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1964-02-05 第46回国会 衆議院 社会労働委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年二月五日(水曜日)    午前十時二十五分開議  出席委員    委員長 田口長治郎君    理事 井村 重雄君 理事 小沢 辰男君    理事 田中 正巳君 理事 大原  亨君    理事 河野  正君 理事 小林  進君       伊東 正義君    岩動 道行君       大坪 保雄君    海部 俊樹君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       竹内 黎一君    地崎宇三郎君       中野 四郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       伊藤よし子君    滝井 義高君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    吉村 吉雄君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 小林 武治君  出席政府委員         厚生政務次官  砂原  格君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚 生 技 官         (環境衛生局         長)      舘林 宣夫君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (社会局長)  牛丸 義留君         厚生事務官         (児童局長)  黒木 利克君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         社会保険庁長官 大山  正君         厚生事務官         (社会保険庁医         療保険部長)  竹下 精紀君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         厚生事務官         (大臣官房総務         課長)     伊部 英男君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 二月四日  委員坂村吉正辞任につき、その補欠として伊  東正義君が議長指名委員に選任された。 同月五日  委員倉石忠雄君、松浦周太郎君、山口喜久一郎  君及び亘四郎辞任につき、その補欠として岩  動道行君、竹内黎一君、坂村吉正君及び海部俊  樹君が議長指名委員に選任された。 同日  委員岩動道行君、海部俊樹君及び竹内黎一君辞  任につき、その補欠として倉石忠雄君、亘四郎  君及び松浦周太郎君が議長指名委員に選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  厚生関係基本施策に関する件      ————◇—————
  2. 田口長治郎

    ○田口委員長 これより会議を開きます。  厚生関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村委員
  3. 吉村吉雄

    吉村委員 私はきょう、三十九年度厚生省予算、その社会保障費関係の中で特に社会福祉問題に重点を置きながら、若干厚生大臣並びに関係当局者意見を聞いておきたいと思うわけでございます。  来年度厚生省全般予算につきましては、今年度厚生省予算比較しますと六百五十六億の増となっておりまして、相当増額をしておるように見えるのでありますけれども、しかしその中身を検討いたしてまいりますと、この六百五十六億の総額の中の大体四百億前後というものは、いわば自然増充当をされなければならない金額であることは御存じのとおりであります。この中で特に問題になっております生活保護基準引き上げ分につきましては、約二百億近い金が充当をされるわけでありますけれども、この二百億近いところの生活保護基準充当分についても非常に大きな問題があることは、大臣自体が十分御承知かと思います。さらに、昨年の新規政策としてとられました国保の世帯主七割給付に要するところの資金、こういうものに充当されてまいっておりますので、新規政策充当される財源というものは非常に少ない、こういう点が非常に大きな問題ではないかと思います。なるほど厚生省全般予算といたしましては、いままでになくふえてはおるのでありますけれども、この一般会計予算の中に占める厚生省予算比率というものが非常に多くなったとは言えますものの、これは一般会計予算編成の問題ともからんでおりますから、いわば今日の状態の中で、厚生省予算一般会計予算の中に占める割合というものを、単に一般会計の中だけで見るというわけにいかないような予算編成が行なわれておることは、各方面から指摘をされておるとおりであります。といいますのは、財政投融資資金計画というものが非常に増大をいたしておりますから、単に一般会計予算との比率ということだけで議論をするわけにいかない、こういう点があるだろうと思います。私がこの中で、特に厚生省予算問題点としてまず大臣の見解を承っておきたいというふうに思いまするのは、福祉関係予算というものが、生活扶助なりあるいは社会保険なりの費用に圧迫されて、比較的少なくなっている傾向があるのではないか、こういうふうに考えられることが一つ。それからいま一つは、厚生省各局予算内容を見てまいりますると、調査費という名目の費用が非常に多くなっておる。こういうのが、いわば本年度厚生省予算特徴点ではないかというふうに考えられます。調査費というものが各局においてそれぞれ芽を出しているということは、将来に対するところの社会保障政策を発展させるための一つの芽と見れば見れないことはないのでありますけれども、見ようによっては、そこに重点的な厚生省としての施策というものがなくして、各部局とも予算というものを、ぶんどり合って、そうしてお互いに少額の金を獲得して満足をしておる。そういうふうに見れば見れないこともない、こういうふうに考えられます。ですから、私は、まずこの本年度予算全般について、特にいま指摘をいたしました社会福祉予算の問題、それから各局に見られるところの調査費というものが非常に多くなっている、こういう特徴点について、大臣としてはどういう考え方で今度の厚生省予算編成に当たっておるのかということについて、まず所信を承っておきたいと思います。
  4. 小林武治

    小林国務大臣 ただいま御指摘の点でありますが、私ども社会福祉関係が多少少ない、こういうふうな感じは持っております。しかし予算としましては、社会局関係が前年度の八百十五億から千四十一億、また児童局が二百二十二億から二百六十七億、結局両者合わせて約三〇%の伸びがありまして、厚生省全体の伸びに比べればその伸びは二〇%余であったのでありますが、このいわゆる社会福祉分は三〇%程度の伸びになっておる。こういうふうで、少し伸び方が大きい。しかし、お話のような感じはないわけではありません。  なお、一応厚生省仕事というものは、いろいろのものを当たってみて重点的に何か、こういうふうな問題がよく起こりますが、私は、厚生省予算というものはどれもこれも必要な予算でありまして、特にこれに重点を置かなければならぬというふうに考えず、みな重点的なものではないかというふうな考え方は持っております。それから社会保障全体につきましても、一応いわゆる近代的な社会保障というものはほんとうに戦後始まった、こう申しても差しつかえないのでございまして、柱だけは打ち立てられたが、これからは内容充実重点でなければならぬ、こういうことでございまして、新規の事項というものは、これからそうたくさん出てくるというふうには思っておりません。いままで打ち立てた柱の内容充実、こういうことに力を注がなければならぬと思っております。しかして、いまお話しのような調査が多い、これも事実でありまして、いま申すように戦後に出発した近代的な社会福祉あるいは社会保障というものが、いま戦後十八年を過ぎまして、またある程度手直しと申しますか、充実するための調査が非常に必要だ。こういうことで、ことし出ておる調査費も、あるいは医療実態調査とか薬の調査とかあるいは児童関係調査とか、社会保障総合調整等調査とか、いろいろな実際に調査しなければならぬ費目がいま非常に多いので、ちょうどいまそういう時期に来ておる、こういうふうな考え方も持っておりまして、お話のようにこの調査は、やがて今後の施策のためにどうしても必要である。この調査の結果、二、三年のうちには、また社会保障というものが相当な前進と申すか内容充実と申すか、こういうことが行なわれるのでありまして、ちょうどこの時期にそういうものが重なってきた、こういうことが言えるのでございます。  いまのようなことでありまして、私ども、全体的に申しましてはいまの日本予算が一三%の増であるのが厚生省予算が二〇%増であった、こういうことでありますが、この増が相当な地位にある、こういうふうには思っておりません。なお多くのものを国全体としてこれにさく必要がある、こういうふうに考えております。
  5. 吉村吉雄

    吉村委員 ただいま社会局予算というものが相当ふえているというお話がありました。社会局全体の予算がふえていることは、私もそのとおり認めます。しかし、この社会局予算の大部分を占めるものが生活扶助であることは、大臣も御承知のとおりです。千四十二億のうちの大体九百億前後というものは生活保護充当されるわけでありますから、社会局全体の予算伸びたといたしましても、いわゆる生活保護関係費用を除いて、あと社会福祉関係のものを考えてみますと、その伸び率は非常に少なくなっておるということを私は実は問題にしているのでありまして、いわば社会局生活保護社会福祉関係全体を取り扱っているという、そういう機構自体にもたいへん問題があるのではないかと私は考えるわけです。ですから、社会局予算伸びたからといって、それで社会福祉関係全体の予算伸びた、そういう理解にはならない、このように私は考えますので、その点はもっと明確に大臣所信を示していただきたいと思います。  第二の、各調査費目というものが大幅に数多く芽を出したということは、将来の社会保障政策充実のために必要なことであるということは、そのこと自体については私は否定をいたしません。ところが、今年度厚生省の新政策一つとして、社会保障総合研究所というものを設置するということが打ち出されております。この社会保障総合研究所におきましては、これからの日本社会保障政策はどうあるべきかということについて、それぞれの立場から専門的に研究をするということになるのであろうと思います。といたしますると、厚生省関係のそれぞれの調査費目と重複をしはせぬか、こういう点がどうも一貫をしたところの方針に貫かれていない、こういうふうにも考えられまするので、この点は一体どういうふうに解明をされるのか、ひとつお伺いをしておきたいと思います。
  6. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまの社会局予算そのものは、お話のような内容を持っております。したがいまして、このためにいわゆる生活保護以外の社会福祉費用がそう大幅に伸びた、こういうことは申せないのであります。  なお、調査費の問題でありますが、社会保障研究所におきましては、将来の社会保障の基礎的な研究をしてもらう、こういうことでありまするが、他の調査費は、来年でも再来年でもすぐ役に立つようなものが主として計上されておる。社会保障研究所のほうは、もう少し基礎的な、先を目標とした研究を願う、こういうふうな一応の考え方をいたしております。
  7. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの第一番目の社会福祉費の問題については、大臣も認められておりますから、これはあとでまたこまかく質問していきたいと思います。  次にお伺いしておきたいのは、昭和三十七年度において、貯蓄奨励中央本部というところで、次のようなアンケートを出しておるわけです。それは貯金をしておる人に対して、あなたは一体どういう目的貯金をするかということを、一般の家庭を対象にして五万三千世帯調査を行なった。これに対する答えというものがどのように出ているかということが発表になっておりますが、それによりますると、貯蓄目的として、不時災害に備えるという人、言いかえるならば病気とかあるいはけがとかいうことだろうと思いますが、これが三三・五%、子供の養育、教育に備えるという答えを出している人が三二・三%、それから老後生活安定ということを考えてという人が一〇%、その他九%くらいという数字が出ております。実はこのアンケートの結果というものは、今日の日本国民が、毎日の生活に対してどういう不安と心配を持っているかということをやや明瞭に示しているというふうに思います。さらに、日本人は非常に貯金が多いということを言われておるのでありますけれども、これを国際的に比較したものを、同じくこの貯蓄奨励中央本部で発表しておろのであります。この貯蓄率国際比較におきましては、アメリカでは七・一%、イギリスが一〇・七%、西ドイツが八・八%、フランスが七・八%であるのに対しまして、日本は二二%という数字を発表されております。このことは、日本の一人出たり国民所得というものが、国際的に比較をいたしますると二十五位か六位にすぎない、こういう状態の中で特に日本人貯蓄というものが他の諸国に比べてけた違いに額が多いということと、先ほど申し上げましたところのアンケートに対する答えというものを照らし合わせてみますると、これは、言いかえるならば、日本社会保障政策というものが非常に劣っている。したがって、各人で不時災害なり、あるいは子供の将来なりについて備えていかなければならない。だから、所得自体は非常に少ないのにもかかわらず、無理して貯金をしているということを明瞭に示しておると思います。厚生大臣にお伺いしたいのは、言うまでもありませんけれども厚生大臣国民生活を安定させて、そうして将来に不安なからしめていく、いわば最低生活というものを保障させていくという社会保障政策推進責任者でもありますから、いま私が申し上げましたところの、この日本人貯蓄状態、その内容等について、一体社会保障政策推進していくその責任者として、大臣はこの実情をどのように御判断をされますか、お伺いをしておきたいと思います。
  8. 小林武治

    小林国務大臣 ただいまの御質問でございますが、私もいまお話しのような感じを持っておるのであります。日本貯蓄の非常に旺盛だということは、喜んでよい一面、また社会的な欠陥を露呈しておる、こういうふうに私は思うのでありまして、むろん貯蓄は必要であるし、資本の充実も必要でありますが、いまのような外国と比べて差異のあるということは、日本社会保障が劣っておるのが大きな一つ原因である、こういうことが言えるのであります。それで、ただいまお話し不時災害、こういうものは、おもに病気でありますが、この病気に対しましては健康保険なり国民健康保険充実していけばある程度この心配が除ける、こういうことが言えるのでありますし、なお、日本で一番大きな問題は老後所得保障の問題であります。定年後の所得保障されない。これがわずかに厚生年金国民年金によって今後多少保障される。しかし、これはほんの多少でありまして、実質的に無所得老後をささえるには足りない。こういうことで、私どもは、とりあえず厚生年金は実質的に何とか役に立つ一万円の年金まで持っていきたい、そうして、今後の問題としては、国民年金もこれにならいたい、こういうふうな考え方を持っております。一番の問題は老後保障の問題でありますが、これは、大部分の方に対しては年金問題でこれの解決をしなければならぬ、こういうふうに思っておるのでありまして、これの改善ということには国民政府も力を入れなければならぬ、こういうふうに考えております。  なお、教育問題につきましては、これはいまのところやはりある程度個々の方々の努力を待つ、こういうことになるのでありますが、社会保障充実によりまして不時災害老後保障だけは何とか解決をしていかなければならぬ、こういうことに考えておりまして、いまはこれを主として個人危険負担でやる、そのために貯蓄が非常に多い、こういう傾向であることはいなめない、かように考えております。
  9. 吉村吉雄

    吉村委員 日本人貯蓄額が国際的に見て非常に多いことは、必ずしも好ましいことではない。その貯蓄額が多くなっていることの原因一つは、重要な一つだろうと思いますけれども、それはやはり、わが国の社会保障の水準が他に比して低いところにあるということについては大臣も認められておるようでありますから、私は、いま政府のほうで貯蓄奨励の運動を相当行なっておるそのこと自体については、別に問題にはしたくないのでありますけれども、そういうことによって、重要な国としての国民生活安定のための社会保障政策充実がおろそかにされていく傾向がもしあるとするならば、たいへんな問題だと思います。こういう点、厚生大臣のほうから、十分貯蓄の今日持っておる性格、その内容等につきましては、機会を見てやはり実情を明らかにしていく必要があるのではないかと思いますので、厚生省のほうで十分、この貯蓄実態社会保障との関係等については、善処をされるように特に要望を申し上げておきたいと思います。  それから次に、社会保障政策につきましては、一般防貧政策救貧政策というものがある、このように言われておりまして、救貧制度としては公的な扶助、あるいは防貧制度としては社会福祉なり社会保険なり、もっと広義な意味では公衆衛生、こういうものがあるのであります。この公的扶助の問題については、前回の委員会八木委員のほうから詳しく社会党としての立場に立っての意見開陳があったものと思いますので、私はこれには深く触れようとは思いませんけれども、いずれにしましても所得倍増計画あるいは社会保障制度審議会答申及び勧告、こういうものから見ましても、本年度生活保護基準というものが一三%の引き上げにとどまったということについては、たいへん大きな問題がこの中にひそんでおる、このように指摘をしなければならないと思います。この救貧制度としての公的扶助というものに、もっと今日の日本では力点を置きながら、最低生活の底上げということに力を入れなければならないことは言うまでもないのでありますけれども社会保障政策というものが、救貧よりも防貧重点を置くべきであるということについては一般に言われておりまするので、その立場に立って考えてまいりますと、社会保険というものが、ややもいたしますと制度の不均衡、そういうものから、その恩恵というものを深く受けなければならない低所得階層方々保険料負担すらでき得ない、こういうような矛盾もあって、社会保険制度そのものでは防貧役割りというものを十分に果たし得ないということは、私が言うまでもないと思います。したがって、防貧立場に立ったところの社会保障重点をなすものは、あくまでも社会福祉政策でなくてはならない、このように考えるのであります。しかも、このことにつきましては、三十七年度社会保障制度審議会答申あるいは勧告の中でも強調されておるのでありますけれども厚生大臣としては、今日の社会保障政策推進重点というものは防貧立場に立ったものに重点を置いているのだと思いますけれども、その点は、一体どういうところに重点を置いて進めていかれようとするのかということを、ひとつお聞きしておきたいと思います。
  10. 小林武治

    小林国務大臣 お話のように保護費の一三%引き上げ、こういうものは、いろいろの見方がありまして、不十分だ、あるいはやむを得ない、いろいろの見方がありますが、私どももこれでよろしい、こういうふうには考えませんが、今後これらについてはまだ考えなければならない。  それから、厚生行政のあり方としましては、出た現象を追いかけるのではいけない、もっと積極的に前向きに進めなければならぬ、こういうことを思っておるのでありまして、いまの救貧よりか、防貧重点はできるだけ置かなければならぬ、こういうことは当然でありまして、まあ貧乏になる一番大きな原因は、病気が一番大きい。病気による労働不能、また病気による労働力の喪失、こういうことでありまして、この面からいけば、どうしても私は社会保険あるいは国民健康保険なりを充実して、そうして医旅費個人負担を軽くする、こういう方向にいくことが非常に大きな問題で、また重要であるのでございまして、社会福祉施設というようなことになりますと、社会福祉もいろいろありまするが、大体多くのいわゆる従来の社会福祉というのは、保育所とかそういうものは別にしまして、いろいろのマイナスのある方をカバーする、こういうことが大きな社会福祉の大部分仕事ではないか、こういうふうに思うのでありまして、その方々マイナスをカバーするということは、あくまでもやらなければなりませんが、通常の人の防貧は、やはり医療関係に、社会保険に相当の重点を置かなければならぬ、こういうように考えております。病気そのものにつきましてもいろいろな病気がありますが、たとえば流行性病気とか、あるいは呼吸器病気とか、こういうようなものについては相当防げる道がある。私どもはことし、たとえば環境衛生施設等について大きく力を入れておるのは、そういう病気の出ないようにするにはまず環境をよくしなければならない、これが大きな一つ防貧であり、あるいは一つ予防衛生である。病気を初めから出ないようにする。こういうふうにもう一歩先の仕事をしなければならない。こういうふうな考え方で、抽象的にいえば積極的の行政、いわゆる予防行政、前向きの行政、こういうところに私ども仕事重点が移らなければならない、かような考え方をしておるわけであります。
  11. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの大臣答弁によりますと、どちらかというと、防貧の中心というものが社会保険重点を置いておるかのごとき印象を私としては受けたのでありますけれども、もしそうであるとするならば、私は少し意見を異にするのでありまして、現在の社会保険制度というものは、先ほども少しく申し上げましたけれども、低所得階層方々、それぞれの階層方々の中で非常に恵まれない階層方々の加入する制度というものは、給付そのものがよくなっていない、比較してみて悪い、こういう状態にあります。すなわち制度間のアンバランスということがたいへんに指摘されておるわけで、そういう点から考えてまいりますと、社会保険というものが防貧役割りを果たすのにはやはり限度がある、このように言わなければならないと思うのです。そこで、社会保障制度審議会答申におきましても、どちらに国の政策重点というものをかけるべきであるかということについてならば、それは社会保険よりも社会福祉のほうに国の費用というものはかけるべきである、こういうことが強調をされておるのでありますが、その考え方答申なり勧告というものといまの大臣答弁とは、私の理解では少しく食い違っておるように思うのでありますけれど、一体社会保険重点を置いたそういう防貧政策というものにこれから進めていこうとするのかどうか、ここをひとつ、もし間違って私か聞いておるとすれば別ですけれども、明らかにしていただきたいと思います。
  12. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のような答申もいただいおります。いずれにしろ社会保険あるいはいまの福祉対策、こういうものは両々相まっていく。たとえば低所得者対策としましては、いまの世帯更生資金の問題、こういうもの、あるいは老人福祉の問題、あるいは母子福祉の問題、それから今後力を入れていこうとする児童対策、今後は児童手当というような問題も当然課題にのぼってくるのでありますし、そのほかマイナスを持っておる方々をカバーすることによってその家族の生活を補う、こういうふうなことも考えておりまして、社会福祉対策というものも並行してこれに力を入れていかねばならぬということは、お話のとおりでございます。   〔委員長退席、小沢(辰)委員長代理者着席〕
  13. 吉村吉雄

    吉村委員 先ほどの答弁からいたしますと、やや少しく変わってきたように思いますけれども、私は、社会保険社会福祉政策というものをはっきり区分けをして、どちらに重点を置くんだ、そういうように言ってもなかなかむずかしい問題であることは承知しております。ただ、それでもなおかつこの社会保険というものと、それから社会福祉政策というものが、防貧役割りの中でどちらがその役割りを多く果たすのかということについて言うならば、今日の日本社会保険制度のもとでは、十分の役割りというものを社会保険というものは果たし得ない。したがって、防貧役割りの重要政策となるものは社会福祉政策でなくてはならぬ。この社会福祉政策というものを充実していくとするならば、救貧に要する費用というものはだんだん少なくなっていくはずだ。それが、前向きの社会保障政策であるというふうに思います。ですから、大臣のいまのお話によってやや納得できるのでありますけれども、どちらかというならば、社会保険に国のお金、をかける割合といいますか、それよりも社会福祉のほうに国のお金というものはかける、そういう立場で今後の社会保障政策というものを進めていくことが正しいのではないかと思うのですけれども、どちらかといえば一体どのように考えられるのか、大臣の考えをひとつ教えてもらいたいと思います。
  14. 小林武治

    小林国務大臣 いまの社会保険制度の程度では十分な防貧目的を果たしておらない、こういうことはお話のとおりだと思います。したがって、これらを改善することが必要でありまするが、同時に、いまのお話のような社会福祉政策というものは、相当な重点をもって推進しなければならぬ。その御意見には私も同感いたします。
  15. 吉村吉雄

    吉村委員 それで、これは社会局長か、あと児童局長でもいいですけれども、国の予算編成費目の中で、いわゆる社会福祉費として計上されている金、これが昭和三十五年以降、三十六年、三十七年、三十八年、九年というぐあいに幾らの額が計上され、これは年度当初の額で前年度に対してどういうふうな伸び傾向を示しているかということを、これはまとめて出しておると思いますから、社会福祉予算というものはどういうふうになっているかをひとつ知らしていただきたい。
  16. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 三十五年以降の詳しい分は、追って資料として提出したいと思いますが、とりあえず三十九年度と前年度、三十八年度とを比較しますと、生活保護費は除いて、児童局も入れて三十八年度社会福祉関係予算が三百十七億のものが、三十九年度では三百九十一億、約七十四億、伸び率で二七%の増というふうになっております。
  17. 黒木利克

    ○黒木政府委員 たまたま手元に三十七年度までのがございましたから、社会局長答弁を補足いたしたいと思います。   三十二年度社会福祉費の総額が百二十二億六千五百万円、三十三年度が百三十一億二千七百万円、三十四年度が百三十五億五千二百万円、三十五年度が、百四十四億四千二百万円、三十六年度が百九十億六千万円、三十七年度が二百六十四億八千七百万円、これを前年対比でやりますと、三十二年度を一〇〇といたした場合でございますが、三十三年度が一〇七%、三十四年度が一一〇%、三十五年度が一一八、三十六年度が一五五、三十七年度が二一六と相なります。  なお、社会保障関係費用との比率を申し上げますと、全体を一〇〇%としまして社会福祉は四%になります。大体四%でございます。なお、社会保険費は、八一%から八五%程度のウエートを占めるわけです。
  18. 吉村吉雄

    吉村委員 私のほうの質問をしているのは三十五年度以降で、前年度対比を聞いたわけですけれども、資料、かないというお話ですからやむを得ません。実は私がいままでの三十五年度以降ここに国会の仕事に携わってみて、予算費目を全部調べたもので申し上げてみますと、社会福祉費として出されておるものは、三十六年度におきましては当初予算で百七十一億六千九百万円、三十七年度、が二百三十億五千三百万円、三十八年度が三百一億四千万円、それで明年度社会福祉費が三百七十二億千六百万円、こういうふうになっておりますが、この数字自体は間違いないでしょう。
  19. 黒木利克

    ○黒木政府委員 調査しませんとわかりませんが、おそらく先生のおっしゃる社会福祉費の中には、公的扶助費が入っているのではないかと思います。私の申し上げましたのは、公的扶助費と社会福祉費を分けて申し上げたのでございます。
  20. 吉村吉雄

    吉村委員 どうもこの社会保障費用の範囲というものについては非常にむずかしくて、実際対象となるものが明らかになっていないために、したがって政策自体というものも、一本の政策というものは立たないうらみがあります。ですから、私は議論をしやすくするために申し上げているのは、予算編成上の社会福祉費として計上されているもの、こういうものを明確にして申し上げているつもりなんです。それは国の予算の中で社会保障費というものが一体どのくらいになっておるか、したがって本年度社会保障費というものは多くなったとか少なくなったとかいうことが一般政府のほうからもいわれておりますから、そこにまず基準に置いて議論をするしかないであろう。そのほか、社会保障制度審議会のとるところの社会保障費というもの、あるいは厚生省厚生行政長期計画構想ですか、長たらしいあれでいっている社会保障費の範囲、こういうものがいろいろあるのでありますけれども、そういうことで社会保障費の範囲というものがそれぞれによって不明確な状態の中で、どこに基準を置いて話をしたらいいかということになるならば、やはり国が予算を、編成する中で社会保障費はこれこれである、その中で社会福祉費はこれこれであるということが公表されておりますから、それをもってひとつ議論の対象にしていくしかないんじゃないかと思って、前もって予算編成の中での社会福祉費の占める割合、こういうことをお尋ねしておるわけですから、話の食い違いというものの起こらないように、ひとつしていただきたいと思うのです。  それで、いま私が申し上げたのは昭和三十六年度以降の、政府が発表するところの予算費の中の社会保障費中に占める社会福祉費というものの数字を申し上げたわけです。この数字自体は、あなたのほうで調べたものと間違いはございませんかということを聞いておる。
  21. 黒木利克

    ○黒木政府委員 三十九年度予算の説明、大蔵省主計局から提出いたしております資料に明らかなように、社会福祉費は、児童保護費と身体障害者、それから精神薄弱者の保護費、それに老人福祉費、社会福祉施設整備費、児童扶養手当、三十九年度は示度の精神薄弱児の関係の手当がありますから、その六項目を含めておるわけでございます。従来は五項目まででございました。そこで、先生の御質問の意味は、おそらく社会保障費の件で、社会保険公的扶助社会福祉のウエートが従来どんなふうに変わっておるかという御質問だと思いますが、確かに御指摘のように、三十七年度までを見ましても、社会保険費のほうの社会保障費の中に占めるウエートは、三十二年度が八一%で三十七年度が八四、だんだん上がっておりますが、社会福祉関係は、ちょっと先ほど申しましたように、大体四%台の横ばいをしておるというような数字でございます。
  22. 吉村吉雄

    吉村委員 数字的には明らかにされませんでしたけれども傾向としては、他の社会保障費目の伸びに比して社会福祉費伸びというものは停滞している、まあこういうことは明確になりました。私のほうの調べによりますと、その伸びの割合というものが、昭和三十八年度当初予算に比して、昭和三十九年度伸びというもはいままでになく非常に少ないというふうに数字上は計算をされる。私は、ここで問題にしたいのは、先ほど大臣は、社会保障を前向きの姿勢に立って進めていく、そのためには、社会保険も重要ではあるけれども、もっと社会福祉というものに重点を置いたところの施策を進めていく必要があるということを答弁されておる。といたしますと、その方針の裏づけとなる金の問題については、遺憾ながら、いま児童局長のほうの答弁によりましても明らかなように、裏づけとしての金のほうは大臣の方針と一致しない、こういうことになるのでありますけれども、この点は一体どういうふうになりますか。
  23. 小林武治

    小林国務大臣 結果的に御指摘のきらいがあると思います。
  24. 吉村吉雄

    吉村委員 結果的にそうなっているというだけでは、これは結果はわかっておることなんで、社会保障政策というものを充実をしていくために、社会福祉というものが非常に重要である、しかも、防貧という立場に立つならば、その中心的な役割り社会福祉というものが果たしていくということは、厚生省の長期構想の中でもそういった文句が出ておったと思います。さらに明確にこれを強調しておるのは、社会保障制度審議会答申勧告におきましては、社会保険に優先をしてこの点について国費を投入すべきであるということを言明されておる。いまの池田内閣は社会保障を重要政策一つに掲げておって、社会保障制度審議会答申勧告についてはこれを尊重するということも明らかに言明をいたしておるのでありますけれども、そういうような言明あるいは政策、そういうものとこの予算というものは、遺憾ながら一致していない。それはそういう結果になっておるというだけで済ませる問題ではないと私は思います。やはり政策推進する上においては金がかかるわけですから、その金を裏づけをしていくのが、それが大臣政策推進していこうとする心がまえにとって一番大切なところではないかと思うのですけれども、結果はそうなっているというだけでは私は済まされない問題だと思うのですが、どうでしょう。
  25. 黒木利克

    ○黒木政府委員 私の御説明がまずかったせいで、私から一応御答弁申し上げたいと思います。  御承知のように、社会保障の体系の中で、社会保険、社会扶助——これは公的扶助とも言っておりますが、あるいは社会福祉、どちらにウェートを置くべきかということでいろいろ論議がございますが、世界的な定説は、社会保険が主流になりまして、公的扶助なり社会福祉というものは、第二義的に考えておるようでございます。そこで、わが国の社会保障の中で、生活保護を中心にしました公的扶助あるいは社会福祉が、かつて非常に伸びた時代があるのでありますが、その意味で社会保険関係が非常におくれておったとも言えるのでありますが、最近、国民皆保険あるいは国民年金、あるいは世帯主の七割給付世帯員にまで広げるというようなことで社会保険が急激に伸びてまいりましたから、先ほど申しましたように、最近の社会保障の全体の中でのウェートでは、社会保険伸び率が非常に激しい。したがって、公的扶助は、昭和三十二年度が一〇でございますが、三十七年度は七というふうに、だんだん逓減をいたしておるのであります。社会福祉費が大体横ばいの傾向にあるということでありまして、社会保障の全体の体系から申しまして、これはやはり各国からのいろいろな解説からいきますと、正常の姿にだんだん発展したのではないかというふうに言えると思うのであります。社会福祉関係も、全体のウェートは横、ばいでございますけれども、しかし、たとえば児童福祉の面におきましては、この数年、この三年の間に約倍近く予算も増額になっておりますし、社会福祉関係の進展も正常な状態に近づきつつあるのではないかというふうに解釈されるのでございます。
  26. 吉村吉雄

    吉村委員 黒木局長が大臣にかわって答弁をされておるようですけれども、私が先ほど来申し上げておるのは、社会保障政策というものは、やはり防貧というものを考えつつやっていくというのが前向きの社会保障である、こういう答弁がなされておるわけです。その防貧政策の中の中心をなすものは一体何かといったならば、これは黒木局長もわかっておるように、社会保障制度審議会でも、あるいは厚生省の発表する文書の中でも、社会福祉というものに重点を置かなければならないということを強調しておるわけです。だとしまするならば、社会福祉費というものの伸びというものが、どうも年ごとに前年度比較をして減ってくるという、そういう状態というものは、ゆゆしい状態ではないかというふうに私は考えるのです。もとより社会保険というものがふえているので、社会保険費の伸び比較をしておるという議論になるならば、黒木局長の言ったとおりであります。しかし私の申し上げているのは、社会福祉予算伸びぐあいというものがここ二、三年来どうも停滞をし、しかも明年度予算においては前年度伸び率比較して少なくなっているということが、たいへん問題だということを申し上げておるのでありまして、そういう点から申し上げますと、いまの黒木局長の答弁がもし正しいとするならば、社会保険のほうに相当金を使っておるので、したがって社会福祉のほうが少ないのはやむを得ないんだ、こういうことになっていくとするならば、社会保険中心の社会保障というものを、いまの厚生省厚生大臣は進めているということになってしまって、先ほどのことばと非常に矛盾を来たしてしまう、こういうことになるのでありまして、まずい点はやはりまずいでいいと思うのです。そこは、社会福祉費というものが、私の見る限りでは明年度予算というものは非常に少なくなっているという、そういう実情について認められるならば、それを一体今後どうするか、こういうふうに将来に向けて発展していくわけですから、あまり言いわけがましい答弁というのは事を解決することにならぬのじゃないかと私は思いますから、少なくなっているという実情については、やはり大臣がさっき認められたように、そして今後どうするかということを、もっと前向きの姿勢での見解というを示してもらったらいいと思うのです。
  27. 小林武治

    小林国務大臣 社会福祉の金額は、ことしも相当伸びてはおります。ただ、他の伸び方に比べて少ない、こういうことで、お話のようなことはごもっともと思いますから、今後もさような趣旨で努力いたしたいと思います。なお、今年度は特に、いままでなかった重度精神障害児の手当、こういうようなものを新設いたしましたので、これにも厚生省としては非常な力を入れた、こういうふうな関係で、これも来年度は相当な自然増というものが出てまいりますし、お話のような点を私どもも考えますので、御趣旨に従った態度をこれからとりたい、こういうふうに考えます。
  28. 吉村吉雄

    吉村委員 次にお伺いしたいのは、いまの池田内閣の政策のすべてであると言ってもいい、あるいはその政策の柱であると言うべきところの所得倍増計画社会保障との関係についてでございますが、所得倍増計画によりますと、昭和四十五年、目標年次におけるところの国民所得に占める社会保障費の割合というものは六・一%というふうに見込んでおります。その後修正をするとかしないとかいう話は聞いておりますけれども、現在までのところ公表されているのは六・一%というぐあいになっています。  そこでお伺いしたいのは、この六・一%に包含をされる社会保障の範囲というものは、現在の昭和三十九年度の予想するところの国民所得に対してどのくらいの割合になっているのか、ひとつ説明してもらいたいと思うのです。
  29. 伊部英男

    ○伊部説明員 ただいま御指摘のございました六・一%というのは、倍増計画におきます昭和四十五年における振替所得の割合でございます。そこで倍増計画で使っております振替所得という概念は、社会保障と若干相違をいたしておりまして、社会保障費のうち入らないものもございます。そのほか社会保障費には通例入っていないけれども、振替所得に入っているものもございます。たとえば学校給食費のようなものは振替所得に入っておりますけれども社会保障費に入っておりません。一方社会保障費に組合管掌の健康保険費用は当然入っているわけですが、振替所得に入っていない、そういった相違がございます。そこで、大体社会保障費のほうが総額としてはいまのところ二割ぐらい多い、大体そういう傾向でございます。そこで、振替所得は全体として非常に伸びは示しつつあるわけでございますが、国民経済の伸びもまた著しいものがございますので、比率といたしましては、さほどいまのところ大きく増減はいたしておりません。
  30. 吉村吉雄

    吉村委員 所得倍増計画におけるところの社会保障費の取り方は、三十九年度予算で見込んでおる国民所得に対しては、一体何%ぐらいになるのですか。所得倍増計画の振替所得の中に包含される社会保障費、それで換算をして、一体三十九年度ば何%ぐらいになるのですか。
  31. 伊部英男

    ○伊部説明員 社会保障費あるいは振替所得は、いずれも決算を待たないと出ませんので、ただいまちょっと手元に数字を持ってまいりませんが、年次の四・八という振替所得は、率といたしましてはその後大きく変わっていないと思います。本年度どういうことになりますか、明年度の見込みでございますが、これは今後いろいろな推移がございますので、いまのところ、たとえば国民所得の見込みもまだ判明いたしませんので、ちょっと見込みはつきかねますが、そう大きくはふえないと思います。
  32. 吉村吉雄

    吉村委員 実は池田内閣にとりましては、所得倍増計画というのはすべての政策の基本になっておるはずであります。非常に詳細な分析を行なって、それぞれの目標を立てておるわけで、社会保障の問題につきましても、いま説明がありましたように振替所得で六・一%、こういうふうに出しておる。もしこの十ヵ年計画の所得倍増計画というものをスムーズに進めていくとするならば、この中で社会保障というものは年次的にどういうふうな割合を占めなければならないのかということをきめて、そしてその目標に向かって進んでいくというのが、池田内閣の内閣全体としての社会保障政策だと思うのです。それを具体的に実践をしていくその責任の省というのが、厚生省だと思うのです。その厚生省が、昭和三十九年度においてはどのくらいとか、あるいは四十二年度はどのくらいとかいう目標なくしてやっていくということでは、これは四十五年度にこのくらいと言われてみても、ほとんどその数字は信頼するわけにはいかない、こういうことになりかねないと思います。申し上げるまでもございませんけれども所得倍増計画昭和四十五年度において期待するところの社会保障というものは、今日の西欧諸国の水準ということを四十五年度において期待をしようとするわけですから、それを実現していくためには、厚生省厚生省としての年次的な計画というものが当然なくてはならないと思うのですけれども、それは全然ないのですか。
  33. 伊部英男

    ○伊部説明員 厚生省といたしましては、当面倍増計画にございます振替所得六・一を目標として、ぜひそのように施策を進めてまいりたい、こういうことでございます。
  34. 吉村吉雄

    吉村委員 私の聞いているのは、その中間の年度ごとにどのくらいの割合を占めるかということを聞いておるのです。
  35. 伊部英男

    ○伊部説明員 中間の年次につきまして毎年度これこれのことをやるということは、別にそこまでは詰めておりませんが、たとえば厚生年金は本年度計算期にあたりますので厚生年金の改正を本年度行なう、あるいは国民年金昭和四十一年に再計算期にあたりますので、その際に国民年金について改善を考える、あるいは昭和四十四年度において厚生年金が再び再計算期にあたりますので、その際には厚生年金制度をもう一度考える、あるいは国民健康保険つきましては、本年度予算にございますように四ヵ年計画をもって七割給付を実現する等の計画を持って進んでおるわけでございます。
  36. 吉村吉雄

    吉村委員 そういたしますと、厚生省厚生行政長期計画基本構想というものは、現在はあれは生きておるというふうに考えていいですか。
  37. 伊部英男

    ○伊部説明員 現在、基本構想それ自体厚生省としてのいわば目標でございますが、基本構想そのものは、目標としてはいまなお生きておるというぐあいに御了解いただきたいと思います。
  38. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣にお伺いしますけれども、いまの答弁によりますと、たとえば厚生年金については五年目になったから本年度改正をしなければならない、あるいは国民年金については来年改正をしなければならない、こういうそのときどきの実情に応じて事務的な改正というものをやっていくという、それは当然なさなければならない問題だと思うのです。倍増計画は、そういう事務的なものよりも、奨来において日本国民生活をこのようにするということを計画しておるものですから、したがって、厚生省としては、そこに到達するためにはどういう計画でいかなければならないのかということが明らかになっていなくてはならぬと私は思うのです。この委員会でも、そういう点については、年次計画がないのではないかというような議論が再三にわたってなされております。四、五日前の新聞によりますと、大臣は具体的な計画を立案するように事務当局に指示をしたと云々ということが出ておりますが、問題は、やはりこの年次計画をもっと具体的な、厚生省としての長期展望に立ったところの計画というものを年次的に出しておかない、しかもその出したものを政府全体の方針として承認させておかないというところに、そのつどそのつど、厚生省予算というものが大蔵省の圧力とかなんとかによってつぶされてしまうという結果になるのではないかと思うのです。その好例が、やはり生活保護基準の問題にきておると思うのです。厚生省としては二二%を最低限度のものとして要求をする、ところが財政当局のほうからは、それがだめだということになってしまって、とうとう二二%で納得しなければならないという羽目になっておる。これでは、所得倍増計画日本の十年後の昭和四十五年の国民生活をこのようにし、その中で社会保障費はこのくらいにして西欧水準並みにする、こう言ってみたところで実際絵にかいたもちにすぎないので、もっと厚生省だけでもそれを実現していくためには本年度はどうし、来年度はどうするという、そういった計画があってしかるべきだと思うのです。そういう点を十分計画的にやっていかないところに、いろいろ困難な問題が起こる原因があると思うのですけれども大臣は、いまのこの厚生行政のあり方について、これから一体どのようになされようとするのか、ひとつ明確にしていただきたい、こう思います。
  39. 小林武治

    小林国務大臣 お話のとおり、私どもは長期計画、これをたとえば法定するのはどうか、こういうふうな質問も他の場所であったのでありますが、いまの社会保障計画そのものにつきましては、国民生活の程度とか、あるいは国情とか、経済情勢とか、いろいろなものにその年々で支配される、影響を受ける、こういうことがあるから、固定的にこれをきめておくということはなかなか困難な問題であるし、またこれを閣議決定をしておくというようなことも、これはなかなかできがたい。しかし、少なくとも厚生省としては一応の年次計画を持っておるべきだ、目標を持っておるべきだ、四十五年に、それに合うような年次計画を持っておるべきだ、こういうことを考えており、私もその向きの指示をいたしており、一応の目標はある。それを外に出す出さぬ、出すようなものでなくても、とにかく持たなければならぬというふうに私ども考えて、その向きの指示をいたしておるのでございます。お話のとおり、少なくとも役所はそういうものを持つべきであるということは、私もそのとおりに考えております。
  40. 吉村吉雄

    吉村委員 ぜひそれは早急に、もっと具体的なものを策定していただきたいと思うのです。同時に、そういった厚生省なら厚生省の長期計画というものが、厚生省だけの幻想にだけとどまらないで、池田内閣の全体の問題として、やはり閣議なら閣議でもってそれが承認をされていく、そういう方向というものが裏づけされていく、こういうふうになっていかないとこれはどうにもならないと思うのです。私はこの厚生省厚生行政の中で特に感じさせられますのは、大臣がかわるつどに、まあ児童手当をどうするとか、いや国保をどうするとか、いろいろなことの新聞発表というものが厚生省ほど多いところはない。非常に、これもやります、あれもやります、特に昨年の選挙の前のころなどは、はなはだしいと言ってもいいくらいのものもありました。私は、これをやりたい、あれをやりたいと言うこと自体を非難しようとするものではないのです。問題は、そのやるといって発表したものは具体的に実施に移してもらわなければ、単に国民に幻想を抱かせてしまって失望を多くする、こういう結果になってしまうと思います。ですから、厚生省が対外宣伝、PRをよけいにしなければならないのは幾つかの理由がありましょうけれども、しかし、宣伝だけに終わらせないためには、内閣全体の問題として、特に池田内閣は社会保障重点にするということを口ぐせに言っておるのでありますから、内閣全体の問題として長期計画というものを推進する、そういう姿勢というものを確立していくというのが、厚生大臣にとって非常に重要な役割りではないかと思うのでありますけれども、ぜひそのようにしていただきたい、こう思いますが、一体どうですか。
  41. 小林武治

    小林国務大臣 いまの厚生行政のいろいろな政策は、自足党の政策として取り上げられ、私どもがいろいろの機会においてああするこうすると言うたものはほとんど着手されておりまして、単にただ放言に終わっておるものというものは、あまり私はいま見ておりません。しかしお話のように、一定の計画に従ってやるということ、できれば私どもも閣議決定くらいまではしたい、こういうふうに考えておりますので、さような努力もこれからいたしたい。少なくとも私ども仕事は非常におくれている、こういうことでいろいろ世間の理解、協力も得なければなりませんので、いろいろ新聞等にも出ることがありまするが、しかし、私どもが昨年の選挙以来国民に申したことは、この国会におきまして御審議を願うように一応の案はほとんど提出されておる、こういうふうに考えます。
  42. 吉村吉雄

    吉村委員 厚生年金保険法やら、あるいは国保の改正やら、とにかくそういったものについて提案をしようという、そこでは公約の実行であるかもしれません。しかし、内容的に申し上げまするならば、昭和三十九年度において実施をするというものはほとんどないと言ってもいいのでありますから、ほとんどは来年以降の政策として芽を出すにすぎない。こういうことから言いますると、正しい意味での公約の実行ということにはならないと私は思います。しかし、それらは法案が提出されて以降、われわれの態度というものを明確にしながら、政府の態度については議論を展開していきたいと思いますけれども、何か本年度中にやればいいのだということで、公約は実行しておるというようなお話でありますが、実はそれは形だけだというふうにきょうのところはとどめておきたいと思います。  それから、やや具体的な問題で質問をいたしておきたいと思うのですけれども一つは、先ほども少し触れましたが、社会保障費というもの、社会保障の範囲というものについて、国のいろいろの機関というものが統一された見解を打ち出していない、こういうふうに私は考えます。でありますから、何かの政策を立案するとしてもいろいろな混乱の原因になっている。こういうふうに考えますので、厚生省としては、やはりわが国で言うところの社会保障費というものはこういう概念なのだということを明確にすべき必要があると思うのです。ILOに対しては、三年ごとに社会保障費はこのくらいかかっておるということを報告することになっておるはずだと思うのです。そのILOに対する報告の内容と、国の予算費目の中に出てくる社会保障費内容、あるいは所得倍増計画の中におけるところの社会保障内容政府の審議会であるところの社会保障制度審議会がこのごろ発表されている統計で使うところの社会保障内容、いずれもまちまちになっておると思うのです。これでは一致したいところの政策対象というものがないわけですから、一貫した政策というものも出てこない。こういうふうになるのではないかと思いますから、将来社会保障総合研究所ができまするならば、当然そういった問題についても検討が進められるものとは思いまするけれども、これはぜひひとつ、国民の関心というものが社会保障に非常に強くなっているときでもありますから、概念の統一というものを明確にする。国際的な社会保障費の概念と国内的な概念というものがかまちまちだというようなことでは、一貫した政策というものを立て得ない、こういうことになるだろうと思いますから、この点は強く要望をしておきたいと思います。  第二に、これは気がついておることでありますけれども社会局で扱うものは、生活扶助とその他の児輩の社会施設以外の社会施設を一般に扱っておるのですけれども、いい悪いは別にいたしまして、今日の予算の獲得、編成のあり方からいたしますと、やはり一つの局として予算というものを見る、そういう気持ちが働いているのじゃないかと思うのです。本年度社会局予算を見ましても先ほども申し上げましたように、他の局と比べてみると相当多額になっておるように見える。ところが、その大部分生活扶助のほうに持っていかれてしまう、こういう状態ですから、私は、予算というものは、もっと社会保障費充実するための予算の獲得——そういうことばが妥当かどうかわかりませんけれども、そういう方向に進むとするならば、やはり社会福祉関係生活保護関係を区分して、そうして機構を改めた上でやっていくことのほうがいいのではないかというふうに考えるのですけれども、これは行政調査会のほうでもいろいろ議論されておると思うのですが、社会局長にそういう点について、一体そういうような弊害といいますか、があるかないかだけを承っておきたいと思います。社会局生活扶助、それから社会福祉の一部、こういうものを包括しておることによって、予算が少なくなるようなきらいはないかということです。
  43. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 生活扶助社会福祉との関係は、行政的にも非常に密着しておるわけでございますし、私は、これはむしろ総合的に考えていくべき性格のものである、そういう観点からしますと、同じ局で行政を統一的にやっているからということで予算が制約されたということはないのじゃないかというふうに思っております。
  44. 吉村吉雄

    吉村委員 そういうことであればけっこうです。ところが、どうも生活保護基準が上がれば、社会局の中の他の費目が圧迫されているという実績が出ていることは現実ですよ。だから、私は、そういうようなきらいがあるのではないかと思って申し上げたわけですけれども、ないとすればいいです。ところが、生活保護基準が上がったときには、他の社会福祉費が圧迫されておるということがどうしても実績として出ておる、こういうふうに思いますので、そこのところは、そういう結果にならないように十分配慮していただきたい、こう思います。局が一つであったほうがいいのだとするならば、その点を十分配慮してやっていただきたい、このように思います。  次にお伺いしたいのは、先ほどのお話によりますと、厚生行政長期計画基本構想というものは今日でも厚生省の計画として生きておる、こういうことでございますので、それに基づいて若干の質問をしたいと思います。  その中で「社会福祉及び児童福祉」という項があるのですけれども、この中にはたいへん至れり尽くせりのことが書いてあります。若干読み上げてみますと、「産業構造、就業構造の高度化、都市化等に対応する地域社会の質的変化に対応して、社会福祉の近代化をはかり、新しいニードに即応していくべきである。すなわち、老齢者対策としては、近代的な軽費老人ホームないし老人向けアパートを目標年次までにおよそ二千ヵ所建設するほか、生活設計指導の相談機能を強化し、家庭奉仕員制度などについても検討する。」こういうようなのから始まりまして、たいへん至れり尽くせりのことが書いてあるのですけれども、この中で現在、軽費老人ホームというのは一体幾つくらいあるのですか。目標年次までに二千ヵ所と、こういうふうなお話ですけれども、現在は一体どのくらいあるのですか。
  45. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 現在二十一ヵ所でございます。
  46. 吉村吉雄

    吉村委員 四十五年度が目標年次でございますから、そのときに二千ヵ所建設するというのが厚生省の長期計画構想でございます。現在二十一ヵ所、もう昭和三十九年度に入るわけですけれども、一体こういうことで二千ヵ所の建設というのはいつできるのですか。大臣どうですか。
  47. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 これからの問題でございますが、私どもも極力計画の実現に努力したいと思います。
  48. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣、いまお聞きになっているように、長期計画では二千ヵ所を建設すると、こういうふうにいっておるわけですよ。ところが現在は二十ヵ所前後しかない、あとは将来やるのですというのが、厚生省の長期計画なんです。これで一体厚生省の計画として発表され、それを国民が納得できるかどうかということが、私はたいへん問題だと思う。計画の後半において飛躍的にそういうことができるような、そういう情勢であるならば別です。また、厚生大臣がそういうことを、ぜひやるんだ、そういうことであるならば別ですけれども、大体もう計画の半分くらいにまでなっておるわけですから、それでまだ百分の一しかない、こういう状態で一体将来二千ヵ所つくるというようなことが、具体的にどうして実現するのか、私はそういうところを知りたいのです。だから、厚生省の発表するものは、新聞発表でも何でもけっこうずくめでございます。しかし、現実にそうなっていないところが私は問題だということを先ほど申し上げました。今度のこの軽費老人ホームの問題は、その一つの好例だと思うのです。これはどうにもならないじゃないですか。
  49. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 軽費老人ホームにつきましては、これは年度からいいますと、いま着手したばかりでございまして、これからの大きな需要にこたえて計画を増加していきたいということでございます。  それから、経費老人ホームの二十一ヵ所と申し上げましたが、それは国費による施設数でありまして、養護老人ホーム、その他民間施設を含めますと約七百ヵ所になっております。二千ヵ所は、これは全体の施設として二千ヵ所でございますから、もちろん国がそれに対して大きく関与することは必要でございますが、民間の施設も、これからの一般的な需要に応じてもちろんふえていくことと思いますし、そういう点から総合して、四十五年度の二千ヵ所という目標に向かっては私どもも計画実現可能として考えていきたい、かように考えておるのでございます。
  50. 吉村吉雄

    吉村委員 では、社会局長がその計画を実現するためにやっていくというのですけれども大臣、これは目標年次までにいまの局長答弁を実現させていくということを言明できますか。
  51. 小林武治

    小林国務大臣 これらの問題も、これは一応の目標で、また必要によったら改定もしなければならぬ、もう一ぺん考えてみたい、こういうふうに思います。
  52. 吉村吉雄

    吉村委員 ですから、社会局長、努力をしていくということば自体は、私はいいと思うのです。問題は、やはり裏づけも必要になるし、総合的な政策も必要になってくる。だから、もっと実現の可能性のある、みんなから信頼される、そういうものにしてもらいたいと思うのです。いまの大臣答弁によりますと、あなたはやるように努力をしていくという答弁ですけれども大臣は、事情によっては変更してもというお話なんです。だからあまり幻想を振りまかないで、厚生省の計画というものはもっと国民から信頼される、そういう実現性のある、内閣全体として取り組んでいる、そういうものをつくっていただかないと困ると思うのです。  それから、この長期構想の中にも、施設職員の養成あるいは再訓練機関、こういうものを設置するというふうにあるのでありますけれども、これらは現在一体どういうふうになっておるのですか。現在施設職員というものが、待遇その他で非常に少なくなっているというふうに私は聞いております。ですから、施設職員の問題というのは大きな問題なんですけれども厚生省の長期計画によりますと、それを厚生省自体としての養成機関や再訓練の機関をつくるというふうに言っておるのですけれども、現在は一体どうなっておりますか。ことしの予算ではそういうものは全然見当たらないのですけれども、一体どうふうになっていますか。
  53. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 現在は、社会事業研修所においてそういう養成訓練の事業を現にやっているわけであります。三十九年度予算におきましては施設職員の増員も大幅に認められまして、全部含めまして、社会局関係で大体六百八十人程度の増員を認められたわけであります。
  54. 吉村吉雄

    吉村委員 この養成機関というものは、現在どういうふうになっているのですか。
  55. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 現在は東京の社会事業大学その他で、そういう事業の委託でやっておるわけであります。
  56. 吉村吉雄

    吉村委員 この長期計画によりますと、そういう機関を増設するということがうたわれております。だから、それは一体どういうふうになるかということです。
  57. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 国立の養成施設を予算で要求しましたけれども、本年度は実現を見なかったのでありますが、早急に予算の実現をはかりたい、かように考えております。
  58. 吉村吉雄

    吉村委員 そのほか、長期構想の問題は、現在の厚生行政の面から見ますと非常にいいことは書いてあるけれども、現在の厚生行政比較すると、一体こういうことができるのだろうかということばかり書いてあるので、聞いてみなければならないことが多いのですけれども、非常に数多くありますから、いまの一、二の問題について指摘をして——こういう計画というものは私はけっこうだと思いますけれども、その計画というものを実行するための具体的なものが進んでいない。先ほどの軽費老人ホームについてもしかり、あるいは社会施設職員の養成機関についてもしかり、こういう状態ですから、計画というものについては、何回も申し上げますけれども政府全体の問題として取り組み得るかまえというものを厚生大臣はやはり確立をする、こういうふうにしていただかないと、これは絵にかいたもちにすぎないということになってしまう。このことはぜひそうしてもらいたいと思います。それについての厚生大臣の決意をこの際承っておきたいと思います。
  59. 小林武治

    小林国務大臣 いまの構想等につきましても私は再検討をしたい、それで、御趣旨に沿うような実現の可能性のあるようなこういう計画を持ちたい、こういうふうに思っております。
  60. 吉村吉雄

    吉村委員 次は、社会施設で働いている職員の待遇の問題について、若干お伺いをしておきたいと思うのです。  本年度の施設職員に対する待遇につきましては、相当待遇改善のために配慮をしたということは認められるのでありますけれども、なおこの職員の待遇というものは、今度の厚生予算が実施に移されたとしてもいろいろな問題を包含していくのではないか、こういうふうに思いますので、ややこまかい問題になるかもしれませんけれども、お伺いをしておきたいと思います。  現在問題になっておるのは、民間の社会福祉施設で働いておる方々の賃金、待遇と、それから公立の社会施設職員の待遇との相違というものが、一番大きな問題だと思うのです。言うまでもないように、特に児童施設等については、国が民間の施設に委託をしてその保育に当たらせておるわけですから、やる仕事内容は同じだといわなければなりません。そこで、まずお伺いしたいのは、厚生省としては、民間の施設に働いておる職員と他の公的な施設で働いておる職員の待遇は、賃金でいいますと、ベース上は一体どのくらいの差があるというふうな判断をしておるのか、そこをひとつお聞かせ願っておきたいと思う。
  61. 黒木利克

    ○黒木政府委員 児童局のほうの職員が多いために、私のほうから御答弁させていただきたいと思います。  これは収容施設のほうと保育所のほうと二つのやり方がございまして、収容施設のほうは現員現給、実際におります職員の学歴、経験年数に応じて支弁をする、保育所のほうは子供一人当たり幾らというふうな一種の請負的な方法でやらしておりますから、そういうやり方で支弁をする、こういうかっこうになります。したがいまして、収容施設と保育所と分けて御説明を申し上げますが、しかし、両方を通じまして、公立と私立と、私のほうの措置費の運営上は差別をつけていないのでございます。いわゆる措置費の中で人件費についての予算単価というものがございますが、それを公私を問わず給付しておるわけであります。ただ、現実におきましては、地方庁におきましては、公務員は公務員のいろいろ格づけなりあるいは給与の支給の方法でやっております。民間立のほうは、それに準じて処遇改善をはかろうといたしておりますが、なかなか公立の職員の給与に追いつかぬという現実でございます。  そこで、現在がどうなっておるかということを申し上げてみたいと思いますが、収容施設のほうは、大体県単位の施設が多いものですから、この給与も国家公務員に比べておりますが、保育所のほうは、町村の経営がほとんどでございますから、市町村の公務員のベースに比較をしておるのであります。そこで、来年度の三十九年四月からはあとで申し上げますとして、三十八年の十月にベースの改定がございましたからそれで申し上げますと、収容施設のほうでは、予算単価は一万八千四百八十八円が平均の一人当たりの月の単価でございます。保育所のほうは、一万三千八百十二円でございます。それが三十九年の四月一日には、実はこれは本俸を上げるという問題と手当を上げるということで、三十九年の四月一日には手当の増額を収容施設におきましては一〇・五%いたしますから、予算単価といたしましては一万八千六百十七円が予算単価で、それに手当の、いま申しました一〇・五%を加えますと、二万四百二十九円になるわけでございます。保育所のほうは、予算単価が一万四千二百四十円、それが処遇改善費を、手当を本俸に換算いたしますると、一万四千八百三十四円に相なります。つまりこれだけを国として人件費の予算単価にいたしておるわけであります。これを、高等学校を出ましてすぐ採用されました公務員、これは八等級の一号俸でございますが、これは一万二千円でございます。それから大学を出ました者で公務員になりました最初の等級は八の五でございまして、これが一万三千六百円でございます。  なお、ここでまた複雑な要素があるのでございますが、保育所は、先ほど申しましたように子供一人当たり幾らというようなやり方でやっておりますために、いわゆる単価制のためにいろいろ問題があるのですが、現実には保育所の保母の定員の充足状況、これが八二%程度でございます。しかし、国としては一〇〇%定員が充足されておるという前提で予算を交付いたしておりますから、それを人件費として厚生省として地方庁に交付いたしたものを保母さんの給与に充当できるものといたしますと、この保育所のほうは、一万四千八百三十四円が一万六千二百五十六円支給できるはずだというような予算内容になっておるわけであります。現実には、先ほど申しましたように、公務員のほうは公務員のベースでまいりますから、問題は、一般行政職と違って専門職にするということ以外には、給与の改善はなかなかむずかしいのでありますが、公立と私立におきましては、各施設によりまして違いますけれども、まだかなりな開きがある。しかし現実には、予算措置としては、先ほど申しましたものが手当てができておる。そこで、来年度は、特に保育所について問題が多いものですから、国として措置費の中で人件費に私のほうで予算を組んだものは、一種のひもつきにいたしまして、人件費以外には充当できない、他の庁費等には充当できないというようなことをやりまして、保育所の保母の給与の改善を来年度はいたしたい。そういうことで、さらにそういうような人件費にひもつきのやり方を導入いたしまして、その上で実態調査をいたしました上で、どうしてもやはり公務員ベースにこれだけ追いつかないという場合に、あらためてベースアップの問題を考えたいというようなことを考えておる次第でございます。  なお、給与の改善の問題につきましては、いろいろ宿舎の問題を考慮するとか、あるいは保母さんの労働条件を緩和する意味で、担当の子供の、たとえばいままで、盲ろうあ施設は子供十人に一人の保母さんということになっておりますが、それを六人の子供に一人というふうに保母さんの増員をするというようなことを来年度からやりたいと思っておりますが、本年度は、したがいまして一律ベースアップは行ないませんで、手当の増額といま言いました保母さんの数をふやすということによって処遇改善をやりたいというふうに思っております。
  62. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 社会局関係の施設におきましても、大体の状況は、ただいま児童局長から説明しました児童局関係保育所以外の一般の施設と同じでございますが、これを平均本俸で、来年は同じように諸手当の是正ということで待遇改善をはかっておるわけでございまして、初任給の是正、それから暫定手当なり超過勤務手当等の手当の増額、それと収容定員の少ない施設につきましての定員の増加というようなものをはかって、来年の処遇改善を行なう予定でございますが、そうした結果、平均本俸単価といたしまして、三十八年の四月一万九千二百二十五円のものが、三十八年の十月の一般公務員並みのベースアップによりまして二万四百九十八円になりましたものが、今回初任給是正等によりまして、本俸が二万六百十一円に平均単価が値上げになるというような計算になるわけであります。
  63. 吉村吉雄

    吉村委員 先ほどの黒木局長の答弁の中で、相当是正はしたけれどもなおかなりの開きがある、かなりというのはどのくらいに把握しておりますか。
  64. 黒木利克

    ○黒木政府委員 保育所で申しますと、公営のほうが平均で一万五千百六十九円、私立のほうが一万三千五百五円というような開きがございます。
  65. 吉村吉雄

    吉村委員 社会局のほうも、似たようなものだと思いますからそれでいいです。  そこで、三十九年度予算では、いま局長から答弁がありましたように、待遇改善の力点というものは諸手当増額の方向に向けられておる、こういうことです。この諸手当の中で一番ウエートを占めておるのは超過勤務手当です。超過勤務手当というのは、所定勤務時間外に働いた場合には、当然支給しなければならないお金でしょう。いままでは、それをくれていなかったということになるのですか。
  66. 黒木利克

    ○黒木政府委員 これは児童局の施設のみならず、社会局の施設でも同じような問題があるわけでございますが、理屈の上では、予算の範囲内でしか超勤は命じないということであろうと思います。しかし、いずれにいたしましても現実に超勤の実態がございますので、来年度は、従来の約五倍、超過勤務の手当の額を増額したような次第でございます。
  67. 吉村吉雄

    吉村委員 私の聞いているのは、超過勤務手当というのは所定勤務時間以外に働けば当然くれなければならないお金ですよ、基準法に従って。それを増額したということは、仕事でもふえたということになるのですか。三十八年度に比べてみて、三十九年度は、超過勤務手当の予算額が非常に膨大になっている。それは待遇改善だとおっしゃるけれども、超過勤務手当というのは、超過勤務をすれば当然支給しなければならないお金でしょう。だからその額が非常にふえたということは、仕事でも変わった、長時間働かなければならなくなったという、そういう条件の変化があったのですかというのです。
  68. 黒木利克

    ○黒木政府委員 条件の変化があったとは考えておりませんが、ただ、先ほど申しましたように基準法では超勤をするように指示をいたしまして、それについては手当を出さなくてはならないというふうに規定してあるわけでございますから、超過勤務を予算の範囲内で命ずるという、理屈の上ではそういうかっこうになっておるということを申し上げたのでございます。
  69. 吉村吉雄

    吉村委員 だいぶ苦しい答弁のようですけれども、私は、この職員の待遇改善というものを考えるのにあたって、一番基本をなすものはやはり本俸をどうするかという問題でなくてはならぬと思うのです。超過勤務手当は確かに増額をされている。この額だけでも、実際の超過勤務をしたその労働に支払うだけの金に足りないかもしれないと思います。しかし、それが今日の民間社会福祉施設実態であるとするならば、これは非常に重要な問題だと言わなければならないと思うです。だから、そういうことが超過勤務手当の増額によって実収入自体はふえるのだからということで待遇改善をしたという、そういう認識を持っているとすれば、これはたいへんなことだと思うのです。私は当然、この超過勤務手当という問題については、こういう予算費目は減るのがほんとうだと思うのです。そしてもっと職員の数は増大をする、そういう方向に進むのならば、これは近代的な労務管理の方向に進んでいるということになりますけれども、超過勤務手当というものをどんどんふやして、しかも超過勤務手当というものはまだ実際の超勤をまかなうのには足りないかもしれぬ、こういう実態であるとするならば、これはもうたいへんなことですから、よほど厚生大臣が思い切った施策をとらない限り、いつまでたっても直らないと思うのです。さらに、待遇改善の方向としては、先ほど申し上げましたように、やはり本俸を改めて、そしていまの比較でいきますと大体二千円からの開きがあるということになるようです。実際にはもっと多いかしれません。もとより、これは比較をする公務員の対象の職種によって異なりますから一がいには言えないと思うのですけれども、いま厚生省で認められておる数字だけでも約二千円の相違がある、こういうことです。やっている仕事は同じだ、これでは困ると思うので、この差額をぜひ、本年度は無理でしょうけれども、来年度においては地方公務員のどこどこのクラス、どこどこの等級と同じまでは引き上げる、こういうことをやって、同時に、その職員の問題についても、本年若干増員になるようですけれども、超過勤務手当をこれだけ組まなければならないという実態は、増員をしてもなおかつ不足しているということを暗に認めるということになる。ここはびほう的な対策では、私は解決し得ないところに来ていると思うのです。よほど思い切った対策を立てる必要があると考えますけれども厚生大臣、いかがですか。
  70. 小林武治

    小林国務大臣 これはお話のような面があるので、実は来年度予算につきましては一応手当でいく、こういうことでありますが、私はやはり本俸を手直しをしなければなるまい、したがって、三十九年度はやむを得ませぬが、次の機会には本俸においてある程度の改定をしなければならぬ、このように考えております。
  71. 吉村吉雄

    吉村委員 同時に、超勤の予算厚生省がこんなにたくさん、九十何時間というのを組んでありますけれども、こんな多額の超勤の予算を組んで、それを堂々と公表するというやり方はたいへん私は問題だと思います。そういう認識、そういう感覚で労働者に対してもらったのではえらいことになると思います。伏せておくならかわいいところがあるかもしれぬけれども、超過勤務手出をこれほどふやしたなんということは、全く非近代的な方向ですよ。しかし、現実にはこれでも足りない額であるかもしれぬ、その事実は私は認めます。根本的にこれを直すには、やはり増員をやるよりほかないということになります。そうでないと、労働基準法違反をあえて厚生省自体がやっているということになりますから、これは事は小さいようであっても、非常に大きい問題を内包している、こう思いますので、この点は、先ほどの本俸の関係について均衡をとっていくという大臣の言明と同時に、職員の増員についても基準法に違反しない範囲、超過勤務というものをあまりしないで済むような、そういうような心がまえに立って予算措置なりその他の対策というものを明年度においては樹立をしてもらう必要がある、こう思いますけれども、、ぜひひとつ厚生大臣にそのために御努力を願いたいと思いますが、どうですか。
  72. 小林武治

    小林国務大臣 御趣旨のような努力をいたしたいと思います。局長さん方もここではっきり私の言明をお聞きになっておりますから、努力してくれると思いますし、私もいたします。
  73. 吉村吉雄

    吉村委員 医療費問題について、厚生大臣は、きわめて筋を通して、き然とした態度をとっていることについて、私はそのき然とした態度については敬意を払っておるのです。いつまで厚生大臣をなさるのかわかりませんが、明年度予算については、この社会福祉施設職員の問題というのはいまに始まった問題ではないのですから、やはりどこかに重点を置いて切開するなら切開する、そういう腹がまえでやらないと、いつまでもこの問題があとに残ってしまうと思うので、ぜひひとつ小林厚生大臣が決意を持って、そうして社会福祉施設職員の問題についてはあとは問題ない、こういうような態度を来年度予算編成の中で樹立をしていただくように特に要望しておきたいと思います。先ほどそういった決意の表明がありましたので、この点については、これからの努力を期待しておきたいと思います。  そのほか、この社会福祉施設職員の問題については、今年度予算の中でも、退職金につきまして八千円から一万円に引き五げが行なわれましたけれども、これまた他の制度比較しますと非常に劣っていることは、皆さんも御存じのとおりだと思います。子供の養育という問題は、池田さんが人づくりとかなんとか言っておりますけれども、そういった保育所とか、あるいは幼稚園とかいうものについてもっと真剣に、具体的に取り組んでいかない限り、人づくりというものはことばばかりで終わってしまう、こういうことになるわけですから、非常に人知れない苦労をしながら超勤をやっても、やっぱりそう言うわけにもいかない、要求もでき得ない、しかし子供のためにはやらなければならないという、そういう仕事に従事をしている方々なんですから、これはもっと真剣に、この人たちの待遇の問題については取り組んでいただきたいと私は思います。  最後に、厚生省から民間の各団体のほうにいろいろ補助金あるいは委託費として金が出ています。最近はあまり出ていませんが、この中で私がお聞きしておきたいと思うのは、国民健康保険団体連合会に対して、三十九年度は幾らでしたか、二億五千万でしたか、金が出ている。これは、これ自体としては私はいいと思うのですけれども、この社会保険の事業を推進していくための社会福祉関係の団体としては、全国社会協議会というものがあるのですが、この全国社会福祉協議会に対する補助額というものはきわめて少ないように思えるのです。比較するのが妥当であるかどうかわかりませんが、しかし、社会福祉というものが社会保障政策推進のために非常に重要であるとするならば、そのことをやっていこうとする民間団体に対しても、よほど考慮していく必要があると思うのです。国保連の場合には、本年度予算は昨年度よりも五千万円ほどふえて二億五千万円になっておりますが、社会福祉協議会のほうに対しては、とてもお話にならないような金しか出ていない。これは何か理由があるだろうとは思いますが、私はどちらかというと、全国社会福祉協議会というものに対して、もっとそういう仕事というものを推進させるためにも考えていったらいいのではないか思うのですが、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  74. 小山進次郎

    ○小山政府委員 国民健康保険団体連合会の補助金は、これは御承知のとおり、国民健康保険の診療報酬の審査支払いの事務を連合会がやっておるわけでございまして、それに対する補助金でございまして、いまお話しになったものとやや性質が違うわけでございます。したがって、二億五千万という非常に大きい金のようでありますが、実はこれでもかなり団体側としては持ち出しが多うございます。これはいずれも市町村の国民健康保険のほうから納めてもらって補っている、こういうような状況であります。
  75. 牛丸義留

    ○牛丸政府委員 全社協に対しまして三千万円の補助金がございますが、これは全社協の企画指導員、それから都道府県社協の福祉活動普及員に対するいずれも二分の一の補助でございまして、事業の内容が国保中央会の場合と異なりますので、金額においてそれだけの差があるわけでございます。
  76. 吉村吉雄

    吉村委員 わかりました。その国保連のほうについては、特別なそういう仕事をやってもらっているということについては、私どももよく無知していなかったものですから疑問を感じたわけですが、そういう事情であるとするならば、その点は了解いたします。ただ、先ほど来から私が申し上げてまいりましたのは、やはり今日の社会保障政策というものを推進するのにあたって、社会福祉というものにもっと力点を置いた立場で当たってもらいたい、このように考えるわけです。社会保障費が多いということは、私は必ずしもその社会にとっていいものだとは思いません。たとえば生活扶助というような額が多いということは、いわば防貧政策がそれだけ足りないものだということにもなのですから、したがって、今日の日本状態においては、公的扶助というものについて十分考えながら最低生活をしている人たちの底上げをはかっていく必要がある。しかし、それらの方々を多く出さないようにする施策というものが、もっと重要視されなければならないという意味で、先ほど来大臣からたいへん力強い意見の開陳なり答弁がありましたので、私もそれに期待をしたいと思いますけれども防貧政策の中心としての福祉政策というものについて、もっときちんと計画を立てる、あるいはその計画の裏づけとなるような予算措置というものを考えつつ、そして内閣全体の問題として、内閣全体が責任をとり得るようなそういう姿勢というものを確立して、ぜひ社会保障政策というものをもっと前向きに進めてもらうように特に要望しておきます。
  77. 小林武治

    小林国務大臣 御趣旨は十分了承いたしました。
  78. 小沢辰男

    ○小沢(辰)委員長代理 滝井義高君。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 厚生大臣の社会労働委員会における所信表明に関連をして二三問題がございますが、きょう時間がございませんから、まず第一に一つだけにしぼってお聞かせを願いたいと思うのです。  それは、所信表明の中に、「次の問題としては、医療保障充実強化でございます。特に緊急に改善をはかる必要がございます国民健康保険につきましては、昨年の世帯主に対する七割給付の完全実施に引き続き、明年度以降四ヵ年計画をもちまして家族全員に対する七割給付の実現を期することとし、これに伴う必要財源につきまして所要の措置をとる所存であります。なお、社会保険の診療報酬につきましては、昨年十二月中央社会保険医療協議会に対して諮問をいたしておりますが、同協議会の答申を待ってとるべき措置を考えたいと存じます。」こういうように医療保障のところで所信をお述べになっております。ところが、この医療保障を実行していくための袋に当たるところのそれぞれの会計の内容については、少しも触れられていないわけです。そこで、大臣が非常に熱意を持って医療保障の拡充強化をおやりになろうとしておりますが、その医療保障をになっていくそれぞれの財政について、大臣の所見を承っておきたいと思います。なぜならば、その財政の確立なくして医療保障の拡充強化を云々することはできないわけです。そこで、現在の財政状態の認識から拡充強化の問題は出発しなければならぬと思います。まず第一に、現在の財政を知ろうとするならば、社会保険診療報酬の支払い基金の支払いの状況というものをここで明らかにしてみる必要があると思うのです。そこで、最近における基金の支払いの状況というものは一体どういう状態になっておるのかということです。私、そういう専門の雑誌を読んでおりましたところが、最近基金に支払い遅延の状況が起こってき始めた、これは重大であるということを書いておるのを読んだことがあるのです。したがって、基金に支払い遅延の状態が起こるということは保険財政に何か——少なくとも赤信号でなくたって、桃色ぐらいの信号は上がっているのではないかという感じももするけです。そこでまず第一に、基金の支払い状況その他について問題があれば、その概要をひとつ簡単に要約して御説明を願いたいと思います。
  80. 小山進次郎

    ○小山政府委員 手元に数字を持ち合わせておりませんが、ただいま仰せのとおり、昨年の九月、十月ころに基金の支払いがややおくれぎみになりまして、地域によりまして若干の違いはあったようでありますが、五日前後支払いがおくれるというような状況が出たのでございます。放置することでございませんので、いろいろ実態を調べ、対策を考えたわけでありますが、このような支払いの遅延が出てまいりました原因は、だんだん調べてみましたところが、どうも日雇い健康保険の財政が不調であるために、とかく基金への金の繰り入れが非常におくれている、勢い政府管掌その他のために繰り入れられているものに若干おんぶをしてくるというような傾向があり、これが支払いを遅延さしている非常に大きな原因であることを知ったわけであります。その後基金当局におきまして、社会保険庁ともいろいろ協議をいたしました結果、これらの問題について暫定的にある程度支払いの促進ができる措置を講じてまいりまして、私、最近の事情はまだ確認しておりませんが、昨年の暮れで大体ほぼ平常に返ってきた、かように承知をしております。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 この基金における医療費の支払いの状況は、昨年に比べてどういうに点に特徴的なものがあらわれているのでしょうか。たとえば、いま小山さんが言われたように、昨年の九月、十月ごろにおいては、五日前後支払いがおくれるという状態が出てきたということでございます。これは一億、二億の金を払うわけではなくて、何十億という金を支払うわけですから、四、五日おくれるということは重要であるわけですが、おくれるのには、そのおくれなければならない根本的な理由がどこかにあるはずであります。たとえば、昨年に比べて非常に医療費の支払いが多くなったとか、あるいは保険料の収入よりか医療費の支払いのほうがはるかにこえる状態が出てきたとか、いろいろあるのではないかと思うのですが、そのおくれてきたという理由が——あとで日雇いのこともお尋ねしますが、単に日雇い健保だけだろうか。どうもそうでないような感じがするわけです。
  82. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先住おっしゃるとおり、昨年度に比べまして、本年度に入ってからこれは出てまいった傾向であります。先ほど申し上げました日雇いが支払い遅延の原因になっているということは、これは突き詰めた状況においてそういう姿になっているということでございます。全般的に、ただいま仰せのとおり、医療費がふえていくのは、これは当然のことでありますが、ふえ方がそれぞれの保険が予想しておったよりもやや多目であるために、勢い支払いが逐次苦しくなってきた、特にこの傾向政府管掌の健康保険に非常に端的にあらわれてまいっておりまして、政府管掌の健康保険としては、本年度内だけを取り上げますと、かなり巨額の赤字を生ずる見込みであります。そういうようなことからいたしまして、前年度においては、この政府管掌のかなり巨額な支払いの中に部分的に織り込まれておったために表面化しないで済んだ日雇い労働者の健康保険の財政の逆調というものがかなり大きく響いてくる、こういうようなことになったわけでございます。
  83. 滝井義高

    ○滝井委員 だんだん支払い基金における遅延の正体がわかってきました。いま小山さんが指摘をされた医療費の増加が、それぞれの会計が予想しておったよりか非常に伸びたということ、特にそれが端的に政府管掌の健康保険にあらわれた、そうして隠れておった日雇の逆調その他も顕著にあらわれてきた、こういうこともはっきりしてきた。  そこでまず、順に入っていきますが、政府管掌の健康保険の財政についてでございます。政府管掌の健康保険においては、三十六年度において積み立て金がたぶん二百九十億円ぐらいあったと思うのです。いま小山さんが、政府管掌の健康保険の赤字というものが巨額になった。そしてどうもこれはなかなかたいへんな状態になりつつあるという含蓄を含めた巨額の赤字らしいのですが、これの実態をひとつここで明らかにしておいてもらいたいと思うのです。三十六年に二百九十億あった積み立て金が、三十七年、三十八年、そして三十九年度の今年までにどういう推移をたどろうとしておるのかということです。
  84. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 ただいまお話し政府管掌の健康保険の積み立て金の問題でございますが、二百九十億と申しますのは三十六年度末の数字でございまして、三十七年度の決算によりまして、積み立て金は二百七十六億になったわけでございます。三十八年度の見込みにつきましては、先ほど保険局長から説明がありましたように、医療給付費の伸びが相当著しいわけでございますので、一応私どもの推定といたしましては、さきに中央医療協議会に提出をしました資料によりますと約八十億の赤字を見込んでおるわけでございますが、私どもの見込みとしましては、年度末までにこの数字はふえる可能性のほうが大きい、かように見込んでおります。  なお、三十九年度の財政収支でございますが、予算にございますように、積み立て金から七十億の取りくずしをしまして収支のバランスをとっておるという状況でございます。
  85. 滝井義高

    ○滝井委員 大臣いまお聞きのとおり、三十六年末に二百九十億あったものが、三十七年度決算二百七十六億四千九百万円と予算書には出てきていますね。こういうことになったわけです。そうすると今度、これは三十七年が二百七十六億ですから、三十八年では八十億プラスアルファがつくということですね。八十億をこえる。そうして、その三十九年度を見ると、予算書で七十億の積み立て金からの受け入れが厚生保険特別会計の健康勘定の歳入の中に出てきているわけです。七十億受け入れです。これはとりあえず七十億であって、一昨年以来あるいは昨年措置した制限診療撤廃その他措置が全部平年度化してくるわけですね。したがって、これは七十億だけの取りくずしでは私はどうにもならないのではないかと思う。というのは、御存じのとおり経済引き締めが始まったわけです。そして総評は二割五分の賃上げをいっているけれども、日経連は五%以下、こうおっしゃつているわけです。したがって、給料がぐんぐん上がる情勢はない。雇用も、これはそんなに多くの伸びを期待するわけにはいきません。たとえば八幡製鉄その他を見ても、去年のごときは、去年の四月ごろは二千人も雇用をするということを約束しておったけれども、入れなかったですね。こういう情勢があるわけです。したがって、こういうようにいまの非常な赤字が、二百九十億三十六年末あった積み立て金をだんだん取りくずしていかなければならぬという赤字情勢ははっきりしてきたわけです。そこで、そういう赤字の出ておる根本的な原因というのは一体どこにあるわけですか。かって、いま基金にいらっしゃる久下さんが保険局長のときに、被保険者の数を百万人見そこなったのです。これが大きな契機になって、この三十二年、三年ごろから大きな健康保険の赤字が問題になってきた。だんだん調べてみると、被保険者の数がずっと増加をするという情勢だったのに、御存じのとおり、当時の三十二年の不況のために伸びなかったのです。そうして政府健康保険法の政正をかねや太鼓でやった。ところが、法律の改正が通らぬ前に保険経済は黒字になってきた。こうい状態が当時は起こってきたのです。ところが、今度はどうも日本経済が、異常な高度成長をしておるけれども、内部矛盾というものは構造的な状態が出てきているのですよ、だんだん。景気の上げ下げだけではないという状態です。そこで、私たちが今後医療費の問題を論議する場合には、この袋の状態を見きわめておらずして医療費の問題を論議することはできない。そこで私は、きょうは医療費の問題はやろうとは思いません。まず医療協議会の結論が出たら医療費は何とかしますということを大臣が言っておるけれども、一体その何とかできるような袋の状態にあるかどうかということをきょうは検算をしたいと思う。それでなければ、大臣がいま言っていることがうそになる。だから、ここでまず私が言いたいのは、二百九十億もあった積み立て金が急激にくずれていかなければならぬという根本的な理由は、一体どこにあるのかということです。それをひとつ大臣、御説明を願いたいと思う。これは明らかに三十六年以来なだれを打ってくずれているのですからね。保険経済はくずれつつあるのです。だから、この根本理由を一体どう大臣が把握をしておるのか、それをひとつここで御説明願いたい。
  86. 小山進次郎

    ○小山政府委員 原因は、なかなかむずかしい問題でございますが、まず医療の面からながめてまいりますと、最近における被保険者の受診率と一回当たりの受診日数を掛け合わせて、総合的に被保険者が、いわばお医者さんのお世話になる中身を検討してみますと、これはここ二、三年来ほとんど動いておりません。問題は、結局医療費がふえております原因は、一にかかって一件当たりの点数あるいは金額が非常に伸びてきているわけでありまして、そういうふうな原因伸びてきておりまする医療費に対応して、いまの政府管掌健康保険の財政が非常にむずかしくなっているのでありますが、ただこの問題は、現在の段階であまりに断定的な結論を出すことはまだ少し差し控えたいというのが、私どもの現在の考えでございます。かつて政府管掌の健康保険が均衡をとっておりました状態をながめますと、保険料率は千分の六十五でございました。また、あの当時の標準報酬の最高額が、あの当時の被用者の平均賃金に対して示しておりました割合と現在の最高額——つまりそのまま据え置きでございますが、これが平均賃金に対して示しておりまする割合とは、かなり違っておるのであります。言いかえますと、医療の実勢のほうは世の中の当然の成り行きによって内容充実され、またこれに要する費用もふえてきておる。それに対応して器のほうは、かつて置かれた条件よりもやや縮められた状態においてこれを受けているというのが現在の状態でございます。したがって、こういう状態のもとで出てきておりまする赤字を構造的なものというふうに言い切ってしまうことには、なお、さらに検討したい。しかし、いずれにしても現状としては、これは赤信号であることはもう間違いございませんので、なお情勢を見つつ、少なくともこういう情勢かある程度恒久的な傾向を示すという判断がされるような時期になりまするならば、少なくとも器の問題については、かつて置かれたと合じ条件に置く程度の措置というものを頭に置きながらいろいろ検討する必要があるだろう、こういうことが現段階における厚生省内部の事務当局の考え方でございます。
  87. 滝井義高

    ○滝井委員 医学医術が進歩して、医療の質はどんどんよくなってきておる。同時に、人間は進歩すれば自分のからだが大事だという気持ちが多くなるから軽いうちに受診をする、そういう形で医療費がどんどん上がる。ところが、いま言われたように、器のほうの条件というものはむしろ拡大するより縮小的な傾向にある、こういうことです。これで問題がはっきりしてきたわけです。そこで、いま医療費が上がるという情勢が一つある。ところが、一方においては、池田さんの高度経済成長政策のために雇用も相当増加するであろう、標準報酬の平均も上がるであろう、同時に、努力をすれば収納率も上がるであろう、こういう前提がないと、これはいまのものが構造的でないからしばらく静観をしたいという理論は出てこないわけです。そこで、その関係は一体三十六年以来どういう推移をたどったかということは、ここで簡単に説明をしてもらって、あとでひとつその三十六年以来のきちっとした資料を出してもらいたいのですが、ここで三十六年以来の簡単な、あなた方が当初予定をしたときの標準報酬の平均、それに実際に当たってみたところが標準報酬の平均はどのように上ったのか下がったのか、それから収納率というものは、たとえば三十八年度は見積もりが九四%です。一体九四%とれるのかどうか。三十九年度は九四%よりもっとよけいに見ておるでしょう。それは赤字だから、もっとよけいに見なければつじつまが合わないので、おそらくよけいに見ておるはずです。だからその収納率が、あなた方が見積もったものと実績がどうであったか。同時に、被保険者の数が、たとえば三十九年度予算を見ると千百七十四万人、政府管掌ですね。この政府管掌が、千百七十四万人を去年は一体幾ら見積もって、そして実際はどういう被保険者の数になったのか、ここらの見積もりが間違っておると、その集約形態である保険料収入というものが減ってくるわけです。したがって、まず端的に言ってもらえば、保険料収入というものは三十六年のあなた方の見積もりは幾らであった、実績は幾らであった、これをまず言ってもらって、その背景である収納率とか標準報酬の平均とか、あるいは被保険者の数というものを出してもらえばわかるわけです。それをひとつ簡単に言ってみて下さい。前の資料がなければ、最近のものだけでもけっこうです。
  88. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 収納率の問題でございますが、三十六年、九四%の見込みでございましたが、九四・四という収納率になりました。三十七年は九四%の見込みでございましたが、九四・五に実際はなったわけでございます。三十八年は九四%に見込んでおります。三十八年はまだ実績は出ておりません。  標準報酬は、ちょっとお持ち下さい。
  89. 滝井義高

    ○滝井委員 保険料の集約形態である保険料収入が、あなた方が当初予定をしておったときより実績がぐっとふえておれば、この問題というものはわりあい解決がしやすくなってきておるわけです。保険料収納率というものと、それからいま言ったように平均の標準報酬と、被保険者の数が、あなた方が見積もったよりか雇用が増加をしていなければ少なくなるわけですよ。   〔小沢(辰)委員長代理退席、井村委員長代理着席〕
  90. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 三十六年度予算と決算を申し上げます。  予算が九百四十万人の被保険者数の見込みでございまして、決算におきましては九百四十七万五千七百九十八人。標準報酬月額でございますが、予算が一万五千百六十二円で、決算におきまして一万五千九百九円。それから、おそれ入りますが、御訂正願いたいのであります。三十六年の保険料収納率は、予算におきましては九三・二と見込んでおりました。これが実際におきましては九四・四になったわけでございます。私、先ほど九四と申し上げましたが、九三・二の誤りでございます。三十七年の状況でございますが、予算におきましては被保険者数一千四十九万一千人を見込みまして、決算におきましては一千二十万三千五百二十八人。標準報酬月額におきましては、予算は一万六千五百四十九円であります。決算におきましては一万八千百八十七円。収納率は、前に申し上げましたとおりであります。
  91. 滝井義高

    ○滝井委員 三十八年のいままでの実績はわかりませんか。
  92. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 予算額だけ申し上げたいと思いますが、三十八年の予算額は、予算におきましては被保険者数一千百五十三万二千五百人と見込んでおります。標準報酬月額は二万二百六円。以上でございます。
  93. 滝井義高

    ○滝井委員 いままでの被保険者の数、わからぬですか。
  94. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 ちょっと手元に持ち合わせておりません。
  95. 滝井義高

    ○滝井委員 一番問題のところが出てこないのですが、三十七年で一千四十九万一千人見積って、一千二十万三千五百二十八人と、そろそろ人数が減り始めてきつつあるわけです。ここに氷山の一角が露呈をし始めているわけです。それまでは全部見積もりどおりいっているわけです。これはいわゆる経済がずっと伸びてきている段階ですから。引き締めは三十七年の初めごろから強く出てきたわけです。そこで、とにかく現実の問題としては、積み立て金を非常な勢いで食いつぶしをしていってしまっておるということはもう明らかです。この傾向というのは日雇い健康保険やあるいは政府管掌の健康保険にあらわれておるばかりでなくて、財政の比較的いい組合健保にもあらわれてきているのです。これは組合健保には、たとえば炭鉱みたようなところ、駐留軍みたようなところの非常に特殊な産業で、その産業構造が急激に変わるというようなところにも特徴的にあらわれてきておりますけれども、やっぱり全般的な傾向として、政府管掌の健康保険の地域差は撤廃をした、しかし、賃金の地域差というものはそのまま残っておるわけです。あるわけです。だから、これにもあらわれてきておるわけです。したがって、こういう政府管掌の健康保険の積み立て金がどんどん取りくずされていって、いま医療費も伸びていくという段階で保険財政というものをほんとうに立て直すためには、小山さんの言うように、いましばらく様子を見ておって、それからやるということで一体いいかどうかということなんです。それではまた三十三年の健保と同じように激しい問題が起こってくるわけです。そこで、やっぱり事前にこれは対策を講じなければならぬ。こういう状態のもとでは、医療費を引き上げるなんということはできないですよ。そこで、医療費を改定して窮状にある医療機関の状態を変えようとすれば、まずこの袋を堅固なものにしなきゃいかぬことになるわけです。そこで一体その袋を——まず政府管掌の健康保険ですが、昭和三十九年度予算を見ると、千百七十四万人の被保険者を包含しておるわけです。しかもこれは、中小零細企業の労働者を中心にしておるわけです。しかも五人以上千人以下ですね。これを中心にしておるわけです。これに対する財政対策というのを、今年は何もおやりになっていないでしょう。こういうように二百九十億あった積み立て金をどんどん取りくずしておるのに、何で政府は財政対策をやらないのかということです。そして医療費は、医療協議会が結論が出たら上げますよと、こう言っている。これはやりますと言っておるこれで一体できますか。こういうように、保健財政というものは少なくとも赤信号が出ておりますということを保険局長が言っている。そうすると大臣、この政府管掌の健康保険に対する対策というものを一体どうされるつもりなのか、これをひとつここで御明示願いたいと思うのです。
  96. 小林武治

    小林国務大臣 これは保険局長が説明いたしましたように、さような傾向は認められる、したがってやがて対策も必要となるが、ことしはもう一年ひとつ様子を見たい、こういうことできたのであります。これらの傾向を今後的確に把握した上でむろん適当な財政措置をとらなきやならぬ、こういうふうに考えております。
  97. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、もう明らかに三十六年の積み立て金が三十七、三十八と——三十九年も、もう積み立て金を七十億取りくずさなきゃだめですということがはっきりしているわけですからね。もう赤字です。これは積み立て金がなかったら明らかに赤字経済です。それなのに、もう一年様子を見てやりますということだけでは、これは死んでしまいますよ。やっぱり死ぬ前に予防的な措置を講ずるのが名医なんですよ。少なくとも厚生行政厚生大臣は、やっぱり名医であってもらわぬと困るんですね。もう病人が瀕死の重症になって、輸血や何かの状態になって手を下すのではおそいです。これでは滝井義高と同じようにやぶ医者になってしまう。それではいかぬ。やっぱり小林さんは名医であってもらわなければいかぬ。したがって、前もってこれは対策を講じてもらわなければならぬと私は思うのです。たとえば一つのものとして、いま千分の六十三というように、この前保険料を黒字になったからまけました。しかし、これを千分の六十五にしたって、二上げたって二十億そこそこでしょう。この前、たしか二十億だったですよ。最返ベースアップがあったから少し上がっておるかもしれないが、二十億そこそこですよ。そんなものでは、いまのようなこの医療費の増加傾向にはとても追いつかぬわけですよ。  小山さん、ここ二、三年の状態において、一年に総医療費はどの程度増加しておりますか。
  98. 小山進次郎

    ○小山政府委員 三十七年度の総医療費が六千二百億程度と推計されておりまして、三十八年度はおそらくそれが千億近くふえるだろう、こういわれておりますので、およそやはり一五%から一八%、このくらい伸びているということが言えると思います。
  99. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、政府管掌の健康保険が約二千億ですよ。医療給付費がざっと見て二千億。そうすると、これが一割五分と見ると三百億いくわけです。二割と見ると、これは四百億になるのですよ。四百億だけをどこからか待ってこなければ、これはどうにもならなくなってしまう、一割五分から一割八分の……。そうすると、今度はその上に医療費の改定をやってごらんなさい。もしこれを一割上げたらどうします。一割上げたら、これだけで二百億です。政府管掌だけで二百億ふえるのですよ。そうすると、その分加えると、五百億から六百億上積みが要るのです。単価一円でそうなる。そうすると、われわれがこの医療費改定の問題を論議しようとするならば、まず保険経済の土台はこういう土台だからという土台を認識せずして、医療費問題を論議することはできない。  そこで、一体、いま小山さんが一割五分から一割八分程度増加をすると言うならば、これは当然何も来年を待つ必要はない。いまから一体どうするか。いまのままでは、医療費の改定が客観的にあることが——今年なくても来年あることは、もう火を見るよりも明らかです。この前から尾崎さんが言ったように、あるいは医療課長の松尾さんも言ったように、もう窮状にある、われわれのところはもうたいへんです、こうおっしゃっているのですから、そのまま放置するわけにはいかぬ。そうしますと、この保険経済を何とかここで対策を明らかにしなければ、じんぜんもう一年待つというようなことでは、小林さん、あなたはやめてしまいますよ。あと大臣が今度はしりぬぐいをしなければならぬということになってしまう。それではたいへんです。やはり在任中に全力を尽くして予防的にその対策を立てていくということが、私はほんとうの厚生行政を預かる者の責任だと思うのです。これは明らかですから、いまの客観情勢は、もうカラスの鳴かない日があっても、一割五分か一割八分医療費は必ず毎年上がるということですからね。だから、それは算術計算をしても三百億以上の金は上積みをしなければなりません、こういうことなのです。それはいまの保険の状態ではまかない得ない。そこで、まかない得ないとすれば一体いかなる対策を打つのか、こういうことなのです。その対策をひとつこの際教えておいてもらわなければいかぬです。
  100. 小山進次郎

    ○小山政府委員 先ほども申し上げましたように、もう少し情勢の推移を見た上で、ということになると思いますけれども、対策として当然最初に出てまいりますものは、かつて下げた保険料率というものを一応もとのところまで戻す。先ほどのお話もありましたように、数年前でございますと千分の二が二十億程度、確かにそういう数字でございましたが、明年度等で見ますと、これは約六十二億程度と見込まれているようでございます。大体この規模の程度になると思います。それ以外に、例示的に申し上げましたように、かつて標準報酬の最高額を五万二千円ときめておりましたときの、その当時の被用者の平均の賃金と今日の賃金はかなり大きく動いているわけであります。普通でありますならば、こういう最高額も、当然それに応じて調整を考慮するということが一応考えられるわけでありますが、かりにそういうふうなことが考えられるとすれば、これからもある程度の収入というものが期待できる。いろいろながめておりまするのは、問題をその程度の範囲にしぼった対策でとめることができるか、あるいはさらにもっと突き進んでいろいろ考えなくちゃならぬか、こういうようなことについてさらに御検討いただく、また検討する、こういうお気持ちで大臣は一年間見ておられるわけであります。積み立て金は確かに減ってはまいっておりますけれども、これはまだ相当あるわけであります。そのための積み立て金でございますので、この一年間諸般の動きというものを十分きわめましたあとで、対策を考えることにいたしたいという考えなのでございます。
  101. 滝井義高

    ○滝井委員 いま三十七年度決算で二百七十六億の積み立て金が残っていますね。これを三十八年度の八十億プラスアルファ、たえばと百億減ったとすると百七十億になるわけですね。その百七十五、六億のうち、七十億を組み入れたら百億になってしまうのです。百億ぐらいになってしまって、そのときになってからこれはたいへんだということでは、これはどうもならぬわけですよ。ころばぬ先のつえで、やはりいまから政策を立てなければならぬと思うのです。それについても、いま小山さんが例示いたしました千分の二引き上げると六十二億、それから標準報酬五万二千円の上限を取っ払ってその上に上げるか、あるいはどうかすれば収入はふえるでしょう。しかし、それにしても、それはたとえば一円だけ単価を改定したときに政府管掌が二百億程度、医療費が二千億とすれば一割で二百億、二百億程度はまかなうことができるかもしれぬけれども、いま進行している積み立て金の取りくずしをやるこの客観情勢というものは、とどめることはできないでしょう。そうすると、こういう段階になると、一体国はどういう責任を持つのだという問題になってくるわけです。国はどういう責任を持つのだ。千百七十四万人の中小企業の労働者がつくっているこの政府管掌健康保険に、一体政府は幾ら入れていますか。ことし幾ら入れておりますか。
  102. 竹下精紀

    ○竹下(精)政府委員 五億円でございます。
  103. 滝井義高

    ○滝井委員 たった五億円です。二千億の総医療費が要るというのに、医療給付に対してたった五億円ですよ。こういうことで社会保障と言えますか。これで医療保障の拡充強化をはかるということが言えますか。これは、私は何回も言うわけですが、ことしの予算編成で、厚生保険特別会計における三十億の金を、赤字であろうと黒字であろうと出すという約束ができておったのです。それを積み立て金ができ始めたら、その借りておった借金をみんな取り上げてしまって、くれるものもくれないのですね。これは私はここで一体何回言うか知らぬ。歴代の大臣は、何とか考慮しましょうとかなんとか、うまいことを言って逃げるのだが、これは船後さんのほうは一体どういうことになっておりますか。厚生保険特別会計の法律をごらんになると、ちゃんと入れることになっておる。こういうのをもらわない厚生省厚生省です。見てごらんなさい。どんどん積み立て金がくずれていっておるじゃないですか。法律でちゃんとくれるようになっておるのです。なっておるけれども、金持ちになったからもうそんな金は要らぬというほど保険経済が豊かならば、百円を限度とする初診料をやめたらいい。入院料一日三十円払うのをやめたらいい。そういうものはやめないでしょう。そして大蔵省に払うのだけは払って、もらう金はもらわぬ、一体こういう行政がありますか。これは一体どういうことになっておるのですか。何で三十億というものをもらわないのですか。歴代の総理大臣が約束をし、歴代の厚生大臣が約束をしておるものを、ここ一、二代の厚生大臣がずぼらで力がないのか知らぬけれども、それを取らなかった。法律にも書いてあるということなら、法治国家無視じゃないですか。
  104. 船後正道

    ○船後説明員 健康勘定に対します一般会計の繰り入れにつきまして、御指摘のとおり、厚生保険特別会計法に「本会計ノ健康勘定ノ歳入不足ヲ補填スルタメ必要アルトキハ」云々という規定があるわけでございますが、先ほど問題になっておりましたように、この健康勘定の収支につきましては最近いろいろ問題があるわけでありますけれども、三十九年度の政管健保の財政といたしましては、収支相償うという状況でございますので、やはり前年に引き続きましてこの十八条の七の規定によるところの繰り入れということはいたさなかった次第でござます。
  105. 滝井義高

    ○滝井委員 それは法律を読めばそうだけれども、歴史的な経過があるわけです。いまどこかの総裁か副総裁になっておる森永貞一郎君が主計局長のときから、この問題を予算委員会でわれわれは何回も論議をやって、厚生省は、その予算委員会の議事録をたてにして何回か要求して、一回か二回かは三十億をもらったのです。ところがそのうち、健康保険法の改正を契機として、健康勘定が黒字に転化したときに、借りておった六十億は全部払ってしまった。そうしてもらう金はもらっていないのです。毎年三十億もらうことになっておる。これは岸さんが総理大臣のとき、あるいは一萬田さんが大蔵大臣のとき、池田さんが大蔵大臣のとき、何回約束しておるかわからないのですよ。こういう国会で約束したことが払われないというばかなことはないわけです。これは当然払うべきですよ。三百億予備費があるのだから、そのうちから今度これをもらわなければいかぬのですよ。こういう問題について、保険局長、補佐が悪いですよ。当然取らなければいかぬ。何をおいてもこれはもらわなければいかぬ問題です。これは大臣、一体どうするのですか。もう明らかに赤字に転化しておる。赤信号が出ておると思う。だから何ぞ来年を待たんやです。もらわなければいかぬ。これはあなたを責めてもしょうがない。あなたの前の大臣がずほらをしたため、あなたに結局しわが寄ってきたことになる。これは政治が継続しておるのですから、しょうがないと思うのですよ。これはもう歴代の大臣が、一萬田さんにしても池田さんにしても、赤字であろうと黒字であろうと、おれの目の黒い間は必ず出すということを言明しておるのですよ。みんなまだ健在です。岸さんも健在です。大臣をやめておるだけです。池田さんはいま総理大臣になっておる。その総理大臣のもとにおいてこれを出さないんですからね。当然これはもらわなければいかぬのです、法律に書いておるのですから。だから、これをもらわずしてこのままじんぜん日を過ごすわけにはまいらぬと思うのです。いま無理だとすれば、次の補正予算を組むときにでも、これは当然予備費から回してもらうか、あるいは税の自然増の中から出すかしてもらわなければいかぬと思うのです。これを毎年もらうことによって、その分だけ今度は、どうせ赤字になって特別の財政措置をしなければならぬときには、三十億プラスアルファとして上積みができるわけです。それだけ厚生保険特別会計の健康勘定というものは、財政的に豊かになるということを意味するわけです。まずわれわれは、その基本的な財政対策をやる前に、こういう既得権というものは確立しておいてもらいたいということです。これはもう保険当局がぼやぼやしておるために、この既得権さえ喪失しておる。いま外堀を埋められ、内堀を埋められ、五億になってしまった。最近は、ここ一、二年は五億も削るということを言っておったけれども、やかましく言って、ようやく五億だけは食いとめた。いまや天主閣しか残っていない。これでは医療保障はどうにもならぬのです。これは大臣、どうですか。ひとつ船後さんのほうも出す気持ちになってもらわなければいかぬし、大臣のほうも取る気持ちになってもらわなければいかぬと思うのです。
  106. 小林武治

    小林国務大臣 私が不勉強だったのを非常に申しわけなく存じますが、よく検討いたしまして相談します。
  107. 滝井義高

    ○滝井委員 歴代大臣もみんなよく検討しやると言ったけれども、私は小林大臣を信頼してしばらく待ちます。これはもう既得権で三十億は持っておったのです。二年だったですか、くれたのです。そうして黒字に転化するとともに金を返させられた上に、十億ずつ返すことになっておったのを全部返させられたのです。そして三十億を巻き上げられてしまったのです。出さなくなったのです。だから二重の負担が厚生保険特別会計にかかっておるということを、大脳の細胞に鮮明にひとつ記憶をしておいていただきたい。  次は、同じ保険の中で日雇い健康保険です。  この日雇い健康保険は、保険料収入が四十九億です。ところが、一般会計から六十億受け入れているわけです。一体これで保険と言えますか。保険料の収入が四十九億で、一般会計から六十億受け入れて、去年二十三億の借りり入れ金がことしは百三億になっておる。百三億借り入れをしておるわけですよ。二百十五億の総支出のうちの半分は借り入れ金です。一体これで保険と言えますか。この借り入れ金は、どうやって解消していくつもりですか。借り入れ金の解消の方途いかん。
  108. 小山進次郎

    ○小山政府委員 これは社会保険庁の所管でございますが、基本方針は、私関与いたしましたので申し上げたいと思いますが、この借金は将来あげて国の負担解決をしてまいりたいというのが厚生省当局の考え方でございます。
  109. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると船後さん、御存じのとおり、日雇い健康保険の労働者の平均賃金は、昨年が四百五十八円、今年は九%ちょっと上げて五百一円九十銭にしたわけですね。五百一円九十銭の全国平均の賃金の中からばく大な保険料負担することは、これは不可能です。この日雇い労働者の諸君というものは、三分の一くらいは生活保護を受けているわけですから、したがって、三分の一くらい生活保護を受けている諸君がこの保険料をまかなうことは不可能ですから、これはいま小山保険局長の言われたとおり国が負担をしなければならぬ、こういうことになるわけです。これはあなたのほうはおやりになるのですね。
  110. 船後正道

    ○船後説明員 日雇い健保の問題につきましては、御指摘のとおり現在かなりの累積赤字をかかえておるわけでありますが、問題は、さらに今後に向かいまして保険の収支をどうするかという問題もあるわけでございます。厚生省のほうにおかれましても、過去の累積赤字の解消の問題、同時に、今後に向かいましてこの保険財政をいかに再建していくかという問題とからめまして御検討中でございます。私どもといたしましても、その御検討の結果を待ちまして、その時点で十分検討いたしたい、かように考えております。
  111. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも健康保険も赤字がどうなるかわからぬから、これもひとつしばらく静観いたします。ところが、こっちの日雇い健康保険は、二十三億の借り入れ金が一挙に五倍になったのですよ。そうしてまだこれから検討することしの厚生省の提出法案の中に出ておりますか。日雇い健康保険の改善案が提出予定法案の中に出ておりますか。大臣、お出しになるおつもりですか。
  112. 小林武治

    小林国務大臣 現在出ておりません。これは三十九年度と申しまするか、次の機会にはどうしてもこれが根本的改正をしなければならぬ、こういうことでいま検討を加えております。三十九年度はとりあえずこれでいきたい、そういうことでございます。
  113. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四十年度から出すという意味ですね。いわゆることしの終わりの十二月から開かれる通常国会に日雇い健康保険の改善案を出す、こういうことですか。
  114. 小林武治

    小林国務大臣 そうせざるを得まいと存じております。   〔井村委員長代理退席、委員長着席〕
  115. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、一体、根本的な赤字原因というのはどこにあるのです。結局、給料が低くて保険料をまかえないということでしょう。御存じのとおり、政府管掌健康保険と日雇い健康保険と、だんだん近づけていくというのが少なくとも保守党のほうの政策的な要求でもあるし、われわれ社会党の要求でもある。この問題については、少なくとも目標は一致しているわけです。やり方はどうするかということは、いろいろ問題があります。しかし、これは一致しておるとすれば、現在の問題は、社会保障をうまくやろうとすれば最低貸金制度というものが確立されていなければならぬということ、しかもそこには完全雇用がなければならぬという、少なくともこの二通りの条件がそろっていなければ、りっぱな社会保障というものはそびえ立たないわけです。ところが、いまの五百一円九十銭で、しかも三・三人の家族が食っていくのですから、生活保護とすれすれです。それを、保険料を巻き上げて健康保険と同じ程度の医療給付をするというようなことは、木によって魚を求めるよりも不可能なことです。不可能なことを可能にするのにはどうするか。結局、保険ではどうにもならぬということでしょう。結局、相当大幅な国庫負担を入れなければならぬ。ことしも六十億入れておるのだが、とても六十億程度では焼け石に水である。日雇い健康保険引き上げていくためには、日雇い健康保険の総費用は二百十五億ですから、二百十五億の中から約五十億程度を引いて、百五十億くらいを国から入れなければだめだということです。そうすると、これは形態的に言えば非常に生活保護医療扶助に近づいてくるということです。こういう根本問題は、いまに始まったことではないのです。昨年、二十三億の赤字の繰り入れ金をやるときに、その前年の三十七年のときからもうそういう傾向は顕著だった。だから、これは何とかしなければならぬから、われわれはこれに国庫負担を大幅に入れなさいという要求を、再三再四警告をしてやったわけでしょう。ところが、あなた方は、ついこういうように昨年の五倍に当たる借入金をしなければならぬ。しかもこれは、借入金をしたら利子を払わなければならぬでしょう。ことしこの会計から二十三億償還をするわけでしょう。こういう借入金をして、そうしてこの血の出るような会計の中から借入金の償還をさせる。それならば、一体どうして一挙に、百億をこえるこの借入金を国庫負担にしないのかということです。どうして一般会計から入れないのかということです。こういう何か当面をごまかす政策ばかりとっていってはいかぬと思のです。しかも一番日本で貧しいところでしょう。低所得階層を解消して国民生活水準を上げる、人つくりをする、うまいことばかり口先では言うけれども、現実に、この貧しい階層についてはこのていたらくでしょう。もっとここらあたりを、どうして一般会計から全部取れないのですか。当面緊急の措置として、一般会計から、借入金でなくて入れておくというのがほんとうじゃないですか。どうしてそれができないのですか。
  116. 小林武治

    小林国務大臣 お話のような御意見もあり、ことし私どもとしては、根本的に改定したいといろいろの案をつくったわけでありますが、政府の間で議がととのわない。したがってもう一ヵ年このままでいって、これはきわめてびほう的な方策にすぎませんが、次の年度から根本的にこれの解決をはかりたい、そういうことでいま続いて検討をいたしておるのであります。
  117. 滝井義高

    ○滝井委員 どうもいつも次の機会に、次の機会にと言うのですね。やはりもう少し快刀乱麻といかなくても、スイカを切るくらいのずばりしたところで言ってもらいたいですね。麻は、これは乱れておるからむずかしいですよ。しかし、スイカを切るくらいの答弁をしてもらわないと、次の機会に、次の機会にと言っておったら、大臣、やることは何もなくなってしまいますよ。こういう一番むずかしいところを、やはり重点的にやってもらわないと困りますよ。河野建設大臣を見てみなさい。二兆一千億の道路予算を四兆一千億に引き上げちゃった。しかも、たった三分間大蔵大臣と折衝しただけで四兆一千に引き上げた。公共事業が四兆一千もの長期計画を取ってしまうと、それに見合う地方財政の交付税というのがそれにくっついていかなければならぬから、中央と地方の支出の三割八分というものは、こういう公共事業に取られて、予算はだんだん弾力性を失って硬直してきておる。その中で、こういうばく大な社会保障予算を取ろうとすれば、大臣の首を三つくらいかけなければ、とてもできぬですよ。こういう百億の借入金、事務当局は明らかにこれは一般会計から入れると、言っておる、国の負担にしますと言っておるけれども、大蔵省のほうじゃ負担をするとは言わない、もう少し検討させてくれ、大臣も検討する、小山さん一人が、一生懸命国の負担、国の負担と言っておったって話にならぬわけですよ。こういう状態ではわれわれも力が抜けて、池田内閣のお題目ばかりを聞くだけでは腹がふくれぬということにもなる。時間がないから、日雇い健康保険はこういう実態である、こういう大きな矛盾をはらんでおるものを、じんぜん日を送るわけにはまいらぬ、何ぞ三十九年末を待たんや、すみやかにこれは、やはり臨時国会でもあったらそのときに検討して出すくらいの熱意を持ってもらわなければ困るですよ。  たくさんあるのですが、もう一つ今度は国民健康保険、おもなところだけちょっと言っていきますが、国民健康保険法をここで昨年通すときに、私がたまたま北九州の吉田市長をつくるために市長選に行っておったけれども、長谷川さんにわれわれにかわっていただいて、そうしてあの国民健康保険の一部を改正する法律を通すときに、家族給付は二ヵ年でやるという約束じゃなかったのですか。あのとき二ヵ年でやるという約束だったでしょう。これを見ると、あなた方は四年でやるようになっておるのです。こういうように国会で約束をしたことを、一々かってにおくずしになるということは一体どういうことですか。まず、その点ひとつ御説明を願いたいと思います。国会は国民の意思ですよ。
  118. 小山進次郎

    ○小山政府委員 私は、家族給付を二ヵ年間でやるということが、先生方と与党の先生方との間できまっていたというふうには承っておりません。私がお聞きしておったところでは、とにかく家族給付というものは、当初の計画によれば三年目になって初めて着手をするという計画になっておるが、これじゃいかぬ、世帯主給付を二年間なんということを言わないで、何とか一年間でやり遂げてしまえ、そしてとにかく明年度家族給付に手をつけろ、こういうようなことが御議論になられ、そういうことについては、与党の先生方もそれをひとつ何とか政府にやらせよう、こういうふうにお打ち合わせになったように承っております。
  119. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、あなた方のほうは二年でやるということを聞いておらぬ、こういうことですね。
  120. 小山進次郎

    ○小山政府委員 さようでございます。
  121. 滝井義高

    ○滝井委員 それはしかし、ここで大蔵大臣その他も約束をしておるはずです。  まあ、現実に立って少し質問しますが、そうしますと、御存じのとおり、ことしの予算で見ますと約四千三百二万の国民健康保険の被保険者があるわけです。それで、昨年の十月一日から、本人については七割給付が実現をしたわけです。政府の原案によると、四十年の一月から家族の七割給付を実現していくことになるわけです。しかもこれは、あなた方の要求した案が、たぶん三年で三分の一ずつだったと思うのですね。ところがこれは、四十年の一月から四分の一ずっとなって四ヵ年間でやることになるわけです。これで一体どういうことが起こってくるかというと、非常に事務的に、ややこしくなってくるわけです。いいですか、小山さんも御存じのとおり、国民健康保険においては本人は七割給付、精神、結核は七割給付、家族は隣の町は七割給付、だが、自分の町は五割給付だ、こういうばらばらが起こってくるわけです。それで最近は、市町村当局はどういうことにしたかというと、保険証が世帯みんな被保険者で同一ですから、したがって今度は、世帯主については別の保険証をつくらせたでしょう。こういうように、事務的にも医者の事務が非常に複雑になってくるわけです。市町村の事務もたいへんです事務費は幾らふやしたか。百三十円を百五十円にした。しかも今度は減税が行なわれて、いままでは九万円以上のものは全部やらなくてもよかったのだけれども、今度は九万円以上のものでも、これは保険で納めなければならぬものが出てくるわけです。だから、事務的に非常に複雑になってきた。こういう診療を担当する側のことはちっとも考えないで、自分たちの財政事情ばかりから、こういう医療保障を処理していこうとしている。だから末端はたいへんですよ。見てごらんなさいよ、仁術よりも算術ということになってしまう。聴診器は捨ててもペンは捨てるなということになってしまう。日本医療の退廃はこんなところからくる。保険行政日本医療を退廃させている。こういう一般的な財政の事情からやるなんということは、けしからぬと思うのです。どうですか、国民健康保険全部国が出したって、ことしは二千三百億しかかからぬのですよ。去年かおととしまでは、国民健康保険の総医療費は千六百億だった。全部出したって、河野さんの道路計画の二十分の一しかかからないわけです。毎年そのくらいしかかからないわけです。それをしみったれて、大自由民主党の政策として、これから最も日本の零細な農民と中小企業にアフターケアをやらなければならぬ、アフターケアというのはどこから起こってきたかというと、結核患者の後保護から起こってきたのがアフターケアです。まるっきり日本の農業と中小企業を結核のような伝染病にしておいて、いまアフターケアをやらなければならぬという、その農民と中小企業に対してこれから七割給付をやるのに四分の一ずつやりますという、何というけちな政策ですか。こういう政策を出して、社会保障の拡充強化をはかるというようなことは言わないほうがいい。しかも、ことしの予算を見るとたった十一億円なんです。これは何ということですか。一体、こういうような実態の中で、あなた方はこの四分の一はどうして選ぶのですか。
  122. 小山進次郎

    ○小山政府委員 現在の考えでは、なるべく希望するところのうちで、いろいろな条件の苦しいところからやってまいりたいという考えでおるのでございます。あらましを申し上げますと、全体を各府県の被保険者の割合である程度は配分をし、もちろん全国的な調整のために若干の留保はいたしますが、各都道府県では、希望を申し出た市町村のうちで、所得水準の低く、比較医療にかかる機会に恵まれにくいところの市町村から逐次選んでいくという方針で実施をする、こういうことでございます。  それから、お尋ねになったことでございませんが、さっきおっしゃいました、これをやることが医療機関に非常に迷惑をかける、この点は、私ども十分考えなければならぬことだと思っております。現在のところでは、全国のうちこれを実施し得る市町村はおよそ四分の一程度で、四分の三程度の市町村はまだ五割給付ということになるわけでありますから、やり方としましては、やはり医療機関との関係においては、医療機関側が特に承知をしてくれた場合以外は、七割は五割というものを基本にしておいて、あとの二割分については、これはそれぞれの市町村の保険財政のほうから被保険者に償還をしていく、こういうようなことにいたしまして、少なくともこの実施のやり方から、よけいな手間が医療機関のほうに強制的にかかるということはないようにする考えでございます。滝井委員 あと部分ですが、そうすると、七割給付をした場合は、五割と七割の二割については患者が窓口で支払うということですか。
  123. 小山進次郎

    ○小山政府委員 さようでございます。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすれば、今度は患者と市町村役場の国民健康保険課との間に問題が出てくるわけです。事務が複雑になってくるわけですね。
  125. 小山進次郎

    ○小山政府委員 ある程度そういう傾向はあり得ると思います。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 実は国民健康保険は、いまのたてまえはちょっと私、記憶が鮮明でございませんがかつては、これは保険者が取ってほんとうは医師に払う分なんです、一部負担は。しかし、便宜上医師が窓口でかわって取っていただく、こういうことで、窓口に支払わなかった分が出てきたわけです。そこで今度は市町村が取り立てることになる。ところが、これはなかなかたいへんなんです。行ってみたところが、なべとかましかなかった、とても医療費の一部負担を取れる情勢ではなかったというところがざらなんですよ。これは御存じのとおり、国民健康保険の被保険者の六割は所得三十万円以下の階層でしょう。そういうところに、今度は二割の現金を、七割給付にしたから払えなんと言ったって、これはできるものじゃないです。だから、こういうところにあなた方の政策というものの矛盾が出てくるのです。  そこでお尋ねしたいのは、いまのやり方はおよそわかりました。所得水準の低いところ、それから恵まれていない地域、こういうところからおやりになるということはわかりましたが、昨年の十月の本人七割給付のときの実施は、全国一斉にやっちゃったんですね。いまや地方自治体においても、やはりこの農業や中小企業の不平不満を解消しようとすれば、国民健康保険は七割給付に前進せざるを得ないという客観情勢があるわけです。そこで、本人は一挙に七割給付が実現した。そして今度は家族の番だとみんな待っているわけですから、その家族をやるについては、やはり国が相当大幅な国庫負担をしてもらわなければ困るという客観情勢もあるわけです。そうしますと、すでに社会保障に対する国民的な熱望は非常に強いわけですから、もし四分の一以上のものが殺到してきてぜひ一つやってくれ、こういう殺到があったらどうしますか。
  127. 小山進次郎

    ○小山政府委員 少なくとも今年度は、現在予定されている予算のワク内で処理をしていく考えでございます。今年度と申しますのは、明年度ということでございます。  それから、明年度以降の問題については、きまっておりますことは、四ヵ年のうちに家族全部を七割給付にするということが、与党及び政府においてきめられたことでございます。中身をどういうふうに配分していくかという問題は、これは今後の問題でございます。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 政策をお出しになれば、少なくともその中身まで明らかにしておいてやってもらわぬことには、こういう長期の政策なんですから、四ヵ年計画でおやりになるというような場合には、昭和四十年一月からやる、一月、二月、三月までの三ヵ月分だけの予算を十一億二千万円ばかりお組みになって、それから先の四十年度についてはどういうことになるのか、中身はさっぱりわからぬというようなことでは話にならぬわけですよ。もう少しそこらの間の政策を明らかにしておかなければ、こういう人間の命に関するような問題が、いつもそういうふうに扱われる。さいぜん申しましたように、これは全部国で出したって、国民健康保険は二千三百億くらいでしょう。しかも池田さんは、アフターケアをやるのだ、革命的な近代化を中小企業と農業にやる、革命的と言ったら新聞記者が笑ったので、革新的と直そうか、革新的と直した。革新的な政策をおやりになるというのに、ことしはたった十一億、しかも来年は海のものとも山のものともわからない、幾らやるかわかりません、こういうことでは力がないですよ。  いま、政府管掌の健康保険と日雇いと国保まできましたけれども、明確な答弁一つもできないじゃないですか。しかも、これは日本医療保障の柱ですよ。柱が立っていないじゃないですか。柱が立つどころじゃない、その柱というものは、昔から日本では竹の柱にカヤの屋根といったけれども、竹の柱も立っていない。どうも悪たれをつくですけれども、少し悪たれをついておかぬと、これはだめですね、いまのような状態では。  そうしますと、あなた方は、四年間でおやりになるというのをずっと縮められないでいるというのはどこにあるのですか。四年間でなければならぬという理由はどこにあるのですか。どういう隘路があって、どういうネックがあって二年とか三年——いま三年ということばが自由民主党から出たのだけれども、どういうところに大きな隘路があったのですか。
  129. 小山進次郎

    ○小山政府委員 隘路は、しいて言えば二つあったわけでございます。一つは、これは何といっても決定的な隘路でありますが、一度にそれだけの金を用意することが非常にむずかしい、こういう意味であります。それからもう一つの隘路は、やはり世帯主の七割給付に実のところかなり無理のかかっている市町村がございます。負担してもらっている保険料は、二割のうち四分の一程度を地元で持って、あとの四分の三は国が補助をしている前提をとっておりますが、それでもなかなか苦しいところがある。そういうようなところに一息つくだけのゆとりを与えなければいかぬ、そういうような事情からいたしまして、三年ないし四年ということが論議されたわけであります。なお、これは滝井先生もう御承知の上でおっしゃっておられることでございますが、四年計画ではあるけれども、各年機械的に四分の一ずつじゃない、こう言っているのは、われわれのほうがいまだにある種の気持ちを特っているからそういうことを言っているわけでございまして、決して四分の一を割った実施を明年度以降しようというような考え方は、これは現在のところ政府部内にも全然ございません。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 昭和四十年には四分の一以上おやりになりたい気持ちを含蓄として持っておるのだという意味のことをおっしゃっておりますけれども、いいですか、国民の半分が国民健康保険に加入をしておるわけです。そうして三兆二千五百五十四億、みんなにいい予算という予算をお組みになった。みんなにいい予算という予算をお組みになって、そうしてその中で、人間の生命を守るための社会保険に幾ら出しておるか、千九億しか出してない。たった千九億です。三兆二千億の予算をお組みになって、人間の健康を守るための社会保険、九千六百万人の国民病気を守るための医療保障の柱に、たった千九億しか出してない。しかも、その中で一番貧しい階層の多い国民健康保険、農業と中小企業の近代化をはかろうという、その農業と中小企業のにない手であるそれらの農民と中小企業のための健康保険に、その千九億の大部分がいっておるわけでしょう。ところが、これを一挙に四分の一みんなやった。そうしていまの二割五分の医療給付の国庫負担と一割の調整交付金と、そして五割を七割に引き上げる二割分の四分の三の一割五分を加えて五割でしょう。そうすると、国民健康保険の総医療費は二千三百億ですね。大体ことし二千三百億程度でしょう。たぶんそのくらいだと思うのですが、二千三百億に五割をかけて何ぼでしょう、千億ちょっとです。そうすると、これはそうたいして目の色を変えるほどのことはないわけです。半分みんな一挙にやったって、もうすでに現在八百四十億出しているのですから、もう二百億程度出せばこの問題は解決するのですよ。一体、日本の農業と中小企業に二百億の金が出せないかということです。日本の零細な中小企業のためにたった五億出す、そうして日本の農業と中小企業の命を守るために千億の金が出せないのか、これが自由民主党の政策実態じゃないですか。ほんとうに良心のある政治家がおるならば、私はこれは出すべきだと思う。それがいま言った、しいて言えば二つ理由がある、一つは一度に金が出ない、しかし、農地の補償をするためには千八百五十億とか二千八百五十億の金を出そうとしておる。その準備費として十億の金を組んでおる。そういうところに回す金があるならば、何で大臣が政治生命をかけてこれを取らないか。二百億取ったらいい。こういうところに、やはり私は与野党共通の場面があると思う。私たちは、もういまのような状態ならば、社会党が天下を取ったらたいへんなことだと思っております。自由民主党がほんとうにこういう政策をサボってしまっているから、今度われわれがやったらやりにくくなる、社会党に政権を渡さないためにサボタージュをやっておるのではないかと疑いたくなるくらいです。どうですか。いよいよ大臣も政治生命をかけて、これはやはり四年じゃなくて、少なくとも昭和三十九年度と四十年度の二ヵ年くらいでやるという腹をくびってもらわなければ、これはとても質問をやる気にならぬですよ。小林厚生行政というものは、どこからも固有名詞はつけられないですよ。
  131. 小林武治

    小林国務大臣 政府政策なり党の政策に対する御批評は御自由でありまするが、いまの社会保障の柱、一つも柱はなさそうだとおっしゃったが、柱は立っております。あなたのおっしゃったのは主として財政上の問題をおっしゃったので、医療そのものは行なわれておりまして、柱は立っておる。したがって、いまの財政を健全にしろ、こういう御注意は十分承りますが、私どもは、社会保障の柱は立っておる、こういうふうに考えております。また、いまのように、国民健康保険の問題も四ヵ年ではえらいしみったれた計画だ、こう申されますが、とにかく昨年十月、世帯主の七割給付ができている。ことしはあるいは一年見送ったらどうか、こういう御意見も世間にはあったのでありますが、お話のような中小企業、農民等の関係もあって、家族給付というものをことし一年休むことはできない。少なくとも次の機会にはぜひ発足をさせたいということで、私どもは、一応とかくに三分の一ずつやるという案で党及び政府部内でいろいろ相談いたしましたが、財政上の理由その他によっていまのような結果になった。しかしてこれが、私は先ほどから申しておるように、必ずしも固定的な結論ではない、かようにも考えておりますし、金の使い方は国全体としていろいろなあんばいがあるのでありまして、あなたはいまこのことをおっしゃるし、ほかの方はほかの経費が要る、こういうふうに思いますので、政府としては、全体のあんばいを見てこれをきめておる。その中で、私ども社会保障ができるだけ推進できるようにいたしたい、こういうふうに考えております。これらの問題、いまの国民健康保険に御不満はあろうと存じますが、とにかく昨年十月世帯主を上げたばかりだ、すぐにあとどうかというような御意見は相当あったのでありますが、私どもはそれではいけないということで、とりあえず発足をした、こういうふうな熱意がある。あなた方から見れば努力が足りない、こういうふうに見えますが、しかし、私どもとしてはやはり相当な熱意を持って努力した、こういうことが言えるのでありまして、激励をくださる真意はよくわかります。そういう趣旨によってできるだけの努力をいたした。しかし、私ども政府としては、全体のあんばいというものをやはり考えなければならぬ。日本の社会資本の充実もおくれております。さっき道路のお話も出ましたが、それもやはり進んでおるのではありません。道路も非常におくれておる。その他社会保障もおくれておる。こういうことで、できるだけの努力をその中でしていきたい、こういうことを申し上げておきます。いま申すように四分の一ということも、ことしは四分の一で出発したが、必ずしもこれを固定する考えは、私ども厚生当局としてはまだ持っておりません。これらは将来の問題として、ぜひひとつ早くに御期待に沿うようなことにいたしたい、かように考えております。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 いま私は、三つの保険のことについてざっと聞いてみたのです。まだ、時間が一時間半くらいしかないから掘り下げては聞いていない。けれども、一応重要な問題点指摘したつもりです。そうすると、いま言ったように、医療費の改定その他も何らやらずして、いまの保険財政というものは、赤信号がどれにもみんなかかってきているわけです。政府管掌の健康保険も積み立て金を取りくずしつつある。日雇い健保は百億をこえる借入金を持っておるし、国民健康保険はすでに昨年世帯主の七割給付をやって、家族の七割給付をやるためには、金はできない、道路もおくれておるから道路も取らなければならぬ、財政上はもうこれが限界である、こういうことなんです。そうすると、医療協議会から結論が出ても、もう上げようがない。結論は出たではありませんか。これは一体どういうことになるのですか。受け入れのその袋のほうは、もう赤字の火の車です。この中に医療費の改定を入れたら飛んで火に入る夏の虫、焼け死んでしまう、もう赤字が燃えさかっているのだから。一体これはどういうことになるのですか、大臣。もし医療協議会の答申が出るということになれば、どういうことになるのですか。とにかく私は、近く与党と話し合って、有沢先生にここへ来てもらって意見を聞かしてもらおうと思っておる。その予行演習のつもりで、保険財政だけは知っておいていただかなければならぬというつもりです。この認識に立って日本医療費の問題を論議しないと、政府管掌の健康保険ももう六三を六五に上げるとかなんとかということもあるけれども、これもそう大きな引き上げというものはできる情勢ではない。なぜならば、御存じのとおり、いま厚生年金の改正が起こっておる。厚生年金保険料率千分の三〇を千分の六〇に上げるかどうかで、もう総評その他が反対しておって、これは厚生年金の問題とともに大きな問題でしょう。そうすると、医療費を上げればさらに負担が加重して、国庫負担もたった五億しか政府管掌にしていない。国保も日雇い健保も同じですよ。そうすると、お尋ねしますが、ことしの予算を組むにあたって、医療費改定に対応して、火の車の三つの保険財政に、一体どういう伏線をもって考えておるのかということです。医療費の改定が行なわれた場合に、一体どういう、いまの火の車の中にある保険財政に対応して、その医療費の改定を受けとめていける措置を講じておるかということです。これは、聞くところによると、組合管掌の健康保険等については、一割程度の予備費を組みなさいという趣旨は出しておりますけれども、これから先にちょっと答えてください。そして前段をひとつお答え願いたいと思います。
  133. 小山進次郎

    ○小山政府委員 組合に指示しておりまするのは、元来、組合が予算を組みます場合には一定の予備金を必ず組むことになっていますが、どうも近年、とかくそれが励行されがたい傾向があるわけであります。したがって、これはこの際厳守さすということを指示しておるわけでございまして、はたしてそれが一割に当たるかどうかということは、私ここで正確に記憶してはおりませんが、いずれにしても、組合としては当然それだけの予備費を持ちつついかなる事態にも対応するような措置を講ずべきだ、こういう気持ちでございます。  それから、それ以外の問題につきましては、国民健康保険とかあるいは日雇い労働者の健康保険は、本年度行ないました地域差の撤廃の際にもそういたしましたが、いずれも医療費の引き上げに対応する特別な措置を講じております。当然考えとしては、そういうものがあればそれは講じていかなくてはいくまいという考え方が根本にあるわけであります。  それから、それ以外の保険につきましても、先ほどいろいろ御検討がありましたように、今度は政府管掌の健康保険について手放しでというわけにはいくまい。これはもちろん、われわれ事務当局の判断ということでひとつお聞き取りいただきたいと思いますが、そういう考えでございます。やはり規模と程度というものについてはいろいろ議論はありましょうけれども、何らかの特別対策というものは当然伴うべきものだ、こういう考えを持っておったわけであります。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、いまのような苦しい保険財政に医療費の緊急是正というものがある場合においては、当然これは補正予算を組むことになる。それから政府管掌健康保険についても、積み立て金をくずすというわけにはいかぬから、今度は当然国庫から出してもらわなければならぬ、こういうことになるという意味なんですね。
  135. 小林武治

    小林国務大臣 いまの問題は、まだどういう答申が出るか知りませんし、また上がるか上がらぬかわかりませんが、いずれの場合にもこれは政府全体として措置する問題で、何も厚生省だけの問題ではありせんから、必要な事態に応じて措置をされる、こういうことになると思います。しかして、いまはまだ上がるのか上がらぬのかわかりません。答申がいつ出るのかわかりません。また、答申内容についても私どもは知らないのでありますが、いずれにいたしましても、新しい事態が出まするならば、その事態に対して政府全体として措置する所存であります。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 そう大臣、けんか腰にならなくて、これは当然論議しておかなくてはならぬのです。なぜならば、医療協議会の答申が出たらすぐやらなければならぬのだから、もう目前でしょう。出なければそれまでです。出なければ出なかったときで、またやればいいのです。しかし、私がこの間から言ったように、医療機関は休業の状態にあるということはみんな異口同音におっしゃっておる。大臣もおっしゃったでしょう。医療協議会でも、人件費、物件費については支払い側も上昇した分については出してもよろしい、こうおっしゃっておるのです。そうすると、政治家は、そういうものに対する最小限度の対応策というものを、この苦しい保険財政の中でどうするかということを聞いておかなければいかぬわけです。聞いておかなければ、さいぜんのように、とにかく家族の七割給付についても、これはもう金がなかったのだから、しみったれのようになるけれども四十年一月からしかできませんでした、まあ私たちの気持ちはくみ取ってください、昭和四十年になったら四分の一よりかもっとよけいやる気持ちがある、こうおっしゃっておるわけです。そこのところが、多々ますます弁ずるというわけにはいかぬのですよ。相手は大蔵省がおるのですから。だからそれだけの財源の見通しと、それに対応するだけの措置がとれる基盤があるかどうかということを政治家が見ることは、当然なんです。何もこんなことを隠す必要はない保険経済というものはガラス張りの中で論議をして、ガラス張りの中で上げていくという形をとらなければいかぬのです。どうも非常に不満足な答弁で、もう少し大臣、大事な社会保障ですから、これは年金になったらまだ進化していないのですからね。医療保障だけが一番初めから国会でも問題になって、昭和二十六、七年ごろからずっと問題になって、問題になってお互いにがあがあ、かんかんがくがくの議論をしながら推進してきたけれども、いま言ったように、極端な言い方だけれども竹の柱にカヤの屋根みたいな形にしかなっていない。大臣は柱は立っておるとおっしゃるのだけれども、それは柱は立っておるかもしれない、けれども肉がつき、血が通い、魂が躍動していない、こういう表現に改めてもいい、そういう形なのです。これは御存じのとおりです。どれを見たって、満足な答弁ができないじゃないですか。だからわれわれも御協力申し上げます。これは謙虚な気持ちで言っておるのですから……。私は社会保障を前進させるために代議士に出てきたのだから、医者の事務を簡素化するために代議士に出てきたのだから、あんなような事務の複雑なことでは医者はできない、ほんとうの医学的な良心を満足させることはできないから、これをやらなければいかぬのです。事務の簡素化は、ずいぶん前から小山さん約束しておられたけれども、一向にできない。どうですかこれは、七割給付の問題が出てきたが、事務の簡素化は当然おやりになるのでしょうね。これはあまり金がかからぬのですから、むしろ保険経済のもうけになることですから、どうです。最後に、これだけはひとつ尋ねておきたい、事務の簡素化は、ひとつ速急におやりになるのでしょうね。
  137. 小山進次郎

    ○小山政府委員 これはやりたい気持ちで、ずっと医療担当者の団体と相談をしております。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 やりたい気持ちでと言うが、私が事務の簡素化を言い出してからもう何年になりますか。高田さんが保険局長だったときに、私は高田さんとやったのです。その後に何とかかんとか言っておやりにならぬわけです。生活保護の事務なんか、実に複雑です。これはあなたの所管ではなく、牛丸君の所管ですけれども、あなたのほうの健康保険だってずいぶんめんどうくさい。それから今度は、国民健康保険の本人、家族が七割給付という形になってくれば、これは実にややこしくなる。私は一ぺんあなたを友だちのうちに連れていくから、ちょうど月末がきておるから、二、三日私と一緒に事務をやってみたらわかる。私の友だちのところに一ぺん連れていくから、やってごらんなさい、たいへんだから。ああいうたいへんなことをやらしておれば、それだけ患者を見る時間がなくなり、勉強する時間がなくなって、医者はだんだんばかになってくる。だから医師会がごたごたもめてくる。そういう点では、もう少し科学者らしい体制をつくらなければいかぬ。そういう反省がちっともない。自分たちの保険事務のことばかり考えて、患者の病気をなおすということは考えていない。保険経済が優先をして、患者が置いてきぼりを食っている。ちょうど三池における生産第一主義で保安が考えられない、国鉄の輸送が第一主義で安全運転が考えられないということが、日本の保険行政の中に出てきているのです。ぜひひとつ事務の簡素化をやっていただきたい。話し合っておるくらいのことではだめなんです。速急にこれをやったらどうですか、私も中に入りますから。どうです。
  139. 小山進次郎

    ○小山政府委員 これは前から申し上げているように、われわれが一番やりやすい仕事の分野だと思っておるわけであります。ただ、遺憾ながら、やはりこれをやるについては、相手のあることでございますから、原因は必ずしも滝井先生がおっしゃったようなことではなくて、いろいろな意味で十分話がこなれていないというのが、まだはかばかしい進展を見せていない原因でございますが、何とか解決をしてまいりたいと思います。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは今度、私が少し積極的にやりますから、相手になりますから、ひとつやってください。これは歴代の大臣がやるやるということを何回言うかわからないが、ちっともやらない。やはり言ったことは実行に移すというのが政治ですよ。実践をしてもらわなければ困るのです。これは歴代の大臣がやるやると言うし、あなたもやると言ってやらないでしょう。ちっともやらない。だからひとつそれを、私も積極的にあなたのところに行ってやりますから、ぜひやってもらうことを希望して、本日はこれで終わります。
  141. 田口長治郎

    ○田口委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明六日午前十時より委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後二時六分散会