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1964-04-15 第46回国会 衆議院 商工委員会石炭対策特別委員会連合審査会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十五日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員   商工委員会    委員長 二階堂 進君    理事 小平 久雄君 理事 始関 伊平君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    遠藤 三郎君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       神田  博君   小宮山重四郎君       小山 省二君    佐々木秀世君       田中 龍夫君    田中 六助君       野見山清造君    長谷川四郎君       大村 邦夫君    加賀田 進君       桜井 茂尚君    田中 武夫君       藤田 高敏君    森  義視君       麻生 良方君    伊藤卯四郎君   石炭対策特別委員会    委員長 中村 寅太君    理事 上林山榮吉君 理事 神田  博君    理事 始関 伊平君 理事 多賀谷真稔君    理事 滝井 義高君 理事 中村 重光君       田中 六助君    野見山清造君       藤尾 正行君    三原 朝雄君       細谷 治嘉君    八木  昇君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (鉱山局長)  加藤 悌次君         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君         通商産業事務官         (鉱山保安局         長)      川原 英之君  委員外出席者         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  鉱業法の一部を改正する法律案内閣提出第五  三号)      ————◇—————   〔二階堂商工委員長委員長席に着く〕
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより商工委員会石炭対策特別委員会連合審査会を開会いたします。  先例によりまして、私が委員長の職務を行ないます。  内閣提出鉱業法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————   鉱業法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 二階堂進

    二階堂委員長 本案についての趣旨の説明は、お手元に配付しております資料によって御了承願うこととし、質疑を順次許可いたします。多賀谷真稔君。
  4. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 十三条の二に、目的鉱物分類ということで、第一類、第二類、第三類と類型を設けられておりますが、この類型基準、どういう基準でこの類型を設けられたか、これをお聞かせ願いたい。
  5. 加藤悌次

    加藤政府委員 この分類をごらんになっていただきますというと、第一類がいわゆる金属並びに非金属鉱物、それから第二類が原則的にはこれは石炭型、それから第三類は流体鉱物である石油、天然ガス、こういう分類になっておるわけでございます。大体鉱床賦存状況から見まして、現在同種鉱床であるか異種鉱床であるかということで鉱業権設定を認めておりますが、これをもし簡単にするとすれば、鉱床賦存状況が似たものを同じ分類に入れるというふうな考え方のもとに、いま申し上げたよう分類をいたしたわけでございます。
  6. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 続いて十四条の改正理由
  7. 加藤悌次

    加藤政府委員 十四条の改正点は二つあるわけでございます。第一点は、二項に規定してあるわけでございますが、現行法によりますというと、鉱区の形状を示しますところの基準になる地点、これを地形主義と申しますが、たとえばあるお宮の鳥居のある場所が一つの頂点になるというふうな規定のしかたであるわけであります。こういう規定のしかたにつきまして、地形というのは長い期間において変動があるわけでございます。川と川の合流点というふうな場合もあり得るかと思いますが、そういう長期的に見て変動するものを鉱区基準にするということについて、いろいろトラブルが起こるわけでございます。また鉱業権設定したり変更したり出願を処理するという場合の支障がございますので、これを通知主義に改めたというのが第一点でございます。  それから第二点は、第三項でございますが、いままでの実際を見てみますというと、非常に複雑な鉱区かっこうになっておるわけでございます。これもいろいろの紛争を避け、あるいは出願処理迅速化をはかるという点からいたしまして、そこにもございますように、十角形以上のものは認めないということにいたしたわけでございます。
  8. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 このたび二十二条の二、未成年者等出願、特にこれを書いてありますが、これは民法規定例外になるわけですが、民法は、「未成年者カ法律行為ヲ為スニハ其法定代理人同意ヲ得ルコトヲ要ス但単二権利ヲ得又ハ義務免カルヘキ行為ハ此限二在ラス」民法は「単二権利を得又ハ義務免カルヘキ行為」とある。だからこれは、たとえば贈与とか、そういうことしか考えてない、この法定代理人同意を必要としない場合を。そうすると鉱業権というのは、民法規定からいって法定代理人同意を要するというのは当然ですね。ですから、これを特に書いた理由はどこにあるのか、これをお聞かせ願いたい。
  9. 加藤悌次

    加藤政府委員 民法規定によりますと、未成年者代理人同意を得ていない場合は取り消し得るべき法律行為、こういうことになるわけでございまして、もしそういった場合に、鉱業権出願そのものが過去にさかのぼって取り消されるということになりますと、権利関係は非常に不安定な要素が入ってくるということで、民法特例規定といたしましてしぼったわけでございます。
  10. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは特例ですかね。「未成年者カ法律行為ヲ為ス二八其法定代理人同意ヲ得ルコトヲ要ス」というのですからね。ですから、その様式行為なんだから、同意書がなければ受け付けなければいい。事実行為をどこかでしたというのでないのですから、当然あなたのほうが出願を受け付けるわけですから、それに同意書がなければ設定しなければいいわけです。なぜこれを書いたかちょっと理解に苦しむのです。そういうことをしておると日本の法律は膨大になるですよ、何でもかんでもこういう法律に全部民法規定なんか入れておりますと。それでなくても長いのに、何々条の二とか、何条の三とか七とか、そういうふうにみななってくる。法律一般原則に従ったものは簡略にすべきが当然じゃないかと思う。まあ不便であるという点もあるでしょうけれども、しかしこれは例外になるですか。
  11. 加藤悌次

    加藤政府委員 この二十二条の二という新しい規定を入れましたのは、趣旨は、先先のおっしゃるように、ものごと簡略化をはかるという趣旨からでございます。いま先生が御指摘よう未成年者自身出願するときには、同意があれば当然いいわけなんでございますが、同意書をはっきりつけるということの考え方は、ただし書きのところの後段ではっきり示しておるわけでございますが、当然この場合には同意書を要するわけでございますが、ただ民法一般原則でいいますと、要するに同意を得てない場合は取り消し得るということになっておりまして、一ぺん権利設定が行なわれたあとでそういうことが起こりますと法律関係が非常に不安定になる。特に先願主義原則でいっておりますので、後願との関係におきまして非常にむずかしい問題が起こるということで、原則的な考え方は、未成年者の場合には法定代理人出願をしていただきたい。しかし、これだけで困る場合もあり得るかとも考えられますので、ただし書きをつけた、こういうことでございます。
  12. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうじゃないのでしょう。例外ではなくて、同意を得ることを要する、要するということを鉱業法に明記したというのでしょう。そういうように解釈するのが当然でしょう。何か一般民法例外規定であるなんていいますと、これはたいへんなことになりますよ。権利関係鉱業法くらいの法律一般民法規定例外を設けるなんということをいいますと、これはたいへんな越権の法律だ、こういわざるを得ないのですがどうですか。
  13. 加藤悌次

    加藤政府委員 例外とお答えしたのは少し誤りがあったようでございますが、考え方民法と同じでございますが、いろいろあとでもんちゃくが起こる可能性がございますので、手続要件をはっきりといたした、こういう趣旨でございます。
  14. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では例外でなくて同意を要するという、要することを鉱業法に明記した、こう理解していきたいと思います。  続いて共同鉱業出願人です。今度は、組合契約と考えておった共同鉱業出願を、代表者を選ぶということになっておりますが、しからば共同鉱業の場合、賠償を請求する場合連帯債務になるのですか、一体何になるのですか。
  15. 加藤悌次

    加藤政府委員 連帯債務でございます。
  16. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうするとAとBという共同鉱業権者がいた場合に、Aにも全部請求ができる、Bにも全部請求ができるのですか。それともA、B一体と考えるのですか。その持ち分に応じてやるのですか、どうですか。
  17. 加藤悌次

    加藤政府委員 連帯債務規定が当然適用されるわけでございます。A、Bどちらにも債権の全額について請求し得る、こういうことでございます。あとその共同鉱業権者の中でどういうふうに分担するかというのは、当事者間の契約と申しますか、これによってきまるというふうに解釈するわけでございます。
  18. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると連帯債務であって、中のいわば求償権的なものは持ち分に応じて配分する、こう理解していいわけですね。  続いて次にいきたいと思いますが、二十四条の「都道府県知事との協議」、すなわち「鉱業権設定出願があったときは、都道府県知事協議しなければならない。」、これは一体実例はどのぐらいあるのか。実例というのは、都道府県知事としては鉱業権設定は反対である、こういった場合に通産省として鉱業権設定許可した場合はどれくらいあるのか、この実例をお示し願いたい。
  19. 加藤悌次

    加藤政府委員 いままでの行政上の実際は、非常にむずかしい場合は、問題がうまく解決するまで都道府県知事との間の話し合いをいたしまして、最終的には府県知事合意のあったところに従って処分をいたしております。こういうことでございます。
  20. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 県のほうはこれは困りますといって出しておるのに、実際は許可しておるという現実の実例じゃないのですか。
  21. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいまお答え申し上げましたように、一応そういう第一回のと申しますか、内部的にお話があるような場合も多々あるかと思います。その場合、鉱業権を認める場合に、いろいろ施業方法を制限するというふうなことも考えられまして、公益上の判断から見て、やはり鉱業権を認めるべきじゃなかろうかというふうな場合には、そういういろいろ施業方法制限等によってこれをできるだけ防止するということで、最終的に府県知事と話をつけまして、それに従って処分しておる、こういうことでございます。
  22. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、二十四条のその「協議しなければならない。」というのは、結局合意に達しない場合は鉱業権設定ができない、こう解釈してよろしいですか。
  23. 加藤悌次

    加藤政府委員 この二十四条の規定法律上の要件でございますので、必ず協議をする必要はあるわけであります。協議の結果、両方の話し合いがつかぬで、公益上の事由によって不許可にしたという例はたくさんございます。
  24. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、この協議をしなければならぬというのは、単に形式的な協議でなくて、協議がととのわない場合は鉱業権設定ができない、こう解釈してよろしいのですかと聞いておる。
  25. 加藤悌次

    加藤政府委員 法律的には協議ということになっておりますので、必ず合意がなければいけないということにはならぬと思います。実際の例といたしましても、まあそういうことを申し上げていいかどうですか、同じ地域に同じ鉱業権設定される場合に、先願のものはいかぬけれども、後願はいいという例も何かあるようでございまして、そういう点につきましては、やはり通産局長自分判断によりまして妥当なところで処分するということもあるようでございます。
  26. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先願は悪いが後願がいいというのは、どういうことですか。
  27. 加藤悌次

    加藤政府委員 かりに石炭なら石炭目的として、ある地域鉱業権設定出願が二つあった。鉱業法原則によりますと、いわゆる出願の早い人が優先権を持っておるということで、条件が同じであれば最初に出願した人に許可をしなければいけないことになっております。その場合に、二つの場合、いずれも府県知事協議するわけです。先願回答がどうも不許可にしてくれということでまいって、その最終の処分をしていないうちに、後願協議もこの規定によってやりますから、やってみたところが、その場合は鉱業権設定を認めてもけっこうだというような場合もあるやに聞いておるのですが、これはどうも鉱業法原則からいうと違反ということになりますので、そういう場合には通産局長の適正な判断先願許可するというふうな場合があり得るわけでございます。
  28. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その先願県知事のほうに協議するために送付した、その間に後願がきた、そうすると、後願のほうは必要であるけれども、先願のほうが必要でないとすれば、後願のほうが許可されることになりやしませんか。というのは、県知事のほうは先願についてノーといった、後願は必要なんだということなら、後願のほうが許可されるということになりませんか。どうですか。
  29. 加藤悌次

    加藤政府委員 いずれの場合も、いま申しましたよう協議をしてやるわけでございますが、先願についてノーという回答がまいった。その回答に従って、形式的にいいますと不許可処分にするわけですが、その処分をしないうちに後願に対する協議回答がきた、その場合の回答イエスだったということがあり得るわけですね、これは同じ地域に同じ石炭を掘るという場合に、単に出願の時日が違うということだけで、先願はいけないけれども後願ならよろしいというのは、どうも十分の理由がないのではなかろうかということで、そういう場合もあるということでございまして、これは一例として、協議でございますので、必ず知事イエスがなければ鉱業権設定許可しないかどうかということにつきまして、そうでない場合もあり得る、その一例としていまのような場合を申し上げたわけでございます。
  30. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 わかりました。そういたしますと、県知事のほうから先願についてはノーと言い、それから後願についてはイエスと言った。そこで行政官庁としては、全体として見ると何も差をつける理由がない、こう見た場合にはイエスととって判断をした、こういうように解釈していいのですか。
  31. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのとおりでございます。
  32. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、この答申どおり法律ができていない点の一つとして、御存じのとおり答申は、知事との協議制度は置くけれども、「しかし、従来協議内容が明確でないために所期効果があげられないよう事例もあったので、鉱業実施一般公益または他産業に与える影響について協議する旨を法律上明確にすること」、こういうのがあるのですが、法律上明確になっていませんね、これはどういうことですか。
  33. 加藤悌次

    加藤政府委員 この二十四条の趣旨は、鉱業権設定する場合の基準がいろいろ三十五条以下に出てまいりますが、そのうちの一般公益に対して支障があるかどうかということを、公益を代表する公平な人ということで協議するわけでございまして、その趣旨都道府県知事にはっきりさせるために答申にございましたようなことにしたらどうかということでございますが、これは行政上の実際の運用で十分可能でございますので、いまさらそういったことを法律に書く必要もなかろうじゃないかということで、この条文改正をいたさなかった、こういうことでございます。
  34. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、いままででもそれならできそうなもので、これは権利関係ですから、私は法律をかなり明確に書く必要があると思うのです。ですからわざわざ答申に、従来協議内容が不明確であったので所期効果をあげられない実例もあるから法律で明確にしなさい、こう書いておるわけだ。ですからやはりこの答申どおり支障がなければ、特にあなたのほうでこの答申実施しない理由があれば格別ですが、理由がなければ答申どおり書かれたらどうなんです。
  35. 加藤悌次

    加藤政府委員 いままで毛十分に府県知事との事実上の連絡によりまして趣旨は大体わかっていただいておると思うわけでございますが、間々いま申し上げたような点もございまして、必ずしも実効を期せられないという答申の言い方になったのではなかろうかと思いますが、そこまでこの条文にはっきりさせることもあるまいということで、今後とも通産局長都道府県知事との事実上の連係を密にし、運用によりまして改善できるのではなかろうかということで条文改正までには至らなかった、こういうことでございます。
  36. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは鉱業権設定の大きな条件です。いわば最大の条件です。知事ノーと言えばできない、こういうことですから、それだけ鉱業権設定に大きな影響のあるものを法律基準を明確にしないということは私はおかしいと思うのです。それは当然どこかの条文を受けてもいいのですよ、いろいろ今後出てきますからね。条文を受けてもいいけれども、これは何の理由であってもいいのです。ノーと言えば法律違反じゃない。ノーと言えば法律違反でなくて、協議が成立しなければできないとおっしゃるのですからね。ですから、それだけ権利設定に大きな影響がある問題を無基準で出されるのは、私はおかしいと思うのですよ。ですから、いま申しましたように、答申のほうでそういうふうに、いままでその内容が不明確であるから、ひとつ今度は法律で明記しなさい、こう書いてあるのですから、こういう大きな点を抜かしてはいけないと私は思うのです。いまから私はその質問をしていきますが、こんなところまで、こういう条文まで書かなくてもいいのじゃないかと思われるところまで、あとのあらゆる脱法行為を想定して書いてある。それならもう少しこの二十四条というものを、少なくともこれは権利関係が衝突しておるわけですから、それを明確にすべき大きな問題じゃないか、こういうように考えるわけです。
  37. 加藤悌次

    加藤政府委員 何回も答弁申し上げましたように、行政運用で適当にやりたいということでございますが、御意見としては承っておきたいと思います。
  38. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 通産大臣にお尋ねしたいのですが、いまお聞き及びのように、この鉱業権設定について通産局長知事協議しなければならぬと書いてある。そこで、協議内容が従来不明確であるのでこの所期効果があがらない事例がかなりあった、だから、鉱業実施一般公益または他の産業に与える影響について協議する旨を法律上明記しなさい、こう答申には書いてあるのですけれども、この改正の点においてそれが抜けて、現行法どおりいっておるわけです。ですからこれはきわめて大きい問題ですよ。あなたのほうでこれがミスであるならばミス、書きようがないなら書きようがないということで、どちらかはっきりおっしゃったほうが事務当局としてはいいと思うのです。大臣としては一体どういうお考えであるか。
  39. 福田一

    福田(一)国務大臣 なかなか重大な問題だと思いますので、事務とよく相談をして後刻お答えをさせていただきたいと思います。
  40. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 続いて、市町村は単に鉱業権設定後の通知にとどまっておる。この場合、一体市町村通知でいいのかどうか。と申しますのは、鉱業権設定された後に、あるいは鉱害の賠償等いろいろな問題を惹起する、そして市町村にかなり負担をかけるのですね。ですから、県にももちろんですが、市町村にもかける、無資力になった場合にも市町村負担がある、こういう場合に、市町村に、鉱業権設定されましたという通知だけでいいかどうか、これをお聞かせいただきたい。
  41. 加藤悌次

    加藤政府委員 二十四条の規定によりまして、都道府県知事協議をいたしますというと、当該都道府県としては当然関係市町村長にそれを照会するということにもなっておりまして、事実上そういった運用をしておるわけでございます。なかなか県知事といえども各府県のすみずみまで十分わからないということで、関係市町村長照会をいたしておられるわけでありまして、それで十分ではなかろうか、要するに直接利害関係のある市町村長協議ということでは、場合によるとかえってお困りになるということもあるのじゃなかろうか、都道府県知事なら一般公益代表者として適格ではなかろうか、市町村長を不適格と申し上げるわけではございませんが、逆にいろいろお困りの点も出てくるのじゃなかろうか、事実運用としてそういう運用をやっておりますので、それで十分ではなかろうかということで、この協議規定従前どおり都道府県知事だけにとどめた、こういうわけでございます。
  42. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたのほうは重大な規定は略しておるし、あまり書く必要もないよう規定は書いておる。この法律全体を見ると、こういう感じです。四十三条の二に市町村長への通知というのがあるでしょう。要するに「鉱業権設定登録をしたときは、関係都道府県知事を経由して、当該鉱区の所在地を管轄する市町村長にその旨を通知しなければならない。」一片通知だけをもらって、市町村長はおこりますよ。協議のときはそれは知事がするだろう、それは内部的に話をしておるはずだ。ところが鉱業権登録があったときは、ぽんと通知が来る。これは自治体というものをやはり非常に軽視をしておる。ものの考え方がおざなりです。それはなるほど市町村長がお困りの場合もあるでしょう。確かにある。しかし、市町村長が困るという場合は確かにまた知事も困る。それは同じですよ。ただ、鉱区設定というのがわりあいに一町村だけでない場合がある、こういう点もあるでしょう。しかし、私はやはり関係市町村には当然何らかの形で協議をするという方法が必要ではないかと思う。一片通知だけでいいものか。しかも異議は何もはさめられないのでしょう。登録が終わった後に、登録が終わりましたという通知をするのですから、こんなものは私は通知をしてやらぬほうがいいと思うのです。市町村では、何のためにこんな通知をいまごろ持ってくるのだ、こういうことになりますよ。ですから、立法上、協議に当然参加できるよう方法を講ずべきではないでしょうか。
  43. 加藤悌次

    加藤政府委員 関係市町村長に御意見を伺うということは、先ほどお答え申し上げましたように、都道府県知事から照会があるということで十分その意向を考慮に入れるということになっておりまして、十分だと思っておるわけでございます。この四十三条の二の市町村長への通知規定は別の趣旨からの規定でございまして、いままで、都道府県知事なりあるいは関係市町村長は、自分の所管する地域内にどういう鉱業権があるかということが実は全然制度的にわからなかったわけでございます。一々通産局へ出向きまして、いわゆる鉱業原簿と申しますか、それを見る必要があったわけでございますが、先生指摘ように、地上権益といろいろの問題、鉱害等の問題が起きているわけでございますので、少なくとも自分関係のある地域の中でどういう鉱業権がどういうかっこう設定されるか、どのくらいの鉱業権があるかというふうなことは、市町村長はもちろんでございますが、関係市町村住民にも広く知らせる必要があるということで、市町村長へこの通知をいたすと同時に、この二項にございますように、一般に公示、閲覧に供する、こういう制度を新しく設けたわけでございまして、事後に起こりますところの地上権益とのいろいろのトラブルをできるだけなくし、あるいはスムーズに解決するというための一つ方法として新しく規定を設けた、こういう次第でございます。
  44. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 別個のものだとおっしゃいますけれども、私はやっぱり性格は同じものだと思うのです。閲覧に供するのもその他のことも、要するに今後市町村はかなり影響をこうむり、被害を受ける可能性があるからでしょう。それならなぜ事前の審査に対してタッチをさせないのか。これは単に都道府県でなくて、一番困る市町村に当然事前審査に対して参加をするという制度が必要ではないか。現実の炭鉱を見てごらんなさい。おわかりでしょう。一番迷惑をこうむっているのは市町村ですよ。掘って掘りっぱなしになる。そうして水道は引いてやらなければならぬ。鉱害から何からいろいろな面において一番迷惑をこうむっているのは市町村です。ですから、市町村にはもう少し私は発言権を持たしたらいいと思う。大体鉱業法というのは恒久的な法律ですから、私は、いまの時限における、たとえば炭鉱の実情とかその他の実情に左右されて法律をいろいろ考えることはまた問題があると思う。ごく短期的な視野に立って見ると、これは私は恒久立法ですから間違いを起こすと思う。しかし、あまり長期的なものを見ると、これもまた全然死んだ法律になる。そこで、この鉱業法というものは臨時立法でないですから、その観点がむずかしいのです。その点はむずかしいけれども、少なくとも当該市町村に及ぼす影響は非常に大きい。その当該市町村には全然タッチをさせないで、登録したあと一片通知だけをやる、こういうようなことは、私は不親切ではないかと思う。ですから私は、やはり鉱業権設定の場合には、何らかの形に当該市町村を参加さすべきではないか、こういうように考えるわけです。これは事務的な問題というよりも、むしろ政治的な問題ですから、ひとつ大臣から御答弁を願いたい。
  45. 福田一

    福田(一)国務大臣 出願をいたしました場合に、府県知事協議するという形でやった場合でも、かなり事務がいま渋滞をいたしておることが多いのであります。そのときに、また市町村長も加えて、その市町村長意見も聞いた上でなければ認めないということになると、ますます事務が渋滞するおそれがあるというので、実際上の行政措置をとる場合において、十分そういう点も考慮しながら処置をするという考え方でこの条文をつくった、こういうわけでございます。
  46. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事務が渋滞すると言いますけれども、とにかく今度は着手義務がないのですよ。着手義務がないくらいなら、渋滞なんて問題にならないでしょう。着手義務さえつくってないのです。法律上を言えば、鉱業権設定してじっと五年間放置しておいたっていいわけですよ。あなたのほうは着手義務さえ今度は削除しておるのですから。事務の渋滞というならば、着手義務はいままでどおり置いておけばいい。着手義務は意味がないからというので削除したでしょう。ですからそういうことはおかしい。この問題は、事務の渋滞とかいうような問題でないですよ。被害を受けた市町村は永遠の問題でしょう。ですから、これは私見ですけれども、鉱業というのは当然国の基幹産業ですから、それは必要でしょうけれども、しかし一方においては私企業である、そこで調整という問題が起こる、こういうことですね。そこで、私はこれは当然法律の中に明記しておかないと、とにかく普通の状態の場合はいいわけですよ。ところが、問題になるのは、これは権利関係が錯綜するとか、あるいは公益の福祉とまっ正面から衝突する場合ですね、ですから、その場合に市町村を抜きにして、知事だけでできるというのは、私はきわめておかしい、何らかの形で、これは市町村を参加さすことが必要ではないか、こういうように考えるわけです。  それからもう一つは、この答申というのは、時点がかなり古いのです。鉱業法改正というのは、私たちもこの経過を知っておりますが、これは論議された時点というのはかなり古いのです。しかもいま私が申し上げておるようなところは、もう二年か三年ほど前の論議ですよ。それから論議が逐次こう行っておるわけですからね。そして土地等の権益の調整なんというところが一番あとですね。鉱業権出願なんというのは最初やっておるわけですから。その間に鉱業の実態というのは、石炭鉱業を中心として刻々変わっておる。しかし、変わっておるけれども、あまり変わった現象をとらえて法律をつくるのは危険だと私は言っておるわけです。しかしこの問題は、私はやはり市町村長に対する何か発言権あるいは事前審査の参加というものがどうしても必要じゃないかと思うんです。この点は権利関係の衝突した場合に起こる事件ですからね。普通のときは問題にならないのですよ。これはレアケースの場合を書いてある法律ですよ。ですから、私は、このときは当然市町村長意見を十分聴取するよう方法を考えるべきじゃないかと思う。どうですか。ただ実際問題としてやるだろうとか、行政措置でやるだろうとか、こういうことじゃ済まぬと思うのです。少なくとも、こういうのが問題になるときは、通産局長知事とはまっこうから対立するような場合が多いのですよ。ですから、ひとつ大臣の御答弁を願いたいと思うのです。
  47. 福田一

    福田(一)国務大臣 どうも私は、あなたのように実際の場に当たっておらないので、いささか答弁が的を射ないような感触があるかもしれませんが、ただ鉱業権を与えるというのは、一応国がこれを認めるというたてまえをとっておるわけだと思うのです。その場合に府県知事協議をするということは、一応地元を尊重するということだと思うのです。いま多賀谷委員の言われておることは、これによって起こった災害あるいはこれによって生ずべき問題等がたくさんあるのに、市町村長にその始まるときに協議がないのはおかしいじゃないか、むしろそれにそういう権利、権限を与えるべきではないか、こういう御趣旨だと私は解釈する。それならば私は、その権利を与えるほうでは、知事なら知事協議をするということにしておくが、そういう問題が起きたときには、もっと国として十分な措置をとれるようなことを考える。そのほうが筋が合うような気がするわけであります。まあこの問題もひとつもう少し研究をさしていただきたいと思います。
  48. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 必ずしも的を射ていないのですが、検討するということでありますから、ひとつこの審議中に結論を出していただきたい、こういうように思います。  次に、二十六条の二の欠格条項です。欠格条項について、答申に四つ欠格条項を書いておるわけです。その中の「ハ」すなわち「上記各号に該当する法人の業務を行なう役員またはそれであった者」その「ハ」の条項が今度の改正案ではいれられていないのですね。その理由をお聞かせ願いたい。
  49. 加藤悌次

    加藤政府委員 御指摘ように、この点につきましては改正法の中に取り入れてないわけでございますが、これは一つは、事務処置の促進の面との調整を考える必要があるということでございまして、この「ハ」に指摘しておりますことが実際の事務処理上どういうふうになるかということを考えてみますと、御承知のように、鉱業権出願というのはあらゆる人ができるわけでございまして、そういう方が過去においてこういう事実があるということを一々確認することが事務的にはたして可能であるかどうだろうか、こういう検討をいたした結果、いま申し上げましたように、事務処理上の問題と考えあわせまして、理屈としてはもっともな点があるわけでございますが、そこまではどうも困難ではなかろうかということでこの部分を改正法には取り入れなかった、こういうわけでございます。
  50. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、要するに鉱業法あるいは鉱山保安法に違反した法人の役員であった者が新しい法人の役員になった場合にはどうなるのですか。
  51. 加藤悌次

    加藤政府委員 まさに先生の先ほど御指摘の場合に該当するわけでございまして、その場合にこの一号、二号、三号いずれにも該当しない、こういうことに相なるわけでございます。
  52. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際はそれが一番多いのじゃないですか。もう個人企業というものは少ないですよ。今後は個人企業でももうほとんど株式会社にするわけですよ。ですから株式会社のときに鉱業法違反をやるわけですね。あるいは取り消し処分を受ける。そうするとまたその人が主になって法人をつくるわけですよ。法人をつくってまた出願をする。これじゃ同じじゃないかと思うのですよ。これが抜けておるなら意味をなさないですよ。個人企業というのはあまり考えられないと見ていいんですからね。株式会社でなくて純然たる個人企業というものはわりあいに考えられない、こう思わなければならないですからね。その場合どうですか。
  53. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどお答え申し上げたとおりでございますが、ある法人が鉱業法違反の罰則の適用を受けたという場合に、その法人の役員等が両罰規定規定によりまして、個人として罰則の適用を受けるという場合もあり得るわけでございます。こういう場合が相当多いのじゃなかろうかと思います。そういう場合には直接的にこの一の規定の適用を受けましてチェックされる、こういうことに相なると思います。
  54. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱山保安法の場合は両罰規定を受けることはあるのです。しかし鉱業法の制裁として、鉱業権の取り消しを受けるなんということは、個人はないのですね。法人の場合に個人が受けるということはない。それは法人が受けるわけです。ですから、せっかく欠格条項と書かれておるのに、この一番大きいケースがなぜ抜けておるか。今度は企業をやはり法人でやりますよ。法人から法人に移る。ですから、せっかく欠格条項が書いてあるけれども、その一番大きい場合が抜けておるという場合にはどうにも手がない。結局これは意味をなさぬということですよ。率直に言って、それだけ大きな抜け穴があるなら、この欠格条項は意味をなさない、こういうように考えていいのじゃないですか、どうですか。
  55. 加藤悌次

    加藤政府委員 これも弁解がましい答弁になるかもしれませんが、いまのような取り消しの場合に、取り消しの原因になった行為が同時に鉱業法なり保安法違反ということで罰則の適用を受ける場合もあり得るわけでございますので、ある程度それでカバーできるのじゃなかろうか。問題は、せっかく欠格条項をもうけた以上、できるだけ多くの場合をこれでカバーしてチェックするようなことを考えるべきじゃないかという御趣旨はごもっともであるわけでございますが、実はこのままの規定でいきますというと、必ずしも十分にカバーのできないような場合があるわけでございます。たとえば相続その他一般包括承継の場合、こういうような場合には——移転の場合にもこの適用がございますが、包括承継の場合には例外ということになっておりまして、これは民法考え方との調和をどの程度すべきかというふうなことで苦心のあるところでございますけれども、感じとしてはなかなか完全無欠のものはむずかしい。一歩前進といったふうな気持ちでこの欠格条項を設けたというのがいままでの経緯でございます。
  56. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは権利関係ですから、そういう大きな抜け穴があるというと、法の公正を欠くですよ。一歩前進じゃなくて、あることが不公正な取り扱いになるでしょう。ですから、そういう面はむしろないほうがいいですよ。不公正な扱いをするくらいなら、ないほうがいいですよ。要するに答申の欠格事由の「ハ」と「二」というのはよくくっついておるですよ。その「ハ」が抜けておるということになると、これは大体死んだと同じだ、極言をすれば。あなたは一歩前進というけれども、これは法の不公正になる。そんならば欠格条項をなくしたほうがまだ公正である。こういうことになると思いますよ。ですから、この点を検討する気持ちがあるかどうか。ことに答申に載っておるのですから。答申はそれを心配して出しておる。ですからあなたは事務的に調査がむずかしいというくらいのことで、そのことでこれを削ったという理由でありますから、私は当然調査をできるだけして、できないものはやむを得ないとして、大体わかるわけですよ。どういう人が鉱業をやっておるというのは大体わかるですよ、いままで過去にやった場合は。ですからこれは当然入れるべきじゃないか。
  57. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、事務的に処理する場合に、いまの「ハ」に書いてありますことを一々チェックするということが事実上困難というより不可能である。いわゆる常連のようなものがあるわけでございますが、そういう場合にはなるほどはっきりするかと思いますが、これは一般的な規定でございますので、あらゆる場合にその規定の適用をするということになると、事実上非常にむずかしい問題がある。それをほかの立法例もいろいろ調べてみたわけでございますが、いまのよう規定を置いているものは、むしろ非常に例外的な場合しかないということでもございますので、先ほど来御答弁申し上げているような結論に達したわけでございます。
  58. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはひとつ大臣が見えてからもう一度質問したいと思います。どうも局長の答弁では納得できないし、またこのことはかえって不公正な法律になる、こういう気持ちがいたしますから、大臣から答弁を願いたいと思います。  そこで、その次に、無資力になって、そうして無資力鉱害として国または地方公共団体に迷惑をかけた者、その者は鉱業権設定許可を得ることができますか。欠格条項としてはどうですか。技術的な、経済的な問題は別として、欠格条項に入るかどうか。
  59. 加藤悌次

    加藤政府委員 無資力であって鉱害賠償の義務が十分履行できないというふうな場合でございますが、鉱業法規定によりますと、特に石炭の場合には鉱害賠償を担保するために供託金制度があるわけでございます。それから、石炭鉱害賠償担保等臨時措置法には、供託金にかわって積み立て金制度があるわけでございますが、この積み立て金あるいは供託金の供託をしておらない場合には、鉱業の停止命令を出したり、あるいは鉱業権の取り消しができるということで、そういう場合の取り消しの例は非常に多いわけでございます。したがいまして、そういうことで鉱業権を取り消されております者がさらに出願するという場合には、二号の規定によりまして当然チェックできる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  60. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱山局長は、昔資源庁におられたから石炭にタッチされておったですが、最近遠ざかっておられますから、最近の実情を御存じないからそういうことをおっしゃいますけれども、たとえば、炭鉱がつぶれる。そこで石炭鉱業合理化臨時措置法にかけて買い上げてもらう。そうして買い上げ代金によってもまだ鉱害の賠償ができない。本人もある程度財産を出したけれどもだめだ。そこで無資力鉱害として、政府が残りの部分についてその手当てをするわけですね。そういった人がその後どこかで金もうけをして経営能力ができた、こういう場合において、一体その男が鉱業権設定許可を受けることができるかどうか。これを石炭局長から御答弁願いたい。
  61. 新井眞一

    ○新井政府委員 ただいま鉱山局長が申し上げましたように、この法律または鉱山保安法の違反があるかどうかという点でございますので、したがって、いまの先生事例にございましたよう関係で無資力になった者でも鉱業権設定ができるというふうに解釈をせざるを得ないと思います。
  62. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 同じ企業をやる者が、府政からばく大な補償金をもらって、さらに無資力権者として国あるいは地方公共団体に迷惑をかけた。この人は一生鉱山業を放棄したものだと考えていいんじゃないかと思います。その者にまた鉱業権設定を許すということは、国はばく大な、どこか国民の税金でないような財源を持っておるようにしか考えられない、こういう制度は。ですから、それはどこの法律規定するかはむずかしいですけれども、欠格条項に入るのではないかと思います。現時点において経営能力があってもですよ。
  63. 新井眞一

    ○新井政府委員 お話しのように、臨時鉱害復旧法によりまして、国土の保全そのほかのことからああいう無資力認定の政策が出ておるわけでございます。したがいまして鉱業法上、たとえば賠償責任があるのに金銭賠償をやらないということが鉱業法違反になるかならないかという問題がちょっとございますけれども、そういう問題と、いまの国の施策によって、もちろん国なり地方のほうで補助金を出してやっておりますので、したがって、けしからぬことはけしからぬと思いますけれども、はたしてそれが鉱業法違反になるかどうかという点は問題があろうかと思います。したがいまして、本来であれば金銭賠償でやれるんだ、しかし、それでは完全に国土保全にならないからというので補助金を出しておるわけでございますから、したがって、無資力認定によって国が補助金を出しておるゆえんの趣旨と、それからこういう権利設定の問題は、道徳的な問題としてはけしからぬと思いますけれども、法律上若干問題があろうかと思いますので、先ほど御答弁申し上げましたように、その場合でもやはり鉱業権設定の欠格条項には法律的にはならない、こう考えるわけでございます。
  64. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、法律的にならないから立法論として聞いておる。これに該当しておるならば聞いておりません。該当しないから立法論として聞いておるわけです。ですから、鉱業法というような公法や鉱山保安法の公法に違反しているのではない、しかし債務が履行できない、債務が履行できないことによって国または地方公共団体に非常な迷惑をかけたのです。これは鉱業の稼行という事由によって起きたもの、他のたとえば商売をするとか、ほかの全然違う工場をつくるとかいうなら別ですよ、少なくとも鉱業法上の賠償義務の完了が自己の力ではできない、こういった国に迷惑をかけた者は鉱業権設定を許すべきでないと私は思うのです。
  65. 新井眞一

    ○新井政府委員 その次の二十六条の三のほうに、これは後ほど御質問があろうかと思いますが、石炭と亜炭につきましては、「通常必要と認められる経理的基礎」というようなことで出しておりまして、そういう形でとらえようと考えておりますが、いまの立法論としてどうだとおっしゃいます際には、やはり無資力の認定で国なり地方のほうから補助金を出してやったという趣旨のものは国土保全の関係、民生安定の問題でやったので、したがって立法論といたしましても、それだから鉱業法違反にもならない、そういうことだけで欠格条項にするべきではない、立法論的にもそういう感じがいたしますけれども、ただ二十六条の次の点がございますので、それともかね合わせて考えていかなければならないかと思っております。
  66. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二十六条の三の経理的な基礎というのは、鉱業権設定の場合にそういう基礎があればいいわけですね。ですからその無資力鉱害として国または地方公共団体に全部責任を負わしたのが、ある時期を経て、鉱業権設定する時点においては権利能力ができるわけですね、それを聞いておるわけです。どうも公法的な問題としての欠格条項という面だけをとらえられておりますけれども、同じ鉱業権においていわば債務の不履行をやって、国または地方公共団体に迷惑をかけた、賠償の責任を果たさなかったという者についてやる必要があるかどうか、これはもう鉱業は一生やらないのだときめていいのじゃないですか、どうなんですか。
  67. 加藤悌次

    加藤政府委員 たまたま臨鉱法の規定によって無資力者ということの判定を受けまして免除されたと申しますか、国がかわってこれを賠償したということだといたしまして、義務の履行ができなかったのはたまたまそのときにおける当該鉱業権者の単に資金面からの事情だけであるというふうな場合に、そういった人を永久的に鉱業権から締め出すことがいいかどうかという議論も一方にあるのじゃないかと思います。それでいま先生のおっしゃいました国なり公共団体に迷惑をかけたということの救済としては——これは私見でございますけれども、また現在の臨鉱法がどういう規定になっておるか、そこまで承知をいたしておりませんが、後日ある一定の期間内にそういう資力ができた場合は、前に国がかわって金を出して賠償したその必要な経費をあとで追及するということで問題の解決をはかるべきではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。
  68. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 無資力鉱害の場合、国または地方公共団体が補てんをした場合における追及規定はありましたか。
  69. 新井眞一

    ○新井政府委員 ございません。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 たしかないと思ったわけですから私は言っておるわけです。これはいまおっしゃるように、国または地方公共団体が負担をした分を払えば、当然鉱業権設定することにおける制限としては考えるべきでないと私は思うのです。しかし国または地方公共団体にいわば道徳的な借金が残っておるわけです。だからその場合を言っておるわけです。
  71. 新井眞一

    ○新井政府委員 先生よく御承知だと思いますけれども、無資力認定になります経緯等から考えまして、あるいは累積債務がございますとか、最近のエネルギー革命に伴う石炭の不況問題、そういう点もあろうかと思いますので、したがって恒久法的に鉱業権設定云々という問題に関連をいたしますと、そういうものを欠格条項として認めていいかどうかという立法論といたしましてもやはり問題があるのではなかろうか。無資力認定をやったから欠格条項にするという理屈にはならぬのじゃないかと思うわけでございます。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、鉱業権以外の他の産業の仕事をされるのは一向差しつかえないと思いますよ。しかし無資力といいましても、実際私が考えておるのは、何千万円から何億、それも小さい炭鉱でそのくらいおりますよ。三百人くらい使っておる者で何千万円も国に負担さすわけですよ。それがまたどこかへ行って今度鉱業権が設立できるなんて、どう考えてもこれはおかしいじゃないですか。そうして支払っていないのです。それで追及する方法もない。ですからどこから考えてもおかしい。ただ刑事的な罰則でないのですから、これはいわゆる私的な債務不履行なんですから、なかなかむずかしいのですけれども、しかしどう考えても、単に鉱業法違反であるとか鉱山保安法違反とかいう性格よりも、責任としてはむしろ大きいのですよ。その分だけは鉱業権設定について欠格条項にしても、これは憲法違反ではないと思うんですがね。とにかくそれだけ国に迷惑をかける者になぜ鉱業権を許しますか。
  73. 新井眞一

    ○新井政府委員 先生ようなお考え方もあろうかと思いますけれども、くどいようでございますが、先ほど申し上げましたように、私は無資力の認定をやった者を欠格条項にするのは少し酷であろうと思います。もちろんそのあと施業案の問題とか、鉱区改正問題とか、いろいろありまして、この鉱業権権利関係の中で道徳的にはけしからぬという気はいたしますけれども、それを鉱業法上の欠格条項にするというのは一つ考え方であろうかと思いますが、私は必ずしもそれがいいというふうには考えられない点もあろうかと考えるわけであります。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その形式論を離れて実体的にいいますと、それならば欠格条項をなくしたほうがいい。それは無資力で何億も国に被害を与えた者が鉱業権設定ができる、わずかの問題があって鉱業法違反とか鉱山保安法違反にかかった者はできない、こういう不公平な法律上の取り扱いは実体的にいうとないと思います。それは形式論からいえば、一方は刑事罰、鉱業法違反だ、一方においては債務不履行だ、こう言いますけれども、債務不履行は私契約でありますけれども、国または公共団体では金を出しておる。これは単に国土の保全という意味だけではないんですよ。やはり現実に支払えないから無資力でやっておるわけであります。ですから、やはりこういった問題が解決をされないとあまり意味がないと思います。小さい悪いことをしたそのボスを罰して、大きな損害を与えた者には知らぬ顔をしておる、こういうことはきわめておかしいと思いますが、現実にそういうことがあるんですよ。ある炭鉱ではもうどうにもならなくて、買い上げをして無資力にしてつぶす、そうしてそのときには金がないような風をしておりまして、いずれかの時点に、またその男がどこかの炭鉱をやっておる。どうも国民から見ますと解せぬですね。納得がいかない。ですからそういった場合に、欠格条項が全然ないならまだアンバランスでないと私は思うのです。しかし欠格条項ができておるわけでしょう。そしてそれ以下の事件で鉱業法または鉱山保安法違反にかかった者は欠格条項になる、国にそれだけの大きな迷惑をかけた者は欠格条項がない、こういったことがいわば法の構成上あるいは法の均衡上納得できるかどうかです。これもひとつ検討してもらいたいと思うのですがね。
  75. 新井眞一

    ○新井政府委員 現在石炭鉱山が閉山いたしまして無資力鉱害になるというときの実態はよく御承知だと思います。もちろん経営者の経営責任とかあるいは道義的な点とかということは多々あろうと思いますけれども、しかし今日ここに至っておるというものは、これは申し上げるまでもないと思いますが、いろいろ累積されたものが固まってきておって、やろうにもやれないという事態のものも無資力認定としては相当あるはずだと考えておりますし、今後の問題としては担保基金の問題とかいろいろやっておりますので、むしろ従来鉱業権を持ってやっておった者についての無資力というのが、将来も残りますけれども、多いだろうと思います。したがって、そこの無資力になったゆえんのものをずっと考えてまいりますと、そのことだけで欠格条項として考えていいかどうか、これは相当問題があろうかと思うわけでございます。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いまお話しのような点もないことはないのです。しかし無資力で政府に負担をかけるという者が、わずかの金額なら私は言いませんよ。実際小さな炭鉱でも何千万から何億でしょう。それだけ迷惑をかけた者が鉱業権設定ができるということが、どうも一般常識としてはわかりにくい。法律を厳密にやっておるものは、一方は公法じゃないか、一方は私法関係じゃないかと割り切ればできる。しかし国民と常識はそれを許さぬ。ですから、これは私は問題点として残しておきたいというように思います。  続いて経理的な基礎について伺いたいと思うのですが、この経理的基礎を有する者あるいは通常必要と認められるもの、こういったものはどういうことを考えられておるのかお聞かせ願いたい。
  77. 加藤悌次

    加藤政府委員 この二十六条の三の規定石炭、亜炭の鉱業権だけについての特別規定でございまして、こういう新しい規定を入れました趣旨は、先ほど来先生が御指摘鉱害あるいは鉱山災害といったものを引き起こしまして、しかもそのしりぬぐいができないというふうな状況の鉱業権者が間々あるわけでございます。したがいまして、そういった者に対して権利設定の段階においてひとつスクリーンにかける必要があるのじゃないかということで、第一段階として、設定なり移転の場合にも準用されるわけでございますが、そういった段階で、一般的に見ますと、こういう人なら大体やってもらっていいのじゃないか、つまり鉱害の被害者あるいは地上権益者から見て信頼を置くに足る人であるというふうなことが言えるかどうかということを経理的な面で見ようという趣旨で、この規定を新しく設けたわけであります。
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、先ほどの鉱害の無資力になった者は、現在金を持っておっても経理的な基礎を有しないと考えられますか。
  79. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは出願がございまして、その出願を処理し、結論を出す時期において、経理的基礎があるかどうかということをチェックするわけでございまして、過去において無資力の状態にあったけれども、現時点においては、この条項から見て十分であるといったような場合には、当然権利設定を受けることができるというふうに解釈していただきたいと思います。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しからば無資力鉱害として国または地方公共団体から補てんをしてもらった者が、その後経済能力を有するようになって鉱業権出願をした場合には当然許可を受けられたということになりますと、何のためにこういう法律を設けられたか聞きたい。というのは、石炭だけ設けたというのはどういう理由ですか。
  81. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、特に鉱害問題あるいは鉱山の災害で問題の多いのは石炭、亜炭鉱業でございます。統計を見ましても、大体全体の九割までが石炭、亜炭関係であるというようなこともございますので、特に石炭についてはそういった面からの考慮をこの設定の段階で行なう必要があるのではないかということで、そういうようにいたしたわけでございます。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、石炭問題は他の問題と違って、鉱害の被害というものが非常に大きい、あるいは鉱山災害も非常に多いという面からだと言うならば、過去において大きな鉱害の過失を犯した者について、現時点において経済能力があれば認可するのだというのもおかしいでしょう。何のために石炭と亜炭だけ経理的基礎が必要であるかという面から見れば、経理的基礎というものについては、過去の無資力鉱害に対して補てんをしていない、またその制度がないということも問題でしょうけれども、一応補てんをしていないという場合に、この二十六条の三の条項からして、経理的基礎を現時点において有すればよろしいのだという解釈をしていいのですか。
  83. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどの先生の御質問にも当然関連してくるわけでございますが、先ほど来も申し上げているように、法律は整備されましても、その解釈、運用についていろいろ問題があるということでは、やはり問題があろうかと存じますので、私どもは理想は理想といたしまして、一応その反面法律技術的な可能性の問題なりあるいは法律の解釈、適用と申しますか、そういった行政上の技術的な面から見て、ある一応の限界があるのではなかろうかということで、先ほど来御指摘の問題は当然だと思うわけでございますが、ある一線を画して法律規定というものは置く必要があるだろうということで、こういう規定になった次第でございます。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この点は鉱業法改正審議会で論議になりましたか、どうなんですか、していないでしょう。
  85. 加藤悌次

    加藤政府委員 いま先生の御指摘になっているような臨鉱法で無資力設定を受けたという問題は、どうも具体的な問題になって論議されていなかったのであります。ですから、これは一般的、平均的な基準を考えておるわけでございまして、そういった面からの議論がございましてこの規定が新しく入った、こういうことでございます。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は無資力鉱害というものが法律制度としてはありましたけれども、実際はそれほど予算処置もなかったし、事実行なわれていなかったわけですね。ですからこれが論議にならなかったのだと思います。と申しますのは、これは審議の個所から言えば、三十五年くらいの審議の個所ですよ。そのときは、いまから四年ほど前ですから、あまり論議をされていなかったのじゃないか、こういうように思う。当然論議されておれば、これはかなり問題になっているはずですよ。ですから石炭と亜炭だけ特に経済的な能力であるとか技術的な能力というものを要求するのは、いま申しましたよう鉱害という問題が非常に大きなウエートですから、それが過去のことは全然抹殺して将来だけだというのは、私はどうも解せない。欠格条項というのを別にして、これは欠格条項は一般的な鉱業法全体の問題ですから、石炭、亜炭については経理的な基礎ということで、特殊な問題としてわれわれは無資力鉱害というものを見るならば、これはどうしてもここでこの経済的基礎というものの中に過去の問題として取り上げるべき問題じゃないか、こういうように思うのですが、どうです。
  87. 新井眞一

    ○新井政府委員 この二十六条の三の「通常必要と認められる経理的基礎」というものは、政令で定めることになっておりまして、非常にむずかしい政令になろうかと思っておりますが、やはり鉱業権設定に関連をいたしますので、なるべく画一的な基準でやらなければ相なるまいと思いますし、経理的基礎と申しましても、いろいろ時間をかけて調べるわけにもまいりませんので、その辺いろいろいま検討を加えております。先生のおっしゃいますように、無資力で大きな国の補助金なり地方の補助が出たものについて、これをこの経理的基礎でそういう形で見るかどうかという点は、これは私は少し無理があろうかと思いますので、やはり画一的な基準で考えていかなければならないというふうに考えております。先ほど来申しますように、無資力認定というものも前からのいろいろな問題があって、そうなっておるのだというよう考え方もございますので、さように考えたいと思っております。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が指摘しておる問題を政令で定めるというのはなかなかむずかしいと思います。ですからむしろこの際修正をして、無資力鉱害制度というのは石炭と亜炭だけですから、そういうものもはっきり画一的にやるべきじゃないかと思う。あるいは臨鉱法に入れますか。臨鉱法に権利関係を入れるのもおかしいでしょう。どっちへ入れるかですね。臨鉱法がなくなれば、その意味においては、二十六条の三の中に入れておきましても、既存の法律がなくなれば意味ないわけですから、臨鉱法に入れる。しかし、臨鉱法に権利関係を入れるというのも、これはおかしな法律制度ですが、これは欠格条項でなくても、過去の補てんができてない場合には、現時点において経理的な基礎があってもこれは問題にすべきじゃないか、こういうように思うんですよ。
  89. 新井眞一

    ○新井政府委員 政令で定め方がむずかしいと申し上げましたのは、二十六条の三のこれを申し上げておるので、先生のお話しになりました無資力認定のものはシャットアウトするのだという、その分を入れるのがむずかしいと言っているのじゃございませんで、私の立場はあくまでも若干先生と反対でございますが、無資力認定のものをここから、それだけでシャットアウトするのは無理であると考えておりますので、こういうふうに画一的に基準をつくりまして、通常必要と認められる経理的基礎というものは政令で定めるのはなかなかむずかしくて、いま検討しておりますが、しかし、その際に、無資力認定のものをこれに入れてシャットアウトするのだという見解は持っておらないのであります。
  90. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは問題ですよ。何のためにこの二十六条の三を入れたのですか。経理的基礎というのは鉱害のためでしょう。鉱害のためなら、過去に払ってない者になぜ権利を与えますか。私は、あなたのほうが全然理論がなってないと思うんですよ。欠格条項のところは一歩譲るとしても、この経理的基礎のところに、過去にばく大な損害を国または地方公共団体に与えておる者を、現時点において経済的基礎があればよろしいなんて——しかもそれは無資力鉱害として国または地方公共団体が負担をする分については追及の制度がないのですから。ですからどっちかを改正すべきですよ。どうなんです。   〔二階堂商工委員長退席、始関商工委員長代理着席〕
  91. 新井眞一

    ○新井政府委員 どうも無資力認定の制度それ自体の解釈なり考え方になると思いますが、先生の立場は、これは経営責任でまことにけしからぬことをやっておる、膨大な何億という国の補助金なり地方の財政をとっておるから、まことにけしからぬという立場に立っておられると思います。私もそういう感じはいたしますが、しかし、無資力認定であるゆえんのものは、戦後特別鉱害という点もございましたし、そのあと傾斜生産の問題もある、炭価と需給の関係もございますし、そういったいろいろな問題の累積になっておる面もあるんじゃないだろうか、もっとはっきり申しますと、これはほんとうは何とか有資力でやりたいけれども、しかし、やむを得ず無資力にならざるを得ないのだ、それを国でカバーするのだということになっております。したがって、無資力認定のものは、たとえば罰則を科すとか、あるいはどうとかいう形にはなっておらぬわけであります。制度そのものはそういう無資力認定という制度でございます。それをすぐにひっかけまして、これはもう鉱業をやる資格がないということにいっていいかどうかというところに、私は一つ法律的な問題があるんじゃなかろうかと思います。現実にその中でやはり経理的基礎もなくて、非常に悪質のものもあろうかと思います。それは経理的基礎で見られるかどうか、それを無資力認定でやったから欠格であり、あるいは経理的基礎がないんだというふうに言い切るにはあまりにも複雑ないまの石炭の状況でございますので、そういうところからすぐにそういうふうに持ってくるのは、立法論としても問題があろうかと考えております。
  92. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は一般的な石炭鉱業権者が受けておる国の補助金について言っておるのじゃないのですよ。ですから、農地については六十何%とか、家屋については宅地を上げる分の二分の一とかいう範囲を言っておるのじゃない、これは全鉱業権者ですから。ですから、それ以上無資力として全然本人は負担しなかったという分について話をしておるわけです。ですから、局長がんばられるけれども、どうもこの点は立法論としてはおかしいじゃないかと思う。あなたは欠格条項のところはかなりはっきりがんばられた。これはわかるのです。公法的なものだというのですから。しかし、ここに経理的な基礎というものをわざわざ入れたゆえんは、鉱害の問題が主だというのでしょう。鉱害の問題が主だというならば、過去の責任は全然とらぬという制度がおかしいじゃないかというのです。何も鉱業だけをやらなければ食えぬというのじゃないでしょう。その人は一回それだけ迷惑をかけたんだから石炭はやらぬ、こう考えればいいのじゃないか、こういうのです。
  93. 新井眞一

    ○新井政府委員 これは専門の先生でございますから、くどくど申しませんが、かりにこういう事例はいかがでございますか。鉱業法上は金銭賠償なんでございますので、かりに一億円の場合に、五千万円の鉱害金銭賠償をやった。しかし、全然国土保全のための復旧はできないので無資力になったという形があろうかと思います。そういう場合には、やはり無資力認定もあるわけでありますが、鉱業法上の金銭賠償以上の制度としての無資力認定の別の政策があるわけでありますから、したがって、それだけで無資力認定をやったから、だからという理屈で欠格条項なりあるいはいまの鉱業権ができないという形ではない、むしろ石炭産業が持っておる形から申しまして、非常に炭層が平べったいものですから、いろいろ問題があるわけです。それはやはり国土保全上、産炭地には農地も少ないから、国のお金も出して、無資力であれば復旧してやろうという政策であります、正面から考えますと。それを悪用すれば別でありますが。したがって、それなるがゆえに鉱業権はどうだという議論は立法論としても……。私はほんとうにそういう気持ちで考えておるわけでございます。
  94. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 金銭賠償というのといわば原状回復という差は農地以外にはないのですよ。いいですか。問題はその農地の場合が、いわば土地の価格と原状復旧の費用が差があるから、ここに原状回復と金銭賠償というものと差が出てくるのですよ。それじゃ道路の復旧の場合の金銭賠償はどうかというと、道路に値段はないのですから、復旧費が即金銭賠償になるのですよ。家屋でも、特に美術的な国宝的な家屋であれば、それを昔のとおり復旧しろというならそれはまた問題であろうけれども、普通の場合には、一般の家屋の場合には金銭賠償と原状復旧の差はないのです。土地の場合には価格という問題がある。それが原状回復と合わないと、ここに原状回復の問題と金銭賠償の問題が起こるのですよ。ほかには問題の起こるのはないのですよ。道路とかため池とかいうのは、金銭賠償と原状回復とどう違うかというと、結局金銭賠償といえども原状回復する費用をもって金銭賠償とするというんでしょう。ですから私は特に局長が力を入れて言われるほど金銭賠償と原状回復の差というものは考えられないのですよ。何かその鉱業権者に、金銭賠償ならできたんだけれども原状回復だからできない。国は原状回復を農地の場合は要請しておるから、その差を払えないからといって許可をしないというのは酷じゃないか、こういう議論は大体通用しないのですがね。あなたは実態をよく御存じないからそういう議論をされるんだろうと思うけれども……。
  95. 新井眞一

    ○新井政府委員 この臨時鉱害復旧法と申しますのは、通常の鉱業法上の金銭賠償じゃなくて、国土保全の上から農地とかあるいは道路とかそういった特定のものについて、これではいかぬというのでいろんな補助政策をとりながら復旧をさせるという趣旨のものでございまして、これは申すまでもないことでございますが、そういう趣旨から申して、ものによっていろいろ関係はあろうかと思いますが、おおむね平均いたしまして金銭賠償よりも約四割から五割程度効用回復をいたしますのに金が要る。農地につきまして倍近い金が要る。そのほか家というものについても、これは本来金銭賠償でやってもらうべきものを、地盤を国土保全で上げるときには一緒にやっているわけでございますので、そういう本来的な趣旨から言いますと農地が主体でございますから、ですから申し上げたわけでございますが、鉱業法上の金銭賠償より以上の形で補助をしている場合もあるので、私はどう考えましても、無資力認定をやったものは鉱業権取得の欠格条項にしないのはおかしいというふうにはどうも考えられない。立法論といたしましても考えられないと思います。
  96. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから農地は補助率が高いのですよ。補助率が六〇何%というのは農地だけでしょう。農地の復旧はことに高いから、補助率が高いというのはそういう意味からきているのですよ。問題はそうでなくて、鉱業権者負担分も出せないとこう言っているんですよ。無資力としてそのものを払ってないんだからと、こう私は言っている。局長もその点はおわかりで答弁されておると思うのですけれどもね。ですから局長の固執しておられる、原状回復主義をたまたま国が政策上とっておるからそれは払えなくなったんだと、こういうことじゃないと思う。本来ならば全部払う必要があるのだけれども、国は六十数%補助しているんだ。それは農地は復旧の場合は特殊な事情にあるから、ほかのものは補助率が低いんだ、こういう理由があるわけですね。その補助率を多くしてもらっても鉱業権者負担分が払えない、こういう場合ですから、私はその経理的な基礎というものを書くなら、過去の責任の問題も当然出てくるのじゃないか、こういうように思います。ないならないでいいですけれども、これをあなたのほうでは書かれるというから、書かれるなら過去の鉱害賠償の責任はどうするんだ、こう言っているわけです。
  97. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、考え方としては確かに先生の御指摘の点はうなずけるわけでございますが、一方におきまして立法技術上あるいは法律の解釈適用上の問題に限界がありはしないかという気がするわけでございまして、この二十六条の三は、こういう規定は入れましたけれども、これは最初に鉱業権設定するときの一つ基準であるわけであります。したがいまして、一たん鉱業権設定があった後、当該鉱業権者がその資力が非常に乏しくなったというふうな場合には、これはほかの方法でいろいろチェックするということが考えられるわけでございまして、これだけですべてをカバーするということはとても不可能じゃないか。また、あとに出てまいりますけれども、すでに現在、鉱業権者にいままでなっている人につきましては、これから新しく鉱業権の移転を受けよう、あるいは増区の申請をしようという場合にこの規定の準用があるわけでございまして、鉱業権者たる者はおよそ常にある一定の限度以上の経理的基礎がなければならぬということは、事実上運用として非常に不可能ではなかろうかという気がいたすわけでございまして、そういった面の配慮もあわせいたしまして、こういう規定をいたしたような次第でございます。  それで、ただいま御指摘の点は、特にいま申し上げたようなほかにもそういう問題があることと、それから鉱業法は恒久的な一般法ということでもございまして、むしろ問題は鉱業法でその問題を一刀両断解決すべきということでなくて、ほかに何か適当な方法があるかどうかということで考えるべきではなかろうか、こういう気が実は私いたすわけでございます。理屈の面あるいは理想の面からいうと必ずしも十分ではなかろうかと存じますが、いままでに比べて一歩前進というふうな感じで御了承を願えれば、という気がいたすわけでございます。
  98. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一歩前進か、後退、混乱をさすか、私は法の公正を欠いておるという面からついておるのですよ。どうも納得できない。ないならないでいいのです。経理的基礎なんかいままでどおり要らない。経理的基礎が要ると言いながら、過去のものは全然責任を追及せぬというのはおかしいじゃないか、こういう議論をしておるわけです。これもひとつ検討してもらって、大臣から答弁をいただきたい。同じことを繰り返しても時間がたちますから、問題点を指摘して次にいきたい、かように思います。  少し飛びまして、掘進増区を廃止した理由、これをお伺いします。
  99. 加藤悌次

    加藤政府委員 現行の四十六条に掘進増区という規定があるわけでございますが、この掘進増区の形態が鉱業法全体のたてまえからすると非常に変態的なものになるということでございまして、今後はこれを租鉱権制度の活用によってこういった場合の要請にこたえるということで規定を削除いたしたわけでございます。
  100. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 租鉱権制度の活用というのは、具体的にはどういうことになりますか。
  101. 加藤悌次

    加藤政府委員 租鉱権を設定する場合に、特定の鉱床目的として租鉱権設定という制度が従前からもあるわけでございますが、この制度によって今後はやっていきたい、こういうことであります。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事実問題として、その場合と、一体どういう法律的な差ができてきますか。
  103. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは法律上取り扱いの問題でございまして、実質的にはいま申し上げましたように変わりはない、こういうように考えます。
  104. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 変わりないですか、変わりあるでしょう。変わりあるからそういうようにしたのじゃないですか。たとえば掘進増区をした場合には、鉱害なんというものはなかなかわからないですね。要するにAという鉱業権者がBという鉱区の中に、ある層を掘進増区しますね、そうするとそのB鉱区の地点における——地上から言えばAのいわゆる掘進増区分の被害であるのかBの被害であるのか、なかなか判定がつかない。そうした場合に、租鉱権者であれば責任の追及が鉱業権者にもできる、こういう理由ですか。法律効果はないとおっしゃるから私は教える。法律効果はありはせぬか。
  105. 加藤悌次

    加藤政府委員 その点は同じでございます。要するに損害の原因になった権利者が賠償の責任を負うというのが原則でございまして、ただ、こういうふうに一つ地域に二人以上の人が鉱業をやっておるという場合に、どちらの鉱業の作業が原因であったかということがわからない場合には、連帯責任という規定になっておるわけでございますが、その場合は掘進増区の場合であっても、あるいは租鉱権設定によってやる場合でも同じであるわけであります。
  106. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 違うでしょう。租鉱権者の場合は、本来の鉱業権者に租鉱権者としての損害賠償の請求ができるでしょう。その点は違うんじゃありませんか。
  107. 加藤悌次

    加藤政府委員 ちょっと思い違いをいたしておりまして、訂正をいたしますが、租鉱権設定の場合には、第百九条の四項の規定によりまして、鉱業権者が連帯責任を負うということになっておりまして、鉱害の被害者の立場から見ますと、掘進増区の場合よりも租鉱権設定によった場合のほうが保護が厚い、こういうことが言えると思います。
  108. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうするとこの租鉱権というのは、大体AとBと隣接鉱区がありますね、そうすると、従来、Aのほうから、Bの鉱区の地点といえば問題がありますが、鉱区の地点に掘進増区をする。そうした場合に考えられているのは、掘進増区でなくてAのBから受けた租鉱権としてAが行なう、こういうふうに考えていいのですか、大体ものの考え方としては。
  109. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのとおりでございます。
  110. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも掘進増区というのを廃止しても、租鉱権を認めるのならあまり意味がないんですがね。ただおっしゃるように、Aの租鉱権の責任追及をBにできるという点が法律的には違う。しかしこれができるなら私は混乱は同じだと思うんですよ。ですから同じ鉱区において他の鉱床は認めないのだ、こういうようにはっきりすべきじゃないですか。そうしないと混乱が起こる原因はそのままになっているんですね。これはやはり掘進増区があるから非常に混乱が起こると書いているが、混乱が起こる原因は掘進増区でやろうと租鉱権でやろうと同じですね。ですからその混乱というものは全然解決していない。ですから答申の考えというのは、この改正案によって全うされていないんじゃないですか。
  111. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいまの御指摘の点でございますが、現行のこの掘進増区がいわば乱用されまして、鉱区の切り売りの一つの手段としていろいろ使われておった、こういう事実があるわけでございます。そういうことで、この掘進増区についての制限がございませんので、鉱山災害あるいは鉱害問題、こういった面の監督についても非常に問題が多いということでございまして、そういう弊害の多い制度でございますので、この趣旨は先ほど申し上げた租鉱権制度の活用によってやっていこうということにいたしたわけでございます。今度租鉱権の設定の面で一つ制限をいたしておりますのは、七十五条の規定でございますが、現行法の七十五条を読んでみますと、同一の鉱区中同一の区域には、二つ以上の租鉱権は設定ができない、こういうことになっておりますが、ただし書きがついておりまして、特定の鉱床目的として租鉱権が設定される場合はこれは例外だというようになっておりますが、このただし書き規定も削除した、こういう弊害のある掘進増区制度そのものを廃止すると同時に、租鉱権設定についての制限をさらに厳格にした、こういうことでいま先生の御指摘の弊害を除去しよう、こういうことでございます。
  112. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 同一鉱区内に二つ以上の租鉱権の設定例外規定として、特定の鉱床目的とした場合というのがあるわけですが、その程度ではやはり混乱はたいして差がないのですね。しかし私は掘進増区というものは全然否定できないものを持っていると思います、現実問題として。ですからこれはそれをどういうように調整をするかというのが問題ですけれども、この点は私は地上における混乱をいかに防ぐかということにあると思います。それから地上だけでなくて、掘進増区の場合は非常にいい面もあるのですけれども、また地下におけるいろいろな問題点もありますね。掘進増区することによって、一体水の処理はどうするんだ、あるいはその掘進増区をした場合に増区後の管理が悪かった場合にはだれが責任を持つんだ、こういう場合も非常に問題点があるわけですね。ですからプラス、マイナス考えてみると、もう禁止したほうがいいんじゃないかという気持ちもするんですよ。掘進増区というんじゃなくて、掘進増区はもちろんのこと、その租鉱権も、同一鉱床内において租鉱権を認める、租鉱権と鉱業権を並立さすということも禁止したらどうか、こう思うんですがね。
  113. 加藤悌次

    加藤政府委員 そういう御議論も当然出てくると思うわけでございますが、今回の改正で鉱物を三分類主義の原則を適用いたしましたために、主としてこれは第一類鉱物について言えることでございますが、もっぱら第一類鉱物の鉱区で当該鉱業権者は金属鉱物、これを目的にして、それ以外には手をつけないということであるわけですが、そういった場合に、たまたま同じ鉱区の中に非金属鉱物が、有望な鉱物があった、しかも当該鉱業権者はそれに手をつけるつもりはないという場合に、この租鉱権の設定を認めるという場合も考えられるわけでございますので、そういう面から租鉱権制度の必要性というものは現行法より以上に出てきたということも言えるんじゃないかと思います。それから、お互いの鉱業をやる場合も相互に支障がないようにしなければいけないわけでございますが、そういった点を考えますと、租鉱権は一応当事者間で話し合いがまとまりまして、そのまとまったところに従って租鉱権設定出願があるということでございますので、要するに設定契約ができるときに、鉱業権者と租鉱権者になろうとする人との間の仕事のやり方についての話し合いも十分済んでいる、こういうことになりますので、いままでの掘進増区等で権利設定してから、あとで当事者がいろいろ鉱業実施方法について話し合いをするということよりも実情に合うのではなかろうか、こういう気持ちも実は持っておるわけでございます。
  114. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一つの立法論としての問題点ですが、次に五十三条関係について述べてみたいと思います。  現行法でも、いわば公益影響がある、あるいは法律では著しく公共の福祉に反する、こういう場合の取り消し処分ができるようになっております。鉱区の減少または取り消しをした場合に、それに対する補償をしなければならぬと書いてあるんですが、この補償をした例があるかどうか。国が取り消しまたは減区その他を命じた場合に、補償した場合があるかどうか、これをお聞かせ願いたい。
  115. 加藤悌次

    加藤政府委員 前例はございません。
  116. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 前例がないというのは、どうして前例がないのですか。予算がないのですか。この法律があるだけで、そういう事案は起こったけれども、大蔵省が金を出さぬから、何とか関係者で話し合わせた、こういうことですか。どうなんですか。
  117. 加藤悌次

    加藤政府委員 補償の規定はちゃんと法律にあるわけでございますから、この規定によって取り消しをする必要がある場合は当然取り消しをする、それによって生じた損害は補償するということに相なるわけでございますが、実際問題として、御承知のよう鉱業権を最初に設定する段階でかなりシビアーなスクリーンをやっておる。鉱業権設定後に一般公益と衝突するという例が、そういった面からわりあいに少ないんじゃなかろうかという気がするわけですが、それと同時に、この取り消しの制度といいますのは、財産権に対する非常に大きな制限であるわけでございまして、ほんとうに公益上の見地からこれを取り消す必要がある、こういうような場合には、これはどうしても取り消しをしなければいけないというふうに考えますが、いま申し上げましたように、私権、財産権に対する非常に重大な制限になることでございますから、これを発動する前に、ほかにいろいろ法律がないかということで、たとえて申しますと、鉱業を実際に行なう場合の施業の方法、これをある程度制限することによって、この権利そのものを処分することを取り消すというまでに至らなくても問題の解決をはかれる場合が多いということで、実際問題としてはそういったやり方でこの公益上の点で、利益の保護をはかってきておるというのが実情であるわけでございます。
  118. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実際問題としてないのではなく、金がないからやらないというのじゃないですか。私は例を知っているのですが、要するに大蔵省は金を出さないのですよ。大蔵省が金を出さなければこれは取り消しができないですよ。そういう事由があってもできない。できないとどうするかというと、結局五十三条の二の三項に受益者負担というのがある。要するに受益者と鉱業権者と話し合わせて、受益者が鉱業権を買収するわけです。こういう形になるのです。要するに問題は、この法律が動かないのではなくて、金がない。金がないから法律が動かせないわけです。こういう形になっている。どうなんですか。
  119. 加藤悌次

    加藤政府委員 先生指摘の第三項の受益者という規定は、一般的に、公益に非常に害がある、そのために取り消しをされましたけれども、その取り消しによって特に目立って利益を受ける人が中にあるわけでございますが、そういう場合に、負担の公平の見地から見まして、一部の金をその受益者に負担させる、こういうシステムでございますが、実際問題として、地上の利益と競合する場合、ほとんど大部分が特定の受益者といいますか、こういうものが入っている場合が多いわけです。いわば当事者の利害の問題として解決すべきものであって、一般公益の保護という名のもとに国が権利を制限するということよりも、当事者同士で解決するという場合が実は非常に多いわけでございますので、当事者の利害の調整の一つ方法手段としてこの鉱業権取り消しというふうな制度を使うことは、非常な制度の乱用になるのではないかという気がいたすわけでございます。現実の問題としては、鉱業権とある特定の地上権益とが衝突するという場合が非常に多いわけでございまして、したがって、これは当事者間の話し合いで問題は解決する、こういうことでいままでもやっているわけでございますが、今後ともそういうケースが非常に多いのじゃなかろうかというふうに存じております。
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いわば伝家の宝刀をあまり抜いてもらっても困る。それだけに、それを発動するときには国の補償というものをかぶるわけです。ないならば幸いです。泣き寝入りをした人がなければ幸いだというのはどっちの面からも言えると思うのです。こういう法律は動かないほうがいいのですが、しかし、動かなければならぬときに金がないから動けないというのも、法律をつくってもあまり意味がない。それで、これらはひとつ今後慎重に扱ってもらいたいと思います。  そこで、その次に五十四条の例があるかどうかですね。これは現行法でも同じ規定ですが、五十四条、すなわち鉱物の試掘または採掘が他人の鉱業を著しく妨害するに至った場合の排除方法のない場合における取り消し、この規定が発動されたことがあるかどうか。
  121. 加藤悌次

    加藤政府委員 この条文につきましても、前例がございません。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に五十五条の二の規定に入りたいと思います。その前に、着手義務というのを今度なくされた理由、これをお聞かせ願いたいと思います。
  123. 加藤悌次

    加藤政府委員 現在の着手義務は、法律どおり解釈すると非常に厳格なわけでございまして、実際の経済情勢その他でなかなか法律どおりにいかないという場合が間々あるわけでございますので、そのためにこの許可を受けるための手続がいろいろ必要になってくるわけでございます。   〔始関商工委員長代理退席、二階堂商工委員長着席〕 それを一々理由をチェックいたしまして許可するわけなんでございますが、事実上はほとんど大部分これを認めざるを得ないといういままでの実情にもなっておりますので、なかなか本来の原則が守られにくいという法律規定は実態にそぐわないのではないかということで、いままでの着手義務ずばりの規定のかわりに五十五条の二の新しい規定を置いた、こういうことでございます。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この規定の中で「一体として計画的に開発することが適当な鉱区」という、「一体として」というのはどういうことなのですか。
  125. 加藤悌次

    加藤政府委員 ここで頭に描いておりますのは、いわゆる予備鉱区をこの規定によって救いたい、こういう趣旨でございます。
  126. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、ちょっと法律解釈をお聞かせ願いたいのですが、「その鉱区が現に鉱物の採掘の事業を行なっている鉱区と一体として計画的に開発することが適当な鉱区その他その採掘権者の事業の安定的な継続を図るために必要な鉱区であると認められるとき。」という条文ですが、一体として開発することが適当な鉱区というのは、「事業の安定的な継続を図るために必要な鉱区」の例示規定ですか。
  127. 加藤悌次

    加藤政府委員 仰せのとおり、例をここであげてあるわけでございます。
  128. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、「その他」というのはどういうものを考えられているのですか。
  129. 加藤悌次

    加藤政府委員 この前段で例をあげておりますのは、大体鉱区が隣接しておるといったようなことが考えられまして、事業を始める場合に最初相当な資本を投下しなければいけませんので、将来長い目で見て計画的に開発する必要があるという場合に、隣の鉱区も、いまは鉱区そのものは手をつけてないけれども将来開発する必要がある、こういう場合でございます。  「その他」の場合でございますが、鉱区が必ずしも隣接していなくてあるという場合でも、当該企業の長い目から見た計画的事業の遂行ということから、どうしても休眠状態を認めざるを得ないというような場合もあるかと存じまして、こういう規定のしかたになっておるわけでございます。
  130. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最初の例示規定は、例外規定とするのにはなかなか適当な規定です。ところが「その他」というのが実際上休眠鉱区を考えるというなら、これはそっちのほうがばく大なものですよ。予備鉱区のほうは隣の鉱区であるし、だれが見てもそれは当然だ。しかし休眠鉱区は非常に大きいということになる。「その他」のほうが大きいということになる。問題は「その他」にあるわけです。この鉱区が一応問題だと思うのです。そこで、一体俗にいう休眠鉱区と予備鉱区は、日本の、石炭だけでもいいのですが、あるいは銅その他主要鉱物があればなおいいのですが、どのくらい分けられるものか、推定埋蔵量としたらどのくらいのものか、これをお聞かせ願いたいと思うのです。
  131. 加藤悌次

    加藤政府委員 はなはだ遺憾でございますが、現在そういったものを調べたデータがないようでございます。
  132. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもこの規定自体も死文化する可能性ありますね、例外規定が大きいのですから。着手義務を実態に沿わぬからなくした。しかし今度は五年以内という期限をつけて、ただし次のような場合を除くとある。その次のようなものは休眠鉱区まで考えておるんだということになると、せっかく法律をつくっても、これもまた法律として一体意味をなすのかどうか。どうなんです。
  133. 加藤悌次

    加藤政府委員 休眠鉱区をできるだけなくするという趣旨からの五十五条の二の規定でございますので、そういった趣旨規定はほかにもあるわけでございますが、この趣旨が十分貫徹できるように実際の運営の面において十分留意すべきでなかろうか、こういうふうに思っているわけでございます。ただこれは一律にはいかぬと思うわけでございますが、この第一号に書いておる事項、これはもちろん鉱物の合理的開発という見地からこれを認めるかどうかということを通商局長としてきめるわけでございますが、これは当該鉱業権者として将来計画的に、ここが終わればその次にこの鉱区の開発にいくんだということであるわけでございますが、通産局長といたしましては、当該鉱物の開発の緊急性その他もやはり勘案いたしまして、そういった総合的な見地からケース・バイ・ケースでこの一号の解釈、運用をするということになろうかと存じます。趣旨は、御指摘のとおり、休眠鉱区をできるだけなくする、こういう趣旨のものでございますので、運用を厳格にやっていきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  134. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、この法律の制定によって、一体どのくらいの休眠鉱区鉱業権の取り消しになるわけですか。
  135. 加藤悌次

    加藤政府委員 この五年の期間の算定の起算点でございますが、既存の鉱区につきましてはこの法律が施行されてからということになりますので、この施行後五年間休んでおるものがどの程度あるか、しかもその休眠している事情がどうであるか、こういうことによって先生御質問の点が判明するのではなかろうかというふうに考えるわけでございます。したがいましていまの段階においてはこれは不明である、こういうふうにお答えするよりほかないのでございます。
  136. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 五十五条の二というのは、法律が制定されて五年後じゃないとこういうことができませんか。そうじゃないでしょう。過去五年前にすでに鉱業権設定をしたものは、法律が制定すると同時にこの条文の適用を受けるわけでしょう。
  137. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほど申し上げましたが、いままでにある休眠鉱区の防止につきましては、現在の着業義務と申しますか着手義務によって処理いたしておるわけでございまして、法律違反の状況がないわけでございます。したがってこの新しい規定の適用は、改正法が施行になったときから、この五年間の算定の起算点が始まる、こういうふうに附則でなっておるわけであります。
  138. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 附則の何条ですか。
  139. 加藤悌次

    加藤政府委員 いま申し上げましたように、鉱業法の現行の規定によって、着業してないというのは違反によってやっているわけでございませんのでして、全部必要な理由に基づいての許可を受けておる、こういう解釈に相なるわけでございまして、したがってこの規定の適用は施行後新しく適用される、こういうふうに考えるわけでございます。
  140. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一般論として法律の解釈がそうなりますか。経過規定か何かで特別に定めておかなければ、そういう解釈はとれないでしょう。やはりこの「五年以内に」という五年というのは、法律が制定を見て効力を発してから過去五年前に登録があっておればこの法律の適用を受ける、こういうことになるでしょう。
  141. 加藤悌次

    加藤政府委員 附則の三十四条の三項に、鉱業法の施行の日からとございます。
  142. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは附則で書いてありますから、解釈としてはわかりました。わかりましたが、やはりどのくらい五年間において開発をされるかわかりませんけれども、大体これでどのくらい休眠鉱区が取り消されるのか。ただ法律は直したけれどもさっぱり動かなかった、動かす気持ちもない、これは実際こういう法律になりやしませんか。あとに、私が申し上げるまでもないと思うのですが、鉱区の調整というのがありますから、若干今度の場合はいままでの不合理性がなくなりますね。その点はなくなるわけですけれども、こういうことを言っているのですよ。北海道でも、萩原さんが石炭委員会に見えて、とにかく私のところの炭鉱でもいま休眠鉱区にしておるけれども、百万トンの炭鉱が二つぐらいできる鉱区は持っているのだ、金がないからやらないのだ、こういうお話をなさっている。それで先願主義が非常に問題になったのは、休眠鉱区が眠っておるじゃないかというので一つ問題になったのです。それからもう一つは、鉱害その他でしりぬぐいもできない鉱業権者が稼行しておる、この二つが問題になった。そこで先願主義や能力主義という問題に移ったわけですが、その一つの問題は、最近石炭事情が非常に悪くて、あまり開発をしようという連中がないものですから、休眠鉱区の問題が大きくなっていない。しかし国が開発するということになりますと、やはり休眠鉱区の問題は大きな政治問題になるのですね。石炭だけではない、鉱物資源の問題でもこれは同じだろうと思うのです。ですから、この休眠鉱区の問題をどういうように扱うか、これは非常にむずかしい問題だと思いますけれども、この法律によって別に現行と変わらぬと、こう見ていいのですか。
  143. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほども申し上げましたように、着業義務の規定を削除いたしましたのは、実態にできるだけ合わすという感じからでございまして、この休眠鉱区を防止しなければいけないという感じは、従前と同じ考え方を持っておるわけでございます。したがいまして、この五十五条の規定の発動につきましては、今後と毛一段と厳格にやる必要があるというふうに存ずるわけでございます。いままでも無認可の無着業、休業といったことを理由にいたします現行法の五十五条の規定に基づく取り消しというのが、大体年間百五、六十件ばかり例はあるわけでございます。それと、休眠鉱区を防止するという面から、もう一つ新しい規定を実は入れたわけでございまして、第四章に規定がございます鉱区調整、これはいわば休眠鉱区を防止するために、そこを開発したい人があるという場合には強制的に鉱業権の譲渡を認めさせるという趣旨規定でございます。
  144. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 休眠鉱区の問題は従前どおり少なくするという気持ちだとおっしゃるが、従前はやってないのですよ。あなたのやっておられるというのは、いわゆる出願したばかりで何もしてないものをやっていたのですよ。鉱区税を払っているようなものを取り消した例というのはほとんどないでしょう。ただ先願してそのまま放置されておるというのが相当多い、こういうことじゃないですか。
  145. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱業権の取り消しの理由にはいろいろあるわけでございますが、ただいまもお答え申し上げましたように、その中でも着業義務違反による取り消しというのが一番多うございまして、先ほど申し上げましたように年間百五、六十件ばかりあるわけでございます。
  146. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、存続期間、ことに租鉱権の問題ですが、租鉱権の存続期間を延長したというのはどういう理由ですか。
  147. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは先ほども申し上げましたように、今度の鉱物の分類制度を新しく採用いたしたという関係もございまして、これは最長の期間ということでございますが、そういった面を見ると、どうもいままでの五年ということでは少し短きに過ぎるのじゃなかろうか、こういう趣旨から十年に延長したというわけでございます。
  148. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 短過ぎるから長くしたというのは、ことばとしては答弁になっているけれども、私のほうが聞いた答弁になってないですね。短過ぎるから長くしたというのは答弁にならない。なぜ長くしたかと聞いているのですから。短過ぎるから長くしたというのは当然のことで、五年ではどこに支障があるのですか。
  149. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは七十六条の規定を見ていただきましてもわかりますように、第二類、石炭、亜炭でございますが、これにつきましては従前どおり運用も同じであるわけでございますので、五年ということにいたしておりますが、第一類につきましては、先ほども申し上げました本来鉱業権者目的にしてない鉱物が相当賦存しておって、これをやはり開発するためには五年ということでは実情に合わない、もう少し長くする必要があるということで延長いたした、こういうわけでございます。
  150. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、七十七条のどこの部分になるのでしょうか。七十七条の三項の認可条件がありますね。主としてどういうところを対象に考えて延長されたのですか。
  151. 加藤悌次

    加藤政府委員 第三項にいろいろ並んでおるわけでございますが、具体的に申し上げますと、三項の第一号、これは裏からの規定でございますが、「目的鉱物の一部」という規定がございますが、これがいま申し上げた場合に該当するわけでございます。
  152. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に鉱区の調整について質問したいと思います。鉱区の調整について従前と変わった点をまずお聞かせ願いたい。
  153. 加藤悌次

    加藤政府委員 第一点は、鉱区調整で考える場合がふえた、こういうことでございます。それから従前の現行の八十八条の規定、これは勧告だけということになっておりますが、今度の鉱区調整の規定は、いずれも最終の場合には決定まで持っていける、こういうふうに強くいたした、この二点が変っておるわけでございます。
  154. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは八十八条の場合と八十九条の場合、ともに決定方式は最終的には同じですか。
  155. 加藤悌次

    加藤政府委員 さようでございます。
  156. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に施業案について、ことに問題のある百条の三の一項五号「鉱害及び鉱山災害の防止に関する事項」これは防止だけでなくて、損害予定というようなものはこの施業案に必要がないわけでしょうか。大体鉱害の損害予定といっても、それはなかなかやってみなければ出ませんけれども、しかしこれは施業案を見る場合に、ただ防止方法なんということだけでなくて、いわゆる経済的な能力というものと非常に関係があると思います。これは防止できないのですからね。ある一定のところまでは防止できるけれども、ある一定を過ぎれば防止できない。ですからここに無過失賠償の論理が出ておるわけです。ですからこの場合はそういうことも改正案としては加味すべきじゃないですか。
  157. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱業法のたてまえといたしましては、結果的に鉱害が出るということは事実問題としてあるわけでございまして、このために必要な賠償規定が入っておるわけでございますが、これから仕事をやっていこうという場合に、できるだけそういった鉱害を防止するためにどういうことが考えられておるかということを施業案の段階で見ようというわけでございまして、初めから鉱害を予想して、しかもその鉱害がどれくらいになるかということは、施業案そのものの考え方としては少しどうであろうか、こういう気がするわけでございます。
  158. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 経済的な能力という能力主義が入ってきたわけでしょう。ですから私は従来のような施業案の書き方とは変わってこなければならぬと思うのです。鉱山災害防止の方法、これは私は必要だと思う。ところが鉱害の防止なんというのは、率直に言うとあまり意味がない。普通どこの炭鉱だって充てんしていますか。充てんしていないでしょう。ほとんど充てんができない。充てんするには費用が要るのです。ですから鉱害の防止というのは程度が知れているのです。これは金属鉱山の場合は私はそうないと思う。メタルマインの場合はそういう事情じゃない。経営の基礎及び技術的能力ということをいわれておる以上、従来のような施業案の方式とは変えなければならぬ。もっとも従来とは変わった点もあります。一般公益及び他の産業との調整に関する事項、こういう点は変わっていると思う。私は経理的基礎をシビアーに言われるゆえんは、石炭の場合、鉱害問題が非常に大きいということもあるのではないかと思う。こういう場合には、やはり鉱害の予定量というものを一応試算をさす必要があると思うのです。大体施業案で、この鉱区を何層掘る、そうすると地上にどのくらい鉱害が起こるかということは想定できるわけですね。そうして地上物件にどのくらいの被害があるのかということは当然考えなければならぬ。それによって石炭をやらす能力があるかどうかを判定しなければならぬ。ですから、ただ防止の方法だけでは私は済まないのではないかと思う。メタルの場合はそれでいいかもしれないけれども、コールマインの場合はそれではいけない、こういうふうに思うわけです。これはひとつ石炭局長からでも御答弁願いたいと思います。
  159. 新井眞一

    ○新井政府委員 御承知のように、石炭鉱害につきましては担保基金というのがございまして、担保法によりましてあらかじめどのくらいの損害が出るのだ、したがってどのくらいの積み立て金を出しなさいというふうな形でやっておるわけでございますので、そのような事項等もやはりこの点で考えたい、こう考えておるわけでございます。なお上の、地上との関連でどのような掘り方をしていくか、これは一号との関連もございまするけれども、やはり掘採の深度、状況というような点から、鉱害を、そこのところはなるべく避けていくというふうな点もあろうかと考えておるわけでございます。
  160. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから私は掘採方法による鉱害の防止という面もある、それを否定しておるわけではない。この条項は要らないといっておるのではないのです。しかし、まだ大きな点が抜けておりはしませんかといっているのです。それは大体この問題が起こった基礎というのは鉱害問題だとおっしゃるから、それならば、一応鉱害の予定額というものは、厳格にはいきませんけれども、大体想定ができるのではないか。そうすると、それは施業案の中の一つの項目として入れるべきじゃないか。そうしないと、何を基礎にこの経理的な基礎を考えられますか。経理的基礎というものは、そういうものを基礎に考えて、そうしてそれに従って納付金がどの程度納められるか、この納付金を納める能力があるかどうか、こういうことを考えなければならぬでしょう。ですから、当然それを入れてしかるべきではないか、私はこう言っておるわけです。
  161. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいま石炭局長から御答弁申し上げたように、特別法としての石炭鉱害担保法の中で必ず予定の算定を行なわせる、その算定に基づきまして積み立て金を積まない場合は施業案は認可しない、こういうようなチェックのしかたをいたしておりますので、まあ一般法としての鉱業法の中にはそこまで入れる必要もないのではなかろうか、こういう気持ちと、先ほど申し上げましたよう考え方で、特にここで具体的にあげなかった、こういうふうに御了承をいただきたいと思います。
  162. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 純然たる新しい炭鉱を想定するよりも、移転の場合が多いのです。鉱業権の移転によって施業案をつくる場合が多い、こう見なければならぬのです。ですから、鉱害というものはもうすでに発生しておる場合もあるし、今後発生すべきものもある。その場合に施業案の認可という問題がある。ところが、いまおっしゃる積み立てをしなければ施業案を認可しないとおっしゃるけれども、これは、最初のときはそうでしょう。しかし施業案を認可してしまって、積み立てなければ施業案を一々取り消すのですか。どうです。鉱害賠償積み立て金を積まないと認可しないとおっしゃるけれども、それは最初のときは鉱業権者は積むでしょう。しかし能力がないものは積めないのです。能力の算定の基礎というものがこの施業案に全然出ていないじゃないか、こう言っておるのです。
  163. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱業法の中でも賠償の担保のための措置として供託金制度があるのですが、この供託金を積まないときは鉱業の停止を命ずる、あるいは鉱業権の取り消しができるという規定がありますが、今度の新しい石炭の積み立て金についても、それと同じ趣旨規定があるわけでございます。
  164. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも供託金なんていう話をされても、供託金はほとんど役に立っていないのです。そうして日本の供託金は外国の場合と違って最終時に、いわゆる終山時まで留保している制度になっていない。法律はそう書いていないのですよ。法律は書いていないけれども、あなたのほうの運用でそれをどんどん返しておるのですよ。ですから、炭鉱が終わったから供託金はあるだろうと思ったら、もう返してしまって中身がない、こういうシステムに現実の運用がなっておるのですよ。そこで担保制度に切りかえた。担保制度でも私は十分じゃないんじゃないかと思うんです。やはり施業案で、二類なら二類だけでもいいですよ、二類の場合は鉱害賠償の予定額、こう書かれてもいい。メタルマインの場合にはそれほど必要ないとおっしゃるなら、二類なら二類の場合には、特にこれだけが必要である。ことにあなたのほうは経理的基礎を条件に認可をするわけですから、その経理的基礎は何かといえば、それは坑木代もない、火薬代もないものは絶対やりませんよ。それがやるというのは、結局一番問題なのは鉱害ですから、その鉱害の賠償予定額というものは当然施業案の、少なくとも石炭においては必須的な条件ですよ。その条件を書かずして何をもって経理的基礎を算定しますか。全然意味がないじゃありませんか。
  165. 加藤悌次

    加藤政府委員 御指摘ように、この経理的基礎を見る場合に、鉱害の賠償能力があるかどうかということは一つのポイントであるわけでございますが、どの程度の鉱害が起こるだろうかということにつきましては、先ほどお答え申し上げましたように、担保法の中でこれは毎年毎年鉱害の予定を算定するということになっておりまして、その算定の結果に基づいて積み立て金を積み立てる、こういう法律構成になっております。それからその積み立てをしないときには、鉱業法の供託金の場合と同じ規定が担保法の中にあるわけでございまして、鉱業の停止あるいは鉱業権の取り消し、もちろん施業案の認可もいたさないわけでございます。この三つの規定があるわけでございます。
  166. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 施業案の認可は何年に一回ですか。五年に一回でしょう。
  167. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのとおりでございます。施業案の認可のほかに鉱業の停止命令、さらにそのほかに鉱業権の取り消し、この三つの制度があるわけでございます。
  168. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それを、鉱害の賠償ができなくて発動したことがありますか。ないでしょう。法律があるだけですよ。そんなことできませんよ。鉱害の賠償が払えぬからといって鉱業を停止するなら、日本の炭鉱はほとんどつぶれますよ。そんなことできっこないですよ。法律があったって、従業員がいるんですから、とにかく鉱業が動いてしまったら、そんなことできないですよ。それを鉱害の賠償を払えぬからといって停止をしてごらんなさい。そこの従業員は首になるんですよ。ですから、できないようなことをおっしゃっても現実だめなんですよ。ですからスタートが大事なんです。スタートは経理的な基礎が必要である。経理的な基礎の一番大きな問題は何か、石炭だけに限って制度を設けたのは何かというと鉱害だ。だから鉱害の予定賠償額というものを当然施業案の認可のときにその条件として見るように、勘案するように加えるべきじゃないか、こう言っておるのですよ。
  169. 加藤悌次

    加藤政府委員 先生の御指摘の点、まことに理屈があるわけでございますが、積み立て金なり供託金の義務違反については新法では相当厳重に考えておりまして、いままでの鉱業法規定によりますと、供託義務違反あるいは積み立て金違反という場合には鉱業の停止命令だけしがなかったわけでございますが、今度新しくそのほかに鉱業権の取り消しもできるというふうな厳格な規定が入っておりまして、そういった鉱害の賠償のための担保についてどうも不安であるというような場合は、今後できるだけ厳格にチェックをしていきたい、こういう考え方に基づいておるわけでございます。
  170. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、実際問題としてできないようなことを法律に書かれて、それがあるからだいじょうぶだとおっしゃっても、鉱業の停止とか鉱業権の取り消しなんということが、鉱害賠償しないからといってできますかというんです。現実上そんなことはできないですよ。その停止ができるくらいなら、いまごろ炭鉱はほとんどとまっているというんですよ。そんなことはできないですよ。供託金を払わぬからといって、停止なんか実際問題としてできませんよ。賃金だって払ってないんですから。ですから、そのスタートをするときに能力主義を入れたのは、ことにこれを炭鉱に入れたのは鉱害が大きいからという意味だから、鉱害の賠償予定額はやはりあなた方が考慮される一条件として入れるべきではないか、こう言っているんですよ。これはどうですか。
  171. 加藤悌次

    加藤政府委員 施業案の認可の場合に経理的基礎を見ますのは、先生指摘よう鉱害の問題、賠償の問題もあるわけでございますが、それ以外に鉱害の防止なり災害防止というためにいろいろの施設が必要であると思いますが、そういう施設をするための資金的な能力があるかどうか、あるいはさらに鉱業の本体でございますいろいろ仕事の予定がございますが、この予定された仕事が実際にやり得る資金的能力があるかどうかということを総合的に見るわけでございまして、法律のていさいとしては、鉱害賠償の問題についてだけ金額をそこで書かせるということはどうであろうかと、こういう感じがいたすわけでございまして、実際問題としては先ほど申し上げましたように積み立て金を、年々の予定鉱害の予定の算定に基づいて積ましている、こういうことでございますので、それで支障がないのではなかろうか、こういう気がいたすわけでございます。
  172. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この採掘であるとか運搬であるとか、そういうものは必ずやるのですよ。それもできぬようであったら出願しませんよ。問題は一番転嫁し得るもの、最終的にしりをぬぐわなくても——最初から賠償しないという気持ではいかないでしょうけれども、しかし実際問題としてはそれができていない。できなくても鉱業はできるんだということは、私はいまからスタートする制度としてはいけないと思う、少なくとも能力主義を入れた以上は。ですから、鉱害賠償の予定額というものを、一応その算定できる時点において算定すべきじゃないか。それはわかるのですよ、すぐに。とにかく何の層と何の層を掘る、それはどのくらいの層だということを算定しまして、地上にはそれが大体どれくらいあらわれるであろう、それは何月後にどれくらいあらわれるであろう、それは大体わかるわけですよ。そうすると、しろうとでもずっと回ってみまして、この地域はあぶない、大体わかるのですよ。だから、その概算の額が出ないはずはない。それはかなり狂いますよ、狂いますけれども出ないはずはない。これは私は問題として提起をし、さらに質問を保留しておきます。  次に百条の十四の「土地の掘さくの制限」これは農地及び宅地の場合と、一般の公共物と分けられたのはどういうわけですか、地下三十メートル以内、一般の公共物は五十メートル以内、こうなっていますが、その理由
  173. 加藤悌次

    加藤政府委員 この第二項の規定は今度の改正で新しく入れた規定でございまして、農地と宅地というものの土地の利用形態を見ますと、第一項でいろいろ書いてございますが、そういうものに比べて、もう少し制限をゆるめてもいいんではなかろうか、こういう感じからいたしまして一項を五十メートル、これは現行どおりでございますが、二項の新しい規定ではこれを三十メートル、こういうことにいたした次第でございます。
  174. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは何か技術的な基準があるのですか、三十メートルとか五十メートルというのは。いままでのデータによって、三十メートル以上はだいじょうぶだとか、あるいは五十メートル以上はだいじょうぶだとか、何か技術的な研究の結果があるわけですか。
  175. 加藤悌次

    加藤政府委員 過去の鉱害等の例から見まして、大体安全度を見てこの程度であればいいのではなかろうか、こういうことでございます。
  176. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この宅地というのは、一般の家屋が建っておる場合の宅地も含むわけですか。
  177. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは文字どおりの宅地でございまして、その上にある建物につきましては、第一項の規定の最後のところに「建物の地表地下」というのがございますが、この規定によりまして、これは五十メートルという制限を受けるわけでございます。
  178. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そう読みますか。百条の十四は、「その他の公共に用に供する施設並びに建物」でしょう、一般のも含むのですか、この建物は。
  179. 加藤悌次

    加藤政府委員 そういう法律の解釈でございます。「並びに」というのは、そういう趣旨でございまして、一般的に広く建物についてはその規定の制限を受ける、こういうことでございます。
  180. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、「学校、病院、図書館」云々とこう書いてあるんですね。そして建物というのを書いておる。その建物の前には「公共の用に供する施設並びに建物」、そうすると建物は一般の家屋その他を言うんだというなら、何のためにこんな列挙をしておるかわからぬでしょう。もう学校、病院、図書館なんて削ってしまって、建物と書けばいい。そうして公共の用及び建物でいいわけでしょう、どうなんですか、これはそういうふうに解釈するんですか。
  181. 加藤悌次

    加藤政府委員 いままでの解釈、運用は、先ほどお答え申し上げたとおりでございます。学校だとか病院だとか、これは公共の用に供する施設という例示でございます。
  182. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それはもうそういうように解釈されるなら、私はけっこうですが、ほんとうですか、そういうよう運用しておるのですか。
  183. 加藤悌次

    加藤政府委員 解釈、運用とも、そういうようにやっております。
  184. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 資源庁の昭和二十七年五月十五日の、建物についてはその帰属いかん、または公共の用に供されているといなとにかかわらず運用される、こういうようにあなたのほうが出しておられますからそうですが、そうしますとこの宅地というものを設けて、それが三十メートルという差をつけるのもおかしいんですよ。それは従来農地及び宅地というものがないときなら、私はこれはなるべく地上物件を保護するという意味において、建物を一般の家屋も含めるんだという解釈は成り立ったかと思いますが、今度農地、宅地と一般の建物をなぜそう差別をするか、ことにこれは宅地においてはどうか。
  185. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは非常に広い宅地がございまして、その宅地の中に一部住宅用の建物等があるという場合に、この現行法の一項のままですと、建物から五十メートル離れたところがかりに宅地になっておる場合でも無断で掘れる、こういう不都合を生じますので新しく入れた、こういうわけでございます。
  186. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 入れたのはわかるんです。しからばなぜ差をつけておるか。むしろこれは同じように五十メートルとすべきではないか、こういう意味です。それを答弁願います。
  187. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは最初にお答え申し上げましたように、農地なり宅地ということになりますと、せいぜいそこに作物があるとか植木が植わっておるという程度でございまして、その上にいろいろ重い施設があるという場合と比べまして、性格が違うというふうに考えられます。
  188. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、家が建つんですよ、宅地ですから。やがて建つことが予定されているでしょう。そのときには建っていなくても、鉱業権設定した後には……。
  189. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは現実に鉱業を行ない、そこを掘さくしてまいります場合の制限規定であるわけでございますので、今後いろいろ施設ができる、そういう予定のある場合につきましては、あとにございますが、地上権益の調整という面で解決すべきではなかろうか、こういう考え方であるわけでございます。
  190. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一般家屋は調整する必要はないんです。一般家屋の場合は、地上の物件との調整の適用に入っていない、そうでしょう。そうすると、宅地の場合はこれは一般家屋ですよ。そうすると、宅地と一般の建物とをなぜ差をつけるか。いまおっしゃった議論は通用しないんですが、どうですか。
  191. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、これは、現にその場所を掘採するときの現況においてこの程度で十分ではなかろうか、こういう考え方に基づいておるわけでございます。
  192. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは現実に宅地として整地をされておれば、家が建つことは当然だし、その予想もできるわけでしょう。そういう場合に、一般建物と差をつけるというのもおかしいですね。建物というのは公共の用だけでなくて、これは一般の建物も含めるんだ、こういう解釈は、当時農地、宅地のない場合には、私はそのほうが保護をする意味においてよかったと思いますよ。ところが、ここで宅地というのを建物と区別する理由がないと思うのですが、どうです。全部五十メートルにしたら。
  193. 加藤悌次

    加藤政府委員 これはあくまでも掘採をいたします現状においての規定でございますが、先ほど申し上げましたように、地上権益との調整というのはもちろん必要であるわけでございますので、そういった場合には、当然地上権益者と鉱業権者との事実上の話し合いで問題を解決する余地がある、こういうふうな考え方に基づまして、法律上の要件としてはこういう規定にいたしたわけでございます。
  194. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 あなたのほうは、今度新たに第五章の二で、鉱業と他の事業との調整という章を設けられて、ずっと地上物件との調整をされておりますが、一般家屋との調整は私はないと思うのです。そうすると、将来調整をしますとおっしゃるけれども、住宅の場合は、一般の建物ができた場合には調整のしょうがないでしょう。
  195. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいま申し上げましたのは、法律的にそういう制度は御指摘のとおりないわけでございますが、事実上、そういう宅地の近くで仕事をやられる場合には、当然宅地の所有者としても心配があるわけでございますので、そちらのほうからの事実上の話し合いというものがあるのではなかろうか、こういうことを申し上げたわけでございます。
  196. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それから、私の質問もちょっと訂正したいと思うのです。それは宅地には、いわゆる施設の設置による損害賠償の問題その他調整の問題はないと言ったのですが、しかし、これは大きなアパートだったらあるでしょう。六階も七階ものアパートをつくれば、これは調整の問題が起こるでしょうね。そうすると、今後、一般家屋だけじゃないでしょう。普通のわれわれの想像している家屋だけでなくて、アパートだって宅地の上にできるでしょう。それは学校や図書館より大きいものができるかもしれませんよ。だから、これはいまや区別をする必要がなくなっているでしょう。建物は五十メートル、宅地は三十メートルという区別をする根拠がなくなっている、こういうように思いますが、どうですか。
  197. 加藤悌次

    加藤政府委員 この百条の十四の一項、二項、これは法律上の要件として、最小限これはぜひやっていただく必要があるということで規定いたしておるわけでございまして、先生指摘ような問題は、現に一項でも、ダムがあるといった場合に五十メートル以内まで掘っていいかどうかという問題は実はあるわけでございまして、そういった問題は、一般的な地上権益との調整は、必ずしも全部が全部この鉱業法の中に規定されておるのではないわけでございますが、一般的にそういった両当事者の話し合いと申しますか、これによって解決をいたすべきではなかろうか、こういう考え方に立っておるわけでございます。あくまでもこの一項、二項は、最小限の法律要件ということで規定いたしたわけでございます。
  198. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 最小限度ですけれども、私は区別する理由がないというのですよ。いま宅地の場合は、建物と宅地と区別する必要がないじゃないか。農地の場合はわかりますよ。ところが宅地はないじゃないか、こう思うのですよ。ですから、あなたのほうだったら、百条の十四の「建物」の次に、及び宅地ですな、これを入れたらどうですか。こんなくらい局長は答弁できるでしょう、何も大臣までわずらわさぬでも。
  199. 加藤悌次

    加藤政府委員 この規定は、あくまでも形式的な面から見ての規定であるわけでございます。宅地というのは登記法上宅地、こういうことになっておるわけでございまして、現実には必ずしもそうでない場合はあり得るわけであります。したがって、そこがいわば相当長期にわたって建物が建たないということも考えられるわけでございまして、先ほど来申し上げておりますように、最小限の要件としてこの規定を置いた、こういうことで、宅地ということになれば、第一項にございますいろいろの施設なんかと違いまして、土地の利用の形態が違うということで区分したらどうだろうか、こういうわけでございます。
  200. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 宅地は建物を建てる予定地ですから、私は建物と区別をする必要はない、しかも鉱業をやろうとするとき、あるいは土地の掘さくをやろうとする場合ですから、ないと思います。まあ、これは問題点として留保しておきたい、こういうように思います。  続いて百条の十九、特にこの規定を設けられた理由、これをお聞かせ願いたい。
  201. 加藤悌次

    加藤政府委員 百条の十九、この規定は新しく入れたわけでございますが、斤先掘りの禁止をはっきりと明文で規定する、この条項に違反したものにつきましては、鉱業権の取り消しなり罰則の規定の適用をするということをはっきり表向きに規定をいたしまして、今後とも取り締まりを一そう厳重にいたしたい、こういう趣旨からでございます。
  202. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 斤先は租鉱権の制定になって後、現行法においては法律的にどう解釈しておったわけですか。
  203. 加藤悌次

    加藤政府委員 現行法が二十五年に制定されたときに初めて租鉱権という制度を創設したわけでございますが、それまでにございましたいわゆる斤先掘りというものの経済的な必要性ということは否定すべきものでもないわけであります。また鉱物の合理的開発を促進するといった意味からもメリットが確かにあるのじゃなかろうかという感じでございまして、もしこれを認めるとすれば法律的にはっきりこれを認めると同時に、逆に災害防止あるいは鉱害の防止という面からの監督を厳重にする必要があるということで、正式に鉱業法上の一つ権利ということで認めるかわりに、いままであったものは今後絶滅を期したいという趣旨から設けたわけでございますが、その後一部脱法行為的に斤先を行なうというふうな面があるようでございまして、どうも租鉱権制度を設け、しかも現行法律十三条でございますが、権利目的になる場合を限定してあるにもかかわらず、これの脱法行為的な斤先掘りはあったわけでございますけれども、十三条に加えましてさらにはっきりとこれを明文で規定したい、こういう意味で、先ほど申し上げました趣旨からこの規定を設けたわけでございます。
  204. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その租鉱権の前に使用権というのがあるでしょう。使用権ができてから、斤先というのは法律上違法な措置ということに明確化されたのじゃないですか。
  205. 加藤悌次

    加藤政府委員 使用権があったときも同じでございます。これは鉱業権によらないで鉱物の掘採をするということに該当するわけでございまして、表面から使用権ということで正式に認可を受けた者は、正当な権限に基づいて鉱業をやるわけでございますが、そういう正式の使用権にしないで、鉱業権者でない者が他人の鉱区で鉱物を掘採するということはあくまでも鉱業法違反行為であるということで、罰則の適用もあって、認められない、こういうことでございます。
  206. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 結局は現行法と変わらないけれども、明文を設けてより厳格に取り締まるというように解釈していいですか。法律の性格としては変わらぬ、こういうふうに見ていいですか。
  207. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのとおりでございます。
  208. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に土地の使用及び収用ですが、鉱山の場合に今後起こり得るのは公有水面の使用ですね。これは百四条の使用の目的の中に入っているか、一体どういうように考えられておるのか。
  209. 加藤悌次

    加藤政府委員 公有水面の使用についてはこの中に入っておりません。これは公有水面の使用の所管官庁の協議によって必要がある場合は使用する、こういうぐあいに解釈していただきたいと思います。
  210. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この公有水面の使用として埋め立てに——また領海の話が出るのですが、海に人工島をつくる場合、あるいは人工島をつくらなくても、島までいかなくとも、埋めて使用するという場合は今後非常に多いだろうと思います。そういう場合に、単に行政官庁一般的な制度にゆだねていいかどうか、ことに鉱業法で、何らかいわば優先権的なものを与えてやる必要があるのではないかと思いますが、それはどうなんでしょうか。
  211. 加藤悌次

    加藤政府委員 公有水面は、文字どおり国またはこれに準ずるものが管理をいたしておりますので、これは実際の話し合いで問題の解決ができるのではなかろうか。こういう所存で特に強制的な実施というものは取り上げなかったわけであります。
  212. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはなかなかむずかしいんですよ。それは現実の問題として、公有水面の埋め立てばほとんど農林省がやっておる。ところがこれは大体農地の干拓その他を予定しております。だから簡単に譲ってくれなんていうわけにはいかない。農民はまた農民としてそれを期待しておる。こういう場合に、何らか公有水面に対して鉱業実施することについて、たとえば農地の場合なら農地法の適用を除外するというようないろいろな立法が若干見受けられるように、公有水面の場合も、とにかくその土地でないと鉱物を掘れないわけですからね。何らかいわば保護的な措置が必要ではないかと思いますが、どうですか。
  213. 加藤悌次

    加藤政府委員 何回もお答え申し上げますが、一般の私人が所有しておる場合にはなかなか当事者の話し合いがつかずに、そのために鉱業実施が不可能になるおそれがあるかと思いますが、御指摘の公有水面は官庁が所管いたしておるわけでございますけれども、場合によれば、当然鉱業の所管官庁である私どもも入ることになると思いますが、そういった面で事実上解決の方法が可能ではなかろうか、こういうふうに存ずるわけでございます。
  214. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事実問題としてもなかなかむずかしいと思うんですが、あなたのほうで使用目的にかなり書いてあるから、公有水面についても触れたらどうか、今後そういうような状態がかなり多いと思います。大陸だなを開発するような場合ですね。ですから法律は、やはり新しい事象に対して将来さらに起こるであろうということを予定して立法をするのが当然だと思うんですね。石油のような場合は、ただやぐらを組んで、いわゆるボーリングをして、それを採油に切りかえてやってできないことはないのですけれども、しかし鉱物の場合にはたしてそういう方法ができるか、これはできないんですよ。ですから私は、この点ひとつ検討してもらいたいと思います。せっかくの鉱業法の大改正ですからこういう点がりっぱに盛られるかどうか、これはひとつ大臣から答弁いただきたいと思いますが、これは今後非常に重要な問題になってくるだろうと思うんですよ。
  215. 福田一

    福田(一)国務大臣 先般の委員会でもその種の大陸だなの問題が出ましたが、ひとつ検討してみたいと思います。
  216. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、今改正で一番大きな重点になっております鉱業と他の事業との調整について質問してみたいと思います。  まず百八条の二の施設の設置による損害賠償のところですが、この規定は採掘の着手前においても請求できるという根拠をお示し願いたい。
  217. 加藤悌次

    加藤政府委員 まだ現実に鉱業に着手してない場合に、これによって賠償の請求ができるかどうかという御質問だろうと思いますが、現にそのときにおいて着手してないからといって損害がないわけではないと思います。したがって、原則的にはそういう場合でも損害の賠償はできるわけでございますが、ただ百八条の四に規定がございますように、賠償の責任の有無なりあるいは額を裁判所がきめます場合に、現に採掘事業が行なわれていなかったという場合には、この規定によって特別にしんしゃくができる、したがって、しんしゃくの結果損害賠償の責任がないという判断を裁判所で行なうということもあり得るわけでございます。
  218. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 「通常生ずべき損害」というのは、通常得べかりし利益も含みますか。
  219. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのとおりでございます。
  220. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 従来かかった費用だけでなくて、得べかりし利益を含むということになると、鉱業権設定したということだけで着手をしない場合に、それだけの賠償の請求権がありますか。その根拠はどういうことでしょうか。
  221. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいまもお答え申し上げましたように、その辺は裁判所でしんしゃくをやる場合の判断にまかせるということに相なるわけだと思います。
  222. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 試掘権の場合には、「その成果が無益となったものに通常要すべき費用を支出したことによる損害」とはっきり書いてある。ですからいままで要った費用を返すのだ、これはわかります。ところがまだ着手前に、鉱業権の場合に得べかりし利益もその損害の対象になるのだというほど鉱業権というものは大きな権利ですかと聞いておるわけです。
  223. 加藤悌次

    加藤政府委員 百八条の二の第二項に損害の範囲の規定があるわけでございますが、先生いま御指摘の試掘権の場合は、今度の鉱業法改正で性格をはっきりしたわけでございますが、その性格の権利でもございますので、一応の限度といたしましては、試掘のためにいままでかかった費用を限度とするということでございます。採掘権につきましては、たまたまいま未着手であるといたしましても、権利の行使によりまして近い将来においてそこを掘るつもりでおったところが、それが特殊施設の設置によって掘れなくなったという場合があると思うわけでございます。そういう場合に、全然頭から請求権がないということにするのは少し酷ではないかということでございまして、その辺の判断は百八条の四の規定によって裁判所にまかせるというたてまえにいたしたわけでございます。
  224. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 損害のしんしゃくは別ですけれども、あなたのほうは試掘権と採掘権とを区別して損害の算定を書いてあるのですよ。しかもこれは夫着手の場合でもできるということになるのでしょう。そうすると、「通常要すべき費用を支出したことによる損害」ならば、夫着手の場合でもわかりますよ。ところが得べかりし利益も算定するよう方法において未着手の場合その請求ができるというのはどういうことでしょうか、こう言っておるのですよ。
  225. 加藤悌次

    加藤政府委員 ケース・バイ・ケースで裁判所が判断するわけでございまして、先ほど申し上げましたように、しんしゃくする場合には、額をどうするかという問題だけではなくて、損害賠償の責任を持たせるかどうかという判断についても裁判所がきめるわけでございますので、これはケース・バイ・ケースで裁判所の判断にゆだねるよりしかたがないという考え方でございます。かりに未着手の状況にございましても、普通鉱業権の譲渡を受ける場合に、一体この鉱区でどれくらいの鉱量があるだろうか、こういう算定に基づいて鉱業権の価格がきめられると思うわけでございますが、そういう実情でもございますので、全然未着手だというだけで請求権がないということにするのは酷に過ぎはしないかということでございます。
  226. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は請求権がないというようにしなさいと言っておるのではないのですよ。請求権があってしかるべきだ。しかし試掘権の場合は要するに「要した費用」でしょう。そうすると、採掘権の場合も未着手の場合は要した費用でいいのではないか。これはいいか悪いかは別として、質問をしておるわけです。私は白紙の立場で質問をしておるとお考えになっていいわけです。私はある一方のサイドに立って質問しておるわけではないのです。法律制度として、その場合には特に試掘権の場合と区別されておる。そうすると、採掘権の場合、譲渡を受けて費用が要った、それは現状の商取引の中において、鉱業権の譲渡というのが金がつくということは常識ですね。ですから、費用が要った中にそれは算定してよろしいと言うのです。しかし「通常生ずべき損害」というのは得べかりし利益まで入っておるのだから、その得べかりし利益まで着手前においてその対象にするというのはどうなのか、こう聞いておるのです。
  227. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは民法等の考え方ともバランスするよう考え方でこの規定を置いたわけでございまして、その辺の判断は、何回も申し上げますが、第百八条の四の第三号の規定によって、裁判所において十分しんしゃくできるのではなかろうか。それから試掘権と非常に差があるように感ぜられるわけでございますが、新しくこういう規定を置きましたのは、いままで地上権益との調整の問題についていろいろ法律の解釈適用上、民法しかありませんので、不分明な点があった、それをこの際、鉱業を行なうために出てくる問題でございますので、鉱業法の中に規定を置くという趣旨でございます。それと同時に、いままでの実例を見てみますと、試掘権が損害賠償を目的にして非常に乱用されておったという事実があるわけでございまして、そういった権利の乱用をできるだけ防止するというたてまえから、本条におきましても試掘権と採掘権をこのように区分をしたということでございます。
  228. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 要するに損害賠償の請求の問題は、現行民法ではどういうことになっておるのですか。
  229. 加藤悌次

    加藤政府委員 考え方といたしましては、通常生ずべき損害を補償する、こういうことであるわけでございます。
  230. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると現行法と採掘権及び租鉱権については変わりない、試掘権についてだけ変わったのだ、こう解釈してよろしいのですか。
  231. 加藤悌次

    加藤政府委員 試掘権につきましては、先ほど御説明申し上げました趣旨もございまして、こういうふうにはっきりと規定をいたしたわけでございます。
  232. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 試掘権だけが現行法と違うわけですね。
  233. 加藤悌次

    加藤政府委員 現行法でも、おそらく一般原則である通常生ずべき損害を補償するという考え方には変わりがないと思いますが、実際問題として、試掘権の段階において得べかりし利益というものの算定ができるかどうかという問題があると考えられまして、実体的には変わりがないだろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  234. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうもはっきりわからぬですがね。実体的には変わりない、しかし法律的には変わりあるわけですね。どうなんです。法律的には、試掘権の場合は、現行法では通常得べかりし利益ということになるわけでしょう。ですから法律的には変わりがある、しかしおそらく裁判所の取り扱いでは変わりないだろう、こういう意味ですか。
  235. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのようでございます。それで、これは先ほど申し上げましたように、一方において試掘権の乱用という現象がございますので、そういった趣旨から、試掘権の設定出願するということをできるだけ事前に防止したいという趣旨も、この規定の中には、裏の趣旨でございますが含まれておるわけでございます。
  236. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、法律的には試掘権の賠償の範囲を確定したんだ、こういうように解釈していいわけですね。
  237. 加藤悌次

    加藤政府委員 限度を設けた、こういうわけでございます。
  238. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、百八条の二の一項に一、二、三と、受忍すべき限度をこえる損害の場合の列挙が書いてあるわけですね。その前に、「受忍すべき」ということばは法律用語として熟しておるのですか。
  239. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは一般法律の解釈運用上の考え方として、「受忍」ということばは一般に慣用的に使われておるわけでございます。
  240. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それから一、二、三と各号が設けられておるわけですが、この号からはみ出るようなことは想定できないのかどうか。今後技術が進歩しますよ。そうした場合に、一でも二でも三でもないなんというのが出てきやしませんか。出てきた場合にはどうしますか。
  241. 加藤悌次

    加藤政府委員 これはいろいろ検討いたしまして、あらゆる場合を想定して、大体この一号、二号、三号で拾えるのではなかろうかという想定に基づいて規定いたしたわけでございます。
  242. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 百八条の四、ここにも一項に一、二、三と場合を分けてあるのです。しかしこの場合には、「前項に規定する場合のほか、裁判所は、一切の事情を考慮して、当事者間の衡平の見地から」云々と書いてある。ですからもう一つ、将来いろいろなことが想定されるのですが、そういう場合の余地を残す条文を入れておく必要はないのですか。これは列挙規定でいいのですか。例示に直して、その他各号に類似する場合とかなんとかは必要ないですか。
  243. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどもお答えいたしましたように、大体これで将来予想される場合を全部カバーできるのではなかろうか、こういうことでございます。
  244. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 百八条の四にはそういうように書いてありますので、法律は大体そういうようになっておるのですが、これはえらい自信がありますね。この点も問題と思いますけれども、まあこれはいますぐどうという問題じゃないですが、これはやはり考慮する必要があるのじゃないか、こういうように思います。  次に、百八条の三ですが、予見しまたは予見すべきであった施設の設置によって起こった損害の場合には請求権がない。これは例になるわけですが、この予見し、予見し得べきであったということで、悪質な鉱業権者に対抗する面としてはこれは言えるわけですけれども、しかし、しんしゃくでなくて例になるということですね。これについては善意の譲り受け等の鉱業権者に対して少し救済の法を欠いておるのじゃないか、こういうように思いますが、どうですか。
  245. 加藤悌次

    加藤政府委員 この立証責任と申しますか、これは賠償の請求を免れたいとする地上権益者のほうにございますので、その立証等を裁判所で見まして、現実にこの規定に当てはまるかどうかという判断がなされることと思うので、特に鉱業権者の側に酷の規定であるというふうには考えておらないわけであります。
  246. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、Aという鉱業権者が予見をしておって、Bという人に譲渡をした場合、Bは全然知らなかったという場合はどうなりますか、Bは請求権があるかないか。
  247. 加藤悌次

    加藤政府委員 この法文にもございますように、予見しまたは予見すべきであったかどうかというのが一つ判断基準になるわけでございますので、前鉱業権者からそのことを聞いておったかどうかということは、もちろん判断一つの要素にはなるかと思いますが、ただ聞いてないからそれでわからなかったということだけでは、この請求権がそれによって確保されるということにはならない。予見すべきであったかどうかというふうな判断基準があるわけでございますので、それの立証を免れたいとするほうでやり得れば、この規定によって賠償の請求ができないということになろうと思います。
  248. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業権設定をした場合は、これはAという鉱業権者は知っておるわけです。そうしてBに譲渡するわけです。Bは、譲り受け人は全然知らない。こういったBは全然知らないといった場合には、Bはもらえますか。
  249. 加藤悌次

    加藤政府委員 普通の人であれば予見すべきであったろうに、たまたまその人が予見できなかったというふうな落ち度があった場合には、この規定によっておそらく裁判所は賠償の請求権がないというふうに判断するのではなかろうかと思います。
  250. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その最初の鉱業権者は知っているのですよ。そして自分は知っているのですよ。自分は知っておったらもらえぬ。自分が知っておるということを地上権者は知っておるわけです。それで第三者に黙って譲るわけです。そうすると第三者は、今度鉱業権者になった人は請求できるかと、こういうことです。
  251. 加藤悌次

    加藤政府委員 そういう場合は当然請求権があるというふうに解釈できると思います。
  252. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、知っておった人はあわてて知らない人に売って、そうして知らない人から少しリベートをもらえばいい。そうでしょう。
  253. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは先ほど来お答え申し上げております後段の、予見すべきであった施設であるかどうかという面での裁判所の判断によってきまるのではなかろうか、こういうふうに思うわけでございます。
  254. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、その譲り受け人は全然善意であった、しかも一般的には予見すべき状態にない。たまたまAという人は、地上権者との関係において、特定の理由によって知っておった。そうすると、自分は、すなわち譲ろうとする側は、これは鉱業権者になっても、自分が知っておる以上はあぶない。あぶないというか、もらえない。こういうので、あわてて第三者に譲った。そこでこの規定は、どうも脱法行為ができるのですよ。これは悪くやると、リベートがかせげるよう規定なんです。そこで私は聞いておるわけです。これはいずれもう少しいろいろなケースを考えて質問してみたいと思うのですが、とにかくいまお話しになったのは、前鉱業権者は知っておった。そしてその知っておったことを、当然地上権者は知っておった。ところがBという譲り受け人は全然知らない。これが脱法的に行なわれた場合でも請求権がある、こういう解釈をいただいたわけで、この点については立法上どう考えるか、今度は逆の場合もありますね。逆の場合は、第三者というか、善意の——善意といいましても予見し得べかりしもの、それをゼロにするのはちょっと酷ではないか、少なくとも損害賠償のしんしゃくをする条件に入れるべきではないか、こういう気持ちがするわけです。これはどうでしょうか。
  255. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいま御指摘の点、いろいろ乱用の余地もあるいはあるかと存じますので、解釈運用の点は、帰りまして関係方面とも一度打ち合わせをさせていただきたい、こういうように考えます。
  256. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 民法が、予見しまたは予見し得べかりしときは請求権を失うということを書いている。それを受けているわけですから、日本の法律体系としては決して例外的な規定ではない。特殊な規定ではないと思うのですが、どうもこれを特にこう入れてくると、何か乱用されやしないかという、悪意のものが得をする可能性も出てくる。得をするというよりも、善意のものが非常に気の毒な目にあうという余地があるのではないか、こういう感じを受けておるわけです。  続いて、百八条の六にいきたいと思いますが、その前の百八条の四は、例のしんしゃく規定に着手前の問題が入っておるのですね。すなわちこの三号というのは、しんしゃく事由でなくて、請求権としての場合にするか、あるいは損害を生じ得べき場合として試掘権のようなものにするか、これは立法上なかなか問題があるところでしょうし、なかなか考慮を要する点があるのではないかという気持ちがするわけです。  続いて百八条の六にいきたいと思います。これは鉱物の採掘の事業を行なっている場合、これは例の差しとめ命令ができるということになるのですが、なぜこの場合、鉱物の採掘の事業を行なっている場合に限っておるのか。着手前になぜ差しとめ命令をおやりにならないのか。損害賠償の場合と差しとめ命令を差別した理由、これをお聞かせ願いたい。
  257. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは当事者の公平の見地と申しますか、こういった面からの配慮で、鉱業権者の側としては、現に仕事をしておるかどうか、それから地上権者の場合には、現にそういう施設があるのか、あるいはこれからつくろうとするのかどうか、こういうことで一応の事業の着手なりあるいは施設の設置ということを基準に考えて、公平の見地から処理したい、こういう考え方に基づくわけでございます。
  258. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、土地調整委員会でなくて、裁判所に対しては、着手前に差しとめ命令の物権的請求権が行使できますか。
  259. 加藤悌次

    加藤政府委員 この規定を新しく入れました趣旨は、いままでの鉱業法の解釈上、鉱業権にもいわゆる物権的請求権の一つとしての妨害排除の請求権があるかどうかという問題が実はあったわけでございますが、解釈としてはそれがあるということで、もっぱらそれ以後の段階におきましては裁判所の判断にゆだねておったような次第でございますが、なかなかいろいろと問題が多い。しかもこの鉱業権に基づく物権的請求権ということになりますと、やはり鉱業権そのものを規定している鉱業法の中でそういった面を規定するほうがよりはっきりするのではなかろうかということで、いままで運用上問題になった面をこの規定の中に入れたわけでございますので、そういった趣旨から、一般の訴訟に持っていく場合には土地調整委員会の裁決がまずございまして、それに対する不服の抗告訴訟という格好で裁判所に持っていくという考え方でおるわけでございます。
  260. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その民法規定を適用して最初から裁判所に請求できないのですか。要するに着手前の場合ですよ。着手後はこの規定にのっとるわけですね。着手前の場合は民法規定にのっとることができないかどうかです。
  261. 加藤悌次

    加藤政府委員 この規定は、先ほど申し上げましたよう民法の特別の規定ということで置いたわけでございますので、解釈は制限的に解釈できる。したがいまして御指摘ような場合は出訴できない、こういうことでございます。
  262. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、一体この差しとめ請求権というのは、これは鉱業権自体から発生する権利ですか。それとも鉱業権に基づくいわゆる採掘のある施設、採掘した施設に基づいて請求権を行なうのですか。すなわち採掘した施設というと、採掘施設の所有権に基づく妨害排除の請求権、こういうふうになるのですか。どうなんです。
  263. 加藤悌次

    加藤政府委員 物権としての鉱業権に基づく請求権というふうに解釈していただきたいと思います。
  264. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業権という物権に基づく請求権である、そういう法理論をとられるならば、着手という条件は私は要らないと思うのですよ。いわゆる鉱業権自体から発生する請求権ならば、私は鉱業権設定によって差しとめ命令を出せばよい。その必要があるかどうかは裁判所がやる、あるいは土地調整委員会がやる。少なくとも着手したという後においてできるということならば、やはり何か鉱業権というもの自体から発生するのではなくて、その鉱業権の施行に基づく、ある施設からのその所有権に基づく請求権、こういうことになりはしませんか。
  265. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱業権だけを中心に考える場合には確かに御指摘ような点があるかと思いますが、この規定は土地所有権その他の地上権利と地下の鉱業権、このいわば相隣関係にある両権利の間の調整をいかにしてやるかという趣旨からの規定でございまして、ある程度負担の公平という面から見まして制限を受けることはやむを得ないのではなかろうか、こういうふうに考えておるわけでございます。
  266. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業権自体から発生するけれども、鉱業権という性格から、あらゆる場合にできるということでなくて、ある制限を置いた、その制限がすなわち採掘の事業を行なっている場合、こういうように解釈してよろしいですね。
  267. 加藤悌次

    加藤政府委員 そのとおりでございます。
  268. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、着手前に予見されても、差しとめ命令はできない、こういうことになるわけですが、これは挙証責任というのは、すなわち予見し予見し得べかりき場合の挙証責任というのは、やはり地上権者、こういうふうに考えていいわけですか。一般的、この法律全体についてです。
  269. 加藤悌次

    加藤政府委員 挙証責任は差しとめ請求をされた側のほうにあるわけでございます。
  270. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 続いて、この鉱業権設定した場合に、土地の価格が下がるのですね。これだけ制限が地上物件にあるということになれば、鉱業権設定したことによって土地の値段が下がった場合には、一体賠償の請求権があるのか。
  271. 加藤悌次

    加藤政府委員 これはほかにもままある事例でございまして、そういう場合には法律請求権はないというふうに解釈いたします。
  272. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 しかし、鉱業権設定されたことによって土地の値段が下がった場合に、全然損害賠償の請求権がないというのは、これは土地所有者としては困るでしょう。これは全然ありませんか。
  273. 加藤悌次

    加藤政府委員 いまの御指摘の点は、これは鉱害賠償の問題ではなくて、一般民法の不法行為原則に当てはまるかどうかという解釈によって裁判所が判断することになるのではなかろうか、こういうふうに存ずるのでございます。
  274. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この百八条の二の一項の一号、二号、三号、これをちょっと考えつくものをその類型に従っておっしゃっていただきたいのです。
  275. 加藤悌次

    加藤政府委員 第一号は、土地を通常の利用の範囲を越えて掘さくする場合でございまして、掘さくする規模なりあるいは深さにおいて通常の利用の限度を越えておる、こういうことでございまして、前段の規模で申しますと、たとえば地下のタンクだとかあるいはトンネル、こういうものがそれに該当するかと思います。それから深さの場合は、最近方々でございますが、工業用の井戸あるいは温泉、こういったものを掘るというのがその場合に該当するわけでございます。  それから次に二号は、高度の地盤の支持を要する施設ということでございまして、地盤の支持を必要とする場合はいろいろあるわけでございますが、一つは重量が非常に重いものができるという場合でございまして、たとえばダムであるとかあるいは製鉄所の高炉であるとか、こういうものがその場合にあたると思います。それから非常に高い施設ができる、そのために高度の地盤の支持を要するという場合でございまして、たとえば鉄塔であるとか、非常に高い高層建築物といったようなものがこれにあたると思います。それから用途の面から高度の地盤の支持を要するというふうなのは、たとえば精密機械工場あるいは鉄道、こういったものがその中に含まれるであろう。  それから三番目でございますが、通常の利用に比して非常に広い区域、あるいはそのものの施設によって著しく土地の形質を変更する、この二つ、その結果、鉱床、坑道、坑井そのものを損壊する、事実上鉱業実施が不可能になるという場合であるわけでございますが、広い区域の例としては、飛行場であるとか演習場、つまり砂鉱関係を採掘している鉱業権がある場合に、その土地が飛行場になるというふうな場合がこの例にあたると思います。それから著しく土地の形質を変更し、それによって鉱床そのもの、あるいは坑道を損壊する、そういった場合の例といたしましては、たとえば干拓地だとかダムの貯水池であるとか、こういったものが例としてあげられるというふうに思います。
  276. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 続いて百十三条の二号の特殊施設というのがあるのですが、この特殊施設以外のものは、いわばしんしゃくの対象になりませんか。過失相殺というものはありませんか。
  277. 加藤悌次

    加藤政府委員 一般的には、第一号の被害者の責めに帰すべき事由があったかどうかということでかなり広い範囲において救われるのではなかろうか、こういうふうに存ずるわけでございます。
  278. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 家屋が建った場合はどうなんです。住宅、しかも特殊施設でない住宅の場合。
  279. 加藤悌次

    加藤政府委員 二号は特殊施設だけの場合の規定でございますので、家屋のような場合には、第一号の事実があったかどうかということによって範囲がきまるのではなかろうか、こういうふうに存じます。
  280. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 第一号の場合の家屋のような場合に、過失相殺というよう考え方が日本の法律上はできますか。たとえばその地下を掘っているという場合に、家屋を建てれば陥落をし、損害賠償を受けることは当然初めから予定される。しかしその場合に、家屋の下を掘って損害があることはおまえも知っておったじゃないか、こういうことで過失相殺の対象になり得るかどうかということです。
  281. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱害賠償の制度をこういうふうに鉱業法の中に置いた趣旨が、公平の見地からいたしまして、鉱業の仕事の実態の特殊性等から見まして無過失賠償責任という規定を入れたわけでございますので、民法一般的な適用として、損害賠償の場合にこれと同じ過失相殺の規定があるわけでございますが、現実の場合には考え方がそういうふうに違っておりますので、これを現実の場合に適用することになると、特にひどい悪意があったというふうな場合にはこれによりましてしんしゃくされるかもしれませんが、これはやはりもともとこういう鉱害賠償規定があるという趣旨をも兼ね合わせて裁判所で判断していただけるものであろう、こういうふうに考えるわけでございます。
  282. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは土地所有権に基づいて家を建てておるわけですから、陥落することがわかっておるけれども家を建てた場合に、過失相殺の適用があるということはやはり考えられるでしょう。やはり適用があるでしょう。一般的にどうです。
  283. 加藤悌次

    加藤政府委員 感じといたしましては、先ほど申し上げましたように、家を建てることは土地の一般的な利用であるかどうかという問題とも関連するわけでございますので、そういう面からいたしますと、よほどの場合でない限り、普通の家を建てるというふうなことについての何らの保障がないということになりますと地上の所有権に対する非常に大きな制限ということになりますので、そういう面をやはり勘案いたしまして、裁判所がこの規定によってしんしゃくされるというふうに思うわけであります。
  284. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうしますと、すでに陥落をして、地下が掘ってあるところに家を建てた場合は、これは復旧を要求する権利がありますか。土地を上げてもらう権利があるかどうか。
  285. 加藤悌次

    加藤政府委員 土地を上げてもらうといいますか、鉱業権の行使によりまして自分の土地にそういう損害が起きておるわけでございますので、そういった面からの損害賠償の請求は当然できる。事実上、土地の地上げの工事をだれがやるかということは別問題であろうかと思います。
  286. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 すでに発生している、そして土地は陥落によって下がっておる。その事実は知っているわけです。そこに家屋を建てるわけですね。その場合に、その後になって、いわゆる宅地を上げてもらいたいという請求ができるかどうか、こういうことを聞いておるのです。大体局長の答弁でいいと思うのですが、もう少し具体的に聞きたい。
  287. 加藤悌次

    加藤政府委員 おそらく土地が陥落いたしておるというふうな場合には、その段階におきまして損害賠償請求権が発生いたしておりますので、おそらく賠償をしてもらっている場合が多いのじゃなかろうかという気がするわけでございます。それでいまのような場合、例をあげて申しますと、その土地の陥落が現に進行の途中にある。したがって賠償の範囲、額もはっきりきまらないということを知りながら、その上に家を建てるということにつきましては、土地所有権者側に重大なる落ち度があるのじゃなかろうか。場合によりますと、いわゆる賠償目的で新しい家を建てたというふうなことも考えられるわけでございまして、その辺の事情をこの一号の規定によって裁判所は当然しんしゃくすべきではなかろうか、こういうふうに思うわけであります。
  288. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業権の行使によって土地の所有権が制限を受ける場合は、鉱業法にはっきり明記した場合だけですよ。それは地上権との調整の規定があって、それ以外は土地所有権は制限を受けてないわけです。だから土地がすでに下がっておる、そのことは承知しているのです。その上に家を建てるわけです。そして復旧をしてくれ、こういった場合に、おまえは知っておったじゃないか、すでにそれは予見されておるし、通常当然知り得たことである。逆に言えば、それをもって今度は鉱業権者は賠償の義務を免れるものかどうか、これはどうですか。
  289. 加藤悌次

    加藤政府委員 これは実際問題として、いま陥落の進行中にある。やはり通常の社会通念から言えば、まずその土地の陥落しておるものを復旧して、そこへ家を建てるべきではなかろうか、こういう気がするわけでございます。土地の陥落進行中であるといった場合に、それを知りながら家を建てるということになりますと、やはりその家屋の所有者と申しますか、地上権者に相当大きな落ち度があるのじゃなかろうかという気がするわけで、常識的かもしれませんが、その場合には進行を招く家を建てることを待つ。それによって損害ができれば、土地の陥落による損害賠償の中に含めて賠償請求ができるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけでございますが、すべて裁判所のしんしゃくの規定でございますので、非常にむずかしいわけでございます。この鉱業権の行使による損害賠償につきましては、民法一般原則とは変わった点が、無過失賠償責任ということでございますので、そういう点をも考えあわせながら、裁判所は民法一般原則で、この一号の適用をすべきじゃなかろうか、こういうように感ずるわけでございます。
  290. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういうことをおっしゃるなら、なぜ百八条の二から続く地上物件との調整のところにお書きにならないのか、少なくともここに列挙されておる特殊施設以外には、土地の所有権の行使について制限を受けることはないと思うのです。ですからその土地所有権に対して制限を受けるというのは、百八条の二に書いてある特殊物件です。特殊施設ですよ。一般家屋は、当然土地所有権によって家を建てる場合に、あなたの言うように、それが進行中であるならばある程度損害賠償の額が少なくなるというようなことであるならば、問題であると思うのです。それならばこれだけはっきり列挙規定を設ける必要はないのですよ。そして当然これまたこれをその場合にも含ますべきでしょう。そして差しとめ命令という制度があるのに、それに乗せない。しかし賠償はしんしゃくする。どうもその理論はおかしいですね。ですから少なくとも特殊施設以外は、土地所有権者はその土地の利用については自由にできるのだと考えていいのじゃないですか。
  291. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほど申し上げましたように、鉱業権地上権益を比較しました場合に、権利の行使の内容におきまして地上一般の利用、これに基づく所有権等の行使は鉱業権に優先するという基本的な考え方に立っておりますので、この一号を現実に適用する場合、ほとんど大部分の場合は地上権者に責むべき事由があるということは言えないのじゃなかろうか。具体的に一例を先ほど申し上げましたが、現に鉱害が進行中のところに補償を目的として建物を建てるとか、あるいはボタ山へ立ち入り禁止の表札がかかっておるにもかかわらず、それを取りくずしたということがボタ山の崩壊の原因になって鉱害が起きたというふうなことは、ボタ山のくずれることによって、たとえばうちが倒壊した、そのうちの所有者が、不法な行為によってボタ山がくずれる原因をつくった、こういう例があるのじゃなかろうか。ですから比較的悪質な度合いが高い場合に、初めて現実の問題としてはこの一号の適用があるのではなかろうか、こういうふうに感ずるわけであります。
  292. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱山局長は非常に重大な発言をされたのですよ。進行中に、それを知っておってうちを建てた場合にはと言われるが、このしんしゃくの規定が適用するのはほとんど進行中ですよ。厳格な意味における安定したものなんてほとんどないのですよ。ですからそれができるなら、ほとんどいまの鉱業権者というのは過失相殺として免れる。しかしたとえ進行中であっても、悪意でない以上、いわゆる賠償金を取る目的でない以上、当然全額の請求権があるでしょう。また裁判所も悪意でない以上、このしんしゃくの規定の適用はないはずです。
  293. 加藤悌次

    加藤政府委員 私がお答え申し上げました例でございますが、いま陥落が進行中である、そのことを当然知っておるわけですが、そのほかに当然故意に賠償を請求することを目的にして建てた、だから社会的に見て非常に非難すべき点が多いという場合を申し上げたわけでございます。
  294. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、進行中というよりも、要件としては賠償金を目的として、こう解釈してよろしいですか。
  295. 加藤悌次

    加藤政府委員 いま私が例として申し上げたのはそういうことでございます。
  296. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この百十五条の二のいわゆる盗掘の場合の鉱害賠償の規定が初めて設けられた。これは従来この国会でも問題になっている点が改正されたので非常にけっこうだと思いますが、これは無資力の規定はどうなんですかね。臨鉱法の規定は無資力として扱えますか。
  297. 新井眞一

    ○新井政府委員 今回の改正に伴いまして、鉱業法上の鉱害でございますので、無資力認定の対象とすることができるわけでございます。
  298. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、鉱業権者というのはあらためて加害者ということになるわけですか、そういうことになるのですね。しかし、鉱業権者じゃないわけでしょう。あるいは鉱業法上の鉱害にはなるのだけれども、いわゆる権利を侵害した者は鉱業権者じゃないわけでしょう。この無資力というものは、鉱業権者が無資力なんですからね。これは鉱業権者または加害者が無資力の場合、こういうふうにしなければいかぬ。
  299. 新井眞一

    ○新井政府委員 鉱業権者ではないかもしれませんけれども、できました鉱害につきまして、その原因をやった者が実際の無資力だということになれば、無資力の認定をいたしまして鉱害復旧をやるということになるわけであります。
  300. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると法律改正が要るんじゃないですか、臨鉱法の法律改正が。
  301. 新井眞一

    ○新井政府委員 臨鉱法のほうは鉱業法鉱害というものを受けておりまして、その中の特定物件について云々ということになっておりますので、したがって鉱業法が母法の鉱害鉱業法上の鉱害となりますことで、別に改正を伴わずに先ほど申し上げた運用はできるということになります。
  302. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それができればけっこうですが、私はおそらく鉱業権者または租鉱権者が無資力と、こう書いてあるんじゃないかと思うんです。そうすると鉱業権者または租鉱権者じゃないのですから、これは加害者か何か字句を入れなければならぬじゃないかと思いますけれども、局長がいいとおっしゃるのですから、私はそれ以上質問をいたしません。
  303. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいまの御指摘の問題、この附則の五十条の規定で臨時石炭鉱害復旧法の一部改正があるわけでございますが、その最後のところに「第四十八条の二第三項及び第五十一条第二項中「第百九条」の下に「若しくは第百十五条の二」を加える。」この条文を引いておりまして、鉱業権者でなくてもこの改正によって無資力の認定ができると同じ取り扱いができる、こういうことになっております。
  304. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大体この条文の解釈的な面はお聞きしたわけですけれども、しかし外国の立法例として、大きな立法例としては、私はいろいろ比較して質問をしてみたいと思うんですよ。それから大臣については、再度保留いたしました質問をいたしたいと思いますが、本日はこれで一応終わりたいと思います。
  305. 二階堂進

    二階堂委員長 次会は、明十六日午前十時より開会することにいたし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時五十三分散会      ————◇—————