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1964-05-11 第46回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十一日(月曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 中村 寅太君    理事 上林山榮吉君 理事 中川 俊思君    理事 多賀谷真稔君 理事 滝井 義高君       壽原 正一君    中村 幸八君       西岡 武夫君    三原 朝雄君       渡辺 栄一君    井手 以誠君       細谷 治嘉君    八木  昇君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君  委員外出席者         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    森田三喜男君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局石         炭課長)    佐伯 博蔵君         参  考  人         (東京大学名誉         教授)     青山秀三郎君         (三菱鉱業株式         会社取締役保安         部長)     井上 健一君         (日本炭鉱労働         組合中央執行委         員保安生産部         長)      東海林秋男君         (全国石炭鉱業         労働組合書記         長)      加藤 俊郎君         (全国炭鉱職員         労働組合協議会         副議長)    瓜生  昇君         (日本鉱業株式         会社専務取締         役)      河合 堯晴君         (全日本金属鉱         山労働組合中央         執行委員)   高橋  登君     ――――――――――――― 五月十一日  委員原田憲辞任につき、その補欠として渡辺  栄一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員渡辺栄一辞任につき、その補欠として原  田憲君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  鉱山保安法の一部を改正する法律案内閣提出  第一五二号)      ――――◇―――――
  2. 中村寅太

    中村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出鉱山保安法の一部を改正する法律案議題として、審査を行ないます。  本日、本案審査のため、参考人として東京大学名誉教授青山秀三郎君、三菱鉱業株式会社取締役保安部長井上健一君、日本鉱業株式会社専務取締役河合尭晴君、日本炭鉱労働組合中央執行委員保安部長東海林秋男君、全日本金属鉱山労働組合中央執行委員高橋登君、全国石炭鉱業労働組合書記長加藤俊郎君、全国炭鉱職員労働組合協議会議長瓜生昇君の七人の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。本日は御多用中にもかかわらずわざわざ本委員会に御出席を賜わり、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。御承知のごとく鉱山保安法は、鉱山労働者に対する危害の防止を主眼とし、こと人命に関するきわめて重要な問題を蔵しておる法律でございますので、この際、金属鉱山石炭鉱山労使方々及び学識経験者として、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。参考人各位には最初一人十分程度それぞれ御意見をお述べいただき、そのあと委員の質疑に応じていただきたいと存じます。それでは、青山参考人からお願いいたします。青山参考人
  3. 青山秀三郎

    青山参考人 ただいま御指名がございました青山でございます。本日は、ただいま委員長の御指示にございました鉱山保安法の一部を改正する法律案について、参考人としてまかり出ました次第であります。  この問題につきましては、中央鉱山保安協議会におきまして、この三月でございましたが、数次会合を催しまして、一応成案を得まして大臣に御答申申し上げたのであります。それでこの中央鉱山保安協議会でございますが、これは三十六年十一月以降保安法改正につきまして数次協議を進め、今回が第三次の答申なのでございます。それで最も大きな機会は、御承知のように、もう半年経過いたしましたが、三池炭鉱の大災害であり、あのあとを受けまして保安法改正として緊急必要なものを、再びこういう災害の起こらないように私どもも日夜心がけておりますので、早く御答申申し上げなければならぬというので、ここにまとまった次第なのでございます。  この協議会といたしましては、御承知のように労使代表方々、きょうもその代表方々が数名おられますが、その方々と、中立の者とが加わりまして、初めはなかなか話し合いもむずかしかったのでありますが、ここ一、二年はまことによく御意見も発表され、協議も進め、いい話し合いの場になっておると私は喜んでおるのであります。そこで、この問題につきましても、いま申し上げました三池の大災害あとであり、私ども保安法立場からどういうことを早く取りきめなければならぬだろうかということで、たくさんあった問題の中で、きわめて重要な問題を保安局の御指示にもよりまして議題としたのでありまして、その結果はもう皆さんとくと御承知のとおりであろうと思いますが、大きくいえば二つなのであります。この以外にももちろん問題はあろうと思いますが、これはただいま協議会そのものでも、またその中に少数の基本問題委員会というものがございまして、絶えず会合いたしまして、法律並びに関連いたしました規則の問題、その改正案協議を続けておりますので、その間の問題とお考えいただき、私どもはまた、本日いろいろ承りました御意見を今後の協議会に、また私どもの心がまえにも反映いたしたいと思うのであります。それで、いろいろ問題がございましたが、やはり労使両方立場の方がおられますから、もちろんすぐお話がまとまる次第でもございませんので、それぞれの立場から十分御意見も承り、また私ども中立立場から、いろいろ国の全体のバランスの上でここまではぜひ両方で御妥協願いたいということを無理におすすめし、お願いした点もあるのでございます。  最初保安統括者制度の問題でありますが、これはいままでも、現在鉱業を実施しておられますところでも、統括管理をされておるところにかなり保安の問題は反映しておったと思うのでありますが、私は、この保安関係経営される立場あるいは労務の立場ということを離れて、むしろもっと大きくいえば、鉱山でも炭鉱でも、そこにおられます全山の心が一致して保安協力してもらうということが必要であろうと思うのであります。どっちがおくれても、どちらが進み過ぎてもおもしろくないので、全山が手を握って進んでもらわなければ保安は保てないと私は痛切に考えておるのであります。そういう意味で、これを管理される方は、生産の面であろうとあるいは保安の面であろうと、そういうことに区別なしに全体の責任をとってもらいたい。いままでもそういうりっぱな方もございますが、数の多い鉱山炭鉱のことであり、もしどこかにそういう不備があってはおもしろくないというので、あえて法律段階において、鉱山統括管理をされます方が、保安の問題も一緒に、生産と同様に管理していただきたい、統括していただきたいというところから、この名称もさることながら、内容はこれを進めたいというのであります。これは三池災害のあったあとでもあり、これがもし実現されれば、私は相当効果があがるのじゃないかと思うのであります。  なお関連いたしまして、いままで保安管理者とかあるいは副保安管理者というのがございましたが、これは今度は技術の面にいたしまして、保安技術のほうの管理者またその副管理者というのを置いて、これは技術の面がかなり重要なことでありますので、そこで統括者のもとに管理機構に入ってもらいたいということであります。これはむしろ今度の機会がこういうことを実現するいい動機を与えることになったと私は思っておるのであります。  それからもう一つの問題は、これはいま申し上げましたように、保安全体の立場管理者あるいは経営者、あるいは労務者、そういう区別なしに、全山が自主的に保安体制を確立したいということから、今度保安監督員機構の中に補佐員というものを新設した次第であります。これにもいろいろ問題がございました。補佐員では弱いのじゃないか、そういう必要はないのじゃないかという相反する意見もあったのであります。この保安監督員という問題でありますが、これも保安法ができますときに日本の古来の思想から考えると少し受け入れにくいものであったかもしれぬと思うのでありますが、保安法をつくるときには世界に冠たる保安法にしたいという皆さん方の御要望もあって、こういう制度もできてきたのでありますが、その後十余年を経過しました今日、ほんとうに監督員という制度が生きているかどうか、これはなかなか問題であろうと思います。生きているところもございますが、日本にはなかなかこういうことをやりにくい点もございます。しかし、せっかく監督員という制度があるところへ今度は補佐員という制度を加えまして、その鉱山労働者の過半数の推薦を得た方から一名保安補佐員を選任しようということにようやく話が落ちつきました。ここでその補佐員の方がよく保安坑内事情監督していただいて、そしてその結果を監督員のほうに連絡していただく。やはり外と違いまして坑内のことでありますので、できるだけ絶えず坑内を見ていただきまして、その結果を監督員に十分反映するように御協力お願いしたいというのがこの趣旨であります。ただ、こういう制度がいずれできましても、これを生かす生かさないということは要するにその人の関係であり、また運用の面であろうと思いますが、監督員も十分その性格を発揮してもらいたいが、補佐員となられます方もいずれはりっぱな方が出てこられると思うのでありますが、それぞれの資格において合格された方を監督補佐員としてお願いして、そこでは保安の問題について十分御協力お願いしたい。これは私個人の切なる希望も入っておるのであります。そういうことで、御承知の問題ばかりでございますが、私はこの二点を特に重要なものとして進めておりますので、どうぞ皆さまの御理解と御支持をいただきまして、この原案を通過させていただきますように、切に私からもお願い申し上げまして、私のお話といたしたいと思います。(拍手
  4. 中村寅太

  5. 井上健一

    井上参考人 私は現在三菱鉱業につとめておりまして、石炭産業経営者の一人でございますが、私は現在までに約三十年間、この石炭採掘仕事に従事しております。その間保安管理者もつとめてまいりまして、現場実態については十分承知しておるつもりでございます。  昭和二十四年に鉱山保安法ができまして、その後新しい技術の進展あるいは社会情勢の変化によりましてたびたび改正がなされてきたわけであります。今回も、昨年来からの重大災害に関しまして特に保安管理の問題が強く取り上げられて、これを中心とした保安法改正の動きがございます。まず結論から申し上げまして、今回の改正には賛成でございます。しかし、私といたしまして、一言私の考えておりますことを申し上げたいと思います。  御承知のように、石炭あるいは鉱物の生産ということは、地下作業という全く他に例のない自然との戦いでありまして、普通の生産のように工場でただ物を組み立てていくというようなものではなくて、自然を破壊して生産をしていく仕事であります。常に落盤あるいはガス、出水、自然発火というような非常に困難な自然条件を克服して生産をしなければならないところに、非常に特殊な事情があると思います。すなわち生産ということと保安ということが切り離せない。生産することが即保安である。岩石を掘りくずすと、心ずそこに支柱というものがなければ作業ができない。すなわち保安作業を遂行しながら生産を行なっていくというところが、他の生産と非常に違ったところだと思います。したがってわれわれの日常業務は、常に保安ということを念頭に置いて仕事をしなければならぬのであります。しかもこの生産のうちで最も大きな部分を占めておりますのは労働力でありまして、労働によってこの条件を克服していかなければならない面が非常に多いのであります。したがってこの鉱山保安法というものも、人に対する危害の予防ということをまず第一に掲げておるわけでありますが、この点特に私たちは頭に置いて仕事をしておるつもりであります。  今回の法改正の第一点は、まず鉱山における保安責任者の地位をさらに向上させ、確立させたいというところにあると思いますが、私はこれはしごくもっともだと思います。鉱山経営をあずかっておる、具体的に言いますと所長が、当然これは鉱山保安責任を持っておるわけでありまして、私はこの点は前からそういう考えを持っておったのであります。ただ率直に申しまして、昭和二十四年に鉱山保安法が制定されました当時、いわゆる労働情勢が不安定なときには、保安という絶対性のもとに、どうしてもいま言った労働力ということがからまっておるだけに、保安問題と労働問題というものが、ときとするとからまり合い、重複し合って、微妙な問題を発生したことがあります。こういうようなことで、鉱山責任者が純粋な保安問題ということに取り組めないというような時代もありました。過渡的にはいろいろ問題があったと思いますが、現在の段階においては、その心配はあまりないのではないか。ただ、いずれ省令段階できまると思いますけれども、やはりこの保安というものは純然たる技術、いわゆる生産をやっていくための裏づけになる技術というものが最も大きな問題でありますので、この点保安統括者の実際の日常業務における運用面にはその点を特に配慮して実際の管理十分実情のわかった人によって運営されるように配慮すべきであるというように考えます。  次に、鉱山労働者意見を反映させる問題でありますが、これも前から申し上げましたように、労働力によって生産をやっていく以上、この意見というものが十分反映されることは当然でありまして、従来そのために保安委員会というものがあって、その目的を果たしてきておったわけでありますが、しかし一部には十分でないというような話も聞いております。私はこの問題については、保安委員会を十分に活用していけば、その目的は達成し得るというふうに思っております。私個人のことを申し上げてはなはだ恐縮ですが、私の会社におきましては、保安委員会運営により十分に労働者意見の反映をさせておる、労使一緒になり、あるいは意見の違うものはお互いに出し合って、十分にこの意見を入れ、またわれわれの意思も伝えて、運営はうまくいっておると思っております。したがって、私はうまくいかないというところを基準にしてさらにこれをかたくするということには若干の異論もございますが、しかし実態処理といたしまして、事実上今後保安向上していくには、どうしても労働者協力なくてはできません。したがって一歩前進いたしまして、いわゆる監督員補佐員ということでこの意見をさらに十分に反映させるということはよろしいと思いますけれども、ただこれもわれわれ担当者の間では十分わかっておりますが、しかし現場の末端に行きますと、保安監督員というものとの線が明確にならない、あるいは保安監督員にしろというような声もありますが、保安監督員業務保安法に規定されておりますように、施業案とかあるいは企業とか山の操業に入っていく問題でありまして、これに労働者を選任するということには、われわれといたしましては経営管理の面から問題があると思います。しかし純然たる保安立場から、その意見を十分反映させるために補佐員という立場保安監督員を補佐し、その意見十分保安管理者、今後は統括者になると思いますが、こういう保安責任者に伝えて鉱山保安を確保していくということはけっこうなことだというふうに思います。  それから最後に、保安法改正についての私の考えを一つ申し上げて終わりにいたしたいと思いますが、日本のこの保安法、特にこれを具体的に規制をしておる省令、いわゆる保安規則というものがありますが、これは約四百条にもなるというような膨大なものでありまして、これくらい微に入り細に入り規制した法律は、他にあまり見かけないのじゃないかと思います。すなわち改正するたびに本が厚くなっていく。つけ足すことばかりつけ足して、事実上必要ではないのじゃないかと思われるようなものもやはり残っている。すなわちそういうものを省くということが、いかにも条項が少なくなると保安管理が弱くなるのじゃないかというような皮相的な見方が一般にあるのは、否定できないと思います。しかし、保安法ができましてすでに二十年近くたっておるのであります。当然この際そういうようなものは抹殺し、改正ということは保安法のいわゆる省令を含んだ法の整備であるということに、ひとつ今後考えていただきたい。幾ら条文をふやしてみても、運営がうまくいかなければ保安は確保できないのであります。この点今後の法改正にあたりまして、ただページ数を増すだけではなくて、内容を実際運営しやすいようなものにしていただきたいということを希望いたしまして、私の意見を終わりたいと思います。(拍手
  6. 中村寅太

  7. 東海林秋男

    東海林参考人 私は、日本炭鉱労働組合中央執行委員保安生産部長をしております東海林秋男であります。このたび本委員会よりお招きにあずかりまして、鉱川保安法改正に関しまして、炭鉱労働者立場から意見を述べさせていただく機会を得ましたことを、心からお礼を申し上げる次第であります。  時間も限られておりますので、簡潔に申し上げますが、今次改正案の第一は、保安統括者保安技術管理者等制度を新設いたしまして、鉱山におけを保安管理機構の強化をはかろうという目的を持つものであります。このことは鉱山における保安上の責任体制を明確にするため、絶対に欠くことのできないものでありまして、早くから私どもにおいて主張を繰り返してきたところであります。むしろその実現がおそきに失したのではないかと考えております。三井三池におけるあの悲惨な大災害以前の保安管理体制ということを考えてみますと、現在提案をされておりますような強化された保安管理体制あるいは保安責任体制というものがあの炭鉱にしかれておれば、あのような悲惨な大災害をあそこに発生せしめることはなかったのではなかろうか。しかも三井三池炭鉱という、日本におけるトップ・クラスの山として、皆さんの御審議にあずかっております石炭鉱業合理化の先端を行っておった山に悲惨な事故が起きたということは、私どもとしてはどうしても納得ができない立場でありますので、そのようなことを特に強く感じておる次第であります。  申し上げるまでもなく、人命の尊重は何ものにもかえがたいものでありまして、保安統轄者に課せられる社会的責任はきわめて重大だと存じます。いやしくも生産緊急性であるとか、資金が足りないとか、あるいは労働力が不足であるとかいう理由をもちまして炭鉱鉱山における保安をおろそかにする、こういうことは絶対に許し得ないことだと思うのであります。私どもとしてはこの案に賛成をいたします。賛成をいたしますが、保安統轄者における絶対の指揮命令権にも当然その場合は従っていかなければならないと思いますが、その責務に違背をした保安統轄者に対するきびしい責任追及体制も、先生方のお力でぜひとっていただきたいと思うのであります。このことは、名目あるいは体制がいかにりっぱなものができましても、実際の鉱山における保安管理体制なり執行体制というものが抜けておったのでは、災害は依然として減らないという事実があるからであります。また、鉱山保安確保向上に功労があった保安統轄者のような方々に対しては、国における積極的な表彰制度等を採用して、現在社会的にも問題になっております炭鉱保安の急速な向上にぜひ資していただきたいと思うのであります。  次に、改正案の第二は、保安監督員補佐員制度を新設をして、保安に関する炭鉱労働者意見を自主的な監査組織に反映せしめんとするものであります。現在の保安に関する監督制度は、政府監督行政監督官による炭鉱監査とともに、企業内における自主的な監査機構もあります。ところがこの企業内における保安監督員による監査機構の機能は、法の目的とするような方向で運用されておらないという事実があるのであります。そのことは、炭鉱における災害が発生をした時点において、どのような当該事例に関する監督がその鉱山炭鉱において行なわれておったかという事実を調べてみます場合に、明らかに証明ができるのであります。したがって私どもとしては、常に現場に働く、貴重な体験に裏づけられた労働者意見、あるいはまた、一たび災害が起きますと一瞬にして生命を奪われるという、最大の犠牲者として宿命づけられておる炭鉱労働者意見、こういうものは保安対策上第一に尊重せられなければならないものだという思想を持っておるのであります。人間性を忘却した保安というものは、もはやその目的を貫くことはできないという確信を持っております。このような観点に立ちまして、労働者代表する保安監督員制度というものの創設を私どもは強く訴えてきたところでありますけれども、先ほど前参考人等意見にもありましたように、経営権の介入ではないのかという御心配等もございまして、このたび中央鉱山保安協議会において議論をいたしました際には、私ども主張を残念ながら労働者代表する保安監督員という制度のもとに生かすことはできませんでした。しかし十分議論を尽くしましてその意図するところをお認めいただき、今回ここに提案をされましたように、保安監督員を補佐する制度の中に労働者代表する者が入っていく姿勢ができましたことは、漸次進歩をしなければならぬこの保安法なりあるいは保安規則運用の次態として、やむを得ないものと考えております。どうか先生方の御理解をいただきまして、一日も早くこの制度現場において実効を発揮し、もって鉱山保安向上に役立たしていただきますように心からお願いを申し上げる次第であります。  私どもといたしましては、すでに保安委員会における委員常駐制度を、私ども組織の傘下においては、その会社側との間に協定をいたしまして、現在実施中でございます。したがいまして、この制度委員の方がこの監督員補佐員として肩がわりをする状態になると思いますけれども、すなおに従来までの経験を生かしまして本制度趣旨とするところと取り組みまして、炭鉱保安向上を確立するために、労働者側からの協力を惜しまない決意のあることを表明をいたしておきます。そうしてまた、そのような実績の上に立ちまして、私どもの念願といたしております労働者側からの保安監督員推薦をなし得る体制、あるいは経営者の方方にも、保安を熱願しておる労働者姿勢というものをお認め願った上で、保安監督員という制度をぜひ先生方お願いをして、この法律の中につくっていただきたい、このような決意を持っておることもあわせて申し上げたいと思います。  以上で本改正案に対する私の意見を終わる次第でございますけれども、要は一日も早く本案が成立し、職場の労働者が安心して働くことができますように、そのような保安体制、あるいはたよりになる鉱山保安法と申しますか、あるいは積極的な保安監督行政の確立というものを心から希望するものであります。  なお、この際二、三の点をつけ加えさせていただきたいと思いますが、その第一は、鉱山保安法保安規則で必要な事項というものは、長年の経験によりまして、政府側特に通産省鉱山保安局においては、つぶさにその状態を把握されておると思います。あるいはまた鉱業の実施に当たられておる経営者側についても、そのことが専門家においてわからないはずはないのであります。ところがその必要な事項が積極的に改正されたといういきさつはありません、こう私は力説しておきたいと思うのです。三池災害のようなことが起きれば、世論に対応するような形をもって一、二の点を改正をしてお茶を濁す、これではほんとうの意味の鉱山保安の確立はなし得ないのであります。いわば世論に対する申しわけというふうに世間から言われてもしかたのないような状態で推移しておるのが実態ではなかろうか、ここをとくとお考えいただきたいと思います。  第二は、今次改正案提案理由によりますと、鉱山保安の状況は漸次改善されてきているという趣旨が述べられておりますけれども、私どもの調査をし体験をするところでは、漸次悪化をしてきておるという考え方を持っております。これは同じ数字と同じ実情の上に立って、御当局の判断と私ども労働者側の判断とがどうして食い違うのか、もし時間があればここで私ども意見を聞いていただければ幸いだと思います。また災害の規模におきましても、炭鉱の集約化に伴いまして、一応起きればかつてのものよりは大きなものが起きておるという現実もございます。そしてまたそれらの災害の増加というものは、多年にわたりまして、たくさんの犠牲の上に積み立ててまいりました炭鉱合理化の効果を、一瞬に無にしている実情にあるのではないかと思います。たくさんの国の投資を炭鉱に、先生方のお力で入れていただいておりますけれども保安を十分に措置しないままで営業しておりまして、そこに不測の事態を生じますと、国民からお借りをしている金の効果を生まないのですから、これは全く国家の政策に対して申しわけないことを炭鉱自体がやっておるのだ、こういうふうに考えられますので、十分この辺も、いま皆さまのお手元に配付をいたしてあります資料もございますので、御一覧の上後ほど質問をいただきますれば、私ども炭鉱労働者立場から、どのような関係炭鉱にあるのかということをつまびらかにする用意があるということを明らかにしておきます。  第三は、いかにりっぱな法や規則でも、あるいはまたいかにりっぱな改正がそのつど行なわれましても、また世間がそのことに対する心配をいたしましても、当事者間にその内容を生かして使う体制がなければ、何にもならないと思うわけであります。このために絶対に必要な保安教育について、国も鉱業権者も労働者も一致協力して当たるべきではなかろうかと思います。法律規則をひもときますと、保安教育の必要性については強力に訴えられておりますけれども、その実施状況ということになりますと、御当局よく御承知のとおり、あるいは鉱業権者の方々も御承知のとおり、現場において一体どのように生かされておるのか。国家試験を受け、炭鉱において保安技術職員という資格をお持ちになっておる方々に対して、再教育というものは一体どういうふうに行なわれておるのか。あるいは、最近の労働事情を反映して、きわめて炭鉱経験の薄い方々が雇用されておる状態でありますけれども、これらの方々に対し、危険な坑内に働く労働者としての必要な教育が徹底して行なわれておるかどうか。あるいは、現在営業している炭鉱に働いておる方々に対する退避訓練というようなもの、あるいは救護隊の出動体制というようなものについて、実際の状況にマッチしたような訓練が行なわれておるかどうか。私はそのことについて残念ながら、行なわれていないという判断を持つものであります。その実例として、三池炭鉱においてあの災害が起きたときに、爆発でなくなった方はわずか二十名、その他の方々は一酸化炭素の吸入によって死亡なさっております。ところが、坑内の状況からしますと、教育さえされており、訓練さえされておれば、幾らでも逃げる坑道は、入気坑道がそばにあったわけでありますから、可能であったわけでありますし、坑内にはたくさんの技術職員もおったわけでありますから、鉱山労働者のいわゆる退避に関する誘導というのは可能であったはずであります。訓練のないところに実践は必ず敗退をするわけでありますから、この辺を、特にこの法律改正するにあたって、その背景となっておる問題点を取り除かなければ何にも効果がないということの観点から申し述べておきたいと思います。  最後に、これは諸先生方においてもお気づきの点だと思いますけれども、確かに井上参考人が申し述べましたように、現在の鉱山保安法あるいはそれぞれの保安規則においては、その条項は世界に冠たるものがあると思います。しかし今日、この法律炭鉱鉱山に適用する場合、可能性のある炭鉱、そのことを適用されてもそれに即応していくだけの能力がある炭鉱が一体どれだけあるのかということに対して、トレースが行なわれているかどうかということに対して、私どもは疑問を持つものであります。どんなにりっぱな法が片方にありましても、そのものを消化する体制がないところに、とうとい人命をなくしていく鉱山災害というものはあとを断たないのではなかろうかと思います。したがいまして、法律のりっぱなことを私どもは認めますし、その運用について協力することを惜しみません。しかし鉱山経営ということに対して、その可能性がない、あるいはそれを生かしていく見通しがないのであれば、思い切って整備をしなければならないでしょうし、可能性のあるものに対しては、強力な保安体制指示しながら、そのことに必要な国の投資なり、あるいは経営者において集中的な投資なりを行なって、りっぱな炭鉱として、あるいは鉱山として発展をするようなかまえというものを積極的にやっていただかないと、炭鉱というのはともすれば、もともと危険なところなんだから、あぶながっておっては仕事にならないのではないか、あるいは保安の必要なことはわかるけれども、そんなことばかりやっておったのでは会社がつぶれてしまう、いわゆる炭を出すことのほうが先決問題だというので、保安あとからこいというような思想のもとで経営をやっておりますと、やはり災害は忘れたころにやってくるのではなかろうかと思います。災害が起きたときには、慰霊祭等で、今後はこのあやまちを再び繰り返しません、こういうことをお誓いになって、保安対策をしっかりやるとおっしゃいますけれども、また少しすると、いま申し上げたような状態に返る、このような背景を取り除かない限り、法のりっぱな、期待をする方向の実現はないのではないか、こういうことを特に申し上げまして、一応の意見を終わらせていただきたいと思う次第であります。ありがとうございました。(拍手
  8. 中村寅太

  9. 加藤俊郎

    加藤参考人 全炭鉱書記長の加藤でございます。全炭鉱といたしましては、今回の鉱山保安法の一部を改正する法律案賛成でございます。いまその理由を申し上げます。  第一は、保安統括者及び保安技術管理者、副保安技術管理者の問題でございます。私は、保安の確保という問題は、いま申し上げます三つの要素を確保するということが肝要であると考えております。その第一は、保安の意識の問題でございます。要するに、これは人の問題であるかと思います。第二は、その人を組織いたしました経営上の管理機構の問題第三は、設備等の問題を含めました保安に関する技術の問題であるかと思います。この三つの要素を三位一体といたしまして確保することによりまして、鉱山保安というものは成果をあげることができると考える次第でございます。  今回の法の改正は、これらの要素のうちの保安管理の問題、これらをねらっておるわけでございますが、保安管理の面につきまして現状を考えてみたいと思います。  炭鉱鉱山におきまして、経営上の責任者である鉱業権者の義務というものを代行いたしまして、保安の面につきまして最高責任者ということになっておりますのは、現行法のもとにおきましては保安管理者でございます。保安管理者は、法律の上におきまして上級保安技術職員という資格を要求されておるところの技術者であります。しかるに法律は、この保安管理者に対しまして、技術上の責任はもちろんでございますが、その他の面、つまり技術以外の経営上の管理責任あるいは労務といったような人間の問題、そういった責任も課している形になっているわけでございます。ここに、実際の経営におきまして、その鉱山炭鉱における経営上の最高責任を持っておりますところの鉱業所長、鉱山長、こういったようなものと、責任の面で競合するということが起こり得るわけでございます。保安管理者責任というものは法律上明記されておるのでありますが、ただいま申し上げました鉱業所長あるいは鉱山長、こういったものが法律上はあらわれてまいらないのであります。もし両者が別人であるといたしますならば、こういう例は多いわけでございますが、管理者は事実上はその所長あるいは鉱山長の部下でありますから、部下であるために十分な権限を有し得ない、こういう場合が出てくるかと思われます。保安管理者保安上必要であると判断をいたしました設備であるとか資材であるとか人員であるとかいうものを、鉱業所長あるいは鉱山長が確保してくれると必ずしも限らないのであります。所長は経営上の全責任と権限を有しながら、実は保安に関しましては、この法令をたてといたしまして、保安上の責任を回避できる形になっている、こういうところに現行法の矛盾があるかと思うのであります。この意味から申し上げまして、今回の改正案は妥当であると考えます。所長、鉱山長に保安統括者としての最高責任というものを明確に課することにいたしました。  しかし、私は、このように改正をいたしましても、まだこの面について問題が残ると考えております。それは、実際の場合、鉱業所長あるいは鉱山長といいましても、多くはやはりサラリーマンでありまして、彼の背後には鉱業権者がある、あるいは本社がある、こういう形になってまいります。ここに同様の制度上の欠陥を露呈しないかということを心配すれば心配として出てくると思います。また、同様なことは係員についても言えるわけでありまして、多くの場合係員に対しましては責任のみを課しまして十分な権限を与えていない、こういう経営のやり方が今日一般ではないかと思うのであります。責任と権限というものがばらばらに分離しているというこのような前近代的な日本経営管理そのものにメスを入れていくということが、今後の課題であろうと思うのであります。  第二は、監督員補佐員の問題であります。これにつきましては、最初に申し上げましたように賛成でございます。しかしながら、正直に評価いたしますならば、これはないよりはましだといったような改正ではないかと思います。これによりまして従来からございますところの保安委員会にあわせて、労働者意見が反映され尽くすと考えますならば、それは誤りではないかと思うのであります。監督員補佐員はその名称のとおりに、監督員の指揮下に入ることになるかと思うのであります。補佐員の述べる意見というものは監督員によりまして取捨選択された上で、監督員を通じ保安統括者あるいは保安技術管理者、係員に勧告されるということになってくる。私の労働組合は、この法律に基づきまして労働者保安上の意見を反映させる新たな権利、こういう形で持つことができるということを歓迎はいたしますけれども、この制度が現在の労使の間の協約、取りきめによりまして設けているところの保安専従者といったような自主的な制度を、ある程度縮小せしめるおそれがあることを心配いたしております。すなわち監督員補佐員が出しますところの意見が取捨選択されるというその過程に、私は問題が残ると思うのであります。いずれにいたしましても、労働組合の意見というものが一〇〇%経営側に採択されるとは限らないのでありますが、その取捨選択というものが十分な労使話し合いと納得の上で行なわるべきであります。監督員とその部下であるところの補佐員とは、決して対等ではございません。対等の話し合いは、こういう関係の中では期待できないのでございます。したがいまして監督員補佐員制度を設けましても、別途の方法によるところの労働者意見の反映の道というものを閉ざしてはならないのでございまして、この制度保安専従者といったような制度と、あるいは、保安委員会は論外でございますが、その他の労使話し合い制度ととってかわるものではない、このことを十分に明確にした上で処理をすべきではなかろうかと思うのであります。この点を特に衆議院におきまして附帯決議等を通じまして明確にいたされるならば、ただいま申し上げましたような心配の点が解消するのではないかと思いまして意見を申し上げ、かつお願いを申し上げる次第でございます。以上で終わります。(拍手
  10. 中村寅太

  11. 瓜生昇

    瓜生参考人 ただいま委員長から御指名にあずかりました炭職協の瓜生でございます。  初めに私どもの所属団体について明らかにしておきたいと思います。全国炭鉱職員労働組合協議会略称して炭職協と申しておりますが、この内部構成を大きく分けますと、炭労、全炭鉱、前二者は御意見を述べていただきましたが、それに中立の三つのグループ、さらに明確に申し上げますと、石炭大手十六社と中小で組織しております。その特色といたしましては、坑内外の第一線現場におきまして直接保安生産両面の指揮監督に携わり、またはこれらの計画に参画をする係員の職能別組織、こういうように御理解を願いたいと思います。  まず第一の、保安統括者制度及び保安技術管理者並びに副管理者等に関する改正についてでありますが、これは相互に関連性を持ちますので、一括して申し述べたいと思います。  まず結論から申し上げますと、改正案については賛成をいたします。賛成する理由といたしましては、法律案提案理由の中に述べられておるところでございますけれども、まず鉱業所長とその鉱山保安最高責任者とが必ずしも一致していないという欠陥も是正をされる。第二は、保安の最高責任者は同時に資金、労務その他鉱業全般についての最高の責任者であることが望ましい、こういう二つの重要な点が、私ども考え方、従来の主張と一致をするからであります。  こうした改正が行なわれるといたしますと、必然的に、経営計画の策定にあたりましても、従来より以上に高い次元で保安対策に積極的に取り組まざるを得ない。言いかえますと、統括者責任制という面からもその取り組む姿勢が高まってくる、このように見られます。いま一つは、保安委員会議長を原則的に統括者が担当することになりますので、保安委員会運営もしくは刷新あるいは委員会の論議経過等が、特に鉱山労働者の身近な意見についても、統括者みずからが直接把握をする、こういう利点が生じまして、その結果保安に関する取り組む姿勢というものが高まってくる、こういうように期待をいたすものであります。  さて、私は以上のように賛成をしながらも、なおかつ不安があります。その一つといたしましては、管理機構の次元が単に一段階上がったという形だけのものに終わらせては意味がないということと、その点は一体大丈夫だろうかというような疑問が残ります。それは管理組織上の欠陥を追及する以前の問題ともいうべき点でございまして、はたして保安最優先ということで経営が対処し得る状況に石炭産業全体が、あるいはその政策との関連も含めて、あったのかなかったのかということとの関連で、この点を考えなければならないところだと思います。私は石炭企業の力量とその限界意識から、保安面が逃避する傾向の継続することをおそれるものであります。千二百円のコストダウンあるいは能率アップ、こういう問題につきましては、私たちにとってたいへんなものでございます。合理化に次ぐ合理化の過程で、赤字山はつぶす、こういう政策がとられますと、もう保安的に問題を見ますと、これは決定的なものを意味します。生き抜くためには、わかっていながら無理をする、こういう思想につながってまいります。石炭鉱業調査団の答申は、生産の基調は保安であるということを強調してくれました。政府もまた、これにこたえております。しかしながら、政府当局の保安財政措置等の補助政策、あるいは個別企業に対する指導という面におきましては、あまりにも性急さが求められ、かつ指導措置が不十分ではなかったという点を指摘せざるを得ません。炭鉱労働者労働条件はきわめて劣悪な状態にありますが、たとえ他産業並みの賃金に上げたといたしましても、職場の安全性、労働者の生命の保障、こういうものが展望されない限り、炭鉱労働者は山を去っていくと思います。私は人的側面から保安問題を中心にいたしまして、石炭産業の危機的要因があることをおそれておるわけです。願わくは、こうした石炭産業の矛盾というものに再度メスを入れられまして、石炭政策の補完策との結合関係において、保安統括者をトップとして企業内の保安対策が密着をし、実効を期し得る体制となることを希望してやまないものであります。  次に、第二の問題であります保安監督員補佐員に関連して御意見を申し上げたいと思います。まず、原則といたしまして保安目的を達成する、こういう角度からとらえてみますと、鉱山労働者保安に対する意思反映のルートというものも不十分というように見られます。自主保安の推進、なかんずく企業監査というような面につきまして、経営のかまえについても改善の余地が残されておるというように考えるものであります。保安委員会について申しましても、これは労働者保安に関与し得る唯一の場でございますけれども、その開催は月に一回か多くて二回、しかもその果たすべき機能と役割りというものをとらえてみますと、大局的な問題、いわば計画的段階における意思反映と、あとは同種災害を繰り返さないという立場からの事後処置というように範囲がとどまっております。そうして刻々変化する現場の中で対応的な予防保安あるいは頻発災害という問題をとらえますと、この事前防止という面には手が届いていないと言うことができるのではないかと思います。先ほども東海林参考人が申し上げましたが、労使間協定とはいいながら、保安委員が常駐制をとりまして鉱山内を巡視をしておる、こういう例などは、この委員会の持つ欠陥を補整する措置とも見られるわけでございます。  また、保安監督員の活動につきましては、本席でまことに失礼かもわかりませんが、法が期待する方向での活動はなされていないという私ども内部からの指摘も行なわれております。私どもといたしましては保安監督員センターをつくって、それから各鉱山への派遣という制度考えたらどうか、あるいは半官半民という資格を付与して監督員の身分保全をはかるべきではないか等等について意見もあります。このような問題に対しましても諸矢生方に御議論願うのも意味がないとは考えておりません。私は、保安委員会における高い次元での保安方針の決定と、その決定に基づく職制機構を通した実行、その実行過程における保安監督員のチェック、こういう活動が互いに効果的に結合することによって保安対策は前向きで回転をしていく、こういうように考えますが、現実的にはそうは行なわれていないというところに、監督員補佐員制度化という要求も出てまいりましょうし、あるいは必然性があるといったほうが適切かとも思います。私ども係員といたしましては、人命保安最優先を基調にいたしまして、事このことについては非妥協という思想経営活動に対しましても臨んでおります。流動的に変化する作業態様の中で、チェックの目が拡大されるということは、未然に事故を防止し得るという成果にもつながるだけに、その本質的な意味を正しくとらえた上での今回の補佐員制度化という問題につきましては、賛成をいたします。  ただ、今後のこの制度運用にあたりまして望んでおきたい点といたしましては、中央協議会段階で討議の過程で、補佐員の服務基準あるいは管理体制の中における補佐員の位置づけ、こういう問題について問題がなかったわけでもございません。これらの問題は省令に委任をするということになっておりますけれども、中央協議会の答申にも盛り込まれておりますが、特にこの問題につきましては純粋に保安確保の立場から運営される、いやしくも保安に名をかりて経営への介入をするとか、労使闘争の具に供しない、また鉱業権者側といたしましては、現場労働者の身近な声を積極的に保安面に反映する、こういう基本的な基調が十分尊重されなければならないというように考える次第です。以上、法改正点に限りまして御意見を申し上げましたが、さらに保安対策の一そうの充実を期すために二、三意見を述べさせていただきたいと思います。  第一は、保安委員会の正常かつ効果的な運営という問題についてでございます。時間の制約がございますので要点だけを申し上げますと、保安委員会が形式的に開催されるというような取り組み方では意味がないということを率直に申し上げるとともに、またそのような態度あるいは運営とが関連をしますと、まことに雑な言い方でございますが、保安委員会頼むに足らず、そして保安団交優先という結果をもたらしておるという側面も重視しなければならないということを考えるわけです。結論的には、保安問題につきましては労使が超党派の立場で共同して対処する、こういう決意体制が確立されることを希望してやみません。  第二の問題は、今次法改正によって管理体制の強化が行なわれようとしておりますが、このことは、必然的に現場を担当しております係員についても、その職務が円滑に遂行できる体制に整備される必要があると思います。その理由の一つといたしましては、管理密度上の問題があります。坑内保安係員一人当たりの管理密度の強度率を私どもで調べてみますと、昭和二十八年を基準にしまして三十七年を対比いたしますと、一・八九倍強まっています。約二倍、強度率が拡大をしております。それは三十七年との比較ですから、三十八年、三十九年というその後の合理化の推移、あるいは昭和三十七年度を一〇〇としますと、四十二年度では能率は八割も引き上げられる、こういう合理化の構想から推定をいたしましても、非常に問題のある点ではないか、保安的に見ても問題のある点ではないか。こういう傾向につきましては、係員の現場における指導能力を弱めますし、日常現場での保安指導あるいは監督という面に間隙を生じて事故、災害を起こす、こういうことを私どもはおそれるわけです。  その二といたしましては、責任遂行上の問題に関連をしますが、保安管理者あるいは保安監督員、こういう上級保安技術職員における従来まで果たしてきた役割り、権能、こういうことは先ほど申し上げましたような実情にございます。まして一般係員のそれは、職制機構の中でよほどの決意と態勢とがなければ没入をしてしまうという危惧もあります。なお加藤参考人も申されたところですが、職責権限の明確化という問題と関連して、係員は結果的責任の矢面に立たされておるというような実情でございます。私ども係員といたしましては、人の命を預かっておるわけでございまして、権者からの分掌事項あるいは係員固有の責任については、あくまでも企業の内外で体現をしていく、こういうかまえでございますが、今後の規則改正にあたりましても、そういう面の御配慮をお願いしたいというところでございます。  第三は、保安教育についてさらに強調いたしたいところであります。現在のような状況の中で、技術革新と呼ばれますが、日進月歩、採鉱技術自体も進歩しています。企業の行なう保安教育は、十分とは言えない実態にあります。保安教育センター等を拡充強化していただいて、国による再教育制度特に係員の再教育という問題について、必要であるというように考えます。  第四の補足意見といたしましては、国による保安監督の強化が、三池事故以来非常に強められています。そのことはきわめてけっこうであり、歓迎するところであります。それらが実行に移し得る体制というものについて、たとえば保安監督官の増員とか、あるいは待遇の改善、こういうものがなければ、こうこういたしますということが作文倒れになるおそれもある。そういう面について十二分に解明をしていただきたい。さらに、率直にこの委員会で御意見を申し述べさしていただきますが、特に先ほども法に合致する炭鉱云々ということで東海林参考人が指摘されたところと関連をいたしますが、特に監督の強化とあわせて、中小炭鉱の場合をとってみますと、それについていけない。それはやはり保安的な財政融資等の措置が並行的に進められることを意味しています。  最後といたしまして、保安生産との一体的な姿勢というものが、国策的に進められる必要がございます。端的な問題提起をして恐縮だと思いますが、石炭鉱業審議会、これは石炭産業の整備あるいは生産計画等を論ずるところでございまして、もちろん保安問題についても論議がなされておるというように判断をいたしますが、私ども考え方からいたしますと不十分である。特に石炭審議会の中に、なぜ保安部会というものが独立してないのかという気もいたします。保安部会等を審議会に設ける。一方においては法、規則改正の場である中央協議会との提携強化という形で保安対策上の解明がなされて、そこから生産計画あるいは合理化計画という基本的な計画が提示されるのが至当ではないか、こういうように私ども考える次第です。特に先ほども若干触れましたが、保安上の財政措置等を含めまして、この際石炭対策について全体の再検討をお願い申し上げまして、あわせまして本法の改正について一日も早く成立されることを望みまして、私の意見を終わりたいと思います。(拍手
  12. 中村寅太

  13. 河合堯晴

    河合参考人 先ほど御紹介がございました私、河合尭晴でございます。現在日本鉱業株式会社に勤務いたしておりまして、出身は技術屋でございます。学校を卒業いたしましてから、ことしで三十五年の経験を一応持っておるつもりでございます。ただいままで青山会長以外の参考人方々は、みなそれぞれ炭鉱を中心にしてのお話でございましたのですが、私はいま御紹介申し上げましたように金属鉱山の勤務でございますので、金属鉱山を中心にした形で、御参考になるかどうかわかりませんが、発言させていただきたいと考えておるわけであります。  冒頭といたしまして、今般の保安法の一部改正につきましては賛成でございます。全面的に賛成でございます。ただ金属鉱業が置かれております立場から申しまして、中央鉱山保安協議会におきましてもかなりの抵抗を示しましたことも事実でございます。それは私は中央鉱山保安協議会委員でございまして、一応業界を代表した立場でその場に臨むわけでございますが、あらかじめ日本鉱業協会の中の保安部長会議並びにいわゆる勤労部長会議労働部長会議と申しましょうか、そういう面の各自の、いわゆる経営の側に立ちます連中の意見をそれぞれ伺いまして、それをその会議に反映させていくというたてまえをとってまいったわけでございます。結論におきましては、いま申しましたように賛成でございます。ただ金属鉱業の現在の立場は、先ほど申し上げましたように、炭鉱立場とかなり違っておるわけでございまして、これは委員先生方も御推察いただけると思いますが、その採掘いたします対象のあり方から全然違っておりますので、賛成ではございますけれども、それぞれの作業の方法なんかがかなり変わってまいります。   〔委員長退席、中川委員長代理着席〕 生産管理も若干変わっております。これを前提として、保安法は軌を一にして採択されますので、鉱山としましては、先ほど申しましたように、考え方につきましていろいろ抵抗があったわけでございます。  細部に入りますと、この一部改正の案件のうち、いわゆる保安統括者並びにそれに付帯いたしました保安技術管理者並びに副保安技術管理者の件につきましては、これは局その他の皆さまのおはからいで、管理機構を強化するということでございますので、さしずめこの点については大きな反対を感ずることもないと考えておりますが、実情を申し上げますと、現在の鉱山長、従来の保安管理者でございますが、これはいずれも一部の例外を徐きましてほとんど技術屋が占めておるわけでございまして、これはわれわれも長い間経験いたしてまいったわけでありますが、もう生産保安なのであります。表裏一体の仕事でございます。これは設備を設定します場合から保安生産ということで取り上げてまいっておるわけでございます。金属鉱山におきましては技術者が大部分鉱山長というような形がありますので、この点につきましても従来の法でけっこうじゃないだろうかというかなりの意見があったわけでございますが、先ほど申しましたように、総括的に保安管理を強化するのだというたてまえでございますので、これにつきましては全員賛成を申し上げたわけでございます。  時間の関係がございますので次に飛ばさしていただきたいと思いますが、次に監督員補佐員の設定という問題でございます。これは現在金属鉱山で行なっております。いわゆる労働者意見を反映さす場と申しますと、これは常日ごろいつも反映さしておるつもりでおるわけでございますが、一応オフィシャルの形といたしましては、法で保安委員会の開催ということがきまっておるわけでございまして、この保安委員会が現在どういうような運営をされておるかということは、保安委員会に魂が入っておる入っていないということは別にいたしまして、一応形が大事でございますので、先生方にもお聞き取りいただきたいと考えておるわけでありますが、ちょうど日本鉱業協会でことしの一月十五日に集めましたデータでございますが、保安委員会につきましてのアンケートの回答が参っておるわけでございます。全鉱山が大小取りまぜて七十四の会社がございます。アンケートの出題は、保安委員会労働組合から執行委員が一名以上入っておりますかという問いに対しまして、いるという答え、そのいるの中が二つに分かれておるわけでございますが、組合の三役の方が入っていただいているところ並びに執行委員が入っておられるところ、それぞれ組合の有力なポストを占めておる方でございますが、その前者、組合の三役につきましては大体二十一鉱山入っている。それから執行委員の方が参加していただいておりますのが、二十六鉱山ございます。合計して四十七鉱山になるわけでございます。その四十七はパーセンテージにいたしますと、六三・五%になるかと存じておりますが、その他の、残りました三六・五%のうち、いわゆる組合の三役並びに執行部の方々がオブザーバーとして出席したり――したりしなかったりでございましょう。出席すればもちろん発言権を持っていらっしゃるわけですが、発言するという山が十四ございます。パーセンテージにしますと一八・九%になりますので、ここまで入れますと八二・四%の山がいまのような有力なお立場を持った労働組合の方々が参画していただいているということでございまして、あとの一七%くらいになりましょうか、この山についてはそれぞれの山の行き方もございましょう。しかしこれが有効なものであれば、局といたしましてもこういう形で進めていこうというようななにもあってしかるべきじゃないかと考えております。これはもちろん強制すべき問題じゃございませんので、そんな感じを持っているわけです。ただ、いまの保安委員会は月に一回ないし二回でございますが、その保安委員会を構成しております下部機構がかなりございます。大きい山で申しますと、各課を形成しておられます。各課もそれぞれの職場、各区に分かれておりますので、その下部機構の集まりなんかを入れますと、かなりのいわゆる保安的な問題を検討する場が持たれておる。特に保安のいわゆる職場懇談会的なものもございます。かなりの回数が積み上げられて開催されておるということは事実なのでございまして、先ほど申しましたように、それが身が入っているかどうかという問題になりますと、われわれのほうも責任がございます。いずれもこれは労働組合からも半数出ていらっしゃるわけでございます。相互の責任において強化拡充していかなくちゃならぬ、充実さしていかなくちゃならぬということは、お互いの責任じゃないかと考えております。それぞれ地方の保安委員会、並びにその上に中央保安協議会がございまして、それぞれ積極的に正面切って取り組んでおることは事実なのでございます。その成果があがっているかあがっていないかということは、数字的にいろいろ出てまいるわけでございますが、いろいろ日夜反省さしていただいておるわけでございます。そういうような面で、現在金属鉱山関係では、保安委員会を正面切って取り上げて進めておるということが現実でございます。  それと、もう一つの点でございます保安監督員補佐員の問題でいろいろ御討議が重ねられてきたわけでございますが、保安監督員と申しますのは、もう御承知のことでございましょうけれども、これはあくまで自主保安をたてまえといたしております保安法のもとで、いわゆる企業体の内部監査の機関でございます。これは内部監査的なもので、五百名以上のところには監督員を選出しなくちゃならぬということで選出いたしまして、それでそれぞれ適材を送り込んで保安を固めていこうということは心がけておるわけでございますが、あくまでいわゆる経営管理生産管理と申しますか、その責に任じておりますいわゆる経営者側の責任におきまして保安を推進していく、固めていくというたてまえをとっておるのが実情なのでございます。そういうようなたてまえからいきますと、あくまでいるゆる経営管理生産管理の面からのみ一元的に進めていきたいものだというのが、われわれの念願でございます。  いろいろこういうような議論を尽くしました結果、地方鉱山保安協議会におきましても、各界の方々からの御発言もございますので、いろいろ皆さんの御意見も承りまして、結局におきましては労使双方のいわゆる相互の信頼に立ちまして、とにかく進めていかなくちゃならぬ問題でございます。これは生産より優先する、いわゆるセーフティ・ファーストと申しますか、そういう問題でございますので、何とかひとつこの問題をお互いの協調のもとに固めていこうという趣旨で、今回の御提案があったわけでございます。最終におきましては、われわれも皆さまの御発言もよくわかりますものでございますので、われわれの責におきましてこの案に全面的に賛成申し上げ、これを保安対策の一歩前進として、これでひとつ様子を見ていこうじゃないか、固めていこうじゃないかということで決意いたした経緯があるわけでございます。  そういうようなことで、最後的に申し上げますが、最終的にこの法案の改正につきましては、金属鉱業関係におきましても賛成をいたしております。先ほど井上参考人からもお話がありました内容は、金属鉱山におきましても同じことであります。世界に冠たる保安法とおっしゃっておりましたが、私も十四年前の保安法の成立のときなんかも、現場におりました関係でよく存じておるわけでありますが、何とかひとついまの段階、しかも今度の一部改正を取り入れました保安法にとにかく魂を入れていくのが、われわれ並びに労働組合の責任だと考えておりますので、この法案を一日も早く御採択をいただきまして、何とかこれに身を入れていきたい、そうして変災を排除していきたい、絶滅していきたいという感じでいっぱいでございますので、どうぞ諸先生方の深い御理解をいただきまして、法案が一日も早く通過いたしますように御努力をお願い申し上げたいと考えております。失礼いたしました。(拍手
  14. 中川俊思

    ○中川(俊)委員長代理 ありがとうございました。  次に、高橋登君にお願いいたします。
  15. 高橋登

    高橋参考人 全鉱の高橋でございます。鉱山保安確保のために御審査中の鉱山保安法の一部改正案につきまして、金属鉱山労働者立場から意見を申し述べる機会を得ましたことを、まことにありがたいことと感謝しておる次第でございます。  鉱山保安確保につきましては、本委員会で従前から慎重御審議をなされておりますし、本日も他の各参考人から意見がたくさん述べられまして、いまさら申し上げるまでもございませんが二、三の点について申し述べてみたいと思います。   〔中川(俊)委員長代理退席、委員長着席〕  金属鉱業は貿易の自由化に対処しまして体質の改善を迫られ、現在その努力中でございます。その結果として合理化が急速度に進められておるわけでございます。三十四年を境としてその後の五年の経過を見てみますと、三十四年末に金属鉱山の数は七百二十三鉱山でございますし、労働者は七万三千五百人おりました。三十八年末には四百八鉱山に激減しましたし、労働者も五万一千三百人と減少しておるわけです。この反面、生産量は毎年増大しまして、これに伴って坑内夫一人当たり月間能率も、三十四年度の五十六トンから三十七年には七十六トンと増大してきているのであります。石炭にありましては、この三十四年を境として災害が急増しておりますが、金属鉱業においても、災害件数は減少してきておりますけれども、千人当たり災害率なり強度率がやはり三十四年を境としまして漸増してきていることは、御承知のとおりだと思います。特に労働者数が減少しているにもかかわらず死亡災害件数が増加してきていることを考えますと、今後合理化が進むことによって、石炭鉱業のように災害が急増するおそれがないわけではありません。産業別の労働災害統計を見ますと、鉱業、建設業、林業、運輸業などが高い災害率の発生を見ているわけですが、鉱業のうち特に石炭は非常に高い災害率を示しております。これは炭鉱の地質的性格とか爆発性ガスの問題などから生じているものと、われわれ金属鉱山労働者としても理解はいたしております。しかし一方、金属鉱山災害率は、現在建設業より若干よい成績を示しておりますけれども、ここで注意をしなければならないのは、先ほども述べましたように、金属鉱業においては災害率が三十四年以来漸増してきているのでありまして、建設業や林業、運輸業などは着実に毎年災害率の減少を見ているのであります。このように金属鉱山における合理化の進行が災害を増加させてきていることとあわせて、金属鉱山においても炭鉱のような重大災害の発生する危険な要素があることを、特に申し上げたいと思うのであります。鉱山保安では先進国と言われていますドイツで、昨年の秋マチルデという鉄山におきまして、百二十九名が生き埋めになるという災害が発生しました。この災害で三十六名が死亡しまして、うち十名の遺体は坑内に残されたままになっているという大事故であったわけです。このマチルデ鉄山の災害原因は突然の坑内出水によるものと言われておりますけれども日本金属鉱山においても、昭和十一年に尾去沢鉱山の捨て石堆積場の決潰で、労働者ばかりではありませんが、三百七十四名が死亡したのはわれわれの記憶にまだ新しいところでございます。金属鉱山においてはこのほかに、塊状鉱床等の採掘あとや無充てん採掘あとなどには大崩落または大落盤の危険が存在しておりますし、先ほど申し上げましたダム決潰や坑内出水など、また坑内火災の発生や有害ガスの突出による災害の発生は、全く炭鉱災害と同じく重大な結果を招くものと考えるわけであります。その危険は現在常に存在していると言って決して過言ではありません。以上申し上げました点は、炭鉱金属鉱山災害率の差異というものはありますけれども保安確保すなわち労働者の生命の尊重という基本的な見地及び金属鉱山の置かれている実態からいたしまして、その保安対策は同様であるべきだとの考え方を申し上げたわけでございます。  以上申し上げました諸点から、鉱山保安法改正点であります保安管理組織の整備とともに、現場に働く労働者意見を自主的な保安監査機構を通じて反映させる方策につきましては、保安確保にきわめて有効な結果をもたらすものと考えます。この法改正に対し金属鉱山労働者としても賛意を表明しますし、その実現方を心から希望するものであります。法改正に対しましての考え方については以上のとおりでございますが二、三の点につきまして簡単に申し上げたいと思います。  その一つとして保安監督行政についてでございますが、これを強化していただきたいと思うのであります。使用者の方々監督より指導をと言っておられますが、そのお気持ちはわれわれもわかります。しかし昭和三十七年度の鉱務監督官監督巡回は金属、非金属鉱山だけを申し上げますと、三十七年現在の千六百八十五鉱山に対しまして二千四十九回のみであります。これは一年間に一鉱山当たり約一・二回にしか当たっておらないわけです。こういう少ない監督状況というものでは十分な成果が得られないだろうと思いますので、このためには監督官の増員、監督行動経費等の大幅な増額をはかっていただきたいと思うわけです。  その二つとしては、国における保安教育を充実していただきたいということでございます。企業における保安教育は一部において相当熱心に行なわれておりますけれども、大部分の鉱山では不十分であると私たちは判断をしております。したがって、現在行なっている保安係員に対する教育のみでなくて、実際の現場に働く労働者の有資格者とか指定鉱山労働者に対する再教育などについても国が実施する。そのほか企業、団体に対する指導助成の充実をはかっていただきたいというふうに考えるわけです。  その三といたしましては、合理化の促進と関連しまして、生産設備や作業態様の変更に対しての監督の強化及び規則の早急な改正を行なうようにしていただきたいということでございます。合理化技術革新を伴いますけれども、この技術革新は安全衛生面における配慮が十分になされぬまま行なわれる傾向が強いのであります。技術革新には未知の面が多いのでありまして、十分な検討を加え、さらに安全特に衛生面での対策と教育が行なわれなければならないというふうに考えます。たとえば近時運搬施設の大型化、高速度化が行なわれながら、その保安面での対策が十分に行なわれずに、運搬における重要災害がふえています。また硝酸アンモンと軽油を混合したANFOという爆薬が現在各金属鉱山で試験をされておりますが、この爆薬からは酸化窒素ガスが従来爆薬より多量に発生すると見られております。このため坑内の通気が問題になるのでありますが、この爆薬のいわゆる工学的安全性についてはデータもある程度そろっているようでございますが、衛生面でのデータが少ないようであります。また国の監督面も、この点同様ではないかとわれわれは考えております。このような有害ガスは通気量が問題なのでありますけれども、現行の金属鉱山保安規則ではその第八十一条で定めがありますけれども、その必要な速度と量についての基準がないのであります。また先ほど申し上げましたANFO爆薬のあとガス中の酸化窒素につきましては、環境としての望ましい最高濃度、これは許容濃度とか恕限度とも申しますが、この最高濃度はアメリカでは五PPM、一PPMは百万分の一のことをいいますが、アメリカでは五PPMとされ、イギリスのICIという化学会社で公表しているものでも一〇PPMであります。酸化窒素は三〇PPMあれば、数分で病状を訴えるといわれているものであります。金属鉱山保安規則の第八十五条の三では、この酸化窒素が五〇PPM以上は立ち入りを禁止されているのでありますけれども、これ以下のいわゆる有害な高濃度の中での作業を許しているのであります。  以上申し上げましたように、現在の保安規則には災害防止のためとらなければならない措置についての定めが、先ほどからお話がありますようにたくさんございますけれども、おそれのあるときとか、適当な措置とか、危険の少ない位置というふうに、基準の明らかでない場合が多いのでありまして、これらの基準作成を、合理化の促進の状況、技術革新の進行などともに緊密に、かつ早急に進めていくべきであろうというふうに考えておるわけです。  以上、簡単でございますけれども、私の意見の陳述を終わらせていただきたいと思います。(拍手
  16. 中村寅太

    中村委員長 これより、参考人の方方に対して質疑を行ないます。  なお、青山参考人は所用のため一時ごろに退席いたしたいとのことでございますので、青山参考人に対する質疑がございましたら、先にお願いいたします。  質疑の通告がありますのでこれを許します。多賀谷真稔君。
  17. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 青山先生に、時間の関係があるそうですから、最初にお伺い申し上げたいと思います。  中央鉱山保安協議会は、諮問に応じて調査審議し、さらに建議をすることができる、こういうことになっております。そこで、ことに今度の三池の大爆発を契機に、このたび保安法改正がなされんとしておるわけですが、これ以外に将来法律改正を予定されるものを、建議または諮問について審議をされるということがあるのかどうか、これで法律としては事足りるのか、さらにまた、今度は省令にゆだねた面が鉱山保安法は非常に多いわけです。法律というよりも、実施面はほとんど省令で行なわれておるわけですが、この規則改正について今後審議をし、あるいは建議をする用意があるのかどうか、大体この保安法のいま提案をされております問題だけで、一応制度としてはこれで足りるのかどうか、この点をお伺いいたします。
  18. 青山秀三郎

    青山参考人 お答え申し上げます。いま御質問のありました点、私冒頭にもちょっと触れたのでありますが、今回の第三次答申としては、きわめて緊急なもの、ことに三池の大災害によって早く法改正お願いしたいと思いますものを、それもきょう幸い私を加えまして七名参考人が出てきておりますが、お聞き取りのようにどういう立場からも皆さん賛成していただけた、そういう問題を本日ここにお願い申し上げたのであります。なおこれに関連しまして、私どもとしては、これにとどまらないで、りっぱな保安法ではございますけれども、今後の新技術を取り入れて、また保安の新しい問題も出てまいります、それからそのほか、鉱山炭鉱、石油、協議会はこの三者一緒になっておるのでありますが、それぞれの立場でまた変わった意見もあろうかと思いますが、そういう問題をよく調整いたしまして、重ねて先生方に御配慮いただいて御審議を仰ぎたい、それが日本保安、あるいは鉱山炭鉱保安の上で心要であると私は思っております。ただ、どういうものを具体的に申し上げますかは、内部で意見はたくさん出ておりますけれども、ここへ出てまたそのときに、参考人にしろばらばらなことを申し上げてはまことに恐縮でありますので、よく意見のまとまりましたものを携えてお願い申し上げたいと思っております。  なお今度の二つの問題につきましても、具体的に省令段階規則としていろいろ取りきめなければならぬ問題はたくさんございます。これは前にお願いいたしました改正案についても同様でありますが、引き続き、みな多忙な方でありますがお願い申し上げて、労使の方、また中立の者もそろいまして、あるいは基本問題委員会あるいは協議会の総会にかけて、その必要な改正案を進めていきたい、だいぶ前から進めておったところへ、実は三池災害が出てきたのであります。そのだいぶまとまった問題もいまあるのでありますが、それを、今度の三池の問題を加えまして十分審議して、私どもの、省令段階でおきめになります規則の原案を御答申したいと考えております。  それからちょっとつけ加えますが、実は三池の問題につきましても、御承知のようにいろんな方面から調査のグループがまいりましたが、保安協議会としましても、いま申し上げました労、使、中立三者構成の調査班を組織いたしまして調べていただきましたが、あの結果は非常にいいレポートを私ども受けることができまして、これが今度の法案にもそうでありますが、今後の運営に非常に役立つことと私は喜んでおります。つけ加えて御報告申し上げます。
  19. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、とりあえず緊急なもの、しかも意見のまとまったものを出した、こう理解してよろしいですか。
  20. 青山秀三郎

    青山参考人 はい。
  21. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 実はこの委員会にはかかっておりませんけれども労働災害防止法という法案がすでに継続審議になっておるわけです。鉱山は御存じのように、安全衛生は鉱山保安法として別個になっておりますけれども、これは基本法ではないのですけれども、いわば姉妹法のような形になっているのに労働災害防止法というのがございます。ところがこれは、御存じと思いますが、単に協力機関というような性格で、羊頭狗肉もはなはだしいというので、本院では名前から第一変えていこうというような動きになって、そういうことで、労働災害のいわば基本法的なものをつくったらどうか、いま本院にかかっておりますのでなくて、こういう動きがあるわけです。これが労働省を中心として、いろいろいま問題点を集約されておる段階です。そこで、これらのものに抱合をするかどうか、これは今後の問題になると思いますけれども、要するに、石炭並びに金属鉱山における保安については、一応のところこれでいいのか。いや、そうであるのですけれども、とにかく緊急に、とりあえずまとまったものを出しておる、こういうようなお話、ことに後者に理解していいのかどうか、これを重ねてお聞かせ願いたい。
  22. 青山秀三郎

    青山参考人 お答え申し上げます。私さき申しましたと同様であります。いまの労災法の関係も、実は全国安全会、あのほうの関係に私も出ておりまして、絶えず伺っておりますが、鉱山保安に関する限りは、私はやはり鉱山保安法立場からどこまでも進めていきたい。ほかの産業の保安もなかなか安全が進められておりますが、これだけ法律を整え、また組織が全国的にできておるというのは少ないのじゃないかと思うほどであります。だから、現在の保安法も、いま申しましたように、私はまだほかに問題があると想像しておりますが、法律のどこまで、どういうふうなかっこうでお願いするかは、まだ私自分でもきょう御答弁するだけ具体的になっておりませんけれども、重ねて審議をお願いいたしまして、こういうものを追加して改正お願いする必要があろうということで衆議まとまりましたならば、これは重ねてお願い申し上げたい。いまの一般保安災害あるいは安全という問題は大いに進めていただきたいのでありますが、鉱山保安に関する限り、特に鉱山保安法においてこれを充実したい、こう考えております。
  23. 中村寅太

    中村委員長 細谷治嘉君。
  24. 細谷治嘉

    ○細谷委員 青山先生にお伺いしたいと思います。  第一点は、いまの問題に関連するわけですが、先ほど瓜生参考人のおことばの中に、保安という問題は生命に関する問題で、やはり非妥協の態度で貫かれなければならぬ、こういうおことばがございました。しかし現実問題としては、経営者なりあるいは労働者立場というものがあって、中央協議会等なかなかむずかしい問題があろうかと思います。やはり第三者といいますか、先生は第三者の立場と見ておるわけですが、今度三池災害の問題を契機としてこういう法律が出たのですけれども三池災害を契機として問題をとらえていった場合に、ただ労、使、第三者という中で話のまとまったものだけで、これで当面の問題として――先ほど来質問に対してお答えがあったのですが、当面の問題としても、ばらばらということでなかなか言いにくいというおことばもありましたけれども、妥協の産物としてということばは適切じゃありませんけれども、今度のものができておるという感がするのであって、そういうすき間から災害が、法改正にもかかわらず出てくるのじゃないかという気がいたしますので、第三者としての立場にある先生のこの問題についての所見をひとつ伺いたいと思います。これが第一点です。  第二点は、いま基本法といわれておる鉱業法があり、そして鉱山保安法があり、これを受けて四百条に及ぶ石炭鉱山保安規則があり、さらに金属関係保安規則というものがある。石油関係規則もある。この鉱業法から保安法、それから規則へと、もう膨大なものがある。先ほどのおことばで、石炭とメタルはだいぶ違うというお話がございました。それから規則自体にも問題があるし、規則と法との関連においても問題があり、ある意味においては、あまりにも規則にゆだねられておるために、災害の原因もそこから出ているのじゃないかという意見もあるほどなのですが、こういう問題について、法律上の体系といいますか、保安という面から見たそういうものについての先生の御意見をお伺いしたいと思います。  それから第三点は、私ども最近の災害をながめてみますと、通産省の鉱山保安局がかなりいいところまで保安上の指摘をしておりながら、最後のチェック、とどめが足りなくて災害が起こっているという感がございます。たとえば三池の場合でも、そのものずばりの点について危険性を指摘しておる。それから半年くらいして爆発が起こった。それをきちんとチェックしておけば、事故は防げたのじゃないかという感がいたします。せんだっての日炭高松の場合でも、あぶないということで二、三日間ストップさせて、再開させたとたんに事故が起こっておる。こういう点からいって、いろいろな法体系はでき上がっても、鉱山監督行政自体に、先ほど監督行政のもっと質的な、あるいは待遇等の改善ということを含めた強化ということが言われておりましたけれども、そういう面についてどうも足らぬように感じますが、鉱山監督行政について先生はどう見ていらっしゃるか、これについてひとつ所見をお伺いしたいと思います。
  25. 青山秀三郎

    青山参考人 お答えを申し上げます。最初お話のございました本日改正法律案として私申し上げましたのが、いかにも妥協でまとまったものだけをお願いしたというような――正直なところ、事実それに近いところもございます。さっきの参考人皆さんからお話があったのにも、それぞれちょっとそれがにおっておりますが、まさに審議会の部会でも、それはもうその場でありますから、もっと具体的に率直に意見が出ました。どうも私は妙な性格で、両方にはさまれるとろこへばかり入る傾向がございまして、この場合も労務者の関係の方と経営者の間にはさまれるのですが、鉱業法のほうにも出ておりましたが、ここでは鉱業権と地上権とにはさまれて、いろいろなはさまりを受けておるのでありますが、この場合でも、私はやはりどこまでも日本として、三池災害ははなはだ不幸な災害でございますが、鉱山保安を確保したい、それにはこの際どういうことをまずやったらいいのだということが、基本の観念であります。そこで、それには少なくともきょう出ておりますような問題は早急にやらなければなるまい。しかし、先ほど申し上げたように、私それをもってまだ十分とは思っておりません。でありますから、今後皆さんにおはかりしてそれぞれの立場で御理解いただいて、やはり鉱山保安法改正としてはこういうことが必要だということで早く議がまとまれば、またそれを追加してお願いしたいということを痛切に考えております。たまたま出た結果はそういう感がなきにしもあらずでありますが、私はどこまでも日本鉱山保安を確保したい。人命の尊重を基調とした立場からもそういうものは必要だということをお認めいただいて、それを推進していきたいということをひたすら考えております。  それからさっき申し上げましたように、やはり鉱山炭鉱、石油それぞれ事情が違っておりまして、これを一つの鉱山保安法で締めくくってしまうということにはやはり無理があるのであります。その無理は規則のほうで調整しておりますが、それで規則のほうにあるものをもう少し法のほうに上げたらどうか、あるいは法にあるものを規則におろしたらどうかというような考えは、私もしょっちゅう持っております。いま基本問題委員会で討議しておるのもそうでありますが、法になりますとこういうところへお願い申し上げることになりますけれども、いま申し上げました現在の法律改正で起こる問題は、そういうことに関連した問題もあるだろう、規則にあるけれども、これを法のほうに上げたらどうか、あるいは逆の問題がありはせぬかということを私も検討したいと思っております。ただほかの法律関係もありますから、法律の形からそういうかっこうはおかしいということでおしかりをいただく場合もあることをおそれるのでありますが、できるだけ法を完備するという意味においても、そういうことを関連して考えていく必要があるのではないかと思っております。  それから監督関係の問題でありますが、これはいろいろ日本鉱山炭鉱には、こういうふうにたくさんの中小の鉱山炭鉱もありますし、大手の鉱山炭鉱もありますところを、全国こういうように監督行政をやられることは容易ならぬことだと思います。できるだけ数の多からんことが望ましいのでありますが、これは各国多少やり方が違いまして、日本のほうは、大体を申しますと、私はやはり監督されることがかなりおもになっておるのではないか。アメリカあたりでは監督と指導とが一緒にはさまっておる、インスペクションとインストラクションと申しますか、見るのと、そこでこうしたらどうかというて相談に乗るというようなこともやや加えられておる、そういう国もあります。日本の国もだんだんそういうような、監督官もりっぱな方が全国を回っていらっしゃいますが、どこそこではこういうことをやっておるがどうだとか、外国の例ではこうなんだがお前のほうはどうだというような、そういう教育的な指導的な役割も果たしておられますが、こういうことは私はやはり、少しよけいなお仕事かもしれませんが、現場では喜ぶことではないか。大きな鉱山でございますとそういう必要は少ないかもしれませんが、中小のところになりますと、なかなかそこまで手が届かぬ。せっかく来られた監督官の方にお教え願うということが望ましいと思うのであります。そういうことで、監督行政内容につきましても問題があろうと思いますが、私はやはり、先ほどお話もありましたが、強化することはこれをもってまだ十分とは思っておりません。そういう意味で、監督の強化もできるだけ必要でありますが、監督される内容につきましても、そういう意味を考えていただければ非常にしあわせだ、こう思っております。  それからついででありますが、そういうことでいろいろ教育問題が出てまいりますが、保安の教育問題は鉱山保安局も非常に考えておられまして、指導のためにいろいろなテキストブック等まで用意を進めておられますので、そういうことで教育の実があがることを非常に期待しております。
  26. 中村寅太

    中村委員長 青山参考人には御多用中のところ貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  続いて他の参考人に対する質疑を続行いたします。多賀谷真稔君。
  27. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 井上参考人にお尋ねいたしたいと思います。  先ほど御指摘の中で、ことにきわめて膨大な内容を持つ、石炭の場合ですと石炭鉱山保安規則がある。しかしこれをしさいに検討すると、もうこういう条項は削除したほうがいいんじゃないかというものもかなりあるけれども、何か削除をすることが保安をおろそかにするかのように考えられがちであるからそのままに存置しておる面もある、こうおっしゃいました。省令は国会で審議をしてこれを決定するわけではございませんけれども、しかし先ほどから御指摘がありましたように、鉱山保安法はほかの法律の体系に比べて、大事な部分が省令に多くまかせられ過ぎておるという面が非常に多い。実体的な内容のない面が鉱山保安法には多い。むしろ形式的なものばかり羅列をしておるというような点もある、こういうように思うわけです。そこで、そういう意味においてお聞かせ願いたいと思うのですが、そういう条項を具体的にお気づきの点をお示し願えれば幸いと思うのです。
  28. 井上健一

    井上参考人 いま具体的にこまかい技術的な面を申し上げる準備をしてきておりませんので、先ほど申しましたことに対する考え方を申し上げてみたいと思います。  私は日本炭鉱実態というものは、世界じゅうは知りませんけれども、こういう法律なんかが早くからできておる先進国に比べまして、非常に自然条件が千差万別であり、経営の規模も非常に異なっておると思います。これを一本の保安法で規制するというところに私は根本的に、特に技術面から見たむずかしさがあると思う。したがって、この法ではあるいはもの足りないところがあるかもしれませんけれども、いわゆる大もとを定めて、具体的には省令あるいは山の保安規程というものもありますが、こういうところで定めなければ、なかなか実態の処理はむずかしいのではなかろうか。私は先般の三池災害を詳細に検討いたしました。あの結果が、今度の法改正の一つの大きな原動力になっておると思います。先ほど申し上げましたように、私は三菱鉱業の者でございますが、私の会社全体、炭鉱鉱山約十カ所ございますが、これを全部集めてもなおかつ三池よりも労働者数も少ないし、いろんな点で根本的に違った点があると思います。これを一つにまとめて法制化するところに、私は非常にむずかしい点があるのじゃないかと思う。極端に言えば、三池炭鉱保安法があってもいいんじゃなかろうかと思うくらいに違うのであります。あの三川鉱から出ておる一日の出炭量は、われわれの炭鉱の一カ月分の出炭がたった一日で出されておる。そうすると、かりに炭じんを掃除したといっても、われわれの炭鉱で一カ月に一回やっておることが、あの山では一日に一回ということになってしまう。これを同じように規制するところに、私はなかなかむずかしい面があると思う。したがいまして、今後炭鉱保安を強化していくためには、やはり実際処理にあたって、もちろん必要な監督もなされるし、われわれ経営者に課せられた義務も履行していく。私は保安は力では解決できないと思います。力でもってやってくるところに昔の問題があったわけで、現在はそういう時代ではないと思いますけれども、これはやはりお互いに一致した意見のもとに解決しなければならぬ問題で、力で押されたからやるのぬ問題で、力で押されたからやるのだ、あるいは妥協するというようなことではなく、山の保安委員会等でも、多数決できまるという例は私のほうではないと思いますが、これはやはりあくまでもお互いの正しい意見を出し合って、あるいはまた、その時点ではできないこともあるかもしれません。しかしできないことはできないとはっきり言って、そのできないところはお互いの注意で補っていくとか、ただいたずらに表面的に妥協しながら保安問題を片づけていくということには非常に問題があろうかと思いますので、そういう点私たちも十分気をつけますし、鉱山労働者の方にも協力をいただいて、お互いにやっていけば、私は鉱山保安は確保できる、現在の保安法でも、忠実にこれを履行すれば、私は炭鉱災害、少なくとも重大災害は、防げるというふうに考えております。いわゆる法と省令との具体的な問題についてはきょう資料を持ってきておりませんので、また必要な場合に御説明したいと思います。保安に対する私の考え方を申し上げまして、お答えといたしたいと思います。
  29. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 本委員会でも問題になったわけですが、甲種、乙種と分けられておるけれども、乙種炭鉱のほうが事件が多かったり、あるいは災害が多かったりする場合がある。あるいは特免区域であるところに災害が起こったりする。どうも分け方が機械的過ぎるじゃないだろうかという、われわれもそういう考えを持つ場合が非常に多いわけです。そういうことで、あるいはそういう一片の法律の条文にすることはなかなか困難ではないか、こういうように思っておるわけです。ことにこういう日進月歩、かなり変わっていく技術革新の中で、こういう規則は当然変えなければならないような場合に、法律の中にそれを書くと弾力性を欠くという面もあるでしょう。しかしながらあまりにどうも鉱山保安法には内容的なものが少ないんじゃないかという議論もまたあるわけで、われわれとしても検討をする必要はあるということはわかっておるわけですが、さてどういうようにそれを持っていくかという結論は出ていないわけです。幸いに井上さんのほうから、もうこういったものは置いておく必要がないと思うような、おそらく規則の問題だろうと思うのですけれども、そういう条項についても依然として、残されておる、こういう御指摘がありましたからお聞きしたのですが、それはさておきまして、あとから東海林さん、その他加藤さん、瓜生さんからもお話も伺いたいと思うのですが、いま災害は、私は率直に言って増加の傾向が炭鉱にはあるんじゃないかと思います。それは、御指摘のありました保安教育の面、ことに最近における労働力の質の面、こういう面を見ると、どうも災害はふえるんではないかと危惧するわけです。いままでと同じような注意力をもってし、設備をもってしても、労働力の質の面、保安力の面からしてふえていくのではないかという、こういう危惧を持つわけです。ましてや今年は要請にこたえるだけの供給ができないかもしれぬという不安がある。ですから、率直に言って、こういう席では言えないほどの時間外労働が現実において行なわれておる、こういうことも否定できないと思うのです。ですから、経営者として、どうも井上さんにははなはだ御迷惑ですけれども経営者というところで参考人に来ていただいたわけですから、あなたの所属されておる当該企業ということでなくて、石炭界全体として経営者側に立たれて、一体どういうような処置を考えられておるのか。人間を連れてくるのがやっとという、そういう面がいま現実にあるわけですよ。はたして保安のところまでそういう労働者に対して手が届くのだろうかという気持ちがしますね。ですから、これらについてどういう対策を持っておられるのか、ひとつお聞かせ願いたい。
  30. 井上健一

    井上参考人 いま多賀谷先生の言われたことに、私も同意する点もあるわけでございます。確かに石炭産業は現在非常な苦難の道を歩いております。炭鉱に対する労働者の魅力というものが非常に薄れておるんじゃないか、炭鉱は斜陽であるという斜陽ムードが広がりまして、現在の生産規模を維持するにも非常に問題があります。しかし生産を続けていく以上は、保安を無視した生産考えられませんし、特にまた炭鉱に魅力を持たせるためには、炭鉱というところはいいところだという、いい環境をつくらなければ、私はいい鉱山労働者は得られないと思います。賃金が上がることも必要かもしれませんが、金だけで人をつったら、かえって悪い者が集まるのじゃないか、炭鉱というところのいわゆる作業環境の整備ということが、私は一番大事だと思う。どんな規則をつくり、またどんなふうにこれにいろいろな枝葉をつけてみても、実績がこれに伴わなければ保安の確保はできませんし、職場の環境の改善はできない。私はやはり作業現場の環境の整備、すなわち保安的に安心して仕事のできる炭鉱鉱山をつくり上げなければならぬというふうに考えます。また、こうして人の少ないときですから、働きに来た者がけがをして休んでおるというくらい、私はむだなことはないと思う。高い金を出して人を雇ってきて、しかも人一人入れるためには百万円以上の厚生施設を持たなければならぬ、こういうことまでやって連れてきた者をけがさせるほどばかなことはないと思います。労働力を補う意味からいっても、私はけが人を減らして生産の維持あるいは向上ということに寄与すべきだという信念を時っておるのであります。  しかし大きなことを申しましても、残念ながら現在の時点では災害率は決してよくなっているということは申せないと思います。御指摘のとおり、災害率は上昇しております。この内容につきましては、たとえば坑外夫の減少であるとか、あるいは直接夫の増加であるとか、いろいろな要素はあると思いますけれども、しかし、そういう言いわけをここでしようとは思いません。やはり災害率を下げなければならぬということに尽きると思いますので、それにはやはりわれわれ経営者が、まず第一に保安に対する重点的な管理体制をとる、いわゆる保安責任体制を明確にして、保安観念を十分植えつけるということじゃないかと思います。今回の法改正によりまして、保安統轄者というものができまして、鉱山における資材、資金の面まで全部責任を持っておる所長が保安責任者ということになれば、これ以上のことはない。それがうまくいかなければ、うまく運営しないわれわれ、あるいはまたこれを監督されておる政府のほうにおかれましても、私はさらにその点われわれのしりをひっぱたいて今度の改正趣旨を生かしていただくならば、私は必ず御期待に沿えるものじゃないかというふうに思っております。
  31. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 東海林さん、先ほど御質問があれば説明いたしますという、あなたのほうから見た最近の災害の傾向、その対策、これをお聞かせ願いたいと思います。
  32. 東海林秋男

    東海林参考人 鉱業権者が法第四条に定められている七項目にわたる講じなければならない義務事項、こういうものをその法律目的、精神に沿って実施をしていただいておれば、それぞれの参考人が言われましたように、保安目的に合することにもなりますし、災害は年々減少の一途をたどることになるわけでありますけれども、残念ながら、ただいまお手元にお配りしております災害推移表によって示されておりますとおり、昭和三十年を一〇〇として三十八年と比較をいたしてみますと、労働者数は職員、組夫を含めまして十一万六千人、三六・四%減少いたしておりますが、災害回数は一万近くも増大をいたしております。罹災者も同じく一万人の増加をいたしておるのであります。また、稼働百万人当たりの災害率は一六四%と驚くべき上昇率を示しております。もちろん昨年発生いたしました三池災害をこれに加えますと、昭和三十年あるいは三十一年度の実績に比較をいたしまして、倍増していると申し上げましても過言ではないと思うわけであります。池田さんは所得倍増ということをおっしゃいましたけれども炭鉱のほうでは災害が倍増いたしております。所得はさっぱり倍増をいたしておりません。これに反しまして、百万トン当たりの災害率というのは八三・七%と減少をしております。これは炭鉱における合理化の推進というのは、いわゆる能率アップという面で成功していることを、採算性の問題はともかくとして、この数字から見ることができると思いますが、炭を出すためにいま申し上げましたような災害というもの、労働者の生命というものが犠牲になったというふうに私どもは判断をいたしておるところであります。出炭能率を見ますと職員、組夫すべての労働者を含めて出したものでありますけれども、一九七・六%と確かに倍増をいたしておるわけであります。  以上のような数字の関連というものは、石炭をよけい出すためには災害も倍増するということを実際に証明しておるのではなかろうか、こう見ておるわけです。またとりもなおさず、生産の態様というものは生産保安であるというお話もありますけれども、やはり鉱業権者はもうけようという努力をなさっておるわけでありますから、生産にその重点を置かれておるということも、この数字から判断をいたしておるわけでございます。  また、このような具体的な例を世間にはっきり示したというふうに考えておりますが、昨年の三池における大炭じん爆発でございます。これはそれぞれの立場から先生方もいらっしゃったと思いますが、調査団が行かれました。三井会社といたしましては、私どもとしては講ずべき措置は十分講じておったつもりだということを、どの調査団にも強力に主張なさったわけでありますけれども、しかし炭じんが集積をしておって、それに点火源さえあればあれだけの爆発を起こす環境に数ヵ月の間置かれたという事実は、先ほど細谷先生御指摘のとおり、鉱山監督局におきましても半年も前に指摘されておった事実があることを考えれば、また、三池のようないい炭鉱においてそのような状態に置かれておったということを考えれば、三池よりも劣悪な条件のもとで採掘を行なっております日本の各炭鉱においては、そのような状態が存在しておるということを明らかに証明できるのだろうと思います。私どもとしては、炭鉱における採掘技術の進歩ということについて、あるいはそのことがもたらす能率の向上ということについて、それは全体の進歩のためでありますから否定はいたしません。しかし、私どもとして注意をいたしたいのは、先ほど高橋参考人からもありましたけれども、そういう技術の進歩に対応した保安体制が、企業の内部においてとられておるのかどうか、こういうことを特に問題にしたいわけであります。  次に、最近の人減らしの現象というものは、これはいま急激に起こってきたものではありませんので、御承知のとおり、炭鉱合理化というものは昭和三十年から法律によって進めております。特に三十四、五年あるいは三十六、七年というときではもはや炭鉱は斜陽である、わが国のエネルギーの過半数のものは油にたよる、あるいは将来の原子力にたよるという方向で、徹底的に石炭の斜陽性というものを世に喧伝し過ぎた。そしてまたその山をつぶし、労働者の首を切っていくという政策を強行なさった。したがって現在人が足りないのは、国と経営者石炭の斜陽性のPRをやり過ぎて、労働者をその産業から離してしまったという結果にほかならないのだと思うわけです。それを形づくっている背景というものが、古い労働者あるいは高齢の労働者を出して、高い技術労働力を持った労働者を入れるという政策目標を持って行なうのであれば、その産業のために歓迎すべきことかもしれません。しかしそれらの準備というものはなさらないで、ただ単に人をもって掘らせればいいんだ、掘らせることによって生産性を上げて能率を上げていくという意図をもって貫かれたがゆえに、もはや炭鉱に職を奉じようという積極的意思を持つ有為の労働者はいないといっても過言ではなかろうと思います。ちなみに、炭鉱技術というのは一朝一夕にして獲得できませんからして、長い間かかって練達していかなければならないわけでありますが、その炭鉱をささえていく技術屋の方々が、大学でいろいろ勉強なさって将来会社に入ってくるわけでありますが、その方々でそのための技術を学ぼうとしておる有為の青年がいるだろうか。あるいは最高学府に学びましても、炭鉱に進んでその職を奉じようとする姿勢にあるか。これは単に大学だけじゃなく、高等学校で採鉱学を学ばれる方方につきましても同じことが言えると思います。そういう教育というものが技術者の断層というものをつくりながら、炭鉱合理化を進めておる。このへんのやり方について問題があるのではなかろうか。そういうトップ・クラスに立つ方々がそういう姿勢でありますから、その下に働こうとする姿勢方々も、一般教育を受けた方々炭鉱を目ざすはずがないのであります。もっと問題にしなければならぬのは、私ども炭鉱労働者でありますけれども、私どもの子供あるいは親戚を炭鉱に入れようとする気持ちがわいてこないのであります。なぜかと言いますと、井上さん御指摘のとおり、単に金がほしいだけで人間は職場を求めるということではないということであります。どんなに努力をし、世間が心配をしても、その鉱山において、あるいはその産業において災害がどんどんふえておるのだ。世の中では月の世界に飛んで行けるほど技術は進歩しながらも、最も身近にある地下産業においてはその技術が適用できないんだとすると、この状態が改善されない限り、またその方向が実績で示されない限り、最愛の者をその職場に送り出す気持ちが親に、また兄弟にわいてこないのも当然ではなかろうかと思います。それに加えて、炭鉱における労働条件というものは、他産業における労働条件の改善ほど目ざましい進歩はいたしておりません。今度も約二千三百円くらいの賃上げをなさいました。炭鉱企業にとってみればたいへんなことだと思うのです。現時点で考えればたいへんなことだと思うのですが、しかしそこに働こうとする労働者は他産業からみて一番低い賃金のアップ率、しかもそれが国の期待をする産業であるという立場に立ってものを考えた場合、あるいはまた年に二度いただく期末手当がいままだ二万七、八千の実績しかないという事実、しかもそれは将来さらにダウンされる可能性すらあるということからすれば、ちっとも入る気持ちがわかぬのがあたりまえです。そのことは現場における労働力の不足ということでありますから、生産が期待されますと、現場労働生産性を上げるために無理の姿を生じてまいります。どんなに経営者の方が、いや無理はさせない、保安は十分だといいましても、出してほしい炭の量というものは一定かそれ以上のものを求めておりまして、当然無理がなされてくるわけであります。無理が保安にとっても当然悪い傾向を持ってくることは事実であります。しかもこれは基準外労働という形で行なわれますし、あるいは休日労働ということで行なわれます。また企業は採算性というものを追求しますから、休暇や休眠も十分とる姿勢にないのではないか。言うまでもなく、労働者の不足だけでなく、技術屋も不足ですから、瓜生参考人も申し上げましたように、それに対する労働管理も十分行なわれておらぬのではなかろうか、こう思うのです。それから生産性の追求ということ、これは企業ですから当然だと思うのですが、そのやり方も問題があるのではなかろうかと思うのです。非常にその期待を急ぎすぎてはいないだろうか。企業は百年の計をもって発展していけばいいのではないか。特に国会も期待をするこういう基幹産業では、そういうことが望ましいのではないか。それを早急に求めるがために、どうもあと先になってしまう。保安にかける経費はなるべく節約をして、生産実績いわゆる営業実績を上げようとなさいます。しかし一たびそういう災害が起これば、努力はすべて水泡に帰する。人のやったことに対しては批判をするわけですけれども、自分の企業においては際限なく繰り返しておる。したがって努力の結果も、一たび起こった災害で一瞬にして吹っ飛ぶ。こういうことをやったために損害が大きくなり、その損害をまた取り返そうとして苦労をする。こういうことでは炭鉱労働者条件のアップもなければ、あるいは将来に希望の持てるような産業の展望もないのではないか。こういうことがやはり炭鉱災害を誘発をしていく重大な原因になっているということを特に申し上げておきたいと思います。
  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 井上さん並びに加藤さん、メタルのほうにもお尋ねいたしたいのですが、今度保安統括者というのができ、その保安統括者はどういう人なのかはっきりしておる。次に保安技術管理者、それから副保安技術管理者、さらに保安監督員並びに今度新しくできます保安監督員補佐員、こういう人人は労働者から今度一人選ぶわけですが、それを除いて監督員という人、それから保安技術管理者並びに副保安技術管理者は、従来の保安技術管理者並びに副技術管理者、こういう人々は会社炭鉱ではどのぐらいの地位の人ですか。これをひとつ現実はどのぐらいの地位の人を充てられておるのかお聞かせ願いたい、かように思うのです。
  34. 井上健一

    井上参考人 私は、先ほど申しましたように三菱から出ておりまして、私の会社のことだけしか具体的にと言われますとわかりませんので申し上げられませんが、現在保安の法的な責任を持っております保安管理者、これはその山の鉱長と申しますか、いわゆる生産責任を持っておる者が保安の最高責任者ということにしております。私の会社で申し上げますと、山の最高の経営責任者鉱業代理人ですが、鉱業所長といっております。保安管理者は、具体的にいいますと、生産関係を担当しております技術の副長が保安管理者となっております。やはり保安日常業務の中で最も必要なことは、人の取り扱いと技術の問題である、設備の問題である、こういう点に最も密接な関係を持ち、また経験もあり明るい人を充てることが実態に即していることから、そうなっております。  次に保安監督員でありますが、これは会社の職制上から申しますと、保安監督課があります。保安監督課長が保安監督員になっております。したがいまして、職制上から申しますと、保安管理者の副長よりも一つ下の課長がやっております。しかし、法的な権限と申しますか、これは明確になっておりまして、保安監督員保安管理者意見を述べ勧告をすることになっておりまして、勧告等も十分活用いたしまして保安の改善には十分活動をしておるというふうに思っております。しかし、何といいましても、いわゆる世間ていから見ますと、そんなに言っても下じゃないかというふうな批判もあろうと思います。私のほうでは先般いわゆる基幹炭鉱におきましては、全部この監督員を、保安管理者よりも学歴的にも業歴的にも先輩の副長を選任いたしまして、会社の職制上からも法的に無理のない、いわゆるもう一歩高い次元から保安管理者、いわゆる副長に勧告できる制度をとったわけでございます。保安委員会運営がうまくいってないとか、保安監督員が力がないじゃないか、無力ではないかというようなことに対しては、やはり実態の中から十分考え制度は生かしていかなければならぬというふうに思います。幾ら今度補佐員を出してもだめだから監督員にするんだとかいうことで、いたずらに力と権限ばかり与えてみても、先ほども繰り返しますように、運営がうまくいかなければだめなんだ。かりに今日の監督員を一格上げましても、実際に力がなかったらやはりから念仏に終わってしまいますから、そういうことのないように十分配慮をしてやっていきたいと思っております。いまちょっとおわかりにくかったかと思いますが、保安法ができましてからは、従来の実態は、保安管理者は山の副長であり、保安監督員は課長であったということであります。
  35. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 メタルのほうはどうですか。
  36. 河合堯晴

    河合参考人 いま井上参考人がお答えになりましたのと大体同じ程度でありまして、特にこれはメタルにおきましても、ほかの会社の様子は私も承知いたしておりませんけれども日本鉱業におきましては、先ほど申し上げましたように、保安の点を特に強調いたしております関係で、将来鉱山長になるであろうという、いわゆる人格識見を持っております有識者を必ず保安技師長といたしまして――これは専門職になりますが、それに充てていこうということで、二年ぐらい前から踏み切っております。必ず鉱山長になる前に保安技師長の経験を得させようということで起用いたしております。大体大きい鉱山におきましては、先ほど井上参考人が申し上げましたとおりの経験、識見を持っております者でございまして、大学卒業年次で申しますと昭和十二年から十五年程度の連中が、いま保安技師長の要職についております。保安監督員になりますと、先ほど御説明がありましたように、課長クラス、これも先ほど申し上げましたような一応の登龍門をくぐらすというような意味で起用いたしております。現在、いずれの会社もそうでございましょうが、実際に会社企業を推進いたしておりますのは課長クラスなんでありまして、このクラスが一番活動的でもございますし、よく仕事実態を掌握いたしております関係で、監督員としましては、その課長クラスを充てまして推進いたしておる現状でございます。
  37. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そうすると、井上さんにちょっとお尋ねしますけれども保安監督課というのと保安管理をするいわば保安課というのは、別なんですか。
  38. 井上健一

    井上参考人 保安監督課というものは、鉱山保安法のいわゆる保安監督員という仕事を遂行するためにわざわざ――ほかの会社ですと、みんな工務課とか工作課とか、こういうふうに単純にその仕事内容から名称をつけておりますが、特に保安監督課――保安課と言わないで、監督課というふうにつけましたのは、保安監督員業務をするところであって、いわゆる保安の現業的なものはやらないんだ、保安の現業的なものは全部現場生産課、私のほうでは工務課といっておりますが、工務課の中に保安係長というものがありまして、日常の保安業務をやっております。私鉱山保安に対して常々思っておりますことは、作業の分業というところに非常に問題があると思います。保安課というものができて、これがあまりにも現業に目をつけ過ぎますと、勢い人間のことですから人にたよるようになってくる。ガスは保安課の保安監督員の人がはかったから、あれが一番正しいんだといって、もしそれに対する管理監督がおろそかになってくると、そこにいわゆる盲点が出てくる。保安生産なんだ、現業保安というものはあくまでも生産の中でこれを消化していくということで、保安監督課というものはあくまでも手足を持たない純然たるスタッフでありまして、インスペクターとして、法により定められた注意あるいは勧告をやるというところであります。ただ、先ほど申し上げましたような会社的な地位では、保安管理者より一枚下であります。これは山の企業実態といたしまして、山の所長は当然一人であります。そんなに副長を何人も置くということでは、企業をやっていくという点に問題があろうと思います。これがしっくりいく、こいう点からいいますと、生産責任者が即保安責任者であるというように、保安監督というものは、あまりはたからのいわゆるおか目八目でやってみたところで、しっくりいかなければうまくないのであります。その点は、現場実態に最も詳しい課長が適任ではなかろうかというふうに考えておりますが、しかし、法的な配置と現実とを照合してみますと、そこにやはり若干の食い違いがありますので、それを今回私のほうでは是正いたしまして、同列よりさらに一枚上の課長制を、いわゆる複数制にいたしまして設けたわけであります。こういうことによってさらに保安管理を充実さしていきたいというふうに考えております。
  39. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 加藤さん、瓜生さん、どうですか。保安管理者の命を受けて保安管理をやっている、私はそれを保安課と思っていた。三菱のほうでは保安監督課で、それはむしろ監督員制度に相応したような課にしたんだ、現場保安というのは現場長でやらしているんだ、こういうことでしたが、私は、必ずしもそういうように普通の山でなっているかどうか、ちょっと疑問だと思う。むしろ保安管理者のもとにある機構、それを補佐する機構保安監督仕事もやっておるんじゃないか、たまたまある会社では別の制度になっておるようだけれども、しかし、保安課長あたりが保安監督員でやっておれば、保安管理の、いわゆる管理者の補佐的な責任者がまた監督員でもある。これは二重人格的な状態になっているのが多くの山に見受けられるんじゃないか、この点は、実情はどうなっているんですか。あなた方も現場におられたわけですが、ひとつお答え願いたいと思います。
  40. 加藤俊郎

    加藤参考人 監督員の地位の向上につきましては、ここにおります私どもみな中央鉱山保安協議会委員でございますが、委員会でもかなり論議をいたしまして、たてまえは現在監督員につきまして、監督員として業務を遂行する上に支障となるような別な仕事をやらしてはならぬ、こういうことに法令上定まっておるわけであります。これができましてから、ただいま井上参考人が述べられましたような、そういう職制上の形態がだんだんあらわれてきておる、こういうふうに理解いたしております。もちろん保安課というものがございまして、保安課の中に監督員がおり、監督員としての業務をやっておる、こういうケースもまだあるかと思いますけれども、今後は自主保安体制を築くという意味合いにおきまして、私も非常にけっこうな形だと思うのでありますが、井上参考人がおっしゃったような形になってくるものというふうに考えております。
  41. 瓜生昇

    瓜生参考人 お答えをいたします。  三十七年の十二月の段階で、私ども組織を通して管理系列、特に保安監督員並びにその衝に当たる課等、鉱業所長ないしは会社のトップに対するつながりはどうなのか、端的に言いますと、管理機構図で調べたことがあります。どこそこがということは、ちょっと膨大な調査になりましたからあれですけれども、これが二つに分けられました。まず監督員の問題がいろいろ議論をされる前、言いかえますと三十七年の段階でございましたので、法ではその保安管理者もしくは鉱業所長から係員にまで勧告権を有する、こうありながら、職制的に見ますと、その中間的なところにつながっておる。言いかえますと、保安管理者に帰属をする、保安管理者の下である、こういう形のものが一つのケースとしてあります。それから、法規の目的を遂行するために、重役室付といいますか、いわゆる町長に直属する形態との二つに、私どもの調査では分かれました。内容をいろいろ吟味してみますと、非常に失礼な言い方になると思いますが、鉱業所長に直属する形態下にあっても、経営はやはり利益追求という側面が忘れられないものですから、そういう支配をいわゆる相互の関係で排除できなかったといいますか、経営の総合的な判断、これがやはり優先をしたというように私どもとしては見ざるを得ない。そのことが監督員の活動が不十分であるというような言い方にもなったと見えまして、形態上の問題について、その実行という面から見ますと、どちらもさほど期待が持てなかったというように私どもは判断をしたわけです。三十八年になりまして第二次中間を受けまして、監督員の資質の向上と、職制機構上のいわば地位の向上といいますか、そういうものが叫ばれるようになりまして、教育強化とあわせて答申を願いました。それ以降これが井上参考人のおっしゃいましたような形で、体系的な力を発揮する意味でもずいぶんよくなってきたというように考えております。  以上申し上げましたのが体系的に見た問題でございますが、私どもといたしましては、監督員自体はそれじゃ十分の指摘をやっていないのかといいますと、アンケート調査の結果、一〇〇%成果が上がっているというところもあるわけです。それから、成果の測定が非常にむずかしくて、現場で一々指摘したことは指摘事項に書かない、書いたことが少ないからこれは役に立っておらない、こういうふうには私ども見ておりません。現実に、これはこういうように改善すべきである。私ども係員の立場でございますが、一つのセクションの仕事をしておりますと、全体的な判断ということをいささか欠きがちになります。そういうことをサイドからいろいろ教えていただくということについて、指摘をしてもらうことを、要らぬ世話をやくな、こういうことは態度としては受けとめておりません。やはり十分その目的とする方向に立っていただきたい。そのことがなかったために、極論をいたしますけれども、いわば鉱業権者の分掌事項と保安管理者等からいろいろ指示をされた機構上からくる指示命令系統の中に、係員は没入をせざるを得なかった。私は、係員が人命保安優先ということから日常事務が遂行できるように、保安監督員が底上げをしてもらいたい。指摘をし、これはだめではないかということで、人命保安、いわゆる生命の安全性ということを前面に出して、ややもすれば没入しようという姿勢監督員が底上げをするというように働かせていただきたかった、こういうように考えておるようなわけでございます。体系的な面と中身の問題について多少脱線をいたしましたが、そういう実態があったということを指摘しておきます。
  42. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に保安監督員補佐員というのが今度新設されるわけですが、これは法律が通過をいたしますと、一体実施段階において補佐員というのはどういう形で出ていくんでしょうか。労働組合から推薦するということが、過半数の推薦というんですから一応考えられるわけですね。労働組合のない場合は、過半数ということになるでしょう、いままでの労働法規その他から考えれば。そうすると、監督員の条項の中に職務の遂行を阻害することとなる業務を行なわせてはならぬとありますから、補佐員にも規則改正で当然それが入るだろうと思います。そうするとこれは、組合業務をやっている人が監督員という任命を受けてやる場合が多いと予想されるのか、あるいはやはり保安監督課の中に組合の推薦を受けた者が行って、ほとんどそれにかかっているという形になるのか。今後会社側と協定を結ばれるのでしょうけれども、それらの取り扱いについて、炭労並びに全炭鉱、炭職協から、どういうお考えであるかお聞かせ願いたいと思う。
  43. 東海林秋男

    東海林参考人 お答えいたします。先ほども申し上げましたように、私ども組織ではすでに、保安委員会保安委員を常駐さしておるというケースがございます。したがって、新しい制度ができました場合、過半数の推薦を得るという手続行為は、従来の保安委員の場合でももちろんやっておりますが、それと同じような方法をとって、やはり補佐員というものを組合の役員とは兼任をさせないという立場に立って選任しなければならない。これは中央鉱山保安協議会において協議した経緯もそういうふうでございますので、そういうふうに扱っていきたいと思います。ただ私どもは、企業の規模によりまして、一名とは限っておりませんので、やはり五名のところもあるし、三池のように八名常駐させるところもございます。したがって、法では一名というふうにお書きになっておりますけれども、これは私どもとしては一名以上というふうに解釈いたしておりますので、八名おる方々については、当然それを補佐員というふうに肩がわりをさしていただきたい。そうでなければ、保安委員会の常駐者もおる、保安監督員補佐員もおる、同じような性格の方が、片方は保安管理者に対して、今度は統括者に対して勧告する、片方は保安監督員に勧告する、あるいは意見を申し上げる、こういうことでは監督が二重になって非常に混乱をすると思うわけです。したがって、現在の常駐員については、それを肩がわりさしていただくことのほうが運用上一番スムーズではなかろうか、こう思っております。なお、その肩がわりについて支障を生ずるような場合については、保安協議会等があっせんの労をとるというようなことも議論をしておるところでございます。  それから、先ほどの参考人の方から害われました中に、監督員のところで取捨選択をされて、補佐員意見が全部反映できないおそれがあるではないかという指摘がございましたが、私どもといたしましてもその点は非常におそれているところであります。したがって、それを補完する意味におきまして、いま議論をしているのは、その保安監督員補佐員日常業務坑内の巡視をするわけでございますけれども、月に一回ないし二回開かれます保安委員会の際には、保安委員として、その資格をもって委員会出席をするという運営をしたならば、これは監督する者と執行する機関とがどうも二重性格になるのではないかという御指摘は先生方からもあると思うのでありますけれども現場における運用では、別な者が保安委員に来て、現場を見ないで基本的なことを委員会で述べ合うということでは、その鉱業所における保安目的とするところが貫かれないのではないか。補佐員として日常坑内の巡視をしている方が保安委員会という目的趣旨に沿って、その際は委員となって、その鉱山保安監督員補佐員としての立場を貫かれる、このことのほうが現場実態と、補佐員の性格あるいは保安委員会の果たすべき任務等におきまして妥当性があるものと考えておりますから、私どもは、今度の中央鉱山保安協議会において省令の問題が議論される際に、そのような姿勢皆さんに審議をいただきたいというふうに考えております。
  44. 加藤俊郎

    加藤参考人 補佐員についての詳細は省令にゆだねられておりまして、現在まだ明らかでございませんので、私の組合といたしましてはっきりした方針を定めているわけではございません。しかし、いま東海林参考人が述べられましたようなことは大体常識として考えられるところであろうと思います。ただその際に考えますことは、補佐員労働者意見を反映するという使命を持っておるわけでありますけれども監督員補佐員という立場におって一体どのような形で労働者意見を反映できるのか、その方法についていろいろ検討をいたしておるわけであります。補佐員個人としての意見を言うということではないように思いますので、労働組合が推薦をいたしまして補佐員を出しましても、その補佐員がやはり何かの形で労働組合の意思を決定するような機関とつながりを持つということを配慮してもらわないと、意見を反映するということが名前だけに終わってしまう心配がございます。どういう方法がいいかは、省令段階で検討すべきだと思うのであります。そういう意味からいいましてただ一つ言えますことは、われわれも補佐員を組合の役員と兼任させようと考えておりませんが、させないほうがいいと思いますけれども、しかし組合の役員である経験を有するということがわれわれの考慮としては入ってくる、こういうふうに考えております。
  45. 瓜生昇

    瓜生参考人 お答えをいたします。まず数の問題につきましては、東海林参考人がおっしゃいましたように、一以上というように考えまして、その辺の取り扱いは監督員補佐員の任務、あるいは課せられた諸般の問題が遂行し得るということがやはり判断のもとになると思います。非常に膨大なものになりますと、船頭多くして船進まずというかっこうになっても困りますので、その辺は山の規模あるいは実情に応じて最低限一名、あと複数にするかどうかという問題については、その目的とするところで判断をするというように取り扱うのが至当かと考えます。  それから資格につきましては省令に委任をするとしておりますが、中央協議会段階の論議をそのまま申し上げますと、補佐員とは言いながらも、監督員に課せられた任務の補佐をやるわけです。労働者の教育事項から、保安委員会に関する問題だとか、あるいは採掘契約とか、一般の施業案的な問題とか、いろいろ勧告その他の事項をつかさどるというのが監督員です。そういうことからまいりますと、それ相当の能力なり判断を必要としますので、少なくとも坑内の防爆保安といいますか、係員程度の資格者というのが必要ではないかというように考えております。  それから、職制系列とどう結びつくかというのがきわめて重要な問題であると思います。私どもとしては、会社の職制機構だけからでは内部監査が不適当であるという面と、それから保安委員会の果たすべき役割りが時々刻々変化する条件に対応できない、結局予防保安の追及性ということと、いま申しました経営の側面におけるところではまだ不十分さが見受けられる。この二つを関連して考えないと、どっちがいいという結論を早々に出すわけにはいかぬ。ところがやはり少なくとも、かつて行なわれましたような保安闘争を前面に押し出した職場闘争ということになりますと、ことばは適当かどうかわかりませんが、いまはそういう状態ではございませんが、かつての職場闘争の先兵といいますか、そういう形でこの問題が把握されていきますと、せっかくいい問題が効果を発揮せず、内部の渦となって成果をもたらし得ない。そういう面について十分慎重に考える必要があろう。それでは職制系列の中で、保安監督員の直接系列下において手も出ない、足も出ない、こうしますと、せっかくの内部監査という目的の遂行ができないという面もございますので、その辺は十分両者の目的を遂行し得るという判断で考えるということではないかと思いますが、体系的には、やはり監督員並びに補佐員管理体制の中に入っていただく、そうして労働組合との関係において十分活動、任務その他について調整をしていただく、そういうような配慮があってしかるべきではないだろうか、こういうように考えております。  それから、多少長くなりますけれども保安委員会監督員補佐員とのいわば二重性といいますか、兼務という面については、これは残念ながら、炭労代表参考人と私どもの見解とはいささかのニュアンスの違いを持っています。というのは、やはり監督員補佐員は日常の業務の実行過程のチェックをやって、それをそれなりに監督員を通して統括者以下に反映をしていただく。保安委員会というものは統括者の命を受けて、いわば諮問機関というかっこうで入ったほうがいいのではないか。監督員補佐員に、保安委員会委員の人を持ち込んだとするならば、その代理者を選任をして、少なくとも週に二回程度は鉱山内を巡視させて、保安委員会の検討ということでいったほうがいいのではないか。そうでないと、保安委員会の中で、事と次第によっては、監督員並びに補佐員の判断をした判断事項の食い違いについて、まことに失礼な言い方かもしれませんが、保安委員会の席上で紛叫をかもすというようなことも考えられるわけですから、そういう意味におきましては、監督員というか、経営の外側から見るチェック体制、それからもう一つは、そういう高い次元からの判断ということをえり分けて両々相まつという体制のほうが好ましいのではないかと考えておりますので、十分に御検討願いたいと思います。
  46. 高橋登

    高橋参考人 監督員補佐員の問題でメタルのほうで問題になりますのは、監督員は五百名以上のところには設けなければならない。必要に応じて五百名以下でもこれができることになっておりますが、経営者側の方々が、労働者補佐員を置くのであればそういう者は置かぬということになりまして、五百名以下の監督員そのものがなくなってしまうということではないと思いますけれども、そういう数の問題がございます。ですからそういう五百名以下のところにも、監督員並びに労働者代表する補佐員というものを置くような指導がなされるようにお願いをしたいと思います。  それから労働組合との関係ですが、やはり労働組合が推薦をするということは、推薦のしかたについてその補佐員を選び出す方法については組合側にまかせらるべきだろうと思いますし、組合で良心をもって選び出した者については、会社側が無条件でそれを選任してもらえるというような形をとってもらいたいと思います。それから労働者意見監督員補佐員に反映させるということは、やはり労働組合の仕事の一つだろうと思いますから、そのあたりは、加藤さんが言われましたように十分な連絡をとるべきであろうと思います。  もう一つ、瓜生さんから言われました、たとえば支柱夫なりさく岩夫が副長扱いなり課長扱いの監督員の下につくわけで、そういう身分というか地位というか、そういう点が非常に問題になると思います。これは省令段階でいろいろ論議がされると思いますけれども、私たちの考えとしては、それはたとえば職制上の職員というようなものにはならなくていいのではないか、身分的にはいわゆる支柱夫なら支柱夫というもののままそういう補佐という任務についていいのではないだろうかというふうに考えておるわけです。
  47. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 最後に、いま高橋さんが心配されておったわけですが、この補佐員制度ができることによって、五百名未満のところで、せっかく設けられた監督員まで逆になくする、こういうことはないと思いますが、しかし念のために、河合さんは現実にメタル金属鉱山における、ことに支配的な地位にある日本鉱業、その中でも経営者代表ですから、ひとつぜひそういうことのないように御指導願いたい、かように思います。
  48. 中村寅太

    中村委員長 細谷治嘉君。
  49. 細谷治嘉

    ○細谷委員 時間がありませんからまとめて御質問申し上げますが、適宜お答え願いたい。  その第一点は、先ほど来参考人の御意見を聞きますと、やはり保安委員会というのが存在しておっても実質的な保安面での活躍、生かされなければならないという声を非常に聞くわけでありますけれども、これについて河合さんなりあるいは井上さんにお聞きしたい点は、今度の法律統括者というのができるわけです。先ほどのおことばの中にも、その統括者保安委員会議長になるわけで、よく保安委員のそれぞれのにじみ出る意見を直接聞けるようになる、こういうことになっておるわけですけれども、これは原則でありまして、実際問題として統括者等が長期の旅行とかなんとかの場合は代理を置くということになりますけれども議長となる場合は法律の中ではややゆるく書いてあるわけです。その議長というのは技術管理者のほうにやらしてもいいのだ、まかせて出なくてもいいようになっておるわけです。これはせっかく統括者がそれぞれの委員意見も直接身近なものとして聞くという制度が、へたをすると生きないのじゃないか。この運営について井上さんなり河合さんなり、原則もあるのですからまかしていいのだということではなくて、それを生かすようにする御意思があるのかないのか、それをまずお聞きしたい。  もう一つ、先ほど井上さんのことば、あるいはほかの参考人のことばで私も気づいて心配しておるところなんですが、保安委員会運営に関して、保安という問題は生命の問題でありまして、労働運動そのものでありませんし、イデオロギーの問題でありませんし、階級の問題でもない、こういう重要な問題だと思うわけですけれども、ややもしますとやはり労使という問題、特に組合等が二つ三つに分かれておりますと、どうしても保安の問題の議論として純保安の面から、あるいは純技術的な理論じゃなくて、あれが言ったらこちらは少し反対してやろうとか、あの組合が言ったなら経営者のほうはひとつ割り引いて聞いてやろう、割り増しして聞いてやろうということになりますと、保安委員会の実質的運営というものはできないのじゃないか、こういう点を私は懸念いたしておるわけなんですが、こういう点について、井上さんはそういう御経験がないかと思いますが、石炭鉱業代表としておいででいらっしゃるし、また河合さんもそういう問題について十分な御経験もあられると思いますので、この辺の所見をお伺いしたい、こう思っております。  その次に、加藤さんに特にお尋ねしたいのですが、あるいは瓜生さんの御意見もあったのですけれども統括者とかあるいは技術管理者とか係員というのが、どうしても私は端的に言いまして、ここに保安部長さんの井上さんがいらっしゃるのですが、私どもが見る目では、一般的に言いますと、生産というのがやはり会社の主流系統であって、どうも保安部長とかあるいは保安系統というのはわき道じゃないか、端的に言いますと本流に乗った、先ほどの河合さんのおことばではトップクラスの人だ、こうおっしゃっておりますけれども、どうも一般的には二流クラスの人が保安に回されて安全とかあるいは保安とかやっている。トップクラスの人というのはやはり生産のほうにいく。しかも全体の風潮というのが生産第一主義というような中にあるわけなので、そういう点で保安というものを第一にやらなければいかぬ前提なんだといった場合に、統括者なら統括者は、その上にやはりおるわけですね。そうしますとどうもやはり統括者の身分、地位というものが、保安でほんとうに完璧を期そうという熱意があっても、会社の中においてやはりあいつは保安のことばかりやってどうも気に食わぬというようなことになって、せっかくの統括者というものができたけれども、事実の問題としてはやはり十分な効果が期待できない面があるのではないか。これは運用の問題であります。私が懸念する一点であって、参考人からもその点が出たので、この点についての所見をひとつお聞きしたい。  そのほかにいろいろ労働災害のあり方、労政のあり方というような問題についても御意見を聞きたいと思っておったのですけれども、時間がありませんからもう一つ。これは東海林さんとそれから加藤さんに特にお聞きしたいのですが、最近の炭鉱災害を見ますと、かなり請負、端的に言いますと保安の教育、経験というものが少ない、そういう者がかなりやはり法にきめられたような線を若干越して生産の第一線に参加してきているのではないか。そういう者でありますから、やはり保安教育が足らぬ、経験が足らぬということから災害が起こっております。現に日炭高松もやはり請負から起こっております。この辺に一つの問題点があるのではないか、こういうふうに思いますが、この請負問題についてどうお考えになっておるか、これを一つ聞かしていただきたい。  最後に河合さんにお聞きしたいのですけれども、メタルの場合はたとえば山とそれから製錬所というのが多く違うわけなんですね。しかし会社としてはやはり保安行政の一元化、一体化ということをお考えになると思うのですが、メタルの鉱石をとっている、これは純然たる鉱山でしょう。それを製錬する工場等における補佐員等の扱いはどうなさるおつもりなのか。石炭の場合は掘ってすぐやるのですが、メタルは山と製錬所というものが離れている場合が多いのですが、その辺の御見解をお聞きしたい。以上です。
  50. 河合堯晴

    河合参考人 御質問のございましたいわゆる保安統括者、それからいまのそれを代行する副保安技師、何と申しますか、技術管理者と申しますかそれが代行してもいいというたてまえで、主として統括者保安委員会に出ないでやるんじゃないだろうかというような御心配がございましたが、これは当然原則がきめてございますので病気で休んでおるとか、長期の出張とかいう場合は別の代理人を設定してまいりましょうけれども、これは必ず原則としていわゆる保安統括者が主宰すべきものだ、そういうふうに進めたいものだと考えております。  それからメタルの場合、採鉱所の場合と製錬所の場合はどういうふうに取り扱うかというお話でございますが、これは業態がすっかり変わりますものですから、たとえば手近な日立鉱業所で申しますと、元山に採鉱所がございます。下に大雄院と申しますが、そこに製錬所がございます。総括して日立鉱業所と申しておりますけれども、現在、下に鉱業所長がおりまして、上には副鉱業所長と申しますか、いわゆる副長がおりまして、全権を委任されてやっております関係もございますので、当然鉱山のほうは、いわゆるいまの監督員補佐員も別に設定いたします。精錬所におきましても、これは業態が違いますから、監督員の下に監督員補佐員は別に、いわゆるメタルの経験者をもって、組合からも同意を得て充てるという形になろうかと思っております。
  51. 井上健一

    井上参考人 保安委員会統括者関係でございますが、これは今次法律で定められます原則を尊重いたしたいと思っております。ただし、山の規模により、あるいはまた保安統括者の業歴と申しますか、いわゆる事務屋さんというような場合に、実際に審議する内容によっては、いわゆる技術管理者のほうが適当する場合もあろうかと思います。そういう場合には、技術管理者に実際の審議には当たらせることになると思いますが、しかしあくまでも保安統括者保安委員会議長ということで、責任を持ってこの運営の成果をあげていきたいというふうに考えております。ただ、鉱業所長は、昨今のような炭鉱事情ですと、非常に多忙です。それで保安をおろそかにするというような意味でなくて、実際問題として多忙です。そこで、たとえば長期にわたってあけるとかいうような場合に、保安委員会をできるだけ手軽に開催するためには、代行させながらやらしていくという実態も例外的には出てこようかと思いますけれども、しかし原則のたてまえは動かさないというふうに考えております。  それから、これは私のほうからお答えすべきことじゃないと思いますので、意見を申し上げておきますが、保安担当者はどうも会社的に地位の低い人あるいは成績の悪い人、何か病気をやったような案外つまらぬのがやっておるのじゃないかというような御指摘がありました。私はそういうことが絶対にないと断言はいたしませんが、しかしまた、保安は元気ばかりじゃいけないので、はた目からちょっと見ますとわりあいにおとなしい、いわゆるじみな性格の人を指名しておることもございます。あまり向こう意気が強くてばりばりやるような者は、かえって見落とし、あるいは行き過ぎがありまして、十分な管理ができない。十分その山の実情に精通した者が保安責任者であるということが適任の場合もあります。ただし、今回の保安監督員の地位について、先ほど申し上げましたように、あまりに見劣りする者が来ますと、結局ただ形だけになってしまってその実があげられませんから、いまの御指摘があったような点は、直すべき点があれば率直に直して、今後は何といってもやはり私がさっき言いましたように、保安の確保ということでこの少ない労働力を有効に生かす。鉱山の業績をあげるには、もう物資を節約するといったって限度がある。私はこういう点に特に目をつけて、保安を重点的に取り上げて、いわゆる合理化を進めたいというふうに考えておりますことを申し上げておきます。
  52. 加藤俊郎

    加藤参考人 簡単にお答えいたします。保安監督員会社内で本流にある人間かどうかというようなお尋ねでございます。かつて監督員制度ができました際には、私どもの目から見まして、どうも会社内であの人物は島流しにあったのじゃないかというような評価もかなりあったように記憶をいたしております。最近の事情は、先ほど申し上げたように、変化をしてきておると思うのでありますが、かなり会社内で地位の高い、実力のある者を監督員に任命をしておる、こういうのが次第に多くなりつつあるのではなかろうかと思います。といいますのは、ようやくこの監督員という制度炭鉱鉱山におきまして消化されてきたというのが現在の実情でございまして、具体例を一つ申し上げますと、会社の名前は省きますが、ある会社で有能な監督員を任命をいたしておりましたけれども、別な関係から第二会社のほうに配転をした。そのあとに別な監督員を連れてきたのでありますけれども、この人は前任者に比較するとそれほど実力はなかったということでございましょう、さっそくそういうことが災害率に反映をしてくるのでございますね。ですから、そういうことを考えますと、自主的な会社内における監督機構でありますから、ほんとうにこれに力を入れませんと、災害の撲滅という目的を達することができない、こういったことが次第に認識されてきておるように思います。  第二の点でありますが、請負夫の問題は、本委員会でかなり御論議を願いまして、相当の規制の線が出ておるわけではありますけれども現場におきましては、なおすっきりしない点がございまして、どうもわれわれの目から見ますと、この請負夫を規制するという問題は一体どこへいったんだろうかというような感じがする場合もございます。ただし、災害の例を出してお尋ねでございましたけれども、そこまでは、災害を起こしておるという面は直接の生産関係だけではないものですから、請負の関係仕事をいたしております建設的な事業、そういう関係でも災害が起きますので、それは請負夫の規制のしかたが足りないからそうだというように結びつけては必ずしも言えないかと思います。ただ私どもで警戒をしなければなりませんのは、請負夫の規制をする、直轄でなくてはいかぬ、こういうことになりますと、その請負夫を、雇用形態を切りかえて常用の臨時夫に切りかえてしまうというような対策のしかたを会社側はするわけです。確かに請負組夫に雇われておった人間が今度は直接炭鉱に雇われるという形にはなりますが、そこに働いておる人間そのものは変わりはない、こういう形もとれるわけでありまして、なかなかここはむずかしいところでありますが、私どもは厳重にその辺を警戒をいたしております。
  53. 東海林秋男

    東海林参考人 お答えいたします。請負の規制の問題については、三十七年の規則改正の際かに採炭、掘進、仕繰り等の直接作業に参加する者については規制をするという方針がきまっております。しかし現在の炭鉱では、先ほど申し上げましたように、人手不足なものですから、特にビルドアップの方向をとっております北海道のほうでは、最近請負組夫を使うという傾向がかなり大きく出てきております。それとともに、新しい問題として、準鉱員という名称をつけた鉱員の採用ということがございます。これはいま加藤参考人も言われましたが、臨時夫という名称を使おうが準鉱員という名称を使おうが、規制の対象となる請負組夫の性格を持った人を、名称を変えて法の規制をのがれるという意味かどうか知りませんけれども、そういう方法で使われておる危険性があるのではないかと思って、私どもは現在調査の段階にございます。ただこの請負作業というのは、坑道掘進というような、その炭鉱におけるいわゆる前向きの仕事と、かつて日炭高松で災害を起こしましたいわゆる廃棄坑道の鉄柱引きというような、いわゆるしまったところの作業とに分かれる。前向きのほうの坑道掘進等については、これは組を扱っておるところの組の保安責任者というのもかなり一生懸命おやりになるでしょうし、もちろん鉱業所の保安監督の任にあられる方々も一生懸命にやられるわけですけれども、どうもそのしまったほうの作業のほうは、いわばいいかげんだ。あえていえば、職業安定法違反のような組をお使いになるという危険性があるような気がするのです。たとえば人夫供給業的な作業員をもって、鉄柱さえ引けばいいのだからというので、保安任務を遂行するだけの機材なり保安技術能力を持たない組の使用ということが大炭鉱においても採用されておることを、私どもとしては危惧するところでございます。いずれにしましてもこれらの問題は、その炭鉱の組夫の使い方に対する規制の問題と、そこに働く労働者の教育ということにまたざるを得ないのではなかろうかというふうに思っております。
  54. 中村寅太

    中村委員長 この際、参考人各位にごあいさつを申し上げます。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚くお礼を申し上げます。  次会は、来たる十四日木曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十一分散会