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1964-02-06 第46回国会 衆議院 商工委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月六日(木曜日)     午前十時五十七分開議  出席委員    委員長 二階堂 進君    理事 小平 久雄君 理事 中村 幸八君  理事 早稻田柳右エ門君 理事 板川 正吾君    理事 久保田 豊君 理事 中村 重光君       浦野 幸男君    遠藤 三郎君       小笠 公韶君    小沢 辰男君       岡崎 英城君    海部 俊樹君       神田  博君    菅野和太郎君       田中 正巳君    田中 六助君       中川 俊思君    野見山清造君       長谷川四郎君    村上  勇君       山手 滿男君    大村 邦夫君       加賀田 進君    桜井 茂尚君       沢田 政治君    島口重次郎君       楯 兼次郎君    藤田 高敏君       森  義視君   米内山義一郎君       麻生 良方君    加藤  進君  出席国務大臣         通商産業大臣  福田  一君         国 務 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁調         整局長)    高島 節男君         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  向坂 正男君         通商産業事務官         (大臣官房長) 川出 千速君         通商産業事務官         (企業局長)  島田 喜仁君         通商産業事務官         (軽工業局長) 倉八  正君         通商産業事務官         (鉱山局長)  加藤 悌次君         消防庁次長   川合  武君  委員外出席者         通商産業事務官         (工業技術院標         準部標準課長) 矢渕 久成君         専  門  員 渡邊 一俊君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石油資源探鉱促進臨時措置法を廃止する法律案  (内閣提出第五二号)  通商産業基本施策に関する件  経済総合計画に関する件      ————◇—————
  2. 二階堂進

    ○二階堂委員長 これより会議を開きます。  経済総合計画に関する件について調査を進めます。  先般の長官所信表明等について質疑の通告がありますので、これを許可いたします。久保田豊君。
  3. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私は、きょうは主として政府の三十九年度の経済見通し経済運営基本的態度並びに過般長官商工委員会において述べられました演説について、ごく大どころだけをかいつまんで御質問を申し上げたいと思います。しろうとですから、だいぶ間違ったところがあると思うから、そういう点は遠慮なく教えていただきたいと思います。同時になお、私は長官にぜひ新産都市の実施状況並びに工業整備地域実施状況について具体的にお尋ねをしたいと思いますけれども、きょうはその時間がないと思いますから質問を保留しておきますから、あらかじめひとつ御承知をいただきたい。  まず第一にお伺いいたしたいのは、この政府からいただきました資料をずっと分析をしてみますと、毎年の政府経済見通しというものと、その実績というものは、はなはだしく食い違うわけです。これはもう池田内閣以前からそうでありますが、特に池田内閣になりまして高度成長政策というものが行なわれて三年になるわけですが、三年の実績を詳しく数字で申し上げてもいいのですが、時間が惜しいから省きますけれども、非常に大きく食い違っている。これは一言でいえば、経済は生きものであるとか、あるいは日本経済潜在力というものの把握のしかたが不十分だったとかいうことばでいわれるわけですが、少なくとも経済計画というのは年々の予算規模をきめる一番基本数字になっていると思うのであります。なぜこういうふうに年々の大きな相違が出たのかということについて、企画庁としては十分に反省をしてみる必要があるのではないか。その原因をどのように把握されているのか。もっとはっきりいえば、企画庁の能力が足らないからこういう間違った数字が出てくるのか、あるいは経済に対する見方が間違っておるからこういう相違が出てくるのか、こういう点の把握をはっきりといたしませんと、特に今後中間計画等をお立てになることを表明されておりますけれども、私はこれは何にもならぬということになろうと思います。これは歴代の企画庁長官に聞いても、この点はいつでも明らかでない。そうして結局は一年たってみると、そのときの出た数字を土台にして、また同じような作業を繰り返すというようなことになっておるのじゃないか、こう思うのであります。政府として、こういう見通し数字がどういう意味合いとして、どういうふうにとらえておるのか、また、これについて民間はこれをどうとらえておるのかという点をはっきり認識した上で、こういうものに取り組むべきものだと私は思うのでありますが、この食い違い原因について、企画庁としてはどういうふうに理解をされておるのか、またこの食い違いをなくすために今後どういうふうな施策をとられようとしておるのか、こういう点をはっきりしなければ、中間計画をかりにお立てになりましても、これまた三年たって平均してみたら大体同じようにいったという程度のことになるんじゃないか、こう思うのであります。この点の御解明をひとついただきたい。
  4. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御指摘のように、私ども立てます経済見通しというものが、過去から現在まできわめて実績と比較いたしまして不正確であるということは、仰せのとおりだと思います。その理由は、おそらく非常にたくさんの理由があると思いますが、考えつくものを幾つか申し上げますと、私ども作業をいたしますときに基本にいたしますいろいろな統計、それらが実はきわめて不備ないしは全く欠けておるというようなことに一つ原因が求められると思うわけでございます。たとえば、国民経済全体にどのくらいの在庫があるかというようなことにつきましても、非常に正確な統計はないわけでございます。それからまた企業操業率がどのくらいになっておるかというようなことにつきましても、推測を出る以上の統計というものがございません。そういう基礎とすべき統計が不備であるということがございます上に、わが国経済が御指摘のように非常に成長を続けておる。これは理由があって成長をしておるわけでございますけれども、きわめて動態的であって、全く静態的でない。すなわち非常な早い成長をする潜在力を持っている経済の中で、いろいろな経済指標を示すところの統計がまた他方で欠けておる、そういったようなことが基本にあるのではないかと思うのであります。  それから、一つ別の面で考えられますことは、自由主義経済あるいは資本主義経済でございますから、一応経済活動というものは合理的になされるというふうに考えるわけでございますけれども、実際には必ずしもその経済活動というものは合理的になされていないと思われる面がございます。それは、たとえばわが国経済活動そのものが非常に集団的であるというようなことを申し上げることができると思います。つまり、一人一人の経済人が独立に自分の考えで行動するというよりは、一人が何かをすると、みんな同じような傾向に向かって動く、きわめて、これはいい場合にも悪い場合にも集団的に行動をするといったようなことが、純粋の経済人の考えることと、あるいは行なうこととかなり違っておるのじゃないかと思われる節がございます。またもう一つは、資本主義経済でございますから、当然採算に基づいて投資計画などが行なわれるであろうというふうに一応考えるわけでございますが、事実は必ずしもそうではありませんで、いわゆる経済の分野におけるシェアの拡大というような動機が相当強く経済人に働きまして、採算をかなり無視をして設備拡張計画をやるといったような動きが、過去ずっと見えるわけでございます。つまりそういう面から申しますと、非常に集団的である、あるいは採算をともすれば無視したような投資計画をやるというようなことは、経済人そのものが必ずしも合理的に行動をしていないということになるわけでございますが、それがまた経済の予測を非常に困難にしておるというふうに考えられます。  申し上げますとまだたくさん理由があると思いますけれども、ただいま御指摘があって気のついておりますことは、そのような幾つかの点だと思います。
  5. 久保田豊

    久保田(豊)委員 どうも私はそればかりじゃないように思うのです。一つは、確かに日本の各種の統計の取り方等が非常に機械的で、また不備な点がある。しかし、まあかなり正確にはなってきているわけです。相当に政府としても全体的に見れば金もかけているわけですから、かなり正確に近くそれぞれの部門部門のあれはあると思うのであります。ですから、統計が不十分だからそれで不正確になるのだということは、まあそれだけではないにしても、問題にはならぬと思うのであります。  ただ、私はいつもこれを見て感ずるのは、二つの大きな原因があるのじゃないか、こう思います。一つは、政府数字の出し方が、きわめて政策的な意図を盛り込んだ数字が非常に多いわけです。政策的意図といいますか、政治的意図を盛り込んだ数字指標としてとられる場合が非常に多いということと、もう一つは、やはりいまの経済社会客観原則に対する理解というか、そういうものに特に目をつぶってやろうというようなところが非常に多いのじゃないか、こういう二点に大きな原因があるのじゃないかというふうに私は思うわけであります。しかし、これは見解の相違になりましょうから、時間の関係もありますので先に進みますが、特に私は三十九年度の経済見通しという数字は非常に政治的な意図が作用して、この数字そのものが非常に政治的につくられておるように思うのです。しかもそういう政治的な意図から、全体としてこれを統一的にながめる場合に、非常に不つり合いな面がもう数字そのものに出ているというふうに解せざるを得ないわけです。それは、たとえば最初にあなたが指導されてつくられた企画庁の原案は実質成長率を六%に見ておる。ところがあなたと首相とが相談をして、これを七%に上げた。ところが、ほかの分は必ずしもこれにすっかり正確に合っていない面が非常に多いわけです。この上げたということについても、私はこれは悪意かどうかわからぬが、一つはやはり池田さんが——客観的にいまの時代を見る点については、あとでまたひとつ意見を交換したいと思いますが、いま時代のつかみ方もいろいろ問題がありましょうけれども、それよりは、高度成長政策がいろいろなひずみが出てきて、一つの転換期になっておる。はっきり言えば、政策転換をしなければならないという時期にあるにかかわらず、それをやると池田さんの三選にいろいろの大きな影響が出てくるのじゃないか、こういう意図一つあったことと、それからもう一つは、あとでこれも詳しくお聞きしたいと思っておりますが、予算編成都合上六%ではぐあいが悪い、どうしても七%程度にしなければぐあいが悪いという二つ意図から、この成長率そのものが動かされたように思うわけです。あなたも日本経済新聞の十二月二十四日に、経済新聞編集局次長との対談では、六%に食いとめられなくて非常に残念だったというようなことを言っております。ですから、経済企画庁がいまのいろいろのデータなり条件の中で、最も良心的につくられたものが、首相一言で変わるというふうなことは——まあ、総理大臣はいつでも、経済はおれが一番専門家だと言っておりますけれども、こういうことをやるから、こういう数字が非常に変なものになってくるのではないか、こう私は思うのです。この点が一つ。  さらにその次に、この数字について、たくさんありますけれども、こまかく全部あげるわけにいきませんから、この中で特に鉱工業生産伸び率を九%に見ております。これは低過ぎるのではないかと思う。なぜかというと、いろいろの計算に使われる数値やなにかを使って計算すれば、どんなにしたって、大体国民総生産が七%上がれば一〇%ないし一一%の鉱工業生産伸びでなければならぬはずです。ところが、これがあえて九%に押えられている。これはどこに意図があるかといえば、これははっきりしている。それはなぜかといえば、鉱工業生産がかりに一一%ないし一二%になれば、どうしたって原料材その他の輸入量がふえてくる。そうすると六十二億の政府見通しではおさまらぬ。そうすると国際収支の赤字がさらによけいになってくる。こういうところから、特に鉱工業生産伸び率を小さくしたと見るよりほかにない。さらにもう一つの点をあげてみると、個人消費の支出の伸び率を一一・七と押えております。これも低過ぎる。少なくとも一三%ちょっとぐらいでなければならぬはずであります。ところがこれは、あなたの新聞記者との会見では、こう押えたところに苦心があるのだということを言っておられる。それはなぜかというと、いままでは表面の理由は、要するに消費が非常に堅調で、このままいったのでは消費が非常に堅調になるので、結局経済規模も大きくなるし、そしていわゆる押えがきかなくなる。輸入も大きくなる。こういうところから、どうしても消費を、少し上がり過ぎたものを押えていくという政策をとるのが当然だという、こういう配慮から出たということを、あなた自身が言っておる。しかしその裏に、あなた自身も言っておるとおりに、いわゆる労働者に対する所得政策というものがちゃんと裏打ちになっておる。要するに労働者の賃金をできるだけこの機会に下げていこう、下げていくためにはこの数字を小さく見たほうが適切であるということを、ほかの機会にあなたは言っておられる。これ三つだけとってみても、ことしの経済成長見通しというのは非常に政治的だ、こういうふうに思われるわけです。私はこういうふうな態度がいいかどうか、ここにやはり問題があるのではないかと思うのです。こういうふうな態度で一項目、一項目数字を、必ずしも全体との統一性をはっきり確保しないで、そして一々政策意図を込めて、こういう数字を次々に、あるものは都合が悪いから上げる、あるものは都合がいいから下げるというようなことをやっておる、こういう態度がやはりこれからの経済運営基本を制約するものになるのではないか、これではうまくいくはずがない、こう思うのですが、この点はどうでしょう。
  6. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもが決定いたしますのは、経済見通し経済運営基本的態度、お手元にございますようなものでございますから、したがって、こういう作業の中に政策努力というものが入ってまいることは御指摘のとおりだと思います。つまりこういう仕事をいたしますときに、明年度経済がこうありたいという、ありたいという姿と、あるであろうという姿とは必ずしも一致しないわけでございますから、当然に、政府が全面的な政策努力をすることによって、幾らかでもありたい方向に近づけていこう、こういう気持ちが常に働くわけでございます。このたびの三十九年度の基本的態度の中では、そのあるであろう姿とありたい姿とを書き分けてあるわけでございます。しかし、いずれにしても久保田委員のおっしゃったような気持ちは、私ども基本的にございます。ございますが、しかしありたいと考えましても、それが客観的にとうてい不可能であるという場合もございますから、そういうときには、やはり客観的な可能性の範囲の中でとめなければならない。いかにありたいからといっても、とうていできそうもないようなことを見通しとして書くというようなことはいたしていないつもりでございます。一例を申し上げますと、たとえば消費者物価が、四・二%であろうということを申しておりますが、これなどはどちらかといえば、消費者物価は上がらないということを言いたいわけでございます。けれども客観的にそれは可能ではない。やはりこの程度のことは最善の努力を尽くしてもどうも起こるであろうということになりますと、やはりそういう客観的な可能性の前には、当然それを認めていかなければならないというような気持ちになっていくわけでございます。それですから、御指摘のような気持ちはございますけれども、客観的な不可能性までをこの見通しの中に書くということはいたしておらないつもりでございます。  それから、成長率の問題について御指摘がございました。七%という結論に達しますまでの過程では、確かに相当いろいろなことを考えたわけでございます。いろいろ数字がございましたが、総理大臣云々というような経緯があったわけでございません。むしろ一番私が刺激を受けましたのは、昭和三十七年の経済が必ずしも好況な経済ではなかったわけでございますが、昨年の暮れになりまして、正確な国民所得計算が出てまいりましたのを見ますと、三十七年の経済成長率は五・九%であったということになったわけでございます。私どもはそれを五・一か五・二であろうというふうに、実はそのときまでは考えておったわけでございます。意外にも五・九%というあの実感の、どちらかといえばかなり不況であった経済にしては、数字の上では相当高い率であったということがわかりました。そういうことから判断いたしますと、三十九年度の経済というものは六%といったようなものではとうていあり得ないであろうというような見通しになってまいりました。それで七%という数字を出してきたわけでございますけれども、ただいま御質問の中に御指摘がございましたように、この七%というのは、私はどちらかといえば少し低目に押えておるという感じがするわけでございます。先ほど仰せになりましたように、九%の鉱工業生産伸びというものは、少し小さくないかということを仰せになりましたが、私にも幾らかそういう感じがいたすわけでございます。もしそうであるといたしますと、七%という数字は決して高過ぎませんで、どちらかといえば低目ではなかろうか、私もどちらかといえばそういう傾きがあるように感じるわけでございます。ですから低いものを無理に高く上げたというのではありませんで、どちらかといえばその逆のような気持ちのほうが私には強いわけでございます。  それから鉱工業生産経済成長率との間の関連について御指摘のありましたことは、多少私は違う意見を持っております。昭和三十年ごろから今日までの鉱工業生産伸び率経済成長率とを比較いたしますと、その間に函数関係がどうも発見しがたいわけでございます。たとえば設備投資主導権をとりまして、鉱工業生産がふえましたときには成長率が相当大きくございます。しかしそうではないときには鉱工業生産が相当高くても、成長率があまり高くないときがございます。これは詳しくは数字をあげて申し上げてもいいのでございますけれども、また年によりましても鉱工業生産がマイナスであって、経済成長率がプラスであるというような年もございます。その両者の問に函数関係を発見することができません。それにはいろいろな理由があると思いますが、少なくとも考えられます幾つかのことは、鉱工業生産国民経済活動の中で持っておる比率というものは、大体経験的に三分の一くらいと思います。一次産業、二次産業、三次産業とございます中で、ほぼ二次産業にあたるでありましょう鉱工業生産の持っております比率が三分の一くらいしかないというようなこと、それから鉱工業生産伸びがどういうものの主導のもとに行なわれてきたか。設備投資であるとか在庫投資であるとか、いろいろあると思うのでありますが、そういうことにもよりますし、また伸び率そのものが、六%の場合と二〇%の場合とでは、やはり成長率に及ぼす影響も違ってくる。それらのいろいろな理由がありまして、鉱工業生産経済成長率との間の函数関係というものは発見しがたいように思うわけでございます。したがって、九%の鉱工業生産で七%の成長がおかしいということはないように思うわけでございます。  それから最後に御指摘になりましたのは、九%の鉱工業生産というのは少し低目ではないかという点、それは私もどちらかといえばそういう心配をしておるわけでございます。心配と申します意味は、御指摘のように国際収支の問題もございますし、いろいろなことがございますから、在庫がふえていながら鉱工業生産がさらにふえ続けるということは何か不自然なことである、経済の正常な動きではないという感じがいたしますもので、あまり大きく鉱工業生産伸びてほしくないというような気持ちを持っております。まずそこまでお答えを申し上げておきます。
  7. 久保田豊

    久保田(豊)委員 いまの国民総生産鉱工業生産との間の函数関係というものは非常にむずかしいあれだと思います。しかしまあいままでも、大体経験的に方式はきまっているわけですね。そういうものではじいてくるとほぼこういう数字になるといって差しつかえないと思う。また、いま鉱工業生産が御承知のとおり非常に在庫が多い。製品在庫が非常に多いにもかかわらず非常な高水準をいまのところ保っているわけですね。それはなぜかといえば、いま高度成長政策で借金して施設をうんとつくったのだから遊ばしちゃおかれないという事情もあり、あなたの言う収益分岐点が高くなった。そういういろいろな事情から、下げたくてもなかなか下げられないという一つ事情から、これを高くせざるを得ない。こういう状況になってもある程度高くせざるを得ない。そうしてある段階にいけば、これは何かの処置をしなければならぬという問題になってきますけれども、これは資本主義のあれからいえば、当然、いまの行き方の三年間の集積の上では、そういうふうに出ざるを得ないと私は思う。これをどう、あなたのことばでいえばなだらかに押えていくかということがことしの一番大きな課題じゃないか、こう思うわけです。しかしそれだからといって、私は、頭から数字を出して、当然予想される数字を押えるということはどうか、こう思うわけです。まあしかし、この点は私の本旨ではありませんから次に運営のほうに、基本的態度のほうにひとつ移っていきたい、こう思います。  この本年度の基本的態度並びにあなたの演説を聞いて感ずることは、ことしは引き締め基調でいく。その引き締め基調というのは、いわゆる開放経済の中ですから、従来のように、ものをいきなり押えたり、あるいはなんなりすることは非常に困難になってくる。したがって、財政金融措置を通じていわゆる引き締め政策を浸透さしていく。そういう中で、まあいままでのところであらわれたのでは、いわゆる国際収支の危機といいますか、これを何とかうまく切り抜けていこう。それから物価の上昇というものも押えていこう。さらに非常に立ちおくれておる農業と中小企業をひとつ改善していこう。もう一つ社会投資ですか、公共投資ですね。これが非常におくれているから、これをひとつ回復していこう、こういうのが基本政策と思うわけですが、そういう前提に立ってみると、初めから出発点がおかしいじゃないか、こう思うのです。  引き締め基調といいながら、予算はどうかというと、御承知のとおり最初田中さんが閣議で了承を得た線は、予算規模財投も大体前年度の一〇%増し、こういうことであったわけです。ところが選挙になってから、これじゃまずいというので、とたんに一四%に増された。それを基準にしていろいろやられて、そして結局はどうかというと、予算規模は一四・何%ですか、こうなってきた。財投規模はどうかというと、二〇・何がしということで、合わしてみても相当大きな、少なくとも積極予算インフレ予算だ。しかもこれにいろいろの尾ひれがついておりまして、正確にやればもっと予算規模が大きくなることは御承知のとおり。一つは、いろいろの政府保証債によるものが財投の中に非常に多い。あるいは予算規模を特に小さくするために、国立学校特別会計をつくってみたり、あるいは住民税の減収分の補てんを元利の補給債でやっていくというようなことをして、いろいろなことをして予算規模をできるだけ小さく見せて、そのかわり財投のほうは政府保証債を中心とする借り入れ金——公債というんじゃないでしょうけれども、主として公債でもってやるようにした。こういう点から見れば、実際の規模はもっと大きいと見て差しつかえないのじゃないか。さらにその上にどうかというと、本年度の予算では、次年度に増してくるいろいろの経費が多いわけですね。これが非常に多い。ことしはいいかもしれませんけれども、来年はさらに予算の膨張を来たす点です。さらにもう一つの点は、ことし公共投資がさらに非常にふくれた。いままでは大体総計で約六兆ぐらいです。それが全部集めると、大体十兆から十一、二兆になるでしょう。これから年年やっていくということになりますと、これまた非常に膨張要因になってくる。こういうのを見ると、ことしの予算はすぐ出ないまでも、来年度以降には非常に大きな膨張予算、いわゆるインフレ予算をつくられた、こういうことになると思うのです。そうすると、財政を通じていわゆる引き締め政策をやっていこうという点は、はっきりここでもってくずれていく、こう言わざるを得ないと思うのであります。しかも税金のほうはどうかといいますと、国民総生産に対する租税の何とか率というのは非常に高く、二・六というふうにことしは特に高くなっておる。去年が大体一・二六ぐらいでしょう。その前年が一・六幾つぐらい、まあことしあたりのような調整過程でやれば大体一・四か一・五ぐらいが適当でしょう。それを特別に高く見て税金をよけい取る。この面からも私は明らかに一つインフレ予算だと言って差しつかえない、こう思うのであります。したがって、要するに引き締め政策あとに残されたものは何かというと、金融面を通じてだけということになる。もっぱらこれにたよらざるを得ないということです。ところが、金融面のほうでは、いままで二つの引き締め策がとられたわけですね。一つは、準備率を倍に引き上げたということ、一つは、窓口規制を一−三の貸し出し純増分について一割、大体二百四十億ぐらいでしょう、これをやってきた、こういうことですね。ところが実際には、金融界がいろいろの関係で非常に繁忙ですから、要するに揚げ超が多いからということでしょうね、そういう点で繁忙だというので、これが相当にいろいろのでこぼこを持ちながらきている。しかし、いずれにしてもこういうふうにほとんど金融にすべてを託して、財政のほうで引き締めるのではなくて逆に膨張をやった、インフレをやった、そして金融のほうでそれを肩がわりしていこうということになりますと、これは及ぼす効果というものは非常に違ってくる、こう思わざるを得ない。こういう矛盾した政府政策というものは、おかしいじゃないか。少なくとも開放体制下において財政と金融とがいわゆる均衡をとりながら引き締め政策をやっていく、こういうので初めて私はなだらかな移行ということもある程度可能になると思う。ところが、こういう片びっこなやり方では、なだらかというわけにはいかないと思う。この点に対するあなたのお考えはどうかということであります。  それから、あなたはこれの調整策として、新聞記者に話したところでは、情勢によっては予算なり財投の、要するに一時執行停止なりあるいは執行の引き延ばし、こういうようなものをやってもいいというようなことを言っておられる。しかし、はたしていまの内閣で、そう言ってはなにですけれども、やれるのかどうか、もしそうした場合に、よって起こるところの、いろいろの方面における影響というものはどういうふうに見ておられるのか、ここらに、もうすでに出発点からして波乱含みの一つの体制をつくっておるじゃないか、こう思うのですが、この点に対して、はたしていまの内閣が予算なり財投の繰り延べなり執行停止、こういうものをやり得るのかどうか、やる腹があるのかどうか、またその場合に対する対策というものを考えてこういう措置をとられたのかどうか、これをお伺いしたいと思う。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 表現なり見方なりでは、必ずしも久保田委員のおっしゃいましたことと同一でない点が幾つかございますけれども、しかし問題の大づかみな指摘としては、まさにただいまおっしゃいましたようなことが問題だろうと思うのでございます。予算あるいは財投がインフレ的かということになれば、私はインフレ的だとは思いません。前年度に対する伸び率にいたしましても、前回、前々回よりは小そうございますから、またその費目について見ましても、いわゆるインフレ的なものではないというふうに考えております。しかし、先ほど仰せられましたように、一方で経済引き締め基調運営しながら、他方で中小企業の問題もあり、農業の問題もあり、公共投資の問題もございますし、いわゆる振りかえ所得、社会福祉的なものもございます。そういうたくさんの目的を追うのは欲ばりではないかというふうにおっしゃれば、それは、そういう意味では私はそうだと思うのでございます。けれども、そのくらいなことはできる経済だというふうに考えております。つまり相当大きな設備投資が、しかも新しい設備投資がなされて、生産能力がむしろ余剰と言えるくらいにある経済でございますから、そのような幾つかの目的を並行して追っていくということは、私はいまの日本経済にはできるというふうに考えておるわけでございます。租税負担率が確かに高いということは御指摘のとおりでございますが、しかし考えてみますと、租税の負担率がどのくらいであるべきかということは、その租税がどういう目的で使われるかということとの関係で考えてもらわなければならないと思います。福祉国家というようなものを目ざしていきますときに、それはやはり高額所得者から低額所得者への財政を通じての移転といったようなことは当然あってよろしいことでございますし、負担できる階層からはかなりの租税を取って、それが公共投資なりあるいは福祉施設なりに向けられていくということは、排撃すべきことではないと思うわけでございます。低いにこしたことはございませんけれども、ただ低ければそれでいいんだということは、私どもの考えております福祉国家の姿と必ずしも一致しないように考えるわけでございます。でございますから、租税負担率は決して低いとは申しませんけれども、それが、要はいかに社会正義に基づいて使われるかということが問題ではなかろうか、こう思うわけでございます。かれこれそういうことを考えますと、いまの日本経済でこのような予算あるいは財投計画を組むということは意味があることでありますし、さして無理なことだというふうには考えておりません。しかし、さてその結果、その程度においては、引き締め基調運営するということが、やはり少しその限度ではそれだけそこなわれるであろうということは、それはもうそのとおりでございます。そのとおりでございますから、それだけのものはやはり金融でも一考えていかなければならない。金融だけにたよるというふうには考えませんけれども経済引き締め基調で行なうということは、かなり大きな部分が金融にかかってくる仕事である、そのとおりだと思うわけでございます。しかし、それにいたしましても、やはり中小企業といったようなものが非常な危機におちいるということは避けるべきでありますし、むしろ中小企業の生産性を上げたいという目的をほかに持っておりますから、一方的にただ金を引き締めたらそれでいいんだというようなわけのものでもない。総体、ただいま御質問を伺っておりまして、確かに運営のむずかしい経済であるということは仰せのとおりだと思いますが、最善を尽くしてそのむずかしいところを幾つかの目的を追いながらやっていく、こういうのが私ども基本的な考え方でございます。
  9. 久保田豊

    久保田(豊)委員 ただいま、まだ日本経済がそれだけ余力はあるんだ、それが証拠には遊休施設がまだ相当あるんだと言うが、大体において相当遊休施設はなくなっているんですね。勧告操短等も一部やっておりますけれども、おもなものについてはそうないわけですね。そんなにそういう点で余裕はないんじゃないか。それにこれだけの財政規模、これにさらにいろいろの政府関係機関やその他地方のものまで入れれば膨大な需要になり、それが主として資本的といいますか、何といいますか、有効需要を刺激するような要素になっていることは明らかである。また同時に、国家経費と総生産との比率を見ましても、これは今日の状況では大きくなるのが普通でしょうけれども、しかしそれにしても、いまの引き締め基調の中でこういう予算をつくるということは、少なくとも予算なり財投はこれはインフレ要因であって、むしろそれらはかえってあとになってからのっぴきならぬような結果を持ってくるんじゃないか、それを心配する。あなたは、場合によってはひとつ予算なり財投の執行を引き延ばすというふうなことも考えてみなければならぬと言われることでしょうけれども、来年度に大きく尾を引く非常に危険な財政態度だと私は言わざるを得ないと思う。そして一方において金融だけにしわを寄せて、それで何とかやっていこう、何とか調整をとっていこうという態度は、私はこういう日本の段階ではとるべきものじゃないというふうに考えるわけです。この点は意見相違になりましょうから……。  そこでもう一つお伺いしますが、あなたの言っておられるように、経済事情によっては、財投なり予算の執行をあるいは引き延ばすということをやるのかどうかということが一点。その場合にはどういうふうな用意をしてやるのか、どういう影響があるということを見てやるのかということ。それからもう一つ、これは金融上のいわゆる引き締め政策というのは、いま二つ出ているのは、窓口規制と、それからいまの準備率の引き上げだけですね。問題は、いつも公定歩合を上げるかどうかということが一つの問題になる。これは池田さんは非常にきらいだ、とにかく公定歩合だけは引き上げはやめてくれということらしいが、この二つの措置だけでやれるものかどうか、今後いわゆる金融引き締めの措置として考えておられるものはどんなものを考えておるのかということを、もう少し具体的に伺いたい。
  10. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 責任の直接の当事者ではございませんから、あまり具体的に申し上げることはできないと思いますけれども、たとえば実行予算などを組む気があるかという御指摘であれば、そういうことを考えるつもりはございません。ただ抽象的に申しますならば、予算なり財投なりの執行というものは、やはり経済の基調を見ながらいたすことが必要でございますし、ことに先ほどから御指摘のように、相当むずかしい問題をかかえた来年度の経済でございますから、財政の運営にもやはりそれだけの配慮があってしかるべきものだ、この点は大蔵大臣も同様に考えておられるように承知をいたしております。  それから金融で、さらにどういうことをやっていくかという問題でございますが、公定歩合の問題も、私、当事者でございませんから、抽象的に表現するしか方法がございませんけれども、金利の負担を国民経済にかぶせていくということは、それだけではあまり意味がないように思うわけでございます。千億以上の借り入れ金をしておる企業などがすでに相当あるわけでございますから、一厘というようなことでも相当な負担になるわけで、国際競争その他の観点からいって、そのことは格段の、それで金融が締まるといったような実体的な意味はないのではないか。むしろ金利の問題ではなくて、壁の問題であろうというふうに考えるわけでございます。過去において、預金準備率の引き上げと、それからいわゆる窓口規制ということをやってまいりましたが、この窓口の規制の方法、数量的な方法は、経済の繁閑に応じていかようにもなり得ることでございますし、また、他方でオペレーションというようなこともございますから、そういったようなことを考えていけばいいのではなかろうか、抽象的にはそんなふうに考えております。
  11. 久保田豊

    久保田(豊)委員 そうすると、これからの金融引き締めの方策としては、売りオペですか、これをやっていく。それから、いわゆる選択融資は、当然結果としては強くなってくると思うのですが、これはどうなんですか。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 選択融資と言われましたのは、銀行として優良な相手により多く貸すということでございますか。一般的に申して、そういうことは、金が締まってくれば、どうしてもありがちだというふうに考えます。したがって、中小企業に対する貸し出しを忘れてくれるなということを、しばしば金融界にも要望しておるのでございますが、最近の傾向は、中小企業だからといって貸さないという姿ではなくなってきたようでありまして、中小企業でもいいものには貸していこう、こういう傾向がだいぶんに見えておるように思います。いわゆる大企業に圧倒的に偏重するというようなことが、かなりなくなりつつあるように考えます。  それから、もう一つ困った問題は、そこに銀行としての自分のシェアの確保という問題がございまして、系列企業だけを非常に大事にするといったような、必ずしも合理的でない態度一つ見えますので、それについてもできるだけ反省を促していきたい。しかし、一般的にいって、金融が詰まってくれば銀行の態度が選択的になるのではないかとおっしゃれば、市中金融機関に確かにそういう傾向はあると考えます。
  13. 久保田豊

    久保田(豊)委員 時間がありませんから、この問題、もう少し突っ込みたいのですが、あと機会にします。  この経済運営基本的態度の一番ガンになるのは何かというと、根幹になるのは国際収支の悪化を防止しようということだろうと思います。政府のあれによりますと、大体ことしは、総合収支では約九千九百万ドルの赤字だ、来年度はどうかというと、貿易収支は輸出入ともに六十二億ドルで、大体においてとんとんだ、それから貿易外収支が大体五億五千万ドルの赤字になる、それから資本収支のほうで四億ドルの黒字になる、したがって、年末には一億五千万ドルの赤字で済む、こういう大体のあれでしょう。しかし、これは実は相当問題だろう、こう思うのです。  私が第一にお聞きしたいのは、輸出が、これで見ますると、前年度の同期に比べて一二・七%ふえる。あなたの算定では、世界の景気が大体においていい。資本主義国の景気がいい。それと同時に、低開発国も、第一次産品等の値上がり等によって多少活況を呈してきている。そういうところから見て、世界の貿易の伸びというものは大体六%ぐらいだろう。ですから、経験的にはその倍はいくから、大体六十二億ドルぐらいのことは十分いけるじゃないか、こういうあれのようであります。こまかい点は通産のほうとやりますけれども、私は、ここでやはり一つの現状認識についての違いが少しあるんではないかというふうに思うわけです。政府のこの見解をずっと読んでみますと、いまの段階は、世界的にも日本的にも、いわゆる景気調整、つまり景気循環の一段階であるというふうにとられておる。この循環がある程度過ぎれば、また発展は相当いくんだというふうに見られておるようであります。しかし、私はそうじゃないと思う。少なくとも、世界的に見ても、欧州でも、大体国によって多少の違いはありますけれども、いままでの高度成長の一番基本になっておるものは設備投資である。つまり技術革新を土台とする設備投資だ。それから、何といいますか、市場が、ああいうふうに、中間の狭いものを取っ払ったために、市場が広くなる。この二つの要因が、大体においていままでの比較的高い成長を維持したものであります。ところが、この設備投資が各国とも——イギリス等はまだ多少あるようですけれども、相当頭打ちになっておるということは明らかだ。アメリカにいたしましても、自動車、住宅、一般の個人消費というようなものが中心になって、御承知のとおり景気はいまのところいい。しかしながら、見方によって、ある人は、後半期になれば設備投資がさらにふえてくるだろうという見方もしておりますが、多くの人の見方は——政府はそういうふうに見ておるようですが、多くの人の見方は、設備投資は大体頭打ちじゃないかというふうな見方が多いようであります。こういう点から見て、私は、少なくともこの数年間、欧州やアメリカの高度成長をささえてきた一番基本的な要因である、いわゆる技術革新を中心とする設備投資による高度成長というものは、もう一応の段階が来て、これはもう終わりだ——終わりということはありませんけれども、もちろんまだいろいろのものが残ってもおりますけれども、しかし大勢としてはもう終わりの時期に来ておるのではないか、その意味におきまして、総体的な停滞期に入っておるという多くの学者その他の見方のほうが正しいじゃないか、こう思うわけであります。日本にしましてもそうだ。日本にしましても、この高度成長をささえてきたものは、御承知のとおり技術革新を中心とするいわゆる設備投資、それが同時にシェアの拡大というふうなものにつながってやってきた。しかし、昨年度からことしへの設備投資の内容を見ますと、多くはそういうほうへいっていない。石油であるとか石油製品であるとか石油化学、あるいは自動車というようなものは、どんどんシェアを拡大して、どんどん生産能力を増すという方向での設備投資が相当活発です。しかし、ほかの大企業については、大体技術革新のための、したがってこれを台とするいわゆるシェア拡大、生炭能力拡大というための設備投資は一段落だ。昨年度あたりから出てきているのは何かというと、いわゆる研究投資であるとか、あるいは福祉施設を拡充をするとか、あるいは販売網を拡充するとか、そのほか更生ないしは改良というほうの投資が主力であります。直接生産能力を増していくという投資は、もう大企業については一段落。中小企業についても——中小企業設備投資が去年あたりは非常に盛んです。ほとんど主力はそっちに移った感じ。しかし、この内容を見ると、結局親企業からいわれてしかたなしに設備の改善をした。これはある程度技術革新と生産能力の拡大というほうにつながっておるものも相当ある。しかし、それ以外に、いわゆる労務対策としていろいろな福祉施設であるとか、特に営業用自動車の投資というようなものが非常に多い。これまた本格的な意味においては、要するに生産能力の拡大といいますか、成長、こういう意味での頭打ちであります。ですから、表面はそうでありますけれども、これまた、ここでは設備投資を中心にした従来のいわゆる生産拡大といいますか、高度成長というものは一段落じゃないか。したがって、その意味においては、表面はともあれ、深部においては、いわゆる総体的停滞期が来ている。これがどうしても内外ともに情勢の基本をなすものだ、単なる景気循環という問題では絶対にない、こう思うわけです。それなるがゆえに、日本では、御承知のとおり完全な開放体制に入ると同時に、外国では、アメリカが盛んに自由化、自由化と言っておりますけれども、ブロック化といいますか、地域化といいますか、そういうもの、あるいは保護主義の傾向が至るところに出てきている。これは特に資本主義国に多い。こういう状態ですから、これは品目別に詳しくやらなければいかぬかもしれませんけれども資本主義下において日本がそういう簡単に伸びれる状態ではないというふうに私は思うわけです。同時に、低開発国にしましても、なるほど一次産品は多少の値上がりをしました。しかし、こういうところは御承知のようなところでありますから、借款なり何なり、あるいは延べ払いなり何なりでそういうものはいいかもしれないけれども、とても支払い能力がないというのが今日の実情であろうと思う。そして、さらにインフレが強くなってくるという傾向から見ると、このほうも私はそう輸出が伸びるということは考えられない。一方共産圏のほうは相当の輸出力があり、各資本主義国は最近非常に積極的な熱意を示して伸びております。ところが日本は御承知のような状況で、アメリカに押えられておる。どっちも実は完全には伸び得ないというふうな状態で、これまた相当は伸びるでしょうけれども、大きな期待は持てない。こういう点を考えてみますと、六十二億ドル、前年に比べて同様に一二・七ですか、これだけのすでに伸びがあるということは、そう簡単に、楽観的に見るのは危険じゃないかというふうに思うのですが、この点はどうですか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大胆なことを申し上げるようでございますけれども国際収支の赤字が一億ドルとか二億ドルとかいうことは、そのこと自身は実は私はそんなに心配をしていないわけでございます。むしろ問題は経常取引、ことに貿易外で大きな赤字を出しながら、それを資本収支でカバーをしているという姿がよくないので、これを直さなければならないということをむしろ申しておりますので、国際収支に総合で二億ドルとかなんとかいう赤字がかりに出ましても、私はそのことは決して心配をすべきことではないというふうに考えておるわけであります。  それから、世界経済の来年度の見方、これは自分の国の経済も正確に予知し得ない者が申すのはおこがましい感じがいたしますけれども、たとえばアメリカなどでは、政府見通しはヘラー委員会が立てておるわけでございます。ここでは減税法案が通れば——おそらく三月ごろには通るかとも思いますが、大体実質で五%の成長がある、相当強気の見方をしております。この点はアメリカの政府ばかりでなく、たとえばマクグローヒルとか、いろいろ政府以外の機関でもほぼ一致してかなり高い、四%ないしそれ以上の成長を見ておるようでございますから、これは一応それに信を置く以外にやり方がないのではないか。イギリスでもかなりの成長を見ておりますし、フランスとかイタリアとかいう国がどうなるかということには、あるいは問題があるかとも思いますが、しかし、東南アジアを含めまして、大体世界の三十九年度の貿易の環境というものは悪くない。これも実際になってみなければわからないことでございますけれども、そう見るのがほぼ通説ではないか。私どもそういう通説に従ってものを考えておるわけでございます。  そういたしますと、世界貿易の伸びというものはやはり六%とか、七%とかあるはずでございますし、経験的にはわが国がそれに対して弾性値が丁二ぐらいであるということを考えておるわけでございます。これは品物別にも多少積み上げておりますし、地区別にも作業をいたしておりますけれども、六十二億ドルという数字そのものは、いまの通説が大体当たります限り、そんな無理な数字ではないではないか。世界の景気の動向よりは、各国にぼつぼつ見られますような輸入制限の動き、このほうをどちらかといえばむしろ私は心配をいたしておりますが、しかし、六十二億ドルそのものは、実務家の意見を聞きましても、そんなに無理だという感触を持っておられる人はないようでございます。ただ、これも国内の経済が、先ほど御指摘のように、どの程度引き締め基調でいけるかということに相当大きな影響がございますけれども、まずまず輸出のほうについてはそんなに無理な数字ではないではなかろうかという感じを持っております。
  15. 久保田豊

    久保田(豊)委員 私も輸出のほうはまだと思います。これはどれを見ても、各銀行あたりの見通しを見てもそう大して無理じゃない。ただ輸入のほうは六十二億ドルでとまるかというと、とまりそうもないというのがどうも一般の見方のようですね。これで見ると、落ちついてくれば、相当原材料の手持ちも多いし、そんなにむだな、あわを食ってやる必要はないのだ、だから、落ちついてくれば、原材料もこのくらいのあれでやろう、こういうことが中心のようですが、確かに機械類の輸入は頭打ちをなして、伸びるという要因はないと思う。しかし、自由化になってくれば、物価政策の点からいっても、消費物資はどんどんいままでふえていますね。それに今度は物価政策が加わって、やれ今度は豚が高いから豚を入れるとか、肉が高いから肉を入れるとか、何を入れるのだということで次々入れていくと、そういったものも相当ばかにはならないという点です。  それから、特に原材料は非常に在庫水準が低いわけです、十一月ごろが大体八四、五ではないですか。十二月、一月で相当大幅に入りましたから、相当積み増しになっておると思いますが、しかし実際は原材料の水準としては非常に低い水準です。こういうことで、ある点から見たり、あるいはその他いろいろな点から見て、私はそんなに——また企業のほうからいえば、あなたも御指摘になっておるとおり、とにかく借金で施設を拡充したのですから、原材料がないからといって工場を遊ばすわけにはいかない。そうすれば採算はなお悪くなる。同時に、労働者も簡単には首は切れませんから、そのほうからもそう簡単に操短率を上げるというわけにはいかないというふうな点から、これは生産がきわ立って急に落ちるということも考えられない。そうすれば、どうしても原材料は相当よけいになるのではないか。あなたがこの中で指摘しておるように、前年度は、御承知のとおり、砂糖であるとか、小麦であるとか、あるいはなたね、その他のああいう特殊な突発的なものでもって多少ふえていますね。こういうものはなくなるでしょう。なくなりましょうけれども、そういう点から見て、どうも六十二億ドルというのは低過ぎるというのが一般の見方のようです。大体六十四億ドルくらいがまず水準ではなかろうかというのが、ほとんど大方の見方でしょう。政府だけが六十二億ドルでがんばられておると見ていいではないかと思う。だから、貿易収支がとんとんだという見方は非常にあぶないと私は思いますが、この点はどうでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 三十八年度の五十七億五千万ドルに対比いたしまして六十二億ドルが小さいではないかということでございますが、これはいまちょうど御指摘のございましたように、三十八年度にありました、かなり特殊だと思われる要因はまず繰り返されないという前提で差し引く必要があると思うわけでございます。砂糖などは急に下がるということは考えるわけには参らないかもしれませんが、しかし、たとえば相当量の麦を天候の関係輸入したとかいったような、そういう種類のことは必ずしも繰り返すと考えなくてもいいではないかと思いますので、そういう要因を差し引いてまいりますと、六十二億ドルというのはかなりたつぶりした伸びを見ておりますことは事実だと私は思うのでございます。  それから、現在輸入原材料の在庫は決して高くないぞとおっしゃるのは、そのとおりだと思います。したがって、もうたっぷりだから買わないだろうと考えるわけにはまいりません。それから、企業の損益分岐点が高いから、そんなに操業率を下げるわけにはいかないだろうとおっしゃることも、そのとおりだと思うわけでございます。したがって必要な原材料の輸入はかなりあるというふうに考えなければならないと思います。ただ、自由化でいいところと悪いところがあると考えますのは、自由化の結果、いわゆる原材料でない不要不急の、どっちかといえばファンシーといわれるようなものが相当入ってくるだろうということは、これは覚悟いたさなければなりませんけれども、他方で、大部分のものが自由化になっておりますから、輸入業者のほうで思惑の輸入をする必要がなくなってきたということは、自由化の美点だと考えます。十二月に輸入担保率を引き上げるのではないかといううわさがございまして、相当大きな輸入承認がございました。しかし、その内容を見てみますと、ほとんど飼料でありますとか原燃料でありますとか、そういったようなものばかりでございます。これはおそらく輸入承認を求めましてから半年の有効期間がございますから、どっちみち半年の間に買わなければならないものなら、かりに担保率が上がるのなら上がらない前に買ったらよかろう、こういう動機だったと判断をいたしますので、したがってこれは原材料、燃料等がほとんどでございますから、今後半年間に輸入承認を求めるべきものが、一カ所に一度にまとまったというふうに見てもよかろう、こういうような感じでおるわけでございます。六十二億ドルという数字が絶対だというふうには私も申し上げられませんので、それが六十四億ドルになることがあるかもしれないではないかとおっしゃれば、あるいはそうかもしれません、こう申し上げるよりほかにないわけでございますけれども、そうなりましても、それが国民経済に必要なものが買われておる限りは大して気にすることはない、大して問題ではないというふうに感じるわけでございます。
  17. 久保田豊

    久保田(豊)委員 その次に一番問題になるのは、これは言うまでもなく貿易外の経常収支の赤字が非常に大きいということ。これは政府のほうでいうと、五億五千万ドルということになりますが、貿易外の経常収支の内容というのはどんなになっているのですか。話をしていただければ——資料があればいただきたいと思う。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは資料がございますので、後ほどある程度のものは差し上げられるのではないかと思いますが、収支だけのバランスを申しますと、これは三十九年度の見通しでございますが、運輸で二億六千万ドルの赤、保険で千八百万ドルの赤、投資等の収益——送金でございますが、ほぼ一億ドルの赤、その他、サービス五億何千万ドルの赤というようなものがございまして、そのほかに軍関係の受け取りが三億がらみのものがプラスになる。したがって軍関係を除きますと八億余りの赤字、それを軍関係で三億がらみプラスになりまして、ネットで五億五千万ドルの赤字、大体大まかにはそういうことでございます。
  19. 久保田豊

    久保田(豊)委員 あなたも御承知のとおり、一番の問題はここにある。あなたのほうで出された経済月報の十二月号にかなり詳しい分析があるわけです。これを見ると、大体貿易外の経常収支を三つに区分しているようです。一つは、要するにそれ自体で独立的に動くいわゆる経常収支の分、一つは貿易に付帯して動くもの、一つは資金の出入りに付帯して動く分、こういうふうに三つに分けておられるようです。この分析は私は非常におもしろいと思うのであります。これをちょっと読んでみますと、経常つまり独立的に動く部分については、大体においてことしは特許権の使用料というのは、いまお話しのように一億ドル近くであって、これはだんだんふえていくわけですね。それから映画フィルム、政府間取引というのは主としていまの軍関係ですね。これが三億ドルですか、これは昨年に比べてどのくらい減っているか、こういう点もお聞きしたいと思う。それから海外旅行は、日本側としてはことしは相当ふえるのじゃないか。しかしオリンピックがありますから、ことしに限ってはこれはいいんじゃないか。軍関係は、アメリカからの軍関係の経費というのは、アメリカ軍がだんだん引き揚げていき、そして日本に対する軍事援助といいますか、そういうものがほとんど打ち切られている関係では、むしろこれはだんだん減っていく。したがって、これは現在のところ黒字だけれども、将来は赤字になる公算が非常に多いということを言っておるわけです。  それから、資本取引に付帯しているものは、これは要するに、資本がどんどん入れば、これに対して利子の支払いや配当の受け払いその他がふえていくわけです。これは計算をしてみますと、資本の流入超過が一億ドルあると、大体五百万ドルが悪化してくる、赤字幅が大きくなってくる、こういうことになる。一番大きいものは、何といっても貿易に付帯する経費ですね。これは運賃の受け払い、港湾経費、保険料、海外事務所の経費、それから銀行の手数料、このうちで一番大きいのは運賃の受け払いと港湾経費、大体こういうことだろうと思う。これは、いまのところ日本で非常に船が足りないものですから、邦船の積み取り率が非常に悪い。こういうことから経費はだんだん悪化していく状況です。FOB換算でやると、一億ドル貿易が増せば五百万ドルだけが悪化するという数字になるようです。  したがって、こういう点を考えてみると、貿易がいまのように六十二億ドルでいきますと、相当大きな赤字がふえて、政府見通しよりは七千万ドルくらいふえるんじゃないかというふうに思われるわけであります。そのほかにまだ日本としては借りた金を返さなければならぬわけです。償却分が四十一年以降になるとずっとふえてくる。こういうことで貿易外収支の構造的なものになっているわけです。  この赤字を埋めるのに何を持ってくるかというと、結局アメリカから金を借りる。いわゆる資本導入をやる、こういうことになる。その資本導入は、ドル防衛で押えられてきて、非常に窮屈になっている。これでは資本収支が四億ドルの黒字になっているが、これもどういうふうな内容で四億ドルの黒字になるのか御説明願いたいし、結局こうして貿易外の収支、特に貿易がふえればふえるほど赤字がよけいになっていく。さらに資本取引の超過分がふえればふえるほど赤字になっていく。それから経常経費の独立的なものも大体の傾向としては赤字化してくる。こういう構造的な一つのあれになっておるということを、このあなたのほうの研究雑誌にはこまかく書いてある。その赤字を埋めるべき資本収支が結局はアメリカからの借金だ。その借金のうちで、経営参加的なものは別として、いわゆる普通のローンはこれからどんどん返していかなければならぬ。そうしますと、赤字を埋めるための借金が、要するに資本の導入がまた赤字を大きくしていく、こういう構造になっておるわけです。私は、これが国際収支では問題の一番中心だ、この悪循環をどこでどうして断ち切るかということが一番根本問題だ、こう思うわけです。  政府の考えでは、あなたが言っているのは二つある。一つは船をどんどんつくれ、こういうわけです。ところが、ことし六十四万総トンですか、くらいではとても追いつかない。運輸省の試算では、四十二年度に大体運賃の赤字を埋めるのに、赤字がパアパアになるのには一年に二百万総トン、しかも積み取り率を非常に改善をしなければやっていけないという。では二百万総トンの船ができるか、これを財政投融資でできるかというと、私はできないと思う。したがって、この赤字は、いやおうなしにたちのいい資本をなるべくアメリカから借りてくるよりしかたがない。借りてくればますますアメリカに頭を下げていって、しかも全体としての貿易収支は赤字になる。しかも、アメリカとの関係においては、貿易収支そのものも御承知のとおり大きな赤字です。しかも今後この大きな赤字はますますよけいになりそうです。特にアメリカとの貿易外の収支の赤字、入超のうちで見落としているものが一つある。それは何かというと、中近東から入ってくる油です。あの油が二億八千万からもっとあるでしょう、あれはみんなアメリカのものでしょう。しかも見返りの品物はほとんど出ない。ですから、アメリカの貿易じりの赤字には、あの中近東からくる油を加えなければほんとうの赤字は出ない。こういう関係をますます深くしていくという、ここに一番基本があるわけです。こういう構造的なあれをどう断ち切るかということは、政府としては本気に考えなければならぬものです。これは一年や二年で片づく問題ではありません。この点については最後に少しお話し合いをしたいと思うのですが、こういう構造的な問題をはらんでくるようにしたのは、これはもともとからです。しかし、アメリカ一辺倒の経済といいますか、一辺倒と言うと語弊がありますが、アメリカを中心にした従来の日本の海外関係がこうなってきたので、特に高度成長下でひどくなっていると見ざるを得ないと思うのですが、どうですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 貿易外収支の赤字が構造的なものであるということは、もうまさに御指摘のとおりであると考えます。  そこで、先ほどお尋ねのございました軍関係がどうなっておるかと申しますと、三十六年度に三億七千万ドル、七年度に三億六千万ドル、今年度、三十八年度は三億三千万ドルくらいではなかろうか、明年度は三億ドルを割るだろうと考えます。おっしゃるように、これは漸減をしていくものでございますし、またこういうものはあまり当てにすべき性格のものでもないと考えるわけでございます。それから、海運関係では、IMF方式をとってまいりますと、今年度で四億三千万ドルくらいの赤字でございます。そのうちで運賃そのものが二億ドル余り、残りの二億ドル余りが港湾経費から船舶用の油、用船料などでございますが、三十七年度が三億五千万ドルでございました。三十六年度は非常に輸入が多い年でございましたから四億八千万ドルになっております。三十八年度は四億ドルをちょっとこえたところではなかろうか。そこで、三十九年度の場合にかりに——私はそう思いませんが、かりに輸入が六十二億ドルでなくて六十四億ドルになれば、その分だけは海運の収支に響くであろうとおっしゃいますことは、積み取り比率が現在のような状態でございますから、そのとおりだと考えます。しかし、六十四億ドルになるというふうには私どもはただいまは思っていないということを先刻申し上げたわけでございます。  そこで、この構造的な問題をどうして直していくかということは、たとえば海運であるとか観光であるとかいう問題になると思うのでありますが、海運では今年、三十九年度に六十何万トンというものを予定しておりますが、どうも船台のほうを見ますと、ほぼ百万トンくらいの建造余力があるように思いますので、六十何方トンということにこだわらずに、処置をとって、できれはもっとつくれるようにしていきたいと私ども考えて、いま研究いたしております。それから、観光のほうは大体毎年少しマイナスでございます。三十九年度は、たまたま先ほど仰せられましたようなことで、ほんのちょっとわずかなプラスを見ておりますけれども、どっちみちこれはほとんどとんとんか、マイナスというのが毎年の傾向でございます。まあ、これはオリンピックなどの機会に、やはりなるべく外客を誘致するような環境をつくっていくということでやっていくべきものだろうというふうに考えるわけでございます。  そこで、そのような貿易外収支の赤字を資本取引の黒字で埋めておるということは、私も先刻申しましたように決していい姿ではないと考えます。けれども経済成長していく、そのために質のいい外資を貸すものがあり、またそれを借りようではないかということ自身は、そのこと自身が不健全だとは考えておりません。経済がうまく運営されていく限り、そういう借款の提供というものも今後も続いてあると思いますし、また従来借りておったものが期限がくれば借りかえというようなこともあるわけでございましょうから、それが国民経済の生産力なり輸出力になっていく限り、そのこと自身は私は少しも差しつかえない、と申すよりはむしろ歓迎していいのではないか。ただ恒久的に貿易外で赤字が出まして、それを資本取引の黒でカバーしていくという姿は、何とかして貿易外収支の赤字をなくすことによって直していきたい。その方法は、御指摘にもございましたように、やはり海運とか観光とかそういうものであろうというふうに考えるわけでございます。
  21. 久保田豊

    久保田(豊)委員 一体こういうふうにして、あなたの所得倍増計画はこれからどういう長期計画になるかわかりませんけれども、大体成長率がある程度伸びるということを考えてあなた方としてはつくるでしょうし、またこれはある程度伸びていくでしょう。しかし、その場合に、いわゆる最低限必要な外貨量というものはどの程度あったらいいのか、また同時に、その内容はどういうものでなければならぬかという点の検討がないのじゃないか。実はこの前経企庁長官の藤山さんにもこの点をつっついて質問してみたのですけれども、ないのですね。まあとにかくあればいいのだというのですが、いままでの日本経済の循環というものは、御承知のとおり外貨でいつでも壁がある。それが今度は、外貨を救うために、要するに今度は引き締め政策をやる。そうして不景気になって、何とかして外貨がちょっとたまるとまたやると、ぱっと伸びていく。これからはぱっと伸びないでしょうけれども、やはりそういう循環の一番基本になるのは外貨です。したがって、今度のあれでは、安定成長ということが、要するにこういう景気、不景気の波をできるだけ小さくしようというのが一つのねらいだと思う。したがって、やはり外貨が経済成長に応じて大体どれだけあったらいいかということを、これは函数なり何なりの数値が出るかどうかわかりませんけれども、ある程度考えてやらなければ、いままでのように、もうとにかく詰まったときには何とかかんとかやる、そうして締めて、あるいは借金をして穴埋めをしておいて、ちょっとよけいになってくればすぐぱっとやる、今度は開放経済下ではそういう操作は実際にはなかなかできないわけです。もちろん足りなくなれば、国際通貨基金なんかからまた借りてきて一時穴埋めすることはできるでしょうが、しかし、片方において、要するに毎年経常収支の穴埋めのための借金を今後も当分の間続けていかなければならぬ。私は、今度中期の経済計画立てられるようでありますけれども、やはり一番大きな現実の課題というものは、この外貨の壁なり何なりをどう打開していくかということが一番中心の問題ではないかと思う。したがって、それには何らかの基準というか、目標がなければならぬはずです。いままでのように出たとこ勝負で、そうしてまあこの辺でいいだろう、この辺でいいだろう——あなたは大体二億ドルや三億ドルの赤字が出たって平ちゃらだと言うが、しかし私はそれだけでは済まないと思う。おそらく、日本でも外貨の手持ちが十五億ドルを割ってきて、あるいは十億ドルを割ってきて、あるいはそれに近づいてきたということになれば、これはあなたは平ちゃらでも、世間はじっとしてはおりません。必ず何らかの措置をとらざるを得なくなる。そうすれば、経済成長なり貿易の成長に応じた外貨のあるべき手持ち量なりその内容は何かということ、それに到達するにはどうしたらいいかという点をしっかり考えるのが、ほんとうの今日の日本経済の自立性を高めていく根本じゃないか、こう私は思うのです。この点はどういうふうにお考えですか。
  22. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 必要最低限の外貨の量がどのくらいであるべきかということについては、定説はどうも私はないように思います。考えますと、正常輸入量の何カ月分くらいあったらいいかというようなことでも考えてみるのかと思いますが、たとえばこれも各国で非常に違っておるように思います。オランダとかイギリスとかいうあたりが、二月分くらいあるいは三月分くらいのものを持っておるのではないかと思います。それから西独のように非常にたくさん持っておるところもございます。これは半年以上持っておるのじゃないかと思います。わが国の場合に、大体二カ月分いま持っておるわけでございますから、まあまずまずということであろうか。これも別に確たる定説もございませんから、経験的にはそんなことではなかろうかと思うのでございます。二億ドルや三億ドルは平ちゃらだと申し上げたわけでもございませんけれども、IMFのゴールド・トランシェのこともございますし、外貨が減ること自身がそんなに心配だというのではなくて、ほかに問題があるということをさっき申し上げたわけでございます。ですから、外貨が大いに減って、貿易も経済活動もどうも動かぬようになったというようなことは、少し大胆に申せばわが国では起こり得ないだろうと私は思います。しかし、過去何年かとかく外貨のポジションが低くなりまして、経済政策を調整しなければならなかったということはそのとおりでございますし、今回もややそういう傾きになってきておるわけでございますから、どうも二十億ドルより下ではやはり天井にこつこつとぶつかる場合が多い。これもしかし経済活動が大きくなりますと輸出も輸入も大きくなりますから、外貨のほうもそれに従って成長しなければならないわけでございますけれども、いまのような状況でやはり二十億ドルより下ということは、ときどき天井に頭をぶつけるような感じがいたすわけだと思います。
  23. 久保田豊

    久保田(豊)委員 二十億ドルといいますと少し過小じゃないかというように思うのです。これは確かにあなたの言うとおり、定説はないわけですね。いままでの経験からいって、大体どうもやはりそういうところで二十億ドルというのは少し過小じゃないか。十五億ドルを切ってくれば大体において必ず騒ぎだしますからね。ですから、貿易がこういうふうにどんどん伸びてきた段階で、二十億ドルというのは大体貿易量の百二十億ドルの六分の一ということでしょう。輸出入からいえばそういうことですね。これでは実に私は、ときどきこつこつくらいじゃなくて、始終これから小当たりに当たっては引き下がってきて、景気調整を年がら年じゅうやらなければならぬというようなことになりはせぬか。ここらについて私はもっと突っ込んで——いろいろ経験もあるでしょうし、これはなかなか定説で学説的にどうだというものはないと思います。しかし、日本の貿易なり国際収支構造を十分に検討されれば——私は学者でもありませんし、そうこまかい資料を持っておるわけじゃありませんから、なかなか検討しようにも検討するわけにいきませんから、案はありません。しかし、少くとも政府、特に企画庁としては、私はそこらに対して今後の経済見通しの上に立ってはっきりした目標を立てていかなければだめじゃないかというふうに思うのですが、こういう点の検討はいままでされておるのですか、されてないのですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二十億ドルということをきわめて雑に申し上げましたのは、ただいまの段階ではと申しました意味で、六十億ドルといたしますと三分の一でございますから、まあ四カ月分、このくらいあればという、ごく雑な感じを申し上げたわけでございます。外貨が十五億ドルになるなんということはないと私が申しますのは、そういうことになれば、ゴールド・トランシェにしても、何にしても、しごくわけなく借りられる金があるわけでございます。ただ、この金を借りるということは、やはり利子もつくわけでございますし、返さなければならぬということでありますから、できればあまりそういうものは借りたくないというだけのことだと思います。輸入量に対してどれだけ外貨があればいいかということについては、私の知っておる限りあまり研究はなされたことがないように思いますので、今度所得倍増計画の中期の実施計画を立てますときに、間もなくその作業をことし一ぱいかけていたしますが、この問題はひとつ特別の項目として研究をしたいと思って準備を  いたしております。
  25. 久保田豊

    久保田(豊)委員 貿易ないしは外貨とユーロダラーとの関係はどうなんですか。貿易が赤字が大きくなり、あるいは国際収支が悪くなるという場合には、ユーロダラーはどんな関係になりますか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それはこういうことだと思います。一般論としては、国際収支に問題が出ますと、大体国内の金利を引き上げることになります。そういたしますと、ユーロダラーのようなものは流入しやすいということが一般論だと思います。ただ、非常に極端な場合に、だれが見ても非常に外貨があぶないといったような国には、そういう金は流れてこないだろうと思いますけれども、一般にはそういう関係にあると思います。
  27. 久保田豊

    久保田(豊)委員 大体いままでの経験で、ユーロダラーの流入——外貨が少なくなれば、どうしても金利は上がってくる、こういうことになりますから、ユーロダラーなんかそっちをねらってくることになりましょうけれども、従来の実績はどうなんですか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと従来の何年間かの実績数字を持っておりません。調べまして何かの形でお届けいたすことができるかと思いますが、一般論としては、私どもユーロダラーというものを、ことにホットマネーはあまり歓迎していないわけでございます。入りそうになりますと、金利を下げまして押えたりいたしておる。一般論といたしましてはそんなふうな考え方をいたしておるわけでございます。
  29. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それに関連して、来年度資本取引は四億ドルの黒になっていますね。これは大体まあ出るというものはそんなにないのじゃないかと思うのですが、入ってくるものですが、どんなものを予定をされておるのですか。あるいは特にあなたの談話の中には、大体利子平衡税が一応二月ごろに確定をすれば、一%の利子がつくものないしはそうでないものについて、アメリカあたりではまた採算立てて、日本とすれば、一%の税金を払っても安くなるから、これをとってこようというふうなことを考えておられるやにも見えるわけですね。だから、一%はしようがない、それでもいいから何でも持ってきて穴を埋めなければならぬというふうな——穴を埋めると言うと語弊があるが、そこらはどういうふうにお考えになっておるのですか。  なお、それと関連して、せんだっての日米合同委員会でこれは一番中心の問題になって、特に田中さんが相当に強くいろいろやったそうです。ところが、向こう側が柳に風といいますか、この点については前の言質以外には一歩も与えなかったというようなことですが、この辺の消息なり、いまの四億ドルの黒字になってくる基礎の中にどういうものを考えておられるのか。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 資本収支につきましては、実は出るほうもかなりございますので、入りが六億ドル余り、借り入れ金とか外債、証券でございますが、それから出の方が三億六千万ドルぐらい、あとはユーザンスがプラスになるわけでございます。  利子平衡税の問題は、私ども政府の中にも多少違った幾つかの考え方がございまして、私自身は利子平衡税というものはけしからぬ税金である、たてまえとしてはこれは間違っておるという考えで発言を過日もいたしておりました。それから、大蔵大臣は、むしろそういう理論的な問題よりは、日本の場合にやはりカナダと同じような扱いをすべきじゃないかということを強く主張しておられたわけでございます。実際問題といたしましては、あの法案の成立を見越しまして、あれが三年以上のものはということでございますから、三年未満のインパクト・ローンのような形で金がぼつぼつ入ってきておるというのが実は実情だと思うのでございます。あれが成立いたしますと、今度は当然利子のついたところで三年以上の金が入ってくるかと思うのでございますが、そういうのが実情でございまして、わが国の外貨に非常な危機がくるというようなことは、先刻私申し上げましたように、ないことだと考えますし、アメリカ側としても、したがってそういうことになれば考えると言っておりますけれども、そういうことは実際にはないことだと私などは腹の中で思いますから、あれを向こうが日本に対してまけようというようなことは、まずちょっとなかなかありそうもないことだし、どういう見通しかとおっしゃいますから、率直に申しましたら私はそういう印象を持っております。
  31. 久保田豊

    久保田(豊)委員 それでは、まだ私は、物価問題その他について、中期計画の問題についてもう少しいろいろ要点について御質問申し上げたいのですが、きょうはもう時間がないそうでございますから、それらの質問を保留をいたしまして、これで一応終わります。
  32. 二階堂進

    ○二階堂委員長 午後一時三十分まで休憩したします。    午後零時三十二分休憩      ————◇—————    午後二時開議
  33. 二階堂進

    ○二階堂委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出石油資源探鉱促進臨時措置法を廃止する法律案を議題とし、まず通産大臣より趣旨の説明を聴取することにいたします。福田国務大臣。     —————————————
  34. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 石油資源探鉱促進臨時措置法を廃止する法律案につきまして、その提案理由及び要旨を御説明申し上げます。  石油資源探鉱促進臨時措置法は、昭和二十九年に限時法として制定された法律であります。すなわち、同法は石油資源の探鉱を急速に促進する必要のある地域を指定し、その地域内にある石油を目的とする試掘権につき、施業案の変更の勧告及び命令、存続期間の特例、試掘権の譲渡等鉱業法の特則を定め、もって、当該地域における石油資源の探鉱を促進することを目的として制定されたものであります。  しかるところ、同法が制定された翌年には国策会社として石油資源開発株式会社が設立され、同社を中心として石油資源の探鉱及び開発を強力に推進する体制が確立されたのであります。  わが国の石油鉱業は、この石油資源開発株式会社の設立を一つの契機として大きな変貌を遂げ、その後は全国の有望未探鉱地域における鉱区の大部分を同社が保有して国策的な要請に基づいて石油資源の探鉱の急速かつ計画的に推進されました。  この間において石油資源探鉱促進臨時措置法意図した目的も漸次実現を見るに至ったと考えられるのであります。  石油資源探鉱促進臨時措置法は、施行の日から十年以内に廃止するものとされており、その期限が本年四月三十日に到来するのでありますが、以上に申し述べました事情にかんがみ、今回、同法を廃止することといたしました。  この法律案の内容は、石油資源探鉱促進臨時措置法を廃止することを規定したものでありますが、そのほか施行期日および若干の経過措置を定めております。  以上がこの法律案の提案理由及びその要旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  35. 二階堂進

    ○二階堂委員長 以上で説明は終わりました。  本案についての質疑は後日に譲ることにいたします。      ————◇—————
  36. 二階堂進

    ○二階堂委員長 次に、通商産業基本施策に関する件について調査を進めます。  先般の大臣の所信表明等に対する質疑の通告がありますので、これを許可いたします。中村重光君。
  37. 中村重光

    中村(重)委員 最近、通産省の所管事項でいろいろな事件が発生いたしております。大阪の加藤ビル会社社長加藤尚、この人物が百貨店の申請をやった、この許可にからんで、若林現在の炭政課長が逮捕された、こういうことが報道されたのであります。百貨店の問題は、御承知のとおり中小企業の問題に対しまして非常に重要な関係を持ちますために、許可基準に対しての規制というものがそれぞれあるわけであります。それらとの関連等も出てまいりますので、私どもこれを重視しておるわけであります。  まず、この事件の内容に対して御説明を願いたいと思います。
  38. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 御案内のように、ただいまはその事件については警察で取り調べをしておる段階でございまして、われわれのほうで事件の内容自体を、全貌を明らかにするほどこまかい事情はいまのところわかっておりませんが、一応われわれが調べたところによりますと、京都の百貨店の売り場の改造に関連いたしまして、大阪通産局の係の者が何か金銭の供与を受けた、あるいは供応を受けたということで事件が始まりまして、それを取り調べておるうちに、福井の放送会館関係のビルを百貨店にしてもらいたいという話について、若林課長が大阪通産局の商工部長をしておりましたとき、何か供応を受けたような事実があるということから、当時百貨店の認可に関係のある人がそういうことを受けたとしますならば、これは当然取り調べもし、また罪があればそういうことで起訴しなければならぬというような実情もあるというような事情から、京都警察が取り調べをするということになっております。これはその内容でございますから、はっきりしたことはわからないのですが、弁護士をつけまして、どういう事情であったかということを聞いてみておるのでありますが、いずれにしても、こういうことは非常に遺憾なことでございまして、私としては就任以来、特にこの種の問題については実は非常に注意をいたしまして、あなたも御承知だと思いますが、ちょうどこの前に鉱山局の水銀に関する課長の問題で何か汚職があるようなことを言いまして、それで一ぺん取り調べたことがあるのです。これは全然事実無根で、だれも有罪にならないし起訴されなかったのでありますが、私はそのときにも、通産省というのは業界と関係が非常にいろいろあるから、そういうような関係の人は特に注意しなければいけないということを実は綱紀粛正の意味から言いまして、また綱紀振粛という意味からいっても特に気をつけてもらいたいということを言っておったのでありますが、今回このような事件が起きて、まことに残念にたえません。私はきのうまた、こういう事件もあったことであるから特に注意しなければいけないというて、大臣名で、実は各局の者に、特にこういうような業界との関係においては注意をして行政に当たれという実は厳重な通牒も出したような次第でございますけれども、いずれにいたしましても、こういうことが起きたということは私にとってはまことに遺憾にたえないところであります。
  39. 中村重光

    中村(重)委員 問題は、大臣がただいま、事件はさほど重大なことではないではないか、こういうことであったんですが、公務員がその職務を利用して汚職をやるということそれ自体はきわめて許しがたいことでありますが、その汚職をやった、この新聞報道によりますと、百貨店の許可に対してまあ利便をはかった、こういうことが報道されておるわけなんです。どういうことをやったのか、事件の内容に対しては大臣御答弁のごとく目下取り調べをやっておるので、その真相は詳しくはわからないと思いますけれども、私どもがこの事件に対して関心を持つことは、百貨店の許可が、この便宜をはかったということにおいてゆがめられているのではないか、これは非常に中小企業者の影響という問題から重要な問題であると思うわけであります。したがいまして、この点に対して大臣としては関心を払わなければならないんじゃないか。そこでこの事件に対して、当該便宜をはかったというこの許可がどのような形で行なわれたのか、そのことについてはすでに調査をしておられるのであるかどうか、調査をしておられるとするならば、あるいはまた調査をしておられないとしても、その経緯ですね、許可をするに至った経過というものは申請書によって明らかでありましょうから、まず、それらの点に対してひとつお答えを願いたいと思います。福田(一)国務大臣 実はまことに皮肉なことなんですが、これは福井の事件でございまして、福井市にはだるま屋という一つのデパートがあるわけであります。そして新しく放送会館が建ちまして、それに関して、一階、二階、三階をデパートにしたいという動き加藤氏がやっておりました。これは私は選挙区だから非常によく知っておるのであります。それで私のところへも頼みに——頼みにきたというのはおかしいが、依頼に、選挙区の人ですから来るわけで、来たこともあります。私は、その当時小売り店が反対をしておりました百貨店の関係、そういうものをつくってもらっちゃ困るというので、近所のいまあなたが一番心配されておる問題を、私はその事情を知っておったので、それはだめです、とにかく私は中小企業の味方ということでやっているので、それが小売店が反対するようなものは、それは小売店のほうでみんなが納得したということになればどうか知らぬけれども、そういうことは認められませんよということをはっきり私は言うたわけであります。そうしたところが、それから半年ほどたって、実はまあ下のほうから、企業局のほうから、判を押してくれ、それで課長がやってきて、実は大臣の選挙区の問題で、大臣に一ぺんも連絡しないできまっちゃったんでおかしなことになりましたが——これはあなただから実相を申し上げるのですが、どうも大体下調べその他すべて済ましてみると間違いがないということでありますから、判を押してもらいたい、こういうことがあったわけであります。私はその事情を知っておったから、はたしてこれは解決ついたのか。これは一番いいのは、何といっても商工会議所の会頭が必ず答申をすることになっているので、それから私秘書に電話を福井へかけさせまして、一体それはすべて地元において解決がついているのか、小売り店がずいぶん反対していたがということを聞かせたのであります。そうしたところが、それは全部解決がついております、こういう話であったのであります。小売り業者との話が全部ついておれば——これは反対があれはもうこんなものは絶対できない、たとえ、いかなる請託があっても——私はそんなことを考えてもいなかったのでありますが、まあ話がついたというなら、しかも全部調べて書類がきちんとできているのに、私が今度また一存でとめるというのもこれはおかしなことだと思って実は判をついたというのが偽らざる実情であります。そういうことでございまして、いまあなたの御心配になりました小売り業者を圧迫しはしないか、中小企業を圧迫しはしないかということについては、少なくとも私としては最大限の注意を払って処置をいたしたつもりでございます。ちょうど事情もよくわかっておっただけに、なお注意をしてやったつもりなのであります。ただこれに関係してこういう事件が起きたということについては、これは私としてはまことに遺憾にたえない、こう思っておる次第でございます。
  40. 中村重光

    中村(重)委員 どうも大臣の率直な答弁と、しかも福井県であるという、それはつい私も感じないまま質問しておったのですけれども、問題は大臣とどういう個人的関係があろうともそれは別でありますからお尋ねしなければなりませんが、いま大臣が最大限の注意を払った、こう言われるわけです。決してことばじりをとらえるわけではありませんが、小売り商が相当反対をしておった、ところがその書類がすべて円満に解決をしたとして出てきたんだから、これは許可をしないわけにはいかなかったという前の御答弁があったわけであります。小売り商もそう簡単にこれは引っ込まないはずであります。これは相当な圧力があっていいのじゃないかというように感じるわけであります。たまたま私の郷里である長崎県にも、デパート許可の問題に関連をいたしまして相当混乱がありました。いろいろな問題もあったわけでありますが、解決をいたしたのでありますけれども、その解決というものは必ずしも円満にこれが行なわれたと言えない面もなきにしもあらず、こういうことであります。そこで、大臣が最大限に注意を払ったとおっしゃるのでありますが、この事件が発生をしたことと関連をいたしまして、何か大臣として相当無理が行なわれたのではなかろうかというようにお感じにならないかどうか。またそのことに対して特に調査をしなければならぬという必要を感じていらっしゃらないかどうか。まずその点に対してのお答えを願いたいと思います。
  41. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ごもっともな御質問でございますが、私がこれは解決したというのは、商工会議所の会頭からその話を聞いたときに、いままで反対していた小売り業者がその百貨店の中に、今度許される中に、どうも入って仕事をするといいますか、これは寄り合い百貨店という形とは別でございましょうが、何かそこでやっぱり仕事を与えてもらう、こういうことで話がついたということを聞いたのであります。そうなると、何といいますか、みんなが一緒になって仕事をしていく、協業化というような政策をいまわれわれのほうでも進めておる段階でもあるし、小売りをしておる人がその百貨店の売り場の一つを使わしてもらうというか、そこの従業員になるか知らぬが、そういう意味で円満に解決をしたんだ、こういう話を聞いておりますので、それならそれでもいいのかな、こういう感じを持ったのでありまして、私は百貨店問題について、この事件があったからといって、新しい観点に立ってこの問題を処理研究するという感じは持っておりません。ただあなたが御心配になったように、小売り業者と百貨店というものとの関係ということになりますと、これはいま非常にいろいろ問題になってきておる商店街、いわゆる商店の権利を守るといいますか、中小企業の権利を守るという意味と考えて、いろいろまだまだ研究をすべく、またわれわれとしても考慮すべきことはあると思っておりますが、このことで直接にはそれほど、いわゆる小売り業者を圧迫したという漢字でこれが解決されていないように私はとっておりますから、私はそういう感じは持っておらないわけであります。
  42. 中村重光

    中村(重)委員 この百貨店は放送会館に設置されたわけですね。放送会館に開設されたということになってまいりますと、法的に禁止はされておりませんが、放送会館は公共的な施設であるというように考えられるわけであります。そうした公共的な施設に対して、純粋な営利を目的とする百貨店を開設することが適当であるかどうか、この点に対する配慮というものは行なわれなかったのか、まずその点を伺ってみたいと思います。
  43. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 それは放送会館という名前にしただけで、実はそこは一部は福井放送というのが入ったわけです。加藤尚という人が福井放送をやっておりますからそれは入りましたけれども、それを建てた目的はどういうことであったか、そこまで私はせんさくしませんが、放送だけの建物でもないし、ずいぶん大きいので、放送はたしか一番上のほうのワン・フロアーかツー・フロアー使っておるくらいだと思います。私は全部見ておりませんけれども、全部が全部放送のために建てたというわけでもなくて、放送も兼ねてつくったのじゃないか。私はその建設の関係は詳しく存じませんが、放送のための会館というわけではなかったと思っております。それができてから福井放送が入って、名前を放送会館としたわけであります。
  44. 中村重光

    中村(重)委員 こうしたデパート等の許可の一つの基準というのがあるわけですが、これを許可するといった場合に、公共的な施設というものを利用して開設しようという場合に、どういう配慮が行なわれておるのか。まず大臣の考え方というものを聞かしてもらいたい。
  45. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 私は、本来の建物が公共的な目的を持って建てられたものであるとするならば、それに百貨店を認めるということはちょっとうなずけないと思っております。ただし百貨店の基準というものがあるでしょうから、これはむしろ事務のほうからお答えを申し上げたほうがいいかと思いますが、私は常識的に考えて、公共の建物の中に百貨店をつくるというものの考え方はあり得ない、こう考えております。ただ私がいま申し上げた建物は、ビルディングを建てた、その中に放送も入ったという形になっておる、こういうわけで申し上げておるわけであります。
  46. 中村重光

    中村(重)委員 公共的な施設である、しかしそれに百貨店を許可するという場合に、施設の拡張もあるでしょうし、無理にそこでやろうとすればできないことはない。しかしそういう場合の許可をするということに対しての配慮が当然なされなければならない、こういうことから実はお尋ねしたわけであります。  そこで島田企業局長にお尋ねいたしますが、当該福井の百貨店は小売り店が相当反対をしておったということは、ただいまの大臣の答弁においてもうかがわれるわけであります。それがどういう形で説得されたのか。円満に解決して大臣の許可の決裁を求めたということについては、相当紆余曲折があったのじゃないかと思われるのでありますが、まずそれらの経過について伺ってみたいと思います。
  47. 島田喜仁

    ○島田政府委員 いまのお答えを申し上げる前に、まず百貨店が許可される手続と申しますか、どういう段階を経て最後に許可するかということをちょっと申し上げてみたいと思います。  百貨店の営業許可を受ける、あるいは新増設をしたいという申請者は、まず各通産局を経由して通産大臣に申請をいたすわけでございます。ところが申請のありました案件は、本省に付属しております百貨店審議会に諮問をいたします。そうしますと、百貨店審議会は、その名におきまして商工会議所に対しまして意見を出させるわけでございます。言いかえれば百貨店審議会が商工会議所に諮問をいたします。商工会議所の中には商調協というものがありまして、その商調協において、百貨店を許可するか許可しないかといういろいろな意見を述べて、そこで審議をするわけでございますが、その商調協の中には学識経験者、消費者それから卸売り業者、小売り業者、そういうものの代表でメンバーができておりまして、そこでいまお話のありました小売り業者あるいは卸売り業者と百貨店との調整問題を審議いたすわけでございまして、問題がございますとその審議に非常に時間がかかるわけであります。そういう審議をいたします中で大体結論が出ませんと、答申が本省にあります百貨店審議会に出てまいりません。そういう案件が全国で相当数が多いわけでございまして、そういう中身につきましては商工会議所が最後にその商調協の意見をまとめまして、今度は百貨店審議会に答申をしてまいります。その答申をもとといたしまして、百貨店審議会が今度はそれを許可するかしないかという案件を決定するわけでございまして、この百貨店審議会は、御承知のように学識経験者からなりまして、会長一名とその他委員が学識経験者の中から六名出ておりまして、ここでまた審議をいたすわけでございます。その審議いたしました結果を通産大臣に答申が行なわれまして、通産大臣はその答申を尊重いたしまして許可する、不許可するということを決定するわけでございまして、通産大臣がその百貨店審議会の意見と変わった決定をすることはほとんどございません。したがいまして、ただいま申し上げました商工会議所における商調協の中で、小売り業者の代表も含めて時間をかけてやるわけでございますから、本省といたしましては、そのときに小売り業者と百貨店とがどういう事情でどうなっておったかということは、実はなかなか調べる権限もございませんし、そこで出てきた答申を審議会は尊重してやる。審議会の答申は、本省は必ず尊重して決定する。数が非常に多いことと、地方の問題でございますから、その問に小売り業者と百貨店との問題というのはいろいろな観点から調整されまして、それから商調協を中心にあれします一つの基準というものがやはりつくられておりまして、その基準をもとに、人口だとか小売り店の数だとか売り上げ高とかというものをみんな調べまして、そして私どもの立場は、全くその商調協あるいは百貨店審議会の答申に、簡単に言えばおまかせするというかっこうになっておるわけです。実は本省でも意見を百貨店、審議会で述べることは許されません。説明員だけでありまして、必ず百貨店審議会の会長の決定によりまして、その答申を尊重してそのままやる、こういうことになっております。ただ商調協から出てきたものを百貨店審議会がそのまま決定するということは必ずしも言えないのでございまして、百貨店審議会は百貨店審議会の立場からまたこの諾否をきめるということに相なっております。したがいまして、いまの加藤ビルディングの問題に関連しまして、小売り業者と卸売り業者、百貨店との関係がどうであったか、その点は問題がございましたので、申請がなされてから許可をするまでの間に相当時間がかかっております。と申しますのは、商調協でも時間がかかり、そして百貨店審議会でもこれを慎重に検討して決定をいたした、こういうことの経緯でございます。  なお、一つ申しおくれましたが、いよいよ申請がなされますと官報に公示をいたしますが、そのとぎに利害関係人、これは小売り業者等は当然入るのでございますが、その意見が百貨店審議会に出てまいりまして、百貨店審議会はその意見も十分に尊重して、反対意見があるときは反対意見を尊重いたしまして、審議決定する、こういうことになっております。
  48. 中村重光

    中村(重)委員 局長の答弁を伺っていると、何にも不正が介在する余地もなきがごとく聞こえるのであります。何らの圧力もかけられないというふうに感じられるわけでございますけれども、現実はなかなかそうではございません。この若林事件にいたしましても、新聞報道によりますと、そうしたいろいろな機関に若林さんが出ていってものを言うたということが書いてある。意見を述べた、こういうことが書いてあるのでありますが、そのことでやはり相当左右されたということがなきにしもあらず。また、申請人にいたしましても、特に若林氏を呼んでごちそうするとかあるいは金品を供したということは、やはり若林氏の果たした役割りを評価しておるということがこれは考えられるわけであります。私どもは、その事件そのもの、公務員がそういう間違ったことをやったということ自体も許されないのだが、先ほど申し上げましたように、その許可がゆがめられているのではないか、そのことが中小企業に対して相当の影響を及ぼしてきているのではないかということを憂慮いたしますから実は質問しておるわけであります。それに、この事件が発生したということに対して、その後何か不正なことが行なわれていなかったかどうか。審議会というものはあるけれども、若林氏の果たした役割りによって一つのゆがみというものが出ておるのではなかろうかということで、あらためて調査でもするというような取り組みが必要ではないのか、そういうことから実はお尋ねをしているわけです。ですから、あなたは、そういう点に対して特にこういう経緯を経て許可になるのだから何も間違いないのだ、そういうことに判断をしておられるのか、特に私がただいま申し上げましたようなことを配慮して何らかの措置を講じなければならぬというふうにはお考えになっておられぬのかどうか、まずその点に対してお尋ねをしておるわけです。
  49. 島田喜仁

    ○島田政府委員 商調協における議事録は全部とられておりますので、その中でいろいろな意見が出たことは記録に出ておりますが、商調協の中で最後にあれしたときには、小売り業者のほうから反対意見はなくなって、それから百貨店審議会のほうに答申が行なわれております。  それから申し忘れましてまことに恐縮でございましたが、通産局の職員が商調協の参与といたしまして、オブザーバーとして入っております。委員はただいま申し上げました学識経験者、その他消費者、小売り業者、卸売り業者、百貨店の代表でございますが、委員ではございませんがオブザーバーとして通産局の職員が入っております。この点を申し落としましたので、つけ加えさせていただきます。
  50. 中村重光

    中村(重)委員 まだただいまの御答弁で納得のいかない点もありますが、事件の警察当局の取り調べと関連をしましてまたお尋ねをする機会もありましょから、その機会にお尋ねしてみたいと思います。  いま一つ簡単にお尋ねをしますが、長野県で起こった事件として、スケート客八人が石油ストーブで中毒死する、こういうことが報道されておるわけであります。最近三カ年間ばかり、相当石油ストーブがふえておるわけでありますが、これは大臣としても、この記事を読まれて相当ショックであったのではないかと思うのであります。この事件は、新聞に出ておりますので大体わかるわけでありますけれども、どうもプロパンガスの関係は、この前プロパンガスの協会に対する保安の、何というのですか、権限をゆだねたという法的措置が行なわれてきた。ところが、石油ストーブに対しては無関心とは申しませんけれども、あまりそうたいして関心が払われていないということもなきにしもあらずであります。そこでこの事件、中毒死したことに対して、どういう取り締まりというのか指導が行なわれてきたのか、いろいろ問題点として通産当局の中にも出ておるのではないかと思いますが、まずこの経緯について伺ってみたいと思います。
  51. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 まず、事件の経緯並びに通産省としていままで考えておったところを、一応事務当局から報告をさせます。
  52. 倉八正

    ○倉八政府委員 お答えいたします。  先般の事件につきましては、さっそく専門家を三名その日に調査に出しまして、調査にあたっておりますが、いまのところ原因というのは、八畳の部屋に八人寝ておりまして、その換気が悪かったのが主原因だということに一応なっておるようでございますが、その一酸化炭素を発生した量につきまして、当時そこに置いてありました石油ストーブの取り扱いが悪かったか、あるいは掃除の行き届きが不十分であったかということにつきましては、まだ完全な結論を得ておりませんが、いずれにしましても、こういう遺憾な事件を起こしましたから、石油ストーブの製作面を担当しておりますわれわれとしましても、さらにJIS規格の厳格化あるいはアフターケアの徹底化ということをいま急いで推進しておる次第であります。従来この石油ストーブというのが、規格につきましても、製品につきましても、まだまだ外国のものについて劣っておりましたから、先般、前年の七月から、消防庁も一緒になりましてJIS規格の制定を始めたり、あるいは外国品の輸入をしまして、それを分解していろいろその向上させる製作の資料にしたりして、どんどん進めておるわけであります。最近は、われわれといたしましては決して外国品にも劣らないと思っておりますが、しかし注意に一〇〇%の完ぺきを期するという意味で、今後ともいま私が申し上げましたような方向で進めていくつもりでございます。
  53. 中村重光

    中村(重)委員 この石油ストーブの規格といいますか、これは検査をすることになっておると思うのですが、この検査が非常にゆるやかであった当時の製品もまだ残っているということが言えます。またこのストーブは燃焼器具検査協会ですか、この協会と消防庁、通産省と連絡をとってやっているのじゃないかと思っておるのですけれども、この検査を経なければ販売をしてはいけないということもないのではないかと思う。そうなってくると、いま取り締まりをやるのだ、基準を強化して、規格を強化していくのだと言われますけれども、実際はそうした検査を経なくとも販売をしてもよろしいということが今日行なわれている以上は、ただいまのあなたの答弁は一〇〇%実質的な成果を期するということはできないわけなんです。それらの点に対して何らかの措置を講ずる必要があるのじゃないか、こう思うわけですが、そのような点に対してはどうお考えになっていらっしゃいますか。
  54. 倉八正

    ○倉八政府委員 安全性の問題から見ますと、まず国家規格であるりっぱなJIS規格をつくりまして、これを実施するというのが第一段階であろうかと思います。したがいまして、最近このJIS規格というのが非常に普及してまいりまして、全生産の九四%はJIS規格にすでに合格する商品になったわけでございまして、第一段階の目標というのはおおむね達成されつつあるということでございます。いま先生の御指摘の第二の、検査を全部受けさせることについてどう考えておるかということでございますが、これについても二つの道があろうかと思います。第一の道は、いわゆる強制検査をやりまして——強制検査ということは法的な検査ということでございますが、強制検査にこれを取り上げていって、一個残らず検査させるという方法と、いまの検査協会というのが全部検査を受けるように業界を指導する。この二つの面があろうかと思います。したがいまして、法定検査に持っていくか、あるいは自主検査ではあるが全員が一個残らずそこの検査を受けるかということにつきましても、いろいろ利害あるいは得失もあろうかと思いますから、そういう点も合わせていま検討している次第でございます。
  55. 中村重光

    中村(重)委員 問題は、いま規格の検査というのは、製品に対して、これを製作するということに対しての検査ということになるわけですね。ところが、長野県の事件は、炎をあまり強く出し過ぎた。そして一酸化炭素が発生をして中毒死したということが大体伝えられておるわけですね。そうなってくると、炎を大きくするとか小さくするとかということは、これは使用者が大きくする、小さくするということが自由にやれるわけなんですね。ところがどの程度大きくしたならば、そういう一酸化炭素というものが発生をするのかしないのかということがわからない。したがって、製品の製作の面における検査ということだけではなくて、販売という面においての規制というものも当然行なわれなければならない。同時に、この前のプロパンガスの場合においていろいろ規制措置が考えられたわけですが、そういうように指導面というようなものも相当強化されてこなければならないのじゃないか、そう思うわけです。ここ三年間程度で石油ストーブというものが非常にふえてきた。こういうことが、野放しとは私申しませんが、いまの答弁の中では、これはもう野放しと申し上げてもいいようにすら考えられるわけです。そういうことに対しての研究というものは進められていないのかどうか。まずそういう点と、問題点がどこにあるのか、きょうは工業技術院の矢渕さんもお見えでありましょうし、消防庁の川合さんもお見えでありましょうから、関係の皆さんからお答えを願いたいと思います。
  56. 倉八正

    ○倉八政府委員 安全性の万全を期するためには、器具がもちろん完備したものでなければなりませんが、そのほかに、いま先生から御指摘ありましたように、使い方の十全さということもあわせて必要でございまして、この意味におきまして、使い方をどうすれば能率がよくて、どうすれば安全性を保てるかという点につきましては、一つは一般的なPRの問題でもあろうかと思いますが、その器具のメーカーなり販売業者なりが、その器具の使い方はこれが理想的ですよという指導をするということがまた非常にあずかって力があるかと思います。したがいまして、いまわれわれが指導しておりますのは、売る場合必ずそういう使い方をつけたものを配布するとか、あるいはときどき回りまして簡易の修理をしてやる、そういうふうなことで、使い方における向上度を期するということをはかっておる次第でございます。
  57. 矢渕久成

    矢渕説明員 使用者、消費者に対する教育の点でございますが、これにつきましては製造業者に対しまして、あまり石油ストーブの過大広告をしない、そういうふうに注意を喚起いたしまして、さらに古い製品につきましては、危険な状態であることがわかればアフターサービスに万全を期するようにということで、かねて業者のほうに、これはメーカーに対してでございますが、注意を喚起してございますし、特に、御指摘になりました先般の白樺湖の事件の後におきましても、さらに一そうこういう点にかんがみまして、石油ストーブを販売するにあたりましては正常な燃焼状態の表示とか、あるいは正しい保存方法の説明、それからしんの取りかえですとか、掃除の時期あるいはその掃除の方法につきまして、できるだけ丁寧に説明をするように、あるいは使用時の換気の必要性というようなこと、そのほかクレーム処理につきまして、アフターサービスの具体的な方法を立てて宣伝をするようにというふうに、関係の製造業者のところに十分注意を与えてあります。
  58. 川合武

    ○川合政府委員 消防庁といたしましては、石油ストーブの問題につきまして、この取り扱いの結果いろいろな事故を起こしている例が非常に多いものでございますから、いろいろな研究を加えておるわけでございます。私どもは、石油ストーブが非常に普及してまいりましたので、多少語弊のある言い方でございますけれども、ざっくばらんに言いますと、これだけ普及したので、取り扱いの問題とはいいながら、そう神経質なくらいに非常に極端な取り扱いをしないで済むような構造を持った石油ストーブができてほしいという気持ちを持っておるわけでございます。したがいまして、通産省の委員会にも私どものいろいろな経験を発言さしていただきまして、現在といたしましては規格の向上も進みまして、構造面におきまして、相当な進歩ができておるというふうに思っております。しかし、先ほど御指摘のありましたように、たとえば白樺湖の石油ストーブは無検査のものと申しますか、検査以前のものでございますし、また構造も十分に進歩をはかりつつも、しかしなお取り扱いの問題がこれはどうしても残ります。そこで取り扱いの問題につきましては、私ども火災予防条例の基準をつくりまして、火災予防条例を市町村においてつくるように指導いたしまして、予防条例の中で一番大きな、よく事故の起きる原因となりますところの、たとえば使用中に給油することのないように、あるいは転倒をすることによって事故の起きることのないように、さようなことを条例にもしたためまして指導をいたしておるわけでございます。  繰り返してくどくなりますが、構造上の進歩をはかるように、いろいろ私ども意見を通産者にも申し上げると同時に、どうしても現実問題として残る取り扱い上の注意基準の問題もございますので、その点については消防庁として指導をいたしておるわけでございます。
  59. 中村重光

    中村(重)委員 矢渕さんにお尋ねしますが、石油ストーブによって一酸化炭素を発生して中毒死することがあり得るということが、あなたは予想されておったんじゃないかと思うんですが、そういうことに対する何らかの配慮というものが行なわれておりませんでしたか。このことは倉八局長にもあわせてお答えを願いたいと思います。
  60. 矢渕久成

    矢渕説明員 ただいま御質問のございました一酸化炭素が発生することが予想されていなかったかどうかという点でございますが、当然そういうことは一般的には予想されるわけでございまして、JIS規格の中にもその点は規定してございます。すなわち、石油ストーブにつきましてのJIS規格の品質、性能、その項目の一部といたしまして、燃焼ガス中の一酸化炭素につきましては、排気ガス中一酸化炭素が〇・〇一%以下であること、こういう規定の仕方をしておったわけでございます。ただし先般の白樺湖畔におきますユースホステルの事件のごときものは、私どものほうにわかりました事件といたしましては初めてのことでございまして、実はこの点につきましてはまだはっきりした結論も出ていないようでございますし、何ぶんにもその状況というものもはっきりいたしませんし、将来さらに検討を加えて、これにつきましても十分措置していきたいというふうに考えております。
  61. 倉八正

    ○倉八政府委員 いまの答弁で尽きておると思いますが、われわれ製造面を担当している者から申し上げますと、最近家の構造が変わってまいりまして、自然換気というのができない構造になってきたというので、空気中の一酸化炭素の含有率の〇・〇一というのを、たしか昨年の十月だと思いますが、そういうふうに減少をするように規格を変えたわけでございまして、今後この問題につきましても〇・〇一%をさらに低めるということについては、いますでにその試験のほうにも取りかかっておりまして、これを下げていきたいという努力を続けてまいるつもりでございます。
  62. 中村重光

    中村(重)委員 いまいろいろとお答えを願ったのですが、御答弁の中からも考えられることは、やはり施設、器具の規格、そういうことについて一段のくふうというものが行なわれなければならぬ、相当普及されてきましたが、これから先も石油ストーブというものは相当伸びていくのじゃないかと思われます。プロパンガスであるとかあるいは都市ガスにいたしましても、何か危険だという感じを持ちますけれども、石油ストーブに対してはそう危険感というものがないわけであります。この事件が発生をしましたので、相当ショックもありましょうが、何としても使うほうでは暗中模索でありますから、関係の方々、によって十分配慮して、実情に即する措置を講じていくということでなければならぬと思います。同時に通産省と消防庁その他関係方面との密接な連係というものが行なわれていなければならないのじゃないか。私はさきのプロパンガスの問題の際も、保安協会というものができ上がって、保安協会に対して保安面の責任を負わせる。しかしこれに対しては国が一つの権限を与えながら補助金も出さないという形では、実際そうした協会に対して責任を負わせるという形になるかどうかということも、相当局長には指摘をいたしたこともあるわけでございます。この燃焼器具検査協会というものの性格、それから通産省との関係、それらの点について参考までに伺っておきたいと思う。これに対して今後はどういう強化策を考えなければならぬということを今度の事件発生によってお考えになったか、それらの点に対して局長からお答えを願います。
  63. 倉八正

    ○倉八政府委員 お尋ねの前段の、消防庁と十分協力してやれということについては、まことにごもっともなことでございまして、すでに二年ぐらい前から自治省の消防庁のみならず、東京都の消防庁と通産省とが燃焼器具安全協議会というのをつくりまして、規格の問題あるいは取り扱いの問題についてやっております。  それから検査協会の問題でございますが、この協会の重要性にかんがみまして、これをどう強化するかということで、われわれとしましては、いろいろ考えておるわけでございまして、予算措置でも講じまして、その財源の一端に資したいということも考えたのでございますが、ことしはどうもそれが実現できませんで、今後はこれにつきましては、いろいろ鉱工業技術補助金の中から、検査の実験の補助金とかあるいは検査員の充実をはかって、これをも一つともっと権威のあるものにしたい、こういうふうに考えております。
  64. 中村重光

    中村(重)委員 大臣に考え方を伺っておきたいと思いますが、いろいろいま短い時間の中で行なわれました質疑の中で相当問題点が出てきたと思いますが、これらの点に対しての大臣としての考え方をここでお聞かせ願えれば幸いだと思います。
  65. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 事務当局の説明で大体おわかりを願ったと思いますが、私としては、やはりこういうような生活必需品的な関係のものであって、しかもそれが使い方いかんによっては危害を及ぼすというような、あるいは災害を引き起こすというような——今度の場合は人体の問題でありましたが、火災の場合も含めて、これは大いに考えなければならぬ点もあると思います。こういうような問題については、いわゆるJIS規格というようなものをもっとそういう意味で適正なものにする、と同時に、今度はまたそういう関係の役所、消防その他の関係とも密接に連絡をとりまして、今後こういう事件のないように、またこれはいかに機械自体はよくしましても、注意を怠ればやはり弊害が起きることは事実でございまして、無理をして機械をこわしてまでやるというような、子供がいたずらするというようなことさえもあり得るわけでありますが、そういう意味で使い方をよくわからせるということも含めて、たとえばそのものを売るときには、これはこういうことに使わなければいけない、こういうふうに使えば間違いないのだというようなことなどもよく知らせるくふうをするというようなことによって、今後こういう災害が起きないように極力努力をいたしたいと存じております。
  66. 二階堂進

    ○二階堂委員長 板川正吾君。
  67. 板川正吾

    ○板川委員 過般行なわれました大臣の産業政策の重点所信表明に関しまして、時間がございませんから、十分ほどで二、三点お伺いいたしたいと思います。  まず第一に伺いたいことは、総理が総選挙を前にしまして、所得倍増計画のひずみを直す必要がある。特に中小企業と農業については、革命的な近代化をはかる、こういうテレビの記者会見で国民に言明をして約束をいたしました。そのとき、革命的ということばを私はあまり好かないが、いいとは思いませんが、とにかく革命的な気持ちでやる、こういう言明をしておった。大臣も御承知だろうと思います。そこで今度の大臣の諸政策、本年度やっていこうという重点的政策というものをばらばらと見ますと、さっぱりどうも革命的な内容を盛っていないと思うのです。これで通産大臣は総理大臣の意向を受けて革命的政策がこの中に盛り込まれていると、こういうふうにお考えでしょうか。
  68. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ことばというものはなかなかむずかしいもので、使った場所によっていろいろまた意味も出てきますから、総理が革命的と言われ、また革新的と言われておるのでありまして、今度はひとつできるだけのことをやりたいという感じで述べておられた総理の気持ちは、そのとおりだったと思います。われわれとしても、実を言いますと、何とかここいらで革命的、革新的な政策を出さなければならぬと思って、ずいぶんいろいろと実は中小企業庁あたりにも、何かいいくふうはないか、何か考えられないかと、こういって話をし、また勉強もさしてみたのであります。しかし、その気持ちはそうでありましても、しからば実際問題としてどういうふうにしたらそれは革命的になるか、革新的になるかというと、私は、自由主義経済のたてまえでやっておるいわゆる産業構造の中における中小企業の立場ということでありますと、いわゆる革命的というような、いままで考えておったのと全然違う方向ということは、なかなかむずかしいということがだんだん明らかになった。私は、気持ちはそういうことであったことは、私自身も何とかここでもっと実効のあがる、もっと効果のあがる、とこう考えますが、やってみますと、いわゆる社会主我といいますか、統制的なものの考え方でいくと、いわゆる自由主義と全然違った考え方になれば、これはある程度革命的というようなものも起こし得ると思うのでありますが、自由主義経済のワクの中で考えていくということであると、なかなかむずかしい、こういうことなのであります。そこで、そういう御批判を受けることは、これは受けると思うのでありますけれども、しかしわれわれとしては、そういう心がまえでやったということだけは偽らざる気持ちであります。しかしながら、内容的に見ましても、いま金利がまた上がるとか何とかいうようなときに、五年来どうしても実現ができなかったのでありますが、商工中金の金利の利下げ、これはいつも皆さんから強く要請されておったので、おととしなどもずいぶん私やりましたけれどもできなかった。しかしいまこれが、わずかでありますが、いささか実現した。この間、金利政策からいえば、ある程度思い切ったことになったのじゃないかと、まあ考えております。それから、一応予算編成の面から見ましても、一般の予算が一割四分くらい去年よりふえておるというのに、中小企業関係では約四〇%ふえたということでございまして(発言する者あり)もとが小さいというのは、これは私は少し違うので、農業政策のように実際の構造改善等を行なうものであれば別でありますが、通産省のものはそうでない。もとより近代化、協業化とか共同化という言葉がありますが、しかしこれは、じゃどういうことをするのだという、こういうことがありますということでなければ、私は金額だけを乗せても意味がないと思う。少なくともいま日本の国内で、そういう意味で中小企業の近代化、合理化などをやるという意味で、必要量という意味では、大体言うだけのものは今度は大蔵省も出してくれたと私は思っておるわけでありまして、御不満もいろいろありましょうが、われわれの意のあるところは一つくんでいただきたいと思うのであります。
  69. 板川正吾

    ○板川委員 どうも大臣の答弁はさっぱり要を得てないのですが、じゃこういうのですか。総理大臣は革命的と確かに育った。私はテレビを見ておって、なかなか思い切ったことを言うな、さすがに選挙の前だなと思った。しかし、おそらくこれは選挙が終わったらば、革命的ということばは何か適当なことを言ってしまうんじゃないかと思って新聞を見たら、いつの間にか革新的という字に変わっておる。しかし総理が国民に言明した革命的というのは、短い期間に大きな変革を遂げる、大きな改正でもいいですよ、改良でもいいですよ、短い期間に大きな変化を与える、これが革命的という意味だろうと思う。ところが大臣のいまの説明じゃ、革命のほうは抜きでして、的のほうに重点を置いて解釈しておるという、農林大臣と同じような解釈なんで、どうもそれでは総選挙を前にして、とにかく国民に対してはうそを言わぬという池田内閣が、実際うそを言うことになるんじゃないかと思う。政治に対する不信というものが国民から生まれるのではないか。どうも選挙の際の各候補者の言うことは、みんな適当のことばかり言って、実際当選してしまえば約束を守らない、こういう気持ちになるんじゃないかと思う。大臣は、自由経済のもとでは、その革命的というのは、なかなかそう——統制経済であれば別ですが、大きな変革は遂げられない、できないのだ、それが自由経済だ、こういまおっしゃっております。しかし私は、それは総別が急に社会主義を考えて革命的と言ったんじゃないと思う。自由経済の中で大きな変革を短時間にやろう、所得倍増計画を達成するためには、やはりネックになっておる中小企業と農業の所得格差をなくしていく方向に革命的にやろうというのです。それはやり方は、私は統制経済でなくてもやる方法はあると思う。だからそういう方法が、大臣がことしやろうとする重点政策の中に具体的にさっぱり盛ってないから、これは池田内閣の閣僚としてはどうも国民にうそを言うんじゃないか、こう思う。大臣、いま中小企業予算が四〇%、ふえたということを、この間新聞にもそう書いてあったし、再三言われておる。しかしこの大臣のあいさつされた中にも、財政投融資の関係はわずか前年よりも三百三十五億で、一二%、一割二分の増加である。財政投融資の総額が幾ら伸びたか、これは前年より二〇%伸びておるじゃないですか。その全体よりも中小企業に対する財政投融資の割合は低い。それから中小企業の一般会計予算、約二〇%弱、一九%ふえております。これはいまうしろのほうでもありましたように、もとが小さいのですし、総予算三兆何千億という中でわずかに〇・五%にも満たないという数字ですから、その範囲で一九%くらい平均よりやや伸びたってたいした金額じゃない。これじゃとても革命的というわけにいかない、的のほうまでいきません。的までの解釈にならぬと思うのです。これはどうも羊頭を掲げて狗肉を売るということであって、革命的な中小企業対策をすると総選挙を打って、そうして今日出た予算の内容を見るとたいしてふえていない。これは大臣、ちょっと今度の政策はせめて——農林は別、中小企業庁としては財政投融資なりあるいは、予算なりをもっと大幅にとらるべきじゃなかったのですか、いかがですか。
  70. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 そこが実は私はいささか感じが違うところでありまして、あなたとこれはやはり意見相違になるかと思いますが、私は中小企業というものが、それ自体だけで存在はしておらない。やはり経済の全体の中で存在をしておるのでありまして、そういう意味でいって、いま財政投融資の金額で一二%じゃないか、それはおかしいじゃないか、こう仰せになりますが、しかし一方において、たとえば大企業のほうへ回した金が、じゃ中小企業影響がないかというと、そういうものではありません。私は、それは水の流れでありまして、水の流れが大もとからだんだん分かれて流れていくように、やはり流れていくことは事実だ、だからそういう意味で、いわゆる中小企業というものを独自の存在でという形でもって問題を見られると、農業の問題とはそこがだいぶん違ってくると思います。中小企業の場合においては、あらゆる意味において関連性がある。そして一方、たとえば鉄鋼業が栄えれば販売業、たとえばお菓子を売っている人と鉄鋼業はどんな関係があるのかということになると、全然関係がないように見えるが、鉄鋼業が栄えることは、こういう販売業にもすぐ影響してくるという意味で、抽象論になっていささか恐縮には存じますが、私はその意味ではやはり経済全体が栄える姿に持っていく、しかしその間においてひずみを直すというのでありますから、たとえば人体について言えば、胃が悪ければ、胃をなおしながら、しかもなおからだは活動しないで寝ているわけにはいかない。やっぱりちゃんと働いておりながら胃をなおしていく、こういうようなやり方でやるよりほかしかたがないのでありますから、あなたのおことばではありますが、私たちがそういう非常な意欲を燃やしてやっておった——現に私自身が考えてみましても、実を言うと、私はいまから五年ほど前でありますが、政務調査会におった時分に、なんとかして中小企業対策をもっとやらねばいけないということを言って、少なくとも農業基本法ができる以上は、中小企業基本法をつくらねばいかぬということを私が発言した当時においては、実は賛成者がほとんどなかったくらいであった。それが今度基本法をいよいよつくる。これは時勢の流れとは言いながら、やはりどうしてもそれはやらねばいかぬという空気になり、そうしてやはりそこへだんだん重点が向いてきているということで、これからいろいろ皆さんからも御注意を受けながら直していこう、こういうことであります。だから、一挙にそれじゃ全部入れかえるとかなんとかというような形でこの問題は解決できるか、しからば、そういうような解決の方法がありとするならば、むしろ逆にこれは皆さんからもお教えを願って、そしてこれを実行に移していく、こういうのがほんとうの政治の姿だと思っている。私はこういうものを与野党の間で、意見の対立とかなんとか、あるいはまた、あっちが負けたとか、勝ったとかいうことではなくて、お互いに日本経済をよくしていこうという意味で、皆さんの意見もいいことがあれば率直にわれわれも聞いて、これを取り入れていく、こういう形でありますから、もし革命的という御意見があって、われわれが実現できる方法がありといたしますならばお教えを願いたい。私は、いままであなた方からお伺いをいたしておった方法では、これがないから予算に組めなかった、こういうことであります。
  71. 板川正吾

    ○板川委員 どうも大臣の答弁を伺っているとあれですね。中小企業に対して予算をこれだけとったということは、大臣のあいさつの中にあるから、それを引用して、わりあいに少ないじゃないか、革命的じゃないじゃないか、こう言うのです。しかし、大臣のいまの答弁は、いや中小企業にはそれだけだけれどもあとの残りは大企業に行ったんだ、大企業がよくなることは中小企業がよくなるんだ、だから中小企業もしたがってよくなるんだ、こういう理論にいまのお話はなる。しかしそういうことであれば、中小企業に金を出すことは大企業のためにもなるのであって、お互いさまじゃないですか。大臣は、中小企業のためには資金を前年度よりこれだけとり、これだけの。パーセンテージに上がったと自慢する必要はない。ただ、経済の実態をわれわれが判断するときには、こうした資料を政府も使っておるし、われわれも使ったにすぎないのであって、大企業にいった残りが中小企業にもおこぼれが回ってきて、結局中小企業のためだなんて言わないで、これは政策としてはまことに不十分であった、こういうことを率直にお認めになったほうがいいんじゃないかと思う。で、大臣は最後には、やけのやんぱちみたいになって、あなた方が具体的な政策を出さないから要求も通らないのだ、どんどん出せば幾らでもとりますというような言い方をしておるけれども、これはどうかと思います。よろしい、われわれのほうはひとつどんどん出しますから、必ずそれをとってもらいましょう。それはそれでいいでしょう。答弁はいいですが、しかし大臣、どうもそういう意味のことを言われるから、われわれのほうもなお一応突っ込んで伺いたいのですが、大蔵大臣が、手形の不渡りを出した者に対して刑事罰を加えたい。新聞等によりますと、イギリスかアメリカか、そういう取り扱いをしておる国もある。で、不渡りを出した場合には刑事罰を適用するという主張をされておる。これは人に物的な迷惑をかけるのですから、相当な罰を受けてもやむを得ないと思います。しかし、この現状で不渡りに罰則を加えたらば、牢屋に入るのは大企業でなくて中小企業だけになっちゃうんじゃないでしょうか。この点を大臣はどうお考えになっておるか。これは革命的という方法かもしれませんけれども、牢屋に入れられるほうを革命的にふやそうという方針ですか。罰則を加えるのは場合によってはやむを得ないにしても、 いまのままでいったんじゃ中小企業が牢屋に入ることになっちゃって、大企業は長期手形を乱発して、責任をみんな中小企業に押しつけていく結果になるんじゃないでしょうか。この点は閣内でどういう方針ですか。
  72. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 手形の問題に関係しまして大蔵大臣が発言いたしましたのは、そういう問題も含めて研究をしておるということであります。そういうふうにやるという発言はしておらないと思うのでございますが、この問題は何もきのうきょうに起こった問題ではございませんので、これは、ひとつそういうふうにしたほうがいいじゃないかという意見がずいぶん前からあるのであります。ただしかし、なかなか法律論といたしましてうまく筋を立てていくということは非常にむずかしいということで、今日まで実は行なっておられません。罰の問題はどういうふうにしたらいいかということについては、われわれとしては前向きで今後も一生懸命に考えて、ひとつできるだけ中小企業のためにもなるような法律をつくりたい、こういう意欲で前向きでやっておりまして、そういう罰を加えるとか加えぬとかいう問題等につきましては、まだ実は結論を得ておりませんので、これはまたわれわれ十分研究した上でお答えをさしていただきたいと思います。
  73. 板川正吾

    ○板川委員 不渡りが非常に最近ふえておる現状というのは、大企業が不渡りというよりも、中小企業ほど不渡りが多いのであって、現状でそういう刑事罰を加えるということになると、中小企業者だけがその対象になる、こういうことを憂えておるのでありまして、ひとつ閣内においても御検討を願いたいと思うのです。  もう一つは、歩積み、両建ての問題です。これを私が言うのは、歩積み、両建てが解消されるようなことであれば、中小企業者は、あるいは革命的にいいことだと思って喜ぶに違いないのです。これは別に社会主義でも何でもない。自由主義の政府の中においてやってできないことじゃない。この歩積み、両建て制度をなくするという方針——まあ大臣は大体において了承されておるやに聞いておるのですが、この方針をなくするような革命的な政策をおやりになる気持ちはございませんか。約束はできませんか。先ほど大臣は、社会党から要求があれば、幾らでもいいことなら応ずると言ったのですが、それはいいことですから、なくするような方針を、気持ちをお持ちでしょうか。
  74. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 歩積み、両建ての問題については、私もしばしば閣議で発言をいたしておりますし、これはなくするということには私自身大賛成でございます。ただしかし、よく、なくするということばがありますが、私は歩積み、両建てといいますけれども、やっぱり一割ぐらいのものは欧米におきましてもやはり残しておくのは、これは取引関係を明らかにするために必要だ、こういうことでございまして、私はその程度はやむを得ないと思っておるが、それ以上のものは私はなくすべきである、こういう強い主張を持っておる。これはちょっと話が余談になりますが、正月に渡邊公取委員長が私のところに年始のあいさつに来られた。実は渡邊さんに、あなた大いに歩積み、両建てをあれするのでがんばってくれてどうもありがとう、ぜひこれはやってくれと、私のほうから実は頼んでおるぐらいなんです。ということは、やはり中小企業をわれわれは育成しようとかなんとか言っておっても、いま親企業に対する遠慮で、なかなかそういうことがあっても言うてこないのですね。たとえば銀行との取引でもそうなんです。公正取引委員会あたりが抜き打ち的にそういう調べをするというようなことも、時と場合によってはやむを得ない。それほどやってでも、これはひとつ大いにやらねばいかぬ。これがもしあなたのおことばで革命的ということに通ずるならば、われわれも大いにそれは賛成でございまして、やらしていただきたいと思います。
  75. 板川正吾

    ○板川委員 ぜひひとつやってもらいたいのですが、しかしこれはなかなか大臣、そう簡単なものじゃないようにわれわれは伺っておる。それは大蔵省で二十六年以来歩積み、両建てはいかぬということで、銀行側に自粛の通達を出しておる。しかしそのつど適当にされて、実際は解消に至らなかった。そこで公正取引委員会が、これは独禁法の一般指定じゃいけないので、特殊指定にして、そしてぴしゃっとこの歩積み、両建てはいかぬということをはっきりしたほうがいい。一般指定の中じゃ、経済的に優位な地位を利用してこれこれという不公正取引ということになっておるのですから、それじゃどうも一般的な基準をいっておるにすぎない。そこでずばりと特殊指定をすれば、私はこの問題は急速に確かになくなっていくだろうと思うのですよ。そうなると、銀行のほうでは実質的な金利が下がるという形になってやっていけないというなら、それは表面金利を上げたらいい。表面金利は一割だからといっても、実質金利は二割も払うような形になっておるから問題が明らかにされない。こういう点ですから、銀行がどうしても一割何分、五分なら五分、地方銀行が利息をとらなければやっていけないというなら、それはそれでとってもしかたがないのじゃないか。そのかわりそれは一般の金利と非常な格差ができますから、政治の対象になって、そういう高金利を中小企業に与えないような政策というものが新たに追加をされてくる、こういう形が呼び出されてくることになると思うのです。ぜひひとつこれは、公取が来ていないようですからまたの機会に申し上げますが、公取から、いずれ私は特殊指定ということにしてもらわなければならぬと思うので、閣議に出た際には率先ひとつそれを推進してもらいたいと思うのです。  それから下請関係で、三期ほど前の国会で、下請代金を支払う場合に、六十日以上たった場合は利息を払えということを法律改正いたしまして、これは大臣も御承知のとおりです。法律は下請代金支払遅延等防止法第四条の二が追加になりました。この実態はどうなっておりましょうか。実際に六十日以上たった場合には利息が払われておりますか。この実態を調査したことはございますか。これは公取か中小企業庁かどっちかです。
  76. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 その問題はまだ私、事務から聞いておりませんから、また適当な機会にお答えをさしていただきたいと思うのですが、実はこの下請代金支払遅延等防止法の問題についても、納品してからの一定の期限は守る。二カ月以内に払わねばいけない。しかし、払っても非常に手形が長いとか、いろいろ問題が介在しているようであります。したがってわれわれは実は予算のときから、何とかこの法律を直してはどうかということをよりより研究をいたしておるのであります。気持ちを体してこの問題の研究をさしていただきたいと思っております。
  77. 板川正吾

    ○板川委員 いずれこれはあとで時間を得て、局長を呼んで議論してみたいと思う。ただ大臣は、社会党から革命的ないいものを言えば幾らでもやりますと言うから、話が横に発展したのであって、まだたくさんありますが、一応下請関係はこれで終わります。  それから次に移りますが、大臣のあいさつの中で、輸出振興を中小企業政策の次に重点政策としているのですが、この輸出振興の中に、東西貿易という点に一言も触れていない。これはどういう理由ですか。
  78. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 その前にちょっと、板川さんから何度も、社会党からいい政策が出れば何でもやるからと私が言った、こうおっしゃっておるのでございますが、これは御意見を参考にさせていただいて、非常にいいことであればどんどんやりますということで、これは板川さんも御承知の上でおっしゃっておられるのじゃないかと思いますから、あえてこんなことは必要ないかと思いますが、一言だけお断わりをさしていただきます。  それから輸出振興の問題について、東西貿易の問題について触れていないがとおっしゃいますが、われわれは何も東西貿易であろうと南北貿易であろうと、貿易自体を大いにやらなければいけないということを言っておるのでありまして、そういう東西貿易というようなことを考えることのほうがかえっておかしいので、むしろ貿易を全般としてふやす、こういう考えで今後もやっていきたい、こう考えておるわけであります。
  79. 板川正吾

    ○板川委員 それは貿易全体としてやっていくのはけっこうなんです。しかし全体として貿易を見るときに、東西といっても中ソが主ですが、中ソの貿易が非常に少ないのですね。だから特にこの点を改善される気持ちがことしは前よりあるのか。この前お伺いしたときは、前向きで一歩一歩前進していく、こういう話であった。それで、ことしはこれに一言も触れてないから、今度はうしろ向きになって後退するのか、それとも従来以上の前向き、前進の形を続けていこうとするのか、どういうふうな気持ちかということが一つ。それからもう一つは、よくわれわれと意見を異にしておる方々の中には、中国貿易はたいして将来伸びない、たいして期待するにあたらない、こう言う方があります。これは私はそういうことを希望しているのかどうか知りませんが、ちょっと実は南米とアフリカの地域にある国々がどの程度の貿易をやっているかというのを調べてみたのです。ところが南米地域には、ブラジルや何かたくさん入りまして、人口が一億六千万人おるそうです。そこで年間の貿易が、六二年ですが六十八億ドルあります。アフリカは御承知のように非常に民度がまだ低い国です。独立国も少数だし、経済的にも発展した地域じゃございません。アフリカには人口がどれくらいあるかというと、二億八千万人おる。そうしてどれだけの貿易をやっているかというと、五十六億ドルです。これはいずれもヨーロッパ地域の諸国とアメリカと日本がこの地域に輸出した金額です。南米が、これはアメリカが非常に多いのですが、六十八億ドル、アフリカは、ヨーロッパが多いのですが五十六億ドル。南米は中国の人口の四分の一です。アフリカは中国の人口の四割と見ていいでしょう。そうすると、アフリカのような民度の低い国と中国の人口と置きかえてみても、中国がその割合で貿易したとするならば百四十億ドルです。南米の場合には、人口的に貿易量を計算してみた場合、これは一つの見方ですが二百七十億ドル、アメリカの最高の貿易量と同じようなものです。それは国の発展過程やその周辺の経済との結びつきから考えて、いろいろの事情がありますから、中国がすぐに二百七十億ドルあるいは百四十億ドルにも貿易がふえるということじゃないかもしれません。しかし六億五千万の今日の中国の貿易の将来性というのは、百何十億ドルにも二百何十億ドルにも達するものを持っておる。こういう市場を日本の近くに持っておるのですから、私はそういう意味では、将来の布石として、中国の貿易というものはもっと前向きの形をとっていかなくちゃならないのじゃないかと思う。なるほどことしはこれで六十二億ドル輸出されて一応何とかつじつまは合ったとしても、将来五年後、十年後の日本の貿易構造というものを考えた場合に——今日政府は政経分離という立場をとっておる。われわれはそれには反対であるが、政府政府の立場としてもっと前向き、前進の形をうたうべきじゃないか、こう思うのです。いかがですか大臣。
  80. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 ただいま人口比率から見た中国の潜在的な貿易力の将来性というものをおっしゃった。私はそのことには異議はございません。お説のとおりだと思っております。ただしかし、貿易というのはあなたも御承知のようにいわゆる商売でありますから、売ったり買ったりであります。そのときに、日本経済力がうんとございますれば、ある程度将来のPRとか将来の開発のためというので、相当量貸し売りもできる。いわゆる延べ払いというような形でやることもできる。ところがいまのところ見てみますと、ソビエトとの貿易についても中国との貿易でも、ある一定量以上になるとすぐ全部貸してくれということになるわけなんです。買いたいのはうんと買いたい、しかし貸してくれということになる。そうすると、こっちが中国やソビエトにだけ貸して、いわゆる南方の方面とかあるいはアフリカとか、中南米に貸さないというわけにはいかない。おまえはどういうわけであっちのほうだけ貸しておれのほうには貸してくれないか、こういうことになりますと、日本経済全体の貿易の運営のしかたから見て、そこに限度が出てくる。日本の貿易がだんだん伸びるにしたがってはだんだん伸ばせるけれども、中国だけにそういう意味の利益を与えていくというわけにはいかないと私は思う。それは商売のやり方としてはへたな方法で、むやみに貸し売りして自分のうちが動かなくなってしまうということも考えておかなければなりません。そういう意味から、われわれはいまでもいわゆる政経分離という形で、前向きでやるということは一つも変えておりません。ただそういう諸般の事情も考えながら順次伸ばしていくという形でいきたい。また日本経済力がうんとついてきて、そういうことができるようになれば考えられるということでありまして、もちろんあなたの仰せになった潜在的な貿易力というか経済力というものを無視する、そんな考えでわれわれは政治をやったりあるいは経済を見たりはしておりません。将来のこともちゃんと考えてやっておる。やっておるけれども、現実にいま自分のおなかがふくれるかふくれぬかということになると、そうそうはできないというところに、あなたが仰せになったいわゆる東西貿易の問題点があるのだとわれわれは考えておるわけでありまして、前向きという点では、あなたの御意見とは少しも違っておらないと思っております。
  81. 板川正吾

    ○板川委員 時間がございませんが、最後に一つだけ伺います。  大臣のあいさつの中に「操短、共同行為の内容の適正化、生産性向上成果の価格面への的確な反映等についても十分な配慮を加える方針であります。」こうおっしゃっておりますが、この意味はどういう意味ですか。
  82. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 その意味はなかなかたくさんの問題を含んでおると思います。たとえば、いわゆる管理価格というような意味のことでございますれば、これはいろいろ内容を調べてみて、生産性の上がっているものについては、やはり消費者にこれを返すようなことも考えなければいけない。それから操短の問題では、いま勧告操短というのは、紙と肥料の問題で一つあるくらいになっておりますが、こういうものはだんだん廃止していくのです。その他いずれにしても物価問題に関係のあるもの等、産業全般を通じてみて、その産業が生産性を上げたということになれば、その生産性の一部は消費者に返すという考え方で政策を実施していきたい。その方向でいまあなたが仰せになったような問題を全部フォローしてみる、それをまた実施に移していきたい、こういう考え方でおる、こういうことでございます。
  83. 板川正吾

    ○板川委員 それでは終わりますが、操短やカルテルの弊害を認めて、そうした価格のはね返りを消費者に還元するような方法をとろうということは、従来の考え方から一歩前進しておるのです。この点はわれわれは非常に賛成です。ただ、いまの独禁法の法制上からいいますと、管理価格というものに対して適正な法的な基準がないために、管理価格を押えるというのは、実際問題としてなかなかむずかしいのです。そこで大臣の御承知のように、われわれのほうでは独禁法の不備を補うという意味において、市場支配的経済力乱用防止法という法律を用意しまして、管理価格と思われる大企業の独占寡占の管理価格を行ない得る地位にあるものに対して報告をさせて、これは明らかに下がるべき価格を下げないで、少数独占の利益の上に眠っておるというような場合にはそれを公表するという法律を用意している。たぶんこれは内容の趣旨からいって、大臣も自民党の方々にも御賛成願えると思うのでありますが、いずれ本会議提案の際には御賛同願いたいと思います。  以上をもちまして私の質問を終わります。
  84. 福田一

    ○福田(一)国務大臣 一言だけ申し上げたいと思いますが、われわれはそれはやはり行政指導でやれると思っておるし、そういうやり方をやることがはたしていいかどうかということについては、いまにわかに私は賛成申し上げることはできませんから、どうぞ…。
  85. 二階堂進

    ○二階堂委員 次会は明七日金曜日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十分散会