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1964-03-11 第46回国会 衆議院 商工委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十一日(水曜日)    午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小川 平二君 理事 小平 久雄君  理事 中川 俊思君 理事 早稻田柳右エ門君    理事 板川 正吾君 理事 久保田 豊君    理事 中村 重光君       内田 常雄君    浦野 幸男君       小笠 公韶君    小沢 辰男君       岡崎 英城君    海部 俊樹君       田中 正巳君    田中 六助君       中村 幸八君    野見山清造君       長谷川四郎君    村上  勇君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    島口重次郎君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君   米内山義一郎君       麻生 良方君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君  出席政府委員         通商産業政務次         官       田中 榮一君         中小企業庁長官 中野 正一君  委員外出席者         国民金融公庫理         事       油谷 精夫君         中小企業信用保         険公庫理事   佐々木彰一君         中小企業信用保         険公庫理事   菅 博太郎君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 三月十一日  委員楯次郎辞任につき、その補欠として川  崎寛治君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川崎寛治辞任につき、その補欠として楯  兼次郎君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法  律案内閣提出第七二号)  中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第七三号)  中小企業指導法の一部を改正する法律案内閣  提出第七四号)  中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案  (内閣提出第七五号)  中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫  法の一部を改正する法律案内閣提出第八七  号)  商工組合中央金庫法の一部を改正する法律案(  内閣提出第八八号)      ————◇—————
  2. 二階堂進

    ○二階堂委員長 これより会議を開きます。  まず、内閣提出中小企業近代化資金助成法の一部を改正する法律案中小企業金融公庫法の一部を改正する法律案中小企業指導法の一部を改正する法律案中小企業近代化促進法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法及び中小企業信用保険公庫法の一部を改正する法律案並びに商工組合中央会庫法の一部を改正する法律案、以上六法案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許可いたします。桜井茂尚君。
  3. 桜井茂尚

    桜井委員 基本的な点についてお伺いいたしますが、いろいろな方面にわたりますので、質問いたしました点についてお答え願って、あまりそれないような御答弁をお願いいたしたいと思います。  まず第一に、池田内閣高度成長政策の進展の中で、大企業に対して中小企業が立ちおくれているので、中小企業近代化を革新的に実施することが政府方針である、こう考えてよろしいでございましょうか。
  4. 福田一

    福田(一)国務大臣 さようでございます。
  5. 桜井茂尚

    桜井委員 そこで、開放経済体制へ移行するに際し、経済国際競争力を培養し、輸出を増加し、輸入外国製品に勝つことが貿易の体制的赤字を解消するためにも絶対必要なことだと考えてよろしゅうございますか。
  6. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりでございます。
  7. 桜井茂尚

    桜井委員 そこで、石油のような装置産業は別といたしましても、自動車のような組み立て産業や、その他の機械産業等においては下請企業に対する依存度が非常に高く、そしていまでは下請企業近代化合理化しなければ品質の改良もコストの低減も困難で、下請企業近代化のおくれが大企業国際競争力強化の大きな制約要因になってきた。したがって、従来は大企業への設備投資が先行してまいりましたが、今後は中小企業への設備投資や、これの自己資本充実等、要するに中小企業に実力をつけることが必要になった。だから大企業発展のためにも中小企業近代化が必要であり、両者ともに共存し得るバランスのとれた経済構造に持っていくことが政策目標である。こう考えてよろしゅうございますか。
  8. 福田一

    福田(一)国務大臣 大企業中小企業がどちらが中心ということじゃなく、相関的に一体として、いまお話のあるような姿に持っていきたいというのがわれわれの望むところでございます。
  9. 桜井茂尚

    桜井委員 さらに物価の安定のために、国民生活関係深い商品を生産する中小企業、たとえば食料品工業等近代化を促進し、かつ流通機構が立ちおくれているので、これが合理化を推し進める政策をとり行なう、こう考えてよろしゅうございますか。
  10. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりでございます。
  11. 桜井茂尚

    桜井委員 そして政府は、中小企業近代化が最も効率的かつ最も望ましい姿、すなわちバランスのとれた近代的、合理的経済体制ができるよう各種施策を重点的に実施すると考えてよろしゅうございますか。
  12. 福田一

    福田(一)国務大臣 その方針で処置をいたしております。
  13. 桜井茂尚

    桜井委員 そういたしますと、たとえば機械工業などをとってみますと、わが国は中小企業が多く、しかも多品目少量生産傾向が強い。そして常に過当競争を行なってまいりました。だから親企業や買い手に対して弱く、製品価格の引き下げを低賃金でカバーするようなことが今日まで行なわれてまいりました。したがって資本蓄積も少なく、設備投資も十分に行なわれていないような現状で、労働力も不足になってきた。しかも品質のより高度化を要求されている。そこで近代化合理化が必要であり、少品目大量生産生産性を向上し、コストを引き下げなければならない。そのためには現在の中小企業を再編成し、製造品日別に実力ある会社を育成する必要がある。そのために適当な会社を選んで政府施策を集中するとともに、市中金融機関協力を求めるということにならざるを得ないのでありますが、いかがなものでございましょう。
  14. 福田一

    福田(一)国務大臣 その段階までまいりますと問題が起こり得ると思うのであります。お説のとおり日本中小企業関係で最も機械産業というのが高度の成長を遂げようとする段階にいまきております。日本重化学工業に力を入れなければ輸出産業が伸びませんし、事実また日本産業高度化重化学工業からいま始まりつつあります。そうすると、その下に連なっております下請関係のいわゆる中小企業というものが、いまあなたのお話しになったような非常に苦労な立場にあることは事実でございます。そういうときに、そのうちでの優秀なもの一つを選ぶとか、あるいはほかに一つのものをつくって、そうしてそこへやらせる、仕事を全部預けるとか、あるいはそこに重点を置いてやっていくというような姿をわれわれとしては勧奨するわけにはまいりません。やはりその間、いま現実の問題としてそういうことはあまりしておらないと思いますが、中小企業協業化するなり共同化するなりして近代化合理化施策を進める、親企業のほうもそういうような体制に持っていって、そしてできるだけこれにまた親企業からも協力をしていく、こういう姿で共存の姿をあらわすようにしたい。そういう形においてやっていくことについては、できるだけ政府としても協力をしてまいりたい、こういう考え方でございます。
  15. 桜井茂尚

    桜井委員 おっしゃることは、私の申し上げたことと違っていないはずなんです。要するに多品目少量生産ではどうにもならない。少品目大量生産、そういう形に持っていかなければならぬ、そのためには適当な企業を選んで、それを保護育成するなり、あるいは若干下のものであるならばそれを協業化するなり、企業合同するなり、そういうような形でもって、やはりいずれにしても過当競争のなくなるようにしなければならぬ、こう思うのですが、どうでありますか。
  16. 福田一

    福田(一)国務大臣 お説のとおりでありますれば賛成でございます。
  17. 桜井茂尚

    桜井委員 いずれにしましても、そうした場合の共同化協業化あるいは合同といたしましても、私の考えでは相当やはり中小企業上層部面にならざるを得ない。現在中小企業の中で発展しておりますのは、やはり雇用者が二百人から三百人、そういうところが発展しておるのであって、五十人以下というところは漸次衰微方向をたどっているというのが現状であります。したがって、たとえば小さなところでも、協業化あるいは合同といいましても、資本力に限界がございますから、団地その他をつくりましても、やはりある程度実力あるものが集まるということでなければ、うまいぐあいにみんなのバランスがとれないという結果になりますので、上層部にならざるを得ぬと思うのですが、いかがなものでございますか。
  18. 福田一

    福田(一)国務大臣 傾向としてはそういう傾向があるかもしれませんが、われわれの考え方としてはそうではなくて、小さいものも含めて、小さいものの協業化もできるという姿へ持っていきたいと考えております。
  19. 桜井茂尚

    桜井委員 その点はそういたしまして、私の考えからいけば、どうしても数社を、極論すればそれは一社にまでいってもよろしいが、数社を育てていくということにならざるを得ぬと思うのでありますが、そうした場合に、やはり選別から漏れた多数の中小企業はつぶれざるを得ないと思う。ところが、いま大臣の御説明によると、中小企業の下のほうの小さいところも救っていくのだ、こうおっしゃられております。中小企業の小さいほうも育てるのだといたしますと、マーケットは大体きまっておりますから、したがって一方では近代化を進めて整理をしていきながら、他方でもっては中小企業の弱いものも、これも育てるという形になりますと、政策に矛盾がくるのじゃなかろうか。一方で整理をして、きちんとしたかっこうの近代的なものにしよう、他方では小さなものもこれも育てていくのだ、しかしマーケット一つ、それではやはり過当競争になるじゃないか、それでは設備過剰投資にもなるんじゃなかろうか、政府施策にジレンマが生ずるのじゃないかと思うのですけれども、この点はいかがでございますか。
  20. 福田一

    福田(一)国務大臣 いまあなたの仰せになったような場合も起こることはあり得ると思うのであります。しかしわれわれが考えているのは、いわゆる需要重化学工業部門において国内的にもあるいは海外の関係でも順次これを拡大する、こういう考え方でおりまして、したがって、いわゆる多品目のものを少量やっておるような姿から、JIS規格その他を用いまして、少品目大量生産という形には持っていかなければなりません、またそうしなければ合理化はできませんけれども、しかしその場合においても、経済構造が大きくなり、輸出市場が大きくなれば、それだけやはり需要がふえてくると見なければなりません。またそういう姿に持っていってこそ日本経済が伸び得るといいますか、拡大して、拡大の過程においてなお国民生活を充実していくという道があるので、一定の需要がもうきまっておるという姿ですと、いまおっしゃったような問題は起こり得ると思うのであります。したがって、分野によっては、ものによってはそういういまあなたのおっしゃったようなことが起こり得るでありましょう。しかし私は、考え方としては、やはりぐんぐん需要を伸ばす、したがって供給も伸ばし得るという姿で順次高度化をはかっていこう、そうして小さいものもできるだけ救う姿でいくべきである、こういう考え方に立っておるわけであります。
  21. 桜井茂尚

    桜井委員 何しろ中小企業の数は非常に多いのです。製造業だけとりましても五十万越します。四人以上の製造業をとりますと二十四万あります。これほど多い製造業の中で、合理化なり共同化なり、こういうものを進めるという場合に、みんな利潤を追求して事業をしておるわけですから、それらのものが全部利害が一致するということはなかなか困難だと思うのです。したがって、それらのものの利害をある程度一致をさせるといたしましても、中小企業は昔からなかなかお互い同士は手が握りづらい、そこでその企業合同なり共同化なりを進めるということになると、金融機関なり親会社からある程度の強制といいますか、あっせんといいますか、そういう力なしにはなかなか共同化も一企業合同もできにくい、このように思いますが、いかがなものでありましょうか。
  22. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はそこに行政面のわれわれとしての任務があると思っておるのであります。すなわち、日本のいまの経済はどういう方向発展する可能性があるか、それぞれの業種について具体的に、この仕事は将来こういうふうになるでありましょう、こういう傾向です、世界的に見てもこういうふうな姿になると思います、そこであなた方がそういう姿でおるときに、三人なり五人なりの小さいものでやっておいでになっても、とてもうまくいくはずがないじゃないですか、そういうことをよく理解してもらう。そして確かに中小企業というのは小なりといえども一国一城のあるじというのが一つの魅力ではあったと思いますが、しかしもうそういうことは言っちゃいられぬじゃないですか、だからひとつできるだけこの場合には皆さん一緒になっておやりになるべきではありませんか——おやりなさいとは言えないわけであります。おやりになったほうがいいのじゃありませんかということは、これはわれわれとしても大いに理解してもらう。だからあなたのおっしゃったように業種がたくさんありますから、一つ一つについてそういうような姿が出てこなければいけない。これはなかなかたいへんな事業であります。一朝一夕にはできないでありましょう。しかし、それぞれの仕事についてそういうことをわれわれのほうでもよく勉強し、そしてその立場をよくわかってもらうようなPR運動もよくするということによって、それならばひとつじゃあ一緒にやるようにしようかという空気を、醸成するということが、この際非常に大きなわれわれとしてのなさなければならない問題であると私は考えておるのであります。
  23. 桜井茂尚

    桜井委員 そうすると、長官のほうにお伺いいたします。私は工業に限って質問いたしますが三人なり五人なりの企業共同化が非常に進んでおるという事実はございますか。
  24. 中野正一

    中野政府委員 製造業につきまして、非常な小人数でやっておる業態等につきましても、あるいは企業組合あるいは事業協同組合等をつくっておる業種も相当ございます。そういう関係からいろいろ共同仕事をやろう、場合によっては企業組合がさらに成長しまして会社になるというようなケースもございます。したがいまして協業化等実績は、過去においても相当程度実績があがっている、さらにそれを推進するように、しかしこれはいま大臣もおっしゃったように上からわれわれが押しつけるのではなくて、あくまで皆さんが自主的に考えてやられることをお手伝いをする、これが政府方針でございます。
  25. 桜井茂尚

    桜井委員 組合は昔からあったのです。だけれども、いま大臣のおっしゃっている合理化近代化の場合には、設備共同、ことに企業設備の急速度な発展に伴う合併、こういうものがなければ、個々のもの、たとえば販売なり購買なりというだけの共同ということでは、あるいは資金を借りるための共同ということでは、これは企業それ自体の近代化合理化にはなってないはずです。ですからその生産工程が本格的に近代化したというような意味におけるそういうものがあるかということを聞いているのです。
  26. 中野正一

    中野政府委員 確かに御指摘のように、製造業についてはほんとうの意味合併とか完全な形の協業化、これは極端な場合ですが、これはなかなか簡単にはいかないと思います。ただ例としまして、一番最近起こっておりますのは、これは製造業とは正確には言えませんが、クリーニング業でございます。これは……。
  27. 桜井茂尚

    桜井委員 限定して口をきいてください。製造業のことを私は言っておるのです。そのほかのことはまた別に聞きます。
  28. 中野正一

    中野政府委員 クリーニングも一種の製造業だと思いますが、こういうものは最近非常に実例が多いわけでございます。
  29. 桜井茂尚

    桜井委員 先ほどちょっと大臣に申し上げて御回答を得たのですが、物価の安定のために消費財産業近代化を進めなければならぬ。ところが、たとえば従業員四人以上の事業所数二十四万四千のうちで食料品製造業が三万八千、繊維工業繊維製品製造業が四万九千、木材木製品工業、家具、装飾品製造業が三万六千、全体の半分を占めております。これらの工業近代化はたとえば——たとえばですがパン製造業、これは私どものほうにあるのですが、船橋に大きなパン屋さんができました。パン製造業近代化をやりまして、千葉県でいいますと銚子の果てまで今度はトラックでパンをおろして歩くわけです。したがって各町々におけるところの菓子製造業者はつぶれているわけです。このようにパン製造業一つとってもそうでございますが、それ以外についても大体類似のことがあるわけです。こういうような部面近代化ということのために他の業種の零細な、弱いほうの業者人たちがつぶれていく、あるいはなくなってしまうという現実がありますが、このことはお認め願えますか。
  30. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘のように食料品製造業、これは中小企業が非常に多うございます。特に御指摘のありましたようなパン製造業等にも相当そういう技術革新の波が押し寄せておることは認めております。そういうこともございまして、われわれとしては国民生活に密接な関係のある業種をできるだけ——業種別近代化計画でございますけれども法律で言いますと、中小企業近代化促進法業種指定にあたって、そういう点も十分考慮してやっていきたいというふうに考えて、いま研究中でございます。
  31. 桜井茂尚

    桜井委員 その点はちょっと実行不可能ではないかと思いますが、私は一例をパンにとっただけで、たとえばイワシの加工であるとかサンマの加工であるとか、たくさんございますけれども、これは各町々に散らばっているのです。各町々に散らばっているのであって、しかも三人や四人の業者が十人集まってみたところで、先ほど申しました船橋なら船橋船食パンにはどうせかないっこない。ですから現実の問題としては、そういう業者は全部やめざるを得ないはずです。ですからむしろ現実には代理の販売業になっているという形で救われているわけなんです。製造業者であったものが販売業者となった、要するにセールスマンになっていった、販売労働者に転換したという形で救われているのであって、決してそれが製造業共同化だとか企業合同だとか、そういう形で救われているというものではないのです。その点をお認めになりますか。
  32. 中野正一

    中野政府委員 いま先生が御指摘になったような事態が出てきておるということは認めます。ただ私が申し上げましたのは、食料品製造業等について、たとえばみそ、しょうゆというようなものは、これは組合が相当がっちりしたものがございますから、そういうものがあれば、業者別振興計画近代化計画というものを立てて、その中で共同化等を進めていく動きが現に出ておるのでございますが、業種業態によって、確かに先生のおっしゃったように違いがあります。しかしわれわれとしてはできるだけそういう食料品製造業等も取り上げていきたいという気持ちを申し上げておるわけでございます。
  33. 桜井茂尚

    桜井委員 売りことばに買いことばみたいで、あなたがお認めくださらないからまた申し上げるのですけれども、たとえばしょうゆにいたしましても、私ども千葉県にヤマサ、ヒゲタ、野田醤油とありまして、私の親戚にも佐原に百人ぐらい使っておるしょうゆ屋さんがありますけれども、これはもう問題にならぬ。ヤマサならヤマサ野田醤油なら野田醤油が一万石増石したら、そういうところは直ちに全部いかれちゃうのです。そういうものを集めたところでどうにもなるもんじゃないのです。そういう現実にいま来ているということ、そうしてそういうおっしゃるような形ではなしに、いま私が申し上げたような形で進むことこそが自由主義経済基本的原則ではないか。その原則にさからうような施策を、自民党の政府であり、資本主義自由経済基本と一応お考えになっている大臣が、みずから資本主義発展必然性と矛盾するようなそういう御答弁をなさっているような感じを受けるのでございますが、この点はいかがなものでございますか。
  34. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは例で言ったほうがいいのでありますが、食パンなどは、いまおっしゃったような問題があると思います。食料品の場合、ほかの食料品でもそういう姿があると思います。私は製造業から販売業になったから悪いとか、そういうもんじゃないと思います。要するにそれだけの所得が得られるかどうかというところにこそ問題があるので、パン屋さんが本屋さんになっては悪いということではないと思います。ですからそういう場合においては、場合によっては販売のほうに力を入れる、こういう必要があるということであれは、そういう助成政策面一つの姿であると思っております。ただおしなべて言って、あなたのおっしゃるように、ものによってそういうものもありますが、ものによっては集めてうまくいく場合もある。それは並行して考えていくべきではないかと私は考えております。
  35. 桜井茂尚

    桜井委員 工業生産力発展生産性の向上ということが、いま申し上げましたような形で進んでいって、生産力発展の結果、小規模のものが販売店なりあるいはほかのものになっても、要するに人間として生きていくための所得が得られるということであれば、それは何も決して不幸なことじゃないのでありますから、そのことをお認めくだされば私はよろしいのであります。ただ、すべてのことについて全部を育てていくんだ、こうおっしゃるから、それでは過当競争になるじゃないか、政府としては一貫してないじゃないか、だから工業としては上層部のほうを育成するんだ、そしてまた地場産業あるいはおみやげのこけしだとか、こういうものがありますから、こういうものの中で当然成り立つものについては、それはそれなりの発展策を講ずる、それ以外については、それはもうほかの生計の道を立ててもらう、そういうふうにまた援助をするということで、おっしゃることがそういうことであるならば私は話がわかるのでありますが、いかがでございますか。
  36. 福田一

    福田(一)国務大臣 私はさように考えております。
  37. 桜井茂尚

    桜井委員 ですから先ほどから申し上げておりますとおり、政府生産政策中心というものはどうしても中小企業上層、大体現在発展しているのは二百人から三百人であります。せいぜいあれしましても百人から二百人のこういうところが発展しているのであって、工業統計で見ましても、大体五十人以下というものは衰微傾向をたどっているわけです。しかし結局このように、いま申し上げました二百人以上をとってみましても、これは全部で六千三百一社しか会社はないのです。従業員で八十七万。ところが衰微傾向にある四人から五十人というものの事業所の数は、これは二十二万、従業員として三百八万あるのであります。このような事業所に対して政府がどのような政策をとっているか、これは長官にひとつお答えを願います。
  38. 中野正一

    中野政府委員 先生が御指摘になったのは、いわゆる小規模事業者というか、零細企業といいますか、そういうものに対する対策の御質問だと思います。これにつきましては、まず金融面でいろいろ優遇の措置をやっております。一つ国民金融公庫、これは最近限度を上げまして最高が二百万円までということになっておりますが、大体一件当たり平均三十五、六万くらいになっているかと思いますが、国民金融公庫が主としていま言った生業的な資金金融に当たっておりますので、これに対する財政投融資を来年は相当大福にふやして六百九十四億の財投を確保いたしました。その財源をふやして金融円滑化をはかっていこう。それからもう一つは、これも御承知と思いますが、地方にあります保証協会の小口保証、この制度を拡充させる。それには中央にありまする中小企業保険公庫から小口保証のための特別の資金を地方の協会に出す、こういうことをやっております。なお来年度から、法律改正でお願いいたしておりますが、小口保証保険の限度が現在二十万円でございますが、最近の経済情勢から見てあまり低いということから今度三十万円まで上げよう、それから料率も特別に保険料を安くしております。そういう金融面の措置、それから中小企業金融公庫、商工組合中央金庫等についても、小口貸し付けというものについてはできるだけ担保をとらないようにやっております。無担保でも貸せるようにやっております。それから国民金融公庫は当然でありますが、九〇%以上は、保証人は要りますが、無担保で貸し付ける。そういう金融上の措置と、それから特に来年度零細企業対策の一つの重点として、例の家族専従者控除を青色申告について現在十二万五千円のものを十五万円まで、相当これは画期的な引き上げじゃないかというふうに私は思っておりますが、そういうことで零細企業についての税制面の配慮もいたしておるわけでございます。
  39. 桜井茂尚

    桜井委員 実は私、この問題もう少しお伺いしていきたいのでございますけれども大臣が十一時半にいなくなるそうでありますから、またこの点はあとからお伺いすることにいたしまして、二つだけお伺いいたします。一つは、今度の法案に中小企業者の定義が出ております。そこで、企業とは何か、このことを大臣にお伺いいたします。
  40. 福田一

    福田(一)国務大臣 企業の定義でありますか——企業といえばいろいろ大きく考えるのから小さいのまで、これはちょっと私も御説明するほどの学識がございませんが、大体常識的に考えれば製造業とか販売業、サービス業、いろいろこれはあるわけですが、ものをつくったりあるいは売ったり、そういうようなことを営む事業でございましょうか、もう一ぺんひとつ御質問の趣旨をこまかく……。
  41. 桜井茂尚

    桜井委員 私、実は八方調べまして、法律学者の見解も経済学者の見解も、日本にあるだけは調べました。それから法律でも、企業と名のついている法律は全部調べました。しかしこの点については、大臣からお伺いしたほうがよろしいと思いますので、いずれ御答弁をお願いいたしたいと思います。そういたしませんと、中小企業者と申しましても何を言っているのか、さっぱりほんとうは私にはわからないのであります。そういう意味で、この点は機会を次に譲りまして、大臣にお答えを願いたいと思います。  それからもう一つ中小企業対策、いわゆる通産省で一般に中小企業中小企業といいますと、先ほどから私も議論しておりますとおり、多くの場合製造業が主になっておるわけです。そうして三百五十六万社のうちで製造業で四人以上というものをとりますならば二十四万、一人というものを入れても五十万、五十五万、ところが商業をとってみますると、これは百五十七万ぐらいでしたか、とにかく百五十万台ございます。小売り商だけでも百二十九万ございます。それから飲食店を入れますと、これは三十万ございます。それからサービス業は七十八万ございます。したがって通産省の対象となっている、そうして従来論ぜられている、一般に中小企業といわれるときには、常にそれは製造業中心、そうして政府がことに生産政策をおとりになる。この間も経済審議会の答申か検討がございましたようでございますが、現段階におきましてはアフターケアとしてやはり生産政策をとるというようなお考えのように、先ほどから大臣おっしゃっておりますが、そうなりますと、中小企業の圧倒的部分を占めます商業、サービス業、こういうものにつきましては、従来から通産省においてはほとんど行政らしい行政はやってなかった。今回三つほど法案が出ております。それは知っております。それについてはあとからまた申し上げますが、とにかくそういうように、通産省の政策というものが生産政策に偏するあまり、三百五十六万の事業所のうち圧倒的多数、三百万をこすものについては従来ほとんど触れられていなかった。今度三つだけ出ておりますけれども、そういう状態であった。これに対してどうお考えでございますか。
  42. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、これは確かにあなたのおっしゃったような傾向、テンデンシーというものは認めないわけにはいかないと思います。しかしそれはなぜそうであったかと申しますと、二つ、三つの理由があるかと思いますが、終戦の後におきましては物が一番足りなかったわけであります。物さえあれば、販売するほうは物を手に入れさえすれば、それがもう利益になったという時代が非常にあったわけです。これはあなたも御承知のとおりです。そこで一番大事なことは物をつくることです。物をつくることによって物価も下げることができる、こういうことでございましたから、終戦後における一つ方向生産という方向に向いておったことは、これは事実でございます。これはおっしゃるとおりであったと思います。ところがその後いわゆる輸送機関が大きく変革いたしまして、終戦後あたり、あまり自動車なんかを使って方々売って歩くなんてことはなかった。船橋パン屋さんが千葉までぐらいなら手を伸ばせたかもしれないけれども、銚子まで行って売ったんでは割りが悪いというようなこともあったと思うのです。そういうような意味で、いわゆる距離が短縮されてきたということが一つの大きな時代の流れだと私は思うのであります。それからもう一つは、やはり地域的な独占性といいますか、販売業というものはやはりある一定の地域におって、そしてその近所の人たちと仲よくして豪族的な販売をしているものが非常に多い。いまでも地方にそういう習慣が残っており、またそういう姿で販売業を営んでおる人は相当多いと思います。ところが今日になりますと、これに対してデパートとかスーパーマーケットというような種類のものが順次できてきておる。そこへ交通機関もだんだん整ってきておりますから、あえて近所で買わないでもいいじゃないかというような問題等がいままた起きてきておる。それが今日においてサービス業、販売業に対する施策というものを必要としてきた大きな理由であろうと思うのであります。だから私は、傾向的に見れば、あなたのおっしゃったような傾向はあると思いますが、要するに行政からいえば、それを早く察知しながら手を打っていくというのが行政の正しい姿ではないかということであれば、もうおっしゃるとおりだと思いますけれども、われわれそういうことも前向きに見ながら、いまそういうような販売、サービスというような問題にも特に力を入れる、こういうふうにやっていくつもりであります。今後もそういうふうな施策を強力に進めていかなければならない、こう考えておるわけでございます。
  43. 桜井茂尚

    桜井委員 たとえば商業、サービス業におきましては、戦後農地改革の結果、農業が潜在失業のプールの役割りをだんだん果たさなくなってまいりましたので、大部分がこういうところに潜在失業のプールがあったが、三十五年ごろから商業はこのプールの役割りをはずれて、絶対数におきましても減少をしてきております。しかもその場合に、三十年から三十五年までは五人から九人、あるいはそれ以上の雇用者を持っているところで成長が行なわれた。しかも国民の総生産高の中の販売を受け持つのは、四人以下のところで五〇%、五人以上であとの半分を占め、しかも経済成長とともに、その部分の販売を受け持ったのはこの五人以上のところなんです。四人以下はちっともふえていないんです。一戸当たりの販売量は全然ふえていない。また全体としてもふえていない。そして三十三年から三十五年ごろになりますと、二人から四人のところ、ここのところがもう減少してきている。七%も大幅に減少してきております。そして十人から十九人のところに主力は移っていった。ところが最近になりまして、三十五年以降になりますと、十人から十九人のところもだめになってきた。いまでは二十人以上のところに主力が注がれていっているわけです。だから、大臣のおっしゃるように生産が高まって総販売量が高まる、購買力も高まれば、それは商人が救われるんだ、こういうことにはならないんです。二十人以上の雇用者のあるところへ、そこにずっと販売が集中してきますから。ですからそれ以下のところの膨大なものは、これは商業としての機能をだんだん失いつつある。そしてその分野の人が圧倒的多数であって、二十人から以上ということになりますと、一%もありません。〇・六%ぐらいでしょう。この〇・六%ぐらいのところに全部集中していく、あとは全面的に総くずれの状態にいまなりつつある。こういう現状に対して、だから生産力を上げさえすれば商業の問題はすべて解決するんだ、こうはならないと思うのですが、大臣はいかがでございますか。
  44. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、生産力をあげれば商業部門の関係の人は、零細の分まで含めて救済できるというふうには考えてはおりません。それはあなたのおっしゃるとおりであります。ただしかし、だんだんそういうふうに大規模のところへ集中する傾向もありますが、しかしこれには一定の限度があるだろうと思います。またそこには、地域的な一つの必要性というか、親近感を持った一つ販売業の存在というものが全然なくなってしまう、地域的なそういう意味でのある特定な部分においての小売り業者というものはなくなるとは思いません。それはなくなるかなくならぬかは、その小売り業者がどれだけ努力されるかということだと思うのです。その努力の方向はどこにあるかといえば、方々そういうようなことで集まった市場、スーパーマーケットとかデパートなどが強大になるのは、やはり結論は品物が安いということです。何といっても同じ品物が安いからみなそこへ買いに行く。ところが、そういうような共同化によって小売り業者がやはり安いものを売るということになれば、近所の人は何もあえてデパートまで行かなくてもよいわけですから、そこにおのずから一定の限度があるわけです。小売り業者というものが今後相当——相当といいますか、やはりこれは交通機関とかそういうことは大きくは影響しますが、スピードが早まるということにつれてだんだんそういうふうにはなっていくと思うけれども、しかし、小売り業者が生き残る姿、生き残る余力、力というものはある程度あると思います。しかし、そこまではだんだんそういうふうな形で動きが変わっていくであろうということは、あなたの御説には賛成をいたします。
  45. 桜井茂尚

    桜井委員 それは大臣も一例として交通機関をお引きになったのでしょうけれども、たとえばポリエチレンの袋ができた、各家庭のほうにも冷蔵庫ができたということになりますと、これは流通革命というものは確かに大きくそこへ出ているわけなんです。そこで肉屋さんだ、魚屋さんだといいましても、そうしてこれらのものがおっしゃるとおりに近所の方々を相手にしているといいましても、たとえば農村において、農村から離れて、三ちゃん農業といわれますけれども、一家の主柱をなす者までが働きに行くについて、通勤だということになりまして、地方の中小都市以上のところ、工業のあるところへ働きに行くということになれば、どうしたってそっちで品物を買ってくるということになるから、購買力が絶対的に減ってくるのです。それだからこそ地方における商店というものは全面的に衰微してきている。そういう場合に、政府が商業放棄としてやろうとしているのは、それは寄り合い百貨店であるとか、スーパーマーケット、商店街をつくろうということなんです。商店街をもし中都心、小部市でつくってごらんなさい、その小さな五万か十万の程度の市において商店街をぴいんとしたものをつくれば、その回りにある零細な商業というものは、購買力が一定である限りつぶれるわけだ。つぶれるというよりも少なくとも営業が成り立たなくなるわけだ。スーパーマーケットとか、あるいは寄り合い百貨店とか、それに参加しましても、家族従業員しか持っていないような人たちがスーパの中に入ったり寄り合い百貨店の中に入るということは、資本力からいってできません。できるのはせいぜい十人以上の雇用者を持っているとか、いずれにしても二十人以上の雇用者を持っている者、その程度の資本力を持っている者であれば、先ほども長官がおっしゃられましたが、信用保証協会の保証を受け、あるいは国民金融公庫のほうから金を五十万かそこら借りて、そうして寄り合い百貨店とか大きなこういうものの中に具体的に入れるが、いま言ったような人たちはおそらく入れないのです。そういうものに対する考え方はどう持っているのか。おそらく流通革命が急速度に進む限りこういうものが非常に多数出てくる。しかも、商業一つをとりましても、個人経営で労働者の一人もいないものが百二十九万の中で百四万もあるのです。それから一人ないし二人というのが九十数万あるのです。月の光り上げが十万円以下というような商店が七十二万あるのです。十万から二十万という程度の商店が二十万あるのです。十万やそこらの月の売り上げで、大体利潤が出ると思いますか。それらの人々の所得はおそらく一割ないし二割五分あげたとしましても、多く見ても二万五千円です。都市の勤労者の一家の平均所得が三十七年度には五万一千円であります。労働者一人当たりの平均賃金が三十七年度二万九千円。商店に従業している労働者の平均賃金でも三十七年二万七千円だ。それが十万の売り上げ、あるいは二十万といたしましても、ここにそういう今後の発展——そしてまた何かそこで解決できるという方法がございますか。それをお伺いします。
  46. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、これは農家における専業農家と兼業農家の問題と同じような姿が出てくるだろうと思います。たとえば奥さんは店で、月に十万なら十万の売り上げの店を持っている。だんなさんはまたほかでお働きになる、あるいは子供が働く、こういうようなことが出てくるだろうと思います。しかしそれはそれなりに、要するに私たちは一家がどういう方面から収入があるにもせよ、一定のいわゆる文化生活が行なえるような収入があることは望ましいことであるのでありまして、この仕事だけに限るということではないだろうと思います。私はそういう考え方でおります。そこでいまあなたのおっしゃった四人か五人で寄り合い百貨店はできないじゃないかとおっしゃるけれども、できないと断定するのは少し早計だろうと思います。それはできる場合もあります。それはところによります。それからまたそれに関係しておる人たちの意欲もあります。いろいろあると思うのです。だからできないというものではない。しかしそういう希望を持ってやれるようなところには、できるだけわれわれは援助をして、そういうことは進めましょう、こう言っておるわけであります。それからそういうものをつくるというと、近所の店がみんな困ってしまうじゃないか、なるほどそういうところもあるでありましょう。だからそういう意味においてだんだん時勢の要求といいますか、時代が移り変わるに従って、変わっていくものだろうと私は思います。それをあくまでも同じ仕事を同じようにするということにして、合理化近代化を進め、所得を増大する、こういうことは私はないと思います。時代はいつでもそういうふうに、今後もそうであろうし、いままでもそうでございました。私はその点は同じだと思うのです。ただその場合にできるだけ苦痛をなくし、できるだけ早くそういうことを知らせ、所得が得られるような道をわれわれみんなで考えていく。どうしてもそれが得られない人に対しては福祉的な方途も考えるというところに、われわれが考えておりますいわゆる自由主義経済の姿における国民の幸福、あるいは生活の安定というものを求めていこうという考え方でございます。
  47. 桜井茂尚

    桜井委員 先ほど工業について大臣がおっしゃられたことと同じことを、商業についてもおっしゃられました。とにかく商業でなくたって所有があれはいいじゃないか、そのように私も思います。しかしそういう政策を具体的に通産省はおとりになっていますか。そしてどのような施策現実におやりになりましたか。中小企業基本法にははっきりそれが書いてあるわけなんです。転業の場合、あるいはほかに移るというような場合、ほかに職を求めるという場合、その場合に政府は援助するとはっきり書いてある。政府として三百五十六万の事業所のうち、二百万をこえる零細な企業——一人か二人で二百万あるのです。四人、五人を含めると圧倒的になるが、こういうものに対する政策を具体的にどうおとりになりますか。
  48. 福田一

    福田(一)国務大臣 私は、そういう問題も含めながら具体的に何をやったかということ、それから今後やる方針、こまかいことは事務当局から聞いていただきたいと思いますが、要するにそういうようなことであるからこそ中小企業基本法というものをつくり、いままさに具現しようとしておる、それが時期がおそいじゃないかというおしかりならば、これはよくわかります。しかしわれわれは意欲を持っていまやろうとしておる段階であります。しからばそういうような零細企業が、じゃあすから全然めしが食えなくなるか、そういうものでもないでしょう。急にもうなくなってしまうというものじゃないのですから、その間できるだけ早く、いまあなたの言われたような欠点をなくしながらこれに対してわれわれは施策を進めていかなければならない、こういう方針で政治に当たるつもりでございます。
  49. 桜井茂尚

    桜井委員 最後に大臣に、ほんとうに一言でございます。それほどの大臣のお考えがあるにもかかわらず、なぜに——通産六法をちょうだいいたしましたが、国民金融公庫法は通産六法には入っておりません。主管は確かに大蔵省でございます。しかし日夜通産行政をやっておる者が、そういう重大な、大臣がお考えになっておるのに、そういうものを通産六法には入れていないで、行政の上からは全然念頭にないというような形をとってよろしいのでありますか。大臣にちょっとお伺いいたします。
  50. 福田一

    福田(一)国務大臣 これは私はいつも通産省で言っておるのですが、通産省につとめておるから通産省の役人だとは思いなさるな、国の役人だと思って仕事をしてもらいたいということをいつも言っておるわけなんです。私はこういう行政の組織というものをいろいろ分けて行なう——分けることによる利益もあるし、分けることによるマイナスもございます。いまあなたのおっしゃったのは、マイナスの面があるいは反映しておるかと思いますが、全部を一ぺんに統一するわけにはいきませんから、そういうふうに分けておるからといって、そのほうは全然忘れておるわけではない。いつも私たちが金融問題等をやる場合、政府三機関、こういって、常に国民金融公庫中小企業金融公庫、商工中金ということを前に出しながら説明をいたしております。たまたまそういうことが抜けておったということでございますれば、これは必要であれば今後は入れさせていただきますが、そういう変な意味——変な意味といいますか、そういうことを忘れたという意味で抜かしておるのじゃないのでありまして、われわれも金融問題を論ずるときには、これは国民金融公庫はどうするのだ、こういうことは実はいつも言いながらやっておるわけでありますから、ひとつこの点は誤解のないようにお願いいたします。
  51. 桜井茂尚

    桜井委員 では先ほどの質問をもう一ぺん前に返って申し上げます。商業のことはやめまして工業のほうにまた戻ります。  先ほど長官は、四人から五人というようなのは零細企業だ、こうおっしゃっておりました。それに対しては、国民金融公庫中小企業、信用保証協会あるいは商工中金ですね、こういうものがある、こうおっしゃっておりましたが、そういたしますと、設備近代化資金が全体で四十二億、あるいは工場集団化資金十七億九千六百万円、共同施設資金二十六億、こういうようなものは、トータルの府県の出資分まで入れまして、どういうところへ使うのでありますか。
  52. 中野正一

    中野政府委員 中小企業近代化を進めていくためには、やはり資金が要るわけでございます。これを出す方法として、一つ金融面で見よう。それから一つは一般会計を通ずる、これは一種の無利子の貸し付けでございますから、広い意味金融ではございますが、いわゆる金融機関からの金融ベースとは違うわけでございます。その二つの方法を政府としてとっておるわけであります。一つ金融ベース、これは一般の金融機関がやりますが、それだけでは中小企業の場合はうまくいきませんので、いま大臣の言われた国民金融公庫中小企業金融公庫、商工中金、特に設備資金につきましては中小企業金融公庫と商工中金、また特別に中小公庫については設備資金と長期運転資金に限っておりますが、財政投融資の今をそちらのほうにできるだけ確保することによりまして、金融面から設備近代化を推進していこうというのが一つでございます。  それから、いま先生の御指摘になったのは、一般会計のほうではないかと思いますが、これは中小企業近代化のためと事業共同化のために、昭和三十九年度におきまして政府の金を総領八十九億八千百万円を確保しておるわけでありまして、そのうちでいわゆる設備近代化補助金といっておりますが、これは本年度四十一億に対しまして来年度は四十五億政府の金が確保してあるわけであります。これに対して同額の金を都道府県が出しますので、九十億になります。従来この設備近代化補助金で府県が貸し付けておったものの返済金が返ってまいりますので、そういうものを入れまして、府県の貸し付け規模はことしが百十四億に対しまして、来年度は百四十三億になるということでございます。これは、五カ年間の無利子の貸し付けでございまして、主として中小企業のうちでも比較的規模の小さい、従業員でいいますと大体百人以下のものに重点を置いて貸し付けをやっております。きょうたしかお手元に資料を配付してあると思いますが、これによってごらんいただいてもわかりますように、比較的零細なものに設備近代化補助金はいっておるということでございます。それ以外に中小企業高度化資金というものが前の国会で成立いたしまして、これはいわゆる中小企業者の集団化、協業化あるいは組合共同施設というものに対する貸し付けであります。これもやはり同じく無利子の五カ年間の貸し付けでありまして、これは特にわれわれとして重点を置きまして、来年度は資金を大幅に拡大いたしまして、総額で来年度は本年度に対して約九一%増しの四十三億八千六百万円の予算を確保しておるわけでございます。金融でやる面と、一般会計から金を出して無利子で府県を通じて貸し付けをする、この二つの方法をとっておるわけでございます。
  53. 桜井茂尚

    桜井委員 私、最初にお断わりいたしましたが、あまりそれないで御答弁願いたいと申したはずでございますから、質問について御答弁を願いたいわけです。私が申し上げましたのは、四人から五十人は零細である、これについては国民金融公庫なり、信用保証をつけたりあるいは商工中金から出す、それならばいまおっしゃられましたような資金はどこへ使う、どういう層に使うのかということをお伺いしたわけです。いま百人以下だとおっしゃられましたが、百人以下というと、場合によりますと一人も入ります。先ほど申しましたように、一人、二人という業種が非常に多いのです。そうすると、五十人以下は零細だとおっしゃられましたから、百人から五十人くらいを大体目途として、そこらのところの共同化なり近代化なりを進めるのだとおっしゃるならば、それで私は了解するのでありますけれども、どういう層を対象にしてお考えかという質問をしたのです。
  54. 中野正一

    中野政府委員 先ほど申しましたように、主として百人以下の規模のものを重点に置いて貸し付けをいたしておるわけでございます。
  55. 桜井茂尚

    桜井委員 以下には一人があるということを私は申し上げておる。だから百人から下はどこまでかということをお伺いしておるのです。
  56. 中野正一

    中野政府委員 お手元に資料として本日配付してございますが、三ページに「業種等部門別従業員数別貸付企業数および貸付額」三十七年度の実績で申し上げますと、全体の貸し付けのうちで、一人から十九人までが二五・六%、二十人から四十九人までが四〇%、それから五十人から九十九人までが二四・八%ということになって、ほとんどがもう百人以下でございまして、その重点は二十人から四十九人ということになっております。
  57. 桜井茂尚

    桜井委員 それで、そういうような一切の政府施策は、先ほど一番最初に大臣に確認したのでありますけれども、最も効率的に、重点的にやるのだ、こう答弁なさった。効率的、重点的にやるということになると、平面的にみんなにやるわけにいかない。もしいまおっしゃられたやつを全部の数で割ってごらんになりますと、おそらく私の計算では十二万五千円くらいになってしまいます。それではとても施設の近代化合理化もできなくなってしまいます。ですから重点的に、効率的にやるというように大臣が先ほどおっしゃたのですから、どうしてもそういうことでやらざるを得ない。もし全部のものにやるとしたならば、非常にわずかなものになってしまうと同時に、政府方針にも反するし、逆に過当競争を助長する結果にもなる。その点を政府として重点的におやりになるでしょうから、そうした場合には、私としては、その残されたものに対する政策はどういうぐあいにお立てになっていますかということを質問するわけです。
  58. 中野正一

    中野政府委員 確かにこういう政策を進めていく場合には効率的でなければなりません。しかし重点的といいましても、これは程度の問題じゃないかと思いますが、たとえば設備近代化補助金筆につきましては、やはり対象業種等を相当程度しぼってやっております。これは従来は主としてそういうことをやっておったのですが、その意味で、たとえば輸出産業であるとかいうものに重点を置くとか、来年度につきましては輸出産業だけでなく、今度はむしろ国民生活に非常に関係の深い物資をつくっている業種も大いに取り上げる等、そのときそのときによって違いますが、できるだけ効率的にこれが行なえるようにやっていく。  それから、そういう政策をやっていきますと残るものがあるのではないかという御指摘でございますが、そのとおりでございまして、そういうものに対しましては、先ほど申し上げましたような国民金融公庫金融面あるいは保証協会の保証、税制といったような面で特別の配慮をやっておるわけでございます。
  59. 桜井茂尚

    桜井委員 資本主義自由経済ですから、つぶれるものはつぶれる、ほかに転向したほうがいい、こうおっしゃるほうがより正直だろうと私は思うのですけれども、それを、盛んに何とか国民金融公庫なり信用保証協会のほうでもカバーしてくれるのだ、こういうようなお考えのようでございます。  それでは今度は国民金融公庫、それから信用保証協会のほうにお伺いいたしますが、国民金融公庫が貸し出す場合の条件として、利益の中から元利金を返済するということが一応の原則であるというぐあいに聞いております。この点についてはどうでございますか。
  60. 油谷精夫

    ○油谷説明員 ただいまのとおりでございます。
  61. 桜井茂尚

    桜井委員 また貸付金は、たとえば小売り商の場合、運転資金で見ますと、大体一カ月の売り上げの範囲内ということをめどにいたしまして、二カ年なら二カ年の月賦ということで貸している、このように聞いておりますが、いかがでありますか。
  62. 油谷精夫

    ○油谷説明員 必ずしも一カ月の水揚げの範囲に限定しておるわけではございませんが、大体そういう月の売り上げというものを目安にして貸し付けをいたしております。
  63. 桜井茂尚

    桜井委員 現在の貸し付け額が大体、公庫の資料で拝見さしていただきますと、二十万から五十万、このくらいの貸し付けが四五%を占めております。それで平均が三十五万円程度ということから、原則的に考えてみますと、大体二十万以上——先ほど私申しましたが、小売り商の場合、十万円以下の売り上げのものが七十二万ぐらいあり、十万円から二十万円まで入れると九十万、こういうものかある。こういうところは貸し出しの対象からはずれていくのじゃないか。また一方、それらのものはほとんどが家族従業員であります。こういうところは、先ほど申しましたことを繰り返すようですが、十万円とすれば二万五千円の収入しかない。そうすればそこには利潤がない。利潤がなければ、原則論としてお金を貸しても返せないはずなんですから、そういう意味で、たとえばもっと五十万円も売っているのだけれども、いま十万円とか五万円とかでいいということで借りるなら別ですけれども、そういう限度として、十万円くらいしか売ってない者は貸し付け対象の外になると思うのですが、いかがなものでございますか。
  64. 油谷精夫

    ○油谷説明員 御質問のことは、要するに零細な業者国民金融公庫の融資の対象からはずれるじゃないかという御質問かと思うのであります。統計資料でおわかりかと思いますが、まあ大部分のものは平均しますと三十五、六万の貸し付け金額になりますけれども、従業者の規模から申しますと、製造業では三十人前後、それから卸小売り、商業段階では五人以下のものが大部分でございます。五人以下の商業と申しますのは、いま先生の言われた非常にこまかい業者でございまして、現実にはこういうものが公庫の対象の半分以上を占めておるような現状でございます。
  65. 桜井茂尚

    桜井委員 いま私の質問を逆にとられて答弁なすっているのですが、五人以下といいましても、私は一人から二人ということについて御質問申し上げた。そこでもうけようと思おうとも、現実を客観的に見て、全然利潤が上がらぬ、こういうものが公庫の金融の対象になりますか。先ほど、利潤の中から元利金を返済するとおっしゃっているのですから、利潤のない者に貸し付けることは、これは私は背任行為になろうと思います。この点はどうお考えでございますか。
  66. 油谷精夫

    ○油谷説明員 お答え申し上げますが、実績のございます者、つまり過去に何年もやっております商人の小さなものについては、これは実績がございますので、たまたまその年に非常に不況であっても、ずっと実績があれば利潤といいますか、つまり返済が可能だ、こういうふうな見方ができるかと思います。ただ問題は、先生言われますように、今後初めて仕事をする、これから新しい仕事をする、商業を営むという場合に、はたして返せるのか返せないのか、つまり利潤が上がるかどうか、こういう問題かと思います。実はこういう貸し付けをします場合の審査に非常に難儀をいたす場合が多いのであります。ことに先ほど来お話がございましたように、経済情勢がどんどん変わってまいりますので、なおさら非常に難渋するのでありますが、その辺はできるだけ本人の将来の計画を聞きまして、その計画が客観的に納得できて返済できるという場合には、たとえば返済の条件の期間を延ばすとか、あるいは据え置き期間を若干延ばすとか、そういうようなことで返してもらう目安をつけた上で融資をする、こういうたてまえをとっております。
  67. 桜井茂尚

    桜井委員 これはあなたが公庫の「調査月報」の二月号にお書きになったものですが、「最近のマス・コミはレジャーとか消費ブームとかの華やかな面を取り上げることが多いが、われわれの手元に集まる資料によれば夜逃げなど悲惨な事実は依然としてあとを断っていない。」ということをあなたはお述べになっておりますが、やはりそういうことは事実でございますか。
  68. 油谷精夫

    ○油谷説明員 さようでございます。
  69. 桜井茂尚

    桜井委員 次に信用保険公庫のほうの方にお伺いいたしますが、保証協会は金融機関の手を経て貸したものについて保証する、もちろん保証協会のほうからあっせんする場合もあります。そういう手を経て保証協会が保証し、金融機関が貸す場合に、非常にぎりぎりの線だ、ここでちょっとてこ入れすれば何とかなるのじゃなかろうか、こう思われるものを主として保証するというようなやり方をしていらっしゃると思うのですが、いかがなものでございますか。
  70. 佐々木彰一

    ○佐々木説明員 大体先生のお話のとおりでございまして、それともう一つ、銀行取引が従来ほとんどなかったというものが保証のほうを何べんか受けまして、それが金融機関との結びつきの端緒といいますか、そういうことになって、だんだんそちらのほうに移っていくというようなケースもございます。しかし大体といたしましては北川ほどおっしゃいましたとおりでございます。
  71. 桜井茂尚

    桜井委員 そこで銀行としましても、たとえあっせんされましても、やはり金融機関も営業でございますから、まさか救済資金を貸すわけでもございませんので、利潤が生まれ、金利は利潤の一部でございますから、その中から支払われるということが一応見通しとして前提になければ、銀行としては貸すこともできませんし、そうなれば保証協会のほうも保証ができないという結果になろうと思うのでありますが、いかがなものでございますか。
  72. 佐々木彰一

    ○佐々木説明員 金融機関のほうと保証協会の保証との関係につきましては、先生御承知のとおり、保証ないし保険と申しますのは金融そのものに対します補完でございまして、従たる性格でございます。したがいまして銀行のほうで、国民金融公庫等で融資になります場合に、その審査の観点はいろいろあると思いますが、その中で若干危険性があるというようなものについて協会のほうにお話しになる場合が多いわけでございます。ただしこれは保証協会の業務でございますから、私のほうから申し上げるのもいかがかと思いますが、地方の協会で、特に小口のものにつきまして、さらにその協会の本所から遠隔の地、たとえば北海道の協会というようなところで、何とかの支庁の何とかの町というようなところの非常に小口の保証につきまして、その地区の商工会議所あるいは商工会というようなところの方が審査委員というようなことでお集まりになりまして、この人の従来の仕事のしかたでいけばこのくらいのものは返せるであろうというようなことで、先ほど先生おっしゃいましたあっせん、保証のほうへお申し込みになるという場合も、ちらほらとあるようでございます。
  73. 桜井茂尚

    桜井委員 いま国民金融公庫ないし信用保証の件についてお伺いいたしたのでありますが、このように銀行の採算ベース——少なくとも利潤を生まない、もう金融機関の対象にはほとんどなり得ない、事実取引もしてない——国民金融公庫ですと、おそらく二割ぐらいしか対象にはなっていないはずですが、そういうように取引してない膨大な層が日本に現存するのだ。先ほど、一人から二人だけとっても三百五十六万事業所のうち二百万もあるということを申し上げたが、これに対して通産省はどのようなことをしてきたか。そして、先ほど来長官は、五十人以下の零細なところについては国民金融公庫や信用保証でもってやる、こうおっしゃいましたけれども、その下にこういう金融のべースに全然——たとえ国民金融公庫、信用保証協会がありましても、なおかつそれを利用し得ないような層があるのだ。こういうものについてどうお考えですか。またそれに対する施策はどうやってまいりましたか。
  74. 中野正一

    中野政府委員 先ほど申し上げておりますように、国民金融公庫あるいは保証協会の業務の拡充等を通じまして、金融面から、できるだけいま御指摘の層に当たる方々に対しても金融の道が開けるように努力はしておるつもりでございます。しかし、御指摘のようにそこにも入ってこないというような層があるということは私も認めます。またそういう層に対する政策というのはなかなか、これは社会保障なりいろいろな面の政策があるかと思いますが、通産省といたしましては、先ほど申しておりますように、金融面あるいは税制面等を通じてできるだけそういう層の方々にも政策が行き渡るように努力はいたしておるつもりでございます。非常に不十分であると言われれば、確かにそういう御指摘は当たるかと思います。
  75. 桜井茂尚

    桜井委員 いま私が申し上げたのは、金融のべースに乗らぬ人を言ったわけです。ですから、金融政策でやるとおっしゃられても意味をなさない。それから税制と申しますが、そういう人たちは多くの場合は税金を納めていない。そういう場合に税金を下げましても、対象にならないのです。ですから、そういう層に対する政策をどういうぐあいにいままでお立てになってきたか、今後どうするつもりか、それをお伺いしたいのです。
  76. 中野正一

    中野政府委員 これにつきましては、先ほど申しておりますように、金融面につきましては国民金融公庫あるいは保証協会の小口保証保険の拡充というようなことでいろいろとやっておるわけであります。たとえば保証協会等につきましても、すでに保険公庫を通じまして小口の貸し付けのために四億円の金を出しておりますが、これをさらに増額をする。それから先ほど言っておりますように、保険の付保限度を二十万円から三十万円に上げるというふうなこと、それから担保につきましても、物的担保はできるだけとらないというふうなことでやっておるわけであります。それからなおそれ以外に一般会計の面では、これも御承知かと思いますが、地方に商工会というものがございまして、そういうものに経営指導員というようなものを置いて、これを国と府県で補助をして、いろいろ経営面の相談といいますか、金を借りる場合、先ほど保険公庫の理事から言われましたように、保証協会の保証をする場合に、そういう商工会あたりがあっせんをする。最近は国民金融公庫から金を借りる場合にもそういう商工会の指導員がいろいろ世話をして、金を返す場合にも集めて返していくというふうなことで、金融面なんかのお世話をしておるわけであります。何もしていないわけじゃなくて、不十分ということは御指摘のとおりでございますが、いろいろ今後も研究をして施策を充実してまいりたいと思います。
  77. 桜井茂尚

    桜井委員 しつこいようですけれども、質問とはずれた御答弁ばかりなさっていらっしゃいますが、金融のベースに乗らない人なんです。もしそこでもって利潤を生まぬ、先ほど言うように所得部分きりないのだ、利潤部分がないのだ、こういうものにお金を貸したら返せなくなるのです。返せないにもかかわらずそれに貸したら、大正十一年の大審院判決で、その理事者は背任行為を問われますよ。ですから、たとえこの信用保証協会を通ずる銀行の貸し出しであろうが、国民金融公庫の貸し付けであろうが、こういう層には貸せないのだ。それでその貸せない層が日本にはあまりにも多いのだ。これに対してどうなさっていらっしゃるか。こう聞いておるのです。
  78. 中野正一

    中野政府委員 そこの問題になりますと、たとえ政府機関であっても全然金融ベースに乗らない分野があるのじゃないか、それは確かにそういう分野があると思います。これにいろいろな政策をやれということになりますと、たとえば補助金でもくれてやるとかというようなことにせざるを得ないと思います。しかしそういうこと以外に一般的な社会保障政策の推進と充実というようなことは、これは政府全体としては考えておるわけでございます。
  79. 桜井茂尚

    桜井委員 社会保障にしましても、たとえば商売をやっておれば対象にならないのです。そういう点、たとえば生活保護、少なくともそういうものの対象にはならない。だから社会保障においても落ちてしまう。そうして通産行政の上からいっても落ちてしまう。そういう政治のほんとうの谷間みたいな人たちがあまりにも膨大にいるんじゃないか。だからそういうところに対してどうするのだ。こう聞いておるのです。
  80. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 桜井委員がおっしゃったような、そういういわゆる谷間の面が多数あることを私ども認めております。ただ通産政策といたしましては、先ほど来長官答弁いたしましたように、やはり金融ベースに、いわゆる経済取引、利潤というものを対象にしたものを取り上げておりますので、勢いいま桜井委員のおっしゃったような、それから落ちる面はどうするかという問題が起こってくるわけでございます。しかしながら、さりとてこれをそのまま放任するということは、社会政策の面からも、また日本中小企業を今後育成する通産省の面から申しましても、できないわけでございます。そこでわれわれといたしましては、こうした面をどうして救済したらよいかということにつきましては、すでに中小企業基本法の中にも上編一章を設けまして、零細企業対策については施策を講ずべしというような規定も置かれてございます。今後この点につきましては、いま桜井委員のおっしゃったようなことをわれわれ胸に置きまして、どういうふうにしたらいいかということについては真剣に検討さして、何らかの方法でこうしたものを救済したい、こう考えております。御了承願いたいと思います。
  81. 桜井茂尚

    桜井委員 それ以外に、今度ちょっと工業にまた返りますけれども工業につきましても、たとえば一人ないし二人というのが非常に多くて、一人のものが六万、二人のものが九万四千、こういう状態であります。四人以上の事業所二十四万中、四人ないし九人のものが九万七千、十人ないし十九人が七万三千、合計で四人以上二十人まで含めますと六八%あります。これらに対しても実は従来、基本的な意味においては通産省としての行政はなかったのじゃなかろうか。たとえば、これも国民金融公庫の油谷さんのほうの御専門かもしれませんけれども、ヨーロッパにおいてはフランスなり西ドイツなり、こういうものではギルドの発展形態としての同業組合というようなものについて相当高く評価し、そうして政府施策の対象としても、そういうものを通じて、あるいはそういうものを保護助長し、そういう形でやっておる。日本においてはイギリス流と申しますか、そういうのは全然もう念頭にないというかっこうになっておる。しかしながら、こういうものの中にも、ドイツやなんかの場合の例では、近代的な装置をして、どんどん近代的なものをやりながら、なおかつ小さなもので成り立っておる。工芸美術品であるとか、そういういろいろなものがあるわけです。こういうものに対する政府施策というものが基本的に今日まで落ちていたんじゃないか。こういう点について通産省としてどのように考えるか。これは私は落ちていたと思いますので、落ちていないなら、いないとおっしゃればよろしいので、それでなかったら今後どういうぐあいに考えるか。これをお聞かせ願いたいと思います。
  82. 中野正一

    中野政府委員 いま御指摘の点で、二つ問題があったと思います。一つは、確かにドイツにおきましては、昔のギルドの残りというか、同業組合的なものが非常に強力に発達しておりまして、まあ一種の事業の許可制的なようなことになっております。このために過当競争というものが防がれていたということは私も知っております。日本の場合でも協同組合あるいは商工組合あるいは事業組合というふうなことで、組合組織はいろいろございますが、ドイツ式なそういう強力な統制色の強いものではないのでありまして、これはもちろん一つは歴史的な点でこういうことになってきたと思います。したがってそういう意味でもう少し中小企業についても強力なそういう組合組織とか統制色の強いものをやるべきであるという議論もありますが、われわれとしてはまだそこまで考えておりません。ただ中小企業の組織化の問題につきましては、いまいろいろな制度がございまして問題も多い。それから最近いろいろ情勢も変わってきておりますので、このたび中小企業政策審議会の中に組織小委員会というものをつくりまして、この問題を学識経験者に集まっていただいて検討してまいりたいと考えております。  それから、そういう地方産業といいますか、そういうものに対してどうだということでございますが、これにつきましても、たとえば設備近代化の補助金制度を実行することとか、あるいは組織化を通じて協同組合等をつくらして、そして金融面でのめんどうを見るとか、そういうようなことは従来からやっております。
  83. 桜井茂尚

    桜井委員 ぼちぼちもう締めくくりに移りますが、先ほど来私が問題にいたしておりますことは、要するに通産行政の中に階層的な区分というものをもう少しはっきりときめこまかにきちんとしなきゃだめなんじゃないか。そういう意味で通産行政あるいは通産統計を見ますと非常に見にくいのです。わからなくできているのです。三十二年ごろまであったものをわざわざ落としてみたり、そういう形でわからなくできている。そういう意味で、今後統計をおつくりになるときには業種別、階層別に利潤並びに利潤率、こういうものをお示し願いたいと思いますが、これはできますか。これはできるはずなんで、大蔵省はそれがなかったら税金かけられないし、経済企画庁はこれなしには国民所得の計算ができないはずですから、すぐとは申しませんが、ゆっくりでけっこうですから……。
  84. 中野正一

    中野政府委員 確かに御指摘のように、中小企業問題を論ずる際に資料なり統計が非常に不備であるということは再々指摘されております。われわれとしてもできるだけ努力しておるつもりではございますが、なお統計の整備、特にその整備に当たっては、業種別、階層別にもうちょっと掘り下げたデーターというものをつくっていく。同時に、御指摘にありましたように、政策もそれに合わせてきめこまかくやっていくべきだという御説はごもっともでございます。その方向で検討してまいりたいと思います。
  85. 桜井茂尚

    桜井委員 私の先ほど申し上げたようなものをつくってくださるように努力なさるということで了解いたします。  それから年次報告ですが、これがどうも私は何かちょっとこうおかしいといいますか、間違っているとは言い切れませんけれども、何だろうかと思う点がある。たとえば一例をあげますと卸売り業、これの分析なんか実に粗雑にも度があるんじゃないか。これは質問をするより私から申し上げますけれども、小売りに一たんおろして、それから小売りが消費者に売るというのが普通の卸売り業です。ところが統計における卸売り業の規定は、それは事務用器械からペーパーに至るまで、会社に売るもの、建設資材、ガラスから木材から、官公庁に納めるもの、学校に売るもの、全部これは卸売り業なんです。ですから、工業発展とともに流通界もそれに対応した形で変ってまいりますから、そういう形の直接消費へ向った卸——統計面でいえば卸になる。こういうものがふえている。それを見ますと、現にふえているのは、たとえば石油——ガソリンスタンド、あれは卸売り業なんですから。それから鉄鋼、自動車、電気通信、建設資材、こういう卸売り業が急増しているのです。それから一方またふえている面でそれ以外と言えば、婦人子供服、下着類、寝具類、カバン、袋もの、こういうものがふえている、これは合理化のおくれている、直接消費のもので小さな企業がつくっているものですから、だからこういう部面についての卸売り業は、資本主義経済である限り、必然的に消費の伸びとともにふえるのがあたりまえなんです。だから一般的に卸売り業が全部過当競争になったんだ、だから合理化しなければならぬということではなく、現にその電気機械なら電気機械の製品は、そのメーカーが直接末端までつなぐようになってきている。自動車にしてもそうです。そうすれば既存の卸売り業者がそれだけ分野を狭められた関係上、そこに苦しさが発生した。そうすれば問題の解決が違ってくるわけです。こういう分析の仕方が何か非常に平面的に、お義理に書いてある。それでもって政策——ただ単に問屋街の団地づくりくらいの政策をお出しになっている。それともう一つは、スーパーマーケットをつくるとか商店街をつくるとかいったって、あれぽっちの予算で、日本国中の商業の中であれくらいの団地化だとかスーパー、寄り合い百貨店をつくるとか、商店街をつくると言ってもたかが知れている。こんなもので日本の流通界の中にどのような政策として根がおりるのか。何か言われるとうるさいからこう書いたという程度の印象しか受けないわけです。そういう意味で、お出しになるならもう少し真剣にお考えくださって、口でなしにほんとうに資料を整えて、これは短い期間でなくてもいいですから、この次の国会が開かれるまでにはきちんとしたものをお出し願いたい。  以上で私の質問を終わります。
  86. 中村重光

    中村(重)委員 資料要求をいたします。事業者にしてすべての金融機関より借り入れをしていないものの数、いま一つは、取引先及び町の金融業者より借り入れをしていないものの数。これは事業別、規模別に出していただきたい。できますか。これは中小企業基本調査資料というものがたしか出ておる……。
  87. 中野正一

    中野政府委員 どの程度のものができるか、ちょっと勉強させまして、できるだけ御希望に沿うようにしたいと思います。
  88. 中村重光

    中村(重)委員 ぜひとも出してもらいたい。できないはずはありません。
  89. 中野正一

    中野政府委員 実際できるものか、できないものか、ちょっと時間をかしていただいて、できるだけ御希望に沿うようにはいたしたいと思います。
  90. 二階堂進

    ○二階堂委員長 でき得る範囲でひとつお願いいたします。
  91. 中村重光

    中村(重)委員 あまりおそく出されると、質問をするための参考資料だから、早く出してもらいたい。
  92. 中野正一

    中野政府委員 あれば、すぐ出します。
  93. 中村重光

    中村(重)委員 あれば出すと言っても、出そうと思って調査をしてもらわなければできないんだ。ぜひ出してもらいたい。
  94. 中野正一

    中野政府委員 さっそく調査をいたしまして、できるだけ早く資料として出します。
  95. 島口重次郎

    ○島口委員 関連して。中野長官にお尋ねいたしますが、先ほど来金融べースに乗れない、いわゆる国民公庫なりあるいは信用保証制度のベースに乗れないものをどうするんだ。答弁がないわけですね。あなた方、自分たちのやっている金融行政がわかりませんか。金融ベースに乗れないものに対しましては厚生年金制度で出しているじゃないですか。どうですか。
  96. 中野正一

    中野政府委員 通産省の所管でないものですから、そういう制度があるやに聞いておりますが、調べまして……。
  97. 島口重次郎

    ○島口委員 中小企業庁の所管でない、こう言いますけれども国民金融公庫の中に更生資金制度があるじゃないですか。
  98. 中野正一

    中野政府委員 それはございます。しかし、これはやはり全然金融ベースに乗らないようなものに貸すというような制度にはなってないように承知しております。
  99. 島口重次郎

    ○島口委員 これは金融ベースには乗らなくて、それで生活をしていかなければならぬという、それで更生資金と称している。一定のワクがあるんです。そういう制度があるにもかかわらず、ボーダーラインのものにどうするんだということを質問しても、答弁がないということはどういうことなんだ。自分たちのやっている制度がわからないのかね。
  100. 油谷精夫

    ○油谷説明員 ちょっと、便宜私からお答えをさしていただきますが、国民金融公庫では御承知のように更生資金貸し付けというものはございます。しかしこれは当初は国からでありましたが、後府県から金を預託を受けまして、三十億でありますか、その金を貸し付ける制度でございます。しかし、貸し付ける条件等は普通の事業資金と同じようにやれということでやっておりますので、いわゆる社会政策的な救済資金という考え方ではないわけであります。
  101. 島口重次郎

    ○島口委員 いままで更生資金制度の運用の問題は、たとえば外地から引き揚げてくる——大体融資する場合の条件としてはある程度の資本力、商売の経験ということなんであって、外地から引き揚げてくる者は資本力もない、あるいは商売の経験がない、だけれどもそれを放置しておけない、そのための更生資金制度じゃないですか。だから、あなたの言うように、社会保障政策的な立場じゃないというけれども、社会保障政策立場からこの制度を設けているじゃないか。
  102. 油谷精夫

    ○油谷説明員 御説のとおりでございますが、実績がないというだけでございまして、本人にとってはこういう計画でこういう商売を始めるということで融資を受けておるわけでございます。ただ不幸にしまして、御承知のようにこの資金の大部分といいますか、約半分近くが回収困難になっておるというような状況でございます。
  103. 島口重次郎

    ○島口委員 補助金じゃないから、融資だから回収するのはあたりまえじゃないかね。それを称して融資と言うんでしょう。それから金融ベースに乗れると称するのは、ある程度の商売の経験があるものを、ベースに乗ると称する。このベースに乗らないものを更生資金で貸し付けるんじゃないか、これは社会政策じゃないかね。
  104. 油谷精夫

    ○油谷説明員 国民公庫に委託をされました事業といたしまして、当初から金融経済政策といいますか、いわゆる金融ということで貸し付けをしたわけでございます。ただ非常にお話のように借り受けをいたしましたものが、零細な、主として新しく仕事を始めるという方々が多かったのと、それから資金も、当時としてはよかったのでありましょうが、とにかく五万円限度で貸し付けたものでありますが、現在はこの制度はほとんど死んでおりまして、活用されておらない状況であります。
  105. 島口重次郎

    ○島口委員 国民金融公庫の場合でも、十分に貸し付けをしている方がたくさんありますよ。その中におきましては、七万、六万しか貸し付けをしておらない方がある。そうでしょう。更生資金の場合は、確かに個人の場合は五万、団体の場合は二十方円まで貸し付けをしておるわけなんだ、金融べースに乗らないものを対象にして貸し付けをしておる。だから先ほど来金融ベースに乗らないものをどうするんだ、対策がないのかと、こういう質問したのに、何も答弁がなかったじゃないか。
  106. 中野正一

    中野政府委員 いまの御指摘の点は、そのとおりでございます。
  107. 二階堂進

    ○二階堂委員長 次会は、明後十三日金曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十五分散会