運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1964-05-27 第46回国会 衆議院 国際労働条約第八十七号等特別委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十七日(水曜日)    午前十時三十四分開議  出席委員    委員長 倉石 忠雄君    理事 愛知 揆一君 理事 安藤  覺君    理事 田中 正巳君 理事 森山 欽司君    理事 河野  密君 理事 多賀谷真稔君    理事 野原  覺君       秋田 大助君    稻葉  修君       小笠 公韶君    亀山 孝一君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       渡海元三郎君    永田 亮一君       濱田 幸雄君    松浦周太郎君       有馬 輝武君    大出  俊君       小林  進君    田口 誠治君       安井 吉典君    山田 耻目君       栗山 礼行君    吉川 兼光君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君         文 部 大 臣 灘尾 弘吉君         運 輸 大 臣 綾部健太郎君         郵 政 大 臣 古池 信三君         労 働 大 臣 大橋 武夫君         自 治 大 臣 赤澤 正道君  出席政府委員         内閣官房長官  黒金 泰美君         内閣法制局参事         官         (第一部長)  吉國 一郎君         人事院総裁   佐藤 達夫君         人事院事務官         (管理局長)  小林  巖君         人事院事務官         (職員局長)  大塚 基弘君         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房公務員制度         調査室長)   岡田 勝二君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎭男君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         通商産業政務次         官       田中 榮一君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      廣瀬 眞一君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君  委員外出席者         郵政事務官         (人事局審議         官)      土生 滋久君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     松浦  功君         日本国有鉄道副         総裁      磯崎  叡君         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第  八十七号)の締結について承認を求めるの件(  条約第二号)  公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一号)  地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律  案(内閣提出第二号)  国家公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第三号)  地方公務員法の一部を改正する法律案内閣提  出第四号)      ————◇—————
  2. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより会議を開きます。  結社の自由及び団結権保護に関する条約(第八十七号)の締結について承認を求めるの件、公共企業体等労働関係法の一部を改正する法律案地方公営企業労働関係法の一部を改正する法律案国家公務員法の一部を改正する法律案、及び地方公務員法の一部を改正する法律案の各案件を一括して議題といたします。  この際おはかりいたしますが、先般の理事会の申し合わせによりまして、右各案件について来たる六月二日、六名の参考人出席を求め、意見を聴取することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  なお、参考人の人選及び所要の手続等につきましては委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 倉石忠雄

    倉石委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決定いたします。      ————◇—————
  5. 倉石忠雄

    倉石委員長 これより各案件について質疑を続行いたします。小林進君。
  6. 小林進

    小林委員 私はILO八十七号条約批准の問題に関連をいたしまして御質問申し上げたい要点を十問に集約をいたしまして御質問を申し上げていきたいと思いますので、政府側もひとつ要領よく、しかも誠実味のある答弁をしてくださることをあらかじめお願いを申し上げる次第であります。  まず第一問といたしまして総理大臣にお伺いをいたしたいのでありますが、総理大臣がお見えになっておりませんければ、その代理といたしまして官房長官お答えをいただきたいのであります。  ILO八十七号条約が今日に至るまで一体なぜ批准できないのかというそ理由を率直にお聞かせを願いたいと思うのであります。
  7. 黒金泰美

    黒金政府委員 御承知のとおりに、ILO条約批准につきましては、関連いたします国内法改正と一緒に御審議を願いたいということで、再々国会提出いたしましたが、審議未了に終わっておるような次第でございます。まことに残念に存じておりますが、いろいろ審議の御都合もあって延び延びになったことと存じます。幸いに今国会におきましては非常に熱心に御議論願っておりますので、ぜひ今回の機会に一括して御審議を願い、成果を得るようにと期待をいたしておる次第でございます。
  8. 小林進

    小林委員 官房長官もすでに御承知のことと存じますが、この条約に関する批准の問題は、これは去年やおととしに起こった問題ではございません。実にわが日本がまだILOに再加盟いたしません前であります一九五〇年、世界労連日本占領軍日本政府による組合権侵害提訴いたしました場合、結社自由委員会はこれを却下しながらも、そのときにすでに日本政府が八十七号条約、九十八号条約批准する可能性を考えることを希望するという報告を寄せているのでございます。一九五〇年でございます。それがまる十年に近い歳月を経過いたしながらもなお解決しないというところには、やはり根本的な原因がそこにあるのではないかと私は思う。  いまも官房長官が言われました国内法改正、修正の問題でどうも足踏みをしているというふうな御回答がございました。国内法改正足踏みをしたり、これがILO批准の障害をなしている原因一体どこにあるのでありますか。国内法関連をしてこれが批准できない原因一体どこにあるか。私をして言わしむるならば、第一にあなたの与党ですよ。政府党の中にILO精神というものをいまだ理解していない者があるのではないか、問題はそこにあると私は思うのでございます。  一九五一年にわが日本が復帰を命ぜられ、一九五四年以来常任理事国になっておるのであります。その間においても勧告を受けていることが一体何回ございますか。回数をまずお聞かせ願いたいのでございます。
  9. 黒金泰美

    黒金政府委員 勧告を受けること実に十四回だそうでございます。
  10. 小林進

    小林委員 ILO憲章前文に、このILO目的というものが明らかにせられておるのでございまするが、われわれはこの条約批准に際しまして、国内法審議いたす場合にも、やはりILO憲章前文精神というものを正しく理解をしながら審議に入っていかなければ、いつまでたっても私は問題の一致点に到達することは困難であると思います。官房長官ILO憲章前文をひとつそこでお聞かせを願いたいと思うのであります。
  11. 黒金泰美

    黒金政府委員 前文小林さんとくと御承知のとおりで、ここで読み上げるまでもないと存じますが、ILO前文にうたっておりますように、ILO関係におきましては、この八十七号条約は非常に重要なものである。したがいまして、これをぜひ、批准について御承認を願いたい、こういう気持ちでございます。
  12. 小林進

    小林委員 官房長官がお読みにならぬならば、私がひとつかわってその概要を申し上げます。それによりますると、永続せる世界の平和は、社会正義基礎としてのみ確立することができる。そして世界の平和及び協調が危うくされるほどの大きな社会不安を起こすような不正や困苦や窮乏を多数の人民にもたらす労働条件が存在する。したがって、そういう労働条件を改善をし、排除するために賃金、時間、失業防止等、特に結社の自由の原則承認ともろもろの処置をとることが急務であるので、その目的を達するためにこの機関を設置するのである。こういうことが明確にせられておるのであります。  われわれはこの精神に沿っていま批准問題を審議しなければならぬでございましょう。いま一度私は官房長官の御答弁を得たいのであります。
  13. 黒金泰美

    黒金政府委員 ただいま仰せのとおりの趣旨でございますので、ぜひ早く批准を御承認願いたいと思います。
  14. 小林進

    小林委員 なお、私はここでひとつ政府側注意を喚起をいたしながら御質問しておきたいことは、そもそもILOが、一九一九年六月二十六日ベルサイユ条約に署名されると同時に、これに付帯してこれの設置が承認をせられた。その一九一九年に、このILO設立をされるその準備委員会として国際労働法制委員会というものが設立された。そしてILOベルサイユ条約の中に設置するその作業が進められていったのでありまするが、その作業を進める十の代表委員会、いわゆるベルサイユ平和会議の中から十の国が代表してその準備委員会に任命をせられた。当時のことばでいえば五大強国、そのほか五つの国。その五大強国と称する国の中にわが日本代表が入っておるじゃありませんか。そのときのいわゆる国際労働法制委員会、その準備委員会の中にわが日本代表が入っておる。どなたが入っておりましたか、官房長官、あなた博学のようでありますから、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  15. 黒金泰美

    黒金政府委員 不敏にして存じません。
  16. 小林進

    小林委員 それでは私のほうで申し上げますけれども、そのILO創設準備委員会には、五大国として、アメリカ、イギリス、フランス、イタリア、それから日本が入っております。後にベルギーが追加になっておりますが、そのほか五つの国が選ばれておって、当時その委員会に入りましたわが日本代表は、当時のオランダ公使落合謙太郎氏、農商務省商工局長岡實氏であります。  そうしたILO創設の輝ける歴史の中にすでにわが日本が関与しているという、この事実であります。その事実を持っているわが日本が、そのILOの、しかもほんとうの基本的な精神とせられる結社の自由をいまなお批准できないなどということは、それ自体私は日本歴史のしにおいて大きな恥ではないかと思うのでありますが、いかがでございましょう。そういうような輝ける歴史を、残念ながらあなたの政党政府党の中に理解をせられない方があることが、長い間批准できない根本原因ではないかと思うのでありますが、官房長官、ひとつ明確にお答え願いたいと思うのであります。
  17. 黒金泰美

    黒金政府委員 したがいまして、昭和三十五年以来六回にわたって提案をいたしておる次第でございますが、いまだに御承認を得なくて、まことに残念に存じております。
  18. 小林進

    小林委員 私はこの特別委員会を通じまして与党の諸君の発言を静かに聞いてきたのでございますが、確かに自民党内部にはILOに対する感覚が大別して二つに分かれております。一方には、ILO憲章の宣言の趣旨に沿って、労働者の人格を認め、労使の信頼の上に立って協力関係を打ち出そうとする、いわゆる近代派的な考え方に立ってこの審議に参画をしている方がおります。けれども、その反面には、いま私が申し上げましたILO精神というものは全く理解していない、その設立当初からわが日本政府代表関係したというそ歴史も知らず、労働者労働組合に対する不信感あるいは劣等視、そういう感覚基礎にして、ただ警察法か何かを審議するような治安対策的な観点からのみ労働問題を処理していこうというおそるべき時代錯誤による感覚を持った者があなたのパーティーの中にいる。これが私はこの批准ができない根本理由であると考えるが、具体的に、私の申し上げておることに誤りがあるか、総理大臣になりかわってひとつ明確な答弁をしていただきたいと思うのであります。
  19. 黒金泰美

    黒金政府委員 御承知のとおりに、このILO条約関係は大きな問題でありますだけに、いろんな議論があることはおっしゃるとおりだと思います。ただ幸いに今国会におきましてはもう提出も済み、また委員会におきまして熱心な御論議が行なわれておりますので、十分に御意見を尽くされて、そうして結論に到達いただくことを政府としては心から期待をしておる次第でございます。
  20. 小林進

    小林委員 十分なる論議を尽くすとおっしゃいまするが、この委員会における論議というものはやはり一つの制約がある。三つの政党五つ政党、それぞれの政党考え方をこの委員会に持ち寄って十分なる審議を尽くすというのが、委員会における審議原則でなくちゃならない。われわれが聞いているのは、そうじゃない、あなたの政党だ。与党内部のそれぞれ水と油の意見をこの委員会に持ち寄ってきて、そしてこの委員会の中でかってな議論をしていらっしゃる。しかもその議論の中には何らの調整が行なわれていないのでありまして、こんなような意見が戦わせられている限りは——それはあなた方の代議士会でやることですよ。自民党内部政党内部で行なうべき議論、そんな議論をこの委員会に持ち込まれて、無統制、無秩序のままにラッパを吹いたり、鈴の音を鳴らしたりしていられたのでは、これは何回やってもこの委員会にいい結論が出てくるはずはない。こんなことはまたわれわれ野党第一党、社会党にとりましてもはなほど迷惑しごくなことなのでございます。そういうような無台裏の混迷の中に巻き込まれてわれわれがおつき合いさせられなければならぬなどということは、これは迷惑しごくであります。したがいまして、これはひとつ官房長官にお願いいたしたいことは、早く与党内における調整をとっていただきたい。もっと具体的に言うならば、あなたの与党内における強い保守的な思想を持つ人々であります、こういう者をまずひとつ党内において学習をやって、講習会でもやって、ILOのイロハからひとつ教え込んで、そこで教育ができたところで、この特別委員会委員なり任命して、そうして審議に参加せしめる、こういう方法をとってもらわなければ、これは他の政党が迷惑でたまらぬと思うのであります。この点いかがでございましょうか。私の進言をお受けくださるというならば、私は次の質問に入りたいと思うのであります。
  21. 黒金泰美

    黒金政府委員 御審議の過程におきまして、だんだんとよい結論が出てまいることを期待しておりますが、御注意のほどはよく総理にも伝えますから……。
  22. 小林進

    小林委員 どうかひとつ総理にもよくお伝えをいただきまして、現在のILOに対する与党審議の姿は断じて正常ではございません、国会の正常な形ではございませんので、与党内において早く調整をせられて、そういう理解のない者、−労働立法を、ILO批准を、いやしくも治安警察法審議か何か、治安の対策、対象としてそれを論じていこうなどという本末転倒もはなはだしいような大きな間違いを犯している者たちによくひとつ教育をせられて、そういう恥ずかしいような発言をしないように、どうか総理のほうから十分御訓示を与えられるように、よくお伝えをいただきたいと思うのでございます。(「内政干渉だ」と呼ぶ者あり)ただいまも不規則発言内政干渉だというのがございましたけれども、これは内政干渉ではございません。そういうような統制のできないあなた方の発言のために、われわれ野党がどれだけ御迷惑をこうむっているかわからないのであります。われわれは自分たちにふりかかった火の粉を払う意味において申し上げておるのでありますから、この点はひとつ誤解のないようにお聞きいただきたいと思うのであります。  次に、第二問に移ってお伺いいたしたいのでございます。  このILOの八十七号条約を何ゆえ一体批准をする必要があるかということなんです。これもわかり切ったような話でありますけれども、いまなお与党の中には、それはそんな批准を急いでする必要はないじゃないかという説をなされる方が多いのでありますから、この問題をなぜ批准をしなければならないのかという質問の形で、やはりもう一回確かめておかなければならぬのであります。どうかお答えをいただきたいと思うのであります。
  23. 黒金泰美

    黒金政府委員 先ほど小林さんお話しになっておりますように、このILOの基本的な前文にもございますように、ILO機構としては最も基本的な条約だと存じます。そういうような観点からいたしまして、この八十七号条約は一日も早く批准をいたしたい、こう考えております。
  24. 小林進

    小林委員 問題を二つに分けまして、十年近くこの条約を今日まで批准をしてこなかったという経過の中に、一体実害がなかったかどうか、この問題が一つであります。それから、今次の国会でかりにこれを批准できなかったとしたら、将来に向かって一体どういう弊害が起きてくるか、この二つの面に分けて御質問をいたしたいと思います。  まず第一の、いままでの経過の中で、日本一体失うところがなかったか、有形無形実害、損害というものが一体なかったかどうか、これをお聞かせを願いたいと思うのであります。
  25. 黒金泰美

    黒金政府委員 この問題につきましては、ILOにいろんな組合から提訴が一ぱい出ております。そのような点で、いろんな支障があったという見方が——そういう支障があるから提訴があった。したがいまして、そういう点から見ましても支障があり、したがって今回ぜひ御批准を願いたい、こういう考えであります。
  26. 小林進

    小林委員 外務大臣にお尋ねいたします。(「外務大臣はいない、五分間ぐらい待って」と呼ぶ者あり)それでは労働大臣——通産大臣いませんか。(「あとで来れるそうだ」と呼ぶ者あり)
  27. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止
  28. 倉石忠雄

    倉石委員長 速記を起こしてください。小林進君。
  29. 小林進

    小林委員 私は、いままでILO条約批准をしなかったことによって、第一に、無形としては国際的な信用を失っている、こういうことを考えられると思うのでございます。  これは、一九五四年、当時の労働大臣倉石さんがまず第一にILOに行きまして、この八十七号は近く批准をいたしますと政府代表として約束をしてきている。自来、一体何回ILOの総会に行ってその約束を繰り返されたか。大臣はかわれども繰り返すことばには変わりなし、同じことを繰り返している。それがなお今日に至るまで批准できないということは、これは国際的な信頼を失墜したるのみならず、わが日本内閣というものがいかに無能であるか、統制力がないか、国際的にうそを言うか、信頼のないことばを吐いておるかという左証であると私は考える。この国際的な信頼内閣統制力指導力、こういうものを失っている。その損失は私は無形に非常に大きいと思うが、官房長官いかがでございましょうか。たいしたことはございませんか。
  30. 黒金泰美

    黒金政府委員 したがいまして、今回ぜひ御審議の上御承認を願いたいと考えております。
  31. 小林進

    小林委員 官房長官はやはり国際的な信頼を失っておるということをすなおにお認めになりましたから、そのすなおな姿は非常によろしいと思うのでございまして、それであるならばなおさら早く批准をしなければならない。  私は労働大臣に申し上げまするが、わが日本ILOに再加盟をいたしまするときに、特に再加盟についていわゆる労働権の問題や結社の自由の、あるいはILO憲章義務受諾面等について何かILO当局から留意せられた歴史が、事実があるはずであります。申し上げるまでもなくございましょう。恥ずかしがることはございません。率直にお聞かせをいただきたいと思います。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILO加入に際しまして、わが国は当時の政府代表を通じましてILOに対して、ILO精神を尊重し、またその重要なる原則についてはこれを順守してまいるという趣旨をじゅんじゅんとして説かれたやに承っております。
  33. 小林進

    小林委員 わが日本先ほども申しまするように一九一九年、その成立の当初からILO加入いたしておりまして、一九三八年に戦争中において脱退をいたしたわけでございまするが、その戦前の加盟中におきましても、わが日本ILOにおきましては、事労働問題に関する限り札つきだといわれていたことは大臣承知のとおりでありましょう。大正時代には、労働組合代表として官選の役人、官僚を、ILO出席せしめるなどというような、そういう行為も繰り返してきた。労働法労働条件の面でも当時からすでに悪名が高かった。実に悪名が高いという歴史的事実があるということ、これは労働大臣率直にお認めになることでありましょう。いかがでございましょう。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日本は元来国際条約につきましては特にこれを尊重し、忠実に履行してまいったという輝やかしい誇りを持っておるのでございますして、労働問題に関しましても、批准をいたしました国際条約については常に歴代の政府は責任をもってこれを履行してまいったと私は承知いたしております。
  35. 小林進

    小林委員 一般国際条約については確かに日本は忠実な義務履行者でございましたけれども、ILOにおける労働関係だけは残念ながら大臣の言われることは全くうそでありまして、労働者代表役人出席せしめたり、労働者保護の面や権利擁護の面においては常に日本札つきといわれた。札つきといわれたからこそ再加入の際に、先ほど大臣答弁せられたようにさらに義務受託の面を特に念を押されて、やれ憲法二十八条に労働基本権認めております。あるいは労働三法もできておりますといって詳しく説明をして、その上にようやく加入を許されたという事実がある。それが一九五四年に至ってようやく理事国まで受けるようになったのであります。しかし、そのILO理事国という名誉ある地位にありながらも、ILOに対する基本的な条約に対しては日本は依然として批准をいたしておらないじゃありませんか。  ILOの数々の条約勧告の中でもどれが一番基本的な条約であるかといえば、それは申すまでもなく八十七号でございましょう。これはILO成立そのものなのであります。八十七号が一番重要でりあます。それから九十八号でございましょう。ひいてはILO条約の第一号でございましょう。憲法でも法律でも第一条というものは一番重要であることは間違いない。その第一号の時間の問題でりあます。その第一号の条約さえもまだ日本批准をしていないじゃありませんか。第一号の重要性と、これを批准をしていないということは、労働大臣はすなおにお認めになると思いますが、いかがでございましょう。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILO条約第一号は一週四十八時間を原則といたしまする労働時間についての国際条約でございます。御趣旨のとおり、この条約わが国といたしましてはいまだこれを批准いたしておらないのであります。先進国の中にもこの条約批准をいまだ行なっていない国は相当あるのでございますが、それらの理由をいろいろ調査いたしてみますと、本条約原則として採択いたしております一週四十八時間の時間制限につきましては、ある程度の例外措置認められておるのであります。この例外措置認め方について、各国それぞれ自国の産業労働事情等に基づきまして独特の規定をいたしておるものが多うございまして、これが第百万の類型的な規定と抵触をいたしまするために今日まで批准の運びになっておらない国があるわけなのでございまして、わが国もその一例にすぎないわけでございます。  しかしながら、わが国の場合におきましては、何ぶんにも例外の範囲が先進国の立法例に比べましてあまりにも広範にわたっておりますので、私は今日の国内の産業労働事情から見まして必ずしも現行の制限は適当でない、かように考えておるのでございまして、できるならばこれを条約に近づけてまいりたい、かように考え、この点についてただいま労使双方に審議会を通じてお話し合いをお願いいたしておる次第なのでございます。その結果によりまして将来すみやかに善処をいたしたい、かように考えております。
  37. 小林進

    小林委員 いろいろ釈明的な答弁をお伺いいたしましたが、いずれにいたしましても、ILO条約第一号の工業的企業における労働時間を一日八時間かつ一週四十八時間に制限する条約をこの日本がまだ批准をするまでに至っていないことだけは事実であります。決して私はILO理事国として名誉のあることじゃないと思うのであります。現在時勢はもはや欧米先進国においては週四十時間、週休二日制が常識となりつつある中に、週四十八時間のILO第一条の条約さえも批准できていないということは、何といってもわが日本労働行政に関する限りは欧米先進国に比べてまだ大きな開きがあることの左証であるといわなければならぬ。原因はありましょう、理由はありましょうけれども、しかしその理由は名誉ある理由ではないのであります。  なお私は申し上げます。ILOの幾多の条約の中で次に一体何が基本的に重要であるかといえば、私はILO第二十六号の一律の最低賃金に対する条約だと私は思う。この条約もどうでありますか。世界的な非難の中に、ようやくわが日本が、昭和三十四年でありますか、業者間協定などというごまかしの最低賃金法をおつくりになった、そのときにわれわれは国会の中で反対をしました。そんな恥ずかしいものをつくるのはおやめなさい——当時の労働大臣は、ここにいらっしゃる倉石さんなんです。この人が労働大臣。こういうようなごまかしの最低賃金法をおつくりになったところで、ILOの二十六号には該当しない、ILOの二十六号の批准はこんなものではできませんよということを念を押して御忠告申し上げたときに、当時の倉石労働大臣は何と言ったかというと、いや、これでけっこうだ、この業者間協定を中心にする最低賃金法は、必ずしもILO二十六号に抵触しないから、最低貸金の条約批准は可能である、あなたはそういう答弁をせられた。ところが、その後すでに五年の歳月を経過するけれども、この最低賃金のILO条約批准できていないじゃありませんか。なぜおやりにならないかということを今度は次の労働大臣に聞いたら、いまILOに問い合わせ中だけれども、若干疑問がある、この日本の業者間協定などというごまかしの最低賃金ではILO二十六号の条約批准するわけにはいかない、疑問があるとおっしゃった。あるんでございましょう。大橋労働大臣、いかがでございましょうか。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のとおり、ILO条約第二十六号におきましては、最低賃金の決定に際しましては、労使の代表が対等の立場でこれに参画する手続が必要に相なっておるのでございまして、わが国現行最低賃金法は、この点において疑問があるのでございます。ただいまILOの事務当局において専門家をわずらわして鋭意検討中でございますが、これは条約に抵触するというはっきりした結論も出ておりませんが、しかし、条約に適合しておるという結論も出ておらないわけでございまして、一応、政府といたしましてはその明確な結論を待っておるわけでございますが、しかし、国内のいろいろな諸情勢から考えまして、最低賃金法につきましてはいま少し制度としての改善が必要ではないか、かように考えられますので、この批准の問題とは切り離しまして、近き将来においてより進んだ最低賃金法をつくり上げるということのために、これも目下労使間のお話し合いをお願いしておる最中でございます。
  39. 小林進

    小林委員 いま大橋労働大臣お答えになりました賃金、給与というものは、労使対等の原則に立ってこれをきめなくちゃならない、これは明々白々たる原則であります。その原則はいま初めてお聞きすることじゃない。倉石さんが労働大臣のときに、私どもは何回もそれを申し上げた。つまり、その労使対等の原則に基づく賃金の決定がないじゃないか、だからこんな最賃法はごまかしだ、こんなものをつくったところで、ILO条約二十六号の批准がかなうはずがないということを申し上げたわけです。それを強引に通しておいて、いまこと新しくそういうILOの専門委員会で研究を願っていること等を理由にせられることは、いかに日本の歴代のいわゆる政府がこういう形で反動政策、反労働者的な政策を進めてきたかという左証であります。日本の国民や労働者をごまかせても、国際の舞台はごまかせない。  いま申し上げますように、ILOの基本的条約である八十七号はもちろんのこと、第一号も批准できない、第二十六号も批准できない、そのさなかに、いままたILO八十七号でこういうもたつきをしておることは、いよいよわが日本の国際的な信用を失墜する大きな原因ではないか、わが日本労働行政というものがいかに反動的であるかということを具体的に国際舞台に反映せしめる結果になるのではないか、私はこういうことを考えるのでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は、労働行政が反動的であるとは考えておりません。やはり国内の産業事情に即応しながら絶えず前進しておるのでございまして、国内の状況がなかなかまだそこまで進歩しませんので、労働行政の進歩もこの程度でとどまっておるのだ、こう思います。反動的であるというようなことは毛頭考えたことはございません。
  41. 小林進

    小林委員 そういうようなILOの基本的な条約一つ批准できないということを、これを反動的と称すかいなかという問答は、これは労働大臣と私の間における並行的な考え方といたしまして、大臣はそうお考えになればよろしい、私はあくまでも、いままでの歴代政府のやり方は、労働政策に関する限りは非常に世界各国におくれている、反動的である、そういう見解を変えるわけにもいきません。  次に私は、やはりILO批准問題について、これを批准をしないことによって経済的にもどういう影響があるかということを通産大臣にお尋ねしてみたいのであります。——きのうからちゃんと通告の申し入れをしているにもかかわらず通産大臣は来ないなどということは、ふまじめでいかんですな。  日本はIMF八条国に移行いたしました。OECDにも加盟いたしました。開放経済の体制の中に日本は好むと好まざるとにかかわらず追い込まれたわけでございますが、そういう現状の中で、ILO八十七号を批准できない、その他のもろもろの理由悪名を高めていくということは、私は対外貿易関係にも非常に悪影響を及ぼしているものと考えるが、その影響はいまのところ出てきたかこないか、まだ影響はないかどうか、その点をひとつ通産大臣からお聞かせを願いたいと思うのであります。
  42. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 ILO八十七号条約批准がおくれたために、わが国の国際貿易上あるいは国際感情上にいかなる悪影響があらわれておるかという御質問でございますが、現在まだつまびらかにはしておりませんが、直接貿易上であるとか経済上の国際関係等におきましては、これらの批准が遅延したからという理由のもとにおいて、いろいろな悪影響とか、そうしたことは現在起こっておらないと確信いたしております。
  43. 小林進

    小林委員 おりませんと断言をせられましたな。これは通産大臣——いや大臣じゃない、将来なるかもしれないが、その言明は、いずれかの場合に取り消していただかなければならぬことを私はあなたに予告をいたしておきましょう。  ただ、確かに、あなたがいまおっしゃったことは、与党の中の一部にある。八十七号を批准しなければ日本の貿易に悪い影響があるというのは、それは間違いだ、こういう説をなすものが与党の中にいる。そういうような説をなす与党内の一部の人たちは、その証拠に、現在すでに条約批准しなくてもOECDに加盟することができたではないか、こういうことを言っておりますが、これはまことに愚論であります。加盟することそれ自体はわが日本の経済の実力だ。資源も何もないところでこの日本をこれだけ大きな産業国にしてくれたのは労働者の血と汗の結晶だ。その実力が認められてOECDに加盟することができた。けれども、加盟したその後は、この労働問題が影響してくるということと、現在加盟できたということとは、全く別個にして考えなければいけないと思う。OECD各国と今後は歩調を合わせていかなければならぬ。日本だけが特殊な立場に立って特別な条件を主張するようなことは私はもうできないと思う。日本の経済、貿易政策に対する批判というものはすでに起こっているじゃありませんか。非常にきびしいものがあるじゃありませんか。あなたはそれを知らぬのですか。西欧諸国の政府も使用者も、特に労働組合も、官民あげて日本を批判しているじゃありませんか。その事実がありませんか。通産副大臣、言ってください。
  44. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 お答え申し上げます。  わが国がOECDに加盟したりIMF八条国に移行いたしまして、わが国といたしましては、これらの条約加盟し、あるいはまた移行いたしました以後におきましては、先ほど官房長官からもお答えがありましたとおり、忠実にその義務を履行いたしておりまして、またいたす決意でおります。したがいまして、そうした加盟後におきますILO八十七号条約批准の遅延のことにつきまして、またこれらのいろいろな諸国の間におきまして、何らの批判は現在受けておりません。
  45. 小林進

    小林委員 先月イタリアのゼノアで開かれた国際金属労働組合連合会の造船部会の内容を御存じでありますか。
  46. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 残念ながら、まだ存じておりません。
  47. 小林進

    小林委員 三日間にわたる期間のほとんどが、日本の造船に対する各国労働組合の批判に終始したといわれる。日本の低賃金、労働時間の長さ、政府の造船業援助の政策等に対する批判がほとんどの各国から出て、それだけの論争で終わったといわれている。こういう現実を、輸出貿易を担当しておられる通産省の副大臣が知らないというのだから、情けなくて涙が出るほどだ。こういうようなことは、ILOにおける日本労働政策が全部千波万波で影響している。しかもその中に、おもしろいじゃありませんか、労働者対策に対しては、低賃金、労働時間の長さ、いかに労働者を弾圧し冷遇しているかということが問題になっている。その一方、造船会社の独占に対しては、日本政府が援助を与え、金を出し過ぎている、かわいがり過ぎている、保護し過ぎているということが問題になっている。これが国際的な常識なんです。そういうような国際舞台においては、日本政府のやり方、行政がいかにへんぱなものであるかということが、これだけでも浮き彫りにされているじゃありませんか。労働政策に対しては冷淡である、造船資本家に対してはあまり援助をし過ぎる、こういう批判が明らかにあらわれている。これは政府は反省をしてもらわなければならないと思うのです。そういう意味において、各国の労働者ILO八十七号の結社の自由を認めない日本労働政策をながめているから、こういう発言やこういう弾劾になってあらわれてくる。この影響をキャッチできないような通産大臣や運輸大臣なら、おやめになったほうがよろしい。大臣は事務屋ではございませんから、こういうことを見ていかなければならぬと思うのでありまして、現に日本の主要輸出品の一つであります写真機とかあるいは軽電機業界、たとえばナショナルとか、そういうような企業家が、週休二日制を実施しようとして努力したり、時間短縮等をつとめてやろうとしておることも、この国際金属労連に見られるような各国のこういう批判が日本の事業に及ぶことをおそれて事前にその対策を講じている一環である、こういうふうにいわれているのでありますが、これも実際にどうか、わが日本の時間短縮や週休二日制がどんな方向に向いているか、通産副大臣、ひとつお聞かせを願いたいと思う。
  48. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 お答え申し上げます。  現在そういう方向に産業界におきましてもいろいろ検討はいたしておるのでありますが、現在の国内情勢から、その辺が直ちに実現するということが非常に困難な感じがあるのでございます。ことに中小企業その他におきましては現在経営困難になっておりますので、そういう点につきましても今後十分に検討さしていただきたいと考えております。
  49. 小林進

    小林委員 そういう週休の問題や時間短縮の問題等も、いま申し上げました国際的な反応等もよく考えて、国際的な視野に立ってそしてひとつ産業行政も進めていただきたいと私は思うのであります。  残念ながら大臣がおいでにならないので、もっときめのこまかい質問をいたしたいと思いますが、これは省略いたします。  労働大臣にお伺いいたしますけれども、このOECDにおける国際自由労連の発言力というものは一体どんなものか、労働者発言力の限界、範囲、力ぐあい等をひとつお聞かせ願いたいと思うのであります。
  50. 大橋武夫

    大橋国務大臣 相当なものであると伺っております。
  51. 小林進

    小林委員 現に八十七号条約批准に関しまして、国際自由労連、国際運輸労連、国際郵便電信電話労連、国際公務員連合等の労働組合日本政府を相手にしてこれを提訴いたしておりますことは、すでに御承知のはずでありますが、この点は事案に間違いございましょうか。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおりでございます。
  53. 小林進

    小林委員 こういう国際的な各種労働組合の連合会がILO八十七号に関して日本政府提訴しているということは、これは一体国際的な影響がないとお考えになりますかどうか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  54. 大橋武夫

    大橋国務大臣 提訴は向こうの自由でございますが、内容そのものは日本といたしましてあまり名誉なことではございませんので、まことに困ったことだ、こういうふうなつもりで対処いたしてまいったわけでございます。しかし、何と申しましても、日本国内法にも相当な理由があることでございますから、これにつきましては十分ILOにも説明をいたしてまいった次第であり、ことにまた、ILO八十七号の批准につきまして政府の従来からの方針というものもございまするので、この辺についても十分理解を得るべく努力をいたしてまいったのでございまして、その結果、今日まで事件は一応処理されてまいったわけでございます。
  55. 小林進

    小林委員 OECDの加盟に伴いまして、その諮問機関である経済産業諮問委員会、BIACに日本の経営者は加盟をいたしましょうね、通産副大臣
  56. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 加盟いたしております。
  57. 小林進

    小林委員 同じく労働組合も、OECDの諮問機関たる労働諮問委員会、TUACに加盟しなければならぬ。近く加盟するものと思いますが、この点いかがでしょう、労働大臣
  58. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、労働諮問委員会日本労働組合加盟するかどらか、この点は労働組合の自主的な判断にゆだねておる次第でございます。
  59. 小林進

    小林委員 これは当然加盟をいたします。加盟いたしまするから、したがって、今度はOECDの国際的な舞台において日本の労使はそれぞれその場所で活躍するということは必至の事実であります。その場合、このOECDの国際的な経済機関の中において、正式に日本の労使の関係の不対等、不平等、賃金その他の労働条件の不公正、そういったものが印象づけられることは、私は予期しなくちゃならぬと思う。そういう面において、OECDの加盟に基づく八十七号の批准というものは大きく影響してくると私は思う。これでも影響はありませんか、通産副大臣
  60. 田中榮一

    田中(榮)政府委員 お答え申し上げます。もちろん、将来そうした諮問機関におきまして、いろいろ労働問題、労働者の福利あるいは経済条件の改善、そうした問題も相当論議されるものと考えておりますが、現在のところ、日本といたしましては批准をいたしておりませんので、そのような状況のもとにおいて当然これは論議されるものと考えておる次第でございます。
  61. 小林進

    小林委員 現に総評は、このたびのILOの実情調査調停委員会のドライヤー委員長の大平外務大臣あて書簡にこたえて、国際自由労連、国際運輸労連など、日本結社の自由問題についてILO提訴している国際労働団体との協調態勢をさらに強めるために、陳述書をつくる前あるいは同時にこれらの団体に資料を送り、また原口全鉱委員長、槇枝日教組書記長等をこれらの団体に派遣する、こういうことを決定しておるようでございますが、こういうことになれば、ILO八十七号条約批准の問題を通じて、いよいよ国際舞台で日本のこの恥ずべき労働行政がだんだん浮き彫りされてきて、これはわが日本の立場からも好ましい姿であるとは私は考えない。その意味においても、問題を一日も早く解決してこういう実害を防止するのが、政府の反省ある態度でなければならないと思うのでありまするが、労働大臣、この点いかがでございましょう。
  62. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおりに考えます。したがいまして、今国会においてぜひともこの問題を解決したいというのが、池田総理の切なる希望でございます。
  63. 小林進

    小林委員 大体いままでは、八十七号条約批准しなかったことに対する経過中における実害をお伺いしてきたわけでございますが、今度は将来に及んで、今次国会においてこれを批准しない、成立をさせない場合には、一体どういう結果が生ずるか、お伺いいたしたいと思うのであります。
  64. 大橋武夫

    大橋国務大臣 数年前よりILOにおいて結社の自由に関する問題として提訴せられておりました諸案件は、おおむね日本政府は近くILO八十七号条約批准したいという意思を持っておる、これに伴いまして国内法を整備改善するという意図を明らかにしておる、したがって、その意図が実現されるまでしばらく不問に付そうというような解決をとっておる案件が多々あるわけなのでございます。それが今日までILO八十七号条約批准につきましてILOがたびたび勧告をしてまいった動機の大きな一つをなしておるわけなのでございますが、御承知のとおり、その批准への猶予的な時間というようなものも、いつまでというめどがなかなか立ちかねておりましたので、ILOといたしましても、もうこれ以上待てないというような気持ちで、今回の調査調停委員会の調査ということに相なった次第なのでございます。したがいまして、今国会において批准が実行できないということに相なりますると、この調査調停委員会は、理事会の決議に従って当然活動を進めてまいらなければなりません。そうしますると、日本の国内における現在の法制におきましてILO八十七号条約に抵触するような事項が摘発され、国際的な場において、結社の自由に対する侵害の事件として批判、糾弾されるというようなことも予想ざれるわけなのでございます。この事柄は日本の国際的な信用を非常に傷つける結果と相なりましょうし、また、このことをきっかけといたしまして、国際自由労連その他の勢力を通じまして、日本の貿易に対するいろいろな有形無形の圧迫も覚悟しなければならぬ場合もあろうかと思われるのであります。政府といたしましては、この辺の事情を心配いたしまして、ぜひとも今国会においてこの問題の決着をつけていただきたい、かように念願をいたしておる次第でございます。
  65. 小林進

    小林委員 そのILOの実情調査調停委員会の具体的な活動の一環といたしまして、すでに五月の十九日エリック・ドライヤー委員長の名前で大平外務大臣あてに書簡が寄せられているはずでありまするが、外務大臣、その書簡の内容についてお聞かせを願いたいと思うのであります。
  66. 齋藤鎭男

    ○齋藤(鎭)政府委員 外務大臣にかわってお答え申し上げます。  主として証人の喚問に至る過程における手続問題でございます。最初に従来の対日問題の経緯を述べまして、その後追加陳述書——従来から陳述書が出されておりますが、その後の追加された情報を提出してもよろしいという追加陳述書の提出について述べております。それからその陳述善と従来の申し立てとの関係はどうなるか、それからその追加陳述を行なうことのできる団体の名前が出ております。具体的の例としましては、日経連がそれに入っております。またさらに、陳述できる団体として中立的な団体、すなわち、国際経営者団体連盟、国際キリスト教労働組合連盟及び世界労連、こういう団体の名前があげられております。それから陳述書の性格でございますが、これは付託された事項について関係のある事実関係の情報を提供するということが述べられております。それからさらに、陳述書に対して意見のある政府ないしは団体はこれを述べてもよろしいということで、その意見提出の期日が述べられております。さらに、日本の現行法を解明する解明書案というものを提出するようにということが要請されております。さらに、証人喚問に触れまして、証人喚問を実施する方法としては、日本政府に対して、日本政府代表して行動する代表者一名を指名するようにということが言ってこられました。これは具体的には、日本政府とこの調査団との連絡をいたしますエージェントということで、青木大使を希望しております。さらに、その証人として委員会が決定する場合は、それは委員長が決定するのだということを述べておりまして、日本政府及び各団体に対して、その希望する代表者の氏名を通報するように求められております。日本政府の場合には幾つかのカテゴリーに分けられておりますが、労働大臣またはその代理者、その代理者と申しますのは、労働大臣が希望されるけれども、やむを得ない事情の場合には、それにかわって権威ある答弁のできる者という意味で、次官または局長でもかまわないという趣旨でございます。以下同じでございますが、法務大臣もしくは内閣法制局長官、郵政大臣、それから文部大臣、愛媛県教育委員会委員長、それから国鉄総裁、それから公労委会長、その他問題になっております事項が列挙してありますが、その問題に関係のある、何といいますか、そういうことについて答弁のできる政府代表者ということで、そういう人も求められております。それから第二回、すなわち九月九日から証人喚問が行なわれますが、そのときの手続に触れまして、日本に来るかどうかという問題につきましては、そういう問題も含めてその後の手続は、九月九日に行なわれます第二回の委員会で決定するということを述べております。  以上が外務大臣あてに委員長から寄せられました書簡の概要でございます。
  67. 小林進

    小林委員 外務大臣にお伺いをいたしまするが、いま説明のありましたとおり、七月四日までに追加陳述書、文句があればその書類を出しなさい。八月の一日までに政府代表する委員の名前を申し出なさい。それが、政府のお考えといたしましては、いまお話がありました青木大使でありましょう。それから九月九日以後の第二回目の委員会は、証人として、いま言われた労働大臣、法務大臣または内閣法制局長官、郵政大臣、文部大臣、国鉄総裁、公労委の会長、その次は自治大臣、国家公務員のことを扱っている関係大臣、愛媛県の教育委員長、こういう者あるいはその、正当に授権せられたその他の代理者を証人として出席せしめようという、こういうきびしい書簡が寄せられたのでありまするが、七月四日といえば、もう幾らも期日がないのであります。これに対してそろそろ準備をされてもいいと思うのでありまするが、どういう態度をもって臨まれるのか、その方針、政府の考えをお聞かせ願いたいと思うのであります。
  68. 大平正芳

    ○大平国務大臣 今度実情調査調停委員会が設けられましたが、私は、この委員会は公正な委員会であり、政治的な問題に介入することなく事態の究明に当たろうという態度に敬意を表しております。したがいまして、いま言われておりまする審査も、公正に行なわれるものと思います。したがいまして、政府といたしましては、これにこたえてそれぞれの準備はいたさなければならないと存じまして、その手順を進めておるところでございます。
  69. 小林進

    小林委員 追加陳述書が七月四日ごろ出る、それぞれの関係労働組合からも陳述書が出る、それがそれぞれの関係者に送付せられて、意見があれば、また八月の何日までかに意見を述べてもよろしいというような形になって、いよいよ九月の九日から委員会が開かれ、証人の喚問といいますか、証言といいまするか、それが開始せられる。それは非公開とする。けれども、証言聴取の期間中、日本政府、総評及び国際自由労連の代表者がその聴問の委員会の会合に立ち会うことを希望するということで、関係者の中ではそれぞれその話を自由に聞き得る、こういう形の中で委員会を開始せられるのでありますが、いまの外務大臣のお話の中で、公正な委員会だから、しかも政治的な調査ではない、関係の事項に対する事実上の調査だから、非常に好ましいというふうな御返答がありました。ILO批准はそれまで行なわないで、この実情調査調停委員会の諮問に応じたほうがより好ましいというお考えがあるのかどうか、いま一度お聞かせ願いたいと思います。
  70. 大平正芳

    ○大平国務大臣 私どもとしては一日も早く御批准をいただきまして、わが国結社の自由につきまして提起した態度をとっていくことによって、そういう調査が必要でないようになることを第一義的に希求いたしておる次第でございます。
  71. 小林進

    小林委員 私も、この実情調査調停委員会が証人などを調査せられたその結果は、決して政府が考えるようにわが日本にとって有利であるとは考えられない。その意味において、今日この時限においては、さらにこういうような陳述書を出す、あるいは証人として出頭するということよりは、いま大臣が言われたように、こういうことのないように、実情調査調停委員会の活動がこれで終止符を打たれるように条約批准いたしますことが、わが日本の保守党のために、政府のために何よりも有利な方法であると考えるが、この点いかがでございましょう。大臣に明確にいま一回お答えを願いたいと思うのであります。
  72. 大平正芳

    ○大平国務大臣 小林委員と全く同感です。
  73. 小林進

    小林委員 まだ保守党の中には、その実情調査調停委員会に事実上証人も出してもらったらいいじゃないか、あるいは事実上日本へ来てもらって、現実に日本労働情勢を見てもらったほうがいいじゃないか、そういうような説をなす者がございますが、私はそうは考えないのであります。特にわが日本労働行政は、これは二重行政とする。それは大企業の労働者には八時間の時間の問題も解決されておりましょうし、賃金もややイタリアの賃金並みに近づいておるところもございましょうけれども、その底辺の七百万に近い労働者は、まだ満足に食うことのできるような賃金ももらっていないで、満足な労働保健衛生の組織設備のない中に働いておる中小企業、零細企業の労働者です。そういう実情を見られて、なお恥ずかしくない、政府側に有利な結論を得られるなどという甘い考え方自体が、私は、実に至厳なる書簡の内容も、国際労働情勢をも理解せざる者の暴言であると考えるが、外務大臣いかがでございましょう。やはり実情調査調停委員会が現実にわが日本を調査したほうが政府側に有利であるとお考えになるかどうか、お聞かせ願いたいのであります。
  74. 大平正芳

    ○大平国務大臣 先ほども申し上げましたように、実情調査調停委員会は政治問題には介入しないということを言われておりまして、あくまで事実の究明ということが任務であると承知いたしております。したがって、国会における批准の問題等に関連して云々ということは一切聞いておりませんし、そういう意図も持っていないものと承知いたしております。国会批准の仕事は、わが国国会の仕事として続けられているわけでございます。ただ調査委員会が設けられて、その手順が別途進行しているということにすぎないわけでございまして、私どもは、どういたしましても、この機会に御批准をいただきまして、こういった問題が調査委員会の御調査というようなことにならぬことを心から希求いたしている次第でございますが、別途進行中の調査委員会の準備の作業というものは、まだ批准になっていない段階におきましては、その手順だけは一応われわれも協力申し上げなければならぬのではないかという立場でございます。
  75. 小林進

    小林委員 私がお伺いいたしておりますことは、この調査委員会日本に現実に調査に来てくれたほうがむしろ日本政府並びに政党のために有利な結論が出るという説をなす者があるが、政府側一体どう考えるか、これをお伺いいたしておるのであります。政府も同じくこの実情調査調停委員会日本から現実にいま提訴されているこの問題に関連して事実調査をしてくれたほうが政府側に有利であるとお考えになるかどうかということをお尋ねいたしておるのであります。
  76. 大平正芳

    ○大平国務大臣 日本労働基準というものは、憲法その他関係法令によって大体において国際的な水準に至っているものと私どもは承知いたしているわけでございます。ただ、いま問題になっている結社の自由問題につきまして、ILOが要求しているところを部分的に満たしていないところがあるということを承知いたしているわけでございまして、今日の日本労働基準というものは、そんなに粗末なものではないと私は思います。どちらから御調査をいただきましても、そんなに恥ずかしいものであるとは重々思っておりません。ただこいねがわくは、若干のまだ満たされない部分につきましては、国会のお力によりまして一日も早く満たされますことを希求いたしているわけでございます。調査していただいたほうが有利だとかどうだとか、そういうようなことは毛頭考えておりませんで、一日も早く御批准いただくようにこいねがっている次第でございます。
  77. 倉石忠雄

    倉石委員長 小林君にちょっと申し上げますが、外務大臣は渉外関係で宮中に参内することになっておりますので、正午に退席いたしたいと思いますが……。
  78. 小林進

    小林委員 それでは集約してお尋ねいたしますけれども、ILOへいまそれぞれ報告書を寄せておられますが、このILOに寄せられている報告書は、これは公文書でございますか。
  79. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外交文書と心得ています。
  80. 小林進

    小林委員 外交上の公文書でございましょうね。間違いございませんね。
  81. 大平正芳

    ○大平国務大臣 さようでございます。
  82. 小林進

    小林委員 ILOに寄せられておりまするこの外交上の公文書は、日本政府代表いたしました、政府の意思を表明した公文書でございましょう。たとえば労働省とかあるいは外務省とかという一つのセクションの意思ではなくて、政府代表する、政府の意思を表明した外交上の公文書であることに間違いないのでございましょうか。お尋ねいたします。
  83. 大平正芳

    ○大平国務大臣 外交文書に間違いございません。
  84. 小林進

    小林委員 ILOにしばしば提出をせられました政府の外交上の公文書に盛られた内容が、今次国会のこの委員会にいきさかも反映をしていないということが、私にはふに落ちない。そこでお尋ねいたすのでございますが、今次国会提出をせられておりますILO八十七号批准に関して国内法改正案等をお出しになりましたが、これは一体何回この国会へお出しになったのか、これは労働大臣にお伺いします。
  85. 倉石忠雄

    倉石委員長 小林君、外務大臣、いま申し上げましたような事情ですから、御退席を願います。
  86. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国会には、ILO批准に伴う国内法改正案は六回出しております。そのうち、今国会に提案いたしましたものと同じ内容を持った議案を提出いたしましたのは、五回でございます。
  87. 小林進

    小林委員 一九六一年の六月二十五日に第二回目の案件国会提出されました。自来、一九六二年四月十三日、一九六三年の三月二日、同じく一九六三年の十月十七日、それから今回であります。その内容は、いまも大臣がおっしゃったように、全然変わりのないものであります。同じものをお出しになっている。これは間違いございませんかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  88. 大橋武夫

    大橋国務大臣 提出いたしましたものは同じものであります。ただし前三回は、この法案のほかに鉄道栄業法の一部改正案を提出いたしておりましたが、今国会及び前国会には、この法案だけは削除いたしております。
  89. 小林進

    小林委員 くどいようでありまするけれども、いま一回お尋ねいたしまするが、鉄道営業法の改正法案をお取りやめになったほかは、内容その他において全然変わりはないものをお出しになっておるのかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  90. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういう趣旨でございます。
  91. 小林進

    小林委員 一九六二年四月二十日付のILO第六十四次報告書において、「日本政府は、」「同条約批准承認案件及び関係国内法改正法案の国会による承認を確保するための非公式な交渉が与野党によりそれぞれ指名された代表を通じて行なわれてきたが、これは、現在もなお与野党間で続行されていること、」を報告する、この報告書には間違いございませんね。このとおり報告せられておることは間違いございませんね。それだけ確認すればよろしいわけです。
  92. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおりでございます。
  93. 小林進

    小林委員 同じく一九六二年五月十一日、第六十四次報告、二十三、「一九六二年四月二十日付の通信において述べた交渉担当者が引き続き善意と互譲の精神をもって会合を持った結果、問題点についての意見調整は著しい進捗をみたが、一九六二年五月七日の国会の会期終了までには、最終的な意見の一致をみるに至らなかったと述べた。両党間の話し合いは今後も続けられる予定であって、関係案件が今次国会において採択されなかったことは遺憾であるが、日本政府は、実質的には一九六〇年及び一九六一年の国会に比し、著しい進歩がなされたことは明らかであると考えている。日本政府は、今後に期待し、さらに努力を続ける意向である」こういう文書をILOの当局にお出しになっているというのでございますが、これも間違いないことをお認めになるかどうか。
  94. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおりでございます。
  95. 小林進

    小林委員 くどいようでありまするが、さらにお伺いいたします。一九六三年一月二十五日、第六十八次報告、「一九六二年十二月八日から二十三日までに開かれた臨時国会においては、」「一九四八年の結社の自由及び団結権保護条約第八十七号の批准に関する問題点についての与野党の交渉担当者間の話し合い——日本政府は、このことを随一本委員会に通報してきた——が引き続き行なわれたと述べた上、日本政府は、前述した緊急問題をめぐって臨時国会の会期中はげしい対立があり、批准関係案件についても会期終了までに、最終的な意見の一致を見るに至らなかったが、自民・社会両党は、なお折衝を続け、通常国会において成立させるよう努力を継続すると申し合わせをした。」こういう報告をなされたことにおいても間違いがないかどうかこの報告の中に言われている「本委員会」というのは、ILO理事会をいうのか、付属の結社の自由の委員会をさしておるのか、お答えを願いたいと思うのであります。
  96. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおり報告いたしております。  なお「本委員会」というのは、おそらく結社自由委員会をさしておると思います。
  97. 小林進

    小林委員 なお一九六三年二月十三日であります。第六十八次報告、「日本政府はまた、一九六三年二月六日、与野党の交渉担当者間において話し合いが行なわれ、今通常国会で同条約批准関係案件成立させるよう努力することについて意見の一致をみ、今後さらに関係案件の取り扱い等について話し合いを進めるという申し合わせがなされた、」今後さらに関係案件の取り扱いについて話し合いを進めることを、与野党代表担当者間で話し合いが行なわれたと報告をしている。間違いはございませんか。
  98. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういう報告もいたしております。
  99. 小林進

    小林委員 一九六三年五月二十二日であります。昨年であります。第七十次報告であります。「一九六三年三月二日に前述の八十七号条約批准関係案件提出を受けた国会は、四月中に行なわれた地方選挙のため、同月中は事実上休会していた。休会明けとともに、一九四八年の結社の自由及び団結権保護条約(第八十七号)関係案件に関する与野党の交渉担当者間の話し合いが再開され、五月十五日、今国会において同案件成立するよう努力をするため引き続き話し合いを行なうことの申し合わせがなされた。今国会の当初定められた会期は、一九六三年五月二十二日をもって終了するが、四月中の休会があったので、ILO関係案件をも含む諸案件審議のため、一九六三年七月六日まで延長されることとなった。」与野党間の交渉担当者間の話し合いが再開をされた。今国会において同案件成立するよう努力をするため、引き続き話し合いを行なう申し合わせがなされた。これは実に重大な意義を有する報告でありますが、この報告の趣旨に間違いございませんか。
  100. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そういう報告もいたしております。
  101. 小林進

    小林委員 御質問申し上げる過程において重要なことでございますので、くどいようでありますが、もう少し事実を質問させていただきます。  次は一九六三年の六月二十六日であります。第七十二次報告、その報告の中に「一九四八年の結社の自由及び団結権保護条約(第八十七号)関係案件に関する与野党の交渉担当者間の話し合いは、六月においても継続された。与野党の書記長、幹事長間において成立した了解のもとに、六月十四日、衆議院本会議において、国際労働条約第八十七号等特別委員会を設置し、八十七号条約批准承認案件及び関係国内法改正案を付託することを決定した。」こういう内容であります。「日本政府は、八十七号条約関係案件は、一九六〇年四月以来国会提出されること四回に及んだが、特別委員会を設置して実質的な審議が行なわれる運びとなったのは、今回が始めてのことである。」これは一九六〇年二月の二十日以降、同条約批准及び関係国内法改正案の国会における承認を確保するため、与野党によりそれぞれ指名された代表を通じて行なわれた交渉の結果、ようやく一致点を見い出し、その結果、書記長、幹事長においてその修正案の成立を了解したことによって、実質的な審議に入ることになったのであるという、こういう意味の報告がなされていることに間違いがないかどうか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  102. 大橋武夫

    大橋国務大臣 修正案ということばが入っておりますかどうか、私、記憶いたしておりませんが、おそらく修正案というようなことは、正確を期する外交文書の上で軽々に取り上げた記憶はないのでございますが、しかし特別委員会成立いたしましたことにつきましては、その意義とともに十分説明をいたしたつもりであります。
  103. 小林進

    小林委員 そのとおりでございまして、だから私はそういう意味の報告をなされたかどうかと、言ったので、修正案ということばは入っておりません。しかしこれは非常に重大な外交上の公文書であることだけは私は申し上げておきます。  なお次に、一九六三年七月十二日、第七十二次報告であります。その報告の中が「国会の会期は七月六日に終了した。同日、両院の特別委員会はそれぞれ国会閉会中も継続審査をする旨の議決を与野党一致して行なった、」「しかしながら、同日の両院の本会議においては、議事運営をめぐる不測の波乱のため、国会閉会中の継続審査に関するすべての案件の議決が行なわれなかった。このため、八十七号条約批准関係案件も、審議未了となった。」と報告いたしておるのであります。  以上、私は七つの報告書にわたって政府の公文書の抜粋を読み上げた。そうして政府にその公文書の存在をいま確認をしてきたわけであります。何ゆえに私がこれを執拗に繰り返してきたかといえば、先ほども申し上げましたように、この公文書に報告せられていることと、現在われわれが審議をいたしております国内法と全く関係がないからであります。先ほども言われたように、ここで審議しているものは、こんな報告書がなされない四年前のその内容と同じものが出されているだけであって、この公文書の中に繰り返し述べられていることが、今日国会提出せられている法案の中に少しも反映していないという、こういうようなことで一体国会に対する政府の正しい姿勢であると言い得るかどうか。私はこれをお尋ねしたいからにほかならぬのでございます。大臣、いかがでございましょう。
  104. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来御指摘の報告書に記載いたしてありますものは、政府の提案いたしました案件の処理をめぐる国会内における与野党の動きについての報告でございます。この与野党の動きは、この提出せられました案件国会においていかに審議をしていくかという、その手続に関する問題として、私どもはこれを取り上げて報告をいたしたわけであります。すなわち特別委員会を設置し、そして特別委員会審議を通じまして、それぞれ与野党意見調整していこう、こういう御趣旨に解しまして、その趣旨ILOの事務局に報告をいたしたわけなのでありまして、この与野党代表者間の話し合いというものが、政府の提案を国会においていかに修正せしめるか、そういうような内容を含んだものとは考えていなかった次第であります。したがって、政府の提案がそれらの話し合い並びにその話し合いの結果に対する報告、そういうものによって変更をされていないのは当然でございます。
  105. 小林進

    小林委員 私は大臣答弁には承服はできないのであります。できませんが、徐々にひとつ大臣お答えの矛盾を解明していきたいと思いまするので、私の質問お答えをいただきたいと思うのでありまするが、第一番目に、その一九六二年四月二十日に報告された、国会承認を求めるため、「与野党によりそれぞれ指名された代表を通じて」、これが重大問題ですね。政党によって指名された、これは公式の代表をさしていると私は思う。正式に指名をせられた代表を通じて交渉が行なわれたということ、その与党と言えば自民党でございましょう。自民党によって、正式に代表と選ばれたのはどなたでございますか、社会党によって選ばれた正式の代表というのはどなたか、大臣の口を通じてお名前をお聞かせ願いたいと思うのであります。
  106. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、自民党といたしましては、昔時倉石ILO世話人代表が指名されてこの交渉に当たられたと思います。また社会党におきましては、河野ILO特別委員長がその任に当たられたと心得ておりました。
  107. 小林進

    小林委員 そのとおりでありまして、いまの特別委員会委員長をおつとめになっている倉石忠雄さんが与党代表して正式に指名をせられた代表者であることに間違いがないと思うのであります。なぜ私がそれを確認したかと言えば、最近どうも与党内において、その倉石氏の代表権を否定するような、そういうささやきが行なわれているのでありまして、そういうようなことは相手たる、話し合いの対象たる社会党にとっては実に迷惑しごくなことでもります。あえて私はこれを大臣の口を通じて確認しておきたかったからであります。明瞭になりました。  その改正案について与野党代表が選ばれたというからには、当然改正案の内容についても、政府側に何らかの話し合いがあり、いや常時私は相談をされたと思う。政府側の協力のもとに私はこの話し合いは進めていったものと断ぜざるを得ない。そしてその中には一致点もあったろうし、それぞれの代表者間において不一致の点もあったと思う。その一致点がいままで一つもなかったのでありまするか、あったならば、当然それは私は政府案を通じて何らかの形でこの委員会にあらわれていなければならぬ性質のものであると思うのでありまするが、いままで全然一致点もなかったのかどうか、なお政府側はそれに関与しないとおっしゃるのかどうか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  108. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府はむろん折衝には関与いたす立場にはないわけであります。しかし政府の提案いたしました法案の処理に関する打ち合わせでございますから、政府もその成り行きにつきましては、常に注意を払ってまいったのでございます。私どもの承知いたしておりますところでは、この話し合いは大いなる成果をあげたと心得ておるのでございまして、その成果の何よりもの証拠はこの委員会設立せられ、そうしてかように連日法案の実質的審議が進行するに至っておるということ自体であると考えます。
  109. 小林進

    小林委員 私はそういう抽象的なお答えには満足できないのでございまして、一九六二年五月十一日の報告には、この与野党代表の交渉について、「交渉担当者が引き続き善意と互譲の精神をもって会合を持った結果、問題点についての意見調整は著しい進捗をみた」こういう報告をされておる。この文書は、私は単なる事実の報告であると解するわけにはいかない。これは公式の外交文書を通じて相手に事態の変化、好ましい事態の変化を思わせている、そういうふうに内容ができておるにもかかわらず、その内容が、問題点が著しく調整せられたというその問題が、ジュネーヴの報告書にだけ載っておって、こちらのほうに何ら報告が来ないというのは、私は国会審議に誠実なる政府の態度ではないといわなくちゃならないと思う。なぜ一体こちらの問題点について意見調整を見たというのですか。向こうに対すると同じ報告を具体的になぜお示しにならないのでありますか。お示しになるのが私は政府としての正当な姿であると思う。いかがでございますか。
  110. 大橋武夫

    大橋国務大臣 問題点について意見調整を見たということ、そのことは私どももよく承知をいたしておるのでございますが、ここに報告されておる事項はそういう事実があった、しかしながら会期終了までには最終的な意見の一致を得るには至らなかった、したがってその話し合いは国会閉会後も続けられるであろう、こういうことでございます。
  111. 小林進

    小林委員 この外交文書に盛られている内容というものは、これは政府がこの与野党の交渉に十分ウエートを置いて、その与野党の交渉に政府関係をして、だからこれは批准はいたします、成立はさせますという含みが入っていると私は思う。政府与党との関係は、いわゆる与党の交渉を政府は事務的に単にILOへ報告するという、そういう事務関係だけを担当するとは思わない。先ほどから大臣答弁を聞いておりますと、何か与党代表の交渉の結果、著しく調整のでき上がった事項そのものに対して、政府は単なる事務屋だ、事務屋としてそれを報告するだけにとどまっているかのごとき回答をせられておることは、私は、政党内閣政党政治というものを根底から否定する、非常に小ばかにした御返事であると思うのです。ほかの大臣ならいいですよ。あなたのように憲法の裏表も知っているかどうか知らぬけれども、法律に精通をしておられる、政党内閣政党関係が裏表だぐらいのことは手にとるように承知しておられるあなたが、政党代表の交渉事項を内閣と何も関係がなくて、単なる一事務屋の立場でILOに報告したにすぎないなどという答弁は、これはその答弁の裏には国会を軽べつしておるか、ILO自体をあるいは軽べつしているか、最初から批准をする誠意のないものをごまかしてきたか、いずれにしてもどこかにうそがあると私は思う。そういう不誠意な答弁じゃなしに、誠意のある回答をお見せ願いたいと思うのであります。
  112. 大橋武夫

    大橋国務大臣 何かこの報告に裏があったり、表があったりするように言われまして、私も非常に迷惑をいたすのでございますが、そもそも政府がかような国会におけるILO問題の経緯につきまして報告をいたしておりまするゆえんのものは、ILO結社自由委員会の要請によりまして、日本政府はこの法案を確かに国会提出しておる、しかし国会において、はたしてどういう審議が行なわれ、そしていかに成り行きが進められるか、これについて結社自由委員会は知りたいというので、国会における審議経過を知らしてくれ、こういう照会に基づいて報告をいたしておるわけなのでございます。したがいまして、この報告につきましては、政府といたしましても、これを客観的に、事務的に、忠実に報告するということが報告の目的にかなっておるものと考えておるのでありまして、そういう意味において事務的に報告をいたしたわけなのでございます。
  113. 小林進

    小林委員 いまさら言うまでもないことでありますけれども、日本や英国におけるこういう議院内閣制、政党内閣制というものにおかれましては、多数を占めた政党が政権を担当する。その政党の党首が内閣の首班になる。だから制度の中においても、与党政府というものは全く一体じゃありませんか。この議院内閣制を私は否定できぬだろうと思う。いま与党の中には何か首相公選制などといって、首相だけは別途の形で選挙人でも選んで首相を選ぼうなどという説をなす者があるが、そういう形にでもなれば、また問題は別でありますけれども、今日のわが日本において、この議院内閣制がしかれ、政党内閣制がしかれている限り、与党内閣一体です。何と言われてもこれは裏表だ、一体なのであります。その政府が、与党が行なっている交渉の内容に対して、国際法上の公文書を通じてこういう折衝が行なわれているということは、これは一応とるものには、政党代表の交渉は政府ですよ。政府与党の意向を体した政府代表でもある、こういう考えに立たざるを得ないと私は考える。ただ時と場所によって、公式の場合においては、国際間においては政府代表として出る場合もあるだろう。しかし、国内における政党間の交渉等においては、政府の代弁者として政党代表が交渉に応ずるなどということは、これはもう議院内閣制度における通常なんだ。だから、こういう公文書をもらったものは、そういう受け取り方をする、これも当然ですよ。それをいまこの場において、与党政府は別個なんだ、ただほんの事務的に事実の報告をしたにすぎないといって、その交渉の経過、内容について、いささかも責任がないような答弁をせられることは、誠実なる答弁じゃないです。良心ある答弁ではないと思う。その報告に盛られた政府期待されたかあるいは関知せられた問題はちゃんとここへ出てなくちゃならない。どうしてもこの委員会に具体的にあらわれてくるのが私は議院内閣制度における与党政府との関係だと思わざるを得ない。いかがでございますか。
  114. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は小林委員の御意見には全く同意できません。この報告はきわめて忠実に、事務的に報告することがたてまえでございまして、そういう趣旨で報告をいたしておるわけでございます。したがいまして、この報告に対しましては、ILOの事務当局並びに結社自由委員会といたしましても、これは政府からの情報である、かように考えておるのでございまして、政府政党とを混同して受け取っておるというような事実は断じてございません。
  115. 小林進

    小林委員 それでは大臣は、この政党内閣制、多数をとった与党の中から内閣が生まれてくるという、内閣と多数を握る与党との関係は表裏一体であるというこの事実を一体否定されますかどうか。
  116. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政治の運営として、たてまえ上そうしたことがわが国において行なわれておる事実は、私もこれを承認するにやぶさかではございません。
  117. 小林進

    小林委員 私は、事実上において府政と与党が表裏一体であるというだけではなしに、制度の上においても議院内閣制というものは、政府与党とは裏表である、制度上もそうあるべきであるし、それがまた常識であると考えるのであります。いかがでございましょう。事実問題じゃない。制度として私はそうであると思うが、いかがでございましょう。
  118. 大橋武夫

    大橋国務大臣 制度としてどうなりますかは、別に憲法にも規定してございませんし、国会法にも規定してないようでございまするので、人おのおの解釈するところによっていろいろお考えがあろうと思います。しかしはっきり申し上げられることは、この報告におきましては、政府という立場から国会内におけるILO関係案件審議の進捗状況について、きわめて客観的に事務的に報告をいたしておるということでございます。
  119. 小林進

    小林委員 私がお尋ねをいたしますることは、その公文書に盛られている互譲の精神に基づいて与野党との間に著しい進捗を見たとかあるいは調整をされたという、そのことばを裏づけする事実であります。それは空虚なものではないはずであります。その事実がいささかもこの審議の内容にあらわれていないのはおかしいではないかというのであります。その事実の報告書の云々を言っているのじゃない。その報告書に盛られたことばを裏づける内容が少しもこの委員会に出てこないのはおかしいじゃないかという。それはもちろん、私は先ほどから申し上げますように、事実問題としては与野党の交渉の過程に事実上政府が加わっている。逐一その審議にも出席している。内容も知っている。事の処理も行なっている。それが、今日会期も延長せられて六月の二十六日には国会は終わるというのに、なぜ一体その内容が一抹もここへ明らかにせられないかという。それが一体国会に対する良心的な政府のあり方だとおっしゃるのか、ILOの報告に対する忠実な政府の姿勢であるとお考えであるのかどうか。これを私は申し上げているのであります。いかがでございますか。
  120. 大橋武夫

    大橋国務大臣 両党がいかなる内容によって意見調整され、そしてこの委員会成立を見たかということにつきましては、政府といたしましては正式にこれを知らせられておるわけではございません。これは国会内における手続として、私どもは政府の立場からこれをありのままに受け取っておるわけなのでございます。これらの意見調整の結果が本委員会審議の上に反映していないと言われまするが、もし反映していないとすれば、それは政府の責任ではなく、意見調整参画された両党がこの委員会にその結果を反映されるべきではなかろうか、かように思うのでございまして、この話し合いに正式に参加をしていない政府といたしまして、またその話し合いの内容につきまして具体的に報告をいただいておらない政府といたしまして、あらかじめお話し合いの内容を推測してこれを行動に移すというわけにはまいりません。
  121. 小林進

    小林委員 先ほどからお名前をお聞きいたしまして、政府自民党代表として倉石忠雄君が与野党折衝の代表になられて問題を煮詰めてきた、著しく調整をしてきたというそのものが、いまお尋ねいたしますれば政府は知らないと言う。これは野党にとっては重大問題であります。そういう与党代表と称するものの交渉の内容は、逐一政府と裏表になって了承の上でこれが出てきたと私は思うから、野党のほうも与党代表の修正意見なり一致点なりに権威を認め信頼を重ねてきた。それが何も知らないということならば、これはわれわれの折衝としては実に重大なる誤謬をおかしたということになる。特に先ほどからこの委員会の内容を、今日だけではなくずっと聞いておりますと、この委員会における与党委員諸君が与党代表と称して、このILO委員会で、与党から選ばれた与党代表のまとめ上げた内容あるいは修正案、修正個所、そういったものをあるいは反駁したり、あるいはこれを非難するがごとき、実に摩訶不可思議な態度を続けてきている。それは大臣も経験をせられているとおり、事実上見られたとおりであります。そういうような、代表それ自身をつるし上げるのかあるいは反対をするのか、わけのわからぬような態度を続けている。そこへ持ってきて今度は、その与党と裏表をなす政府代表して、与党代表が何を話したか、それは政府の関知するところではない、われわれは全然知りませんというような形である。一体代表与党との関係はどうなのか、代表政府関係はどうなのか、政府与党関係はどうなのか、まるでわけがわからない。そんなわけのわからぬことでこの審議を続けてきた。野党の社会党にとっては、実に迷惑しごくであります。野党にとっては背信行為もはなはだしいといわなければならぬ。そんなことで一体こういうような重大な案件審議を続けていかれるかどうか、私は野党の立場に立って大臣からひとつ考えていただかなければならぬと思うのでありますが、この点はいかがでありますか。
  122. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは、この特別委員会における御審議には、政府の立場といたしましてできる限りの御協力を申し上げてまいっておるつもりでございます。決して政府が背信であるとか、そういうような非難を受けるべき肝柄ではないと思うのであります。いまもこうして誠心誠意小林委員の御質問お答え申し上げておる次第でございます。
  123. 小林進

    小林委員 これはいずれにいたしましても大胆の御答弁で満足するわけにはいきません。与党がその代表の交渉の経過を何か非難したり、それを否定するような行動に出たり、あるいはその代表政府間に何らの話し合いもないというような答弁になったり、三者三様でまるで不統一そのままの形が暴露せられておる限り、これは私ども野党といたしましても重大な決意をしなければいけない重大問題でありますから、この問題はひとつ留保いたしまして、午前中はこれで終わって午後に継続したいと思います。
  124. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは、午後一時四十五分より再開することといたしまして、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後二時九分開議
  125. 倉石忠雄

    倉石委員長 休憩前に引き続いて会議を開きます。  質疑を続行いたします。小林遊君。
  126. 小林進

    小林委員 午前中の質問に続いて申し上げまするけれども、先ほどから申し上げておりまする、この委員会における政府与党並びに与党代表、そういう三者の間における統一調整ができ上がっておりません。そういうような与党内部の、あるいは与党政府間の形がある限りは、いかに私どもが真剣にこのILO批准を進めていこうということで取り組んでまいりましても、私は問題の解決は困難だと考えておりますので、政府与党並びにこのILO八十七号批准の問題について与党代表と称して野党社会党との折衝に任ぜられたその方との間において、どうかひとつ意見調整をせられた上で、責任ある回答をこの委員会が終わりますまでの間にお寄せくださることを要望いたしまして、次の質問に移りたいと思うのであります。  第四問として御質問申し上げたいことは、公共企業体等労働関係法の第四条の三項に対する、これはこのたびの法案において削除されるようにでき上がっておりますけれども、この四条三項に対する政府の御見解を承りたいと思うのであります。
  127. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公労法第四条第三項は、職員でなければ職員組合組合員または役員になることはできないという趣旨規定でございます。これはILO条約八十七号の結社の自由という趣旨から申しまして、この際削除することが適当であると考えるのであります。
  128. 小林進

    小林委員 労働大臣のただいまの御答弁でよろしいようなものでありまするが、ILOに対する回答の中で、いささかわれわれの了承することのできないような文章を連ねておりまするので、それで質問をしたわけでございまするが、ILOに対して政府はこういうことを言っておられる。第四条第三項は、「一九四八年に制定されたが、それは、労働組合運動における当時の強力な極左勢力に対処するためであって、第四条第三項は、労働組合に対して干渉するようなものではなかった。労働者を恣意的に解雇することは不可能であって、公的被用者を解雇することのできる事由は法律で定められており、他方、組合組合員または役員であること、ないしは組合の正当な活動をしたことを理由とする解雇は、労働組合法第七条及び公共企業体等労働関係法第三条を重畳的に適用することによって禁止されている。違法な解雇が行なわれた場合には同法裁判所にも、また労働委員会にも救済を求めることができる。したがって第四条三項は、専門家委員会の示唆するごとく、経営者による干渉を容易にするものと考えることはできない。法律で定められた事由に基づいて解雇が行なわれた場合には、職員組合の役員たる職員は、組合員でなくなり、役員としての地位にとどまる資格を失うが、このことは経営者による干渉ではない。」こういうような答弁をしておられるのでございまするが、いまでも政府の主張としてこの報告と何ら変わるところがないかどうかお聞かせを願いたいと思うのであります。
  129. 大橋武夫

    大橋国務大臣 変わるところはございません。
  130. 小林進

    小林委員 これによるILO勧告の内容といたしましては、日本政府によれば、この第四条三項は解雇事由が法定されており、または関係者は各種の救済手続を利用することができるから、干渉の口実を提供するものとはなり得ない。最後の解雇の立証責任は使用者にあると言っておる。「しかし、本委員会は、たとえば職務の懈怠を理由として使用者により解雇された労働者が、その解雇の真の動機が組合活動にあるべきことを立証することは、きわめて困難であろうとの意見を有する。さらに、訴えの提起は、既に下された決定の効力を停止するものではないから、解雇された労働組合の指導者は、解雇されたときは、同法の規定により、労働組合の地位を去らなければならない。本委員会が一九五九年に強調したように、四条三項、及びこれと同種の規定である地公労法五条三項は、これらの企業の経営者が労働組合の活動を妨げることを可能にし、従って「労働者団体及び使用者団体は、その設立、任務遂行又は管理に関して相互が面接に又は代理人若しくは構成員を通じて行う干渉に対して充分な保護を受ける」と規定する本条約第二条に抵触する。」こういうことをいっておる。明らかに抵触をするという勧告をしているのでありまするが、これに対する政府の見解をもう一度伺っておきたいと思います。
  131. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この見解は、政府意見とは違ったような意見でございます。しかし、いずれにいたしましても、この問題につきましては、委員会は、日本政府がこの四条三項の廃止を内容とした法案を提案し、それの実現に努力をいたしておるという点に着眼いたしましてこの問題を打ち切っておるのでございまして、私どもも、やはりこの条項は、先ほど申し上げましたるごとく、ILO八十七号条約批准を機会に廃止いたしたい、こう考えるのでございまして、結局においてILO考え方と最終的には異なるところはないと思っております。
  132. 小林進

    小林委員 大臣のおっしゃるとおりです。確かにこの改正案の中には四条三項あるいは五条の三項が削除せられておるのでありまするから、結果においてよろしいとおっしゃるけれども、しかし、その削除せられたことが、ILO勧告に基づかず、そのILO勧告の意図することは全く反対である。承服できない、そういう形のもとにこの四条三項を削除せられるということは、これは、単なる、結果が同一であるということによって黙視せられる問題ではございません。それでありまするから私はあえてこの問題をお尋ねをいたしたのでございまして、もう一度ILO勧告趣旨とほんとうに違うのかどうか、ILO勧告を了承できないのかどうか、答弁をいただきたいと思うのであります。
  133. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府の四条三項に対する考え方ILO結社自由委員会考え方の間には食い違いがあるようでございますが、しかし、いずれにせよ、この条項の廃止につきましては、政府もすみやかにこれを実施したい、こういう考えでございまするから、この際特にこの違いを問題にする必要はないというのが私どもの考えでございます。
  134. 小林進

    小林委員 私は、いやしくも八十七号の条約批准するに際して、この四条、二項が確かに結社の自由の原則に反するからこれはおやめなさいという勧告を受けたならば、その勧告理由も納得ずくの上で削除するのがほんとうじゃないかと思うのであります。労働大臣の言われるように、結果が同じだから、その意に沿わぬけれども、これをなくしようなどというようなことは、今後の労働行政を進めていくしにやはり禍根が残る。だけじゃない、過去における問題です。痕跡が残っておる。その痕跡をそのままにとどめてこの条約批准するか、あるいは痕跡までも払拭して、清潔な形で批准をするかという問題にもかかってまいりますので、あえてお尋ねをするところでございますが、大臣、いかがでございましょうか。
  135. 大橋武夫

    大橋国務大臣 こういった法律の問題の解釈につきましては、いろいろな見解があることは他にもよくあることでございます。どちらの見解が正しいかということについてけじめをつける必要のある場合もございましょうが、今回の場合におきましては、日本政府も、なるべくすみやかに四条三項を削除したい、こういう考え方に立っておるのでございまするから、私は、あえてこの際、この問題についての見解の相違点をこれ以上争う必要はないというふうに考える次第でございます。
  136. 小林進

    小林委員 私は、労働大臣の御答弁には満足することができません。できませんが、ここで争ってもしようがありませんから、次に進みます。  組合の役員で、公労法あるいは類似の形においては国公法、地方公務員法等において、この四条三項あるいは五条三項等のそういうようなケースにおいて処分を受けた者とか、組合の役員たるの地位を追われた者が、現在に至るまで一体どれくらいおるか、これは各関係公社からそれぞれお答えを願いたいのであります。
  137. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 数字の問題でございますから、国鉄の当事者から報告いたさせます。
  138. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 本日総裁が病気のため休んでおりますので、お許しを得まして、私から御答弁申し上げます。  ただい京の先生の御質問、実はちょっとはっきり承れなかったのですが、四条三項の結果組合の中の役員たる地位を失った者の数、こういう意味の御質問だというふうに伺っておったんでございますが、そうでございましょうか。
  139. 小林進

    小林委員 それは、あなた方がどれだけ首にしたかということなんです。
  140. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 わかりました。先ほどの御質問は、その組合の中の地位を去ったというふうに伺いましたものですから、それはちょっとわかりかねるものでございますから……。  私のほうが昭和二十四年以降——公労法ができましたのが昭和二十四年六月一日でございます。それ以降昨年の暮れまで、公労法によって解雇いたしました者は全体で二百十七名でございます。ただこのうちに、昭和二十四年に七十六名おります。これは、まだ法律制定当時で少し事情が違っておりますので、この二十四年の者を除きますれば、百四十一名でございます。これは公労法による解雇者、昨年の暮れの十一名を含めましての数字でございます。
  141. 古池信三

    ○古池国務大臣 お答えいたします。郵政省におきましては、今日まで職員の身分を失った組合役員の数は三十七名でございます。なお、詳細にわたりましては事務当局からお答え申し上げます。
  142. 土生滋久

    ○土生説明員 ただいま大臣から御答弁ありました三十七名と申しますのは、昭和二十八年一月、郵政事業に公労法が適用になってから後今日までの該当者であります。
  143. 大橋八郎

    大橋説明員 公社の解雇した者は十九名、懲戒免職をした者が三名、合わせて二十二名でございます。
  144. 小林進

    小林委員 そのほか、全林野、全印刷、全専売、全造幣、日教組——文部大臣、いますな。自治労、全水労、都市交通、それぞれお伺いいたしたいのでありまするけれども、時間がございませんから省略をいたしまするが、それにしても国鉄の総裁は、いま病気とおっしゃいましたけれども、きのうはゆうゆうとしてこの国会の中を濶歩しておられましたけれども、急病で出てこれないのでございますか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  145. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 たいへん申しわけないことでございますが、実は昨日からかぜぎみでございました。きょうはそういう意味で休ましていただいて、たいへん申しわけございません。
  146. 小林進

    小林委員 これがほかの公社でございまするとすぐ信頼を置けるのでありますが、事国鉄というと、何といってもこの国会においても誠実を示さない、最も不可解な公社なものでございまするので、私もどうもすなおにそれを受け入れるわけにいかないのでございまするが、何しろ、きのう廊下を濶歩しておられた。この濶歩の姿には、かぜをひいたというような様子はなかった。まことに威風堂々として歩いておられたのでありまするから、急にここで言われても、どうも私は信じかねるのでありまするが、願わくばあなたに、宣誓までしてその真実を知らしてもらいたいとまでは申し上げませんけれども、いま一回教えていただきたいのであります。間違いございませんか。
  147. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 間違いございません。
  148. 小林進

    小林委員 どうも石田総裁みずからにお答え願えないのはまこと残念でございますけれども、しかたがありません。  そういうような処分をみなおやりになっている。それに対して管理者側は、それぞれ、法律で定められたところであります、実証の責任も官側にあって、明確な証拠があって解雇にしたのである、こういうようなことを言われるのでありまするけれども、この問題に関する限り、労働者側に言わしむるならば、これは全く組合活動によって受けた不当の処分である、不当労働行為の結果によって処分を受け、組合の役員たる地位を追われたのである  現実には去っておりませんけれども、政府に言わせれば。組合を追われるようなことをせられたのである、こういうことになるのでございまして、この両者の主観、主張に正しい判断をくだす第三者機関といたしまして、労働委員会もあるじゃないか、提訴機関として司法裁判所もある、こういうことを言われるのでありますけれども、これは労働者側から言わしむれば、いずれも権力側に利益をするようにできている。できているか、できていないか、これは将来の問題でありますけれども、こういうことも、実情調査調停委員会を通じて日本法律を正しく解明したものを出せと言われていますから、これはILOの場においてわれわれの主張、そういう中立機関、第三者機関と称するものが確かに権力側に利益をしているというわれわれの主張が正しいことは、必ずILOの場において証明されますから、いまから予言しておきますけれども、そういうものができ上がっている。すなわちILO自由委員会もそれを指摘しているように、その決定が下されるまで、しかも公平を望み得ないようなその第三者機関が、仲裁機関が決定をするに至るまでの間、一方的に官側の処分が実行されて、労働者は現在の地位を失うようなことになっておる。これは、このILO批准に対してわれわれが考えなければならぬ一番重大なポイントだと私は思っている。そうでございましょう。一般の刑事裁判においても、被疑者というものは最終判決が下るまでは犯人ではないんだ。処分を受けることはない。社会一般人としての身分と地位は保障されている。しかるに労働行政だけにおいては、官や経営者の一方的な処分によって、最終判決を受けたと同じような身分関係の変更を強制せられるということは、まことに不当な規定であるといわなければならぬ。いわゆる国鉄や電電公社におけるところの官側の管理者などというものは、ちょうど検事と判事と両方の立場を兼務しておるようなものである。第三者機関の犯罪決定があるまで、三年でも五年でも官側の処分に服しなければならぬということは、私はまことに不当だと思う。そこで私の申し上げたいことは、こういうような不公平なことをなくするために、このたびのILO八十七号の条約批准するに際して、こういうような一方的な法律の内容を改正する意思があるかないか、これをお尋ねをいたしておるのであります。
  149. 大橋武夫

    大橋国務大臣 四条三項の規定につきましては、先ほど来申し上げましたるごとく、その改正をいま提案して御審議をお願いしておるわけでございます。しかしながら、解雇に関する規定は、この際改正するという考えは全くございません。
  150. 小林進

    小林委員 私の申し上げておりまするのは、公労法の第十八条です。十七条の行為があれば司法裁判所または労働委員会等に提訴北、その決定があるまで身分に変更を及ぼさないように、一般普通の刑事訴訟法におけるそういう法律のあり方と同じように、その十八条において、そういう第三者機関の、あるいは提訴せられた裁判所の判決があるまでは、労働者側の現在の地位、職務において変更を加えないというふうに改めるべきがILO精神に沿うものと私は考えるが、いかがでございましょう。改める意思がないか。
  151. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私どもは小林委員とは見解を異にいたしておりまして、この際御趣旨のような改正は必要でないと思っております。
  152. 小林進

    小林委員 この問題はしばしば繰り返されたことで、新しい問題ではありませんけれども、しかし、古いとは言いながら、これは将来いつまでも残っていく問題であります。将来いつまでも残っていきまするし、この条文、十七条、十八条は、四条三項とともに、ILOがしばしば勧告をした問題でもあるのであります。先ほども数字の御報告がありましたが、この公労法各組合に対する断圧のごときは、——私どもはこれを断圧と呼んでいる。あなた方は法律に基づいて正当な処分をしたとおっしゃるけれども、われわれ社会党の側からすれば、これは不当なる処分だ。官側あるいは管理者側が正当なる給与も与えないで、勤務状況もこれを満足にやらない、そういうことからやむにやまれぬ結果で、むしろ処分に値する行為があったとすれば、その原因はあげて政府側にある。政府側の不当労働行為に原因をしてそういう結果があらわれてきた。だから、かりにわれわれ社会党が政権をとって、かりに小林進労働大臣になったとする、あるいは公社の総裁になったと仮定すれば、社会党の側からはそういう者には処分を加えません。断じて処分はいたしません。たまたま保守党が、自民党が政権を握っていたがゆえに、こういう人たちは不幸にして処分を受ける、こういう結果になったのでありまして、社会党の政権になれば処分を受けず、自民党政府なるがゆえに処分を受けるというふうな、政党によって黒白、表裏を異にするような条文があるということは、労働法規の中にそういう条文、法規の介在するということは、民主政治の本質にも関する問題であるから、こういうようなものはこの際削除しておいたほうがよい。日本労働者というものはそれほど不信頼に値するものではないのでありまするから、この際、労働基本権の立場から考えてもこれは削除する。削除をしなければ、私が申し上げまするように、第三者機関の確かに不当なる行為であるという判決があるまでは、一方的に労働者を処分するような、そういうようなことはひとつこの際改めておくのが、ILO勧告に沿う良心的な処置であると私は考えるが、労働大臣、いかがでございましよう。
  153. 大橋武夫

    大橋国務大臣 小林労働大臣と違いますから、お気に召すような御返事ができかねます。
  154. 小林進

    小林委員 それでは申し上げまするが、一九六三年、条約勧告適用委員会がこういうような希望を日本政府に寄せております。公労法第四条第三項及びこれと同様な規定である地公労法第五条第三項は、労働者団体及び使用者団体……干渉に対して十分なる保護を受ける、を規定する——これはILO第九十八号の第二条でありますが、このILO第九十八号第二条に反するものであるという意見を再確認をする。しかし本委員会は、勧告適用委員会は、結社自由委員会第六十八次報告、第六十七項から日本政府が一九六三年二月士一百通信において——これは政府の報告でございましょう。報告において、改正法案を本国会提出する意向を有することを述べていることに留意する。本委員会関係法規がいまや廃止されるよう強く希望を表明する。この関係法規がいまや廃止されるというのは、私は第四条第三項、第五条第三項だけをさすものではないと考える。あえて関係法規というからには、私はその十七条、十八条の変更をもこれは示唆しておると考えるが、いかがでございますか。
  155. 大橋武夫

    大橋国務大臣 関係法規は四条三項並びに地公労法五条三項だけと心得ております。
  156. 小林進

    小林委員 あえて労働者保護の立場に立つILOがそういう狭い意味で私は勧告したものとは考えられない。どうしてもこれを改正することを、改めることを希望するというこの中には、公労法の第十八条あるいは日本国有鉄道法の第三十一条第一項第二号、職務の懈怠による一方的解雇、こういう条文を私は削除することも含まれていると判断せざるを得ない。これは私の解釈が正しいと思うが、運輸大臣、いかがですか。
  157. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公労法十八条の問題でございますので私から申し上げますが、小林委員の解釈は、私どもの見解によりますると明白に誤りでございます。
  158. 小林進

    小林委員 勧告適用委員会関係法規が廃止されることを強く希望するというその廃止の中には、当然公労法の第十八条の解雇の削除を私は希望しているものと考えるけれども、労働大臣は、そうじゃない、四条三項、五条三項の狭い範囲に限るものだとおっしゃるならば、どうでございましょう、いずれの見解が正しいか、ひとつILOにもう一度その真意を聞きただしてみるというお考えはございませんかどうか。
  159. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公労法の改正の法案はすでにILO結社自由委員会においても承知をいたしておるのでございまして、その内容も十分検討済みでございます。したがって、それに基づきまして私どもは結社自由委員会の意図を把握いたしておりまするので、いまさらもう一度問い合わせる必要もないかと思います。
  160. 小林進

    小林委員 どうも大臣はまだ全部この勧告の内容を理解していないのじゃないかと私は思うのでありまするけれども、勧告適用委員会は、この公労法の十七条によって解雇した場合に労働者の側にはこういう不利があるじゃないか、これがあげてあるのであります。一つには、その真の解雇の理由組合活動にあるべきことを立証することは労働者の側において困難だ、こういう一つの不利がある。第二番目は、また労働者が訴えを提起しても、すでに経営者が下した決定の効力を停止することができない、こういう不利があるじゃないか。第三番目には、したがって、解雇された労働組合の指導者は、四条三項によって労働組合の地位から去らなければならない、こういう不利も加えられているではないか。このような三つを取り除くべきことを日本政府に対して要望をするのである。したがって、その不利を取り除くためには、四条三項の削除はもとよりでありまするけれども、経営者の下した決定の効力を提訴期間中は停止きせる何らかの救済規定を挿入するとともに、解雇は当然十八条から削除されるべきことが、——これは私の意見でありまするけれども、ILOのこの勧告趣旨に必ず沿うものであると言わなければならない。そう言わなければ、四条三項の削除だけでは、いまILOのこの委員会が指摘している三つの労働者側の不利というものは救済することができないじゃありませんか。いかがでございますか。
  161. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そもそもILO結社自由委員会の性格から申し上げる必要があるかと存じまするが、このILO結社自由委員会は、労働者のあらゆる保護を取り上げようという委員会ではなくして、労働組合結社の自由並びに労働組合の活動の自由を保障しようというのがこの委員会の使命なのでございます。しこうしてこの委員会が五条三項を取り上げましたゆえんのものは、十八条の規定によって解雇をされた場合においては、五条三項が存続する限りにおいては、その者が引き続き役員の地位にとどまることを妨げられる結果になる。これでは結社の自由の保障は十分ではない。そこで五条三項を削除しろというのがこの委員会勧告趣旨なのでございます。  しかし十八条の解雇の問題に触れてまいりましたのは、日本政府の見解によりますると、十八条の運用は適正を期するのであるからして不当解雇ということはあるべきはずではない、こういうふうに主張したのでございまするが、しかし結社自由委員会においては、不当解雇というものが絶対にないとは言えない、そうしてこの職務懈怠とかあるいは十七条違反ということによって解雇が行なわれる場合において、それが公社の理事者側の悪意によって組合活動の自由を阻害しようという意図のもとに行なわれないということの保障ができないではないか、したがって十八条が存在する限りにおいては、結社の自由を保護するためには五条三項の削除が必要である、こういう趣旨勧告と私どもはこれを理解いたしておるのであります。したがって、十八条を存続しておりましても五条三項を削除すればこの勧告趣旨は十分達成せられるのでございまして、五条三項を削除しながらその上さらに十八条まで削除するということは必要ではないと思うのであります。かりに十八条を削除するということにいたしますならば、その場合においては五条三項は存続しておいてよろしいんだ、こういう理屈にもなろうかと思うのでございまして、かたがた私どもは、この勧告趣旨は五条三項の削除ということに了解をいたしておる次第でございます。またこのことは、ILO結社自由委員会の真意にも適合いたしておるものと確信いたしております。
  162. 小林進

    小林委員 残念ながら労働大臣の御答弁に賛意を表することはできない。ということは、やはりILOのこの勧告には、先ほどから私が申し上げておりまするように、三つの不利の点をあげていてそれを救済をしなさいという勧告なんだ。ところが大臣のおことばによれば、その解雇をされた労働組合の指導者は四条三項によって組合の地位を去らなければならない。これは結社の自由に反するから四条三項だけ削除すればいい、こう言われるが、しかし私の見る勧告の中には、そのほか労働者がその処分は不当だといって提訴をしても、経営者が下したその処分というものはすでに効力を発揮していて、それは停止ができないじゃないか、それが不当だから、その面をひとつ直しなさい、それから立証責任は政府の側にあって、これはいわゆる懈怠だ、あるいはサボったというような理由をつけて首にしようとも、労働者の側からすれば、それはいわゆる十七条による争議行為ではなくて、労働組合運動、単に組合活動だ、組合活動をしたにすぎない者を、不法なる争議行為をやった、あるいは懈怠をやった、怠けたという理由でこれを首切ってしまうじゃないか、そのときに労働者の側からは、それは組合活動によって私は不当なる馘首を受けたのだという立証をすることがなかなか一方的には困難だ、そういうこともあわせてこの際ひとつ労働者のために救済するようにせよという勧告なんでありますから、単に四条三項の削除だけの問題をもってILO勧告に沿えるようなものではないと私は考える。けれどもあんまり論争したのじゃ次へいきませんから、これはこのまま問題を残しておきまして、いよいよ本論に入ります。  私は十七条のストライキ権の問題について御意見を承ってみたいと思うのでありまするが、公労法の十七条によって公共企業体に雇用される者のストライキ権が剥奪をせられているというこの問題であります。私はこの問題についてしばらく時間をおかりいたしながら、政府側の考えをただしていきたいと思うのであります。  本来労働者はストライキ権、争議権を持っているのは、これはいまさら申し上げるまでもないことであります。憲法第二十八条「勤労者の團結する権利及び團體交渉その他の團體行動をする権利は、これを保障する。」実に明確であります。一点曇りなし、これは基本権です。この基本的な権利は、私は労働大臣にお伺いするのでありまするが、これは法律をもっても侵すことのできない権利であると考えますが、いかがでございましょうか。
  163. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは法律をもちまして憲法の許した場合においては制限ができる場合もある、こう私は考えます。
  164. 小林進

    小林委員 この第二十八条の問題は別にいたしましても、憲法で定められたその規定を変えるものは憲法か、あるいは憲法改正によるほかできないのが、法律解釈上原則の立つところ。明治憲法の時代においては、明治憲法の第二章に臣民の権利義務というものが定めてありますることは、大臣も御承知のとおりであります。この臣民の権利と称するものの中には、憲法によってこれを保障するということばは明治憲法には一つもない。「日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ從ヒ」「法律ノ範圍内ニ於テ」こういうことばが用いられております。旧明治憲法の二十九条には、「日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス」ということで、「法律ノ範圍内」ということばがありまするが、この法律によって言論の自由を縮めたり、伸ばしたり、結社の自由を法律によって制限をしたり廃止をしたり、いろいろなことができましょう。これはできる。だから明治憲法によって治安維持法ができた。自由の制限をやったり干渉をしたり、それは憲法認められるけれども、新憲法には、この法律の範囲内だとか、法律によってやるとか、あるいは法律命令の定むるところによるとかいうことばは全然なくなった。これは基本権だ。憲法によってこの基本の権利というものを定めることは旧憲法と新憲法における重大な差異だと私は思う。大臣いかがでございましょう、この見解は間違っておりましょうか。基本権は法律をもっても制限することはできない。ここに旧憲法と新憲法の最も根本的な違いがあるという私の主張は間違っておりますか。
  165. 大橋武夫

    大橋国務大臣 およそ憲法に関する基本的原則というものは、これは人類の普遍の理念から出発いたしたものでございまして、新憲法、旧憲法あるいはどこの国の憲法、ここの国の憲法でそう基本的にたいした違いがあろう道理のものではないと思うのであります。労働者の基本的権利というものは憲法で保障されておりまするが、しかしながら、憲法はさらに国民のいろいろな基本的な権利、自由権、平等権、財産権等をも保障いたしておるのでございまして、これらのもろもろの権利と労働者の争議権というものは——労働者の争議権だけが優先して、他のあらゆる基本権は無視されていいというものではございません。その間にはおのずから調和が必要と相なるわけでございまして、法律は、その時と場合に応じまして、これらのもろもろの権利と労働者の争議権というものを適当に調和するごとく規定されなければならぬものであると思うのでございます。現在、労働者の争議権に対して規定されておりまする法律上の制限は、かような趣旨に基づくものでありまして、これが合憲的なものであるということは、一点疑いをいれないところだと私は確信をいたしております。
  166. 小林進

    小林委員 私は、大臣がおのずから調知せられるべきだとか、おのずから労働者の権利が制限されても、それは合憲的であるとかいう、そういう多弁なお話を承っておるのではないのでありまして、明治憲法においては、法律の範囲内で結社の自由というものを制限することも憲法は許していた。新しい憲法には法律によって基本権を制限するような規定一つもないじゃないか。ないということになれば、私は、労働三権でも何でもいい一学問の自由でも何でもいい、そういう二十八条にこだわるのじゃないけれども、第三章「國民の権利及び義務」の章は、これは原則としてこれを制限し得るものは憲法以外にはない。憲法憲法の規約を制限することはできるけれども、憲法の基本的権利を法律でもって制限するというのはできないのが、これが正しい憲法解釈ではないかということを私はお尋ねしているのであります。
  167. 大橋武夫

    大橋国務大臣 憲法上の基本的権利が制限される場合があり得ることは、憲法それ自体がすでに予想いたしておるところでございますから、その憲法趣旨に従いまして、法律をもって制限するということは当然のことだと思うのでございます。
  168. 小林進

    小林委員 私は、憲法によって法律ができ上がって、それがたまたま憲法精神を失わない範囲内においてそれを制限することもあり得るというその解釈には賛成です。その原則に立つならば、この憲法二十八条によって与えられている労働者の基本の権利を公務員や公共企業体の職員から剥奪をいたしておる根拠は一体どこにあるか、その根拠をお聞かせを願いたいのであります。
  169. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公共企業体の職員の争議権の問題につきましては、憲法十二条、十三条等におきまして、憲法上の保障されたる自由及び権利は、国民がこれを乱用してはならない、常に公共の福祉のために利用する責任がある、また、すべて国民の持っておりまする生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利は、立法その他国政の上で、最大の尊重を必要とする、また第十五条に、公務員はすべて全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない、これらの諸規定憲法に明らかにされておるのでございまして、公共企業体における争議行為の制限というのは、これらの諸規定精神に基づきまして、法律によって制定せられたるものでございます。
  170. 小林進

    小林委員 私はその前にひとつ労働大臣にお伺いします。これも前回の質問の中に出たと思いまするが、国家公務員、地方公務員も、憲法二十八条でいう労働者であることに間違いはないと思います。大臣もそういうお答えがあったと思いまするが、いま一回ひとつお答えおき願いたいと思います。
  171. 大橋武夫

    大橋国務大臣 そのとおり申し上げております。
  172. 小林進

    小林委員 この問題については、これは将来も重大問題でありまするから、文部大臣にもお伺いいたしておきます。学校の教職員は、やはり憲法二十八条でいう労働者であると考えまするが、この二十八条でいう労働者であるかないか、お答えを願いたいと思うのであります。
  173. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 憲法にいわゆる労働者に該当すると考えております。
  174. 小林進

    小林委員 それはそりとおりであります。もし文部大臣がそうでないと言われたら、私は反証をあげて申し上げるつもりでありましたが、すなおに、学校の教職員も憲法二十八条でいう労働者であると明確にお答えになりましたから、そう定義づけていただけばそれでよろしい。  その憲法でいう労働者であるならば、憲法二十八条には、労働者の基本権であります三権が労働者には与えられておる、保障せられておるのでありまするから、そうすると基本的には公務員も教職員も——もちろん教職員は公務員でありまするから別にあらためて言う必要はないのでありますが、念のために申したのであります。公務員にはこの団結権、団体交渉権あるいは争議権が原則としてあるということは、これはおのずから決定いたしておると思いますが、いかがでございましょう。
  175. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公務員につきましての争議権に関しましては、先ほど来御質問に応じてお答え申し上げましたるごとく、法律による制限が厳として存在をいたしておるのでございまして、教職員につきましてもこれが例外ではないわけであります。しかし、このことは憲法の勤労者に保障しております団結権、団体行動権は全く公務員には無関係規定であるというのではなく、勤労者にもさような労働基本権は保障されておるのでございまするが、その労働基本権が公務員の従事しておる仕事の性質並びに公務員という地位に基づきまして特に法律上制限が必要であるので、国会において法律をもって制限されておる、こういう次第でございます。
  176. 小林進

    小林委員 その公務員にも労働三権は当然ある。あるが、それはその職務上制限をされておる。その制限をされている根拠はどこにあるか。これは先ほど労働大臣の言われた憲法の第十二条の乱用の禁止の規定、公共の福祉あるいは第十五条にいうところの全体の奉仕者、こういうようなところから、そのストライキ権といいまするか、団交権、二つの基本権が制限をされているということになるわけでありますという御答弁であります。しからば一体労働者の基本人権を制限をするワクになっている公共の福祉とは何であるか。この公共の福祉という概念を明確にしていかなければ、これは労働者の基本権というものがみだりに制限されてたまったものではないのでありまして、それでは基本権を制限をいたしまする公共の福祉というのは一体何であるか、それをひとつお聞かせを願いたいと思うのであります。
  177. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法制局の当事者からお答え申し上げます。
  178. 吉國一郎

    吉國政府委員 憲法で公共の福祉と申しておりますのは、これは憲法制定当時におきまして、あるいはコモングッドとか、あるいはゼネラルウェルフェアというようなことばを基本にいたしまして、あるいはまたパブリックウエルフェアというような用語も使っておったかと思いますが、そのような用語を基本にいたしまして、これを日本語として公共の福祉という文字を使ったと記憶いたしておりますが、国民たる個々の人間の個別的な利益に対しまして、それを超越いたしまして、時にはこれを制約するような機能を持つようないわば公の利益であるというふうに憲法学説上は考えていると思います。憲法の第十三条に使っております公共の福祉もそのような意味でございまして、あるいはまた憲法十二条におきまして国民に保障されております自由及び権利の乱用の禁止の趣旨規定してございますが、ここにおきまして公共の福止のために使用するといっておりますのも、そのような意味でございます。
  179. 小林進

    小林委員 いろいろわかるようなわからぬことをおっしゃいましたが、いま申し上げまするように、せっかく法律でも制限することができない基本的な権利として、何百年の歴史の間に痛めつけられてきた労働者が、初めて人権宣言やその他の革命を通じて新憲法の中で法律をもっても制限するととができないということの三つの権利を与えられた。しかし、与えられたけれども、その三つの権利も同じく憲法の十二条、十三条、十五条によって制限をせられる。その制限するワクは、いまも言うように公共の福祉あるいは全体の奉仕、こういうワクなんです。このワクを明確に規定づけなければ、せっかく与えられた労働者の三権なんというものは、これは法律で制限されるものよりももっとみじめなものになる。あいまいな解釈のしかたで権力者にそれをまかせたら、これも公共の福祉に反する、これも公共の福祉に反するという形で、みんな権力者の一方的な考え方でこれを締めつけてやられたら、事案上労働三権なんというものは与えられた名目だけで終わってしまう。でありまするから、学者の間でも、この公共の福祉ということのこの基準は非常に柔軟性があり過ぎる、少しあいまいなところがあり過ぎるじゃないか、こういう学説が通説になっている。ボン憲法世界人権宣言などでは、他人の自由と権利を害する場合に限り基本的人権は制限を受ける。いわゆる労働三権を含めた基本人権を制限する場合には、ただ他人の自由と権利を害する場合のみに限るというふうに定められているところもある。それに比較すると、わが日本の基本人権というものは非常にあいまいにされて、そして権力者によって都合のいいようにこれが活用せられておる。いまILOの八十七号、労働者の基本権を中心に審議するときには、こういう公共の福祉などというような概念をここで明確にしておかなければ、将来に禍根を残す場合が往々にしてあるのじゃないか、こう思うので私は質問いたしているのであります。もしこの公共の福祉という概念によって制限が過度に行なわれた、あるいは人権が不当に制限をされた、こういう場合には、裁判所にこれを訴えてその効力を阻止するという救済方法がありまするけれども、現在の裁判所それ自体においてもなかなかこの公共の福祉という概念が明確に行なわれていない。いないからこの公共の福祉という名前でいまなお労働者の基本権がどんどん制限されている。でありまするから、いまの進歩的学者の中では、この公共の福祉に対する裁判のあり方に対しても、裁判所は頼むに足らぬ、いわゆる憲法が保障した自由と権利とが立法、行政によって不当に侵害される場合にも、これに合意のお墨つきを与えるか、あるいは司法権の範囲外として裁判を回避する、最高裁判所において特にその傾向が強い、砂川事件においてしかり、朝日裁判においてしかり、こうして公共の福祉という概念の中に労働者の基本権が踏みにじられていくではないか、こういうような学者の意見がいま非常に多いのであります。いま、いみじくも、国家公務員だから、地方公共団体の職員だからといってどんどん憲法二十八条に定められた基本権を剥奪しておきながら、それは憲法の十三条の公共の福祉に反するからあたりまえだ、こういうふうな安易な御回答をいただくことは、われわれとして了承できないのでありまして、もし憲法のいわゆる公共福祉の制限によって労働者のストライキ権を剥奪するならば、することができるとしても、その解釈というものは、最も狭く、最も労働者のための立場においてこの解釈が与えられなければならないものと私は判断する。労働大臣、いかがでございますか。
  180. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私も、小林委員のお気持ちにつきましては、全くそのとおりに考えるのでございます。そこで労働基本権につきましてのわが国の制限の実情を考えてみますると、これは最も慎重なる手続によりまして、全国民の代表者でありまする国の最高機関である国会において法律によって制限をしておられる。私は、これ以上の慎重なる取り扱いは、憲法上あり得ないと、こう考える次第でございます。
  181. 小林進

    小林委員 非常に大臣はお力をお入れになりましたけれども、この国会が国の最高の権威のあるものであるとおっしゃるならば、旧憲法と同じように、法律によって労働の基本権もその他の基本権利も制限できる、差別できるようにしておけばよろしい。最高の機関で決定するその法律も、時の権力者によっては悪法も法律として生まれる。人民大衆の意向から離れて、一部の者の階級の利益のために大衆の好ましからざる法律も包まれる。それだからこそ、新憲法においては、そういうような国会における多数決によってもこれを制限することはできませんよといって、そういう法律によるにあらざればというワクを取ってしまって、憲法によるのほかは、いわゆる基本権はこれを制限してはいけない、ストライキ権は取り上げてはいけないときめておるのであります。いまの大臣のような、最高機関の国会法律できめれば、多数決できめれば、そこで剥奪したのだから、これくらい公平なものはないなどという御返答は、残念ながらちょうだいするわけにはいきません。  そこで、いま申し上げまするように、今日の学説の中にも、この公共福祉などという概念は、むしろ、憲法で定められた基本権のためには、これはなくしたらいいじゃないか、基本権は基本権そのままにずばりと与えておくことが、近代国家としてのあり方ではないかという、こういう有力な学者の意見もある。どうでございましょう。それは、少数意見であるかもしれません。少数意見でありまするが、そういう学者の意見に従って、公務員や公共企業体の職員は、憲法本来に定められた、憲法みずから保障している、このストライキ権や団結権を与えた場合に、一体どれほど公共の福祉に侵害を与え、公の奉仕者として、どれほど侵害するような悪い結果があらわれてまいりますか。私はあらわれてこないと考えるのでありまするけれども、大臣に、ひとつそれも含めてお聞かせを願いたいと思います。
  182. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公共の福祉という観念をやめて、基本権をずばりときめるようなやり方がいい、こういう学説があるがどうか、こういうのでございますが、私は憲法上の規定というものは、やはり社会生活の健全なる運行ということを頭に置いてつくり上げられなければならぬものだと思うのでございます。今日わが国におきましては、労働者の基本的権利、少なくとも公務員につきましては、これを制限いたすことが公共の福祉からいって必要である、こういう御趣旨で国の最高機関たる国会法律を制定せられ、しかも、憲法上の固有の機関でございまする最高裁判所も、その権威を持って、この法律の合憲性を裏づけておられるわけなのであります。したがって、今日の社会通念から申しますると、少なくとも労働基本権というものについては、公共の福祉のために若干の制限はやむを得ないということが言い得るのではなかろう。そういう現在のもとにおいて、公共の福祉という観念をやめて基本権ずばり憲法規定しろということになりまするならば、労働基本権というものは憲法上から消滅させなければならないんじゃなかろうか。これでは私はやはり日本の社会の発展の基礎でありまする労働者の地位というものを守る上からいって適当ではない。これはやはり労働者には労働基本権というものを憲法上与えておく、そして公共の福祉というやむを得ざる最小限度の限界において制限を認めていく。しかもその手続は国会の最高の意思によって慎重に決定していく。そしてそこにもしいささかでも間違いがあれば、最高裁判所が違憲判決によってこれをくつがえす。こういうふうなもとにやはり労働基本権憲法認めていくということが今日の国内の政治のあり方から見て適当であろう、こういうふうに私は考えるわけなのであります。  次に、第二の問題でございまする争議権を制限しなかった場合においてどれだけの危険があるか、危険などはどこにもないではないか、こう仰せられるのでございまするが、すでに先般の四・一七ストの際におきまして、公務員の争議権の禁止というものが現下の日本の実情から見ていかにやむを得ざるものであるかということは、大多数の国民が身をもって体験をいたしたところなのでございます。これを、何らないではないか、どこにも見出せないではないかということになりますると、私は小林委員の視力の再検査をお願いしたい。どうぞめがねをかけていただきたいと思います。
  183. 小林進

    小林委員 残念ながらいまの労働大臣の御答弁は何にも御答弁になっていないのであります。それは、大臣先ほども言われたように、国会の最高機関できめた法律で制限するという。そんなことは、その決定は憲法に上回るものじゃないのだ、憲法の権利を制限するものではないのだと私は先ほどから繰り返しております。憲法の決定の前には——この最高機関できめたものは法律なんですよ。法律憲法よりは弱いものだと私はそう言っている。憲法で与えられた基本権は、憲法でそれを訂正するかあるいは三分の二という憲法改正のその手続による以外には憲法の内容を変更することはできないのだ、こう私は言っているのでありまするし、最高裁判所の判決——私はさっき言ったとおり学者の中には、最高裁判所が一番基本権利を守ることに腰がすわらない。その実証が砂川事件にも見られるし、朝日裁判にも見られるじゃないか、だから、裁判の公正を期するためにも、基本人権を正しく守るためにも、公共の福祉だとか全体の奉仕者などという概念をこの際明確にしておく必要があるのではないかというのです。これは学者の意見がある。   〔「それは危険思想だよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  184. 小林進

    小林委員 いま、うしろのほうで言っておりますけれども、その公共の福祉というのは、先ほど言うように憲法十三条にある。その憲法十三条の公共の福祉というワクをいままできめた。実にこれが……。   〔発言する者あり〕
  185. 小林進

    小林委員 うしろでしゃべるのはやめたまえ。
  186. 倉石忠雄

    倉石委員長 小林委員、進行願います。
  187. 小林進

    小林委員 そういうことで私は言っているのでございますけれども、それに対して学者は、十三条でいう公共の福祉とかまたあるいは十五条でいう全体の奉仕者というこの制限は、いわゆる憲法の第三章の国民の権利義務にはこれを適用しないで、基本権利そのものをずばりと憲法のいうとおりにこれを与えるべきであるという少数の学者の意見もあるが、どうかということを私はお聞きしたわけです。この学者の意見に対してあなたは賛成か反対かということをお聞きしたのでありますから、反対なら反対でよろしゅうございます。
  188. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私の承知しておりまする有名な、権威のある憲法学者のうちにはそういう謬説を唱えるお方は一人もございませんので、そういう説は私は聞いたことはございません。いまにわかに言われましてもお答えできかねます。
  189. 小林進

    小林委員 あなたの権威ある学者がだれだか知りませんけれども、私も権威ある人の口からそういう意見を聞いているのでありますから、どっちが謬説かは歴史の定めるところであります。けれども、ここには参考までに、我妻栄氏あたりは、これは「この最低線を「公共の福祉」という基準で現わすならば、それは社会思想の変遷によって流動するものであることを忘れてはならない。「公共の福祉」に具体的内容を与えるものは、その国の国民思想である。そしてそれが裁判に反映する。」こういう学説をなされておるのであります。これは我妻栄さんの学説でありますけれども、これも傾倒に値いするけれども、流動する国民思想などを背景にして、時々刻々に労働の基本権、国民に与えられた憲法の基本権を取ったり、縮めたり、伸ばしたりされたのでは、私はやはりたまらない。どうしても基本権を制限をするというならば、この公共福祉という概念に、やはり国民の基本権を守るという立場で具体的な答えを与えなければ、強い国家権力によって労働者の基本権などというものはいつでも剥奪せられる。だからILOの八十七号の批准に対してはどうしてもこの公共福祉の概念というものを明らかにする必要があるという私のこの論を、私は譲るわけにはいきません。そういうわけにはいきません。私はこれは何回でも繰り返しますから……。  なお、申し上げますけれども、今度は国家公務員です。国家公務員に対するこの全体の奉仕者という概念、これを聞きますけれども、この概念がどうしていわゆる労働基本権、ストライキ権を剥奪するということに結びついていくのか、私はこれをお聞かせ願いたい。大臣、いま一回申し上げますが、全体の奉仕者だから公務員からは労働三権のうちの二権を取り上げるんだという、これはあたりまえのようなことに先ほどから労働大臣は言っていらっしゃるけれども、これは決してあたりまえの理屈ではない。そこにどういう因果関係があるのか、これもお聞かせを願いたいと思うのであります。
  190. 大橋武夫

    大橋国務大臣 国家公務員は国民全体の奉仕者であるということは、憲法十五条にも規定してあることでございます。国民全体の奉仕者ということは、国家公務員が自己の使命として公共の利益のために勤務をいたし、かつ、職務の遂行にあたっては全力をあげてこれに専念しなければならないということを意味するのでございまして、これがために団結権、団体交渉権等につきましても、一般の勤務者とは違って特別な取り扱いを受けることのありますのは当然であると考えられるのであります。従来、労働組合法または労働関係調整法におきまして非現業の官吏が争議行為を禁止されたり、また警察官が労働組合結成権を認められなかったりいたしておるのはこのためである、こういうふうに一般に解釈をされている次第でございます。
  191. 小林進

    小林委員 いろいろ大臣のお話がございましたが、これは学説ではございませんが、この五月十八日の新聞に、政府が任命せられておる臨時行政調査会、七人委員会の一人である今井一男委員、この人が公務員制度について今井私案というものをつくっているのだが、一定の規制のもとに争議権というものを公務員に与えたほうがよろしい、こういう説をなしている。卓説ではない。その説をなす根拠の中に、現在における公務員の使用者は政党を基盤として成立する政府である。この政府対公務員の労使関係を通じて公務員は国民全体の利益に奉仕するものであるとされておる。これは憲法第十五条であります。この点において公務員の労使関係は一私企業における労使関係と異なっていることを認めるにやぶさかではない。しかし同時に公務員は一般労働者と同じように憲法第二十八条にいう勤労者であることも間違いない。したがって、公務員にも憲法第二十八条の労働基本権が保障されておることはもちろんである。そこで公務員の労働基本権を考察するに際しては、この公務員というものにも、国民全体の奉仕者という性格を調和させながら、二十八条に書いてあるストライキ権を与えるのがむしろ進歩したあり方ではないか。公務員の労使関係が将来ともこのような状態でよいのかどちかということは、これは日本だけの問題ではない。世界的な問題であるとともに、世界の主要な国の公務員の労働基本権に対する政策を見ても、それをできるだけ幅広く世界各国はみな保障しているじゃありませんか。  そこで私の申し上げたいことは、公務員が国民全体の奉仕者であるからといって、それのみで公務員の労働基本権を制限することの合理性が一体どこにあるのかということです。先ほどから労働大臣は言われましたけれども、その合理性を認める理屈は一つもないっ国家全体の奉仕者だからといって、その基本権を制限するという合理性は一つもない。世界主要国の考え方から見るならば、全体の奉仕者であるからむしろ労働基本権を与えても差しつかえないものだ、むしろ与えたほうがいいのではないか、こういうような理屈も成り立つのでありまして、労働権を保障しても国民全体の奉仕者として責務を果たすについてむしろ何らの支障がないではないか。そのためにむしろこの三権を与えたほうが進歩的な労働行政としては妥当ではないかと思うのです。これは少数の意見ではない。これもきっと労働大臣は自分の意見に沿わないと、そういう謬見とか謬学とかおっしゃるかもしれませんが、こういう一般の説もあるのでありますから、お答えを願いたいと思います。
  192. 大橋武夫

    大橋国務大臣 いや、小林委員もときどきはなかなかいいことをおっしゃることもよくわかりました。  私は、現在の国家公務員の労働三権の制限というものは、単に国家公務員なるがゆえのみで規定されたものであると申しておるわけではございません。先ほど来申し上げましたるがごとく、主たる理由は公共の福祉を守るためであり、公共の福祉を守るために何ゆえ国家公務員の争議権を制限する根拠があるか、こういう点になりますと、それは公務員たる身分からその根拠がさらに理由づけられる、こういう趣旨に二段がまえに申し上げてまいったつもりなのであります。しかして、現在国家公務員につきまして、その団結権及び団体交渉権を認め、争議権及び労働協約締結権を否定いたしておるのでありますが、しかしながら一方において法律によりましてその勤務条件を保障いたしておりますとともに、その利益保護機関として人事院を設けている。また国営五現業及び地方公営企業の公務員につきましては、団体交渉権、団体協約締結権をも認め、争議権は与えておりませんが、しかしながら強制仲裁制度によってその権利利益を保護するという制度に相なっているわけでございまして、革に一方的に労働三権の一部を剥奪しているというだけではございません。剥奪するのには相当の公共の福祉上の理由があり、また身分上の根拠があり、しかしてその権利利益に対する保護、保障の方途が準備されて初めてこの労働権の制限というものが行なわれているわけなのでございます。  しかして、これにつきまして、この制限を変更してはどうかという意見は、これは各国の例等から徴しましても十分に考え狩るところでございますが、私どもは、国内の時勢の変転に応じまして、必ずしもこの労働権制限のワクというものは固定的なものだとは考えておりません。常に諸般の情勢とにらみ合わせながら、そのときどきにおける制限のあり方、それに伴う各般の制度、こういうものを考えつつ、常に前向きに前進をいたしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  193. 小林進

    小林委員 こういう公務員の制度についても、やはり当然ストライキ権を与えるべきだという説に対しても耳を傾けて、将来ひとつ流動的にものを考えていきたいという労働大臣のこの御答弁は、私はちょうだいいたしたいと思います。けれども、ILO八十七号条約批准関連をするこういう機会でございますから、こういう機会がないと私はなかなかこういう質問を繰り返すこともできないものでございますから、つとめて申し上げるのでありますけれども、願わくば近い将来などというようなことを言わないで、でき得べくんば近代国家に呼応して早急にこういうストライキ権を与えるようにしていただきたいと思うのであります。  ただ、先ほどの御答弁の中にも、そのストライキ権を取り上げている代償として人事院等あるいは労働委員会等、そういう組織を与えているではないかとおっしゃいましたが、そのお答えに対する人事院のあり方、その改組の問題等については、これはまたきょうこれからあと別の問題としてひとつ御質問を申し上げますが、その人事院云々あるいは仲裁機関云々のお答えは、これは大臣の御答弁そのままをちょうだいするわけにはまいりません。これはまたあとで二、三時間ゆっくり質問させていただきます。  ただ私は、そのような御答弁を聞いているときに、やはり公務員というものの労働権を制限して、ストライキ権を取り上げている、その根本的な考え方の底には、いわば労働者に対する不信感というものが根底をなしているのではないかというふうに考えられるのであります。これは大臣も御承知のように、近来の公務員の組織は、特に日本等はそうでありますが、非常に強大となっておりますし、公務員の組合等はみんな責任を持って行動しておりますし、また国家公務員、地方公務員を問わず、公務員の行動に対しては国民が直接間接にみんな監視している。その監視が行き渡っておりますから、公務員に労働基本権、団交権、ストライキ権を与えても着実上は何の弊害もないと私は思う。全体の奉仕者として、いささかも国民に迷惑をかけることはないと私は確信している。この点どうでありますか、いま一回大臣の御答弁をいただきたい。
  194. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私も、現在の公務員の労働組合の実情につきましては、りっぱに国民の期待に沿うような行動ができると確信をいたしておるのであります。ただ遺憾ながら、まだ私と同様の確信を国民全体がお持ちになっていただけるような状況になっておらないのではないかということを非常に残念がっておるのでございますが、この上とも公務員の皆ざまがりっぱな組合行動を通じまして、国民の安心感をかちとってくださる日の一日もすみやかなることを期待いたしておる次第でございます。
  195. 小林進

    小林委員 国民が信頼を置かないのか、政府が御都合が悪いのか、その点はどうもはかりにかけるようなわけにはいきませんが、とにかくわが国におきましては第二次世界大戦後、警察官、消防職員及び監獄の職員以外の官公吏についてはすべて団結権を保障した。そのうち本来の行政または司法に従事する官吏にのみ争議行為を禁止するにとどまっていたのであります。これは大臣も御存じのとおりです。これが昭和二十三年の政令第二〇一号以来、公務員の全体の奉仕者たるべき者の性格が非常に強調せられて、労働基本権がそのとき以来著しん制限された。だからいま団交権やストライキ権を、ILO八十七号で国際的近代国家の様相を示すために与えたと仮定したところで何も新しい行政じゃない。それは昭和二十三年の昔に返るだけの話なんです。しかし、それをおやりになることがそれくらい困難だというその底には、やはり国家公務員そのものに対する政府自体の不信感があるのじゃないか。全体の奉仕者としての国家公務員労働者に対する信頼感の欠乏が原因しているのではないか。それ以外に私は弊害というものはあり得ないと考えておるが、大臣いかがでございましょう。
  196. 大橋武夫

    大橋国務大臣 仰せのとおり、労働基本権の制限は占領期間中に強化されたのでございまするが、これが強化されるに至ったにつきましては、その間相当な経緯があってのことであることは小林委員も御承知のとおりでございます。自来、労働組合運動の実情に詳しくない多数の国民の間においては、なお組合の現状につきまして相当な誤解が残っておることは、遺憾ながら事実であると思うのでございまして、政府は職員組合の幹部並びに組合員諸君については全幅の信頼を置いておるのでございまするが、何ぶんにも法令というものは国民の意思によってきまるものでございますから、政府だけの考えでかれこれいたすわけにもまいりません。今後私どもも、組合とともども国民の誤解を一掃するように一そう努力いたしたいと思います。
  197. 小林進

    小林委員 国家公務員、地方公務員の問題は、あとでまた人事院の問題にからんで再質問をいたすことにいたしますので、これはこれで一応閉じまして、もとの本題であります公共企業体の労働者に対するいわゆるストライキ権の問題に返りたいと思うのであります。  いずれにしても、この公共企業体の労働者の基本権が、いわゆる憲法の十三条にいう公共の福祉という概念によって制限されておる。本来持つべき労働者の権利が制限されておるのでありますから、その意味におきまして、公共企業体等労働関係法前文に一章を設けて、公務員と民間労働者のいかんを問わず、労働者からはその本来の基本権たる三権を奪えべからざるものであるという、こういうような一つの宣言文を公労法あるいは公務員法等の前文に掲げておくのが、私は新しい近代的な労働立法としては非常に明確でないかと思うのでありますが、この際こういう改正をおやりになる意向があるかないかお聞かせを願いたいと思うのであります。
  198. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府といたしましては、いまの段階でさような改正案を考えたことはございません。国会において必要があれば必ず御措置くださるものと考えます。
  199. 小林進

    小林委員 私がそう申し上げるのも、このILO特別委員会におけるいままでの審議経過をたどってまいりますと、このせっかくの労働者保護のためにあるべき労働法を、何か治安法あるいは先ほどから申し上げますように警察法というような法律と同じように考えて、何とかこの法律の中で労働者を締めつけよう、労働者の権利をもっと剥奪しようというような、そういう解釈や考え方で論じておられる方がある。ここにむしろ労働者にストライキ権を与えるよりももっと大きな危険がある。そういう危険を排除する意味でも、そういう労働法規の前文には、いま私が申し上げましたように労働者には、公務員たると公共企業体職員たると民間労組たるとを問わず全部憲法二十八条によって労働三権が、長い数百年の労働者の血を流す戦いによって与えられておるのであるというふうな前文を掲げておくことが、労働法規を正しく解釈していく上に非常に重要じゃないかと私は思っておる。決して思いつきを言っておるのではないのでありまして、この際ILO八十七号を批准するときに簡単に一条前文を加えればいいのでありますから、この作業をおやりになるお考えがあるかないか、私の言っておることが間違っておるかどうか、ひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  200. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまの小林委員の御意見は、立法府の有力なる一委員の御意見として承っておきます。
  201. 小林進

    小林委員 それでは大臣の御賛同を得たものといたしまして、次に、問題を公労法の第十七条に戻してお尋ねをいたしたいのであります。  先ほどの御答弁のように、公労法に争議行為を禁止したかわりに、公労委の調停仲裁制度等が設けられているのです。争議行為による不利益は補われている、こういうことを先ほどもおっしゃったし、ILOの報告の中でもこういうことを主張しておられるのでありまするが、いまでもやはりさように考えておいでになりますかどうか、お聞かせを願いたいと思います。
  202. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さように確信いたしております。
  203. 小林進

    小林委員 先ほどからしばしば繰り返してまいりました、公共企業体職員の持つストライキ権の制限を与えることの憲法上の根拠についての論争は、これはまた後日に譲ることにいたしましても、かりにそのストライキ権を制限することがやむを得ないとしても、まだその中に二つの矛盾が含まれているということを私は論じなくてはならない。その一つは、ストライキ権の代替として与えられた仲裁委員会が、事実ストライキ権の代替たる役割りを果たしていないことの矛盾であります。第二番目は、公共企業体の中にも、公益の重大なる侵害になるものとストライキ権そのものを与えてもそれほど直接公益その他の侵害にならないもの、それを一括してストライキ権を剥奪していることの矛盾であります。  私は、そのうちの第二点からひとつ質問していきたいと思うのでありまするが、三公社一五現業一律にストライキ権を剥奪せられておる。これは私は不公平じゃないかと思う。事実に即していないと思いまするが、大臣、いかがですか。
  204. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ただいまの御意見は、公共企業体並びに五現業の事業の内容は、公益に対する影響の程度がいろいろ違うではないか、その公益に対する影響の程度の違うのを、同じように労働権を制限することがはたして適当かどうかという問題であると思うのでございます。この点は、ILO結社自由委員会の報告書におきましても指摘せられたところのように記憶いたすのでございますが、私はこの点は確かに傾聴すべき御意見一つであるというふうに考えておるのであります。しかしながら、現在三公社五現業と申しておりまする事業、なるほど、こまかく分析すれば程度はいろいろ違うかもしれませんが、要するに、おしなべて国民の生活並びに経済に重大な影響のある仕事であるということは間違いのないところでございまして、この点に着眼して現行法は同じように権利の制限をいたしておるものと思うのでございます。しかし、社会生活なり国民経済におけるいろいろな事業の影響の度合いというものは、時に応じましていろいろ変わることもあり得るし、また経済の発展、国民生活の進歩という上からいきまして、いろいろ違いが出てくることもございましょうから、今後とも十分この点に注意をし、常に検討いたしまして、時勢の要求に適合させるように努力をいたしてまいりたいと思います。
  205. 小林進

    小林委員 ILO第五十四次報告の中にも、いま大臣が言われたとおり勧告が載っておりまして、公有企業であるというだけで一律にストライキを制限することは不当だ、すべての公有企業が、ストライキ権の制限について、その業務の中断が公共の困難を惹起するがゆえに真に必要不可欠な企業と、この基準から判断して必要不可欠でない企業とを、関係法律上区別することなく、同一の基盤において取り扱われていることは適当でないという事実に日本政府注意を喚起すること、及び適当な時期に問題のこの点を考慮するよう配慮することを日本政府に示唆する、こういう勧告が行なわれてすでに数年を経過しております。大臣の御答弁のように、今後適当なときに考慮していきたいというようなことじゃなしに、いまILO批准を前にしているこのときに、これを国内法において改めることがより忠実なゆえんじゃないか。大体、政府のこのILO八十七号批准に対する国内法改正点を見ると、どうもこういうふうに労働者に権利を与えるほうの修正が何にも勧告どおり行なわれていない。つとめてこちらのほうばかりサボタージュをしながら、ともすれば、つまらない、取り締まるほうや、小意地の悪いおしゅうとさんみたいな改正ばかりやっている。やれチェックオフがどうだ、やれ専従がどうだ、やれ命令、規則の決定が何だのと、つまらないところだけいじくり回して、ILO八十七号批准に際して労働者の権利を幾らかでも大幅に認めていこうという親切な改正が少しも見当たらぬ。これが残念にたえないのでありまして、こういうような勧告——いまも大臣答弁を聞いていれば、ちっとも否定すべき面がない、やはり大臣も賛成だとおっしゃる。賛成ならば、この批准に先立ってこういうのは早々に改正したほうが、国際的にも国内的にもいいじゃありませんか。どうしていま一体おやりにならないのでありますか、なぜこの改正国会にお出しにならないのでありますか、いま一回お聞かせ願いたいと思うのであります。
  206. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まずILO関係国内法をいま急いでおる最中でございまして、なかなか一時にあれもこれもというわけには参りません。できるだけあらゆる検討を急ぎたいとは思いますが、おのずから順序と、それから一時にかかえ込み得る仕事の量に限界がある、こういう趣旨に御了解をいただきたいと思います。
  207. 小林進

    小林委員 時間の関係もありまするから、この問題はまあこのくらいにして、第一点の矛盾点に及びたいと思うのでありますが、ストライキ権を剥奪したその代替として調停あるいは仲裁制度というものを与えた、すなわち、公労法第二十六条以下に調停、仲裁の規矩を設けられている、こう言われているのでありまするが、この公労委の裁定は、法律的には労使双方を拘束するものであるにもかかわらず、事実上は労働組合だけを縛る結果になっている。これは事実でございましょう。すなわち、仲裁が出ても、国会によって承認されるまでは仲裁裁定は実施されない。逆に言えば、この法律は、国会承認を与えなければ何にもならないようになっている。解釈によっては、与えなくてもいいようにさえできている。裁定を出した、また事実上国会承認をされなかった仲裁の申請が今日まで七件あったはずであります。そのために裁定の完全実施を求めて合法的な闘争戦術を行なったことに対して、当局はそれぞれこれを処分をされた。この処分をされたことを、今回ILO批准に際して一体どう処置されるか、その考えも承っておきたいと思うのであります。
  208. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御指摘の処分につきましては、それぞれ不服のある者は不服の手続中でございまして、司法事件として裁判所に係属いたしておるものもあるわけでございまして、おのずからこれらの手続によって妥当な解決が得られるものと思います。
  209. 小林進

    小林委員 こういう政府の一方的なやり方に対してILO勧告が出ております。ストライキの「制限又は禁止には、調停手続及びその裁定があらゆる場合において両当事者を拘束する公平な仲裁機関が付随すべきであり、かつ、かかる裁定は、一旦下されたときは完全にかつ迅速に実施されるべきであるという原則に本委員会の付している重要性に、日本政府注意を喚起する」こういう勧告がなされております。「公共企業体及び国営企業における争議の解決を規制する法律を、前記の諸原則に照らして検討し、かつ、前記の諸原則が効果的に適用されることを確保するために右の法律及び現行の慣行に対しいかなる修正を加えることが望ましいかを考慮するよう、配慮することを日本政府に示唆する」第五十四次報告の中にこういうことがいわれておるのであります。この勧告に対して、政府一体どういう態度をもってこたえられておるか、お聞きをいたしたいと思います。
  210. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この点は、争議権を制限する以上は、労働者の権利並びに利益の保護の上からいって最も大切な点であるのでございまして、政府といたしましては、昭和三十一年公労委の発足以来、すべての仲裁裁定を完全に実施いたしてまいっておるのでございまして、すでにこのことは実績によって十分に実証されておるところでございます。
  211. 小林進

    小林委員 完全には実施いたしておりませんけれども、ここでまた議論していると時間がたちますから、ひとつ国鉄側に具体的な御質問をいたしましょう。  国鉄労組は、たび重なる仲裁裁定の不完全履行の経験に照らして、一九五二年十二月以降、完全履行を要求する順法闘争をやりましたね。また、一九五六年十一月以降は、完全履行の要求と、調停、仲裁が不公平であるということに抗議するための手段をそれぞれとりました。国鉄当局はこの行動に対して、公労法十八条や国鉄法三十一条に基づく処分を行なった。これに加えて、刑事の訴追さえも併用された。このとき解雇せられた者は何人で、処分した者は何人、賃金カットした者は何人か、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  212. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私のほうの記録によりますと、昭和二十七年、これは二十七年の暮れでございますが、裁定の完全実施と年末手当の問題と二つでございますが、このときに三名でございます。それから昭和二十八年、これはやはり年末でございまして、ベースアップの問題と年末手当の問題と——当時は御承知のとおり現在と時期が違いまして、いわゆる仲裁裁定は大体年末に出ておったのが慣例でございます。したがいまして、年末の闘争は、いつも仲裁裁定の完全実施と年末手当とこの二つの問題がからんで実施されたのが、二十八年、二十九年、ころの慣例でございました。そのときの処分者が十八名でございます。このときはその他の処分は一切いたしておりません。その後、昭和二十九年には私のほうには仲裁の問題はございません。それから昭和三十一年、これは春でございまして、これも仲裁問題でございません。昭和三十二年以降は、先ほど労働大臣おっしゃいましたように、仲裁裁定の完全実施を見ておりますので、いわゆる仲裁裁定に関連して処分いたしたことは一件もございません。したがいまして、もう一ぺん申し上げますと、昭和二十四年の件は、先ほど申しましたとおり少し事情が違っておりますので、これを一応別にいたしますと、二十七年に三名、二十八年に十八名、これが仲裁裁定の不完全実施に対すると申しますか、実は不完全実施と申しますよりも、当時は一月に国会にかかっておったわけでございます。そして十二月に、いま申しましたとおり、年末手当と両方のテーマでもって闘争を組んでおった。ですから、不完全実施と申すのもおかしな話で、完全実施の要求というふうに申したほうがいいかと思います。その闘争が二十七年と二十八年の暮れでございました。それが両方で二十一名の解雇者、それ以後は一名もございません。
  213. 小林進

    小林委員 国労からILOに対する提訴によりますと、一九五二年十二月以降、完全履行を要求する順法闘争、また一九五六年十一月以降、完全履行の要求と、仲裁裁定が不公平であることに抗議する圧力手段をとった、それに対し、解雇された者八十名、懲戒処分を受けた者七万七千三百九十四名、賃金カットを受けた者四十八万六千百七十七名、これは第五十四次の報告の六十五項にこういう数字をあげて国労の申し立て書が行っております。副総裁の御答弁と少し内容が違うようでありまするが、こんなのにこだわっているとまた時間をとりますから、それはあとでひとつこの資料に合わせるような書面でちょうだいする——もっとも、国労の書面はかつて出たことなしでありますから、やはりいま数字の違うことを御答弁願いたいと思います。
  214. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 先ほどの先生の御質問は、いわゆる仲裁裁定の不完全実施に伴う処分、こういうふうな御質問でございました。したがいまして、私のほうといたしましては、いわゆる仲裁裁定の不完全実施は、二十四年を一応別にいたしまして、二十七年と二十八年の二年だけでございまして、その後、二十九年は、先ほど申しましたとおり仲裁裁定は出ておりません。よその公社は存じませんが、私のほうには仲裁裁定がございません。三十年またしかり、三十一年は、春のいわゆる賃上げ闘争でございます。これも仲裁裁定と関係ございません。その後、三十二年からの処分、処分数は先ほど申し上げましたが、これはいわゆる仲裁裁定の問題とは関係のない問題でございまして、たとえば年末の手当の問題、あるいは春の手当の問題、そういったベースアップ以外の、主として期末手当等の問題に関連しての闘争あるいはその他の闘争でございます。たとえば安保闘争というようなものが入っておりますが、そういうものを含めましての——たぶん国労の数は、それ以後の仲裁裁定と全然関係のない問題を全部含めての数字だというふうに考えております。
  215. 小林進

    小林委員 私の言うのは、仲裁裁定の完全履行の要求と、調停、仲裁が不公平であることに抗議をする、そればかりじゃございません。その他を全部含めてのことでありますから、数字はよろしいとして、それに対するILO勧告が行なわれている。「日本政府が同条約批准の意向を表明している事実を考慮して日本政府に対し、同条約批准まで、同条約に含まれる諸原則に違反する虞れのある措置を執ることを避け、かつ、特に労働組合活動を理由とする逮捕、解雇又は懲戒を避けるよう努力すること。」懲戒をすることや解雇をすることはおやめなさい、こういう勧告が策六十四次報告の中にありますが、一体具体的にこのILOの諸原則に反するような処置を避けるためにどういう手段をおとりになったか、お聞かせを願いたいと思うのであります。何にもおとりにならないのですか。おとりにならないならならないでお答えをいただきたいと思うのであります。
  216. 倉石忠雄

    倉石委員長 小林君、どなたに答弁を求めましょうか。
  217. 小林進

    小林委員 それは国鉄公社でもいいし、監督官庁である運輸省でも、どちらでもひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  218. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ILOからの勧告につきましては、私のほうは直接ILOからいただくわけじゃございません。政府を通じてお話を承っております。個個の項目につきましては、詳細は長くなりますから省略いたしますが、私どもといたしましても、労使関係の円滑化、あるいは労使一体となって公共事業をやっていくということにつきましてはあらゆる努力をしてまいったつもりでございます。具体的にいろいろ申し上げることも省略いたしますが、精神といたしましては、極力、政府から御伝達いただきましたILO趣旨をも考慮した上で労使関係を円満に進めてきたというふうに考えておりますが、不幸、事態のいかんによりましては、多少そういった線からはずれたこともあったかと思います。しかしながら、全体といたしましては、今日まで着々と労使関係の円滑化をはかってきたというふうに申し上げて差しつかえないと考えております。
  219. 小林進

    小林委員 運輸大臣もどうですかな。ILO勧告は御存じない、あなたは政府の一員として、こういうILO勧告が国鉄公社に出ているのを関知されない、何も伝達もされない、知らぬ顔していたのですか。
  220. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 私といたしましては、政府から国鉄にじかに参っておるかもわかりませんが、運輸賓といたしましては聞いておりません。
  221. 小林進

    小林委員 こういう重大な勧告を、しかも、あなたが直接監督せられる国鉄公社のあり方に対して行なわれておる勧告を、監督者として運輸大臣が御存じにならないなどということは、これはいかに日本政府内部の綱紀が紊乱しているかを如実に私は示すものだと思うのであります。そんなことではいけません。また、運輸大臣にそういうILO勧告を教えないということは、関係閣僚の重大なる責任だと思うのでありますが、運輸大臣、何も第二飛行場の問題ばかりでおこるのがあなたの能じゃありません。こういう問題についてもほんとうに知らないならば、あなたに伝達しない閣僚に対して、大いに異議を申し上げて、反発を加えてくだざい。がんばってください。やりますか。
  222. 倉石忠雄

    倉石委員長 ちょっと委員長から政府側に申し上げますが、いまの案件について、大臣はともかくとして、政府委員の側で関知しないというのはおかしい話ですから、どういうふうな手続をとっておられるか、明快に答弁を求めたいと思います。
  223. 大橋武夫

    大橋国務大臣 第六十四次報告の(f)項前段の問題につきまして、当時の政府側の見解並びに措置等について御説明を申し上げます。  この(f)項の内容は、いかにも現在公労法の条項があるにもかかわらず、ILO結社自由委員会が、この条項を適用しないように勧告したかのごとき感があったのであります。そこで、公労法の四条三項及び地公労法五条三項は、ILO条約八十七号に抵触をいたしておるということは事実でありまして、政府もこれを否定するものではございませんが、しかし、ILO八十七号条約批准日本政府としてはまだいたしておりませんし、したがって、これに関連いたしまして、この条項の法律改正も行なっておらないわけであります。したがって、法治国家でありまする以上は、国会法律改正ざれるまでは、行政府といたしましては現行法を順守すべきことは、法治国のたてまえ上自明の理でありまして、政府が現に有効に存在しておる法律を無視した行政を行なうということは、法治国家としてはあり得ないことでありまして、したがって、ILOが現行法を無視することを勧告したと私どもは考えておらないわけなのであります。したがって、六十四次報告(f)項前段も、公労法十七条に違反して争議行為を行なったことを理由として解雇しました組合役員を、現に有効に存続しておる公労法四条三項及び地公労法五条三項を無視して組合役員として取り扱うことまでも、政府に対して勧告をしておるものとは解していないわけであります。労働省としては、このF項をこういう意味で解釈をいたしておるのでございまして、この点は各省にも通達をいたしたわけでございまするから、各省の当局としては、それぞれの公共企業体あるいは国営事業の当事者に対しまして、労働省の解釈の趣旨を通達されたことと思っておるわけであります。
  224. 倉石忠雄

    倉石委員長 きわめて明快でありますから、御了解できましたか。
  225. 小林進

    小林委員 了解をするわけにはいきません。それは、労働大臣が一方的に、各省に書面をもって配付せられると言うのでありますが、各省の中の最も関係の深い、当該事件に一番関係している運輸大臣がお知りにならないというのでありますから、これはそんなことで了承するわけにはいかないわけであります。しかも、いまの御答弁のように、何か日本法律に違反をするから、その勧告に対してはこれを聞き流しておいたという程度の御答弁でございまするけれども、私はこれも重大問題だと思う。ということは、同じようなILO勧告が続いてまた行なわれている。いまのは第六十四次の報告のF項でございまするが、今度は六十六次の報告の中に、また同じことが繰り返されている。「日本政府が同条約批准の意向を表明している事実を考慮して日本政府に対し、同条約批准まで、同条約に含まれる諸原則に違反する虞れのある措置を執ることを」——「避けるよう努力することをしようようすること。」さっきは示唆でございましたが、今度は再び慫慂する——こういって、同じ勧告を二度繰り返しているのは、私は、国鉄当局が首切り処分をしたことに対して、ILOが相当に重要視している結果にほかならぬと思っている。これをそのままにして、二回も同じことを繰り返して慫慂している、勧告している事実を無視して、このまま批准されることは、私はILO八十七号を批准してもちっとも問題の解決にならぬと思う。これはまた将来延びて必ず禍根を残すと思いますので、この際、公労法も改正をされたことでありまするし、いままで処分をいたしました者——この悪法によって処分をせられたと言われる被害者を、全部白紙に還元をする、こういう考え方一体ないかどうか、これは運輸大臣と国鉄当局にひとつお尋ねをいたしたいと思うのであります。
  226. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 私どもといたしましては、先ほど労働大臣のおっしゃったとおり、そのときそのときの法律によりましていろいろな仕事をしているわけでございますので、今後改正されるべき問題といままでの法律によってやった問題とは、おのずから別になるというふうに考えております。したがいまして、ただいま先生のおっしゃったとおり、いままで存在していた法律に基づいていたしました措置につきましては、取り消す意思はございません。
  227. 小林進

    小林委員 そこにわれわれの言う悪法も法律なりという危険がある。しかも、一方からその誤りを、二回も三回もきびしく勧告を受けておりながら、ほおかぶりをして、その悪法に基づいて処分をした、とうとうほおかぶりができなくて、そのよって来たる条項を削除していま批准をするというときに、その悪法によって処分せられた犠牲者たちをそのままに救済しない。ケース・バイ・ケースでこれから将来は考えるなどという考え方自体が、為政者としてほんとうにとるべき措置であるか、あなたたちがそんな考え方ならば、ILO八十七号を批准いたしましても、事この問題に関する限りは、断じて問題の解明にならぬわけであります。これを私は言っておきます。  現に本日——一九六四年五月二十七日だから、きょうだ。ドライヤー書簡に対して、総評はその追加陳述井の中においてこう言っておる。ILO実情調査調停委員会に送付する追加陳述井の中には、「日本政府ILO八十七号条約批准するまで労働組合活動を行なったことを理由に逮捕、解雇、または懲戒処分をしないよう努力すべきだというILO勧告関連するその後の処分、圧迫の状況を追加陳述に含める」こういうことを発表しておるのであります。これを陳述書の中に含めると言っている。あるいはこの条約批准されるようなことになろうとも、この問題に関する限りは、彼らはILOの場において争うんだと、こう言っておる。あくまでも戦うと言っている。私は、戦うという組合考え方は正しいと思う。あなた方のほうは間違っていると思う。そういうことでありますから——しかし、それほどまでも角ばらぬにしても、背だって大赦とか恩赦とかいうのがあったんだ。いまだって天皇がめでたいことがあるとか、皇太子が嫁をもらったとかといえば、そういうような罪を解除するという問題もあるのでありますから、労働者にとっては、ILO八十七号が批准せられて、団結の自由権や結社の自由権が認められるということは一つのめでたいことなんだから、そういうめでたいときを契機にして、いままで処分をした者を白紙に返して元に返すというふうな考え方は、冷たい法律に準拠しなくても、行政の上からいってあってしかるべき問題だと思うのでありますが、労働大臣、いかがでございますか、私の考え、間違っておりましょうか。
  228. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど申し上げましたように、F項におきまして、特に労働組合活動を理由とする逮捕、解雇または懲戒を避けるよう努力しろ、こういうようなことを申しておるのでありますが、日本政府といたしましては、調査する限りにおきまして、かような理由による逮捕、解雇または懲戒というものは絶無であるのでございまして、したがって、この点をILO注意いたしましたところ、この一行は削除されたのが六十六次の報告に相なっておるわけなのでございます。したがいまして、私どもは、この問題はすでに解決済みの問題であって、いまさらILO批准関連してどうこうという事柄ではないと思っております。
  229. 小林進

    小林委員 先ほども私が申し上げましたように、総評は全労働者の勢力をあげて、その後における逮捕、解雇に関する不当処分あるいは懲戒に対して、追加陳述書等を通じ、あるいは世界の自由労働者の全体会議に呼びかけながら、ILO批准云々にかかわらず、あくまでもその解明のために戦うと言っておるのでありますから、どう答弁されようとも、この問題を経営者、管理者の側で、フランクにその処置を撤回されない限り、問題は将来に残されていくということを私は申し上げます。同時に、大臣の御答弁には私はどうも納得することはできません。  次に、この際国鉄側にいま一つ聞いておきますけれども、これはたいした問題ではございませんが、給与の問題についてこういうことを報告しておる。これは国労側が提訴をしている内容なんだ。「日本の運輸労働者の賃金は、第二次世界大戦前及び戦後の初期までの間・一貫してトップレベルに近い層に位置していたが、一九四九年、公労法が制定されて以降、争議否認の代償としての強制調停、仲裁制度等は国鉄労働者の利益を守る適当な処置となり得ず、国鉄労働者の賃金は相対的に劣悪化している。」第五十四次の報告の中にこう言っておる。これに対して国鉄当局の回答は、「鉄道労働者の給与は他部門の労働者のそれに比して遜色がない」一九六一年の五月一日の通信の中にこういう回答をしておりますが、いまでもこの回答は、正しいとお考えになっておるかどうか。
  230. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 ILOに対する回答は、国鉄当局は回答する資格がございませんで、政府の御回答でございます。ただ事柄は私のほうのことでございますので、いまの御質問に、私のほうのいま考えておることを申し上げますと、この問題はいわゆる公共企業体、三公社五現業の中におきましても、賃金の格差ということによりまして、過般の四・一七スト前後に非常に問題になった点でございまして、確かに戦前は国鉄労働者の賃金は相当よかったことは事実でございます。しかも、戦後それがいわゆる生計費の高騰等によりまして、一般化、平準化されまして、国鉄労働者の特殊性が賃金の面に反映されなかったことも事実でございますが、徐々にそれが直ってはまいりましたが、なお他公社等と比較いたしまして、相当な格差があるということを強く私どもも主張いたしまして、過般の仲裁の裁定におきましては、他公社に比較いたしまして若干の格差をお認め願ったという結果でございます。この点につきましては、私どもは調停委員会の段階から同じ主張を続けてまいったわけでございまして、その点過般の仲裁の結果をごらんになっていただきたい、こういうふうに考えるわけでございます。
  231. 小林進

    小林委員 国鉄労働者の給与は、他の部門の労働者、三公社五現業のそれに比較して遜色がない、と言っているじゃないですが。遜色があると言っている。宇美あるから、また今日の仲裁において九・五%だの六・五%という三%以上の格差を三段階に設けられたはずなんだ、その設けたことが、正当であると言っておるのだ、遜色があると言っているんだ。しかしILOにおける公文書の中に遜色がないと言っている。運輸大臣、この原案は、あなたがおそらくこの答えを出されたのだろうと思う。運輸大臣、遜色がないと報告しているのは、一体これは何ですか。
  232. 綾部健太郎

    ○綾部国務大臣 先ほど総裁が申しましたように、直接国鉄にILO勧告がまいっておりません。そこで私どもといたしましては政府を通じまして答えたのでございまして、そのいきさつにつきましては労働大臣からお答えします。
  233. 小林進

    小林委員 私は最初から聞いておるんです。ILOに出したる報告書類は、これは外交上の公文書ですか、政府の責任において出されたんですかと私はお尋ねしておる。そのとおりだと外務大臣は答えられました。その公文書に対する報告の中に、国鉄側は——運輸大臣、あなたはいま何とおっしゃった、政府がほかに出したんだから、私は知らぬとおっしゃった。(綾部国務大臣「そんなことは言わぬ」と呼ぶ)あなたはやはり国鉄職員の賃金が低いということを認めるとおっしゃる。総裁認めると言う。公文書の中では遜色がないと言っている。他の公社、他の部門と平等だと言われている。どっちが正しいのか。一体そういうようなことであなたは責任が持てるのですか。ごまかしの答弁は要りません。良心的な答弁をされているというなら、ひとつ承ろうじゃありませんか。
  234. 廣瀬眞一

    ○廣瀬政府委員 国鉄から十分事情を聴取いたしまして、政府のほうから、国鉄職員の賃金は生産性の向上に十分対応する上昇を示しており、また他産業、特に運輸労働者の賃金上昇率の比較においても十分均衡を保っているという趣旨の回答を出しております。
  235. 小林進

    小林委員 同じじゃないか。遜色がないも、均衡を保っているも、同じじゃないか。そんなのは答えにならない。一九六一年五月一日の通信に基づく第五十四次の報告の四十八、その中に、「鉄道労働者の給与は他部門の労働者のそれに比して遜色がない」と報告している。間違いですか。この公文書は間違いであるかどうですか。政府部内の不統一を明らかにして、これは間違いであったということをお認めになりますか。それならば私は次の問題に移りたいと思いますが……。
  236. 大橋武夫

    大橋国務大臣 公文書には間違いはないつもりでございます。
  237. 小林進

    小林委員 公文書には間違いないとおっしゃるけれども、現に政府部内における運輸省の監督下にある、直接それを担当している公社の副総裁も遜色がありますと言っている。明らかにありますと言う。ありますから、今度の仲裁においてその遜色をある程度直してもらったのである、こう言われておるのであります。これが同じ答えになりますか。
  238. 大橋武夫

    大橋国務大臣 小林委員の指摘されておりまする報告は、一九六一年、昭和三十六年の五月一日の報告でございまして、したがって、問題になっておりまする賃金水準は、おそらくその前年の賃金水準を他産業と比較ざれたものだろうと思うのでございます。先ほど国鉄から説明された問題、並びにただいま小林委員の御指摘になりました九%、よそより三%高いではないかと言われましたのは、これは現在におきまする国鉄の賃金水準を他産業と比較いたしたものなのであります。したがいまして、三十六年のそれに指摘してありまする当時の状況はその報告のとおりでございまして、したがって、その問題についての公労委の裁定は企業別の差異はおそらくなかったろうと推測いたします。
  239. 小林進

    小林委員 ここに労働大臣答弁のごまかしがあるのでありまして、それがいけないのです。これが労働大臣の一番いけないところなんだ。先ほどから言っておりまするように、一九四九年の公労法が制定されて以降、その前年まではトップレベルに近い層に位置した。これは副総裁認めた。その四九年のその争議権を剥奪せられて以来、代償として与えられた強制調停も仲裁も、国鉄労働者の地位も守らなかった。自来、四九年ですから、それから全面的に毎年毎年減らされてきた。だから、もう六一年ごろには十二年もたってだんだんその格差が激しくなっている。それを言っているのですよ。それを大臣のいまの答弁は、まだ六一年ごろにはまるで遜色はなかった、六二年から三年あたり、二、三年の間にがくっと差ができたような、そういう答弁をせられている。実に無責任な答弁のしかたでありまするが、時間がありませんから、ひとつそのスト権を取り上げられてから以来のこういう表を、くまなく私どものほうで資料を提出いたしまして、いま一度私は労働大臣に反省を促しながらこの質問を繰り返したいと思いますから、本日のところはこれは留保いたしますけれども、常識としても大臣、そんなことは考えられないのです。六一年まではまだ遜色なかった、六二年から三年にいってどかっと差がついたなどというそういう答弁は、大臣それはいけません。いけませんから、その資料はあとであらためて申し上げることにいたします。  この際ひとつ全逓の労組の問題についてもお尋ねをいたしたいと思うのでありまするが、一九五八年三月の二十日、日本の郵便局で行なった作業停止の結果起こったできごとに関して、全逓の労働組合員二十二名が警察に任意出頭を命ぜられて、これに応じなかったことで逮捕をされたという問題がある。一九五八年の五月十三日から六月十三日の間、全逓の労働組合員七十人が警察に勾留せられて、二百人が任意出頭を命ぜられて取り調べを受けた。さらに八人が起訴された。組合大会を指導した組合役員が逮捕されて家宅捜索を受け、十九名が起訴された。以上の逮捕及び起訴されたことが郵便法第七十九条教唆によるものであるというのであるけれども、この七十九条の郵便法というものは争議行為には適用してはならない法律であります。しかるにこういうことでばんばんやられていることに対しまして、郵政当局は十七条の関係で不当処分したことはない、みんな違法行為で処分したのである、こういうことを言われているのでありまするけれども、十七条以外というならばどの法律によっていままでこういう処分をされてきたのか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  240. 古池信三

    ○古池国務大臣 十七条違反につきましては行政処分、また郵便法七十九条の違反につきましては、これは刑法上の罪として起訴されておるわけでございます。
  241. 小林進

    小林委員 これは国労の場合と同じようなケースでありまするから、同じことを二度と繰り返すのを省くためにも次に移りたいと思うのでございますが、それにしても郵政当局も電電公社も、もう八十七号の批准をしているときでございまするから、この際いままで処分された方々に対して何らかの救済措置、白紙還元というようなことを考えられないかどうか、ひとつ郵政大臣のお考えを明らかにしておきたいと思うのであります。
  242. 古池信三

    ○古池国務大臣 先ほど労働大臣等からも御答弁がありましたとおり、当時の国内法、今日も生きております現行法に違反した行為でありまするし、しかもILO八十七号の条約はいまだ批准もしていない、こういう段階におきましては、過去の行政処分について今日これをどうするということはできないものと考えております。
  243. 小林進

    小林委員 私は、そういうふうな政府答弁というものはまことに残念にたえないのです。やはりそういう答弁の中には、労働組合法というものを治安立法と同じように考えている、何でも処分すればよろしいという考え方で、労働者の権利を守り、擁護するなどという考え方一つもない。まことに残念でありますけれども時間がありませんから次に移りますが、いまのお答えは私は了承できないのです。そういうような答弁をする郵政大臣を軽べつするわけです。決して信頼するわけにはいきません。  次に、私は、国労及び労働者の国労への加入に対する干渉に関する国労側の申し立てについて幾らか質問をしておきたいと思うのであります。国鉄に対する団結権侵害の訴えは一体いままでどのくらい出ておりますか、件数をお聞かせ願いたいと思う。
  244. 三治重信

    ○三治政府委員 国労のILOに対する申し立ては、労働組合員の資格及び役員選出に対する制限に関する申し立てと、労働組合員に対する懲戒処分に関する申し立て、三番目に労働組合員の逮捕に関する申し立て、それから四番目に国労及び労働者の国労への加入に対する干渉に関する申し立て、都合四つ出ております。
  245. 小林進

    小林委員 その組合加入に対する干渉に関する問題でございますけれども、これくらい国鉄の経営者が露骨に組合干渉をやった例はない。残念ながら、旧来、団結権の侵害を管理者側に行なわれてきても、その侵害の事実の立証は労働者側にあった、労働者側は使用者の巧妙な侵害行為を立証することはなかなか困難である、それにまた公労委も、いままでこの団結権侵害に対する救済命令というものはほとんど出していない。公労委に訴えてみてもこの公労委は労働者のための公労委じゃなかった。十八件も提訴せられた中に救済命令はたった一つ、こういう形になっておるのでございます。規約命令が一件、救済命令が一件、そのうちにはどうも公労委に対する希望も失って申し立て人が申し立てを取り下げたという件数が十六件、こういう形になっている。  まず国鉄当局がこの労働者団結権に対して干渉をいたしておる事実を、このILO提訴いたしましたその内容から分析してみると、第一番目には、職制を通じて、国鉄労組の脱退や団交拒否、この団交拒否の期間中に止まれた第二組合加入を勧誘している。その例は、新潟、金沢の鉄道管理局の中において最も露骨に行なわれている。第二番目には、職制を通じて、右の勧誘にあたり、利益を提供したり不利益を課したりもしくは不利益処分を課すぞという、不利益にするぞというおどかしをかけている。その例は、金沢駅の徳田助役脱退干渉事件、直江津駅岩川駅長脱退の干渉事件、同じく直江津駅の市村助役の件、こういうことが行なわれている。第三番目には、職制を通じて組合役員の選挙に干渉している。福井支部の大会の代議員選挙に干渉した事件が起きている。第四番目には職制が単独に、もしくは第二組合組合員を通じて国鉄労働組合の活動に制限を加える。掲示板の撤去だとか、あるいは掲示板を移転させるとか、そんなまことにうるさいような干渉をしている。第五番目には、国鉄労働組合の運動方針を支持しているかどうかを、定期昇給の査定のための勤評の一要素としている。第六番目は、国鉄労組の運動に参加したことを理由に、雇用上の不利益待避を行ない、参加しなかったことを理由にして優遇を与えている、昇進をせしめている。こうした不正を国会であばく国会議員に対しては、鉄道の役員がみずから陣頭に立って選挙妨害までしている。こういう事実があるのでありますが、私の申し上げたことが事実でないとおっしゃるか、以上の件に対してひとつ所見を承っておきたいのであります。
  246. 磯崎叡

    ○磯崎説明員 いま先生のおっしゃったいわゆる不当労働行為というものにつきましては、ここ数年来数回にわたって論議がかわされまして、少なくともこういう問題について紛争があったことは事実でございます。しかしながら、ただいま先生のおっしゃった一件一件を、ここの場でイエス、ノーということは差し控えますが、いずれにいたしましても、不当労働行為を中心とした紛争事件があったことは事実でございます。その結果、御承知のとおり、先化のおっしゃったとおり、仲裁委員会の命令が出まして、それに対しまして、当方といたしまして行政訴訟にいたしました。結局御承知のとおり、昨年の秋すべて一応円満に解決して、今後ともこういったことのないようにしようじゃないかという状況に持っていったわけでございます。過去の一つ一つの事実について申し上げることは差し控えますが、少なくともそういうことについては、いろいろ新潟と金沢におきまして紛争のあったということは事実でございます。
  247. 小林進

    小林委員 私はこの問題に対しても実は非常に怒りを持っているのでございまして、私自身もこういう国鉄の経営者によって直接非常に被害を受けておるのでありますから、これだけでも、この問題でひとつ堂々と論議をしたかったのでありますが、もっと至厳なる反省を促したかったのでありますが、まだちょうど質問が半分ばかりしかいっておりませんので、ここで停滞いたしておりますと次の議題に進むわけにはいきませんので、しばらくの間運輸大臣と国鉄の関係者には待っていただきまして、この問題の解明は一番最後に回したいと思いますので、ひとつ委員長において御了承をいただきたいと思う。決して私はいままでの答弁に満足したわけではございません。  これは一応留保いたしまして、次に地方公務員法の規制を受ける団体に関するストライキ権の否定及びその代償的補償の欠除の問題について文部大臣、自治大臣等に御質問をいたしたいと思うのであります。  日教組はILOにこういう申し立てをいたしております。日教組組合員である小中学校の教師は、地方公務員として地公法の適用を受け、同法三十七条第一項で争議行為が禁止され、懲戒処分を受ける規定になっている。そのストライキ権剥奪の代償として人事委員会が設けられ、勧告権を持っているが、何らの実効性がなく、その代償としての機能を果たしておらない。この点が第一点であります。  第二点といたしまして、岩手県で二回にわたって昇給延伸条例が制定されたときに、人事委員会はこれに反対する勧告を行なったが強行され、これに対する訴えを受理した盛岡の地裁は、人事委員会意見は何ら拘束力を持たないとして組合の訴えを退けた。ストライキ権の代償として設けられた人事委員会が代償制度としての役割りを果たし得ないので、労働条件の劣悪、権利侵害を防ぐために組合はやむを得ずして圧力手段を用いたことに対し、これが違法とされ、刑事責任、行政懲戒処分をかけられておる。このような行政処分、刑事弾圧が組合組織の上にもたらされ、すでに回復できないような重大な損害を与えられておる。その根源は地公法第三十七条に存在するものと考える。この地公法三十七条はILO八十七号、九十八号条約による組合権の保障に違反をするものと信ずるがどうか。こういう提訴をしているのでありますけれども、これに対する文部大臣の御所見を承りたいと思うのであります。
  248. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 この問題につきましては自治大臣からお答えを願うほうが適当かと思いまするが、お名ざしでございますので、私がお答え申し上げます。  公務員はその従事する公務の性質から、先ほどお話もありましたように、公共の福祉のためにストライキ権が認められていない。これはやむを得ないものであると考えるのでありますが、これに関連いたしまして、そういう場合に公務員に対しましては適当な代償措置と申しますか、救済の措置がなければならぬ、こういうことも当然のことであろうと思うのであります。現在、現行法のもとにおきましては、地方公務員については、勤務条件に不満のある者は人事委員会または公平委員会に措置要求をすることができるわけであります。また、不利益な処分を受けたときは不服申し立てをして、人事委員会または公平委員会の救済を受けることができるこのようになっておることは、小林さんの十二分に御承知のところでありまして、かれこれ申し上げる必要もないと思うのであります。この人事委員会あるいは公平委員会に対して救済を受けるという措置が十分であるかどうかということにつきましては、いろいろ御議論もあろうかと思うのでありますが、現行法におきましては、ただいま申し上げましたような程度の救済措置を講じておるわけでありまして、これをもってストライキ権の代償措置といたしておるわけでありますから、私はこれ以上のことを申し上げるものはございません。
  249. 小林進

    小林委員 そのストライキ権の代償として設けられた人事委員会が、代償制度としての役割りをちっとも果たしていない。そのために労働条件の劣悪、権利侵害を受けている。それを防ぐために圧力手段を用いた。そしたら、それが違法行為として刑事処罰を受けた。こういうような刑事処罰を受けた原因は、地公法の三十七条にある。だからこの三十七条は、いわゆるILOの八十七号、九十八号の精神に違反をしているじゃないか、こういうことなんです。自治相は、この地方公務員法改正法律案をお出しになって——ILO精神に沿うてこれを改正しようというならば、この点は何らかの形で改善しなければならぬと思う。今度の改正法の中に出ていますか。こういう一方的に地方公務員を苦しめているような矛盾を是正するために改正法ができておりますか。
  250. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 だいぶ待ちまして、せっかくお尋ねでございますが、ただいま文部大臣お答えになったとおりでございまして、地方公務員の場合は、勤務条件は、御案内のとおり、法律または条例できめられてあるわけでございまして、それに不服、また特に不利益な扱いを受けました場合には、それぞれ人事委員会または公平委員会提訴または回復を求める要求ができるわけでございまして、またそれにさらに不服の場合は裁判所へ提訴する道も開かれておりますし、これで十分地方公務員の権利は守られておる、かように考えております。
  251. 小林進

    小林委員 私はいまさらそういう公式的、形式的な答弁を承わろうと思っているのではないのであります。そういう人事委員会や公平委員会が、何らストライキ権の代償としての役割りをなさぬじゃないか、単なる勧告だけだ、その人事委員会の構成も見るべきものがない、そして労働者の権利というものは一つも守られていない、だんだん給与が低下していく、条件は悪化していく、劣悪になっていく、これではたまらないというので、やむを得ずして圧力行為に出てきた。その圧力行為に対して政府はこれを処分した。こんなことでは労働者の立場がないから、これをひとつ改めてくれ、こういう提訴に対して、こういう心情に対して、あなたは、労働者の権利は、人事委員会や公平委員会やあるいは裁判への提訴によって十分守られていると言うがごときは、これは私は実情に即しない、実に冷淡、過酷な答弁であると考えなければならぬのであります。文部大臣、あとでまた自治大臣にはお尋ねいたしまするが、一体地公法三十七条関係によって、文部省関係の教職員で処分された者が今日まで何名おりまするか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  252. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 相済みませんが、政府委員から答弁いたさせます。
  253. 福田繁

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問のありました三十七条関係だけではございませんが、いわゆる勤評闘争あるいは文部省主催の講習会阻止等に伴います処分、あるいはまた学力調査の阻止などに関連しての処分でございますが、免職が二百八十八人でございます。停職四百七十人、減給一千六百七人、戒告五千二百八十五人、合計いたしまして七千六百五十人でございます。これは昭和三十二年一月から昭和三十八年三月三十一日までの合計の数字でございます。
  254. 小林進

    小林委員 これは私が持っておりまする数字よりもさらに大きいのでびっくりしておるのでありますが、これは驚いた。二百八十人名も免職にされておる、四百七十名も停職だ、驚くべき数字です。総計において七千六百五十名。文部大臣、あなたはどうも教職員の公務員を首にしたり処分するのを非常に楽しんでいられるような感じを受けるのでありますが、御真意をこの際お聞かせいただきたいと思うのであります。
  255. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 文部大臣が、教職員を首にしたり苦しめたりするということが楽しいはずはないのであります。さようなことの一名もなからんことを心から願っております。
  256. 小林進

    小林委員 そういうことのなからんことを祈っているとおっしゃるが、実は祈っていただかなくてもよろしいのでありまして、なるべくは、心の中では処分したい、処分したいと思っていただいてもけっこうなんであります。要は、現実において処分してくださらないのが一番ありがたいのでありまして、心に祈りながらも、こうたくさん処分されたんじや、これはとてもたまらないのであります。どうか願わくはこれがひとつ逆になることを私は祈らざるを得ない。  そこでお伺いをいたしまするけれども、それはもちろん勤評の問題やその他の問題も関連いたしまして、単なる地公法三十七条の問題だけではないと思いまするけれども、やはりよっていずる処分の根源は、地方公務員法の三十七条が根源でございまするから、それについて伺いたいのでありまするけれども、ILO八十七号を批准いたします今日、この処分の正当性、これが正当なりとやはりお考えになっているかどうか。及び人事委員会と公平委員会が、職員のストライキ代替機関として、確かに地方公務員の権利と利益を守ることに十分であるとお考えになっているかどうか。これはもう自治大臣はいい。私は文部大臣にお尋ねをするのであります。あなたの教職員が、この現在のままの地方公務員法や、あるいは人事委員会制度等によって、十分その権利あるいは利益が保護されているとお考えになっているかどうか、それをお尋ねをしておきたいと思います。
  257. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 われわれとしましては、処分の少なからんことを祈るということをおっしゃいましたが、処分を受けるような事態を引き起こさないように祈っているわけであります。現実に法があるにもかかわらず、義務があるにもかかわらず、これに反することをいたしますために処分を受ける事例が非常に大きいのでございます。いま、数が非常に多いとおっしゃいましたが、そういうふうな事例が非常に大きいのでございまして、そういう意味におきまして、ひとつ原因をつくらないようにお願いをしたい、このように考えている次第でございます。  なお、人事委員会あるいは公平委員会につきましては、私といたしましては、現在この法律改正していただこう、そのような心持ちはございません。
  258. 小林進

    小林委員 ここに私は、あなた方の為政者としての姿勢の重大問題があると思うのです。法律があるから守らなくちゃならない。その法律の中には、これは悪法もあればよき法律もある。暴君ネロだって法律は施行するんだ。暴君ネロでも法律はつくるんだ。だから、法律というものが正しく映らぬものならば、——徳川幕府だって法律をつくった。徳川の時代にも法律はあったんだ。明治維新なんという革命が起こるわけはないじゃありませんか。ただ問題は、法律というものは固定したものじゃないですよ。法律というものは、国民全般にひとしく利益を与えるものじゃありませんよ。したがって、もし民主政治の原則が正しく法律の上に反映するならば、それは多数の利益というものがその法律の上に反映するであろうけれども、しかし少数の者はやはりその法律からは不利益をこうむる、これはわかるでしょう。それはよき法律あしき法律を問わず、法律というものは、国民全般にひとしく利益を与えるものではない。多数者に与えても、少数者には不利益を与えるだろう。そのために、少数者のために、少数者の意見というものが、法律に反映し、反抗の形であらわれる。その反抗が暴力なり武力ならば、それは民主政治の原則には反するだろうけれども、民主政治下に許された形でその反抗や、法律に対しての反対が表明されることは、これはあたりまえです。そこに、その民衆の反抗や意見やその表現に基づいて、法律というものは常に流動的に改めていかなくちゃならない。そうして、できるだけ大ぜいの者にその利益を与えるように持っていかなくちゃならぬ。それをあなた方のように一様一括に、法律といえば神聖にして侵すべからずというように、法律があるから、いいも悪いもこれに服従せい、これに従え、そういうようなきめつけ方は、これはむしろ民主政治や大衆の意向をじゅうりんする誤った考え方なんです。法律は絶対じゃないのだから、そうして多数の者の利益を全部包含するものではないのだから、その意味において法律を執行するあなた方の立場でも、常に大衆の利益に適合しないような法律は直していく、大衆の要望を入れるようにしていく、大衆の利益を守るように改めていく、そういう心がまえがなくちゃいけませんよ。その心がまえがなしに、何でもあなたたちのつくったその法律だけを絶対のものとして強制していこうというような考え方が間違いだと私は思う。いかがですか、文部大臣、私の言うことは間違っていますか。
  259. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 小林委員の仰せは同感の点もございます。また、いかがであろうかと思う点もございます。今日はネロの時代でもございませんし、また徳川時代でもないのであります。あなた方がおつくりになっておるりっぱな民主国会であります。そこでつくられました法律は、まずこれは尊重するのが当然ではないかと思うのであります。しかし時勢の変化あるいは実情の変化に伴いまして、必要な法律改正はもとよりちゅうちょすべきではないと思います。これは当然のことでございますが、しかしながら自分が気に入らぬからというのですぐ法律違反あるいは実力行使、これもいかがであろうかと実は私は思うのでありまして、そういう点につきましては、われわれも十分考えなければなりませんが、いわゆる実力行使の手段に訴える方たちも民主的にやっていただきたい、かように考えるのであります。
  260. 小林進

    小林委員 学校の先先方は、ともかくこの人事委員会や公平委員会では私どもの権利は守られない、利益は守られない、これはほとんどの学校の先生方の要望なのです。これは決して一部の教師の意向じゃない。その意向というものを行政の上に正しく反映してくれるのが、文部大臣の役割りじゃありませんか。その大衆の意向が法律の上に正しく反映していないならば、それは改めるように努力してくれるのが文部大臣の役割りじゃありませんか。私はそれをあなたに言っているのです。そうして先生方の大衆の意向に従って選ばれた役員やあるいは代表たちが行動した、それを処分している。処分の可否の問題はまた別にするとしても、大衆のほとんどの教師たちがそれを要望したなら、その要望を法律の上に明らかに反映せしめるように改正するというのが正しいにもかかわらず、いまの人事委員会や公平委員会のあり方をこれで十分である、改正する必要はないというような文部大臣の言い方は、いかにも教職員大衆の意向をじゅうりんしている、理解をせざるものの考え方だと思いますが、いかがですか。
  261. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 人事委員会あるいは公平委員会の機構、組織、権限等について改善を要するものがあれば、もちろん改善してよろしいわけであります。私は現在改善の用意をいたしておらないということを申し上げたわけであります。教職員の諸君にいたしましても、そういうことであるならば、その筋を通して改善の運動をなさったらよろしいと思う。それを直ちにストライキの手段に訴えるとか、実力行使に訴えるということが私は民主的でない、かように考えるのであります。
  262. 小林進

    小林委員 こういう問題はもう水かけ論です。あなた方のおっしゃるように、筋を通して、順序を立ててなんといったところで、絶対現在の保守党のいわゆる政党や行政では、教育労働者の思うような方向に動いていかない。あなた方の言われる前に、彼ら自身もそういう圧力行為に出るのを一番きらっている。筋を通したり、お互いに話し合いの形の中で要望がいれられるならば、一生懸命やりますよ。そのしんぼうがし切れなくなった。だんだん権利は劣悪になっていく、だんだん条件が悪くなっていく、たまらなくなって、しんぼうし切れなくなって、最後になってその行動に出た。それをあなた方は突然、唐突としてその行動に訴えたごとく言わるるところに、いわゆる為政者の幼稚さがある。問題を根本的に解決できない原因が、そこに介在しているのです。権力を握った側でいま少し大衆の意向というものを正しく反映してくれるという資質がなければ、それはあなたは取り締まり官になれても、労働者に対する血の通った行政としての、文部大臣としての資格はありませんよ。  そこで、続いて私はお尋ねするのでありますけれども、いま申し上げましたような事案に対して、ILOからの勧告が出ておるのです。その勧告は、ここで要点を申し上げますと、本来ストライキ権を承認されている地方公務員の利益が、日本において正確にどこまで地公労法によって守られているか、不明である、教師を含む日本の地方公務員が、公務員という範疇の中でとらえられながら、その雇用は国の法律によらず、県もしくは市町村の条例によって規制されている、これはおかしいじゃないかということです。それらの地方公務員は、地方公営企業労働者と同一の地位はないが、大多数の国々の地方公務員は、紛争解決のための適当な公平な調停、仲裁制度によって守られているのが通例である、こういうことをいわれているのであります。教師を含む日本の地方公務員が、公務員という範疇の中にとらわれておりながら、その雇用は国の法律によらぬのもこれはおかしいじゃないか、あるいはまた大多数の国々の公務員が、仲裁裁定という労使双方を拘束するような、そういう制度によってその勤務条件や、あるいは労働者の利益が守られているにもかかわらず、日本の地方公務員にはこれがないのはどうもいかぬじゃないか、こういうようなことがいわれているのでありまするけれども、この点はどうですか、文部大臣
  263. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 地方公務員法の問題でございますので、自治大臣からお答えを願うのが適当ではないかと私は考えるのでございます。
  264. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 先ほどお答えいたしましたことの繰り返しになりまして、たいへん恐縮でございまするけれども、私どもは、現行の制度で少なくとも地方公務員の勤務条件の問題についての紛争あるいは不満等は十分解決する道が開かれておる、かように考えております。   〔委員長退席、田中(正)委員長代理着席〕  それから、最初から公共の福祉とは何ぞやということで議論が始まっておりますが、私はこういうふうに理解いたしております。憲法に返ってたいへん恐縮でございまするけれども、やはり公共ということは人に関することでもあるし、憲法十四条の国民、あるいは士二条の個人、あるいは十二条の国民、これは国の全部をさすものでありまして、やはり労働者の方もそのうちの一部分であることは、私は間違いないと考えておるわけでございます。そこで十五条でいっておりまするとおりに、公務員の諸君のこういうストライキなどによって全部の福祉が害されるようなおそれがある場合、公務員に対しましてストを禁止するということは、いまの憲法のもとにおいても当然やむを得ないことであるというふうに、私個人は理解もいたしておる次第でございます。しかしながら、そういう不満の救済措置といたしまして、いまの公平委員会あるいは人事委員会が救済機関として十分かどうか、さらにまた、別に仲裁機関を考えたらどうかという御質問のように考えますけれども、現在の状態におきましては、公平な第三者の良識というものも信ずることができるし、またその次には裁判所という段階もありますので、これで私どもは一応救われるし、またILO精神に反するものではない、かように考えておる次第でございます。
  265. 小林進

    小林委員 公共の福祉の解釈については、いま私はあなたから承ろうとは思わない。これはあなたがおいでにならない前に長々とここで論議を尽くしたのであります。ましてあなたのようなそういう解釈は、私は全然見解の外だと思います。それは別だが、私のいまお尋ねをいたしておりますことは、地方公務員の利益保護のためにILOはこういう勧告をしておるということなんだ。地方公営企業労働関係法の中には仲裁裁定の制度がありますか。自治大臣、お尋ねいたしますが、ありますか。
  266. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 ございます。
  267. 小林進

    小林委員 その地方公営企業に対する仲裁の機関は、労使双方を拘束する権限はありますか。
  268. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 労働委員会がやるのでございます。
  269. 小林進

    小林委員 ILOはそれを勧告しておる。地方公務員にはせめて地方公営企業並みの労使双方を拘束するような権限を与えるように人事委員会を改めたらどうか、こういう勧告をしておる。そのILO勧告をあなたは一体どう処理されたかということを私はお聞きしておるわけであります。
  270. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 勧告という御指摘でございますけれども、私どもはそういうふうに考えておりませんので、ただ示唆は受けておるというふうに考えております。
  271. 小林進

    小林委員 その示唆をどのように処置されたかということを聞いておるのであります。
  272. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 たびたび申し上げますように、現在のこの制度で十分救済はできると考えております。
  273. 小林進

    小林委員 それではILOの示唆は、これは間違っておる、日本政府としてはその示唆を受けるわけにはいかない、こういうことでございますね。
  274. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 示唆はたいへんありがたいと思って、いろいろそれに沿う努力をいたしておるわけでございますが、現行制度でもって救済ができるということを申し上げたのでございまして、その示唆というものは十分参考にいたしております。
  275. 小林進

    小林委員 そういう回答はまことに誠実のない回答であります。  次に、同じくILO勧告の中に、人事委員会の正確な権限は全く明瞭ではない、こういうこともいわれておりますし、教員は政府によっても給与、勤務時間、その他一般的な労働条件の決定がなされている、こういうことがいわれておりまするけれども、文部大臣、このILOのこういう事実認定をお認めになりますか。
  276. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 教職員の勤務条件は、それぞれの地方の条例によって決定せられるのであります。もちろん政府は給与あるいは勤務条件等について関係があるということは私は認めますけれども、現実に勤務条件として決定するのは地方でございます。
  277. 小林進

    小林委員 教員の給与や勤務時間や、その他一般的な勤労条件のすべてを政府によってのみ決定をされるとはいっていないのであります。政府によってもこれこれが決定されるといっておりますけれども、いま一度この点をお聞かせを願いたいと思うのであります。
  278. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどお答えを申したところでございますが、教員の勤務条件等に関しましても法令によって定まっておるものもございます。そういうふうなものは中央できまる問題でございます。現実のそれぞれの教員に対する勤務条件、給与その他が決定せられますのは、地方の条例によってきまるのであります。
  279. 小林進

    小林委員 大臣政府によってこういうものが決定されるというと、次における質問に逃げ場がなくなるものでありますから、その質問を予定して巧妙に答弁をごまかそうとしているのでありましょうけれども、これは現行法におきましても、事実上においても、政府が教員の給与や勤務や時間その他の労働条件の決定に参面をしていることは事実じゃありませんか。事実じゃないですか。それは事実じゃないとおっしゃるならば、事実じゃないとお答えを願いたいと思います。
  280. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 政府は法令によりまして与えられた権限を行使することはございます。それが教員の勤務条件に該当する、こういうことはございます。これは当然のことでありますが、これは行政の範囲に属することであります。
  281. 小林進

    小林委員 それは文部大臣だけじゃありません。各省それぞれ法令に基づいて行政を行なっておられるのでありまして、その法令を政府が実施することによって、それが教職員の勤務や給与や時間や労働条件の決定に参与するという形になるということになれば、私はそれで十分だと思う。その意味においては、次に来たる団交の問題なんかも、この面においては文部大臣において当然責任を持ってもらわなくちゃならぬと思うのでありますが、それはまた後ほどお尋ねいたすことにいたしまして、人事委員会の公平性に関する限り日教組の申し立ては正しい、こういうことをILOはいっております。すなわち人事委員百五十三人の委員のうち、法律や医療の職についている四十九人を除くと、他のほとんどすべては高級の管理者層出身者である。これらの者はすべて任命当局である地方公共団体の同意のもとに、地方公共団体の長によって選任されている。ほんとうに地方公務員の利益や実情を理解するような公平な人事委員という者が任命せられていないではないか。こういうことで一体どうして地方公務員の利益が守られるのかということを示唆いたしております。第五十八次報告二百六十五項の中にこういうことがいわれておりますけれども、自治大臣、このILO勧告をあなたはどう処置されましたか。
  282. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 先ほど申しましたように示唆は受けておるわけでございますが、私どもは、必ずしもいわゆる三者構成にして、結論が平行線を加えて二で割ったやり方ばかりが可能ではないと考えておりまして、ただいま日本ではやはり公平な第三者の良識というものもあると考えております。ですからいまの人選のぐあいから考えましても、全国の人事委員会委員あるいは公平委員会委員はそれぞれ中立のりっぱな方でありまして、私は、これによって地方公務員の利益が害されるというふうには考えておらぬ次第でございます。
  283. 小林進

    小林委員 あなたは自治相になられて日も浅いけれども、まことにILO関係労働法規の理解に対しては頑迷だ。聞いているとちっともこのILO勧告それ自体を理解なさっておらない。これではいけませんよ。あなたと労働大臣答弁なんか聞いているというと、これが同じ内閣の閣僚かと思うくらい……(「失礼なことを言うな」と呼ぶ者あり)失礼なことではありません。私の感じを申し上げているのであります。ILOがこれほど勧告していることを一応は自治省大臣としては——あなたの所轄関係じゃありませんか、理解した上に答弁をしてもらわなくちゃ、質問しているものもまじめに質問しているのですよ。百五十三人のうち数字をあげて、四十九人を除くほかは高級の管理者層出身者であるから、その関係を改めたらどうか、こういわれておるのであります。具体的に数字まであげていわれておるのでありますから、あなたはその数字をもとにして答えていただけばいいのであります。
  284. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 先ほどから申し上げますとおりに、この人事委員会、公平委員会の中身がどうかということを御指摘になってだれだれはどういう思想の傾向の人、だれだれはどういう人、それぞれの前歴などを判断の基礎にして分析をしていらっしゃるかもわかりませんが、しかし私が申し上げておりますのは、法の第九条にある人事委員会または公平委員会の「委員は、人格が高潔で、地方自治の本旨及び民主的で能率的な事務の処理に理解があり、」云々ということを御承知になっての上の発言であると思います。こういう問題につきましては、これは片寄っておるとかあるいは前歴がこういうことだからこうであろうといういろいろな御判断も成り立つかもしれませんけれども、私たちは、先ほども申しましたように、現在こういう方々の良識というものに期待をしておるわけでございまして、ILO精神には決して背馳するものではない。先ほど申し上げましたように、ILOから与えられた勧告ではありませんけれども、示唆というものにつきましては、十分尊重して考えておる次第でございます。
  285. 小林進

    小林委員 先ほどから自治相は示唆、示唆と言われるけれども、ILO勧告というのは、条約及び勧告といって、正式にILOでいう勧告は、条約と同じように各国の政府みずからが国会その他によって批准しなければならないものであって、示唆それ自体が、普通われわれのいうあるいは勧告とか指令とかあるいは話し合いとか  けれどもILOというものは、それぞれの国に対して内政にそれほど強く、干渉し得るものではないのでありますから、それで示唆ということばを用いているのでありまして、この示唆はわれわれの俗にいう勧告にひとしいものなんです。ここをひとつ自治大臣も間違いのないように判断していただかなくちゃならぬと私は思う。勧告じゃないです。この憲章を見てください。条約及び勧告といってこの憲章でいう勧告条約と同じようなものだ。その示唆ということばの持つ意義をいま少し重要視して考えていただかなければならないと私は思うのでありまして、まだそこにあなたの認識不足があると私は考えざるを得ない。しかもILO地方公務員法に対する勧告が個条書きで出ている。読み上げますよ。第一には、ストライキが禁止される場合には救済のための他の手段がなければならぬという理事会が常に重要性を与えている原則を再確認することだ。ILO理事会が、ストライキが禁止されている場合には救済のために他の手段がなければならぬという、何回もこれを繰り返してその重要な原則をいっているのだからこれをいま一度再確認をしてくれ、こういう勧告が行なわれている。あなたのいわゆる示唆が行なわれている。第二番目には、地方公務員でない地方公共団体の職員について裁定力を持つような仲裁機構を設置する地公労法を改正すると政府はいっているが、地方公務員も同様のような機構の中に含ませるという一般化している慣行を採用することが望ましいものであるということにつき考慮するよう示唆する。第三番目、人事委員会の数的な構成の上にいろいろな利益が正しく反映すること、また同委員会の中立もしくは公益委員のすべてがその不偏性につき一般の信頼を得ることを確保することを考えるよう政府に示唆する。これは人事委員会のことであります。第四番目には、政府に対し関係当事者のそれぞれが人事委員会委員の任命について平等な発言権を持つべきであることの規定することが望ましいことを考慮するよう示唆する。三と四の勧告は公平委員会にも適用するものである。こういうふうに結ばれているのであります。このILOのあなたの言われる示唆に対して、具体的にどういうような御処置をおとりになったかを私は聞いているのであります。おとりにならなければならぬでよろしい。
  286. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 同じことを申し上げまして恐縮でございますが、このILOの示唆は、つまり「地方公務員をも同様な機構のワク内に入れる広く行なわれている慣行を採用することの可否を考慮するよう日本政府に示唆する」これはなかなか表現がむずかしいことになっておりますが、しかしこの示唆を受けて、こういう救済の一つの担保ということを考えました場合に、現行で、どうかということは十分反省したということを申し上げたわけでございます。しかし、現在の制度で私は救済の道がこれで足りておるという判断をしておるわけでございますので、小林委員とはかなり考え方が違うようでございますけれども、私はまじめな意味で申し上げているわけであって、決して逃げ口上を一時申しておるわけではございませんので、そのことはひとつ御理解をいただきたいと思います。
  287. 小林進

    小林委員 それでは先ほど申し上げた四番目の、政府に対し関係当事者のそれぞれが人事委員会委員の任命について平等な発言権を持つべきであることの規定することが望ましいことを考慮するよう示唆するという、いわゆる労働者、地方公務員の側からも公平委員会委員の任命について発言力を持つようにひとつそり発言力を認めるべきじゃないか、推薦権を認めるべきじゃないかというこのILOのいわゆる示唆に対してはいかがでございますか。
  288. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 御案内のとおりに議会の議決を経てきめるわけでございますので、私はこれで足りる、かように考えておる次第でございます。
  289. 小林進

    小林委員 結局あなたの答弁を聞いておりますと、地方公務員あるいは地方公務員法に関する限り、ILOから相当の示唆、勧告が行なわれているけれども、それに対しては現状維持で何ら改正する必要はない、その要望に何らこたえる必要はないというふうにお答えになったと解釈してよろしゅうございますか。
  290. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 そのとおりでございます。
  291. 小林進

    小林委員 この問題は、またこのたびの外務大臣に対する書簡を通じて、いずれ陳述書等にあなたの答弁等も含めて別な舞台で争われることになると思いますので、私は非常に残念ながらこの質問を打ち切らざるを得ないのであります。  なお最後にお尋ねいたしますけれども、現在市町村に公平委員会は全部設置せられておりますかどうか。
  292. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 公平委員会のほうは全部つくられております。
  293. 小林進

    小林委員 最近まではまだ公平委員会の設置せられない市町村が全体の二、三〇%程度あるということになっているのでございますが、間違いございませんか。なお、その公平委員会のない市町村の地方公務員は、ストライキ権を剥奪せられ争議もできない。そうしてだれ一人救済してくれる機会もない、こういうかっこうに置き去られているわけでございますが、この点どうでございましょうか。
  294. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 間違いないと思いますが、事務当局でも全市町村にすでにつくられてある、かように申しております。——全部あるということを事務当局が言っておりますが、私が見たわけではございませんけれども、そういうふうに指導してあります。事務当局のほうでは全市町村につくってある、こういうことを申しておるということを言ったわけでございます。
  295. 小林進

    小林委員 これはあなたは大臣なんだ。あなたが大臣なんですよ。事務当局がこう言っておりますなんて答弁がありますか。そんな権威のない答弁のしかたがありますか。それは事務当局が言おうと次官が言おうと、あなたが答弁せられるのは、あなたの責任において答弁するのがあたりまえでしょう。実際にあるのですか。一体全部の市町村に公平委員会があるのかないのか、ひとつ自治大臣の責任において答弁をしていただきたいと思うのであります。あなた方はこんな問題を非常に平気に考えていられるけれども、いまも言うように労働者の側にしたらこれはたいへんなんですよ。だれが一体そこに働いている地方公務員の権利を守ってくれるのですか。重大問題ですからね。いま少し権威のあるお答えを願いたい。
  296. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 私の責任で申し上げておるわけでございまして、昭和三十八年の一月一日現在で全部行き渡っております。
  297. 小林進

    小林委員 それではあらためて伺いますが、現在市町村はわが日本に幾つあって、そしてその公平委員会一体何千カ所あるのか。全部とか半数とかじゃなくて、数字に基づいてひとつ答弁をしていただきたいと思います。
  298. 赤澤正道

    赤澤国務大臣 数字に弱いので事務当局に答弁いたさせます。
  299. 松浦功

    松浦説明員 お答え申し上げます。現在市の数が五百七十九、町村の数が二千九百一、こういう数字に相なっておりますが、公平委員会の設置のしかたには、御承知のように、単独設置のものと、共同設置のものと、それから人事委員会に委託をする方式と、三つが法律認められております。それぞれの形式についてお答えを申し上げますが、単独で設置をいたしておりますものは市で四百六十九、町村が千百二十三、共同設置をいたしておりますものが市では三十八、町村では六百七十七、人事委員会に委託しておりますものは市では六十六、町村では千百一、これはいずれも三十八年一月一日現在の調査でございますので、お含みおきをいただきます。
  300. 小林進

    小林委員 いま一度確認いたしますが、三十八年一月一日現在で市町村の単独設置の点において市が四百六十九、町村が千百二十三、共同設置が市において三十八、町村において六百七十七、人事委員会に委託が市において六十六、町村において千百一、間違いございませんか。
  301. 松浦功

    松浦説明員 間違いございません。
  302. 小林進

    小林委員 市において六十六も人事委員会に委託をしているというのでありますけれども、その六十六の市は一体どことどこですか。いますぐお答えができないならば、あとで資料でちょうだいしてもよろしゅうございます。
  303. 松浦功

    松浦説明員 お答えいたします。資料を現在手元に持っておりませんので、後ほど名前を書きましてお届けいたします。
  304. 小林進

    小林委員 これは私どもの労働行政のしにおいて重大なポイントでございますので、いま申し上げました数字を一々固有名詞をあげて、一覧してわかるように親切な資料を出していただきたいと思います。たとえていえば、単独に公平委員会を設置している市が四百六十九、町村が千百二十三というが、四百六十九のときには四百六十九の市の名前を全部入れていただく、千百二十三の中には町村の名前を全部入れていただく、こういうふうにして資料を出していただきたいと思うのであります。大臣よろしゅうございますか。  ILO批准をするに際しまして勧告せれている条項は、ストライキ権の代償を与えるようにせい、地公労に仲裁機関を設置する、そしてそれに拘束力を持たせるようにして公務員の利益を守れ、第三番目には人事委員会の改組をせい、人事委員会の任命についても労働者側の主張が通るようにせい、公平委員会についても人事委員会と同じようなそういう拘束力のある、労働者意見も反映するような任命の方法をとってくれ、そういうような勧告が行なわれているという結論になったのでありますけれども、残念ながら、これらの勧告に対しましては、わが日本の自治省において、何らそれに対する改善も、あるいはその勧告に対する要望をいれるような努力もお考えになっておらないという、そういうことが明確になった次第でございまして、これは非常に残念にたえません。この問題はひとつ同僚を通じてまたあらためて徹底的に質問さしていただくことにいたしますので、一応は自治大臣に対する質問はこれでひとつ打ち切ることにいたします。  次に、事実上の連合体の交渉に関する件について文部大臣にお尋ねをいたしたいと思うのであります。  現在の地公法第五十二条、第五十三条によって、一つの地方公共団体の範囲を越えた職員団体ないしは連合体は事実上の団体とされている。その結果、日教組は登録をされず、団体交渉を拒否されておる、こういう現状でございますが、これには間違いございませんか。
  305. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 そのように承知いたしております。
  306. 小林進

    小林委員 今度の国内法改正によりまして、この関係は将来どういう形に変わっていくのか、お聞かせを願いたいと思うのであります。
  307. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 今度の法律改正によりましてどういうふうな法律上の関係になるか、この法律問題につきましては政府委員から正確にお答えをさしていただきたいと思います。
  308. 福田繁

    ○福田政府委員 お答えを申し上げます。  日教組は御承知のように県単位の教員組合の組織でございまして、これは現行法上、地方公務員法第五十二条第三項に規定する事実上の連合体でございます。改正法案におきましては、結社の自由の原則に従いまして、職員団体を「職員がその勤務条件の維持改善を図ることを目的として組織する団体又はその連合体」と定めたことに伴いまして、日教組が単位職員団体すなわち県教組の連合体であり、かつ単位団体として労働組合など職員団体以外の団体を含まないものである限りにおきまして職員団体であるということができようと思うのでございます。以上でございます。
  309. 小林進

    小林委員 ただいまの御答弁にもありましたとおり、今度は国公法、地方公務員法改正せられることによって、日教組は法律上の職員団体になるわけでございます。登録のいかんにかかわらず法律上の職員組合になる、こういうことと解するのでありますが、いかがでありましょう。
  310. 福田繁

    ○福田政府委員 お答えをいたします。そのとおりでございます。
  311. 小林進

    小林委員 登録の有無にかかわらず職員団体になるわけでございますが、これに対して文部大臣は、従来どおり団交拒否の態度をお続けになる考えかどうか、いままで日教組との話し合いを拒否されていた理由一体那辺にあったのか、あわせてこれもお聞かせ願いたいと思います。
  312. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 団交拒否というおことばでございますが、今度の法律改正によりまして、日教組が教職員の職員団体として認められることになるわけでございますが、ただ、お話のいわゆる団体交渉につきましては、地方の公立学校の教職員の勤務条件等についての団体交渉ということであろうかと思うのでありますが、その限りにおきましては文部省は団体交渉の相手方には従来と同じようにならない、さように私は考えております。
  313. 小林進

    小林委員 先ほどしばしば質問をいたしてまいりましたように、教職員の、教員の給与、勤務状況、勤務時間、その他一般の労働条件について政府がその決定に関与している、このことはあなたもお認めになっています。ならば、その給与や時間の問題、あるいはその他一般的な労働条件についてあなたに話し合いをしたい、団体交渉をしたいということは当然じゃないかと思うのでありますけれども、それを依然として拒否するという理由一体どこにありますか。
  314. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その関係は、現在も、またいわゆる提案しております法律改正後におきましても、私は同様だと思うのであります。すなわち、団体交渉の相手方となる立場にいないと思うのでありまして、なるほど勤務条件その他に関係はございますけれども、文部省は地方の公務員の任命権者でもございませんし、その労働条件を直接管理するものでもございません。当事者としては別に任命権者がおるわけでございます。文部省がその相手方となるべき立場にはいない。すなわち、いわゆる労使の関係におきまして文部省は地力の公務員の使用者という立場にはいないと思うのであります。
  315. 小林進

    小林委員 私はここでひとつILO勧告をもとにしてお尋ねをいたしたいと思うのであります。  「八十七号第二条は、労働者はみずから選択する団体を設立し、及びこれに加入する権利をいかなる差別もなしに有するという一般に承認ざれた原則規定したものである。この権利は全労働者に対して適用されるものである。本委員会——政府がそれぞれの立場に応じて、全国単位では交渉しないとか、交渉権を職場単位、市町村もしくは県単位に制限するとかという完全な権利を持っていると考える。実際相当数の国々においては地方公務員の雇用条件は当該地方当局によって直接決定されておる。しかし、いろいろな当局との交渉について、地方公務員は、彼らがそう望む場合には、みずからの全国的な団体によって代表されることが通常認められている。」これが重要なところなんです。「日本政府は、地公法による交渉は地方単位で行なわるべきであるがゆえに、団体交渉もまた地方段階にのみ存在する団体でなければならないと制限している。そのような制限は、ILO八十七号第三条第二項の権利制限となる。」いまあなたの答弁は権利制限となる。いいですか。こういうことを言っているのでありますけれども、このILO勧告に対して、文部大臣はいかようにお考えになりますか。あなたの発言ILO八十七号第三条第二項の権利制限になる、こういうふうにきめつけているのでありますけれども、いかがでありますか。
  316. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 ILOの第五十四次報告におきまして——文部大臣は日教組を団体交渉の相手方として承認すべきであるという日教組の申し出があったわけであります。それに対するILO意見でございますが、私は、ただいまお述べになりましたが、ILOは、「任命当局は地域的段階または全国的段階のいずれで交渉するかを決定する権利を有するが、」ということを向こうは言っているのであります。それに続きまして、「労働者は、地域的または全国的段階のいずれで交渉するにせよ、その交渉において、みずからを代表する団体を自己の希望するところに従って自由に選ぶ権利を有する」、こういうふうになっているように私は承知するのであります。  この関係でございますが、私は、ILOは、両当事者が労使の関係に立ちまして、そこに労使間の交渉の素地がすでにある場合を当然の前提として述べておられるのではないかと思うのであります。労使関係のないところの話ではないのだろうと、私はさように理解するのであります。その場合におきまして、使用者側たる任命当局が交渉段階をどこに置くかということを決定する権利を持っている。また労働者側が、各段階に応じてみずからを代表する団体を選ぶ自由を持っている、こういう一般原則を明らかにいたしたものではないかと思うのであります。  そういうふうに考えましたときに、文部省というものが、地方のいわゆる使用者関係と、そういうふうな地方の団体の中央団体たる性格は私は持たないと思うのであります。もしそのようでありますならば、やはり地方の団体の、地方の当局の連合体と申しますか、それらのものによって構成せられた中央の団体というものが考えられるわけでありますけれども、文部省はそのような立場にはいない、かように考えて先ほど来御答弁申し上げているわけであります。
  317. 小林進

    小林委員 確かに文部大臣の言われるように、一方に文部省が任命権者として、先ほども私が読み上げましたように、いずれの団体、職場単位に、市町村単位にあるいは交渉する、制限をするとかいう完全なる権利を持っているという、こういう勧告がある反面には、労働者の側にも、みずからの全国的な団体に代表されるものはいずれの段階の代表を選ぶことも自由である、こういう勧告がなされておる。  なお続いて、あなたも言われたように、「教育政策の一般的基準の決定は教員団体と協議するのが通常の問題であるとしても、それらの団体と教育当局の団体交渉問題ではない、これを認めつつILO理事会に対し、この中央交渉の問題に対し以下の決定を行なうように勧告する。」これは自由委員会ILO理事会勧告している問題でありますが、一つには、「労働者がみずから選択する団体を設立し、加入し得べきであり、かつ完全な自由のもとにその代表を選出すべきであるという原則に置いている重要性について日本政府注意を喚起すること。」——一体何のために注意を喚起する必要がありますか。これはあなたが労働者の、日教組の団交に応じないからということに対してこの第一の勧告が行なわれて、この問題について日本政府勧告してこいということです。  第二番目には、「任命者である当局が、自分の側で地方単位で交渉するか、全国単位で交渉するかを決定する権利があるとしても、労働者は上記の原則に従って、地方単位で交渉するか、全国単位で交渉するかのいずれかにおいても、交渉に際してみずからを代表する団体をみずから選択する権利を持つべきであるという見解を表明する。」どうですか。こうやってちゃんと労働者側の中央交渉における権利を政府認めるべきであるという見解を表明しているのであります。  以上の勧告からいえば、為政者といたしましては、政府側といたしましては、この労働者の交渉権というものを認めるのが、労働者保護の立場からいえば当然でしょう。これがすなおじゃないですか。あなたの解釈は、地方の団体の連合会がむしろその日教組の中央の交渉に応ずべきなどということは、いかにも理屈に走りめいて事実に沿わない。私は牽強付会の弁だと思いまするが、いかがでしょう。そういう中央団体がありますか。
  318. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 先ほどお答えいたしましたとおりでございます。私は、ILOのその御意見なるものは、両者の間に労使の関係ありという前提のもとに立っての御意見だろうと思います。不幸にして日本にはそのような中央団体はない、文部省はそういう団体に該当しない、かように考えておる次第でございます。
  319. 小林進

    小林委員 繰り返して申し上げまするけれども、それではあなたは教職員の給与や労働条件に対して全く無関係、無関心であるとおっしゃるのでありますか。
  320. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 決して無関心でも無関係でもございません。先ほど関係があるということは申し上げております。しかしながら、いわゆる労使関係という団体交渉の前提となる関係につきましては、文部省は使用者たる立場にはいないということを申し上げております。
  321. 小林進

    小林委員 それではこの問題について、これは前回もわが党の多賀谷委員質問になりましたけれども、日教組の中に、主として中学、小学校等の、あるいは高等学校の教職員等も含まれておりまするけれども、この日教組の中に国立学校の教職員が含まれた場合に、文部大臣に対する団体交渉権が発生するかいなか、これもひとつあわせてもう一度お聞かせを願いたいのであります。
  322. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日教組の構成が今後どういうことになるか存じませんけれども、現在の状態のもとにおいて考えます場合に、若干国立学校の教員が含まれておりましても、日教組は地方都道府県の教職員団体の連合体とわれわれは考えておる次第であります。
  323. 小林進

    小林委員 文部大臣は前回のこの特別委員会質問に答えて、あるいは教職員組合意見を述べたり要望を申し述べるということに対して話し合うことはやぶさかではない、ただその話し合いが事前に個条書き等を突きつけられて、あるいはそれが何か文部大臣発言を、条件をとったとかとらないとかいう形によってそれが外部に漏れていく、そういうルールに従わないような交渉には応ずるわけにはいかない。表現が違うかもしれませんが、そういうような発言があったやに聞きましたけれども、あの節の答弁をいま一回ここで繰り返していただきたいと思います。
  324. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私のお答え申し上げた趣旨は、先ほど来問題にしておられます勤務条件等のいわゆる団体交渉、この関係におきましては文部省は中央の公務員の団体交渉の相手にならない、そういう立場にいないということを申し上げたわけであります。  いまお話しになりました教職員の団体が意見を述べるとか陳情をするとかいうふうなことは、いまの団体交渉の話とは筋の違った話だと私は思うのであります。勤務条件等の団体交渉ということになりますればその相手方ではないと思いますけれども、いろいろな問題について意見を述べるとか、あるいは陳情するとかいうふうなことはこれは御自由であります。すベての国民が私はその自由は持っておると思う。そういう意味におきまして、文部省に対しまして意見の表明なり陳情なりなさることはこれは御自由であります。また文部省としましてもこれを受けるということも自由であると思うのであります。したがってまた直接会うか会わないか、直接会ってもよし会わなくてもよし、そういうふうなことは一般に行なわれておるところでありまして、文部省としましてはそれを拒否する理由はごうもございません、そういう趣旨のことを申し上げたわけでございます。
  325. 小林進

    小林委員 そうするとあなたは、教職員組合に対しては団体交渉に応じられないけれども、陳情として国民の中の一人として話し合いに来るのは、ときに気分が向けば聞いてもよろしい、一般の陳情並みの扱いはいたしましょう、こういうことでございまするかどうか。
  326. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 一般の陳情並みというふうなそっけない心持ちは持っておりません。教育に最も関係の多い人たちの団体でありますから、その意味において私どもは日教組の諸君に対しましても対処いたしたいと考えておる次第であります。そういうことまで私が拒否するというふうな心持ちはございません。必要ありと考え、適当であると考えますれば、お目にかかってよろしいのでございます。同時にまた必ずお目にかからなければならぬというふうなものでもないと私は思うのであります。これは私が適当と考え、必要と考えれば、直接お目にかかることもございましょうし、あるいはまた部下の諸君がお目にかかるということもございましょう。  ただ、私が一番今日まで心配をいたしておりますのは、いまのような筋道における話し合いの問題、意見の表明の問題、陳情の問題でございますか、それはややもすれば職員組合と文部省あるいは政府との団体交渉である、団体交渉によって、単なる勤務条件だけの問題ではない、いろいろの教育上の問題について交渉するのだ、こういうことをしばしば言われもするし、そういう行動をとられるのでありまして、これは日本の行政の筋を乱る、そういうことのないように、あたりまえの形式において、あたりまえの態度においてお互いが会うとか、あるいは意見を聞くとかというふうなことは、たてまえとしてこれを拒否する理由はございません。要は、私といたしましては、そういう誤解の生ずることはないようにいたしたいと思うのであります。そして、適当と考え、必要と思えば、お目にかかってちっとも差しつかえない、かように考えております。
  327. 小林進

    小林委員 なかなかことばはやわらかでございますけれども、それだけの回答では、やはり陳情であります。陳情、請願、交渉、話し合い、労働者の権利を一つ認めたことではない。  いま一回繰り返しますけれども、今度は法律改正によって日教組は職員団体として法律認められておる。職員団体として認められた以上は、連合体の交渉権はある。しからばその交渉権は、中央においてだれとこの教職員組合は労使関係を結んで、その交渉の相手をだれに一体選ぶべきであるか。世間の常識でも、それは文部大臣だと私は思うけれども、文部大臣は直接の使用者でないから、片一方の教職員組合、日教組に団体交渉権があることだけは認めるけれども、それに対する交渉の相手はない、しいて言えば、地方公共団体の中央連合体のようなものしかないとおっしゃるのでありますけれども、その答弁であなたは間違いないとおっしゃいますか。労働大臣、それでよろしゅうございますか。
  328. 大橋武夫

    大橋国務大臣 純粋に法律的に考えてまいりますと、文部大臣の申し上げたとおりで間違いないと思います。
  329. 小林進

    小林委員 文部大臣、よろしゅうございますか。——団体交渉権という権利は、これは義務があって権利なんだから、権利のあるところ義務あり、義務のあるところ権利あり、どこにも交渉することのできないような権利だけを今度の改正法律案につくってもらったところで、その権利の反対給付を受けてくれる義務者がないなんという、一体そんな権利の付与がありますか。あなたは、今度は法律改正して教職員組合、日教組というものに団体交渉の権利を与えたというならば、その権利を行使する相手の義務者をひとつさがしてください。労働大臣、その義務者は一体だれですか。
  330. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日教組は教職員団体の連合体でございます。教職員団体はその使用者と団体交渉をする能力があるわけでございます。したがいまして、日教組は、教職員団体の多数の組合員が選ぶならば、教職員団体のために、教職員団体の団体交渉の当然の相手方と交渉する能力があるわけでございます。
  331. 小林進

    小林委員 その交渉の相手、その権利を受けて立つ相手方はどなたかと聞いておるのであります。中共交渉における相手方……。
  332. 大橋武夫

    大橋国務大臣 それは教職員の任命権者であります。
  333. 小林進

    小林委員 中央における任命権者はどなたでありますか。
  334. 大橋武夫

    大橋国務大臣 中央における任命権者がだれであるかということは、文教の制度上の問題でございますので、文部大臣にお尋ねをいただきたいと思います。
  335. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 地方公務員の勤務条件等に関する団体交渉の相手方であるものは中央にはございません。
  336. 小林進

    小林委員 国立学校ほどうでございますか。
  337. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国立学校につきましては、究極するところ、文部大臣が任命権者ということになろうかと思います。
  338. 小林進

    小林委員 国立学校に対する任命権者は文部大臣である。それならば、文部大臣に対して国立大学の教職員組合が団体交渉をやります。そこに中等、高等、小学校の教職員が加わって団体交渉をする。ILO批准に伴って、四条三項、五条三項が削除されたのでありますから、私は当然交渉団体として成立すると思うのであります。いかがでありますか。
  339. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 国立学校の問題につきましての団体交渉は、これは文部大臣が逃げるわけにはまいりません。文部大臣が受けなければならぬ性質の問題だろうと考えます。その場合にだれが一体団体交渉にやってくるかという問題でございます。私は、国立学校の諸君が日教組の幹部の諸君に委任をいたしましておいでになる分なら、これは問題はない、ただ、日教組という団体として文部大臣に交渉においでになるということになりますれば、これはH教組がどういう構成になるかということによって違ってくると思うのであります。現在までの日教組でありますれば、これは地方公務員の連合体、このように日教組というものを私は考えておる次第であります。
  340. 小林進

    小林委員 日教組の中に入っておるのですよ。入っておりますから、その国立学校の職員の入っておる連合体の日教組の役員が文部大臣に交渉に行く。なぜお会いにならぬか。あなたは、国立学校の職員組合の委任を受けたという形ならばその日教組の役員とも会うけれども、いわゆる日教組の連合体として会うことはできないというお答えでございますが、日教組そのものとして会うのは、五条三項を削除したたてまえ上、当然じゃないですか。
  341. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 日教組が職員団体として認められますのは、地方公務員の職員団体の連合体として認められておる、かように私は考えるのであります。
  342. 小林進

    小林委員 国家公務員との連合体の関係はどうなんですか。
  343. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 その点は、今後日教組がどういうふうな構成でおやりになるか、それによってきまる問題だと思います。   〔発言する者あり〕
  344. 田中正巳

    田中(正)委員長代理 御静粛に願います。
  345. 小林進

    小林委員 文部大臣、現在の構成で、一体国立学校の職員と地方公務員の職員とが連合体で結成いたしております現在の日教組は、どういう形になるのか、お聞かせを願いたいと思います。
  346. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 私どもは、現在では、日教組は地方公務員法に基づく職員団体と考えるのでありまして、国家公務員法に基づいての職員団体とは考えておりません。
  347. 小林進

    小林委員 国家公務員、国立学校の職員が入っておるのです。入っておるこの現実の姿を、その連合体を認めないというのは、残酷非道じゃありませんか。これを一体どう解釈するかという問題であります。文部大臣、それでもその連合体を認めないのですか。依然として地方公務員の連合体としてしか認めないのですか。それはむちゃですよ。
  348. 灘尾弘吉

    灘尾国務大臣 現在の日教組は、私は国家公務員の団体と地方公務員の団体との連合体とは考えません。
  349. 小林進

    小林委員 私は非常に残念でありますけれども、どらも文部大臣もえこじになられたようで、冷静を少しく欠いておられるようでございますので、この問題は重大問題でございますから、保留をいたしておきます。  いま一つ、最後に、人事院改組の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのでございます。   〔田中(正)委員長代理退席、委員長着席〕  人事院の改組の問題について、特にこれは重大問題でございまするので、政府側からひとつ慎重な御答弁をいただきたい。いままでも人事院改組についてはしばしばこの審議の中で討論が繰り返されておる。私はどうしても満足できない。速記録を全部読みました。全部読んだが、満足できませんので、またあらためてひとつ御質問を申し上げるのでございますけれども、ILO八十七号の批准のためにどうして一体人事院を改組しなければならないのか、私自身まだそれがわからない。私は、むしろこのILO八十七号の批准に籍口して、国家公務員を締めつける便乗改悪の最たるものがこの人事院の改組じゃないか、私はかように考えるのでございますが、政府側の所見をひとつ承っておきたいと思うのであります。
  350. 大橋武夫

    大橋国務大臣 ILO八十七号条約は、労使の自由な団結とその活動を保障いたしたものでございますが、今回これを批准するに伴いまして、条約趣旨といたしておりまする正常な労使関係を確立いたしますためには、職員団体について一そうの自主性、責任性の確立が期待されますると同様に、当局の側におきましても、職員の勤労条件など、人事行政の管理に関する責任体制を確立することが必要であると考える次第でございます。中央人嘉行政の機構につきましては、従来からその責任関係がややもすれば明確を欠くきらいがございまして、行政審議会の答申でしばしばその改革の必要性が指摘されておりまするので、右に申し上げました趣旨に基づきまして、この際、在来の人事院の事務の一部、大蔵省主計局給与課の事務の一部及び総理府公務員制度調査室の事務を統合いたしましてこれを整備することにし、もって人事局を設置いたすことに相なったわけでございまして、この人事局の設置に伴いまして人事院の改組が必要と相なったのでございます。
  351. 小林進

    小林委員 私は大臣の総括的な御答弁だけでは満足ができないので、若干の時間をお借りいたしまして、少しきめのこまかい質問をさせていただきたいと思うのであります。  ILO八十七号批准のために人事院が改組されるとおっしゃるのでありますけれども、そもそも国家公務員法が、昭和二十二年の十月二十一日、法律第百二十号として公布されたその当時は、人事院というものは、臨時人事委員会と称して、九十八条は一項しかなかった。職務に専念する義務だけであった。そして、憲法二十八条にいう労働三権というものはひとしくこれが与えられていた。それが占領中に、占領軍の諮問に応じて、フーバーを団長とする占領軍の顧問等が来日をいたしまして、その使節団によって勧告案が出た。その勧告に従って、労働権を中心として、いままで三権を与えられていた労働者の基本権をどう制限するかということを中心にしてこれが改組が行なわれてきた。その間には二・一ストがあったり、政令二百一号が発せられたりして、そういうような経過を経て労働者の三権が制限されたのでございます。その制限をされた代償として、政府から独立をした準立法的、準司法的な行政機関として人事院がつくられた。どらですか、この発生の理由に間違いがありますか。
  352. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さように承知いたしております。
  353. 小林進

    小林委員 この人事院という代償機関の設立によって、労働者はいままで昭和二十二年の公務員法が持っておりました団体協約権とストライキ権というものを剥奪されたのです。この経緯にも間違いはございませんでしょうね、いかがですか。
  354. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その点もさように存じます。
  355. 小林進

    小林委員 なぜ一体代償機関を設けてそらしてストライキ権と団体交渉権を取ったかといえば、その制度の改廃に残る根底の思想は、政府と公務員との関係は、やはりこれは使用者と労働者との関係なんだ。その両者の関係というものは、労使の関係は常に利益が相反するのですが、利益が相対立する、その意味において、労働者からストライキ権を取った反対に、第三者の中立機関を設けて労働者の利益を援護しよう、こういう関係で人事院が設けられたことに間違いないと思いまするが、いかがでしょうか。
  356. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私もさように思います。
  357. 小林進

    小林委員 しからば、今日この段階においても、政府と国家公務員の関係における労使関係というものは何らの変化を及ぼしていないと思う。その過程においては、それはよき慈悲深い使用者であった場合もあったでしょうし、また政府側が非道な雇用主になった場合もありましょうけれども、いずれにしても本質は、政府は、労使の関係においては、公務員労働者とは全く利益相反する使用者の立場にあるというこの関係は、今日も少しも変わっていないはずなんです。そういう関係労働大臣がそのとおりすなおに御認定になった。御認定になったならば、その形に変化がないにもかかわらず、いまその使用者の立場である政府が、労働者から奪い取った団体交渉権やストライキ権をそのままにしておいて、政府の権利だけを人事院から取り戻すということは、これは非常なへんぱな、労使関係における非常な革命的な変革ではありませんか。いかがでありますか。
  358. 大橋武夫

    大橋国務大臣 労使の利害は、ときとしては一致し、お互いに協力する、ときとしては意見が和対立するという場合もあり得るわけでございます。ある問題について意見が相対立した場合におきましては、その問題の解決のために、公正なる第三者機関の意見に従うということが、制度の根本であろうと思うのでございます。今回の改正におきましても、こうした意味における人事院の機能というものは完全に保持されているわけでございまして、ただ職員組合の自由が認められ、団体交渉が認められておりますのに対しまして、従来から政府の部内におきましては、これの交渉に当たるべき機構、そして労働組合の意思を十分に法令の上に反映し、もって労働者の利益を保護する、そういうふうな政府自体の機構が欠けておったわけでございます。この点は、この機会に人事局を創立いたしまして、そしてその人事局にこの仕事を担当させていく。つきましては、従来、政府部内で担当すべき部局がなかったものでございますから、便宜人事院に担当させておりました事務は、本来政府が直接処理することが適当であるものが多いのでございますので、これらの事柄を人事局にこの際移すというわけでございまして、人事院の主たる使命はいささかもこれによってそこなわれるものではない。労働者の権利は完全に公正なる第三者機関たる人事院によって引き続き擁護され得るものと政府は考えておるのでございます。
  359. 小林進

    小林委員 私は残念ながら労働大臣の御答弁に決して満足するわけにはいきません。そういう結論的なお話を出されても納得できません。そこで私は、政府考え方の矛盾を一つずつ解明していきたいと思うのであります。  まず第一に、池田総理大臣は、わが党の河野密先生の質問に答えてこういうことを言っておるわけです。「私といたしましては、人事院はその本来の性質として公務員給与の改善勧告、試験その他基本的な問題を取り扱う中立機関にしておいて、そのつくられた基準に基づいての実施面は内閣に人事局を設けて担当していくことが実態に沿い、公務員にも親切な行き方であると考えまして、御審議願うことにいたしておるのであります。」使用者が労働者からストライキ権も団体交渉権も取り上げておいて、今度はその代償機関たる人事院のそれまでも取り上げておいて、使用者みずから権力を持ち、使用者みずからが労働者の給与その他を決定すること、それが一番親切な行き方なのだという考え方、そういう理論構成は、いまの近代的な労使関係ではありません。すべての労働法規というもの、一切の仲裁機関というものを否定する、これは私はおそるべき暴言だと思うのです。そんなことは昔から言いました。使用者が、私が使用人に対して一番親切なんだ、使用者が使用人を直接使って何もかもやること、これが一番親切だという言い方は、これは奴隷時代における慈悲深いだんなざまや、封建時代における君主制の殿様が言ったことばですよ。かれらから戦う権利も団体交渉する権利も全部剥奪しておきながら、私が臣民に対して一番親切なんだ、私が一番慈悲深いだんなさまでございます。君主、皇帝でございます。そういう言い方と私は同じだというふうに考える。どうですか、大臣、この私の考え方は間違っておりましょうか。
  360. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回人事局において所掌しようという仕事の大部分は、従来各省大臣の手元で個別的に行なわれておった事柄なのでございますが、政府といたしましては、やはり内閣で一元的に処理するということが適当である、かように考えまして、特に人事局を新たに設けようという趣旨なのでございまして、従来から国家公務員の職員組合におきましても、団体交渉と称しまして政府にいろいろ交渉に来ておられます。これに対しまして、政府には、その団体交渉に応ずべき適当なる機関としては、各省ばらばらに取り扱うほかはなかったわけでありまして、そういう意味で組合側も政府側も大いに改善を希望いたしておったところなのでございます。今回の人事局の設置ということは、私は、これによって従来欠けておった人事管理上の責任体制を確立することになる、したがって、池田総理お答え申し上げましたごとく、公務員全体の利益を守ることになる、こう思うのでございます。
  361. 小林進

    小林委員 ただいまの答弁も、やはり前々からの労働大臣の御答弁と本質的にはちっとも変わっていない。前回にも労働大臣は、いまと同じですが、こういうふうな回答をせられている。現在の公務員のあり方、全体の奉仕者たる性格はわが国として変更すべきではない、むしろ、かような意味でその勤務条件はできるだけ擁護改善すべきである、現在の日本の行政組織からいって、人事院の現状は公務員の利益の保護という点で不十分である、こういうことを言っている。いまの御答弁もやや同じであります。ここでお伺いをしたいのは、現在の人事院の機構が不十分であるとおっしゃる前に、その人事院が政府と公務員の独立機関として設置ざれたその立法の趣旨一体あなたはお認めになるかどうかということであります。その立法の趣旨承認せられるかどうかということを私はまずお伺いしておきたいのであります。
  362. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど来申し上げましたごとく、国家公務員の争議行為の制限、これに対する公務員擁護の代償的措置としての人事院の機能というものは十分に理解いたしておるつもりでございます。
  363. 小林進

    小林委員 労働大臣は、その人事院がいわゆる労働二権の代償機関として設けられたという立法趣旨を正しく御理解になっているならば、その人事院に不十分な点があるならば、その不十分な点を改めるという方向へ法律改正を持っていくのがほんとうじゃないか。公務員の利益を保護するに不十分であるというならば、その公務員の利益を擁護するという、そういう方向に向かってその立法趣旨を生かしていくというのが、近代的な労使関係を正しく伸ばしていく本然の姿ではなかろうか。たとえば、人事院の勧告が仲裁裁定のごときものよりもっと労使関係を拘束するような、そういう大きな権限を与えていくとか、政府に対してもっと独立した、もっと強い権限を与えていくとか、準立法的権限をさらに付与していくとかいうふうな、そういう形で労働者の権利を保護する方向に持っていくのがほんとうじゃないか。いかがでしょうか、私の考えは間違っておりましょうか。
  364. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私は小林委員のお考え方が間違っているとは思っておりません。それも一つ考え方であると思っているのであります。しかしながら、私といたしましては、日本の行政運営の現状から考えまして、内閣から独立いたしました人事局の力というものにはおのずからある程度の限界があるのではなかろうか、そのことが、従来から人事院の勧告が完全実施を得られなかったという一つのもとにもなっておるのではないかと考えるのでございまして、私は、人事院の力を十分に発揮いたしてまいりますためには、今後内閣に人事局を設けまして、人事局と人事院が内外相呼応して労働者の利益を守っていくという体制をつくり上げることが絶対に必要だと、かように確信をいたしておるのであります。
  365. 小林進

    小林委員 今後の公務員のために人事局をお持ちになるといって、人事局と人事院を兄弟相ともにして公務員の利益を守るとおっしゃるけれども、私はこれは暴論だと思っている。人事局は政府の一機関ですよ。人事院は第三者機関です。それとこれとをごっちゃにざれることは、労働者にとっては、はなはだ迷惑しごくです。そんなような考え方にこそ、労働者の利益がそこなわれる大きな危険があると私は思う。労働大臣はそこまでいくと、どうも事態を混乱されるのじゃないかと考えざるを得ない。いまの答弁関連いたしまして、それと同じようなことをこの前もあなたはおっしゃっておる。あなたはこういう答弁をしていらっしゃる。「人事院が公務員の利益を保護し得ない理由は、行政全体は政府が責任を負っているわけで、人事行政も例外ではない。その政府が人事行政に積極的役割りを果たすには、公務員擁護の上から当然で、責任あるものにその責任を実現するだけの組織と権限を与えることは、行政責任を明確にするゆえんである。」私はこれまではいいと思う。その次が、「これにより日本の人事行政が改善され、公務員の権利、利益の擁護は確保ざれると思う。」これは三十八年の七月五日の、この前の特別委員会であなたが答えられている。これは私は重大発言だと思うのです。前のほうの、政府は行政全般の責任者であるから、人事行政に責任を持つのは当然である、その責任を果たすために、組織と権限を持つのが行政責任上当然であり、それによって日本の人事行政が改善されるという、とこまでは私は一応認めるにやぶさかなものではありません。これは、あに政府という使用者のみならんや、会社だって、会社の重役あるいは執行部というものが、会社の業務全般を執行する責任者であるから、その会社の労働者の人事行政に責任を持つのは当然だ。その責任を果たすために組織と権限を重役陣が持つのはまた当然である。それによって会社の人事が改善されるといわゆる執行者が言うのもこれは会社の社長が言うのも、行政の責任者たるあなたがおっしゃるのも同じだ。ただそのあと、これによって労働者の利益が守られ、労働者の利益が保護されるという、そこに行政と労働者保護とを混迷した大きな間違いがあると私は思う。その管理者や使用者が人事行政を責任を持つことによって、往々にして使用者によって労働者の利益がそこなわれる。そこに不当な弾圧が加えられるという、それが労使間における数百年、もっと砕いて言えば数千年かもしれない。そういう関係を、経験の上に立って、使用者の労働者に対する使用権を制限して労働者の利益を守らなければならないという労働三権を与えている。その労働三権が公務員の立場において完全に使用させるわけにはいかないということで、ストライキにかわる第三者機関を設けた。それを全部否定をした規定です。ところが公務員、会社でいえば労働者を、あなたが直接お使いになっておることが、労働者のために一番しあわせになり、その利益を擁護するのであるという理屈は、いままで数百年、数千年の歴史を繰り返している。ここまでたどりついた、この労働者と資本家に対する仲裁の根本的な理念をここで根本的に破壊し否定をしておる考え方になるのじゃないですか。繰り返して言う。あなたは一般行政としての責任者と、労使関係における使用者という立場を、ごっちゃにしてお考えになっておるのじゃないかと思うのですが、いかがですか。
  366. 大橋武夫

    大橋国務大臣 小林委員のお説には一つの飛躍があると思うのでございます。もし私が、今日人事院を全廃いたしまして、内閣人事局一本で政府の人事行政をやっていく、こういうことならば、確かにあなたの言われるとおりだと思います。しかし私がいま申し上げておりますことは、政府といたしましては、人事院の公正なる第三者としての中立機関、その機関を現状のまま存続し、その機能の主要なるものは依然として残して置きながら、そのほかに内閣の中に政府全体の人事行政の責任を持って当たるべき機構を新たにつくり上げよう。外にあっては人事院、閣内にあっては人事局というものが、今後両々相まって、公務員の利益、権利を擁護していこう、こういうことを私は申し上げておるのでございますから、小林委員の言われる結論とは、全く結論が違ってくるのも当然だ、こう思うのでございます。
  367. 小林進

    小林委員 大臣は人事院を廃止をしないところにウェートを置いて、それが近代的な労働関係に何らの影響がないように言われましたけれども、私はそのお答えもちょうだいするわけにはいきません。何といっても近代的な労使関係からいえば、結論はきわめて明白だ。団交権、ストライキ権を政府、使用者は剥奪をした。その代償として人事院を設けた。そして政府は人事行政その他の権限を人事院に供出した。労働者もそれに相呼応して、団体交渉権とストライキ権を人事院に供出した。こうして労使ともに均衡を保ちながら、その人事院が十分に権限を発揮し得なかったところに問題がある。その問題は別だ、ともかく労使ともどもに人事院に貴重なる権限を供出しながら、一応労使の均衡を保ちながら今日まできた。それが今日の改組によって、政府は人事院から労働者に対する人事権を取り戻すならば、一方労働者も当然団交権、ストライキ権を労働者に取り返さなければ、均衡ある改組とは言えない。私はこの人事院の改組をおやりになるならば、いま私の申し上げました公平の原則によってのみ改組をしていただかなければ不公平です。そういう不公平なことを残念ながらわれわれ認めるわけにいきません。  そこで、ひとつきめのこまかい質問を繰り返しますけれども、労働大臣は人事院をそのまま存続して、ちっとも権限を縮小しないようなことをおっしゃいましたけれども、一体人事院の中からどんな仕事を人事局にお移しになるのですか。私が申し上げましょうか。職階制でしょう、任免でしょう、勤務評定、研修その他能率制度、分限、懲戒及び服務、私企業からの隔離、政治的行為の制限もその中に入っておる。政治的行為の制限も取り上げられ、勤務条件も取り上げる。給与の実施、労災補償の実施等、ほとんど労働者の基本的な権利に関するものが全部取り上げられるじゃないですか。一体現在の人事院で残っておるものは何だ。大部分はみんな人事院から取り上げておる。そしていま申しました人事院規則で定められているものがこの規則をはずれて政府の手にいって、いわゆる政令という形、その時の政府の思いどおりの政令という形で、これが全部きめられていく。この任免、分限、懲戒の基準の設定、職階制、研修、政治的行為の制限等に関する事項は、現在人事院の公正確保特に公務員の身分保障及び利益擁護、中立制の確保の見地からはこれは絶対に譲られない重大なポイントです。人事院の仕事の中核をなすものです。その中核たるところの仕事をそっくり持っていってしまうじゃないですか。そこで一体どうしてこれで、第三者機関があって労働者の権限を、労働者の利益を使用者の手から守ることができるという理屈になりますか。労働大臣、この点をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  368. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回人事局において所掌することになりまする仕事というものは、おおむね現在各省大臣の手元においてばらばらに現実には行なわれておる仕事でございます。懲戒とか分限とかこうした勤務条件の問題、こういうようなものはおおむね現在は各省大臣の手元におきまして各省それぞれに行なわれておるのでございまして、これを内閣調整をとっていくということが人事局の設置の理由に相なっておるわけなのでございます。これについての人事院の現実の仕事というものは、今後におきましてもやはり苦情処理等を通じまして従来どおり権威を持って行なわれるわけでございまするから、その点は公務員の擁護の立場からいって心配の必要はないと思うのであります。  また、給与その他の労働条件につきましては、元来、現状におきましては、法律によって国会に御決定をいただいておる事柄でございまして、この立案等につきましてはもともと人事院でなく、政府の責任でやっておることでございまするが、これにつきましてはやはりこの際機構を、人事局をつくる機会に責任を明らかにしていこうという趣旨でございます。要するに公正なる第三者機関としての人事院の存立意義は、何らこれによってそこなわれるものではございません。
  369. 小林進

    小林委員 各省において行なわれたことをただ人事局に集約されるだけであるという御答弁は、私はいただきかねる。しかしあるいはそうかもしれませんけれども、その根本には人事院規則というものがある。人事院規則という第三者の厳正中立な、しかも労働者の利益を守るという立場で決定ざれたその基準に基づいて、各省の運営がせられておる。今度はその人事院規則をみんな政府が取り上げて、政令という名前で懲戒から全部おやりになる。根本から政府自身が権限をお出しになるのでありまするから、それは従来とは本質的に形が変わってきます。しかも第三者機関として人事院に何が残るかとおっしゃれば、いま残るのは試験と公平な審査です。入れるときの試験、それから審査、いわゆる出口であります。入り口と出口だけだ。そのほか給与につきましても、給与の権限は一切政府がお持ちになる。単に勧告だ。その給与に対する不満があったときには人事院が勧告するというそれだけの権限、それから新しい法改正に基づくいわば職員団体の登録関係、これだけを扱うくらいなんです。これは第三者機関としてどれだけの一体発動があるのですか。全く骨抜きではありませんか。私はこれくらい、試験やあるいは公平審査や職員の登録くらいをやらせるために人事院を残すならば、この際一挙にこんなのをむしろ廃止されたほうがよろしい。大臣が言われるように、私はこれを廃止をざれたほうがよろしいと思う。廃止をされて、明治憲法時代にあったように、明治憲法時代の官吏制度のもとに置かれた高等試験委員会——あなたなんかやっぱり高等試験委員によって高文をとられてこっちへこられた、あの高文の試験委員会あるいは普通試験の委員会、あるいは懲戒委員会、分限委員会、こういうような機関を置いて明治憲法の時代に返したらいいじゃないですか。そのほうがむしろすっきりいたします。そういうようなときにおける、明治憲法下における官吏というものは、御承知のようにこれは国民の官吏でも人民の官吏でもなかった。人事院のない政府のもとに舟等試験委員が置かれたときの高文をとってこられたあなたたちは、天皇の官吏であった、天皇に忠誠を誓う官吏であなたたちはあった。いっそのこと昔に返して、天皇はもはや天皇の権限はなくなったんだけれども、今度はかわってそういうふうな政府のもとにおける試験制度によって出てきたその官吏は、今度は政党内閣に属する国家公務員という形になってくる。あなたたちの試験によって、政党内閣によって適当な試験を受けて出てくる国家公務員は、天皇に忠誠を誓うかわりに直接の権力者たる時の政府政党内閣に忠誠を誓うそういう公務員にならざるを得ないし、むしろここまで改組をせられるならば、いっそのこと明確にこれからの公務員は天皇の官吏から政党内閣に忠誠を誓う官吏に、公務員になるのだ、こういうふうにはっきり銘を打たれたほうが、私ははっきりしていいのじゃないか。いかがでございますか。
  370. 大橋武夫

    大橋国務大臣 今回の改正案の趣旨先ほど来申し上げたとおりでございまして、私は小林委員の御意見に賛成するわけにはまいりません。
  371. 小林進

    小林委員 それではお尋ねいたしまするけれども、一体職員の任免を——おっしゃるようにさっきから任免権から全部お出しになったのでございますけれども、その職員の任免権を人事院から取り上げて、政党——政党と言っちゃ悪いけれども、いまの内閣政党内閣なんでありますから、政党と裏表です、先ほども言うように。だから政党がおやりになる、それで一体公務員の公平、中立性が保たれますか。総理府の中に人事局をお設けになるのでございましょう。おそらく総理府総務長官の配下に人事局が置かれる。責任者は総理府長官だ。総理府長官は何だ、政党の中から選び出される政党内閣の一員なんだ。その政党内閣の一員がいわゆる長となって公務員の任免をおやりになる。これで一体どうして公務員の中立性、行政の中立性が保たれますか。私は保たれないと思うのであります。保たれるというならば、その理由を納得できるようにお聞かせ願いたいと思います。
  372. 大橋武夫

    大橋国務大臣 任免権は現在でも政府すなわち各省大臣にあるわけでございまして、この点につきましては現状どおりでございます。特に変更する考えはございません。
  373. 小林進

    小林委員 変更することはないとおっしゃいますけれども、現在の任免の根本的な基準として、採用や任用や昇進等には、一定の基準というものが、この第三者機関にあることが、ちゃんと人事院の中に置いてある、人事院規則の中にある。それが今度は内閣に取り上げられて、その基準、任用や採用や昇進などという基準は、政令や閣令だ。政党内閣の政令や閣令によって、これが定められ、政党大臣がその権限を掌握することになる。そうでございましょう。そうすれば、人情のおもむくところ、当然自己の政党に忠節を誓う者が昇進をしたり重要視されたり、あるいは出世したりするようなことは、常識として考えられるじゃありませんか。私は、この弊害を一体どうして防いでくれるのですかと言うのです。
  374. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のとおり、公務員には一定の資格が必要でございまして、この資格をとるためには試験制度が一般に行なわれておるのでございますが、この根本になります試験は、依然として人事院の権限に残されることになっており、試験の結果、各省において充員に際して採用すべき候補者名簿の作成というものも、引き続き人事院に残されるわけでございます。したがいまして、任用につきましては従来と何ら変わるところはないのでございまして、国家の官吏が政党の官吏になるなどということは、絶対にあり得ないことでございます。
  375. 小林進

    小林委員 私は、試験制度が人事院に残されることは、先ほども申し上げました。試験制度が残されているから、入り口だけは残されている。そして出口も残されている。しかし、その中の一切の中身は持っていかれたんじゃないかと先ほど来言っておるのであります。昇進もない、任免もない。そういうことは全部政府がおやりになる。そのおやりになる基準は、いわゆる政府でおきめになる政令だとか閣令というもので基準を定めておやりになるのだけれども、それは第三者機関が定めていた基準から見れば、だんだん政府に都合がいいものに変わっていくことはあたりまえじゃないかと私は言っている。しかも基準だけじゃない、その運用も政府がおやりになるのでありまするから、基準の面に政府に都合がいいようないわゆる政令、閣令ができる危険があれば、運用の面において、さらにそれが政府に都合がいい方向に持っていかれる危険があるではないか、これを言っている。そう言うとあなたは、救済機関があるとおっしゃるでございましょう。救済の規定があるじゃないかとおっしゃるでございましょう。なるほど、現実に反した人事があったときは、救済規定によって、本人が不利益処分を受けたと言えば、その理由書を交付することにはなっております。それだけはありますけれども、そんなことの不平を述べて、そしてこれこれでおまえを処分したという理由書をもらったところで、それで一体その公務員の昇進についてのきずあとがなくなるか。そんなことをやれば、あとからにらまれてたいへんだというので、そんな救済規定なんというのは空文化して、だれもやらなくなってきますよ。だれがやるか。ただ、それよりは、もしやったとして毛、こういう救済の規定が人事院に残されていたとしても、予防的な効果は一つもありません。いまこそ、第三者機関があって、そういう昇進や任免やすべての問題、任用の面も公平に見てくれるというから、彼らはその公平に準拠しているけれども、政府がおやりになるなんといったら、まずまず政治の不公平に対する牽制、予防という効果は全くなくなってしまって、これは早く時の政府にこびを売って、犬のようにひとつ早く政府の権力者にくっついて昇進の道をはかったほうがいいという人間の弱点、公務員の弱点が露骨にあらわれてくることは、これは私はいなめないと思う。いま人事院があったって、現実に国家公務員の姿はどうですか。私は、一般労働組合や公務員組合に組織されている下級の職員に対しては、その弊害があるとは言いませんけれども、まず課長以上の官僚と称するものなんかというのは、第三者の人事院機関があっても、ほとんどまず政党の準使用人くらいの形に変わりつつあるという弊害は、これは私は労働大臣も否定されないと思う。政党政治が、三党も四党もあって、それぞれ相拮抗しているときにはまだいいけれども、いま、一つ政党が政権を握って、野党に政権が回らない、長期にわたって自民党という政党が天下をとった、その第一の弊害がどこにあるかといったら、私は、国家公務員の中立性が失われたということなんです。一つ政党が長く政権をとったその弊害として、彼らは、国民に忠実に奉仕をするという性格を失っている。いつの間にやら政党に奉仕をする、政党に使われているという形があらわれている。これは長い間における一つの大きな弊害だと私は思う。この弊害をさらに露骨に助長していくのが、この人事院の改組、政党内閣による人事の管理にあると考える。大臣いかがですか、いま私が申し上げました、一つ政党が長い間政権をとっていると、公務員のいわゆる国民に奉仕するという中立性が失われつつあるというこの考え方は。どうか、私も感情で申し上げておるのではないのでありますから、大臣も、ひとつ正確なお答えをいただきたいと思うのであります。
  376. 大橋武夫

    大橋国務大臣 まず申し上げたいことは、現在の官吏の任用制度といたしまして、課長以上、三等級以上につきましては、人事院の選考によって行なっておるのでございまして、この点は改正後も変わらないのであります。なお、それ以下の官吏につきましては、現在においても各省限りにおいて行なっておりますが、今後におきましても、この点は、内閣人事局において特別の考えがない限り、特に変えるつもりはございません。  それから、もう一つ大事な問題は、国家公務員の政治的中立性がなくなりつつあるではないかという点でございますが、自民党は、申すまでもなく、国家の官吏につきましては、最も厳正なる政治的中立を要求することをモットーといたしておるのであります。将来、社会党内閣になった場合、あるいは、かつての社会党内閣の時代はいざ知らず、自民党内閣の続く限り、この点は絶対に国民諸君とともに御安心願って差しつかえないと思います。
  377. 小林進

    小林委員 これは重大問題です。重大問題ですが、労働大臣も公の場合ですから、やはり政党の閣僚としては、それぐらいの答弁をしなくちゃならぬだろうと思いますけれども、私は、心の中では、現在の高級官僚が、正しく国民に奉仕をし、行政法でいう行政の中立を守っていると大臣はお考えになっていないと考える。もしいるとすれば、惜しいかな、大臣も、長い間権力の座にすわって、とうとうどうもその清純さがよごれてきた結果である、こう判断しなければならぬ。いまあらゆる選挙を通じてもわかります。しかし、私どもは、政権を離れて、長い間とれないから、あまりそれを言ったのじゃ、引かれ者の小うたみたいになりますから言わぬけれども、実際高級官僚が——大衆あるいは国民に奉仕するという中立の観念を持っている役人を私一、二知っておりますけれども、こんな者は実にとうとい存在です。貴重な存在だ。そういう貴重な存在が、私は、高級官僚にいることも少数は知っておりますけれども、大半はみな政党に尾っぽを振って、いかにして政党の権力者にこびを売って出世街道を進むかという、そういう観念だ。それもだんだん病膏肓に入って、今度は、政党の実力者の中に行って、役人みずから、現職にありながら、おれは河野派だ、おれは佐藤派だ、おれは何々派だ、そういうところまで分かれていって、もはや国民のためにお仕えするなどという考えは全くうせている、おそるべき現職の役人が、至るところにあふれているじゃありませんか。こういうような現実を大臣が御否定になるというなら、私は、いままでいささか信頼いたしました大飯に対する見方も若干変えてこなくちゃならない、そういう感を深うするのでありますけれども、まあこういう論争を繰り返しておりましてもなんでございますから、私は、重大なポイントだけ一つ申し上げて、結論を急ぎたいと思うのであります。  この公務員の中立性を失う中で、私は一番惜しいのは、職員の研修事項であります。教育訓練、この権限を人中院から取り上げて、政府がこれを実施せられるのでありまするけれども、これは必ず政府がおとりになれば、時の内閣に都合のいい教育、訓練、研修をおやりになることは、これはあたりまえでありましょう。各省の教育も全部これは人事局で、先ほどのお話のとおり統一してやられることになるのでありますけれども、こういうような研修教育をやられれば、それは目に見えてわかることは、いままで人事院が各種の研修をやったときに来た講師なども、私は形は変わってくると思う。政府の都合のいい講師——中立的な講師、政府に苦言を呈するような講師というものは、私は必ず省かれて、やはり政府に都合のいいような教育だけが行なわれる懸念がある。こうして、いままでは人事院が、相当政府の牽制を受けながらも、あらゆる角度から考えて公正中立な講師を招いて、公務員大学という考え方教育をいたしましたこの教育が、今度は自民党大学あるいは自民党内閣、こういうような形に変貌していくであろうということを私はおそれるのでありますが、この点いかがでありますか。そういうようなことに対して中立が守られていくという確信がありますか。
  378. 大橋武夫

    大橋国務大臣 研修の目的というものは、官吏として国民のために最も忠実にして能力のある人材を養成しようというのが目的でございまして、あらゆる政府の研修におきましては、まず公務員の根本的な心がまえでございまする政治的中立性の確保ということが、この研修の根本精神に相なっておるのでございます。少なくともこの内閣考え方はきようでございますから、御安心をいただきたいと存じます。
  379. 小林進

    小林委員 ちっとも安心することはできないのであります。ますます不安を強めてくるのでございまして、そういうような政党政治内閣が公務員の教育をされるなんということになれば、それは国民に奉仕するという名のもとにおいて、だんだんいまよりゆがめられていくという危険を強める。大臣の御答弁に何らの私は信頼を持つわけにはいきません。  なお、次に給与についても、これがまた人事院から取り上げて人事局に移されることになっておるのでありますけれども、もし人事院から取り上げて人事局に給与の権限が移るとしたら、あるいは使用者との話し合いにおいて大幅に給与を引き上げるようなことになったときに、一体その予算措置をするとか、あるいは別途の方法を講ずるような、そういう救済の方法はありますか。人事院にあるときには、まあ一応権限がなくとも勧告というものがあって、その勧告をいれるためには、いまも出ているように、不満足でありますけれども、——いま出ていないか。そのうちに出るでしょうけれども、出れば勧告というものに対してあるいは補正予算を組むとか、何らか政府を政治的に拘束する権限があった。今度は人事局になったら、何にも勧告権なんかない。労働者のベースアップの要求があったところで、それは話し合いには応ずるだろうけれども、それをいれて予算的措置を講ずるとか、その要望にこたえるとかいう救済規定は何もないじゃないですか。話を聞いておこう。総務長官か、あるいは人事局長か、そうかそうか賃金が安いか、それは困ったな、何とかしましょうと、団交において話を聞いているだけで、じんぜん日を過ごしていればいいという、そういう形しかこれは出てこないじゃありませんか。いかがですか。
  380. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府案を十分御検討をいただきたいと存ずるのでございますが、政府案におきましては、人事院の給与に関する勧告権あるいは労働条件に関する勧告権等人事院の最も大切な機能は、従来どおり人事院に存続することに相なっておるのであります。ただ変わるところは、従来人中院には給与について勧告の機構があり、勧告の制度がございましたが、これを受け取って実施すべき政府の機構として、人事局のごとき有力なるものがなかったために、十分に実施を見ることができずにおったというような遺憾な点があったのでございまして、私は、こうした欠陥をぜひ是正するという意味におきましても、人事局の設置が絶対に必要である、また公務員全体を擁護するために有益である、こう確信をいたしておるのであります。
  381. 小林進

    小林委員 私は、給与に関する人事院の勧告権をおとりになったとは言っていない。勧告権は決してお取り上げにはならない。それは残しておりまするけれども、いわゆる実施権であります。実施権を取り上げられて勧告権だけ残したところで、それが正当に発動することができるかどうかということであります。それは大臣答弁だけの問題でございますよ。実施権は取り上げられて勧告権だけが残っても、それは実をとられた、からだけ残ったようなものであります。いわば通用しない権力だ。そんな勧告権なんかあったところで、実施権がないのだ。あたりまえですよ。各省だって、人事院なんかに正当な統計なんか出しませんよ。人事局というものがあるのだから、それが交渉の相手なんですから、だれが一体人事院あたりにまともになって、勧告するために必要だから資料をよこしてくれ、統計をよこしてくれといったところで、各省がまともにそんなものを受け付けますか。私は、人事院が勧告のために新しい調査をやるから資料をくれといったって、いままではその給与の資料に基づいて、政府とは独立していわゆる給与の実施権を持っていてくれたからこそ、各省も一生懸命になって人事院にみな協力いたしましたでしょうけれども、実施の権限が離れてしまって、勧告権だけはあるといったって、実際いわゆる資料の提供や調査に応じたり、統計に応じたりするまじめな態度は私は期待できぬと思う。その点は重要なるポイントであります。どうでありますか。この点はむしろ労働大臣よりは、人事院総裁、どうですか。——いや、待ってください。あなたじゃなくて——まあいいですよ。給与の実施権をとられて勧告権だけ残されたときに、正当な勧告ができるかどうかということです。
  382. 倉石忠雄

    倉石委員長 政府の見解を聞きましょう。  大橋国務大臣
  383. 大橋武夫

    大橋国務大臣 人事院総裁からもお答えがあることと存じますが、政府といたしましては、ただいま小林委員は実施権がなくなって勧告権だけ残ったのは、中身がなくなって、からだけ残ったようなものだ、こう言われるのでありますが、私は従来から、人事院の勧告政府によって完全に実施されるに至らなかったという事実を非常に残念に思っておるのであります。それにつきましては、やはり勧告を受け取ってこれを完全実施に移すだけの十分なる機構組織というものが政府に欠けておったということを反省いたしておるわけでございまして、今回の人事局の設置ということにつきましては、この点を是正する一つのよすがになるものと期待をいたしておるのでございます。したがって今回の改正は、からだけ残って実がなくなったというのでなく、その実を十分に食べていただくために要らないからを取り払うようなものだ、こういうように逆にお考えいただいてよろしかろうと思います。
  384. 佐藤達夫

    ○佐藤(達)政府委員 きわめて現実的な立場からお答えいたしたいと思います。  現在の法制のもとにおいては、御承知のように勧告権が与えられております。そのほか、給与関係について申し上げますが、給与法に基づきまして、相当大幅な基準的な事項を人事院規則におまかせいただいております。なおそのほかに、各省間の給与の調整の仕事という方面もおあずかりしておるわけです。そういうような一連の給与に関する仕事を背景にいたしまして、きわめて地についた、と私が申し上げるのは、はなはだ僭越でございますけれども、勧告をするにいたしましても、それらの平常の体験が背景となりまして、まず筋の通った勧告ができておったと私どもは考えておるわけでございます。ただいまの改正案のようになりますというと、勧告権だけが残されまして、その他の権限はすべて人事局のほうに移されてしまう。現在給与局におります人間は、百人足らずでございます。これが勧告作業のための調査のほかに、ただいま申しました給与関係の規則の制定の関係、それからその他いろいろな手当あるいは各省間の事務の連絡というようなことで、みな手分けをしてやっておるわけでありますが、いざ勧告の時期になりますと、これらの百人の者は平素の任務の分担にかかわらず、全部一丸になって勧告作業に集中して、そうしてやっと皆様にお口にかけられるような勧告案ができておるわけです。これがいま申しましたように、仕事の面において大幅に人事局に移され、人間において当然またこれは移されるわけでありますが、これでしっかりした、信頼性のある勧告ができるかどうか、これはわれわれの努力次第だということにもなりましょうけれども、私どもはそういう現実の面から申しましても非常に深い心配を持っております。
  385. 小林進

    小林委員 しごく明快な御回答があったと思うのでございまして、これが私は実情だと思うのです。そういうところを大臣は巧みにおやりになると思うけれども、他人ならばいざ知らず、私はそうごまかしに乗るわけにはいきません。  なお、時間のこともありますので一つ質問申し上げまするが、私はこの人事院改組の問題について一番の重点は、政治行為の制限だと思う。これもいままでは人事院がお持ちになっていた。これを今度は政府がお持ちになる。一体政治活動とか政治行為のそういう基準などというものも、これは運用によってどうにも解釈できる。時の政党によってあるいは制限を受けたり、政権、政党に都合のいい、そういうような政治活動をした者は大目で見ていくという、運用の面においても私はいろいろえこひいきが出てくると思うのでございまして、こういうような政治活動の制限に関するような、その権力を人事局を通じて政党のもとに持たれるということは、私はこれはとんでもない結果になる。もう役人などというものは、選挙でも始まろうものなら、それを出世のチャンスだと思って、一生懸命に政党や政治家のために犬馬の労をとる。いまだって高級官僚はみなとっておるのでありますけれども、露骨なそういうありさまが出てくる。しかもそれを制限したり、チェックしたり、規制するような何らの機関もなくなってしまう。これは必ず出てきますよ。それでよろしいのでございますか。
  386. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは意外なことを承ったような気がするのでございますが、私どもは政治活動の自由というものは、国民一般に認められた基本的な権利だと思うのであります。しかしながら国家公務員の性質上、ある程度の制限をつげることはやむを得ない。そこで現在では人事院規則をもってその制限をいたしておるのでございまするが、何分にも基本的権利の制限という民主国家においては重大なる制限でございますから、これを行なうにあたりましては慎重の上にも慎重に検討し、手続としても最も大切な手続を通じて定めるということが適当ではなかろうか、そういう意味で人事院規則でなく、法律によって国会におきめをいただきたい、これが今回の制度改正の骨子でございます。
  387. 小林進

    小林委員 ほう、それは私は初耳でございます。政治活動に関する制限を法律でおやりになるという話は、私は初めて聞いた。風のたよりで、何か倉石さんだとか河野さんだとかいうその話し合いの中で、若干これを人事院か何かに残すという話は聞いておりましたけれども、法律事項にするということは初耳でございまするが、いかがなものでございましょう。
  388. 大橋武夫

    大橋国務大臣 先ほど私の申し上げましたるごとく、政治行為の制限につきましては、今回の改正案は、制限すべき行為は法律でもって国会でおきめをいただきたい、こういうのでございまして、国会がその法律をおきめいただきますまでの間は、現在人事院規則できまっておりまする制限規定をそのまま法律に読みかえていこう、こういう趣旨であります。したがって政府がかってに政治行為の制限はできなくなるのでございまして、改正案が通りましたならば、今後は政治行為の制限は必ず法律によらなければならぬということに相なるわけでございます。
  389. 小林進

    小林委員 まあ、政治活動については暫時の間は安心しておられますけれども、その行く先は非常に危険であります。それはそれといたしまして、その政治活動とは別個に服務、分限、懲戒、こういうような事項はそのまま人事局に移ることに変わりはないのでございますか、いかがでございましょう。
  390. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さようでございます。
  391. 小林進

    小林委員 さようでございましょう。そうすれば、その政治活動をもしかりに法律でおきめになったとしたところで、その政治活動がお気に召さなければ、分限、懲戒、あるいは服務等々のいわゆる名目で何ぼでもこれは政府の思うままに処分することができる。私は、政令があるとおっしゃったり、あるいは閣令があるとおっしゃったり、いかにおことばはなろうとも、こういう人事院の改組は、将来にわたっては生殺与奪の権を全部政府がお握りになる。首を切るのも自由、あるいは懲戒することも、まあ自由とはいきませんけれども、従来人事院にあるよりは手軽にできる。時の政府の、政党内閣の考えによって、まことに首切りも懲戒も、まあ意のままとまでは言えませんけれども、非常にやりやすくなっていくことだけは事実でございまして、その意味においても、私はこの人事院の改組の問題、ストライキ権や団体交渉権を剥奪せられたままで人事院を改組し、人事局を設けられることに対しては、どうしても賛成することができません。いかがでございますか。
  392. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御承知のとおり懲戒、分限等は今日各省大臣の権限にまかされておる事柄なのでございます。そこで今後はこれにつきまして、政府といたしましても十分に責任を持つ体制をつくる必要がある。そこでこれにつきましては、人事局において全般的な調整をとるようにいたしたわけでございます。もちろん人事院が公正なる第三者としての立場から、懲戒に関する規則あるいは分限に関する規則その他につきまして、政府勧告をされることは当然でございます。
  393. 小林進

    小林委員 どう答弁をいただきましても、私の疑問とすることは少しも解明をいたしておりません。なお、このたびの改組につきまして私はさらに多くの疑問の点を持っておるのでありまするけれども、同僚諸君がいろいろ言っておりますので、これらの問題は留保いたしまして、本日は一応私の質問は打ち切ることにいたしたいと思います。
  394. 倉石忠雄

    倉石委員長 安井吉典君。
  395. 安井吉典

    ○安井委員 この際資料をお願いいたしたいわけですが、ILOのエリック・ドライヤー委員長から、結社の自由に関する実情調査調停委員会委員長の井筒及び付属文書が政府にきているはずですが、あすの質問関係がありますので、あすの朝までにひとついただきたいと思います。
  396. 大橋武夫

    大橋国務大臣 承知いたしました。
  397. 倉石忠雄

    倉石委員長 それでは、明二十八日午前十時理事会、十時十分より委員会を開きます。  本日はこれにて散会いたします。    午後七時四十九分散会