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1964-04-10 第46回国会 衆議院 商工委員会 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十日(金曜日)    午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 二階堂  進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君    理事 始関 伊平君 理事 中川 俊思君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君       遠藤 三郎君    小笠 公韶君       小沢 辰男君    海部 俊樹君       神田  博君    佐々木秀世君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       南  好雄君    大村 邦夫君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    滝井 義高君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君    麻生 良方君       加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (大臣官房参事         官)      宮澤 鉄藏君         通商産業事務官         (繊維局長)  磯野 太郎君         通商産業事務官         (鉱山局長)  加藤 悌次君         通商産業事務官         (石炭局長)  新井 眞一君  委員外出席者         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 四月十日  委員米内山義一郎辞任につき、その補欠とし  て滝井義高君が議長指名委員に選任された。 同日  委員滝井義高辞任につき、その補欠として米  内山義一郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月九日  繊維工業設備等臨時措置法案内閣提出第一四  八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会に関する件  繊維工業設備等臨時措置法案内閣提出第一四  八号)  鉱業法の一部を改正する法律案内閣提出第五  三号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    二階堂委員長 これより会議を開きます。  昨九日に付託になりました内閣提出繊維工業設備等臨時措置法案議題とし、通商産業大臣より趣旨説明を聴取することにいたします。通商産業大臣。     —————————————
  3. 福田一

    福田(一)国務大臣 ただいま上程されました繊維工業設備等臨時措置法案につきまして、その提案の理由及び概要を御説明申し上げます。  御承知のとおり、わが国繊維産業を取り巻く内外の環境は、近年著しい変化を示しつつあります。すなわち、国内におきましては、開放経済体制への移行に伴い、繊維工業も従来のような閉鎖的な規制体制をこれ以上続けることが許されなくなってまいりましたのはもちろん、最近、合成繊維発達に伴い、複合繊維が急速に増加し、さらに労働需給変化により、労働集約的産業としての強みも次第に弱まる傾向を示しております。  他方、海外におきまして、諸外国のわが国繊維品に対する輸入制限は一段と強化され、さらには、新興諸国繊維産業発展に伴い、その国際競争はますます激化しつつある現状にあります。  ひるがえって、わが国繊維工業、特に紡績業現状を見まするに、戦後の復興需要に応じて、急激な増設が行なわれたこともありまして、設備過剰状態が著しくなり、これに対処し、繊維製品輸出の正常な発展に寄与するため、昭和三十一年に現行繊維工業設備臨時措置法の制定を見たのであります。自来、同法により過剰設備格納などの規制を行なってまいりましたが、生産能率向上等もあって、立法当初にこの法律の意図した過剰設備の消滅は必ずしも十分に進展せず、かえって過剰設備状態はいまや慢性化し、多年にわたる高率操短を余儀なくされるなど、構造的な問題となりつつあります。これに加え、現行法の細分化された精紡機路銀区分は、近時の複合繊維の実態から遊離し、ために繊維工業合理化は著しく阻害される状況となっております。  このような状況に対し、昭和三十六年秋以来、繊維工業設備審議会におきまして、わが国繊維工業の進むべき方向につき、各界の有識者により慎重審議が重ねられた結果、昨年七月にその答申を得たのであります。政府といたしましては、その答申趣旨に従い、さらに検討を重ねました結果、現行繊維工業設備臨時措置法を廃止し、これにかわるものとして、ここに繊維工業設備等臨時措置法案を作成し、提案することとなった次第であります。  本法案の企図するところは、わが国繊維産業を今後とも輸出産業として確立していくために、企業の自由な創意の発揮し得る基盤を造成することにあります。そのため、現存する過剰設備をすみやかに廃棄し、繊維工業全体として適正な設備規模とするとともに、複合繊維時代において、非現実的なものとなっている非弾力的な登録区分を改めることが要請されるのであります。以上のような趣旨に基づき、提案いたしました本法律案概要を次に御説明いたします。  第一は、紡績業における過剰設備廃棄を促進するため、現存する過剰精紡機共同行為によりすべて格納し、今後の糸の需要増加に応ずる精紡機の新増設及び格納の解除を、この格納精紡機一定比率による廃棄条件として認めることとしたのであります。この共同行為につきましては、独占禁止法適用除外とすることとなっております。なお、この過剰設備廃棄につきましては、これを間接的に促進するとともに、企業国際競争力を強化するため、日本開発銀行及び中小企業金融公庫を通ずる財政投融資による資金的援助を講ずることといたしております。  第二は、精紡機及び幅出機につきまして、その設置を制限することであります。すなわち、過剰設備廃棄を促進するために、精紡機及び幅出機について原則として新設を禁止するものとし、登録を受けたものでなければ設置してはならないものとしたことであります。  第三は、精紡機及び幅出機につきまして、その使用の制限を緩和することであります。すなわち、合成繊維発達に伴う複合繊維の急速な増加などに対処するため、非弾力的な現行登録区分を大幅に緩和することとしたのであります。  第四は、この法律案は四年間の限時法とし、過剰設備廃棄は、当初の三年間に行なわせることといたしまして、自由競争体制への移行を、無用の混乱を避けつつ、漸進的に行なわせることとしたことであります。  以上御説明申し上げましたように、繊維工業現状にかんがみまして、織維工業の合理化をはかり、また輸出の正常な発展に寄与するため、過剰精紡機廃棄促進等に必要な措置を講ずることが、本法律案をここに提出する理由であります。何とぞ慎重に御審議の上、ご賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 二階堂進

    二階堂委員長 以上で説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  5. 二階堂進

    二階堂委員長 次に、内閣提出鉱業法の一部を改正する法律案議題として審査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。滝井義高君。
  6. 滝井義高

    滝井委員 鉱業法の一部を改正する法律案について質問をさしていただきたいと思います。  御存じのように、メタル・マインにしても、石炭亜炭等にしても、非常に客観的な情勢が変わってきたわけです。特に金属鉱業については、自由化の波が押し寄せてきているし、石炭鉱業については合理化の激しい波が押し寄せてきております。したがって、明治三十八年でございましたか、明治の御代にできたこの鉱業法というものが、現在の自由化合理化の激しいあらしのもとにおける法律として耐え得ないことは当然でございます。したがって、今回学識経験者等意見も聞いて、鉱業法改正が行なわれたと思うわけです。先日多賀谷委員から、改正のいろいろな問題点について御質問があったようでございますので、私は少しく具体的な問題について、多賀谷君の質問と重複しないように質問をさしていただきたいと思います。  まず第一に租鉱権の問題であります。日本資本主義が相当フロンティアを持っておる時代には、こういう租鉱権というようなものは私は必要ではなかったかと思うのです。ところが、いまや石炭鉱業というものが五千五百万トン程度出し得るか出し得ないか、需要も相当無理をして、電力やあるいは鉄鉱に無理をして食っていただく、無理をして燃やしていただくというような形で、ようやく基礎的なエネルギー資源である石炭の確保をやっておるという状態、そういう中に租鉱権というものを依然として残しておくことが一体それほど必要なのだろうかという点でございます。この点について、まず政府の見解をお聞かせ願いたい。
  7. 加藤悌次

    加藤政府委員 租鉱権制度というのは先生も御承知のように、現行鉱業法が二十五年に改正いただきましたときに、新しく設けられた制度であるわけでございますが、これは石炭鉱業等につきまして、従前から斤先掘りといったようなかっこうで事実上の鉱業権の賃貸が行なわれておったわけでございます。しかも経済上こういうものを一概に無視するわけにいかないということでございまして、これを何とか考える必要があるのじゃないか、斤先掘りでやっておった当時、一方において鉱山災害鉱害等の問題がございまして、そういった面の監督、むしろこれを認めることによって強化するということで租鉱権制度ができたわけでございます。そういった必要性なり趣旨は、現在の時点においても変わりないというふうに考えておるわけでございまして、特に今度のお願いいたしております改正法では、従前鉱業権設定につきましての異種鉱床制度と申しますか、これを簡略にいたしまして、三分類制をとったわけでございます。直接石炭には関係ございませんが、金属非金属鉱物は一括して一分類ということになっておりまして、当該鉱業権者が直接目的にいたさない鉱物目的として、これを他の第三者開発したいというときには、どうしても租鉱権というものを認める必要があるということもございまして、いろいろ弊害はございますが、そういった弊害の面につきましては他の監督規定等でこれを規制するということで、今後ともこれを認めていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  8. 滝井義高

    滝井委員 いま、鉱山災害鉱害等を認めることで強化するというお話があったのですが、問題は租鉱権功罪功績罪悪歴史、これを昭和二十五年にできて以来見てみますと、功績というものは、石炭傾斜生産等で非常に必要だというようなときには、中小の山を安い労働条件、劣悪な労働条件でやらせるということで、一応それはエネルギー供給源として功績があったかもしれません。しかし、そのほかにこの租鉱権功罪を見てみますと、罪悪歴史が多いのですね。まず第一に、今後石炭産業が高能率、高質金でやろうとする場合に、これらの租鉱権炭鉱というものは必ずしも高賃金でないということですね。中には例外はありますけれども、高能率、高賃金という点においてはやはり問題がある。それから災害についても、租鉱権炭鉱というものは相当問題があるわけであります。それから同時に、鉱害その他についてはもうこれは話にならぬわけです。ほとんどこれは無資力になってしまっているということで、しりぬぐいは全部国がやらなければならぬという形になってきてしまっているわけです。こういう罪悪を持ち、功績が少ない現状で、鉱業法を抜本的に改正しようとするときに、依然として租鉱権を新たに付与していく必要があるかどうか。既存の租鉱権既得権、いわば財産権ですから、これはやむを得ないと思うのです。しかし、今後新しく鉱区を分割して租鉱権を認めることが今後の日本石炭政策の前進に一体役立つかどうかというと、これは役立たない。むしろ大衆に迷惑を及ぼすことが多くて、あるいは日本石炭政策労働政策の上から言っても罪悪をつくることが多いという考え方です。これは石炭局長等から、過去の石炭行政の中でいかに租鉱権者が手足まといであったかということを説明してもらえば一目りょう然です。この法律で、欠格条項その他については、鉱業権と同様にするところで幾分規制はできております。幾分手綱はかかっておりますけれども、しかしそのくらいの手綱租鉱権者がそうやすやすと手綱にひっかかってギャロッピングといいますか、奔馬の情勢をやめるという情勢はいまない。こういう点について、私はこの点は何かやはり問題があるという感じがします、あとで具体的にだんだん出てまいりますけれども。そういう点について、一体租鉱権功罪の見地から検討してこういう結論になったのかどうかということです。
  9. 加藤悌次

    加藤政府委員 御指摘のように、この審議会審議をいたします場合に、租鉱権について、これは不必要であるという意見についての検討もいたしたわけでございますが、先ほど答弁申し上げましたような議論の末、これを従前どおり認めていこう、ただ従前においてもいろいろ弊害がございますので、その面をなおより的確にチェックするために、設定要件なりにつきまして規定を整備いたしますとともに、いままで条文でははっきりいたしておりません租鉱権脱法行為であるようないわゆる斤先掘り、これも法文上はっきり違法である、やってはいけないという条文も新しく設けたような次第でございます。  それで先生指摘のように、石炭につきましては、いま特別法としての石炭鉱業合理化臨時措置法というような法律等もございまして、坑口開設等について一々許可制をとっているという状況でもございまして、確かに石炭亜炭関係については、これの今後の必要性についていま御指摘のような問題があると存じます。統計上見てまいりましても、ここ数年新しく租鉱権設定する数もだんだん少なくなってまいっておるわけでございますが、鉱業法は御承知のように石炭だけの鉱業法でございませんで、石油天然ガス金属鉱物非金属鉱物、これら全体に通ずる法律であるわけでございまして、私が先ほど申し上げましたように、今度の鉱業法では鉱物分類を非常に簡素化いたしておりまして、重複設定を認めないということにもいたしておりますので、この七十七条の設定申請のところの条文の第三項の一号にございます「残鉱採掘」−「残鉱採掘」というのは従前からの規定でございますが、いま申し上げましたように、目的鉱物の一部の開発を行なう必要がある金属鉱物非金属鉱物は全部同じ分類鉱物になっておりまして、たとえばある金属鉱物目的として鉱業権設定されまして、当該鉱業権者が、たまたまそこに石こうの有望な鉱床があるということでございましても、それを直接目的としないというふうな場合に、第三者がそれを引き受けてひとつ開発したいという場合には、どうしてもこの租鉱権制度を活用するということが必要な場面も今後ますます生じてくるのじゃなかろうかというふうに考えられますので、先ほど来申し上げましたような考え方で、これを今後とも維持していきたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  10. 滝井義高

    滝井委員 一応租鉱権が認められておりますから、したがって私は、この際、租鉱権というものは認めるべきでないんじゃないかという立場に立って質問をすることになる。したがってあなたのほうの答弁は、理論的にいって認めておるわけですから、当然認めるだけの具体的な理由を一々あげてもらわなければならぬことになるわけです。そうしますと、一体鉱業権の経理的な基礎租鉱権を認める場合の経理的基礎同一であっていいのかどうかということです。その経理的な基礎というものは違うのかどうか。
  11. 加藤悌次

    加藤政府委員 今度の改正法石炭亜炭関係につきましては経理的基礎を見ることになっておりますが、第一段階で、設定段階において経理的基礎を判断するという段階におきましては、いまのところこれは政令できめることになっておりまして、最終の結論を得ておりませんけれども、石炭亜炭とは多少区分して考える必要があるのじゃなかろうかというふうには考えておりますが、鉱業権租鉱権についてはそういう区分は必要ではないのじゃなかろうか、同一の取り扱いにするという方向で考えております。ただ問題は、設定の後にいよいよ事業を開始する場合に、施業案段階でやはり経理的基礎チェックする規定があるわけでございます。この場合には、具体的な開発計画鉱業実施計画、これに相応いたしまして、これを十分にやり得るだけの経理的基礎があるということで、ケースバイケースで考えるという考え方でおりますので、本来の採掘権者がやる場合と、その鉱区の一部について租鉱権者がやる場合のことについて、たとえば金額的に考えた場合に必ずしも同じであるということにはならない、こういうふうに見ておるわけであります。
  12. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、鉱業権租鉱権、それぞれ開発規模等が、施業案と申しますか事業をやる計画書の内容その他で違ってくると、経理的な基礎も変わってくることになるわけです。これは当然規模の大小によってそうなるだろうと思いますけれども、経理的な基礎をつくる場合に、やはりそこに何か一定基準がなければならぬわけです。経理的な基礎とか技術的な能力というのは今度初めて使われたわけではなくて、石炭鉱業合理化法か何かにもあったような記憶があるのですが、いまちょっと条文を忘れましたが、その場合の運用のしかたとの関係は一体どうなるのですか。
  13. 新井眞一

    新井政府委員 合理化法には特別ございません。いまのように鉱業権設定いたします際の要件は、今度新しく鉱業法におきます問題でございます。
  14. 滝井義高

    滝井委員 合理化法か何かのときの審議にあったと記憶しておるのですが……。
  15. 新井眞一

    新井政府委員 先生のいまのお話は、施業案の認可あるいは坑口開設許可という段階におきまして経理的基礎があるか、技術的能力があるかという点だと思いますが、その場合にはございますけれども、いま問題になっております能力要件について鉱業権設定する場合は鉱業法上の問題でございます。
  16. 滝井義高

    滝井委員 新鉱を開発する場合に、ある程度制限をしなければいかぬというので小型坑道以外は認めなくなった。そのときに、出炭の能力その他をやはり問題にして、たぶんあったような記憶があるのですが、合理化法であったかどうか、ちょっと記憶がないのですが、過去においてわれわれはそれを議論したことがある。
  17. 新井眞一

    新井政府委員 いま先生お話になっておりますのは、先ほど申し上げました坑口開設許可基準の場合の条文合理化法の第五十五条でございます。これの第一項第二号に「その申請に係る鉱業権者又は租鉱権者当該鉱区又は租鉱区における保安を確保するに足りる経理的基礎及び技術的能力を有すること。」というのが許可基準の中にございます。
  18. 滝井義高

    滝井委員 私それを記憶しておるわけです。それとの関係ですね。それと、ここに出てくる租鉱権なり鉱業権を認めようとするところの経理的基礎とは同じものかどうかということを聞いているわけです。
  19. 加藤悌次

    加藤政府委員 お答え申し上げます。先ほど申し上げましたように、経理的基礎を見る場合二つの段階に分けて、先生の御指摘のやつは、最初の権利を設定する段階あるいは移転を受ける段階におけるチェックの問題であろうと思います。この段階におきましては、具体的にその鉱業権設定の暁においてどの程度仕事をするのかということが実はわからないわけでございます。したがいましてここでは一般的な基準といたしまして、およそ鉱業権設定を受けた場合に、鉱害問題あるいは災害問題などむずかしい問題がございますので、こういうものも起こらないように十分やり得るだけの経理的な基礎があるかどうか。見方をかえていいますと、ああいう人にやってもらえるのなら、その地上の人も安心しておれる、鉱害被害者等から見まして、あるいは鉱山労働者から見まして、この程度経理的基礎のある人なら十分信頼できるのではないか、いわば社会的信用という面から見て、これではたして十分であるかどうかといった面からのチェックをいたしたいということであるわけであります。第二段階の、いよいよ鉱業を実施する場合の施業案段階におけるチェックは、先ほど申し上げましたように、ケースバイケースで、鉱害の防止に必要な施設も必要でございましょうし、そういった面もあわせ考えまして、はたしてその仕事が十分な経理的な裏づけがあるかどうかということを具体的にチェックしたい、こういうことでございます。
  20. 滝井義高

    滝井委員 その坑口開設の場合と今度の租鉱権を認めるかどうかという場合とは、私は本質的には変わらないのじゃないかと思うのです。租鉱権を認められたって坑口開設しなければ意味がないのですから、問題は坑口開設するという合理化における基礎とこの基礎とは同じでなければならぬ。ところが、合理化における経理的な基礎、技術的な能力というものを過去に一体どういう基準で扱ってきたかということが非常に参考になるのです。いま鉱山局長が言われたように、この法律に基づく二十六条の三の経理的基礎というものは政令で定めるのだからまだ具体的にきめておりません、こうおっしゃる。しかし、具体的にきめていないかもしれないけれども、すでに鉱業法と重要な関連のある、それをむしろ基礎にしておる石炭鉱業合理化では、そのことを使って現実に実施したわけなんですから、そして、坑口開設許可について小型坑道という抜け道があって、みんな小型坑道をやってしまった。そしてどんどん坑口をつくって石炭を掘り出している。これはなかなかチェックのしようがない。そこに抜け穴をつくっておった。ところが、今度はこういう経理的な基礎を明白にしていくからには、抜け穴をつくったのではいかぬわけですから、過去の実績で、一体いかなる基準石炭局のほうではその経理的な基礎なり技術的な能力を評価して実施したのか、それがもって他山の石として今度の新しいこの中の重要な参考のものとなり、少なくとも同一方針運用されていかぬことには、鉱山局長運用方針石炭局運用方針が異なるのでは困るわけです、もうすでに過去にあるわけですからね。そこをまだ局長きめておらぬのでは困るのです。すでに過去において実施したことがあるのだから、基準がなければならぬのですが、租鉱権の場合には一体どういうものか。私はなぜそういうことを言うかというと、ここに鉱区面積その他が大体今度きまるわけです。最小面績がいままで石炭石油等については十五ヘクタール、石灰石、ドロマイト等については一ヘクタール、その他については三ヘクタール、鉱区最大面積は一律に三百五十ヘクタール、これでやる。これを今度は改めて、一類の鉱業権、すなわち金属非金属鉱物、これは最小三ヘクタール、最大三百五十ヘクタール、石炭亜炭目的とする第二類の鉱業権については最小十五ヘクタールから最大三百五十ヘクタール、三類もまだあるわけですが、こういうふうにとにかく面績がきまってきたわけです。そうしますと、その面績の中に一体どの程度鉱物賦存をしておるかということがある程度わかったからこそ施業案を出して掘ろうとするわけですから、そうしますと、大体鉱業権ならばはどの程度——租鉱権というものはそれに大体同じ程度だとおっしゃったわけですから、そうたいして違わないということになれば、この面績がきまっておればおよその基準は出ておらなければならぬことになるわけです。それが全くここでまだきめておらない、抽象的だということになれば、過去の実績は、一体あんなものを法律でつくったのだけれども何もなかったということになって、どうもこれは今後もできないのじゃないか、経理的能力というものを単なる訓示規定でつくったものの、実際はいままでどおりだということになれば意味はなくなるわけです。
  21. 加藤悌次

    加藤政府委員 先生ただいま御指摘のとおりでございまして、この経理的基礎政令で定めることになっておりますが、一番問題の石炭における租鉱権等を認める場合にどういうふうに考えればいいかということで、大体こういう場合以上のときには租鉱権をやはり認めざるを得ないのじゃないかという一つの基準があると思います。その基準に基づきまして、大体この程度の期間にこの程度石炭を掘れるもの以上であればやはり認める必要があるだろうという考え方からいたしまして、逆に金額的に幾らというふうな試算をいまやっていただいておるわけでありますが、最終的には金額で、たとえば総予算幾らというふうな簡単なことになるかと思いますが、その点につきましては先生の御心配の点がないように十分石炭局のほうとも現に慎重に検討いたしておる、こういうことであるわけであります。
  22. 滝井義高

    滝井委員 私が言いたいのは、石炭局がすでにそういう法律を持っておるわけですから、それが過去において一体どういう基準でやられておったのかということ。それからいま一つは、これは技術的な能力というものがあるのですね。今度は法律技術的能力というものがないわけです。新鉱開設のときには、坑口開設許可を受けるときには経理的な基礎と技術的な能力とを加味しておったわけです。ところが今度は経理的な基礎だけしかないわけです。技術的なものは考慮していないわけですが、いまのように石炭鉱業において技術者の数が不足してくるということになると、技術的な能力というものを加味しないと大災害が起こってくるわけです。それは発破係や電気の係とかがいなくなってしまった、だからそのかわりがやっておったので国家の免許等も持たなかったのだということになるわけでしょう。そうすると、今後はますます技術的な能力というものを入れなければならぬわけです。ところがそれが入っていない、そしてすでに以前には合理化法には入っておった、こういう関係もあるわけです。この二点についてやはり解明してもらわなければいかぬ。
  23. 新井眞一

    新井政府委員 先ほど私から申し上げました合理化法におきます五十五条の坑口開設許可基準でございますが、法文では先ほど読みましたようなとおりでございまして、実際の生産能力あるいは必要な資金の情勢、あるいは石炭の生産量、そういう諸般の問題を考えてやっておるわけでございますが、ちょっと先生に申し上げたいことは、最初に鉱業権設定するという段階におきます考え方と、実際それが坑口開設をしていよいよ仕事をするという段階におきます考え方とは別個でございまして、あくまでも仕事をやる段階になりますと、この山をどういうふうにやっていくのだ、どういう規模でやっていくのだということで、おのずから資金計画なり技術の問題なり等におきましても、相当詰まってまいります。最初のときには、とにかく鉱業権設定するのだ、もちろんそれは石炭採掘をやるのだという段階がございますので、当初はだれもかれもというわけにはいかぬのだ、やはりある程度保安の問題もあるし、鉱害の問題もあるから、社会的信用だけは与えていこう、しかし実際仕事になりますと、その仕事ずばりでいろいろものを考えて、その基準でやっていくわけでありまして、その意味から申しますれば、私どもの合理化法のほうは、石炭政策から見まして五十五条の関係でやっていく、これは何も矛盾がない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  24. 滝井義高

    滝井委員 鉱業権設定する場合は、まだ具体的に坑口開設をやっておるわけではないのですから、ある程度、経理的な基礎にしても技術的な能力にしても、そうシビアーでなくともいいと思うのです。しかし、いよいよ坑口開設するということになると、これは相当シビアーでなければいかぬわけです。そうすると、一体非常に厳重な経理的な基礎なり技術的な能力というものを把握しなければならぬのだが、その厳重なところは一体どうなのか、こうなるわけです。そうすると、厳重なところよりも緩和したところのものを、この鉱業法の経理的な基礎政令でおきめになればいいわけです。しかし厳重なところは過去においてすでに実施されておるのだから、その厳重なところはどうでしょうか、こういうことになるのです。それを石炭局長のほうから説明してもらわないと、大まかのところが出てこないわけです。だから、鉱山局長石炭局長のほうと相談をしよう、こういうことに、いま答弁があったようになるのじゃないかと思うのです。それはもう実施しておるのですから、そこらあたりの——実は私が言いたいのは、この条文がこうしてあるのだけれども、厳重でなかったのですよ。そうして小型坑道ということで抜け道ができたりして問題が起こって、それをわれわれが指摘して、石炭局のほうではこれはいかぬ、やはり厳重に取り締まらなければいかぬということになったわけです。抜け穴がうんとできてきたのです。そしてどんどん坑口をつくっちゃった。そういうことがあるので、やはりこういう規定をつくるからには、しかもこれが今後租鉱権その他を制限する重要な一つの手綱になるわけでしょう。ところがその手綱手綱でなかったならば意味がない。いままでの租鉱権と同じで、むちゃくちゃになっちゃうのです。もし一歩を譲って租鉱権を認めるとすれば、やっぱりこの手綱がかかる姿でなきゃならぬ、こういう論理になってくるわけですね。その手綱が過去の例からいってもどうもかかりかねておるんですね。それで、これはすでに過去の例もあるので、ぜひひとつ鉱山局、石炭局、十分意思の統一をして、経理的な基礎なりまた技術的な能力——今度は技術的な能力についてはまだ何も触れてないのですよ。この点はやっぱり広い意味経済的な基礎、経理的な基礎というもののなかに技術的なものも入るということが見方によっては私は言えると思うのです。そういうことで、その両者かみ合わせて御検討になって、ひとつきちっとした政令をぜひつくってもらわなきゃならぬと思いますがね。
  25. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいま先生の御指摘の点は、その運用にあたりまして十分注意をしてまいりたいと思います。  それからもう一点の技術的能力の問題でございますが、これは実は設定段階においてこれを見るということも非常に困難があるわけでございます。具体的な開発計画というものがきまりませんので、先ほど申しました施業案段階において、いよいよこれからこういう計画で開発をいたします、ついてはこの施業案を認可していただきたいというときに、先ほどの経理的な基礎と同時に技術的能力を見ようということで、それが施業案条文の第百条の五でございますが、百条の五の第二項第一号ではっきり新しい規定を入れたわけでございます。
  26. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつ坑口開設段階では、経理的な基礎も技術的な能力も一目瞭然となるようにしていただきたいと思います。  次は鉱区の分割のしかたです。いままでの鉱区の分割のしかたを見ますと、メタル・マインはあるいはそういうことはないかと思いますが、たとえば石炭で申し上げますと、たんぼや家屋の鉱害が非常によけいあるというところの責任を鉱業権者が免れるために鉱区を分割してしまうのです。分割をして、そして租鉱権者に出すわけです。その場合に、租鉱権者に出すときにはどういうぐあいにするかというと、この分割租鉱権、分割をした鉱区を——あるいは租鉱権者鉱区として分割する場合だってあるわけです。鉱区として分割をするかあるいは租鉱権として分割をする場合、いろいろあるのですが、そういう場合にどういう形をとるかというと、この鉱区は時価よりか安くやる、安くやるから、その鉱区の中に起こる鉱害の責任は一切君が持つんだ、その分割をしてもらった人が持つんだという形をとるわけです。なるほどこれは法律的にはもとの鉱業権者も原因作為者ですから、ある程度連帯の責任はあるんです。しかし鉱区を分割してしまうとなかなかそうはいかない、こういう形になるわけです。そしてしばらくしたら今度は分割をした自分の持ち分のほうの鉱区合理化にかけて交付金を取ろう、こういうことになれば、これはよけい自分に金が入ってくるわけです。こういう分割のしかたが行なわれるわけです。これは至るところ行なわれておる。いまでも白昼公然と行なわれておる。ここに鉱区の分割の問題と租鉱権の問題がからまってくるわけです。そうなりますと、これをもらった人は、ちょっと石炭を掘ることもあるが、全然掘らないこともある。そしてそのままほっぽり出しておるわけです。のど元を過ぎれば熱さを忘れるで、ある程度日にちが三年、五年とたつと、それで事態が終わってしまうという可能性もあるわけです。そこで、一体鉱区の分割のしかたというものはどういうぐあいにやるべきか。いままでならば、このゲリマンダーをつくるわけです。そしてもう掘ることやなんかは考えぬ。ただ鉱害を免れ、自分の責任をのがれるような形でゲリマンダーの鉱区をつくって申請をすると、これは石炭局のほうで、もう財産権の移転だからということでそのまま認めてしまうのです。こういう分割のしかたというものは非常に問題なんです。一体、今度の鉱業法改正ではそれをどういうように規制をする所存なのか。これはもうすでに臨鉱法なり石炭鉱業合理化法を審議をするときに、私たちは何回か質問をした。政府のほうも鉱業法改正のときには、そういう問題については十分検討いたしますという答弁もしているのですが、どういう具体的な検討が行なわれて法文にあらわれたか。
  27. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱区の分割に関します規定は五十条にあるわけでございますが、そういった分割あるいは合併なりの出願をすることができる、こういうことになっております。それで、この出願を許可する場合の考え方は、これは自由裁量行為でございまして、鉱業法本来の目的である鉱物の合理的開発のためにそれが必要であるかどうか、こういう基準に基づいて分割を許可する、こういう方針でいままでもまいっておりますし、今後とも運用していくつもりでおるわけであります。  それから、この場合に、分割後の鉱区面績につきましては、一般の原則でございます、先ほど先生の御質問にございました十四条の二の規定がそのまま適用されるわけでございますから、この最小面績を下るような分割のしかたは当然認められない、こういうようなことであるわけでございます。  それから分割のしかた、簡単に言えば鉱区の形状の問題でございますが、それはやはり分割後もそれぞれ一つの鉱区でございますので、この点につきましては第十四条の規定が適用されまして、鉱区の境界というものはあくまでも直線できめる。それからもう一つは、あまり複雑な格好になることはどうも事務処理上、また鉱物の合理的開発上からも問題があるのじゃなかろうかということで、今度の改正法では三項という新しい規定を設けまして、多角形の頂点となる地点の数は十以上あってはいかぬ。つまり十角形以上の複雑な鉱区の形態になってはいけない、こういうような規定を置いた次第でございます。
  28. 滝井義高

    滝井委員 その十四条の三で十角形というところが問題なんですね。私は、いままでの鉱区で十角形以上のものがずいぶんあったと思うのです。それはもう実に複雑怪寄な形状のゲマンダー鉱区ができてくるのです。それを財産権の移転だといって抑制をする方法がないとすれば、そのしりぬぐいは全部国にきてしまうのです。しかも国がその鉱区のあとさらえをやるまでは、その住民というものは泣かなければならぬわけです。だからここらが、私はやはりある意味で経理的な基礎と技術的な能力というものを非常に重要視しているならば、鉱区というものはあまり分割すべきものではないじゃないかという感じがするのです。もう譲渡というものは、これは神さまが与えたものなんだから、そのままで売買をしていくということのほうがいいのじゃないかと思うのです。これを三つ四つに分けるということになると、必ず悪用するのです。そしてたとえば十五ヘクタールなら十五ヘクタールというと、三百五十ヘクタールのものを十五ヘクタールずつ幾つにも分割をするのです。これはもう知恵が多いですからね。金をもうけようとする人間はありったけの知恵をしぼってくるのです。それを悪知恵というのでしょうが、ありったけの知恵をしぼって、自己中心的にこの法律を悪用してくるわけですね。したがって、私は鉱区というものは、それは普通の財産ではあるけれども、やはり売買はそのままやらせるほうがいいのではないか。たとえば農地についてみますと、やはり日本の農地はなるべく分割しないほうがいいのだというので、最近は新しい親子契約の方式なんかというものも生まれてきつつあるでしょう。やはり農業でさえも、猫額大の土地を耕して天にのぼるというようなあのたんぼを、幾つも幾つもむすこたちや娘たちに分けてしまうのでは日本農業はだめになってしまうのと同じで、やはり鉱区を総合調整しようという段階が出てきているわけですからね。だから、そういう点でやはり私はそれだけの鉱区を売ろうとすればそのまま売っていく。それのほうが、それだけの大きな鉱区を買える人ならば必ず経営的な能力があるはずですし技術的能力もついている。石炭開発の上からいっても、これは中小企業抑圧という点も出てくるかもしれないけれども、石炭企業なんというのは中小企業にはできやしないのですね、大体言って。中小企業でも、どこまでが中小企業かということはいろいろ議論のあるところですけれども。だからこういう点について、何か鉱区の分割のやり方についてある程度規制というもの——十角形というものもなかなか——これはウナギの寝床のような鉱区をつくってしまうのですよ。たとえばぐっと一本筋の町がある。そうしますと、その町のところだけを鉱区を分割してしまうのです。そしてたんぽと山のところだけを残して売山に持っていくわけです。そうすると、町のところはばく大な鉱害の復旧をやらなければならぬですから、そこでそこだけは残してしまう。そうしますと手も足も出ないですよ。そしてその町の下は、今度はその租鉱権を受けた人がちょっぴり掘っていくわけです。掘っていって、私はもう何もできませんでしたとやる。町の下を掘りくり返して手を上げたらどうにもならぬ。無資力で、国があとを見なければならぬということになる。国がばく大な金を出す、こういうことは現状では見えすいておるわけですから、鉱区の売買は自由にするけれどもやはり細分は許さぬ、もういま鉱区を持っておるのは大手の炭鉱が大部分ですからね。中小はほとんどつぶれてしまったのですから、残ったのは大手ですから、明治の日清、日露の戦争のときから掘って掘って掘り尽くしておる大手が、これから鉱区の分割を始めるわけです。それはもうあまり許さぬほうがいいんじゃないかという感じがするのです。
  29. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどもお答え申し上げましたように、分割を許可するかどうか、これは鉱区の合理的開発上ほんとうに必要であるかどうかということを基準にいたしまして具体的にチェックいたしますので、先生の御心配のようなことは運営の面でできるだけなくしていけるんじゃなかろうかというふうに感ずるわけであります。たとえば分割の必要な場合、例を申し上げますと、ある一つの非常に広大な面積鉱区がございまして、その中に炭層といいますか、鉱床がABCと三つある、ところが現在その鉱業権者がAという鉱床開発しておる、Bという他の鉱床開発するためには別に新しく坑口開設する、立て坑を開発しなければならぬという場合があるわけですが、次の段階にはBという鉱区をそういったやり方で開発することを考えておるでありましょうが、経済事情の変動その他によりまして、Bという鉱区を将来において自分が開発するよりも、むしろ鉱区を分割いたしまして、分割後のB鉱床のある鉱区第三者に譲り渡したいという場合があるわけでございますので、そういう場合にはやはりこの規定によって認めざるを得ないのではなかろうか、こういうことであるわけでございます。
  30. 滝井義高

    滝井委員 運営の面でおやりになるというのは、いままでもそういう答弁をしていただいております。ところがこの鉱業法目的の第一条を読むと「この法律は、鉱物資源を合理的に開発することによって公共の福祉の増進に寄与するため、鉱業に関する基本的制度を定めることを目的とする。」としておるわけです。まず第一に鉱物の合理的な開発というものを行なわなければならぬ、しかもそれが公共の福祉の増進に寄与しなければならぬという二つのものさしがきちっとしておるわけですね。そうしますと売山をする場合に、いま言ったように開発をするという名のもとに切るわけです。鉱区を分割するわけです。分割をして、はなはだしいのはほとんど開発しない。やらない。それはすぐやらなくてもいい。なぜならば、租鉱権の存続期間は登録の日から五年以内、延長もできる、いままではそうでしょう。そうすると鉱業権も同じように開発するまでに期限があるわけです。そうすると、その期間が五年なり十年過ぎればいいんですよ、目的はそれで達する。こういうものはざらなんです。それをみんな分割許可しておるんですよ。だから分割をされたために、ずいぶん多くの人が泣いておるわけです。たとえばこういう場合だってあるでしょう。一つの大きな鉱区を持っておる、まつ二つに切って、そしてAとBのうちのBというものは売りに出す、Aは自分の会社がやらなくて今度は第二会社をつくってやらせる、こういうことが行なわれておるでしょう。そうすると、いままでは非常に技術的な能力と経理的な基礎がしっかりしておった大手がやっておったものが、今度は一夜にして鉱区が半分になって、一方は売りに出して一方は第二会社でやらせるということになれば、明らかにこれは経理的能力はがた落ちですよ。ところがそれでも平気でやっておるわけです。こういうことが公然と、もう資本主義だからといって認められていくと、明治以来採掘された住民としては、これはもうたいへんなことですよ。こういう場合は一体どういう指導をするのですか。
  31. 加藤悌次

    加藤政府委員 いまの鉱区を分割いたしまして、そのうちの一つを第三者に譲渡するという場合は、新しい規定鉱業権の移転を受ける場合には、新しく鉱業権者となる人につきまして、鉱業権設定するときと同じ経理的基礎があるかどうかというチェックをいたします。それから現実にその鉱業権に基づきまして新しくこれから事業をやろうという場合も、新規の設定を受けた鉱業権者事業をやる場合と同じでございまして、施業案による厳重なチェックをいたします。また休眠鉱区の更新につきましては、長い期間にわたりまして休眠のある場合には鉱業権の取り消しをするというような制度もございまして、そういった面からチェックをするわけでございます。いま御質問のような場合、すべて鉱業法のいろいろのこういった面の監督規定を働かせることによって、十分弊害は防げるのではなかろうかということでございます。先生指摘のように、鉱業法法律上はいろいろ制度は整備してはいるんだけれども、必ずしもこれが十分に守られておらないという、いわゆる監督の不行き届きと申しますか、こういった点はあるいは御指摘のようにあるんじゃなかろうかと思いますが、その点につきましては、これは運用ができるだけ円滑に適正に行なわれますように、今後とも人員等の整備について十分注意をする必要があるであろう、こういうふうに存ずるわけでございます。
  32. 滝井義高

    滝井委員 私が言いたいのは、一つの鉱区を持っておって、それをまつ二つに割って、あるいは三つに割って、そうしてその二分の一なり三分の一のところだけは合理化事業団に売ってしまう、分割して売るんですよ。そうしていままでやっておったその会社が全部やめちゃって、そうして第二会社という新しい会社をおつくりになる。そうしてその第二会社の鉱区にこれはしてしまうわけです。これは鉱害は連帯責任があることははっきりしております。がしかし、そこで表にあらわれたものは、いままでやっておった人が、この鉱区では私はやれません、やったってもうからぬからだめですといって投げた鉱区ですよ。投げて、そうして半分は売りに出して、半分は第二会社にやるというのは論理が通らぬじゃないかというんです。もうこの鉱区は大手の人がやってさえもうからぬものです。今度は第二会社にやらせるというのは、第二会社というのは、これは経理的能力技術的能力はあるかもしれぬけれども、これは採算がとれぬものです。採算がとれぬとすれば、労働条件を悪くし、労働時間を長くし、そうして資材の投入を少なくして、それでもうけるほかはないということになる。いわゆる悪条件の積み重ねの上にその鉱業権開発をしていくということになって、一条の目的に反するのではないかというのです。公共の福祉を増進するとか鉱物の合理的開発ということにならぬじゃないかというのです。ところがそれが公然と許されて通っておるから納得がいきませんよ、こういうことなんです。
  33. 加藤悌次

    加藤政府委員 第二会社の問題につきましては、鉱業法上は、親会社から新しくつくりました第二会社に鉱業権を譲渡する、移転するということに相なりまして、移転の許可を受ける必要がございますが、その場合に、当然、先ほど申し上げましたような経理的基礎審査がある。また第二会社が仕事をする場合に、施業案段階におけるチェックがある、こういうことであるわけでございます。鉱業法のたてまえといたしましては、一たん認めました鉱業権をなくするという場合は、積極的に一般の公益に対して非常に害があるとか、あるいは災害の防止上非常に問題があるというふうな、いわゆる積極的な悪い条件がある場合にこれを取り消しするということでございまて、これを採算的に見て、どうもうまくやれるかどうかという場面からは当該工業権者の自主的な判断にまかそう、いよいよもうやれないというときには廃業、これは放棄でございますが、こういう制度的な面からも考えておるわけでございます。そういう場合に、国が積極的に認めないということは、鉱業法のたえまえからしでいかがであろうかというふうな感じがいたすわけでございます。
  34. 滝井義高

    滝井委員 だから、そのものの考え方が、すでに日本資本主義の勃興期、フロンティア時代のものの考え方だというんです。いまのように石炭鉱業がこれだけ国の保護政策を受けて、出た石炭は全部重要なところは鉄鋼とか電力が買い入れるようにさせる、それから失業者が出れば、離職者対策は政府がやる、鉱害も、手を上げれば国が見てやります、こういったら、経営者のやるところは一体何があるか。炭を掘るだけですよ。炭を掘るだけしかない。いわば経営のうまみというものは、資本主義的な経営のうまみというものはどこにもないんですね。そういう状態になっている。メタルは自由化その他で幾ぶん違うところもあります。ありますが、石炭、少なくとも第二類のものについてはそういう傾向が出ておるわけでしょう。そういうものが出ておるのに、第二会社でやれるものなら、なぜ第一会社がやらないのかということになるんです。だからここは法律で第二会社をチェックして、第一会社でやらしたらいい。それはどうしてそう言うかというと、今度は第一会社と第二会社の関係鉱業権租鉱権関係を見ると、出た炭は、販売権は全部もとの会社が握っているんですからね。例外もありますよ。例外もありますが、ほとんどもとの会社が握っている。そうしますと、これはもう全くていのいい下請ですよ。請負掘りになっておるだけなんです。やはりこういう冷厳な現実があるということです。だから、立法というものはその現実に即応した形をとらなければならぬと思うのです。中国には七億の民がある、これをそのままにするわけにはいかぬということは、フランスのドゴール大統領ばかりでなくて、日本の池田総理も、そのことは認めなければならぬ、だけれども、台湾との歴史的、伝統的な……こう言っておりますが、それと同じで、冷厳な現実があるということだけは事実です。だから、この事実を無視するわけにはいかないし、客観的な石炭情勢も変わってきておりますし、したがって、その方向法律改正すべきである。その改正ができなければ、その運用は、そういう方向に当然やるべきだと思うんです。ところが、そういう方向にいってないでしょう。
  35. 加藤悌次

    加藤政府委員 先生の御指摘の点、全くそのとおりで、否定するわけじゃございませんが、先ほどちょっと触れましたように、鉱業法というのは石炭だけではなくて、石油等の流体鉱物、あるいは金属鉱物非金属鉱物、こういったものに通ずる一般的な、原則的な考え方から規定をいたしておるわけです。それで、最近の石炭需要等にかんがみまして、この鉱業法のそのものずばりの適用は必ずしも実情に沿わないということで、鉱業法の特例規定を求める、それだけではございませんが、いろいろ規定するかっこうで石炭鉱業合理化臨時措置法という法律があるわけでございまして、もしいま御指摘のような点で、しかもそういう点の是正について、鉱業法なり現在の合理化臨時措置法でいけないということになりますれば、それは鉱業法の特則としての合理化臨時措置法をどういうふうに改正すべきかというふうな点での御議論にしてしかるべきではなかろうかというふうに考えるわけでございます。御了承願いたいと思います。
  36. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、合理化法で、運用でやれますか。いまのような、たとえばAとBと一つの鉱区を分けてBは売りに出す、Aは自分の会社がやらずに第二会社でやらせてしまう。これは有沢調査団のときは、雇用対策上やむを得ない場合以外は第二会社は認めない、あるいは地域経済に重大な影響を及ぼすという、二つくらいのものさしで第二会社は認めることになっておったのですが、それ以外は認めないとなっていた。しかし堂々と第二会社というものはできてきつつあるのです。だから、そういう点が合理化法運用なり規定でそういうことがチェックすることができるというならば、それはそれでいいと思うが、やはり客観的な石炭の置かれている環境等が変わってきているので、根本の鉱業法でそういうものさしをつくっておく必要があるのじゃないか。特に、鉱区の分割という点についてはつくっておく必要があるのじゃないですかね。
  37. 新井眞一

    新井政府委員 先生のおっしゃいます鉱区の分割問題と申しますか、鉱業法上の財産権の分割の問題でございますが、先ほど来鉱山局長からお話のあったとおりでございますけれども、これに伴う第二会社の問題あるいは鉱害処理の問題、あるいは合理化事業団の開発の問題、こういう問題につきましては、それぞれ石炭の臨時措置法の関係で、いろいろ買い上げもありますし、あるいは第二会社の件につきましても、御承知のように、雇用政策上やむを得ないというときに限って運用いたしているわけでございますから、さような面で悪質な分割についてはあるいはそういう事情もあろうかと思いますけれども、買い上げの段階とかあるいは当該者の段階におきまして、行政の運用もそのような線で進めてまいりたい、かように考えているわけであります。
  38. 滝井義高

    滝井委員 行政運営の面でやるやると言って、それが現実にはいよいよとなると私権の非常に強い圧力で押されてしまってできないのが現実です。だから、私権をある程度制限していくということは、内閣が得意なように公共の福祉の名のもとにやる以外に方法はないわけです。いま労働者がストライキをやろうとすると、われわれは喪えないのだから賃金を上げるためにはストライキをやらざるを得ないのだと言うと、公共の福祉に反するじゃないか、公労法第十七条に違反するじゃないか、食えないということとは別だということで——こっちは、いつの間にか私権がまかり通ってしまう。こういう点については、第二会社ばかりではなく、租鉱権の場合でも同じことが公然と行なわれているわけです。こういうものに対するチェックの方法がなければ、ゲリマンダーの鉱区が幾らでもできるですよ。これは、大手の中ではそういうゲリマンダーの鉱区を公然とやっているのです。ひとつ大臣からいまの質問に対してまず総括的に締めくくりの御答弁を願いたいと思います。
  39. 福田一

    福田(一)国務大臣 だんだん御質問趣旨等々を承っておりまして、あなたの言われるようなことが行なわれているとすれば非常に遺憾だと私は思っております。しかし、行政面でチェックができないかというと、私は行政面でできると思っております。私はそういうことでできると思っております。だから、鉱業法自体はこういうふうにしておきましても、第二八会社にして、片一方は売るのだ、そういうふうなことは認めなければできないことなんですから、そういう方針で——それは特殊な事情があって必要があれば別でありますけれども、そういうことは厳重に処理をするということ、こういうことで差しつかえないと私は考えております。
  40. 滝井義高

    滝井委員 なかなか特殊な事情がみなあるのです。そういうときは特殊な事情にみななってしまうのです。これは現実の問題を当てはめると、そうい、うものがたくさん出てきて、みな特殊な事情になってしまうおそれがあるので、いまの大臣の御答弁をよほど事務局は熟読玩味してやってもらわなければならぬと思うのです。そこで大臣、実はそういうことが白昼公然とざらにあるので、ぜひ合理化事業団のほうも、石炭局のほうにも十分注意をして行政運用をやってもらいたいと思う。  そこで、その問題が出てまいりましたので、鉱業法とは直接関係がない〉思いますが、しかし鉱区の問題とは関係がありますから、ここでついでに御質問しておきますが、合理化事業団が相当の鉱区を買い上げたわけです。ころが御存じのとおり、三十七年度で旧方式はやめになって、三十八年度からニュー・スクラップ方式になったわけです。いままでは鉱害設備その他全部買い上げておったけれども、もう鉱区だけしか買い上げないことになってしまったわけです。今後事業団の買い上げた鉱区の運命というものは、一体政府はどうする方針なのか、というのは、御存じのとおり、ことしから来年にかけて買い上げは一応ピリオドを打つような形が出てくるわけです。そうしますと、この買い上げた莫大な鉱区の運命を一体どうするかということです。たとえば何か戦雲ただようというようなことになると、またその鉱区に対する盗掘その他の問題がすぐ起こってくるし、あるいはその鉱区開発すべきだ、まだ深いところには炭が残っておると言って、採算が合うようになると始まる可能性も出てくる、あるいは隣接鉱区との関係も出てくるということで、この買い上げた鉱区の運命については、いままで質問をしたけれども、政府としては、まだその段階ではございませんと言って答弁をそらしてきておるのです。しかしこういうぐあいに鉱業法の抜本的な改正をおやりになるとすれば、いわば国にひとしいような合理化事業団が莫大な鉱区をかかえることになるわけです。もちろん鉱区登録は抹消しておりますけれども、かかえることになるのだが、この運命は一体どうするつもりなのか。
  41. 新井眞一

    新井政府委員 いまお話のございましたように、新方式によりますと、鉱区の消滅が前提になりますが、旧方式ですと、一応買い上げまして事業団が持っておるわけであります。その保有鉱区を今後どうするのだという御質問でございますが、まだいろいろ検討しておりまして、結局事業団のほうで鉱区を保有いたしておりますので、もちろんほかの者に鉱業権設定してそれでやっていくということにはなりませんが、それをもうきっちり鉱業禁止地区にしてしまうかどうかということにつきましては、それをやるかやらぬかということを現在慎重に検討しておる段階でございます。
  42. 滝井義高

    滝井委員 旧方式で買い上げられたものは、合理化事業団が連帯責任を持って鉱業権者として残っておる、新方式のものは鉱区を抹消しておるわけです。したがって、そこにはいわば鉱業権はないわけです。そうしますと、ここに新しく、ちょっと私法律的な何年の制限か忘れましたが、新しく鉱区申請してくる者が出てくる可能性があると思う。この場合との関係は一体どういうことになるのですか。
  43. 新井眞一

    新井政府委員 合理化事業団は、石炭鉱物にした形での鉱区を現在保有いたしております。したがって先生質問のように、それにもう一つ石炭を掘るのだということでやってきても、これはだめです。そこでほかの鉱物を持ってきたらどうかというお話になりますが、これは鉱山局長関係になります。私のほうは石炭局長でございますので、石炭のほうはそういう考え方でやっております。
  44. 加藤悌次

    加藤政府委員 今度の改正によりまして、先ほど来申し上げておりますように、三分類鉱物分類されることになったわけであります。そこで事業団の買い上げ、保有しておりますのは石炭鉱区でございます。かようなことは実際の例としてないのではなかろうかと思いますが、かりに専業団の保有しておる石炭鉱区の中に、他の金属鉱物がどうもありそうだというふうな場合に、これは第一類鉱物でありますが、それを目的として鉱業権設定の出願があった場合には、これはほんとうにあるということになれば慰めざるを得ない。ただその場合に、現実に鉱害問題が起きた場合、現在事業団が保有しておる石炭鉱区の中で石炭採掘した仕事に基づく鉱害であるか、あるいはその後設定された金属鉱物開発によって起きた鉱害であるかという問題が実は起きるだろうと思いますが、これは事実認定の問題ということになりまして、法律考え方そのものは、当該鉱害の発生の原因になった鉱業権岩が責任を負うというたてまえになっておるわけでございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 ちょっともう一ぺん念を押しておきますが、旧法式では合理化事業団が連帯責任を持っておるので、これは鉱業権が生きておるわけであります。鉱業権が生きておるから、そこへ他の者が鉱業権設定することはできないわけです。ところが新方式では鉱業権登録を抹消してしまうわけです。抹消すると交付金をもらえるわけです。抹消しますと、ここでは施業案を出して石炭を掘りたいと言ってお願いしても許さぬわけです。これは法律的にどうなっていますか、無限永遠に許さないのですか、それとも一定の時期が来たら許すのですか。これは鉱業権は消えてしまっておる。だから新しく鉱業権設定は一体どの程度の時間を経過したら許すことになるのか。
  46. 新井眞一

    新井政府委員 石炭合理化臨時措置法の関係になりますので、さような場合につきましては、将来永劫にわたりまして出願を許可をしないという形になっておるわけでございます。したがって、新方式によりまして、交付金で鉱業権廃棄させた場合には、同様の石炭鉱業申請がございましても、これは許可をせぬということに三十五条の六で規定をいたしておる次節でございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、三十五条で永久に許可をしないということになっておりますが、問題は、今度掘進増区のことになるわけです。今度の鉱業法では掘進増区制度は廃止ということになって、認めないことになっておる。ところがいままでは、隣接鉱区鉱業権岩の承諾を得て鉱床を定めて、鉱区増加を出願することができたわけでしょう。今度この制度は廃止されたけれども、どうしてもそこから石炭を掘ってとったほうがいいということになれば、やはりそこに鉱区は認めざるを得ない形になるわけです。隣の鉱区から事業団が持っておる鉱区、連帯責任の鉱区、いま抹消した鉱区、その地下から掘る、こういう場合が出てくるわけです。隣の鉱区からどうしても行かなければいかぬというときがある。この場合はこれは認めるのでしょうね。
  48. 新井眞一

    新井政府委員 先ほど申しましたように、廃棄をいたしました石炭鉱区許可をいたしませんので、したがって、いま先生がおっしゃるように隣の鉱区までいっておる、そして少し掘進さしたら合理的だという場合は、あるいは例外的にはあろうかと存じますけれども、そういう事態につきましては、もちろん最初に廃棄させます場合の整理交付金の交付の段階で、他の隣接鉱業がどういう施業案を持って、どういう段取りで施業をやっておるかというようなこともにらみ合わせながらそういう廃棄をやらせるわけでございますから、そういう事態は、その面におきまして避けたいと考えております。なお、不幸にしてそういう事態が起こりましても、これは先ほど申しましたように認可をいたしません。
  49. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、その場合に相当の金をかけて坑道の開設をやっておった、それで現実に優秀な資源が目の前にあるのだということでも国が許さぬということになると、不当に私権を侵害することになるわけですね。何も合理化事業団が持っておった鉱区、あるいはニュー・スクラップであれあるいは旧方式で連帯責任をもって買い上げているものであれ、その隣まできて、そこに明らかに石炭がたくさん賦存をしておるというのに、もうそれを許さぬということになれば、じゃ国は、この鉱業権者に対して、その責任はある程度持つことになりますか。
  50. 新井眞一

    新井政府委員 先生よく御承知のように、石炭鉱業合理化のためにスクラップ・ダウンをいたします場合に、国で金を出しまして、それを廃棄させて、そうして高能率炭鉱に集約的に生産をやらしていくわけでございます。したがいまして、そういうことを認めますと、片一方で買う、片一方で掘さくをしている。そしてまた買うという事態になります。初めに買います際に、これは将来の日本エネルギーを背負う石炭産業の中で、高能率、高賃金のところにやらすという判断が前提になりまして、これを買い上げるなり鉱区整理をやっておるわけであります。したがって、単なる私企業の立場から、これをもう一ぺんやったほうが得である、損であるというような考え方でやるというものではございませんで、あるいはそういう場面で私企業にとりましての損得の問題はあまり考えず、国の政策として合理化をやっておる段階では、それは認めるべきではない、かように考えられるわけでございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 そうするとこれは行政指導で認めないことになるのですか、それとも鉱業法目的鉱物の増減という五十一条の二項がありますね。これは別に合理化事業団の鉱区でどうだこうだということを具体的に何も規定はしてないわけですね。これは採掘権者は当然増減を出願することができるわけですね。そうすると何かそこにちょっとおかしなことが出てくるというのは、いま申しましたように合理化事業団の持っておる鉱区であるならば、行政で全く許さぬ、高能率、高賃金でやるんだからと言うておるくせに、最前申しますように、一方においては第一会社がやめてしまって、そうしてやめた鉱区は二つか三つに分けて、半分は売りに出し、半分は第二会社にやるというようなことは許すんですからね。大臣は、そういう場合は行政でできるだけ許さぬようにしますと言ったのだけれども、いまほど厳重なものではない。特殊な場合はやむを得ないということなんでしょう。何か、これはやはりそこらの重要な鉱区の相当の部分を——いま一番大きな鉱業権者というのは合理化事業団ですね。しかもニュー・スクラップでやったものまでだめだということになれば、いわばこれは合理化事業団の鉱区と同じような、類似の形態をとっておるわけです。そうしますと、大きな鉱区に対してはだめだ、それは厳重にだめだということになれば、私の前に言ったようなことも行政で厳重にだめだということにしないと、意味がなくなってしまう。そこなんです、私の言いたいのは。前者については、鉱業権者が第二会社に譲ってまた掘らせるというようなことについては目をつぶる、しかし、合理化事業団の持っておる鉱区については全然だめです、こういうように、同じ鉱業権についても行政の運営というものに濃淡があるということはやはり問題があるのです。
  52. 新井眞一

    新井政府委員 ただいま合理化事業団の保有しております鉱区についてそういう問題が起こった場合は、鉱業法鉱業権者の承諾を得なければ申請はできなくなっておりますので、合理化事業団としては承諾をいたしません。それからあとの新方式によります場合は、先ほど申しましたように、合理化臨時措置法によりまして、鉱業法には書いてない石炭の特別の対策といたしまして、三十五条によってそういった制限を加えておるという状況であります。
  53. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、基本法である鉱業法の原則というものを、いまの合理化法でその点だけは抑制をしておる、こういう形ですね。いわばこれは全く政策論的にそういうところは取り扱っておるんだ、こういうことですね。そうしますと、これは非常に石炭情勢がよくなってきた、また、何か戦争でも起こって石油の輸入がない、石炭を掘らなければならぬというようなときは、これはもう許すことになる可能性もあるわけですね。
  54. 加藤悌次

    加藤政府委員 石炭局長から御答弁申し上げるのがあるいはいいかもしれませんが、要するに、現在の時点におきまして、石炭合理化を促進するというために、鉱業法の特則としてのいろいろの規定合理化促進法の中にあるわけでございまして、その情勢が全然変わってくるといった場合には、当然この合理化促進法の規定改正なり——これも限時法でございますので、そのときの状況によってその特別法改正するということになるのではなかろうかと存じます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 次は、三十五条の二ですが、鉱物の試掘または採掘が、文化財とか治山治水、保健衛生、こういうようなものに該当して公共の福祉に反するというときには、鉱業権の取り消しができることになっておるわけですね。この場合に、国は一体どういう方法で鉱業権者に補償することになるのですか。たとえば、われわれのところで言えば、石灰石のきれいな鐘乳洞があった。そこの石炭を掘ろうとする。これは重要な天然記念物だ、これを掘ってもらっては困るんだという問題があるわけです。あるいは、セメントをつくるために、石灰石という鉱物をどんどんとっていく。そうすると、そこに、小倉の平尾台というところのように、石灰石の露頭が羊群のように非常に景観を呈しておる。これは絶対にとってもらいたくない、こういう場合が出てくるわけです。いわば天然記念物とか、いわゆる文化財、それから治山治水、保健衛生上、そういうものと鉱物採掘、採取とが競合した場合に、通産局長がその鉱業権の停止なり、その鉱区の減少の処分をやるわけでしょう。これは五十三条でやるわけですね。その場合に、当然補償の問題が出てくることになるわけですね。そうしないと、鉱業権者は、経理的な能力なり技術的な能力審査してもらってやったのだから、簡単に局長そんなことを言ったって困る、こういう対立関係が出てくるわけです。この取り扱いをひとつ具体的に御説明を願いたい。
  56. 加藤悌次

    加藤政府委員 ただいま御指摘のように、五十三条の二の規定には、公益上の必要に基づきまして、鉱業権を取り消した場合には、国がその損失を補償しなければいけないという規定があるわけでございますが、運用についての私どもの考え方といたしまして、鉱業権の取り消しと申しますと、これは財産権に対する非常に重要な制限と相なるわけでございまして、最も慎重に対処しなければいけないという基本的な考え方であります。したがいまして、取り消しまでに至らなくても、施業の段階において、いろいろ制限を課するということで間に合うという場合には、できるだけそういう方法によって、二つの利益が共存していけるという方向でいままでも指導を行なっておるわけでございます。それでいよいよ鉱業権の取り消しなり、あるいは一部の減鉱をやらなければいけないという場合には、当然それによって損害が起こるわけであります。その損害を金銭で評価いたしまして国で補償する、こういう考え方であるわけであります。その損害の中身は、法文上は「通常生ずべき損失」と書いておりまして、この場合には、もしその鉱業権が取り消しなり減区されなければ得たであろう利益、これも解釈としては当然含まれると考えておるわけであります。
  57. 滝井義高

    滝井委員 その場合に、取り消しその他の処分をしようとするときは、一応地方鉱業審査会の意見を聞くことになるわけですね。しかし国が補償をする場合には、これは一体何かどこかで基準をおつくりになるのですか。それともやっぱり地方鉱業審査会の意見も聞くことになるのですか。それとも行政官独自の立場で判断をして補償をすることになるわけですか。
  58. 加藤悌次

    加藤政府委員 地方鉱業審査会というのは、いろいろ重要事項について通産局長の諮問機関ということで、その権限に属してあるもの以外にもいろいろこれを活用するということは考えられるわけでございまして、実はいままで公益害で取り消した例はないわけでございますが、今後そういった場合がかなり出てくるということでございますれば、この審査会をそういった考え方で活用するということも当然考えていいと思うわけでございます。
  59. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この鉱業の実施が、五十三条にある「著しく公共の福祉に反するようになったと認めるとき」ここが大事なんですね。この著しく公共の福祉に反するようになったときという認定が、通産局長によって認められて、初めて今度これが地方鉱業審査会にかかるわけです。そこでこの認定の発案権というものが通産局長だけにあるわけです。これは文化財なり、そういう認定を要請しなければならない立場にあるそれぞれの地方公共団体があるわけですね。この地方公共団体の長も、その認定の発案権があるようにするか、あるいは通産局長は自由にその意見を受け入れるような形を、私は法文の中に入れる必要があると思う。どうしてかというと、通産局長は御承知のとおり、立場としては石炭鉱業開発を推進し、あるいはその他の鉱物開発を推進する立場にあるわけです。監督官庁でもあるが、同時にそういう事業を奨励しなければならぬ立場にある。ところが奨励しなければならぬ立場にある人が、著しく公共の福祉に反するということで、その目的鉱物の減少の処分をしたり、鉱業権の取り消しをするというようなことは、場合によってはちょっと言いにくい場面が出てくると思う。そうすると、そういう関係市町村の代表にも、著しく公共の福祉に反するという認定を与えることができなければ、たとえばその意見によってでもやるとかいうような、何か条文を一項入れる必要があると思う。その点に対する御意見もお聞かせ願いたい。
  60. 加藤悌次

    加藤政府委員 そういう御意見も、実は審議会審議をいたしましたときにあったわけでございますが、考え方といたしまして、現に北九州市あたりでそういう問題が起きておるわけでございますが、実際問題としてそういった規定法律的に置かなくても、通産局長は当然そういった声に応じまして、真剣にこの五十三条を発動するか、あるいは五十三条の発動までに至りませんでしても、先ほど申し上げましたように、施業の面の制限ということを行なうことができるわけでございますので、そういった面から、はっきりそういう条文を置かなかったような次第でございます。この五十三条に該当するかどうかという場合をいろいろ考えてまいりますと、どうも、むしろ当事者の利害が相反するといったような場面が非常に多いのではなかろうか。したがいまして、単に当事者の利害の衝突した場合に、この公益害という規定によって、鉱業権を一方的に取り消すということになると、これは財産権に対する重大なる侵害になりますので、私どもといたしましても、あくまでもそういった問題は当事者同士の話し合いにまかせる。いろいろ新しい規定を今度も整備をいたしたわけでございますが、そういった条文の活用によって、当事者限りで話し合いをしていただく。もしそれがうまくいかないような場合には、裁定等の新しい制度も設けまして、そういう制度を活用していただく。できるだけ五十三条に基づきますところの、鉱業権に対する重大な制限である取り消しというものは慎重にやる必要があるのではなかろうか、こういうふうな感じでおるわけでございます。
  61. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、地元市町村長等の意見というものを、十分通産局長が入れて運営をしていくということになりますと、地方鉱業審査会の中には、こういう知事なり市町村代表というものは入ることになるわけですか。
  62. 加藤悌次

    加藤政府委員 お説のとおりでございます。そういうふうに考えております。
  63. 滝井義高

    滝井委員 問題の多いような地域の市町村長なり知事というものは、ぜひひとつ地方鉱業審査会に入れて、その意見を十分聞いて、公共の福祉に著しく反するやいなやの認定等について、万遺憾なきを期してもらいたいと思います。  そうしますと、いまのように、もし鉱区の取り消しその他を行なった場合に、一体その鉱害はだれが責任を持ってやることになるのですか。
  64. 加藤悌次

    加藤政府委員 取り消しによって鉱業権が消滅するわけでございますが、その消滅をしたときの鉱業権者が責任を持つことに法律上なっておるわけであります。
  65. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは石炭でいえば当然臨鉱法にかかることになるわけですね。
  66. 新井眞一

    新井政府委員 さようでございます。
  67. 滝井義高

    滝井委員 次は、この五十五条関係ですが、同じくこの鉱業権を取り消す場合でも、鉱区外に侵掘をした場合は、一体これは臨鉱法でやることになるのですか。
  68. 新井眞一

    新井政府委員 鉱業法上の鉱害に関するもののうち、御承知のように国土保全の関係上復旧を要するものを特定いたしまして、その物件について臨鉱のシステムで処理をしていくということでございます。
  69. 滝井義高

    滝井委員 ちょっとわかりかねたのですが、そうすると、この五十五条の「第七条の規定に違反して鉱区外に侵掘し、又は鉱区内において鉱業権目的となっていない鉱物の試掘若しくは採掘をしたとき。」は取り消しますね。この損害はいままでの概念でいえば、これは民事の関係で、一切鉱害として取り扱わなかった。全部民事関係でおやりなさいということで、臨鉱法の適用その他もやらなかったわけです。それで、今度の鉱業法改正においてもそういう概念でいくのか、それとも侵掘の場合も、鉱業権者が隣の鉱区を掘ったのですから、あるいは許された以外の目的鉱物を取ったのですから、これは鉱業法上の救済をやってくれるのかどうか、こういうことなんです。
  70. 加藤悌次

    加藤政府委員 鉱業権者が自分の鉱区内で許可を受けた鉱物以外の採掘をした場合、これは解釈はいろいろできるわけでございますが、要するに、権限外の行為によって採掘した、これは広くいうと盗掘ということになりますので、今度新しく盗掘をやったような場合に起きた鉱害については、当該盗掘をした人に責任があるということをはっきり民法の特例として鉱業法の中で規定をいたしたわけであります。
  71. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、これは臨鉱法の対象にならないわけですよ。いまのそれで間違いないですね、たとえば石炭に限った場合は。
  72. 新井眞一

    新井政府委員 先ほど申し上げましたように、鉱業法上の鉱害であって、そうして農地とか家屋とか、こういうものについては臨鉱法の適用をいたしておったわけでございますが、従来鉱業法上の鉱害ではなかったが、今度の改正によりまして、鉱業法上も鉱害であるということで、いま鉱山局長のお述べになりましたとおりでございますので、それを受けまして、私どものほうも一定物件につきましては臨鉱で考えておるシステムでやるということに変わってまいることになるわけでございます。
  73. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、鉱山局長の答弁とは少しニュアンスが違ってきたんですね。前では、その盗掘した人の責任でやる。これは責任でやるという言い方が、御存じのように、臨鉱法では補助金がつくものですから、臨鉱法でやるという解釈になるわけです、いまの石炭局長の答弁でいえば。そうすると、これは鉱業権者の責任でやる、そういう意味にとりましょう。それで解釈としては鉱業権者の責任でやるが、しかし法律的にいうと、これは臨鉱法の対象になる、こう解釈して差しつかえないですね。
  74. 新井眞一

    新井政府委員 御承知のように、臨鉱法の中にも、有資力で金のあるものとか、あるいは無資力で金のないものの処理がございますが、どちらの場合にいたしましても、いままでは鉱業法上の鉱害という前提の中で家とか農地とかやっておった。今度は盗掘でも鉱業法上の鉱害ということになりますので、したがってそういう場合にも臨鉱のシステムに乗せる。金があれば有資力でやる、金がなければ無資力でやる、こういうことになります。
  75. 滝井義高

    滝井委員 その点は非常に前進しておりますからけっこうであります。  次は、少し急ぎまして、五十五条の四の場合ですね。施業案によらないで鉱業をやるという場合、この場合は一体どういう形になりますか。いまの関係はやはりこれは臨鉱法の対象になるのですか。
  76. 新井眞一

    新井政府委員 盗掘と申しますのは、いろいろなケースがあろうかと思いますが、施業案によらないで施業をやることは鉱業法違反でございますので、従来はそれは鉱業法許可になっておらない。先ほど申しましたように、そうなりますので、先ほど御答弁申し上げたのと同じ扱いに相なるわけであります。
  77. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、それも臨鉱法の対象になる、こういうことですね。
  78. 加藤悌次

    加藤政府委員 ちょっとニュアンスが違いますので、私多少訂正させていただきたいと思います。  施業案違反の鉱業をやったということは、鉱業のやり方についての方法が違反したということでございまして、その違反によってたまたま石炭を掘採いたしまして、それが鉱害の原因になったという場合は、施業案違反には違いございませんけれども、鉱害としては鉱業法に基づく鉱業権の行使による鉱害である、こういう解釈に相なると思います。
  79. 滝井義高

    滝井委員 ちょっと専門的なことになるのでお教えをいただきたいのですが、鉱区の認定を受けますね。そしていよいよ具体的な仕事に入ります。そこで施業案の認可を受けるわけです。そうしますと、その施業案というのは、一体その鉱区全体の採掘の計画を具体的には出すことになるのか、それともとりあえずこれから一年なら一年、二年なら二年はこういう計画でいきます、そしてまた今度は一年くらいしたら、第二年目、三年目はこうなりますということで、そういう実施の段階に応じて年次的な計画を出すことになるのか、それともこれからこの鉱区を十カ年間掘るというので十カ年分のものを出すことになるのか、そこらをちょっと先に教えていただきたいと思います。
  80. 加藤悌次

    加藤政府委員 従前鉱業法本来の考え方からいきますと、許可を受けました鉱区を今後最終的にどういう方法、スケジュールで開発するかということを見たいというのが施業案でございます。ところが、非常に広い鉱区では無炭層の地域も当然ございますので、それはやはり状況が判明するに従ってだんだんと計画が具体化していくということでございますので、従前鉱業法の解釈としては、その場合は施業案の変更の認可を受ける、こういうことになっております。そういう実情にございますので、今度の改正では五年ごとに施業案を見直しするということでございまして、少なくとも五年間についてはその間における開発計画を出していただく、もし途中で変更いたします場合は、施業案の変更認可を受ける、こういう考え方でおるわけでございます。
  81. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、五年ごとに施業案——具体的な採掘なり鉱物の採取の計画を出すということになれば、当然施業案によらないで鉱業を行なったということの認定が非常に困難になる可能性があるわけです。これはどこの炭鉱に例をとっても、五カ年間の詳細な、主要坑道から片の状態を、なかなかきちっとはいかないわけです。そうしますと、もう大ざっぱな案を出しておって、それから先はどんどん掘っていく、こういう形になるわけです。ここが、一体おれのうちの下はいつ掘ったのかということがわかってこないのです。わからないことになる。通産局もここはわからない。そこで私はこの問題と関連して、あとでも出ますが、言いたいのは、やはりこういう施業案が出たら、通産局の炭政課ですか、そういう技術の専門家が各山に入って、そして具体的な、施業案どおりに実施されておるかどうか、施業案に沿った採掘が行なわれておるかどうかをやはり国みずからが絶えず確認をして、そして地図を引いていく必要があるのです。それがなされていないところに問題があるのです。これがなされていないところに、鉱害の認定なり、それから三池に起こったような問題が出てくるのです。一体どこをどういうぐあいに掘ったんだ、どういうぐあいに炭車を入れて炭をあげておったのだということが、三井の場合だって、一々その専門の職員に聞いても、千差万別です。説明のしかたがみんな違うのです。役所に行けば役所で違う。だから、そういう形では、ああいうガス爆発が起こったときも、その原因の探究がわからぬようになる。役人の言い分と組合員の言い分が違う、第一労組と第二労組の言い分が違う、経営者と言い分が違うということでは困るのです。こういう点が私は、いま言うように、もう少し施業案というものをきちっとさせて、そうしてそのみかじめをつけたならば、単に事業主から出させただけで全部めくら判を押すのではなくて、やはり出たならば鉱内に入ってこれはきちっと施業案の確認をやる。これさえやっておけば、日常のどこにどういう鉱害が起こった、破断角がどうだ、鉱害の影響がどうだということがすぐわかってくるのです。それが全部炭鉱の資料によらなければわからないので、通産局に対する不信感が起こってくる。施業案によらないで鉱業を行なった場合には取り消しになるというけれども、具体的にこういうことは過去においてほとんどなかったのではないかと思うのです。過去にも施業案によらないで鉱業を行なったということがあったのです。あったのだけれども、いわば盗掘ということで片づけた。私は具体的にこういうことでやられた例は非常に少ないのではないかという感じがするのです。どうですか、ここらあたりの実績をひとつあなた方みずからが施業案をきちっと確かめて、採掘状態等はみずから地図に施業案に沿ってかき込んでいく、こういう態勢がとれる形が石炭局なり鉱山局にあるのかどうか。
  82. 加藤悌次

    加藤政府委員 法律の面での施業案監督につきましては、保安に関する事項につきまして保安局長が責任を持って監督をする、それ以外の問題につきましては通産局長が監督をするということになっておりまして、その両方の面から通産局の職員が実施に山の中へ入りまして監督をいたすかっこうになっておるわけであります。そういった実際の監督の面から、はたして施業案どおりにやっているかどうかということの違反が判明した場合には、施業案違反で取り消しをするということでございまして、取り消しの件数はかなりございます。昭和三十七年度だけでございますが、取り消しは一件でございますが、その他の始末書並びに注意、勧告というような行政上の指導を含めまして、三十七年度中で大体三百九件くらいの処理をいたしております。  それからもう一つ、施業案どおり仕事をやっているかどうかということをチェックするために今度の改正法で、百条の十にございますが、常時施業の実績図を鉱業事務所に備えておく、それから毎年二月末までに前年中の事業の実際の状況を記載しました施業の報告書、それから施業の実績図、これを通産局長に提出しなければいけない、こういう新しい制度ができてまいりまして、この面からも十分チェックをいたす必要があるというふうに考えておるわけでございます。
  83. 滝井義高

    滝井委員 私の言いたいのは、その百条の十で、鉱業簿及び施業実績図等を必ず事務所に備えつけると同時に、二月末までに、前年中にその事業を行なったときはその行なった状態を報告する、その報告だけでは足らないというのですよ。その報告が出たならば、施業の実績図と同じとおりになっておるかどうかを、鉱内に入り、あるいは採鉱の現場に行ってきちっと見て、そして地図を通産局みずからが独自のものを備えつける必要がある、こういうことを言っているわけです。これが完全に履行せられていないから鉱害問題をきちっときめることに手間どるし、自信が持てないし、同時に災害が起こった場合に、その原因その他についてなかなかすぐに結論が下しにくい、こういうことなのです。だから、ここには鉱業権者に義務的にこうやらせるということは書いてある。けれども、みずから積極的に役所が、監督官庁がやることがない。それを私はやるべきだということなのです。特にいまのように莫大な金を石炭産業に注ぎ込んでいる合理化事業団に金をどんどん貸しておるわけです。たいした担保もないのに貸しておる。そして合理化事業団は青息吐息という状態ですからね。あるいは探鉱その他についても、探鉱の事業団がやってやるような制度も出てきておるわけですから、そうなればますます積極的に出ていって、役所が現場だけはきちっと見ておく、何も監視する必要はないのですから、現場だけは見ておく必要があるのじゃないか、そうして見た実績を地図の上に、その地図が正しいかどうかをきちっと整備をしておく、これだけの配慮をしてもらわないと困る、こういうことなのです。そういうことができる態勢がありますか。
  84. 加藤悌次

    加藤政府委員 先ほどお答え申し上げましたように、これは通産局の現場の監督体制の問題になるかと思います。現在まで、先ほど申し上げましたように三十七年度を例にとりますと、施業案の違反の摘発と申しますか、三百九件ばかりやっておるわけでございまして、これが違反の一〇〇%全部摘発できておるかどうかということはもちろん問題になるかと思いますが、件数としましては先ほど申しましたような程度の件数をやっておりまして、かなりの監督を現場ではいたしておるというふうに存じておるわけでございます。
  85. 滝井義高

    滝井委員 現場ではいたしておるつもりでございますということでなくて、そういうことが、われわれの経験からいうと、通産局の末端で働いている事務当局がなかなか確信がないのです。すべて資料が炭鉱のものによって行なわれておるという、こういう実例があるわけですから、やはりひとつ責任を持ってやるような体制を予算的にもぜひ講じていただきたいと思います。  それからこの八十八条関係で、ちょっともう一ぺん元に返るわけですが、合理化事業団の鉱区の問題との関係ですが、鉱区の調整という第四章のもろもろの規定合理化事業団には適用しないと、さいぜんの答弁から考えていいですね。
  86. 新井眞一

    新井政府委員 さようでございます。
  87. 滝井義高

    滝井委員 第四章の鉱区の調整は合理化事業団には適用しない、確認をいたしました。  次は施業案です。この施業案というものは一種の財産権である。したがってこれを公開しないことになっておるわけなんです。われわれ個人に施業案を見せてくれということは、これはいまの段階では、資本主義の社会ですからなかなか言えないと思うのです。しかし住民に対して重要な責任を持っている地方自治団体の長に対しては、施業案というものは、私は見せてくれと言ったら見せる必要があるのではないかと思うのです。なぜならば、合理化事業団が旧方式で買い上げをする場合には市町村長の判が要るのです。そうすると、市町村長は判を押す場合にはどういう形で判を押すかというと、私に関係のある公共の建物とか道路という物件は、これとこれとこれとが鉱害がございます、他のものについては鉱害がございません、したがって、この鉱害物件の確認を鉱業権者がしていただけるならば、私はこの山が買い上げられることについては異議がございませんという、この一筆に判を押してやるわけです。これで最終的には締めくくっていよいよ買い上げになるわけです。ところが、市町村長がその判をつくためには、これは住民に対して重大な責任を負うわけです。市町村長が判をついたからこの山が買い上げられたじゃないか、ところが買い上げてみたらわれわれは何もしてもらえぬじゃないか、だから市町村長が判をついたのはけしからぬということになるわけです。ところが市町村長が判をつくについては、やっぱり施業案を見て、一体どの程度にまで鉱害の影響線が及んでおるのか、鉱物採掘の被害が及んでいるのかということをやっぱり施業案を見て確かめてみなければならぬわけです。ところがそれがないわけです。いままでもないし、今度もちょっと私が見たところでは、不勉強だからかもしれませんけれども、見当たらぬわけですね。そうすると、まず関係地方団体の長には施業案の内部を見せる必要がある。これはいままでは財産権としてがんとして見せておりません。福岡通産局等においては見せていないのです。したがって、これは非常に紛争になって、調停にいっても疑いを持たれているわけです。これに対する見解をお聞かせ願いたい。
  88. 加藤悌次

    加藤政府委員 御指摘のとおり、施業案は個人の秘密に属する事項でございまして、これは法律上公開するという規定はないわけでございます。ただ先生指摘鉱害問題にからみまして、地上の権益者は自分の地下でどういう仕事がやられておるかということが非常に心配になるのは当然のことでございます。そういった面から、地下の仕事状況等を十分知る必要があるということもございますので、今度の改正法では新しい制度といたしまして、まず第一には、鉱業権設定があった場合には、これを地元の市町村長に通知をいたしまして、関係鉱区の資料を送付するというふうなことにいたしております。それから具体的な、しかもどういうふうな方法で工事が行なわれておるかという問題を、鉱害の予防あるいは鉱害の紛争の処理のために必要であるというふうな場合には、単に地方公共団体の長だけではなくて、関係者が直接当該鉱業権者に対しまして、鉱業の実施に関する事項についての説明を求める規定を新しく百八十七条に設けまして、正当な理由がなければ鉱業権者はそれを拒めないというふうな規定を置いてございます。さらにそれだけでも不十分な場合は、通産局長に対して説明を求める、そういう規定が第二項にあるわけでございます。  それから御指摘鉱害処理問題につきまして一番問題になるのは、鉱害の原因だとかあるいは鉱害の範囲、これがなかなかつかみにくいわけでございますので、そういった問題を平素から十分に把握しておく必要があるという趣旨から、これは百二十九条でございますが、鉱害に関する資料として、鉱業権者にそういう調査を命令できる、こういう規定が百二十九条に新しく置かれたような次第でございます。こういった新しい制度をできるだけ活用いたしまして困難な鉱害問題処理に資したい、こういう考え方でおるわけでございます。
  89. 滝井義高

    滝井委員 施業案が個人の秘密に属する、しかしながら今度の改正では鉱業権者に、あるいは祖鉱権者に、鉱業実施に関する事項の説明あるいは通産局長にもそういう説明を求めることができる、それから鉱害に関する資料を備えつけるというようなことがございますけれども、こういう規定というものは精神規定訓示規定になりやすいわけです。というのは、それは両者の間に利害が対立している問題なんです。したがってこういうことをやっても、御存じのとおり、私がさいぜん言うように、通産局長自身が、ベースとしては、いままでのみんなの観念は石炭鉱業権者側のベースに六分くらい足を突っ込んでおるという、監督官庁がむしろその事業を奨励しなければならぬという立場にあるから、こういう概念があるわけです。そこで市町村長としては判こを押すような場合には、みずからの目でその採掘の地図を見るということが非常に必要になってくるわけです。したがってこういう鉱業権者説明をする場合に、このとおり、地図はこうで、こう掘っておりますということで、ざっくばらんに見せてくれた鉱業権者は寡聞にして聞いたことがないわけです。それから通産局長のところに行っても、地図はこのとおり、こういうぐあいに掘ってあるということは絶対に見せません。それは説明だけです。したがって市町村長には個人の秘密といえども、自治体の長なんですから、住民のいわば運命をになっている長なんですから、その長にはこれを見せてやらないことには、さいぜん言うたように、鉱業の実施が公共の福祉に著しく反するやいなやという認定というようなものを通産局長が一方的にやるということについて、その認定権を与えてくださいといったら、それはどうもぐあいが悪いという御意見、そこで地方鉱業審査会までこっちがおりて、それには入れるという御答弁まできているわけです。ところが、そこで個人の秘密のものを公開するかといったら、なかなか公開しないのです。やはり説明程度に終わる。そうすると疑心暗鬼が生ずるわけです。だから私がさいぜん言うように、あなたのほうでみずから、出た施業案に関連をする採掘の地図を見せてもらうことはもちろんだが、その前に、前段としてあなたのほうの地図を、きちっと書いたものを市町村長が見せてくれ、そうして市町村長は職務に関連して知った秘密は守る、こういう形さえしておいてもらえば、いいのじゃないかと思うのです。これくらいの権限は自治体の長にはできていいと私は思うのです。いまの単に説明説明で片づけるだけでは、この点はちょっと納得がいきかねると思うのです。これはぜひひとつ、少なくとも市町村長には見せてもらえる形をつくってもらいたいと思うのです。説明を聞いたけれどもなお納得がいかないというような場合には、その施業案を見せる、市町村長に限って見せるというくらいの規定は置いてもらわなければいかぬと思うのです。
  90. 加藤悌次

    加藤政府委員 私自身も技術者でありませんから詳しいことを知りませんが、現行の坑内実測図と申しますか、そういうものを見たことがあるのでございますが、どうもしろうとにはあまり複雑過ぎてわかりにくいという感じが実はいたすわけでございます。それで説明の解釈の問題でございますが、特に通産局長が説明をいたします場合には、単なる口頭だけの説明ではなくて、参考資料として、この辺はこういうふうになっておるという程度のことは、この条文によりまして当然やられるし、またやる必要があるのじゃなかろうか、こういうふうに考えるわけでございまして、施業案そのものを他人に見せるということにつきましては、先ほど申し上げましたような関係もございまして、この法律ではそういう規定はいたしたくないというのが私たちの考え方でございます。
  91. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、ほんとうはここらは修正を要するところだと私は思いますが、これはどうせ小委員会になるでしょうから、少なくとも市町村長だけは縦覧ができる形をぜひとっていただきたいと思うのですよ。通産局長がオールマイティではないわけです。幾ぶん現実においては通産局長は石炭鉱業権者の側に足が入っているという疑念を持たれておる。やはりわが市町村長がこの目で見てこうなんだと言えば、これはもう通産局長が言うよりかだいぶ違うわけです。そこできょうは時間がないそうですからここまでにして、なお施業案の問題は次回からさしてもらいます。ちょうど三分の一終わりましたから、あと二分の二あります。      ————◇—————
  92. 二階堂進

    二階堂委員長 この際、連合審査会開会の件についておはかりいたします。ただいま議題となっております本案について、石炭対策特別委員会より連合審査会開会の申し入れがあります。この申し入れを受諾することとし、開会の日時等に関しましては委員長に御一任願うことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  93. 二階堂進

    二階堂委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次会は、来たる十四日火曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十三分散会