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久保田(豊)
委員 時間がありませんから、この問題、もう少し突っ込みたいのですが、
あとの
機会にします。
この
経済運営の
基本的態度の一番ガンになるのは何かというと、根幹になるのは
国際収支の悪化を防止しようということだろうと思います。
政府のあれによりますと、大体ことしは、総合収支では約九千九百万ドルの赤字だ、来年度はどうかというと、貿易収支は輸出入ともに六十二億ドルで、大体においてとんとんだ、それから貿易外収支が大体五億五千万ドルの赤字になる、それから資本収支のほうで四億ドルの黒字になる、したがって、年末には一億五千万ドルの赤字で済む、こういう大体のあれでしょう。しかし、これは実は相当問題だろう、こう思うのです。
私が第一にお聞きしたいのは、輸出が、これで見ますると、前年度の同期に比べて一二・七%ふえる。あなたの算定では、世界の景気が大体においていい。
資本主義国の景気がいい。それと同時に、低開発国も、第一次産品等の値上がり等によって多少活況を呈してきている。そういうところから見て、世界の貿易の
伸びというものは大体六%ぐらいだろう。ですから、経験的にはその倍はいくから、大体六十二億ドルぐらいのことは十分いけるじゃないか、こういうあれのようであります。こまかい点は通産のほうとやりますけれ
ども、私は、ここでやはり
一つの現状認識についての違いが少しあるんではないかというふうに思うわけです。
政府のこの見解をずっと読んでみますと、いまの段階は、世界的にも
日本的にも、いわゆる景気調整、つまり景気循環の一段階であるというふうにとられておる。この循環がある
程度過ぎれば、また発展は相当いくんだというふうに見られておるようであります。しかし、私はそうじゃないと思う。少なくとも、世界的に見ても、欧州でも、大体国によって多少の違いはありますけれ
ども、いままでの高度
成長の一番
基本になっておるものは
設備投資である。つまり技術革新を土台とする
設備投資だ。それから、何といいますか、市場が、ああいうふうに、中間の狭いものを取っ払ったために、市場が広くなる。この
二つの要因が、大体においていままでの比較的高い
成長を維持したものであります。ところが、この
設備投資が各国とも——イギリス等はまだ多少あるようですけれ
ども、相当頭打ちになっておるということは明らかだ。アメリカにいたしましても、自動車、住宅、一般の
個人消費というようなものが中心になって、御
承知のとおり景気はいまのところいい。しかしながら、見方によって、ある人は、後半期になれば
設備投資がさらにふえてくるだろうという見方もしておりますが、多くの人の見方は——
政府はそういうふうに見ておるようですが、多くの人の見方は、
設備投資は大体頭打ちじゃないかというふうな見方が多いようであります。こういう点から見て、私は、少なくともこの数年間、欧州やアメリカの高度
成長をささえてきた一番
基本的な要因である、いわゆる技術革新を中心とする
設備投資による高度
成長というものは、もう一応の段階が来て、これはもう終わりだ——終わりということはありませんけれ
ども、もちろんまだいろいろのものが残ってもおりますけれ
ども、しかし大勢としてはもう終わりの時期に来ておるのではないか、その意味におきまして、総体的な停滞期に入っておるという多くの学者その他の見方のほうが正しいじゃないか、こう思うわけであります。
日本にしましてもそうだ。
日本にしましても、この高度
成長をささえてきたものは、御
承知のとおり技術革新を中心とするいわゆる
設備投資、それが同時にシェアの拡大というふうなものにつながってやってきた。しかし、昨年度からことしへの
設備投資の内容を見ますと、多くはそういうほうへいっていない。石油であるとか石油製品であるとか石油化学、あるいは自動車というようなものは、どんどんシェアを拡大して、どんどん生産能力を増すという方向での
設備投資が相当活発です。しかし、ほかの大
企業については、大体技術革新のための、したがってこれを台とするいわゆるシェア拡大、生炭能力拡大というための
設備投資は一段落だ。昨年度あたりから出てきているのは何かというと、いわゆる研究投資であるとか、あるいは福祉施設を拡充をするとか、あるいは販売網を拡充するとか、そのほか更生ないしは改良というほうの投資が主力であります。直接生産能力を増していくという投資は、もう大
企業については一段落。
中小企業についても——
中小企業の
設備投資が去年あたりは非常に盛んです。ほとんど主力はそっちに移った
感じ。しかし、この内容を見ると、結局親
企業からいわれてしかたなしに設備の改善をした。これはある
程度技術革新と生産能力の拡大というほうにつながっておるものも相当ある。しかし、それ以外に、いわゆる労務対策としていろいろな福祉施設であるとか、特に営業用自動車の投資というようなものが非常に多い。これまた本格的な意味においては、要するに生産能力の拡大といいますか、
成長、こういう意味での頭打ちであります。ですから、表面はそうでありますけれ
ども、これまた、ここでは
設備投資を中心にした従来のいわゆる生産拡大といいますか、高度
成長というものは一段落じゃないか。したがって、その意味においては、表面はともあれ、深部においては、いわゆる総体的停滞期が来ている。これがどうしても内外ともに情勢の
基本をなすものだ、単なる景気循環という問題では絶対にない、こう思うわけです。それなるがゆえに、
日本では、御
承知のとおり完全な開放体制に入ると同時に、外国では、アメリカが盛んに自由化、自由化と言っておりますけれ
ども、ブロック化といいますか、地域化といいますか、そういうもの、あるいは保護主義の傾向が至るところに出てきている。これは特に
資本主義国に多い。こういう状態ですから、これは品目別に詳しくやらなければいかぬかもしれませんけれ
ども、
資本主義下において
日本がそういう簡単に
伸びれる状態ではないというふうに私は思うわけです。同時に、低開発国にしましても、なるほど一次産品は多少の値上がりをしました。しかし、こういうところは御
承知のようなところでありますから、借款なり何なり、あるいは延べ払いなり何なりでそういうものはいいかもしれないけれ
ども、とても支払い能力がないというのが今日の実情であろうと思う。そして、さらにインフレが強くなってくるという傾向から見ると、このほうも私はそう輸出が
伸びるということは考えられない。一方共産圏のほうは相当の輸出力があり、各
資本主義国は最近非常に積極的な熱意を示して
伸びております。ところが
日本は御
承知のような
状況で、アメリカに押えられておる。どっちも実は完全には
伸び得ないというふうな状態で、これまた相当は
伸びるでしょうけれ
ども、大きな期待は持てない。こういう点を考えてみますと、六十二億ドル、前年に比べて同様に一二・七ですか、これだけのすでに
伸びがあるということは、そう簡単に、楽観的に見るのは危険じゃないかというふうに思うのですが、この点はどうですか。