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1964-10-01 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第62号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月一日(木曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 熊谷 義雄君 理事 中野 四郎君    理事 河野  正君 理事 小林  進君    理事 長谷川 保君       伊東 正義君    伊東 隆治君       倉石 忠雄君   小宮山重四郎君       齋藤 邦吉君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    橋本龍太郎君       八田 貞義君    藤本 孝雄君       粟山  秀君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    伊藤よし子君       高田 富之君    滝井 義高君       松井  誠君    八木 一男君       八木  昇君    山口シヅエ君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  委員外出席者         人事院事務官         (給与局長)  瀧本 忠男君         警  視  長         (警察庁警備局         参事官)    金堀 一男君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      秋吉 良雄君         通商産業政務次         官       岡崎 英城君         通商産業事務官         (繊維局長)  新井 眞一君         中小企業庁次長 影山 衛司君         労働政務次官  始関 伊平君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 十月一日  委員倉石忠雄君、坂村吉正君、竹内黎一君、藤  本孝雄君、粟山秀君、渡邊良夫君及び大原亨君  辞任につき、その補欠として熊谷義雄君、小宮  山重四郎君、伊東正義君、八田貞義君、森清君、  亘四郎君及び松井誠君が議長指名委員に選  任された。 同日  委員伊東正義君、熊谷義雄君、小宮山重四郎君、  八田貞義君、森清君、亘四郎君及び松井誠君辞  任につき、その補欠として竹内黎一君、倉石忠  雄君、坂村吉正君、藤本孝雄君、粟山秀君、渡  邊良夫君及び大原亨君が議長指名委員に選  任された。 同日  理事小沢辰男君及び澁谷直藏君同日理事辞任に  つき、その補欠として熊谷義雄君及び中野四郎  君が理事に当選した。 同日  理事熊谷義雄君及び中野四郎君同日理事辞任に  つき、その補欠として小沢辰男君及び澁谷直藏  君が理事に当選した。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事辞任及び補欠選任  労働関係基本施策に関する件(国際労働条約  第八十七号等に関する問題等)      ――――◇―――――
  2. 田口長治郎

    田口委員長 これより会議を開きます。  この際、おはかりいたします。  理事小沢辰男君及び澁谷直藏君より理事辞任申し出があります。これを許しますに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  これにより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よって、熊谷義雄君及び中野四郎君を理事指名いたします。      ――――◇―――――
  5. 田口長治郎

    田口委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山田耻目君
  6. 山田耻目

    山田(耻)委員 本日は大臣に、ILOドライヤー三人委員会政府代表として喚問されて、所信を述べられてお帰りになりましてまだ間がないのでございますが、特に問題が非常に大切な事柄でありますし、この取り扱いを誤りますと国際信用を失うことも著しいと思いますので、本日は特に前国会でいろいろと議論をいたしました国内法改正のそれぞれについてはお伺いする気持ちは、ございませんが、条約八十七号の批准をどうこれから考えていくかということの基本の問題についてお伺いいたしたいと思います。  まず先立ちまして、新聞などで、伝えておる模様を聞きますと、ドライヤー委員会はかなり厳正な態度喚問を続けられたというふうに聞いております。大臣が御出席なさいまして、日本組合権国際水準に照らして低いということは、今日すでに十分わかっておることでございますが、労働大臣として御出席なさいましてどういう印象を受けられたか、まずお伺いをしたいと思います。
  7. 石田博英

    石田国務大臣 ドライヤー委員会審問の詳細な内容は、この委員会秘密会議でございますので、具体的にこれに触れることは避けたいと思うのでありますが、御質問印象でございます。まず第一に受けましたのは、非常に厳正と申しますか、厳格な態度、その態度は非常に、ドライヤー氏以下、委員の各位がこのILO基本的な考え方というものの上にゆるぎなく立って、その尺度の上から労使双方について厳正な審問を続けられておる。したがって、そのILO基本的な考え方というもの、あるいは問題の審問範囲というものを逸脱したものについては遠慮なくこれをはねのけるという態度が、第一見受けられました。それから第二には、非常に日本実情についてよく承知をしておられることであります。それから第三は、きわめて静粛のうちに審問が続けられた、こういう印象を受けました。
  8. 山田耻目

    山田(耻)委員 ゆるぎない基本的な態度で、ILOという機構の精神の上に立って喚問が続けられたということでございますが、日本の今日の立たされておる実情というものが、十五回にわたって条約八十七号の批准もしていないし、結社の自由それ自体侵害をされておるという事態もございますし、そういう中で、政府代表としてあなたはどういうお気持ちで終始をなさいましたか。あなたのお立場をひとつお伺いいたしたいと思います。
  9. 石田博英

    石田国務大臣 私の立場は、この八十七号条約批准という案件日本政府自体としてこれを批准するという方向を決定し、それをILO総会において表明をいたして以来、かなりの年月がたっているにかかわらず、日本国内のいろいろの事情によって今日まで実現を見なかったということに対して遺憾の意を表明するということが一つ。しかしながら、日本政府はこの条約批准については非常な熱意を持っているという政府基本的な態度を明らかにするということが第二でありました。この二つを私は表明をいたしてまいりました。  それから委員会に臨む全体の態度としては、でき得る限りいわゆるどろ仕合いを避けたい。そうして事実をこの委員会の席上において明らかにするということで政府側証人の全体の態度というものを統一していきたいと思ったのであります。これは労働側も同様のお考えでありまして、一、二、若干エキサイトしたと申しますか、遺憾な応答があったようでありますが、全体としてはそういう態度で終始されたと私は考えております。
  10. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣としては、政府としては誠意を持って熱情を込めて条約批准に今日までも努力をしたし、これからも努力をするけれども、今日遺憾にも批准できなかったということは与野党の間でまとまらないという立場で向こうで意向表明されたというふうなことはございませんでしたか。
  11. 石田博英

    石田国務大臣 私はその原因について具体的に別に申し述べませんでした。
  12. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなた以外に約十二名の政府代表が行かれておるのでありますが、それぞれの答弁の中にはそういう趣旨の陳述はございませんでしたか。
  13. 石田博英

    石田国務大臣 与野党ということばを使ったか使わないかは明確に記憶しておりませんけれども、こういう事態になった原因双方にあるという表現を使っていることは私も承知しております。
  14. 山田耻目

    山田(耻)委員 非常に注意深く微妙な発言をなさっているのでありますが、これは秘密会であったかもしれませんが、しかしそれぞれが交互に質問をいたしておる事項でございますし、いずれはっきりはしてくると思いますけれども、少なくとも政府批准のために積極的に今日まで努力をしてきたが、与野党の間でまとまらずに混乱をしたというふうに責任与野党にかぶされるという意図があなた並びに政府の中にあったとしたら私はきわめて遺憾なことだと思うわけです。少なくともさきの四十六国会特別委員会を開きましたときに、与野党の間で意見がまとまりまして、しかも六月二十二日以降二日間にはかなり与野党として今日までの問題点を了解し合ったけれども、いろいろな自民党党内事情でできなかったというふうにその衝に当たった私は承知をしておるのでありますけれども、そのことをあなた並びに現地に行かれました政府代表の方々が承知をして申されたということになりますと、これは今日までの国会審議のいきさつをまさに冒涜するものであるというふうに私は感ぜられてならぬのでありますけれども、そこらあたりのあなたの見解はいかがでありますか。
  15. 石田博英

    石田国務大臣 私はその当時当該の責任者ではありませんでしたけれども、私が党の執行部から承っておりました認識では、与野党の間で、倉石河野両氏の間で協議がまとまったものについて誠意をもってその実現をはかるということ、つまり、その実現について努力をするということは公約であります。その努力は、自由民主党の執行部として最大限の努力をしたものと考えておるのでありますが、しかし、この問題の背後にありまするいろいろな諸条件、そのいろいろな諸条件からかもし出される意見の相違というものがこの実現努力を成功させなかった。これははなはだ遺憾である。こう考えておる次第であります。
  16. 山田耻目

    山田(耻)委員 非常に大切なことでありますし、微妙でありますので、もう少し質問を続けていきたいと思うのでありますが、与野党の間で河野倉石合意点というものがそれぞれの機関で認められまして、しかもその結論を誠意をもって実行するようにいたそう、ここまでの状態というのは、少なくとも与野党の間でまとまらないというふうな事態を引き起こす条件は備えておりません。したがいまして、後段でこれがまとまり切れなかったのは、与野党の問題ではなくて、自民党内部事情であった。これがあなたのおっしゃる諸条件というものであろうというふうに私たちはすなおに理解をしておるわけであります。しかし、それが権威あるドライヤー委員会というところに呼ばれまして、政府が積極的に批准をさせようと思ったのだけれども、与野党意見がまとまらなかったから、残念だけれども批准をするに至らなかったという立場になりますと、私はきわめて事実がゆがめられておるような気がしてなりませんけれども、この点については、非常に微妙でございますから、あなたの立場もあろうかと思いますから、これ以上きびしく追及はいたしませんけれども、そういう事情というものは、私は、これからの国会運営の上においても大切でございますから御理解を願っておきたいと思うわけであります。  そこで、話を若干もとに返していきますけれども、あなたがジュネーブからこちらにお帰りになりまして、新聞発表なさいましたのを拝見したのであります。これは私の読み違いならば、別でございますが、いずれにいたしても、ドライヤー実情調査調停委員会来日するであろうというふうな記事が載っていたわけでございますけれども、ドライヤー委員会日本来日するという判断をお持ちになったあなたの気持ちは一体どうであるかということを伺います。
  17. 石田博英

    石田国務大臣 私は、そういうふうに積極的に申してはおらないつもりであります。前通常国会において批准が終われば、当然ドライヤー委員会というものが開かれないだろう。しかし、前通常国会において批准を不幸にしてできませんでしたために、ドライヤー委員会というものが活動を開始いたしました。その審問を開始いたしました経緯、方向等について日本政府側連絡がいろいろあったのでありますが、その連絡の中に、期日は別に明確にまだ出してありません。同時に、年内に、つまり、ドライヤー委員会日本に来る前に日本政府批准が終わったならば日本へ行くことはやめるだろうということはどこにも書いてないわけであります。審問が開始され、そうして、その審問日本政府が応じた以上は、ドライヤー委員会のおきめになる審問方向に協力をするのが当然であります。そういうことを私は申し上げたのであります。したがって、批准が終わっても必ず来るだろうとか、あるいは批准をすれば来ないだろうとか、そういうような積極的意思表示を私はしたわけでもなく、また、そういう材料も持っていないわけであります。
  18. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣にお伺いをするわけでありますが、条約八十七号というものと、ドライヤー三人委員会の持っておる実情調査目的というものは同じものであるというふうにお考えでございますか。
  19. 石田博英

    石田国務大臣 全く同じではありませんが、しかし、それは主要なものが八十七号の批准という問題、そこへ集約されておると解釈しております。したがって、その主要なものが解決されれば日本へやってきて調査をする必要性というものはかなり変わってくるだろう、こう私は考えていたのであります。
  20. 山田耻目

    山田(耻)委員 実情調査調停委員会というのは、大臣も御存じのように、日本のそれぞれの組合ILOに提訴いたしましたのをひっくるめまして、ケース百七十九号案件として処理されております。この中には、日本組合基本権侵害の問題をはじめといたしまして、非常に広範囲なものが含まれております。これらについて実情調査調停委員会が調べようとなさる気持ちがありますがゆえに、非常に広範囲に今日まで調査をなさっているわけであります。したがいまして、条約八十七号というものが批准をされたことによって、すべて百七十九号事件というものがそこで消滅をするというふうにはあなたもお考えにならないと思うのです。したがいまして、あなたの日本調査団がお見えになるということの一つ表現については、条約八十七号というものの批准とは直接的には関係ございますけれども、日本組合権侵害というかなり広範囲なものについて調査をする、それが百七十九号事件中身を網羅しているものでございますだけに、そういうことで来日をするというふうな気持ちはあの表明をなさるときには毛頭考えずになされたものでありますか。
  21. 石田博英

    石田国務大臣 ドライヤー委員会審問する対象はあなたのおっしゃったとおりであります。しかし、その中の中心的なものは八十七号条約批准とされていると私は考えておるのであります。したがって、それを日本政府批准すればドライヤー委員会審問をする課題というものにも大きな変化が生じてくるだろう、これは推定であります。したがって、ドライヤー委員会来日ということにも影響があるだろうと考えております。たとえば、来る、来ない、来ても、来た場合の審問範囲、あるいは活動、そういうものにも影響があると考えていいわけでありますが、しかし、これはドライヤー委員会がすでに活動を開始したのでありますから、ドライヤー委員会の独自の判断でおきめになることで、私どもがこれに推測をしてどうこう言ってみたところでしかたがない話だ、こう思いますが、私の記者会見で申し上げたことは、そういうことを含めて臨時国会批准が終わればドライヤー委員会日本へ来ないのだということは言えないのだという意味のことを申し上げたのであります。
  22. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたの談話として発表された真意はそれでわかりました。わかりましたが、条約八十七号が批准をされましても実情調査調停委員会というものの組織された根拠、目的という立場から見ますと、理論的には来ることもあり得るということは言えると思いますね。問題は、今日大臣のお気持ちの中には条約八十七号が批准をされれば、この調停委員会の主たる目的を達したことになるであろう。だから、来ない場合もあるであろう、こういうふうな御判断をなさっておるようでございますが、ただ私は、条約八十七号の批准というものが形式的になされるということになりますと、少なくとも日本問題ケース百七十九というものは少しも解決されたということにはならぬでございましょうし、そこらあたりの関連が来日をされる方向をきめられるものであるでありましょうし、問題は条約批准されたという、その形式的な事実のみが来日を阻止するということにはならないであろう、こういうふうに私は考えておるのでありますけれども、大臣所信というもの、見解というものはそういうものであるということでございますので、そこらあたりには若干の食い違いがございますが、私の考えているような事柄については、大臣としてお考えになる要素はございませんか。
  23. 石田博英

    石田国務大臣 私は先ほどからも申し上げておりますように、条約批准が終わったらドライヤー委員会は来ないだろうということは一つも申し上げておりません。そういう推測もしておりません。条約批准が終わったからといってドライヤー委員会が来ないというふうに判断する材料はないのだということを言うておるわけであります。
  24. 山田耻目

    山田(耻)委員 ドライヤー委員会来日条約批准ということは他人ごとではございませんし、日本の問題でございますから、もっと具体的に、できれば来日なさらぬでも持っておられる意図十分条約批准を通し、国内法改正をみごとに行なって名実ともILOのいう精神も、ともども批准をされるという形式、形態が取れれば、おっしゃっているとおり主たる任務が終わるわけでございますので、おいでにならぬかとも私も思うのでございますが、昨日、参議院大臣答弁なさっている事柄を私、少し聞きまして、きわめて心外に思っておるところであります。若干それらの問題についてお伺いをしたいと思うのでありますけれども、国内法改正条約の八十七号批准とを分離をして形式的に批准をなさろうというお気持ち大臣としては全然ないと思うのでございますが、それでよろしゅうございますか。
  25. 石田博英

    石田国務大臣 何か新聞紙上分離して批准するという考えがいろいろ出ておるのを私も読みました。政府部内としてそういう方針を決定した事実はございません。この八十七号条約批准をできるだけ早い機会に、要すれば臨時国会で成立させたいという熱意と強い願望は持っておりますが、それをどう取り扱うかということ、取り扱い内容をあまり早い時期に公にしますことは、この問題を処理するために適当でないと考えますので、いまの御質問を含めて答弁を留保させていただきたいと存じます。
  26. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういう慎重な態度できのうも参議院お答えになったものだと私は思いますけれども、しかし新聞が報じておるところを見ますと、あなたはきわめて軽率にものをおっしゃっておられるようなふうに受け取れるわけでございます。そこで私はそうであったとしたらたいへん遺憾でございますから、きょうはもっと政府として所信が述べられなければ、担当の大臣として所信を述べていただきたいという気持ちでいま伺っておるわけでございますから、ぜひともあなたの所信伺いたいと思うのであります。  もう一度お聞きしたい点を申し上げますと、条約八十七号の批准というものと国内法改正というものを分離して行なおうとする気持ちは、もしそれがありとするならば、きわめて形式的にごまかして、国際的な立場からの追及を避けるというふうに受け取られてもしかたがございませんし、特にドライヤー委員会喚問状態というのは、形式的なそうした批准でなくて、今日抵触する個々の問題についてかなり掘り下げた議論がされておるだけに、そういう問題点についても、国内法の中でみごとに整理をされて批准をなさるというのが調停委員会おいでになってお述べになった大臣立場であったろうと私は思うわけでございます。当然そういう立場でこれからILO案件処理については大臣はお考えになっておると私は思うのでありますが、そういうふうに理解をして間違いはございませんか。
  27. 石田博英

    石田国務大臣 私は昨日の参議院社会労働委員会においても、この問題については先ほどお答えをした以上のことは申しておりません。そうしてこの問題は、この程度で現在とどめておくほうが私は問題を処理する上に、あなたがおっしゃったような方向処理する上にも適当であろうと存じますので、これ以上のことはごかんべんをいだたきたいと存じます。
  28. 山田耻目

    山田(耻)委員 慎重もたいへんけっこうでございますけれども、あとからまたとやかく文句を言い合ってもおもしろくないと思います。確かにあなたのいまの立場としていろいろな御配慮から述べにくいという気持ちもわからぬことはございませんが、ただ、いまのあなたのとっておられるような態度をとることが、私が申し上げている事柄を進めていく上にふさわしい態度なんだ、こういうふうにおっしゃったと受け取ってよろしゅうございますか。
  29. 石田博英

    石田国務大臣 八十七号条約を国際的な要請と水準の上において批准をするという上に私のような態度をとることが正しい方法――正しいと申しましょうか、効果的な方法だと考えております。
  30. 山田耻目

    山田(耻)委員 形式的な批准でなくて、ILOの指向しておる方向の具体的なものを含めて処理をするという上において、いまのあなたの態度をとられることが適切であるというふうに私もあなたのお気持ちを受けまして、私の気持ちとしては分離批准はなさらないというふうなお気持ちであったと私は私なりに受けておきますから、そのようにひとつ理解をして次に進みたいと思います。  それからもう一つ、これは私は重たい軽いの目方の議論をするわけではございませんが、何か参議院質問の中でさきの四十六国会でいろいろと与野党の間で話が進んでまいっておりました誠意をもって尊重しよう、こういう約束の品物でありますところの河野倉石妥結点合意点、こういう一つ中身のものはドライヤー委員会でも私は若干のやりとりがあったのじゃないかと思いますが、私たちILOのそれぞれの条約なり、憲章を読んでみまして、あの合意点の中にも若干抵触する部分があるのではないかと懸念される点がございます。言いかえたならば、あの河野倉石合意点というのは、いわゆる社会党の主張組合側主張自民党主張、こういうものが少なくとも二年半の長い歳月を費やして、あらゆる角度から話を進めていって、妥協点に達した所産であるだけに、ILO条約憲章自体をあわせてみますと、抵触するというふうに見られる分野があるのだと私は思うのであります。それを別の角度から言いますと、八十七号条約批准するにあたりましては、あの合意点というものは最低のものである。むしろ社会党なり、組合の人々の主張というのはもっと高いところに向けて、強い意向が出されておっただけに、今日最低でもこれでまとまるならばという気持ちでまとまったのがあの合意点でございます。その最低の問題を政府内部には最高の条件だというふうにお考えの向きがあるやに仄聞いたします。労働大臣のお気持ちジュネーブでいろいろと喚問され、現地の空気にも触れられてお帰りになったあなたの気持ちとしては、これをどのようにお考えになりますか、お答えいただきたいと思います。
  31. 石田博英

    石田国務大臣 ドライヤー委員会においては、いわゆる倉石修正案というものについては、ほとんど触れられませんでした。この内容最低か最高かということは、これは非常にお答えしにくい問題であります。そうして党内にもまた世間にもいろいろ議論がございます。この内容をどう判断するかということ自体先ほど申しましたILO案件処理についての私どもの考え方を早い時期に表明することになりますので、前にお答え申し上げましたと同じような意味において、この問題についてのいまの御質問お答えは留保させていただきたいと存じます。
  32. 山田耻目

    山田(耻)委員 非常に答えにくいという気持ちはわかりますけれども、確かにドライヤー委員会では河野倉石合意点の中の一つ一つについては審査され、喚問されるというふうに私も承知しておりませんけれども、あの中に持っておる幾つかの条件、こういうものは最低の線として満たされなければならないものであろうし、ある意味ではもっと高めて処理をしていかなければ、条約八十七号を名実とも批准したということにならない、こういうふうな気持ちを持った人たちがかなりあるやに私も漏れ聞いておるのでありますけれども、私はこれから条約八十七号を批准していく上において、あなたがどのような具体的な中身をお持ちになってやろうとなさるかということを聞いておるのじゃございません。そういうドライヤー委員会におきまして、いろいろとあらゆる角度から喚問された事項の一つ一つをやはりあなたとしては政府責任者として御存じあるはずでございます。その立場から見てどうお考えかと私は聞いておるのでございます。お答えいただきたいと思います。
  33. 石田博英

    石田国務大臣 ドライヤー委員会審問は結論とか、方向とかいうものを少しも明示しておりません。事実の究明にまだ終始しておる段階であります。それからその審問内容の詳細について別に報告を受けておりませんが、大筋についてはむろん報告を受けて承知しております。私どもこの問題の取り扱いドライヤー委員会を含めたILO、われわれが参加をしておりますILOの求めて追求しようとする精神に即応するような方向でこの問題を処理していきたいという感じを早くから持っておるのでありまして、ドライヤー委員会審問によってそれが左右されたというわけでは別にありません。私は当初からこの問題を、いま申しましたような方向処理をしていきたい、こう考えておるのであります。
  34. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたの答弁では、私がお伺いしておることについては直接触れられないのでありますけれども、私は一つの点だけを申してみますと、たとえば、管理職の範囲の問題につきまして郵政の代表の方が申された意見、国鉄の代表が申した意見、法制局の次長の申した意見、それぞれの間にはかなりのニュアンスの違いがございます。労組法二条一項によるものをもって管理職の範囲とするという立場がとられるとするならば、少なくともあの合意点の中には若干の問題をかもす条件がございます。私はそれらの一つ一つをきょうここでやろうとは全然思っておりません。おりませんけれども、私たちがああいう立場政府並びに組合代表が出席をして喚問を受けた中で、やはりあそこで取りまとまっておった合意点というものがほんとうにILO条約批准に必要な精神を貫いていった合意点であるというふうには考えられない向きもありますから、その点についてあなたはどうお考えかということをお伺いしておるのでございますので、それらについて私はお答え願っても別にあなたの立場がおかしくなったりどうかなったりするというふうには思わないのでありますが、いかがでありますか。
  35. 石田博英

    石田国務大臣 私の立場がどうなるこうなるということではないのでありまして、八十七号条約というものを早期に批准するというために適当でないと考えておる次第であります。  それから管理職の範囲の問題について審問があったということは承知しております。しかしその審問方向内容、それはどうもお受け取りになった両方、労使といいますか、政府及び労働者側それぞれ受け取られた受け取り方にかなり違いがあるようであります。群盲象をなでるとでも申しますか、ドライヤー委員会がどういう判断をされるかは、いま審問の途中でわれわれがいろいろ推測してみてもしかたがないことだろうと思うのです。速記録をとったわけではありませんから、これについてどうこう議論をする段階でないし、してみても要するに人のおなかの中を探るだけの話でございますから、ただ私は先ほどから申しましたように、ILOにわれわれが参加をし、その参加を前提として国際連合に加入しておるわけでありますから、そのILOの要請する水準に基づいて八十七号条約批准を熱心に実現したい、こう考えておる次第であります。
  36. 山田耻目

    山田(耻)委員 いまの後段のあなたの態度、よくわかりました。ILO精神に反さないように、国内法の諸整備も終えて批准をする、こういうふうな立場が、やはり私の質問した気持の答えに十分なり得ると思いますので、いまの最後の御答弁で私も了解をいたします。  次に、もう一つ、昨日の参議院質問などでちょっと気にかかる点がございますのは、分離という形式については、さっきお伺いいたしましたのでわかりますけれども、いまの条約八十七号批准、その精神を貫いた国内法の整備というものは、一体のものであるというふうに、くどうございますけれども、重ねてあなたのお気持をそのように理解してよろしいかというふうにひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 八十七号条約批准するために、それに関連する与野党間の意見の調整が必要でありましたので、その批准を容易ならしめるために、倉石河野両君が御努力をなさったのでございます。私は、そういうふうに理解をいたしているところでございます。
  38. 山田耻目

    山田(耻)委員 承知いたしました。  次に、これはくどいようでございますけれども、やはりこの条約精神が十分貫かれた国内法整備ということがなされないと、直ちに条約適用勧告委員会というところにまた、新しい紛争を生ずるというふうな形がILOの機構の中には。ございますので、これから政府責任者としてこの問題をお取り扱いになる大臣に、いままで私がお伺いをした内容それ自体が正しく措置されていきますように、特にお願いをしておきたいと思います。  それでは、私のほうの質問は、大体概括的なものでございまして、きょうは、大臣答弁のしにくい分野も、いまの段階で私もわかっておりますので、細部については立ち入らないということで、本日は、これで終わりたいと思います。
  39. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 せっかくの機会でありまするから、関連して伺っておきたいことがございます。  実は、ドライヤー委員会に、大臣は、直接御出席になられて、終始審議の模様を聴聞されたことでありましょうから、その内容について伺いたいと思うのでありまするけれども、ただいま山田君とのお話、応答を伺っておりますると、秘密会だというので、内容の詳しい御答弁は困難であろうと思いまするから差し控えまするが、ただ、秘密会秘密会と申しましても、政府側とさらに労働側が、その委員会の審議に参加しておるのでありますし、労働側においては、その報告を機関に流しておりまして、秘密は当然漏洩すると見なくちゃなりませんね。そこで、きょうこの機会にどうという必要はございませんけれども、将来、適当な機会に、国会の審議を円滑ならしめるために、それは秘密会であってもけっこうでありまするから、少なくとも国会に対しては、大臣政府に報告したと同じ程度のものを報告すべきではないかと私は考えまするが、この点はどういうふうにお考えでしょうか。
  40. 石田博英

    石田国務大臣 これはドライヤー委員会日本政府及び労働代表の間で秘密会にするという約束をしておるわけであります。したがって、ドライヤー委員会の了解なくしては、少なくとも日本政府はそれを発表するわけにはまいりません。労働側がどうしておるか、こうしておるかということでありますが、三者で約束をして、その一がそれを破ったからといって、当然のごとくわれわれがその協約を破る権利が生じたとは、われわれは考えないのであります。われわれは、やはり守るべきものは守るのが政府態度だろう、こう思っておる次第であります。それから、政府に対しまして――政府と申しますか、閣議に対しましても、その秘密に属する部分を詳細には報告いたしておりません、基本的、根本的なものは報告いたしておりますけれども。そういう状態でございますので、御了承願いたいと思います。御要求がありまして、ドライヤー委員会の同意が得られれば、これはまた別でございます。
  41. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 ドライヤー委員会に対してひとつ大臣が積極的に、日本国会に対して、審議を円滑にするために、三者の間で秘密ということになっておるが、私がいま申し上げておりますように政府に報告した程度のものでよろしいから、国会に報告したいと思うがどうか、こういうことをドライヤー委員会に照会なさる御意思があるかどうかということを伺っておきます。
  42. 石田博英

    石田国務大臣 政府に報告した程度のことは、御質問お答えいたしております。
  43. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 この問題ばかりにかかっておられませんから、いずれILO問題を審議する機会にまた発言のチャンスもあろうかと思いまするから、この程度にいたしておきたいのでありますが、もう一、二伺っておきたいのは、ドライヤー委員会の席上におきまして、政府並びに労働者側ともに、八十七号条約批准問題に関して端的に見解を発表したかどうか、したとすれば、どういうふうな発表であったかということを、簡単でよろしゅうございますから、伺っておきたい。
  44. 石田博英

    石田国務大臣 これは先ほど山田委員の御質問お答えをいたしましたように、いままで延びたことを非常に遺憾に思うという点と、そうして同時に、この批准日本政府としては熱意をもって早期に行ないたいということを申し述べました。この批准を早期に行ないたいということについては、労使双方の間で別に懸隔はございませんでした。
  45. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 ドライヤー委員会は今回の証人喚問を終了したわけですが、今後同委員会の対日調査、たとえば派遣であるとか、その他いわゆる派遣を含んだどのような調査計画を進めると思うか、その見通しと、それから、今後のドライヤー委員会調査に対して政府はいかなる態度で臨むかということを伺っておきたい。
  46. 石田博英

    石田国務大臣 十一月に開かれます理事会に中間報告はなされるだろうと思います。それから、現在のところ、来日調査ということは決定しておりますが、いつどういう形ということは承知しておりません。これからドライヤー委員会調査を行なうにあたっては、このドライヤー委員会設置当時からこれに応じたのでありますから、政府は当然協力してまいるつもりでございます。
  47. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 昨日の参議院の社労における大臣の御答弁として今朝の新聞に載っておるところによりますると、いわゆる与野党――与野党といっても有力なる野党であります民社党はこれに加わっておりませんが、いわゆる自民、社会両党の間におけるお話し合いによりまするところの河野倉石修正案でございまするが、これは過ぐる四十六国会においてこれが未成立と決定するや、内閣不信任案が出た。したがって、あの内閣不信任案によって倉石修正案というものはおのずからその意義を失ったものである。ことばは違うかもしれませんが、こういうふうなたてまえとなったというふうな御発言があったやに新聞に出ておりまするが、そのような御答弁があったのでございましょうか。
  48. 石田博英

    石田国務大臣 意義を失ったとは申しておりません。また私も意義を失ったとは決して考えておりません。ただ、与野党間の話し合いというものは、私は当時自民党の役員会で聞いた報告でありますが、あの話し合いの実現に向かって自民党執行部も鋭意努力をいたしましたが、その努力が実を結ばなかった、そういう旨の報告をすると同時に、自民党としてはこれを打ち切ったという意味の表現をしたと、当時の前尾幹事長から役員会の報告を受けました。それに基づいて社会党の不信任案が提出されて、それが否決されたわけであります。したがって、私はその内容とかその意義とかいうことが消滅したということを言うておるわけではないのであります。いままでの与野党の間の話し合いの手続というものはそれで一段落がついたものだ、こういうふうにお答えをいたしました。と同時に、しかしながら特別委員会において政府原案と同時に倉石修正案というものも議題になりました。そこで、その議題になった部分について、私の前任者である大橋君が答弁をした、その答弁をした内容については私も責任を受け継ぐのだという意味のことをお答えいたしたのであります。
  49. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 国会答弁は用語の端に至るまで正確を期したいのですが、与野党間ということばは、少なくとも私の質問に対しては、自民党、社会党間というふうに御答弁を願いたいのです。それから、決してことばじりをとらえるわけではありませんけれども、私の意義と言いましたことは、あくまでも国会における今後の審議を拘束するものかどうかという意味の意義という意味でありまして、それは広い意味の意義というものはもちろん大臣の言われるとおりであります。  それから、さらにもう一つ言わなければなりませんが、倉石修正案というものを私どもは幽霊案と言っております。というのは、とうとうあれは国会に姿を見せておりません。これは、私はILO委員会委員長倉石君に対して、これはおかしいじゃないか、倉石修正案が全然上程されていないのにその内容が論議されるのはおかしいじゃないかということで答弁を求めました。倉石委員長は、これは仮定に基づいての質疑応答でありますというので、私は何をか言わんという態度であったのでありますが、いまお話を伺っておりますと、倉石修正案がさも上程されて、そこで大橋前労相との間に何か審議でも進められたかのごとき大臣の御答弁でありますが、これはひとつ訂正してもらいませんと……。そういう事実はないのです。ですから、倉石修正案内容とするものについて、いわゆる仮定に基づく議論があったことは私も認めますが、倉石修正案というものは全然衆議院にもどこにも姿を出しておりません。これはもう幽霊案でございますから、ひとつ誤解のないように……。
  50. 石田博英

    石田国務大臣 私の先ほど答弁はことばを簡単にし過ぎた結果、不十分な点がたくさんあったと思いますので、いまお話しのような趣旨に訂正をいたします。
  51. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 時間の御注意がございますから簡単にやりますが、そこで昨日の御答弁がけさの新聞の報道にありますように、いわゆる不信任案の上程によって、自民、社会両党間のいわゆる倉石修正案なるものは、一応国会の審議の面において政府及び与党を拘束するものではないという大臣のお考えのようであります。ところが岩井総評事務局長は、すぐそれに続きまして新聞に談話を発表しております。それによりますと、かりに石田労働大臣の言うようなことを認めるとしても、総評との約束はどうするか、こういうことを言っております。労働団体と政府与党との間にどういう約束があったかつまぴらかにいたしませんが、巷間いろいろ伝わっておりますが、この岩井発言に対して大臣はどう思われるかということ。それからもう一つついででありますから伺いますが、今後も、いわゆる政党間における話し合いというのはわかりますが、政党以外の労働団体とも院外において話し合う御意思を少なくとも大臣は持っておられるかどうか、その点をあわせて御答弁を願いたい。
  52. 石田博英

    石田国務大臣 総評と政府との間には少なくとも約束はございません。それから総評と倉石君との間にどういう約束があったか私は承知しておりません。それから国会内で取り扱うべき問題は、これは政党間で話し合うべきものだと考えております。
  53. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 大体そういうところでいいでしょう。もう少し伺いたいのですけれども、そこで、臨時国会の上程についていろいろなことがいわれておるのであります。大臣は非常に強い御意思で臨時国会においてこれを批准したいお考えのようでありますが、むろんそれにはいろいろな客観的な情勢あるいは主体的な条件なども、たとえば総理大臣の欠席云々という問題等も考慮されるわけでありますが、いかなる障害がありましょうとも、大体十一月ぐらいを予定されておると思いますが、その臨時国会に八十七号条約批准案件を上程なさる強い御意思をお持ちかどうかということを、この際確かめておきたいと思います。
  54. 石田博英

    石田国務大臣 いかなる障害があろうともと言われると、それを前提にしてはお答えできませんけれども、私としてはぜひ上程をしたいという強い願望を持っております。
  55. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 元来国際条約批准というのは、それ自体が形式的なものでありまして、それを批准したことによっていろいろな具体的な内政の面、外交の面等において処理することが必要となってくるために、条約批准後の効力発生の期限などがついておると私は思うのでありますが、いわゆる形式的な批准に対していろいろな議論もあるやにも聞いたのでありますが、私は条約批准はあくまでも形式であり、その具体的内容はその後の一定された時間の間に内政面を整えるという筋合いのものだと思うが、大臣はその点はどういうふうに考えておりますか。
  56. 石田博英

    石田国務大臣 これも先ほど山田さんにお答えしたと同様に、ひとつ答弁はごかんべんいただきたいと存じます。それについてむろん私の意見はあります。意見はありますし、その意見がきわめてあたりまえのことであろうとも、いま言わないほうが問題を取りまとめるために適当であろうと考えますので、どうかひとつごかんべんのほどをお願いいたします。
  57. 吉川兼光

    ○吉川(兼)委員 いずれ臨時国会あたりで私もこの問題でお尋ねする機会があると思いますから、本日はこの辺で……。
  58. 田口長治郎

    田口委員長 小林進君。
  59. 小林進

    ○小林委員 私は人事院勧告の問題と、それから最近、新潟地震に便乗いたしまして、企業合理化の名前において不当なる首切りが行なわれておる、この二点についてお伺いいたしたいと思うのであります。  まず第一番目の人事院勧告でありますけれども、人事院総裁と給与担当の増原国務大臣来ておりますか。
  60. 田口長治郎

    田口委員長 いま呼んでおりますから。
  61. 小林進

    ○小林委員 増原君はいまどこへ行っていますか。
  62. 田口長治郎

    田口委員長 いま参議院におりますから、こちらから要望があればすぐ呼ぶようにしております。
  63. 小林進

    ○小林委員 できれば順序上人事院勧告から先にやりたいのですが、来ますか。いれば来てもらいたいのですが……。  それから人事院も来ておりますか、人事院はいませんね。
  64. 田口長治郎

    田口委員長 いま連絡して、すぐ来るそうです。
  65. 小林進

    ○小林委員 かけ足でひとつ……。
  66. 田口長治郎

    田口委員長 速記をとめて。   〔速記中止〕
  67. 田口長治郎

    田口委員長 速記を始めてください。
  68. 小林進

    ○小林委員 まず人事院総裁にお導ねをいたしますが、給与に関する人事院の勧告は何月何日にお出しになりましたか。(「人事院はいない」と呼ぶ者あり)まだいないのか。何だ全く。(「いま来る」「来た来た」と呼ぶ者あり)大体、労働委員会が開かれて給与問題があるのに、人事院には重大問題じゃないですか。労働者は毎日各省にすわり込んだり、デモをやったり命がけで戦っているじゃないか。国会で呼び出しがあろうとなかろうと、人事院の総裁や人事官、関係者が待機するのはあたりまえですよ。いま国会が開かれるといえば、何委員会を問わず、公務員の賃金の問題を取り扱うなんというのはあたりまえで、昼飯を食いにいきましたなど何です。洋行しますからその準備に行ったなどふまじめきわまるよ。給与局長、君のところに何回呼びにいった。そういうふまじめなやり方をしているからだめなんだ。そういうふまじめなやり方ではいかぬよ、全く。君たちの勧告の問題でどうなるかということでみんな命がけじゃないか。給与局長だの関係者だけにまかしておいて、あとは勧告が出れば能事終われり、われ関せずえん。人事官は一体何人いるか、三人も四人もいるじゃないか。一人しかいないなんという失敬な話があるか。  それでひとつ、今回の勧告の問題点についてお伺いいたしまするが、今度の人事院の給与勧告に対しては、国家公務員は一律に七千円の賃上げの要求をした。それに対して勧告の平均は七・九%だ。金にして二千五百九十八円、これだけのアップにしかすぎない。一律の要求に対して何で一体こういう七・九%というけちな勧告に終わったのか。その経緯をひとつ承りたい。同時に先ほども、あなたの来ないときに言ったけれども、一体今年度何月何日にその勧告をせられたのか、期日もちょっと明確に言っていただきたい。
  69. 瀧本忠男

    瀧本説明員 人事院は八月の十二日に勧告をいたした次第でございます。  そこで、どのような勧告をしたかということでございますが、ただいまお示しのように本俸では七・九ということに相なるのでございまするが、本年は官民の比較をいたしますのに、従来人事院は五十人以上の民間企業における公務と同等な職務をやります者を比較の対象としておったのであります。ところが本年は御承知のように三公五現の仲裁裁定におきまして、民間と比較をするという新しい方式を採用になったのであります。その際に民間と比較するその対象となりますものは百人以上の民間の企業である、こういうことに相なったのであります。そこで人事院といたしましても、これは従来五十人の比較をいたしておったのでありますけれども、これは三公五現が百人ということに相なりますれば、やはりそのバランスということも十分考えなければならないというような観点から、従来よりも方式を変えまして、百人以上の民間の企業につきましてこれを比較の対象といたすということにいたしたのであります。  そこで、そういう比較をいたしてみましたところが八・五%、これは毎月支給されます給与におきましての話でございますが、八・五%の差がある、こういうことに結果がわかりましたので、われわれのほうといたしましては本俸で七・九%上げる、しかしながら本俸を上げますればこれに伴いましてはね返り等がございますので、それらを合わせますると、これは八・五の完全な引き上げをやったことになる、こういう結果に相なるのであります。はね返りのみならず、昇給短縮というようなこともあわせ行ないまして、そういうことになります。なおそのほかに、従来五十人以上で比較いたしておりましたものを百人以上で比較いたすということに相なりましたために、期末、勤勉手当におきましても、これまた相当の増額になるという事情が出てまいったのでございまして、そのようなことをあわせ考えますれば、今年の勧告というものは、大体におきまして民間の本年の春闘に対応するくらいな数字に相なっておる、このようにわれわれは考えておる次第でございます。  それで、申し上げるまでもなく、この人事院の勧告というものは公務員法に基づいてやるわけでございますが、過去四年間にわたりまして、おおむね八月に勧告をいたしまして、五月から実施していただきたい、こういうことに相なっているわけでございます。
  70. 小林進

    ○小林委員 それでいま本俸は七・九%を上げることによって、大体格差の八・五%に追いつくことができる、そのほかに期末手当等もそれにスライドして若干の値上がりをするというふうな答弁があったのだが、あなた方に官民給与の比較については、四月に調査をされたということになっている。ところが今年の春闘というものは相当長期の時間がかかって、四月のころにはまだ妥結しない賃金がたくさんあった。だから四月の中ころだとか、以後にきまった賃金というものは、あなた方の調査に入っていない。そこにまたこの七・九%というものに相当の狂いがあると思うのだが、この点は一体どうか。  それからあなたは先ほどから百人々々と盛んに宣伝されている。しかし調査の対象の事業所の規模を五十人から百人にしたと言われるけれども、これはやはり五百人以上を対象にするということが、いまの国家公務員の職場の規模等から勘案して、われわれは至当じゃないかということを、これは多年にわたって叫んでいる。どうして一体五百人以上の規模でできないのか。あなたは三公社五現業、公共企業体とのかね合いがあるとおっしゃったけれども、われわれはやはり国家公務員の立場においては五百人以上の規模の給与を標準にすべきが至当であると思うが、時間もないから要点だけにしておきますけれども、この二つの点いかがですか。四月調査の矛盾、規模が五百人以上が至当であると考えるが、どうか。いかがでありますか。
  71. 瀧本忠男

    瀧本説明員 人事院は民間と比較いたしますのに、事業所規模五十人以上のものということでずっとやってまいったわけでございます。そこでこれは非常に問題であるという御指摘のことでございますが、いろいろな観点から公務と民間とを比較するのに議論が出てくるわけであります。ただいま御指摘のように、公務というものは、見方によっては五百人以上ないしは千人以上、場合によっては公務のように大きな企業とは言えませんが、一つの経営と申しますか、そういうものがないから、もう民間に率先範を示すという意味において、非常に高い給与水準でいいのではないかという議論もあります。ところがまた一方におきまして、やはり公務員というものの給与は税金の中から支払われるのである、したがって、その税金に国民全体が負担しておるのであるから、そういうことを十分考慮しなければいけないという議論もまたあるのでございまして、そういういろいろな議論の中におきまして、大体五十人ということが国民全体の御納得をいただける線であろうということで従来やってまいったのでございますが、今回は公企体のほうで百人という線が出ましたので、百人ということに相なったわけでございます。  そこで今後においてこの問題をどうするかということでございまするが、現在のところまだ確たる方針はございませんけれども、やはりこの問題は十分検討いたしまして、一般の御納得を得るような方法で今後も検討していかなければならぬ、これは百人でもうよろしいというものではなかろう、このように考えております。五十人ということで、従来どおりのやり方でやってみますと――本年のわれわれの調査は、四月に現実に払われたものを調査いたしております。したがいまして、御指摘のように春闘というものがおくれているというために、四月分として支払われた給与の中には入っていなかったが、しかしその後妥結をして、さかのぼって四月分として支払われるものがあるということがあるわけでございます。そこでわれわれの調査におきましても、そういうものを調べたのであります。その結果、この春闘のおくれによって、もし完全にと申しますか、これはなかなか完全ということは――たとえばある六月二十日とか、そういうような日を選びまして、その日に一斉に全部の事業所について調査するというようなことは事実上不可能でございますので、調査に時間がかかるというようなことから、多少問題が残りますけれども、おおむねわれわれは春闘のおくれというものは約一・九%くらいであろう、このように見ているのであります。そこで従来どおり五十人で比較いたしたといたしますならば、その格差はどれだけあったかということをこれまた計算してみますと、七・六%、こういうことに相なるのであります。そこで、これはまた全体の問題になってまいるのでありますけれども、一番理想的な方法は、今回百人以上にするということをやったのは、それはそれでよろしい、そのほかに春闘のおくれということを百人で見ろ、こういう考え方もあり得ると思いますけれども、人事院としましては、従来五十人でやっておったということを基準に考えますならば、百人にしたということによりまして、おおむねこのおくれも吸収し得る程度の改善に相なったのであろう、このように考えている次第であります。
  72. 小林進

    ○小林委員 春闘のおくれというものを一・九%くらい考慮されたというお話でございますから、それは完全なものではないにしても、その考慮された御苦心の点だけは一つ認めておきましょう。適か不適か、私は専門でないからわかりませんが……。同時に百人以上も、これが納得のいくものかどうか将来とも一つの研究の対象にして、よりよきものを選びたい、この御返答もちょうだいしておきましょう。しかしあなたのことばに満足したわけではございません。お互いにひとつ研究の素材にいたすことにいたします。  特に今度のあなた方の勧告の中で私どもが一番ふに落ちないのは、人事院の算出した本年度の標準生計費の問題であります。その生計費の中で、食料費が一カ月五千九百円、これは一日が百九十四円四銭、一食幾らかというと、一食六十四円六十八銭、これで一体国家の公務員が人として人並みの栄養をとって、社会全体、国家全体に奉仕ができるとあなた方はお考えになっているのか。こんなことでは栄養失調になってしまいますよ。厚生省の栄養担当の公衆衛生局長は来ておりますか。こんな一カ月五千九百円なんかで、一体人間が人間として生きるだけのカロリーがとれますか。御承知のように今年度一級地において四人の標準家族で一万四千幾らかの生活扶助費の基準を政府は示した。動物だって、こんなものでは生きられない。一人平均三千五百円、こんなものでどうして生きられるのか。ところでそれは最低生活基準の問題なんだけれども、これは標準ですよ。標準生計費で一カ月五千九百円、どうして生きるのです。根拠をひとつお知らせをいただきたいと思う。
  73. 瀧本忠男

    瀧本説明員 人事院は標準生計費というものを毎年算定いたします。この一人の標準生計費というものを、十八歳で高校を卒業いたしまして、そして公務員試験を通って入ってくるという者の初任給をきめます場合に、この数字とながめ合わせて、その数字を実際の民間で調べました初任給よりも上げてきめておる、こういうことをいたしております。そこで、この食料費五千九百円ということになっておりますが、これはどうやってきめたかということでありますが、これは人事院がかってにきめておるのではございません。人事院は、厚生省でおやりになっておりまする国民栄養調査、これは非常に権威があるものというふうにわれわれ思っておりまするが、その国民栄養調査で一般の消費者がどのように消費をしておるかという状況を栄養調査の結果が示してくれます。これにはおとなもおり、子供もおり、老人もおり、男女いろいろな人がおるわけでございまして、一人平均の一日の摂取カロリーというものがその結果に出ておるのであります。そこでわれわれは、その結果表につけてありまする換算表を用いまして、成人男子の一日の平均カロリーに直すことをやるのでありまするが、さらに十八歳の者に換算する手続をやりましてこれを計算いたしてみますると、二千六百九十カロリー、こういうことになるのであります。すなわち厚生省の栄養調査の結果によると、成人一般十八歳程度の者は現にわが国において過去一カ年間――栄養調査は毎月やるわけではございませんが、そのやった月で見てみまするならば、およそ一日に二千六百九十カロリーとっておる、こういう状況が明らかになっております。そこで、二千六百九十カロリーというものを基礎にいたして、それをとるためにはどういう食品分を、あるいは食品別に数量を、どういうふうにきめたらいいかということになるわけであります。これも厚生省の国民栄養調査の結果食品分はどういうものをどれだけとっておるという割合をそのほうから持ってまいりまして、さらに個々の食品をきめます場合には、これは総理府統計局の生計費調査のほうからどういう商品をその中でとってくる、どういう割合でとってくるというようなやり方をやりまして、いわば国民が実際に消費にあたって摂取しておる食品を圧縮した形で、それをまとめた形でやる。いろいろな食品をいろいろの人がとっておるのでありますから、名前等も違うものが非常にたくさんありますし、それを全部というわけに参りませんから、同種類のものをまとめるという形でやるのでありまするが、そういうふうにして、いわゆるマーケットバスケットというものを人事院はつくるわけであります。したがいまして、それはあくまで国民全体が消費しておる実情を圧縮した形においてそれを打ち出してきておる、こういう形になっております。二千六百九十カロリーというのは、現にわが国の十八歳程度の者が毎日摂取しておるカロリーということになります。  そういうことで、現にその食品の価格が幾らであるか、これも、総理府統計局の生計費調査の結果、一体そういう食品をどれくらいで購入しておるかという実効価格を用いまして計算いたし、そうして五千九百円というものを出しております。これを一日に割り、さらに一食に割ってお話しになりますと、なかなかそれだけで外食してそういうものが成り立つかというお話になりまするけれども、一般の国民がこの程度の状況におきまして消費生活を行なっておる、こういう数字でございます。それをわれわれはこれで食えというのではないのでありまして、一応そういう水準の生活をしておるということを基礎にいたしまして月額の食料費をきめ、さらに住居費、光熱費、被服費、雑費というようなものをきめまして、それで、十八歳程度の人の初任給をきめます場合に、それよりも民間の初任給が低ければそこまで上げてきめる、こういうことをやっております。
  74. 小林進

    ○小林委員 だいぶ微に入る御説明がございましたが、この五千九百円という食費の出どころがわかった。やはり厚生省の中にある国民栄養調査、それから総理府の家計調査、そこから出ているということが明らかになった。二千六百九十カロリーが公務員として一日つつがなくその仕事をやるに適当かどうかということも問題であろうし、また、もっと食べたいしもっと栄養もとりたいけれども、こういう低賃金でやむを得ずこれほどの食費に甘んじておるものを、これが実際の食費だからといってそこら辺から持ってこられたのでは、これはいろいろな問題がありましょうが、これはあなたの問題じゃない。やがて厚生省や総理府にこの問題は場を変えて御質問申し上げることにいたします。いずれにしてもこれじゃ納得できません。  次に、人事院勧告の中で特に一番われわれが納得できないことば、今度新しく設けられた勧告の内容、いわゆる指定職俸給表というものです。従来各省事務次官以下は一般職公務員であり、行政職俸給表によって給与が定められた。今度は、どういうふうに人事院は考えたものか、従来は一等級がいわゆる事務次官と外局の長官、それから二等級が局長、三等級が課長、四等級が課長補佐というふうに賃金体系ができ上がっているものを、今度の勧告の中でいわゆる指定職俸給表というものを新設して、一等級の事務次官を行政職俸給表から切り離してしまった。いわゆる特別職にしてしまった。事務次官を特別職にして、その給与額は現行の十六万円から一挙に二十一万円にこれを引き上げるという、こういう勧告をおやりになった。いま私は特別職というておったが、特別職というのは国家公務員法によってきめられるのだが、国家公務員法はそのままにしておいて、給与のほうだけ、給与面においてだけ特別職というこういうものを一つつくり上げておる。それが事務次官だけかというとそうじゃない。さらに、現在困難な業務を行なう局長といっても、局長の中でも困難な業務を行なう者、一体人事院はどういう標準でこれをきめるのか知りませんが、局長の中にも等差をつける。いまも言うように、これはどういう差別をつけるのか知らぬけれども、困難な業務を行なうという名目でいわゆる事務次官並みの格づけをされている者もあったわけなんだが、これをいま申し上げましたいわゆる指定職俸給表の中に含めて特別職にして、特別職の中に甲乙を設けて、そして、事務次官クラスはその特別職の甲に格づけする。その困難な業務を行なうという局長あたりの一部は乙に格づけして特別の俸給をくれよう、こういうふうな勧告をせられておる。これは一体何です。何で一体こんなことをやる必要があるのか。事務次官といまあなたの言われる困難な業務に従事するという局長をいわゆる特別職にして、この特別職の中で甲乙をきめて、そうしてひとつどんどん賃上げをしていこう、この特別職というのは、御承知のとおり選挙運動も自由だ、立候補することも自由だ、自民党のちょうちん持つのも自由だ、何でもできる。こういう、行政の中立性、三権分立に定められたいわゆる国家公務員の、いずれの政党にも属さず、厳正中立に国家国民に奉仕するという精神を、こんな形で俸給の点から君たちはくずしていって、そうして大政党の下請け機関でもつくろうという、こういうさもしいものをつくり出した。何で人事院がこういうことをやる必要があるのか、一体どういう趣旨なのか、私どもはわからない。しかも困難なる業務を行なう局長なんという抽象的なことまで――局長の中にこんな差までつけられれば、だれだって特別職になりたい。局長が、おれも特別職にしてくれということで、全部みんな局長は特別職になってしまう。将来そういう懸念はありますよ。いまでも事務次官や局長が、一般の公務員でありながらも、時の天下に迎合して、そうして、まるで自民党の政調会だの部会なんかに出入りするのが役所に通うのと同じような気持ちになっている。私はきのうも、委員長に厳重に抗議を申し込んだ。局長のところに電話をかけてみた、大蔵省でも通産省でもみんな――あなた方いるから言うんですけれども、電話をかけて局長はどこへ行ったと聞くと、政調会に行っています。お前の局長はどこへ行ったと聞くと、いや大蔵部会に行っています、労働部会に行っていますと言う。大蔵部会というのは一体どこにあるのかと聞けば、そんなのがわからないんですか、自民党の大蔵部会ですよと、質問したほうがおこられるくらいだ。役所の中にそういう空気ができ上がっている。事実上局長は、みんな役所の自分のポストにいるより政党の部会に行っているのが自分たちの仕事だと思っている。だから、局長付の秘書なんか、部会へ行ってますよ、政調会に行っていますよと言う。それぐらい行政と立法府――いまはいわゆる立法府といえば、政党というものがこんがらかってしまっている。いわゆる権力のにおいをかぐやつの強いのが官僚だから、これについたら出世する――次官になりたい気持ちを持っているものだから、一生懸命権力に阿諛共感している。それを助長するような案を人事院がつくっている。行政の中立性を守るというのが人事院の重大なる仕事の一つじゃないか。それを特別職をもって時の政党なんかにくっついて、そうして政治活動や選挙活動でも、何でも自由にできるようなあいまいもことしたような、そういう改正をするおそれのある改正をするなんということは一体何だ。その指定する職務俸給表というのは――給与局長に聞いたってわからないかもしれませんけれども……。だから、総裁も人事官も来いと言うんだけれども、どうです、あなた……。
  75. 瀧本忠男

    瀧本説明員 御説明申し上げます。従来の行政職俸給表の一等級というものは、これは一般職の給与法をごらんいただければ明らかなのでございますが、二等級以下は昇給制度というものが規定してあるのであります。一等級というものは昇給制度が指定してございませんで、従来一等級は一号から九号まであったのでありますが、その一号から九号まではそれぞれ意味を持っております。たとえば一等級九号俸が次官である、こういう意味を持っております。すなわち、この二等級以下と全然違った運用がされる規定が、従来からの給与法の一等級の運用であります。この一等級は、ただいまは行政職(一)の俸給表について申し上げましたが、教育職(一)の一等級、研究職の一等級、それから医療職(一)の一等級、みな同じ金額で同じ号俸でありまして、その運用のやり方は同じやり方にすることになっておるのであります。そこで、御存じのように昨年の勧告におきまして、事務次官を十六万円ということで一等級の特号俸の勧告をいたしたのでございます。東京大学、京都大学そのほかの昔からあります総合大学の五大学、こういう大学につきまして十八万円、十七万円、こういう勧告を去年いたしまして、これは国会で御決定になって、現在特号俸十八万、十七万、十六万というのがあるのでございます。こういう金額を受けられます方は特別調整額いわゆる管理職手当は受けない。いわばそれを含んだ十六万、十七万、十八万。すなわち当時一官一給与ということを申したのであります。やはり行政部内におきましても、一般職の最上位に位するような官職というものは、昇給というようなことでなしに、ずばり職務に対して給与が支払われる。戦前もそういう形であったのであります。そういうふうにするのがいいのではないか、一官一給与ということで、昨年は大学関係につきましては七大学、行政部内につきましては事務次官というものについて、特号俸というものを設定したのでありますが、しかし、大学関係につきましても、七大学だけをそういう形にするよりも、そのほかの大学がずいぶんあるわけでありまして、その大学についても全部そういう形にするほうがよろしいということはございますし、また外局の長官、これは任命権を持っておるというので、次官に次ぐ行政職の高位のポジションでございますので、そういう方々につきましてもまた同様に、一官一給与的な考え方を発展さすほうがいいじゃないかということがあるわけであります。ちなみに、大臣が三十万円というふうに昨年きまったのでありますが、われわれは、大臣が十九万のときに次官は十六万でよろしい。次官、大臣の関係というものは、これはおおむね戦前においてもそうでございますし、諸外国の例を見ましても、大体大臣の給与の七割ないし八割というところが事務次官の給与ということに相なっておるようでございます。そういうこともございますし、また民間の企業の責任者と行政の責任者と、職務内容が違いますので、これを端的に比較することはできません。しかしながら、一つの省の事務次官――大臣を補佐いたしまして、事務的に省を統轄してまいります事務次官のポジションというものは、これは非常に高い責任があるポジションでございますし、またそういう人がかりに民間でおられたならばどういう給与を取っておったのであろうというようなことも、これは連想として出てくるわけでございますが、そういうふうに考えてまいりますと、民間の一般の給与よりも、公務員の上級ポジションの給与というものは現在相当低い事情があります。これは公務員に有能な人材をとどめ得るゆえんでないというようなことを考慮いたしまして、今回は大臣三十万円の七割すなわち二十一万円、こういうことでやったわけでございます。  それから、これは特別職ではないのでありまして、一般職であります。俸給表が違うだけであります。今回は、先ほど申しましたように、行政(一)の一等級、教育(一)の一等級、大学の学長、それから研究所長の一等級、警察署長、全部するわけではございません。それから医療職、大病院、そういうものを、従来から一括して同様の取り扱いをしておりましたので、これは一括して別の俸給表にいたした、こういう次第でございます。
  76. 小林進

    ○小林委員 別の俸給表にしたって一般職に変わりはない。われわれはどうもあれを見ると、そうすなおにとれないんだがね。君たちの勧告の内容を見ると、どうも局長以上は何か別の指定表、いわゆる別の表をつくって、指定職イコール特別職となり、課長以下が結局一般の行政職、一般の公務員という、どうもそういう形――しかし、まだ公務員法が改正されてないから、ただ給与だけが別表をつくってやったことなんだから、それが一般職だという解釈もできる。それではひとつ参考までに申し上げる。政務次官は十八万円だ。事務次官は、君たちの勧告が実施されれば二十一万円になるんだが、国会議員は一般公務員の最高を下ることを得ずという規定があるのだが、これは一体どうなるか、この規定の運用はどういうふうになるか。
  77. 瀧本忠男

    瀧本説明員 御指摘のような問題は、今後この人事院の勧告を政府側で取り上げて、これは法案として国会へ出していただくことになると思うのでありますが、その機会並びに国会で御審議になります場合にこれは当然問題になることであろうというふうに思うのであります。しかしながら、それが問題であるから、現在の状態を前提といたしまして、そこから一歩も出られぬということではどうにもならない。やはり勧告でございます。その点はやはりそういう問題があるということを承知しながら、これは総合的に御判断願う事項であるということで、われわれは勧告した次第であります。
  78. 小林進

    ○小林委員 私はいろいろの問題ちょっと数項目を提供しただけでも実に今度の勧告ではいろいろ問題があるが、しかし時間もないし、やがてまたこの内容については国会で論議する機会もありますから、私は疑問を疑問のままに残して、勧告の内容の問題は一応これで打ち切ることにいたしましょう。  続いて、今度は増原さんにお伺いいたします。あなたは防衛庁次長としてはなかなか武運かくかくたる功績をお残しになりました。それが今度は給与を担当せられて、俸給表のほうもおやりになるという、世の中の移り変わりも激しいものだと私は感慨にたえないわけでございますけれども、防衛庁次長の昔の功績があろうとも、現職は現職でございますから、人事院勧告もあなたの責任でありますから真剣に取り組んでいただかなければならないと思うのであります。  それでお伺いいたしたいのでありますが、八月に出されたこの人事院勧告をいつ実施せられるかということはきのうも参議院で問題に出たと思います。おざなりの答弁をいただくのはあと回しにいたしまして、現在人事院は今日まで何回勧告を行なって、その中で完全に実施されたことが何回あったか、そこからひとつお聞かせ願いたいと思います。
  79. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 承りますと、十九回勧告が行なわれておるそうでございます。
  80. 小林進

    ○小林委員 完全実施をされたことは何回あるか。
  81. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 完全実施をされたことはただいままでにはないように承っております。
  82. 小林進

    ○小林委員 ありませんか、ここが一番重要なところでありますから。いま十九河とおっしゃいましたね。その中で完全実施をされたことはありませんというあなたの答弁ですが、そこで明確に教えていただきたいと思います。あなたは三軍をやられたから声が大きいはずでありますから、遠慮しないで大きな声で願います。
  83. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私、いまちょっと不注意で承知いたしておりませんので、事務当局に調べてもらいまして――完全実施されたことがないように私は聞いておりますが、その点はよく調べましてお答えをいたしたいと思います。
  84. 小林進

    ○小林委員 これは一番重大なところでございますから、給与担当国務大臣になって、しかも人事院の勧告が数十回、数百回やられたということならたまにはわからぬということもあるだろうが、昭和二十三年の十一月に第一回の勧告が行なわれた、それ以来三十九年の今日まで、私どもの統計によれば昨年までで十三回だ。十九回というのはわからない、十三回だ。ことしの八月十二日の分を含めて十四回と私は記憶しております。数字も合わねようですが、それも調べてみなければわからぬというようなたよりないことは言わないでください。給与担当国務大臣として明確にお答えいただきたい。こんなことまで調べてみなければわからないという、そんな無責任なことはありません。
  85. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 私どもが人事院勧告を扱います上に特に注目をすべき問題は、最近の四回、三十五年以降のものを特に参考とし、問題にしておるのでございます。それ以前のものを調べてみますと、特に問題は実施の時期についてでございまして、以前には実施の時期について言及をしておらないものがあるわけでございます。そういう時期はおおむね勧告の内容はそのままに実施をされておる。問題は主として実施時期を五月一日にさかのぼるという過去四回の勧告について、実施時期が勧告どおり行なわれておらないというところを特に私は注目をして記憶しております。一々のこまかい問題はいますぐお答えいたしかねます。
  86. 小林進

    ○小林委員 それだからいけないのです。いま官僚がちょこちょこものを言ったらあなたの答弁がすぐ変わってしまった。最初のあなたの答弁が正しいのです。完全に実施されたことば一回もない。その答弁が正しいのです。ああいうのがいてそばでごちゃごちゃ言うから、いまのわかったようなわからぬような答弁に変わってしまう。こういうのが国家を蠹毒する、人民を苦しめる悪いやつだ。大臣がちゃんと明確に答えておる。完全実施されたことはありません。ないんですよ。ないんだ。こういうあなたがごちゃごちゃ言った話は、昭和三十一年から三十四年に至る勧告の中に、なるべくすみやかにといって人事院が期日を示していない。そのことばに便乗して一年間も実施をしていない。それを期日が示してないから実施をしないことにならないという官僚的なずるい答弁をあなたの頭の中に入れる。帰ったらおこってやりなさい。こういうやつをいわゆる側近の好といってあなたの大臣としての名声をみな失わせるんです。私は申し上げますよ。いまも言うように、私は給与担当大臣ではないけれども、あなたに質問しようとすればそういう重点だけは調べてきますよ。昭和二十三年の十一月の第一回勧告以来俸給表の改定――ベースアップ以外は別ですよ。ベースアップを伴う勧告は今年も含めて十四回、ベースアップに関する勧告は十四回行なわれておる。いいですか、今年を入れれば十四回だ。以外の勧告はそれはほかにありましたよ。昭和二十七年の寒冷地手当の地域区分の改定に関する勧告だとか、昭和三十年の期末、勤勉手当の増額の勧告だとか、昭和三十四年の期末手当の増額、通勤手当の新設だとか、こういうようなベースアップを伴わない勧告は実施されておる。ただしかしいまも言うように、ベースアツプを伴うような勧告は昨年までに十三回だ。一つも完全には行なわれてはいない。これは私は実に重大問題だと思うんですよ。参考までに読み上げましょうか。昭和二十三年十二月、勧告実施時期についてはまだ人事院は触れていないようでありました。そのときには勧告の内容は六千三百七円ベースを勧告しておるのでありますが、実際の実施時期は昭和二十三年十二月に五千三百三十円に値下げしておる。昭和二十四年四月になってようやく六千三百七円をそのまま行なっておる。昭和二十四年の十二月には七千八百七十七円のベースアップの勧告をしておるが、とうとうこれは食い逃げだ。昭和二十四年十二月の人事院勧告七千八百七十七円を一銭も上げないで、ほおかぶりをして逃げておる。それから二十五年の八月、これは勧告の日時はわかりませんけれども、八千五十八円のベースアツプの勧告は二十六年一月まで延ばしていって七千九百八十一円に値下げして勧告どおりの金額を上げていない。それから昭和二十六年八月には、八月までに実施をしなさいという期限つきで一万一千二百六十三円のベースアップの勧告が行なわれた。それを十月までひっぱってきて、一万六十二円にしか上げていない。どうですか、期日とベースの内容と二つみな不履行だ。それが昭和二十七年の八月には、同じく二十七年五月から実施をしなさいといってその内容は一万三千五百十五円のベースアップをしなさい――インフレの激しいときです。そのときにも十一月までひっぱってきて一万二千八百二十円のべースアップしかしていない。昭和二十八年の七月に入って初めて、いまも言うように、あまり期日どおり行なわないから人事院としてはなるべくすみやかにということばを用いて一万五千四百八十円のベースアップの勧告をしておる。なるべくすみやかにとわざわざつけ加えておるものを二十九年の一月までひっぱってきて、これは勧告どおり全部を通じて一万五千四百八十円上げたというのが人事院勧告の中で最高であります。それから二十九年、三十年となくて、三十一年の七月に、これもなるべくすみやかにということで、これは俸給制度の改定だ。六・二%アップを勧告しているのでありますけれども、これが三十二年の四月まで引っぱってきて勧告どおりにやっている。昭和三十三年の七月、これもできるだけすみやかにといって、初任給の是正を二%勧告しているものを、これも三十四年の四月までずっと引っぱってきて勧告どおりに行なっている。三十四年の七月、できる限りすみやかにという勧告を受けている。これも中だるみ是正だ。いわゆる四%アップで、昭和三十五年の四月に勧告どおりに行なっている。こういうできるだけすみやかにおやりなさいと人事院が四回も繰り返しているものを一回もすみやかにやっていない。みんな引き延ばしている。そこで、あなたが最後に言われたように、これではけしからぬというので、昭和三十五年の八月になって、あなたのおっしゃったように三十五年の五月から一二・四%、金額にして二千六百八十円アップをしなさいといって期日を示した。ところがこれが三十五年の十月だ。これは六、七、八、九と政府は四カ月分まるまる食い逃げしてしまった。昭和三十六年の八月、これも三十六年の五月から七・一%、千七百九十七円アップをしなさいと言われても、これはやはり十月だ。これも食い逃げだ。三十七年の八月、これも五月から実施をしなさいと言って八・八%、二千三百六十一円のベースアップの勧告を受けているが、これも十月実施。そして昨年であります。昨年も八月だ。三十八年の五月に六・七%アップしなさいと言っているが、これも十月実施。今年に至ってもやはり七・九%五月から実施しなさい――ついに今日に至るまでするともしないともほうかむりしてきている。いま申し上げましたとおり、一回として勧告どおり実施したことがありますか。人事院が設けられて、給与のベースアップに関する限り一回も完全に実施されたことがないじゃないですか。これで公務員がすわり込みがいけないの、デモをやるのがいけないのと、一体何をほざいているんだ。人事院勧告も実施しない、立法措置は何ですか、公務員から団交権は取る、ストライキ権は取る、そのかわり第三者機関を設けて、政府の機関でなければ労働者の機関でもない、その第三者の勧告は必ず完全に実施します――当時の総理大臣も給与大臣も一体何回国会でこれを約束したんだ。繰り返し繰り返し約束しておきながら、しかも一回も実施をしない。一体それでいいんですか。これでいいとお考えになりますか。これは総理大臣に聞くのがほんとうだろうけれども、いま何だか前ガン症状とかいって寝ているそうだから、まさか寝ている者を引っぱり出して聞くわけにはいかない。昔はそれでも浜口雄幸なんていう総理大臣は、これは鍛冶さんも知っておるように、病気だって国会の審議は大切だというので、引っぱってきて本会議場に上げて、いやでも答弁させたこともありましたけれども、社会党はそんな酷なことはしませんから、私も、前ガン症状でガンになるとかならないとかいって苦しんでいるものをここに引っぱってこいとは言わないけれども、給与担当大臣として、こんな政府の姿勢でいいとお考えになりますか。お答え願いたいと思う。
  87. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 国家公務員の給与についての人事院の勧告は、御指摘のとおり、いわゆる公務員の労働三権にかわるものという意味もある大事な制度であり、それに基づく勧告であります。政府としても従来よりこれを尊重するということを申しているわけであります。今回の勧告につきましても、この趣旨を尊重し、実施時期を含めまして、勧告のとおりに実施をしたいと考えて、給与担当としていま努力をいたしておるところでございます。何ふん財政の問題についての話し合いの結論をまだ得ることができませんので、その結論を申し上げることができないのはたいへん残念でございます。実施時期を含めまして人事院の勧告を尊重してまいる、そのたてまえで努力をいたしておるところでございます。
  88. 小林進

    ○小林委員 人事院の給与局長に聞きますけれども、あなた方の勧告のこの七・九%を五月から実施するとして、国家公務員関係、できれば地方公務員も全部含めて一体どれだけの予算を必要とするか、概算の数字をひとつ教えていただきたい。
  89. 瀧本忠男

    瀧本説明員 人事院勧告を五月から実施する場合に必要な経費は、俸給表の改定に伴いますものが約二百十二億円、それから期末手当及び勤勉手当の増額に要しまするものが五十一億円、それからその他の諸手当の改善に要しまする経費が八億円、計二百七十一億円、おおむねその程度の金額であります。このように考えております。
  90. 小林進

    ○小林委員 地方公務員のほうは…。
  91. 秋吉良雄

    ○秋吉説明員 大蔵省給与課長でございますが、先生の御質問に補足してお答えいたします。  五月実施をいたします場合に、一般会計におきまして六百八十億、特別会計で百二十億地方公共団体で八百八十億、合計いたしまして千六百八十億という概算数字になっております。
  92. 小林進

    ○小林委員 これなんですよ。いま増原給与担当大臣が言われたように、いかにも財源がないようなことを言うが、どこに金がないのか。今年度など国家予算が三兆二千五百億だ。その中のたった一千億前後の金が出せないとか、ないとか言う。あなたは何を言われるのですか。そういう失敬な言い方というものはないですよ。あまり小ばかにしたようなことを大臣も言うものだから――三兆二千五百じゃないか、そのうちの一千億というものは、こんなものは何ですか。あなたは防衛庁出身でしょう。戦争のことは一番よく知っているはずだ。戦争をしているころ、戦時中は国家予算の半分を軍事費が占めたが、その軍事費が高いとだれが言ったかね。そんなことを言ったら、何を言っているのかといってわれわれは命を取られた。その半分を取った軍事費には手をつけないで、そのあとの中から道路だの、橋だの、学校だのとみなつくった。その軍事費を無条件につくり上げたあの昔のことを考えたら何でもないじゃないですか。国家公務員が人間として生きるための最低の生活じゃないか。これはいかに占めようと、軍事費のごとくどうしても払わなければならないものだという政府の姿勢がきまったら、こんなものは一兆円かかろうと二兆円かかろうと出さなくちゃならぬですよ。道路や橋をつくるのが大切だ――何です、独占に奉仕するために企業に投資する金はあるけれども、国家の基幹たるべき公務員や地方の行政を担当している地方公務員のために一千億の金が財政上ないなどという、そんな人を小ばかにした理屈をわれわれが一体承服できますか。政府の姿勢の問題ですよ。精神の問題ですよ。それで三兆二千五百億の国家の収入の大半から人件費や国家公務員の費用を出せというなら、それは不当でございますという話も出るだろうけれども、何です。国家の基幹たるべき行政を担当している者の給与を払うために、橋ぐらい削ったっていいじゃないですか。道路ぐらい削ったっていいじゃないですか。オリンピックなんかやめなさい。一番いいのはあなたの大好きな自衛隊だ。そんなものを削ればいいじゃないですか。(「そうはいかない」と呼ぶ者あり)そうはいかないというところに基本的な政府の人事院勧告に対する姿勢の間違いがあるというのです。どうですか、増原さん、金がないなんて言わぬでください。
  93. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 少し私の言い方が足りなかったかもしれませんが、私は金がなくていけないと申し上げたのではないのであります。まだ財政の問題が論議の結論を得るに至っておらないという意味を申し上げたのであります。私は国家公務員の給与担当大臣として申し上げましたとおりに、人事院勧告を実施時期を含めて尊重をし、そのとおりに実施をしたい、その主張をいたしておるのでございます。ただ、私の担当の職権として財政的措置をすることはできません。あるいは地方公務員の問題についての権限を私は持っておらないわけでありますから、これは国家公務員だけ人事院勧告に従って措置をするということになかなかいきにくい問題でございます。地方公務員も従来とも同様に扱っておるということで、決定は同時にいたすべきものでございます。また一般民間給与との格差を考えて、勧告がなされておるというたてまえから、労働大臣にもこの問題についての関与を願う、そうして財政の問題は大蔵大臣が所管としての関与をするということで、申し上げたかどうかわかりませんが、六人委員会というようなものをつくりまして、これで論議をし、閣議決定に持っていこうというたてまえでやっておるわけでございます。そうした六人委員会の審議がまだ議を尽くしておらないということであるのでございます。私としては申し上げましたように、人事院勧告を実施時期を含めまして尊重し、実現をするというつもりで努力をいたしておるわけでございます。
  94. 小林進

    ○小林委員 あなたは給与担当大臣として期日を含めて、実行したいとおっしゃった。まことにそれはすらすらと言われたけれども、ただそれに対するあなたの決意なんですよ。あなたのような答弁は歴代の給与担当大臣はみんな言いました。しかし、その歴代大臣はあなたと同じような答弁を繰り返しながら、一人として実施しなかった。しかし繰り返して言いますけれども、期日を含めてとおっしゃいますけれども、期日は重大な勧告の要素ですよ。これだけは含んでください。今年の二千何ぼの金額よりもむしろ期日が重要なんです。こういうような大インフレで物価はぐんぐん値上がりしていくときに、五月に実施するのと十月じゃ――もう五月に実施されたって実態は民間給与の四月を基準にしているのだから、一カ月も差がついてくる。それをだんだんおくれて、五月になったら格差は開いているのです。だから期日というものは勧告の重大な要素です。それを期日も含めてなどというようなおことばが、軽視された意味じゃないだろうけれども、われわれがどうも聞きづらいようなことを言わないで、断じてこれを実施するという決意でいっていただきたいと思いますから、おっしゃるように、六人委員会もあるし、大蔵大臣もいますけれども、給与担当大臣というものは一応やはり責任の所在大臣ですから、期日も含めて勧告どおりいかない場合には、あなたは責任をとっておやめになりますか、どうです。はっきりしてください。いかがですか。責任をとってやめると言われますか。大臣というものは政治的責任をとらなければならないのです。
  95. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 これは実施時期を含めまして、人事院の勧告を尊重し、これを実施するように努力するつもりでございます。
  96. 小林進

    ○小林委員 これは勧告どおりいかぬ場合にはあなたは責任をおとりになりますか。どうですか。これは一つはやはり行政の最高官としての一般論と同時に、個人的に私は増原先生に言いたいことは、あなたはやはりその責任を――さむらいは死ぬものなりと言われた。そういう境地の中に生まれてきておるのでありますから、ほかの大臣と違って、自分の主義主張あるいは信念が通らないときにはいさぎよく腹を切って責任をとるくらいの、そういう決意を示してもらいたいと私は思うのだ。どうですか、腹を切るということばはなんでありますが寸責任をとることになりますかどうか、お聞かせを願いたいのであります。
  97. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 繰り返して申し上げるようですが、人事院勧告を尊重し、実施するように努力をする所存でございます。
  98. 小林進

    ○小林委員 もう時間がありませんし、なんですが、はなはだ大臣答弁には非常に不満足であります。とてもわれわれはそういうことで納得ができません。それでは努力をされて、一体いつ勧告を実施していただくのか。いつやっていただきますか。せめてその決定を労働者は願っておる。社会不安がだんだん広がりますよ。あなた方はこれでいいのですか。落ちついて国家公務員が国民全般に奉仕できるようにする。それも行政の重大な責任じゃありませんか。八月から勧告しておるのをいままで実施しないで、みんな働いておる者の気持ちが落ちつかない、仕事も手につかない。こういうことを放置をしておいて努力をいたしますという通り一ぺんのことであなたは済むのですか。いつおやりになるのですか。このために起こっている国家行政の損失なんというものは、これは無形の損失ははかりがたいものがあるのですよ。その責任をあなたはおとりにならない、お感じにならないのですか。一体いつやられるのですか。六人委員会でも何でもいいのですが、この決定はいつおやりになりますか。それも努力ですか。努力なんという答弁は要りませんよ。
  99. 増原恵吉

    ○増原国務大臣 まだ残念ながら何月何日までということを申し上げる段階へいっておりません。なるべくすみやかに六人委員会を開き、閣議決定をするということを申し上げるよりしかできないのであります。
  100. 小林進

    ○小林委員 労働大臣もお見えにならぬようですし、とてもこの給与担当大臣と問答を繰り返したところであなたのことばの中に残念ながら私は誠実というものを見出すわけにはいかない。あなたはやはり巧妙な官僚上がりですよ。非常に言質をとられないようなじょうずな答弁を繰り返しておる。私どもはそういう答弁はきらいです。そんなことで世の中が送れるものならば、私ども政治家や立法府なんか要りませんよ。いま少し誠実な、いま少し政治家らしい度胸をきめた腹のある、失敗したらわしは腹を切る、それくらいの信念のある、男らしい答弁をしてくださいよ。期待を裏切られました。給与担当大臣としての増原先生に心から期待を裏切られました。  そこで労働政務次官労働大臣がお見えにならぬようだからあなたにひとつ質問をいたしますが、公労協関係の仲裁裁定については、これは労働省主管であります。私もくまなく調査をいたしましたが、時間がありませんからあなたに質問をすることはやめますけれども、十五件いままでに裁定が行なわれておるけれども、しかしその中にはやはり期日をおくらせたものが十件、金額を減定したものが二件、三十一年以前に完全に実施したものがわずか三件であります。石田労働大臣は、前のときも、あくまでもこの仲裁裁定に対しては、これを順奉する――いま、ちょうど大臣がいらっしゃいましたので、大臣伺いますが、大臣、いままで人事院勧告の問題について増原大臣答弁を聞いておりましたが、私は実に落胆をいたしました。期待を裏切られたのです。私は何もその人の人格を云々するわけじゃないけれども、せめて大臣なら、歴代の給与担当大臣と違って、今回だけは完全な実施をして政府の汚名をそそぐ、そういうことが出ない。通り一ぺんの、努力をいたします、期日もわかりませんということで終わったのであります。あなたは大臣の返り咲きですから、私は石田労政というものを知っているのです。前にあなたが大臣をやっているときも、私はここで委員をやっていた。与党の先生方は有為転変が激しい、次官になったり大臣になったり。われわれ野党は十年一日のごとくこの委員会に居続けていますから、来し方行く末みんなわかるのです。過去の歴史がわかるのです。そのときにも、あなたは法律は正しく守るとおっしゃった。労働行政の根幹は法律を正しく守ることなんだ、だからこういう公労委の裁定なんかに対しては必ず完全な実施を行なう、こういう方針でいくということを言われた。しかし私は繰り返し申し上げますけれども、現在の公労委の裁定についても、十五件行なわれているうちに、期日をおくらせたものが十件、金額を減定したものが二件、完全実施したものわずかに三件という過去の実績があらわれているわけです。このインフレの世の中に、金額が勧告どおりに行なわれたとしても、期日をずらされれば、労働者にとってその金額は実質的に同じ金額を用いたということにならない。けれども公労委の裁定については、労働大臣の御苦心等もあってやや近づきつつあるといたしましても、人事院勧告は――私のお尋ねしているのは人事院勧告、あなたの担当ではない。ないけれども、あなたの多年の主張からいって、いまなお人事院の十四回の給与に関するベースアップの勧告に関する限り一回も完全に実施が行なわれていないというこの事実は、やはり閣僚の一員として、内閣連帯責任者の一員としてあなたに責任を感じてもらわなくちゃいけない。公務員も公共企業体の職員も労働者に変わりはないのであります。労働者の地位を守る、職業を守る、生活を守る労働大臣立場からは、これは断じて責任外の仕事として黙視、黙認せらるべき問題ではないと私は思います。どうかひとつ大臣の率直な御見解を承っておきたいと思います。
  101. 石田博英

    石田国務大臣 国家公務員及び地方公務員は労働権の制限を受けておりますので、その制限を受けたかわりとして人事院の勧告を政府が尊重するということになっておるわけであります。公共企業体の労働者諸君に対する法律と文章の上では、片方は尊重ということになっておりますから、多少違いますけれども、法の精神としましてはやはり労働権の制限の代償として与えられておるものでありますから、私は期日を含んで完全実施すべきものだと考えております。したがって私は、この問題を処理する六人委員会の一人として、その立場を強く主張し、その実現のために努力をする所存でございます。
  102. 小林進

    ○小林委員 さすがに労働大臣、実に明快な御答弁をいただきました。私ども敬服にたえません。どうかひとつ、労働大臣の政治力と閣内における実力をこの際発揮いたしまして、人事院の制度が設けられて今日ここに至るまで、一回もこれが完全実施されたことがないなどという、いたずらに労働者側に政府排撃の言質を与えるような、そういう愚かな行政をおやりにならないように、一回は完全に行なったこともあるじゃないかという、こういう輝ける歴史を樹立する意味においても、今回だけはひとつ特別に労働大臣の御努力をわずらわしたいと思うのでございます。非常に明快な御答弁であります。私は、この問題はこれで質問を打ち切りたいと思います。  それでは次に北越製紙の問題について、昼めしの時間がきましたので、ごく簡単に御質問をいたしたいと思うのであります。  私はいま北越製紙と申し上げましたが、実は個人の企業のことを申し上げているのではございません。新潟地震という、戦後一、二を争う大きな地震がありました。新潟地区において、それぞれ被害を受けた企業が、国民の大きな支援と同情の中に再建をはかっているわけでございますが、その再建に関連をいたしまして、労働者の首切りを行なおうとしている、こういうことがございますので、この問題について私は、労働省側の見解あるいは通産省、これに関連いたします大蔵省当局の考えをお伺いいたしたい、こういうのが趣旨でございます。その大地震によって被害を受けた企業の中で、いわゆる企業合理化の名において首切りをやろうとする、その最も端的なケースが北越製紙でございますので、その意味における北越製紙の問題をお尋ねするのでありますから、ただ一企業のために私が質問を繰り返しているのであるというふうにお考えをいただかないようにお願いいたしたいと思うのであります。  さて、この新潟において確かに企業が被害を受けた、それぞれ再建のためにあらゆる苦労をいたしていることはわかりますが、その中で、先ほども言いますように、北越製紙がそのための首切りを始めようとした。そういうふうな首切りはいかぬじゃないかということで、労働省に私みずからも参上いたしまして、それをやめるように――やめるということはできませんけれども、労働省は労働者一般の問題に関連いたしまして、これを指導し、あるいは、助言するという立場にいらっしゃいますので、こうした首切りに対してはすべからく御調査を願いまして、そして適当な指導なり助言を行なうようにしていただきたいということを申し入れました。これは私が申し入れただけではなくて、企業も労働組合代表も、あるいはそれが所属いたしております総評の代表も、一緒に労働省にお伺いいたしました。やはり同じようなお願いをしたはずであります。こういう組合側やわれわれのお願いごとに対して、労働省はどういう適確な処置をとっていただきましたか。どういう調査をしていただいたのか。まずそこら辺からお伺いをいたしてまいりたいと思うのであります。
  103. 石田博英

    石田国務大臣 この新潟震災に伴って行なわれております各種企業の再建築、その再建策に伴います従業員の取り扱いの問題、こういうことについての私どもの根本的な考えを申し上げまして、個々の事例その他については事務当局から御説明を申し上げます。  あの気の毒な震災にあった人々に対して、その復旧を政府が全力をあげて努力をするということは、池田総理はじめ関係閣僚が現地へおもむいてそれぞれ言明したとおりであります。その復興ということは、建物を直したとか、橋をかけかえるということのみをいうのではむろんないのでありまして、その被害を受けた人々が被害を受ける前に劣らない生活の条件が維持確保されるということが重点でなければならぬことは言うまでもないのであります。したがって、こういう考え方で行政一般を指導いたしております。  次に、その企業が企業再建のためにいろいろな方途を考える場合におきましても、やはり経営者の社会的責任というものが今日は会社の将来性、収益性その他の問題以前に、その企業を取り巻く人々の豊かさと安定を保証するということが第一であろうと思うのでありまして、会社の将来性も収益性もすべてその目的考えるという立場から考えるべきものだと思っております。しかしながら、そういう観点の上から考えてもらっても、なおかつ再建策において人員の配置転換あるいは他の産業への転職ということを必要とする場合におきましては、私どもはこれが労働基準法の規定に違反しないように行なわれるよう厳重に見守っていきたいと思っておるのであります。われわれが目ざします完全雇用は、単に従来働いておったところへいつまでも居ついているということではなくして、産業界、経済界の変遷に伴って生じます雇用の変動というものを認め、その犠牲になった人々に対して前に劣らない職業を世話するということもその中に含まれておるわけであります。しかしそれは一番最後にとるべき手段でありまして、以上のような考え方でこの問題に対処いたしておりますことをあらかじめ申し上げて、具体的問題は事務当局からお答えいたさせます。
  104. 小林進

    ○小林委員 実に大臣からは、いわゆる復旧に努力をすると総理並びに担当各大臣も言明せられておる、それを分析をせられて、その復旧するということは橋や道路だけではないのだ、住民あるいは労働者を含めて、そういう方方の生活を旧の状態に引き戻してあげるというふうに言われた。企業の再建についても、やはりその企業の再建は資本家だとか株主だとかあるいはそういう方々に対する責任を果たす前に、そこに働いている労働者の人たちの生活を守るということを優先的にやるべきだと言われた。これは実に的確な御答弁だと私は思う。これは労働大臣に社会党へ来ていただきたいような、全く社会党の考え方と同じなんでございますが、私はその問題に関連をいたしまして、あとでまたこまかいことを御質問いたしますけれども、北越製紙の社長がいわゆる激甚法に基づく休業と首切りを宣言するときに、大臣の明快なことばと全く相反することを言っておる。そこに私は問題の発生の根本の理由があると思うのです。文書にした、社長が組合員に言われていることばがどこかにあったのですが、時間もありませんから、またあとでひとつ申し上げることにいたしまして、そういう企業だとか社会だとかあるいは資本家だとかいう人たちに対して責任を持たなければならないから、このたびの首切りをひとつ納得してくれという申し入れを組合の方にしております。少なくとも労働者の首と資本家の利益と平等、対等に扱わなければならぬということを言われておる。これは近代的な資本家としての考え方基本的な大きな間違いがあると思うのでございまして、そういうことから首切りが行なわれておるのでございますから、どうかひとつ労働大臣は今後ともその企業者、責任者のそういう間違った考え方、これを基本的に教えるように指導していただきますと、こういう問題もだいぶ基本的に直されていくのではないか。――そうです、こういうことを言っておる。ちょっと参考までに読み上げます。いままで欠席していた社長が二十八日、いわゆる団交の席上出てこられて、そして次のような提案の趣旨弁明をされた。「組合から完全雇用、労働条件の低下を認めないことを基本態度とするということについて会社の考え方を申上げる。」「今度の被害が非常のものであることは万人の認めるところであり、会社は需要者、株主、債権者のことを従業員と同様に考えている。生やさしい再建方針では皆に迷惑をかける、そこで慎重審議し考えた結果」云々ということで休業命令を出した。それから立ち入り禁止を出した。それから首切りの発表をした。こういうことを言われておるのでありまして、これがいまの労働大臣が言われた、労働者の生活を守ることが株主や需要者や債権者よりも優先すべきであるという考え方と全く相反しているのでございます。労働大臣のおことばを聞きまして、違いがはっきりいたしましたので、この点はあくまで労働大臣のお考えで、北越製紙社長の間違った考えを是正するように、どうかひとつ適当なる指導と御援助を賜わりたいと思うのであります。  事務当局にお尋ねいたします。先ほどどういう調査とどういう見解をお持ちになりましたかをお尋ねいたします。
  105. 三治重信

    ○三治説明員 北越製紙の問題につきましては、これは先ほど先生がおっしゃったように、当該組合並びに紙パから事情を聞いたので、会社のほうの労務担当を呼びまして、組合から聞いた事情と会社の事情も聞いて、それで会社のほうに対しましては、何といってもやはり団体交渉を持って、よく会社の事情も説明し、また組合のほうの意見もよく聞いて、逐次問題を詰めていってもらいたいというふうに、まず所見と申しますか、意見を申し上げた。組合のほうはそれに対して、いろいろの打ち合わせか何かで団体交渉が少しおくれましたが、その後開かれて、今日では会社のその提案に対して、最終的にきのう、おととい代議員会が開かれ、若干問題が残って、きょうもまた最終的な意見の調整が行なわれているようでございます。またそういうふうに労使双方それぞれお互いに意見を交換して、問題をしぼっていくように私たちとしては努力したつもりでございます。会社側に対しましては、先ほど大臣が申し上げましたように、たとえ北越製紙が全員の雇用の維持ができなくて整理を行なう場合としても、それに対して従業員の不安のないように職場の確保について特別な対策をとるということ、また関連会社なり関係方面に就職のあっせんなんかの対策も至急やはり具体的にとってもらいたいというふうな申し入れもして、会社のほうも了承されております。  それからさらにこの激甚災害について失業保険の適用が九月三十日までの期限のところを、新潟の災害復旧の基本的な計画が立つのが十一月の初めでなければできない、いま少しその適用を延ばしてほしいという再三の要請に対しましては、これは職業安定局のほうで検討しまして十二月まで延ばすというふうに決定を――まだこまかい点は若干ありますが、大筋は大体そういうふうなことであります。  なお、昭和石油のほうにつきましては、まだそういう具体的な労使の関係の話し合いに入らなくて、昭和石油そのものがまだあそこの全体の再建計画を検討中ということでまだ具体的な話になっておりません。その他二、三いわゆる当該地の中小企業の問題につきましても陣情を受けております。いずれにいたしましてもごく簡単には以上のような状況でございます。
  106. 小林進

    ○小林委員 まず、大臣にお尋ねしますけれども、先ほどのように労働者を優先的にする――北越製紙は並列的にやると言っているが、こういう大臣のお考えを社長に何らかの方法で教えていただけますでしょうか。
  107. 石田博英

    石田国務大臣 北越製紙の社長は私の部下ではありませんから、命令指導という関係にはむろん、ございません。しかし、私の考え方は常にあらゆる場合において明らかにしておるのでありまして、私の部下を通してそういう方針のもとに処理をさせたいと思っております。  そこで、先ほど小林委員のお話は、前段の私の話を非常に強調されましたが、後段、つまりやむを得ざる場合をわれわれは認めていないのではないのであります。やはり産業界、経済界の進歩、変遷に伴って雇用の変動もあるということはやむを得ない、しかし、その場合においても、やはり従業員の生活を守るということが第一であるのであるから、変わる職業のあっせん等について万全を期すべきであるということであります。会社が単独でできない場合は労働省がこれにお手伝いをするということでございます。
  108. 小林進

    ○小林委員 三治局長の御答弁の中に、失業保険二カ月交付をしていただきましたものをさらに二カ月延期いたしまして、九月三十日で終わるべきものを十月、十一月と二カ月さらに延ばすように閣議の御決定をいただきましたことはまことにありがたいです。ありがたいが、これをこのままの形では、首を切られる者は九カ月の保険のうちの、手前の前足を食ったようなもので、四カ月分もらったのを差し引かれてあとは五カ月しかもらえない。これが激甚地指定のとおり休養していただいて直ちにまた十一月から企業の再建に入っていけるものならば、この四カ月は非常にありがたいのであります。そのまま首切りに入ったんじゃ、これは自分の失業保険の前受けをしたと同じことで、何も恩典がないのであります。でありまするから、願わくはこの恩典もそういうような形で首切りにつながらない休業程度であるように、さらに労働省の的確な御指導をいただきたいと私は思うのでありまするが、労働省に対する質問はあとに回すことにいたします。  だいぶ鍛冶さんにもお待ちをいただきまして、あなたもどうもしゃべりたいような顔で一ぱいのようでありますからお尋ねをいたしますけれども、新潟の激甚地指定を受けました企業に対しまして、大蔵省もあるいは金融の面であるとか、あるいは税金の面それぞれに対してやはり処置をこうむっていただいておるわけであります。そういう激甚地指定の企業に対して具体的にどういうような処置を一体講じていただいておるのか。いままた申し上げましたそれぞれの企業に対して、個々にどういうあっせんやごめんどうを見ていただいておるのか、お聞かせいただきたいのであります。
  109. 鍛冶良作

    ○鍛冶説明員 北越製紙から災害復旧に対しての金融の申し出は、現在までに復旧工事費の総額は三十六億七千五百万円、そのうち三十九年度工事分として十一億二千六百万円必要である、さらにその資金の融通については北海道東北公庫に七億九千万円の融資を申し出てきておる現状でございます。しかし、これは単なる災害復旧だけではございませんで、先ほどから議論のありましたごとくに、事業の復旧ということが伴っておるものですから、事業の復旧そのものがはたしてできるかどうかということの調査が非常に重要な点でございまして、仕事が今後も続けていけるかどうか、ただこわれたものをなおすということだけとは違うと思うのです。そこでそういうことになりますと、北海道東北公庫だけではなくて、開銀からも融資をすることになっておりますし、さらにまた、地元銀行は一そう重要な役割りを持っておるものでありますから、それらの方面がみな調査をいたしまして、それが出てこないと、大蔵省から出すこれは特別金融になるわけですから、それらの額も確定しないと思うのでありまして、現在はこれに対する調査の最中である、こういうことを私のほうの所管として申し上げておきます。
  110. 小林進

    ○小林委員 そこで時間もありませんから簡単に申し上げますけれども、北越製紙の復旧工事の三十六億七千万円というのは、私どもの調査したところによりますと、大体やはり新設備の費用だ、百四十七インチのオフ・コーター新設とか、二、五号抄紙機の代替等を設置する考えで、日産六十トンの百四十七インチの上中質紙及び下質紙抄紙機を設置する、その工費が十一億五千万円だとか、百四十五インチのオフ・マシン・コーターを工費四億五千万円でかけるとか、そういう大体近代的な新しい機械や設備を入れられるような費用を中心にして、この三十六億というものが組まれておる。われわれは一体新潟地震で北越製紙がどれだけの被害を受けたか、これはわかりません。わかりませんけれども、まあ諸般の事情をいろいろ調査いたしてみますと、大体十三億円前後ではないか。その十三億内外の被害の中で、今度はその復旧だけではなくて、それも含めて、新しい機械設備を入れまして、工場の近代化をはかろう、こういうことでありまして、なお申し上げますならば、この北越製紙の一造、二造というところには、非常に古い機械がありまして、地震があるなしにかかわらず、もはや近代的な合理的な設備としてはだめだ、いつかはやめなければならぬという機械も幾つかあった、それが震災もありましたし、更新のいい時期であると言っては悪いですけれども、この機会にひとつ更新しよう、こういう考え方であった。私はそれはそれで非常にけっこうだと思うのです。非常にけっこうだと思いますけれども、いまは地震というこの不可抗力な事情の中で、労使ともどもが被害を受けて立ち上がろうとしておる。これは国民が全部認めており、全部同情しておる。その中で労働者だけを犠牲にしておいて、経営者だけがいわゆるその立ち上がりを見せようということは、いま援助をされようとする政府のお考えに相反するものではないか。これを私は大蔵次官にお聞きしたい。いいですか大蔵次官。三十六億の金を――これが民間の金なら別ですよ。民間の企業というものは私が申し上げるまでもなく、賢明なあなたは御承知のとおり、金を貸すからには元手をとらなくちゃならないから、企業の合理化をやれ、余分な費用のかからないように首切りはやれ、利益があがるようにせい、こういうことを条件にして民間の金融資本家は金を貸すのでしょう。けれども、いま激甚地に関係をして政府資金、北海道東北開発公庫と、政府の金じゃありませんか。そうじやありませんか。政府の金というのは国民の金ですよ。開発銀行だって国家の機関じゃないですか。資本家の金じゃないのですよ。国民の金なんですよ。そういう金を融資するということならば、その金はいわずもがな、単なる経営者や資本家だけの金じゃないでしょう。北越製紙に国家の金を融資するとなれば、震災でやられた労働者も含めて企業全般の援護、擁護のために私はその金をお出しになると思う。そうじゃありませんか。もし大蔵省が一般金融資本家と同じように、それは企業を合理化せい、だから労働者は首にせい、資本家の利益があがるためにこの金を融資するとしたならば、私は政府金融機関を設立した趣旨に沿わないと思う。この点いかがでしょう、私の考えは間違っておりますか。
  111. 鍛冶良作

    ○鍛冶説明員 御説のとおりだと思います。決して労働者の首を切ってこいなどということは言うておらぬと確信いたしております。さようなことは言わせません。
  112. 小林進

    ○小林委員 そうでありましょうね。それは言わぬと思いますじゃない、あなたも副大臣でありますし、もし言った者があるとすればあなたの部下ですから、そういう者はひとつ厳重に処罰をしていただきたい。少なくとも労働者も含めて企業全般の、この震災で受けた被害を守っていただくという趣旨のものであると考えます。それならば、いま私どもはそういうような国民的な同情と、労働大臣が明快に労働者を守るのだと言われたその明快な形の中で、いま政府の援助金もお出しになろうとするときに、こういうような不当な首切りが行なわれるとするならば、それはいやしくも大蔵省の金融のごあっせんをされる趣旨とは相反するものだから、こういう首切りが行なわれる場合にはその融資を一時中止をされるべきが至当ではないか。まだ調査中でございますから、まだ融資をするときまったわけじゃありませんけれども、もしきまった場合においても、そういう首切りが行なわれたら、その首切りが不当であるか不当でないかはまたあとで労働省にその見解を承りますけれども、こういう国民的な同情と支援の中に、新潟地震を救えという全国的な救いは――労働者を首切ってもいいなんという、そんな救いは国民の間から起こっておりません。労働者も一人も犠牲にしてはいけない、企業も犠牲にしてはいけない、みんな救おうという国民的な世論の中に立ち上がって、いま政府も資金の援助をやろうとする。その中に首切りをすることは、あの新潟地震に立ち上がっている国民にこたえるゆえんでもないし、政府のお考えでもないとするならば、その融資は私は当然途中からでも打ち切られるのがほんとうだと思います。いかがです。
  113. 鍛冶良作

    ○鍛冶説明員 大蔵省としては企業の再興のために必要だという計画を立ててきますから、その計画に従ってよいものであれば融資するということになります。したがって、労働者の生活を保護するということも考えておることは当然でございまして、労働者の生活を脅かしてまでというようなことは絶対にないと思います。けれども、どうも大蔵省の管轄の以外のことまでにわたってやるわけにいきませんから、精神は御説のとおりだと考えますが、大蔵省は大蔵省としてのたてまえでやるよりほかないと思います。
  114. 小林進

    ○小林委員 まあ仮定でございまして、交渉の段階でございますので、早急に結論を伺うわけにはいきませんが、いまは政務次官が言われたように労働者の生活まで脅かしてそういう金融等の処置を講ずる考えは大蔵省にもない、これは明快であります。将来ともどんな形で進みますか知りませんが、不当な首切りが行なわれる場合に、大蔵省が金融のあっせんをされたり、北海道東北開発公庫から融資をされたり、開発銀行から融資をされるような場合には、われわれは残念ながらやはり金融に関する監督官庁として大蔵省のあり方を弾劾していかなければならない。そのときにはやはり北海道東北公庫、開発銀行等も、われわれは何らかの形で、そういう貸し付けにわれわれは賛成することができないという意思を国会を通じて表明をしなければならぬ立場になっております。どうかそういうことになりませんように、今後ともひとつりっぱな行政指導をしていただくことをお願いしておきたいと思うのであります。  次に通産次官にひとつお伺いしますけれども、これは不幸にして大臣お見えにならなかった。私は、九月の二十四日です、特に時間を大臣と打ち合わせまして、午後の四時、通産大臣のところに参りました。それで通産大臣にお目にかかって、いまの新潟の北越製紙――北越製紙だけじゃない、そのときにも、この北越製紙の不当首切りの問題は、通産行政の上からもひとつ十分に調査をして、そういうことのないようにしてもらいたい、特につけ加えますけれども、いま新潟は全部震災にやられて、北越製紙がどういう首切りをやるか、どういう合理化対策をやるか、ほかの企業もみんな見ているのだ、北越製紙がひとつうまく首切りをやって、それに成功したら、それに準じてやろうといって、ほかの企業もみなこれを見ておる、そうしてこの北越製紙の首切り問題は新潟在住の他の大小の企業に全部影響してくることなんですから、通産大臣、その意味においてもこの問題はひとつ単なる一企業の問題とは思わないで、慎重にあなたの所管事項についてどうか御処置を願いたい、こういうことをお願いしてまいりました。通産大臣は、よくわかりました、さっそくひとつ御貴意に沿うように手を回して調査をし、処置をいたしたいと思います。こういう回答を私はいただいております。大臣がお見えにならぬので残念でありますけれども、その後どういう御処置をしていただいたのか、お伺いをいたしたいと思います。同時に、この新潟の震災に対する通産省の所管事項についても、あわせてこの際お聞かせを願いたいと思うのであります。
  115. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 企業の隆盛をはかるということについては、通産省の所管の責任のある問題でございますが、企業が隆盛になると同時に、やはり企業に参画する勤労者の方々の生活の安定、福利の増進ということもあわせて考えるべきは当然であると思いますが、ことにこのたびのような震災の起こりました場合においては、企業の復興を考えるだけでなく、やはりその企業が損害を受けたために、経営者だけでなくて、勤労者の方々にも非常な大きな影響のあることでありますから、この勤労者の救済なくして企業の復興ということは特にこういう際にはないと思い、私は万般の注意を払うべきだと思うわけであります。幾多の企業の問題がございますが、いろいろ要請に従って処置をしてまいりたいと思っておりますけれども、ことに北越製紙の企業の再建に対しましては、やはり勤労者がそのために非常な影響を受けないように鋭意努力いたしたいと当局も考えております。その詳細につきましては局長のほうから答弁させますが、根本的な精神においてはさようであります。
  116. 新井眞一

    ○新井説明員 さっそく私どものほうで経営責任者を招致いたしまして、現在の復興計画についていろいろ調査をいたしております。それによりますと、先ほど大蔵政務次官のお話にございましたように、各般の問題がまだいろいろ調査が不十分でございますけれども、一応通産省として考えるべき一番のポイントといたしましては、前の計画よりも非常に辛い計画だという点でございますが、この点あるいは先生よく御承知かと思いますけれども、能力はそう変わりません。ただ従来御承知のように非常に老朽した設備でございますので、この際新しくやっていくということで、能力的には変更ございませんけれども、かなりの新鋭設備になるということでございます。そのほか事業をどういうふうにやっていくかという問題、そういうことをいまいろいろ関係方面とも打ち合わしております。特に私ども、やはり激甚地でございます新潟の問題でございますので、御趣旨のように特に被害を受けられた労働者の方々には、労働大臣もお話しになったような気持ちで私どもは一生懸命やってまいりたい、このように考えております。
  117. 小林進

    ○小林委員 通産省のお考えも承りましたが、私はその趣旨で御努力いただければ労働者もそう不当な圧迫を受けないで済むかと思いますので、どうぞ今後ともひとつ適当な御指導をいただきたいと思うのでございます。現に北越製紙がそういうような首切り合理化を発表したということで、それに右へならえするわけではございませんでしょうけれども、小野鉄工という中小企業が、小さな企業だが、その企業で驚くなかれ六十八名という多量な者を一挙に首切りをしている、こういう事実があるんです。ただ、しかしいまのところは好ましい現象と言えばしませんが、昭和石油の問題は、あそこに依然として工場を再建するか場所を変えるかという問題がいま出ておりますので、会社自体を動かすか動かさぬかという問題でありまして、労使も労働組合の首切りの問題まで入っておりません。これはやはり北越の問題の解決に必ず関連してくる問題だと思います。ただ新潟鉄工と臨港開発会社というのだけは、こういう未曽有の地震を受けて、国民があげてわれわれ企業の問題を心配していてくれるさなかに、労使が対立をして首切りなどすることは、国民や政府に対して申しわけない。だからわれわれは、新潟鉄工だとか臨港開発会社は首切りはやらない、労使一体になって国民のこの支援にこたえるように再建工作に邁進する、こういう会社もある。それは私はりっぱだと思うし、これが正しいと思うのであります。そういう空気も地元には一部起こりつつあるのでありますから、そういう空気を助成していって、労使一体になってひとつ企業を再建する形ができるように、政府みずからも力を貸してもらいたい。いやしくも首切りに賛成をしていくようなことのないようにひとつやっていただきたいと思うのであります。そういうことで大いにやっていただきまして、いまも申し上げましたように、通産省でも皆さん方が、やはり労働者を犠牲にして――これは普通の条件と違う。企業が悪いとか一般に不景気だとかいうことじゃなくて、この地震という不可抗力の中でともに苦しんで国民的にその再建を願っているさなかに、その同じ震災の犠牲者の労働者だけを痛めつけておいて片方の企業だけが伸びようという、これはいかにも人道的にも許されない問題でございますから、今後も通産省のほうで、企業を伸ばしていくという立場に立って、労働者を犠牲にするような再建工作をおやりになるときには、私どもは残念ながら将来とも机をたたき、鼓を鳴らして、皆さん方のやり方を弾劾しなければならぬ、あくまでも反対しなければならぬ。これは肝に銘じて繊維局長、次官、あなたは副大臣ですから、よく腹の中に考えていただきまして、万々そういうことのないようにひとつ御処置をいただきたいと思います。間違いありませんな。どうですか。
  118. 岡崎英城

    ○岡崎説明員 いまお説のように、ことに震災の復興には労使ほんとうに一体となってやるというような態勢に進むように、通産省としても万全な努力を払いたいと思っております。
  119. 小林進

    ○小林委員 それでは労働大臣に一言だけお伺いいたしまして私の質問を終わりたいと思います。  労働省の考え方、法律解釈の問題も含めて、一般民間企業の中における首切りというものは、不景気に基づく合理化だとか、いろいろな立場で首切りが行なわれるでしょうし、それはまたその問題とこのたびのように不可抗力の地震とか天災とかいうことに基づく首切りは、私はおのずから法律上の解釈も違っていいのではないかと思う。こういう天災とか地変に基づく首切りは不当な首切りのケースではないか。これは私も研究中でありますが、法文解釈上からいえば、これは不当な首切りの中に入るのではないかと思う。どうでありましょうか。その解釈をお聞きしたいのです。
  120. 村上茂利

    ○村上説明員 これは先生御承知のとおりでございますが、解雇に関する制限条項といたしましては、労働基準法の第二十条の規矩がございます。解雇をしようとする場合には、労働基準法第二十条第一項の規定によりまして三十日以前に予告しなければならない。即時に解雇しようとするときは、いわゆる三十日分以上の解雇予告手当を支払わなければならない、こういう制限条項がございますが、実はそのたてまえが例外的にはずされる場合として、天災事変その他やむを得ざる事由によって企業の継続が不可能となった場合には、むしろ即時解雇ができるという除外規定があるのでありますが、その除外規定の適用云々という問題ではないのであります。基準法上は、そういう解雇制限条項しかありません。しかし、今回の北越製紙の問題につきまして、このような二十条の適用の問題をこえたところの一つの社会的な震災という特殊な背景を持ちましたケースとしまして、これを労使関係を円滑に処理するという大所高所のたてまえからどうするかという大きな問題があるわけでございます。労働基準法上の問題としましては、法違反がないように私ども十分注意をしておりますが、いまのところ、そういう問題については格別の情報を聞いておりません。ただ、そういった労働基準法三十条の適用以前の問題としまして、先ほど大臣お答えになりましたような、ああいう社会的な立場からの問題処理をどうするかという観点からただいま腐心しておるような次第でございます。
  121. 小林進

    ○小林委員 村上基準局長から、博士ですから法学博士らしい答弁をいただきましたけれども、それで私は満足するわけじゃないのであって、天災地変とは言いながらも、いろいろケースがあると思う。局地的なケースもあろうけれども、やはり東京大震災だとか、あるいは福井の震災とか、いまの新潟の震災のように、全県民的な、全国民的なケースの中で、同情と支援と協力を受けて、その再建を願っておる中に、やはり一経営者だけが、その国民の意思、社会的通念といったもの、社会的支援を土足でけって、同じ被災者、同じ国民の同情と支援を受けておる、その労働者だけを首にして、企業の再建をはかろうなどということは、私はどうも法の精神から言っても一般の首切りとは違って扱わなければならぬというように考えますが、いまのところは法律的根拠がないとおっしゃるなら仕方ありません。どうかひとついまもおっしゃいます基準法以前の問題として、労働大臣をはじめ、大蔵省、通産省、ともに御答弁のとおり間違いのないように、労働者の幸福のために御努力くださることをお願いいたしまして、関連があるそうですから……。
  122. 松井誠

    松井(誠)委員 もう時間がございませんから、簡単に、質問というよりもむしろ主として労働大臣に要請をしておきたいと思うのであります。  申し上げたいことは、やはりいま小林委員から問題にされました北越製紙の問題、これもこの一つの企業の首切りをそれだけ切り離してわれわれが問題にしておるわけじゃございません。いま新潟市で例の激甚法による失業保険を受けておる労働者が約千三百名。この千三百名の労働者が、さて、企業がほんとうに再開されるかどうか。そのまま解雇されてしまいやしないかというそういう重要な関心を持っておるわけです。そしてそれのいわばテストケースとしてのはしりがこの北越製紙の問題ですから、この問題の取り上げ方いかんによれば、この解決のいかんによれば、重要な社会不安というものもかもしかねない。そういう社会的な注目を浴びておる。単なる私企業の問題としてではなしに、そういう意味で社会的な非常に重要な意味がある。そういうことでありますので、くどいようでありますけれども、簡単にお願いやら要請やらを申し上げておきたいと思います。  最初に、先ほど大臣がおっしゃいましたこの復興についての基本的な考え方の二つ、これは私も全く同感であります。ところが、その考え方に対して、たとえば企業の収益性なり将来性なりそれが最優先すべきものではなしに、むしろ企業の社会性といいますか社会的な責任というか、そういうものが基本になるべきだと私は考える。それは、仕事の内容が公益的であるかどうかという問題よりも、むしろ多数の労働者をかかえておるというそのことだけで企業は社会的責任を負うべきだと思う。ところがここの経営者の考え方というものはそれとは非常に背馳した考え方があるやの重大な疑問があるわけです。その点を具体的に申し上げて、これからあとひとつぜひお調べをいただきたいと思う。  一つは、先ほど小林委員からもお話がありましたけれども、かりに融資がある、その融資について、もし、われわれが主張しているように、あるいは労働組合主張しておるように、完全雇用という前提の融資ならば、そういう融資なら私は受けませんということを団交の席上で言っておるわけです。そういう事実がもしあるとすれば、これはほんとに企業再建ということよりもまさに便乗合理化だと言われてもしかたがないその一つの結果ではないか。もう一つは、これの是非は問題になるかもしれませんけれども、いま激甚法の失業保険の期間の延長のお話がございました。ところが、社長は、これはもう新聞にも公表されておるわけですけれども、かりに延長になっても北越企業はそれの適用は受けないつもりだ、こう言う。受けなくて、解雇者と、それからいままで激甚法による失業保険を受けておった人は当分解職をして残存期間の失業保険をもらわせる、そしてその期間が終わったら再び雇用して休業という形にする、こういうことを公言をしておるわけです。これはもう解雇しなければならぬということがきまっておるものなのに失業保険をもらうということは会社の経理上損だという意味もあるでしょう。しかし、ともかくこういういろいろな言動を考えると、いまの経営者がほんとにその経営の社会的な責任というものを考えておるかどうか非常に疑問に思う。ですから、この点をひとつぜひお調べをいただいて、適切な御指導をお願いをしたい。  もう一点は、これもやはり社会的責任感の欠除ということに関係があると思いますけれども、今度の首切りというのは、われわれは率直に言って疑いもなく不当労働行為といわれる要素が多分に含まれておると思う。しかし、最近の経営者は非常に巧妙でありますからして、露骨な不当労働行為と思われるような形はとりません。しかし、たとえば今度の首切りの場合にこういう形になっておるわけです。一つは、その首切りの対象になる労働者の職場というものが今度の地震で甚大な被害を受けた一つの職場、製紙工場だけに集中をされておる。新潟ではその製紙工場ともう一つパルプ工場が並んでおる。そのパルプ工場のほうは被害は非常に軽微だ。製紙工場のほうが甚大な被害を受けておる。その甚大な被害を受けた工場の労働者に解雇は全部しわ寄せをされておる。なぜ一体このようにこわれた職場の労働者が首を切られなければならぬかというそういう理由はないと思う。最初は、会社の全地域にわたって――これは市川にもありますし、長岡にもある。そういう会社の全地域にわたって解雇の基準をきめて、それで整理するという案がある。ところが、どういう経緯か知りませんけれども、地域的に非常に集中した解雇の対象者が出ておる。これは現にもう労働組合自身が四苦八苦をしておるように、反対運動というものができないようにするための、労働運動の分断政策というにおいが非常に強い。もう一つは、第一製造所――一造といいますけれども、その一造の組合の積極的な活動家というものは全部指名解雇の中に入っておる、たとえば満三十歳米満というものも解雇基準に入っておる。会社の言うところでは、満三十歳未満ならばほかの職場に転換できる、そういう余裕があるからだというのが理由ですけれども、それによって、若い職場のリーダーは全部入っておる。全部入っておるというだけならば、まだこれは不当労働行為だという理由になり得ると思うのですけれども、幸か不幸か、一名かそこいらはどこかで抜かしておる。ですから一〇〇%活動家を切らないで、何がしかどこかに逃げ道としてちゃんと抜かしておる。これが露骨な不当労働行為という形態をとらない一つの結果だと思う。こういう二つの点、非常な不当労働行為的な解雇の形態、それから企業の社会的な責任というもの、そういう意識がほとんどといってもいいくらい欠除をしておるという状態、これが、これから新潟に、あとに続くかもしれない解雇、労働争議の問題のはしりだということになりますと、これはほんとうに労働者が傍観をしておるわけには私はいかないと思う。ですから、そういう点をこれからあとよくお調べをいただいて、先ほど大臣の良識に私は期待をいたしますけれども、そういう意味で、これからあとの適切な御指導をいただきたいと思うのです。そういう点について、おそらくいままで具体的なこと御存じなかったかもしれませんし、先ほどの話ではありませんけれども、ひとつ部下を通して、あなたの先ほどのあの復興の大原則というものをあくまでも徹底をされるように、そういう御指導をお願いいたしたいと思う。
  123. 石田博英

    石田国務大臣 この問題についての私の基本的な考え方は、先ほどの小林委員の御質問お答えしたとおりであり、いままた御理解をいただいておるとおりであります。そういう考え方を通しまして、この問題を処理する方針でございますが、いま御質問を受けましたことについて、私ども調査不十分の面も若干ございますので、これは至急調査をいたさせまして、原則に沿うように、先ほどからお答えしました私の考え方に沿うように、行政指導をしてまいるつもりでございます。
  124. 田口長治郎

    田口委員長 河野正君。
  125. 河野正

    河野(正)委員 私は当委員会におきまして、さきには野村証券におきまする女子職員の自殺という非惨な事実をめぐりまする労使間の問題についていろいろ所見の開陳を求めてまいりました。ところが最近、特に証券界、あるいはまた金融界を通じて言えることでございますが、いわゆる今日高度成長経済という中で、金融引き締め政策というものが非常に強く出てまいりました。そういうような金融引き締め政策が強く出てまいりまして、金融情勢が非常にきびしくなった。ところが、そういう情勢と相まって、最近特に目立ってまいりましたことは、経営者側の労働組合に対しまする締めつけが非常に強く、しかもまた露骨になってあらわれてまいったという、こういう事情でございます。したがって今日の高度成長経済、それからまたそれに基づきます金融引き締め政策、こういう一連の動向は、いまの内閣がとってまいりました政策の一環でもございますので、私は、それらの事情と相まって起こってまいりますいわゆる労使間の諸問題、こういう問題については特に労働行政の立場から積極的な行政指導というものが行なわれていかなければならぬ、こういうことを実は考えておるわけでございます。  そこで実は、それらの経営者側の動向というものは、具体的には一つには組合側に対しまする暴力事件というものがしばしば発生をしてくる、あるいはまた警察権が介入する、さらには最近の一つの傾向として赤路線を追放しろ、こういうふうな一つの傾向というものが強く出てまいっております。そうして白日のもと堂々と、しかも露骨にいまの方向に従って不当労働行為というものが強行される。あるいはまたそういう不当労働行為に基づいて組織分断、第二組合、第三組合の結成というようなものが経営者の露骨な盲動となってあらわれてまいる、こういうような一つの著しい傾向がございます。そこで私は、実はそういう問題点というものが最近非常に金融界に出てまいりまして、この委員会においてもいろいろ取り上げてみたいというケースが非常に多いわけです。具体的な事例というものが非常に多いわけでございます。  そこで一つには、富山の相互銀行におきまする不当労働行為、あるいはまた組合介入、さらには九州の旭相互銀行、さらには大光相互銀行、弘前相互銀行、岐阜相互銀行、昭和相互銀行、振興相互銀行、こういうふうにあげてまいりますと枚挙にいとまがないわけでございますけれども、時間の制約等もございます。そこで私はきょうは、特に当面する一、二の問題点を取り上げて、ひとついろいろと労働省あるいはまた関係各方面の御意見というものを伺ってまいりたいと考えております。したがって、いま申し上げまするようなたくさんな不当労働行為あるいは警察権の介入、暴力事件というものがあるわけでございますから、今後次々にひとつこの委員会で提起をいたしてまいりたい、かように考えております。  大臣が二時半から宮中に参賀されるというような事情等もございますので、最初に、そういうような証券界あるいはまた金融界全般におきまする現在の、私がいま抽象的でございますけれども申し述べてまいりましたような傾向についてどういうふうにお考えになるか、一応総括的にひとつ御所見を承っておきたいと思います。
  126. 石田博英

    石田国務大臣 相互銀行の労使関係においていろいろな話題があること、問題があることは、大ざっぱでございますが、報告は受けております。その正確なる事情はいま調査させておるところでありますが、おっしゃるように企業の経営の都合によって労働組合に経営者が参加するということは、これは労働組合法の原則に反することでありまして、望ましいこととは思っておりません。
  127. 河野正

    河野(正)委員 いま総括的な面におきまする大臣の率直な意見を承ったのでございますけれども、いま私は、各相互銀行におきまするもろもろの不当労働行為あるいはまた警察権介入、赤路線の追放、さらには暴力事件、こういう点をあげたのでございますけれども、実際現場の実情というものはきわめて深刻なものがございます。私は先ほど来申し上げまするように、さきには野村証券におきまする藤本さんという女子職員の方が経営者側の締めつけ、精神的な圧迫によってとうとい若い生命を断たなければならぬというような事例をあげて、いろいろとこの委員会でも論議をいたしたのでございますが、そういうことが実は富山の相互銀行においても、最近の事例としてまことに悲しいことでございますけれども、行なわれてまいりましたことを、私どもは非常に遺憾に感じております。経営者がなるほど経営者の利益を守るということは自由であるかもしれません。しかしながらそれは労働者を犠牲にしてよろしいということではないのでございます。ところがこの経営者側の不当労働行為あるいは人権を無視した組合脱退強要、こういった精神的な圧迫というものが、この女子職員の悲しむべき自殺事件となってあらわれてくる。もちろんそういうような不当労働行為に基づきまする組織介入あるいは組織分断というようなことも許せぬのでございまするけれども、さらにいま申し上げまするように富山相互銀行においても女子行員の自殺というふうな悲しい現象というものを当委員会で重ねて取り上げなければならぬということを私どもも非常に残念に感じておるわけでございます。したがって、いま大臣からも御所見を伺ってまいりましたが、現場の実情というものはまさしくきわめて深刻な実情にございます。したがって、私はやはりさきの野村証券あるいは今回の冨山相互銀行の女子職員であります小林弘子さんの死というものを決して無視してはならぬと思う。第二、第三の女子行員の自殺行為こういうものが出てまいることは、私どもは国政審議の中、政治を担当する一員としても防止をしていかなければならぬ、そういう意味からもやはりそういう深刻な実情にあるということを大臣も十分ひとつ御認識をいただかなければならぬと思うのでありますが、これらのたび重なりまする自殺事件というものをお聞き取りになって、今後どのように行政指導上対処しようとお考えになっておりますのか、ひとつこの点を率直にお聞かせをいただきたい。
  128. 石田博英

    石田国務大臣 御指摘の事件の正確な材料というものはまだ持っておりません。しかしそれと離れまして一般的な事例として考えまして、もし御発言のようなことが事実といたしますならば、これはもうきわめて遺憾なことであります。われわれとしては経営の態度が不当労働行為であるとの立証が得られますならば、むろん法によって処置をしなければなりませんし、そういうことのないように行政指導をしたいと思っておる次第でございます。
  129. 河野正

    河野(正)委員 細部についてはいずれ事務当局といろいろ論議を重ねたいと考えております。そこで大臣の時間の都合がございますので、前もって特に大臣の所見を承らなければならぬという点についてひとつお尋ねを申し上げておきたいと考えます。  そこで、いまの自殺行為というような悲しむべき事態というものは、これはもうだれが見てまいりましてもきわめて深刻な事態でございますし、細部にわたりまする論議はいずれいたすといたしまして、特に労働者の権益を守るという立場大臣として、今後格段の行政指導上の処置をとっていただきたいというふうに申し上げておきます。  先ほど申し上げましたが、金融引き締め政策から一転をして、経営者側が組合側に非常に強い引き締め政策をとっていく。その政策が具体的には暴力事件となり、あるいはまた警察権が介入したり、いろいろの不当労働行為を行なってみたり、こういうことになっておるわけでございますが、たとえばいままで相互銀行の労使関係の中で直接警察権が介入いたしましたのは、長崎の相互銀行でそのような事件が一例ございました。これはもう私どもも当初から不当逮捕だというふうに主張をいたしておりましたが、私どもの主張が通ってこの件は最高裁で無罪ということでございまして、全く警察権の不当介入ということが明白になったわけでございます。したがって私はそのことについてはあえて触れようと思いませんが、ところがいま一例は、さっきもちょっと触れたのでございますけれども、旭相互銀行の熊本で、実は銀行の取引先の顧客を通じまして間接的に警察権の介入を行なった、こういう事例が出てまいっております。これはもう具体的に介入した人物もわかっておるわけでございますので、これは何も言うことはないと考えております。しかしながらこういう警察権の介入を許すといたしますならば、これはせっかく労働大臣が労使間の健全な今後の関係を成長せしめていく、あるいはまた労働権を守っていくという上においてきわめて遺憾な点でございますし、そのような警察権の介入ということが労働運動を抑圧し、また労働運動というものを根本的に破壊するというふうな道に通ずるわけでございますので、このような警察権が具体的に介入せしめられるという点が遺憾な点であるということは事実であると思いますけれども、そういう点について労働省として今後どのような御処置をとっていただけますのか、ひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  130. 石田博英

    石田国務大臣 労働運動並びに労使関係の問題の処理労働関係法のワクの中で行なわれている限りにおいて、これに対して警察権が介入することは言うまでもなく不当であります。したがってそういう事実に対しましてはこれを排除するように労働省としてはいたしてまいるつもりであります。
  131. 河野正

    河野(正)委員 そこで、もう一つ大臣にお伺いをいたしておきたいと思います点は、先ほども申し上げましたように、経営者側の組合に対します暴力行為という点をひとり取り上げてまいりましたが、私どもその一例として大光相互銀行におきます管理者側の組合に対します暴行事件というものを取り上げておきたいと考えております。細部につきましてはいずれ後ほど事務当局といろいろと論議をかわすつもりでございますが、一つの最高の方針として、時間の都合等もございますから大臣にひとつ率直な意見をお聞かせを願っておきたいと考えております。それはもうすでにこの九月の五日の日に大光相互銀行の三条支店長が行員でございます組合員に対しまして暴行を行なった。このことは、いま申し上げますようにすでに告訴をいたしてまいっております。すでに捜査も、先ほど警察庁の意見を聞いてまいりますともう終わったというふうな段階のようでございます。しかもこの大光相互においてもこの組織分断が行なわれて第二組合がつくられている。それらの点と関連をしていまの暴力事件がやはりまた行なわれておる。現実にこういう具体的な暴力事件が行なわれ、それが第一組合、第二組合というふうに分裂する一つの要素として行なわれてまいっておりますことば、これまた私どもも絶対に許すことのできない事態であろうというふうに考えております。このようなすでに告発をされ、しかも捜査が終わって送致をされたというような極端な事例が出てまいっておりますが、こういうふうな事例に対しましては大臣としてどのようにお考え願えますか、これまたお伺いいたしたいと思います。
  132. 石田博英

    石田国務大臣 暴力行為は、これは労使関係であろうとなかろうと、むろん不当なものであります。ましてや労働者の団結の自由というものが暴力によって左右される。しかも経営側というよりいわゆる権力関係を伴った暴力によって左右されるということは、これは一番望ましくないと考えている次第であります。
  133. 河野正

    河野(正)委員 暴力関係が組合運動のいかんにかかわらず排除されるべきであることはもう当然のことでございますし、特に私ども社会労働委員会は労働者の権益というものを守っていくという一つの役割りがあります。そういう観点から見ましても、暴力そのものももちろん悪いのでございますけれども、そういうことによって組織分断が行なわれ、そういうことによって正常な組合運動が抑圧されるということは、われわれの立場からきわめて重大視しなければならぬ点でございます。したがって、単にいいとか悪いとかいう問題でなくて、やはり正常な労働運動の発展を考えなければならぬ。大臣としてはこういう具体的な事例については、ひとつ強力な行政指導というものをとっていただく必要があろうかと思います。それらの点についていかがでございましょうか、ひとつ率直にお聞かせいただきたい。
  134. 石田博英

    石田国務大臣 具体的な事例について私は詳細に承知いたしておりませんけれども、おっしゃるような事態については、むろん強力な行政指導によってこれをやめさせるようにいたすつもりであります。
  135. 河野正

    河野(正)委員 大臣は二時半という約束ですから、あと一問で終わりたいと思いますが、もう一つ大臣に率直な意見を承っておきたいと思います点は、それは先ほどもちょっと取り上げてまいりました旭相互銀行におきます経営者側の態度でございますが、これはいまなお第一組合は春闘に引き続いて賃上げ、臨給の闘いを進めているわけでございます。ところが、この第二組合、第三組合とは妥結いたしましたが、第一組合に対しましては妥結申し入れを行なってすでに八十日以上経過をいたしております。六月の二十五日に妥結申し入れをいたしたわけでございます。ところが、第一組合がいまなお闘争を継続中だから妥結することはできない、こういうことで実は賃上げ、臨給を第一組合だけには実施しない。これはいままで私どもしばしば経験をいたしてまいりました。それは主として第二組合、第三組合よりも第一組合の要求が高過ぎる。そういうことで第一組合についてはなお妥結を見ることができないという形で支給されぬケースはちょいちょいございます。ところが、もうすでに同じ条件で妥結を申し入れておりますにもかかわりませず、争議中だということで妥結をやらない。こういうことは私はまさしく労組法にも違反する行為でございますし、したがって断じて法のたてまえからも許すことができない点であろうかと考えております。この点は他の企業と違ってきわめて露骨な点でございますが、こういうことが許されるものかどうか。これも最後にひとつ大臣から御意見を承っておきたいと思います。
  136. 石田博英

    石田国務大臣 私どものほうへは団交が妥結に至っていないという程度の報告でありまして、その妥結に至っていない事情はどういう事情にあるか、それは実はまだ報告が来ておりません。これは至急調べたいと思っております。賃金その他の条件が一緒であってなお闘争継続中ということがちょっと私にはよくわかりかねますが、よく調査の上で善処をいたしたいと思います。
  137. 河野正

    河野(正)委員 最後に、いまのケースはいずれ調査していただきたいと思いますけれども、私どもの知っておる範囲では、闘争中だから妥結せぬ、条件は同じだけれども妥結せぬのだ。ところが妥結せぬから組合は闘争するわけですね。ですから、いまのようなことを許せばいつまでたってもこれは終結することはないわけです。私どもがいままでしばしば経験してまいりましたケースというものは、要求項目が違う、そういうことでなかなか解決せぬというケースが大部分です。ところが、これは条件は同じだけれども、闘争を継続するからやらぬのだ、片一方は妥結せぬからやるのだということで、イタチごっこで、このままでは解決しませんし、また会社側がとってまいりました態度というものは、私はやはり労組法にも違反する行為だというふうにも考えます。そこで、まだ十分の調査がいっておらぬといたしますならば、ひとつさらにあらためて十分な調査をしていただいて――現状が私どもが申し上げましたような事情ならば当然法に違反すると思うのです。でございますから、ひとつ適切な処置をとっていただきますことを強く希望をいたしておきます。よろしゅうございますか。
  138. 石田博英

    石田国務大臣 はい。
  139. 河野正

    河野(正)委員 大臣の時間の都合で、委員長に協力する意味でいろいろあれこれやりましたけれども、細部についてはいまからじっくりやってまいりたいと思いますから、ひとつ率直な御見解を承ってまいりたいと考えます。  最近の証券界もそうでございますが、金融界におきまする労使関係の実情というものは、いま申し上げますようにきわめて深刻な実情にございます。しかも、二、三でございますけれども問題点を取り上げてまいりました。それらの点については深く追及はしなかったのでありますけれども、大筋としては労働行政の最高責任者でございます労働大臣もきわめて遺憾である、強力な行政指導なり処置をとる必要がある、こういうふうな御見解でございます。そこで私どもは、こういう事態が依然として継続されるということは日本の労使関係の上からも好ましくございません。したがって、さらに経営者側の反省を求め、しかもまた今後行政府の適切なしかも強力な指導を期待する、そういう意味から若干掘り下げてお尋ねを申し上げてまいりたいと考えております。  相前後する点もございますが、先ほど申し上げました富山相互銀行の自殺事件にいたしましても、やはりさきに取り上げてまいりました野村証券の藤本さんという女子職員の自殺というものも、全く本質的には同じケースであるというように私ども理解をいたしております。このようなことが行なわれますることは、私はやはり労働法の中でも問題点がございますが、しかし一方では、やはり人権の上からも、人権を侵害するものとしてきわめて重大問題というふうにいわなければならぬというふうに考えております。そういう意味で、法務大臣としては最近におきまする証券界あるいは金融界のこういうふうな、第一組合、第二組合というふうな組合分裂を契機として行なわれてまいりまする女子行員の自殺行為、もう少し具体的に申し上げますならば、強力にそういう脱退の強要を受けるために精神的圧迫に耐えかねて、特に女性の場合でございますからそういうことでこの自殺行為というものがたび重なってまいる。これは私は人道上からも全く許しがたい問題点であろうというふうに考えるわけでございますが、法務省として、人権擁護局長として、これらの点をどのようにお考えになっておりますか。ひとつ率直に御意見をお聞かせいただきたい。
  140. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 生命、身体、それから幸福追求に関する権利、これは人権の上でも最も尊重すべきものでありまして、ただいまいろいろ御指摘のように、第一組合、第二組合の間のいろいろなことに関係いたしまして、あるいは脱退を強要する、自由意思を強制的に圧迫して脱退させるというふうなことがありますれば、これは重大な人権侵害になると考えております。したがいまして、そのような事実が判明いたしました場合には、それに対しましてはできるだけそのようなことをやめてもらう、場合によっては、自後の措置について適当な措置をとりたい、かように考えております。
  141. 河野正

    河野(正)委員 そこで人権侵害の事実というものがあれば強力な措置をとりたいということでございますが、それならば、この富山相互銀行におきます女子行員の自殺行為について人権侵害の事実の有無、これらについて調査願えますか。
  142. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 富山相互銀行の行員の自殺事件につきましては、実は昨日当委員会から御通知がありますまでには私のほうに何らの報告が入っておりませんでした。昨日御連絡をいただきましたので、さっそく現地に照会いたしましたところ、北日本新聞という、富山地方の新聞だろうと思いますが、その八月四日付の朝刊の記事といたしまして、新旧労組の板ばさみか、睡眠薬を飲んだ女子行員死ぬという表題のもとに、次のような記事が出ております。すなわち、小林さかえさんという人のむすめさんの弘子さん、十九歳、富山相互銀行人事部事務員が三日、ですから八月三日だろうと思います。午前六時半に死亡した。同女は七月三十一日就寝前睡眠薬を飲み、一日朝意識不明になっているのを家人に発見され、富山市富山市民病院で手当てを受けていた。同行は組合が新旧両組合に分裂して争っており、弘子さんも七月三十日旧組合から新組合にかわったばかりなので、新旧両組合の板ばさみを苦に自殺したものではないかといわれている、こういう新聞記事であります。私どもといたしましては、自殺されたということはこれはまことにお気の毒なことだと思っておりますが、これだけの事実が直ちに人権侵害ありと断定するわけにはいかないのでありまして、その後注意して事態の推移を見守っておりますが、今日までこれにつきましてこういう点が人権侵害だから調べてもらいたいという趣旨の申告は出ていないのであります。したがいまして、現在ではまだ事態の推移を注意して見守っている、こういう実情でございます。
  143. 河野正

    河野(正)委員 私は一つには、やはり野村証券の場合もそうでしたが、今度の富山相互銀行の場合も、いま局長から御報告がございましたように、それぞれ人事部に勤務しておる女子行員という点でございます。したがってこの労務管理という点からは、この人事部というものは非常に重要な役割を果たしてまいっておりますのが現状でございます。そういう中でいろいろ組織脱退というものが、妙な形で強要されるだろうということは、容易に想像される点でございます。そこで野村証券の場合も今度の場合も同じように、人事部関係の女子職員だったというところに一つ特色がございます。それからいま一つは、特に今度の場合は、七月三十日に第一組合から第二組合に移った。そしてその翌日の三十一日には、睡眠薬を飲んだということでございますから、そこにも非常に疑惑を抱く点がございます。それからこの小林さんの保証人であった元富山相互銀行の支店長が再三小林さんの自宅を訪れて、そしてお父さんに対して、第二組合に移ることを説得した事実がございます。ところがお父さんのほうもそういうかっての上司がいろいろ要請することでございますから、本人にも、第一組合から第二組合に行ったらどうだというようなことで説得したけれども、御本人は常に第一組合が正しいのだ、第二組合には自分は行きたくない、こういうことを確信を持ってお父さんに答えておった。そこでお父さんのほうも、かっての上司がいろいろと要請されたけれども、それほど娘の意思というものがかたいならば、いたし方がないのだということで、お父さんも第二組合に移るということの説得を断念された、こういう事情等がございます。それからもう一つは、これはもうここで私は明らかにいたしませんけれども、御本人の日記もございまして、その日記の中でも、明らかにそういう意味のことが明記されておる。それらの点を総合いたしますると、これはまだきのう聞いたばかりで十分調査がし切れない段階にございますから、局長として最終的な意見をお述べになることは不可能だと思いますけれども、しかし以上私が述べました一、二の点を総合いたしましても、やはりこれは第一組合脱退強要ということと自殺行為との関連というものが当然考えられてまいるというふうに考える。そういたしますならば、これは明らかに人権侵害であって、私はこのような不当労働行為というものは、人道上から全く許すことのできない悪質な行為だというふうに断ぜざるを得ないと思うのでございますが、それらの事情等お聞きになって、どういうふうにお考えになりますか、ひとつこの点もあわせてお尋ね申し上げたいと思います。
  144. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 ただいま御指摘のように、日時の関係、それから自宅を元支店長が訪ねて第二組合に移るように説得したということ、御本人のお父さんもそれに同調されたが、本人がどうしても第一組合のほうが正しいのだという確信を持っていらっしゃった。そこでお父さんも、これは本人がそう言うならば仕方がないというふうになりました。ところが最初に申しましたように、第二組合のほうに移ったその翌日に自殺をされたということになりますと、その間に何らかの因果関係があるのではないかということは一応いえると思いますが、しかしまた逆に、それだからといってその間に意思の自由を圧迫する強制があったと断定するのにはまだ不十分ではなかろうかと思います。問題は第一組合に対する第二組合が相当微妙な点もそこに生じてくるかと思いますので、私どもといたしましては、やはりこの調査につきましては相当慎重な態度で臨みたい。すなわちどちらかから、この場合ですと第一組合からあるいは御本人の遺族の方から、こういう事実があるぞという点ではっきりした申告でもあれば、調査には非常に好都合である、このように考えております。
  145. 河野正

    河野(正)委員 具体的な事実については調査が行なわれていませんから、現段階で最終的な御意見をお述べになることが不可能だということはわれわれも承知いたします。しかしながらいま申しますような事情を総合して、それでもなお疑惑というものが十分ないというような御見解では納得いかぬので、それならば一体人権侵害というものはどういうことであるという定義をお示しになって、そうしてそういう御見解を述べられぬことには、われわれ納得するわけにはまいりません。というのは、私どもいろいろな角度から、人権侵害というものはどういうものだということを総合的に考えてまいりますと、大体いまのような点が明らかになれば、これはやはり人権が侵されておることだし、また人道上許すべからざる行為だというふうに考えるのでございますが、それらの点については、その遺家族あるいはまた第一組合のほうから申告があればさらに調査をされるという用意がある、そういうふうに理解してけっこうですか。
  146. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 御指摘のとおりでございます。御本人の遺家族あるいは第一組合のほうから申告があれば、調査を開始いたします。また調査にあたって好都合であるというふうに考えております。
  147. 河野正

    河野(正)委員 そこでいまの点と関連をして、これは労働省にもひとつお伺いをしておかなければならぬと思います点は、この事件に対して銀行側は、これは睡眠薬を飲む際に睡眠薬の量を間違えたのだというようなことで、これの原因というものは事故死だ、こういうことを言っておるわけです。ところが実は私はこの方面のことば専門家なんですが、会社側が言っておりますように連用しておったのだということになりますと、連用しておる者が量を誤って死亡するというようなことはちょっと考えられないわけなんです。ふだん使ったことがない人が量を誤って、そうしてそのために死亡したということになりますと、これは一応考えられぬわけではないのですけれども、しばしば睡眠薬を運用しておった。そして最後にはその量を誤って飲み過ぎて死んだんだ、そういうことをとにかく会社側は言っておるわけです。それは専門的、学術的に見てまいりましても、私どもははいそうですかと言うわけにまいりません。これは会社側のこじつけだということの判断が正当だと思います。それに対して組合側は、これはやはり経営者側の組合分断、組織介入と非常に大きな関連がある自殺だ、こういうことを主張をいたしておるわけであります。そこはそれぞれの主張があるわけですけれども、ただ私が非常に重要視しなければならぬと思いまする点は、会社側が、証拠を出さなければ重大問題だぞ、その責任を徹底的に追及するぞ、こういうことを実は組合側に対してどうかつ的に言っておるわけですね。私に言わせますならば、これは全く会社側の言こそ、盗人たけだけしいというふうに断ぜざるを得ぬと思うのでございますけれども、会社側はいま申し上げましたように、それはかってなことを言っておる、その責任追及するんだ、こういうどうかつ的な言辞を用いておるのでございます。私は、会社側の労働組合に対しまする一つ態度というものがこのことばの中にも出ておると思いますけれども、そういうところにやはり労使関係がうまくいかぬ一つの隘路というものがあろうと思うのです。組合側主張すればその主張したことに対して責任を取らせるぞ、こういうところに私はやはりこの問題の複雑性もあろうし、また労使関係がうまくいかぬという一つの隘路というものもそういう点にあるのじゃなかろうかと思う。私はやはりそういうどうかつ的な会社側の態度というものを改めさせぬ限りは、労使関係というものはうまくいかぬと思うのです。私は、いまのような経営者側の言動というものは絶対許せぬというふうに思いますし、そういうふうな言動をするところに、労使関係がうまくいかぬし、労使間の紛争の原因というものが、私は根底に横たわっておるというふうに考えます。こういうような、組合側主張に対してはその責任追及するぞというふうなことが許されるものかどうか、私どもは絶対許されぬと思いますけれども、しかもそのことが労使関係の正常な運営をはばむ一番大きな原因になっておるというふうにも考えますので、そういう点についてひとつ、これはぜひ会社側のそういう態度というものを改めてもらわなければいかぬというふうに考えるわけですが、その点はひとつ労働省としてはどういうふうにお考えでございますか、労政局長から御見解を承っておきたい。
  148. 三治重信

    ○三治説明員 いまの、そういうふうに会社側が言っているということについては、私のほうは先日御連絡を受けて、調査をして報告を受けているわけですが、その点につきましては、そういうふうに言っているという事実があるという情報は入っておりません。ただしかし、そういうふうな、お互いに刺激するような線をやるというのは、ますます双方敵視的な行為に発展するので好ましいこととは思っておりません。また、しかし実際問題としてお互いに何と申しますか、いろいろ刺激的な言動が、まさに過去においては現実に相当あるということも承知いたしておりますが、この具体的な例につきましては、私のほうにまだ、そういうことが言われている、言われたというふうなことについては、情報は入っておりません。問題としてそういうふうにお互いの何と申しますか、労使関係以外の、労使間の問題に関係はないとは言えないにしても、直接関係のないような問題でお互いに感情を刺激するというふうなことは決していい問題ではないし、また法律的に考えてもそういうことは何ら効力のない問題だというふうに思います。
  149. 河野正

    河野(正)委員 私は、今回女子行員でございます小林弘子さんが、とうというら若い人生を断たれた事件というものをきわめて遺憾に感じますし、そういう事件の背景にはいろいろな要素があったというふうに考えます。そこで第二、第三の小林さんを出さぬ、そういうためにも、またその死を無にしてはならぬ、そういうためにも、私はやはりその問題の背景について若干究明しておく必要があろうという点から、一、二、具体的な例を取り上げてまいりまして、ひとつ労働省の卒直な意見を聞かしていただきたいと思います。  その一つは、いまの自殺事件の中にも見られますように組織介入、組合分断という問題が背景に大きく流れておったと思うわけでございますが、たとえば昭和三十九年の六月七日に竹島という常務がおられるわけですが、この常務の自宅に組合員を集めて、そうして第二組合を結成さした、こういう極端な事例がございます。しかもこの常務の自宅で第二組合を結成さして、そうして引き続きその常務の自宅に第二組合の仮本部を設定をした。私は、労使関係というものは対等でなければならぬ、ところがその労使対等の原則というものがじゅうりんされるという形でこのような組合分断が行なわれるということは、これはもう明らかに法に違反する点だろうということは、何人も否定することができないというふうに考えます。これは枚挙にいとまがないわけでございますけれども、労使対等の原則というものが法で規定されておるわけですが、そういう意味で、この常務という、銀行の最高幹部が自分の自宅に組合員を集めて第二組合を結成させる、そうして第二組合組合本部をこしらえる、これは明らかに法に違反する行為だということは、労働省といえども御否定になるわけにはまいらぬだろう、こういうふうに考えますが、この点いかがですか。
  150. 三治重信

    ○三治説明員 その点につきまして私のほうに報告を受けておりますのは、六月七日に約五十名の者が市内の某旅館で第二組合の結成式をやろうとした。ところがそれが第一組合のほうに知れて、その第一組合員の相当数がその旅館に押しかけてくるような状況になったので、それでその常務宅のほうへ会合を変えたということがあったというふうな報告になっております。そしてなおこの点につきましては、現在地労委に不当労働行為救済申し立て事件としてかかっておりまして、この二十八日に第三回の審問までいって証人喚問が行なわれ、具体的な審理に入っております。この不当労働行為の問題については、その地労委の処理を待って処置すべきだというふうに考えております。
  151. 河野正

    河野(正)委員 実はこれと同じようなケースがあったんですね。それは当委員会でも私が取り上げた問題ですけれども、全逓の組合活動の中で、特定局長が自分のところの局員を自宅に呼んで、そうしていろいろ労働協約について話し合いをした、これは少なくとも労使対等の原則をじゅうりんしておるということが、前労働大臣でございました大橋さんから、この席上で、その点に対する労働省の最高の所見というものを述べられておるわけです。そういう労使間の公の問題というものは、やはり当局側の自宅を使ったり、あるいはまた施設を使うということは好ましくないということが、すでに見解として述べられておるわけです。したがって、私も特にこの問題をそれと並行して取り上げてみたわけですが、それからいきますと、いずれ地労委でその点についての結論が出るでしょう。しかしながら、労働省としては、前労働大臣でございまする大橋武夫さんから、すでにそういう公的な問題を経営者側の建物なり施設なりを使用することによって行なわしめることは適当でないという見解が述べられておるわけですから、やはりこの際結論は地労委が出すとしても、労働省としてはそういうことは好ましくないという見解をやはり重ねてここで再確認してもらわんといかぬと思うのです。いかがです。
  152. 三治重信

    ○三治説明員 その点は大橋前大臣が当委員会において言明されたとわれわれ同趣旨でありまして、それについて別の見解をとるものではございません。当然使用者側は不当労働行為の疑いでも受けるような行為はとるべきでないという見解においては一致しております。
  153. 河野正

    河野(正)委員 これはあえて取り上げるまでもなく当然のことだと思うのです。ですけれども、たまたま同じようなケースであらわれてまいりましたから、あらためて再確認を願う意味でお尋ねを申し上げたわけでございます。  それから、やはり今度の自殺事件が起こった背景として、法務省のほうもお聞きとり願っておりますから、そういう意味で参考のためにお聞き願っておかなければならぬと思いますけれども、これも一つの例でございますが、この三十九年の六月の初旬に、この行員の家族、あるいはまた取り引き先に対して、この第一組合活動を批判をしたり、あるいはまたこの組合活動に介入するような依頼状を出したり、こういうような具体的な事例がございます。それから、もう時間もございませんから、さらには、同じく六月のことでございますけれども、年次有給休暇を取った組合員が組合活動を行なったと認められる場合には賃金カットをやるというような通達を人事部長名で出した具体的な事例がございます。年次有給休暇というものは、これはもう御承知のように、基準法の三十九条で規定をされておりまする労働者の権利でございまして、その権利の中で組合活動をやったならば賃金カットをするんだ、有給休暇を認めぬのだというふうな通達を出すということが、これはもう法に違反する行為であることは、当然のことでございますけれども、こういう事例もございます。それから、やっぱり同じ六月、春闘の争議中にこの指名ストで活動している執行委員に対して、もし正常な業務に就労しない限り即刻この支店の社屋から出て行け、こういうように、正常な組合活動を妨害をした。こういう事実もございます。こういうようにあげてまいりますと、枚挙にいとまがないわけですが、こういうような一つの不当労働行為というものが背景となり、それが結局は冒頭に取り上げてまいりました小林弘子さんのとうとい犠牲となってあらわれてまいったというふうに私ども理解するがゆえに、いろいろ労働省に対しましても人権擁護局長に対しましても所見をお尋ねを申し上げたのでございます。このように富山相互銀行におきまする小林弘子さんの自殺という問題は、単に自殺という簡単な問題でなくて、その背景の根というものが非常に深いということを、私がいま申し上げましたような幾つかの点でございますけれども、その幾つかの不当な銀行側の行為によってそういう感じを非常に強く持たざるを得ないわけでございます。そういうことで、私どもはこの富山相互銀行におきます小林弘子さんの死というものは、決して単純に判断すべき問題ではない、その背景というものがいかに根強いものであるかということを私どもはしみじみと知らしめられた一例でございますけれども、こういうような富山相互銀行の労使間のきびしい情勢があるということを十分に労働省も御理解をいただきたいし、また法務省のほうもそれらの点を十分御認識をいただいて、この問題の徹底的な究明に当たっていただきたいというふうに申し上げておきます。  それから、先ほど大臣にも御所見を承ったのでございますけれども、庁の御出席もいただいておりますから、私はこの際ひとつお尋ねを申し上げておきたいと思いますが、それは、組織介入という傾向というものが金融界あるいはまた証券界で非常に露骨になってあらわれてまいっておる。それが先ほどからしばしば申し上げまするように、会社側の組合に対しまする暴力行為になってあらわれてみたり、警察官の介入になってあらわれてみたりというようなことでございますが、その一例として、実は旭相互銀行の熊本で起こりました事件を一つ取り上げて論議の対象にいたしてまいりたいと考えます。  それは、旭相互銀行の熊本地区の組合役員に対しまして、かねて親しくしておりました顧客の人からいろいろ要請があった。その要請は、熊本県の県警の公安係がその組合の役員に対して、ひとつ組合の共産党的な情報を提供してほしい。もし提供するということになるならば月一万円の手当を出す。それから、もし提供をしてもらえぬということになるならば、会社のほうからおまえのかねての行動についていろいろ調査がなっておる。そこでこれを明らかにすれば結局おまえの首に通ずるぞ。結論的に申し上げますと、金か首かということでスパイを強要した。こういう事例が出てまいっております。先ほど大臣の際に申し上げましたが、今日まで相互銀行の労使間の問題について直接警察権の介入したのは長崎相互銀行の一例でございましたけれども、今度のやつはお客さんを通じて間接的にいろいろ工作したという特異な事例でございます。しかし私はどちらが悪質かと申しますと、むしろこの、覆面をして、そして銀行として一番痛いところでございますお客さんを通じて警察権が介入したということは、最も悪質な行動であろうというふうに考えますし、そういうようなことが、この旭相互銀行においても第一組合、第二組合という問題が起こってまいりまして、やはりそういうふうな組合分断と非常に密接な関係をもたらしておるというような事情等もございます。したがって、こういうような警察権の介入が適当でないということは当然のことでございますが、しかしそれにしても、そういう警察権の介入によって、正常な労働組合運動が抑圧される、あるいは圧迫されるということは、非常に重大な問題だというように考えております。これは当然労働省でも非常に重大にお考えになると思いますし、また警察庁は、これは非常に重大な問題を提起するわけですから、その責任はきわめて重大だというように指摘せざるを得ないと私は思うのです。こういうような事例に対して労働省はどのようにお考えになるか。一応は大臣から先ほど総括的な御意見を承ってまいりましたので了承いたしますけれども、重ねてひとつ労政局長からお伺いしたい。それからいまの事例をあげまして、警察庁としてはどのようにお考えでございますか、警察庁当局の意見もあわせてお伺いを申し上げたい、かように考えます。
  154. 三治重信

    ○三治説明員 この旭相互銀行の熊本支店の問題につきましては、調査が済むのが時日がなかったために、そういうふうなことがいわれているという簡単な報告だけしか入っておりません。組合側がそういっているという情報でございます。いずれにいたしましても、その問題は組合と使用者側との関係の問題ではない問題で、労働省としては、そういう組合内部の情報について外部の方が、あるいはそれが官憲であろうが、あるいはそれがほかの調査機関であろうが、そういう問題について組合を刺激するような、また組合員に非常に不安感を与えるようなやり方というものは慎んでもらいたい、好ましいことではないというふうに考えております。
  155. 金堀一男

    ○金掘説明員 熊本の旭相互銀行の件について具体的な事実を御指摘してのお尋ねでございますが、私どもまだそういった具体的な報告に接しておりません。ただ一般的に申し上げまして、われわれが調査活動で許されますのは、社会的に見て一応妥当であるというような方法でいろいろな情報をとったり調査活動をするということはあり得ますけれども、いま御指摘のようなことはちょっと考えられませんので、報告にも接しておりませんし、そういうことはないのじゃないか、かように存じております。
  156. 河野正

    河野(正)委員 実は私そういう事例を一つ具体的に知っておるのです。しかし、これは御本人が非常に反省をされて、そしてぜひ助けてくれというふうなお話がございましたから、実は不問に付しました一例がございます。たまたま今度の事例が出てまいりましたので、私もさもありなんということで、私はこの問題をあえて取り上げたわけです。そういう具体的な事例を知っておりますだけに、こういう事例がたび重なるということは好ましいことではございません。むしろ私はそういう意味では、今後そういう問題を起こさせぬという意味では、建設的な立場からこの問題を取り上げております。しかもこの事例については昨日実は通告をして、きょうお尋ねをしておるわけです。ですから、警察のほうでは警察電話もございますし、自由に調査することは可能だと思います。にもかかわりませず、いまのような答弁では私ども納得するわけにまいりません。私もこの一例だけを取り上げていろいろ申し上げようとは考えません。過去にそういう一例、具体的な事情を知っております。知っておりますがゆえに、むしろ再びこういうあやまちをおかさしてはならぬということで、実は建設的にこの問題を取り上げておるわけです。それにもかかわりまぜず、いまのような、結局全くつかみどころのないようなお答えでは承知するわけにまいりません。それも、実際通信網が十分ないとか、あるいはまた連絡が時間的にもむずかしいということだったら別ですけれども、これは昨日から通告をして、事前にそういう調査をしていただいて、ここで黒白を明らかにしようということで臨んでおるわけですから、そういう御答弁ではわれわれは納得するわけにまいりません。いかがでございますか。
  157. 金堀一男

    ○金掘説明員 実は、昨日そういうお話がございましたので、現地に一応問い合わせて調べてみましたが、該当事例の報告にまだ接しておりません。しかしなお重ねて調査はいたしてみたいと思います。
  158. 河野正

    河野(正)委員 これは人物が実在しておるわけですから、いずれにしても黒か白かということははっきりせざるを得ぬと思うのです。ですから、警察庁として、そのもとの事情というものがまだ十分明確でないということで、この段階では十分なお答えができぬということならそれでいいと思うのです。しかしながら、もしそういう事例があるとするならば、これはまことに遺憾だというふうにはお考えになるでしょうな。
  159. 金堀一男

    ○金掘説明員 私どもが情報をとったりします方法は、先ほども原則的に申し上げました、社会的に容認される範囲なりあるいは方法でやるということになっております。御指摘のようなことが相手を脅迫したりというようなことになりますれば、これははなはだ穏当を欠く方法ではないかと存じます。そういう方法はつとめて避けてまいりたい、かように思います。
  160. 河野正

    河野(正)委員 この問題と組合活動とに密接な関連があるから問題だ、私はこう言っております。あなた方が情報をおとりになるとかおとりにならぬとか、そういうことは問題にならぬです。要は、そういうことと組合活動と関連してくるから問題だ、こう言っている。警察の方ですから、いろいろ情報を収集なさることについては、それが職務でしょうから――これは好むと好まざるとにかかわらず職務でしょうから、職務の遂行というものはやむを得ぬと思うのです。しかしながら、そのことと組合活動と関連しておるから問題だ、私ばこう言っておるのですよ。ですから、そういうふうな任務を遂行されることと組合活動との関連がある場合には、これは当然遺憾だというふうにお考えにならなければならぬと思うのです。その点はいかがですか。
  161. 金堀一男

    ○金掘説明員 私どもは、正常な組合活動に対しましては警察は関与すべきでないという原則でまいっております。今後もそういった原則は堅持してまいりたい、かように存じております。
  162. 河野正

    河野(正)委員 基本的な方針というものを述べられたわけですけれども、そこで、そういう方針であるから、もし私が取り上げたような問題があったときにはどうするか、こう言っておるのです。
  163. 金堀一男

    ○金掘説明員 先ほど申しましたように調査をいたしてみたいと思います。
  164. 河野正

    河野(正)委員 調査されることはけっこうですが、もし私が指摘したような事実があるとするならばどうされますか、こう言っている。
  165. 金堀一男

    ○金掘説明員 調査方法なり情報収集の方法が妥当を欠く、あるいは組合活動に不当に影響を与えるようなことでありますれば、そういう方法は厳に避けてまいるように指導をしてまいりたい、かように思います。
  166. 河野正

    河野(正)委員 警察はしょっちゅう責任追及されるわけですけれども、いまの答弁では避けたいということでなくて、やった行為が悪いならば悪いだけの処置をしなければいかぬでしょう。その点はどうでしょう。ただ避けたいということだけでは、われわれは納得するわけにまいりません。
  167. 金堀一男

    ○金掘説明員 ただいま申しましたように、そういうことはないように今後努力を続けてまいりたい、かように存じております。
  168. 河野正

    河野(正)委員 ないように努力されることは当然のことですよ。しかし、現実にそういうことがあった場合にはどうされますかと、こう言っている。
  169. 金堀一男

    ○金掘説明員 もしも現実にそういう不当な行為が行なわれてくるという事実がはっきりしましたら、しかるべき措置はとります。
  170. 河野正

    河野(正)委員 ぜひひとつしかるべき処置をとっていただきたいと思います。  それと関連をしてでございますが、この大光相互銀行で支店長が行員に対して暴行を働いた、こういう事例、これも先ほど大臣には大体御所見を承ってまいりました。細部についてちょっとこの際、いまそういうような警察権の介入という問題が出てまいりましたから、ひとつお尋ねをしておきたいと思いますが、これはもうすでに告発をいたしまして、警察署のほうでも、三条署でございますが、捜査をされたというようなことでもございますけれども、その結果はどういうことになっておるのか、もし事情がわかればお聞かせいただきたいと思います。
  171. 金堀一男

    ○金掘説明員 御指摘の件につきまして、実はまだ調べの結果がどうなっておるか、詳しい内容その他につきましては調査が行き届いておりません。ただ告発が、九月の四日の日に被害者であります遠藤という方から出まして、これについて捜査を遂げて、九月の十四日すでに検察庁に送付済みである、こういう報告に接しております。
  172. 河野正

    河野(正)委員 その間の内容はまだ十分わかりませんか。
  173. 金堀一男

    ○金掘説明員 ただいま申し上げましたように、警察側の取り調べの内容につきましては、ただいま調査中でございますので、詳しいことはわかりませんが、ただ告訴側の言い分といたしましては、この支店長が、セールス研究会に本人が欠席したので、おこって、開拓日誌と申しますか、これでほほをなぐった、いわゆる暴行傷害ということで告訴が出ておるようでございます。これに基づいて一応調査を遂げて九月一四日に送付した、こういうことになっております。
  174. 河野正

    河野(正)委員 労働省もお聞き取り願ったと思いますけれども、いま御指摘申し上げましたように、この大光相互銀行でも第一組合、第二組合と分かれまして、そしていま行員に対して暴行を働いたといわれております三条の支店長でございますが、この人は、今日までもしばしば組合介入をやっており、そして不当労働行為というものが非常に多かった。そこで、すでに新潟地方労働委員会に対しても提訴をされた、いわくつきの人のようでございます。そこで、セールス研究会に出なかったから、書類をまるめてほほをなぐったというふうな具体的な事例でございますけれども、その背景にはやはり組合分断と申しますか、組合介入と申しますか、そういう背景というものは考えられると思います。いま申し上げますように、不当労働行為で提訴されるというような人物でございますから、そういうことが容易に想像される。  このように、あげてまいりますと、枚挙にいとまがないというような現状でございますが、いずれにいたしましても、この証券界あるいは金融界におきます金融情勢というものはきびしくなった。そこで、そのしわ寄せが労働組合に対して強い引き締めとなってあらわれてくる。こういうことが具体的には警察権の介入になってみたり、あるいはいまも申し上げましたような暴力事件になってみたり、あるいはまたその他のもろもろの不当労働行為という結果になってみたり、私どもはそういう現象が起こってまいりましたことをきわめて遺憾に感ずるわけでございます。しかも、さきには野村証券で、うら若い乙女がとうとい生命を断たれた。さらにはまた富山相互銀行で、これまた若い女子行員の方がとうとい生命を断たれた。こういうような人道的な問題にまで労使関係というものが発展したというところに、私は今日の非常に大きな悲劇があり、不幸があり、さらには金融界におきます労使関係の特色があるというふうに考えておるわけでございます。  そこで、こういうふうな次々に自殺者を出さなければならぬような深刻な現場の情勢でございますので、私はこの金融界におきます労使関係については、よほど強力な行政指導というものを行なわなければ、今日の労使関係を軌道に乗せることはなかなか困難でなかろうか。私は時間の制約上省いたのでございますが、旭相互銀行におきます川内事件といって、組合幹部に対していろいろなでっち上げをやる。金を使い込みもしないのに使い込んだというようなことを言ってみたり、あるいは暴力団を派遣してその組合幹部をおどかしたり、こういうふうな悪らつきわまりない謀略事件というものが旭相互銀行の中で行なわれておる。私はこういう不明朗な労使関係というものを一日も早く払拭するためには、いまのようなきわめてきびしい情勢、あるいはまた複雑怪奇な情勢でもございますので、行政指導というものがよほど強力に行なわれぬ限りは、こういう一切の問題を解決するということはなかなか困難であろうということを感じましたがゆえに、あえてきょうは一、二の例を取り上げてまいったわけでございます。  そこで、予告いたしてまいりましたように、実はまだ取り上げなければならぬ問題がたくさん残っております。きょうは時間の都合もありまして申し上げませんでしたけれども、大光相互、弘前相互、岐阜相互、それから昭和相互、振興相互、こういう諸金融機関についても、いずれ後日を期して、次々と具体的な問題を取り上げて論議をいたしてまいりたいと考えております。  そこで、再三申し上げますように、これはほんとうに強力な行政指導がない限りこの問題の解決がうまくいかぬというふうな感じを非常に強くいたしました。それから、それには人権上の問題もございますし、それから警察官の介入等もございますから、それぞれ警察庁でも人権擁護局でも、労使間の正常な運営、健全な運営というものがはかられる意味において、ひとつ徹底的に真相の究明に当たっていただきたい、こういうように考えますので、労働省と警察庁と法務省と、それぞれ最後に結論的に御意見を承って、本日の私の質疑を終わりたい、かように考えます。
  175. 三治重信

    ○三治説明員 不当労働行為の問題は、最終的には労働委員会あるいは裁判所で結論が出ることでございます。したがって、われわれのほうの行政機関としては、事前に、それが不当労働行為ということで行政指導を強くするというふうなことを差し控えているわけですが、実際の問題のどういう理由でそれが起こり、どういう状況になっているかということについては十分調査してその動きを見、そしてそういう暴力事件とか不穏当なことの起こらない先に労使双方に自重を求め、話し合いを進めていき、その具体的な問題についての、不当労働行為だからやめろとかいう問題を具体的に判決みたいに言って指導することはちょっと差し控えておりますが、事実が出れば、その事実を労使双方、または第三者によく聞いて、その具体的な動きをしっかりつかむとともに、その動きが過激にならぬように、暴力事件にならぬように、さらに、それがどうしても労使双方で解決できなければ、早く第三者機関へ持っていって平和裏に解決するというふうに行政指導を強力にやっていきたいと考えております。
  176. 鈴木信次郎

    ○鈴木説明員 不当労働行為につきましては、労働省労政局というりっぱな組織がありまして、あるいはまたその出先も完備しているのでありますから、一応はそちらのほうにおまかせすることにいたしまして、ただ、問題が人権あるいは個人の自由を極端に圧迫するということになりますと、これが人権擁護というプロパーの問題になってくる、こう考えますので、慎重に、しかも問題の重大性を頭に置きまして今後注視していきたい、かように考えております。
  177. 金堀一男

    ○金掘説明員 正常な組合活動が法の許す範囲内で行なわれております限りは、警察がこれに関与すべきものではございません。正常な組合活動の発展こそわれわれは願っているのでございます。ただ、たまたまそこに刑事事件が介入しますと、やむを得ずこれは警察権の発動もあろうかと思いますが、そういうことがないようにわれわれは念じているのであります。また、われわれの情報活動にいたしましても、先ほど申しましたように、正常な組合運動あるいは組合活動に誤解を与えるようなやり方はやるべきではない、かように存じておる次第でございます。      ――――◇―――――
  178. 田口長治郎

    田口委員長 この際、おはかりいたします。  理事熊谷義雄君及び中野四郎君より理事辞任申し出があります。これを許すに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  これより理事補欠選任を行ないたいと存じますが、その選任委員長において指名することに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  180. 田口長治郎

    田口委員長 御異議なしと認めます。よって小沢辰男君及び澁谷直藏君を理事指名いたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は来たる三十日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後三時三十四分散会