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1964-03-17 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十七日(火曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 臼井 莊一君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       岩動 道行君    大泉 寛三君       大久保武雄君    奥野 誠亮君       金子 一平君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       濱田 幸雄君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       野原  覺君    日野 吉夫君       平林  剛君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 田中 角榮君  出席政府委員         内閣法制局参事         官(第三部長) 吉國 一郎君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         国税庁長官   木村 秀弘君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君  委員外出席者         大蔵事務官         (国税庁税部         長)      鳩山威一郎君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 三月十七日  委員野原覺辞任につき、その補欠として松井  政吉君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松井政吉辞任につき、その補欠として重  盛寿治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員盛寿治辞任につき、その補欠として野  原覺君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 三月十三日  印紙税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九六号)(参議院送付) 同月十六日  元満州国政府等職員期間のある非更新共済組合  員の在職期間通算に関する請願外一件(小沢辰  雄君紹介)(第一二五三号)  同外二件(田中龍夫紹介)(第一五二二号)  同外一件(田原春次紹介)(第一五二三号)  旧海軍文官国庫返納退職賞与更訂支給に関す  る請願谷垣專一君紹介)(第一二八三号)  政府関係金融機関資金増額に関する請願(井  出一太郎紹介)(第一二九五号)  酒税法改正等に関する請願井出一太郎君紹  介)(第一二九六号)  揮発油税等増税反対等に関する請願島上善  五郎紹介)(第一三一八号)  財団法人海洋博物館に対する国有財産の譲与に  関する請願星島二郎紹介)(第一三四五  号)  ガス、石油燃焼器具物品税減免に関する請願  (天野公義紹介)(第一三五六号)  入場税撤廃並びに労音、労演に対する、不当課  税の取消し等に関する請願坊秀男紹介)(  第一三五七号)  同(有馬輝武紹介)(第一三九四号)  同(落合寛茂紹介)(第一三九五号)  同(金丸徳重紹介)(第一三九六号)  同外一件(田口誠治紹介)(第一三九七号)  同(加賀田進紹介)(第一四三一号)  同(神近市子紹介)(第一四三二号)  同(河野密紹介)(第一四三三号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第一四三四号)  同(島上善五郎紹介)(第一四三五号)  同(田原春次紹介)(第一四三六号)  同(帆足計紹介)(第一四三七号)  同(堀昌雄紹介)(第一四三八号)  同(武藤山治紹介)(第一四三九号)  同(横山利秋紹介)(第一四四〇号)  同外二件(栗原俊夫紹介)(第一四九三号)  同(加藤進紹介)(第一四九四号)  同(長谷川正三紹介)(第一四九五号)  同(角屋堅次郎紹介)(第一五二七号)  同外一件(芳賀貢紹介)(第一五二八号)  音楽舞踊能楽等入場税撤廃に関する請願  (稻村左近四郎君紹介)(第一三八七号)  同(岡田春夫紹介)(第一三八八号)  同(川上貫一紹介)(第一三八九号)  同(志賀義雄紹介)(第一三九〇号)  同(谷口善太郎紹介)(第一三九一号)  同外二件(華山親義紹介)(第一三九二号)  同外二件(安宅常彦紹介)(第一四二九号)  同(山内広紹介)(第一四三〇号)  同(佐々木更三君紹介)(第一四九〇号)  同(志賀義雄紹介)(第一四九一号)  同外五件(栗原俊夫紹介)(第一四九二号)  同(小林進紹介)(第一五二九号)  入場税撤廃に関する請願外一件(原彪紹介)  (第一三九三号)  同外二件(中村高一君紹介)(第一四四一号)  同(藤尾正行紹介)(第一四四二号)  同(武藤山治紹介)(第一四四三号)  同外一件(森下國雄紹介)(第一四四四号)  同(山田長司紹介)(第一四四五号)  同(戸叶里子紹介)(第一四九六号)  減税税制民主化等に関する請願川上貫一君  紹介)(第一三九八号)  同(河野正紹介)(第一四四八号)  減税税制民主化等に関する請願外七件(堀昌  雄君紹介)(第一三九九号)  同(野原覺紹介)(第一四〇〇号)  同外二十三件(五島虎雄紹介)(第一四四九  号)  同(志賀義雄紹介)(第一四八八号)  同外五件(山下榮二紹介)(第一五二一号)  政府関係機関に対する大蔵省の貸金抑圧並びに  不当干渉即時撤回に関する請願加藤進君紹  介)(第一四〇一号)  同(川上貫一紹介)(第一四〇二号)  同(志賀義雄紹介)(第一四〇三号)  同(谷口善太郎紹介)(第一四〇四号)  同(林百郎君紹介)(第一四〇五号)  音楽、演劇、舞踊映画等文化的催しものに対  する入場税撤廃等に関する請願野原覺君紹  介)(第一四四六号)  同(井岡大治紹介)(第一四八九号)旧令に  よる共済組合等からの年金制度に関する請願(  辻寛一紹介)(第一四四七号)  税制改革に関する請願岡田春夫紹介)(第  一四五〇号)  同外十一件(角屋堅次郎紹介)(第一四五一  号)  同(華山親義紹介)(第一四五二号)  同(松井誠紹介)(第一四五三号)  同外五件(横山利秋紹介)(第一四五四号)  同外一件(春日一幸紹介)(第一五一九号)  同(佐藤觀次郎紹介)(第一五二〇号)  減税税制改正等に関する請願松本七郎君紹  介)(第一四五五号)  重税反対等に関する請願松本七郎紹介)(  第一五二四号)  税理士の試験制度改正反対に関する請願福田  繁芳紹介)(第一五二五号)  同(増田甲子七君紹介)(第一五二六号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  三六号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第九八号)  相続税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  揮発油税法及び地方道路税法の一部を改正する  法律案内閣提出第一七号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  九五号)      ――――◇―――――
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案相続税法の一部を改正する法律案物品税法の一部を改正する法律案及び揮発油税法の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中武夫君。
  3. 田中武夫

    田中(武)委員 いまから税三法に関連をいたしまして質問をいたすのですが、まず最初に御了解を得ておきたいことは、御承知のように私大蔵委員会は今国会になってからでございまして、いわゆる大蔵委員会一年生でございます。したがって税法一年生でございますので、愚問を発するかもわかりませんが、その点を御了承の上懇切丁寧にひとつ御答弁を願いたい。  そこでまずお伺いいたしますが、所得とはどういうことですか。ただ、税を課せられる所得と課せられない所得があるとか、あるいは所得には十種類ありまして、利子所得から雑収入までありましてどうとかいうような答弁を期待いたしておるのじゃありません。いわゆる収入あるいは池山内閣のいう所得倍増計画所得とは一体どういうことだ。
  4. 泉美之松

    泉政府委員 お答え申し上げます。  所得考え方には、大きく分けまして二通りあろうかと存じます。一つ純資産増加説と申すものでございまして、たとえば個人でございますと、一月一日現在の資産に対しましてその年十二月三十一日現在の資産がどの程度増加しておるか、その増加額資産所得であるという考え方がこの純資産増加説の基礎になっております。こまかいことを申し上げますといろいろ申し上げなければなりませんが、大ざっぱに申し上げておきます。それからもう一つは、所得というのは継続的に収入の生ずるものに限るんだ。たとえば譲渡所得、いわゆるキャピタル・ゲインというものは所得ではないんだという考え方、これは利子とか配当とか給与とか、それから事業所待といったように毎年回帰的に生ずるものが所得であるという考え方、大ざっぱに分けましてこの二通りあろうかと思います。両者の間にどの分は所得であるとかないとかいろいろ考え方がとられるわけでございまして、たとえばドイツにある考え方でございますが、インピューテッド・インカムと申しまして、つまり計算所得、たとえば自分が家を持っておりますと、その家について自分効用を受ける。そこに居住しておるということによって効用を受ける。もし自分がその家を持っておらないと、他の人から家を借りてそこに住まわなければならないのであるから、もし家を持っておればそれだけ自分効用を受ける、家賃を払わなくてもそこに住めるということは、計算的にすれば所書があるんだという考え方、こういった考え方もとられるわけでございまして、いま申し上げました両者の中間にいろいろの考え方がございますが、しかし大ざっぱに分けまして純資産増加説回帰的所得説という考え方でよろしいかと思うのでございます。ただ各国の税法を見ますと、必ずしもその両者に徹底していないで、その両者の混合した考え方をとられておるのが多いようでございます。
  5. 田中武夫

    田中(武)委員 それでわが国税法は一体どの説に根拠しておるのですか。
  6. 泉美之松

    泉政府委員 わが国税法におきましては、法人税のほうは純資産増加説を根拠としておると申し上げてよろしいかと思うのでございます。ただ所得税につきましてはいろいろ変遷がございまして、かつては譲渡所得に対しては課税しなかったというような点から申し上げまして、必ずしも純資産増加説でなかったのでございますが、戦後シャウプ勧告に基づきまする所得税改正をだんだん行なってまいりましたあと、そこには純資産増加説に近い性格のものが考えられてきておると思います。ただ必ずしも法人ほど純資産増加説考え方が強く徹底しておるわけではございません。
  7. 田中武夫

    田中(武)委員 わが国税法では、法人税は大体純資産増加説である、所得税も大体それに準拠しておるが、いろいろと例外もある、こういうことで理解してよろしいですね。――そこでお伺いするのですが、たとえば三十八条の今度の改正取締役会決議によって決定した役員賞与、これは実際に入らなくとも一年以上たっている場合は、収入せられたとみなして課税する、そういう改正が出ておりますね。そうするとこれなんかはいわゆる純資産増加説の特例になるわけですか。
  8. 泉美之松

    泉政府委員 この点につきましては、お話のように純資産増加説のたてまえからいえば、まだ支払われないものに対して源泉徴収するという点に問題はあるわけで、その例外をなすわけでございますが、これは所得税の場合いろいろ問題があるわけでございます。最初に問題になりましたのは配当でございます。配当につきまして同族会社なんかの場合におきましては、配当することを株主総会決議いたしましたが、しかし実際にはなかなかその配当を払わないという場合があったわけでございます。そこで、それでは配当に対する所得税課税が実現できないということになりますので、配当決議をしてから一年も支払わない場合におきましては、その配当決議をしてから一年たったときに源泉徴収するのだという規定を置いておるわけでございますが、それと同じように役員賞与につきましても、同族会社の場合に、賞与支払い決議はいたしますけれども、その決議を実行しないでいつまでも支払いませんと所得税課税が実現できません。そこで支払い決議をしてから一年たったときにおきましては源泉徴収をする。これは源泉徴収だけでございまして、現実にまだ支払われておりませんから、所得税をその上に総合課税するわけにはまいらないのでございますが、ただ源泉徴収をするということによって法人のほうはそれを支払うことを事実上強制される、それによって支払われた場合に総合課税をするということになるものでございます。
  9. 田中武夫

    田中(武)委員 農地を売った場合、農地法三条四項に「第一項」すなわち知事許可ですが「第一項の許可を受けないでした行為は、その効力を生じない。」とあります。そこで農地を売って金はもらった、ところが知事認可が受けられなかった、そこでこの農地法によるとその売買効力は発生しない、売買は成立しないといっているわけです。しかしそれをまた第三者に、たいていブローカー等に転売するというケースが多いのです。その場合に農地を売って受け取った所得、これは所得になりますかなりませんか。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、農地売買につきましては知事許可が必要でございます。そこで農地を売却いたします場合には、普通農地委員会を経まして知事許可を得ることになっておるわけでございますが、実際問題としては、その知事許可が得られる前に金の支払いが行なわれるといった事例が多いわけでございます。そこで税務の実際におきましてはいろいろトラブルが起きておるのでございます。農地の転用につきましては、田中委員承知のように、農地委員会許可する場合、何でもかでも許可しないのではなくて、宅地造成をするような地域でございますと、それを宅地のために転売する場合は許可されるのが普通でございます。そういう点からいたしまして、現実金銭取引がございますと、そのときに譲渡があったものとして課税しているのが実情でございます。ただいま申し上げましたように、法律的には知事許可あとになるという場合がございまして、その場合におきましては本来は契約が成立したときに土地の譲渡があったものと見るべきでありましょうけれども、農地につきましては知事許可あとになるという場合がございます。その場合に一体いつその農地を売ったのであるかというのが争いの種になるわけでございます。これにつきましては、法律的に申し上げますれば、お話のように県知事許可がないと農地譲渡はできないのでございますので、知事許可のあったときが売買のあったときだというふうに法律的には解されるのでございます。その許可がおくれて年を渡るというときに、同じ年の中でございますとその年の所得として問題ないわけでございますが、年をまたがって、つまり金授受は前年の十月か九月に行なわれた、ただし知事許可は翌年になって行なわれたという場合に、いつの所得であるかということが問題になるわけでございまして、これは税務の実際におきましては各地でいろいろトラブルを起こしておるようでございます。
  11. 田中武夫

    田中(武)委員 主税局長、実際の場において、各地トラブルを起こしておる、それでは済まされないのです。ぴしっと解釈を出してもらいたい。たとえば三十六年に売買をして金をもらった。ところがその年に知事認可がこなかった。そして三十八年になって知事認可があったという場合は、法律的に見た場合は知事認可があったとき、すなわち三十八年に売買契約は成立したと見るべきである。しかし三十六年に金は渡されておる。もしこの農地法三条四項の規定をシビアに考えるならば、三十六年のその人の所得不当所得だ、こうなります。そうでしょう。権限に基づかない所得なんです。ところが実際あなたが言っている純資産増加説からいえば、資産はふえておる。所得になっておるわけなんです。その点どちらに準拠するのか。実際の場合においてあちらこちらにトラブルが起きておるようでございますでは答弁になりません。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように法律的に申し上げますれば、先ほど私が申し上げましたように知事許可があったときでないと所得は実現しなかったことになります。しかし取引といいますか、金銭授受が前に行なわれておるものでございますから、法律的に申しますと知事許可があったときに所得があったというふうに解すべきでございましょうが、税務の実際におきましては、税務書のほうから申告しなさいという慫慂は知事許可があるまではいたしませんけれども、納税者の方が申告しておいでになるとそれを受け取っておるというのが実情でございます。
  13. 田中武夫

    田中(武)委員 そういたしますと統一見解としてはこういうことですね。かりに三十六年に売買を行なった、そこで金を受け取った。本人申告をしなければそれでいい。そして三十八年に知事許可があったときに売買が成立したとして三十八年の所得にする。しかし本人が三十六年に申告をした場合は、その三十六年の所得として取り扱う。この場合法律的に言うならば、先ほど言ったように農地法三条四項の規定によって売買契約は成立していない。すなわち売り主の受け取った金は法律的には不当利得になるわけですね。本人申告をすれば税務署不当利得収入とみなすかどうか。
  14. 泉美之松

    泉政府委員 これはお話しのように非常にデリケートな問題でございまして、法律的に申し上げますと田中委員のおっしゃるとおり知事許可があったときに所得が実現するのでございますから、そのときに課税するのがいいのでございます。ただ実際問題といたしますと、納税者の方はその受け取った金をもちまして財産買いかえを行なうとかいうことになるわけでございます。その場合におきましては、租税特別措置法による財産買いかえの規定適用を受けたほうが得になるわけであります。そういうような場合におきましては、納税者のほうが三十六年に金を受け取ったのだから、それから一年以内に財産買いかえを行なうということにしたほうが得な場合がございます。もちろん三十八年まで金を持っておりまして、そうして三十八年に知事許可があってから買いかえてもよろしいわけでございますが、金を持っておりますとつい使うというようなことがありますので、そういうことになりますと、まあ納税者自身も困るということからいたしまして、申告してそのかわり賢いかえの規定適用を受けたいというような場合があるわけでございます。そういう場合には、納税者の気持ちをそんたくして、それを受け取っておるというのが実情であります。
  15. 田中武夫

    田中(武)委員 最初に私が所得税意義等を聞きまして、あなたから純資産増加説ということを答えてもらったのはここにあるわけです。この農地法規定を見た場合に、所得という点において、農地売買においてここに矛盾を来たすわけですね。ところがそれはいまあなたがおっしゃったように、法律的には農地法規定売買契約は成立していないが、とにもかくにも実際売買――法律的でなしに実際に売買をして金を受け取った者が当該年度において申告をした場合は、それによって課税をしておる。申告しなかったときには、農地が法律的に売買成立したとき、すなわち知事認可があったときに課税する、こうお答えになりましたが、実際にそうなっておりますか。間違いありませんね。
  16. 泉美之松

    泉政府委員 さようでございます。そういうふうになっております。
  17. 田中武夫

    田中(武)委員 実は兵庫県西宮税務署、三十六年に農地売買いたしました。そのときには知事認可がなかった。そこで本人は三十六年に所得申告をいたしております。ところが大阪国税局ですか、そこから三十六年に納めた税金は返してきた。そうしてあらためて三十八年、すなわち知事認可があったときに課税をする。したがって三十六年に一応まじめに申告して納めたそれを返してきて、三十八年にもう一度申告をし直せ、こういう事例がありますが、いまあなたがおっしゃいました、間違いありませんと言ったことに対してこういう事実があることはどうでしょうかね。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 これは国税庁のほうからお答えすべきかと思いますが、私から申し上げますと、実はこの問題につきましては、その法律的見解と、それから先ほど申し上げました事実問題として金を受け取っておるというところから生ずる問題とございまして、各国税局でその取り扱いを統一しようじゃないかという話が出まして、最近はそういうふうな取り扱いに統一することになっておるのでございますが、以前におきましては必ずしもそういうふうに全国の国税局が統一されておらなかったようでございまして、お話しのような事例が生じたのではないかと思うのでございますが、最近はいま申し上げましたような方向に統一いたしておるのでございます。
  19. 田中武夫

    田中(武)委員 最近解釈を統一したと言いますが、その最近とはいつですか。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 昨年の直税部長会議におきましてそういう打ち合わせができて、各国税局でそういう通達を出しておるはずでございますが、必ずしも全部の国税局で出ておるかどうか、私まだ承知いたしておりません。
  21. 田中武夫

    田中(武)委員 ところが、そうでない事実がある。具体的に西宮税務署はどういうように処理せられますか。
  22. 泉美之松

    泉政府委員 これは、私から申し上げるのはあれでございますが、さっそく国税庁に連絡いたしまして、そういうことで取り扱いが違うということでは困りますので、統一するように指導させたいと存じます。
  23. 田中武夫

    田中(武)委員 統一するように指導したいということは、いま御答弁になったように、法律的に成立するということは別に、実際面において授受の行われたとき、これに統一するのですね。
  24. 泉美之松

    泉政府委員 これは、申し上げましたように、法律的に申し上げますれば、知事許可があったときに初めて農地譲渡が行なわれるわけでございますから、そのときに申告していただくのが当然でございます。ただ、納税者の方から、買いかえ等の関係がございまして、実際に金銭授受したときに申告して買いかえの規定適用を受けたいというような場合がございます。納税者のほうから進んで申告された場合には、それを受け取るということに統一するというのでございます。
  25. 田中武夫

    田中(武)委員 例じゃない、これはもう事実のことです。これは三十六年に申告をしております。ところが、国税庁がそのときの税額として九十万か幾らかを還元してきて、あらためて三十八年に申告をせよということになっておるのです。この事実をどう解決しますか。
  26. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま主税局長がお答えいたしましたとおり、昨年の直税部長会議におきまして、原則としては都道府県知事認可のときをもって売買契約の成立というふうにいたしたのでございます。しかしながら、認可がおりる前に売買契約がすでに行なわれておるのが通常でございまして、局によっては取り扱いが必ずしも一致していなかった。そこで、昨年の直税部長会議におきまして、その足並みをそろえるように、指示をいたしております。したがって、それ前の分についてどうかということになりますと、これはその前にまでさかのぼってやるということは困難かと思います。
  27. 田中武夫

    田中(武)委員 昨年の直税部長会議というのは何月ですか。それ以後に還付が行なわれ、三十八年度、いま申告せよと言っておるのですよ。だからそれ以後なんですよ。それをどう解決します。
  28. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 昨年の十一月の直税部長会議で下打ち合わせをして、その結果によって十二月の資産税課長会議において、足並みをそろえようという具体的な申し合わせをいたしたのでございます。
  29. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、それ以前、すなわち、三十六年に申告をして現実に納税を行なっている。国税局がそれの返還の手続をとったのはあるいはその以前かもしれません。しかし、現実申告をせよと言っている三十八年度はその以後なんです。こういうのに対して、遡及してではないが、具体的にいま申し上げている例は、先ほどの答弁とは違ったことが行なわれている。したがって、どう解決するか、こう言っているのです。
  30. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま申し上げました、各国税局によりまして申し合わせをして統一をしました前の分につきましては、これをさかのぼって改定をするということは、各国税局によって類似の事例がたくさんございますので、困難かと存じます。
  31. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると、昨年十一月の直税部長会議統一見解をきめるまでは、各税務署においてまちまちであった、そういうことを認めるのですね。したがって、所得税をかけるときになってその関係の法規である農地法三条第四項の規定はあまり考えなかった。もしそれを十分考えて、法律の規定と、先ほど主税局長が言った、所得に対して、基本的な態度として純資産増加説等をとるならば、そういうことが具体的に問題になる以前に当然統一見解をとっておくべきであったと思う。どうです。いままではでたらめだったということですよ。
  32. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 法律の純粋な解釈といたしましては、やはり農地法規定によって認可が行なわれたときに契約が成立した、したがって、そのときに譲渡現実に行なわれておる、こういうことになるのは当然でございます。ただ、主税局長が先ほど申し上げましたように、場合によっては納税者の方が、契約の成立時に申告したほうが有利になるというような考慮から、申告をされておってこれを認めたというものも局によってはございます。したがって、先ほど申し上げましたように、局によって必ずしも取り扱いが統一されておらなかった、こういうことでございます。
  33. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、結局のところ、昨年の十一月の打ち合わせまではまちまちであった、そういうことを承認するわけですね。それから、ことばじりを拾うのではありませんが、用語には気をつけてください。契約の成立は農地法によって知事許可があったときですから、用語は間違いなく。次官、いままではまちまちであった、でたらめだったことを認めるかどうか。
  34. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま申し上げましたように、必ずしも統一しておらなかったことは事実でございます。  それから、契約の成立と申しましたのは、実は契約が有効に成立したということは、これは認可があって初めて有効に成立するわけでありまして、私が契約成立と申し上げましたのは、これは実際の取引が行なわれたという意味で申し上げましたので、用語は訂正いたします。
  35. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 ただいま国税局長から御質問に対する大体のお答えを申し上げたのですが、同じ考えでございますから……。
  36. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、これはこの程度にしておきましょう。要は、いままでは統一見解を持たなかった。したがって、全国においてまちまちであった。だが、これからはこういうようにきめました、こういうことで過去を反省するということにおいて、一応この点は通過いたしましょう。  次にお伺いいたしますが、納税の義務はいつ発生するのですか。
  37. 泉美之松

    泉政府委員 納税の義務につきましては、国税通則法に規定されておりまするように、法律の規定に基づきまして、たとえば所得税でございますと、一月一日から十二月三十一日までの間に生じた所得について課税されるわけでございますので、一月一日から十二月三十一日までという時間の経過によりまして、一応抽象的な納税義務が発生するわけでございます。抽象的な納税義務発生と申しますか、納税義務が成立するわけでございます。その抽象的な納税義務が成立した後、具体的に、それでは昨年の所得が幾らありまして、それに対する税額は幾らであるかということを確定するのが申告納税制度でございまして、納税義務者が所得税でございますと、三月十五日までに申告することによって具体的に確定する。もし申告が行なわれない場合におきましては、税務官庁がこれを調査いたしまして、税務署長が決定通知を行なうことによって確定するわけでございます。また申告いたしました所得が、税務官庁が調査しました所得と相違しておる場合におきましては、税務署長が更正を行なうことによって確定する。もちろん申告によって確定した部分と、更正によって確定した部分とは違うわけでございまして、更正が行なわれますと、その申告によって確定しておった税額が、更正によって増加する部分だけふえてきまるということになるわけでございます。
  38. 田中武夫

    田中(武)委員 納税の義務がいつ発生するかといえば、税金はいろいろありますからそれぞれ違うだろうが、いま言っているのは所得税にしぼります。そうすると継続して入る所得、たとえば給与、たとえば事業所得、こういうもののいわゆる抽象的義務発生は、その金を受け取ったときに発生するのですか。そして具体的の義務発生は、確定申告の決定、あるいは更正決定もこういうときに具体的義務は発生するのですね。
  39. 泉美之松

    泉政府委員 いま私が申し上げましたのは、所得税申告納税制度をとっておるという点から生ずる点を申し上げたのでございまして、所得税につきましては田中委員承知のとおり、源泉徴収の制度がいろいろとられております。源泉徴収の制度は給与のみならず、そのほか放送謝金とか原稿料とか、こういったものについても源泉徴収の制度がとられております。この源泉徴収の制度は、もちろん給与でございますと、ある月分の給与を支払いますと、それについて納税義務者というよりも、源泉徴収義務者が源泉徴収すべき税額が確定するのでございまして、その納税義務者のほうは一年間の経過によりまして、その人の総所得がきまらないと、納税義務者自身の納税額というのは確定しないのでございますが、源泉徴収義務者が徴収すべき税額の確定は、それぞれの給与の支払いのとき、あるいは原稿料とか放送謝金の支払いのときということになっておるのでございます。
  40. 田中武夫

    田中(武)委員 尋ねたかったのはその点なんであります。いわゆる申告所得の場合は、申告が決定した場合あるいは更正決定した場合、納税義務が具体的に発生する。給与所得の場合は、給与所得者には義務は発生しないが、徴税義務者には、給料支払いのときに義務が発生する、こういうことですね。
  41. 泉美之松

    泉政府委員 さようでございます。
  42. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、徴税義務者の義務というのはどういうことですか。
  43. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収制度をとっておるのは、結局その徴収義務者と本来の納税義務者との間に、雇用人であるとか、役員であるとか、そういった特殊関係がある場合におきまして、その源泉徴収義務者に源泉徴収の義務を課しておるのでございます。この源泉徴収義務者が課せられておる義務というものの法律的な性格につきましては、実はいろいろの見解がございます。これにつきましては、われわれ税務官庁当局といたしましては、その源泉徴収の義務も憲法の規定による納税義務の中に含まれるのだという解釈をとっておりますが、この点につきましては、田中委員承知かと思いますが、現在裁判所で争われておりまして、まだ裁判係属中でございます。
  44. 田中武夫

    田中(武)委員 だからこそ聞こうとしたのです。いまあなたがおっしゃいました徴税義務者、この人の義務は憲法上の納税の義務とひとしいですか。そういう規定はどこから出てきますか
  45. 泉美之松

    泉政府委員 いま申し上げました源泉徴収義務者の源泉徴収の義務が、憲法の規定する納税義務に該当するかどうかということについて争いがあること、申し上げたとおりでございます。ただ税務官庁といたしましては、憲法に規定する納税義務というのは、広くそうした源泉徴収の義務も含んでおるものだというふうに解しておるのでございます。この点については重ねて申し上げますが、いろいろ争いがございます。
  46. 田中武夫

    田中(武)委員 いろいろ争いがございます。そこで最終的な方法解釈については最高裁がきめる、こう言いたいのだろうと思います。  それでは源泉徴収制度というものは何のためにあるのですか、及びその歴史を知らしてください。
  47. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収制度につきましては、もう一つ田中委員承知だと思いますが、月ケ瀬事件というものがございまして、このほうはすでに最高裁の判決があったわけでございます。
  48. 田中武夫

    田中(武)委員 あれは刑事事件ですよ。
  49. 泉美之松

    泉政府委員 もちろん刑事事件でございますが、それに関連して、源泉徴収の制度が問題になりまして、これについて最高裁の判決があったわけでございますが、その判決にありますとおり、源泉徴収の制度は結局国にとっても、また本来納税の義務を負担する納税者にとっても、便宜な制度として、これは社会公共のために認められるものであるということになっておるわけでございます。結局納税の義務を実現していく過程におきまして、国も、また実際の納税の負担をすべき給与の支払いを受ける者も、また給与の支払いをする、その給与の支払いを受ける者と特殊関係にある源泉徴収義務者、この三者にとって、きわめて便宜な制度であるということでございます。この源泉徴収制度の歴史ということでございますが、わが国におきましては、給与所得に対しまする源泉徴収制度が設けられたのは昭和十五年でございます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、その前がある。
  51. 泉美之松

    泉政府委員 その以前におきましては、利子所得につきましては、源泉徴収制度がとられておりますが、給与所得につきまして源泉徴収制度がとられたのは昭和十五年でございます。
  52. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど最高裁の判例云々と言われましたが、これは訴訟上の理由であって、上告却下の事由であって、形式的な判断しか下していないのですよ。実質的内容には触れていないのです。それはそれとしてあとで触れます。法務委員会ではないですから、判例をひっくり返してまではやりませんが、もし御希望なら、ひっくり返してやります。  それからもう一つあなた言われましたが、源泉徴収の歴史は、教えてあげましょうか、日本においては明治三十二年、公社債の利子源泉徴収が行なわれましたね。次が日露戦争のときに、戦費を調達するために非常特別税というのができまして、それで通行税において行なわれましたね。それから給与所得は、いわゆるシナ事変が大東亜戦争へと発展するという抜きさしならぬ昭和十五年行なわれました。これを経過的に見ました場合は、起こりはいわゆる戦争とか何とかいったような場合であって、そして三者のために便利であるとあなたは言った。その源泉徴収制度は何よりも合理主義にのっとっておる、能率主義にのっとっておる。しかしだれのためにといえば、徴税者の側に立って便利である、合理的であるということにとどまるわけです。私が言いたいのは、そもそもの起こりは、日露戦争なりシナ事変なり、そういう国家非常の際といいますか、戦時体制の中に行なわれたその制度が、あなた方にとって、徴税官にとって便利であるがために今日まで続けておるということについては、より深い法律的根拠がなくてはいけないと思うのです。その法律的根拠をぴたっと、これでやっておりますと示してください。
  53. 泉美之松

    泉政府委員 先ほどの田中委員お話の中の通行税の問題は、これは特別徴収の問題でございまして、源泉徴収とは違うわけです。  それから、こういう源泉徴収の制度が、そういった戦争といったようなことを契機にしてとられたというお話でございますが、これはもう田中委員承知のとおり、古今東西の税というものは、結局その起こりというのは、戦争とか国家非常時の場合にその財源調達のために起こされるのが普通でございまして、そういうことなくして起こされる税というのは普通はないのでございます。したがいまして、そういうためにとられたからといって、すぐにそれが悪い制度であるというわけには私まいらないと思うのでございまして、もちろんそういった戦争とかいったような事態のためにとられた制度でございますけれども、結局その制度が世界各国にとられておるということからもおわかりになりますように、それは結局徴税者にとっても、また納税する側にとりましても、またその納税する人に給与などを支払う人にとりましても、それぞれ便宜な制度であるわけでありまして、したがって、もちろん国はこれによって徴税費があまりかからないといった非常に便利な制度であることはおっしゃるとおりでございますが、それだからといって納税の負担をする人にとっても便宜でないというわけではないわけであります。それは結局、そういう制度がそれぞれの国にとられておるところからわかっていただけるように、制度それ自体が非常に有用であるということに根拠があるものと考えておるのでございます。
  54. 田中武夫

    田中(武)委員 いろいろと見解は違うと思いますが、私はこれは、便利である、能率的、合理的であるというのは徴税する側からのことであって、納める者は、はっきり申しまして、いま所得税の大きな部分は給与その他の源泉徴収ですよ。これは給与から天引きせられるので税金に対して無感覚になる。したがって私は、戦時中に行なわれたこの制度を今日なお継続するには、もっと慎重な態度と、そしてもっと有効なといいますか法的根拠がなくてはいけないと思います。そこで、戦時中に給与所得といいますか、それによって昭和十五年やられましたね。そのときには徴税義務者に補償しておりましたね。当時の所得税法施行規則の九十六条所得税者一人につき五十銭、九十七条で記載事項一件につき三銭、一信託ごとに十五銭というのがありましたね。今日では一文も補償がありませんね。しかしこのことに対して最高裁の判例が出ておる。だからということで私はのがれられないと思います。そこで憲法の二十九条三項ですか、「私有財産は、正當な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」「正當な補償の下に、」こういうことになっておるのです。源泉徴収者はこのために相当な人件費も要るだろう、あるいは用紙、事務用具も要るだろう、そういうものに全然の補償なくしてやられておる。最高裁はそのことについて上告を却下した。これはあくまで訴訟上の問題であります。戦時中においてすらいま申しましたように事務補償があるのです。にもかかわらず今日一文の補償もしていないというのはどういうわけか。たとえば給料を二十日なり十五日に支払うときに徴収をしておいて、翌月十日までに払えばいいのだから、その間に日歩をかせげるのだからいいのだ、それと相殺するという考え方ですか。しかも納税貯蓄組合の場合は、この源泉徴収者が行なうと同じことについて、納税貯蓄組合法第十条は補助を規定しておるじゃありませんか。この点はどう考えます。
  55. 泉美之松

    泉政府委員 昭和十五年、給与所得に対しまして源泉徴収制度がとられました当時におきましては、田中委員お話しのとおり、源泉徴収義務者に一種の手数料と申しますかそういったものを支払っておったことは事実でございます。これは源泉徴収制度を新しく初めて起こしましたので、源泉徴収義務者がそういった義務になれるのに――なれると申しますか、源泉徴収の義務を果たすのにいろいろ苦情があってはいけないといったような考慮も働いておったことかと思うのでございます。その後、各国の制度を見ましても、源泉徴収の義務というのは、国にとっても、納税義務者たる本人にとっても、また給与の支払いをするそういう会社その他の法人とか個人にとりましても、ともに便宜な制度である、公共の福祉の要請にこたえるものだからということからいたしまして、どの国も手数料をとっておらないのでございます。したがいまして、わが国におきましても、その後そういった制度は取りやめになったわけでございまして、これは結局いま申しました源泉徴収が三者の間にとって非常に便宜な制度であるということから端を発しておると思うのでございます。なるほど、お話のように、納税貯蓄組合の場合におきましては、納税貯蓄組合に対して補助金を交付することにいたしております。これはしかし納税貯蓄組合というのは、納税義務者が自分申告納税の税を納めていく上におきまして、貯金をしておけばその納税が楽にできるということからいたしまして、お互いにまあ地域組合なり、あるいは職域組合をつくっているわけでございますが、その組合と組合員との間におきましては源泉徴収義務者とその雇用者といったような特殊の関係はないわけでございまして、そこでその組合の発達、育成ということに資するために若干の補助金を出しておるのでございます。なおこの点につきましては田中委員の御承知のとおり、まあ刑事事件ではございますが、最高裁の判決がございます。しかし、これによりますと、結局私がいま申し上げましたような、源泉徴収制度が能率的で、合理的で、公共の福祉の要請にこたえるものだという解釈からいたしまして、そういうふうに手数料を払わなくても憲法二十九条の規定に違反するものではないという解釈が出ておるのでございます。
  56. 田中武夫

    田中(武)委員 この源泉徴収制度は、まああなたの言をもってすれば三者ともに便宜である、都合がいい。納税貯蓄制度、納税貯蓄組合は、これもお互いの便宜のためでないでしょうか。一方においては十条において、具体的にこれこれについては補助をする、もちろん予算の範囲内と書いてありますけれども、補助をする。やっていることはどない違うのです。しかも納税貯蓄をした場合は、いままでは五万、今度の改正で、これはまたそのときに論議をいたしますが、十万まで引き出したものには課税をしないとかいう特典もあるわけですね。そういたしますと、ここに源泉徴収所得者と申告制度の所得者との間に大きな開きができます。そこで税法上、いや控除額がどうだとかこうだとかいって、若干徴税にあたって源泉徴収については普通の申告徴税よりかある程度認めておるか知れませんが、大きなここに差別ができてくる、この差別のあることを認めますか。  さらに憲法二十九条三項の問題は、最高裁において判決が出たのは、これは刑事事件について上告棄却の理由として、法解釈としてただ単に形式的に訴訟上の技術として触れているにすぎないのです。そうじゃないのですか。判決理由を読んでみましょうか――たとえば、これは論旨ですね、第一及び第二というのはいま言っていることです、弁護人の。「単なる法令違反の主張であって適法な上告理由とならない。」解釈が上告理由とはならないというだけです。それによって鬼の首でもとったようにこの制度が憲法二十九条三項に適法であると言えますか。最高裁のものはただ上告理由とはならない、こういうことですよ。
  57. 泉美之松

    泉政府委員 納税貯蓄組合の場合におきましては、私が先ほど申し上げました国とそれから納税義務者と、それからその納税義務者を雇用しておる等、特殊の関係にある法人または個人と、この三者の関係から合理的で能率的だ、こういうことを申し上げたのでございますが、納税貯蓄組合の場合におきましては、国とその納税義務者との関係においては、それはお話のとおり便宜な制度でございます。しかしその組合自身は、そういった納税貯蓄をしようという人の集まった組合でございまして、これはその組合員と雇用その他の特殊関係があるわけではないわけでございまして、そこにやはり源泉徴収制度の場合とは違いがあると思うのでございます。ただ田中委員がおっしゃいますように、源泉徴収の制度はそういうふうに便利だからということで、実際所得税の負担をする納税者の方が自分所得に対する所得税が幾らであるということについての自覚を持たなくなってくるおそれがある、したがってそのために所得税の負担に対する観念と申しますか、そういったことがだんだんと薄らいでくるというようなことからいたしまして、いろいろ問題を生ずるということはお話のとおりだと思います。したがいまして私ども税制の企画立案に当たる者といたしましては、十分そういう点を考慮してまいらなければならないと思うのでございます。  なおお話の最高裁の判決理由、これは上告を棄却いたしたのでございまして、その棄却する場合に上告趣旨が、それぞれ最高裁への上告趣旨、理由として成り立たないということを申したのでございますが、やはり判決理由にこういうふうに書いてあるということは、そこに最高裁が憲法二十九条三項と源泉徴収制度につきまして具体的な判断をしたものだと私どもは解釈をいたしておるのでございます。
  58. 田中武夫

    田中(武)委員 ひとつその判例の中で、最高裁が憲法二十九条三項についてどういう解釈を示しておるか、一ぺん読んでください。解釈を下していないでしょう。ただ上告の理由とならないというだけでしょう。
  59. 泉美之松

    泉政府委員 この判決理由の論旨第一に対しまする後段のところに、こう書いてあるのでございます。「かように源泉徴収義務者の徴収義務は憲法の条項に由来し、公共の福祉によって要請されるものであるから、この制度は所論のように憲法二九条一項に反するものではなく、また、この制度のために、徴税義務者において、所論のような負担を負うものであるとしても、右負担は同条三項にいう公共のために私有財産を用いる場合には該当せず、同条項の補償を要するものでもない。」こういうふうにいっておるのでございます。
  60. 田中武夫

    田中(武)委員 判決文はいまお読みになったように、これは二十九条一項にかかってまずいって、三項については、源泉徴収ということが公共のために私有財産を用いる場合ではないといっているんですね。それじゃこれはだれのためにやっておるのですか。公共のためじゃなかったら私有のためですか、だれのためですか、個人のためですか。源泉徴収はだれのためにやっていますか、公共のためじゃないのですね。
  61. 泉美之松

    泉政府委員 もちろん、源泉徴収の制度は、前段にありますように、公共の福祉のためにやっておるものでございますが、ただそういう源泉徴収制度のために心要な負担は憲法二十九条三項にいう公共のために私有財産を用いるという程度のものではない、こういう解釈だと存じます。
  62. 田中武夫

    田中(武)委員 最高裁の判例をひっくり返していまあなたとここで違憲論議をやろうとは思っておりません。しかし、この所得税をかけるという立場から見まして、申告所得と源泉所得といいますか、源泉徴収との間に大きな開きがあるということは認めますね。たとえば、給与所得者にとりますれば、有無を言わさずに天引きされる、しかも、具体的に納税の義務が発生するのは、あなたが言ったように、その年度が終わって確定したときなんです。そうならば、個人からいうならば税金の前払いである。納税貯蓄組合員が将来の納税のために貯金をするのと同じことでしょう、違いますか。少なくとも税金の前払いであるということは認めますか。
  63. 泉美之松

    泉政府委員 おことばの意味でございますが、税金の前払いというのは、本来納めるべきでないのを納めるという意味ではなしに、申告納税の場合には、年三回に分けて納めることになっておるわけでございますが、それに対しまして、源泉徴収の場合におきましては、月々、あるいはまあ給与の支払いを受けるつど源泉徴収されるという意味におきましては、申告納税の人の場合に比べまして、早く納めるということになるという点に差があることはもうおっしゃるとおりでございます。したがいまして、給与所得者につきましては、給与所得控除というものを設けるということが行なわれておるわけでございます。
  64. 田中武夫

    田中(武)委員 給与所得者ということにしぼりますが、給与所得者等源泉徴収を受ける者には、いわゆる救済の道がない。申告所得者には異議の申し立ての道がある。しかも民法四百九十四条を適用いたしまして、その税額を供託することによって免責規定がありますね。したがって、申告納者はまず自分の自主的立場というものを尊重してもらって、さらにきりのないときには更正申請も出せる。さらに争うときには、まず供託することによって免責を受けて争いの道が開いておる。ところが、給与所得者に対してはそういったような道が全然封じられておるわけです。これも憲法に反して差別をしておるじゃないか、こう言うと、最高裁の判例がやはりそうではないというふうにうたっておる、とこうお答えになると思いますが、これをどう思いますか。あまりにも給与所得者残酷物語じゃないでしょうか。一方にはもうどんぴしゃり月給から天引きで異議の申し立ての余裕がないのですよ。ところが一方はいろいろと救済の道がある。さらに供託することによって免責が行なわれて争いの道がある。こういうことに対して、最高裁がただ単にこれはいわゆる差別したと思えないというたぐらいで、ああさようですかでのんべんだらりとおっていいのですか。この制度についてどう思いますか。
  65. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、給与所得者につきましてはその源泉徴収につきまして異議申し立ての道が開かれておりません。そこが申告納税の場合と違うといえば迷うわけでございますが、ただ、給与所得者の場合には一定の給与を払いますれば、それに対して所得税法規定によって当然税額が算出されてくるわけでございます。申告納税の場合におきましては、一体そういった所得があるのかないのかということがまず争いになるわけでございますが、給与所得者には、給与が支払われると、それだけの給与の収入があったという事実は否定できないわけでございます。したがって、その事実について争う必要は実は給与所得者にはないわけでございます。問題は、そういった給与所得者が受ける源泉徴収税額が不当であるかどうかということになると、これは田中委員承知のように、源泉徴収義務者が異議の申し立てをすることができるということになっているわけでございまして、したがって、お話のように申告納税の場合には異議の申し立てができる、あるいは供託をすることによって争いを続けることができるということになっておりますが、それと源泉徴収の場合とはやはりその争いの内容が違ってまいりますので、そこに若干の差が出てくると思うのでございます。しかしもちろん、それではこのままがいいかどうかということになってまいりますと、法律的に検討を要する点は確かにあろうかと思うのでございます。私どもといたしましても、税法整備の一環といたしまして、この源泉徴収の法律的な制度の問題として検討をいたすことにいたしているのでございます。
  66. 田中武夫

    田中(武)委員 いま出ているのを、事件の名前なんかあげずに最高裁の判例といっておきましょうか、具体的に言えば、この弁護士が一つ落としている。私なら違った点を出します。これは差別ではないかというから、そうでないときているのです。この弁護士はまだ一つ理由を出しておらない。私なら憲法でいう、いわゆる裁判官の裁判を受ける道をこれは封じていると言う。そうでしょう。やりようがないのです。供託をしておいて訴訟するということが他の納税者にはできます。ところが給与所得者にはできない。訴訟の道がないのです。争いの道がないのです。あなた首振っているが、あるなら言ってください。それは義務者が争うのでしょう。義務者の争いは、債権不存在の確認訴訟ということで出ていることは知っております。私が言っているのは所得者です。この点どうですか。
  67. 泉美之松

    泉政府委員 給与の支払いを受けます者は、その源泉徴収をする源泉徴収義務者を相手どりまして、民事訴訟を起こすことはできることになっております。税務官庁に対しまして異議の申し立てをすることはできませんけれども、源泉徴収義務者に対して訴訟を起こすことはできるようになっております。
  68. 田中武夫

    田中(武)委員 はっきりしましょう。給与所得者が源泉徴収義務者、すなわち給与支払い者に対して訴訟を起こせるのですね。この税金のことで起こせるのですね。その点はっきりしておいてください。それはどういう根拠でありますか。起こせるならおもしろいことになりますよ。この前総評がやるといってできなかったのは供託ということがなかったからできなかった。それぞれの使用者に対してやれるとするならばたいへんなことになりますよ。たいへんなことにしてみせますよ。
  69. 泉美之松

    泉政府委員 法律の根拠と申しますと、結局源泉徴収義務者が不当に源泉徴収をして不当利得を得た。したがって不当徴収の返還請求という形で起こすことになろうかと思います。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 不当徴収に対しては当然ですよ。私は、正当に徴税せられた上に立って、一方申告所得者では争う余裕がある、ところが給与所得者では争いの道が封ぜられている、これは憲法でいうきめられた裁判官の裁判を受ける道を封じたのではないですか、こう言っているのですよ。私ならもう一つこれを入れますよ。
  71. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように申告納税の場合におきましては、納税義務者がその所得があるかないかをまず問題にして争うわけでございます。所得があるということがきまりますと、これは税法規定によって税額は確定するわけでございます。ところが源泉徴収の場合には、先ほど申し上げましたように、給与の支払いという事実がございます。したがってその支払いという事実に伴って、給与の収入金額幾らに対して幾らという税額は、税法上きまっておるのでございまして、それを争う余地はないわけでございます。したがって結局源泉徴収を受けた給与の所御者が争うということは、源泉徴収義務者が不当に徴収したということ以外の事実はないわけでございまして、お話のようにその点におきましては、源泉徴収を受ける給与所得者は、申告納税制度の適用を受ける納税者と違っております。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 立場が違う、これは認められたのですが、もちろん所得があったのかなかったのか、幾らあったのか、あるいは必要経費がどうであったのかということについて争えるわけですね。しかも争う間において、税法上の滞納金というのですか、そういうものがかけられないように供託しておくという手があるのです。一方は全然その手がない、その道がふさがれておるでしょう。そのことは認めますね。そうしてその両者の間に大きな隔たりというか、その意味における差別があることは認めますね。さらに先ほどあなたおっしゃいましたが、立法上の問題として検討の要ありといったことを認めますね。はっきりしておいてください。
  73. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように両者の間に差異があるということは、先ほど来申し上げておるとおりでございます。源泉徴収制度の法律的な検討という場合は、先ほど申し上げましたもちろん不当に源泉徴収をされた場合に、現在の段階では税務官庁に対して異議申し立て等の手段がない。源泉徴収義務者だけしかそういう異議申し立て等の措置がとれない。源泉徴収を受ける給与所得者としては、源泉徴収義務者を相手どって民事訴訟を起こすほか手段がないという点に問題がありますので、そういった場合に、源泉徴収を受ける給与所得者に対しても、税務官庁に対して異議申し立てを認めるような手続を設けるべきではないかという問題がございます。それを法律的に検討したいというのでございます。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 徴収義務者が、徴収をしておいて納税しなかったときにはどうなります。
  75. 泉美之松

    泉政府委員 これにつきましては所得税法規定によりまして、税務官庁より強制徴収することになっております。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 それは単なる債権ですか。たとえば、徴収義務者がおれにはそんな義務がないということで争った場合、それは税務署から支払い命令を受けるところの債権が不存在だということになるのですか。どういうことです。債権不存在確認訴訟というのが出ておるでしょう。
  77. 泉美之松

    泉政府委員 訴訟の形といたしましては、お話のように、源泉徴収義務者が税務官庁を相手どって訴えるということになりますれば、それは債権不存在確認訴訟という形になると思います。
  78. 田中武夫

    田中(武)委員 債権不存在ということになれば、それは民法上の義務です。ね。税法上の義務ですか。
  79. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収義務者が徴収して納付する義務は、税法上の義務でございまして、もちろん税法上の債務の履行を強制徴収するわけでございます。私は税法上の義務と存じております。
  80. 田中武夫

    田中(武)委員 吉國さんも同じ意見ですね。
  81. 吉國一郎

    吉國政府委員 いま主税局長から申しましたとおり、税法上の義務でございます。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 税法上の義務であって、国に対する債務ですね。そうでしょう。  そこで、源泉徴収義務者には、先ほど来言っておるように、一つの補償もない。そうしておいて、所得税法の六十九条の二の一項ですか、これによると、三年以下の懲役というところまで過酷な刑を科するようになっておるのです。これどうですか。いままでの答弁の中から明らかになったのは、そもそも源泉徴収というようなものは、大体が戦争といったような財源を必要とするところから起こってきた。日本においても、昭和十五年シナ事変のときが起こりである。そのときには若干の事務費を出しておった。しかし戦後になって、どこの国でも出していない。したがってうちも出さないのだ。そうしておいて、三年以下の懲役まで科するというような過酷な扱いについてどう思います。  さらに同条の、詐偽または不正行為があった場合となっておりますが、詐偽ということはわからぬことないのですが、不正行為、これをちょっと解釈してください。
  83. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収義務者が罰則の適用を受けますのは、本来給与の支払い報酬その他の支払いをする場合におきまして、源泉徴収をするという義務が課せられておるのに、その義務を履行しないということに対しまして罰則の規定適用するわけでございますので、義務の履行さえしておれば、問題はないわけでございます。  そこで、義務の履行をしない態様というのは二通りあろうかと思います。  一つ源泉徴収、給与を支払って本来源泉徴収税額を源泉で差し引くべきなのに、それを差し引かないでおいて、したがってまた源泉徴収税額の納付もしないというのが一つ。(田中(武)委員「故意だな」と呼ぶ)これはお話のとおり故意でございます。  それからいま一つは、源泉徴収義務者としては、給与の支払いの際に源泉徴収税額を天引きしてはおるのだけれども、天引きしたままこれを使い込んで税務官庁に対して支払いをしない、いわば納付をしないということでございます。それからいま一つは、源泉徴収税額を間違えたという場合でございます。この罰則の適用は、なるほど三年というのはかなりきつい制度でございますが、これは結局そういった態様のうちでは前二者の場合に限られるわけでございまして、源泉徴収税額を間違えたという場合にまで、さような三年とかいったような刑を科するわけではもちろんないわけでございます。ただその罰則のほかにもう一つ附帯税といたしまして不納付の加算税あるいは延滞税の制度がございます。これも源泉徴収義務を履行していただくために、その義務違反に対してそういった附帯税が課されることになっているわけでございます。ただ源泉徴収の実際を見ますと、源泉徴収義務者に責任のない場合があるわけでございまして、そういったような事態の場合にまで附帯税を課するのはどうであろうかという法律的な問題がございます。この点につきましても、税法整備の問題といたしまして今後十分検討していきたい、かように思っておるのでございます。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 いま三つの場合を分けて言われました。第一の点は故意ですから、これはもう問題はないが、第二点の天引きをしておりながら納付しないで使い込んでしまっている場合に、所得税法の六十九条の二の一項が動くのか、横領罪はどうですか。横領罪と税法上の刑罰とどっちが先に動くのですか。それとも併科するのですか。
  85. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げました第一の事例の、徴収すべき源泉徴収所得税を徴収しなかった場合、これは所得税法の七十条の四号の規定に該当するわけでございまして、この場合におきましては一年以下の懲役または二十万円以下の罰金ということになっております。  それから先ほど申し上げました第二の場合の、徴収と申しますか、給与の支払いの際に天引きしておきながらそれを納付しなかった場合、これは所得税法の六十九条の三の規定で、これはお話のように三年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金に処しまたはこれを併科するということになっております。
  86. 田中武夫

    田中(武)委員 横領罪にはならぬのか。
  87. 泉美之松

    泉政府委員 横領罪かどうかという点につきましては、この併合罪の規定からいたしまして、私どもとしては横領罪にならなくて所得税法六十九条の三の規定に対する違反というふうに考えております。
  88. 田中武夫

    田中(武)委員 天引きをしておりながら着服をして納付しない場合――自分の権限によって他人のものを預っておってそれを使い込んだ場合にはどんぴしゃり横領罪です。ところが所得税法六十九条の三において別の規定があるということは、むしろそういう者に対して刑法よりか軽い刑罰をかける、こういう趣旨なんですか。
  89. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収の制度は税法上の制度でございますので、財政法規違反としてまず問うというのが本来の筋であろうと思うのでございます。したがいまして、私どもは所得税法六十九条の三の規定に対する違反事項として考えるべきであって、横領罪には該当しないと思うのでございます。お話のように、横領罪の刑よりもこの三年以下の懲役もしくは百万円以下の罰金というほうが――まあ、百万円の罰金のほうはたしか多いと思うのでございますが、三年以下の懲役のほうは横領罪より軽いのでございますが、これをなぜそういうふうに違えておるかという点につきましては、私それまで詳しくございませんので、法務省の刑事局のほうに問い合わせましてからお答えいたします。
  90. 田中武夫

    田中(武)委員 いまあなたおっしゃいましたが、間違いありませんね。まず所得税法の罰則が動く、そうして刑法の横領罪は免責になる、動かない、こういうことですね。そうして刑量のほうは法務省に聞かなければわからない、そういうことですね。確認しておきましょう。
  91. 泉美之松

    泉政府委員 所得税法六十九条の三の規定によって罰則を科した場合に横領罪のほうが免責になるかどうかは私詳しく存じません。これは法務省に問い合わせていただくほうがよろしいかと存じます。
  92. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは午後法務省を呼んでいただきましょう。
  93. 山中貞則

    山中委員長 午後一時四十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時三十八分休憩      ――――◇―――――    午後二時四分附議
  94. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き、会議を開きます。  租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しまして、有馬輝武君外十二名より修正案が提出されております。提出者の趣旨説明を求めます。有馬輝武君。     ―――――――――――――
  95. 有馬輝武

    有馬委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されております租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案の趣旨を御説明申し上げたいと存じます。  申し上げるまでもなく、租税特別措置につきましては、これまでもたびたび整理改廃が論議され、税制調査会におきましても、これが整理を主張されてきたところであります。昨年十月四日の税制調査会基礎問題小委員会中間報告におきましても、この問題が取り上げられ、租税特別措置は負担公平原則や租税の中立性を阻害し、総合累進税率構造を弱め、納税者のモラルに悪影響を及ぼすなど多くのデメリットがあるから縮減すべきであると述べているのであります。この租税特別措置はその成立の経過を見ましても、もともとシャウプ勧告以後の激励期の日本経済を強めるための臨時的性格を持ってスタートしたものであり、期限がくれば当然廃止されなければならないにもかかわらず、制度自体が固定化し、既得権化することによって拡大の一途をたどっているのであります。このことが総合累進税制を後退させ、税体系を混乱させ、格差をますます拡大させる結果となっている事実を重視すべきであります。このような観点から本修正案は、大企業者ないし資産所得者本位に設けられた偏向減税である租税特別措置は原則として廃止するとともに、昭和三十九年度における特別措置の新設は一切認めないこととするため、政府提出にかかる租税特別措置法の一部を改正する法律案の全部を修正しようとするものであります。  その内容といたしましては、第一に、昭和三十九年度における租税特別措置の新設は認めないこと。第二に、利子所得の分離保税及び税率の軽減、配当所得源泉徴収税率の軽減、価格変動準備金勘定への繰り入れ金額の必要経費または損金への算入、重要外国技術の使用料についての税率の軽減、航空機の燃料用揮発油の免税の五項目につきましてはこれを廃止すること。第三に、本年三月末日で適用期限の到来する特別措置のうち、輸出所得の特別控除、技術輸出所得の特別控除、輸出取引がある場合の特別償却、外航船舶の保存登記または抵当権取得の登記の税率の軽減、増資登録税の軽減、石油資源開発株式会社の石油または可燃性天然ガスを目的とする鉱業権の設定、航空機の乗客の通行税の軽減の七項目につきましては、その適用期限の延長は行なわず、これを整理すること。第四に、本年三月末日で適用期限の到来する特別措置のうち、交際費等の損金不算入につきましては、損金不算入割合百分の二十を百分の四十に引き上げた上、その適用期限を一年間延長することといたしております。第五に、本年三月末日で適用期限の到来する特別措置のうち、次のものにつきましてはその適用期限をなお一年間延長することといたしております。すなわち、開発研究機械等の特別償却、開墾地等の農業所得の免税、土地改良事業施行地の耕作所得の免税、農地の交換による所有権取得の登記の税率の軽減、開拓農地等の所有権取得の登記の税率の軽減の五項目であります。第六に、以上の改正に伴う所要の経過措置を講ずることといたしております。  これによって生ずる歳入増につきましては、平年度ベースで九百五十億円、初年度五百億円の増収が見込まれております。  以上、簡単ではございますが、本修正案の趣旨説明を申し上げました。何とぞ御審議の上すみやかに御賛同賜わらんことをお願い申し上げます。
  96. 山中貞則

    山中委員長 これにて修正案の趣旨説明を終わりました。      ――――◇―――――
  97. 山中貞則

    山中委員長 この際、先日行ないました社会労働委員会との合同審査会の席上、政府当局の答弁に明確を期し得なかった聖路加病院の収益に対する課税につき、大蔵政務次官より発言を求められておりますので、これを許します。大蔵政務次官纐纈彌三君。
  98. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 先般、大蔵・社労連合審査会の席上、七税局長から、聖路加病院に対しては医療保健業について収益事業を営んでおるものとして課税しておるが、欠損申告をしておる旨の発言をいたしました、しかしその後調査の結果、この点について間違いがあったことが判明いたしましたので、私からこの点について訂正をいたします。すなわち、聖路加病院は法人税申告書を提出しておりますが、これは同病院における売店の収益事業についての申告でありまして、しかも最近三年間欠損の申告となっております。聖路加病院の医療保健業については収益事業に該当しないものとして課税いたしておりません。なお、この点につきましては当委員会における審議の過程にかんがみ、今後十分調査をして善処したいと思います。
  99. 山中貞則

    山中委員長 ただいま大蔵政務次官より発言のありました内容につきましては、合同審査会の席上における案件でございますので、当委員会委員長たる私より、社会労働委員会委員長に対しまして伝達をいたしたいと存じます。その手続等は御一任のほどをお願いいたします。      ――――◇―――――
  100. 山中貞則

    山中委員長 午前に引き続き質疑を行ないます。泉主税局長
  101. 泉美之松

    泉政府委員 午前中の田中委員の御質問に対しまして、法務省刑事局の担当者と打ち合わせいたしましたところ、源泉徴収義務者が源泉徴収した所得税を他に流用して納付しなかったという事例の場合におきましては、所得税法六十九条の三の規定適用があるのであって、この場合には自己の占有する他人の財物を横領したものに該当しないという解釈だそうでございます。
  102. 田中武夫

    田中(武)委員 源泉徴収者がいわゆる給与等を支払いのときにおいて徴収した金は他人のものじゃないんですか、違うものですか。
  103. 泉美之松

    泉政府委員 この点につきましては、金に色がついているわけではございませんので、すべて関係を債権債務の関係として処理いたしておりますので、そういった源泉徴収した金を他に流用したという場合におきましても、刑法二百五十二条の「自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタ」というのには該当しないという解釈と承りました。
  104. 田中武夫

    田中(武)委員 その答弁であなたの午前の答弁とで食い違いませんか。いいですか。こういうことはあまりやりたくないのですが、こうなるとやらざるを得ないのです。源泉徴収者は給与を支払うときにそれを徴収する義務がある。そうでしょう。そして、それは私か前に午前中に質問したときには何によって納税義務が発生するのだと言ったときに、その徴収者が徴収したときにという答弁じゃなかったですか。そうすると徴収したのは自己のためじゃないでしょう。自己のために徴収したのと違うでしょう。他人のためですよ。そうじゃないですか。そうなってくると、あなたのいまの答弁は食い違ってくるんですよ。午前中の源泉徴収義務者の義務は何かと聞いたときには、あなたは自己のために徴税するとは答えなかったですね。いまの解釈から言うと、自己のために徴収したということになるんですよ。他人のものではないということになる。それでは源泉徴収者が給与等を支給する際に天引きをする源泉徴収の税というか、これは一体だれのものになるのです。
  105. 泉美之松

    泉政府委員 先ほども申しましたように、源泉徴収したもの、これは政府との間におきまして、租税債務として納税すべき義務のあるものでございますが、金に色がつけてあるわけではございませんので、そういう意味で「自己ノ占有スル他人ノ物ヲ横領シタ」というのに該当しないというのが法務省の解釈と聞いております。
  106. 田中武夫

    田中(武)委員 なるほどその源泉徴収者は、徴収するのは徴税官にかわって徴収するのだ、自己のためではない。しかし金に色がないからといって、それを流用したからといって他人のものを流用したとはいえない、こういうことですか。
  107. 泉美之松

    泉政府委員 法律のデリケートの点につきましては、法務省の方でないと正確にお答えできないかと思いますが、私の法務省との連絡によって理解したところではお話のとおりでございます。
  108. 田中武夫

    田中(武)委員 そうしますと、源泉徴収者の納税の義務はいつ発生するのです。
  109. 泉美之松

    泉政府委員 これは所得税法規定されておりますように、翌月の十日までに納付されなければならないということになっております。
  110. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると給料を支払ったとき天引きをする。それから十日までは納める義務は発生しないのですね。そうなってくるとまた午前の答弁と違ってきますよ。給料支払いのときに徴収する義務があるのでしょう。そうでしょう。十日には必ず納付しなくてはいけない。その間はどんぶり勘定でいい、こういうことですね。
  111. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように源泉徴収義務者は給料の支払いの際に源泉徴収すべき所得税額を天引きするわけでございますが、その具体的に納付しなければならないのは翌月の十日まででございまして、その間もちろん早く納めてもいいわけでございますけれども、会社等といたしましてもいろいろ資金繰りの問題がございますから、その間いろいろ資金繰りの関係で使っても、それはいわば先生のおっしゃるような意味でどんぶり勘定として使っておってもそれは差しつかえない。ただ翌月の十日には納付しなければならないということになるわけでございます。
  112. 田中武夫

    田中(武)委員 その給与支払いの際に、徴収義務者は徴収する義務がある。そうですね。そうして翌月十日までに納付しなければならない。そうすると徴収義務と納付義務とは別個の存在ですね。
  113. 泉美之松

    泉政府委員 徴収して納付しなければならないということになっておりますが、徴収行為がもちろん前提でございますけれども、徴収するという行為と、それから納付するという行為との間には、お話のように時間的な余裕がございます。
  114. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、時間的な余裕があるが、別個のものですね。徴収の義務と納付の義務とは別個のものなんですね。
  115. 泉美之松

    泉政府委員 私どもは別個とは考えませんで、徴収して納付する義務、一個の義務と考えております。
  116. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、一個の義務だということになると、どういうことになりますかね。徴収即納付、かりに徴収しなくても納付しなければいけないのじゃないですか。
  117. 泉美之松

    泉政府委員 法律上の義務といたしましては、徴収して納付する義務と思いますが、事実行為といたしましては、徴収する行為と、それから納付する行為という事実行為が二つございます。したがいまして、その事実行為を怠る形態に応じまして、刑罰としましては徴収すべきものを徴収しなくて納付しなかった場合も、それから徴収したけれども納付しなかった場合、この二つの場合に刑罰の適用があるわけでございます。
  118. 田中武夫

    田中(武)委員 徴収しなかった場合……。
  119. 泉美之松

    泉政府委員 徴収しなくて納付しなかった場合と、それから徴収して納付しなかった場合、それから全然徴収しなかったけれども納付だけはしたという場合におきましては、これは給与の支払いを受ける者と、その給与の支払いをする者との問の関係になってまいるわけでございまして、納税義務としては、徴収はしなかったけれども納付をしたということによりまして、税務当局との間の関係はそれによって実現いたしておるわけであります。
  120. 田中武夫

    田中(武)委員 源泉徴収の場合、税金をかけられるのは、給与等をもらった者でしょう。それが所得税を納める義務があるのでしょう。それをかわって――政府にかわってというか、徴税官にかわって給与等を支払う者が徴収をする義務があるのでしょう。そうでしょう。そうして翌月十日までに納付する義務がある。したがって税金を納める義務は、徴税義務者にあるのか、所得税を納める者すなわち勤労所得等を所得した者にあるのか。
  121. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収すべき所得税は、源泉徴収義務者に納付の義務があるわけでございます。もちろん実際的にその税金を負担する者は所得者すなわち給与の支払いを受ける者が負担するわけです。したがって給与の支払いの際に天引きされるというわけでございます。
  122. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、納税の義務はどっちにあるのです。
  123. 泉美之松

    泉政府委員 納税の義務という意味でございますが、徴収して納付する義務は源泉徴収義務者にあるわけでございます。それから所得税の負担をすべきという意味での義務なら、それは給与の支払いを受ける給与の所得者にあるわけでございます。
  124. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、納税義務者というのは所得者でしょう。所得税所得に対して行なうのでしょう。そうでしょう。そうすると、源泉徴収者はかわって権利を行使するだけじゃないのですか。そこで、もし徴収すべきものを徴収しなかった場合は、そのかわって行なうところの義務を――その義務が憲法上どうかということは別問題として、やらなかったということに対しての罰則その他があるのじゃないですか。そうじゃないのですか。そう解釈しないと、刑事局長ですか、先ほどの法務省の解釈とは狂ってくるでしょう。そこの点をはっきりしてください。今後問題になったときになにしなければいけないから、はっきりしておいてください。
  125. 泉美之松

    泉政府委員 御質問の趣旨がよくわかりかねるのでございますけれども、お話のように、源泉徴収義務者は給与の支払いの際に、源泉徴収すべき所得税を徴収して納付する義務がございます。この徴収して納付する義務は、国にかわって徴収すると考えるべきか、あるいは実際所得を得るところの給与の所得者すなわち自己の雇用者等にかわってその事務を行なうものかという点については、いろいろ見解があろうかと思いますが、先ほど源泉徴収制度の意義について申し上げましたように、この制度は国と、それから給与の支払いを受ける給与所得者と、それからそれと特殊な関係にあります給与の支払い者、この三者のために能率的であり、合理的であり、公共の福祉に適しているという見解からいたしますと、一がいに国にかわって徴収するものであるとだけきめ切れないと思いますけれども、法律的に申し上げますれば、お話のように国にかわって微収するのだといっても差しつかえなかろうかと存じます。
  126. 田中武夫

    田中(武)委員 国にかわって徴収をする、すなわち徴収義務者が現実に給料を渡すときに源泉徴収した金は、これはあくまでも国のものといいますか、本人のものではない。そうですね。しかしそれをいわゆる横領した場合、金に色はついていないから、自己のものを使ったのか他人のものを使ったのかはっきりしない。そこで刑法の横領罪を適用するのにはなおいろいろと問題がある。そこでまず、そういうことを論議する以前に、この所得税法による刑罰を科するというのが本条の趣旨でございますとは答弁できませんか。
  127. 泉美之松

    泉政府委員 給与の支払いの際に源泉徴収した金は政府のものだとは言い切れないと思うのでございます。それは翌月の十日に支払うことによって初めて国庫に歳入となって入ってくるのでございまして、それまでの段階におきましては、企業がいろいろの資金繰りの都合上使っておる場合におきましても、それは企業のその他の金と一緒になっておるわけでございまして、その意味では自己の占有する他人の財物といえないということだと思うのでございます。
  128. 田中武夫

    田中(武)委員 私はこういうことを打ち切るつもりで自己のほうで解答を出したのですよ。あなたがそうおっしゃるなら、所得税法三十八条によっていわゆる給与等を渡す場合に天引きするところの行為は一体だれのための行為なんです。自分のための行為なのか、国のための行為なのか、それとも納税者のための行為なのか。あなたの言をもってするならば自分のためにする行為だということになるのですよ。そうすると、所得税法三十八条はいわゆる徴収義務者に対する義務を定めた条文でございますか。そういう答弁になっておるのです。
  129. 泉美之松

    泉政府委員 源泉徴収義務者が徴収するのは、先ほど申し上げましたように、法律的には政府にかわって徴収するという形態でございますが、それは結局納税者であるところの給与所得者のためでもあります。したがって政府のために徴収したことにはもちろんなるわけでございますけれども、しかしその徴収した金がすぐに政府の物だというわけにはいかないという解釈だと思うのでございます。
  130. 田中武夫

    田中(武)委員 もうこういうことはやめたいと思うのですが、それじゃ給与をもらう者のためにも徴収するのですね。それじゃ、自分のためにとってほしくないと言ったらどうなりますか。あなたは三者のために、こう言ったですね。この三十八条によって源泉徴収することは、国のためでもあれば自分のためでもあり、また納税者すなわち勤労所得等の所得者のためである、こういうように言われた。そこで私は、それじゃかりに私が給与所得者として、私のためであったら、私はそれをしてほしくありません、こう言えるかどうかということです。言えないでしょう。
  131. 泉美之松

    泉政府委員 もちろん給与の支払いを受ける者は源泉徴収を受忍しなければならない義務がございます。したがって、自分源泉徴収されるのはいやだということは、午前中にも申し上げましたように、言えないということになっております。
  132. 田中武夫

    田中(武)委員 だから結局は国のためですよ。そうじゃないですか。徴税官にかわってその手続をやるのでしょう。そうじゃないですか。三者のためだなんて言うからややこしくなるのですよ。そうじゃないですか。
  133. 泉美之松

    泉政府委員 繰り返して申し上げておりますように、源泉徴収ということは、国のために国にかわって給与の支払いを受ける者から源泉徴収をする、これが一審大きな意義を持っておるわけでございます。しかしそれだからといって、その源泉徴収ということは給与の支払いを受ける給与所得者のためにもなっており、またそれが給与の支払いをする、そういう給与の支払いを受ける者を雇用している者のためにもなっておるということを申し上げたのでございまして、法律的な意義といたしましては、もちろん政府にかわって源泉徴収をする、これが第一でございます。
  134. 田中武夫

    田中(武)委員 これが第一とか第二とかいうからややこしくなるのですよ。あなたの言うておるのは実情的にというか、実際的にそうなるかもしれぬが、法律的にはあくまでも政府にかわりその手続をとるんじゃないですか。違いますか。
  135. 泉美之松

    泉政府委員 それはもう繰り返して申し上げましたように、法律的には政府にかわって源泉徴収するところに一番大きな意義があるわけでございます。
  136. 田中武夫

    田中(武)委員 一番大きな意義とか、第三の意義とか言うから問題になるのですよ。あくまでもその行為は政府にかわってやるのでしょう。違うのですか。あくまで三者のためにやるのですか。そういう裏づけが法律のどこから出てくるのです。政府が当然やるべき行為、徴税官がやるべき行為を法律的に義務づけられている源泉徴収者が給与支払いのときにかわって行なうのでしょう。それが三十八条による源泉徴収者の義務じゃないのですか。
  137. 泉美之松

    泉政府委員 繰り返して申し上げますように、法律的にはおっしゃるとおり政府にかわって徴収するというところに意義があるわけでございます。ただ、その源泉徴収制度ということがそのほかに役立っていないかというと、そうではないということを申し上げているわけでございまして、法律的にはおっしゃるとおりでございます。
  138. 田中武夫

    田中(武)委員 そこで最初私が言いましたように、その源泉徴収はやはり国のために行なう、国のものなんですよ。しかし、それが具体的に納付の義務が生ずるのは翌月の十日だ。先ほどうしろで春日君が言っておりましたが、その徴収してから納付までの間に事故があったときにいろいろ問題があると思うのです。そこのところははっきりしておかなければいかぬと思う。翌月十日に納付の義務がある。だからこれはあくまでも具体的に金にしるしはないけれども、何万円とか何十万円とかいうのは、これは政府の金なんです。しかし、それを流用したからといって、この金にしるしがないから物とはいえない。そういうことで、刑法の横領罪を適用するには、横領罪の構成要件に対していろいろと論議もあり、むずかしい点があるんだ。そこでさしあたりこの問題については、そういうことによって価値罪の成立ができるかできないかというようなことを調べる以前に、税法によってこういう刑罰を科すんだ。これが所得税法の六十九条の二その他の目的でございます。そうじゃないですか。
  139. 泉美之松

    泉政府委員 横領罪が成立するかどうかということはしばらくおいてという御発言でございますが、この場合には先ほど先生もお話しのように、自己の占有する他人の物といえないから、横領罪の構成要件に該当しない、したがって所得税法六十九条の三の規定によって処罰する、こうございます。結果は先生のおっしゃるとおりでございますが、横領罪の構成要件に該当するかどうかという点について疑義があるんじゃなしに、構成要件には該当しないということが法務省の見解でございます。
  140. 田中武夫

    田中(武)委員 吉國君はっきりしてくれよ。
  141. 吉國一郎

    吉國政府委員 先ほどの御質問は、所得税法の六十九条の三と刑法二百五十二条以下の横領罪の規定があわせて科せられることがあるかどうかということにあると存じますが、ただいままで田中委員が仰せられましたように、横領の規定は御承知のように、自己の占有する他人の物をいわば領得するということが構成要件でございまして、源泉徴収義務者が毎月あるいは毎日源泉徴収税額を徴収いたしまして、それを翌月十日までに納付するという間において、その源泉徴収税額相当の金額をかりに費消したという場合でも、先ほどもお話ございましたように、金に色はついておりません。たとえば十万円使ってしまったという場合でも、十万円はまた自分のさいふの中から払えばよろしいわけでありますから、自己の占有する他人の物の領得ということは、そういう構成要件を満たすことがほとんど事実上あり得ない。したがって刑法二百五十二条の適用される場合はほとんどないのじゃないかというのが刑事局の見解らしいのでありますが、所得税法では六十九条の二と六十九条の三の規定を置きまして、そのような刑法二百五十二条の規定を待つまでもなく、源泉徴収をいたしましてそれを納付しないということを構成要件にして罰則を設けたということでございます。
  142. 田中武夫

    田中(武)委員 だから私の言っておるとおりなんですよ。もし主税局長の言うようにかりに金に色がつかぬからということなら、それじゃこれを払ってくださいと言って委託を受けた、あるいは証券取引の中でやっておりますが、受けたものを入れたときには絶対横領罪は成立しないことになりますよ。そうでしょう。金に色がつけられないからじゃないのですよ。それをいま言ったように、特別な趣旨によって立法ができておるのだ、こうでなくちゃいかぬと思うのです。わかりましたか。
  143. 泉美之松

    泉政府委員 これは午前中申し上げましたように、租税の脱税犯につきましてはまず租税犯として処罰するというたてまえをとるために、所得税法なり法人税法にそれぞれ罰則の規定があるわけでございまして、刑法との関係におきましてはそういう意味で特別法になっておるわけでございます。したがって、特別法のほうが先に適用になる。刑法のほうはそういう構成要件をはたして充足しているかどうかということによって刑法の適用があるかどうかはきまる事柄だと思うのであります。構成要件の適用がなければ刑法の適用はないということになるわけであります。
  144. 田中武夫

    田中(武)委員 もうやめますが、そういうばかなことを答弁するとまた次に言いたくなるのですよ。ともかく税法においては税を納付しないその事実の上に立って、詐欺とか横領とか使い込みとか、いろいろなその事実だけで罰則をかけよう、これが目的なんです。特別法だとかなんとかいう関係じゃないのですよ。したがって、それにプラス横領罪が成立する場合もある。刑の競合の場合は重きに従って処断する、こういうこともあり得るのですよ。一方でやるから一方が免責せられるのじゃない。そうでしょう、吉國さん。
  145. 吉國一郎

    吉國政府委員 一般法としての刑法と特別法としての特別刑法との関係でございますが、本件の場合は一般法と特別法の関係と申しますよりは、もっと別な並列的な関係であるというふうに考えております。特別規定でありましたならば、もちろん特別刑法は一般刑法を排除するわけでございますが、この場合はさような関係ではないというふうに考えております。
  146. 田中武夫

    田中(武)委員 この程度にしておきましょう。  次に、たとえば三十八条の本文規定とその他扶養控除がどうだとか、あるいは源泉徴収の場合の基礎控除がどうだとかいう規定がありますね。そうして三十八条で付表の三があって、そこに月額がずっと書いてある。この間違いをいま言うのじゃない。間違いをここでやってしまうとあさっての本会議がパーになりますから、そこは触れません。本文条項と付表(三)あるいは付表(五)、こういったものとの関係はどういうことなんですか。
  147. 泉美之松

    泉政府委員 これは本文のほうにおきましては、基礎控除は十二万円あるいは配偶者控除は十一万円、それからその他の扶養控除等の規定がございまして、さらに税率の規定があるわけでございますが、それに対して、別表三の毎月の源泉徴収額表または日額表の規定によって日額として払う場合に適用する源泉徴収税額表、これは本法の基礎控除、配偶者控除、扶養控除というものを前提として、給与の月額表で申し上げますと、月額がこれだけの場合にはその一年間そういった月額の所得があるものということを前提といたしまして、そこにその月に源泉徴収すべき税額というものをきめておるのでございまして、したがって本来基礎控除、配偶者控除、扶養控除及び税率からはじき出される税額になっておるわけでございますが、しかし源泉徴収の便宜ということを考えまして、その際理論的に計算いたした金額でございますと端数がいろいろ出てまいります。その端数をできるだけ調整いたしまして、十円未満の端数はできるだけ生じないようにするとかいったような考慮を払いまして、ここに出ておりますように、給与の金額から社会保険料の金額を差し引いた残りの金額が、この何方何千何百円から何万何千何百円という間に入る場合には、その額でその月の源泉徴収すべき税額を確定するということになっております。したがって、毎月あるいは毎日の源泉徴収税額というものは、正確に申し上げますと、私が申し上げました基礎控除、配偶者控除、扶養控除及び税率から算出される理論的な数値とは若干違っております。
  148. 田中武夫

    田中(武)委員 長々と御答弁どうもありがとうございますが、私の言っておるのは、具体的に納税額が決定せられるのは本文条項でしょう。附則はあくまでも目安、便宜のためにつくった付属物にすぎない、それでよろしいですか。
  149. 泉美之松

    泉政府委員 付属物とは言えないのでございまして、やはり毎月の源泉徴収で納付すべき税額はこの税額になるわけでございます。
  150. 田中武夫

    田中(武)委員 具体的な納税義務、何百何十円ということは本文条項によって決定するんですか、それともこの附則によって決定するんですか。
  151. 泉美之松

    泉政府委員 附則とおっしゃいますが、これは附則ではございませんで、本法の別表第三ということになっておるのでございまして、本法と一体をなしておるものでございます。したがって、毎月の源泉徴収税額はこの別表第三によって具体的にきまるということでございます。
  152. 田中武夫

    田中(武)委員 附則と言ったのは間違いです。別表ですね。この別表の三なり四なり五なり、これは本文条項と一体のものである、したがって具体的に納税の義務、これはこの別表に書いてある金額によって決定せられる、そういうことですね。
  153. 泉美之松

    泉政府委員 さようでございます。
  154. 田中武夫

    田中(武)委員 そうすると午前の議論を蒸し返すようなことになりますが、結局源泉徴収というか源泉所得は、やはり一般の人は三期に分かれるとかあるいは一年間をトータルして月に払うとか、こういうことになっておるのだが、給与所得者だけは、午前中から言っているように、何らの救済規定もなく、そしてこれによって義務が月々あるいは日々発生する、そうなんですね。
  155. 泉美之松

    泉政府委員 これは午前中も申し上げましたように、源泉徴収義務者が徴収して納付すべき税額が、お話しのように日々あるいは毎月支払うことによって確定していくわけでございます。しかしその徴収を受けました給与所得者がその年分について幾らの税額を納めるべきかということは、これは毎月の徴収税額表のトータルではなくして、やはり年末調整を行ないましてそれによって確定するわけでございます。また二以上の給与の支払い者から支払いを受けております場合には年末調整でも確定いたしませんので、それは翌年の三月十五日までに申告納税することによって確定するわけでございます。
  156. 田中武夫

    田中(武)委員 この別表は源泉徴収義務者のために給与を支払ったときに天引きする金額を示したのである。もちろんあなたの言をもってすれば、納税者も毎月幾らぐらい払えばいいかという目安は立つわけです。そういう意味において第三者のため、こういうことになるかもしれぬが、あくまでも趣旨は源泉徴収義務者の徴税に便利だというか、いわゆるものさしである、そういうことですね。
  157. 泉美之松

    泉政府委員 お話のとおりでございます。
  158. 田中武夫

    田中(武)委員 そうするとまたもとへ戻りますからやめますが、次官お聞きのとおり、いわゆる申告納税者源泉徴収者との間に大きな法律的な差別がある、このことは認められた、午前中も言われたと思います。したがって今後こういうやり方に対しましては、十分に利益が均衡せられるようにといいますか、義務が均衡になるように配慮を望みたいと思いますが、いかがですか。
  159. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 十分検討していきたいと思います。
  160. 田中武夫

    田中(武)委員 まだまだありますが、時間の関係もありますから次に租税特別措置法に移ります。  この租税特別措置法というのは一体どんな法律ですか。
  161. 泉美之松

    泉政府委員 これは先ほど有馬委員から提案の趣旨御説明もございましたように、所得税法法人税法その他租税法規が規定いたしております納税義務額に対しまして、租税特別措置法のほうにおきましてはその特例を設ける。その特例の設ける趣旨というのは経済政策、あるいは社会政策その他の政府の達成しようとする政策目的を実現するために、一般法規であります所得税法とか、法人税法規定されている納税の義務額というものを変更する特例を設けるわけでございます。
  162. 田中武夫

    田中(武)委員 したがって本来ならば所得税とか法人税等々基本的税法によって納付すべきが当然で、それを政策的あるいは社会保障その他の理由から特に減税の措置を認め、それを規定したのが租税特別措置法だということであるならば、本来が臨時的立法でなくてはいかぬのですが、その点についてはいかがですか。
  163. 泉美之松

    泉政府委員 租税特別措置法の中には先般も申し上げたのでございますが、所得税法法人税法に対しまして軽減をする規定が多いのでございますが、ただ一つ例外といたしまして交際費についての損金不算入の制度は、これは所得税法法人税法の上では損金として認めるべき性質のものを損金に認めないという点においていわば増収をはかるための特別措置ということでこれが唯一の例外であります。それ以外は大体軽減あるいは免除ということになっております。したがって、お話のようにそういう特定の政策目的を実現していくものであるから時限立法であるべきだという御趣旨はごもっともと思うのでございます。ただ、現在の租税特別措置法規定の中には、必ずしもそういう特定の政策目的のために所得税法になり、法人税法規定しておる租税負担の公平を害してまでやっておるというだけでなしに、個別的な担税力を見た場合に、そこまで所得税法課税する意図ではない、たとえば、居住用財産買いかえのような場合にまで課税すべきかどうかということは問題だというような規定もございますので、そういったものは本来租税特別措置ではなくて、個別的な担税力に即応した税制として所得税法規定すべき性格のものであろうと思うのでございます。そういった点がございますので、税法整備をいたしまして、いずれ本来所得税法なり法人税法規定すべきものと、そうでなくて、いま田中委員のおっしゃるような意味での特別措置とに分けて規定を設けるべきである。その意味では、現在所得税法なりあるいは法人税法の中に規定されておるたとえば重要物産の免税制度というようなものは、本来の特別措置でございますので、所得税法なり法人税法なりの中にあるのはおかしいという理屈が成り立つわけでございます。そういう意味での税法整備をいずれ行なわなければならないと思っておるのでございます。そういう点からいたしまして、租税特別措置法の中には、いまお話のように、個々の条文の中で時限立法的に何年何月から何月までの間にこうこうこういう控除をした場合にはというので適用期限を定めておるものが多いわけでございます。法律自体を時限立法にすべきか、あるいは個々の条件をそういった形にしておくべきか、これはやはり立法政策の問題としていろいろ論議のあるところかと存じますが、私どもとしては、租税特別措置が臨時的な性格を持っておるという趣旨から個々の条項にそういうふうな適用期限を設けておるのでございます。
  164. 田中武夫

    田中(武)委員 徴税の側から見てそれがマイナスであろうがプラスであろうが、いま一つだけプラスの規定があるといわれたが、あくまでも原則に対する特例である。しかも、これは政策その他によって必要だからやるのだ、こう言うけれども、原則に対する特例であるならばできるだけ短期間がいい。法律の性質それ自体が臨時法である。また、いま答弁になったようなことは税制調査会でも答申が出ておるようです。したがって、この答弁が出るともうあとはないようなものですが、この法律の内容をちょっと見てみますと、普通の法律だったら第一条に目的と書いてあります。この法律は目的と書かないで趣旨と書いてある。目的と趣旨はどう違うのかということは聞かない。結局控え目に趣旨と書いたのではないかと思いますが、とにもかくにもその中に「当分の間と、」あります。この「当分の間、」というのは一体どの程度のことを考えておるのか、そうして、内容に入ってみますと、大部分のものが時限法になっております。しかし、そうでないのがある。恒久法的な規定もありますね。たとえば条文を見ますと、この間医療法人のときに問題になったあの規定等々まだ恒久法的な存在がありますね。そういうことについて、整理をしようと思っているという答弁だから、もうこれ以上聞かなくてもいいということになると思うのですが、もう少し、いつまでにどういうものをどちらに入れて、どういうものを残す、これが本来の租税特別措置法の姿である、ということについて解明していただきたい。
  165. 泉美之松

    泉政府委員 その点につきましては、実は目下検討いたしている段階でございますが、その性格からいたしまして、本来租税特別措置であるというものは、利子所得に対する軽減の特例、それから配当所得に対する軽減の特例、ただその次にあります配当軽課の問題は、これは租税特別措置法に現在のところ規定されておりますけれども、本来法人税の税率を三八%から二八%にし、そうして配当控除割合を一五%に引き下げ、あるいは法人配当の益金不算入割合を七五%にするといったようなのは特別措置ではございません。ただ今回提案いたしておりますように、法人支払い配当に対する法人税率を二六%に二%軽減するけれども、配当控除率を変えないという点においては、この二%の分は特例だろうと思うのでございます。それからそのうちに合理化機械等の特別償却、これはもちろん特例でございますので、租税特別措置法として残すわけでございます。それから価格変動準備金がございます。これも特例でございます。それから今度新しく設けます海外市場開拓準備金ももちろん特例でございます。それから新開発地域投資損失準備金、これも特例でございます。それから技術輸出所得控除の制度、これももちろん特例になるわけでございます。それから開墾地の農業所得の免税、あるいは土地改良事業施行地の後作所得の免税、これも特例になるわけでございます。それから社会保険診療報酬の所得計算の特例、これももちろん特例でございます。それから山林所得の概算経費の控除、これは必ずしも特例と言い切れないが、山林所得は、御承知のように、木を植えまして長い間育てて、それを伐採したときに一時に発生する所得でありますので、その間記帳するということもなかなか困難でございますので、そこで概算経費で控除するということにいたしているのでございます。これはしたがって本来ならば所得税法に移すべき性格のものであろうと思います。それから収用等の場合の譲渡所得の保税の特例、これも本来からいいますと、そういう収用といったような場合において、自己の意思によらずして譲渡所得が実現する、そういう点からいいますと、そういった場合の担税力としては、この程度の担税力しかないものと見るのが至当であるという考え方も成り立つわけでございます。そういう意味では、現在特例に規定しておりますけれども、本来これは所得税法の本法のほうに移すべき性格のものと思われるわけであります。居住用財産買いかえの場合も同様でございます。  以上申し上げましたのが、大体所得税についての特例でございます。  それから法人税についても同様の点がございますので、そういった意味で、本法に規定すべきものと租税特別措置法規定すべきもの、これは十分吟味して、その性格を明らかにした上で区別すべきものと考えておるわけでございます。せっかく現在努力中でございます。
  166. 田中武夫

    田中(武)委員 一々特例についてあげられましたが、私の申し上げておるのは、租税特別措置法というのは、あくまでも基本法に対して特別な措置である。したがって臨時的なものでなくてはならない、時限的なものでなくてはならない。ところが、この中に恒久的なものがある。それは特例であるにしても恒久的なものだ。たとえばいまあなたも申しましたが、二十六条の社会保険診療報酬に対する特例、それから四十二条の配当利子の特例、これは特例ではあろうが恒久的でしょう、規定のたてまえから言えば……。そういうものはできるだけ恒久的に必要なものは本法に入れるべきだ。しかしたとえば配当利子とか社会保険診療報酬に対する特例とかいうこと、これもあくまで時限的な、臨時的な特例であるとするならば、これは時限を付すべきでなかろうか、そういうように思うわけなんです。今後の特別措置法のあり方といいますか、そのことについて申し上げているわけなんです。私の言っていることわかりますか。
  167. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、現在恒久的な規定となっておるたとえば社会保険診療報酬の特例でございますが、これは明らかに特例でございます。したがいまして時限立法といいますか、期限をつけるのが筋だと思います。ただ先生御承知のように、この規定は国会修正によって実現いたしたものでございます。私どもがそれに手を入れることにつきましては制約がございますので、現在そういうことになっているわけでございます。配当利子につきましては、これはもう時限立法になっておるわけでございまして、昭和四十年三月三十一日までに支払われる利子について軽減税率の規定になっておるわけでございます。
  168. 田中武夫

    田中(武)委員 四十二条はどうですか。
  169. 泉美之松

    泉政府委員 四十二条は、配当軽課の場合の法人税の税率の特例でございますが、これは先ほども申し上げましたように、配当軽課ということそれ自体は本来の特別措置ではございませんで、配当軽課するけれども配当控除率は下げる、あるいは法人配当の益金不算入の割合は下げるということにしておりますので、これは見合っておりますから特別の措置でございません。ただなぜ租税特別措置法規定をしておるかと申しますと、この制度が昭和三十六年に設けられましたときにいろいろ論議があったわけでございます。というのは、先生御承知と思いますけれども、わが国の企業では借り入れ金で資本を調達する場合と増資によって資本を調達する場合とで企業の資本コストが違う。そういう点からいたしまして、いろいろ論議のあったあげくこういう制度を設けることにしたわけでございますが、この制度についていまいろいろ意見もあるわけなので、いきなり本法に規定するのはいかがであろうか、しばらく租税特別措置法規定しておいてその成果があるかどうか、あるいはもう少し配当の一定割合は損金と認めて法人税を計算しろというような意見もあるわけでありますので、そういった措置がいいのか、いずれにしてもよりよい恒久的な措置をとるまでしばらく租税特別措置法規定するということから、こういう四十二条の規定が設けられておるのでございまして、本来はこれはいずれ所得税なりあるいは法人税のほうに恒久的な姿で取り込むべき性格のものと思います。ただそういうことにするについては世間の論議がいろいろございまして、恒久法に取り入れるにはまだ熟しておらないというのが現状でございます。
  170. 田中武夫

    田中(武)委員 要は政策的あるいは圧力団体の圧力、いろいろ理由はありましょう。それぞれの経過はありましょう。だが、あくまでも特別措置法は特別措置法として臨時的なこういうものにしぼるべきであって、そしてそれにはちゃんと時限法のかっこうをとるべきである、これが筋だと思うのです。そして現在の所得税なり法人税に対しては特例をなすにしても、これを相当期間据え置かねばならぬという理由があるならば、これは特例とは言いがたい、むしろ本法に入れるべきである、そういうことによって整理をしようと言っておられるし、また税調からもそういう議が出ております。そこで政務次官、私はあくまでも租税特別措置法はこれは特別立法であるから、先ほど刑法の問題について特別法と言われましたが、まさにこれは特別法であるから、あくまでもしぼって、しかもその趣旨にのっとった時限法のかっこうをとるべきである、そのいきさつ等についてはいろいろあろう、だがしかし、そうすべき時期ではなかろうか、こう思いますが、いかがですか。
  171. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 租税特別措置法は、田中委員が申されますように、あくまでも私は臨時的な措置だと思うわけでございます。これにつきましては税制調査会のほうでも相当問題になっておりますし、また地方税の問題につきましても相当問題になってきております。だんだんそれらの問題を整理しつつ、恒久的のものにつきましては、いわゆる時限立法として期限をつけるとかというような方法もとっておるわけでございまして、さような意味合いからいきまして私は特別措置法には政策的のもの、いろいろございますが、こういうような問題につきましては、私個人の考えからいきますとやはり特別措置法で行なわれておる減税のようなものにつきましては、むしろ財政の関係もありましょうが、助成金で扱うべきものは筋が通っているのじゃないかという感じがするわけでございますが、さような意味合いからいたしまして、いま局長からもお話を申し上げましたが、これらにつきましては今後整理をしてだんだんと特別措置を少なくする、時限立法におきましてはどうしても必要がある場合にはあるいは多少の延長をするということもあるかもしれませんが、一応は大体論としては田中委員の御意見に賛成をいたします。
  172. 田中武夫

    田中(武)委員 大体においてということだからこっちも大体において了承しましょう。しかしともかく租税特別措置というものは私はできるだけシビアにやるべきじゃないか、こういう考え方なんです。そしてそれをなお引き続き行なう必要があるならば基本法の改正を行なうべきである、そういうことを意見として申し上げて次にいきたいと思います。  改正点一々についてお尋ねもしたいのですが、まだあとにだいぶ質問者もあるようですから……(「やれ、やれ」と呼ぶ者あり)じゃ一条一条についてやります。  六十一条の改正ですが、これは協同組合等の留保所得についての特例、ですね。この特例を設けた理由をまずお伺いいたします。
  173. 泉美之松

    泉政府委員 租税特別措置法第六十一条の規定を新しく設けようというのは、農業協同組合、漁業協同組合、あるいは商業組合、事業協同組合、こういった組合が内部留保を充実する、それによってそれらの組合活動が活発に行なわれるようにしよう、そうすればそれがひいてその組合の組合員になっておるところの農業、漁業、商工業を営む者の利益になるということを考えまして、一定の金額を留保いたしました場合には、その留保した金額は出資の四分の一に達するまでは毎年の留保額のうち二分の一は法人税課税をしない、その法人税課税しないという趣旨から法文の上では――これは実態上からはおかしいわけでございますが、法文の上では所得の計算上、損金に算入するという規定になっておるわけでございます。
  174. 田中武夫

    田中(武)委員 そういう理由のもとに今回六十一条を設けて組合等に対して――組合はいろいろありますが、その理由でいったときに、なぜ同じような協同組合等の形態をとっている中で生活協同組合だけが除かれておるのか、その理由をお伺いいたしたいとともに、いままで法人税等において組合に対しての特例がたくさんありますね。たとえば法人税法の九条の七項、すなわち事業分量に対する配当の損金算入とか、あるいは十七条第一項第一号、事業所得税に対する税率の特例とか、あるいは十七条一項第三号のそれぞれの特別な規定、こういうものは全部農協あるいは漁業協同組合、生活協同組合にあわせ適用を受けておるのに、今回に限って生活協同組合のみが除かれておるのはどういう理由ですか。
  175. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように、今回の六十一条の規定適用を受ける対象の中に消費生活協同組合は入っておりません。これはどういうわけかと申しますと、二つ理由があるわけでございます。  一つは、消費生活協同組合は御承知のとおり中小の商業者といわば競争関係に立っておるということでございまして、その意味で、中小商工業者との間に競争上いろいろ問題になっておる点があるわけでございます。そこで、この点からして本来中小商工業者についてその組織する協同組合を助長しようというのに、それと競合関係にある消費生活協同組合に適用するのはおかしいではないかという点が一つでございます。そういう意味で消費生活協同組合にこういった留保所得の特別控除を認めるについてはよほど慎重でなければならないという考え方の点でございます。  いま一つは、農業協同組合であるとか中小企業協同組合などにつきましては、それぞれ農業基本法あるいは中小企業基本法におきまして、その整備をはかるため国の施策を講ずべきであるという法律の規定が設けられておるのでございます。そういう点からいたしまして、今回こういう協同組合については、この留保所得の特別控除の制度を設けるのが適当であろうが、消費生活協同組合につきましては、そういった基本法におきまして、その整備をはかるため国の施策を講じなければならないという規定が設けられてございませんので、そういった二点からいたしまして、消費生活協同組合にはこの適用を認めないということにいたしておるのでございます。
  176. 田中武夫

    田中(武)委員 重要な発言があったのですがね、消費生活協同組合は中小小売り商と競争しておりますか。そういう頭で大蔵省は見ておられるのですか。それでは厚生省、いまの大蔵省の主税局長の発言を認めますか。
  177. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 二つの理由をいま主税局長はあげられたわけでございますが、私どもは、第一の中小企業との競合というものは、消費生活協同組合法の適正な運営においてはそういう競合というものはあるべきではないというふうに考えておるわけでございますが、事実問題としてそういう点が場合によってはあり得るのじゃないか、しかし本質的な法の精神に沿った組合の運営におきましては、そういう競合ということはないように私どもは考えておるわけでございます。
  178. 田中武夫

    田中(武)委員 生活協同組合の主管である厚生省の意見はいまお聞きのとおりなんです。主税局長は頭から中小小売り商と消費生活協同組合が現実に競争しておるという見方を持っておられるのですか。現実にもし競争しておるというならば、いかなる地区において、いかなる消費生活協同組合と何々商店街あるいは何々商業組合とが競争しておるのですか。
  179. 泉美之松

    泉政府委員 私のことばが足らなかった点はおわびいたしますが、法律上はただいま厚生省からお話がありましたように、消費生活協同組合が適正に運営されておりますれば、その組合に対してのみ利益を与えるべきでありまして、そういう意味では中小小売り業者と競争関係に立つというふうに法律的に観念すべきではないと思います。ただ事実問題といたしまして、消費生活協同組合の場合にはいわゆる員外利用というのがかなり行なわれておりまして、そういったことが行なわれておりますと、その場合には付近の商店街から、あそこの消費生活協同組合ができたために自分のところの品物が売れなくて困るといったような不平がよくあるわけでございます。そういった事実関係を考えまして、それと先ほど申し上げましたように、中小企業基本法なりあるいは農業基本法においてそういった農業協同組合なり中小企業協同組合の整備をはかるために国が施策を講ずべきだというような規定があるのと、消費生活協同組合には別にそういう規定がないという点を考慮して今回のような取り扱いにいたしておるのでございます。
  180. 田中武夫

    田中(武)委員 消費生活協同組合が員外利用をさしたために現に私のほうがこれだけの迷惑をこうむりましたというような陳情があなたのところに出ましたか、具体的につかんでおられますか。その前提としては員外利用ということが前提になっておる、そういうことについて、あなたはいま申されたようなことに対して裏づけある証明ができますか。
  181. 泉美之松

    泉政府委員 これにつきましては、たとえば酒の小売りといったような場合に、その消費生活協同組合で安く売ったために他の小売り商が迷惑したといったような不平は私しばしば聞いておるのでございます。
  182. 田中武夫

    田中(武)委員 もう少し具体的に知らしてほしいと思います。そういうことは間々ないと思っておるのですが、しかも酒の小売りといえば、これは別に認可を受けなければできないのでしょう。酒税法に免許規定の条文がありますね。それによって免許しておるのでしょう。それがかりにそうであるとするならば、生協活動という以前に、あなたの管轄であるべき酒の小売りの免許ということにまず関係してくるんじゃないですか。員外利用をさしておるということがかりにあって、付近の小売り商と競合するというならば、これは農協でも同じことですよ。どこかその点において生協と農協の違う点がありますか。
  183. 泉美之松

    泉政府委員 お話しのように、農業協同組合の場合にも員外利用の率が法定されておりまして、その点では員外利用ということの法律上許されている範囲というものは両者ともにあると思うのでございます。ただ、私も一々詳細にその陳情の書類を保存して持っておるわけではございませんけれども、従来から消費生活協同組合ができたために付近の小売り商が迷惑するといったような陳情は承っておるのでございます。
  184. 田中武夫

    田中(武)委員 かりにそういう陳情があったというなら、私は具体的にどこがそういうことを言ってきたか聞きたいのです。そしてその消費生活協同組合が法に定められていないような方法による組合活動をやっているとするならば、当然厚生省が何とか処置すべきものだと思うのです。そういう段階を踏み越えて、あなたの言うように小売り商と生協のみが競争しているような認識を待ち、そういう競争をしているのだから六十一条の規定からはずしたというのはあまりにも筋が通らぬと思うのですが、どうです。さらに厚生省としては、いまの主税局長の発言並びにこの六十一条の改正から生協が離されておることについてどう考えておられますか、お伺いいたします。
  185. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 お答えいたします。租税特別措置は三十六年までは同様にやってきたわけでございますが、廃止になりまして今日に至っておるわけでございます。今回の農業協同組合なりそういうものに対する特別措置というものは、先ほど主税局長の御答弁の第二の点、特に農業基本法なりあるいは中小企業基本法の法の精神に基づく農業企業なり中小企業の近代化、合理化の線に沿う税の措置だというふうに私どもは理解しておりまして、これは従来のいわゆる特別措置というものはすべて一応三十六年で廃止になったわけでございまして、今回は別の要因によってこういう措置がなされたわけでございますから、そういう要因を持ちません消費生活協同組合なりあるいは森林組合というものは除外されておりますので、今回の法律改正の趣旨は前のときとは迷うのではないかということで、今回の改正措置とは一応関係をしていないわけでございます。
  186. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの話であると、これは従来あったのでしょう。そのときは生協も入っておった。それがなくなった。今度六十一条が復活した、その理由は近代化云々だ。そうすると生協にはそれほど近代化とかそういうことはない。しかしここに言われておる農協あるいは漁業協同組合、中小企業等協同組合による協同組合、あるいは団体法による商工組合、これはそういう近代化が進んでおる、そうなんですか。
  187. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 農業協同組合なり漁業組合、あるいは中小企業の協同組合に相当するそういう基本法というものは、消費生活協同組合には現在存在してないわけでございます。
  188. 田中武夫

    田中(武)委員 基本法の主税局長があげた二つの理由の後段のほうはいましばらくおいておるわけです。前段のほうの第一点の小売り商と消費生活協同組合が競争しておるというこのことを取り上げておるわけです。そういう認識を持ってもらったら困るし、現にあるとするならば、事実どこの地区において何々消費生活協同組合と何々商店街にそういう事実がある。そういうことを示してもらいたい。第一、中小小売り商と生活協同組合が競争をしておるなんという認識それ自体が生協の本質を知らない意見だ。全くあなたは消費生活協同組合がどんなものであるかということを知らない。その上に立っての暴言だと思いますが、いかがでしょう。
  189. 泉美之松

    泉政府委員 私、消費生活協同組合と小売り商との間でそういう小売り商のほうからの不平があるという話を聞いたので、そういうふうに考えておるわけでございますが、お話のように、そういった不平について私、陳情を受け取ったのでございますけれども、陳情書をいま持っておりませんので、それはいつどこであったか現在記憶しておりません。したがってそれは後刻申し上げたいと思います。ただ法律的な性格といたしましては、田中委員のおっしゃるとおり、そういう消費生活協同組合と中小商業者とが競争関係にあるべきではないのでございますが、事実問題として、そういう消費生活協同組合で安く売られて、そして員外利用が認められているという関係から、そこに隣で商売をしておる中小業者としては、どうもうちの品物が売れなくて困る、こういう不平を持っておる、これは事実でございます。
  190. 田中武夫

    田中(武)委員 まず主税局長、直接生協に関係がないかもしれませんが、しかし租税特別措置法でこう出てくると、生協というものについて認識をしてもらわなければいけない。はばかりながら中小小売り業の問題につきましては、私は専門なんです。かりにまたあなたのおっしょるようなことがあるとするならば、小売商業調整特別措置法の十五条によって知事のあっせんを求めるとかいろいろな手があるわけなんです。ところがばく然たる認識によって競争しておるからということで、確固たる信念も理由もない。にもかかわらずこれだけはずしたということについては了承できません。中小小売り商の問題につきましては私のほうが専門です。どうですかこれは。
  191. 泉美之松

    泉政府委員 田中委員は商工委員をしておられましたから……(田中(武)委員「社会党の中小企業委員長だ」と呼ぶ)そういう意味で中小小売り商について権威であることは事実だと思いますが、私は従来からのそういった陳情の趣旨から考えまして、法律的な問題はともかくとして、事実問題としてやはりそこに問題があるということを考えまして、今回の適用対象に入れるのは慎重に検討すべきではないかということから、現在のところ落としておるのでございます。
  192. 田中武夫

    田中(武)委員 最初あげられた二つの理由のうちのあとの件はあとで触れます。最初の競争云々という点は、どうです、この辺で間違っておったと言えませんか。そうでないとおっしゃるなら、いまから大蔵省に人をはせてその陳情書を持ってきてください。具体的にどこの地区においてどういうことが起こっておるかということは、先ほどここで私がすわって申しましたように、社会党の中小企業委員長をしているので、調査の必要があります。そういうことで、生協が中小企業を圧迫しておるという事実、しかも生協が法律の規定に違反してやっておるというならば、私のほうが生協のほうを向いてものを言いましょう。その事実を持ってきてください。
  193. 泉美之松

    泉政府委員 同じような答弁を繰り返して恐縮でございますけれども、私どもとしましては従来の所得税課税のときなんかにも、たとえば所得標準率の問題が出てきますと、その際におきまして消費生活協同組合があるところの商店街のほうから、消費生活協同組合のほうで安く売るために、自分らの品物は利益率が低くなるんだから、標準率を考え直してもらわなくちゃいかぬといったような陳情をいろいろ聞いておるのであります。ただ、自分がその目で確かめずにそういうことを申し上げた点につきましては、十分確かめなければならなかったということをいま反省いたしておるのでございますが、そういう意味では、なお消費生活の実態というものを十分調査、検討いたして、その上で考えたいと存じます。
  194. 田中武夫

    田中(武)委員 私は先ほど来言っているように、中小企業政策に関しては社会党では責任舌であります。したがって、あなたが言われるような具体的事実があるならば、私のほうも生協の諸君に勧告するといいますか、そういうことで小売り商業の育成なり振興をはかっていく上においては、政府よりも人後に落ちないつもりであります。したがって、いまのあなたのおっしゃっているのは、たまたまどっかで自分の確定申告を安くしてもらうために言ったことが頭に残っておった、そういう程度のものであったと思いますので、第一の理由はなかったと確認できますか。
  195. 泉美之松

    泉政府委員 第一の理由はなかったと言われますと、どうもちょっと困るのでございますが、第一の論拠とした点につきましては、なお今後十分調査、検討すべきであるというふうには考えております。
  196. 田中武夫

    田中(武)委員 この項目に生協を入れなかった理由を二つあげられた。その一つがいまのようなことなんです。なおかつ第一の理由をここで維持せられるというならば、具体的事実を出してもらいたい。具体的事実がない場合は、第一の理由は取り下げてもらいたい。いかがですか。
  197. 泉美之松

    泉政府委員 これは私、陳情書を現在持っておらないから……。
  198. 田中武夫

    田中(武)委員 持ってきてください。
  199. 泉美之松

    泉政府委員 役所にもないのです。
  200. 田中武夫

    田中(武)委員 どこにあるのですか。
  201. 泉美之松

    泉政府委員 そういう点でございますが、なるほど田中委員のおっしゃるように、消費生活協同組合が正しく運営されておればそういう問題はないはずだと思うのでございます。ただ事実問題として、そうでなくて運営されておるような事例があって、そこに小売り商との間に問題が起きておる。これはしかし田中委員のおことばではございますけれども、よく世間で聞く問題でございます。そういう点からいたしまして、私もそう信じたのでございますが、事実自分の目で調査した上でございませんので、今後その点は十分調査したい、かように申しておるのでございます。
  202. 田中武夫

    田中(武)委員 まあ、うわさを聞く、このうわさの論議はできないわけなんですね。したがって私はあなたが上げられた二つの理由の一つは、根拠なきものと認めます。いいですね。  それでは第二の理由、基本法が農業と中小企業にはある。その基本法が出たから入れたと言われるが、具体的に中小企業基本法でやりましょう。何条ですか。何条にこういう措置を求めるように出ておりますか。農業基本法は弱いけれども、中小企業基本法でいきましょう。
  203. 泉美之松

    泉政府委員 中小企業基本法の第二十七条に、中小企業団体の整備という条項がございます。これによりますと、「国は、中小企業者が協力してその事業の成長発展と地位の向上を図ることができるように、中小企業者の組織化の推進その他中小企業に関する団体の整備につき必要な施策を講ずるものとする。」という規定があるわけでございます。その点からいたしまして今回そういった中小企業者の組織する団体でありまする中小企業協同組合及び商工組合につきまして、このような留保した場合の法人税の非保税の特例を設けることにいたしたものでございます。
  204. 田中武夫

    田中(武)委員 この二十七条の具体的などの条項ですか。
  205. 泉美之松

    泉政府委員 お答えします。  二十七条の「中小企業者の組織化の推進その他」の次にあります「中小企業に関する団体の整備につき必要な施策」、団体の整備につき必要な施策ということで、内部留保を厚くいたしますと、その団体の経済力が強化されるということから、その団体の整備がはかられるというふうに解しておるのでございます。
  206. 田中武夫

    田中(武)委員 主税局長に中小企業基本法の論議をぶつけても赤子の手をねじるようなものですからやりませんが、二十七条はそうじゃありませんよ。団体の整備とは――いいですか、中小企業団体の組織をあげてみましょうか。まず、縦の線として中小企業等協同組合法あり、中小企業団体組織法あり、地域的なものとしては商店街振興組合あり、商工会議所あり、これはちょっと違いますが、これも中小企業に入っています。それから商工会法あり、こういうように縦横二重、三重の組織形態が定まっておる。その運用もまちまちである。したがってそういったような組織を整備いたしなさい、これが二十七条の真意ですよ。
  207. 吉國一郎

    吉國政府委員 中小企業基本法なりあるいは農業基本法におきまして、今回の六十一条の規定に関連する規定というようなことで主税局長が先ほどお答えを申し上げたわけでございます。どこからくるかということでございますが、中小企業基本法を例にとりまするならば、基本的には第三条に「国の施策」という規定がございますが、その精神を受けましてさらに第五条で政府があらゆる法制上、財政上の措置を講ずべきことを定めておりまするし、ただいま仰せられました中小企業団体に関する第二十七条の規定でございますが、この規定によりまして、もちろん先ほど田中委員仰せられましたように、語般の組織法によりまして中小企業団体の組織の整備をはかることも当然この第二十七条の目標とするところではございますが、その線に即応いたしまして、税制上もそのような団体の生々発展をはかるということを国が企図して税制上もかような措置を講じたというふうに私どもは理解をいたしております。
  208. 田中武夫

    田中(武)委員 中小企業基本法の制定の経過、その前文、いまおっしゃいました三条なり五条その他の条文はすべて中小企業の将来への道、発展振興策についてきめております。したがってこの措置一つもその道につながるということならそれはそれかもしれません。しかし中小企業基本法をもって中小企業等協同組合、あるいは商工組合等を六十一条の改正に入れ、消費生活協同組合を入れなかったという理由にはなりません。もっと中小企業に対して――いいですか、発展振興策はこんなばかなことじゃなく、たくさんありますよ。せっかくの吉國部長答弁ではございますが、これはいささか三百代言のそしりを免れない。中小企業基本法の精神はそんなものじゃありません。こういう詭弁はやめてもらいたい。はっきりと入れなかった理由がほかにあるのでしょう。基本法なんか持ち出してくるのはどうかと思いますよ。基本法の精神はそんなものじゃありませんよ。基本法をもって答弁せられましたことは不服でありますし、どんぴしゃりの答弁にはなっておりません。生協を入れなかった理由にはなりません。どうですか。もっと具体的に言うならば、どの条文で留保財産について特別の措置をせよとありますか。生協を入れなかった理由に農業基本法なり中小企業基本法がその理由になりますか。
  209. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、中小企業基本法にそういった中小企業の組織する団体の留保について課税を軽減しろというような規定があるわけではもちろんございません。ただ私どもは中小企業基本法の第二十七条の規定によって、組織化その他中小企業の団体の整備をはかるという点の趣旨は、そういった税制上の特別措置を講ずることによって、そういった中小企業の団体を強化するということもその一つの方策ではないかというふうに考えたのでございまして、それ以上ということになりますと、これは結局私どものほうの見解と違うということしかないのじゃないかと思うのでございます。
  210. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほどうしろで春日委員も言っておりましたが、中小企業等協同組合法を改正して、二十三条の三で、「事業協同小組合の組合員に対し、税制上、金融上特別の措置を講じなければならない。」こういう規定を入れたのは、中小企業団体法が成立するときすなわち三十二年ですが、それから今日まで小規模事業者に対して何らのことをやっていないじゃありませんか。そうしておりながらこの場合だけ基本法の精神をもってといっておりますが、それではお伺いいたしますが、基本法の二十四条、二十五条にわたって金融上、税制上についての特別の規定があります。それに対して具体的にどのような措置をいま講じておりますか、講じようとしておりますか。
  211. 泉美之松

    泉政府委員 中小企業基本法の第二十五条の規定によりまする「国は、中小企業の企業資本の充実を図り、事業経営の合理化に資するため、」「租税負担の適正化等必要な施策を講ずる」、この点につきましては御承知のとおり、中小企業者の所得税の負掛を軽減いたしますために、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、これは中小企業以外の人にも適用になりますけれども、そういった控除の引き上げを行ないます。それからさらに国税では所得税の専従者控除、地方税では事業税の事業主控除の引き上げを行なうというようなことをいたしております。  次に法人税につきましては、軽減税適用範囲の拡大と同族会社の留保課税の軽減、事業税につきましても、軽減税適用範囲の拡大と行ないます。  さらに租税特別措置といたしまして、中小企業用合理化機械の特別償却であるとか、あるいは中小企業者の工場建物を含めた中小企業近代化促進法の規定による特別償却であるとかいったような制度を設けて、それぞれ税負担の軽減をはかっておるのでございます。さらに今回におきましても、ただいま申し上げました基礎控除その他の諸控除及び専従者控除の引き上げをはかるというような措置を講じておるのでございます。なお中小企業協同組合法の規定による中小企業協同小組合について、従来税制上特別の措置がなかったではないかといわれる点はお説のとおりでございます。今回措置法六十一条に小組合の規定を入れておるわけでございます。
  212. 田中武夫

    田中(武)委員 三十二年にわざわざ小組合について入れたのを、いまのこの改正で入れたといって、その間すでに六年余りたっておるのです。やっていなくて、なるほど若干の税改正がありますが、これは中小企業の特別の団体組織法による商工組合だから、あるいは商工会だから、あるいはまた協同組合だからといって、その組合に対して特別なことをやっていないでしょう、いままで。しかも中小企業基本法はもちろん団体をも対象に考えておりますが、その目ざすところは個々の中小企業者の発展育成であります。いまなさんとしているのは、ひいては個々になるかはしれませんが、その団体に対して特別な措置を行なおうとしておるのであります。したがって、あなたの言われた第二の理由もこじつけであって、これは確固たる理由とは考えられません。あなたがこれ以上言ったら見解の相違になると言っておりますが、この論法は、どこで聞いてもらっても、あなたのほうに理はあるとは考えられません。  そこで、あらためて、生協をなぜ入なかったのか、その理由を言ってあげましょうか。言ってよろしいか。こっちで言いましょうか。――それはともかくとして、厚生省どうなんです。あなたの管轄ですよ。もう少し大蔵省に抵抗はできないのですか。そんなことでいいんですか。あらためて大蔵省と厚生省と話し合ってください。そうでなければここで引き下がるわけにはまいりません。
  213. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 今回の法律改正の趣旨は、先ほど私が申し上げたとおりのように私どもは大蔵省との間の連絡で聞いておりますし、生協の健全な育成、発展の措置としては、将来の問題として検討していきたいと思っております。
  214. 田中武夫

    田中(武)委員 いや、将来じゃなしに、ただいま現在においてもう一度話し合う余裕はありませんか。ようしませんか。
  215. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 現在のところは考えておりません。
  216. 田中武夫

    田中(武)委員 だらしがないね。大蔵省に対してはそれほど役人は弱いのですか。予算編成のときには大蔵省の主計官の肩をもんだという某省の課長もおるそうだ。それが次官になったそうですからね。あんまり大蔵省にたてつかぬほうが出世の道かもしれませんが、そういうことではだめです。  委員長、先ほど来お聞きのとおりでありますが、生協だけを除いたという理由は明確ではございません。そこで、理研会等において、この件について相談をする。そうして修正を話し合う。そういうような委員長として配慮が望ましいと思いますが、いかがでしょう。
  217. 山中貞則

    山中委員長 その問題につきましては、ほかの問題と違って、税制改生の原案として提出されている問題についての野党としての主張であり、また、政府当局者の答弁と見解の不一致ということでありますから、その事実についての追及はまだお続けになってもけっこうでございますが、その取り扱いに持ち込むかどうかについては、別途また考究いたしたいと存じます。
  218. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは、基本法と言われたが、基本法では了解できないと私は言っておるのです。だから、中小企業基本法で生協は除いたが、中小企業団体は入れたのだという了解のいくまでの説明をしてください。
  219. 泉美之松

    泉政府委員 私、先ほど申し上げましたように、中小企業基本法の三条規定に基づく国の施策があって、あるいは同条に基づく政府の財政上の措置、それらを受けまして、二十七条に、組織の整備に関する施策を講ずるということになっておりますので、そういった点から見て、中小協同組合等に対しまして今回の措置を適用するのが適当であるというふうに考えたのでございまして、自分はそういうつもりでございますが、田中委員が御納得をいただけないのははなはだ残念に存じますが、それ以上説明しろと言われましても、いま申し上げました以外に理由を申し上げるわけにいかないのでございます。
  220. 田中武夫

    田中(武)委員 三条、五条は国の施策なり目標なんですよ。したがって、これは中小企業基本法を貫くところの精神なんです。それで、具体的に二十七条とおっしゃるのですが、二十七条は、先ほど言ったとおり、そういうことではなく、中小企業の組織に関する法律が二重、三重にある。また、これ以外に、環境衛生同業組合とかいろいろなものがある。それを整備しようというのがその法の精神です。あなたが言っているようなものじゃありません。吉國さんも、あなたがそう答弁をしたからこじつけて言ったが、あくまでこの二十七条はそういうものじゃないですよ。何なら一ぺん昨年の通常国会における中小企業基本法の審議の議事録を出してきましょうか、そういう議論が展開されておるかどうか。
  221. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、中小企業基本法二十七条の規定によりますと、「中小企業者の組織化の推進」となっておりますから、お話の組織化の推進ということが中心だと思いますけれども、「その他中小企業に関する団体の整備」ということが規定されておるのでございまして、「その他中小企業に関する団体の整備」の中には、いま私が申し上げましたようなことが入ると解釈できると思うのでございます。  なお、申し上げるまでもなく、中小企業基本法には、中小企業者であるところの小規模企業者につきましては第二十三条、それから小規模企業者でないほうの中小企業者につきましては第二十五条で、それぞれ税制上の措置を講ずるようになっております。これはもちろん企業者自身でございまして、その組織する団体ということは言っておりません。しかし結局、そういった中小企業者の税を軽減していくということは、その中小企業者の組織する団体についてそういう税の軽減を措置することによって、結局、中小企業者が地位が向上し、近代化がはかられるということになれば、それも一つの中小企業基本法の目的としている趣旨ではないか、かように考えるものでございます。
  222. 田中武夫

    田中(武)委員 二十七条はあくまで、あなたの言うようなことは含んでおりません。これはいままで中小企業の組織に関する法律が多過ぎる、それを一本立てにしようという方向をとりつつあるんですよ。そういうことなんですよ。だから、あなたの言ったようなことじゃありません。なお二十三条で小規模事業者、二十五条で中小企業者ということについて税制上の特別措置、これはあります。しかしあなたが答えたのは、まず二十七条をもって答えられて、しかも中小企業団体組織法成立の際に、中小企業等協同組合法二十三条の三を入れて事業協同小組合に対しては特別の税制の措置を講ずべし、こういうことに対しては何らなされていない。それをいまになって基本法を引っぱり出してくるのは詭弁にすぎないのであります。しかもあなたが持ってきた二十七条はそうではない。そうするなら、あなたがあげた最初の第一点、第二点ともに根拠はくずれたということになりますが、いかがでしょうか。
  223. 泉美之松

    泉政府委員 その点になりますと、先ほど申し上げましたように、私の説明が御納得いただけないのははなはだ残念でございますけれども、結局見解の相違と申し上げるよりほかないと思うのでございまして、私どもとしてはそういう点、二つの点を考えて今回の措置の対象に消費生活協同組合を入れないということにいたしたのでございますが、田中委員の御発言のように、その点についていろいろ論議がありますことは承知いたしましたので、それらの点を考えまして、今後さらにどういうふうにすべきかということは、実情調査をもいたしました上で厚生省とも相談いたして検討してまいりたい、かように考えるのでございます。
  224. 田中武夫

    田中(武)委員 政治上の、思想の問題ではありません。これはあくまで法律の解釈であります。行き迷いで事が済まされる問題ではありません。あなたが二十七条と言うた二十七条は絶対にそんなことはないです。もしあるとおっしゃるならば、どこかの大学の先生に来てもらって、そしてなお、私もその一人でありますが、中小企業基本法を審議し、あるいは修正した者として私の意見も聞いてもらいましょう。それは根拠なきものである。ただ中小企業基本法の精神からいって、中小企業のためになるようにしてやれということ、振興のためだということ、それも一つの理由だということならわからぬことはないが、二十七条はあくまでもあなたが固執せられるならば――私は立法者なんです。審議をした本人が言うておるんですよ。あるいはまた、社会党案を答弁した本人が言っているんですよ。そういう論弁的な解釈はやめてもらいたい。見解の相違で片づけられる問題ではありません。  そこで厚生省、どうです。いま大蔵省の主税局長は厚生省とも相談をして考慮すると言ったでしょう。厚生省はそれを受けてどう答えますか。
  225. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 将来の問題としては、大蔵省主税局当局ともよく相談をしまして、私どもも善処していきたいと思っております。
  226. 田中武夫

    田中(武)委員 将来を言っているのではありません、いま直ちに――あなたがあげられた理由は二つともくずれたのですよ。ただようやく残っているのは中小企業基本法の精神だけですよ あなたがあげられた根拠はくずれた。ならば白紙に立ち戻って、大蔵省、厚生省話し合いをし、再検討の用意があるかどうか、お伺いいたします。
  227. 泉美之松

    泉政府委員 私が中小企業基本法第二十七条を論拠にいたしました点については、田中先生の御指摘のように中小企業基本法の全体の精神を基礎にしてというのが正確だと思いますので、そのように訂正させていただきたいと存じます。  それから現在のところ法律案は国会に提出されまして、国会で審議されておるのでございますので、その審議は国会の決定に待つべきだと思うのでございまして、私どもはこの法案に対する国会の審議いかんがきまりましたあとで、厚生省と相談いたしまして、今後、この租税特別措置法六十一条が成立するかどうかわかりませんけれども、そのあとでこういった規定適用を消費生活協同組合にも認めるべきかどうか、それらの点につきましては消費生活協同組合の実態をなお調査した上で、両省間で話し合いをいたしたい、かように考えるのでございます。
  228. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 ただいま主税局長答弁されたとおり考えております。
  229. 田中武夫

    田中(武)委員 私は別表には触れないと初めから言っておりましたが、別表の間違いは修正するのでしょう。ならばこの件についてもいまからもう一度相談し直してもいいのではないか、その余裕はあるのではないか、このように思いますが、引き続きいま私が申し上げました点、あるいは主税局長に事実誤認があった、また法律の解釈も間違っていた、まさに裁判所なら棄却に値する事実誤認があった、こういう事実にのっとって両者間で、すなわち大蔵省と厚生省において十分に生協を入れるべく、この方向で検討してもらいたいと思いますが、もう一度念を押しておきます。
  230. 泉美之松

    泉政府委員 所得税法の別表の第三の修正問題は、これは本来税額の計算の誤謬から生じておる問題でございます。ただ租税特別措置法の六十一条の規定の問題は、結局こういう特別措置を講ずるべきか講ずべきでないかという問題でございますので、所得税法の別表の問題とは性格が違うと思います。これはあくまでも国会の審議によって決せられるべきだと思うのでございます。私ども政府関係者といたしましては、その上で政府間におきまして今後検討をしたい、かように考えるのでございます。
  231. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 厚生省当局も同様に考えております。
  232. 田中武夫

    田中(武)委員 これ以上詰めても詰まらぬ、将棋と同じことだと思います。これ以上は千日手で詰まぬと思うからそうしておきますが、もう一度申し上げます。あなたが生協を入れなかった理由にあげられた二点、その第一点は事実の誤認があったと認めますね。第二点は法律の解釈に間違いがあったと認めますね。したがってまさに理由なきものとして再検討をなすべきであるということが結論として出てきたと私は思っておりますが、違いますか。
  233. 泉美之松

    泉政府委員 おことばでございますが、そういうことであるというふうに判定すれば、これは裁判所でございますれば、裁判長が判決文を書くわけでございます。国会でございますから、国会で審議されるもの、かように考えるのでございます。
  234. 田中武夫

    田中(武)委員 先ほど委員長に私が希望申し上げましたときに委員長答弁がありましたが、その後の詰め方にかんがみて、再考を促したいと思います。理事会で相談できますか。
  235. 山中貞則

    山中委員長 租税特別措置については、社会党のほうでは、別途全面修正案もお出しになったようですし、法人税についても、さようなお取り扱いがなされたならば、公正に取り扱いたいと思います。
  236. 田中武夫

    田中(武)委員 それでは生協をはずしたことについて、なお今後も大蔵省、厚生省が両者間でいろいろと先ほど来理由にあげた事実の問題あるいは法律の問題等もあわせ検討して、なお前向きのかっこうで検討していく、考慮していく、こういうように理解して終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
  237. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 いろいろ議論はございましたが、主税局長もこの問題につきましては、事実について今後調査したいということをはっきり申しておりますし、またこの問題をやらないということは言っておりません。慎重に検討いたして、厚生省とも相談してやろうということでございますから、どうかこの辺でひとつそういう意味で御了承願いたいと思います。
  238. 田中武夫

    田中(武)委員 最後に一点お伺いいたします。  今度何か国選税理士制度ですか、そういうものが考えられておるように聞いておりますが、そうじゃないのですか。
  239. 泉美之松

    泉政府委員 御質問の趣旨がわかりかねるのでございますが、国選税理士でございますか。――別段そういう制度ではございませんで、現在考えておりまする税理士制度の改正問題は、昨年末税制調査会から税理士制度の改正につきまして答申が出ました。その答申の内容によりますと、税理士制度について、いろいろ改正すべき事項が盛られておりますが、そのうちで長年税理士……。
  240. 田中武夫

    田中(武)委員 いやそれと違うのだ。
  241. 泉美之松

    泉政府委員 それでは、国選税理士の制度は考えておりません。
  242. 田中武夫

    田中(武)委員 私が聞いておるのは、聞くところによると、納税者、ことに零細企業者のために、本人が費用を出して雇えない場合に、税理士を国のほうで雇うというか、出して、相談にあずからしめるという制度、これに対して若干の予算もついたと聞いておりますが、そういうことはないですか、こう聞いておるのです。
  243. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私からお答えいたします。  従来中小企業、いわゆる小規模納税者の方々は、記帳から税務の相談あるいは申告、そういう面につきまして、職業人たる税理士さんに高い報酬を払って見てもらうということには相当無理がございました。したがって、国税庁といたしましては、これらの小規模納税者の方々に、平生の記帳から決算、申告に至るまでの一貫した継続性のある指導を行ないたい、また相談に乗りたい、こういう意味で税理士さんにお願いをしまして、ごく低廉な費用、あるいはできれば実費程度でもって御相談に応ずる。そのために昨年税理士会と青色申告会、それから国税庁と三者がお互いに相談をいたしまして、そういう道を開いていこうということをまとめたのでございます。  第二の、国からの補助ということにつきましては、三十九年度の予算として要求を申し上げておる中には、従来の商工会等における中小企業の指導員、また経営の診断員、そういう方々に対し、そこに税理士さんに入ってもらって、税務の指導にあずかるというための経費として、中小企業庁に四千六百万円、また国税庁におきましては、日本税務協会に対して一千五百万円、大体その程度で来年度は発足をいたしたいと思っております。
  244. 田中武夫

    田中(武)委員 私が聞いたところでは、何かそういうのを三十九年度一千五百万円の予算で、そうして国が料金を支払って税理士を雇って、零細企業者のための相談員になってやろうといいますか、そういう制度を考えておる、こう聞いたのですが、大体そうなんですね。
  245. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 こういう補助金でもって税理士さん全部をまるがかえにするという趣旨ではございませんので、税理士会でも犠牲を払っていただく、たとえば税理士会でもって選定をされた税理士さんに、輪番制と申しますか、そういうことで関与をしていただく、また青色申告会等におきましても、従来ややもすれば青色申告会と税理士会とは必ずしも円満にいったところばかりではございませんので、そういう点で快く税理士さんを受け入れていただく、また国税庁、局、署におきましても、そういう仲立ちをいたしまして、また中小企業庁と相談をいたしまして、いまの補助金を有効に使用いたしたい、こういう計画を立てておるのでございます。
  246. 田中武夫

    田中(武)委員 それがある書物で見た国選税理士制度というのでしょう。  そこで私は、刑事訴訟法三十六条による国選弁護の制度と同じようなことを考えておられるのではないか、こういうように解釈したのですが、そうじゃないのですか。国選弁護に当たりましても、なるほど弁護士は規定どおりの報酬はもらっておりません。やはりあなたがおっしゃったように輪番制等でやっておるのです。したがって、これを国選税理士制度と呼んでよろしいですか。
  247. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私は、刑事訴訟における国選弁護人の制度を詳しく存じておりませんけれども、私たちの考えておりますのは、国が選ぶというのではなくて、国税局あるいは税務署と青色申告会、商工会、税理士会、こういう機関が組織的に提携をいたしまして、そうしてそういう同じ目的に向かってやっていくということを考えておるのでございます。
  248. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃ、私のある書物で見たことと若干違うようですが、それならば、あらためて提案というかっこうになるのですけども、国選弁護制度といっても、国が選ぶのではなくて、刑事訴訟法二百七十二条によって、被告人または被疑者が選べるわけです。そこでできるならば、それではいま考えておられる制度を一歩前進させて、ちょうど刑事公判における国選弁護士のように、弱い被告者に対して中正な判決が出るように、国選弁護の制度がありますと同じように、弱い零細企業者に対して、あなたが考えられておるこの制度をもう一歩進めることによって、国選税理士制度というものができ上がると思うのです。そういうように今後発展せしめていくという気持ちはありませんか。  なお私が提案したいのは、刑事訴訟法におけるところの国選弁護の制度と同じような考え方に立って、弱い零細企業者に対して国選税理士制度を立てて、そうして、あとでこの税理士法の改正も出るようでありますが、税理士の任務としての第一条の条文と、弁護士法の第一条の条文とを、同じような性格を持たす、すなわち、税理士を弁護士と同じような性格に立たしめて、そうして弱い零細企業者と納税者に対して公正な決定がなされるように、片や公正な判決がなされ、社会正義を守るための弁護士制度と同じようなものを、税理士制度として考えられる必要はないか、こういうように質問を変えてみましょう。
  249. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 お答えいたします。御承知のように、刑事訴訟と違いまして、数百万の納税者の相談相手になるという仕事でございます。したがって、その数百万の方々が何らかの意味において、やはり税は重いとか、税に対する御不満もいろいろおありでございます。そういう方々に一人一人御相談に応ずるということは、なるほど理想ではございますけれども、しかし、現在全国で一万三千人しか税理士さんはおりません。また、地域によっては、税理士さんの配分と申しますか、分布状況も非常に厚薄がございます。したがって、そういう個々の納税者の方々の御相談に応ずるということは、現在の状況では事実上非常にむずかしい。そこで、私たちはやはり商工会なりあるいは青色申告会なりというような現在ある中小企業者の方々のための機関、そういうものにたよりまして、組織的に――先ほど組織的に協調をしてと申し上げましたのは、そういう組織的に結びつきをいたしまして、そこで指導を申し上げたい、御相談に応じたい、こういうことを考えておるのでございます。もちろん、将来税理士さんの数が非常にふえたというような状況になりました場合は、またいまのような考え方を変えて、ただいま御指摘になったような方法に進むこともあり得ると思います。
  250. 田中武夫

    田中(武)委員 予算とか人員その他について直ちにと言えば、いま言われたように問題もあろうし、困難な面もあろう。しかし考え方からいけば、公正な判決が得られるように弱い立場の被告人を守るための国選弁護士の制度がある。同じような考え方で、ことに零細企業等に対して国が費用を出すとかあるいは団体が費用を出す等の方法により、ちょうど国選弁護士と同じような税相談といいますか、あるいは税理士をつけるといいますか、そういったような方向を今後ともに進めてもらいたい、こういうことを提案いたしておきます。  きょうはこのくらいにしておきます。
  251. 山中貞則

    山中委員長 卜部正巳君。
  252. 卜部政巳

    ○卜部委員 先輩並びに同僚の数多くの質問が行なわれましたので、私は角度を変えて質問をいたしたいと思うのであります。  まず最初に、政務次官にお伺いをいたしたいと思います。政務次官は二十八日の委員会でありましたか、竹本委員の質問に答えられまして、何か戦前は納税の義務、教育の義務、兵役の義務云々ということを言われて、戦後におけるいわゆる納税の義務を怠る道徳的な欠除の問題がある云々ということを指摘されておるわけであります。私たちの先輩並びに同僚委員が質問をしております内容の中には、かなり批判をまじえての質問も行なっておるだけに、その問題について若干私は気がかりになるのであります。この点について一つ、私はわからないのでありますが、憲法八十四条に定めるところの租税民主主義なり、さらには租税収入における民主的原理というものをまず政務次官からお伺いをいたしたいと思います。
  253. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 竹本委員の御質問に対しまして、私はただいま卜部委員からお話しのようなことを大体答弁したわけでございますが、最近いろいろ税金が高いということが一つの大きな問題になっておるかもしれませんが、ややともすると反税同盟とかいうようなことがございましたりして、ことさらに納税義務を怠ろうとするような動きもなきにしもあらずでございまして、さような意味合いからいたしまして、私は大事な租税に対しましては国民がもっと真剣に考えてもらいたい、こういう意味のことを申し上げた次第でございます。
  254. 卜部政巳

    ○卜部委員 後段の質問が残っておるのでございますが、ひとつその点も政務次官のほうからはっきり言っていただきたいと思うのであります。――租税法律主義だとかさらには財収ですね、いわゆる収入の基本的原理というものをお伺いしたい、こういうことです。
  255. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 租税は、御承知のように国の施策執行のために必要な費用を所得に応じてかけるということが根本的な問題であり、しかも租税はあくまでも公平の見地からやっていかなければならないということでございます。したがいまして、特に最近は御承知のように戦争によりまして疲弊したわが国が、ようやくにして非常な国民の努力の結果進んでまいりまして、戦後の復興ぶりは目ざましいものがあるわけでございます。ことに戦争によって壊滅をいたしましたために、いわゆる公共事業、ことに道路あるいは環境衛生というような問題が非常に大きなウエートを占めており、その上に社会保障というものもようやくにしてだんだん盛んになってまいりまして、その上に国家公務員また地方公務員等のいわゆる俸給、手当というものも非常に増してまいっておるわけでございますので、さような見地からいたしまして、やはり納税というものは、当然国民の義務として納めていただかねばならないものであるというふうに私は考えております。
  256. 卜部政巳

    ○卜部委員 前段のほうは、私わかるような気がするのですが、しまいのほうになってきますと、率直に申し上げて、抽象的でわからないのであります。私は率直に申し上げて、租税法律主義なるものがあるということ、並びにそういう財政収入の原理というものは、私はそういうものではないと思っております。しかしながら、そういうことを私がいまここで反論をするとかいうことは、時間的な問題もありますから、それは差し控えますが、しかし少なくともこの法の主義のもとに、私たちが税金をあまねく公平にという立場の中で、いろいろといま論議をされておる、質問をされている内容について、道徳的な問題を提起をしてくるということは不見識だと私は思うのです。そして私が最初に心配申し上げた点は、私たちのこのような先輩、同僚の質問自体に対しても、その面において該当するというような印象を与えられることについてきわめて遺憾に思うのです。その点で私は何も道徳的な問題について触れたくはありませんが、少なくとも道徳をそういうふうに述べられるならば、やはりにせ証紙の問題をめぐって、勝つためには手段を選ばないとか、さらにはそういうふうな面におけるところの問題を解決した上で道徳というものをみずから口に出す権利が生ずると思いますが、そういうことがなされない上に立って道徳云々ということを口ばしるのは、ちょっと僭越ではないだろうか、このように考えておる次第であります。  そこで政務次官のほうから、さらに民商の問題に触れて若干この問題を――私は反復説明はいたしませんが、委員会の中で申し述べられておりますが、どういう見解でそういうことをおっしゃったのかお伺いしたいのであります。
  257. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 民商、いわゆる民主商工会というグループが、いわゆるアンケートを出したり、スライドを出したりして、いろいろの運動を行なっておるということは承知いたしておるわけでございまして、これは見方によるかもしれませんが、大蔵省の立場からいたしまするならば、私はこれはまことに容易ならざる運動であろうということを考えておるわけでございます。
  258. 卜部政巳

    ○卜部委員 民商を攻撃される前に、やはりその民商にたよっていく人々、そういう人が理屈抜きに、思想は抜きにして入っておるというこの現状をどのようにとらえておりますか。
  259. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 最初のときもちょっと申し上げましたように、政府といたしましても、年々だんだん減税をいたしておりますが、しかしまだ今日必ずしも世界の各国に比べて安いとは言われない状態でございます。したがいまして、政府といたしましても、なるべく税金は安くなることが望ましいのでございますけれども、先ほども申し上げましたように、ベースアップの問題あるいは社会保障の問題、公共事業というようなものがうんと重なりまして、いわゆる出資の要求というものが非常に多くなってきておりますので、今日の状態といたしましては、できるだけ減税をいたすことにしなければならぬのでございますけれども、まだその域に達しておらないというふうに私は思っております。
  260. 卜部政巳

    ○卜部委員 では、木村国税庁長官にお伺いいたしたいと思います。  あなたも民商問題について二十八日のこの委員会で触れられましたが、この議事録の中で、民商は会員のために何もやっていない、だから脱会をするとか、さらには民商は脅迫団体だなどというふうな、こういう受けとめ方ができるのでありますが、この点につきまして、そういうふうに解釈していいのかどうか、お伺いいたしたい。
  261. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私が先日この委員会におきまして、ただいま御指摘がありましたようなことを申し上げたのは、こういう意味でございます。それは、なるほど従来中小企業者の方々で民商の会員となられる方が相当数ございました。それはやはり一つは、記帳が非常にめんどうだ、民商に入ると記帳がやってもらえる、いわゆる記帳の代行ということ、また税務署に対していろいろな交渉をするときに、やはり自分一人では心細い、だから、そういう組織でもって税務署に対して話をするということが、何かたよりになるというような気持ちから入っておられたことは事実だろうと思います。  ところで先日私が申し上げましたのは、それでははたして民商は、ほんとうにこういう小規模納税者の方々のためを思ってやっておったかどうかということについては相当疑問がある。と申しますのは、民商を脱会された方の言として、税務署から言われるので、民間の事務局に帳簿をもらいに行った、ところが行ってみると、何も帳簿はつけていない、これでは何のために記帳料を払ったのかわからないというようなことを述べておられる方が相当数ございます。そういう点から考えて、私は必ずしも民商がそういう小規模納税者の方々のために誠意を持って仕事をしていたとは思われないということを申し上げたのでございます。
  262. 卜部政巳

    ○卜部委員 ただいまの答弁は、二十八日の議事録の中にも残されているわけですが、そこであれに書かれている内容の中で私ども気がかりになるのは、脱会した人々が、 長官がいまおっしゃったように、そう言っておりますし、同時に私たちの調査結果もそのとおりでございます。こういうことでございますから、ひとつその調査にあたって何県に、また何市にどれだけあったのか、こういう点をつまびらかにしていただきたいと思います。
  263. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 せっかくの御質問でございますが、どなたがこういうことをおっしゃっているかということはお許しをいただきたいと思います。やはりそういう方が何らかの意味でつらい目をなされるということも考えておかねばなりませんので、名前を述べることは差し控えたいと思います。  それでそういう例はずいぶんございますけれども、中にこういうのがございます。
  264. 卜部政巳

    ○卜部委員 名前はけっこうです。税務署調査した結果を言ってください。
  265. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 いまここに持っておりますが、たとえば中野の税務署の管内でございます。その中に「調査の際は集団の圧力で何とかするということで筋を通した行き方をしないし、税務署が来たらすぐ連絡してくれと言うだけで、肝心の決算や記帳上の指導はしてくれず、証拠は残さないようにという非合法な指導ばかりでした。」こういうのもあります。それから「調査の際、調査官より、民商の作成した決算が不備である、損益計算書は一応あるが、しかし貸借対照表が作成されていないと言われ、でたらめだと思った。」というようなことを言っておる人もあります。それからまたほかの方では、「いままで帳簿を見たことがないので、民商へ取りに行ったところ、ことしの分はまだつけてないと言われ、毎月記帳料をとっておきながらひどいと言ったところ、反対におどすようなことを言われた。」こういう例がございます。それは各地に民商がずいぶんございますから、場所によって相違はあるかと思います。しかしながら先ほども申し上げたように、必ずしも小企業納税者の方のためを思って、誠意をもって仕事をしていたとは思われない、こういうことを申したわけでございます。
  266. 卜部政巳

    ○卜部委員 私はいまおっしゃられておりますような個々のこれがこう言ったとかああ言ったとかいうことを質問しておるのではないのです。先ほども申し上げましたように、何県の何市におけるなどという形の中で何件そういう問題があり、さらに二番目といたしましては、長官のほうからも言われたように、帰れ帰れと言って追い帰した、調査がそういうふうに私のほうにも参っておりますという答弁がありましたから、だから帰れ帰れと言う民商がどこの県に、さらにどこの市に何ぼあったのか、調査したのであったらそのくらいのことは出ておるだろう、こういうことから質問をしておるのです。
  267. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま読みましたような情報がどこで何件ということは正確に記録してございません。ただ特にそういう例があったという報告が参っておるということでございます。統計はとってございません。それから民商が税務の調査に対して非協力であった、あるいはいやがらせをしたり妨害をしたという例はもう枚挙にいとまがございませんので、ここで一々申し上げるというのも繁雑かと存じます。
  268. 卜部政巳

    ○卜部委員 二十八日の委員会答弁は、繁雑だとか何だとかいうことではなくて、的確に調査をした結果に基づいたという確信に満ちた答弁をされておるのですね。そういうようなことになりますと、いま言ったように繁雑であると言われても、部分的には、率直に申し上げてたいへん民主的な――民商が共産党に指導されておるという民商だけではないところもあるのですよ。そういう点も私はあわせ知りたいと思ってその問題を出しておるわけなんですから、繁雑だとか何とかということじゃなくて、調査をしてなければ調査をしてないということをこの委員会の中ではっきりしていただければいいと思うのです。この間の委員会はいかにも自信に満ちたようなかっこうで、十ぱ一からげで報告されておりますので、さらにその点の答弁がなされておるから私は申し上げておるような次第です。どうかひとつその点で御答弁を願います。
  269. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 私はどこの民両がどういう政党によって指導されておるかというようなことは深く立ち入って調査はいたしておりません。ただ概数的に見てこう言えるという程度のことでございます。しかしながら全国各地の民商、ところによっていろいろニュアンスは違いますけれども、それらの過去の言動等から帰納的に見て、私は確信を持ってこれらの民商が反税的な動きをしておるということをお答えいたしておるのであります。
  270. 卜部政巳

    ○卜部委員 その点につきましてはまた触れることといたしまして、たまたま長官のほうで述べられた内容がありますが、その内容の中でも私特に心配になりますのは、いろいろとそういう形で脱会をしたのでありますという報告があります。これはエコノミストあたり、さらには週刊誌あたりにも書いてあったのですけれども、現実に私の知人の中にも脱会を強要された、それであるからこそ会費をこそっと届ける人がおるというような状態があるのであります。ただ本人が自発的に脱会をしたものなのか、その点についての圧力が加えられたものなのか、これはかなり疑義があるところでありますが、そういうことが事実ないとするならばないでけっこうです。その点ひとつはっきりしていただきたいと思います。
  271. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 税務の機関といたしましては、特定の団体に加入あるいは脱退を強要するということは、仕事の性質上そういうことはやっておりません。ただわれわれとしては民商が現在行なっておる――これも地区によって違いますが、行動というものをはっきりいたしまして、そういう反税的な行為があるような土地の民商につきましては、そういう行為に加わらないようにということを納税者一般の方々にお願いをいたしておるのであります。
  272. 卜部政巳

    ○卜部委員 お願い程度でもって加入者が脱退をし、こそっと会費を届けていくというようなことは、私は常識的に考えてもないことだと思うのです。そこにはやはり、お前は民商に入っておれば不利になるだとか、さらにはそういう点については共産党と同じように思われるから脱退したほうがいいのではないかという、これはあなた方がかけなくても当然かけてくる周囲のそういう雰囲気をつくり上げてきた間接的なあなたたちの強制があったのではないか、こういう点を私は指摘したいと思うのですが、どうでしょうか。
  273. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 会費をこっそり納めに来たという週刊誌の記事は私読みました。読みましたが、一体そういう方が事実おられたかどうか、あるいはいままで一緒にやってきたのにどうも一ぺんに抜けちゃぐあいが悪いという心理なのか、ほんとうに民商の活動に対して賛成をしておって、一応表面は抜けたようにしておるけれども実際は抜けたくないのだという意思表示のためか、どういう心理でそういうことなさったか、あるいはそういう事実があったかなかったか、これは私存じません。
  274. 卜部政巳

    ○卜部委員 私は率直に言って、民商の役員の中には私たちに対しても反動呼ばわりをしたり、さらには反共主義者だとなど言ってわめく連中もいます。しかしながらその中に結集をされておる人々には、かなり、かなりというよりも、ほんとうに良心的であり、同時にまた真剣に自分たちの生活を憂えるあまりに入っておるという方が多いのであります。それは私たちの県の場合のことを指摘をするのですが、そうした場合において、ただ民商のそういう一部の幹部だけを対象にした攻撃のしかたは当てはまらないだろう。むしろその人々がいわゆる会合の中でも言われておりますけれども、税務署の方々につっけんどんにぶつかっていったり、さらには所得を少なくして初めからやっていくということはおかしいことではないか、それよりもむしろそういう点を権威のある会としての方向に持っていってはどうかというようなことが、会の中で独自に突き上げられ、同時にまた強調されてきてこそ初めて、そこに反税云々というものがなくなってくるだろうと思うのです。それに攻撃をしかける。そうしたときに当然そういう連中が脱落をしていくということにはならないのですよ。その面におきまして、私は社会党員でありますが、一番最初はあえて民商の肩を持ったような形で発言をしましたが、しかし帰するところは、そういう点をあまり露骨な攻撃、同時にまたそういうような村八分におとしいれるような姿ではなくて、むしろ強力な指導機関があってしかるべきではないのか。民商にたよらなければならない人々に対する問題とは別に、強力な一つの指導機関というものをつくり上げる必要はないのか。申告会だとか、さらには先ほど田中委員のほうから言われましたところの貯蓄組合などというものがありますが、これにはかなりまだ現実に問題がございますが、そういうものを別個にいたしまして、もう少し強力な機関をつくることが必要ではないか、この点を一つ指摘したいと思いますがいかがでしょう。
  275. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 お答えいたします。  私も全く同感でございます。民商の指導者が民商をどういうふうに指導し、どういう行動を会員にとらせているかということと、民商の会員そのものが一体どういう考えでついていっておるかということは区別をしなければならぬと思います。先ほどもお話に出ましたように、私たちは何も民商に対して脱会を強要するとかなんとかということでなく、やはり従来民商が非常に低額申告をいたしております。同じ人が民商に入った翌年から申告所得額が半分になるというような例が枚挙にいとまないのでございまして、そういう面でやはりおかしい。それから税務の執行に対する態度、こういうものについても非常に不自然なところがある。何か共通した指導によって行なわれておる。現象間に共通した現象があらわれておる。こういうところから、先ほど申し上げたような判断をいたしておるのでございます。しかし問題はやはりそういう民商なり民商会員に対する徹底した調査だけでは問題は解決いたしませんので、先ほどこの委員会で出ましたお話のように、私たちはやはり中小企業、小規模納税者の方々に対して、紀帳なりあるいは決算なり申告なりというものを十分指導する、そしてまたこれらの方々の税務の相談に乗ってあげるという態勢をとる必要がある。こういうことで昨年秋から青色申告会、税理士会、国税庁の間で協定を結びまして、現在各局各税務署それぞれの管内でもって、その地のこれらの機関と協定を結びつつあるのであります。なお、昨年の五月以来、いわゆる毎月五の日、五日、十五日、二十五日という日には、全国の税務署納税者のために開放いたしまして、匿名の税の相談に当たらせておるのであります。私たちはやはりこういう二つの施策が車の両輪となって歩んでこそ、初めて税務行政が軌道に乗るという信念を持っておるのであります。
  276. 卜部政巳

    ○卜部委員 先ほど申告会や税理士会の問題、さらには税務相談所の問題も出たり、さらにはこれも田中委員のほうで問題を提起いたしました貯蓄組合の問題も出たわけですが、現実の問題として、税務相談所さらには貯蓄組合というものについての一般の認識と、さらに目というものが冷ややかであるということは何としても指摘できると思うのです。そこで私は先ほど長官がおっしゃられましたように、民主的な形の中で、大いに困っておる人々、さらにはわからない人々が、自由な立場でその意思が反映できるという会の指導機関というものをつくらないと、率直に言って税務署に行けばがたがたふるえておるという現状があるから、こういう民商にたよらなければならないという問題も出てきておるのではないか、こういうふうに考えますので、その点の民主的という意味の一つの指導機関というものを強めていただきますように、特にいまの問題が出ましたように、さらに長官もその点を強調されましたように、その面における何と言うのですか、重点指向を私はお願いいたしたいと思います。  それと同時に率直に申し上げて、やはり税法自体というものが非常にむずかしいのではないかと私は思うのです。長官もこの間の委員会でおっしゃられておりましたのですが、この点についてエコノミストあたりにもちょっと出ておりましたけれども、合算申告書などというものは、私もちょっと見せてもらいましたが、こういうものも実際は税務署の係長自体もわからないというようなこともあるわけです。これは笑いごとではないのです。そういうことになりますと、国民自体これはもう全然わからないというのはけだし当然だろう、こういうことを思うのです。率直に申し上げて、これはことばはきついかもしれませんが、これは税法が悪文であり、かつ難解な言い回し方をしておる、こういうことにあろうと思うのです。そうした面で難解な言い回し、さらには悪文であるという立場から、通達等がどんどん出ておるということを私は聞いておるわけですが、こういう通達がこのごろはどうも非公開、未公開になる、こういうことが間々あらわれるわけなんでありますが、この点はどういうような意味で未公開にするのかをお伺いいたしたいと思います。
  277. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 お答えいたします。税法がすこぶる難解である、そのために納税者の方々にとって理解しにくい、近づきがたいものになっておるということは事実でございます。これははなはだ遺憾でございますが、事実でございます。そこで国税庁といたしましては、従来税法をわかりやすく書いたパンフレット、チラシ等を一般に配布をいたしておりますけれども、しかし何と言っても今度はそのパンフレットそのものがむずかしい、ことにこれを最初のページから最後のページまで読むということは、なかなか根気がそこまでは続かないというようなことでもございますので、それで先ほど申し上げましたように、税の相談日というものを設けて、そして納税者の方の不満なり疑問なりというものに、そのものずばりでお答えをする、税の相談日には、たとえば納税者の方は自分の管轄税務署でなくても、どこの税務署へ行かれてもかまいません。また来られた方に対して住所氏名は問いません。それから応接をいたしますのは係長、課長という役づきの責任者が応接をいたします。これはあらゆる事務に優先をしてその日には相談に応ずる、こういう体制をとっておる次第でございます。  また通達の問題でございますが、御承知のように、この通達は大まかに言って二種類に分けていいものと思います。一つは法令の解釈に関する通達であります。これは庁としては公開をいたしております。もちろん通達が要らないで、法令そのままで万事が実行されていけば一番けっこうでございますけれども、非常にたくさんの事件をかかえておって、その一々に通用するというわけには法令だけではまいりません。そういう意味でその法令の解釈を通達として流しております。これはこの委員会にもお配りをしてあるはずでございます。公開でございます。  もう一つの通達といたしましては、いわゆる執行通達がございます。税務機関が税務行政を執行するについての通達でございます。この中には大まかに言って二種類に分かれるかと思います。一つ税務署の機構なりあるいは税務職員の服務に関すること、これは一般の納税者の方々には直接関係がございませんので、公開はいたしておりません。もう一つ問題なのは、税務の執行のやり方あるいは調査の方法等についての通達でございます。これは公表をすることによって申告納税制度の趣旨に沿わない、あるいはこれを公表することによって脱税を誘発するおそれのあるもの、こういう種類の執行通達についてはこれを秘扱いといたしております。
  278. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま長官のおっしゃられました中に二つの面がある、これは私も十分理解をしておるところでありますが、少なくとも通達というのは上部機関から下部機関に対して、さらに各職員に対しての意思統一がされていく、こういう面では私は了とするのですが、たまたまその中には事実的には法規の性質を持つというような通達もありますね。法規の性質を持つという通達も私はあると思うのです。   〔委員長退席、臼井委員長代理着席〕 もしないということでありましたら、いまから具体的な問題を提起をいたしますが、そういうかっこうのものが出ておるのでありますから、そういうようなものがあるならば、むしろ官報等に公示をする性格のものであって、何も非公開にする必要はないのではないか、私はこういうように思うのですが、いかがですか。
  279. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま御指摘になりました法規の性質を持つ通達というのは一体何をさしておっしゃったのか私どうもぴんときませんが、しかしながら通達はただいま御指摘のように上部機関の下部機関に対する訓令でございます。したがって一般の納税者の方々をこれによって拘束するということは理論上あり得ません。しかしながら実際において国税局なり税務署というものが職務命令に従うというその結果として、一般の納税者の方々に影響があるということは事実でございます。そこでわれわれとしては通達を出します場合には慎重に検討をいたしておるわけでございます。もちろんこの通達が法令に違反しておるならば、これはその限度においてその通達が効力のないことは当然でございます。
  280. 卜部政巳

    ○卜部委員 非公開の問題に関連いたして、秘密通達というのがございます。これはかなり問題があるところもあろうと思いますが、なぜ秘密通達にするのか、さらにまた秘密通達の内容、どういうものを秘密通達にするのかを質問したいと思います。
  281. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、秘密通達にいたします理由は、これを公表いたしました場合には、現在の税法の基本精神である申告納税制度の趣旨に沿わないもの、あるいはこれを公表いたしますことによって脱税を誘発するおそれのあるようなものでございます。例を申し上げますと、標準税率表とか、あるいは青色申告を取り消します場合の基準であるとか、あるいは重加算税をかけます場合の基準であるとか、こういうようなものでございます。
  282. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういたしますと、人権にわたるような問題を秘密通達として出すというようなことはないわけですね。もしあるとすればそういうものを撤回する、こういうことになるのですね。
  283. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほども申し上げましたように、私は、どの通達をさしておられますのか、その辺がはっきりいたしませんが、人権に関する問題を通達でもって命令するということはちょっと考えられないと思います。
  284. 卜部政巳

    ○卜部委員 国税庁長官並びに国税庁が出すのではなくて、地方の国税局民が出した、もしそういうものがあれば処分をしますか。
  285. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 もう少しはっきりおっしゃっていただかないとどうもどういうものなのか、お答えのしようがございません。
  286. 卜部政巳

    ○卜部委員 たとえて申し上げますと、映画の場合、ソビエト映画が上映される、そういう場合、いわゆる入場税の課税と同時に立ち会い検査、さらにその実績を警察に報告をする、こういうことでありますが、税務署は警察に報告をする義務があるのでありますか。
  287. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 警察に報告をしろというような通達は私出しておりません。私の想像しますところでは、労映、勤労者映画協議会でございますか、労映あたりが自己の上映いたします映画についての入場料を払わないということについて、税務署との間にトラブルがあることは事実でございまして、その場合にただ払わないというだけでなく、入場者の数等を調査にいきました税務官吏に対していやがらせあるいは脅迫等を行なう、こういうことが方々で実際行なわれております。その際に身に危険があるような場合には、警察に連絡をとるというようなことはやっております。ただ事前に報告をしろというようなことはやっておりません。
  288. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういたしますと、そこに上映されておる映画並びにそれに参加をした人々の名前、顔等を見ながら、だれだれがこの映画に来たなどということを警察のほうに連絡をすることはまかりならない、そういうことがあってはならないということでございますか。その辺はどうでしょうか。
  289. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 だれが入湯したかということは問題ではございませんので、先ほど申し上げましたように、入場税を納めない、申告もしない。また納付を慫慂しても入場税の納付もしない、そういうようなところに対して調査に行った場合に、その調査に対して非常に危険を感ずるという場合があるのでございます。たとえば一、二例を申し上げますと……。
  290. 卜部政巳

    ○卜部委員 それはいいです。そういう場合は話としてはわかりますが、ただそういうような状態ではない場合に、入場者の中にはだれだれがおった、何名その幹部が来ておった云々ということを警察にもし通報しておったという現実の問題があれば、長官としてはそれを処分するかどうかということです。
  291. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そういうことをしておるところがあるかないか私は存じませんが、しかし処分ということになりますと、国家公務員法に明定せられておる事由がなくては懲戒処分にすることができません。もしそういう公務員法に定められておる条項に該当いたしますならば処分をいたします。
  292. 卜部政巳

    ○卜部委員 私は国家公務員法の問題ではなくて、いまの状態をとらえて質問しておるのですから、そういう場合はどうかということなんです。
  293. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 問題は事実がどうであるかという問題と、それからもし事実であったとするならば、どういう趣旨からやったかという問題、こういうようないろいろな問題を突きとめまして、その上で問題がはっきりいたしませんと、一体懲戒の事由に該当するやいなやということは、ここの席で抽象論としては申し上げられません。
  294. 卜部政巳

    ○卜部委員 どうした状態でやったのかということは、これはどうした状態といったって、立ち会い検査に行った、たまたまそういう状態の中で顔も知り、さらにまた名前も知っておるから、これを報告したということになると思うのですよ。だからそのような状況の中でどうなのかということを私は言っておるのですから、その点を調査しなければわからないということは、私は当たらないと思うのですが、どうです。
  295. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、調査に当ってやはり身の安全を守ってもらうために、職務を完全に執行するために、警察等の機関と連絡をとっておることは事実であります。したがって、その連絡の際に一体どういう話が出たか、たとえばきょう行ったら、こういう人がこういうことを言ったとか、ああいうことを言ったとか、これは連絡の内容として当然そういう事実は起きてくると思います。これはやはりやむを得ないことだと思います。
  296. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、 この映画「鉄鋼はいかにして鍛えられたか」及び「黒い潜水艦」の上映に対する云々ということがあるわけでありますが、そうした面において実績を報告する、同時にまたそのことについては連絡をするという通達文書がもし流れた場合は、国税庁長官としてはどういう取り計らいを行ないますか。
  297. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そういう種類の映画だけでなく、いかなる映画でも同じでございますが、申告をし納税をしていただいておれば、これはもう問題とするに足りません。ただ申告もせず、納税もせずということになりますと、調査の必要が起こりますので、その調査に付随して起こるいろいろな連絡ということはこれまた当無必要かと思います。
  298. 卜部政巳

    ○卜部委員 わかったようなわからないような御答弁ですが、もしそうした場合における実績を警察のほうに連絡をするというようなことがあった場合に、それは許されることかどうかということを私は聞いておるわけですよ。
  299. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまも申し上げましたように、申告もされておらない、納税もされておらない、したがって、調査の必要がある、その調査のためにいろいろな障害が予想される場合に、関係機関と協力をしてもらう、そのための必要な連絡というものは当然われわれの職務の一端としてやらなければならぬと思います。
  300. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういう事態が発生するかしないかはまだわからないのでしょう。その前に連絡をするということはどういうことですか。それはもちろんそういうことが予想されるから連絡をしておいて云々という問題は一応はわかりますが、しかし実際問題として、そういう危機――危機といえばおかしいですが、そういうことが予想されないのに、そういうことを初めから想定して、いまの長官のお話ということになりますと、これはかなり問題があるのじゃないかというふうに私は考えるわけなんですが、その点明確にしていただきたいと思います。
  301. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 税務当局といたしましては、ソ連映画であろうとアメリカ映画であろうと同じでございます。結局申告なり納税なりをしていただいておるかどうかという問題でございまして、いまおあげになりましたような例の場合には、おそらくそれを上映いたしております機関が過去において申告もせず、納税もしていないという実績が積み重なっておるものと私は推察をいたします。
  302. 卜部政巳

    ○卜部委員 推察をしておるから連絡をしたということなんですか、端的にお答えを願いたいと思います。推察をするから警察に連絡をしたのか、さらにはそういう点についての危惧を感じたから連絡をしようとするのか、この点を明確にしてもらいたいということを私は先ほどから述べておるのです。
  303. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 具体的に申しますならば、過去において税務署から何回申告なり納税なりの慫慂をいたしてもこれに応じないというようなことの実績が積み重なっておりますと、そういう特殊の団体に対しては調査をしなければならぬ、調査をするについて過去においていろいろな脅迫なりいやがらせなりというようなものがあるような団体に対しては、関係機関の協力も仰がなければならぬということでございます。
  304. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、特殊の団体に対してはそういう連絡をするということなんですか。そういう脅迫めいたことをやるような団体が過去にあり、かつまたそのような団体が現実にそういう上映をするから連絡をするということなんですか。
  305. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 そのとおりでございます。
  306. 卜部政巳

    ○卜部委員 それで私はこの問題に触れて特にお願いをしたいのですが、とにかく労音の問題もしかりでありますが、いま長官がおっしゃったように、特定の団体ならいいのでありますが、拡張解釈をどんどんと広げられてくるという危険性が私はあろうと思います。そうした面で少なくとも税務署のほうといたしましては、そこに民主的な団体が相つどっての上映を行なう場合に、暴力が必ず発生するなどという想定を行なってもらうということについては、かなり問題があると思います。そういう点について、私はニュース・ソースはいろいろどこからもこういう秘密文書が入るようになっておりますが、今後もしそういうかっこうで拡大解釈をされた通達、秘密文書が出るということがありましたときには、ひとつ国税庁長官にきつくその責任を迫りたいと思いますが、その点はだいじょうぶでございますか。
  307. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 税務機関は申し上げるまでもなく、無色透明、中立でなければつとまりません。したがって、上映する映画がどこの国の映画であるかということはわれわれの関与すべき性質のものではございません。ただ、上映するからには、入場税法規定する条件に該当したならば、入場税を納めていただかなければなりません。そういう点ではっきりきちんきちんと申告もし、税金を納めていただくということならばわれわれは何も申しません。
  308. 卜部政巳

    ○卜部委員 入場税の問題でございますが、たまたまそういう御答弁でございますから、労音の問題に触れてまいりたいと思いますが、一月一日から今度は常設映画館の切符と同様に課税をするということが通達として出され、かつ現実に実行される段階にあるわけなんですが、ただ人格なき法人とでもいいますか、労音に対するこの問題を、どういうふうに入場税としてお考えになるのかをひとつ明らかにしてもらいたいと思います。
  309. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 入場税法では催しものの主催者は入場税を納めることに相なっております。それが法人であろうと、個人であろうと、人格なき社団であろうと、問うところではございません。したがって、たとえ人格なき社団でございましても、会費なり入場料金をとって催しものをいたします場合には、これに対して入場税を納める義務がございます。
  310. 卜部政巳

    ○卜部委員 そうすると、後援会などは法人ではございませんか、法人格を有する場合があるでしょう。
  311. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 どうもどういう講演会か存じませんが、かりに講演会という名前がついておりまして講演が中に入っておりましても、そこで映画を上映するなり音楽を聞かせるなりして料金を取っておれば、これは講演会という名前はついておりましても入場税の納付義務がございます。
  312. 卜部政巳

    ○卜部委員 それはたとえばいま申し上げたような後援会であろうともなかろうとも、そういうものが催されておる場合には必ず取るということは間違いないですね、それはよろしゅうございますね。
  313. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、そこで講演だけをやるというのではなくて、それに催しものがくっついておって行なわれる場合には、名前は講演会ではあっても入湯税  の納付義務がございます。
  314. 卜部政巳

    ○卜部委員 後援会が主催して民芸大会などと銘打ちまして、そこにプロが参加をしてそこの人たちに見せる、こういう場合にもやはり対象となりますか。後援会の問題ですとやはりおわかりにくいと思いますが、たとえば選挙区に帰りますと何々後援会というのがございます。そういうことでございます。
  315. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ちょっと後援を私思い違いをいたしておりましたが、たとえそういう特定の方の後援会でございましても、入場料金を取って催しものをおやりになるということになれば、納税義務があるものと解釈をいたしております。ただし、先ほど申し上げましたように、後援会で講演だけをおやりになるという場合は催しものではございません。
  316. 卜部政巳

    ○卜部委員 では、その点については、ただいまの御答弁に対して私は不満足でありますが、しかしこの点について私は私なりの見解に基づいて一ぺん実行してみたいと思います。そしてその中で税務署がどういう対処をするのか、その点で私はあえて今度は実行段階で行なってみますが、その場合と労音との措置がはなはだ違っておるということでありましたならば、私はその中でまた追及をしていきたいと思います。  そこで、たまたまいま国税庁長官のほうから言われましたが、標準率表とそれから効率表、こういうものにつきましては秘密文書にすると、こうおっしゃられたのでありますが、これをなぜ秘密にするのか、この点をお伺いしたいと思います。先ほど、これをやりますと脱税に関係をするとかなんとかいうことで、その名前が出てまいりましたけれども、そういう面ではないと思うのです。その点で、ひとつなぜそういう点を秘密にするのかをお伺いしたいと思います。
  317. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、標準率表あるいは効率表を公表いたしますと、これは申告納税制度の趣旨に沿わない、公表そのものが現在の制度の趣旨に沿わないということを申し上げておるのでございます。かりに標準率表でもって所得率が六〇%という業種があったと仮定いたしますその場合に、それよりも以下の所得の方は、どうしても税務署を通るためには六〇%まで上げて申告しなくちゃなるまいというようなことをお考えの方もございましょう。また、それよりも以上の所得率を持っておられる方も、まあ税務署はこの程度で通るだろうから六〇%までにしておけ、こういうこともございましょう。そういうことになりますと、現在の申告納税制度のもとにおきまして、実際の納税行の所得を正確に申告をしていただくという現在の制度の基本的な趣旨には沿いませんので、これは従来からも秘密にいたしておるのでございます。
  318. 卜部政巳

    ○卜部委員 これは三十三年に秘密漏洩の問題で問われた問題だと思うのですが、さらにその点についてまだ裁判が行なわれておるところでありますが、この点について当局のほうとしては行政上の公表はまずい、こういうことでありますけれども、国税庁自体の見解としてはこれは資料だ、こうおっしゃっておるのじゃないですか。それと同時に、どんずばりそれで課税されてくる、こういうような状態であれば、公表しても何らはばかるところはないのではないでしょうか、その点はどうでしょう。
  319. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 これは税務署納税者の方の調査をいたします場合に、たとえば白色のほうでございまして帳簿も的確な帳簿が備わっていない、また経費についても的確な御説明がしてもらえないというような場合におきましては、やはり他にたよるべきものがございませんので、標準率いわゆる平均的なその業種の所得率というようなものを執務の参考にいたしておるのであります。そういう意味におきましては、これは発表してもいいじゃないかというおことばではございますけれども、これを発表いたしました場合には、これによって税務署課税をするのだというような誤解を受けて、そして先ほど申し上げましたような正直な、正確な申告がしていただけないという弊害が起きてくるのでございます。
  320. 卜部政巳

    ○卜部委員 これは国税庁長官どうなんですか、シャウプ勧告のときにはこれを廃止せよということでございましたね。その点について率直に申し上げるならば、この問題については国税庁自体この点についての自信というものが計数的にないのじゃないですか、この点はどうなんですか。
  321. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 シャウプ勧告ではやはり納税者は正確な記帳をとって、その記帳に基づいて申告をすべきであるということは確かにございます。しかしながら、すべての納税者の方々がいまの青色申告者の場合のように正確に記帳をとられて、そうしてその記帳に基づいて申告をされておるというものばかりではございません。   〔臼井委員長代理退席、委員長着席〕 そういう場合に、先ほど申し上げましたように、調査のよりどころがない場合には、やはり標準率表というようなものを執務の参考にせざるを得ないのでございます。
  322. 卜部政巳

    ○卜部委員 私が申し上げておりますのは、やはりシャウプ勧告のときに廃止を勧告された、しかし、また同時に、国税庁としましてはさらに当時公開を目途としてこの問題を鋭意作成に努力をしたけれども、結果的には統計学者から反対をされた、いわゆるその基礎数字なるものがでたらめだということから、これは国税庁の威信にかかわるということで未公開に踏み切ったということを私は聞いておるわけです。聞いておるというよりも、そういうことのエピソードとして書かれておる本を読んだことがあるわけでありますが、事実そういうような自信のないもの、それだけに、私はいま申し述べられておる国税庁長官の発言は、単にそういう基準云々というようなことではなくて、むしろそうしたところにでたらめな計数が羅列され、基礎となったために公開を渋っておるのではないか、このように考えるのですが、いかがなものでしょう。
  323. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 御指摘ではございますが、そういうのは事実ではございません。もちろんこの標準率というものは、たくさんの同じ業態の方々の調査をいたしまして、その実地の調査の平均をとってございますので、必ずしも個々の納税者の方の所得率を正確に反映しておるということは申せません、あるいは上であったり下であったりすることはございます。しかしながらそういう意味においては、よりどころとして現在採用し得る最も確信を持っておる調査の方法はとっております。おりますけれども、これはもちろん神さまではございませんので、いろいろ学者等で異論のある方もございましょう、しかしながらそれで自信がなくて隠しておる、秘密にしておるというものではなくて、先ほど申し上げましたように、やはり公表することが申告納税制度の趣旨に沿わないということから、秘密の通達にしておるわけでございます。
  324. 卜部政巳

    ○卜部委員 そういたしますと、これからもそういう面ではどんずばり課税をしてくるわけでありますから、公開をしたらどうかという私の意見に対しましては、もう絶対にこれは秘密だ、こういうことでありますね。
  325. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいまの段階では公開をするつもりはございません。
  326. 卜部政巳

    ○卜部委員 私たちが見せてくれと言っても、これは見せられないわけで  すか。
  327. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 せっかくのおことばでございますが、いままで国会でこういう議論が出たこともございますが、これは公開をお断わり申し上げております。また裁判所に対しても同様でございます。
  328. 卜部政巳

    ○卜部委員 では角度を変えまして、これは平林委員の、ほうから委員会の中で質問をされておりましたのですが、中小企業の合理化機械特別償却の問題についてひとつ御質問を申し上げたい、こういうように考えます。  そこでこれは過去にさかのぼってはなはだ恐縮でありますが、これは租税、特別措置法十一条さらには四十三条、こういう問題でございますが、同じ機械におきましても、大企業とさらに中小企業との間にかなりの格差――格差ではなく下請泣かせの特別償却が行なわれておるという、このような現実がございますが、この点に対する今後  の措置をひとつお伺いしたいと思います。
  329. 泉美之松

    泉政府委員 御質問の下請泣かせと  いう御趣旨がよくわかりかねるのでございますが、租税特別措置法規定による中小企業用合理化機械、この特別償却の対象となる中小企業用合理化機械につきましては、重要産業用合理化機械と違いまして、中小企業が使用いたします合理化機械というのは、その性能の点におきましても、精度の点におきましても劣るのが普通でございます。したがいまして、そういった大企業を中心としたような重要産業用合理化機械ほどでなくても、中小企業が使っておる、しかも中小企業がそれを使うことによって生産コストが非常に下がるというような合理化の機械につきまして、特別償却の対象にするようにいたしておるのでございます。この特別償却の対象にする機械につきましては、それぞれ中小企業の監督官庁であります通産省から、こういう機械が今度新しくできたから、それを特別償却の対象にしてほしいというような御要望をいただきまして、それを検討いたしまして取り入れるべきものを取り入れるというやり方でやってまいっております。ただ、昨年まではこういう問題があったわけでございます。それは一つは、昨年までの間は、下請企業が使う中小企業用合理化機械のうち、自動車産業の下請業者の場合には、それが中小企業用合理化機械として指定されておるのでありますが、そうでない、たとえば工作機械の下請業者の場合には、ものによってその対象になっておらなかったというような事例があったのでございます。しかしこれは申し上げるまでもなく、おかしいではないか、自動車産業の場合であろうと、工作機械製造業の場合であろうと、そういった下請業者が同じような機械を使用しておる場合に、片一方に認めて、片一方に認めないということは適当でないということを申しまして、昨年そういった点は全部改めたのでございます。したがって、その点からは、下請業者がそういう意味で適用の条件が違うというようなことで困るということはなくなっておるはずでございます。
  330. 卜部政巳

    ○卜部委員 いま局長のお話ですと、重要産業におけるところの機械と、中小企業が使うところの機械とは異なる、こういうことでございました。全く同じ機械をもし使っておれば、どういうことでしょう。
  331. 泉美之松

    泉政府委員 同じ機械を使っておりますれば、それは重要産業用合理化機械に該当して、重要産業というのは業種を特定いたしておりますが、その業種に該当しますれば、これは資本金の大小にかかわらず適用になるわけでございます。ただ、中小企業用合理化機械と申しますのは、こういう特別の中小企業用合理化機械である場合には、特に資本金一億円以下の企業者だけに対して適用する重要産業用合理化機械は、重要産業を営んでおれば、資本金の大小にかかわりないというのでございます。
  332. 卜部政巳

    ○卜部委員 主税局長のほうから、いまの自動車の問題に関連をいたしまして、そうした同じ機械を使っておって云々ということばの中で、そういうものは全部是正をいたしました、こういうおことばでございましたが、そのように確認をしてよろしいのでございましょうか。
  333. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年までは自動車産業の下請業者とそのほかの産業の部品の下請業者との間で若干違っておったのでございますが、その点は私どもとしては全部是正したと思っております。
  334. 卜部政巳

    ○卜部委員 現実の問題といたしまして、いろいろとそういう問題が出ておるわけですが、いま主税局長からそういう力強いおことばがありましたので、いま陳情がなされ、かつ直税部長のほうなどに出ておりますそういう問題は、すべてそういうように確認をされる、そういうことで私は確認をしてこれを終わります。この点について私はさらに主税局長からの答弁を求めようとはいたしません。確実にそういうことを御答弁になったのでありますから、いろいろといままで折衝した問題はここに解決をしたというふうに解釈をいたします。それでよろしゅうございますね。
  335. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、昨年中小企業用合理化機械の機種を選定いたしますとぎきに、いま申し上げましたような措置をとったのでございますが、それ以前に指定されておる機械につきまして問題がいま起きておるということをお聞きしております。昨年指定いたしました機械につきましては、そういうふうに措置をとっておるのでございますが、いわばその前に指定されている機械につきまして若干トラブルが起きておるように聞いております。
  336. 卜部政巳

    ○卜部委員 トラブルが起きておるようでございますが、いま主税局長が力強くお誓いなされたように、そういうものもすでに確実に消化をする、消化をするということばは適当ではありませんが、解決をする、こういうことでよろしゅうございますね。
  337. 泉美之松

    泉政府委員 私が申し上げたように、昨年改正いたしましたので、それは昨年の七月一日以後取得したものから適用になるわけでありまして、それ以後に取得したものについては問題はないわけでございますが、それ以前に取得したものにつきまして問題があるわけでございます。それはなお解決いたしておらないわけでございます。
  338. 卜部政巳

    ○卜部委員 同様なものがなぜ解決をしないのでしょうか。そのことは私は触れません。触れませんが、しかし、いま主税局長もおっしゃったように、昨年以前の問題が残っており、昨年から今日にかけての問題は解決をしておるというのは、若干問題が――問題と言うよりは矛盾がありはしませんか。その点については、むしろ解決をすべきだと思うのですが、いかがでしょう。
  339. 泉美之松

    泉政府委員 法規の性質といたしまして、昨年七月以降取得したものにつきましては、昨年改正した規定が通用になるわけでございますが、その昨年改正を行ないました前に取得した機械につきましては、その改正規定適用にならぬわけでございます。したがいまして、その前に取得したものにつきましては、先ほど私が申し上げましたように、自動車産業用の下請機械の場合なら特別償却の対象になったけれども、そうでない下請業者の場合には、特別償却の対象にならなかった事例があるわけでございまして、その事態は、昨年七月以後取得したものについては解決したのでございますが、それ以後に取得したものについては、なお解決しないということでございます。
  340. 卜部政巳

    ○卜部委員 ですから、私は故意に具体的な問題に触れまいとしておるのです。最高責任者である主税局長が――最高ということはない、大臣がおられますから。しかしながら、少なくともそういう発言をしていただいたので、私はこれで打ち切ろうと思いましたけれども、しかしながら、実際問題としてそういうような昨年以前の問題と今日の問題の中で、解決されないものと解決されたもの、それが同じものであるということについては、やはり矛盾を感ずるだろうと思うのです。そうするならば、少なくともそういう問題が同性質のものであるならば、同時に早急に解決をする必要があるのではないか。この点について、現在、じゃ解決されなければどのような状態のもとにあるのか、同時にまたそういうような下請泣かせということばを私は申し上げましたが、これは現実に下請泣かせなんですから、その点をひとつ私は御質問をしたいと思うのです。
  341. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、法規の性質からいたしまして、改正いたした後取得したものに適用するという規定にならざるを得ないのでございます。そこで事柄が同じならば、日にちが違うということだけでそのような取り扱いを異にすべきかどうかということになりますと、私どものほうでは、法規の性質上そういうふうにならざるを得ないのでございますが、実際課税の立場に立った場合にどう取り扱うかということになりますと、それは国税庁のほうの問題でございますので、国税庁のほうからお答えいただきたいと思います。
  342. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 法規が改正されました場合に、どこまでさかのぼるかという問題かと思います。あくまでも法規が改正されました場合、ことに最近のように税法改正されますと、やはり改正されましてその改正効力が発生しました以後にこれを適用するというのが原則でございまして、かりに、改正前にその当時の法令を信じて申告をされた方、あるいは改正前の法令ではだめだということであきらめられた方、そういう方たちとの間の不均衡、不公平という問題も生じます。どこかでやはり一線を画さなければならない性質のものだと存じます。
  343. 卜部政巳

    ○卜部委員 その問題についてでありますが、そういう形の中では具体的な問題に入っていかざるを得ないのですが、現在その問題をどう対処しようとしておるかということをお答えを願いたいと思います。
  344. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 ただいまの問題につきましては、庁のほうで実情を調査をしております。この問題は一応通産局あるいは府県のほうで該当するかどうかという証明書を発行することになっております。ただいま問題になっております問題といたしましては、この証明書が出ておるものでありまして、こういった点につきまして、この証明書が出たということにつきましてこれを信じて措置をされたという方が一方にあるわけであります。また、ただいまの場合には、告示の内容につきまして、なぜこの証明書を出したかという問題になるわけでありますが、そこに若干の法文の解釈と申しますか、そういった解釈についてやや相違があったという問題もあると思うのであります。また、他方におきまして、法文の解釈を非常に厳格にいたしまして、そういった指導をしておる通産局あるいは府県もございます。こういったものにつきまして、なるべく取り扱いが不公平にならないように、その共通点の発見に私どもとして努力いたしておるわけでありまして、この点もうしばらく時間をかしていただきたいと思います。
  345. 卜部政巳

    ○卜部委員 わかりました。この問題について、これは率直に申し上げて、通産省と国税庁との問題の中で若干の見解の相違、と同時に、その見解の相違では済まされない問題が残っておるように考えるのです。しかし、その問題は、ほんとうはその点を中心にして私は申し上げたいと思っておったわけでありますが、しかし、その問題で現在率直言うならば、国税庁、これは言葉はきびしいのですが、形式ばった形の中で解釈をされてずばりとやられますと、中小企業の方々が、率直に言って泣かなくてはならないという悲しい現実があるわけです。そういう点でむしろその面についての追究は省きますが、しかし、少なくともこのような特別償却の問題について、中小企業が現実に、主税局長のことばを借りるまでもなく、一昨年以降の問題については、まだこれが解決をしてないという状態の中では、同じ機械を使っておりながら、しかも同じような製品をその中からもちろん出すわけでありますが、くず鉄までも返していく状態の中では、大企業のものは先ほどのように償却が行なわれる、だけれども中小企業は行なわれないという、こういう矛盾した状態が出てきておるということを私は指摘をいたしたい、こう思います。そうした面でこの問題は早急に、しかも下請が現在の中でほんとうに日の目を見るように、私は配慮を行なった一つの結論を浮き出していただくことをお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  以上であります。
  346. 山中貞則

    山中委員長 ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  347. 山中貞則

    山中委員長 速記を始めて。  大蔵大臣が出席されましたので、引き続き質疑を行ないます前に、先ほど発表されました公定歩合の問題について大蔵大臣の発言を求めたいと思います。田中大蔵大臣。
  348. 田中武夫

    田中国務大臣 本日五時に、日本銀行におきましては輸出貿易手形の金利を除く公定歩合の二里引き上げを決定いたしました。この目的とするところは、健全金融政策をとることによりまして、戦後初めて国際通貨としての交換性を持つことになりました日本円の国際的価値の維持確保に資すること、第二は、IMF八条国移行等開放体制に入るにあたりまして、わが国経済の調整をはかり、国際収支の長期にわたる安定の基調を強固ならしめること、その第三は、当面の経済の動向、特に経済活動の推移等にかんがみ、その水準の適正化をはかり、国内経済の健全な成長に資すること等が考えられるわけであります。なお、時期が年度末でありますし、中小企業の問題等もありますので、池田総理大臣は慎重かつ細心の配慮を強く要望されておったのでありますが、私は、中小企業対策その他に万全の配意をするとともに、金融機関の今後の配慮等を期待いたしまして、日本銀行の申し出を了としたわけであります。政府は、今後中小企業対策を一そう強化すること、金融機関もさらに金融の正常化に努力されたいこと、また産業界も今回の措置の趣旨を了解せられて、大局的見地から企業の健全経営に徹せられ、新しい一局面における日本経済の健全な発達に協力をこいねがいたいと存じておるわけであります。
  349. 山中貞則

  350. 武藤山治

    武藤委員 ただいま突然大蔵大臣からたいへん重大な公定歩合二厘引き上げという日銀の申し出を了としたという申し出が披露されました。これは日本経済全体にとって大きなできごとでありますし、私どもはこういう事態に直面しなければならなくなった責任の一半は政府にあると考えます。そこで大蔵大臣に、公定歩合引き上げについて二、三質問をしてみたいと思うわけでありますが、一つは、私どもは、今日の鉱工業生産あるいは三十八年度中の輸入の増勢、諸般の経済指標から見ても、田中さんがおっしゃっておる低金利政策、あるいは公定歩合は引き上げないほうがいいという再三にわたる国会での答弁、こういうものを聞いておりまして、どうも、日本の経済動向を十分検討してみた場合に、大蔵大臣の感覚は少々経済動向を的確に把握していないのではないか、こう私たちは実は憂慮いたして、わが党の各委員から、いろいろな角度で大臣に質問をいたしたわけであります。はたせるかな、大蔵大臣の低金利政策、あるいは公定歩合引き上げはぜひしないで済ませたいという願望は、本日の五時をもってくずれたわけであります。私は、そういう大蔵大臣の悲願であった公定歩合引き上げをしないでほしいということが、ここでくずれた最大の原因は、やはり池田内閣の経済政策の失敗にあると思うのです。そういう点で、当然大蔵大臣として私は責任を痛感しておると思いますが、あなたは一体いまの時点でどのような心境にあるか、あなたの心境のほどをまず伺ってみたいと思います。
  351. 田中武夫

    田中国務大臣 私は低金利論者というのではありませんが、日本の打つ特殊性を考えますと、原材料のない日本が、原材料のある国と、自由な競争場裏において競争をしなければならないのでありますから、その上になお金利差があるというようなハンデを幾つも幾つも重ねていくことは、日本の立場として、特に貿易依存の国である日本としては耐えられないことでありますので、できるだけ金融の正常化をはかりながら、国際金利にさや寄せをしなければならないという考えは、過去も、私は将来も、現在も変わっておりません。また、この事実は、私は日本人のすべてがそう考えておられるものと信じておるのであります。今回の公定歩合の引き上げの問題に対しましては、日銀からきょうの政策委員会の結果を報告されたわけでありますが、新聞、雑誌その他には、もう去年から公定歩合引き上げ論等が毎日のように論じられておったわけであります。しかし私は、国際競争力をつけるために、また近代化、合理化のために、中小企業の皆さんが日々努力をせられておる、その方々に対してしわが寄らないように、あらゆる施策をとるべきであるという考えを先行させておったのであります。一律画一的な引き締めということによって、努力をしてきた方々が志半ばでしわが寄るということでは耐えられないことでありますので、私はその意味で細心の注意を払いながら、御承知のとおり下請代金支払遅延等防止法の問題、また各金融機関から倒産、不渡り手形等の実態の調査、なお十二月から第四・四半期における中小三公庫に対する何回かにわたる資金の手当て、買いオペレーション等の施策を十分行ない、もう口がすっぱくなるほど国民各位に開放経済に向かっての心がまえを訴えてまいったわけであります。私はその意味で政府が確かに回り道であるというような立場をとったことに対する御議論はあると思いますが、日銀当局もこの委員会で日銀総裁が出席をされ、述べられたとおり、日銭、私たちには意見の相違もなかったわけであります。いまの状態で画一一律的な引き締め的な措置はとるべきではない、回り道をしてもこまかいところまで措置をして、あらゆる角度から配慮をした上にとるべきものは機に応じてとりますということを国会でも明らかにいたしておるわけでございます。二厘引き上げということは昭和三十六年の引き下げ前に返ったわけでありますので、私も報告を徴しましたときにはさまざまな思いがいたしたわけでございますが、しかし三十二年、三十六年のように外貨が十四億ドルまで落ち込んでいるわけではありませんし、特別借款をしなければならないというような状態でもありません。ゴールド・トランシェ分を含めて期末外貨は十九億ドル余というような高水準にあり、しかもかつて三項借款、七項借款等で三億余ドルの借り入れをした三十二年、三十六年に比べては非常に健全な状態であることはお認めいただけると思います。国際収支の帳じりに対してもいろいろ議論がございましたけれども、特別借款一億ドルを返済をしてなお十七億六、七千万ドルの政府の当初の見通しを維持しておるのであるますから、私は国際収支の不安とか、どうにもならなくなっての引き締めと考えておるのではないのであります。しかし将来再びあと戻りのできない八条国移行というこの歴史的な時期に対して日銀がとられたこの措置に対しては、いろいろな配慮も求めるつもりでございますし、政府も、私がただいま申し上げたように、各般の措置に対して誠意をもってこたえていくつもりでございますが、諸般の情勢を十分勘案し、将来のために私は日銀の政策委員会の決定を了としたわけであります。私もこれから十年、二十年の将来を考えるときに、相当勇気を必要とする事態でございましたが、いろいろなことを考えたあげくかくすることが将来のためによりよい手段であるという結論に達したわけであります。
  352. 武藤山治

    武藤委員 私どもの判断では、日銀が大蔵大臣に申し出をする時期が本日では実はおそ過ぎたと考えておったわけです。私どもはもう一月早々から日本の今日の経済政策でいくとこれはたいへんなことになる。これは早く公定歩合の引き上げをやって、さらに財政規模もそれにマッチしたようにしていかぬとえらいことになるぞということを再三忠告をしてきたはずであります。ですから非常におそ過ぎる。ところが大蔵大臣はいまの御説明の中で、日銀の申し出を了とした。心の中ではじくじたるものがある。それはよくわかります。そこで、日銀が申し出をした際に、どうして公定歩合を二厘引き上げなければならないという具体的なこれからの経済見通しについて、日銀はどのような判断をして、あなたに了承を取りつけたわけですか。先ほど非常に抽象的に、健全金融政策をとるためだ、第二には、国際的日本円の価値を維持するためだ、第三には、経済動向の水準が適正でないから、これを適正の方向に導くためだ、この三つの目的で二厘の引き上げを了承した、こう大臣は言うのでありますが、具体的に、国民全体が関心を持っておる問題でありますから、日本の現時点の経済諸情勢というものがこの三つの目的を果たさなければならないという欠陥が今日生じたわけでありますから、日銀が今日の日本経済をかく判断した、そのために二厘、本日の五時に突然引き上げざるを得なかったんだ、こういう何か積極的な経済見通し、動向、こういうものについてひとつ国民にこの委員会の席を通じて発表願いたいと思うのです。
  353. 田中武夫

    田中国務大臣 日銀からは、ただ政策委員会におきましてこのように決定をいたしましたという申し出に対して、日銀総裁の発表文を持ってまいったわけでございます。今回の引き上げは、IMF八条国移行等開放体制に入るにあたって、わが国経済の調整をはかり、国際収支の基調を強固ならしめて、円の交換可能通貨としての地位を確保するとともに、経済の一そう順調なる発展を期するに出たものである。金融機関におかれても、わが国が当面する事態にかんがみ、特に中小企業に十分配慮を加えつつ、所期の目的達成に協力されんことを要望する次第である、こういうことでまいったわけであります。  この種の問題は、御承知のとおり日本銀行が中立性を持つ中央銀行としての権能の一つでございまして、日銀が金融政策の一つとして政策委員会で決定せられたものを大蔵大臣に届けるという制度になっているわけであります。私も、この届け出を了とするにあたっては、諸般の問題に対していろいろ考えましたが、先ほど申し上げたとおり、私は必ずしもその二厘をどうしても引き上げなければならない事態であるというふうにも強くは感じておりませんが、しかし私も日銀総裁もこの席で申したとおり、八条国に移行する開放体制に向かってできるだけ細心の配慮をしながらまいるためには、金融の調整という立場においても相当回り道をして、時間もかかります、時間がかかるということになればロスもあるわけでありますが、まあある意味において、かくすることによって将来なお希望を託し得る日本の経済成長をはかるための一手段でありますので、熟慮いたしました結果、日銀がこれをやりたいという感想を表明した以上、この趣旨を了とするとともに、この公定歩合引き上げによって起こり得ると想定するような諸般の問題に対しては、細心、勇気を持った措置をとらなければならないという考えを時っておるわけであります。なお、日銀総裁とも近く会談をいたしまして、政府側の意向も、金融の中立性を侵さない限度において強く申し述べて、細心の配慮はいたしたい、このように考えます。
  354. 武藤山治

    武藤委員 しつこいようでありますが、日銀のさような決定に対して、大臣の率直な気持ちは、不満と感じておりますか、それともやむを得ない、心の中ではおれは低金利政策をあくまで主張していきたいんだ、いまの経済も二厘引き上げるほどの経済状勢ではないと思うということをいまほのめかしたのでありますが、一体日銀の決定に対して不満と考えておりますか。どうです。
  355. 田中武夫

    田中国務大臣 このような事態に至りまして不満などと考えておりません。日本銀行が中立性を持ちながら、慎重に配慮の結果私のところへ持ち込んだのでありますし、私も快直な配慮をした結果、かくすることによって将来のためにプラスが持たらされるならばと、相当勇気を持ってこれをのんだわけでありますから、のんだ以上、これを了とした以上、政府も日銀と一体になりながら、金融の正常化をはかりながら、将来のために道を開くという考えでありまして、これが施策の徹底に対して、大いに努力をしてまいりたい、このように考えます。
  356. 武藤山治

    武藤委員 そこで大臣、日本の経済の体質が金融正常化の体制ができていない、需要と供給のノーマルな体制ができていないという経済体制にあるわけです。そういう体制のときに、あなたは人為的に無理に低金利政策を推し進めようとした。ここに大きなむずかしさがあったわけです。いまこの時点で、そういうむずかしさ、なるほどこれはそう簡単に大蔵大臣が経済の実態と離れた低金利政策を人為的にやろうとしても無理なんだということにお気づきになりましたか。それともまだおれの低金利政策は間違っていない、これは経済のせいなんだという批判的な判断に立ちますか。あなたの独創的な低金利改築というものがやはり経済の実態に合っておらなかった、間違いだった、こういう反省は今日お持ちでありますか。
  357. 田中武夫

    田中国務大臣 私はあえて自分の説を固執しようとは思いませんけれども、公定歩合を引き上げない状態であっても、日本の金利は国際的に高いのであるという事実認識は変わっておりません。それから開放経済に向かって国際競争力をつけなければならないという事実、原材料のない日本が原材料の持てる他の国と自由市場において競争しなければならないという事実、それからいままでは、御承知の戦前などは、労働力、低賃金、低コストというようなものでこのハンディがカバーされておったのだが、そうあるべきではない。その事実を前提として考えるときには、その上になお大きなハンディになっておる金利負担というものを低減せしめていかなければならないということは、これはもう事実であります。私はそういう事実に対して誤りを犯しておるとは考えておりません。しかし、金利を国際金利にさや寄せをしていかなければならないということと、それから過程における公定歩合の操作等、これは金融調節手段であります。でありますから、あるときには引き上げ、あるときにはこれを引き下げる。私は、現在の時点において二厘の引き上げが行なわれましたけれども、将来かかる状態が長く続くことが好ましいことだとは考えておりません。これはできるだけ早い機会に引き上げ以前に戻り、なお国際金利にさや寄せをするという実際的な目標に向かって日本の金利が国際水準化されることこそ望ましいのであります。そのためには金融の正常化もはからなければなりませんし、企業自体の経営態度もまじめなものに、実際的なものにならなければなりませんし、まあその過程における一つの手段でありますので、政府が当初庶幾し、国会でも明らかにいたしております金利政策というものが、この公定歩合の引き上げというものによって根底的に相たがうものになったというふうには理解しておらないのであります。できるだけ早い機会に国際競争力がつくように、金利負担ができるだけ軽くなるように、中小企業もより安い金利で十分な国際競争力をつけていけるような状態こそ招来するように、各般の施策を推し進むべきだと考えるのであります。
  358. 山中貞則

    山中委員長 関連質問を許します。堀昌雄君。
  359. 堀昌雄

    ○堀委員 大臣のいまの御発言の中にちょっと問題があると思います。  それは、私どもは公定歩合の操作というものはまさにその時期時期における調節機能であるから、これはもっと気軽にタイムリーに行なえる性格のものであるべきである。ところが、池田さんを筆頭とするあなた方の考え方は、公定歩合操作というものが何か金利水準一般に本質的な影響を与えるかのようにおそれて、これまで累次にわたって行なわれた公定歩合操作というものは常にタイミングがおくれておるわけです。それがいまのお話を聞いておると、われわれの考えておる原則論のほうをいまはおっしゃるけれども、しかし実質的に皆さんがやっておられることは、公定歩合を上げることは何か金利水準を上げるというかっこうに、後続的な政策だという理解がこれまでもとられてきて常におくれたということを、私は非常に痛感をしておるわけです。だから私はこれまで二回にわたってそういう弾力的な措置をとるべきではないかという発言をしてきましたけれども、大体私の予想した段階にきたわけです。  ここでちょっと伺っておきたいことは、これははっきり言って、いまのようなやり方は、池田さんの国際水準の金利にさや寄せをするという、まあ低金利政策ということばを使っておられないからそういう表現にしますが、そういう方向というものは、まさに自由化に対して一番重要な問題だったと思うのです。その一番重要な政策の一つがいよいよ自由化をする前になって逆転をしたということは、まさに池田さんの金融政策の最大の失敗だと私は思う。同時にそれは大蔵大臣であるあなたを含めての日本政府の金融に対する措置の最大の失敗だ、こう私は思いますが、どうですか。
  360. 田中武夫

    田中国務大臣 堀さんの言われた、公定歩合とはもう少し弾力的に運用せらるべきだということは、お説のとおりであります。世界先進諸国においてはそのようにやっておる国がございます。しかし日本は公定歩合というものに対して非常に敏感でありますし、公定歩合論議というものがどこででも出るということであり、そういう方向でと言われましたが、日銀にも記者クラブがございまして、公定歩合論争を毎日やっておる。こういうような公定歩合に対しての非常な歴史もございますし、他の国と違う状態にあります。こういう特殊な状態というもので公定歩合に対するウエートが非常に強い。それだけにある意味では慎重にやらなければならぬということもうらはらになると思います。しかし将来、金融調節機能である公定歩合を含めた各種の措置というものは、やはり機に応じて、臨機応変にやってこそ調節機能の役目を果たすわけでありますから、まあきょうあたりでも日銀の申し出を私が暫時熟慮いたしましたけれども、これをのもうということも、将来にわたって日銀の持つ公定歩合操作等の弾力性をだんだんとそのようにしていこうというあらわれであるということもひとつ御理解いただきたいと思います。  きのうまで、まあ低金利政策とは言わなかったけれども、国際金利へのさや寄せということをしょっちゅう言っておった者が二厘も引き上げる責任ということに対しては、確かに私自身も国民に対してある意味では責任も感じますけれども、しかしこの公定歩合操作というものが、大蔵大臣が行なう、政府が行なうというよりも、中央銀行が自主的な立場で行なう、――御承知の窓口規制や準備率の引き上げ等のように大蔵大臣の許可を要する事項ではないわけであります。それだけに弾力的に随時行ない得る体制になっておるわけでありまして、私も先ほど申し上げたように、こうすることによって国民自体の気持ちも引き締まり、お互い自身が短期に開放体制を迎える態勢を整えるとしたならば、これは一つの手段であろうというふうに理解をしたわけでございます。しかし究極の目的といたしましては、先ほど申し上げましたように、ハンディのある日本の実情でありますので、金融の正常化をはかったり、あらゆる努力をしながら国民の金利負担というものは軽減をする方向に十分努力をしていかなければならないと痛切に感じておるわけであります。
  361. 堀昌雄

    ○堀委員 誤りを正すことにはばかることなかれということばがありますけれども、政策、政治というものはやはり失敗を失敗として認めなければ私は問題は解決しないと思う。だから、いまいよいよ八条国移行を目の前に控えて、政府がやったんじゃない、日銀がやったんだとおっしゃるけれども、日銀がそういうことをやらざるを得なくなったこれまでの政策の責任は、私はやはりはっきり池田さんにあると思うのですよ。だから、これまでのやり方が、失敗とはあなたは言えないかもしれないけれども、適切でなかったから今日こうなったんだと私は思います。反省をしないで改善は私はあり得ないと思う。これまでのは別に悪くなかったのだ、これからもこれでいくのだということでだらだらとやる、その折り目のないところに政治責任というものが不明確になってくると私は思うわけです。だからこれはほんとうを言えば、ここに池田さんに来てもらって言いたいわけです。あなたは池田さんのあれですからね、あなたに言うのはたいへんお気の毒だと思うけれども、しかしあなたも大蔵大臣として責任があるわけです。そこでやはりこれまでのやり方が適切でなかったために、この国際金利水準に最もこれからさや寄せをしなければならぬときに上げるということについては、過去における措置に適切を欠いた、そういう過去の反省の上に立って、今後は適切なる経済金融政策を行なう、こういうことなら私も了承できるのですが、いまのような話を聞いておると、何のことかよくわからないのです。何かいいことばかり言って、これまでも悪くなくて、これからもますますよくなるようにしたいのだ、これはそういうことでしょうけれども、やはり折り目はこういうことで正すべきで、これは大きな政策転換の折り目だと思いますので、その点ひとつ、たくさん説明は要りませんから、過去における措置はやや適切を欠いた、表現はあなたにまかせますよ。しかし少なくとも反省の色をわれわれが感じ取り、国民を含めて全部が感じ取れるようでなければ問題は解決しないと私は思うのです。
  362. 田中武夫

    田中国務大臣 金融責任は、総理大臣にはなく、私にあります。明らかにいたしておきます。公定歩合を引き上げるということが、国民の皆さんに非常に迷惑をかけることであるとしたならば、私は金融調節機能を果たすことによってより大きな飛躍のためであるということを前提といたしておるわけでありますが、しかし公定歩合を引き上げるというようなことをしなければならないような金融政策をとったことが、私が悪いと言われれば、――適切を欠いたと言われるかもわかりません。私は将来公定歩合の引き上げもあるかわりに、より金融の正常化ができ、正常な経済成長がはかられ、そのことによって公定歩合の引き下げも行なわれ、また金融の梗塞もだんだんとけて、国際金利によりさや寄せができるような体制をつくるためにやられておる手段でありますので、将来とも、過去の金融行政の実績を十分見ながら誤りなきを期してまいりたい、このように考えるわけであります。しかし堀さんもひとつ、公定歩合もできるだけ弾力的に運用せられることが好ましいということでありますので、公定歩合引き上げ、引き下げということを、非常に強く御指摘をせられると、だんだん私どものほうでもまたやはり弾力的だけでいけないということにもなりますし、そういうこともひとつ十分御勘考くださいまして、日銀が行なう金融調節機能を、私がここで申し上げておるように、また予算案の御質疑の中にも、機に応じて臨機応変な金融政策をとりたいと思います、こう申し上げておるわけでありますので、将来を見ながら事情を了解せられたいと思います。
  363. 武藤山治

    武藤委員 公定歩合の問題は、突発事項に対する質問でありますから、長い時間を費やしたくないと思いますので、最後に大臣に特に要望をしておきたいのは、公定歩合の二厘引き上げによって中小企業金融というものがかなり圧迫をされると考えられます。そこで特に倒産が続出をし、資金繰りに非常に苦しんでおる今日の中小企業の実態にかんがみまして、特に公定歩合引き上げに呼応して特別な対策をすべきであると思います。その点について、大臣はどのような処置をこれからやらなければならぬと考えておるか、具体的なことはまだ本日の発表でありますから、おそらく検討してないと思いますが、こういうようなことはやらなければならぬだろうというあなたの積極的な中小企業に対する対策をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  364. 田中武夫

    田中国務大臣 公定歩合の引き上げによって中小企業の倒産がもしありとせば、これはたいへんなことであります。私はそういうことが絶対ないように十分な配意をいたしてまいりたいということであります。でありますから、具体的な問題といたしましては、この委員会の直後、日銀総裁を招致いたしておりますので、中小企業対策に対しては遺憾なきを期したいという考えでございます。なおその上に金融機関等の協力も待ちながら、いやしくも公定歩合操作によりまして中小企業がより以上の苦しみを持つことがないように、各般の施策を行なう予定でございます。なおけさも御承知のとおり、中小企業向けに二百億の買いオペを閣議で決定しておるわけではありますし、政府が中小企業に対していかに細心な配慮をしておるかということに対しては、ひとつ理解をいただきたいと思います。
  365. 只松祐治

    ○只松委員 関連してお尋ねしますが、いま中小企業の問題で、武藤委員に対して、絶対にそういうことはない、こういうふうに断言されました。いまも中小企業が倒産を続けておりますけれども、さらに今後もしこれが増大するというようなことが起これば、これは今日の事態が招いたものである、こういうふうにお考えになりますか。  それからさらに、今後絶対にないという具体的な方針を一つでもお示しをいただければ幸いだと思います。
  366. 田中武夫

    田中国務大臣 この委員会で御指摘がございましたとおり、現在も相当な倒産がございます。私たちはこの倒産というものに対しては、地方財務局等を通じまして非常にこまかく調査をいたしておりますし、金融調節段階において、それが直接の原因となって倒産をするようなことは絶対に避けなければいかぬということに対しては、強く関係機関に対しても要請をいたしておるわけでございます。私は少なくともこの公定歩合操作によりまして、それが原因となって倒産に導けないように各般の努力をいたしたい、このように考えておるのでございます。
  367. 武藤山治

    武藤委員 公定歩合の問題についてはこの程度の質問にいたしまして、通告に従いまして特に租税特別措置法の問題を取り上げ、質問をしてみたいと存じます。  最初に数字のことにわたりますので、主税局長にお尋ねをいたしますが、租税特別措置法の減収額ですね。昭和三十五年から三十九年の減収見込み額までを含めて、五年間どういう実数になっておるか。さらに国税、地方税と分けて、国税はすでに私どもの手元に配付をされておりますが、地方税が全然出ておりませんから、地方税を含めて三十五年から明年度の減収額までひとつ発表願いたいと思います。
  368. 泉美之松

    泉政府委員 国税の租税特別措置法による平年度減収額につきましては、昭和三十九年度分は、先般資料を提出いたしましたように二千九十八億でございます。これは従来租税特別措置といたしておりました貸し倒れ準備金、退職給与引き当て金及び特別修繕引き当て金につきましては――貸し倒れ備準金のほうは要項にありますように貸し倒れ引き当て金と直しまして、これは三つの引き当て金は、租税特別措置でなく企業会計原則上認められておるところの評価税の引き当て金であるというふうな構成にいたしました。これを従来は租税特別措置といたしておりましたけれども、昭和三十九年度からは租税特別措置としないということにいたしておるのでございます。そういうたてまえで昭和三十五年以降の租税特別措置による平年度減収額を申し上げますと、昭和三十五年が千七十一億、三十六年が千百十九億、三十七年が千三百四十八億、三十八年が千六百六十六億、こういうふうになります。もっともいま申し上げました三つの引き当て金は、従来租税特別措置といたしておりましたので、それを含めた額で申し上げますと、三十五年は千四百七億、三六年は千四百九十五億、三十七年は千六百九十五億、三十八年は千九百九十八億、もし本年度この三つの引き当て金を租税特別措置に加えますと、二千九十八億でなくて二千五百四十億ということになります。しかし、いま申し上げましたように、この三つの引き当て金は、企業会計原則からいたしましても、評価税の引き当て金として当然なことでありますので、これは租税特別措置と考えないのが適当であるというふうに考えまして、本年度は二千九十八億の減収とこう申しておるのであります。地方税の数字につきましては、国税の特別措置が地方税にはね返ります分が三十九年度におきまして五百四十億ございます。  地方税独自の租税特別措置による減収額は自治省のほうで調べておると思いますので、さっそく自治省のほうに問い合わせましてお答え申し上げます。
  369. 武藤山治

    武藤委員 三十五年から五カ年間の地方税の減収分はそこに数字はありませんか。――それでは来てからにいたしますが、大臣、いまの数字をお聞きになりましたね、この三十五年から租税特別措置法によって取れるべき税金を取らずに、本来なら基本税率によって取るべきものをこういう形でまけておる税額というものは膨大なものです。かりに年々の上昇率を調べてみますと、これはたいへんな上昇になってきておるわけであります。元来租税特別措置という名称で呼ばれるごとく特別措置なんでありますから、やはり一定の経済効果なり合理性なり、こういうものを検討して、当初考えた効果がなくなったときには当然はずすべきなんです。ところがいまの数字を見ると、昭和三十五年が千四百七億、三十六年が一千四百九十五億、三十八年には一千九百九十八億、来年度に至っては二千五百四十億円、三引き当て金を入れるとこうなる。このように租税特別措置が総額において年々ふえていっておる。総予算に対する税収のパーセントからいっても六%が六・七%になり、三十九年度は六・八%へと飛躍していっておる。大臣は一体租税特別措置というものが五年間もそのままに置いてどんどんふやされていっておるというこの傾向を、あなたは好ましいとお考えになりますか。こういう傾向に対してどんなお考えを持ちますか。
  370. 田中武夫

    田中国務大臣 御承知のとおり、租税特別措置法などというものがなくやっていければ、これにこしたことはないわけでございます。租税特別措置法が必要であるということは、それだけ国内また対外的に日本の状態が非常にむずかしい状態にあるということでございます。
  371. 武藤山治

    武藤委員 五年前のはどういうふうに今日……。
  372. 田中武夫

    田中国務大臣 戦後とにかくあの爆撃の中から立ち上がってきて、同じようなことを申し上げるようでございますが、(武藤委員「十八番だな」と呼ぶ)十八番というよりは、これは昭和二十三年から二十四年、二十五年に、御承知の日本を占領しておった世界じゅうの経済学者が来まして、日本は一体立つことができるだろうかと、長期にわたってあらゆる産業別に調査をしまして、当時の極東委員会に対して報告が出ております。この報告は、あらゆる施策を行なっても日本は再び立つあたわざる日本だ、こういう結論になっておることは御承知のとおりであります。その日本が政策的にいろいろな施策を行ないつつ今日になったわけであります。今度はこれよりもより以上に飛躍的になろうというためには、国際競争力にたえなければならぬわけでありますから、相手のある話であります。これは確かに一律一体でもってやれるならば、一番簡単であります。これほどいいことはない。ないのでありますが、そうしなければ国際競争力にたえないというのであります。これは一つの例をとってみればすぐわかるのです。同じ企業でもって同じ率でやればいいといっても、中小企業と大企業というのは同じ率でいかぬ、やはり中小企業には中小企業の特性によって別な軽減税率を適用しなければいかぬ、それはそのとおりであります。石炭企業が悪くなる、何とかしてやらなければいかぬ、貿易収支を改善するためには海運対策をやらなければいかぬ、これに対してはあらゆる措置をやります。国産原油とか国産の物資をだんだんと使わせるためには減税制度もとる、これはそういうふうにやはり必要なのであります。しかし政策目的が達成せられて、できるだけこの特別措置というものが撤廃されることが望ましいということは、私はそのとおりだと思います。同じ学校の生徒でも、要保護児童には無料にするのであります。これはもう有料であって、一律のものが一番簡単であり、一番合理的である、これはもう言うを待たないのでありますが、それだけ複雑多岐な日本の現状に徴しまして、だんだんとこれをレベルアップしてある一つの水準になそうというのでありますから、やはり特別措置というものは必要であって、国会で議決をされておるわけであります。いまあなたが申し述べられたとおり、主税局長が言われたとおり、年間二千億といいますけれども、ただよその国のために二千億もやっておるわけではない、こうすることによってわが国力がだんだん大きくなって、それに従事しておる労働者も恩恵を受けておるのであります。生活の基盤もそこで確保しておるのでありますから、ひとつ特別措置というものがなくなるような状態こそ望ましいということと、現実はやはり一つずつ政策を行ならことによって国内的不均衡をなくしていかなければいかぬ、農業用ガソリンに対しては免税をすべし、こういう議論があるじゃありませんか。これは必要だからであります。こういう事実を私は考えながら、一つずつその事態に対処していかなければいかぬ、こういう事実をひとつ十分に御理解いただきたい。
  373. 武藤山治

    武藤委員 私が言っておるのは租税特別措置法を全部直ちに全廃しなさいということは言っておらぬのですよ。税制調査会が答申もしない租税特別措置を十六もつくり、さらに現在までの租税特別措置の残された項目数だけでも三十七ですよ。しかも五年も七年も前にその当時必要であったという理由でつくられた租税特別措置が今日もそのまま踏襲されていくというこの傾向、それは私は先ほど税額で推移を一応主税局長答弁を願って、あなたの判断を聞いておる。七年も八年も前のそういう古い昔の必要性というもの、あるいは有効性というもの、経済的合理性というもの、効果というもの、そういうものがあったかなかったかということを再検討して、これはどうしても三十七項目残さなければならぬという具体的な説明をわれわれに配りもしないで、租税特別措置は必要だからといって、うのみにどんどんふやす傾向というのは、私は好ましくないと思う。あなたはそれを好ましいと思いますか。私はあなたのいまの説明で、そのときどきの時点で必要性があるということはわかりますよ。これは認めますよ。しかしながらもう七年も八年も前のものをそのままどんどんと踏襲し、新たに圧力を加えたものに特別措置がどんどんつけ加えられていくというこの租税の取り方、税金のまけ方、こういうものはやはり私は公平の原則やあるいは応能原則や、租税のあるべき姿から考えた場合に、どうも間違っておると思う。妥当を欠いているように思うのです。それではこういう傾向をあなたは望ましいと考えますか。
  374. 田中武夫

    田中国務大臣 政策目的が達成をしておりまして、しかももう廃止をしてもよろしいというものに対しては、将来税調の意見等も聞きながら善処してまいりたいという基本的な考え方を申し上げております。しかし趨勢と実勢はどうか、こういうことになりますと、国際的に開放経済に向かうのでありますから、やはり元も子もなくしない、より近道をしなければならぬ、より効率的な政策を行なうということになると、税の中に政策を加味するということは、税法の理論から言うといろいろな問題はございますけれども、必要やむを得ざる処置として最上、これ以上の方法がないということになれば、やはり税制の中である期間特別措置というような方法でその目的を達成するように織り込まざるを得ないというような実際であることは御承知いただけると思うわけでございます。しかし税理論にも徹し、また世の批判も受けないように、また批判に対しては十分耳をかしながら、税の公平の原則をおかさないで、その公平原則の中に包含されるという立場で特別措置は適宜考えていただかなければならぬものだと考えます。
  375. 武藤山治

    武藤委員 大臣はどうも答弁をごまかされる。大臣はその場限りの放言をされると同じように答弁もまことに慎重さを欠いておる。特定の期間、ある期間やむを得ないということはわかりますよ。ある期間じゃないじゃないですか。ずっとそのまま踏襲して拡大する一方じゃありませんか。これでもある期間と言えますか、どうですか。
  376. 田中武夫

    田中国務大臣 ある期間、政策目的を達成する期間、こういうことでございます。まあしかしこれはもういろいろなところで議論をされておりまして、私もあなたの言うことはよくわかるのです。そういうことがないような国にしたい、そのためには一時特別措置もやむを得ない、こういう議論でありますから、これは競合しないのであります。これを日本のためではなくよそのためにやっているわけはないのです。お互いに社会連帯的な考えの中でこうすることがよりお互いのためになるのだという考えのもとで、国会の議決をいただいてやっておるわけでございます。しかしそれをどこまででもふやしていって、税法のうちのほとんどすべてを特別措置にしてしまおうなどという気はありません。これはなきにしくないのであります。十分事情を承知をしながら、必要やむを得ず、やむにやまれずやることでございますので、御理解をいただきたい。しかし、過去に措置されたもので当然廃止できるようなものがあれば、税調の意見等も聞きながら、またいろいろ政治的にも配慮をしながら、できるだけかかるものはなくする方向に検討をいたしてまいります。
  377. 武藤山治

    武藤委員 大臣、長々答弁は要らぬですから、私は端的に聞きますけれども、租税特別措置というものがふえていく傾向は好ましいか好ましくないか、好ましければ好ましい、好ましくなければ好ましくない、この答弁をしてください。
  378. 田中武夫

    田中国務大臣 それは質問のほうが無理なんです。こういう議論はもうずっとやられておりながらなお必要なのであります。だからその事実をよくお考えになっていただいて、私にいまこれはいいか悪いか、こう言われても非常に無理なのであります。簡明直截に答えよと言われても、これは私が先ほど申し上げたとおり、税法の理論からいいますれば、かかる除外例はないにしくはない、だからそのような方向で大いに努力をしていきたい、しかし現実がそれにマッチするような状態をつくらなければなかなかそううまくいかない、こういう事実を申し述べておるのでありまして、これはどうも理論だけでもってぴしゃっと割り切れるほど簡単なものではございませんから、これはひとつぜひ御理解いただきたい。
  379. 武藤山治

    武藤委員 それでは大臣は三十七項目をさらにふやして税調の答申にないのをふやすのも、必要性があるからどんどんやっても別に不妥当でもない、不当でもない、不適当でもない、こうお考えになっておるわけですね。それはいいです、あなたがそう考えるのはかってですから。  そこで、去年も利子配当所得に対して大減税をして、今度は証券投資信託の収益分配金に対する課税について減税をまた三十九年度から行ないますね。具体的にこのことをやることによってどういう効果を大臣はねらっておるわけですか。その効果のほどを聞かしてもらいたい。
  380. 田中武夫

    田中国務大臣 利子課税に対する減免の問題につきましては、先ほどから公定歩合の問題等で御発言がございますが、金融の正常化をはかっていくという考え方から考えましても、日本で現在各金融機関が貯蓄の増強を行なって、この資金でまかなえるような正常な状態こそ望ましいのであります。私自身も税理論の公平論をよく理解いたしますし、お互いに民主政治家として国民の前に立っておるのでありますから、そういうことに対しては非常に厳密な考え方をしなければならぬことは言うを待たないわけでありますが、少なくとも日銀から借り入れが多過ぎる、オーバー・ローンの解消、また一面においては企業はオーバー・ボローイングの解消を唱えながらも、どうしても日銀から借りなければいかぬ、つまり借り方が多いから公定歩合を引き上げなければいかぬ、こういう事実に直面しておるのであります。ですから、どうしても金融原資を得るためにも貯蓄の増強ということが必要であります。また貯蓄をすることによって消費も抑制され、物価も安定するのであります。こういう問題に対しては、お互いに政治家として国民に苦い薬を飲んでもらいたいというようなことはなかなか言いにくいことでありますけれども、しかし、ただ単に減税もしなさい、貯蓄をしてもしようがない、物価は押えろということを言っても、これはなかなかむずかしい問題でありまして、大きな目から見れば一つの消費の抑制にもなり――消費抑制というよりも健全な消費ということをはかりながら貯蓄の増強をするように進むことが私は物価問題、あらゆる問題にも資するという考え方でおります。  もう一つ配当の問題です。配当の問題に対しては私が口をすっぱくして申し上げておるように、戦前自己資本比率六一%でありました。しかも現在は三〇%を割り、二五%を割っておるのであります。しかもどんな人に聞いても、どうか、こう言えば、まずだんだんと二〇%に近くなる趨勢にあります、こういう事態において開放経済に向かうのであります。資本の自由化は原則ではありません。しかし私は、このような問題はただ公平論だけではなく、よほど積極的に考えていただかないと、ほんとうに私達は将来の道を失うというふうに考えておりますので、資本蓄積、貯蓄の増強に対して税制上の特例を認めておるわけであります。
  381. 武藤山治

    武藤委員 昨年も本年度も認め、さらに三十九年度に証券投資信託の分についてだけ分離課税を新たに租税特別措置として認める、このことの効果は一体どういうことがあるのですか。それを端的に御答弁願いたいと思います。
  382. 田中武夫

    田中国務大臣 税の特例を設けられて効果がないということはないわけであります。
  383. 武藤山治

    武藤委員 具体的にどういう効果があるかを明らかにしてください。
  384. 田中武夫

    田中国務大臣 国民が、配当に対しては五%分離課税になったというだけでも資本蓄積に応じよう、こういう気持ちになるわけであります。
  385. 武藤山治

    武藤委員 大臣がそう言うなら、私は数字で聞きますよ。
  386. 田中武夫

    田中国務大臣 数字というよりも、こういう特例を設けたから預金が幾らふえたか、世界にどういう例があったかというようなことだけで言い得るものではないのであります。それはほかにもいろいろな要因があるわけであります。実際は特例をやったためにうんと伸びておるのかもしれぬけれども、そのほかに物価が上がるとかいろいろな要因があってこういうものはつかみ得ないのであります。捕捉しがたきものであります。ですからそういうことを数字で言うよりも、減税をしないときよりも減税したほうが国民の考え方はそっちに向く、そのほうが有利であるということは当然のことであると考えております。
  387. 武藤山治

    武藤委員 大臣の答弁はまことに不満でありますしごまかしでありまして、大体そういう分離課税をしたりあるいは利子配当の税率を下げることによって貯蓄の率がどのくらい上がったかということは税調がはっきりデータを出しておるのです。そういうものは詭弁ですよ。だから、今回のこの配当に対する減税というものが具体的に株価をてこ上げするとか何か意図があってやっておることだと思うから、具体的にわれわれが気に入らぬ効果でもいいからどういう効果があるかということを聞いておるのです。この点については私ははっきり答えを出してもらいたい。
  388. 田中武夫

    田中国務大臣 昨年減税をいたしますときに大蔵委員会でもって問題がございました、同じようなお立場で御発言がございましたけれども、そのときもいまと同じようなお答えしかできなかったわけでございますが、しかし去年は、物価も七%以上も上がったけれども、貯蓄率も戦後最高であったということであります。これは全部が全部そういう特例をやったためだとは考えておりませんが、しかしそういう趨勢に、いわゆる貯蓄増強というものに対して資しておるということは言い得ても強弁ではないというふうに考えます。  今度の配当分離の問題でございますが、いま、この問題に対しては、将来必ず効果がある、これは具体的にはまだ四月一日からやることでありますので、新しいその意味での効果は申し上げることはできませんが、こういう制度をつくった効果は十分あるであろうということは申し上げられます。
  389. 武藤山治

    武藤委員 春日委員から申し出がありますから、十分間春日委員に……。
  390. 山中貞則

  391. 春日一幸

    春日委員 私は民社党を代表いたししまて、本日突如として断行された日銀公定歩合二厘引き上げの問題について、大臣の所見を伺いたいと思うのでございます。  まさに青天のへきれきということがございまするが、このことは従来の政策論議の経過に徴しまして、われわれは異様なショックを受けたのでございます。と申しまするのは、われわれは、この際わが国の外貨事情を好転せしめることのためにはすべからくこの公定歩合を引き上げすることによって投資意欲を抑制することが必要であろうということを強調いたしてまいりました。これに対する池田内閣の総理並びに大蔵大臣の答弁は、われわれはその策をとらないものである、すなわち金融機関の窓口規制によってよくその目的は達し得るものである、だから公定歩合の引き上げは行なわない、これは言明を繰り返し繰り返しされてまいったのでございます。しかるところ、そのような言明に相反して、本日突如として日銀がこのような強硬な手段を打ってまいりました。国民は、政府が何と抗弁されましょうとも、このことは政府に対する不信のあらわれであると受け取っておるに相違ございません。われわれも、政府がいままで金融と財政の一体化を政策信条とされておりまするその立場において、少なくとも金融政策の総本山は日銀にございましょう。この日銀が総理並びに大蔵大臣の言明と相反する執行をここにとってまいったということについては、これはもう金融と財政の一体化の基本的信条もくずれ去ったことに相なります。したがって、われわれは、ここに日本銀行が政府に対するその信頼をなくした、頼むに足らずとしてついにその円価値護持を至上使命とする日銀が、その責任によってこれを踏み切った、政府はやむなくしてこれを容認せざるを得ないという形でこのことが政策として措置された、かくのごとくに理解せざるを得ないのでありますが、本日日銀当局からこのような申し出を受けられました大臣の心証はいかがでありますか。かつはまた、これを容認されたことは従来の言明と正面相反する措置でありまするが、これについてどのような説明がなされ得るのでございますか。あらためてこの際、国民の前にその政策大転換の積極的理由を御説明願いたいのであります。
  392. 田中武夫

    田中国務大臣 日銀当局から、四時半ごろ、公定歩合二厘引き上げということが報告をせられたわけでございます。届け出の制度になっておりますから、届け出てまいったわけであります。私は、この問題に対しては熟考いたしましたけれども、中央銀行の中立性のもとで行なう公定歩合操作でありますし、またしばしば私も日銀総裁も機に応じて措置をいたしますと、このように言っておりますので、私は将来の日本のより強固な状態を築きますためには必要やむを得ざるものとしてこれを了としたわけでございます。  政策の大転換だというふうにおとりになっておりますけれども、私は、財政演説の中でも、金融の引き締め過程にあるということは申し上げておるわけでございます。なお、昨年の十二月から日銀が準備率の引き上げ、窓口規制等一月にわたって行なっておりますけれども、金融情勢の推移によりまして機に応じて適切な処罰をとります――公定歩合に対してはどう考えるか、こういう御質問がございましたけれども、私は、公定歩合というよりも、ただ一律画一的な引き締めによって中小企業にしわが寄るような形のやり方よりも、十分事実に目をはせて、こまかい配慮を行ないながら、回り道をしながらも、少しくらいロスがあっても、犠牲を最小限度にとどめなければならないということを繰り返し申し上げておったわけであります。しかし公定歩合に対しては、公定歩合も含めて機に応じて臨機の処置をとりますと、こういうことを申し上げておるのでございますから、間々マスコミは、昨年の十月、十一月、十二月、一月は引き上げるのではないかというようなことまでございましたけれども、私たちが細心の配慮でここまで持ってまいり、もう十二月には相当の倒産があるだろう、三月の末は一体中小企業が越せるものかというような考え方もあったわけでありますが、あらゆる施策を行なってきょうに至ったわけでございまして、日銀で公定歩合の引き上げということが、準備率を引き上げ、窓口規制を行なってまいりました政府の金融施策と背馳するものでもなく、私は大きく方向転換をしたものだとは考えていないのであります。
  393. 春日一幸

    春日委員 私はこの問題は特に池田内閣全般を通じて猛反省を願いたいと思うのでございます。と申しますことは、病気にも早期診断、早期治療ということがございます。かつはまた、あなたも政調会長時代から、こういう事態にいかに政策は立てられるべきか、十分御検討済みのことであろうと思うのでございますが、本委員会も、昭和の二十九年以来こういう問題、景気の変動期について専門的に論じてまいりました。特に三十二年度におきまするあの好況事態におきまして、当時日銀の関根報告というものが出されて、こういうような場合には事業家の設備意欲を抑制するの道は公定歩合を引き上げることによってその心理効果をねらう以外に道はないのだ、これをすみやかにやれという警鐘が乱打されたのに対しまして、そのことが行なわれなかった結果、いろいろな多くの国際収支の逆調のみならず、その症状を深くすることによって、その処理にはたいへんな国民の出血を伴ってまいったのでございました。さればこそ、われわれはこのことを指摘いたしまして、早くその措置をとるべきであると主張したのに対して、あなたのほうは、昨年の十二月、日銀の窓口規制によってその目的を達し得る、政策目的は達し得るのだから、いま公定歩合を上げなくてもいい、こう言われた。ところが本日の現象はどうであるかと申しますと、これは大臣御承知のとおり、輸入の増勢も押えることはできない、鉱工業生産の上昇率も抑えることができなかった。だからして、このような情勢にかんがみて、やむなくして日銀は、政府の反対を押し切っても円価値を護持しなければならないという至上使命にのっとって、ここにこれを確信を持って、厳然たる決意を持って政府に向かってこのことを申し出てきたと思うのでございます。これは客観的事実でございます。私は、時間がありませんから、この問題を深くこの際論議することができないことを遺憾と思うのでありまするが、いずれにしても早期診断、早期治療であり、このような日本における金融情勢、経済情勢のもとにおいては政策はいかにあるべきかということは、昭和の二十九年以来すでに本委員会がしばしば論じ、わが国の経済現象の中でしばしばこれを国民の大いなる犠牲とともに体験をしてまいったことでございまするから、私は、今回このような政策を政府がかたくなにとることによって大いなる症状を深くしたことについて、遺憾の意を表せざるを得ないのでございます。さりながら、問題がこういう状態になりましたからには、この上は、そのような心理的効果が中小企業にしわが寄ってくることは、これは歴然たる事実でございます。いままでもそうであったのでございますから、したがって今回もそうでないという保証はございません。したがいまして中小企業の資金確保に関する特別の政策というものが、政府の手によって同時並行的に行なわれるのでなければ、中小企業の惨状まことに憂うべきものがあると私は思うのでございます。したがいまして、この際中小企業の資金を確保することのために、政府はどのような政策を講ぜんとしておるものであるか、ただ何となくやるというのではなくて、一つの確信を持ってその具体的な政策をここに御明示願って、 このことによって、いろいろと動揺いたしております中小企業の不安を解消せらるべきであると思うのでございますから、しかるべく御答弁願います。
  394. 田中武夫

    田中国務大臣 先ほどから申し上げておりますとおり、中小企業の問題につきましては万全の措置を講じたいということを考えておるわけでございます。本日も閣議で決定をいたしましたが、二百億円にのぼる買いオペレーションも中小企業対策として行なうわけでございますし、私もこの公定歩合引き上げという時点に対処しまして、いま七時に日銀総裁を招致いたしておるわけでございます。この問題の重点は中小企業対策に万全を期すということでございます。政府も日銀も金融機関も一体になって、いやしくもかかる措置が中小企業等に大きくしわが寄ることを避けるために、あらゆる角度から努力をいたしたい、このように考えます。
  395. 春日一幸

    春日委員 終わります。
  396. 武藤山治

    武藤委員 大臣が退席をしましたから、大臣のかわりは政務次官、さらに政務次官の補佐役は主税局長ということで、ひとつそのつもりになって御答弁を願いたいと思うわけであります。  まず、今回の租税特別措置法の各項目別に税制調査会で答申をされた項目と、税制調査会が答申をしない租税特別措置、これをひとつ税類別に分けて、税調で答申をしたものが何百億、答申にないものが何百億、それを具体的に報告を願いたいと思います。
  397. 泉美之松

    泉政府委員 その前に、先ほどの地方税関係の特別措置による減収を申し上げておきたいと思います。地方税関係の特別措置といたしましては、国税の特別措置がそのまま地方税へはね返る場合、この減収が三十五年度二百五十三億、三十六年度二百六十五億、三十七年度二百八十億、三十八年度三百九十三億、三十九年度五百四十九億、こうなっております。このほかに地方税独自で特別措置――武藤委員承知のとおり、地方税におきましては全部一本の地方税法になっておりますけれども、その中に特別措置と認められるものを考えますと、三十五年度三百三十一億、三十六年度三百八十九億、三十七年度四百九十九億、三十八年度五百六十億というふうになっておるのでございまして、三十九年度につきましては自治省のほうで目下算定中と聞いております。  それからいまお尋ねの、今回の租税特別措置のうちで、税調答申にあるものとないものとに分けてというお話でございますが、税調答申にあるものは輸出関係の輸出特別償却制度あるいは技術所得控除、それから海外市場開拓準備金及び新開発地域投資損失準備金、このものでございます。ただ、その中で、海運のほうの輸出所得控除は、税調答申におきましては、海外市場開拓準備金の中に取り込むというふうになっておりましたが、これを政府案におきましては、技術輸出所得控除の中に入れております。その点が違いますが、大部分は同じでございます。(武藤委員「金額」と呼ぶ)この分の金額は、いま申し上げました輸出関係におきましては、税調答申は二百六十億というふうになっておりますが、政府案におきましては、計数整理の結果二百五十四億となっておりまして、その内容はほとんど変わっておりません。その次の税調答申にあります試験研先用機械設備等の特別償却……。
  398. 武藤山治

    武藤委員 時間がおそいのですから、私が聞いていることだけ答えてくれればいいのです。税調の答申にある租税特別措置の総額は幾ら、税調の答申にない租税特別措置の総額は幾らと質問をしているのだから、要領よく答えてくださいよ。ますますおそくなりますよ。
  399. 泉美之松

    泉政府委員 いま計算しておりますから……。
  400. 武藤山治

    武藤委員 その答弁は計数計算ができたあとでお聞かせを願いたいと思いますが、輸出特別償却制度の適用期限三年延長、さらにその次の技術輸出所得控除制度、こういう輸出競争力を強化するという名称で新たに変更されて特別措置をやるわけでありますが、その特別償却を認める場合、子会社、下請会社、こういうところは輸出控除あるいは償却というものをほとんど適用されていないということを聞かされておるわけでありますが、実際の政府が見積もっておる輸出総額と、税当局へこれだけ輸出額があったから償却をこれだけ認めてくれという税金関係の輸出総額と、数字の上でどうなっておりますか。
  401. 泉美之松

    泉政府委員 輸出特別償却につきましては、従来の制度でございますと、前年に対して輸出金額が伸びた、その上に輸出割合がふえた、こういう条件でないと輸出割り増し償却の適用がございません。したがいまして、この輸出特別償却の適用は現在までのところ非常に少なかったのでございまして、われわれの見積もりではせいぜい十数億程度しか考えられないのでございます。したがいまして、その輸出額というのは税関統計あるいは貿易統計にあらわれております輸出額とは非常に違っております。そういう事情を考えまして、今回の輸出特別償却制度につきましては、輸出さえしておりますればその適用が受けられるというふうに直すことにいたしたのでございまして、したがって今後は、輸出特別償却の適用を受けるのが非常にふえてまいる、かように期待いたしております。
  402. 武藤山治

    武藤委員 局長、輸出をしていさえすれば適用になるということは、商社の場合や直接輸出をしている人は直ちに通関証明をもらえる、そういう企業は直ちに適用になるでしょう。しかし、それのまた下請で、輸出品の部品専門の生産をしておる、直接は自分で輸出業務には携わらない、こういう業者というのはかなりあるわけです。これの生産額というものは非常に多いわけです。質問してもその金額はおそらくわからぬと思いますが、そういう子会社とか下請会社がこの制度を適用できるようにしてやらぬということは、私は非常に不公平だと思う。そういう点、国税庁長官にちょっとお尋ねいたしますが、いままでの輸出所得控除というものを見ました場合に、下請や子会社というものが実際に輸出品を加工し、輸出製品を取り扱っておるにもかかわらず、控除されなかったという中小企業が膨大なんですね。従来の実績から見ると、一体どの程度所得控除というのがありましたか。
  403. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 下請等がどの程度かという金額はわかりません。ただ従来、下請業者であっても間接的に輸出をいたしております場合には、輸出業者の証明をもってこの恩典が及ぶということに相なっております。
  404. 武藤山治

    武藤委員 輸出業者の証明というのは、具体的に何と何を税務署提出すれば控除の対象になりますか。
  405. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 税関で発行いたします輸出免状と輸出業者の証明書でございます。
  406. 武藤山治

    武藤委員 そこで、納税者の立場に立って考えてみた場合、中小企業の諸君が非常に不満を述べておるのは、こういう制度はできても、この恩恵を受けられるのはほとんど大企業あるいは大商社である。直接貿易をやっておるそういう人たちに大半の恩恵がいってしまって、下請企業、零細中小企業にはほとんど活用されない――なぜ活用されないかというと、通関証明書と貿易業者の証明書の写しを添付して税務署へ出さなければならぬ。親会社や輸出業者は、その証明書を一々書いて出すことを非常におっくうがり、めんどうくさがって出さぬわけですよ。ですから、実際には輸出の七割も八割も占める中小企業者がこういう恩典にあずかれないのですね。そういう実態を一体国税庁は知っておるのかどうか、そのことを先にお尋ねして、もし知っておるとしたら、これを直さぬということは私は怠慢だと思うのですが、一体こういう実態を、国税庁長官としてはどのように把握しておりますか。
  407. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 間接輸出をいたしました場合に、そのものがはたして確実に輸出をされておるかどうか、あるいは国内に転売をされたのではないかというような点を確認いたしますために、やはり輸出免状を点検をするということはやむを得ない措置だと思います。
  408. 武藤山治

    武藤委員 輸出点検をすることは私もけっこうだと思うのです。問題は、子会社、下請会社は、親会社がめんどうがるものを無理にもらえないのですね。そんなことまでおまえのところの会社がやるんだったら、もう下請に出さぬから、ほかへ回すぞ、こう言われるから出せないのです。ぼくの知っている関係だけでもそういう会社が多いのです。丸紅なら丸紅、伊藤忠なら伊藤忠へその証明書をもらいに行ったら、めんどうくさがってなかなかやってくれない。そういうような実態を国税庁は一体知っておるのかどうかという質問なんです。長官、知らなければ知らなくてもいいんですよ。そういうことは全然ありませんか。そういう業者の不満の声というか、かゆいところに手の届かない今日の実情というものを、長官は御存じであるかどうかということなんです。それはいかがでしょう。
  409. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま武藤委員が御指摘になりましたような、手続が非常にめんどうで、この制度が末端まで十分に活用し尽くされていると言うことはむずかしいという声は聞いております。
  410. 武藤山治

    武藤委員 せっかく鳩山名直税部長がお見えになっておりますから、具体的な仕事に携ってきた東京管内の局長をいたした経験から見て、こういう輸出所得控除というものが実際の輸出金額と比較して、なるほど、これは確かに申請が少ないなという感じをお持ちになったことがありますか、それとも、輸出に関係している中小企業もほとんど控除してやっておるな――そういう数字を、局長時代なりあるいは現在の直税部長になってからでも調べたことがありますか、大体でいいですが。
  411. 鳩山威一郎

    ○鳩山説明員 私のいままでの経験では、直接にそういうような、下請企業が輸出業者からいろいろな証明書がもらえないというような声は、私、伺ったことはないのでありますが、そういった場合も相当あるのではないかということは、おおよそ想像はいたしております。
  412. 武藤山治

    武藤委員 そこで、主税局長と政務次官にお尋ねいたしますが、いままでの実績をぜひ調べてもらいたい。どういう性質のものでもいいから、輸出控除を申請してきた総額――その総額と、日本全体の通関実績による輸出金額との間に、いかにも開きがあるということをおそらく感ずると思うのです。それは結局、中小零細企業やなんかの控除というものがほとんど出ていないからですよ。出せない実態にあるからです。  さらに資料として要求いたしたいのは、この輸出控除の特別措置による恩恵というものを、ひとつ分布別に分けてもらいたい。大企業、中小企業――中小企業といっても、資本金五千万円以下というような大づかみでなくて、さらに一千万円以下の小企業、そういうようなものに分布してみると、なるほど活用してないということが明らかになると思うのです。実は、そういうような資料を手元にもらってから質問をすればいいのでありますが、時間の都合でそれは許されませんから、そういう調査を、私どもも資料を要求してしたいと思います。そういうような中小零細企業が恩典の受けらるべきものが受けられなかったということが明らかになった場合、政府が何らかの通達を出すなり、あるいは商社なり輸出業者に対して何らかの通達を出してほしい、こう私は希望するのですが、政務次官、主税局長あるいは国税庁長官、ひとつ御意見を聞かしてもらいたいと思います。
  413. 泉美之松

    泉政府委員 お話の点でございますが、過去の輸出所得控除の際におきましては、お話のように下請企業の場合におきましては、貿易商社と親元のメーカーのほうに証明書をもらわなければなりませんのに、その証明書をなかなか出してくれないという不満は、私もお聞きいたしております。この点につきましては、そういう貿易商社あるいは親元の企業が、手数だというようなことを言うことなしに、当然下請に証明書を出してもらいたいと思っておるのでございます。したがいまして、そういった点につきましては国税庁のほうで指導していただきたい、かように思っております。  なお、その調査につきましては、これは私のほうでできませんで、やはり国税庁のほうで調査していただかなければならぬと思いますが、ただ間接輸出の場合におきましては、貿易商社にも輸出所得控除を認めますし、またその下請の企業にも認めるということになるわけでございますので、そこは実は輸出額がダブって計算されるということになります。したがって、通関統計による貿易額とそれとがなかなか合いにくいという事情は、ひとつ御了承いただきたいと思うのでございます。そういった点につきましては、実情国税庁のほうで十分調査していただきまして、過去の輸出所得控除はともかくとしまして、今後行なわれまする輸出割り増し償却の制度あるいは海外市場の開拓準備金の場合に、そういった点から下請企業が不利に扱われることのないようにやっていかねばならないものを考えております。
  414. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 当無利益を受けるべきものが手続の煩瑣とかそういうような形でその恩典に浴さないということはどうも不公平であろうと思いますから、今後十分にそれらのことを調査いたしまして、公平に恩典を受けられるようにしたいと思います。
  415. 武藤山治

    武藤委員 政務次官にお尋ねいたしますが、今度ガット十六条の規定が発動されて、直接税の減免をするということが禁じられる。したがって、今回制度を改めて、これなら何とか禁止条項に抵触しないだろう、こういう考え方から今回の租税特別措置に税制調査会は答申として出してきたのだろうと思うのですが、一体こういう減免措置をすることがガット十六条の禁止条項に抵触しないのかどうか、この点の自信はあるのかどうか、これをひとつ最初にお聞きをしておきたいと思います。
  416. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 私十分承知いたしませんので、事務当局から答弁いたさせます。
  417. 泉美之松

    泉政府委員 ガット十六条の第四項の規定におきましては、産品の輸出補助金を支出することをやめるということになっておりまして、その規定の承諾した国がA宣言国になるということでございます。そこでわが国は従来輸出所得控除の制度がございまして、これはガットの公式の席上におきまして、これが十六条四項の規定に違反するのではないかといったような指摘はなされておらないのでございます。ただイギリスあるいはフランスにおきまして、この日本の輸出所得控除の制度はガット十六条四項に違反するのではないかといったような非公式な話がありますので、そういった点を考えまして、従来未宣言国のままにとどまっておったのでありますが、しかしいつまでもB宣言国であることは好ましくありませんので、今回本年四月一日を期しましてA宣言国に移行するという通告をいたすことになっておるのでございます。したがいまして、ガット十六条の四項の規定は輸出補助金が何であるかということにつきましては、実のところ公式の見解はございません。しかし、この規定をつくるときのワーキング・パーティーの検討したもの、あるいはフランスから輸出補助金と解すべきものはこういうものとしたいといったような提案、これらがございますので、それらから見ますと、予算上の補助金は別といたしまして、税の関係におきましては直接税を減免することが輸出補助金に該当するというふうになっております。今回設けられました輸出特別償却制度、あるいは海外市場開拓準備金といったようなものはすべて課税の繰り延べでございまして、これは直接税の減免に該当しない。したがって、これはガット十六条四項の規定に反しないという解釈を持っておるのでございます。同時に、技術輸出所得控除につきましては、ガットの規定は産品の輸出となっておりまして、技術輸出のほうはいわゆるプロダクトではないという解釈が国際的に行なわれております。したがって、技術輸出所得控除は確かに直接税の減免ではございますけれども、これはガット十六条四項の規定する産品の輸出補助金とは考えられないということからいたしまして、ガット十六条の規定に今回の措置は違反するものではないという解釈をとっておるのでございます。
  418. 武藤山治

    武藤委員 その問題の議論をする時間がありませんので先へ進みたいと思いますが、特別措置の政府の出している予算の説明書で質問していきますが、第二の、企業の資本充実に資する見地から云々で、税率を今回軽減いたしました。この税率の軽減による二六%の分と、さらに一九%の分、二二%の分、それぞれ税額にして幾らになりますか。税額別にわかっておりますか。
  419. 泉美之松

    泉政府委員 予算の説明書にございますように、今回支払い配当に対する税率を軽減することによりまして九十九億、約百億の平年度減収額になるわけでございます。三十六年にとりました支払い配当に対する軽減税率の一〇%軽減、これによりまして五百億の軽減になるわけであります。ただそれは税率だけの問題でありまして、三十六年の措置は配当控除の引き下げ及び法人配当の益金不算入割合を引き下げておりますので、それによってまた増収が出てまいります。したがって、ネットの額は五百億より小さいということになるわけでございます。
  420. 武藤山治

    武藤委員 そういうことを聞いているのじゃないのですよ。あとでこれは資料要求をしておくが、年間所得三百万以上の法人と三百万以下の法人と公益法人と、税率が三つに分かれたわけでしょう。今度二%ずっと、一%軽減した、それを私は知りたいわけだ。だから、三百万以上の所得の比較的大きい企業がどれくらい恩恵を受けるか、二二%の分がどれくらい受けるか、これを問いているわけです。もし即答できなければ資料で後日ひとつこれは出してもらいたい。その際、いま主税局長がちらっとほのめかしたのですが、配当控除割合ですね。この前のときには、先ほどの税率を軽減した際には控除額のほうは一八だったですかね。前は二〇だったですが、それを十五%にした。今回はその一五を全然いじらぬわけですね。どうも筋が通らぬと思うのです。ちぐはぐなやり方だと思う。あなたのほうから提案したのではなく、これは自民党の圧力でやったのだからそういうちぐはぐな筋の通らぬ減税の中身ができたのだとは思いますが、しかしどうせ上の二二、一九といじるならば、当然この下の益金不算入割合及び配当控除割合のほうを据え置くというのは筋が通らない。いままでの慣例から見ても当然こちらもいじるべきだ。二〇を一五にしたときの状況を考え合わせてみてもそれが筋が通る程度ではないだろうか。なぜこういうことをやったのか、その原因と、こうやらざるを得なかった経過を御説明願いたいと思うのです。
  421. 泉美之松

    泉政府委員 これは、三十六年に配当軽課措置を講じましたときに、配当控除率を引き下げ、また法人配当の益金不算入割合を引き下げたわけでございますが、したがって、その場合の配当軽課措置は、私どもとしては、いわゆる租税特別措置ではないというふうに観念いたしておったのでございますが、今回は三十六年にそういう措置を講じましたところ、配当控除率を引き下げ、あるいは益金不算入割合を引き下げるということは投資家に、特に機関投資家にとって従来より不利益になる、したがって増資をしたい企業としてはそれが救われるけれども、投資家のほうがそれに応じないということになれば結局増資の促進にならない。したがって配当軽課措置を進めるについては、そこに非常な問題があるわけでございます。しかし今回の措置は、そういう点から配当軽課は二%進めるけれども、それによって配当控除率は理論的にいいますと、いまの約一五%というのを一三・何%に下げる、あるいは七五%という益金不算入割合を七〇%幾らというふうに下げるのが理論的でございます。しかしいかにも一三・何%というのでは中途はんぱな数字になりますし、そういった点からまた機関投資家の不利益になることをすることが必ずしも本来の目的であるところの増資促進にならないという点を考慮いたしまして、今回は軽減税率のほうを下げることも二%にとどめるが、同時に配当控除率及び益金不算入割合は変えないという制度になったのでございまして、理論的には御説のとおり片一方の税率を下げるのなら、配当控除率なりあるいは益金不算入割合を下げるのが理論的でございます。
  422. 武藤山治

    武藤委員 きょう採決をするというので、実は十一時五十九分までやろうかということで質問をやっておるわけでありますが、理事の方からも急いで締めくくりをやれということですから、採決をされた後においても国会開会中にさらにこまかい資料や何かの質問をするということを留保しておきまして、最後の一問をお尋ねしておきたいと思います。  それは御存じのように、金融財政事情の中で、発生主義によって徴税原則を貫くという主税局の考え方に対して何か銀行当局が反対をして、九月決算から発生主義を採用できないのではないか、あるいは主税局はやれると考えておるが反対が強い、抵抗が強いというような意味のことが書いてありますが、税制整備に関する答申の中でも、発生主義をこの際やるべきだという意味が書かれておるわけです。すなわち銀行等の金融機関における未収収益はこれを計上すべきものと考えるという答申がなされておる。したがってこれを九月決算から実施する決意であるのか、この点はどのようにいま作業を進めておるか、ひとつ明らかにしておいてもらいたいと思います。
  423. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 御承知のように、金融機関におきます保有有価証券の利息あるいは未収利子、こういうものは、大正年代から、金融機関におきましては、その未収の部分については資産に計上しないという、いわば保守的な会計原則をとっておるわけでございます。しかしながら筋といたしましては、やはり税法のたてまえからいたしますと、未収利益であっても、既経過分についてはその発生めときに保税をするというのが筋としては通っておると思います。ただいま武藤委員から御指摘のように、昨年の十二月に税制調査会でも同様な御意見が出ております。そこでわれわれといたしましては、過去における金融機関のそういう保守的な会計方法、経理の方法が間違っておったというのではなくて、われわれの立場からは、これをやはり税法の発生主義の原則によって経理をし  てもらいたいということで、現在銀行局のほうと打ち合わせをいたしておる最中でございます。
  424. 武藤山治

    武藤委員 銀行局と打ち合わせておるということは、もうすでに報道で知っておるんですよ。ただ問題は、徴税当局が九月決算からそれをやるのかやらぬのかという方針はどうですかということです。
  425. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま申し上げましたように、これは長年にわたる慣行でございまして、一がいにこれを誤りといってきめつけるわけにもまいらないと思います。おそらくこの制度は、預金者を保護するというたてまえから金融機関の資産を充実させるために古くからとられておった手段であろうと思います。そういう意味で、強行するということでなく、やはり部内で十分意見を出し合って調整をとった上で実施に移したい考えでございます。
  426. 武藤山治

    武藤委員 ただ証券会社や他の企業というものは発生主義で経理をやっておる。銀行だけ旧態依然とした古い発生主義ではないやり方を是認することは、その決算の認定が統一されていない。したがってこれはやはり統一した方向に――税収は三十九年度だけどかっとふえるだけで、自後の年は別に変動はないのでありますが、しかし税体系、徴税原則からいうならば、これは銀行だけをそういう慣習にほっておくことはけしからぬと思うんです。したがってこれは至急検討して全部の統一がとれる体制にすべきだと考えますが、あなたの見解はいかがですか。
  427. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 先ほど申し上げましたように、私の意見は、ただいまの武藤委員の御意見と全く同じでございます。ただ長年の慣行でございますので、これはやはりスムーズに移行するためには関係局との間に十分調整をとりながらできるだけ早く実施に移してまいりたい、こういう考えでおります。
  428. 武藤山治

    武藤委員 たいへん時間足らずの質問ですが、この法案が通過をした後においても税法の質問を許してもらうということを委員長に確約をしておいて、これで質問を終わりたいと思います。
  429. 山中貞則

    山中委員長 その問題は当委員会の不断の使命ですから、仰せのとおり、いつでも適当な機会にそのような運営をいたすつもりです。  有馬輝武君。
  430. 有馬輝武

    有馬委員 主税局長に二点だけお伺いをいたしておきたいと思います。  それは法人税の税率の問題でありますが、御承知のように、イギリスに比べましても、西独に比べましても、米国に比べましても、日本の場合の最高三三%というものが非常に低くなっておりまして、この所得税との関連でならしていく必要が基本的にあるのではないか。うちの租税政策大綱におきましても四段階に分けまして具体的に考えておりますが、この前、主税局長が長期の路線を示されたときに私がお伺いをしたのでありますが、これについてどのような考え方を持っておられるかということがまず第一点であります。
  431. 泉美之松

    泉政府委員 法人税の税率につきましては、この前申し上げましたように、一体法人税というものをどういふうに観念するかという基本問題があるわけでございます。法人税法人凝制説に基づいて観念して個人所得税の前取りというふうに考えますと、これはできるだけ税率が一本であることが望ましいということでございまして、わが国の税制はシャウプ勧告以来そういう考え方をとっておりますために、最初は三五%一本であったわけです。しかしその後三五%の税率は四二%に上がり、四〇%に下がり、それからまた三八%に下がるという経過をたどりましたが、その間に、大企業は租税特別措置によって相当特典を受ける。しかし中小企業は祖税特別措置の特典を受けることが少ないというような議論からいたしまして、最初は年所得五十万だったのでございますが、それがだんだんとふえまして、今日では二百万になっており、今度の改正で年三百万になるわけでございますが、その軽減税率という制度が設けられておるわけでございます。  そこで、それでは法人をそういうふうな擬制説的な観念に基づいて考えておる場合には税率はできるだけ一本でやるのが望ましいし、またそれをふやすことは理論上おかしいという問題になってくるわけでございますが、しかし法人の実態を見た場合に、現在の大企業のように資本と経営のいわゆる分離されているような大企業の場合に法人擬制説に基づいた理論が適当するのか、それとも法人実在説に基づいて法人税を観念したほうがいいのかという基本の問題があるのでありまして、税制調査会におきましては目下その基本問題をどうするか、どう観念するかという検討をいたしておるのであります。その観点からいたしますと、法人実在説に基づいて考えますれば、今回アメリカがとりましたように年二万五千ドル以下の法人税は従来三〇%でありましたのを、これを二二%に思い切って引き下げたわけでございます。そして最高税率が五二%であったのを年々下げていって、四八%までにしようというような改正案ができております。そういった点を考えますと、いまの日本の法人税率が三八%と三三%になっている点につきましては、そういう法人実在説をとれば考え方を改めなければならぬという点が出てこようと思うのであります。しかし法人実在説をとるべきか、擬制説的な考え方をとるべきかというような問題がございますので、その点はなお税制調査会のほうで検討していただいて、そこではっきりと線が打ち出された上で、法人の税率というものをどういうようにすべきか検討いたしたい、かように考えておるのでございます。
  432. 有馬輝武

    有馬委員 いままでそれぞれの立場から論議をされてきて、それを踏まえて実効負担率をどう考えていくかという立場から私はいまの質問をしておるわけです。きょうはこのようになっておりますので、そういった前書きとかなんとかは全部省いてしまって端的にお伺いしておりますので、そのつもりで答えていただきたいと思います。  それから次は、私は簡単に聞きますが、同族会社を特別扱いにする、これについていままで十分論議されてきたところなんですが、これをやめる考え方はないか、これも結論だけでけっこうです。
  433. 泉美之松

    泉政府委員 同族会社留保所得課税を全然やめることは適当でないと思っております。ただその負担を非同族会社の場合との留保傾向とにらみ合わせて、漸次軽減していくという必要は認めております。
  434. 有馬輝武

    有馬委員 それから企業組合課税の軽減についてどのようなプログラムを持っておるか、これもお聞かせいたきただいと思います。
  435. 泉美之松

    泉政府委員 企業組合に対する課税につきましては、その成立当時のいきさつからいたしまして、現在九条第七項法人として特別の扱いをしているわけでございますが、それにつきましては先般春日委員の御発言もございましたので、今後企業組合の実態を十分調査いたしまして、企業組合が当初問題になりましたような、いわゆる脱税的な組合でないという性格が変わってきておるかどうか、その点を校訂した上でそれらに対する課税の問題を再検討いたしたい、かように考えておるわけであります。
  436. 有馬輝武

    有馬委員 たとえば確定申告書の問題については出さなくてもいいようにするとか、そういったことを具体的に考えているのかどうか、これもあわせて伺いたい。たとえば家賃なんかの場合。
  437. 泉美之松

    泉政府委員 企業組合の場合に、一般の所得税の確定申告の場合と違って所得を分散するおそれがあるということから、一般の申告の場合でございますとその給与所得者が他の所得が五万円以下である場合は申告を要しないことになっているが、企業組合の場合は申告を要するということにいたしております。これはそういった目的から出ておりますので、にわかにやめるのが適当とは考えないのでございます。しかしその実情につきましてはなお十分調査いたした上で検討したい、かように考えます。
  438. 山中貞則

  439. 春日一幸

    春日委員 非常にせかれておりますし、のみならず食堂も終わってしまいましてすでに空腹に耐えかねておりますので、問題を集約いたしましてお伺いをいたします。  まず木村国税庁長官に、これは特に要望いたしたいのでありますが、大工、左官、とび等に対する所得税取り扱い方の通達、これは御承知のとおり営業所得と勤労所得の区分を、特に徴税行政の責任においてこういう区分がなされておるのでございます。これは当時本委員会の強力なる主張に基づいてこのような行政措置がとられていると思うのでありますが、それにいたしましては実は三十七年二月十六日に通達が出されたままに相なっておるのでございます。顧みますと、当初は三十年二月に出されたものが、その後賃金水準等の情勢の変化に即応いたされまして、やはり賃金部分を多く見なければならぬというその必要に基づいてこの区分率が変更されたものと思うのでございます。しかるところ現実には三十七年の二月十六日に通達がされまして、三十六年度の所得分からこれが適用せらるべき旨通達の中に明示されておりますが、この三十六年、三十七年、三十八年というのは非常に経済成長が高いのでございます。高度成長、所得倍増論によって賃金もまたあおられました。官公吏の賃金ベースアップ、産業労働者の賃金ベースアップ等現実に六年、七年、八年と三カ年、このことは格段の上昇を見ておるのでございます。こういうことから大工、とび、左官等の賃金部分も相当に上がっておりますので、したがって本昭和三十九年度においてもやはり昨年度のこの区分率については、このような賃金情勢の変化に即応されまして、この区分率というものを実情に即して変更せられてしかるべきだと思うのでありますが、願わくはこの際このような零細所得者に対する減税のためにも――これは午前中の田中君の所論の中にも特に強調された点でありますが、団体法においても、あるいはまた基本法においても零細事業者、勤労事業者の減税のことのために国会は政府に対する一個の宣言規定を設けてその政策の実現を迫っているのでございます。このような経過にかんがみまして、本年度においてやはりこの区分率はそのような趣意を参酌されて変更される必要があると思うが、長官の御見解はいかがでありますか。御見解というよりも、むしろ変更していただいて――大工が千円のものが千五百にもなっております。千五百円のものが事実上千八百円にもなろうといたしております。大工、左官、とび、板金、特に屋内労働のできません部分については、そういう賃金上昇がありますので、それに即して所得額の分類というものは、賃金所得部分をより多く見ていただくように変更せられたいと思うのでありますが、これについての御見解、あわせて御方針をお述べ願いたいと思います。
  440. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 ただいま春日委員御指摘になりましたように、現在の左官、とび、大工さん等の所得につきましては、三十六年に各国税局で実態調査をいたしまして、その結果三十七年の二月から実施をしておるのでございます。しかしその後ただいま御指摘になったような情勢もございますので、三十九年分につきましては、これからもう一回実態調査を行ないまして、実情に即したように改正をいたしたいと存じます。
  441. 春日一幸

    春日委員 三十年度から三十六年度までにも歴然たる賃金上昇がございました。しかしながら六年、七年、八年におきます賃金上昇のその足どりといいますものは、これは相当のものでございます。したがいまして、願わくば、早期に御調査の上、これは労働省の賃金統計にもございますが、必ずしも国税局の実態調査によらずして、政府に資料があろうと考えますので、賃金上昇の実態をふんまえて、ひとつぜひとも三十八年度の所得からその減税のフェーバーがこれら勤労者に及びますように善処いたされたいと思うのであります。特に基本法の制定された翌年、これらの零細事業者に対します関連法律、政策というものがなお乏しいのでございますから、せめてはこのような施策をさらに講ずることによって、その法律の効果を確保いたしたいと思うのでありますが、三十九年度ということになりますと来年度になります。このことは三十六年、七年、八年と賃金の上昇の趨勢に即応されて、願わくば三十八年度の所得からそのような処理がかないませんものか、この点についていかがでありますか。
  442. 木村秀弘

    木村(秀)政府委員 せっかくの春日委員の御要望でございますけれども、御承知のように、この十六日をもって三十八年分の申告が終了いたしております。したがって、今年中にできるだけ早期に実態調査をいたしまして、三十九年分について検討を加えるということで御了承をお願いしたいと思います。
  443. 春日一幸

    春日委員 なるほど三月十六日に申告済みであるから、区分が困難である情勢はわかりました。それではひとつ何とか早期にこの実情に即して、できるだけ適切な処理がなされますように強くお願いをいたしておきたいと思います。  次は泉さんにお伺いをいたしたいと思うのでありますが、社会党の諸君からいろいろと租税特別措置についての論議がなされましたが、特に中小企業の設備近代化のための積み立て金に対する非課税特別措置、これについて政府の検討がいかに進められておるのであるか、特に主税局において問題をどのように検討されておるのであるか、私の要望意見を加えて御見解を伺いたいこ思うのでございます。申し上げるまでもなく、所得倍増政策によって産業間、企業間、階層間に大きなる所得の断層、所得格差を生じてまいっておることは、すでに国会論議の中において強調されておるところでございます。したがいまして、この所得格差を解消して、均衡ある成長発展を遂げることのためにも、金融、税制全般にまたがって、それぞれの施策を講ぜられてしかるべしと強く要望が繰り返されておるのでございます。したがいまして、所得格差を解消するためには、すなわち大企業と中小企業の所得格差を解消することのためには、まずもってこの中小企業の生産性を向上させなければならぬ。そうして企業利潤の増大をはからなければなりません。大企業においては、金融上、税法上さまざまな措置が講ぜられておりますから、したがって、自由濶達なる成長が現になし遂げられつつあるのでありますが、しかしながら、中小企業にはなるほど減価償却もございます。あるいは担税償却等もございます。中小企業設備近代化法案によるさまざまな政策もございますが、これらの政策にあわせてわれわれとして特に強調いたしたいことは、特にまた中小企業の全国的要望でありますことは、ただいま指摘いたしましたようなぐあいに、やはりこの一定の重要な業種に属する中小企業が設備近代化のために積み立て金として所得の中から一定の金額、たとえばこれを一〇%にいたしましても、一五%にいたしましても、こういうようなものを積み立てました場合、この積み立て金に相当するものは、これを所得金額から控除する、それからこのような控除したものの累積によって機械を購入した場合は、やはり圧縮記帳等の方法によりまして、とにもかくにもこういう方法によって中小企業の設備の近代化を政策的にバックアップしていく、これは私は必要にして欠くべからざる当面の施策ではないかと思うのでございます。これはすでに業界からは要望が非常にあるのでありますが、政策理論としては私は今回申し上げるのが初めてございますが、しかしこれはぜひとも申し上げて、政府の実現を求めたいと思いますが、どのように御研究になっておりますか。
  444. 泉美之松

    泉政府委員 この租税特別措置の内容はいろいろございますが、私ども税制をやっている立場から申し上げますと、特別償却のほうは期首償却でありますから、あとの耐用年数の経過のうちに取り返すということで、さして問題はないのでございますが、一番問題になりますのは、いわゆる重要物産の免税と利益留保の積み立て金、準備金、こういうことでございます。お話の中小企業設備近代化積立金につきましては、どうもそれが利益留保の準備金ではないかという点から、税制上難点があるのでございます。ただお話のように、中小企業の近代化を促進するためには、そういう積み立て金を設けておいて、そうして中小企業の生産性向上のための機械設備の取得を容易にするという政策的な必要もあろうかと思います。しかし税制の立場としては、いま申し上げましたように、利益留保準備金になるという点に難点がございますので、現在のところ、これが制度化については見送っておるのでございます。今回におきましては、準備金のうち、海外市場開拓準備金、それから新開発地域投資損失準備金、この二つだけを輸出振興という点から認めたのでございまして、したがって、中小企業設備近代化積立金につきましては、ほかに研究投資準備金という要望もあるわけでございまして、それらの点とあわせ今後検討してまいりたい、かように考えております。
  445. 春日一幸

    春日委員 私は、この問題は前向きの形で研究を進めたいという御答弁でございますので、切に期待をいたすのでありますが、いずれにいたしましても、いま泉局長の答弁されたところは、これは本日までの一つのマンネリズムでございます。従来の観念はそれでございました。しかしその観念に基づいてそれぞれの施策が講ぜられておるのでありますが、しかし情勢変更の原則というものがございます。現在の開放経済、OECD、八条国への移行、関税一括引き下げ、こういうような画期的な大変革と申しますものは、既往の徴税理論ではなかなか私は対応できないものがあろうと思うのでございます。したがいまして、いままでのそのような観念を脱皮いたしまして、しこうしてわが国の中小企業がどのような地位と役割を果たしておるか、雇用において七九%、生産において、貿易においてどのような役割を果たしておるか、しかもこのような国際経済、開放経済の中に対処して、日本経済は中小企業にいかなる使命をになわしておるか、このことを判断いたしますならば、既往の観念のマンネリズムの中で問題の処理はできかねると思うのでございます。単年度償却と初年度償却、いろいろございます。他にもそのようないろいろな特別償却の制度があることは承知いたしておるのでありますが、しかし、私はそのすべての、たとえばバーやキャバレーやパチンコ屋、そういうものまでそのような設備近代化のために云々しておるのではございません。したがいまして、やはり国際競争力を強化することのために重要なる産業とおぼしき業種については、このような近代化のための準備金制度というものは創設されてしかるべしというよりも、創設されるにあらざれば、わが国のこの開放経済に対処することはできないのである。これは中小企業が占めておる割合が少なければそれはそれでもよろしいけれども、現実に占めております割合が雇用において、生産において、流通において、輸出において、これがざっと平均いたしまして六割以上のものを占めておると思うのでございます。そういう大きなわが国産業経済の本体でありますものに対して、やはり国際競争力を強化させることのために、さらによりよき施策をこらすということは、必要にして欠くべからざる方法であろうと思うのでございます。したがいまして、いま申し上げましたこの重要産業に対して、特にそのような近代化のための準備金に対して、その損金積み立て金をその課税対象から除外していく、こういうことは、学者間においても相当論じられており、業界にそのことを強く要望しております。われわれ政策マンもその必要性をもはや認めております。すべからく政府のほうにおいて従来のその方針というものにこだわることなくして、この現実に対処されて必要な施策を講じられることを強く要望いたしますが、政務次官、これは大きな政策案件でございます。やはり政府としてこの政策をどのように判断されておるのであるか、この際責任ある御答弁を願っておきたいと思います。
  446. 纐纈彌三

    ○纐纈政府委員 ただいま春日委員のおっしゃいましたことは私非常に参考になりました。ことに、中小企業問題に対しましては非常な御研究をなされて、高邁な御意見を拝聴しましたので、御趣旨に沿うように努力をいたします。
  447. 山中貞則

    山中委員長 ただいま議題となっております各案中、法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案の各案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     ―――――――――――――
  448. 山中貞則

    山中委員長 これより各案を一括して討論に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。平林剛君。
  449. 平林剛

    ○平林委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました法人税法の一部を改正する法律案、並びに租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しまして、その税制改正の基本的な誤りと問題点を指摘しながら、これに反対する討論を行ないたいと思います。  最近における国民の税負担の現状から見まして、昭和三十九年度の税制改正は、どこにその重点を置くべきかという基本的目標につきまして、私どもはまず生計費には税金をかけないという原則に立って、所得税負担の軽減をはかり、税制面における負担の公平という立場から、従来より大企業に偏向する租税特別措置はこれを大胆に整理するよう政府と論争を続けてまいったのであります。しかるに政府の重点施策としての税制改正は、この二つの目標に対して著しく背反するものでありまして、この二法につきましても、所得税における実質的な税負担の軽減を要望する国民とともに、とうてい私どもの容認できないところであります。特に税負担の公平原則から見まして、この二法律案は、大資本擁護の政策を大量に盛り込みまして、調査会の答申にもない各種の特別措置を乱造創設して税制を混乱させる傾向にある点に私は大きな問題があると思うのであります。  御承知のように、昭和三十九年度の税制改正におきましては、その重点を所得税減税を最優先に取り上げるよう税制調査会をはじめ多くの国民世論がこれを要望いたしたのでありますが、政府はいわゆる政策減税に力を注ぎまして、田中大蔵大臣のごときは、税制調査会の答申がどうあろうとも、政治生命をかけて資本蓄積減税を優先的に実施すると初めから勇ましいラッパを鳴らしまして、税制調査会を暗に牽制し、池田総理大臣も租税特別措置の乱造創設に対するわが党の批判に対して、私は税制調査会には意見を聞くだけで、言うとおりにはしません、ときわめて高姿勢の暴論をはくなど、まさに税制における独裁的傾向を示しているのであります。(拍手)その結果、昭和三十九年度における租税特別措置による減収額は、国税におきまして二千五百四十億円、地方税を含めますと、三千八十億円という膨大な金額にのぼり、昭和二十五年当時の十三億円という減収に比較いたしますと、実に百九十五倍、今日まで累積された大企業への恩恵的な減税は国税だけで一兆四千九百五十一億円をこえるという巨額に達しておるのであります。これは所得税における初年度の六百四十九億の減税を昭和三十二年度以降の大減税であるとみえを切り、昭和三十九年度の税制改正を、口を開けば中央、地方を通じて二千億をこえる大減税と、一般の国民に対してあたかも大減税かのような錯覚と幻想を抱かせておることと比較いたしますと、これこそ私は、大資本擁護にとって史上最大の大減税というべきであると思うのでありまして、私は政府に猛省を促したいと思うのであります。この際特に注意を喚起しておきたい現象は、池田総理が昭和二十四年、第三次吉田内閣の大蔵大臣として登場いたしました翌年、すなわち昭和二十五年度から租税特別措置十三億円が税制上に頭をもたげ初めまして、昭和三十五年度その内閣の首班となりましてから、その減収額が激増しているという経過を見ることができるのであります。私は、この経過から考えまして、今回の税制改正にあたりましては、特に政治と金との悪因縁を絶つためにも、租税特別措置の全面的な改廃は必要であると痛感をしたのでございますが、政府はかえって租税特別措置の乱造創設をしたのであります。それでは一部の観測にありますように、過般の総選挙でお世話になった財界、産業界に対するお礼の意味と、その論功行賞だという説をくつがえすことができないのではございますまいか。まことに遺憾なことといわなければなりません。  法人税法改正におきましては、一見すると中小企業者の税負担軽減の一環として、普通法人の各事業年度の所得に対する法人税の軽減税率の適用限度額を、現在の二百万円から三百万円に引き上げ、機械設備を中心に固定資産の耐用年数を短縮するなど、初年度三百億円、平年度四百九十三億円の減税となっておりますが、平年度四百九十三億円のうち中小企業者の減税分はその四〇%の二百億円にすぎないのであります。御承知のように、わが国法人数は昭和三十八年度六十五万九千八百四、その九八%はまず年間所得一千万円以下の中小企業者でありまして、年間所得一億円以上の大法人はわずかに二%という割合になっておるのであります。そのわずか二%の大企業に二百九十三億円、九八%の中小企業に対しては二百億円と、まことにつり合いのとれない減税は、中小企業に便乗した大資本擁護というべきだと思うのであります。(「そのとおり。」と呼ぶ者あり)また、法人税軽減四百九十三億円の大半、四百十億円は、政府のことばでいえば開放経済への移行に備えて企業の内部留保の充実と設備の更新に資するためとして、固定資産の耐用年数を短縮するところに主眼が置かれておりますが、その具体的な措置はすべて政府が目下検討中の政令、省令にゆだねられておりまして、正しくは委員会の審議対象とならず、この段階で賛否を決するには重大な疑問が残るわけでありまして、私ども賛成し得ない理由の一つであります。  租税特別措置法改正案におきましては、従来よりガット第十六条四項の輸出補助金として国際的批判の対象でありました輸出所得控除制度にかえて、新たに海外取引のある場合割り増し償却等の改正により百十七億円、特別控除制度の創設で七億円、海外市場開拓準備金制度の創設により百十四億円、また配当軽課措置の拡大によりまして百十四億円など、合計四百十九億六百万円の特別措置を認めようとするものでありますが、政府提案に対して私ども基本的に容認できない点は、第一に税制調査会の検討を待たず、租税特別措置を乱造創設したことでありまして、かりにその中に多少の必要性を認められるものがあったといたしましても、しからばそれだけ緊急性があるかという点については、多くの疑問があるのであります。私は少なくとも租税特別措置について本格的検討を進めておる税制調査会の答申を待つべきものと思うのであります。いわんや一般の国民が過重な税負担に耐えているとき、いかにわが国が直面した開放経済への移行という政策要請があったといたしましても、税制の措置に安易に依存する考え方は基本的な誤りであると思うのであります。国際競争力強化のためにと提案をされました海外取引等のある場合の割り増し償却、技術等海外取引にかかわる所得の特別控除、海外市場開拓準備金制度の創設は、貿易為替の自由化を迎えて輸出の振興の必要性が高いことを認めないわけではあませんが、租税特別措置というのは負担公平の原則や租税の中立性を阻害し、総合累進構造を弱め、納税、モラルに悪影響を及ぼすなど、弊害の多いことは各位の御承知のとおりでありまして、政府はこの認識に立って、絶えず税制以外の措置で有効な手段を検討し、特別措置の効果を実践で確かめ、特権化しないように配慮してこれを短期に改廃、縮減に努力すべきときであると思います。これをガット第十六条四項の規定に触れない程度において企業の国際競争力の強化をはかるという基本的な考え方は、ガット加盟諸国の批判に再びほおかむりする行為でありまして、看板の塗りかえによる措置にすぎないと思われ、国際信義から見ましてもいかがかと思うのであります。配当軽課措置の拡大その他における租税特別措置法の不当性指摘に対する政府の答弁は、先ほどの大蔵大臣の答えにありましたように、自己資本の充実と資本蓄積の必要ということでございますが、私は今日も資本金一億円以上の大企業が法人全体の七四・九%を占め、総資本の六三・八%、固定資産の七四・九%、そして純利益の六〇%を独占しておるということを忘れてはならぬと思うのであります。企業資本における自己資本の割合が戦前に比較いたしまして低条件にあるといたしましても、今日までの経過を見ますと、相当の税制上の恩恵でささえられながら歴年低下する一方でございまして、税制上の措置の効果は、私は疑問だと思うのであります。かつその主たる原因は、わが国の経済発展の速度が早かったことと、政府の所得倍増計画によって企業の内部資金をはるかにこえた投資に狂奔した結果でありまして、その回復措置を一般の税負担の犠牲に求めようとするのは、私はあまりにも虫のよい要請であるといわなければならぬと思うのであります。かりに開放経済への移行に備えて、資本蓄積の必要性を真に痛感するものであるならば、私は最近の法人におけるいわゆる交際費に対する政府の態度は、もっと厳粛な措置が必要であると思うのであります。昭和三十八年度における交際費の支出額は、三千八百八十六億、資本金一千万円以上の法人におきましては、昭和三十年度の七百二十億と比較して約四倍半という激増ぶりを示しておりますのは、田中大蔵大臣の財政演説にある、企業においては、あくまで自己責任の原則に立って、慎重にかつ合理的な経営を通じて内外のきびしい環境に耐え得ることが必要であるという趣旨からも反しておるのでございまして、今回とられた政府の措置は、なお不十分であり、心がまえにおいて欠けるものがあり、同時に、これは租税特別措置法に対する政府の基本的なかまえを示しておると思うのでございます。  以上申しました趣旨によりまして、私どもは政府提案の二法に反対しようとするものでございますが、先ほど有馬委員より提案をされました租税特別措置法の一部を改正する法律案に対する修正案は、第一に、大企業ないし資産所得者本位に設けられた偏向租税特別措置は原則としてこれを廃止する、第二に、昭和三十九年度以降における特別措置の新設は一切認めないことを主体としておりまして、私はまことに時宜に適した修正案であると思うのであります。この意味におきまして、私はこの有馬委員提案の修正案に対しまして賛意を表するものであります。  以上、修正案に対しては賛成、政府提案による二法に対しては反対の討論を終わります。(拍手)
  450. 山中貞則

  451. 木村剛輔

    木村(剛)委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、ただいま議題となりました法律案につき、法人税法改正案及び租税特別措置法改正案に対して賛成の、租税特別措置法改正案に対する社会党修正案に対して反対の討論を行なうものであります。  今回の法人税法及び租税特別措置法改正は、昭和三十九年度税制改正の一環として行なわれるものでありますが、昭和三十九年度においては、国税、地方税を通じて平年度二千二百五十六億円、国税においては平年度千三百七十六億円に及ぶ大幅な減税を実現せんとするものでありまして、これはわが党が昨年秋の総選挙に際して公約し、国民多数の支持を得た二千億減税のスローガンを実現したものであって、きわめて満足の意を表するものであります。  野党の皆さんは、国税の自然増収六千八百二十六億円に比して減税の規模が小さいという批判を当委員会においてしばしば表明されておるのでありますが、前年度繰り越し剰余金の減少分を差し引いた実質的増加財源四千八百九十億円のうち、その一七・一%に当たる部分を本年度の減税に振り向けたものでありまして、この割合は昭和三十二年度後においては最高の割合を示しており、公共投資の増大、社会保障の拡充等、現下緊要の歳出要請を満たしながら、一方においてこのような規模の減税を実施しようとすることは、財源の許す限り最大の減税を行なったといっても過言ではなく、野党の皆さんの批判は当を得ないものと思うのであります。  次に、改正法律案の内容を見ますと、これらは資本の充実、設備の更新に資するとともに、特に中小企業の負担軽減をはかるための企業課税減税及び産業の国際競争力の強化等、所要の特別措置をあわせ講ずることを主たる内容とするものでありまして、最近の国民負担の現状及び内外経済情勢の推移を考えるとき、まことに適切な措置と考えるものであります。  以下、改正案のそれぞれについて、その賛成の理由を述べたいと思います。  まず、法人税法改正におきましては、法人税の軽減税率の適用限度額及び同族会社の留保所得課税の控除額の引き上げがはかられており、これは中小企業の負担の軽減に大いに資するものでありまして、賛成をいたすものであります。  中小企業については、所得税法改正及びこの法人税法改正等、今回の税制改正により国税、地方税を通じて平年度六百億円を上回る減税が実施されるものであり、これは中小企業の近代化、高度化をはかるための他の諸施策と相まって中小企業者に対して大きな福音となるものであります。  なお、法人税については、法人税法規定に基づく大蔵省令の改正により機械、設備を中心に固定資産の耐用年数につき平均一五%の短縮がはかられることになっておりますが、これは開放経済への移行に備えて企業の経営基盤の強化に大きく貢献するものと考えられるものであります。  次に、租税特別措置法改正におきましては、企業の国際競争力の強化、科学技術の振興、企業資本の充実等、現下要請される各般の施策が講ぜられておるものでありまして、いずれも適切な措置であると考えます。  租税特別措置につきましては、大企業のための優遇措置であるとか、税負担の公平を害しているとかいう論拠から、これを廃止すべきだとの議論がしばしば行なわれているのでありますが、私は、租税政策も経済政策、社会政策の一環であり、その意味における租税特別措置の必要性は決して無視してはならないものと考えるのであります。特に来年度は本格的に開放経済体制に移行する年でありまして、今後わが国経済が開放体制下に堅実な発展を続けてまいりますためには、前述した企業の国際競争力の強化、科学技術の振興、企業の資本の充実等はゆるがせにできない緊要な政策要請であり、これにこたえる今回の租税特別措置法改正は、まことに時宜に即したものと考えるのであります。  この他、租税特別措置法改正におきましては、住宅対策、中小企業対策、農林漁業対策として、きめのこまかい種々の配慮がなされているのでありまして、大企業優遇のための租税特別措置という批判は全く当たらないものと考えられるのであります。もちろん租税特別措置については、その特定政策目的実現のための誘因効果と租税負担の公平原則との間の調整をはかり、制度の固定化を避けるよう機動的に改廃を行なうことに常に留意しなければならないことは言うをまたないのであります。  法人税法及び租税特別措置法についての改正法律案は以上述べたような内容を持つものでありまして、私はこれらの法律案について、以上述べたような理由から全面的な賛意を表明するものであります。  なお租税特別措置法改正案に対する社会党の修正案につきましては、これが政府原案の全文を修正し、新規の特別措置は一切これを認めず、期限の到来するものにつきましては、若干の項目を除いてこれを廃止し、さらに利子課税の特例、配当課税の特例、価格変動準備金等の特別措置をも廃止しようとするものでありまして、その提案の趣旨には傾聴に値する点もあるのでありますが、現下わが国内外の実情に適合しない修正案と考えられます以上、これに反対せざるを得ないことをまことに遺憾とするものであります。  以上をもって私の討論を終わります。(拍手)
  452. 山中貞則

    山中委員長 竹本孫一君。
  453. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民主社会党を代表して、ただいま議題となりました法人税及び租税特別措置法改正案に対しまして、反対の意見を表明するものであります。  今回の税制改正は、政府の最重要施策の一つとして、国税において平年度千百二十九億円の大幅減税を実施するものとうたわれておりますが、その減税の内容をしさいに検討してみますと、昨年同様、本年もまた大企業に対する政策減税のために中小企業、勤労所得者に対する一般減税が多大なしわ寄せを受けておるのであります。来年度の自然増収六千八百億円に比べてみまして、また国民所得に対する租税負担率が三十九年度二二・二%に達することを考えます場合、さらに物価騰貴の趨勢を考慮に入れますと、今回の減税はまことに微々たるもので、とうていわれわれは納得することはできないのであります。  まず法人税法改正では、政府案は普通法人に対する法人税の軽減税率の適用範囲を年所得二百万円から三百万円に引き上げているが、われわれは中小企業法人適用される軽減税率はさらに段階的にこまかく分けて引き下げ、たとえば年所得五十万円以下は二五%、五十万円をこえ百万円以下は二八%、百万円をこえ二百万円までは三〇%というように、中小法人の税負担の軽減と合理化をはかる必要があると思うのであります。  また、同族会社の留保所得課税についての控除額を、課税所得の二〇%または百万円のいずれか大きい金額に引き上げることといたしておりますが、本来この制度は非同族会社との負担の不均衡を招来し、中小企業の内部留保による資本蓄積を阻害するもので、ことに最近における資本金一億円以上の法人の社内留保割合が二七・七三%程度となっておる点から見ましても、控除割合を現行の一五%から二〇%に引き上げた程度では、とうてい大企業との格差を解消することはできないのであります。また企業組合につきましては、企業組合の最近の整備充実した実態にかんがみまして、また新しい経済の段階において、企業組合の果たすべき重要なる使命と役割りにかんがみまして、協同組合と同様に法人税法第九条第七項の特別法人として軽減税率を適用することが至当であると思うのであります。  次に、租税特別措置法改正につきましては、農業協同組合、漁業協同組合、事業協同組合、事業協同小組合及び商工組合に対して、留保金が出資の四分の一に達するまで、留保した所得の二分の一については法人税を課さないこととしておりますけれども、生活協同組合や企業組合に対しましてもこの措置が当然なされるべきであります。  今回の租税特別措置法改正は依然として大企業優遇のための改正でありまして、しかも税制調査会の答申にもないものが十数項目入っておるのであります。中小企業の受ける恩典はその結果きわめて少なく、大企業本位、高額所得者本位の特別措置は大幅に整理、改廃すべきものであると私どもは信ずるのであります。  たとえば価格変動準備金の損金算入率の引き下げ、重要物産免税、重要外国技術使用料課税の特例、異常危険準備金などの特定産業の特別措置を廃止し、また今回の改正で証券投資信託の収益分配金の分離課税が行なわれることになっておりますが、元来利子所得の分離課税配当所得に対する源泉徴収税率の引き下げ等の資産所得減税の特例は、これを漸次廃止する方向で考慮すべきものであります。  なお、政府提案の租税特別措置法改正案につきまして、ただいま社会党より修正案が提案されましたけれども、この修正案は今回の改正案を全面的に否定せんとするものであります。われわれとしても、租税の特別措置は漸進的に廃止の方向で考慮しつつありますけれども、いまこれを一挙に廃止することの妥当性については疑問を持つものであります。  たとえば今回の海外市場開拓準備金制度の創設にいたしましても、中小企業者が海外市場調査の費用のための賦課金支出について損金算入を認めることにいたしております。またその賦課金の納付を受けた商工組合等についても、これに見合う準備金の設定を認めることにいたしております。さらにまた、住宅建設の促進に資するために、新築貸し家住宅の割り増し償却の率を引き上げることにいたしております。これら中小企業者や一般民生安定のために役立つ特別措置をもすべて否定せんとするがごときは、われわれの賛同し得ざるところであります。  以上、申し述べましたもろもろの理由によりまして、政府提案の法人税法及び租税特別措置法改正案並びに租税特別措置法改正案に対する社会党の修正案に対しては、わが党は反対であることを明らかにして、私の討論を終わります。
  454. 山中貞則

    山中委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  まず、法人税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  455. 山中貞則

    山中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。(拍手)  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案及び同案に対する修正案について採決いたします。  まず、有馬輝武君外十二名提出の修正案について採決いたします。  本修正案を可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  456. 山中貞則

    山中委員長 起立少数。よって、本修正案は否決されました。  次に原案について採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  457. 山中貞則

    山中委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。(拍手)     ―――――――――――――
  458. 山中貞則

    山中委員長 ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  459. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  460. 山中貞則

    山中委員長 次会は、明十八日午前十一時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後八時三十六分散会