○村上(茂)
政府委員 ただいま
大臣から申し上げました
労働災害防止に関する対策の内容は、きわめて広範多岐にわたっておるのでございますが、かいつまんで申し上げます。
まず第一は、人命尊重観念の高揚という問題でございます。この点につきましては義務
教育、職業
教育課程における安全
教育という点につきまして各般の配意をする必要がある。
労働省といたしましても、産業安全、
労働衛生両
研究所等を通じまして
教育すべき内容を具体化し、文部省、
教育機関と連絡を密にいたしましてこれを具体化するという
考え方が示されておるのでございます。また安全意識高揚のためには、現在すでに実施されておりますが、全国安全週間、全国
労働衛生週間、
国民安全の日といったような
各種の行事につきましても、
国民的
立場からさらに効果的に実施されますように、また
国民的な安全運動推進の
機関といたしましては、全国安全
会議がすでに設置されておるのでございますが、この運用につきましてもさらに一そう実効をあげるような配慮をする必要があると存じますが、この点につきましても、答申では的確なる御指摘がございましたので、今後
労働省といたしましては、これらの
国民運動の展開につきましても鋭意努力したいと
考えておるのでございます。
また安全意識の高揚のためには、
労働者が就職する際における
教育活動、特に集団就職などにおきます際における安全
教育についても指摘を受けておりますし、さらに職業訓練所等におきます公共職業訓練、事業内職業訓練の実施におきましても、安全
教育につきまして格段の配意をなすようにという指摘があるのでございます。
以上申し上げました点が人命尊重観念の高揚という
観点から示された内容でございますが、これらにつきましても今後鋭意努力したいと
考えております。
第二に、産業の体質及び
労働市場の改善という問題が提起されております。すなわち、わが国産業構造の特殊性といたしまして、大企業と
中小企業との
関係、元請と下請との
関係といったような二重構造に由来するところのいろいろの問題がございます。単に
中小企業ないしは下請企業だけを正すのでは実効を期しがたいという問題が多多あるわけであります。これらの問題の本質的な改善は非常に困難ではありますが、しかし災害多発業種でございます港湾荷役事業とか交通運輸事業等につきましては、すでに
関係審議会からの答申もあることでございますので、これらの産業の体質改善とにらみ合わせまして、
労働面からも実効ある処置をなすべきである、こういう
考えが示されておるのでありまして、こういった災害多発業種に対する措置、それから
中小企業性業種の体質改善につきましても答申でその内容が示されておりますので、その具体化に鋭意努力したいと存じます。
第三の問題点といたしましては、個別企業を越えまして、数企業にわたる阻害原因につきまして、これを排除するようにという御指摘があるのでございます。たとえば機械施設を
使用いたします際に、機械施設の製造者がこれを販売するというような過程におきまして、初めからその販売される機械施設に十分な防護施設を備えつけるべきであるというような問題は個別企業の
立場から解決し得ない問題であります。
また別な問題でありますが、同一作業現場で数個の請負業者が関連作業を実施するというような場合におきましても、その請負業者のみを規制したのでは十分に効果を発揮し得ないのでございます。そういった個別企業の場をきめたところの問題点についても、
労働基準
審議会から問題の指摘がございまして、その対策を示されておるのでございますが、具体的には機械の防護に関する
法律を整備すべきである。これにつきましては昨年の六月ILO総会におきまして、機械の防護に関する条約が採択されておるというような
事情もございまして、国内法令をその基準に近づけまして、さらに整備をする必要がある。
それから請負等における災害の防止、責任の明確化につきましては、現在御
審議を願っております
労働災害の防止に関する
法律案にその規制条項がございますので、これは
法律案の成立を待ちまして直ちに実施に移していきたいということでございます。そのような内容が数企業にわたる阻害原因排除という
観点から示されておるのでございます。
次に、第四といたしまして、個別企業の場におきますところのいろいろな問題がございます。その企業における
労働災害防止活動の促進につきまして安全衛生管理体制の強化、安全衛生
教育の徹底、生産設備等の改善、労務管理の適正化といったような個別企業の場におきましてもなお数々の問題がございまするので、これからの問題についての改善策を示されておるのでございます。非常に具体的な内容になっておりますが、省略させていただきたいと思います。
それから第五の問題としては、災害防止行政体制の整備の問題がございます。これにつきましては
労働省の災害防止に当たる行政体制の整備の問題がございます。
機構の問題並びに監督官の増員、専門官の増加といったような問題もございますし、それから
審議機関等の整備、これにつきましては総理府に設置されますところの産業災害防止対策
審議会の活動を
期待するというような内容も示されておるのでございます。さらには災害防止に関する
研究機関、具体的に申し上げますと産業安全
研究所、
労働衛生
研究所等の飛躍的な拡充の問題、あるいは災害発生原因を科学的に究明するための調査
機関の設置といったような問題についても答申をいただいておるのでございます。
以上何ぶんにも非常に広範多岐にわたる内容であり、かつこれを具体化いたしますためにも、かなりの長期的な年月を要するものと、直ちに実施し得るものといろいろな内容があるわけでございます。この点につきましては、先ほど
大臣から御答弁がございましたように、個別的な事項につきましては
労働基準
審議会におきましてさらに細目的な検討をいただきまして、その
結論を得次第法令の面におきまして、あるいは行政運用の面におきまして、あるいは
予算措置の面におきまして具体化をはかりたいと
考えておる次第でございます。