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1964-06-17 第46回国会 衆議院 商工委員会 第59号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十七日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 始関 伊平君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       大石 八治君    岡崎 英城君       海部 俊樹君    神田  博君       佐々木秀世君    田中 龍夫君       田中 六助君    中村 幸八君       長谷川四郎君    三原 朝雄君       大村 邦夫君    加賀田 進君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       島口重次郎君    藤田 高敏君       森  義視君    麻生 良方君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         農林政務次官  丹羽 兵助君         農林事務官         (農林経済局         長)      松岡  亮君         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         議     員 田中 武夫君         農林事務官         (農林経済局統         計調査部長)  久我 通武君         農林事務官         (食糧庁業務第         二部長)    中島 清明君         中小企業金融公         庫理事     馬場 靖文君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 六月十七日  委員森義視辞任につき、その補欠として栗林  三郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員栗林三郎辞任につき、その補欠として森  義視君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業団体組織に関する法律の一部を改正  する法律案内閣提出第一六二号)  中小企業者事業分野確保に関する法律案(  松平忠久君外二十八名提出衆法第二四号)  官公需中小企業者に対する発注の確保に関す  る法律案松平忠久君外二十八名提出衆法第  二五号)  中小企業組織法案松平忠久君外二十八名提出、  衆法第二六号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    ○二階堂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。桜井茂尚君。
  3. 桜井茂尚

    桜井委員 本日の本論に入ります前に、昨日新潟にたいへんな地震がございました。私は罹災者に対して深甚なる同情の念を持ちつつ御質問いたしますが、これに対して通産当局としてはどのような今後の処置をおとりになられる考えか、この際、最初にまず御質問いたします。
  4. 福田一

    福田(一)国務大臣 災害がきのう起きましたので、直ちに本省の中に官房長を主とする通産省の災害対策本部をつくりまして、災害の実情の把握につとめますと同時に、一応最も必要なことは、われわれとしては、道路網回復、あるいはエネルギーの回復ということが第一と考えますので、電力関係復旧に一番重点をまず置きまして、そして、これは広域運営立場からでありますが、中部電力と東京電力、北陸電力、この三電力をして救援をさせる手配を整えさせました。  それから今後の問題でございますが、被害状況から見ますと、昭和石油の四万バーレルのあそこに新しい施設がありますが、これがほとんど全滅的な、壊滅的な影響を受けておるように聞いております。それから電力は、火力発電所があそこのすぐそばにあるのでありますが、これも非常に危険な状態にさらされたが、いままでのところは大体直接の被害はなかったのであります。いわゆる水の供給ができないために運転は中止をしておるのであります。それから新潟鉄工SK等はある程度被害はあったようでございますが、まだ実態を把握いたしておりません。  このような工業関係に対する被害について、今後どういうふうな措置をとるかということは実態を把握してからにいたしたいと思いますが、同時に中小企業者が今度の事態において非常に損害をこうむり、また非常な窮状におちいることを考えておりますので、これに対する対策についても、従来の福井の地震その他を参考としつつ、いま対策を練っておりまして、なるべくすみやかにこれを決定をして実施に移してまいりたい、かように考えておる次第であります。
  5. 桜井茂尚

    桜井委員 まだ被害程度も本格的にはわからないと思いますので、今後どうか敏速に各種の施策を講ぜられて、ことに通産関係におきましては復旧ということにおきまして大きな責任を持っておると思いますので、なるべく時期を失しないで施策を実施されるよう要望いたします。  では本論に入りますが、私は、この前本会議において質問しているとおり、またこの前の委員会中野中小企業庁長官が述べられているとおり、さらにまた、たびたびの委員会で倒産問題や歩積み、両建てと関連して論ぜられているとおり、大企業による中小企業への圧迫は目に余るものがあります。しかもさらに、国連貿易開発会議に見られるように、低開発国からの追い上げは激しく、そして三十七年度におけるわが国輸出の五四%が中小企業製品であることを考えるとき、はだ寒い思いがするのであります。  そこで、私はまず通産大臣大局的所感をお伺いいたしますが、政府は、本年度予算を編成した際に、このような内外情勢をあらかじめ予想していたかどうか。私は、国際情勢全般と関連した問題であるので、これほどまでとは予想しなかったのではなかろうかと好意的に解釈いたしますが、もしそうだといたしますと、池田首相の言った革新的施策を、政府は口先だけではなくして本格的に実施しなければならない段階に来たと思うが、どうでございましょうか、大臣の所見をお伺いいたします。
  6. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおり、国連貿易開発会議との動きというものは、これは大いにわれわれとしては刮目し、また注意をし、さらにその対策考えなければならない段階に来ておると思います。昨年の予算編成のときには、お説のとおりそれほどこれが具体化というか、低開発国がこういうような動きをするであろうということは実はあまり予想をしなかったのでございますが、実際に開いてみますと、非常な勢いであります。ただ、しからば会議の結果はどうであったかということから見ますと、結局総会は一九六六年、いまから三年後に開かれるということでありまして、具体的の問題については何らまだ決定はいたしておりません。それぞれ一次産品の問題にいたしましても、特恵関税の問題にいたしましても、具体化はいたしておりません。また低開発国が言うことを先進国が全部うのみにしておるわけではない。むしろきまらないということは、その間に意見の相違があったからでありまして、私は一九六六年までにはいろいろの問題が話し合いが進むとは思いますけれども、それじゃ進んだからといって六六年からすぐに実施するか、またその幅がどれくらいであるかということは、これからの問題であろうと思います。ただあなたのおっしゃったように、低開発国との関係ということは、いわゆるいままでの先進国である英米あるいはEEC等とは違って、日本の場合には受ける影響が特に大きい、特に農産物においてその影響が大きいということを考えます。もちろん中小企業にも大きな影響があるでありましょう。でありますから、われわれとしては今後大いにこれが対策考えていかなければならない。いわゆるあらし前ぶれがあったと見るべきであると思うのでありまして、あらしは来たわけではありませんが、前ぶれがあった。前ぶれがあったのに黙っているという手はないと思うのであります。
  7. 桜井茂尚

    桜井委員 いま大臣のおっしゃるとおり、国連貿易開発会議では、低開発国の多数の強い要求にもかかわらず、先進国との十分な了解がつかないままで第一次産品問題や特恵問題は後日に持ち越された。だからいま直ちに重大な影響を持つとは確かに考えられません。しかし今後常設機関が設置され、しかも三年おきにこの種の会議が持たれるようであり、歴史の大きな流れになっておるということは、この前宮澤長官もおっしゃっております。そこで昨日の委員会藤田委員の質問に答えて通産大臣は、自由化は当面の問題であり、低開発国の問題は三年後の問題であるといっておりますが、三年後にほぼ当面することがわかっているということは、大臣がいま仰せられましたとおり、いまから対処していきませんと間に合いません。そして、現に国連貿易開発会議においてアジアアフリカグループから推されて日本は副議長になりながら、ことごとに低開発国の提案に水をさしたり、反対したりして、しかも自分には何ら積極的な案もなく、低開発国からの評判が非常に悪く、冷笑さえされたと伝えられております。三年後に再びこの轍を踏むことのないよう、また低開発国、ことにアジア諸国から恨まれないためにも、世界動きに対応して急速に国内体制をつくらなければならないと思いますが、この点はいかがでございますか。
  8. 福田一

    福田(一)国務大臣 今度の会議におきまして、当初日本側としては一応状況を見るという形をとっておりましたが、その後におきましては、国民所得の一%は少なくとも低開発国のために向けるというような積極的な案についてわれわれは賛意を表し、また低開発国のうちでも東南アジアの問題については、われわれは少なくともいわゆる開発銀行構想というようなものを打ち出して、これはエカフェの問題とも連なるのでございますが、ひとつ大いにやろうではないかという積極的な姿をきめておったわけであります。ただそれまでにいくまでの間に、機構問題あるいは一次産品問題あるいは特恵問題で、かなり低開発国がいまの段階においては実現困難な問題を言っておったのでありまして、日本だけが冷笑を受けたのじゃなくて、これは先進工業国がみなそういう意味では冷笑を受けたと私は思っておる。日本だけがそうであったというわけではないと思っております。まあこれは度合いの問題ですから、また認識の問題でございますが、しかしいずれにしても今後は、いまのお説のあったように、すでに来たるべきものがわかっておるのに黙って見ておるというわけにはいきませんから、今後大いに対策考えていかなければならない、かように考えております。
  9. 桜井茂尚

    桜井委員 いま大臣援助の問題を主として申されました。この点につきましては私はこの前質問いたしておりますし、その点は十分承知いたしております。また冷笑されたということは、これはけさの日本経済新聞にも出ているとおり、日本が発言すると冷笑しておったのでありまして、全部が笑われたというわけはでございません。  ところで、私は援助の問題は今回は省略いたしまして、最初特恵並びに貿易障害の撤廃の問題についてお伺いいたしますが、低開発国からわが国への輸入については比較的問題は少ないと一般には言われております。しかし、これとてあとに述べるようにやはり問題はあります。だが、さらに重大なことは、先進諸国においては、昨日藤田委員が指摘しているとおり、わが国ほど中小企業の問題の比重が高い国はございません。したがって、先進諸国が低開発国特恵の問題で譲歩する可能性は十分考えられます。そうすると、わが国からの先進諸国への中小企業産品輸出に重大な影響が生じます。そして、このことは他国のきめることでございますから、わが国自身としてはどうにもならない問題であります。したがって、低開発国産品との競争で将来うき身をやつすというようなことのないよう、わが国産業構造を急速度高度化し、中小企業産品にしても性能や品質の高度化を行ない、急速度に変えていかなければならないのじゃないか、このように思いますが、どうでございましょうか。
  10. 福田一

    福田(一)国務大臣 中小企業近代化高度化生産性の向上ということは、もとより中小企業基本法においても定めておるところであり、また今後われわれとしては、こういうような事態もございますので、努力をいたさねばならないと思っております。ただしかし、よその国はすぐ譲ってしまうだろうというような見通しにつきましては、これはなかなかそう簡単ではないようであります。アメリカにしてもEECにしてもそう簡単ではない。ただ度合いが違う。たとえば日本の場合は五つしか譲れないのに、先進国は七つ譲るというようなことは起こり得ると思うのであります。それは度合いの問題であります。またそれは話し合いもできることであります。OECD等に加盟いたしましたのも、こういう話し合いができるようにということが一つの大きな理由であったわけでございまして、こういう場を通じまして大いに先進国の間で話し合いもいたしつつ、しかもまた後進国に対してはわれわれとしてのできる限りのことをする、こういうことでなければならないと思います。私はこういう場合に、いつでも議論だけで、アドバルーンだけでものを処してはいけない、日本の国力がそれに相応する、日本の国としてこれだけはできるということはできるだけやらねばいけませんが、日本の国の産業がつぶれても、農業がどうなっても、それでもかまわない、私はこういう態度でこの問題に処するわけにはいかない。ほうっておいてそういう態度で臨んでいいかというと、そうではない。いま桜井委員の言われたように、極力その間において近代化合理化をはかって、できるだけのことをするという努力をしながら、その努力の結果として自分にたくわえられた力をもって低開発国のために大いに骨を折る、こういう姿であるべきである、かように考えておるわけであります。
  11. 桜井茂尚

    桜井委員 いま大臣は、他の先進国も困難は持っているということでございました。そのとおりではございます。しかし、すでにイギリスにおきましては、特恵において譲るというような動きもこの間の会議においてあったのであります。したがって、われわれとしまして、われわれ日本がまあ一番困難な立場に立つだろうということをあらかじめ心配して私は申しておるのであります。そこで、自由化は、昨日大臣が申されましたとおり、先進国との競争の問題であり、先進国に比較してわが国産業の立ちおくれている分野、主として重化学工業機械工業に関する問題を提起いたしております。一方、低開発国に関する特恵問題は、従来わが国輸出産業の花形であった、主として繊維工業やミシン、望遠鏡、自転車、陶磁器、雑貨等、これら従来低賃金労働に依存して日本独特のものとして発展してきた軽工業に問題が多いのでございます。昨日の委員会で論ぜられたのは前者であり、しかもそれは業種は少ないのであります。しかし、後者のほうは今日までわが国産業の中核であったものでありますから、広範囲にわたり、現在でも経済的、社会的比重は実に重いのでございます。したがって、次の貿易開発会議までの三年や、その次の五年ぐらいの期間で簡単に解決できる問題ではございません。わが国中小企業全般体質の問題であり、産業構造全体の問題であり、おくれて出発した、いわゆる二重構造といわれる日本資本主義特質そのものの問題であります。そしていま先進国からは自由化を迫られ、低開発国からは第一次産品特恵問題等で、上と下から二重にはさまれ、しかも歴史流れに沿ってわれわれ自身体質を一刻も早く急速に改善しなければならないところに問題の焦点があると思うのでございますが、大臣のお考えをお伺いいたします。
  12. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりだと思うのであります。自由化に対してはきのうもお話をさせていただきましたが、自由化によって日本産業のうちで相当部分、もう九三%やりましたが、これはどうやら耐え得る。耐え得ないものもあるから、それに対しては何とか特別の法律をつくってでもこれを処理しなければならない、こういうことを申し上げておるわけでございます。今後低開発国の攻勢に対しましては、お説のとおり、われわれとしても極力その動向を察知して、そして来たるべきそういう時期に備えてやるということは、それ自体がまた日本の国の経済を繁栄させる道でもある。何も低開発国のためにやるのではない。それ自体日本産業の生きる道である。こういう観点に立って、恩恵とかそういうことじゃなくて、自分のためにやるというような観点に立ってこれをやることが一番大事だと思っておるのであります。そういう意味で、あなたのお説には賛成でございます。
  13. 桜井茂尚

    桜井委員 いま大臣の仰せられたとおり、自分のためにやらなければならないことであって、そのとおりであります。そこで産業構造の変革を急速度に実現する方法として、三つの場合が考えられます。一つ一つ申し上げますから、ひとつ順を追ってお答えを願いたいと思います。  第一は、大企業中小企業分野に進出して、中小企業にとってかわることであります。第二は、中小企業が成長して近代化合理化をはかり、いわば国際競争力を持つ企業にまで大きくなることであります。第三は、中小企業合同あるいは共同化して合理化近代化をはかり、同様に大きくなることであります。政府は、このうちのどれを施策として推し進める考えであるか。  そこで第一の、大企業中小企業の圧倒的に多い食料品工業繊維工業家具木製品工業等において、嗜好や流行の変化に伴って中小企業にとってかわるということは、現在すでに急速度に進行をしております。そこで、これを防止するのがいま上程されている法案の趣旨だろうと思います。だが、中小企業に対する保護だけでは時代流れに抗することはできません。  そこで第二の、中小企業業種に即応した大企業にまで成長しなければならない、このためには合理化投資を急速に進める必要があるのであります。ところが、最近の破産倒産の例を見ますると、合理化投資による資金負担に原因するものが多数見受けられます。わが国中小企業資本力が弱いので、このような状態にすぐぶつかってしまうのであります。したがって、このような弱い中小企業に、政府はどのような措置をもってこの時代的要求に対応させようとするのでありますか。  第三の、企業合同あるいは共同化は、現実の問題として中小企業においては大企業の場合よりも今日まで行なわれにくかったのではありませんか。中小企業経営者は概して独力をもってその企業を今日まで経営し発展させてきたので、自分支配力の弱まる合同共同化をきらう傾向があるのであります。そこで政府は、これらの企業経営者をどのように行政指導するのでありますか。そこでこの場合、何といっても単なる啓蒙だけではだめであって、資金的な裏づけを持った指導が行なわれなければならないと思うのですが、どうでしょうか。たとえばあの大きな海運会社でも、資金的な背景を持った指導の前には合同せざるを得ませんでした。この問題について御回答をお願いいたします。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 なかなか分析をしていただいて、非常にいいお考えが入っておると思います。私としては、大企業中小企業分野に入っていくということは、なるべく自分の仕事を専門にやってもらいたいということから、私はむしろ慎んでもらいたい。大企業は大企業なりに、もっと世界を相手にしたたいへん大きな問題がたくさんあると私は考えております。だから、そういう意味合いで、私は大企業中小企業分野に入るということについては原則として反対でございます。ただし、これは原則でございまして、ものによってはそういうものが起きるかもしれません。中小企業が、たとえば幾らわれわれがこういうふうにうまく合理化をして近代化をしてあれしてくれと言っても、それをやらないい、倒産したとか破産したとかいうことになれば、そういう分野に入っていく場合もありますが、少なくともそういう意欲を持って中小企業のやっているようなところには入らないようにいたすべきである、私はこう思っております。  それからその次の、中小企業をいわゆる近代化する、中小企業がだんだんその分野において大企業になるようにしたらどうか、こういうことでございますが、これは中小企業に二種類ございます。いわゆる下請関係企業というもの、これは一緒に組み合っていくわけなんです。だから、私はきのう申し上げたように、いわゆるこの特振法というような形においてその中小企業がいじめられない——それは独立してはなかなかいけないです。その大企業と組んで、コンビになっていくことによって初めて成立する、その成長が約束される、こういうことになるものもあるわけであります。こういうものについては、私はやはり特振法的な姿において基準を合理的にきめる、そうして中小企業にしわ寄せがいかないようにするというような姿をとっていくことが必要だと思う。ただ今度は、中小企業オンリーでもってやっておるところがございます。それもいろいろあるのであります。たとえばオルゴールをやるとか、あるいはセメントのタイルをやるとか、いろいろございます。こういうようなものになりますと、これはそれ自体として育てていかなければならないのでありますが、しかしこれもなかなかやれない。会社をそのまま育てていくということは、そしてそれを大企業並み生産性まで持っていくということは非常に困難かと考えております。そこで、結局はやはり協業をする。そういう中小企業がみんな集まって、そうして集まったところへ政府としてもできるだけの力を加えつつその産業を育成していく、こういう方向に持っていくのが本筋ではなかろうか、私はかように考えております。
  15. 桜井茂尚

    桜井委員 下請企業の点もございます。私はその点もわかりますが、先ほど申し上げましたとおり、中小企業圧倒的部分食料品工業、あるいは繊維家具木工、こういうようなところに——数日前の日本経済にもありましたが、家具木工方面に新たな大会社がどんどんと進出して、アラスカパルプまでが出てきているというような状況がございます。食品工業につきましては、一番先、私が委員会で申しましたとおり、たとえばパン屋におきまして、あるパン屋が非常に大きくなれば、ほかのパン屋さんはつぶれる。こういうようなことを申しました。したがって、現在政府考えられている工業が、従来からあるいわゆる日本に存在して育ってきた工業よりも、新しい工業に主力が置かれたような考え方でございますけれども、従来からの工業もやはり何とかしなければならない。で、いずれにしても、現在の施策程度では、日本中小企業は先ほど述べたとおり資本力が弱いので、早い話が、ゼロを幾ら集めてもゼロであるという結果になる可能性が強く、この法案による保護にもかかわらず、現実は、私が本会議で質問したとおり、法律そのものざる法となり、一部の中小企業独特の分野を除きましては大企業に取ってかわられるという可能性が非常に強く、このことがまた蓄積の乏しい日本資本主義の特性であり、必然性であろうと私は考えられるのであります。ただ、しかし、いま言ったような現象が急速度に発生する場合は、経済問題を乗り越えた社会的混乱を巻き起こす可能性があることを、やはり大臣に指摘せざるを得ませんが、こういう点につきましてどのようにお考えでございますか。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 仰せのとおり、私はこの法律が万能だとは思っておりません。まだまだいろいろの手を考えていかなければならないと思いますが、まずこういうふうにして認識を皆に持たせつつ、順次施策を進めてまいりたい、かように考えております。
  17. 桜井茂尚

    桜井委員 次に農林大臣にお伺いいたしたいのでございますが、御病気とかいうことでございますので……。
  18. 二階堂進

    ○二階堂委員長 農林大臣が病気のため出席ができないということでございますので、農林省から久我統計調査部長と中島食糧庁業務第二部長が出席されております。
  19. 桜井茂尚

    桜井委員 次官はおいでになりませんか。
  20. 二階堂進

    ○二階堂委員長 政務次官はいま要求しておりますが、まだ返事はまいりません。
  21. 桜井茂尚

    桜井委員 では、次官がおいでになりますまで若干技術的なことをお伺いいたします。  食糧庁長官にお尋ねいたしますが、去る五月の二十七日に、全澱連の会長本坊氏をはじめ千葉県、鹿児島県の代表の方々があなたに陳情にお伺いいたしております。その席上、長官は、あなた方はでん粉が安くて困る困ると言うが、でん粉業者は困っても、農家は昨年高く売ったのだから困っていない、君たちが高く買ったから困っているのだと言い、では長官は幾らで買ったらよいと思うかという問いに対し、反当り二万円の粗収入があればよいのではないかと答えたそうでございますが、事実でございましょうか。
  22. 中島清明

    ○中島説明員 その際、私同席しておりませんでしたので、正確にどのように申しましたか承知いたしませんが、おそらく本年のでん粉の価格の事情等がいろいろ議論になりました際に、本年のいまの問題としては、イモの価格については、去年すでにイモの価格がきまりまして農家にも支払いが行なわれておるので、現在直接困っておられるのはでん粉業者ではないか、こういう趣旨を申し上げたのではないかと思います。したがいまして、でん粉の問題は農産物価格安定法にもございますように、でん粉の買い上げを通じましてイモ作農家を保護するというのが趣旨でございまして、食糧庁といたしましてはイモ作農家の保護に万全を期するような心がまえでやっておりますし、また今後もそういう考え方で進みたいと思っております。
  23. 桜井茂尚

    桜井委員 統計部長にお伺いいたしますが、カンショの生産費調査は、三十七年の重要農産物生産費調査報告によれば、反当り粗収入の全国平均は二万六百二十三円であり、非災害農家の平均は二万一千八十五円でありますが、間違いございませんか。
  24. 久我通武

    ○久我説明員 ただいまおっしゃいましたとおりの数字でございます。
  25. 桜井茂尚

    桜井委員 ところで、カンショの生産地は茨城、埼玉、千葉、静岡、愛知、三重、愛媛、高知、長崎、熊本、宮崎、鹿児島であり、しかも三十八年の全澱連の統計によりますと、商品化率の高い県は、宮崎、三重、千華、長崎、高知、愛知、鹿児島、愛媛、茨城という順であり、他の県はすべて自給を主とした生産であります。そうして、たとえば生産の多い静岡、埼玉をとってみても、自給率はそれぞれ六二・六%、五四・五%であり、自家用と野菜としての市場販売が主になっております。したがって、先ほど述べたところのおもな生産県がでん粉用カンショの生産県であり、それ以外の県は、たとえば生産費調査にある鳥取、佐賀等は自家用を主とした生産を行なっていると思いますが、いかがなものでございますか。
  26. 久我通武

    ○久我説明員 大体先生のおっしゃいましたとおりであると思います。
  27. 桜井茂尚

    桜井委員 そこで自家用を主とした生産を行なう農業においては、作物栽培の合理化近代化が行なわれないのは当然であり、農家も真剣にイモづくりに取り組むはずもございません。また原則として販売するわけではないから、価格に対しても興味は薄く、反収が少ないのも当然でありましょう。たとえば、鳥取が一万四千三百七十九円、佐賀が一万二千二百六十円というように、一反歩当たりの粗収入は非常に低額であります。しかも、生産費は、鳥取の場合一万七千六十三円であり、明らかに赤字経営となっております。佐賀の場合は、生産費が九千四百五十一円と非常に低い。そして、三十七年の生産費調査によれば、鳥取以外に和歌山、広島、愛媛、高知も赤字であります。これに反して商品生産をしている関東のモデル県である千葉の例をとるならば、粗収入は、反当たり二万七千五百六十七円、生産費は二万四千二百八十九円であります。そこで前者と後者を全体として総和平均値を出すならば、先ほど述べたように二万六百二十三円となる。このようにして、この生産費調査は非常におくれた自給生産と、進んでいる商品生産とを総和平均しているところに、イモの生産費価格を引き下げるからくりがあると思うのでありますが、いかがなものですか。
  28. 久我通武

    ○久我説明員 イモの価格の決定をされます場合に、ただいま先生の御指摘になりました生産費の調査も確かに一つの資料にはなるかと存じますけれども、しかし価格決定の場合には、これは実は十分お使いいただき得るほど、たとえば米ほどの標本調査をやっておりません。したがいまして、確かにただいま御指摘のとおりに、自給的な農家と、イモをでん粉に商品としてつくっておるような農家とは差がございますけれども、これは全国で見ますと多少そう言えますけれども、県別の数字になりますと、私のほうは県でものを言い得るほどの数でございませんので自信もないわけでございます。したがいまして食糧庁でも、イモの価格をおきめになるときには別に生産費調査をお使いになっておりませんから、その意味ではただいま先生の御心配のようなことはないかと考えております。
  29. 桜井茂尚

    桜井委員 何といいましても農林省で生産費調査と銘打ってここにありますようなりっぱな本をつくりますと、これをもとにして官僚の皆さん方が一応はやっておるのですから、結局価格決定の基礎の中にそういうニュアンスをあらかじめ入れてしまうという傾向が生ずるのはやむを得ない。だからこの点におきまして、もしやるのならもっと本格的な調査をおやりになって、そしてもっとしっかりした生産費調査を出すべきであります。この点が欠けておりますと、私が先ほど申しましたように、どうしてもからくりになっておるのだというような考えしか生まれてまいりません。さらに、生産費調査を担当しておる農家は毎日記帳を行なっております。したがってこのような農家は一般農家の水準よりも経営能力がある農家としか考えられません。だから、この生産費調査の基準は非常に生産性の高い上層に片寄っている。一般農家はこの調査にあらわれているよりコストがかかっておると思うのでございますが、いかがなものですか。
  30. 久我通武

    ○久我説明員 この調査農家を選びます場合には、イモ作農家全体につきまして一応平均生産費が求められますようにアトランダムに選んでおることは選んでおるのであります。しかし何と申しましてもただいま御指摘のように記帳能力の問題がございますから、上層に片寄るという傾向は持っております。特に米の生産費などでございますと非常に厳密にその点を出すこともできますけれども、イモの場合は多少そういう点もございます。ただ、イモをほんとうに商品として売っております農家ということになりますと、実はどれくらいの経営になりますか、イモだけではわかりませんが、われわれは農家らしい農家というものを選び出しまして、そのものについての経営の内容を将来押えることにしようということで案を練っております。やがて農政審議会等でも御議論をいただいた上でおきめいただきたいと思っておるのでありますが、そういうことになりますと、農家経済調査を分析いたしますと、五反あるいは十万円以上の農産物販売収入のあった農家というものが農一家らしい農家と言えるように思います。しかし、生産費調査はそういうものだけではなしにもつと下の階層まで入っておりますから、そういう意味からいたしますと、将来は、先生の御指摘のように、この両者を区分して比較できるようなくらいにまで拡充してやりませんと行政にお使いになれないのではないか、将来それらの点につきましては、せっかく拡充強化をしていきたい、かように考えております。
  31. 桜井茂尚

    桜井委員 以上の質問でも明らかなとおりに、たとえば千葉県におきましては、一反歩当たりの所得が二万七千五百六十七円で、経費が二万四千二百八十九円であります。食糧庁長官のところに陳情に行ったのは主として千葉県人であります。人を見て法を説けということもございますが、食糧庁長官はこれらの人に対して、反当たり二万円あればよろしかろうとおっしゃったのでございます。これでは、これらの人たちにとっては明らかに四千二百八十九円の赤字になるばかりではなく、農家所得の面からいっても、自家労賃と資本利子、地代を加えた農民の手取りが、従来ならば、千葉の場合、反当たり一万一千八百七十円、鹿児島の場合ならば五千三百八十九円であったものが、長官の言う二万円とするならば、千葉ではたったの四千三百三円、鹿児島は四千六百九十三円となってしまうのであります。だから陳情に行った方方はもうだめだと考え、翌日千葉市で会合を持ち、このことを報告するとともに、昨日は七百人の農民が陳情に参っております。そこでことしの秋の……。あとはちょっと大臣か次官がおりませんと……。
  32. 二階堂進

    ○二階堂委員長 いま政務次官に出席をお願いしておるわけですが、農林委員会を両方ともやっておりまして、手がすかないそうです。
  33. 桜井茂尚

    桜井委員 もう一ぺんあとでお伺いすることにしまして、同じことの繰り返しになるかもしれませんけれども、まず大ざっぱな点からお伺いしておきます。  低開発国の第一次産品並びに二次製品のわが国への輸入の問題についてお伺いしたいのですが、万一低開発国要求どおり受け入れると仮定した場合、鉱産物は別にして、農産物並びにその加工品においてどのような品目、どのような影響が発生いたしますか。もちろん農業問題は各国においても政治的に非常に問題であり、EECの統合やEECへのイギリスの加盟の問題でも常にこのことが障害になってきたのであって、わが国においても国内における農業政策の転換は重大問題であり、簡単に変更できる事柄ではありません。しかし低開発国からの要求は非常に強く、昨日のジュネーブからの報道によると、日本の評判の悪かった最大の原因の一つが、第一次産品を取り扱った第一委員会におけるわが国態度にあったと伝えられておりますが、日本はこの委員会でどのような態度をとったのでありますか。そうして従来農林省は農業保護政策を口にはしておりますが、現実には徐々に現在の農業経営の解体の方向に施策を運んでおります。だが今度は、この世界情勢にどのように対応策を講ずるおつもりでございますか。
  34. 福田一

    福田(一)国務大臣 私に対する質問ではございませんが、関連した部分がありますからお答えしておきますが、一次産品の問題につきましては、先進諸国でも、低開発国の言い分をそうそのままうのみにすることはできない、こういう空気とか私は聞いております。  それから、日本が評判が悪かったと言いますが、日本としては農業問題については非常にセンシティブでありますので、急にはそういうふうにはでき、ないということを言おう、こういう態度でございまして、これはこれからの国際会議にあたってどういうテクニックでやるがいいか、誠実に自分の姿をあらわしてやったがいいかという二つの方向があると思うのであります。私は、今度の国連貿易開発会議に出るにあたってのいわゆる関係閣僚の会議があったときに、自分のできもしないことをできるような形で述べるということは、将来において日本は信用う失うことになるから、やはり実態を明らかにしておいたほうがよろしいということをはっきり発言をいたしました。まあ私の意見が取り入れられたというより、最初は大体そういう方向で臨んでおったわけであります。これはいろいろ功罪の問題はありましょう。できないことをできるように言っておくことがプラスになるのか、できないことはできないと言っておくのがプラスになるのか、これはいろいろ考え方があるだろうと私は思っております。しかし、われわれは自分の国のためでもあるということを考えて、押しつけがましいというか、恩を売るような形ではなく、中小企業とか農業の近代化構造改善をはかっていくということは非常に必要でございますが、実はそういうような事情もあったということは御了解を賜わりたいと思っております。
  35. 桜井茂尚

    桜井委員 私は、ほらではありませんけれども、ずっと農業問題専門にやってきておりますので、こういう問題になりますと、通産大臣から抽象的に御意見をお伺いいたしましても、核心に触れるのは非常にむずかしいと思いますので、農林省の責任のある人にどなたかやはり出ていただきませんと、審議が進められません。
  36. 二階堂進

    ○二階堂委員長 政務次官が間もなく見えるということでございますので、見えてからあとで……。  それでは島口重次郎君。
  37. 島口重次郎

    ○島口委員 大臣にお尋ねいたしますが、今度の中小企業団体法につきまして、政府が提案されました姿勢をお聞きしたいのであります。  去る選挙におきまして、池田総理は、高度成長政策やら開放経済に移行いたしまして、そのしわ寄せが中小企業等に相当以上の影響がある、深刻な世相であるから革命的な施策をやるという公約をいたしたのであります。今度通産省から提案されました法案を見ましても、革命的な施策と称するものがわれわれにはちょっと理解できないのでありますけれども、団体法の提案が革命的な施策とどういうような関連があるか、一応お尋ねしたいのであります。
  38. 福田一

    福田(一)国務大臣 確かに池田総理が革命的にやるという発言をいたしておりますが、それは一年の間にやると言ったわけではなく、言いわけになるから、これは議論してもしようがないと思うのですが、これから大いにやりますという形容詞だと私は考えておる。具体的にこのことに何百億金をつけます、このことには幾らどうします、こういう法案を出します、こう言ったのを実現しておらなければ、明瞭なる違約ということになると思いますけれども、われわれとしてはとにかく一生懸命やりますというような意味で申し上げておったわけであります。しかしそれが一生懸命であったかどうかということについては、おのおの、私たちはやったつもりだと言うし、あなたのほうから言えば、そんなものはやっていないじゃないか、足りないじゃないかとおっしゃるかもしれませんが、現実私など、実は商工中金の金利の引き下げなんというのをやったときには命がけでやりました。命がけということはおかしいけれども、これが通らなければ私としては重大決意をするつもりでやったので、十年間の問題をとにかくあれで解決してみたのです。だから表現の問題で、これはいろいろございます。だからわれわれ政治家は十分ことばを慎まなければいかぬということはよくわかりますけれども、一生懸命やるのだという意味だと御理解を賜わりたいと思います。  そこで今度のこの法案でございますが、これも一つであります。しかしこの法案が全部を代表しておるものではございません。またいわゆる革命的にやるというか、一生懸命すべての問題解決に努力していく、農業のためにも中小企業のためにもやるという意味では一つのやり方である。そしてその一つのやり方についても、これが最高度のやり方であるかどうかということは、これまた御批判があるだろうと思っておりますが、われわれとしても、漸を追って、すべての施策を充実をしてまいりたい、実態と離れないで、可能な限りにおいて極力これを進めていくということにいたしたいと考えまして、今回この法案を提案いたした次第でございます。
  39. 島口重次郎

    ○島口委員 大臣の答弁を聞きますと、一生懸命やるという意味であろうというように理解をされておりますけれども、少なくとも日本国民といたしましては、革命的な施策をやるということにつきましては、抜本的な改革をやるということであろうと私は確信をするものであります。したがいまして、少なくとも革命的という用語は、ただいま通産大臣のおっしゃるように、一生懸命やるというだけでは理解されない問題があるのではないかと考えます。いわゆる高度成長政策による中小企業と大企業との格差が解消されると池田さんは申されましたけれども、一そう大きくなっている、そのアフターケアとして抜本的な、革命的なことをやるというのでありまして、単に一生懸命やるのだというような理解とは大きな開きがあると思うのでありますけれども、この点もう一度お尋ねしたいと思います。
  40. 福田一

    福田(一)国務大臣 私が申し上げておりますのは、いま御指摘のありました構造改善とかあるいは格差の是正とかいう問題をもちろん前提にいたしておるのでありまして、それを、いわゆる欠点のあるところ、欠陥のあるところというような、大企業中小企業との関係その他いろいろの問題について、そういうものを解決していかなければならない、それはいままではやっておらないというわけではないが、今後はもう一つ最善の努力を傾けるのだという意味であります。一生懸命ということばのうちにはいろいろな意味があります。これも誤解を受けることばかもしれませんが、最善の努力を尽くしてやるのだというふうに私は考えて、使っているわけであります。
  41. 島口重次郎

    ○島口委員 もう一つの問題は、ただいまお答えの中にありましたのは、何もこれ一つが政策の全部ではない、こうお答えになりましたけれども、来月の十日ですか、自民党の総裁選挙があるわけでありますけれども、やってみなければわからない。あるいは佐藤さ・んがなるかもしれぬわけですね。少なくとも国民に革命的な施策をやると言った限りは、池田内閣がおる間にやらなければ、国民大衆を裏切ったことになると思うのです。これが革命的施策の一環であるとするならば、全体と称するものの構想がどういうものかをお話し願いたいと思います。
  42. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は総裁選挙とこの問題は関係がない——関係がないというのはおかしいが、直接のことではない、大体池田内閣は自由民主党の政策を実現いたしておるのでありまして、総理がああいう発言をしておるのは、かねて自由民主党の政策を述べておるわけであります。その自由民主党の政策が何も変わるわけではないのでございまして、どなたが総裁におなりになろうとも、これは現段階におきましては、中小企業あるいは農業に対する抜本的な、いわゆるいま申し上げたようないろいろの問題、そういう問題の解決に最善の努力を尽くすという方向は全然変わらないと思っております。
  43. 島口重次郎

    ○島口委員 政党政治の立場から大臣のお答えは正しいと思います。そういたしますと、私らどうも納得のいかない具体的な事実がたくさん出てくる。佐藤さんでありましても、あるいは藤山さんでありましても、高度成長政策が行き過ぎまして失敗したと称しているのであります。そういう面から申し上げますると、自民党党内の総務会長である藤山さんが、明らかに池田さんが失敗であるということであるならば、自民党政策が失敗したということでありまして、こういう責任は池田内閣がとるものか、自民党内閣がとるものか、あるいは佐藤さん、藤山さん等が池田内閣の政策をきびしく批判しておりますけれども、これは党内の問題だけでおさまらないと思いますけれども、大臣の所感はどうでしょう。
  44. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、自由主義のこれがまたおもしろいところだと思っておるので、ちっとも矛盾を感じておりません。党内で総裁が一ぺん公選されたら、その総裁の言うことはもう何でもかんでも全部聞いて、一言もそれに異論を唱えられない、それは独裁政治じゃありませんか。そういうものじゃない。それはどの立場におろうとも、やはり一応の批判をしても私は一つもさしつかえないと思います。ただ問題は、そうはおっしゃいますが、たとえば藤山さんが言われている場合でも、あるいは佐藤さんが言われている場合でも、新聞紙上に述べておられるのは、方法論においていささか、もう少しこういう方向でやったらいいじゃないか、ここのところへもう少し力を入れたらいいじゃないかということであって、根本的な方針において、たとえば中小企業に力を入れるなんて必要はない、大企業のために大いにやるべきだ、こういう発言があったのなら、これはわれわれとしては党内問題のみならず、これは党としても大いに考えなければいけないでしょう。しかし、何もそういう意味で言っておるのではない。いわゆる近代化をしていくということは何も悪いことではないが、そのやり方はこういうやり方もあったのではないか、こういう意味で、また自分ならばこういうことも考えておるということを言われておるわけです。お互いに切磋琢磨党内ですることは当然である。私はそんなことをあなたに申し上げちゃ恐縮ですけれども、社会党の中でも御意見がときどきお違いになる。これと同じなんです。近代化政党の中では、党内において全然発言ができない、そういうものであるべきではない。やはり党の方針がきまっても、またいろいろ問題が変わってくればこれについて意見を述べるのは、これは国民も納得してくれると思うのです。それが自由主義だと私は思っておるわけでございます。
  45. 島口重次郎

    ○島口委員 社会党党内におきましても、社会党の決定いたしました政策に党内批判があること、これは当然だと思います。だけれども、それは自民党には総務会という最終決定機関がある。党内問題としては議論はしてもよろしいと思う。党内で切磋琢磨することはけっこうだと思う。ところが、大臣も御承知のとおり、佐藤さんの表現であるか、佐藤派と称する方の表現であるか、この点は明確でないけれども、少なくとも池田さんが政権を担当する限りは解消されないから、この付近で政局を一新しなければならぬ、こう言っているのであります。党には党の統一見解がある。党には党の統一見解というのは、おそらく自民党のほうから申し上げますると、政調会を経ましての総務会の決定だと思うのです。この総務会の決定と相反することを、自由主義であるから自由に言ってよろしいというのであるならば、政党政治の連帯責任制というのはどこにありますか。われわれ社会党におきましても、あえて主流、反主流という表現をしますると、反主流の方の批判はあるのです。あるけれども、党内の機関に対する発言でありまして、党内の決定を無視するようなことを対外的に国民に表現したことはない、あるいは公約をしたことはない。政党に統制機関がなければ一個の徒党でありまして、政党ではないと思うのです。個々には相違している意見がある、自民党から申し上げますならば、自由主義のたてまえから、資本主義のたてまえからいろいろ意見はあると思いますけれども、自民党の統一見解を出して、政党が連帯責任を持つのであります。それを自民党の統一見解を無視するようなことを発表をいたしますることは、徒党でありまして政党でないと思うのであります。
  46. 福田一

    福田(一)国務大臣 もしあなたのことばを措りて言うならば、一ぺん総裁がきまったら万年総裁でありまして、総裁がきめて、それで政調の方針をきめて、総務会できめていったら、それに対して一言も異論を言えないということであれば、万年総裁ができてしまうことになると思うのです。私は公の立場においてやはり言っても一つもさしつかえないと思う。それは意見があれば言ったらよろしい。しかし、意見があるということと、その意見をそのまま政策に移すということは別でございます。それを決定して、そうして党の機関として決定する場合には甲論乙駁があっても、決定をもう一ぺんし直しはできない、そのときに発案権がない、いままでの政策に対して、これを修正する修正権がない、発案権がない、こういう考え方では自由主義、民主主義というものはできないのではないか。われわれとしては、そういうことは言ってもよろしい、ただし、言うことは言っても、それを党の政策として実行し、政府の方針として実行していく場合には、これは正当な機関の議決を経なければいけません。いま総裁選挙の前にあたって、自民党の政策を根本的に変えようと言っておる人はないのであります。自民党の自由主義経済あるいはまたいままでやってきたことについて根本的に改めるのではない、方法をこういうふうにしてはどうであろうか、私が総裁であればこういうように考えられるのでありますということを言われても、これは何もそれで政策が変わるわけではありません。政調会の議を経たわけでもなければ、総務会で決定したのでもありません。総務会長だからといって、そういう発言をしてはいけない、こういうように私は考えてはいない。われわれは切磋琢磨していくということは、いかなる場合においてもやっていいのではないか、こういうように考えております。
  47. 二階堂進

    ○二階堂委員長 島口君にお願いいたします。できるだけ法律関係のあることにしぼって御質問願います。
  48. 島口重次郎

    ○島口委員 いま、前提問題の議論ですから……。  私も大臣のおっしゃるとおり、総裁が一回当選いたしますと、万年その人でなければならぬというように考えていないのです。だから総裁の公選権がある。二年の任期がある。その二年の任期の際に、党内の諸君、党内の機関に訴えることは正しいと思う。だけれども国民大衆に向かって、従来の自民党がとってまいりました施策が間違いであるというような意見を発表いたしますのは、おそらく政党制度の立場から見ますと、統制のとれたいわゆる国民全体に政党全体で責任を負うという姿勢ではないと思う。しかし、これはいずれかのまた機会にいたしまして、その政党政治の論は抜きにいたしまして、具体的な問題に入りたいと思います。  そこで、ただいま大臣も、今度の団体法の一部改正法案が必ずしもこれで十分とは考えておらぬ、こういうような御発言でございましたけれども、どの点が不十分であるかをお答え願いたいと思います。
  49. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、いまの段階においては、現実の問題を見てこの程度でやる、これが十分であるかどうかということについては御批判があるであろうという意味で申し上げたのです。これがいまの段階においても私の信念と相反しておるという意味で申し上げたわけではございません。
  50. 島口重次郎

    ○島口委員 今度の改正法案の趣旨を見ますと、中小企業の事業活動に適正な機会を確保するためだ、こう言っておりますけれども、どうですか、この改正法案によって中小企業が完全に大企業と対立ができる、競争ができるというようなお考えでありますか。これを見ますと、大企業が進出をいたしまして、中小企業分野をじゅうりんいたします、その際に合理化カルテルをやる。これは新しく転業をする期間の間だけ大企業にはいわゆる特殊契約を締結いたしまして、時間的な余裕を与えるということでございますけれども、そういう時間的な余裕を与えるだけで、この中小企業問題が解決すると思っておられるかどうかお尋ねしたいと思います。
  51. 中野正一

    中野政府委員 今度出しております法案につきましては、確かにいま先生が御指摘のように、大企業の進出によって中小企業が非常な打撃を受けるというような場合に、その中小企業者のつくっておる商工組合が大企業と交渉をして、そうしてその進出の計画を一部変更させるというようなことをきめさせるわけでございます。またその交渉が不調な場合は、今度は通産大臣が中に入ってこれをあっせんとか調停をする、こういうことでございまして、われわれの見るところでは、この形でもって商工組合は大企業と対等に話ができると思っております。また大企業のほうには応諾義務を課しておりますから……。しかし、ただそれも、中小企業者自身が経営の合理化なり体質の改善をほっておいてはいけませんから、したがって一定の期間を限って大企業の進出に待ったをかける、その間に中小企業者がみずから自己の体質改善をやるべきである、こういうたてまえになっております。したがってこれに対しては、たとえば近代化計画等を業種別に立てさせるということをやりまして、金融的にも税制面でもこれに対して政府としては待ったをかけておる間にできるだけ中小企業近代化体質改善を促進させるようにさせよう、こういうことでございます。
  52. 島口重次郎

    ○島口委員 今度の提案されました法案の趣旨につきましては、まさに長官の言ったとおりであります。ところが私の言わんとするのは、中小企業基本法にうたわれておりますところの中小企業の生活安定なり業界安定と称するのはそういう暫定的なものではなくて、半恒久的な政策の打ち出し方でなければならぬと考えるのであります。たとえその合理化なりあるいは他の事業のほうに転業いたします時間的な余裕を与えておりましても、ここ七十年の経済流れを見ますと、独占企業はあらゆる市場を集中独占しつつある。一つの例をあげますと、従来は漁業だけでありました大洋のマルはにおきましても、陸上に上がりまして肥料の加工もやる、肉の加工もやる。あるいは日魯漁業におきましても農産加工もやってきている。あるいは食油におきましても、かつては豊年なりあるいは日清、味の素等が日本全国の消費をいたします量の四割か四割五分しか生産しておらないと言っておりましたけれども、ただいまにおきましては生産機構が集中化されまして、大手五社か六社ありますならば日本の需給量を全部生産できる。特に貿易の自由化によりまして原料を大量に外国から輸入してまいりまして、まさに生産機構を独占しようとするのであります。こういうような財閥におけるあらゆる業界における進出を見ましても、若干合理化体質改善をいたします時間の余裕を与えましても、将来におきましての中小企業の職場というものは大企業に独占されるという可能性があります。したがいまして中小企業基本法のうたっております精神というものは、過去、現実、将来ともに中小企業の基盤というものを確立する、確保する、保障してやるというところに中小企業基本法の精神があると思うのでありますけれども、その点の見解はどうでございましょう。
  53. 中野正一

    中野政府委員 私は少しそういう考え方でなくて、基本法の考え方は中小企業者自身体質改善、これによってそれぞれ適正な分野確保できるんだ、こういう考え方でできておると思います。ただ、いま申し上げましたように、大企業が一時的に進出するために中小企業が非常に困るという事態を避けるために今度の法案を出しておるわけであります。その意味におきまして、一種の中小企業分野というものをはっきり法律か何かできめて、そこには他の業者は一切入ってきてはいかぬというふうな政策をとれば、かえってその中に入っておる中小企業体質というものは弱くなっていくわけです。したがって、そういうことでなくて、やはり大企業中小企業といわず、いわゆる正当な自由競争というものの中でそれぞれが自分努力体質改善をやっていく、それに対して政府は適切な施策によってこれを応援するというのが中小企業基本法のたてまえだと私は考えております。
  54. 島口重次郎

    ○島口委員 この法案と対立の形におきまして、社会党から中小企業事業分野確保法案が出ておりますね。確かに長官のおっしゃいますように、中小企業分野というものをラインを引きまして明確にいたしますと、近代化なり体質改善の度合いがおくれるということがあり得るけれども、これは決して半永久的に体質改善をやらぬということではないと思う。あえて大企業中小企業分野への進出を押えましても、やはり自身の生産コストを切り下げる問題あるいは技術の革新をやらなければ、中小企業同士の戦いにおきましても脱落せざるを得ない。そういう面から、中小企業分野を明確にいたしまして中小企業同士の競争をいたしましても、体質改善なり技術の改善は出てくると思う。そういう面から申し上げましても、一時の暫定的な特殊契約というよりも、中小企業分野というものを明確にいたしたほうがよろしいと思いますけれども、その点に関する大臣の見解、あるいは長官から聞きたいのは、はたしてこの分野中小企業がやってよろしい分野なんだということに関する調査をしたことがあるかどうか、そういう点をお聞きしたいと思います。
  55. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、その問題はなかなかむずかしい問題があると思います。調査をすることはけっこうであります。調査をしなければなりませんが、大体この中小企業というものの定義からしてむずかしいのでございます。それはいろいろ、資本金五千万円以下あるいは三百人以下とかいうような一定の基準をつくっておりますが、この基準がいわゆる中小企業のワクにはまっておるのかどうかというような問題もなかなかむずかしい。これは一応線を引いておるだけであります。それから、中小企業でやっておるものは大企業になってはいけないというのじゃないですね。だんだん高度成長して大企業まで伸びていくものもあるわけです。たとえばソニーのようなものはその例であります。ほとんど大企業に近いところまで伸びてきておる。こういうものがあります。だから中小企業問題というものはその業種々々によって、場合によって、その会社によっては大企業のランクヘ入るものもあれば、将来ずっとやはり中小企業的な規模でやるものもあれば、一応そのちょっと上までいってやるものもあれば、まあ卒業生がどんどん出てくるようなものであります。ある意味で言うとちょっとおかしな表現ですが、あまり成績のよくないものばかりが下のほうでたまっておるという形もあり得る、考え得るわけでございますから、そこでいまあなたのおっしゃるように、この仕事は全部がもう中小企業でなければ、という判定ができるかどうか。私はもちろんそういう大体の方向はきまると思いますが、お前の会社はこの仕事をしている限りは絶対資本金五千万円以上にしてはいけない、こういうことではないと思いますから、そこら辺にいろいろのいわゆる画一的には言えない面があると私は考えておるわけでありまして、これは御了解を賜わっておると思いますが、特に付言をさせていただきたいと思うわけであります。また、御質問の点につきましては長官からお答えを申し上げたいと思います。
  56. 中野正一

    中野政府委員 中小企業でやったほうがいい業種といったものだけを取り上げて特別に調査ということはいたしておりません。しかし、中小企業性の高い業種がどういうものであるかということは統計によってちゃんと出ております。それからもう一つ、これは実は外には発表しておりませんが、基本法をつくるときに、現在中小企業相当部分を占めておる業種であって、それが将来一体どういう形になっていくだろうかということを一応予測調査をしたことはございます。たとえば中小企業業種の中で将来生産性が大いに上がり得るものかどうか、生産性が比較的停滞をしていくものかどうか、それから大企業関係でどういうふうになるであろう、それから需要が将来伸びる業種か、あるいは需要が減退をする業種か、あるいは需要が停滞をする業種か、こういうようなことでサンプル的に取り上げて調査をいたしまして、その結果をざっと申し上げますと、中小企業生産性を上げることによって、まだ中小企業として相当伸び得るというものが相当あったわけであります。しかし中には、将来転換を余儀なくされるであろう、あるいは需要が減退して事業そのものが停滞をするであろうという業種もございますが、必ずしも先ほど先生がおっしゃったように、特にこれから大企業によって中小企業のほとんど全部の分野が荒されるというような結果には、一応役所のほうで予測したものはそういうふうになっておりません。
  57. 二階堂進

    ○二階堂委員長 桜井茂尚君。  桜井君に申し上げますが、通産大臣は十二時から一時まで渉外事務のために退席されます。なお、丹羽政務次官も委員会を中座して来ておられますので、できるだけ時間を短縮していただきたいという御要望でございます。
  58. 桜井茂尚

    桜井委員 先ほど私は、国連貿易開発会議のことにつきましていろいろと質疑をしてきたのでありますが、次官が参られましたから、関連したことをもう一度申し上げます。  低開発国の第一次産品並びに第二次製品のわが国への輸入の問題について農林次官にお伺いいたしますが、万一低開発国要求どおり受け入れると仮定した場合、鉱産物は別として、農産物並びにその加工品において、どのような品目にどのような影響が発生いたしますか。もちろん農業問題は各国においても非常に政治的に問題であり、EECの統合やEECへのイギリスの加入の問題でも常にこのことが障害になってきたのであって、わが国においても国内における農業政策の転換は重大問題であり、簡単に変更できる事柄ではありません。しかし低開発国からの要求は非常に強く、昨日のジュネーブからの報道によると、日本の評判が非常に悪かった最大の原因の一つは、第一次産品を取り扱った第一委員会におけるわが国態度にあったと伝えられておりますが、日本はこの委員会でどのような態度をとったのですか。そして、農林省は農業保護政策を口にはしておりますが、現実には徐々に現在の農業経営の解体の方向へ施策を運んでおります。だが今度は、この世界情勢に対してどのような対応策を講ずる考えであるか、大局的な所信をお伺いしたい。
  59. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 低開発国から一次産品の輸入によりましてわが国に及ぼす農業の影響でございますが、ただいま先生からの御指摘で、どういう品物を入れたらどういうような影響があるかという、こまかいと言っては失札でございますが、その品目にわたりましては事務当局から御説明を申し上げることをお許し願いたいと思います。そこで、もちろんわが国とそうした国々との関係がございまするので、できるだけ入れねばならないわけでございますが、しかし向こうのいうとおりのものをわが国として、農業の面につきまして入れるわけにはいかない。あくまで先生の御指摘のありましたように、国としては農民の福祉、農業の振興ということを考えておりますので、無条件で私どもが向こうの要求をのむわけにはいきませんので、できるだけこちらとしましても、国の農業に影響を来たさないということを前提として、できる限りの輸入を考えていきたいと考えておる次第であります。
  60. 桜井茂尚

    桜井委員 大体問題になっているのは、熱帯産品を除きまして、米とタピオカ、お茶、こういうものがおもだろうと思う。それ以外にはあまりない、  コンニャクも若干ございますが……。  主要作物である米麦につきましては、これは現在食管制度でやっております。それに次ぎましてはイモでございます。今日、トウモロコシの輸入と関連いたしまして、一昨年来コーンスターチの生産が急速度であります。全販連総計では、三十六年三万トン、三十七年八万七千トン、三十八年十三万トンという速度で伸び、三十八年十二月で日本食品化工、日本コーンスターチ、三和澱粉、敷島スターチ、大久保澱粉、滝野コンス、味の素等々の会社の設備投資も大きく、日本食品化工の日産二百トン処理工場のごときは、一工場としては世界最高最新の能力を持ったものであります。しかもまた本年九月には、千葉県の五井において、王子コンスによる本格的な生産が始まるはずであります。このコーンスターチは、イモでん粉とは用途が違うといわれております。しかし現実には、三十八年度においても約一万トン程度は水あめ用として流れております。コーンスターチ工場は設備能力が大きく、したがってこれをフル操業に持っていくということが最も経済的であります。そうすると一定の生産量で原価並びに利潤を確保し、余剰分を利潤抜きでダンピングするという場合も考えられるのであります。ところで、コーンスターチはいわゆる政府買い上げの対象になっていません。したがって政府が行政指導による規制をすることは困難であります。この場合、いま論ぜられている中小企業団体組織に関する法律の一部改正で、全販連、全澱連とコーンスターチ製造会社との間に協定が結ばれるということで、この法律が適用されるのであるかどうか。だが、全販連は商工組合に入っておりませんが、これはどのようにするのか、この点、通産大臣と農林次官にお伺いします。
  61. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 お話がありましたように、全販連は商工組合ではもちろんございませんし、直接中小企業組織法律の規制を受けるわけではございませんが、全澱連その他の三団体、全販を含めましてよく協議して進めるように、食糧庁当局から指導を加えております。
  62. 桜井茂尚

    桜井委員 この法律の適用はあるのですか、ないのですか。
  63. 中野正一

    中野政府委員 これは所管は農林省になっておりますので、いま農林省の経済局長からお答えになったとおりに解釈しております。もう少し具体的に事態をよく通産省としては調べた上、回答いたしたいと思います。
  64. 桜井茂尚

    桜井委員 わからないようでありますからどうにもならない、あとでよく御研究をお願いいたします。しかし非常に大きな問題でございます。しかしこれだけでは問題は解決いたしません。たとえば、昨年度政府は外国でん粉を三万四千トン輸入いたしております。その内訳は、タピオカでん粉一万五千五百三十一トン、バレイショでん粉一万三千八百二十九トン、サゴでん粉二千九百十トンであります。今後これが、先ほどちょっと触れましたとおり、低開発国からのわが国に対する輸入要請となってあらわれてくる可能性があります。現にタイ国からの要請は強いものがあります。今日において、でん粉の関税率は二五%ということで一応防遏されておりますが、貿易障害撤廃の問題とも関連して、今後この見通しはどうなりますか。先ほどから私は三回にわたりまして、国連貿易開発会議につきまして議論いたしておりますので、通産大臣はよくおわかりのようでございますが、その世界のとうとうたる流れの中でこの問題をどう解決するのかということをはっきりと、農林省の方にもお考えいただきまして、そうしてこの問題に対する対処のしかた、日本の農業をどうするかということにお答えを願いたい。
  65. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 昨年東南アジア諸国からでん粉を輸入いたしましたのはお話のとおりでございます。また、タピオカでん粉につきましてはタイ国から要求が強いことも事実でございます。ただ、先ほど来のお話を伺っておりまして、国連の貿易開発会議でそういった問題が出たということでございますが、実はそういう報告はございません。正式の場でそういった品目が具体的に問題になったという報告はないのでございます。でん粉はもちろんではございますが、先ほどあげられました紅茶、米、これは熱帯諸国の輸出品でございますけれども、具体的にそういうものについての論議は公式の場では行なわれなかったのでございます。もちろん米などにつきましては、今後もある程度要求があるかと思いますが、政府としては現行方式で臨むことはもちろんであります。タピオカでん粉につきましては、現状におきましてでん粉の輸入を自由化するとか、あるいはワクを大幅にふやすということは、その年の事情によって、足りない場合は別でございますが、そういうことは現状においては考えておりません。もちろん要求は強いのでございますけれども、これは一方ででん粉に対する国内対策を十分立てまして、その上でなければそういった問題に対処できない、こう考えております。ただ、今後どうするか、今後低開発国要求が非常に強いときはどうするか、こういうお話でございますけれども、国連の貿易開発会議にいたしましても、ケネディラウンドにいたしましても、やはり一般的に低開発国要求が強いとか、あるいはアメリカの要求が強いとか、そういうことはございましても、それぞれの国の事情は十分加味していくようになるものと考えるのでございます。日本といたしましても、日本の農業には日本の農業の個別の問題があります。新聞ではいろいろなことを伝えておりますけれども、決してそのような画一的な考え方で会議が進められ、あるいは協定がつくられるものとは考えていないのでございます。
  66. 桜井茂尚

    桜井委員 いまの世界情勢に対する認識が何か非常に甘いように私感ずるのでございます。これは先ほど申し上げましたとおり、この前宮澤長官あるいは外務省の方々、すべての方々と一応この委員会において論議され、そして大局的な歴史の方向ということで確認されてきた、そういう問題であります。したがって、日本国内体制というものも、自分みずからのためにも確立していかなければならぬ、そして農業問題がおくれていればいるほど、われわれ自身としてもこれと本格的に取り組んで改善していかなければならぬ、こういう問題であります。ですから、ただ単に従来どおりにいくという形でございますと、三年先、六年先にたいへんなことになってしまう。現在、いま公式の席上ではなかったと言いますが、新聞の伝えるところによれば、各国から、個別であるかどうかは知りませんけれども、いろいろの要求があったということは、現地からの報道として、朝日においても、あるいは日本経済新聞にもあらわれているところであります。またこのことは通産省並びに外務省においても確認されていることであります。ですから私は心配している。ことにタピオカでん粉の原料であるカッサバ、これは年じゅう生産されますから、現地におけるでん粉生産は非常に長期間操業可能であります。日本のでん粉工場のような操業日数が年間四十日から六十日というのと比軽するならば、非常に経済的なものであります。だから、タピオカでん粉の価格は、先ほど食糧庁に電話して聞いたのでありますが、昨年輸入したものでも三十七・五キログラム当たり千四百円から千八百七十五円程度と、非常に安く生産されているので、非常に安く入っております。   〔委員長退席、始関委員長代理着   席〕 そこで、わが国におけるイモ並びにでん粉の生産及び需給が将来どのようなぐあいになっていくのか、この点がわからないと農民並びにでん粉業者は非常な不安にさらされます。現に、昨年度はでん粉が非常に不足し、外国でん粉を輸入するほどでありました。しかるにことしは過剰であって、でん粉業界は非常に困っている。そこで政府は五月十四日、二万五千トンの買い上げを決定いたしました。さらに、それにもかかわらずでん粉の下落がとまらず、六月十二日、さらに五万トンを全販連、全澱連によって買い上げさせることとし、金利、保管料、保管諸経費を政府が負担すると発表いたしております。  ところで、まず最初にお伺いしたい点は、現在の需給面で過剰分が幾らあるのでありますか。第二に、五万トン買い上げは二万五千トンの外ワクでありますか。第三、この五万トン買い上げの資金は補正予算を組むのでありますか。それとも予備費から出すのでございますか。第四、見通しとして、でん粉の需給は強含みと考えているのでございますか。すなわち、でん粉の現在の過剰は一時的現象であって、したがって、これだけ買い上げを行なえば直ちにでん粉価格が上昇し、売り渡し価格がより高くなり、実際は三十七・五キログラム当たり千六百八十円プラス金利、保管料、保管諸経費、これをペイして、政府は事実上予算は要らないというように考えておるのでありますか。その点をお答え願います。
  67. 中島清明

    ○中島説明員 ただいま御質問のございました点にお答え申し上げます。  最初に需給面でありますが、需給につきましては、供給は持ち越しを含めまして百十一万五千トンと見ております。これに対しまして需要は百七万七千トンでございまして、差し引き約四万トンがイモ年度としては過剰であるというふうに見ております。  それから第二点の、五万トンは二万五千トンの外かという御質問でございますが、これは、二万五千トンのほかに五万トンにつきましてただいま先生のおっしゃいましたような処置を講ずることにきめたものでございます。  それから五万トンの今後の処理の問題でございますが、これは市況が回復しますれば、食糧庁の指示によりまして一般に売り渡しをするということになると思います。ただ、先ほど金利とか倉敷料を負担すると申し上げましたのは、一応一般会計で負担をするというぐあいに考えているのでございまして、将来補正予算を組むかどうかということは、これは今後の問題でございますが、政府の補助に関しまする限り、これは予備費でまかなうことになろうかと考えます。  それから、でん粉の需給が今後どうであるかという御質問でございますが、実は昭和三十三年ごろから最近までのでん粉の需給を見てまいりますと、糖化製品への需要がふえたとか、ビール用あるいはグルソーへの需要がふえたというようなことで、毎年一五%くらいずつ非常な勢いで実は需要が伸びておったのであります。そこで、三十八年におきましても従来どおりの傾向をたどればかようなことはなかったのでございますが、一つには砂糖の価格が非常に安いということが影響いたしまして、糖化製品への需要が減退をしたというような事情があるようでございます。そこで先ほど約四万トンの過剰と申し上げましたので、それに対して一応調整をいたします数量は約六万トンでございますから、市況は上向くのではないかと思っておりますけれども、それではどの程度まで、いつごろどうなるのかということにつきましては、なお今後の推移を見ませんとはっきりは申し上げられないというのが現状でございます。
  68. 桜井茂尚

    桜井委員 当面の施策としてはこれで乗り切れるかもしれません。しかし先ほど申しましたとおり、世界情勢の大きな変革に対応する必要があり、砂糖やコーンスターチやタピオカでん粉等との関連を考えるとき、いまこそ政府が基本的に施策考え直さなければならないときと思われます。そしてこのことは、農民はもちろんのこと、でん粉業者もコーンスターチ生産業者も念願しているところであります。そこで農民が安心してイモをつくれるよう、またでん粉業者も従来のような投機的生産ではなくして合理的な生産を行なえるよう、さらにはまたコーンスターチ業者がむだな投資を行なわなくて済むように、イモやでん粉に関して価格の上限と下限をきめて、価格が下落したときは政府が無制限に買い入れを行ない、不当に上昇したときには無制限に売り渡すという価格安定帯を設置するというような制度をつくるお考えはございませんか。
  69. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 ただいま先生から御指摘がありましたように、農産物全体から考えましても、やはり価格の安定、もっと具体的に申しますならば価格の安定帯をつくるということは必要と私ども思っております。しかしいろいろと関係もありまして、検討はしておりますが、現在結果的にはまだその運びに至っておりませんが、御趣旨はそういう方向に持っていくべきだと思う。ただいま申し上げましたように検討しておりますので、現在どのような検討を進め、またどのような考えをもって進めておるかということは事務当局から内容をお話し申し上げることに御了承願いたいと思います。
  70. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 ただいま、でん粉の価格安定の対策として安定帯をつくって、それで政府の操作で一定の幅の中に安定させてはどうかというお話でございました。この問題はでん粉に限らない問題でございまして、乳価にいたしましても、いろいろ重要な農産物について価格安定をはからなければならない。野菜についても同じでございます。そういうことからいろいろな角度で、特に自由化の問題を控えておりますので、価格面の対策と、もっと基本的な構造的な対策、つまり体質そのものを改善していくような対策をあわせて考えなければならないということで、現在実はまだ内容を申し上げられるわけではございませんが、自由化の面と農政の基本的な問題として、各種の農産物について具体的な検討を加えておる段階でございます。
  71. 桜井茂尚

    桜井委員 そこで、ことしの秋のカンショの価格はどのようにきめようとするお考えでございますか。先ほど私が申しましたように、生産費調査それ自体非常にあいまいなものであり、先ほど部長から答弁がございました問題があるばかりではありません。日銀の統計によれば、一般の都市労働者の賃金指数も、三十七年十月に比較して本年二月で七%上昇しておりますし、十五日の地方農政局長会議の報告が新聞に出ておりますが、イモの生産地でない東北を除くと、一五ないし二十%の労賃の上昇が報告されております。物価の騰貴は言うまでもありません。したがって政府として、いま直ちに幾らの値段に引き上げるという確定的なことは述べられないにしても、イモの作付面積はすでにわかっておりますし、平年作と仮定した場合、農業パリティ、商品化率、需給関係も現段階においてある程度見通しがつき得るので、この秋にはこれらのものを勘案して当然この程度上げなければならないというくらいのことは言明できるはずだと思うのでございますが、どうでございましょうか。そして、世界情勢の変化があるにいたしましても、いま直ちに不当にイモの価格を引き下げ、農民の犠牲においてこの問題を解決すべきではなく、むしろ農民を豊かにし、資金の余裕を与えることによって合理化近代化を促進し、あるいはより有利な作物へ転換することを容易ならしめるごとがあたたかい政治のあり方だと思いますが、いかがなものでございますか。
  72. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 イモは、御承知のように大部分がこれから植えつけが始まる段階でございます。それで秋にその値段をきめるということにしておりまして、いまどのくらいにするかということを申し上げかねますが、労賃が上がっていることは、お話がありましたように事実でございます。いずれにしましても、これは農産物価格安定法に基づきまして、その定めている算定方式できめるわけでございます。現段階ではその程度のことを申し上げるほかはないと思います。  それからでん粉とイモの関係でございますが、この問題も十分検討する余地があると思うのであります。農産物価格安定法が直接にはでん粉対策、生産農民がつくりますイモの価格と——直接、間接という表現は適当でないかもしれませんが、直接には、でん粉の価格の安定、それがそのまま生産農民のつくるイモの価格の安定に制度的には直結しないというような面がございます。これは先ほど来お話ありましたように、この面に対しましてもメスを入れる必要があると思います。
  73. 桜井茂尚

    桜井委員 労賃の上昇や物価の騰貴はお認めになるのですから、したがって、いろいろな算定方式は私も存じておりますが、それらの算定方式の中に当然織り込まれるということになれば、昨年より高くなるのが当然だというぐあいに理解してよろしゅうございますか。
  74. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 私から当然そうなると申し上げかねるのでございますが、通常の考え方をとりますれば、農産物価格安定法を前提にして考えますならば、そうなる可能性はある、こう申していいかと思います。
  75. 桜井茂尚

    桜井委員 次官いかがでございますか。
  76. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 ただいまお話のありましたように、農産物価格安定法によって相場はきめるのですが、その計算内容は先生いま御指摘のとおりであります。そういうほうから割り出してまいりますけれども、現状としては、労働賃金は高くなったし、ものは高くなっておりますので、おことばにもありましたように、やはり農民に対する愛の農政をやろうとする、そうしてまた農民に大いに増産意欲を持たせる。生活をよくしていく等々を考えますれば、私もやはりはっきりここで高くなるであろうということを言明するわけにはいきませんが、結果的に、政治家として思いますには、当然幾らかでも高くならなくてはならないんじゃないか、こういう考え方をしております。
  77. 桜井茂尚

    桜井委員 次に、いつごろカンショは収穫されるかということを三十七年度の生産費調査報告で見ると、比較的早く掘る、しかも商品化率の高い関東での茨城、千葉をとってみるならば、十月中に収穫されるものが茨城八〇%、千葉五三%であり、おそいといわれる九州の鹿児島、宮崎でさえ三八%が十月中に掘られております。したがって指示価格公示の日取りは、当然のこと九月末かおそくとも十月の一日か二日でなければ、農家は安心してイモを掘ることができません。そればかりか、従来十月末に発表される例が多いので、それまでの間にあめ屋、でん粉屋が思惑的な相場をつくり、流通機構が混乱しているのが現実であります。ところで二十八年に農産物価格安定法が制定されて以来、三十二年には十月七日、三十三年には十月三日、三十四年には十月八日に公示されている事実も存在するのであります。だから今年度のように、非常に農民が不安な状態にある年においては、特に一刻も早く公示すべきであります。次官としては、九月末か十月初めに指示価格を公示する意思があるかどうか、この点をお伺いいたします。
  78. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 ただいま、これまたお話のありましたように、せっかく皆さん方の御協力を得て指示価格を出しましても、もうそのときにはイモがない、もうすでにその前にたたかれて安く農家は手放しておる、指示価格をせっかくつくったときには、もうものはない、いま申し上げたような結果になっておったのが、毎年のようではありませんけれども、ときどきそういう例を見ております。私どもとしても、早くこの価格を出すことをきめることを念願しておるのでありますが、統計等の関係で思うように早く出せないことは残念に思っております。しかしことしはできるだけ早く手回しをいたしまして、あらゆるものをそろえて農民の気持ちに合うように、指示価格を出したときには、もうものはないというような、しかもその前に安くたたかれて売るという結果にならないように、それではお話がありましたように愛の政治にならないのでございますから、十分に考慮に入れまして、できるだけ早く指示価格を決定するようにいたしてまいりたいと思っております。
  79. 桜井茂尚

    桜井委員 統計が間に合わないとおっしゃいますが、十月三日に公示した例もございますし、統計の末端の事務当局その他からも私もいろいろ聞きました。今日、電信電話網、それから計算機が非常に発達しているのですから、これはできないことじゃありません。どうかひとつ早く発表をお願いいたします。  次に、カンショの指示価格は昨年度三七・五キログラム当り歩どまり二一一丁五%のものが三百円と決定され、二三・五%以下のものについては、 〇・五%につき五円の割合でこの価格より差し引いた額となっておりますが、二三・五%以上の歩どまりのものはこれと同額となっており、二三・五%の価格が上限であります。したがって歩どまりのよいカンショをつくっても、農民にとっては利益にならないことは明らかであります。そこで三〇%も歩どまりのあるようないい製品のつくられる九州において、イモは安く買われているということになり、九州のでん粉業者は確かに非常に有利になります。その結果安いでん粉が関東に送られ、したがって関東のでん粉業者はそれだけ安くイモを買わざるを得なくなる。こうして順をめぐって関東のイモ作農民も安くたたかれる。だから二三・五%を上限とするやり方は、政府がカンショの優良品を増産させる意思を持っていないのではないか、こういうことを考えるのであります。優良品種を普及せずして、でん粉工業経済性を高めることも、農民所得を増すことも困難であります。だから上限を撤廃して完全スライド制にすることが公平であり、当然であり、生産の増大と合理化に役立つと思うのでありますが、次官の所信をお伺いいたします。
  80. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 まず、さきの御要望でございますが、なるほどお話のありましたように近ごろは統計等をとるにも早くできるようになりましたので、そうしたこともかなり勘案して、できるだけ早く御趣旨に沿うように指示価格の決定をしてまいりたいと思います。  次に、ただいまの御意見でございますが、実は私もこのイモの相場をきめるときには、もう十年近く毎年関係いたしておりまして、そういう御意見を聞いてはおります。いま先生の御意見のようにしていくことがいいかどうかということは、まだここで次官としてはっきり——いままでは先生の御意見、全面的に私は賛意を表してまいりましたが、これについてはもう少し検討さしていただいて、後日のときに政府としての考えを述べさしていただくように検討を加えさしていただくことで、御猶予をちょうだいいたしたいと思います。
  81. 桜井茂尚

    桜井委員 この点は政治における合理性です。この合理性が貫かれていないということは、これはおかしいのです。そしてしかもそのイモの品種の改良ということ、これなしにはどうにもならないということは、みなわかっていることなんです。ですから、この点につきましてもどうか前向きで御措置くださるようにお願いいたします。  次に、次官、中小企業庁長官にお伺いいたしますが、でん粉工業、あめ工業合理化が行なわれない限り、農民にばかり価格のしわ寄せがいくでありましょう。なぜならば、先ほど来申されておりますが、アメリカにおきましてはブドウ糖の価格は砂糖の価格とニューヨーク相場は同じであります。でん粉価格も同じであります。このようなことで、上がそういうぐあいに押えられてくる可能性が非常に強いといたしますと、その間においてでん粉工場なりあるいはあめ工場が合理化を行なうということをしないと、農民にばかりしわ寄せを持ってくるという結果になります。そして五月六日の農林水産委員会において、農林大臣みずから企業合理化合同を推進する措置をとると言っております。でん粉工業の、さらにまたそれの最大の消費者であるあめ工場の合理化政府はどのように進めるつもりでございますか。農協工場の場合の合理化資金は、農業構造改善事業による農業近代化資金から支出されると思います。しかし一般のでん粉やあめ工場に対しては中小企業設備近代化資金、合理化資金にたよらざるを得ないと思いますが、この点どうでございましょうか。私は以前にも質問いたしましたが、これらの工場はほとんど典型的な中小企業であり、零細経営であります。そしてでん粉用カンショが増産されているとはいいながら、原料が一定である場合、ある工場の合理化が進めば他の工場はつぶれざるを得ません。これに対して政府はどのように近代化合理化を進めるつもりであるか、以上の点をお答え願います。
  82. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 特にでん粉を御指摘になっての御意見でございますが、このでん粉による製品価格を消費者のために安くしなくちゃならない。そこで製品の過程に合理化がなされていないので、結局は生産者、原料にしわ寄せがくる。そしてまたかりに一つが合理されると他のほうがつぶれるおそれがあるではないか、こういうような御意見でございますが、それに対して政府として、特に農林省としてはどう措置をしておるか、こういうことについてのお答えをさしていただきたいと思います。  私どもは農民の立場、もちろん消費者の立場も十分考えております。今日の農政が、ひとり農民の立場だけではなくして消費者の立場等も考えているところに農林省の仕事があり、食糧政策というものがあるわけでありますから、このブドウ糖につきましては、水あめあるいは精製ブドウ糖等を中心に一私どもは考えておるわけでございます。そこで、さきに国会におきまして甘味資源法というものをつくっていただきまして、できるだけ外国からの砂糖の輸入を押えまして、てん菜糖またブドウ糖等、甘味資源はできるだけ国内生産をしよう、こういう方針で、消費の面でも、でん粉の消費の拡大をはかっており、それと同時に国内甘味資源振興の立場から、そうしたブドウ糖工場をつくる等につきましてはでき得る限り政府で融資をする、こういう方向をとっておるのでございます。ただ今後新しいブドウ糖工場を、片っ端からまた政府が金を貸してふやしていくかという問題は、これは大いに慎んでいかなくてはなりませんので、新工場については特別な取り計らいをしておりますが、前々からありますところの工場等につきましてはできるだけ融資をいたしまして、公庫資金等で近代化をはかり、構造改善をはかり、施設の改善をはかっていく、こういうやり方をして、特に安くでき、それが広く消費されて、そして先生に御心配いただいておりますように、原価が安くなって農民にしわ寄せのいかないように、こういうことを配慮して努力をいたしておるものであります。
  83. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 ただいま政務次官から申し上げましたように、需要の喚起というような意味で、ブドウ糖の製造あるいはその合理化につきましては、甘味資源対策と関連して農林公庫等から低利資金を貸し付けましていろいろな対策をとっておるわけでございます。さらにでん粉製造業等につきましても、いまのお尋ねの点でございますが、中小企業近代化助成法の対象といたしまして取り上げて、その合理化をはかるようにいたしておるわけでございます。
  84. 中野正一

    中野政府委員 いま農林省の経済局長から御答弁があったとおりでありますが、中小企業庁としましても、でん粉工業合理化については、いま言いました設備近代化補助金の制度の運用面等で十分これを応援していきたいと考えております。
  85. 桜井茂尚

    桜井委員 あめ工場につきましては、指定業種に入っていないと思うのですが、入っておりますか。
  86. 中野正一

    中野政府委員 でん粉は入っておりますが、あめは現在のところ指定になっておりません。
  87. 桜井茂尚

    桜井委員 そのあめの工場がでん粉の最大の消費者なんです。ですから、それでは合理化が進まぬじゃないか。それからでん粉工場につきましては確かに入っておりますが、これは前に中小企業庁長官が、中小企業については共同化を進めるのだ、こう申されておりますが、現実には存在しておりません。しかし何とかやっていかなければならぬ、こういう状態でございます。現在のでん粉工場の合理化あるいは共同化を進めようとするならば、たとえばカンショ処理能力三十万貫の工場が十合併して新規の一つの工場が設立されるということなら、これは一番合理的、近代的なものになります。しかしこのことを直ちに行なうのには非常に困難がある。そこで実現可能な方法を私は申し上げますが、十の工場の中心工場として精製工場を建てる、このほうが現実性を持っておる。そしてそれによって一%歩どまりが高まっただけでも非常に利潤は上がります。しかしこのような精製工場を設立するためにも、たとえば三百万貫処理工場ですと、土地抜きで三千万円から四千万円の設備資金が必要であります。したがってこれが共同化のためには、一工場あたりこの程度の資金的援助がなければできない。そこで政府は、そのために近代化資金、合理化資金があるというでしょうけれども、たとえば昨年度は千葉県で、でん粉業に対する中小企業近代化資金の貸し付けば、農協工場以外の民間二百三十四工場中、わずかに九件であり、しかもその金額は一件当たり五十万円程度であります。そうして本年度分の近代化資金についても、わずかに四件の申し込みの受付だけであって、金額はたいしたことはございません。そうして四月の末日をもってすでに締め切っております。また、共同化を進めるための合理化資金にしても、現在の割り当て以上の特別ワクをもらうのでなければ不可能であると県では言っております。中小企業金融公庫に、政府が前向きで政策をやろうとする場合、新たな現在以上の施策を実施するには、資金量がほんとうにあるのかどうか、あるなら幾らあって、そうしてそれをいつごろ配分するつもりか、中小企業金融公庫の方が来ておられましたら伺っておきたいと思います。
  88. 馬場靖文

    ○馬場説明員 ただいまの御質問でございますが、私のほうは本年度は総額で千三百七十五億という融資のワクがございまして、いつきめるということでなくて、逐次受け付けて貸し付けをいたしております。その中で、でん粉とか水あめ工業のほうにどのくらいいっているというようなワクも別にあるわけではございませんで、大体先着順で受け付けるようにいたしております。相当のものが出るのではないかというふうに考えております。
  89. 桜井茂尚

    桜井委員 いま私申し上げましたとおり、一件当たり五十万円なんです。千葉県におきましては……。
  90. 馬場靖文

    ○馬場説明員 五十万円ということでございますが、私のほうのは県の貸し付け金ではございませんで、公庫の直接貸し並びに各金融機関を窓口とする代理貸しと二本立てでやっておりますから、五十万円というような小さいのはないはずでございます。
  91. 桜井茂尚

    桜井委員 そうしますと私の調査が足らないのかどうか。私は千葉県の県庁並びにそのほかへいって調べてあるのですけれども、ほんとうに申し込みがございますか。これだけの仕事をしようとするなら三千万円ないし四千万円かかるはずなんです。
  92. 中野正一

    中野政府委員 いま先生の御指摘になったのは、県を通じて出す設備近代化資金のことじゃないかと思います。こちらのほうは金融機関の中小企業金融公庫でございますので、全然違うのですが、そっちのほうは手元に数字がございますが、いままででん粉についても相当申し込みはございます。しかし私はいま聞いておるところでは、いま先生の言われたような精製工場を共同でつくるというようなことは、私のほうは共同施設には相当金を用意して助成をしようとしておりますが、でん粉業界からはそういう話がまだ一件も出ておりません。しかし個々の業者の方が設備近代化をするということで、県を通ずる設備近代化助成金をほしいという申し込みもありますし、これに対しては出すようにいたしております。  それから水あめでございますが、これは設備近代化の指定業種になっておりませんが、これは十分研究をして、できたら指定の方向で検討したいと考えております。
  93. 桜井茂尚

    桜井委員 私はいま新しい提案みたいなことを申し上げたのですが、これは急速に進めていただきませんと、世界の情勢その他からいって非常に困る事態になりはしないか、こう心配いたしますので、それを一番実現可能な方法として、私も各種の学者その他にもお伺いして申し上げているのですが、農林次官はこれを、今年度中にもやればできることですから、行政指導をしていただきたい。資金的にいま申されたとおりバックアップをすると言っているのですから、やればできることですから、おやりになる気持ちはございますか。
  94. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 でん粉全体についての処理の案としては当然考えていかなければなりませんが、ただこの水あめに限ってということになりますと、それも一つのでん粉消費の大きな方法であります、けっこうなことだと思いますが、現在水あめの……(桜井委員「私の申し上げているのは、でん粉の精製工場です。」と呼ぶ)精製工場につきましては、ただいま先生も非常に御熱心でありますので、いい案と申しますか、いい考えのものが出てまいりますれば、政府としても、農林省としても、それを実現するように大いに協力を申し上げたい。またそうすべきだと考えております。
  95. 桜井茂尚

    桜井委員 次官にお伺いしますが、これは次官ばかりでなく皆さんに、どなたにも聞いていただきたいのです。ほんとうは大臣にお伺いしたいのですが、現在の畑作の状態において、イモの生産を直ちに他の作物に転換するということは非常に困難であります。ところが、先日閣議において佐藤科学技術庁長官が報告をしているように、LPガス冷蔵による蔬菜、果実の輸送が可能となり、試作車も完成しております。もしこれが大規模に普及することができるならば、そしてこのことは可能だと私は思うのでありますが、そういたしますと、国内における蔬菜栽培地帯が遠隔地に拡大されるばかりでなく、シベリア開発と結びついたわが国からのソ連に対する蔬菜、果実の輸出考えられます。御承知のようにシベリアはツンドラ地帯であり、これらのものは生産できません。したがってソ連でこれを必要としていることは申すまでもございません。だからLPガス冷蔵による沿岸貿易が実現するなら、畑作地帯の農民にとって新しい市場が開発され、畑作農業の大転換をもたらす可能性考えられるのであります。このことについて、農林省でどのように考えたことがあるか、お答え願います。そうして、わが国は四季の変化に富み、日射も強く、雨量も多く、蔬菜の生産には最も適しているのであります。国際分業の上から言っても非常に有利であります。したがってこのことについてソ連と話し合ったことがあるかどうか、この点をお答え願います。
  96. 松岡亮

    ○松岡(亮)政府委員 ただいまLPガス冷蔵で野菜の貯蔵輸送、それから対ソ沿岸貿易でシベリアに輸出してはどうか、畑作対策としても非常に役立つであろう、こういう御提案でございますが、農林省といたしましても、野菜の価格安定のためにはいろいろな施策考えておるわけでございますが、なかなか名案がございませんで、実は苦慮しておるのでございます。いま御指摘のありましたような冷蔵方法につきましては、最近そういう方法ができた、こういうことでございまして、実用化できるかどうか、なお農林省として検討を要すると考えております。しかしこの方法自体は、もし実用になるものでありますならば、非常にけっこうなことと考えております。実は先般も対ソ貿易の問題あるいは国内の価格安定対策の問題として論議した次第であります。今後十分検討いたしたいと思います。
  97. 桜井茂尚

    桜井委員 以上、国連貿易開発会議と関連して、二次製品、一次産品の問題について質疑してまいり、関係閣僚の所感を伺ってまいりましたが、できるだけ早急にわが国産業構造を変革しなければならないということは、これは通産大臣も農林次官も確認されました。そしてこの産業構造の変革は、わが国経済の基本的な体質の変化を伴うものでありますので、開発会議の次の三年先とか、あるいはそのさらに六年先というような短い期間では、非常に解決のむずかしい問題であります。しかし急速にやれば、そして一日早ければそれだけ出血も少ない。しかし、このための予算なり財政投融資なりは本年度計画に入っておりません。先ほど通産大臣が答えております。だから今後多額の追加がなければ、このことの実現は不可能だと考えられますが、両次官がおいでになっておりますので、御答弁をお願いいたします。
  98. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ただいまの御質問につきましては、財政役融資につきましては毎年要求はいたしているのでありますが、いずれもわれわれの要求どおりまいりません。しかしながら今後ともできる限り努力をいたしまして、やはり金融の道を講ずるためには、もとの原資が必要だと思いますので、財政役融資のためには今後十分いま先生のおっしゃったように努力いたしまして、額を役ずるように最善の努力をいたしていきたいと考えております。
  99. 丹羽兵助

    ○丹羽(兵)政府委員 どの産業よりも、事農業に関しては一番切実に感ずる問題であります。貿易が自由化され、また低開発国との連携もあって、これがわが国の農業に影響があってはなりませんし、そういう意味から考えまして、もちろん現在苦慮いたしておりますけれども、せっかくの激励をちょうだいいたしておりますので、来年変予算等うんとがんばってみたい。先生からお教えいただきましたような方向に持っていくべく努力いたすことをお誓い申し上げる次第であります。
  100. 桜井茂尚

    桜井委員 最後に私は意見を申し述べます。  私が最初委員会において質問をいたしましたが、たとえば自動車産業には膨大な投資が行なわれました。しかしこれは組み立て産業であるので、下請産業としての中小企業がたくさんあります。これに対する投資は不足であり、合理化がおくれた。だからここにアンバランスが生じ、かえっていまではこの産業の成長のネックとなっている。このことは通産大臣も認めております。今日の日本の全産業をとってみても、多かれ少なかれこれと同様なことが言えるのであります。そこで、私はもう一度戦後二十年の歴史を振り返ってみる必要があると思います。御承知のとおり敗戦のときは焼け野原で、工場らしいものはありませんでした。しかるに今日では、世界第一位といわれる造船業、第二位といわれる石油産業、第三位といわれる鉄鋼業等、主たる産業はこのような発展を遂げております。なぜこうなったのでしょうか。それは戦争直後の強制供出に始まり、低賃金、そうして税制あるいは財政投融資等、国の施策による援助があげて大企業の資本蓄積に向けられたからであります。ところで、その陰に二重構造の底辺をなす労働者、農民、中小企業者が犠牲となり、放置されたのであります。その結果、今日中小企業、農業の生産性の低下をもたらし、物価高となり、国民生活を脅かしているみのではございません。政府からろくな援助も受けず、営々辛苦して輸出産業にまで成長した中小企業も、いま大きな変動期に直面いたしております。このような、わが国産業構造がいま大きな矛盾に突き当たり、変革を要請されている。しかも、わが国経済における資金量には限界があります。だから、この資金を従来は大企業偏重に流されてきたが、これを中小企業、農業を重点に切りかえなければ、この矛盾は突破できない、どうにもならない段階に到達いたしたのであります。  だから、最後に繰り返して申し上げます。政府は二十年にわたる政策を転換しなければならない。いまその時期に来ている。このことを指摘いたしまして質問を終わります。      ————◇—————
  101. 始関伊平

    始関委員長代理 ただいま議題となっております本案に加えて、松平忠久君外二十八名提出中小企業者事業分野確保に関する法律案、同じく官公需中小企業者に対する発注の確保に関する法律案及び同じく中小企業組織法案、以上三法案を議題とし、四法案についての質疑を続行いたします。  午後三時より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後零時五十三分休憩      ————◇—————    午後三時二十四分開議
  102. 二階堂進

    ○二階堂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  休憩前に議題といたしました四法案について質疑を続行いたします。島口重次郎君。
  103. 島口重次郎

    ○島口委員 先ほど中小企業庁の長官が、中小企業だけが最も適正な事業分野というものを調査をしてみたというお話でございますけれども、その具体的な業種はどういうものですか。
  104. 中野正一

    中野政府委員 これは、いま私は実はちょっと資料を持ち合わしておりませんが、基本法をつくるときに、現在中小企業が相当のシェアを占めておる各業種を拾い上げまして、そしてその業種生産性が伸びる余地、需要の伸びる余地等をいろいろ役所のケースで検討しまして、はたして基本法等をつくって、中小企業というものがどういうふうに伸び得るかというようなことを検討をいたしたわけでございます。また、もし私のほうで検討いたしまして、国会へ提出していい面は、参考資料として後日提出したいと思います。
  105. 島口重次郎

    ○島口委員 第二にお尋ねいたしますが、この改正法案によりますると、政府のほうから出しました資料によるところの石油ストーブや魔法びん、紙コップ等が救済されるようでありますけれども、これは暫定的にこういうことを改正いたしましても、あらゆる産業分野全体から見ますると、私は先ほど指摘いたしましたように、中小企業近代化合理化いたしましても、大企業との対抗はできない。これは機械整備の規模の面におきましても、あるいは資金量の面におきましても、とうてい対抗できないと思うのです。整理をされますのはどういたしましても時の問題である、こう考えます。そういう面から申し上げますと、徐々に大企業中小企業分野に進出をしてまいりますると、勢い中小企業が商売の切りかえ、転換をしなければならない時期が来ると思いますけれども、この改正法によりますると、その面の救済方法あるいは対策がないようでありますけれども、これに対する見解はどうですか。
  106. 中野正一

    中野政府委員 今度の改正法案によりますと、大企業の進出によりまして中小企業者の経営の安定に重大な影響、悪い影響を及ぼすおそれがあるときに、一定の期間をきめて当該中小企業者以外のいわゆる大企業者と中小企業者の代表である商工組合が交渉をしてその進出の計画を変更するというようなことの特殊契約を結ぶことができるようになるわけでございますし、その場合に、その特殊契約はやはり主務大臣の認可を受けなければならないということになっておりまして、その認可の要件の中に、その商工組合の地区内において資格事業を営む中小企業者が経営の合理化であるとか、あるいは事業の転換を円滑に行なうために必要な最小限度を越えないという認可要件がございまして、結局やはり大企業の進出によって中小企業者自身が非常な影響を受ける、しかし、その事態を克服するために、中小企業者みずからが経営の合理化であるとか、あるいは場合によっては事業の転換をする余裕を与えよう、そういう時間的な余裕を与えるという意味合いがここに入っておるわけであります。したがいまして、大企業と契約をいたしまして、しかも一定の期間、三年とか四年とか、期間をきめますので、その期間に中小企業者自分で経営の合理化をやるという場合には、これに対して、その計画に対して、政府として資金面その他の面において応援をする、こういう形になっていくわけでございます。
  107. 島口重次郎

    ○島口委員 今度の特殊契約に対する処置の問題は、ただいま長官の説明したとおりだと思います。私は、暫定的に合理化カルテルをやる際に、やって救済されるものがあるけれども、これでは救済されないたくさんの階級があると思う。たとえば中小企業が、いま長官の言うように企業合理化をやりましても、中小企業と大企業との資本力の問題あるいは大量生産等の問題でどうしても勝てない、徐々に圧迫をされるということが、今度の破産、倒産にも出てきておると思います。そういう暫定的な対策で救済されないいわゆる中小企業者を救済するために何か考えているかどうか、そういうことであります。
  108. 中野正一

    中野政府委員 その問題は、これは何もこの法律関係だけでなくて、自由競争のこの経済社会において、ある程度そういうことは常日ごろ行なわれておるわけであります。したがってそういう問題については、合理化の資金あるいは事業転換のための資金等は、これは一般の金融機関だけでなくて、政府関係のたとえば中小企業金融公庫、国民金融公庫というようなところで、主として金融面でこの点は十分めんどうを見ていく、こういうことにするわけでございます。
  109. 島口重次郎

    ○島口委員 これは幾ら聞きましても結論が出ないと思いますから、これは政治上の問題ですので、大臣に一言お尋ねいたします。この問題は、ただいま申し上げましたとおり暫定的な合理化カルテルをやりましても、特殊契約をやりましても、救済されるものは、時間的に申し上げますと、一・四半期なり、二・四半期である、あるいは幅の広さの面から申し上げますと、全体の企業から申しましてわずかな部分であります。資本主義のただいまの経済社会というものをながめますと、この程度の手当てによりましては救済されない多くの中小企業者があると思うのです。資本力の問題、大量生産等の問題あるいは設備等の問題で、近代化したと申し上げましても、大企業近代化中小企業近代化はおのずから力の相違がある。格差が大きくあるのであります。そういう面から逐次大資本に圧倒されまして、これが恒常的な盲点となりまして、いわゆる昨年の十一月から本年の二月あるいは三月、四月と、恒常的に破産、倒産がたくさん出てきておる。要するに、大企業が進出をしてまいりました際に合理化をやる、やってもまた時の問題で、圧迫を受ける、あるいは転換しなければならない、こういうような層がたくさんあると思うのであります。これは今度の法律案によっては救済されない、対象になっておらないたくさんの中小企業者だと思う。これに対する政治的な救済策としては通産大臣はどう考えておられるかをお尋ねしたいと思います。
  110. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、この法律だけで中小企業が救済されるとは思いません。そこで具体的にいろいろ考えてみますと、いろいろな事業においていろいろの問題が惹起されておると思いますが、こういう面につきましては、まず金融、税制の問題等ももっと考えてみなければなりません。それからまた具体的な、ある会社がそういうふうな事態で困っておるというような場合には、その内容等に立ち入って、中小企業自体が参画できないまでも、地方の通産局あたりがそういう相談にも乗る。そういうようなきめのこまかいやり方でないというと、中小企業という一言で、これにおしなべての政策というものを考えますと、これは、税とか金融は一般的な消化剤みたいなもので、効果はありますけれども、それだけで解決するかというと、そうはいかない面もあると思う。そういうことはやはり今後われわれが親身になっていろいろそういう相談に乗っていくような方向で問題の解決をはかってまいらねばなるまいかと考えております。
  111. 島口重次郎

    ○島口委員 大臣はたびたび金融の問題、税金の問題で総合的な対策を進めるというみずからの意思表示をしておられますので、この際その点につきましても若干希望を申し上げたいと思います。  御承知のとおり金融の問題といたしましては、三十九年度の財政投融資額を見ますると、昨年度に比較いたしまして二六%の増であります。二六%の増であるけれども、物の値上がり、物価の値上がりを計算いたしますると、約八から九といたしますれば、本質的な増資のワクと称するのは一六%なり一七%になっておるのであります。こういう金融対策でありましては、ただいまの破産、倒産の状況にはまさに焼け石に水の状態である。もっと抜本的な、革命的な方法をやってもらいたいと思います。今後における財政投融資の額を追加しておるようでありますけれども、大臣なりあるいは関係者におきましては、そういう現象が出てきてから手を打つのではなくて、やはり正しい見通しのもとに、今年度の財政投融資額を大幅に予算化しておくことが正しいあり方だと思います。そういう面から特に御配慮をお願い申し上げたいと思います。  第二点の問題は減税の問題でありますけれども、たびたび減税減税と声を大にしておりますけれども、私らの考えといたしましては、生活の水準は高くなる、そういたしますると、免税点も上に上がりまするのは当然でありまして、本質的に減税になっているかどうかという面を見ますると、今年度予算に盛られておりまする減税というものはすこぶる不安定であり、不満足であります。その具体的なあらわれといたしましては、大臣もすでに御承知だと思いますけれども、昨年の十一月から今年の四月に至るまでの破産、倒産の経過を見ますると、件数にいたしまして約一倍半になっておる、あるいは負債額におきましても一倍半以上になっておる。こういう具体的な現実の姿というものは、政府の政策が立ちおくれておるということであります。そういう面から、池田総理が選挙の際に公約をいたしましたように、抜本的な、革命的な施策を強力に推進してもらいたいと思います。  そこで今度の法案を見ますると、商工組合やあるいは資格事業者が相手の大メーカーのほうに申し入れをする、そうして具体的な折衝をするのでありますが、話し合いができない段階では、通産大臣もしくは県知事のほうにあっせんや調停を申請をするというような状態でありますけれども、この中身を検討いたしますると、申請をいたしましてから何週間とかあるいは何カ月間の間にまとめなければならないというような時間的な規定はないのであります。そういう面から見ると、特殊契約をいたしまして不利となると思われますると、大企業のほうでは時間をかせぐ憂えがあるのであります。そういう面から、この法案がねらっておりまする成果がなかなか出てこないと思いまするけれども、そういう点はどうなんですか。
  112. 福田一

    福田(一)国務大臣 期限は確かにつけておりませんが、問題処理にあたっては、可及的すみやかにやる。大企業の言うことをきく、こういうたてまえで調停をするつもりはございません。大企業だからとか、あるいは小さいからほうっておくとか、そういう意味じゃなくて可及的すみやかにやる。これはそうでなければ効果はございません。半年も一年もほうっておいて、一年もたってから決定を出してみましても効果はないと思います。法文の中に明らかにしておかないでも、私はそういうふうに運営をいたしてまいる所存でございます。
  113. 島口重次郎

    ○島口委員 可及的すみやかにやるとするならば、最低線期日を明確にしたら効果があがると思いますが、どうですか。
  114. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、それはまた問題が起きると思うのであります。やはり両方の実態調査というものを、言い分をよく聞くということが必要であり、そうしてその関係者が多いか少ないかということによって、時日に若干の差が起きることは当然だと思います。だから、これを二週間とか三週間とか一ヵ月とかはっきりきめてしまうと、かえってまた弊害が起こる。調査もしないでものを処理したということになってもいかぬと思います。これは自由裁量ではありませんが、ほうっておくというわけではない。これはもう具体的に問題が出て、どうしておるか、こういうことを指摘できるわけでありますから、これは自由裁量の範囲で可及的すみやかにやる、こういうふうに処理をさしていただきたいと思います。
  115. 島口重次郎

    ○島口委員 それでは、期日を明確にきめておらないので、話し合いの過程におきまして、大メーカーのほうではどんどん進出作業を始めた場合はどうなりますか。
  116. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はいまの段階においてそういうことは行なわれないと思っております。いままでもいろいろな問題がございました。この法律がない場合でも、通産省が待ったをかけたときに、どんどんやった大メーカーは一つもございません。
  117. 島口重次郎

    ○島口委員 大メーカーがやったことがない、こう言うけれども、系列会社や、あるいは別個の法人会社をつくりましてやり得るということも考えられますけれども、そういう点はどうなんですか。
  118. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういう場合にも、われわれがそういうことは少し考えてからやってもらいたいと言った場合は、われわれの意図に大体応じてやってくれております。
  119. 島口重次郎

    ○島口委員 その系列会社を通してやるとか、あるいは別個の法人をつくってやるということは、調査をしますにもなかなか容易でないと思いますけれども、そういう点はどうなんでしょう。
  120. 福田一

    福田(一)国務大臣 系列会社をつくった場合には人的な要素が入るか、資金的な要素が入るかでございまして、それを隠してやるということは困難であります。私たちは明らかにこれは察知できると考えております。
  121. 島口重次郎

    ○島口委員 これは契約にはあっせん、調停はできるけれども、強制力を持った仲裁という制度がないのであります。こういう面から申し上げますと、どうも調整法のごとく仲裁委員会をつくりまして裁定をつくる。その裁定が双方とも拘束力があるような力のある法体系のほうが理想的だと考えますが、そういう点はどうなんでしょう。
  122. 中野正一

    中野政府委員 それはいま先生の言われたのも一つの方法だと思いますが、こういう経済実態に即するような調停案なりあっせん案というものを示してやらなければ結局実効もあがらない、こういうことでございますので、第三者的なものが一方的にそういうものを押しつけてやるということは行き過ぎだ、実際またそういうやり方をやったのでは経済実態に合わない、こういうふうに考えまして、まず第一に主務大臣のあっせんをやる。そうしてそれでもうまくいかない場合は調停案をつくってそれを主務大臣が両方に示して、それに従うように勧告をするわけであります。しかもそれを公表するということになりますから、相当これは、運用次第によると思いますが、強い措置じゃないか。いままでの行政指導等に比べて法的根拠を持った相当強い措置だというふうに感じております。これ以上までいくのは経済実態に即さないというふうに私は考えております。
  123. 島口重次郎

    ○島口委員 これは利害が対立をいたしますから、あっせんなり調停をする。調停をいたしましたから必ずしもその調停が成立をするというものではない。本人が了承しなければ成立をしない。その際に何らの拘束力もない、罰則もない。そういたしますと、応じないと言いますればそれまでであります。したがいまして、どうもこの改正案によりますと、あまり期待するものがない、こう考えますけれども、これで十二分の自信があってやれるのでありますか。
  124. 中野正一

    中野政府委員 この前も、最近における大企業の進出事例を説明いたしまして、そうして本来通産省でやっております行政指導は法的根拠はないわけでありますが、それでもいままでは相当効果があがっております。中小企業の方々のほうも、両方の間に役所が入って調停をして喜んでいただいておるケースも多いわけであります。うまくいってないケースもございますが、しかし今度はちゃんと法的根拠があってやるということ、それからもう一つは、自主的にまず商工組合が相手の大企業と正式に法的な裏づけを持った交渉ができる、こういうことになるわけでありますから、従来のやり方よりは相当進歩をしておる。したがって、この制度というものを中小企業の皆さま方、また大企業の皆さま方によく理解をしていただいて、また通産省はじめ関係の主務官庁が運用よろしきを得れば、相当効果があがるのじゃないか、こういうふうに私は見ております。
  125. 島口重次郎

    ○島口委員 この程度であったら、いままでやってまいりました行政指導と何ら変わりはないじゃないか。法律に調停をやると書いておりますけれども、相手のほうには応諾をする義務がない、拘束力がない、罰則制度がない。そうなりますると、いままでやってきた行政指導と効果の面から申し上げますると、ほとんど同一ではないか、こう考えております。しかし従来の行政指導だけではどうにもならないから新しい法律改正が出てくる、こういうことでありまして、出てきたからには応諾の義務がなければならない、強制力を持たなければならない。強制力を持たせるとするならば、労働調整法のごとく、裁定というものが出てこなければならないと思うのです。そういう点はどうなんでしょう。もう一回……。
  126. 中野正一

    中野政府委員 この法律改正が成立すれば、従来の行政指導以上に相当効果をあげて、中小企業の皆さま方のためになるような方法でやり得るのじゃないかというふうに考えております。
  127. 島口重次郎

    ○島口委員 相当効果のあがるという確信であるようだけれども、ただ、現段階で商工組合の組織されておる率というものは微々たるものだと思います。組合が結成されておるところは比較的効果があがるかもわからないけれども、この組織率の低いただいまの段階において、特に後進地域におきましては相当問題があろうと思っておりますが、そういう点はどう考えておりますか。
  128. 中野正一

    中野政府委員 商工組合は現在全国で約千ばかり組合ができております。確かにいま先生から御指摘があったように、後進地域の一部等でまだ商工組合ができてない分野もございます。したがって、そういう面については今後やはり商工組合をつくっていただいて、できるだけ自主的に問題の処理に当たっていただくというふうに指導をすべきであるというふうに考えております。しかし、そういうものができてないところへ大企業が進出するというような場合もあると思いますので、そういう点については一面で行政指導をやると同時に、やはり問題のある業種については商工組合をつくっていただくというふうな形に指導していくべきだと思います。
  129. 島口重次郎

    ○島口委員 後進地域のほうに商工組合の組織化を促進して、その上で合理的な指導をする、こういう見解でありますけれども、よく大臣にいたしましても長官にいたしましても、現実の姿ということを言っておりまするが、そういう観点から申し上げたいのでありますけれども、この契約の申請者があえて商工組合だけでなくて、商工会もしくは後進地域における商工会議所にも申請権を与えたらどうかと思います。  それからもう一点は、ただいま大臣は系列会社をやった場合には人の問題あるいは出資金の問題等で隠すことができないというのでありますけれども、これはごもっともだと思います。しかし別個な会社をつくりまして、いわゆる親子関係の線を結んでやるということも考えられます。いかにして合法的な脱法行為としてやり得るかということをいろいろ大企業の方々も考えておると思いますけれども、そういう面はどうですか。
  130. 中野正一

    中野政府委員 商工組合がやはり当該問題の起こる業種についての大部分の中小企業者を代表する団体として最も適切であるという意味合いで、商工組合を交渉の相手とすることが適切だと考えております。商工会議所とか商工会というものは地域団体でございますので、そこまで広げるのは行き過ぎじゃないかというふうに感じております。  それから、身がわり会社をつくって進出するということがこの法律では取り締まれないじゃないか、確かにそういうことになればこの法の趣旨をくぐるということになると思いますので、先ほど大臣もおっしゃったように、そういうものは政府のほうでは調べればわかることでございますので、十分そういうものについては注意をするということでやっていきたいと思います。ただ実際問題として、身がわり会社をつくって非常な大規模な設備をするというふうなことは、これは実際大企業としてもうまくいかない場合が多いのでありまして、必ずしも私はそういうふうなことで、この法律があるからこれをくぐるためにわざわざそういうものをつくるというような態度に出るかどうか、もう少し事態の推移を見まして、そういう面については十分調査もし、行政指導もやってまいりたいと考えております。
  131. 島口重次郎

    ○島口委員 前段の、商工組合だけ申請権があるという問題でありますけれども、あなたの期待するように急速に組織化が促進されればよいけれども、そう右から左へはいかぬと思います。縦の関係から申し上げますと、商工組合が適当だということになりますけれども、やはり後進地域のほうに大手メーカーが進出をいたします場合には地域全体の問題であります。多々出てくると思うのです。しかも、ただいまの普及限界から申し上げますと、非常に未組織が多い。即時この法のねらっておる効果をあげようとするならば、商工会もしくは商工会議所にやらせることが、暫定的であっても高能率的に効果があがると思いますけれども、こういう点を考えられないかどうかをもう一度お尋ねをいたします。
  132. 中野正一

    中野政府委員 われわれはその点も十分検討してみたわけでございますが、この法律がねらっておる各業種について、大企業中小企業が競合して、しかも大企業が大規模に進出したために、その進出した業種に属する中小企業者が非常に困るというようなことで知事に待ったをかける、こういうものは、やはり業種的な組織者というものが交渉相手になるほうが最も適当であるというふうに考えております。
  133. 島口重次郎

    ○島口委員 商工組合を第一義的に取り上げるということは、これは私も賛成であります。しかし、現実の姿から考えて、後進地域の対策を強化する意味で商工会、商工会議所が申請権を持ってもよろしいじゃないか、むしろそのほうが、あなた方の考えておる法の成果があがるためにもそうすべきじゃないだろうか、そう考えますが、どうですか。
  134. 中野正一

    中野政府委員 私は、先ほどから御説明しておるように、地域団体がこういう問題を取り上げるということは、これは必ずしも適切じゃないと思います。ただ御承知と思いますが、小売商業調整法等がございまして、そういう面についてはいろいろな地域団体が——たとえばスーパーが進出したためにその地域の小売り商業者に非常な影響があるとか、そういうふうな問題はまた別の法律で取り上げ得るわけでありまして、この法律でねらっておるのは各業種ごとの問題でございますので、やはり商工組合のほうが、地域団体でなくて業種別の団体がいいんじゃないかと考えております。
  135. 島口重次郎

    ○島口委員 特にこの際お聞きしたいのは、今度の改正のねらいというものは、工業の方面だけ重くて、商業の方面はあまり重く評価しておらぬようでございますけれども、この点はどうなんでしょう。
  136. 中野正一

    中野政府委員 先ほど申し上げましたように、地域的な小売り商業の問題等につきましては小売商業調整法等がありまして、そういうものを十分活用していったらいいんじゃないかというふうに考えております。ただ、たとえばスーパーの問題ですね、巨大資本をバックにしたスーパーが進出する、こういうような問題はまた別途、これはどうするかということで、通産省のほうでも特別の部会をつくっていま研究しておりますので、またそういうものの結論が出ればそういうものに従って、必要があれば法制化を考える、こういうふうにやったほうがいいんじゃないかと思います。
  137. 島口重次郎

    ○島口委員 スーパーに対する対策もその一つでありますけれども、縦の業界の組合にいたしましても、後進地域におきましては、おそらく未組織の地域が圧倒的に多いかと思います。圧倒的に多ければ、この法がいかに改正されましても成果があがってこない。やはり法律をつくりました限りは、最大限成果のあがるようにやることが正しい改正の方向でありまして、成果をあげるという面から考えて、もう一度商工会なり商工会議所も申請権を持つ段階にしたらどうかということについてお尋ねしたいと思います。
  138. 中野正一

    中野政府委員 いまの先生の御指摘のような問題もあるかと思いますが、そういう点につきましては、さらにわれわれのほうで実情をいろいろ調べまして、必要な措置をさらに今後研究してまいりたいと思います。
  139. 島口重次郎

    ○島口委員 その点につきまして、さらにお尋ねしておきたいのでありますけれども、相当検討いたしまして、必要があるとするならば対策をとりたい、こういうお答えでありますけれども、今後の改正には時間的にも間に合わないということですが、本気でそういうことを言っているのか、いまのその場限りの答弁で言っているのか、もう一度そういう点を明確にしてもらいたいと思います。
  140. 中野正一

    中野政府委員 答弁であります以上、もちろん本気で言っております。いろいろ調べまして、実情に合うように今後研究してまいりたいと思います。
  141. 島口重次郎

    ○島口委員 この際、大臣にも要望申し上げておきますが、もう昨年来破産、倒産が相当多くなっている。だけれどもこの破産、倒産の統計をとるのは、残念ながらただいま政府の機関にはないようであります。私らがいろいろ資料をさがしましても、興信所あたりの資料でなければとれない。少なくとも日本中小企業対策があり、あるいは金融機関がありまして、政府機関で一つもそういう統計が出てこないというのは、実に怠慢そのものだと思います。特に一千万以上の破産、倒産者が興信所の調査によりまして出てくるけれども、一千万以上の破産、倒産者でもこれほどの数があるのでありますから、いわゆる中小の小零細企業者の破産、倒産というのは数え切れないほどあると思います。少なくとも正しい中小企業、零細企業行政をやるとするならば、それらの数字も出てくる行政機構をつくらなければならぬと思いますが、そういう点、大臣なり長官はどう考えておられますか。
  142. 中野正一

    中野政府委員 破産、倒産の調査というものは、これは非常にむずかしい問題でございまして、いま東京の興信所も、たしか私の聞いておるところでは、全国で三千人くらいの人を使って、個々に聞き込みで特定の会社に行って調べるわけで、日本では一番、東京商工興信所ですか、権威があるものとしてみんなも信用してやっておるわけであって、われわれのほうも、民間でそういういい調査があればそれを利用するのは当然のことでございますので、定期的にその調査をわれわれのほうで利用しております。しかし確かに先生のおっしゃったように、まだ中小企業実態調査が非常におろそかじゃないか、政府の手によってもう少し実態を詳細に刻々と把握すべきであるということは、非常にごもっともな御意見だと思います。今後その面の施策は、私は画期的に拡充すべきだというふうに感じております。
  143. 島口重次郎

    ○島口委員 わかったような、わからないような答弁ですけれども、一体政府は、本腰を入れてそういう統計が政府の手の中で出てくるような機構を整備するという答弁なのか、それとも、ただいまの状態のように、やれないというのか、そういう点をはっきりお答え願いたいと思います。
  144. 中野正一

    中野政府委員 これは今後の政策の問題でございまして、いま、必ずどういうものをやるということは、ここでは私は答弁できませんが、いま程度実態調査では、中小企業政策を大きく前進させるのには不十分であるということは強く感じております。
  145. 島口重次郎

    ○島口委員 大臣、長官みずからが不十分だということを認めているんですから、何かこれに対策をとらなければならぬのは、通産大臣あるいは政府としてやらなければならない当面の問題だと考えますけれども、そういう点はどうなんでしょうか。
  146. 福田一

    福田(一)国務大臣 そういう実態調査をやるような、また、それがわかるような方向で今後実施の方向を研究してみたいと思います。
  147. 島口重次郎

    ○島口委員 民間の調査によって、それを基礎にしてやるようでは、これはとてもじゃないが対策は立ちません。いつでも中小企業が貧困に追い込まれ、破産、倒産に追い込まれるものがあとをついでいくと思うのです。医者の治療にしましても、診察が正しくなければ正しい治療ができない。ただいまの状況から申し上げまして、中小企業、零細企業が破産、倒産して、どういう状況にあるかということを診断できる機構がないのです。まさに中小、零細企業に対する政策の基本が欠除していると思います。これはただいま長官も認めておるのでありますから、速急にやることを強く要請申し上げたいのでありますけれども、大臣といたしましては、やむを得ないということで終わるのか、ぜひとも統計のできるような組織機構を確立するという見解であるかどうかをお尋ねしたいと思います。
  148. 福田一

    福田(一)国務大臣 通産省としての機構でやるか、あるいは商工会議所とかそういう民間団体を利用するかは別として、そういう調査をするくふうは前向きで実施をいたしたいと考えております。
  149. 島口重次郎

    ○島口委員 それでは基本的な問題はその程度にして、あと二点ぐらい具体的な問題でお聞きしたいと思います。  私が質問いたしますと、別個な法律で適正な措置をとると、長官はこう答弁をすると思いますけれども、いままでの、たとえば農協あたりで理髪業をたくさんやっておりますね。これは会員だけにやる、員外利用というものはみずから限定されておるというけれども、全国至るところとは言いませんけれども、相当力を持っておる農協におきましては、員外利用という限界は規則の上では明確であっても、実際利用しておる現実におきましては明確になっておらない。利用者の半分以上やっているか、あるいはむしろそのほうが多くて、六割やっているか七割やっているかわからないという状況があると思うのです。それがために、安い料金で奉仕をしているといえばそれまでですけれども、逆を申し上げますと、理髪業者を大きく圧迫をしておると思うのです。そういう点は、法律がある、別個なもので取り締まるということではなくて、実際に、確実に成果のあがるような手を打っているのかどうか、おそらく打っておらぬと思うのです。こういう面から申し上げましたら、いかに法律を改正いたしましても意味がないんです。法律がある限りは、その法が最大限効果のあるように行政的にやらなければならぬと思っておりますけれども、やっておるならやっておるという状況、それから、やるというならやるという決意のほどを明確にしてもらいたいと思います。
  150. 中野正一

    中野政府委員 実は、いまの先生の御指摘の点は非常にごもっともでございまして、農協の員外利用の行き過ぎ等につきましては、別の法律があって監督できるようになっておりますが、これが実際に十分行なわれていないじゃないかという御趣旨の御発言かと思います。この団体組織法の一部改正法案を出す際に、われわれのほうと農林省、厚生省ともよく相談をいたしまして、そういう問題が地方にあって、そういうことが判明いたしましたならば、直ちに関係両省で調査をして、そうして行き過ぎがないようにこれを十分監督し取り締まるということを、両方でよく話し合いしておりますが、その趣旨に従って、われわれのほうとしては今後はさらに気をつけて監督指導をやってまいりたい、こう考えております。
  151. 島口重次郎

    ○島口委員 公社の退職者が一つの会社なり組合なりをつくりまして——印刷会社であろうとも、あるいはそれに類似をいたしました工場をつくりまして、民間企業者を相当圧迫をしておる例が多々あると思うのです。そういう点は、今度のこの改正法から考えて、どう考えておられますか。
  152. 中野正一

    中野政府委員 その実施する形が大会社であります場合には、当然この法律の適用があるわけでございます。
  153. 島口重次郎

    ○島口委員 あとに質問者も控えておるようでありますから、これで終わりたいと思いますけれども、どうもいままでの法律を見ましても、こうやればこうなるんだという一応の体制はできておると思うけれども、なかなか効果があがっておらない。それだけに中小企業、零細企業等の問題が深刻でめんどうな問題だということもわかります。いずれにいたしましても、法がある以上は、それの実効のあがるようにしなければならない。今度の改正法を見ましても、一貫して考えられることは、ほとんど成果があがらぬじゃないかということで、すこぶる不満とするものであるが、政府の見解はいまお聞きいたしましたから、不満であるけれども、この辺で私の質問を打ち切りたいと思います。
  154. 二階堂進

    ○二階堂委員長 田中六助君。
  155. 田中六助

    田中(六)委員 ただいまから、社会党提案になります中小企業者事業分野確保に関する法律案について、若干の質問を試みたいと思います。  まず、田中議員にお尋ねしたいのでございますが、田中議員は、この中小企業中小企業者の範囲をどのような定義づけをなさるか、ちょっと聞きたいと思います。
  156. 田中武夫

    田中(武)議員 昨年、政府案とわが社会党案で基本法を出したことは御承知と思います。あの基本法でわれわれがうたっておりますように、資本金三千万円、そして「かつ」という字を入れておりますが、従業員三百人、これは製造業です。それからサービス業あるいは商業については三十人ということにいたしております。それから、建設業とかその他については特例がありますが、しかし、われわれは三千万円かつ三百人という定義を持っております。ところが、政府案は五千万円または三百人、そういうことで対立をいたしたわけでありますが、中小企業基本法の成立の過程におきまして、われわれは一応その定義を譲ったわけなんです。しかし、わが党といたしましては、資本金は五千万円にいたしましたが、かつ三百人の定義を今日まだ堅持いたしております。
  157. 田中六助

    田中(六)委員 この中小企業者事業分野確保に関する法律案の目的を見ますと、一定の業種中小企業分野として指定しておりますし、その業種への大企業の進出を一切禁止しようとしているようでございますが、このような条件をのむとしますと、現在中小企業が占めている分野中小企業のものとして固定してしまいますと、中小企業合理化のための努力をおくらしたり、そのために、ひいては国際競争に負けるような粗雑な商品を生むことにもなるし、またコストの引き下げなどにも影響してくると思いますが、こういうふうになりますと、一般大衆、つまり消費者にかなりの影響があると思いますが、この点どういうふうにお考えになりますか。
  158. 田中武夫

    田中(武)議員 実は、いまの御質問は、昨年中小企業基本法をめぐって相当論議をした点でありますが、まず中小企業と大企業との体質の違いということにつきまして、政府と、あるいは皆さん方自民党とわれわれとの見解が違うわけなんです。政府は、大企業中小企業は一つの産業における傾斜であって、上が大企業であり、下が中小企業であり零細である、こういうふうに考えておられるようであります。しかし、われわれは、経済の二重構造、すなわち体質的に大企業中小企業が違うんだ、こういうように考えております。それがまず出発点となるわけでございまして、そこで、いまでは五千万円と考えておる。そうすると、いつまでたっても五千万円で固定するのかといえば、そうではないわけでして、中小企業全体がレベルアップしてまいりましたときには、五千万円を超えて一億もあり得ると思います。ただ、われわれが考えておりますのは、一つの企業が百歩前進する、こういうことよりか、百の企業全部が一歩ずつ前進していく、こういう考え方の上に立っておることをまずお答え申し上げまして、それの上に立ってこの事業分野の調整を考えておるわけで、たとえば一例を石油コンロにとりますと、中小企業が営々努力をいたしまして石油コンロを販売部門に乗せた、それには相当な犠牲と努力が必要であった、しかし、これがいけると見れば大企業が直ちにこれを取り入れてどんどんと進出してきた、そして大資本の前には中小企業の資本あるいは技術はもろくもついえて、結局大企業の石油コンロの進出によって中小企業の多くが倒産、破産した、こういう例を見るわけでございまして、われわれといたしましては、本来が中小企業がやるべきものであり、やっておったものであり、またやるのが適当だと思うものにつきましては、中小企業分野としてこれを大企業  言うならば、これはライオンからウサギとか小鳥といったようなものを守っていこう、こういう考え方で、御承知のように、トラやライオンとウサギとかあるいは小鳥等を一緒に入れておきますと、これらは大きな猛獣といいますか、そういうもののえじきになる。これはちょうど今日大企業のえじきといいますか、あるいは下積みといいますか、犠牲になっておる中小企業、零細企業実態を見ました場合に、これに対してえさ箱も、あるいはまたそのおりも、入れものも別にするのがいいのじゃないか、こういう考え方に立ちまして中小企業分野確保したい、こういうことでございます。
  159. 田中六助

    田中(六)委員 そうすると田中議員も、つまり資本の本質として拡大再生産をしていきまして、中小企業というものが大企業へ転換するという基本的なものはお認めになるのですか。
  160. 田中武夫

    田中(武)議員 大企業中小企業という観念が、現在われわれは五千万円かつ三百人と申しておりますが、中小企業全体のレベルが上がっていくのを、いつまでも五千万円とは考えておりません。大企業になるといって、たとえば一つの松下をつくり、一つのゼネラルをつくる、そういう考え方ではないわけです。しかし、われわれといたしましても、いわゆる現在の機構の上に立って考えておるのであって、社会党の政策だといって、何も直ちに社会主義政権における政策ではございません。
  161. 田中六助

    田中(六)委員 そうすると、われわれの考えている資本というものの考え方を一応肯定なさっているわけですか。社会主義政権に移行するという考えではないというのですね。
  162. 田中武夫

    田中(武)議員 その前にちょっと申し上げておきたいことは、社会主義政権下におけるものと社会党政権下におけるものとは違うということです。まずわれわれは、現在この経済機構の中にあって、そうして弱者たる中小企業、零細企業をどう守っていくか、こういう上に立ってのこの立法でございます。したがいまして、資本というものについては、やはり経済学上の観念としてわれわれはつかまえているわけでございます。
  163. 田中六助

    田中(六)委員 この第三条を読んでみますると、この中に、経済的に中小規模の企業形態による事業経営にも適切である、この業種を政令で指定するということになっておりますが、最近の技術革新や流通革命の進展で、これまでどうしても手工業によらなければならなかったものが、結局技術の進歩によって大量生産が可能になっている産業がたくさんあるわけでございます。この点、いわゆる産業分野というものも、経済のこういうような大きな情勢変化によって絶えず流動していると思いますが、このようなときにあたって、どのような具体的な基準によって、この法律によって、一定の業種中小企業に適したものであるかということを判断なさいますか。
  164. 田中武夫

    田中(武)議員 御指摘になりました三条がその基準でございまして、たとえば「当該業種に属する事業を営む者の総数のおおむね五分の四以上が中小企業者であり、かつ、当該業種に属する事業に係る過去一年間の生産実績又は取扱量のおおむね三分の二以上が中小企業者によって占められているもの」云々、こういうふうになっているように、先ほど申しましたように、本来中小企業がやっているもの、また中小企業でやるほうがいいもの、あるいは中小企業で大部分を占めているもの、こういうところに重点を置いて考えていく。ただ、あなたがおっしゃったように、いわゆる技術革新に目をおおうものではありません。
  165. 田中六助

    田中(六)委員 憲法の第二十二条は職業選択の自由を保障しているわけでございますが、この点から見ますと、本案は、非常に広い範囲の業種について包括的に営業の自由を制限するような精神が感ぜられるのでございますが、これは憲法との関係、つまり二十二条との関係で問題があると思いますが、この点はいかがですか。
  166. 田中武夫

    田中(武)議員 この事業分野確保法律が憲法違反ではないか、いわゆる職業選択の自由の違反ではないか、こういうような議論は前にもやったわけでございますが、おっしゃいました二十二条、職業選択の自由に対して、憲法第十二条、第十三条によって、公共の福祉のためには制限ができると定めてあります。憲法はこういったように国民の基本的人権を認めております。おっしゃるように、二十二条において居住、移転及び職業の選択の自由を認めておると思います。しかし一方において、これは公共の福祉によって制限を受けるということを宣言しております。多くの中小企業者、零細企業者、これに働く労働者、この者の生活を守るといいますか、これはもちろん生活権の問題です。大企業の事業進出ということは、利潤の問題です。より多くもうけるかどうかということです。ところが中小企業、零細企業はそのこと自体が生活であります。したがってそれを法によって保護することは公共の福祉に合致する、したがって憲法とは関係なく適法である、こういうように考えております。
  167. 田中六助

    田中(六)委員 おっしゃるように、憲法第二十二条は公共の福祉というのを頭にかぶっているわけでございますが、やはり職業選択の自由というもののほうに第二十二条の本質的なものがあるのじゃないかと思います。このような特に重大な事柄に関連している問題を政令で指定することになっておりますが、この点、法律によったほうがいいんじゃないかと思いますが、御見解を承りたいと思います。
  168. 田中武夫

    田中(武)議員 なるほど法律によるのがいいと思います。したがって本法第三条でも、その基準といいますか、その目標を法律に定めまして、具体的なことにつきまして政令に委任をいたしておるわけなんです。御承知のように、旧憲法と新しい憲法とは、旧憲法は法律によらねばならないという制限がございました。しかし新憲法は広く基本権を認めると同時に、法律によると同時に、公共の福祉のためには旧憲法のような制限はありません。特に法律によるということは、旧憲法のほうが強くうたっておったと思うのです。したがいましてことごと業種を、何々何々といったように小さなものまで法律では書けませんし、書くべきではないので、これは従来の立法例に従いまして、その基本となるべき点を法律で定め、具体的な詳細な業種については政令に委任したわけでございます。
  169. 田中六助

    田中(六)委員 この第三条は非常に問題の多い条項でございますが、この三条によって業種が指定されてしまいますと、この文によりますと、結局大企業はその業種において新増設を行なうことは禁止されるわけでありますが、業種の指定されたその後においては、中小企業であったものがその後だんだん大企業に転化した場合、あるいは中小企業者同士で共同化して、形式的に大企業となる場合が十分予想されるわけでございますが、これらの二つの場合、一体この法律はどのように適用されるのか。つまり他の大企業と全く同じように新増設を禁止されるかどうかということは、やはり大きな問題と思いますが、どうですか。
  170. 田中武夫

    田中(武)議員 おっしゃっておることは、現在は中小企業だ、その業種が指定を受けた、それがどんどんと栄えてきて、いわゆる中小企業の範疇を出た場合にどうなるか、こういうことだと思うのですが……。(田中(六)委員共同化する場合もあります」と呼ぶ)共同化もございます。しかしわれわれはそういうことは排除いたしておりません。現在の中小企業が発展していくことをこの法律は阻害しておるのじゃありません。現在経済的に弱い者に対して、経済力の強い者が押しかけてくることに対して守っておるわけなんです。外からの攻撃に対して守っておるのであって、内側から出ていくことに対してそれを阻害しておるのじゃありません。
  171. 田中六助

    田中(六)委員 この業種指定のあったとき、その業種において事業を営んでおる大企業に対しては、この法律はどういうふうに適用されるわけですか。
  172. 田中武夫

    田中(武)議員 現在、たとえば大企業が多角経営をやっておる。たまたまその経営をやっておるうちの一つが中小企業事業分野業種指定となった場合のことですが、そういうときに、まず出発においてはそれは遠慮してもらいたい、こう私は思います。と申しますことは、大企業はそのことを、たとえば生産部門の一つを遠慮したからといって、これは大きな生命の問題ではありません。もし言われるように、大企業がそのうちで多くの生産シェアを持っておる場合、本条の三分の二に入りませんから、これは指定しないということなんです。したがって三分の二は中小企業がやっておる、あとの三分の一に大企業の多角経営の一端が入っていくというときには遠慮してもらっても、そうたいして大企業影響を与えるものじゃないじゃないか、こう考えております。
  173. 田中六助

    田中(六)委員 しかし、もしその既存の設備などがある場合、それからいろいろいままでの権利、つまり既得権と申しますか、そういうものがあるわけですね、そういう面を侵害するということを考えれば大きな意味、つまり国民経済上から見た場合大きなマイナスが起こるのじゃないかと思うのですが、その点を……。
  174. 田中武夫

    田中(武)議員 おそらく生産量で三分の一ですね、それを大企業がやっておるという場合、そういう大きな問題があるでしょう。私は、まず三分の二中小企業がやっておる、その場合大企業がやっておるというならば片手間であり、すでにわれわれの考え方からするならば領域を侵しておる、このように考えるわけなんです。
  175. 田中六助

    田中(六)委員 まあそこは質と量の問題であると思うのですが、質的に他の三分の一が重大な場合も考えられますし、既得権の侵害というようなことについて、私どもはそういう点で、大きな国民経済のロス、つまりマイナスがあらわれてくるということを危惧するわけでございます。  次に、この第六条によりますと、主務大臣が指定業者に対して、中小企業に対する圧迫を緩和するために適切なる措置をとるべきことを命令するということを規定しておりますが、この適切なる措置というのは、具体的にどういうことをさしますか。
  176. 田中武夫

    田中(武)議員 たとえばいま申しましたように、まあそこまでいかなくたっていいのじゃないかということで、ちょっと遠慮してもらいたい、こういうことになろうと思います。大企業が大体あちらこちらに手を延ばすということがどうかとまず思うわけなんです。大企業中小企業へ手を延ばす、そうして気に入らなかったら引き揚げることが、今日大きな倒産というような問題を起こしておるのと同じなんです。われわれが問題にいたしておりますのは、まず中小零細業者の生活権の問題です。大企業が進出をしていくのは、先ほど申しましたように、より多くの利益を追求する、こういうことでございますから、その利益と利益が衝突した場合はやはり生命権のほうが強い、したがって遠慮していただく、そういうことに対して具体的な命令を出す、あるいは業種を転換してくれとか、あるいはその部門だけ別にそれじゃ中小企業としてやってくれとか、いろいろあろうと思いますが、そういうようなことが予想せられると思います。
  177. 田中六助

    田中(六)委員 その大企業中小企業との関係でございますが、中小企業庁の調査を見てみましても、たとえば製造業全般を見ますと、中小企業の約半分が下請業者でございますね。そういう点から見ますと、特に下請企業の多いのが繊維とか雑貨とか金属製品、機械類でございますが、こういうものは必ずしも大企業と競合したり、あるいは大企業の利潤追求によって被害をこうむるような企業形態ではない場合があるのです。こういう点はむしろ平面的に見るより立体的に見た場合、むしろ競合せずに、大企業の利潤追求によって必ずしもあなたのおっしゃるようなことにならない中小企業というものがずいぶんあるわけですが、こういう点、どういうふうにお考えですか。
  178. 田中武夫

    田中(武)議員 いわゆる親企業と下請の関係あるいは系列化の関係があります。どうも政府なり与党の諸君は、そういったところに中小企業のあり方を求めておられるようでありますが、私たちは封建的な身分関係につながる下請関係ということは考えておらないのであります。なお、われわれが問題にしておりますのは、たとえば自動車の大きなメーカーに対して、その部品を納めておる中小企業、こういう関係よりは、むしろ第一次製品を大企業がこしらえ、そして中小企業は本来二次、三次製品をつくっておった、ところがそれがいけると見れば大企業がどんどんと二次、三次製品に進出してくる、たとえば製紙会社が封筒、便せんをつくっていくというような場合、その二次、三次の製品ということに重点を置いておりまして、部品と完成品といいますか、パーツとアッセンブルとの関係については、ここで言うようなことは出てこないというように考えておるのであります。ただしこの関係にあっても、いわゆる系列化あるいは封建的、身分的な親企業下請関係については、それを近代化すべく別に下請関係調整法というものを考えておるということを申し上げておきます。
  179. 田中六助

    田中(六)委員 私がいま質問したことと関連しますが、この第七条におきまして、大企業中小企業に対し、人的または資本的関係において支配力を及ぼすことを排除しておるわけでございますが、人的または資本的関係における支配力とは、具体的にはどういうものをさすのか。
  180. 田中武夫

    田中(武)議員 実は三十一年に百貨店法が成立をいたしました。そこで百貨店を規制いたしましたら、御承知のように、何とかストアとかあるいは名店街といったようなものが出てまいりました。そして、たとえば東光ストアのごとく、これは明らかに百貨店法の脱法行為であって、資本的あるいは人的に、ストアとかなんとかいった企業を百貨店法の穴抜けとしてたくさんやっておるわけでございます。したがいまして、今日かりにこの法案が成立いたしたといたしましても、そういうような脱法行為が多く行なわれる。たとえばいま例に、製紙と封筒、便せんの関係、あるいは石油こんろをあげましたが、そういう関係におきましても結局三条による指定を行なう、そういたしますと、それに対して大企業のほうが人を送る、あるいは資本を送る、こういうことによって、法の上においては中小企業である、そして第三条の指定業種をやっておるということであっても、実際は大企業から人が行く、あるいは資本的に支配するということは、もう今日世間で間々あることなんです。そういうことに対する脱法行為を禁止するという考え方で、そういうことをしてはいかぬぞという意味において第七条を入れたわけでございます。
  181. 田中六助

    田中(六)委員 最後にお尋ねしますが、結局この第七条の第三項は、こういうような重要な事項を政令で定めておりますが、私どもといたしましては、政令ではなくてやはり法律で明確に規定しておくべきではないかと思われるのですが……。
  182. 田中武夫

    田中(武)議員 御承知のように、法律はそうこまかいものは書けないわけであります。できるだけ基本的なものは法律にして、あとは政令にゆだねるということに、大体いままでの立法例もなっております。ことに百貨店法をつくったときに、ああいうような行き方があるとは実はわれわれ考えなかったわけです。と同じように、この法律がかりに成立いたしました場合に、いままで考えておるようなことと違った形態——経済人というものは、ことに大企業が利潤追求をする場合はいろいろ形態が考えられると思います。今日われわれが予想しておるようなことでない方法による支配が出てくるかもしれない、そういうことも予想いたしまして、具体的なことについては政令にゆだねる。しかし、これは政令に裸でゆだねたのではなくて、一項、二項においてその基本を示し、そのもとにおいて政令にゆだねたということです。具体的な行為が出てくると思いますから、そういうような意味で政令にゆだねたわけであります。
  183. 二階堂進

    ○二階堂委員長 中村重光君。
  184. 中村重光

    中村(重)委員 ただいま田中六助委員とわが党提案者との間に、わが党提案の中小企業者事業分野確保に関する法律案の質疑応答があったわけですが、きわめてわが党提案が現実に適した、真に中小企業を守るための法律案であるということは、与党の諸君も理解されたわけで、必ずや賛成されるであろうことを私は期待をいたします。  そこで、政府の一部改正案に対して若干お尋ねをいたしますが、この中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案を提案するにあたって、わが党提案の事業分野確保に関する法律案を検討されたかどうか。これを参考にされてこの提案をするというような——もちろんこれは団体法の一部改正ではあるけれども、やはり中小企業立場を守るために、大臣のことばをもっていたしますならば、いわゆる緊急避難的な法律案を提案したのだと言ったわけでありますが、そうした政府提案をするにあたって、わが党提案をどう見られたか、どういう点が現実に適し、またもし適していないとするならば、どういう点がふさわしくないとお考えになったか、それらの点について政務次官並びに中小企業庁長官のお答えを願いたいと思います。
  185. 中野正一

    中野政府委員 社会党の中小企業と大企業分野調整の法律案につきまして、もちろんこの考え方というものは十分検討し、また参考にして政府案をつくったわけでございます。特に、実はこれは中小企業基本法にございます政策審議会、ここで十分時間をかけて練っていただいた、ここには消費者代表から大企業の代表、中小企業の代表、学識経験者、いわゆる中小企業問題についての権威者といわれるような人にお集まり願いまして、御審議願ったわけであります。そのときに、特に国会方面でどういう議論が行なわれているのだということを、われわれはできるだけ客観的な立場から詳細にデータも出しまして御審議願って、そのときに社会党、民社党もそうでなかったかと思いますが、こういうふうな法案でやるべきである、先ほど御説明のあったようなことを十分説明をして、これに対していろいろ議論がございました。しかし審議会の全体の空気としては、やや行き過ぎじゃないかということで、むしろ大企業が進出する場合に、いわゆる緊急避難的な意味合いにおいて中小企業体質改善をはかり、ちょっと待ったをかけることが経済の長い意味での進歩という点からいって一番適切じゃないか、またそうすることが中小企業体質改善のために最も必要なことであり、それが前向きの政策である、したがって、一つの可能な政策ではあるでしょう、社会党の案も。しかしこれはどちらかというと、中小企業者のためにかきをつくって、その中で保護するというようなことで、ほんとうに中小企業体質改善のためにならないじゃないかということが、いわゆる関連の業界あるいは消費者代表というか、そういう方面から強い意見もあって、大勢としてこのいまの政府案のような構想でやるべきであるという答申がございましたので、われわれはその答申に従って案をつくって国会に御審議を願いたいというわけであります。
  186. 中村重光

    中村(重)委員 ただいまの長官の答弁は問題があると思いますけれども、わが党案に対して政府側と議論をすることはどうか、与党の諸君と大いにこの法案に対しては議論をしなければならないのだ、こう思いますから、行き過ぎである、どういう点が行き過ぎと考えるのか、こういうことに対しては、与党の委員の皆さん方からそういう意見があったということでございますので、政府がこれに対してとやかく言っておるのではない、こう一応理解をいたしまして、この問題は時間の関係もありますからまた適当の機会に議論をいたしてみたい、こう思います。  そこで政府の提案でありますが、いま言われたように、大臣も本会議におきましてわが党の桜井君の質問に対して答えたのでありますが、緊急避難的だ、私はそのままずばり申し上げるならば、この法案中小企業合理化をやる、あるいは不況要因をなくするための努力をやる、そうした中小企業の安定をはかることに対して、大企業が進出をすることをここで歯どめをしなくちゃならない、期間を限る関係上、緊急避難というわけでありますが、私はそのことが中小企業の緊急避難でなくて、政府の緊急避難であると申し上げることが適切であると思います。中小企業の育成のためにも、中小企業庁は何をしているのだ、通産省は何を考えているのだ、もろもろの非難がなされておるわけであります。そこで何かやらなければならぬだろう、やらなければもう政府としては追い込まれてしょうがないのだ、こういうことからこの法案を、いわゆる緊急避難的にお出しになったのだろう、こう思うわけです。したがってこの法案が大した期待は持たれない。まあ何というのか、積極的にわれわれがこれに反対をしなければならぬというようなこともこの中から出てまいりませんが、大いに中小企業の安定のために、いまあなたが答弁をされたように、中小企業の振興のために大いに役に立つのだといったような期待感を持ってこれに賛成する内容のものでもない、こう考えるわけであります。しかしながら、出ました法律案でございますから審議をし、これが害にならなければ賛成をすることにやぶさかではありません。  そこで、ここでは商工組合、その商工組合が行なっておるところの資格事業、これを対象にいたしておるわけでありますが、そうした商工組合が行なっていない事業というものもあるわけであります。しかしその事業というものは、量的に申し上げるならば大した数ではない。大企業が主としてその事業分野を占めておる、こういう考え方の上に立ったのではあろうと思いますけれども、しかしそうした少数の中小企業といえども、大企業の圧迫によって非常な不安定な状態に追い込まれておるというこの現実は無視できないと思います。そういうものに対してはどのような対策を講じようとお考えになっておられるのか、まずその点を明らかにしていただきたいと思います。
  187. 中野正一

    中野政府委員 いま先生が御指摘になったようなケースもあろうかと思いますが、そういうものにつきましてもできるだけ、これは商工組合とは限りませんが、組織化等を通じまして、そしてまた必要な資金面等の援助もして、やはりその体質改善をはかっていきたいというふうに考えております。
  188. 中村重光

    中村(重)委員 そこでこの団体法でありますが、不況事業であるとか、あるいは合理化事業であるとか、あるいはその他組合協約の認可の問題、中小企業調停審議会をいかに働かせるかといったような具体的な問題等々、相当重要な有効な内容があるわけです。これらの内容がどう働いてきたか、端的に言ってこの団体法というものはどのような成果をもたらしたか、また政府はいかにこの法律を適用してきたか、そういうことに対してこの際明らかにしていただきたいと思います。
  189. 中野正一

    中野政府委員 商工組合は現在約千ほどできておりまして、相当の部分が活発に活動しております。そうして事業としては合理化事業、安定事業、それから出資組合については経済事業ができますが、特にこの団体法の適用の上では調整事業でございますね、不況要件に対して事業の生産制限であるとか、そのほかのいろいろな調整をやる。不況カルテル、これは中小企業で相当不況要件が事態によって多くなっておる業種がございますので、そういう面については調整事業も相当活発に行なって、中小企業の安定のために、私は団体法は相当効果をあげておるというふうに見ております。また業界のほうでも、この団体組織法というものは中小企業の経営安定、業界全体の安定のために非常に大事な組織法であるというふうにみな言っております。
  190. 中村重光

    中村(重)委員 そこでこの団体法の二十八条、組合協約の締結の認可というのがある。これがどの程度認可をされた事実があるか。それから第二十九条には組合交渉の応諾というのがあるのでありますが、この二十九条がどのように働いてきたのか、それからこれを受けていくわけでありますが、第八十一条には中小企業調停審議会というのがある。この審議会は要するに勧告をするというような形になるのでありますが、こういう有効な内容がどう働いてきたのか、そういう事実について明らかにしていただきたいと思います。
  191. 中野正一

    中野政府委員 実はこの二十九条のいわゆる組合交渉の規定につきましては、御承知のように同業者である大企業と商工組合が交渉をして、そうして自分たちの調整事業と同じようなことを相手にやらせよう、こういう規定でございます。こういう規定はあるのでございますが、どうもこの規定はあまりいままで発動されておりません。実際にはほとんど例の五十六条のいわゆるアウトサイダーに対する規制、これで中小企業以外のもの、あるいは中小企業の組合に入ってないものも政府の命令によって規制をする、こういう形をとるように実際は運用されておる関係もございまして、二十九条はほとんど働いておりません。二十八条の組合協約の認可は、その協約というものができておりません。働いておりませんので、二十八条の認可というのはケースがないのであります。
  192. 中村重光

    中村(重)委員 長官、申請がないから認可がない。アウトサイダーの規制の問題も、それに以通った答弁になる。若干違うけれども、なかなか規制命令というものを出さない。現実には規制命令を出さなければならぬような事態はないか、大ありなんです。これは団体法あるいは環境衛生法しかり。あるけれども、大企業のほうからのいろいろこれに対するところの突き上げとか反発がある。あるいはアウトサイダー規制命令を出すという場合においても、それぞれの抵抗がある。だから政府側としては、さわらぬ神にたたりなし、これをよけて通ろうという考え方があるのです。だからしてこの法律は有効に働かない。さらにまた二十八条の組合協約の認可の問題にしても、いままでそういうケースはないのだ、ところが政府がこの団体の組織に関する法律を有効に使って、そして中小企業の安定をはかっていこう、そういう考え方の上に立って取り組んでいくならば、私はこうした二十八条あるいはその他の条文を生かしていくことができるのじゃないか、こう思います。そういう面に対して、非常にこの政府の消極的な態度というものは非難されなければならぬ、こう思います。  そういう考え方から、この中小企業団体組織に関する法律のいま審議をいたしております改正案にいたしましても、これが出ても、いわゆる特殊契約というものがほんとうに行なわれるであろうか。過去のそうした実績から考えてみますと多く期待できない、こう思います。したがいまして、この法案を提案するにあたっては、あなたのほうでは相当なかまえがなければならぬ、こう思います。この法律を出さなければならなかった、この法律によって、いわゆるあなたのほうのことばを借りるならば緊急避難をさせなければならない、こういうようなことで、具体的なそういう事実はどういうことであらわれてきているのか、そしてまたこの法律をいかに働かせようと考えておるのか、そういう具体的な問題とあわせてひとつこの際明らかにしていただきたいと思う。
  193. 中野正一

    中野政府委員 先ほど二十八条の組合協約の認可はケースがないと申し上げたのですが、五十六条のいわゆるアウトサイダー規制命令は、これは相当活発にやっております。確かに、いま先生がおっしゃったように、一々審議会にかけておりますが、相当問題があります。問題があるというのは、関連業界、一つのアウトサイダー規制命令を出そうとすると、それの関連業界の代表あるいは学識経験者、特に消費者代表、そういうようなところの方々に審議会の委員になっていただいて御審議願っておりまして、相当議論があって、必要最小限のものにしぼらざるを得ない。これは当然のことだろうと思います。しかし、それでもやはり中小企業は非常に不況のために困っておりまして、五十六条を発動せざるを得ない。われわれも何もすき好んでこれを発動しようというわけじゃございませんで、業界の実態から見てまことにやむを得ないという場合が、大体現在のところで四十六業種について六十六の命令が出ております。したがってこれは相当活発に働いておるというふうにお考え願いたいと思います。  それから、最近に起こりました大企業進出の実例も相当でございまして、まあこれは中身は、時間があれでございますので詳しく申し上げませんが、また、これはたしか書類で提出してあると思いますが、一番最近起こった例としては、みがき棒鋼、これは中小企業者がほとんどやって、戦争前からやっておりますが、最近某大手の特殊鋼メーカーが大規模な設備拡充計画を実施に移そうとして、これはもうこれらに出てこられたのじゃ中小企業者の生死にもかかわるということで訴えがございまして、それで通産省が中へ入って実情を調べて、必要な調整を行なって、大企業の進出を取りやめさしたというようなケースがございます。それから魔法びんにつきましても、御承知かと思いますが、これは関西方面で大手の電機メーカーが、従来魔法びんの生産、需要の開拓等をやりました中小企業分野に進出をして問題を起こしております。これは解決しておりません。それから石油ストーブも、先ほどちょっと田中委員からお話がございましたが、これはもうすでに大企業が相当侵食してきております。それから機械すき和紙、これについても某大手二、三の洋紙メーカーが、トイレットペーパーとか紙ナプキン、紙タオル、婦人衛生用品等に使用されるちり紙のようなもの、これに進出をして問題を起こしております。これも先般来通産省が中へ入りまして行政指導をして解決を見ております。中小企業者の方々に喜ばれております。それから紙コップについて、これはちょっと外国の会社と提携をするケースでございますが、これも通産省が中へ入って調整しております。それから清涼飲料水のごときは、これはちょっと事情が違いますが、従来のラムネ、サイダー等をつくっておられた中小企業の方々は、最近の大手の製菓、ビール、水産、商事会社の進出によって大きくその分野を食われている。しかし、これは種類が、清涼飲料水といっても相当範囲が広うございますので、やや問題は違うかと思いますが、そういうことになっております。それから過去の例としてクリーニング、これは顕著な例でございますが、昭和三十六年に兵庫県において某大手紡績会社が、自分会社の納入したシーツ、まくらカバー等の洗たくを行なわせるために子会社をつくって、そうして地元のクリーニング業者と問題を起こして、これは組合と交渉しまして、そうして、三十六年以降三年間、同社は、親会社が納めた大口需要者、たとえば病院とかホテルとか大口需要者に親会社が納めた製品だけのクリーニングをやるということで話がつきまして、協定ができました。そういうふうなケースが相当ありまして、従来行政指導で何とかこれを切り抜けてやったわけでありますが、やはり一定の法的根拠があったほうが役所もやりやすいし、組合の方々も法的根拠に基づいて申し入れをするわけですから、向うも応諾義務があるわけで、非常にやりやすいのではないか。その意味で、先般来、われわれもいろいろ聞いておりますが、特に商工組合の中央会を中心にして、また組合の方々はぜひ一日も早くこの法律の制定をやってもらいたいという切実な訴えをしておられます。
  194. 中村重光

    中村(重)委員 いまの答弁はそのとおり受け取りましょう。ところが、この法案全体を見ると、ずいぶんきびしくなっているのですね。たとえば中小企業者の経営の安定に重大な悪影響を及ぼすとか、あるいは、国民経済の健全な発展に著しい支障を来たすとか、あるいは、十七条第五項においては、これは合理化事業になるわけでありますが、こういうような場合においては「経営の合理化又は事業の転換を円滑に行なうために必要な最少限度をこえないこと。」であるとか、中小企業者のために、大企業の進出で苦しんでおるのを、できるだけ守っていこうというような考え方から出発したのではなしに、大企業に気がね気がねして、この程度はどうかひとつ大企業さんがまんをしてください、こういうことでおそるおそるこれを出してきたというような感を免れない。いませっかく長官は、現在起こっておる事態、あるいは取り組んできた問題等々あげて、法的背景を必要とするのだ、こう言われたのであるけれども、いまのあなたの御答弁、あなたのその答弁態度、気魄、そういうことからするならば、もう少し中身のある法案であってほしかった、こう思います。しかし、先ほど冒頭に申し上げたようなことでありますが、要はどんなにりっぱな法律をつくっても、それを運用する人の熱意いかんというものに大きく左右されます。この法案が通過をして成立するということになってまいりまして、あなたのほうで積極的な取り組みをやろう、十分これを生かしていこうというかまえがあるならば、私は中小企業の期待にこたえ、経済の安定を期し、国民経済を向上させるのに役立つと思う。そういう点に対してどのような心がけを持って取り組もうとされるのか、まず政務次官、長官のお答えを願いたいと思う。
  195. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 中小企業基本法をはじめ関連法案、もちろん本法もその中でございますが、今後、中小企業を生かすために、また大企業との調節をするためには、こうした法案を十分にひとつ実情に即したような方向に持ってまいりまして、各方面の意見を十分に聴取いたしまして今後つとめたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  196. 中村重光

    中村(重)委員 参考までに最後にお尋ねをしておくのだけれども、中小企業に対する官公需確保について、政府は何か考えておるように伝えられておるのでありますが、具体的な計画があるのではないかと思います。そこだけひとつ大臣から直接お答えを願いたい。それは具体的なそういう計画と、官公需というものを中小企業に対して確保していく必要性というものを、大臣としてはこれはお感じになっていらっしゃるのではないか、こう思いますから、そういう点を中心として具体的な計画があれば、それをお聞かせ願いたいと思います。
  197. 福田一

    福田(一)国務大臣 官公需の問題にりきましては、役所関係は実は三回ばかり会合を持ちまして、そうしてできるだけ官公需中小企業から買うようにしてもらいたいということをやりました。それから今度は各種団体ですね、これを集めまして、実は各役所に対してこういうことをしておるのだが、その場合、やはり役所とうまくコネをつけていかなければ実際問題としてうまくいかないのだから、諸君のほうでそういう努力をしてもらいたい。なお接近するに何らかの理由、何らかの方法等を考えておるのならこちらであっせんしてやってもよろしい、こういうような指示を与えておいたわけでありますが、具体的に、それではこの品物をこうするというところまではまだ進んでおりません。今後もできるだけ努力をいたしたいと思います。
  198. 二階堂進

    ○二階堂委員長 おはかりいたします。ただいま議題となっております四法案中、内閣提出中小企業団体組織に関する法律の一部を改正する法律案について、質疑を終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  199. 二階堂進

    ○二階堂委員長 御異議なしと認め、よってさよう決しました。  次会は、明後六月十九日金曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会