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1964-06-03 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第50号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年六月三日(水曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君    理事 小林  進君 理事 長谷川 保君       伊東 正義君    浦野 幸男君       大坪 保雄君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       松山千惠子君    粟山  秀君       亘  四郎君    伊藤よし子君       大原  亨君    滝井 義高君       八木 一男君    八木  昇君       山口シヅエ君    本島百合子君       吉川 兼光君  出席国務大臣         法 務 大 臣 賀屋 興宣君         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         総理府総務長官 野田 武夫君         大蔵事務官         (主計局次長) 中尾 博之君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (援護局長)  鈴村 信吾君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         文部事務官         (初等中等教育         局財務課長)  岩間英太郎君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  重度精神薄弱児扶養手当法案内閣提出第一一  二号)  厚生関係基本施策に関する件(原爆被爆者の  医療に関する問題等)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出重度精神薄弱児扶養手当法案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  3. 河野正

    河野(正)委員 重度精神薄弱児扶養手当法案につきまして、若干の質疑を行なってみたいと思います。だんだんとこの内容につきましては質疑が行なわれてまいりましたので、重複を避ける意味で若干の質疑を重ねたいと思います。  そこで、まず第一に私がお尋ねを申し上げておきたいと思いまする点は、なるほど本法が、重度精神薄弱児に対しまして手当を支給し、重度精薄者福祉の増進をはかる処置がとられてきているという内容につきましては、私どもも、いろいろその度合い等につきましては問題がございますけれども、原則的には一応賛意を表するものでございます。しかしながら、国民皆保険あるいはまた国民年金体制というものが、不十分でございますけれども、一応確立されたというかっこうになってまいりました。わが国社会保障の中で、いろいろ私どもがしさい検討してまいりますると、いま特別委員会でも八十七号批准というのが問題になっておるわけでございますけれども、こういうような児童福祉対策については、やはりILO百二号に規定されておりまする社会保障最低基準、こういうものが基本にならなければならぬのではなかろうか、こういうことを私ども考えるわけでございます。そこで、なるほど部分的にはいろいろ関連いたしまする諸法案が提案されまして、児童福祉のためには一歩前進したものと私ども考えますけれども、しかし基本的には、いま私が指摘をいたしましたILO百二号、この社会保障最低基準というものが基調にならなければならぬ。これを基調として、児童福祉についても検討を加えていかなければならぬ、こういうことを考えるわけでございます。そこでやはり今後の問題等もございますから、こういうILO百二号に規定をされておりまする社会保障最低基準、こういう基本的な理念というものも当然考えられていかなければならぬというふうに考えますので、そういう意味でそれらの点について、これは基本的な問題でございますから、大臣のほうから御所見をお伺いいたしておきたい、かように思います。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 ILO百二号条約一つの目標として社会保障の問題を考えるということは、当然そうすべきでありまして、政府もそのつもりでいろいろの施策をしておりますが、あの条約では、あそこへいろいろ掲げた項目のうらの三点を満たせば条約が批准できる、こういうことでありまして、予算委員会等でも申し上げたのでありますが、医療給付とかあるいは障害給付とかいうことは、大体あの条件を満たしておる。いまお願いしておる厚生年金法が成立をすれば——あれは年金標準報酬の百分の四十以上を出せばいい、そういうことでそれに該当するということで、政府としましては厚生年金法改正が通れば条約批准にこぎつけられる、こういうことを考えておりますが、そのほかにも約六つか七つの条件がありますが、その中で児童手当というものが、いままで全般的に手がけられておらない一番大きな問題である。こういうことで、この問題につきましては先般来いろいろな機会において答弁を申し上げておりまするが、これもわが国としては、いろいろの事情はあるが実現せしめたい、こういうことで検討を続けておるのでありまして、おそらくここ二、三年の後には実現の運びになる、こういうふうな予想をして、いまいろいろ児童福祉審議会にもかけておりまするし、また厚生省といたしましても、事業所等についての調査、また個人個人の世帯についての調査、こういう二方面から資料を集めておりますので、遠からず一応の結論が出てまいる、かように考えております。
  5. 河野正

    河野(正)委員 重度精神薄弱児扶養手当そのものについては、尺度の問題はありましても、基本的には私ども賛意を表するわけでありますけれども、しかしそれは、だんだん今日までも委員会の論議の中で検討されてまいりましたように問題点がございます。その問題点を解決するために、やはりこの社会保障最低基準を明記いたしましたILO百二号等基調として今後とも施策を続けるべきであろうというふうに私ども考えるがゆえに、いま申しましたような御所見を承ったわけでございます。  それともう一つ、その点に若干の関連がございますけれども、これも基本的な態度としてお尋ねしておきたいと思います。それは、児童憲章によりますると、「すべての児童は、心身ともに健やかにうまれ、育てられ、その生活を保障される。」、こういうように規定をされておるわけでございます。また児童福祉法におきましては、「国及び地方公共団体は、児童保護者とともに、児童心身ともに健やかに育成する責任を負う。」こういうように規定をされております。いずれにいたしましても、児童憲章児童福祉法におきましても、それぞれ児童心身ともにすこやかに育成せらるべきことが保障されておるわけでございます。このことは、これまで福祉施設あるいはまた生活保護、そういうような考え方というものがこのような問題を解決する中心的な考え方だったろう。しかしながら、この児童憲章あるいは児童福祉法等内容をしさい検討してまいりますと、もちろん施設を重視することも必要でございます。また生活保護基準を上げていくことも、これは憲法に保障されました規定等からも重要なことでございますけれども、しかしながら児童個々福祉に対しまして、国ないし地方公共団体というものがそれ相応の責任を持たなければならぬ、こういうような意義が、私は児童憲章あるいはまた児童福祉法には盛り込まれておるのではなかろうか、こういうことを考えるわけです。そういうように、児童個々福祉についてさらにそれぞれの憲章なり福祉というものがその精神というものを盛り込んでおるといたしますならば、やはり個々福祉というものについてさらに政府は重点を指向すべき責任があるのではなかろうか、こういうことを考えるわけでございます。この点も基本的な問題でございますから、この際あわせて御所見を承っておきたい、かように思います。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のとおりでありまして、終戦前までのいわゆる社会政策と申しますか、社会福祉と申しますか、こういうことは、大体において身体的にも精神的にも、あるいは経済的にもハンディキャップと申しますか、マイナスを背負った者をカバーしてあげる、こういうようなことがおもな仕事でありましたが、終戦後のいわゆる一般社会保障になれば健全な一般人も対象として仕事を進めなければならぬ。ことに児童問題につきましては、そういうふうなマイナスあるいはハンディを背負っている子供のことは当然なことであるが、一般社会子供対象にして福祉を進める、あるいは健全育成をする、こういうことになってきたのでありまして、そのためにあるいは児童健康管理、いま申しているような三歳児の一斉健診とかあるいは児童のための広場だとか、児童会館あるいは児童館、あるいはプールとか、いろいろな一般児童健全育成、こういうふうな問題に向かって新しく仕事を始めておるのでありまして、そういう意味におきましてこれから児童手当等もその一つの問題になりますし、あるいは児童健康管理というような問題も当然これからの課題としなければならない、お話しのような方向仕事を進めていくべきである、かように考えております。
  7. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣からもお答えをいただきましたように、やはりわれわれ、児童福祉考えてまいります場合には、児童憲章あるいはまた児童福祉法、こういうそれぞれの法に示されました内容が尊重されていかなければならぬ、そういう考え方基調として児童福祉対策というものが推進をされていかなければならぬと考えますがゆえに、一応基本的な方針を承ったわけでございます。  それからさらに、当委員会におきましてもろもろ社会保障政策が打ち出されてまいっておるわけでございまして、この点は、もちろん内容的に尺度の問題はございますけれども、いずれにいたしましても福祉国家を念じまするわが国といたしましては、非常に前向きな施策をすることを私どもも痛感いたしておるものでございます。そこで、そのような福祉国家を造成する意味において、総理府におきましても社会保障制度審議会設定をされて、その中でいろいろと諮問がなされ、また答申が行なわれて、もろもろ社会保障政策が立案をされていくわけでございます。その際、せっかくの機関でございますから、その機関で鋭意審議され、検討されました内容は、当然尊重されなければならないし、またそういう検討なり審議なりを尊重するがゆえに、社会保障制度審議会存在価値があるであろうと私ども考えるわけでございます。  そこで、いま議題となっております重度精神薄弱児扶養手当法案につきましても、社会保障制度審議会はその諮問に答えているわけであります。すなわち、精薄者対策全体の関係をどうとらえていくか、施設収容との比重をどう配慮していくか、このような基本的な考え方が不明確である、さらにまた、今度の法案によりますると、給付が千円でございますけれども、そういうような給付額そのものも少額に過ぎる、それから、先般来いろいろ問題になってまいりました支給条件等制約がございます。これらの点についてかなり強い疑問が、社会保障制度審議会において答申として出されてまいりましたことは、もう御案内のとおりだと思います。先ほど来指摘いたしまするように、やはりこの社会保障制度審議会は、社会福祉国家として十分な施策を推進する、そういう意味設定をされた審議会でございますし、その審議会答申というものを十分尊重するということが、とりもなおさず政府方針にも合致する点であろうかと考えます。そういう意味で、私は、やはり社会保障制度審議会諮問をし、答申を受けたならば、そのことが大いに尊重されてそれぞれ立法化されなければならぬ、実はこういうふうに痛感をいたすものでございます。  以上申し上げまするような内容的な疑問点が、実は社会保障制度審議会において指摘をされておる。社会保障制度審議会答申について、具体的に申し上げますような点が疑問点として取り上げられているわけでありますけれども、そういう点についてどういうふうにお考えになっておるか、この際ひとつお聞きをいたしておきたい、かように思います。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 社会保障制度審議会答申を尊重するのは当然でありますが、私どもは、この重度精薄問題につきまして、理想的にいえば、やはり収容ということが一番いいと思うわけです。ただこれは、事実問題としてなかなかできない。非常にたくさんの経費を要することでありまして、理想はそこにありまするが、当分、そこまで持っていくことはなかなか困難でございます。したがって、在宅の方は、やむを得ないで相当期間これからもまた継続される、こういう方はそのまま放置できない、こういうことでやはり手当、こういう制度も併用するということはやむを得ない。しかし、できるだけの収容施設をつくって、そして入ってもらおう、こういうふうな方向で進むべきであると私は考えます。しかし、それまでなかなかできませんからして、これもある程度やむを得ない。金額については、私どもも、いまの福祉年金に相当する千八百円を提案したのでございますが、これが実現を見なかった。この点も厚生当局としては非常に不満足でありまして、今後の拡大をぜひしなければならぬ、こういうふうに考えております。またこの問題について、わずかな金について所得制限等も私どもは不満足であります。これらもできるだけ緩和していきたい、こういう考え方を持っておりますが、とにかく毎々ここで申し上げましたように、出発におきましてはいろいろなこういう制約を受けたが、とにかく出発させたい、こういうことで、やむなく政府部内の話としてはこういうことでまとめたのであるが、厚生当局としては、これらについてはきわめて不満足であるので、これからこれの改善拡充をしたい、こういうふうに考えております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 せっかく政府社会福祉国家の建設ということで熱意を入れておられるわけでございますから、その一翼をになう社会保障制度審議会でもございますし、やはりこの答申については十分尊重せられます義務があろうかと私は考えます。なるほどいま大臣からも、いろいろ今回の法案内容については、厚生省の志と違って遺憾である、さらに今後とも努力をするということでございますし、国会内におきましても、いろいろ、それらの点について善処しようというような空気もございます。でございますから、その点はあえてここで重ねて追及する考えはございませんけれども、いずれにいたしましても、やはりこの社会保障制度審議会設定をされております以上は、その答申というものを大いに尊重していただく、こういう一つ基本的な考え方というものをぜひひとつ堅持してほしいと思います。この点は、単に重度精薄児童扶養手当に限りませず、すべての社会保障政策について、そういう態度を堅持してほしいということを強く要望いたしておきたいと思います。  いま指摘をいたしましたように、この審議会というものが、もろもろ制度を制定する意味におきまして大きな役割りを果たしてまいったことは、これはもう何人も否定することができない点だろうと考えております。そこで、やはり政府としては、社会福祉という面につきましては、審議会その他学識経験者あるいは第三者意見というものを十分ひとつ聞き入れて、そしてせっかく国民福祉のために寄与するわけですから、そういう意味ではひとつ誤りなきように取り計らってもらわなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございます。  そこで私は、その点と関連してここにお尋ねをしておきたいと思いまする点は、先般アメリカライシャワー大使刺傷を受けて、その事件をきっかけとして政府精神衛生法の緊急の一部改正を行なおう、こういうことが実は先般明らかにされてまいりました。たまたま日本の精神神経学者というものは、ほとんどアメリカロスアンゼルスに参っておりまして、そういう関係もあったと思いますけれどもロスアンゼルスAPA総会において、たまたま時を同じくしてこの問題が起こってまいりましたので、実はAPA総会でセンセーションを起こしたという経緯がございます。たまたま私も出席いたしておりましたが、このAPAにおきまする空気というものは非常に深刻なものがございました。もうここらにおきまする神経精神学会の権威というものは、百三十名全部アメリカに行っておる。そのすきにこの精神衛生法の一部改正が出てまいりましたので、学会どころの騒ぎではない、これが率直な現場の空気でございました。私どももそういう実情をまのあたり見てまいりまして、実は非常に大きな責任を感じたわけでございます。このいわゆる精神障害者が、社会不安の増大というものに対しまして重大な役割りを持つということは、私どもも否定するものではございません。また現在施行せられておりまする精神衛生法を中心とする医療体制、こういうものによって精神障害者対策というものが十分行なわれておる、こういうふうに私ども考えないわけでございまするけれども、しかしながら、さればといって、その改善というものが、いわゆる単なる思いつき的な考え方でこの問題が処理されようとすることにつきましては、私どもの大いに異論のあるところでございます。やはりそういう問題というものは、まず医療保障を充実する、それから早期発見、治療、退院後のアフターケアあるいは社会復帰、リハビリテーション、こういうような一貫した体制というものが考慮され、それと相まってそういうような諸制度というものがいろいろと検討されなければならぬ、こういうふうに私ども専門的立場からも強く考えておるものでございます。そういう意味で、私はやはり、きわめて専門的な事項でございますから、こういう問題については学界あるいは第三者意見というものが十分取り入れられて、それに立ってこの改善策というものが検討されなければならぬ、こういうように私どもは強く考えてまいっておるわけでございます。たまたまアメリカにおきましてそういう状況に接してまいりましたので、この際ひとつ政府の御所見お尋ねをいたしておきたい、かように思います。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 あの刺傷事件を契機として、世間精神障害者が野放しになっておる、こういうことで、野放しということばはきわめて一般の耳に入りやすいことばで、新聞その他で喧伝をされて、社会が相当な不安を持っておることは事実でありまして、私ども、やはり政治としては不安を解消するということは、どういう手段によるかは別として、必要であることはどなたもお認めのことと思うのであります。あの当時、河野委員も御存じのように、厚生省障害者について野放しであった、こういうような非難を相当に受けたのでありまして、これは厚生省ばかりでなく、精神衛生関係者も同様な関係にあるのでありまして、私はあの事件のあと、精神衛生審議会を招集をいたしましていろいろの相談をし、御意見もいただいて、あの際もとにかく厚生省としては精神病はなおるんだ、早期発見と、それから事後のアフターケアを十分することが必要だ、こういうことでありまして、これらについて保健所あるいは厚生省全体の対策に私は相当な欠陥があることを認めて、これらも予算問題あるいは行政問題として処置をしたいということですぐに相談を始めたのでありまして、それについても、とにかく保健所精神病実態をある程度把握することは私は必要である、ことに退院者等につきましては問題があるのでありまして、これらを追跡するということはどうかと思いますが、その状態を知って相談に応じる、そしていろいろの助言をする、こういうことも必要で、そういう意味において一般的に保健衛生立場からも、精神障害者実態をある程度保健所が知っておくことは私はいまでも必要なことだと思っておるのでありまして、そのことは、私は警察関係を抜きにしましても、当時審議会の方々ともお話し合いをいたしたのでございまして、そういうことはある程度必要であろう、こういうことでありましたが、たまたま警察からいろいろの要望が出てぶつかったために、あれがいかにもただ治安対策のためにだけやる、こういうふうな誤解を受けて、いろいろ世間から批判を受けたわけであります。しかし私どもは、あの際アメリカでそういうことをやっていることを実はよく存じなかったので、ああいう問題が起きてからアメリカからも電報をいただいたのでありまして、私どもはこれを役所の都合だけで独断でやろうという意思はありません。精神衛生審議会にも御相談申しておるし、したがって五月の十三日にお帰りになる、お帰りになったら十分相談もしたいということで、これらの決定も延ばしておったという事情でありまして、精神衛生関係者からも当時いろいろの陳情が私にありましたが、あなた方も責任を持ってもらいたい、とにかく精神障害者社会に不安を招いているということは事実であるから、その不安解消について政府も、また病院その他の医療関係者責任を持って、どうしたらこの不安を持たせないようにするかということについては、これはみんなで考えなければならぬ問題である、こういうように思っておりまして、私どもは単に通報だけのことを考えておるわけでございませんで、予算的に措置することは非常に多いのでありまして、ことにいま保健所等においては、精神病についての十分なこれを管理するだけの人もありませんし、知識も経験も持たない、こういうことで、国の精神衛生研究所、あるいは地方にも精神衛生センターを設けたいということで、ほんとうに精神病相談指導にあずかり得るような体制をつくりたい、こういうことで、私どもは来年度の予算においても相当なこれの準備をしておるのでありまして、これらにつきましても、やはり実は多少法律を変えて、そして予算的の事項も入れていくことが次の予算要求に非常に役に立つ、こういうふうな考え方からして、予算関係事項厚生省としてはあの法律の中に幾つか入れて考えておったのでございますが、しかし世間一般から——世間一般と申すよりか、精神衛生関係者からいろいろのお話もありまして、もともと精神衛生法はもうすでに時勢に合わない、これは全般的に改正したいということは厚生当局も言っておりますし、また精神衛生関係者もそういうお考えを持っておりますので、それならばこの際は皆さん意見を結集して、そして全般的に改正をしたいということで、あの直後衛生審議会に全般的な改正諮問を申し上げておるのでありまして、これらはあくまでも役所当局が独善的にやろうとする考えはありません。関係皆さんとも十分協議の上でもって、そして最大公約数的な法律改正をいたしたい、次の国会にはどうしてもこの提案をいたしたいということで現在進めております。この問題は、幸か不幸かは別の問題としまして、世間の関心を得て、予算的にも、あるいは行政的にも、あるいは法律的にもこれから前進し得る素地ができたということで、私は非常にいい機会であった、かように考えておるのでありまして、これらは私ども六月一ぱいくらいに結論を出してもらいたい、それで予算もすぐに要求をしなければならぬし、法律準備もしなければならぬ、こういう状態であるのであります。重ねてひとつ各位と十分意見を交換して、みんなの納得できるような対策法律的に、行政的に、また予算的に実現せしめたい、かように考えております。
  11. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣からだんだんお答えを聞いておりますと、非常に適切なお答えのようでございます。いずれにいたしましても、次の国会にはこの精神衛生法改正が提案される、その間の準備段階だというようなお話でございますので、あえてひとつ申し上げておきたいと思いますけれども、それは今度アメリカ精神衛生学会総会においても非常に問題となって、私どももいても立ってもおられぬというような状況でございましたけれども、それは大体二つの問題点があったろうと思います。  一つは、いま大臣からちょっとお触れになったようでございますが、なるほど発端がライシャワー事件、このことに刺激されたといいながらも、精神衛生法治安対策的に取り上げられた、このことがやはり非常に大きな関心を持った点であったろうと思います。そして、医療体制の中に警察権を介入せしめるということになりますと、精神障害者に対しまする人権侵害等々の問題が起こってくる危険性というものが非常に多くなってくる。それからいま一つは、一々治安当局に患者が報告される、こういうことになりますと、やはり患者を持ちまする家庭では、いろいろ及ぼす影響が多いと思います。これは極端に申し上げますと、兄弟の縁談にも差しつかえましょうし、いろいろ及ぼす影響が起ころうと考えます。そういうことで、警察権を介入するということは、かえって人権侵害等のおそれもあると同時に、いま申し上げますような家庭に及ぼします影響が大きいがために、かえって患者を潜伏せしめる、そのことがかえって野放しを助長する、こういう結果になるだろう、こういう点が問題となりました一点でございます。  それからもう一点は、たまたま政府が発表されました時期が、いま大臣審議会その他の意見を聞くというお話でございましたけれども、そういうメンバーが全部アメリカに行っておる、そういうさなかに方針が示された。これは少し極端になりますけれども、全くあき巣ねらい的な政府の行為ではないか、こういうような激しい論議が行なわれてまいりました。一つはそういう内容的な問題、もう一つは国内におきまする精神神経学会の権威者あるいは審議会のメンバーが、全部アメリカに行っている留守中にそういう方針が表明された、そういう時期的タイミングの問題、こういう問題が学会に対しまして非常に不信の感を抱かせた。これらの点がセンセーションを起こしました一番大きな理由だったと思います。もちろん私は、このことをきょう取り上げてまいることが本義ではございませんけれども児童福祉の増進をはかっていくということは、そういう児童の人格を尊重していくということでございますので、そういう点は、本質的にはこの精神障害者の場合にも同一であろうと考えます。特に今度アメリカに参りましていろいろな施設を見てまいりました。患者の人格を尊重するという意味におきまして、私は非常に学ぶ点があったと思います。そういう点、今後も医療行政につきましては大いに尊重されなければならぬ点ではなかろうか、こういうことを考えてまいったところでございます。  そこで、そのことに関連してもう一点お尋ねをしておきたいと思いまするけれども、それは医療行政の中に警察権が介入するということについては、いま大臣からそれぞれお答えがございました。しからば今後、そういう障害者保健所が掌握していく、ところが、それならばそういう保健所にいまそういう能力があるのか、そういう体制が確立されておるのかということを考えてまいりますると、私どもは全く寒心にたえないというのが率直な意見でございます。そこで次の国会精神衛生法改正されるということだとするならば、そういう体制がはたして確立されているのか、そういうことが前提としての改正でなければ、大臣がおっしゃったような所期の目的を達成することは不可能だろう、こういうことを考えるわけです。しからば、この警察権を介入することについては大いに考慮したい、しかし、健保所がそういう実態を把握するだけの能力があるのか、こういう点はいかがでございましょうか。これは次の国会精神衛生法改正をされるというお話でございますので、この際私どももその御所見を明確にひとつお聞きをしておきたい、かように思います。
  12. 小林武治

    小林国務大臣 いまの警察権の問題を精神衛生法関係等に入れる考えは毛頭ございません。あくまでも、衛生法というのは衛生管理、それを目的としている法律でありますから言うまでもありません。またあの時期にたまたま関係者がアメリカへ行っておられた。これは私どもに届け出たわけではございませんので私存じませんが、たまたまそういうことをあとで知りまして、お留守の間にわれわれだけで進めるのはいけない、それならいつお帰りになるか、五月の十三日だ、こういうこともお聞きいたしましたので、それを待っていろいろお話したい、こういうことにいたしておりましたので、たまたまそういうことを知らないで、ある時期にぶつかったということを御了承願っておきたい。私どもは、あき巣などねらわず堂々とやります。だからそういう意図の毛頭なかったことは、ひとつ御了解願っておきたいのでございます。  なお、私どもは、この問題については法律問題よりか予算問題を重視しておるのでございまして、いまのような精神衛生法改定も、その裏づけをなす体制ができなければ問題になりません。したがって、いまからいろいろそういうくふうはさしておりますが、現在のところ、お話のようにそれに対応するだけの体系が整っておりません。この点も私は、政府としてはやはり正直言えば怠慢であった、こう言わざるを得ないのでありまして、こういうことをひとつ整備することによって法律の裏づけをする。法律だけではこれはどうにもなりません。あらゆる予算的な裏づけを今度の機会に願いたい。したがって人的等につきましても、いま、急になかなかそろわないから、いまからでもできるだけそういう用意をするようにということを、関係者に指示をいたしております。
  13. 河野正

    河野(正)委員 財政上の点について重点を置きながら検討していきたい、その点については私ども異論はございません。ただ現状のような形で精神衛生法改正をされる、そして医療行政といいますか、厚生行政という中で、そういう問題が解決できるような実情にあるのかということになりますと、先ほど御指摘申し上げましたように、私どもは寒心にたえないというのが率直な意見でございます。たとえば一般の疾病と違って、精薄の場合にも問題になると思うのですけれども精神障害者という問題は、非常に専門的にわたっております。そこで、たとえば一試案でございますが、保健所機構というものを充実さしていく、そして今後そういう精神障害者実態というものを把握していきたいというようなお考えであっても、はたして現状のような施策の中で、そういう面に対します保健所機構の充実というものができるのか、こういう点については、私どもは非常に大きな疑問を持たざるを得ないのです。と申しますのは、やはり専門事項ですから、そういう実態を把握し、また十分承知するということになりますと、専門家というものがやはり保健所機構の中に入らなければならぬ。ところが、いまいろいろな医者の仲間で専門医がおりますけれども精神科の専門医というものは非常に少ない。ですから、医者の中でも公務員は別ですけれども一般民間では、精神病の専門医というものが一番給与が高い。これは需要供給の関係でいたし方がないと思うのですけれども、一番高い。そういう実情でございますから、今後保健所機構というものを充実して、そして精神障害者対策というものをだんだんと考えていきたいということにあたって、まず人を得ることができない。ですから、いま大臣がお答えになったように、予算面ということでございますけれども、そういう専門家を保健所機構その他に入れていくためには、その処遇についてよほどの大幅の御検討を願わないと、なかなかこの問題を解決することは不可能ではなかろうかと考えるわけです。  そういう意味で、私は大体二つの解決点があろうと思います。これは将来の参考のためにひとつお聞き願いたいと思いますけれども一つは、そういう専門家に対しましては、格別のひとつ優遇措置を講じてもらうということ、もう一つは、いまの精神衛生法の中にも示されておるわけでございますけれども精神衛生鑑定医、こういう鑑定医の地位というものをもう少しきちっと整備していただく、これがやはりこういう問題を解決する近道ではなかろうかと考えております。でございますから、今後そういう問題を解決するについては、なるほどいま大臣の御指摘になったように、予算の面もございますけれども、それのみならず、やはり旧来の考え方というものを抜本的に考え直す、こういう考え方というものが前提にならないと、単に予算を取って施設の充実をはかるということだけで解決できぬ面が多かろうと思うのです。そういう点についても、この際大臣の強い心がまえをお聞かせ願わぬと安心できぬので、ひとつ率直な御意見をお聞かせいただきたい。
  14. 小林武治

    小林国務大臣 これはもうお話のとおりでありまして、予算で解決つかぬ問題、一番の問題は人の養成の問題、これらの医者と保健婦ですね、医者の再教育と申しますか講習とか、こういうことも間に合わせ的に考えなければならぬと思いますし、またこういうものを充実するためには、公衆衛生と同じような、たとえば奨学とか貸与とか、こういうようなことも考えなければなりませんし、また現在でも精神病関係者は、もう民間にも全国で三千人足らずしかおられない、こういう状態にありますから、だんだん、結核のほうの関係もありまして、国立病院等も精神障害に転換せしめつつある。こういうことで、この方面に対する需要と申しては悪いですが、必要が非常に増してくるのでありますから、大学等におきましてもそういうことにひとつ十分に御協力を願わなければならぬ、また精神病関係者も、社会不安というようなことについては、全体的の責任としていろいろ御協力願わなければならぬ、こういうふうに思っております。なかなか急には間に合いませんが、その人を得ることが大事であって、その方途を十分に考えなければならぬということは申し上げるまでもないことであります。
  15. 河野正

    河野(正)委員 具体的にいろいろ私見を持っているわけですけれども、それは本旨ではございませんから、いずれ別の機会に申し上げてみたいと思います。  いま問題となっております重度精薄対策、これにはいろいろな取り上げ方があると思いますけれども、私は大体二つの問題点があろうかと考えます。一つは、現在行なわれております精薄対策というものは、児童福祉法に基づいて収容保護、通園指導、居宅指導、こういう助成が行なわれたり、あるいはまた里親制度等が活用されておるという現況でございます。しかしながら、重度の場合はこういった施策から漏れておる点が多いわけでございます。すなわち収容施設のごときも、今日までしばしばこの委員会でも意見が出てまいりましたように、国立は秩父学園、これが定員百二十五名、私立では島田療育園、これは定員二百名、びわこ学園、定員五十名、こういうりょうりょうたる状況でございます。このように、大臣も、施設施設というふうなおことばもございましたけれども、この重度精薄につきましては施設が非常に少ない。それからいま一点は、これまでこの委員会でたびたび問題になってまいりましたが、重度精薄対策に従事する専門職員確保というものがなかなか困難である。これらの点が、結果的にはこういう福祉対策を非常にお粗末にする、こういう結果になっておるというふうに考えるわけでございます。そこで、そういう施設の問題あるいはまた専門職員の問題、こういう問題について、やはり具体的に今後どうするのだという計画が立案されて、そうしてそういう計画の中で消化されぬと、なかなかこの問題は手当だけで解決する問題ではございませんので、せっかくの政府方針というものが、十分目的を達成することができないまま終わるのではないか、こういうことを私は感ずるわけです。ですから、そういう施設あるいは専門職員、それぞれの拡充なり確保について、どのような具体的な計画によってこの問題を処理されようとしておるのか、そういう点について、ひとつ具体的な御計画等がございましたらお聞かせをいただきたい。
  16. 黒木利克

    ○黒木政府委員 重度の精薄児の収容保護の問題につきましては、先ほど御指摘がございましたように、国立が一カ所、私立が二カ所現在ございますが、ブロック別に一カ所ずつは設置してまいりたいというような計画でございます。しかし従来の実績を見ますと、この施設の普及性と申しますか、各地にこういうものができる可能性というものがだんだん困難になってまいったのであります。それは職員の確保の問題とからみまして、重症児だけの単独施設では職員が長続きしない、あるいは職員の確保に非常な問題があるということで、これは各ブロック別に一カ所という程度でとどめよう、そのかわり既存の施設を活用するということを考えまして、実は従来の肢体不自由児施設に重度の病棟というものを一昨年から始めておるのでありますが、本年度も十カ所、昨年十カ所、二十カ所が既存の肢体不自由児施設に重度の病棟として設置をしてまいるという計画であります。これは全国的に普及してまいりたい。それから精薄の子供につきましては、既存の精薄児施設に重度の特別病棟というものをつくりたい。これは三十八年度五カ所、本年度は六カ所すでに設備が決定いたしまして、いま建設中でございますが、これも既存の精薄児施設にはできるだけ各県ごとに置いてまいりたい。これは総合施設で、職員の交代勤務等の便もございまして、この二年の経験ではかなり普及性があるというような判断をしておるのでございます。  それから設備費の予算措置といたしましては、本年度から、社会局、児童局の設備費を統合いたしまして、総計二十五億円でございますが、この二十五億円は、こういう精薄児施設あるいは重症の精薄、肢体不自由の施設を優先的に扱いたい。したがいまして、県なり私の団体が設立の申請をした場合には最優先的に取り扱う、大体の希望が満たせるというような仕組みを実は本年度からとったのでございますが、実はまだ予期したような申請がないのでありますが、これは宗教団体等に働きかけまして、明年度以降はかなりな進展を見るのではないかと考えております。  それから職員の確保につきましては、昨年国立秩父学園に初めて養成所というものを設置することがめ認られまして、本年度からすでに養成訓練を始めておるのでありますが、ここをフルに活用してまいる。それから従来肢体不自由児施設の、国が委託しております整肢療護園というのがございますが、ここでも訓練所が一昨年からございまして、ここは定員百六十名でございますが、訓練をいたしております。なお、いわゆるOT、PTの養成所を新しく医務局で設立いたしまして、本年度から養成訓練に取りかかっておるのでございます。そういうことで一応の養成の体系ができたのでありますが、これを今後の施設整備、施設拡充と見合わしまして、整備充実してまいりたいと考えております。
  17. 河野正

    河野(正)委員 なるほど施設充実については、いまお答え願ったように具体的に着々と進められている、そういう点については私どもも敬意を表するのでございますけれども、しかしながらこの施設をつくりましても、後段の専門職員の充実というものが非常に困難だ、こういうことになりますと、せっかく施設ができたけれども、専門職員がおらないということで、これまた能率をあげることができない、こういう結果になることを考えます。そこでやはり施設の充実と並行して、専門職員の養成というものが行なわれなければならぬ。ところが、いま局長からもお答えになりましたように、秩父学園におきます指導職員の養成所においても、この応募者が定員を満たすことができないというような実情でございます。それからいろいろ職員の業務内容実態等につきましては、さきの委員会においてわが党の伊藤よし子委員から切々と訴えられた実情等もございました。ところが国の施設でございますけれども、秩父学園においても非常に待遇が悪い。人並み以上の重労働に対して保母の平均給与というものが一万二千円、これに仕事の割り増しとして八%が加算される。しかしながら宿直、深夜勤の手当は全く認められておらぬ。こういうことになりますと、第一養成機関に志望者がない。養成されても、いま申し上げますように国そのものが基準法違反を犯して、そして手当を支給せぬというようなことになりますと、もともと志望者が少ない上に、今度はなった人が職場に出ないでやめてしまう。こういうことでは、幾ら施設をつくっても仏つくって魂入れずで、また所期の目発を達成することができぬのではなかろうか、こういうことを私ども指摘せざるを得ないと思います。そういう状況ですから、その他の一般施設の職員の待遇というものは推して知るべしです。これでは何ぼ政府児童福祉児童福祉とおっしゃっても、実際の実効というものはあがらぬと思うのです。ですから、この点については、やはり国が思い切った待遇その他の改善というものをお考えにならなければ、所期の目的を達成することはとうてい困難である。これはさきの委員会で伊藤委員からも切々と訴えられたとおりであります。それらの点について今後どういうようにお考えになりまするか、率直にお聞かせいただきたいと思います。
  18. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに、先生のおっしゃるように若年労働力がだんだん足りなくなるのでありますから、社会福祉施設の職員の確保は重大な段階にきておるのであります。厚生省としましても、昭和三十五年以来、保母等の給与については約二倍のベースアップになっておるわけでありますが、これでもなお足りないことは遺憾ながら事実でございます。したがいまして今後給与の改善につきましては、明年度できるだけの努力をいたしたいと思います。なお、こういう精薄児施設等につきましては、公立の場合は調整号俸という方法があるのでございますが、私立の場合にはそれがございませんために、何割増しかの特殊手当というものを考慮して、予算要求をしてまいりたいと考えております。  それから労働条件のもう一つは、職員の数が足りない、定員の問題でございますが、これはたまたま中央福祉審議会答申を二カ年計画で充足をするということで、その初年度が三十九年度でございまして、四十年度も二年度として職員の増員等もやってまいりたい。そこで、昨年ただいまお話の出ました夜勤手当、超勤手当、宿直の増員等の問題は一応の改善を見たのでありますが、明年度さらに改善に努力してまいりたいと思います。
  19. 河野正

    河野(正)委員 仕事内容が、私どもの想像以上の内容を持っておりますし、よほどの篤志家でないと、なかなかしんぼうされる人が少なかろうということが一つ。もう一つは、いま言ったように実際にその道に精進いたしましても、やはり人間ですから、処遇というものが問題になると思います。そこで、せっかくの政府方針でございますので、その方針を完遂していくためには、ぜひいまの問題点については格段の御配慮を願いたい、これは私ども特に希望をいたしておきたいと思います。  それと並行してでございますけれども、これもさきの委員会の中でも局長からお答えになったようですが、やはりこの際抜本的な対策お尋ねをいたしておきたいと思います。それは整肢療護園においても、身体不自由児の施設でございますけれども、この施設においても、四十一人おる看護婦さんのうち十人が一ぺんにやめてしまう大量退職という問題が出てまいっております。これもやはり待遇が非常に低いということが原因だと思うわけです。このように一般の病院よりも非常に手の要る、なみなみならぬ努力が要る、そういう仕事に従事する職員については格段の手当をやってもらわなければならぬということは当然ですけれども、もともと、そういう専門職員あるいは看護婦というものが非常に少ない現状でございます。ですから、福祉対策あるいはまた大きくは医療行政を推進するという意味においても、やはりこの際専門職や看護婦、そういう職員を養成する抜本的な対策を立てるべきではないか、このように私ども考えるわけです。そうせぬと、親心でやられた政府方針が人を得ないということで、その使命を十分達成することができぬということになれば、私は非常に残念なことだと思うのです。そういう意味で、看護婦あるいはまた専門職員の養成を今後抜本的に解決してもらわなければならぬわけでございますけれども、その点について大臣どのようにお考えになっておりますか、この際御所信がございますならばお聞かせをいただきたい。
  20. 小林武治

    小林国務大臣 これはもう非常におくれてしまったと申しますか、そういうふうな必要は当然考えられるのでありますが、しかしこれからの問題としてやっていかなければならぬ、われわれはどうしても実現せしめなければならぬ、かように考えております。
  21. 河野正

    河野(正)委員 そこで、私は整肢療護園の看護婦さんの大量退職という問題も提示いたしましたので、この際重ねてお伺いをしておきたいと思います点は、そういうもろもろの使命を達成するという一つ考え方として、この看護婦養成等については当然国が責任を持たなければならぬということでございますけれども、民間、特に病院協会あるいはまた医師会等で養成する、そういう場合に大幅に国が助成をする、本来は国が当然やらなければならない問題ですけれども、それができないということだとするならば、地方で国の代行機関的な性格で看護婦の養成をはかるとか、こういう点についてはやはり国が大幅に助成をするということでなければならぬと私は考えるわけです。またそういうことになりますと、実際地方でも看護婦が足りない、何とかひとつ養成したい、こういう機運もあるのですから、国が大幅に助成するという方向が出てまいりますと、逐次そういう面の解決もはかっていかれるのじゃなかろうか、こういうことを考えるわけですけれども、この点、ひとつ大臣の率直な御意見をお聞かせいただきたい。
  22. 小林武治

    小林国務大臣 看護婦の問題につきましては、この国会でもいろいろ御論議があったのでございまして、改善したいと思うことがいろいろありますが、実はいま私設の病院等で養成しておりますが、それに対していま運営に要する経費の補助さえ行なわれていない状態でありまして、運営費等が病院の収入の中から払われておるということはあまり適当でない、こういうことで、これらの問題につきましても、次の予算では何かの手段を講じなければならぬ、こういうふうに思っておりますが、看護婦全体を国の責任で養成すべきかどうか、こういうふうなことにつきましては、まだ多少問題もありますので、これからの検討をしなければならぬ。ことにいまの学園等でなくて正規の学校をあちこちつくったらどうか、こういうふうな問題も出てきておりまして、神奈川県などは学校ができておるということで、今後は学校形態のほうにも相当進むべき道があるのではないか、こういうふうに思っております。医師の学校等も、いろいろ私立の学校等もあるわけでありまして、これが看護婦そのものが、全部国の責任でどうこうするという、そういうふうな方向にまだはっきり考えがまとまつておらない、こういうことでありまして、今日のように不足が激化してくれば、やはり国の手を伸べなければならぬことが相当多いと存じますが、お話のように全面的にどうこうということは、これからひとつ相談をしてみなければならぬのではないか、かように考えております。しかし、いま現に一般的に看護婦の養成についての運営費等について、国が全然補助をしておらぬというふうなことは、ある程度改善をしなければならないのじゃないか、かよに考えております。
  23. 河野正

    河野(正)委員 これはせっかく政府児童福祉のためにいろいろ施策を打ち出しておられるわけですから、そういう親心というものが完全に実行されるというためにも、いま人の問題というものは非常に大きな役割りを果たしてまいると思うのです。そういう意味でお伺いをしたわけでありますので、ひとつ格段の御努力をお願いしたい、こういうことにいたしておきたいと思います。  それから、もう一つお尋ねして善処を願いたいと思います点は、精薄の子供たち、これはいま言われるように非常に能力が欠けて、収容所に入れておかなければならぬ重度の者もありましょうし、ある程度訓練によると仕事ができるし、生産に寄与できる。これは精薄もそうでございますけれども精神障害者の場合にもそういうことが言えると思うのです。かねがね、長い間、私はワークコロニーということを提唱しておる一人でありますけれども、ややともいたしますと、いままでの施策はとにかく収容してしまう。収容すれば事足れり、こういう方針に終始してきたきらいがあります。しかし私は、ある程度訓練して仕事ができる、これは一人前にはできぬのでありますが、ある程度でき、そうすれば何%かは生産に寄与できるということでございますから、できるならばやはりそういう方策というものがとられなければならぬ。そういう点で、一例でございますけれども、知恵のおくれた子供たちを持つ父兄を中心に結成されております東京都内の大田区の精神薄弱者育成会、この会で精薄児を対象にして職業訓練授産所の建設計画を進めておる。ところが、金がないものですから行き詰まっておる。いろいろ父兄の方方がバザーをやったり、慈善公演をやったり、あるいは手分けをして鉛筆を売り歩いたり、そういうことで百四十六万円の資金をつくられた。ところが、二千万円ほどないとこの授産所が完成しない。そういうことだと、その目的を達成するまでには、いまのペースでは十数年かかる。結果的には、これではいつできるかわからぬじゃないかというような声も起こっておる、こういうことが新聞に報道されておる。こういう自発的、自主的な計画はやはり国がある程度御協力していただく、そうしますと、私が先ほど指摘いたしましたように、完全に生産に寄与できるということではございませんけれども、ある程度訓練をし、ある程度指導をするならば、独立とまではいかなくても若干の仕事ができ、能率をあげ、生産に寄与できる、こういうことになりますから、やはり国家的な見地からも、これは得策ではなかろうかというようなことを私は考えるわけでございます。そこで、そういう知恵おくれの子供たちの職業訓練は、もちろん先ほど局長からもお話がございましたオキュペーショナルセラピスト等が今後いろいろ活動願うと思いますけれども、具体的にそういう運動というものが地方で起こっておるわけでございますので、そういう運動についてもぜひ政府の御協力があることが望ましい、こういうふうに考えるわけでありますが、この点についていかがなものでありましよう。
  24. 小林武治

    小林国務大臣 これは政府としても大事なことでありますので、そういうお申し出があれば、永続性とか規模とかいろいろな条件考えて、お年玉はがきの利益金をお世話するとか、あるいは自転車振興会の経費をあっせんするとか、そういうふうないろいろなことをやっておりますので、具体的に御相談があれば当局としてはその相談に乗ってお手伝いをしたい、こういう気がまえでおります。
  25. 河野正

    河野(正)委員 せっかくそういう地方におきまする積極的な運動もあることでございますので、そういう運動についてはぜひ政府の御協力をお願いしていきたい、かように考えます。  いまの点と若干の関連を持ちますが、なるほど重度精薄の児童が、二十歳まで、今度の法律が成立いたしますと手当をもらえるということでございますが、二十をこしますと手当ももらえぬ、さらにまた施設収容されておる子供たちも施設を出なければならぬ、こういう実情が出てまいります。これは先般もNHKのテレビで報道いたしておったようでありますけれども、非常に困った問題であります。そういうような点が、いま非常に大きな問題となって提起をされておるようでございます。そこでひとつ、それらの点について具体的な方策がありやなしや。これはもうNHKのテレビでも三十分時間をかけて、非常に強く指摘をいたしておったようでございます。そのときは、たしか社会局長も出てこられたような気がするのでありますけれども、これらについて具体的な方策がございましたら、ひとつお聞かせ願いたい。
  26. 黒木利克

    ○黒木政府委員 河野先生の御持論のワークコロニーの問題は、一応庇護授産所というような形で実現をしたいというので、昨年も予算要求をしたのでありますが、特に現在の盲点は、義務教育、中学を終えまして満二十までは、何らの職業あるいは授産的な施設がないのでございます。ところが、たまたま労働省のほうでも同じような構想で要求いたしまして、結局競合いたしまして、そのために一年お預けになったのでございますが、来年はもう一度これを要求してみたい、事前に労働省と折衝を終わりたいと思っております。しかし、こういうような新しい予算が取れなくとも、現在の精薄児施設が、先生のおっしゃるような職業の訓練とか授産というようなことを加味せざるを得なくなりまして、現に、たとえば多治見の精薄施設あるいは信楽の精薄施設はその典型的なものでございますが、そういうような既存の精薄施設が職業授産施設になりつつあるところもあるのであります。たとえば大田区の育成会の場合でも、精薄児施設の一種として国から補助の対象にすることも可能でございます。ただ、現行法では、新しく設備をつくる場合には国の補助が出ないで、すでに何らかある施設に対して増設をする場合に、国から補助が出るというようなことになっておりますから、先ほど大臣が申されましたような競輪あるいはお年玉はがきとか、そういう民間の助成によりまして、まず小ぢんまりしたものをつくってもらって、その上で増設をする、それに対して国が補助をするというようなことを今後やってまいりたいと思っております。  それから二十を過ぎた場合、これは社会局の所管でございます。児童局は満十九歳まで。それから、二十になりますと施設をかわらなくてはならないというような問題がありますが、これについては社会局長からお答えがあると思います。
  27. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 精薄者の収容施設というものは、精薄児と同様に現在その需要を満たしていない状況でございまして、特に私どもは、これから重度の精薄者の収容施設を早急に整備する必要があるのではないかと思います。三十五年の精薄者法ができました当時に比べますと、その当時全国で三、四カ所しかなかった収容施設が、現在は公私立を合わせまして四十カ所にはなっております。しかし、それでもなお御指摘のように不足がございますので、三十九年度におきましては一般収容施設を七カ所新設いたします。それから現在まで生活保護法に基づく救護施設として収容しておりました施設を、こういう精薄者の施設——これはほとんど実態的に精薄者が収容されておりますので、そういうものを福祉法に基づく収容施設に切りかえる。これは大体十三カ所ばかりを予定いたしております。それから収容授産施設として、これは大体社会に復帰できないような重度の者がその対象になっておりますが、そういう者の収容授産施設を二カ所、本年度の予算措置として現在府県の希望を募っておる状況でございますが、四十年度以降におきましても、そういう点にもっと力を入れまして収容施設の整備をはかっていきたい。そうして十九歳で収容をチェックされるようなことがなく、スムーズに収容の切りかえができるような方策を現在の制度としては考えておりますが、なお、それとあわせまして、精薄者全体としてもっと一般的に施策を行なう必要もあるのではないかと思いまして、精薄者と精薄児の総合的な行政をするにはどうすればいいかということを、現在児童局と私のほうで検討しておるような状況でございます。
  28. 河野正

    河野(正)委員 せっかく局長がおられますので、二点お伺いしたいと思います。  一つは、私も不勉強でしたけれども、先般のテレビでは、二十歳になると収容施設を出なければならぬ、行く先がないのだ、こういう報道でございました。それが間違いであるかどうか。いまの局長の話では収容できるということでありますが、その点が一つ。  それからいま一つは、二十までは重度精薄扶養手当が出るのですね。二十をこすと出ない。ところが実際には、その家族に及ぼす影響というのは同じことですね。むしろ私どもから見ますと、二十をこしたほうが、いろいろいたずらをしたり何かしてたちが悪いのですよ。そういうことで下等感情なんか発達してまいりますので、むしろ介護という点になりますと、二十から先のほうがやっかいではなかろうかと思うのです。そういう点についてはどういう形で解決されようとするのか。二十までは、問題はございますけれども、一応千円の手当が出る。二十を過ぎれば一体どうなるのか。これは社会局の所管ですから、社会局ではどういうふうにお考えになっているのか。いまの二点をお聞かせいただきたい。
  29. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 第一の点は、先ほど申し上げましたように、個々のケースとしてはNHKのテレビのようなケースもあろうかと思いますが、しかし先ほど申し上げましたように、精薄者のほうの施設も相当最近整備を急いでおる状況でございますので、そういう点はこれからなるべくないように私ども努力したいと思います。現在も制度としてはそういうふうになっております。  もう一つの、今度の手当法におきましても重度精薄児の手当でございまして、これは年齢によって切れるわけでございます。現在は、二十以上の重度の精薄者全体に対しての手当は、今度の法律が初めてでございまして、ちょっとないわけでございますが、たとえば生活保護の運営におきましては、そういう重度精薄者の中では、いわば身体障害者とみなされる者もおるわけでございます。これはイコールでございませんが、実態的には非常に身体障害者として取り扱うべき重度の者もおりますので、そういう者に対しましては、身体障害者加算として現在は措置しておる者もございます。しかし手当としては、これからの問題として考えていかなければならないと思います。現在は、こういう手当法に基づく手当はございません。
  30. 河野正

    河野(正)委員 その点は、冒頭に私が指摘いたしましたように、児童福祉法あるいはまた児童憲章精神からも、施設中心主義あるいはまた生活保護中心主義という考え方を脱して、個個の子供たちに対して対策を講ずべきである点を冒頭に指摘いたしたわけです。そういう点から考えましても生活保護的な考え方を脱して、そういう精薄者を対象とする対策が進められなければならぬ。今度は児童局ですけれども、次は社会局にも当然お考え願わなければならぬ問題である。こういうことを考えますので、その点は強く要望をいたしておきたいと思います。  さらにお尋ねをしておきたいと思いまする点は、重度精薄者の定義でございます。これはもうさきの委員会におきましても二、三指摘されたようでございますが、この提案の趣旨を読んでまいりましても、二十歳未満で精神の発達が遅滞し、そのために日常生活において常時の介護を必要とする程度、これらの判定の際に知能指数が中心となる。これは先般も、いろいろ黒木局長からお答えになったようでございます。しかしながら、単に知能指数だけでは問題があろうと思うのです。そこで知能指数で機械的に判定するということであるならば、これは一応その道の職員であればできるわけですけれども、それのみでないということになると、一体だれが判定をするか。これはやや専門的になってくると思うのです。これは不服の申請等もできるわけですけれども、それらの最終的な判定が一体どうなるか、この辺も、不服の申し立てができるそうでございますけれども、ひとつ御所見があれば伺っておきたい、かように思います。
  31. 黒木利克

    ○黒木政府委員 重度精神薄弱児の定義につきましては、東大の笠松教授、三木教授以下九名の専門家にお集まり願いまして、一応の案をつくっておるわけでございますが、この先生方の一致した意見では、単に知能指数がIQだけでは不十分である。しかしIQも、厚生省の最初の原案のように二十以下というようなことであったのでございます。いわゆるわれわれの言う最重度であったのでございますけれども、三十五くらいが適当であろうという御意見がありまして、これも最終段階で大蔵省と折衝いたしまして、三十五以下の知能指数の者といたしたのであります。それから医学的診断というものも必要である。これは原因を究明したり経過を調べたりいたしまして、現在における心身の状態とか障害等について詳細に検診をして、それによって診断をする、同時に医療の判断も行なうというようなことも必要である。したがってこれは専門の医師になってくるのであります。IQのほうは、心理学者が必要になってくるのであります。それだけではやはり不十分で、社会生活能力検査というようなものも必要であろう。これはたまたま牛島式とか遠城寺式とかいって厚生省で採用いたしております社会生活能力検査がございますから、今度の重度精神薄弱児向けに重度精神薄弱児社会生活能力調査表というものを新しくつくりまして、これを使用して判定をする。それから生活及び行動面につきまして、検査時において判断をする必要があるというようなことで、結局臨床の心理学者、専門の医師、それにケースワーカーというような人たちが判定に必要であるということになりました。そこで児童相談所にこの判定の機能を行なわせることにいたしまして、この児童相談所では、いま申しました三人が牛島式によって判定をするというような仕組みにいたしておる次第でございます。
  32. 河野正

    河野(正)委員 いろいろいまお答えになりましたように、しさいに研究をされて、その判定に役立たせるということでございますから、ひとつ誤りなきようお計らい願いたい、かように考えます。  それからいま一つ、心理学者等の意見もあってお伺いをするわけですけれども、精薄者の出現率というものは人口の大体三%内外、こういうふうにいわれております。それからもう一つは、ドイツの調査報告によりますと、白痴のごときは、二十歳までに大体七〇から八〇%が死亡する。精神病そのものも短命ですけれども、精薄の場合も短命です。そこで人口の中で占める比重、それからまたいまの平均寿命の問題、こういう問題から、もう年齢制限というものは要らないのじゃないか、非常に少ないわけですから……。そういう意見も実はあるわけです。これは何も、もらいたい、もらいたいということで言うのではなくて、いま申し上げますような心理学者、あるいは諸外国の統計等を参酌して検討いたしましても、適用範囲が非常に狭い。狭いならこの際、二十歳というような年齢制限なんかしないでもいいじゃないかというような意見もあることを、私ども承知をいたしておるわけです。これは先ほど社会局長からも若干お答えがございました。いずれ将来、この二十以上の問題についても再検討の要があるというようなお答えもありましたけれども、いま申し上げますような心理学者の意見、あるいは統計等から見ても、そういう考え方が出てくるわけですけれども、そういう点についてはいかがですか。
  33. 黒木利克

    ○黒木政府委員 河野先生は専門家でございますから、その御意見は、実は最初の厚生省の原案であったのでございます。大臣の構想では、成人の精薄というものの数もそんなに多くはないし、かつまた精神年齢は児童ですから、精神薄弱児も精神薄弱者も同じような対象にしてこの手当法案考えられたのでありますが、いろいろ財政当局との折衝の過程におきまして、主として予算、財源等の関係で、ついに子供だけになったわけであります。  そこで、いずれにしてもこの精薄者を年金対象にしなくてはならぬのでありますが、児童局としては、この重度精神薄弱児扶養手当法の中で、精神薄弱児というものも取り入れる。何となれば精神年齢が児童だからいいではないかということ、しかも先例では、児童福祉法の中で、国立秩父学園におきましては、児童が成年になりましてもこの施設収容できるような特例の規定があるのであります、そういう先例がございますから、そういうような法律改正考えられるということを考えておったのであります。しかし、たしか滝井委員あるいは八木委員の御議論の中で、むしろ精神薄弱というのは一種の器質的な精神障害と考えて、年金の体系の中に入れるべきじゃないか、国民年金法の体系でいくべきじゃないかという議論もございまして、これは一体どちらのほうがいいのか、その辺は今後検討するということを大臣が御答弁なさっておるのでありますが、私のほうも、いろいろ御意見を伺いまして結論を出したいと思っております。
  34. 河野正

    河野(正)委員 いずれ二十以降の場合にもどうせ問題になる可能性がありますし、それからまた、いま私が指摘いたしましたように、心理学者あるいはまた諸外国の統計から見ましても非常に適用範囲が狭いわけですから、これは何らかの形で、形は別としても、年齢制限の撤廃というものが考えられるべきではないかということを考えておりますので、方法論は別でございますけれども、十分ひとつ御検討をいただきたい、こういうふうに思います。  それから、次に伺っておきたいと思いまする点は、手当の支払い期日というものが一月、五月及び九月の三期に限定をされておるわけです。その理由がどこにあるのか、この際お聞かせをいただきたい。
  35. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は従来の年金なりあるいは児童扶養手当制度の先例がございますから、その先例に従ったものでございます。ただ一月というのが、ちょうど師走の翌月でございますから、むしろお金がほしいのは十一月か十二月だというような御意見もありまして、これは年金なり児童扶養手当にも関連がございますから、いま検討をいたしておるところでございます。
  36. 河野正

    河野(正)委員 これはもらう側の立場に立って検討さるべき問題だと思いますので、その点は十分、もらう側の立場を尊重されて御検討をいただきたい、かように考えます。  その他ございますけれども、いずれにいたしましても、私どもが御指摘を申し上げてまいりましたように、制度そのものにつきましてはわれわれも異論ございませんし、賛意を表するものでございますけれども、ただ中身につきましては、いろいろ私も指摘を申し上げました。なおまた、その方面では非常に御勉強になった伊藤よし子委員からも、いろいろ体験を通じて御指摘の点がございました。それで、この点についてはいずれ与党のほうからもいろいろ意見が出ると思いますけれども、この問題点の解決のために私どもも最善の努力を尽くしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。政府当局においても、いままでいろいろ出てまいりました問題点につきましてはさらに格段の御配慮をお願いする、こういう希望を申し上げて、本日の質疑を終わらしていただきたい、かように考えます。
  37. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 関連して。いま河野委員からだんだんと年齢の問題についての御質疑、また御答弁があったのであります。この点については、伊藤委員からも先ほどお話があったわけであります。私ども現場の施設を見て回りまして、私の見た限りにおきましては、十八歳または二十歳という年齢制限が依然としてありまして、精薄児を収容する施設におきましては、それから先は出さなければならぬ。制限を無視してやっておりますところは国立秩父学園と近江学園だけでありまして、ほかは全部その点をわれわれに強く訴えられたのであります。でありますから、いまの児童局長社会局長お話は、どうも現場の現実と違っていると私は思う。児童局長はいま特例があるというお話でございましたけれども、どうも現場と違うように思うのですが、現場で働いて苦労しております社会福祉事業家の皆さん、あるいは親たちの皆さんのために、もう一度明確にしておいてもらいたい。もし精薄児の収容保護の施設におきまして十八歳もしくは二十歳を過ぎましてもかまわないということでありますならば、現場では非常に喜ぶと思うのであります、またそれは時宜に適したことと思うのでありますが、実際において精神年齢がまだ子供である者を外へ出さなければならぬ、あるいは外へ出しても行くところがない、もちろん社会的な生産に従事できるということであれば一番いいと思うのでありますけれども、IQその他の程度によりまして、できるだけそうはしなければなりませんけれどもどうにもならぬ子供もあるのでありまして、その点現場の施設では非常に困っておりますので、年齢を過ぎても置けるのかどうか、この際明確にしておいてもらいたい。
  38. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほども申しましたように、現行法では、児童福祉法は十八まででございますが、ただ国立の秩父学園の場合には、法律の中で、精神年齢は子供だということで、重度の場合は例外規定がわずかにございます。お説のように、児童福祉法施設におりまして、児童福祉法の年齢を超過いたしますとそこにおれなくなるわけですから、外の施設にかわるかあるいはうらに置かざるを得ない。施設の御要望、親の御要望では、そのまま現在の施設に置いてほしい、あるいは同じ敷地内におとなのそういう施設をつくって、できるだけ同一経営主体の中で継続して保護ができるようにしてほしいという要望がございます。  もう一つ問題点は、子供の精薄児の施設の数のほうがおとなの精薄者の施設の数よも多いものですから、結局、おとなのほうの受け入れ態勢が、先ほどの社会局長お話のように十分ではないのであります。したがって、その間のズレがございまして、成人になりました児童精薄施設子供が、行くところがないというような現在の状態でございます。そこで社会局長お話のように、むしろこれは児童局から要望いたしまして一元化していこう。というのは、児童福祉法精神薄弱者福祉法というものを児童局の所管にするならするというようなことを、実は話し合いを続けているということを社会局長から申されたのでありますが、事実そういうことでできるなら一元化してもらいたいということで、いま話し合いをしている最中でございます。
  39. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 でありますから、ごく重度の者の例外ということだけでなしに、中度くらいの諸君にいたしましても、そこは児童福祉施設だからといって十八歳で出されるということになりますと、行くところがないというので現実にほんとうに困っている問題です。私はいまの児童局長の話のように、精薄者の収容保護施設というものがたくさんあるならいいけれども、実際にはない。実際においては数がきわめて少ない、あるいはその他のいわゆる浮浪者的な更生施設というもので、更生保護施設というようなものにごちゃまぜに入っているというのが現実であると思うのです。ですから、そういう更生保護施設というような形のもの、浮浪者的なものも収容していますものにごちゃまぜに入れて、そこでそういう諸君が、たとえば町のごみ捨て箱からいろいろなものをさがして一日じゅう歩いている。いわゆるパタヤというような仕事を能力のある人たちがやっておるならまだいいけれども、その能力の全くないような気の毒な、中度と重度の間くらいの精薄の諸君が、そういうことをしてうろついているということを私は事実見ているわけです。だからそれを見ておりましていかにもこれはいかぬ。またいろいろなかっぱらい、放火というようなことにも関係してきましょう。そういう犯罪にも関係してきましょうし、あまりそうすべきでない。適当な生産に参加させるということはしなければなりませんけれども、しかし同時に、現実にそういうのを私ども見まして、これはこんなことをしてはいかぬ、あらゆる点でよくないということをしみじみと思うのです。でありますから、いまの精神年齢が低いということに関係して、いまのような社会局のお話で一元化して進めていくということはけっこうですけれども、ぜひ進めるなら進めてもらいたいが、同時に、いまこの法律がせっかくできるときであります。各施設は注目しておりますから、私はいまそういう点は明確にしておくべきだと思うのです。そういうことによって、現場で非常な苦労をしておる諸君がどんなに安心をするか、また親たちがどんなに安心するか、また本人たちがどんなにそれでしあわせになるかということを思うわけでありまして、いまの点をどうも現場に行ってみますと非常に心配して憂えておりますので、ひとつこの際明らかにしておいていただきたい。それで、すみやかにやるならやるでそういう方針を現実につくり出してもらいたい。だから児童福祉施設を十八歳になったら出なければならぬ、出さなければならぬということは、実際に現場はそうなっておりますけれども、そういうことでなしに、精薄者の施設があるならいいけれども、ないのにそういうことをして浮浪者などと一緒にしていくということは非常に不幸なことでありますから、ないようにしてもらいたい。先ほどの河野委員の質問を、私ほかの用事があってちょっと外に出たりして十分聞けなかったのですけれども、その点はどうも明確を欠いているように思うので、ひとつもう一度社会局長のほうからも明確にしておいていただきたい。
  40. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 年齢制限の点につきましては、先ほど児童局長が答弁したとおりでございますが、もう一つの点の、いわゆる生活保護施設の中に従来収容されておりました者は、先ほど河野先生の質問にお答えしましたように、そういうものの中で十三カ所、ほとんどこれは精薄者が収容されている。もっともこれはごっちゃに入れられておる。そういうことは非常にわれわれも弊害があると思いまして、三十九年度、今年度予算からそれを精薄の施設のほうに移しかえいたしまして、そうして純粋にそういうふうなものとして福祉施設のほうに切りかえていく。それでそのほかに、また絶対数が足りませんので新設をしていく。そういうふうな方針で三十九年度から始めておるわけでございまして、長谷川先生の御指摘方向に進んでおるわけでございます。
  41. 伊藤よし子

    ○伊藤(よ)委員 ただいまのことに関連してでございますけれども、私はこの際特にいまの点に関連して、二十歳になった人でもまた精薄者の施設収容するということもぜひやっていただきたいわけでございますけれども、その施設にずっと子供のころから置かれておりますと、性格も、いろいろその子供方向というようなものも、その置かれている施設の中ではわかっているわけでございますから、特に重度の場合にはほかへ移すということではなくて、引き続いてそこにおられれば、その子供の性質上、そこでまたその子供のいろいろな点が生かされていくと思いますので、そういう中度の場合などには、必要があればそこに置かれる、そのままそこへ引き続いて置くことができるというようなことは、ぜひ私はこの際しておいていただきたいと思うわけでございますが、その点いかがでございましょうか。ただ研究しておいでになるということではなくて、秩父学園ではいいのですけれども、ほかのところは非常に訴えておりますから。先日その点はちょっと詳しく触れましたのですが……。
  42. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに精薄者本人の福祉立場、あるいは先ほど申しましたが、職員の確保の面から見ましても、あるいは精薄児なりで生産と関連のつけられるものは生産と関連をつけてもらうというようなことで、できるなら子供施設とおとなの施設と総合的な運営をする総合施設をつくっていく、さらに進んで精薄児、精薄者を一元化していく、できればコロニーまでつくってまいりたいということを目標として児童局としては進んでおるわけでございまして、社会局にお願いいたしまして、簡単に申しますと精薄者福祉法を児童局の所管にしてほしい、そこで行政の一元化をやりたいということでお願いして、社会局もいま好意ある態度で、大体そちらのほうの結論に近づきつつあるという段階でございます。
  43. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 いまの話ですけれども大臣、これは実際私ども現場を見ますと、何としてでも、先にいってそうするというのじゃなしに、いますでにそこに収容しております者で十八歳もしくは二十歳という年齢になり、どうしても出さなければならぬということで、出さなくてもいいように——これはそうたくさんの数じゃないのです。そうたくさんの数じゃないのだから、そういう措置を大臣ひとつぜひやってもらいたい。そんなかわいそうな現実を見ていても、浮浪者と一緒くたにほうり込んじゃって、そうしていまのパタヤをやっているわけですね。私は、そういう行き方というものはほんとうによくないと思うのです。これは不幸な子供をさらに不幸にする。そうたくさんのものじゃないのだから、現にこの精薄の児童福祉施設におります者を、それはいまのお話が進んで、明確なことが法制的、制度的に出てくるまでの間、臨時的な措置として、おってよろしいということをひとつ省内できめてもらいたいと思う。そうしてひとつ児童局、社会局でお話しになって、そういうような不幸な子供をさらに不幸なことにすることのないように、ひとつ、いまおる人はよろしい、出さなくてもよろしいというようにしてもらいたいと思う。そのことを大臣の良識に訴えてお願いしておきまして、関連を終わります。
  44. 小林武治

    小林国務大臣 法律のたてまえからして、表向きそれをよろしいと言うわけにはまいらぬと思いますが、実際上実情に合わぬようなことをしないようにひとつ注意をいたしましょう。
  45. 田口長治郎

    ○田口委員長 午後一時半まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十八分開議
  46. 田口長治郎

    ○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。長谷川保君。
  47. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 私は緊急の問題がございますので、それについてごく簡明に御質問をいたしたいと思うのであります。  私の記憶するところでは、たぶん中央医療協の委員の任期が六月五日であったのではないか、こう思うのであります。その点いかがでありましょうか。
  48. 小林武治

    小林国務大臣 そのとおりです。
  49. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 実は、御承知のように中央医療協から先般診療報酬についての答申が出て、それについて各方面に、ことに病院関係に非常な不満があるわけであります。八%あるいは一〇%にはならないだろうというお話でありますけれども、今回の診療報酬のアップの答申につきまして、どういうような計算でこれが出てきたかについて、われわれもつまびらかにしないのでありますが、この点は緊急質問でありますから、また次の機会に譲ります。  ただ問題は、昨日も大臣予算委員会におきまして、この中央医療協の答申については尊重するというようなおことばであったように新聞は報道しておりますが、さように承知してよろしゅうございましょうか。
  50. 小林武治

    小林国務大臣 そのとおりであります。
  51. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 そこで、考えておかなければなりません問題は、労働関係調整法の三十六条というのにつきまして、昭和三十五年の十一月十一日に労政局長から通牒が出ております。また同じく三十五年十一月十八日には、当時の医務局長から通牒が出ております。これは人命の尊重という立場から、病院関係のストライキにつきまして、いわば禁止条項が提示されておるわけであります。これによりますと、たとえば救急施設、病院施設、入院施設、外来診療施設、検査施設、放射線の施設、調理施設、それから消毒施設、検査施設、蒸気、用排水、空気調節等々の施設がいわば争議の場所としてはならぬということになるわけであります。これは私も、人命尊重という立場からいいまして、この考え方は正しいと思います。ただ問題は、そういうようになりますと、これは実際において争議ができないということになります。争議はほとんどできない、完全にできないといって差しつかえないほどできなくなります。それならば、これは代償措置というものをちゃんとしておきませんと、ILOの百五号の強制労働廃止の条約、これに当然ひっかかってくるわけです。でありますから、もしそういう点で代償措置をちゃんとしておきませんと、このILO問題にまたこれが発展していく可能性は、私は十分あると思う。それでは代償措置をどうするかということになりますれば、第三者の客観的な機関がありまして、診療報酬を時宜に適したものに改定をしていき、その中で労働者に対する妥当な賃金を支払うという形に当然なってこなければならないと私は思うのです。  そこで、今回の中医協の答申に対しまして、まず八%あるいは一〇%というような、まだ明確には出ておらぬようでありますが、大体八%というように報道されておりますけれども、これらについて、たとえば自治体の病院等々で、なかなか詳しい精密な計算をいたしておりまして、それによりますと、大体五七%ぐらいの診療報酬の引き上げをすべきであるという計算を出しております。私もその計算を一応目を通しましたけれども、なかなか精密な計算をいたしておって、われわれを首肯させるものがございます。そこで問題は、そういうように一方で非常に不満があって、診療報酬というものを、いまの八%というようなことであってはならぬという相当詳しい計算を出しておるといたしますと、先ほどの百五号条約、強制労働廃止の条約から見まして、これははたして八%が妥当であるか、それとも自治体病院等の、学者を集めていたしました計算によって約五七%のアップ率というものが正しいという結論、それが正しいのであるかどうか、それらについて国会といたしましても十分に討議しなければなりません。したがいまして、この問題について、私はまず政府が中央医療協に出しました計算の基礎になりました資料というものを当然われわれにも提示すべきでありましょう。このことはすでに要求をしたのでありましたが、いまなお出てまいっておりません。これをまずひとつどうしても出してもらわねばならぬ。次の機会にこの問題を徹底的に究明する機会がほしいと思うのであります。本国会でやらなければならぬと思いますけれども、それまでに出していただくということをひとつ要請をいたしておくとともに、同時に私は、この中医協の委員の切りかえにつきましては、今日まで御承知のように、病院関係の代表者という者が以前は出ておりましたけれども、日本医師会とのいろいろなトラブルからいたしまして、これがいまはございません。全部日本医師会から診療担当者のほうは出ておるわけであります。しかし、全国公私立病院連盟というものがこの機会に結成をされまして、その病院連盟の関係しておりますベッド数というのが膨大な数字にのぼります。三十七年の統計でありますから、今日の統計と少し違いますけれども、三十七年の統計といたしまして、総数七十五万ベッドに対しまして、もし私が聞いておるようなごとくであるといたしますと、この全国公私立病院連盟の組織下にありますものは、国立及び社会保険病院を除きまして、少なくとも二十五万ベッド以上あります。こういうことでありますから、今日、この日本医師会の再診療の要求というものに対しまして、病院関係のほうが、日本医師会と別な考え方をもちまして、いま全国公私立病院連盟というものがつくられてきておる。そしていま申しましたように、この中心になっております自治体の病院のほうの関係で、大ぜいの学者を集めて計算した結果が、五七%からの診療報酬の引き上げをしなければならぬという結論を出した。これと先ほど申しました百五号条約の問題、労調法三十六条の厚生省医務局長が三十五年十一月十八日に出しました通牒、こういうものとあわせ考えてみますと、どうしても、国の厚生行政といたしまして日本医師会の非常な御協力をいただかなければならぬと同時に、またそこにすでに意見のそごがある程度あります以上、この病院関係の代表者をも、一人は日本医師会の了解を得て中医協に出すべきであると思うのであります。そうして、日本医師会のほうでも了解のできる人があるだろうと思う。この前の問題のときに、神崎三益氏の問題が起こりまして、日本医師会では排除いたしましたけれども、今日必ずしも神崎三益氏でなくても、他に適当な人があるだろうと思う。だからそういうような人を選びまして、この際中医協の委員の人選にあたりましては考えませんと、いま申しましたいろいろな問題にひっかかりまして、またぞうここでILO百五号条約問題が出てくる。私は少なくとも、病院関係の労働組合が持ち出しますと、そういうことが可能でないとはいえないと思うのです。私は、病院関係が紛争に陥ることは人命尊重の立場からいって反対であります。しかし、それならそれなりに、代償措置を十分にしておかなければならぬ。代償措置のない争議禁止、いまの医務局長の通牒によりますものであれば、ほとんど全部病院関係は争議ができないのです。そういうことのないようにしておく必要がある。そういう立場から申しまして、六月の五日に差し迫ってすでに任期が切れるということでありますから、ことにこの前の中央医療協の問題のあと、有沢会長も必ずしも次の委員になるということを快しとしているものでもないかの言動もあるように思われます。こういう重大な問題でありますから、これらの点につきまして、厚生省は十分に考えていくべきであると思うのでありますが、これらにつきまして、いま大臣立場としてごうごうということを明確におっしゃることは、重大な段階でありますから、できますまいけれども、私は、少なくともそれらについて善処する必要があると思うのでありますけれども大臣の御意向を承りたい。
  52. 小林武治

    小林国務大臣 医療機関の中で病院の占める重要性というものは無視できません。したがって、医療費等の問題が審議される場所に、ほんとうの病院関係者の意見を反映させるということが必要であることは言うまでもありません。したがって、私どもは、できるなら、世間のだれが見ても、あれは病院の代表者だと言えるような人が参加されることを希望しております。ただ、病院といたしましては、いま公私立の病院協会ができましたというても、これはまだ一つの任意団体でありまして、いわゆる法人格を持ったとは聞いておりません。しかも、病院の医者が、これは日本医師会と別個の団体であるかどうか、こういうこともきわめて不明確です。病院勤務のお医者さんたちは、あるいは日本病院協会に入っておる、あるいは全日病院に入っておる、中には両方に入っておる、いろいろのことでありまして、この間の関係がまだきわめて不明瞭である。こういうふうなことになっておりますために、いまの日本医師会の中にも病院の関係者が多数入っておる。こういうことから、いままでは日本医師会からのその向きの推薦も依頼をしておったようであります。私どもは、ほんとうに病院の代表者といえる方が入って、真に病院の利害というものを主張し、この協議会に反映してもらうことを希望いたしておるのでありまするが、まだそこまでうまくいくかどうかということについては、十分な見通しを持っておりません。しかし、長谷川委員が言われるように、病院と町の診療所とは相当な違いがありますので、病院関係の真の声が協議会に反映されることをわれわれは心から期待をし、できるならそういうことが実現できるようにつとめたい、かように考えております。
  53. 長谷川保

    ○長谷川(保)委員 それでは緊急質問でありますから、一応了としておきまして、次の機会に中央医療協の出しました答申等につきまして徹底的に追及する時をお与えいただくようにお願いをしておきたいのであります。  委員長にこの際お願いしておきますことは、いまも申しましたように、中央医療協に厚生省が出しました資料、それを土台にいたしまして医療費の計算もしたわけでありますが、それらの資料が私どもの手に渡らぬということは不可解しごくであります。これはすでに要求してあるのです。委員長におかれまして、どうか厚生当局に対しまして、われわれのこの国会におきまする、国民の非常に重大な問題を審議いたします資料といたしまして、その計算の基礎となりました資料を当委員会にも提出されるようにお取り計らいをお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  54. 田口長治郎

    ○田口委員長 承知いたしました。  大原亨君。
  55. 大原亨

    ○大原委員 私は、先般四月三日に衆議院の本会議におきまして、全会一致で可決されました原爆被爆者援護強化に関する決議、この決議に基づく政府側の措置につきまして、主としてこれを中心として質問をいたしたいと思います。  相当時間もたっておりますし、特に歴代の厚生大臣に私からもしばしば予算委員会、社労委員会で要請をいたしました。ぜひ西村前厚生大臣あるいは小林厚生大臣におかれては、現地に実際に行ってひとつ実情を見た上で対策を立ててもらいたい、こういうことを要請をいたしておったところでございますし、「一日厚生省」というそういう機会も設けられましてお行きになったわけですが、その「一日厚生省」に厚生大臣が行かれまして、現地の病院なりあるいは実態調査されたり、あるいは視察されましたり、あるいは記者会見をされましたり、あるいは原爆被爆者医療法の問題その他万般の厚生行政について質疑応答をされましたことは、地方におきましては非常に大きな反響を呼んでおるわけであります。  きょうは医療法の改善を中心といたしまして御質問いたすわけですが、最初に、厚生大臣が現地に行かれましての感想といいますか、そういうものにつきましてひとつ率直に所見を発表していただきたいと思うのであります。
  56. 小林武治

    小林国務大臣 これは御承知のように、原爆の被爆者に対する施策の問題でありますが、政府といたしましても、従来皆さんから見ればかたくなと思われるほどいわゆる医療法の外に出ることをちゅうちょしておったということは事実であります。しかし、先般の衆参両院の決議の次第もありまして、従来の態度がそのまま押し通せるかどうか、こういうことは非常に大きな問題でありまして、私どもも、これは両院一致の御決議もあり、また私も現地に行って実情を目で見、耳で聞いて、そして何ぶんの考えをまとめたい、こういうことであったのであります。いろいろの観点からいたしまして、政府もこの点、従来の政府態度というものは、要するに身体的障害に対するものに限定しての施策に限られておったが、これをどういう程度か、とにかくこのワクを出るべきである、こういうふうな結論になりまして、程度の問題は別として、自由民主党におきましてもさような考えを持ちまするし、政府におきましても従来の態度をそのまま継続すべきでない、こういうふうな考え方になったということを申し上げておきたいと思います。
  57. 大原亨

    ○大原委員 きょうはできるだけ具体的な議論をしたいと思うのですが、その際に、厚生大臣が記者会見をされまして、次の国会に原爆医療法の一部改正案を提案したい、いまお話しのように衆参両院におきまして援護強化の決議がなされました、その決議に基づいてひとつ飛躍をしたい、こういうことが語られておりまして、それは全国の新聞によりましても伝えられたのであります。被爆者は現在三十万人といわれておりますが、北は北海道から沖繩に至るまで被爆者はいま生活しているわけです。その際にいろいろ御発言になっておりますが、被爆者の全員にひとつ援護手当を出そう、こういうことが医療法のワクを出る案といたしまして出ておるわけであります。これは私ども全く同感でありまして、現在参議院に提案をいたしまして予備審査でこちらに回っております私ども法案にも健康手当、こういう立法措置があるわけでありますが、この前に出しました社会党の案にはやはり援護手当というふうになっておりましたし、これは全員という意味はともかくといたしまして、医療から生活面に国の恩恵を差し伸べる、救援の手を差し伸べる、こういうことは今日までいろいろ国会におきまして議論をいたしました一つの焦点でございました。したがって、このことは非常に大きな全国的な反響を呼びまして、さすがは小林厚生大臣である、こういう期待と感謝の声が出ておるわけであります。その点につきましてどういう、新聞記事だけでははっきりいたしませんが、これは見出しでちゃんと出ているから間違いないと思いますが、これはどういうお気持ちをお話しになったのか、具体的にもう一度、国会におきましても援護決議があった際でありますし、ひとつ発表していただきたいと存じます。
  58. 小林武治

    小林国務大臣 これはいろいろ誤解を受けて、その後抗議等も受けておりますが、私は実は医療のワクを出なければならぬ、こういう抽象的なことを申し上げたのでありますが、かような具体的の問題について私からしゃべったということはないのでございまして、新聞がこの点どういうふうに伝えたか私は知りませんが、要するにいろいろの問題が世間に出ております。こういう問題がある、ああいう問題があると国会においても世間においても出尽くしております。それを新聞記者諸君が書かれた、こういうふうに私は思っております。ことに私は、前々から御承知のように、あまり援護というふうなことばは使いたくない、それはどういうことかというと被爆者の福祉を増進したいのだ、私がしゃべるとすればそういうことばで申し上げたいのだということも言っておりまして、いまの援護手当のことも皆さんからも出ておるし、世間にはそういう声がありますが、こういうこともやるというようなことを私は実は言うておりません。それでこれらの問題はきょういろいろお尋ねがあると思いますが、これから検討をしてそして予算要求もしなければならぬ問題でありますし、皆さんもいろいろなことを検討されておりますが、また自由民主党の政調会においても小委員会をつくってこれらの問題を検討しておる、こういうことでみんなの考えをまとめて、七月から予算折衝しなければならぬ問題でありますから、具体的にこういうことをする、ああいうことをするというようなことは実は私はしゃべっておりません。その点はひとつ、——当時いろいろなあれがありましたが、この間も実は党の政調会でもおまえはそういうことをしゃべったか、こういうことを言われたのでありますが、私は具体的なことはしゃべっておりません。しかしこういうようなこともみんなでもって考えなければならぬとは思っておりますが、いまおっしゃるようなことを、私はこういうことをひとつやりましようというようなことを具体的に新聞記者会見等で言うておらないということを申し上げておきたいのであります。
  59. 大原亨

    ○大原委員 私は法律案が政府としてきまったというそのことについて厚生大臣にはっきりした事の表明をここでしてもらおうというふうには思っておりません。ただ問題は、次の国会に原爆医療法の一部改正案を出すのだ、こういうことと関連をいたしまして援護手当の問題がどの新聞にも出ておるわけです。だから私はそういう厚生省の決意を表明されたのだと思うし、私はその点においてはいままで渡邊厚生大臣、古井厚生大臣、灘尾厚生大臣、西村厚生大臣、それから小林厚生大臣、最近だけでもそういうふろにずっと厚生大臣がおかわりになっておって、そのたびごとにいろいろ質問をいたしてまいりました。しかし小林厚生大臣は今度七月は留任されるだろうと思うのですけれども皆さんは大体一年ぐらいずつでかわっておられるわけです。だから「一日厚生省」で広島へ行って、非常に実直な厚生大臣ですからよほどの決意があるところで発表になったのだろうと思うのですが、これは決して私はあげ足をとるとかそういうことではなしに、非常に期待を持たれている発言であるから、きょうは総務長官にも御出席いただく、あるいは被爆者援護決議の一つの契機になりました昨年の十二月七日の例の裁判所における原爆判決、こういう問題とも関連がございますから、当時の原告の一人の下田さんは厚生大臣が広島に行かれた当日からその前日になくなっておられますが、八年間ぐらい国を相手にして訴訟をやられた。その当時の被告は賀屋法務大臣ですから賀屋法務大臣にきょうは出席を願う。広島にゆかりのある方でありますから、厚生行政に関係の深い方でございますから、いま内閣委員会におられるので後ほど御出席を願って、できるだけお互いたくさんの人が善意を持ってこの問題を検討しながら、あとで政治上の責任を明確にしながら、これをみんなでささえていく、私はあげ足をとるというような気持ちは全然ないのであります。  私はもう少し角度を変えて御質問いたしますが、被爆者に対して所得制限その他の問題はともかくといたしまして、医療の裏づけとなる生活の援護について、衆参両院の決議は援護ということばを使っておるわけですが、援護について一歩踏み出すのだ、生活の問題について手を差し伸べるのだ、厚生大臣はこういうはっきりした決意を発表になっているのは間違いないだろうと思うのであります。医療の裏づけとなる生活の援護について一歩を踏み出す、こういう決意を御発表になっておる、こういうふうに私は考える。普通の大臣とは厚生大臣は違うと思う。非常に実直な方でございますから、私はそういうふうに信ずるのでありますが、その点におきまして焦点を合わせて御答弁いただきたい。
  60. 小林武治

    小林国務大臣 ここらは、私はっきりといまの態勢から一歩を踏み出していく、そのためには医療法の改正をします、その改正案は次の国会には出すつもりでございます。こういうことを申しております。したがっていろいろ内容については国会皆さんともそれぞれ御相談をしてとれからきめていこうということで、この法律改正するということははっきり申しました。しかし個々の問題についてこれはやるとかやらぬとかいうことはこれから御相談をする、われわれはむろんいろいろな問題を検討いたしております。そういう趣旨で、私はいまのワクを出て進めるのだ、厚生省としても政府としてもそういう考え方を持っておる、こういうことは申し上げておきます。
  61. 大原亨

    ○大原委員 このワクをはみ出して飛躍をしたい、こういう決意を御発表になったわけですけれども、では具体的に、決議が出ましてから相当時間たっておりますし、広島その他へお行きになりまして議論をいたしておりますし、あるいは与党の諸君も、政府部内においても議論になっていると思うのですが、いままでは医療法は厚生省の中の公衆衛生局の管轄になっておったわけでありますが、それをたとえば援護法の問題でしたら援護局で扱うわけですけれども、そういう大臣の意思を継いであるいはその他の局ですか、具体的な作業に取りかかっておる、そういうふうに了解してよろしいですか。
  62. 小林武治

    小林国務大臣 そういう相談をしておると御了解くださってけっこうです。
  63. 大原亨

    ○大原委員 それからいままで私ども考え方と、与党特に政府との考え方の間においていろいろとギャップがあったわけですが、原爆被爆者医療法という法律をつくってこれを援護的な方面に拡大していくという際には、今日までいろいろと議論をいたしましたが、立法の根拠が非常に問題でございました。特別法をどういう根拠でやるのかという問題が障害となっておったと思うのであります。その点につきまして、それを前進させる立法の根拠については、いままでの議論をさらに進めてお考えになっておるのかどうか、その内容はどういうふうにお考えになっておるのかという点につきまして、ひとつ大臣のお考えを発表していただきたい。
  64. 小林武治

    小林国務大臣 これは要するに原爆の特殊性というものを根拠にして特別立法する、こういうことであります。いままでは、たとえば身体的障害ということに限定されておったが、原爆そのものが必ずしも身体的なものでもないし、心身に対してもいろいろの影響があるということでもって考えをまとめたい、こういうふうに思っております。
  65. 大原亨

    ○大原委員 原爆は、あなたも御承知のとおり、六、七百メートル上で炸裂いたしまして、爆風や数千万度といわれておる熱風やあるいは放射能による被害であります。それが今日なお白血病やガンで死ぬ人があるというくらい身体に対して非常に深刻な影響を与えておる。これは単に被爆者の問題ではなしに、今日の新しい世代における戦争と平和の根本的な大きな問題として議論をされておる問題であります。被害が非常に深刻であり、そして今日そういうような死亡者も出るという実態に対して、政府はやはり立法の態度を明確にいたしまして特別立法をやっていく。戦後処理の一環として、戦争犠牲者救援の一環としてやる。発言力が非常に弱く、地主団体みたいな圧力団体ではないし、金を積んで運動するわけにいかない。そういうことから考えてみまして細々と生活しておる人ですが、しかしながらこれを無視することは人道上もできない。ましてや唯一の被爆国である日本としてはこれはできない。こういう観点で立法を進めておる、そういうお考えであるというように確信をいたすわけでございます。厚生大臣は、広島やその他での記者会見等におきまして、その点は相当な決意を表明されたわけですが、それを援護に飛躍するためには、やはりいままでの議論について、それを克服するような立法上の根拠を明らかにしないと、堂々めぐりをしてなかなかこの立法が進まない。大蔵省当局あるいは他のセクションから、またいろいろと公平の原則から文句も出る。地主団体みたいに押しまくって、一回補償を取っておるのにもう一回取るというような、そういう圧力はとてもできない。そこで私は思うのですが、厚生大臣はそういう特別立法の根拠について、社会保障の水準が今日国際的に見ましてもヨーロッパの先進国に比較して低いという現実に基づいて特別立法が必要であるという、そういう根拠についてはっきりした厚生大臣としての見解を持っていただきたい、国会の議事録にとどめてもらいたい、私はそう思うのですが、その点について厚生大臣のお考えがあれば明確にしていただきたい。
  66. 小林武治

    小林国務大臣 こういう特殊立法をするからには、あくまでも原爆の特殊性というものをいろいろの面から検討して、それを基礎にして法律をつくる、こういうことになると思います。あくまでも原爆の特殊性というものをいろいろの面から検討していかなければならぬ、こういうふうに思っております。
  67. 大原亨

    ○大原委員 昭和三十二年に原爆医療法ができまして、二、三千万から出発いたしまして今日十四億円という一応の予算で、昭和三十五年、昭和三十七年の改正を経て今日に至っておるわけですが、しかし医療法から援護法に一歩出るという点におきましては、いろいろ立法上の根拠といたしましては議論があります。しかし私どもといたしましては、それについては私ども法案を提案した前提といたしまして、国際法上の問題あるいは政治上の問題、いろいろな問題からいたしまして特殊立法の根拠を設けておるわけですが、今日までの立法経過を振り返ってみて、御承知のようにいわゆる特別被爆者の制度がある。これは国民健康保険や社会保険の残りの部面について国が医療の保障をしよう、こういう立法でありまして、十数万の人がその恩恵にあずかっておるわけです。その特別被爆者の制度というものは原爆による打撃、それとの因果関係がなくても、放射能を受けたり熱風を受けたりいろいろなことをいたしますと、病気が回復する能力、治癒能力が劣っておるということで、特に被爆者の制度として医療の保障で各種の保険の残りを負担するという制度になっておると思うのであります。しかしながら実際は、あなたが原爆病院をごらんになりましてもわかるように、若い人がケロイドになったり、放射能を受けてからだが弱いというようなことで結婚もできない、就職も制限されておる、そういう長い間の闘病生活を続けておる人もたくさんあるわけであります。そういう治癒能力の劣っておる者はとりもなおさず生活能力も劣っておる。したがって、生活能力の劣っておるという面に対して国が援助の手を差し伸べるということは、立法技術としてはたくさんあると思いますが、しかし、この問題は、いままでの原爆医療法の立法過程における若干の改善規定を踏まえてみましても、いわゆる治癒能力の劣っておる人々に対しては、当然生活能力も劣っておるのだから、そういう人たちの治療費その他の生活上の援護の手について技術的な問題を検討しながら進めていくということは、いままでの政府の一貫した態度から考えてみても、当然特別立法として飛躍をする一つの根拠になり得るのではないか。私はそういうふうに政府も了解できるであろうという根拠を提示いたしまして、厚生大臣の見解をひと明らかにしていただきたいと思います。
  68. 小林武治

    小林国務大臣 大原委員のおっしゃることも十分われわれ考えなければならないと思います。
  69. 大原亨

    ○大原委員 そこで現在、この法律にございます医療手当制度がございますが、この医療手当は、大体資料によりますと、現在原爆と因果関係のある白血病、ガン——ガンの中でも一部、それから白内障、その他いわゆる原爆症と因果関係があると認定された被爆者を対象といたしまして、これが四千九百人ぐらいありまして、それをきびしい所得制限をしておりますが、月額二千円の医療手当の金額を増大し、範囲をもう少し実情に沿うようにしていく。相当原爆病院ができ、あるいは広島、長崎医大等に原爆の研究所ができておるわけでありまして、原爆に対する研究も相当進んでおるわけでありますが、そういうことで範囲を広げ、そして金額を増大し、所得制限を撤廃していく、こういう面からの改善も必要ではないかと私は思います。全部の被爆者に対する援護手当の問題を別におきまして、この医療手当改善するという方向につきましては大臣はどのようにお考えになっおるか、お聞かせをいただきたいと存じます。
  70. 小林武治

    小林国務大臣 私はいまここで具体的にこれはこうしましょう、こういうお答えはできません。しかし、いまのようなこともむろん検討されておる、こういうことを申し上げておきたいと思います。これはいろいろな問題もある程度出尽くしておりますので、それらすべての問題について社会党もお考えになっておるし、自民党もお考えになると思う。また私ども厚生当局もいままで出たすべての意見についての検討をしておる。結局これは最後はまとまったところで予算要求の問題になるのでありまして、十分ひとつ皆さんとも御相談の上結論を出したい、こういうふうに考えておりまして、お話のようなことはすべて検討対象になっておる。これはどこの党でも検討されておるのでありまして、厚生当局においても同様でございます。
  71. 大原亨

    ○大原委員 それではいわゆる援護手当の問題は一応おきまして、いわゆる認定被爆者の中で月額二千円の医療手当をもらっている人はいま何人ですか。
  72. 小林武治

    小林国務大臣 いまのことは局長からお答えしますが、お話しの援護手当の問題について私はしゃべったことはない。私は否定しているということではありませんが、そういうことを私が申したことはないということで、いろいろなことが検討対象になっておるということは申し上げておきたいと思います。私はそういうことを具体的にしゃべったことはないが、それじゃ否定しておるかと言えば、決してそういうことも申し上げない、こういうことです。
  73. 若松栄一

    ○若松政府委員 三十七年度で医療手当を支給しました件数は七千九十五件でございます。したがってこれは実人員とは差がございます。
  74. 大原亨

    ○大原委員 実人員は幾ら。
  75. 若松栄一

    ○若松政府委員 実人員はわかりません。これは月ごとに出しておりますので、認定患者の治療の件数が大体一人当たり三件程度でございますから、大体それで割った数がおおよその実人員になろうと思います。
  76. 大原亨

    ○大原委員 認定被爆者の何割ぐらいもらっているのですか。
  77. 若松栄一

    ○若松政府委員 認定医療医療を受けている人の約四割程度でございます。
  78. 大原亨

    ○大原委員 従来から議論されておるのですが、その金額を増額して、所得制限を撤廃するなり相当思い切って引き上げる。それから範囲を拡大する。そういう改善の具体的な問題につきましては、大臣としては賛成ですね。賛成の上に立ってそういう方向検討している、こういうように考えてよろしいですか。
  79. 小林武治

    小林国務大臣 いま具体的のお答えを申し上げるわけにはまいらぬのですが、私どもそのことも検討をしておる。しかし私はそれを否定的の意味検討しておる、こういうわけではございませんで、みなさんの要望もございますから、できるだけ要望のできるようなふうに検討しておる、こういうことであります。
  80. 大原亨

    ○大原委員 主計局のほうの見解では、大蔵省はこういう問題について非常にきびしいわけですね。そこで所得制限を撤廃して金額を引き上げていく。生活保護とのいろいろな関係もあるけれども、栄養費とかいろいろな——今日では入院いたしましても、実際厚生大臣も行かれたと思うのですが、やはり長い間の病気でいつこれがなおるかわからないのですよ。少々の財産、固定資産等があるにいたしましても、そんなに長い病気で財産を食いつぶすわけにいかない。だからそういう特殊事情考えながら、そういう私が申し上げたような方向については理解できますか。机の上だけでやるというようなことは指摘しない、そういうことはいまから言わないけれども、そういう点については理解できますか。去年もそういうことは問題になったと思うのです。おそらく来年も新しい問題になるのですが、いかがですか。
  81. 船後正道

    ○船後説明員 原爆被爆者に対しまして、医療面の治療のほかに、別に特別の医療手当を支給しておるわけでございますが、これは金銭給付でございますので、完全に所得制限を撤廃するということにつきましては、その他の制度とのバランス等につきましてかなり困難があると存じます。ただ厚生当局におかれましてもこれらの点は御検討中とのことでございまして、来年度予算の問題として具体的な御相談がございますれば、もちろん私どももその線で検討することになるかと思います。
  82. 大原亨

    ○大原委員 それではさらに質問を進めてまいりまして、これは総務長官にお尋ねするのですが、いままで本委員会でも議論したのですが、つまり軍人、軍属、公務員、こういうふうに国家との雇用関係、特別権力関係にある場合でないと、特殊の恩給、年金その他給付金の措置はできない、非常にむずかしい。総務長官は戦後補償の問題、戦争犠牲者救援の問題については、他の所管に属さないことや、他の省とのバランスをとる問題について御所管であるから質問するのですが、そういうことが一つの大きなネックになっておる。焼夷弾等の関係、いろいろな問題の関係等があるわけです。そこでこれは厚生省で提案をいたしまして、一昨年でしたか昨年、国会で議決いたしましたが、戦没者の未亡人に対する一時金の給付、これは債券ですが、この未亡人は特別に国との間においては権力関係はなかった。私はそういう戦争犠牲者の措置としては賛成ですから、改善に賛成するにやぶさかでなかったし、そういう措置をとったわけですけれども、そういう例があるわけであります。だから人道上の見地から、社会党が言うように、あるいは昨年十二月七日の原爆判決が示すように、国際法に違反をしておる。日本の国はアメリカの国に対してサンフランシスコ条約で放棄しておる。国際法は、賠償は国と国の問題であるから、個人の賠償はないけれども、あの判決が示しておるように、国の道義的、政治的責任として善処すべきである。特に今日のように高度成長したときは一日もゆるがせにできない。医療保護では不満足だ、こういう判決文があるわけですけれども、とにかくそういう人道とか公平の見地から考えてみて、被爆者に対しましては援護について特別の立法をする根拠は十分にある。私どもの見解に立つ、立たないにいたしましても、私どもの見解の精神というものは否定できない、これは昭和三十五年に藤山外務大臣に本委員会に出席していただきまして、しばしばそのことを議論したこともありますが、とにかくその精神については否定できないと思う。その精神を受けて特別立法を進めていく、こういうことにつきましては政治の公平の原則から言いましても、裁判所の判決の精神からいきましても当然であると思いますが、この点についてはどういう御所見を持っておられますか明らかにしていただきたい。
  83. 野田武夫

    ○野田政府委員 原爆の被害者と申しますか、被爆者につきまして、いままでいろいろ御意見を拝聴しておりました。そのうち、特に戦後処理に関連して未亡人の問題とか遺家族の問題というものが出ましたが、もとより原爆の被爆者は大きないわゆる戦争による犠牲者であります。したがっていまお話しになりましたとおり、国家としてもこれらに対してできるだけの措置を講ずるのは、ひとり人道という問題は当然でございますが、政治的に考えましてもできるだけの措置をして、これらの方々に対する援護措置をすべきであるという考え方は、全く大原さんと同感であります。したがってただいま厚生大臣からも申し上げましたとおり、現在の原爆の被爆者に対する医療等につきましても、厚生大臣はその法律改正をして、さらに積極的な方法を考えよう、また並びに、ただいまお話しになっておりました医療措置以外の援護措置の問題、これらにつきましても、厚生大臣は否定はしない、やはりこれらも含んで検討するのだというお答えがございました。私も全く同感でございます。したがって政府といたしまして、どういう手段でもってこれをやるか、どういう方法をとってこれらの援護措置を行なうかということは、これは特にこの問題に一番関連の深い、またいままでその責任をおとり願っておりました厚生当局の御意見を拝聴し、また私ども政府といたしましても、いま大原委員のおっしゃいましたとおり、現在の被爆者に対する医療その他の対策がまだ不十分であるということであればこれはどうするか、これらについてやはり各関係の官庁もあることでございまして、総合的にこれらを検討いたしまして、そうしてこれらに対して政府考え方をまとめていく段階を過ぎませんと、最後にここでもってどういう方法があるとか、どういう施策をやりますということは明言はできませんが、いまの大原委員の御意見というものは、私はやはり尊重すべき御意見だと拝聴いたしておりまして、これらにつきましてもやはり積極的に政府側としても考慮を払わなければならぬ、こう考えております。
  84. 大原亨

    ○大原委員 いまの野田長官のお考えの発表ですが、御理解をいただいておると思うのですけれども、私のほうから一方的に希望を申し上げておきますが、政治というものはやはり公平でなければならぬと思うのです。それで、私はやはり被爆者などのささやかな集まり等においてはいつも出るのですが、たとえば地主の補償について二千億円のことが議論されておるわけです。これは総務長官一人の責任云々ということは言わないけれども、二千億円の予算が云々されておるわけです。それは圧力をかけて力まかせでとるという方法もあるでしょう、民主主義ですから。しかしそれにいたしましても、やはりそういう手段を持たない被爆者の立場というものは、これは黙っておればいつまでも放任するような性質のものであってはならない。だから、現在の医療法が十四億円余り一年間でようやく予算が使われるようになっておりますが、しかしこれを三倍、四倍にいたしましても、私は決して国民が不当であるというふうには考えないと思うのです。だからそういろ点で、政治の均衡、公平という点について総務長官におかれましても、あるいは厚生大臣におかれましても、十分留意をしていただきたい、この点を私は特に強く申し上げておきたいと思います。  それから前の質問に続きまして、一つ一つ片をつけてまいりたいと思うのですが、いわゆる認定された被爆者というのがある。白血病。白血病は血液のガンだといわれておりますが、白血病あるいはいわゆる各種のガン。ガンの中でも全部が全部認定された被爆者の中へ入っておりません。それから白内障、その他原爆症といわれておるものがあるわけですが、この範囲を拡大することによって、——これは専門家の公衆衛生局長に御質問いたしますが、認定された被爆者の範囲を拡大していくということについては、十分ひとつ研究をしてもらいたい。そうして昭和三十二年の立法以来相当研究が積んでいるわけですから、範囲を拡大するという点についてひとつ努力をしてもらいたいと思いますが、これは局長のほうから御答弁をいただきたい。
  85. 若松栄一

    ○若松政府委員 認定の範囲の問題でございますが、原爆の身体的な影響は、直接被爆の場合には、急性症状的なものははっきりいたしておりますけれども、残りました後続して起こる、つまり長期にわたる放射能の影響はどういうふうに出てくるかということはきわめて判定が困難でありまして、そういう意味で現在とにかく関連を否定できないというものをかなり大幅に認定の資料といたしておりますので、現在のところにおきまして、原爆医療審議会等で不足であるというような意見は出ておりません。したがって、医学的な面でこれを拡大しようという考えは事務当局としては現在ございません。念のため、近い将来に開かれます原爆医療審議会でその点もおはかりいたすことにいたしております。
  86. 大原亨

    ○大原委員 それで公衆衛生局長に言っておくのですが、ガンにいたしましても、私はいま手元に詳細なものを持っておりませんが、全部これは入れていないわけです。だから、放射能の影響を受け、そしてガンにかかった場合には、この人は認定された被爆者としてやるべきであるという第一線の専門医の意見です。私はその点につきまして一つの例をあげまして申し上げたわけですが、その点は指摘しておきますから研究してもらいたい。よろしいですね。
  87. 若松栄一

    ○若松政府委員 原爆の被爆とガンとの関係につきましては、御指摘のように白血病が非常に強い関連を持っておりまして、そのほかには甲状腺のガンがかなり放射能の影響があるということはいわれておりますが、その他のガンにつきましては、積極的な関連を証明するだけの資料があまりございませんので、これらの点につきましても、研究の結果等が出てまいりまして、当然考慮すべき段階に来れば、その時点で配慮いたしたいと思います。
  88. 大原亨

    ○大原委員 甲状腺のガンだけだということを言うのですが、しかし第一線の専門家、原爆病院の院長とか、あるいは広大の研究所の専門の教授、こういう皆さん方はみな言っているのです。とにかく被爆をした人がガンにかかる率が多くて、そして症状等においてもやはり重いということが言い得る、実際やっておると言い得る、こういうことを言っておるわけです。もちろんガンの全部が放射能による被害であるというようなことは言わない。言わないけれども、やはり健康を十分管理しようと思えばその点を十分研究すべきだ、積極的に範囲を広げていくべきだと思うのです。そういう点を指摘しておきます。  それから特別被爆者の範囲の問題で、二週間以内に爆心地等に死体運搬その他で入った人が放射能をたくさん受けて、つまり二次放射能、残留放射能、その被害者が出ておる。しかしながらその人々には、現在特別被爆者が爆心地から三キロ以内という制限があるために、ケース・バイ・ケースで、症状があらわれないと出てこない。これに対しては、国の命令、動員、その他総動員法による動員、あるいは地方当局の要請等で周辺から入ってきて、三日も五日も一週間も死体運搬等をしたり、あるいは建物の整理等をしたり、そういうふうな人々が相当あるわけです。そういう人々に対する措置について、御承知のとおりいろいろな問題があるわけです。その際に、今日までケース・バイ・ケースで特別被爆者の中に入れていく、こういう措置がとられた事例が大体どのくらいあるのか。これについては相当不満があるようです。これにつきましてのデータがあればお答えいただきたい。
  89. 若松栄一

    ○若松政府委員 特別被爆者は現在いろいろな条件がございます。全被爆者二十六万三千名中約十五万ちょっと欠けておると思います。したがって、この率は全体の被爆者の中の約五六%程度が特別被爆者になっているわけでございまして、これに対してただいま御指摘の被爆後の入市者は、約四万名被爆手帳をもらっております。その中で特別被爆者になっておりますのが千七百三十一名、約四%であります。
  90. 大原亨

    ○大原委員 その措置が少しシビアーなんじゃないですか。どうですか。だからこれを緩和して、実情に合うように改正することはできませんか。そういうことを議論したことはありませんか。そういう技術上の問題として、私は行政当局のほうからお答えをいただきたい。
  91. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいまお話しのように、入市者が特別被爆者になる方法といたしましては、疾病が原爆に関係ありとして認定患者になる方法と、それから健康診断の結果、特定の症状がございまして、特別被爆者になる方法とございます。そのほかの方法で、ということになりますと、現実に放射能をどの程度浴びたかという判定をする方法がございませんので、現在どの程度の線量を受けた者を特別被爆者にするかという判定が現実にできませんので、技術的には困難でございます。したがって、結果として、ただいまのように何らかの症状があらわれた者は特別被爆者にするという、お話しのようなケース・バイ・ケースということでいくより、技術的にはいたしかたがないと私ども考えております。
  92. 大原亨

    ○大原委員 たとえば死体運搬や、その他家屋疎開、整備等に、原爆が投下された後に入った人がある場合に、一週間以上入市して爆心地で作業した人には特別被爆者の手帳を出す、こういうふうなことを時間的に制限するようなことはできませんか。
  93. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在におきましては、もうどこの場所でだれがどれだけの期間作業をしたかというような証拠が証明ができるかどうか、そういう意味で証明力が全くないという点で、そういう問題は非常に難点があろうと思います。
  94. 大原亨

    ○大原委員 証明できればこれはよろしいのですか。そういう点について、一定の基準を設けることができますか。たとえば爆心地から三キロ以内で被爆した人に対しては特別被爆者にするといっても、三キロ以内の人でも、すぐ飛び出してしまって、どっちの方向へ行っていいかわからぬから外のほうで、四キロくらいのところでうろついておった人がいる。外におった人でも、その当時降った雨にやられて放射能を浴びた人もいる。そういうふうに、人によってケース・バイ・ケースで違うのだから、三キロという線を引いておったって、それは機械的な話です。ですから、少なくとも一週間も作業をしておったという人は、たいてい外から来ているわけです。あるいは縁故とか、いろいろなことで来ているわけですから、そういうふうな外の人に対しては、特別被爆者にするということはできるでしょう。いかがですか。
  95. 若松栄一

    ○若松政府委員 結局、どの程度の放射能を受けたかということが問題になろうかと思いますので、被爆した場所、作業した場所、それからその期間というような点が全部複合して、どの程度の線量というような計算をしなければなりませんので、そういうことは、一般的に一人一人のケースを証明していくということがきわめて困難である以上、かえって逆にいろいろな不公平を起こすことにもならないかと私ども心配いたしております。
  96. 大原亨

    ○大原委員 それではその問題は、これは問題ですから、大臣ひとつ研究してもらいたいと思います。よろしいですね。
  97. 小林武治

    小林国務大臣 研究いたします。
  98. 大原亨

    ○大原委員 それからもう一つは、いわゆる弔慰金なんですけれども、たとえば大臣、こういうことです。この前も賀屋法務大臣がお見えになったのですが、私が予算委員会で一部を読み上げましたが、原爆判決のときの原告の一人の下田隆一さんという人が、小林厚生大臣が行かれる前日に死んだわけです。これは新聞にその当時出ておりました。この人の例をひとつ見てみますと、「原告下田隆一は広島被爆当時四十七歳であって、広島市中広町九百四十五番地に家族とともに居住し、小工業を自営していた健康な男子であったが、被爆により長女レイ子(当時十六歳)三男清(当時十二歳)次女ユリ子(当時十歳)三女和江(当時七歳)四女利子(当時四歳)は爆死し、原告、その妻ヒナ(当時四十歳)及び四男克治(当時二歳)は爆風、熱線及び放射線によって傷害を受けた。原告は現在右手上膊部にケロイドを残して機能障害があり、また腹部から左背部にわたってもケロイドがあり、毎年春暖の時節には化膿し、じん臓及び肝臓にも障害があって、現在全く職につくことができない。妻ヒナは全身倦怠感、脱力感、頭痛に悩み、四男克治は潜在的原爆症の症状がときどきあらわれる。このような状態のため、一家は収入の道なく、わずかに米国ホノルル在住の原告の実姉から毎月少しずつ送金、送品の援助を受けて、かろうじて生命を保っている。」こういうことが原告の訴えの一つの事実上の基礎になっておるわけです。これは先般読みましたけれども、この人は長い間の闘病生活の末なくなったわけです。こういうふうに長い間原爆症で苦しんで、そのあげくなくなられた人に対しましては、今日一般社会保険、健康保険等でも葬祭料その他の措置をしておるわけです。死んだ人に対しましていたしておるわけです。だから原爆病院等でなくなっても、引き取り手がない場合には、結局は原爆病院、ABCC等で死体解剖をしてもらって、その費用で葬式をする、こういうような例が多いわけです。ですから私どもは、弔慰金というのは一律にどうということではないけれども、ある一定の闘病生活で長い聞苦しんでおる人、非常に多面的、普遍的な深い損害で苦しんでおる人、そういう人々がなくなったときに弔慰金を出す、葬祭料を出す。まず全被爆者に対する遺族の援護の問題が問題になるけれども、私の一つの具体的な提案としては、少なくとも三十二年に原爆医療法ができて以後原爆症等によってなくなった人、そういう人々に対しては葬祭料や弔慰金を出す、こういうふうな配慮をすることが必要ではないか、このことは当然ではないか、十分理由のあることではないか、こういうふうに私は思うのであります。その点につきまして厚生大臣のほうからひとつお答えをいただきたい。
  99. 小林武治

    小林国務大臣 そのことも検討いたしております
  100. 大原亨

    ○大原委員 賀屋法務大臣お急ぎのようですから、私一言申し上げておきたいのですが、原爆被爆者援護強化に関する決議が衆参両院で満場一致可決になったし、厚生大臣もせっかく現地を視察になりましていろいろとおわかりになったと思うのですが、実情を見てこられたわけです。いろいろ御研究になっておられるわけでございますが、賀屋法務大臣は広島とゆかりのある方でございますし、実力者でもあるし、社会保障制度にも熱心だし、そういう点で、現在の医療法のワクを援護の面にまで手を差し伸べることについて、これはいままでの質疑応答を聞いた上でお答えいただきたかったのですが、この際ひとつそいう面につきましての国務大臣としての積極的な御所見をお伺いいたしたい。全然無関係な国務大臣ではなしに、昨年の原爆判決にも問題のある国務大臣ですから、特に御出席いただきまして、ひとつ記録にとどめておきたいと思うのであります。私は心配するわけではないのですが、いままで厚生大臣は、どんどん一年ごとにかわられます。いろいろと討議いたしましても、新しい大臣ではなかなか理解できない面がある。できるだけ一人でも多くの人々と議論をいたしまして、これをやはり政策の上に反映させるということが必要じゃないか、こういう面で特に御出席をいただきました。御所見のほどをひとつこの際明らかにしていただきたい。
  101. 賀屋興宣

    賀屋国務大臣 お尋ねの点につきまして、いろいろの考え方を私はいたしております。一つは、むしろ私個人に属することかもしれませんが、原爆が落ちることになりましたのはあの戦争の際でございますが、戦争開始の際並びにその後戦時中相当長く閣僚をいたしておりまして、責任を持っておる一人として、戦争の犠牲を受けられた方々に対しまして、ほんとうに相済まぬ気持ちを持っております。加うるに広島市は私の出身地でございます。県というよりも広島市が出身地でございます。その意味におきましても特に痛切に感じ、自分の知己や親戚や友人多数の気の毒な被害者がございまして、一そう痛切に感じております。私の気持ちといたしましては、例の地域の範囲にいたしましても、いま会長をしておりますから、お話のようにいまきまっております地域以外にほんとうに気の毒な事情があって、できるだけこれを広げたい。そのほかの問題につきましても、現在相当にいっておると思いますが、まだまだもっとやっていただきたいと前から考えておりますのが私の心情でございます。ただ国の施策といたしましては、いろいろな角度から考えなければならぬ。厚生当局におかれましても、いままで私が承っておるところによりますと、一面人情論としてはこうもやりたい、しかしほかのいろいろな場合との権衡とか、それから事実の冷静なる立場からの認定その他からいろいろ苦心をしておられまして、私の感傷だけで、ああもしてください、こうもしてくださいとばかり言うのもまた考えさせられるところがあるのでございます。またいずれこの上にも厚生当局検討されると思います。そういう際に私が意見を申し述べる機会がありましたら、私として国の財政と厚生当局の行政上のいろいろな観点からのその御意見を尊重しながら、十分に希望を申し上げて御考慮を願う機会を持ちたい、かように考えております。
  102. 大原亨

    ○大原委員 私はこの点はせんじ詰めて議論をしているのじゃないのです。私、考えているのじゃないのですが、たとえば原爆を受けて顔をやけどしてケロイドになる、これは四キロぐらい向こうでもやられておるわけです。そして放射能を受けて、からだが悪い、病身である、そういうことで造血機能、造殖機能にやはり一つの大きな障害がある。そういう当時若かった人が就職に制限を受ける、就職できない、家でぶらぶらしている、あるいは結婚もできない、こういう人々に対してやはり国家といたしまして——どものような立法上の根拠をいえば、これはどんどんやらなければならぬことになるのだが、そこまでの議論はきょうは時間の関係でしない。そういうところにも私は一つの被爆の特殊性があると思う。そういう問題について政府施策の上において考慮すべきではないか、この点いかがでしょうか。
  103. 小林武治

    小林国務大臣 いまのような特殊性があると私も考えます。したがってどういう方法をとるか、こういうなかなかめんどうな問題がありますが、これらの問題につきまして、私はみんなの要望といいますか、意見を出していただいて、そして至急、いまも現に検討しておりますから、その中に入れて考えたい、こういうふうに思っております。
  104. 大原亨

    ○大原委員 私は関係者の方々にたくさん集まってもらって、そして質疑応答しながら考えていくということが一やはりひとり厚生省の事務当局が机の上で、ああやれこうやれという議論をいたしましても、なかなか進まないから、できるだけたくさんの人に出てもらって議論しよう、こういうことでありますが、そういう趣旨で質疑応答をいたしておりますから、そういうっもりで、やはり自分の考えで賛成の点はこうというふうにはっきり御答弁いただきたい。  それで弔慰金の問題、葬式料の問題につきましては、そういう問題はこの趣旨については理解できるところであるからそういう趣旨に沿うて検討したい、こういうお話でございますが、この点は広島における記者会見のときの一間一答の中では案外簡単に葬られております。こんなことはちょっとむずかしいですと事務当局が言っております。だれが言っておるかめがねがないから小さい字のところが見えないけれども、事務当局が言っておる。私は下田さんの例を言いましたが、実際に長い間病気をして近くの人にいろいろ世話になり、しかも先の回復の余地のない、働くことの見通しも立たないということで闘病生活を送った人がなくなったという場合に、これは当然葬式料、弔慰金を出す。社会党の三万円という案は非常に安い、低過ぎる。これをむしろ引き上げて出す、こういうことが私は必要だと思う。事務当局は簡単に否定しておるのです。大臣はやや積極的な御答弁であります。これは私は無視できない。当然理由は立つ。ただし前なくなった三十万の全被爆者に対して一ぺんにやれということは、これは実態調査しなければならぬ。そういうことは私が言ってもなかなかできることではない。実態調査して、その上に立って審議会その他で対策を立ててもらいたいという二段がまえの提案を私どもとしてはしておるわけですが、とにかく昭和三十二年以降、原爆医療法ができて認定患者の制度ができた以後においては、それは因果関係もあり、あるいは妥当であると考えられるこういう人たちに対しては弔慰金や葬式料を出す、こういうことは十分検討しなければならぬ問題であるというふうに考えますが、もう一回厚生大臣の御所見を聞かしていただきたい。
  105. 小林武治

    小林国務大臣 きょうも関係者みな出ておりますから、おっしゃることはすべて十分に検討をしたい、かように考えます。いまの問題も同様であります。考慮しなければならぬ問題であると思います。
  106. 大原亨

    ○大原委員 それから、原爆の人々が指定病院に行きます。国が指定しております。県知事が指定しております。指定病院に行きます際における距離の問題、遠隔地から行く問題、これは北海道でも千名前後あるわけです。それから専門医にかかりたい、あるいは保養をしたいという場合、やはり普通のお医者さんは原爆の障害については経験のない方が多いようです、初めての経験ですから。だからそういうことは東京なりあるいはその他——東京にも稲毛に放射線医学研究所があるわけですが、そういうところや広島、長崎等の専門医にもかかりたい、こういう療養や保養のための交通費について、鉄道運賃の減免、これを国が予算上で補てんをする、こういうことにつきまして、そういう措置もきめのこまかい措置として考慮していただきたい。厚生大臣はその点について、やるやらぬという前の問題として御趣旨についてお考えがあれば御表明をいただきたい、かように思います。
  107. 小林武治

    小林国務大臣 これは前々申し上げましたように、私もいろいろの相談にあずかっておりますし、出ておる問題はいずれも検討しておる、こういうことでありまして、それぞれの党におかれても同じこと、出ておる要望は初めからこれはやらないということではなくて、みな検討しておる、こういうふうに申し上げております。
  108. 大原亨

    ○大原委員 それからこの原爆による被害が非常に一時的でございますから、そういう結果といたしまして、まあよく原爆孤老というのですか、年寄りが残っておるわけであります。これはこの法律に直ちに付随いたしました措置ということではありませんが、老人ホームその他の問題につきましてもそういう特別の援護措置を講じていただきたい、こういう要望が御承知のとおりあるわけであります。これも私は大臣の御所見を記録にとどめたい、こう存じますから、お答えをいただきたいと存じます。
  109. 小林武治

    小林国務大臣 それも相談対象になっております。
  110. 大原亨

    ○大原委員 それから御承知のようにいわゆる人間ドックというのがございます。原爆を受けました方々は、原爆ぶらぶら病と俗に言われておるが、その正体がはっきりつかめないけれども、働く意欲、能力がない、こういう方々もあるわけです。それはお医者さんの話によりますと、一つ神経だろう、これはあなたの精神状態がおかしいのだ、こう一概に言う人もある。しかしながら、実際に原爆ぶらぶら病といわれている人は働く意思と能力がない、こういうことでやはり生活にも困る、こういうのがあるわけですが、そういうように医者が診断の結果、必要と認めた人に対しまして、たとえば精密検査の予算単価をもう少し拡大をして、そうして人間ドック的なもりにそういう方策、施設を設けていく、こういうことは大切なことであると存じますけれども、この点について御研究になっておるか、あるいはこれに対する御所見があればはっきりしてもらいたい。事務当局でもよろしい。
  111. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在健康診断は一般検査と精密検査になっておりますが、精密検査は外来診療でやっておりますので、現地の実情等もよく調べまして、どの程度そういう需要があるか。ぜひ必要な状態であれば将来実施の段階でそういうことも考えてみたいと思います。
  112. 大原亨

    ○大原委員 それは二千円の予算単価を引き上げて、そうして政令か何かで行政上の措置が法律を変えないでできますか。
  113. 若松栄一

    ○若松政府委員 現在の精密検査は入院してはいけないとか、外来でやらなければいかぬという特別な規定はございませんので、これは予算措置その他ができれば可能であろうと思います。
  114. 大原亨

    ○大原委員 この点は努力をしていただきたい。厚生大臣からひとつ……。
  115. 小林武治

    小林国務大臣 局長の答えたとおりでございます。
  116. 大原亨

    ○大原委員 それから最近提起された問題で、これは建設省に関係があるのですが、原爆スラム街といって生活力のない人が都市の周辺にずっと寄ってきた。言うなれば不法建築や何かでスラム街を構成している。こういうのが四、五千軒くらいある、これは広島の例ですが、長崎にもそういうことがあるわけですけれども、そういう住宅対策で、一般的な法律の適用だけでなしに、やはり特別のきめのこまかい住宅対策等をすることが必要ではないか、こういうことが申し述べられておるわけです。具体的な問題はあとわずかになりましたが、この問題については厚生省としては現在どういうふうなお考えを持っておられるか伺いたい。
  117. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 不良住宅の問題は、一般的に第二種公営住宅の建設をやっておりまして、御指摘のように広島、長崎等のそういう問題につきましては、建設省とも相談いたしまして、第二種公営住宅の建設の促進ということについて努力いたしたいと思っております。
  118. 大原亨

    ○大原委員 第二種公営住宅の建設ももっともですが、その際には、たとえば地元負担があるわけですね。地元負担がありまして予算が消化できない。結局医療費その他においても出費が多いから、国民健康保険に対する市の持ち出しが多いとか、いろいろな点で出費がかさむわけですが、地元負担との関係があるわけです。相当膨大なことですから、そういう特殊事情を考慮しながら住宅スラム街の解消についても、この施策を重点的に進めてもらいたい。予算上の措置も考慮してもらいたい。いかがですか。
  119. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 補助裏の融資につきましては、地方債の発行の点がございますので、自治省ともよく連絡いたしまして御趣旨に沿うように努力したいと思います。
  120. 大原亨

    ○大原委員 それから遺族に対する——被爆者を含めて遺族ですが、一般被爆者の対策が済めば、また社会保障が前進すれば解消できる面もあるが、遺族に対して何らかの考慮をすべきではないか、こういう議論があるわけです。これは地主補償の場合ですけれども、地主補償についての私ども考えは、先ほど申し述べたのですが、実態調査して生活状況がどうかということを調査する、あるいはどういうことが原因で生活が苦しいかということを調査する、こういうことであります。私は被爆者についても、遺族の問題を含めて生活実態調査をして、社会的、経済的、生活上のそういう特殊性を実態に基づいて把握する。そうして把握した上で対策を立てていく、こういうことが私どもといたしましては現実的な考え方だと思うのですが、一歩前進する上において、何といっても実態を把握することが必要ではないか。医療の面において医学的な、いわゆる原爆症に対する対応措置をどんどん進めていくということが一つと、それからそういう面、生活上、社会上、経済上のそういう生活その他の実態に基づく特殊性を明確にしながら進めていく。こういうことが今日まで忘れられた大きな問題ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけですが、この点につきまして、ひとつ大臣から努力目標として御考慮いただけるかどうか、こういう点を明らかにしてもらいたい。
  121. 小林武治

    小林国務大臣 いまの問題、まだ具体的に取りかかっておるが、調査はしておりません。そういう話があれば、ひとつ検討したいと思います。
  122. 大原亨

    ○大原委員 それで大体大切な問題は——まだ議論したいことが一つ残っておるのだが、何だか理事の諸君も忙しそうな顔をしておるし、これはいろいろ議論しないとなかなか進まない面もあるわけですが、私、これはしばしば申し上げておるし、あるいは昨年の十二月七日の原爆の判決にも書いておるのであります。国会政府責任指摘しておるところでありますから、まあ、原爆判決については、私ども全面的に賛成できない点もあるけれども、それはとにかくとして、そういう議論も特殊立法の根拠になる点においては進んでおるわけであります。したがって、それらを踏まえながら、そうして可能な限りひとつ施策改善していく。医療法を援護法の方向に進めていく。そうしていままでの忘れられた面に対して政治の恩恵を及ぼしていく。こういう点について格段の努力をしていただきたい。昭和三十二年に医療法ができて、先ほど申し上げたように三十五年、三十七年に改正があったわけですが、しかしこれは一つの段階に来ているわけです。その点について、ひとつこの際英断を持って法律改正に取り組んでもらいたい。厚生大臣といたしましては、現地で非常なたくさんの方々から期待を持たれてお帰りになっておるわけですから、その点について最後に決意のほどをひとつお話をいただきまして、私の質問を終わりたいと思います。
  123. 小林武治

    小林国務大臣 冒頭申し上げましたように、私ども広島へまいったということは、さような決意がなければまいれない、こういうふうな答弁を現地でもいたしておりますので、政府としましても、従来の態度をここで変えて前進せしめる、こういうことでございますので、さよう御了承願います。
  124. 田口長治郎

    ○田口委員長 暫時休憩いたします。    午後三時二十一分休憩      ————◇—————    午後四時四十三分開議
  125. 田口長治郎

    ○田口委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出重度精神薄弱児扶養手当法案議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 重度精神薄弱児扶養手当法案について、まず質問をいたしたいと思いますが、精神薄弱に関係のある法律をちょっと拾ってみますと、まず第一に学校教育法があるわけです。それから児童福祉法精神衛生法精神薄弱者福祉法があるわけです。ちょっと見ただけで四つばかり見当たるわけですが、今度新しくこの重度精神薄弱児扶養手当法という、福祉年金に非常に近い、あるいは児童手当法に近い、精神薄弱児を保護する法律ができたわけです。  そこで、まず第一にお尋ねをいたしたいのは、児童福祉法精神衛生法関係についてです。児童福祉法は、十八歳未満の精神薄弱児を対象にしているわけです。それから、精神衛生法は十八歳以上なんです。今度のこの法律は二十歳になっているわけです。こういうように、同じ厚生省の中から出てくる法律が、一方は十八歳以下といい、一方は十八歳以上といい、一方は二十歳以下という。一体こういう意思の不統一の状態がどうして出るのかということです。十八歳なら十八歳に統一したほうがいいんじゃないかという感じもするのですが、これはどういう理由で、こういうようにばらばらになっているのですか。
  127. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は児童福祉のいろいろな仕事児童福祉法基本になっておりますが、児童福祉法では十八歳未満を児童というわけでございます。ただ、保護の場合に、年齢延長をしたほうが児童のために有利な場合がありますから、たとえば児童手当法でも実は十八歳までというのがたてまえであったのでありますが、できるだけ機会あるごとに有利な取り扱いをしたいというような意味で、そもそもが今度の手当はおとなまで含むという趣旨でございましたから二十歳ということにしたのでありまして、基本的には十八歳、しかし機会あるごとにそれを延長して福祉を厚くしたい、こういう趣旨で、こういうようなばらばらな規定になっておるわけであります。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 機会あるごとに福祉を厚くしたい、だからこれは二十歳にしたんだというような、そういう場当たり的なことでは困るのですね。私は、政策というものは、やはり一貫をした筋というものを通しておく必要があると思うのですよ。それならば、場当たり的に二十歳ならば、場当たり的に二十五歳にしたほうがいい。何も二十歳である必要はなかったわけです。そうすると、これは二十五歳に修正してもいいですか、あるいは三十歳に。二十歳というのは何も理論的根拠がない。福祉を手厚くしたいというなら、御承知のとおり現在三万かそこらしかないんですから、三万そこそこしかないものを、何も二十歳に区切る必要はない。もう少し上まで持っていってもいいわけです。その根拠のないものを、保護を厚くしたいから二十歳に上げたというのでは納得がいかない。それだったら、われわれがこれを三十歳とか四十歳に修正していいのかどうか。
  129. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は未成年でありますから、民法等の規定あるいは法務省関係の少年保護等の規定で、大体未成年というものを一応の基準にいたしておるわけでございますが、児童福祉法では、その場合に十八歳ということに前々からなっておりますから、そういうようなたてまえで運用しておるのでありますが、その他の立法におきましては未成年ということを二十歳までにいたしまして、この二歳の間隙を他の立法ではなかなか福祉の措置が講ぜられない場合に、この二歳をそれぞれの児童関係の立法で措置をするというような従来の慣例になっておるのでございまして、確かに十八歳に統一するということも一案でございますけれども、そのためには十九歳以上を何らかの、また別な体系の法律で見るのも一案でありますが、従来の慣例に従いまして、十九歳、二十歳というのは、児童関係の立法、おとなの関係の立法、それぞれの法源によって目的等が違いますから、児童に有利なように従来は措置しておるわけでございます。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 精神薄弱者福祉法は十八歳以上なんですね。そうしますと、どの法律もみんな十八歳を一つの限界点にしておるわけです。これだけ二十歳に持ってこられたということは問題だと思うのです。それならば、何も精神薄弱児とする必要はない。重度の者だったら非常に少ないのですから、精神薄弱者扶養手当法にしたらいいですよ。どうしてできなかったんですか。なぜ子供だけしなければならなかったのかということですよ。まさか、子供でないと児童局じゃなくて牛丸さんのほうへいくからということになると、私に言わせると牛丸さんのほうがぼやぼやしておったということになる。そうすると、これは「児」を「者」に直しても差しつかえないわけですな、理論的根拠はないんだから。
  131. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先ほども申しましたように、児童福祉の各種の立法で一応は十八歳までが児童というたてまえを貫いておるのでありますが、ただ、場合によりまして二年ほど年齢の延長をして、福祉の措置が講ぜられるようないろいろな立法例がございますから、それにならって今度の重度の精薄児は二十歳を限度にしたというようなことでございます。もちろん二十歳までは未成年、あるいはいままでの児童福祉の諸立法で二十歳までを児童としておる例がございますから、それ以上、二十歳をこしますとやはり問題かと思います。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、子供も入れて、重度の精神薄弱者というのは、全国にどの程度おりますか。
  133. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 私ども、この法案準備します段階においても、これは推定でございますが、大体薄弱者が四万、薄弱児のほうがたしか三万二千だと思いますが、そういう予想でこの計画をしたわけでございます。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じのように全部で七万でしょう。そうしますと、これは画竜点睛を欠いているんですよ。小林さんに対する補佐のしかたが悪かったということになる。私は党へ帰って主張して、「児」を「者」に変えますよ。これは当然こうやらなければならぬものなんですよ。それをやらなければならぬという理由を、私はいまから徐々に述べていきますからね。精神衛生法における精神障害者というのはどういうものが入りますか、これを一つ説明してください
  135. 若松栄一

    ○若松政府委員 精神衛生法障害者といいますのは、精神病者、精神薄弱及び精神病質者の三つのグループを申します。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、国民年金における精神障害という、今度の年金対象になるのはどういうものですか。この前やったんだから知っておるはずです。
  137. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは国民年金法及び児童扶養手当法の一部改正の第二条の一二に、「精神の障害」として、カッコして「精神病質、神経症及び精神薄弱によるものを除く。」ということでございますから、先ほど公衆衛生局長の申しました精神障害者の中でこの三つを除いたものでございます。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生省法律の中で、精神衛生の部面には精神薄弱者は入っているんですよ。精神障害は入っておる。ところが今度は山本君のほうの年金局になると、これは入っていないんです。こういう矛盾が出てきておるわけです。そうしますと、あなたのほうは両方を入れてもいいわけですよ。何も子供と限る必要はない。精神薄弱者は入っていないんですから。そうすると重度四万人の人は、おとなは救う方法がないでしょう。これが政策的な欠陥です。じょうずの手から水が漏れるというのはこのことです。論理的に言っても、向こうの若松さんの中の精神障害という場合には、薄弱者が入っている。一方、山本さんの年金の中には精神薄弱者は除いておる。あなたのほうでは、子供だけにして二十歳以下にして、二十歳以上は除いておる。二十歳以上はどこもどうにもならぬです。年金もだめだし、あなたのほうもだめだ、若松さんのほうだけが入っておる、こういうことでしょう。それならば入れてやるべきですよ。これだけ入れて何か隘路がありますか。
  139. 小林武治

    小林国務大臣 この問題は、私はここでしばしば申し上げたのでありますが、とにかくこういう制度そのものが大蔵省では絶対に認められない……。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 そんなことはないですよ。
  141. 小林武治

    小林国務大臣 いや、あるなしではない、そういう事実を申し上げているのです。そういうことで、最後まで大蔵省はこれを承認しない。最後の段階でようやく私と大蔵大臣の折衝で、とにかく針のめどの小さいところを通るためには、やむを得ず何かの点で、妥協と申しますか、話をつけなければならぬ、こういうことで、お話のように二十歳以上の精神薄弱者は除かれている。これは私は政治の面の非常に大きな欠陥だと思っております。しばしばこの席で申し上げておりまして、これは直さなければならぬ。いずれかに、とにかく入れなければならぬ、こういうことを厚生当局は強く考えておるのでありまして、お話のとおり、これはもう私どもとしても、このままでは絶対に推移せしめることはできない、こういうふうな考え方をいたしております。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生大臣の意向はよくわかったです。厚生大臣はぜひ入れなければならぬつもりだった。ところが大蔵省が認めなかった。だから、いまから大蔵大臣を呼んで、十二時までかかっても認めさせなければならぬ。これは一番証言があったですからね。  それからもう一つ大事なことは、国民年金については、精神薄弱者というものは——これは大臣の答弁ですよ、二十歳までに大体はっきりしてくる、したがって、二十歳以上の者を対象にする拠出制国民年金とのうらはらの関係で、精神薄弱者は年金対象にならないのだという断定をされているわけです。そうすると、この人たちは、四万人の成人の精神薄弱者は行きどころがないわけです。年金もアウト、それからこれは入れたいけれども大蔵省がだめでアウト、こうなるわけですね。だから、おそらくこれは与野党意見の一致を見ると思うのです。修正していいと思う。あるいは「児」を「者」に変えたらいいです。そうして「二十歳」を取ればいいでしょう。あとは所得制限。だから、法律としてはいいわけです。厚生省の意向はわかりましたから、あとは大蔵省に来てもらいます。これで一つ盲点がはっきりしたのですね。
  143. 小林武治

    小林国務大臣 私からあらためて申し上げておきますが、厚生省は折衝の経過においてそういうことを考えた。しかし政府はこういうものでまとめたので、この前も私は申し上げましたが、とにかく大蔵大臣も非常な御理解の上で、とにかくこの程度の話し合いができたということは、これは一つの非常に大きな前進ではないかと思うから、こういう向きのことで大蔵大臣が非常な御理解を示しておられるのに、この席であまり追及されることは、厚生省立場としてはぜひ何とかお考えを願いたい、こういうことをこの前にも申し上げておりますから、その点をひとつお願いをいたします。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 ただ、数が五十万も百万もおるというならば、これはここで無理かと思います。しかしわずか四万人ですからね。しかもこれは、年金対象にもならぬということは大臣が言明されている。われわれもそれはそうだと思うのです。重度精神の薄弱者は働く能力がないですからね。そうすると、働く能力がないものを、百円とか百五十円の掛け金、年金の保険料をかけさせるということは無理です。といって、生活保護にいかしていいかというと、生活保護にいかせるということは無理です。生活保護にいくということは、お金をもらうことはぐあいが悪いという概念があり、権利意識が日本ではまだ十分確立されていない。そこで、では重度の精神薄弱で、やはりこういう特殊な生活保護でないものを差し上げるのだ、こういうことならば社会保障的な概念でいけるのです。したがってこれはひとつ厚生大臣御心配なく、厚生大臣のメンツを汚すような言い方はいたしませんから、いまのように客観的に大体明らかになってきたのだから、それでひとつ攻めていって、少なくともこれは確立しなければならぬ。これはいつも私が言うように、野党の役割りというものはこういう点以外にないのです。いわゆる落ち穂拾いです。ミレーですかな、りっぱな絵をかいたあれですよ、あの落ち穂拾い以外にないのですよ。これで大体一つ目的を果たしたわけです。  それから二条の関係です。少し逐条的に問題点指摘しますが、二条に、手当の「支給を受けた者は、これをその趣旨に従って用いなければならない。」と書いてあるわけです。この趣旨に従うということは、一体どういうことなのかということです。手当の趣旨に従って金を使えということだと思うのです。御存じのとおり、老齢福祉年金があめ玉年金といわれたけれども、それはもらった年金が、一体どういうような目的で使用されておるかということを年金局で調査しております。必ずしも全部が全部その趣旨に従って使われていないのです。これは統計でいろいろ出ております。いま私、ここに持ってきておりませんが、使われていない。その趣旨に従ってこれを用いなければならぬということを、あなた方はどういうように概念として解釈しておるか。これは今後重度精神薄弱児手当を与えた場合に、世論調査というか、いろいろ調査をやりますね。その趣旨に従って使われておるかどうか、どういうことを目的として、ねらいとしてこれをおつくりになったのか。
  145. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは第二条に書いてありますように、「重度精神薄弱児生活の向上に寄与することを趣旨として」ということで、今度の手当の趣旨が明記してあるのであります。大体介護料的な意味を持つものというふうに私どもは解しております。したがいまして、重度の精神薄弱児の介護的なために用いてほしいという規定でございます。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 そうするとそれは介護に用いよ、こういうことですね。  それから、さいぜん河野さんもちょっと尋ねておりましたけれども、詳しく突っ込んでいかなかったようですが、この「重度精神薄弱児」という、重度ということの定義ですね。まず、重度精神薄弱児というのは二十歳未満ということが一つ、それから精神の発達が遅滞しているということ、日常生活において常時の介護を必要とする状態、こういう三つの条件が三条に書かれてあるわけですが、これだけではなかなか——末端でこの手当をいただこうとすれば、それぞれ詳細な診断書その他を出さなければいかぬと思うのです。したがってこれは、普通の内科や小児科医だけではどうにもならぬ場合が出てくると思うのです。そうすると、当然専門の精神科医の鑑定等が必要になってくると思うのです。これは一体どういうように重度というものを把握していくのか、それを少し具体的に御説明願いたいと思います。
  147. 黒木利克

    ○黒木政府委員 重度精神薄弱児の定義につきましては、河野委員の御質問にお答えしましたように、九人の専門家、これも精神科医、心理学者、それからケースワーカーにお願いをいたしまして、そこで詳細な判定の基準をつくりまして、ここに持ってきておりますが、これは先ほども申しましたように単にIQだけでは不十分であるということで、しかもこのIQも二〇以下になりますと測定はなかなかむずかしいものですから、そういう関係もありまして三五以下ということにしたのでありますが、まず従来の鈴木ビネー式とか、愛研式の知能検査表を使います。それから医学的には、精神衛生の医者あるいは小児科等の医者で精薄になりました原因を究明して、その後の乳児以来の今日までの経過を調べまして、現在の心身の状態なり障害の有無等について検診をし、それに基づきまして判定をする基準をつくっておるのでございます。それからそれだけでも不十分でございますから、社会生活能力検査というものをやることにしまして、新しく重度精神薄弱児社会生活能力調査表というものをつくりまして、従来の牛島式、遠城寺式というようなものを採用いたしまして、これによりまして発育、成熟の程度というものを判定することにいたしておるのでございまして、大体精神科医、心理の臨床の専門家、それと社会事業家、この三人のチームでそれぞれの所定の様式に書き込みまして、たとえば例のプロフィール方式と申しますか、一つのワクの中に書き込みまして、そのワクがたとえば二十一以上埋まれば重度であるというように、簡単に判定のできる方式を新しく編み出しておるわけであります。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 九人の専門家によって——そういう基準はわかるのです。問題は、全国に三万人の重度精薄児がちらばっておるわけですから、それが末端でどういうふうに把握されて診断が上がってくるかということをお聞きしておるわけです、そうしますと、各県に一人くらいの特別の鑑定医を置いてもどうにもならぬわけです。したがって末端でそれが具体的にどういうように処理をされるのか。その場合に、そういうむずかしいIQから、知能検査の表から、精神薄弱児の社会生活能力調査表というような、非常にむずかしいいろいろな検査をやってこなければならぬ。そうすると、一体そういう診断費用は幾らくらいのものを払えばいいことになりますか。
  149. 黒木利克

    ○黒木政府委員 御意見のように、あまりむずかしくなりますと第一線における能力の限界もありますから、そこでこの九人の専門家に一応の方式をきめてもらいまして、実は国立秩父学園に参りまして一応どういうふうなことになっておるのか、あるいは地方児童相談所レベルの職員でできるのか、私もいろいろ立ち会ってやりました結果、これでいけるというような方式ができたのであります。したがいまして現在の児童相談所の心理判定員、児童相談所におります児童福祉司、それに精神鑑定なり精神衛生の精神科の医者が参加すれば可能な判定の方式をつくり出したのでございますから、実際にやってみまして、これでいけるというようなことで始めようと思っておるわけであります。  なお、この費用につきましては、この事務費の予算措置の中に組んでございますが、まだこのために幾らというようなはっきりした単価は出していないのでございます。従来の国民年金法あるいは児童扶養手当法等の実績等を参考にして一応の積算単価はつくっておりますが、これは大体の積算単価でございますから、立法は実情に合うようにいたしたわけであります。
  150. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますれば、これは普通の医師の手にかからなくても、児童相談所単位で片がついている、そういうことですね。
  151. 黒木利克

    ○黒木政府委員 さようでございます。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 それから四条に支給の条件が書いてあるわけです。そうすると、その場合の三項の三をごらんになりますと、「父又は母の死亡について支給される公的年金給付を受けることができるとき。ただし、その金額につきその支給が停止されているときを除く。」こうなっているわけです。おとうさん、おかあさんがなくなったときに公的年金があると支給しなくなるんですね。これは、私は人情の機微を知らない政治だと思うのです。いいですか、重度精神薄弱児というのは非常に手がかかる。施設に入れておったって、長谷川さんや伊藤さんがるる言っておったように、給料を出してもそれを看護する人はいないのです。なかなか集まらないのです。そうすると、在宅で重度精神薄弱児を介護しておった。だから千円いただくことになる。ところがそのおとうさん、おかあさんがなくなったといったら、そのおとうさん、おかあさんにわずかな公的年金が入ってくる。いま日本は、公的年金はわずかですよ。そうすると、その場合にはその子供にはやらぬのだということになれば、その子供は無一文です、金を持っていけないのです。そうすると、一体親身になって世話してくれる人がおるのかどうかということです。はなはだ経済的なものの言い方をするけれども、やはりここは、おじいちゃん、おばあちゃんがあめ玉年金でももらっておけば、孫に幾らかの小づかいやキャラメルでも買うことができる。そうすると、おとうさん、おかあさんのきげんもいいから、両親におじいちゃん、おばあちゃんも大事にされる、こういう関係があるわけでしょう。そうすると、みなしごになったその精神薄弱児が、おとうさん、おかあさんのたとえば遺児年金があったからといって、残したからといって、その重度精神薄弱児手当を切るということは、あまりにも政治の機微をわきまえていないと私は思うのですが、こういうことまでする必要はない。この三号は削るべきだと思うのです。これはどうですか。
  153. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに御意見のように、併給の問題は、この第三項の三号のみならず、老齢年金をもらっておる人が精薄の子女を引き取った場合にも、手当が出ないというようないろいろな欠陥があるわけでありますが、これは併給問題として、国民年金法なり厚生年金法なり、いろいろなこういう手当なり年金の体系の中で根本的に改善をしなければならない問題だ。単にこういうような法律だけで解決するには問題が大き過ぎるというようなことで、将来こういうことを考える、検討するということにして、今回は併給問題は、ただし書きで一部認められてはおりますが、全面的な併給をするというようなことにはならなかったのでございます。
  154. 滝井義高

    ○滝井委員 こういう問題は非常に大きな問題だから根本的に解決するというけれども、根本的な解決をする日はなかなか来ないのです。だからやり方としては、水上さんのああいう問題もあったこの機会にこれをお出しになったのですから、この機会にこそ、こういうところに突破口をつくっておかなければ根本的な解決はできないと私たちは思うのです。そういう意味で、これはあなた方ヒューマニズムがあったらぜひやりたいと思うが、根本的なとおっしゃるが、やりたいのはやまやまなんですよ。ただ、うしろの大蔵省が髪を引っぱってうまくいかぬ、こういうことだろうと思うのですよ。だから、こういうところはやはりやるべきだと思う。子供は三万人しかいないのですから、今度われわれがおとなを四万入れて、七万人ですよ。それは軍人恩給その他をやっているのに比べたら、これをやるべきですよ。あそこで与党があれだけのふんばりをするんですから、ここでもう一つふんばってもらうように言ったらどうですか。われわれも言いますからね。
  155. 黒木利克

    ○黒木政府委員 厚生省としては、こういう併給の問題、加算の問題あるいは差額の支給の問題、できるだけ年金内容手当内容をよくしたいという一念であります。また大蔵省も、必ずしも全面的に併給なり加算なり差額支給に反対をしておるわけではないのでございまして、これは御可決をいただきました児童扶養手当法におきましても、むしろ大蔵省のほうから、何とかこういう差額支給等につきまして考慮はできないかというような提案すらあったほどでありますが、いろいろ研究はしてみましたけれども、やはり抜本的にやらないと、こそく的にやっておると差しさわりがいろいろありまして、かえって一時の偸安と申しますか、一時的なことで満足するようなことになる。やはり機会を見て抜本的にやる必要がある。またその時期も近づいておるのではないか。特に児童手当等の立案等をしてみますと、こういう問題はやはり早く解決をしなければ、なかなか児童手当の実施というものも本格的にできないのではないかというので、抜本的解決を近い将来に予期して、実はとりあえずただし書きの政令事項で当面のことを解決するということにとどまったのでございます。
  156. 滝井義高

    ○滝井委員 黒木さん、抜本的抜本的と言うけれども、そもそもこの法律自身が枝葉的でしょう。だから枝葉でいいんですよ。何も他のものまであなたが御心配にならなくてもいいんだし、あなたの領域のここだけをひとつやれということですよ。抜本的というならば、初めにおとなをあなたのほうに入れてこなければいかぬ。ところがおとなは入れずに、十八歳というのを二十歳と、二歳だけふやしてやっておるわけです。末梢的なことだけおやりになったわけだから、もう四万人を入れるのならば、重度精神薄弱児についても抜本的にできたはずです。金額は少ないですよ。しかし制度としてはできたわけですよ。それをやっていないのだから、この法律自身が抜本的でないわけだ。したがって、何もこのところだけを抜本的と言う必要はないので、この四条の三項の三号のところも、私はやはり一つの修正点だと思うのです。これはわが党の部会でどうせいまからやるのですから、私主張したいと思う。おとうさん、おかあさんがなくなって子供に遺児年金がきておった。ところが、その子供が重度の精神薄弱児だったから、あいつはもう金を切るんだという政策は、二千八百五十億円、地主のためには目の色を変えてもんでいらっしゃる自民党さんにしては、少し不人情だという気がしますね。そうでしょう。あなた方だってそう思うでしょう。これはやっぱりがんばるところでしょう。  それから、その次も同じです。これはもう再三再四にわたって言ってきているので、いずれ労働災害防止法でも言わなければならぬところです。一つの例が、労災打ち切り補償をもらっておった。おとうさんは労災打ち切り補償をもらって、脊椎の骨折があって動けないんだ。そこに重度の精神薄弱の子供がおるといったときに、これは六年間もらえないんですからね。こんなばかなこともないですよ。おとうさんは脊椎骨折で動けない、あるいはけい肺で動けないんだ、そこに重度精神薄弱の子供がおるときに、おとうさんがたまたまそれをもらっておったからといって、それを打ち切るということはないと思うんですよ。私はあなた方がほんとうにヒューマニズムなのかどうか疑いたくなる、おこりたくなる、義憤を感ずる。こういうものを、またよく平気で自民党の政調は通すものだと思うのですよ。これはもう、どのくらいわれわれが言っているかわからぬ。労働省も、何とかしたい、何とかしたいと言っている。労働省が何とかしたいと言うのだから、その前に厚生省は当然踏切るべきですよ。前には厚生省は、私が言って踏み切ってくれた。それはいままでは、厚生年金をもらっている夫がなくなると、四十歳以上の未亡人でなければ金をもらえなかった。未亡人として取り扱えなかったのです。今度は、強硬に言ったら、厚生年金では年齢を撤廃してくれていますよ。それと同じです。これも私はそのとき一緒に主張しておる。だから、こういう点はもう少し厚生省が踏み切ってもらわなければ、一体だれが社会保障の前進をやるのですか。特に、かわいい子供のために、しかも子供でも非常に知能指数の低い、いわゆる日本語で言えば白痴でしょう。白痴の子供に千円やるのに、脊椎骨折をしたり、けい肺のおとうさんが労災で金をもらっておったら六年間やらぬなんという政策が、一体まかり通りますか。こういうのを平気でまた削る大蔵省も大蔵省だと思うですよ。これはいまの三項三号よりか不人情です。だから私は、ここは特に赤まるをつけておる。三は黒まるだけれども、これは特に赤まるですよ。これはもう私のヒューマニズムが了承できぬですよ。こういうことでは、これはおそらく自民党さんだってそうだと思う。金が要るからとかいって、抜本的な一こういうことは抜本的なことだと言うけれども、こういうところからやらなければ話にならぬですよ。これは大蔵大臣でなくても、うしろに船後さんがおりますけれども、船後さんどうですか、このくらいのことは。四条の三項の三と四があります。私は三も四も認めさせるべきだと思うのですが、まず三と四とどっちをとるかといったら四です。四をやっぱりやってもらわなければいかぬ。もしこれ、どっちかを選びなさいというなら四だと思うのですが、これは船後さんのほうはどうですか。
  157. 船後正道

    ○船後説明員 重度精神薄弱児扶養手当と公的年金との併給につきましては、先ほど黒木局長から御答弁ございましたように、この手当のみならず、これに先行しております児童扶養手当等と公的年金との関係、あるいは福祉年金体系内における諸問題、こういった制度的な問題がからみまして、この扶養手当におきましても従前の例に準じまして、併給は行なわないというたてまえをとっておるわけでございます。いま御指摘の三項四号につきましては、これはまあ公的年金の概念には入っておりませんけれども、労災保険の中には公的年金給付に準ずるような給付になっておるわけでありまして、従来の児童扶養手当体系におきましても、これと全く同じような支給制限規定があるわけでございます。実態に即してどのように考えていくのが妥当であるか、これは現行の体系が絶対であるということは必ずしも言えないと思うのでありますが、制度的に各方面から検討しなければならぬ問題だ、かように考えております。
  158. 滝井義高

    ○滝井委員 各方面から検討しなければならぬけれども、おとうさんが脊椎骨折で動けないのだという場合と、死んだ場合と、どっちがよけいに補償をくれるかというと、死んだ場合は千日分、動けない場合には千二百日分くれるのですよ。どうしてかと言うと、これは奥さんが介護しなければならぬ。だから奥さんがその間働けないから、死んだ人が千日分で、脊椎骨折で働けなくなった患者は千二百日分の補償が出る。そういう二百日分よけいにやっているという、まずそういう政策が一つあるわけです。そこにもし重度精神薄弱児がおった場合には、その千円やるという政策を、これは併給するのが当然です。その場合にはこれをやらないのだ、その千二百日分もらったおとうさんが、そのもらった中からその子供の養育費を出しなさいということは、私は無理だと思うのです。そうでしょう。こんな場合は少ないから、ここであっさり認めていいですよ、そんなに予算をよけい食うわけではないのですから。いまの予算の移流用でできるのです。おとうさんが脊椎骨折になっておって、そこに重度精神薄弱児がおるなんということは非常にまれです。そういう場合には認めぬということになると、この法律は通すわけにいかない。ヒューマニズムがちっともないじゃないですか。大臣どうですか、これは当然修正すべきところでしょう。
  159. 小林武治

    小林国務大臣 これはやっぱりいろいろ欠陥のあることはわかっておりますが、私ども、まずもってこういう出発をして、これから改善をしていきたい、こういうことで出ておるのでありまして、御意見等は十分承っておきたいと思います。
  160. 滝井義高

    ○滝井委員 御意見を承っておくというけれども、私、当然これは修正すべきところだと思うのです。それは、けい肺になったり脊椎骨折であって動けぬというときに、いまわずかの金をもらっておって、これが少ないというので上げてくれという要求が非常に熾烈です。二百日分と二百四十日分——通院と入院でそれぞれ違います。第一種給付、第二種給付となっておる。そういう重いような場合に子供精神薄弱でどうにもならぬというときに、奥さんは御主人にかかりっきりでやっておる、子供を見れやしないですよ。そうすると、どこかに子供を預けなければならぬ子供を預けるには金が要りますよ。そういう場合にさえ、千円という金を出さぬということはないですよ。これはあなた方、結局じょうずの手から水が漏れておるのです、私に言わせれば。まさか、こういうことを大蔵省に交渉して、はねられるはずはないですよ。あなた方のおそらくミスだったと私は思うのです。
  161. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は先ほどお話が出ました児童扶養手当法にいたしましても、国民年金の補完的な法律でありますし、また重度のこの精神薄弱児の手当法も、いわば本格的な児童手当法に至る緊急措置といいますか、経過的な措置でございまして、こういうような性格の法律国民年金法の根本的な方針に影響を与え、左右するというようなことはどうかと思うのでありまして、おそらく先生のおっしゃる意味は、この年金あるいは手当基本法たる国民年金法の改正の問題ではないかと思うのでありまして、先ほど申されましたこの精薄児の手当法の中におとなを当然入れるべきじゃないかという御意見も、これは八木委員の御意見によりますと、むしろ国民年金法の中で——この精薄というものは器質的な精神障害と考えて、むしろ国民年金法で解決をすべきではないかという御意見もあるくらいでございまして、私のほうは、おとなは精神年齢が子供だから、この重度精薄児の手当の中へ取り入れていきたいというようなことでおるわけでありますが、いまの段階でもいろいろこういうような議論があるところでございますから、ひとつこういう問題は、国民年金法の抜本的な改正機会改正するのが至当ではないか、かように考えて、今回はあまり深入りをしなかったという事情でございます。
  162. 滝井義高

    ○滝井委員 国民年金に二十歳以上を入れるべきだという主張が八木委員からあったというけれども大臣は、それは精神薄弱者は拠出制年金にはなじまないものであるということを断言されておるのですよ。だから、断言されたことを私は認めて言っておるわけです。あなた方のベースで議論をしておるわけです。大臣は、この前から私の質問に対してそう答えているわけです。だから私はそれを一応認めて、それならばこちらに入れるべきでしょう。金をくれるならどこでもいいです。何なら、年金でやるというならこの年金の附則を修正してもいいですよ。年金で二十歳以上をやるというのを消せばいいのです。このカッコの中から「精神薄弱者」というのを消せばいいのですよ。そうして精神障害者の中に入れればいいのですから、精神衛生法と同じ形をとってもいいのですから、あなた方がそういう意思表示ならばそれでもいいです。どららでもお金がもらえる形態ならば、法律の形態というものは、そういまの場合たいして問題でない。どうせばらばらな、ちぐはぐな法律が多いのですから……。問題は、いかにしてその精神薄弱者の生活が豊かになり、福祉が前進するかということが問題なんですからね。だから、そういう点で、ただ大臣が、国民年金にはなじまないという答弁をされておるから、私はそれを主張しておるだけです。この前もそれで法律が通ったのですから……。  それから、抜本的、抜本的とおっしゃるけれども、いまの日本の財政事情から考えて、国民年金の抜本的な改正がそう気やすくできるような客観情勢ではないですよ。あなた方も御存じのとおりですよ。これが厚生年金程度にいくためには、もうわれわれの額がここに上がるぐらいの時代にならないととてもだめですよ。それまで代議士であるかどうかわからぬけれども、そう簡単にいくような客観情勢ではないですよ。そうすると、私たちは、こそく的ではあるかもしれないけれども、一歩一歩前進をさせていく以外にはないという考え方なんですよ。  それから、あなたは児童手当のことを盛んに言われる、児童手当がそうだからと言うけれども児童手当とこれとは違うわけでしょう。児童手当というのは、御存じのとおり御主人とは生き別れですからね。そうして子供精神薄弱ではないわけですね。いわば健全な子供なんです。精薄よりか健全な子供なんです。片方は重度精薄でしょう。重度がついているのですよ。介護を必要とするものでしょう。あなた方が定義でちゃんと書き並べておる。しかも特別の診断を必要とする、特別のケースですよ。しかも珍しいケースです。重度なんというものは、百四、五十万も子供が生まれる中で、重度のものというのは二十歳以下で三万人くらいしかいないのですから、非常に少ない数でしょう。だから、あとでその児童手当との関係もだんだん問題にしていきますけれども制度的には似ておりますが、児童手当とは比較さるべき筋合いのものではないのです。私の論理は、私はあなたに負けてはおらぬと思うのです。だから、そういう点では、あなたはおそらく私と全く同意見だと言いたいところでしょう。言いたいところだけれども、この原案を出した責任者として、つじつまを合わせなければならぬというので、あれこれと並べているのだろうと思いますけれども、これはやはり理論闘争ですから、理論闘争で負けたほうが負けましたと言ってすなおに修正をすることが、民主国会のあり方なんです。われわれも、あなた方の理論に負ければ、負けましたということで通すわけですから。きょうは私は負けておるとは思われないのです。あなたの理論のほうが無理ですよ。いまの三項の四号については、これは当然修正すべきところです。こういうところから修正をしなかったら、これは脊椎骨折があっておとうさんが病院に寝込んでおって、膀胱直腸障害があって大便も小便もずっと出流しで、看護人がいなければならぬ、そこに重度精神薄弱児があった場合に月に百円削るなんて、そんなばかなことはだれが考えたってないですよ。  それから、この四条の三項五号の意味は、これはどういうことですか。これをちょっと説明してください
  163. 黒木利克

    ○黒木政府委員 第四条の第三項五号は、重度の精薄の子供の養育者、これは同居をしていまして、母と子の生計維持者であり、また重症の子の看護者でありますものが、たとえば祖父といたします。これに対しまして、この祖父が、たとえば精神障害者でこの祖父の世帯に母がおりまして、その母が重症精薄の子供を持っておった。その場合に母が看護していない、たとえば精神障害者であったという場合に、母子福祉年金の支給の基礎となっておりますので、この重症精薄の子は本手当の支給対象精神薄弱児とならないというような規定でございます。
  164. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、母子年金をもらっておるときには重度精神薄弱児手当はやりませんよ、こういうことですね。これは少しは理屈があるようであるけれども、これもやはりちょっと問題ですね。それでは、ちょっとここで問題にしましょうか。母子福祉年金は千三百円ですね。それから児童扶養手当は千円ですね。この重度のほうも千円ですね。このように千三百円、千円、千円と違うのは、これはどういう理論的根拠から違うのですか。
  165. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは実は何も議論はないのでありまして、児童扶養手当の千円をそのままここで採用したにすぎません。当初は、障害年金千八百円でありますが、一種の障害者でございますから、そういうことも考えたのでありますが、結局児童扶養手当の先例によりまして千円にしたにすぎないのでございます。
  166. 滝井義高

    ○滝井委員 理論的根拠はないとしますと、これは千三百円でもいいことになるわけですね。そうしますと、いまのように児童手当をもらっておったということで、その場合にその子が重度の精神薄弱児だったら、これはやはり少なくとも三百円とかなんとかいう加算の制度はつくるべきだと私は思うのですよ、これはそう何もかにもよけいな欲ばった主張はしませんけれども。四号ほどの欲ばった主張はしませんけれども、これも一つ問題点だと思うのです。  これはいずれ次の機会に譲るとして、そうすると、その次の里親との関係です。里親との関係は、里親に子供を預けた場合には国がどのくらいの金をくれるのです。
  167. 黒木利克

    ○黒木政府委員 三十九年度の予算では、たしか五千円こすかと思います。五千円程度だと思います。
  168. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ここもやはり前と同じように問題があるわけですね。普通の児童だったら、そう手はかからぬわけです。重度の者は非常に手がかかる。そうしますと、重度の者を里親として預かる人は少なくなるわけですね。こういうものについては、私はやはり、前と同じように加算をやるという考え方になっていかなければいかぬと思うのです。健全な子供と重度の精神薄弱児とは違うのだということでこの法律を出しておるのですからね。もしあなた方がそういう理論でいくならば、先日も八木さん等も言われておったように、当然これは児童手当法の中に入れるべきものなのです。しかしこれは、大臣としても、自分が大臣の間に一つ何か記念碑を建てておきたいというお気持ちもあったでしょう。私、政治家だからそのお気持ちはよくわかります。だから、これはいいのです。小林厚生大臣の時代に重度精神薄弱児扶養手当法という法律ができたのだ。これは児童手当法の中に入れられてしまうと、小林さんの金字塔は建たぬわけですよ。だから、そういう点では、私政治家だからいいと思うのです。いいと思うのだけれども、それならば、児童手当とは前進をして違うのですよということで、里親のところに幾ぶんの加算をやはりつけるべきだと思うのです。そうでないとこれは特色がないですよ。児童手当と同じことになってしまう。そうでしょう。そういう点では、これはじょうずの手から水が漏れるという、こういう形があるわけです。まあ欠陥だけ指摘しておりますが、どうしてもがんばらなければならぬところは二つ三つはがんばりますから……。  そうしますと、文部省にちょっとここでお尋ねするわけですが、文部省所管の特殊学級というのですか、特殊学校というのですか、学級と学校と二つあるわけでしょうが、どの程度の精薄児が一体現在収容されて教育を受けておるかということです。
  169. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 これは三十七年度の統計でちょっと古いのでございますが、現在養護学校で二千八百五十名、特殊学級で四万八百二十六名、そういう数字になっております。合計いたしまして四万三千六百七十六名。その後、特殊学級は三十八年度に七百五十七学級、それから三十九年度に一千学級ふえておりますので、一学級約十五人といたしましても二万人以上のものがふえておるような形になっております。
  170. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、児童福祉法と学校教育法における特殊学級ですが、これも三十九年度で千学級ということになって相当なものなのですが、これは児童福祉法との関係は一体どういう形になっておりますか。児童福祉法というのは、十八歳未満の精薄児を対象にしておるわけですね。それと学校教育との関係です。これは十分連携をとって一貫した教育的な指導方針をとっておるのか、児童福祉法と学校教育における特殊学級との関係は何かあるのかどうかということです。
  171. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 特殊学級の関係は、おそらく児童福祉法施設との関係はあまりないんじゃないかと思いますが、養護学校との関係におきまして、児童福祉施設との関連がだいぶあるんじゃないかと思います。児童福祉施設に来られる子供さんが学校に通います場合には、養護学校等が隣接しているような付属施設がございまして、そこから通うというような形になっておるようでございます。したがいまして、日常生活児童福祉施設のほうでお願いしておりますし、学校教育につきましては学校のほうで行なう、そういう連携のしかたであろうと思います。
  172. 滝井義高

    ○滝井委員 私も県会議員の当時、それを経験したことがあって調べたことがあるのですが、寮は児童福祉施設、それから学校のほうは、文部省、教育委員会所管の特殊学級ということになっておるのです。そして施設の中の教育方針と学校のほうの教育方針とが一致しないと、たいへんなことになるわけですね。この間の連携が一体どうやられておるかということです。私の見に行ったところでも非常に問題があった。両者に必ずしも意見の一致がないのです。これについて両者の間に連絡会議その他を持っておやりになっておるのかどうかということです。同時に、もう一つ出てくるわけです。何が出てくるかというと、十八歳以上になると、精神薄弱者福祉法によって今度は別な施設になるわけです。そこで、子供のときからずっとおとなになるこの三つの法律関係が一貫した体系のもとに運営をされておらぬと、ちぐはぐな人間になるわけです。何も愛国心や道徳心の教育ばかりじゃない、全般的な教育の体系というか、福祉の政策というものが、一貫をしておらなければならぬことになるわけです。かつて私はこの問題について、松永先生が文部大臣のときに質問したことがある。ところが、どうも文部省と厚生省とうまくいってなかったのです。きょうはあれからもう四、五年以上たちますから、何か両者の間にきちっとした連携を持ってやっているのかどうかということです。まず牛丸さんのところが十八歳以上を扱うならばあなたのほうが十八歳以下、そして義務教育のところは相当なものを扱っておるわけです。いま言ったように二万人以上おるわけです。だからここらの三者の関係というものがうまくいってないと、精薄の対策というものがうまくいってないことになるわけです。三者の間が、予算その他においてもきちっとした連携をとっておらなければならぬことになるわけです。一体三者の間に何か連携をとって、協議会でも開いてやっておるのかどうかということです。
  173. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は児童福祉法の精薄の施設におきましては、教育可能な者、訓練可能な者あるいは教育も訓練も不可能な者、この三つの種類の児童収容保護いたしておったわけでありますが、文部省のほうの学校教育法に基づきまして、義務教育に準じまして特殊学校、特殊養護学校という特殊教育がだんだん伸展をしてまいりまして、児童福祉施設の中で教育可能な児童は、児童福祉施設からだんだん養護学校のほうにお願いをするという経過をいまとっておるのであります。特に精薄通園施設におきましては、文部省の特殊教育がだんだん伸展するに従いましてだんだん性格が変わりまして、むしろ学齢前の子供あるいは教育不可能な子供、しかし訓練可能な子供を扱うというようなことで、文部省と厚生省児童局との間には、この施設の取り扱う児童につきましてのいまのような関係がございまして、当然両者が協力をしてやっておるわけなのでありますが、社会局の関係では、義務教育の関係が済んだあとの段階でありますから、むしろ労働省の職業訓練、職業教育との関連が出てまいります。しかし、御指摘のように確かに精薄者対策につきまして各省それぞれの所管がございまして、この間が、体系化とか総合化とかいう意味において若干の間隙のあることは事実でございますが、それぞれの責任の範囲内におきまして力を尽くし、協力をしておるという現状でございます。
  174. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっといまの答弁、はっきりしなかったのです。十八歳未満の精薄については、児童福祉法でやっていかれるわけでしょう。そうしますと、十八歳以上になると精神衛生法が今度これに加わってくるわけですね、この措置入院その他の問題が出てきますから。それから施設としては、精神薄弱者福祉法で十八歳以上の施設が出るわけでしょう。そうすると、いま義務教育のほうは、あなたのほうの施設と直結しているのが相当あるのです。さいぜん言ったように、寮の役割りを演じているのは児童福祉法施設がやっているわけです。そして教育訓練のほうは学校でやる、文部省になっておるわけです。だから厚生省方針と文部省の方針とは、絶えず一致していなければいかぬわけです。そこの連絡がうまくいっておりますか、こういうことなのです。同時にそのことは、今度は子供は十八歳以上になるのだから、なった場合に牛丸さんのところの施設さいぜん御説明になっていたように、おとなの施設は少ないのですから入りようがない。そうすると、ここで中断されることになる。まず児童局と文部省との連携を強化して、今度さらに十八歳以上になったときに何らかの措置をやらなければならぬ。そうすると施設はない、社会にほうり出す、ほうり出せばライシャワー事件みたいなものが起こってくる可能性があるわけでしょう。だから今度は戸口調査をやる、警察を介入させるということになるから、河野先生からおこられることになるわけです。そこらあたりを、もう少しきちっとした、一貫したものにする必要がある。そのためには、何も精神衛生法を抜本的に検討するばかりでなくて、いまや学校教育法と児童福祉法精神薄弱者福祉法、精神衛生法、これらの法律を全部一貫して検討しなければならぬ時代がやってきているということなのです。それを精神衛生法だけをあわせてやるということは間違いだ、むしろ精神衛生法と他の学校教育法までひっくるめたものでやる必要があるのじゃないか、そういう時代に来ているのです。しかも、こういうようにストレスが激しくなって太平洋ベルト地帯にたくさん人が集まって、そうしてどんどん自動車が多くなって亜硫酸ガスが舞い上がってくるというようなことになれば、人間というものはなかなかうまく生きていけぬのです。いらいらしてしまうのです。そういう中で子供が育つのですから、いい子供は育たないですよ。私、いつも言うように、東京に三代おったら、三代目は生存競争に負けてルンペンか何かにならなければならない、そうすると、いなかから生きのいいのが来て東京の天下を治める、また三代くらいたったらかわる、こういう形になっておるのです。それでは民族の逆淘汰の起こる可能性も出てくるですね。教養のある頭のいい者の子供が、からだが弱いためにだめになってしまうのだから。そしてそれが頭だけ鋭くて肉体が弱いと、精神もどんどん弱くなるのです。だんだんそういう形になる。女は、ヒップというんですか、小さくなって子供を産めなくなっちゃう。東京の人を見てごらんなさいよ、私みたいにとは言わぬけれども、みんな色が青くてつやがないです。生気はつらつとしておらぬですよ。そういう点ではやはりもう少し民族の将来を考えて、こういう法律をそれぞれ各省割拠して、児童局だ、社会局だ、文部省だといってわが城を守ることなく、ひとつ三者というか、若松さんを入れたら四者だ、四者がざっくばらんに話し合って、そうして日本の精神薄弱者の対策、教育施設、これらのものをぴしっとやる必要がある、こういうことなのです。これは児童局ばかりが頭を振っておったってしようがない。大臣にどうするかという方針を出してもらわなければならない。最近は一週間か十日ごしには厚生省のものが新聞のトップに載るから、精神薄弱児についても、そういう一貫した政策を灘尾さんと肝胆相照らして新聞のトップ記事に載せて、そして来年度予算編成には実行していく。精神衛生法改正なんというものはゆっくりひとつその総合的な中で考える、あわてる必要はない。ライシャワーが刺されたからといってあわてると、また痛くもない腹を探られて、アメリカ従属だと言われますよ。だから、そういうことでなくて、ひとつがっちりしりを落ちつけて、頭も落ちつけて考えてもらうということです。大臣どうですか。
  175. 小林武治

    小林国務大臣 よくわかりました。
  176. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひひとつそういうことにしてください。それから文部省も、あなたのほうは児童局と連絡をとっておりますか。
  177. 岩間英太郎

    ○岩間説明員 絶えずお願いしております。
  178. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ十分連絡をして、われわれも言うだけがあれじゃないですから、よくわかったと言うから修正すべきところは修正さしてもらって、ひとつ通すようにしてもらいたいと思います。では文部省、けっこうです。  次は、この手当の額は、子供重度精神薄弱児であって、それが二人おるときは二をかけて二千円にする、こういうことなんですね。——それはそうだということです。  そうしますと、重度という認定の問題ですが、これは法文で知事がやることになっておるわけですね。したがって、児童相談所長が知事にかわって認定をするということになるのか、それとも児童相談所における専門的な医師が——児童相談所には実はそういう専門的医師は私のところなんかいないのですが、認定をして、県知事にその書類を出すのですね。
  179. 黒木利克

    ○黒木政府委員 必ずしも児童相談所の職員と限りませんで、心理判定員と児童福祉司がおるわけですが、精神衛生の医者は、もよりの病院なり開業しておる診療所のお医者さんをお願いするというたてまえでおります。それから最終的な認定は知事がいたしますから、書類をつくりました上で県にそれを提出しまして、正式の認定をするということになります。
  180. 滝井義高

    ○滝井委員 この十二条ですね、「所得の範囲及びその額の計算方法は、政令で定める。」という、政令で定める基本方針はどういう方針ですか。
  181. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは従来の国民年金法なり児童扶養手当法に全く同じ方法で、従来やっておる方法をそのまま踏襲するつもりでございます。
  182. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、四十万円からずっと六十五万円までで、所得税法の改正のたびごとにそれが自動的に改正をされていく、こういうことなんですね。
  183. 黒木利克

    ○黒木政府委員 さようでございます。
  184. 滝井義高

    ○滝井委員 それから十七条ですが、異議の申し立て、都道府県知事のした手当の支給に関する処分に不服がある者は、都道府県知事にまた異議の申し立てをすることになっている。知事がやっておって知事に異議の申し立てというのは、ちょっとおかしいと思う。これは社会保険審査官及び審査会法でやるわけにはいかぬのですか。
  185. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これも従来の国民年金法なり児童扶養手当法の条章をそのまま踏襲いたしたのでございますから、またいろいろ検討の余地はあろうかと思いますが、他の法案との関係もありますから、関係部局と検討してみたいと思います。
  186. 滝井義高

    ○滝井委員 こういう制度は、知事がした処分に対して知事にまた異議の申請をやるということは、われわれ児童手当についてちょっと不勉強だったと思いますけれども、やはり第三者機関にやるほうがいい。そのためには、幸い社会保険関係厚生省は中央に社会保険審査会があり、県には審査官がおりますから、そこにやらしたほうがいいのではないか。そして不服の審査をしてもらう、こういう形にするほうが——知事が自分でやった処分に対して自分に不平を持ってこいというのも、いま民主的な公選知事ですから悪くないけれども、別の機関でやったほうがいいのじゃないか。これは社会保険のほうでやっても別に差しつかえないわけです。どうしてそう言うかというと、さいぜん以来私が御指摘を申し上げておりますように、他の制度との併給を全部禁じておるでしょう。第三条の第二項に、「この法律において「公的年金給付」とは、」ということで、ずっと十六まで書いてありますね。こういうのは社会保険に関係あるものが相当ある。船員保険とか、国民年金とか、厚生年金とか、国家公務員共済組合とかあるわけです。だから私は、そういう社会保険審査官及び審査会で苦情の処理をやる、こういうことのほうがいいような感じがする。他の法律にあるということでなくてやってもらいたいと思うのです。  それから事務費の交付です。二十一条で事務の処理に必要な費用を交付することになっておるわけです。ことしの予算を見ると、三万有余の重度精神薄弱児扶養手当一億六千五百十四万九千円、支給金一億二千二百八十二万円、その他として四千二百三十二万九千円あるわけです。おそらくその他のこの四千二百三十二万九千円が事務費ではないかと思うのですが、事務費というのは一体どういう基準で交付することになるのですか。たとえば被保険者一人について百三十円とか百五十円とか、国民保険等はそういう形になっていますね。これはどういう基準で交付することになるのですか。
  187. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これも従来の児童扶養手当法の事務費と同じように、新しく認定する場合いろいろ届け出の受理あるいは継続の場合がございますから、それによりましてそれぞれ単価をきめまして交付するという方針でございます。
  188. 滝井義高

    ○滝井委員 その単価は何の基準できめるのですか。一人当たり幾らくらい交付することになるのですか。
  189. 黒木利克

    ○黒木政府委員 受給者一人当たりでございますが、新規認定の単価は百六十二円四十七銭、平常業務の単価は二百五十二円五十三銭、これは従来の児童扶養手当等の実績によりまして、こういう単価をきめておるのでございます。
  190. 滝井義高

    ○滝井委員 全国で三万人少ししか重度の子供はいないわけです。そうしますと、下からそれぞれの認定の手続をやって上がってこないとわからないわけですね。前もって市町村は調査しなければならぬわけですから、まず事務費を全国の三千有余の市町村にずっと配るわけですか。どういう形でこの四千二百三十二万九千円というのは使うことになるのですか。
  191. 黒木利克

    ○黒木政府委員 ただいまのは都道府県分でございますが、市町村分の新規認定分は単価が七十円でございます。これは児童扶養手当法のやり方と全く同じでございますが、御指摘のように、児童扶養手当法の事務費につきましても、件数の少ない町村におきましては、わずかな金しか参りませんから、いろいろ問題があるのでありまして、これは来年度予算でひとつこういう点の是正をするような予算要求をしてみたいと思います。わずか数件しかなくて七十円の単価をかけますと、問題にもならないのでありますが、それをどういうふうにしたが合理的か、いま検討をいたしておるわけでございます。
  192. 滝井義高

    ○滝井委員 まず第一に、基本的に全国の三千有余の市町村に対して、あるいは四十六の都道府県に対して、重度精神薄弱児をさがしてもらわなければいかぬわけです。その経費というものを平均的にずっと与える必要があると思うのです。これをどうするかということが一つ。それから同時に、報告が上がってきますね。東京都のような大きい人口のところは、一割か二割おるでしょう。そうすると、三千人なら三千人は東京都におりましたと、こう出てくるでしょう。そうすると、一人について百六十二円四十七銭、それからその他のものも入れて二百五十二円五十三銭というものを差し上げることになるわけですが、まず見つけるための経費というものが要るわけでしょう。
  193. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは申請主義をとっておりますから、そういう子供を持った親からの申請を期待しておるわけであります。しかし例の育成会という精薄児の親の会がございますから、親の会の協力を得まして、こういうような制度のあることを周知徹底せしめまして、申請を奨励するというような方針でおるわけでございます。
  194. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっといま法文が見つからぬのですが、これは時効は何年ですか。
  195. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは申請主義でございますから、申請をすればいつでもよいというような運営になるわけでございます。
  196. 滝井義高

    ○滝井委員 重度精薄児を持っている家庭というのは貧しい人が多いわけです。市町村役場の公告その他では必ずしも周知徹底しないわけです。そうすると、この法律が九月一日から実施をされても、年度内に申請が出るがどうかわからぬ場合があるわけです。そうすると、たとえばいま公務扶助料その他でもよく出てくるでしょう、あとになって自分のむすこも戦死しておって該当するのだった、出してみたらおまえは時効でだめだと、こうなるわけですよ。そこで、たとえば満二十歳だというのだが、十九になってわかった、出してみたらもう一年しかもらえなかった、しまった、もうちょっと前に出しておけば四年間もらえるのだったということもあり得るのです。その場合に、いやおまえ二十歳になったからだめだということになるのですよ。
  197. 黒木利克

    ○黒木政府委員 附則の二項、三項をお読み願いますと、制度発足の当時は、さかのぼって支給する経過的な措置を講ずる規定を設けたのでございます。
  198. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、この法律は時効はないという解釈で差しつかえないわけですね。たまたまこの法律がことしの九月一日から施行されるということになると、十九歳の人が二十一になって初めてわかったというときにはさかのぼって一年はくれることになるわけですね。
  199. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは先ほども申しましたが、申請をした翌月から効力が発生するわけでございますが、時効その他の規定におきましては、二十七条で児童扶養手当法の準用といたしておりまして、児童扶養手当法の第二十二条から二十六条までと、三十一条の規定が準用されておりますが、そのうち二十二条が手当に関する時効の規定であります。
  200. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、児童扶養手当法の二十二条で時効があるのですか。一定の期限までに申し出をしなければならぬ。何か竹内さんの持っていらっしゃる書類には、十一月三十日までに届け出なければだめだということがその解説に書いてありました。そういうことはない、時効はなし、そういうことだけ確認してもらえばいい。
  201. 黒木利克

    ○黒木政府委員 この児童扶養手当法の準用されました二十二条に、手当の支給を受ける権利は二年を経過したときには時効により消滅するという規定がございます。
  202. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、やはり二年間で時効でだめになるわけですね。そこらあたりをはっきり教えておいてもらわないと……。  そうしますと、さいぜんの事務費の支給のしかたというものがちょっとよくわからないのですが、申請主義だから、したがって、申請のあった者がうまく認定に合格するかどうかもわからないわけです。滝井義高が重度精薄児だと思って出してみたけれども、知能指数がたまたまちょっと高かった、だからおまえはだめだ、こうなるわけでしょう。そうしますと、事務費配分のしかたというものは一体どうなるのか、これをやはりはっきりしておいてもらわないと、ただいま検討中でございますでは、市町村が困るわけです。これはやはり法案のときに——こういう事務費予算が四千二百三十二万九千円通っておるから、この四千二百三十二万九千円をどういうぐあいに全国に配分をしていくのか、基準をやはり明らかにする必要があると思います。申請主義だといっても、たくさん申請があるかもしれない。
  203. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは県を通じて交付するわけでございますが、県から大体の見積もりと申しますか、大体重度の精薄児が各町村別にどのくらいおるという推定をいたしまして、それによって交付の申請をしまして、それを私のほうで予算の範囲内で査定をして交付するというような取り扱いになっております。
  204. 滝井義高

    ○滝井委員 申請をしたら、申請した者の一人について二百五十二円五十三銭だけは必ず配分してやる、端的に言うとこういうことになるわけですね。だから三人くらいだったら七百五、六十円事務的には県に対して配分する。市町村に対しては七十円をする。こういう形で申請した者に対してずっと配分をしていく、それだけのことですか。そうして、四千二百三十二万というと一体どの程度の申請をすると見ておるのかです。
  205. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは資料を差し上げてございますが、三万七百五件くらいの件数があるであろうというようなことでこの件数を推定いたしておるのでございます。
  206. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、三万七百五人の事務費が四千二百三十二万九千円ですか、そうじゃないでしょう。三万に二百何十円かけたってこれにならない。
  207. 黒木利克

    ○黒木政府委員 その予算のほかに、児童相談所における費用は別に計上しております。
  208. 滝井義高

    ○滝井委員 いや、どうもわからぬです。いいですか、重度精薄児扶養手掛が一億六千五百十四万九千円で、支給の金額とその他——この「その他」が事務費だろうと思うのです。それを児童相談所に別に入れるというならば、児童相談所というのは何も重度精薄児だけの問題じゃないわけだから、それから郵便局のは九十二万一千円しかいっておぬわけですから。
  209. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは都道府県分の中には対児童相談所の事務連絡旅費それから廃疾認定委員手当、それから児童相談所の認定関係費、それに新規認定業務関係分と平常業務関係分が含まれておるのでありまして、先ほど私が申しましたのは、この児童相談所の認定関係費一千九百二十六万八千円に該当するものであります。
  210. 滝井義高

    ○滝井委員 このあなたのほうからいただいた参考資料を見ますと、事務取り扱い交付金というのが四千百四十万八千円出ておるわけですね。それから一億二千二百八十二万円というのは三万七百五人の四カ月分一人千円、それから九十二万一千円というのが出ているわけです。この二つを合わせますと四千二百三十二万九千円となるわけですね。これは郵政省のものと合うわけです。そして都道府県、市町村十分の十、すなわち事務費全額やるわけです。全額差し上げるということになる。もう時間があれですから、これは事務的なことですから、あとでこの児童扶養手当関係予算の詳しい内訳を都道府県分が幾ら、市町村分が幾らというようにしてちょっと出していただきたいと思います。  それから調査ですが、二十四条関係です。これはいわば一種の立ち入り検査みたいなものをやるわけですね。重度精神薄弱児を持っている家庭が十分身体検査もしてもらって、知能検査もしてもらってそして書類を出す。それで金を受けるようになると、必要があると認めるときは、子供からその両親その他質問をして調査をすることになると思うのですが、同時に子供精神状態の判定もやり変えることになるわけですね。これは「必要があると認めるときは、」と書いてありますが、どういう場合が予想されますか。これは金をもらっておるほうについては、普通の金をもらっておるのと違って、非常に重度の子供を介護しているということでいただいておるわけですから、それが役所から来て、いや書類を出せ、何を出せというふうに一々言われて、今度はまた子供状態を検査するということは、やはりなかなか不名誉なことになるのですね。これはどういう場合にこういうことをやることになるのか、どういうケースの場合……。
  211. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これも従来の国民年金法なり児童扶養手当法の条文をそのまま採用したにすぎないのでございますが、確かに重度の精薄児を持った家庭の親たちの特殊な心理状態がございますから、この運用には十分心するように注意したいと思っております。
  212. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも社会保障立法にあまりこういうのを詳しくやるのもどうかと思うのです。その二十五条ですね、これは郵便局から、官公署から、信託会社から全部調べるのですね。この二十五条というのはもう重度精薄児を持っている家庭全部にこういうことをやることになるのですか。
  213. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは二十五条の最初の行に書いてありますように「必要があると認めるときは、」というのでありますから、何らか不正な、あるいは事実を曲げた申請をしたというような疑いのあるとき、というような場合に限定をされると思います。
  214. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、前もって当然ミーンズテスト的なことをやることになるわけですね。いわゆる子供の肉体的、心理的な判定をするばかりでなくて、両親の所得その他について、あるいは貯金の状態、それから信託会社その他の機関に対する金銭の信託関係等、一応前もって書類は全部出させるわけですね。
  215. 黒木利克

    ○黒木政府委員 添付書類にはそういう書類は要求をしておるわけでありますが、それに事実の記載の間違いがあるかどうか、そういう疑いがあるとき、それを必要があると認めるとき、というふうに考えております。
  216. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、当然その出た書類がやはり問題すれすれにあるというようなことであれば、全部必要があるということになって、これは調査をするということになるわけですね。
  217. 黒木利克

    ○黒木政府委員 お説のような場合もあり得ると思いますが、しかし従来の児童扶養手当法の運用の例から申しまして、こういう場合はごくまれなケースでございまして、特にいろいろな事情から不正な申告だと考えられる場合に大体限られるのではないかと思います。
  218. 滝井義高

    ○滝井委員 したがって、この二十四条とか二十五条というのは普通の場合には行なうものではない、異例であって、いろいろ疑われるというような場合以外はそう簡単にやるべきものでない、こういう意味の御答弁ですから了承しました。  そうすると、二十六条で手当の支払いというのは郵政大臣が取り扱うが、その例外の場合を政令で定めておりますが、これは農協とかその他をやることになるのかどうか、たとえば労働金庫その他も指定をされることになるのかどうか。
  219. 黒木利克

    ○黒木政府委員 法律的にはそういうことが考えられるのでありますが、従来の年金法なり児童扶養手当法の運営では、大体この第一項で十分処理ができております。
  220. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと農協その他はやらずに、全部大体いままでの例では郵便局だ、他のものを、児童手当その他については指定した例はないのですね。わかりました。  大臣がいなくなったのですけれども、今後あなた方の政策としては、こういう手当を出すことに重点を置くことになるのか、それとも施設をつくって、施設収容に重点を置くことになるのか、これはいずれに重点を置くか。たぶんこれは社会保障制度審議会でも問題になっておるところだと思いますが、あなた方としてはどちらになることになるのです。
  221. 黒木利克

    ○黒木政府委員 どちらも重点を置いてまいりたい。ただ施設収容にもやはり職員とかその他の関係で限度がございますから、在宅の者に対しましてはそういう相談、助言のサービスとこの手当しかないわけでございますから、数から申しますと、こういうような在宅の児童に対する手当というものが多くなってまいると思いますが、いまのところどちらにウエートを置くか、それは両方両建てでまいりたいという方針でおるわけであります。それから親の気持ちから申しましても、施設に入れたいという親と、やはりふびんであるからなおさら家庭に置きたいという親もございまして、その両方から、やはり親の意思も尊重する意味で両建てでやらざるを得ないのではないかと考えております。
  222. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、結局扶養手当の増額とそれから施設の拡充と、そういうようにいけばいいのだけれどもさいぜんあなたに御質問もして指摘をしたように、おとなのほうの拡大もよくできぬという実態ですから、そう両建てといってもなかなかだと思うのですね。やはりそこらあたりを思い切って、清水の舞台から飛びおりるようなつもりでどちらかに重点を置く必要があると思うのです。多々ますます弁ずるというわけには、いまの状態ではいかぬと思うのです。だから、まずおとなの施設がないのですから、子供からおとなに、すべてやはり施設収容できる、そしてこの千円なら千円が併給ができるという形態をとるべきじゃないでしょうか。これは生活保護との併給はできますか。
  223. 黒木利克

    ○黒木政府委員 実は家庭で養育することが不可能あるいは養育することが適当でない、そういう者は施設で保護をし、めんどうを見るというたてまえでございますが、しかしどちらが原則かとおっしゃいますと、やはり子供は親のところで養育するというのが子供のためにもなりますから、そういうような親のためにも適当でないという場合だけが施設収容保護するというたてまえになるかと思います。  なお生活保護との関係では、社会局長さんが見えておりますが、生活保護法の同額の加算をするということで、収入として結果的には認定しないというような取り扱いを、話し合いができております。
  224. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、併給するということですね。  そうしますと、一番さきに返るわけですが、結局私は二点になってきたわけです。四万人のおとなを全部入れたところで、三億五、六千万円にしかならぬわけですな。それで、これはやはり私はおとなを入れるように修正をすべきだと思うのです。この段階で四万人ぐらいのおとなを——だから、これはここで答弁できればいいですよ。でなければ、大蔵大臣に来てもらわなければいかぬです。これはやはりわれわれもがんばらねばいかぬですからね。身体強健の者のためにがんばるのじゃなくて、精神薄弱の者のために身体強健の滝井義高ががんばるのだから、がんばらなければならぬと思うのです。これは大蔵省だけ攻略すればいいわけです、厚生省はもう当然やらなければならぬと大臣が言質を残したわけですから。だから中尾さんのほうで、四万人の重度精神薄弱者に対して月千円の年金を支給することで日本経済に重大な響影を及ぼすことはないと思うのです。いつも私、がんばるのだけれども、やはりこういうところでかんばらなければ野党のがんばりどころはないのですよ。だから、私のがんばりは二点です。あと八木先生がまだ一、二点がんばるらしいのですけれども、私のがんばるのは二点だけで、いまのおとなに適用するということと、それからこの四条の三項の三と四がありますけれども、三は私は今度目をつぶりたいと思うのです。四だけは、これはぜひしてもらいたい。二つといっても、これはなかなかです。私はこれはもう何回言うかわからぬです。厚生年金のときもまた言うつもりですけれども、御存じのとおり、厚生年金でけい肺とかそれから脊椎骨折で非常に麻痺が強い、そしてもう寝たきりであるというような者については、五四・幾らかは併給されます。五四・幾らか、ちょっと忘れましたけれども、併給される。全額併給してくれないのです。これをわれわれはやはり全部してもらいたいという要求です。今度厚生年金改正が出ますから、これは当然とらなければならぬところだと思っています。幸い厚生年金は、あれは予算がついておりません、四十年の五月から実施ですから、これはことし勝負が十分できると見ております。そこで、厚生年金の勝負をつける前に、やはりこの精神薄弱児の労災関係なり国家公務員災害補償法、労働基準関係の勝負をつけておかなければいかぬ、こう思うわけです。だから私はその二点はどうしてもやらなければならぬ。もう一つ欲を言えば、千円を千三百円にやはりしてもらわなければならぬ。これはおそらく八木先生ががんばるでしょうから、この二点をひとつぜひ実現をしてもらいたいと思うのです。大蔵省、何かそれの実施の上に重大な隘路があれば、これはもう私、下がります。しかしいまのところ、私いろいろ勉強してみたのです、上から下から、縦から横から、全部まっかくなるほど検討してみたけれども、やはり最低この二点だけはどうしても譲れぬ。これは何も、おとながすぐ救える制度があればいいのです。それならおとなを国民年金のほうで、二十歳以上になったらば無拠出年金対象にするのだ、それならばそれでもけっこうです、こっちでなくてもけっこうです、この附則で書いたらいいわけですから。法律をつくることについては国会は万能ですから、附則で書いたらいい。これをひとつ大蔵省の見解をぜひお伺いしたいと思います。
  225. 中尾博之

    ○中尾政府委員 重度精薄対策といたしまして、ただいまの御質疑のような問題があることは私ども当然承知いたしております。しかしながら、本法案につきましては、他の社会保障制度一般同様でございますが、まず最も問題のシビアーなる点から手をつけまして、それで将来の制度を発達さしていきたい、そういう順序になっておるわけでございまして、本件もその行き方でいっておる次第でございます。御承知のとおりいろいろな制度がございまして、それらの間におきましては、一つ制度をつくります場合、必ずしもそのほかの制度を意識しないでできておるわけです。それに対して、新しい制度をつくっていきます場合に、それがどういう関係に立っておるかということを実は十分に検討して、それを処理していかなければならない。全部の制度は関連をしておるわけであります。制度の問題といたしまして、それが最もむずかしく、また大事な点でございます。そういうような点から見まして、本制度はその一画につきまして、重度精薄児童という面につきましての措置でございまして、これをもちまして、それ以外の措置をどうするかという問題は、当然将来の懸案であろうと存じます。しかしながら現在のこの重度精薄児の対策は、当面の国民各位の要請なりあるいは実情なりに応じてとりあえずこれは出発させるという筋合いのもので実は立案をされておる次第でございます。したがいまして、今後そういうような御指摘の点につきましては、本制度が全体の制度の中でどういう意味を持つものであるかということを十分検討いたしまして、その間の調整をはかりつつ逐次充実していきたいと存じます。そういうようなことで、御質疑の点が決して問題がないということではございませんが、現段階におきましては、お話にございますような点につきましては、本法案の構想をもちまして、これをそこまで適用を伸ばしていくということは考えておらない次第でございます。  今後の問題といたしましては、本制度そのものの本質もさらに明らかにいたしていきたいと存じまするし、将来の児童手当あるいは国民年金制度とどういうふうに関係がついていくのであるかというようなことは、今後十分実情に即しまして、しかも緊急の順序に従いまして考えてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  226. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも優秀な中尾さんにしては切れ味のいい御答弁じゃないのですが、御存じのとおり、子供よりか重度の二十歳をこえたおとなの精薄のほうが手がかかるのです。これはもうとても手がかかるのです。そうしますと、子供のときは出すけれども、二十歳をこえたら出さぬということは、私は非常に問題だと思うのです。しかも十八歳までは施設におれるのです。ところが今度十九歳になったら施設を出なければならぬ。しかしおとなの施設はない。おとなになったら、十八歳から十九、二十と二年間はもらえるかもしれぬけれども、それから先は手当ももらえぬ、収容する施設もない、こういうことなんでしょう。そして二十一になったら一挙にうんと知能指数が七十、八十になるかというと、ならないのです。ますます手がかかるのです。そうすると、これはやはり何らかの介護の金を出さなければならぬ。むしろ、子供に千円出せば、二十歳以上には二千円か三千円出さなければいかぬです、ものの考え方としては。ところがそれがじょうろになる。しかもこれは十万も二十万もおるわけじゃないでしょう。四万ですからね。だから、そこらあたりもう少し私は考えてもらう必要があると思うのです。きょうあなたが御答弁ができなければ、——大蔵大臣も来れぬというならば、あしたひとつ大蔵大臣に一時間ばかり出てもらって詰めたいと思うのです。これは非常に重要なところですから、やはり中尾さん答弁できにくいかと思うのです。それと、河野さんが言っているように、白痴が一番早く死ぬというけれども、非常に寿命が短いのです。だからやはり出してもたいして大きな財政負担にもならないのです。それはことし、公的年金、それから公務扶助料と国民年金との併給をおやりになって、七万を八万にお上げになったでしょう。公的年金のほうは二万四千円ですけれども、いわゆる公務扶助料については七万から八万にお上げになった。これは私はいいことだ、前進だと思います。しかしそういうところよりかもっと悲惨ですよ。もちろんそういう悲惨な状態になる原因は、先天的なものもあるし、お産の過程でそういうことになったものもあるだろうし、あるいは後天的な疾患でそういうことになったものもあるでしょう。いろいろある。いろいろあるけれども、これは悲惨ですよ。親を失った、子を失ったという以上ですよ。みずからがいかんともしがたいのですからね。だから、こういうものについては、子供だけ出しておとなに出さないというわけにもいかぬと思うのです。だから、私はこれは四万人ですから無理でないと思うのですけれども、滝井のやろういつも無理ばかり言いやがる、こうお考えになるかもしれないけれども、四万人程度だから無理ではないと思います。  それから、さいぜんの各年金との併給の問題も、年金というか、厚生年金なり国家公務員災害補償法、労働基準法、これらのものとの関係の併給についても、そんなに大きな額のかかるものではないわけですよ。だから、これはきょう御答弁無理でしょうから、とくと大臣と御相談になって1質問はもう全部終わりましたけれども八木先生がまだ一、二点大事なところがあるらしいですから、私がいま質問したこの二点についてぜひひとつ。これは大蔵省が非常に金がかかって、日本国家が破産をするというならば、また相談もして何点かにしぼってもかまわぬわけです。それだけの良識は持っております。しかし、ヒューマニズムのほうが場合によっては良識を越える場合があるのですから、おそらく田中大蔵大臣、浪花節大臣といわれて、非常にヒューマニズムを解する大臣ですから、ぜひあした来ていただいて、ひとつ田中さんの心情に訴えてみたいと思うのです。心と心が触れ合うならば、おそらく田中さんも胸をたたいて、そのくらいの金はどこかから移流用して出してくれるのではないか。仲裁裁定で五、六百億の金を、予算を組まなくても出し得る大蔵大臣ですから、いわんや二億やそこらの金は、仲裁裁定のそでの下からでも出てくるのではないかと思うのですね。五、六百億予算を組まぬでも移流用できてやれるというんだから、ひとつ委員長、ぜひあした大蔵大臣に出ていただきたいと思うのです。大蔵大臣が悪ければ総理でもけっこうです。ぜひひとつ。無理ではないのです。これは人つくりを唱えておる池田内閣の一番の看板です。水上さんのあの「拝啓池田総理大臣殿」の有終の美をなすためには、これをやらなければだめですよ。  それではこれであしたまで留保しておきます。
  227. 田口長治郎

    ○田口委員長 本島百合子君。
  228. 本島百合子

    ○本島委員 たいへん時間もたっておりますから、私一つお聞きしたいのですが、職員並びに保母さんの問題で、これはどの施設に参りましても一番質問を受けるところだし、こういう状態では、献身的に奉仕的にやるつもりでいても、人間のからだには限度があるというようなことを言われるわけなんです。あの施設に参りますと、収容されておる子供さんたちが奇声をあげて私どもの視察に対して非常な喜びの動作をしてくれるわけなんですが、もうそれを見るたびに涙が出るというのが施設見学をなさる方々の共通した感情だろうと思います。そういうときに、あの中で働く人々がほんとうに現在の状況の中では給与も低い、またいろいろな待遇等もよろしくない、こういうことは、先ごろ伊藤先生かだれかの御質問のときに答えられたわけですが、来年度は号俸調整をやってもらいたい、それはたぶん可能だろうというようなことの御答弁があったように聞き受けたわけですが、社会保障関係に限ってこの号俸調整というもので——調整というのは、おくれているのを引き上げるということになるわけですが、非常にその点が残念に思うわけで、この点大体どういう折衝をされて、来年度は確約ができるのかということを聞きたいわけです。  そこで、それとあわせて民間の場合こういうものがないわけですから、そういう民間の人々に対しては特別な措置としてどういうことが考えられておるのか。過日の御答弁の内容でまいりますと、民間は非常に気の毒だと思います。そういう点で公的施設の中でもお気の毒なところに持ってきて、民間はなおさらですから、そういう点についての御見解をひとつ聞かしておいてもらいたい、こういうことで御質問を申し上げます。
  229. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かにこういう施設に働く職員の問題というのは、だんだん若い労働力が足りなくなりました現在におきましては、重大化しておるわけでございますが、公務員のほうは公務員の給与の体系でまいっておりますから、先ほど申しましたように、特殊のこういうような勤務の状態にかんがみまして、調整号俸の引き上げというものを予算要求をしてみたい。これは衛生関係、医務局系統では、たとえば、らいの施設等には調整号俸がございますし、結核の療養所にもございますから、特にこういう精薄の重症の施設等につきましては、当然調整号俸の要求はしてしかるべきだと考えておるのでございます。  それからもう一つは、単に一般の公務員でなしに、特別の資格を要求をいたしまして、たとえば福祉職というようなやり方で待遇改善をはかってまいるというようなことも考えるべきだと思っておるのでございます。それともう一つは、勤務の形態から見まして、三交代とかいうようなわけにもまいりません。特におかあさんがわりの保母さん等につきましては、二十四時間勤務になるわけでございますから、一種の拘束手当てみたいなものも考えてしかるべきではないか、これは来年予算要求考えておる項目でございます。  それから民間のほうは、こういうような公立の職員に準じまして、これと同じような処遇をいたすべきでございますが、現実に差があるものですから、その差をどうやって埋めるかということで、文部省でやっております私学振興の例によりますと、国から補助金を出しまして、この差を埋めておるような例もございますから、それをひとつ参考にして、来年は何らかの新しいくふうをしてみたい、かように考えておる次第でございます。
  230. 本島百合子

    ○本島委員 もう一つ聞きたいのですが、危険手当は、こういう場合には出ていないと思うのですけれども、実際のところ非常に危険を感ずるということを言われておるわけなんです。あれまでになっていかれるまでの過程というものはそれは並みたいていではない。特に保母さんなんかの話を聞きますと、いつ自分は締め殺されるか知れない。——これは私どもは極端な表現と受け取ったのですが、現実ではそういうものでもない、そういう危険を感ずる。あるいはまたその危険手当という種類が、そういう意味の危険でないから出ていない。しかし身の危険というものは、何も薬物等による危険とか、伝染病による伝染性の危険だけではないではないか、こういうことを言われてきたわけなんです。こういう点の危険手当というような、身を保護するという立場考えてみて出ないものか。そして少しでも多く給与体系がよくなるということによって、こうした奉仕的な仕事というものはなかなかやり手のない現在の世相ですから、そういう点もひとつ考えてもらえぬか、こういうようなことが、これは特におかあさま方からの陳情であったわけです。そういう点は考えていられないかどうか。
  231. 黒木利克

    ○黒木政府委員 先生の御意見の危険手当が、結局公務員の場合には調整号俸ということで解決を見たわけでございまして、調整号俸を新しくつくる理由として、そういう危険があるというような理由づけをいたしたいと思っております。
  232. 本島百合子

    ○本島委員 そういたしますと、先ほどの御答弁で、拘束手当と危険手当と、こういうようなものを合わせて一般の公務員よりは少し上回っていかないと、これはとても人を得ることはできないだろうという感じがするのですが、その点号俸的にいって、どの程度の引き上げになるという目算でいられるか。
  233. 黒木利克

    ○黒木政府委員 確かに福祉施設の職員の給与が低かったものですから、昭和三十五年以来毎年改善をいたしまして、三十五年と比べまして三十九年度は実は倍額になっておるのでございます。しかし他の部門、特に産業部門と比べまして、まだ低くて要員の確保にいま困難をしておるような状況でございます。そこで、大学出なりあるいはその他そういう学歴に応じまして適当な格づけをいたして、それにふさわしい給与というものをやりたいというようなことで、従来とも有利な格づけをいたしたいということで努力をいたしておるのでありますが、本年度は、そういった基本的な給与の問題でなしに、手当の問題で一歩前進をしたわけでございます。来年度は、基本給与の改善は一年休みましたから本格的な基本給の改善を獲得するように努力をしたいと考えております。
  234. 本島百合子

    ○本島委員 最後に御要望を申し上げて終わりたいと思います。  社会福祉施設に働く人々が、一般の公務員よりは体系が低いということはもうだれが考えても解せないわけで、むしろこういう人こそ優遇されていなければならぬ、こういうふうに思うわけでありまして、特段の御努力を払って、来年度はそれの実施が見られるように、そうして施設の拡充と同時に、職員並びに保母さんたちの獲得といいますか確保、こういう点をひとつ十二分にやっていただくということを要望して私の質問を終わりたいと思います。
  235. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明四日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後六時四十分散会