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1964-03-19 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第22号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十九日(木曜日)     午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       浦野 幸男君    大坪 保雄君       熊谷 幸男君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    粟山  秀君       伊藤よし子君    滝井 義高君       長谷川 保君    八木 一男君       八木  昇君    山田 耻目君       吉村 吉雄君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         文部事務官         (管理局長)  杉江  清君         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣男君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         大蔵事務官         (理財局資金課         長)      海堀 洋平君         厚生事務官         (社会局庶務課         長)      城戸 謙次君         農 林 技 官         (水産庁漁業振         興課長)    森沢 基吉君         通商産業事務官         (企業局参事         官)      馬郡  巌君         運 輸 技 官         (自動車局整備         部長)     宮田 康久君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十九日  保健所において執行される事業等に伴う経理事  務の合理化に関する特別措置法案内閣提出第  一三七号)(予) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一九号)  厚生関係基本施策に関する件(公害対策に関  する問題)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  3. 滝井義高

    滝井委員 社公福祉事業振興会法の一部を改正する法律案について御質問を申し上げるわけですが、御質問申し上げる点は、おもな点三、四点でございます。時間の関係がございますから、あまりこまかいところは質問ができません。そこで大きな点だけを三、四点御質問申し上げるわけです。  今度のこの改正で、まず第一に、振興会に金の入る道は一般会計からの出資というのが一つあるわけです。それから同時に、今度振興会社会福祉事業振興債券発行することができるわけです。そのほかに、今度さらに政府から資金運用部資金貸し付けを受けることができる。こういう形になっておるわけです。  まず第一にお尋ねをいたしたい点は、こういうような収益事業を営んでいない社会福祉事業振興会というようなものと、同じ性格のものでこういう債券発行することができるものが他にあるかどうかという点です。
  4. 牛丸義留

    牛丸政府委員 収益事業程度の問題もございますが、これに一番類似している他の法人といたしましては、私学振興会でございます。
  5. 滝井義高

    滝井委員 そこで、文部省管理局長さんがいらっしゃっているそうですが、いま文部省のほうの私立学校振興会法が同じような性格のものだそうでございます。そこで、まず遠くのほうから聞いて近くほうに及ぼすわけですが、この私立学校振興会法は、現実に具体的に債券発行いたしておりますか。
  6. 杉江清

    杉江政府委員 いたしておりません。
  7. 滝井義高

    滝井委員 この法律は、たぶん昭和三十七年、四十二国会で改正されたと思うのです。そうしますと、私立学校施設整備等を緊急にはかっていく。特に高校生の急増対策なんというようなものが非常に必要になってくるわけですね。こういうもののために債券発行して、そしてその建設の促進をはかろうというのがねらいであったはずなんですが、これはそうすると、現実発行されてないということになると、今後も発行しないのですか。
  8. 杉江清

    杉江政府委員 債券発行のための規定を設けましたおもなる趣旨は、いわゆる債券発行能力を与えることによって資金運用部からの借り入れができるようにしたいということがおもなるねらいでありまして、もちろん将来、国の資金事情によりまして債券発行現実にするという場合も考えられますけれども、さしあたっては資金運用部資金からの借り入れをする、そのための債券発行能力を付与するというところに主眼があったわけでございます。
  9. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、資金運用部から金を借りるためには債券発行能力というものを一とにかくそれが実質的に発行能力がなくても、擬制的にそういうものを持っておらなければ金が借りられないから、私学振興一つの方途としてこういう債券発行の道を開いたのだ、実際はこれは現実発行をやっていないし、国の金融事情その他が非常にこういう——何と申しますか、ほんとに世間にいう広義の収益事業には入るかもわからぬけれども、授業料でまかなっているというようなことでは、この学校は実際に収益事業とは言えぬわけですね。そうしますと、収益事業をやれない学校が、債券発行して、その利子を払うというわけにはいかぬわけですね。したがって実質的には、これは発行能力がないわけなんです。しかし、発行能力があるような擬制をして資金運用部から金を借りる、こういう形になっておるわけでしょう。
  10. 杉江清

    杉江政府委員 債券発行いたしますのは、学校ではなくて、私立学校振興会という特殊法人でございます。この特殊法人は、債券発行能力は私はあると思いますけれども、ただ債券発行いたします場合には、利率資金運用部から借りる場合よりも高くなります。そういうことでありますから、できるだけ低利の資金借り入れることがよりよい策である、そういうことから、なるべくならば資金運用部資金からの貸し付けを受けたい、こういうふうに考えたわけでございます。もちろん、その資金運用部資金からも資金が逼迫して借りられないという事情が生じますならば、この債券発行ということを現実に考えることもありましょうけれども、さしあたっては資金運用部資金からの借り入れということを考えて、こういう措置をいたしたわけでございます。
  11. 滝井義高

    滝井委員 少し私のことばが足りませんでしたが、私学振興会債券発行能力をつけていただく、しかしそれは、実際には債券は当面発行しないのだ。ところが、もし債券をこれが発行するにしても、債券発行してその集めた金を私学に貸すということになると、借りた客体である私学が高い利子までつけて返済する能力がないわけです。ここに問題があるわけですね。したがって、その場合に問題なのは、資金運用部資金から私学振興会が一体幾ら利率で借りるか、これは六分五厘だと思うのです。六分五厘で借りたお金を七分五厘とか八分とかいう利率で貸せば、これはいいわけです。ところが、そんなに高い金で私学に貸したところで私学は払う能力はないのだということになれば、そういう債券は買い手がないわけですね。消化能力なしということになる。それじゃ国が引き受けてくれるかというと、いまの情勢では、国は必ずしも引き受けないと思うのですね。だから擬制的になっておると思うのです。そうしますと、必然的に私学振興会私学に貸す場合には、六分五厘以下で金を貸さざるを得ないということになる。そうでしょう、これは幾らで貸しておるんですか。
  12. 杉江清

    杉江政府委員 多くは六分で貸しております。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、六分五厘で借りた金を六分で貸せば、五厘だけ私学振興会赤字になるわけですね、逆ざやになるわけです。こういうことでは、これは全くから手形をもらったようなものですよ。そこで私は、文部省としてはその逆ざやを当然国に要求しなければならぬ。たとえば地方自治体が交付税で金をもらう、どういう場合にもらうかといったら、たとえば起債をして自分で金を出しかえた、それはとてもいまはばく大な借金をすることは不可能だから、起債償還をしてもらいたい、こういう形になってきているわけでしょう。そうすると、私学振興会は六分五厘で借りた金を六分で貸すならば五厘だけについては少なくとも利子補給を国にしてもらわなければならぬ、それはしてもらっておりますか。
  14. 杉江清

    杉江政府委員 先ほど申し上げましたのは債券発行の場合は、普通の場合七分三厘以上になると思いますが、現在は資金運用部資金から借り入れております。その利率は六分五厘になっておりますが、振興会としましては、これは多くは六分で貸しております。そこに逆ざやが生じておりますが、これは、振興会貸し付け資金は相当多額にのぼっておりまして、 これの利子収入も相当入ってきておるわけでございますから、現状のところそういった貸し付けた金の利子収入をもってその逆ざや補てんしておる。当分の間、その逆ざや資金を他に求める必要は、現在のところございません。
  15. 滝井義高

    滝井委員 したがってそういう利子私学振興会の中から集めてくるというような形になってくれば、それだけ私学に行く学生授業料負担が多くなるわけでしょう。たとえば私学の経営する病院その他は診療費を高く取らなければならぬ、こういう形になってくるわけです。だからこういう点は、私学振興の点からいえば、負担を結局私学振興の名のもとに私学に来る学生、父兄に転嫁をする、こういう形になっておるわけです。だから私は、ここは当然あなたのほうの文部省としては、その元利補てんを要求するのがほんとうだと思うのだけれども、元利まではあれでしょうから、利子補てんくらいは要求してしかるべきだと思うのです。これ、おやりになっていないというのは、これはどうかしておると思うんですよ。
  16. 杉江清

    杉江政府委員 ただいま申し上げましたように、振興会多額貸し付け資金を持って貸し付けておるわけでございまして、その利子収入も相当多額にのぼっております。そういうことから現実には逆ざや学校負担させることなく、私学振興会自体がこれを負担しておる、その補てんは結局のところは国からの出資及び借り入れ、これによってそれをまかなっているわけですから、現在のところ学校にそれだけの負担がよけいかかっているということにはならないのであります。
  17. 滝井義高

    滝井委員 私学振興会は、金は私立学校しか貸してないわけでしょう。したがって、結局必然的には入ってくる利子というのは、私学の中からしか入ってこないわけでしょう、他のものから入ってこないわけでしょう。したがって、たくさんの私学にたくさんの金を貸して、そして元利償還をせしめてくるということになれば、目下六分五厘で借りたものを六分で貸せば、五厘だけはこれはもう逆ざやになって、どこかに無理がいっておることは明らかなんです。その無理を、私はやはりさせるべきでないというわけなんですよ。だから五厘は当然国から補てんをしてもらうべきだ、その利ざやの五厘は、私学振興会の血肉を切るべきじゃないという意見なんですよ。そこらは、文部省はもっと積極的にやるべきだ。出資がどんどんふえていけば、それはその分だけは利子のない金が入ってくるわけですから、利子はずっと安くできるわけです。しかし資金運用部の金を、ことしたしか四十億くらい借りるでしょう。その金が多くなればなるほど、これは利ざやが多くなるのですから、それだけ私学から取り上げる利子も多くなければならぬわけです。その点を私は言っておるのです。その点については、きょうこれはあなたを責め立ててもしょうがないのですが、いずれこれは、私は機会をあらためてやはり言わなければならぬところだと思うんですよ。当然私はそういう逆ざやなんというものをつくるべきでないと思うのです。つくっておるならば、その分だけは、国が一般会計から私学振興会事務費か何かで出すときに、つけて出すべきだと思うのです。当然そうあなた方も考えるでしょう。
  18. 杉江清

    杉江政府委員 現在振興会への国の出資金は、合計百億にのぼっております。これを全部学校貸し付けておるわけです。だからそこから当然五分五厘なり六分なりの利子収入は入ってくる。それによっていまの逆ざや補てんいたしますから、当分二十億とか四十億程度借り入れであれば、それによってその逆ざやのために大きな支障を生ずる、他に圧迫を及ぼすということは起こり得ないわけでございます。なお、昨年度も本年度も、この資金運用部資金からの借り入れのほかに出資金がございます。したがって、その出資金による利子でもかなりになりますが、そういうことを考えまして、現状においては逆ざやによる困難ということはほとんどない、こう申し上げて差しつかえないと思います。もちろん将来、この資金需要は相当膨大なものになると思いますので、私どもこれをふやしていくことに努力しなければならぬと思いますが、これが非常に多額になりました際には、その逆ざやが全体の資金計画を圧迫するという事態は起こりましょうけれども、当分の間はその心配はない。したがって私どもは、その逆ざやを国から補てんしてもらう、そういうことを早急に考える必要は現在のところないと考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 政府出資比重借り入れ金比重が一体どういう形になるかという、管理局長も御存じのとおり、今度国立学校特別会計をつくったわけでしょう。国立学校でさえも特別会計をつくって、財産を売って、あるいは借り入れ金をさせる形をつくって学校の充実をはからなければ、一般会計から金が出ないという形が出てきておるわけでしょう。同時に、一般会計の三兆二千五百五十四億という膨大な額を、できるだけ総ワクを減らさなければインフレの傾向が出るかもしれぬ。そういう心理的影響を与えるというので、総ワクを減らすためにもつくった一つ傾向もありますが、そういうふうに国立学校でもそういう傾向ですから、今後私学出資をどんどんする傾向はないです。むしろ傾向としては資金運用部の金がふえるという傾向借り入れ金もどんどんふえるという傾向があるのです。そうすると、借り入れ金がふえるということは利ざやが多くなるということです。同時に、あなたの言われるように、すでに百億貸しているのだから、その利子だけでも相当のものだということになるけれども、これはいまの私学現状から考えて、私学がばく大な高い月謝を取る、しかも教室というものはマイクとほろ机しかない。法科や経済に行ったらそういう実態でしょう。そういう実態を何かもっとうまく改善しようとすれば、やはりそういうつめに灯をともすようにして集めた私学の金を、逆ざやでまた取り上げていくという形は私はよくないと思う。それだけ貸す金が少なくなるのだから、その点はもっとすなおに、こういうものの補てん文部省が要求すべきです。そこを言を左右にして言わないところが、文部省はだめなんです。だからそれは堂々と要求すべきです。いまこの法律が通るときの当時の説明を見てみますと、会の利子収入が五億円、この中から何ぼでも利ざやを払うということでは、それだけ貸す金が減るわけですから、その分について言えばそれだけ私学振興がおくれる。だからその点、もう少し局長さんは、海堀さんがおっても遠慮なく言わなければならぬ。そうでしょう。それをいま、当分はだいじょうぶだから、利子は何ぼ払ってもだいじょうぶ、うんと借りたほうがいいという気持ちでは困るのです。そうなんでしょう。
  20. 杉江清

    杉江政府委員 確かに利子補給していただければ、それに越したことはございません。ただ実際問題として、貸し付け金をふやす、これが最大の目的なんです。利子補給してもらっても出資金がそれだけ減ったのでは、これは意味がないのです。要するに、出資金が年々ふえておるという事実を考えれば、この逆ざやの問題はそれほど大きな問題ではないと私は思います。もちろん将来、その借り入れ金が何百億とふえた際には、確かにおっしゃるような問題が生じます。そのときには私は何らかの措置を講じなければならぬと思います。これは利子補給という形でいくか、あるいは出資金をふやすという形でいくか、いろいろな方法が考えられると思うけれども、何らかの措置をしなければならぬことは当然のことだと思います。もちろん現状においては、一方出資金が年々ふえておるわけでございます。そういうことを考えますと、いまの点は私はそれほど大雪な問題ではない、こういうふうに考えます。
  21. 滝井義高

    滝井委員 政治は、転ばぬ先のつえを先にかうというのが政治のいいところです。池田さんみたいに公定歩合を上げる必要はないと言っておったが、いよいよ日銀総裁から、じゃおれの首を切れ、おれはもうやめるぞと言われて、ようやくあわて回って二厘上げなければならぬという醜態なことを、経済の神さまといわれる人がやっておるが、少なくとも文部省管理局長ならば、私学振興というのは困っておるのだから、そういう一文の金でもやるようにして、私学振興をやることがあなたのつとめなんです。あなたは、直接の所管局長じゃないかもしれないけれども、やるべきですよ。それをいまはだいじょうぶだといっておると、困ったときに困るでしょう。これからも出資はあまり出ないでしょうけれども、資金運用部の金をどんどん借りていくことに為るのだから、その点では私学現実に困っておるのですから、その点はもう少し積極的にやることが当然なんです。  そこで、私学実態がそういう実態だが、今度は——私学授業料収入がある、ところが社会福祉施設はそういうものがないわけですね。そうすると牛丸さんは、やはりいまのような答弁をしますか。当分社会福祉事業振興会は何とかやっていける、前に借りた金もあるし、出資も五千万円減ったけれどもあるから、そんなけちくさい利子補給なんかもらわぬでもいいのだというようなことが、あなたのほうは言えますか。
  22. 牛丸義留

    牛丸政府委員 社会福祉振興会貸し付け利子逆ざやでございますが、これは、社会福祉法人私学よりも収益性は少ないのでございます。もちろん収益事業をやっておる法人もございますし、それから共同募金からの配分金なり、あるいは後援会からの寄付金等によって償還財源に充てておるわけでございます。現在の政府出資金だけでやっておる貸し付けの状況からいいますと、償還率も九七・六%というようにわりあいいい成績を示しておるわけでございます。それで、これからの問題でございますが、現在の政府出資金は総計で約十億五千万くらいございまして、これの回収金がございます。それの利子収入、こういうことによって事務費なり逆ざや利子補てんをやるわけでございますが、三十九年度におきましては、収支は多少剰余が出る程度でございまして、やっていけると思います。しかし、政府出資金三十九年度一億円と、借り入れ金が三億円、大体一対三の比をもって、だんだんその率で借り入れ金をふやしていくということになると、まだ私学振興会のように政府出資金も多くないわけでございますので、多少赤字になってくる、そういうことでございますので、この点については将来何らかの措置をして——その方法利子補給をするか、あるいは政府出資金借り入れ金の率を変えるか、その点はまだ検討はしておりませんけれども、そういう問題が出てくるかと思います。
  23. 滝井義高

    滝井委員 百億ある私学振興会と、それからこの社会福祉事業振興会とは、同じように収益事業をやっていないという点で、しかも債券発行する能力を付与されておるし、一つはされようとしておる点においては、非常によく似ておるわけです。似ておるけれども、私学振興会に比べて、社会福祉事業振興会のほうはもっと力が弱い、資金も少ない、こういう点で、ことしはまあとにかくとして、先々になると不安定であるという御発言がいまあるわけです。それは発言をしていただかなくても当然だと思うのです。そうしますと、ここでは、こういう立法上擬制をやることが一体いいか悪いかということになってくる、私学振興会だって実際に発行する能力がありません。しかも発行しようとすれば、政府保証債でなければいかぬ。保証債でなければ買いてがおりはせぬ。しかし、政府はいまのところ保証する意思はないです。そうしますと、その借り入れ金をするために、こういう保証債をなぜやらなければならぬか、こういう保証のつかないような債券発行擬制をなぜしなければならぬのか。これは政府がちょうど国立学校特別会計をつくったり、住民税のオプション・ツーをオプション・ワンにしてしまったりするための減収補てん債を出したりするのと全く同じで、一般会計のふくらみをできるだけ少なくするためには出資を減らすという、この精神に通じておるわけです。だから私はこんなものを全部削減すべきだと思う。こういう債券発行する能力もなくて、返済能力もなくて、返済能力もないものに債券発行する擬制をして、国会議員をごまかすということはいけないことだと思う。出資金を出すべきだ。これは私は大臣に言いたいのです。きょう私は牛さんにやかましく言って気の毒だけれども、あなたの前任者がこの法律をつくって、あなたがこれを受け継いでおるのだろうと思うのです。あなたは、「社会保障制度総合調整に関する基本方策についての答申および社会保障制度の推進に関する勧告」をお読みになっておると思うのです。これは船後さんにも関係がある、あなたのほうが予算をこういうようにしておるわけだから。これに一体何と渇いてあるか。小林厚生大臣は、医療費の問題なんかは医療協議会の結論が出なければ、絶対にこんりんざい動きません、こう育った。そうすると、すでに答申の出ておるものについては、こんなことをしようと書いておるのですか。いいですか、この社会福祉事業振興会対象になる社会福祉施設はどういうものかというと、私学よりかもっとレベルの低いものです。いわば医療金融公庫対象病院からいえば、ずっと零細なものです。そういうところにこれをやることになるわけです。金を貸すのです。牛丸さん、勧告の策一章の費用配分というところを見てください。費用配分の中の(一)が救貧制度ですね、(二)が社会福祉、(三)が公衆衛生、こうなっておるわけです。その(三)の公衆衛生の前のところをちょっと読んでみてください。「貧困原因は多様で、社会保険をもってしてはこの原因のすべてをカバーすることはできないけれども、救貧線以下におちこむ公算の大きい層に対してこそ、防衛手段が必要である。社会福祉防貧のこの面を担当するものである。この意味において、社会福祉社会保険を補充するものであるが、そのため第二義的なものではないから、税金による一般財源は、公的扶助についで、この面に優先的に投入されるべきである。」 こう書いてある。そうでしょう。そうすると、公的扶助生活保護と同じように税金をまず投入しない。これは、この勧告の分け力は貧困層と低所得階層一般階層と三つに分けておるわけです。だから防貧線救貧線という線が引かれているわけです。そこで、その救貧線というのは、結局低所得階層が下のほうの生活保護、いわゆる極貧層なり貧困層に転落することを防がなければならぬ線です。それを防ぐためには、社会保険だけではいけないので、社会福祉施設を充実しなさい、それを充実するためには税金でやりなさいと書いてある、利子を払って借り入れをしてやれとは書いてないわけでしょう。それを六分五厘の金を貸して、それも幾ぶん安く貸したところは良心的です、安く貸したところは良心的だが、そもそも資金運用部から金を借りる。振興会そのものは、まるきりこれを払う能力がないのですからね。そうするとその手当てをせずしてこういう政策をやること、これはごまかしです。だから私は、これは三十条から全部削減すべきだと思う。こんな制度を法律になくることは間違いです。実は私学振興会もほんとうはそういう点がある。私学振興会授業料その他を取るから、資金も多いから、あなたの言うようにまあまあ幾ぶん目をつぶれるのです。目をつぶれるけれども本質的には国に利子補給をやってもらわなくてはならぬ。きょうは、私は文部委員会でないから言わぬけれども、いま外堀から埋めてきた、そしていよいよ内堀に入ってきたところだ、今度は天守閣に乗り込まなければならぬのですが、とにかくこういう形のものを、答申がこういうことをはっきり言っておるのですからね。総理大臣の諮問を受けたものが言っておる。それを税金でやらずに——税金でやるということは政府出資でやるということです。それを資金運用部の金を借りて、利子を巻き上げるのはもってのほかです。だから私は、こんなものは全部削減しなければならぬ、こんなものを擬制すべきでないと思うのですが、一体こういう制度をだれがつくったのですか。どういう頭のいい、からくりのうまい人がやったのか知らぬが、これで国会議員がごまかせると思ったら大間違いです。
  24. 牛丸義留

    牛丸政府委員 御指摘のように社会保障制度審議会の勧告の中に、ただいまお読み上げになったような趣旨のことが書いてあるわけでございまして、私どもも、原則としては一般財源税金によって国の責任によって拡充していくことが正しい方向であるということについては同感でございます。しかし、民間社会事業というものが戦前から存在し、そして、現在大体施設の四〇%をこういった民間の社会事業がやっているという現実は、これまた無視することはできません。したがってそういう民間社会事業の施設資金の需要に対して、事業の措置費等についてはすべて国が責任を負ってやっておるわけでございますが、その施設の整備の他についてその資金需要というものも非常に多いわけでございまして、そういうものも借りる能力のある限り、そういう貸し付けの制度を付随的に持っている。これですべてをまかなうというわけでもございませんし、いま法律が制定されてから約十年ぐらいでございますが、その資金量もごくわずかでございまして、これをもって社会福祉のすべてをまかなうというような趣旨のものでもございませんし、あくまでも補完的なものでございますが。こういう需要も無視できないのではないか、こういう意味でこの制度が設置され、その資金需要がある限り、どうしても私どもとしてはこれをある程度整備して、そうして、そういう民間の社会福祉事業の資金需要に応じていきたいという趣旨でつくったわけであります。
  25. 滝井義高

    滝井委員 趣旨はわかるのです。わかるのですが、一体そういう趣旨であるならば、民間の社会事業に非常に金がよけい要るのだ、老朽化もはげしい、これをやろうとすればなぜ出資金を減ずったのです。一億五千万あったものを一億に減ずっておいて、そうして利子を取り上げる金をよけいにするということが不見識だと言うのです。それならばこういう債券発行するなんてけちなことを言わず、出資金をふやしてやったらいい。これが一番需要に応ずる道なのですよ。ところが、出資金は一億五千万円、スズメの涙ほどの出資金であったものをまた五千万円削っておるのですから、スズメの涙を半分にするのだから、三分の一にするのだからあまり冷酷じゃないか。この資本主義の冷酷無情な風に打たれて、そして社会のおりのように社会の下に下敷きになってきてしまったその人に出す金を、またその人たちから、今度はその人たちをあたたかく保護しようという施設から、それは利子はまけてやっても利子を巻き上げてやっていくということはよくないと思うのです。これはこの答申の精神にも反しているのです。こういうことを池田内閣は、うまいことを口では言うけれども、やっておるからいかぬと言うのです。社会施設にしても、みんな聞いてごらんなさいよ。今度われわれ債券発行することができるから、うまいこと金を借りられるわいと思っておったところが、あにはからんや、それは大もとの貸し元の振興会もこれから赤字の火の市になるのだということでは、借りたい金もよう借りられぬということです。一体この対策は、このままじゃ私は済まされぬと思う。文部省だって、来年の予算委員会では言って文部大臣に迫ろうと思うのです。当然これは利子補給してもらわなければいかぬ。海堀さん、これは二つしか方法がないと思うのです。問題は、私はこんなもの全部ここで削ったら一番いいと思う。債券発行能力のないものに債券発行ができるような擬制をやって国民をごまかし、国会議員をごまかすのはよくないと思う。ほんとうは、出資をよけいふやしてもらう、これが一番いい。これは船後さんのほうだ。もしそれがどうしてもできないというならば——その前にちょっと聞いておかなければいかぬけれども、六分五厘で借りた金を一体幾らで貸すのかということ。幾らで貸すのかわからぬが、貸す利ざやだけは補てんをしてやらぬと、この予算を見てごらんなさい、「社会福祉事業振興会関係予算額調」というのを見ますと、これは三十八年度が一億六千七百七十三万三千円、三十九年度は政府出資が減るから一億二千八百九十万三千円で、別に資金運用部から三億円借りる、こういう形になっている。非常に予算も少ないわけです。そして、しかもたくさんな福祉施設、いわゆる零細な福祉施設のために金を貸すことになるのでしょう。そうしますと、こういうわずかな予算の中からやりくりをして、利子を払おうということになればたいへんなことです。だから、当然、もう一つ方法はその逆ざやだけの利子補給というものをしてやらなければいかぬ。債券なんかやめちゃって出資をふやすか、どうしても債券をやろうとするならばここに利子補給をやるという、このどっちか二者択一です、どっちかをやってもらわなければいかぬ。そこで、これは早川さんじゃないけれども、四億や五億の金は何とかやりくりしてできますよという。地方財政計画でも四億や五億は何とかできるのだから、それならばひとつ予備費も三百億あるのだから、その中からでもこんなものを何とかしてもらわなければいかぬ。どっちですか。それはどっちか、利子補てんをやるかそれとも出資をふやすことにするか。それだったらこれは社会党は削っていいです。出資をふやしてくれれば削っていいですから。このままいくとすれば利子補てんをやらなければならない。どっちか二者択一です。ひとつよく相談して……。
  26. 海堀洋平

    海堀説明員 財政投融資の関係に関連しておりますので、私から一般的にお答え申したいと思います。  資金運用部の金は、確実、有利で、しかも公共の福祉に貢献するように使用しなければいけないということ、すなわち元本の回収が確実で、しかも一定の収益を有するところにしか貸し付けてはいけない、こういう規定になっております。それを具体的には、たとえば今回の社会福祉法人なんかにつきましては、債券発行能力というものをやはり期待するという形になっております。ただ、先ほどからの滝井先生のお話では、債券というものを経済的な債券というふうにお考えでございますが、やはりいろいろな意味の、たとえば現在まで非常に多額の得付をいただいておるというふうな点もありますので、これを債券の形に切りかえて、関係のそういった社会福祉に協力をしていただけるようなところに対して債券を持っていただくというふうなことも、決して不可能ではないのではないか。したがって、先ほどから擬制であるというお話、なるほど、現在のところ特に債券発行することを私のほうはすぐには期待いたしませんが、やはり国民経済の発展とともに、そういった社会福祉に対する関心も一般的に深まるだろうと思いますので、債券発行が必ずできない、したがって全く擬制であるというふうに断定されるのはいかがなものかと存じます。したがいまして、私どものほうとしては、もちろんその金額というものは大きくは期待し得ないと思います。したがって、そういうある見通しのもとに、財政投融資の中で、そういう償還能力を考えながら必要な額をできるだけ出していくという態度をとっているわけでございまして、無制限に財投の金を償還の見込みなしにこの機関につけていくという考えを持っておるわけのものではないのです。  先ほど逆ざやになるのではないかという問題がございました。確かに私どもからの金利は六分、五厘でございます。この機関が社会福祉法人貸し付ける金利は五分一厘でございます。しかし、現在この機関、少なくとも三十九年度をとってみますと、損益は過去の出資金の収益その他によってバランスいたしておりまして、特に特別な措置をとる必要がないことは先ほど厚生省から御答弁のあったとおりでございます。将来どういうふうになりますかという問題は、やはり諸般の情勢を勘案いたしまして、私のほうの金、一般会計措置に何らかの、そのときには逆ざやになるような、すなわちこの機関が欠損して非常にものごとがやりにくくならないように、一番妥当な措置を考えていくということになるのじゃなかろうかというように考えております。
  27. 滝井義高

    滝井委員 いまの答弁では、何かこの社会福祉事業振興会がこの規定をすればすぐにでも債券発行するようなことを言うけれども、発行したってこれを政府保証しなければ買い手はないです。私学振興を審議するときだって、これは速記を見ても、当分する意思はないと答弁しておるのですね。いまも文部省管理局長さんは、やはり当時の答弁と同じように債券発行する意思はないと言っておるのです。これだって、もっと条件が悪いのですから、できないわけですよ。できないことを響く必要はないのであって、必要なときになって書いたらいい。必要なときに書くといいので、書かなければ資金運用部の融資ができない。資金運用部から借りないで、ほかのところがら借りたらいい。年金福祉事業団から借りたらいい。年金福祉事業団から借りられるなら、そんなもの必要ないでしょう。どうですか、ないでしょう。
  28. 牛丸義留

    牛丸政府委員 振興会借り入れするということになれば、結局同じでございます。その金は運用部資金資金でございますから、結果は同じでございます。やはり法律的な措置が必要であります。
  29. 滝井義高

    滝井委員 そうなるのですか。年金福祉事業団は、資金運用部の金と同じじゃないはずです。それは法律のどこに、年金福祉事業団から借りられないなんて書いてあるか。みな社会福祉施設は年金福祉事業団から借りているのです。振興会が借りられぬはずはないのでしょう。法律的にどういう読み方をしたらそうなるのですか。
  30. 牛丸義留

    牛丸政府委員 福祉事業団の貸し付けは直接の貸し付けでございまして、振興会が事業を行なう施設を自分でやるならば、年金福祉事業団がそれに貸すことはできるわけでございますが、振興会はそれをまた社会福祉施設貸し付けをするわけです。したがって、又貸しをするようなかっこうになるものですから、年金福祉事業団は又貸しをするような貸し付けはできないわけでございます。したがって資金としてやるならば、結局は資金運用部資金を直接振興会は借りるという結果になりまして、この法律のような結果になると思います。
  31. 滝井義高

    滝井委員 この議論はもうしばらく置いておこう、また発展するから。これはもう一ぺんやらなければならぬところがあるから……。  私としては、こういう当面発行する意思もないし、また発行するだけの力のないところが債券発行することは反対です。もしこれをどうしても発行したいというなら、利子補給をやってもらうよりほかに、われわれはこの法案を了承することはできないのですよ。まずここを先に結論を出してから、いまのほうに移りたいと思うのです。どうしてもこの法案を通すというならば、私は、利子補給をするという言明を得る以外に方法はないのです。それか、もうこれは削ってやるか。いまの海堀さんのような答弁では、快刀乱麻の答弁じゃないのです。どうも納得いかないのですよ。理論的に納得いかないのです。だから、あなたのほうはこれを固執するというのなら、船後さんのほうで利子補給をすると、こう言ってもらわない限りはしようがないのですが、船後さん、利子補給をしますか。
  32. 船後正道

    ○船後説明員 今回、社会福祉事業振興会に財投資金を投入するということによりまして、振興会貸し付け資金量は飛躍的に増大をすることになるわけでございますが、この結果、六分五厘の利子の支払いを要する資金が入ってきたわけでございまして、新たに、振興会におきましてはこの借り入れ利子の支払いの問題が生じたわけであります。  三十九年度につきましては、現在までの振興会に対する国の出資金の累計が十億五千万円ございまして、この十億五千万円の運用による収入がございますので、これによりまして三十九年度の振興会の収支というものは順調にいく予定であります。この点は、先ほど私学振興会につきまして文部省から御説明になりましたと全く同様の状態でございます。  今後の問題につきましては、振興会の全体としての貸し付け資金量をどの程度にするか、またこの資金に応ずるためには、自己資金つまり貸し付け資金の回収と、財投からの融資借り入れ金、それからまた一般会計出資もあるわけでございますが、この比率いかんによるわけでございます。いずれにいたしましても、従来は利子の支払いを要しない出資金だけで貸し付けを行なっていた。今後は、この運用部からの借り入れ金については利子の支払いを要する、しかもその点に逆ざやがあるということは事実でございます。この点をどうするかは四十年以降の予算編成の問題でございまして、そのときどきの財政事情に応じましていろいろな方法がございますので、具体的に検討したいと存じます。いずれにいたしましても、今の措置貸し付け資金ワクの増大を目的とするものでございまして、これによりまして特に振興会貸し付け条件を悪化させるというものではございません。そういう点に配慮しながら、今後も資金量の拡大につとめていきたい、かように考えております。
  33. 滝井義高

    滝井委員 四十年以降の問題であるということは、ことしのこの貸借対照表を見ればわかるわけです。わかるけれども、法案を審議するときには——やはりこういう発行しない債券発行する形の擬制をとるわけですから、それをカタにして、それを足場にして、能力のないものをあたかも能力があるかのごとく擬制して金を借りるわけです。実際能力がないのです。いま社会局長は、振興会は実際は発行する力はございません、こう言っておるのです。ないものをあるかのごとく能力を与えて金を借りるのですから、これは擬制ですよ。そうしますと、借りた金の利子は払う道を講じておかなければ……。それだったらわれわれ反対で、これを削ってもらう、それで出資だ、あなた方ががんばれば、こういうことを言わざるを得ないのです。こんなものを零細な社会福祉施設に貸して——いつも言うようにお隣の韓国には三分五厘で、とにかく無償三億ドル、有償二億ドルというものを海外経済協力基金を通じて貸すのですよ。お隣の韓国にさえ三分五厘で貸すのに、日本のこれから救貧線に陥るかどうかという人を救うための社会福祉施設に、五分一厘というような韓国に比べたら高い利子で貸すというのはけしからぬというのですよ。三分五厘にしなさい。六分五厘で借りたやつを五分一厘で貸すわけです。だからそういう点では三分五厘にして、もうちょっと逆ざやを大きくしたらいい。そしてその分だけは国が補てんをする、こういうかっこうにするならいいですよ。だからそういう点では、これは私はどうしても納得いかぬです。しかもわれわれの気づかぬところでうまいことをやったと思って出されておるけれども、天網かいかい疎にして漏らさず、ちゃんとこれでわかるわけです。だからこういう点は、発行能力のないものに発行さして、そして金だけは借りる、借りたものは利子を払わなければならぬ、そんなばかなことはない。これはぼくらどうしても初心を貫きますよ。利子補てんするという言明を得るか、削るか、どっちかでなければやれぬのです。この背後にもう一つからくりがあるんだから……。
  34. 海堀洋平

    海堀説明員 債券発行能力がないということを非常にはっきり断定されているようでございますが、たとえば、その前にあげられました私学振興会——つまりいま油井先生のおっしゃられているのは、一般的に市場流通の債券ということに限定されて議論されているのじゃなかろうかと思うのであります。政府保証債におきましても、  一般的な流通とか一般的な引き受けということを前提とされて、債券発行能力なしというふうに断定されているのじゃなかろうかと存じますが、前に例としてあげました私学振興会をとってみますと、私学共済から借り入れ金を行なっております。これは縁故があるものですから、借り入れ金を行なっておる。したがいまして、もしこれを債券に切りかえればそれだけの債券発行ということは可能なんでございまして、同じようにやはり縁故引き受けといいますか、そういう関係者に協力を受けるということをとりますれば、債券発行ができないのだというふうに断定して考える必要はないのではないかと存じます。
  35. 滝井義高

    滝井委員 その場合、縁故債や何かということになると非常に無理がいくんですね。たとえばわれわれが私立学校学校債を引き受けるわけですよ。あるいはわれわれ社会党の社会タイムスの株券を持っておる。こんなものは返ってこないのですよ。もう寄付したと同じですよ。そういう形になると、縁故債その他でやるということになればやはり非常に無理がいってくるのですよ。地方自治体で公募債をやっても、地方自治体さえもが簡単にいかぬじゃないですか。だからこういう零細な団体が債券発行するといったら、政府がはっきり保証して裏打ちを与えなければ、なかなかうまくいかないのですよ。だから私は単刀直入なんですよ。一億五千万円であった出資を二億に減らした、ここにまず、かちっとくるものがあるのです。資金をふやしたいというなら、何で一億五千万円そのままにしておいて借り入れということを言わないか。ところが三億を貸してあげますよといって、いかにも資金最をふやすような錯覚をわれわれ代議士に与えながら、一番大事な扇のかなめの五千万円というのを削っておる。ここが気に食わないのです。だから、それならばひとつ利子補給をしてください。それから債券をやめてむしろ出資を三億にしなさい。三兆二千五百五十四億という、みんなにいいよという予算をつくっておきながら、こういう貧しい階層にだけ五千万円削るというのはけちくさいというのです。だからみんなにいいよという予算なら、みんなにいいように、出資を四億か五億にしてもらわなければならぬ。その上で、資金が足りなければ借り入れ金だというならバランスがとれてくるのですよ。ところがそれを削っておるのですから、そこが気に食わぬのです。どうです、あなたか手をあげるなら——利子補給するというなら……。
  36. 船後正道

    ○船後説明員 出資金の一億五千万を一億に削減したという問題でございますが、予算の問題でございますので、私からお答えいたします。  これはむしろ逆でありまして、振興会の三十八年度の貸し付け総額は三億二千万であります。三十九年度につきましては、これを約倍の六億に拡大しようということが前提になっておりまして、この六億を前提といたしまして、振興会事務費、それから新たに借り入れ金の導入による支払い償還の問題、こういった経費面を考慮いたしますれば、政府出資が一億、借り入れが三億ということでバランスがとれるということでもっていたしたわけでございます。目的はあくまでも貸し付け金の増大でございまして、決して削るために削ったというものではございません。
  37. 滝井義高

    滝井委員 その場合だって、出資を一億、五千万、借り入れを二億五千万にしてくれてもいいんですよ、六億でやりたいというならば。そういうことはどっちだって解釈ができるんです。問題は、過去二十九年から三十八年までの十ヵ年間に、借り入れ金なんかはやっていないのですから。この金は伝統的に出資償還金でまかなってきているんです。それをいまの段階になって、突如として債券発行能力を与えて、そうして、出資を犠牲にして借り入れ金を借りる手段としてこれを利用しているんですから、それを御利用になるならば利子補給してくださいと言っているんです。これは無理な要求じゃないですよ。しかも利子はわずかですよ。そうでなかったら、削った出資をふやしなさい。三億の借り入れ出資を四億にしたらいい。そうすると、あなたの御希望どおり六億になるんだから、そのほうがいいですよ。社会福祉事業の振興のためにはそのほうがいい。そのほうがこの答申に合っている。政府答申を無視するということはないんです。厚生大臣がきょうおったら、こっぴどくやっつけなければいかぬと思っておった。医療協議会か何かの答申が出なければ絶対にだめだ、答申をやっておるのだからと、ぶるぶるふるえながら報告を何回もやった。三十七年の八月二十二日に答申が出ておるのに、こんなものは無視してこういう形をつくっているんです。しかも一番貧しい層でしょう。一番貧しい層のために——これは何ぞ来年のことを言わんやというけれども、いまから来年のことを言っておかなければ間に合わぬです。どうですか、利子補給してもらえますか。
  38. 船後正道

    ○船後説明員 三十九年度につきましては、政府出資一億と借り入れ金三億ということでバランスがとれますので、そのような比率にいたした次第でございます。これを一億五千万と二億五千万にするというような計算でございますけれども、そのようにする必要はない、振興会のほうの支出面から検討いたしますればその必要はないということで、一億と三億ということにいたした次第でございます。四十年度につきましては、もちろん事情が変ってまいります。全体としての貸し付けの総額を幾らにするということがまず前提になるわけでございまして、まず  それがきまりました上で、そういった問題は検討いたしていきたいと思います。  なお、滝井先生は、一昨年八月の制度審議会の答申を御引用されまして、われわれの努力が足りないというおしかりでございますけれども、国といたしましては、社会福祉施設の整備につきましては格段の努力をいたしておるわけでございまして、御承知のとおり社会福祉施設整備費は、三十八年度の約二十億を二五%増の二十五億円にふやしておるわけでございます。ただいま問題になっておりますのは、本来局間資金でもってまかなうべき部分を、政府の低利融資でもって貸し付けしようという部分でございます。私どもといたしましては、このほうにつきましてもできる限り、従来三億程度貸し付け額でございましたのを倍程度に引き上げたいということで、努力しておる次第でございます。
  39. 滝井義高

    滝井委員 努力はよくわかるけれども、こういう雪一純な社会福祉施設に、一文でもそれが利子で支払わなければならぬという杉をつくるべきではないというのですよ。巻き上げられるような利子については、当然振興会資金の拡充に充当すべきだということなんですよ。そういう形に持っていかなければ、これは私納得、できないのです。そこはどうしても納得できないんです。だから、ぼくらは党に帰って、債券発行のところを削減してあれを要求します。  それからもう一つ、さいぜん問題がございましたが、この金を資金運用部から借りなければならぬ。年金福祉事業団からは——年金福祉事業団から借りる場合だって、どうして債券発行しなければならぬのですか、そういう法律の根拠はどこにありますか。年金福祉事業団は、資金運用部の金が来てするん、だったら別だと思うのですよ。
  40. 牛丸義留

    牛丸政府委員 年金福祉事業団の対象になりますのは、年金福祉事業団法によってきまっているわけでございます。社会福祉事業振興会は、私学振興会のような貸し付け金に対して又貸しをするというふうな、そういう能力を持っていないわけです。
  41. 滝井義高

    滝井委員 むしろそこを又貸しするようにしたらいい。この金は、あなた方は、ここに資金運用部と書いてある、年金福祉事業団から三億の金を借りるのだ、ここにごまかしがあるのですよ。年令福祉専業団から借りるのでしょう、この金は。そうじやないのですか。
  42. 牛丸義留

    牛丸政府委員 資金運用部資金から借ります。
  43. 滝井義高

    滝井委員 そうじやないでしょう。資金運用部資金から直接借りるのじゃなくて、まず年金福祉事業団にいくようになっているでしょう、あなたのほうの予算書には。ぼくはこの前もこれでごまかされてしまった、国立病院に関して。あなたのほうの資料には、資金運用部資金借り入れ、年利六・五%であると書いてあるから、ぼくは資金運用部資金から直接借りるものと思っておったら、あにはからんや——今度はぼくも意地悪く見ることにした。この前、国立——何というか、「等」というのを書いておって、国立病院が入っているというのでごまかされてしまった。今度はよく見た。医療金融公庫の下に社会福祉事業振興会が三億円、これは国民年金の特別融資です。それが入っておるのです。だからこういう資料か——こちらのあなたのほうの資料は資金運用部から借りるようになっているが、これでは年金福祉事業団から借りることになっている。
  44. 海堀洋平

    海堀説明員 国民年金の特別融資から出るということでございまして、年金福祉事業団は還元融資、特別融資の一つの機関でございまして、こちらのほうから出るということではなくて、国民年金の特別融資から出る。しかも還元融資、特別融資は、何もこの機関だけではございませんでして、年金福祉事業団、特別地方債、それから医療金融公庫社会福祉事業振興会、それから一般地方債も一部分入っておりますので、むしろどこが減ったかという伸び率から見ていただければ、一般地方債の伸び率が小さくて、特に厚生省所管部門に伸びが大きくなっておりますので、年金福祉事業団に回るべき金が社会福祉事業振興会に回ったというふうに考えていただくのが誤解ではなかろうかというふうに考えます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 資金運用部から金が直接いきます場合と、年金福祉事業団を通じていきます場合とは違うんですよ。ですから、海堀さんの言うように、これは明らかに年金福祉事業団の、いわゆる国民年金と厚生年金の三十九年度の積み立て総ワクの二割五分の中から出ているのですよ。
  46. 海堀洋平

    海堀説明員 ちょっと誤解があるかと思いますが、還元融資は厚生年金資金の二五%、特別融資は国民年金資金の二五%ということでございます。これの対象の機関は、単に年金福祉事業団だけではございませんで、滝井先生よく御存じのとおりに、特別地方債、医療金融公庫、それから一般地方債のある部門に充てております。したがいましてそれを出すのは、やはり一応資金運用部に預託になったものからそういう形で出すわけでございまして、その場合に、どこが一番ふえているかということを見ていただければ非常によくわかると思うのでございますが、年金福祉事業団は非常によく伸びております。それから特別地方債も非常に仲ばしております。むしろ一般地方債に回すべきものが社会福祉事業振興会に回った、こう考えていただけばいいのでありまして、先ほどちょっと誤解があろうかと思いますが、金を出すのはあくまで運用部から直接この振興会に出るわけでございます。ただ、それが二五%のワクの中であるということになっておるわけでございます。
  47. 滝井義高

    滝井委員 私の言い方もちょっと舌足らずでございましたけれども、そのとおりなんですね。二割五分の中にこれが入っているということですよ。二割五分の中に入るということは、直接資金運用部からいくという、われわれのいままでの概念と違うのです。これはもっぱら労働者の福祉にやるという金なのです。ですから、私の言いたいのは、もし社会福祉事業振興会を三割五分の中から出そうとするならば、年金福祉事業団から借りたっていいじゃないかということです。そうすればこんな債券のものなんか要らないんだから、年金福祉事業団の中の業務方法雷に社会福祉事業振興会対象にしたらいい、 六分五厘で借りられるのだから。去年は医療金融公庫等ということで、うっかり「等」を見落としておった。「等」の中に、国立病院に金を貸すのが一側五分の中に入っておる。ことしは「等」はありはせぬかと見ておったら、社会福祉事業振興会が三側五分の中にもぐり込んできているわけです。これは直接税金でやりなさい、こう言っているのです。直接税金でやりなさいと言ったものを、今度は債券発行するようにして、資金運用部から直接もらうのかと思ったら、労働者に割り当てる二割五分の中から割り当てる、こういう形になっているわけです。こういうむずかしいからくりを、こういう制度についてはおやりになるべきでないと私は思うのです。もう少し簡素化する必要があると思う。  それから、そればかりじゃなくて、今度は、この勧告の三章「低所得階層に対する施薬」の一の「社会福祉対策」の一番最後、「社会福祉対象」の前を見てください。そこにどういうことを書いているかというと、「なお、社会福祉施設は、国および地方公共団体の責任によって充実しなければならないが、これを急速に充実するためには、社会保険の積立金はとくに適当な原資である。」となっておる。これからが大事だ。「たとえば、年令福祉事業団等がこの資金をもってこれらの施設を設置し、長期の年賦償還の方式などにより、これを地方公共団体等に移譲することもできるであろう。」こうなっている。これも明らかに年金福祉事業団を通じておやりなさい、 こうなっているのです。しかもそれは、いま特定郵便局でさえもが、郵便局の局舎を簡保資金の金を持ってきて又貸しでやろうとしている。自治省は、そういうものをやってはいかぬという次官通牒を出しているでしょう。出しているのに、わざわざ政治的にきめて、力でもって都道府県知事を通じて又貸しをして特定局舎にやろうとしている。それならば、こういう零細な社会福祉施設については、年金福祉事業団から県なら県が借りて建てて、民間に移譲してその運営をまかしたらいい。そうすると、民間はさらに調度とか内部の充実を寄付金でやる、こういう形がほんとうの行き方です。ところが、そういうことをせずに、今度は社会福祉事業振興会に金を貸すなんということになればますます複雑になる。なぜ複雑になるかというと、これは海堀さん御存じのとおり、年金福祉事業団は、厚生福祉施設の第一種、第二種については養老施設その他に金を貸すのですよ。同時に、特別地方債で厚生福祉施設に金を貸すのです。そうすると、それをまた複雑にして、この二割五分の中に三億の金が割り込んで別立てを立てるということが気に食わぬ。労働者の福祉ということだったのですよ。それを救貧ラインのものの、国がやらなければならぬものをここに肩がわりして持ってくるという精神がけちくさい。こういうような、何か代議士は勉強せぬでみんなめくらばかりがおると思っておる。この社会労働委員会はみんな優秀な人ばかりだから、そうはいかぬ。こういう二つの大きなごまかしをやっておる。だから、これはやるなら年金福祉事業団を通じておやりになったらいい。やり方についても問題がある。同じ福祉施設をこの還元融資の中で三本立てでやるなんというばかなことはない。これはそれだけ事務費が要ってむだです。一本立てでやったらいい。そういう点についても、もうちょっと牛丸さんのほうもしっかりしなければいかぬ。資金運用部資金といっても、説明には還元融資と書いてもらわなければいかぬ。直接プロパーでないんだから、二割、五分というやつは長年の労働者の闘争の中から確保したものでしょう。労働者の福祉に持っていくんだ、こういうことなんです。それを今度は救貧の、国のやらなければならぬものにこの金を持っていくということは、やはり問題だと思います。これはこの前やかましく言って国立病院を削ったら、今度はかわりにこれが三億、こういうものがあらわれてきた。どうも大蔵省も厚生省もたちが悪い。海堀さんは特にたちが悪い、この前言うてようやく国立病院をのけたら、今度は振興会がもぐってきておるんだから。
  48. 牛丸義留

    牛丸政府委員 ただいまの滝井先牛の御議論でございますけれども、年金福祉事業団からやったらいいじゃないか、これはやり方は、法律のたてまえを変えるならばそういうことも可能ではあると思いますが、この制度審議会の、先ほど読み上げられました第三章のなお書きのところの文章にもありますように、第一の問題は、「社会保険の積立金はとくに適当な原資である。」まさに二五%はそういうものに使ってもよろしいということは、ここにも書いてあるわけであります。これを年金福祉事業団から直接社会福祉関係施設に融資をしないで、振興会が別に、その原資は原資であっても、資金運用部からそれだけのものを借り入れまして貸し付けを行ないます理由は、これは年金福祉事業団でございましたら利率が高い。したがって、そういう収益性のわりあいに低い社会福祉事業の各法人に対しては、特別の振興会法律貸し付け利率も五分一厘というように低利に貸している。そういうところに、振興会が年令福祉事業団と別に設置された一つの理由があるのではないかと私どもは考えておるわけでございます。
  49. 滝井義高

    滝井委員 資金運用部の金を借りるのは六分、五厘ですから、同じなんです。だから、これはこういう法律の改正のめんどうなことをやらずに、現実社会福祉施設は、第一種、第二種の、分類はありますけれども、年金福祉事業団でみんな金を借りているわけです。借りておるのに、その同じワクの中で、今度はもう一つ年金福祉事業団と同じような形のものを社会福祉事業振興会に付与する必要はないんじゃないか。このワクの外でもらうのならまだ話はわかる。資金運用部そのものからもらうというならわかるけれども、二割五分の中に割り込んで、そして年金福祉事業団と肩を並べ、特別地方債と肩を並べる必要はないんじゃないか。三つもこの金を分ける必要はない。どこか一木で出したらいい。こういう点についてもごまかしかあるわけです。私はこういうやり方は反対です。そうでしょう、年金福祉事業団がそういう施設には金を貸せるのですから。貸せなければ別ですよ。貸せるものを、もう一つここに社会福祉専業振興会というものを、債券発行能力まで擬制をして立てなくてもいいのじゃないかということなんです。それだったら、社会福祉事業振興会がこの金を借りなくても、資金量をふやしたいと思ったら年金福祉事業団から借りればいい。厚生福祉施設に年金福祉事業団は八十億ありますから、これを八十五億ぐらいにしたらいい。そうしたらそれだけ社会福祉事業振興会事務費が倹約になる。一つにまとまったところでやれるわけですからね。小さく細分をするということは、それだけ事務費がよけいにかかって、資金コストが向くなることを意味するのです。こういう点について、あなた方は合理三義者が多いのに、どうも非合理なことばかりやっておるわけです。還元融資なり特別融資の別ワクでお借りになるというなら話は別です。私は別ワクで借りておるだろうと思った。というのは、ここを見ると厚生年金なり国民年金の還元融資とは書いていないから、別ワクだと思ったのです。そしてこれを見てみますと出ているわけですからね。こういう点についても、どうも海堀さん、船後さん、これは納得いきませんね。
  50. 海堀洋平

    海堀説明員 厚生年金、国民年金の二五%相当をそれの拠出者たる労働者並びに農民等の福祉に還元するようにという趣旨は、まことに私のほうもその趣旨を尊重いたしまして事を進めているわけでございます。ただ、それを何に充てるかという問題になりますと、これには非常に理論的に考えますといろいろ問題があるわけでございます。たとえば、滝井先生よく御存じと思うのでございますが、住宅金融公庫の産労住宅貸し付け、これなんか、まさに労働者の福祉に還元しているわけでございます。それから、さらに例をあげさせていただきますれば、住宅公団の、現在賃貸住宅というのが大部分でございますが、これに入っております職種を調べてもらいますと、厚年加入者が半分以上を占めておるわけでございます。これなんかも、事実はまさに住宅という基本的な福祉施設への還元をいたしているわけでございます。ただその場合に、何を還元融資ということで押えることが妥当であるかということにつきましては、厚生省の御意見等も十分に参酌いたしまして現在のような姿にいたしておるわけでございまして、いわゆる還元というだけのことを考えてみますと、現在、たとえば住七政策なんかは相当労働者並びに一般国民年年金の加入者の福祉への貢献というものが大きいのでございまして、そういうもののどこを取り上げて還元融資、特別融資の一五%のワクに入れるかという問題につきましては、その年金制度を所管いたしております厚生省と十分に相談申し上げまして、こういう形をとっておるのでございます。これだけをもって年金拠出者への還元であるというふうにして個々の事例を取り上げて議論されるのは、やや実態を離れているのではなかろうかと考えられるわけでございます。
  51. 滝井義高

    滝井委員 この社会保障の総合調整に関する答申勧告をごらんになっても——そういうことか書いてなければ別ですよ、この社会福祉施設については、年金福祉事業団を通じて金はお出しなさいと書いているのです。しかもそれは、できれば地方自治体にやって施設をつくらしたほうがいい、こういうことになっておるのです。そういうことを書いておるにもかかわらず、別立てのものをつくっておやりになるということがやはり問題なんですよ。だから、それだったら資金運用部から直接お出しなさいと、こういうことなんです、法律まで改正するのですから。そうでなければ年金福祉事業団からお借りになったらいいでしょう、こう言うのです。同じ金を三ところから貸すような制度をつくらなくたっていいのです。二ところでけっこうですよ。起債と、それから金を貸す分と、これでけっこうです。今度振興会を別にこのワクの中に入れるというようなことをしなくてもいいじゃないか。どうもこの説明では還元融資でないようなことを書いておるものだから、ほんとうに資金運用部から直接にくれるのかと思っていたところが、よく見ると還元融資のワクの中だ、こういう形になるわけですね。だから、その場合はなるほど広義の資金運用部かもしれないけれども、しかしそれは、あくまでも別ワクのものとしてもうきめられているものですからね。だから、そういう点でもこれはどうも納得できないですね。  まあ時間が来ましたが、結局集約すると、その問題を解決しようとすれば、利子補給をしてもらうか債券をやめて出資にするか、この二者択一ですよ。もう明らかになってきた。この前は医療金融公庫等で国立病院も入れられておって、それが今度のいたと思ったら、今度は社会事業の振興会が入ってくる。振興会へ金を出してもいいですよ。いいけれども、出すならば利子補給をしてください。しかしそれは、ことしはもうバランスが合っておるからと計われるけれども、それではバランスが合っておるから、こんなものは必要がないから来年やりましょうかということになる。だから、ことしはひとつ三億円の金をやめて、年金福祉事業団から金を施設に直接貸したらいい。施設は年金福祉事業団から借りられるのですからね。何も振興会を通じなくてもいいのです。だから、どうもそういう点では納得ができないのです。私、これは少しがんばりますから、簡単には通さぬですよ。そういう矛盾だらけなことを、代議士の口をごまかすような法律のつくり方では納得ができないです。あなたのほうで明確な答弁があればいいし、そうでなければこれは納得できません。
  52. 牛丸義留

    牛丸政府委員 年金福祉事業団と振興会の関連がただいま問題になっておるわけでございますが、これは発生的にはむしろ振興会のほうが先で、二十九年でございます。事業団はそのあとにできたわけでございまして、いろいろな貸し付けの条件とか、それから貸し付けの目的が違っておるわけでございまして、社会福祉事業振興会が本来目的としますのは、新設じゃなくして、むしろ改築とか、それから運転資金借り入れとかいうような、社会福祉事業に直接必要な、いわば金額としても大きな、新築に要するような金額でもございませんし、これを同じ機構でやるにしても、結局は振興会が現在果たしているような機能は事業団の中に入っても必要でございますし、それだけの陣容も必要がありますので、その辺の程度というような問題はあるにしても、振興会が果たしている役目は依然として私は必要かと思います。また法律の制定も、振興会のほうが十年ぐらい前にできておりますし、そういう趣旨で別々にその目的に従って事業の運営をすべきではないかというふうに考えるわけでございます。
  53. 滝井義高

    滝井委員 大臣がいらっしゃいましたが、大臣、今度社会福祉事業振興会では三億の借り入れをすることになっているわけです。これは大臣御存じのとおりです。その三億の借り入れをするためには、債券発行する能力を持っていないと、三億の金が資金運用部から借りられない。したがって、債券発行能力というものを、実際はこれはないのだけれども、また当分これをやる意思もないのだけれども、まず債券発行能力だけはつけておく。そうしますと、これは資金運用部から金が借りられる、こういう形になっておるわけです。そこで資金運用部から金を借りておるものだと思っておりましたところが、その三億円の金は厚生年金の還元融資と、それから国民年金の特別融資のワクの中から持ってくることになっておるわけです。直接に資金運用部の金を持ってくるのじゃないのです。還元融資のワクの中から持ってくるわけです。それならば、還元融資のワクの中にはそれらの社会福祉施設に貸す厚生年金の還元融資を使ってつくっているところの、あるいは国民年金の特別融資を使ってつくっている年金福祉事業団というものがあるわけです。ここからそれらの施設には金を貸しておるわけです。貸しておるにもかかわらず、そのワクの中からもう一本つくり、さらにそのほかに特別債というものがあるわけですから、地方に起債の道も開いているわけです。ところが二本立てになっているのに、これを一つ加えて三本立てになるということは事務が複雑になる。事務が複雑になるということは結果的に見ると資金コストが高くなるということになる。大所高所から見るとそうなるわけで、そういうめんどうなことをおやりになるのならば、そして、もしどうしてもお金を借りたいというならば、年金福祉事業団からお借りになったらどうかと、こう言っておるわけです。そうすればこんな法律の、債券発行するとかなんとかいうことをつけなくてもいいわけです。又貸しをすればいい。又貸しをするように業務方法書を変えたらいいのです。そうすれば法律の改正の手間も省けるわけです。そのいい例としては、いま簡保資金を自治体を通じて特定郵便局にさえ政府は、自治省の事務次官の通牒に違反をしてやっておるじゃないか。そんな違反をせぬでも、業務方法書さえ変えたらいいのだ。業務方法書を変えるのは行政のべースでできるのだから、それでおやりになったらどうですかと、こう言っておるわけです。ただそういうことが、どうしてもできぬというならば、この法律をお認めいただきたいというならば、資金運用部の金を還元融資なり特別融資に持ってきて、それを今度は振興会がお借りになるのと六分五厘で借りる。貸すときには五分一厘です。五分一厘で貸すからそこに一分四厘の逆ざやになる。その逆ざやになった一分四厘というものを利子補給してくれるということならば、それなら前に言ったくしゃくしゃした問題は解決しますよ、こう言っておる。それをやらないならば債券発行をやめて国の出資にしてください、どっちかをお選びください、われわれはこういう要求をしておるわけです。ところが大蔵省の資金課の海堀さんも、主計局の船後さんも、なかなか言を左右にして動かぬわけですよ。動かなければこっちも動きませんぞと言っておるところへ大臣が幸いおいでになったわけです。これは事務当局の段階を越えて大蔵大臣なり厚生大臣政治的判断になってきたわけです。結論的に申しますと、逆ざや利子補給をするか、それとも債券発行をやめて、一億五千万円を五千万円お削りになっておる政府出資を思い切って四億にして資金ワクをふやすか、いずれかの道を選んでください、こういう結論になってくるわけです。この法案の原案のままで押されるつもりか、それとも前に申し上げました二つの、いずれをお選びになるのか、この答弁をいただきたいというのが私の最後に到達した質問なんです。
  54. 小林武治

    小林国務大臣 振興会法はこれだけで済ますわけではありません。今後いわばもっと拡大発展せしむべきものでありまして、この際は、私は原案でひとつお認めを願いたいと存じますが、これからの問題としては、逆さやの問題も必然考えなければならぬと思います。来年度は政府出資等によってこれが解消できるが、これがふえていけば、当然利子補給とか何らかの方途を考えなければならぬということと同時に、借り入れ金が、いま何もこれに限らず、将来資金部からも借りられるというふうに私どもは考えておるのでありまして、これは今日これだけでお考え願わないで、今後にいろいろの発展的な要素がある、こういうことでひとつこの際お認めを願いたい。また繰り返して申しますれば、逆ざや等についても当然何らかの措置をとる必要が出てくるのでありまして、私どもは、これはこのまま放置できる問題とは思っておりません。そういう趣旨でこの際はひとつお認めを願いたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  55. 滝井義高

    滝井委員 普通の収益ベースに乗っているものならば、来年何とかすると言われれば来年何とかしてくれということで私は下がります。しかしこういう問題は、さいぜん大臣の来る前にくどくど申し上げましたが、これは三十七年の八月の社会保障制度総合調整に関する答申勧告を見ても、これは当然国の税金でやるべきものであるということをいっておるわけです。借り入れ金なんかで利子を払うものでやれというようなことは、私は全部調べてみたが、どこにも書いていない。それをそういう形で来年は何とかするからいまはひとつ法律を通してくれといっても、来年になってまたごまかされるかもしれません。どうもわれわれ、ILO以来非常に神経質になっておるわけです。ILO問題では幹事長、書記長がやっておってもなかなかなんです。ですから、やはりここで最小限の保障というか、言明をしていただきたい。来年は利子補給を必ずやりますとか、そうでなければ、来年は借り入れ金をやらずに政府出資をふやしますとか、ここまでぐらいは言ってもらっておかなければ引き下がれません。解決の道はその二つしかないのですから、そのいずれかの措置を必ずとります。出資をふやすか利子補給をするか、必ずいずれかの措置をとりますというくらいの言明をしていただいておかぬことには、よろしいと言って下がれません。
  56. 小林武治

    小林国務大臣 これはもうあなたが御指摘なさるとおり、かまわぬでおける問題ではありません。逆ざやなんか出てまいりますし、だから仰せのような考え方をもって進まざるを得ないということはこの中に出ておるのでありますから、そういうふうにわれわれも認識しておるということを御了承願います。
  57. 小林武治

    小林委員 関連して伺いたいと思います。実は私も長くやりたいのですけれども次に一般質問が詰まっておりますから簡単にいたします。  私どうもふに落ちないのは、先ほどからも質問がありましたけれども、年金福祉事業団というものがあるでございましょう。そうして、そういう社会福祉施設に金を貸しておるのでございましょう。なぜ一体振興会法を設けて、こういうように二重に貸し付けをしなければならぬのか。この前から言っておる医療公庫の問題といい、振興会法の問題といい、何か役人のおば捨て山をつくるために、いたずらに自分たちの権限を大きくしようとしておるように見えてしかたがない。年金事業団だってそうでしょう。これで免れば、今年度の貸し付けの予算が二百六十六億円であり、その中で住宅への百五十二億、病院へ三十四億、そのほかに厚生福祉施設に八十億円の金を貸すことになっておるのではありませんか。三億ほしいなら、この中に三億含めて八十三億にして、そうして一般の社会福祉施設に貸せばいいではないか。これが私どもにはふに落ちない。  お聞きしますけれども、一体この年金福祉事業団で貸し付ける厚生福祉施設社会福祉事業振興会が貸す社会福祉施設と内応が違うのでありますか。別側の内容なんでありますか、ひとつお聞かせ願いたい。
  58. 牛丸義留

    牛丸政府委員 振興会のほうは、御存じのように社会福祉法人に対しましてその経営する施設の修理、とか改造、拡張、それから災害復旧とか、経営に必要な運転資金貸し付けることになっております。一方年金福祉事業団は、社会福祉法人の経営にかかるものといなとにかかわらず、老人、身体障害者、母子または児童のための施設に対して新築、改築、それから設備、備品の購入、土地取得に要する資金貸し付けるといううような貸し付けの条件になっております。したがって、社会福祉法人の経営する老人、身体障害者、母子、児童のための施設に対しましては、両方から融資ができるというかっこうになるわけでございまして、この点は事業団の設立にあたりまして、ここを区分いたしまして、これらの施設のうちで措置委託を受けるものにつきましては、原則として事業団の業務範囲から除きまして、振興会の専管とするというようにいたしておるわけでございます。これは総合的に考えたらいずれかに統一するということも可能でございますが、法律はむしろ振興会のほうが先にできておりまして、これは議員提案の法律でございまして、こういう必要を国会がお感じになってできた法律でございますが、私どもとしては、事業団とは貸し付けの条件あるいは対象をこのように区別して現在運営しておるわけでございます。
  59. 小林武治

    小林委員 そういう年金福祉事業団が先にできたか、振興会が先にできたかということを聞いておるのじゃないのです。この前までは政府の原資だけでおやりになっていたものを、今度はそういう資金運用のほうから持ってきておやりになるならば、年金福祉事業団と同じじゃないか。同じことを、なぜそういう区分を二重にも三重にも分けて、しかもその管轄、監督するのは厚生省だ。あなたのほうで監督しておる。貸し付けも全部監督をしておる。年金事業団もあなたのほうのひもつきだ。せめて役所のセクトがあって、役所同士違うからというので、こういう新しいポストを拡張していかれるというならいいけれども、同じ厚生省内部におけるその福祉関係に貸せる金を、こういうふうに区分をしていかれるというそのやり方がどうも私どもはふに落ちないのです。  それでは続いてお伺いしますが、振興会の会長はどなたですか。会長以下、機構、給料、それから評議員会というのがありますが、評議員会の構成メンバーをひとつお開かせください。
  60. 牛丸義留

    牛丸政府委員 振興会は会長、役員のほか三十八名でなっておりまして、会長、常務理事、事務局長、それに五部の部員があります。会長は葛西嘉資氏でございます。それから常務理事は木村又雄という方でございます。それから事務局長は甲賀春一、庶務部長は大熊延之、経理部長は佐竹武美、貸付業務部長は松下菊松、共済事業部長は若尾貢、調査部員は狩野見範夫、以上のようなことになっております。
  61. 小林武治

    小林委員 こうやって振興会に三十八名の職員がおいでになりまして、会長から常務理事、事務局長、庶務部長さんから経理部長、貸付業務部長さんがおいでになる。この中で葛西さんは天下に名だたる方です。厚生省の事務次官をやられて、日赤の福社長をやられたり、実力者です。ここらにも子分と言っては悪いけれども、まだまだ親分子分の関係がありまして、厚生官僚の中ににらみをきかしておるのであります。そのほか木村さん、甲賀さん、大熊さん、佐竹さんとおっしゃいますけれども、こういう方はどういう出身者ですか。厚生省の中のお役人が何人いらっしゃいますか、厚生省以外の出身者が何人いらっしゃいますか、民間から出ていらっしゃる力は何人いらっしゃいますか、お聞かせいただきたいと思います。
  62. 牛丸義留

    牛丸政府委員 部長の中で、主人が民間で、二人が元公務員でございます。
  63. 小林武治

    小林委員 いまの会長、常務理事、事務局長、部長の本俸、諸手当をひとつお聞かせ願いたいのでございますし、時間もありませんからあわせて、何か会長はその運営をするときに評議員会の儀にかけなければならないと言っておりますが、評議員会の構成とメンバーをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  64. 牛丸義留

    牛丸政府委員 会長の手当は総額で十七万円、常務は十四万円でございます。その他は公務員のベースで給与をやっております。  評議員のメンバーは、大体社会福祉事業の方が多いので、民間人が多いわけでございますが、いま、手元にメンバーの表がございませんので、あとで御報告いたします。
  65. 小林武治

    小林委員 これは私は、この前社会保険審査会法を上げるときにも、政府、労働大臣にも要望いたしておきましたけれども、いかにもいまの官僚制度、行政制度が、俸給といい、退職後といい、役人の未来のめんどうを見るような形ができていないところに、国の政治の盲点がありますけれども、どうもそれに便乗して、片方には臨時行政調査会なんかを設けて、役人がふえ、むだな役所が多い、そういう傍係の系統が多過ぎるといってそれを一生懸命に縮小するような形をつくっておる反面、各省はこうやって役人がもぐっていったり退職後の問題を処置するようなものをぼこぼことっくり上げる。そうして国民を代表するわれわれ国会議員なんというものは、全く無能名扱い——無能名扱いと言っては悪いけれども、ほとんどそれをチェックできないような形でそれが進められている。きょうかあすか知りませんけれども、われわれがこの法律を上げるとすれば、この通常国会でも労働省、厚生省関係で三つの法案を上げることになるけれども、この三つの法案は、裏を返せば、これを勘ぐって言えば、全部まるで役人のいわゆる捨て場所——こう言っては悪いけれども、捨て場所というか、落ち行く先の始末をしようという法案ばかりだ。まるでわれわれは、この委員会を開いて役人のあと始末をするようなものだ。一体こんな形でいいのかということなんだ。厚生大臣、あなたが大臣になられてからだんだんそれが激しくなってきた。ふんと言ってはあなたはお怒りになるかもしれませんけれども、あなたはふん尿大臣とおっしゃるかもしれませんが、ふん尿、役人の終末処理までこうはでにやられては、われわれとしてもどこでチェックしていいかわからない。この形でいいのか悪いのか、大垣、真剣に私は御答弁を承っておきたいと思うのであります。
  66. 小林武治

    小林国務大臣 小林さんはいろいろなことをよく御存じの上で御質問なさっておりますので、私もよろしくないということは感じておるのでございまして、この会そのものは、聞くところによれば議員提案でおつくりになったということだそうでございます。私どもも、そういうことはできるだけ自粛しなければならないと、かたく考えております。
  67. 小林武治

    小林委員 実は私は、きょう時間がありますならば、この振興会の会長の葛西さんを参考人としてここへ来ていただいて、遠慮のない質問をさせてもらいたかったのでありますけれども、大臣もおいでになって、同僚の諸君が重大な一般質問を持っておりますので、私は質問できないのがほんとうに残念だが、何といってもこういうところには厚生省の官僚の実力が動くのです。葛西などというこういう実力者が、自分のポストを巧みに利用してその周辺を拡張していこうとする。そういう形で、振興会法では去年までは出資金だけでよかった。それを借り入れ金を入れる、あるいは債券発行ができる、そういう形でだんだん伸びてくる。おそらく来年か再来年になったら、やれ理事長を総裁にせよ、俸給の十七万円を二十七万円にしろ、常務理事を三人にせよと、必ず出てくるに違いない。巧みな形で拡張されていきますからね。実力者の生まれるところ、そういう機構や組織が拡大されていくという、この官僚の特有の姿だけは断じてこれをチェックしていかなければ、国民は何ぼ税金を払ってもたまったものではありません。その意味において、私は葛西君をここへ呼んで質問できないのがはなはだ残念でありますけれども、そんなわけで、きょうは残念ながら私の関連質問をこれで終わることにいたします。
  68. 田口長治郎

    ○田口委員長 これにて内閣提出社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案に対する質疑は終了いたしました。     —————————————
  69. 田口長治郎

    ○田口委員長 次に、本案を討論に付するのでありますが、別に申し出もありませんので、直ちに採決いたしたいと存じます。御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  70. 田口長治郎

    ○田口委員長 御異議なしと認め、そのように決します。  内閣提出社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案について採決いたしま。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  71. 田口長治郎

    ○田口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  72. 田口長治郎

    ○田口委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
  73. 田口長治郎

    ○田口委員長 この際、地崎宇三郎君、長谷川保君及び本島百合子君より、社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案に対し附帯決議を付すべしとの動議が提出されておりますので、その趣旨の説明を求めます。地崎
  74. 地崎宇三郎

    ○地崎委員 私は、自民党、社会党及び比社党三派共同提案にかかる社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案に対し、附帯決議を付するの動議を提出いたします。  案文を朗読いたします。     社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案においては、出資資金運用部資金等とをもってその貸付原資としているが、これをもってしては将来運営に支障を来たすおそれなしとしないので今後政府は更に本会に財政的に助成をして運営に支障なからしむるべきである。 以上であります。何とぞ委員各位の御賛成をお願いいたします。
  75. 田口長治郎

    ○田口委員長 本動議について採決いたします。  本動議のごとく決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  76. 田口長治郎

    ○田口委員長 起立総員。よって、本案については地崎宇三郎君、長谷川保君及び木馬百合子君提出の動議ごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、小林厚生大臣より発言を求められておりますので、これを許します。小林厚生大臣
  77. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまの御趣旨はごもっともでありますので、これを尊重して善処したいと思います。     —————————————
  78. 田口長治郎

    ○田口委員長 ただいま議決いたしました本案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ昔あり〕
  79. 田口長治郎

    ○田口委員長 御異議なしと認め、そのように決します。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  80. 田口長治郎

    ○田口委員長 次に、厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。山田耻目君。
  81. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 それでは公害の問題につきまして質問をいたしたいのでございますが、数回にわたりまして質問の用意を求められたのでありますが、ようやく今日いたすことになったのでありますが、関係各位にたいへん御迷惑をおかけいたしました。  最近、日本政府の指導される経済成長政策あるいは新産業都市、あるいは治山序工業都市の整備などによりまして、炭業公害が非常に顕著になってまいりました。しかもこうした産業公害は不特定多数の原因をつくる人々から、不特定多数の多くの国民各位に対して、健康上の問題あるいは財産上の侵害、幾つか憂慮すべき事態が起こり始めつつございますし、それだけでなくて、産業対産業の侵害、こういうものも日立ち始めてまいりました。一般には大気汚染等を中心といたしまして、非常によごれた空気というものがだんだんとその度合いを深くしてまいっておりますし、国民の健康管理の上からもゆゆしき問題だと思います。これらに対しまして、国民の健康管理行政の上で主体的な行政をなさっておられます厚生大臣として、こうした公害が非常に強くなってきた原因について一体どのようにお考えになっているのであろうか、しかも具体的な施策対策についてはどのようなことをお考えになっているのだろうか、これらについてまず冒頭にお伺いをいたしたいと思います。
  82. 小林武治

    小林国務大臣 現在の公害と称するものは、主として産業の急激な発展、一言にして言えばこういうことに尽きていると思うのでありまして、問題としましては、要するに産業の発展と生活の保全、この調和をどこに置くか、こういうことが一番大きな問題でありまして、私ども厚生省としては、この問題は加害者と被害者があるわけでありまして、加害者というのは工場関係の役所が、被害者を代表するものは私ども厚生省が、その被害の防止あるいは被害に対する救済、こういうことを考えなければならぬというふうに思うのでありまして、産業の成長が非常に急激であったために公害に対する関心なり防止方策というものが非常におくれている、また極端に言えばあるいはない、こう言ってもいいくらい非常なアンバランスが生じているのでありまして、ちょうど石炭産業について言えば、鉱山の保安と生産、これをどういうふうに調整するか、この問題が産業と人間の生活との保全調和、こういう非常にむずかしい問題になっておるのでありまして、産業は興さなければならぬ、しかも採算がとれなければならぬ、こういうことで、この問題は、公害防止の問題に非常に大きな費用が要る。したがって、これをそのままかければ産業が成り立たない、こういうふうな非常なむずかしい問題があるのでありまして、最近ようやく公害問題というものが非常にやかましい問題になりまして、私どももこれに対していろいろの考え方をまとめておるのでありまして、来年度初めて厚生省にも公害課というものができる。また私どもは、公害の原因あるいは人体に対する影響、あるいはいろいろの汚染度、こういうふうな基礎的な調査をするために公害研究所もつくりたい、こういうことでいま考えておるのでございます。いずれにいたしましても、一番問題になるのはむろん動植物に対する害、あるいは産業に対する害であります。しかし私どもとしては最優先的に人体に対する害、こういうものを考えて防止したいと思っております。おくれてはおりますが、来年度等におきましてはある程度の予算もとって、これに対する対策を十分確立していきたい、現在も御案内のように公害防止の法律はばい煙の防止、あるいは水質の汚濁の防止、あるいは工場の排水の規制、こういうような三つの法律があることはありますが、その機能が十分発揮されておらない。またこれによれば、大体地域を指定してこれを実行するのでありますが、その指定区域もきわめてまだ不十分であるという状態でありまして、公害問題は政府としても早急に、おくれた問題として最も緊要な態度をもってこれに臨まなければならぬ、こういうふうに考えております。
  83. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大臣の御答弁は非常に日本の産業構造なりあるいは経済施策というものが急激にふくらんできたために、公害の対策が追いついていないし、そのために多くの被害が起こっていることは認められるが、しかし総括的にいえば、そうして急激にふくれ上がってきた日本の産業の実態に即応して、国民の利益、健康を守っていく、公害に対する具体的な対策なり諸施策は、今日はほとんど見るべきものがない、しかしこれからはそういうものについて厚生省にも公害課などを設けて具体的に進めてまいるようにいたしたいという、将来にわたっての希望の施策が述べられたものだと、一応この段階では理解をしておきます。にはほとんど見るべきものがない、まあこういうことに尽きておると私は思っております。  そこで、きょうは厚生、運輸、水産庁と通産省、三省一庁の方においでを願っておりますので、もう少し今日の公害の実態について御質問をいたしてまいりたいと思います。  その第一は、大気汚染の問題についてでありますが、資料を見ますと、東京におけるスモッグが、昭和二十年は年間二十一日あった、昭和三十五年は約七十日スモッグがかかっておる。大阪は三十二年が百日で三十三年が百三十日、しかもスモッグの時間がおおむね二時間から十九時間の長きにわたっておる、こういうふうに資料が大気汚染の状態を示しておりますが、そのほかに四日市をはじめ多くの工業地帯には、これに負けないような大気の汚染が目立ってきておりますが、これらに対して、一体今日どのようにばい煙規制法が役割りを果たしていっておるのだろうか。ばい煙規制法をおきめになりましたときに附帯決議として、中小企業に対する助成の措置、あるいは自動車の排ガスについての具体的な措置等も懸案事項として決議されておりますので、これらがその後一体どのように行政施策の面で解決をされるべく努力されておるのか、こういうことについてまずお伺いしてみたいと思います。
  84. 舘林宣男

    舘林政府委員 ばい煙の排出の規制等に関する法律は、昭和三十七年五月四日に成立されたわけでございます。この法律に基づきまして、たとえて申しますれば、東京都あたりが地域指定を受け、実際に各種の施設から出てまいります煙の最に対する規制が行なわれましたのは、昨年の九月からでございます。しかも既存の施設につきましてはあの法律に基づきまして二年間の猶予期間がございまして、新設の施設につきましては定められた規制の基準、たとえて申しますれば煙突の排出口における〇・二二%というような排出量というような基準は新しい施設に対しての強制力を持つわけでございますので、この法律ができまして直ちにその効果があらわれるという点は、ややおくれる点があるかと思います。それからやはりこの法律に基づきまして、いわゆるスモッグ警報を出す基準となる通達を昨年秋に出したわけでございます。これに基づきましてスモッグがやや激しくなりましたときにそれ以上ばい煙あるいは有毒ガス等の排出が多くならないような勧告を都道府県知事がそれらの排出の施設を持った者に出す条項があの法律にございますが、そのような勧告というか、警告といいますか、そういうものを出す基準となる考え方といいますか、そういう科学的な基準を昨年の秋ようやく私ども通達いたしたわけでございます。そのような意味合いでこの法律の効力を発します期間がややおくれた感はございますが、昨年の暮れからことしにかけまして、この冬場が最もスモッグの発生の多い時期でございます。わが国のほとんど多くの地域がそうでございます。四日市は夏でございますが、東京、大阪等はそのような地域でございますが、気象条件等も幸いいたしまして、ことしは昨年に比べてスモッグといわれる状態になりました日数は、はるかに少なくなっております。これは直ちに法律が有効になったとばかりは申せませんが、結果的には前年に比べまして非常に少なくなってきております。
  85. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ばい煙規制、排出基準の制定などありまして、だいぶんきれいになってきたとおっしゃっておるのでありますが、最近は目に見えない大気のよごれということがいわれておるのです。いまあなたがおっしゃっておるのは目に見える大気のよごれが減ってきたというお話なんですが、私は特に運輸省の関係の力にお伺いをしたいと思うのでありますけれども、ばい煙焼制法がきまりましたときに、排ガス、騒音の対策を確立するというふうに附帯決議がされておりますし、しかも最近の自動車の増大等を資料で見ますと、このばい煙排出の規制に関する法律ができましたのが三十七年六月の法律第百四十六号でありますが、三十七年から三十八年にかけまして東京都でも十万台近いもがふえてきております。しかも、これはアメリカの統計でございますけれども、燃料重量当たり大体四%から七%の損失率がありまして、これが一酸化炭素なり炭化水素なりあるいは酸化窒素を排出しておる。しかも統計を見ますと、大体一日千台で猛毒といわれる一酸化炭素が三・二トンも排出されておる。東京のように約百万台近い自動車がおりますと、一日に猛毒である一酸化炭素を排出するのは大体三千二百トンぐらいになるのじゃないだろうか。これは口に見える大気の汚染ではございませんけれども、人体に及ぼす影響というものははかり知れないものがある。ばい煙規制法ができ上がったから空気はあまりよごれていないように思うとおっしゃるが、しかし質はそのように低下してきておる。しかも日本の石油あるいは油類というものはほとんど中近東産でありまして、中にはかなり多くの硫黄分を含んでおる。その意味ではアメリカあたりの統計よりははるかに日本の排気ガスというものは量が多いと判断されなくてはなりません。ですから私が統計的に申し上げた百万台で三千二百トシの一酸化炭素を出しておるというよりももっと多いということになるわけであります。これらについて一体運輸省は、あの附帯決議で排ガスについてその対策の具体的な確立ということがなされておるにかかわらず、今日までどういう施策が講ぜられておるのか、お伺いしておきます。
  86. 宮田康久

    ○宮田説明員 いま先生のお話の中にありましたような燃料の質的な改善というようなことも非常に大切な事項だと思います。また実際に自動車の排気が大気汚染に占めております内容につきましては、厚生省その他の筋がいろいろお調べになっておりますが、運輸省といたしましては、自動車の排気の中の有害ガス及びばい煙の排出状況をいろいろ試験をしてみますと、やはりエンジンの整備状態の不良の場合が極端に増加するのでありまして、整備の徹底が必要であろうということが一点でございます。もう一点は、やはりこの排気ガス中の有害ガス、ばい煙といいますものは運転の状態、と申しますと、急加速をいたします場合、あるいは急にブレーキをかけます場合、あるいはトラック等におきまして非常に過積載をしておるというような場合には、非常に多量に排出されるわけであります。したがって、こういうような車両の適正な使用ということがやはり問題になります。  それにつきましていま具体的にどういうような対策をしてきたかというお話でございますけれども、道路運送車両法には、自動車を走行いたします場合には、多量にばい煙とか有毒なガスを出さないような事の状態にしておかなければならないということを以前から焼制しておりましたけれども、いまのお話のようなことで、また整備の内容によりましてはこれが量的に非常に違うわけです。したがいまして、昨年の国会におきまして車両法の改正をお願いいたしまして、定期点検整備の義務づけを実施いたしました。定期点検を確実に実施していただきますことによって、有害ガスの程度を極力下げようという意図のもとにその点の改正をいたしました。なお道路交通法も昨年やはり改正をいたしまして、自動車の装置を十分整備して、あるいは運転に注意をして他人に迷惑をかけないように、多量のばい煙とかあるいは悪臭のガスを出さないように、運転をさせ、また運転をしなければならないというような道路交通法上の規定も昨年改正をいたしました。これは警察庁の所掌でございますが、特に悪質の者についての取り締まりを強化するということを警察のほうでいたしております。  さらに、これは世界のどこの国でも問題にされていることでございますけれども、基本的に究明をいたしまして、この大気汚染の自動車に関する防止対策を進めますためには、やはり基礎的な研究を促進する必要がございますので、厚生省その他各省御連絡のもとに、私どもの技術研究所において基礎的な掘り下げをいま実施しております。なお運輸省といたしましては、委託研究費等によりまして、大学の研究室あるいは民間の研究機関等にも基礎的に排気防止の方法等につきましての委託研究費を出しまして、研究を促進しております。
  87. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 たいへんな猛毒がたくさん出ておることはわかっておるけれども、車両の点検だとか目測だとか、あるいは道路運送車両法を改正してやるとか、こんなことが抜本的な排気ガスに対する対策ではないことは御存じのはずだと私は思うのでございますけれども、ガソリンから出てくる排気ガスが六五%、エンジンから出るものが三五%というのが国際的にきちんといわれておることです。さらに日本の場合にはそれにかてて加えて、硫黄分の非常に多い中近東の油を使っておる。だからそういう非常にマイナスの部分を多く内蔵しておる日本の排ガス、一酸化炭素の対策というものが、おっしゃっているような事柄で解決できるものだとは私は思いません。この点はやはり公害に対するものの考え方が少しおかしくなっているのではないか。たとえば、ばい煙の規制に関する法律にいたしましても、水質保全の法律にいたしましても、それ自身が持っているのは、いわゆる加害者と被害者が非常に明らかであるから、それに対して司法上の損害賠償請求権であるとか、妨害排除の請求権であるとかいうものが前提にありまして、しかも調停なり仲裁という和解の制度を前提に持ちながら、この法律は運用されているわけです。百万台の自動車が東京都の一千万近い人たちに対して与えるそうした肉体的あるいは幾つかの精神的な障害というものが、あまりにも不特定多数の人によってつくり上げられていっておるところに、あなた方が抜本的な対策を立てることができない原因があるのではないか、この原因というものをもっと究明されていきませんと、私は被害者に対する運輸省としての抜本的な対策が立てられないのではないかという気がしてならないのですが、この点ひとつもっと突っ込んで、差しさわりがあってもいいと思いますから、お話を願いたいというのが一点であります。  いま一つは、ばい煙規制の法律ができましたときに、排ガスに対する検査といいますか、そういうものを具体的に促進していきますために、ガス分析自動記録計というものを備えつけるようになっているはずです。それから自動測定記録計というものも備えつけるようになっておる。この予算を組んでおったはずですが、これは一体どのように今日なっておるのか。その点を二点として、含めて御答弁いただきたいと思います。
  88. 宮田康久

    ○宮田説明員 前半のほうが私どものほうの所掌だと思いますので、前半につきまして、まず御説明申し上げます。  お話のとおり、私どもも自動車の急激な増加に対しまして、特に先ほどお話がありましたように、ディーゼル自動車のばい煙と申しますものは、有害性については御承知のとおり非常に少ないわけでありまして、たとえばプロパンを使っておりますが、プロパンについても非常にLPGは有毒性が少ない。やはり一番最終的に残りますものは、ガソリン自動車のガソリンの燃焼に対する排気ガスの有毒性をいかにして減らすかということが一番問題であります。その点で先ほど御説明が足りませんでしたが、私どもの研究所でいま研究しておりますものも、整備の状態によってどういうように排気ガスの有害性が変わってくるか、一酸化炭素その他のパーセンテージが変わってくるか、その究明によりましてはっきりいたしますれば、整備の基準等についてもその辺の規制ができますし、さらに運転の操作によってどう変わってくるものかあるいは過積載によってどう変わってくるものか、その究明によりまして取り締まり等の対策もいろいろできてまいります。それからさらにいま問題になっておりますのは、簡便なる検査方法の問題、実際に取り締まりを実行いたすといたしますと、簡便なる検査の方法ないしその装置が必要であります。その点について具体的にどういう装置をつくるのかということにつきまして、いま委託研究費等によって具体的な開発をしております。そういうようなことで、実際に具体的に実施いたします点についてはそういうような研究を実施しておりますが、さらに最終的に、これはアメリカ等でもいろいろ研究されておりますけれども、排気ガスそれ自体をもう一度再燃焼するというような方法によりまして、一酸化炭素その他を極力減らすという方法もあるわけです。ただ現状の段階におきましては、わが国においても研究の実施がされておりますけれども、実用的に価格の面、耐久性の血、その他から考えまして、まだ実用化の段階になっていないわけでございまして、実用的に非常に廉価のものができてまいりますれば、そういうものの使用等によって最終的にそういう点が解決されていくということは考えられます。
  89. 舘林宣男

    舘林政府委員 この際、第二点のことを申し上げる前に、第一点にも関連して申し上げておきたいと思いますが、観測の面におきましても、ただいま山田先生御指摘の、酸化炭素の測定というのは非常におくれておるわけでございます。他の面のばい煙あるいはばい煙に含まれて出てまいります有毒ガス中特に問題視されます亜硫酸ガス等につきましては、かなり全国各地で詳しい調査をいたしておりまして、数年来全国的に相当な資料が出てまいっております。一酸化炭素についての調査はかなりおくれておりまして、今日ある程度やっておりますのは、東京、大阪ぐらいのものでございます。それらの都市におきましても、必ずしも十分な調査ではございませんで、ごく局地的な一時的な調査にとどまっておるわけでございまして、今後この方面を強化してまいる必要を感じておるわけでございます。地方におきますこういう公害の有害ガス調査のためのただいま先生御指摘のございました自動記録計のようなものを都道府県に多数設置させるために、明年度は三分の一の補助金で約二千三百万日予算を計上いたしてございます。これによりますと、全体で約七千万円程度の機械が全国の衛生研究所に設置されますから、御指摘のような自動記録計もこの中に含まれておりますので、相当な観測網ができるものと期待いたしております。
  90. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 研究が不十分だということと、予算が不十分だということで、排ガスに対する排除の措置ができないというお話でございますか、一番この問題が進んでいるのは欧米諸国でしょうけれども、特に排ガスの再燃焼装置といいますか、こうした機械設備については白金アルミナ等を使ってやることはかなり科学的にも立証されておりますし、しかもその機械ができております。これはアメリカの専売特許となって、国際的なそれぞれの国に使用されておる。ただエンジン部門に備えつけるのが一基当たり三十万程度の金である、そのためにそういう機械設備を日本に入れることができないのかどうか。しかし上三五%の排ガスを出していくエシジン部門に取りつける機械は七千円で済むはずなんですね。こういうことすら日本としてはまだ研究段階であるのか、それとも特許権というものがアメリカにあるのだから、結局エンジン部門ぐらいはアメリカの特許を受けて装置をしていくというふうなことが、なぜ今日考えられないのであろうか、これらについて、あなた方は問題点を指摘なさることは非常に巧みだけれども、具体的な施策としてこれを実行していくということについては非常にずるい。やはり人間の生命なり健康というものについては、加害者がだれであるかということが不明確なゆえに放置されるというふうなことは、私は許されないと思うのです。それらについて、私はもう一度お答えをいただきたいと思うのです。
  91. 宮田康久

    ○宮田説明員 いま先生のお話のありましたとおり、全面的な白金触媒等を使いました装置は相当高額になりまして、いまの段階ではすぐ国内の自動車すべてにつけさせる、あるいは東京等一番問題になっております地域の車に全部つけさせるという段階ではまだないわけでありますけれども、いまのお話の中のエンジンのシリンダーから漏れてまいりますいわゆるブロー・バイ・ガスという問題でありますが、そのブロー・バイ・ガスは全体のほぼ二五%程度のものと考えております。これに対しての規制だけ早く進めたらいいのじゃないかというお話だと思います。私どもも実はその点をよく検討しておりますが、いま世界の国でブロー・バイ・ガスの装置を規制しておりますのは、アメリカのロサンゼルスの周辺の州につきまして規制をしております。これはもう三、四年になると思いますけれども、規制をしております。それだけの世界的な例でございます。ただ私どもといたしまして、やはり規制をいたしますということは、逆に申しますとそれだけ国民の負担がふえるわけでありまして、その点やはり自動車の排気の有害性が大気汚染の中でどの程度の地位を占めているのか、その実績を明確にしていただきますれば、私どものほうとしてはそういう強制をするということに踏み切れるわけでございます。先ほどお話のありましたように、国民に強制いたします場合にはやはりその辺のデータの提供をぜひしていただかなければなりませんので、各省ともお話し合いをしておるわけであります。さらに、ロサンゼルスは車が三百三十万台くらいなんです。日本の東京におきましてはいま九十万台ぐらいでございますけれども、これはオートバイ、スクーターでありますとか、軽三、四輪の三十万台を含めての九十万台でありまして、まだロサンゼルスに比べますと、エンジンの排気量等から換算いたしますと、ほぼ六分の一程度の自動車の量だと思います。したがって、私どもといたしましては、その辺の実態を厚生省等の数字でよくお調べいただいて、国民の納得のもとにやっていきたい。いま七千円というお話でございますけれども、やはり軽三輪、四輪、あるいはオートバイ、スクーターは非常に中小企業その他国民の足になっている車でございますので、すべてに強制するといたしますれば、その辺を十分考えてやらなくちゃならぬと思っております。
  92. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 いろいろ負担を負わせることがなかなか過酷であるから、実施の面に障害がある、あるいは大気汚染の中で一般的なじんあい汚染と排気ガスによる汚染がどういう占め方をしておるかということが不明確であるから、そういうことがこれを放任していく理由には私はならぬと思うのです。その点、私はやはりその衝に当てられておる行政担当者がもっと人命を尊重していこうとのせ貴任官に欠けておるのが、おっしゃっているような答弁になるとおもうのです。最近の熱エネルギーの変化というものが石炭から油に変ってきたということは、だれだって知っているわけですよ。それだけに、大気の汚染が目に見えない汚染度を高めていっておるということは、常識的にいえると思うのです。いわゆる熱エネルギーの変化に伴って、どういうふうに大気汚染が変化をしていくかということを絶えず監視をし、調査をするのは、あなた方の責任でしょう。そういうことすら放置をされておったのでは、私はまじめに国民の健康管理をするためには必要な施策が打ち出されるものとはやはり思いません。これらについて十分これから責任ある御処置をとっていただくようにお願いして、いまの質問の段階ではこれで終わっておきたいと思います。  水質汚濁の問題について質問をいたしたいと思いますが、水産庁の方、お願いいたします。  最近、新産都市なり臨海工業地帯がずっと、目をみはるような速度でできつつあります。これは政府のいわゆる大資本中心の傾向投資方式のあらわれでございますが、しかも、申し上げましたように、熱エネルギーの変化というものがかなり石油廃液を海に流し込むようになった。片側では石油コンビナート・システムが非常な速度で進んできておる。こういうことが非常に海水をよごす結果になりまして、いえば産業対産業の被害が非常に突き進んできておる。こういう事情の中でどういうふうに水産資源に影響を及ぼしてきておるか。それと同時に零細漁民の人たちに対してどういう権利の侵害を及ぼしておるか。これらについて今日の実情をひとつお話しいただきたいと思います。
  93. 森沢基吉

    ○森沢説明員 お答えいたします。  いま山田先生おっしゃいましたように、最近臨海工業地帯の開発等に伴いまして、特に内水面と沿岸地域におきます漁業関係の被害が統計上見ましても毎年増加の傾向にございます。都道府県の報告によりましても、三十三年に比べまして三十七年は一千件をこえる被害報告が寄せられております。その原因はいろいろございますけれども、特に一番大きなものは工場、事業場から出されます廃液、それで水産動植物の生息環境に非常に悪影響を及ぼしている。これがやはり一番大きな原因でございます。そのほか、工場、事業場ではありませんが、船舶廃液の問題、あるいは海面によるし尿の投棄問題、あるいは農薬の問題、いろいろございますが、最も被害を明瞭に受けますものは、やはり油等によりましてノリの養殖地帯がやられる。一昨年も千葉県等で非常に大きな被害があったようでございますが、というものと、やはりそういう汚濁に対して逃げることが比較的しにくいような底優性の生物、おもに員数でございますが、こういうものに対して被害があらわれておるようでございます。魚類に対しましては、現にそういう汚濁で斃死をいたしますほかに、そこで行なわれております産卵なり稚魚の生育に被害を与える、あるいは沿岸に魚類が参りますのをある程度魚類がそれを避けまして沿岸に来ないというふうな待避の問題もございますか、これはなかなか正確にはどの程度であるかということはつかみにくい本質を持っております。いずれにいたしましてもそういう実態があらわれております。水産庁といたしましては、現在沿岸漁業の構造改善対策事業を軸といたしまして、都道府県知事の計画をされます沿岸振興事業に対して融資なり助成なりを行ないつつございますが、特に地方の農政局等を通じまして、新産業都市あるいは鉱工業整備地域、そういうものの計画が立ちます場合には、その県の漁業の構造改善事業計画と緊密に連携をとると申しますか調整をとっていただきまして、特に工場立地にあたりまして、用水、排水、そういうものを計画の段階で漁業の再生産に支障を来たさないように十分調整をしていただくというふうな指導を行なっております。  さらに資源保護を積極的に行ないます方策といたしましては、たとえば瀬戸内海等におきましては、栽培漁業センターを設けまして、減衰をしていきます高級魚の資源の増殖をはかるとか、あるいは人工ふ化、また、資源保護法という法律がございますが、それによる保護水面の決定、あるいは都道府県に指導員の設置、そういうふうな一連の事業を通じまして他産業の発展と十分調和を保ちつつ、さっき申しましたような被害で漁業者にしわ寄せされる面が少なくなるように極力努力をいたしております。
  94. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 おっしゃっておることはわかるのですけれども、実際、工場誘致などでそれぞれ都道府県で海水をよごさないように除外装置をする。しかも、そういうことが具体的には期待できるような事情になってない。そこに問題が発生しておるわけなんです。だから、おっしゃっておるように、ノリの養殖の問題、最近はやりの養殖真珠の問題、カキの問題、魚介類の問題、こういうものが非常に圧迫をされておるということは間違いない群雲なんです。ですから、こういうことに対して被害者の側の救済措置というものは、私法上の損害賠償請求権に基づくものと調停、仲裁、和解の制度があの中につくられておりますが、これを発動されて措置をされていく以外に方法はない。しかし、その私法上の損害賠償請求権につきましても、決して完全なものではないわけなんです。そこにどうしても産業対産業のかみ合っていく中で、資本力の乏しい零細企業である農漁村というものはだんだんと食われていってしまうのが実情なんですから、このことに対してもっと抜本的な除外装置の強い筋を通していく以外には救済の道はないと考えられるわけです。それらについて今日まで抜本的な施策の見るべきものがない。この点についていま一点、ひとつ詰めて御答弁をいただきたいわけです。  それから第二点口に、町間もありませんからできるだけ詰めますが、最近のこの種の公害というものは、いわゆる加害者もあるいは被害者もかなりはっきりしておるので私法上の損害賠償請求権ができますけれども、最近東京湾なり、あるいはこれは千葉を含めてそうでありますが、ずっと工場地帯ができております。沿岸の魚はさしみで食べるとにおいを感じないけれども、焼いたり煮て食べると石油のにおいを感ずるという苦情が非常に多いのです。このことが国民の健康管理の上からも決して適当でないと思われるし、そういうふうに産業対産業の及ぼしてくる地域住民の上にそういう形であらわれてきておるという実態を正しく承知していくならば、除外装置についても多角的に抜本的な対策を講ずる段階にきておるのではないかということが海水汚濁の面でも言えますので、その点を含めてひとつ御答弁をいただきたいと思います。
  95. 森沢基吉

    ○森沢説明員 漁業に対する公害の除去の問題でございますが、第一点といたしましては、御承知の水質関係の二法がございます。経済企画庁が主管官庁になりまして運用されておりますが、漁業の立場から非常に紛争、被害の起こっております水域、こういうものを極力、毎年度の調査基本計画の中で基準を設定すべく調査水域が経済企画庁できめられる場合に、水産庁としても実態を十分詰めておきまして、なるべくそういう漁民の被害を受けておる地域を優先的に調査地域に取り上げる、こういうふうな方向で経済企画庁に要請をする努力を毎年続けておるわけでございます。そのためには、事前に被害を及ぼしておる水域などを水産庁独自におきましてもみずから調査し、あるいは研究機関等に委託して調査をやる。これは基本的にやはり水質二法をまずこの水域に極力早く適用して、工場排水法によります主務大臣の公害除去の施設についての権限が発動できるような方向に持っていくべきだろう、こういうように考えております。  もう一つ、漁業の面におきましても、この水質二法で除外を極力するほかに、積極的に公害から逃げると申しますか、公害を防止する方策を考える。ノリにつきましては、たとえば技術の振興によりまして、なるべく沖合いヘノリの養殖施設を出しまして、都市排水なり工場排水の被害の少ないところで養殖のできるような技術を確立する。そういう場合にその施設に対する——あるいは多少風浪の高い場所にございますので防波施設等を講じまして、水産業として積極的に公害の起こるおそれの少ないところへ漁業を移す。また半面魚類の養殖等につきましては人口ふ化等ができるものにつきまして技術が進んでおりますが、単に海面でやるのみでなく内水面の養殖と同じように陸上でもできるようにする。そういうふうな水産業における積極的な考え方を打ち出しまして、極力公害の被害を少なくするという両面を考えてやっております。
  96. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 問題点は非常にはっきりしてくるわけですね。これは運輸省の場合でも厚生省の場合でもあるいは水産庁の場合でも通帳省の場合でもそうでしょうけれども、この提起される問題は明確に出るし、しかもそれを客観的に分析することも可能であるけれども、これに対する具体的な対策というものが政治施薬の中に十分あらわれてこない。指摘はできるけれども実行に幾つかの困難性がある。この問題につきましては、これを解決するのは政治力以外にはないわけです。国または地方自治体がその責めを負いながら推進していく以外にはない。それが今日、困ったという結論が出、むずかしいという結論は出るけれども、なぜ実施できないのか。昨年暮れ行管から指摘をされておりますあの勧告書を見ましても、明らかにその中には問題点が明確に示されています。特に日本の公害問題につきましては、七省三庁に分かれましてそれぞれのなわ張りの中で問題を解決されようとするところに私は本質的な問題があるのではないだろうか、ここに強力な行政措置が発動できない原因があるんじゃないだろうかということに気がつくわけです。特に、結果としてそれが人命の軽視になったりあるいは疾病の起る原因をほおかむりをして逃げてみたり、与える多くの国民の不愉快なり損害なりというものに対してほおかむりをしてみたりするところにはどういう結論が出るかといったら、私は政治的な怠慢という結論しか出ないと思う。これらについては私は、きょうお呼びしておるのはわずかに一庁三省の方々でありますし、全般的なことについて質問できないのを残念に思いますけれども、少なくともあなた方の気持ちの中になわ張り的な気持ちがあるんじゃないかという気持がどうしても私は消えうせませんので、それらについて少し質問に入っていきたいと思います。  三十年の八月二日に厚生省から提示されました公害防止に関する法律案要綱というものがございまして、この法律案要綱ばかなり公害防止に関する積極的な意欲が見られたわけであります。ところが九月二十三日から二四の審議を経たのみで、通産省のほうから就業実施に伴う公害の防止等に関する法律案というのが逆に提起されております。そうしてこの法案はついに日の日を見てこないのでありますけれども、一体こうしたいきさつはどういう形の中から生まれてきたのか、通産省、厚生省の責任者の方から話を聞かしていただきたいと思います。
  97. 舘林宣男

    舘林政府委員 お話にございますように、昭和三十年に公害に関する法律案を考えまして提出の運びにまで至ったわけでございます。今日大気の汚濁防止法にいたしましても、水質保全法にいたしましても、関係各省庁が非常に多数あるように、その当時からすでに公害問題は関係する各省庁が非常に多いわけでございますが、やはりいま少し広い範囲を包括いたしまして全体を包む法案を考えたらどうかということで、その後いろいろ検討の上で、今日の水質関係二法並びに大気汚染の法律になったわけです。ただ、それらができましたのは非常におくれまして、ことに大気汚染防止法じゃ非常におくれまして、ようやく三十七年に成立を見たという点はまことに残念でございますが、水質汚濁防止法のほうはかなり早くにできておるわけでございます。
  98. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 答弁として聞けるようなお答えではないので、私も不満でありますが、つけ加えて申しますと、同じく三十年の十二月十七日に厚生省のほうから生活環境汚染防止法案というものが用意をされて出ております。これも特にこの法律の中には、国民の健康な生活環境の造成、公害による衛生保健上の障害排除、生活環境の汚染防止施策、こういう三つの目的を明らかにしてこの法律案というものが内部で意見調整に入られておりますけれども、これも三回目の会合で大体打ち切られていっております。そうして、それらが時期尚早ということで葬られていっておるわけであります。この中で運輸省の排ガスについては、さっきから申し上げたような幾つかの問題点が提起される。あるいは通産省のほうから、国民の健康ということもそうだけれども、企業の防衛ということがなおざりにされてはならないということが提起されておる。経営者団体のほうからは、やはり利益が中心ということでものを考えられていっておる。この種の公害施策というものは企業に対してはマイナス投資であるという、企業中心の気持ちというものか非常に強く前面に出てきておる。そしてついにこの法律というものも日の目を見ることなく消されていっておるわけです。三十五年の九月に公害防止調査会というものが日本環境衛生協会長の浜口さん外十九名によって発足をいたしておりますが、この問題につきましてもおおむね主管省として厚生省というものが主管の任を負うべきであるという立場から、施策というものがかなり詳しく明らかにされておりますか、これも打ち消されていっておるのであります。こういうふうにながめてまいりますと、いわゆる国民の健康を守るという立場の施策と、産業の発展というものとの営業上の自由権というものとがそこでかみ合いまして、絶えず問題が葬り去られていく。なわ張り的な根性が前提にあるがゆえに、消されていっておるというふうにしか考えられません。そこで私はやはりこういう経緯をおながめになった上で、今回出されてまいりました行管の画一的な、総合的な公害対策というものの樹立を急がれるという理由になってきたものだと私は思っております。これらについてあなた方の三者の御意見は賛成であるのだろうか、反対であるのだろうか、その態度をひとつお話しいただきたいと思うのです。
  99. 舘林宣男

    舘林政府委員 ただいま山田先生御指摘の点は、厚生省としても非常に強くその必要性を感じておるのでございまして、特に厚生大臣は固い決意を持っておるわけでございます。先ほど来いろいろ御指摘がありますように、この公害問題の解決は大臣が先ほど申されましたとおり、被害者と加害者がございます。国民の立場からすれば、公害の原因となるような有毒原因は少しでも少ないことがいいという気持ちを持つわけでございます。それに対しまして、やはり産業の振興という立場からすれば、その面が強調されれば、産業の発達に支障があるというお気持ちがあろうかと思うのでございまして、そのような面から、従来この施策がややもすれば不十分であったという点は御指摘のとおりかと思って私どもは反省をいたしております。その点何とか打開をする必要がある。これはこのままで放置すれば、わが国の公害はますますひどくなるに違いない。そういう意味合いから、各省の連携をさらに密にする必要があるということで、ただいま総理府のほうにお願いをいたしまして、各省連絡会議のような構成のものを設けていただいてはどうか、こういう努力をいたすつもりでおります。もちろんそのような連絡会議ができましただけでこのような仕事が推進されると思いませんけれども、少なくとも連絡を十分に密にし、それぞれの問題点を提起し合って、解決に協調して誠意を示し、具体策にこれを持っていく努力をする必要があるということは痛感いたしておりま。
  100. 宮田康久

    ○宮田説明員 運輸省といたしましても、いま先生の御指摘のとおりでございまして、各省連絡のもとに、積極的に防止対策を進めていかなければならないと考えております。
  101. 馬郡巌

    ○馬郡説明員 産業公害の問題につきましては、とかく通産省は加害者で、公害問題の解決に積極的でないというようなことが過去におきまして確かにあったやに見受けられますが、私どもといたしましては昨年の四月から産業公害課をつくりまして、積極的にこの公害問題の解決に乗り出していこうというふうに考えてまいりましたが、ほんとうの意味の産業活動というものは、人体の問題はもちろんでございますし、地域住民の福祉との関係がうまく調和されなければ、ほんとうの産業の発展にはならない。むしろこれは積極的な形で解決に向かったほうが、定業自体の発展上からも適当じゃないかというふうな考えから、昨年来仕事をやっておる次第でございます。しかしながら、いま厚生省等からお話がございましたとおり、現状のところは必ずしも満足すべき状態にあるというふうには思いませんが、なおただいま総理府に置かれようとしております各省連絡会議等を通じまして、総合的な解決に進んでまいりたい、こういうふうに考えております。
  102. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 時間がございませんので、できるだけはしょって先を急ぎますが、確かに公害問題につきましては、三庁七省にわたり、それぞれの分野でそれぞれの施策の中で消化をされようとしたので、相互索制も手伝ってうまくできなかった。それが今度総理府に公害対策連絡会議というものが設置をされる。何か聞くところによりますと、二十六、七日の閣議できまるようでありますけれども、やはり、この種の連絡会議ができましても、一体法律的根拠は何か、ただあなた方担当者が集まって単なる連絡会議を開いて打ち合わせをするということは、これは従来もあったことであります。今日までもおやりになっておったのです。それをそういうふうに公害問題がやかましくなってきたから、総理府に連絡会議を置いて調整していくということは、私はことばとしてはいただきかねるというふうな気がいたすわけであります。そのことよりもっと根本に、なぜそんな微温的な施策しかとれないのだろうか、根本に何かある。それは日本の公害に対するものの考え方、公害の概念が不統一なところに問題があるのじゃないか。少なくとも日本の公害は国際水準にも達しておるわけでありますから、少なくとも英法なり、ドイツ、フランス法なりというものをもっと取り込んできて、諸外国では一体どういうふうな基本的な法律公害対策についてつくり上げて、それによって規制しておるかということについて手を染める時期ではないのか。この問題を手がけていきませんと、あなた方が法的な根拠もない連絡会議幾らおやりになったって、三庁七省にまたがってそれぞれのなわ張りでやられようとしておるこれらの対策というものは、決して今日以上の成果をあげるとは私は思いません。いまの日本の国民の各位に対するこの種の保護法というものは、ほとんど見るべきものがないわけであります。憲法二十九条二項でいっている内容にいたしましても、民法一条二項、三項でいっていることにいたしましても、これはきわめて抽象的な事柄でありまして、実定法として多くの役割りを果たすものを持っていないわけです。しかも水質保全法なり廃液の規制に関する法律というのは、私法上の妨害除去請求権と損害補償請求権を基底にした仲介和解のものである。一体何があるのですか。何もないのですよ。何もないのでありますから、そういう今日直面しておる事態で、国民の求めておられるような施策を推進していくためには、どうしてもその種の微温的な連絡会議ではなくて、世界各国のそれぞれの国の法律に見られるように、公害の概念をきちんと整理をして、いわゆる私的ニューサンス、公的ニューサンスという立場を明確にして、その基礎の上に公害基本法というものを打ち立てて、それを軸にして国または地方自治体が積極的な施薬を進めていく。その打ち出し方の中にしか、国民の公害に対する理解を深め、企業に対して適切な制限を加えることは私はできないと思うのです。こういう方向にこれからの施策を打ち出していく気持ちがおありなのかどうか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  103. 舘林宣男

    舘林政府委員 わが国の公害の発生源となります産業の発達は、比較的最近に至って急に飛躍したものでございまして、その意味でわが国の公害対策が諸外国に比べて非常におくれておりますことは、御指摘のとおりでございます。おくればせながらこの公害対策のために、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、工場排水規制法あるいは今回の国会に劇毒物の法律の改正を出すというように、矢つぎばやに法律措置を講じてきたわけでございます。国としての法律措置は、日本はむしろ進んでいると申してもいいかと思います。御承知のように国としての規制は、イギリスに二つの法律がある程度でございまして、他のものはほとんど州の条例といいますか、法律といいますか、そういうものにとどまっておるわけであります。一応国としての法律体系はかなりわが国は進んでおるわけでございますが、外国におきましては、公害問題は前々からやかましいおりから、工場側が自主的に規制をするあるいは学問的に公害問題が相当喧伝されるということから、公害対策措置がかなり講ぜられてまいった状態でございますが、わが国はただいま申しましたように非常に対策がおくれて、ようやく芽を出してまいった現状でございますので、今日の段階では御指摘のとおりかなりおくれておると思います。これは早急にもっと推進し、徹底を期する必要があるわけでございまして、このままで進めば、わが国で一部に指摘されておるような、公害のはなはだしい地域が各地に広がってくる可能性があります。いまの勢いで伸びれば、自動車の排気ガスの害も放置できない状態にますますなってくるに違いないということから、この対策を大いに強化していく必要はあると思います。この点に関しましては各省ともに十分関心の度を払っておりまして、先生御指摘のように、単なる連絡会議だけではもちろんこの施策が推進されるとは思いませんけれども、通産省に産業公害課ができ、厚生省に公害課ができ、また近く将来に公害衛生研究所ができるというように、国の施策も漸次充実してまいり、予算もだいぶふえてまいっておりますので、おくれることのないように努力はいたしてまいりたい、かように思っております。
  104. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 大体最後でありますが、やはり公害対策をお立てになる場合に、一番の基礎になるものについてしっかりした思想統一といいますか概念の統一がなされませんと、あなたが御答弁になっているような、諸外国よりはるかに日本のほうが部分的には進んでいるものがある、国が扱うものとしては——こういう御答弁になってしまうわけです。私は水質保全法の問題にしましてもばい煙規制法の問題にいたしましても、これは諸外国でいう公害の概念から見たら非常にお粗末なものなんですよ。これは、私が繰り返して言っているように、私法上の和解、調停の法律といえば言えるんじゃないか。あるいは産業の協和を保つための調停的な法律にしかすぎないじゃないか。これは加害者と被害者が非常に明らかになっておる場合のようなときに、この法律というものが役割りを果たしていく。ところが、本来の公害というものは、加害者と被害者が区分けかつかない。非常に不特定多数の人に被害を与えておる。それが産業の営業上の自由権というわがままな姿から出てくる。これを規制をするものは、根本的な基本法というものによって規制をされて、それをもととして具体的な施策が打ち出されていかなくてはならない。ここに私的ニューサンスと公的ニューサンスの概念の違いが出てくるわけです。これがいまの日本の公害対策の中には分離されておりますが、むしろ日本の場合には、私的ニューサンスのほうに重点が置かれてやられておるところに問題があるんです。これをもっと深めて考えていただかなければ、日本の産業発展と付随して起こる公害の問題についての対策が立ちおくれて、国民の生命と権利なり利益を侵害することになってしまうし、その時期は来ておるので、すみやかにそういう基本法の制定をされて、 これを軸に、国または地方自治体とそうして国民とが一緒になって、公害に対する認識を強め、必要な手だてを講じて排除していく、こういう立場になっていかなければ、あなた方がいかに連絡会議をお持ちになってみたって、前提があやふやであれば、私はいい成果をあげることができないという気がするわけです。その公害の概念と公害の米本法の制定についての具体的なあなたの御意見を伺いたいと思います。
  105. 舘林宣男

    舘林政府委員 先生の前段のお話は、御指摘のとおりでございます。法律ができたからといって公害問題は解決するものではないことば、痛感いたしております。たとえて申しますれば、水質汚濁防止関係法律ができましても、隅田川の水はなかなかきれいにならない。それはほんとうにきれいにする意味でございましたら、これは私どものほうの分野に属するものでございますが、下水道の終末処理場をもっともっと充実していけば、工場排水はそちらのほうに流して、きれいにして、流すことができるわけでございます。先ほど御指摘がございましたように、し尿を不法投棄をしておるという実態もあるように私も思います。したがって、そのようなことのないように、下水道に全部入れて処理すれば、今日の隅田川の問題も解決すると思います。私どもとしても、五カ年計画によってそれらの施設の充実をはかってまいる必要があることは痛感しておりますし、また工場の面は、主として通産省あるいはそれらの工場の所管省がやっておられますが、例を私どものほうの分野にとりますと、ごみ焼き場における防じん装置といいますか公害防止装置は、非常に多額の金がかかるわけでございまして、他の機械の全部と同額ぐらいの金がかかるものでございますが、すでに東京においては板橋につくり、最近他の都市においてもそういうものをつくるという機運ができてまいっておりますので、やはり施設側においても、公害に対する責任を漸次感じてきております。これは各分野から公害問題に対する重要性を十分徹底して、排出者に自覚をさせ、そういうものは必ず必要な施設である  要するに低コストでやれば、周囲に障害を与えてもかまわないというような感覚をなくしてもらう。周囲に対して障害を与えないことで施設を設置するという観念、そういうものは必需品である、こういう感覚に変わってもらわなければ困るわけでありますが、このころだいぶそういう風潮に変わってまいりました。ことに四日市等の問題も相当やかましいおりから、漸次産業界においても、防じん、防ガス装置の重要性も考えてきてくれておりますので、全体の施策を、法律だけでなくて、自覚を促し、進めていく機運はできてきておりますが、なお大いに努力をしなければならない。これらの問題の中心になります基本法というものは、私個人としては——これは個人の意見を申し上げるべきではございませんけれども、たいへんけっこうなものだという気持ちは持っております。ただ、これは法律の体系のことでございまして、各省それぞれのお立場もございますし、国の施策の進め方もございまして、従来からは、大気汚染は大気汚染の法律、水質汚濁は水質汚濁の法律、しかもかなり具体的なこまかい分野でございまして、おそらく先生のお考えになっておられるうよな基本は、そもそも公害を防止する基本的な姿勢を織り込んだ、基本理念を織り込んだ法律のようなことをあるいは御指摘かと思いますけれども、今日の段階ではそのようなものはできておらぬわけでございます。将来そういうものでもできれば、たいへん基本となってよろしいかと思うわけであります。
  106. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 これで終わりますが、公害の問題については、非常にむずかしい問題だとも思いますし、しかし、どうしてもやり切っていかなくてはならぬ大事な問題でもありますので、一時間十分そこらでお伺いをしたのでは、まだまだこの問題を浮きぼりさせることばできないと思う。これからまた委員会で、もっと次元が進んでまいりますと、じっくりと煮詰めていって、具体的な施策を明らかにしなくてはならぬと考えております。ただ、あなた方の考えの中に一点ぜひとも改めてもらわなくてはなりませんのは、公害対策というものは、出てきた事柄に対してどう処理をするかというのが公害に対する基本的政策であってはならないのです。公害というのが起こらないような予防措置を講ずるのが、公害の基本的対策でなくてはなりませんので、そういう予防措置を中心に、ふさわしい法をつくり上げていくというのが今日のあなた方の仕事だと思っておりますので、そういう立場で基本法という名前を申し上げましたけれども、そのようにからみ合わせてお含みをいただいて、これからなお一そうの研究を願いたいと思います。  以上でございます。
  107. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会ば来たる二十四日午前十時理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時四十九分散会