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1964-05-06 第46回国会 衆議院 商工委員会 第39号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月六日(水曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       小山 省二君    佐々木秀世君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       村上  勇君    大村 邦夫君       加藤 清二君    田中 武夫君       森  義視君    麻生 良方君       加藤  進君  出席政府委員         通商産業政務次         官       田中 榮一君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君  委員外出席者         参  考  人         (日本紡績協会         副委員長)   田和 安夫君         参  考  人         (日本羊毛紡績         会専務理事)  酒井  弘君         参  考  人         (日本化学繊維         協会会長)  山口 利吉君         参  考  人         (全国繊維産業         労働組合同盟会         長)      滝田  実君         参  考  人         (日本繊維産業         労働組合連合会         中央執行委員         長)      小口 賢三君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 五月六日  委員米内山義一郎辞任につき、その補欠とし  て田中武夫君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田中武夫辞任につき、その補欠として米  内山義一郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  繊維工業設備等臨時措置法案内閣提出第一四  八号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  内閣提出繊維工業設備等臨時措置法案を議題とし、審査を進めます。  本日は、本案審査のため参考人として、日本繊維産業労働組合連合会中央執行委員長小口賢三君、日本羊毛紡績会専務理事酒井弘君、日本紡績協会委員長田和安夫君、全国繊維産業労働組合同盟会長滝田実君、日本化学繊維協会会長山口利吉君、以上五名が出席されております。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ御出席いただき、まことにありがたく存じます。会議を進める順序といたしまして、最初に各参考人方々にそれぞれの立場から大体十分程度の御意見をお述べいただき、次に委員から質疑がありますので、これに対しましても忌憚なくお答えを願いたいと存じます。  なお、発言の際は、必ず委員長許可を得てから発言をしてくださるようにお願いをいたします。また、参考人方々委員に質疑することはできないことになっておりますので、御了承ください。かってながら発言順序委員長において決定いたします。  それでは、まず田和安夫君から意見を承ることにいたします。田和参考人
  3. 田和安夫

    田和参考人 紡績協会意見は、ただいまお手元にお回しいたしました書面に詳しく書いてございます。時間の都合上これを読み上げることは省略いたしまして、かいつまんで要点だけを申し述べることにいたします。  まず結論から申し上げますと、われわれの業界では、本法施行によって一番大きい影響があるものと存じておりますが、業界では、新法が本議会において通過して施行せられるものという想定のもとに、新体制に対処する準備を着々進めつつあるのでございます。したがいまして、どうかこの議会において諸先生方の御尽力によりまして本法案が通過いたしますようお願いいたす次第でございます。  ただ、この法案について業界がそれなら全面的に満足しているかと申しますと、必ずしもそうでないのでございまして、われわれはこの機会に、法案の修正をお願いするつもりはございませんが、その施行に際しましては、どうかこの本法案趣旨に合うように善処していただきたいということをお願いする次第でございます。  そこで、われわれの問題にいたします一、二の点について申し上げますと、第一番は金融、税制の点でございます。本法案は、多年の統制経済のために累積しました弊害自由競争によって体質改善をはかって開放経済に対処しようとするものでございますが、自由競争の結果最も影響を受けるのは中小企業でございます。ところが綿業界は五万錘以下のものが八割を占め、要するに全体が中小企業のところが非常に多いのでございます。したがいまして、この法案影響を受けること非常に大なるものがあるのでございますが、その場合に、中小企業対策として本法案に盛られておりますのは金融の点のみでございます。昨年の暮れ、諸先生方の御尽力によりまして開銀融資十億円というものが認められております。しかし開銀融資は、従来大企業対象とするものでございますので、この開銀融資にはある程度の限度がございます。そこで、必ずしも中小企業がこの開銀融資によって助けられるというわけにはまいりません。したがって大部分のものは中小企業金融公庫によるものだろうと考えますが、中小企業公庫の金が借りられるのには中小企業としての定義がございます。この定義にはまるものと、それから開銀融資ワクにはまらないものと、この間の谷間ができる、だろうということをわれわれ心配しておるのでございまして、この開銀融資並びに中小企業金融公庫融資のこの適用につきましては、どうか融通のある方法によってこの谷間を埋めていただきたいということが第一点でございます。  第二点といたしましては、われわれが一番問題にいたしますのは、この合理化というのはスクラップ・アンド・ビルドと称しておりますが、いままで籍のあった、要するに登録のあるものだけが対象とせられておりまして、業界の混乱の一番のもとを来たしました、われわれが普通無籍紡機と申しております、要するに、登録のなかった紡機については、きわめてルーズな方法になっております。われわれはあえてルーズと申しますが、われわれの目から見てルーズな方法になっていまして、この穴は行政措置によって埋めようとせられております。しかし従来のやり方から見て、政府においてはたして厳重にこれが取り締まられるかどうかという点に非常に疑問を持っておるものでありまして、この点がもし従来のごときやり方でございましたら、せっかくの法案が、要するにいままで行儀よくしておった有籍のもののみに対してきついことになる、こういう心配があるのでありまして、無籍紡機については政府は行政的の面においてこの穴を埋めていただきたいということをお願いする次第でございます。  第三点といたしましては輸出振興問題でございます。本法案は要するに、繰り返しますように、開放経済に対処するための企業合理化を推進して、そして輸出振興に役立たせようということになっておりますが、御承知でございましょうけれども、綿業には国際綿業協定というものがあって、すでに海外においては、わが国のほうでは自由競争しようと思っても、輸入規制されております。近くその規制は単に綿だけでなしに、羊毛方面にも及ぼうといたしておるのでありますが、こういうものを解決するのは政府経済外交による以外に方法はございません。また綿業協定の面におきましては、どうしても一番問題になりますのは、海外における市場撹乱ということでございまして、市場撹乱のもとになるのは、内地における需給の不均衡、それから来る価格の崩壊ということが海外輸出の場合においての市場撹乱という一番海外で問題にする点に触れるのでございますので、したがいまして、こういう場合にどういうふうにしていくかということは、需給調整の道がつくられておりませんので、これをどうしたらいいかということは、今後において行政面においてお考え願いたい、かように考えるのであります。これを法令にうたっていただきたいということはこの際申しません。  ただこの機会において、多少問題にはずれるかもしれませんが、先ほど申しました国際綿業協定、これはアメリカ提案によってできたのでございますが、そのアメリカの側がこの提案をしました理由は、アメリカにおける綿花の二重価格ということが原因になって、アメリカ業界がこの方法を要求したのでございますが、その二重価格は解消いたしまして単一価格になりました。そうしますと、われわれも単一価格ということをかねて希望しておったのでございますから、単一価格そのものについては文句を言うわけではございませんが、二重価格であるためにわれわれの対米輸出が非常に厳重なる規制を受けております。したがいまして、単一価格になりました以上は、その基本であるアメリカの差別というものがなくなったのでございますから、この協定については、どうか次の機会にこれを改定するように、あるいはワクそのものは変えられぬでも、その運用がもう少し実際上きまったものはなし得るように是正するよう、政府のほうで御尽力願いたい。これは本法に直接関係することではございませんが、要するに輸出振興ということが目的である以上は、この輸出振興目的に合うように、そういうような問題は政府のほうで十分善処していただきたい。これだけの点を申し上げまして、私の要点のみを申し上げ、詳しくはひとつ差し上げたものをあとでゆっくりごらん願いたいと思います。  以上であります。
  4. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、酒井弘君より意見を承ります。酒井参考人
  5. 酒井弘

    酒井参考人 本法案の作成の基本方針につきましては、過去約二カ年間、各業界委員並びに学識経験者が集まりまして、練りに練ってきまったことでございます。その結論は、各業界ともにおのおの不満な点はあろうかと思いますが、練った結果の結論でございますので、いまさらここに、この基本方針について異議を申し上げる考えはございません。議員各位の御賛同を得まして、できるだけ早くこの法案が実施せられることを希望するものであります。もしかりにこの法案が今議会で通過しないような事態が起こりますならば、現在の措置法は約一カ年まだ有効期間がございますが、実際は無効状態になるものと私は予想いたしております。したがって、この新法案が成立しない場合には、直ちに現行措置法を改正せられることを希望いたしております。  基本方針につきましては以上のとおりでございますが、ただ、この法案に対する法律技術上の意見を二、三申し上げたいと思います。  第一点は、この法律案は非常に難解にできておるという点でございます。法律は、疑義が起こらないように正確につくることが大切でございますが、さらにわかりやすく書くということが大切だと思います。現在において、この法案をわかりやすく直してもらいたいという意見はございませんが、今後こういうような法律をつくるときにはできるだけわかりやすい法律にしていただきたい、こういう意見を申し上げたいと思います。  それから第二点でございますが、この法案の構成が、二十一条発動、これは例外的なアウトサイダーの命令でございますが、この命令が出ない限り、本法案実体規定である新規登録並びに変更登録、この関係がスムーズに動かないようなたてまえになっております。非常におかしなことだと思いますが、こういう点を考慮いたしまして、できるだけ早くこの二十一条発動をしていただきまして、この法律が実体的にスムーズに、なめらかに動くよう措置せられんことを希望するものであります。  それから第三点でございます。この法案の別表に出ておると思いますが、梳毛式の糸と紡毛式の糸、こういう定義が出ておりますが、これが明確でない。現在の措置法におきましては、精紡機型式登録が行なわれておりますが、新法においては今後そういうような登録は行なわれないと想定いたしておりますので、現在の法律ではある程度梳毛式紡毛式の糸が明確でございますが、新しい法律ではそれが定義もされておりませんし、明確でなくなるおそれがございますので、この点につきましては、通牒なりあるいは施行法において明確にしていただきたい、かように思うわけでございます。  最後に一つ申し上げておきたいことは、純糸混紡率の問題でございます。この新法におきましては、旧法と同じ純糸定義が行なわれておりますので、ワクがきめられておりますが、同じく純糸といいましても、家庭用品——品質表示法における純糸と差が出てくるわけでございます。法律が違えば、必ずしも同じ定義をする必要はないかと思いますが、弊害がなければ、できるだけ法律上の定義は共通にしたほうがいいのではないか、かように思うわけでございます。  以上が法律技術上の要点でございますが、最後に、将来の問題として一言つけ加えさしていただきたいと思います。  この新法のたてまえといたしましては、原則として短期需給調整は行なわない、こういう方針で、もちろん自由競争による合理化あるいは開放経済に対する合理化、こういうことを目途といたしておりますので、そういう点はしないというたてまえになっております。ところが、実際問題を考えてみますと、生産は自由であり消費は自由である、こういうところには必ず需給のアンバランスが出てくることは当然でございます。したがって、先ほど田和参考人からも話がありましたとおりに、業界価格の安定ということができなければ、輸出も減りますし、また対外的な非難も受ける点もございますので、おそらく、結局は今後こういう紡績界なり各種団体において需給調整を行なう必要は必ず出てくるだろうと思います。その際残された手段といたしましては、法律的には、独禁法不況カルテル規定による以外にはないと思います。ところが、この不況カルテル認可というものは非常にむずかしい。と申しますのは、膨大な資料を必要とするという点、それから第二点は、公取は独禁法違反を取り締まるいわゆる取り締まり官庁でありまして、業界の安定とかいうような考え方を直接担当している官庁ではございませんので、この不況カルテルの申請が認可されるには、いろいろと時日と困難とがあるわけでございます。もともと不況を回復するということは、長年にわたっていろいろな統制を続けるべき筋合いのものではなく、実際に起こった場合には早急に短期間に解決すべきであるというのが原則であるにもかかわらず、実際問題として不況カルテルで救済することは非常にむずかしくなっている。したがって、これらの点を何らか将来解決する方法を考慮していただきたい。たとえば、一例でございますが、現在の不況カルテル認可権各省大臣に持っていくというようなことも一案であろうかと思いますが、何もそれに限ったことではございませんが、実際問題として以上申し上げましたような困難さがございますので、この点に対する何らかの法律的な改正なり裏づけをしていただきたいというのが私の希望でございます。  以上でございます。
  6. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、山口利吉君から意見を承ることにいたします。
  7. 山口利吉

    山口参考人 それでは、私から化繊協会を代表して意見を開陳させていただきたいと思います。  本日は、繊維工業設備等臨時措置法国会審議に際しまして、この法案に対する意見を申し述べる機会を与えられましたことは、まことにありがたく、化学繊維業界左代表いたしまして厚く御礼申し上げます。  お手元にわが業界意見書を差し上げてございますが、それに補足しましていろいろ意見を率直に申し述べさせていただきたいと思います。  わが国産業経済は、開放経済への移行産業構造高度化という大きな流れの中を進みつつございます。このため、各方面でいろいろな改革が必要となってまいります。繊維業界におきましても例外ではございません。  繊維業界では、多年にわたりまして現行措置法による設備規制基盤といたしまして、村区分による紡出範囲の制限とか、格納によります需給調整が行なわれてまいりました。このような体制は、一応既存業者に安定を保障するかのように見られますが、最近におきます内外情勢の急激な変化は、かかる状態を続けては、わが繊維産業の将来を危うくするおそれがあることを告げております。繊維工業設備審議会は足かけ三年にも及びます慎重なる審議の結果、村区分操短体制廃止し、すみやかに自由競争体制移行すべきであるとの答申を出されました。まことに当然のことでございまして、わが化学繊維業界もこれに賛意を表した次第でございます。  もとより、自由競争体制への移行と申しましても、設備規制は長年にわたってわが繊維業界基盤となっておりましただけに、最小限度準備期間を置き、設備規制廃止のための過渡的措置を講ずる必要があるのは、やむを得ないところであると思います。審議会答申も、これがために新しい法律を制定し、過剰設備廃棄促進すべきことを結論としておることは、御高承のとおりでございます。  このたび審議対象となっております繊維工業設備等臨時措置法案は、以上のような答申の線に沿いまして立案されたものでございます。したがって、新法は新たな規制をはかるものではなく、設備規制廃止するための過渡的措置立法でございます。過渡的措置の範囲内で、若干の現行体制類似の条項が残りましても、新法目標はあくまでこれらの体制から脱却することにございますので、この点を忘れるべきではないと思います。残念なことでございますが、業界の中には現状維持に執着する立場もございまして、今回の新法案におきましても、それらへの妥協の配慮があってか、過渡的措置とは言いながら、きわめて歯切れの悪いところが残っているように思われます。しかし、繊維業界が新しい方向へ踏み出すためには、現行措置法廃止新法の制定は、どうしても必要と思われますので、細部の点には不満はあるといたしましても、新法が一日も早く成立するよう切望いたしますとともに、新法が適切に運用されまして所期の効果をあげるよう、ここに国会の諸先生方並びに政府当局の格別の御配慮をお願いする次第でございます。  新法は、先ほども酒井君が言われましたが、内容が非常に難解であり、解釈上疑問の点が少なくございません。また相当に幅のある運用にゆだねられているところもあります。これらの点の解釈運用いかんによっては、新法目的と背反する結果を生ずるおそれもございます。特に、一部には、新法の精神をなお理解せず、現状維持に執着する考え方も残っているように見受けられますのは、はなはだ心配なことでございます。と申しますのは、新法は非常に弾力的運用あるいは通産省令にゆだねられているところがございますので、その点の解釈いかんによりましては非常に変わってまいります。形の上では現行措置法と何ら変わりのない点が多々ございますので、この点を心配するわけでございます。新法は、従来の規制体制廃止するための法律である以上、解釈運用はすべてこの基本に立って行なわれるべきであり、既存体制の引き延ばしにならない決意を固めることが、業界自体にとりましても政府当局にとりましても最も必要なことと思われるわけでございます。  第一に、従来の措置法も、本来の目的過剰設備処理にあったはずでございますが、現実には、需給調整とか操短の縦続に終始したことは御高承のとおりでございます。新法におきましては、再びこのようなことのないように希望いたします。しかし、過剰の精紡機使用停止が、政府指示に基づく共同行為の形式で行なわれることになっております。これは形の上で、従来の格納操短方式と同じでございますので、指示共同行為の定め方いかんでは、需給調整のために使われるおそれが多分にあると思います。供給過剰の場合に、従来のように、その使用停止紡機の増加、すなわち格納を強化してみたり、廃棄新設を抑制したり、また供給力不足を生じた場合に、新規登録に優先しまして使用停止紡機、つまり格納を解除するというようなことがあってはいかぬと思います。輸出振興に名をかりまして停止紡機のかげんをするようなことはないようにしていただきたいと思います。このようなことが行なわれますと、新法の眼目である廃棄新設の実行も鈍りがちになり、再び新法需給調整に終わることになってしまいます。新法は、操短体制には決して利用されないということを明確にしていただきたいと思います。  次は、設備規制廃止への方向は、当然に従来の体制によります既得権者にとってはその利益を失うことになります。新法は、四年を限って過渡的な配慮をしておりますが、これは既得権の上に眠る業者保護ではなくして、あくまで新しい体制への準備期間でございます。したがって、新法期間中といえども、需要の動向、技術進歩に応じて、紡機新設の必要が生じた場合に、既得権保護にだけ偏してはならないと考えるわけでございます。実質的にある種の糸の供給能力が不足した場合に、過剰精紡機を温存する業者が一部に残っているからと申しまして、新規登録への道を開かないことがありましたり、それに先立って区分外糸許可や、使用停止紡機の解除を行なうようなことはないでしょうか。この点が心配でございます。そのようなことでは、まじめに過剰設備廃棄した業者よりも、つまり法目的といたしますスクラップ・アンド・ビルドに徹してやった人よりも、既得権に座する業者を厚く保護する結果になり、新法目的に沿わないと考えます。新法期間中といえども、繊維産業は一日もその技術的進歩を押えてはならないと確信するものであります。  新法は、四年後には当然失効すると定められております。新法設備規制のための過渡的立法である以上、これは当然のことでございます。これによりまして過剰設備廃棄決意も固まるのでございます。また延ばされる、こういうことであっては、スクラップ・アンド・ビルドは決して達成されないと考えるからでございます。この点についてすら、一部には再延長の余地を残すように主張する向きもございましたのはまことに遺憾なことでございます。新法は、性格的に時限失効法でございまして、再延長などは決してあり得ないことを確認いたしたいと思います。  新法におきましては、化学繊維紡糸機はその規制対象から除外されております。これはかねがねわが業界が主張し要望してまいりましたところであり、設備審議会答申趣旨にも沿ったものであります。そもそも今回の措置法の改廃の問題は、三十六年の四月一日から原綿、原毛の輸入が自由化されたからでございます。それで三十六年の秋以来審議審議を重ねまして答申案が出たことは先生方の御高承のとおりでございます。新法は、もとより過剰設備廃棄促進によりまして自由競争体制への移行目標とするものでありますから、現に過剰設備がなく、今後も増設を必要とする化学繊維紡糸機新法適用外になるのは、これは当然のことでございます。化学繊維特に合成繊維は目ざましい発展を続けておりますが、今後は企業自己責任に徹しますとともに、国際競争力強化のため万全の努力を傾けることを業界としても決意いたしておることを申し上げまして、国会政府はじめ各方面の御理解と御支援をお願いする次第でございます。  次に、新法は、主といたしまして、紡績業における自由競争体制への移行のため過渡的に設備規制を存続して過剰設備処理促進をはかっております。しかし業界としても、政府としても、これをもって足りるとすべきでないことはもとよりであります。今後におきます労働需給状況、賃金水準の推移を予想いたしますと、紡績業においては過剰設備というような問題は、従前に比べまして急速に重要性を減ずるのではないかと考えます。すなわち従来は、過剰設備がある、すると過剰生産になる、過剰生産になれば値下がりがある、不況、こういうふうな形で問題が提出されましたが、今後はいかにして必要な労務者を確保するか、いかにして労務費の上昇に見合う生産性の向上をはかるかということが主要な問題になるだろうと思われます。したがいまして、この点からも設備規制操短による需給調整の意味はなくなってくるものと考えられます。ましてや後進国の進出、需要動向の変化、技術革新等の事態を考慮いたしますれば、新法によります過渡的期間設備規制さえ慎重に過ぎた配慮ではないかと思われるほどでございます。したがいまして、業界としては新法に残る設備規制に寄りかかるというような考え方は捨て去るべきであり、徹底的な合理化、新情勢に対応する企業体質改善に努力すべきであり、政府当局におかれても、統制者としてよりは、このような企業努力に対する援助者として、金融、税制等の面にでき得る限りの配慮をしていただきたいと思います。輸出振興ということも、中小企業合理化も、新法における規制措置の手かげんなどによるものではなく、新法基本方向である自由競争体制に備えての企業努力によって実効が期せられるものと考えます。このような意味におきまして、新法が成立いたしましても、これに依存する、寄りかかるというようなことではなく、新法基本精神である自由競争に備えよ、こういうところに忠実であるべきだと考えます。新法についての論議が始められましてからすでに二年半、その間内外の情勢はますます進み、繊維業界現状維持を許されなくなっております。一日も早く繊維新法が成立し、新しい方向繊維業界が踏み出すことができますよう心から切望しておる次第でございます。  以上でございます。
  8. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、滝田実君から意見を承ることにいたします。滝田参考人
  9. 滝田実

    滝田参考人 全繊同盟を代表して意見を述べたいと思います。四点にしぼりたいと思います。  第一点は、この法律目的に関してであります。時限立法でありますから、この法律の条項についてもおのずから制限があることは承知の上でありますが、この目的合理化と正常な輸出発展というところだけに問題をしぼり過ぎているわけですが、これではたして繊維産業の安定的な発展が期せられるかどうか、この点については、これははなはだ片手落ちの立案のしかたではないかというふうに思います。というのは、天然繊維のほうを規制し、人造繊維のほうは規制対象外に置く、こういうことが法のたてまえになっておりますが、この法律のねらいは、こういう点で生産と需要との関係において輸出だけを対象にしていて、内需というものの動向をどういうふうに考えるかという、その点の配慮が欠けているのではないかと思われます。もう少し具体的に言いますと、現在の輸出の伸張の度合いというものは、本年度の場合は努力目標としてせいぜい三%前後ではないだろうか。そして国民の一人当たりの衣料の消費量は、天然繊維と化学繊維に分けて、天然繊維のほうは一人当たりの年間消費量は四・五八四キログラム、人造繊維のほうは四・〇九七キログラム、合計して、約九千八百万の国民の一人当たりの年間の消費量が八・六八一キログラムというのが大体現実の数字であります。この国民の消費あるいは消費の傾向というものが、いま申し上げたような数字から、奇跡は起こらないのではなかろうか。そういたしますと、輸出の傾向というものは本年せいぜい三%増加が努力目標であり、国民の全消費量というのはほぼ見当がつくとするならば、その需要に見合ったような生産体制をいかにつくり上げていくか。その生産体制の中には、天然繊維よりも人造繊維の漸増傾向というものを進めていかなければならない、こういう点で繊維の安定的な成長を初めて期せられるのではないかという点を見ますと、この目的が単に合理化輸出の発展というそのねらいだけではきわめて不十分な点があるのではないかと思います。したがって、この目的繊維産業の安定的発展という目的に置きかえなければ総合対策にならないのではないだろうか。天然繊維の場合でも、単に設備を規制すればいいということでは問題は決解しません。現場に行ってみると、一錘量当たりの生産高はどんどんふえている。そして無人操業的なことが現にやられている。ですから、労働者がいなくても生産はできるような体制に置かれておりますから、天然繊維の設備だけを押えておればそれでいいという状況ではない。やはり生産と需要との関係がどういうふうに調節されるかというところに、この繊維産業の安定策の焦点があるのではないだろうか。そういう点で私は、設備と生産量と両面から見て、内需と輸出と両方見きわめた上での設備の規制あるいはまた調整ということがたてまえであるべきではないだろうか。そういう点を考えますと、この目的についての配慮が片手落ちだという点をまず第一に指摘したいと思います。  第二は、この法律には、労働者の雇用構造の変化とか流動化の問題とかあるいは賃金という問題が一向触れられていないわけです。むろん私の認識によりましても、労働条件を法律の案文に入れるということは不可能であることは承知しておりますが、しかし繊維産業の発展の中でこれから労働力を確保していくことがいかにむずかしいかということは、先ほどの公述の方も触れられたとおりです。時間がありませんから端的に申しますと、最低賃金制をすみやかにしくべきであるという考え方であります。設備審議会においても、すでに最低賃金制は早急にやらなければならないという結論を出しております。労働省においては、中央最低賃金審議会において、どの産業に最低賃金が適当であるかという審議最中であります。そういう点を見ますと、労働行政の面から見ても、通産経済政策の面から見ても、日本の場合は、輸出で問題を起こし、国内で低賃金層が非常に多いという代表的な産業は、私は繊維産業だと思います。繊維産業が外国において規制をされる根本原因は安売りだということであります。そして同時にまた、一品種の生産をどっと一時期にふやし過ぎる。特定地域に特定品種を一挙にふやし過ぎている。相手方の国を非常に刺激する問題が現実に起こっているわけですから、そういう点を考えますと、輸出振興という面から見ても、国内のいろいろな労働力の確保の面から見ても、最低賃金制は焦眉の問題ではないだろうか。むろん全繊同盟に加盟している組合員だけでも四十六万人おります、事業場にして千五百をこえる事業場の賃金は労働組合の力によってある程度高めてきました。しかし、問題は、未組織の弱小労働者の労働条件がどうなっているかということが、繊維産業の労働力確保の面から見ても非常に問題を残している。そうしてまた過当競争のいわゆる低賃金、低価格という原因もそこにあるわけでありまして、最低賃金については、早急にこの商工委員会でも、法律の案文にすることができないとするならば附帯決議をされて、そして労働関係の上で石炭産業にやられたような熱意あるいは積極性をこの繊維産業にぜひ示していただきたいというふうに思います。  私は日本の労働代表としていろいろな国際会議に出ましたけれども、いつの場合でも日本の繊維製品の安売りの攻撃の矢面に立ってきました。どの人よりも私は矢面に立ってきました。そういう点で、国内の過当競争、低賃金というものがいかに国際信用を落としてきたかということについての配慮というものが、繊維の政策の中に入ってくるべきじゃないかと思います。ただし、私は、労働組合の代表といえども、国家の不利益になるようなことはできるだけやめるように努力してきました。それだからこそ、また国内の体制がもっと真剣に考えられるべきじゃないだろうか、そういう意味で最低賃金制の早期実現を私は強調したいと思います。その点で、国内の体制がもう少しできれば、いわゆる国際公正競争、公正労働基準という問題で相手国と十分やり合えるような日本の体制ができるのではないだろうか。安売りをして信用を落とすというふうな日本の商法のやり方については、根本的に考え直す必要があるのではないか。特に国際的な取引の仕方については、外務省関係で経済担当官が在外大使館、公使館、領事館におりますけれども、忙しくてそういった取引の条件を十分国内に知らせてないというのが実情ではないかと私は思います。相手方のバイヤーがどんどんたたいて、もうけているのは向こうさんであるのにかかわらず、安売りの責任を日本だけがかぶっているという状態をどういうふうに理解するか、そういう点については今後審議会等が持たれますから、その審議会で、これほど多くの外貨獲得をしている産業でありますから、もう少し真剣になって、対外的な取引状況がどういう現実にあるかということをつかんだ上で対策を立てていただきたいというふうに思います。  それから第三点は、紡糸機の制限ということをこの規制対象からはずされております。これは設備審議会においても、私も参加してきめたことでありますから、このことについては異議はございません。しかし、設備審議会答申案の中に「新法規制対象外とするが、今後の新増設は法律に基づく官民の協調方式によって調整するものとする。」というふうに書いておるのであります。ですから、天然繊維のほうはあるワクをきめて計画的にやられる、しかし紡糸機のほうは、人造繊維が世界の趨勢であるからということで、無制限の形で設備投資をしていいかどうかということは、私ははなはだ別な疑問があると思います。発展の方向は是認しますけれども、無計画な設備投資をいま各社が競ってやる状態では、遠からず人造繊維あるいは繊維産業全体に戦国時代、群雄割拠時代の来ることは明らかであります。もう目に見えておる。それを単なる自主調整という美名のもとにおいてやることは、結局は設備投資の過熱の問題、そして資本費用の増大、ひいては繊維市況の不安というものを引き起こしてくるし、ひいては対外的にはダンピングの対策をとらざるを得ないところに追い込まれてくる、こういう点を考えますと、紡糸機の漸増主義あるいは計画的な増設は、方向としては認めますけれども、その自主調整のあり方については、答申案にうたわれたとおりの官民協調方式を、法律の効果が発揮できるような形にぜひやっていただきたい。特に、この商工委員会は繊維産業だけを論じているのでありますけれども、隣の化学部門においてのいわゆる設備投資の行き過ぎの問題は、直ちに繊維産業に連鎖反応を起こすという性格を持っているだけに、これは日本の経済全体のために特に配慮すべき問題があるのではないかというふうに私は考えます。  もう一つつけ加えておかねばなりませんことは、この法律では審議会を設けるというふうになっております。今度審議会が設けられたら、労働者を代表する者の人数をぜひふやしていただきたい。各業界から、業界を代表する人がたくさん参加している割りには、一番弱い立場にある労働者を代表する委員の数が少な過ぎると思うのであります。対外的にもよくごらんになっていただきたいのでありますが、労働組合を参加させないという産業政策、あるいは輸出政策というものは成功しない状態に現実の世界は動いている。アメリカの場合でもAFL、CIOでは、大統領の就任と同時に、直ちに経済協力体制をとるために話し合いを始めております。そういう点を見ますと、日本の輸出振興あるいは産業政策についての労働組合の参加というのをもっと重要視しなければならぬ。政府や経営者だけの力では相手国を説得することができないという現実にきております。そういう点について特に議員の方々の認識を深めていただきたいと思います。  最後に、中小企業の対策です。先般の商工委員会の委員方の質疑に対して、中小企業については十億円は開銀から用意してある、あとは協調融資によって百億ないし二百億円ぐらい動くからしてまあまあいいのじゃないかという意味の、繊維局長から答弁もあったようでございます。しかし繊維産業のようにこれだけ多くの企業をかかえ、そして外貨の獲得という面から見れば最も貢献している産業のこういう構造の大変革を起こすときには、私はもっと力を入れてこの技術の改革あるいは企業の統合の問題、経済単位、生産単位をどこに置くべきかということについてのそういう合理化を推進するためには、いま国会の中で審議されているようなワクでは、私は中小企業の体質の改善というものはできないと思います。いいものも悪いものも一緒くたにして中小企業対策というものは論じられませんから、私の考え方では、やはりある生産単位、その規模に達するようなもの、あるいはまた、ある労働条件を確保できるような企業に対して融資の優先権を与えるという態度によって、初めて建設的な産業政策ができるのではないだろうか、こういうふうに考えております。  なお、労働基準法の一部除外例が現在置かれております。終戦後日本の繊維産業の設備が少なくて、マッカーサー命令によって増産の命令を出された当時においては、婦人の労働者といえども深夜の十時以後三十分延長してもよろしいという例外規定がありますけれども、あの例外規定は、法律はいま存続の意味は全然ございません。いま三割も操短をしている状態のもとで、設備規制をやらなければならぬと言っておるときに、何のために十時以後の深夜の操業を認めるか。これは明らかに事態におくれた法律が残っておることでありますから、十時以後の例外増産体制というのは早くやめていただきたいというふうに思います。  結論的にいえば、村区分廃止あるいは過剰設備規制、そして合理化を進めようという原則については私は賛成をいたしますが、自由競争という名のもとにおいて、節度のないそういう設備投資の過熱あるいは生産の増大というものは、巖に慎んでいかなければならない問題ではないでしょうか。端的にいえば、日本の国ほど、日本の繊維産業ほど、どっと増設したかと思えばすぐ操短をやっている国は、遺憾ながらほかの国に、先進国、後進国ともにないということであります。その繰り返しをまたやってはいけないという意味において、私は、天然繊維と人造繊維を含めて、需給関係の長期的な見通しを立てながら、そして産業の安定的な発展をしていただきたい。そういう意味合いにおいては、これから設立される五十人によるこの審議会は、権限を強化して、そして運用面においてももっと積極的なものになるようにやっていただきたいと思います。そしてその審議会答申というものを、通産当局は直ちに行政指導に強力に持っていく、そういうふうにしていただきたいと思います。  以上であります。
  10. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、小口賢三君から意見を承ることにいたします。
  11. 小口賢三

    小口参考人 繊維労連の小口であります。中小企業の労働組合を代表して、本委員会に対して意見を述べさしていただきたいと思います。要旨は、お手元にプリントで出しましたが、それに沿いながら意見を述べさしていただきます。  本法案は、一見繊維工業の設備規制のための臨時措置法的なよそおいをしておりますけれども、私どもは、法の制定の背景をなす政策意図というものを、必ずしもそれに限定して受け取っておりません。もちろん本法律案が制定されるに至った経過については、繊維製品の需給構造の変化、あるいは輸出貿易構造における繊維輸出の相対的低下によって、特に綿紡績業の相対的な斜陽化が進行しているために、これに対して過剰精紡機スクラップ・アンド・ビルドをてことして、複合繊維時代に対応し得る紡績業体質改善を意図しているというふうに理解しているのでありまして、そのための金融、税制上の優遇措置、生産、出荷、価格カルテル等の独占禁止法の適用除外の措置が許されることが本法趣旨になっています。したがって、私は、特定産業振興法のこれは繊維産業版ではないか、あるいは将来これは紡績業法という形に発展してくるのではないかという危惧を持っております。  本法案の制定過程、繊維工業設備審議会審議の過程をよく見てみますと、この法律案に対するそれぞれ綿紡績、羊毛紡績資本と化繊資本との間にいろいろなニュアンスの違いがあるということも、また先ほどそれぞれの参考人から出ました御意見のニュアンスの違いも、その辺にいろいろあるわけです。そういう点で、私どもは単にこれがいわゆる設備規制法だというのではなくて、かなり特定産業振興法の繊維産業版だというにおいが強いという点について非常に危惧を持ちます。それからしばしば、本法は時限立法で、四十三年後はなくなすんだということを言っていますけれども、操短登録区分もない自由競争基盤というものは、現在の繊維産業の相対的諸条件の中では、実はさらにこれが紡績業法として強化再編成されるような危険性があるのではないかということを感じ取っておるわけなんです。  本法中小企業及び労働者への影響についてでございますが、伝統的な繊維産業政策について、私ども中小企業労働組合はかなりの危惧を抱いています。伝統的な繊維産業政策がどのような経過をとってきたかと申しますと、一つは、生産力の発展に伴う過剰設備の買い上げ、技術革新に即応した新設備の導入に対する金融、税制上の優遇措置、二つ目は、原糸市況の維持のための操短の実施、その勧告、監督、滞荷金融の優遇措置、この二点にございました。ところが、繊維産業の生産構造は、御承知のように原糸の製造を行なう十大紡、化繊七社、羊毛、麻紡績等を頂点として、この糸を織り、加工染色、縫製する中小零細の産地群を底辺とした典型的な二重構造をなし、さらに、これに流通段階に対して、五綿商社と少数の産地問屋が介入した典型的な二重構造をなしておるわけであります。  こういう二重構造に対しては、よく糸高の製品安と言いますが、従来の繊維製品というものは、このような体制的な生産流通構造によって再生産されるものを是正する措置がとられたかどうかということにたいへん疑問を持っております。したがって、日本の繊維産業が、輸出競争力があるというように非常に言われますけれども、織布、縫製、染色加工の中小零細企業による実は低賃金と長労働時間によって、手間をかけるほど競争力が強いというのが実情でございます。  戦後に多少繊維産業が変わりまして、商社資本の金融力の後退とか、あるいは綿糸、綿布輸出から、スフ織物、メリヤス、綿合成繊維の二次加工製品などの製品輸出に転換しましたが、依然としてそういう転換過程においても、なおかつ原糸メーカーによる織布、加工、縫製段階の系列化が進んで、大手独占企業は一そう系列化、合理化を貫徹しているというのが繊維産業の実情でございます。本法の制定もその促進も、こういう伝統的な繊維産業の政策を一そう推進する、そういう上に立ってこれは制定されたように私どもは危惧しております。したがって、名前は繊維工業一般ではございますけれども、実体はこれは原糸メーカーの企業振興法というにおいが非常に濃い。そのために、本法制定を機会体制的に進められる行政指導によって、大手紡績による中小紡績の賃紡化あるいは大手紡績内部の集中生産に伴う工場閉鎖、生産の一部の中小企業への切りかえによる大企業労働者の首切り、女子労働者に対する閉鎖の形をとった名目的な自己都合退職の発生、あるいは大企業の製品によるチョップ販売体制の確立によって起こる中小企業との生産分野の競合、メリヤス、縫製、織機部門の系列化の促進がすでに進行しているところでございます。  ところが、中小企業の労働者の実態はどうかと言いますと、お手元の表にございますように、組織率については、御承知のような実情で、五千人以上がわずかに三三%、全体の組織率は四一%になっていますが、組織状況も、生産流通構造に見合うような二重構造の反映した組織の実情にございます。それから、現在のその地域におけるところの、とりわけ産地の労働者の低賃金状態は、お手元業者協定の表にもあるとおりであります。  それから、労働基準法の実施の状況を申し上げますと、滝田委員からもお話がありましたけれども、現在大阪の泉州地方においては、俗に泉州基準法といって、完全に現在の労働基準法が無法状態になっておる。ことに最近、二十四時間、二交代制が行なわれ、現在、大阪の基準局で一生懸命努力している基準監督の行政は、深夜業をやめてくれという状態です。まして、週休制はとられておりません。賃金台帳の面では一応週休制がとられておるごとく見えても、それは月二日休んで、あとの二日は片番だけ操業する、その分は賃金台帳に記帳しない、こういう状態でございます。それから、メリヤス、綿糸、絹、人絹、織布、これらの繊維の産地においては、現在でも九時間労働が実情でございます。このような実情というものは、もちろん業者の労働基準法の順法精神のあり方にもよりますが、それは現在まで伝統的にとられてきた繊維産業政策そのものがこのような体制というものを維持しておるという点が特徴だと私どもは考えるわけです。  こういう実情に対して、本法を労働組合の立場から考えまして、次のような意見を持っております。  今後の繊維工業は、糸及び綿布の生産と輸出から、メリヤス、二次加工の分野について、かなり生産と輸出の伸びが期待されているところです。ところが、織布業、染色整理業、メリヤス業、縫製業の近代化が実は著しくおくれておるわけです。本法は、従前の生産秩序の近代化を並行的に進める配慮に欠けて、右にあげた業種の近代化は、わずかに中小企業団体法と中小企業近代化促進法一般の行政指導にゆだねておるのでございます。そして紡績業を中心とする大企業保護本位政策の意図が実に露骨に出ております。  こういう実情を考えますと、繊維労連としては、次の条項が着実に実施される経過を見つつ、本法制定の趣旨をなす政策が進められることを希望し、本法の独走化については反対したいと思います。  労働者対策としては  一、織布業、メリヤスを中心に、主として産地における労働基準法の完全実施のための監督を強化すること。  二、現行最低賃金法を改正し、全産業全国一律に適用する法定最低賃金制の制定を進めるとともに、並行して繊維産業における産業別最低賃金制の実施の措置を講ずること。  三、織布、メリヤス、縫製業における家内労働の広範な動員の実態が、繊維産業労働者の労働条件向上のおもしとなり、中小企業労働者の雇用保障を不安におちいらしめておる現状にかんがみて、家内労働法の早急な制定の措置を講ずること。  四、国際競争力の強化を名目とする交替制の強化、労働密度の強化が進められておる現状に照らして、婦人年少労働者の保護に関するILO八十九号条約の批准、ILO週四十時間労働制に関する勧告への移行について検討すること。  中小企業対策としましては  織布、染色整理、メリヤス、縫製、撚糸業に対する近代化のための産業政策を確立すること。特に設備近代化資金の大幅融資ワクの確保、その協同化、専業化の促進のための金融、税制上の具体的措置。  二として、下請企業に対する加工賃の大幅引き上げと手形決済期限の短縮。  三として、中小企業と大企業との間の生産分野の調整措置。  これらの政策が進められることを望みます。  それから消費者対策として、趣向のあるよい製品が、いろいろな糸によって安く供給できる体制をとるということについては、私ども賛成でございますが、独占禁止法の穴あけに通ずる各種産業政策立法化には賛成できません。繊維工業審議会の構成委員に、そういう意味においては、滝田委員からも御発言がありましたけれども、私はさらにつけ加えて主婦、小売り商、中小企業労働者代表を多数参加せしめて、消費者の要望にこたえ得るような繊維行政が講じられることを期待したいと思います。
  12. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で参考人方々意見の陳述は終わりました。     —————————————
  13. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、政府並びに参考人に対する質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。板川正吾君。
  14. 板川正吾

    ○板川委員 参考人に伺いますが、まず第一に、紡績協会田和参考人に伺いたいと思います。  今度の新法が通りますと、二対一ならば格納紡機が解除できるわけですね。そうしますと、一番多いのは綿業関係と梳毛関係ですが、個々の実態としては、二対一なら解除できるのだから、新法が通ったとたんに大部分が解除の方向に向かうだろうか、待っていましたとばかり二台廃棄して一台を稼働させるという状態になるだろうか。この間、埼玉県のほうの現地を視察したのですが、そこの経営者は、解除されて動かすとすれば、いま人手もなかなか十分ではないから、人手の要らないような、ある程度の機械の合理化したものを入れる、そのためには、二対一で解除できるからといって、すぐ解除して動かすということはできない、そういう設備をする相当の期間が要る、こういうような話も聞いておるのですが、紡績業界の見通しとしてはどういう形をとるでしょうか、これが一点であります。  第二点は、無籍紡については、政府は十分に穴を埋めるような対策を講じろ、こういう意味の主張をされたように思うのですが、その意味はどういうことなんですか、ちょっと私わかりませんから、もう少し説明をしていただきたいと思います。  それから第三点といたしましては、金融、税制上の措置に対して要望がございました。御承知のように、開銀で本年十億の予定ワクがあるわけであります。しかしこれは、開銀のほうは設備の自動化あるいは近代化等の方向に、主として大企業に使われるだろうと思われるのですが、中小公庫について一体どのくらいの要求といいますか、この本法が通って四年間のうちに二百三十万の廃棄を行ない、百十五万が復活をする、そのうちに旧機械の復活が五十五万錘で、六十万錘が新機械になるだろう、こう言われておりますが、この六十万錘を設備を取りかえていくということになりますと、これについて中小企業としてどういう受け取り方をするだろうか、中小企業金融公庫にどの程度の金額の要望があるものでしょうか、その三点についてとりあえずお伺いをいたします。
  15. 田和安夫

    田和参考人 お答え申し上げます。  第一点の、新法の案に書かれておりますように、二対一でどのくらいのものが解除されるか、またそれが新法施行と同時にそういうものが出てくるかどうかという御質問であったと思いますが、正直に申しまして、どれだけ出るかということを現在はっきり申し上げられる段階に至っておりません。ということは、先ほど申しましたように、新法施行せられるということで各社はそれぞれ画策をいたしております。その画策の中には、ただいま御指摘がございましたが、はたしてそれに伴う労働者が獲得できるかどうか、これが一番大きな問題であります。また、現在とまっておるものを動かす、またはそれをつぶして新しいものをつくるといたしますれば、相当の金が要ります。したがってその金なり労働者なりがはたして予期どおりに得られるかどうかという点に疑問がございます。したがって私は正直に申して、十月になってどれだけ出るかということをはっきり申し上げることは不可能なんでございますが、ただ申し上げられることは、大企業の中で、すでに工場を閉鎖して、そうしてこの新体制に対応しようとしておるものが相当ございます。こういうものがすでに相当期間準備しておられますし、また金融の道がつけばおやりになるだろう、こういうので、これが相当出てくるだろう。しかも出てくれば、これは早い期間に出てくるだろうというふうに考えておりますが、しかし幾ら出てくるかということは、私はいまはっきり数字を申し上げるわけにはいきません。ただ問題の中小企業でございますが、中小企業は先ほど申しました金融の点、労働の点において非常に困難な立場にございますのと、それからまたすでに持っておりますものは、やはり資産でございまして、それは担保に入って金を借りているようなものがございますので、実際つぶそうにもつぶせない、こういう事態でございますので、私は中小企業の中で特殊なものはあるけれども、この機械をつぶして、そして新しいものを動かすというものが中小企業には少ないだろう、これだけのことは申し上げられると思います。  それから第二点、やみ紡機に対しておまえはどういうことを政府に要求するか、こういう御質問だったと思いますが、実はやみ紡機処理をどういうふうにして防止するかということは、ここ二、三年来政府のほうにおいても非常に苦心されまして、そしていろいろな手を使われましたが、事実上ほとんど効果があがらない。若干政府命令に従って機械をとめたりしたものもございますが、大部分のものは知らぬふりをして、ほおかむりをして通ってきたというのが現状なんでございます。それは現在法律上は認められてない機械でさえそうなんでございます。今度は法律上認められるのでございます。今度は設備制限法でございますから、したがって自由系をひくということなら、これはすでに設備として認められておるのでございますから、法律上今度は認められるのでございまして、ただ今度は法律ではそれが制限糸をひかれないという点だけが問題になる。そこで、これにはよほど政府が厳重なる監視をなされぬとできないのであります。ところが今度の法律で、政府のほうで監視に対する予算は何もとってございません。これは従来も民間の者が協力してやっておりました。いままでは村別というのがございまして、そして相当な犠牲を払って監視すればそれだけの効果がその村に返ってきたのでございますが、これからは対象がぽうっとしておりまして、はたしてそういう監視の費用を業界が負担して協力するかどうかということは私は問題だろうと思います。政府のほうでは、やはり従来どおり業界の協力によってこの監視をしようとしておられるのでございますけれども、われわれはこの点について疑問を持っておる。したがって私は今度のこの法律で一番大きな欠点は、やみ紡機に対する対策というものがはっきりしてない。したがってこの過剰紡機のもとをなしたやみ紡機が穴があいているという点については、われわれは非常な不満を持っておる。政府のほうではやるとおっしゃっておりますから、私どもは信頼せざるを得ない。おやりくださるだろうと思っておるのでございますが、どうかこの点については政府は行政上厳然たる態度をもって臨んでもらいたい、こういうふうにお願いしておる次第でございます。  それからいま、金融上の問題で、中小企業にどれくらいの金が要るか、こういうお話でございましたが、これも先ほど申しましたように本年度は十億円を開銀で認められまして、足らぬところは中小企業公庫のほうで借りようというお話になっておる。われわれのほうでも、いろいろ条件つきで開銀から見込みをとっておりますが、ところが見込みをとりますと、三年間にやりますのと、来年度一年間にやりますのと、はっきりいたしません。政府のほうの予算としては、十億円というものをとりあえず本年の十月以降来年の三月までのものを予定しておやりになっておりますけれども、しかし業者にとりますと、機械を注文するにしましても、来年できるか再来年できるかわかりません。そういうような関係で、とりました数字がはっきりしておりませんが、しかし先ほど申しましたように開銀の十億円というものは、ほとんど中小企業に回らないのじゃないかということをわれわれは心配しております。だから条件が、大体開銀はうしろ向きでなくて前向きの、しかも一定の規模のあるものにしかおやりにならないので、中小企業金融公庫しか問題にならぬ。したがって中小企業に対する体質改善ということは、中小企業金融公庫にたよらざるを得ないのでございまして、われわれは大部分はそっちに行くだろうと思っておりますが、正直のところ、いままでとった数字がございません。調べた数字はございますけれども、三年分をとっておるのか一年分をとっておるのか、これはわかりません。また金融のことでございますので、業界の情勢によって銀行がどういうふうな態度に出てくるかわかりません。しかし、とにかくいま政府のお考えになっているように、ほんとうの中小企業体質改善をするとすれば、また今後開放経済中小企業を役立たすためには相当なものを用意していただくと同時に、その条件等についてはもう少しゆとりのある方法をやっていただきたいということを、抽象的でございますけれども、申し上げるという以外にございません。  なお、われわれのほうもこの法律が通りましたらさっそく銀行に当たることになりますので、その場合には具体的な数字を必要とします。現在中小企業金融公庫のほうで、会社別にまた金額別に、それからまたその目的別に調べたものを出してくれということを要求しておりますので、現在取り調べ中でございますから、それができましたら差し上げることにさせていただきたい、かように考えます。  以上でございます。
  16. 板川正吾

    ○板川委員 参考人の方に伺いますが、いまの田和さんのおっしゃった、やみ紡機に対して取り締まりを強化せよという主張について、別にこれに反対光という意見の持ち主はございませんが、念のために……。(滝田参考人「ありません。」と呼ぶ)  次に、合繊の山口参考人に伺います。  何点かおっしゃった中で、共同行為使用停止命令というものが、何回か変わることによって需給調整的になるのではないかという心配をされておりました。この点は過日の委員会で私の質問に対する答弁で、そういうことはないのだ、大体一回出してそれでずっとやっていくのだということで、需給の状況に応じて解除したり強化したり緩和したりすることはない、こう言っております。そこで、輸出のための解除は困るという意見がございましたね。山口さんそうおっしゃられましたが、政府が考えているのは、使用停止の解除というのを共同行為の中の一項目とするのだと言っております。使用停止の解除の例があるのは、イ、ロ、ハ、ニと四点ほどあげておりますが、一点として、使用停止精紡機が滅失した場合において、その二分の一の錘の範囲内で他の使用停止精紡機使用停止を解除する、これは二対一ですから当然です。第二点としては、稼働精紡機を一対一で取りかえること。第三点は、試験研究に必要があるため。これは問題ない。問題は四点に、輸出振興のために必要がある場合という項目が掲げられておるのであります。ですから、輸出振興の場合には政府もある程度の解除があり得るということを考えております。では輸出振興のどういう場合に解除するんだということになると、二点ほどあるんですが、これは現行法における輸出ワクは、(1)米綿委託加工による輸出のごとく、大口の輸出受注があった場合に、その繊維製品の受注数量を確保するために格納を解除する場合、これが現行法であります。(2)として、繊維製品の輸出振興するため、繊維輸出実績に応じて格納を解除する場合、この二つがあるのだということで、いずれも、この輸出ワクで緩和する制度は、繊維製品の輸出振興に寄与することがあるからやむを得ないというたてまえを第一にとっております。  第二としては、製品の正常な輸出目的とする方向において現行法と同様、輸出ワク制度により繊維製品の輸出の進展をはかることが必要であり、もって国際収支の改善につとめなければならないということで、新法においてもそういう考え方を引き継ぐのだ、ただしこの制度で「二対一の比率による廃棄新設又は廃棄解除の方法がそこなわれることのないように、また、単なる需給調整の手段に用いられないように、巖格に実施してゆきたい」ということを政府は言っております。こういう従来の輸出をふやすためにある程度の解除はやむを得ないということと、しかしこれが需給調整の手段にならないように厳格に運用する、こういう政府の答弁が書面によってなされておるのですが、この点に関しまして御意見を承りたいと思います。
  17. 山口利吉

    山口参考人 ただいまの御質問に対してお答え申し上げます。  いまお述べいただきましたような範囲内でならば、けっこうだと思います。従来は、とかく輸出ワクというものをつくりまして、それが需給調整につながっていったわけでございます。それを、そういうことがあっては困る、こういうことでございます。なお、第五条でございますが、この五条につきましても、先ほどもちょっと触れましたが、試験研究の用に供する場合、その他通産省令でという、その範囲のことをいま先生がおっしゃっていただいたと思うのでございますが、いやしくも法律である以上、その法律で簡単にオーバーしたようなことを通産省令できめられたのでは困る、こういう意味で申し上げたわけでございます。以上です。
  18. 板川正吾

    ○板川委員 もう一点山口参考人に伺いますが、化繊の国際競争力といいましょうか、どういう程度に現在なっておるか、また将来どういうような競争力を持つような状態になっておるか、その点をちょっと。
  19. 山口利吉

    山口参考人 いまの御質問につきましてお答え申し上げますが、合成繊維化学繊維、特に合成繊維におきましては、最近非常な勢いで伸びております。先ほど滝田さんからも御指摘がございましたが、従来規制法によって曲がりなりにも自主調整をやっております。ところが、これは御質問の点にちょっと触れないかと思いますが、われわれのほうの業界としては、先ほども申し述べましたように原綿、原毛の輸入が自由化された今日、国産品である繊維原料をつくる化学繊維の原料を押えるべきではない。それでございますから、われわれのほうとしては、規制法はもちろんのこと、単独事業法的なものはあくまで反対でございます。精紡機の設置とか、それとは全然違うわけでございまして、高度の科学技術とばく大な資金を要する産業でございますので、そのためにいままでは悪平等、それからワク取り、こういうことに終始してきたわけでございます。なぜそういうことを申し上げますかというと、ただいま先生の御質問に対しても関連があるわけでございますが、そういうようなことで健全に伸びていくものをいままでは無益に押えられていた、こういう形でございまして、むしろその規制されたがためにワク取りを無理をしてもやる、こういうような傾向があったために、伸びていくものが健全に伸びたとは申せないわけであります。なるほど化学繊維価格を国内的に見ますと、レーヨンにしましても、合成繊維にいたしましても、ある程度先進諸国と肩を並べるかのように見られつつありますが、しかし、実際には各先進国におきましては、それぞれ間接税を設けております。間接税と申しますのは、たとえばイギリスでは仕入れ税、西ドイツでは取り引き高税、フランスでは付加価値税、イタリアでは売り上げ税、こういうようなものを課しております。これは、今度輸出ということになりますと減免されますので、そうなるとその価格の率は非常に高いものでございます。安く入ってくるおそれはございません。それでございますから、まだまだ全体的に考えましても合成繊維の——もちろん品種その他にもよりますけれども、その筆頭でございますナイロン、テトロンにいたしましても、まだ国際競争力は欠除している、私はこういうふうに考えるわけでございます。   〔委員長退席、始関委員長代理着   席〕
  20. 板川正吾

    ○板川委員 滝田参考人山口参考人に一点、繊維の消費量の問題でお尋ねいたします。  滝田参考人は、法律目的合理化輸出だけにあって内需を考えない、若干片手落ちじゃないか、こう言われておったようであります。そこで、内需をどの程度に見込んでおられるのか伺いたいのですが、政府は今度新法を可決した後に、三十九年、四十三年度の両年度の繊維の需給の見通しをして、いわゆる使用停止共同行為指示しあるいは命令をする、こういう形になる。その繊維の需給状況を見ますと、合成繊維が三十九年度三十五万トン、四十三年度が五十八万八千トン、四年間に一七%になるといわれております。これは合成繊維ですが、そこで山口さんに伺いたいのです。過去四年間に合成繊維が三倍になっておりますね。ところがここでは一七〇%しか見てないから、七割しかふえないように見ておるわけです。この点ではやや過小評価ではないかというように考える。この点について御意見山口参考人に伺いたい。  それから滝田さんに伺います。総合的な繊維の需要は、三十九年度が百四十万トン、四十三年が百七十万トンで、この四年間で二割二分ふえるというふうに政府は需要の見通しをとっておるのであります。それから輸出がこの間に四十五万トンから五十二万トン、一割七分ふえる、こういうことになっておるのであります。さっき滝田参考人は、日本は国民一人当たり繊維の使用量は八・七キロだ、こう言われました。アメリカが国民一人当たりが十五・五キロ、カナダが十一キロ、オーストラリアが十キロ、イギリスが十二キロ、西ドイツも十二キロ、フランスが九キロ、イタリアが六・五キロ、ソ連が八・五キロという中で、日本は比較的繊維の消費量というのが多い。各国に比較して、国民所得の割合から言えば、わりあいに繊維の消費量が高い国だと思うのです。しかし、この高い国民の消費量があるからこそ、輸出産業として、現在でも輸出品目のうちで繊維製品というのが一番多いわけです。そこで総合的な需要の見通しとして、日本で国民一人当たりどの程度が適当というんじゃないけれども、望ましい数量だとか、たとえば西ドイツ並み程度はあるべきじゃないかとか、フランス並み程度というようなことを考えておられるか、この点を、消費量の点について一つの考え方を伺いたいと思います。  それから次に、最低賃金制をすみやかに政府は実施すべきだというようなことを滝田参考人も、また小口参考人も申されました。小口さんのほうははっきりしておるのでありますが、滝田さんのほうは、これは全国一律の最低賃金制を政府はしくべきだ、こういうふうな意味でおっしゃったのか、その点をひとつ。
  21. 滝田実

    滝田参考人 第一点の、日本の繊維の消費水準というものはヨーロッパの国あたりと比べてどの程度かということですが、どの程度であるということは、気候とか風土とか習慣の相違がありますから、断定的にどこだということは言えないと思うのです。しかし、これは少し前ですけれども、国鉄の労働者にアンケートを求めて、そしてあなたはオーバーを何着持っていて、背広は何着持っていて、いまの繊維の消費についてどう考えますか、こういうことを求めたことがあるのですが、そうなると、結論的に言えば、それはほしいんだけれども買えないんです、これが結論で、背広について言えば、冬服、夏服、合い服、こういうふうに季節を分けての背広を持っていない人が半数ぐらいある。奥さんについても、オーバーを持っていない人がそれに近い状態にある。そういう点を見ますと、これはどの国に見合った消費水準というようなことではなしに、やはり低所得者が、欲望はあるんだけれども、買える状態にするかどうかというところに日本の消費の傾向があるんではないだろうか。消費者こそが王様であるというようなキャッチフレーズで繊維の宣伝がされておりますけれども、宣伝費にもあんなに金を使う、一社でも多いところは三十億円くらい年間広告費を払っておるんですけれども、むしろ低所得者のほうの購買力をどうつけるかというところに日本の繊維の消費水準というものが左右されておるのではないだろうか。そういう点で、今度労働者の賃金の傾向なんかを見ますと、低所得者のほうが高額所得者のほうよりも比較的上がっておりますが、しかし、支出の面においては、その消費の増大ということが、繊維というよりもむしろ食べものなり、いわゆる住宅関係費用のほうに食われておって、所得がふえても必ずしも繊維の消費増大というふうに結びついていないのが昨今の傾向のように思います。したがって、国民所得の増大率だけ確保されるかどうかということがまず一つのめどになるのではないだろうか。そういう点を考えますと、先ほどの論法と少し結びつくのですけれども、国民所得の増大率すらが繊維の消費の増大に結びつかないとするならば、輸出は大体三%がせいぜいだということしの見通し、それが今後どうなるかということについて、私は楽観は許されないと思います。政府の見通しはやや甘いのではないのだろうか。具体的に言えば、アメリカの最近の規制措置、あるいは豪州の措置、あるいは西独あたりでも油断できない状態です。EEC諸国も……。そうだとすると、輸出が低価格というプレッシュアによって出すならば別問題ですけれども、そういう価格の迷惑をかけてまでも出そうというような強硬策はとても通用しないのではないだろうか。そういう点から見ますと、輸出の増大率が三%、どんなに何か条件に恵まれても五%程度だ、国内はせいぜい横ばいだ、こういうふうに見ますと、いわゆる輸出と内需と含めて年間非常な増大傾向だというが、天然繊維のほうは規制措置をしても大体横ばい、漸増ぐらいだ。ただ紡糸関係のほうが、ことしの傾向だけ見ても一一%以上ふえていく、あるいはひょっとすると一五%ぐらいふえるのじゃないだろうか、こういう点を見ますと、すぐ生産過剰になる問題が起きてくる。こういう点で、輸出と内需と含めて、いわゆる生産秩序という観点から、需給関係と設備がどうあるべきかという観点で、この法律以外にもう少し幅を広げて考える必要がある、こういうふうに私は申し上げたわけであります。  それから最低賃金の問題はやはり全産業一律だ。全産業一律ですけれども、どの国が最低賃金を実施した経過を見ましても、望ましいのは繊維産業に働く全労働者という対象にしたい。しかし、その綱の目をどの程度こまかくするか、荒くするか、たとえば二府県以上にまたがっているというような事業場にするか、あるいは事業場何人以上というふうにするかについては、これは相当詳細な検討を要するのではないだろうか。しかし、そういう具体的なきめのこまかい論議はこれからしなければいけませんけれども、少なくとも繊維産業に全国一律の最低賃金をやることだけはやはり必要だ、こういうふうに考えます。
  22. 山口利吉

    山口参考人 それでは、私に対する御質問にお答えいたします。  いま、先生の御質問では、この四年間に一七〇%の合成繊維の伸びではちょっと見方が少ないのではないか、こういう御質問のように伺いました。それで、私たちのいまの考え方といたしましては、ここに数字を持っておりますが、合成繊維の伸びは、まさに先生の御指摘のとおり、三十三年末はわずか日産二百一トンの設備でございましたのが、三十八年度末は七百六十三トンになっている。それですから、三倍以上の伸びを示しているわけでございます。それで、仮登録という、現行法にあります仮登録によって現在設備を進めておりますのが、今年末には約千八十トン、千百トン程度は動いてまいります。それでございますから、七〇%の見方というのは少な過ぎると私は考える。それから、いままで審議会その他で需給見通しということをやっておりましたが、これは御承知のように糸換算での見通しだったと思います。それで、合成繊維は糸ばかりでございません。綿の段階で、そのままふとん綿にも使えます。また、各産業用の上での需要が非常な勢いで伸びております。でございますから、そういう意味から言って一七〇%程度にあるいはお役所のほうでお考えになったかもしれませんが、全体のあれとしましては私は低きに失すると考えます。  なお、私の一番懸念いたしますのは、合成繊維がこういうふうに伸びてまいりまして、ナイロン、テトロン、それから最近は夢の繊維と言われますポリプロピレン、こういう繊維が伸びております。こういうようなものはどなたが論議されても、何年にはどのくらいの需要があるだろう、こういうようなことは私は神様でない限り絶対不可能だと思います。それで、これは要するにメーカーの需要開拓の努力、それによって伸びてきたわけでございます。それですから、今後もその一応の目安としての見通しというものを作成なさることはけっこうだと思います。しかし、いままでのようにそれがワクである、こういうような考え方では困る、こういうふうに考えております。  それからなお、今後は比重の軽い合成繊維が非常な勢いで伸びてまいりますので、これは世界的な傾向としましても、比重の重い綿、毛と比べまして国民の一人当たりの消費量が何キロ、こういうことでは当を得たということにはならないと思います。目方が軽くなるのですから量的には多くなる、こういうことも考えていただきたいと思います。以上です。
  23. 板川正吾

    ○板川委員 これは小口参考人滝田参考人に伺いますが、審議会に労働者の発言をもっと強化してほしいという要望がございます。小口参考人はさらに、消費者の代表も入れろ、こういう御意見でございましたが、大体五十人のうち労働者代表が何か一人か二人だそうでありまして、これはまことにけしからぬ話であります。どの程度の希望があるか、ひとつ御意見を聞かしていただきたいと思います。
  24. 小口賢三

    小口参考人 従来はメーカーと問屋の代表が多かったと思うのですが、それに対して、いずれにしても業界の諸君は、この法律が通れば独禁法の穴あけなんだということを公然と言っておるわけです。そういう意味において、私どもは特に繊維工業審議会に対して、そのような消費者の立場からのあれを生かしてもらいたい、数で申しますれば、多ければ多いほどいいのですが、最低限一名以上必要であろうと考えております。
  25. 滝田実

    滝田参考人 いままでやってきた審議会の経過を見ますと、総合部会に私が一人入っておったのですが、労働代表ということは好ましくないということで、そういう表現をされてないのです。学識経験者というようなことで、労働代表というたてまえをとっていない。業界のほうはちゃんと業界代表ですから、こっちは銀行屋さんも評論家も一緒くたにしてどうにかまあていさいをつくろってもらっておる程度ですから、私は少なくとも三本足の審議会の性格になっていないと思うのです。やはり労使は大体同数に近い状態、それに第三者として、やはり純粋な意味で、第三者的な意味で学識経験者、それに消費者、金融関係はぜひ入ってもらいたい。そして三者が同数くらいがいいのではないかというふうに思うのです。これは日本の国だけの問題じゃなくて、西ドイツあたりのやり方を見ると、大体そういう傾向になっているのじゃないだろうか。イギリスの場合はランカシャーの問題で大問題になりましたが、結局労働代表が英蘭銀行の理事に一人入っております。日本では日銀に相当するところまで労働代表というものが入るところまでいって初めて産業なり経済というものが民主的に運営される。その点については日本の現状はきわめておくれているというふうに思います。
  26. 板川正吾

    ○板川委員 最後に一つ。どなたでもいいのですが、この前の旧法ができたときは過剰設備処理ということも目的にしておったわけです。ところが実際はこれを需給調整の基礎としましたために、過剰紡機が整理をされないで、登録紡機がそのまま残っている。登録紡機があれば、何%ということで操短を命ぜられますから、もとのベースがあったほうが得です。もとの登録数が多いほうが得ですから、過剰紡機は減らさないという形で行なわれている。そこが当初予想したものと大きな違いであったと思う。今度の場合はまあ二対一で、格納されたもの二錘廃棄をすれば、うち一錘は新設してもいいし、復活をしてもいいということになる。いま滝田参考人からも話がありましたように、イギリスの場合にはたいへんな時間がかかって、政府も会社に四分の一の補助を出すということを何回も繰り返してランカシャーの過剰機械の整理をやった。今度はとにかく政府は一銭も出さないでやろうというのですが、この点がこの前の法律のように事志と違うようではいけないと思うのです。大体今度の場合、政府は一銭も出さないが、大体において予想されるような二百三十万錘が廃棄され、百十五万錘が復活をし、そのうち六十万錘が新規の機械になるだろう、こういわれておるのですが、そうした大体政府の予想のような状態になるだろうか、それとも何か大きな食い違いがあって——この前の旧法の制定とその後の状況のように大きな食い違いがあっちゃいけませんから、その辺の見通しについて、どなたでもけっこうでありますが、参考人から伺って、終わることにいたしたい。
  27. 滝田実

    滝田参考人 率直に言えば、ちょっと様子を見た上でというところが中小企業の現状だと思うのです。つい先般、最低賃金の中央からの視察に北陸地方を回ってみたのですが、若年労働力が確保できないものですから、いわゆる高年齢層、五十歳、どうかすると六十に近い人まで近所から集めて、そうして日給三百円というかっこうでやっている。今度新しい法律ができるのにどうなるのですかといって、そこの業界代表者全部集まってもらって聞いてみたのですが、まあ、いくところまでいってみなければわかりませんなというところのようですね。だからそういう点を見ますと、この法律がどんなふうに運用されていくかということについては、先ほど田和参考人からもお話があったように、おそらく開銀融資その他でも、自己に相当借りる能力があるところだけに流れていってしまって、そうして中小企業は様子を見た上で何とかいくところまでいってみよう、こういうところでしょうから、ほんとはこの会議あたりも、中小企業の代表者を何人か呼んで聞かれるべきじゃなかったかというふうに思うのです。きょうの参考人、それは全体を代表するとはいいますけれども、純粋な意味において中小企業を代表する——この問題、一番被害者は、問題が起こるのは、中小企業中小企業だといいながら、この人選を見て、私ちょっと考えざるを得ない、こう思っております。
  28. 始関伊平

    始関委員長代理 中村重光君。
  29. 中村重光

    中村(重)委員 時間の関係で、簡単にお伺いいたします。  まず滝田参考人にお尋ねしますが、あなたは審議会委員をしておられるわけです。この繊維新法が実施された場合に労働者に与える影響という点、審議会答申に、この答申の実施に際しては労務者、消費者及び関連事業者等に対する影響について十分の配慮を希望する、こういうようになっているわけですが、法案を見てみますと、なるほど十八条の共同行為期間及び内容の中に「当該共同行為指示を受けた者の従業員の地位を不当に害するものでないこと。」こういうことは入っておるわけです。ところが十七条におきまして、特に「一般消費者及び関連事業者に対する影響その他の事情を参酌して、」云々というようなことで、答申法案の中に強く生かしてきている。この点が労働者に対する配慮というものに欠けているというような感がするわけです。その点に対して、審議会委員をしておられるあなたとしてはどう考えておられるのか。また具体的には、この法案が制定、実施された場合において労働者にはどのような影響が生じてくるのか、その点をひとつ伺ってみたいと思います。  いま一点は、時間の節約上続いてお尋ねをいたしますが、小口さんのほうからは具体的な資料が出ておるわけであります。あなたのほうでは述べられなかったのですが、労働者の平均時間というものはどの程度になっておるか。それから賃金の、いわゆる最低賃金であるとかあるいは平均賃金というものはどのような水準になっておるのか、その点も伺ってみたいと思います。
  30. 滝田実

    滝田参考人 これは先ほど触れたつもりでありますけれども、去年の七月の繊維工業設備審議会答申の第九項目に「労働対策」という一項があります。そこで「本法施行に際しては、政府は労働者の利益が害されることのないよう配慮する必要がある。」二項としては「繊維産業において最低賃金法の実施が一層推進されることが望ましい。」こういうことで、抽象的にはなっておりますが、具体的には雇用関係の問題で、いわゆる労働力の流動の問題が必ず起こると思います。要するに、配置転換もあれば事業場閉鎖もあるでしょうし、企業合同という問題も起こってくる、当然いわゆる集中生産方式というのが進んでくると思われます。ですから、まず労働力の流動化に対して労働者の不利益を来たさないということが一つ、それから労働条件の低下というのはこの中にはあり得るはずがない、あってはならないという点が第二、第三は、最低賃金制の即時実施といいますか、早急な実現、この三つにしぼってこの審議会発言をしてきました。前回の臨時措置法が制定されたときに、法律の案文の中に入れるのはむずかしいという法制局その他の見解がありましたから、国会において附帯決議がなされております。ですから、その附帯決議というものを生かして、そして行政的な指導、あるいは労使がそれによって問題を解決するというふうにしていきたいものだ、こういうふうに思うのです。石炭の場合を見ても、石炭産業があそこまでいって、大騒ぎになれば対策をするということではなしに、石炭産業に劣らないだけの重要産業ですから、そういう意味合いにおいては、いま申し上げたことをぜひこの法律施行あるいはこれを立法化にあたっては何らかの形で決議なりしていただきたいと考えております。  それからまた、どんなことがいろいろ起こるかということについてでありますが、若年労働力を確保するという点については、繊維産業の賃金が、ことしの要求は、いかなる地域においても最低が一万三千円で闘争が進んでいるわけです。従来は一万円ベースだったわけです。しかし未組織のほうの状態は、先ほど申し上げたように、若年労働力に対しては募集の費用を使って、相当高い賃金を出しても採ろうという意欲が各企業にあるのですけれども、若い人は来てくれないものだから、昔とったきねづかというような人、そういう古い人を近所から集めてきて、それを三百円くらいの日給で雇っていこうという、高年齢層のほうが低賃金で雇われるという傾向が出てきておるわけです。ですから、これが今後もっと顕著な形で出てくるのじゃないかというふうに思っています。なぜ若年の人は来ないかということについては、あの作業環境、あの条件ではいやだという点、それから、あの寄宿舎の集団生活、雑居生活は自分の自由がないという点について、やはりきらいます。そこにまた、女ばかりのところはいやだ、おもしろくない、これは言いにくい話だけれども、いまの気風です。そういう点を考えますと、封鎖的な生活環境だけをよくするということ以外に、何かよほどいい、労働条件以外の新しい生活環境をつくらない限りは繊維産業にはちょっと来ないのではないかと考えております。
  31. 中村重光

    中村(重)委員 小口参考人に……。いま私がお尋ねしたような点について何か御意見がありませんか。
  32. 小口賢三

    小口参考人 先ほど触れましたので特にありませんけれども、一応心配になりますのは、これが全体として体制的に進められている関係上、従来の繊維産業におけるピラミッド構造がさらに一そうピラミッド型に進んでいくという点が一つ。もう一つは、繊維産業は御承知のように二次加工その他の点がだんだん変わってまいりまして、従来中小企業の生産分野であったところに対して大企業がどんどん入ってきておるわけです。そういう面で、系列化といいますが、別の面で中小零細企業のあぶり出しに実際問題として通じてくるのではないか、そういう点をおそれているわけです。
  33. 中村重光

    中村(重)委員 山口参考人にお尋ねいたしますが、あなたのほうでは消極的賛成、こういうことなんですが、詳細な御意見を伺いましたので、大体考え方はわかるわけでありますけれども、この法が制定、実施される場合、運用いかんによっては、需給調整という現行法と何ら変わることにならないではないか、こういうことをたいへん心配しておられるようであります。特にあなたのほうで運用上注意をする必要がある、配慮しなければならないということについて御意見があれば、ひとつ伺ってみたいと思います。
  34. 山口利吉

    山口参考人 ただいま先生から、消極的賛成のようだとおっしゃいました。これは当初からわれわれの業界としては、こういう規制法——しかも三十一年に制定された現行法が時限立法であり、それでさらにまた四年延ばされて四十年六月になる。そういうような現行法のもとにおきましても過剰紡機処理はできたわけです。それをようやりもしないような業界が、しかも今度の法律を見ますと、ほとんど形が同じだ、こういうことでは前向きの姿勢になれないのではないか。それでわれわれのほうとしては、即時村区分撤廃その他を主張したわけでございますが、関連業界その他も多いことでございますので、この辺ならばやむを得ないということで妥協したわけでございます。それでございますから、先生の御指摘になりますように、今度の法律は形こそたとえば共同行為というようなことになっておりますが、これは凍結命令で出すべきだった。それが共同行為というようなことでは、またぞろうしろ向きの姿勢になるのではなかろうか、そういう点を心配して申し上げておるわけでございます。
  35. 中村重光

    中村(重)委員 田和参考人酒井参考人に同様なことをお尋ねいたしますが、この法案が御承知のとおり四年間の限時立法になる。四年後の昭和四十二年度におきまして、過剰紡機の問題が解決するかどうか、この点と、それから四年終わりますれば自由体制移行するということになりますが、それでよろしいとお考えになっておられるか。繊維産業の実情からいたしまして、やはり政府の何か計画的な配慮が望ましいというようにはお考えにならないか。それからいま一つは、過剰紡機といたしましては綿紡、梳毛紡、スフ紡、こういうことになっておりますが、この三つだけが過剰紡機ということになるのかどうか、現在わかっておりますれば、四十二年度の見通し等についてお聞かせ願いたいと思います。
  36. 田和安夫

    田和参考人 この法律が済んだあとで自由競争になっても、われわれのほうは差しつかえないのかどうかという御質問のように思います。これはいろいろ議論のあるところでございまして、現在の過剰の事態を来たしたのが多年の統制の結果である、したがって、過剰というものが結局また業界の負担になっておる点から考えれば、これは自由競争にゆだねて、一切統制的なものは排除してしまったほうがいいのだという見方がございます。現在われわれの業界でもそういう見方をとっておる人がございます。また、たびたび申しますように、綿業界というものは五万錘以下の小さい業者が八〇%を占めておる、こういうようなものが、ほんとうの意味においての自由競争ならば、おのおのが責任を持って経済原則に従う自律調整の道が開かれるのでありましたならば、自由競争もけっこうであります。そしてそれによって業界の安定も期せられるということも考えられます。しかし、はたしてそういうような事態になるかどうかという点については私は疑問だと思います。したがって、こういうような中小企業を主体とする産業にはやはり何らか国家の計画的な要素のものが必要なんだという見方をとる人もございます。しかし業界は動いております。動いておる一番大きな原因は、私は労働者にあると思います。労働者の不足というものがあって、それが大きくこれからの産業の自由活動を抑制する条件になっております。したがいまして、その状態がどうなるか、要するに機械をつくっても労働者か得られないというような事態になって、また自由競争のもとにおいては、当然シビアーな業界不況というものがくるということが考えられますので、したがって、自由競争にしても必ずしも過去のような設備の過剰は来たさないだろうというふうな見方もあります。したがって、四年後の状況がどうなるかということをいま想定するわけにはまいりません。私は先ほど言うように、二つの見方があるが、それはそのときの四年後の事態によって考えるよりしかたがないというふうに考えております。   〔始関委員長代理退席、委員長着   席〕
  37. 酒井弘

    酒井参考人 この法律につきましては、現段階においては非常に賛成をするものでございますが、ただ将来の見通しになりますと、いろいろ意見が違ってくると思います。自由競争がいいとか悪いとかという話になりますと非常にむずかしい問題になりまして、私個人として考えておりますことは、自由競争のいいところは、品質の向上とかあるいはコストの競争というところに競争原理が行なわれると、社会は非常に発展していくのだと思います。ところが、日本の現状というものは、そのほかに生産数量競争が完全に行なわれるわけです。そこに不況が出てくる。これが自由競争の一番悪い欠点だろうと思います。生産数量ばかりでなく、たとえば銀行の支店をつくるにせよ、あるいは過剰設備をつくるにせよ、個々の企業にまかされておる以上は、その過度の競争に打ち勝つために、社会全体から見ますれば非常にむだなことが行なわれる、ここに非常な欠点があるのじゃないか、かように思うわけです。それではなぜこの過当競争が行なわれるかという問題でございますが、これは日本の社会全般の系列の問題が影響しているだろうと思います。というのは、日本の社会というものが縦の系列になっている、要するに非対等関係になっているというところに、根本原因があるのだろうと思います。たとえば会社にしてしかり、あるいは官庁においても先輩後輩の関係があり、政党におきましても派閥の関係が出てくる。こういう縦の関係が強い社会でございますので、そこにそういう過当競争——いわゆる縦の関係が出てきますと、排他的になり、秘密主義になる、そして自分だけかわいがるというような道徳にまで影響してきている。したがって、日本人が社交的でないし、しかもまた社会道徳にも欠けてくるというような事態が起こってきておりますので、この問題は、結局日本の社会がもう少し対等的な横の連携ができて、あたかも織物のごとく縦横の関係が均衡的にできる事態がこなければ、この欠点は直せないと思います。
  38. 二階堂進

    二階堂委員長 加藤清二君。
  39. 加藤清二

    加藤(清)委員 この際、私は、簡単に要点をしぼって、二、三点御質問をしたいと存じます。  もとより私は、この繊維産業に対しては非常に愛着を持ち、それに従事しておっていただける人については敬意を表しているものでございます。言うまでもなく、日本産業、特に日本経済の発展の歴史は繊維産業の発展の歴史であると同時に、日本経済の発展の母体になったものは、これは糸へんでございます。ところが、それがどうまかり間違ったものか、十年前後からおのれみずからその手足を縛らなければならないということに相なってまいったわけです。片や日本経済のエネルギーの主体であったところの石炭が同じような傾向をたどっておるのですが、しかし糸へんは必ずしも斜陽であると私は考えておりません。なぜかならば、いま滝田さんがいみじくもおっしゃいましたように、需要は国民生活が豊かになれば当然伸びるものである。どんなに裸主義が横行しても、銭さえ持てば国民は繊維を数多く持つことに幸福感を感ずる。したがって、決して私は悲観的には見ておりません。ぜひ振興させたい。そのために以下二、三点質問するわけです。  第一番に、専務さんが大ぜいさん来ていらっしゃいます。各専務さんにお尋ねしますが、最賃法を至急実行するという意思はあるかないかという問題でございます。すでにこれは答申の中にも出ております。これはまたちょうどおりよくILOの批准がこの国会で行なわれようとしておるやさきでございます。先ほど滝田さんのお話にございましたように、自由貿易でありながら、日本の繊維品が外国で制限を受ける。ガット三十五条の援用を受ける。その原因は常にレーバー・ダンピングであり、ソシアル・ダンピングでございます。滝田さんのお話のように、ラッシュの問題もございますけれども、特に日米間の糸へんの輸出の歴史は、クレームの歴史と言ってもいいほどであります。そのためには業界の皆さんも労働界の皆さんもたいへんな御苦労をしていらっしゃる。その点については敬意を表するのですが、そのクレームがやがて今日の制限法の基礎の大黒柱をなしておることは周知の事実でございます。そこで最賃制度をしく用意があるかないか。もしそれができないというならば、なぜそれができないのであろうか。私はこれをしくことがかえって労働力の確保に非常に役立つではないかと思うのですが、せっかく難儀して支度金まで使って確保した労働力が、やがて都会、工場へ来て、周囲をながめてみるとそれ以上待遇のいいところがあるので、次から次へと引き抜かれていってしまう。それが現状だと思う。したがって、最賃法をしくということは、業界の発展にとってもプラスである、輸出振興の一番の大切な問題であると私は思うわけでございます。これについてまず田和さん、酒井さん、山口さん、ともにひとつお答え願いたいと思います。
  40. 田和安夫

    田和参考人 最賃法をしく用意があるかないか……。
  41. 加藤清二

    加藤(清)委員 いや、制度です。
  42. 田和安夫

    田和参考人 私は法律と聞きましたが、先ほどからのお話を聞いておりますと、現在最賃制で一番問題になりますのは、われわれの関係いたしまする紡績業でなくて、むしろそれ以下、と言ってはいけませんが、二次製品、三次製品、むしろ家内工業に近いような部門にあるように考えるのでございます。われわれのほうの紡績部門におきましては、会員の大部分が現在全繊と労働協定を結んでおりまして、事実上これをやっておるのでございまして、いまさらわれわれの業界としてこの制度のよしあしを論ずる時期ではないように私は考えます。  以上でございます。
  43. 酒井弘

    酒井参考人 ただいまの田和参考人と同様の意見でございまして、われわれも全繊との交渉において初任給その他が全部きまっているわけでございまして、たまたま地方あたりでいろいろとそういうことが小さい企業との間において話が行なわれておりますが、実際問題としてわれわれ業界はそれを上回っている状態でございますので、いまここで問題視する必要はないかと思います。  以上でございます。
  44. 山口利吉

    山口参考人 私も、いま田和参考人並びに酒井参考人の申し述べられたとおりでございまして、私のほうでも化繊の専業七社が全繊の滝田さんはじめ皆様方とよくお話し合いをしているわけでございまして、意見といたしましてはお二方と同意見でございます。
  45. 加藤清二

    加藤(清)委員 お答えを額面どおり本日は承っておきます。しかし、中小企業と申しましょうか、大紡績、十大紡、新紡、毛の六大紡、そこらあたりの系列化、ここに実はいまだ労働組合のできていないところまである。滝田さんをはじめ全繊の皆さんの御努力によって、組合のできているところはおっしゃられるとおりになっているかもわかりません。しかし、私の調査や労働省の調査はさようになっておりませんのを、私は非常に遺憾に思うわけでございます。  そこで、滝田さんにお尋ねいたしまするが、組合のできていないところは、はたして組合のあるところと同等の待遇を受けているかいないか、あるいはまた、組合はあっても、いまお三方がおっしゃるようになっていないところが労働省の調査や私どもの調査ではあることを、私は知っているのでございます。そこで、そういう問題についてどうなさるおつもりか。逆に、今度お三方に、未組織のところに労働組合をつくろうといたしますると、何やら勢力が作用いたしまして、それができない結果になる、できてしまっても、これがこわされる結果になるという具体的事実をたくさん私は知っているのでございます。こういう傾向についてお三方はどうお考えでございましょうか。もう新しくなった自由化の今日、せめてガット三十五条の援用をレーバー・ダンピングなるがゆえに適用されないようにすべきであると私は思うのでございます。
  46. 滝田実

    滝田参考人 いま非常に広範な問題を含んでいるわけですが、組織の増加傾向を見ますと、全繊がいま四十六万の組織で、企業の数が千二百をこえておりますが、ここまで広げてはきましたけれども、それ以外に未組織のところが相当あるのです。未組織のところの正確な労働条件というものを把握するのは困難ですけれども、まあ大ざっぱにいえば、組織労働者よりも実額において賃金が二割ないし三割低いのではないか。しかし、それは実額で、それだけの差があるところにもってきて、労働時間が長い。それから付加給付が非常に悪いです。ですから、共同化でもして、食事なり住宅対策なり、中小企業の人たちにいこいの場所を与えるようなことが各産業地域にできないものだろうかどうか。そういう点については、中小企業の人たちは、単に現金収入が低いという以外に、もっと大きな圧迫を受けているのであります。それには中小企業自身のいわゆる共同化、体質改善という問題もありますが、それ以外に大企業の加工賃という一つの大きな力によって押えられている面があります。ですから、加工賃をどう上げるかというときに、やはり私どもが幾ら努力をしても、組織を拡大するのには限界がありますから、その労働条件を引き上げ、その労働力を確保し、そして二重構造の体質改善をするということに最も有効で現実的な具体策というものは、やはり最低賃金制をしく、そしてその最低賃金が払える状態にまで加工賃を引き上げ、あるいは中小企業の体質を改善して、そこに合理化資金を出すということがあって、初めて産業政策としては前向きの対策になるのではないだろうか。それを従来はやはり払えたら払う、あるいはまたそれを払ったらつぶれるという議論をしておっただけで、これでは根本的な中小企業対策にはらないいのではないだろうか。そういう点に問題を置きかえてみますと、この中小企業の繊維の問題がやはり一つの大きなモデルケースにでもなって——各国の歴史を見ますと、私は審議会でもこれはたびたび発言するのですが、最低賃金制については大体経営者側のほうはほとんど反対です。しかし、やったあと数年たって振り返ってみて、あのときやっぱり中小企業体質改善をしておいてよかったという結果が各国では出ているのです。そこを政府がやはり政治的にものを判断しなければいけないのではないだろうか。そういう点で、この合理化体質改善の問題については、労働条件の差をなくす、そういう前向きの、あるいは生産性を持った金融税制対策というものが必要なのではないだろうかと思います。  それから、各界で触れることをいやがっている問題がさっきから論じられておりません。それは繊維の流通機構がいまの状態でいいかどうかという問題です。繊維には、生産者という立場をとっている人と、多分に投機的な人があるということです。これがまた産業界をかなり混乱させているのではないだろうか。そういう面はこの問題とは別ですが、そういう問題があるということだけを指摘しておきたいと思います。  さっきから機会がなかったので、一つ忘れておった問題がありますが、政府関係では輸出最高会議的なものが持たれております。あれには労働関係の代表はだれも入っていないということであります。ああいう大事な審議会にこそ労働関係の代表者を入れるべきだと思います。これは国際常識だし、国際通念だというふうに思うのであります。
  47. 加藤清二

    加藤(清)委員 それでは、逆に小口さんに、あなたのところは、どうなっているか。いまの質問について、小口さんのところは一体どうお考えであるか、それをお尋ねいたしたいと思います。
  48. 小口賢三

    小口参考人 先ほども触れましたように、戦後の繊維産業の生産分野が戦前と変わってきて、系列化という支配が圧倒的に中小企業に入ってきているということが特徴だと思います。それに応じて起きますのは、実は業者協定は、ここに数字を掲げましたけれども、これ自身も、実はある面で、こういう産地企業に対する賃金統制的な役割を持っておるわけです。そういう意味で、御質問の中で触れられましたように、私どもも、率直に言って、労働組合をつくるという場合には、系列の親企業からの干渉もありますし、あるいは一時金あるいは賃金引き上げについて、商社もしくはメーカーに相談しなければ回答できないということをたくさん見ております。そういうような実情を考えますと、私が先ほど意見として述べましたような中での労働者対策、中小企業対策、消費者対策というものが万般考慮されなければ、これは結果的には原糸メーカーだけの振興策になってしまうのではないかという点を非常におそれているわけです。
  49. 加藤清二

    加藤(清)委員 輸出振興が今日の至上命令であるとするならば、そのネックである低賃金、レーバー・ダンピングを、まずおのれみずから解消するように御努力をお願いするわけでございます。  次に、お尋ねしたいことは、糸へんの業界のもう一つの問題点は金融であろうと存じます。  倒産続出のおりから、その内訳を調べてみますると、糸へんが非常に多い。特に糸へんの流通部門に多い。この問題は、いま滝田さんもちょっと触れられた、また田中君も質問したいと言っておられましたが、御遠慮なさったようです。問題は、三品市場がギャンブル化しているということ、これは本日代表が見えませんので、いずれ別な時期にお尋ねしたいと思いまするけれども、これを解消せんければならぬと思います。  次に、今日行なわれている金融機関の歩積み、両建ての問題、これを一体どの程度業界は受けているのか。その業界というのは、十大紡とか毛の六大紡とかあるいは化繊の基礎部門というふうでなくして、系列下の中小企業に対する歩積み、両建ての実態をお漏らし願いたいと存じます。  次に、同じ金融の問題で、政府が、設備更新のために十億とか、あるいはプラス二十億で三十億とか言っておられますけれども、これは全くスズメの涙で、これだったら十万錘の設備はおろか、これを全部一工場に投入したとしても、経済単位の一つの工場もできぬ程度のものなのです。なお将来問題になりますのは、今日設備増設の場合に業者金融機関から借りておる権利金が、非常に大きな担保のウエートを占めておるということを知らなければなりません。しかし、この権利金は、やがてこれが時限法、失効法になりますと、これは喪失していくことを予想しなければならない。したがって、金融機関ではすでにそのことを二年も前から調査をしているわけでございます。いかにして貸してあるものを引き揚げようかという目標のためでございます。こうなってまいりますと、三十億や四十億なんというものは、スズメの涙、二階から目薬と言っても過言ではないと思うのです。そこで、ほんとうに糸へんから倒産を救うには、特に中小企業を倒産から救い、その中小企業に労働者が喜んで働いていただけるようにするには、一体どの程度どういう金融を望まれんとするのか。開銀融資などと言われたら、これは目の前にえさをぶら下げられて走れ走れという犬と同じだと思う。手が届かないのです。口が届かないのです。開銀融資を受けられる糸へんの中小企業は何軒ございましょうか。中小企業金融公庫対象にもならないようなところにたくさんの問題があるわけです。したがいましてこの点についてお三方の御意見を承りたいと存じます。
  50. 田中武夫

    田中(武)委員 ちょっと関連いたします。実は加藤さんの質問がさらりと通過したので、その点だけ皆さんの中に御意見があれば伺っておきたいと思うのです。  それは、先ほど加藤さんが触れましたが、この法律はいわゆる生産段階においては一種の統制であります。生産を統制しておいて、今度流通の面においては、自由競争をたてまえとする商品取引所があるということですね。こういうことを私は常に矛盾ではないかというふうに考えておるわけなんですが、参考人の各位で特にこの問題について御意見がありましたら、一緒にお答え願いたい、こう思います。
  51. 酒井弘

    酒井参考人 金融の問題でございますが、金融自体というものはどうしてもケース・バイ・ケースになりまして、信用のないところには貸されない。したがって、全般的にいえは——中小企業すべてが信用がないとは申しませんが、一般的に言ってみて中小企業が不利になることは当然であろうと思います。したがって、こういう意味におきまして、中小企業金融制度ということが、政府においても、社会政策的な意味において出てきているのではなかろうかと思います。  それから、その前に権利金がなくなる。これによって銀行が引き締め出したということも、もちろんこれはやがてそういうような事態もあろうかと思います。おそらく三年以後あるいは四年後においては、こういう権利の発生というものはほとんどなくなるのが当然でございます。ただ金融の問題は、実を言いますと私がここで申し上げるまでもなく、日本の全企業が、大体借金のほうが自己資本より多くなっているというところに、日本企業の欠点があろうかと思います。戦前においては、七割が自己資本であり、あとの三割が借金でございました。現在では平均いたしまして逆になっている。したがって、金融引き締めが行なわれますと、黒字倒産というような事態が発生するわけでございます。これらの点も、もちろん経営者自体が考えるべき筋合いのものだとは思いますが、経営者が従来のごとく大資本の経営者でございませんで、現在の経営者は、どちらかといえば、中小企業は別ですが、大企業におきましては経営技術者になっておりますので、できるだけコストの安い資金を使う、その意味では、自己資金を使うよりは借り入れ金でやったほうがコストが安くなる、こういう事態が出てきておりますのと、いま一つは、そういった経営者が借金をして次から次に新しい仕事をしていく、そういう経営者が非常に世論で評判になる、こういった事態が起きている関係上、どうも日本の経営者というものは、もうけるということよりか、むしろ仕事だけをやっていくという、こういう傾向が出てきておるところに欠点があるのじゃないか、かように思うわけでございます。  なお、われわれの業界だけから言いますと、実際の問題としては、小さい紡績はかえって強いというような事態でございます。と申しますのは、小さい紡績は機屋から出た紡績が多いのでございます。できた糸の消化先は完全に機屋とつながっている、いわゆる注文生産が多い、こういったことで、わりあいと強い業態になっております。大きなところは、これは現在糸が不況でございまして、赤字を続けておりますので、大きいところはやはり資本力というところに効果がありまして、糸だけつくっておったら赤字が続きますから、漸次織物まで進んでいくという傾向が出てきております。一番苦しいのは、一万二、三千錘程度の、ほんとうに糸だけしかつくっていないという業態ではないか、かように思われます。したがって、いま羊毛界、合繊界、加工業並びに織物業者、その他と、いろいろとそういう関係を討議するために、新取引方法というものを研究中でございます。これはとにかく売れない糸はつくらない、できるだけ生産者と需要家との間のコネクトをつけていこう、そうして安定しょう、こういう考え方でございます。従来ややもすれば、先ほど取引所がギャンブル化しているというお話がございましたが、全く最近の事情を見ますとお説のとおりでございまして、こういった欠点は、全織糸量の単に五%しか生産のないものを上場しているというところに大きな欠点がございまして、これは仕手関係によって牛耳られる取引所になっているというところに欠点があろうかと思いますが、こういった投機によって上げ下げいたしますと、そこで糸の生産が非常に乱れてくる。紡績業者は機屋なりあるいはメリヤス業者が使う糸をつくればいいわけでございますが、そういった取引所の関係の上げ下げが非常なものになりますと、そこに生産が乱れてくる。要するに機屋なりあるいはメリヤス業者に必要でない糸、いわゆる取引所の荷渡し用の糸が生産される、こういう事態が起こっているわけでございます。この取引所の問題につきましては、ここでどうしたらいいのだという結論は申し上げませんけれども、われわれ生産業者、紡績もしかり、機屋さんもしかりですが、とにかく困ったものであるという感じを持っているわけでございます。御返事になるかどうか……。
  52. 加藤清二

    加藤(清)委員 時間を急ぎますので、あと簡単に二点質問してみたいと思います。  一番の問題点でございますこの法律施行されまして、はたして交通整理ができるかできぬか、ほんとうにゴーストップが正確に行なわれるか行なわれないかという問題でございます。これについてどのように一体お考えであるか。どのように希望していらっしゃるのでしょうか。私は、十年前ここで審議いたしましたときに、参考人として出られました綿紡協会会長さん、羊毛紡績会の会長さんに、私は無理ではないかということを申し上げたわけです。なぜかならば、制限をしたいのは、おのれの設備ではなくて、よその設備である。したがいまして、もしスクラップ・ダウンということが正確に行われれば可能かもしれませんけれども、それについて日本政府は何ら資金的御援助を考えておらないようでございます。これはもう後刻また政府とやり合うことでございますが、イギリスのごときは、すでに御存じのとおり、スクラップ・ダウンするために、紡績に対しても日本金に直したら九百億円余出している。機屋に対しては六百億円余出している。そしてそのスクラップ・ダウンするところの期限まできちっと切って、それが正確に行なわれたものに次の設備増設を許すという制度を確立して、スケジュールで進んでいっているわけです。材料が統制であった時代に、なお泉南だけで八十万錘も幽霊が出ている。これについて何ら打つ手がなかったわけです。その結果は、正直者がばかを見た。それで、毛に例をとってみますと、ぶつ倒れが非常にたくさん出たのです。そのことは、あなたはよく御存じのはずです。吸収されていきました。さて再び同じ問題がここで繰り返されているわけです。ほんとうに交通整理ができ、ゴーストップができるか、できないか。それをするのには政府に対してどんなことを御希望になりますか。これはひとつ声を大にして言っていただきたい。お三方にお願いします。
  53. 酒井弘

    酒井参考人 いまもそうでございますが、過去一、二年の状況は、原毛高による赤字が続いているわけでございます。その間、形式は別としまして、実際的につぶれた会社も多々あります。それは事実でございます。それでは一体今度の新法に乗った場合に、はたして過剰設備処理ができるかどうか、こういう御質問だろうと思いますが、これは一にかかって、業界の経営者が、自分らの業界をどう見るかという考え方できまってくると思います。普通の会社といたしましては、どうしても利益主義であり、横の相対立的な関係になりますので、希望としては、他の業者を封緘をたくさんしてもらって、自分だけは解除してもらいたい、これが通常の考え方だろうと思います。したがって、そういうところの各会社がそういうふうな考え方でいった場合、一体業界はどうなるのかというところの認識いかんにかかっていると思います。事務局といたしましては、それらの点をよく調整しながら、できるだけこの法律趣旨にのっとってその目的を達したい、こういう気持ちでおりますが、要は業界の首脳者がこの羊毛、紡績業界をどう見るか、どうやって協力して目的を達するかという認識いかんにかかっていると私は思います。
  54. 加藤清二

    加藤(清)委員 私は、法律をつくってものごとを制限するという場合に、認識や道徳論にたよらなければならないというようなことでは、とうてい実行に移されない、こう思うのでございます。したがって、私どもの考え方としては、ほんとうにある程度のものはスクラップ・ダウンさせてしまって、そこから生ずるところの欠損は、政府及び生き残って得する側、これでもって負担すべきである、そうしなければほんとうの交通整理はできない、かような認識でおるわけであります。たとえば、かりに錘数や織機を制限し、幅出し機を今度制限してみても、問題は機械そのものの能率による。十年前この法律審議いたしましたときのスピンドルの回転数は大体七千回から八千回、ところが今日はどうでしょう、最高のものは一万七千回程度は出しております。したがって、どこの工場を調べてみても、一万五千回くらいのノルマは出しておると思う。機械設備の古いものはそういうことはないとお答えになるかもしれませんけれども、この設備にちょっと手を加えまして、そのモーターを上から下へおろし、そうしてそのギアの入れかえをちょっとやるだけで、七千回転のものが一万二千回転くらいになるのです。そうなりますると、設備の数だけをどんなに制限してみても、生産数量はおのずから上がってくる。生産数量を上げようという意欲のあるところに、零細企業のほうでは時間外労働までもさせられなければならぬという問題が出てくる。時間外労働をしてようやく大企業の従業員と同じ程度の給料がもらえる、こういう制度が生まれてきちゃうのです。そこで、ほんとうにおのれの左手を切り右手を切ることができるようにするには、勇気だとかあるいは期待だとか念願だとか道徳論でなくて、法律論ではっきりとすべきである。そのためには、もういまこの条文の修正ができなければ、せめて附帯決議で、もしそれもできぬというならば、今度は参議院にやがて回っていくでしょう。要は、そこではっきりと答弁するという形でないと、仏つくって魂入れず、何べんも繰り返しておってもいかぬと思うのです。これはいかがなものでしょうか。
  55. 二階堂進

    二階堂委員長 ちょっと参考人の方にお願い申し上げますが、先ほど田中武夫委員のほうから質問がございましたが、何か御意見がございましたら、ひとつお述べいただきたいと思います。
  56. 山口利吉

    山口参考人 私は、田中先生の御質問に対してお答えしたいと思うのですが、われわれ化繊業界は、昨年のたしか三月十三日に、繊維に関する小委員会のときに参考人として私呼ばれました。そのときにも申し上げましたが、天然繊維のほうの事情は私にはよくわかりませんが、化学繊維の化繊取引所というのは私は全然反対、廃止すべきだと考える。なぜかと申し上げれば、化学繊維の特徴と申しますのは、気候風土に左右されないで一定のものができるわけです。そこには日々技術改良が行なわれているわけです。そのために人絹、スフの取引所がございますが、これは私は絶対反対です。これはかつて私のほうの協会長の賀集さんがそれを叫んで、賀集大旋風を起こして、取引所から大いに攻撃を受けましたが、この際私からもこの席上ではっきりお願いをいたしておきたい。こんなものがあっては百害あって一利なし。それで昨年も人絹が非常に高くなった。これは一部行儀の悪い業者がそれによってやったためでございます。実際の取引値段というものはそれほど高くはなかったわけでございます。その点だけちょっとお答えしたいと思います。
  57. 田中武夫

    田中(武)委員 天然繊維のほうはどうです。
  58. 田和安夫

    田和参考人 綿について田中先生の御質問にお答えいたします。  綿の場合は、羊毛の場合、化繊の場合と多少事情が違うように思います。先生が御指摘になったように、現在の措置法も、いまできようとしております法律も、一種の生産統制である。したがってその統制下における取引所というものの存在がおかしいではないか。理論的には全くそのとおりでございますが、現在われわれのところでも、生産の量というものは大体半年ぐらい先まではわかっております。それでも市場が動いている。ということは、取引所を動かしておるのは、生産量だけではなくて需要でございます。需要というものが動きますと、やはり価格が動く。こういう関係で、生産は一つの幅があっても、やはり取引所というものの相場は動いておる。それでは相場が不自然な動き方をするかどうかという点が問題、また、それが日本の消費者に対する負担、あるいは輸出に対する妨害になるのかどうかという点が問題かと思います。それで、取引所の存在が輸出の阻害になるという議論はたびたび起きるのでございます。ということは、取引所値段が不当に下がる場合がございます。たとえば、先年の金融引き締めの場合に、商社がみんな手持ちの産品を売って現金がえをして、非常に価格が実勢以上に下がりました。その下がったものが輸出価格影響いたしまして輸出の阻害になった。したがって、こういう場合の取引所というものは無用であるという議論が、生産者のほうから強く叫ばれたのでございますが、しかし、現状において取引所をなくしてしまって、そうしてはたして価格が相対で、あるいは現物だけの取引になって、安定した市場ができるかということについては、綿において多少の問題が残っておると思いますので、私は、羊毛、化繊のように、現在綿において全廃を叫ぶのはまだ早いというふうに考えております。
  59. 田中武夫

    田中(武)委員 滝田さん、産業労働者の立場からどうです。
  60. 滝田実

    滝田参考人 われわれの認識は、大体いま三人の方が言われたところに現状はあると思います。しかし、もう少し労働組合という立場からはっきりものを言えということになれば、いまの取引所はやはり根本的に改めなければならないものがあると思います。一ぺんでなくすることは、なかなかいろいろないきさつがありますからできないですが、まず取りかかることは、消費の民主化の問題、運営の問題からまず入ってみて、そうしてそこから根本的な改革に入っていくというのが、一番具体的な措置じゃないかというふうに思います。
  61. 加藤清二

    加藤(清)委員 つなぎの場であるべき三品市場が投機の場と化して、証券市場が景気が悪くなった、その反動でその資金が三品市場に流れて、おかげでその三品市場の理事長が腹を切らなければならないというようなことは、それ自体よくないことであると同時に、その結果は原料高の製品安となり、あるいはすでに契約を行なわなければならない長期契約が短期になり、大量に輸出できるものがスポット売りにしかならないというような、こういう現象はすみやかに改善さるべきである。同時に、天然繊維でないところの合成繊維は、もはやつなぎの場は必要ないのでございますから、当然いま山口さんがおっしゃったようにこれは除外さるべきである、かように考えるものでございます。  最後にお尋ねしたいのは、繊維の輸出の可能の程度及び米国の制限について——何も米国だけではございません。ほとんどの国が日本の繊維製品について制限を行なっている。その最たるものがアメリカだと存じます。したがって、アメリカにしぼってお尋ねいたしますが、二国間の国際協定振興のためにつくったそのものが、自由化のやさきに制限をさせられるという方向に使われる。これ自体がすでに問題でありますけれども、それがカナダに波及し、豪州に波及しということに相なってまいりますと、もはや無視することはできないわけでございます。このために、ずいぶん業界のお三方も、あるいは滝田さんまでが代表になって向こうへ行かれまして、いろいろ御努力あそばされておることに、私は敬意を表しておるわけでございますが、このクレームの歴史を解消するにはどうしたならばいいのか。それぞれ政府案あり、自由党案あり、社会党案があるわけでございますけれども、業界案あるいはこの道にたいへん御苦労をしていただきました滝田さんの御意見等をぜひ承ってみたいと存じます。そのお答えのいかんによって、私は、具体的な実例を個々にあげて、向こうにも考え直してもらうと同時に、こちらもえりを正さなければならぬ問題を提起してみたいと存じます。  なぜこういうことをここで言わなければならないかといえば、これを放置しますと、綿業の国際協定はやがて羊毛に及びます。そのことを羊毛紡績会の先刻御存じのことでございましょう。これが日本をオミットして、EEC諸国と関税一括引き下げに関連して、イギリス、フランス等あの国の利益供与になるような条件でもって国際協定が生まれようとしているやさきでございます。いずれ後刻これは外務省その他を呼んで慎重に検討したいと思っておりますが、この点について特に羊毛紡績会のほうはどうお考えでございますか。でき得るならば、私は、この際アメリカにもございますようなパストール委員会等をこの日本の国会にもつくって、そうして正常な輸出振興に寄与貢献すべきである、かように考えておるわけでございます。
  62. 田和安夫

    田和参考人 お答えいたします。  ただいま加藤先生から、アメリカの問題を取り上げて御質問がございました。私、最初の陳述のときにも、この点に触れておきました。今度の法律輸出振興ということをうたっておるにかかわらず、一番根本になる輸入先が市場を閉鎖し、あるいは制限するというような状態政府がほうっておいて、法律の改定もあったものでない、かように考えましたので、多少問題の焦点ははずれるかと思いましたけれども、あえてこのアメリカの問題を私は述べたのでございまして、アメリカの今度の問題は、かねて問題になっておりましたアメリカの原綿の二重価格を、アメリカ業者の要請によって単一価格に改めた、こういう点が問題なんでございます。単一価格にするということは、世界の綿紡績あるいはアメリカから綿を買っている業者がみんな多年叫んでおったことで、それが実現したのでございますから、あえてそのこと自体にわれわれは文句を言っておるわけではないのであります。われわれが問題にいたしますのは、現在のアメリカ輸入政策というものが、二重価格ということを根底にしてでき上がった輸入制限政策である。その根本である二重価格というものが改定になり、単一価格になった以上は、その条件が変わったのであるから、したがって、この条件に沿うて、現在の輸入制限政策というものを改めてもらうことをわれわれとしては要求する権利がある、かように考えて申し上げたのでございます。しかもアメリカのこの法律はケネディのセブンポイントから出ておるのでございまして、すでにこのアメリカのセブンポイントは、全部これで政府は打つべき手を打ったということになっております。したがいまして、日本といたしましては、すでに三年を協定してあるのだから、この期間は何も言いようがないのだ、こういうような消極的ではなくて、要するにいまのできておる輸入の制限の根本が変わっているのであるということを条件にいたしまして、当然これは御交渉願ってしかるべき問題だろうと、かように考えます。あるいはその大ワクを変えるということはむずかしいかもわかりません。しかしながら、その実際ワクをつくっておりながら、これが入らぬようにできておる小ワク、つまり品種別の小ワクなんというものは緩和して、そうして少なくとも大ワクだけのものは入るように努力するということは当然であろうと思います。しかもこれは業者の声でなくて、むしろこれを締結せられた政府が積極的にこの根本条件の変わった時期において手を打たれるのがしかるべきであろう、かように考えましてお願いした次第でございます。  以上でございます。
  63. 酒井弘

    酒井参考人 自由貿易主義を世界に押しつける米国が、その逆の行き方をしているということに対して、私たち業界が納得がいかないことは当然だろうと思います。したがって、こういうような考え方が出てきまして、かりに綿の次に羊毛にくれば、その次は必ず合繊にくるだろうと思います。さらにまた、アメリカがやれば、カナダあるいはその他の国にも波及してくるであろう、そうすることによって、各国の国際間の貿易は逆に自由貿易から制限貿易になってくる、こういうおそれが多分にございますので、われわれ業界は、各業界全部集まりまして輸出対策委員会というものをつくりまして、官民合同的にこの対策を考究しているわけでございます。願わくは、われわれ業界だけでなく、日本の国のすべてがこういう制限貿易に対する考え方に反撃をしていただきたい、かように思うわけでございます。  なお、さらにつけ加えて申し上げますならば、アメリカは、いまのようにワクは現在につくっておりませんが、欧州の各国は、三十五条ばかりではなくして、毛製品に対してはすべてワクをつくっております。こういったことを日本といたしましては積極的にこれをはずさせる、こういう方向に進むべきであろうと考えておるわけでございます。
  64. 滝田実

    滝田参考人 私は、最初にケネディ政権ができたときに、ちょうど綿製品をはじめ日本の主要輸出品に対して制限傾向がありましたから、たまたま大統領と会ったときに、自由化を促進するアメリカが制限をするということは納得できないということで直談判して、そのときに大統領はこういうことを言ったことを記憶しております。それは、アメリカ政府は、業界あるいは労働組合の自由な動きについて法律的な権限を持っていないから、直接団体——まあ経営者なら経営者同士、労働組合は労働組合同士でやってもらいたい、自分は勧告を出すことはできるからということで、勧告を出してもらって、それでボイコットを一回やめてもらったことがあります。そのあとで、この二重価格の問題の、いま田和さんのおっしゃったような問題が起こって、また行って、今度は労働長官に会って、それで相手の労働組合の反対連動を押えてもらった経験があるわけです。ここであまり詳しくもお話しできませんけれども、アメリカに対して日本政府はもっとき然とした態度をとってもらいたい。それは、アメリカ輸出入の関係でいえば、日本のほうが輸入超過の関係にあるし、原料の最大の顧客であるという点から見れば、もっとアメリカに対してはっきりものを言うべきではないだろか。そういう点については、わずかアメリカの全消費量の中に二%以内を占めるような輸入に対して、それが直ちに雇用問題、失業問題に響いているという言いがかりは少し大き過ぎると思います。そういう点については、政府は出先の経済担当関係者のほんとうの報告をしっかりつかんで、そして言うべきところははっきり言うという態度をとってもらいたいと思います。  大体繊維の経営者というのは、各国ともきわめて保守的で、これは前におられるのでまずいですけれども、アメリカの繊維の業界も相当なものです。特に南部にいけばその傾向が強いのですが、しかし、そのことが共通の問題として指摘されるばかりではなくて、気をつけなければならぬのは、労働組合が一緒だということです。アメリカの場合は完全に一致であります。  実例を簡単ですから申し上げてみますが、私は労働組合の代表とマイアミで制限をやめてもらいたいという話をしているときに、その労働組合の態度が変わることについて、経営者が、ニューヨークから飛んできて、マイアミに組合と打ち合わせに来ている、そういう問題にぶつかったことがあります。これは国会の速記録としては非常にまずい問題でありますけれども、背景としては労使が一体になっているという現実があるということであります。  そういう点を見ますと、日本の国内はどうかといえば、政府に対してき然とした態度をとっていただきたいと同時に、こっち側が向こうへ何か申し入れに行ったら、とんでもない、こっち側に非があるじゃないか、そういう点を日本側は正さなければならないと思うのです。具体的にいえば、日本の毛製品は安過ぎます。その安過ぎるために、しかも一品目が一地域に殺到するというやり方をしますと、アメリカの生産地域というものは、一地方について特殊なものをつくっておりますから、その品目だけどっと日本から入ってくると、全繊維の消費量としては少ないけれども、一地域について決定的な打撃をこうむるという傾向が出てくる。そうすると、一地域においては猛烈な反対運動が起こるわけであります。大統領選挙その他の政治的な問題がからんで、そうして連鎖反応が起こってくる傾向がありますから、そういう点については、日本の商品の輸出については、品目別に急増しないということをやはり一つはたてまえとしなければならぬでしょう。それから取引価格については、商社関係の駐在員は、よけい売れさえすればいいというたてまえをとっているし、メーカーのほうは市場開拓調査だけやっておるという関係にあって、この間に連絡がうまくいってない。そのために過当競争が生じて、非常に相手方の市場を撹乱するという問題が起きておりますから、そういう面については、政府は、輸出の関係者について、一体日本側にどういう問題をかかえているのかということについて、相手側に抗議を申し込んだら、こっちが逆に突かれたということのないように、対内整備ということを心がけてもらいたいというふうに——どうも現在の政府やり方を見ていると、輸出はただ外貨を獲得さえすればいいのだというところに力点を置き過ぎて、いわゆる公正競争という点についての配慮が欠けておるのではないだろうか。そういう点で、対外的にははっきりした態度をとり、対内的には指摘されないようなわれわれの商行為に対する態度が検討さるべきではないだろうかというふうに思います。いま繊維の問題だけ出ておりますけれども、おそらくこれから電気部品あるいは陶磁器の関係、その他中小企業関係でつくったいろいろなものの制限も起こってくると思いますから、これは早急に国会で——輸出対策ということが、外貨さえとればいいという考えで、パーセンテージだけ伸ばすという考えでやりますと、これは現実には全然沿わない対策になりはしないだろうかと考えております。
  65. 加藤清二

    加藤(清)委員 それなればこそ、私は、アメリカで行なわれておりまするように、本件に関しては、パストール委員会式のものをつくって、業界のみならず、労働者のみならず、これは輸出商も、輸出関係者もこぞると同時に、これに対する経済外交の責任の政府も加わる、議員も、加わって、そうして輸出振興のための完全な制度、委員会をつくるべきである。なぜかならば、この法律が、ややともすれば、かご抜けの憂えなきにしもあらずだからでございます。ことにまた、いまおりよく山口さんもおっしゃいましたように、あるいは、また田和さんもおっしゃられましたように、アメリカは、日本の繊維製品を制限するという原因の一つであるという自由価格制度、コットン・ファーマーを助けるためのあの制度は解消しました。それからまた、せっかく触れられましたから何でございますが、ケネディさんが存命中、ジョンソン及びルーズベルトをして日本政府に交渉をされました問題、これも大体解消しているはずでございます。同時に、そのサゼスチョン、そのプッシュによって行なわれようとしている自主規制、これが今日のこの法律という姿になってあらわれてきておるわけで、日本政府及び業界としては、これは明らかに、えりを正して向こうの申し入れについて、相呼応しているわけでございますから、当然このたびは勇気を持って相手国に対し正常な取引、日米友好通商航海条約の精神に基づいた輸出振興策を要求してしかるべきである。いづれ本件は委員会において討議をしたいと存じますが、最後に、そのおかげでよけいに苦しんでいらっしゃる中小企業の労働組合の代表である小口さんに、本件に関する所見をお尋ねをいたしまして……。
  66. 小口賢三

    小口参考人 御質問の趣旨は、パストール委員会の設置についての意見ですか。
  67. 加藤清二

    加藤(清)委員 と同時に、アメリカに対する輸出振興の問題です。
  68. 小口賢三

    小口参考人 これは世界的にそれぞれ資本主義の競争をやっているところからくる本質的な矛盾もあって、先進国が後進国の賃金ダンピングに対する規制という形でこの問題は起きておると思うわけです。したがって、私ども国内内部においてこの問題をそういう点についてあれするには、先ほど言いましたような、まず大手の原糸メーカーだけ国際的水準にするということではなくて、中小自体も整備をしていく。それからそういう面を通した国際的な全体の繊維産業の構造的な近代化というものはやっぱり進める必要があるのではないか。それから、そういう点にかんがみて、繰り返して申し上げますが、最低賃金制というものが一番重要なかなめであるということを繰り返して主張したいわけです。
  69. 二階堂進

    二階堂委員長 麻生良方君。
  70. 麻生良方

    ○麻生委員 だいぶん時間が切迫しておりまして、参考人の方にはたいへん恐縮なんでございますが、私がしんがりだろうと思いますので、しばらく御意見を承らしていただきたい。  初めに滝田さんにお伺いしたいのですけれども、先ほどの滝田さんの御意見の中で、一番重要なこの法案ができる目的に関しまして御意見をおっしゃっておられました。この御意見については非常に重要な問題が含まれておる。つまり、一面的には、開放経済を前にして、日本のあらゆる産業体制合理化していかなければならないという、ある意味での絶対的な立場がある。それから、それと同時に、日本の産業構造がまだ完全にコントロールされていない、つまり高度成長政策が大企業の面においては相当の成功は見ているけれども、かえってそのために二重構造の状態がよりはなはだしくなってきているというような状態の中で、この法律施行されていったらどうなるだろうかという問題を提起されておる。きわめてこれは重要な点だと思うのでありますけれども、そういう点にかんがみまして、この審議会の小委員滝田さんもお入りになっておられる委員会の中で、滝田さんのようなお考えを持っておられた委員の方がほかにおありになったかどうか、そういう点について少しく具体的な御説明をお願い申し上げたいと思います。
  71. 滝田実

    滝田参考人 いま言われました設備審議会で、小委員長は稻葉秀三さん、稻葉秀三さんは大体似通った意見です。いまの通称言われていることばで言えば、どっちかといえば計画経済というところへいっても弊害がある、そうかといって日本の自由主義あるいは資本主義経済はこうでたらめでもいかぬだろう、そして自主調整というか、実際問題はうまくいかないのじゃないだろうか、そういう点ではもう少し審議会の権限を強化して、その権限強化というようなものが行政の指導と相まっていくような形でないといかぬのじゃないだろうかというのが、大体の考え方なのです。しかし、現にこれは通産当局がおやりになっておられるのですが、やっぱり各業界がまっこうから対立しているわけです。どっちかといえば綿紡は、大企業はやっぱり自由競争の主張者が多いわけです。中小企業発言はきわめて弱い。化繊は、おれのところはわが道を行かしてくれ、こういうかっこうで、通産当局はまとめるのにどうしようもないという状態だったと思うのです。そして、できあがったものは、あまりはっきりしない文章で、かなりむずかしい案が出てきた、こういうことです。やっぱり学識経験者という業界でない方たちの意見がもう少し通るような形でやってもらいたい。これは通産省の繊維局長がおられてまずいかもしれぬけれども、答申案がこの法律案に出てくるまでに、この審議会委員にほとんど御相談なくこういう法律案が出てくる。今度の法律においても、審議会意見を聞いてと書いてあるけれども、聞いて、やるのかやらぬのか別問題だということになると——そこでぼくは今度条件を出している。今度の審議会は、運用、それから権限を強化して、その答申を骨子にして、やっぱり強力な行政指導をやってもらいたい。この行政指導については、過去の苦い経験で業界に反対する人が多い。いわゆる官僚統制はいやだ、またそれはかえって失敗で悪を助長するという面で、きわめて反対が強いのですけれども、それは、かつての官僚統制というものと、今日の民主的な協議の中で決定された方針を強力にやろうという意味の統制とは、おのずから性格が変わっていると私は思う。ですから、私は、あくまでも広く協議されて、そうして客観的な落ちついた方針を強力にやることについては、やはり行政当局もやりやすい状態に持っていかなければいかぬ、こういうことです。ですから、意見としては、必ずしも私の意見が少数ではなくて、相当あったのですけれども、実際の運用の面になると、業界がやれないものを幾らつくったってだめじゃないかというようなことで、通産当局は各個々の業界意見だけを聞いて、どうにかここへ出てきたというのがこの状態です。
  72. 麻生良方

    ○麻生委員 それはそれとしまして、きょうは政府側の御答弁はあと回しにして、私もう一つ、これは小口さんにお伺いしたい。先ほど来からの審議会等のあり方の中に、労働組合の代表を加えるべきだ、またさらにあなたは消費者代表まで加えるべきだという御意見を主張された。そこで、もし、あなたが、またあなたのようなお立場の組合が、このような審議会にお入りになった場合、いま私が指摘をしたような基本的な問題に対して、どういうお態度でお臨みになるかという点を  ちょっとお聞かせいただきたい。
  73. 小口賢三

    小口参考人 この法律についての基本的な考え方は、先ほど述べましたように、これは設備制限法だといいながら、結果的には繊維大手の独占が一そう寡占化する危険性を持っておる。そういう意味で、とりわけ今回の繊維工業設備審議会というものは、「設備」を取ってしまって、繊維工業審議会になった。そういう意味で、繊維行政が、伝統的に大手の保護育成という立場ではなくて、もっと広い意味の消費者の立場に立って、繊維行政というものをもう少しつくらなければならぬ。それから中小企業立場においても、十分な意見が反映するような仕組みにしなければならぬ。そういう意味で、中小企業労働者、消費者という考え方を出したのです。
  74. 麻生良方

    ○麻生委員 私そこのところをもう少し突っ込んでお聞きしたいのですけれども、あなたのおっしゃられておられます、ここに出ておる内容は私もよくわかる。ただ労働組合が審議会にお入りになるということになれば、もちろん労働組合の立場を代表すると同時に、日本の国の全繊維産業のあり方、特に開放経済がいいか悪いかは別問題として、ともかく開放経済政策が政府によって進められているという現実があります。その現実に対処していく場合に、あなた御自身として、御主張はよくわかるのですけれども、やはり繊維産業全体の立場を考えた場合に、これを、つまり第二の特振だという形できめつけるという御意見はよくわかるのですが、それならばもう一歩進んで、あなたのような小さな企業立場から見て、もう少し具体的にどういう御意見を出されるかということをお伺いしたいのです。少し込み入った御質問で恐縮なのですが……。
  75. 小口賢三

    小口参考人 その点については、全体として、これは法案の制定過程でも、御承知のように化繊のほうはこのワクからはずれることについて意見を出しましたし、それから先ほどから参考人が御意見を述べておりますけれども、綿紡績と羊毛のほうは、要するにまあ徐々にやってほしいということなのですね。私どもは、中小企業の経営と労働から考えますれば、たとえば金融とかその他につきましても、実際は大企業に金が回って、中小企業に来ないのじゃないかということを心配しておりますし、それから繊維工業全体の現在の産業秩序から考えまして、従来のように綿糸生産、それから織布生産の段階から二次製品の加工の分野まで大きくなってきたわけです。その点から考えれば、ある面では、綿紡績、羊毛紡績その他が総体的に繊維産業の中であるシェアが縮まってくる過程で、今度はその部分の資本の一つの分野というものを——従来中小企業が取り扱っておった加工部門に入ってきておるわけです。それが系列化で入ってきておるわけです。こういう部分が、資本が転換なさる場合も、かなり計画的に考えて、中小企業が生き伸びるような条件を考えないと、また中小企業がそういう産地等においても締め出されるような状態に結果的に発展する。こういう部分について徹底的にチェックするという態度をとります。  それから、価格の問題についても、独禁法を無視して生産が操短されたことはないと思います。鉄鋼の販売制度の問題については、いろいろ批判はありますけれども、別の面で繊維にもそういう面もあったわけです。そういう点から考えて、私は、むしろ独占のそういう部分の価格制度の問題について、消費者の立場から意見があるのは当然だと思います。そういう立場意見を述べたい。ただ、この法律に示されておるように、開放体制というものを踏まえて、日本の繊維産業体質改善をしていくとか、あるいは綿紡、羊毛を中心にしたものが将来複合繊維にかわる、あるいは中心的には合成繊維がさらに大きな発展をするだろうということについては肯定しています。
  76. 麻生良方

    ○麻生委員 たいへんよくわかりました。  それから、これは滝田さんにもう一つお伺いしたいと思うのですが、答申案の中で少数意見というものがございますけれども、この少数意見の中で、一、二、三の三番目です。これは先ほど先輩の委員も御質問されておったようですが、「廃棄促進するため中小紡績業者の廃棄する凍結設備を政府資金をもって買い上げるべきである」。というのが少数意見として添付されておりますが、このような意見は実際に少数であったのでしょうか。もう少し多数の意見としてこれがあったのでしょうか。あるいはまた、少数だとすれば、中小企業代表の方が審議会に入ってないために少数になったのでしょうか。その辺の状態を少しお聞かせ願いたい。
  77. 滝田実

    滝田参考人 これは大体は中小企業の経営者代表の方がかなり強く主張されております。それから大企業の方でも、出してもらえるのなら出してもらいたいという希望はあったでしょうけれども、とうていとれないだろうということで、まああきらめたようなことですね。というのは、もうかるときは黙ってやりますけれども、損したときだけ出してくれというのは、ほかの産業の関係からいってもむずかしいだろうということで、それで少数意見にならざるを得ませんでした。しかし、合理化資金については、これは別個の観点から、いわゆる健全化、体質改善という意味においては、うんと金を出してもらいたい。これはもうほとんどの委員意見だと思っていただいていいと思います。
  78. 麻生良方

    ○麻生委員 二時までという時間の制約がございますので、私この程度で質問をやめさせていただきます。  最後に、私、いままで参考人の方の御意見をいろいろ拝聴いたしますと、共通する問題もございますし、共通でない問題もあるようでございます。ただその中で、特にこれはどなたにも共通をしているのではないかと思われる点が二、三ございますので、その点をもう一度念を押させていただいて、もし御異議がありましたら、ちょっとおっしゃっていただきたい。  その一つは、やはり中小企業へのしわ寄せがどうしても及びがちである。したがって、中小企業に対する金融措置を、もっと具体的な形で、何らかの形で、法案の中に明文化してもらいたいという御意見については、どの参考人の方もどうやら反対がなさそうだと私は受け取ったのでございます。これが一つでございます。  それからもう一つは、最低賃金制の問題についてでありますけれども、その最低賃金制をしくしき方、またその立て方については、いろいろ御意見がおありのようでございましたが、しかし、少なくともそういうような最低賃金制にのっとった方法がとられないと、やはりこの法律が、事実上において労働力の不足という点で、きわめてまずい結果になりはしないかというような御意見についても、ニュアンスの相違はありましょうが、大体同じようなお考えではなかったかと、こういうふうに実は私受け取ったわけでございます。  まあ目的の点をどうするかという問題は、これは特に基本的な問題ですから、これはあとで委員会で私十分に政府委員の方にもお伺いしたいと思いますが、以上、先ほど申しました二点について、私の受け取り方に間違いがございませんでしょうか、どうでしょうか。もしありましたら、どなたでもけっこうですが、御意見を聞かせていただきたいと思います。
  79. 二階堂進

    二階堂委員長 どなたか御意見がございますか。——別に御意見はないようでございます。
  80. 麻生良方

    ○麻生委員 それでは大体そういう点だと了解してよろしゅうございますでしょうか。
  81. 酒井弘

    酒井参考人 金融の問題を法律に書けという意見ではないのですが、おそらく金融の問題を法律に書けと言っても、技術的に入れられないだろうと思います。したがって、できるだけ中小企業を優遇するように、金融の面で行政的な指導をやっていただきたい、こういうことについては賛成でございます。  それからもう一つ、最賃の問題でございますが、おそらく主体は過剰設備処理の問題になるかと思いますが、ほんとうに小さい方々は基礎控除でしなくても済むと思います。そういった点もありますし、それから最低賃金を法律的にきめた場合、今度のこの法律目的としている過剰設備処理に支障があるかどうかということは、私はないと思うのです。ということは、これをやる業者は、他の繊維業界と比べれば小さいかもわかりませんが、その業界では、大体大きなところが不利になるだろうと思います。そしてまた、これを処理するようなところは、ある程度最賃というか、いまの初任給というものはわりあいに高いところまで、全繊というようなところと相談しているわけでございますから、それが法律的にできなければ、この新法ができないという論理的な結論にはならないのではないかと私は思います。
  82. 麻生良方

    ○麻生委員 その点につきましては、私もまた法律の中で明文化するという御意見とは伺っておりません。ただ要するに、答申案に出ておりますように、これはどなたも御一致の結論だろうと思いますが、特に総論の中でも、最後中小企業に対する問題が強くうたわれております。うたわれている以上は、やはり一つの法律をつくる場合に、その問題が大きなウエートを占めるのは当然だと思います。したがって、法文の中に入らなくても、やはりその点を考慮した何らかの措置をとらないと、審議会意見を結果的にはわれわれが無視する、こういうことになりますので、実は御意見をお尋ねをしたわけであります。  それからもう一つ、これは特に業界の方にお伺いしたいと思うのでございますが、先ほどから労働界の代表が二人見えて御意見を述べられております。特に滝田さんからも小口さんからも、かりに審議会委員としてお入りになったときのお立場も表明されておられる。業界の方として、こういうような労働界の方が審議会の中に入ってこられることをお望みになっておられるかどうか。たいへん失礼ですが、そこのところをお聞きしたいわけです。先ほど来、審議会の構成の中に労働界の代表がきわめて少ないというようなことが言われております。また中小企業の代表も少ないということも言われている。審議会の構成そのものは政府が御委嘱するのでしょうが、業界の方として、労働組合代表の方もどんどん入っていただいて、自分たちの産業の将来の発展のことを一緒に相談したいというお気持ちがおありかどうか。たいへん失礼ですが、ひとつ一言ずつお答えいただきたいと思います。
  83. 田和安夫

    田和参考人 そういう審議会に労働組合の代表の人がお入りになるという場合に、われわれは、もしその方が、滝田さんのように、非常に高い視野から産業全般をお考えになる、単に労働者の、あるいは組合の立場からでなく、産業全体の立場からお考えになって、そうして労使一体になって日本の産業発展に寄与する、こういうお考えでお出になることだったら、私はまことにけっこうなことである、かように考えます。  それからもう一つ、この機会に、先ほどの御質問で、最低賃金の問題については異議ないのかという御質問がございましたが、私は、最初に申しましたように、私は紡績でございますが、紡績のほうでは、滝田さんのところと、すべて組合との協定において協定いたしておりますので、われわれに関する限りは、この場でこれは賛成であるとか不賛成であるとかいう問題ではないということを申し上げておきます。
  84. 酒井弘

    酒井参考人 田和参考人と同様な意見でございます。
  85. 麻生良方

    ○麻生委員 それではこれで質問は終わらしていただきますが、最後に一言だけ関連して政府委員の方に、この際参考人の方においでいただいて、この法案提案している責任者として、いま申されておりました参考人の方の御意見について、政府側としてこの原案を出しておられるのですから、なるべくなら修正したくないでございましょうけれども、いろいろ御意見審議の過程の中で、なるほどと思われる点がおありになったかどうか、ちょっと一言、儀礼もございますから、お聞かせ願いたい。
  86. 磯野太郎

    ○磯野政府委員 先ほどから拝聴いたしておりまして、いろいろな問題が出ております。審議会の小委員会の審議の経過、それから法律目的、それから最低賃金制の問題、いろいろ出ておりましたけれども、お述べになりましたことについては、大体において異議はございません。
  87. 麻生良方

    ○麻生委員 これで私の質問は終わります。
  88. 二階堂進

    二階堂委員長 参考人の各位におかれましては、長時間にわたり出席をいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表してお礼を申し上げます。  次会は、明五月七日木曜日午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。   午後二時十二分散会