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1964-06-16 第46回国会 衆議院 商工委員会 第58号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月十六日(火曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 始関 伊平君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    大石 八治君       海部 俊樹君    神田  博君      小宮山重四郎君    田中 六助君       長谷川四郎君    三原 朝雄君       大村 邦夫君    加賀田 進君       桜井 茂尚君    沢田 政治君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君   米内山義一郎君       麻生 良方君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     渡邊喜久造君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (重工業局長) 森崎 久壽君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君         通商産業事務官         (鉱山局長)  加藤 悌次君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         議     員 板川 正吾君         議     員 田中 武夫君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 六月十六日  委員野呂恭一君辞任につき、その補欠として海  部俊樹君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  特定産業振興臨時措置法案内閣提出第三九  号)  市場支配的事業者経済力濫用防止に関する  法律案板川正吾君外十二名提出衆法第一二  号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出特定産業振興臨時措置法案及び板川正吾君外十二名提出市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。藤田高敏君。
  3. 藤田高敏

    藤田(高)委員 定足数はだいじょうぶですか。
  4. 二階堂進

    二階堂委員長 いま参ります。
  5. 藤田高敏

    藤田(高)委員 定足数に達するまで待ちます。
  6. 二階堂進

    二階堂委員長 藤田君、どうぞ質問を始めてください。
  7. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はいま提案されております特振法関係について以下質問をいたしたいと思うわけでありますが、この法律案は、他の法律案もさることながら、経済立法としては非常に重要な法案だと私自身は考えておるところです。したがって、具体的な質問に入ります前に、委員長に特に要望しておきたいと思いますが、委員会審議の常道として定足数が欠けるような場合は、私は質問を一時中止する場合がありますので、そういうこともあらかじめ申し上げておきたいと思います。  そこで、まず第一にお尋ねをいたしたいことは、特振法審議関連をしまして、いわゆる特振法の対象業種といわれておる自動車業界に対して、いま非常に重要な問題が提起をされております。それはアメリカのゼネラル・モータースと日通との提携による、いわゆるノックダウン方式による外車輸入問題であります。これはいまいろいろな立場を越えて、業界それ自体にとってもたいへん重要な問題だと考えるわけでありますが、政府としてはこのGM日通との提携を、ノックダウン輸入を認める方針であるのかどうか、これをまずお尋ねをいたしたいと思います。
  8. 福田一

    福田(一)国務大臣 われわれとしては、ただいまのところこれを認める意思はございません。
  9. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣答弁では認めないというわけでありますが、認められないという理由を具体的に聞かしてもらいたい。
  10. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま、まだ自動車については自由化もいたしておりません。自由化をする場合においても、車種とか、あるいは完成車部品関係の場合をどうしていくか等いろいろの問題があるわけであります。自由化自体も認めておりませんので、いまのところわれわれはそういうようなノックダウン方式の問題は考えておりません。
  11. 藤田高敏

    藤田(高)委員 まだ自動車に対する自由化を認めていないということが主たる理由のようでありますが、政府はすでにIMF八条国の移行あるいはOECDへの加盟、いわゆる開放経済体制移行した段階において、いつまでも自動車自由化を認めないというわけにはいかぬと思うわけなので、結局大臣答弁も、おそらく当面の措置として、外車輸入あるいはノックダウン方式による輸入は認めないというふうに言われておると思うわけですが、大体目標としては、新聞紙上その他の報道によると、いろいろな政治的な事情、特にアメリカからの自由化に対する圧力等々によって、通産大臣自体談話形式の中にも、外車輸入の繰り上げ、いわゆる来年の春に予定されておると言われておる外車輸入をことしの秋に繰り上げるのではないか、こういうような観測なりあるいは談話というようなものが出ておると思うわけです。したがって、いま当面の、今日段階におけるセクションでは認めないということでありましょうけれども、先ほど私が指摘しましたような状態の中から、いわば半永続的にこの外車をいわゆる非自由化品目として制限をすることは困難じゃないかと思うわけです。そういう点からいって、政府はそれではいつごろノックダウン方式を含む外車輸入を認めようと考えておられるのか、この点お尋ねいたしたいと思います。
  12. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のように、自由化はいろいろの影響を各界に与えるものであります。したがって、自由化の時期というものは、それを決定するまでは、われわれとしてははっきりしたことを申し上げるわけにいかない。きまっておっても申し上げられない。ましてまだきめておりません。しかし一定の時期、来年の三月以降にはしなければならないということを大体審議会がきめております。だからその前に行なわれることは事実でございますが、しかしその場合においても、ノックダウン方式をすぐ認めるかどうかということはまだ問題が残っておるわけであります。こういうような事情でございますので、いま、いつどういう時期に、どういう方法自由化をしていくかということは申し上げることは差し控えさしていただきたいと思います。
  13. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、現在特振法のこの審議関連をしまして、いわゆる政府国際競争力の強化ということに一番大きな力点を置いてこの特振法の提案をしてきておるわけですが、自動車の場合に限定をして考えてみますと、日本の場合は非常にアメリカヨーロッパ諸国との競争力において弱い状態に置かれておるということを政府自身としては言っておるようでありますけれども、個別的に取り上げてみますと、日産とかトヨタとかあるいはいすゞといったところは、ノックダウン方式によって南ア共和国なりあるいはタイ国に対してはすでに組み立て工場をつくっておる。あるいはチリやペルー等についても新たに新設工場をつくるような計画が具体的に進められておる。いま申し上げたのは主として日産の例でありますが、トヨタの場合でいえば、ことしの二月からタイで本格的なノックダウン方式による生産がなされており、また豪州やフィリピンに対してもノックダウン方式による輸出増加見通しである、こういうふうにいわれておりますし、いすゞに例をとりましても、すでにタイ国において操業を開始しておる。私どもの調査した範囲では、日本外国向け輸出のうち約五〇%に匹敵するものがノックダウン方式によって輸出をされておる。こういう日本東南アジア中心としてノックダウン方式による輸出をしておりながら、片や開放経済下において、先ほど指摘をいたしましたIMF八条国移行なりあるいはOECD加盟、こういうような国際的な開放経済移行した、そういう方針をとっておる池田内閣対外貿易政策として、日本がそういった方面にノックダウン輸出をしながら、片や外国からのノックダウン方式を認めない、こういうことは非常に国際的な会議その他において筋が通らないということで政府自身が窮地に追い込まれるのではないかと思うわけですが、その点についての政府見解を聞かしてもらいたいと思うわけです。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 問題は二つあると思います。いわゆる低開発国においてノックダウン方式輸出が行なわれておるということはお説のとおりでございます。しかし、それはトヨタとかあるいは日産というような特定のものに限られておりまして、そのほかの自動車会社においてはまだそういうような余力も持っておりませんし、力もないと思っております。  なお、アメリカとの関係あるいはその他の欧州諸国との関係においては、いまのところそういうようないわゆる日本ノックダウン方式輸出をしておるのにわれわれのを認めないのはけしからぬ、こういうような意味提案というか抗議は何も来ておりません。ただ、自動車についてはできるだけ早く自由化してもらいたいということはずいぶん前から言われておるところでございます。
  15. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、今日段階ではそういう、日本東南アジア中心とする諸国に対してノックダウン方式による輸出をしておりながら、アメリカの、GM社のいわゆる提携問題を中心としてノックダウン輸入は認めない、またその時期についてはいまのところ見通しが立たぬ、こういうことですか。それに関連して、政府としては確定的なことは言えぬにしても、一応自動車自由化を認めるとすれば、いつごろを時期として考えておるのか、またノックダウン方式による輸入はいつごろから認めるというふうに考えておるのか。もう一度お尋ねをいたしておきたいと思います。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほども申し上げましたように、アメリカから特にそういうような例をあげて自由化をしろということは言ってきておりませんが、もう数年前から自動車自由化日本がやってもらいたいということを常に言われております。しかし日本には日本の特殊の事情がありますから、アメリカから言われたから何でもそのままするというわけにはいかない。私たちはその時期を見ておるわけでございます。これに対する審議会答申等は、来年の三月までには自由化をすべきである、こういうことを答申をいたしております。われわれとしても来年の三月までにはどうしてもしなければならないと考えておりますが、いつ、いかなる時期にこれの自由化をし、その自由化をする場合においても、すべてをもう開放的にしてしまうか、あるいはノックダウン的な自由化は認めないようにしていくか、認めない場合に、ノックダウン自由化、そういう形による自由化といいますか、輸入というものを認めるのはいつにするかということばいまのところ、先ほど申し上げましたような事情で、ここでお答え申すわけにはいかないと考えております。
  17. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣答弁関連して、いま一つ念のためにお尋ねをしておきたいと思いますが、それでは自動車自由化は来年の三月より早くなることはないというふうにここで確認をしてよろしいかどうか、これが一点。  それからもう一つは、いまなかなかニュアンスのある答弁をされたと思うわけですが、自動車自由化をするにしても、ノックダウン方式そのものを認めるかどうかについてば検討の要があるやに聞こえるような御答弁であり、あるいは自動車関係でいえば重要な部分品、たとえばエンジン、こういうものについては外資法規制対象にして認めない、こういう含みのあるようなことを言われたのではないかと思うわけですけれども、そういうことを考えておるのかどうか、これが第二点。  第三点は、そのことに関連して、もし外資法規制によって、たとえばエンジン部門であるとか重要な部分品についてはこれを認めないという方針をとったとしても、たとえば今度のGM社日通との提携問題で見ますならば、この資金調達外資法適用を受けない形で、日通が国内で資金調達をやり、そして一切外資法適用を受けない形で部分品輸入をする、こういうことになれば、外資法エンジン部門なりあるいは重要な部分品規制しようとしても、そのことはできなくなるのではないか、こういうふうに考えるわけですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 まず自由化の問題でございますが、来年三月までしないということは申し上げられません。いつやるかもしれません。時期は申し上げることはできない。しかし、おそくも来年三月までにはやらなければいけない、こういうことを申し上げたわけでございます。  それからノックダウン方式によりますところのいわゆる外車輸入について、これは外資法とは直接関係はございません。他に、部品を入れてやるような場合、今度のような、GM日通とのやり方等につきまして、外資を入れるということになりますと、これは外資法適用されるわけであります。ところが、いまあなたの御質問は、日通自体が金をつくって入れる場合にはできるじゃないか、こういうことでございます。しかし、私は、日通計画をまだつまびらかにしておりませんが、私の聞いている限りでは、やはり向こうから金を借りて——とても日通はそれだけの資力がございません。相当な金がかかるわけでありますから、やはり外資を入れて、そうしていわゆるノックダウン方式による組み立てをやりたい、こういうことに聞いておるのでありまして、その場合にはどうしても外資法の問題がさしあたりかかってくると思います。
  19. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それではGM社日通との提携問題に関する点は以上で質問を終わりまして、次に特振法に関連をしまして、私は三十九年度の設備投資についてお尋ねをしたいと思うわけです。政府設備投資計画、最終的にきまりました内容を見ますと、十三業種あるわけでありますが、その中で特に特振法の対象となっておる鉄鋼、石油化学自動車あるいは合成繊維、こういうものの中で、さらに特振法の超重点対象業種といわれておる石油化学自動車を見てみますと、昭和三十八年度は石油化学は七百五十二億に対して計画案が千四百二十七億、約九〇%増の計画案が提示され、最終的な決定は千百三十一億と決定をされております。これは前年対比において五〇%の増になっており、自動車については三十八年度の実績見込み額が千五億といたしますと、それに対する自動車業界からの計画は千七百五十二億、約七四、五%の計画増、これに対して修正、最終的な決定版が千三百九十八億ということで、約四〇%の増を見せております。したがってこの数字は、十三業種のうち石油化学については一位であります。自動車工業については、設備投資額の伸びにおいて第三位であります。このあたりに、政府方針というものは、この特振法の対象にするような業種に対しては特振法が制定されなくとも、すでに三十九年度の設備投資計画の中で非常に手厚い政府の財政的な保護政策設備投資の面における保護政策をとっておると考えるわけです。業種として見た場合に、そういうことが石油化学自動車に対しては指摘できると思うわけです。また自動車それ自体の中身を見てみますと、トヨタ日産、このいわば自動車業界を代業する二つ企業に対しては、設備投資計画についてこれらの自動車会社申請をしてきた計画案を一〇〇%認めております。ところがその他の自動車企業に対しては大幅に削減をして、こまかい内容は省略しますが、設備投資ワクにおいては、申請ワクに対して約二〇%程度削減をしております。私はこのあたりに、いわゆる特振法の具体的な質問あとでいたしますが、特振法制定後における、この政府の特振法対象企業に対する産業政策のあり方というものが、非常に代表的に典型的にあらわれてきておると思うわけであります。ということは、この自動車の場合でいえば、トヨタ日産、この二つ企業に対して集中的に設備投資の面においても、あるいはこれから先の企業集中あるいは系列化、こういうものについても、政府はそういう方向で、いわゆる寡占体制を強化する方向でこの産業分野に対する指導性を発揮するのではないか、こういうふうに十分これらの具体的な施策の中から判断することができるわけであります。そういう方向で、これから先特振法制定後における政府施策としては寡占体制を強化する方向指導性を発揮していくと考えられるのであるが、そのように理解してよろしいかどうか、まずこの点お尋ねいたしたいと思います。
  20. 福田一

    福田(一)国務大臣 この設備投資の問題でありますが、お説のとおり石油化学自動車については、相当大幅増に相なっておることは事実であります。  それから次に自動車でございますが、自動車のうちでなぜ日産トヨタだけが十分認められて、ほかのほうは認めなかったかということでありますが、その理由は、日産トヨタにつきましては車種確定をいたしておりまして、事業計画内容が非常に合理性を持っておるということであります。ほかの自動車会社のほうは、いわゆる車種確定をいたしておりません。そうして設備だけをふやしていく、こういうようなかっこうに相なっておりますので、私は、はたしてそういう場合に認めるべきかどうかということになると、これは非常に問題があろうかと思うのであります。したがって、ある程度削減をした、こういうことに相なっておると存じます。
  21. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、政府資金との関係からもそういうことが言えるわけでありますが、いま指摘した設備投資計画内容から判断をしても、石油化学自動車、こういうものについては、業界自身が非常に意欲的でありますし、また、いわば設備投資を通じての俗にいう競争力の培養についても、業界自身が自主的に努力をされ、そういう方向に向かって具体的な促進をしておるということが十分うかがえるわけです。そういう実態の中から考えます場合に、ここにあらためて特振法というようなものをつくって、そうして政府機関産業官庁が直接介入するような形を行なうことが必要であるのかどうか、また、こういうふうに、設備投資の面においても政府が重点的な配慮をしておる段階では、特振法による体制融資というような一つのえさをぶら下げてまでこの特振法をつくる必要がないのではなかろうか、こういうふうに考えるわけです。その具体的な一つ理由は、三十九年度の特振法に関連をする開発銀行融資計画を見ましても六十億程度でありますし、自動車ワクとしては、私の記憶に間違いなければ、たしか二十億程度というふうに理解をしておるわけです。そういうことになれば、いま私が指摘しましたような設備投資計画等々から判断をしますと、この程度体制融資というようなことでは、この特振法を制定する根拠というものが非常に薄いんじゃないか、そういうふうに思うわけですが、それに対する見解をひとまず聞かしてもらいたいと思います。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、今度の設備投資の問題については、日産とか、トヨタは、車種がはっきり確定しておって、事業計画内容が非常に合理性を持っておるということであります。ところが、ほかのは、そういう車種確定しておりませんから、たとえ設備投資をしてみた場合でも、はたして採算面その他から見て十分効果が上がるかどうか問題がありますので、そこで日産トヨタには一〇〇%認めたということでありますが、私は、こういう形において自由化をした場合に、日産トヨタは生き延びることはできても、ほかの自動車会社ははたして外車に対抗してやっていけるかどうかということについては、非常な疑問が残っておると思うのであります。この場合に、政府がこの二つだけに重点的にそういう投資をしむけておるじゃないかということでありますが、決してそういう意味寡占状態をつくり出そうと思ってやっておるのじゃなくて、計画内容自体に基づいて合理性のあるものに投資をしておる、こういうことであります。でありますから、いまそういうようにやっておるならば、業界全体がうまくいっておるんだから、いまさら特振法の業種に加えないでもいいじゃないか、こういうような御質問かと思いますが、業界全体として見ました場合には、いざというときにはみんなが相談して、そうして規模の利益を追求し、あるいはまたその他の合理化方法を考え、あるいはまた、場合によっては合併等の問題も考えるというような道を開いておくということは、私はこの際はどうしても必要なのではないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  23. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、特振法のねらいなり特振法自身一つの大きな目的、意図というものは、特定産業の中でも大企業中心とする寡占体制を強化することが一番のねらいであり、またそういう体制をつくらなければ、資本主義社会における日本独占国際独占という、独占独占との競争ということは論理的にも成り立たぬと思うわけです。この点に関しては、あと法案内容問題に関連をして、具体的に政府見解をただしたいと思いますが、ただ、ここで総括的に申し上げておきたいことは、先ほど来指摘しました設備投資計画内容を見ましても、特に自動車の場合は典型的にあらわれてきておるわけです。自動車でいえば、いわゆる自動車業界総ぐるみ——中小企業を含め、あるいは部品メーカーを含めた形の全体的な競争力を強化する形ではなくて、トヨタ日産という大企業中心とする寡占体制を強化する方向でこの競争力を強化するということが目的であって、その目的を達成するためにこの特振法をつくって、合理化カルテル、そうして合併、こういうものを行なわしてその実をあげようとしておる、こういうふうに、私は何としても理解せざるを得ないわけであります。このあたりになりますと、政府政府としての一つ見解を主張されるかもわかりませんが、私はそのように思われてならないわけであります。この点については、あと質問関連をしてもう一度、私が深く掘り下げて質問をすることにも関連をいたしますので、大臣見解を聞かしてもらいたいと思うわけであります。  次に、私は、池田内閣高度成長政策のひずみ是正、それと特振法との関係についてお尋ねをしたいと思うわけです。  先ほど来申し上げておりますように、今回の特振法の提案にあたって、政府は、貿易自由化等による経済事情の変動に即応するために、わが国企業国際競争力を強化するためには、企業規模の拡大をはかり過当競争防止する必要がある、その手段として、この企業集中による合理化カルテルとあわせまして、合併中心とする共同行為によってその目的を達成したい、こういうふうに法案目的の中でうたっておるわけでありますが、これは一応、以下質問をいたします池田内閣高度成長政策のひずみ是正の問題にも関連をいたしますので、私が文面どおり受け取り、また私がいま指摘したようにこの法律目的を理解してよろしいかどうか、これをまず、先ほど質問関連をしてお尋ねしたいと思います。
  24. 福田一

    福田(一)国務大臣 先ほどもお答えをいたしましたが、自由化をした場合に、いわゆる二社は何とかやっていけるとしても、ほかの業界がやっていけないということになると、それに関連をしておる下請企業あるいは中小企業がみんな困ってしまいます。そういうようなことがあってはいけないし、また、そういうことを防ぐ必要もあると思われるのでありますから、そこで、こういうような法案を出して自動車をその中に入れるというのは、そういう意味でございまして、寡占体制をつくるのが目的ではなくて、いま言ったような、ほかの自動車会社がみな困った場合に、これに従事しておるところの人たち、従業員の人たちあるいは中小企業の人たち、下請企業の人たちが困ることをできるだけ防ぐくふうをしておかなければならないというのが特振法の目的でありまして、決して寡占体制をつくるということが目的ではないのであります。  それから、池田総理の言っております高度成長政策とこの特振法との関係でございますが、高度成長政策は国の内外を問わず、日本の産業自体に力をつけていって、そうして輸出振興もはかり、また国内の経済の発展もはかりつつ日本の繁栄をはかっていこうというのが目的でありますが、特振法はそのうちで、いま言ったようないわゆる開放経済体制に向かう場合において、自由化をした場合にすぐに大きな影響を受けるであろう産業がある場合においては、この法律をもってその悪影響をできるだけ少なくしつつ日本の経済の成長発展を阻害する原因をなくしていこうというのが目的でございまして、高度成長政策とは矛盾はいたしておらないと私は考えておるのであります。
  25. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私が質問をしました池田内閣高度成長政策の問題は、高度成長政策それ自体ではなくて、いわゆる高度成長政策の推進からくるひずみ是正、これは今国会の冒頭における池田総理の施政方針の中にも、池田内閣の経済政策のいわば失敗というか行き過ぎというか、そういうものに対してこれを是正しなければいかぬということは言っておるわけです。そのひずみとしてあらわれてきておるのは多くありましょう。その一つは消費者物価の高騰であり、いま一つは大企業中小企業の格差、大企業と第一次産業、第一次産業と第二次産業との格差、こういうものが高度成長政策のひずみとして私は指摘することができると思うわけです。したがって池田総理の施政方針の中にも、このひずみを解消する具体的施策として、たとえば中小企業に対しては革命的な施策を講じてこのひずみを直すのだという意味のことが言われた。このことはこの商工委員会でも再三論議をされたところであります。こういう池田内閣自身高度成長政策のひずみを是正するといういわゆる中小企業と大企業との格差是正、こういう観点から、この特振法の内容なり、あるいは特振法が成立するというようなことを一応前提にしていま政府がいろいろ立てられておる、先ほど指摘しました設備投資計画あるいは産業構造調査会の答申案、あるいはこの調査会等における審議経過というものを、私は私なりに分析をしてみると、鉄鋼の場合であれば八幡と富士が中心になる、自動車の場合は先ほども指摘しましたがトヨタ日産中心になる、石油の場合は先発と後発という形で、これらの今日段階では先発四社、後発五社というところが中心となって寡占体制を強化することがこの特振法の中心だ、そういう形で新産業体制を確立するというのがこの特振法のねらいであり、特振法が出てきた一つの背景だというふうに理解せざるを得ないわけであります。そういう立場から見ますると、この特定産業振興法がたとえば成立したといたしますなれば、この特振法によって指定された大企業と指定されない中小企業との格差、また特振法の中小企業を含む指定業種対非指定業種との格差、それと特振法の指定業種対第一次産業である農林業との格差というものは、抽象的に格差は拡大しないのだといっても、これは何としても現実に格差が拡大すると思うのです。そういう点から、これは明らかに池田内閣高度成長政策のひずみ是正、格差是正という観点から見てみます場合に、それはむしろ政府の言っておることと特振法の制定とは逆行する状態を惹起すると考えるわけでありますが、その点に対する政府見解を聞かせてもらいたい。
  26. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は特振法と高度成長政策とは逆行するというふうには考えない。これは見方の問題でありますから、いろいろ見方はあるでありましょう。高度成長政策をやる場合には、どうしても輸出を振興しなければならないが、輸出を振興するということになりますと、自分のほうでできるだけ自由化をしなければならない。自分のほうの門戸はふさいでおいて外国にだけ輸出をしようというわけにはいきませんから、自由化をしなければならぬ。自由化をするということになりますと、自由化によって今度は海外の安いよい品物が入ってきて、その結果日本の産業がつぶれてしまうような場合も想定できるわけであります。そういうことがありましては、それに関連した中小企業は倒産を余儀なくされる、またそれに関係した産業自体全部が動きがとれない、たいへんな結果が起きるのであります。実を言うと、この間、東京発動機の問題等もありまして皆さんからいろいろ御指摘を賜わっておるのでありますが、今度の特振法関係業種の中にはそれに類似するような問題が起こりかねない業種をたくさん含んでおります。これは御理解を賜われるだろうと思う。こういうものをどういうふうにして処置をしていったらいいかということでございますが、私たちといたしましては、やはりいろいろな面で考えなければいけない。いわゆる大企業中小企業の格差の是正ということも考えますが、しかしまた一方においては、その一つの産業を取り上げて、縦の関係におきましてそれに属しておる中小企業を助けていくことも決して悪いことではないと思うわけであります。一方においては横の面から中小企業を助ける。縦割りでまた助けていく。その産業に属しておる中小企業は二重の利益を得ることになるのでありまして、それはいけないということではないと思うのであります。こういう意味合いにおきまして、その産業に属しておる中小企業も含めてこの仕事がうまくいくようにしてやるということは、私たち池田内閣の考えておるいわゆる高度成長政策とちっとも矛盾はしておらない、こういうふうに考えるのでありまして、私は全然高度成長政策関係ないとは申し上げませんが、しかし高度成長政策をやる場合に輸出振興ということが柱になることはもうおわかりを願えると思います。また日本の経済を繁栄させるためにも輸出振興をしなければならぬが、輸出をするにはやはり自分のほうも門戸を開かねばならないということ、その門戸を開いた場合に日本の産業に大打撃が起きるということであれば、それに対する対策を考えておくということは政治として当然な方途ではなかろうか、こう考えておるわけであります。
  27. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣答弁答弁なりに一つのまじめさを持っておると思うわけですけれども、無意識か意識のうちにちょっと落ちておるように私は思うのです。私の質問のしかたも悪いかもしれませんが、いま私が指摘をしましたのは、いわゆる格差の解消ということが池田内閣の当面の大きな経済政策なり産業政策の重点になっておる。少なくともこれはそういううたい文句だけは言っておるわけですから、その方針とこの特振法の性格というものを考え、特振法成立後におけるこの経過というものを考えてみると、格差の拡大にこそなれ、格差の圧縮ないしは縮小ということこはならぬじゃないか、こういうふうに私は質問をしておるわけです。その点はあるいは時間の経過の中で見なければわからないかもわかりませんけれども、この特振法の性格は、国際競争力、いわゆる国際独占競争をするという、そういう競争力を拡大するために、政府がこの独占禁止法の緩和を通じて、大企業間の合理化カルテルを認め、そうして合併を認めて競争力をつけようとするわけですから、そういう対象になった大企業とそういう対象にならない中小企業との間には、国内市場の中における競争力の格差、そういうものは私は当然起こってくると思うのです。それを否定するのは、何としても私は理屈としても理解できないのですが、その点に対する見解を聞かしてもらいたいと思います。
  28. 福田一

    福田(一)国務大臣 問題が核心に入ってきたわけでありまして、ごもっともな御質問と思うのであります。そこで私たちが考えておるのは、振興基準というものをきめていかなければいけない。いわゆる大企業中小企業、あるいは下請企業との間において、どういうふうにして産業全体をうまく運営して、その格差も少なくしながらやるかということは、振興基準のきめ方というものによって私は違ってまいろうかと思うのであります。その振興基準をきめるときに、いまあなたの仰せになったような点を特に重視しながらきめていくということは、これは私は必要であると考えておるのであります。そうすれば、やはり格差の是正に大いに役立つ、その振興基準のきめ方によって非常に役立つと私は考えております。そういうふうに考えておるのでありますが、これはこの法案がなくて自由化をしたという場合に、それじゃ中小企業と大企業の間の格差は開かないで済むかということになりますと、これはたいへんな格差がまたできるだろうと思います。だから、われわれの言っておりますことは、この振興基準のきめ方が一番問題ではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  29. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はやはりこの特振法ができることによって、先ほど指摘したような格差の拡大というものは絶対避けられないと思うわけです。いまの大臣答弁を聞いておりますと、この特振法の対象業種になった大企業中小企業との関係については、その間における系列化等を通じて、格差の圧縮はある場合にはなされるのじゃないかというようなことを言われたわけですが、私が指摘しておるのは、この特振法の対象業種になるものとならないものがあるわけです。ならないものがあるわけですから、この間における格差の拡大は私は当然起こると思うのです。その点をもう一度伺いたい。
  30. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは今度は中小企業問題のまた一つのテーマであろうかと思います。中小企業というのは、あなたも御承知のように非常に種類が多い。そしていろいろの業種があり、その業種業種の特別の事情があるわけであります。そこで、一つ法律をもって中小企業のそれぞれの業種全般の格差是正をするというようなことはできません。なかなかできないと思うのであります。そこで一つ一つの特殊の事情あるものについて特殊の法律をつくりつつ、それに合ったいわゆる救済策あるいは格差是正の方策を講ずるということが必要ではなかろうか。また、それ以外には格差是正は私はできないと思う。ただ一般論だけ言ったって——ただし、一般論でできるものはないとはもちろん申しません。それはたとえば税の問題とか金融の問題、これは普遍的に関係のあることでありますが、しかしそれ以上の問題になりますと、その業種業種に応じた救済策といいますか、対策というものを考えていかなければならない。この場合においてわれわれが考えておるのは、自由化という一つの事態に応じて、それに備えるべき問題としてその業種を考えてみた場合にはこういうようなことを考え、この法案のごとき対策を考えたがいいではないか、こういうことであります。だからお説のとおり、これをやった場合には、やらないものとの間の格差は開くかもしれません。しかしほっておいていいというわけじゃないと思います。ほっておいたらもっと格差が開く。それを一部でも格差をだんだん縮めていく。十の業種があれば、まず一つから始めて、だんだん次々と手を打ちながら全部の格差をなくしていく。一ぺんにその格差をなくなさねばいかぬ、これは理想でございますが、しかし現実の問題としては、やはり一つ一つの問題を着実に解決する、こういうことが格差是正に一番必要ではなかろうか、こう考えておるわけであります。
  31. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は問題点をさらに対照的にしていきますために、次のような形で質問してみたいと思います。というのは、なるほど十ぱ一からげで日本の大企業中小企業を含めて一度にその格差解消がなされるようにやれといっても、これはむずかしいでしょう。しかし今日段階における大企業、俗称独占資本ないしは独占と称する大企業、そういうものと、中小企業法に言われる中小企業というものを対照的に考えてみた場合に、政府産業政策、これは金融、税制、あるいは組織の問題を含めてあると思うのですが、その場合にどちらに重点を置くべきであろうか。この点については、今国会の委員会を通じてもわれわれしばしば指摘してきたところでありますけれども、大企業に対しては非常に手厚い保護がなされておるが、中小企業に対しては例の設備近代化を中心として、政府の予算のワクあるいは中小企業金融公庫を通じてのワクというものでしか見ることができないと思うのです。  これは話が脱線いたしますが、たとえばこの特振法を前提として政府体制融資のことを考えております。その体制融資の中で、この法案にも関係しますが、振興基準をきめるにあたってタッチする政府関係金融機関というのは、開銀と中小企業金融公庫と北海道東北開発公庫と、この三つになるのじゃないかと思うわけでありますが、この内容を見てみますと、開銀に対して六十億の体制融資をしております。開銀といったら、これは大企業向けですね。ところがこの中小企業金融公庫のワクに対しては、いま大臣答弁になられましたけれども、この特振法によって指定を受ける中小企業も含めて振興政策をとるんだ、あるいは金融、税制その他の措置をとるんだと言っておるけれども、たとえば政府が三十九年に計画しておる計画内容を見ても、同じように、特振法のワクに入っておる中小企業金融公庫に対しては何ら具体的な措置がなされていないじゃありませんか。  こういう一つの具体的な事実を見ても、大臣答弁されておるような抽象的なことでは、これは私は理解できない。そういう点からいって、この特振法のねらいというものはどうしても大企業中心寡占体制をつくることがねらいであるというふうに私は思われてならぬわけです。その点についての見解をもう一度聞かせてもらいたい。
  32. 福田一

    福田(一)国務大臣 実はいいことを御質問いただいたわけでございまして、昨年のうちにこの特振法さえ通っておれば、これはまたそういう面で充実ができたと思うのでありますが、いかんせん、予算の問題等も、やはり具体的に法律でも通っておれば、こういうふうにしてこういうことが出てきておるのだから、これは何とかしなければならぬだろう、こういう裏づけがしやすいわけであります。ところが現実にまだそこまでいっておりません。しかも、中小企業基本法は昨年できましたけれども、これから大いにやろうという段階でありまして、先ほど来申し上げておるように、中小企業に対する一つ一つの産業の対策というものも考えなければいけない、それをいませっかく練り上げておる段階でございますので、ただ仰せのとおり金額その他において非常に少ないとおしかりを受けることはごもっともと思いますけれども、しかし準備もしないで金だけ出せばいいというようなものでもない、幾ら薬を盛っても病人がなおるというわけでもありません。薬を幾ら置いておいてもなおらぬ場合はなおらぬので、適当な薬を適時に与えることが必要かと思います。そういう意味合いから申しまして、われわれとしては、実はこの法案が通っておらなかったことを非常に残念に考えておるところでございます。こういう法案が通りまして、そうして振興基準ができて、こういうことはどうしても中小企業にしなければならない、こういうものは商工中金からでも金を融資するようにしなければならない、こういう振興基準がきまれば、これは当然その分については優先的に配慮がなされると思います。これは法律ができておりますから。そこにおいてこの法律の必要性があらわれてくると考えておるわけでございます。
  33. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、大臣がすりかえたような答弁をされたことを非常に残念に思うわけであります。私は、たとえば特振法の対象業種の中で大企業中小企業が入るわけですから、中小企業も一部特振法のワクの中に入るわけですから、そういう場合に、この法律がかりに通っておったとしても——まだいま通っていない段階においても政府体制金融で開発銀行に対してはやっておるのですよ。これは額の違いはともかくとして、やっておる。ところが中小企業向けの中小企業金融公庫にはやってない。私は特振法を認めるという前提でやれと言っていない。政府が認めるという、この法律を通したいという前提に立つ政府側の施策として大企業向けにやっておるけれども、中小企業向けにやってないということは、明らかにこの特振法は、大企業寡占体制を強化するための目的、作用はあっても、中小企業というものはその主たる目的ではないということを私は言っておる。その点に対してのまともな答弁をしてもらいたい。
  34. 福田一

    福田(一)国務大臣 要するに、これは、中小企業基本法ができまして、そしてこれの近代化、合理化をはかり、生産性の向上をはかるということはきまりましたけれども、しかし、それに対する個々の産業についての、これをこうする、ああするということについての方途がまだはっきりしておらないというようなことでございますので、金額が非常に少ないという点ではお説のとおりだと思いますが、全然やっておらないわけではございません。それは、そういう面で開銀が大企業というものにやるものであるとすれば、中小企業金融公庫においても商工中金においても、そういうような資金はちゃんとあるわけであります。ただ、その金額が少ない、これではいわゆる格差の是正ができないではないか、こういう御質問であれば、確かに金額の面からそうではございますが、しかし、実態を把握してそれに適応するような方策を講じなければいけないので、予算の折衝をするといっても、大蔵省はなかなかそう簡単に、何でもよかろうというふうには出さない。だからそれに裏づけというものが必要である。その裏づけという点からいいますと、いま申し上げたようなこういう法律が通れば非常にやりやすくなるわけであるということを申し上げておるのであります。
  35. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はたまたま例をこの特振法の対象金融機関にとったために、いわば大臣としては、失礼な言い方ですけれども、もっけの幸いと、そのワクの中でひとつ論争をやってみようかというようなことで、なかなか政治性の高い答弁をされておるようでありますが、そういうことであれば、私は観点を変えて質問したほうが私の意図に沿ったお答えが願えると思うので、観点を変えてみたいと思う。  私のこの質問は、そういう限られた体制融資をする銀行のワクの中でこの問題を論じようとしておるのではないのです。むしろ、本来的な国際競争力の強化というものは、特振法というようなものをつくって、特定産業ないし特定企業にだけ体制金融をして、そうしていわば先ほど来から強調しておるような寡占体制をしいて、そうして国際競争力を強化するということではなくて、やはり日本の産業構造から見て、いわゆる二重構造の解消、中小企業中心にして、中小企業をもっと育成強化する、そういう立場から考えますなれば、特振法をつくらなければ中小企業の近代化なりあるいは中小企業設備改善なりあるいは税制面における中小企業の育成施策というものはできないということではないと思うのです。私はそういうことではなくて、むしろ、特振法がかりに通らない場合——これはあなた方の頭の中は通ることで一ばいかもしれぬけれども、通らない場合もあるのです。通らない場合、政府はそれではこの二重構造の格差を解消しないのか、こういう論理に発展すると思うのです。そういう立場からいくなれば、私が多くを指摘するまでもなく、この前、たしか桜井委員であったと思いますが、企業とは何ぞやというところから入って、たしか四百五十三万の事業所のうち、中小企業と称される四人以上三百人以下の事業所というのは五十三万、そうして、特に中小企業対象といわれている五十人以上三百人未満の中小企業というものは約三万、四人以上を含めても二十七万、こういうところを中心とした施策というものが、中小企業の育成策というものが考えられなければいけないじゃないかということを指摘したと思う。また、この特振法の例をとって言いますなれば、私がごく最近、これは政府関係から資料をもらったわけですが、某自動車工場の部品の下請工場というものは大体約三百くらいある。その中で三百人以下の中小企業というものが、三百の事業所に対して二百十社からあるわけですね。これを見ましても、いかに自動車工場だったら自動車工場というものが中小企業下請工場によってささえられておるかということが、この一事を見ても私は理解してもらえると思うわけですね。また若干具体的な例を引きますが、ヨーロッパ、アメリカとの中小企業の比較をしますと、一人から九十九人、いわゆる百人以下の中小企業の占める割合は、日本の場合は六二%、西ドイツの場合は二四%、イギリスの場合は二七%、アメリカの場合は二五%、こういうふうに、その他いろいろランク別の区分がありますけれども、百人以下の中小企業日本にとっては非常に多いわけです。私があえてこういった、取るに足らないかもわかりませんけれども、一、二の例を申し上げましたのは、大企業の系列下あるいは系列外の中小企業を含めて、端的に言って、大企業に搾取されておる中小企業の地位というものを、大企業と比較をして中小企業の地位というものを高めていく、こういう施策がなされない限り、いわゆる日本の産業全体の立場から言えば、競争力を強化するということにならぬと思うわけです。したがって、私はこの特振法によって指定をされる狭いワクの中の中小企業とか、そういう限られた業種だけではなくて、日本の産業全体の中における中小企業の地位、中小企業の体質改善、中小企業の近代化、中小企業の組織化、こういうものに重点を置いた施策を講じて、大企業中小企業との格差を——いわゆる生産性の問題についても、あるいは企業実力の面についても、そういう力を培養するところに重点を置かない限り、これは本来的な意味における国際競争力の強化にならぬのじゃないか、こういうふうに考えるわけです。そういう点から、私がいま指摘をしましたような対象中小企業に対する政府施策の強化に対して、特別意を用いる必要があるのではないか。そのことのほうが、特振法をつくって特定企業政府体制融資を通じてどうこうするというよりも、先行して考えらるべきことではないかと思うわけですが、その点について見解を聞かしてもらいたい。
  36. 福田一

    福田(一)国務大臣 いま、るる御説明がありましたことは、いわゆる中小企業に対する対策をまず考えるべきであって、特定産業に関する中小企業の問題を考えるより先にしなければいけない、こういうようなお考えだと思う。私たちは、これは並行して考えたらいいと思っております。そして、いまあなたのおっしゃったことでございますが、病気をしたような場合に、やはり病気をすると体力をつけなければいかぬということがある。体力をつけるには胃をじょうぶにしなければいかぬというので、たいていのお医者さんは胃散みたいな消化剤を飲ませます。それだけで病気がなおるかというと、なおらないから、特殊な薬を投入してその病気をなおすわけであります。これと同じような考え方が特振法の考えでございまして、いわゆる中小企業対策というのは、胃をじょうぶにする薬でございます。この胃をじょうぶにするような薬としては税制とか、金融とかいうものが、これは必然的に必要なものでございますから、これをもっともっと強化していかなければいけません。しかしそれで、それではおできがなおるか、あるいは肺病がなおるかというと、そうはいかないので、肺病には肺病がなおるような薬をやはり投入していかなければいけないわけであります。そこで、あなたがいまおっしゃったような中小企業に対する対策が抜けておるじゃないか、あるいは中小企業全体に対する考え方をもっとやることがやはり輸出振興に役立つのだ、仰せごもっともであります。そのとおりでございます。しかし、それだからといって、まだその中小企業というものがたった一つワクできまっておれば、いいのですが、中小企業は千差万別である。ここのところが私とあなたの議論の分かれるところになろうかと思うのです。それぞれみんな違った業種であります。その違った業種には違った薬を投入しなければ効果があらわれません。そこで、まずここでいわゆる特振法で自由化関係のある中小企業を育成する。そうすると、それを育成することによって格差が是正されれば、これがほかの産業から見て、なるほどあっちは格差を是正されておるじゃないか、われわれもひとつこういうことをやらなければいかぬ、自由化関係があろうがなかろうが、こういうことをしなければいかぬ、こういう意欲が出てくるだろうし、政府としてもまたその施策を進めていくようになるだろうと思うのであります。業界もまた政府もそういう考えに立つようになる。仲間から優等生が出たり早く泳ぐ人が出れば、やはりおれも泳いでやろうか、こういう気になるわけでありますから、そういうふうにひとつでも優良なものができてくるということがまた中小企業問題を解決する大きな原動力にもなろうかと私は考えておるのでございまして、私たちとしては、中小企業がだんだん大企業との格差を是正するということについては熱意を込めて今後も施策をやってまいらなければならないが、その業種がいろいろあるから、共通した部面についてはやれるけれども、特殊の業種については特殊の措置を考えて、そうしてそれの振興をはかり格差の是正を行ない、生産性の向上をはかっていかなければならないのだ、こういうふうに考えておるわけでございます。
  37. 藤田高敏

    藤田(高)委員 特振法とも関連しまして、私は、特にいま日本の産業全体としての国際競争力というものを強めるという観点から考える場合は、中小企業対策に重点を置いた産業政策をとるべきではないかということを指摘したわけですが、大臣答弁では、中小企業の場合はいわゆる千差万別なので、今回特振法に出しておるような業種に限定をしてやりたいのだ、こういう御答弁のようです。しかし私は、これも先般の商工委員会でも問題になったと思うわけですが、いま国連の舞台で問題になってまいりました例の低開発地域における貿易開発会議の問題ですが、私はやはり国連におけるこの会議が指向をしておるように、低開発地域の一次産品の買い付けを行なうという場合、関税の問題もこれは具体的な問題として上がってくると思うわけです。特振法にいう大企業中心とした、独占企業中心とした競争力を培養するために、極端に言えば、ついでにそれに関連する中小企業をその大企業の下に系列化していくという意味中小企業振興策というか、そういう対策を講じるという形が、私はこの特振法の内容だと思うのです。そういうことであると、この国連における貿易開発会議方向ではないけれども、低開発地域の一次産品の買い付けをやるという場合に、いわゆる特振法の対象になっていないような日本の一次産業なり中小企業というものは、そのことによって大きな打撃を受けると私は思うのです。へたをすると、東発じゃないけれども、これはかなり中小企業の中にもそういう面からくる倒産ということも私は起こり得ると思うのです。そういうことを考える場合に、やはり大臣答弁からいうと、中小企業の場合は千差万別でなかなか施策というものはやりにくいと口では言うけれども、私は日本がいま置かれておる貿易構造なり将来予見される貿易条件というようなものを考えた場合に、中小企業に対する施策こそ、特定産業と称する大企業なんかに意を用いる前に、政府はもっと前向きの姿勢で積極的に取り組まないと、いわゆる国際競争に勝つことができないと私は思うわけですが、その点についての考え方を聞かしてもらいたい。
  38. 福田一

    福田(一)国務大臣 これもまた非常に重要な問題に言及されたわけでございまして、私はお説のとおりだと思っております。お説のとおりというのは、いわゆる国連貿易開発会議が言っておりますような、低開発国を援助するという意味においていわゆる一次産品を買い付けなければいけない、あるいは特恵関税の問題等が出てきておる、これの対策を考えなければいけないということはごもっともなんです。だから、この面から見て、もう一つ今度は法律をつくって中小企業を助け、あるいはまた農業を育成強化するような法律も必要かと思うのであります。ただしかし、自由化の問題はすでにもう実行しつつある段階であり、目前に迫ったということではございません。ところが国連貿易開発会議の今度の結果を見ていただいてもわかりますように、これはまだ二年後の問題であります。それから実施をどういうふうにしてやっていこうかというような形になっていくと思うのであります。ところが、自由化はもうすでにどんどんやっていて、いまそのさなかにあるわけであります。片一方、国連貿易開発会議はこれからの問題であります。だから、これからの問題だからほうっておいていいというわけではございませんが、それに対してわれわれとしては農業をどうするか、それによって影響を受ける中小企業をどうするかという観点から今後大いに施策を進めなければいけません。また国民にその実情を訴えてわれわれは反省を促し、またいろいろの意味において対策を考えていくということは非常に必要でございまして、お説のとおりと思いますが、われわれはまず自由化ということからくる問題を解決して、さらにまたそういうような特殊の事情からくる問題を取り上げて、そうしてこれに対する対策を考えていくということについては大いに賛成でございます。
  39. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣答弁では、いわゆる国連における低開発地域の貿易開発会議との関係は将来の問題で、端的にいえばまだ時間がある、ところが自由化はもうすでになされておるのだ、こういう答弁ですね。したがって、前の川から渡らなければいかぬというために、自由化対策として特振法をつくってこういうことをやるのだ、まあ俗にいえばそういう言い方だと思うのです。しかし私は、そういう言い方であれば、これは理屈になるかもわからぬが、IMF八条国移行の問題なりあるいはOECD加盟の時期の問題については、われわれ社会党が本会議なり委員会を通じて、その移行の時期あるいは加盟の時期というものは、もっと日本の産業全体の力をつくって、あるいはそういう自由化によって日本の産業が大きな打撃を受けないような体質改善を中小企業を含めてやることが大事ではないかということで、いわばこの自由化に対しては、あるいは自由化品目に対してもいろいろ注文をつけたと思うのです。大臣のお話というか答弁を聞いておると、えての悪いときには、先ほど私が冒頭に質問したように、自動車に対しては自由化してないのだ、私はノックダウンを認めぬといったってこれは認めざるを得なくなるじゃないかと言ったら、いまのところまだ自動車については自由化は認めてない。なるほど認めてないでしょう。認めておる品目の中には入ってないけれども、私はやはりこの業種関係からいえば、自動車なんかこそ先行されていいような気がするわけですよ。そういう観点からいくと、自由化対策としてこういうことをやるのだと言っておるが、それではOECD加盟なりIMF八条国の移行の時期というものは、逆にいうと時期尚早であったのではないか、いま少しく国内のそういう産業体制を整備した上でそういう方向貿易政策なりあるいは対外政策を指向するのが順当ではなかったか、こういうふうな理屈も私は生まれてくると思うわけですが、その点についての見解はどうでしょうか。
  40. 福田一

    福田(一)国務大臣 まずIMFの問題について申し上げれば、いわゆる日本の円というものに信用をつけるということが問題でございます。日本が物を買ったときにでも、まあだんだん日本が物をよけい買って金が払えなくなったというような場合に、この外資理由にして何かいろいろチェックをする、あるいは支払いを延べるということはできませんよということでありますから、いわば商売をする上では金が必ず入ってくる、物を売れば必ず金が入ってくる、こういう姿にしなければ商売はうまくいかない。いわゆる輸出振興の対策としてそれは必要でございます。だから踏み切ったのでございます。OECD加盟したのも、いわゆるそういうようなクラブ組織の中へ入りまして、そして日本の立場をよくわかってもらう、先進国にわかってもらうことが必要なのです。やっぱり商売をするときには、私どものところはこういうものをつくっております、こういうものを売っておりますということがよくわかることが必要でございまして、その認識を、何といいますか深めるためには、やはりそういうクラブにも入っていったほうが得策である、こういう見地から入ったわけでございます。ところが、いま申し上げました国連のいわゆる貿易開発会議のほうは、これはまだまだ実を言えば具体化はいたさない。まだまだというのはおかしいが、二年や三年では私は現実的な問題は——方針は二年後にはだんだんあらわれてくるでありましょう。しかし、はたして現実的に日本の経済にたいへんな影響を与えるまでの具体策ができるかどうかということは、まだ見通しが立っておりません。もしこれが立っておるようであったら、もう次の通常国会あたりには当然法案を出して、これに対する対策も考えなければいけないんじゃないかと私は思うのであります。これを要するに、いまあなたが仰せになったように、まず向こうへ旅行するときには手前の川を渡っていかなければならない。手前の川を渡る前にあちらの川を渡るわけにはいきませんから、まだずっと先のほうにある川を渡るような施策はまだいたしておりません。しかし、これはだんだん渡らなければならない川でございますから、それについて御指摘を賜わるということは非常にありがたいことだと思っております。
  41. 藤田高敏

    藤田(高)委員 前の川から渡るというたとえに対しては、いわゆる貿易自由化がなされておるのだから、それに対処する対策を講ずることが当面の急務だと、こう言っておるわけですが、私もそのことだったら、そのことに対して対策を講じていく場合に、大企業中心にいく場合と中小企業を下から積み上げていくという、この経済の底辺にある地位を高めていくというやり方の問題と、私は二つの行き方があると思います。私が指摘しておるのは、やはり自動車の例ではないんですけれども、あれだけ日産トヨタ、あるいはプリンス、何とかという大企業がありますけれども、この企業が何によってああいうふうな高利潤、高配当を生むような状態をつくっておるかといえば、それをささえておる二百も三百もの中小企業部品工場、下請工場が、この自動車の大企業をささえておる主力になっておると思います。そういう点からいけば、やはり中小企業の力をつくっていくというところに重点を置いたそういう産業政策をとるということが、貿易自由化という点に焦点をあわして論議をするにしても、私は国全体の競争力を強めることになると思うわけです。そうしないと、上からの大企業中心国際競争力の強化ということになりますと、これは、あとからも具体的な特振法の内容について質問をしたいと思っておりますが、いわゆる系列化が促進をされていく。そこには中小企業の淘汰、あるいはその淘汰からくる労働者に対する首切りなり合理化、あるいは新しい国際独占競争するという形の中で新たな設備投資をやっていく。特殊鋼ではないですけれども、新しい工場を一つつくれば、私も詳しいことは知らぬけれども、若干の資料で見てみますと、百三十億から百五十億くらいかかるといわれておる。こういうものを、たとえば五年なり七年間で取りかえてしまうということになると、極端にいうと、この特振法によって指定をされ、それによって企業合理化が進められ、そうして合併集中が行なわれる、こういうことになっていくと、労働者に対しては、首切りあるいは賃金統制的な労務政策が私は出てくると思うわけです。そういう点からいっても、日本自由化に対処する国際競争力の強化というのは、大臣答弁を借りていえば、大企業中小企業を並列的にやっていくんだ、こう言っておりますけれども、私が先ほど来指摘したような二重構造といわれる日本中小企業の実力、これは先ほど一つ落としましたが、貿易面においても、たしか製造業では五割五分ぐらいな輸出量を中小企業が占めておるわけです。そういう点からいっても、貿易面における国際競争力の強化というのは、中小企業に対して、たとえばもっと設備近代化資金をふやしていくとか、あるいは中小企業近代化促進法による金融措置を強化していくとか、そういう面の施策をもっともっと積極的に進めていくことが大切ではないかと思うわけですが、その点について見解を聞かしてもらいたい。
  42. 福田一

    福田(一)国務大臣 いわゆる特振法関係中小企業でございますが、これは、問題は、それが統合されるとかいうことよりは、どういうふうにしたらその産業自体がうまくいくか、親企業もうまくいくか、中小企業もうまくいくか、こういうことでありまして、それによってそこに従事しておられる人たちの生活の安定もあり、あるいはまた賃金の上昇もあり得るかということを考えることが必要なのでございます。だからそうした基準をつくるときが一番問題なのです。中小企業にしわ寄せをするような形ではいけません。いまあなたが御指摘になったように、ある一つの会社には三百の企業がついておる。そのうちの二百以上はいわゆる中小企業である。それを搾取して大企業は繁栄してもうけておるじゃないか、こうおっしゃるのです。もしそうであるならば、そんなに大企業はもうけてはいけませんよ、中小企業にもちゃんと利益を均てんするようにしなさい、こういう基準をつくっていくことが大事なのであります。また、中小企業については、たとえば規模の利益というものがあります。規格を統一して、そうして、それでもって中小企業自体が仕事をどんどんやっていけばいい。親企業からむしろ独立できるような形もあり得るわけでありまして、たとえば日産とかトヨタとか、あるいは四つくらいのものがあっても、そのどこにも部品を供給できるような中小企業をつくれば、親企業から離れて独立もできるかもしれません。こういうように、今度の特定産業振興法をつくったからといって、これが中小企業、いわゆる関連中小企業に悪い影響を与えるとは考えておりません。また与えないように努力をいたさなければなりません。そこでいまあなたが仰せになっておりますように中小企業全体について考えなければいかぬ。それは、たとえば特振法に関係のあるところでも税とか金融問題は同じであります。関係のない業種も同じだ。それならばほかのものは見ないかというと、たとえばタイルの場合なんか今度組合をつくって、そうして一定の年限の間は金を積み立てて、そうしてそれをうまく利用するくふうをした。これなんかもあなた御案内のように中小企業でございます。やはりそういう手を打っておる。だから、その業種によってはどんどん手が打たれるわけであります。その手を打つことをどんどんやっていかなければならぬという御意見、私たちはよくわかるのであります。これをもっとやれ、この問題はやってないじゃないか、この業種はこれができるじゃないか、こういうことでございますればよくわかるのであります。ただ一般論的に中小企業というものだけでお考えを願っては普遍的な案が出てこないということを私は申し上げておるわけであります。
  43. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、大臣答弁の中には若干すりかえ的な御答弁があるような気がしてならぬわけです。というのは、なるほどこの特振法によって指定をされた場合は、中小企業もその指定をされた業種の中には含まれます。含まれるようになっておりますが、この法律自身は、それでは端的にお伺いをしますが、中小企業育成のためにこの法律をつくられたのですか。
  44. 福田一

    福田(一)国務大臣 その産業を縦割りに見た場合に、全体としての育成強化をはかろうというのが目的でございます。   〔委員長退席、小川(平)委員長代   理着席〕 中小企業だけを目的にもしなければ、大企業目的にもいたしておりません。全部を包含して考えておるわけでございます。
  45. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の理解する限りにおいては、中小企業対象にする合理化カルテル、あるいは合理化政策というものは既往の法律面においては、これは大企業も一部含みますが、機械工業振興法とかそういうものが一つ対象になろうかと思うのです。機械工業振興法とこの特振法の関係からいきますと、機械工業振興法の場合には、主として国内における技術や品質の低さ、ないしは品質の悪い面を改善していこうという面の合理化カルテルを認める法律になっておると思いますが、この特振法はいわゆる国際競争力という形で、対外的な意味を持つ大企業国際競争力を強化するということが中心であって、その競争力を強化するために、あと質問しますが、振興基準の内容なり、あるいはカルテル行為の内容の中にあらわれておりますような措置を講じて、冒頭来から申し上げておるような寡占体制を強化する、いわばそういう寡占体制による国際競争力の強化というのがこの法律中心だと思うのです。そういう点からいくと、そういう寡占体制をつくる過程において、中小企業集中合併なり、あるいは共同化なり、そういうものがこの振興基準の内容等々からして、これは派生的に起こってくる。したがって、この法律自身は、決して中小企業に力をつけることによって国際競争力を高めていこうということが目的でなくて、あくまでも上からの競争力の強化ということが重点になっておるというふうにどうしても理解せざるを得ないわけですが、その点について、以下私が幾つかの質問を継続する立場からお聞かせ願いたいと思います。
  46. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは前々申し上げておりますとおり、何も寡占体制をつくるのが目的ではございません。結果においてそうなるかもしれませんが、そういうことは目的ではありません。全体として、産業全体がうまくいくようにしていきたいというのが目的であります。そうしてその場合に中小企業に影響がないように振興基準も考え、あるいはそれに関連しておる労働者、あるいはまた従業員が悪影響を受けないような振興基準を定めていくということは必要であると考えておるのでございまして、格差を拡大させようとか、中小企業はこれをなくしてしまおう、決してこういう目的でやっておるのではない。これをやることによって初めてその関連中小企業がりっぱに成長ができるのである、こういうたてまえでこの法案をつくっておるわけでございます。
  47. 藤田高敏

    藤田(高)委員 その点は、ある意味においては見解の相違というか、立場の相違からくる意見の対立点になろうかと思うわけです。ただ、いまの答弁で私はふに落ちないことは、大臣は、この特振法ができた後における結果は寡占体制になるかもわからぬがと、こうおっしゃった。私は、この特振法の目的ではないけれども、これほど日本の産業の国際競争力を強化していくというような重要な経済立法にあたって、この法律を運用し、この法律が施行されたらどういう結果が招来されるであろうかということを予見しないで、考えないで目的をうたわれ、そうして法律を出されるなんていう、そんな不見識なことはないと思うのですよ。結果としてそういうことになるかもわからぬなんていう、そういう不見識なことではいかぬと思う。大臣のほんとうの意図というものは、これは明らかに結果的には寡占体制になるということをお認めになっておるんじゃなかろうか、こういうふうに私はいま判断をしたわけですが、その点どうですか。
  48. 福田一

    福田(一)国務大臣 御案内のように、この法案においてはいわゆる規模を、いわゆる振興基準をつくるというところに重点が置かれておりまして、業界がそういうことを意図して、そうしてみんなで相談の上できめるということになっておる。それから事業によっては、場合によってはそういうふうに規模の大きさというものを認めていかなければならないものもあるかもしれません。それほどそういうことはしなくても合理化ができるものもあるかもしれません。そういうことについていろいろここに業種があげられておりますが、これらについて私があらかじめ事を想定してしまっておったんでは、法律にそれを書いたほうがいいわけだ。われわれは振興基準というものをつくって、その基準に従ってこれをやるのです。それは官がやるのではない。官僚統制ではございません。いわゆる民間の創意くふうも含めて、そうして官民一体になってこの問題を処理しようというときに、政府方針というものをあらかじめ打ち出してしまったんでは意味がないと思うのであります。そこで、いわゆる私が申し上げた規模寡占体制が起きるかもしれないというのは、業種によってはそういうものも起こり得るだろうと思いましたからそういう発言をしただけでありまして、あらかじめ形を想定してしまうのならば、何もこういう法律ではないほうがいいと思っております。
  49. 藤田高敏

    藤田(高)委員 こういったような重要な経済立法を制定されようとする責任ある内閣として、あるいはその所管大臣として、こういう法律をつくって——なるほど、ここにいま出されている法律内容は、官民協調方式という形で、産業官庁業界と相談をして、合意の上で、特定産業の振興のあり方について、その基準をきめていこう、こういうことになっています。それは形の上ではそのとおりなんですけれども、いま大臣の御答弁を聞いておると、どういう形になるということをあらかじめ考えない、あるいは結果がどういうことになるということを想定をしない、こういう形で相談をし、あるいは業界、あるいは金融界を含めて協議をしていくのだ、こう言いますけれども、こんな無定見な、どういう形で官側の意見を出すかということが——業界産業官庁この二者が合意に達して基準をきめるのでしょう。そうしたら、これは額面どおりに受け取っても、業界の自主的な意図というものが前提になりますけれども、やはり合議する、形の上ではこれを一応五分と五分の形で相談をし合うと思うわけです。そういうことになると、五分の立場における官庁の側が、この特振法に基づいてどういう特定産業の振興をはかっていくべきか、その形態はどういう形にするのが一番望ましいか、そういう形を通じて、結果はどういう結果が招来されるかという、そういう具体的な構想と定見というものがなくて、場当たり主義でこんな法案が出るというのであれば、これは極端に言えば、まさにこの法律自身審議をする価値がないと私は思う。そういう点からいって、大臣がさっき言われた、結果としてこの特振法の対象になる企業については寡占体制がとられる、そういうことを目標として官庁側の指導性を発揮するというのが少なくとも通産省あるいは政府側の真意じゃないかと私は思うのですが、その点についてなおお尋ねをいたしたい。
  50. 福田一

    福田(一)国務大臣 形の上でも精神の上でも、これは官民協調方式であります。そうしてこの法律は、やはり自由化によって影響を受ける産業をどうするか、どう育成するかということが問題で、そのときに官のほうで、こういう方法でやるのです、こうするのですということを言ったんでは、いわゆる官民協調ではありません。法律ができてから十分審議を尽くした上で、いわゆる振興基準というものをきめる。その振興基準をきめる場合に、この業種はこうあらねばならないということを言ったのでは官民協調ではないのであります。私たちは官民協調という以上は、その審議の場においては意見を述べますが、しかしいま法案審議をしておる段階において、私たちがこうあるべきである、こうあらねばならないと言うことは行き過ぎであると思いますのでこれは申し上げません。ただ私が先ほど申し上げたのは、寡占体制が起こるかもしれないということを言っておるので、寡占体制が必ず起こるとここで言明を申し上げているわけではないのであります。行き過ぎの結果として起こり得る場合があるでありましょう、こう申し上げておるわけであります。
  51. 藤田高敏

    藤田(高)委員 具体的な法案内容関連をしましての質問は、あとで時間をかけてやりたいと思いますが、私はやはり、いま非公式に意見が出ておりましたように、この振興基準の内容なり、あるいは共同化の内容を見ると、その落ちつく先はやはりおのずから大企業中心とした寡占体制がとられざるを得ない。こうなることはごく客観的に、ごく常識的に想定されることです。そういうごく客観的にこの法案をすなおに読んでさえ理解できることを、あえてこういった審議の場において否定するような御答弁をなさるということは、私は池田内閣というか福田通産大臣は、日本の産業界を、あるいは経済の発展をどういうふうに持っていくかということについては全く無定見のままこういう法律を出すことになるとさえ言えると思うのです。その結果、どういう結果が招来されるか。この特振法がかりに通ったとすれば、どういう方向で、通産省としてはこれらの対象業種に対しては官側としての意見を出していこうと考えておるのか、こういうことがこの委員会で出されないで、やってみなければわからぬ、法律が通ってからだ、こんなことでは何を目的としてこの法律が出されたのか、全くもって先ほど言ったように審議する価値がないとさえ言えると私は思う。極端なことを言ったら、大臣自身の無定見を暴露する——私はそんなことを言いたくないけれども、福田通産大臣ほどの人がそんな無定見なことを考えてこの法律を出されたのではないと思う。少なくともかなり具体的に、法律が通ったらどういう形で振興指定業種対象になる産業は発展をしていくか、その結果はどういう形に落ちつくかということは、福田通産大臣ほどの方であれば、十分具体的な見通しと構想をお持ちになっておると思う。その構想と具体的な内容、それをひとつ聞かしていただきたいと思う。
  52. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はこの法案が最初審議をされたときに、これは官僚統制であるというような問題で非常な反対を受けました。私がいまここでいろいろの考え方とかそういうことについて申し上げると、また、それ官僚統制を始めた、こういうことになるでしょう。五分と五分であれば、その場に、実業界の方がおいでになるところで申し上げれば別ですけれども、法案が通ってそういう場が出れば別ですが、いまここで法案審議の過程において私がそういうことを言及する必要はない。それが無定見であるとおっしゃるならば、私は甘んじて無定見であるという御批判を受けます。
  53. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はこの問題は、ある場合にはこれは休憩してもらって、一ぺん理事の間でも相談してもらいたい。それはこういう重要な法律を出しておいて、大臣答弁をしたらまた官僚統制じゃないかと言われたんではいかぬから、考え方は実はあるのだけれども言わないのだ、(福田(一)国務大臣「違う」と呼ぶ)そういう言い方をされたのではこれは審議にならない。私はその点では、いま大臣がはしなくも違うと言われるのであれば、どういうふうに違うのかお答えを願いたいし、そうして私は、先ほどから質問をしておるように、これに対する具体的な振興基準をきめて、そしてその指定業界をどういうふうに持っていくことが、いわゆるこの法律でうたっておるように国際競争力を強化するということになるか、そういう提案が具体的に示されないなんということになれば、これはこの法律案審議することがいいのかどうかということについて、一ぺん理事の皆さんの中で、休憩をして相談をしてもらいたいと思う。
  54. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、その振興基準をつくるときに、どういうふうにしてこの産業を育成したらいいかということを相談すべきである、しかしその振興基準をつくるにはどういう手続を経て、どういうことをやっていくのであるかということは、これはきめておかなければできないと思います。しかしその一つ一つ業種について、これはこうするのがいいのであります、これはこうするのがいいのでありますということを私がこの場において申し上げたのでは、いわゆる官民協調方式ということにはならないと思う。私は、その場において両者が意見を出して、十分に審議を尽くすということが一番大事だと考えておるのであります。
  55. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、通産省の機構から言いましたら、通産省の機構というものは物資別に、鉱山局なり繊維局なりあるいは軽工業局、重工業局、あるいは政策別には通商局と企業局、こういう形で今日の機構がなされておる。ということは、いわば産業別なり政策別にこういう立法を提案した場合には、これからの指定業種対象になる業界は、どういうふうに発展をすることが一番望ましいだろうか、そういうことを専門的にこういう機構を通じて検討をされるということが、これからの通産省の任務じゃないですか。そういう具体的な内容が全然予見されない、考えられないで、こういう法律案を出してくるということは、全く私は不見識だと思う。そんなことをおっしゃるから、この法律がいままで二転、三転して流れてきた一つの原因にもなっておるのじゃないか、私はそういう点では、官民協調であれば官民協調の線に沿って、どういう官民協調の方式によって、どういう指定業界なり指定業種の振興をはかることが一番望ましいか、その体制は最終的には寡占体制になるのかどうか、そういうようなことについては、これは通産省としてわからぬなんということはないですよ。これはひとつ、しつこいようだけれども、ぜひ聞かしてもらいたいと思う。——政府委員じゃだめだ。いまの私の質問大臣ですよ、これは重大な、大臣としての政治的な責任を伴った答弁です。
  56. 福田一

    福田(一)国務大臣 私の申し上げておるのは、何も通産省でその業種について調査をしておらないとか、方向をきめておらないという意味ではありません。もちろん業種についていろいろ各局が審査もし、研究もしております。ただ寡占体制にするということでこの法案を出しておるのではありません。そういうことは、すべてやはり審議会というもので基準をきめるのがこの法案内容でございますから、問題点はいろいろございます、問題点はありますけれども、私としては、寡占体制になるということを前提にしてここで申し上げることは、これは差し控えさしていただきたい。したがって、寡占体制になり得ることもあるでしょう、こういう表現を使っておるのであります。だからこれは誤解のないようにお願いいたしたい。ただ、いま私が申し上げておりますように、この業種について問題点はどういうところにあるかということは、これは私の原局のほうからいろいろ御説明さしていただきたいと思います。
  57. 藤田高敏

    藤田(高)委員 いまの段階ではその必要はないです。あとで必要があれば私のほうから言います。  私は、結果としてそうなるかもわからないということは、やはり大臣としても想定され、一つの前提として考えられておると思う。それがすべてでないかもわからぬけれども、ただいま審議段階までにおいての答弁の中で明らかになったことば、寡占体制になるかもわからぬという一つワクというか、目標は出てきたと思う。そのことは、私はあえてその質問をする順序にはまだなっていなかったわけですが、関連してお尋ねをします。  この法律の第九条、共同行為、いわゆる独占禁止法に風穴をあける一これは皆さんの立場からいえば風穴をあけるものではないと言われるかもしれぬが、経済団体やあるいは通産省の中にも−官民協調方式になって、共同行為についてはカルテルを中心とする九条の第一項の第一号から第六号に集約をされておるわけで、これは独禁法に風穴をあけるものではないと言っておるが、振興基準の四項の六号、いわゆる「合併に関する事項」と独禁法十五条との関連において、こういう合併行為を認めることは、明らかに寡占体制になるのじゃないですか。寡占体制をつくらぬくらいであれば、こういう合併に関するようなことを基準にあげる必要はないと思うのですよ。この関連はどうです。
  58. 福田一

    福田(一)国務大臣 この問題につきましては、公正取引委員会と十分連絡をとって、現在の独禁法に矛盾しないということで法案を出しておるわけでございまして、私たちとしては、独禁法にそういうような大きな影響を与えるとか、独禁法と相反することをするという考え方ではございません。
  59. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は具体的な法案関連をして聞きましたが、やはり先ほど質問をしましたように、この法律がかりに成立したということを前提にします場合に、この特振法が施行された場合に、どういう形でこの指定業種なるものが国際競争力を強化していくのかという点については、この振興基準の中でうたわれておる規格の整備、生産の専門化、あるいは設備投資の適正化、事業の共同化、そしてさらにいま申し上げた合併に関する問題とか、あるいは事業の転換、こういうものは明らかに寡占体制をつくる、たとえば冒頭に私が指摘しましたが、鉄鋼の場合でいえば八幡と富士を中心にやっていく、自動車の場合でいえばトヨタ日産中心にやっていく、石油化学の場合には先発、後発という形で整備を系列化していく、これがやはり産業構造調査会ですか、この調査会の検討段階においても、そういう方向でこの法律でいうところの特定産業を振興していこうということが論議をされておると思うのです。論議をされておるにもかかわらず、しかもいま私が指摘をした具体的な法律内容との関係においても、当然やはり結果として寡占体制をつくっていくのだということがこの法律の主たるねらいであると私は考えるわけですが、その点についての見解を聞かしてもらいたい。
  60. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は調査会においてどういう議論があったか存じませんが、それは調査会においてそういう議論をなさった人があるかもしれません。これは調べてお答えをするよりいたし方がないと思います。しかし業界の問題を研究する上においてはいろいろの考え方があるわけであります。二社を限るとか三社にするとか四社にするとか、あるいは五社になる場合も十社になる場合もいろいろあるでありましょう。  それから、先ほど寡占体制ということのお話がございましたが、寡占というのは実際は非常に莫たることばで、国際的にも定義がない、日本でも実は定義がない。これを二、三社という形で縛るのが寡占であるか、いろいろの問題が私はあると思います。しかしこのことにつきましては、私たちはどの業種は幾つ、どの業種はどうだというふうな考え方でここに提案をいたしておるのではございません。振興基準を定めるときに十分にこの点を研究していただきたい、かように考えておるわけであります。
  61. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は枝葉末節的なことにこだわろうとは思いませんが、やはり寡占体制なんということは経済用語にないということで逃げるようなことはやめてほしいと思う。これはごく通俗的にも寡占体制というものは、少なくとも、大臣に失礼な言い方ですが、経済的な専門雑誌を読めば普遍的にどこへでも出ておりますよ。そんなことおっしゃるのだったら、資本主義の競争において、自由競争以外に過当競争というものはありますかと言わざるを得ない。ところがこの特撮法が出てくる、こういうものを出してこざるを得なくなった有力な原因には、過当競争によって云々ということが、この法案が出てきておる中心になっておる。だから、何か大臣は非常にしんどうなったのかどうか知りませんけれども、寡占体制というものがないということであれば、この間の企業とは何ぞやではないけれども、大臣に、私は私なりに知っておることをお教えしなければいかぬということになる。そういうような失礼なことは、私も新人議員で、できがたいと思いますので、やめますが、そういうふうに話をそらさないで、わかることはわかったなりに、寡占体制ということを理解して答弁をしてもらいたい。  そこで私は、寡占体制になるのではないかということを前提にして、そういう結果、体制をつくるということを目的としてこの法律案を出しているのではないかということを、若干法律条文を引き合いに出して申し上げたわけでありますが、あとでもまた出てまいりますので、そのことについては、私はそう思う、またこの法律自身の性格からいってそうならざるを得ない、極端に言えばこういうふうに断定できると私は思う。それと冒頭指摘しましたすでにいろいろな政府計画の具体的施策内容を見ると、そういう寡占体制をとりつつある、この点も指摘をしておきたいと思う。ただ私はこの段階で、あと同僚議員のほうから質問もあろうと思いますから、一つはっきりしておきたいのは、まだこの段階においてさえ通産当局としては、この法律案が施行された後における指定業種ないしは指定産業がどういう形で発展することが一番望ましいか、そしてそのことが国際競争力の強化になるかというスタイル、そのスタイルと結果についてはまだ結論が出ていない、そういう意見の発表がまだない、この点だけははっきり私は保留しておきたいと思います。これは私もあとで触れるかもしれませんけれども、審議内容を発展さすために、以下具体的な問題に質問点を変えたいと思います。  そこで法律案内容になるわけですが、まず第一にお尋ねをしたいことは、特振法と独禁法との関係についてであります。これは先ほども、独禁法に抵触をしない形で振興基準をきめていきたいというふうに答弁がありましたが、私どもがこの法律案内容をごくすなおに、客観的に検討をした場合に、どのように好意的に理解をしましても、特振法が独禁法に風穴をあけるといいますか、実質的に独禁法を緩和する内容になっておると思うわけであります。これはあえて注釈を加えますなれば、経営者団体が最終的にこういうものに賛意を表したのも独禁法の緩和に通ずるものである。あるいは通産省当局部内にもそういう意見を持っておると聞いておるのでありますが、この独禁法の骨抜き法であるというふうに、私は具体的にあとで指摘をしますが、たとえば二条の一項の四号、振興基準の三条の四項の一号から八号、九条の共同行為、いわゆる合理化カルテル、十二条の合併条項、こういうものはどのように御答弁されようとも明らかに独禁法の骨抜きであり、独禁法に俗に言う風穴をあけると私はこの点に関する限りは断定できると思うわけであります。これに対する大臣の御見解と公取委員長見解を聞かしてもらいたい。
  62. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま御指摘になりました各条項については、われわれとしてもいろいろ調べておりますが、われわれとしては独禁法に抵触はいたさないという考え方でございます。
  63. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 特振法に規定されております事項と独禁法に規定されております事項との関連事項としては、二つの問題があると思います。  一つ合併の問題であります。この合併につきましては、一応この特振法で規定しておりますのは第十二条でございますが、ここでは結局公正取引委員会に対して合併が実質的に制限することとなるかどうかについての判断の基準となるべき事項を定めて公表すべきことを求めることができるというわけでございまして、一応判断の基準を請求できるということで、合併について、この特振法あるがゆえに独禁法にきめられている一定の取引分野における実質的制限となるときは合併をしてはならないという事項には実質的には何ら触れておりません。したがいまして、これはただそうした独禁法を受けまして、それじゃ具体的にどういうふうな姿になればそういう独禁法に抵触するかという判断の基準を求めるというわけですから、これは全然独禁法とは私は実質的に抵触するものというふうには思っておりません。それからもう一つの問題は、お話のありましたカルテルの問題でございます。第九条の共同行為、御承知ように独禁法におきましても、企業合理化のための共同行為というのが二十四条にございます。この二十四条の合理化カルテルと同じことしかしないなら、これは別に第九条の規定はわざわざ必要ないわけです。したがいまして、第九条の規定が設けられている限りにおきましては、それは二十四条の四では不十分だという点があるからこそ第九条が設けられている、これは私はお説のとおりだと思います。ただしかし公取委員会としまして、ずいぶんこの案が成り立つまでの間にはいろいろな経過がありまして、公取委員会としてもずいぶん当初の案に対していろいろ意見を言い、そして現在の姿になったわけでございます。現在の姿におきましては、二十四条の四でなし得る行為よりはある程度幅が広がっておりますが、しかし他の例外法の場合において認めているパターンは幾つかございます。そういうようなこともございますし、また同時に九条の三項でございますか、一応こういう場合には認可できない、認可してはならないという消費者保護とかあるいは関連事業者の関係、いろいろやかましい消極的制限は持っておりますので、われわれとしましては、現在の姿においては独占禁止法ではなし得ないこと、したがってそのためにこそわざわざここに規定がつくってあるのですから、広い意味合理化カルテルという理解のもとに、この程度であれば独禁法のほんとうの意味の精神を阻害するものでない、あるいは独禁法に風穴をあけたといった意味のものではない、かように理解しております。
  64. 藤田高敏

    藤田(高)委員 十二条の合併の問題……。
  65. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 十二条の合併の問題は、先ほど申し上げたとおりです。要するに、合併自体は独禁法で制約される。それが特振法によって何ら変わるものではない。ただ十二条がありますのは、合併の基準が一体どの程度のものになったら一定の取引分野の競争制限になるかならないかという判断の基準を公取に公表しなさい、こういうことだけを要求しているわけですから、したがってその一定の取引分野における競争制限になる、ならないという判断自体ば、これは独禁法そのままそれが生きるわけです。したがって、この十二条によってその考え方がちっとも変わっているわけではない、こういうことを申し上げておるのです。
  66. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは私は具体的な内容についていま詳しくお尋ねをいたしたいと思いますが、特に合併の問題については、この基準について、公取がその合併が一定の取引分野における競争を実質的に制限するかどうかについて判断の基準となるべき事項を定めて公表すると、こういうわけですが、これはいまのこの独禁法のたてまえからいきますと、私は非常に重大な条項だと思う。これは公取としてはこういう合併であったらよろしい、こういう基準条件にかなっておるものだったら合併はよろしいということは、独禁法の一番中心になるのは、やはり一定の取引分野における競争を実質的に制限するかどうかということが、この独禁法の一番かなめになっておるのでしょう。それがこの十五条の合併の制限となっておるわけなんですね。したがって、一般の二十四条の四の合理化カルテルと別に、合併の制限をこういうふうに設けておることは、合併というものを認めるということは一定の取引分野における競争を実質的に制限することになってくる。そういうことになると、自由主義経済下における自由競争の秩序が乱れてくる。そういう点で、この独禁法の十五条というものは、私は非常に大きな意義を持っておると思うのです。その十五条に真正面から、公取がこういう基準であったら合併してもよろしいということは、明らかに十五条に大きな穴をあけることになりませんか。
  67. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 十五条のほうは、そこに書いてありますように、「各号の一に該当する場合には、合併をしてはならない。」これはそのまま特振法が通過いたしましても生きているわけでございます。それで結局今度は合併の基準を公表するという問題ですが、これはいろいろ合併をする場合におきまして、たとえばある会社とある会社が合併したい、一体これでもって公取として認められるだろうかどうだろうかという問題、いわゆるネガティブ・クリアランスを求めてくるという問題は、これは全然ないことではありません。もちろんわれわれはその場合におきまして一応発言しましても、結局それは委員会としての正式な意見ではありませんから、具体的になればそれで保証が与えられるという性格のものではありません。今度の場合におきましては、一応基準を委員会として出すわけですから、その基準に合致していれば、現在与えているいわば事実上のネガティブ・クリアランスに対して、法的なネガティブ・クリアランスという意味においては、これは確かに意味は違うと思います。ただ実際問題としまして、一体どの程度まで具体的にこの基準をきめるかというのは、これはかなり問題だと思うのです。私は内部でいろいろ議論しておりますが、結局振興基準というものが一体どの程度まで具体的に出てくるかということと結びつくのじゃないか、この合併の問題につきましては、もちろん第一に問題になりますのは、一体合併によってその業界におけるシェアはどのくらいになるかという点が一番問題になります。しかしそれだけで全部が片づくわけのものではない。あるいは外国との競争がどんなふうになっていくか、あるいは輸入がどういうふうに入ってきて、そこでマーケットのシェアがどんなふうになっていくか、こういうようなことも問題になってきます。結局話が具体的になればなるほど、われわれのほうとしてもわりあいに具体的な基準ができ得るわけであります。したがいまして、そういった意味において基準をわれわれのほうとして公表するということは、振興基準といいますか、これが具体的になればなるほど具体的なことも言えますし、抽象的であればわれわれのほうとしてはきわめて抽象的なことしか言えないと思いますが、しかし、そういう基準自身を公表することは、これはわれわれのほうとしては十五条の規定に従ってやるわけでございまして、したがって、それは順序からいえば、普通なら合併の届け出があって、それからわれわれのほうとしてはイエスかノーか言うわけです。しかし、会社のほうのいろんな関係もあるから、この場合においてはこうしてほしいというのですから、全部についてこういうわけにはいきませんが、たまたまこの場合においては振興基準というものもありましてかなり具体的な案も出るはずですから、そういう場合においては、われわれは、この程度ならいい、この程度なら悪いということは相当言い得るのじゃないかと考えます。しかし、それはどこまでも十五条の規定の上に乗っかっての話でありまして、十五条の規定をはずれてのものというふうには思っておりません。
  68. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは若干俗っぽい実質論になるかもわかりませんが、いまの公取委員長答弁を聞いておりますと、なるほど、この法文の筋書きとしては、指定業種対象になった、その対象になった業種は、実質的に届け出の申請をして、そうしてそこで通産省と業界が、あるいはそれに金融界が加わって協議をして、必要に応じてといいますか、大蔵大臣も加わって、そうしてその振興基準をきめよう、その合意に達するかどうかは通産省と業界だけできめるのだ、したがって実質的な届け出によってものが始まるのだと、こう言いますが、私は、この法律ができたら、失礼な言い分ですけれども、これは公取と通産省との関係、そして通産省と業界との関係からいきますと、やっぱりものは力関係で動くと思うのです。渡邊さん、しんどげな笑い方をしておるけれども、私はそう思う。だれ人もその点は識者の見るところは一つだと思います。そういう点からいくと、通産省は何といっても力を持っておる。これから先は特に俗っぽい言い方かもわかりませんが、やはり個人的な名前を出して恐縮ですけれども、いまの公取のメンバーはやっぱり大蔵省の一つの系列の中に入っておった人がそれぞれの責任ある地位におつきになっておる。こういういわば派生的な条件も含めて考えた場合に、主管官庁である通産省が中に入ってきめたものを公取としてチェックしてこれを拒否することが現実にできるかどうか。その点について、公取委員会としてのいわゆる自主的な見解に基づくひとつ責任のある御答弁を願いたいと思う。
  69. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 現在の公取の判断なり行為について、一応確かに独立した権限は与えられております。その独立した権限を君たちの現在の陣容は行使するだけの能力がないじゃないかとか、あるいはそれだけの根性を持っていないじゃないかという意味のふうにとれたのですが、私は、それは非常に遺憾だと思います。過去において、われわれのほうのやったことが、あるいはそういうことの判断を招いた原因であったとすれば、われわれも大いに反省してみなければなりません。しかし私は、少なくとも一応われわれとしてはこれだけの独立した権限を与えられておることは、独立してものを判断をすべき責任を与えられておることなのですから、その責任を果たすだけのことは十分やってまいるつもりです。御批判は別に受けます。
  70. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、そういう自信のほどと、そういうことで、公取機関がほんとに責任のある機能を発揮してもらうことを歓迎します。しかし、あなたがあえて自信のほどをお見せになられたけれども、やはりものごとというものは過去の実績の中から一つ判断されるわけですね。これはあなたも十分お認めになる。代表的な例をあげれば、例の雪印乳業とクローバー乳業の合併公正取引委員会の正式な承認を受けて、しかも独禁法十五条の合併に対するそういう法律がない段階において、バターで言えば五七%、チーズで言えば八〇%、アイスクリームで言えば三六%という国民生活に直結した非常に重要なこういう業種に対して、それほどのシェアを持つ合併を公取委員会が過去において認めてきておるのですよ。それは、十五条に風穴をあけるという法律がない段階において、あなたのいまおられる公正取引委員会は、それを公式に認められてきた。また最近においては三菱三重工の合併が、これまた独禁法を空洞化したと世間でいわれておるように、具体的な事実として合併を認めてきておるじゃないですか。こういう基準をいろいろ相談をして、こういう単独法ができて、独禁法の十五条に対して、一定の条件さえ整っておれば合併を認めるのだという法律のない、今日の独占禁止法だけしかない段階で認めてきておるじゃないですか。そういう過去の実績の中から、あなたがそういうふうに御答弁になられても、これは客観的にそういうことを信頼できると思いますか。その点に対する見解を聞かしてもらいたい。
  71. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 三菱三重工の問題につきましては、この委員会でも一応公取の見解について御質問がありまして、私は答えておいたつもりであります。過去の雪印、クローバーの問題につきましては、一応あの当時の状況としまして、公取として認めてきた。そういったことについていろいろ御批判のあることは伺います。しかし、この法案審議において一応焦点として申し上げられることは、この十五条の規定は、特振法の新しいこの条文によって何ら変わるものではない、そういうことです。したがって、独禁法自身の現在の施行において、この十五条の合併についての独禁法の施行について公取のやり方はおかしいじゃないか、これは御批判があるかもしれません。公取は公取なりの一応の見解を持っております。しかし、ここでもってそれをるる申し上げるつもりはありません。一応御批判としては伺うことは伺います。
  72. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は具体的な過去の事例を引例して質問をしたのは、この特振法が通った後における事実問題として、そういうことが将来これまた、いわゆるまたぞろ起きる条件がこれによって大きくなったと思うのですよ。事実問題として将来そういうことは起きないかどうか、この点についてのお尋ねをしておるわけです。  それともう一つは、これは答弁にこだわるわけではないですけれども、たとえば雪印の合併、この問題については批判は自由だ、私はこれは公取としても単に批判で済む問題じゃないと思う。憲法の番人機関が最高裁であるように、やはり独禁法の番人機関は公正取引委員会なんですね。そうすると、雪印とクローバーの合併が事実行為として実質的に独禁法の十五条に風穴をあけた、違反するような行為を公取自身が認めたということは、これは独禁法の番人としての資格と権限を消失したことになるわけですね。また、あえて言えば、そういう公取だったら、これは極端に言ったらなくてもいいじゃないかという極論まで理屈としては生まれるわけです。私は答弁にこだわるわけではないけれども、やはりこういう重大な失策ないしは公取委員会としての失政に対しては、批判は自由に受けますということを越えて、やはり責任ある行政をやるんだということが前提にならなければ——批判は甘んじて受けるというそういう態度であれば、今度この特振法ができたら、これは失礼だけれども出してきたものはほとんど無条件で認められていくんじゃないか。また、私は個々の事例をあげようとは思いませんけれども、いままで代表的なものを二つ申し上げたけれども、その他の合併についてもほとんど今日まで認めてきたというような実態じゃないですか。そういう経過からいって、この特振法ができた後において、事実問題として合併をこの公取委員会においてチェックすることは、非常に失礼な言い分だけれども、これは俗な言い方でありますが、いまの力関係の中でもむずかしいんじゃないか。これはもっと端的なことを言えば、この法案が出てくるときに、この法律案には指定業種に対する認可権自身は公取になかったんじゃないですか。そうしていわゆる世間で言われておる宮澤経済企画庁長官の妥協案によって、まあ極端に言ったら公取のメンツだけ立てよう、こういうことになって公取が妥協したというのが、この特振法に対する経過を書いてあるすべての諸雑誌にあらわれておるところなんですよ。私はそういう一つの最近における特振法の成立に至るまでの具体的な経過、それと、指摘をしました過去における合併問題に対する数々の具体的事実、こういう中からこの特振法ができて、そうして十二条の一項、二項を中心とするような条項が法律案として認められれば、独禁法はますます大きな風穴があいて、そうしていま経済界では言っておるように、経営者団体が言っておるように、これはもう明らかにこの特振法というのは独禁法の緩和に通ずるものだ、こういうことに私はなると思うわけです。そういう点について、事実問題からして公取委はその機能を十分発揮することはできないと思うわけであるが、それについて自信−があるかどうか、この点もう一度お尋ねをいたしたいと思います。
  73. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 先ほどの私の答弁を多少補足させていただきます。御批判は自由だと申し上げましたのは、公取のほうとしては、一応あれが独禁法に違反しないという確信があったればこそ承認したわけであります。ただそうした考え方についていろいろな御批判があったということは聞いております。もちろんわれわれとしてもいろいろ御批判は御批判なりに反省はしてみて、将来に対処するということは考えております。それで、先ほども申し上げましたように、結局いまの御議論は、特振法の問題というよりも独禁法自身の施行について公取が本来与えられている責任を十分果たしていないじゃないかというふうな点にむしろ問題は尽きるように思いますが、公取としましてはそうした御注意に対しましては十分反省し、同時にそうした御批判を受けないように今後大いに信念を持って独禁法の施行にあたってまいりたい、かように考えております。
  74. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は個々の独禁法にいわゆる風穴をあけることになるんじゃないかということについては、各条文についての質問、意見は時間の関係で後日に譲りまして、保留しておきたいと思います。  次に、この特振法を検討すればするほど、この内容は、先ほども指摘をしましたが、いわゆる産業官庁である通産省が、実質的には公取委員会の権限と機能を剥奪するような仕組みになっておると思うわけです。これは先ほども指摘をしましたが、たとえば九条のカルテル行為あるいは十二条の合併条項等がその代表的なものでありますけれども、特に私はここでひとつ具体的な条文に関連をしてお尋ねをしたいのは、第二条第一項の第四号では、前各号に掲げる業種のほか、産業構造の高度化を促進するため、いわゆるこの指定業種ワクをいわばしり抜けにしている、この不特定な産業について合理化カルテルを認めるような法律になっておるわけです。それは先ほど質問とも関連しますが、私は非常になしくずし的にこの指定業種ワクを広げるという形を通じて、独禁法の実質的な大幅な改正に通ずるような形になっておると思うわけですが、これについての見解を、これは通産大臣及び公取委員長に聞かしてもらいたいと思います。
  75. 福田一

    福田(一)国務大臣 この第四号は、いわゆる特定したもの以外においても必要がある場合においては−必要があるといいますか、業界がその必要を認めて、そして業界の大部分の人がそういう意図をもって申請をされたときにその業種を指定し得る方途をここに定めておるわけでございまして、一般的にそういうふうにいたしておいて、適時に——この法律に明定しておきますとその分しかできないが、しかし事情の変更等によって必要がある場合には、この条項でもって業界が救われるような道を講じておいたほうがよろしい、こういう考え方に基づきましてこの条項を入れたわけでございまして、この条項が入ったからといって独禁法に大きな修正を加えたり、あるいはその精神を乱すという考え方はございません。
  76. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 私はこの条文をすなおに読んでおりますので、これはやはり一応、特定産業振興臨時措置法の第一条の目的、それからこの第四号に掲げてある「産業構造の高度化を促進するためその発達を図ること及びその国際競争力を培養するため生産又は経営の規模の適正化を通じ産業活動を効率化することが必要であり、」こういう要件を備えている場合にのみ政令として指定し得る。この要件を備えていない場合は政令として指定すべきものでない。したがって、一応法律業種を全部特定してしまうほど窮屈ではありませんが、といってこの条項があるから、どういう業種であっても業者から希望があれば指定できるという性格のものだというふうには解釈しておりません。したがって、おのずからそこに政令として指定し得る限度があるのではないか、かように考えております。
  77. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はこの第九条の共同行為から見ましても、実質的にこれは——きょうは午前中の時間がもうきておりますので、以下数多くの質問点を持っておるわけですが、時間がありませんので、あと質問は一応留保することにしまして、いわゆるこの第九条から見ても、九条の第一項の第一号から第六号までの具体的な条項というものは、明らかに独禁法に対して大きな穴をあけるような条項だと思うわけです。こういう点についても、いままでの法律ではここに掲げられておるものはほとんど質的な問題点として——単独法ではこういう条件はないわけでありまして、明らかにこの一号から六号までの条件は独禁法それ自体に大きな穴をあけるものであると思われるわけです。特にいまの公取委員長なり大臣答弁では、基準に適合したということを強調されておるわけですが、この九条の関係からいきますと、特に公取委員会は第九条の第一項及び第二項の申請にかかる共同行為が第三項の一から四号までの条件に合致しておれば、この申請を許可しなければならない、こうなっておるのですね。ですから、こちらにはなるほど条件は四項ほどありますけれども、現実に申請してきたものは許可しなければいかぬということが、この条文からいくと大原則になっておる。そういうことになれば、やはり現実の振興基準をきめて、そうしてその共同行為を認めるかどうかということについては、これは事実問題としては申請してきたものをチェックして排除する。これは基準に合いませんということで排除する分野というのは、ワクがあっても非常に少ないし、ほとんど認める結果になる。そのことはやはり独禁法自身の実質的な大幅緩和に通ずるのではないかと私は思うわけですが、その点についての見解を聞かしてもらいたい。
  78. 渡邊喜久造

    渡邊(喜)政府委員 三項の申請を許可しなければならないということは、御説のとおりであります。この点については、こういう考え方で主として法制の技術的な関係で法を書かれたと思っております。許可してはならないという場合と、許可しなければならないという場合と、二つ考えられるわけですが、結局こういった問題はいわゆる法規裁量といいますか、こうした条項が現実に当てはまっている場合に許可するあるいは許可しないということで、一号から四号までの消極的な規定に該当する場合はもちろん許可してはいけないわけです。許可してはいけないという書き方と、許可しなければならないという書き方と、どちらをとるかということがこの条文整理の過程で議論があったらしいのですが、この振興法自体が一応ある程度のカルテルを弊害のない限度において推進しようというたてまえにあるがゆえに、許可しなければならないという書き方をしたと聞いております。しかし、許可してはならないという書き方をいたしましても、あるいは許可しなければならないという書き方をしましても、結局一号から四号までの条項に該当するか該当しないかということが問題であるわけです。したがって、私は実質的にはその両者がそう大きな違いを持つものというふうには解しておりません。
  79. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私はこの特振法に関連をして問題になっておる、たとえば法律目的にうたっておりますように、日本企業規模というものが非常に過小であるために国際競争に太刀打ちすることができないのだというような観点、あるいはこの法律は二転三転をして官民の協調方式に変わってきましたが、こういう過程あるいは過去の日本の歴史の中における、この種の法律ができた後においてどういう形で一人歩きをしたかというような立場からする属僚官僚の業界に対する支配介入、あるいは規模の過小性というものと過当競争というようなものの立場から、この特振法自身をどうしても成立させなければいかぬというような政府側の意見に対して、私は私なりの意見をまだたくさん持っておるわけですが、午前中の時間の関係もありますので、この点の政府側に対する質問をちょっとここで一服して、これに関連をして、わが党提案にかかる市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律、これについてお尋ねしたいと思うのです。  まず、午前中の時間の制約もありますので、かためてお尋ねをしたいと思います。  社会党提案にかかっておるいわゆる市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律目的は何かということ、これがまず第一点。  第二点は、この法律は現行独禁法の法域を大幅に拡大するものだという説があるが、提案者としてはどのように考えられるか。これは独禁法との関係です。  第三点は、私どもが党の立場から出しておる本法のような立法例が諸外国にあるのかどうか。  次に、この市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律の一部を特振法の中に入れて修正したらということが新聞で報道されたが、私の見解をもってすれば、この特振法の意図するものとわが党が出しておるこの法案とは質的、次元的な立場において大きな違いがあると思う。こういう新聞発表は、失敬な言い分だけれども、ジャーナリストの一つの誘導的な見解であって、いわゆる特振法の中にわれわれの条件を入れて修正するというようなことを前提としてわれわれは特振法に取り組んでないと私は思うわけです。ある場合には、私がいま質問したことは、お互い同一党派の中におりますので若干客観的には八百長的なかっこうになるかもわかりませんけれども、決してそういうことではない。そういうことでいえば、自民党が政府提案に対して質問できぬことになるわけですから、そういう点で決してそういう意味ではなくて、私は以上四点についてお尋ねをしておきたいと思います。
  80. 田中武夫

    田中(武)議員 藤田委員の四点について逐次お答えをいたします。もし私の答弁で足りないところがありまする場合に、同じく提案者である板川君から補足していただきます。  まず第一点の、社会党提出にかかわる市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律案、これの目的は何かということでございますが、まず同法案の第一条に目的を掲げております。そのことはお読みになっておわかりいただけると思いますが、一口に言うならば、自己の取引上の地位を利用いたしまして不当な対価による取引を、いわゆる経済力の強い立場を利用してそれを濫用する、そして中小企業あるいは一般消費者に大きな被害を与えることをチェックしていきたい、こういうことでございまして、もっと端的に申し上げますならば、現在問題となっておりますいわゆる管理価格であります独占価格あるいは寡占価格、こういったような管理価格に対しまして、現在独禁法をもってするならば十分なる監督といいますか、あるいはこれをチェックしてこれに対して値下げ等の措置令を出すことができない。そういうことに対して、本法でそういった管理価格に対してチェックをし、さらに進んでは適切な措置、たとえば公表あるいは命令等を出すようにいたしたい、こういうのが目的で、ございます。  第二点の、わがほうの提出経済力濫用防止法と独禁法との法域の関係でございまするが、御承知のように独禁法のたとえば二条七項等では、公正な競争を阻害し、あるいは一定の取引分野における、こういうような条件をかぶっておるわけでございます。したがいまして、具体的に一つの問題が独禁法違反であるやいなやとかいう議論になった場合に、まずそれが公正な競争を阻害することになるのかどうか、あるいは一定の分野における競争を排除しているのか、どうかということが疑問になると思います。そこでわれわれのやつは、そういうことをかぶらずして、即不公正な取引としてチェックをしていく、こういう点でありますので、その間に関する限り、法域といいますか、対象が広くなる、もっと申しますならば的確に対象をとらえていく、こういうことになろうと思います。もちろんそのことは公正取引委員会の機構の拡充あるいは強化、こういうことを前提とせねばならないと思いますが、そういう意味におきましては独禁法よりかこの法域を広くしておる、こう解してもいいと思いますが、私は法域を広くするというより、端的にその事実をつかまえていくのだ、こういうことを申し上げることができると思います。  第三点の、このような立法例がほかにあるのか、こういうことでございますが、西ドイツでは一九五七年に競争制限禁止法という法律が出ております。その第三節で、市場支配的企業者、こういうことをうたい、その二十二条で市場支配的企業者の定義をいたしております。その定義は、わがほうの案の第二条とほぼ同一でございます。そこで、われわれは、これを立案するにあたりまして、まず西ドイツのこの法律競争制限禁止法を一つの参考にしたことも事実でございます。また、イギリスには最近そのような立法があったと聞いておりますが、その詳細はまだ調査いたしておりません。  最後に特振法とそれから市場支配的事業者経済力濫用防止法、これをつきまぜては、というような意見があるがどうかということでございますが、藤田委員も御指摘になったように、この法律はなるほど特振法の代案としてわれわれは考えました。もし特振法が何らかの形で成立するとしたならば、なおさら本法案が必要である、こういうふうに考えております。しかし本法案の趣旨を特振法に入れてということは、理論の上ではできると思います。だがしかし、実際においてはどうかと考えております。と申しますのは、御承知のように特振法は五年間の時限立法であります。この時限立法の中にわがほうの恒久的規定、これを入れることができるかどうか、こういうことをまず検討せねばなりません。そういたしましたときに、理論的には入るようなことも考えられまするが、実際問題としては不可能ではないか。なお、そういう誤解が新聞等に出ておるということについては、五月七日の本委員会における私の答弁で、与党の質問に対して前向きに検討しようということに対して、前向きの検討はけっこうでございます、受けて立ちましょう、こういう答弁をしたところから言われておるのだと思いまするが、それはあくまでも、あの日はわが党の立法に対しての質問でございましたので、与党があくまでもわが党の提案、立法に対して真剣に取り組むならばと、こういうことを申し上、げたのでありまして、そのようにつきまぜてというようなことは、具体的にまだ考えておりませんし、正式な話も聞いておりません。
  81. 板川正吾

    板川議員 二と三の問題について補足をいたしたいと思います。  わがほうの市場支配的事業者経済力濫用防止に関する法律、濫用防止法、これが反対者の大きな意見というのは、独禁法の大幅な法域の拡大だ、ここに問題があるという議論が多いのであります。しかし私は、この法律は決して独禁法の法域の大幅な拡大ではないと思うのです。なぜなら、いま御承知のように、独禁法では、いまの独禁法を中心とする経済法の中で独占企業における価格、これはほとんど認可制をとられております。たとえば電気にしましても、鉄道、バス料金等にいたしましても、これは認可制をとっておる。完全独占企業体においては、この企業体の利益と公益とを加味して認可制をとっておるのであります、また多数が協定をして独占的な価格を維持しようというカルテル価格、このカルテル価格についても独禁法がこれを違法としておるのは御承知のとおりであります。ところがその中間にあるいわゆる寡占的な状態における価格、われわれこれを管理価格といっておりますが、この管理価格については、いまの独禁法には明確な規定がありませんが、本来なら私は独禁法で取り締まるべきだと思います。現行独禁法では、多数のものが協定をして、独占的な価格を維持するというカルテル価格を禁止しているのだから、少数の企業間であえて協定をする必要がない状態のもとに、独占的な価格を維持するという管理価格の場合には、当然これは独禁法の対象になっていいという実は考えにあるのであります。完全独占については、国の規制を加えていることは御承知のとおり、先ほど言ったとおりであります。だからいまの法律のこの管理価格については、私は国家の規制が加えられていいんだと思うのですが、独禁法の解釈上ではいまそれがとられておらないのであります。今度のこの特振法の提案をしました産業構造調査会産業体制部会の報告書、ここには管理価格についてこういう答申をされておるのです。それは「管理価格がはびこると経済の効率が著るしく悪化するわけであるから、管理価格に対する配慮を怠ってはならないことはいうまでもない。従って、今後においては、価格形成の実態について十分な調査と分析が行なわれることが望まれる。管理価格を排除するための施策については、一般論としては、貿易自由化、関税引下げ、新規企業の育成等による競争の促進」これが一であります。二として、「事実の公表による世論の圧力の喚起」三として、「価格決定に対する政府の干渉等」があげられる。管理価格の現実に対して、こういった三つの点から規制を加えらるべきじゃないか、こういうことを産業体制部会において報告書を出しておる。ところがこの政府の特振法は、そういう点は全く無視をして、政府のそのほかの対策にしましても、この管理価格については事実を公表するとか政府規制を加えるということまで答申をしておるのに、何ら考慮を払われていないから、われわれとしてはこの法案を準備したといってもいいと思うのであります。そういう意味で、私はこの管理価格を規制しようという濫用防止法が、現在の独禁法を大幅に法域を拡大したというんじゃない、田中議員が言いましたように、それは一つの柱を抜きましたから、その点において拡大したことは事実でありますが、基本的に独禁法のワクを越えて独禁法を大幅に強化したというものじゃない、独禁法の不備を補完するという程度である、こう思うのであります。それから本法の立法例でありますが、田中議員が答弁せられたとおりであります。ただヨーロッパにおいては、御承知のようにEECが発足をしておりまして、EECのローマ条約八十六条ではこれと同様な規定がございます。それを見ますと、八十六条では、「共同市場内又は市場の相当部分内での自己の優越的地位を不当に利用するような、一もしくは二以上の会社による行為は、加盟国間の貿易がそれにより影響を受ける限度において、共同市場と両立しないものとみなされ、禁止される。そのような不当行為には、特に次のものを含めることができる。」(a)として、「不当な購入価格、販売価格又はその他の不当な取引条件の、直接又は間接の賦課」ということで、そのほか四項目並列をしてありますが、EECローマ条約の八十六条において、こうした同様な趣旨を条約として規定をしております。これに基づきまして、EEC諸国では、独禁法制に対する共同市場の共通した目標達成のために、いろいろの討議がなされております。これに従いまして、フランス等においても、最近法制化の整備がされたといわれておりますし、イギリスでは、委員会において要望を発表した。従来は、イギリスのは事後規制的な——カルテルや合併によって弊害が生じた場合には、弊害の生じたものを規制するという考え方であったのでありますが、今後はそれを事前に規制しようというような委員会の要望等が発表されて、近く法制化されるという段階であるそうであります。  以上、二点について補足をいたします。
  82. 小川平二

    ○小川(平)委員長代理 暫時休憩いたします。    午後一時十一分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らな   かった〕