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1964-04-23 第46回国会 衆議院 建設委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月二十三日(木曜日)     午前十時三十七分開議  出席委員    委員長 丹羽喬四郎君    理事 加藤 高藏君 理事 瀬戸山三男君    理事 服部 安司君 理事 福永 一臣君    理事 岡本 隆一君 理事 兒玉 末男君    理事 山中日露史君       逢澤  寛君   稻村左近四郎君       大倉 三郎君    正示啓次郎君       中村 梅吉君    堀内 一雄君       堀川 恭平君    松澤 雄藏君       湊  徹郎君    山本 幸雄君       和爾俊二郎君    渡辺 栄一君       金丸 徳重君    久保田鶴松君       栗原 俊夫君    西宮  弘君       原   茂君    山崎 始男君       玉置 一徳君    吉田 賢一君  出席国務大臣         建 設 大 臣 河野 一郎君  出席政府委員         建設政務次官  鴨田 宗一君         建設事務官         (大臣官房長) 平井  學君         建 設 技 官         (河川局長)  畑谷 正実君  委員外出席者         総理府事務官         (経済企画庁水         資源局水質保全         課長)     戸室 成樹君         建設事務官         (河川局次長) 国宗 正義君         専  門  員 熊本 政晴君     ————————————— 四月二十三日  委員天野光晴君、田村元君及び井谷正吉君辞任  につき、その補欠として湊徹郎君、和爾俊二郎  君及び栗原俊夫君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員湊徹郎君、和爾俊二郎君及び栗原俊夫君辞  任につき、その補欠として天野光晴君、田村元  君及び井谷正吉君が議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  河川法案内閣提出第八号)  河川法施行法案内閣提出第二四号)      ————◇—————
  2. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 これより会議を開きます。  河川法案、及び河川法施行法案を議題とし、審査を進めます。  質疑を続行いたします。兒玉末男君。
  3. 兒玉末男

    兒玉委員 最初に、河川局長にお伺いしたいのですが、いままで多くの先輩が質問しまして、ある程度重複する点もあろうかと思いますが、大体まとめて御質問したいと思います。  第一に、この第二章に、河川管理原則ということが書いてあるわけですけれども、やはり現在の河川法は、水行政に対する基本法という重要な意味を持つ法律だと思うのですが、現在まで制定されました水に関する法律が相当あるわけです。ですから、管理という概念がどの程度拘束力と範囲を持つものか。それから、現在まで制定されておる、たとえば工業用水法とか地下水規制法とか、また多目的ダム法など、多くの関連する法律があるわけですが、これらの関連性から考えますならば、いま少し全体を、何と言いますか、総括する総合的な治水法あり方を考えるべきではないか。この点について、管理原則概念というものはどういうふうな幅を持っておるものか。第一にこの点についてお伺いしたいと思います。
  4. 畑谷正実

    畑谷政府委員 河川管理概念でございますが、ここの法文に書いてございますとおりに、河川の実態をつかみまして、河川の面から見て、それをいかに管理するかということを考えております。  そこで、河川とは何ぞやということでございますが、河川というものは、物理的に見ますと、河川の敷地と流水、そういうものを一応考えております。その流水の中にはどういうものが入るかというと、伏流水ということまで一応考えております。そのほかの地下水とかいろいろな問題もございますが、これは、われわれとしてはこの法律の中には入らないということでございます。  それからもう一つ、いろいろな水に関する立法もございます。水資源法だとかそういう問題、それから水の水質の問題、そういうものがございますが、私どもはそういうようないわゆる工事実施促進法、それに対しまして、河川法というのは、水利に関する権利制度基本をきめる、そういうことで一応の調整をとりまして、水利権制度というようなものの基本河川法で、実施促進についてはそういうような法律である、こういうふうに考えております。
  5. 兒玉末男

    兒玉委員 私は、大臣の明確にされておるとおりに、河川公共用物であるということが明確に規定をされておるわけです。ところが実際に流れておる水の利用なりあるいはいろいろな面において、私は相当問題が派生しておると思うのです。一番問題の大きいのは、いわゆる公害といわれる工場用水排水の問題です。これが非常に多大の害悪を及ぼしておるということが、どこの地域においても社会問題として提起されておるわけです。でありますから、その水の基本を取り入れて、河川法の中のこの第二条における管理という面において、今日特に水に対する情勢の進展に伴って、非常に水の必要度が高くなっておるわけです。そういう点から考えますならば、きのうの金澤参考人意見の中から出されましたとおり、そういう流水占用許可権というものは建設省が持っておるわけです。そういう点等から考えますならば、この管理最高責任者流水制度をきめるに当たって、その結果、対社会的に及ぼす影響ということは当然その考慮の中に入れるべきだ。そういう管理権者としての一つ権限の中において、やはり規制すべき何ものかがなければ、いわゆる利用するその目的は確かに社会的な立場を考えても当然だと指摘されるわけですけれども、結果的におきまして、今日工場排水の問題が非常に大きな課題を投げておるわけです。そういう点から考えますならば、いま一歩前進した形の中において、この管理概念というものをもう少しこまかく規定する方向においていかなければ、せっかくのりっぱな河川法ができましても、いわゆる利用する側において、ほんとうに水が公共用物であるという概念が、ともすれば自分がかってに使っていいのだというふうな方向に走りやすいところの多くの弊害を持っておるのじゃないか。こういう利用された水が、結局対社会的に大きな公害を及ぼしておる。これらの関連について、ひとつ局長の御見解を再度承りたいと思います。
  6. 畑谷正実

    畑谷政府委員 いまのお話につきましては、二つの問題があると思います。いわゆる河川というものは公共用物であるから、これに従ったような規制をすべきではないか、これは当然この河川法によりまして、いわゆる流水占用とかあるいはそれを引用するためのいろいろな水利調整の問題については、御存じのとおりに、十分調整できておると思います。  なおもう一点は、そういうような問題と別に、性質的に水質というものをどういうふうにするか、これはその法文の二十九条にも書いてございますとおり、やはり水というものは、ただ入れものの中にある一つの量でなくて、そういう入れものの中にある水そのものの性質というものを、十分公共用に使うに差しつかえないような状態にしなければならないというようなことで「清潔」ということばを使っておりますが、そういう面で、みんなの人が使うために清潔の維持に、河川管理の面を働かしていく、こういうふうに考えております。
  7. 兒玉末男

    兒玉委員 ですから、二十九条の規制、これは法律でありますが、現在制定されております水質保全法との関係において、きわめて微妙な問題を含むのではないかと思うわけです。ですからこれは水質審議会等が設けられて、実際の実施面においては相当規制がされておるわけですけれども、やはり基本法である河川法のほうがよりウエートが高いし、また水利用に対するところの許可権限を持っている建設省でありますから、今日たとえば派生しておる問題として——きょう水質保全課長を呼んでおるわけですが、どこの地域においてもこの工場排水が非常な問題になっておる。これはたとえば隅田川等も相当汚染されておるということが最近の新聞にも出ております。この点は、水質保全法との関係において、今日相当な問題が提起されておるわけです。この点について河川局長として、占用許可をしたその水が、今度はその排水一般国民に非常に重大な影響を与えておる、こういう点に対して、今後どういうふうに指導していこうとするのか、水質保全法との関係について、ひとつ御意見を聞かしていただきたい。
  8. 畑谷正実

    畑谷政府委員 水質の問題でございまするが、いまお話しのとおりに、川の中に工場のいろいろな汚水を含みました排水が入っていく、それをどこまで規制するかという問題でございますが、これは、河川の中にそういう汚物が入ってくるということは、河川管理の面からよろしくないから当然これを規制しなければならぬが、しからばそれをどこまで、工場のそういう排水を、工場施設を直してまで河川法規制をするかということになると、これは非常にむずかしい問題であります。御承知のとおりに、水質規制の問題は、工場排水規制のそういうような法律でその分野は規制してもらう。私どもは、河川の区域内にそういう問題が入ってくる面について、河川管理上から規制する、こういうように考えます。
  9. 兒玉末男

    兒玉委員 これは私は非常に大事な問題だと思うのですが、使った水を外の川に流す、それがどういう形で流されても、それは所管外のことだ、こういうふうな判断でございますか。
  10. 畑谷正実

    畑谷政府委員 工場排水については、いわゆる河川から揚水、取水をいたしまして、それから河川に流す、こういう一つの点がある。もう一つは、地下水その他そういうものをくみ上げまして、河川と別個に揚水したものを河川の中に流す、こういう二つがあるわけです。いまお話しの、前段の面につきましては、当然可取水の面からいろいろな問題がございます。そういう点は、そういう点からわれわれ当然規制しなければならぬと思います。
  11. 兒玉末男

    兒玉委員 私はやはり流水工場が取り入れ口から取って、その水を工場において使って、たとえばパルプ工場等のごときはその顕著な例があるわけです。私の郷里にも日本パルプがありますが、常に排水が問題になりまして、その河川の流域あるいはその河口の零細な漁業に従事しておる人々が、非常な損害を受けている事実があるわけです。これは単に私どものほうの工場だけではございませんが、そういうようないわゆる水質保全関係河川管理との関係が、まだ非常に私は緩慢ではないかと思う。確かに利水という面については相当の配慮がされているけれども、使った水の排水に対する規制が緩慢じゃないか。というのは、たとえば工場がそのような排水について努力することは、いわゆる工場採算の面において不可能だ、そういうことで、使うときだけはかってに許可をもらって、使った水はどうでもこっちのかってだということでは、私はやはり水法基本ともいうべき河川法あり方として、もう少し検討を加える必要があるのじゃないか、こういうように考えるわけです。  本日は水質保全課長がお見えになっておるので、担当の課長に聞きたいのですが、現在主要河川における水質基準等については、どういうふうな作業を進めているのか、この点についてひとつお聞かせを願いたいと思います。
  12. 戸室成樹

    戸室説明員 水質保全法昭和三十三年にできましたが、保全法によりますと、水質汚濁原因となって関連産業に大きな影響を与える、また公衆衛生上看過しがたい問題があるという場合につきましては、一定調査をやった上で、必要がある場合には、それを指定水域として指定し、水質基準をつくるということになっております。現在までにそのために調査基本計画をつくりまして、それで百二十一水域対象といたしまして、そして逐年それにつきまして問題の大きい水域ごとに逐次調査をやっております。三十八年度までに三十五水域についてその調査を終わっております。調査内容は、一年間の通年調査ということになっておりまして、それらの河川につきまして、現在水質審議会にはかりまして、水質基準審議及び指定ということをお願いしているわけでございますが、いままでに指定されたものは四水域、さらに近く指定がきまるものは数水域があります。全体で七つの水域について審議中でございます。そういうようなことで、現在作業をやっております。
  13. 兒玉末男

    兒玉委員 大体三十数水域について基本調査をやっていると言われますが、特に私は工場地帯が多い阪神とか東京、こういうところの主要河川については、常に水質汚濁の問題が起きておると私は思うのです。それで、特に四月の十八日でございましたか、隅田川の問題が非常に大きく出ておりましたが、大体こういうふうな非常に人口の密集する、しかも非常に水の利用の高い地区における水質基準といいますか、そういうことは、具体的にどういうふうな作業が進められておるか、もしこれが汚染された場合、いままでどの程度の対策をとってきているのか、この二点についてお聞かせ願いたい。
  14. 戸室成樹

    戸室説明員 水質汚濁審議する場合の作業といたしましては、具体的に申し上げますと、まず一年間調査いたします。そのあとその資料につきまして一定解析を行ないます。そしてそれにつきまして一定解析作業が終わりますと、その上で審議にかかるわけでありますが、その際におきまして、同時に水質基準というものだけでなしに——水質基準はただ一定工場事業場に対する規制でございますから、そのほかに、工場事業場規制だけにとどまらず、水質汚濁が防止できない点も十分にあわせて審議いたしまして、こういう点につきましても、水質基準の決定と同時に、あわせてそういう関連措置を、これも関係各省に、あるいは関係機関十分通知あるいは連絡申し上げまして、その点の実施方の要請ということもあわせて行なうというようなたてまえで運用しております。
  15. 兒玉末男

    兒玉委員 さっき具体的な問題について、私は隅田川の例をあげたわけですが、事情を聞いてまいりますと、水質審議会意見というものは全く無視されて、工場側が、そういうふうな設備をすればばく大な金がかかるから採算が合わないということで、これが野放しになって、相当水質審議会等でやっておるのですが、相当な抗議をしてもナシのつぶてで、全然これがほったらかしにされておる。これは、この前の多摩川の例もあったわけですが、東京都民にとってはきわめて重大な問題だと思うのです。その点について、現に起きておる隅田川問題等は、具体的にどういうふうな作業を進め、どのような措置をやってきているのか、この点について再度承りたいと思います。
  16. 戸室成樹

    戸室説明員 隅田川につきましては、三十六、七年にわたりまして、水質基本調査をいたしました。そのあと三十八年、昨年の八月に第一回の審議会——実際は部会でございますが、部会を開きまして、現在までに十回審議会を、部会を開いております。その過程でどういう審議のしかたをしているかということでございますが、御承知のように、隅田川水質問題は、環境衛生あるいは生活環境に関する問題という点が一番大きな問題でございます。  それで、汚濁の態様でございますけれども、その点についてわれわれのほうが解析いたしました結果は、隅田川の水量が見た目よりきわめて少ない。それから御承知のように、隅田川自体非常に停滞的な河川である。一週間もかかって海に入るというような状況河川である。それから、それに対しまして、工場事業場、それから一般家庭下水、それがものすごく多いということが一つでございます。それに対しまして、家庭下水あるいはその他についての除害施設下水道あるいは工場に対する除害施設というものがきわめて普及率が低いということが主たる問題の原因であるというふうなことになっております。それに対する審議でございますけれども、一部新聞にそういう印象を与えるようなことが載っておりましたが、実際の審議内容は、きわめて慎重に一般住民方々の具体的なそういう要望にいかにして沿うかということで、中には、そういうふうな工場事業場に対する負担の問題も実はありますけれども、これはその中の一つの問題としてとらえるということだけで、問題は、あくまでも一般住民方々がそういうふうな公衆衛生あるいは環境衛生にいかにして早く対処するかということで、基本的には終始しております。したがって、そのために慎重審議を重ねておるということで、いままでにない部会審議回数になっておる、そういう状況でございます。
  17. 兒玉末男

    兒玉委員 あと一点だけお聞きしたいのですが、これはあと大臣にもお伺いしたいのですけれども水行政の中で、水質保全ということはきわめて大事な問題でありますが、現在水質審議会においては、これの実際問題が提起されてから検討するのですが、現実の問題として、主要河川における先ほど言われました基本調査が終わっておる水系については、大体どの期間をおいて、どの程度間隔をおいて、実際の水質検査を行なっているのか、この点について、一つの例としてお聞かせを願いたいと思います。
  18. 戸室成樹

    戸室説明員 ちょっと質問を聞き落しました。
  19. 兒玉末男

    兒玉委員 水質検査ですね。それはどの程度間隔をおいてやるのか。おそらく法律できめられたように、一定期間をおいて水を検査するということが規定されているのですが、特に汚染度の高いところは工場地帯の多いところだと思うのです。先ほどあなたが言われたように、基本調査を三十数水域終わっていると言われましたが、そういう重要な水域における水の検査というものは、どの程度期間をおいて検査をされているのか。たとえば、一つの事件が発生してからその検査に取り組むのか、あるいは事前にそういう検査を定期的に行なっているのかどうか、ということでございます。
  20. 戸室成樹

    戸室説明員 水質について行なっている調査でございますが、これは三十四年にできました水質保全法の中に、たしか経済企画庁長官水質審議会意見を聞いて調査基本計画をつくりなさいというのがございます。その内容はすでに問題が発生しまた問題の発生のおそれのある水域を全国的にうまく選びまして、それを百二十一水域取り上げまして、それが基本計画調査対象河川と一応決定しております。したがいまして、そういうふうな問題がすでに発生するおそれがあるというものを新たに選んで、それにつきまして、たとえば河川で申しますと流量の検査というのは少なくとも一年間を要するということでございますので、そういう一年間にわたる調査もございます。それから問題の時期が一定期間であるというふうな場合には、その期間に限り、その部分だけそういう調査をするということでございまして、問題が発生してあわててやるというのではございませんので、すでにそういうふうな配慮であらかじめ選んだものを、計画的に長期にわたって行なうというたてまえで調査を行なっております。
  21. 兒玉末男

    兒玉委員 大臣にお伺いしたいと思いますが、先ほど河川局長から河川管理概念というものについてお聞きしたわけですけれども、特に私は、利水の面においては積極的な構想が盛られておるけれども、それの使った水の排水が、いわゆる何といいますか、公害として相当の被害を与えておる。こういう点から考えますならば、特に今回の河川法改正のねらいというのが、いわゆる水系別河川管理体系を整備して、そうして治水利水両面からこの水行政基本を確立するということが言われておりますけれども、いままで提起されておりますように、この河川の水を利用した排水が非常に社会的に大きな問題として、なおこれに対して、やはり私たちは水法基本というものは地域住民立場を常に考慮しなければいけない、こういう点から考えますならば、いま少しく水法あり方というものを前進させる必要があるのではなかろうかと考えるわけですが、このような工場排水等を含めて、公害として地域住民に大きな影響を与える立場から、特に管理最高責任者である大臣見解をひとつ承りたいと思います。
  22. 河野一郎

    河野国務大臣 ごもっともな御心配でございますが、しかしながら、大体は地域住民の理解ある協力があるならば、水質が汚染する場合はわりあいに少ないと思うのであります。ことにそれが大工場であれば、その工場に対して、工場管理の面から、その水を徹底的に公害を除去させて放流するということもできるわけでございます。ところがはなはだ遺憾なことには、現にこれらの川につきましては、そこへある程度の悪水を放流することが既得権のごとくになっておりまして、これについて措置することが非常に困難である。たとえば下水道をその川に平行して設置いたしましても、下水道使用料が高いから、依然として下水道を使わずに川に流される方が多いというような例は、一々枚挙にいとまがないのであります。しかしさればといって、これらの既得権利についてこれをどういうふうにしてシャットアウトするかということにつきましては、なかなか問題が多うございます。したがって、今後十分これらについても検討を加えると同時に、またそれはそれにして、隅田川に例を持っておりますように、流水の量を非常に多くして、そうしてその害を消すというような立場をとって、御期待にこたえる場合もあるでしょうし、いろいろ従来の川、これから新たにそういう危険の生じてくる川について、ケース・バイ・ケースで善処してまいることが必要ではなかろうか、こういうように考えます。
  23. 兒玉末男

    兒玉委員 畑谷河川局長にお伺いしたいのでありますが、やはり水質保全の問題でも、先ほど局長排水に対する管理という面が、率直に言って、現在の河川法の中においてはあまり規制ができない、こういうふうに私は聞き取ったわけですが、やはりたとえ地下水等利用したものであっても、その排水河川に放流されるならば、これはやはり第二十九条との関連において、当然ある程度規制する権限というものはあってしかるべきではなかろうかと私は思うのです。いわゆる流水占用許可を得たものが排水するのは当然のことでありますが、地下水等からくみ上げた水、その排水汚濁する場合は、当然これは二十九条のいわゆる規制があってしかるべきだと思うのですが、その関連について、ひとつ再度お聞かせを願いたいと思います。
  24. 畑谷正実

    畑谷政府委員 先ほどはそういう例で申したつもりじゃないのですけれども用水の取り方がそういう取り方があるということでございまして、いかに地下水であろうが、川のほうから持ってこようが、それが河川の中に排水として入ってくる場合は、当然河川管理の面からやるということでございます。ただ、工場の機械の装置までも直して、それによって排水をどうのこうのすることはなかなか河川法でいきがたい。もう一つは、河川法の二十九条で書いてございますとおり、規制措置というものは、ただ汚水だけをそういうふろにして規制するばかりでなく、御承知のとおりに、隅田川におきましても、新河岸川に新たな水を持ってきまして、それを希釈して、そういう河川汚水をだんだんなくする、あるいはしゅんせつ船を使って、河川の川底の泥をはね上げまして、汚水を希釈するということで、河川管理としては、水質保全という面にいろいろな作業をやって、管理ができるということもございます。
  25. 兒玉末男

    兒玉委員 これは大臣にお伺いしたいのですが、今度の河川法改正にあたりまして、いわゆる水の利用というものは高度にその必要性を増してきたわけですが、何と言いましても、私は、河川法最大眼目は、人命尊重に立つ治水ということにやはり最大眼目が置かれなければいけないと考えるわけですが、この点について全体を見てまいりますと、やはり利水ということに非常にウエートがかかっておると感ずるわけですが、この点について最高責任者として、いわゆる利水調整という面と治水とについてどの程度配慮というものがなされておるか。総合的な立場から、ひとつ大臣見解を承りたい。
  26. 河野一郎

    河野国務大臣 お話のとおり、当面治水に重点を置いて、徹底的に治水を達成しなければならないことは申すまでもありません。しかし、その治水は定量の水を流すことによって徹底するわけであります。したがって、水源地に、ダムの建設その他砂防の徹底というようなことにさらに重点を置いてやってまいるということでございまして、総合的に川の問題は解決することになるものだというふうに私は考えてやっておるわけであります。
  27. 兒玉末男

    兒玉委員 特に私は、先ほども申し上げましたが、水に関連する法律が非常に多い。一本の川でも、表面は建設省、中は厚生省、あるいはあとは通産というふうに、一つの流れている水も、その場所によって所管が違う。こういう点等から考えますと、特に今日高度の経済成長の場合、水に関する所管というものは非常に多岐にわたっているわけですが、その利用度が高まれば高まるほど、治水利水調整、特に利水調整ということは相当な問題が出てくることと思うのです。この点は全国の知事会においてもかなり問題があったところでありまして、この河川法が、当初の原案よりも相当内容において後退したということも事実でありますが、こういう点について、特に建設省管理者でありますけれども利水調整の面について、いわゆる管理者である建設省が全体的な調整というものをうまくできるかどうかむしろ特に利水調整という面については、やはり第三者的な機関を設けて、公平な利水調整というものが行なわれてしかるべきではなかろうかと考えるわけですが、第二条との関連において、この利水調整というものについてどういうふうな見解を持っておられるか。また今後多面にわたる各所管庁との間の調整ということをうまくやっていける自信があるのかどうか、これらの点についてひとつお答えを伺いたい。
  28. 河野一郎

    河野国務大臣 本法制定の暁におきましては、私は絶対に責任を持って、御期待に沿うように運用してまいる確信を持っております。
  29. 兒玉末男

    兒玉委員 もちろん、当事者でございますから、自信があると言われるでしょうが、現実の問題として、特に水に対してはなかなか——先ほどの工場排水の面一つとりましても、出す水はかってだ、それを規制することはできないという局長の答弁もありますように、やはり総合調整という面について、先ほど申し上げた第三者的な機関を考える必要がないのかどうか、この点について見解を承りたい。
  30. 河野一郎

    河野国務大臣 工場を新たにつくって、きたない水を川に流すのはかってだ——それはかってにさせません。そういうことは絶対に許しません。どこで。それは御承知のとおり、工場法においても、それから今日これだけあらゆる法律で、いろいろな面から拘束を受けるようになっております。ただそれが十分に運用されておるかどうかという点であります。これにつきましては、河川行政を担当いたします者といたしましては、それぞれの機関に十分に注意をいたしまして、そういうふうなことのないように、絶対に私は責任を持ってやるという所存でございます。
  31. 兒玉末男

    兒玉委員 それから、今回の水系主義によりまして、河川管理というものが大幅に国に委譲されるわけでありますけれども、やはり水は地域開発の総合性なり、また長い歴史の中においていわゆる慣行水利権という既得権が相当あるわけです。この既得権がこれから相当制約を受ける形になってくるのではないかと思うのです。そうしなければ、この水系主義に立ったところの河川管理はなかなかうまくいかない。そういう点から考えますならば、現在までのいわゆる慣行水利権既得権との調整という問題は、私は地域において大きな問題が提起されようかと思うのですが、この既得権であるいわゆる慣行水利権との調整等については、どういうふうな配慮をなされていかれるのか、この点についての見解を承りたいと思います。
  32. 河野一郎

    河野国務大臣 これはかねてたびたび申しますとおりに、既得権である慣行水利権につきましては、あくまでも尊重いたします。ただし、これは尊重したからといって、いまお話しのような点に新たに問題が惹起することではない。すでにこれまでにおいて慣行水利権が確立しておりまして、その慣行の中にわれわれは行政を運用してまいるのでありますから、新たに問題が起こるわけはない。これをいかにして調整を今後とって、そしてよりよき、より問題の起こらぬようにするか、それができるかどうかということであって、今日より悪くなるということになろうとは考えておりません。
  33. 兒玉末男

    兒玉委員 時間も制約を受けておりますので、あとは大綱についてお聞きしたいのですが、特に今回の河川法水系主義をとるということで、あとでこの点お聞きしたいのですが、たとえば、遊水地域の問題あるいは水系概念といいますか、こういうような点から、私は、相当広範囲にこの管理の範囲が拡大されてきたと思うのですが、こういう立場から考えますならば、実際行政上の面においても大変化をもたらすものと私は考えるわけです。  そこで、まず第一に考えるのが、砂防法なり海岸法との関係というものが、私はきわめて重要な問題を提起するんじゃないかと思うのですが、砂防法なり海岸法との関連についてはどうなのか、この点について、局長なり大臣の御答弁をお願いしたいと思います。
  34. 河野一郎

    河野国務大臣 どうでしょうか、水系ごとにと言いますけれども、砂防法は砂防法の範囲を決定して、砂防法の適用の範囲はきまっております。それをあえて河川法で砂防法の範囲に入っていって云々ということは私はないと思います。海岸法においても同様だと思うのであります。おのずからそこには法律の範囲がきまっておる、こう思いますから、そこに混淆があろうとは思いません。
  35. 兒玉末男

    兒玉委員 特に私は、そういうなわ張りを侵すというふうな立場から考えたのではなくして、やはり密接な関連性があるわけですから、その辺の一つ——今度水系主義をとった河川法の実際から考えて、私はやはり全然無関係ではないと思います。砂防は砂防なりにかってに独立しているのだから、そんなことまでどうこうすることはない、しかし、実際私は、河川管理関係から密接な関連性があると思うのです。ただ砂防はかってに砂防をやればいいんだというんじゃなくて、密接な関連があるんじゃないか、この点について、ひとつお聞きしたいのであります。
  36. 河野一郎

    河野国務大臣 私の前回の答えが、少し誤解から出ておるようでありまして、取り消します。  お話しのとおり、私は先ほども申し上げましたように、なるべく多目的ダムを増設することによって、水の高度の利用をはかっていく、このことが結局治水の根本になるということを申し上げましたが、その際に、ダムの建設にあたっては、徹底的な砂防が必要であるということは申すまでもございません。そういう意味合いからして、基本的に総合的に計画を立ててやるべきであって、この点からまいりましても、従来府県にまかせておりましたもの等につきましても、基本の構想は一貫して建設省においてやるということが、よりよき結果をもたらすだろうというふうに思います。
  37. 兒玉末男

    兒玉委員 これは昨日金澤先生にも聞いたわけですが、特に今回の河川管理において、一昨日利根川の水系を見せてもらったのですけれども、遊水地域というものが非常に大きな問題であろうかと思うのです。昭和三十七年だったと記憶しますけれども、これは大臣の地元でございますが、神奈川県では集中豪雨によって相当被害を受けて、特に横浜市等が水浸しになって、ばく大な損害を受けた。また鎌倉等も相当の被害を受けておる。その原因を当時の県の土木関係の方に聞いたわけですが、いわゆるこの河川の上流地域にのべつなく宅地造成をやって、いままで遊水地域であった田畑が宅地に変わったために、下流地域に集中して損害が出た。また鎌倉等の場合においては、いわゆる水源地付近において、いままで雑木林や松林であったものがゴルフ場ができたために、全然水はけがない、それが一挙に川に流れ込む、こういうことが具体的に指摘をされたわけです。この点は今回の遊水地域との関係もあるわけですけれども、このような河川管理立場から、この流域に対する河川保全区域なりあるいは河川の区域というものについては、私は相当拡大したところの一つの解釈をとっていかないと、今日宅地造成等が非常に急激に進展しておる状況の中において、一たん集中豪雨がきますと、いままでそのような遊水地帯であったものが完全になくなる、これが与える影響というものはきわめて大きいわけでありますし、これはあと法律も出されておるのですが、宅地造成事業等の関連性においても重要な問題であろうかと思うのです。こういうような河川区域、あるいは遊水地域等について、もう少し積極的な考え方というものをこの法律の中に取り入れていくべきではないかと考えるわけであります。この点について、これは私権の制限にも関する問題でございますが、特に河川管理の高い立場から、大臣見解を承りたいと思います。
  38. 河野一郎

    河野国務大臣 神奈川県下に起こりました災害は、まさに私もそのとおりに考えます。ただそういうものが無計画にむぞうさに拡張し造営されてまいりますために、そういった災害が起こってくる。そこで、たとえば、大阪のあの市内に非常に堀が多い、東京でもそういうものが、江戸時代から遊水池にかわるような堀がたくさんあった。そういうようなものが一時的に水を吸収したゆえんだろうと思うのでありまして、今後都市計画等につきましては、これらの水の関係について、十分勘案して計画を立てる必要があるということは、私も考えておるところでございます。これは都市計画法その他におきまして、今後十分勘考しなければならぬことだと思います。御承知のように、神奈川県のあの地域には改修された川がほとんどない。これが災害を起こした一つのもとであるというふうに考えます。たとえば鶴見川にいたしましても、まだ十分改修が進んでおりません。その他鎌倉方面においても同様でございます。すみやかにこれらの点について改修を迫られております。神奈川県も、いま県のほうにおきまして、せっかく努力中でございます。いずれにいたしましても、全国のこういったにわかに膨脹する地.帯におきましては、これらの点を十分考慮する必要があることは、お話しのとおりと私は考えるのであります。今後十分注意する必要がある。さればといって、これを河川法の中に云々しなければならないかということにつきましては、私は、河川法河川法としてこの程度で御了承をいただきまして、そうして一方都市計画もしくはその他の際に、十分これらの点を勘案し、注意して計画を立てていくということで対処しなければならぬ、こう思います。
  39. 兒玉末男

    兒玉委員 遊水地域の問題については、社会党としてもかなり問題の点でございまして、これは、あとで岡本委員のほうからも、修正意見の中で詳しく指摘があると思いますが、この点はこの程度としまして、次に、やはり河川管理のほうで、第九条に、一級河川管理は、建設大臣が行なうということになっております。しかしその中において、一定の区間を指定して、そうして知事にこれを管理させるという、今度の河川法はいわゆる水系主義による管理と、それから区間指定による区間主義との混合主義みたいなものではないかと思うのであります。少なくとも水系主義をとる以上は、やはり一貫した管理形態というものが理想であり、私たちも賛成であります。ただこの区間主義をとった場合に、たとえば一定の上流地域か支派川、こういう点等がいわゆるこの法の規制を受けないで、知事の指定区間になった場合、はたして水系主義の理想というものが徹底できるかどうか。この点について、混合主義をとった理由なり、あるいは今後水系主義による管理の徹底が期せられるか、この点について見解を承ると同時に、水系主義と区間主義の違いというものはどういうふうに違っておるのか、この点について見解を承りたいと思います。
  40. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、現状も実は区間主義をとっております。そして、現状におきましても、水系の中の困難な場所につきましては、これを指定して直轄いたしております。ただ、しいて申し上げれば、今後一貫して水系主義をとった場合には、水系を通じての計画を立て、水系を通じての企画の上に立って管理してまいる。その中で比較的困難でないところについては、この区間を県等のほうに管理を委任しよう、こういうことに相なってまいると思うのであります。なぜそういうことをするか、こういうことになりますが、御承知のとおり、県におかれましては、一級河川以外の河川について十分責任をとっていただかなければなりません。川が小さいからといって、りっぱな技術者がなくてよろしいというわけにはまいりません。相当の技術人員その他を備えて、県の河川行政を運営していただかなければなりませんので、そういう意味合いからして、県と国とあわせてこれらの行政官が十分に働いていただけるということから、比較的困難を見ないところの地域は、県のほうにお願いをしてやっていただくことのほうが行政上妥当であろう、こういう意味合いから、この方針をとっておるということに御了解願いたい、こう思うのです。
  41. 兒玉末男

    兒玉委員 やはり私もよく勉強するのですけれども、区間指定をした場合に、いわゆる国が管理するものと指定したそれとからんで、その地方自治体の経費の負担能力等によって、建設省の考えているように、管理区域と指定した区間との全体的な調整なり、あるいはバランスというものがなかなかうまくとれぬのじゃないか、こういう懸念をするわけですが、この辺についてはいかがでございますか。
  42. 河野一郎

    河野国務大臣 それは、率直に言いまして、金の問題だと思うのです。要するに、従来といえども、国家の河川予算がたくさんふえれば、直轄区域をもっとふやせふやせという御要望は非常に多いわけでございまして、その直轄区域をふやすだけの予算を取るか取らぬかというところに決着すると私は思います。したがって、今後におきましても、河川法をこういうふうに改正をして、そして世間大方の御理解をいただきまして、河川行政の徹底を期するというようなムードの中に、河川予算、水の利用、水防、治水の徹底を期するような公共投資をふやしていく、そしてこの行政を徹底せしめるということにしていく、こうなっていくべきものだろう。こういう意味合いにおいて、この法律の一日もすみやかに実施せられるように期待いたしておる、こういうことであります。
  43. 兒玉末男

    兒玉委員 先ほど一つだけ聞き落としたのですが、慣行水利権の問題、今度管理形態が変わってきますから、ある程度の慣行水利権の統制、統合、廃止ということは考えられるわけです。そういたしますと、当然これは河川台帳の抜本的な調製というものが必要だと思うのですが、この点については相当長期であり、しかも広範囲でございますから、この河川台帳の調製にはかなり手間取ると思うのですが、台帳の整理統合についてはどういうふうな対策をとっておられるか、この点についてお聞かせをいただきたいと思います。
  44. 畑谷正実

    畑谷政府委員 慣行水利権の問題につきましては、この条文に書いてございますとおりに、今回この法律によりまして、水利台帳というものをつくります。その水利台帳に載せて——この慣行水利権を含めまして、水利調整基本調査に資する、それで届け出をしてもらいまして、その台帳に載せる、こういうことでございます。どこまでも、先ほど大臣お話ししましたとおりに、慣行水利権というものは十分尊重していきたい、こういうふうに考えます。
  45. 兒玉末男

    兒玉委員 この法律実施されてから、大体どの程度期間で全体の調製を完了し終わるのか、その辺の目標が立っておれば、お聞かせを願いたいと思います。
  46. 畑谷正実

    畑谷政府委員 この水利調整というのは、新しく新規の水利が起こったときに水利調整というものをやります。台帳の整理は、これは非常に明確にできます。簡単に一年二年の間に全部調製いたします。ただ届け出の問題でございますから、届け出がなければ、台帳の記載が漏れるという場合がございます。これは私どもは、できるだけ積極的に届け出てもらいまして、そういう台帳に載せるように、いろいろな面から指導してまいりたいと思います。
  47. 兒玉末男

    兒玉委員 これは要望でございますけれども、慣行水利権というのは非常に長い歴史を持っておりますし、その間に当事者同士の利害関係というものがあって、かなり混乱を生ずるのではないか、こういう非常な危惧の念を持っている。特に農業用水等に関しては問題が深刻でありますが、これの調整については慎重な配慮をしていただきたいということを要望いたします。  次に水防との関係で、私はずっと読んでみましたが、特に水防関係については、地域の消防団なり自治体においても、かなりの負担をして水防措置をとっているわけであります。この点について、河川法における水防に関連する経費負担なり、そういう措置はどういうふうにされようとしているのか。この点は、特に地方自治体ではかなりの努力をしてやっているわけでありますが、これに関しての見解を承りたいと思います。
  48. 畑谷正実

    畑谷政府委員 水防に関しましては、現在あります水防法によりまして、その面から水防に対する措置をやりたい、こういうように考えます。
  49. 兒玉末男

    兒玉委員 水防は河川と密接不可分だと思うのです。水防法というものはこれは独立した法律でありましょうけれども、やはり河川管理の面から、特に地方自治体等においては相当の犠牲を払っていると思うのですが、この点は河川管理という面から、水防法にまかせておけばそれで十分だ、こういうような見解でございますか。
  50. 畑谷正実

    畑谷政府委員 水防というと、非常に大きな面から、河川工事そのものが水防の非常に大きな前提になるわけであります。決して水防がおろそかになるというわけでございませんが、そういう工事は完了したけれども、いわゆる災害が目前に迫っている、あるいは災害が起こったというときに、その自衛手段としてどういう動作をするかという問題につきましては、水防法のほうでやる、こういうことでございます。
  51. 兒玉末男

    兒玉委員 あと二点ほど聞きたいと思うのですが、特に今度の法律では、ダムの操作規程というものがわりあいこまかく規定されているわけです。これは独立するダムに対する操作規程ではなかろうかと思うのですが、今回特に水系主義をとったたてまえから考えますならば、一つ河川に付随するダム群というものが存在するわけです。ですから、これはそれぞれの独立したダムに対する操作規程であると同時に、一つ水系主義のたてまえから考えますならば、その水系にあるダム群の全体の操作調整ということがきわめて重要な意義を持つものではなかろうかと考えるわけであります。そういう点を考えますならば、このダム群に対する操作はどういう立場からこれをやっていこうとするのか、この点について、現在規定されている個々のダム操作規程との関連について、見解をお聞かせ願いたい。
  52. 畑谷正実

    畑谷政府委員 ダムの操作につきましては、二通りの問題がございまして、いわゆる洪水調節を目的としないダム、いわゆる利水ダム、それともう一つ洪水調節をするダム、そういう問題がございまして、平常において河川を正常な機能に流すという面については、これは水系一貫としての操作内容について十分検討して、操作規程を認める。もう一つは、いわゆ洪水が起こったときにそれをどういうようにするかということであります。当然これは洪水調節機能を持っているダムにつきましては、水系一貫としての観点から、そういう動作をする。もう一つは、いわゆる通常においてそういう洪水調節機能あるいは目的を持っておらないダム、これにつきましては、いわゆる緊急非常事態の場合においては、それに相当する、洪水を安全に流し得るということを目標にいたしまして、それぞれの指示をする、こういうふうに考えております。
  53. 兒玉末男

    兒玉委員 特に私は、ダム群の操作ということはきわめて重要な問題だと思うのです。でありますから、いま局長が答弁したように、調節できるダムと調節できないダムがあると思うのです。そういう点から考えますならば、やはり水系主義をとるたてまえから、特に管理責任者である建設省としては、やはりこのように一級河川等において特に過去に災害の大きい河川については、詳細な規定をしていかないと、単に個々のダムの操作規程だけでは十分にその目的を達成することは困難ではないか、こういうふうに考えます。やはり水系別のこのようなダム群の特に多い河川については、もう少し積極的な取り組みをしていかないと、取り返しのつかない結果を招くのではないかと考えるわけです。この点についての見解を承りたい。
  54. 河野一郎

    河野国務大臣 御説はごもっともですが、何も河川法が変わったから変わらぬからによって、ダムの管理が変わるということはないので、これまでもダムの運営につきましては十分に研究されてやっておられる。それを今度の河川法によって、御承知のとおり、よりこまかく、より強度の監督権を発動してやろう、こういうことにいたしておるわけでございまして、なおこれが運用につきましては、万全を期して運用してまいる、こういうつもりでおります。
  55. 兒玉末男

    兒玉委員 最後に一点だけお伺いしたいと思うのですが、特に今度の改正によりまして、一級河川に対する国の負担割合が変わってきたわけですが、治水十カ年計画により、昭和四十四年度を期限として、それまでは法律の適用をしますが、それ以降は費用の負担割合というものはどういうふうになっていくのか、この点を最後にお聞きして、私の質問を終わります。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 四十三年になりまして、私が建設大臣をしておるとは考えられませんけれども、私は、従来の経験からまいりまして、こういう補助率が一ぺん上がったものが下がるということは、日本の法律の常識や政治の常識にはない、こういうふうに考えて、これがこのまま続くものであると期待いたしておるわけであります。
  57. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 金丸徳重君。
  58. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私は、きょうは実は少し時間をちょうだいして、逐条的に、私のわからぬところや疑問な点をお伺いしたがったのでありますが、もういかにも時間がなくなりまして、御迷惑をかけてもいけませんから、大綱だけお伺いをいたします。お答えのほうも、要点だけお答えをいただけばけっこうです。  その前に、ただいまの質疑の中で出てまいりましたが、河川流水概念でありますが、これには地下伏流水も入るというお答えであります。私はそうなければならないと思っておったのでありますが、洪水はどういうふうにお考えでございますか。管理対象になるところの河川概念の中に入ってまいるのでありますか。
  59. 畑谷正実

    畑谷政府委員 洪水というのは、いわゆる大水のことでございますか。——これも当然入ってまいります。
  60. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そうしますと、その管理対象になると、管理権者は、それを何とかつかまえて、何とか処理しなければならぬ責任を負っておる、もちろん権利もあるわけでありましょうから、義務がある、こう考えてよろしゅうございますか。
  61. 畑谷正実

    畑谷政府委員 私は、河川管理というものは、もちろん水の利用もそうですけれども、そういうような水をいかに管理して措置するかということが基本であると思います。
  62. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 この洪水によって生じた損害につきましては、管理者は責任を負うておるというふうに考えます。いままでは洪水は天災である、しかたがない、あきらめろ、ということでおったやに思われる。今度の河川法では、はっきりとこれが管理対象になる、そして洪水をも管理対象として、生じたところの損害については、管理者が責任を負うということになりますと、それにより生ずる損害は一切ということはどうか知りませんけれども、負うべき根底と申しますか、大綱は持っておる、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  63. 河野一郎

    河野国務大臣 法律的にいろいろむずかしいようでございますけれども河川管理するというのは、災害をなくすることが第一の眼目でございます。しかし、われわれの人為をもっていかんともすることができない災害が起こったときは、これは天災であると私は考えます。
  64. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 天災だからやむを得なかろう、というようなお考え方が基本にあるようでありますが、天災には、たとえば地震であるとか雷であるとかあるいは冷害であるとか、どうにも管理のしようのないものがある。しかし、今度はそういう天災をも管理対象として、国がこれに対して責任を負っていこうというところに、今度の河川法の大きなねらいがあるように思う。大きな理想があるように思うものですから、これは実際問題としてはなかなか容易なことではなかろうと思いますが、河川法制定の基本になった理由としてはそうあるべきではないかと思う。この点はどうでありますか。やはりいままでどおり、天災だからまあしかたがないのだというふうな基本の観念で、この法律がこしらえられておるのでありますか。
  65. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知のように、政府におきましては、行政の基本を統計に基盤を置きまして、大体過去何十年間にどの程度の雨が降って、その雨が降った場合にはどの程度流水が出てまいる、それに対してどういう水防をするという、一応われわれの考えられる範囲の災害は防除するということを理想としております。しかし、御承知のとおり、最近特にひんぱんに起こっております集中豪雨のごときは、われわれの想像以上のものが出てくる、これを称して、私は天災という意味で言っておるわけであります。そういう場合には、これはいかんともしようがないと私は思うのでございます。ただし、その天災を、われわれが可能な範囲において防除していくために努力をする、その努力の範囲を広げていくことが、今度の法律改正の要旨である、こう御了承いただきたいと思うのであります。
  66. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 以下こまかくなるわけでありますが、六条の「河川区域」というものがございます。この河川区域というものは非常に範囲がめんどうになるのでありますが、例の受け土手というのがある、これは俗称であるかもわかりませんが、扇状地帯によく出てくるのですが、土手がありまして、次の川を受けるために、こういうふうな土手をはすに入れまして——この土手は切れておる、それからまた流れていって、次にまた受け土手というものがあって、はすに上流の水を受けて入れておる。その受けどいと木堤との間は、どの程度河川区域になるのか、またどの程度河川保全区域になるのか、これは政令に譲られるということのようでありますが、どういう範囲、どういう程度をもって政令をおきめになる予定でありますか、これは住民の権利義務に大きく影響してまいりますから、一応の基準だけを伺っておきたいと思います。
  67. 畑谷正実

    畑谷政府委員 この六条には、河川区域といたしまして一、二、三号ございます。一というのは、常に水が流れておる、もちろん伏流水というものがありますから、それが下がっておるようなところは、伏流水になっておるところはもちろん砂利だけですけれども、これは一号でやります。それから二号は河川施設があるその下の敷地であります。ですから、いまのような状態のものは当然三号の「堤外の土地」カッコして「政令で定めるこれに類する土地を含む。」こういうような状態になりますが、これはやはりケース・バイ・ケースでありまして、貯留の用をするために当然必要であるということであれば、これはこの三号の中に入る、こういうふうに解釈しております。
  68. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 この点はケース・バイ・ケースでじょうずに管理してもらわなければならぬわけでありますが、実際、こうはすになっておるところは、大きな耕地になっておったり、また工場なんかできております。したがって、今度の河川法におきましては、これを厳重に公示したりしまして、相当の私権の制限もいたしております。もう一つは、伏流水河川流水として管理されるということになりますと、その土地でもってその伏流水利用しておったもの、あるいは工場などは、今度あらためて保全区域——六条は河川区域であります、あとのほうの五十四条の保全区域の指定を受けることになります。したがって、これはすみやかに政令の基準を公示するといいますか、きめていただいてなにせぬと、後においてかなり問題を起こすのではないかと思う。この点はどういうふうな御準備がありますか。
  69. 畑谷正実

    畑谷政府委員 実際その土地に行って見なければわからぬと思いますが、少なくとも工場があるとか、そういうようなことがあるということになれば、河川工事としては、そういうところは貯留としての地域じゃないというふうな一つの計画が立っておるところだろうと思います。そこで、この河川水系におけるいわゆる水行政基本計画を立てるときに、きちっとやって、なおかつ、やはり先生の御説のとおりに、いろいろな工事あるいは行為の規制がございますから、これはすみやかにやる、これが確かに必要だと思います。
  70. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 次に、第二十一条を見てみますと、工事の施行に伴って損失の補償を約束なさっておられます。これは工事の施行に伴って起きた損害についてだけをいっておるようでありますが、たとえばダム・アップしたというようなことのために、付近地及び下流に浸透水がいった。そこで田畑に損害を起こし、あるいは住宅の価値を下げたというような場合についてはどういうふうに取り扱っておられるのでありますか。二十一条では、どうもその問題は解決できないように思います。
  71. 畑谷正実

    畑谷政府委員 この二十一条の「工事の施行に伴う損失の補償」というのは、この条文の中に書いてございますとおりに、「当該河川に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の施設若しくは工作物を新築し、増築し、修繕し、」云々と、こうなっておりますので、実際の工事をやり、それと並行してこういうような施設をするということだけに限りますから、いま先生のお話しのとおりに、水が浸透して云々ということは含まれておりません。
  72. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 それはどういうふうに処理なさるのですか。
  73. 畑谷正実

    畑谷政府委員 これは、これでない一般の補償基準になります。
  74. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 一般の民法上の損害賠償でいくというほかはない、こういうことになるのですね。ただ河川工事につきましては、わざわざ八条で、河川工事の定義があげられております。ということは、河川工事については特別に各当事者について便宜を与えるということもあるのでありましょうし、また同時にそれについての損害につきましては、特別に何か考えようというようなあたたかい配慮があるように思われる。そこで私はそういう場合におきましては、通常の処理のしかたではなくて、河川工事という特別な、国といいますか、管理者の工事に伴う損害なるがゆえに、特別に、あるいは優先的にと申しますか、特別の配慮がとられてもよろしいのじゃないか、こう思ったものですから、あえてお伺いしたのであります。
  75. 畑谷正実

    畑谷政府委員 そういう点で、私たち十分考えたつもりでございまして、これはだれが見ても、こういう問題がすぐに目につくところでございますから、もちろん一日も早くしてあげなければならない、そういう面から考えております。
  76. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 たいへん急ぎますから、もう少しお伺いしたいのでございますが、後にいたします。  二十五条に、河川区域内の「土石等の採取の許可」という段で、河川の産出物ということばを使っております。そして、この河川の産出物につきましては、政令できめることになっております。政令できめると予想されるところのその他の産出物というものは、どんなものを考えておられますか。
  77. 畑谷正実

    畑谷政府委員 二十五条のその他というのは、大体アシとかカヤそれから埋もっておる木とか、そういうものを考えております。
  78. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 要するに、竹木以外の草というようなものについて考えておられる。そういうものにつきましては、できるだけ付近住民の便益のために、採取を楽にしようという考え方を持っておられて、この二十五条はできておるのでありましょうか、それとも、河川だから非常に厳重に取り締まるというような考え方で、二十五条をおつくりになっておられるのでありましょうか。どうですか。
  79. 畑谷正実

    畑谷政府委員 その両方でございます。河川管理の面からすると、やはり河川管理に支障がある行為をしていただきたくない。もう一つは、また別な面から、付近の住民の人々がいろいろ利用することに対しては、河川管理に支障ない限り、そういうことを十分に許可する。そういうものをよく調和をとって運営したいと思います。
  80. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 私がこんなお伺いをしますのは、河川付近の住民は、あとにも出てくるのでありましょうが、河川管理について非常に協力すべき義務を負っている、また災害防止のために、そうでなければならないと思います。自分の災害も免れなければなりませんが、人の災害も免れるという意味におきまして、第何条かに出てくるのでありますが、自分のものも出し、自分の土地も使ってもらい、また労力をも提供する義務を負っておる。そこで、今度は河川の産出物などにつきましては、もちろん河川の保持上じゃまになることについてはこの限りではないのでありましょうが、そうでない限りにおきましては、付近住民の利益、便益のために、できるだけ、二十五条の運用などにつきましては、そういうあたたかい気持ちを持って考えていただきたい、したがって、今度きめられるところの政令については、そういうお心持ちできめていただかなければならぬ、こう思うものでありますが、念のためにお伺いをいたします。
  81. 畑谷正実

    畑谷政府委員 金丸先生のお話しのとおりに、十分そういうことを考えて運営したいと思います。ただ河川というものは、やはりそういう河川管理が十分でなければ、付近の人たちの生命、財産が安全に守れない、こういう使命もはっきりつかんで運営したいと思います。
  82. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 第五十三条でありますが、だいぶあとになっていけませんけれども、それについてお伺いするのでありますが、渇水の場合の処置であります。これによりますと、許可を受けた者が協議をするようにつとめなければならないということになり、「前項の協議を行なうに当たっては、」ということになっておりますが、渇水の場合においては、この許可を受けた者のみが五十三条の対象になっており、その他の、許可を受けたわけじゃない慣行水利権で届け出ればよかったという者については、この五十三条はらち外、こう考えておられるわけでございますか。
  83. 畑谷正実

    畑谷政府委員 必ずしもらち外だとは思いませんが、慣行水利権というのは、はっきり台帳に載るように当然届け出がしてありまして、河川管理者が明確であれば、当然そういうようなものはこの中に入ってくると思います。全然そういう届け出がない、こっちもわからぬということになると、そういう範囲には入ってこないということになると思います。
  84. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そこで、私がお伺いするのは、届け出ができておるところの慣行水利権、私は、農民などがそういう場合になろうと思うのでありますが、これはやはり協議の対象になるわけですか、協議することになるのでありましょうか。
  85. 畑谷正実

    畑谷政府委員 後段の私の言ったのは、ちょっと誤解を受けかるもしれませんが、慣行水利権というのは当然入ってくるわけです。ただ何も言ってまいらないと、もちろんそういうような人は、こういう交渉にも入ってこないということであります。
  86. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 そうなりますと、三項の「公共の利益に重大な支障を及ぼすおそれがあると認められるときは、水利使用の調整に関して必要なあっせん又は調停を行なう」、これは農民もその対象になるわけであります。当然なることになるわけです。そうすると、その公共の利益ということが非常に重大な関係を持ってまいります。この公共の利益にというのは、この条文の三項では、どういうふうにお考えになっておりましょうか。私は、具体的に言いますと、たとえば水電の業者と農村との争いなどがよく起こるかもしれないと思うものですから、その場合に公共の利益というのは、農村のほうも公共の利益であり、水電のほうも公共の利益であろうと思います。うっかりすると、農民は公共の利益じゃない、個人の利益だというふうにとられそうでありますから、この公共の利益というものは農民の利益も入っておる、入っておるという中で調停あっせんをしてくださる、そういうことに解釈してよろしいのでございますか。
  87. 畑谷正実

    畑谷政府委員 これはもうこの字に書いてあるとおりで、農村のそういう人たちのものが入っておらぬということは全然考えておりません。
  88. 金丸徳重

    ○金丸(徳)委員 入っておるということであります。だから、平等の立場において調停あっせんをしてくださる、こういうことですね。それじゃ終わります。終わりますから、大臣に一点、御迷惑なことかもわかりませんけれども、ひとつ大臣から。  本法は水系一貫主義をとっておられるが、現段階においては、区間主義を取り入れた混合主義にいかざるを得なかった、こういうことであります。私も、そういうことがあるいはやむを得ないことだったかもしれません。ただ、先ほど大臣のお答えの中にも出てまいったことばでありますが、ともすれば、上流において既得権かのごとくにやって、損害を下流に及ぼすことがやむを得ざる措置のように、従来とも考えられておった。けれども水系一貫主義をとり、総合的、全体的な立場から管理しようとしますれば、上流のほうが優先するという考え方は、今度の河川法においては捨てられなければならないと思うのであります。そこに非常に新しい河川法の理想がなければならないと思うのであります。しかし、いままでの考え方の惰性からいきまして、とかくいまのように既得権を主張し、そしてその既得権があたかも正当であるかのようにとられておりますから、この機会にはっきりとその点を宣明しておいていただきたい。
  89. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申し上げますとおりに、常時流れる水の量というようなものであれば、いまお話しのように、上流が非常に得をして下流はそれによって圧迫を受け、迷惑を受け、損害を受けるときには下流が受けるというようなことはないわけでございます。問題は、水の流れる異常の流水がいろいろな問題を起こす。渇水の場合、洪水の場合ということだと思うのであります。したがって、水系を一貫して管理するということは、先ほど来申し上げますとおりに、上流においてすみやかに多目的のダムを多数に建設して、そうして可能な限り常時流れる水の量を一定にしていくようにつとめていく、これが私は理想だと思います。そういうふうにだんだん持ってまいるということに逐年努力を重ねてまいりますれば、その結果は、そう長い先でなしに、実行できるのではないか、こう私は思いまして、今回の予算もしくは今後の運営におきましても、まず第一は砂防工事に徹底をする、第二にはダムの増設に努力する、そして流水をなるべく異常渇水、異常洪水の起こらないように努力するということに専念してまいるということが、水系を一貫して管理してまいる基本の理想でございます。この理想達成のために努力いたしたいと考えておるのでございまして、その経過過程におきましては、多少のことは−これは従来より悪くなるというようなことは——既存の既得権につきましては、これは絶対に尊重してまいるつもりでございますが、従来よりも悪くなるということはこれはあり得ないことであります。いまお話しのように、理想をどこに置くかといえば、理想は、いま申し上げました方向に置きまして、そして上流、下流ということの区別のないようにしていきたい、こう考えております。
  90. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 栗原俊夫君。
  91. 栗原俊夫

    栗原委員 時間が非常に急迫しておりますので、答弁の内容によっては一発の質問で終わりたいと思います。  前回お尋ねした河川敷きの問題にちょっと執念がありますので、いま一度やり直します。  新しい河川法の「河川区域」の節三号、「堤外の土地の区域のうち、第一号に掲げる区域と一体として管理を行なう必要があるものとして河川管理者が指定した区域」これが現行法の第二条の河川認定に当たるように思われるわけです。現行法では、河川認定をしますと、当然そこにあるところの私権が第三条によって排除される。ところが新法の第六条によって河川区域に認定されても、河川区域にはなるが、そこにある私権は排除されない、こういうことになります。これはどうも少し権衡を失するように思うわけです。こういう議論をしまして、その後法務省やあるいは行管等でいろいろ話を聞いてみましたが、今回の、すでに認定された河川区域は国有に属する、今度は積極的な規定がある、しかも今後認定される河川区域は、私権はそのまま存続する、それを救済するために、現行の河川法施行規程の第九条、第十条が、新しい施行法の第十九条で受けてそのまま有効として存続するのだ、それは旧所有権者に占用の優先権を積極的に与えておるから、これによって救済できておるのだ、こういうふうに説明されておるわけです。私もその点は十分理解はできるのですが、この現行河川法施行規程の第九条は、いかにも占用権について優先的に下付せねばならないという規定でありますから、いいようでありますけれども、中に幾つか問題になる文字が使われておるわけです。荒れ地にあらざる限り——この荒れ地にあらざる限りというのが具体的な場合になかなか問題になる。私たちが具体的に当面した場合には、農地であったものが河川状況になったのだから、農耕ができないところはこれは荒れ地になったのだ、だから「荒地ニアラサル」土地ではない、したがって占用権の優先的下付の対象にはならないのだ、こういうぐあいに出てきて、なかなか問題になっておるわけです。そこで、この規程の成立した当時には、農耕地が洪水によって河川状況になり、農耕に適しなければ、これは荒れ地なのだ、こういう観念があったと思うのですが、現時点においては、この「荒地ニアラサルモノ」は、農耕に適しないという解釈ではなくて、実をいえば、経済的な価値を失ったのが荒れ地である、したがって、旧所有者が何らかの経済的価値を認めて占用を願い出た場合には、優先的に占用権を下付せねばならない、そうして、そこには、公益云々、これは河川管理上に支障を来たさざる限り、こういう意味だと思うのですが、このように解釈していくべきだ、でき得れば新法の施行法案の中に、占用の個所に、そういう点まで明確にしてうたってもらえればけっこうだと思うのです。しかし、旧施行規程の効力がそのまま効力を有するのだという形で受け継がれておるわけですけれども、この点、「荒地ニアラサル」土地についてはという「荒地」の解釈を、旧所有権者が経済的な価値を認めておるという形に具体的に解釈してもらえるかどうか。そういうことになれば、現に所有権は没収されても、価値を認める限り、占用権が優先的に与えてもらえれば、新たな法律河川区域に認定されて、所有権を失なわないけれども河川管理上の制限には服する、所有権はないけれども、しかし経済価値を持っておる限り占用権は与える、こういう形の中で均衡が保っていけるのではないか、このように思うのですが、この点の御解釈を、ひとつずばりと一発御明答いただきたいと思うのです。
  92. 河野一郎

    河野国務大臣 原則的には、お話しのようなことで、私は差しつかえないと思います。ただ何ぶんにもいろいろなケースが起こってくる場合が考えられますので、異常の場合については異例な解釈をしていかなければならぬ場合があるかもしれませんが、原則としては、ただいまお話しのような解釈をとることで差しつかえない、したがって、今後におきましては、ただいまお述べになりました点を十分に参考にいたしまして、取り運びを進めてまいることにいたさせます。
  93. 栗原俊夫

    栗原委員 どうもありがとうございました。
  94. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 吉田賢一君。
  95. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 大臣にお尋ねしたいのですが、実は事務当局とは質疑応答を重ねてまいったのですけれども、納得することができませんので、最終的に大臣の御意見を伺ってみたいのであります。  それは、この河川法案にはいろいろとたくさんな委任命令が記載されております。実はこの法案を通覧いたしてみますと、五十二カ条にわたりまして、政令の数が七十二出ております。元来この政令は、申し上げるまでもなく、七十三条の六号によりまして、新憲法が新たに委任命令を出し得るという規定を設けまして、内閣法の十一条によりまして、ただしこの政令には国民の権利を制限したり義務を課することができないということになっております。そこで、国民の権利義務に直接間接影響のある非常に重大な法律でありますので、これはやはり憲法の精神を十分に尊重するということでないといけないのじゃないかということはもう明らかであろうと思います。まずそれについて、概括的にお心がまえを伺っておきたいと思うのです。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 当然のことと考えます。
  97. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこで、この政令の個所を点検してみますと、非常に重要な規定がずいぶんございます。私は一々朗読することはやめますけれども、特に重要な規定といたしまして、第四条がございます。第四条は、一級河川を政令で指定するということになっております。一級の河川が政令できまるということになりますと、一級河川指定に伴いまして、国民の権利義務が大きく制約されてまいります。あるいはまた罰則の規定もございますことは申し上げるまでもございません。したがいまして、これはやはり相当苦心なさってでも、何とか一応法律をおつくりになってしかるべきではなかったか。私ども河川の問題はしろうとでありますけれども、また同時いろいろな文献をあさってみましても、河川とか水系というものの定義をつけることすらなかなか困難のようであります。しかしいずれにいたしましても、国会は申すまでもなく唯一の立法機関でございますから、国会によってのみ法律ができる、その国会におきまして、法律でなければならぬものは、どんなにむずかしゅうても、責任を持って法律化しておかねばなるまいじゃないか、こう思うのであります。  そこで、試みに労働省設置法のできました経過を見てみますと、第一回の国会、政府提案でありますが、この第三条第一項には労政局あるいは労働基準局、婦人少年局、職業安定局、その他が規定されておって、第二項以降におきましては、必要のあるときは政令の定むるところによって前項の部局のほかに部局を設けることができる、こういう趣旨がございます。衆議院においては、この点についての論議はあまりなかったのでありますが、ところが参議院でひっかかってしまいまして、この第二項は削除されてしまったわけであります。この点、憲法調査会におきましても、第二委員会の第二十三回の会議録にも明記されておりまして、そこで委任命令というものの重要性が強調されておるわけであります。私はこの機会に、この法案は成立するものと思いますが、また法律において指定していくことはなかなか困難な作業でありますけれども、やはり憲法の条章を順守し、法律立法の国会の立場を重視いたしまして、大臣においてはでき得べくんば——この国会もやはり法律内容として一級河川指定するということであってほしいのだが、どうしてもいけないというのであれば、これは何らかの方法によって、政府において処理をしなければなるまいじゃないかと思うのですが、いかがなものでございましょう。
  98. 河野一郎

    河野国務大臣 政令に譲りましたのは、河川の名前をきめるだけでございます。どういうものを一級河川にする、どういうことをやるかということは本法において規定する、したがって私はこれで一向差しつかえないじゃないか、こういう解釈であります。
  99. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 吉山君に申し上げますが、もう十分たちましたから、これで終わりにしていただきたいと思います。
  100. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 政令で名前をきめるだけではなしに、具体的に一級河川というものをおきめになるわけです。なるほど天然自然に川はあるのですけれども、それを法律上の一級河川と決定するのは政令なんです。だから、その政令できわめて重大な国民の権利義務に影響をするものをきめるということは、それは国会の立場を無視した行政の越権になるのではないか。つまり委任立法の範囲逸脱ではないか、こういうことでありますから、憲法順守の精神から考えますると、非常に大きな過失を犯すことになるのではないか。これはいまの労働省設置法の経過にかんがみまして、私はやはり当然厳格に解釈すべきものであろうと考えておりますが、その点につきまして、大臣のお考えを重ねて伺っておきます。
  101. 河野一郎

    河野国務大臣 私はいまのお話と解釈を異にいたします。どういうものを一級河川にするかということ——一級河川にした場合にはいかような法律上の行政行為をするということを本法にうたっておりまして、ただこれを政令に譲りますものは、その一級河川として該当するのは何という川、何という川、何という川という、川の名前を規定するだけでございます。もう一つお考えいただきたいと思いますことは、吉…さん、道路はどういうことになりましょうか。道路は一級国道、二級国道、県道とそれぞれみなあります。しかしこれはみなそれぞれ政令で、どれを一級国道、どこからどこまでを二級国道にするということをきめております。河川も道路も管理する意味においては同じじゃないか、こういうふうに患います。
  102. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 道路と河川とは違いますから、これは議論すれば少し時間をとりますのでよしますが、河川河川といたしまして、他の法律によっておかしておった、もしくは、その法律の趣旨のいかんにかかわりませずに、河川法自体といたしまして独立してお考えにならなければ、これはそれをもって答えたということになってしまう、単なる議論にすぎないことになるのでありまして、この点は提案者の大臣といたしましては、いささか御認識が不足ではないかとさえ私は考えるのでありまして、やはり立法の例といたしましては、確かに形も、心がまえも、またものの掌握のしかたにおきましても、大きなあやまちになっておることはいなみがたいものであります。単に名づけのものでも何でもございません、法律上の河川を決定するのですから。自然の河川は天地始まって以来あるわけですから。
  103. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 他に質疑の通告もございませんので、これにて両案に対する質疑は終局するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  104. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 郷異議なしと認め、両案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  105. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 この際、岡本降一君外八名から、河川法案に対する修正案及び河川法施行法案に対する修正案がそれぞれ提出されております。     —————————————
  106. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 提出者岡本隆一君から趣旨の説明を求めます。岡本隆一君。
  107. 岡本隆一

    ○岡本委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっておりまする河川法並びに河川法施行法案に対し、修正の動議を提出するものであります。  現行河川法改正の必要が叫ばれるゆえんのものは、第一に、明治二十九年制定以来著しく発達したわが国経済の発展に即応し、第二には、戦後に確立した地方自治とともに、わが国政治の実態に即応して、河川を適切に管理して、国民生活を守るとともに、経済成長とともに増大した水利用を満たさんとするところにあったのであります。したがって、改正の目標は、何をおいても高い次元に立って治水利水両面にわたって河川水系ごとに一元的に管理するというところにあったのであります。ところが、一たび河川法改正が発表されますと、各省間に猛然としてなわ張り争いが起こり、知事会の権限争いがこれに加わりまして、改正方向は右に左に大きくゆれて、改正内容も全く当初の方向を見失なってしまったのであります。これがわれわれが本法律案に修正の動議を提出する理由であります。  次に、その内容と趣旨の概要を、重要なる数点にしぼって御説明申し上げます。  まず第一に、修正案におきまして、われわれは流水に対する私権の排除を明確にせんとしたのであります。現行河川法は、第三条におきまして、「河川並其ノ敷地若ハ流水ハ私権ノ目的トナルコトヲ得ス」と規定されております。ところで、昭和三十二年成立いたしました多目的ダム法には、ダム使用権は物権とみなすと規定されまして、ダムにたくわえられた水に対する私権の排除が不明確になっておるのであります。また事実ダムの水はおれのもの、こういった考え方に立ったダムの操作の誤りによりまして、洪水時にしばしば重大なるダム災害が発生しているのであります。しかるに本改正案におきましては、現行法における私権の排除の規定がなくなり、ダム設置者の持つこうした誤った考え方を助長するおそれが出てまいりましたので、われわれは流水に対する私権の排除を明確にせんとしたのであります。  修正の第二の要点は、河川の認定と管理並びに管理に要する費用の負担に関する問題であります。当初、本法改正方向が発表されました当時の河川管理に関する方針は、人口、産業等、その流域の経済の発展の状況に応じて河川を一級、二紙に分類し、国民生活と重大なる関連のある一級河川については国が、中小河川については府県が管理して、費用もそれぞれにおいて負担するということをたてまえとしようとしたのであります。すなわち、一級河川管理費用は全額国が、二級河川については二分の一国が負担することにより、財政面においては国の責任体制を明らかにせんとしたのであります。ところが、一たびこの方向が発表されますと、自治省並びに知事会の反対によって、水源より河口に至る河川の一元的管理という大目標がくずされ、知事管理区間の設定による従来のこま切れ管理が復活したのであります。また大蔵省の抵抗によりまして、財政面における国の責任体制がくずれ去ったのであります。かくて本改正案は、当初の河川管理の一元化による治水利水の合理化という背骨を失ったタコのようなものになってしまっておるのであります。したがいまして、われわれは、本修正案によりまして河川管理体系を当初の計画に戻し、その一元化をはかるとともに、国の財政的責任体制を強化して、まさに仮死状態に陥っておる河川法改正の本来の目的に土性骨を入れ、その生命を取り戻さんといたしておるのであります。修正の第三の要点は、遊水地域指定に関する事項であります。今回の改正案には、遊水地域保全という考え方をどこにも見出すことはできません。従来の河川管理の方針は、水を堤防で囲い、洪水の疎通をよくして、できるだけ早く無害にこれを海に注ごうとしておったのであります。いわゆる高水路工法といわれる方法がとられておったのであります。ところで、洪水をこうして堤防で攻め立てますと、一たん破堤した場合には、その破壊力は強大なものとなり、膨大なる災害を発生するのであります。さらにまた、洪水を海に無効放流して、水利用を全く不可能にしてしまうのであります。かくて治水工法の近代的方向は、高水路方式より流量調節に向かい、本修正案におきましても、ダムに関する多くの規定が織り込まれまして、流量の調節によって治水効果をあげるとともに、利水の効率を高めんといたしておるのであります。戦時中、食糧増産の目的から、多くの遊水地域が耕地化されました。いままた住宅、工場等の用地需要が高まるとともに、公共用地の拡大と相まって、さらにその傾向に拍車がかけられております。このことは、戦中、戦後の山地の荒廃とともに、今日の日本の洪水を非常に大きくしておるのであります。利根川には渡良瀬や田中の遊水地域が設けられておりますが、全国的に見て、河川管理の方式の中に遊水地域保全ということが非常に軽視されておるやに見受けられるのであります。川を攻め立て、河川の領域を経済が蚕食するところに災害の大きくなる原因があるのであります。河川の領域を侵し、土地の有効利用をはかるには、遊水地域の持つ調節機能を保全しながら、計画的に行なわなければなりません。こうした考え方に立って、われわれは、本修正案の中におきまして、治水上必要ある場合には、洪水調節のための遊水地域指定し、この遊水地域は、これにかわるべき洪水調節機能を有する施設をつくるまでは、これを取りこぼつことができないよう規定せんとしたものであります。  修正の要点の第四は、洪水常襲地帯の指定であります。川は生きているということばのとおり、われわれが川に手を加えますと、必ず敏感に反応してまいります。たとえば、利水目的をもってダムをつくりますと、ダムの上流では、洪水の停滞のために、著しい土砂の堆積が起こります。下流では、河道の掘さくのために干害が生じます。また、河川の改修によって洪水の疎通をよくいたしますと、下流の狭窄部には洪水をもたらします。こうしてわれわれが、治水利水目的で川に手を加えますと、一部に第二次的な洪水常襲地帯をつくり出すのであります。このように人工的につくられた洪水常襲地域に生活する住民は、毎年のように大雨ごとにどっぶり浸って、非常な犠牲をしいられているのであります。作物はとれず、住む家は荒廃して、生活は次第に困窮しつつあるのであります。しかも政府は、財政的理由をもって、これらの災害を防除するための措置を一向にとろうとせず、その地域の住民の嘆きは、いまや政府の無策に対する怒りとなって燃え上がりつつあるのであります。したがいまして、これらの人工的な洪水常襲地域を水禍から解放するための治水施設は、他の施設に優先すべきであるにかかわらず、他の利水目的とする施設がしばしばこれに優先しているのであります。それゆえに、私どもは、かかる地域を洪水常襲地帯として指定いたしまして、この地域に対する治水施設を、他の施設に優先して行なうことを政府に義務づけようといたしたのであります。  この修正は、連年の水禍に悩む住民の声であります。また、政治の当然のあるべき姿であります。昨年の通常国会におきまして、われわれは、罹災住民の立場に立つ本修正案を提案いたしまして、与党の諸君によって否決されたのでありました。まことに涙なきしわざというのほかありません。水害地住民は、この事実を悲憤の涙をもって見ております。しかるに、政府並びに与党の諸君は、悲痛なるこの願いを無視して、われわれの修正意見を取り入れることなく、本改正案を提案しているのであります。まことに冷酷無情、無神経きわまるというのほかありません。これでは、利水権は国の手に、水はおれたちに自由に使わせろ、ただし、そのためにどこにどんな水害が起こるようになっても、それはおれたちの知ったことではないということになりまして、今度の河川法改正は、利水第一主義の改正であると言われてもしかたがないのであります。地域住民の犠牲において、水を求める産業に奉仕せんとする改正であるとのそしりを免れることはできません。これが本案に修正を要求する理由の第四であります。  第五は、ダム操作に対する河川管理者の指揮権の問題であります。本改正案におきましては、災害防止のためのダムの緊急措置に対し、はなはだ憶病であるということであります。従来、発電ダムは、洪水に際しまして、しばしば予備放流を怠り、あるいは急激な放流を行なって、下流住民に重大なる危害を与えるような事故を起こしてまいりました。かかる経緯にこりまして、今回の改正法案では、ダム操作に関する詳しい規定を設け、ダムの安全性のために特段の配慮を払っております。ところが、ダム使用権を物権とみなすという考え方の中に、ダム操作に関する統一的管理にきわめて憶病なるものがあります。昨年の国会において、緊急の場合に、河川管理者は、ダムの設置者に対し、災害を防止するために必要な措置をとることを勧告することができるとありましたのを、指示することができると修正されました。しかしわれわれは、この程度の修正をもってダム操作の安全性を確保することはできないと思うのであります。流水は公共のものであります。ダム設置者は施設を設けることによってダム使用権を持ちますが、それは、権利として流水を事業の目的に使用することができるのではなく、資格として使用を許されているのであるとわれわれは理解しております。それゆえに、公共の安全に重大なる影響ありと懸念される場合には、進んで災害の防止に協力する義務があるものと考えております。そして、河川管理者は、各水系ごとに洪水管理本部を設けて、これら幾つかのダム群を科学的に統一的に管理し、指揮して、災害防止の実をあげるべきであります。そのためには、河川管理者は、緊急の際に、ダム設置者に対して命令権を持たなければなりません。指示することができるといった改正案の程度の消極的な態度をもってしては、十分な成果を期待することはできないのであります。レーダーや電子計算機の発達した今日では、ダム群の科学的管理によって、完全な洪水管理ができるはずであります。命令権のない管理者にこれを求めんとすることは、武器なくして戦えと言うにひとしいのであります。命令権なきダム管理は、魂なき管理というほかありません。これが修正を求める第五の理由であります。  さらに、河川法施行法案に対する修正案は、以上の河川法案に対する修正に伴い必要となる経過措置、並びに関係法律についての整理を行なったものであります。  明治二十九年に制定された河川法は、いま、時代の進運に伴って、画期的な改正が行なわれようといたしております。それだけに、われわれは、その改正にあたっては、その本来の目的を見失ってはなりません。政府部内のなわ張り争いにゆがめられたり、資本の圧力に屈服するようなことがあってはなりません。国民生活の安定のために、経済の伸展のために、正すべきところは正さなければなりません。そして、国民の生命と財産を守るための治水は、何よりも重要なものとしなくてはなりません。しかるに、政府原案は、この重大なる河川法の使命を忘れているのであります。いわば魂を置き忘れた河川法改正というべきであります。これに魂を吹き込まんとするのがわれわれの修正案であります。  皆さん方の御賛同をお願いいたしまして、提案の趣旨説明を終わります。(拍手)
  108. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  両修正案に対し、別に発言の申し出もありません。  この際、河川法案に対する修正案について、国会法弟五十七条の三の規定により、内閣から意見を聴取いたします。河野建設大臣
  109. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま社会党を代表して、河川法案の一部修正の動議が提出されましたが、政府といたしましては、原案をもって妥当なものと考え、遺憾ながら、修正案に賛成することはできませんので、原案のまま御可決あらんことをお願い申し上げます。     —————————————
  110. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 これより河川法案河川法施行法案、岡本隆一君外八名提出の河川法案及び河川法施行法案に対するそれぞれの修正案の四案を一括して討論に付するのでありますが、討論の申し出もありませんので、これより直ちに採決に入ります。  まず、岡本隆一君外八名提出の河川法案に対する修正案を採決いたします。  本修正案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  111. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  引き続き、原案について採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  112. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 起立多数。よって、河川法案は原案のとおり可決いたしました。  次に、岡本隆一君外八名提出の河川法施行法案に対する修正案を採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  113. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 起立少数。よって、本修正案は否決いたしました。  引き続き、河川法施行法案を採決いたします。  これに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  114. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 起立多数。よって、河川法施行法案は、原案のとおり可決いたしました。(拍手)     —————————————
  115. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 ただいま議決いたしました河川法案に対し、吉田賢一君外一名から、附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  この際、提出者吉田賢一君から趣旨説明を求めます。吉田賢一君。
  116. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 朗読いたします。     附帯決議  一、本法施行に当っては、国の行政   権強化に伴い、自治権、私権等、   その運営上幾多の問題が予想され   るのであります。したがって、法   の実施にあたっては、これまでの   実情を参しやくし、いやしくも憲   法上の自治権や私権等に対し、不   当な侵害にならぬよう十分なる配   慮を行なうべきこと。  二、洪水の頻発する地域治水対策   を促進するため、治山治水緊急措   置法等の整備を図り、実効ある措   置を講ずべきこと。  三、河川保全区域における行為の制   限の適用をうける地域について   は、免税措置等について十分の考   慮をはらうこと。  四、流水占用に対する建設大臣の   許可は、一定基準以上に限定し、   その他は、都道府県知事の権限と   するとともに、河川区域内の土地   の占用、土石等の採取の許可、そ   の他の河川管理に関する従来の   知事の権限についても十分考慮す   るものとすること。    右決議する。  何とぞ御賛同のほどお願いを申し上げます。
  117. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。  本動議について発言の申し出がありますので、これを許します。岡本隆一君。
  118. 岡本隆一

    ○岡本委員 ただいまの民主社会党から提案されました附帯決議を付すべしとの動議につきましては、その附帯決議の内容につきましては、すでに本委員会におきまして、たびたび議論をされておるところでございまして、さらにまたその内容については、そういう方針で法の実施に当たる、こういうふうに政府より答弁をされておるところでありますので、いまさらそのような附帯決議をつける必要はないと思います。よって、本附帯決議には反対いたします。
  119. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 他に発言の申し出もありませんので、採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  120. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 起立少数。よって、本動議は否決いたしました。     —————————————
  121. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 ただいま議決いたしました両案に対する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  122. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 御異議なしと認め、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕
  123. 丹羽喬四郎

    ○丹羽委員長 次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十五分散会