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1964-03-18 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年三月十八日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 田中 正巳君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       浦野 幸男君    大坪 保雄君      小宮山重四郎君    竹内 黎一君       地崎宇三郎君    中野 四郎君       西岡 武夫君    西村 英一君       橋本龍太郎君    藤本 孝雄君       松山千惠子君    粟山  秀君       渡邊 良夫君    伊藤よし子君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山口シヅエ君    吉村 吉雄君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君  委員外出席者         厚生事務官         (社会局庶務課         長)      城戸 謙次君         参  考  人         (同和対策審議         会会長)    木村忠二郎君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 三月十八日  委員高田富之辞任につき、その補欠として楢  崎弥之助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  高田富之君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一九号)  厚生関係及び労働関係基本施策に関する問題  (同和対策に関する問題)      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  内閣提出社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。長谷川保君。
  3. 長谷川保

    長谷川(保)委員 御承知のように、最近は公立の社会福祉事業におきましては、設備その他戦後なかなかりっぱなものができてまいりましたが、全国にありまする社会福祉法人、もしくはこの社会福祉事業振興会対象になっておりまする公益法人施設は、すでに戦前、日本の社会事業というものがまだ十分政府に取り上げられておらないころに、惻隠の情にかられて多くの義人が、貧しい方々あるいは人生の行路に行き悩んで翻りまする人々出獄者あるいは教護を要する少年たち、あるいは病人、あるいは保育に欠ける子供たちのために、保育園をつくり、隣保館をつくりということで苦心惨たんをしてやってきたわけであります。したがいまして、その施設も必ずしも十分なものとは言えないものが多いのでありますが、まだ戦前におきましては皇室あるいは慶福会、あるいは三井報恩会、その他の巨大資本が行なっておりまする助成会等々がありまして、それによって施設設備をつくってきたのであります。戦後は共同募金の制度ができて、そういう施設設備に対しましてある程度資金分配はいたしておりますけれども、しかし戦前からのものはずいぶんひどくなってまいりました。それらの多くの義人皆さん方が非常な犠牲を払ってやってまいりました施設も、もう見るにたえないようなものが多く出てまいりました、あるいは危険な設備が出てまいりまました。それに対して、この振興会ができて、そこから融資をするということになってきたのでありますけれども、今日、この資金量ではそれらの施設を更新あるいは拡張し、改良してまいりますのには非常に足りないように思うのであります。  まず第一にお伺いしたいことは、二十九年から三十七年にかけて、参考資料によりますと借り入れ申し込み数千九百三十五件、四十億二千万、これに対しまして貸し付け件数千六十六件、金額で十七億二千三百十五万円、貸し付け件数におきましては五五%、また、貸し付け金額にいたしましては申し込みの四三%を満たしているにすぎないのでありますが、これらの貸し付け件数金額、これがどういうような種類福祉施設融資されておるか、その種類別を承りたいのであります。
  4. 牛丸義留

    牛丸政府委員 二十九年からの累計は非常にむずかしい問題でありまするが、最近の年度といたしましては、昭和三十七年度の借り入れ申し込み貸し付け件数事業種別ごとに申し上げますと、まず生活保護施設につきまして、申し込みが五十九件ございまして、それに対して貸し付けば三十二件、大体五四%程度貸し付け率になっております。金額にいたしまして、申し込み金額は一億八千二百万円に対しまして貸し付け金額は八千八百五十万円、大体四五%くらいの貸し付けの率になっております。この生活保護施設の詳細は、養老の施設、それから救護、医療保護その他になっておりますが、その総計が三十二件でございます。  次は、児童福祉施設でございますが、これは保育養護その他合わせまして百二十四件の申し込みに対しまして、貸し付け件数が七十一件、金額にいたしまして三億一千七百五十万円の申し込み金額に対しまして、貸し付け金額は一億五千四百万円ぐらいの金額になっております。率にいたしまして件数比率が五七、二六%、金額で四八、三%というふうになります。  それから、そのほか身体障害者更生施設十一件の申し込みに対して、貸し付けは九件でございます。金額にいたしまして三千二百九十五万円に対して、貸し付けば二千五百九十五万円。これは大体件数にして八一、八二%、金額にして七八、七六%というふうになっています。  そのほか精薄者授産施設更生授産施設が、五件の申し込みに対して三件の貸し付け金額にして申し込みは千九百五十万円、貸し付け金額は九百五十万円。  そのほか更生保護施設公益質屋、それから社会福祉事業法による施設及び医療その他の厚生施設、総計いたしまして全体で二百二十七件の申し込み件数に対しまして貸し付けが百二十八件、その比率は五六、一四%でございまして、金額にいたしまして申し込みが六億七千四百四十六万円、貸し付け金額が三億一百九十六万円、その比率四四、七七%。これは三十七年度の事業種別実績であります。
  5. 長谷川保

    長谷川(保)委員 児童福祉施設の中で保育所あるいは養護施設精薄施設貸し付けられましたのはどのくらいでございましょうか、別々にお聞かせ願います。
  6. 牛丸義留

    牛丸政府委員 保育所につきましては、申し込み件数が四十六件でございまして、貸し付け件数は二十二件。比率からいいますと四七、八三%、金額にいたしまして申し込み金額が七千五百二十六万四千円、それに対しまして貸し付け金額は二千五百十二万円、三三、三八%。  それから養護施設は、申し込みが四十四件でございまして、貸し付けは二十七件、六一、三六%、金額にいたしまして申し込みが一億一千三百四十八万円、貸し付け金額が六千百七万円、パーセントで五三、八二%ということになっております。  それから精薄には、申し込み件数が十四件でございまして、それに貸し付けが十件、金額申し込みが三千七百万、それに対しまして貸し付けが二千八百万というふうになっております。
  7. 長谷川保

    長谷川(保)委員 乳児院母子寮数字はわかりますか。
  8. 牛丸義留

    牛丸政府委員 乳児院は、申し込みが二件ございまして、貸し付けはございません。  母子寮資料はちょっと持ってきておりませんから、あとで御報告申し上げます。
  9. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いただきました資料によりますと、貸し付けの一件当たり平均額は百六十一万六千円というようになっております。これはもっとも二十九年度からの平均のようであります。百六十一万というような数字、いま承ったところを見まして、最近は種別によってはもっと多いものもあるようでありますが、いずれにいたしましても百六十万程度のも一のでは、今日では施設をつくるとすれば何もできないのでありますけれども査定等の問題、一般貸し付けを申し込んできておりまする福祉施設のほうでは、これらの金額に対してはどういうような見解を持っておりましょうか。私どもが見ますと非常に少ない、これでは何もできないではないか。形だけは貸せるという形になっておっても、はたして実効があがっているであろうかということを心配するのでございますけれども、これについてはどういうような見解厚生省としては持っておりましょうか。
  10. 牛丸義留

    牛丸政府委員 御指摘のように、一件当たり金額は非常に低いわけでございます三二十八年の大体の実績、まだこれは最終的ではございませんが、三十八年度におきましては二百三十七万円くらいになるわけでございます。この資料の百六十一万円は全体の計でございますので、初めのほうはわりあいに低く押えてありますから平均が低くなっておりますが、最近は二百三、四十万円の平均になっておりまして、最高額は大体五百万円を私どもは目途として貸し付けをやっておるわけでございます。ただこの金額は、施設の新築は貸し付け対象にならないわけでございまして、あくまでそういう社会福祉施設修理改造拡張とか整備、または災害復旧のためのいろいろな経費、それから運転資金、そういうふうな金額でございますので、多いに越したことはございませんが、施設としては、この程度のものでもその運用の効用は十分果たしているというふうに考えておるわけでございます。
  11. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いま貸し付け最高額は五百万ということでございますが、実際においてやっておりまする最低及び最高はどれくらいになっておりますか。
  12. 牛丸義留

    牛丸政府委員 最低金額は、いまちょっと手元にございませんが、最高は例外の措置も認めておりまして、七百万ぐらいまでは貸しております。
  13. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは、ただいまお話しのように、業務方法書第三条を見ますと、修理改造拡張整備災害復旧というようなものに貸せるということになっておりますが、最近の年に修理改造拡張整備災害復旧等に出しました件数並びに金額種類別にお聞かせいただきたいのです。
  14. 牛丸義留

    牛丸政府委員 同じく三十七年度の実績で申し上げますと、拡張が六十二件でございまして、金額は三億五千九百万円、それから改造が二十二件、これは一億二千二百六十二万円、そのほか修理二件、拡張改造十一件、移転八件、それから災害復旧十五件、運転資金三件というような内訳になっております。
  15. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この要望額借り入れ申し込み金額に対しまして、先ほど来伺っておりますように貸し付けの実際の額は大体五〇%以下ということになっておるのでありますが、これで実際にその計画を実施しているのでしょうか、それともまた、貸し付け額が少ないから振興会のほうの了解を得て計画を縮めておるというようにしておるのでしょうか、それともまた、足らない分はよそからの融資等を受けて満たしているのでしょうか〇五〇%以下、四〇%あるいは三十何%というふうでございますけれども、その計画実施は全体として十分行なわれているのでしょうか。
  16. 牛丸義留

    牛丸政府委員 貸し付け限度は、大体貸し付け対象事業費の七五%、それから担保価格の七〇%、正味資産額の五〇%、この三つで算出しました額のうちで最も低い金額によって貸し付け限度を定める。もっとも災害等のやむを得ない場合はこの限度によらないことがございますが、原則はそういうことで、事業費からいいますと七五%程度貸し付け限度となっておりまして、このあと金額は、ただいま御指摘がございましたようにいろいろな補助金なり共同募金なり自転車振興会補助金なり、そういうものからの配分金、それから一般篤志家の寄付なり、いろいろな形態でカバーされている、そういうことで事業運営をしているような形でございます。
  17. 長谷川保

    長谷川(保)委員 計画どおりやっているのですか。
  18. 牛丸義留

    牛丸政府委員 そうでございます。
  19. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私が社会福祉事業を見まして非常に心配しますのは、先ほど来申しましたように、私設社会福祉事業が順次設備老朽化してまいりまして、十分その目的を果たすに至っていないというのが現状であると思うのであります。ことにいま整備拡張等、あるいは修理災害復旧等の面に融資されますものが、拡張改造等でも一件当たり五百万ないし六百万平均のようであります。今日の建築費増高から見ますと、これではほんのわずかのものしかできない。もちろん、いま申し上げましたような自転車振興会あるいは共同募金等で十分配分されればいいのでありますけれども全国私設社会事業が非常に数が多い。数から申しまして、公的のものの大体四十何%に当たると思うのであります。収容人員から申しましても、あるいはまた施設の数から申しましても、大体四三に%当たると私は見ているのでありますが、そういうように非常にたくさんのものでありますから、それに対して共同募金等によって配分されるにいたしましても、何ぶんにも数多くのものであって非常に少ないものしか配分されない、あるいはごく重点的に、ごく少ない数の施設に対して割り振ることによってその要望を満たすということも行なわれておりましょうけれども、そういうように思うのです。でありますから、せっかく長い間非常な努力をしてこられました優秀な私設社会事業が、順次衰亡の形になっていくという傾向があることを非常に心配する。先般も、長い間一人で非常に奮闘してやっておられましたある農村地帯保育でありますけれども、もう自分一代でやめる、自分のむすこや娘さんにはこの仕事はさせたくない、こういうように言っておられる人と会ったのであります。そういうようなこともありますので、この際、そういうようなあまりにひどいみじめなことにさせないような十分な配慮をして、保育に欠ける子供たち、その他の助けを要します人々、そういう人々基本的人権を守っていくということができるようにさせなければならぬ。惻隠の情にかられて社会福祉事業をやってまいりました諸君にとりましては、あまりにみじめな形になるとしますれば、これはもうその情熱を失うのは当然のことでございまして、この点についての十分な配慮を国はする必要があるというように思うのであります。  そこで、これは社会局長のほうでおわかりかとも思いますけれども昭和三十八年度、社会福祉施設整備費というのが二十億三千六百万円ありました。これは一体どういうように使われておりましょうか、この点をまず承りたいのであります。
  20. 牛丸義留

    牛丸政府委員 これは結局社会福祉のいろいろな施設がございまして、従来はその施設ごと、大体生活保護施設なら生活保護施設児童福祉施設なら児童福祉施設というように各項目別施設整備費というものを予算で計上していたわけでありますが、三十九年度から社会福祉施設整備費というものを一括して予算へ計上し、そうして大体、従来の計画なり実績というものをもちろん尊重するわけでございますが、施設全体を総合的な観点から整備していくようにしようというような配慮もあって、一本の項目にまとめたわけであります。前年度は大体二十億三千万円のものが、今度二十四億三千万円程度に増額されたわけであります。これは結局こういうことでございますので、保護施設なり身体障害者更正援護施設、あるいは精神薄弱者援護施設老人福祉施設婦人保護公益質屋老朽民間社会福祉施設に対する補助、それから児童福祉関係施設児童遊園児童館母子健康センター重度身体障害児施設母子福祉施設等、各社会福祉児童福祉全体に対する施設整備補助金として計上されているのでございます。
  21. 長谷川保

    長谷川(保)委員 その分けた種類別に教えていただきたい。
  22. 牛丸義留

    牛丸政府委員 三十九年度の予算におきましては、これは実行面配分をやるわけでございますが、まだ予算が成立しておりませんし、四月以降になって大蔵省との間で実行計画を立てて実施するわけでございますので、現在のところ、ただ総額が二十五億四千万というふうに計上されているわけでございます。
  23. 長谷川保

    長谷川(保)委員 三十八年度はどういうように配分されておりましょうか。
  24. 牛丸義留

    牛丸政府委員 三十八年度は、各施設ごと予算として計上され、それぞれ支出されたわけでありますが、その金額は、先ほど申し上げましたように全体で二十億三千六百万円でございまして、保護施設に対して一億二千四百万円、それから身体障害者更生援護施設に七千三百万円、精神薄弱者援護施設に六千七百万円、老人福祉施設に六億九千二百万円、それから老朽民間社会福祉施設に二億三千四百九十万円、それから児童福祉施設に対しましては五億九千二百万円、児童遊園に二千三百万円、児童館に九千万円、そういうふうな内訳になっておるわけでございます。その他こまかいものもございます。
  25. 長谷川保

    長谷川(保)委員 老朽施設に分けられたのは、どういうふうに分けられておりますか実態を教えていただきたい。
  26. 牛丸義留

    牛丸政府委員 詳細はあとで御報告いたしますが、この老朽民間社会福祉施設社会局関係と、それから一般児童福祉施設との割り振りは、大体六、四くらいの比率でございますので、件数が全体で五十四件でございまして、その中で四割程度児童福祉関係、その詳細な内訳あとで御報告いたします。
  27. 長谷川保

    長谷川(保)委員 五十四件、詳細な内訳あとでというお話でございますけれども、大体のことがおわかりでございましたら、社会福祉施設のどういうものに何件でどれくらい、児童福祉関係のどういうものに何件で幾らかというようなことがわかりましたら——いまわかりませんか。
  28. 牛丸義留

    牛丸政府委員 いま調べまして、後ほど御報告します。
  29. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それでは三十九年度のほうは四月から大蔵省話し合いでということでございますが、老朽施設のほうの関係だけでけっこのですから、その予定はわかりませんでしょうか。案はどうせ厚生省にあるのでしょう。
  30. 牛丸義留

    牛丸政府委員 まだ全体としての計画を立てておりませんので、大体昨年の実績を上回ることは、これははっきりと考えておりますが、それの具体的な金額まではまだ考えておりません。老朽施設は、五カ年計画老朽施設整備をやるというような計画を持っておりますので、昨年は一六%増でやっておりましたのを今度一八%増にしたいというわけでございますが、そういう意味では大体二%は前年より増加させるというような予定はいたしております。
  31. 長谷川保

    長谷川(保)委員 五カ年計画の内容を承知いたさないのでありますけれども、五カ年計画は大体どういうふうにおやりになるのでありましょうか。厚生省のほうでいわゆる老朽施設として把握しておりまするそれに対して、一体どの程度までこの資金でもって、あらためて新築するなり何なりということをするのだろうと思いますけれども、どういうような計画になっておりましょうか、その五カ年計画をさっぱり承知しないのでありますけれども
  32. 城戸謙次

    城戸説明員 五カ年計画につきましては、三十八年度を初年度といたしまして、老朽の一万点満点の整備点数で、四千点以下の施設整備していこう、このやり方は全体で約五万坪でございまますが、この一六%を初年度の三十八年度でやりまして、一八%を二年度の三十九年度にやり、順次二%ずつ実施率を上げていこう、こういう計画になっております。
  33. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そういたしますと、五万坪で大体全国社会福祉施設老朽度の四千点未満のものというようなものは、全部解消できるということでしょうか、それとも現在ありますものの中で、あるものはやめ、あるものは引き上げていくというような形になるのでしょうか。どんなふうになっておるのでしょうか。これは全国社会福祉施設が非常な関心を持っておりますので、あるいに児童福祉施設が非常な関心を持っておりますので、その点をさらに承りたいと思います。
  34. 城戸謙次

    城戸説明員 いまの五万坪でございますれば、四千点以下の施設は全部整備できる、こういうことになっております。
  35. 長谷川保

    長谷川(保)委員 児童局のほうでは、すでに三十九年度のほうの老朽施設配分等の内定をしているやに伺っているのでありますけれども、いかがでありましょうか。
  36. 黒木利克

    黒木政府委員 社会局の一応の所管でございまして、私のほうでは各県の児童課から申請を取りまして、現在児童局としての査定中でございまして、まだ社会局話し合いを済ましていないという段階でございます。
  37. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いずれにいたしましても、今日社会福祉法人立のものが千九百八十、公益法人立が六百三十三、合わせて二千六百十三という施設があるようであります。その他の法人八百七十三、これを合わせますと三千四百八十六、その他というのが、いただきました資料にも二千七百九十一というものがあるわけでありまして、合わせますると、六千二百七十七という施設がある。このうち、その他の法人というのは、宗教法人その他をさしておるのではないかと思いますけれでも、その他の法人八百七十三というものの内訳はどういうものでしょうか。さらに、その他二千七百九十一というのは、これは個人のものをさすのかどうか、承りたいのであります。
  38. 牛丸義留

    牛丸政府委員 「その他の法人」はほとんど宗教法人でございまして、それからその右端の「その他」というのは、御指摘のように個人でございます。
  39. 長谷川保

    長谷川(保)委員 この宗教法人が非常に多くの保育所をやっていることは、御承知のとおりでございます。しかし、宗教法人なるがゆえに、同じ保育をやっておりながらどこからも融資あるいはまた補助の道がない。一部では共同募金分配をやっているところもありますけれども、本来の姿からすれば、共同募金分配も消極的になっているかに見るのであります。この多くの全国宗教法人が経営しておりまする保育所、こういうものに対する融資その他の援助の道はないのであろうか。これは宗教法人社会福祉法人という名前は変わっておりますけれども、しかし実態はやはり保育をやっている。もちろん宗教法人におきましては、それぞれの宗派によりましての礼拝その他もやっておるでありましょうけれども保育に欠ける子供保育をしているというのが実態であろうと思うのです。したがって、この宗教法人立のものも、やはり公の支配をそこに強く出していくということにつきましては、民間施設であるということにつきましての本来の趣旨をおかすことになりますから、憲法のたてまえもあるわけでありまして、考えなければなりませんけれども、しかし何らかの形におきまするある程度援助融資というものは、当然すべきものであると私は思うのであります。この点につきまして、どういうようにお考えでありましょうか。同様に個人経常のものにおきましても、これの大部分はおそらく保育所あるいは幼稚園というたぐいのものでありましょう。ここに載っているものは保育所でありましょう、あるいは託児所でありましょう。そういうようなものに対しましても、当然同じように保育に欠ける子供たちを預っているのでありますから、やはり何らかの形の援助というものが必要であろうと思うのであります。これらについて援助もしくは融資等々のことが、はたしてどの程度行なわれているのか。一部におきましては、宗教法人のほうから、そういうことについてのいろいろな陳情もあるようであります。実際に保育に欠ける多くの子供たちを、国あるいは地方自治体等が全部収容いたしまして、そして保護できればけっこうです、保育ができればけっこうでありますけれども、しかし実際においてはできませんので、多くの人々が、こういう個人で、あるいは宗教法人でやっていてくださるということになっているわけであります。しかもそれらの人々が全部やってくださっても、今日なお保育に欠ける者がたくさんいるという形になっているわけであります。したがいまして、最も望ましいのは、もちろん本来は国が責任を持ち、あるいは地方自治体が責任を持ってやるということでありますけれども、現状そういうところにいっておりません今日の段階におきましては、当然これらに対しましても融資その他の援助の道を講ずべきであると私は思いますが、今日どういうふうになっておりましょうか、実情を承りたいのであります。
  40. 黒木利克

    黒木政府委員 保育所の問題が出ましたから、私からお答えを申し上げます。  先生御承知のように、民間社会事業施設に対する公金の支出につきましては、憲法制定当初は、宗教団体等には公金を出してはならないという規定がございましたが、その後社会福祉事業法等の運営で、社会事業をやっておる部分については公金を出してもいいのではないかというような解釈から、だんだん拡張されて今日に至っておるわけでありますけれども、まだ社会福祉事業振興会法の運営におきまして、あるいは法律の規定におきまして、宗教法人対象にするような段階にはないのでございます。しかし年金福祉事業団等ではそれを禁じておる規定もありませんから、これはやりようによってはできるのではないだろうか。ただ、いろいろな従来の経緯から問題がありますので、実は三十九年度の予算要求といたしましては、御承知のように民間社会事業施設に対する措置費という、これは国の一種の委託費でございますが、保育所に対して措置費ということで公金を支出いたしております。そこで、こういうような老朽施設の復旧あるいは建物の償却費をこの措置費の中で交付するならば、憲法なり従来の法令にも違反をしないということに思いつきまして、措置費の中でこういうような建物の償却費を個人立においても、宗教法人立においても交付できるような予算要求をしたのでありますが、いろいろやはり民間社会事業の本質論等がありまして問題は詰まりませんで、次年度以降に持ち越されたのでありますけれども児童局といたしましては、個人立なり宗教法人立保育所に対しましても、措置費の運営において建物のこういう償却の問題、老朽施設の問題の解決をはかりたいという増えでおるわけございます。
  41. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしますと、厚生省の方針といたしましては、措置費の中に、あるいは事務費の中に建物その他の減価償却費を入れるという行き方をしていこうというのでありましょうか。それらの点につきましては、民間社会事業から非常に強い要望も御承知のようにあるわけでありますが、そういうような方法でやっていくつもりでありましょうか。社会局長児童局長、どちらからでもけっこうでありますが、厚生省の御見解を承りたい。
  42. 黒木利克

    黒木政府委員 三十九年度の予算要求に対しましては、特別償却費というような名前は用いませんでしたが、実質はそういうことをねらいにして管理費というような予算要求をしたのでございます。しかし、先ほど申しましたようにいろいろ問題がございましたので、三十九年度では解決できませんでしたが、そのかわり建物の建設費の単価を引き上げるというようなことで、そういう建物の償却等の事務費的な面を幾ぶん楽にしてあげたいというような解決を見た程度であります。
  43. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、建設費の単価は今度幾らになったのでしょうか。
  44. 牛丸義留

    牛丸政府委員 従来五万五千円のものが五万八千円程度に増額されたのであります。
  45. 長谷川保

    長谷川(保)委員 それは木造ではなしに、不燃質のものですね。
  46. 牛丸義留

    牛丸政府委員 ブロックであります。
  47. 長谷川保

    長谷川(保)委員 ブロックで五万八千円では、いまなかなかできないと思います。でありますから、せっかくの厚生省の親心も、事実におきましては、五万八千円程度では現場におきましてはやはり建築は困難だと思います。したがいまして、これらの点について、せっかく厚生省がそういう親心をお出しになるならば、やはり少なくとも来年度におきましては、この点十分減価償却費を何らかの形で入れるという御努力を願わなければなりません。そういたしませんと、いまのような宗教法人保育所あるいは個人でやっております保育所、母子ホームその他の社会福祉施設というようなものは、それを改善してまいる道がないわけであります。ただに維持するのみならず、改善しなければならないのでありますけれども、改善も維持もできない、じり貧である、そういう形に追い込まれていくわけであります。したがって、これらの点につきましては、今日のあり方では非常に不十分だと思うのであります。先ほど年金福祉事業団では融資ができるのではないかというお話が児童局長からあったわけでありますけれども、この点事実できておりましょうか。年金福祉事業団のほうで、こういう宗教法人なりあるいは個人立の社会福祉施設に対しまして、あるいは児童福祉施設に対しまして融資ができておるのでしょうか。現在やっておるのでありましょうか、また、やれるという話し合い厚生省の当局とできておるのでありましょうか承りたい。
  48. 黒木利克

    黒木政府委員 先ほどの単価の問題で、ちょっと私が耳打ちをいたしましたのは間違いでありまして、五万円がブロックでは五万五千円、鉄骨では六万円になったのであります。これは各省の関係建築費の単価にはね返りますのでいろいろ折衝してみたのですが、結局は各省に影響があるというので、この程度に終わったのでございます。  それから宗教法人に対する年金福祉事業団の融資では、年金福祉事業団の運営で厚生大臣が特に指定したものにつきましては、社会福祉法人以外にも貸せるような道がありまして、その例として従来宗教法人の例があるのであります。ただし、これは国から措置費の交付を受けておる宗教法人の経営する施設に限るわけでございます。
  49. 長谷川保

    長谷川(保)委員 個人のほうはできておりますか、全然ありませんか。
  50. 黒木利克

    黒木政府委員 いまのところはございません。
  51. 長谷川保

    長谷川(保)委員 個人のやっておられますものにつきましては、やはり何らかの配慮をいたしまして、長い間非常な努力をしてくれておりますそれらの方々に対する道を開くべきであると思うのであります。これらについて、また格段の御配慮をしていただきますようにお願いをしたいと思うのであります。  それからさらに、社会福祉事業に関する必要な助成を行なうというのが振興会法の第一条にあるのでありますが、今日その助成をしておる実情はどういうことになっておりましょうか、承りたい。
  52. 牛丸義留

    牛丸政府委員 現在はまだ行なっておりません。
  53. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、法律はきめてあるのに全然そういう計画も何もない、実績もないが計画もないということでありましょうか、何らかの計画はあるのでありましょうか。せっかく法律にあるのでありますから、どういうふうにこれが行なわれるのか、方針を承りたいのであります。
  54. 牛丸義留

    牛丸政府委員 現在のところ計画はまだございませんが、私どもとしては、一応たとえば老朽施設借り入れ金に対して利子補給をするというようなことを、将来の問題として検討する必要はあるのじゃないか、しかしまだ具体的な計画は持っておりません。
  55. 長谷川保

    長谷川(保)委員 老朽施設に対する借り入れ金の利子補給をするということは、非常に適切なことだと私は思うのです。というのは、今日措置費、事務費というものが、実態におきましてはむしろ非常に窮屈な形になっておる。むしろ実態を下回るようなものだと私は考えるのでありますが、そういう場合に、施設といたしましては、借り入れ金をいたしましてもその返済及び利子の支払い等々が非常に困難になるわけであります。したがいまして、そういうような助成の意図を持っているとすれば、非常にこれは適切なことだと思います。当然これらのことは、二十七年以来ですか、今日までほうっておくべきではなく、すでに社会福祉事業振興会法の第一条に明確にうたわれておるのでありますから、当然そういうような適切な計画を立てるべきであります。ひとつ、ぜひそういうような道をつくっていただきたいと思います。  さらに、この助成の意味でありますが、たとえば方法書等を見ますと、社会事業従事者の講習、職員の講習、研修等をするようなふうにも読めるのでありますけれども、それらのことはやっておらないのでしょうか。
  56. 牛丸義留

    牛丸政府委員 研修制度はまだ実施しておりません。
  57. 長谷川保

    長谷川(保)委員 業務方法書を見ますと、そういうことをやるように書いてあるように思うのでありますが、私も簡単に見ただけでありますからなんですが、そうではございませんか。
  58. 牛丸義留

    牛丸政府委員 この業務方法書の中にはありますけれども、現在のところまだ実施はしていない。将来の問題として検討したいと思います。
  59. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、いまのような方法書にありますもの、あるいは方法書にありますさらに具体的なもの、こういうものをやっておらぬというのは、結局予算が足らないというところからやらないのか、それともまた振興会のほうの職員、組織等の充実がないためにできないということでやらないのか、その理由をお聞かせいただきたい。
  60. 牛丸義留

    牛丸政府委員 第一には、予算がいま貸し付けの業務だけで手一ぱいでございまして、もちろん職員の充実ということも予算に関連があることでございます。これからまず振興会自体の強化をはかって、そしてだんだん事業を拡張していきたい、かように考えます。
  61. 長谷川保

    長谷川(保)委員 政務次官もお聞きのように、予算も足りない、陣容も足りないようであります。この社会福祉施設児童福祉施設、その他の厚生施設等々は、国民の基本人権を守るのに欠けるという人々を実際の現場において守っているのでありまして、いわば憲法を実施している第一線であります。その第一線の社会福祉施設あるいは社会福祉事業従事者の研修等々の仕事、こういうようなことが、予算が足りないためにできないというようなことであってはならないのでありまして、これらについて一体振興会予算として要求なさった要求額と大蔵省査定、これはどういうようなことになっておりましょうか。大きく査定されたのでありましょうか、承りたいのであります。
  62. 牛丸義留

    牛丸政府委員 助成費用につきしては、これは利子収入の中で運用していくという形になっていますので、予算には関係ございませんが、結局その利子のもとになる政府出資がいまのところまだ少ない、小さかったというような現実から事業がそこまできていない、こういう実情であります。
  63. 長谷川保

    長谷川(保)委員 貸借対照表を見ますと、相当の利子収入があると思われる。これは別途積立金、当期益金あるいは償却の準備金・損失補てん積立金等々のものがございます。こういうものが益金から出されておりましょうから、相当の利子収入があると思われる。にもかかわらず、これらのことが行なわれておらぬというのは少し理解に苦しむのでありますが、どういうわけでありますか。
  64. 牛丸義留

    牛丸政府委員 いま御指摘のように貸借対照表によりますと、償却準備金なりあるいは損失補てん積立金という形で別途積立金のほかに計上されておりますが、振興会の事業そのものが、貸し付け対象が結局収益をあげる団体ではないというようなところから、回収不能のものに対する補てんというような点が非常にいままで重大な関心事でございまして、そういう意味で安全を期した点もありますが、そういう点はこれからの問題としては問題はあろうかと思いますが、従来はそういう点を配慮して、新しい事業をしないで貸し付けの業務だけを実施してきたというのが実情でございます。
  65. 長谷川保

    長谷川(保)委員 法律にあり、また業務方法書にあるのでありますから、それらのものは、そういう収入をおもに充てるというなら充てるで当然すべきである。したがいまして、私ども善意に解釈いたしますれば、貸し付け予算に追われてそちらのほうに手が及ばなかった、あるいは職員の陣容が不十分でそこまで手が回せなかった・貸し付けだけで精一ぱいだった、こういうようにも解釈できる。けれども、善意でなく考えれば、なまけているんじゃないか、いわば案外政府資金を得て、それで借り手は幾らもあるというようなところから積極性を欠いておるのではないか。法律できめられたことをやらない、業務方法書に書かれたことをやらない、積極性を欠いて非常に消極的になっておるのじゃないかというようにも考えられるのであります。一体それらの内容は実際においてどうなのか、その事実を明確に承りたい。
  66. 牛丸義留

    牛丸政府委員 御指摘の点は、現在役職員の数からいたしましても、三十八名おるわけでございますが、そのうち退職の共済分が十四名、結局振興会の事業そのものに対しましては二十四名で実際の業務をやっている、そういうようなところで、いままでは貸し付け業務に手一ぱいであったというのが実情でございまして、それだけの人数でもなお努力すればやれないことはないと言われるかもしれませんけれども、そういうふうな人手不足で貸し付け業務に忙殺されていたというのが実情でございます。
  67. 長谷川保

    長谷川(保)委員 陣容がなるほど二十四名で、振興会の仕事を全部やれというのは無理かもしれません。それならば・その陣容をさらに強化するという形をとるべきであり、予算が足りないならば、さらに積極的に予算を増額するという方針をとるべきであります。それらについて一般の御奮励を必要とするのではないかというように考えられるのであります。  そこで、さらに承りたいことは、社会福祉施設の退職手当共済制度の実施状況はどんなふうになっておるのでありましょうか、実情を承りたい。
  68. 牛丸義留

    牛丸政府委員 退職共済の制度は、実施されてからまだ間がないわけでございまして、三十六年六月に法律が実施されまして・三十八年十月末現在で、退職共済の事業の契約施設数は四千九百七十八施設でございまして、被共済職員数は三万三千五百四十五人でございます。被共済の見込み数の三万九千に対しまして、加入率は八六%となっております。  退職手当金の支給状況は、三十七年十月一日以降の退職者の退職手当金受給権者の請求に基づいて支給を始めたわけでございまして、三十七年度中には退職手当命を支給した人員は六百三十三人、給付額は三百十四万七千二百円というふうになっております。なお、三十八年度は、四月一日から十月まで、支給人員は二千三百三十六人、給付額は一千百九十五万二千円となっております。
  69. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、これはほぼ順調に歩み出しておるように思うのであります。  先ほど貸し付け金の焦げつきその他の問題があったわけでありますが、三十八年度がわかれば一番けっこうでありますが、三十八年度がまだわからなければ三十七年度でもけっこうでありますが、振興会の利息収入の内訳はどんなものでございましょうか。業務方法書等によりますと、日歩一銭四厘のもの、延滞利子は五銭というようになっておるようでありますが、その総領及び内訳はどういうふうになっておりますか。
  70. 牛丸義留

    牛丸政府委員 総額は、三十八年度で三千八十万円でございます。内訳は、いま手元にございませんので、あとで申し上げます。
  71. 長谷川保

    長谷川(保)委員 承りたいのは、先ほどお話しの焦げつき貸し付けがどれくらいあるのか、貸し倒れと考えられるものがどれくらいあるのか、それを承りたいのであります。そのことが、先ほど来ちょっと伺っておりました助成の事業その他に関係をしてまいりますから、あとでけっこうでありますから、一銭四厘の利息が幾ら、延滞利子の五厘ものが一体幾ら入っているのか、それから焦げつきの貸し付け、あるいは貸し倒れとすでに考えなければならぬようなものが一体どれくらいあるのか承りたい。
  72. 牛丸義留

    牛丸政府委員 三十七年度末で一応償還率を申し上げますと、予定額は八億三千四百九十三万六千円に対しまして、償還済み額が八億一千四百八十九万三千円、償還率は大体九七・六%というようになってはおりますけれども、これは累計の償還でございますが、借りかえその他の内容も含んでおりますので、償還率は九七%よりも実際はちょっと下回るのじゃないかというふうに考えておるわけであります。
  73. 長谷川保

    長谷川(保)委員 実際貸し倒れと考えられるもの、いま考えなければならぬと思うものはどれくらいありましょうか。
  74. 牛丸義留

    牛丸政府委員 この九七・六%の一〇〇%に対する差額は、一応そういうふうなものもあるわけでございますが、実際の貸し倒れというのは現在のところ非常に少ない。
  75. 長谷川保

    長谷川(保)委員 貸借対照表を見ますと、損失補てんの積み立て金が、三十七年度では千六百五十万円という数字がございます。二十八年度の見込みが二千十九万ということでありますが、いまの償還予定並びに実績から見ますならば・ほとんどその差額の全額をここに積んであるということになるわけであります。やはりこういうように考えてくれば、先ほどの助成事業などをやっていいのではないか・こんなに全額を積み立てておく必要はないではないかというように思うのであります。それらの点はいかがでありましょうか。
  76. 牛丸義留

    牛丸政府委員 金額の点から申し上げますと、御指摘のように、大体三十九年度六億くらいの貸し付けば与えておるわけでございますが、補てん金約二千万円ということでそういう御指摘もあるかと思いますが、結局現在まで振興会がやりましたのは貸し付けに専念してきた。しかしここでは、一方におきましては借り入れ金三億ということで、これは結局逆の利子になるわけでございまして、将来の貸し付けの原資の収支計算というものは、借り入れ金が増加すれば収入がそれだけ減ることになるわけでございますので、必ずしも楽観を許すわけではないのでございますが、しかし一方におきまして、そういう助成事業ということは振興会の目的にもあるわけでございますので、将来この点は早急に検討していくべきではなかろうかと考えております。
  77. 長谷川保

    長谷川(保)委員 私は、この振興会法をつくりましたときの一つの疑念、  一つの心配は一社会福祉事業あるいは児童福祉事業、そういうようなものはもちろん非営利事業であります。非営利事業であって、借り入れをしていろいろ立ててそれを返済することがはたしてできるかどうか、非営利事業と施設費、設備費等の借り入れ金の返済、そこに一つの大きな矛盾がある、明らかに矛盾がある。非営利事業である社会福祉施設児童福祉施設、こういうものに、先ほど来お話しのような施設設備の減価償却費等を措置費、事務費等に含ませておけばいいけれども、もしそれがなしで、ほんとうに一ぱいの、あるいはそれ以下の措置費、事務費等を与えておるとすると、この貸し出し金の返済という道がない、その点を最初から危惧しておったのであります。そこで本来のたてまえから申しますならば、その措置費、事務費の中に少なくとも十分な減価償却費というものを入れておくことによって、この返済の道ができるのでありますけれども、今日まで長年の間社会福祉施設を経営しております皆さんから強い要求があったにかかわらず、それができておりません。これらの点は、いままで官公庁でしておられますお仕事のほうは、国の資金なり地方自治体の資金を入れてそれで全部つくっていく、調弁費までもそれで出していくということでありますから、それがだんだん悪くなってまいりますれば、またそこへ資金を入れましてつくっていくからよろしゅうございますけれども、そういう立場で私設社会福祉事業児童福祉事業というものを扱っていったのでは、これは動きがつかなくなる。借金をいたしましても返す道がないという形になってくる。今日、ことに社会福祉事業の従事者の処遇の問題が大きな問題となって日程にのぼってきているわけであります。その処遇はいかにも低いのであります。つい二、三日前、社会党の河上委員長が、近江学園、琵琶湖学園、おちば寮、あざみ寮等、滋賀県におきます有名な糸賀先生のやっておられる仕事をつぶさに拝見いたしました。代議士や大臣に勲章をくれるよりも、ここで二十四時間勤務をしておられる従業員の皆さんにまず勲章を差し上げなければならぬということを、新聞記者との対談で言われたそうでありますけれども、今日、社会局長におかれましても児童局長におかれましても、その実態を十分御承知のことであります。そういうような非常に低い給与、処遇を受けて、むちゃくちゃな悪い労働条件のもとに働いております人々、その人々の処遇の改善の要求、これは施設の責任者といたしましては十分に満たそうとするのが当然である。それを満たそうとすればもう返済ができなくなる、返済をしようとすればそれができなくなるという板ばさみになって、多くの社会福祉施設の経営者は苦しみ抜いておるのであります。これは、私は予算を編成する直前におきます児童福祉の危機突破の大会あるいは社会福祉施設の危機突破の大会等に臨席いたしましても、その施設の経営者あるいは職員の、むしろ怒りの声がそこに満ちていることを聞くのであります、見るのであります。こういう点を考えてまいりますと、この非営利事業である施設融資をして施設を何とか維持改善をしようとする、その返済の矛盾、この中にはさまれております社会福祉事業児童福祉事業の悲劇を感ずるのであります。こういうように考えまして、私はよくまあこれだけ、この償還ができるものだとむしろ感心しておるのであります。したがいまして、この一銭四厘もの、これについても、先ほど来の利子補給の助成の通を立てて——ことにまじめに経営していればまいるほど、いまの非営利事業と返済の矛盾の板ばさみに立つわけでありまして、五銭もの延滞利息というようなものにつきましても、放漫な経営はできませんけれども・実際におきましては十分に考慮する必要があるのではないか。延滞利息五銭というようなものを社会福祉施設から取るということにつきましては、放漫経営を避けるという意味ではいたさなければならぬという点もわかりますけれども、いまの社会福祉施設あるいは児童福祉施設に対する措置費、事務費等の実情から見まして、私にとりましては、むしろ払えないほうがほんとうであって、返済ができるほうが普通でないようにも考えられるわけであります。でありますから、こういうものについても十分に配慮する必要がある。先ほど来の社会局長の利子補給の助成の道をつくろうということは、いよいよもってすべきものであるというように考えられるのであります。先ほど来伺っておりますと、貸し倒れはまだないというのであります。先ほどの差額だけがほぼ焦げつきという形で考えられるというのでありますが、この全額に対して損失補てんの積み立て金というようなものをつくっておく必要はない。むしろこういうものを生かして、そして利子補給等の道を与えて、また措置費、事務費等の中に減価償却の費用をすみやかに入れまして、そうしてこの返済と非営利事業との矛盾を解決していくべきだと思います。これらについて御意見を承りたいのであります。
  78. 牛丸義留

    牛丸政府委員 御指摘の点は、私どもも全く同様に感じておるわけでございますが、現在のそういう自己負担の分を、どういう点で返済をしているかという償還財源を一応御説明申し上げますと、三十七年に例をとりますと、補助金が大体償還財源のうち五・九%を占めております。共同募金が大体一五%、それから寄付金が四二%、それから事業収入として約三〇%、その他八%というような形で貸し付け金の償還の財源が組まれておるわけでございます。しかし、ただいま長谷川先生の御説もありましたように、非常に内容は苦しい、これは私どももそのとおり考えております。しかし一方におきまして、各種団体からの配分金等も相当最近は増額しております。そういう点で、国の補助金なり、それから共同募金とかお年玉つきの郵便はがきの寄付金なり、あるいは自転車振興会補助金なり、そういうふうなものの増額は当然はかっていくべきでありますし、それと同時に、私どもとしては予算措置として、ただいま御指摘のような点について将来はぜひ努力していきたい、かように考えておるわけでございます。
  79. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまの償還財源のお話でありますが、共同募金やお年圧あるいは自転車振興会のほうの補助金あるいは配分金等々は、原則として旧債の返済には充てないということがほとんど条件になっていると思いますが、これらのことはいかがでありますか。
  80. 牛丸義留

    牛丸政府委員 共同募金だけでは返済の償還財源に充てることができるが、その他のものはできない。私のさっきの説明は少し間違っておりましたので訂正いたします。
  81. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうかそれらの点をお考えくださいまして、すみやかに改善をせられるようにと深く要望をいたします。  今度の法改正を見ますと、社会福祉事業債を発行できるようにするということになっております。これはどういうことを考えておられるのか、その内容を承りたいのであります。
  82. 牛丸義留

    牛丸政府委員 振興会に債券発行能力を付与するということが今後の法律改正の主たるねらいであります。これは基本的には、債券を発行することによって外部資本の調達を容易にしようとすることにあるわけでありますが、しかし債券発行能力を有する団体になりますと一いわゆる財政投融資として資金運用部から資金借り入れができるということになるわけでございまして、当面は、債券を発行するということよりも、むしろ資金運用部から資金借り入れるということで、こういうような規定を設けたわけでございます。
  83. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、これは実際に発行するということではなくて、事実は、やはり資金運用部から借り入れをするのには、こういう債券発行の能力を付与しておかなければ資金運用部からの資金を得ることができない、そういう意味でありますか。
  84. 牛丸義留

    牛丸政府委員 そのとおりでございます。
  85. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、実際にはいま兆行するという計画は何もないわけですね。
  86. 牛丸義留

    牛丸政府委員 そうでございます。
  87. 長谷川保

    長谷川(保)委員 資金運用部資金借り入れは、御承知のように六分五厘が予定利子であります。もちろん政府資金が入っておるのでありますから、全部が資金運用部からの借り入れではありませんから、これはこまかい実際の計算をしてみませんと、はたしてどういうことになるか私にもよくわかりませんけれども、本来のたてまえといたしましては、振興会は日歩一銭四厘で貸せるということになります。したがいまして、そこに逆ざやと申しますか逆利子と申しますか、という形が出てくるわけであります。それらの点についてはどういうように処理していくつもりでありますか。
  88. 牛丸義留

    牛丸政府委員 現在、この制度が始められましてから今日に至るまでの政府出資金が大体十億五千万だと思いますが、ございまして、それの利子収入というものがこの大きな一つの財源になるわけでございます。しかし来年度は政府出資金が一億円、そのほかに三億円の借り入れ金を予算措置したわけでございまして、これに対しては御指摘のように六分五厘の利子を払わなければならない、こういうことになるわけでございます。そうしますと、先ほど指摘がございました積み立て金等も、来年度は相当減額されるということになるわけです。こういう状態でいくと、来年は大体収支は償うわけでございますが、将来の問題としては、政府出資金借り入れ金との比率のいかんによっては、御指摘のような利子の収入よりむしろ支出のほうが、多くなることはございませんが、事務費をまかなう経費をプラスすると、そこでマイナスになってくるという状態になることが予想されるわけでございますので、来年度以降につきましては、これは利子補給の予算措置を要求したい、これは来年度予算の結果を待たなければなりませんが、私どもとしては、ぜひそういう点の予算措置をして解決していきたいというふうに現在考えておるわけでございます。
  89. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると、今度は振興会自身が政府に利子補給を頼む、こういうおもしろいことになってくるわけですね。しかし、そういうことであればなおさら私に理解できないのは、たいした金ではないのに、前年度一億五千万円でありました政府出資が、なぜ三十九年度におきましては一億円にして、そうして資金運用部資金から借りるような道を講じていったのか。せめて前年どおりの——先ほど来お話しのように、借り入れ申し込みが非常に多いのでありますから。この資料で見ましても、三十七年度借り入れ申し込みが六億七千四百万円、貸し付け額は三億百万円、つまり充足率は四四・七七%であるのに、逆にどうしてこういうような政策をとったのか。これは大臣に伺わなければならぬところでありますけれども、逆じゃないか。いまお話しのように、ことしは何とかやっていけるが、将来はマイナスになるかもしれぬ、したがって、今度は振興会自身が利子補給をしてもらわなければならぬというように考えると、来年はそういう措置をしなければならぬというのに、なぜ前年度一億五千万円の政府出資を一億円に減らしたのであるか。これはあるいは大蔵省のほうに伺わなければならぬのかもしれません、あるいは自由民主党の皆さんに伺わなければならぬのかもしれませんが、どうしてこういうようなことをしたのか私には理解できない、その点を伺いたいと思います。   〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕
  90. 牛丸義留

    牛丸政府委員 政府出資金借り入れ金との比率では御指摘の点があろうかと思いますが、私どもとしましては貸し付け原資の絶対量がほしい。これは先ほど御説明いたしましたように・申し込みと実際の貸し付けというものは、現在半分くらいしか貸し付けていない。とにかく低利の貸し付けに対する要求は非常に強いわけであります。したがって、資金量をふやしたいということを、私どもとしては非常に念願をしておったわけでございます。そういうわけで、政府出資金だけでこの問題を解決するのが一番いいわけでございますが、そうしますと資金量が、いろいろな予算一般的な制約でなかなか伸びないというような状況もあって、借り入れ金の制度を考えたら、そういうことで、このバランスは将来なかなかむずかしい問題でございますが、利子補給というようなことでバランスをとるにしても、全体の資金量をふやすということに重点を置いて、結果的には、ただいまも申し上げましたように来年度は要するに赤字は出ないわけでございますので、三億の借り入れ金をお願いした、こういうことでございます。
  91. 長谷川保

    長谷川(保)委員 いまのような逆ざやの行き方をしてまいりますと、せっかく積み立てました諸積み立て金、準備金というようなものがくずれていくのではないかというように思われる。だから経営としてはいかにもまずい経営です。いまの御答弁にもかかわりませず、私にはなぜ一億五千万円を一億円にしたのか−資金量がほしいからということでありますが、資金量がほしければなおさらこれも減らさずに、また資金運用部資金からの借り入れも多くする、こういうことをすべきでありますのに、何らかそこに取引があったのか、あるいは社会福祉事業振興会の事業に対する認識と情熱を政府が失っておるのか、どうも私には理解で響きない。厚生大臣なりあるいは大蔵大臣なりにいていただきますとその点をさらに伺いたいのでありますが、どうも理解できない。変じゃないかという気がするのですが、どうでしょうか。
  92. 牛丸義留

    牛丸政府委員 御指摘のような点があるかもしれませんが、私どもとしては、努力した最後の結果がこういう結果になって、結局借り入れ金と政府出資金という二本立てで将来やっていきたいという方針で、決定を見たわけでございます。
  93. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうもこれは実にまずいですね。これらの点は、予算をつくりますときに大蔵省も尽力をし、厚生省もずいぶんと尽力をしておるのでありますし、与党の皆さんもそれぞれのところで御尽力になっておるのでありますが、私にはどうもこれでは納得できません。本年はともかくとしまして、少なくとも来年度は、もっと社会福祉事業振興会の仕事の意義、価値を十分認識されて、政府のほうの出資もよけいにしてもらう、なお足らないところは万やむなく資金運用部の借り入れ金でやるという形をとってもらう。ことに先ほど来申し上げておりますように、日歩一銭四厘という本来の貸し代け利息に対して、その資金のほうは六分五厘の利息を払うということでありますから、これらの点についてはこういう処置は納得できないのであります。しかし、この点はさらに今後における善処を強く要望いたしまして、一応もう少し質問を続けてみたいと思います。  貸借対照表を見ますと、固定資産三十七年度実績一千四百七十三万、それに対して三十八年度見込みが当初は六千七百万ですか、これはどういうのでありましょうか、意味がわかりませんが……。
  94. 牛丸義留

    牛丸政府委員 三十七年の実績におきましては、千四百万は、固定資産としては建物を所有していたわけでございます。三十八年の六千七百万というのは、初めは建物を売却いたしまして、現在入っております日本酒蔵会館の一部を買収するというような予定でございましたけれども、これは結局借りたわけでございまして、固定資産四百七十万というのは、新しく建物に入った場合の調度品とかなんとかいうものを自分で持っておりますので、そういう建物以外の固定資産、そういうものを四百七十万保有している、こういう結果でございます。
  95. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしますと・その差額は、反対の貸方のほうの何に主として確保されておるのでしょうかね。何の勘定科目に入っておりますか。
  96. 牛丸義留

    牛丸政府委員 借方のほうの貸し付け金は九億八千万が九億九千五百五十五万になった、そこに差額が入ってくるわけでございます。  ちょっと補足しますが、その貸し付け金と、それから預金及び預託金の見込みのほう、その両方に入ってきます。
  97. 長谷川保

    長谷川(保)委員 償却準備金五千七百二十一万八千円、この償却準備金というのは何でありましょうか。減価償却であるのでありましょうか。
  98. 牛丸義留

    牛丸政府委員 これは貸し付け金の焦げつきに対する準備金というふうに考えております。
  99. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると損失補てん積み立て金というのは何でありますか、二千十九万……。
  100. 牛丸義留

    牛丸政府委員 これは別途積み立て金とちょうどうらはらになるわけでございまして、決算上の損失が出た場合の補てんをするための積み立て金、そういうことでございます。
  101. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうすると別途積み立て金は……。
  102. 牛丸義留

    牛丸政府委員 決算上剰余が生じた場合にそれを積み立て金とするわけでございます。
  103. 長谷川保

    長谷川(保)委員 そうしますと、やっぱりそこに一つの矛盾が出てくるわけです。先ほど伺いました返済予定と返済実績の差額に対しまして、こういうようものを——二千万円ばかりでありましたが、五千七百二十一万八千円というような大きなものをここに積んでおく理由は何もない。そのほかにまだ別途積み立て金もある。損失補てんの積み立て金もある。なるほど方法書には、損失補てん積み立て金を持つということが書いてあります。書いてありますが、こんなに大きなものをここにあげておく理由は何もないというように思います。でありますから、積み立て金をつくるのはけっこうでありますけれども事業運営がかたくなってけっこうでありますが、しかし仕事をしないでそういうものをしていくということでは何にもならないのでありまして、そこらに、この事業経営はまだまだ十分に考えなければならぬ点があるのではないか。助成等をいたしまして、いわば損金となるものを十分つくっていっていい。そうして法律に掲げられてありますとおりの仕事をどんどんやっていくという態度を当然とるべきである。私は、そういう点がきわめて消極的に過ぎるのではないかという思いがするのであります。  大臣がようやく御出席でございますので、先ほど来私の御質問申し上げました趣旨をお聞きいただかなかったわけでありますが、少しかいつまんで先ほど来の質問の要旨、結果を申し上げてみたいと思うのであります。  第一は、社会福祉事業というものは非営利事業であり、ことに社会福祉施設というものは、戦前は皇室あるいは三井報恩会、あるいは慶福会、あるいに服部報公会その他多くの助成団体がありまして、そこである程度必要な施設費等を満たしてまいりました。しかし戦後におきましては、それらはほとんど全部なくなりまして、かわって共同募金という制度ができたのであります。しかし共同募金配分金は、何ぶんにもたくさんあります社会福祉施設のことでありますから、絶対量が足りない、非常に少ない。ところが、戦前政府が十分なこういう政策をいたしませんために、見るに見かねて、いわゆる側隠の情にかられて多くの義人が進んで私財を投じ、あるいは無報酬というような立場で、刑余者の方とか保護を要する子供保育に欠ける子供、あるいは病人、あるいは失業者、母子世帯等々の保護をしてきたわけであります。ところが、それらの施設はいまや非常に老朽化しまして、見るにたえないようなものが出てきておるわけであります。それがもし措置費、事務費等に減価償却等の費用が含まれておりますと、それによってまた建て直していくということもできるわけであります。ところがそれが含まれておらぬ。そこで社会福祉振興会というものをつくって、われわれももちろん賛成をいたしまして、それらの施設に対する融資等をしてまいりました。しかし、そこに大きな矛盾がありますことは、非営利事業でありますために、借金をいたしましても返す道がないわけです。減価償却等の費用が措置費、事務費に入っておればいいですけれども、そうでない今日においては、返済をする道が本来はないわけです。そこに矛盾があるわけです。営利をする仕事ではない、しかし同時に、借金をすれば返済をしなければならない、その出す財源がない、こういう矛盾を持っているわけです。そこで先年来社会福祉施設児童福祉施設等を経営いたします職員の皆さん方から、減価償却の費用を措置費、事務費等に入れてもらいたいという強い要望があったのでありますが、先ほど来伺っておりましても、それがついに児童局あるいは社会局の御努力にもかかわりませず、ことしの予算に入らなかったということであります。  そこで私の伺いましたのは、この振興会法の業務方法書等を見ましても、あるいは振興会法第一条を見ましても、助成ということばが入っておるのであります。この振興会の仕事は大きく分けて三つあります。一つは、それらの施設融資をするということであります。第二は、それらのものに助成をすることであります。助成には社会福祉事業施設の従事者の研修等のこともございます。第三は、その社会福祉施設の従事者の退職金の共済制度を運営するということであります。ところが先ほど来伺っておりますと、その融資と退職共済のほうはやっておられますけれども、助成はやっておらぬのであります。なぜ助成をしないかという質問に対しましての御答弁は、これは予算が足りないということと陣容が足りない、不十分である。三十八人ですかの陣容でありまして、陣容が足りないということであります。三十八人のうち十四人は退職共済のほうをやっておる、二十人で貸し付けのほうをやっておるので手が回らぬ、こういうことであります。一方貸借対照表を見ますと、そこには相当の利益金がある、そしてそれが諸積み立て金になっている。これは予定額の九七%くらい一応なされておるということでありますが、それならばなぜ助成をなさらないか。その利益金、余裕金をもって当然助成の仕事をやるべきじゃないか。どうもそこに不熱心さがあるのではないか。消極的過ぎるのではないか。事業の安易な運営ということから考えて、ほんとうに日本の社会の第一線で基本人権を守ることができない、その欠けておりまする気の毒な人々に対する社会福祉事業あるいは児童福祉事業の、そのとおとい使命に対する十分な援護の措置、バックアップという措置が当然この社会福祉事業振興会でなされるべきでありますけれども、それがなされておらぬ、足りないのではないかということをまず第一点に伺ったのであります。  さらに考えさせられますのは、本年度のこの予算で、前年度一億五千万円でありました政府出資を一億円に減らし、そして資金運用部資金からの借り入れ金をするというようなことになっておる。資金運用部資金は、予定利息は御承知のように六分五厘、この振興会が貸します融資は日歩一銭四厘ということになっておる。逆ざやになってしまうのではないか。本年は、社会局長の御答弁でございますと何とかやっていけるが、将来はマイナスになるかもしれぬ、したがって、来年は利子補給の予算措置をしてもらうようにしたい、こう言っておるのであります。もし資金が足りぬために、いまのように貧弱な職員の組織でもって助成の仕事ができない、法律には書いてあるけれども、いまだかってしておらぬということであれば、なおさら資金をふやすべきである。一億五千万円をなぜ一億円にしたのですか。しかも逆ざやになると考えられる資金運用部からの借り入れをして、そして一銭四厘で貸すという行き方をする。それではいよいよ助成というような仕事はできないという形になってしまう。そこらに、どうも社会福祉事業振興会に対する政府のお考えというものが——今度は政府自体のお考えが消極的であって、第一線で非常な努力をしておりますこれらの社会事業家たちの期待に沿わないことになっているのではないか、どうも振興会のこの経営のやり方というものは納得しかねる、こう思うのであります。こういう点を先ほど来伺っているのでありますが、まず、どういうわけで一億五千万円が一億円になったのか、その点を大臣から承りたいのであります。
  104. 小林武治

    小林国務大臣 社会福祉事業振興会というものに対する考え方の問題でありますが、厚生省なり政府の考え方が、このものに対しては非常に不徹底じゃないか、またこういうことが、いまの資金関係にしても、きわめていいかげんのものというか、乏しいものしか盛っておらぬ、こういうことでありまして、資金量をこれからふやしてやろう、こういう趣旨のために、今度の債券とかいうものも出てきたわけでありまして、この量がふえれば政府出資は多少減ってもいい、また、こういうふうなことのために、ことしはその見返りみたいなかっこうで減ったというふうに思っておりますが、ほんとうにこれを盛り立てていくというのなら、この程度のものではだめだ、したがって、せっかく債券ができるならばこれを活用するということで、とにかく資金量をふやすことを考えなければならぬと思いますし、また、資金量をふやせばふやすほど逆ざやの問題も出てくる、だから、どうしても政府出資をふやすか、あるいは利子補給をしなければならぬ、こういうふうに考えておりますが、いずれにしましても、現状程度のこの会というのは、どうもきわめて宙ぶらりんなものにすぎない。いずれか態度をはっきりさせなければならぬ。これを通じてほんとうに社会事業振興をやらせるのか、政府が助成とは別に直接やったらどうか、こういうような考え方にまだ十分検討の足りないものがある。要するにいまはあいまいな、きわめて中間的な存在で、私はこれでいいとは思いません。したがって、政府としても、ほんとうにこれを通じて振興するのか、あるいはもっと直接的に政府が助成するのか、融資そのものは政府が直接できませんからこういうものを使う、しかし助成そのものは、この会を使わぬでも政府でもできる、こういうことで一ひとつ使い分けの考え方をきめなければならぬかと、こういうふうに私は思っております。
  105. 長谷川保

    長谷川(保)委員 確かに大臣が率直に言われたように、これは実にあいまいです。やはりもっと厚生省にしても、政府としても、社会福祉事業に対します方針を明確になさるべきである。そしてせっかく社会福祉事業振興会というものをつくってあるのでありますから——もちろん政府直接の助成もけっこうであります。大いにやっていただきたいと思います。憲法の解釈からして助成ができない、私立のものに対しては助成ができないというようなこともいろいろあったのでありますが、順次その解釈も変わってきておるわけです。助成も大いにやっていただきたい。同時にまた、こういうものがあるならば、こういうものが十分に活動できるようなふうに順次政府出資をふやしていって、そういう逆ざやになっていく−逆さやになっていくから今度は利子補給を政府からするのだ、子供のままごとみたいなことをややっておる理由はないと私は思うのです。それなら率直に金を出してやればいいと思うのであります。でありますから、こういうような中途半端なことをなさらないで、ひとつ振興会法をせっかく改正なさるのであれば、それならば政府出資を十分して、逆ざやになっていくことも承知で、そうして、来年はいいけれども将来はマイナになるだろう、マイナスになったら今度は利子補給をしてもらうというような、その日その日のやり方というものは絶対すべきじゃない。もっと断固とした態度で、やはり基本人権を守るという重大な任務を負いまする全国社会事業児童福祉事業、そういうものに対する、政府も腹をきめての助成、援助をしてもらいたい、こういうように思います。  また、その質問の過程において、私は政府の資料を見ますと、この社会福祉事業振興会は、社会福祉法人立のものと公益法人立のものに融資をすることになっておる。その他の法人の内容を見ますと、宗教法人が大部分であります。いただきました資料によりますと、その他の法人立が八百七十三ある。そのほかに、まだその他というのが二千七百九十一もございます。社会福祉法人立が千九百八十、公益法人立が六百三十三、それに対しましてその他の法人が八百七十三、個人のが二千七百九十一、こういう数がございますが、この宗教法人立、おもにこれは母子ホームや保育園、老人ホームであると思いますけれども、大体保育園が多いと思います。この保育園に対しましては、先ほど来伺っておりますと、年金福祉事業団のほうからなら融資ができるかもしれないというようなお話でございます。けれども、まだそれは必ずしもそうだということでもないようであります。個人のものにつきましては、なおさらであります。こういうようなことをしておくべきではない。やはり宗教法人にいたしましても、あるいは個人にいたしましても、保育に欠ける子供のめんどうを見ておる、事実においては子供の福祉のためにやっておるのでありますから、これらについてもまた適当な助成、融資という道を講ずべきである。先ほど来伺っておりますと、措置費等においてそういう考え方をしておるのだとおっしゃいますけれども、これは措置費が十分であればけっこうでありますけれども、実際においてはきわめて不十分、これは職員諸君の宿直費、あるいは当然支払うべき労働の対価に対しても払えないというのが現状である。しかも、先ほど来お話しのように、減価償却費は入っておらぬというわけでありますから、きわめて不十分で、経済で考えれば、子供を預かってむしろ迷惑だというたぐいのものであります。それならこれらの施設というものは衰亡せざるを得ぬ。私の知っている人で、しかも大臣の故郷である長野県のある保育園を個人で熱心にやっております人が、先ごろ会いましたときに、もう私はこの仕事は私一代でやめます、もう娘やむすこにはこんな残酷なことは押しつけられません、私は使命を感じてやってきたからいいけれども、もう私一代でやめますというお話であります。もちろん、国や地方自治体が責任を持って全部やっておりますればけっこうであります。けれども、今日、国や地方自治体がずいぶんとやりましても、この全体の社会福祉事業関係で見ますと、児童福祉も含めまして、在籍あるいは保護しております人間から申しましても、施設関係が四三%あります。数から申しましても四三%であります。こういう多くのものを施設のものにお願いいたしてある。しかもそれに、いま言うようなわけで、とてもやれないからもうやめるのだというような考え方をさしている。しかもそれは、何十年の間、惻隠の情にかられてそういう福祉施設を経営してまいった諸君であります。いわば日本の義人であります。その義人の皆さんを、最後そういうところで終わらせるというようなことはさすべきではない、これらに対する助成あるいは融資その他の道をもまた当然考えるべきである。宗教法人立あるいはまた個人立のものについても、これらの点を政府はやはり方途を講ずべきではないか、こう思うのでありますが、大臣の御所見を承りたい。
  106. 小林武治

    小林国務大臣 これは、私は逆にお尋ねしてはなはだ恐縮ですが、この社会福祉施設、私の施設に対する政府の助成は困る、こういうふうな意見があるわけですが、これは一体長谷川さんはどういうふうにお考えになりますか。日本の社会事業というものは、戦争前はほんとうの篤志家の篤志にだけたよってできたものでありまして、公にあまり触れない、こういうことでできてきた伝統は伝統として私はこれを認めますが、一体戦後のような近代的社会福祉になってああいう姿のままでいいものかどうか、私はこの際根本的に福祉施設のあり方を考えなければならぬ、すなわちあるいは公有にして民間に委託するとか、あるいは国有にして委託するとか、逆にいまのように民有にして国が組織でもって委託するとか、そういう形で従来の考え方がちっとも改まっておらないが、 このものは一体このままでいいか、何かこの際近代的社会福祉に合うように、日本の福祉事業のあり方を根本的に検討する必要がありはせぬかと私は思いますが、そういうことについて、はなはだ恐縮ですが、長谷川さんはどういうふうにお考えになっておられるか。私は当然こういう仕事は国の仕事、公共団体の仕事としてやっていくべきではないか、そういうことが近代的な社会福祉ではないか、こういうふうに考える。日本のあり方がこのままで一体いいかどうか。私はいまの経営者がみじめな思いをしていることはよく知っておりますが、これはたいへんな難事業でありまして、単なる人道愛とか人類愛だけではもうできない、こういうところにきているのでありまして、私は政府なり公共団体がほんとうにこれは力を尽くしてやらなければならぬところにきておるのではないか、こういうふうに思いますが、一方からいえば、それはいけないのだというふうな意見。ところが、御承知のように私立学校には政府から金を出してはいかぬということになりますが、まあだんだん意見も変わってきて、いまではいろいろな形で出ておる。それは間に中間機関は設けたのでありますけれども社会事業についても何かそういう考え方がないかというふうに思う。恐縮でありますが、私は何とか政府がもっと手を下さねばならぬと思うが、それがまた手足が不自由にされておる部分がある。これについてどういうふうにお考えか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  107. 長谷川保

    長谷川(保)委員 どうも私のほうで答弁するという変なことになりますけれども、私、長い間そういう方面に関係をいたしておりますので実態をよく承知をいたしておりますから、私の意見もまた大臣の今後の政策を推進させます御参考に申し上げてみたい。  社会事業、いまの教育事業でも同様でありますが、これは機械工場とは違うのでありまして、対象が人間であります。そこに設備だけをりっぱにいたしましても、その事業の目的が達せられないという本質的な問題が出てくるわけです。もちろん、設備はできるだけりっぱなことはけっこうです。完全なことはけっこうです。それには多くの金を要しますから、この資金の手当てをしなければなりません。それは国が出すか、あるいは地方自治体が出すか、あるいはまた有志が出すか、個人が出すか、いずれにいたしましても設備をできるだけ完全にするということは当然のことであります。しかし問題は、設備がよくできましても相手は人間を扱うことでありますから、そこには人間らしいもの、つまり愛情に包まれた事業の経営、一人一人の対象に対します処遇というものがありませんとどうにもものにならないのです。そこに問題があるのであります。でありますから、社会福祉事業が、その助成をしてもらわぬほうがいいというようなことはあり得ません。そういうことを言っている人はないと思う。そうではなくて、助成したが、そのかわり役人がそれに対して差し出がましく中に入り入りましていろいろ支配がましいことをする、これでは仕事ができなくなってしまうのであります。つまり、ほんとうの社会福祉事業を経営し、それを推進してまいります人々の中に、その対象に対しまする深い愛情が絶対に必要でありますから、それが欠けるような指図をされては困る。そうすると社会福祉事業の本質を失うのであります。さればといって、それでは公有民営、国有民営というような道がいいかと申しますと、これまた大きな問題をはらむのであります。それは公有という形になってまいりますと、何と申しましてもそれを所有しております側の県なら県あるいは市なら市、国なら国というものの支配が必ず入ってくるのであります。たとえば率直に申しますが、事務長は役人の古手を持ってくるということになる。それではもう仕事が全部つぶれてしまう。私は非常に苦い経験を一つ持っております。それは戦後、たぶん大臣が静岡県知事のときだったかと思いますけれども厚生省に頼まれて弁天島の母子寮をやった、それをぜひやってほしいという静岡県厚生課長の要請でもって私は引き受けました。開所の日に、集まってまいりました子供を連れたおかあさんたちが何を持ってきたか。ふろしきの中におなべ、おはしと茶わんだけを持って、ぼろぼろの着物を着て子供が手を引かれて集まってまいりました。この親子を見て私は泣きました。この子が育つであろうか、あの敗戦の直後のことでありますから、その中でこの子供がはたして育つであろうかと、私は私の経営いたしまする病院から、それゆえに最も有能な総婦長その他職員をここへ集中いたしまして、最善の努力をいたしました。当時のことで食糧がありませんから、その寮長が自動車を駆使いたしましてやみの食糧を買いに行くのを、警察もつかまえても見のがしてくれました。そうしてその母子たちを飢えから救いながら進めてまいりました。おかげで非常にりっぱな施設になって、そのころ厚生省でも、もし母子寮をやるなら弁天島へ行って見てきなさいと言うようになりました。しかし、やがて非常に奮闘した寮長が病に倒れて死にますと、その施設はたちまち今度は、県やその町村で、非常にりっぱなものでありましたから、人が入って支配するというようになりました。ここに命をかけた仕事も、少しく役人がかわり、人がかわれば、それは経営の方針が変わっていき、ついに、それから十年、十五年くらいになりましょうか、惨たんたるものになってしまいました。もちろん時代の動きもあります。ついにその母子寮は、事実上解散せざるを得ないという形になりました。こういうところに公有民営の非常に苦いものがあるのであります。私はやはり、一人の重度の精薄子供たちの命を全世界よりも重いものとしてこれを保護し、これのために献身をしていくという、ほんとうの人道的な社会事業の精神に貫かれた者たちが、りっぱな施設の中でその理想を実現していく・そのヒューマニズムを実現していくことができるような組織をつくらなければならぬと考えるのであります。したがいまして現実的には、せっかく助成というのが振興会の中にございますから助成をし、融資をし、国のほうも助成をし、利子補給をしていく等々で、できるだけその有能な諸君にまかせていく。経営、施設その他施設の新築整備一切のものを、社会事業なり児童福祉関係法人としてそれをつくってまかせていく。もちろんそれが不当な処遇をその収容者等にしますならば、これは当然当局として監督しなければなりませんけれども、りっぱに行なわれておりますならば、それをそっとうしろからバックアップしていくという形をとるべきではなかろうかというように思うのであります。助成をお断わりするという者は日本の社会事業家には一人もないと思いますが、ただ問題は、それに食いついて・実際にはそういう事業に対する十分な情熱も、あるいは意図もない者が、いわゆる役人の古手ということばで言うと誤弊があるけれども、いわばそういうことばに代表される着たちが入ってきて不当なる支配をする、それに対して社会事業家としては断固としてこれを拒否せねばならぬという形があるのでありまして、どうかひとつそれらの点をお考えの上で施策を進めていただきたい。また、そういう意味では、社会福祉事業振興会をもっと真剣に、これに対する資金の確保または合理的な経営、また法律に定められました単に融資だけではなく、助成の道も講じていくというように御尽力をいただきたい。  もう時間もだいぶ過ぎましたので、私の質問は一応これで終わっておくことにいたします。
  108. 小林武治

    小林国務大臣 よく御意見わかりました。私は、それによりまして社会福祉事業振興会を拡大していく、こういう方向に進みたいと思います。
  109. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 午後二時十五分まで休憩いたします。   午後零時五十分休憩      ————◇—————   午後二時三十六分開議
  110. 田中正巳

    ○田中(正)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  厚生関係及び労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  二月二十五日の委員会において、同和対策に関する問題について参考人より意見を聴取することに決し、その人選等については委員長に御一任願ったのでありますが、本日同和対策審議会会長木村忠二郎君が参考人として本委員会に出席されておりますので、御紹介いたします。  木村参考人には、お忙しいところ御出席をいただき、ありがとう存じます。委員からの質疑にお答えいただき、御意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。八木一男君。
  111. 八木一男

    八木(一)委員 同和対策審議会の会長である木村忠二郎さんが、お忙しいところを参考人として御出席をいただいたことを、質問を用意しておる者として感謝を申し上げたいと存じます。  同和対策審議会は、議員立法の同和対策審議会設置法という法律によってできまして、非常に画期的な問題について審議をされておるわけでございます。その会の取りまとめをやっておられる木村会長はさぞ御苦労であろうと存じまするが、非常に画期的な点について熱心に取り組んでおられる点について、感謝を申し上げたいと考えております。  そこで、この同和対策審議会の答申を本年の八月を期して出すべくいま答申案の御準備にかかっておられるようでございますが、それについて画期的な非常に熱心なものを出していただきたいというふうに考えているわけでございますが・会長のこの点についての御所信なり御決心なりをひとつ伺わしていただきたいと思います。
  112. 木村忠二郎

    ○木村参考人 ただいま八木先生からのお話でございますが、今日までこういうような問題が残っておりますることはわが国といたしましても、あまり形のいい問題ではございませんので、一日も早くこういう問題が解消いたしますように念願いたしておるものでございますが、この同和対策審議会が始まりましてから二年半くらいたちますが、この間委員の皆さんと一緒に、この問題につきましてもいろいろな点について調査研究をいたしまして、ちょうどことしの八月をもちましてこの審議会といたしまして一応終了するということになりますので、それまでにできるだけの努力をいたしまして、この同和対策というものが徹底的に行なわれる基礎をぜひつくりたい、かように考えております。
  113. 八木一男

    八木(一)委員 御熱心に取り組んでいただいて非常にけっこうだと思います。  ただ、ちょっとお伺いいたしたいのは、この同和対策の問題で先年この委員会で審議をされましたときに、審議室長のほうから、立法の趣旨については、委員各位がおわかりになるようにいろいろの、たとえばその当時の述記録なり、そういうものを配付しているのかという質問をいたしておりましたところ、そういうことをまだしていないというようなお話でございました。自由民主党、日本社会党、それから民主社会党のほうで議員立法として出しまして通していただきましたので、その当時の立法の趣旨なり、それからその前にこういう問題が発展しました状態の背景なりを、ぜひ会長から各委員に浸透していただきまして、立法の趣旨に合うような画期的な、非常にりっぱなものを出していただくというふうに御努力を願いたいと思うわけでございます。会長の御所信を承りたい。
  114. 木村忠二郎

    ○木村参考人 立法の趣旨等につきましては、この審議会におきまして、衆議院の議員の方々の御出席をいただきまして話し合ったことがございます。したがいまして、この審議会はわりあいに委員の出席がよろしゅうございまして、特に官庁側以外の委員はほとんど常に全員出席しておるといったような次第でございますので、御趣旨は十分に徹底しているものと考えております。したがいまして、できるだけの努力を払いまして、これは画期的なものができまするかどうかということは私も十分自信は持っておりませんけれども、御期待に沿うように努力いたしたいと思います。
  115. 八木一男

    八木(一)委員 実はこの問題が、国会で前から幾ぶん部分的に論議されておりましたけれども、集中的に論議がされるようになりましたのは昭和三十二年の十月ごろからでございます。参議院の予算委員会で湯山勇君だと思いますが、当委員会では、私も四回目くらいでありましたけれども取り上げました。それが契機になって、その当時の岸内閣で、閣議で同和問題を取り上げるということに十一月の半ばごろに決定をいたしたわけであります。その後この問題について、昭和三十三年の二月の末の予算委員会におきまして、三月十二日の当社会労働委員会で、予算委員会においては総理大臣が御病気か何かで副総理以下各閣僚、それから当社会労働委員会においては岸内閣総理大臣が見えまして、この問題の討議をしたわけでございます。  そこで意見の一致を見ましたことを、会長十分御承知でありまするけれども、もう一回思い起こしていただくために、そこにおりました者として申し上げてみたいと思いますが、現在非常な差別が残っている。この差別は身分的なものから出たものであるが、この差別のために非常に多くの貧困が現存している。この貧困のために差別がなくならない、かえって拡大再生産されるような状態にある。この差別と貧乏の悪循環を断ち切らなければならないし、いままで徳川時代に身分的なことで多くの人が何百年苦労してきたし、現在の部落の人たちは差別と貧乏で非常な苦しみをしている。そういうことは、この民主主義の国家では許されることではない。そういう人たちの苦しみは何が原因をしているかと申しますと、遠い昔のことはよくわかりませんけれども、少なくとも徳川時代の木多佐渡守が行政をやっていた時代から、その矛盾が非常に拡大をしている。士農工商というような階級を無理につくって、百姓は食わしむべし、飢えしむべからずというようなことで、おもな生産担当者である農民から収奪をするためにそこには名誉を与えて、物質的には収奪をする。そのかわり、支配階級たる武士の次の階級を与える。士農工商という階級だけではなくて、えた、非人という階級をさらに無理やりにつくって、名誉を与えて物質的に搾取するというようなことをやった政策のあふりを受けて、一部の同胞が非常に人間外の扱いを受けてきたということから始まっているわけでございまして、その後、明治のときに太政官布告でそれが直ったように見えましたけれども、たとえば位階勲等があり、爵位があり、そういうようなことで、前に武士階級であった者、公家階級であった者、そういう人たちにはそのような栄誉のある地位を与えられた、そのために、太政官布告は出ても部落出身の人は一般の平民よりも、片一方に栄誉の者があるため、一方でそれよりも観念的に卑しめられるようなことが消え去らないでやってきたというような状況にあるということになったわけであります。  そこで、徳川時代には斃獣処理権、その他経済的特権だけが身分的な差別にかわるものとしてあったのでありますが、明治のときに経済的特権が取り上げられて身分差別が残った。商売人としてやろうとしても、商売に適当なところに行こうとすれば家も土地も貸してくれない。これでは自由主義経済時代の競争には参加できない。それからまた、労働者として働こうとしても、身分差別があって安定したところには就職させてくれない。おまけにまた、農地解放のときの農地の改革においては、農村に住む部落の人に農地の配分がなかったというような状態であるわけであります。一方、武士のほうは、武士という俸禄は世襲的に受けることはなくなりましたけれども、秩禄公債をもってりっぱな農民になる、あるいは商売人になるという資金を与えられ、また開墾その他の援助を与えまた公務員なり、そういう恒久的な公的な勤労者として働く道を大きく開かれておったので、武士は非常によかったけれども、その反面部落の人たちは、いままでの特権を奪われて、与えられたものは何もなくて、いままで義務がなかった徴兵とか納税とかいう義務が課せられるというような条件で、実際的には、明治以後のほうがその圧迫の状態が実質的にふえたという条件にあるということに意識統一をいたしました。   〔田中(正)委員長代理退席、委員    長瀞席〕  その後明治時代から資本主義経済が興隆をいたしまして、このような半失業者がいることが、低い賃金に引っぱることに非常に好適でございますから、資本主義の興隆期においては、その問題に対処するということを一切政治がしないでまいってきた。  そういうような状態が続いて非常な貧困と差別の中にありましたので、大正時代において水平社運動が米騒動を契機として起こりまして、環境改善その他のことを政府のほうが幾ぶん始めようというような状態になったわけでございますが、その後、戦後の農地解放においては、そこでも自作農創設というようなことで問題を処理いたしましたので、その具体的な条件としては、小作権を持っている者に自作農の権利を与えるという方式をとられましたので、小作権を実際的に持っていなかった農村地帯の部落の人たちは、この農地改革の余恵にもあまりあずからなかったという状態で、依然として貧乏が続いているという状態だと理解が一致をいたしました。  そこで、岸さんとの話において——その点はもう省略いたしますが、いまの差別と貧困というものは徳川時代以来の歴代の政府の責任である、これを解決することは全国民の義務であるというふうに意見の一致を見たわけでございます。今後いかなる政党の内閣が組織をしようとも、いかなる人が総理大臣になろうとも、これを根本的に急速に解決するための努力を怠らない、努力をしなければならないということの意識の統一を行ないました。それをやるためにどうしてやるかというときに、いままで環境改善の問題は部分的に取り上げられたけれども、現在の貧困の根源は、たとえば労働者として、農民として、あるいは漁民として、あるいは中小企業者として成り立つ基盤がなかった、そういう生産関係を直していかなければならない。また、教育の問題もあるし、その他の問題もあるということで、環境改善だけではなしに、あらゆる生活の根本が立ちいくような、そのような方式でこれをやっていかなければならない。各省にまたがるので、根本的にそういう問題を進める施策をつくるために、非常に強力な審議会をつくらなければならない。各省はその間に、すでにわかっていることについてはどんどん進めなければならないけれども、それと同時に、そういうものを根本的に強力な総合対策を立てて、そうしてその答申に基づいてまた総合的に非常に強力にやっていこう。そのために予算は一切出し惜しみをしない、またそれを進める点について政党利己心は一切発揮しない、国民一致してこれをやっていかなければならないという意識統一をしたことは、会長はもう釈迦に説法で、御承知のとおりであります。そういうことでございますが、それほどの決意を持ってこの委員会で審議をされ、いろいろの過程を経まして、議員立法で同知対策審議会設置法が出たわけでございます。  会長は十分御承知でございますし、委員各位も御承知であろうと思いますけれども、国会において、あるいは政府において非常に熱意をつぎ込んでいるという点を十二分に会長さんから各委員に御配意を願って、たとえば普通に財政がどうであろうとか、ほかのいままでのそれほど任務の重くない小さい審議会の形式がどうであろうとか、そういうことは一切顧慮なさらずに、りっぱな、抜本的な、強力な答申をつくる御努力をぜひお願いをいたしたいと思うわけであります。会長のお考えを伺いたいと思います。
  116. 木村忠二郎

    ○木村参考人 御趣旨のございますところはかねがね承っておりますし、また、ただいまも十分拝聴いたしました。大体そういうようなつもりは持っておるつもりでありますけれども、何と申しましても審議会という形式のものには、そこで行なわれます審議の限界というものがございまして、現在のところでは、非常に具体的な、直ちに使えるような答申ができるという段階にはまいっていないのではないか、かように考えられます。したがいまして、将来一体どういうような形でもってこの問題を進めていくのがいいのかということに、どちらかと申しますれば、話はまいっていくのではなかろうかというような気がいたします。現在のような形式でもちましてこの審議会を続けましても、それ以上のものはなかなか出てこないのではなかろうか。いま御趣旨のような点でございますれば、その御趣旨の点に合うような形のものがございませんと、なかなかうまくいかないのではないか。審議会というものは、あくまでも一つの答申のしかたをまとめるということはありますけれども、具体的なものをまとめるにつきましては、いまのような審議会の形式でもってはあるいは十分にはいかないのじゃないか、かように存じております。私もいろいろと勉強いたしまして、この問題につきましては非常に重大なこともよくわかっておりますし、それだけにこの仕事を徹底的に進めるという意味におきましては、あるいは大きな決意をしないとできないのじゃないか、かように考えるわけでございます。したがって、いまのままでもって、いま御趣旨にございましたような考えでもって各省が実施できるという段階にまで持っていけるかどうかということにつきまして、相当疑問があるのじゃないか。したがいまして、御趣旨に合いますような答申には持っていきたいと思っておりますが、どうもそれがすぐに使えるかどうかということにつきましては、相当問題があろうかと思います。
  117. 八木一男

    八木(一)委員 会長のたいへん前向きな御答弁をいただいて非常にけっこうだと思います。もちろん審議会のほうでは予算が要るので、いままで少な過ぎてその点御苦労したと聞いております。予算がもっと多くなければいけないし、調査の費用などは少ない、そういう点でもっと十分なものでなければいけなかったのですが、その間で非常に御努力を願っておることはけっこうだと存じます。  そこでお願いをいたしたいのは、非常に大きな根本的な問題ですから、背景なり基本的な問題をぜひその答申のほうに入れていただく御努力をなさって、それからできる限りまた具体的なことをたくさんうたっていただく、そういうふうなことをぜひしていただきたいと思います。大きな問題の解決のスタートになるわけでありますから、そういうようなかまえで、歴史的なことを入れ、基本的な態度でその方向を出す、それからできる限り具体的なものをたくさん盛っていただくというふうに、ぜひしていただきたいと思います。それについて伺いたい。
  118. 木村忠二郎

    ○木村参考人 御趣旨につきましては、十分に審議会の委員の皆様方に申し上げまして、御趣旨に沿うことができるように努力いたしたいと思います。
  119. 八木一男

    八木(一)委員 それから、実はこの法律はほかの審議会の設置法と違ったところが一つ、会長御承知のとおりございます。というのは、ほかの審議会では、委員のメンバーに各官庁の代表の方とか関係団体の代表の方のほかに、学識経験者ということばで規定いたして委員を入れるのが通例に相なっております。ところが、あの法律では、経験ある者並びに学識ある者というふうに規定をいたしております。その規定をいたしました理由は、会長すでに御承知のとおり、非常に背景の複雑なむずかしい問題でございますから、他の学問においては非常にりっぱな学者でおありになっても、この問題の背景や実際の問題についてはなかなか御理解が困難なことが多かろう。したがってこの問題の解決には、そういう解決のために努力をしてきた団体の代表が非常に重要な要素を占めらるべきであるという考え方で、経験ある者というのを上位に書いたわけであります。そういう意味で、これは委員の中にも専門委員の中にもそういう関係者の方が入っておられますけれども、この方々は学識においてはほかの方たちと同じように学識がおありでございましょうし、また経験なりこの問題を解決したい熱意においては全部の委員の方、専門の委員の方、同じであろうと思いますが、特別に何十年もそういうことに苦労されただけに熱意の強いものがあろう、そういう方々の意見を十分くんで審議しておいでになると伺っておりますし、そう信じておりますけれども、そういう法律の趣旨は御理解くださっておられますけれども、ぜひそういう法律の趣旨に基づいて重視をして審議を取りまとめられるというような御配慮をお願いいたしたいと思いますが、それについて……。
  120. 木村忠二郎

    ○木村参考人 今日までのところは、関係官庁から現在行なっております状況等を承り、あるいはこの問題につきまして多年経験を経てこられました委員の方々の御意見が大部分でございまして、大体それを承っておるのがいままでの形であります。したがって、審議会に出ておりましてもほかの方々の御発言はあまり多くございません。おそらくこれからそういう方々の御意見を承って、それを基礎にして皆さまから御発言になるのじゃなかろうか、かように思っております。
  121. 八木一男

    八木(一)委員 学識経験ある方の御出席はいいそうでありますが、仄聞いたしますと各官庁の代表の方の御出席が少ない、委員である官庁の方の御出席がほとんどない、幹事である局長、課長の方の御出席が、厚生省関係を除いては非常に悪いということを承っております。もちろん、いま言ったような経験のある人が一番これに熱心で精通しておられますけれども、その間の論議に各官庁の方に参加を願って、そういう答申をまとめる趣旨を十分御理解なさって、また各官庁の立場からその官庁の部門においてはこういう計画をつくらなければならないという、積極的な気持ちになって審議をされることが非常に大事ではないかと思いますので、各審議会の例を私も知らないではありませんが、各官庁の方の出席が悪いようでありますから・どうぞ会長からそれについて注意されまして、よく御出席になって審議に参画されるように慫慂していただきたいと思います。
  122. 木村忠二郎

    ○木村参考人 審議会の審議の方法は、総会とそれから四つの部会に分けまして、四つの部会で具体的なそれぞれの分野にわたった項目について審議いたしております。それをさらに総会におきまして並行して、審議を進めるということになっておりまして、総会において取りまとめをやることになっております。いずれの会にも各官庁の担当の方々が見えておられて、必要に応じましていろいろと実情、現状その他について御説明を承っております。基本的な問題につきましては、どうしても担当の責任者であります官の方々に来ていただかなければならぬということもあるわけであります。そういう必要があります際には、官庁の状況に応じまして、出ていただける時期を選んで出ていただくようにいたしまして、十分に審議の中身が深くなりますように努力いたしております。
  123. 八木一男

    八木(一)委員 具体的な同和対策、部落解放の対策を推進する大筋は、結局審議会のいままでやっておられたことがなると思います。その具体的なものをやるために教育の問題ではどうか、環境改善の問題ではどうか、生活保護の問題ではどうか、あるいは雇用対策の問題ではどうかというときに、やはり各官庁の、具体的にそういう趣旨に基づいてどうやるかというような貴重な意見があろうと思う。そういう点で、各官庁の取り組みがあまり熱心でないということは非常に残念に思いますし、また審議にずっと参加していただくことによって、その答申が出たときに、各官庁が自分のものとしてそれの具体化をやるときにスムーズにいくと思うのです、熱意が出ると思うのです。そういう点で、ぜひもっと熱心に各官庁で出席されるように慫慂をお願いをいたしたいと思います。
  124. 木村忠二郎

    ○木村参考人 御趣旨は私も同感でございまして、できるだけ特に総会には出ていただくようにいたしたい。特にこれからの総会におきましては、だんだんと話をまとめていく方向になりますので、ぜひそういうことにいたしたいと思っております。それにつきましても会議の席におきまして委員の皆さんと話し合いまして、そういうことになりまするように、必要な方だけは必ず出ていただくようなことで審議をしてまいりたい。ただ、この会議は御承知のとおり非常にひんぱんに開いておりますので、全部の会議にいつも出ていただくということは非常に困難な事情はよくわかりますので、特にいろいろな問題がありましたときには、その問題の担当の方が必ず来ていただくようにしたい、かように考えております。
  125. 八木一男

    八木(一)委員 先ほど会長の御抱負から伺って、この答申は熱心につくられた答申をお出しいただくことを非常に期待しておるわけでございますが、非常に背景の深い何百年の問題で、広範な問題で、奥の根の深い問題でございますから、答申が出たから一ぺんにその問題の解決の道が完全に切り開かれるという問題でない場合もあると思うのです。それを解決するために、たとえば総合的な行政機関をつくるとか、たとえばまた、それを解決するための基本法的な法律をつくることを建議するとか、そういうようなこと、それから具体的にまた、審議会のほうの何といいますか、いままでの御調査が、委員関係者の熱心な御協力にかかわらず予算関係が少なかったり、またそれに対する時間が足りなかったりして十分な調査ができてないので、続けて調査をし、続けて審議また建議をするというような必要がある場合もあるのではないかというふうに考えるわけであります。そういうような総合的な行政官庁とか、あるいは基本的な立法とか、あるいはまたそれに審議会とか、そういうものが当然審議をされることが将来において必要であるというような考え方に到達をせられるのではないかと思うわけでありますが、そういう点について、積極的にほんとうに問題が解決するという体制が将来ともに答申後もできますように、ひとつそういうことを御答申の中にうたっていただく御努力をお願いいたしたいと思いますが、それについての会長の御意見をお聞きいたしたいと思います。
  126. 木村忠二郎

    ○木村参考人 まだそのことを審議いたします段階には至っておりませんので、皆さん方の意見がどういうふうに相なりますかということにつきましては、いまのところ申し上げることはできません。御承知のとおり、私は、審議会といたしまして皆さん方の御意見をできるだけ引き出しましてまとめるという形でまいりたいということで、御意見がございましたことは十分にお伝えいたしたいと思います。
  127. 八木一男

    八木(一)委員 まだ審査中でございますから、会長が御自分の御意見を明確におっしゃれないということは、当然私どもも理解をいたします。ただ、私の申し上げていることは、ほかの何百とたくさんある、審議会の中で、ごく視野の狭い、あるいは遠慮がちな答申を出しておるところが多いわけでございます。ところがこれは、立法の経過から申し上げて、ほんとうに与野党ともに、また政府も本腰に何百年の問題を急速に解決しようということでできた、これを審議していただきたいということでできた審議会でございますが、ただいま言ったような立法なり、行政機関なり、また後の審議会というものが私は必要になると思うのですが、会長も個人的に御意見をお持ちだと思いますけれども、そういうものをほかのところが出していないからといって、ほかに比べて遠慮するというようなことを一切なさらずに、何百年の問題で日本のほんとうの民主化の恥の問題を、急速に解決するためにはこういうことがなければならないというような御結論を勇敢に、強力に答申に盛っていただく。そういうような遠慮をなさらずに、この問題の本質に踏んまえて責任を果たされる意味において、遠慮をしないで強力な、そういうほかではしてないような新機軸であっても、そういうものをどしどしと答申の中に入れるというようなお気持ちで会議を御指導願いたいというふうに考えるわけでございますから、それについての会長のひとつ前向きな御決意を伺いたい。
  128. 木村忠二郎

    ○木村参考人 私はそういうことについては遠慮しない、遠慮しないことは遠慮しないでやっておるつもりでおります。それから私の意見も、審議会ではよくいろいろなことを申しております。ただどういう意見をここで申し上げるかということは、審議会の中だけのことにしていただきたいと思います。たとえば、そういうような問題につきまして、日本にこういう問題が残っておるということにつきましては、なぜ日本にだけ残っているか、外国にははたしてないのかどうかという点につきましても十分に調べたいと思いまして、いろいろと私はそちらのほうの人に聞きましたり手を回して調べておりますけれども、どうもこういう問題についての外国の例といったようなものがなかなかわからない。長年この問題につきましてやっておられる方でも、諸外国のこれについての実例というもの、実情はどうなっているのか、特に封建社会から今日までくる間にどうしてこれが解消したのか、もし解消したならばどうして解消したか、あるいは上のほうの階級関係は残っておりながら下だけは消えたのかといったようなことについて、いろいろあるわけであります。こういうようなことにつきまして社会学の学者なんかにも聞いたのでありますけれども、なかなかわからない。そういう問題がわかりますと、こういう問題の解決につきましては一番いいものが出てくるのではないか、かように思うのでありますが、なかなかそういうものが出ません。したがいまして、そういうようなことも実は考えたり話し合ったりしているのでございますけれども、なかなかそのほうでは答えが出てまいりません。したがいまして、いまのところでは現在あります国内のいろいろな問題を基礎にいたしまして、いまおっしゃったような勇敢に、あまりあたりを顧慮しないで答えが出るようにやっていきたいと思います。
  129. 八木一男

    八木(一)委員 いま国内の問題、いまの現象の問題を取り上げていただくこと、もちろんこれが必要だと思うわけです。しかし先ほども、この国会の中で与野党ともに、また政府と議院の間で意思統一をしましたものは、審議会で木村さんをはじめ専門家の方が御論議を願ったように学問的ではないかもしれませんけれども、しかし問題の本質をついて一生懸命に討議をして、政府と議会、あるいはまた与野党の間で意思統一をした問題なんです。現在の現象のもとに、そういうような非常に特殊な条件が重なって現象が起こってくる、そのもとからやはりえぐり出して考えてこなければ、現象面だけ見たのでは片づかない問題だというふうに、ここで、この委員会での意思統一がされたわけでございます。どうかそういう意味現象を深く掘り下げられるとともに、その淵源、歴史的な沿革、それからきた特徴があるわけです、貧乏の問題もほかの貧乏と違って。そういう基本的な問題から御研究になっておられますが、それを答申の中に盛ってやっていただきたい、というふうにひとつ会長から御指導をしていただきたいというお願いを申し上げるわけでございますが、どうかその点について……。
  130. 木村忠二郎

    ○木村参考人 もちろんこれは、現在表にあらわれました現象だけでもって問題が解決するものではないと思います。その根ざすところもございまするし、いろいろな問題がからみ合っておりますで、それらをあわせまして十分に考えなければ答えが出ない。なかなか広範なむずかしい問題でございますので、全体のそういう抜本的なものがここでもってすぐ出るかどうかということにつきましては、私はまだいまのところでは十分だとは思いません。しかしながら御期待に沿うように努力いたしまして、八月までにできます限り努力はいたしたい。しかし、そこまでに答えが出ないものがございますれば、それでは出ない、まだ問題があるということを残しまして出したいと、私の気持ちでは思っております。しかしこれも委員皆さん方のお気持ちでございますので、私としては、自分の意見はここでは申し上げないことにしているつもりなんですけれども、これは皆さんと話し合った上で、できるだけ有効なようにまとめたいと思っております。
  131. 八木一男

    八木(一)委員 それをおまとめになる経過で非常に大切な問題で、同和対策審議会で出された問題は、これから大事な問題を解決する一番最初のスタートになるわけです。それから、会長はじめ委員各位一生懸命やっておられることは非常に敬意を表するわけでございますが、慎重の上にも慎重に御検討なさるという意味におきまして、それをまとめられる前に、たとえば関係の各市町村の関係者であるとか、また各府県の関係団体の人であるとか、そういう人たちの意見を聞かれる、通常公開会というような、そういう会合を各地でお持ちになって、それで結論をおまとめになる御参考にぜひしていただきたいと思います。それについてひとつ会長のお考えを承りたいと思います。
  132. 木村忠二郎

    ○木村参考人 委員皆さん方には、大体いままでに数回各地方に出ていただきまして、実際に地元の声というものを十分に聞いていただくような努力をしてまいりました。したがいまして、この答申をまとめます際に、その答申というものの基礎として公聴会を開くということは、現在ではまだ予定いたしておりません。特にこれからあと、いま三月でございますから、八月までと申しますとあと四カ月ばかりしかございませんので、四ヵ月の問でそういうようなものを開くのがいいのか、そうでなしに、そういうような関係の人にいろいろな意見を聞く方法をとるのがいいか、これらにつきましては十分に審議会におきまして皆さんと相談いたしました上で、できるだけ各方面の実情なりを十二分にとらえて答申が出ることができるようにいたしたいと思っております。
  133. 田口長治郎

    ○田口委員長 八木さん、約束の時間が来ておりますから、結論をひとつ。
  134. 八木一男

    八木(一)委員 そんなに長く延びておりませんし、会長の御意見もめったに聞かれないから、もうちょっと。  公聴会の件でございますが、いま会長がおっしゃったように日限の点もあるし、いろいろな点もあると思います。ただ御調査になったときには、問題が、ほかのたとえば一般行政で普通にやっておる問題でしたら大体十のうち九まで完成している、そのうちの一つの問題について新しくやろうとするから、大体の母体が意思統一された上でやるわけです。小中学校の問題がきまっている、それを学童給食の問題をどうするかというような問題でしたらぴしゃっとわかるのですけれども、大体が非常に複雑な背景の問題でございますから、たとえば関係者から御調査の段階のときに、同和対策審議会の委員も、これから一生懸命お取り組まれる御抱負もすっきり割り切れない状態のままのときに御調査になったようなことも多いんじゃないか。ですから、それについての御調査も、非常によかったところも不十分であったところもあろうかと思うのです。そういう意味で、ぜひそういう公聴会とか関係団体の意見を聞かれるとかいうことをできるだけたくさんやっていただいて、それで一番緻密な研究のもとにおける御答申を出していただきたい。各府県別というようなことは無理でございましょうから、ブロック別くらいだったら時間をそうかけなくてもやっていただけるのじゃないかと思います。どうかぜひその公聴会等をやっていただくように会長から御配慮をいただきたいと思います。会長の前向きの御答弁を伺いたいと思います。
  135. 木村忠二郎

    ○木村参考人 先ほど申し上げましたように、審議会の委員の方々は非常にひんぱんに会合を開いて、いろいろ問題をまとめております。それからいまお話しのように、各方面の意見も十分にそれぞれの人々におきましてそれぞれ各地でもってやっていただくようにいたしたいと思いますが、皆さんがまとまりましていろいろとそういうようなことをやりますことが、なかなか困難でございます。大体総会を開きます際には、皆さんの御都合のいい日を聞きまして総会の日をきめておりますので、これが出かけましてそういう話を承るようなことができるかどうかということは、どうもいまの審議の状況からいいますと非常に困難じゃなかろうかと私は思っております。御趣旨につきましては十分よくわかりますので、できるだけ御趣旨に沿うように努力いたしますけれども、公聴会の形式でやるかどうかということにつきましては、審議会としまして問題がございますので、みんなの意向を十分まとめてやるということでもって御了承願いたいと思います。
  136. 八木一男

    八木(一)委員 会長のお話のように、中央でいろいろな意見を聞かれるだけでなしに、少なくともブロック別くらいに関係団体や行政的な関係者、そういう意見を再度聞かれて答申の完ぺきを期すようにぜひとも御努力を願いたいと思います。それからもう一つは、これは幾ぶんあれですけれども、この法案の提出者は自民党の秋田大助氏であります。同時に私も提出者になっております。それから民社党の、これはいま名前をちょっと忘れましてその方に失礼でありますが、三名が提出者になっているわけでございます。前に各政党の意見を審議会のあなた方がお聞き取りになったことがございましたけれども、残念ながらそのときには秋田氏も私も、私はブラジルに行っておりましておりませんでしたが、何らかの機会にこういう立法者の、審議会にお願いたした者の考え方を聞かれるとか、私どもも皆さんの考え方を伺うとか、そういう機会をつくっていただけるように御努力をいただきたいと思います。それについての会長の御意見を承りたい。
  137. 木村忠二郎

    ○木村参考人 その御意向を前から承っておりましたので、実は先般そういうことによっておいでを願うようにお願いした。ちょうどそのときには自民党並びに社会党からおいでいただきまして、いろいろお話を承りました。提案者の方の御意見は承りませんでしたが、承ったわけです。今後におきましてまたいろいろと皆さんと相談をいたしました上で、各方面において御都合のいいようなことになりますすれば、そういうことができるようにいたしたいと思います。
  138. 八木一男

    八木(一)委員 それでは一番最後にもう三分ぐらい……。大体審議会で御調査願って非常に熱心に取り組んでいただいておることについては、立法者の一人といたしまして感謝を申し上げているわけでございますが、非常に熱心に取り組んでおられるのに老婆心みたいなことを申し上げて恐縮でございますが、非常に画期的なもので非常に大事なものでございますので、ぜひそういう御審議にはいろいろな点で完ぺきを期していただきたいことと、答申にはぜひ、ほかの小さな一時的な問題を取り扱うものでない、根本的な審議会としての非常に強力な御答申、どちらも歴史的に、基本的に考えて具体的な問題についてできるだけたくさん盛る、将来それを動かしていくためにどういう機関が必要である、どういう法律が必要だというところまで込めた、ほんとうにりっぱなものをつくっていただくことを心からお願いし、御期待を申し上げるわけでございますが、会長の総括的なあれでもけっこうでございますから、前向きに、非常に熱心にやっていただく会長がさらに熱心に会を運営していかれるという決意を伺いたいと思うわけであります。
  139. 木村忠二郎

    ○木村参考人 私はあまり自信がないのでございまして、ものをあまりよく知りませんし、このごろは少しぼけてしまって御期待に沿えるだけのことができるかどうかわかりませんけれども委員皆さん方はその道に長年戦ってこられた方々であり、この方々はもちろん十分に自信を持ってやっておられると思いますし、その他の方々におきましてもこの問題の非常に重大なことについてよく認識をしておられまして、またそれぞれの道におきます専門の学識経験を持った方であります。しかもこの問題について取り組む決意を持っておられるように私拝見いたしております。皆様方の御意見を十分に引き出しまして、まとめるように努力したいと思います。何を申しましても、私至って若輩と言ってはおかしいのですが、若輩のつもりでおります。その上に少しぼけておりますので、努力しても十分御期待に沿えるように取りまとめができますかどうかということは自信がございませんけれども、私としましてはできるだけのことはやりたいと思っております。
  140. 八木一男

    八木(一)委員 一番最後の締めくくりのようなことを申し上げて一つ忘れましたのでもう一つお尋ねしますが、各関係の団体の御意見を聞れるということを伺いまして、非常にけっこうでございます。ぜひ地方においてもそうでございますし、中央においても各団体の意見を答申の前にお聞きになって御参考にしていただくことと、前に申し上げた説明のくだりで、予算についてはとにかく制約してはならないというようなことになっておりますので、ひとつ予算関係の答申の内容については勇敢にやっていただきたいということをぜひお願いしたいと思います。部落解放同盟とかその他の関係団体の御意見を、ぜひ中央においても地方においてもお聞き取り願いたいと思います。また予算について遠慮なさらずにやっていただきたいということについて、もう一回お願いいたします。
  141. 木村忠二郎

    ○木村参考人 答申につきましては、別にわれわれとしては遠慮しなければならぬ立場でございませんので、皆さんの意見のまとまったようにお答え申し上げるつもりでございます。また各方面の御意見も、できるだけ時間の許す限り、皆さんの都合のつきます限り聞きたいと思っておるのです。みんながそろって聞かなければならない場合が多いわけでありますが、皆さんをそろえるほうに手間がかかりますので、できるだけ努力いたしまして皆さんをそろえて十分に御意見をお聞きしてまりたいと思っております。
  142. 八木一男

    八木(一)委員 どうもありがとうございました。
  143. 田口長治郎

    ○田口委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  木村参考人には、有意義な御意見をお述べいただいてまことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  本日はこの程度にとどめ、次会は明十九日午前十時三十分より委員会を開会することとし、これに散会いたします。    午後三時二十二分散会