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1964-05-20 第46回国会 衆議院 建設委員会 第30号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年五月二十日(水曜日)    午前十時五十分開議  出席委員    委員長 丹羽喬四郎君    理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君    理事 服部 安司君 理事 廣瀬 正雄君    理事 福永 一臣君 理事 岡本 隆一君    理事 山中日露史君       逢澤  寛君   稻村左近四郎君       大倉 三郎君    木村 武雄君       正示啓次郎君    中村 梅吉君       堀内 一雄君    山本 幸雄君       渡辺 栄一君    井谷 正吉君       金丸 徳重君    久保田鶴松君       楢崎弥之助君    西宮  弘君       原   茂君    玉置 一徳君       吉田 賢一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         建設事務官         (計画局長)  町田  充君  委員外出席者         農林事務官         (水産庁長官官         房総務課長)  三浦 善郎君         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 五月二十日  委員山崎始男辞任につき、その補欠として楢  崎弥之助君が議長指名委員に選任された。 同日  委員楢崎弥之助辞任につき、その補欠として  山崎始男君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 五月十五日  道路法の一部を改正する法律案内閣提出第一  七〇号) 同月十九日  二級国道一五一号線のバイパス線建設に関する  請願福井勇紹介)(第三七五三号)  河川法案等反対に関する請願外一件(下平正一  君紹介)(第三七五四号)  建設省西大寺工事事務所廃止反対に関する請願  (岡本隆一紹介)(第三七九五号)  同外五十一件(逢澤寛君紹介)(第三九六二  号)  宅地建物取引業法改悪反対に関する請願(永  末英一君紹介)(第三八六四号)  近畿圏整備法関連法制定に関する請願(山下  榮二君紹介)(第三八六五号)  関越自動車道建設促進に関する請願福永健司  君外十一名紹介)(第三八七三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  土地収用法等の一部を改正する法律案内閣提  出第一四五号)      ————◇—————
  2. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 これより会議を開きます。  土地収用法等の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  質疑を続行いたします。楢崎弥之助君。
  3. 楢崎弥之助

    楢崎委員 先日の委員会のときに、佐藤参考人から私の質問についてお答えを得たのですが、事業認定機関収用裁決機関は全然独立した別個の機関である、したがって、事業認定収用委員会拘束されることはないという見解を示されたわけですが、その点について、建設省のほうとしては、どのようにお考えでございましょうか。
  4. 町田充

    町田政府委員 収用法では、第四十七条に、収用委員会裁決態様が書いてあるわけでございますが、その一つの態様として、却下裁決がございますが、この却下裁決をいたします場合以外は、事業認定に従ってその事業に必要な土地範囲区域というふうなものを裁決をいたさなければならぬわけでございます。したがいまして、第四十七条に該当する場合以外は、事業認定機関が行なった事業認定について、その事業遂行に必要な範囲土地区域なりあるいは広さなり、そういうものについて裁決をしなければならぬ、こういうたてまえになっておるわけでございます。
  5. 楢崎弥之助

    楢崎委員 現行法の第二十一条には、事業認定者関係行政機関意見聴取しなければならない、そういうふうになっています。この意見聴取というのは、どの程度聴取をもってすれば、この二十一条を満足することになるのでしょうか。
  6. 町田充

    町田政府委員 事業認定はあくまで、その前の第二十条に書いてございますとおり、はたして第三条各号の一に掲げる事業であるかどうか、あるいは当該事業遂行する十分な意思と能力を有する者であるかどうか、あるいは土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであるかどうかということを審査の基準にいたしておるわけでございまして、こういった心証が得られるに必要な程度において意見を照会するわけでございます。したがいまして個々具体ケースについてでないと、一般的な判断はなかなかできませんが、一番問題になりますのは、何と申しましても、事業計画土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであるかどうかという点に重点が置かれるわけでございまして、そういう心証を得るに必要な限度において、関係行政機関意見聴取する、こういうことになるわけでございます。
  7. 楢崎弥之助

    楢崎委員 しかし、この法のたてまえは公益私益調整にあるわけです。そこに非常にデリケートな問題が出てこようと思うのです。その際に関係行政機関意見聴取する、ただ意見を聞くだけでこれは足りるものではない。その意見妥当性と申しますか、そういうメルクマールをどの程度重要視するのか、たとえば関係行政機関から、これは収用しては困るというような意見が出された際に、事業認定者はどの程度拘束されるのでしょうか。
  8. 町田充

    町田政府委員 意見聴取するわけでございますが、それが適切な意見であれば、もちろんこれを十分尊重いたしまして、最終的に事業認定権者事業認定する場合に、有力な参考意見として取り入れる、あるいはせっかくの御意見でありましても、最終的に、私益との調整も考えた上に、土地の適正かつ合理的な利用に寄与するものであるという判断をいたしますれば、事業認定機関事業認定する、こういうことになるわけであります。
  9. 楢崎弥之助

    楢崎委員 その際に、収用されては困るというような意見関係行政機関が出して、それでもなお事業認定が行なわれた場合に、収用委員会としては、その二十一条と関連して関係行政機関収用しては困るという意見を出したその意見を、どの程度参考にし得るか、私が当初申し上げたのはそういう意味なんです。収用委員会事業認定拘束されるかどうか。つまり極言すれば、収用委員会はただ単に補償の問題さえやっておけばいい、そういうものなのか。あるいは、事業認定妥当性について、さかのぼっていろいろ検討し得る権限があるかどうか。私は、事業認定機関収用裁決機関は上下の関係にあるのではない、収用委員会は独立した行政委員会ですから、独自の見解で、事業認定そのものもいろいろ検討し得ると考えるわけですが、どうですか。
  10. 町田充

    町田政府委員 収用委員会却下裁決ができます場合は、四十七条に書いてございますとおり、事業認定を受けた事業計画と、裁決申請があった事業計画とが非常に違っているという場合、それから「この法律規定に違反するとき」というふうに書いてございます。この法律規定に違反するというケースがどういうケースが考えられるかということでございますが、これは、全く事業認定に値しないという事業について事業認定があったというふうなことでございますれば、あるいは却下の原因になろうかと思います。しかし事業認定機関でそう間違った、全然事業認定をするに値しない事業について事業認定をするということは、ほとんど考えられませんので、「この法律規定に違反したとき」というくだりに該当することは、まずまずなかろうかと思います。したがいまして、おおむねのケースとしては、事業認定機関が正当な手続を経て認定した事業認定については、その事業認定前提として、その事業遂行するに必要な土地範囲区域というふうなものを裁決しなければならぬ、こういう関係になろうかと思います。
  11. 楢崎弥之助

    楢崎委員 もう少しはっきり言っていただいたほうがいいんじゃなかろうかと思います。私の質問も率直にやっておりますから……。いまのお答えですと、結局事業認定拘束されるということになるでしょう。事業認定そのもの批判できない、却下裁決のあの条項以外のものは却下できないんだという見解、そこで問題は、この法律に違反しておる場合、この法律という場合に、たとえば二十一条の意見聴取について、意見聴取が十分でないというような理由でその事業認定批判し、そして却下するということがあり得るかどうか、そういう点なんです。
  12. 町田充

    町田政府委員 第二十一条に基づきまして関係行政機関意見を求めます場合も、「必要があると認めるときは、」となっておりまして、事業認定権者が、これは関係行政機関意見を照会してみる必要があるという判断に基づきまして意見の照会をする、そういうこと、それからそういう意見聴取いたしました上で、事業計画がはたして土地の適正かつ合理的な利用に寄与するかどうかという最終的な判断に明白にあやまちがある、当然意見を聞くべきであるにかかわらず、意見を聞かないでやってしまった、あるいは一見明らかに土地の適正かつ合理的な利用ということからはほど遠いというふうに判定されるようなきわめて希有な場合を除きましては、認定権者である行政庁判断というものを一応尊重して、収用委員会裁決をする、こういうことになるのじゃなかろうかと思います。
  13. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何回もことばは少し変わっておりますが、内容はちっとも変わってないわけです。この辺は非常に重大な問題だと思うのです。私自身も、収用委員会に、ある県でいろいろタッチしたことがありますが、この点は非常に問題になりました。そこでもう一度重ねてお伺いしますが、一応は事業認定を尊重するということは、完全に拘束されるという意味ではないと解してよろしゅうございますか。たとえば、何回も言うようですけれども、関係行政機関がいわゆる収用反対収用されては困るという強い意見を出し、それが妥当な意見であるというような場合に、それでもなお事業認定が行なわれ、収用委員会はさかのぼって二十一条と関連をして、これは関係行政機関の言っておられる意見のほうがいわゆる妥当性があるというふうに認めた場合に、却下裁決がし得るかどうか。
  14. 町田充

    町田政府委員 事業認定権者意見を聞きまして、かりに収用反対だという意見が出てまいりまして、その結果いろいろ総合判断をいたしまして、それでもやはり土地利用が合理的かつ相当の理由があるという判断事業認定をいたしますとすれば、収用委員会としては、事業認定そのもの法律規定に違反するわけではありませんで、成規手続もとってその意見も照会し、したがって判断も加えて、最終的に事業認定をいたしたわけでございますから、この法律規定に違反しているとは言えないわけでございます。したがいまして、収用委員会としては、事業認定権者である建設大臣なりあるいは都道府県知事がした事業認定、これを尊重して、これを前提として、裁決をせざるを得ないその場合に、その事業遂行するためにはたして申請どおり土地の広さが必要であるかどうかというふうなことについては、収用委員会裁決で明らかにするわけでございますが、事業認定そのものを無効だというふうにきめてかかって、却下裁決をするというわけにはまいらないかと思います。もしそういう事業認定に問題がございますれば、別途行政訴訟なりそういう方面で争う余地はあるわけでございますし、収用委員会としては、一応事業認定権者がした事業認定に従って裁決をする、こういうことになるわけでございます。
  15. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、結局いまの局長お答えは、事業認定機関に完全に拘束されるということではないですか。そうでしょう。事業認定者はその二十一条に基づいて、あるいは二十条に基づいて、手続を終えた上きめたことだから、これは尊重しなければいかぬというお答えです。そうすると、結局事業認定機関拘束されることになるのじゃないですか。その辺をひとつはっきりお答えをいただきたい。
  16. 町田充

    町田政府委員 その事業に必要な土地範囲がはたしてこれでいいか、あるいはそんなに要らぬかというふうな土地区域とか範囲とか、そういうものについてまで拘束を受けるわけではございませんが、それが土地収用できる事業であるという、そういう判断については、それを前提として裁決せざるを得ない、こういうことでございます。
  17. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だから、結局収用委員会としては、範囲も含めて補償の問題、そういう点だけしか審議ができない、認定そのもの批判はできない、そういう御見解ですか。そうすると、そういう認定については完全に拘束されると私は思います。  そこで、もう一ぺん整理してみますと、二十一条で意見を求められた際に、その行政機関意見と、事業認定者意見が完全に違う場合でも、最終の判断事業認定権者がする、こういうことになっております。そうすると、関係行政機関との意見の一致は必要ではないということですね。
  18. 町田充

    町田政府委員 それはもちろん、事業認定にあたりまして、関係行政機関と完全に意見が一致することは望ましいわけでございますが、間々食い違うことがありましても、最終的な判断として、土地利用が合理的かつ適正であるというふうに判断しますれば、事業認定をすることは差しつかえないわけでございます。収用委員会としては独立の権限を持っておるわけでございますから、お互いお互いの処分を尊重して、お互いに干犯しないというたてまえで、この法制ができておるわけでございまして、収用委員会としては、事業認定権者がした事業認定というものには、拘束ということを盛んにおっしゃるわけでございますが、必ずそれについて何らかの裁決をしなければならぬという意味合いにおいては、拘束されるわけでございます。
  19. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、収用委員会裁決申請事業認定者がやって、そうしていよいよ収用委員会審議が始まる、そうなると、収用委員会に、被収用者は二週間以内にですか、意見を出し得るわけですね。その際に、いわゆる関係行政機関収用委員会に、意見を、最初の二十一条によって出したと同じ意見を出す、その際に、いまの局長お答えだと、収用してもらっては困るという、そういう認定に対する異論を出した場合、収用委員会はその審議はできないのですか。つまり被収用者が出す意見は、たとえば補償の額とか、あるいは収用範囲とか、そういう点だけにしか意見が出せないのですか。収用そのもの妥当性合理性について意見を出せないのですか。また、意見を出しても、収用委員会はそれを尊重しないでもいいのでしょうか、無視していいのでしょうか。
  20. 町田充

    町田政府委員 もちろん、その収用委員会関係者が提出し得る意見というのは、別段特段制限はございませんが、主としては損失補償の額に関する問題が中心になるわけでございます。そこで、かりに事業認定そのものを問題にするような御意見関係者から提出されたといたしましても、先ほど申し上げたような理由から、収用委員会としては、そこでその意見を取り入れて事業認定そのものをくつがえすということはむずかしかろうかと存じます。
  21. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのお答えは非常に片寄った、言い方によると権力的な姿勢ではなかろうかと私は思うのです。収用法精神にも少し、もとっておるんじゃないか。この収用委員会というのは、非常に民主的な機関として公益私益の均衡をはかる、調整をはかる、いかにして調整をはかるかというのがその精神であるわけですね。だからなるたけ強権対象物は限定をして、そして三条ですか、いろいろ公益事業を掲げてありますが、それに当てはまっておればすぐ収用対象になるんじゃないんですね。しかも二十条でなお公益性なり公共性が具体的に証明されないと、収用対象にならないわけでしょう。それほど厳格に、この強権の発動については、この法律は考慮しておるわけですね。それに、関係行政機関収用そのものについての批判が全然できない。収用委員会に対して意見も出せないそういう意見を出しても、収用委員会はその意見には一顧も与えないでいい。ただ損害の補償範囲だけだ、そういう見解では、私は、この法律精神と反すると思うわけですが、そういう収用そのものに対する意見が出されたら、それも十分慎重に収用委員会審議対象にして、そしてそれを二十一条と結びつけて、二十一条を満足しないということで却下裁決ということもあり得るんだ、ケースは少ないかもしれないが、そういう可能性はあり得るんだということがなくては、私はおかしいんではなかろうかと思うのですが。
  22. 町田充

    町田政府委員 裁決申請の場合に意見を出し得ますのは、関係行政機関はこの場合入りませんで、あくまでその収用によって損失を受ける利害関係人、こういうことになっておりますので、関係行政機関意見収用委員会の場に出てくるということはないたてまえになっております。あくまで個人個人権利者、あるいは準関係人と称しておりますけれども、何らかの権利を持っておるような、そういうものに限られておるわけであります。もちろん意見内容特段制限はございません。したがいまして、裁決申請書段階収用そのもの反対であるという意見を提出することはさしつかえないわけでございます。収用委員会はそういう意見が出てまいりますと、裁決いたします場合に、事業認定は、前提としてはかられざるを得ませんが、はたしてその事業遂行するために申請者申請どおり土地が必要であるか、もっと少なくていいんじゃないかという判断は、もちろん十分そういう意見をもとにして慎重に裁決する、こういうことになろうかと思います。
  23. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、ちょっとお尋ねしますが、海区漁業調整委員会は、行政委員会なんでしょうか、どうでしょうか。
  24. 町田充

    町田政府委員 たしか行政委員会という性格だと存じます。
  25. 楢崎弥之助

    楢崎委員 水産庁はお見えでしょうか、まだお見えじゃないでしょうか。——それじゃあとにします。  大臣は、農林大臣経験も豊富な大臣ですから、もうどちらもよくおわかりになると思うのですが、今度五条改正して、今までは河川の敷地を公共の用に供する場合には、現行法はすでにその関係する内水面漁業権収用対象にしておるわけです。今度改正をして、海底を公共の用に供する場合は、その関係海面漁業権、あるいは埋め立て、干拓をしてそこに公共事業を起こすときには、それに関係のある漁業権収用対象にしておるわけです。それは今度の五条改正でございますが、これについて、昨年沿振法を国会で通したわけです。その沿岸漁業等振興法の中身については、河野大臣も十分御承知であろうと思うのですが、特に三条では、「国は、第一条の目的を達成するため、沿岸漁業等について、次の各号に掲げる事項に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講じなければならない」そして以下一号からずっとあるわけですが、その第一号に、「水産資源の適正な利用水産動植物の増殖、漁場の効用の低下及び喪失防止等によって、水産資源維持増大を図ること。」ということがあるわけです。そうすると、五条改正はこの漁場喪失という点に非常に関係があるわけでございます。この沿岸漁業等振興法のこの方向と、今度の五条改正はあまりにも逆行するのではなかろうか。しかし、公共事業の伸展ということは十分理解できますから、そこで、政策全般にわたって総合的な施策を講ずるということになっておりますから、十分その辺は関係農林大臣なり水産庁とも話をされた上で、私は当然この五条改正は持ち出されたと思うのですが、その辺は、大臣のこの改正に対する措置はいかがなものでございましたでしょうか。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 まず、農林省関係者との連絡はどうか、十分に了解、同意を得てこの法案を出したということは御了承いただけると思います。  第二に、沿岸漁業等振興法で、漁場もしくは水産振興するのに、所要のものについては十分これを育成し、利用するということがうたってあるということは、そのとおりであります。しかし、御承知のとおり、土地収用法、さらにまた今回の改正はそういうものを超越して、国家目的を達成するために、もしくは一般国民利用を増進するために必要であるという場合に、その事業遂行支障があるものについては、これを除去していくということであって、いままで漁場水産関係のものが落ちておった、そのために、たとえば御承知のように、羽田の道路を進行するのに非常に支障があったというようなことから、どうしてもこれを入れなければならぬということで、これを入れることになりました。これは御了解いただけると思うのであります。ただ、その場合に、これらのものについてどのような配意をするかという問題は問題として残る。これはいまお話がありましたが、漁場がそれによっていたむならば、可能な限りにおいて漁場の回復をする、振興をするというようなことについてつとめる道がある。極端に申せば、組合のほうも従来金でみな片づいております。しかし、いまの法律のたてまえから、ただ単にそれを政府が当事者間において金で片づければよろしいというのではなくて、その法律のよってきたるゆえんのものは、国全体の沿岸もしくは内水面漁業振興という上において立てられておるのでございますから、たとえば漁礁をつくるとか、その他現に農林省は各種の施設をしておりますが、さらにこれと関連して、十分にこれらの施設をするとかいうようなことを政府としてもいたしましょうし、また、われわれこれによって強制収用いたします場合におきましては、それらについて可能な範囲配意をするということでこの問題は解決していくことが、国全体もしくは国民全体の利害から考えてとるべき道じゃないかという意味においてやった、こういうことでございます。
  27. 楢崎弥之助

    楢崎委員 建設大臣お答えでございますが、農林大臣経験もおありでございますから、非常に配慮のあるお答えでございます。   〔委員長退席福永(一)委員長代理着席〕 実は、昨年通りました沿振法の、いま私が指摘をしました、たとえば漁場喪失防止について必要な総合的な施策がはたしてできておるかどうか。これは建設大臣の所管ではございませんので、水産庁農林大臣お答えをいただきたい点でございますが、実はこれはまだできていないわけです。そういう段階で、この海面漁業権収用ということが先にきたものですから、非常に問題があろうと思います。いま建設大臣お答えになったような施策を、実は具体的に明白に示してもらいたいということなんです。それがまた沿振法三条指摘をしておる点でございます。きょう水産庁関係あるいは農林省関係がお見えでございませんので、その点よくわからぬのですが…。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 便宜私からお答えいたします。御承知のように、そういった漁業権を侵害し、もしくは漁場をこれに転用するという場合は、土地収用法対象になる場合は、そんなに広範に及ぶとか多いということは、わが国の場合は、私は想像できません。これは御理解いただけると思うのです。そんなに広範に及ぶというならば、御指摘のように、まずそういったものを先にして、そしてあとから考えるべきではないかという御議論も、一応私は納得できます。しかし現に農林省におきましては、私農林大臣時代から、従来のただ単に沿岸漁業の一本釣りはいかぬというようなこと、もしくは自然に繁殖するものをただ捕獲するのではいかぬということばかりでなく、むしろ魚は育ててとるべきものであって、かえって人工によってふ化し、もしくは人工によって育成する、もしくは魚礁をつくって魚をふ化してこれを放流する、というような施設を順次行なっておるわけであります。したがって、もしそういう地区ができましたならば、その地区ごとにそういう施設をするということは可能なことでございまして、決してそれはそんなにむずかしいことではないと思うのです。たとえば御承知のことと思いますが、品川湾にああいう道路をつくった。ノリに非常に支障がきた。ノリのごときは最近製造方法が変わりまして、人工によって非常に増収ができる。従来のようにただ放置しておきますノリ漁獲と比べて、人工によってノリ漁獲方法を変えますれば非常に増産できるということが、専門家あるいは技術者の手によってでき上がっておるわけであります。こういうことを施策するということによって、私は可能であると思う。その他のものにしましても、いまわれわれが指摘する収用対象になる地区ということになりますと、範囲が非常に狭い。そこでいま言いますとおり、振興法と抵触する地点がどの方面に起こるか、これは想像できぬじゃないかとおっしゃるならば、議論ではできぬかもしれません。しかし、われわれが想像して、もしくはそれがあまり大きければ、これを設計する場合に、御承知のように、むやみに海の中を通るとか、むやみに川の中を突っ走っていくわけではない、またむやみに山の中を通るわけではありません。したがって漁場の手当をすることにそんなに金がかかるなら、海岸の中に入っていくとか、国家として合理的に経費の安いところを通っていくわけでございますから、その経費の安いところを通る場合に、強引に強制収用して漁民の迷惑もかまわずにいくかというと、そういうことはありません。手当は十分にいたしていく、その計算を十分にした上で設計する、こういうふうに考えております。
  29. 楢崎弥之助

    楢崎委員 建設大臣に農林関係のことをお尋ねするのは筋違いかもしれませんが、お詳しゅうございますから、お尋ねしたいと思うのでありますが、現行の漁業法の二十二条では、もちろん公益の場合ですが、知事の権限で、漁業権を分割しあるいは変更できるし、あるいは三十四条の三項では、同じように、「漁業権制限又は条件を付けることができる。」ということになっておるわけであります。特に三十九条の一項には「漁業調整、船舶の航行、てい泊、けい留、水底電線の敷設その他公益上必要があると認めるときは、都道府県知事は、漁業権を変更し、取り消し、又はその行使の停止を命ずることができる。」と書いてあります。しかも同条の五項には、「政府は、第一項の規定による漁業権の変更若しくは取消又はその行使の停止によって生じた損失を当該漁業権者に対し補償しなければならない」という規定があります。したがって、私はこの項目がありますから、今度の五条改正はこの点と重復するのではなかろうか。この漁業法で大体やれるのではなかろうか。むしろ漁業法でやったほうがいいんではなかろうか。収用対象にすると、いかにも強権的な背景でわざわざ重復させるよりも、この漁業法で十分できるのではなかろうか。むしろ漁業法を活用したほうが、たとえば陸地に近いところに橋なんかかける、そのために収用をするような場合は、あとで漁業権の一部を復活できる場合もあろうと思います。ところが収用法による収用の場合は、収用しっぱなしということになると思うのであります。そこでむしろ漁業法でやったほうがいいのではないかと思うのでありますが、その点について、大臣の御意見を伺いたいと思います。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、いまおっしゃったような規定がありますから、最初に収用法を制定いたしますときには、それに触れていなかったと私は思います。ところが現実に羽田沖もしくは品川沖を工事を進行いたします過程におきまして、東京都知事のとった態度はどうであったか、御承知のように何年かかったか、そうしてそれに対して、しかもその漁業権者の組合があり、その個々の組合員と交渉するのに一体どのくらいかかったかというようなことを考えました場合に、いまの規定では、とうてい急激に所要の工事を進めていかなければならぬという国家的要請、国民的期待にこたえることは困難だということから、特にこれを入れなければ、再度羽田沖のようなことになってはいかぬから、こういう規定をつくる必要が生じてきたということを御理解いただきたい。何も無理やりにみなこれでやるということじゃございません。できるものはいまお話しのとおりやったらよろしいしかしそういう事態が起こりましたときに、そういうふうにしても話し合いがつかないときには、こういうふうにして、ものを早く片づけていかなければならない。ほかが全部できているのに、そこだけがおくれてしまっていてどうにもならない、オリンピックにも間に合うかどうかわからないというような事態が起こっておるわけであります。そのために必要だ、こういうことであります。またあとで復活するようにしたらいいではないかという御意見ですが、これは規定があってもなくても、どんどん復活できるものは復活したらいいと思います。何も一ぺん使ってしまったら復活できないということはないので、あと必要がなくなったら、復活したらよろしい。一ぺんとったものは復活することはいけないというようなことはないと思います。そういうことはケース・バイ・ケースで、大いに一般国民の利便の用に供したらよろしい、こう思います。
  31. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、いまの大臣お答えによりますと、むしろ手続的には公有水面埋立法とかあるいは漁業法で一応進めて、それで所期の目的を達し得ないときには、最終的にこの五条を適用したい、そのようなお考えでございますか、手続的には。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 私はいずれもそうだと思います。いずれの場合も——漁業権の場合だけでなしに、ほかのほうも、何も初めから急がないものを、むやみに収用法にかけ、この特別措置法にかけて、どんどんやっていくというようなことではなく、それはやはり国家目的国民的要請の緩急の度合いによるということだと思います。何も初めから全部これにかけて縛るというようなことは考えておりません。第一は、話し合いでやることが原則でございますから、話し合いでやって、話し合いがうまくつかぬから、収用法にかける、収用法手続がうまく進まぬから、緊急措置をとるということは当然のことだと思います。
  33. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうしますと、ちょっと問題がさかのぼりますが、いまの大臣お答えを聞いておりますと、現行法河川だけを対象にしておって、海面を入れてなかったということは、せんだっての参考人の意見聴取の場合には、これは片手落ちであって、法の不備だと考えるという佐藤参考人のお話であった。私は、そうではない、昭和二十六年に河川の敷地を入れた際に海面を入れなかったのは、それ相応の理由があったのだ。つまりいま大臣お答えになったような、たとえば埋立法があり漁業法があるから、その当時は必要ではなかったのでしょう、不備ではなしに。そのようにいま私は理解をしたのですが、大臣はどのようにお考えでございましょうか。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 私はいま、当時の立法の理由をつまびらかにいたしておりません。おりませんが、私は、さっきから申し上げておるように考えております。   〔福永(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  35. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは確認したいと思いますが、これは法の不備だからいまそれを整えるというのじゃなしに、新しく必要が起こったから、というふうな大臣お答えですが、そのように理解をしたいと思います。  それでは、漁業権の問題はあとに回しまして、大臣関係のある点を、いま一点お伺いしておきたいのです。  先ほど局長にお尋ねをしておりましたとおり、二十一条によって、事業認定をする際には、関係行政機関意見を、建設大臣なり都道府県知事は聞かなければならないその関係行政機関意見建設大臣意見がたとえば違った場合でも、建設大臣事業認定者である場合には、建設大臣が最終的に意見を出してきめる、そういうふうな立場に建設大臣はあるわけです。そしてまた旧法では、最後に、収用裁決について不満があるときに訴願することができる。現行法の第百二十九条では「収用委員会裁決に不服がある者は、建設大臣に対して審査請求をすることができる。」旧法では、たしか訴願することができるとなっておったと思うのですが、今回の公共用地の取得に関する特別措置法の一部改正のほうでは、建設大臣の代行裁決という考え方が出ておるわけです。これは参考人の意見でも、問題を起こすのではなかろうかという意見が出されたのですが、確かにこの点は法理的に考えてもおかしいのではなかろうかと思うのです。最後には建設大臣収用委員会にかわって裁決をする。しかもその建設大臣が、不服がある場合には審査請求を受ける対象になる。これは非常におかしいと私どもも思うのです。参考人の意見もそうです。この辺の考え方についてお伺いしたいと思います。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 法律の解釈その他につきましては、事務当局からお答えいたさせますが、総括的に申し上げまして、私は、極端に申せば、無理を承知でこの法律を変えたのだ。仕事を急ぐ、国家目的が非常に急迫しておるというのに——十分意を尽くしてやることが一番いい、これはわかっております。十分関係者意見調整して、そして時間にかまわずに、いつまでかかってもいいからやるということなら、それはすべてがうまくいくと思います。しかし、それじゃ一方において、目的達成の上において支障がある。だから、そこに出てきたのが土地収用法だ。現在まで経験してみたところが、収用法でもまだ間に合わないそのために、緊急を要する道路その他公共施設をするのに、御承知のように、一軒のうちがのかないために全体が利用できない、というような事態が各地に見られる。これじゃ困るということから、建設大臣の専決事項——建設大臣が、これについて、工事を一方において施行しなければならない政治上の非常な大きな使命を持っておる、一方においては、そういうものがあるからできないという中に立たされておるということから、やむを得ずこの処置に出る。私は、いまお話しのとおり、それはおかしいじゃないかといえば、一方において建設大臣意見を聞かなければならぬ。意見を聞いておまえの考えと違ったらどっちをとる、それは自分の考えておることをやるにきまっておる。説得はします。理由を大いに述べて、そして了解を得ます。了解を得ますけれども、総合的判断建設大臣の責任においてやるということでなければ、工事が進行しない、目的の達成ができないということだと思います。それはいまお話しのとおり、それじゃその他の法律上の手続においておかしいじゃないか——それは政治だと思います。間違ったら政治上の責任をとるべきだ、そういうことがあるから、こういうことになっておるのであります。それは極端にいえば、私権を拘束してそういうことをやるのはいかぬじゃないか、憲法と違うじゃないかというようなところまで徹底的に詰めていけば、いろいろな問題があると思います。しかし今日の社会情勢、国際情勢、いろいろな面からいきまして、その一部は制限をしてもらわなければいかぬ、ある一部はこうしてもらわなければいかぬということは、大多数の人が御了解願える、また御協力願えるなら、やはり多少のことはがまんしてもらわなければいかぬだろうという点からくるのであって、御指摘の点を全部充足し、少しも矛盾のないように、すべての既存の法律、すべての社会通念というものを全部充足するようにすれば——それは各所でいろいろの問題があるだろう、こう思いますけれども、一方に大目的達成のために、しかもそれは社会全体のためにやらなければならぬのだという政治的使命を帯びておる私としましては、ある程度のことは御協力願わなければならぬと考えて、この法律を出した、こういうことでございます。  あとは事務当局からお答えいたさせます。
  37. 楢崎弥之助

    楢崎委員 建設大臣の意欲については理解できるのですが、それでもなお、私はこれはおかしいと思うのです。収用法なるがゆえに、いまのような考えでは国民の納得も得られぬのじゃないかと思うのです。たとえば、ここで二カ月で裁決しなければならないという考え方を出していらっしゃるわけでしょう。それにまた追い打ちをかけるように、それでもきまらぬときには代行裁決だ。もしそのお考えであるなら、代行裁決するなんて入れなくても、もし二カ月できまらぬのだったら、事業認定のとおりなるのだといえばいいでしょう。そうじゃないですか。わざわざここに、誤解か何か知りませんが、異様な強権的なにおいを与える項目を入れられるということは、私は法のたてまえからいってもまずいのではなかろうか。いずれにしても二カ月で結論を出せというふうになっておれば、法のたてまえからいっても、むしろいいのじゃなかろうかと思うのです。この条項はどこから引き出しても、建設大臣の意欲はよく理解できるのですけれども、収用法のたてまえからいって、私は何としても理解のいかないところですが、むしろこれは削除されたほうがいいのじゃないかと思います。
  38. 町田充

    町田政府委員 原則的に二カ月以内に緊急裁決をしなければならぬ、こうしておるのでございますが、かりに二カ月近く審理をいたしまして、かすにもう十日、一週間の期間があれば、収用委員会として裁決できるというふうな機の熟したようなケースも相当考えられますので、そういう場合には、あらかじめ一カ月以内の期間をきめて、収用委員会が自分で裁決いたしますということを妨げないということを明確にいたしておるわけでございます。二カ月たったら、もうそんな建設大臣の代行裁決というような制度を設けないで、ぴしゃっときめてしまったらどうか、こういうお話でありますが、やはりはたしてその事業遂行のためにこれだけの土地が必要であるか、あるいはもう少し少なくていいか、あるいはもっと要るのじゃないかというふうな問題もございます。したがいまして、やはりしかるべき期間において裁決をするという手続はどうしても必要でございます。自動的に事業認定どおりになるというわけにはなかなかまいらないと思います。しかも事業範囲は、建設大臣が所管しております事業だけでございますれば、お説のようなことも考えられないわけでもないかと思いますが、建設大臣の所管以外の事業もあるわけでございますから、そういうわけにはなかなかまいらないと思います。
  39. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そうすると、建設大臣が代行裁決をなさる場合には、自分がなさった事業認定と違う裁決をなさることもあり得るのですか。
  40. 町田充

    町田政府委員 理屈の上ではそういうことがあり得るわけでございますが、実際問題として、建設大臣事業認定をした事業については、その裁決申請をした事項とはずれる裁決をするということはまずないかと思います。
  41. 楢崎弥之助

    楢崎委員 結局同じだということになるでしょう。自信を持って裁決申請をなさったのですから、そのとおりになるのがあたりまえじゃないですか。それとも二カ月の審議期間を通じて、建設大臣のほうも若干考えを変えられて、やや違った裁決をなさるということもあり得るのですか。それだったら、その収用委員会でむしろそういう変更をすべきですね。自分が裁決申請をしたものはあくまでも正しいということでいかれないと、論理が合わないと思うのです。
  42. 町田充

    町田政府委員 事業を施行する立場の建設大臣と、事業認定をしたりあるいは収用委員会裁決を代行したりする立場の建設大臣というものは、たまたま同一人格ではございますけれども、機能的には分かれておるわけでございます。したがいまして、事業を施行する面の建設大臣としては、これだけの土地が必要だということで緊急裁決の申し立てをする、ところがその収用委員会でなかなか裁決ができないで、代行裁決を求めるということで建設大臣に上がってきた場合には、事業認定権者あるいは収用委員会裁決代行機関としての立場での建設大臣裁決をする、こういうことになるわけでございますから、理論的には、必ずしも事業認定裁決申請どおりというわけにはならないわけでございます。人格がそういう意味では機能的に分化している、こういう関係になるわけであります。
  43. 楢崎弥之助

    楢崎委員 だからおかしいのです。そんな無理な、性格を分けて、あるときはこっちの性格だ、次はこっちの性格だといっても、同じ建設大臣ですからね、起業者でしょう。だから、こういう建設大臣の代行裁決をここにわざわざ持ってこられぬでも、もう少し法律的にうまい作業が私はあり得ると思うのです。これは何としても建設大臣、まずいんじゃなかろうかと思うのです。
  44. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、法律はあまり詳しくはありませんけれども、いま伺っておりまして、この法案どおりのほうがゆとりがあるんじゃないか。委員会審議の過程、もしくはその後新たに起こってくる実情等を勘案して、そして事業認定をして提案したものに対して、一部修正を加えるというような事態もまた——建設大臣自身でございますけれども、御承知のとおり自身もしくは自身に隷属する者に対して、このほうが案がいいのじゃないか、この程度でいいじゃないかというような場合が考えられる。たとえて申しますと、こういうことを例に引いていいかどうか知りませんが、あるダムの場合について、そこの森林が水没する、絶対反対だ、そうしたら、その審議の過程において、その森林を他の森林と交換してやったらどうだ、もしくはうちにしても、他に適当なうちを見つけてくれるならばそっちへかわる、というような事態も起こってくるというような場合のように、一部分はそれで充当できるんじゃないかというようなことが起こってきたときに、多少考慮の余地が、期限的には詰まってきたが、いよいよ裁決する場合に、これだけはこれでなさい、これはこっちで見なさいということが、詰めておる間に、そういう新しい事実が生まれてくることがある場合があるじゃないか、こう思うのです。いまもお話しのとおり、一ぺん出したらこういくんだという役所流の考え方よりも、そのほうが融通性があるじゃないか、こういう気がいたします。せっかく委員会委員諸君からいろいろ意見が出るわけですから、そういう点を参考にして裁決する、ということのほうが穏便じゃないかという気がいたします。
  45. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまのお話は、たいへん理解のいくお話です。そのようにあってもらいたいと思いますが、それならやはり内容を変えて、大臣が代行裁決をしようというその案を、もう一ぺん二ヵ月——もう一カ月かかるかもしれませんが、出して、あくまでもこれは収用委員会できめるというたてまえをとったほうが、この法のたてまえからいって妥当ではなかろうか、大臣のお考えが変わられた、その変わられた部分をもう一ぺん裁決申請し直すというふうにされたほうが、私は妥当であり合理的であろうと思うのです。大臣のお考えはわかりましたから、それならよけいに、そういう手続をとられたほうがいいんじゃなかろうかと思うのです。今度は二カ月は要しないかもしれませんが……。
  46. 河野一郎

    河野国務大臣 私は、期限を付するという意味は、いまのような事態を繰り返し繰り返しておりましたらだんだん延びる、それじゃ二カ月にする必要はないじゃないかということになる。それで二カ月という期限を切って、そしてそれ以上延ばしてはいけないという意味でやってまいらなければならないと思うのでございます。そうでございませんと、先ほどもいろいろの例をお話しになりましたが、そういうようなことが、従来とかくだんだん延び延びになり、この道があいているからこの道、この道ということで延びていくというようなことが、国全体からいって決断がつきにくいというふうに思うのでありまして、とにかく一応実施して、いまのようなこういう緊急な事態に対処して、早く公共施設を先行して投資する、そうして工事を完成する、これはまた時代が変わってきたら変わってきたように、私はあるべきものだと思います。しかし、いまはとにかく何ぶんにも延び延びになり過ぎまして、予算と事業の進行が食い違ってきた今日までの例から見まして、適当でない。実は私自身としましては、全国の関係者を集めてそれぞれ指示をしようといま思っておるのでございますが、ぜひこれは、私は、二カ月以内に——これに何カ月、これに何カ月、最終までにこの用地の取得は何カ月で完了するということで、他の事業の進行とあわせていくのでなければ、大方に御迷惑をかける場合が非常に多いというふうに考えるのであります。
  47. 楢崎弥之助

    楢崎委員 この点は、同僚の委員の方からもまた重ねて御意見が出ようと思うのですが、この点はむしろ削除されて、十分いままでと変わった収用委員会の強化の方法をとられておりますから、私は可能であろうと思います。この代行裁決というのは、もうやらないほうがいいんだというふうに意見をはっきり出しておきたいと思うのです。この点は先ほど申しましたように、まだ問題が残っておると思いますし、同僚委員に譲りたいと思います。  この収用法を非常にたくさん準用しております、例の地位協定に基づく土地等の使用等に関する特別措置法ですか、これの十四条の一項は、土地収用法を非常に準用するということをうたってあるわけですね。その中で、土地収用法準用を除外するという中身があるわけです。その中に第五章第一節というのが入っているのです。この土地収用法の第五章第一節というのは、収用委員会の組織権限ですね。そうすると、つまり基地問題なんかの場合に、関係する特別措置法を使う場合には、土地収用法でつくられておる収用委員会は特別措置法については審理をする権限がない、別個の委員会を予定しているのかどうか、お答えを願いたい
  48. 町田充

    町田政府委員 それは、そういう考え方ではございませんで、収用委員会というものは、収用法によりまして各都道府県に設置をされております。その収用委員会の審理の手続であるとか、方法であるとか、そういうものについては、当然第五章第一節以外の各条項にあるわけでございまして、当然その手続にのっかかってやるんだ、組織そのものは、収用法によって各都道府県に置かれるということになってやるから、わざわざ五章一節の規定を準用する必要はない、これほどの意味でございまして、収用委員会自体に特別措置法の審理権限がない、そういう性格のものではないと思います。
  49. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたはそう思われているかもしれませんが、これには第五章第一節を除くと書いてあります。別に触れてないわけですよ。そうすると、土地収用法収用委員会の組織権限規定は除くのですか、あなたはそういうお考えかもしれませんが、いまの法律はそうなってないのじゃないですか。
  50. 町田充

    町田政府委員 これは特別措置法の損失補償の金額の裁定の問題であるとか、そういった実体的な問題については、それぞれ土地収用法のしかるべき規定を準用しておるわけでございます。したがいまして、収用委員会で審理をし、裁決する、こういう実体的な規定はそれぞれ準用になっておるわけでございます。ただ、収用委員会という組織は二つも置く必要はないわけでございまして、土地収用法という法律によって都道府県に設置されておるその機関をたまたま利用する、こういうわけでございますから、この収用委員会は都道府県に置くんだとか、あるいは何人で構成するんだというふうな組織に関する規定は、わざわざ特別措置法で準用する必要もない。それは当然収用法で設置されているのだから、すでに設置されている収用委員会利用して、審理をし、裁決をするんだ、そういう必要な個所の規定は準用されておるわけでありますから、収用委員会に審理の権限がない、こういうふうに私どもは理解をしておらないわけでございます。
  51. 楢崎弥之助

    楢崎委員 いまの点は、私はまだ問題があろうと思うのです、この解釈からいきますと。私は、これは検討する必要があろうと思います。  水産庁から見えていますか——時間もだいぶたちましたから、最後に、第五条関連をした点の質問をして、終わりたいと思います。  先ほど建設大臣にも、農林大臣経験がございますからいろいろお尋ねをしました。こういう重大な改正の際に、水産庁の長官がお見えにならぬというのはけしからぬと思う。それだけでも、水産庁建設省のほうからいかれております。もう少し水産業者、漁業者の立場を私は考えてもらいたいと思います。いま建設大臣のお話によると、いろいろ異論はあろうが、とにかく必要だから、異論を承知の上でこういう法案を出しておるんだ、何が何でも収用するんだ、というような意見が出されております。去年沿振法が通ったのは御承知のとおりでしょう。建設大臣にも、筋違いですけれども、お見えになられたからお尋ねしたのですが、沿振法三条に、漁場喪失防止については、政策の全般にわたって必要な総合的な施策を立てなければならないとなっております。これは立てられておりますか、お尋ねしたいと思います。
  52. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまの点につきましては、沿岸漁業振興させますためには、現在の沿振法の制定に先立ちまして、沿岸漁業の構造改善事業というのを大体全国にわたって推進していくということで、目下実施中でございます。その中で、それぞれの地区の計画を各県に立ててもらいまして、それの審査水産庁のほうで行ないまして、それで沿岸漁業振興に十分貢献するように計画を推進してまいりたいというふうに考えておるわけでございます。ただいまのお話のような点につきましては、現在の構造改善事業を計画的に推進するということについて、なおかつさらに不十分な問題が出てくるかどうかということにつきましては、たとえば新産都市の問題だとか、いろいろと新しく産業計画的な問題も出てまいるわけでございますが、そういう問題につきましては、それぞれのそういう計画樹立の段階におきまして、関係の省からの協議を受けまして十分検討してまいるというようなことを考えております。それで、今回の土地収用法改正にあたりまして、新たに埋め立てあるいは干拓を行なうことに伴って漁業権収用されるというような問題につきまして、また新たに何か検討しなければいけない問題が起こるかどうかということにつきましては、今後十分慎重に検討してまいりたいというふうに考えておる次第であります。
  53. 楢崎弥之助

    楢崎委員 何を検討されるのですか。現に改正が出ておるじゃないですか。改正が出ておって、いまから検討なさるのですか。どういうふうに漁場喪失を防ぐか、いまから検討するのですか。私がお伺いしているのは——構造改善事業をやっておるのはわかっております、私も農林水産委員ですから。しかし、この三条にいう漁場喪失防止について、具体的な必要な施策を立てておりますかと聞いておるのです。「講じなければならない。」と条文ではなっておる。まだ立てておらぬなら、立てておらぬでいいです。いまからこの漁業権収用問題と関連して検討するなんて、そういう御答弁じゃ因るじゃないですか。検討する余地ないでしょう。建設大臣も、絶対これは必要だからこのままやるんだとおっしゃっているんですから。検討するんだったら、なぜその前に、改正問題が起こったときにどうしてやらないのですか。水産庁としては困る、これは必要ないじゃないか、公有水面の埋立法もあり、漁業法もあるから、必要ないじゃないですかと、どうして言わないんですか。すでに改正案が出ておるのです。いまから検討されて、意見を出されますか、水産庁として建設省に——そういうことなんですか、いまのお答には。
  54. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまも申し上げまたように、沿岸漁業の構造改善計画は、沿岸漁業者の所得の向上はもちろんですが、いま申し上げましたような産業全般との関連の問題であるとか、そういう点も十分考えて、それで沿岸漁業振興に十分役立つようにということで、計画的に推進しておるわけでございます。現在のところといたしましては、それで運用よろしきを得ればやっていけるんではないかというふうに考えております。ただいま申し上げましたのは、かりにそういったような問題が起こった場合において、新しく検討しなければいけないというようなことが出てきたときには、あらためて検討するということを考えたらどうかということでございまして、現在土地収用法改正が行なわれます問題に関しまして、水産庁といたしましては、あるいは現状と相当いろいろ法制上のたてまえとしては違った状態が出てくるわけでございますが、現在の構造改善計画を推進していく、しかも各省と相談しながらやっていくということで十分やっていけるのではないかというふうに、現在のところは考えております。
  55. 楢崎弥之助

    楢崎委員 どうもお答えがよくわからぬのですが、特定の海面漁業権収用問題が起こったときに考えるということなんですか。もう改正は出ておるのです。何を検討なさるのですか。善意に解釈すれば、漁業権収用の問題が起こったときに、これはせんだっての参考人の意見でも出ましたが、金だけの補償では困るのだ、漁業権は生存権だから、幾ら公益公益と言われても、生存と関係のある問題以上に公益はないんじゃないか、生存権が一番大事だ、したがって、単に金だけでは解決しないのだ、たとえば職業のあっせんなり新しい漁場の確保なり、そういう点についての生きる方策を立ててくれとい言う要望もあったのです。いまの、この問題が起こったときに新しく検討するというあなたのお答えは、そういう意味お答えなんですか。
  56. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまおっしゃいましたような問題もございます。それから、新しく漁場をどういうふうにして造成していくかというようなことを検討することもございます。今後の沿岸漁業のやり方全般について、どういうふうに考えていくかということもあるわけでございまして、もちろん土地収用の問題があるなしにかかわらず、そういったようなことを水産庁としては真剣に考えていかなければならぬわけでございますけれども、そういった全体の沿岸漁業振興の方向の中で、十分考えていきたいというふうに考えております。
  57. 楢崎弥之助

    楢崎委員 そういう一般的な問題じゃないんです。この五条改正は、特定のところの漁業権をとるという問題ですよ。それを、一般的な沿岸漁業構造改善事業で考えていきたいというようなゆうちょうな考えでは困ります。それでは、この五条改正問題が建設省から持ち込まれて、水産庁としては、沿振法の方向あるいは現在進めておる沿岸漁業構造改善の方向と逆行するものであるとわれわれは思いますが、あなたは、この五条改正をどう思いますか。
  58. 三浦善郎

    ○三浦説明員 両方の事業の考え方のたてまえが違うわけでございますから、両方一緒に並存していけるという場合もあると思いますし、それから摩擦が起こってくるという場合もあると思うわけでございます。そういう場合につきましては、よくいろいろと対策を考えながら進めていけばいいじゃないかというふうに考えております。
  59. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは何を言っておるんですか。並存する場合があり得るなんて、漁業権収用されて、並存していくようなことは何もないじゃないですか。この問題は明らかに沿岸漁業者の圧迫ですよ。沿振法の方向と逆行すると思いませんか。片一方の沿振法は、漁場喪失防止する方向を出しておる。それに対する必要な施策を講ずるとはっきり法文にうたっておいて、今度は漁業権を剥奪する、収用するという問題が起こっておるんですよ。明らかに逆行じゃありませんか。そういう問題が起こったら、総合的にいろいろ考えてみたらよかろうと思いますくらいのゆうちょうな考えでは、水産庁として困ります。これは水産庁長官に来てもらわぬと、こういう答弁では話にならぬ。  それではもう少しお尋ねしますが、十二条に、「総理府に、附属機関として、沿岸漁業等振興審議会を置く。」十三条に、「審議会は、内閣総理大臣又は関係大臣の諮問に応じ、この法律の施行に関する重要事項を調査審議する。」とあり、沿振法の施行に関する重要な事項を審議することになっておる。この問題はまさに重要な事項です。ところがこの審議会はことしの四月一日から発足する。それで、第五条改正問題が出たときには審議会はできておらぬはずです。そこで附則では、昭和三十九年三月三十一日までの間は、つまり審議会ができていない間は、「農林大臣は、この法律の施行に関する重要事項について、中央漁業調整審議会の意見を聞くことができる。」審議会ができるまでは、中央漁業調整審議会の意見を聞く。この五条の問題は、建設大臣からこういう相談があった場合、農林大臣は当然中央漁業調整審議会の意見聴取しなければならない。沿振法と重大な関係があります。どう思いますか。   〔委員長退席、廣瀬委員長代理着席
  60. 三浦善郎

    ○三浦説明員 ただいまの点につきましては、もちろん沿岸漁業の問題とたいへん重要な関係があるわけでございますが、沿岸漁業等振興審議会もできておらない段階でございましたし、政府段階の検討でもって十分検討できるのではないかということで、審議会の意見は聞いておらないようなことになっております。
  61. 楢崎弥之助

    楢崎委員 あなたは水産庁を代表して、責任をもって言っておるんでしょう。全然意見を聞いてないんですよ。この五条改正問題について、建設省に対して、水産庁はどういう意見を出されましたか。
  62. 三浦善郎

    ○三浦説明員 漁業権につきましては、現在すでに河川漁業権に関しましては、土地収用法収用対象になっておりますのは、御承知のとおりであります。それから海面につきましても、海水を収用する場合には、現在土地収用法対象になっております。先ほどからいろいろ議論がございましたように、海底を埋め立てまして、干拓埋め立て地として公益事業に使う場合は、現在まで土地収用法対象の中に入っていなかったわけであります。そういうことになっておりまして、この点についていろいろと私のほうでも検討したわけでございますけれども、土地収用法というのは、ただいま建設省のほうからもいろいろお話がございましたように、尽くすべきことは十分尽くして、最後に公益上の問題と、それから漁業権の上の問題と比較考量をいたしまして、どうしても考えなければいけないというときに初めて発動を考えていくといったような法律の性格でもございますし、そういったような点をいろいろ考えまして、まあ事情やむを得ないんではないだろうかというふうに考えたわけでございます。
  63. 楢崎弥之助

    楢崎委員 お聞きのとおり、どうも最高の責任者じゃございませんから、尋ねるほうも無理かもしれませんが、ぜひ水産庁の長官を呼んでいただいて、わずかな時間でよろしゅうございますから、質問さしていただきたいと思います。  それでは、最後に一点だけお伺いしておきますが、この第五条関係のある漁業権収用の際に、起業者は、二十一条によって、関係行政機関意見を聞くのですが、この関係行政機関の中に、第五条関係では、当然海区漁業調整委員会が必ず入ると思いますが、その点はどのように考えておられますか。
  64. 廣瀬正雄

    ○廣瀬委員長代理 楢崎君、長官はきょうはできないそうでありますから、次会出席予定であります。
  65. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでよろしゅうございます。
  66. 町田充

    町田政府委員 当該事業の施行について関係のある行政機関ということでございまして、先ほどお答えいたしましたとおり、海区漁業調整委員会行政委員会でございますので、当然この中に入ってまいりますので、必要があれば、海区漁業調整委員会意見を求めるということは十分考えております。
  67. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは起業者が国の場合は、建設大臣は当然農林大臣なりあるいは中央の漁業調整委員会あるいは四月一日からできます沿岸漁業等振興審議会等の意見も聞く必要があろうと思いますが、どうでしょうか。
  68. 町田充

    町田政府委員 必要に応じては、農林大臣の御意見も伺うということも当然あるだろうと思います。沿岸漁業等振興審議会、これはまあ農林省の付属機関として置かれるわけでございますから、その御意見農林大臣を通じてお聞きするというようなことになろうかと思います。
  69. 楢崎弥之助

    楢崎委員 それでは、水産庁の長官に対する質問を保留をいたしまして、終わります。
  70. 廣瀬正雄

    ○廣瀬委員長代理 吉田賢一君。
  71. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 大臣が退席せられたので、やむを得ませんから、事務当局から伺いたいのであります。  まず第一に、最近、数年間でいいですが、およそ公共用地の対象となるような地域、そういった対象土地の大体の地価の趨勢、簡単でよろしゅうございますから、述べていただきたい
  72. 町田充

    町田政府委員 まあ、昭和三十年ごろを基準にいたしますと、大体現在平均して、これは市街地とそれ以外のところでは多少違いますけれども、市街地における地価というものは大体六倍くらいに上がっております。特に上昇の激しいのは、工業用地でございまして、それに次ぎますのが商業用地、住宅用地、こういう趨勢になっておるわけでございます。公共用地として取得いたしますのは、市街地の工事の場合は別でございますが、大体主として市街地以外の農地あるいは林地、草地というようなところを利用しておるわけでございます。したがいまして、用地費の事業費の中に占める割合と申しますのも、市街地における事業については相当な割合になるわけでございますが、市街地以外の部分における事業については、それほど大きなウエートを占めない、全体的に見ますと、事業費のうちの大体一五、六%が用地費その他の補償費、そういった状況でございます。
  73. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 全体事業費の一五、六%が用地費、補償費、これは逆ではないですか。もしそのような率であるならば、この法律改正理由として、非常に用地取得が困難だということが劈頭述べられておるわけでございまして、たとえば最近の公共事業に必要な用地の取得は、事業量の著しい増大に伴い種々の困難が生じておる、公共事業の用地取得難を打開し、またこれをすみやかに施行するためには地価対策等を必要とする、だから、大上段に、この法律改正理由といたしまして、公共事業に必要な用地の取得が至難である、この価格をめぐっていよいよ至難な情勢にある、これが最も重大な理由でないかと思うのですが、全体として事業費の一割六分ということであるならば、これは非常に率が低いということになるのではないでしょうか。また実際に、それならば市街地と市街地でない地域と、そういった困難な条件が格段の違いがある、こういうことにもなるのですか、どちらなんでしょうね。
  74. 町田充

    町田政府委員 事業費の中に占める用地費、補償費の割合は、先ほど申し上げたような趨勢でございますが、だんだんこういった地価の上昇という現象が、単に事業を施行する地域のみならず、一般に及んできておる。そこで、そういう情勢を見越して、具体的な土地について事業を施行するという場合に、そういう思惑もありまして、なかなか地元の方の協力が得られないということで、折衝が長引く。特に市街地の場合は、地価そのものも市街地以外の場合に比べますと非常に高うございますし、かつ関係権利者というものの関係が非常に複雑でございます。権利があるなし、あるいはだれが権利者であるかというような事柄をめぐって非常に権利関係がふくそうして、市街地以外の場合に比べますと、問題は非常に困難を加えてまいっておるような状況でございます。そういった事情に対処して、今回の改正を考えた次第であります。
  75. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっとまだ、あなたのお述べになることは筋がはっきりいたしません。つまり、市街地といわず都市以外の地域といわず、用地取得難が主たる目的であるのかどうか、これを聞きたいのです。ところがいまの御説明では、これは十分にその点明らかになっておりません。もし大部分のものが事業費の総量の一割五、六分が用地取得費というのであるならば、パーセンテージの低い、それはたいして問題にならぬのじゃないかとさえ考えられる。しかし、それはそうではなくして、むしろ用地取得について、地価にぶつかって取得難になっていくというのが重きをなしておるのじゃないだろうか、こう考えるのですが、実際あなたの御説明は、そうではなしに、一部市街地以外は大部分用地費は多くの割合を占めていない、こういうふうになってしまうのですか。
  76. 町田充

    町田政府委員 市街地における事業はもちろんでございますが.市街地以外の部分における工事についても、一般的な地価の上昇傾向を見越した思惑的な売り惜しみというような現象がだんだんふえてまいりまして、事業の施行についてなかなか協力が得られない、そういうことが公共用地の取得の困難な一つの大きな原因になっている、こういうことを申し上げておるわけでございます。
  77. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 市街地は三十年以後六倍に地価が高騰しておるとおっしゃいますが、それならば、市街地における公共事業費の総量における土地の取得金額の割合、もしくは補償費の割合、これはどのくらいになっておりますか。
  78. 町田充

    町田政府委員 具体的な一つの例でお話し申し上げますと、東京都がオリンピック関連事業として実施いたしました放射四号線あたりの実例を申し上げますと、大体事業費のうち七〇%ないし八〇%程度のものが用地費、補償費という割合になっております。
  79. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そういたしますると、いまの都のなした放射四号線の街路工事費と同じような状態が、概して大都市ないしは首都圏における経費の割合、こういうふうに見ていいのでしょうか。
  80. 町田充

    町田政府委員 東京都内の特に区部におきます事業は、きわめてそういった特殊な事情があろうかと思いますので、これが一般の情勢だとは決して申し上げられないかと思いますが、平均いたしますと、先ほど申し上げたように一五、六%、ことにまた事業の種類によりましてもだいぶ違うわけでございまして、河川事業、ことにダム事業というふうなものになりますと、事業費の中で用地費、補償費の占める割合が、事業の性格上わりあい大きくなっておる、二一%あるいは二五%くらいが用地補償費、こういうような関係になっておりますが、事業の性格、それから事業の行なわれる場所、そういうものによりまして、一がいに申せませんが、全体的に平均的に見ますと、一五、六%になっておる、こう申し上げたわけであります。
  81. 廣瀬正雄

    ○廣瀬委員長代理 吉田君、正午を過ぎましたので、なるべく簡明にお願いいたします。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 一五、六%の地価が相当であるのか、八〇%の地価が相当であるのかというのは、一体その妥当性はどういう基準できめていくことになるのでございましょうか。
  83. 町田充

    町田政府委員 これはもちろんその個々具体土地、建物、そういうものに関します所有権その他の権利、こういうものに対する補償という問題になるわけでございますが、この補償につきましては、従来とかく各起業者において統一がとれていなかったというふうなこともございまして、一昨年、閣議決定で損失補償基準要綱というものができました。それに基づきまして、各起業者が統一した細目をつくって、それに基づいて個々具体の案件に処して補償を実施しておる、その補償費を積み重ねて計算してみますと、東京都の場合はそういった額になり、平均的に見ると、いま申し上げたような割合になるということであります。
  84. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 補償の問題は別にいたしまして、地価の相当、妥当性というものは何を基準になさるか、簡単におっしゃってください。
  85. 町田充

    町田政府委員 土地の価格は、収用法にも書いてございますとおり、近傍類地の正常な取引価格、そういうものを基準にして適正な補償をする、こういうことになっておりますので、いわゆる近傍類地の適正な時価を基準にしてきめておるわけでございます。
  86. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 近傍の適正な取引の価格が、それが適正であるというのでは、何が適正か、基準が明らかでないことになります。たとえば、近傍には呼び値もありましょう、あるいは例もありましょう。銀座四丁目あたりにおきましては、数百万円で一坪得られないと称しております。そうしたら、銀座四丁目の人がほんとうにそう信じておるのかというと、近所ではそう言っておるから、そう思うのだということにもなっております。ですから、これは、宙に浮いたとは申しませんけれども、一体何を基準にしてそれをきめるのであろうか、この辺が法律の文字だけではわかりませんし、また趣旨もよくわかりません。また取引と申しましても千姿万態でございますし、利用価値もまたいろいろ違いましょうし、目的も違いましょう。でありますから、その辺は、何を妥当な基準と規定すればいいのだろうかということは、真剣に考えて見るべきではないかと思います。法律にまかしておいて、ということでは思いやられるのですが、ことに、所によれば八〇%も用地費ないしは補償費に使っておりますし、所によれば一五、六%で済んでおるということになりますと、ある意味においては、何かしら非常に不公平な感じさえ受けますから、こういうことが事業進捗の上で次々と問題を生む一つの原因にもなりはしないか。これは余分なことですけれども、もとをなすものですから、やはり一体何が補償されるべき——たとえば所有権の場合、地価相当な補償額と見ればいいのか、地価は私どもどうして見ればいいのだろうかという、もっと突っ込んだ用意がなければなるまい、こう思うのです。
  87. 町田充

    町田政府委員 御指摘のとおりでございまして、近傍類地の取引価格等を考慮してという、その近傍類地の取引価格がそのまま時価になるわけでは必ずしもございませんで、近傍類地の取引価格等を考慮して、相当な価格をもって補償しなければならない、こう一般的に表現をしておるわけでございますが、個々具体の場合に何が相当な価格であるかということは、御指摘のとおり、なかなかむずかしい問題じゃないかと思います。  昨年御審議をいただきました不動産の鑑定評価に関する法律が、今年四月一日から施行になりまして、職業的な専門家としての不動産鑑定士という制度ができてまいりました。すでに鑑定評価基準というふうなものも宅地制度審議会から答申をいただきまして、土地の場合、家屋の場合、どういう基準で評価をするのだ、適正な価格というものはどういう手順で評価をするというふうな、評価基準を答申をいただいております。したがいまして、今後そういう評価基準によって、職業的な専門家が売買の場合に十分関与して、相互の間に立って、適正な価格というものをだんだん周知普及さしていく。ことに収用にかかります場合には、収用委員会が鑑定人を求めて価格の鑑定を求めるわけでございますが、そういう場合に、鑑定人の中の一人は必ず不動産鑑定士でなければならぬということに相なっておりまして、だんだんそういう機構を通じまして、専門家による適当な適正な価格というものが一般に普及をしていく、浸透していく、こういうことを期待しておるわけでございます。
  88. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 御期待はもっともなことでありますが、方法は、鑑定士が評価をする、あるいはまたその他の熟練者、経験者の意見を聞く、あるいはまた趨勢の統計などもしんしゃくする、こういうようなこともいろいろありますけれども、それは一つの方法でございまして、それならば、たとえば取引されておる事実の価格、それはその基準の要素にはなっておるのですか、なっていないのですか。
  89. 町田充

    町田政府委員 個々の売買の実情を必ずしもつまびらかにいたしておりませんが、鑑定評価基準をことしの三月末に答申をいただきまして、いまそれの普及につとめておる状況でございます。その基準自体は、別に特に新しい事項を盛り込んではございません。いままで慣用的に用いられておったような手法、たとえば土地について申し上げますと、一般市場価格法と申しますか、収用法にも書いてありますような近傍類地の一般取引の実情、それを一つの資料として算定する方法、あるいは複成価格方式と申しますか、それを再生産するとすれば幾らかかるであろうというふうな観点から評価額をきめる方法、あるいは資本還元法と申しますか、その土地から得られる収益というものを資本還元した場合の価格を求めるというふうな方法によって評価額をきめるというふうな、大まかに申し上げまして、そういった一応のよりどころとなるべき方法というものは示されておるわけでございますが、こういうものがだんだん普及をし、それによって適正な値段が形成されていくということが、この不動産鑑定法の目的でございまして、これが確実に履行されていくということを期待しておるわけでございまして、いままでの個々の売買実例の価格というものが必ずしも適正であったかどうかということについては、いまちょっと申し上げるだけの資料を持ち合わせておりません。
  90. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 昔からも土地の取引はあるのですから、方法はいろいろあるでしょうが、究極するところ、たとえば、これは逆に申しますると、公共事業ならば予算を先に組まなければなりません。予算を組むためには、土地の買い取り価格が幾らかということを一応積算してみるのであります。そういたしますると、そのような計画があり、予算を作成する、そのときにすでに収用の代償補償はきめられておらなくちゃならぬ、こういうことになりますのですが、いまお聞きすると、いろんな機関はあり、また鑑定人の制度も新たにできる等々、整備していきつつありますことはけっこうでありますけれども、逆に予算ができてしまって後に、幾ら補償するのが妥当かということをきめるというのがどうも実態ではないだろうか、こういうことを実は案ずるのであります、そうでなければしあわせですけれども。もう少し、たとえば、建設省の各般の事業が予算の積算があって、そして予算の配分がある。積算の基礎としては、一応何に幾らということが、相当こまかい費目が出ておるはずでございます。そういった場合の土地に関する補償が、それから後に評価しなければならぬというふうにお考えになっておるとすれば、これは逆になるのではないか。依然としてこれは未解決の問題として、従来と同じように、やや速度は早まるかもわかりませんが、従来と同じことを繰り返すのではないかということを私は案ずるのです。と申しますのは、この収用法のみならず、以前にできました公共用地の取得に関する特別措置法との関連を考えてみましても、その他いろんな諸問題を考えてみましても、ぶつかっていくところは土地取得の問題ではないかと、最近だんだんと私も考え方が固まってきたのであります。ただ、しかし私においても、ずばりと解決する案はほんとうはないのであります。それだけ一つ悩みを持っておりますのですが、そういう中で、お互いにこの重大な問題に対処していくのでありまするので、やはり計画、予算の作成、それから代償補償等の内容、それの形成の方法、順序、そういうものは事前に相当明確に基準ができておらぬといくまいじゃないかと思うのです。もっとも、私もいわゆる閣議の補償基準というものを一応読んでみました。文書はできておりますのですけれども、これは幾ら読んでみましても、そんなに処方せんのようになっておりません。処方せんなら薬局に持っていって適当に薬を盛れば、それでいきますけれども、なっておらないこれはやはりこれを一つの基準としまして——一つのある抽象的なものさしです。だから、具体的に当てはめて検討していかなければならぬということにすぎませんから、数字は全然出てきません。だから、この作文をもっていたしましても、基準がはっきりしてまいりませんので、そこでほんとうの一番重要な土地の取得、その補償、その基準、何が適正な基準であるか、何が一体妥当性を判定する基準になるのだろうか、そういう基準設定についての要素は一体何であろうかということは、この際立法の作業の過程におきましては、相当明確になっておらねばなるまいと思う。でなければ、元来やはり公共用地を取得せんとする起業者と、私有権を主張する所有者もしくはその他の権利者と、この間の調整というものは、双方の対立のまま進んでいって、問題は問題を生んでいくということになりはしないだろうか、憲法が二本立てにななっておりますから、二本立ての調整をせんとするのが、やはり立法の底を流れておる一つの法律意識だろう、こう考えております。そういうふうに考えますと、やはりこの点はできるだけ精密なもしくは正確な、地価妥当性の基準というものが相当具体性を持ってここにあらわれてきませんと、立法作業といたしましても、これは非常に不備になるのではないか、こう思うのでございます。
  91. 町田充

    町田政府委員 もちろん基準を実施いたしますためのこまかい数字もある程度、閣議決定になりました要綱には、各起業者がつくっておるわけであります。たとえば、土地の価格について申しますと、奥行逓減法などというものがございまして、角地からだんだん奥に入っていくほどに逓減をしていく、そういう率も数表がつけてあったりしまして、各起業者がつくっておる細目には、かなり具体的な数表があがっておるわけでございます。それにしても、個々具体の場合に、それがぴたり当てはまるかどうかというような問題もございます。これは今後そういった職業的な専門家による鑑定評価の実例というものをだんだんだんだん積み上げていって、適切な事例、実績をつくっていく、こういったこと以外に方法はないんじゃないかというふうに考えております。鑑定評価基準をつくりましたのも、いままで精通者価格というようなことで呼ばれて、ある専門家が一声十万円と名のれば、そのままそれがまかり通るというふうな、きわめて合理性がないような地価の形成が行なわれていた。これを、できるだけ合理的な適正な基準を付与していこう、こういう趣旨で鑑定評価基準はできたわけでございまして、これからひとつこの基準に従って適切な事例をどんどん積み上げていきたい、こう考えておるわけでございます。
  92. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 それならば、また別な角度から同じ点を突っ込んでみたいのですが、一体地価というたらどうして形成されるのですか。
  93. 町田充

    町田政府委員 なかなかむずかしい問題でございまして、私も的確にお答えができかねるかと思いますが、やはりその土地の生産性、それから、普通の商品と違います。代替性もございませんし、移動性もありません。普通の商品とは違いますけれども、やはり需給の原則というものが働くものでございましょうし、主として、そういったこの土地から得られる収益に見合う、つまりもう少し申し上げますと、その土地から上がる収益を資本還元した価格、そういったものが一応の目安になって、それを中心にして需給関係で変動する、こういうのが、きわめて常識的でございますけれども、地価形成の要因ではなかろうかというふうに、私自身は考えておるわけでございます。
  94. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 かりに足立区に畑があって、そこに麦をつくっておる。そこが今度公共用地に収用対象になったというようなときに、それは資本還元というたら何を意味するのであろうか。従来の農業用地としての収益の関係が一つの大きな要素をなすのかどうか、そういうことは、全然だれも考えないことであります。机上の議論にすぎません。また需給関係と申しましても、日本で、戦後、財産税創設のころはそうでなかったが、最近は土地を売るということは、特別な小農以外はまあないと思います。特別な小農が手もなし、現金収入もない、やむを得ず売って都会地へ行きたいということでもなければ、ない。山もそうであります。耕地もそうであります。市街地はなおさらであります。都市に入りましては、絶対に売り手はないこういう状態でありますから、したがいまして、そんなものを需給関係から価格を評定するのは、そういう経済の原則は、私は当てはまらぬ議論でないだろうか、こういうふうにも考えるのであります。   〔廣瀬委員長代理退席、委員長着席〕 そうなりますと、資本還元とか収益だとかおっしゃっても、あるいは需給関係だとかおっしゃっても、そういう一般の生産経済の価格形成の原則は、この場合当てはまらぬのじゃないか、そういうふうに私は疑うのであります。そうなりますると、一体地価というのは、どこを押してどうしてきめるのが正しいのであろうか、こういうふうにまたくるくるもとへ戻ってくることになるのでありますが、まことに考え方もくるくる回りしておるのが実情です。しかしお説のそれでは、やはり依然として、問題を御提供になった以外、その御意見で地価は出てこないように思うのです。
  95. 町田充

    町田政府委員 これは専門的な問題でございますので、私どもも地価形成のメカニズムというものがどういうものかということは、ひとつ専門家に依頼をして研究してもらうということで、今年度準備をしておるわけでございますが、まあ常識的に、先ほど申し上げたように、確かに資本還元いたします場合に、その収益、それは、いま農業として利用しているようなところからあがる収益というものはたいしたものではないので、それを資本還元した価格もたいしたものでない、それが地価を反映するはずはないという御意見もごもっともですが、しかしその土地利用形態と申しますのが、その土地にふさわしいような形で利用した場合の収益、たとえば非常に市街化した地域の周辺で依然として農耕を続けている、というふうな場合の利用方法に基づく収益というものを考えますと、とてつもない低いものになるかもしれませんが、周辺が市街化してまいった場合に、はたしてそこの土地利用形態として妥当と思われる利用方法をとった場合に得られるであろう収益というようなものを考えますと、まあまあその辺の一般地価というものにかなり近いものが出てくるのではなかろうか、というふうに考えるわけであります。
  96. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 やはり議論はくるくる回りしておりまして、その辺の地価へまた戻ってくる。その辺の地価というものは一体何からきたかということになりましたら、いやこれはこの土地がほしい、ここへ小さい店をこしらえたいのでかえ地がほしい、あれやこれや一万円だったのが、いまは五万円する。五万円したと思ったら七万円になった。あるいは、付近に団地形成の報が伝わった。にわかに売り手がなくなった。あるいは倍になった。あるいは、公団住宅ができた。たいへん便利だ、その付近もにわかに住宅地として値が上がってくる、こういうことになりますから、私はやはり土地というものは、普通の経済価格を形成する原則から全く離れたものであろうと考えるのであります。でありますので、土地の価格をきめるということは、そういう意味におきまして、やはりとんぷくで腹痛をなおすというような回答は出ないのではないだろうか、こう思うのであります。  そこで、そういう場合にごね得が起こるでありましょうし、あるいはまた何が妥当かということがはっきりしないために、そこの紛糾が重なってまいりましょうしいたしますと、ずいぶん利益を得る人もありましょうし、あわてて損をする人もありましょうし、めんどくさい、一刀両断で、大臣の専権にしてしまうという思想も生じてまいりましょう。そうなってまいりますと、凡百の民主的な手続は無用ということになってきます。そういうことになってまいりましたら、号令一下軍隊が収用したような、そういう政治の流儀のほうがよっぽど手っとり早い、というような思想が生じてくる危険もありはしないかとさえ、想像をたくましゅうするのであります。  でありますから、そこはめんどうであっても、やはり憲法もあるし、またかくして戦後、いろいろと問題が解決難であるけれども、歩んできた現状であるから、できるだけ条理も尽くし、そうしてまた公平適切に、また公益事業も適当に早く推進されるような、あらゆる面からこれは十分な検討をして対策を立てていかなければいくまいと思うのでありますが、やはりぶつかる一番大きな問題は地価ではないか。この点は、私も当委員会の劈頭に、この問題について、住宅問題で大臣にも質問したのでありますけれども、私自身も十分自信がない。いろいろな文献もあさってみたりしたのですけれども、どうも回答が出てきません。出てこないので、この間、清水さんですか、千葉大の先生の御意見を伺ってみましたし、いろいろとあの人の書いておいでになるものも読ませてもらいましたが、どうもなかなかいい案が出ない。結局、地価というものをほんとうに何がどうして形成するのかということをもっと突っ込んで十分に検討して、そうしてこれはどの基準が妥当であるか、妥当でない場合にはどうするかということ、また妥当でない値段を吹っかけて、それが事業の進捗に差しつかえるということであればどうするかということも、相当強い決意をもって臨む以外に手がないのじゃないか、こういうことになります。ですから、その点は突っ込んで、やはり地価をどういうふうに追い詰めていったらいいのかということに帰するほど、地価問題はやはり大きくこの法案の上にもあらわれてきておるものと思うのであります。  そこで、いまの鑑定士によって鑑定するとか、あるいはその他基準があるので、その基準をできるだけ数字化していくことに努力なさるということまでおっしゃっておるのだが、そういうこと以外にはいまのところ手がないのですか。それをもちましてもなお、若干前進するかわからぬけれども、やはり依然として問題は残っておるのでないだろうか。そうすると第二次、第三次の収用法改正で、漸次法律を簡素化するということ一本に進むのではないかという、さっきの私の議論に入っていくと思いますが、この点どういうものなんでしょうか。
  97. 町田充

    町田政府委員 地価がどういうふうにして形成されるかという問題につきましては、先ほども申し上げましたように、今年度御審議をいただきました予算で、研究補助金をいただいておりますので、これで専門家に検討していただきたい、こういうことで準備を進めております。公共用地の取得にあたりまして、起業者である国なり公団あたりは、大体専門的な不動産銀行なりあるいは信託会社なり、そういった専門家の評価を一応聞いて値段をつけておる、こういうのが実情であります。ところが売るほうの方になかなかそういう専門的な知識がおありにならない。どうしても、あそこは十五万円で売れたのだから、おれのところは二十万円だというような、しろうとの勘で値踏みをされてなかなか一歩も引かれないというようなことで、交渉が難航するというふうなことがしょっちゅうあるわけでございますが、これがいま申し上げたような鑑定士が中に立って相互に鑑定するというふうなことになりますと、専門家同士の鑑定でございますから、多少の値開きがございましても、そうしろうとがやるような値開きは出てこないだろう、したがって歩み寄りも比較的しやすいだろう、したがって売るほうも買うほうも、せっかく鑑定士という制度が新しく誕生するんだから、土地の売買については、こういう鑑定士の鑑定評価を経るという慣行をひとつつくっていってもらいたい、こういうふうに今後鑑定評価制度の運用を指導してまいりたい、こう考えておるわけでございます。それについては、先ほどから申し上げましたような鑑定評価基準というふうなものもすでに答申をいただいておりますので、これが周知徹底をはかって、これによって適切な実例を積み上げていく、その間におのずから適正な地価というものが一般にしみ渡る、浸透するということを期待をしておる、こういうふうな実情でございます。
  98. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 将来長い五年、十年の後のことならいざ知らず、もうすでに直面いたしております諸般の公共事業の実施について不便であるし、また困難な問題があるので、法改正をしようという趣旨でありますから、だからあまり将来を期待して、公平とか適切な事態の出現することを望むというようなことは、私はこれは意味のないことであろう、こう思うのです。そこで、たとえば問題を一転いたしまして、具体的に、時価を追うていくというような考え方もなお残っておるのでありまするから、それならば、例をあげるならば、最近全国にはんらんします宅地造成業者でありますが、宅地造成業で売買するということは法で禁止するところではございません。したがいまして、その宅地造成をする、山であった——あるいは東海道を列車に乗ってまいりましても、神奈川県、静岡県あたりへまいりましても、どこの山を売りますとかいう宅地屋がずいぶんとございますが、こういったのが新しく宅地を造成いたしまして、そうして売る。そいつがそれによって数倍の利益をあげる、あるいは膨大な利益をあげるというようなことになる。しかしそれもやはり取引の一例でありますから、実例でありますから、あすこであれだけの価格で取引された、あれが一つの時価になったということになりますと、その付近に公共用地を求めるというようなときには、やはりその大きな影響を受ける、こういうことになる。そうすると、そのばく大な利益をあげておるというようなそういうところへ何か打つ手はないのであろうか、それが一つの適正な鑑定価格を生み出す付近の材料を整備するゆえんではないであろうか、こういうふうにも考えるのであります。だから、そういう面についても相当手を打つべきではないだろうか。打っておけば、全体のいわゆる時価、全体の取引価格というものが静かに——多少動くにいたしましても、静かな動き方になってまいりますから、非常に無理のない条件が整備されるんじゃないだろうか、こう思いますので、いまのような新たな宅地造成等につきまして打つ手はないものか、打っておくべきではないであろうか。そして山を買った、山を坪五百円なら五百円で買った、宅地にしてそれを一万円で売る、二十倍に売れる、宅地造成の経費は二千円しかかかっていない、けれども、やはり宅地を求める人には何か利用価値があるというようなときには、これは一万円で飛んでいくということもよくあるわけなんですから、そういうような方面について、相当利潤を押えていくとか、差益を押えていくとか、吸い上げていくとかいうようなことも反面考えていかなければ、鑑定士にまかしておくというようなことでは、まことに前途遼遠ではないだろうか、解決はなかなか至難ではないだろうか、こういうふうに考えますが、どうでしょう。
  99. 町田充

    町田政府委員 直接に、宅地造成業者が造成いたしました宅地の分譲価格を規制をするという、直接的にその規制をするというとなかなか問題が多かろうと思いますが、実は宅地制度審議会で不動産価格評価制度が答申をされました際に、将来は、ある一定規模以上の宅地を造成をして分譲をするというふうな場合には、その分譲価格について鑑定士の鑑定評価を経た値段を表示しなければいかぬというふうな制度も検討するように、というふうな答申をいただいております。したがいまして、私どもといたしましては、将来の問題として、そういった宅地造成業者の分譲価格というものについても、間接的にではございますけれども、そういう鑑定評価制度の拡充によって対処していくことがどうだろうかということは十分に考えておるわけでございますが、公団なりあるいは地方公共団体が造成をして分譲いたしますものにつきましては別でございますけれども、一般民間の宅地造成業者が売り出すものについて、直接的にこれに制限を加え、チェックをするということにはいろいろ問題が多かろうと思いますので、まあさしあたりはそういった間接的な方法で、適正な評価というものによって売買されるというふうな方向に持ってまいりたい、こう考えております。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 つまりそれはたとえば鑑定士に鑑定をさせて、その鑑定価格以上には売ることを差し控えるように勧告でもするというのか、あるいはまたその場合に、なにかほかの方法でその利益を押えるというのか、それはどうなんです。
  101. 町田充

    町田政府委員 鑑定士の鑑定評価、これがただいまの法制では、やっぱり一つのその鑑定士だれそれの評価、個人の意見、こういうことになっておりますので、これを直接的に、それ以上で売買しちゃいかぬというふうにきめつけることには問題があろうかと思います。国の場合あるいは地方公共団体の場合でも、売買いたします場合に、そういう鑑定士ではございませんけれども、いま現に不動産銀行なりあるいは信託銀行なり、そういうところで鑑定評価を経てやっておるわけでございますが、必ずしもそれに拘束されて、それをきちっとそのとおりやるということではございませんで、やはりその線を基準にして、その上下で、かなり相対の売買でございますから、その間で参考にしながら値段をきめておる、こういう実情でございますので、いきなり鑑定士の鑑定評価価格によるのだ、あるいはそれ以上に売っちゃいかぬのだということにきめつけることには、いろいろな抵抗があり、問題があるのじゃないだろうかというふうに考えます。
  102. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は時価によらないで地価補償の妥当額をきめるという方法をとるならば、このことはもう申さないのです。しかし鑑定士が評価をする場合においても、時価を相当重視するということが基準になる。また補償の基準にも、やはり付近の売買とか時価というものは相当重要な要素をなしておる、数字作成の大きな要素をなしておるというのであるから、地方公共団体等、公団等が宅地造成をなすような場合には、それ自身は問題ではなくして、そういうことじゃなしに、一般的に地価というものが、土地の時価というものが、そうでない場合に形成されていくという事情のほうがむしろ割合は大きいものと見ますので、たとえば都市の価格がかりに六倍になっているといたしましても、六倍に引き上げたということは、これはもう普通の個々の民間取引がそこに形成しておるのじゃないか、こう思うのであります。でありますから、やはりこの一般にいわゆる時価をつくりつつあるという場合に、相当不当なと見るべき差益が積み重ねられていく、そこに手をつけていかなければ、適正な時価に押えることはできないのじゃないだろうか。鑑定士が幾ら評価いたしましても、土地に関しましては、物の生産じゃあるまいし、土地に関しては、幾らという、それはほうっておいてください、私どもはここで新しくかくかくの企業を営むのですから、自動車販売の店舗をつくるのですから、坪五十万円でもよろしいのです、けっこうこれで引き合います、と言ってしまえばおしまいなんです。でありますから、そこに土地を持っておるがゆえに、どう考えても相当でないと思われるような収益をするという面に何か手をつけないといかぬのじゃないか、こういうふうに思うのであります。そこで移動する場合における利益を吸い上げるという手もあろうかと思います。またじっとしておる土地につきまして、問題になっております空閑地税とかいうものもあろうかと思いますが、そういう面につきまして、相当突っ込んだ考え方をこの際はっきりとしておかなければ、これはたちまち問題になっていくと思います。これは、憲法を振りかざして、最高裁判所まで争っていくという例がこれから起こってくるだろう、強権発動的な態度に出るならば、なおさらそういう方面における抵抗が起こってくると私は思います。それならば私権と公共性との両全を期する、調整をするという趣旨におきまして、やはり相当社会的に不当な利益は国に吸い上げるという面も考慮しなければならないのじゃないか、この考慮の用意なくして、法案のいまの改正だけでは、問題の根本的な解決にならぬと思うのですが、それに対する用意でもありましょうか。
  103. 町田充

    町田政府委員 先ほどから申し上げておりますように、いま相対の売買というたてまえで、いろいろな法律制度が組み立てられておりますときに、直接その売買の価格を押える、何らかの方法で統制をするということは、現行制度全般との調整関係もございますので、なかなかむずかしい問題かと存じます。  しかし、不当にもうけておるというものに対する何らかの措置を考える必要があるのじゃないかという御意見でございますが、そういうことも考慮いたしまして、たとえば土地増加税というような構想がいろいろ議論されたわけでございますが、たとえば今年度の所得税法の改正で、資産の譲渡による所得、これにつきましては、いま半額課税という税法上の恩典があるわけでございますが、その恩典を、きわめて短期間内に売買したことによる資産の譲渡所得に対しては適用しない、きわめて短い期間と申しますのは、三カ月程度を考えておるようでございますが、三カ月内に土地を買って、転売をして、差益増があったというふうな資産の譲渡所得に対しては、半額課税の恩典を適用しない、つまりまるまる税金を取るというふうな所得税法の改正も行なわれたわけでございます。これも考え方によれば、一種の土地増価税的な性格を持ち、そして土地ブローカーの暗躍と申しますか、そういうものを押えよう、こういう意図でそういう改正がなされたわけでございますが、そういった間接的な税制というふうなものも、今後の問題として十分検討しなければならぬ問題だと思います。ただ、直接的に売買価格そのものに対してどうこうするということについては、現行制度全般の問題とも非常に関連いたしますので、いろいろ問題が多かろうかと思います。
  104. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 いまの問題は譲渡税の改正の問題でありますが、こういうことはいまの問題の解決にはなりません。私の申し上げておりますのは、そうでなくして、もっと、つまり譲渡したものの買いかえをしたようなときの利益、それに課税しないとかいう、そういう狭い範囲ではなくして、もっと広い範囲におきまして過大な利益を得るということがありますので、そういうものを追及していくという手を、ほかの法律の制度もありますけれども、それも考えて、地価安定のために、手を打つことが必要でないか、こういうふうに思うのでありますが、これはいまの所得税法の改正だけでは解決しないことはもちろんであります。そういたしますと、つまり税制の面から妥当な地価を形成させるという手は、いまのところないということになりましょうか。これはいろいろな方法がこの際考えられますが、まず第一にあげてみたいことは、税制の面から妥当な地価を形成させる、こういうことはできないものかどうか、この点は非常に至難であるのかどうか、これはいままだあまりきめ手がないようでありますので、ごく簡単でよろしゅうございますから、述べておいていただきたい。
  105. 町田充

    町田政府委員 地価抑制のための税制、こういうことになりますと、まず議論いたしましたことは、土地増価税でございますが、これはいまの売買実情から申しますと、増価税分だけは買い主に転稼させるということで、逆にいまより価格が上がるのではないか、こういう議論のほうが大勢を占めまして、どうも宅地制度審議会では消極的な御意見が多かったわけでございます。  空閑地税、これは空閑地を締め出すことによって供給増加の一助になる、そうすれば地価がそれだけ安くなるであろう、だから供給の促進策、こういう意味では検討に値する、ただしその前提として、土地利用計画というようなものが確立していなければ、なかなかむずかしい、だからまずそういう方面を検討しろ、こういうことで中間結論をいただいているわけでございますが、さしあたり税制ということになれば、そういった問題が今後の検討課題になろうかと思います。
  106. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは大臣に聞くのが至当ですが、あなたは省内で企画の責任を持っておられるので、できるだけ省内の意見調整してもらいたいのですが、要するに税制に限りませんから、地価問題に対する何らかの新しい抑制の手を積極的に打つということは絶対に必要でございまして、そのことなくしては、どんなにあらゆる他の方法手段をお選びになりましても、ずばり地価問題にぶち当たっていくことなしに、公共のいろいろの事業の進展は依然として困難であるという考え方が私はだんだん固まってまいりました。でありますので、省内におきましても、地価問題につきましては、今後そういう審議会等におきましても、地価問題にぶっつかっていくという積極的な体制を整えていくということが絶対に必要だと思いますので、その点、あなたは、事務当局として、省内の意見をつくり上げるように、強くお願い申し上げておきます。  それで、政令委任の事業でありますが、これは大体予定に上っているのかどうか、この点も非常に大事なことであります。これはやはり前々議論しておりますように、憲法上の問題にもなり、内閣法の問題にもつながってまいりますが、あらかじめ予定せられている事業があろうかと思いますので、ひとつその御用意のほどをこの機会に示しておいてもらいたい。どういうものを新たにこの種公共事業として指定しようとするのか、その辺をひとつ明らかにしておいてもらいたい。
  107. 町田充

    町田政府委員 まだ最終的に私どものほうで意見を取りまとめたわけではございませんが、現在各省から要望がございますのは、第一種空港が出ておって重要港湾が出てない、したがって重要港湾をこの際加えてもらいたい、それから、昨年御審議を願いました新住宅市街地開発法に基づく新住宅市街地開発事業あるいは市街地改造事業、こういったものが緊急を要するものが多い、あるいは特に公共性の高いものであるということで、この事業に加えてほしいという申し出がございますが、十分にそういった申し出を検討して、最終的に政令案を固めたい、こう考えております。
  108. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 大臣になお締めくくり等について聞きたい点があるのですけれども、できれば別の機会にさせてもらいたいと思います。きょうはこの程度にしておきます。
  109. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 次会は、来たる二十二日金曜日、午前九時三十分より理事会、午前十時より委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十一分散会