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1964-04-15 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月十五日(水曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       橋本龍太郎君    松浦周太郎君       松山千惠子君    粟山  秀君       渡邊 良夫君    伊藤よし子君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    吉川 兼光君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君         労 働 大 臣 大橋 武夫君  出席政府委員         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (年金局長)  山本 正淑君         厚生事務官         (社会保険庁年         金保険部長)  實本 博次君         林野庁長官   田中 重五君         運輸政務次官  田邉 國男君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         郵政政務次官  金丸  信君         郵政事務官         (人事局長)  増森  孝君         労働政務次官  藏内 修治君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君  委員外出席者         大蔵事務官         (造幣局東京支         局長)     石橋 大輔君         厚生事務官         (年金局企画課         長)      高木  玄君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 四月十五日  委員西岡武夫辞任につき、その補欠として中  村庸一郎君が議長指名委員に選任された。 同日  委員中村庸一郎辞任につき、その補欠として  西岡武夫君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  連合審査会開会申入れに関する件国民年金法及  び児童扶養手当法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一〇五号)  労働関係基本施策に関する件(公共企業体等  における労使関係に関する問題)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民年金法び児童扶養手当法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  3. 八木一男

    八木(一)委員 国民年金法び児童扶養手当法の一部を改正する法律案につきまして、厚生大臣並びに政府委員に御質問を申し上げたいと思います。  私どもは、この法案が出まして、国民年金の相当の改正が行なわれるだろうと期待をしておりましたものとして、この内容があまりにも貧弱なのであ然としたわけでございまするが、小林厚生大臣が、厚生大臣として国年法改正を出されるときに、このような貧弱な内容しか盛ることができなかったことについて、小林厚生大臣がどういう考え方でこのような貧弱な案を出されたか、それについて伺いたいと思います。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 実は、この年金の額を常識に合うようなものにせよということは一般の希望でありまするが、とりあえず厚生年金のほうを改正する時期がきておるからこれを改正して、そうして次の機会に、昭和四十一年でありますか、国民年金計算がえをする時期がくる。その時期に厚生年金等改正とも見合って適当な改正をしたい、こういうふうな考え方から大幅な改正はこの際見送って、まず厚生年金に取り組みたい、こういうふうな考え方でこれに臨んだのであります。  なお、福祉年金等についてもいろいろな議論がありましたが、とにかく昨年上げたばかりでありますので、毎年だらだらやるということよりか、やはり時期を選んで適当な改正をしたほうがよかろう、こういうふうなことで、ことしはこの程度改正にとどめたわけです。こういうことに御了承願います。
  5. 八木一男

    八木(一)委員 経過はわかりましたけれども、御了承と言われてもこれは一切了承できません。はなはだ怠慢であります。この国民年金法昭和三十四年に提案されたときの経過を、厚生大臣勉強をしておいでになりますか。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 どうも、はなはだ恐縮ながら勉強いたしておりません。
  7. 八木一男

    八木(一)委員 そういうことについては、十分勉強をしておいていただかなければいけないと思うのです。  それでは、いままでの国年法社会労働委員会における審査経過並びに結果、あるいは各審議会審査経過並びにその答申、そういうものについて勉強をしておいでになりますか。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 それもあまり勉強しておらぬと言わざるを得ません。
  9. 八木一男

    八木(一)委員 率直ということは片一方で美徳でありますが、非常に大事な政府のセクションを預かっておられる方としては、そのような何もしていないということでは責任が保てない。それについて、どのように反省をしておられるか伺いたい。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 これは、まあ従来の経過その他につきましては、役所の事務当局でもよく心得ておられる。したがって、大臣に十分知らせてのみ込ませる必要があることは、事務当局から十分な御注意を承っておるわけでありまして、私が一々書面をもって読む、こういうふうなことは必ずしもしておらないということでありまして、この問題につきましても、ことしの国民年金改正というものをどの程度にするかということは、一応いろいろ論議をいたしたのでありまするが、いま私が申し上げたような経過でこれにとどまった、こういうことであります。
  11. 八木一男

    八木(一)委員 事務局のほうで一番責任を持っておられる年金局長に伺いますが、昭和三十四年に政府が立案をして、本院あるいは参議院において、本委員会または参議院社会労働委員会において審議された経過なり、あるいは、たとえば年金審議会、また社会保障制度審議会のこの問題に関する討議のいろいろな経過、あるいはまた現在の答申案、そういうもののあらまし——こまかいことはいいけれども、あらましについて、いかに国民年金制度がおくれているか、急速にこれを改善していかなければならないかということについて、厚生大臣に十分連絡されなかったようにいまの厚生大臣答弁から受け取れるのでありますが、そういうことでございますか、また、そういうことで責任が果たされるとお思いになりますか。
  12. 山本正淑

    山本(正)政府委員 国民年金法ができました当時の事情、並びにその後毎年国民年金法の一部改正国会で御審議を願っておりまして、不十分と言われながら毎年何がしかの改善をいたしておるわけでございます。しかもその国会における御審議の過程におきましては毎年附帯決議をいただいておりまして、毎年度附帯決議におきまして、一体国民年金として何が不十分であるかということが、一番わかりやすく明示されているというような経緯をたどっている次第でございます。したがいまして、この附帯決議について翌年度予算編成の段階におきましてどう処理するか、このうちでこれとこれとはぜひやりたい、これもできればやりたいといったような項目につきましては、事務的に十分検討し、大臣の御意向も伺いまして、そうして翌年度予算編成について重点的にこれとこれというふうに、できるだけの努力をして実現してきているという経緯をたどっております。
  13. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣に特に申し上げておきたいと思いますが、国民年金法提出をされましたときは岸内閣の当時でございます。厚生大臣坂田道太君。そこで討議をされたときに、その内容があまりにも貧弱である、その組み立てがあまりにも社会保障に徹した組み立て方をされておらないというようなことを中心として、徹底的に政府案の欠点が指摘をされたわけです。そこで討議をされたことの一番の重点を言いますと、これは総理大臣も何回も出席されて言われましたし、厚生大臣年がら年じゅう言われましたけれども、とにかく内容が非常に不十分であるし、組み立てが不完全であるということについて徹底的に追及されましたときに、最初の発足だからこれで何とかかんべんしていただきたい、それに対して日本社会党は、最初にこういう重大なものを不完全な状態、また組み立ての間違った状態で発足すると間違うから、日本社会党の案のような、それでも金額については完全とは言えないけれども、組み立てとしては完全なものを最初からつくるべきであるということで反対いたしております。そういう点で政府のほうは、とにかく毎年毎年非常な改正をやるからという確約のもとに、拝み倒してそれを通したという事情にございます。その後、なるほどいま年金局長の言われましたように、毎年逐次少しずつ改正はございました。一つだけ、組み立てほんとう大曲がりにひん曲がったものを少しまっすぐにする、免除に対する国庫負担をつけるというような、少し評価に値する改正があった時代もありますけれども、それ以外は数えるに足りないくらいの改正でございます。前のほんとうに悪いベースより見れば、これは前進には違いありませんけれども、国民年金制度の意義から言えば、これは九牛の一毛にしかすぎないというような改正ばかりだ。ことに、その金額に至っては、ほとんどいじられておらないわけであります。国民年金法の中核でございまする拠出年金制金額については、いじられておらない。福祉年金については、いじったとは言えない程度のいじり方を昨年度している。そういう程度であります。そういうことではいけないと思う。厚生年金制度改正案を出して改正と見合っているというような心がまえ自体が間違いであります。厚生年金対象者である労働者も大切な国民であります。したがってその人たち老齢年金退職保障、あるいはまた遺族、あるいは障害保障について、それを十分にするための改正も、もちろん大きく進めなければなりない問題でございまするが、それとともに、同じ日本国民であってはるかに低いベース給付しか現在ない、そういう問題についての改正を、それを待ってからというような心組み自体が、このような国民年金制度やあらゆる所得保障制度、あるいは社会保障制度に対する政府熱意を疑わしめるものがあるわけであります。厚生大臣は、ほかの点で熱心にやっておられることについては、私も存じております。年金局長も、熱心な局長であることは存じておりまするけれども、それをその熱心な人たちがこんなものしか出さない、そういう政治に間違いがございます。厚生省が出したものは、大蔵省主計局というようなところがブレーキをかけることができない。厚生省が出したならばほとんどスムーズにそのまま通る、また閣議で、そんなにたくさん一ぺんに出してもらっては困るというような発言がないように、そういうふうにしていかなければ問題が進まないわけであります。前にも申し上げたように、予算編成のときに、各省の予算を第一次査定のときに五割ずつふやした、それを限度として出してくれというような主計局の原案、そのような大蔵大臣発言閣議を通る、そういうような間違った制度のもとに、ほんとうに必要なものが伸びないわけであります。  先輩の小林さんにこのような大きな声で申し上げて恐縮でございまするが、あまりにも貧弱な案でございまするので、どうかこの点について深く玩味していただいて、こういう案が、いまからでもおそくはない——いまからでも今国会でおそくありません。予算が通ったからというようなことも、おそいことにはなりません。補正予算ということもできる。そういうことで、こういう法案を根本的に考え直す。もっとほんとうにみなが喜びをもって審議できるような十分な案に直すというような考え方で、ものごとを処していただきたいと思います。そのことについての御答弁は、お立場上苦しいであろうと思いますからあえて求めませんけれども、根本的に、本腰を入れてかかっていただかなければならないと思います。  そこで、さっきの御答弁に関する件でございまするが、厚生年金改正を待ってからというような考え方、そういうような一つやって一つやるというような、そういう熱意の欠けた憶病な考え方を捨てて、このような国民年金その他の社会保障制度について、強力な決意を持って推進していただかなければならないと思うわけでございまするが、その点についての御答弁をひとつ伺いたいと思います。
  14. 小林武治

    小林国務大臣 福祉年金は、御存じのように一応去年改正をした。わずかでありますが、改正をした。しかし、拠出年金はまだ本格的に始まっておらない。こういうことで、私は厚生年金のほうを固めてから、しかも国民年金計算の更改が四十一年にある、この機会に、いずれにしましても相当な改正をしなければならぬ。実は私の考えが間違っておったかもしれませんが、私どもいろいろ相談した結果、拠出年金そのものはまだ本格的に始まっておらぬから、ここ一、二年待っていただいても実際にそう大きな害はないではないか、こういうふうな考えをいたしたのでございます。昨年の附帯決議の中でも、できるものはほとんどここに二、三改正をしておりますが、私のそういう考え方が間違っておるのだ、こういうことであればそれまででありまして、私も反省はしたい。しかし、この問題はよく相談をしましたが、いま申し上げたように、拠出年金本格的開始はまだ始まっていないということと、とにかく前々からの厚生年金を固める、こういうことが必要であって、それが固まれば、私は、自動的に国民年金改正をせざるを得ない、こういうふうな考え方を持ったのであります。この考え方が安易であった、こういうことであれば私も反省をいたしますが、そういう経過でこれができておるということを、ひとつ御説明を申し上げておきたいと思います。
  15. 八木一男

    八木(一)委員 拠出年金が本格的に始まっておらないと言われる。本格的ということを言われましたから、その御答弁は必ずしも全部間違いではございません。しかしながら、拠出年金の要件、六十五歳、三千五百円を頂点とする拠出年金に対する保険料徴収はすでに始まっているわけであります。それからまた、死亡に対する遺族に対する給付は、すでに部分的に始まっております。ですから、本格的にということばでございましたらあながち間違いでございませんけれども、拠出年金は始まっておらないという考え方でございましたら、これは誤りであります。ことに拠出年金については、その最初金額が非常に少なかった。金額が非常に少ない点とそれから組み立てが非常に間違っておりましたがために、それに対する痛烈な批判が起こりまして、一年有半あるいは二、三年にわたりそれに対する批判運動がございました。批判運動については、厚生省説明によって部分的に納得をした点もあるでありましょう。それからまた、免除国庫負担をつけることによって、幾ぶんともひん曲がったものが前向きに変わってきたので、不十分であるけれどもとにかくそれについて強烈な批判運動はとめようというような状態にはなっておりますけれども、その底流に拠出制国民年金に対する不信の念が非常にあるのであります。そこで、いまのたとえば保険料徴収にしても、それから加入の状況にしても、相当入っておりますけれども、まだ国民年金について理解が少ない点もあれば、理解をしていながら不十分だから魅力がないという点もあって、加入が全部になっておりません。また被用者の家族は任意加入ということになっておりまして、そのような評判のあまりよろしくないものについて積極的に加入をする人が少ない。そういうような状態のときに、早く魅力のあるものにして、正しいまっすぐなものにして、そのような国民のそれに対する理解、それに対する期待がふえて、国民年金の根が固まるというふうにしなければならないわけであります。そういう意味からすると、本格的な老齢年金の支給がまだ始まってないからといって、じんぜんとして日を送るべきものではない。その意味厚生大臣考え直されまして、こういうものは一日もおくらすことができないものだという考え方に立っていただかなければならない。ただし、厚生大臣が非常に苦吟していらっしゃいますのはわかります。というのは、厚生省がいろいろの点で、あるいは医療保障方面において、あるいは生活保護方面において予算要求をしなければならない。そこで大蔵省のわからず屋が——閣議でも必ずしもわかった人ばかりではない。こっちを通すとなかなかこっちが通らないというような点から、これをあと回しにしたというのが真相ではないか。そのようなことではならないと思う。そのようなことではなしに、ほんとうに必要なものは、勇敢に毎年これを前進させるという気持ちになっていただかなければならないと思います。最後に申し上げましたことと、それから拠出年金制は、そのようにいまから直ちに魅力のある、また筋の通ったものにしなければならないということにつきまして、私の申し上げました意見につきまして厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  16. 小林武治

    小林国務大臣 それはもう八木さんのおっしゃるとおりだと思います。しかし、とにかく厚生年金改正というのは非常に大きな問題でありまして、それと同じように、拠出年金金額を並べていくということが、一度にやることが、そういうことがあってはならぬとおっしゃいますが、実際問題として相当困難な問題であるということは申すまでもありません。しかし、一般国民にしましても、厚生年金が直れば当然国民年金も直るのだ、こういうことで相当御期待を持っていただけるのではないか、こういうふうに思います。当然、一方が直ればこれをこのまま置けないということは、そういうふうな予想をされることはあたりまえでありまして、大蔵省も、厚生年金を直すということは、すぐにこれに響くからということで非常な反対をしましたが、とにかくあそこまで歩み寄ってきた、こういう事態もありますので、われわれは十分早い機会にこれが直せる期待を持っておるものであります。
  17. 八木一男

    八木(一)委員 入りましたところから少し具体的に入ってまいりたいと思いますが、いま六大都市の生活保護の四人世帯の基準は、いま正確に数字を持っておりませんが、一万六千円をこえて一人当たり平均にして四千円、これは一級地でございますが、そういうことになります。ところが今日の国民年金の一番最高の額、全部保険料を四十年間納めたか、あるいは免除に対する条項が適用されてそれと同様に計算された場合、それが月三千五百円、その金額を御比較になって、あまりにも非常識なものだとお思いになりませんかどうか。
  18. 小林武治

    小林国務大臣 これは、お話のように三千五百円という金額が適当でない、こういうことからして厚生年金出発しておりますし、当然国民年金についてもそういうふうに言わざるを得ないのでありまして、私はそういう意味で、おそらく近い機会にどうしても直さなければならぬというふうに考えております。
  19. 八木一男

    八木(一)委員 そこで金額を直すについて、どういう考え方で進めなければならないというふうにお考えでございましょうか、いまお考えがございましたら伺わしていただきたい。
  20. 小林武治

    小林国務大臣 これはまだ具体的に考えを持っておりませんが、とにかく国民年金というものが、厚生年金に比べて低所得者対象にしておるということでありますから、そう多く保険料期待はできない、こういうことを前提としてむろん考えなければならぬと思っております。
  21. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、そういう考え方は直していただかなければならないと思います。保険料期待を持てないというような考え方で、厚生行政社会保障行政考えてもらってはいけないと思う。この国民年金法の条文は、憲法第二十五条の精神を受け継ぐことを明記しております。ほかの法律よりも、もっと多くはっきりと明記してございます。それを御存じでありましょうか。
  22. 小林武治

    小林国務大臣 これはもうお話のように、年金法の一条に「日本国憲法第二十五条第二項に規定する理念に基き、老齢、廃疾又は死亡によって国民生活の安定がそこなわれることを国民共同連帯によって防止し、もって健全な国民生活の維持及び向上に寄与することを目的とする。」こういうふうにありますので、それの趣旨に沿う、そういうことでございます。
  23. 八木一男

    八木(一)委員 私は法律学者じゃありませんけれども、これは法律の問題でひとつ解釈をしていただかなければならないと思います。憲法第二十五条第二項には社会保障と書いてあって、社会保険ということが書いてない。社会保険という字は一字も書いてない。厚生省は、社会保障社会保険をうまいぐあいにかってなときに使い分けをしますけれども、そういうことは許されない。それから第二項は、第一項をもちろん受けているわけです。第一項では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度生活を営む権利を有する。」というふうに書いてある。これから法律論じゃなしに具体的にやりますが、その第一項のほうを直接に受ける規定は生活保護法、それから第二項になるわけです。その問題を二つ別に分けて考えますと、この前厚生大臣社会保障に対する一般質問で申し上げましたときに、厚生大臣と不肖私とが完全に意見の合致を見ました。まず、健康で文化的な最低限度というものは生活保護の条件を規定するものだ、積極的に防貧をするものは、これを上回る健康で文化的な相当なものでなければならないということについて、厚生大臣小林さんと私と、だいぶ前のこの社会労働委員会において完全に意見の一致を見たわけであります。そういう点は、ひとつもう一回かみしめていただきたいと思います。  あとのほうだけで申し上げますが、社会保障をやれということであって、社会保険をやれということではないわけです。社会保障という概念は、必要な人に必要な給付がいくということをしなければならない概念であって、保険料をたくさん払ったからたくさん反対給付をもらうというような概念ではないわけです。それならば民間保険、たくさん契約をした人がたくさん満期保険料をもらう、そういうような概念で、厚生大臣に特に食い下がるわけじゃありませんけれども、一般的に間違った考え方が蔓延をして、社会保障というものは保険料を払って、払った保険料に対応したものをもらえばいいというような概念で問題を考える人が多いわけでありますが、賢明な小林厚生大臣はそのような考え方ではないと存じますけれども、保険料ということで財源ということを頭に入れて考えられたと思いますが、そういう御答弁でありました。そういうお考えではないであろうと思いますので、とにかく国民年金というものは、老齢保障遺族保障障害保障が必要な人に必要な保障をやる、そのための法律である、また、制度というものはそういう制度でなければならないという考え方ものごとを律していただきたいと思うわけです。それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  24. 小林武治

    小林国務大臣 これはいろいろ議論があるところでありまして、お話のようなことも私は一つ考え方であろうと思いますが、日本のこれを開始したときが、もう私のこれに関知する前から、やはり多少社会保険というものを軸にして運営していこうというふうな出発をしておるわけですね。その事実は、私はお認めになるだろうと思うのです。だからその出発が悪いから直せ、こういうことであればいまの社会保険料というものは一切間違いだ、こういう議論も私は成り立つと思いますが、とにかく現実は、是非は別にしまして、社会保険というものを中心とするというか、軸にしていこう、これらの原則できておるので、私はその現実の上にいまお答えを申し上げたわけでありまして、これを始めるとき厳格にいまのような社会保障という解釈をすれば、始まったときにすでに間違いをおかしたと申しまするか、別の解釈をして出発をしておる。私どもは、やはり現実のいままでの組み立て方をもとに置いて考えていくというふうに思っております。しかし、議論としてはいまのような議論が私はあると思います。
  25. 八木一男

    八木(一)委員 質問の申し上げ方の順序が少し適切でなかったかもしれませんが、いきなり申し上げましたので、厚生大臣保険料ということばは財源という意味として考えられたものだろうというふうに考えますが、それについて伺いたいと思います。
  26. 小林武治

    小林国務大臣 これは国が全部出せればけっこうでありますが、国の財政力と申しますか、こういうものも勘案して財源としてここに一部を求められた、こういうふうに私は考えております。
  27. 八木一男

    八木(一)委員 財源として国家に幾ぶんなりということは、現状としてはやむを得ないことであろうと思います。必ずしも望ましいことじゃありませんけれども、やむを得ないことであろうと思います。そこで私がちょっとほかのとまぜこぜで申し上げましたけれども、そこで私も分けて考えてみたいと思いますし、分けて御質問しますことについて御答弁願いたいのですが、財源という問題と、それから保険料を払った者が割合に応じて受け取るという問題は、別な問題であります。制度全体として財源を幾ぶん確保するために、保険料を取るということが一つある。それで保険料を払った度合いで今度は給付をするということと、それからそうではなしに、給付が必要なものに給付をやるという概念で、保険料のお返しをするという概念でなしに、社会保障的にものごと組み立てていくということは、別なことになるわけであります。それで結局、国民年金制度は、そういう点でかなり社会保障的に歩んでいこうという組み立てが幾ぶん考えられておりまするし、またそのような方向に向けようという努力がされているわけであります。そういう点について、保険料が幾ぶん必要であることはわかりまするけれども、保険料に対して対価を与えるという考え方じゃなしに、社会保障的に給付をやっていくというような考え方厚生大臣もおられると思います。それについてひとつ伺いたいと思います。
  28. 小林武治

    小林国務大臣 考え方はそうあるべきだと思うのです。ただしかし、拠出をしたという本人から言えば、多少利息の加算とかいろいろな問題が必ず頭に出てきますから、多少のことは考えなければならぬが、社会保障的である。しかして御案内のように、福祉年金のごときはおっしゃるとおりの方向で拠出してやっておる、こういうことが今後も——その問題でいま現にすでに四百億円もこの金が出ておるのでありますから、そういう考え方は、十分でなくとも導入されておることは事実であろうと思います。
  29. 八木一男

    八木(一)委員 そこで、またもとの問題に戻りまするが、とにかくいまの生活保護の水準、一級地にしろいまの水準より少ない金額が、保険料を完全に四十年間納めた場合に四十五年後に受け取れる、そういうような年金がおよそ魅力のあるものであるとお考えになるかどうか、ひとつ伺いたいと思います。
  30. 小林武治

    小林国務大臣 それは、ただいまお答えしましたように魅力がない。したがって、現にもう厚生年金でも近く法案審議をお願いしよう、これが直れば、当然権衡上こちらにもくるということを国民全体が十分の期待を持っておられたと思いますので、期待を持って当然だと思います。こういうふうに考えております。
  31. 八木一男

    八木(一)委員 それに対処することとしては、よほど本腰に金額を大幅に引き上げるということを考えられないと、いまの御決心がほんとうのものであったということにならないと思います。これからこれを撤回して出し直していただいてもけっこうですが、それができないとしたならば来年度ということになろうと思います。その来年度の用意について、それこそ大蔵大臣がこれに反対をするならば大蔵大臣と対決をして、おのおの辞表をふところにしてけんかをするような覚悟でやられないと、いまおっしゃったような金額に近づくことすらむずかしいのではないか。非常な決心を持って金額を引き上げる。その金額の財源を補てんするためには、もっと国庫負担をよけいにするとか、そういうような一般のこの対象者が理解のいくような方法で財源を見つける。たとえばいま積み立て金方式でございまするが、この方式を変えるやり方もございます。いまの負担をそうふやさないで、それで金額を猛烈に大きくするというようなことで、よほどの決意を持ってやっていかれなければならないと思いますが、それについての御決意があれば伺っておきたいと思います。
  32. 小林武治

    小林国務大臣 それは国の財政力にも限度がありますから、それを越えるということはできない問題でありますが、とにかく厚生年金を変えるということにつきまして、非常な苦心と申しますか論争と申しまするか、大蔵省は当然これに波及するということで、あれだけ長い間いろいろな論議を重ねてきておりまするから、あれを承認したということは、これについてのある考え方がなければあれを承認されるはずはありません。そういうことでわれわれは期待をしておるのでありまして、大蔵省は、しばしば、これをやればこれに響くということを言うて、いままであれを阻止してきておったのをあそこまで持ってこられたということは、私は、国民にしても、この問題がある程度前進しておるのだというふうに考えられていいのではないかと思います。
  33. 八木一男

    八木(一)委員 その問題について、また何回も御質問を申し上げたいと思います。いまは質問のはしりで問題提起のような形で申し上げておりますけれども、いまの御答弁では満足をするわけにはまいらない。もっと強い決意を表明していただかなければならない。  問題をほかに移しまして、拠出年金制については、厚生大臣がすぐ取っかからなかった点については相当怠慢であると思いますが、とにかくいま御答弁のような事情で今度出てまいった。ところが福祉年金の増額についてなぜ出されなかったか、それをひとつ伺いたいと思います。
  34. 小林武治

    小林国務大臣 この問題もありましたが、とにかく去年わずかでも上がった。毎年どうだろう、こういうふうな考え方があるのです。むしろ固めてというようなことばは語弊がありまするが、だらだらやるよりか一年休んだらどうか、こういうふうなことは、あなたから言えば安易な考え方だというふうにおっしゃるかもしれませんが、私どもは、とにかく去年上げたばかりだ、したがって一年おいて、そして今度はもう少し幅の大きいものを考えようじゃないか、こういうことでもってことしは見送ったということです。
  35. 八木一男

    八木(一)委員 福祉年金の中心である老齢年金は、一問一答でやってもいいのですが、こちらから申し上げますが、老齢年金の支給の年限は七十歳以上であります。これは厚生大臣から聞いて一つ一つやろうかと思いましたけれども、あまり回りくどいことになりますから直接やります。そういう人は年寄りであります。日本の平均寿命は六十七歳です。年をとってからの人はもっと長いですが、とにかく一年一年なくなっていかれるわけです。そういうようなことで、去年上げたから——あんなスズメの涙みたいなものを上げておいて、そして去年上げたからことしはどうであろうかというようなことでこれを考えられたならば、確定しない期間の方、上がらない期間の方は少ないものしか受け取れないでなくなっていく。適用を受けなかった人は、適用を受けられないままになくなっていくということになるわけであります。現在の問題であります。将来の問題でなくて現在の問題であります。さっき将来の問題について、本格的に始まっていないから、厚生年金をやってからやってもいいのじゃないかというお考えであるとするならば、現在の問題については、当然すぐ対処するという考え方になられなければならないと思います。なぜ福祉年金についての金額の改定が考えられないか、これは小林さんの重大な責任であろうと思います。それについてひとつ小林さんのお考えを承りたいと思います。
  36. 小林武治

    小林国務大臣 これはまあ私の責任でありますが、いまお答えしたような事情でことしはひとつこの金額を上げるのを見合わせよう、こういうことになったのです。あなたのおっしゃるとおり一年一年減っていく人もある、その人には適用できないじゃないか、こういうことは私も考えますが、とにかくこれを毎年、ちびちびと申してはどうかと思いますが、ちびちびでなくてもっと大きくやれ、こうおっしゃるかもしれませんが、そういう考え方があった、こういうことです。
  37. 八木一男

    八木(一)委員 何をか言わんやですね。毎年ちびちびという考え方が大体いけないのです。毎年大幅にという考え方になっていただかなければならないし、その前が非常に大幅だったら毎年しなくてもいいのを、前が小幅だからことしはしなければならない。そのときには前の厚生大臣が怠慢であったら、かわった厚生大臣のときに前の怠慢を補うためにことしやるのがあたりまえです。毎年ちびちびなんということを厚生大臣が言われることは、大体間違いです。毎年ちびちびではなくて、十分なものを上げるという考え方に立っていただかなければならぬ。厚生大臣はあきらめた形でいる。これは手をつけてもきっと大蔵省が文句を言うだろう、内閣でもほかの閣僚が無理解で、積極的に賛成をしないだろうというような投げやりな気持ちがあるようにしか受け取れない。小林さんは、ほかの点は熱心にやっておられます。だから小林さんの悪口は言いたくないのですけれども、小林さんの責任は非常に重大なわけです。その一つ一つが全部重大なんです。十あるからといって、二つやったからあと八つはほったらかしていいということにはならない。全部をやらなければ厚生大臣としてのほんとう責任を果たしたということにならない。そういう意味では、福祉年金について、去年やったからことしはいいんだというような考え方は改めていただかなければならぬと思う。それについての厚生大臣のお考えを承りたいと思います。
  38. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のとおりでありますが、何しろ御存じのように厚生省にはいろいろな仕事がありまして、これはごく卑近なことばで言えば、これもか、またか、こういうことを言われるほど問題が多い。これは実際問題を申し上げているので、私はそれがいいというわけではありません。そういうことで、いつもいろいろな問題をこれもかあれもかという関係がありまして、なかなか力の足りない者はそう何もかもというわけにいきませんで、大事なことがときどき漏れてしまう、こういうことでありまして、これは遺憾ながらわれわれの力が乏しいと申しまするか、大蔵省の金がない結果と申しまするか、おわびを申し上げざるを得ない、こういうことでございます。
  39. 八木一男

    八木(一)委員 老齢福祉年金金額は、現在七十歳以上、四カ月分まとめて払いますが、月割りにすると千百円です。この千百円が、福祉年金制度が始まったときの物価と現在と比較して、現在では幾らぐらいになるか、これを計算されたことがあるかどうか伺っておきたいと思います。
  40. 小林武治

    小林国務大臣 これは事務当局からお答えいたしますが、もともと千円の福祉年金が、多少でも生活の足しになるとか、そういうことよりか、とにかく何か小づかいの足しになる、そういうことから始めたものであります。物価騰貴にある程度スライドしろといえばそういう考え方もありまするが、始まったのが生活資金とか、そういうものから始まっておるのではおそらくないというふうに、私は老齢年金については考えております。むろんスライドして上げるのが普通の行き方でありまするが、この年金の性質そのものが、いろいろの考え方があってやったわけでございまして、その計算はこれから申し上げますが、非常にひどいじゃないかというふうなお考えはむろんあり得ると思います。
  41. 山本正淑

    山本(正)政府委員 いま大臣が申し上げましたように、福祉年金の額そのものが、老齢者の生活保障の額そのものというふうな考え方に立っていないわけであります。その額そのものの基本に問題があるわけでありますが、いま御質問の、この制度ができました当時の千円というものを、一つ考え方をして消費者物価の変動というものに合わせて考えた場合にはどうでなければならぬか、どうであるのが正当かという議論にかりに立つといたしますれば、当時の千円というものは、本年度予算編成しました昨年末の消費者物価に換算しますと約二五%でございますから、千二百五十円ぐらいが当時できました千円の価額に相当することになると思います。
  42. 八木一男

    八木(一)委員 福祉年金そのものが生活保障じゃないという考え方に非常に問題がございます。拠出年金は、もちろん生活保障でなければならない。その程度は健康で文化的な相当なものでなければならない。福祉年金は、同じく生活保障でなければならない。ならないけれども、昔の政治がなまけておって、前にしてなかったので、いきなりその体制が整えられてないから過渡的に低い金額考えられたということです。しかしながら、その本質は生活保障でなければならないということは当然であります。したがってそれが、そういうような意味で発展しなければならない。そういうような考え方になっていただかなければ、これは考え方として間違いであろうと思います。それについて厚生大臣年金局長の御答弁を伺いますが、それとともに、その発足当時のつまみ金みたいな、許されない考え方ですけれども、そういうことでやったものが、それが物価にスライドすらされていない、最初のときよりもその使用価値が減っているということでは何といっていいかわからない、怠慢であろうと思う。前段と後段についてひとつお考えを伺いたいと思います。
  43. 山本正淑

    山本(正)政府委員 年金の額というものを何で考えるかということ、これは拠出年金の場合と無拠出年金の場合というものについて、老後の保障という意味においては、思想、考え方に違いがあってはおかしいじゃないかという考え方が当然あるわけでございます。ただ、こういったような議論はもちろん政策的に出てくるわけでございまして、財源の全額を税金でまかなうといった措置を講ずる場合におきまして、生活保護は別といたしまして、その他の施策においては政策的に何が妥当であるかという、政策論議になるのじゃないかと思います。最低生活保障しなければならぬという意味においては、これは生活保護のごときものについては別でございますが、そうでないものにつきましては、どこまで税金でまかなうかという政策論上論議のあるところと思います。現在の国民年金におきまして、福祉年金が発足当時、その額で老後の生活保障をする額であるというふうな考え方に立っておらないことは、先生も御承知のとおりでございます。ただ、財政が許すならばといいますか、望むべくんばそういった額になるまで支給することが望ましい、こういうような考え方でおるわけでございます。
  44. 八木一男

    八木(一)委員 いま年金局長の言われたことの半分はいいと思います。半分はよくないと思います。老齢保障というものは、やはり老齢者が完全に健康で文化的な相当の生活を送れるようにならなければならない。ところが前からの、たとえば明治、大正から昭和の初めにかけて、そういうことの配慮がなかったがために、急速にいま積み立て金方式がいいか、賦課方式がいいか、いろいろな議論がありますが、そういう体制ができていないときに始まったから、過渡的にそれよりも少ない金額福祉年金が出ておったということであります。しかしながら、それでいいということではない。それをほんとう生活保障ができるように前進をさせなければならない。その点が一点あるわけです。基本的に前進をしなければならない。それとともに、その過渡期にあってつまみ金を出したものが、物価が上がったために実質価値が減るというようなものを、そのままストップするというようなことは断じて許されないことです。それについてひとつ厚生大臣のほうから伺いたいと思います。
  45. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のようにすべきだと思いますが、私も予算編成を一度やってみて、日本は金がないな、貧乏だなということを、やはりそういう壁にぶち当たるのでありまして、何といたしましても財政そのものの制約はあると思わざるを得ないのでありまして、これから当然、社会保障費というものは相当毎年増額されるのでありますが、国家予算としましては、たとえばこの関係あるいは保険の関係等におきましても、毎年千億では下らない、こういうふうなどんどんふえるものがありまして、財政の弾力性を失うということは、一面財政的に見れば非常にやっかいなものだ、これは財政的に見た場合そういう考え方を持たれるのでありまして、その壁を破って社会保障というものは進んでいかなければならないということであります。しかも御存じのように、社会保障なんというものは、やっとこのごろ始まったばかりです。日本では、近代社会保障なんというものは最近のものであります。しかもそれはテンポを速めていかなければならぬということで、非常な困難があるのだ。それで私は、皆さんがおっしゃることは一つも無理だとは思いません。しかし、実際にこれを実現することは非常に苦労なものだということをぐちみたいにして申し上げますが、そういう事情もひとつお聞き取りを願いたいのです。私どもは、あくまでも社会保障というものは進めなければならぬ。しかも、日本社会保障は始まったばかりだ、テンポを速めなければならぬ、こういうことで非常にいま苦難期である、こういうふうに思います。おっしゃることは一々ごもっともだと思います。
  46. 八木一男

    八木(一)委員 お互いにずいぶんわかり過ぎたことを何回も言っておるというような気もいたしますけれども、今日はもう一回だけ申し上げておきますと、そういうふうに財政とかなんとかいうことでできない。ところが、ほかの国ではやっているからできるんですよ。くだらないところに金を持っていったり、当然たくさん税金をかけてもいいような高額所得者に対する減税をやったり、そういうようなことをやっているからこれができない。そういう政治の姿勢自体を変えなければならぬ。ところが、そういうような間違った財政経済政策がとられている。そこでやられるときには、ほんとうにたゆまざる努力、最大限度の努力が必要だ。  そこで、最初のことばに戻りますけれども、去年ちょっと上げたから、ことしまたというようなことではどうかというような気分になられてはいけない。去年やったら、去年の十倍もことしはやってみせるんだ。大蔵大臣厚生大臣に会うのがいやだと逃げ回るくらいの勢いで、何回もまた交渉される、総理大臣にも会われるというようなことでやっていただきたいと思います。池田さんにこう言っていただきたいと思います。池田さんは、社会保障をやるやるとずいぶん言っているのですけれども、いまの計算によると千二百五十円というようなこと、そうなると、その逆算をすると千円だから八百円になる、千百円は八百八十円になる。評判があまりよくなかった岸さんのときに、この問題だけは岸さんは少し一生懸命やられまして、とにかく月千円の年金が、なかったものができた。それが池田さんの時代に——社会保障を一生懸命にやるとか、高度成長政策だとか、景気のいいことをワンワン言っている人が、その時代に八百八十円になってしまった。小林さんは池田さんにこれを指摘して、面罵をしていただきたいと思います。あなたはほんとうにやると言って、やっていないじゃないか、われわれが要求を出しても、すぐそういうことについて大蔵省を押えて、出させるようにしようとしないじゃありませんかというようなことを、強く言っていただかなければならない。また池田さんがそれを知らなかったならば、これは厚生大臣として責任が重大であろう。それを言ったならば、もし彼がほんとうの政治家であればこれは恥ずかしくなって、この法案も出し直して出せ、補正予算は組むから、大蔵大臣が何と言っても総理大臣はやる、反対する大蔵大臣は解職をして、賛成をする者を大蔵大臣にするというようなことにならなければならない。いまからでもできる。そういうことを総理大臣にもやっぱり強力に言って、ものごとを動かしていかなければならない。福祉年金が年々実際的に下がっている。これでは社会保障は後退をしているということになるわけです。そういうことにならないように、ひとつがんばっていただきたいと思います。同じことを押し問答になりますから、ほかの問題に少し移してまいりたいと思います。  今度は拠出年金のほうにおもに関係がございますが、先ほどの国民年金法の精神というものは、憲法第二十五条第二項の精神を受けておって、社会保障をやるということでできているわけです。国民年金制度拠出年金制度、それから福祉年金制度もありますが、この社会保障の精神にほんとうに徹底していない部分がずいぶんあるわけであります。それについて厚生大臣はどの部分が徹底していないか、御検討になったことがございましたならば、お考えを伺わしていただきたいと思います。まだ十分にそこまでこまかいことを御検討になっておらなければ、私のほうから質問を続けたいと思います。一応御答弁を願います。
  47. 小林武治

    小林国務大臣 いろいろ議論のあることは知っておりますが、ひとつ八木さんからもいろいろ御指示をいただきたいと思います。とにかく社会保障といいましても、日本のような経済力、財政力ではやっぱり財源的に、ある程度社会保険というふうな観念を導入しなければ実際問題としてやれない、こういうことでできておるわけでありまして、いまの社会保障そのものがさような出発をしておるという現実は、私ども否定はできない。社会保障そのものが、文字どおり行なわれることが一番いいことは申すまでもありませんが、それだけの力があるかどうかというところに、いまいろいろ考えられておるというわけであります。
  48. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど申し上げましたことに関連するのですが、社会保険ということばをいま使われましたけれども、それは保険料を取るということに限定して考えておられるのですか。先ほど申し上げました保険料、財源の意味から取らなければならぬという考え方と、取った保険料と正比例してものを渡すという考え方と、二つあるわけです。前のほうは、現実の状態としてこれはある程度許容もしなければならないと思う。財源を得るために、国庫負担だけで全部まかなえない、だから保険料徴収するということは具体的に認めなければならない。その保険料徴収することと、その分け方をそれと正比例して分けるという考え方とは別な概念で、あとのほうは断じてこれは許せない、私どもとしては絶対に賛成ができないと思います。厚生大臣がどういう意味でそういうことばをお使いになったか、もう一回伺っておきたい。
  49. 小林武治

    小林国務大臣 保険というものは連帯だ、ある人の不幸をみんなで背負うんだ、こういうことが保険でありますから、おっしゃるように、必ず正比例するようなものであれば保険じゃないということも言えると思います。
  50. 八木一男

    八木(一)委員 逆な言い方として、社会保障の目的は必要な人に必要な給付が無条件でいく、一ぺんにそこまでいかないにしても、それが筋であるということについては、厚生大臣は御賛成になりますか。この前は、そういう考え方でやりますとお話しになった。なぜ同じ考え方を短時間に変えられたか、この点を伺いたい。
  51. 小林武治

    小林国務大臣 実際に行なわれておるかどうかということは別としまして、私はあなたのおっしゃるとおりであるべきだと思う。
  52. 八木一男

    八木(一)委員 それでは、できるだけそういうふうに変えていくというような御努力が必要だろうと思う。それについて厚生大臣のお考えはいかがですか。
  53. 小林武治

    小林国務大臣 必要だと思います。
  54. 八木一男

    八木(一)委員 拠出年金制にはいろいろな問題がありますが、本日一、二点だけ御質問を申し上げたいと思います。  まず、保険料を払えない人については免除制度ができております。免除はある程度要件になりますが、年金給付を受ける資格が完全な要件にはなっておらないわけです。厚生大臣には釈迦に説法で、御存じでございますが、一番簡単に申しますと、全部免除になった人は大体三分の一の給付が受けられることになる。全部免除になることについては、年々歳々保険料が払えない状況、それを現状でいろいろな基準によって審査されて、それでどうしても払えない状況であるということで免除されておるわけです。その人が六十五歳になったときに、約千二百円くらいの給付しか受けられない。ほかの四十年間払った人は三千五百円になる。ところが、そのような保険料を払いにくいような人は、一番貧乏が続いておるわけでございますから、蓄積が少ないわけです。老齢になったときに生活が困難なる事情は、一番度合いが多いわけです。その度合いの多い人が少ししか年金がもらえないというような状況では、これはほんとう意味の筋ではないと思う。極端に言えば、そのような保険料を払えないような人の年金のほうが、蓄積がないから多くなければならない。そこまではいかないにしても、少なくともそういう人たちが同じ程度まで給付が受けられるように、そのようにならなければならないと思います。最初はそういうことが全然考えられておりませんで、百円に対して五十円の国庫負担がつく。その国庫負担分だけをやっていこうということになって、その三分の一が確保されておりまするけれども、非常にひん曲がったものが、幾ぶんまっすぐに移りかかったということを申し上げておるわけですが、よりまっすぐにするために、とにかく少なくとも普通の人よりたくさん支給しなければならない問題でございますが、そこまではいかないにしても、同じ金額になるようなシステムに一生懸命早く直していかれる必要があろうと思う。それについての厚生大臣のお考えを伺いたいと思います。
  55. 小林武治

    小林国務大臣 お話のとおり、いまの規定がそうなっておるというだけで、私はいいことだと思わない。できるだけ、やはりお話のようにやっていくのがほんとうだろうと思います。
  56. 八木一男

    八木(一)委員 それにつきまして来年度改正があるはずです。お約束になりましたね。そのときにそれを入れる。その金額の改定のほかに——金額の改定のときだったらまだ入れやすい。全体の金額があるから、それを幾ぶん部分的に平均化するということもしやすいわけです。そのときにそういう考え方を入れられる必要があろうと思う。それについて厚生大臣のお考えを承りたい。
  57. 小林武治

    小林国務大臣 私はいまそういうことをお約束できませんが、これはいろいろな問題についてまだ欠陥がある、そういうものも含めて改善をしていくということは、当然されるべきことだと思います。
  58. 八木一男

    八木(一)委員 直ちにお約束は、もちろんお立場として無理だと思いますが、前向きにそれを入れるように最大限の御努力をお願いいたしたいと思います。それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  59. 小林武治

    小林国務大臣 私がいまお答えしたことを局長もよく聞いておられますから、おわかりいただけると思います。
  60. 八木一男

    八木(一)委員 その次に、いままで申し上げたことのないことを一つ申し上げてみたいと思いますが、今度障害についていろんな給付の拡大なり適用の拡大がありました。それは前々から私どもが申し上げたことを、非常におくればせながら、幾ぶん部分的に実現をされた点で、その部分についてはすでにさんざん悪口をたれましたけれども、今度その部分についてはある程度よくおやりになったと思いますが、それ以前の問題が一つあるわけです。というのは、拠出年金制で障害給付については、その年金制度に入った後、一年を経てから後の障害でなければ障害給付対象になっておらないわけです。これが非常な欠陥だと思うわけです。それがほんとう社会保障の精神をはき違えた、制度をひん曲げる人たちだと思うのですが、いわゆるなっておらぬ社会保険学者、観念的なそういう連中の考え方によってそういう間違ったことが行なわれた。十分に私の考え方を御説明申し上げておりませんから、どういうことか、私の考え方についてはまだすっかり御理解いただけるかどうかわかりませんが、なお続けて申しますが、そういう点について、厚生大臣がいままで考えておられましたら、ちょっと伺っておきたいと思います。
  61. 小林武治

    小林国務大臣 私は勉強が足りなくて、さようなことまで気がついておらなかった。したがって、局長からお答えさせます。
  62. 八木一男

    八木(一)委員 けっこうでございます。  続けて申し上げます。具体的に申しますと、たとえば生まれたときから両眼がつぶれておった。それから十五歳ぐらいに両足が切断された。そういう人たちは、これは前にそういうような障害を受けているという理由で、その障害が保険事故として扱われていない。ここに保険主義の一つの大きな欠点が出ている。問題は、国民年金法社会保障だ。それを部分的に、経過的に社会保険システムを入れた点について、全部いけないとは言えませんけれども、そういうような財源を確保する点で社会保険思想が入ったならまだ許容ができる。ところがそれからはずれてしまって、社会保険システムが幾ぶん取り入れられているということが頭にこびりついて、間違った学者どもが、保険事故でなければ給付対象にならないというようなことになっている。ところが二十一歳から足が二つとれた人と、二十五歳から視力がなくなった人と、前からなくなった人とどっちが不幸か。長い間不幸だった。それから後の不幸は同じかもしれませんけれども、とにかくそういうような非常な一級障害を受けている人が拠出年金制対象にならない。ならないというのは、保険というようなことば、人間のつくったことばに制約されている。これは政治ではありません。ほんとうに足のなくなった人が気の毒だ、所得保障をしなければならぬ。それが変な学者が考えた保険という、険ということばによってできない。そういう間違った政治が行なわれておる。社会保障でありますから、保険事故というようなことばを使う必要はない。それだけの障害のあった人にはその給付をするという考え方に立てば、これはできるわけです。それを二、三の保険学者と称する連中が、つまらぬ自分の学問の権威と称するようなことで、厚生省すらそれにブレーキをかけている。そういうような間違ったことを取っ払って、障害を受けたあらゆる人が拠出年金制対象になるようにしていただかなければならない。重度精神薄弱児の問題で、厚生大臣が一生懸命になられたということを新聞その他で伺っております。これは非常に大事な問題でございまするが、それは一部分なんです。全体の障害の問題について、このような間違った考え方が行なわれておる。ですから、そういう人たちは、いまの制度では福祉年金しか絶対に入らない。福祉年金給付しか受けられない。本人が拠出年金に入って、拠出年金保険料を払ってもそれは受けられない。その部分の給付を受けられない。こういうところに社会保険主義の最も間違った点がある。前はこれは二年か三年だった。徹底的に追及してやっと一年つづまりました。一年つづまったけれども、これは二十三歳から後の障害しか受けられないものを二十一歳から——例をあげれば二年つづめただけであって、障害というものはその二年間に起こるものではない。大部分は、その前に失明しているとか、足が切れているとか、そういうことになっている。そういう問題が解決されていない。こういう問題こそは、次の改正期に、英断をもってあらゆる障害に対して——国民年金は強制適用ですから、その者に対してあらゆる障害、一級障害、二級障害、三級障害があったら、それに対して国民年金のほうから支給をする。その場合に、保険料を払った後の障害であるとか前の障害であるとかいうことを、区別をつけないという考え方をぜひとっていただきたいと思います。これは財源にしたらそう心配は要りません。理屈の問題であります。ほんとう社会保障に徹した考え方だから入れられる。次の大改正に必ず小林さんの手で入れるように、強力にこれこそは指示をしていただきたい。だれかが、学者との因縁でちょっと困りますなんと言ったら、しかりつけて、断じてこれを入れよというような指令を発していただきたい。それについて厚生大臣のお考えを承りたい。
  63. 小林武治

    小林国務大臣 ごもっともなことでありますが、そういうようなことはいろいろほかにもありまして、私も、厚生省へ参る前では、いまの障害者は福祉年金しかもらえない。しかし障害者でない精薄者はどうなのかというと、何ももらえません。いまでももらっておりません。これは保険事故じゃない、こういうことでありまして、私は、精薄者全体について年金、少なくとも障害年金のとにかくいまの福祉年金をやりたい、こういうことを思ったが、厚生省の役所は、私が在野の時代に幾度頼んでもやってくれません。しかたなしにまたこの問題を出したら、やはりおとなだけはだめです。子供だけやっと重度身体障害者というものが、手当をつけて出すようになったわけでありますが、お話のようないろいろな問題がある。私はそういうような不権衡はなくさなければいけない、どういう方法を使ってもなくさなければいけない、こういうふうに考えております。(「大臣の言うことを聞かない、そんな官僚は首にしなければだめだ、大問題だ」と呼ぶ者あり)
  64. 八木一男

    八木(一)委員 いま私に聞こえている世の中の声は、ほんとうに正しい声であります。大臣がこうと考えていることに協力しないというような公務員があったとすれば、問題であると思います。そこで、そういう点については強力に指令を発して、指令を聞かないような者は、これはかえなければいけません。それでないとほんとう大臣責任で行政ができない。指令をしてそういうようにさせなければいけません。そこでブレーキになるのが観念学者の議論であって、学識経験者がこう言っておりますからなんということを言って、そういうことに弱い役人が、大臣ほんとうの政治の方針をひん曲げる。いままでもひん曲げてきたわけです。実は内科障害が今度入りましたけれども、それについて学者は、なおるかもしれない、なるかもしれないものは固定した障害じゃないから、そういうものは障害の給付にならないというようなことを言うわけです。ほんとうの政治だったら、現に労働能力が喪失していればその間は支給して、なおったら支給をとめればいい。それを、なおるかもしれないものは固定した障害とは言えないというようなことを学者どもは言うわけです。学者どもは学者どもに放言をさせておいてもいいですが、政治はそういう学者どもの意見ではなしに、政治にマッチしたことをしなければならぬ。そういうことを五年ほど口をすっぱく言ったら、やっとこさっとこ一部分そういうようになった。いまの障害者の問題でもそうだ。精神薄弱というものは、これは身体障害じゃなくして精神のほうの障害者です。当然障害給付に入る、そういうことを言っていたけれども、やはりへんてこりんな学者やそれを受け売りする人たちが、それを入れようとしない、そういうところにある。部分的に厚生大臣が、その点の処理に御努力になったことはわかります。しかし、根本的にこういう問題を解決するようにされなければならない。それについては、必要な者に対しては必要な給付が必ずいくという原則に立って、その間の障害給付に対しては、生涯そういう労働能力が喪失あるいは減少した者に対しては必ず給付をするんだ、国民年金の強制適用者に対してはこれをするんだ、厚生年金の強制適用者にはそれをするんだというような原則を立てなければいかぬ。それを保険事故というような、人間のつくった、この法律からつくったそういうことばに支配をされて、それで給付をしないようなことでは間違いだと思う。大臣は水上さんの手紙を見て部分的な努力をされました。その部分的な努力は買いますけれども、厚生大臣はもっと根本的に、組織的に、そういうような欠点を一ぺんに直すように努力をせられなければならない。これは大蔵省が何と言ったって、そんなに金額は多くはありません。金額が多くても断じてやらなければならない問題でございまするが、厚生大臣は、大蔵省がどう言うかということを気にして勇敢になられたり、勇敢じゃなくなられたりしますが、とにかくどんな場合でも勇敢にやらなければならない問題でありますが、そっちのほうの懸念もそうありません。そういう意味で、とにかく保険事故ということではなしに、国民年金制度は強制適用で入っているんですから——入りたい人が入るということでは問題でありますが、とにかく入っている。そういう意味で、ほかは厚生年金に入る、あるいは共済組合に入るということになっている。みんな強制的に入る。ですから、そういう障害で給付をする必要のある人は、前の障害であろうとあとの障害であろうと、必ず給付をするということを考えられる必要があろうと思う。そして、それについては原資が幾ぶんは要りますが、それだけでは原資原資と小じゅうとのくだらぬ連中が言いますから、大きな改正と一緒にほうり込めば、この問題は無理解なる抵抗を非常に激減させる要素がある。それだけいくと、無理解な連中が、それで不幸な状態になっていない連中が何とかかんとかつまらぬことを言って、気の毒な人が幾ぶんでもしあわせになることにブレーキをかける連中がおりますけれども、大きな改正の中へそういうことを入れておけば、そういう無理解な連中の抵抗も少し減るわけです。そういう点で、ぜひ今度の改正には保険事故ということをはずして、そういうような労働能力喪失、所得能力喪失、減少、それに対して二十以前の者であってもそういう給付をするという方向にぜひ踏み切っていただきたいと思う。それについて厚生大臣の非常に前向きな御決心を伺いたいと思います。断じて事務局に用意をさせるという御指令を願いたいと思うのです。
  65. 小林武治

    小林国務大臣 それはやはり、こういう法律なりいろいろなものは、理論の上に構成されておりますから、あまり筋の通らないことはできない。したがって、たとえば大臣考えを持っておっても、その考えが間違いなら通らない、こういうことにならざるを得ないのでありまして、私もいまの保険事故などということばにとらわれたら、これはできない問題だと思います。したがって、保険事故でないような方法が考えられないかというので、いま重度障害児の法律もお願いしておる、こういうふうなわけでありまして、われわれはある程度理論を尊重しなければならぬし、したがって私もいろいろな考えを持っておりますが、私の考えが間違いで理論に合わないものもよくありますから、そういうものはやむを得ず引っ込める。したがっていまのように保険事故という理論に対しては私はそれでいいと思うから、結局いまの精神薄弱児を保険に入れなかった、手当にしたわけでありますが、このためにできるだけ学者にもいろいろ考えていただいて、そしてできるだけ常識に合うような、精神障害者に対して年金が出せない、保険事故でないから出せないというような、理論としてはりっぱな理論であろうと思うが、世間の考え方から多少はずれているような問題もありますから、そういうことも考えてもらわなければならぬ。これは理論と実際をある程度一致さしていかなければならぬ、こういうふうに考えております。
  66. 八木一男

    八木(一)委員 実際的に常識的に必要なことをやっていきたい、これはひとつ厚生大臣の善意として受け取りたい。理論に合わなければやっていけないと言われました。それは理論が観念的な理論であって政治の理論ではない、ただその人の非常に狭いワクにおける一部分の部分的学問上のことばにならない議論であって、政治の理論ではないというものに対して、遠慮する必要は毛頭ありません。私が言ったことが理論的に違っておれば、おかしいとお思いになったならおっしゃっていただきたいと思う。私はこの点に関しては、へなちょこの学者の人よりも、理論的には間違っていない。厚生大臣は判断していただきたい。私が違っているとおっしゃるならば、これから論争をしましよう。正しいと思われるならば、理論の点においても正しい、実際的にもそれを給付することが正しいことは厚生大臣答弁からもわかる。政治的に正しい理論的に正しかったら、断じてそれをやらなければいけない。私の理論が、どこが間違っているか。間違っておると思われないと思うが、学者といえば理論が正しい、政治家といえば理論が正しくないと考えたら大間違い。学者の中にもりっぱな学者もいれば、三文学者もいる。保険事故というようなこういう社会保障考える学者は三文学者だ。そういうことではなしに、私の言ったことが理論としてあなたは理解ができるかどうか、ひとつおっしゃっていただきたいと思う。
  67. 小林武治

    小林国務大臣 私は理論として理解するということよりか、実際に合うだろうと思うのです。たとえば子供のときに手をなくした、それが二十以上になってももらえない、こういうことは、保険というものは保険に入ってから何かできたら保険事故で、その前のものは保険事故でない、こういうことは私は理論としては一つの理論であろうと思う。しかし、そのことをいまの社会保障の問題に当てはめて考えていいかというとよくない、こういうふうに思いますので、そこをどういうふうに調和するかという問題だと思います。
  68. 八木一男

    八木(一)委員 わかりました。社会保障の理論としては、いま言ったような三文保険学者は間違っている。それで厚生大臣社会保障をやるので、保険事故というような観念上の、保険上の論文を扱っていられるわけじゃない。社会保障としては、そういうものに対して支給をすることがあっていいわけです。ことに法律的にも、国民年金法は、憲法二十五条の二項の精神に従って社会保障をよくするということを基底としてやられている。憲法の条文から考えて、社会保障として考えなければならない。社会保障考え方に即して保険概念が便宜的に入ることは許されるとしても、根本的な社会保障理念を誤るような社会保険理論はとるべきではない、そういう考え方になられるのが至当だ、それについての厚生大臣のお考えを伺いたい。
  69. 小林武治

    小林国務大臣 えらい議論になって相すみませんが、私も保険事故ということばに引き下がっておるのであります。しかし私は、これは社会保障の常識には合わない、そのことをどういうように調和するかということで、もっと役所としても検討いたしたいと思います。私はいまの状態はよろしくない、こういうことを考えております。
  70. 八木一男

    八木(一)委員 ぜひ前向きで御検討になって、来年の改正には必ず、厚生大臣よくやっていただいたとわれわれが推賞できるような案を出していただくようにひとつ進めていただきたいと思う。もう一回、強力な御決意のほどを伺いたい。
  71. 小林武治

    小林国務大臣 私がまた続いてやるかどうかわかりませんが、厚生省事務当局は十分前向きで研究をしてくれる、こういうことを皆さんの前で私は期待しております。
  72. 八木一男

    八木(一)委員 次に、拠出制国民年金についてのもう一つの不安の中心的な問題は何かというふうにお考えになりますか。
  73. 山本正淑

    山本(正)政府委員 拠出制国民年金について、先ほど来、八木先生から従来の経過等のお話がございましたが、被保険者のほうで何が不安か、これはいろいろ解釈がございますけれども、一つはやはり、老後保障に足る年金額であるかどうかということが先ほど来お話がございましたけれども、おそらくあとは十年、二十年、三十年、四十年先のことであり、あるいは物価が変動するとか生活水準が変わる、そういった場合にやはり老後の保障に足る年金額をもらえるかどうか、いわゆる世の中でスライド制といわれておる問題ではないかと思います。
  74. 八木一男

    八木(一)委員 そういうところです。スライド制です。いま拠出制国民年金でなくてもすべての年金制度、あるいは年金制度でなくても、ほかのたとえば預金とか生命保険あるいは郵便年金、そういうものも全部そうですか、戦争のあと非常なインフレで、せっかく自分の老後なりあるいはその他のことに備えて拠出をしたものが、実際的な価値が非常に激減するという過程を経ておりますので、今後あんなインフレはめったに起こしてはならないし、起こらないとは思いますけれども、しかしあのような猛烈なインフレを経験しているし、現在も物価が残念ながらどんどん高騰しているという時代にあたって、こういうような心配のあるのはあたりまえであります。その点について心配をされて、拠出年金保険料納入について釈然としない人たちがあろうと思います。その保険料納入について釈然としない人たちの中には、いろいろな形があります。ただ少ないからつまらない、老後のことはわからない、それよりいまの小づかいがほしいというようなこともあるでしょう。しかし、相当考え抜いてこれについて釈然としない人の中心点は、そこにあろうと思う。私は、国民年金については、社会党案をつくるために作業をしておりましたのでかなり熱意を持っているつもりですが、どう考えても、いまの政府案で心配な点はそこにあるわけです。よく考えれば考えるほどそこにある。その点の条文が用意をされておりますけれども、この条文が非常にあいまいもことして、この不安を解消するに足らないわけです。それについて、なぜ今回の改正においてそこを改正してこられなかったか、その理由について厚生大臣または年金局長のほうからお答えいただきたい。
  75. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のようにいろいろな問題に共通する問題でありまして、まだ政府の態度そのものがきまらない。理論的には当然そうすべきでありますが、厚生年金についても現在問題になっております。これも同様でありまして、一つができればみな同じようにやるべき問題でありまして、まだ政府の態度といいますか、全体に対することがきまらないというときに、一つ入れるというわけにいきません。全部一緒にやらなければならない。そのことをいま検討はしておりますが、まだこれに入れるというところまで至っておりません。
  76. 八木一男

    八木(一)委員 これは年金局長ではけっこうですが、現在の厚生年金保険法にはいまの国民年金法にあるような規定がありますか。
  77. 山本正淑

    山本(正)政府委員 厚生年金だけではなしに、いわゆるスライド条項といいますか、これは非常に抽象的な規定から具体的な規定まで幅があると思いますが、従来の社会保険におきまして、そういう規定のありますのは労災保険でございますが、これは非常に大きな幅がございます。それ以外の法律においてはございません。一番新しい国民年金法におきまして抽象的な原則、プリンシプルが書いてあるという段階であります。それ以外の厚生年金法その他には、そういうような原則はございません。
  78. 八木一男

    八木(一)委員 厚生大臣、いま御答弁にありましたように、一緒に並べてないんですよ。四年前に出した国民年金法にはあったが、厚生年金法にはなかった。ですからこれは、全部一緒にやるほうがいいでしょうが、片一方ができて片一方ができないということはない。いいことはどんどんやったほうがよい。政府部内がそういうあいまいもことしたことをやっておる。片一方をきめなければ片一方がきめられないという問題ではない。とにかくよいことは全部そろえてやることに越したことはありませんが、いいことだったら部分的にやってもよい。いままでやってきておるわけですから、御答弁の背景は少し違っておりますので、その点ひとつ御理解を願いたいと思います。  そこで、この問題を急速に考えておられない政府に非常な怠慢があろうと思います。国民にこれは政府法律で強制適用でやって、保険料徴収しておる。それでいろいろな計算があって給付を約束しておる。その約束の給付が、制度発足のときの見込みよりもずっと価値の低いものになるということは、非常な国民の心配であります。その心配をなくするのが政府一つ責任であります。それをまごまごして、いままで話がきまっていないからどこにも載せてない、部分的に国民年金に抽象的な不満足のものを載せたが、ほかのものはまだ一つも載っていない、こういうことは許されないと思います。強制適用で保険料徴収していろいろな給付を約束しておいて、その給付の値打ちが激変するおそれがあるということに対して、そういうことではないのだという保障をすることは、どんな角度から見ても政府責任にならなければならない。それについていまだに相談がまとまっていないということでは責任がとれないと思います。相談がまとまっていないのだったならば、国民の心配どおり年金計算の非常に複雑なことを利用して、国民の出した実質価値をそのまま補てんせずに、国庫負担も加え、使用主負担も加えて国民に約束したものを、実際には十分には払わないという考え方があれば、そういうものをつくらないということがあるでしょう。これをつくらないということは、国民ほんとうに不利益にならないようにスライドを完全にするというような考え方が完全にないからつくれない、完全にあればつくれる、そういうように思いますが、厚生大臣のお考えはいかがですか。
  79. 小林武治

    小林国務大臣 国民年金法にあるのも、具体的に実際的にどうするかということまでいっておりません。それで政府としては、要するにいまの物価体系、あるいはそういうインフレというものを予想しておらない、すなわちできるだけ貨幣価値を維持していくということを前提としてこの法律というものは成り立っておりまして、万一の心配をどうするかということがあるわけでありますが、初めから大インフレがくるのだ、したがってスライドするのだ、こういう考え方ではないのでありまして、あくまでもこれはいまの貨幣価値を維持していくんだ、維持できるんだ、こういうことを前提としておるからしでいまこういう法律になっておるわけでありますが、しかし万一にもそういうことがあったらどうするかという問題があるから、その保障をどうするか、こういうことになろうと思います。私は理論的には、それでもやっぱり万一ということはあると思うからして、スライドというものは考えなければならぬ問題だというふうに思っております。しかし、一つのものはして、一つのものはスライドしないということは、制度的にあるべきでない。みんな同じ問題でありますから、私はみんなに同じような規定を設けるべきだという考え方から、これ一つだけを規定しないで一緒に考えたい、こういうことであります。
  80. 八木一男

    八木(一)委員 今度厚生年金法の改正案で同じようなことを考えておられるようですが、そのほかのところでないというところがあったというふうに伺いますが、そのほかについて、全部そういう改正案をお出しになるおつもりですか、出す用意ができておりますか、年金局長に伺いたいと思います。
  81. 山本正淑

    山本(正)政府委員 いま御承知の上で御質問思いますけれども、スライド問題ということは、単に年金額をスライドするということじゃなしに、もっと大きな問題を含んでおるわけでございまして、こういった長期の年金についてスライドしなければならぬということは、これは一昨年の制度審議会にも明確に出されておりますし、また学者の意見その他においても異議がないと思います。ただ一番大きい問題は、そういった措置を講じた際の財源をだれが負担するかということにおきまして、非常に大きな障害といいますか、大きな問題にぶつかるわけでございまして、したがいまして年金制度におけるスライド問題というのは、最低限物価の変動に対してのスライドということが考えられ、それに対しては国が責任を持つべきじゃないかという理論はあるわけでございます。ただ、一般的な生活水準の上昇に応じた年金額に改定する、これはスライドというよりもむしろベースアップの問題になるわけでございますが、そういった際におけるそういった措置を講ずるということになりますと、その財源はだれが負担するのが適当であるかということになりますとまた意見が分かれるところでありまして、そういった財源負担を含めましてのスライドということを解決しなければならぬ点におきまして、今日の段階におきまして、いま大臣の言われましたように、明確にこうするということの方針がきまっておらないのでありまして、その辺のところは、年金制度もこういった皆年金になりまして熟してまいりましたので、少なくとも西ヨーロッパ諸国でやっておりますような段階までそういった問題を解決していかなければならぬ、かように私たち担当者としても考えておる次第でございます。厚生年金改正におきましてこの問題が出ておるわけでございますが、厚生年金だけで明確にすべての問題を片づけるというところまではまいらぬと思います。しかしながら、現状よりは一歩前進しなければならぬ、かように思っておる次第でございます。
  82. 八木一男

    八木(一)委員 国民年金法のスライド規定といいますか、それが非常に不十分であって問題があったということは、かねがねこの社会労働委員会で指摘され、ほかでも指摘されているわけです。それをこの国民年金法改正のときに盛られる必要があった。いまの財源その他のことでございますが、財源その他のことについては、いまのぼんやりした規定だって言えるわけです。ですから、はっきりした規定をつくっていけないという理由は一つもない。それはそのときに考えられるか前もって統一的に考えられるかは別の問題として、厚生省としては考えられなければならない、スライドしなければならない。スライドをはっきりして、国民がその制度に信頼を置くようにしなければならないということは、それは間違いがない。いまの規定があいまいもことして、政府がこれをなまけることができる規定になっている。「その他」ということで物価を表現してない、「著しい」というようなことで、どこまでこの変動があったときにどうしなければならないということを明確に規定してない。そういうひきょう未練なインチキな、国民が完全に信頼が置けないような規定で満足しているような考え方が間違いです。担当者としては、それを明確な規定にしなければならないと思う。いろいろの規定、いろいろの財源計算をどうするかというのは、いまの規定でも、そういうことを言えば、計算してからでなければ書くことができない。書くのなら方針をいま考えられたらいい。考えられなければ、財源についてはまたそのときに考えたらいい。また国民年金の完全積み立て金制度をとっているものが、必然的に修正賦課方式になるということも、世の中の方向として考えられる。そんなような取り越し苦労をするのではなしに、ほんとう意味国民の信頼を国民年金制度につなげるためには、このようなスライドについて明確な規定をする、あいまいな解釈は許されない、「著しい」というようなことでは許されない。何%上がったときにはどうするというようなことをはっきり書く。「その他」ということではいけない。物価と生活水準の向上をはっきり両方とも書くというようなことをやられなければ、ほんとう責任を果たしたとは言えない。その点についての厚生大臣のお考えを伺いたいと思う。
  83. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のようにあるのがほんとうだと思いますが、政府の間でもう一度話し合わなければならない問題としまして、とにかく厚生年金法を提案するについて、すぐに何らかの形をつくらなければならぬと思っております。
  84. 八木一男

    八木(一)委員 まだまだこの問題についての質問は、私自体としては二十時間ぐらいはさしていただきたい、こう思っております。お許しをいただけば三十時間でもさしていただきたいと思います。まだ一時間半ぐらいですけれども、お昼になりましたから、後の質問を完全に保留いたしまして、一応これで終わりたいと思います。
  85. 田口長治郎

    ○田口委員長 午後一時半まで休憩いたします。    午後零時十七分休憩      ————◇—————    午後二時十一分開議
  86. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。吉村吉雄君。
  87. 吉村吉雄

    ○吉村委員 非常に時間が制限をされておりますから、改正法案全般の問題についての質問はできないと思いますけれども、残った部分は保留をすることにいたしまして、一、二、時間の許す範囲で大臣その他関係当局の見解を聞いておきたいと思うのです。  まず、この国民年金法が施行せられましてからわずかの期間でございますけれども、すでに何回か改正をされたわけです。また再び改正をされようとしておるのですけれども、この改正をされた傾向というものを考えてみますると、国民年金法最初提案をされたときに、日本社会党がこの法律案の持っておる多くの欠点について指摘しておった事項が、逐次わずかずつではありますけれども、改正のつど改正案として出てくる、こういうふうに傾向としては考えられます。  そこで、まずお尋ねをしたいのは、この国民年金法改正が、ほかの法律に比較をして非常に短期間に何回かの改正をしなければならないという、その根本的な原因について、大臣は一体どこに原因があるからこういうふうにそのつど改正になってくるのか、このことをひとつお伺いをしておきたいと思うのです。
  88. 小林武治

    小林国務大臣 これは国民年金という日本でも画期的な制度を実施したのでありますが、何ぶんとも一度に完全なものをつくるということはむずかしい。したがって、まずこういう大きな骨組みを発足さして、順次実情に合うように改正していきたい、こういう趣旨で出たのでございます。したがいまして、まだ改正のしかたが不十分だ、こういう御意見もありまするが、これらはみなで検討して、よく実情に合うように毎年少しずつでもやっていく、こういうふうな方向でいくべきだ。すなわち、こういう大きな法そのものは初めから万全を期することはできない、また財政的にもなかなかそれだけの余裕がない、こういうことでやってきておるのでございまして、国会の御意見等もいつも取り入れて年々やってきた。今回の改正もそのある部分を実現さしている、こういうことでございます。
  89. 吉村吉雄

    ○吉村委員 確かにこの法律は非常に重要な法律でございますから、そこで一ぺんに完全なものはなかなかでき得ないだろうとは思うのです。しかし、すでに一昨年社会保障制度審議会のほうからは、本法律が持っているところのいろいろの欠点あるいは今日の日本の経済情勢、将来の見通し、こういうものに立って相当計画的にこれを完全なものにする、そういう必要があるということが勧告をされておるんですけれども、いまの大臣答弁によりますと、そのつど必要な改正をという話でありますが、大きな制度であればあるほど、重要であればあるほどに、完全なものにするためには一定の計画、構想というものがあってしかるべきものだろうと考えます。ですから、国民年金法内容の充実のために、厚生省としてはどのような長期の展望に立ったところの計画あるいは構想というものを持っておるのか、この点をお尋ねしておきたいと思います。
  90. 小林武治

    小林国務大臣 これは五年ごとにやる、昭和四十一年度がこれの計算の更改期になる。この機において相当な改正をしなければなるまい、そういうことで考えておりますが、何と申しましてもいろいろこまかい欠点はございまするが、いまでの最大の欠点は給付額が低い、こういうことが一番大きな欠点でありますので、給付額をある程度実情に合わすのが一番大きな目標になる。そのためには、現にある厚生年金が非常に低い。三千数百円の厚生年金である。これがちょうど三十九年度で更改期にきておりますので、この際まず厚生年金というものを、ある程度実情に合う、いわば一万円年金というものを実現させる。これとの均衡をとって、四十一年度はそれに合うような改正、一番大きな目標である年金の支給額の更改をしたい。それに伴ういろいろなまた改正があるということで、いまの私どもの目標はそこに置いておる、こういうことであります。
  91. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、厚生年金保険法との見合いの中で長期の内容充実の方法を考えておる、こういうことでございますが、言うまでもなく、厚生年金保険法はこの国会に提案をされるという状態ですから、したがってそれとの見合いの中で考えておるとすれば、当然国民年金法改正についても、昭和四十一年度が大改正の時期ではありますけれども、厚生年金法の関係の中で、その均衡とでもいいますか、そういうものの中で一定のアイデアというものが当然なくてはならないだろう、こういうふうに考えますけれども、いまの大臣答弁はそのような理解に立ってよろしいという意味ですか。
  92. 小林武治

    小林国務大臣 その均衡をどの程度にとるかということは、まだきめておりませんが、今度の厚生年金法の改正で一番障害になったというのは、あれを直せば当然国民年金も直さなければならぬ、したがって国民年金についても、ある程度これを相当大幅の引き上げの腹を持たなければ厚生年金改正をまとめることができない、こういう観点でいろいろ政府部内で協議をしたのでありますが、とにかくそれを一つの目標にして、そして厚生年金改正に踏み切った、こういうことは、私は、この問題についても明るい一つの見通しが持てた、こういうふうに考えております。しかし、それを幾らにするかということはまだきめておりません。これからそういうことを考えたい、こういうふうに思っております。
  93. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、厚生年金法の改正というものは、結局国民年金法改正に非常に関連が深いということになってまいります。しかも国民年金法の掛け金率の調整というのは四十一年、こういうことになりますと、これは時間的な関係から見ても、たいへん問題が派生してくるといわなければなりません。   〔小沢(辰)委員長代理退席、委員長着席〕 ですから、国民年金法改正にあたっては、国民年金審議会がある、あるいは厚生年金等についてもそれぞれの関係の審議会がある。こういう中で、その間の意見の調整というものは当然なされた上で厚生年金法の改正というものが出されてくる、こういうふうに理解をしなければ、いまの大臣答弁というものは表裏一致しないということになるだろうと思いますけれども、そういう手続はすでになされておるというふうに解してよろしいのですか。
  94. 小林武治

    小林国務大臣 これはまだされておりません。しかし、厚生年金法を考える場合に、それを全然無視して一つだけ上げるということは考え得られないことでありまして、これからまた国民年金のことも相談の上でそれぞれの機関にはかる、こういうことになりますが、まだそういうふうな案はできておらない。したがって、御相談申し上げておらない。申すまでもなく、厚生年金考えるには、類似のこういうものも当然考えなければやれない問題である、こういうふうに思います。
  95. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大体そういうことであるものですから、どうも日本社会保障制度というのは、関連を考えつつも具体的にはなかなか相互の均衡というものがとりにくいということになってきておると思います。したがって、関係ある制度の改変にあたっては、その制度審議会なり何なりの意見というものを調整した上でやっていくということをしないと、次々とまた不均衡が起こってくる、こういうことを繰り返してしまうんではないかと思いますから、この点は、十分考慮の上でなされたという話ではありますけれども、今後も十分な配慮をして均衡のとれるような措置というものをとっていただく、そういう手続をしてもらうように、この時間では要望をするしかないと思うのです。  それから、やや具体的な問題になりますけれども、まず、いまの国民年金法の中で最も大きな問題だと考えられますのは何としても年金の額、しかも年金法の中で中心的な役割りを果たしておりますところの老齢年金の額、こういうものについて、この老齢年金の三千五百円という額を算出する場合に、当時生活保護基準と非常に関係があった。生活保護基準というものとの関連の中で三千五百円という数字が出てきた、このように考えられるのでありますけれども、この点は一体どのようになっておりますか。関係があるかないか、関係があるとすればどういう関係になっておるかを、事務当局のほうからお答え願いたいと思います。
  96. 小林武治

    小林国務大臣 これはやはり一種の所得保障生活保障の問題でありますから、当然関連を持って考えなければならぬと思います。午前中のお話にも、とにかくいままでの生活保護は昨年までは三千数百円、ことしはこれが四千円くらいまで上がってきておる、こういうことも言われておりますが、そういうことも当然しんしゃくしてやらなければなりません。それから三千五百円といういまのこれは、厚生年金もある程度一緒に考えてきた。厚生年金は、いまの規定ではやはり一応三千数百円にしかならぬ。これがいまの一万円年金というものをお願いをしよう、こういうふうに思っておりますが、所得保障であるということをやはり前提として考えなければならぬ、こういうふうに思います。
  97. 吉村吉雄

    ○吉村委員 次に、この拠出制老齢年金額の三千五百円と、それから福祉老齢年金額の——現在は千百円ですが、発足当時は千円であったのですが、この関係は十分一定の数理的な関係があって出されたというふうに考えてよろしいですか。
  98. 小林武治

    小林国務大臣 これは、老齢福祉年金というものは、御案内のように無拠出の年金でありまして、最初出発したのが、いわゆる生活保障、こういう問題よりか、ある程度慰安とかあるいは小づかいとかそういうことで、そのよい悪いは別として、出発はそれでしております。したがって千円というようなものを、所得保障の点から言えば過少である、こういうことがいわれるわけでありますが、出発が必ずしも生活保障というような出発をしておらぬ。しかしいずれにしても、きょう午前中もお話がありましたが、千円が、始まってから物価もある程度上がっておるので、千百円では値打ちが下がっておる、こういうふうなお話も出ておりまして、これがどのようなものが適当かということは、なかなかむずかしい問題で、財政上等も考えなければならぬむずかしい問題でありますが、いまの千百円では、始まったときに比べれば貨幣価値の関係上相当下回っておる、こういうふうな御議論もあるのでありまして、そういうことも考えなければならぬと思います。
  99. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そうすると、いままでの大臣答弁によりますと、生活保護基準、それから拠出制の老齢年金額、無拠出制のいわゆる老齢年金額、これは当然関連を持っておるというふうに考えていいわけですけれども、そこでお尋ねをしたいのは、この福祉年金制度というものができたのは昭和三十四年なんですね。昭和三十四年以来、生活保護基準というのはどのぐらい上昇をしているのか、これをひとつお聞かせを願いたい。
  100. 高木玄

    ○高木説明員 大体六割増しになっております。
  101. 吉村吉雄

    ○吉村委員 六〇%増しというのは、いつからいつの関係ですか。
  102. 高木玄

    ○高木説明員 三十四年を基準にいたしまして、三十八年までの基準と比べまして六割増しであります。
  103. 吉村吉雄

    ○吉村委員 三十九年度にも生活保護基準の改定はあったわけですが、これを含めてどのくらいになりますか。
  104. 高木玄

    ○高木説明員 年度改定分の資料が手元にありませんので、調べまして御返答申し上げます。
  105. 吉村吉雄

    ○吉村委員 あなたのほうで出しておる厚生行政年次報告書、これによりますと、三十九年度分を含めますと、八六・二%の増ということになっておるのです。これはあなたのほうで書いて公表しておるのですから、そういうことはわかっておいてもらいたいと思うのですが、これによりますと八六・二%の増ということになっています。  そこで、先ほど大臣答弁をいたしましたが、拠出制の老齢年金の問題については、現在のところ、まだ額をきめたとしてもこれに適用されるという人はいないわけですから、問題はない。しかし、そういう点からいたしますと、福祉年金制度というものが、現在の国民年金法の中では補完的な制度として設けられたとはいいながら、実態としては、福祉年金制度というものが一番国民生活に影響をする、こういうことになります。そこで考えますと、生活保護基準との見合いの中で三千五百円という額がきまり、三千五百円との関連で当時の福祉年金額千円というものがきまった、こうなってまいりますと、生活保護基準は八六・二%増額したのにもかかわらず、国民年金老齢年金額はわずかに一〇%ということは、どう考えても理屈に合わない、このようになります。その点を、一体当初の出発の当時から考えてみてどのように説明をしようとするのか、明らかにしていただきたいと思います。
  106. 小林武治

    小林国務大臣 これは先ほどお答えしたように、この千円なり千三百円というものは、いわゆる所得保障、こういうものに該当するものとして出したというよりか、当然拠出年金が全体が施行されるようになれば、老齢保障というようなものは、この面の福祉年金というものは要らなくなるというふうな考え方もあって、千円できめたということは、当時としては所得保障ということよりか、とにかく多少の小づかいと言ってはなんでありますが、生活の足しになるように、こういうふうな全く補完的な意味で設けられた。したがって、これによって所得を保障したというような考え方ではなかった。したがってこれが幾らでなければならぬという、理論的と申しまするか、生活保障的の考え方がないためにこのものが据え置かれた、こういうふうに私は考えておりまするが、しかし、できるだけ多くしてやるのはいいことでありまして、また、できたならいまの生活保護基準の引き上げにも合うようにすれば私は非常にいいとは思いまするが、出発そのものがそういうことであって、幾らでなければならぬ、こういうふうなことから出発しなかったために、このまま据え置かれた。しかし私どもは、やはり物価も上がり、生活保護費も上がれば、これもある程度上げてあげるのが私はほんとうの姿ではないかと思いまするが、そのことがまだ実現しておらぬ。それで、ことに昨年これはわずかでも上げた、こういうことで、毎年どうかということでことしは控えてということで、午前中もだいぶおしかりを受けましたが、これはやはり私どもはもう少し上げたほうがいいと思うが、そういう次第でことしは、変なことばで言えば、役所も積極的な態度をとらなかった、こういうことを遺憾には存じております。
  107. 吉村吉雄

    ○吉村委員 福祉年金制度は、確かに補完的な制度には違いありません。しかし、今日の段階においては、拠出制の年金制度というのは、事老齢年金については何らの実効を果たしていないのです。福祉年金制度こそが、今日の国民年金法の中で最も実効を果たしておるということになるでしょう。ですから、その限りでは、いまの大臣答弁は私は納得できないのです。補完的な制度ではあるかもしれぬけれども、現在の段階においては、これを現在の老齢者に対してその生活保障する、そういう国家的な政策となっていることは、これはいなめない事実だろうと思うのです。そのような考え方からいたしますると、生活保護基準は——もちろんこれで十分だと言うわけではありません。ありませんけれども、三十四年以来八六・二%の増額をしておるのにもかかわらず、老齢者に対する生活保障の唯一の制度とも言うべきところの国民年金制度において、わずかに一〇%しかこれを見てやらないということは、これは補完的な制度だからといって放置でき得る性質の問題でないと私は思うのです。国民年金法というものが、いま一番実際の運用の面で期待をされ、効果をあげておるのは、補完的制度といわれるところの福祉年金の問題でしょう。したがっていままでの法改正の中でも、福祉年金額の問題が一番重点的に取り上げられてきておる。昭和四十一年度において改正を予定をされますものは、相当将来のことについて改定をしていこうということになるはずですから、私はその限りでは、いまの大臣答弁というのはどうしても納得できない。  いま一つは、昨年だったと思いますけれども、やはり同じように国民年金法児童扶養手当法改正案の上程にあたって、私の質問に対して総理は、この福祉年金額の問題については、国民経済の成長度合い、こういうものに見合って考えなければならないということを強調いたしております。そこでお尋ねをしたいのは、昭和三十四年以来昭和三十八年にかけて、いわゆる日本国民総生産というものはどのくらい増大しているか、これをひとつ明らかにしていただきたい。
  108. 高木玄

    ○高木説明員 ちょっと手元に資料がございませんので、すぐ調べてお答え申し上げます。
  109. 吉村吉雄

    ○吉村委員 国民年金法審議には、そういうことは関係ないと言えば関係ないことになるとお考えなのかどうか知りませんけれども、何といいましても老齢者の生活保障の問題ですから、したがって、それは当然に国民生活全般の問題と関係がある。しかも国がこれを保障しようとするならば、国の経済状態というものがこれに関連をしてくるということは言うまでもないと思うのです。ですから、そういうことについては、資料がないというふうなことのないようにしてもらわなければ困ると思うのです。私がここでこういうことを申し上げるのは、日本の経済は確かに数字の上で成長しておる。池田総理も、これは海外に行ってまでこのことを豪語しておる。しかし、数字の上でそのように成長しておると言われてみましても、これとうらはらの関係をなすところの諸制度というものが同じように内容が充実しなければ、これはいばっていられるそういう経済成長ではないと思うのです。したがって、このような観点から見ましても、いまのこの国民年金法の中で最も問題になるのは、福祉年金の額というものをもっと飛躍的に増額をする、そうして国民からほんとう期待を持たれるような制度にする、こういうことでなくてはならないと思いますから私は強調をしておくわけですけれども、先ほど来申し上げておりまするように、この制度ができる際には、確かに生活保護基準の問題等、あるいは経済成長の数字的な見通し、こういうものの関連でこの額がきまったわけですから、生活保護基準を約倍近くまで引き上げなければならない、こういう状態の中では、当然にこの老齢年金の額等についても同じような引き上げをしていかなければ、つじつまが合わなくなるはずだと思うのです。こういうところに目を向けなければ、ほんとう意味での社会保障の充実、所得保障という制度が完成をされていかないだろう、こういうふうに考えます。これは四十一年まで待つという、そういう筋合いの話ではないと私は思うのです。去年百円の増額をする際にも非常に問題になったはずですから、もっと国民全体が納得でき得るような、そういう理論的な根拠、こういうものを持ってこの種の制度の改変に当たってもらわなければ困るというふうに私は思うのです。どうですか。
  110. 小林武治

    小林国務大臣 申し上げますが、私は、この四十一年の問題は、要するに拠出年金金額のことを主として申しておるのでありまして、福祉年金の額がそれまで据え置かれるというふうに考えておりません。これはもっと早い機会に、当然ある程度の手直しをしなければならぬということを考えております。
  111. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういたしますと、四十一年は再来年になるわけです。それまでの間ということになりますと、法律改正の時期というのは、まあ通常国会だけというふうに考えますと来年しかないわけです。来年は、そうしますと、私が先ほど来指摘をいたしておりまするような考え方に立ってこの老齢年金額、その他の福祉年金の額というものは引き上げるというふうにいまの答弁理解していいんですか。
  112. 小林武治

    小林国務大臣 このことは十分考えなければならぬことである、こういうふうに考えます。すなわち、次の機会にはこういうふうな手だてをとられるのが筋であろう、こういうふうに考えます。
  113. 吉村吉雄

    ○吉村委員 これは昨年改正をしたように、つかみ勘定で百円増額したという、そういうことでは済まない問題だと思うのですよ。私はやや数字をあげていま申し上げましたけれども、生活保護基準は不満足ながら約倍になっているんですよ。それとの見合いの中できめられたところの老齢福祉年金ですから、四十一年までの間にさらにこの増額を考慮するということになりますと、相当思い切ったところの額を出さなければならない、そういう決意なくしては、厚生大臣は、いまの答弁は私はできないと思うんです。したがって、そういう前向きの答弁ですから私はまあ了承いたしますけれども、十分考慮した結果、また百円だというようなことのないように、もっと国民が納得できるような、そういう改正案というものを来年出していただけるということになりますか。
  114. 小林武治

    小林国務大臣 私はいまそういうことをはっきりお約束はできませんが、これは相当な決意を持ってやらなければならぬものであると私は思っております。
  115. 吉村吉雄

    ○吉村委員 たいへん前向きな決意の表明をいただきましたので、これはぜひ——大臣は補完的な制度というふうに考えられますけれども、今日の段階においてはこれがほんとうの役割りを果たしているのですから、本来の意味で言うならば、これは切り離してやるのが本筋だと私は思うのです。しかし、拠出制と無拠出制は一体のものになっておりますから、当面の間はこれを切り離さないとするならば、無拠出制のほうの内容というものを、補完的な制度という考え方に立たないで、国民年金法の主体的な役割りを果たすものという考え方に立って、内容の充実に本気になって当たってもらいたい、このように強く要望しておきたいと思うのです。  次の問題に入るとまた長くなりますから、機会を改めることにして、一応私のきょうの質問は、あとは留保をしておきたいと思います。      ————◇—————
  116. 田口長治郎

    ○田口委員長 労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。小林進君。
  117. 小林進

    小林委員 いよいよ春闘もたけなわになってまいりまして、この十七日には、わが日本未曽有の争議が行なわれるということで、まさにあらしの前の不気味さを加えているのでありますが、こういう問題に際しまして、われわれは、公労協に対して関係官庁がまた不当な弾圧をおやりになるのではないかということを非常に心配いたしておるのであります。大体、賃上げと純粋な経済問題については労使の間で話し合いのもとにきめる、そういうことで、なるべく官憲の介入などというものは許さるべき性質のものでないのでありますけれども、いまだ未成熟なわが日本の権力機構はともすると弾圧、あるいは力でこれを押えようとする傾向があるのでございまして、この点を非常に私はおそれているのであります。運輸省、郵政省等にこの問題についてお伺いいたしますが、現在、労働争議に関係をいたしまして、国鉄の労組関係で組合活動に基づいて処分をされた人員は総計幾らになっておるか、同じく郵政省関係でも、処分をされた人員が一体どの程度になっているか、お伺いをいたしたいと思うのであります。
  118. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 従来労働関係で職員等を処分いたしました数字は、ちょっとただいま手元に持っておりませんので、あとでお答え申し上げます。
  119. 小林進

    小林委員 国鉄労働組合の被弾圧一覧表という表がここにあるのでありますけれども、昭和二十七年から三十九年に至るまで、組合運動に関連いたしまして解雇せられた者は二百四十五名ですね。若干数字の違いがありますけれども、昭和二十八年一月から昭和三十八年十二月に至るまで、国鉄労働組合関係で刑事処分の起訴人員数は二百九十二名。行政処分を受けた者で免職、解雇をされた者が合わせて百六十二名。停職された者が一千十四名。減給された者が二千二十八名。戒告をされた者が一万五千三百三名。訓告をされた者が二万四千九百八十四名。運輸政務次官にお尋ねいたしますが、この数字は間違いありませんか。
  120. 田邉國男

    ○田邉政府委員 ただいま小林委員から解雇の数などが出ておりますけれども、詳細な数が手元にございませんので、後ほど調べまして御返事を申し上げます。
  121. 小林進

    小林委員 合計いたしまして四万三千七百八十三名だ。こういう大量のものがいわゆる労働組合に関係をいたしまして処分をされております。これが国際慣行に基づくILOの八十七号等でも批准をせられていれば、当然こういうものは該当しない人員なんです。これをそういう未成熟な労働法規を設けてあなた方は処分されておるのでありますし、その中には、鉄道公安官などという世界では類のないような私兵を傭兵されておるわけです。そうして、もっぱら労働組合を弾圧するほうに使われておるのであります。金丸さん、あなたのところの全逓にもこういう処分がたくさんあるのであります。  ちょうど労働省が見えられましたから、いま労働省のほうの質問をやることになっております吉村君にかわります。
  122. 吉村吉雄

    ○吉村委員 労働省のほうにぜひ聞いておいてもらいたいということを考えましたので出席をわずらわしたわけですが、いま明後日の四・一七ストという緊迫した情勢をめぐって、たいへん物情騒然という状況にあるわけであります。そこで、関係する公労協と一方の当事者でありますところの国鉄なり、あるいは郵政省なりの使用者としての考え方、こういうものについて本委員会におきましてもそれぞれ質問をいたしてまいったわけですが、監督の衝にありますところの運輸省なり、あるいは郵政省なり等では、この四・一七のストという状態に対して、これを回避するために監督官庁としてどのような努力を今日まで続けられてきたのか、まずその点をお伺いしておきたいと思うのです。
  123. 金丸信

    ○金丸政府委員 お答えいたします。  今回行なわれます四月十七日のストにあたりましては、郵政省といたしましては、まことに国民に迷惑をかけることでありまして、できるだけこれは避けなければならないというようなことで、全逓に対しまして、できるだけこの問題は良識に訴えて、回避してくれるような申し出をしておるわけでありますが、なお今後も、この問題につきましては国民に及ぼす影響というようなことを考えまして、繰り返しお願いをしたいと考えておるわけであります。なお、郵政の職員に対しましても良識に訴えまして、国民に迷惑を及ぼすことを避けてもらいたいということをお願いいたしておるわけであります。  なお、郵政省といたしましては、昨日調停委員会に事務次官が参りまして、それまでの状況を申し上げておるわけであります。私たちも、きょうこちらに参りまして御質問にお答えするわけでありますが、できることであるならば本省に帰りまして、この事態をできるだけ避けるような最善の努力をいたしたいといまも考えておる次第であります。
  124. 田邉國男

    ○田邉政府委員 運輸省におきましては、今回の四月十七日のストでございますが、国鉄がもしストに突入した場合につきましては、日本の陸上交通の大動脈でございまして、この正常な運転が望ましいわけでございますが、それが阻害される場合につきましては、非常に国民の交通、経済、あらゆる問題に重大な支障を来たしますので、これに対しまして運輸省といたしましては、国鉄の公共的使命にかんがみまして、国鉄の正常な輸送を願うということは当然でございますので、あらゆる努力を実は払っておるわけでございます。先般来運輸大臣からも国鉄総裁に対しまして、このストをできるだけ最善の努力を払って回避するように、またストを行なわないような措置をとるように通告をいたしております。なお、国鉄総裁からも国労、動労に対しまして申し入れをいたしておりますし、また先般来公労委におきましていろいろと話し合いを進めておるわけでございますが、もしかような事態、ストに突入するような場合につきましては、あくまでも、国鉄の場合につきましてはやはり公共企業体として、これは明らかに違法な行為になるわけでございますので、もしストを決行した場合につきましては、厳重なる処分をもって臨むようにということを、総裁に対しまして強く要望をいたしておるわけでございます。なお現在、国鉄におきましては、国労及び動労に対しまして組合員に対する説得、またできるだけストを回避するようにという努力を重ねておるわけでございまして、万一ストが決行されるような場合におきましては、乗務員及び運転施設の確保につきまして万全の措置を講ずるように努力をいたしておる次第でございます。
  125. 吉村吉雄

    ○吉村委員 この四・一七ストは非常に重大な事態になっておるわけです。私があえて監督官庁としてこれを回避するためにどういうことをやっておるのかということをお尋ねするのは、そういう抽象的な答弁を求めるためにやっておるのではないのです。というのは、いま組合側が主張をいたしておるのは、御存じのようにこの事態の回避をするためには、政府自体として決断をしなければならない、こういうことを強調をし、その決断を求めておるわけです。ですから、具体的な回避の方法としては、その組合側の言い分というものに対して政府が誠意を持って具体的な答えを出していく、態度を示していくということがなくてはならないと思うのです。運輸省なりあるいは郵政省なりが、それぞれの公社に対しまして、それをやらしてはいけない、やらせないようにしなさい、やった場合には処分をする、こういうことだけでいまの事態が解消できるというふうに考えておるとするならば、それははなはだもって事態に対する認識が甘い、こう言わざるを得ません。私が求めておるところの回答は、もっと、そういうような組合側の要望に対してあるいは主張に対して、政府としてこれらの事態回避のためにどういうふうにしたらいいのかということについての組合側との折衝なり、あるいは政府自体の意思を統一するなり、そういう努力こそが最も必要だろうと思うのです。そういうことについて何らなされていないというところに、何か労使の関係については公社と組合まかせ、そうして監督官庁は上のほうからながめておる、やれば処分をするぞ、こういう威嚇だけをやっておるという態度では、現在のこの日本の労働問題を抜本的に解決することにはならない、このように私は考えます。  そこで次にお尋ねをしたいのは、労働者の気持ちとしましても、長いこと働いておるその職場、その仕事について、あえて職場放棄なりストライキをやりたいと考えるわけはないのです。なぜそうなってくるのかということが実は問題なんです。その原因を明瞭に把握しない限り、根本的な対策は立たない、こういうふうになってくるだろうと思いますので、監督官庁としては、今日このような事態になった原因について、制度上欠陥があるというふうに考えられておるのか、単に組合側がそういうことをやっているのがけしからぬというふうに考えておるのか、私は、現象が生まれるには原因がある、その原因について監督官庁としてどのように考えておられるかを、ひとつここでお聞かせを願いたい、こう思います。
  126. 田邉國男

    ○田邉政府委員 現象があることは原因があるというお話でございますが、私もそのとおりだと思っております。いままで国鉄におきましては、国労及び動労からいろいろと要望がございまして、国鉄といたしましては団体交渉を昨年の秋から続けてまいりました。しかし、これがどうしても話がまとまらない、不調に終わりましたので、これを公労委にお願いをいたしまして、これは国労及び動労から実は公労委に調停方をあっせんしたいきさつがございます。そこで国鉄といたしましても、それに従いまして現在までやってまいりましたところが、今日スケジュール闘争の一環としてだとわれわれは判断いたしておりますが、こういう事態になってきたということでございまして、私どもといたしましては、やはり正しい行為ではないと考えております。そういう現状に対しまして、われわれとしては、現在の処置の方法といたしましては公労委の裁定に待つ、こういうことがいま解決の方法として最善であると考えておりますので、さような措置を、実は現在組合が行なわんとする行為につきまして、極力回避するようにお願いをいたしておるわけでございます。
  127. 金丸信

    ○金丸政府委員 郵政省といたしましては、全逓とこの問題を折衝する過程におきまして、公労委の調停にこれを持ち込むというような過程もあるわけでありますが、ただ十七日のストを前にしまして、相当逼迫した事態になっておると私は思うのであります。ひとり政務次官の考え大臣考えということでなくて、政府一体となってこれを善処すべきであると私は考えます。
  128. 吉村吉雄

    ○吉村委員 郵政政務次官のほうは、そういう前向きの姿勢でこの事態に対処しているように感じられますけれども、田邉運輸次官のほうは、私は考え方を少し変えてもらわなければいけないと思います。と申し上げますのは、なるほどいま調停委員会にかかっておる、では田邉政務次官にお伺いしますけれども、公労法に基づいて今日まで第三者機関であるところの仲裁委員会から出された仲裁裁定、こういうものが完全に実施をされておる、こういうことになっておるか。完全に実施をされておるとするならば、それはまさしくその第三者機関を労使双方が信頼する、そういう気持ちが生まれてくるのが当然です。ところが、そうなっておるかどうかということが実は問題なんです。第三者機関にせよ、法律にせよ、その規制の中にあるものがそれを信頼する、そういう条件がなくては、第三者機関は単なる権力機関の一つになってしまうわけです。あなたがいまおっしゃるように、調停委員会にかかっているのであるから、あるいは仲裁に移行をして仲裁裁定、こういうふうに言われますけれども、それすらもいまの公労協の労働者としては信頼できない、こういう気持ちになっているところに問題があると言わなければなりません。どうしてそういうような信頼し得ない気持ちになっておるのか。これまた、労働者の側に責任があるのではないですよ。二十四年以来公労法というものが施行されて非常に問題になってきたということは、仲裁裁定が完全に実施されるかいなかの問題であった。ところが、完全にそれが実施されないというところから、公労法に対する労働者の信頼感というものは全く薄らいでしまっている。ここに問題がある。したがって、政務次官、一体第三者的機関で問題が円満に解決したのはどのくらいあるとあなたはお考えになっていますか。昭和三十二年までの間に、国鉄だけの例をとりましても、ばく大な金額労働者に支給しなければならないという仲裁裁定が、ほとんど無視されている。こういうことをあなたは御存じになっておりますか。
  129. 田邉國男

    ○田邉政府委員 ただいまの御質問でございますが、私どもの記憶によりますと、最近における公労委の仲裁裁定というものは、その裁定どおりほとんど実施されていると私どもは記憶いたしております。
  130. 吉村吉雄

    ○吉村委員 私がいま指摘をいたしましたように、昭和三十二年以降の仲裁裁定は確かに実施をされております。これは私、否定をいたしません。問題は、昭和三十二年までの間に出された仲裁裁定は完全に実施されていない。そこで一番問題になるのは、昭和三十一年に公労法の改正が行なわれているんです。公労法の改正以前におきましては、仲裁裁定というものは完全に実施されたことがない。なるほど、公労法の改正以降、三十二年以降は完全に実施されておる。表面的には、そこに何ら問題はないということになるかもしれぬ。ところが、仲裁委員会の構成は、公益委員をもって構成をするわけです。この公益委員の選出の方法が、昭和三十一年の公労法の改正によって変わってきたというところに非常に問題があるんです。ですから、私は労働省のほうにお聞きしますけれども、現在の公益委員のメンバーは一体だれで、どういう経歴の人がいま公益委員になっておるかをお伺いしたい。
  131. 三治重信

    ○三治政府委員 公益委員の方は、法律に基づいて国会で承認され、任命されておるわけでございます。会長は兼子先生、これは御承知のように学者の御出身でございます。それから石川先生、これも現在大学の先生であります。それから金子美雄氏、これは企画庁におられまして、いま水資源公団の理事をやっておられます。それから飼手真吾氏、これは労働協会の理事をやっておられます。それから峯村先生、これは大学の先生でございます。以上でございます。
  132. 吉村吉雄

    ○吉村委員 三治さんがいま答弁なさった中に、どうも言いにくいことは、あなたは伏せておるようです。だからといって、いま答弁されたことはうそではないですよ。この五人の公益委員の中で、労働省の高級官僚であった人が二人おるのです。それはいいと言えばいいことになります。ところが問題は、ILOではそういうことが議論をされておるのです。議論をされておることもあなたは御存じのとおりです。いま一番問題になっておるのは、この公益委員の人が政府の意向をくんで、そうして仲裁裁定というものを出しているのではないかという疑念が労働者の側にある。これは疑うのは自由だと言えば、そういうことになるでしょう。しかし、現実の問題とし、常識の問題として考えなければならないのは、昭和三十一年までの仲裁裁定というものは、ほとんどと言っていいくらい実施されたことがない、完全に実施されたことがない。ところが昭和三十一年の八月において公労法の改正、この改正の中で最も問題になったのは、労働者委員あるいは使用者側委員、その中でも中立委員の選出方法が変わったということが、一番大きな変わり方であった。ところが、それ以降は仲裁裁定というものは完全に実施されるようになったという、この客観的な事実から見ましても、労働者がそのことに対して疑念を抱くとしても私はふしぎではないと思う。ですから、私の申し上げるのは、そういうところに非常にいまの政府のやり方に対する不信感というものがある。したがって現在の四・一七ストの最大の原因というものは、政府の公労法に対する運用のしかた、こういうところに問題があるのだということを、一つ労使関係の中から皆さん方によく知っていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  いま一つは、あなた方が国鉄なりあるいは全逓なり、労使の紛争にあたって、かりに国鉄当局に例をとれば、団体交渉をやっていく中で財源の問題にひっかかる、こういう場合に、一体ほんとう意味での団体交渉の当事者としての適格条件というものを備えておるというふうにお考えになっておられるかどうか、ここをひとつ監督官庁の立場から明らかにしてもらいたい。
  133. 田邉國男

    ○田邉政府委員 適格条件を備えておると考えております。
  134. 吉村吉雄

    ○吉村委員 だといたしますると、たとえば本年の問題等についても、民間の賃金との比較、あるいは国鉄の場合には公社間のいろいろな問題、こういった問題について、ほんとう意味での正しい団体交渉というものが行なわれる、こういうことになってきたのかどうか。ややもすると、ほとんどその団体交渉というものが形式的に行なわれて第三者機関に移行する、こういうふうなきらいがあったというふうに言わざるを得ないのですけれども、その原因というものは、本来の意味での当事者能力というものを持っていない、こういうところにあるというふうに私は考えております。過般の運輸委員会における国鉄総裁の答弁、あるいはこの委員会におけるところの総裁の答弁等から考えましても、この点は非常に問題がある。しかも昨日の労働大臣答弁においては、適格者としての能力を完全に備えているものというふうには考えられない、こういうような趣旨の答弁すらあるのです。こうなってまいりますと、実はこの労使関係の問題については、制度自体に非常に欠陥があるというふうに言わざるを得ないと思うのですが、それでも適格条件を備えておるというふうに考えますか。
  135. 三治重信

    ○三治政府委員 先ほどのお話から関連して申し上げますが、今度の四・一七ストをかまえた組合側に公労委の公益委員についての不満とか不平、またその公益委員が過去において出された仲裁裁定について、不満でストをかまえたというふうには、寡聞にして私は聞いていないわけであります。今度のかまえた理由として五つほどあげられておりますけれども、その一番重点は、私はいまの質問に関連いたしますが、使用者としての公社、現業、あるいはそれを直接やっている政府、そういうものに、公労委にいかない前に、またそういう仲裁裁定を得ないで、やはり使用者また政府として組合に対して、賃上げなり何なりの要求に対して具体的な回答をすべきだ、こういうふうなかまえでこういうふうになっているというふうに感じておるのです。そういう意味において、いま御質問のあった当事者能力の問題が今国会でもしばしば議論になっているのではないかというふうに私は理解しております。昨日も労働大臣がお答え申し上げましたように、法制上の問題としては当事者能力はあるし、法制上特別の欠陥があるというふうには理解していない。ただ国有、国営と、その形は公社の形、現業の形はとっておりますけれども、予算上において法規並びに予算総則で相当な制限がある、この事実は認めなければならない、こういう答弁があったと理解しております。
  136. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そこでまだ労働大臣来ないのですけれども、この四・一七ストを回避するために、政府と総評なりその他といろいろ話し合いが行なわれておるのですけれども、いまの事態の中では、労働大臣答弁によりますと、仲裁に移行するしかないだろうという答弁がしばしばなされておるのです。ところが、仲裁移行の方法としては、御存じのように三つの方法があるわけです。政府は、いまの事態を回避するためにもし真剣に取り組むとするならば、やればできるところの職権仲裁への移行というものについて、どうしてそこに踏み切ることができないのか。単に労使の間での話し合いによって仲裁移行をしたほうがいいのではないか、こういうことだけで抜本的な解決というものは出ないだろうと私は思うのです。いかに抗弁をされようとも、いまの事態については、各公社が自主的な判断に基づいて本問題の解決というものは、とうていでき得ない状態にあるのではないか。政府自体が、たとえば今春の各組合の賃上げに対しては、六百円なら六百円の初任給是正の支給をもってということは、政府の方針として出されておる。こういう関連からいたしますると、今日の事態を解決するには、政府全体としてこれにどう対処をするのか、こういうようなこと、具体的に言うならば、どのくらいの金額を提示するのかということを含めて、そうして事態回避をはかっていくという道、さらには労働大臣が強調するごとくもし仲裁委員会にということであるならば、職権仲裁という道もあるのではないかというふうに思うのですけれども、この点を進め得ないという理由は、どうしても私としては理解できないのですけれども、大臣がおりませんが、かわって答弁ができる方がありましたら明瞭にしていただきたいと思います。
  137. 三治重信

    ○三治政府委員 職権仲裁は三十六年に行なわれたことがございますが、この場合には、一部の公労協の組合だけが調停に乗って、ほかの組合は調停に乗らなかった、そのために職権仲裁をやったわけです。今度は、組合みずからそろって調停に乗ったわけなんです。それに使用者側が応じた、こういうことであって、しかも調停委員会も終末に近づく時期にあって、公労委において法の示すように努力されているということにおいてなぜ職権をやらなければならないか、そういうのは筋が通らないというのがおもな理由でございます。  なお、金額回答の問題につきましては、きのうの、いわゆる公社、五現業の監督の責任大臣として五大臣が、一緒に公労協並びにそれぞれの責任者とお会いになったときのお話を聞いてみますと、政府側から金額回答を、または金額の明示をすることはできない、公労委の調停の場において、使用者側は詳細公社、現業の経理なりその他いろいろの事情を話してあるのだ、こういう説、さらにその上に政府側が金額回答ということはできないというふうに回答になったように聞いております。
  138. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いまの三治さんの答弁では、職権仲裁に移行し得ないということについて、どうしても私としてはまだ納得ができない。ですから、もとより労使の問題でございますから、労使間において話し合いの結果、仲裁移行なら仲裁移行ということが一つの方法であることは言うまでもないのです。しかし、この緊迫した事態の中で、これを回避していくというその責任は、政府自体にもあるはずだと思うのです。ですから、仲裁以外に解決の道がないという判断にもし労働大臣が立つとするならば、あるいは政府全体が立つとするならば、やってできないわけではないのですから、そういう道というものもあり得るのじゃないか、こういうふうに考えられるのですけれども、そこを歩まないというのが、いまの答弁では私としてはどうも納得できないのです。再度ありましたら示してもらいたい。
  139. 三治重信

    ○三治政府委員 公労委が調停で努力されておりまして、それが現に進行中のところを、ストをかまえたからということで職権の仲裁をするというのは筋が通らない、労使関係のルールからいって筋が通らない。調停で努力して、どうしても早く具体的な金額を組合側がほしいならば、仲裁に切りかえられたらいいのじゃないか。これは何も職権でなくて、労使双方が合意して上げられてもいいわけであります。その点において、もしも組合側のほうで早く結論を得たいということで仲裁を申請されるというならば、きのうの五大臣の会見の場合においては、監督官庁として使用者側に応ずるようにあれします。こういうことでございます。仲裁に移る場合において、職権しかないということではないわけであります。その点を大臣が、むしろストを回避するならば、労使双方に責任があるとするならば、労使双方がよく話し合って仲裁のほうへお持ちになっていったら、それが一番いい解決方法ではないだろうか、こう申されたのが大臣国会における御答弁の趣旨だというふうに理解しております。
  140. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大臣が来ましたから、きのう少し関連質問でお伺いしておきましたけれども、明後日の四・一七ストにあたって、非常に情勢が緊迫しておる。この緊迫しておる事態を解決するのは、もとより労使双方の交渉、あるいは現在の段階においては調停委員会の機能をフルに活用する、こういうことであろうと思うのですけれども、いまの段階としては、十七日以前、十六日までの間に調停が成立するというようなことはちょっと見通しとしては暗い。したがって、大臣のきのうの答弁では、労使双方で、特に組合側のほうで仲裁に移行する、そういう筋道を考えられたらどうか、仲裁の裁定ならば労使双方を拘束するのであるからという答弁がありました。私は、確かに労使双方の問題には違いありませんけれども、今日のこういうふうに緊迫した状態の中では、この事態を収拾するということは政府みずからの責任でもあるだろうと思います。したがって、政府が仲裁移行以外に解決の道はないというのであるならば、労働大臣はその職権をもって仲裁移行はできるわけですから、職権によるところの仲裁移行ということを考慮されてしかるべきではないか、こういうふうに考えるのですけれども、どうもそこに踏み切れないというのは、何か根本的な理由があるのではないかと思うのですが、このことをひとつ明瞭にしていただきたいと思います。
  141. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 実はこれはだいぶめんどうな問題でございますが、これを御説明させていただきますと、私は今度の争議に関連しての問題点が二つあると思うのです。  その一つは、組合の要求であります大幅賃上げ、これに対して最終的にどの程度の額にするか、これが一つの問題だと思います。それからもう一つは、組合側が大幅賃上げ達成のための手段としていま宣言をしておりますストライキの問題でありまして、このストライキをどうやって回避するか、この二つの問題だと思うのでございます。  この二つの問題がいろいろの場合に混同されておるのでございまして、私が問題解決の道は仲裁以外にないだろう、こう申しておりますのは、大幅賃上げの要求について最終的な結論を出すのは仲裁裁定によるほかはなかろう、こういう意味で申しておるのであります。ストライキを避ける方法としてはそれでは何があるか、ストライキを避ける方法としては、仲裁手続へ移すということは、これは切り札ではございません。なぜならば、法律によりますと、仲裁になったからといって特別にストライキをしてはならぬということにはなっていないのでありまして、そもそも公労法においてはストライキは絶対にいけない、こうなっておるわけでございます。それをストライキをやろうというところまで組合がきておるのでございますから、単に仲裁に移すからというそれだけでは、ストライキはやまらない。これはどうしても組合の方々がストライキをやめようという気持ちになっていただかなければならぬ事柄だ、こう思うのでございます。そこで、御本人がストライキをやめようという気持ちになっていただくきっかけとして、あるいは仲裁手続に移すということが役に立つ場合もあるかもしれない。しかし、やみくもに仲裁手続に移したからといって、それではたして御本人が、それではストライキをやめようという気持ちになってくださるやらくださらぬやら、そのことについては、私はいま見通しとしては全然どちらともわかりません。そういう段階におきまして、職権をもって仲裁に移行するということははたしていかがなものであろうか、こういう気持ちがいたしますので、この際職権で仲裁に移行するという手続を選ぶ気持ちになっていないわけなのであります。  そこで、もう一つの問題、すなわち賃上げの問題でございますが、そもそもこのストライキが計画されたのは、大幅賃上げを実現する手段として計画されたことでございます。そこで大幅賃上げ実現の手段として、はたしてこのストライキというものがどれだけ効果があるかということを考えてみますと、現在政府といたしましては、いろいろな事情から、調停段階あるいは団体交渉の段階において、自分のほうの側から、組合の要求のうちこの程度までは認めるであろうという具体的な数字を示した回答を出すことは、困難な状態に追い込まれておるわけなのでございます。このストライキを避けるには政府に具体的な回答を示してもらわなければならぬ、こう言って組合側はいま固執しておられますが、これではどうもストライキを避ける政府の具体的な回答というものは、先ほど来申し上げましたごとく実際上提示されることはない、こう見られておりますので、そういう点を固執される限り、ストライキを避けるという道は開かれないのではなかろうか。そうなりますと、この大幅賃上げを決定する方法、手段というものは、仲裁以外にはないわけであります。仲裁裁定に対しましては、すでに昨日関係五大臣と組合代表者との会談におきましても、政府側は、公労委の結論に対してはこれを尊重するという態度を明らかにしておられます。したがって、大幅賃上げの回答をできるだけ早く得たいと考えられるならば、組合におかれまして進んで仲裁へ手続を移される措置をおとりいただくことが問題解決の早道ではなかろうか、こういうふうに考えておるわけなのでございます。それに対しては、政府側はいつでも喜んで同意をしよう、こういうことを申しておるような実情でございます。したがって、私は使用者側という政府の立場でなしに、労政当局という立場から、公平に両者の状況を判断いたし、また公労委の手続の進行状況などをも考えまして、この段階におきましては当事者双方が話し合われて、すみやかに事件を仲裁に移されるということが適当である、それが問題の解決をすみやかならしめる唯一の道である、こう思っておるのでございます。ことに政府側の立場を考えましても、政府側は、必ずしも現在の六百円だけでこの事態が解決できるものとは考えておらないと私は判断をいたしておるのであります。すでに春闘も進行いたしまして、ある程度の春闘相場というものが出てきておるのでございます。しかし政府の立場としては、自分の口から金額を切り出すということはどうもできない、そのかわりに、公正なる第三者機関である公労委が金額を示したならばそれに従おう、こういう意思を示しておるわけなのでございます。したがってそういった実情から考えまして、この際労使双方が話し合われて、事態を仲裁手続に移すという措置をとられることが適当である。そしてこれは、やはり組合が仲裁を進めることによってストはやめようという気持ちを持っていただくということが、ストを避ける根本でございますから、話がそこまで進めば、何も労働大臣が職権でやることはない。当事者同士の話し合いで仲裁に移れるではないか。この際労働省が労使双方の話し合いに介入して、職権で動くというようなことは何ら必要のないことであるし、また、そういう形で組合の意思に反してこの事案を仲裁に移しましたとて、それがストライキをやめさせる法的な保証もないわけでございますから、この際職権仲裁は避けて、当事者がその気になるまでできるだけ説得を続けるという態度でまいりたい、これが私の考え方でございます。
  142. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いまの大臣お話の中で非常に重要だと思いますのは、六百円という回答だけで問題が解決するとは思わないというお話がありました。ところが、この六百円という初任給是正資金というのは、実は閣議において一応方針は決定されておるわけでしょう。そういうことに基づいて、各公社がその政府の方針に基づいて一応の回答をしている、こういうのが現実の姿なんじゃないですか。だとすれば、この六百円という数字については、各公社一斉にそういう回答をして、そして交渉が進められているということは、大ワクは政府の方針の中できめてしまって、公社はそのワクの中で交渉をする、こういう形態をいままでたどってきたと思うのですよ。これは間違っておりますか。
  143. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 六百円というのは、閣議ではなく、関係大臣の打ち合わせによってきまった数字なのでございます。この数字は、各企業体の予算の範囲内で支出できる範囲、こういうことで六百円がきめられておるわけであります。しかし、春闘相場などから考え、また公労協の要求などから考えまして、現在の公社の予算できまっております給与総額でまかなえる範囲で問題が解決するとは、私はどうしても考えられないのでございまして、どうしてもこれは予算的措置が必要になる程度の額でなければ、問題にならぬのではなかろうか。それに対しましては、使用者たる政府側の態度といたしましては、予算をいじるということは自分らとしてはできない、予算をいじるということになれば、公労委の仲裁に基づいて国会の議決を経て予算的措置を講じた上でなければならない、こういう考えを持っておるものでございますから、したがってこの解決の道は、このまま政府の回答を待っておったのではそれだけの数字が出てこない、また政府といたしましても、なまはんかな数字を出すということはかえって解決から遠ざかることになるのではないか、おそらく出す考えもないと思います。かれこれ考え合わせまして、金額問題についての解決の方途は、もはや仲裁裁定にあるのみだという感じを私としては持っておる次第でございます。
  144. 吉村吉雄

    ○吉村委員 閣議ではないという話ですが、関係大臣の協議の中でそういう方針がきまったということは、一般的、常識的に考えて、それは政府一つの方針である、こういう理解に立たざるを得ないと思うのです。また現に、そういうことでこの回答がなされて以来、ほとんど交渉は前進しないままに調停委員会に移行した、こういう経過をたどっておるわけです。ですから、この六百円という方針をきめたということは、政府自体が、今日の事態を解決するために幾ら幾らにしたほうがいいのだという態度を決定する、そういう責任もあるのだということを明瞭に意味しているのじゃないか。いままでの公労協関係の賃金等の問題につきましても、政府の一定の方針というものが各公社に示されて、そのワクの中での交渉が進められておる、こういうことがとられてきていることは事実です。したがって、その限りにおきましては六百円という一定の方針をきめる権限を持ち、それによって解決ができなかった今日の事態については、その方針をきめたところの政府が、この事態を回避するために、ではこのくらいという額を明示するということを明瞭にするということは、私はでき得ないことではないと思うのです。ただ予算がすでに通過をしてしまっておる、こういう技術的な事務的な煩瑣の問題、むずかしい問題があることは事実だと思いますけれども、しかしそれは、仲裁のほうに移行をしたとしても起こってくる問題なのですから、六百円という額を示した政府責任から見ましても、やはり今日の事態回避のためには、このくらいの額をもってという責任ある態度を示すことが、明後日に迫ったこの事態を回避する非常に重要にしてただ一つと私は思うのですけれども、そういう解決策じゃないか、こう考えられてしょうがないのです。ですから、この六百円というものといまの状態の中では、政府は額を示すわけにはいかないのだということの関係をもう少しわかるようにしていただきたい。
  145. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 ごもっともな御質問でございますが、御承知のとおり団体交渉というものは一つの協定でございます。すなわち契約でございます。したがって、行政機関が職員組合という機関と契約いたしまして、そして賃金は幾らにするということを決定するわけでございます。したがって、この契約は守られなければなりません。契約というものを行政機関が行なう場合においては、御承知のとおり会計法上の制約があるのでございまして、必ず予算または債務負担行為がなければ、契約をやる権能は行政機関にはないわけでございます。したがって具体的に予算のない場合には、費目流用あるいは予備費の流用、こういった措置を講じ、予算の当該費目の全額を変更した上、それに基づいて契約するということになっておるわけであります。ところが今度の問題につきましては、とても、予備費流用や費目流用くらいでまかない得る程度金額では問題の妥結はできないだろう、こういう状況にあるわけであります。したがって行政機関といたしましては、金額を提示したくてもできない。なぜかと言うと、提示した金額は直ちに契約上の金額になります。だから会計法上予算的な措置が先行しなければ、かような手続をとることは法的に差しとめられておる、こういう関係があるわけなのでございます。したがって、現在政府側が金額を提示できないでおるというのは、政治的なあるいはかけ引き的な、あるいはまた技術的な問題でなくして、財政法並びに会計法に基づく法的な拘束である、こういうふうに私は考えるのでございまして、かような法的な拘束がある以上は、幾ら力で押してみても政府に法を破らせるというわけにはいかない。したがって、政府の、現在のような金額を示すわけにはいかぬと言っておる態度は、やむを得ないものとして何人も認めざるを得ないではなかろうか。そうだとすれば、その他の方法によって政府予算金額を変え得るような措置を助けてやるということが交渉を促進するゆえんであり、また大幅賃上げを要求する組合側といたしましても、その方法を考え、それを推進していくということがほんとうの戦いの意味であろうと思うのでございます。さような点から考えますと、政府といたしましては仲裁裁定がありました以上は、予算上、資金上の問題については国会の議決をいただくようにして、必ずこれを尊重する、こういう態度をすでに明白にいたしておりますので、先ほど申し上げましたような観測を私としてはつけて申し述べた次第でございます。
  146. 大原亨

    ○大原委員 関連。労働大臣、非常に重要な問題です。労働大臣の御答弁は、非常に頭脳明晰で筋が通ったようだけれども、さか立ちしておるのです。というのは、つまり労使関係の問題、特に賃金という労働条件の中心問題を解決する際において、団体交渉の段階で交渉することが一つです。それから、公労委の調停段階において公益委員を加えて労使双方の合意を得るような、こういう手続をとることが一つですね。それから、それが合意できない場合に仲裁裁定をとることが一つなんだ。しかしこれは、郵政省や運輸省の次官も見えているし、全体の監督官庁としての考え方においても重要な問題であるから申し上げるのだが、とにかく公労協の労使関係というものは労使対等なんですよ。労使対等の原則による団体交渉権なんであります。ですから、団体交渉で協約を締結したものが、いまお話しのように当局を拘束するわけです。そこで拘束のしかたなんですが、団体交渉と調停段階で妥結ができるかできないかという問題の議論ですけれども、つまり調停段階において結論が出ない、あるいは意見が不一致であるならば労使関係の問題は解決しないということが前提であるならば、公労法というものは全くインチキだということになるわけです。そこで、公労法に基づいて団体交渉あるいは調停の段階において結論を出す、出した場合にこれを履行するのはどういうふうに政府を拘束するかといえば、政府は、調停の段階において結論が出た場合においては、政治的に予算上、資金上の措置をとる責任がある。それでなければ労使対等ということは言えないわけです。だから極端に言えば、手続上は何回でも国会に対しまして、政府はそういう予算上補正の原案を出す責任を持っておるわけです。それをなお責任を果たすことができなければ、政府はその責任を果たす能力がないのであるから、これはストライキの問題にもなるし、あるいは政治的な不信任の問題にもなるでしょう。つまり法律上、資金上、財政上のワクがあるから、調停の段階において労使双方が自主的に結論を出しても、この問題については実行する方法がありませんというふうなことは、これは調停の段階において政府がそういうふうな発言をしたということは重大なる問題ではないか。私は関連質問ですから簡単に申し上げるのですが、私の質問は、調停の段階において政府が自主的なる労使双方の合意の上に立った調停案というものが出たならば、これを当然政府は裏打ちをいたします。こういうことをやはり政治的にはっきりいたしまして、そして調停段階における公益委員を中心といたしました調停案のできることを当然促進すべきである。そういう方法は、公労法の労使対等の原則から、あるいは憲法二十八条の労働者の基本的な人権の問題から当然にとらなければならぬ。その問題について、労働大臣のような御見解であったならば、これは労働者の基本権を否認するような、労働運動の自主性を否認するような、そういう議論になってくるのじゃありませんか。そういう点については、私は関連質問ですから一点にしぼって御質問いたしますけれども、労働大臣の御答弁は私は納得がいかない。この点について見解をはっきりしてもらいたい。
  147. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 お断わりいたしておきますが、この問題についての私の意見を申し上げて皆さまに御賛成をいただいておるわけではございません。私がなぜ労働大臣の職権による仲裁申請をするつもりがないのか、これに対する御質問にお答えしたのでございます。それは、私がこの問題の現段階についてこういう見込みを持っておる、その私の見込んでおる現在の情勢から見ると、十六日以前において調停の出る見込みはない、十六日以前においてストをやめるかどうかというきっかけをつくるとすれば、調停案の提示というものは、これは待ちくたびれて時間切れになるのじゃなかろうか、そうすると、これは公労協関係の組合自身がストをやめるという気持ちに気分を変えていただく以外には、これを避ける道はないのじゃないかということを先ほど来申し上げたわけでございまして、あといろいろ申し上げたのは、私が一つの見込みをつけております。なぜそういう見込みをつけたという根拠を申し上げておるわけなのでございまして、すなわち私の申しておるのは私の見込んでおる一つの事実を申しておるので、私の申しておるのを一つの私の見解であるが、あるいは意見であるかというような感じでこれを反駁されるということは、この場合意味のないことじゃなかろうか。その問題はまたあらためて別の機会に、私の意見ということになりますと、いろいろまた意見の一致する点もあり、また対立する点もあるかもしれませんが、私は私の意見を申し上げたのじゃなくて、私の現在見込んでおるところ、どうもこういうふうな様子だから理事者側のほうはこういうふうな気持ちらしい、そうなると現段階はこういうところじゃなかろうか、そこで私は、先ほど申し上げた結論のような考え方になっておるのであります。こういう趣旨でありますので、その点をひとつ御理解いただきたいと思います。
  148. 大原亨

    ○大原委員 法律解釈じゃない……。
  149. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 法律解釈じゃないのです。私の解釈じゃなくて、これは経営者側の従来からの行動から見まして、私が推測をいたして申し上げたわけです。
  150. 大原亨

    ○大原委員 これは長い時間かけて質疑応答するということはあらためてやるべきですけれども、しかしこれは重要な段階ですから、労使慣行を正常化するという意味において申し上げておるのですが、当委員会も含めて私はいろいろな場所において、公社当局のほうは、石田総裁の言を待つまでもなく、物価が上がっておる事実あるいは民間賃金との格差の事実、そういう問題については何らかの措置をとらなければいけない、とりたい、こういうことはしばしば当事者として言っているのです。そういうときに、私は将来の労使の慣行、公労法の精神から言えば、団体交渉で経済条件の中心である賃金、労働問題の中心である賃金の問題が妥結できることが一番正常です。そうして調停委員会において、公益委員を加えて、調停案等を中心にいたしましてこれが妥結できることがやはり次善の策としても望ましい。それでできない場合において、仲裁委の制度というものがあるわけです。私はこういう段階であるからこそ、しかも当局においては、賃金要求のそういう切実性やそういう根拠については認めていないんだから、それが自主的に解決できる能力を与えるというそういう場所といたしましては、これは調停委員会の場所は政治的にも、実際的にも考えられるようなそういう場所じゃないか。そうすれば、それに対する条件を与えるというふうなことは、これは労働省や総理大臣政府全体の政治的な責任ではないだろうか、こういうことを私は指摘したのです。私は議論は別にいたしていきたいと思いますから、私の主張点だけを明確にいたしておきまして、関連質問ですからそれだけにとどめておきますが、これはずっと続けてもらえばよろしい。
  151. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 関連して。吉村委員質問に対しまして、こんな巨大な春闘が組織されておる背景には、必ずそれなりの因果関係があるという立場の質問に三治さんなり関係次官から答えられておるのですが、そのときに一つの側面として、公労委の意図を含めた攻勢に対する真意ということで若干のやりとりがあったのでありますが、私は客観的に、今日まで公共企業体に働いておる労働者の諸君が大きな不満を内蔵しておる、そのことを経緯的に明らかにしながら、その部門部門においてその責任の所在をひとつ明らかにしてほしい。御存じのように、きのうも実は御質問したのでありますが、二十四年に公労法ができまして、実際にこれを通して労使間の諸問題が解決されるようになった。ところが二十五年の第一回仲裁以来三十一年まで、全く完全実施されたものは一度もない。その間、一体公労協の労働者はどういう態度をとっていましたか。第一回の調停が出て六十億近い未実施が出たのでありますが、実力行使に訴えることなく、悪法でも法は法であるという立場をとりながら、ハンガーストライキという闘争に入っているんですよ。そうして政府反省を求めて運動を強めてきました。三十一年まで絶えずそういう未実施の段階を通して、労働者にはきびしい低賃金の方向が押しつけられたのであります。その中で労働者はまさに隠忍自重して、みずからの要求が法で定められた機関において、それを受ける政府側において、国会において実施されるように心から信頼し、隠忍自重してきたことは間違いございません。この経緯の中で国鉄労働者だけが受けた未実施額が二百二十四億五千万、はね返りを含めると四百五十億というものが未実施という形になってあらわれてきております。こういう中で、昭和三十二年から石田労相のときに完全実施という立場が言われました。これは大臣も三治さんもお話しになったとおりです。ところが三十二年の完全実施の仲裁金額は、一体幾らだったと思いますか。三十二年、三十三年、三十四年、三十五年までは二百円、六百円という賃金がその間に出されておるのであります。物価にも追いつかない、官公庁労働者の低賃金を直してやることにも追っつかないきわめて低い金額が出されて、完全実施がなされておるのです。昭和三十五年に初めて八百円という金額が出ました。こういう状態では公共企業体労働者生活を維持改善することはできない、人並みの生活を営むことはできないということで、三十六年、初めて三・三一ストライキというものを計画したわけです。このとき幾らの金額が出ましたか。一〇%、二千三百円という金額が出ております。ストライキをかまえなければ、平和な調停仲裁機関をたよっておったのでは賃金が上がらないということを証明したのは一体だれです。昭和三十一年までのあれだけ膨大な未実施額をつくっていって不信感を招いた責任は一体だれなのですか、これは政府じゃないですか。そうして三十二年完全実施以降、三十五年の二百円とか四百円とかいう仲裁を出した責任は一体どこなんですか、公労委じゃないですか。そうして三十六年から、そういう実力行使を生活を守るためにやむにやまれぬ行動として組織した結果、一〇%という金額が出ているじゃないですか。しかしその金額は出ても、なお今日民間企業には三〇%の開きがある。五千円から八千円の開きがある。これほどの低賃金を解決するためには、やむにやまれぬ状態としてこのストライキを決行する羽目になったという公労協の立場は、客観的に私は認めてやっていかなければ、具体的な対策は生まれてこないというふうに考えるわけです。  二番目には、きのうも言ったように、この間、裁定実施のためにささやかな抵抗行動を組織したことに関して、膨大な弾圧を加えられてきている。二重の損害を公労協の労働者諸君に与えておるのは、一体どこの責任なのだろうか。  私は、今日のいままでのやりとりを聞いてみまして、法に違反することだから弾圧する、違法に対しては処分をする。いまのお話の中には、処分という権力の発動は見えても、事態を円満に解決する誠意というものは見えないじゃないですか。これに対して具体的な対策というものをお述べいただきたい。  前三点について、それぞれ担当者の方からお答えをいただきたいと思います。
  152. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 私は、労働者の福祉を守るべき労働大臣の立場から、公労協の労働者諸君に対しまして非常に御同情あるおことばをいただいて、厚く御礼を申し上げる次第でございます。この公労協の給与につきましては、御指摘のようにいろいろ問題があるようでございます。すでに公労委の席上におきまして、石田国鉄総裁からも、いわゆる格差問題についてるる述べられましたし、また長時間労働等についても述べられておるところなのでございます。また国鉄ばかりでなく、他の企業体の理事者からも、それぞれその職員の給与問題につきましては、理事者の立場から、ぜひ公労委に賃上げについて配慮をしてもらいたいという意図が述べられておるということも、私は承知をいたしておるのでございます。しかしながら、これらの理事者の方々は、原則論として抽象的に賃上げについての希望を述べてはおられますが、具体的にこれだけまで上げていきましょうという数字は、遺憾ながら述べておられないのでございます。それはなぜであるかと申しますと、先ほど来申し上げましたるごとく、現在の機構といたしまして予算上、資金上いろいろな制約がございますので、理事者として具体的な数字、それも労働者諸君の満足を得るような数字を提示する立場にないからなのでございます。このことは、ひとり公共企業体の理事者がそういう立場にないばかりでなく、財政法ないし会計法などの規定によりまして、そしてまた成立いたしております予算によりまして、政府といたしましても国民に対する立場上、金額の提示は非常に困難であるという立場にあるのでございまして、この問題の解決にあたっては、こうした特別な事情に使用者側があるということをお心におとめいただきたいと思うのでございます。そういう次第でございますので、理事者たる政府側といたしましては、公労委の判断によって具体的な数字がすみやかに出ることを期待しておる、そしてこの公労委によって示されたる数字に対しましては、これをあくまでも尊重するという態度を明らかにいたしておるわけなのであります。したがって、政府はこの労働者の賃上げの要求に対しまして、使用者としてこれを拒んでおるのではございません。これに対しましてはぜひ協力したいという気持ちは持っておるのでございまするが、立場上、みずからの口から数字を出すわけにいかない。そこで公労委によってすみやかにはっきりした数字をお互いに示してもらおうではないか、政府としては責任を持ってその数字を具体化していこう、だからストライキはやめて、この法律によって示されている手続に相協力して進もうではないか、こういう態度をとっておる、こう私は労政の立場から判断をいたしておるのでございまして、ここでストライキを何回やってみましたところで問題の解決に一歩も近づくものではないというところをよくお考えをいただきたい、こう思っている次第でございます。
  153. 吉村吉雄

    ○吉村委員 いまの応答の中でも明らかになってまいりましたけれども、一番問題なのは、公社の理事者に団体交渉の当事者としての適格条件が欠けているというところに問題がある。ですから緊急なこの事態に対する対策としては、いまの大臣のような方法もあるでしょうけれども、しかし根本の問題を解決しなければ、この事態というものは、やはりいつかまた起こると見なければならぬと思うのです。ですから、私はきのうも関連質問の中で申し上げましたけれども、労使の関係を円満に持っていくためには、それぞれの当事者がその能力を完全に備えていなければならない。ところが、いま大臣からも答弁がありましたけれども、各公社の理事者は、そういうことを資金上、予算上あるいは公社法の関係で労働者側の満足するような回答ができ得ない独得な事情がある、こういうお話がございました。ここが一番私は問題だと思う。ですから政府としましては、そういうような状態を放置しておいていまの事態の解決をはかってみても、それは根本的な解決にならぬではないか。だから現実する事態の解決策については、もちろん政府責任を持ってやらなければなりませんけれども、今日の事態が起こってきた根本的な原因を排除する、そういう責任ある態度を明確にするということも、これも将来の労使関係を円満にしていく一つの方策ではないか、こういうことを私はきのうも申し上げたわけです。ですからこの根本的な、いわゆる労使の間の当事者能力としての自覚、要件を備えさせるように関係法律というものを改正をする、そういうような責任ある言明というものは、一つはやはり現実の事態を解決するための方向につながっていく、こういうように思いますので、この点について明瞭にしてもらいたいと思います。  それから、先ほど六百円の問題について私は質問を中断した形になりました。一番問題なのは、政府が六百円の初任給是正ということで関係閣僚会議でそういう方針を示した、ここに一番私は問題があると思うのです。去年の十月二十九日に労働組合側が賃金の要求をした。ところがこれに対して……
  154. 田口長治郎

    ○田口委員長 吉村さん、発言中ですが、大臣がやむを得ない用事でどうしても三十分で抜けるということですから、これで……。
  155. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういうようなことで事態が解決するというふうに考え政府の方針が、一番私は問題だと思うのです。民間賃金と比較をしても、あるいはその他のことを考えてみましても、非常に問題があるということがわかっておりながらそういうワクをはめてしまっておる。これでは労働者の側は本気になって団体交渉でこれを解決するという熱意理事者側にもその熱意が失われていくということは、明瞭だと言わなければならぬと思うのです。ですから、そういう今日の混乱する事態を生むような六百円という方向を出したところに問題があるのですから、政府みずからこれを刈り取る決意がなくてはならない、こういうふうに私は申し上げておるのです。その方向として、いま労働大臣は、労使双方の合意に基づく仲裁移行というのが現実的であるという話をしておるのですけれども、私ども労働者の側が一番心配をしておりますのは、労使双方だけでこの問題を解決するというような、そういう事態になっていない。先ほど山田委員も言われましたけれども、根本の問題は、公労法自体にあるというふうに私は考えておるのです。ですから、このような事態を生んできたところの責任というものを政府が刈り取る、こういう立場を明瞭にするためには、非公式ではあろうけれども、関係の組合あるいは総評等とも労働大臣は折衝しておるはずですから、そういうような考え方について、もしこのストを回避するためにこういうふうにするならばというようなことで、単に労使双方によるところの合意に基づいた仲裁移行ということだけでなしに、政府みずからもその回避策に当たっていくという態度を明瞭にすることが一番解決のポイントではないか、こう思うのですけれども、大臣は忙しいようでありますが、そこをひとつ明瞭にしてもらいたいと思います。
  156. 大橋武夫

    ○大橋国務大臣 まず根本問題の解決という点でございますが、確かに公労協の関係には御指摘のような問題がございます。しかし、そもそも公労協関係の労働者諸君の賃金の問題というものは、申すまでもなく国民の負担によってまかなわれておるのでございまして、使用者たる政府労働者とのいわゆる団体交渉だけでこれがきまってよいものかどうか、ここにそもそも根本的な問題があると思うのでございます。そういった点から考えまして、結局予算というような形式によって国会の議決を経なければならない、また給与をベースアップいたしますために予算を動かすということになると、国会の議決が必要になるというようなことになっておるわけでございます。したがいまして、政府といたしましては、いわゆる使用者と労働者のアベック闘争的なものにこれが考えられるということは避けなければならぬのでございまして、あくまでも国民の同情と支持を得て、ベースアップを使用者と労働者が協力して実施していくという形をつくることが、この問題においては大切なことであるわけなのでございます。こういう意味におきまして、政府が公正なる第三者機関であります公労委において具体的な数字を指示してもらいたいという方針を打ち出すことは、私は政治のたてまえとして決して間違ってはおらぬのではないか、こういうふうに思う点があるわけなのでございます。しかし、これは一つの点でございまして、そのほかに労使関係の正常化とか、いろいろこの問題については多方面の角度から検討すべき点がございますので、労働省といたしましても、責任上これら各方面からこの問題を今後掘り下げてまいりたいと思うのでございます。  次に初任給是正の問題でございますが、使用者たる政府といたしましては、当初から初任給の是正だけでこの問題はおしまいであるというような考え方をいたしておるわけではございません。先ほど来申し上げましたような事情によりまして、政府みずからが、金額について口火を切るということは適当でない、これはやはり公正なる第三者機関である公労委によって金額の指示を得るということが国民を納得せしめるゆえんだ、こういう考え方に立ちまして、初めから公労委の金額についての具体案を待つという気持ちで対しておるわけでございます。もともと六百円だけでおしまいだというつもりで六百円を決定したわけではないということを御承知いただきたいと存じます。
  157. 吉村吉雄

    ○吉村委員 大臣は中断せざるを得ないというのですけれども、いま非常に重要なことを言っていると思うのです。最初から六百円で解決するとは思わなかった、それで公労委の機関というものを活用するという考えを、当初から持っておったという意味の御答弁をして退席したわけです。私は、労使関係というものは、できるだけ労使の合意に基づいて、第三者機関を利用しないでも自主的に解決するというのが、労使関係の基本的なあり方だろうと思うのです。解決しっこないような考え方最初から持ってワクをはめておいて、第三者機関に移行する。第三者機関というのは、御承知のように調停委員会は二カ月間かかるのです。こういうようなことを前もって予測しながら労働問題に対処しようとする、その考え方は、私はとうてい納得するわけにいかない。そういう考え方を持っているから、もう労使の団体交渉というものは形式的になってしまって、第三者機関にだけ移行するということになってしまう。単に時日をかせいでいるのにすぎない。その間、労働者は低賃金で苦労しなければならないということになる。そういうような結果を招来するような方針というものを、この委員会大臣がのうのうとこういうことでございましたと言うに至っては、何をか言わんやという気持ちがするのでありますが、当の大臣がおりませんので残念ですが、こういうような考え方では労使関係というものは円満に運んでいかないだろう。労使はそれぞれやはり当事者の能力を持って自主的に解決する、どうしても解決し得ない場合に、第三者機関に移行する、こういうあり方が労使関係の根本的な状態ではないかというふうに思うのですが、次官いかがですか。
  158. 藏内修治

    ○藏内政府委員 大臣の言われました真意につきましては、またの機会に尋ねていただく以外にないかと思いますが、私どもの理解いたしておりますのは、やはり現在の公共企業体のあり方の中で何らかの捻出をするということになりますと、六百円程度ではないかというのが関係閣僚の会議で出た数字ではないかと思います。ただ、これが調停ないし仲裁の段階に入りまして、そこで公労委の裁定というものが出た段階では、これは予算上何らかの措置を講ずるというのであって、その際にはもちろん幾らかこの六百円に上乗せするということが当然考えられてしかるべきであろう、こういうふうに大臣は言っておるのであろうと私は理解をいたしております。
  159. 吉村吉雄

    ○吉村委員 そういう考え方だろうと思うのですが、その考え方に非常な問題があるというふうに思うのです。ですから、六百円ということで解決でき得ないにもかかわらず、そういうことを予測しながらも六百円という方針をきめている、しかも第三者機関の中でこれを解決していこうとする、こういうことですけれども、本来の意味は、これは公社の各理事者に対してもっと団体交渉をし得る、そうして責任のある回答を出し得る権限というものを与えるような方向で事を進めていくというのが、それが労働行政のあり方だろうと思うのです。しかしこのことについては、大臣がおりませんから、日を改める以外に方法はないわけですけれども、いまの事態につきましても、いまのような大臣答弁、そういう態度ですから、どうしても団体交渉というものが煮詰まらない、形式的になってしまって第三者機関に移行する、第三者機関の中でも調停委員会というものは労使双方を拘束しないから、仲裁裁定でやるしかない、こういうことになってしまう。これでは、何のために第三者機関が置かれるのかということにもなりかねないと思うのです。  私は、だいぶ時間を費やしましたからこの辺で終わりたいと思うのですけれども、一番問題なのは、この公労法という法律、特に第三者機関のあり方、その出した結論、こういうものについて関係労働者が信頼をしていない、ここが一番問題だということを申し上げておるのです。先ほども申し上げましたけれども、三十一年までに、仲裁裁定が出されてこれが完全に実施されたという例は少ないわけです。その間に公労法というものに対しては、もう信頼でき得ないという気持ちを持っておる。これではいけないということで、石田労相時代にこの公労法が改正になりました。なりましたけれども、それ以降は確かに完全実施になっております。なってはおりますが、事をきめるところの公益委員の選出方法、これが変わったというところに問題がある。ですから、疑えば切りがないという話がありますけれども、三十一年以前と三十一年の改正以降とでは、まさに違う金額しか裁定としては出てこない。こうなってまいりますと、政府の意向を受けて仲裁裁定が出されているというふうに常識的に考えざるを得ないのではないか。ここが非常に問題になっておる。ですから、私は今日の問題を解決するためには、公労法のあり方自体をまず考えなければならない。いま一つは、公社に対して当事者能力というものを与えるように関係法律改正する、こういう決意がなくてはならないだろう。そうしなければ、あなた方のように理事者の側に立った責任者の方、あるいはその監督官庁の立場に立った方々といえども、単にたなざらしであって、どうしていいかわからない。こういうことではどうにもしようがない問題だと思うのです。事を解決するのは、大蔵大臣だけだということになってしまう。こういうことでは、労使の慣行というものが円満にいかないのは明瞭だと思うのです。そういう点は、政府としては反省をして対処しなければならない、このように根本的な問題については申し上げておきたいのです。  それから、今日の事態の解決策につきましては、先ほど来私は申し上げておりますが、仲裁に移行したほうがいいのではないかということについては、大臣も私も方向としては一致をするのです。ただ、大臣の場合には、それは労使の合意に基づいて移行したらどうですか、こういうふうに言っております。私は、やる気になるならば職権仲裁移行があるんだから、それは政府責任においてこの仲裁移行を考えるべきではないか、こういうことを申し上げておるのです。事をきめるのは、この場合仲裁裁定だとするならば、そういうことはあり得る。どちらの道をとるかということについての意見の違いなんです。そこで、労働者の側に立ってこの問題を考えてみるとするならば、もし政府に、今日の事態の原因というものについて、先ほど私が申し上げてきました今日の事態を回避する、そういう熱意というものがあるとするならば、政府みずからやってやれないことはないのであるから、仲裁に移すという、そういう積極的な態度があってしかるべきである。ところがそうでなくて、それは労使の問題だから労使合意の上でやるべきではないかということで、今日の事態についてきわめて甘く見ておる、消極的にしか見てない、こういうところにたいへん問題があるというふうに思います。それぞれの関係の官庁の方々でございますから、いまの事態を回避するためにはやはり政府が一体になってこの事に当たる、そのためには、いま申し上げましたような職権仲裁移行ということで、政府もこの問題を真剣になって考えているなという信頼感を労働者に与えるという意味で、一つは私は解決策につながっていくのではないか、そうして初めて、政府みずから積極的にそういう態度をとることによって、責任ある金額等の問題についても労働者がある程度期待感を持つ、そういうような期待感と政府に対する信頼感というものがわかない限りは、この事態というものは解決をし得ないであろう、このように私は考えますので、ひとつ関係の次官の方々も特に大臣等と相談をされて、そういう方策についても十分検討されるように強く要望しておきたいと思います。  私の質問はこれで終わります。
  160. 田口長治郎

    ○田口委員長 大原亨君。
  161. 大原亨

    ○大原委員 政務次官がせっかくおそろいになっておるから、まず一つは、政務次官会議の運営です。特に直接関係の深い政務次官は十分その点についてお聞きいただきたいと思うのですが、政務次官会議は、やはり事務次官以下の各役人に対しましてとにかく督励して、服務の規律ということに名前をかりまして、うんとねじを巻く役割りをしておられる、こういうふうに綱紀粛正連絡会議というものが大体中心になるということなんですが、そういう点から、私はこういう重要な段階においてはやはり理屈を通してもらいたい。その理屈が通るか通らぬかの一つの問題で、私は、労働省の政府委員で三治局長がおられますから、三治局長に対しまして質疑をいたしますから、その結果について各政務次官の御意見もお聞きする、こういう段取りで話を進めたいと思います。そういうことで、質疑応答の順序といたしましてはきわめて紳士的、建設的なんですが、中身は重大であります。  三治政府委員にお尋ねするのですが、公労法による団体交渉の結論である労働協約の法律的な効果については、労働省においてはあなたがその解釈についての主管局長ですから、労働大臣のいままでの質疑応答を聞いてみて、平生からゆっくりかまえてやる問題は別といたしまして、今日の事態解決の上から、労使関係の正常化から重要な問題であると思うので、この一点にしぼりながら質問を展開いたしたいと思います。公労法上の団体交渉による労働協約の締結、この労働協約の法律的な効果については、どういう見解を持っておりますか。
  162. 三治重信

    ○三治政府委員 労使双方の団体交渉によって協約が締結された場合には、その当事者は、それによって拘束されることは一般の労組法上の労働協約と何ら変わるところはないと思います。ただ、公共企業体等労働関係法の第十六条によりまして、「公共企業体等予算上又は資金上、不可能な資金の支出を内容とするいかなる協定も、政府を拘束するものではない。又国会によって所定の行為がなされるまでは、そのような協定に基いていかなる資金といえども支出してはならない。」これが第一項でございます。第二項に「前項の協定をしたときは、政府は、その締結後十日以内に、事由を附しこれを国会に付議して、その承認を求めなければならない。但し、国会が閉会中のときは、国会召集後五日以内に付議しなければならない。国会による承認があったときは、この協定は、それに記載された日附にさかのぼって効力を発生するものとする。」こういうふうに、この点だけが変わっているわけでございます。
  163. 大原亨

    ○大原委員 資金上、予算上不可能である——可能である不可能であるということの問題は議論がありますが、不可能はこれは当然でありましょう。議会において否決された場合は、これは当然でありましょう。しかし、協約自体が、その場合といえども解消するのじゃないでしょう。協約自体はそういう場合といえども解消しない、これははっきりしているでしょう。
  164. 三治重信

    ○三治政府委員 普通の意味においての協約は何もその効力を失わないわけですが、ただその協定がそこで、先ほど読み上げましたように予算上、資金上不可能な場合においては、その協定は国会で承認されなければ有効にならないわけですから、実質上、協定が結ばれても意味がないわけであります。
  165. 大原亨

    ○大原委員 不可能な場合には意味がないわけです。しかし国会において否決された場合においては——不可能な場合は、それは協約自体が実質上存在しておってもその効力を発揮しない。しかし国会において否決された場合においては、当局と政府側は、さらにあらためて資金上、予算上のいろいろなくふうや操作をした上において国会に当然提案するでしょう。いかがですか。
  166. 三治重信

    ○三治政府委員 その点は私は逆で、一ぺん出したのが否決されれば、それでその協定は、その部分に限っては失効すると考えます。
  167. 大原亨

    ○大原委員 それはその国会においては一事不再議だけれども、しかし予算上、資金上やはりあらためていろいろな操作とくふうをして、納得のできる形において国会に出す、こういうことは当然しなければならない、そういう責任を労使の当事者は持つわけです。政治上の責任を持つわけです。そうでしょう。
  168. 三治重信

    ○三治政府委員 私はそうは思いません。一ぺん出したものが否決をされて、それを労使双方がまた実現をするようにやりくりしたり、いろいろ知恵をしぼるというのは国会を冒涜したようなことになると思います。国会で否決されたものはあっさりあきらめてまた別の努力をすべきだ、こういうふうに考えます。
  169. 大原亨

    ○大原委員 それはあなたは一つの政策論を言っているのであって、私は法理論を言っているのです。私が申し上げたいのは、労使の当事者で妥結をいたしました点については、当然に当局のほうでは政治責任を持つわけです。ある場合には、国が不可能な約束をした場合においては政治上の責任をとらなければならないから、極端に大きく言えば辞任とか、あるいは事実上信任をされないという結果になるけれども、そういう政治問題が起きてくる。公労法上の団体交渉は、これは労使対策の原則でしょう。この点いかがですか。
  170. 三治重信

    ○三治政府委員 労働協約は、労使対等という思想のもとにおいて締結されるわけでございます。しかしその締結された協定が、公労法関係に限っては十六条によってその効力について制限されているわけです。しかもそれが、まだどちらともわからぬうちはいいわけですが、それが国会によって結着をつけられたら、それが承認されればその協定は有効になるし、そこで否決されればその協定は無効になる、こういうことであります。
  171. 大原亨

    ○大原委員 しかし、私が申し上げたい点ははっきりしたのですが、労使双方で協定したことについては、その協定を実施するために必要なる予算上、法律上の原案を政府国会提出する、そういう法律上の義務を伴う。この議論は、私はいままでの質疑応答をさらに一歩進めて別の角度から言ったのですが、これは大臣答弁することなんだが、次官、ひとつ答弁してください。私が申し上げている点について答弁してください。
  172. 藏内修治

    ○藏内政府委員 お説のとおりだと思います。
  173. 大原亨

    ○大原委員 それは法律の上から言って私はそうだと思うのです。そのたてまえをやはり通さないと、労使の間においては労使対等の原則が貫かれないわけです。今回の問題解決に対して大切な点は、労使双方で、この点は政府委員の三治さんも、それから次官は御答弁なすったけれども、三治さんのほうもうなずいておるからそれはそのとおりなんだが、これは法律上通説なんだ。そういうように労使双方が調停案においてこれを了承したならば、その了承いたしました結論につきましては、政府国会責任を持って提案をしなければならぬ。それは労使対等の原則と労働協約の法律的な効果の議論から、これは通説といたしまして異論のないところです。ですからその方針、考え方を貫くような運営のしかたが、実際上三公社五現業においてはなされてない、そういうところに問題が出てくるのであります。これは私は議論のための議論ではありませんが、その筋を通さないと、労働者側は労働基本権がじゅうりんされる、あるいは労働者の権利が一方的な弾圧を受ける。そういう理解の上に立って——私は時間をたくさんとる意思はありませんが、憲法二十八条に基づいて、労働三権が基本的な人権として保障されている、そういう観点に立つと、これは首尾一貫した考えであると思いますが、法律についてはしろうとではないが、専門家でもないと思うけれども、労働次官、その点についてはいかがですか。
  174. 三治重信

    ○三治政府委員 いまお話の中で、いずれにしても、先ほど答弁いたしましたように労使はあくまで対等であって、労働団体協約を結べる。しかし公労法関係の適用を受ける労使双方にとりましては、十六条の制限がある、こういうふうに申し上げたわけで、その点につきましては先生も御了解されているわけなんです。ただその場合に、国会へ出して否決されても、なおそれを実現するように、労使双方はその協定を締結したからには、たとえ資金上、予算上ということで国会に出してもそれはだめだということで否決されても、なおそれを実現するような義務が労使双方にあるとおっしゃいますけれども、公労法の十六条関係から言って、またその協約を結ぶ場合においても、これは当然予算上、資金上にひっかかるということで、留保づきの労働協約になることと思います。その実態はとにかくといたしまして、法解釈といたしましては、それはその部分に限ってはその労働協約は無効になるのである。ただ、一たん労使が結んだ協約の、そこまでに至った団体交渉の内容、お互いの理解というものについて、そのときには国会で否決されてもさらにその翌年はまた別の予算も組まれるわけですし、何らかやるわけです。しかしそれは別の形になるべきであって、協約を再び同じ協約で生き返らすということは、法律上も許されないことじゃないか。またそのときはそのときでだめなんで、もう一つ別に新しい事態が起きたならば、そのときにまた新しく団体交渉によって労働協約を結んでその実現をはかる。こういうふうになるのが普通の筋だと思います。
  175. 大原亨

    ○大原委員 その議論はきょうは時間がかかるからしないけれども、私が言ったのは、労使対等の団体交渉の原則から言うて、あるいは憲法の原則から言うて、団体交渉の結果である労働協約を締結した場合には、協定に達した場合においては、その協定については政府法律案予算案に対して変更を加える原案を出して、そして編成して出す責任を当局は負うのであるから、その修正原案を出すという責任は当然になければならぬ。こういうことについては三治政府委員もうなずいておられるし、賢明なる労働政務次官は、そのことはそのとおりだ、こういうことです。これは法律論といたしましては全部異論のない通説なんです。これを通さないと、やはり労働基本権侵害の問題やあるいは不当弾圧の問題が起きてくるのです。ILOにおいてもこのことは当然であります。だからILOの問題につきましても、団結権の問題に関係いたしましても、不当労働行為の問題に関係いたしましてもこの議論が起きてくる。これは一々やっていけば問題ですけれども、そういう点におきまして、私はそういう時間をきょうはとる必要はないので申し上げませんが、そういうことを通してまいりますと、資金上、予算国会が判断をする以前において先ばしったというところはいろいろ問題が起きるけれども、そういう政治的な判断をするのではなしに、やはりその筋を通すということになって、いままで政府委員やあるいは労働大臣がいろいろ言われたけれども、ともかくも自分の生活をささえ、あるいは労働する、それに対する対価を要求し、対価を保証する、こういうたてまえから言うても、特に国鉄では安全問題その他大きな問題になっておるときでありますが、筋を通さないと労使の慣行は確立できない。そこで私は、ぜひとも筋を通してもらいたい。いままで国鉄の総裁をはじめ、あるいは電電公社の大橋総裁をはじめ、あるいは政府の当局をはじめ、やはり物価は四%でなしに七%三年間上がっておる。それを五%に押えるとか、六百円の初任給を引き上げだけで押えるということではいけない。民間賃金との格差は開いておる。この現実は認める、当然賃金については引き上げるべきだ、こういう答弁をされておるように、労働者はそれ以上に切実なる見解を持っておるわけです。だから私は、そういう要求の妥当性と憲法や公労法に基づく労働者の基本的な権利、そういう権利の問題に基づいて、これは筋を通して解決をしなければならぬ。そのことが日本の民主主義を守っていく、あるいは労使の慣行をつくっていく、こういうことに通じていくし、あるいは安全の問題や仕事の能率やサービスの問題にも、いろいろな問題に関係すると思うのです。  その点は、郵政省と運輸省と労働省の政務次官がおそろいだけれども、私が申し上げたい点は、次官会議において弾圧することばかりやっておるとは思わぬけれども、やはりそういう筋を通さないと、民主主義のルールを確立しないと、いわゆる公労法というものが一般の職員団体と同じような——公務員の職員団体は、いろいろな議論はあるけれども、現行法では労使対等の原則ではないわけです。だからそういう観点からいたしますと、公労法の場合はストライキ権を禁止いたしました、しかしながら、実際上のそれにかわるべき人権を尊重するような措置がとられていない、こういう議論に発展することは当然です。したがいまして十七日のストライキというものは、そういう問題をかまえて——共産党の諸君は、一発主義だというようなことを言って誹謗いたしておるけれども、別の意図があるのだ。自民党のほうはスケジュール闘争だというふうな、あるいは資本家のほうでは宣伝があるけれども、そうではなしに、実態と法律上の問題点を踏まえておる非常に重大な問題です。私はこれをもって質問をきょうは終わるつもりですが、労働政務次官からその点につきましての所見を述べていただいて、いろいろな点においてこれからの本問題解決についての所信をこの際明らかにしていただきたいと存じます。
  176. 藏内修治

    ○藏内政府委員 公共企業体の職員の給与につきましては、お話のとおり、公労法による資金上、予算上の制約がございます。ございますが、しかしながら一般的な世間の、民間の給与と比較いたしまして必ずしも十分ではない。この点は、確かに労働省においても認めておるところであります。  なお、最近の経済成長の過程におきまして、公務員の給与は低きに過ぎるのではないか、そういう検討も着々と労働省としては進めておるわけでございます。なおかつ、賃金体系そのものにつきましても、現在、賃金研究会その他につきまして抜本的な検討を進めておる過程でございまして、労働省といたしましては、政府の一機関ではございますけれども、労働者の弾圧というような意図を持ってやっておるわけではございません。ただ一に、現在の法律制度につきましてはいろいろ御不満やら制度の不備について御指摘はあると思いますが、しかしながら、現在の法できめられておるところに違反をするようなことは、ひとつ注意をしていただきたいと申しておるのが私どもの意図でございまして、政務次官の会議におきまして官庁の綱紀粛正という点を言っておりますのも、法は法なりに違法のらち外に出ないようにということを私どもはお願いしておるわけでございます。
  177. 大原亨

    ○大原委員 それで皆さん方は、法律を守ることは大切だけれども、憲法の精神を守ってもらいたい、民主主義の精神を守ってもらいたい。民主主義を守るということは、憲法を守るということである。こういう点で、憲法について、民主主義のルールについてひとつ守ってもらいたい。そういう点において規律を立ててもらいたい。そういう規律を確立することだ。そういうことが今日の政治においては大切である、こういう点を指摘いたしたいのであります。  私、出席者の名簿を見ておりますと、せっかく造幣局と鉄道から見えておりますので、最後に一つ質問いたしますが、造幣局の東京支局長、あなたはいまのような質疑応答から見てみまして、あなたのほうもいままで団体交渉を何回か重ねたと思うのですが、誠心誠意責任を持って公労法の精神で団体交渉ができましたか。あなたのこれからの労使関係に対する所信と、また私のいま申し上げました質問について、あまり出過ぎた答弁をするとおこられると思うのですが、しかし確固たる所信をひとつ記録にとどめておきたいと思うから——造幣局がここに出られるということは珍しいことだと思いますので、そういう面においてひとつ所信を明らかにしていただきたいと思います。
  178. 石橋大輔

    ○石橋説明員 造幣局と全造幣労働組合との間の団体交渉でございますが、昨年の十一月から本年の初めまで、七回にわたりまして、お互いに今回の新賃金要求につきまして質疑をかわしておるわけでございます。それでただいま先生のおっしゃいましたように、お互いに十分納得のいくようにお互いの主張を検討し合っておるわけでございまして、初めからだめなものだというようなことで投げておるわけでは決してございません。十分組合側の申しております六千二百円の本件についても話を伺いましたし、われわれの申し上げたいことも十分話しておりまして、決して団体交渉を拒否しておるわけではございません。
  179. 大原亨

    ○大原委員 あなたじゃないと思うのですが、私は組合側から聞くのですよ。どうせここで団体交渉をやったってだめだから、とにかく政府へ言ってみてくれ、こういうことを公労側の当局がみな言うておるのです。造幣局が言うておるとは言わぬが、しかし私は全造幣の話を聞きましても、実際上やっぱり交渉はやっておりはせぬ。私は、それでは労使関係が確立するというようなことはないと思うのですよ。その点については、私は意地の悪い質問なんかしませんが、これは各政務次官、各政府委員全体といたしまして、残された次官は三次官ですが、非常に重要な段階ですから、この問題についてはほんとうに虚心に——この際たたいてやれとか、あるいはこの際、ひとつ池田をゆすぶってやるために、十七日ストに突入したら池田内閣が倒れるかもしれないからやってやれ、こういうふうな感情論がしばしば聞かれる、そういうことをチェックするのが政務次官の仕事ではないか、チェックしながらこれを正しい軌道に乗せていただくことが政務次官の仕事ではないか。そういう意味においても政党とそういう当事者との間における折り目を正す、こういう役目を果たしてもらいたい、こういうことを切に要望いたしまして、私の質問を終わることにいたします。
  180. 田口長治郎

    ○田口委員長 小林進君。
  181. 小林進

    小林委員 まず、労働政務次官にお尋ねいたしますが、あなたは、先ほどからも質問がありました、内閣に政務次官をもって編成せられました官庁の綱紀粛正特別委員会、総務長官ですか何か議長になられて、この春闘に対するいわゆる弾圧委員会をおつくりになったのでありますけれども、私はその中にせめて労働政務次官だけは——先ほども大臣が言われたように、労働省としては労働者の利益を守る立場でございますから、その労働者を思う答弁を受けて私としては感謝にたえないという、官側にしては非常に傾聴に値するような大臣の御答弁があったにもかかわらず、その大臣を補佐していく立場におられるあなたが、その綱紀粛正委員会の中で最も強硬なる意見を吐かれている、断じて違法行為に出る者は弾圧すべきであるというような強硬な意見を述べられている。私はその会議を傍聴したわけじゃありませんけれども、それは毎日の新聞に出ている。新聞の報ずるところによれば、あなたが一番、そういう職員の動きを見ながら弾圧すべきだという強硬論を述べておる。これは私は心外にたえない。親友藏内君がおそるべき反動の分子であるという感を深くしたのでありますが、這般の事情を明らかにしていただきたいと思います。
  182. 藏内修治

    ○藏内政府委員 事情を御説明いたします。  官庁綱紀粛正に関する連絡会というのは、この春闘に限って急に設置せられた機関ではございません。各官庁の人事担当者をもって常時置かれておる機関でございます。この機関におきまして、春闘の時期が切迫いたしますにつれて、春闘に伴う違法行為というものはやはり取り締まらなければならないであろう、ついては現在の春闘の態勢、準備態勢あるいは現状、それらについて労働政務次官より全体の情勢報告をやれという御注文がございまして、私が説明したことがございます。その説明が新聞紙上に、私も自分でも読みましたが、これの取り締まりをも労働政務次官が提唱したようになっておりますが、これは事実と相違することは、ここに列席の両政務次官もおられますので御承知であろうと思いますが、少なくとも先ほど申しましたとおり法のらち外に出る行為は遠慮していただきたいけれども、そのらち外で行なわれる労働行為につきましては、これはやはり労働省というたてまえからいたしまして、労働者の権利という意味においてはこれを保護するということは、労働省におります限り私も大臣の言明のとおりでございます。この点はひとつ小林委員にも御了解をいただきたいと思います。
  183. 小林進

    小林委員 労働政務次官は他の政務次官がこれを証明をしてくれるとおっしゃいましたが、運輸政務次官郵政政務次官どうでございますか、証明されますか。
  184. 田邉國男

    ○田邉政府委員 藏内労働政務次官の申すとおりでございます。
  185. 金丸信

    ○金丸政府委員 そのとおりであります。
  186. 小林進

    小林委員 両政務次官が証明せられることになりますならば、私も一応信頼をすることにいたしましてこれ以上の追及はいたしませんが、将来とも労働政務次官の口を通じて、労働者を取り締まるべきである。弾圧すべきであるというような強硬な意見が外部で騒がれ、報道せられるようなことのないように、ぼくは十分御注意いただきたいと思うのであります。この四・一七ストライキに対する本会議の各省各大臣答弁などを聞いておりますけれども、やはり与野党ともに、労働大臣答弁が、出色ではないけれどもつぼを得ているのではないか、対労働者の利益を守る者としては、まあ不満足ながら、ややかくあらねばならないという感じを与えておる。その協力者である政務次官が、大臣が外部に与えるのとは全く反対の受け方をされるような発言をされるということは、私は、非常に労働省のあり方を間違わせる根源でありますから、将来とも十分御注意いただきたいと思うのであります。  各政務次官もおなかがおすきになったでしょうけれども、私どももこうおそくまで質問をするのはつらい、用事もたくさんあるのでありますからつらいのです。あなた方が労働者を弾圧されなければ、こんなおそい時間までこういう問答を繰り返す必要はないのでありまして、その意味においても私はひとつ反省をしていただきたいと思うのであります。  時間を短縮する意味において、かいつまんで結論だけを次々に申し上げていきたいと思うのでございます。  まず、運輸政務次官には先ほどの質問に継続して申し上げます。ともかく昭和二十八年の一月から昭和三十八年の十二月まで、労働組合に対するいわゆる労働争議に関しまして、団体交渉に関係をいたしましてあなた方が処分されました組合員の員数は四万三千七百八十三名だ、これだけの者を処分されている。これを賃金カットの人員でいくと五十二万二千六百三十六名だ、昇給を延ばされた者が約八千名、これまでも加えますと延べ人員が六十二万余名になっておりまして、国鉄労働者三十万名として、平均一人で二回ずつ何らかの処分、弾圧を受けている、こういう勘定になっている。これは一体国鉄の管理者として、監督官庁としてほむべき名誉ある行為ですか、喜ぶべき行為とあなたはお考えになりますか、政務次官どうですか。
  187. 田邉國男

    ○田邉政府委員 まことに不幸なる行為だと思っております。
  188. 小林進

    小林委員 それで運輸政務次官に申し上げますけれども、こういうふうな弾圧や処分をしている限りは、これは国鉄の行政がうまくいっていない証拠なんです。こんなことをやって事故が絶えようはずがないのです。安全操業なんて幾ら言ったって、安全操業はうまくいきっこない。これは私は反省してもらわなければいかぬと思う。そこで私は各省全部にお尋ねします。全部がこうやって弾圧をしている。その弾圧の中でずば抜けて大きいのが国鉄なんです。あなたのところで一番成績があがっているのは何か、弾圧した数が多いことだ。国鉄行政の中で見るべきものは何かといったら、労働者をいじめたという実績だけなんだ。そんなことは、日本の労働行政や労働行政の歴史の上に恥ずべきことなんです。なぜ一体国鉄がこういう弾圧の成績をあげたかといえば、そこに国鉄公安官という私兵がいるのです。私の兵隊をあなた方雇っておいて、これをして弾圧せしめているところに問題がある。  そこで私は申し上げまするが、政務次官にこまかいことをお尋ねしても、あなたにきめのこまかいことがおわかりになろうはずがないのだが、そういう公安官なんというものをおまけにつくられた趣旨は、組合を弾圧するためにできたことじゃないのです。ちゃんとここに設立の趣旨がありますけれども、そういう目的じゃないのです。そこで、こういう公安官などというものを、このたびの春闘に際して、これをまた組合弾圧のためにお使いになるようなことは万々なさらぬと思うけれども、一体これを使われる考えでいられるのかどうか、それをひとつお聞かせ願いたいのであります。
  189. 田邉國男

    ○田邉政府委員 これにつきましては、鉄監局長から説明をさせます。
  190. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 鉄道公安職員につきましては、先生も御存じのとおり、これは鉄道の業務に関連しまして旅客公衆あるいは施設内の秩序を保つというのが趣旨でございまして、違法状態等が発生した場合にはこれを排除するということが職務でございまして、従来もそのように運営をしておりまして、今後も同じ運用を考えておるわけでございます。
  191. 小林進

    小林委員 あなたにそういう答弁をされると、私もむきにならざるを得ないのです。実はこの前の春闘の問題に際して、本会議場でこの公安官の問題をわれわれのほうの多賀谷君が質問いたしました。そのときに運輸大臣が出て、この公安官を組合弾圧のためになんかやったことは少しもございません、絶対ございません。実に大胆不敵というような答弁をしておりました。あれが本会議場だから私はやじだけで聞いておきましたけれども、あんなことを委員会で言ったら私はのがしはしませんよ。一体、お尋ねいたしまするけれども、労働組合が自分たちの一つの団体交渉の変形としてピケを張るなどということは、これは組合に許された当然の行為なんですよ、そのピケ破りをやっていませんか。一体公安官がピケ破りをやっている例はありませんか、局長
  192. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 鉄道公安職員は、公労法に基づきます正常な組合運動、活動等に対しましては、一切介入等をいたした覚えはないと考えております。しかし、鉄道用地内で旅客公衆あるいは秩序の維持ということになりますれば、違法な行動に対しましてはこれを排除するのが職務だと考えております。
  193. 小林進

    小林委員 国鉄の労働組合が、現在百二件の裁判を行なっております。その中の被告人が二百九十二名だ。被解雇者が百六十二名、こういうものをかかえております。これらのほとんどが、直接または間接に、公安官の組合運動介入に関連しているとわれわれは判断している。正常なる行為などという抽象論は、どうにも解釈がつくのです。いまだかつて、秦の始皇帝から暴君ネロに至るまで、自分たちの行為が曲がっているなんと言ったことはありません。みんな正常なる行為なんです。弾圧するときには、これは弾圧でございますと言って弾圧してくる者がいますか。組合に干渉するのに、これが干渉でございますと言って干渉してくる経営者や管理者がいますか。みんなあなたのおっしゃるように正常な行為だと言ってきますよ。ピケという具体的な事実、それを破ってくる行為が、一体正常なる行為であるかどうかということを聞いているのです。時間がありませんから、私はあなたの答弁なんか要らない。要りませんが、ここで私はあなたに申し上げるけれども、いま春闘に際会しておりますが、国鉄労働組合の中で四万三千七百八十三名の解雇処分やその他の起訴処分、刑事処分が行なわれているけれども、そのために一体どれだけの費用を費やされておるか、裁判もやられておるのですから。労働組合のほうは、これのために実にばく大なる被害をこうむっておるのでございまして、大体組合の費用の一五%くらいをいわゆる犠牲者の救援費のために使われているという現状でございますが、これは管理者のほうだって費用が要るだろうから、一体どれだけその費用を使っているか。こういう処分をしたために、裁判関係その他直接この関係に要している国鉄当局の支出がどれくらいになるか。これは政務次官わかるでしょうから、書面にして出していただきたい。これは出せますね、まさかつかみ勘定でやっているわけじゃないだろうから。
  194. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 現在資料は持っておりませんが、国鉄当局に確めまして、資料がございますれば提出をいたします。
  195. 小林進

    小林委員 ございますればじゃ私は済まないと思う。片方が訴訟したり起訴されて争っていれば、片方はそれを受けて出るにきまっている。きまっているでしょう。そうでしょう、あなた。現に起訴されて争っている提訴中のものだけでも二百九十二人もいる、そのために組合のほうは組合費の一五%もかけて法廷闘争をしているのだから、受ける方のあなたのほうも弁護士を雇って訴訟をやっているのだろうから、その費用はわかっているでしょう。政務次官、当然それはありますでしょう。ありますればという不確定な話はないじゃないですか。ありますればその費用は一体総計幾らになるか、書面にして出していただきたい、重要な参考資料でございますから。
  196. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 私は詳しくは存じませんが、起訴されました相手のほうはおそらく弁護士等をつけておると思いますが、国鉄の場合は法務担当の職員がおりますので、大体じかにこれが当たっている場合が多いかと存じます。私はいま申し上げましたように、よく調べてから御報告をしたい、こういうことでございます。
  197. 小林進

    小林委員 出てますます奇々怪々だ。あなた方は、カラスの鳴かない日はあっても汽車が衝突したり、船が衝突したり、飛行機が落ちたり、ずいぶん被害が多くてとうとい人命がそこなわれているけれども、そういう方面に対する対策は投げやりにして、労働組合を弾圧して組合のほうで起訴したときに、それに対する人員だけはちゃんとそんなに用意しているのだから、実に国鉄の本体見たりです。驚くべきやり方ですな。そういう組合の弾圧をしたり組合の訴訟に対抗するための人員だけはちゃんと用意している、弁護士なんかは雇わぬでもいい、専門家は雇わぬでもいい、そういう人員だけは用意しておるという驚くべき国鉄のやり方だ。組合の訴訟が起きたら、それに対抗する人員が何人いらっしゃいますか、その人員もあわせてお聞かせをいただきたいのです。
  198. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 私が申しましたのは、刑事事件の場合は通常被告側に弁護士がつきますが、原告側は大体検察官がやるということでございますので、もちろん、一般の法務担当の職員というのは全部でどれだけおるかということを申し上げられると思います。
  199. 小林進

    小林委員 大体用意しておられるのでありますね、起訴人員が二百七十二名おるのだ、刑事事件で起訴されておりますから……。それは、いまおっしゃったように言えるというのでありますから、その専門担当の職員が何人おるのか、これは参考のためにどうしても聞かせていただきたい。政務次官、よろしゅうございますね。書面にしてその人員をひとつお聞かせいただきたい。政務次官、お答えを願いたいと思うのでございます。
  200. 田邉國男

    ○田邉政府委員 調査いたしまして御返事を申し上げます。
  201. 小林進

    小林委員 これは早急にひとついただきたい。何日くらいでいただけるかお聞かせ願いたい。それは時間もかかりましょうけれども、大体官庁の書類というものは、こういう答弁の場合はおざなりにして往々にして出さないのであります。ひとつ明確にしていただきたい。あしたまでにいただけますか。
  202. 田邉國男

    ○田邉政府委員 可及的すみやかに差し上げます。
  203. 小林進

    小林委員 信頼すべき田邉政務次官のことばでありますから、可及的すみやかにということばを大体一週間ぐらいに解釈してやりたいと思います。  次に、郵政政務次官にお尋ねをいたしたいのであります。あなたのほうでも、いわゆる労働組合に対する弾圧の一環として、刑事事件で休職者を、昭和二十九年から昭和三十九年三月までに十六名お出しになっている。休職者ですよ、首切りですよ。死刑の宣告みたいなものです。こういうことをやられたのが十六人です。それから刑事処分で起訴人員が七十六名、行政処分で免職解雇をおやりになった者が三十七名、停職をされた者が千九百名、減給された者が三千四百十九名、戒告された者が一万四千三百五十六名、訓告に至っては三万八千四百六十五名、合計しまして五万八千百九十三名という数字が出ております。これもあなた方は違法行為とおっしゃるが、われわれに言わせれば、国際水準並みの労働法規があるならば、当然正当なる行為として許さるべき労働行為です。それが公労法などという、先ほどから問答が繰り返されているああいう一方的な押しつけ法、憲法に違反をするような押しつけ法に基づいてこれだけの犠牲者が生まれておる。先ほど国鉄は専門の担当官を置いていると言うから、郵政省も専門の担当官がおりましたら、専門の担当官が何名、このために費やした費用が幾らでというのをひとつ書面にしてお聞かせいただきたいと思う。よろしゅうございますか。
  204. 金丸信

    ○金丸政府委員 書面にしてできるだけ早い機会に出したいと思います。
  205. 小林進

    小林委員 あなたのほうにはいま一口ございます。いま申し上げましたのは全逓関係です。全電通関係でも、同じく起訴せられている人員が二十一名、行政処分で解雇せられた者が三十一名、停職が七百二名、減俸が五千四名、戒告が一万五千六百六名ある。これもあわせてひとつ説明を願いたい。これに要した費用あるいはこの処置しました経過を詳しくひとつお聞かせを願いたい。全逓さんが早く資料をお出しになるか電通さんが早くお出しになるか、それによって誠意のほどをはかるバロメーターにしたいと私どもは思います。  次に、林野庁長官おいでになっておりますので、林野庁長官にも私はこの際お願いしておきたいと思います。やはり同じく刑事事件で、あなたから休職されておる者が、昭和三十一年から昭和三十八年までで十二名あります。それから起訴人員が二十三名、逮捕せられておる数が二十四名です。そのうち行政処分で免職をせられておる者が一名、解雇が十三名、停職が百四十名、減給が二百三十八名、戒告が一千十九名、訓告が二千九十一名、合計三千五百六十一名であります。こういうようなことで、あなた方は本来の業務のほうの精力をさいて、こういうところにみんな重心を傾けて、そして組合を弾圧しておいでになる。私は残念にたえない。どういうふうにこれを具体的に処置せられておるのか、そのために失ったあなた方の費用はどれぐらいになっておるか。これも計数的じゃなくて、私どもが国会において審議をする、その審議のしやすい討議の資料として詳しく出していただきたいと思うのでありまするが、その点をひとつ勘案せられて資料をちょうだいいたしたい。  それから造幣がお見えになっておりますが、あなたは東京の支店長ですか、出張所でもないから支社長でございますか、支局長でありますか。やはり官側だから、支店長などと言われるとお気に召さない、支局長と言わなければお気に召さぬかもしれませんけれども、その支局長にお尋ねをするのでありますが、あなたのような造幣局などは、公共企業体といったところで、ストライキが一体公共にどれだけの弊害があるのですか。  労働政務次官にお尋ねいたしまするけれども、三公社五現業といいましても、あなた方の立場で考えても、それは公に若干の被害を与えるところはありましょうけれども、全印刷や全専売あるいは全造幣などという業務が、ストライキをやることによって一体どれだけ公共に被害を及ぼすのでありますか、具体的にお聞かせを願いたいと思う。
  206. 藏内修治

    ○藏内政府委員 造幣でございますとか、印刷の職員を公労法の中に含めました経緯については、私も詳細なところを承知しておりません。労政局長からお答えをいたさせます。
  207. 三治重信

    ○三治政府委員 これは全額国が出して、しかも公共企業体になる前は国家公務員として行なわれていたことでございます。そういういきさつから見て、この関係につきましては公共企業体の中に入っているものと考えます。ただ、いま先生が言われる国鉄、電電というものの公共性と、造幣とか専売というものの公共性については、いろいろ議論はございましょう。しかし、それはやはりおい立ちが、ずっと前は、国の特別会計事業として、長く国の主要な公共的な事業として行なわれていたといういきさつがありますので、ただそれは理論ばかりでは解決せずに、そういう歴史的な性質に基づいて一緒になった、こういうふうに解釈しております。
  208. 小林進

    小林委員 それでは、理論的に何もストライキを禁止する理由はない、実際にストをやっても公共に被害はないのだから。けれども歴史的に昔は役人であった、だからその昔の経緯に基づいてだけでやはりストライキ権を剥奪しておる、こういうことでございますね。
  209. 三治重信

    ○三治政府委員 そうではなくて、申し上げましたのは、ストライキを禁止して公共企業体等労働関係法の中に労使の関係を入れたというのにつきましては、高度の公共性があるという理由で入っておることは間違いないわけでありますが、ただ、その中の公共企業体や現業の中でその区別というものやその公共性の程度ということを申されたから、そういう歴史的なものもそれに加わっておるのですということを申し上げたのです。政府といたしましては、これが高度の公共性を持っておるということから、法律にこういうふうに定められたものと思います。
  210. 小林進

    小林委員 それではあなたにお聞きしますが、これは多賀谷君が本会議場でも労働大臣質問いたしたことを繰り返すのでありますけれども、あなたのおっしゃるように、事業の社会性、公共性、独占性があるからこそストライキを禁止するのだといったら、一体国鉄と私鉄とどう違うのですか、電電公社と国際電信電話株式会社とどう違うのですか、その違いをお聞かせ願いたい。
  211. 三治重信

    ○三治政府委員 そういうことでありますから、したがって現在公共企業体等労働関係法の中に入っておる企業体の現業というものは、歴史的な過程においても一緒になって、特別会計の国家公務員として行なわれたいきさつからそういうふうに——ものの実態、社会の動き、また政府制度というものは全部が全部理論上、また公共機構において理屈どおりにその取り扱いが一緒になっていくわけではないのであります。やはりそこに歴史もあり、おい立ちもあるわけであって、その理論上の取り扱いの責めはその立法のときにきめられるべき問題で、またその法律改正をするとかなんとかいう意見において述べらるべき問題である。その間に、なるほど先生のおっしゃるように、国鉄あるいは電電と専売というものとの比較は、実際問題としてなかなか甲乙は意見のあるところであり、また議論の非常にむずかしいところだとは存じますけれども、私は、その社会に及ぼす公共性の実際の影響という現実の問題、理論だけではこの問題は解決しない、こういうふうに申し上げておるにすぎないわけでございます。
  212. 小林進

    小林委員 局長答弁のとおり、全印刷や全専売や全造幣を、社会性、公共性があるからという理由でストライキを禁止しておる理由は何もない。あなたのおっしゃるいわば一つの歴史的過程があるという、それだけの理由です。それは裏を返せば、いまの政府が、いかに公共企業体という名のもとに、一律一体にストライキ権を剥奪しておることの理論的矛盾があるということは、これによっても明らかなんです。何も根拠がない、そこだけ明らかになればいいのです。  そこで造幣局の東京支局長、あなたのほうも、そういう何も公共性もなければ社会性もない、そういうところにやはり労働組合運動を一つの理由にして、そうして処分をしておいでである。昭和三十二年から昭和三十八年六月に至る処分として、戒告を受けた者が一名、訓告を受けた者は十名、一体この十一名を具体的にどういう形で処分されたのですか、何をやったから処分をしたのですか、お聞かせ願いたい。
  213. 石橋大輔

    ○石橋説明員 昨年二月におきまして、入門規制を行ないましたのでそれに対する処分でございます。
  214. 小林進

    小林委員 入門規制というのは何でございますか。
  215. 石橋大輔

    ○石橋説明員 入門規制と申しますのは、職員が役所の中に入ることを組合員が実力でもって規制した行為でございまして、三十分間の入門規制行為が行なわれましたので、それに対する処分でございます。
  216. 小林進

    小林委員 職員が門を入るのを組合員がとめた。あなたをとめたのですか。職員じゃなくて、組合員が組合員をとめたのでしょう。仲間が仲間をとめたんじゃないですか。仲間に話をしたのじゃないですか。仲間に、ああいうわからない管理者がいるから、君、少しここで足踏みしておられたらどうかいという、その程度のことじゃないですか。そうじゃないですか、具体的にひとつお聞かせ願いたい。
  217. 石橋大輔

    ○石橋説明員 当時の情勢につきましては、私はまだ造幣局に来ておりませんでしたので、見ていたわけではございませんけれども、門のところに組合員がおりまして、それで一般の職員が入るのを阻止したわけでございます。
  218. 小林進

    小林委員 あなたが現場を見たことがないとおっしゃるのなら、それはそれでいいでしょう。それじゃこれ以上お聞きしません。私の調査によれば、不可解千万なこういう処分のしかたである。ノミも食わない、蚊も食わないような、こんなささいなことをこういう形で処分しておられる。私どもは了承できないのでありますけれども、これによって一体どれだけの行政の浪費をされるか、その浪費は実に大きいのでございまして、私が数えあげた数字の中には、国家の行政の面に一つもプラスがないのです。みんなマイナスなんです。そうして職場を暗くし、行政をまずくしている。私はそのために失われた有形、無形の損害というものはばく大だと思っている。こんなことは欧米先進国にはないんだ。あなた方が正しくILO八十七号の批准をしたり、あるいはILOの二十六号の最低賃金や、ILOの一号の労働時間の問題等を、人並みにちゃんと国際的な労働慣行を官側で守ってやられるならば、こういうむだはないのであります。これほどのむだをあなた方はやっている。そうしてまたこの四月十七日には、これに輪をかけたような弾圧を加えようというかまえをいましているのです。そのかまえをあなた方はやっている。こんなことが国民の要望する姿だなどというふうにお考えになったら大きな間違いです。私はそう考えざるを得ないのであります。  もう時間がありませんし、私はこれでやめます。やめますが、最後にひとつ、非常に悪いが一言だけ皆さん方にお尋ねしておきたい。官側であろうと公共企業体の労働者であろうと、労働者である限りは、その労働者が団結をして労使対等の団体交渉をし、また、まとまらないときには争議をするというストライキ権はみんな持っておるはずだ。これらのストライキ権は憲法に定められて、労働者である限りは団結をし、団体交渉をし、争議をするというこの権利は、日本憲法によって与えられているはずだ。この基本権は、官公労といえども、企業体といえどもこれは奪うことができないはずであります。この権利をいわゆる公共性、社会性、あるいは独占性というものである程度セーブをすることはできるであろうけれども、制限をすることはできるけれども、固有の権利は、これを規制することはできないはずであります。これをお認めになるかどうか、一人一人お聞かせを願いたいと思うのであります。
  219. 藏内修治

    ○藏内政府委員 労働省の立場から申しますと、労働省の立場は、もう委員先刻御承知のとおり労働者の保護であります。労働条件の改善であります。そのために、労働省といたしましては、改善の何と申しましても一番大きな力となるものは、労使のよりよき労働慣習のもとから生まれてくると思うのであります。そういう点からいたしまして、今後法制上からも、また従来の制度上からも、ILOその他国際的な慣例からいたしましても、改善できる限り改善をしてまいりたいと思っております。
  220. 小林進

    小林委員 私が政務次官にお尋ねをして、そのことばは非常に明快です。明快だけれども、いま私がお尋ねしておりますのは、労働者である限りは、国家公務員であろうと、地方公務員であろうと、公共企業体の職員であろうとも、雇用者であるという労働者の立場からは、いわゆる憲法できめられておる労働三権は、固有として持っておるということをあなたはお認めになるかどうかということです。
  221. 藏内修治

    ○藏内政府委員 そのとおりであります。
  222. 小林進

    小林委員 運輸省、どうですか。
  223. 田邉國男

    ○田邉政府委員 私は、労働者の基本的人権は、尊重することはもちろんであります。しかしながら、公共企業体におきましては、公労法の十七条におきましてスト権を禁止しておるということを御認識をしていただきたいと思います。
  224. 小林進

    小林委員 私は公労法の十七条などを聞いておるのではないのですよ。雇用者である限りは、労働者である限りは、公務員であろうと、公共企業体の職員であろうとも、憲法で定めておる労働三権は固有の権利として持っておる。持っておるが、持っておるということをお認めになるかどうかということです。ただし、その職業が公共性、社会性、独占性があるがゆえに制限をする。それは制限なんですよ。禁止しておるのです。もとからないというのと、権利はあるけれども公共性という一つの社会的条件に基づいてその点を制限し、あるいは禁止しておるのだということとは、大きな違いがあるのです。それをあなたが言うように、もともと国家の役人だからそういう争議権なんかないのだというような解釈を、あなたの仲間にはする者があるのです。そうじゃないのです。憲法でちゃんと持っておる。持っておるが、客観的条件によってそれを制限をし、禁止をしておる。それがどっちが正しいかということをあなたにお尋ねしておるのです。
  225. 田邉國男

    ○田邉政府委員 十七条によって禁止されておるということを御認識いただきたいと思います。
  226. 小林進

    小林委員 それではやはり固有の争議権は持っておるということをお認めになりますね。
  227. 田邉國男

    ○田邉政府委員 そのとおりであります。
  228. 金丸信

    ○金丸政府委員 ただいま小林先生のおっしゃったように、原則論につきましてはそのとおりだと思います。
  229. 小林進

    小林委員 そこまであなた方が了承していただきまするならば、労働者は固有の権利を持っておるということをお認めになって、それが労働者としてたまたま公共企業体や国家公務員という職業に従事しておるがゆえに、固有の権利を制限されておるという労働者の立場を、たとえあなた方が伝家の宝刀を抜くにしても、そういう認識の上に立って抜く伝家の宝刀と、最初からないものと思って弾圧をしていこうという考え方とでは、そのやり方に大きな開きが生まれてくるのでありまするから、どうかひとつその点、いまの御答弁に間違いのないような対労働者施策を進めていただきたいと思う。ことに国鉄なんかに申し上げまするけれども、そういう考え方をお持ちになれば、少なくとも事故は少しずつ減ってくると私は確信いたします。  皆さんに二つ要望いたしまして、私の質問を終わります。ただし、資料は確実に出していただかなければ、あくまでも催促に行きますからどうぞひとつ御了承願います。      ————◇—————
  230. 田口長治郎

    ○田口委員長 この際、連合審査会開会申し入れの件についておはかりいたします。  逓信委員会において審査中の電話設備の拡充に係る電話交換方式の自動化の実施に伴い退職する者に対する特別措置に関する法律案につきまして、逓信委員会に連合審査会の開会を申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  231. 田口長治郎

    ○田口委員長 御異議なしと認め、そのように決しました。  本日はこの程度にとどめ、次会は明十六日午前十時より開会することとし、これにて散会いたします。   午後六時十一分散会