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1964-02-12 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月十二日(水曜日)     午前十時三十一分開議  出席委員    委員長代理理事 田中 正巳君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 亀山 孝一君 理事 澁谷 直藏君    理事 大原  亨君 理事 河野  正君    理事 小林  進君       伊東 正義君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       塚田  徹君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    渡邊 良夫君       亘  四郎君    伊藤よし子君       滝井 義高君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       吉田 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (公衆衛生局         長)      若松 栄一君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君  委員外出席者         文部事務官         (体育局学校保         健課長)    高橋 恒三君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 二月十二日  委員大坪保雄君及び松浦周太郎辞任につき、  その補欠として塚田徹君及び竹内黎一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員竹内黎一君が塚田徹辞任につき、その補  欠として松浦周太郎君及び大坪保雄君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 二月十一日  駐留軍労働者の雇用安定に関する法律案(中村  高一君外十二名提出衆法第一〇号)は本委員  会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一九号)  麻薬取締法の一部を改正する法律案内閣提出  第四三号)  医療金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第六一号)  予防接種法の一部を改正する法律案内閣提出  第三〇号)(予)  厚生関係基本施策に関する件(防疫対策に関  する問題)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 これより会議を開きます。  内閣提出の、社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案麻薬取締法の一部を改正する法律案医療金融公庫法の一部を改正する法律案及び予備審査のため本委員会に付託されております予防接種法の一部を改正する法律案、以上四案を一括して議題とし、審査を進めます。     —————————————
  3. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 提案理由の説明を聴取いたします。小林厚生大臣
  4. 小林武治

    小林国務大臣 ただいま議題となりました社会福祉事業振興会法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  社会福祉事業振興会は、社会福祉事業施設経営に関し、必要な資金貸し付けその他社会福祉事業に関する必要な助成を行なうとともに、社会福祉施設職員退職手当共済制度運営している特殊法人であり、社会福祉事業振興に多大の寄与をいたしておりますことは、御承知のとおりであります。  この振興会の行なう貸し付け業務につきましては、従来国の一般会計からの出資金をもって事業を行なってまいりましたが、振興会貸し付け資金に対する需要は最近著しく増大しており、国の出資のみに依存する従来の方式ではこの需要に十分こたえることが困難であります。  よって、この際社会福祉事業振興会法の一部を改正し、振興会財務会計作に関する規定整備し、振興会貸し付け資金の充実をはかろうとするものであります。すなわち、一般会計からの出資のほかに振興会社会福祉事業振興債券を発行することができる旨の規定を設け、振興会資金の公募を行なうことができるようにするとともに、政府から資金運用部資金貸し付けを受けて、社会福祉事業施設に対する貸し付け原資に充てることができるようにしたい考えであります。  このことに伴い、この改正法案には、債券債権者先取特権債券発行事務委託等について規定しております。また、振興会は、毎事業年度債券及び長期借入金について償還計画を立てなければならないこととするとともに、その他所要規定整備をいたしております。  以上が、この法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願いいたします。  次に、麻薬取締法の一部を改正する法律案につきまして提案理由を御説明申し上げます。  麻薬事犯を取り締まるため、現在厚生省に百五十名以内の麻薬取締官を、都道府県に通じて百二十名以内の麻薬取締員を置くこととされておりますが、最近における麻薬事犯巧妙化潜在化等の傾向が顕著であることにかんがみ、麻薬取り締まりの態勢を整備強化するため、麻薬取締官の数を百六十名以内に、また麻薬取締員の数を百三十五名以内にそれぞれ増員する必要があると考え、所要改正を行なおうとするものであります。  以上がこの法律案提出する理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことを御願いいたす次第であります。  次は、医療金融公庫法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  改正の第一の内容は、医療金融公庫に対する政府追加出資についての規定整備することであります。  医療金融公庫は、私立の病院、診療所等の設置及びその機能向上に必要な長期、かつ、低利の資金であって、一般金融機関が融通することを困難とするものを融通することを目的として、昭和三十五年七月に設立されたのであります。  設立以来、公庫におきましては、逐次貸し付け原資の増額をはかるとともに、貸し付け限度額の引き上げ、貸し付け利率引き下げ等、その貸し付け条件を漸次改善緩和し、医療の適正な普及向上に寄与してまいりました。これに応じて、公庫資本金も、創設当初の十億円から現在の八十一億円に増加されているところであります。  昭和三十九年度におきましては、政府は、公庫貸し付け原資として百三十五億円を予定し、これに要する資金として、資金運用部資金借入金八十五億円及び貸し付け回収金二十一億円のほか、一般会計から二十九億円を出資することといたしております。このような従来の経緯にかんがみまして、政府公庫に対する出資金はさらに将来も引き続いて増加する必要が予想されますので、資本金法律一定額とされていたたてまえを改め、政府は、必要があると認めるときは、予算で定める金額の範囲内において公庫に追加して出資できることとするとともに、政府出費があったときは、その出費額により資本金を増加するものとすることといたしたのであります。  次に、改正の第二の内容は、公庫監事権限に関する規定整備であります。  監事は、公庫意思決定機関及び執行機関とは独立して公庫の適正な運営を確保するために設けられた監査機関でありますが、このような監事制度に期待されている機能を十分に発揮させるためには、特に監査結果の積極的な活用をはかる必要がありますので、監査結果に基づいて監事総裁または総裁を通じて主務大臣に対する報告を行なう権限を有することといたしたのであります。  以上がこの法律案提案理由でありますが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。  次は、予防接種法の一部を改正する法律案について、その提案理由を御説明申し上げます。  従来、予防接種法による急性灰白髄炎予防接種には不活化ワクチンを用いていたのでありますが、経口生ポリオワクチンの効果及び普及性にかんがみ、不活化ワクチンにかえて経口生ポリオワクチンを用いることにいたしたのであります。  これに伴い、予防接種を実施するにあたっての定期に関する規定改正することといたした次第であります。  以下、簡単に法案内容を御説明申し上げます。  従来、急性灰白髄炎予防接種定期は、不活化ワクチンにより、第一期を生後六月から生後二十一月に至る期間、第二期を第一期終了後十二月から十八月に至る期間と定めていたのでありますが、これを改めて、経口生ポリオワクチンにより、生後三月から生後十八月に至る期間と定めたのであります。  なお、改正法昭和三十九年四月一日から施行するものとし、施行時において、従来の不活化ワクチンによる予防接種を受けて完了するに至っていない者等については、別に定期を定めて経口生ポリオワクチンによる予防接種を受けることができるよう措置いたしております。  以上がこの法律案提案する理由及びその概要でありますが、何とぞ慎重にご審議の上、すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。
  5. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 以上各案に対する質疑は、後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  6. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。河野正君。
  7. 河野正

    河野(正)委員 本日は、一、二の点につきまして所見をただしてまいりたいと考えます。まず、本論に入ります前に、当面して私は一つ問題点につきまして、若干この際大臣所見を承っておきたいと思います。  それは、先般来、医療協をめぐりまする、中央医療協議会中心といたしまするところの問題がかなり重大な事態にございますることは、御案内のとおりであります。もちろん、私は、その問題そのものについての質疑をきょうやろうと思いませんけれども、しかし、私ども国民の一人として、この国民医療というものが適正に行なわれることを強く期待するものであります。そういう意味で、今日、医療費問題をめぐっての中央医療協議会事態というものは、私はまことに遺憾だと考えております。そういう事態解決のために、私は特に厚生大臣も格段の御努力をせらるべきだというふうに考えるわけでございますけれども、その点に対しまして、実はこの七日の閣議後の記者会見におきまして、医療経営実態調査を四月より実施する、その点を事務当局に強く要請をされた。この点でございますが、この実態調査につきましては、中央医療協議会の中でもいろいろ支払い側の強い要求等もございます。また、やるべき点について、私どもがとやかく言う筋合いのものではございませんけれども、ただ、いま中央医療協議会の中で、支払い者側医療担当者側との間において対立が出ておりますことは、御承知のとおりでございます。しかも、その両者の間において、この実態調査に対する見解がそれぞれございますことも、また御承知のとおりでございます。そういうような事態の中でこのような強い要請事務当局に与えること、いま何とか中央医療協議会という土俵の中で医療費問題の迅速な解決をはかっていかなければならぬ、そういう事態の中で、再び刺激を与えるような処置というものがはたして適切であるのかどうか、私どもはそういうことを国民医療という立場から憂えるものであります。いま国民もひとしく中央医療協議会の今後の運営について重大な関心を持っておりますので、そういう点から、この際ひとつ大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 お話の件でありますが、私ども、御承知のように、昭和三十九年度の予算でも、医療実態調査の経費を、大蔵省の承認を得まして皆さんの御審議をいただくことになっております。長い間、実態調査というようなものが要望されながら実現してきておらなかった、こういう事態からいたしましても、医療費体系等を根本的に適正化する、こういうことのためには、私は趣旨としては実態調査がどうしてもなければいけないだろう、こういうふうに思っておるのでありまして、実はいま、医療協に対しましては、さしむき緊急是正についての御意見をお伺いいたしておるのでありますが、それに引き続いて、どうしても私は医療費適正化という問題を課題として取り上げなければならぬ。そのためには、御案内のようにもう医療費基本問題調査員の依嘱もいたしておりまするし、これとともに、今度は医療実態というものをある程度調べなければ適正化に進むことは困難ではないか、こういうふうに思いまして、この実態調査というものは、もともと私ども医療担当者の心からの協力を得てやらなければならぬ。したがいまして、一番問題になるものは実態調査の、内容項目等でありまして、これらにつきましても、協力を得たいと思う方々と十分話し合いをしなければできない、こういうふうに考えておりますので、これをやるには相当な準備が要る。すなわち、項目内容等につきましても一応の素案を得て、そして関係者とも十分協議をいたしましてやりたい。こういうふうな考え方からして準備を早くしなければならぬ、こういう考え方で私はその内容項目等について役所考え方をまず一つ出せ、そうしてそれを皆さんにおはかりして進める、こういうふうな考え方からこういう指示をいたしたのでありまして、将来の問題として、やはり私はぜひひとつ実態調査はしなければならぬ。それで、いま申す緊急是正に引き続いてすぐにでもやりたい、こういうふうな考え方からしてさような事務的の準備をさせたい、こういうふうに考えております。
  9. 河野正

    河野(正)委員 いま大臣からもお答えをいただきましたように、その内容項目につきまする問題にいたしましても、それはいろいろ準備はあろうかと思いますけれども、しからば実質的にこの医療調査を実施するという段階になりますれば、これはもう日本医師会協力を求めなければ実行できないということは当然であって、その点については大臣も十分御承知願っておりますようで、やはり日本医師会協力を求めなければならぬ、こういうお話のようでございます。日本医師会協力なくしては医療実態調査はできるものではございません。もちろん、医療費体系の問題について、実態調査が必要だというようなことでそういう方針が出されたと思いますけれども、しかし、この医療費体系是正をやるにいたしましても、やはり中央医療協議会の中で論議をしていかなければならぬ。そういたしますと、その中央医療協議会構成の中では、やはり日本医師会参加ということが当然必要になってくるわけです。そこでいろいろ検討いたしましても、やはりこれは医業調査自身にも日本医師会協力を得なければならぬと同時に、その前に、前提として、やはりこの中央医療協議会に対して日本医師会というものが参加をしていくという前提というものが当然伴わなければならぬ。ところが、いまこの医療費問題をめぐって、中央医療協議会というものが開催できないという状態に置かれております。そこで私は、なるほど大臣がいまお答えになったように、この医療費体系根本的是正のためには医業調査というものが前提として必要だというようなことになりましても、やはりいま申し上げますように、どうしてもこれは日本医師会協力というものがなければならぬ。また、中央医療協議会構成の中でも協力を求めていかなければならぬということでございますから、いまのような事態の中で、こういうふうないかにも刺激的な御見解発表されることが、私はタイミングとして適切な処置であったかどうか、そういうことをやるやらぬということは別として、そういう御発表をされることがいまの時期に適した処置であったかどうか、私どもはそういう点は非常に疑義を感じます。もちろん、私ども国民の一人として、いまの医療費問題については非常に重大な関心を持っておるということに端を発して、そういう私ども所見を述べておるわけです。私は、そういう意味では私の意見は建設的な意見だと思っておりますが、どうも私は、いまのような大臣方針ではこの医業調査についても必ずしもスムーズに事が運べるというふうに考えませんし、また、その以前におきまする中央医療協議会構成についても、かえって私は悪影響をもたらすのではなかろうか、そういうことを感ずるわけでございますが、その点に対して重ねてお答えをいただきたい。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 お話のような御意見もあり、適切な時期であったかどうかということにつきましては、河野さんのような御意見があったことをひとつ十分に私も了承したい、こういうふうに思います。  なお、中央医療協につきましては、これが機能を停止したとかいうふうな段階にまだ至っておりません。会長も、極力近く医療協を再開したい、こういうことであり、私どももそれを強く希望いたしておるのでありまして、緊急是正の問題が、そう長くこのままの状態でいいとは思っておりません。世間でもこの必要が相当に強く要望されておるようにも私どもは看取をいたします。したがいまして、これに続いてすぐにでも、実態調査でなく、医療適正化という問題に私は当然取り組んでいかなければならぬ、こういうふうに思っております。さしむきのところは、医療協会長も非常に期待をされて努力をされておりまするし、われわれもそれを強く希望いたしておる、こういうことでありますので、これらの問題が進捗をするであろう、私はこういうふうに考えておるのであります。したがいまして、それに続く問題としてどうしても適正化問題を課題としなければならぬ、こういうふうに考えます。ただいま実態調査をいますぐやる、こういうふうなことを言うたことが時期に合わない、こういうふうな御意見でありますが、私がいま申したように、これは相当な準備を要しますので、そういうふうな趣旨でもってこれを指示した、こういうことでございますから御了承を願いたい。むろん、これらは医療協にもお聞きをしたり、また、担当者側にも十分な御理解を得なければならぬということで、少し早目に出発する必要がある、こういうふうな考え方を持っておったのでありますが、その時期が適当であったかどうかということにつきましては、御意見了承いたしました。
  11. 河野正

    河野(正)委員 ちょっと、いま大臣お答えを聞いておりますと、私ども矛盾を感ずるわけです。これはどういうことかと申しますと、やはり将来医業調査をやらなければならぬというようなことになりましても、その医業調査というものを円滑に実施していくためには、どうしても日本医師会協力を得なければならぬということは、これはもう何人も否定することはできぬと思うのです。そういたしますと、やはり私は、その前段階の問題として、今日問題になっておりまする医療費問題というものがある程度うまく解決しない限りは、その後の実態調査について、医師会協力のしかたというものも非常に変わってくると思うのです。というのは、いま大臣お答えになりましたような緊急是正の問題、それからさらに段階的には医業実態調査、こうなるわけですけれども、その中からまた医療費体系というものの根本是正が行なわれるわけですから、そこで、どうしてもこの実態調査、さらに医療費体系根本的是正という、その以前の、現在の緊急是正というものが手ぎわよく行なわれぬ限りは、あとの問題に対しまする医師会協力というものも非常に左右されてくると思うのです。しかも、いま大臣は、いまの緊急是正というものがそう長い時間かかるものとは考えぬ——要するに、短時間でいまの緊急是正というものが解決するならば、その結果を待ってこの医業調査準備事務当局に命ずるなら命ずる、私はこのことがきわめて適切な方法だと思うのです。この、いまの緊急是正というものは非常に時間が長くかかる、そういうことならば、すでに予算も五千万円ついていることだし、これに準備が間に合わなかった、そこで事務当局にそのいう準備を命ずるということならば話はわかるわけですけれども大臣は、いまの緊急是正というものが長くかかるものとは思わなかったということなら、私はやはりその解決手ぎわよくやって、そしてあと実態調査をやるならば、それに対しまする医師会の積極的な協力を求めていく、こういうことでなければならぬと思うのです。その点、大臣お答えを聞いておりますと、若干どうも私どもふに落ちぬ点が出てまいります。ですから、そういう点からも、今度の発表というものは何か高姿勢のような印象を実はわれわれ受けるわけです。そういうことではなかなか解決できぬわけですから、誠心誠意——やはり医療という問題は、国民健康保持増進にとりましてもきわめて重大な問題ですから、この点はひとつ細心の注意を払って、慎重な態度で臨んでいただかなければならぬ、こういうふうに考えます。そういう意味で、今度の処置についてはある程度の反省が必要ではなかろうか、こういうように思うわけですが、その辺はいかがですか。
  12. 小林武治

    小林国務大臣 実は従来、役所予算が通ってから、施行が何でも非常におくれております。これは実は実態調査だけに限りません。たとえばし尿処理とか環境整備にしましても、あるいは厚生年金事業団融資にしましても、十月、十一月になってしまうのです、おそいのは。ところが、これらの事業がそんなになったら、東北、北海道は仕事ができません。したがって、私は、従来こういうものの決定が非常におそいということを、役所一つの大きな欠陥として認めておるのです。したがって、もう今度は、予算審議を願ったならばできるだけ早く実施したいということで、実は実態調査に限りません、あらゆるものについて、私は、四月、五月にもみなやりなさいということで事務当局には万般について強く指示をしておりまして、融資とか起債とかの決定が八月、九月になるようなことはいけない、こういうことで全部の仕事をいま督励をしておるので、たまたまそのうちの仕事一つとしてこれを新聞社が取り上げた、こういうことでございまして、別に他意があるわけではありません。私は、厚生省仕事全部について、せめて六月ごろまでにはほとんど地方に指令の出るようにしたい、こういうようなことでいまから強く指示督励をいたしておる、こういうこと。しかも、実態調査といいましても、なかなか簡単にはできません。もうまごまごすると一年もかかる、こういうことで、実は適正化などはできるだけ早くしたい。そのためには実態調査も早く行なわなければならぬ、こういうことで、私は、これに限らず、全部についてさような指示督励をしている。その一部をたまたま新聞社がお取り上げになった。そのことを当時、私申したのでありますが、環境整備についてももう四月、五月には補助も決定しろ、こういうことまで言っているわけで、これ一つを取り上げて他意があって申したのでないということだけは、ひとつ御了承を願いたいと思っています。いまの時期を得なかったというふうな御意見は、とくと参考といたして考えます。
  13. 河野正

    河野(正)委員 厚生行政全般についてそういうふうな方針で臨まれてけっこうですけれども、中には非常に微妙な問題もあるのです。そういう点については、今後細心の注意を払って処置されんことを望みます。また、大臣もそういう方針で臨むということでございますから、ぜひそういう方向でやっていただきたい、そういうように考えます。  それから、きょうの本論でございます。九州地方中心として現在猛威をふるいつつございますインフルエンザの問題を中心として、防疫体制問題につきまして若干お尋ねを申し上げてみたいと思います。  私どもの最も信頼いたします委員長もとうとうインフルエンザで倒れられて、きょうは御不快のためにお休みのようでありますけれども、そういうように各方面にわたりまして犠牲が起きているのが実情でございます。私どもが承る範囲におきましても、この二月八日現在で、一番新しく静岡が加わって、今日、一都二十一県にこの浸淫状況が波及をしたというふうに承っております。患者数にいたしましても、八日現在で十三万八百九十七人、大体一日に一万人ずつ増加をいたしておるというふうな状況のようであります。このインフルエンザの問題につきましては、昭和三十七年におきましてもインフルエンザA2型が非常に猛威をふるいまして、国会でも論議せられたところでございます。特に今度の場合はいろいろ事情等も若干異なっておるようでございますので、現在の実情等についてひとつ厚生省とそれから文部省、——これは学校閉鎖等がございますから、両省のほうからあらかじめ御報告をお願いしたいと思います。
  14. 若松栄一

    ○若松政府委員 ただいま御指摘がありましたように、インフルエンザの流行が戦後数回繰り返されております。ことに最近におきましても、三十一年以来、ほとんど毎年のように流行を繰り返しておりまして、しかも三十二年には、いわゆるアジアかぜという新しい株による新しい流行が起こって、約百万人という患者が出たわけでございます。現在のところは、三十七、八年が流行がなかったところに、本年突如として流行が起こった。三十七年は春でございますが、その秋と冬以来なくなってきております。そういうことで何分新しい流行が起こるのではないかという期待はいたしておりましたが、現在までのところ、御承知のように約十七万人の報告がございます。これは累計でございます。
  15. 高橋恒三

    ○高橋説明員 文部省といたしましては、速報を厚生省からいただいておりますので、厚生省の数といたしましては、ただいま五日現在までの数によりますと、休業学校数は百十三校、学級を閉鎖しておりますものが四百三十二学級でございます。これは二月五日現在の速報でございます。
  16. 河野正

    河野(正)委員 二月八日現在を聞いたのですよ。
  17. 高橋恒三

    ○高橋説明員 十一日現在の厚生省の速報によりますと、休校数が百九十八校、閉鎖学級数が七百四十四学級でございます。
  18. 河野正

    河野(正)委員 いま事情を承りましても、八日以後十三万人から十七万、なおまた、学校の閉鎖あるいは学級閉鎖の状況を見てまいりましても、非常に急激に増加をいたしております。ところが、その間の経緯を見てまいりますると、きわめて不手ぎわな点が非常に多かったと思うのです。そういうような政府の対策の不手ぎわによって、いまのように国民が流感のために倒れる、あるいはまた、いま進学期、入学試験等も迎えまして、学校関係ではきわめて重大な段階でございますけれども、そ中での学校閉鎖、学級閉鎖というものが非常に急激に上昇していくということになりますと、私は、全くこれは国民にとりましても不幸であり、また学校の学生や学童にとりましても全く不幸であり、かつまた国民は、今日の政府防疫体制に対しましては、非常なる不安を感ぜざるを得ないというのが実情ではなかろうかと思う。こういうふうに強く指摘せざるを得ないのでございます。  そこで、そういうように急激に患者が増加をし、また一方、学級閉鎖がだんだん増加をしてきた。こういう点についてどのような措置を厚生省あるいは文部省ではやってこられたのか、その間の実情をひとつ承りたい。
  19. 若松栄一

    ○若松政府委員 インフルエンザの流行は、ただいま申し上げましたように三十七年の春に流行がありまして、その後ございません。そこで、三十七年はA2のアジアかぜの流行でございますが、これらの流行はかなり大きかったことにかんがみまして、何とか今後このような流行を食いとめたい、大きな流行を食いとめるためには、流行のかなめになりまする小中学生、これを免疫にすることによって流行を食いとめようという方策を立てました。したがいまして、三十七年の流行のあと、直ちに小中学生を対象にいたしまして全国的な予防接種計画を立て、これを実施いたしたわけでございます。そのためか、三十七年の秋冬にかけまして発生がほとんどなくなりました。また、三十八年度におきましても、ほとんど流行が見られなかったのでございます。これで私どもは、インフルエンザの予防接種が相当な効果を及ぼしているものであるという考えを持っております。しかし、もう一つどもが心配いたしましのは、従来の日本の流行がB並びにA2の流行でございましたが、三十七年の秋に、台湾に台湾Bと称します株の新しい流行が報ぜられております。その台湾Bの流行は台湾局地にありましただけで、その後世界のいずこにもあらわれておりません。したがって、もしこれが新しい株であるとすれば、当然どこかに飛び火するであろう、そうしてどこかで新しい流行を起こすであろうということを予想せざるを得ないわけでございます。そこで最も距離的に近い関係にあります日本においては、当然この警戒をしなければならぬということで、三十八年の初めに台湾Bの株を入手いたしました。これをどのようにするかということで協議いたしました結果、当時製造いたしておりますインフルエンザ・ワクチンの中に、これから間に合う分についてはこの株を入れようではないかということを緊急決定いたしまして、三十八年の四月以降製造にかかわる分につきまして、台湾B株をワクチンの中に入れたわけでございます。もしも台湾Bの流行が起こったといたしましても、ある程度これで防げるということを期待いたしておりました。ところが、今年の一月の終わりに至りまして、各地に流行が起ったということで、これはうっかりすると新しい流行が起こったかもしれないということを考えまして、台湾Bの動向について非常に注目をいたしておったわけでございます。ところが、血清検査を実施いたしました結果は、従来のワクチンに入れておりますA2並びにBについて免疫が相当高いにかかわらず、流行が起こっておる。これはどうもおかしい。これは具体的に申しますと、患者の罹患当時の免疫度が、いわゆる血清検査で三十二倍ないし六十四倍あれば通常流行が起こらないというふうにいわれておりますのに、六十四倍あるいは百二十八倍という免疫度を持っておるにかかわらず罹患しておる。これは従来の型ではなさそうだ、したがって台湾Bであるかもしれぬということを直ちに感じて、その検査を進めていたわけであります。そういうわけで、台湾Bに対して手はずを整えていたところこの流行が起こったということで、しかも台湾Bに対して、罹患した患者につきまして相当免疫が上がっております。そういうことで、台湾Bの流行であろうという推測をいたしまして、今後ワクチンを接種する分については、できるだけ台湾Bの入ったワクチンをやるようにという指令を出したわけであります。
  20. 河野正

    河野(正)委員 台湾Bを混合ワクチンとして採用された点は、もちろんそれはわれわれ異論はありません。ところが、その前堤となります基礎条件、この点について私は政府に対して、非常に不手ぎわな点があったし、なおまた、こういう防疫という最も科学的な問題に対しまして非科学的な点があった、この点は、ぜひひとつ大臣はお聞き取りいただきたいと思うのでございます。   〔田中(正)委員長代理 退席、井村委員長代理着席〕  厚生省は、二月の六日ですか、九州地方中心として多発した集団かぜは新株のB台湾型、こういう発表を実はされておるわけです。しかもこの厚生省がB台湾型と発表された論拠というのは、単に血清反応だけの所見でそういう発表をなさっておる。これは当然、私どもから言わせますと、ビールスの検出を待ってやるというのが最も科学的な論拠でございます。ところが、もし今日はやっておりますのがB台湾型であれば、これはもう拙速をとうとぶという考えであればそれもいいかもしれませんが、そういう非科学的な処置をとってそうして政府発表した。ところが、朝令暮改と申しますが、八日の日には、実は台湾Bではなかった、B型だ、こういうふうな訂正発表が行なわれておるわけです。これは国民を冒涜するもはなはだしいし、また、この秋にはオリンピックを控えて、日本の防疫体制についても根本的に検討しなければならぬという重大な段階でございます。にもかかわりませず、いま言ったように朝令暮改というのか、ずさんな、結果だけを見て厚生省は台湾型と発表した。そうして一日おいて八日の日には、間違っておりました、ここで厚生省の役人が数字を一けた読み違えて発表するのとは、これはたいへんな違いです。これは、いま申し上げるように科学的な論拠で当然やらなければならぬ。全く不十分な所見に基づいてそういう発表をされる。先ほど局長から、いろいろワクチンについて非常に努力したと言われた、その努力は買うといたしましても、そういう間違った条件に基づいて努力されても、これは何ら効果がないわけです。東を向いて行かなければならないのに一生懸命で汗を流して西向いて行ったって、国民はありがとうございましたと言わなければならぬのか。これは私は科学者の立場から見ましても、また国民の立場から見ても、厚生省は全く軽率なそしりを免れぬと思うのです。この点はぜひ大臣からもお答えいただきたい。
  21. 若松栄一

    ○若松政府委員 確かに、六日に台湾Bらしいと申し上げまして、八日に台湾Bでないという発表をいたしましたことは、いささか軽率に見えるかもしれません。しかし、これは私どもの立場からいたしますときわめてやむを得さる事情があったと思います。といいますのは、先ほど申しましたように、私どもといたしましては、従来のA2あるいはBの流行はインフルエンザ・ワクチンのキャンペーンでかなり防げるのであろう、しかし、もしも台湾Bが流行いたしたとすれば、これは従来のワクチンでは若干ききが悪いであろうということを予想いたしました。しかも台湾Bが流行するのであろうということは十分予想いたしましたけれども、全く新しい株が流行するということは予想いたしておりませんでした。したがって、台湾Bが流行することをあらかじめ期待し、その用意をしておったわけでございまして、しかも患者の血清を見ましたところ、発病当初に十六倍であったものが、十数日後の回復期の血清で百二十八倍というきわめて高い値を示しましたので、これは台湾Bが入ってきたに違いないという断定をし、しかも先ほど申しましたように、もしも台湾Bであるとすれば、できるだけ台湾Bを含んだワクチンを今後使用しなければならぬということで、緊急措置をとったわけでございます。ところが、あにはからんや、従来のA2でもBでも台湾Bでもない、全くそれとは違った新しいビールスであった、こういうことは私ども予想いたさなかった点でございます。これが、こういう見かけ上不手ぎわなことになった原因であると存じておりまして、その点は新しいビールスに若干の責任があろうかと存じております。
  22. 河野正

    河野(正)委員 大臣は、いまの局長の答弁を国民の一人としてお聞きになって、どうお考えになりますか。私は、いまのような局長の答弁なら、厚生省にこういう防疫体制をおまかせする必要はないと思う。競馬の予想屋か競輪の予想屋にまかせておけばいいと思うのです。少なくとも厚生省は、もっと科学的な論拠に基づいてそういう処置をなさる、またそういう御答弁をなさるべきだと思うのです。ただ混合ワクチンを使って、その効果からどうも台湾Bらしい、こういう期待をして発表される、これは全く検査設備を持たぬ一般の町医者がやることと、一つも違わないじゃないですか。それなら、検出する方法がないかといえば、ちゃんとビールスを検出する方法がある。厚生省が最後の手段まで講じて、その段階で多少新種であった、非常に鑑別がむずかしかったということであるならば、これは私はある程度やむを得ぬと思うのです、人のやることですから。けれども、やるべきことをやらぬでおいて、そうして間違ってそれはやむを得ない処置だった、要するにたぶんそういうことが期待されるのでそうであろう、そういう予想でおやりになるならば何もこういう問題は厚生省におまかせする必要はない、競馬や競輪の予想屋にまかせておけばいいと思うのです。それで当たりますよ、台湾BかBかA2か、その三つのうちの一つでしょう。ですから、それのどれにしようかというようなかっこうで厚生省がおやりになるなら、私は何も、こういう重大な国民の健康、国民の生命、そういう重大な問題を厚生省にまかす必要はないと思う。さっき小林委員から、おまえおとなし過ぎるという話がありました。私は紳士的にやろうと思うけれども、いまのような全く非科学的な、国民をばかにしたような、国会や委員会をばかにしたような御答弁をなさるなら、私はやはりハッスルせざるを得ぬですよ。これは私はやむを得ずハッスルするのです。委員長も医者ですから、私の発言を聞いて、なるほどもっともなことを言っていると思っておられると思うのですよ。どうですか。
  23. 小林武治

    小林国務大臣 河野委員お話は、私はごもっともと存じます。したがって、厚生当局としては手落ちも認め、十分将来を戒めたい、こういうふうに考えます。実は昨年秋にも天然痘の問題でこういうふうな問題が起きて、天然痘でなかったことはしあわせであったのでありますが、一応そういうことで防疫体制をしいた、こういう事態もありますので、重々注意してまいりたい、かように考えます。
  24. 河野正

    河野(正)委員 実は私がいまのようなことを申し上げるについては、このビールスは変種のB型という検出がなされたのでございますけれども、それはやっぱり熊本県の天草の患者から検出がなされておるわけです。ところが、全く不見識な話でございますが、厚生省が訂正をして八日の日に発表したということでございますけれども、すでに二月の三日には、佐賀、宮崎県ではB型を検出したという発表をしておるわけですね。それから、厚生省も天草の患者から検出したわけですけれども、熊本県では一月の二十七日に実はこのビールスの検出をした、こういうような発表もいたしております。そこで私は、どうも厚生省のやっておられる措置についても非常にずさんのそしりは免れぬし、またそういうことでどうも今日まで、それぞれ各県でビールスを検出してそれぞれの型の発表をやっておるわけですけれども、そういう点に対する適切な指導というものが、いまのような状態の中で適切に行なわれたかどうか、私も非常に不安を持ったわけです。と同時に、今後いろいろ厚生省が通達を出し、また、いろいろ行政上の指導をされると思うけれども、いまのような事態で、はたして都道府県に対して適切な指導というものが行なわれるかどうか、指導を受けるほうは、はたして全幅の信頼をもって厚生省の指導に応ずるかどうか、私は、今日までの経緯を見てまいりますと若干疑問を抱かざるを得ぬのです。私は、今日九州地方中心として二十万近い患者が出てき、また、進学期あるいは入半期を迎えて学生、学童たちがこのかぜのために発熱をし、また病苦を訴えて呻吟しなければならぬということも同情するわけでございますけれども、同時に、私は、いまの厚生省の指導というものは、全くずさんのそしりを免れぬというような気持ちを非常に強く持ったのです。しかも私は、ここで、全く申しわけなかったと国民におわびをされるかと思ったら、予想しなかったというような、全く競馬や競輪の予想屋がやっておるような措置でやっておられるということは、私はきょうこの委員会でそういうお答えをいただいて全く残念に感じたわけです。  そこで、今日まで各都道府県に対してどういう指導をされておったか。いま私が申し上げましたとおりに、すでにB型ということは、三日の日に佐賀県、宮崎県において検出をしたという発表をされておる。そういうような、府県がやるのだからたいしたことないのだというようなかっこうで、何か厚生省、特に国立予防衛生研究所でおやりになる研究というものは、それは設備の内容等は一番整っておるでございましょう、だからといって、そこでやったものがすべて一番正しいのだというようなことで、いろいろ防疫対策に対して協力しておる各府県の善意というものを踏みにじるような、そういう指導というものは、やっぱり私どもはここで承知するわけにいかぬ、こういうふうに思うわけです。いままで一体どういう指導をなさっておったのか、ひとつこの際明らかにしていただきたい。
  25. 若松栄一

    ○若松政府委員 インフルエンザの流行等が起こりましたときに、できるだけその流行の型等を決定する必要がありますので、各都道府県の衛生研究所におきまして、この操作ができるように設備の強化をはかっております。現在のところ、すべての地方の衛生研究所が、全部ビールスの分類までできるというところまではいっておりません。ただいまのお話に、宮崎県で決定したというお話がございましたが、実は宮崎県、福岡県、佐賀県等で、今度の流行がBの流行であろうという発表をいたしております。これはどこまでも患者の血清検査の結果に基づいてやっておるものでございまして、ビールスの決定は、天草で分離したものを厚生省の防衛生研究所で決定したものだけでございます。なぜビールスの決定を予防衛生研究所でやるかと申しますと、現在世界的にインフルエンザの予防対策をやっておりまして、ロンドンにインフルエンザ・センターというものがございます。そのセンターのアジアのセンターが予研にございます。したがって、新しいビールス等が発見されますと、これをロンドンに報告し、また新しいビールスが発見されますと、これを世界のインフルエンザ各支所に送りまして、直ちに各地における予防体性ないしはワクチンの生産等に寄与する手配をいたしております。そういう意味で、このビールスが新しいビールスであるというふうに考えましたので、これは予防衛生研究所から世界に向けて注意を喚起し、そのスタムを送るということになったわけでございまして、したがって地方の衛生研究所におきましては、現在のところこの新しいスタムに対する免疫血清等がございません。したがって、現在までのところでは、地方ではこの決定ができなかったわけでございます。そういう意味で、予防衛生研究所で決定せざるを得なかったわけでございます。
  26. 河野正

    河野(正)委員 そういうことを言っておるわけじゃない。というのは、もしあなたがそういう方針なら、私はやはり、厚生省のこの六日の発表というものも、ビールスを検出して後に発表なさるべきだったと思うのです。府県については血清でやったんだ、だからわれわれはそれを確認することができぬと言いながら、あなたのほうは血清反応だけで発表なさっておるじゃないですか。そうでしょう。府県は血清反応だけだ、だから三日の日にできたんだ、だからそれをわれわれは認めるわけにはいかぬと言いながら、厚生省自身も、六日の日には血清反応だけで新聞発表をしておるじゃないですか。あなたがそういう方針なら、やはり八日のビールス検出まで待って発表なさるべきじゃないですか。さっき私が指摘して大臣から御答弁いただいたわけですけれども、どうも局長のほうには反省の色がないですね、そうでしょう。この点、どうですか。
  27. 若松栄一

    ○若松政府委員 一部繰り返しになりますが、宮崎県その他の県ですでに血清学的に決定をいたしました。血清学的に決定いたしまして、地方ではすでに各県とも、今度のわが県における流行はBであるということを発表いたしております。各県で発表しておるにもかかわらず、国がいつまでも決定しない、意見を吐かないということはかえって不安を招きますので、国もなるべく早い時期に意思表示をしようということで、実は六日には台湾Bの流行らしいということを申し上げたわけであります。決定とは決して申しません。したがって、台湾Bの流行であろうということを申しました。しかも、なぜそのように急いだかと申しますと、先ほどのように新しい流行であるために、もしそのとき以降ワクチンを用いるとすれば、台湾B株も入ったものを用いるのが当然である。もしそれをいつまでも延ばしておきますと、その当時台湾Bと予想されておるにかかわらず、台湾Bを含まないワクチンがどんどん使われるということは適当でない。したがって、できるだけ国民にこのことを知らして、適切な予防対策をしたいということが私どもの念願でございました。したがって、その六日の発表におきましても、ビールスの検出は現在検討中であって、ビールスの検討の結果きまれば、そのときにあらためて発表するということをつけ加えておいたわけでございます。
  28. 河野正

    河野(正)委員 宮崎、佐賀でそういう発表をした、それで国民が迷ってはいかぬから、そこで厚生省も急いで発表したのだ、こういうことですね。けれども、急いで発表しなければならぬからといって、不十分なことを発表していいということではないでしょう。しかも結果的には、佐賀、宮崎のほうが正しいじゃないですか。ですから、佐賀なり宮崎で発表をした、それについてはいろいろ問題もあるらしいというようなことで、厚生省が早く真相を的確につかんで発表したいという気持ちはわかります。ですけれども、佐賀なり宮崎では血清反応だ、それに今度また厚生省のほうも血清反応だけで発表されるということになりますと、これは佐賀なり宮崎なりのそういう血清反応に対する処置というものを信用しないということになると思うのです、同じ血清反応なんですから。あなた方が今度ビールスを検出しておっしゃるならいいですよ。同じ血清反応をして、佐賀、宮崎のものは間違っておるというような発表をなさることは、私は各都道府県のそういう防疫行政に対する協力を踏みにじる処置だと思うのです。あなた方が血清反応以上のものをやって訂正なさるならいいですよ。同じことをやっておいて、おまえのところは間違っておる、これはやはり宮崎なり佐賀の衛生部当局のそういう作業に対して、冒涜する態度だと私は思う。それをあなた方は、それに対して反省なさらぬということに対しては私どもは承服できませんから、反省なさるまで私は追及しますよ。間違っておるなら間違っておると、そういう点は、私ははっきり反省しなければいかぬと思うのです。そこに都道府県の今後の防疫行政に対する積極的な協力が出てくると私は思うのです。その点は、私はここで、反省なさるまで時間がかかっても、同僚議員の協力を得て追及したいと思うのです。これは大臣から的確に答弁してください。
  29. 小林武治

    小林国務大臣 御意見のとおり、私はやはり厚生当局としても反省すべきもの、また、ああいう発表は遺憾であったと申し上げておきます。
  30. 河野正

    河野(正)委員 最高責任者である大臣から、遺憾であった、反省すべきだと明確に御答弁いただいたので、その点は、自後は省内の問題ですから、省内の問題として御処置を願うということにいたします。  それから、実は三十七年のA2型が猛威をふるいました際にも、ここでいろいろお尋ねしたわけですけれども、今後はそういう流行がないように、ひとつ国としても流行を予測する体制というものを確立していきたい——いまこういうようなやりとりをしてまいりましたことは、起こったことに対する処置ですね。けれども、三十七年の国会で私がこの問題を取り上げましたときには、今後はそういう流行が起こらないように、流行を予測する体制というものをぜひひとつ整えていきたいという御答弁を、当時の灘尾厚生大臣からいただいておるわけです。しからばその後、そういう流行を予測する体制というものは、具体的にどのように行なわれておるのか。行なわれてもなおかつ今度のような流行が出てくるのか、あるいは答弁いただいたけれども、何も実施されずにこのような結果というものが生まれてきたのか、これに対する具体的な処置をこの際お聞かせいただきたい。
  31. 若松栄一

    ○若松政府委員 おっしゃいますように、現在流行予測の仕事を行なっておりまして、これを全国的な予測をいたしますために、検査能力等も十分に整っております二十三の都道府県の衛生試験所を中心にいたしまして、ジフテリア、急性灰白髄炎、インフルエンザに対する国民の免疫度の調査を随時実施いたしております。
  32. 河野正

    河野(正)委員 従来の機関ではなくて、当時の質問に対しましてはそういう体制をつくっていきたいということでしたが、新しくそういう体制をおつくりになったのかどうか。
  33. 若松栄一

    ○若松政府委員 この事業は三十七年から実施いたしておりまして、現在なお引き続き実施いたしております。
  34. 河野正

    河野(正)委員 そうではなくて、三十七年のような猛威をふるうような事態を再び繰り返してはいけない、そういう意味でさらに予測する体制というものを確立していきたい、そういうお答えをいただいているわけです。そういう答弁に対して具体的にどういう体制というものが新しく確立されてきたか、そういうことをお尋ねしておるわけであります。
  35. 若松栄一

    ○若松政府委員 流行予測の体制と申しますのは、そのように十分に検査能力のある地方衛生研究所の検査設備、能力を活用いたしまして、各地域の特定の集団をつかまえまして、その人間の間における免疫を調査いたしまして、それで全国的な推定をいたしておるわけでありまして、これは現在のところ地研の能力等の関係も勘案いたしまして、二十三の地方衛生研究所に委託して実施しておるわけであります。これ以上現在拡大することは、ちょっと困難であろうと思っております。
  36. 河野正

    河野(正)委員 そうしますと、灘尾厚生大臣の発言をとらえて私どもがいろいろ言うわけではありませんが、三十七年では、再びこういうふうな大流行を繰り返してはならないということで、ひとつこの流行を予測する体制というものを新しく確立していきたいという御答弁をいただいたわけですが、実質的にはそれに応ずる体制はできておらぬ、こういうふうにいまのお答えでは理解をせざるを得ないと思うのです。ところが御承知のように、今度二十万近い、しかもいま一日一万人くらい増加しつつあるというような事態が生じておるわけであります。そこで私は、やはり国会でお答え願ったことは、具体的に実行願わなければいけないと思います。しかも実行願わないために今日のような事態が生まれたとすれば、私は今日、二十万近い国民がこのインフルエンザのためにいろいろ苦痛を味わっておるというすべての責任というものは、全く厚生省がしょってもらわなければならぬ、こういうふうに思うのです。この点については、さらにひとつ再検討していただきたいと思います。  それから、いままでワクチンの点についていろいろお話がございました。ところが、この変種B型であるために、学者の意見をいろいろ聞いてまいりますと、ワクチンの効果というものを一〇〇%期待することは現在のワクチンではできない、そういうような意見をわれわれ聞いております。それだからどんどん患者が新しく発生する。それからもう一つは、いろいろ厚生省の不手ぎわによって、この菌種の確認を誤られたというような点についての国民の不信、私は両面の不信があると思います。ですが、その一方の不信については、さっき大臣から今後不手ぎわの点については反省すべきであるというようなお答えをいただきましたから、その点についていろいろお尋ねしようとは思いません。ですけれども、いまこのワクチンの効果については、学者の間にもいろいろ異論があるところでございます。そのために新しく患者が増加をしておるというようなことになりますと、せっかく国費を使ってもたいした効果はないわけですから、これはたいへんなことだと思うのです。そういうワクチンの効果という問題についてどのようにお考えでございますか、ひとつこの際、国民のために明確にお答えをいただきたい。
  37. 若松栄一

    ○若松政府委員 ワクチンが効果をあげるためには、現在使っておるワクチンに用いられておりますビールスと、現在流行いたしておりますビールスとの間の免疫構造の関係が、できるだけ一致ないし近いことが必要でございます。現在のワクチンに入っておりますのは、B株といたしましては、いわゆる世田谷B株と台湾B株とございますが、台湾B株は一部に入っておりません。今度新しく発見されました株は、台湾Bにも世田谷Bにもある程度共通抗原を持っております。しかし、ある程度共通しない抗原がかなりあるようでございます。このごく詳細につきましては今後の検討に待ちますが、そういう共通抗原が一部あり、一部はないということから若干は予防効果がある、しかし、どんぴしゃりというわけにはいかないという段階でござます。
  38. 河野正

    河野(正)委員 このたびのインフルエンザ対策についてはいろいろ厚生省の不手ぎわがあったということ、このワクチンの効果についてもなかなか多くを期待することができない、そのビールスの種類についてもいろいろ不手ぎわがあったというような実情でございますから、いずれにいたしましてもワクチン対策で多くの期待を寄せることができないということは、私いままで論議いたしてまいりました経緯からも十分考えざるを得ないと思います。ですけれども、今後の問題でもございますので、この点についてはさらに慎重な検討が必要であろうと考えます。これはひとつ大臣、そのようにお聞き取りをいただきたいと思います。  このワクチンに関連をして、薬務局長ゆう然としておられるから、ひとつお答えをいただきたいと思います。ワクチンの効用という点につきましては、ビールスの検出についていろいろ不手ぎわがあったために、国民も非常に不満足な感情を持っておると思うのです。これはいずれ、予防接種法の一部改正がきょう提案されましたから、その法案審議の中でお尋ねをやりたいと思いますけれども、たまたまワクチンの効果ということがいま出てきましたから、そういう意味で一点だけこの際あなたにお伺いしたいと思うのです。  それは、二月の九日、京都で開かれました子供を守る文化会議で、今度国産生ワクチンができて、いま法案提案をされましたように今後接種をするということになるわけですが、その際、人体実験がなされておらぬので、そういう不確実なものを直接三百万人の乳幼児に投与することは人命軽視ではないか、ワクチンに対する不信感、不安感というような点について決議がなされておるわけです。きょうはインフルエンザの問題ですけれども、ワクチンという問題については同一でございます。こういうふうに国民が、いまの政府防疫行政あるいはまた厚生行政というものについて非常に不安を感ずるということは、私はまことに遺憾な点でございますので、せっかくいい機会でございますから、ひとつ国民が安心するように適切なあなたの御答弁を期待して承りたい。
  39. 熊崎正夫

    ○熊崎政府委員 河野先生の御質問は、生ワクチンを投与する、その生ワクチン投与につきまして、いろいろ国産で使用された生ワクチンを投与するについての安全性の問題だと考えるわけでございますが、人体実験をやる前、投与することについて疑問が出ているということは、私どもも十分承知をいたしております。しかし、国産の生ワクチンを正式の医薬品として製造許可をし、それができ上がる前の前提としましては、いわゆる生ワクチンの製造基準といいますか、そういう基準をつくりまして、基準に基づきまして生産に入ったわけでございます。その製造基準といいますのは、これはWHOで採用されております世界的に一般的になっております製造基準を、学者を集めまして、十分衆知を集めた上での決定された基準でございまして、その製造基準ができ上がりましたときには、すでに各学者の意見としましては、この製造された生ワクチンが、国産品ができ上がりました暁には、いわゆるフィールドの実験を必要としないということが、ワクチン学者の共通の意見であったことは事実でございます。なぜそういうことになったかということにつきましては、過去三十六年以来生ワクチンの採用、行政投与ということでやってまいりましたが、その使用されましたあるいはソ連から輸入されたワクチン、あるいはカナダから輸入されたワクチン全部、共通的にセービン博士のつくりましたセービン株を採用したワクチンであったわけでございます。しかもセービン株を採用したワクチンでもって大量に、毎年千七百万人近い行政投与をやってきまして、セービン株の安全性につきましては、十分国内の経験を経た上での結果であるというその事実に基づきまして製造基準をつくり、しかも厳重な国家検定のもとに安全性が確保された生ワクチンでございますので、これをいまさら人体実験をやる必要は毛頭ないというのが、各学者の共通の意見でございました。すでにこの点は、生ワクチン協議会の各学者にも、十分意見を聞いた上で確認を得ておる次第でございます。
  40. 河野正

    河野(正)委員 そういう意見は、大体安全医療の確立という点から出てくると思うのです。ですから、要は、国民がそういう方針に対して満幅の信頼が寄せられるかどうかという点だと思うのです。ところが、子供を守る会の指摘する点を私どもつまびらかにいたしませんけれども、その安全性について厚生省にいろいろ問い合わせをした。ところが、国際規格にも合っているからだいじょうぶだというような非常に抽象的な答えだけで、どうも満足するような答えを得ることができなかった。そういうわけで、われわれはやはりどうも満足な答えができぬというところに非常に不安を感ずるという点が、子供を守る会の主張のようでございます。そこで、やはり安全なることを国民は強く望むわけです。母親としても父親としても、乳幼児に飲ませるわけですから、その安全性を非常に強く期待するということは、人道的にも当然なことだと思うのです。ですから、厚生省も、もう少し親切な指導をなさるという点に若干欠けておったのじゃなかろうか。いま局長が答弁された模範答弁のようなお答えを願っておればよかったろうと思うけれども、私は、厚生省国民に対するPR、あるいはまた宣伝というような点について若干欠ける点があるのじゃなかろうか、ことばをかえて申しますと、行政上不親切な点があるのじゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。ですから、この点については、ぜひひとつ国民が納得するようなお答えを積極的になさる必要がある。言われたからやるのではなくて、進んでなさる必要がある。こういうふうに私は思うわけです。しさいについては、法案が出ておりますから、いずれその席上いろいろとお尋ねしたいと思いますけれども国民も、いたずらに厚生省を攻撃するということではなくて、やっぱり安全医療という面から訴えていると思うので、今後はそういう面について懇切丁寧に指導されることが望ましいと私は思うのです。この点は、国民が強く不満の意を表しておりますし、新聞でも取り上げておりますから、この際ひとつ明確に方針をお示しいただきたい。
  41. 小林武治

    小林国務大臣 御注意了承いたしましたので、十分ひとつ趣旨に沿うように努力いたしたいと思います。  なお、インフルエンザの問題でございますが、これは私の見通しが多少誤っておったということで非常に遺憾に存じております。防疫問題は非常にめんどうな問題でございまして、たとえば昨年の河口湖のコレラとか、あるいは韓国のコレラ等については厚生省も非常によくやったつもりでありますが、よくやったときはあたりまえで、別におほめをいただくことはないが、誤りがあったら非常におとがめを受ける、これは当然であります。そういうふうな非常にめんどうな問題でございますが、この上ともひとつ気をつけてやりたいと思います。
  42. 河野正

    河野(正)委員 大臣も所用のようでございますし、山田委員からも大臣に対して若干御質問があるそうでございますから、そういう議事に協力して、最後に、締めくくりだけやらしていただきたいと思います。  午前中、時間をかけまして伝染病の防疫体制についていろいろ指摘をいたしましたのですが、この防疫体制の確立に拙速をとうとばねばならぬことは当然なことだと思うのです。早過ぎることはないのです。ですけれども、拙速をとうとぶために非科学的な、合理性のない処置をやられるという点については、私どもは承服することはできません。そういう意味で、私はきょうの例は、残念でございますけれども、一番いい例だったと思います。ですから、私が先ほど指摘をいたしましたように、インフルエンザが三十七年におきましても大流行をした、今度は三十七年ほどのことはございませんけれども、しかしまだ今後の推移もございます。毎日毎日二万人からの患者が出ておるわけですから、今後の推移いかんではどのような結果になるか、また三十七年を上回るような重大な事態が発生するかもわかりません。いずれにいたしましても、こういう事態が生じますることは、国民にとりましてもまことに残念なことだと思うのです。ですから、そういう大流行を再び繰り返さないということで、元大臣の灘尾さんからも、この流行を予測する体制というものを確立していきたいというふうな御指摘もお答えもあっておるわけです。   〔井村委員長代理退席、田中(正)委員長代理着席〕  私は、やはりそういうふうな体制というものを確立して、そうして未然に防止していくということが一番望ましいわけですから、ぜひひとつこの点は、元大臣の発言でございますけれども、再検討していただきたい、こういうふうに考えます。先ほど事務当局の話を聞きますと、いままでの機関を若干整備したという意味お答えでございました。それで私ども満足するわけにまいりません。ひとつその点については小林厚生大臣からも、再検討をする、ぜひ体制の確立について考えていきたいというふうな御所見をあらためてお聞きをし、明確なお答えをいただきましたならば、大臣は御所用もあるようでございますし、あと山田委員から若干大臣に対する質疑があるそうですから、あとの点については留保したい、かように思います。
  43. 小林武治

    小林国務大臣 お話趣旨はごもっともと存じますので、私は責任をもって再検討をいたしたいと存じます。
  44. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 山田耻目君。
  45. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 山田でございますが、防疫関係につきましてお伺いをいたしたいと思います。  大臣が非常に時間をお急ぎのようでありますので、一点だけ、特にオリンピックも近く控えておりますし、最近は、赤痢なども春夏秋冬、四季を問わず発生しつつありますし、こうした伝染病の予防の措置について、厚生行政面で具体的にどのようにして絶滅を期するようにお考えになっておるか。特に最近のこの種の伝染病の発生を見ますと、国民の公衆衛生に関する関心あるいは道徳というものが低下して起こるというよりか、むしろ伝染源、伝染経路を見てまいりますと、いろいろと環境衛生の設備が不十分なために起こるということが非常に多いように見受けられます。そういう部面につきましては、明らかに厚生行政が末端地域に浸透していない、政治が行き届いていないとうことに原因がございまするので、そういうことに対しても含めて厚生大臣所見を伺いたいと思います。
  46. 小林武治

    小林国務大臣 私も外国に長くいたことがありますが、消化器伝染病については全く外国の生活はうらやましい。厚生省に参りましてから、赤痢は何とかならぬか。チフスというものは非常に減少しておるが、赤痢はまだ至るところで、季節を問わず集団発生をしておる。そういうことで幾度かさような注意をいたしつつありますが、何しろ日本では、赤痢菌というのは全国的に伝播されておるのだ、したがって、これを撲滅するには単なる防疫体制ではできない、どうしてもお話のような食品衛生、環境衛生というものから、根本的な基盤からひとつ直していかなければならぬ、こういうことでありまして、食品を扱う者に対してはやかましくいま設備の更新を希望して、そのための融資等も至るところの府県でやっております。個々の食品関係者は相当な改善ができておるが、しかし、その前の一般的な環境衛生というものは非常におくれておる、こういうことでありまして、わけてもごみの問題、し尿の問題、下水の問題、これがいまの病気の根源である。お話のように、ほんとうに環境衛生を整えなければこれらの撲滅はできない、こういうたてまえをとっておるのでありまして、来年の予算等におきましては、お話のような環境衛生設備を整える、また、特別国会においても環境整備の五ヵ年計画の法律も通していただいた、こういうことでこの面の改善を急速に、また大規模に進めなければならぬというふうに考えております。地方の衛生組織等におきましても、蚊とハエの撲滅運動というものがある程度普及をしてまいったのでありまするが、もうこの赤痢問題はどうしても全国民的な視野で、国土の浄化連動というふうなことをやらなければ万全を期し得ない、こういうことで公共団体のやる環境施設を整備する、また個人がそれぞれの食品の衛生管理を厳重にやると同時に、一般国民が、衛生思想と申しますか、国土を浄化する、こういうふうに三つ一緒になってやらなければいけないということで、相当基本的な問題で、また多少の期間も要するのでありますが、そういう面からひとつどうしても片づけなければならぬ、こういうふうな考え方で、やっておるのであります。オリンピックもありまするし、全国的に、し尿問題が赤痢のもとになっておるというふうに思いまするので、急いでひとつこれらの仕事を進めてまいりたい、こういうことであります。これは一種の国民的な非常に大きな仕事と申しまするか、だれもかれもこの問題に関心を持って進めていかなければならぬ、私はかように考えておりなす。まずもって自治団体等が行なうことは急速にこれを進めなければならぬ、かように考えております。
  47. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 お話はわかるのでありますが、確かに下水道の問題、し尿処理の問題あるいは食品衛生の問題、あるいは水道にしてもそうでありますが、都市を中心とする周辺は比較的進んでおるわけです。しかし、なかんずく僻地、離島というところになりますと、完全にこういう政治施策から置き忘れ去られたような形になっております。非常に政治の外に置き去りにされておりまして、もっときびしく言えば、政治の貧困の中で国民それ一人一人が苦しんでおるということに通ずると思うのであります。大臣もお時間がございませんので、一般的な抽象論でなくて、これから具体的に、山口県上関の集団赤痢について環境衛生の面から質問したいと思いますけれども、特に大臣には、そうした比較的医療にも恵まれない、あるいは文化施設にも恵まれない、厚生施設にも恵まれない僻地なり離島に対して、いまお示しになっておる厚生省予算の中ではほんとうに総花的で見るべきものがございません、これらに対して積極的に抜本的な対策をお立てになるように、これは強く要望しておきたいと思います。
  48. 小林武治

    小林国務大臣 いまの僻地等におきまして、一番必要なのは簡易水道の問題でありますが、これは来年度も相当大幅に簡易水道を助成しよう、すなわち地方におきましては井戸水とかわき水あるいは流れ水を使う、こういうことによって、赤痢が起きた場合が非常に多いのでありますから、私どもは、これらの地方においても全部に水道を——簡易水道でけっこうだから簡易水道は特に全部補助でやりたい、こう思っておりますので、最近で一番大きく進めていきたい仕事は簡易水道の問題であります。これを全部に普及させたい、かように存じております。
  49. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 それでは、環境衛生局公衆衛生局長いずれでもけっこうでありますが、お伺いいたします。  赤痢関係を特に中心にお伺いするわけでありますが、こうした伝染病は、伝染源あるいは伝染経路を正しく究明して突きとめていくことが非常に大切だということがいわれておりますが、依然として最近やはりあとを断ちません。赤痢は、春夏秋冬を通して集団的に起こっておるのが現状です。三十七年五月に、公衆衛生局長、環境衛生局長御連名で、都道府県に対してモデル市町村の指定をされた指導要綱をお出しになっておるのでありますが、こうした具体的な指導要綱に基づいて今日までどのような成果をあげておるのか、それについてお伺いいたしたいと思います。
  50. 若松栄一

    ○若松政府委員 お話のように、赤痢の対策というのは、残念ながら現在のところ明確なきめ手がございません。したがって、できるだけ考え得るあらゆる施策をとにかく着実にやっていくというほかございません。しかも土地土地によりまして、その土地においてはこの問題が一番重要であろうというような相違がございますので、全国一律にただ何でもやれと言いましても、なかなかむずかしゅうございます。そういう意味でモデル地区を指定いたしまして、そうしてこの地区は何が重点であるか、この地区は何を重点にしてやったらよろしいかということを十分に検討した上で、その地区に最も適した方策を強化してやっていただきたいという方策をとっております。したがって、ある地区におきましては住民の保菌者の検便を重点にやる、ある地区では食品業者の検便を重点にやる、ある地区では水道あるいはその他の集団施設の管理者の検便をやるというように、それぞれの地域に合ったやり方を強化してやってくれという方向でやっております。その結果どうかということになりますが、それは全国でどれだけやったらどれだけ患者が減ったというような数字は、これはなかなかむずかしゅうございまして、小さな集団でございますので、昨年五名出たところがことしは三名になったから効果があったと言うわけにもいきませんし、ことし七名にふえたから、逆に非常にまずかったという工合にもいきませんので、総合的な効果を数字的に申し上げることはできませんけれども、総体的にこの衛生状態が改善され、住民の関心も高まり、そうして将来にわたって衛生状態全般の向上ができるであろうと、そういうことを期待しておるわけであります。
  51. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 若干私の質問に対するお答えとして不適だと思うのでありますが、そういう指導要綱をお出しになって、それが着実に具体化されておるかどうかということをお伺いしておるのでございます。
  52. 若松栄一

    ○若松政府委員 いま申し上げましたように具体化されておりまして、そうしてそれぞれ、いま申し上げましたような大体住民地区の検便を強化しようというのが約五〇%、それからその他食品業者等をやっておりますのが二番目になりまして、それぞれのみずからの地域の特殊性を検討した上で、適切な措置を実施したものと私ども承知いたしております。
  53. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 特にあのモデル市町村のものは、府県によっても違いますけれども、僻地、離島というところにやや中心が置かれておると見受けておるわけであります。したがいまして、おっしゃっているように、十分の効果をあげているということならけっこうでございますが、実際にはいかがでしょうか。そういう五項目にお分けになって指導要綱を明らかにされておりますが、特に伝染源を究明して防疫体制に完ぺきを期するという立場で、無医村に対して保健所をつくって防疫体制を強化していく。保健所の家はでき上がってお医者さんも二、三ヵ月は来ていたけれども、いつの間にか来なくなってしまった、こういうふうなことは起こっていませんでしたか。
  54. 若松栄一

    ○若松政府委員 無医地区に保健所をつくるということはございませんが、先生の御指摘の場合は僻地診療所のことでございませんでしょうか。
  55. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 そういうことです。
  56. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 いまの赤痢の予防対策と、直接関連がすべてあるわけではないと思いますが、第一次の僻地医療対策といたしまして、三百二十数ヵ所の僻地診療所をつくりまして、それは親元病院といいますか、しっかりした病院と関連をつけました僻地診療所でありますが、それらを現在運営しております成績は、三百二十数ヵ所のうちで、三百ヵ所ぐらいは医者が定着するか、または出張診療というような形で診療が行なわれておると承知しております。
  57. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 それでは、山口県上関の八島に起こりました集団赤痢につきまして、一般的な医療行政、厚生行政の立場からもっとお聞きして、部分的な分野について御見解なり御意見を伺いたいと思ったのでありますけれども、時間もございませんから、県における行政指導の分野にも関係があるかと思いますけれども厚生省の立場で指導督励をなさっておるので、その立場でひとつ御解明をいただきたいと思います。  八島の集団赤痢の現状について申し上げておくことがいいと思います。すでに厚生省のほうには御報告が参っておると思いますが、私も日曜日に現地を視察してみまして、病気は起こるべくして起こっておるという感じをしみじみ感じておりますので、まず現状の理解を正しくしていただきますために、現状の報告を少ししておきたいと思うのです。  八島は、陸地から約十キロくらい離れた海の中にあるのでありますが、世帯数が百四十九、人口が五百四十九人おります。半農半漁でございまして、最近は臨海工業都市ができまして、一本釣りがほとんどできなくなってまいりましたために、だんだんと貧しくなってまいりまして、百四十九世帯のうち二十三世帯が保護世帯になっております。昨年電灯がつきまして、トラホーム患者が全島民の七六%というふうなかなり貧しいところであります。この地域に集団赤痢が発生をしたのでありますが、世帯人口が密集しておりまして、五百メートル平方くらいのところに百四十九世帯が階段のように重なっておるのであります。ですから、一ヵ所に赤痢が発生をいたしますと、全島に蔓延をするというふうな地理的な事情にもあるわけであります。昨年の九月ころ、下痢患者が発生をしたのでありますが、お医者さんがいませんのでかかるわけにもいきませんし、クロロマイセチンを飲んで抑えていたのでありますが、これがこの赤痢を最大に蔓延させる一つの因子になっております。いわゆる潜伏させていたわけです。たまたま、伝染経路としてまた条件が一番悪いのでありますが、島には井戸はかなりたくさん掘られております。しかし、井戸の水が、島でありますから下水の水が循環をして井戸に流れ込んで、それをまたくみ上げて飲料にする、こういうふうに下水と井戸との関係が、厚生省の指導されておるような事柄から考えたら、想像もつかないような状態であります。ですから、県の衛生部が参りまして水質試験をいたしましたところ、海岸地帯とまん中の地帯と上のほうの地帯と、三十の井戸の水質試験をやりましたら、飲料に適するというのは四ヵ所しかございませんでした。水をくみますと、あわが立つような状態であります。そういう飲料に適さない水が、しかも下水からほんとうにそば近いところに浅い井戸がありまして、そこに赤痢菌が流れ込んで、去年の十二月ごろから急激に真性赤痢がふえてまいりました。百四十九世帯のうち八十一世帯、百二十一名が赤痢患者となって集団収容をされていったわけであります。  これが簡単な沿革でございますが、特に環境衛生の立場からこれをごらんになりますと、環境衛生局長、公衆衛生局長のほうからお出しになってわる指導要綱の部分からながめてみますと、ほんとうに政治の外に置かれておるし、起きるべくして起こってきた状態だということが十分指摘できるのだと思います。これらについてどのようにお考えになっておるか、ひとつ御解明をいただきたいと思うのです。  いま一つは、これは医務局関係の方にお伺いをしたいのでありますが、昭和三十二年に保険診療所のモデル島としてきめられまして、診療所ができました。二、三ヵ月ばかりはお医者さんも交代で来ていたのでありますが、何しろ離島でありますから、冬になってまいりますと一度渡ると五日か一週間、恐くすると二週間くらい海が荒れて帰れない、こういう条件も悪く積み重なりまして、岩国国立病院から派遣されることになっておったのでありますが、途中の幾つかの海を渡っていくという不便さも手伝いますし、患者を扱っておるという立場で、あるいは医者の特別な研究という事情等もありまして、その保健所にたずねていくということがだんだん遠のくようになり、ついに最近ではいなくなってしまいました。こういうことでは、せっかく保健診療所などをおつくりになってみても、そういう大切な、付随すべきお医者さんの配置等について十分な手だてが講ぜられていないところにこうした問題も出てきたのだと思考されますので、こういうことについて見解をひとつお伺いをいたしたいと思います。
  58. 舘林宣夫

    舘林政府委員 ただいま事例としておあげになりました赤痢の集団発生の内容承知いたしておりますが、その事例によって推察できますことは、飲料水が非常に不適当である、しかも飲料適のものは非常に少ないという事例でございますが、そのような地域こそ簡易水道のようなものを早急に、優先的に実施をして、伝染病の蔓延を防ぎ、住民の福祉をはかることが、本来の簡易水道のような水道事業の目的であると思う次第でございます。従来から、私どもの指導の方針も、赤痢の多発地帯のようなところ、飲料水の適当でないところを優先的に考えるような指導をいたしてまいっておるつもりでございますけれども、具体的にそのような事例がなお残っており、そのような事例によって多数の赤痢患者が出ましたことは、まことに残念に思う次第でございます。簡易水道の事業は、もう数年やっております。本年度予算におきましても十八億を盛っており、過去毎年二億程度ずつふえておりまして、相当浸透いたしておると私ども思っておるわけでございますが、なお末端にそのような簡易水道を一日も早く設置しなければならない地帯がございますのは深く反省し、今後努力をいたさなければならないと考えておる次第でございます。明年度におきまして二十一億ほどの予算を予定いたしておりますので、十分指導の徹底を、期して、そのような事例が決して起こらないように私どもも気をつけてまいりたい、かように思う次第であります。
  59. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 ただいまお話しの八島の僻地診療所、これはお話のとおり国立岩国病院が親病院となりまして、そことの連絡のもとに医者を派遣するという組織でつくった診療所でございます。ただ、このモデルというのはちょっと考え方が特殊でございまして、各県立病院だとか赤十字だとかいうふうなところに僻地診療をいろいろやっていただきますのに対して、その困難性だとかいろいろ苦労があるということを、国が自分でやってみてよくわかる必要があるという立場で、海岸の僻地診療所とか、山間部における僻地診療所だとか、島における僻地診療所とか、いろいろな種類のものをつくってみたわけであります。たとえば山の中におきましては、熊本県の山の奥のほうに一つつくり、島の場合に、この八島を例にしたわけであります。そしてその困難性を、われわれとしても自分で経験をしてくみ取るという立場でのモデルという意味でございます。それで、いまお話しのように、医者を親病院のほうから派遣するのにいろいろ苦労しておることは、御指摘のとおりであります。ほかの病院もやはりそういうことに非常に苦労しておるということで、僻地診療所に対して国ができるだけ助成していかなければならないというふうに考えて、われわれも非常に努力しておるわけであります。この診療所に対してもそういうことでやっておりましたが、なかなか窮屈で、親病院側の院長も私のほうに音を上げてきておったのであります。しかし、たしか私の記憶では、二、三年前に、お年寄りの医者が定着しておるというように聞きまして、それはよかった、しかし親病院でもよくめんどうを見るようにという話をして、私はそこにずっと医者が定着しておるというふうに承知しておったわけでありますが、いまのお話では最近医者がいないということで、まことに申しわけないことだと思います。この点は、私、そのような事態が起こっておることを存じませんでしたので、よく調べて、もう少しあとで御報告さしていただきたいと思います。
  60. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 ことしは二十一億の予算で簡易水道をつくって、そういう非文化的な、不健康な環境衛生を排除していきたいということで、わかります。こうした地方の、取り残された地域における国民へのこうした行政の完ぺきを期するように、全力を尽くしていくようにお願いしたいと思います。  それから医療の問題につきましては、医務局長は認識が少し不足しているのじゃないかと思う。もちろんモデルが六ヵ所あるはずでございますけれども、そうしたところについてもやはり同じような悩みが起こっておって、厚生省において行なう医療行政というものが、通り一ぺんの通達なりあるいは総花的な措置で完全に地域社会の国民皆さんに奉仕できる政治体系ができ上がっておるというふうには理解できぬから、私はお聞きしておるわけであります。やはり現地に医者がいない、逃げ出してしまうということには、それぞれの条件があるはずであります。着想としてお考えになること、国家公務員が国立病院というものをすぐ結びつけて、離島、僻地対策をお考えになることも一つの方法でしょうが、それならばそれのように、やはりお医者さんの定員の問題につきましても、僻地の幾つかの住みつける条件、あるいは手当の問題にいたしましても、やはり条件を整えて措置をしませんと、家だけつくってさあ行けと言っても、私は行けるものじゃないと思いますし、そういう診療行政が完ぺきを期せられるように、障害を排除して措置されるという立場をどのように実施なされようとするのか、最後にひとつお伺いしたいと思います。
  61. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 いま御指摘がございましたように、僻地診療所を、ただ僻地に家を建てて、それで医者に行ってくれと言って行くものでないことは、すでに何回かの歴史を繰り返しておりまして、失敗しておるわけでございます。それで、この親元病院という組織を考え、親元病院と結びつきを持って医者がある程度安心して仕事ができるように、また親元病院から言うと、助成ができるようにという組織を考えていま僻地対策をやっているわけでございますが、それにつきましても、いろいろいま御指摘のような困難性がある。その困難性を、こちらがただ書類通達だけで済ましておってはだめだと思いまして、国自身でも国立病院で数ヵ所受け持って、こういう組織をつくって実験的に自分でも味わっておる、こういうわけでございます。それでいまいろいろ苦労があるということがわかっておりますので、僻地診療所に対しまして、施設の創設費を助成する以外に、運営費につきましても補助をする。また特に、行きます医者の手当等や研究費等をできるだけ増額するとか、また自動車を援助するというふうな、いろいろな施策を強めていっておりまして、ことしの三十九年度予算にも、三十八年度予算よりはその施策が強まっておる、こういう状態でありまして、またさらに一そうわれわれとしても努力していきたい、こう思っております。
  62. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 終わります。
  63. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 本日は、これにて散会いたします。    午後零時三十二分散会