御了承願いたいと存じます。
  354. 只松祐治

    ○只松委員 銀行には違いございませんけれども、開銀というのは市中銀行と違って公のものであるわけですから、これがその貸し出し先も明確にできない、こういうことはたいへんなことだと思いますが、いままで一つもそういうことがなかったのですか、発表されたことが。
  355. 平田敬一郎

    ○平田説明員 お話のとおり、市中銀行と違ったところもございますけれども、実際は市中銀行とだいぶ協調融資をいたしておるのでございまして、業務の運営にあたりましてはできるだけ市中銀行のいいところを取り入れまして運用するという考えで、それで信用を実は保持しておるわけでございますので、いまお話しのような点につきましては、あしからず御了承願いたいと存ずる次第でございます。  なお、業種別の分類は、もう少し整理しましてあとで申し上げます。
  356. 只松祐治

    ○只松委員 市中銀行と協調貸し出しをしておるということでございますけれども、それこそ私が一番最初お尋ねいたしましたように、ここに日本開発銀行目的その他は明確にあるわけなんです。しかし、さて実際の貸し出し状況というものがどういうふうであるかということを尋ねた場合に、それは内容を発表できない。これは私はたいへんなことだと思います。きょうは、発表できないということならばそれ以上私は追及いたしません。他日またこれを問題にいたしますけれども、私はこの問題は、公の開発銀行であるならば、当然に国民の前に貸し出し先を明らかにすべきである、こういうふうに思います。でき得ればひとつ委員長のほうにおいても委員会の決議事項としてお取り上げをいただきたいと思います。突然でございますので、本日はその要望を述べるにとどめておきたいと思います。  それから本年度のその他の項に、三十九年度の計画の中に五百三十六億円という、いままでとしては一番大きなその他という項があがっておりますが、本日ただいま審議しておりますこの土地造成に対する資金というものは、この「その他」の項に入っておるわけでございますか。どこに入っておるのでしょうか、お尋ねをいたします。
  357. 平田敬一郎

    ○平田説明員 土地造成資金は、地域開発二百八十億でございますが、その中から融資する考えでございます。「その他」の業種は、先ほど申し上げましたように、いろいろあるわけでございますが、少しいま申し上げますと、三十八年度のいまの融資の大体の予定でございますが……。  なお、あらかじめ申し上げておきますが、開発銀行は予算説明書に、電力、海運、地域開発、この三つだけは内訳が示されております。その他は一括して運用することになっておりまして、業種間の配分は、そのときどきの情勢に応じまして、できるだけ有効に配分しまして使用するということになっておりますことを申し上げておきます。  なお、三十八年度、その他のおもなものを申し上げますと、特殊鋼、それから石油化学、それからさっき申しました私鉄、繊維工業、これはナイロン等とナイロンの加工品といった化学繊維が中心でございます。それから輸出産業というのは、さっき申しましたように、いろいろな業種がございます。それから新技術の開発、これは金属機械、電子工業等、これもいろいろな産業がございます。それから埠頭倉庫、それから最近はもうあまりやっておりませんが、しゅんせつ船、建設業、そういったようにそのときどきの政府の経済政策の要請に応じまして、近代化合理化あるいは拡充を必要とするような業種を選定しまして妥当を期することにいたしておる次第でございます。
  358. 只松祐治

    ○只松委員 この二百八十億の中に、土地造成は本年度は幾ら予定されておるのですか。
  359. 平田敬一郎

    ○平田説明員 土地造成の分はまだ実はこれからでございまして、特にいまのところ幾らという見当はつけておりません。来年度はまだ初めてのことでございますので、比較的そう多くない額で済むのではないかと考えております。
  360. 只松祐治

    ○只松委員 いやしくも国会に法案の改正を提案しておきながら、しかもいまの答弁を聞くと地域開発の二百八十億の中に入っておる、こういうことを言っておりながら、具体的には幾ら出すかいまのところかいもく見当がつきません、こういう国会軽視、しかもばかげた答弁はないと思います。どんな会社でも、一つの定款を変更したりあるいはいろいろな関係法規を改正していく場合には、どういうことのために行なうかということは当然にあるわけであります。そういたしますと、それに伴う費用が幾らになるかということは当然に考えるわけですが、いまの話を聞くと、そういうことはわかりません、こういうことでございますが、いまの答弁を訂正して、具体的に本年度土地造成を行なうその費用を明示していただきたいと思います。
  361. 平田敬一郎

    ○平田説明員 ちょっと金融のことを少し御了解いただきたいのでございますが、補助金等の場合でございますと、まさにお話しのとおりじゃないかと思います。金融の場合も、はっきりきまっている場合におきましては、それはもちろんはっきり計算いたしましてやるのが当然でございますが、これから新しく始めようという事業の場合に、あまり先にきめてしまうのもどうかと思いまして、二百八十億の中で支出するということになりますと、先ほど申し上げましたような合理的な造成ができるのではないかというふうに考えておりまして、特にいまこの点につきましてあらかじめきめておくことはかえって合理的な運用にならないのではないかというふうに考えておりまして、最初のことでございますので、その辺は少し弾力的に御了解願いますことをお願いいたしたいと思います。
  362. 只松祐治

    ○只松委員 幾ら開銀に金が余ってだぶついておるか知りませんが、先ほどから申しますように、法案改正までして金を貸し出そう、こういうことをしようとしておるのに、弾力的とかなんとかことばはうまいことを言っても、本年度十億貸し出そうとしておるのか、五十億貸し出そうとしておるのか、百億貸し出そうとしておるのか、これがかいもく見当がつかないで、この法案をつくってみた上で、会社のできぐあいその他を見た上で云々、こういうふうにお考えかとも思いますけれども、これは全く国会軽視だけではなくて、国の膨大な資金というものを、不急不要と申しますか、いかにも法案を改正して急を要する、こういうふうなことを言いながら、不急不要のものに使おうとしている、こういうふうに私は断ぜざるか得ませんが、そういうふうに判断してもよろしゅうございますか。
  363. 平田敬一郎

    ○平田説明員 目下のところ、先ほど申し上げましたように、一ぺんにそうたくさん出てきそうにはございませんで、これは非常に大きな額になりそうたということでございますと、お話のとおり、もう少し最初からきちっとして御説明できるかと思いますが、それほどのものにも最初の年にはなるまい。したがいまして、二百八十億のワクの中でうまくやりまして十分消化しあるいは融資ができるのではないかというふうに存じておる次第でございますので、そういうことで御了承願いたいと存ずる次第でございます。
  364. 只松祐治

    ○只松委員 全然見当がつかないのですか。少なくとも十億であるとか、三十億であるとか、五十億であるとか、およそ開銀の全体の本年度の計画が示されておりますように、そこの中で二百八十億地域開発その他があれば、本年度はどの程度は土地造成に振り向けよう、こういうことはその計画の中にあると思う。そういう計画がなくてこういうものを本委員会あたりにでたらめに出されたのですか。
  365. 平田敬一郎

    ○平田説明員 先ほどから申し上げておりますように、あるいはお話のようにいろいろ問題があることも事実でございます。それから企業体の選定等も、先ほどから申し上げますように、慎重にいたしたいということでございますから、最初の年はそれほど特に大きな金額にはならない、むしろ金額を申し上げるのは差し控えたいと思いますが、ワクの中でほかに影響を及ぼすほどの金額にはなるまいというふうに考えております。
  366. 只松祐治

    ○只松委員 本年度のものをどうしても言わないということならば、私はそれ以上きょうは言いませんが、将来どの程度この土地造成に金をつぎ込んでいくか、将来の計画についてお尋ねしておきたいと思います。
  367. 平田敬一郎

    ○平田説明員 将来は、先ほど御指摘のように公社等でやっておりますのがどの程度まで株式会社形態に改組して合理的な方向にいき得るか、あるいは新しくこういう道を開いた場合に、どういう企業体ができまして土地造成をやることになるか、その辺のところにかかると思いますが、やはり漸次拡大していくというふうに私は見ております。
  368. 只松祐治

    ○只松委員 純然たる民間ではなくて親方口の丸でございますから、本年度幾ら貸すかわからない、あるいは将来にわたっても事業その他がどの程度出てきてどうなるかわからない、幾ら親方日の丸といえども、それでは無責任きわまる話だと思います。少なくとも本年度おおよそ幾ら、将来こういう方面には幾らくらい投資していこうか、こういうことは事業を運営していく者としては当然に考えることだ。そういうことも考えないで、開銀やあるいは国の公共的なものを運営していくということであれば——先ほどから貸し出し額その他を明らかにしないということで、国民は全くつんぼさじきに置かれておるだけではなくて、たいへんな危険なものを感ぜざるを得ないわけですが、将来にわたってもそういうことが明らかにならないのですか。
  369. 平田敬一郎

    ○平田説明員 土地造成の問題はむしろ資金のワクの問題よりも、先ほどからいろいろ御指摘がございましたように、個々のケースについていかに適切にやるかということがより雨天な問題でございまして、そういう点に私どもできるだけ善処をする考えでまいるわけでございます。その結果としまして、必要な資金量を必要とする場合におきましては、今後とも資金の確保につとめまして、実現をはかるようにいたしたい。どちらかと申しますと、むしろ最初に御質問になったような点を重視しまして運用をはかっていきたいと考えております。
  370. 只松祐治

    ○只松委員 全くナマズ問答みたいなことで、私はこれ以上追及する気もいたしませんので、その問題はこれで打ち切ります。  次に第十条の改正で、役員をふやす、こういうことが提案になっております。現在開発銀行の役員の給与は、総裁、副総裁あるいは理事、監事、そういうものの給与は幾らになっておりますか、ひとつお尋ねをいたします。
  371. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 開発銀行におきましては、総裁は月額三十四万円、副総裁二十五万円、理事十九万円、監事十四万円でございます。別に年間におきまして、手当といたしまして報酬月額の三・七カ月分が支給されております。
  372. 只松祐治

    ○只松委員 さらにお尋ねをいたしますが、交際費あるいはそういう役員関係の行動費、こまかくいえば、そういう人の乗って回る自動車その他の費用がたくさんあるわけでございますが、こういう費用はおよそ幾らぐらいになっておりますか、お尋ねをいたします。
  373. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 政府関係機関の予算書の参照にありますが、三十九年度の予定額は、交際費は年間四百万円でございます。
  374. 只松祐治

    ○只松委員 これは一番卑近な例で、われわれ国会議員に比しましてもきわめて高額なものでございます。一般の労働者その他の勤労者に対比いたしました場合に、ずば抜けてここの給与というものはいいわけです。そういうきわめて高給を取っておられる方が、先ほどからいろいろお聞きをいたしますと、なかなかゆったりしたような銀行で、それほどお忙しいことでもないような話のようにさっきから感じてきたわけでございますが、そういう銀行でなぜ理事一人、参与一人をふやしていかなければならないか、そんな緊急性があるのかどうか、あったならばひとつ明確にお答えをいただきたい。
  375. 田中武夫

    田中国務大臣 理事と参与の増員につきましては、現在の人員は御承知のとおり事業量がまだ非常に小さいときの人員でございまして、年間の貸し出し額とこの銀行の重要性を考えますときに、どうしても増員のお願いをしなければならないということになったわけであります。ほかの政府関係機関と比べてみましても、事業量に比して非常に責任者の数が少ないということは御承知のとおりでございます。
  376. 只松祐治

    ○只松委員 ちょっと私はいま資料が見当たらないのですが、輸銀その他はずっと事業内容が増大してきておりますけれども、開銀はむしろ低下してきておる、私はこのように思っております。土地の造成その他に着眼されたというのは、そういう事業内容が下がってきたから、そういうところにでもひとつ手を伸ばして開銀の権威を保っていこう、おそらくこういうことにあるのではないかとさえ私は思ったわけですが、そんなに開銀の内容は増大してきておるのですか、需要が多くなってきておりますか。
  377. 田中武夫

    田中国務大臣 御承知のとおり、融資残高は、設立当初は九百六十一億にすぎなかったわけでございますが、現在はその約九倍、八千五百七十四億という膨大なものになっておるわけであります。
  378. 只松祐治

    ○只松委員 最後にお尋ねをいたしますが、これは一般にいわれておるところを仄聞するところによりますと、今回増員になる理事その他は、およそ人が内定して、そういう人がなるからふやすのだ、こういうふうにいわれてもおりますし、私は聞いておりますが、そういうことでございますか、お尋ねをいたします。
  379. 田中武夫

    田中国務大臣 国会の議決を経ない以上、そのような考え方は絶対持っておりません。
  380. 只松祐治

    ○只松委員 本日その人の名前は明らかにいたしませんが、そういううわさをされておるような人が理事になる、そういうことは絶対ございませんか、大蔵大臣にひとつ明確な御答弁をお願  いいたします。
  381. 田中武夫

    田中国務大臣 只松さん、どういう状態でどなたをお知りになっておるかわかりませんが、現在大蔵省も、開発銀行といたしましても、もう通ることを前提にして人選を進めておるというような事実は絶対ございません。結果的にあなたが言われている方にちょうどなるかもわかりませんが、それは全然新しい立場でこの法律が通ったら考えることでありまして、現在予定をしておるような事実は全くありません。
  382. 山中貞則

    山中委員長 堀昌雄君。
  383. 堀昌雄

    ○堀委員 最初に開発銀行の貸し倒れ準備金の問題についてお伺いをいたします。貸し倒れ準備金が本年度末で一体累計幾らになりますか。
  384. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 三十八年度末の見込みで申しまして、貸し倒れ準備金の累積額は開銀の場合二百五十三億二千九百万円になります。
  385. 堀昌雄

    ○堀委員 三十八年度に繰り入れを予定しておる額は幾らでしょうか。
  386. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 これは決算が終わってみないとはっきりしたことは申せませんが、予定額といたしましては二十一億二千九百万円でございます。
  387. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでこの二十一億二千九百万円という貸し倒れ準備金の繰り入れの法的根拠をひとつ示していただきたい。
  388. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 貸し倒れ準備金々毎年繰り入れていくということは開発銀行法に根拠がありますが、別にそれに基づきまして、法律に基づく政令において国庫納付金の規定がございます。国庫納付をする金額を定める場合に、このようなものを控除したあとで残ったものを国庫納付するという規定になっておりまして、それが繰り入れ額の限度を定めております。
  389. 堀昌雄

    ○堀委員 開発銀行法に土台があるとおっしゃいますが、開発銀行法第何条でしょうか。
  390. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 開発銀行法三十六条第四項におきまして、「政府は、前項の規定による国庫納付金の一部を、政令で定めるところにより、当該事業年度中において概算で納付させることができる。」そのほか第五項におきまして、その「国庫納付金の納付の手続及びその帰属する会計その他国庫納付金に関し必要な事項は、政令で定める。」ということになっておりまして、これが国庫納付金の政令でございます。
  391. 堀昌雄

    ○堀委員 そこでその政令はどうなっていますか。
  392. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 日本開発銀行の国庫納付金に関する政令というのがございます。その第一条の中に、益金とか損金というものが列挙されております。その損金の列挙されたものの中に「貸倒準備金への繰入額」というのがございます。この「貸倒準備金への繰入額については、大蔵大臣の定めるところにより算出しなければならない。」という規定が第一条の三項に規定されておるわけであります。
  393. 堀昌雄

    ○堀委員 三項に何と規定されておりますか。ただ大蔵大臣の定めるところによるではどうにもなりませんね。
  394. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 したがいまして、大蔵大臣がその繰り入れの率を定めていいということに法律の体系上ではなっておるわけであります。その規定によりまして、大蔵大臣が大体毎年度決算にあたりまして、どれだけの繰り入れをするかということを開発銀行総裁にあてて通達を出して定めております。それを定めるにあたりましては、開発銀行が同じ政府機関でありながら、出発の当初より輸出入銀行と同じ銀行という名前を冠しているところからも大体おわかりのように、できるだけ民間の銀行と態容、運営のあり方等について似通ったものにする、その健全性の保持とかいう点についても、民間の金融機関と並んでいくような考えがあるわけでございまして、すべてが同じではございませんが、たとえば貸し倒れへの繰り入れ等につきましては、最高限度といたしましては、いままでのところ千分の三十を繰り入れ限度とし、毎年度の繰り入れ額としては貸し倒れ残高の千分の十を繰り入れる、しかし千分の十を繰り入れる場合においてすでに三%を残高でこえるような場合、千分の三十をこえるような場合には、そこで頭打ちとするという通達になっております。
  395. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは銀行にならったのだということですが、銀行の貸し倒れ準備金というものが、いまのお話のように百分の三が限度になっているのはなぜですか。
  396. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 貸し倒れ準備金を積んでいくというやり方はシャウプ勧告によりましてそうなった。それ以前におきましては、いまやっておりますよりも銀行は比較的円山に貸し倒れ償却そのものができた。そういう方法でなしに、いってみれば一つの第一線準備といいますか、貸し付けの危険をカバーするための第一線準備として貸し倒れ準備金というものを置き、その最高限度を大体千分の三十くらいが適当であろうというふうになっております。これは非常に計算された理論的なものから出たものとは思いませんが、やはり社内留保的な意味もかねて置いたものと思います。しかし非常に長い期間をとらえてみますと、いままで戦後にそういう事情はございませんが、戦前にもその例を見ましたごとく、銀行の貸し出しの中に一般的な非常な不況の際にはかなり多額の貸し倒れが現実に生じたという経験もございます。ただ、たまたま戦後の状態におきましては、そういう事例は非常に少なくなった、実際の貸し倒れの理由というものは、民間の金融機関におきましても、率としてはその千分の三十に比べれば相当低いところへいっておりますが、しかしこういう点は、万一の場合といいますか将来に対して備えるという意味におきましては必要なことではなかったかと思います。今日までの経過に顧みまして、それが金融機関の健全性に役立っておるというふうに私どもは考えております。
  397. 堀昌雄

    ○堀委員 普通銀行の貸し倒れ準備金というものは、これは現在損金に入っていると思うのですね。そこでいまのこの百分の三というもののいろいろな問題というのは、私はどちらかというと課税上の問題として出てきているんじゃないかと思うのです。これは主税局どうですか。課税上の問題ではなくてまさにいま銀行局長が言ったようなことですか。
  398. 志場喜徳郎

    ○志場説明員 お答え申し上げます。貸し倒れ準備金の累積限度額の百分の三のお話だと思いますが、貸し倒れ準備金の制度は、現在御案内のとおり毎年洗いがえの部分と累積していく部分とあるわけでございまして、本来の貸し倒れ準備金あるいは引き当て金の性格から申し上げますと、毎期洗いがえということが妥当じゃないかという考え方もあるかと思いますが、現在は不測の貸し倒れに備えるというようなことも考えまして若干の部分は累積を認めておるわけでございまして、しかしその場合もあまり多額の、いわば利益留保的になることは適当でないということで累積限度を百分の三ということにしておるわけでございます。
  399. 堀昌雄

    ○堀委員 いまお話しのように市中銀行で行なわれておる累積限度の期末貸し金残高の三%というのは、まさにそういう趣旨から限度が出てここにきておると私は思うのですがね。これは銀行局長どうですか。あなたが言うように何となく百分の三というんじゃなくて——それはほかにいろいろありますが、いろいろなそういう課税上の問題のほうから私はきていると思いますが、違いますか、いま主税局はそう答えているんだけれども
  400. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 いまの主税局の答弁も本質的にはそう違わないように私は聞いておったのですが、やはり貸し倒れというものは、何も税法上だけからいえば金融機関の貸し出しの場合だけではございません。ほかの税法上の権衡上、いろいろ商社等についてもあると思いますが、金融機関の健全性という点からいいますと三%程度のものは望ましいと私どもは考えております。ただ不時の予測できないような事態——今後そういうことがくることは望ましくありませんが、しかし実績を見ると、各国とも銀行の倒産ということは歴史的には幾らもあったことなんです。そういう場合にはそれは三%程度でもむしろ足らないというような事態であったでしょう。銀行が倒産するということになれば、もっと大きな打撃を受けて倒産したという歴史はあるわけです。そういう観点から申しますと、現在はないが、しかし将来に備えるという点からいえば、まあある程度の準備金があっていい。しかし課税の見地からいえば、無際限に五%でも一〇%でもいいということになると、こういう金融機関の税金というものは非常に安くなり過ぎるということもあって、一般的な権衡もとれないという事情もありまして、まあ三%程度という数字がきまったのであろうと思います。
  401. 堀昌雄

    ○堀委員 私はどうも高橋さんの説明にちょっと納得できないのです。なぜかといいますと、一般の銀行と開発銀行とをあなたは並べてお話しになったが、一般銀行における問題点というのは、私は預金者とそれを貸しておるという問題があると思うのです。ところが開発銀行の場合預金者というのはないのですね。これは大体政府からの借り入れ金が主体であって、要するに、債券を出している金が主体で、一般的な預金者保護の問題とやや開発銀行の場合性格がちょっと違うのではないかと思うのです。  それからもう一つは繰り入れ限度額の問題ですが、千分の十ということに一応限度がなっておるわけですね。一般のほうは、金融業及び保険業というのは千分の七になっているのですね。そうすると、開発銀行のほうが一般の金融機関よりも貸し倒れが多いのだ、要するに不安定なところに貸しておるのだというということになるかと思うのですが、これはたくさん積んでいるというのはどういうことですか。市中金融機関は千分の七、それであなた方の開発銀行のほうは千分の十、これはどういうわけでしょうか。
  402. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 まあ、開発銀行ができました当時からこういう政策が一貫してとられておるわけでありますが、開発銀行が特に一般的にいって危険な貸し出しを行なうというふうには言えないと思います。償還の確実なものにしか融資しないという基本的な精神は、法律にうたわれておるわけでございます。しかしながら、一方において、この法律の上でもまあ民間金融機関でやれないところを補うというふうなことになっておる。まあ、開発銀行はその資金の量的な意味もございましょうが、質的な意味におきましても民間の金融のベースにはやや乗りがたいものをあえてする。現に、石炭その他に相当思い切った投資を過去においてやってきたという点を見ましても、リスクという点からいえばまあ必ずしも民間と同列とは言いがたい。その貸し出し面におけるリスクからいえば本来は若干は高いのではないか、これは私の考え方でございますが、民間がやすやすと貸しに応ずるものではないものに貸すという点では、危険度はやや高いような貸し出しがある。さればといって、いままでのところそんなに大きな貸し倒れが生じておるわけではございませんが、まあ考え方としてはそうである。同時に、最高限度の三%に達してしまいますと、それ以上の繰り入れはやめております。ですから、限度に達したあととしては毎期それほど非常に余分なものを積んでいるというふうには考えられない。大体三%の限度で毎期繰り入れが行なわれている。そのことは千分の十という点から見るとややおかしな気もするが、結局累積限度としては同じことであるという点で御了解願いたいと思います。
  403. 堀昌雄

    ○堀委員 確かに開発銀行のほうが不安定だと思います。これは税制調査会の資料を見ますと、金融、保険業の昭和三十四年の五月から三十五年四月までの間、三十六年の五月から三十七年の四月までの間というのは、資料として出ているのを見ますと、金融、保険業は千分率で〇・四ぐらいしか貸し倒れがないのですね。開銀のほうは、私が見たところでは三十六年で二・二ぐらいありますから、市中銀行よりはかなり貸し倒れが多いように私は思うのですが、その点どうでしょうか。
  404. 平田敬一郎

    ○平田説明員 うちの銀行のことのお話が出ておりますので、二、三実は補足しながら御説明申し上げたいと思いますが、まあ市中銀行と違いますことはお話のとおりでございますが、しかし、同時に最近は、御承知のとおり私の銀行は単に政府から借りるだけではなしに、世界銀行から三億ドルも実は借りておる。それから外債を三回出しまして、来年度も計画しておる。で、この外債の発行等につきましては、実は向こうは銀行の健全性いかんということを非常に注目いたしておりまして、漸次わかってもらえまして、最近は相当な信用を保持することに実はなったわけでありますが、そういうことの一点といたしまして、やはり相当の準備金を毎期積んでおるということが一つの要件になっておるようであります。このことを御理解願いたい。それから事柄の性質上、若干市中銀行の融資に乗りにくいものもいたしておることも事実でございますが、長期的に見ると、私どもは償還の確実なものということは鉄則にいたしているわけでございます。それで償却いたしました金額も、実はそんな多くございませんで、先ほど大臣お話のように、融資残高約七千五百億とか八百億になっておりますが、昨年度三十七年度で償却しました額は六千二百五十万円で、その前の年が九千六百五十万円といったような状態で、現実に償却しました金額は非常に少ないものになっておりますことを申し上げておきます。
  405. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと話が横にそれますから、先にきちんとすることだけしておきたいと思うのですが、実は銀行局長は開発銀行が最初から千分の十だとおっしゃっておりますが、最初は千分の五だったのですよ。ところが昭和二十八年度から千分の十に改まった。まあそんなことはいいのですが、そこでそれを見ますと、昭和二十七年に銀行局長から日本開発銀行総裁あてに通牒を出したわけですね。二十八年、二十九年、三十年、毎年通牒を出して、三十一年にも、やや変わったのでしょう、また出して、ずっと毎年毎年同じような通牒を出しているのです。これですね。こんなことを、政令で書けないのですか。何か書けない積極的な理由があるのか。やっていることは、これは非常にむだなことをやっているのじゃないか。政令というのは、あなた方のほうで、要するに大蔵大臣が定められることだから、適当に協議をしてきめればいいことなのに、これは大蔵大臣——法律のほうには、国庫納付金のことは書いてあるのですよ。貸し倒れ準備金のことは一つも書いてない。国庫納付金の納め方の問題だけが法律に書いてある。国庫納付金の中に、いろいろな要素の中に、貸し倒れ準備金の繰り入れ額というのがただ一項あるだけですよ。そうしてこれはまた大蔵大臣が定めて、通牒で毎年出すという、どうも私はこれはあまり適切な処置じゃないと思うのです。大蔵大臣どうですか。大蔵大臣、あなたが定めるのだから、こんなくだらぬことをやっている必要はないと思うのですが、これは法律で書くのは問題があるというなら、少なくとも政令でそのくらいは書くべきじゃないですか。まことにむだなことで、これは通牒でやっているというから、あまりおかしいからちょっと出してもらったら、毎年通牒が出ている。これはどうですか——事務当局が答えるのですか。
  406. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 たいへんこまかいといいますか、取り扱いの問題でございますので、私お答えしますが、三十六年度分としまして、昭和三十七年の三月三十一日付で出しました通牒には、今後はこれによって算出されたいというふうにいたしました。ですから、毎年通牒を出しません、黙っておれば、この三十六年度分に関する通牒が働くのであると、こう出したのです。ところが、実際には三十八年になりまして、三十七年度分の決算にあたりまして、繰り入れ額の計算方法に若干の訂正を加えた。その趣旨は、いままでは貸し付け残高に対して幾らというふうなことでございましたが、貸し付けというものの内容が、実際に金が交付されておらない分は貸し出しではないんじゃないか、貸し付けの決定はすでになされておるが、金が出ておらぬ分は貸し付け金の債権とみなさないと、そういう解釈を書いたわけでございます。そういう点では、先ほど申しましたその通牒が一部訂正されておりますが、しかし今後特別の事情がない限りこの訂正された解釈によりまして、あらためて通牒を出さなくてもそれによるというふうになっております。
  407. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、三十六年の通牒がおかしいわけですね。今後これによるといって出して、あくる年また変えたというのは、これはまさに朝令暮改ですね、そういうことでしょう、銀行局長
  408. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 貸し付けというものを、実際に資金が交付されておらない分を計算に入れておったという点はおかしいのじゃないか、そういうことから訂正したわけでございます。これは一般の金融機関の場合にも、貸し付け残高というふうな場合には、実際に貸し出されている額で、貸し付け決定額ではないということでございまして、それと合わせたわけでございます。
  409. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私が聞いているのは、こっちが正しいなら、三十六年に今後これによってやるというのは間違いだったということでしょう。どっちが正しいか。あなたはいまのように、それは他の金融機関にならった——他の金融機関も三十六年からそういうことになったのですか。
  410. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 その解釈を変えました点は、やはり変えるほうが常態である、要するにそのほうがあたりまえだ、こういうことでございますから、仰せのとおりその前の通牒は間違っていたといえば間違っていた、しかしこれは間違っているとか間違ってないというよりも、どういう取り扱いをするかということでございまして、これらの点は、毎年度の繰り入れ率をどうするかとか、限度額をどうするかと同じように、どの程度のものを繰り入れさすべきかということでございますので、その点の問題としては、まあ間違ったと言えば言えますけれども、訂正をしたというふうに御解釈願いたいと思います。
  411. 堀昌雄

    ○堀委員 いや、私は別にそれはこだわりませんよ、こだわりませんけれども、これまでのやり方が、ずっと毎年出してきて、この年になって初めてあなた方、もう今後はこの例により算出されたいというようなことを大みえを切っておいて、あくる年になったらそれをまた変えるなんというのは、私は実際権威がないと思うのです。これはだれが見たってそのとおり。私はこんな通牒にするからそういうことになるので、やはりこんなものは政令に書けばいいと思う、今後間違えないつもりなら。そうするのが私は筋だと思う。私は貸し倒れ準備金というのは一体何を根拠にして引いているのかさがし当てるまでに、ずいぶん時間がかかったですよ。ところが金額で見ると、法定準備金に近いほどこれは積み上げられておる。多額の、いまのお答えで二百何十億だったか、お答えがありましたが、それだけのものを積むのに、片方の法定準備金のほうはちゃんと法律に書いてあって、片方のほうは、一体何でこれをいっているのかさっぱりわからない、調べてみたら通牒だったなんて、私はこの取り扱いは適当でないと思うのです。大蔵大臣、どうですか。私は、だからこれは法律にしろとは言わないけれども、このくらいのことは政令の中にきちっと書くべきだと思うのですがね、どうですか。
  412. 田中武夫

    田中国務大臣 御発言趣旨等、また将来の問題として十分慎重に検討してまいります。
  413. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、その取り扱いはそれでいいのですけれども、貸し倒れ準備金についていま総裁おっしゃいましたが、ちょっと急で私メモができなかったので、昭和三十七年度の決算で伺いますけれども、不良債権の償却額、十八件六千三百万円三十七年度にございます。そこで件数十八件、かなり多いのです。金額は六千三百万円、たいしたことはないのですが、これはまあ個々の事業会社の名前は要りません、しかし資本金別に、どの程度の会社であったのか、業態としては何であったのか、ちょっとお伺いをしたいと思います。
  414. 平田敬一郎

    ○平田説明員 これは大体御承知のとおり復金からの貸し付け金を開発銀行が引き継ぎまして、最初七百八十億ほど引き継いだのでございますが、ほとんど償還になりまして、現在は四十億程度まで償還になっております。しかしなお当時貸し付けましたものの中で、主として繊維関係が多いかと思いますが、小口の貸し付け、そういうものが大部分でございます。会社の名前を申し上げてもわからぬようなお方が大部分でありますことを申し上げておきます。なお、若干そのほかに石炭関係で中小石炭に同じく貸し付けたものがございまして、それもやはり復金から引き継いでおります。私ども回収に極力つとめたのでございますが、最近になりまして、行方不明とか、あるいはもうとても資力がないとかいうことを最終的に確認しまして、貸し倒れにさせておる、こういう状況でございます。
  415. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまのは復金からの引き継ぎというお話でございましたけれども、累計で昭和三十六年度末で十六億八千七百万円貸し倒れ準備金から取りくずしをしておる。それじゃ、この中にいまのそういう復金からの引き継ぎ以外のものがどのくらい入っているのかですね。
  416. 平田敬一郎

    ○平田説明員 復金から引き継ぎました以外のもので貸し倒れになりましたのは二件あるのでありまして、二千三百万円程度。あとの二十六年以来償却しました金額が約十七億になっておりますが、それはほとんど全部復金から引き継いだものでございます。
  417. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとこれは私よくわからないのですが、皆さんのほうで取りくずしをすることになるのは、一体どれくらい未払いが続いたときに取りくずしをするのですか、要するに返してくれというので、返さないからおそらく通知を出したでしょうね。最初に通知を出してから取りくずしをするまでは大体どのくらいですか。
  418. 平田敬一郎

    ○平田説明員 これは個々の債権ごとに実はこまかく調べております。特に不良債権と申しますか、取り立てがむずかしいという債務者につきましては、別途に管理部というのを専門に設けておりまして、そこでしょっちゅうホローしております。そうしましてどうしてもこれは収入の見込みがないということを確認する段階になりまして償却する。これは大体銀行局の、一般の銀行の例と同じ扱いにいたしておりまして、銀行局検査部でやっております普通の銀行の償却のやり方に私どもならいまして、個々のケースごとに妥当を期しておるということでございます。
  419. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、この前の産投会計のときに、前の太田総裁がお答えになっておりますけれども、まあ取りくずしはいたしますけれども、それは債権は生きておりますから、要するに勘定上の債権は減っておりますけれどもあとから金が入ってまいります。これは雑益にあげますと、こう言っていますが、あとからこの十七億の中で入ったものは一体どのくらいありますか。
  420. 平田敬一郎

    ○平田説明員 いまのお話のとおりでございまして、償却というのは、私ども、銀行の債権の償還の科目から落とす。ただし償却したからといって、相手方の債務者に対して債権放棄するわけではございません。債権放棄は、さらによく調べまして、これが確実に取り立て不能だということを確認した上で、初めて債権を放棄するということにいたしております。  なお、償却済みの債権において、その後雑益として入りました金額は、累計で四千百万円程度でございまして、比較的少なくなっております。と申しますのは、償却しますのはもう相当見込みがないというものを償却いたしておる次第でございます。
  421. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするといまの十七億のうちであなた方のほうで債権放棄したのは幾らありますか。
  422. 平田敬一郎

    ○平田説明員 まだ十七億全部がそうだということにはなりませんが、償却した中で、雑益として入りましたのが約十二年間で四千百万円でございますから、あとやはりわずかな部分しか現実問題としては入ってこないというふうに考えます。大部分はすでに放棄し、あるいは放棄せざるを得ない債権だと存じております。
  423. 堀昌雄

    ○堀委員 そこで、いまのお話で、新たに開銀が融資をするようになってからは、これまで準備金を取りくずしたのは二件、二千三百万円ということでございますが、この二件、二千三百万円ということの業態はどうなんですか。
  424. 平田敬一郎

    ○平田説明員 一件は化学工業でございます。それからもう一件はやはり石炭鉱業でございます。
  425. 堀昌雄

    ○堀委員 実は少しこれを微に入り細をうがってやっておりますのは、最近非常に会社の実情というものが不安定な状態になっておるわけです。これは日を改めて、私、大蔵大臣にお伺いをすることにいたしますが、ごく顕著な例は、大阪及び神戸証券取引所の第二部に上場をいたしました高森産業というのが、十二月二日に上場をいたしまして、三月十六日に特設ポストに入って、二十三日にはもう取引停止になっている。その間二月の十六日でありますかに倍額増資をして、二億二千五百万円も増資が完了しておる。そういうような会社も実はあるわけです。これは証券問題でありますから日を改めてやります。こんなばかなものを上場させるほうも上場させるほうだし、幹事会社もけしからぬし、大蔵省の監督もなっておらぬ。これは東京にもありますし、すでに私は前に南旺観光とかいろんな問題で大蔵委員会で取り上げて、上場については重々大衆の迷惑にならぬようにと注意を喚起しておったのですが、またそういうことがどんどんいま起きておる。まことに最近の会社の状況は公認会計士が監査をしても、何が何だかわからぬというような状態があまりにありますものですから、特に、それがどちらかというと、土地に関係したものが多いのですよ、率直に言って。そこで、今度の法案が土地造成に対して資金を供給するという点に、私は、さっき只松委員も申しておりますけれども、非常な不安を感じておるわけです。そこで、先ほど基準なりいろいろな問題については十分検討してやりたいとおっしゃる、私はそれで適当だと思いますけれども、ただこの問題は私は開発銀行のような大きな背景のものが土地造成に資金を入れることになると、やはりそこにはよほどそういう調査を厳密にしないと問題の起こる余地があるのが第一点。第二点は、やはりそのことによってまた地価が高騰をして、その周辺に及ぼす影響もかなり大きな問題が起こるのではないかという二点を非常に心配しておるわけです。そこで少し貸し倒れの内容の分析をこまかくしたわけですが、この土地造成の問題について、ちょっと私少し席をはずしておりまして、すでに論議をされておるかどうかわかりませんけれども、この主たる目的と、その事業会社の性格は大体どういうものを頭に置いて今後その基準その他を考えられるのか、ちょっとお答えをいただきたい。
  426. 平田敬一郎

    ○平田説明員 先ほども少し申し上げたのでございますが、今後おそらくこの七、八年の間に、例の倍増計画で考えております程度の産業の発展があるということになりますと、相当な土地造成が行なわれることになる。そのうち相当な部分は、私はやはり地方団体が直覚でやると申しますか、こういうのがやはり一番一般的な状態ではないか。しかし、場合によりましたら、地方団体だけでやるのは必ずしも適当でない、むしろ民間の企業体が中心になりまして関係の土地の需要者のうち、すでにきまったもの、あるいは場合によりましたら、一応きまってない部分、それを総合して土地造成をやっていこうといったことのほうがより合理的に土地造成ができるという地域が、私の見たところでも相当あるようであります。そういった場合におきましてしっかりした企業体がやるということを十分審査し、確認した上で、開発銀行が融資していく、したがって規模も一定規模以上にしたい。企業体なんかにつきましても責任の所在が明らかなものに限るということでいきまして、十分お話のとおり審査を加えまして適切を期してまいりたいと思っております。
  427. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまの御答弁によると、その事業会社みずからがその土地造成によってそこらに工場を建てるとかいうことが主体があって、私どもが心配するのは、この会社自体がそこに工場を建てるための土地造成の費用を出すのは、私は割合問題がないと思っておる。ただ、要するに、土地会社といいますか、そういう第三者に土地を造成することをもって目的とするような、それだけが目的ではない、おそらく定款その他ではいろいろなことをやることになっておるでしょう。最近のいろいろなそういう事故が起きた会社というのは、観光会社だったり、いろいろな会社でありますけれども、実質的には土地造成やなんかをやって、それがひっくり返ったという例はわりにあるようですが、そこで形式はともかく、実質的には土地造成を目的とするようなところには出さないということなら、私はこれまたちょっと角度が変わると思うのですが、その点はいかがですか。
  428. 平田敬一郎

    ○平田説明員 お話しのとおり、会社がその土地を造成することをきめて、土地を利用する事業会社がやる場合はもちろん考えられますが、もう一つ考えられますのは、やはりその地域全体を通じて、特別の一種の企業体と申しますか、土地造成の株式会社等ができまして、そういう会社でまとめて土地造成をやっていって、それできまったものにあとで売る、あるいはあらかじめ約束しておいて売る、こういったような関係につきまして、いまどっちかと申しますと盲点になっておりまして、いろいろな公社とかいろいろな形で実は行なわれておる。これを私ども開発銀行が入りまして、しっかりした民間の企業が中心になってやりますそういう造成主体ができた場合に、そういったような場合の土地造成にも融資の道を開こう、これも今回の改正の大きな一つ目的でございます。
  429. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、やはり一番不安な問題のところに実は焦点があるということがわかるわけです。私どもはいまこの問題でさっき申し上げたように、一つはそういう会社ができて、それがどこかにどことどこがそこへ来るからというので土地を造成をするという場合なら、まあ私はいいと思うのですが、とりあえず造成をして、そこへいろいろ誘致をするとかなんとかするというようなかっこうでやられたのでは、いまの地価の高騰その他で非常に問題が起きるんじゃないか。そういう意味では、私は地方公共団体がやられるのは非常にいいと思うのですが、必ずしも地方公共団体も財源がないからやれないと思うのですけれども、そういう地価の高騰その他不当な——それはやむを得ない結果としては起きますけれども、必要以上にそういう地価の高騰をもたらすようなことのないようにチェックする方法は何かありますか。
  430. 平田敬一郎

    ○平田説明員 御心配のように、まだほとんど利用者の見込みが立たぬといったようなところは実はやるつもりはございません。もう相当きまっているとかあるいは近くきまる可能性が多いとか、そういったような点を十分審査しまして、その上で土地造成の融資をやっていこうという考えでございます。いわゆる世間でいっておりますような土地会社が思惑的に土地をつくって、相当な利益を得て転売しよう、こういったようなものは対象にする考えはございません。
  431. 堀昌雄

    ○堀委員 これは主として地方開発のほうに入るのでしょうね。どういうことでしょうか。
  432. 平田敬一郎

    ○平田説明員 地域としましては、例の新産都市ですね。それから工業開発特別地域、ああいったような地域が中心になって、その他の地域は特に政策的に見てやはり開発の必要があり、かつ可能性のある地域、そういうところをよく厳密に調べましてやるつもりでございます。そういったようなことにつきまして、先ほど申し上げましたが、できるだけ基準を設けまして、遺憾なき事を期する考えでございます。
  433. 堀昌雄

    ○堀委員 その次に、地方開発の問題について、実はいろいろと資料もいただきましたし、銀行年鑑等で見ましてちょっとよくわからない点は、資本金別に見て地方開発融資の状態が資料として出ております。ところがそれがくくられて、九州でたとえば三十四億四千万円というようなことになっているもんですから、一体十億円以上のそういうような会社が幾つでどうなるのかということが、これじゃ全然わからないわけです。金額として十億円以上八十五億、五億円以上二十七億、一億円以上三十一億、五千万円以上十八億、五千万円未満三十七億、こういうふうに金額は出ているのですが、これの件数ですね、これは一体どういうことになっているのか。
  434. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 件数を申し上げます。一千万円以下二十四件、一千万円から五千万円未満六十六件、五千万円以上一億円未満四十六件、一億円以上十億円未満六十八件、十億円以上五十件ということになっております。
  435. 堀昌雄

    ○堀委員 いまのお話で見ますと、大体地方開発もどちらかというと大きな会社のほうに比重がかかっておるようですね。この中小企業問題というのは最近非常に大きくクローズアップされておるわけですけれども、ただいまのお話では五千万以下は九十ですか、五千万円以上で見ると約百六十ですか、やはり大企業のほうに片寄っているように思うのです。地方開発に対する皆さんのお考えというのは、これは中小企業あるいは大企業——地方開発ですから、あまり大企業じゃないのでしょうけれども……。しかし、中央資本、提携資本、地元資本というようなくくり方で見ましても、実は中央資本というのは相当多いのですが、そういう点で見ると、どうも大企業のほうに比重がかかり過ぎているのではないか。私は地方開発というのは、どちらかというと中小企業的なものにウエートをかける必要があるのじゃないかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  436. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 地方開発をいかに進めるかということを総合的に考えます場合、地元の中小企業に対して相当資金を供給すべきじゃないかという御意見はよくわかるのであります。ただこの開発銀行は地域開発をやっておりますが、一方に中小企業のために設備資金等を供給するものとして、同じ政府機関である中小企業金融公庫がございます。これは地域を限っておらない。全国的な視野で中小企業に対して長期資金を供給しておるわけでございます。でありますから同じ低開発地域でありましても、開銀が中小企業を含めたすべてのものを対象にするというのではなくて、中小公庫から金融を受けるものはそちらのほうからの融資にたよる。またいま件数をちょっと申し上げましたが、十億円未満のものなどが件数としては一番多いのでありますが、大企業と今日給しておるものとしては、大体十億円以上が大企業であり、法律的な取り扱いでは五千万円までのものを中小企業と言っておるでしょうけれども、しかし、五千万円をこえて十億円くらいの間が中堅企業でございますけれども、この中堅企業というものはやはり大企業ではないというふうに私ども思っておりまして、それらの点に比較的重点がかかっているように思います。大企業としては二百億円の承諾額のうちで八十四億円で、四割強にしかなっておりません。それ以下のもののほうが金額が多いという点から見まして、大体妥当な線を行っているのじゃないかというふうに判断しております。
  437. 堀昌雄

    ○堀委員 地方開発というものについて皆さんのほうでは産業構造の高度化、資源の開発利用、産業基礎設備整備、いろいろジャンルをつくってやっておいでになるわけですけれども、私はやはり地方開発というものは二つあるだろうと思っております。大きな本社が小さなあれを地方へ持っていくということも確かにその一つだと思います。しかし、同時にその地域における産業自体を開発していくということも、地方開発の大きな使命の一つではないか。そうすると、そういう地方に初めから十億とか五億というような会社があるはずはないですから、大体おくれた地域を開発するわけでしょうから、私はある程度きちんとした会社であるならば、その地域における会社の開発もあわせてもう少し考える必要があるのではないか、こういうふうに思います。今後の経過で、まだ地方開発はそんなにどんどん行われているようでありませんから、そういう角度で少し考えてもらいたいと思います。大体この間私ここで論議したことがあるのですが、ここの中に農林水産業近代化というワクがありまして、そこで食品工業、紙パルプ工業、木材加工業、その他というので、昭和三十七年度ではこれの小計は二十四億貸し出されておるという状態になっておりますが、私はこの間農中の余裕金の状態を見ると、いま非常に大きな余裕金をかかえておる。インターバンクで八百億も持っておったり、コールに二千五百億も出したりということは、まことに適切でないと思うのですが、こういうような農林水産業近代化というのは、これは関連産業なのだから、こういうものは私は開銀がやらなくても農中の金をもう少しやって、これをよそへ回したらどうかと思うのですが、その点はどうですか。
  438. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 こういった農林水産業近代化という名前になっておりますが、お説のようにいわゆる関連産業であります。農林水産業そのものではないように思います。食品工業、紙パルプ、木材、水産養殖、それから製氷冷蔵業というふうなものでございます。私その個々の貸し出しを点検いたしておりませんが、これらがいまおっしゃいました低開発地域におきましては比較的規模の大きくないもので、いわゆる地場産業の中にこういったものがどうしても多くなる。食品工業なんかもその典型じゃないかと思うのです。ですから、こういうものをそれでは除いてしまうということになりますと、——除いているのではなくて、何といってもこの開発銀行から融資を受けるということは非常にメリットがあるわけでございます。金額としてはある割合でございましても、地場としては非常にそれを歓迎する。私どもとしては、全体の金融的な立場から申せば、いまおっしゃられました農林系統資金、これの金が非常にべらぼうに余っておるという状態、これは何とか解決しなければいかぬというふうに思っております。そういうものについて、業種的には農林水産業の関連産業に金をもっと出すように仕向けていきたいと思います。現に近代化資金という意味では、補助金をたくさんつけ決して、数百億の貸し出しは行なわせておりますが、なおまたそれ以上に非常に大きな金が余っておるという問題、これを私ども何とか解決しなければならぬと思いますが、非常にむずかしい。金利が高いという、コストの高い金が農林中金に集まってしまうというだけに、これをどういうふうにさばくか。確かにお説のように、あれだけの資金があるのなら、その直接の系統資金をもっとこれらの農林水産業関連産業に使うべきだという御意見には全く同感でございますが、いかにしてそれを借りられるようにするかという問題であろうと思います。
  439. 堀昌雄

    ○堀委員 私も何も開発銀行に貸してはいかぬというのではないのです。しかし、もうちょっとこういうものにてこを入れて、大いに地方開発をやったらいい。その場合には、いまおっしゃるように、系統資金は確かに金利が高い。しかし開発銀行は電力やその他には六分五厘でも金は貸しているわけですから、これは協調融資のようなかっこうでダブらせれば、これは六分五厘て出して、片一方が高くても、両方一緒に出せば、ある程度金利も下がってくるのではないか。何かくふうをしで、こういう地方開発の中に資金が流れるルートをもう少しつくるほうがいいのではないか。地方開発は私はなかなかむずかしいと思います。資本主義の発展というものは、やはり大都会のほうが便利ですから、ここはやはりなかなか骨が折れることだけれども、それだけに私は金融のめんどうを見てやれば開発もだんだん進むのじゃないかと思いますので、そこらはひとつ開発銀行と銀行局長、十分検討して、少しこういう関連産業に対する資金の流し方などを前向きにひとつ考えてもらいたいと思います。  最後にちょっといやなことを少し伺いたいと思うのです、いやなことというのはどういうことかといいますと、今度は理事が一名、参与が一名ふえることになりますが、開発銀行ができましたときの要するに人事構成、これは名前はけっこうですが、当時の人事構成、大蔵省が何人で日銀が一体何人来て、その他から入られた方もあるかもしれません、一体どういう当時の人事構成であったか、ちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  440. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 突然のお尋ねでございまして、残念でございますがはっきりしたことを申し上げられませんが、当時は理事は四名でございました。これは、定員はあったのでございますけれども実際任命された理事は四名でございます。そうしますと、総裁、副総裁——副総裁はたぶんあったと思います。六名でございます。総裁は、小林中さんでございます。ですから大蔵省でもどこでもないのでございます。それから、その他の構成としては、大蔵、通産、日銀、興業銀行——これは長期金融機関であるというので興銀のようなものがどうしても必要だというので、そんなところであったと思います、構成的に。
  441. 山中貞則

    山中委員長 同橋銀行局長、突然の御質問であると言われるのですが、輸出入銀行のときにこの問題が何日も長時間にわたって議論されたので、どうせ開発銀行のときにもそのような質問があることはわかっておるのですから、突然であろうとなかろうと、そのような資料を準備して明快に御答弁なされる措置が考えられなかったことをはなはだ遺憾に存じます。
  442. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、いまのお話ですと、このときは、総裁は民間人、あと大蔵省、通産省、それから日銀、興銀とあると、理事が四名で、総裁、副総裁——初めから副総裁はあったですね。法律上は副総裁を置いていますから、最初から。どうですか。
  443. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 副総裁は太田さんでございました。
  444. 堀昌雄

    ○堀委員 そうすると、日銀が副総裁が一人ということになりますと、理事が四名、監事は二名いたのだろうと思うのですが監事二名で、いまのは大蔵省、通産省、興銀、一人ずつですか。
  445. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 監事は当時実際の人員は一名で、地方銀行出身ということになっております。
  446. 堀昌雄

    ○堀委員 そうするとまだ一名足らないのですが、これはどこかダブっているのでしょうか。大蔵省、通産省それから日銀、興銀のどこかが一人ダブってないとおかしいのですが……。
  447. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 副総裁のほかに理事が一名、日本銀行でございます。
  448. 堀昌雄

    ○堀委員 それでは途中は飛ばしまして、現在の構成の状態をひとつ伺いたいのです。
  449. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 現在の構成といいますか、出身を申し上げます。総裁大蔵省、副総裁も大蔵省でございます。それから理事の内訳といたしましては、開発銀行自体の職員から上がってまいりました者が二名でございます。大蔵省二名、日本銀行一名、通産省一名、それから興業銀行から来ております者が一名でございます。
  450. 堀昌雄

    ○堀委員 監督は。
  451. 高橋俊英

    ○高橋(俊)政府委員 監事のうち一名は、もともとの出身は、非常に古い出身でございますが大蔵省でございます。それから一名は開発銀行の職員から上がったものでございます。
  452. 堀昌雄

    ○堀委員 実は先ほどのお話で、これを見ておりますと、まことに開発銀行は目ざましい変化を示しております。最初に、総裁が民間人、副総裁は日銀、大蔵省はこれらの中で一人しか実は入っておられなかった。ところが現在は、総裁、副総裁、理事が二人、監事の中に古い方が一人、五名になっておるわけですね。そして口銭のほうは、最初に二人だったのがついに一人になった。私はこの前ちょっと聞いたことがあるのですが、小林さんがおやめになったあとは、総裁が日鉄出身のときは副総裁が大蔵省出身、それから総裁が大蔵省出身になると副総裁が日銀出身というか、何かそういうふうになっておるように私は漏れ聞いたことがあるのですが、それらの経緯について御存じの範囲でお答えいただきたい。
  453. 田中武夫

    田中国務大臣 初めはそういうようなこともあったかもわかりませんが、日銀から副総裁が出たときには大蔵省側が総裁とか、日銀から総裁が出たときには大蔵省が副総裁とかいう慣例はやはり破っていく。そういうこと自体が私するということでありまして、私はそういう意味で、やはり適材適所ということでいくべきだという考え方でございます。これは御承知のとおり正副総裁は政府任命でございますので、高度の立場で人材を広く求めて、日銀や地方銀行、そういうものにこだわることが、もういまの審議会の委員のようでありまして、一人ずつ業界から出すというようなことが必ずしも合理的でないという考え方でありますから、まあ過去にはそういう例が確かにあったと思います。平田現総裁が副総裁のときには日銀出身の太田さんが総裁でありましたが、任期がこられたので副総裁が上がり、大蔵省からも今度副総裁もまいっておりまして、ちょっとどぎついようでありますが、私はそういうことよりもやはり人材という意味から見まして、適材適所という考え方を持っておるわけでありまして、あまり日銀とか、大蔵省とか、興銀とかいうものにこだわらないで、広くひとつ人材を集めるということでお考えいただければ非常に幸いだと思います。
  454. 堀昌雄

    ○堀委員 それは私も原則としては全く同感です。それはまさに人物によるべきでありますけれども、しかしどうもこれを見ておりますと、それにしても大蔵省が多過ぎる。大蔵省が天下で一番人物がおられると言われるのなら、これはまた私も何をか言わんやでありますけれども、今度また理事が一名ふえます。その人材というのは、率直に言ってあなたのおっしゃるように、私も何も役人ばかりが人材だとは思わない。初めには、総裁は民間から人が来ておられたわけですね。ですから広く人材を求めるということになるならば、私は、必ずしも役人をしていた方だけにこだわる必要はないのではないか。こういうふうに思うのです。そこで公庫の今後の方向として一番いいのは、よそから持ってくるよりは、できるだけ開銀の中につとめていた人が順次理事になるということに道を開くほうが適切ではないか。仕事に従来をしておる人たちがやはり一番過去の経緯もいろいろ知っておるだろうし、おそらく開銀といえども人材でないものは集めようということじゃないでしょうから、そこで今後の方向としては、いろいろ関係がありましょうから、これは日銀から来るのもいいでしょう。通産省から来るのもいいでしょう。しかしどうもこの状態は率直に言って少し大蔵省に片寄り過ぎているような感じがいたします。これは輸銀の場合と比較して、こちらのほうはそういう意味では、いささか人が片寄り過ぎているではないかという感じがしますが、まあ今度法律が通れば理事が増員になるので、やがてまたこれは任命になると思います。その場合に私がいま申し上げたような考え方、そういう方向でふやしていくというならばふやすということが適当ではないか。それは開発銀行に勤務をしておられる方々にとっても励みになると思うし、またそういう方々は事情もよくわかっておるから、いろいろな点で私はいい方向だと思いますが、大臣はいかがお考えですか。
  455. 田中武夫

    田中国務大臣 この法律を通していただきまして理事の増員が決定すればその時点において考えるわけでございますが、いま私の立場として申し上げられることばとしては、増員を認めていただいたら、少なくとも大蔵省からやるというようなことはございませんということだけは明らかにいたしておきたいと思います。いまあなたが言われたとおりあらゆる機関において、その中で長いこと経験を持っておる人を上げるということの道を開くべきであるということには同感であります。がしかし、それだけでほかから来る人はみんな排除するという風潮もまた起きつつありますから、こういうことについてはやはりお互いが十分その事情を児ながら、その機関の持つ特殊性というものを十分考えながら、適切なまた世間からも誤解されることのないように、十分な配意をしなければならぬということを考えておるわけであります。
  456. 堀昌雄

    ○堀委員 総裁にお伺いをいたしますが、いまの問題いかがですか。
  457. 平田敬一郎

    ○平田説明員 大蔵大臣お話と同様でございまして、将来の方向としてはまたお話のような趣旨をできるだけ取り入れましてやりたいと考えております。
  458. 堀昌雄

    ○堀委員 私がいま総裁に伺ったのは、実は理事の任命は、これは内閣総理大臣ではなくして、総裁任命なんです。そこを大蔵大臣が話の経緯でお答えになったから、私が伺ったわけでして、総裁、副総裁は、これは内閣総理大臣の任命人事ですから、これはやはり政府として適切な配慮をしなければならぬと思いますが、やはり総裁の任命人事ともなれば、これは総裁というのは開発銀行の総裁ですから、やはり開発銀行の職員をも十分考慮に入れるということでなければ適切でないのではないかという感じがいたしますから、そういうふうに申し上げたわけであります。  そこでもう一つ、これは私全然わからないのでちょっと伺っておきたいと思いますが、参与という制度は、現実にはいまは一体どういう方がなっておられて、どういう運営がなされておるのかを、ちょっと伺っておきたいと思います。
  459. 平田敬一郎

    ○平田説明員 参与はいま五名おられまして、お名前を申し上げますと、石坂泰三さん、原安三郎さん、浅尾新甫さん、太田垣さんは先日なくなられましたので欠員でございます。それから永野重雄さん、この五名でございました。  参与は、法律にございますように、総裁がいろいろの意見を聞く諮問機関でございますが、毎月一回必ず定例的に開きまして、前月の貸し付けをどういうふうにやったかとか、そのほかいろいろの問題がございます。たとえば最近また海運の新造船の問題につきまして問題がございますが、そういった問題について、どういうふうに考えるべきかといったようなことを、月一回必ず開きましてやっております。出席率も調べてきておりますが、八七%という統計が出ておりますが、参与の方の数が少ないですから、十分御連絡しまして御出席のいい日を選んで必ずやっております。民間でございますれば、一種の社外重役さんとまではいかないのですが、私が一切の責任と権限を持っておりますので、諮問機関ですけれども、できるだけそれに準じたような会合を開きまして、会合のたびにいろいろの御意見を聞くということで運用いたしております。
  460. 堀昌雄

    ○堀委員 いま伺いますと、やや知名の人に片寄り過ぎているという感じがいたします。日経連というか、ほとんどそういう団体の幹部ばかりというかっこうのようでありますが、私は何もこの個々の方にけちをつける意思はありませんけれども、何と申しますか、あまりにもう一家をなし過ぎた方ばかりのように感じますので、そういう方ばかりではなくて、やはりもう少し新しい角度からいろいろ問題を考えられるような方も私は中に入っておられていいのではないか、私はそういう感じがいたします。これはやや大企業のほうに過ぎておるような感じがいたしますので、そこいらはひとつ、今度は参与が一名ふえるようでありますから、何らかの配慮を、またあああの人かというような方でなくて、あああの人がというような方を勇断をふるって加えることを要望いたしておきたいと思います。  以上で、今回の法案についての質疑を終わりますけれども、いままでの論議の経過でおわかりいただいたと思いますが、開発銀行が持ってまいります使命というのはだんだん大きくなりつつある。さっきの同僚委員質問とちょっと逆になりますけれども、今後の開発銀行が占める位置というのはたいへん大きくなってくるので、これについては、私はいろいろな角度からやはり相当慎重な取り扱いを行なわれなければならぬと思うのです。その慎重な取り扱いを行なうためには、やはり人事も公正でなければならないし、いろいろな面で第三者の批判にたえるといいますか、みんなが納得のできるようなものをつくっていくことが、私は非常に重要な問題であるということを第一点で感じておりますので、人事が増員をされることは、仕事が地方開発というような間口の広い仕事にかかっておるわけでありますから、必要やむを得ないのかもわかりませんけれども、それについてはひとつ適切な人事を行なうということと、もう一つは、その土地造成の問題について、よほど気をつけてこの問題が行なわれないと、ややもすると不測の事態に発展しかねない場合もあり得る。特に今後のいろいろな問題については、いままでの経緯を伺うと、開発銀行になってから不良債権はきわめて少ないということは、私たいへんけっこうだと思うのでありますけれども、先ほども申し上げたような事例がいろいろと起こっておる段階でもありますから、いろいろな面を含めて、これらの原資が持っておる性格はやはり非常に公共性の高いものでありますから、その点を十分ひとつ認識をしていただかなければ、これはまずい問題におちいるおそれもなしとしないということを申し上げまして、私の質問を終わります。
  461. 藤井勝志

    ○藤井委員 本日の議題中、日本開発銀行法の一部を改正する法律案につきましては、質疑はこれで打ち切られるようにお願いをいたします。
  462. 山中貞則

    山中委員長 藤井君の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  463. 山中貞則

    山中委員長 起立多数。よって、藤井君提出の動議のごとく決しました。  ただいま、日本社会党の委員諸君は退場されました。今日まで円満に運営してまいりました当委員会としてはまことに残念でございますが、退場された諸君は審議権を放棄されたものとみなして、やむを得ず議事を進めます。
  464. 山中貞則

    山中委員長 これより討論に入ります。  通告がありますので、これを許します。岩動道行君。
  465. 岩動道行

    岩動委員 ただいま議題となりました日本開発銀行法の一部を改正する法律案に対して、私は自由民主党を代表して賛成の討論を行なわんとするものであります。  日本開発銀行は、昭和二十六年設立されて以来、長期設備資金の供給を行なうことにより、わが国経済の再建と産業の開発に多大の寄与をいたしておりますが、当初の融資が基幹産業中心であったのに対して、その後地域開発融資が加わり、その他高度経済成長に伴い貸し付け対象の業種も多様化するとともに、その融資残高も昨年十二月末には八千二百五十九億円の巨額に上っております。  今回、日本開発銀行法を改正して、同行の業務に土地造成資金の貸し付け業務を追加することといたしておりますが、最近、新産業都市の指定が行なわれる等、地域開発がますます重要性を加えつつある際、工場用地、埠頭用地等の造成供給を容易ならしめることは、まことに時宜に適した妥当な措置であると存ずるのであります。  さらに、理事及び参与の定員をそれぞれ一名ずつ増員することにいたしておりますが、業務の多様化と資金量の増大化から考えて、その業務の円滑かつ適切な運営を期する上にこれまた当然な措置であります。  以上の理由により、本案に対して全面的に賛意を表して、私の討論を終わります。(拍手)
  466. 山中貞則

    山中委員長 竹本孫一君。
  467. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は民主社会党を代表し  て、ただいま議題となっております日本開発銀行法の一部を改正する法律案に対し、賛成の意見を表明せんとするものであります。(拍手)  最近におけるわが国の経済成長は、ことばの厳密な意味において成長という概念に値しないうらみがあります。すなわち成長とはバランスを保ちながら均衡のある発展をするということでありますが、御承知のごとく現内閣の高度成長経済政策の中におきまして  は、大企業と中小企業、都市と農村、資本と労働、重工業と軽工業、生産部門と流通部門等々、それぞれの間に克服しがたい格差の拡大や矛盾の拡大を招来しつつあるのでありまして、これが解消は現代政治に課せられた大きな課題の一つであります。   日本開発銀行は、昭和三十四年以来、地域開発融資についても積極的な努力をされておることは、この意味においてその役割を高く評価したいと思うのでありますが、まだその努力はもちろん十分ではありません。国内における低開発地域の前進のために、また産業格差解消のために、今後一段の御努力を願わなければならないと存ずるのであります。  今回の開発銀行の業務に土地造成資金の貸し付け業務が加えられるに至りましたことは、新産都市その他の地域産業開発と、土地造成問題の重要性、地方公共団体の財政資金の限界性等を考える場合、まことに時宜に適した方策として賛意を表する次第であります。これによって、民間による土地造成が大きく推進されるよう、原資の面でも手続の簡素化の面でも十分の配慮を希望するものであります。  開発銀行の昭和三十八年十二月末現在の貸し付け残高八千二百五十九億円の中にあって、地域開発融資は五百四億円、全体の六・九%にすぎません。これでは問題になりません。今回の土地造成につきましてもさらに積極的な企画と構想が必要であろうと思います。私はここに、今後この新しい分野における一そうの努力と熱意をもって地域開発、土地造成のために力強い前進が行なわれるよう希望し、また日本開発銀行が将来日本産業の総合的、計画的開発と前進とをになうべき大きな使命を考えまして、その展望の上に立って、本案に賛成するものであります。  これをもって私の賛成討論を終わります。(拍手)
  468. 山中貞則

    山中委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  469. 山中貞則

    山中委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  470. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  471. 山中貞則

    山中委員長 次会は、明二十六日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時五十一分散会