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1964-05-19 第46回国会 衆議院 商工委員会 第45号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月十九日(火曜日)     午前十時四十三分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 始関 伊平君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君    理事 中村 重光君       浦野 幸男君    小笠 公韶君       大石 八治君    神田  博君      小宮山重四郎君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       長谷川四郎君    南  好雄君       村上  勇君    大村 邦夫君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       藤田 高敏君    森  義視君       伊藤卯四郎君    加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         通 商 産 業         政 務 次 官 田中 榮一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房         参 事 官)  宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      宮本  惇君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君  委員外出席者         参  考  人         (アジア経済         研究所所長)  東畑 精一君         参  考  人         (アジア経済         研究所理事)  渋沢 正一君         参  考  人         (アジア経済         研究所理事)  田島 秀夫君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 五月十五日  電源開発促進法の一部を改正する法律案内閣  提出第一七二号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件電源開発促進法の一  部を改正する法律案内閣提出第一七二号)  アジア経済研究所法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  まず、参考人出頭要求の件についておはかりいたします。  内閣提出電子工業振興臨時措置法の一部を改正する法律案審査のため、参考人から意見を聴取することとし、人選、日時、手続等に関しましては、委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  4. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、去る五月十五日に付託になりました内閣提出電源開発促進法の一部を改正する法律案議題とし、通商産業大臣より趣旨説明を聴取することといたします。福田通商産業大臣。     —————————————   電源開発促進法の一部を改正する法律案   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  5. 福田一

    福田(一)国務大臣 電源開発促進法の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  この法律案は、電源開発株式会社が建設する福井県九頭竜川水系電源開発資金の一部を国際復興開発銀行から借り入れるため、その借款担保を付する等所要規定の整備をしようとするものであります。  言うまでもなく、わが国電力需要は、産業構造高度化生活水準の向上に伴いまして、今後ともますます増大する傾向にあります。これに対する供給力としては、火力技術高度化等を反映して、大容量火力が中心となってゆく趨勢にはありますが、この火力経済性を確保するためには、ピーク供給用、さらには事故時の緊急用電源として、大貯水池式ないし揚水式水力を組み合わせることが最も望ましく、水力の建設と並行して一定割合水力開発することが必要であり、今後、原子力発電開発が進めば、水力開発必要性はさらに増大するものと思われます。  九頭竜川電源開発もこのような観点から昭和三十八年五月の電源開発調整審議会の議を経て、電源開発株式会社が着工すべき地点と決定されたものであり、昭和四十二年十一月と予定される本開発完成の暁には、増大するわが国中央部電力需要の充足に重要な役割りを果たすものと期待されております。  このような水力開発にはできるだけ長期低利資金を投入しなければならないことは申すまでもありませんが、国際復興開発銀行資金は十分このような要請にこたえ得るものでありますので、政府としては本年度以降約四年間にわたり、九十億円、二千五百万ドルの同銀行資金をこの九頭竜川開発に投入することに予定したのであります。なお、このような外貨借款わが国国際収支の改善に寄与するものであることは御承知のとおりであります。  しかしながら、国際復興開発銀行から融資を受けるに当たっては、従来の例からして電源開発株式会社の資産の上に担保を設定する等の手続を整備することが必要とされております。  よって、この際、電源開発促進法所要の改正をしようとするものであります。  以上がこの法律案提案理由及びその要旨であります。何とぞ慎重に御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  6. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で本案についての趣旨説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  7. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、内閣提出アジア経済研究所法の一部を改正する法律案議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため参考人としてアジア経済研究所所長東畑精一君、同じく理事渋沢正一君、田島秀夫君の三名が御出席になっております。  政府並びに参考人に対する質疑の通告がありますので、これを許可いたします。桜井茂尚君。
  8. 桜井茂尚

    桜井委員 アジアと申しましても二十数カ国あり、一国一国についてお伺いいたしますと十日以上もかかります。そこで、各論は一応省きまして、本日は総論的なことでお伺いいたしたいと思います。私は、通産外務農林等事務当局と一週間以上にわたり質疑応答をいたし、事務的段階における質疑はほぼ完了いたしております。そうして、本日の私の質問ないし提案内容については事こまかに事務当局にお教えしてあります。したがって、本日の答弁は、国民に対し政策を明らかにするという考えに立って、その場の言いのがれではなく、質問内容に対し要領よく明快に御答弁をお願いいたします。  さて、現在ジュネーブで行なわれておる国連貿易開発会議において、現地では、わが国西欧先進国グループからはアジアの一員であるという理由で除かれ、低開発国アジアグループからは先進国であるとして仲間からはずされ、このままでは身動きできない状態だといわれると新聞が報道しております。そうして朝海大使が新しい訓令を求めるためあわてて帰国しておりますが、このことの実情を明らかにしていただきたいと思います。  また、会議において、EECは初めからわが国とは別の立場をとっておる。たとえばフランス市場組織化案提案し、イギリス特恵待遇の問題でわが国と異なり、日本はほぼアメリカ同一歩調をとってまいりました。しかるにアメリカわが国反対を予想して、何ら事前に相談もなく補償融資の問題についてAA十二カ国と共同提案を行ない、わが国を窮地に立たしめていると伝えられておりますが、どうでございますが。このような状態では、わが国がOECDに加盟した目的の大半が失われると思うが、どうでございましょうか。そしてわが国貿易開発会議において消極的、うしろ向きであるといわれ、低開発国に対する立場が苦しくなっているといわれているが、いわゆる第一次産品買い付け輸入によって、日本はどのような影響を受けるのでございますか。また低開発国製品、半製品特恵問題、繊繊、軽機械、雑貨類の問題は、日本が主たる輸出国であるので、確かに困るのでありますが、しかし先進諸国側特恵問題についてわが国反対にもかかわらず決議してしまったら、わが国としてはどのように対処していくつもりでございますか。  以上、宮澤長官にお伺いいたします。
  9. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 たいへん広範なお尋ねでございますが、できるだけ御趣旨に沿いまして簡略に答弁を申し上げます。  国連貿易開発会議で、わが国がただいま御指摘のような特殊な立場にあるということは事実でございます。それはしかし、別にわが国としてそれを恥じるとか反省するとかいう必要のある問題ではないと思っております。すなわち有色人種として、ただいまのところただ一つ先進国であるということから問題が起こっておるわけでありますが、これは他の有色人種からいえば、将来自分たちが進みたい道を進んだ国である、こういうふうに考えられておるわけでございますから、そのこと自身をもちろん恥じるとか反省するとかいうことではないと思います。ただ現実には、それがある意味で多少羨望を受けたり、あるいはまた嫉妬を受けたりするようなことがないわけではございません。そこでこの会議は、やはり第二次大戦後に多数の国が必ずしもしっかり経済的基盤を持たずに独立をして、それらの国が持っておる地域格差、あるいは所得格差をこういう会議の形で是正をしたい、是正を要請するというよりは、むしろ是正要求するというふうな零囲気のものになっております。しかしこれは、従来こういう問題は戦争という形で解決されたことがあったわけでございますけれども、第三次大戦がないであろうと考えられるいまの段階において、ある意味で私どもは同情を持って考えてやらなければならない問題だ、基本的にさように考えますし、また第三次大戦がない限り、このような低開発国側動きというものは歴史的な必然性を物語っておる、後退することは将来ともないであろうというふうに認識をいたしておるわけであります。そこでわが国の場合、必ずしもそういう問題について十分に対処し得るだけの国内体制が整っておるとは私は申せないように思うわけであります。すなわち農業中小企業にいろいろな問題がございますことは桜井委員のよく御承知のとおりでございますから、深く同情はし、共感はいたしますけれども、さればといって具体的に彼らの要求を一々のんでいくというようなことはなかなか困難であります。同じことは、程度の差はございますけれども、アメリカにもイギリスにもあるいはEECにもあるわけでございます。  そこで、会議の最初の一月半は、ほぼ低開発国側のいろいろの要求先進国側が聞く、そしてそれについてとうてい実現不可能だと思われる分については、いろいろな批評をし、批判をいたしておるわけであります。ちょうどだだいま、ここらあたりから先進国側の何かの合理的だと思われる対案をぼつぼつ出さなければならない段階に立っておるというふうに考えます。そこで朝海大使帰朝を命じましたのは、先進国の中にも、ただいま桜井委員が御指摘のように、ここらで何か案を出さなければなるまいという動きがあれこれの問題についてございますし、また低開発国側も、最後まで実現不可能な案を固執するよりはある段階で妥協をしようということに出てくることがあるかと思います。したがってそういう段階に処してわが国として、三月の末に政府がきめました訓令範囲ではそれらの動きに対処できませんので、そういう現状を現地代表から報告をしてもらい、また政府としてこの段階に立っていかに対処すべきかということを決定いたしますために、朝海代表帰朝を求めたわけであります。  それから次の問題でありますが、まずわが国農業との関係はどうかということになりますと、非常に大まかに申せば、彼らの要求しております一時産品輸出は、概して熱帯産品が多いわけであります。また私ども極力これを熱帯産品範囲に限っていこうと考えておるわけでございます。と申しますのは、そうしておきますと、大まかに申して、わが国農業競合する部分がそうたくさんはない、こう考えておるからであります。しかし、たとえば茶でありますとかいうものはもちろん若干の競合がございます。砂糖も全くないとは申せないかと思います。少し極論をいたしますと、コーヒーとかココアとかいうものも、国内清涼飲料代替関係にあるというふうな議論もございますけれども、そこまでは考えなくてもよろしいのではないかと考えます。またタピオカのようなものは、国内の澱粉との競合考えられるかと思います。それから幾つかの、そう大きくはございませんが触れ合う部分がございますが、概して申せば、熱帯産品についてわが国農業とそんなに競合するものはないと印してよろしいのではなかろうか、こういうふうに考えております。  また次に、特恵の問題につきましては、ただいま後進国側七十五カ国が出しております案は非常に急激なものでありまして、たとえば一〇%以下の関税は即時撤廃をする、それ以外のものは五〇%引き下げを五年以内に行なうというようなきわめてラジカルなものでございますので、とうていこれを受けるわけにはまいらない。御承知のようにわが国特恵という制度を持ったことがございませんために、ただいま御指摘のように英国などが特恵というものを扱っておる、そういう経験となれを持っておりません。したがっていま低開発国が言っておるようなことは、これはわが国のみならず、先進国はどこも受けようとは思っておらないわけでございますけれども、もっとよほど緩和された形で案ができました場合には考えてみてもいいのじゃないか、しかしこれは案いかんによるというふうに私は考えておるわけでございます。  それから補償融資につきましてのお尋ねがございました。この問題は、補償要求するという考え方プレビッシュ思想でありますけれども、それは幾ら何でもひどいじゃないか、何か先進国側にあやまちがあって、それに対して償いをしろという考え方は間違っておるのではないかということについては、双方である程度考え方が近寄ってまいりまして、補償と言わず、何か足らざるところを補ってやる、現在使われておりますことばは、サブリメンタリー・ファイナンスということばが使われておるようでございますが、そういう思想に立っての事柄を何か考えてよいのではなかろうか。この点につきましては、英国は第二世銀の基金を使って融資をすることを考えてはどうかといった、大まかにそういう案、アメリカはもう少し原則論で、援助条件などをいろいろに考えたらどうかということでございますが、わが国は当初の訓令がこの点について非常に消極的でありましたために、二、三週間前まではこれに同調を差し控えておったわけでありますが、私戻りまして、これについては同調したほうがいいと考えましたので、外務大臣から同調して差しつかえないという訓令を出しております。アメリカに一時そういう動きがありましたことは桜井委員の御指摘のとおりでございますけれども、いまの状況はそういうことになっておるわけでございます。
  10. 桜井茂尚

    桜井委員 ちょっとつけ加えてお伺いしておきますが、鉱業のほうですね、これは世界各国先進国はもうほとんど輸入に待つというような傾向が非常に多くなっておりますから、大して影響はないのじゃないかというように私は思うのでございますが、その点はどうかということが一つと、それから補償融資の問題について、財政負担になるのじゃなかろうかという点がありますが、プレビッシュのように、以前からのものをあげてまいりますと確かにそうでありますけれども、今後の問題になりますと、輸入したものをたとえばプール計算するというような形になれば、必ずしも財政負担ということでなくてもできるのじゃないかというように思いますが、この点はどうですか。
  11. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 鉱業の問題は、このたびの国連貿易会議あるいはガット、両方とも問題があるわけでございます。国連貿易会議で申しますと、たとえばボーキサイトでありますとか銅鉱石でありますとかいうものが問題になるかと思います。ボーキサイトの場合にはわが国に問題がございませんが、銅の場合には問題があると思います。これはガットでもやはり自由化をめぐって問題があるのではないか。しかし、これは考えようによっては農業よりももっと始末のしにくい問題ではございますが、それほど大きな問題にはならないのではないかと思います。  それから補償融資の問題は、確かに桜井委員の御指摘になりますように、わが国だけというのでなく、先進各国が一緒になっておのおの分に応じて何かしようではないかといったような方向になら進んでよろしいものだと思いますし、多少の財政負担になることはあるかもしれませんが、しかしそれは本来世銀なり第二世銀なりに金を出すということがそもそも財政負担を覚悟でやっておるわけでございますから、そういう趣旨でなら私は同調していいのではないかと考えておるわけであります。
  12. 桜井茂尚

    桜井委員 次に、池田内閣はことしの初め、一九六四年の日本外交の課題として、近隣外交を掲げ、「わが国は、これら近隣諸国の願望や、その直面する困難を正しく理解し、友情に基づいた率直な助言と適切な援助を与え得る立場にあると信ずる」と言明し、さらに大平外務大臣は、「わが国民が、ただ単に経済進歩の高さを誇り、経済的繁栄の中に安住することをもって事足れりとするならば、それはアジア諸国民の信頼と共感をかちとるゆえんではありません。わが国は」「他のアジア諸国民の苦難をみずからの苦難と感ずるとともに、みずからの繁栄アジアの諸国民と分かち合う決意で進まなければならない」と述べております。  ところでわが国の全世界への輸出は、一九六〇年から六二年までの三年間に二一%伸びたのに対し、アジア貿易伸びは一一%で、伸び悩み状態になっております。またアジア地域に対する六二年度の輸出は十四億五千万ドルで、わが国輸出の一二%を占め、アメリカに次いで重要な市場であり、さらに輸入は九億六千万ドル、日本出超が五億ドルであります。そこでアジア地域に対する各国援助を見ると、六二年の実績では日本が一億五千万ドル、アメリカが十五億七千万ドル、イギリス、西ドイツ、フランスが計一億七千万ドルとなっております。英、独、仏の援助はおそらくタイ貿易になっていると思われますから、わが国からの輸出とは関係なく、アジア諸国わが国への支払いの赤字を補てんする資金源は、各国とも外貨準備が乏しいので、結局はわが国アメリカ援助に期待するほかはない。そこでこの五億ドルの赤字のうち、日本援助が一億五千万ドルでありますから、各国における外貨を減らさないという前提に立つならば、三億五千万ドルはアメリカ援助から支払われなければならないという勘定になります。  ところで、アメリカバイアメリカン政策を強化しているのでありますが、その影響は今後どのように考えておりますか、宮澤長官にお伺いいたします。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ただいまのお尋ねは、一番最後部分でございますが、アメリカバイアメリカン政策をやっていく結果、それがわが国にどのような影響があるか、ひいてはわが国東南アジアとの関係にどのような影響があるかというお尋ねであると思います。バイアメリカン政策が強化されるということは、いわゆるオフショアのプロキュアメントというものがなくなっていくということでございますから、わが国外貨収入にそれだけ影響があるということはそのとおりであると思います。したがって、その限りにおいて東南アジアにクレジットし得る能力が減殺されるではないかということも、そのとおりであると思います。しかし先刻御引用になりましたような、東南アジアに対するわれわれの基本政策でございますので、やはり外貨アメリカあるいはヨーロッパ等において政府、民間の健全な性質の起債をいたしつつ、外貨を蓄積し、そしてその余力で東南アジアの国々にクレジットをするという考え方をとっていくべきだと考えるわけであります。
  14. 桜井茂尚

    桜井委員 私が申し上げましたのは、ヨーロッパにいたしましても、おそらく内容としては具体的にはタイ貿易になるのではなかろうか、カナダもインドに若干タイ貿易をやっておるようでございます。したがって、ヨーロッパからの援助というものは結局ヨーロッパへ返るというようなことで、日本貿易の伸張に大きくは役立たないのではなかろうか、したがって、日本貿易を伸張するために、先ほど例で申しましたが、計算の上でいけば、三億五千万ドルからのアメリカ援助から支払われている勘定になるのですから、この分がなくなれば、その部分だけ縮小せざるを得ぬという結果にならざるを得ぬ。そこでこのバイアメリカン政策が強化されるとき、日本アジア貿易を伸ばし、同時にアジア諸国の発展を念願とするならば、新しいアジア政策というものを考えなければならぬ段階にきているのではなかろうか。  そこで次に、私は新しい提案を含めて御質問を申し上げます。  国連貿易開発会議においては、フランス提案のように市場組織化案提出されております。現実にも、EECとアフリカとの結びつき、あるいは英ブロック特恵や中南米においてはLAFTAがあります。アジアにおいても、マフィリンド構想なるものがいわれておりますが、いまのところ現実性を持っておりません。しかしたとえば戦前からそうでございましたが、インドシナやタイの米はマレーシアインドネシアに売られており、現在でもこの傾向は存在しております。また日本マレーシアインドネシアから、すず、ボーキサイト、鉄、ゴム、石油、木材等輸入しております。そこで、たとえば六十一年においての数字によりますと、日本タイインドネシアに対してそれぞれ一億一千七百万ドル、九千八百万ドルと大きく出超でございます。マラヤ北ボルネオに対してそれぞれ一億六千九百万ドル、七千四百万ドルと大きく入超になっております。タイ日本に対して前述のような入超であり、マラヤシンガポールインドネシアに対してはそれぞれ七千二百万ドル、二千六百万ドルと大きく出超でございます。マラヤ日本に対して前述のように大きく出超でございますが、シンガポール日本に対して七千七百万ドルの入超であり、マラヤシンガポールとしてタイインドネシアからはそれぞれ七千二百万ドル、一億三千九百万ドルと大きく入超でございます。さらにインドネシアマラヤシンガポールに対して前述のように大きな出超でございますが、タイ日本に対しては九千八百万ドル、一億一千七百万ドルと大きく入超でございます。これらを三角貿易の形態でバランスをいたしますと、非常にうまくいくのでございます。何か貿易決済に関する協定を結び、国際的決済機関をつくるというような方法で解決する考えはございませんか。もちろんわが国帝国主義的考え方があってはならないし、それに加入する国の範囲等で、フィリピン——フィリピン日本入超でございますが、フィリピン、ビルマ、カンボジア等いろいろ考えられるし、現在マレーシア問題でインドネシアフィリピンなどの間で衝突もございますので、直ちに実現するというわけにはいかないと思いますが、将来への展望として大きく考えていくということはお考えになりませんか。これは通産大臣宮澤長官とお二人にお伺いしたいと思います。
  15. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに御指摘のような実情でありますし、そういうことは考えられるわけでございます。過去においても幾たびかそういう考え方が議論されたことがございますし、また最近、あるいは通産大臣がことにその問題をお考えではないかと思うわけでございます。  いまの段階の問題としては、二つ問題がございまして、それは国連貿易会議などでいろいろな問題が討議されますと、たとえばアメリカはラテンアメリカというものを一番身近に持っておる。フランスはアフリカの旧植民地との関係が濃い。英国はいわゆるコモンウエルスとの紐帯が強いということで、ともすると問題を先進国共通の立場で取り上げずに、地域的に自分の都合のいいところだけ片づけていこうという傾向がございます。その場合、もとよりわが国東南アジアに一番関係が深いわけでございますけれども、わが国だけでこの東南アジアの仕事を背負っていくのには、いま目先は少し負担が重過ぎる感じがいたします。そこで私どもとして望ましいことは、お互いにそういう地域的な構想を持ってもいいけれども、それらの地域にお互いに関係をし合おう、つまり先進国共通の立場で問題を処理していこうというふうに会議では申し、またそういうふうにわが国なりにリードしてきたわけでございますので、そういう地域的な構想というものは決して否定いたすわけではございませんけれども、各国が自分の、いわば勢力圏ということはよろしくないかもしれませんが、そういうところへ閉じこもるという風潮は排除したいという気持ちがございます。それからもう一つの問題は、わが国がIMFの八条国になったということとの関係でただいまの問題がどういうふうな関係になりますか、ちょっとその点私も不確かでございますが、何か問題があるのかもしれないというふうに思います。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま企画庁長官がお答えをいたしたことで、私の意見もほとんど代表されておると思います。私は、やはり日本東南アジアに位しておるという立場から見て、何らかの東南アジアに対する構想はひとつ持ちたいものだと、こう思っております。ただし、それならばラテンアメリカとかアフリカに全然関心を持たないでいいか、そうはいかない。企画庁長官が言われたように、地域開発構想を推進する場合においても、日本はアフリカの問題にもラテンアメリカの問題にも関心を持ち、場合によっては協力する態勢でなければならない。また東南アジアの場合におきましても、日本だけでやるというのは、私はそこに経済的な理由だけでなくて、政治的なまた無理が起こってくると思うのであります。したがって、やはり国際的な協力の立場において、しかし日本としてはできるだけ力を入れていく、こういうような考え方で処理をいたしてまいってはどうか、こういうふうな感触を持っておるわけであります。
  17. 桜井茂尚

    桜井委員 私はこの点につきましては事務当局にもすでに十日ほど前から申し上げて、よく検討しておいて答弁してくださるようにお願いいたしておいたのでございますが、先ほど申し上げましたとおり、首相も外務大臣も、東南アジアについてとにかく現地住民を援助する、日本も苦楽をともにするのだという考え方を、本年の初頭の演説で明らかにいたしております。そしてもちろんこういう考え方でいって、へたにかつての軍国主義的なものと結びつけられると非常に困りますので、そういうことではなしに、ほんとうに東南アジア開発援助その他の各種の援助国民生活の向上ということと結びつく、そういうことで私も考えたいと思っておりますし、本日はアジア研究所の問題で東南アジアに限って一応議論いたしておりますので、もちろん日本貿易EECやラテンアメリカやあるいはアフリカに伸びなければならぬし、そういう世界的な貿易という観点は持たなければならぬということは重々私も承知いたしております。しかしその問題はその問題として、ともかくアジアに限って考えた場合に、そしてアジア援助し、アジア国民生活を向上し、日本もまた貿易関係におきましてこれを発展させるという見地に立ちますときに、少なくともこういう決済機関を協定として考えられないものだろうかということをお伺いいたしておるのであります。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどややさだかでないと申し上げましたし、実はただいまももう一つはっきり御答弁するほど知識を持っておるわけではございませんが、そういう決済方法を二国間でいたしますことには、少なくともIMFは強い異論を持っておるわけでございます。たとえばわが国と韓国との間のオープン勘定などは、八条国に先般なりますときに、やはりかなり問題になったわけでございます。ただ御指摘になっておられますのは、多国間のクリアランスの機関をつくっては、こういうことでございますから、基本的な趣旨でいえば、本来IMFというのはやはりそういう性格を持っておるはずなのでございまして、したがって似たようなことを、競合関係に立つわけではございませんから、多国間でやるということは二国間とは性格的に違うではないかということは、言って言えないことはなかろうかと思いますが、接触をしたことがございませんので、さだかでないと申し上げておるのでございます。その問題の処理がつきますと、桜井委員の御指摘のような構想は確かに非常に興味のある、また現実的に効果のある構想になり得るのではないか。実は御提案がありましたことを私不在で存じませんで、もう少し勉強して申し上げるべきであったのでございましたが、用意がございませんのは申しわけないと思います。承りますと、そういうふうに感じます。
  19. 桜井茂尚

    桜井委員 国連におきましても、たとえばエカフェとかいろいろと地域間のことは認められているわけなんです。ですから、私は、IMFにおいてもこういうことを原則的に否定するものではなかろう、こういうように考えているわけなんであります。では、まだ御研究が不十分なようでございますので、ひとつ御研究をお願いしたい。これでこの点につきましては質問はやめます。  次に、日本輸出を伸ばすためにも、アジア諸国に経済力をつけるということが基本であり、アジアに対する日本援助が必要でございます。こういう努力なしにはアジア貿易は大局的には期待できないのではないか、こう考えるのです。そして、日本アジア諸国に対してどのような援助考えているのか、賠償、国際機構を通ずる経済援助を除いて、わが国独自の経済援助はどういう点に重点を置いて考えているのか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来賠償がございましたので、事実上そういうことが行なわれておったわけでございますが、これも先が見えておるわけであります。したがって、その後の事態をどう処置するかということは、実は私は、わが国の場合、その問題意識だけは非常にはっきりしておりますけれども、少しからだのほうがそれを背負っていくほどの力を持っていないというようなきらいがあると思います。一つの方法は、従来からもやっておりますが、開発輸入といったような方式、これはたとえばタイ国でトウモロコシをつくってもらっておるというような、あの方式でございますが、これはこれからも非常にうまく動き得るのではないかと思います。それからもう一つは、輸出入銀行あるいは経済協力基金等を通じての融資、出資等々を相当思い切ってやっていくということになると思います。しかし、輸出入銀行の場合にはかなりコマーシャルな色彩が強うございます。もう少し長い目で援助をしていくということが経済協力基金あるいはその他の方法で考えられなければならない、まさにそういう段階であるのでありますけれども、具体的にこういう構想でということがまだまとまっておらないのが現状であろうと思います。
  21. 桜井茂尚

    桜井委員 ところで、いまおっしゃられました開発輸入や技術協力につきましてはあと回しにいたしまして、低開発国が本格的に経済を発展させるためには、経済活動における循環の歯車がきちんとからみ合って、らせん状式に回転して拡大していくのでなければスムーズな発展にはならないと思うのでございますが、どうでございましょう。通産大臣にひとつ。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりだと思います。
  23. 桜井茂尚

    桜井委員 そこで、アジアの低開発国ことに南方地方は、歴史的に見て経済が拡大再生産に向かうべき原始的資本の蓄積がございませんでした。蓄積らしいものといえば、それは植民地主義に基づく母国による鉱山開発とエステート農業であり、次には主として流通部門を担当した華僑やインド人による商業資本の蓄積でございました。そして原住民は村落共同体的古い秩序の中に停滞のまま放置されてまいりました。戦後、独立を獲得し、植民地資本を追放し、華僑やインド人にも制限を加え、いま現地民が独自の経済発展を遂げようと努力している段階であります。そこでこれら国家が取り上げた植民地資本は、原住民経済とは体質的に異なったものであります。現在までの外国援助にいたしましても、軍事援助が経済発展にほとんど役立たないことは言うまでもない。その他の経済援助も、その大部分が道路、鉄道、港湾、空港、発電所、上水道、病院、研究所、試験所等の公共投資であり、経済発展の条件整備にすぎません。日本のスマトラ石油のような開発援助も、現地経済の構造的発展に直接役立つというようなものではない、こう思います。また、各国の行なったプラント輸出による近代的工場がつくられましても、稼働がアンバランスであり、経済協力白書でも述べておりますが、一九六三年半ばまでの生産事業関係の企業進出二百三十件をとって調査したところ、そのうち約二〇%が事業を中止し、あるいは所期の利潤をあげられず、非生産的な、むだの多い投資になっていると述べております。もちろん、経済発展の基礎条件をつくる公共投資が重要であり、低開発国外貨を補給することも必要であり、上からの開発も大切でありますけれども、本来、近代的工業はこれとの関連産業なしには成立せず、部品一つとっても、中小企業なしにはこわれたときすぐ困ってしまいます。またマーケットなしには成功はいたしません。さらに技術を持った労働力がなくては経営も運転もできません。だから、現地経済を構造的に高める方策に基づく援助こそが本格的な援助だと思うのでございますが、この点、東畑先生と通産大臣にお伺いいたしたいと思います。
  24. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はお説のとおりだと思っておりますが、ただこの場合、われわれとして注意をしなければいけないと思うことは、われわれがこうしたらいい、ああしたらいいというような発意をあまり強く出すことによって、こちらが何かいかにも何らかの意図を持っておるがごとき印象を与えることは、非常におもしろくないと思います。したがって、国会等の場において御答弁を申し上げ、あるいは議論をする場合においても、これはお互いに巖に慎んだほうがいいのではないか。現地住民あるいは現地の人たちの総意が出てくるような援助を与えていく、こういうやり方で、できるだけそこの国民の意図に基づくものであるというふうにしていくべきである。また、そういうことを開発する場合でも、その国が本気でそういうことは必要であるということを考えていく場合においても、やはり相当段階的にやらなければいけません。だから私は、そういう意味合いにおいて、われわれが望ましい姿ということと、事実の問題との間には、やはりかなりのギャップが出てくるのではないかということを考えておかなければならぬと思うのでありますが、根本の趣旨といたしましては、私は賛成でございます。
  25. 東畑精一

    東畑参考人 いま桜井さんのお話、非常に有益に拝聴いたしましたのですが、率直に申しまして、私今日において——と申しますのは、考え方としてもそうでありますが、また事実といたしましても、大体二つの流れがあるのではないか。一つは、後進国開発、工業化といいますか、大工業を入れてやる、それが大きな起動力になって発展するのだという考え方があると思いますし、事実そういうことが行なわれております。もう一つ考え方は、もつと卑近なことになりまして、とてもそれはできない、できればけっこうであるが、もっと手近な道は、せめて食糧の自給ができるようにといいますか、一次産品の発展ということに尽くして、それによって将来大工業が入り得る条件をつくっていこう、こういう二つの考え方があると思っておりますが、どうもこの、アジア諸国におけるクーデターがございましたのですが、クーデター政権ができたあとでは、あとの考え方のほうが強くなってきたのではないか、私はこう思っております。それは、いま桜井さんのおことばを借りて言えば、中小産業とでも申しますか、これによって現地の人に近代的産業へ至る訓練を遂げていくのだ、こういう考え方があります。御承知のようにイギリス系統の植民地におきましては、比較的いい官吏だとか、それから企業者というものが養成されておったと思いますが、幸か不幸か他の植民地関係ではあまり企業者的な人を養っておりませんので、急激に大工業を運営するということはなかなか困難ではないか。むしろ手近な道において——まあ私は過去の日本が明治にやったあの道だと思いますが、現地産の第一次産品の加工であるとかいうこと、つまり農産物加工ということ、あるいは食料品加工、こういうことになるかと思いますが、まあ現代の範疇で言えば中小企業ではないか。これが実は手近な道でもあり、いままで比較的軽視されておった道ではないかと思う。私は個人的に申しますと、大工業のやり方が少し焦慮に過ぎると申しますか、急ぎ過ぎたということになる、わりあいに道が結びにくい、したがって中小工業的なほうから進むべきではないかというのが、私は実は個人的にはそういう考えでございます。
  26. 桜井茂尚

    桜井委員 いま東畑先生のお話がございましたとおり、そういたしますと、基本的には農林業の発展と、これに結びつく中小企業の層の厚みを増すということが非常に必要なこととなります。したがって農業技術の援助中小企業育成のための援助が必要となります。そこで経済協力白書にもこのことは指摘されており、ことにわが国が適任であるとも述べておりますが、政府はほんとにそう考えているのでございましょうか。——それならば、技術援助についてはあとで聞きますのでしばらく留保して、現在まで現地中小企業にどのような援助をしてきたか、そしてわが国からアジア中小企業はどの程度出て行ったか、さらに中小企業の進出に対して政府はどのような援助を与えたか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  27. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私、所管でございませんし、つまびらかにいたしませんので、政府委員からお答えいたします。
  28. 二階堂進

    二階堂委員長 だれか答えられますか。
  29. 桜井茂尚

    桜井委員 それでは、宮澤長官はいなくなるそうですから、この点の質問は留保いたしまして、続けます。  これと関連して申し上げておきますが、政府中小企業の資本進出や合弁事業を実は考えているようでありますが、台湾やマレーシアタイのような創始産業法の施行されているところや、自由港である香港等では若干の可能性もございましょうが、インドネシア、ビルマ、カンボジア、セイロン等では問題になりません。インド、フィリピン、パキスタン等でも困難であります。さきに申し述べましたとおり、原住民は低賃金のまま放置されておりました。もちろんマニファクチュア段階も経ず、ブルジョアジーはほとんど存在しません。このような社会構造が中小企業存立の前提条件を欠いていることは言うまでもありません。だから、ここでは自由主義経済に基づく中小企業の発展は望めないと思うのでありますが、どうでございますか。しかも民族意識の強いこれらの国に対し、いかにしてわが国中小企業が民間ベースで進出し得るのか教えていただきたい。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 知識が貧弱でございますけれども、たとえばそういう技術者の養成については、わが国でコロンボ・プラン等々でかなりの人を来てもらいまして教育をしておりますことは御承知のとおりであります。これらの人々は技術を持って帰るわけでございますが、さてそれがただいま御指摘のようなこともあり、また多くが軍国政権であるといったような関連もあって、どうやって資本を得て中小企業になっていくかということになりますと、問題があろうと思います。しかし、たとえばわが国インドネシアに対してやっておりますように、これももとは実は軍の関係になるかもしれませんが、軽三輪車のようなものを実際に出しまして、そしてその修理関係の下請を現地中小企業タイ・アップしてやっていく。現実にそういうことが行なわれつつあるわけでございます。これはそういう完成品が輸出されたことに伴って、その修繕あるいは行く行くはパーツをつくるというところまでいくかと思います。そういう形でぽつぽつながら動き出しているのではないだろうか。私も十分知識を持っておりませんが、いずれにしてもあまり広範に東南アジア各国で、ただいま御指摘タイマレーシアなどは別でありますが、そういうことがいまたくさん申し上げるほど行なわれている実情ではないと思います。
  31. 桜井茂尚

    桜井委員 おっしゃるとおり、ほとんどないのでございます。ですから先ほど確認いたしたのでございますが、現地経済の構造的発展の中に中小企業を発展させる。先ほど東畑先生もおっしゃいましたとおりに、そういう方向への発展の道というものが、それがない。そういう点に対して発展の道をつけないならば、現地住民の生活水準も向上いたしませんし、本格的な経済の発展にはなりませんし、再び植民地的な経営という形に堕するおそれさえあるのであります。したがって経済の構造的発展の中に中小企業を誕生させ、これを確立させていく。そのためにも農林業の基礎的発展が必要となります。その生産と、これは重要なことでありますが、流通であります。流通と結びついた中にこそ中小企業は根をおろすのであります。  そこで、先日アジア協同組合閣僚会議並びにアジア農業協同組合会議が東京において開催されましたが、そこで問題になった点は——宮澤さんもお出かけになるそうですから先にお伺いしますが、さらに現地中小企業発展のために、現地の事情に即したわが国政府の確固たる援助が必要だと思います。そしてまた先ほど申し上げましたが、この比較的低賃金でもって企業を運営するなどというような行き方、これはわが国経済の中小企業の発展ともぶつかるわけであります。香港であるとか、あるいは韓国であるとか、そういうところにおけるそういう行き方というものは、日本の経済の発展とぶつかる。ところが現地経済の国民生活水準の向上ということと結びついてまいりますならば、マーケットがそこに自然に拡大されていく形でまいりますから、したがってそこではぶつからない。わが国中小企業の機械工業といたしましてはむしろマーケットが拡大するということにさえなる。そしてわが国経済では機械工業というものが一番ネックになっているわけなんです。この機械工業の将来の展望のためにも、そして、そのマーケットを拡大していくためにも、そういうことが必要なんじゃないか。さらにまた先ほど申し上げましたとおり、企業としてはこれは成り立たないのです。相手にブルジョアジーがいないのです。資本がないのです。ですから先ほどちょっと御質問申し上げておりますけれども、農協会議でもたしか問題になったはずです流通機構の確立がまず先決になる。そしてその流通機構の確立を通じて集荷し、そこでそのものを生産していく。そしてその場合におきましてはわが国援助というものは、単にコマーシャルベースによるところの援助ということではとてもできない。したがって技術研究機関というものが設置されるにいたしましても、その技術研究機関が同時に実務を行なうような、そして現地における生産と直接結びつくようなそういう形の技術研究機関、中小企業、こういうものがたとえば農協育成の過程の中に確立されていくということでないならばとてもアジア現地の構造的発展ということは困難でございます。こういう点につきまして長官の御意見をお伺いいたしたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のような問題が現実に存在しておると思います。現地農業あるいは中小の商工業を中心に経済基盤が築かれていくという過程において、一部にわが国競合するものがあるかどうか。現地の人々はこのたびの会議などでも、そういう製品輸出ということを考えます。それは先ほどからるるお話のように、国際収支にギャップがあるからでありますが、したがってそこで特恵という問題あるいは一次産品についても関税、非関税障壁の撤廃の問題が出てきているわけであります。しかし非常に大まかに申しますならば、工業製品についてわが国自身がいつまでも造花をつくっていくとか、あるいは太い番手の糸を引くとかというようなことをやっておるわけではなかろう。わが国自身の事情から、やはり工業自身が高度化する。これは昨年、国連貿易開発会議の前に、各国の学者がイタリアに集まりまして、国際的な分業が必要であるという結論を出しました。しかしそこまでのことを現実にすぐどうというのではありませんけれども、そういうことは徐々に実際起こりつつございますから、まあ競合と言ってもそうたいしたことはないのではなかろうか。農産物についてもまあまあ、問題はございますけれども、そう神経質にならなければならぬほどのものではなかろう。したがってある程度のものは買えるものなら買ってやる。そして現地の経済が、下部機構ができ上がってくるのを助けると申しますか、そういう心がまえは必要なのではないかと思います。
  33. 桜井茂尚

    桜井委員 最後一つ宮澤さんに新興国が近代化を急ぐあまりに、近代工業を急速に確立するという気持ちはよくわかります。先ほども申し上げましたとおり、公共事業をたくさんやるとかあるいは上から経済発展を促進するとか、こういうことも重要であるということは私も重々知っているのです。ただしかし、ほんとうに原住民の国民生活向上をはかるというためには、現地経済の構造的発展がなければならぬのだ。そのための援助としては、先ほど来申し上げましたとおり企業進出という形、コマーシャルベースによる行き方ということでは、現地に資本がないからできないのだ。したがってそういう行き方ではなくして、現地に資本を蓄積させるように、そしてそういう経済循環をつくり上げるように日本の技術研究機関を、実際はそうでありますると同時に、わゆる企業としての実務を行なうようなものとして、実質的に活動できるようなものとして確立していくというような援助の方式は考えられないか。こういう援助の方式をやっていくということになりますと——私は大規模な開発援助をするなと言うのではないのです。それはそれとして、そしてそういう方法をやっていくならば、先ほどから言われている日本が本質的にお金がないのだということもありますけれども、日本として一番やりやすく、しかも能力のある部面でもないか、しかも日本として可能な方向でもなかろうか、こういう点を国際機関において宮澤長官は発言していくというお気持ちはございますかどうか。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう気持ちがございます。たとえば漁業についてはそういうことがかなり可能であるし、一部行なわれておると思います。また農業にいても開発というようなことは、若干ではございますが行なわれつつあります。問題は、私はおっしゃっておいでのことに基本的に賛成でございますが、技術指導研究機関なるものが経済活動に入るということは、やはりよほど現地と話をいたしてからいたしませんと、外国資本というようなことになっていくのではないか。そこまでお互いに信頼関係が出てくれば、これは問題も起こるまいと思いますが、その点だけは注意しつつやったほうがいい。しかし基本的にはただいま仰せられましたようなことが、おそらく一番の近道で着実な方法であるというふうに考えます。
  35. 桜井茂尚

    桜井委員 まだ私質問を続けますけれども、宮澤長官お帰りになるそうですし、中村さんが出かけたいというので、先に中村さんにちょっと……。
  36. 二階堂進

    二階堂委員長 中村重光君。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 アジアの経済開発の問題について、せっかくの機会ですから東畑先生にいろいろお伺いしたいのですけれども、残念ながら時間がありません。二日間にわたってアジア経済研究所の運営の問題にしぼって若干お尋ねしてみたいと思います。  先日の委員会東畑先生は、アジ研も高度成長をしたのだ、こういうことでございますが、せっかく御労苦を願っておりまして、確かにアジ研がアジア経済の振興の問題等について積極的に取り組んでいただいておるということについては敬意を表しておるわけです。ところがいろいろ予算の問題その他運営の問題等において、東畑先生をはじめとする幹部の皆さん方の意に反する面も多々あるのではないかという感じがいたしますので、率直にお尋ねをいたします。  このアジ研をさらに拡大強化をしていかなければならない、内容的に充実をしていかなければならないということから拡大計画をお立てになり、いわゆる七カ年計画をお立てになったと記憶いたしておるのであります。ところがなかなか計画のとおり進まない。こういうことから、今度また四カ年計画を策定しておられる。職員にいたしましても百八十数名かと思うのでありますが、これを二百七十名くらいまでふやしていこうというような計画があるように伺っておるのであります。過去においてそうした計画が成功しなかった。今度また四カ年計画を策定して強化をしていこうということでございます。これは非常にけっこうなことでございますけれども、はたして政府側がそうした計画に協力をするのであろうか。そういうことに対しての東畑先生の見通しなり、あるいは過去の運営上から見た問題点ということに対して、率直にひとつお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  38. 東畑精一

    東畑参考人 アジア経済研究所が高度成長をしたと申しましたが、実は急激に人員、予算その他が大きくなりまして、その高度成長ということに伴う問題はこういう点でございます。それは、どの研究も、大体研究グループといいますか、何人かが共同研究をするというのが、その通例の形になっておりますが、実はなかなか上の人といいますか、比較的リーダーになるような人はなかなか求めにくうございまして、リードされるほうの人は若い人をたくさん、求めることができたのでありますが、それで少し下がふくらみ過ぎたということになりまして、上のほうのリーダーシップというものがなかなか困難になった。そういう意味が、私が申します高度成長に伴う弱点であるということを感じたのであります。ですから、もとの計画というのはただ七カ年計画というのは、一定の希望ということでありまして、それほど現実的に強いものではございませなんだのであります。だから多少人の募集をストップいたしました。どうも外からいい人を必ずしも求められない。これは内部で養成していくという以外には大きな道はないのではないか、こういうことに気がつきまして、人員の募集を、おととしでありますか、急に減らしまして、スローダウンいたしておるわけであります。幸いにしまして、第一回、第二回、第三回というふうに採ってきた連中が、現地において二年ずつくらい研究してきたものが帰るようになってまいりました。それで多少の序列ができてまいりました。あらためて序列ができた範囲において研究体制をひとつ強化していこうではないか、こういうことで、前回申しましたが、いわゆる案としては修正案でありますけれども、現実的に申しまして、ほんとにやろうかという意味から言いましたならば、まず最初の案ではないか、こう思います。政府がそれをどういうふうにごらんになるか、これは問題だと思いますが、私はおそらく過去の実績、それから将来の能力ということを御判定になって賛成を得るのではないか。これは決してうぬぼれた考えではございませんのでして、それは、事ほどさように問題がたくさん出てまいりまして、やればやるほど、もっとやらなければならぬということになってくるというのが日本実情ではないかと思っております。きょうも、先ほどもお話をお伺いしておりまして、貿易でも新局面に入ったわけでありますが、それとの関連におきましても、後進国の問題というのはたいへんやっかいな問題ではないかと思う。正直に申しまして、何を一番やったらいいかということを言われても、私自信を持って答えられるものではございません。一歩一歩研究を深めていくということになりますと、人員の必要なのはおそらく政府は承認してくれるんではないか、こういうように考えております。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 若干議論になるのですけれども、確かに先生おっしゃったとおりですよ。幹部はそう急に育つものではない。相当の期間も必要になると思います。ところが、これは財団法人から特殊法人となって相当な期間がたったわけですね。その期間にほんとに若い人たちを育てていこう、プロパーの職員をして幹部に育て上げていかなければならぬ。そういう意欲でもって育てていくのと、そうでなくて単なる機械的な事務に携わる人または幹部級は、通産省あるいはその他関係各省からの出向に求めていく、こういうような形でいったのでは、いつまでたっても育たない。下がふくらみ過ぎたといっても、これはふくらみ過ぎたのではない。幹部と比較をしてふくらみ過ぎたというようなお答えだったのであろうと私は思うのであります。東畑先生が実際にアジ研の運営をどこまで掌握をしておられるのかわかりませんけれども、私は、いま先生がお考えになっておることが実際の姿じゃないんじゃないかと思う。というのは、もっと意欲的に、ともかくプロパーの職員を養成をして海外に対する派遣もやらせなければならぬし、国内組織の面においても十分これを活用していく、そういう態度でもって取り組んでいただくならば、私はもっと優秀な職員が幹部として育つことは可能であると思っております。そういう点に対して問題があるんじゃないかと思いますが、そこらあたり率直な考え方をひとつ聞かしていただきたい。
  40. 東畑精一

    東畑参考人 アジア経済研究所の全体を掌握をしておるかどうかという質問、なかなか痛い質問でありますが、私としてはその努力はやっております。内部の連中も育ってまいりまして、管理業務というようなことをやるのは勉強しておる人から見ますと多少脱線なのですか、多少ずつ無理を言いまして、研究所自身をよくしていくためには、多少傷ついても犠牲を背負う人が出なければならぬというので、研究部員の中でも比較的年齢のたっております人は、実際は管理業務にもいま充てておるわけであります。その二年間でも少なくともやったらいいじゃないかといって、こういうことをさせております。  それから各省からの出向についておっしゃいましたが、事実出向の形で、いま通産省から一人来ております。それから農林省から一人来ております。外務省から一人来ておりますが、これは、みな何といいますか、先ほど申しましたような新しい人間をつくっていく、こういう意欲に燃えた人という意味で、ぼくの感じは、その点は十分話をしてもらって、そういう意味で来てもらっております。私としても、できる限り早く内部で育った人間がそういう地位につくことを望んでおるのであります。何といいましても、最初とった人で三十の人はなかったのです。このごろはことにもつと年齢は若くなっております。その人にいろいろな雑務的なことをやらすのはいかにもかわいそうなのです。しかし、現に相当年齢のたったのは要所につけております。それで育てていこう、こういう観念であります。  最初中村さんのおっしゃった意欲的なという意味においては、これは研究所全体としてそういうふうにやっております。その点がなくなったら私は熱がない、それが唯一の楽しみ、こういうふうにして援助を願いたいと思います。
  41. 中村重光

    中村(重)委員 東畑先生の気持ちはわかるのです。先生は確かにそういうことだろうと思う。そこに私どものまた期待もあり、敬意も表しておるところですが、必ずしも先生がお考えになっておるとおり動いてないと思う。あまりにも通産省、大蔵省を中心として、あるいは外務省を中心とする官僚は、そうした東畑先生の考え方に対して抵抗があると思う。これは事実をもって証明しておる。ジェトロにおいてもしかりです。先日軽機械の振興の法律案審議したのでありますが、そこらあたりにも相当な抵抗を示しておる。ですから、よほどそうした官僚の、何というのか、抵抗に対してき然たる態度をもって先生が臨んでいただくということでなければ、なかなかうまくいかないんじゃないか、こう思います。また、いま現に現地に派遣をしておられるこうした派遣員の中にも、八名程度はいわゆる官庁の出向者が入っているんじゃないか、こう思います。しかも相当な役割りを果たしておる。その出向の人たちは、籍を役所に置いたまま来ている人もあるでありましょう。あるいは関係の会社から来ている人も私はあるんじゃないかと思います。こういう人たちは長くいないのです。これはアジ研の人たちじゃないのですが、ジェトロの問題のときに、帽子はジェトロの帽子をかぶっておるけれども、その頭とからだは役所にいるんだ、こういったことは、私はアジ研の場合にもなきにしもあらずと思っております。二年かそこら現地に行って、学校に入ったりいろいろ研究をする。ようやく身につけたなと思ったら、帰ってきたらまた役所へ帰ってしまう。こういうことでは東畑先生のお考えになっておられるような方向に進まないと思う。そういう形があることは、部内で育てようという職員の意欲を喪失させる結果にもなっていくのではないか、私はこう思います。あまりにも私の考え方を率直に言い過ぎるので、どうかと思うのですけれども、せっかくの機会でありますから、ざっくばらんに考え方を聞かしていただきましょうし、また私どもの日ごろ考えていることを申し上げておくほうがいいんじゃないかと思いますから、申し上げたわけであります。そこらあたりに対してのお考えをお聞きしたい。
  42. 東畑精一

    東畑参考人 ジェトロのお話がございましたが、私、ジェトロのことはよく存じませんけれども、私は、政府から補助金をもらっておりますが、この経験をずいぶん重ねておりまして、戦後は農林省の農業総合研究所というのを十年近くやっておりました。その後アジア経済研究所をやっておるわけでありますが、いまおっしゃいました官僚の抵抗その他の問題ということについて、実は正直に申しまして、あまりそういう場合にぶつかったことがないのであります。これは農林省の場合も特にそうでありますし、アジア経済研究所もそうなんです。だから、アジア経済研究所にとりましても、このごろは通産省とも定期的に話をしておる、外務省とも話をしておるということになりまして、それは一種の報告、あるいは希望は何かということを聞いております。研究所自身の研究的内容とかなんとかについては、特別に注文があって、こういう結論を出せとか、ああいう結論を出せとか、そういうことはいまだかってただ一度もございません。ただ、いわゆる官僚ということでやかましく問題になる一点があるのであります。それは財政支出という問題であります。お金の支出については、きわめて厳重にやってくれ、これは私どものとこは全部ガラス張りで予算の運営をやっていこう、余ったものは余ったで、変な流用はしない、足らぬものは足らぬ、こういうことです。でありますから、金につきましては、これはひとつ厳重に検査してくれ、管理してくれ、こういうことだけは、実はこちらから希望いたしておりましてやっておる次第であります。  それからもう一点、海外派遣生が半数ほど行っておるというお話でありますが、これは実はこちらから頼んでやっておることでありまして、実は若い人なんです。大多数は独身者です。こういう人は、私らのほうの派遣人員は毎年十六人ですが、研究所内部の人は大多数二年おりますが、あとは一年ということになっております。この人たちは、あわよくば、上司も認め、本人も認め、よければ私のほうへ入って研究人員に加わってほしい、こういう人を選考しておりまして、現にそういう人が若干ございまして、相手の官庁から少し恨まれたケースもあるんですが、おまえのほうでとっていくじゃないか、こういうことになっております。この若い連中も、第一、給与はあんまりよくないんです。私ジェトロはよく存じませんが、文部省並みにしていくという大体の方針でいままでやってまいりました。これをいわゆる官僚が便乗して洋行した、そういうことは絶対にないのでありまして、この点だけはひとつ御安心ください。大体そういうことですが、あなたの話はなかなか率直で、私はありがたい質問だと思いますが、ぼくも率直に答えております。
  43. 中村重光

    中村(重)委員 東畑先生がそうお答えになるのに、いやそうじゃないんだというようなことはあまり言いたくありませんが、私はそう思っておりません。それは東畑先生が御存じにならない点もなかなか多いと思う。また、きょうは渋沢さんだとか田島さんもおいでになっておるようでありますが、あなたにはほんとうのことを言われない。また通産官僚があなたに対して、いやそれは通産省から出してくれなければ困るんだというようなことは言わないですよ。形はうまくでき上がってくるから、やはり東畑先生のような人格の高い方はなかなかそういう、何というか、きたない面を把握される面に乏しい面があるんじゃないか、非常に失礼な言い方ですけれども、私はこう考えます。ですから、私の申し上げておることも、先生がアジ研を強化拡充していこうという考え方も同じでありますから、そういう考え方の上で申し上げておりますから、私の申していることを、心配するなということで簡単に片づけようとされるのではなしに、やはりほんとうに中身について真剣にひとつこれは検討してみなくちゃいけない、こういう気持ちになっていただきたい、こう思うのであります。  さらにまたこのアジ研の派遣員の制度ですが、いま先生は、一年、内部の者は二年だ、こうおっしゃる。派遣される地域にそう長くいるということは、行く人も困るでしょうし、やはり十分にいろいろな事情というものを身につけて行くのでなければ、研究の成果もあがらないと思うし、アジ研のそうした機能を強化していくということにも役立たないと私は思います。こういう制度に対してやはり是正をしなければならぬという面があるのではないか、その辺についての考え方を聞かしていただきたい。
  44. 東畑精一

    東畑参考人 いろいろなお話、喜んで拝聴しました。そういうことは、渋沢君と田島君がここにおりますけれども、ぼくがそんなことはないと申しますのは、私のほうが多少悪人なんです。きたないことをよう知っている。ですから、その点はうんと心得ますけれども、どうかひとつ大きく見ていただきたい。
  45. 中村重光

    中村(重)委員 その点はそれ以上は申し上げませんが、いまの制度の問題ですね。具体的なことになりますけれども、これは渋沢さんから、それから必要により通商局長からお答えを願います。
  46. 渋沢正一

    渋沢参考人 ただいま御質問のございました海外派遣員の制度につきましては、先ほど所長から申し上げましたとおり、現在のところまだ徒弟時代であると申しますか、大学院あるいは大学を出まして、非常に若い連中が入りまして、大体二年から三年日本において勉強いたしまして現地に出るのでございます。どちらかというと、留学的色彩の海外派遣員というのがまだ現在まで多いわけでございます。したがって、わがほうとしましては、かけ出しでありますので、一般経済事情のほかに現地語を、あるいは土地カンを、あるいはいい友だちを、もちろんテーマを持たしてやりますけれども、そうしたようなごく基本的なことを海外派遣員に望んでいるわけでございます。しかし、海外派遣から帰りましたいわゆるシニアの連中がだんだんふえてまいりましたので、今年度からはいわゆる駐在員という制度を設けまして実際の活動をやってもらうという制度にし、本年度二名、二カ所につくったわけでございます。将来はその駐在員の数をふやしていくというふうに考えております。  それから前の御質問の点については、私別に所長に隠したり何かしていることは全くございませんので、その意味においてはかなり自由にやらしていただいておりますので、その点は事務をわりあいによく知っている私からも重ねてそういう御返事をいたしたいと思います。
  47. 中村重光

    中村(重)委員 それから、先ほど東畑先生は、官僚からいろいろ指図を受けることはないと言われました。そうあればまことに好ましいのですけれども、私は必ずしもそうじゃないと思う。たとえば給与の改善の問題、賃上げという問題は、これは当事者能力を失っていると私は思います。これはアジ研だけが特別扱いにされているとは思いません。特殊法人のほとんどと言ってもいいくらいに、大蔵省が中心となって給与に対してはいろいろ干渉しております。だから、特殊法人は公務員よりも低賃金であるべきだという思想の上に立って、予算の制約があるからなかなか賃上げをしない。賃上げをしようとするときには通産省とか大蔵省に相談して、その意向をそんたくしてきめなければならぬという形だ。これは当事者能力を欠いておる態度である。こういうことは好ましくない。いま公営企業の関係においても池田・太田会談の中で、この点を是正されなければならないということで真剣にやっている問題でありますが、私は特殊法人の場合におきましても、なおさらこういう点については当事者能力を十分持つ、賃上げの問題、あるいはその他労働条件を向上していくというような問題等々については、自主性を持ってやっていただくのでなければならないのじゃないか。東畑先生、そこらあたりの見解も聞かしていただければ幸いであります。この点に対しても先生が御存じないことで、事実上官僚のそうした抵抗というか、影響力というものが大きく動いておるということは間違いのない事実だと思うのですが、そこらあたりに対しての考え方も聞かしていただきたい。
  48. 東畑精一

    東畑参考人 アジ研だけの給与でなく、特殊法人全体の給与というとちょっと問題が広いのでありますが、アジ研だけにつきましては、決して公務員よりも低いということはございません。おそらく一割くらい高いのではないかと思います。これは補助金をもらっている関係上、どうしたって給与の支出、その他一般の支出というものは主務官庁の承認を得なければならぬということは確かであります。そのこと自身は別に干渉でもなんでもございません。いろいろ話し合ったり何かしております。それから特殊法人全体としての給与の問題これは話は別になりまして、公務員と違うという点をどの程度に考慮するかという問題は、しょっちゅう考えていかなければならぬ。私も研究所長としての資格におきましては、その問題は研究いたしております。それから特殊法人同士につきましても話し合っている次第でございます。
  49. 中村重光

    中村(重)委員 この点は東畑生先が中心になられて、やはり当事者能力を十分持つように、そういう自主性を十分主張するという方向へ前進をしていただきたいということを強く要望しておきたいと思います。  それから、私がいまさら読み上げるまでもなく、アジ研の目的は、「アジア経済研究所は、アジア地域等の経済及びこれに関連する諸事情について基礎的かつ総合的な調査研究を行ない、並びにその成果を普及し、もってこれらの地域との貿易の拡大及び経済協力の促進に寄与することを目的とする」。とあるわけです。これはアジ研といたしましては、この目的に沿うた運営をやっておると思います。ところが実際において、これを目的として運営をやっていこうとする意欲的なものがアジ研自体にあるといたしましても、やはりどうしても主務官庁の意向というものが大きく反映をしていく、こういう形になるのではないかと思います。先ほど、別に官僚からいろいろ指図を受けてない、こう言われましたが、たとえば研究委員会にいたしましても、テーブル・マスターはほとんど通産官僚が当たっておる。これが相当な権限を持っておる。派遣員に対する人選等の発言権というものもここらあたりにあるということを私は伺っておるわけであります。そうなってくると、いろいろな面において自主性というものが尊重されない、こういう形になると思います。そうした研究委員会の構成の問題等々に対しての見解を、ひとつ聞かしていただければ幸いだと思います。
  50. 東畑精一

    東畑参考人 形式的な委員と実質的な委員とについてひとつ御了解願いたいと思いますが、問題によりましては官僚そのものの意見をわれわれが構成するということに非常にあずかっておるという場合は別に自主性とかなんとかという問題は——形としてはそれじゃこういうふうにひとつ問題を出したらどうだ、こういうことを通産省なら通産省へお話ししていくという意味のことをやっております。実質上から申しますと、特にこういう問題をこうやれということはございません。それから研究委員会には官庁からもたくさんの人が入っておりますし、民間からも入っておりますが、問題につきましてほんとうのエキスパートを求める、それから、必ずしもねらった人が来てくれないということもあるのですが、どこでもやはり必要な問題について、差しつかえない限りという形においていろいろなところに手を出しております。官庁の人は、なかなか統計的に資料をたくさん持っておられるとかいう意味で、あるいは民間の人も資料を持っておられますが、部分的資料が多かったり、こういうことになるので、官庁の人がたくさん入っておるということであります。この人たちが人選をするといいますけれども、もとの人選を私がやっておりまして、お願いいたしておるのであります。委託した中から、この人は適任だと思う人が出てくれば、その人に調査に行ってもらう、こういうやり方なんです。
  51. 中村重光

    中村(重)委員 そういうことはあってもいいし、これはまたいいわけですね。ところが実際は私が指摘したような点も、いろいろゆがみと申しますか、そういう点もあるわけですから私は自主性ということを特に強調するのは、たとえばアジ研ではアジアの問題、なかんずく中国の問題については相当研究を深めていかなければならない、そういう考え方があるが、たまたま通産省は、いろいろ政治上の問題等々も加味して、これはあまり歓迎をしない。そうなってくると、研究委員会のテーブル・マスターに通産官僚等がいる、それが相当な権限を持っておるということになってくると、それによって動かされてくる。単なる研究委員会の構成員であるという考え方のもとに、これは妥当性を先生はお考えになっておられるかもしれませんが、テーブル・マスターの考え方というものは、これは研究委員会のメンバー、アジ研の中の一員というような立場よりも、やはり役所の考え方、しかもその考え方は、多分に政治的な問題等が加味された形において委員会というものが動かされていくということになってくると、私は、自主性の喪失である、こう申し上げなければならないわけであります。ですから私が申し上げる自主性というものは、ほんとうにアジ研の幹部の方々が、どうあるべきかということを十分に検討し、しかもまた内部の職員等の意見というものも大きく反映させ、あるいはいま現にやっておられるわけでありますが、教授であるとか助教授であるというようないろいろな人たちの学識経験者の意見というものも取り入れたものを、何ものにも制約されない形の運営というものがなされなければならない、こういう立場から私は実は申し上げておるわけですから、そこらあたりを、形式的な形が整っておるからして何も自主性はそこなわれていないというようなお考え方ではなしに、その背景となっておる面についても十分留意をしていただきたい、こう希望をいたしたいと思います。  なおお尋ねいたしたいと思うのでありますが、アジ研の会員の構成であります。これもただいま私がいろいろ申し上げたことの関連があるわけであります。これはお答えを伺うまでもなく、私ども承知いたしておりますのは、会員というのは五万円以上の会費を細める者、あるいは十万円以上の会費を納める者をして正会員とかあるいは準会員にしておられる。しかも評議員は十万円の会費を納めた者でなければ評議員になれない、こういうようなことになってくると、金持ちクラブ的な存在になる危険性があると思う。中小企業等は、なかなかこの構成員になることすらできないということになる。そうすると、この目的が一部に偏した形において行なわれるという危険性がある。研究委員会のメンバーの中にもそういうものが入ってくる。その他運営面におきましてそういう人たちの発言権が相当強化される。そうなってくると、先ほど来桜井君がいろいろ中小企業の問題等々を質問をいたしておりましたが、真にこのアジ研の研究対象にならなければならないような方向というものがゆがめられてくるというふうな傾向が私は起こる可能性があると思うわけです。そこらあたりに対しての先生の考え方を聞かしていただきたい。
  52. 東畑精一

    東畑参考人 いろいろの可能性はあり得る場合が考えられぬことはないと思うのです。お話によりまして、ぼくは一そう中村さんのおことばの自主性というものを保つように極力努力をいたします。どうかひとつつこの意味で見ていただきまして、どんどん御批判を言ってくださればありがたいと思います。  それから、ちょっとつけ足しでございますが、中小企業の問題は非常に大事な問題だと思っております。この会員になかなかなれない、そういう意味では発言権がないのじゃないかということでございましたが、会費を出しておるから発言権が強いという形でなしに、東アの諸国の問題自体としては非常に大事な問題だと思う。問題自体が重要であるということがわれわれの研究所の研究を推進していく最も大きな動力である、こう思っております。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 これは東畑先生、先生が言われるようになりませんよ。私は先生が信念を持ってお答えになることは大いに尊敬もいたします。しかし会員が五万円なり十万円という相当な会費を負担をしておられる。国からは三億円の補助があるにすぎない。相当、アジ研が会員の会費等によって運営をされておることは間違いない。しかも評議員会であるとかいろいろな機関というものはそうした会員によって占められている。それからアジ研のほうで配付されるところの資料にいたしましても、十万円の会費を出している  にはそれだけの部数あるいは数種の資料を配付される、会費が少ない者には種類も少ない、部数も少ない、こういう形になっておるではありませんか。そうなってくると、どうしても、いま先生が言われた問題そのものということよりも、アジ研に対していろいろ調査をしてもらいたいという人たちの意向というものが大きくそんたくされ、そういうものによってアジ研が支配されていく、こういうことは現実に起こっておることでありますし、将来ともそういう点にメスを入れていくのでなければ、問題そのもの、いま先生が言われたようなアジ研の本来あるべき姿にはなかなか到達できない、目的を達成することはできない、私はこう考えるわけであります。やっていることもその目的の一つだ、それは狭義の意味においてはそうであるかもしれません。あるいは一部の者の利益という形においてはそうであるかもしれません。しかしアジ研の本来の目的というものには私は相当遠いものがあるのではないか、こう考えるわけです。したがいましてアジ研の会員の構成の問題については再検討されて、もっと広範囲に資料も配付され、さらにまたそうした人たちの発言が十分反映されるというような構成にする必要がある、こう思います。その点に対しての考え方をいま一度聞かしていただきたい。
  54. 東畑精一

    東畑参考人 民間のほうからわれわれのほうへ出してもらっているお金というのは、初めのころはわりあい多うございましたが、現在は十分の一以下になっております。研究所自身の大きな運営からいいますと、きわめてわずかな部分を占めておるだけであります。いま口をきわめておっしゃいました問題は、しかし非常に重要な問題であります。アジア経済研究所といたしましては、現在私はそうだとは思いませんけれども、あるいは可能性があるかもしれない、あるいは私が見のがしておるという問題があるかもしれない。わかりませんけれども、少なくとも大きい意味ではそういうことは見のがしておるとは思いませんが、ひとつよく検討いたしまして——私は御趣旨はあなたと同じです、お話と同じだと思っています。その線に沿うてやれるように運用いたしたいと思っております。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 時間がございませんので残念でありますが、あと一、二点お伺いいたしますが、アジ研とジェトロ、科学技術センター、この調査区分というものがどうなっておるか、それぞれに目的があるわけです。ところがやはり貿易の振興ということが目的、この点は共通しておるわけです。ですから、こういう関係と連携というものがどうされておるか。運営面に対して、科学技術センターであるとかあるいはジェトロというものがそういう研究委員会の構成メンバーになっておるかどうか。案外肝心なところが抜けておる面もあるのではないかと思います。そこらあたりは先生からでなくて渋沢さんから……。
  56. 渋沢正一

    渋沢参考人 ただいま御質問アジア経済研究所、ジェトロ、日本科学技術情報センターについて、御承知のとおりアジア経済研究所は貿易拡大及び経済協力の推進ということを主に目的としているわけでございます。ジェトロというのは先般所長からやはり御説明したと思いますが、いわゆるマーカッティング・サーべーというか、市場調査ということを主眼にして考ているわけであります。それから科学技術情報センターについては科学技術の振興という自然科学の点が主としてあるわけでございます。その点におきまして、ジェトロとうちの競合関係が全くないかというと、若干のダブりというのはもちろんあるわけでございますけれども、そういうふうに大きく分けておりますので、御指摘のようなところはないのではないかと考えております。
  57. 中村重光

    中村(重)委員 若干ダブる点があってもやむを得ないと思うのです。しかしそのダブりでなくて、連携をしてやっていく、研究委員会の構成メンバーの中にも入ってくるとか、あるいは現地におけるところのいろいろ研究というような面についても、やはり相互連携しながらやっていく、こういうことでいかなければ、なわ張り的なものになって全く意味ない。二つの力をそこに合わせればその力というのは大きく強くなっていくであろう、こう思います。そういう面を生かしていってもらいたい、こう言っている。案外うとんじられておる、こういうことですから、その点を指摘しておるわけであります。  最後に、東畑先生並びに通産省のほうに申し上げますが、とにかく私企業でも社員から成長した者が経営を動かすのです。ですから、先ほど東畑先生がまだ若いんだ——こういうことできめつけないで、その人たちにほんとうに欲を持たせて、これを育てていく、そしていま役所がやっているテーブル・マスターでも、内部から育てた者にどんどんやらせるという方向にやっていただきたい。それから現地派遣員の制度の問題にいたしましても、単に本人の勉強ということだけで終わらない、十分それが活用されていく、こういう方向に運営していただいて、アジ研の目的を十分達成するようにやっていただきたいということを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
  58. 二階堂進

    二階堂委員長 本日は本審査のため参考人の各位におかれましては長時間にわたり御出席いただき、まことにありがとうございました。どうぞ御退席ください。  次会は、明五月二十日水曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時二十八分散会      ————◇—————