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1964-02-04 第46回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月四日(火曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 山中 貞則君    理事 臼井 莊一君 理事 原田  憲君    理事 藤井 勝志君 理事 坊  秀男君    理事 吉田 重延君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       天野 公義君    伊東 正義君       大泉 寛三君    大久保武雄君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       金子 一平君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       濱田 幸雄君    渡辺美智雄君       卜部 政巳君    岡  良一君       小松  幹君    佐藤觀次郎君       田中 武夫君    只松 祐治君       野原  覺君    日野 吉夫君       平林  剛君    松平 忠久君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席政府委員         内閣法制局参事         官         (第一部長)  山内 一夫君         総理府技官         (科学技術庁研         究調整局長)  芥川 輝孝君         検     事         (刑事局長)  竹内 壽平君         大蔵政務次官  纐纈 彌三君         大蔵事務官         (大臣官房日本         専売公社監理         官)      遠藤  胖君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁保安局         防犯少年課長) 楢崎健次郎君         厚 生 技 官         (国立公衆衛生         院疫学部長)  松田 心一君         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         日本専売公社理         事         (技術調査部         長)      杉  二郎君         日本専売公社販         売部長     狩谷 亨一君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 二月三日  委員渡辺美智雄辞任につき、その補欠として  江崎真澄君が議長指名委員選任された。 同日  委員江崎真澄辞任につき、その補欠として渡  辺美智雄君が議長指名委員選任された。 同月四日  委員田中武夫辞任につき、その補欠として桜  井茂尚君が議長指名委員選任された。 同日  委員桜井茂尚君辞任につき、その補欠として田  中武夫君が議長指名委員選任された。     ――――――――――――― 一月二十九日  昭和三十八年産米穀についての所得税臨時特  例に関する法律案内閣提出第二九号)(予) 同月三十一日  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第四〇号) 二月三日  日本開発銀行法の一部を改正する法律案内閣  提出第四二号)  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第五一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  専売専業に関する件(たばこと肺がんに関する  問題)      ――――◇―――――
  2. 山中貞則

    山中委員長 これより会議を開きます。  小委員会設置の件についておはかりいたします。  税制及び税の執行に関する調査のため、また金融及び証券に関する調査のため、それぞれ小委員会を設置いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、設置することに決しました。  なお、術小委員会の員数はそれぞれ十三名とし、小委員及び小委員長選任並びにその辞任補欠選任等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 山中貞則

    山中委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  では後刻委員長において小委員及び小委員長指名し、公報をもって御通知いたします。      ――――◇―――――
  5. 山中貞則

    山中委員長 専売事業に関する件について調査を進めます。  本日は、たばこ肺ガンに関する問題について質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。堀昌雄君。
  6. 堀昌雄

    堀委員 実は順序としては国立公衆衛生院のほうからお伺いするつもりでおりましたけれども、まだ出席がないようでありますから、とりあえず公衆衛生局長のほうでお答えをいただきたいと思います。  この間米国公衆衛生局のほうで、一般にいま新聞紙上その他で取り上げられておりますところの喫煙と健康に関する諮問委員会報告書というものが問題になっておるわけでありますけれども、この報告結論と――それから特にその結論アメリカ結論でありますから、日本の場合にこの結論はどういう形で受け取られるか、この二点についてお伺いをいたします。
  7. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまお話アメリカ委員会報告はこれでございます。このように非常に大部なものでございますので、この内容について一口にということはなかなかむずかしいのでございますが、結論的に申しますと、たばこは健康に相当の害があるということであります。その相当にというのはどの程度かといいますと、大体三十五歳から八十歳程度の中年以降の男性について、たばこを吸う人と吸わない人とを比べますと、吸う人のほうが死亡率において約七〇%上回っている。その原因はおもに何であるかといいますと、実数として一番大きく影響してくるのは、冠状動脈系心臓疾患、これが約一・七倍になるということでございますが、実数としては非常に大きく影響してまいります。  なおお話肺ガンにつきましては、この調査では約十倍程度になっているというふうにいっております。この十倍というのが非常に大きな数字に見えるわけでございますが、要するに、百十二万人程度調査対象の中から約七百数十人、普通であれば肺ガンが出るはずのものが、千八百人程度肺ガンが実際に見られた。その七百数十人と千八百人程度を比べると約一〇・八倍ぐらいになる、こういう結論でございます。なおこの報告書たばこ肺ガンという報告曲目ではございませんで、スモーキングアンドヘルスという報告書でございます。したがって肺ガンのみならずいろいろな成人の病気にかなりの悪影響があるということを指摘したわけでございます。  これに対して、これが日本国民の場合に当てはめてどうかということでございますが、これも御承知のように、二十七日に日本の国内におけるこの道に関心のありまたある程度研究等ををやっておいでになる方々から御意見をお伺いいたしました。その結果、これを日本に当てはめた場合にはどうであるかということの意見といたしまして、ただいまもお話のありましたように、この調査の基本になりました事項は、一九五〇年から六二年ぐらいまでの間におけるアメリカ、カナダ及びイギリス調査が主体になっております。したがってその時期における事実として認めることは、これは全く妥当であろう。しかし国情も違いいろいろな社会的条件の違う日本に持ってきて、そのまますぐに当てはまるとは考えにくい。なぜかというと、一番大きな問題といたしまして、日本では現在肺ガン死亡率がおおよそアメリカの四分の一、イギリスの八分の一ございます。数が第一非常に少ない。それから日本では最近非常に肺ガンがふえております。この十数年の間に男が六倍、女が五倍というぐあいに非常にふえておりますが、男と女の比率が非常に差が少ない。外国たとえば肺ガンの多いイギリスやなんかでは、大体女のほうが男の十分の一程度、ところが日本ではその差が非常に少ない。ということは、女はあまりたばこをのまぬのに、男はたばこをのんでいる、その差が少ないということは、少なくとも日本ではまだたばこの害がそれほど大きく影響していないのではないかということが一つ。もう一つは、病理学的に腺ガン上皮ガンとありますが、たばこ影響を受けてできたと思われるガンはむしろ上皮ガンである。腺ガンにはそういう影響が少ないはずだ。そうすると日本では外国に比べて腺ガンの占める比重が非常に大きい、そういうような点からも、日本の場合、日本肺ガン病理学的な所見は、たばこ影響外国に比べて少ないのではないか、そういうような結論でございます。
  8. 堀昌雄

    堀委員 いまのお話で、大体最初にお話しになったように、確かにこれはスモーキングアンドヘルスという報告書でありますから、その中では特に心臓疾患に対する問題というのが大きく取り上げられておりますけれども、きょうは一番いま国民が心配しております問題というのは、肺ガンのほうに実は比重がかかっておるようでありますから、その点について、ただいまのお話で、諸外国統計であって、日本の場合にはやや様子が違うとおっしゃるのは私もそうだろうと思います。ただ、いま問題になるのは、日本の場合には、肺ガン増加のスピードと増加曲線あり方というのが、私は非常にいま重要な段階にきているのじゃないかというふうに判断をするわけです。  そこで公衆衛生院出席されましたね。松田先生にお伺いをいたしたいのでありますけれども、いまの報告の中には、普遍的な一つの原則と申しますか、そういうものと地域的な問題とがあると思います。たとえばイギリス肺ガン発生率が十万人に対して八十四ぐらい、アメリカにくるとそれがずっと下がる。日本の場合には八人程度に落ちるということは、私は確かに地域的な特殊性の問題というものが非常に大きな要素としてあると思いますが、この地域的な要素要素とし、しかし普遍的な要素もあるのじゃないか、私はこういうふうに感じるわけです。その普遍性とその特異性の問題の中には、いまの増加速度曲線考えてみると、日本もかつてイギリスの何年か前の時代に当たるような場合も考えられるのではないか、こういうふうに感じますので、その増加速度の最近の状況と、それから速度あり方といいますか、曲線になった場合にはどういうふうな曲線になるかという問題と、普遍性特異性と申しますか、この問題についてひとつ公衆衛生院の専門的な立場から御見解をお伺いしたいと思います。
  9. 松田心一

    松田説明員 ただいまの点につきましてお答えを申し上げます。  御指摘のように、最近のわが国の肺ガン増加傾向は比較的急激と申しますか、急昇の傾向を示しております。この傾向は諸外国の最近の一九五一年以後の傾向に比較いたしますと確かに荷いようでございまして、日本は大体一九五二年から六〇年までの傾向を見ますと、その間に三・三倍くらいの上昇を示しております。イギリスのほうでは大体それが一・五倍、アメリカでは一・六倍というふうに、同じ期間の比較をいたしますとそういう傾向でございます。この上昇傾向は過去の肺ガン発生の、いわゆる、長期変動曲線に比べてみますと、日本ではこの実際の率は高うございませんが、その急昇の割合が高いということになるわけでありまして、これを外国の過去の発生曲線に比較いたしますと、大体三十年ないし二十年くらい前の傾向に非常によく似ておるのであります。しかしこのような傾向で急昇いたしますと、これは過去の諸外国肺ガン発生が三、四十年の間に認められた傾向を比較的早く日本ではあるいは肺ガンがさらに急増するというような傾向を示しはしないかということが懸念されるわけでございます。
  10. 堀昌雄

    堀委員 そこで端的に、これは学問的には非常にむずかしい問題だと思いますけれども、やはり日本肺ガンの場合についても扁平上皮ガン腺ガンよりは比較的少ない。相対的な問題でありますが、日本にも扁平上皮ガンというものは、阪大の甘地教授なんかの資料を見ましてもかなりあるわけでございますから、やはり肺ガンというものの原因の中に喫煙が大きな原因を占めておる、こういうふうに私は判断をするのが適当ではないか、こう考えるわけでありますが、ひとつ公衆衛生院のほうでもそういうふうにお考えになるか、あわせて公衆衛生局長のほうのお考え伺いたいと思います。
  11. 松田心一

    松田説明員 肺ガン病理学的な点でございますが、これはいろいろ見方がございますが、オスローにあります肺ガン研究センタークレイバーグの分類によりますと、御承知のことかと思いますが、第一群と第二群というふうに区別しております。上皮ガンのほうは第一類に入っております。それから腺ガンのほうは第二類に入っております。やはり、今度のこの調査報告を見ましても、第一群のほうをとっております。第一群のふえ方に焦点をしぼっておるのでございます。この点は日本の病理組織学的な成績と逆のような状態でございます。病理学上はそんなことになっておりまして、やはり第一群のうほうを重きを置いているというのが実情でございます。
  12. 堀昌雄

    堀委員 お答えを願いたいのは、第一群、第二群の問題よりも、端的に、要するに喫煙というものが日本においても肺ガン原因一つとして重要な問題というふうに考えられるかどうか。日本の場合にも扁平上皮ガンがかなりあるのだから、相対的なバランスとしては、まだ腺ガンのほうが多いけれども扁平上皮ガンというものがあるということはたばこ影響というものを肯定していいのじゃないか、お考えをお伺いしたいわけです。
  13. 松田心一

    松田説明員 実際には、スモーキングというもの、ことにシガレット・スモーキング人体にはたして肺ガンというようなものを発生するかどうかという一番キーポイントでございますが、これは現状においては、まだ明確にはされていないわけでございますけれども、諸外国の例に徴しまして、やはり紙巻きたばこ喫煙というものが、この第一群の肺ガン発生に大きく影響しておるということは言えると思います。と申しますのは、このレポートに出ております非常に詳細な成績から判断いたしまして、少なくとも疫学的なデータをしさいに検討いたしますと、そういうことが確かにうなずけると思うのでございます。ただし、このレポートにも明らかに示しておりますが、この関係につきましては、人体の実験は不可能である、こういうふうに書いてございます。そういう意味からも、この疫学的なデータあるいは病理的なデータの検討、追及ということが必要になってまいるわけでありまして、このレポートにおきましても、やはりそういう点を疫学的な立場から相当掘り下げておるのでございます。
  14. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま疫学部長お話のように、疫学的な事実としては、もうたばこ肺ガンの間に相当関係があるということは認めざるを得ないと思います。しかも、きわめて常識的な立場からいいまして、アメリカ人イギリス人にきく薬を輸入して日本人が使うということは、これは常識でございます。またしたがって、アメリカ人イギリス人に毒になるものが、日本人に毒にならぬということは、これはこじつけであろうと思います。しかし、多少違うことは御承知のとおりでありまして、たとえば結核の治療剤アイナーが、アメリカ人イギリス人には非常によくきくけれども日本人には多少ききが悪い。これはアイナーを分解する能力が日本人やあるいはアイスランド人等に高い。そういう点で薬のきき方が多少違うということはあります。そういうような点からいいましても、アメリカ人イギリス人にこれだけはっきりした害が認められるものが、日本人には様子が違うから害がないというような言い方は、これはまさに牽強付会であろうと思います。
  15. 堀昌雄

    堀委員 そこで、ちょっと私、次官にお尋ねをいたしますが、実はいまの問題というのは国民の健康の問題ですね。肺ガンだけじゃございません。実は冠状動脈の問題にもさらに大きな問題があるわけですが、国民の健康の問題。一つは、日本の場合には、たばこ専売収入という国の財政の問題ですね。  そこで端的にお答えをいただきたいのは、国民の健康が大事か、財政収入が大事か。これは二者択一でどちらも大事だという答えでは、私は納得できませんから、どちらが大事か順序をひとつお示しを願いたい。
  16. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 一応は両方とも大事なんですが、そういう択一の返事をしろとおっしゃれば、やはり国民の健康を第一とすべきだというふうに考えております。
  17. 堀昌雄

    堀委員 国民の健康が大事だとおっしゃることはわれわれ全く同感であります。国民の健康なくして国はないわけですから。  そこで、今度は公社総裁にお伺いをいたしますが、たばこ肺ガン原因であるということについてはいま公衆衛生院のほうからも公衆衛生局長のほうからも医学的な立場及び疫学的な立場からの御答弁がありましたから、これは当然公社総裁としてはお認めにならざるを得ないと思いますが、どうでしょうか。
  18. 阪田泰二

    阪田説明員 このたばこ肺ガンの問題につきましては、私どもといたしましては専業事業としてたばこの製造、販売をやっている立場でありますが、非常に重大な問題でありますので、従来から公社といたしましてもいろいろと自分でも多少研究はいたしておる点もありますが、主として学界に御依頼申し上げまして各方面で研究をしていただいておるわけでありますが、ただいま厚生省のほうからいろいろと御説明がありましたが、いままで御説明がありましたような趣旨の、主として肺ガン統計その他の点から肺ガンたばこ喫煙というものが関係がある、こういう点につきましては従来からそこが問題になっておるわけでありますから十分承知いたしておるわけでありますが、ただいま御説明もありましたように、統計自体英米その他におけるものと日本におけるものと相当結果が違っております。また日本における肺ガンの性質が少し違う、いろいろそういう点もありますので、このたばこ肺ガン関係につきましては、まだまだ、特に日本におきましては研究を要する余地がある、こういうふうに考えておるわけでありまして、公社といたしましては従来に引き続きましてこの肺ガン喫煙の問題につきまして研究を進めたいと考えておる段階でございます。
  19. 堀昌雄

    堀委員 研究は今後大いにやってもらいたいと思うのです。しかし問題は、研究だけしていたのではちょっと私は困ると思うのです。そこで、私は何もきょうここで何か言質をとってどうしようこうしようなどということを考えているわけではないのですが、老後の対策という問題はやはりある程度この問題を確認をすることによってでないと姿勢ができてこないのではないか、こういう感じがするわけです。いまおっしゃったようないろいろな意見が多少ありましょう。日本はいままだ少ないですからね。ただしかし一番問題なのは、これは少ないままでいくのなら私も論議をしないのですが、先ほどのお答えの中に最近の日本肺ガンふえ方は大体三倍くらいの割合で非常に急激なカーブでいま上昇しつつあるわけですね。これはもう公社のほうでもお認めになっておるところです。ですから非常に急速にふえつつある原因というものは、今後大いに学界その他で御研究をいただかなければならぬと思いますが、しかし同時にさっきの公衆衛生局長答弁のように、ともかくイギリス人アメリカ人にはっきりと害があるということで、これは王立医学協会なりアメリカ公衆衛生局がはっきりと国民に警告を発しておるという立場に立つと、私はやはりこの問題は少し明らかにしておかなければならぬ。そこで、細胞学的な問題について見ても、実はこれはとり方がいろいろあるから問題が、残っているのではないか、宮地教授報告などを読んでみましても、これは決してそんなに日本のいわゆる扁平上皮ガンとその他の関係というのは、思われているほどに少なくないのです。これはちょっと申し上げておきますが、一九五三年から一九五七年の間の男子の例で、これは剖検例ですが、二百五十七の中で扁平上皮ガンと未分化ガンが五六%、腺ガンが三八・九%、これから見るならば、要するに第一群的な考え方に立つところのクレイバーグ外因的要素によるものというのは、日本の場合だって決してそんなに寡少なものではないということは、病理学的に明らかになっている。ですから、私はそういう前提に立って公社総裁にお尋ねしたいのは――しかしまたたばこというのは国民嗜好の問題でもありますから、これをこう右に左にと強制するわけにはまいらぬ性格のものであると思うのです。しかし国民の健康に害があるということが明らかになっておる時点では、国民に必要以上にたばこを吸いなさい、あるいは吸わない人が吸うようになるような、取り扱い方というのは、これは国家的見地から見て適当でない。自発的にいろいろな関係から、社会的条件の中からたばこを吸うようになる人があり、吸っている人がふえたりすること自体は、国民嗜好の問題ですから、そこをとやかく私は言おうと思いませんけれども、まあ国の機関であるところの公社が、特にそういう考え方を持っていない人がたばこをのむような気にならせるような広告、宣伝等は、この際やめるべきではないか、こういうふうに思うのですが、その点ひとつ公社総裁から……。
  20. 阪田泰二

    阪田説明員 私どものほうはたばこ専売事業をやっておりまして、たばこを製造して販売することが使命になっておりますので、たばこを売らない、宣伝しないということはできないと思います。ただ、現在のように、喫煙肺ガンという関係が問題になっておりまして、まだはっきりしない、こういう時期におきまして、積極的に喫煙をすすめるというような趣旨宣伝は、これは慎むべきではないかと私ども考えておりまして、すでに宣伝の方針その他につきましても、そういう考えをもちましてやっておるつもりでございます。
  21. 堀昌雄

    堀委員 そこで公社宣伝費をちょっとお伺いしたいのですが、公社宣伝費は、昭和三十六年には一億五千五百万円だったのです。三十七年は一億七千三百万円にふえているのですが、三十八年、三十九年、三十八年は実施されている額でいいですが、三十九年予算――私は政府関係機関予算を調べてみたのですが、一体宣伝費というのはどこの項目に入っているのかさっぱりわからない。ひとつ宣伝費お答え願いたい。
  22. 狩谷亨一

    狩谷説明員 お答えいたします。三十八年度の宣伝費予算は、一億一千万円になっております。同じく三十九年度の宣伝費予算は、一億二千五百万円になっております。
  23. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまのは公社自体のであって、地方局で行なったものを含んでいないのではないのですか。
  24. 狩谷亨一

    狩谷説明員 予算として計上いたしておりますのは、ただいま申し上げた金額でございます。実行の問題とは別でございます。
  25. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、ちょっと変なことが出ましたから、三十六年、七年の予算として組んだのは幾らか、ちょっとあわせて教えてください。
  26. 狩谷亨一

    狩谷説明員 三十六年、七年については、ただいま手元に資料を持ち合わせませんので、はっきりいたしませんが、予算として計上してありました金額は、大体一億円程度であったと思います。
  27. 堀昌雄

    堀委員 そうすると、いまの公社総裁お話もありますが、これはちょっと重大な問題があると思うのです。予算で組んであるものが一億くらいで、実際には予算以外に五千万円も六千万円も宣伝費が使われておる。きょうは時間がありませんから、これは今度予算委員会分科会かどこかで少しこまかくやらせてもらいますけれども、これは私は公社宣伝費あり方として少し適当でないと思いますが、総裁どうですか。こんなのは公社というところではあたりまえなのでしょうか。
  28. 阪田泰二

    阪田説明員 ただいまの問題、これは予算科目でありますが、予算科目の中での流用の問題がございますので、きめられた予算に対して、きめられた手続に従って流用その他の措置を講じて支出しておるわけであります。
  29. 堀昌雄

    堀委員 一億円の予算を組んで、五千万円も毎年毎年流用しているという予算の組み方、それが適当だと公社総裁思われますか。実際、一億五主力円、一億七千万円も組んで、百万円や五百万円流用したというならばわかるけれども、五割も流用するというのは予算の価値がないじゃないですか、権威がないじゃないですか。
  30. 狩谷亨一

    狩谷説明員 多少事実の説明が不足いたしておりますので、補足的にお答えをさせていただきます。  政府関係機関予算によりますと、宣伝費の問題は役務費の中の一つ科目考えておるわけでございます。その役務費の中に計上しております金額は、先ほど来申し上げましたように、一億何がしかの金額になっておる、こういうわけでございますが、そのほかに販売報償費という科目がございます。販売報償費という科目は、一例を申し上げますれば、小売り店がたばこの販売に関連いたしまして宣伝をいたします、その部分に対して報いるというような意味におきまして出す科目でございますが、これを地方でもって集めまして、プールしてセンターというものをつくりまして、センターで小売店の代表者と公社の地方機関とが協議いたしまして、広告宣伝をいたしております。その資金を報償炎から宣伝費のほうへ組みかえまして、それで支出しているのが実態でございます。さようなわけでございまして、本来の報償費の……。
  31. 堀昌雄

    堀委員 もういいです。時間がないからそこまででいいです。この問題はまた別にやります。  そこで、公社のほうの技術関係の方がおいでになるかと思うのですが、肺ガン喫煙関係があるということになりましても、これは国民嗜好ですから、たばこはのみたい、こういうことはやはりあると思うのです。その場合に、要するに、いま、フィルターがつくことによって、フィルターたばこが非常によく売れてまいっていると思うのですが、このフィルターのついておることによるところの煙なりたばこタールの吸収の問題、それからもう一つは、たばこはやはり細長いものですから、最初の四分の一ぐらいを吸ったとき、半分まで吸ったとき、四分の一ぐらい吸ったとき、全部根元まで吸ったとき、こういうふうに吸い方を考えてみると、根元まで吸えば一番害があるだろうと考えられるわけですね。そこで、そういうようなたばこの吸い方によって私は、これは肺ガンの問題に影響があるだろう、フィルターの問題についてもやはり問題があるだろうと思うのです。  そこでちょっといま簡単にお答えを願いたいのは、そういう喫煙の指導といいますか、これは単に肺ガンだけではなくて、老人病で一番多い心臓病にも関係があるわけですから、そういう意味で国民の健康、衛生のために、嗜好の問題としてたばこは吸いたい、しかし、吸う場合でも、被害を最小限度にとどめるためにはどういうふうな吸い方をすればいいかということについて、現状のお話を、技術関係の方でけっこうですから、ちょっとお答えいただきたいのです。
  32. 杉二郎

    ○杉説明員 私からお答えいたします。  フィルターでろ過されます量は、大体、ニコチン並びにタールにおきまして、フィルターの構造によって多少変わりますけれども、二〇%から三〇%ないしは四〇%もとることができる。現状でやっておりますのは、いずれも三〇%くらいをとっております。  それから、吸いますときの長さの問題でありますが、たばこを七十ミリといたしまして、先から火をつけますから、四分一燃えましたときと、半分になりましたときの煙の中のニコチンなりタールの量は倍になっていくのではございませんで、たばこの中にろ過されていきます分がまた燃えてまいりますから加積されてまいります。したがいまして、簡単に数字を申し上げますと、四分の一の場合が四%入っておるといたしますと、半分までまいりますと一〇%近くなってまいります。四分の三まで願いりますと二〇%近くにまでまいります。そういうふうに加積されてまいります。
  33. 堀昌雄

    堀委員 いまの技術部長お話のように、そうするとそういう害を減らすためにはあまり根元まで吸わないほうがいい、これはどうも専売公社のほうがたくさん売れるような原因になってたいへんけっこうなことと思うのです。そこで公社側として、いまフィルターたばこというのがありますが、フィルターのついていないたばこの率が非常に多いわけです。そこで昔、バットや何かは吸口が別にたばこについていたという記帳があるのですが、ピースや何にでもフィルターがつくようなものを、公社のほうでも一ぺん検討をして、そういうもので吸いたい人はピースにもそういうフィルターが別にありますというようなかっこうの問題の取り上げ方、要するに国民の健康のために、公社側としてはやはり私は最大限親切に、国民の健康を守るような努力がされているのじゃないか、こういうふうに考えるのです。その方向で今後のたばこの問題を、これは単に一つの例を例示しただけですけれども、だんだんフィルターのついたものをふやすなり、いろいろな角度で害を最小限度に食いとめるような努力なり研究をされる意思があるかどうか、その点をひとつ伺って質問を終わりたいと思います。
  34. 阪田泰二

    阪田説明員 フィルターたばこの問題、あるいはフィルターを別途つけたらどうか、こういう問題でございますが、フィルターたばこにつきましては非常に一般の要望が多うございまして、現在ハイライト、ホープその他のフィルターつきたばこを増炭いたしておりますが、機械設備の増強に制約がございまして、十分な供給ができない状況でございます。  ただいま御指摘のありましたようなフィルターを別途つくって供給する――現在民間でそういうものを多少製造している向きもあるようでありますが、そのほうがむしろフィルターつきたばこを増産するよりも簡単にできるという面もございますので、そういう面も実は私どものほうでも研究してみたいと思っておるところでございます。ただ、ただいまちょっとお話がございましたたばこ肺ガン関係、これは病理学的と申しますか、そういう面で、たとえばタール、ニコチンがどういう作用をして肺ガンになるのだということが、もちろんはっきりされているわけではありませんので、どうも公社たばこをよけい売るために、たばこを少し吸って拾てればいいとか、あるいはフィルターをつければ肺ガンになりません、こういうような宣伝をすることは慎みたい、こういうことを考えております。しかし現実問題としてフィルターたばこに対します要望が非常にございますし、フィルターをつければタール、ニコチン分が減りますことは事実でございますので、そういう方向の増産ということはいま計画しておりますが、それ以上は促進してまいりたい。また、ただいま仰せられました点も研究してみたい、こういうつもりでおります。
  35. 山中貞則

    山中委員長 田澤吉郎君。
  36. 田澤吉郎

    ○田澤委員 ただいま堀委員からの質問にもありましたように、今回のアメリカ公衆衛生局スモーキングアンドヘルス関係するレポートが発表されましてから、日本においては私たち愛煙家並びにその家族の者までに非常に大きい間脳になったわけでございまして、私はそういう関係から、たばこ肺ガンに関して厚生省並びに専売公社に質問いたしたいと思うのでございます。  聞くところによりますと、アメリカはこの委員会をつくるにあたりましては、アメリカの場合、肺ガン死亡率は一九三五年には四千人だったのでありますが、一九四五年には一万一千人、一九六〇年には三万六千人に増加しておる。ほかの伝染病や一般の病気の死亡率は医学が発達するに従って減少してまいっておるのでありますけれども肺ガンだけは二十五年間に九倍もふえておる。しかもその増加傾向は依然としてやまない。そうして一九六二年には四万一千人にも達して、いわゆる全米の自動車事故と大体同じレベルに達したというようなことから、ケネディ大統領がその道の専門家十人を選んでこの委員会をつくったといわれております。ところがこの報告書資料というのはカナダ、アメリカイギリス資料でございまして、日本においてこのような過去におけるこういうような資料があるかどうか。これがございましたら厚生省から詳細御説明願いたいのであります。
  37. 松田心一

    松田説明員 ただいまの御質問でございますが、このアメリカの今度発表されましたレポートにもございますように、日本の東北大学の瀬木教授がおやりになりました非常にりっぱな業績がございまして、それはこの論文のあちらこちらに取り入れられております。これは数字を申し上げてみますと、一九五三年から五五年まで 全国の三十三の病院の詳細なカルテ等を集め、同時に死亡診断書と照合し、またインタビューもやりました結果でございますが、肺ガンの患者数は二百七名、また肺ガン以外の患者を対照にとったわけでありますが、それが約五千六百人おりまして、それをいろいろこまかく調べた成績がございます。その成績によりますと、これは三十歳以上の男子の死亡者についで、市部と郡部に分けて喫煙率を調べておるのでありますが、市部のほうでは肺ガンで死にました患者の喫煙率が九一%、対照群が八四%、郡部のほうでは患者のほうが九三%で対照群が八〇%、こういう数字が出ております。また喫煙本数も調べておりますが、市部のほうは患者が平均二十一本、対照が十四本、郡部のほうは十七本と十三本、こういうふうな数字がございます。なお瀬木教授はわが国の肺ガン関係そのほか呼吸器系のガン統計調査を、こまかく世界的なレベルでWHOの援助のもとに行なっておられまして、その成績が非常に詳細に取り入れられております。そのほか私ども公衆衛生院の平山博士が、これは一九五〇年、五二年、五二年の三カ年間、東京近郊の人たちにアンケートで調査したものでございますが、そのときの調査では肺ガン患者は百九十一名、対照が三千六名ということになっており、やはり同様に喫煙率の差を認めておりまして、肺ガン患者の喫煙率が九四・一に対しましてその他のものは八三・二、こういうふうになっております。ことに喫煙本数の多い患者は死亡率が三七・四、それに対しまして対照のほうが一三・九というふうに明らかに優位さが出ておるわけであります。ただ、この平山博士のほうは英文で発表になっておりませんので、そのレポートには取り入れられておりません。やはり世界的なレベルでものを言えますのは東北大学の瀬木教授の成績だと思いますが、これはその肺ガン患者とスモーキングの両者の関係を疫学的に比較しましたデータでございます。
  38. 田澤吉郎

    ○田澤委員 先ほどの答弁によりますと、日本肺ガン死亡率は欧米に比して非常に低い、一九六一年には男子でアメリカの約四分の一、イギリスの約十分の一だといわれておりますし、また欧米のほうは上皮ガンであって、日本のほうは腺ガンだから影響がないというようなかっこうにとられるわけでございますが、私はただいまの答弁を聞きますと、必ずしもそういう状態でないような気がするわけでございます。それはまだガン喫煙というものの決定的な因果関係を厚生省ははっきり突きとめていない、研究が進んでいないというような感じを受けるわけでございます。厚生省はこれまでも単に学者グループに対して数回の補助金だけを出している程度でございますので、この機会に私は国民に対しても、アメリカがこういうような報告書を出したのを契機といたしまして、やはり何らかの諮問委員会一つくってこれに対応していくほうがほんとうだろうと思いますが、そういうやり方を考えておるかどうか、お答えを願いたいと思います。
  39. 若松栄一

    若松政府委員 ただいま最初の段階で、たばこ肺ガン関係を否定的な見方で述べたように伺いましたけれども、私はむしろ肯定的に申し上げたつもりでございます。なお、日本の場合は外国の場合と多少違うという条件はやはり考慮しなければなりませんが、現在は日本では肺ガンがかなり少ないけれども、十年、二十年後には相当多くなるであろう、そして現在はガンの中の割合が一〇%程度でございますけれども、十年、二十年後にはガンの中で肺ガンが占める割合がさらに大きくなるであろうという予想をいたしております。そういう意味で胃ガン等はおそらく将来は相対的に減ってくるであろうと予想いたしておりますのに、肺ガンは将来相対的に増加してくるであろうと予想しております意味で、肺ガンに対しては非常に大きな関心を持っております。そういう意味で、現在の時点において比較的数が少ないということ以上に関心を持つわけであります。そういう意味で、私どももこの肺ガンの動向というものについて、単に現在アメリカ報告が出たからあわてて騒ぐということでなしに、将来十年、二十年という長い目でこれを十分監視しながらその保健対策をやっていくというつもりでございます。したがって現存諮問委員会をつくりまして、すぐ付がしかの結論を出すというようなことよりは、長い目で見た資料を着実につくっていって、十分批判にたえるような調査をやっていく、年々それを積み重ねていって将来の参考にしたい、そのような考え方でやっております。
  40. 田澤吉郎

    ○田澤委員 アメリカ報告書によりますと、たばこ肺ガン以外に動脈疾患あるいはまた慢性気管支炎等にも死亡率が非常に多いといわれておりますが、たとえていいますと、アメリカでは一九六二年に五十万人余が動脈硬化による心臓病、主として冠状動脈疾想で死亡しており、さらに一万五千人が気管支炎等で死亡していると発表しておりますが、日本ではこれらのことはどういうふうな状態になっておりますか。
  41. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまアメリカの数字をおあげいただきましたけれども日本の場合、これに見合う確実な数字をいま手元に用意してございません。総体的に申しますと、アメリカでは心臓性疾患の死亡が日本に比べて非常に多い。それに比べまして日本では心臓疾患の死亡が諸外国に比べて非常に少ない。逆に脳溢血による死亡が諸外国に比べて非常に多いという点がございます。その点脳溢血と心臓病とが外国日本では逆になっておる。またガンにつきましては、諸外国では肺ガン中のトップでございますけれども日本においては胃ガンがトップで、しかも圧倒的に多いのであります。日本の例で申しますと、ガンで死ぬ方の半分は胃ガンで死ぬ、肺ガンでなくなる方はガンの中の十分の一だけでございます。これがイギリス等でありますと、肺ガンで死亡される方が全体の四割にものぼっておるわけであります。その点外国とかなり事情が違う点がございます。
  42. 田澤吉郎

    ○田澤委員 もう一つは、自動車の排気ガスとたばこの害とはどっちが害があるかということをお調べになったことがありますか。ありましたら、お知らせ願いたいと思います。
  43. 若松栄一

    若松政府委員 日本におきまして排気ガスの問題をガン発生と結びつけて精細な研究が行なわれているということを私は存じておりません。なお、アメリカの今度の報告におきましても、もちろん自動車の排気ガスの中にいわゆるガン性物質が含まれておりまして、その幾つかのガン源性の物質はたばこの中におけると同様な性質の物質が含まれております。
  44. 田澤吉郎

    ○田澤委員 たばこが健康によくないということはよくわかったわけでございますが、たばこ日本に入ってきた歴史というのは約三百年から四百年前だといわれております。たばこは鉄砲と梅毒と一緒に入ってきたといわれておりますが、それだけに国民嗜好品として広く親しまれてまいったわけでございまして、生活のいこいとしては非常に大きなプラスになっておるわけでございます。専売公社だって明治三十七年にできて六十年をけみしているわけでございますから、まさにたばこは生活の必需品でございますし、またアメリカ報告によりますと、たばこの利点というのは、精神面と心理的な効果が非常に大きい、こういわれておるわけでございます。さらにまた国や地方自治体では大きな源財になっておるわけでございます。しかし個人が自分の健康を考えるという立場から、今後注意と指導というものが非常に重要になってまいろうと思うわけでございます。  そこで私は、これらに関して六つばかりお尋ねをいたしたいと思うのでございます。その指導でございますが、喫煙量をできるだけ減らす方法としてはどういう方法があるだろうか、第二番目は、人体影響が少ない喫煙方法というものはどういう方法がいいだろうか、三番目には青少年、婦人が新しい喫煙人口に加わらないような指導方法というものはないものであろうか。四番目は青少年にたばこの害を知らせ、公共の場所あるいはまた交通機関で禁煙の指導を強化していく方法はないだろうか。さらにたばこの広告制限をどういうような方法でやっていくか。それからもう一つは、フィルターつきのたばこはいまだ完全な効果を認められておりませんが、より害の少ないフィルターつきたばこを製造する研究を一そう進めていく必要がありはしないか。この六つの点を方法がありましたらお知らせ願いたいと思うのでございます。
  45. 阪田泰二

    阪田説明員 ただいま六項目にわたりまして御質問があったわけでありますが、全体といたしまして、公社といたしましては先ほど堀委員の御質問に対してお答え申し上げましたように、宣伝、広告の方針といたしまして新しくたばこをのめ、のめといいますか、喫煙習慣に誘い込むような積極的な宣伝はやらない方針である、こういうことを申し上げたわけでありまして、従来からすでにそういう方針でやっておるわけであります。  たばこは、お話がございましたように趣味、嗜好品でありまして、長年日本人の生活にもしみ込んだものでありますから、ただいま減らす方法というようなお話がございましたが、公社のほうからそういう減らす方法というようなことはちょっといたす考えもございませんし、趣味、嗜好品という性質のものでありますから、そういう方策を公社としてとるということは適切なことではないと考えております。  たばこの害を少なくするのみ方とか、そういう問題につきましては、先ほど私どものほうの杉部長からお答え申し上げたように、タールとかニコチンとか、こういうものが害があるのだということがはっきりいたしますれば、それを減らせばいいわけでありますが、そこのところまではまだはっきりしていないわけであります。しかし、害が少ないということがはっきしませんでも、とにかくタール、ニコチンが少ないほうが無事であろうといったような観点から、できるだけそういったような安心感の得られるようなたばこをつくっていく、こういうことにつきましては、先ほど堀委員お答えを申し上げましたように、私どもとしても十分研究いたしていきたいと考えておるわけであります。  フィルターつきたばこの増産あるいは、フィルター自体についてもっと研究をする、あるいはたばこの葉自体につきましても低ニコチン、低タールのものを生産する、これは栽培上、品種改良上工夫する、いろいろそういった方法があり得ると思います。この辺は今後も十分にやってまいりたいと考えておるわけであります。  それから若い人にたばこを吸わせない、この問題につきましては、御承知のように未成年者には喫煙を禁止する法律があるわけでありまして、公社といたしましては未成年者は喫煙をしてはいけないといったような趣旨の広告、宣伝等をいたしたことも多少ございます。それからたとえば自動販売機といったようなもの、こういうものにつきましてはだれが買いに来るかわからないわけでありますが、こういったものには未成年者は喫煙をしてはいけないというような表示をつけさせます等いろいろそういうことは考えておるわけであります。  ただ、この青少年の喫煙の防止ということにつきましてはかなりむずかしい面もございまして、あまりやかましく禁煙ということを強調いたしますことはかえってまた喫煙に誘い込むようなことも、こういう年齢層のことでありますから非常にあるわけであります。結局全般的に考えますと、社会的環境、生活環境その他全般の配慮、喫煙に誘い込まないそういう配慮が必要ではないかと考えるわけでありまして、公社といたしましては多少のそういった意味の宣伝等をいたしたこともございますが、完全な禁煙法の趣旨を達成します点につきましては、私どもの手だけではなかなかむずかしいというふうに考えておるわけであります。  広告、宣伝のやり方等につきましては、これも先ほどちょっと申し上げましたが、積極的に売り込むという意味の宣伝ではなく、これからの宣伝はもっぱら商品の銘柄の紹介、特に新製品の発売の際の新銘柄の紹介あるいは喫煙道徳、喫煙のマナーでありますとか効果宣伝あるいは都市の美化、そういった社会的な面に重点を置いた広告、宣伝方針をとってまいりたい。だんだんにそういったような方針のほうに現在移ってまいっておる、こういうことでございます。  大体お答え申し上げたかと思いますが、なおございましたらお答え申し上げます。
  46. 田澤吉郎

    ○田澤委員 さらに厚生省にお尋ねいたします。  各保健所に喫煙相談所というようなものをつくることが必要だと思いますが、そういう考えを持っておりますか。また公園等、ああいう場所での指定場所以外は吸わないというような制限の方法なんかも考える必要があろうと思いますが、そういう考えがありますかどうか、お尋ねいたします。
  47. 若松栄一

    若松政府委員 この問題は衛生教育全般の問題でございまして、たとえば喫煙相談所あるいは禁煙相談所というようなものを設けてやるということがどの程度効果があるか、私いささか疑問を持っておるわけであります。といいますのは、まことに残念でございますけれども、このたばこと健康の問題がすでに十年来きわめてやかましくなっておりますにかかわらず、たばこを制限する運動並びにその効果はあまりよくございません。一番専門家であるイギリスのお医者さんは、自分たちが実験台になってこの害を証明いたしました関係上、たばこをやめる率が非常に多くなってまいりました。またパイプに切りかえたりする率もかなり多くなっております。しかしそのほか一般大衆を相手にいたしました施策、たとえばイギリスが二年前に相当なキャンペーン一をいたしましたけれども、キャンペーンを始めた当時消費が若干落ちたけれども、また回復してしまった。あるいはアメリカで高等学校の生徒にいろいろな方法でたばこの害を教育しておいてその中から一体どれだけたばこを吸うようになるか、その率の変化を見ましたら、ほんの若干少なくなる程度であったという結果もございます。また、そのほかカナダあたりでもかなりのキャンペーンをやっておりますが、必ずしも満足すべき効果をあげてないようでございます。そういう意味で、この問題は非常にむずかしいことでございますので、やはりじっくりと衛生教育という場であるいは社会教育、社会道徳というようないまおっしゃいましたような方法をできるだけ取り入れて、しかも特に青少年を相手にした問題が一番大きいと思いますので、お母さんあるいは婦人団体というような方の協力を得てやっていくのが妥当ではないかと思います。そういう意味で、保健所になまじっかの相談所を設けてみてもたいした効果があがらないのじゃないかというふうに私は現在考えております。
  48. 田澤吉郎

    ○田澤委員 日本の専売公社たばこの会社としては世界第三位といわれております。年間総売り上げ高が四千三百億円、その税収が専売納付金としてあるいはまたたばこ消費税の分を合わせて二千四百億と聞いております。きのうの日経の夕刊でちょっと見たのでありますが、総裁のインタビューが出ておったのであります。たばこ肺ガンとの関係の記事でございましたが、何か総裁は、冷静に判断すべきだということを強調されて、一昨年はイギリスでもすでに発表してあるんだ、いまアメリカが発表したからということで騒ぐ必要はないじゃないかというような印象にとられるわけでございます。そこで今回の報告書によってもしも売れ行きに変化がありましたならば、たいへんな問題だと思うのでございます。またその変化によって予算上にも大きい影響を与えると思いますが、こういう点に対する心配がないものであろうかどうかということを総裁にお尋ねいたします。
  49. 阪田泰二

    阪田説明員 日経新聞に私に関する記事が出ておったそうでありますが、日経の記者が来られましたときに私が申し上げましたのは、たばこ肺ガン関係の問題、これはたいへん古い昔から、四十年近く前から、実は問題としては提起されておったと思います。だんだんと各国で研究が進んできたわけでありますが、現在におきましても、先ほど来申し上げますように、決定的な結論が出るまでには至っていない。ことに病理学的な因果関係というものがはっきり出る段階にはなっていない。したがいまして、今回出ましたアメリカ報告書も、いままでの研究を集大成したといいますか、非常に広く集めて学問的に整理した、こういったような感じのものでありますので、非常に新しい事実が今回あらわれた、こういうふうにとるのは間違いじゃないか、そういった意味で、あまり喫煙者に必要以上の恐怖心を与えるような、こういう取り扱いはどうか、こういうことを私は日経の記者に申し上げておいたわけであります。現在もそういう考えでおります。そういう意味におきまして、ただいまそれをたばこの売り上げに関連させて、お尋ねがあったわけでありますが、たばこの売り上げにつきましては、明年度予算その他におきましても大体最近までの売り上げの状況、たばこ消費の動向その他を参酌しまして見積もりをいたしてありますので、ただいまでのところでは、たばこの売れ行きの状況、消費の状況その他につきまして、特にどういう変化が生じておるというようなことを申し上げるほどの段階には至っておりません。ごくこまかいところを申し上げますと、たとえば東京の市中などにおきまして、パイプたばこあるいは葉巻き等の売り上げが増加しておるといったような点は認められるようでありますが、全体といたしましては非常な変化が現在生じておるというふうには認められないわけであります。現状といたしましてはその程度のことしか申し上げられません。
  50. 田澤吉郎

    ○田澤委員 終わります。
  51. 山中貞則

    山中委員長 野原覺君。
  52. 野原覺

    ○野原(覺)委員 アメリカ喫煙と健康と題したレポートに対する厚生省の考え方は、先ほど堀委員の質問に対して御答弁があったわけでございますから、私はできるだけいま二人が質問しました点の重複を避けたいと思います。しかしもし重複するところがあれば、これは答弁の声が小さかったための結果でございまして、私の責任ではないと思います。はなはだどうも聞き取れにくかったものですから、若干重複するかもしれませんが、二、三お尋ねをしたいと思います。  まず第一にお聞きしたいことは、このレポートアメリカの政府の公衆衛生局から一月の十一日に出されたわけでございますね。このレポートが出ましてから、日本の厚生省は、公衆衛生局は、今日まで何をしたのか、それからこのアメリカレポートが出たことによって、これから何をしようと考えておりますか、まずその点をお尋ねしたいと思います。
  53. 若松栄一

    若松政府委員 このレポートが出てからどうこうというお話でございますが、先ほど来お話がありましたように、肺ガンたばこの問題は、すでに一九三九年ごろからの研究論文がたくさん出ております。特に一九五〇年以降は研究の方法もきわめて大規模になりまして、その後七つぐらいのきわめて膨大な報告がすでに出ておるわけでございます。したがって、ただいまお話がありましたように、今度のレポートは新しい報告をするのでなしに、それらの二十九の遡及的な調査、それから七つの追跡的な調査、ちょっとことばがむずかしくなりますが、遡及的な調査というのは、さかのぼって過去を調査する、追跡的な調査というのは、たばこを吸うか吸わぬかを登録しておきまして、その後ガンになるかならぬかを追跡していく、そういうやり方でございます。したがって、私どももこの事実をすでに前から承知いたしておりますので、ささやかながら厚生科学研究費等の費用を出しまして、たばこ肺ガン関係研究もいたしております。したがって、そういう意味で、日本データも若干ながらあるわけでございまして、しかも、この報告が出ましてから何をするかということになりますと、やはりこの報告が出て、これだけ世の中の大きな反響を呼びました以上は、その反響にふさわしい方法をとっていかざるを得ない。そういう意味でこれを機会に国民たばこと健康の問題をできるだけよく理解していただきまして、その害ができるだけ少なくなるような方法を講じていきたい。そのためにまた、日本で若干不足しております基礎的なデータも、将来着実な形で、長い目で見た計画でやっていきたいと思っております。
  54. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたの御答弁を承っておりますと、具体的な中身がない。私は、これから何をしようと考えておるかということを具体的に聞いておるわけなんです。アメリカレポートが出て世界的に大きな反響を与えておるこの際でもあるから、考えていきたい――一体どういうことを考えていくのか、どういう具体的なその取り扱い方考えていらっしゃるのか、この点は具体的にお聞きしたいと思うのです。
  55. 若松栄一

    若松政府委員 先ほど申しましたように、この問題は結局われわれの立場からすれば衛生教育の問題でございます。したがって、国民にできるだけたばこガン関係をよく理解さしていく、適切な理解をさしていくということが一番肝心でございます。そのためには衛生教育あるいは啓蒙ということになるわけでございまして、そのために若干のパンフレットをつくってみるというようなことも、これはたいした効果はございませんで、このような場で取り上げられ、あるいは新聞あるいはその他のマスコミで報道していただくということが、何千万円の予算にもかえがたいことだろうと存じております。
  56. 野原覺

    ○野原(覺)委員 国民に理解をしてもらうということですね。国民に公衆衛生教育をやっていくのだ、こういうことはなるほどそのとおりだろうと思うのだが、もっとその点をはっきりおっしゃっていただきたいと思うのですが、結局たばこを吸えばからだに害になるのだ、たばこというのは健康によくないのだということをこの機会に国民に徹底していきたい、こういうことですか。
  57. 若松栄一

    若松政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  58. 野原覺

    ○野原(覺)委員 そういたしますと、私は専売公社総裁にお伺いしたいのですが、あなたのほうは一億二千五百万円の宣伝予算を計上しておられるわけです。そこでこの一億二千五百万円の宣伝ということは、たばこを吸いなさい、こういうことじゃないかと思う。昭和三十七年、三十八年度にも、たとえば週刊誌に出ておった、「きょうも元気がたばこがうまい」それから「たばこは動くアクセサリー」これはテレビでやっております。私も二、三拝見したことがある。そういう宣伝は好ましくないということなのです、公衆衛生局に言わせれば。この機会に教育していきたいのだ、たばこというものはからだに害があるのだという教育と理解を国民に深めていきたいと日本政府の厚生省の公衆衛生局長考えておる。ところがあなたのほうは、たばこはうまいのだ、たばこをのめのめ、こういう宣伝をしようと考えておるのです。そこで、この点は私は非常に大問題だと思っておりますが、アメリカと違います。アメリカたばこは民間でしょう。日本の場合には専売局が一手で扱っておる。片一方の厚生省はのむなと言う。片一方はのめと言う。こういうことになってまいりますと、国民ははなはだ迷惑千万な話なのです。そこで、一億二千五百万円の宣伝費の中身を具体的にお聞きしたいと思います。この広告宣伝費はどういうことを考えておられるのか。いかがですか。
  59. 阪田泰二

    阪田説明員 ただいまの御質問でありますが、私どものほうは最初から何度も申し上げておりまするように、たばこを製造し販売するのが使命でありまして、またその販売するのも、これは喫煙者、たばこを愛好される方に吸っていただくという目的のもとに販売しておるわけでございます。したがいまして、それに伴いまして宣伝費というものも当然あっていいものであろうと思っております。ただその宣伝趣旨が、何でも売り込めばいい、新しい喫煙者を開拓して喫煙という習慣をどんどん広げていけばいい、導入していけばいい、ここまでいきますことは、いまのようなたばこ肺ガンあるいは健康の関係が問題になっておる時期におきまして行き過ぎではないか。そういうことで、そういった趣旨宣伝はいたさない。先ほど申し上げましたように、もっぱら銘柄の周知徹底あるいは新製品の宣伝あるいは社会公共的な面に重点を置いた趣旨宣伝、ただいま申し上げました未成年者の喫煙の禁止でありまするとかあるいは防火関係あるいは都市美の関係、いろいろそういった式の、むしろ社会公共的なことに重点を置いた宣伝をもっぱらやっていきたい。宣伝費の内容もむしろそういった面に重点を置いたものに使っていきたい、かように考えておるわけでございます。
  60. 野原覺

    ○野原(覺)委員 公衆御盃局長にお聞きしますが、国民たばこは健康に害があるのだという教育をする前に、たばこの販売元である専売局に対して、たばこ宣伝はやめてください、こういうことをあなたのほうは言う御意思はございませんか。ないとすれば大問題ですよ。あなたの先ほどの答弁とこれはたいへんなことになる。どう考えておりますか。
  61. 若松栄一

    若松政府委員 喫煙の問題は国民の趣味、嗜好の問題でございますので、これを一片の法律や規則で取り上げたり制限したりするということは適当ではないと考えます。それで、このたばこと健康との関係を十分理解させて、なおかつすでに成人になった国民が個々に、自分の自主的な判断のもとでたばこを吸う、あるいはどういう銘柄を選ぶということは自由であろうと思います。ただ、そういう意味で新しい喫煙習慣をつくったり、あるいはほうっておけば喫煙を始めない人に、それをあいかけるような宣伝は適当ではないと存じます。
  62. 野原覺

    ○野原(覺)委員 御生局長、ただこの宣伝は望ましくないでしょう、あなたの考え方からいけば当然だと思うのです。たばこは健康に害があるということですからね。世界のどのデータを見たってたばこが有益だというデータ一つも出ていない。たばこが害であるならばたばこの販売、宣伝というものは望ましくない、私はこう考えるべきだと思いますが、間違いないですか、いかがですか。
  63. 若松栄一

    若松政府委員 私は、たばこは害があるからすべてやめなければならぬというほどに考えるのは少し行き過ぎではないか。やはりいい面もございますし、悪い面もございますので、悪い面は当然強調しなければなりません。しかし趣味、嗜好というものを取り上げることによりましてノイローゼになる人も、あるいは仕事の能率が落ちる人もあるかもしれません。そういう意味で、どこまでもすべてを判断した上で、個人の判断にまかせるのが至当ではないかと存ずるわけでございますので、そういう意味で個人の嗜好を取り上げるような形にまでたばこの広告を結びつけるということは、必ずしも適当ではないと考えたわけでございます。
  64. 野原覺

    ○野原(覺)委員 あなたは速記を読み返されたらたいへんなことを言っておるのです。あなたの先ほどの私に対する答えは、たばこは健康に害があるという断定をされておる。今度は何か知らぬが、専売局の宣伝に対して、あなたのほうとしてはそれでいけば専売局の宣伝は好ましくないと言わざるを得ない。ところが現実に専売局は宣伝をしておる。これは政治問題となってたいへんなことになるということをあなたは心配されて、今度はごまかしの答弁をしようとしておる。一体あなたは公衆衛生局長の職責を御存じですか。公衆衛生局長というのは公衆衛生の立場でものを考え、ものごとを処理していくべき地位にある人だと私は思うのです。専売局のことなんかあなたは考える必要はないのです。  ですからあなたにもう一ぺんお聞きいたしますが、たばこはからだに益があるということ、だからして若干の宣伝はやむを得ないと衛生局長は考えておるのですか。私はあなたのあげ足をとろうとは思っておりません。そういう考え方を今日あなたがしておるとすれば重大なことでございますから、これは一応聞いておきたい。たばこ宣伝はやむを得ない、やってもいいのだ、こういうことですか、はっきりおっしゃってください。
  65. 若松栄一

    若松政府委員 この問題はデリケートでございますので、やってもいいとか悪いかというようなはっきりした割り切り、二者択一というような割り切り方ではちょっとむずかしかろうかと思うわけでありまして、国民判断を尊重しなければならぬので、たとえば国民が害のないようなたばこをほしいという場合に、害の少ないようなたばこをほしいという場合に、そういうものを知らせてやるという方法がもしあったとすれば、それは適当ではないかと思うのでございます。
  66. 野原覺

    ○野原(覺)委員 公衆衛生局立場からいえば、当然たばこはやめてもらいたい。あなたは先ほどそういう教育をしていきたい、そういう理解を深めていきたいということであった。それならばたばこを吸え、吸えと言っておる専売局に対して、そういうような宣伝はおやめになったらいかがですか――国民が吸えば別ですよ。国民の趣味、嗜好があって、国民にやめろと言っても一ぺんにやまらない、しかし積極的に吸いなさいと週刊誌に書く、あるいはテレビやラジオで宣伝をする、そういうことは好ましくないことでしょう、そうでしょう、好ましいと言ったらあなたはやめてもらわなければならぬ、衛生局長を。好ましくないわけです。好ましくないとするならば、私は専売局が予算に計上しておる一億二千五百万円の宣伝費は削除すべきだと思う。これはそういう宣伝をする必要はないです。この点いかがですか。
  67. 若松栄一

    若松政府委員 おっしゃるように吸え、吸えというような誘いかけの宣伝は適当ではないと思います。そういう意味で趣味、嗜好を持っておる国民のために何らかのいい意味のサービスになるようなことであれば差しつかえないと思います。
  68. 野原覺

    ○野原(覺)委員 何を言っておるのかわからぬです。あなたの答弁は何を言っておるかわからぬ。これは全く支離滅裂です。  そこで、私はもう一度あなたにお聞きいたしますが、アメリカレポートが出されて、一九六二年にはイギリスの医学会が報告書を出しております。日本医学水準というのは、私は、アメリカや英国に決してひけをとらないもののように、しろうとですけれども聞いております。ところが日本では医学界なり、あるいは日本の政府なりが、ガンの問題について、アメリカなりイギリスのような真剣な取り組み方をしたことをいまだかつて聞いたことがない。あなたの答弁によるとやっておるらしいのです。日本データもあるらしいのです。ところが私は一度もそんなことを聞いたことがない。日本の新聞はちょっとも書いておりません。一体真剣にガンの問題について取り組んでおるのか、取り組んでいないのか、取り組んでおるとすれば、どういう取り組み方をしておるのか、今日予算はどうなっておるのか、それからどうしなければならぬと衛生局長であるあなたはお考えなのか、これを承っておきたい。
  69. 若松栄一

    若松政府委員 ガンの全般的な問題につきましては、当然国民の寿命が延びますと同時に、ガンによる死亡がふえてまいりますので、できるだけガンを少なくしていくという方向で対処したいと思っております。主とした方向としては、やはりガンというものが非常にむずかしい病気であり、早く適切な診断をし、適切な処置をするということが一番大きな問題でございますので、そういう意味で、先般来国立のがんセンターをつくり、さらに地方における中心的ながんセンターを助成してまいりまして、そういう面からの医療機関の整備、したがって、早期診断、早期治療というものの促進をはかってまいってきております。  なお、肺ガン、その他の実態につきましては、先ほど来のように、日本では相対的に見て、肺ガン比重がわりに少なかった、それよりもはるかに骨ガン比重が大きいという立場から、調査その他については、日本においては胃ガンのほうに力を用いてまいっております。肺ガンについては、政府として面接やった調査はございませんで、むしろ学者に若干の委託をしてやったデータがある程度でございます。
  70. 野原覺

    ○野原(覺)委員 時間がありませんから、簡単に私も終わりますけれども、最後にあなたにもう一点だけお伺いしておきますが、アメリカの政府は、このレポートを出しっぱなしにしようとしていないんですね。強力な行政措置をもしようということを私どもは聞いております。御承知ですか。御承知であれば、一体どういうことなのか、承っておきたい。
  71. 若松栄一

    若松政府委員 アメリカがこれを機会に強力な行政措置をしようという点については、私、残念ながら存じておりません。というのは、アメリカはこれによって何らかの法律あるいは行政措置等をやろうというふうには現在のところ見えません。むしろ今度のアメリカのこのレポートを出しましたゆえんは、すでにたばこ肺ガン関係が三十数年前から論ぜられ、ことに最近の十数年間においてきわめて活発になっておるにかかわらず、なおかつ甲論乙駁で、なかなかはっきりした結論あるいは認識が得られない、こういうことでは困るというので、むしろ学界あるいは業界その他各方面の異論のないような判断、総合的な判断をしたい、そういう態度でこの仕事が行なわれているように私は存じております。そういう意味で、それでたばこ肺ガンの問題は、官側としては結論が出たのだ、これでひとつやっていこうというふうにアメリカ政一府でも考えているように私は存じております。
  72. 野原覺

    ○野原(覺)委員 たいへんな認識不足ですよ。そういう御認識ですから、私は先ほどのような答弁が出ると思うわけです。十一月十一日にこのレポートが出たんです。このレポートに基づいて、アメリカの連邦取引委員会は三つの提案をしておるのです。その三つの提案は、三月十六日にアメリカの国会の聴聞会にかけた上で強力な措置をする。その三つの提案の中身がすでに発表されておるではありませんか。御承知ないのですか。公衆衛生局長として御都合の悪いことは国会でお隠しになろうというそういう根性であれば、これはやがてわかることですから――しかもあなたがそれを知らないとすれば、たいへんな不勉強だ。私はいま連邦取引委員会が出している三つの提案の中身を御参考までに申し上げておきます。これは聴聞会にかけられた上で措置するというそういう法的な手続をとるらしいのです。それはたばこの箱に御注意と書いて、紙巻きたばこ喫煙は健康上危険です、そういうレッテルを張るそうです。たばこは売りなさい、売ることをとめるわけにいかぬから、紙巻きたばこ喫煙は健康上危険です、喫煙と健康に関する公衆衛生局長諮問委員会は、巻きたばこ喫煙が発ガンの病気による死亡及び全般的な死亡率の大きな原因になると判断しました、こういった中身の文章をたばこの箱に張る。いいですか。私はこのくらいしなければ国民に対する教育にならぬと思いますよ。あなたは国民に対して教育をしていきたいというようなことを言っているのだが、どういう措置をとるつもりか。片方では専売局の宣伝はやむを得ない、一体何の教育ですか、何の理解ですか。  その次には御注意、紙巻きたばこ喫煙は健康に有害です、それはガンその他の病気による死亡の原因となるでしょう、この文章はどうか。これが第二番目。  第三番目、その他たくさんございますが、時間もありませんから申しませんが、こういったようなものをこれからたばこには張りつける、それをこの一月十八日に決定した。したががって、いまアメリカたばこ業者は、このためにてんやわんやです。いまアメリカたばこ会社はもうつぶれるというので、もうてんやわんやです。そうすれば、さしずめたばこに対してきわめておとなしい考えを持っている日本に対して、アメリカたばこがまた入ってきて、日本の金が外国に流れるというようなことになるかもわからないが、今度のレポートはそういう強力な措置をとろうというそのレポートなんですね。ところがあなたは口先だけでたばこは害がある、害がある、こう甘いながら、実になまぬるい考えしか持っていない。私は公衆衛生局長立場ならば、当然これは厚生大臣と相談をして、一億二千五百万円も出して、たばこを吸いなさい、ああいった宣伝だけはやめてもらわなければならぬ。国民が吸うならば、これはしかたがない。しかしそれを吸え、吸えと、週刊紙にも書き、テレビでもやるようなああいう宣伝のやり方は間違いじゃないですか。こういう考え方をとるのがあなたとしては当然のことだと思う。それをとらないあなたたは遺憾ながら私は衛生局長の資格を疑わざるを得ません。これだけ申し上げて、質問を終わります。
  73. 山中貞則

    山中委員長 午後一時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時八分休憩      ――――◇―――――    午後一時十七分開議
  74. 山中貞則

    山中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  75. 武藤山治

    ○武藤委員 午前中の質疑応答で大へん状況も把握できるようになったのでありますが、通告をしておりますので、しばらく質問をいたしたいと思います。  まず一月十一日にアメリカの衛生局が発表いたしまして以来、日本たばこの販売状況に何か変化が起こったかどうか、具体的にはたとえば一月の二十日から三十日までとか、例年の同じ期間における売り上げ高とか、何かそういう点で、一月の初めから十日間とか、一区切りをつけて比較をした場合に、この発表は何ら販売高に関係がないのかあるのか、その点を一つ最初に承りたいと思います。
  76. 阪田泰二

    阪田説明員 たばこの全国的の売り上げ高といたしましては、一月の初めから一月中旬までの分がはっきりわかっておりまして、下旬の分は集計がやっとまとまったという程度のところであります。一月の初句といたしましては、これは当然でありますが、毎年休み等が多いところでありますから売り上げは少ないわけであります。例年と別段――多少昨年よりは売り上げが多かった、そういう数字になっております。一月の中旬につきましては、これは公社から小売り店に売った数字でありますから、小売り店の店先から消費者に販売した数字でありませんが、これは前年の同期に対しまして多少なりとも増加した数字が全体としては出ております。まだ影響ははっきりわからないわけであります。一月の下旬の数字につきましても、ほぼ集計がまとまった程度でありまして、はっきりいたしませんが、前年同期よりはふえておる。しかしふえ方が従来の各月よりも多少少ないじゃないかと思われる程度の状況でありまして、さしたる変わった状況は現在のところはあらわれていないようであります。なお東京都内あるいは大阪市内の小売り店について実地の状況を聞いてみましたところでも、売り上げの状況にさしたる変化は認められない。ただ先ほどもちょっと申し上げましたが、パイプたばこあるいは葉巻き等の売れ行きは、これはもともと非常に壁の少ないものですが、比率としては非常に増加いたしておる、こういうふうに相なっております。
  77. 武藤山治

    ○武藤委員 通常のカーブをたどるならば、当然需要が拡大されているという数字になるわけでしょうが、公社が予定をしておった販売増勢というものと、何かここで変化が出ているのではないだろうかと思うのですが、そういう点販売部長のほうは何かそういう情報を下からまだ聞いておりませんか。
  78. 狩谷亨一

    狩谷説明員 ただいま総裁からお答えいたしましたように、一月全体といたしましての数字でございますが、昨年に対しまして数量で申しまして七・六%の伸びでございます。その程度でございまして、いま直ちにこの問題のために売れ行きが落ちたと断定するのはむずかしかろうと思います。
  79. 武藤山治

    ○武藤委員 公社としてはそういう売り上げに何ら減少の影響があらわれていない、こういう判断で今後も従来と同じ程度需要は拡大されていく、こういう見通しに立っておりますか、今後どうですか。
  80. 阪田泰二

    阪田説明員 現状といたしましてはそういうような次第でありますので、大体来年度の予算等も本年度の売り上げに対しましてある程度増加を見込んで組んであるわけでありますが、大体現状におきましてはその見積もりを大きく変更するといったような理由は見当たらないように考えております。
  81. 武藤山治

    ○武藤委員 専売公社に過般も質問をした際にいろいろ明らかになったのでありますが、五カ年計画を立てて専売益金を増大していくという方針を立てておるようですが、たばこ人体に害がある、こういう報告がなされた現時点においても、いままでの五カ年計画の収益というものを確保するという方針については、何ら考慮する余地はありませんか。
  82. 阪田泰二

    阪田説明員 五カ年計画の数字あるいは見通しにつきましては、前にも御説明申し上げたことがございますが、これは一応の、将来計面的に仕事をし、準備をして作業をしていこう、こういうような意味において五カ年計画を立てておりますので、その計画どおりの数字あるいは計画どおりの収益、益金を絶対に上げなければならない、こういったようなつもりでやっておるのではございません。したがいまして今後におきましても、そのときどきの情勢の変化に応じまして、見通しを変更する必要があれば、その情勢に応じて変えていく、こういうふうに考えておるわけであります。現状におきましては、先ほど申し上げましたように、将来の見通しにつきましても、大きくこれを変更するといったような状態にはなっていないと考えておるわけであります。
  83. 武藤山治

    ○武藤委員 衛生局長にお尋ねしますが、この十人委員会の発表でかなり人体に害があるという、国民も心配をしておるときでありますから、何か厚生省としては公社のほうに来年度のたばこ生産の場合にはフィルターつきをこの程度の%に引き上げてほしいとか、あるいはニコチンの量をなるべ希薄にするように心がけてほしいとか、何かそういう注文をつけるような意思はおありですか、厚生省のほうとしてはどうですか。
  84. 若松栄一

    若松政府委員 フィルターつきたばこにつきましては、これはいまのところ、このフィルターが現実にタールやニコチンの量を減らすというような効果は認められております。しかしこのフィルターつきたばこ肺ガン予防にどの視度量的に効果があるかということはまだ突きとめることはできないわけでございまして、少なくともタールを減らし得るということは健康上の効果もあると存じますので、できるだけフィルターつきのたばこが普及することを私どもとしては希望いたすわけでございます。そういう点で公社とも意見の交換をいたしております。
  85. 武藤山治

    ○武藤委員 意見の交換をいたしておるのですか、いたそうと考えておるのですか。意見の交換をしておるとすれば、大体いまのところ生産量全体に対してその比率なんかはどんなぐあいに進めておりますか。またあなたのほうの意見に対して公社のほうはどんな考え方を述べておりますか。
  86. 若松栄一

    若松政府委員 私どものほうからその比率をどの程度とかいうようなことは申し上げることができませんので、私どもとしては同じ数ならフィルターつきたばこのほうが少しはいいようだということは衛生教育の立場で申し上げますので、そういう意味で今後国民のほうの選択がフィルターのほうを好むようになれば、当然公社のほうでもそれに応ぜられるものと存じております。
  87. 武藤山治

    ○武藤委員 公社のほうにお尋ねしますが、フィルターつきのほうがよろしいということは衛生局にやや一致した見解だろうと思う。ガン原因になるかどうかということにつきましてはなかなか結論がむずかしいにしても、できるだけ人体に害をなくすというためにはフィルターをつけたほうがいい。そうなりますと、大衆たばこの「いこい」や「新生」「バット」というようなものは、フィルターをつけるとなかなか現価格では販売できない、値段の点にもはね返ってくる、そういうような点から収益が減ってはたいへんだということで、公社はなかなか手がつけられないという状況にあるのではないか、こう考える。そこで思い切って大衆たばこにまでできるだけ害を避けるような配慮をする、来年度の製造はそういう方向にひとつ転換をしていく、そういう考え方についてはいかがですか。
  88. 阪田泰二

    阪田説明員 フィルターつきたばこにつきましては、けさほども御質問等があったわけですが、今回のアメリカ委員会報告におきましても、フィルターつきたばこにつきましては、別段これをつければ肺ガンになる危険が減るというようなメンションはしていないわけであります。フィルターと肺ガン関係、この辺はやはり学問的といいますか、そういう意味ではまだはっきりした問題ではないと思います。ただフィルターつきたばこにつきましては、趣味、嗜好の問題としまして、現在フィルターのついた軽いたばこを好むといったような傾向がございます。それからただいまお話ありましたニコチン、タール等がフィルターに吸着されるということは明らかな事実でありますから、そういう意味におきまして、もしニコチンあるいはタール等が守をなすものであれば、それは少なくなるということははっきり言えると思うのであります。そういう意味におきまして、いまのような段階におきましては、一般の消費者の御注文といいますか御要望も、フィルターたばこのほうも増炭のほうに向いておると私どもは刊研いたしておりまして、フィルターたばこをできるだけ増産するように従来から努めておるわけであります。ただフィルターつきたばこにつきましては、この設傭機械につきましてたいへんむずかしい問題がありまして、一生懸命増産につとめておりますが、また事実前年に比べましてフィルターたばこ等は倍くらいの増産になっておるわけでありますが、なかなか需要、要望に追いつけないという状態になっております。公社といたしましては、このフィルターたばこの全体のたばこに対する割合は現在大体二割くらいになっておるのですが、少なくとも五割くらいまでには持っていきたいというような考えを持ちまして、ただいま計画を立ててやっております。場合によりましては、それもできるだけ早い時期に実現するようにやりたい。  なお先ほどもちょっと御指摘のありましたフィルターだけをつくってみるといったようなことも、くふうしてみたいと思っておりますが、そういうような考えでおるわけでありまして、ただいま御指摘のありました「いこい」「新生」、こういったようなクラスのたばこにつきましては、フィルターつきのものを発売するという点につきましては、現在フィルターつきの「ハイライト」あるいは「ホープ」等の需要がまだ完全に充足されたという状態に相なっておらないような模様でありますので、そういうような意味におきましても、この増炭に差しあたりつとめておるわけでありますが、こういう状態のもとにおきましては、いろいろな価格段階たばこにつきまして、それぞれフィルターつきのものを出すということも考えて取り入れていきたいというのが将来の考えでございます。
  89. 武藤山治

    ○武藤委員 公衆衛生局、長でもけっこうですし、ほかの局長でもけっこうですが、たばこを吸うことによってガンになる、どういうガンになるか、いろいろ肺ガンや喉頭ガンや膀胱ガンとか新聞には出ておりますが、そういう因果関係について、たばこのどういうものが特に、ガン原因になっておるのか、そういう点について日本学界ではまだ全く答えは出ていないのですか、それともややこういう原因ガンになるらしいという結論は出ておるのですか、そこらを聞かしてくれませんか。
  90. 若松栄一

    若松政府委員 現在の段階でははっきりした因果関係はつかめておりません。たばこ喫煙それ自体との関係ということだけでございまして、その中のどの物質がどのように働いて、どういうメカニズムでガンをよく発生するという点については、日本国内におきましても、外国においても現在のところ研究ができておりません。
  91. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう因果関係について、特に国が予算を投下して研究されておる機関というものにはどういうものがありますか。
  92. 若松栄一

    若松政府委員 国の意思でこれを研究しろというような形で研究を助成し、あるいは育成している事実はございません。
  93. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、いま因果関係がないという断定、できるかできないかということを日本の国内にあるどういうところからあなたは聞いて発表しておるわけですか。どういう機関意見でいまのような答弁ができるのですか。
  94. 若松栄一

    若松政府委員 私どもが接触できます範囲内で、いろいろの学者の御意見を聞きましても、そのような研究日本に現在やられておりません。少なくともその成果が――はっきりと因果関係を証明できるような実験成績はございません。
  95. 武藤山治

    ○武藤委員 成績はあがっていないけれども、実験はかなり進めておるということですが、たとえば進めておるのはどういう機関とどういう機関がやっておりますか。民間でもけっこうですから、ひとつあげてみてください。
  96. 若松栄一

    若松政府委員 まことに残念でございすが、現在たばこの中の直接の成分との因果関係を特に調べようとしておるところがないようでございます。ただたばこの成分の中にタールのいろいろな科学的な分所をいたしまして、その中にたとえば三―四ベンツ・ピレンあるいはベンツ・アントラセーンというような従来発ガン性があるといわれておる物質が存在することを確認するというような成績はございます。
  97. 武藤山治

    ○武藤委員 科学技術庁の研究調整局のほうでは、国として国民の健康を保持するために、たばこはもう何十年も昔から害があることがわかっておるということが再三午前中の答弁で出ておるのですから、そういう国民の健康に害があると思われる物質についての研究を政府として委託しておる場所はあるのか。それからガンに対するそういう研究をするための予算はどのくらい計上しておるのか。過去三カ年間のものを金額で示してもらいたい。
  98. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 科学技術庁でただいまやっておりますのは、各省のやっておりまする研究を総合的に推進いたしまして、国民の福祉、経済の振興に寄与するようにつとめておりますと同時に、私のほうに特別研究促進調整費というのがございまして、予算編成時におきまして、予見されざる緊急の研究事項について、総合体制を細みまして、そこに研究費を出す、そういうことをしております。そこでガンにつきましては、科学技術におきましても、数年前からこれを重要な総合研究課題といたしまして、たとえば宇宙あるいは防災等と並びまして、各省の研究予算の見積り方針の調整でまず促進しておるわけでございます。それで数字でございますが、三年前からということでございますけれども、ただいま持っております数字が三年前になっておりませんので恐縮でございますが、三十八年度におきてては、厚生省関係、文部省関係それから科学技術庁の特別研究促進調整費というのを合わせまして二億七千三百六十五万一千円という数字になっております。この内容につきましては、御説明申し上げると非常にこまかくなり過ぎますので省略させていただきますが、ただいま申し上げました数字はガン研究に関するものでありまして、特別研究促進調整費につきましては、昨年度はこの中で制ガン研究と申しますか、ガンを押える制ガン剤の薬効試験その他に支出したわけでございます。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 ついでに三十九年の予算はどうなりますか。
  100. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 三十九年の予算につきましては、ただいま御審議中のものでございますが、概数を申し上げますと総計で約三億四千万、その中には科学技術庁の特別研究促進調査費は含まれておりません。これはその年度に入りましてから特に必要を生じました場合だけに支出いたすものでありますので、ただいま申し上げました三億四千万の中には科学技術庁の予算は入っておりませんで、厚生省と文部省の分だけでございます。
  101. 武藤山治

    ○武藤委員 そうすると、どうも午前中からの話を聞いておると、イギリスにしてもアメリカにしても、ずっと昔からたばこに対する認識というものはあって、からだに害になることはわかっておったというのですが、そういうわかっておるものをなぜもっと権威者を集めて研究をせさるとか、そういう予算を取って正確な結論を出してみようという気持ちにならないのですか。厚生省は、それほど人体影響はないからということでやらないのですか。それとも予算を要求しても予算をつけてくれないからできないのか、その辺の経過はどうなっておるのですか。
  102. 若松栄一

    若松政府委員 厚生省がいままで大がかりな調査をいたしておりませんのは、この調査日本の場合は特に困難が多いわけでございます。先ほど申しましたように、アメリカ報告におきましても一番重きを置かれております調査は、いわゆる先ほど追跡調査と申しました部分でありまして、数万人あるいは十数が人を登録しておきまして、その中でいろいろな生活環境が似ておる者で、ただたばこを吸うか吸わないかというところだけが違うというような人々を区分いたしまして、その間でガン発生率の比較をしておるわけであります。ところが日本ではガン発生率が欧米に比べて低いものでありますから、欧米ほどの信頼度のあるデータを出そうといたしますと、欧米の数倍の調査対象を必要とするわけでございます。そういう意味で日本においては欧米に比べて実験がはるかにむずかしい。そういう点で現在のところ日本でやろうといたしましても、現在すでに欧米で行なわれておる正確なデータに匹敵するほどのものはなかなか容易に得にくいということで、現在のところまではそのような大がかりな調査計画は持たなかったわけでございます。
  103. 武藤山治

    ○武藤委員 そのような大がかりといっても、別に大がかりでなくとも、先ほどあなたの答弁では、不幸にしてそういうものを知らないというのでしょう。たばこガンとの関係研究しておる大きな機関は何もないわけでしょう。ところが何十年も前からたばこは害があるということがわかっておったら、厚生省としても、あるいは政府としても当然何らかの対策を立てる必要があるのじゃないのでしょうか。日本ガン発生率では必要ないとお考えですか。それとももうこの段階ではそういうものは必要だと考えますか、どうですか。
  104. 若松栄一

    若松政府委員 肺ガンの問題は日本でも欧米に比べて低いとはいいながら増加する速度が非常に速いわけでございまして、私どもは十分関心を払う責任があると存じております。しかし、研究という段階になりますと、一朝一夕になかなか出るものではございませんで、わが国における研究は大体医学的な研究が主でございまして、診断、治療という方面にいままで主勢力が注がれていました。それで発生機転、特にたばことの関連を突きとめようという方面では研究がおくれておったわけでございます。
  105. 武藤山治

    ○武藤委員 そういう研究をやはり徹底的におやりになって、国民の不安というものをできるだけ減少させるということが政府の任務ですから、そういう立場から、いまの時点から至急そういう権威者を集めての研究機関は必要である。つくるべきである、そういう意見はあなたはお持ちになりますか。局長と同時に次官からもお考えをお聞かせ願いたいと思います。
  106. 若松栄一

    若松政府委員 研究によりまして、たとえば、どういう成分とどういう成分が発ガンの機序にどういう影響をするかというようなことになりますと、むしろ私は文部省等の基礎的な研究機関のほうにおまかせしたほうがいいと思いますし、私どもの公衆衛生の立場から見ますと、国民の健康ということに直接関係がある日本肺ガンが、どんなようなふえ方をして、どういう傾向にあるだろうかということについては、私どもとしての保健衛生の立場から十分な関心を持つべきだと思います。しかし、そういう意味でも、現在まで行なわれました各国の広範な調査というようなものは、日本としては依然きわめて困難だろうと思います。しかし、どんどんふえますので、将来にわたってずっと日本ガン傾向を着実に把握できるような体制をいまからしいて、将来とも長期間にわたってその研究を進めていくというような体制が妥当ではないかと現在考えております。
  107. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 私からも一言。ただいまアメリカの衛生局の発表から、非常に肺ガンの問題とたばこ関係がやかましくなっておるわけでございますが、かつては御承知のようにイギリスでもこういうような類のものを発表もいたしておりまして、先ほど総裁からもお話がありましたように、今度のアメリカの発表はそれを少し大幅に統計的な面から結論を出したというようなことで、新しい問題はないということでございます。わがほうといたしましても、これは問題でございますから、いままでも研究をいたしておるわけでございまして、予算のほうにおきましても肺ガン関係委託研究費というものをあれいたしまして、数カ所の学校、病院等にいろいろの観点から大体の予算を、もちろん大量ではございませんが、つけてやっておるわけでございます。したがいまして、いまのお話のような審議会を、いまの段階におきましては、まだそういう委託で研究も進めておられるのでございますから、そういう問題についてある程度の見当がつくというような形になってからでもおそくないのではないか。いま直ちに審議会を開くべきだというところの結論までは私はまだ出しておらぬという状態でございます。
  108. 臼井莊一

    ○臼井委員 ちょっと関連質問ですが……。いま政務次官から、武藤委員からの質問に対してお答えがございましたが、肺ガン問題はすでに数年前からございまして、われわれも知り合い方面から、たとえば千葉大学にも数年前に肺ガン研究所ができた。ところが様子を聞いてみますと、二十人の職員、研究員がいて、俸給を別にして年額研究費がわずか八十万円しかないというのですね。それでたばこ肺ガンとの関連の研究ばかりでなく、肺ガンに関する基礎研究をおそらくやっておるのでしょうが、非常にそれが困っておる。これでは研究できないというので若い熱心な研究員もだいぶ不平を言っておるということを聞きましたので、これは希望でございますが、今後これは大学の付置研究所の研究費の問題になると思いますが、武藤委員から御質問がありましたから、そういうことも参考に願って、これは大蔵省の査定の問題もあるでしょうけれども、十分その研究も願いたい。この点を、希望でございますが、ちょっとつけ加えてお願いいたしておきます。
  109. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 いまの臼井先生の御希望でございますが、こういうふうに問題になっておりますし、各大学等でもやはり相当学理的に検討もする必要があると思いますから、ただいまの御希望等につきましては、今後ひとつ適当の方策を講ずるように進めていきたいと存じます。
  110. 阪田泰二

    阪田説明員 いま御質問ではございませんでしたが、ただいまの千葉大学の研究費の問題がございましたのでちょっと申し上げておきます。  専売公社では、昭和三十六年から委託研究興というので、各大学、研究所等に肺ガンの問題の研究をお願いしておるわけであります。ただいまお話がございました千葉大学のほうは、千葉大学の中に肺ガン研究会というのができておりまして、これは河合先生、香月先生が担当しておられますが、全国的な組織で肺ガン研究をするということになっておりまして、それに公社といたしまして三十八年度は二百万円の委託費を出しております。明年度も引き続き支出することになっております。
  111. 武藤山治

    ○武藤委員 いま、政務次官は審議会みたいなものを権威者を集めてつくる必要は、いまの段階ではないという答弁でしたが、私はまことに不満です。イギリスにしても、アメリカにしても、もう政府みずからが諮問をして答申を取る、そこまで真剣に取り組んでおるのに、日本はまだその段階でないような認識では、政務次官、少々困ると思うのです。しかし、それはあなたの考え方がそうだといえば、それ以上責めてもしかたありませんから先へ進みますが、もう一つ、いまの総裁の各大学に委託費として二百万円出しておるというのは、千葉大一校についてですか、全国の委託費の総額は幾らになりますか。
  112. 阪田泰二

    阪田説明員 委託研究費の額としましては、いま二百万円と申しましたのは、千葉大学でやっておる肺ガン研究会に対する三十八年度の分でございます。三十八年度といたしましては、そのほかに東北大学あるいは癌研究所、東大作合わせまして四百万円を委託研究費として支出しております。明三十九年につきましては、これは予算におきましては七百万円の委託研究費の支出を、現在予定しておるわけでございます。
  113. 武藤山治

    ○武藤委員 公社宣伝費だけでも一億二千五百万円もかけておって、健康の問題について少し調査してもらおう、研究してもらおうとしておるのに、七百万円の予算というのは少々ちょっぴりし過ぎてはいないかと思うのですが、こんな程度国民の健康状況について調査させようというのは、少し虫がいいような気がしますが、七百万程度でできると思っておるのですか。
  114. 阪田泰二

    阪田説明員 公社といたしましては、この喫煙肺ガン関係は非常に重大な問題であります。また、ただいまいろいろお話がございました喫煙肺ガン関係がはっきり究明されれば、したがってそれに対する対策もはっきり立てられると思いますので、公社としては研究に対しましては十分な熱意を持っておりまするし、いろいろとそういう有効な研究がなされるようなことがありますれば研究費の支出を惜しむものではないわけであります。ただ現状といたしましては、これはいろいろ研究しておられます大学の先生方にも実は御相談申し上げておるわけであります。明年度の研究課題としてどのくらいの経費が卸必要になりますかというようなこともいろいろ御相談申し上げた上で明年度の委託研究費の額等も出したわけでありまして、現状におき摂して、ただ金額を多く出せばその金額が何かに使われて何かの研究ができる、こういう段階ではございませんので、非常に資金のかかる研究であっても有効な研究がなされる、またそういうことをやりたいという関係で大学の先生方から御要望がありますれば、私どもとしても十分検討してみたい、積極的にそういう方向に御協力申し上げるという考えでおりまするけれども、現状といたしましては、来年度はまあこの程度の仕事が先生方としてはおやりになれる、こういう状況になっておるわけでございます。
  115. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、先ほど午前中の答弁の中で、総裁日本の場合まだ肺ガンたばことどういう因果関係があるか、どういう原因があるかということは究明されていない、そういうものは将来研究が進んでから公社としても十分いろいろ対策を考えるという答弁をしておりました。そうすると、日本でそういう因果関係を究明してもらう団体というのは、総裁の頭の中に考えておる組織というものは、大学の研究室ですか。それとももっと厚生省や科学技術庁あるいは文部省、公社と四者が一体になった形のスタッフを集めて徹底究明をするという、そういうような完全な組織をつくってスタッフを休めよう、こういう考えではないのですね。大学へ委託研究程度、それの結論を行って、公社としてはいろいろ今後の対策を立てる、この程度ですか。
  116. 阪田泰二

    阪田説明員 現在委託研究しております先は、大学のほかにガン研究所とか東大の伝研、あるいは先ほど申し上げました千葉大学でまとめておられまする肺ガン研究会あるいは公社、あるいは実際に肺ガンの治療等をやっておりまする病院とか、いろいろ相手があるわけです。現在のところは、そういうような現在の日本におきましては最高の権威者と考えられるような方々にお願い申し上げておる、こういうわけでございます。
  117. 武藤山治

    ○武藤委員 調整局長にちょっとお尋ねしますが、昨年十二月でしたか、今度総合的な制ガン対策を立てる、こういう新聞報道があったと思いますが、徹底的な、抜本的な制ガン対策というようなものが本年から何か頭をもたげてきたのですか、その内容はどんなものですか。
  118. 芥川輝孝

    ○芥川政府委員 先ほど申し上げました中の三千七百万を使いましてガンの問題につきまして研究を進めますが、その中心は制ガン作用の機序、それから各種制ガン剤の制ガン効果判定基準に関するものでございまして、これらの研究を通しましてその方面のガンの総合研究体制の確立の基盤といたしたい、こういうわけでございます。  その内容を、大部の研究でございますので、簡単に申し上げますと、基礎方面といたしましては、主として大学に委託いたします。それから制ガン剤の薬効基準等につきましては厚生省に移管いたしまして、厚生省からたとえば国立がんセンターあるいは財団法人微生物化学研究所といったようなところに出しまして、ザルコマイシン、マイトマイシン等、八種の薬効の基準を確立いたしたい、こういうふうなことになっております。そのほか、新しい医療技術といたしまして局所灌流法の研究を進めるというふうなこともいたすわけでございます。
  119. 武藤山治

    ○武藤委員 医者じゃありませんから、たばこのタールが害になるのか、ニコチンが害になるのかということは私らわかりませんが、弟が医者をやっているものですから、よく弟と話し合いをすると、特に紙がタールになって腹の中に入る、あるいは肺のほうへいく。タールの害というのはかなり大きいのじゃないかということをよく聞くのでありますが、何かほかの原料を使って、いまの木材でなく、たばこの幹か、そういうものを使って紙巻きたばの紙にするわけにはいかぬのか。そういう研究について公社は何かやっているのか。そこいらはどうでしょうか。
  120. 阪田泰二

    阪田説明員 ただいま紙巻きたばこの紙のタールの関係について御質問があったのでありますが、タールはたばこのライスペーパーから出るものではありませんで、たばこの全体から出るわけであります。またタールという言葉も非常に不正確な言葉でありまして、要するに、常識的にいいまして、たばこのやにといったようなものの中にいろいろ複雑なものが含まれているわけであります。これを総称して通俗的にタールといっているようなわけであります。そういったような段階でありまし、ただいまたばこの紙に木材等を使っておるからというお話でありましたが、現在たばこの紙は麻の原料でつくっておるものと多少パルプをまぜておるものがあるわけでございますが、いずれにいたしましても、タールの問題につきましてはほとんど関係がない、あるとしましても、きわめてわずかな関係しかないというものであろうと思います。いまの紙をいろいろたばこの茎等で代用するというようなことも、これは実験してみた人もあります。可能ではありますが、それを採用いたしましても、別段の積極的な意義は認められないというふうに私ども考えております。
  121. 武藤山治

    ○武藤委員 そうしますと、ニコチンが体内に入るというのが最大の被害だということの判断はやや間違いないという見方ですか。普通タールというのはパルプからです。それが体内に沈澱をし、付触をして、それが病源になるのだという考え方から、この紙を変えたらどうか。何が方法があるのではないか。私はこういうしろうと考えを持っているのですが、それよりはやはりニコチンの量を減らすというほうが公社としては手っ取り早くやれる方法ですか。ニコチンの量をできるだけ殺してたばこをつくる。国民に害をできるだけ少なくするという観点から前向きに考えたら、ニコチンの壁を減らすたばこの製造のほうが公社としては、やりやすい方法ですか。それはどうでしょうか。
  122. 阪田泰二

    阪田説明員 ただいまのタールの関係ですが、先ほど申し上げましたように、タールというものは通俗的にたばこのやに、あるいはフィルターたばこを吸いますれば、フィルターに黄色くつきますが、ああいうものを総称してタールといっておるようでありまして、ひどい場合にはニコチンもあの中に溶けて一緒に入っているわけであります。そういったふうなことでございまして、それでただいま御指摘がありましたことについて、私もしろうとですが、クールは害がないので、ニコチンに守があるのだ、こういうふうに私は申し上げたわけではありません。むしろクールとニコチンを比べますと、どれも結論はわからぬわけでありますが、ニコチンのほうはむしろ肺ガン関係が少ない、タールのほうがむしろ関係があるのではないかというふうな考え方が、確定的にはわかっておりませんが、大体それじゃなかろうかと思います。いずれにいたしましても、全体としてクール、ニコチンと肺ガンとの直接な因果関係というものは突きとめられていないというのが現状であろうと思います。
  123. 武藤山治

    ○武藤委員 時間の通告がきましたからやめますが、最後に総裁にちょっとお尋ねいたします。先ほど野原委員からアメリカの連邦取引委員会は三つの提案をしそうだ、その中で具体的にたばこの箱にいろいろ紙巻きたばこはからだに害があるとか、あるいは喫煙ガンという病気に関係がありますよ、こういうようなことを箱に書くということです。これは一体日本の場合にそういうようなことを考えたら、一体公社として売れ行きがどうなりそうでどうだということは、あなたのお考えからいかがですか。先ほど具体的に野原さんがアメリカ考え方をばんと出したわけですが、総裁はこういうものに対してはどんな考えを持っておられますか。
  124. 阪田泰二

    阪田説明員 アメリカではそういう提案がなされたそうでありますが、日本におきましても、かりにそういう提案が政府の方針として決定され、専売公社に御命令があるということになればこれはいたさなければならぬと思いますが、現状におきましてたばこにさような表示をする考えは全くございません。
  125. 武藤山治

    ○武藤委員 いや、そういうことをかりに日本でやった場合、仮定ですから答えられぬといえばそれまでですが、やった場合に売り上げはどうですか、専売益金はどうなりますか、その点はどうですか。
  126. 阪田泰二

    阪田説明員 その辺はやってみなければわからないとお答え申し上げるほかないと思います。
  127. 山中貞則

    山中委員長 平林剛君。
  128. 平林剛

    ○平林委員 午前中からたばこ肺ガンの問題を各委員からお尋ねしておりまして、政府側の答弁を静かに聞いておりますと非常にちぐはぐである。厚生省のほうからは、イギリスアメリカ研究をした結果害になるものは日本においても害にならないとはいえないとかあるいはたばこ肺ガン影響があるとかというきわめて断定的、肯定的な説明をされる。専売公社のほうはまだそういう結論になっていないと思いますというふうにお話しになる。立場が違うから答えが違ったってかまわない、またそれぞれに忠実なるゆえんであるから、われわれは理解をします。しかし一般の国民から見ると、同じ政府が心配させながら吸わせるというのは一番非が悪いと私は思う。そういう意味から、このたばこ肺ガンの問題につきましては、私はまず政府がきちんと統一した見解-無理に一つにまとめるというわけではございませんけれども、もう少し厚生省と専売公社の間の意見をまとめておく必要があるのじゃないか、こう思うのです。この基本的な考え方につきまして厚生省と専売公社総裁のお考えをまずお伺いしておきたいと思います。
  129. 若松栄一

    若松政府委員 たばこと健康の問題について厚生省と公社のほうで見方が違うというふうにおっしゃいましたけれども、私はそう違うというふうには解釈しないのであります。といいますのは、喫煙が害があるという事実は明らかであると私は思っております。ただ、たばこの何がどういうふうに作用する、原因、結果というものはつまびらかでないということでございます。二つの要因がありまして、私どものほうは事実を強調しておりますし、公社のほうではどちらかというと原因、結果がまだ証明されないという点を強く主張されたので、両方の事実があると私は解釈しております。そういう意味で、私としては保健衛生の立場ではこの事実をすなおに認めて、それに即応した対策を立てていくべきだというふうに解釈いたしております。
  130. 阪田泰二

    阪田説明員 厚生省のほうと専売公社のほうと認識が違うんじゃないかという御指摘がございましたが、私どもといたしましても、アメリカレポートの内容あるいは現在まで日本並びに外国において研究され、わかっております事項、こういうものに対する理解のしかたは厚生省と全く同じであると思います。ただそういうような理解の上におきまして、現状において専売公社としてどういう態度をとるかといいますれば、けさほど来から申し上げますような態度で私どもやっておる、こういうことでございます。
  131. 平林剛

    ○平林委員 基本的な考え方は同じだということでこれからもいってもらいたいと思います。ただきょう私が聞いておった範囲では、受け取り方にもよりますけれども、違った感じを与えております。これはやはりまずいと思う。私は政府の統一が欠けておるからまずいという意味で、あなた方を援護するわけではありません。ただ国民に対してどっちが一体ほんとうだという無用な心配をさせるということはまずいと思うのです。特に私らもたばこを吸っておりますけれども相当高い税金を吸っているわけですから、心配しながら吸わせるのでは同じ吸わせるのでも違うわけです。たばこの小売り屋さんに行ってみるとみんな困っておる。窓口に行ってみると一体これはどうだといって――あなたのように専門家ではありませんから、その答えもまちまちになるでしょう。そういう意味では、現在の日本における肺ガンたばこ関係などについては政府がもっと正しくきちんと発表していく必要があるのじゃないかと思うのです。特に先ほど来お話しになりました肺ガン日本の死亡の順位において第何番目になりますか、厚生省の発表によりますと、一番多いのは何といっても脳卒中、十六万六千二百人からのこれによる死亡がございます。第二位はガン、十万一千六百人くらいこれで死んでおる。心臓病が六が七千人。その次が老衰。第五位が不慮の事故。第六位が肺炎、気管支炎。第七位が全結核。第八位が高血圧症。第九位胃炎、十二指腸炎、腸炎、大腸炎。第十位が自殺、こういうことになっておるわけであります。このガンの中でも、十万一千六百人あるけれども、実際日本の場合そのうちの十分の一にも足りないという位置にある。私はたばこ肺ガンとの関係を等閑視したりあるいはこれが心配でないというわけではございませんけれども、その占めている正しい位置というものを明らかにしていくことは大事なことだと思うのです。そこで言い方についても説明のしかたについても注意してもらいたい。これからあなたのほうは、きょう各委員からのいろいろの質問によって、宣伝なり、国民に対する注意の喚起なりを行なっていかれるわけでありますけれども、そういう場合の影響というものを十分考えながらやってもらいたいということを希望いたしておきます。  そこで専売公社に聞きたいのですけれども、いまたばこの小売り屋さんの窓口ではたいへんこのことで困っておる。どういうふうにこれらの手を打っていかれますか、その点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  132. 阪田泰二

    阪田説明員 たばこの小売り人の状況でございますが、新聞紙上その他でたばこの売り上げが減少してたばこ小売り人としては困るといったような記事も二、三拝見したことはありますが、先ほど御説明申し上げましたように、現状におきましてはたばこの売り上げが著しく変化してきておるというような状況はまだ認められないわけでありまして、特別にそのために小売り人にどういう指示をするとかどういった対策をとるといったような必要は現在のところ考えておりません。ただこういうふうに肺ガン問題が世間で非常に言われるようになりますと、小売り人としてもこの肺ガンという問題につきまして認識をしておく、お客さんに対しても説明できる程度の知識を得ておく必要があると思います。現在肺ガンにつきましてこういうところまではわかっておる、こういうところはまだわかってない、そういう点につきまして小売り人としても十分な認識を持ってお客さんに接することが必要でないかと考えております。そういうことにつきましては、小売り人の組合、公社の地方組織等を通じまして十分に、これは啓蒙的なことでありますが、やっていきたいと考えております。
  133. 平林剛

    ○平林委員 そこで、専売公社の今後の宣伝あり方につきましては、きょうの議論から考えまして、相当考えてもらわなければならぬ点が示喚されておるわけでありますけれども、小売り店がやる宣伝につきましてもやはり注意をしていかなければならぬと思うのです。私はそういう心配を感じておるわけです。先ほどお話がありましたように、公社宣伝予算が一億二千五百万円、しかし小売り店もたくさん売ったほうが利潤が上がるわけでございますから、公社のほうは政府の機関として厚生省と統一見解なり国民の健康を考えていろいろな宣伝をくふうされるにいたしましても、小売り店のほうはそれとは立場が別です。この場合に、やはり私は、公社が、小売り店が独自におやりになる宣伝のしかたにつきましても相当注意をしていきませんと、それがまたばらばらになってしまう。こういう点につきましても御留意をいただけますか。
  134. 阪田泰二

    阪田説明員 その点は御指摘のとおりでありますが、公社といたしましては、小売り店につきましては、主として当面小売り店の指導といいますか、当たっておりまする地方局、その出先、こういうところにも十分お説のような趣旨は徹底いたさせまして、公社全体としての宣伝、広告のあり方、いき方、こういうものにそごした不当な適当でない宣伝、広告のいき方をしないように、これは十分お説のとおり注意してまいりたいと考えております。
  135. 平林剛

    ○平林委員 そこで私は、この問題に関連をいたしまして、なるべくなら若い人たちは、特に未成年者というのはたばこを吸わないほうがよろしい。いろいろな学術会、医学関係研究結果によりましても、若い間から喫煙の習慣を覚えて、長くその習慣が続けば肺ガンになる。そういうことだけでなく、未成年者に対しましてはいろいろな意味から、この際ある程度喫煙を防止していくというような対策というのは、これを機会にとっていいことだと思います。先ほどどなたかが御提案になっておりました五つか六つの提案などもなかなか玩味すべきものだと思いまして、そういうことは積極的に研究をなさってもらいたいと思いますが、特に未成年者にたばこをなるべく吸わせないようにする、これは専売益金とかその他いろいろなことを考えずに、当然今日の状態では、やったほうがいいと思うのですけれども、そういう未成年者に対して喫煙の習慣をなるべくなくさせるということ、これは公社も厚生省のほうも同じ見解でおやりになっていただいていいのじゃないか。どういうふうな具体的な手段がございますか。それを伺いたいと思うのです。
  136. 阪田泰二

    阪田説明員 未成年者の喫煙の問題につきましては、法律におきましてもはっきりしている問題であります。私どもといたしましても、過去におきましても未成年者の喫煙禁止の趣旨を徹底するためにポスター、広告等を出しましたこともあるわけでありますが、ただ公社立場と申しますものは、やはりたばこを製造して販売するという立場でございますので、その立場である程度の御協力はいたしますが、ある程度までしかできない。結局徹底的にやろうといたしますれば、それぞれのしかるべき筋において、ことに非行少年等に喫煙が多いという実例もございますが、そういった社会環境の改善、生活環境の故智あるいは社会衛生教育とか、広くそういう面からの対策をしていくことが、一番根本的対策ではないか、ちょっと私どもの所管外のことになりますが、そういうような考えを持っております。公社といたしましては未成年者にできるだけ吸わせないように広告、宣伝は、公社としてはそういう対外的の手段がありますから、そういう面でできるだけ取り入れていきたいと考えておるわけであります。
  137. 若松栄一

    若松政府委員 全く御同感でございまして、できるだけ若い人たちをたばこから守っていくということには全面的に賛意を表しております。そういう意味で、そういうことに一番影響力のある地域の婦人団体であるとか母親であるとかいうような方々の協力を、ぜひお願いしたいと思っております。またすでに地域婦人団体等でもそのような動きを活発に始めておられますので、私どももこれに全面的に協力をしてまいりたいと思います。同時にまた、社会教育あるいは学校教育、道徳教育というようなすべての場をできるだけ活用してこの方針を実施してまいりたいと思います。
  138. 平林剛

    ○平林委員 具体的にどうすると言われると、むずかしい問題らしくてなかなかお答えにくいと思うのですけれども一つの問題を提起しておきたいと思います。未成年者喫煙禁止法という法律がございます。明治三十三年三月七日法律第三十三号。先ほど総裁もちょっとその点に触れましてそういう法律があるというお話がございましたけれども、この法律は、「朕帝国議会ノ協賛ヲ経タル未成年者喫煙禁止法ヲ裁可シココニ之ヲ公布セシム」という肩書きで数カ条に分かれている法律でありますけれども、「満二十年ニ至ラサル者ハ煙草ヲ喫スルコトヲ得ス」。ところが、この法律があるというだけで、第三条は、「未成年者ニ対シテ親権ヲ行フ者情ヲ知リテ其ノ喫煙ヲ制止セサルトキハ一円以下ノ科料ニ処ス」とあるわけです。第四条には、「満二十年ニ至ラサル者ニ其ノ自用ニ供スルモノナルコトヲ知リテ煙草又ハ器具ヲ販売シタル者ハ十円以下ノ罰金ニ処ス」とあるわけです。私は、この法律があるということ自体で精神的な効果はあると思うのですけれども、あまりに現実離れいたしておらないかと思うのでございます。それで、しからば罰金を上げたらいいという主張をするものではございません。しかし、現状につきましてあまりにも即さない法律でございまして、何か政府において検討しておるのではないだろうか。何か検討したことがあれば、どういう御見解かひとつ伺っておきたいと思うのであります。いかがですか。
  139. 若松栄一

    若松政府委員 厚生省といたしましては、今度の報告書が出て以来至急専門家の御意見等もお聞きいたしまして、できるだけ青少年の喫煙を防止したほうがいいということが、はっきり日本の学者の先生から答申を受けましたので、厚生省はすでに、未成年者喫煙禁止法のこともあり、また児童福祉ということも考えて、青少年の喫煙を防ぐようにという指令を各県に発しております。  なお、この法律は罰金が「一円」、「十円」となっておりますが、これは「一円」の分は「千円」と、「十円」と書いてある分は「二千円」と読みかえることになっております。  そして本日、朝の毎日新聞で、この法律を現実に適用した事例が報道されております。御存じかもしれませんが一応簡単に御紹介申し上げますと、子供がたばこを吸っているのに、母親がそれを知りながら制止しなかった、しかも子供にたばこを持たせないように注意しなさいと、母親が警察から注意を受けたにかかわらず、警察に注意されるたびに、隠れたばこをして火事を出すより吸わせるほうがよいということで、自分からたばこを買って与えたということが順法精神に欠けるということで、この母親は起訴をされたという記事が載っております。このようなことも今度の影響一つかと思います。
  140. 平林剛

    ○平林委員 私も寡聞にして知らなかったのですけれども、千円ないし二千円に読みかえるというのは、何によってそういうことにしておるわけですか。
  141. 若松栄一

    若松政府委員 私詳細知りませんが、罰金等臨時措置法という法律で、各種の法律におけるそういうような罰金の規定を一律に読みかえることになっております。
  142. 平林剛

    ○平林委員 罰金をもって未成年者の喫煙を禁止するというやり方は私はあまり感心しないので、特にこのことについて罰金を上げたらどうかということを申し上げるわけじゃございません。お話によると外国にも禁止法によって罰金でやっておるような、こういう例はございませんですから。ただ、これを機会に政府において未成年者の喫煙が防止されるようなことは、健康以外にいろいろな社会悪の根源にもなっていますから、ひとつこれだけは積極的に取り組んでもらいたいということを希望しておきます。  そこで、専売公社総裁にお尋ねしますけれども肺ガンのこの種の問題が盛んに新聞やその他の報道機関を通じまして国民の関心になっておるので、この結果私は専売公社の販売目標、国会できめた目標に相当影響を与えるのじゃないかと思うのでございます。総裁は見通しについては大きく影響する理由はないと思うという御答弁がございましたけれども、必ずしもそういうふうな見方でいいかどうかという点がございますが、どういう根拠でそんな見通しはないというふうに御判断なさったのでしょうか。
  143. 阪田泰二

    阪田説明員 先ほど売れ行きの見通しにつきまして申し上げましたのは、現状におきましては、具体的には一月中旬、下旬におきまする売り上げの状況等から勘案いたしまして、現在におきましてはまだ将来の売れ行きの見通しにつきまして大幅に変更するような理由は見当たらない、こういう趣旨を申し上げたわけでございます。将来これにまたいろいろ変わった現象といいますか影響を生じておるということがはっきり出てまいりますれば、それはその場合にそれに応じた対策を立てなければならぬと思いますが、現状におきましてはこういうことであるということを申し上げただけであります。
  144. 平林剛

    ○平林委員 私もいろいろ各方面の意見を聞いておりまして、たしか昭和三十七年、イギリス王立医学協会がこの問題について発表したときに、通常の販売見込みに対して、二、三週間は一〇%くらいたばこの売れ行きが低下をした、ただそう後徐々に売れ行きを回復して、一年後には全体として三%程度の減収といいますか影響になったというのを聞きました。私は、今度の場合総裁の見通しにつきましては、少し矛盾があるのじゃないかと思うのです。たとえば一億二千五百万円の広告費を使って、宣伝につきましてはいろいろ制約があり、あるいは社会的な良心に基づいておやりになるにいたしましても、相当の効果をねらって国会にその審議を頼んでいるのじゃないか。ところが最近新聞やラジオ、週刊誌等に掲げられておりますこの問題は、公社がおやりになっている以上の効果があると私は思う。もしその影響はないと言われるならば、専売公社がお使いになる一億二千五百力円の効果いかんということに相なるわけであります。ですから私は、そういう意味では相当影響を見て考えてもらわねばならぬ、現に、昭和三十九年度の製造たばこ販売の代金は、予算案によりますと四千二百三十六億四千百万円となっておりまして、前年に比較して四百三十八億四百四万円の増になっている。これはおそらくこのたばこ肺ガン問題につきましては予想せられておらなかったのでないか。そうすれば私はこの目標というものはかなり無理が出てくるのではないかということを考えるのであります。私がいま申し上げました論拠から考えまして、ひとつもう一度総裁としての御見解をお願いしたいと思います。
  145. 阪田泰二

    阪田説明員 公社では一億以上の広告費を使って広告するようにしておるわけでありますが、それによりましてたばこの消費がふえますといいますか、そういうのよりも、新聞、週刊誌等の記事による宣伝のほうが大きいから、これは減るほうが大きいだろう、こういうような御趣旨の御指摘であったと思います。この辺は全く、そういうものを見て消費者がどう判断するかということにかかっておるわけでありまして、一がいにそういう紙面の大きさとか金額とか、そういうことだけで判断はできないと思います。現状におきまして、まだ売り上げが著しく減るとかいったような様子が見えてないということだけを先ほど申し上げたわけであります。  来年度の予算におきます売り上げ見通しなどにつきましても御指摘がありましたが、これは現在の状況におきまして、特別の広告宣伝をして、それだけことしより売り上げをふやす、こういうような考えで見てある予算でありませんので、現在の自然の情勢におきまして、従来の例から見てもこの程度増加するであろうといったようなのが、簡単にいいまして明年度予算の見通しでございます。  その当時におきまして肺ガン問題というものはなかったじゃないかというお話でありますが、これも私は再々申し上げておりますように、肺ガン問題につきましてはかなり古くから問題にされておった事項であります。一昨年もイギリス報告がございました。また予算の編成見通し等を立てておる際におきましても、アメリカではだいぶこの委員会の審議がはかどりまして、報告が近く出るのじゃないか、こういう情勢にありましたので、もちろんそういうことも十分に考えてはおるわけであります。また今回の報告の内容におきましても、新事実というものは苛々申し上げておりますようにないわけでありますので、そういう意味におきましても、現状におきましては明年度の見通しが著しく変わる、こういうようなことは考えておらないという趣旨お答え申し上げておるわけであまりす。
  146. 平林剛

    ○平林委員 昭和三十七年の上半期にち上うどこの問題が起きたとき、耳穴公社の販売成績というのはぐんと下がっているわけです。私はそのときは厚生省が喫煙者の教育などをやられた時期だと思うのですけれどもそのときでも、それを回復するのにかなり苦労した実情というのを知っています。ですから、そういうことを考えますと、私はこれは政務次官のほうに特に注文しておきたいのですけれども、例年製造たばこの販売代金というのが六%、七%と上昇しておりまして、現状からいきますとかなり無理がきているような現象があらわれております。きょうはそういうことをこまかく申し上げませんけれども、今後この肺ガンの問題については、研究を進めていけば、その正しい理解、またそういう意味で国民の健康上においてゆるがせにすることのできない問題などが出てくるし、また、それを考えれば積極的対策を考えねばならぬということから、現在のように、ただ最近の実績とか成年人口の増加による自然増加だけを基礎にして毎年の専売益金を安易にきめていくというやり方は、改めていかなければならない。少なくとも、きょう議論されました今後の見通しの上に立ちまして、これらの問題につきましては相当分析をしていく必要があると思う。ひとつこの問題につきまして、当面は政府として御提案になっておりますけれども、十分考えてもらえるかどうか、政務次官からお答えをいただきたいと思います。
  147. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 先ほど来総裁からもお話がありましたように、いまのところでは、まだこの問題が最近の問題でございますので、実際末端の売りさばき所のほうの影響というものは十分に出ておらない。まあ一月一ぱいの実績からいけば、あまり下回っていないというような結果が出ておる。これは私は当然だと思うのですが、いまお話のように、相当この問題がショッキングな問題として国民の間にも考えられておるわけでございますから、私はある程度お説のように、一時は相当の減少を来たすのじゃないかと思うのですが、しかし、もちろんたばこが健康に害があるということはわかっておるのですけれども、はたして肺ガンとどれだけの関係があるかという問題につきましては、まだはっきりした結論も出ていないような状態でございまするから、まあ週刊誌なんかのアンケートを見ましても、日に六、七十本吸うような方が、自分だけはだいじょうぶだというようなことを考える、これは嗜好でございますから、そういう気持ちを持っておる人も相当あるわけでございまするから、多少日にちがたてば、あるいはこの気持ちは薄らいでいくということも一方で考えられないことはないというような気持ちもいたします。しかしこれだけショッキングな記事として取り扱われておる問題でございますし、相当この統計につきましては、アメリカとしても各国の材料等も集めたあれでございまするから、かなりの影響はあると思います。しかし総裁も申しましたよりに、そういう問題につきましては、また別な方法も講ずるのだということも言っておられまするし、ことに最近は、先ほど来お話のようにフィルターつきのたばこというものが相当売れておるというようなことでございますから、あるいはパイプたばこの方面にいって、またフィルターのほうに返るということもあると思いますので、いまここで御心配になることは当然でもございますが、私もその点につきましては、必ずしもあなたの考え方を間違っておるとは考えておりませんが、そういうような考え方でございますが、しかし、もう少し影響がはっきりわかる程度に、三十七年度のお話もありましたが、そういうようなことで、非常に下回るというようなことでありますれば、お話のように、この計画というものもある程度再考していかなければならないのじゃないかというふうに私としては考えておる次第であります。
  148. 有馬輝武

    ○有馬委員 関連して。先ほどの平林委員の質問に対する総裁お答えの中で、その売れ行きの問題に対する把握の問題でありますが、私は、答弁を聞いておりますと、そういった点に関する調査の機能というものが確立されていないように思えてなりません。少なくとも十一日から今日までということになりますと、相当の時日が経過しておるのでありまするから、全国の小売居について把握することは困難といたしましても、アトランダム調査なりなんなりという形で、その傾向について当然把握しなければならぬし、またそういった形であったならばできると思うのであります。けさからの専売公社の態度を伺っておりますと、つくるんだから売らなければならない。厚生省がそういった見解を出そうが、それはまたそっちの考え方であってという態度が一貫してうかがえてしようがないのであります。嗜好の問題でありまするから、けさほどから論議されておりますことは、またこれは別な問題として取り上げるといたしましても、やはりこういった事態が、いま政務次官のことばをかりて言いまするならば、きわめてショッキングな事態が出てきた際に販売数量はどのようになっていくかというような点について、私はすぐこれを把握する努力がなされてしかるべきだと思うのであります。その点について、いま一度、調査されたのかどうか、またその結果はどうなっておるのかをお聞かせ願いたいと思います。
  149. 阪田泰二

    阪田説明員 たばこの売り上げの状況につきましては、けさほど御説明申し上げたわけでありますが、公社といたしましては、全国のたばこの売り上げの状況、公社の売り上げの状況でありますが、これを毎旬に分けまして、翌旬中にははっきりわかるようになっております。  それからただいまの具体的な小売店について抽出して調査してはどうかというお話でありますが、これも東京及び大阪の大体二百軒くらいの業者につきまして、ごく最近の状況を抜き出して売り上げの状況を調査いたしました。なお詳細の調査の結果につきましては販売部長のほうから御説明いたさせます。
  150. 狩谷亨一

    狩谷説明員 ただいままでに調査いたしました結果を申し上げてみたいと思いますが、東京につきましては、いま二百軒について調査いたしておりますが、現実には、数字をまとめておりますのは、手元にあります数字は二十軒であります。したがってこれが全般的な数字を示すかどうかかなり問題でございますが、さようなことになっております。近く二百軒分の状況についての調査はできるだろうと思います。そのほかに、大阪につきまして四百軒ばかりの調査をいたしております。  毎日の売り上げ状況が一月の十一三日以降どのように変化しておるかということでございますが、ただいままでのところ、東京の二十軒についての報告から申しますと、最初の一週間には約一割くらい落ちておる数字が出ますが、それが次の一週間には六%落ちております。  ちょっと失礼いたしました。説明順序が逆になりました。一体それを何と比較するかということが実は問題でございます。十二月は、贈答用その他の異例な時期でもございます。それで十二月以前の月ということで、十一月の中、下句の当核店舗の売り上げ高と比較してみた。そうしますと、一月の十三日から十九日までの間には、十一月の中、下旬に対しましては一割落ちておる。それから一月のその次の週は六分落ちている。その次の週は二分落ちている、かような数字が出ております。問題は、昨年の十一月の中、下句と比較してどうこうということが妥当かどうかという問題がございます。私どもの一般的な考えから申しますと、十一月は、すでに十二月を控えまして例年かなり売れ行きの伸びる時期でございます。それから一月と二月は、例年の季節変動と申しますか、売り上げが落ちるときでございます。その売り上げの比較的高いはずの月と比較したデータでございますと、これがすぐ肺ガンについての世論の影響で落ちている、こうにわかに断定しにくい、こういうことになるわけでございます。大阪につきましての調査は多少それよりもう歩でございまして、一月の上旬に対して中、下旬がどう変化したかということでございますが、総体の数量といたしましては〇・二%の落ちということになっております。そのほかに、葉巻きあるいは刻みたばこを加えてみますと、この辺は一月の中下旬は伸びている、こういう数字があります。  以上のような結果が出ております。
  151. 平林剛

    ○平林委員 私はこれで質問は終わりますから、あとは関連でおやりください。
  152. 有馬輝武

    ○有馬委員 いまの数字、その十一月中・下旬を基準にしたり、あるいは一月の上旬というようなことでは、これは判断資料にならないのでして、たとえば昭和三十八年度の年間を通じてのものを基準にするとか、あるいは前二、三年をとってその基準にするとかいうような形――もちろんこれは自然の伸びがありますから、あまり前のものは参考にならないかと思いますけれども一つのきちっとした基準をつくって、今回のものに対する一つの参考資料を整備しておいていただきたいと思います。  これだけを要望いたしまして、私の関連質問を終わります。
  153. 狩谷亨一

    狩谷説明員 ただいま全国的な数字の御報告をするのがおくれましたが、一月中の三十八年一月に対する比率は、全国で七・六%の伸びになっております。したがいまして、四月から一月までの伸び率よりは実は若干高いというような数字になっております。これも御参考までにつけ加えさせていただきます。
  154. 山中貞則

  155. 田中武夫

    田中(武)委員 朝からだいぶ同僚諸君が質問をいたしておりますし、おそくなっておりますので、簡単にお伺いいたしたいと思います。  まず最初に警察庁のほうにお伺いいたしたいのですが、未成年というか青少年とたばこという――警察等で補導せられたいわゆる非行少年の中に比較的喫煙者が多い、こういうことがいわれておりますが、この作付とたばことの関係はどういうことになっておりますか。
  156. 楢崎健次郎

    ○楢崎説明員 三十八年度におきまして、警察で非行あるいは不良少年として喫煙のために補導いたしました少年の数は、三十五万三千八百余人にのぼっております。  これは三十六年度よりも約十万人の増でございます。これは御承知のように、喫煙そのものによってこれら犯罪少年、虞犯少年となるわけではございませんで、これが多くの場合喫茶店あるいは街頭において補導の対象になっているその他の不良行為あるいは非行行為と一緒になって喫煙がたまたま発見されたというケースでありまして、多くの場合、これは虞犯あるいは非行少年と結びついております。  なお、中学生あるいは高校生について、どのくらいたばこ喫煙者があるかということについて調査いたしました結果、これはきわめて対象がわずかでありまして、五つの私立の高校についてでありますから、決して一般的なものではございませんが、その結果では一応中学生は約八%、高校生の四四%が喫煙をしておる、こういう数字が出ております。
  157. 田中武夫

    田中(武)委員 年少者の喫煙がその年少者に心身ともに害を与える、そういうことで、先ほど平林委員も述べましたが、明治三十三年以来未成年者喫煙禁止法という法律ができております。先ほども話が出ておりましたが、この三条による起訴がきょうの新聞に出ておった。これは滋賀県か何かの例のようですが、これもおそらくは最近肺ガンの問題等で、たばこの問題、あるいはたばこと青少年の問題、こういうことが大きく社会問題化したからあるいは起訴したのじゃないか、あるいは逆にいままでたくさんあったけれども、新聞が取り上げなかったかもしれぬ、こう思うのですが、それでは最近でけっ  こうですが、同法三条あるいは四条の検挙率、起訴率、これを法務省からお伺いいたします。
  158. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 けさほどの新聞に、御指摘のように大津の裁判所へ母親を起訴したという報道がありますが、これはいまおっしゃるように、最近たばこ肺ガンの問題などが論議されておりまして、新聞社のほうで非常な関心を持ってこれを記事にされたものと思っておりますが、この種の事件につきまして、急にいまそういう処置をとろうとしておるのではございませんで、少年非行の問題が論ぜられましたことは、もう年すでに久しいのであります。その閥絶えず少年の福祉を害する事件という場合には、未成年者の喫煙を禁止する法律の運用、飲酒を禁止する法律の運用というものをその他の児童福祉法とか労働基準法と並んで処置をいたしておるのでございます。ただこの法律は御承知のように、喫煙をしております少年は被害者でございまして、被疑者は監督、保護者であります。でありますから……。
  159. 田中武夫

    田中(武)委員 三条、四条の関係です。
  160. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 それをいま申し上げようと思っておるのですが、そういう状況になっておりますので、数字だけからでは実態を申し上げてもなかなか実態がおわかりにくいと思いまして、いま前段にさようなことを申したわけであります。  これから数字を申し上げますが、未成年者喫煙禁止法で受理しました件数は、昭和三十一年から最近までの数字を逐次申していきますと、これは非常に少ないのでありまして、昭和三十年が三十八人、三十二年が六人、三十三年が十一人、三十四年が二十六人、三十五年が三十一人、三十六年が二十人、三十七年が二十二人でございまして、これが求公判、求略式その他を起訴猶予になるのに分かれるのでありますが、求公判になりました者が三十一年に三……。
  161. 田中武夫

    田中(武)委員 そんなにたくさん要らぬです。これは三条ですか。四条ですか。
  162. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 これは両方でありまして、その区別はわかりません。
  163. 田中武夫

    田中(武)委員 私はいたずらに数字を並べてもらうつもりじゃなかったのです。むしろ四条のほうの数字がほしいのです。
  164. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 特に調査すれば確実でありますが、私ども統計資料としましては、四条、三条の区別なく喫煙禁止法違反として取り扱っておりますので、四条違反が何件かということはお答えいたしかねるわけであります。
  165. 田中武夫

    田中(武)委員 それじゃいわゆるこの未成年者喫煙禁止法の関係としてあがったのが三十八件とか、六件とか、十件とか、そのうちいわゆる親権者である者が罰せられたきょうの事例のような――三条と四条との区別がつかない、こういうことですか。
  166. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 さようでございます。
  167. 田中武夫

    田中(武)委員 実は四条を知りたいわけです。  そこで専売公社にお伺いいたしますが、御承知のように四条ではちゃんと情を知って未成年に販売したときはかくかくの罰金に処すという刑罰があります。したがって、たばこの小売り業者に対して、未成年に売ってはいけない、こういったふうな何らかの処置を今日まで公社はせられたかどうか、どういう処置をせられたか、お伺いいたします。
  168. 阪田泰二

    阪田説明員 未成年者に対するたばこの販売につきましては、この法律の四条に書いてありますとおりでありまして、未成年者がその自用に供するものであることを知りながらたばこ等を販売した、こういうことになっておるわけであります。その法律の趣旨に従って販売等をやるようにもちろん指導はいたしております。ただ実際問題といたしましてたばこ店に子供が買いに来る、親の使いで買いに来る、こういった場合があるわけでありますから、未成年者に対して絶対に販売してはならぬ、こういう指示は私どもとしてもできかねるわけであります。
  169. 田中武夫

    田中(武)委員 私は法律があるからそれでわかっておるのだ、こういうことじゃないと思うのです。したがって専売公社としてはたばこの小売り人はたばこ専売法で厳格ないろいろの規定があるでしょう。販売法についてこの未成御者喫煙禁止法の精神を生かすような提示か何かを小売り人に与えられたことがあるかどうかということなんです。
  170. 狩谷亨一

    狩谷説明員 いろいろな会合の際、特にその趣旨は伝達してございます。
  171. 田中武夫

    田中(武)委員 たとえばどういう際にどうしたかということを参考までに資料として出していただきたい。あるいは通牒を出したとするならば、何年何月どういう通牒を出したか、そういうことを出していただきたい。先ほど法務省からも本法の違反事項としては総括的な数字はわかるが、四条関係においてどれだけかということはわからない。しかしあなた方はたばこ小売り人を監督しておられるのですから、この法務省があげられた数字のうち小売り業、すなわち第四条関係の違反が幾らあったかわかると思いますが、いかがですか。
  172. 狩谷亨一

    狩谷説明員 ただいまのところ第四条関係の違反が何件あったかということにつきましては事実をつかまえておりません。
  173. 田中武夫

    田中(武)委員 事実をつかんでないということは、あなた方自体が実際にこうなってきて、未成年者喫煙禁止法なんということからああそういう法律があったのかということで、常に頭を置いておられないでしょう。これはあなたがつくったわけじゃないのですけれどもたばこ専売法、この中で未成年者喫煙禁止法との関係、それを頭に置いておる条文が一片でもあったら、条文を示していただきたいと思う。
  174. 狩谷亨一

    狩谷説明員 たばこ専売法につきましては、格別未成年者喫煙禁止法との関連の条文はない。私どもがこの点に関連いたしましてお答えいたしますとすれば、自動販売機の問題がございます。自動販売機がたばこの販売の道具といたしまして使われるような傾向が出てまいりました。その際自動販売機を通じて販売するにあたっては、やはり未成年者喫煙禁止法の趣旨を自動販売の機械に明記するというような措置を講ずるよう指導をした事例がございます。
  175. 田中武夫

    田中(武)委員 自動販売機でそういう趣旨を明記した。これはものを言わぬ機械だから明記したのかもしれぬ。ものを言う小売り業者に対してはどういう措置をしたか、どういう指道守をしておるか。してないでしょう、実際は。
  176. 狩谷亨一

    狩谷説明員 公社としてのいろいろな会合のほかに、地方各文所、出張所におきまして小売り店との会合の機会等にも、常にそういうことは念頭に置いて指導いたしております。
  177. 田中武夫

    田中(武)委員 念頭に置いて指導しておると言ったって、これはおそらくぼくはやってないと思うんです。専売公社ができてから今日までこのことについてこうやりましたという証拠といいますか、通牒なりが、残っていますか。そういうものをひとつ出してもらいたい。  それから専売法四十三条では、次の各号に該当するときにはその指定の取り消しあるいは販売の禁止という条文があるわけです。その中で何分だったか、ともかく指定せられただけの金額を売らなかったらいけないとか、一カ月引き続いて商売しなかったらいけないとか規定がありますね。そうしたらこの法律によって許可を取り消すとか停止するとかいうことがあるでしょう。――四十三条の五号、これは一カ月売らなかったら停止する、あるいは公社が定めた基準以上売らなかったらいけないという規定なんですね。売らんがための規定なんです。そうでしょう。午前中以来の同僚諸君の質問に対する応答の中でも、国の財政国民の健康はいずれが主なりやいずれが従なりや。これは当然国民の健康が主だ。そういうように答弁をしておられるわけです。専売法では売れ売れと規定しておるが、そういう未成年者にたばこを吸わしてはいけない、未成年者喫煙禁止法の四条にはそういう規定がある。そういうものに対して少しも考慮が払われていないんじゃないか。しかもたばこ専売法において許可の取り消しまたは営業の停止、こういうのはこの法律、すなわちたばこ専売法に違反した場合にやるということが書いてある。他の法律違反の場合には取り消すということは書いてないわけです。それではかりに未成印者喫煙禁止法第四条の違反の小売り店があった場合はどのように措置されますか、またどういう措置をした事例がありますか。
  178. 狩谷亨一

    狩谷説明員 たばこ専売法四十三条の第一号ではお説のとおり「この法律の規定に違反したとき」ということになっております。したがってこの未成年者喫煙禁止法との関連は出てこないと存じておりますが、かりにたばこ小売り店が未成年者に売ったということでもって未成年者喫煙禁止法に違反したという事実が出ますような場合には、たとえば方法の問題といたしましては、たばこの小売店の指定更新の際指定を考慮するというような方法を考えており必ず。また先ほど御指摘がありました第五号の「正当な事由がなくて、引き続き一月以上営業せず、又は製造たばこの買受高が引き続き三月以上公社の定める標準に達しないとき。」こう書いてありましても、これは未成年者喫煙禁止法に違反してたばこを売れ、かような意味は毛頭含んでおらないわけでございます。
  179. 田中武夫

    田中(武)委員 何を言っているのかね、そんなことは聞いていないんですよ。もし未成年者喫煙禁止法四条に小小売り人が違反した場合、それは小売業の停止をするのかどうか、禁止をするのかどうか、あるいは許可を取り消すのかどうか、あるいはいままでにそういう事例があったかと聞いておるんですよ。七十八条、七十九条の両方を見ると、この専売法違反に対してはすごく幅広い刑罰を考えておるわけです。そうでしょう。ところが未成年者喫煙禁止法のほうは何ら考えられていないということです。たばこ専売法とはたばこを売らんがため法律である。そうでないという証拠があったら、その条文を示してごらんなさい。
  180. 阪田泰二

    阪田説明員 未成年者喫煙禁止法違反の問題につきましては、先ほど狩谷部長から御説明申し上げましたとおりでありまして、そういうものは指定取り消し条項には該当しておりませんから、この法律の四十三条によりまして、そういう場合に直ちに指定取り消しということはできないと思います。ただ、先ほども申し上げましたように、小売り人の指定は大体期限を付して指定をしまして、ある年限を切って指定期限が参りますれば、そのときに更新して許可をしなければ引き続き営業はできない、こういうことに相なりますので、そういうときに、未成年者にたばこを販売するとかあまり小売り人として適当でないやり方が多々あるというような小売り人につきましては指定の更新をしない、こういう方法もあるという御趣旨を申し上げたわけでございます。
  181. 田中武夫

    田中(武)委員 他の法律違反は直ちに四十三条によって停止なり許可の取り消しなりに結びつかないですよ。しかし、未成年者喫煙禁止法という法律がある。その四条に小売り屋さんが違反した場合には取り消しをするのかしないのか、取り消しをするのだったら、専売法のどこにその規定があるか。ということは、売ってもかまわぬという上に立っての専売法じゃないですか、そうでしょう。そうでないという法律であるならば何条がそういう趣旨をうたっているのか、それを解明してください。
  182. 阪田泰二

    阪田説明員 その四十三条に関しまする限り、小売り人としても公社から許可を受けてたばこの販売をやっております常業権というようなものがあるわけでございますが、それをいわば強制的に取り消すということにつきましては、法律の根拠がなければできないわけでございます。したがいまして、免許の期限が切れる、そういう機会をとらえて適当でない小売り業者を取り消す、こういうことしかないということを先ほど来申し上げておるわけでございます。ただたばこ専売法自体としてたばこを販売する、たばこ専売に関してたばこの製造、販売というのがたばこ専売事業の内容になっておるわけでありますから、販売事業を重点に置いて販売事業について規定をしておることは当然なことでありますが、違法な行為をしてまでたばこの販売をせよという趣旨はこの法律のどこにもないと思います。
  183. 田中武夫

    田中(武)委員 この法律によって取り消しはできない、これはわかっておりますよ。四十三条、この法律違反の場合だけなんですよ。  しかし未成年者にたばこを売ってはいかぬ。これは明治三十三年から法律はきめてあるのです。その四条違反がいままでかってなかったとは言わさぬと思うのですよ。あった場合に、それはこの法律によって取り消しできないということなら、四十三条五号では一カ月売らなかったとかあるいは公社が示した基準量に三カ月達しなかっただけでも取り消しするのでしょう。にもかかわらず、一方ことに青少年の体育、あるいは未来をになう国民の衛生といいますか、保健といいますか、そういうことに大きな関係のあるものに対して何ら今日まで公社は関心を払わなかった、そうでしょう、そうだと言いなさいよ。
  184. 阪田泰二

    阪田説明員 この四十三条の五号の趣旨でありますが、たばこ小売り人の許可と申しますのは、大体消費者の利便をはかりますために、地域等を見まして適当な小売り人の配置があるようにといったような趣旨考えて許可をいたしておるわけであります。現実に許可を受けてたばこの販売をしたいという人もたくさんあるわけでありますが、そういったところで許可を受けた者が販売しない、店を持っていて許可を受けておりながら販売しない、その結果消費者に不便を与える、こういうことがありますので、いたずらに免許だけを与えて何もしないというような方はやめていただいて、かわりに適当な方に小売り人になっていただく、こういうような趣旨で法律の規定ができております。  後段の問題につきましては、私どもは現行法規のもとに専売事業の経営をやっておるわけでありますから、ただいまの御趣旨のような問題は立法問題として処理していただくほかないと思います。
  185. 田中武夫

    田中(武)委員 ともかく立法問題として処理してもらうよりしかたがない、こういうことです。そうでしょう。先ほどから言っておるように、公社が示す基準に三カ月間達しなかっただけでも取り消そうというのです。一方、明治三十三年以来あるところの未成年者喫煙禁止法違反があってもそれは関係ない、こう言っておるのでしょう。  法制局の第一部長が見えておったね。これは法律的に考えてもらうよりしかたがないと言っておるのだが、どうかね、そのとおり解釈論としてはそうなると思うのだ。そうするとたばこ専売法という法律の制度は一体何ですか。未成年者喫煙禁止法との関係についてひとつ専門家の意見を聞きたいと思います。
  186. 山内一夫

    ○山内説明員 たばこ専売法をいま先生御指摘の条文を見てまいりますと、私が見ました限りにおいてはどうも喫煙禁止法との関係は出てこないと私も思いますし、もう少し調べてみますけれども、少なくとも私はそう思います。そういう意味でいまのところ喫煙禁止法と専売法は現行規定の内容から関係がありませんから、現在の専売法に限り未成年者の喫煙に対して意を払っていないと言われてもちょっとしかたがないことではないかと思います。ですからそういうものは立法政策としてそれが望ましいならばやはり公社総裁のおっしゃられるとおり立法的に解決するよりしかたがないと思います。ただ専売法の体系として喫煙禁止法のこととにらみながら措置するということは、法体系として当然できることでありますから、専売法にあるいは一条出ればこの関係はうまくいく、こういうことになろうかと思います。
  187. 田中武夫

    田中(武)委員 大臣がいないから次にお聞きいたします。  お聞きのとおりでありますが、専売法を改正し、未成年者喫煙禁止法との関係を考慮されるつもりがあるかどうかお伺いいたします。
  188. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 いろいろお説を承りましたわけですが、告訴されて未成年にたばこを売ったということで処罰されても、やはりその情状というものはあるのですから、それでただ一度そういう違反を起こしたからといって直ちに取り消しをする、許可を取り消すということも少し酷ではないかという気持ちもいたします。しかしいま未成年の喫煙を禁止する法律があるのでございますから、ことにこういう問題が起こりました際でございますから、やはりこのほうはおそらくいままでもお説のように、私はあまりその方面に対しては十分な配慮が払われておらなかったじゃないかという気持ちがするのです。だから、いまどうしてもそういうことが必要だということでありますれば、法制局の専門家の話もありますが、やはり法律によってそれを決定するということでなくちゃいけないんじゃないかと思います。ただ、いまその違反をしたからといって、その一回の違反によって面ちにその許可を取り消すということは少し酷じゃないかという気がするのです。結局立法措置によってその処分をするということにしなければならぬのじゃないかというふうに私は考えております。
  189. 田中武夫

    田中(武)委員 一回犯したから直ちに取り消すということが酷であるかどうかは別として、そういう事態があっても、現在の専売法ではどうにもできぬです。したがって、何も一挙に取り消さなくていいわけです。何らかの行政措置あるいは行政処分ができるようにしたらいいじゃありませんか。その気がありますか。それは大蔵省と厚生省、これは児童局長だと思うのですがね、未成年者にたばこを売らない連動というのを始めるということで各都道府県に通知を出された、そういう観点から、いま私が疑問を持っている点についてどういうように解決するか、未成年肴にたばこを売らない運動をしようという、そういうふうにたばこ専売法の中に未成年者の喫煙について何らの考慮を払われていないことについてどのように考えておるか、同じことについて法務省、それぞれから見解を伺いたいと思います。
  190. 纐纈彌三

    纐纈政府委員 まあ大体お説に私は同意いたします。
  191. 若松栄一

    若松政府委員 児童局長は来ておられませんが、大体の趣旨としてはそのとおりだろうと思います。
  192. 竹内壽平

    ○竹内(壽)政府委員 たいへんけっこうなお説だと思います。
  193. 田中武夫

    田中(武)委員 大蔵省、厚生省、法務省そして内閣法制局、お聞きのとおり意見が一致いたしました。つきましては委員長にお願いいたします。どういうような方向でそれを解決するかですね、ひとつ協議の上であらためて書類でも出してもらいたい、こう思いますが、いかがでしょう。
  194. 山中貞則

    山中委員長 書類は出さなくても、具体的にどう処理するか理事会等で相談しましょう。
  195. 田中武夫

    田中(武)委員 もうすでにこれは改正の必要を認めたんですよ。どういうような方向でやるかということです。改正の必要は認めた、そうでしょう。そうじゃないですか、そうでしょう。
  196. 山中貞則

    山中委員長 趣旨はけっこうだということで、おとうちゃんのお使いで子供が来たのにたばこを売っちゃいかぬということになったらそれは困る。だから相談をしてどういう立法ができるか……。
  197. 田中武夫

    田中(武)委員 だから問題はたばこ専売法の中に、未成年者喫煙禁止法――ことにいまやかましくいわれており厚生省の児童局が音頭をとっておられる未成年者にたばこを売らない運動、あるいは警察庁が言われたように、非行少年とたばこというものはやはり切り離せないということ、こういうのを総合して関係機関においてどういう方向をとるかということを相談願って当委員会報告を願うことはむずかしいことじゃないと思うのですが、いかがでしょう。
  198. 山中貞則

    山中委員長 いまの問題は政府においては関係各省で立法の是非、立法するとすれば、専売法の中できめるのですから、どのようなテクニックを要するか等について十分の検討をしてください。当委員会としては理事会において、その進行とにらみ合わせながら入、国会において立法すべきであるということであれば一部改正等の処置をとりたいと思います。
  199. 田中武夫

    田中(武)委員 委員長の明快なる答弁がございましたので、その点はおきたいと思います。  最後に一点。午前から午後に引き続いての各位の質問の中にもう一つはっきりしていないのは、やはり専売公社としてもたばこ、ことに紙巻きたばこ肺ガンにどういう影響があるか、そういうことについてあまりまだ研究はせられていないようです。いろいろ科学技術庁だとかから、あるいはそういうことについての研究資料が発表になりましたが、これもたいした問題じゃない。そこでたとえば私企業でも自分のところの産業において、たとえば廃ガスあるいは排水、そういうことで他人に迷惑を与える場合は適当に考慮しています。またばい煙防止法だとか水質汚濁防止法だとかいう法律もあってこれを規制しております。そこで専売公社は専売益金の中から、こういう問題が提起せられておるのだから徹底的に研究を進める、そういうような態度で臨んでもらいたい。専売益金の中からそういう研究費を出してやる、こういうことについて総裁どういうようにお考えですか、これだけ伺っておきたいと思います。
  200. 阪田泰二

    阪田説明員 研究費の問題につきましては、先ほどもお答え申し上げましたように、現状といたしましては来年度予算で七百万円程度のものを入学研究所等に委託して研究していただくことになっておりますが、これはまあできますればもっと支出して、もっと効果のある研究ができますような体制でありますれば、公社といたしましてもできるだけのことはいたしたい、徹底的に研究はやってまいりたいと考えております。
  201. 田中武夫

    田中(武)委員 おきますと言ったんだけれども、その答弁じゃおけないんだ。私の言っておるのは、専売公社自体の手においてそういうことを徹底的に研究していく研究所なりそういうものをおやりになったらどうか、その費用はたばこ益金の中からお使いになったらどうか。私企業でもそれぞれの立場から研究所だとかあるいは公共に害を与えないような方法は常に研究しておるのですよ。独占企業である専売公社がそういうことができぬはずはないと思う。いかがですか。
  202. 阪田泰二

    阪田説明員 公社自体研究の問題でありますが、これにつきましては公社自体といたしましても、これは肺ガンの害ということと直接結びつくということはまだ――先ほど来いろいろお話にのぼっておりまするところでもわかりまするように、具体的に害のないたばこをつくる、こういう研究をすべきでありますが、その手がかりはなかなかつかみにくいという状況でございます。ただ公社といたしましても現状におきまして、たとえばお話の出ておりまする葉タバコ自体のニコチンとかタールを減少させるような育種とか、あるいは製造その他の面におきまする研究とか、あるいは紙巻きたばこのライスペーパーの研究だとか、あるいはフィルターの研究改良、いろいろそういった面につきましては、これもできるだけのことを現在もいたしておるわけでございまするし、今後もこれは進めていくつもりでございます。ガン自体たばことの関係研究公社自体として取り組んでいくということは、これはできますれば非常に望ましいことでありますが、現状におきましてはガン全体の問題にわたってこれはまた非常にむずかしい問題でございまして、公社自身がそういう研究所をつくりまして面接たばこ肺ガンの問題、これを研究するというような案が立ちかねると思います。できればやりたいことではありますが、現状ではそれはむずかしいというふうに考えます。
  203. 田中武夫

    田中(武)委員 現状ではむずかしい、それだけじゃいかぬ。その現状ということは、専売公社法かと思う。法律も改正してやろうというならまた検討していただきたいと思うのです。ただ私が言わんとするのは――もう答弁よろしい。希望だけです。私企業においても公害防止についてはいろいろと研究をし、施設を持ち、やっておるのです。しかも独占体である専売公社が一手販売をしておるたばこが、その善意にかかわらず今日大きな話題となり、社会不安を起こしておるということに対して、それを究明していく、解明していく、これは公社の責任だと思う。その点について責任がないとは言わせません。これだけ希望いたしておきます。
  204. 阪田泰二

    阪田説明員 答弁は要らないというお話でありますが、ちょっと申し上げておきたいと思います。肺ガンのそういう直接の研究公社としてはできないと申しましたのは、これは制度上あるいは予算がないから、金がないからできないとか、あるいは出すつもりはない、こういう趣旨で申し上げたのではありません。肺ガンあるいはたばこ肺ガン関係というものについての現在までの学問研究の進んでおる程度では、そういう研究所をつくりましてもどういう研究をやっていいか、そういうことからしてわからないわけであります。それで現状におきましては、そういう研究所の形だけつくりましても中身が成り立たない、こういうことを申し上げたわけでございます。
  205. 田中武夫

    田中(武)委員 いまの段階では、いまおっしゃるように雲をつかむようなものだ、こういうことなら了解しましょう。しかし専売公社としてそういうものに前向きの姿勢で、取っ組んでいく、こういうことを約束してもらいたい。
  206. 阪田泰二

    阪田説明員 御趣旨のとおり考えております。
  207. 山中貞則

    山中委員長 春日一幸君。
  208. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま田中君の真剣な御研究に基づく質疑応答を拝聴いたしておりまして、私はふと一個の疑問を持つに至ったのであります。なるほど立法論としては、未成年者の喫煙禁止法というものとたばこの専売法とのそういうつながりを持たせることは、必要なことであろうと思うのでありまするが、しかしその前提となるものは未成年者の喫煙禁止法なのであります。未成年者喫煙禁止の法律が――明治三十三年といえばずいぶん大昔に立法されたのだが、何がゆえに未成年者にたばこを吸うことを禁じたのか。それは健康整備上の問題であるのか、あるいは防火上の問題であるのか、あるいは非行対策にウエートが置かれておったのか。まあ未成年者にたばこを飲ましてはいけない。これをことさらに禁じたその法律の目的というものは、その法律の一条を見ればわかるのではありましょうけれども、しかし思うに、明治三十三年といえば、いまからかれこれ五十年くらい前のことでございましょう。社会風潮ことごとく大変革でございまして、その当時婦人がたばこを吸えばはしたないものとされておりましたけれども、いまは婦人向きのたばこをどんどん売って、たばこを吸うことが一個の教養とまでなりかけてきておる。したがってその当時、子供にたばこを吸わしてはいかぬというたころのたばこの質と、いまのたばこの質とは変わってきておるであろうし、いろいろと変わってきていると思うのです。さらに私が質疑応答で思い当たりますることは、大体肺ガンたばことの関係は、三十五歳からずっと上で、いわば更年期の者に有害である、こういうことでございまして、青年期の者、さらにその前期の未成年期の者、こういう者には有害であるというようなことは、別にアメリカ公衆衛生局報告はしていない。一体未成年者にたばこを禁ずるということの法意、法のねらいというものはどこにあるのか、いまの答弁を聞いておりますると、高等学校の生徒について調べてみたところ、現実には四十何%がたばこを吸っておる、中学校ですら二十何%が吸っておる、こういうようなことなんですね。このパーセンテージから判断をすると、これはまあ成年と同じではないか。おとなであるならば率はもう少し高いかもしれないけれども、大体同工由来曲ではないかと思われるわけでございまして、つらつら判断するに、たばこだって一個の飲食物だと思うのです。しかも嗜好品であると思う。基本的人権というものは、ことさらにそれが飲食物であることにかんがみて、未成年者に対してもその基本的人権は保護されなければならぬし、わけてその嗜好品の選択の自由は、未成年者に弊害のない限りは許されてしかるべきであると思う。私はこういうような観点から判断するときに、未成年者にたばこを禁じていることが、一体何のために禁じておるのか。それは非行対策であるのか、あるいは健康障害を予防することのためであるのか、あるいは防火対策であるのか、一体どういうことになっておるのか。当然専売公社は、この問題について十分御検討がなされておることと思うが、その辺の御答弁をまず願いたいと思います。
  209. 山内一夫

    ○山内説明員 いま春日先生がおっしゃった防火上の問題、あるいは非行の問題、それから健康上の問題、総合的な観点から、この法律が明治三十三年に制定されたように一応思います。ただこれは古い法律でございまして、どういう目的のために制定されたのだという規定も、条章自身持っておらないわけでございます。ですから私、その当時どういう趣旨で制定されたのか、一応その当時の速記録を調べてみたいと思います。この問題、私も深くいままで考えたことがございませんから、その制定趣旨がどこにあるかということは、いま申し上げた感じを持つだけでございまして、確実にそうだということは申し上げかねるわけであります。
  210. 春日一幸

    ○春日委員 阪田総裁は、当然所管責任者として、なぜ未成年者にたばこを売ってはならないのであるか。法律によって営業行為を制約されているのであるから、当然その法意の真髄について把握されているところがあろうと思うが、これをひとつ述べていただきたいと思う。
  211. 阪田泰二

    阪田説明員 未成年者喫煙禁止の趣旨につきましては、私も寡聞にいたしまして、ただいま法制局のほうから御説明になりました程度のことを承知しているだけでございます。
  212. 春日一幸

    ○春日委員 それはまさしく職務怠慢である。少なくとも国民の中で、赤子に飲ませよというわけではありませんけれども、いま現実の統計資料によりますと、中学校においては二十何%、高等学校においては四十何%の諸君が喫煙いたしておるのである。しかもアメリカ公衆衛生局報告によれば、その害毒の徴候があらわれてくるのが、三十五歳以降というような、更年期的な障害と相伴うてそのたばこの害毒がそこにあらわれてくる、こういうことであるならば、実際、健康障害というものは、青年、未成年には及ばざるものと判断をしても差しつかえないと思う。  それから防火の問題だって、明治三十三年のもっさりした日本の建築構造と今日とはだいぶ変わってきているし、また非行少年というたところで、たばこみたいなものは、その当時女がたばこを吸うというと、あいつははしたないといったものがいまでは一個のエチケットになってきているのですから、明治三十三年のそういう社会情勢を背景として立法されたものを根拠にされて、いまなるほど田中君は立法論としては――彼はいささか立法学者みたいだから、そういうような法律の組み合わせの中にロジックを立てたようだけれども、私は未成年者喫煙禁止法なんという法律は、やはり根本的に検討して、ほんとうにこれが必要なものであるのか、それともこんなものは意味がないものか、その点もあわせてひとつ御検討なさってしかるべきだと思う。申すまでもなく基本的人権は赤子にも及ぶものでございまして、飲食物の選択、嗜好品の選択の自由を、特にそういうような者に禁ずるということは一体必要なんですか。私も十六ぐらいからたばこを吸ってきたけれども、堂々たる代議士になって何らの弊害もありはしない。そういう点から申して、これは十分検討を要すると思う。  それから私はここで重大なことについて、ひとつ公衆衛生局長にお伺いをしたいのだが、アメリカでこういうような権威ある報告がなされたという事態にかんがみて、当然あなたは、日本国民の健康保持の責任を持たれる立場において、これについてはやはり根源を突きとめる程度研究調査をなされなければならぬと思う。それはすなわち、たばこ人体との障害関係が、そのアメリカたばこのクォリティーと、それからアメリカ種族の生理的な特殊関係によるものであるのか、あるいは日本民族と、日本で売っているたばこの品質との関係においてどういうものであるのか、これはガンになって死ぬのだというようなことがアメリカの権威ある機関によって発表された以上は、とことん突き詰めて、日本国において販売されるたばこが、日本国民に与える健康障害について最終的な結論を出されなければならぬと思うが、そういう方向に向かって調査研究を進めていかれる御決意であるのか。それともこのほどそれに関心を持っておられる学者グループが意見を発表した、それを資料としてお茶を濁していくような考え方であるのか。一体あなたの心がまえはいま何でありますか、これをひとつお述べ願いたいと思う。
  213. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまのお話は、かなり広範な問題に及ぶと思います。このたびのアメリカの発表は、要するにたばこのみの習慣というものといろいろな嗜好率との関連を、事実で突き詰めただけであります。そのほかのなぜそのような結果が出てくるかという、もう少し具体的な原因と結果の結びつきについては、きわめてむずかしい問題でございまして、事実上世界じゅうでもあまり積極的の研究が進んでいる姿を見ておりません。そういう意味で、日本においてそういうことをやれと言われましても、これは直ちに何かをやってすぐに解決できる問題ではないと思いますので、やはりこれは世界全体の学問の水準の進み方につれて、日本でも研究が行なわれるようになると存じております。そういうことで、厚生省がいますぐあわてて何かをやろうということでなしに、むしろこの事態を国民衛生という立場からじっくりにらんで、推移を見て必要な措置がとれるようにしていこうというつもりでございます。
  214. 春日一幸

    ○春日委員 これがたばこの販売またはたばこの専売益金国庫納入という、大きな財政上の要因がありますので、したがってこれに刃向かっていくというようなことの問題の大きさから、そこにあなたのためらいがあってはならぬと思うのであります。あなたはこういう事実関係が報道されただけだからと言っておられるけれども、たとえば酒にメチールが入っておれば、その酒を飲んだらめくらになるという事実関係が明らかにされたら、これは事実関係だから、現実の被害、障害が起きなかったからといって、それを捨てておくわけにはいかぬでしょう。現実に紙巻きたばこ人体に及ぼす影響、それが肺ガンの徴候となってあらわれてくるという事実関係が明らかになったら、その問題は国民街上上、その健康を保持するというあなたの職務、責任にかんがみて、はたしてそういうような事実関係が現実にあるのか、あるいはまたその被害がどの程度のものであるのか、これは予防措置としても、あるいはいま堀君の質問の中で明らかになったように、ここ数年来それが二倍、三倍という急増の状態がここにあらわれておるのですね。そういうことにかんがみて、これは世界の学界の水準に応じて総合的な処理をされるべきものであって、日本国行政府の責任としては、これをながめておるというようなことでは私は問題にならぬと思う。たとえば化粧品の中に有毒、有害なものを含んでおれば、あなた方のほうはこれを回収する、あるいは販売禁止を命ずる。化粧品であろうと飲食物件、かん詰め、みんなあなたがやらなければならない。たばこであろうと何であろうと、それをすることが国民の健康に障害になるならば、これは専売公社の販売禁止だってやらなければならぬと思う。国民はいまおそるおそる吸っていると思う。これはほんとうに吸って肺ガンになるのじゃないかしらというような心配もしながら吸っておるのです。だからそういうようなアメリカの事実関係報告がほんとうに信頼に足るべきものであるのか、それともそんなにおそるべきものでないのであるのか、このことはあなたは国民の健康を保持する大衆的規模において一般的な健康水準を保っていく、有害、有毒な物件を排除していく、こういう責任の上から判断するならば、当然この問題について決定的な事実関係を明らかにしなければならぬと思うが、どうなんです。
  215. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまいろいろな事例が出ました。たとえば酒の中にメチールがあったらそれを取り除く、これは当然でございます。また化粧品や食品の中に発ガン性の有害物質があるとすれば、これは直ちに取り除くべきだろうと思います。しかしそれらの問題は、それを取り除くことによって有益になりこそすれ、何ら失うべきものはございません。たばこの場合は、残念ながら国民に最も広く行き渡っている嗜好品でございますので、このたばこの中に若干の害成分があるからといって、いま直ちに全部のこれの使用を禁止するというようなことは、事実上できかねると存じます。そこでできるだけ被害の少ない方向に持っていこうというのが、私どものとるべき方策ではないかと存じております。
  216. 春日一幸

    ○春日委員 そういう態度はいけないですよ。好きなものならのみたいだけのんで死ねという態度でしょう。有害な物件があっても、国民嗜好がそこにあるならば、これを禁ずることは云々というようなことは、たばこ好きなら死ね、それは自分の本望じゃないかというような、そんなものでは行政にならぬ。実際どんなに本人が好きなものであったって、これが有害物件であると思ったら、これはのませないようにしなければならぬ。それはアヘンの原理だってそこにあるのです。アヘンだって、本人がのみたければのみたまえ、君は廃疾者になるのだよ、廃人になってしまうのだよ、しかし君、好きならばしようがないじゃないか、こんなことで公衆衛生局の職責がつとまりますか。とぼけたことをおっしゃっては困りますぞ。私はひやかしで言っておるのではないので、事実関係を明らかにして、その心配がないならばないと言って、国民に安心を与えて、そうして大いにこの嗜好品を楽しませるべきである、喜びとともに味わわせるべきである。不安で、肺ガンになるかもしれない、うちでは女房や子供が、おとうさん、そんなものをのまないでと言って、家庭のけんかまで起きたりなんかしておるのです。だから有害であるか有害でないかということは、何億かかったって、何十億かかったって、これはあなた、やらなければいかぬ。国民の健康、これは命あってのもの種なんだから、実際問題として専売公社なんか、有害だったらやめてしまったらいいのだし、またそういう有害の根源がどこにあるかと突き詰めることによって、なおそういう有害部分だけを排除して、大いにたばこを楽しむということだってあり得るのです。いま阪田さんに言うたら、私どものほうではそういうことはできない、やるたてまえではないと言っておられる。私はそうだと思うのだ。国民の健康については専売公社は何も責任はないのだから、日本国民の負託を受けてそのことを所管するのはあなたなのだから、あなた以外にそういうことをやる人はないのだ。だからアメリカ公衆衛生局報告の権威を、ほんとうにそういう心配があるのか、いやそうじゃない、アメリカの種族的な体質とやまと民族の体質とが違っておるとか、あるいはまたたばこも紙の部分のどういうところにどうとかいうところまで突き詰めて、かるがゆえに心配ないとか、ここが心配であったからこの点を除去する。酒の中からメチール部分を除去するように、専売公社に、この部分を除去せよと阪田君に厳命を下し、いかなんだら専売公社に営業停止を命ずる。このくらいのことをやらなかったら、あなたの職責はつとまりませんぞ。四千億や五千億のそんな専売利益なんかあってもなくてもいいのです。なければないでお互いに乏しきを分かち合っていけばいいのだから。病気になった上に、好きなものなら吸って、死んだら本望だろう、自分で好きで危険なものをのんだのだから、あんなものは文句の言いようがないと、そういうふてくされみたいな答弁をしておってはいけませんよ。どうです、それは。
  217. 若松栄一

    若松政府委員 やはりこれは、どこまでも賢明な日本国民の成人である以上は、ある程度判断力は当然持って、国民判断に信頼するところがあってしかるべきだと思います。しかし青少年につきましては、判断力もまだ必ずしも十分でございませんし、やはりある程度の指導を加える必要がございますので、これについては行政的な措置でもって、ある程度の制限をしていくということは必要だと思います。
  218. 春日一幸

    ○春日委員 それは各個の判断というようなことを言ったって、子供は各個の判断ができがたいと言ったって、おとっつあんやおっかさんがのむものを、これはおとっつあんやおっかさんはのんでいるけれども、自分はのんでいかぬなんという判断は未成年者ができますか。そういうことでなしに、ほんとうに私が真剣に申し上げているのは、アメリカは有害だといっている。日本ではそんなたいしたことはないとい言っておる。それでわれわれはほんとうにたいしたものでないのか、それともほんとうに危険なものであるのか、そのことを知りたいと思うのだ。アメリカが、これはもうとても危険なものだ、肺ガンというものと非常に密接な関係があるといっておる。日本も同じことをいっておれば私はやめますよ、みんながいうのだから。ところがアメリカはこれは心配といっておる。こっちは平気だといっておる。それでは私は迷うじゃありませんか。迷った結果、私が肺ガンになったら、詐欺にかかったようなものだ。少なくとも政府の公衆衛生局長の言動というものは、慎重でなければならぬ。有害なものであるのか、あるいは無害なもの、たいしたものでないのか、そのことはあなた、いまわからないでしょう。日本じゅだれもわかっている人はないですよ。そうでしょう。だから日本学界の総力を結集して、ほんとうに無害なものであるか、有害なものであるのか、あるいは害毒があるけれどもそう致命的なものでないのか、その点をアメリカ報告に対応して適当な結論を出さなければだめだ。有権的な結論国民が信頼するに足る結論を出すの義務があると思う。その点どうです。
  219. 若松栄一

    若松政府委員 ただいまのお話のように私ども自体は非常に重大な関心を払っておりますし、アメリカ成績は、少なくとも今度の報告成績では、たばこが健康に相当の悪影響を及ぼすということは事実であります。また日本においてもそれが当然当てはまるであろう。ただし若干事情の違う点もありますので、程度の差はあるかもしれない。その程度の差はいまのところ明確にはわからないということを申しております。したがってこの影響をはっきりつかむために、まだ数年間の長期の観察をしなければならぬと存じております。
  220. 春日一幸

    ○春日委員 アメリカ相当の障害があるといっておる。日本ではそれに君子の程度の差がある。けれどもそれは相当なものであるのか、きわめて微弱なものであるのか、そこが明らかでない。相当といったって、一体相当ということはどういうことですか。五、六〇%か、六、七〇%か、四、五〇%か、あるいは一、二%か、きわめて微弱なものであってこれは心配するに足らぬというものならどんどんのみますよ。相当影響力があるというのは、これはえらいことですよ。だからそうだとすれば、アメリカにそういう現象が現われてき、日本においてもだんだんにそういうような徴候が累増しておるという現実にかんがみて――われわれは何も余分なことを言うのじゃない。ただ現実にそういう障害があるのか、あるいは障害の原体は何であるのか、部分はどこであるのか、これをあなたのほうは突きとめたらどうです。突きとめて悪い部分だけを専売公社に命じて除却させるのです。それでたいしたものでなかったら、たいしたものでないから何も心配することはない、こういうことをきちっと権威ある機関によって国民に知らしめる。そうして、安心してその嗜好品を味わい楽しむ、こういう態勢をあなたが確保していく。何もやらぬといって五、六年事態の推移を眺めていくとは、あなた一体何を言っているのですか。こういうことでいま国民が衝動しているのです。私がたばこをのむかのむまいか、まさに本日の委員会を契機として、私も大いにみずから決せなければならぬ段階にある。私にのめというか、それとものんでいかぬというか、その点をひとつ――いまあなたはそれを言おうと思っても言うことはできない。だれも言えない。それは学者の研究の結果を待たなければそういうことは言えないのです。だったらば、あなたがその研究をせなければいけないじゃないですか。全国民のそのような不安を一掃するために、あるいは危険を未然に阻止するために、あなたはそのアメリカ報告の真相を、事実関係調査研究して結論を出す、これはまた緊急な問題だ、そうお思いになりませんか。思ったらば、あなたは予算を請求してどんどんやったらよろしい。そのためにお伝いに税金を出しているのだから。特にたばこなんというものは、ただみたいなものを膨大な金を出して吸っているのだから、そんな四千億なんという財源があったら、一千億くらいこの問題に金を出して解決してもいいのですよ。あなた、ほんとうに良心的に一言いなさいよ、ただ受け答えだけでなしに。
  221. 若松栄一

    若松政府委員 この問題は研究それ自体が非常にむずかしい問題でございまして、いますぐやろうとしたからといって、すぐできる問題ではございませんし、また金を出したからといって、すぐまたできる問題ではないと存じます。そういう意味で先ほどそういう研究の水準が世界的に上がって、世界じゅうが全部協力して研究が進まないと、日本単独では容易に解決のできる問題ではないということを申し上げたわけでございまして、そのたばこ自体が健康に影響があるという事実だけははっきりしておりますので、これについては、したがって私どももできるだけその害を少なくするように努力するということは、いまも将来も変わりはないわけであります。
  222. 春日一幸

    ○春日委員 害を少なくするといったって、あなたでできはしないですよ。あなたは専売公社ではないのだから、害を少なくするのは製造の当事者ですよ。だから、製造の当事者は有害か無害か、そんなことはわれ関せずといっておるのですよ、事実上。それでは一体国民はどうするのかということなんだ。しかもあなたが世界的規模において調査するといっておるけれども、しかしそれは各種族、国民の体質によって区々に分かれるといっておるのだ。またたばこのクォリティによっても、区々な変化があるでしょう。だから日本国において販売されるこのたばこは、日本民族についてどういう影響があるのか、そのことをあなたが研究調査して、その結論を得る必要がある。しかしきょうやってあした結論を出せ、そんなことは言っていやしない。問題は大きいから、それは長期にわたって継続的に大きな規模で研究せなければならぬだろうと思う。だから私は、それをやりなさい、やらなければならぬと言っておるのですよ。それであなたは局長さんだから、したがってあなたがいきなり自分の独断でここでやりますということもできないから、そのときには本省へ帰り、省議を開き、大臣の決起を求めて、そういう方向に向かって努力することをお誓い申し上げますとか、何とかしかるべく答弁せなければならぬ。あなたの言われることはひょうたんなまずみたいなもので、何を言っておるのかわけがわからない。そんなことなら、こんな貴重な時間にこの貴重なエネルギーを消耗することはない。私の言ったこと、おわかりでしょう。だれもわからないから、わかるようにしろと言っているのだ。しかもアメリカが――エチオピアだかあるいはニューギニアでいったことなら、私どももそうびっくりしないけれどもアメリカ公衆衛生局が多年にまたがる研究の成果として、かくのごとき有権的報告を行なっておる。この事態にかんがみて、日本における喫煙家は不安動揺いたしておる。そこへもってきて日本の厚生省は、この間のアマチュアといっては語弊がありますが、そのことに興味を持っておるお医者さんグループの報告によれば、まあまあたいしたことはないということであるというけれども、それではわれわれはほんとうに不安を払拭し切れないので、アメリカが投げた一投石、それに見合うような機関によってその不安を一掃するか、あるいは突きとめて、悪い点があったらそれを除却するか、そういうことをやらなければ、あなた、メチールアルコールや化粧品征伐だけやっていたってだめですよ、そんなことは。国民の健康ということに焦点を置いて、そのほかのことは何も考えなくていいのです。あなたの職責は、財政がどうなろうと、そんなことは関係ないのですよ。乏しければ乏しいでみんなやっていくのだから。
  223. 若松栄一

    若松政府委員 たいへん御教示をいただきましたので、そういう趣旨でやりたいと思います。
  224. 山中貞則

    山中委員長 次回は明後六日午前十時より、理事会を省略、直ちに委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十分散会