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1964-10-07 第46回国会 衆議院 外務委員会 第38号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年十月七日(水曜日)    午前十時十三分開議  出席委員    委員長代理理事 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 古川 丈吉君    理事 戸叶 里子君 理事 穗積 七郎君    理事 松本 七郎君       宇都宮徳馬君    浦野 幸男君       鯨岡 兵輔君    佐々木秀世君       始関 伊平君    周東 英雄君       野田 武夫君    野見山清造君       服部 安司君    三原 朝雄君       毛利 松平君    森下 國雄君       大原  亨君    岡田 春夫君       黒田 寿男君    田原 春次君       山本 幸一君    永末 英一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  委員外出席者         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (特別地域連絡         局長)     三枝 三郎君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         海上保安庁長官 今井 榮文君     ————————————— 十月一日  委員松井誠辞任につき、その補欠として大原  亨君が議長指名委員に選任された。 同日  委員大原亨辞任につき、その補欠として松井  誠君が議長指名委員に選任された。 同月六日  委員示啓次郎辞任につき、その補欠として  周東英雄君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員佐伯宗義君、竹内黎一君、濱地文平君、松  井誠君及び山本幸一辞任につき、その補欠と  して宇都宮徳馬君、佐々木秀世君、浦野幸男君、  大原亨君及び岡田春夫君が議長指名委員に  選任された。 同日  委員宇都宮徳馬君、浦野幸男君、佐々木秀世君、  大原亨君及び岡田春夫辞任につき、その補欠  として佐伯宗義君、濱地文平君、竹内黎一君、  松井誠君及び山本幸一君が議長指名委員に  選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓及び沖縄問題等)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長代理 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告があります。これを許します。  鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 いよいよオリンピックが東京で開催される今日、大ぜいの外国の方がお見えになっていることでもありますので、この方々の在日間のわが国印象ができるだけ楽しいものであるよう、それは見るものも聞くものも含めて、私ども国民としては一人一人がそうつとめなければならぬ、それが国民の義務でもあると考えますので、本委員会においてはできるだけ静かに、特別の刺激を避けるように心がけて質問に当たりたいと思いますが、それだけに、申し上げることの意を十分に御理解をいただきまして、明快にお答えを願いたいと思うのであります。  私は、外務大臣に、最近再三にわたって、いわゆる李ラインにおける不法な韓国の行動に対して、わが国態度が少しなまぬるいのではないかと前からも指摘してまいったのですが、とうとう韓国警備艇は、夜間ともしびを消してわが国漁船体当たりして、これを沈めるという大事件を起こしたのであります。幸いにも当局の適宜な処置によってその乗組員は無事に帰ってまいったそうでございますから、その点はよかったのですが、そのときの模様を詳細にひとつお話しを願いたい、それから質問をいたしたい、こう思うわけでございます。
  4. 後宮虎郎

    後宮説明員 事実問題のところを私のほうから説明さしていただきます。  十月五日の午前零時二十分ごろ、まき網運搬船の第五十八宝洋丸、これは七十八トン、乗組員七名でございます。船主は長崎県の宝洋水産株式会社でございますが、これが牛島の東北方約二十八・五マイルの公海上の地点におきまして、韓国警備艇八六七号によって追跡拿捕されるに至ったわけでございます。拿捕にあたりまして、いま先生から御指摘がございましたように、先方警備艇強行接舷をしようとしましたときに、同船の機関室に衝突いたしまして、宝洋丸乗組員七名を向こう警備艇に移乗させまして、そうして今度警備艇のほうの隊員四名を、つかまえました宝洋丸に移しまして、釜山のほうに向かいまして曳航を開始したわけでございます。しかしながら、当日は相当海も荒れておりましたような関係もございまして、強制接舷のために起こりました損傷のために浸水し始めまして、午前二時ごろについに沈没するに至ったわけでございます。この沈没いたしましたときに、宝洋丸に乗り移っておりました韓国警備隊の四名が、これは海中に飛び込んだわけでございますが、四名のうち三名は向こう側韓国側が救い上げたのでございますが、そのうち一名はわがほうの巡視船「あわじ」に救助されたわけでございます。  それで、外務省といたしましては、当日午前三時二十分に海上保安庁のほうよりこの事件につきまして連絡を受けまして、直ちに韓国代表部担当官の自宅に連絡をとりまして、抗議を申し込むとともに、この善処方を要求したわけでございます。過去二十年近くの間ずいぶん拿捕事件はあったわけでございますが、沈没いたしましたのは、たしか私の記憶するところでは初めてだと思うのでありまして、その意味で、非常に、時節柄、特に協力問題等が起こっているいまの時期に本問題が起こりましたことにつきまして、外務省といたしましても本件を重要視いたしまして、当日午前十時アジア局長から裴大使抗議を申し込みますとともに、直ちに大臣からも裴大使に正式の抗議を申し込むことにしたのでございますが、ちょうど午前中予算委員会がございました関係で、午後三時半に裴大使外務大臣が呼ばれまして正式に抗議を申し込むと同時に、当時はまだ船員の釈放を見ておりませんでしたので、とりあえずこの船員洋上で釈放するようにということを申し入れまして、裴大使もこの不幸な事件が起こったことについては非常に残念だということを回答するとともに、とりあえず日本側の要望の趣旨は本国政府に伝えて善処に努力するということを約束したのでございます。  その後、現場におきまして、海上保安庁側巡視船は、本庁のほうと密接な連絡のもとに、先方洋上交渉を無電によっていたしました。そうして、その結果、同日夜の九時十五分に李ライン付近におきまして、つかまっておりましたわがほうの船員と、それからわがほうに救い上げました先方警備艇船員、それにお守についておりましたもう一名の先方船員、計二名、これを交換して、一応船員交換だけは無事に終了した、こういうのが事実の経緯でございます。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 大使お呼びになって、外務大臣がお会いになっていろいろ抗議を申したときに、まことにこういう不幸な事件が起きて残念だ、これからのことはいろいろ善処するというお話があったというのですが、もう少し詳細に、そのときどういうような言い方を韓国大使はなさったか、外務大臣からお答えを願いたい。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題につきましてまず申し添えておきますが、沈没による損害賠償請求権については保留するという旨を申し添えました。  それから、大使との会談の内容でございますが、この問題に限らず、最近かような拿捕事件が肝心の際に次々と起こることはまことに遺憾である、一体拿捕して韓国側にとってどういう利益があるのか、ただ胸がすくというだけでは問題にならぬのではないか、せっかくわれわれはこれから本格的な会談の再開に入ろうとして、懸案漁業会談も始めなきゃならぬということを考えておる際に、ただこういう問題で非常なブレーキをかけるということは、韓国側として一体どういうところにねらいがあるのかという点を突き詰めてみたのですが、全くそれは同感である、両国関係を改善する重大な時期にかような事件を起こしてまことに申しわけないということをしきりに弁解しておりました。その点は大使も、私は誠意のほどを十分に認めることができたと思うのであります。しかし、突然今度は大使級の広範な更迭がございまして、新しい人にかわったわけでございます。現大使は、実情を十分述べて、新大使に引き継ぐものと考えております。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 沈没した船の損害賠償については、これは保留をいたします、こういうことであって、払うとは言わない。それから、どういう利益があなた韓国にありますか、胸がすくというだけでは意味ないじゃないか、これから一生懸命お互いに仲よくやっていこうというやさきにどうも理解に苦しむんだがと大臣がおっしゃったら、大使は、全く同感であります、これからないようにというようなお話があったような御返事でありますが、どうも話がよくわからない。けさのラジオの放送によると、韓国は、来年は予算を二億か計上して船を新造し、また長期の計画で十四億も予算を計上して七、八隻の新鋭船をつくって、ますます警備強化に当たるということを発表したというんですが、それといまのお話と多少矛盾があるように思いますが、いかがでございますか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私も向こうのほうでどういう新しい予算の組み方をしておるかよく存じませんでしたが、もしそういうことを考えておるとすれば、一応たてまえとしてそういうことを言っているんだろうと思うのであります。これは向こうの政策の問題でございますから、これ以上立ち入って批判をすることは避けたいと思いますが、いずれにしましても、両国間の問題に関する両国間の基本的態度は、私は、従来とかわりがない。その間にどういう予算編成をして、そしてどういう経過をたどっておるかにかかわらず、日韓の問題に関する基本的態度は変わっておるものとは考えない次第でございます。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 基本態度は変わっておらないと言われるのですが、大臣考えておられる大きな気持ちというものは理解し得ないことではないのですけれども、関連してお尋ねしますが、何かそういうことがあったときには、東京にいる大使を呼んでいろいろ話をしたりすることができますが、向こう日本大使がいるとすれば、向こうですぐ向こう政府抗議を申し込んだり相談に行ったりすることができるのですが、それがいないということが大きな支障になっておる、日韓会談を進める上にも大きな支障になっていると思いますが、そういうことがどうしてもできないという事情は何ですか。
  10. 後宮虎郎

    後宮説明員 従来の交渉経緯でございますので、私からかわって申し上げますが、御承知のとおり、平和条約が発効いたしましたときに、韓国代表部東京にありまして、日本のほうは何も向こうに持ってないという状況でございましたので、当時、韓国側交換公文をいたしまして、韓国代表部も事実上領事館と同じ特権を有する代表部として認める、そのかわり相互主義で、日本も同じような代表部をソウルに置くことを認めるという申し合せができておったわけでございます。ところが、それがその後すぐに朝鮮事変等の混乱になりましたために事実上置かれなくなった。そうして、朝鮮事変が終息いたしましたので、日本側からは機会あるごとにそのことを実は申し出て要求しているのでございますが、向こうは、一たんこういう代表部交換というものができてしまうと、もう国交正常化交渉をしなくてもいいというふうな印象を与えて、これは国内的にも政府としては持てないから、どうせ国交正常化はすぐできるんだからちょっと待ってくれ、ちょっと待ってくれという繰り返しでございまして、こちらの累次の要求にもかかわりませず、いまだに実現していないという遺憾な状況でございます。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 大臣大使お呼びになって話をしたときには、大使は非常にわかったような話をしている。しかし、一方、向こう政府は、ますます警備艇をこしらえて、この警備を強化して、日本漁船拿捕するんだという気がまえを見せている。これでは私はまことに不信であって、もう正常におつき合いもできないという感じを私個人は持ちます。大臣もきっと内心ではそう思われるに違いないと思いますので、この件については時間もありませんから総まとめで私の不満の意を申し上げたいと思いますが、先に進ませていただきます。  報道によると、外務省では、日本漁船の出漁を抑制するかわりに、漁民に対して国家補償をしてはどうかというふうな御見解のようでございますが、そういう考え方をお持ちでございますか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 新聞等において、何か外務省の一部にそういう考えがあるような報道がございましたが、これは全然相違しておるのでございます。繰り返すまでもなく、李ラインというものは、国際法上もあるいは国際慣行上もこれは不法不当のものであって、絶対にわが方としてはこれを認めない。にもかかわらず、向こうがこの李ラインというものを前提にして日本漁船を次次と拿捕しておるという状況が続いておりまして、根本的に両者の考え方が食い違っておるというところに問題が発生しておるのであります。これをどうすればいいかということは、言うまでもなく、正式の漁業交渉をまとめて、そして、専管水域専管水域、あるいは水域外規制規制、それからなお進んで漁業協力といったような、そういう問題に分けて、そして話をまとめることによって問題の根本が解決されるのでございますから、どうしてもこの線を一日も早く進めたい、こういう考えを持っておるのでございますけれども、いろいろな先方事情等があってその進行が阻止されておる、こういう状況でございまして、その際に日本漁船が次々と拿捕されるというような状況であって、最近は向こう監視船が非常に活発に動いて、まき網の網をおろすひまもないというような陳情を受けたわけです。その結果非常に操業率が下がって、中には倒産に瀕しておるものも出てきておるという話でございまして、したがって、この漁民の窮状を十分に考え国家補償をすべきものであるというような陳情も受けたのでございますけれども、これはどうも筋が違う、どうしても外交交渉によって本格的な交渉打開によって解決する以外にない、かように考えておる次第であります。李ライン前提にする拿捕、それによる損害というものを、一体どういう根拠で日本政府がこれを国内的に補償していかねばならぬのかという理屈はどうしても出てこないのであります。場合によっては李ラインというものを是認するという考え方につながるものであるというような誤解を相手方に植えつけるということも、まことに私は心配されるのでございまして、この点はただいまのところ考えておりません。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、抑制水域をきめて、そこへは日本漁船は出漁するな、そのかわりそれによる経済的な損害国家補償してあげようではないかというようなお考えはないと考えてよろしいですね。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  15. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、政府のお考えは、李承晩ラインというものは政府は認めておらないのだから、あそこは公海だから漁船は出かけていってお魚をとることはかまわないことだというふうに考えておられるわけでございますか。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  17. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、今度は向こう警備艇がどんどん出てきて、船を持っていったり人間を監獄にほうり込んだり、このごろは船を沈没させられるというようなことが今後も続くわけですが、これに対してはどう御処置になるつもりですか。外務大臣お話しのように、漁業交渉を早くきめて、そしてお互い相談納得の上でやることがいいのだというのですが、それは長い間そういうふうに言っておるので、きょうもあしたも拿捕事件は続くわけですが、これに対する根本の方針はいかがでございますか。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一種の公海上における不法行為が頻発しておるという事態でございますが、そういうことが韓国にとって、ただいま日韓の間に懸案になっている問題の解決のためにはたして利益であるかどうかというような点について十分に反省を促して、その拿捕行為を控えさせるという努力をすると同時に、実際問題として、無体なことをしかけてくるのでございますから、なるべく、一つの自衛行為として、とっつかまらないように気をつけろ、こういうことを言わざるを得ないと思うのであります。そして、できるだけ正式の漁業会談を進めていく、こういう以外に、国際紛争を実力をもって解決するという手段は日本には全然ないのでありますから、これやむを得ないと思います。
  19. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 この際きわめて簡単にお尋ねいたしますが、この間海が荒れておりましたのに幸いにしてだれも死人がいませんでしたが、船が沈没したり、こちらの船へ乗り移るようなときに、海にはまってもしも日本漁民が死んでしまったということがかりに起こった場合、これは今後こういうことが続いていけば十分に想定されるのですが、そういうことがあったときには一体どうなるのでございましょう。あらかじめ念のために承っておきたい。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうことのないことを大いに希望しておりますが、さような不幸な事態が起こりましたならば、その時点において十分に考え善処したいと考えます。
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは話を前に進めますが、二千万ドルの経済援助についてわが国最終条件は決定したと私は思っているのですが、韓国側はこの二千万ドルの経済援助についてすべての条件を受諾したのですか、この点について承りたい。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まだ正式に受諾したという回答はございませんが、その模様が推察される段階でございます。
  23. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 正式に妥結はついておらないと言いますが、日本のほうでは、こういう条件経済援助をしましょうと、非常に私どもとしては寛大な気持ちでやったと思うのですが、その点のどこが気にいらなくて、どういうふうに希望しておるのですか。おわかりでしたら……。
  24. 後宮虎郎

    後宮説明員 先週の木曜日の予備会談の席上でもこの点話が出たのでございますが、先方は、いま品目等具体的なこまかい問題と一緒に研究しているので、まだ最終的に正式の返事は差し上げられる段階でない、そういうふうな返事でございます。
  25. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 国内におきましても、政府の中でも、不法な拿捕事件が続くのならば、——経済援助は、ああいう韓国経済状態から考えて、早くひとつ経済が発展してもらいたいという気持ち日本では切なものがあるのですから、それはまあいいとしても、この不法な拿捕事件が続くのならば、漁業に関するたとえば船の輸出であるとかあるいは海産物輸入であるとか、そういうものだけはやめたほうがいいのじゃないか、この拿捕事件が続く限りはやめたほうがいいのじゃないかという意見が十分あるように思うのですが、この点については外務大臣はどうお考えになりますか。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういったような交渉はあまり感情に走ってもいかがかと思うのでありますが、しかしながら、国民感情を全然無視するということも、これはやはり適当でない場合もあるのであります。でありますから、海産物輸入であるとか、あるいは韓国漁業に使用する船の輸出というような問題につきましては、やはりかような問題が起こって両国国民がいきり立っておるというような状況では進みにくいという事情も十分に考慮しなければなるまい、こう考えております。
  27. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣は、感情に走ってはいけないということでございますが、なるほどそうでもありますし、外務大臣としての御苦労もよりわかりますが、日本の船は、夜陰に乗じて灯火管制して荒海の中で船をぶつけられて沈められているのです。そういう相手国に対して漁船をつくって輸出してそれを援助するというようなこと、これはやはり、感情に走ってとおっしゃいますが、それまでもがまんしなければならないということは、私は感情に走ってというような表現では言えないと思うのですが、外務大臣、もう一ぺんそのところをひとつ教えていただきたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 全般的に私が申したのであって、故意かあるいは過失かは知らぬが、横穴をつくられて、そしてもう見る見る沈没するというような事件は、これはどうも簡単に黙視することのできない問題でございます。こういったような問題についてはもちろん厳重に抗議いたしまして、なお、これらの状況下においては問題の円滑な推進ということは実際上できないということではないかと思うのであります。
  29. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 前にも申し上げましたが、独立後間もない隣国である、特に第二次戦争前はわが国と特殊な関係にあった隣国韓国の政治や経済がいよいよ安定成長して、その国民諸君が平和な生活のできるように望む気持ちは、われわれ日本人としては切なものがあります。同じく自由民主主義の陣営としての連帯感も十分あるつもりであります。私ども日本人がそのために少しはわれわれの生活を切り詰めてもいいとさえ私個人は思っているわけです。しかし、そのためには、先方も少しはその気持ちになってくれなければ、できる相談もできない道理であります。いままで十五年の間に日本の船が拿捕されたもの三百隻以上、十五年の間に日本人同胞が抑留された者三千人、この不法な拿捕事件あとを断たない、とうとう体当たり沈没までさせられるというようなことになれば、昔だったらこれは十分に戦争の原因になるくらいです。  お互い話し合い日韓会談の促進には理想的でございますが、もしもそのお互い話し合いというものが、話し合い話し合いといいながらいつまでたってもできないで、しかもその間にもますますそういう拿捕事件あとを断たないとするならば、私は、時の氏神として、たとえばアメリカにでも中へ入ってもらって話をどんどん進めていったらいいんじゃないか、そういうことがあっても少しもいけないことでもないし、ふしぎなことでもないし、非難さるべきことでもない、こういうふうに思っているのです。そういうやさきに、先日米国の国務次官補バンディさんが韓国へ寄って、また日本へもやってきたのですが、何か韓国ではこの問題についてサゼスチョンをしてきたように思うのですが、どんなことを言うてきて、日本でも仲裁に私が入るですよというようなことを言うたのか言わないのか、そういうことをひとつ外務大臣からお聞かせ願いたいと思います。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 バンディ氏が向こうへまいりまして、日韓の問題の円滑な進捗を希望するということを韓国政府に言ったことは、新聞にすでに伝わっておるとおりでございます。なお、こういったような問題に関連して共同声明の発表もございましたが、具体的な日韓の現在の問題を取り上げて、そしてこれをこうしたらいいああしたらいいというような、そういうようないわばまあおせっかいと申しますか、そういうことは一切無用でありますし、また、そういうことも事実上は何も言っておらぬという状況であります。  なお、バンディ共同声明の詳細につきましてもしも必要がございますれば、事務当局から申し上げます。
  31. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 詳細に承る必要はありませんが、いま外務大臣のおことばでは、ああしたらいい、こうしたらいいというようなことは、そういうおせっかいはという御表現でございますが、私はおせっかいではないと思う。韓国としてはアメリカからずいぶんいろいろ援助を受けておるのだろうし、その韓国アメリカとの関係日本アメリカとの連帯感、そして結ばなければならない日本韓国との連帯感、そういう点から、いろいろなことを命令してもらってははなはだ心外ですが、こうしたらどうだろうというような話があっても少しもおせっかいでないと思いますし、そうしてもらうことのほうがいいのじゃないかとさえ私個人としては思うのですが、要らざる——要らざるとはおっしゃいませんでしたが、おせっかいというお考えかどうか、もう一回お聞かせ願いたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こっちからどうも手に負えないからひとつ頼むというようなことでも言った場合には、これはおせっかいではございませんが、何も頼まないのに、いろいろ具体的なことを、こうやったらいいだろう、ああやったらいいだろうということは、おせっかいでございます。もうすでに問題の具体的な検討を十分に漁業交渉にいたしましてもいまやっておる半ば、いま中止はしておりますけれども、相当に話を突っ込んでおるのでございまして、そういったような具体的な問題に入っていただくことはまことに迷惑であるという意味で申し上げたのでありまして、大局的に両国懸案の妥結をこの際ぜひとも希望するというようなことは、これはもう有益なる声援と申しますか、これはありがたく受け取ってよろしいのではないか、かように考えております。
  33. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 時間がありませんからどんどん質問を進めたいと思いますが、日韓国交の正常化という問題について日本韓国とどちらがより積極的なのか、それを望むことはどちらも同じ意欲で、どちらも同じレベルであると考えていいかどうか、外務大臣からお答え願いたい。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これはどういうふうにウェートをはかっていいのかわかりませんけれども日本日本としてこの日韓の国交回復はきわめて重要な問題であり、と同時に韓国にとりましてきわめてこの際重要な問題である、かように考えておるのでありまして、どっちがより多くというようなことは、どうも比較することがなかなか困難であり、また、むずかしいと思います。
  35. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ほとんど平等の立場で要求というか意欲があるというふうに受け取れたのですが、私は、もっともっと平等の立場でこれをやったらいいと思うのです。いままでの経過を振り返ってみると、韓国は時宜に応じて強硬な態度をとる、そのために日本は譲歩に譲歩を重ねているという印象わが国民にはぬぐい切れないのであります。李ラインは不法だと言いながら、出漁を自制する話が出てくる。そうすると、不法だ不法だと言いながら、やはりこういう拿捕事件あとを断たない。日本商社の課税もいつの間にか弱腰になってしまう。私ども与党としては政府の施策に積極的に協力する立場にあるのですが、外交で一番いけないことは、脅迫や威嚇に屈することであると思うのです。または脅迫や威嚇に屈したと相手に思わせることであると思うのであります。韓国経済は想像以上に悪いとのことであります。そのためか、政治もまた安定しているとは言えないようであります。気負い立った国民世論または国民感情も何とか韓国としては静めなければならないと思います。日本韓国との連帯感から、この際はひとつならぬがまんをして、より高度の目的、すなわち両国国交正常化をはかろうという気特ち、そういう気持ちは私は十分に察せられるわけであります。しかし、それならばそれで、政府は高邁な対韓政策というものを可能な範囲でそれを日本国民に知らせるべきだと思います。また、さらに、とっぴなことを言うようですが、やはり日本の政治の最高の責任者である外務大臣のような方が韓国へ行って、われわれの気持ちをなぜ理解しないのだというようなことを積極的にやってくるというようなことは、えらいとっぴなことでしょうか。外務大臣はその点についてどんなふうなお考えでおられるか、それをちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お話の趣旨は十分にわかるのでありますが、具体的に私がまいるのはこの際適当であるかどうかという点につきましては、いささか、自信といいますと少し語弊があるかもしれませんが、その点は十分に考えてみなければならぬ問題だと思います。
  37. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 話は違いますが、イギリスでは領海十二海里をとったということを通報してきたようですが、そのとおりですか。どなたか関係者からお答え願います。
  38. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 領海ではございませんで、漁業水域という観念でございます。これは、ヨーロッパ諸国間の条約が最近にできまして、その条約に基づいて措置したわけでございます。
  39. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、領海は三海里で、専管水域として十二海里以内ということであると承知してよろしゅうございますか。
  40. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 さようでございます。
  41. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは承りますが、そういうことをやはり日本もやりますか。
  42. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 これは将来の日韓漁業交渉の結果いかんにかかることでございますが、現在の段階においては日本側についてそういうことは別に特別に検討はしておらないと承知しております。
  43. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 イギリスだけではないので、このごろは、領海でない専管水域だとしても、カナダ、アルゼンチン、イギリス、ソ連、中国、北ベトナム、インドネシア、それぞれ十二海里説をとっておるわけであります。御案内のとおりだと思いますが、日韓の問題だって、李承晩ラインなんか問題ではないんですが、最低限度十二海里の専管水域を認めなければならないということで交渉をお続けになっておるでしょうが、そういう際に、日本だけが専管水域も含めて三海里ということであれば、国民利益の上からこれは非常に御怠慢ではないかという感じがするのでございますが、いかがでございますか。
  44. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 日本といたしましては、漁業水域というものは一方的に設定すべきものじゃないという基本的な立場をとっておるわけでございます。それで、先ほど申し上げましたように、かりに日韓交渉向こう側に十二海里の漁業水域を認めるならば、その協定に基づいて日本側でも十二海里の漁業水域を設けるということは理論上当然考えられる。しかし、それを具体的にまだ検討するようなことはやっておりません、そういうふうに申し上げたわけでありまして、ほかの国になるほどおっしゃるとおりに一方的に漁業水域の宣言をしたりするような国がなきにしもあらずでございますけれども、私どもは、それは国際法上許されておらないという立場をとっておるわけでございます。
  45. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、イギリスが専管水域を含めて十二海里説をとったということに対して、日本は、そういうことは国際法上認められておらない、あなたのような先進国がそういうことを言うのはおかしいという抗議を申し入れましたか。
  46. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 ちょっと私のことばが足りませんでしたが、その水域に関心のある国の了解なしにはということでございまして、かりにイギリスの近海に直接日本漁業上関心がない場合には、特に日本の了解は求めなくてもまあそれはよろしいだろう、しかし、関係国、ヨーロッパ諸国間ではちゃんと合意ができておるわけでございます。
  47. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは承りますが、先ほどから、日韓問題、韓国とのことだけを言っておられますが、日本漁業の問題で関係のある国は韓国だけですか。
  48. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 協定に基づいてやる場合には日韓間に限って申し上げたわけでございますが、もちろん、かりにほかの国と同じような協定を結ぶことも理論上の可能性としてはあると思います。しかし、そういうことは全然いま問題になっておらないわけでございます。
  49. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、もう時間もありませんから、大急ぎで国連問題について私のちょっと外務大臣に御質問を申し上げたいことを申し上げたいと思いますが、いよいよ十九回の国連総会も近く、そのときは外務大臣もこれに出席して演説をなさるのじゃないかと、私は報道や何かでそう思っているのですが、国連総会に臨むわが国態度という大きな方針について、明快に外務大臣からお示しを願いたいと思います。
  50. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すでに日本といたしましては国連中心の外交政策をたてまえとしておるのでございますから、平和機構である国連の機能を今後ますます高め、そうして国連を中心として世界の平和と繁栄を持ち来たすようにしたい、かような趣旨をあくまで堅持してまいりたいと存じます。
  51. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 国連中心主義の外交を推し進めて国連というものを強力にしていきたいというお考えをお持ちだそうでありますが、そういうことで外務大臣は御出席になって演説をなさるわけですか。
  52. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう趣旨で演説といたしたい、かように考えております。
  53. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、 この前もちょっと伺いましたけれども、安保理事会と経済社会理事会の理事国の拡大について過日も御質問を申し上げましたが、これに賛成したわが国ではありますけれども、常任理事国のうち反対したものがある以上、ほかにもあるからといって国会の批准を求めるようなことをいまやってみても、国会に御迷惑を与えるだけだからと、この間は御返答があったわけです。すなわち、百八条による批准の手続をわが国はとらなければならぬ、そういうふうに私は思うのですが、そういう用意がございますか。
  54. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 来年の九月の総会までに各国が批准を了して、そうしてこの問題を最終的に討議するという予定になっております。しかし、わが国といたしましては、積極的にこの問題を推進するという意味におきましてできるだけ早く批准の準備を進めてまいりたい、かような意向を持っておる次第でございます。
  55. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、この問題に賛成をしたわが国はごく早い機会に国会の承認を求めて、そうしていつでもいらっしゃいという態勢を整えるのだというふうに解釈してよろしゅうございますね。私がこの間質問いたしましたときに、常任理事国のうち反対するものがあったのでは批准をしたって役に立たない、前段だけやっても、後段のほうがうまくいかないのだから、それでは国会に御迷惑を与えるだけだというような御答弁がありましたが、そういうようなことではいけない、それではやっぱり国連中心主義とも言えないし、特に一番心配なのは、AA諸国の信頼をかちとることができないのだ、AA諸国のリーダーになっていくという気がまえから言えば、どんどんやるべきことはやって、そういうことを進めていかなければならぬ、こう思ったのですが、いまのお話でよくわかりました。どうかひとつそのように進めていただきたいと思います。  それから、次に、最近の新聞の伝えるところですが、ソ連のフルシチョフは、日本はもっと積極的に国際政治の問題に意見を言わなければだめだというようなことを言ったように書いてあります。カナダだったと思いますが、日本は少なくとも極東の平和に関する国際政治の問題についてはもっと積極的であってほしい、こんなことも言っております。すなわち、日本は国際政治に対して積極的でないというふうに非難されているような気がいたすのであります。それでいて、わが国は国連中心主義の外交だと一方では言っている。そうなると、それは論理的に言えば国連追随の外交であるという印象をぬぐい切れないのですが、外務大臣は国連の外交政策はどうあるべきだというふうに思われておるか。そういう外電の報ずるところによって考えたことですが、その点について外務大臣の御所見を明らかに承りたいと思います。
  56. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、ただ国連に追随する、国連の多数にただ唯々諾々として従っていくというのでは、これは国連中心の外交政策とは言えないのでございまして、積極的に言うべきは言い、主張すべきは主張してまいりたい、かように考えております。
  57. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 最後の外務大臣に対する質問をいたします。これは非常に重要なことだと思うのですが、いままで速記録を調べてみますと、何人かの先輩からこの質問が出て応答がかわされておるのですが、国連憲章の五十三条一項後段と二項及び百七条の敵国条項というのがあります。国連憲章の五十二条によると、国連の目的及び原則に一致するなら、国際の平和及び安全の維持のために、地域的なことに関する地域的取りきめまたは地域的機関の存在は許される。これによってNATOでもSEATOでもワルシャワ条約でもあるいは日米安保条約でもあるのだと思うのですが、五十二条にいくと、安保理事会の許可があるならば地域的取りきめによる地域的機関が強制行動に出てもいい、ただし第二次戦争中の敵国については安保理事会の許可がなくてもいいのだという敵国条項がある。私は、いよいよ日本が国連中心主義の外交をやって国連を強くして、ことしはまた国連の総会では国連軍創設の問題が強い議題として出てくると思うのですが、それに対して日本も原則的に賛成だというのであれば、こういう機会に、この敵国条項みたいなものがあるということは非常に残念で情けないから、これをひとつ取り除くという積極的な運動がわが国からなされなければならぬと思うのですが、これについてはどうお考えになりますか。
  58. 星文七

    ○星説明員 ただいま御指摘の点は、私どももそういうふうに感じております。国連のメンバーでありながら、しかもこういう条項がいまなお戦争の残骸とはいえ残っているということは、国連の一員として、また、国連において平等という立場——国連メンバーシップというのはおのおのみんな平等であるという立場から言って、非常に奇妙な存在であろうと思います。ただ、御承知のように、国連憲章の改正というものは、先ほど御指摘のような安保理の議席の拡大だとかあるいは経済社会理事会の議席の拡大というふうに一部の改正と、それから全体の国連憲章の改正という二つの方法がございます。私は、いま御指摘の点は、むしろ国連憲章全体の改正というときが来ましたときに勇敢にわれわれとしても取り上げていくべき問題ではなかろうかというふうに感じております。
  59. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣、いまの話ですが、これは事務的にはまことに残念だから何とかしなければならぬということですが、これはやはり、日本の外交全体が、事務的なんかじゃなしに、これを変えなければ国連を強くするという努力ができないというくらいの強い決意を持ってかからなければならぬことだと思うのです。まことに残念だと思うんだけれども、その時期を見ているんだというようなことでは、私は解決すべき問題ではないというふうに思うわけです。先ほどの外務大臣お話でも、国連ではひとつ十分にわが国の意思を伝えて国際政治の場に入っていきたいという強い御熱意、まことに力強く感ずるわけで、どうかひとつ、それを進めていただくときには、こういう問題も各国に理解を求める運動を、少なくとも地固めみたいなものはしなければならぬ、こういうふうに思うわけです。  私の質問を終わりますが、質問をやりながら感じたことは、日韓問題に対する考え方は、私ども国民感情から言えば、まことにふがいない気持ちをまだ払拭することはできない。どうかひとつ、この点についても強固な意思を固めて、威嚇などに屈するということでない、しかも韓国の政情、経済に対して十分同情ある日本態度というものを、一日も早く、韓国政府はもちろん、国民の皆さまに理解を願うという積極的な運動を続けていただきたい、このことを御要望申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  60. 安藤覺

    安藤委員長代理 穗積七郎君。
  61. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にお伺いいたします。  実は私は、あなたが外務大臣に御就任になりましてから、ごらんのとおり、先進国における過剰生産と市場競争の問題、この圧力を背景にして、東西問題並びに南北問題が重要な転換期に来ていると思うのです。そういう意味で、椎名外務大臣の今後の国際情勢の分析なりあるいはそれに対処する日本外務省の外交路線について、一度基本的に、あなたに敬意を表しながらわれわれの意見も述べてお尋ねしたいと思っておった。ところが、たまたまきょうの委員会もまた、先般のようにトンキン湾事件が起き、原潜の問題が起き、続いていま、自民党の委員からお尋ねになりましたように、韓国の不当なわが国漁船に対する攻撃が行なわれている、こういうことでございますし、同時にまた、きょうの理事会の打ち合わせで、あと質問者が時間を限って続いておりまして、鯨岡先生の御質問の時間がお約束よりたくさんオーバーいたしまして、時間がなくなって、私ははなはだこま切れの質問で、社会党としても、起きてきた事件を追いかけて事件屋のように質問をすることを必ずしもいさぎよしとしないのですが、そういう理由で、基本的なあなたの外交路線なり国際情勢分析については、ぜひひとつ次の機会に、あなたの時間も十分とって、われわれの考えも申し述べながら御意見を伺うことにして、きょうはもう十分足らずしか私の時間がなくなってしまったわけですから、いまの問題に関連をしてお尋ねをいたします。  あなたは、漁船に対する不当攻撃が行なわれましたのに対して、韓国政府代表に対してそれに対する反省を求めた申し入れをされたようですが、出先機関は何らこれに対する韓国側の意見を述べていない。そうして、本国に御趣旨を通達してということですが、その後、通達した結果、韓国政府としてのわが外務省に対する何らかの答弁がございましたかどうか、その事実をまず最初にお尋ねいたします。
  62. 後宮虎郎

    後宮説明員 まだ返答は何もございません。一応向こうのほうから見ました沈没の事実等の返事がございましただけで、こちらの、大臣から申されました要求等に対する回答というのはまだございません。
  63. 穗積七郎

    穗積委員 それではお尋ねいたしますが、ソウルと東京とは、国は違いますけれども、ほとんど指呼の間にあって、連絡がつく。一体何をしているのですか。こういう緊急な問題が起きて、一方では経済援助をどんどん要求してきている。アメリカの圧力で日韓会談をやろうとしておる。不当な干渉が行なわれておるときに、こういう相手側の態度、相手側が起こしました事件に対して、それを先に解決をする、それに対する責任のある答弁を求める、これが一切の韓国政府との間の交渉に先行すべきことだと思うのです。外務大臣どうですか。あなたは一体何を申し入れたのですか。この点をひとつ明らかにしていただきたいのです。
  64. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 とりあえず洋上交換を申し入れたのでありますが、この点は韓国側もその非を悟ったのでありましょうか、洋上交換は無事に終わりました。損害賠償の点についてはまだ回答はございません。
  65. 穗積七郎

    穗積委員 今後のことについては確約を取りましたか。
  66. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今後のことといいますと、結局李ラインというものを撤廃して、これを侵犯するという事実が起こらないようにしなければ、今後もやはり同じような問題が起こり得るのでありまして、その李ラインの撤廃ということがすなわち漁業交渉の終局の目的でもある。でありますから、その点の確約はまだ取らない、取れない状況であります。遺憾でございます。
  67. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは一体何を言っているのですか。向こう側李ラインというものは正当なもあとして主張しておる。わがほうは国際上の立場並びにわが国の国益から見てこれを認めない。認めるか認めぬかは今後の日韓会談交渉の中にあるわけでしょう。その両者の合意に達する前は、わがほうとしてはこの李ラインを認め、または李ラインがあるから攻撃がやむを得ない、拿捕がやむを得ない、こんなばかな前提がありますか。あなたは日本外務大臣ですか。おかしいじゃありませんか。それは基本的におかしいよ。何を言っておられるのか、私にはわからない。外務大臣どうですか。その基本線が違うじゃありませんか。
  68. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 あなたの御所見を聞いていると、李ラインはよろしい、ただつかまえることがいかぬ、こういうふうに聞こえまするが、(穗積委員「そんなことだれも言いやしない」と呼ぶ)——聞き方が悪いためかもしれませんが、結局、私は、拿捕事件というものは李ラインという不法なものを撤廃しない限りそういうものは起こり得るから、これを基本的に根本的に是正するのが李ラインの撤廃である、こういうことを申し上げたので、李ライン拿捕というものを不可分的に私は考えておる。あなたの言われることは、何か李ラインはそのままでもいいが、とにかくとりあえずとっつかまえるなという確約をしたかというふうに聞こえますので、私は重ねてこの点を申し上げたわけであります。
  69. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣、われわれの所論というものは大体わかっておるはずです。私のいまの発言から見ても、私が李ラインを認めて、その上で漁船拿捕だけやめろという、そういう無礼な曲解というものがありますか。認められざるこの不当なラインなんですよ。そうであるなら、話がきまらぬ時期においてもこれはあり得べからざる線ですから、そこにおける一切の向こう側の行為というものは不法行為であり、不当行為なのです。そんなことはわかり切っています。あなたは、季ラインというものがある以上は、向こうが主張しておる以上は、拿捕事件というものはやむを得ない、こう言っているじゃないですか。認めないという立場で日本が立っておるなら、認めるか認めないかは今後の問題でしょう。認めていないのですから、これは日本側から見ればないのですよ。それを根拠にして、しかも、われわれ、安藤委員長代理を先頭にして、与野党とも、いまの鯨岡君も御同行いたしまして、そしてつぶさに現地の状況を見ております。これは何も李ラインではない、李ラインに接近するものは片っぱしから攻撃を加えておる。ですから、私は外務省に——臼井長官が見えたので、もう時間がはなはだなくて残念ですが、もしあとで時間があれば続いてお尋ねすることにして、そこで、第一に私は提案をして外務大臣の御意見を伺いたいのだが、大体が、現地の漁民ですら、それからさらに広範の国民ですら、こういうような不当なゆすりかたりのような強盗のような態度を継続しながら日韓会談を一体なぜやらなければならないのか、日韓会談を友好的な精神でやるなら、こういう行為はあり得べからざるものであるし、また、こういう行為を一方においてとるならば、日韓会談はこれは中断をすべきである、これは私は常識であり公正な意見であると思うのです。したがって、外務省の弱腰のために、海上保安庁の諸君も非常な苦労をしておる、不当な苦労をしておるのです。これは、あなたは腹の中では弱腰でないことを念願しながら、アメリカの圧力に屈して、よう強いことが言えない、こういうことでしょう。先月からこの月にかけて、アメリカの非常にあせった日韓会談でっち上げ、その前哨としての経済援助の促進、これにあなたは全く屈しておる。だから、こういう不当な行為が行なわれても、それに遺憾の意を表する程度で、行動にあらわれない。だからなめられる。だから、鯨岡委員が指摘したように、向こうはもっと新鋭の警備船を強化してこれを拿捕しようとしておるわけです。攻撃を加えようとしておるわけです。だから、この際は、外務省は、そういう行為、そういう態度が改まるまで日韓会談はやらない、経済援助交渉もやらない、一度中断することが外交的な手段としては私は相手に反省を求める唯一の効果的な方法であると思うのです。感情に走ったり過激なことを一方的に言うのではありません。これが国民全体の常識であり要望であると私は思うのです。そういうお考えはありませんか。
  70. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点については、遺憾ながらあなたと所見を異にいたします。御意見としては承っておきます。
  71. 穗積七郎

    穗積委員 さきにお話がありましたように、ジョンソンでありますとか、あるいは続いて来ておるのはバーネットが来ておる。それからバンディ国務次官補が来ておる。これらの諸君とあなた並びに外務省政府機関は日韓会談の問題についてどういう話をされましたか、どういう圧力を受けましたか、この事実を明らかにしていただきたいのです。
  72. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 バーネット氏とは私は会いません。それから、バンディ氏とは会いましたが、日韓会談の問題についてはほとんど話題に出ませんでした。したがって、圧力も何も感じませんでした。
  73. 穗積七郎

    穗積委員 あるいは訪問した政府機関でなくて出先の政府機関、たとえばエマーソン公使でもけっこうです。後宮アジア局長、どうですか。日韓会談または対韓経済援助についてアメリカ側から意見が述べられたでしょう。隠蔽してはいけませんよ。
  74. 後宮虎郎

    後宮説明員 バーネット次官補代理とは韓国から帰ってまいりましたときに会いました。それから、バンディ次官補とは向こうへ行く前に会いました。一般的な日韓会談模様等についてももちろん情報交換程度のことはございましたが、大臣からもお答えがありましたように、新聞などに伝えられているところとはおよそ逆と申しますか、異なっておりまして、一般的な自由陳営の団結のために日韓国交正常化の早期妥結に対する希望というものの表明はございましたが、具体的な各懸案についてのアメリカ側の意向はごうごうというような、そういうあれは全然ございませんでした。
  75. 穗積七郎

    穗積委員 それは大臣と話が違うじゃありませんか。対韓経済援助並びに日韓会談交渉を軌道に乗せる、こういうことについては意見が述べられているじゃありませんか。大臣どうですか。
  76. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私はバーネットに会いませんし、バンディに会ったときもその話は出ませんでした。
  77. 穗積七郎

    穗積委員 それは、後宮アジア局長あるいはその他の政府機関、それがアメリカ政府機関の諸君から日韓交渉すべての問題について意見が述べられたことは、あなたは大臣として報告を受けていないのですか。私は、あなたまたは日本政府機関と言ったのです。どうなんですか、報告を受けていないのですか。御答弁が食い違っておりますが。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いろいろなことを聞きますけれども、月並みなことはもう片っ端から忘れてしまいますので、ただ儀礼的にしゃべったぐらいのことは、私はあまり心にとめて記憶しておりません。
  79. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃ、経済援助交渉というものは、向こうからいま具体的ないろいろな要望があり、しかもこれには対韓経済援助条件の問題だけでなくて対日輸出の問題日本側から見れば輸入ですが、こういう買い取りの問題も含めて、一括して向こうから要求が出ているでしょう。しかも、民主党の大会を前にいたしまして相当強い要求が出ておるはずです。こういうものを、いまの漁業問題に対するあの不当な攻撃を解決もしないで交渉を続けるつもりですか。いまの大臣お話ですと交渉を続けるつもりだというけれども交渉を続けるつもりなら、一体そういう状況交渉を続けることがわが国の国益に合致するという理由を明らかにしていただきたいのです。日本の外交はあなたの外交じゃありませんよ。国民全体の利益のための外交でなければならない。あなたと池田さんの私物じゃありません。あなたと意見が違うからおれはかってにやるのだという、そんなかってなことは許されませんよ。あなたはまだ戦争中の官僚独善の考えが消えていない。はっきりした明確な理由を明らかにしていただきたいのです。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 漁船輸出あるいは一次産品の買い入れ等の問題については従来からあった懸案でございますが、そういう懸案を打ち切るというつもりはない、たまたま起こったこの漁船拿捕あるいは沈没のために基本的な問題を打ち切る考えはないという意味交渉を続けるつもりだということを申し上げたと私は考えておるのでございます。ただ、あまり感情を露骨に出してもいかぬが、しかし、感情もやはり政治としては取り入れざるを得ないというような関係でございまして、ああいったような事件が起こって両国の間にかなり感情的に先鋭化しておる時期におきましては、やはりしばらく交渉の進捗というものが自然阻止される、そういう事情にあることは認めざるを得ないと思うのであります。
  81. 穗積七郎

    穗積委員 委員長、さっき言ったようなわけで、はなはだこま切れになってしまって、いまの答弁は不十分で満足できないものがありますけれども、臼井長官の都合もあるからここで一ぺんかわりますから、あとでまた……。
  82. 安藤覺

    安藤委員長代理 戸叶里子君。
  83. 戸叶里子

    戸叶委員 御承知のように、私たち社会党の八人の沖繩調査団がゆうべおそく帰ってまいりました。私たちは三班に分かれまして沖繩の人たちといろいろと懇談をしたり、また調査をいたしてまいりました。その調査に基づいてのいろいろ政府質問をしたいことは、いずれ十分な時間をとりまして、それぞれの方々が専門的な立場から質問をすることにしたいと思います。きょうは臼井総務長官におおまかな点だけ四点ほど伺いたいと思います。  まず第一に、臼井長官も沖繩を訪問されましたが、私ども最も深く感じられましたことは、実業界の大御所から末端の人に至るまで、だれでもがいま望んでいることは施政権の返還であり、そしてまた祖国への復帰、これがまた多くの人たちのだれでもが願っておる願いだと思います。長官がたまたまいらっしゃったときも、おそらくそういうことはいろいろと聞かれたと思いますけれども、ちょうど長官のいらっしゃった当時、立法院におきましては、この自治権の拡大あるいは主席公選、こういうことが立法院の超党派的な議決としてきめられたときだと思いますけれども、当然のことだと私ども考える。主席の公選などということは、初めは主席公選が行なわれていて、中断をいたしましたけれども、近い機会に公選をするのだという約束もあったという、そういう立場から見れば、当然これは支持すべきことだと私たちは考え、またそうしなければならないと思いますけれども、長官はこの点についてどういうふうにお考えになりますか。
  84. 臼井莊一

    ○臼井説明員 ただいま戸叶委員お話のように、沖繩住民あげてすみやかに施政権が返還されるように熱望をいたしておることは事実でございます。また、私のまいりましたときにも、各方面からそういう強い要望が述べられた次第でございます。これはひとり沖繩の住民ばかりではございません。日本本土におきましても、当国会においてもやはりしばしばその返還に対する要望の決議も行なわれ、また日本国民の全体の希望である、かように考えておる次第でございます。ただ、施政権の返還という問題に関しましては、非常に高度の政治性に基づく問題でございますので、私といたしましては、あちらへまいりまして、すでにワトソン高等弁務官もそういう趣旨は御存じのようでございますが、私としてそれについて特に話し合った、こういうことは、その点までは及んでおりません。
  85. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの施政権の問題について特に話し合ったということがなかったということは、沖繩の住民の方々あるいは日本本土の者としてもまことに残念だと思います。そういうふうな機会にこそ当然話すべきではなかったかということを私は申し上げたいのですが、その問題はちょっとあとにおきまして、先ほど私が申し上げました、いま問題になっておりますところのこの自治権の拡大、そして主席の公選、この問題についてはどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  86. 臼井莊一

    ○臼井説明員 自治権の拡大は、もとよりわれわれも希望するところでございまするし、また沖繩の住民もこれを強く要望いたしております。ただ、残念なことには、目下沖繩の政情がきわめて不安定な状況にございます。したがいまして、われわれとして、まず日米間の相互の理解と信頼を深めることが、そういう要望を強くする上においても必要でございます。現在のところは遺憾ながらその基礎条件が十分整っていないのが沖繩の施政上の状態であります。そこで、私どもとしては、沖繩の政情が一日もすみやかに安定して、そしてアメリカ側においても自治権の拡大をしてもいささかも心配ない、こういうようになることが先決の条件だ、かように考えております。
  87. 戸叶里子

    戸叶委員 沖繩の政情が安定して、自治権の拡大ができるようにするのが先決問題だということですが、一体なぜできないかということとをお考えになりましたか。なぜできないかといえば、たとえば立法院等ではっきりと主席公選ということが打ち出されておりながら、それを実施できないようなところに、何ものかが入るから、そこで沖繩の政情が安定しないのだ、これが私は正しいと思うのですけれども、そうじゃなくて、何かごたごたしているから主席の公選もできないんだ、こういうふうにお考えになるのですか。
  88. 臼井莊一

    ○臼井説明員 私の判断ではそういうふうに考えます。もっとも、自治権の拡大のうちでも主席の公選というような問題につきましては、やはり沖繩の高等弁務官だけでは決定できないことのようで、もちろん、いろいろな意見は当然これについて持たれて、本国政府とも連絡をとられることとは存じますけれども、やはり、本国政府のほうの政治的な解釈と判断、さらに決定に基づくもののように承知いたしておりますので、したがいまして、ただいま申し上げましたように、私どもはあちらでいろいろ政情を調べ、また高等弁務官と話し合った限りにおきましては、いま申し上げたように、まず沖繩の政情が安定して、アメリカ側が自治権の拡大を広げていってもいささかも心配がないという、そういう信頼感を与えることがまず先決の条件だ、こう解釈をいたしております。
  89. 戸叶里子

    戸叶委員 長官も御存じのように、主席の公選の問題は立法院で超党派で決議されたことです。議決されたことです。いやしくもその一つの議会で超党派的に全会一致で議決されたものが守られないということは、私は非常に議会の権威を失墜するものだと思うのです。そういう意味から申しまして、沖繩県民の総意としてきめられた主席公選さえも何かじゃまをされるというようなことになりますと、ますます政情は不安定になると私は思うのです。政情の安定にならない理由というものを考え、安定にならない理由をなくさないでおいて、政情が不安定だから何とか安定してからなんと言っていたら、いつまでたっても安定しないと思うのです。やはり沖繩県民の要望していることが議会の決議となってあらわれたものですから、そのことぐらいは当然実施さるべきであり、すべきであるというふうに長官としては当然お考えになるべきだと思うのですけれども、もう一度その辺のお考えを伺いたいと思います。
  90. 臼井莊一

    ○臼井説明員 沖繩の政情が最近ことに不安定を来たした原因についてはいろいろあると思いますが、一つは確かに、前高等弁務官が、極端に言えばあまりに施政権の権利のほうに重点を置いて、やはり議会の意向というものについてあまりに耳を傾けなかったという点ばかりでなく、何か事を急ぎ過ぎて、議会で決定する前に、急を要する、こう判断をいたしたものとは存じますけれども、これをあまりに急ぎ過ぎ布令・布告等を出し過ぎた、そこに不満が出てきたと思います。ちょうど私が長官に就任するときと前後いたしまして、キャラウエー前高等弁務官が今度新しくワトソン高等弁務官にかわりました。キャラウエーさんにつきましては、私は十分承知いたしておりますが、仕事に非常に御熱心な方だということは聞いております。その熱心なあまりに、やはり立法院の意に沿わないことがあり過ぎた、これにからんで自民党が分裂した、こういうことがおもな原因のようでございますが、いま申し上げたように、今度ワトソン高等弁務官になりましてからは、御自身がおっしゃっておりますように、沖繩の住民の多くの人の意見にも耳を傾け、また立法院の意見等も十分聞いて、そうしてできるだけの善処をしたいという方向へ進みつつございます。沖繩の政情も、私の判断では、逐次良好に向かいつつある、こういう判断をいたしておりますが、これは私、帰ってきてからそういう方向に非常に進んだようにも聞いておるわけでございます。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもが現地にまいりまして、主席公選ということは大きな県民の要望であって、当然このことくらいは達成されなければならない、私はこういうふうに考えるわけでございまして、いまの長官のお答えには満足いたしませんけれども、一度立法院で議決されたことが実施されないというようなことになりますと、議会の権威ということにも関係することでございますし、現地の人たちも非常にそのことを要望しておりますから、どうかその点のことを判断されて適当な措置をとっていただきたい、こういうことを考えます。  それから、それに関連いたしまして、長官も沖繩で、あるいは沖繩の特別委員会の責任者である床次さんがアメリカで発言されたということを聞いておりますけれども、施政権の問題と基地の問題とは分離してもいいんだというようなことを発言されたやに聞いております。しかし、私どもは、この施政権と基地撤去の問題というのは当然不可分の問題であると考えております。ただ、問題といたしまして、あした基地を撤去してもらう、あした施政権を返還してもらう、こういうことはできない。その段階においていろいろなことをしていかなければならないと思います。しかし、大目標というものは、不可分のものである、こう考えておりますけれども、長官はやはりこれは不可分というふうにお考えになっていられるかどうか、その点をもう一度確かめてみたいと思います。
  92. 臼井莊一

    ○臼井説明員 私が沖繩の立法院におきまして申し上げたことは、これは私個人個人的見解としてではございますけれども、沖縄を早期に返還をしてもらいたい、こういうたてまえからいたしますと、やはり、極東の情勢等の問題から考えましても、なかなか基地というものはそう簡単にアメリカ側でも手離すことができないであろう、したがいまして、まあ基地というものと施政権というものを切り離して、施政権をまず返していただくということが一つの方法であろう、こういうことを申し上げたわけでございます。ただ、これに関しましては、おそらくアメリカ側においては基地と施政権というものは少なくとも現在の段階においては一体と考えられておるようで、なかなかアメリカ側としてはこれは了解がしにくい問題であろう、こういうふうに申し上げたわけでございます。この考え方は私個人としてはいまでも持っておるわけでございます。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 いま総務長官のお考えというものが述べられたわけでございますが、このことは、高等弁務官に会ったときにも、はっきり不可分であるということは言われたわけです。私どもも施政権と基地がいますぐ返されるというようなことは思っておりませんけれども、しかし、それまでの段階として、いろいろな自治権の拡大、あるいは主席公選ということを行ないながらやっていくべきである、しかし、最終の目的は、やはり基地の撤去と施政権の返還ということは不可分である、こういうふうな形でいかなければならない、私どもはそういうふうに考えているのです。  そこで、その問題についてはまたの機会に聞くといたしまして、私がひとつぜひこの際考えていただきたいと思いますことは、この外務委員会では長い間施政権の返還問題について、沖縄問題が出るたびに議論をされました。そのつど各大臣質問いたしましたことは、一体そういうふうな政治的な問題について日本アメリカとの間でお話し合いをしましたかという質問が幾たびか繰り返されましたが、そのつどその当時の大臣が言われましたことは、話をいたしました、こう言われましたが、それでは一体いつどこでどういう形でされたかということになりますと、うやむやに過ごされてしまったわけです。そこで、何とかこの問題を政治的に話し合うような機会をつくるべきではないか、こういうことが幾たびかこの委員会でも論議されまして、そして、この一応の形として日米協議委員会というものが発表されたと私は思います。当時の発表は日米琉懇談会というようなものが生まれるのじゃないかというふうに発表され、私も、いよいよここで政治的な問題が話し合えるなと思って喜んでおりましたところが、一年もそのままもたもたしていて、今度生まれたのが日米協議委員会であり、そして日米琉の技術協議委員会、こういうふうな二つのものに分けられているわけですけれども、私は、当然、この日米協議委員会で、この政治的な問題、たとえば主席公選の問題が起きたり、あるいは国旗の事件が起きたり、あるいはそういったいろいろな政治問題というものが、その基本的な線がこの日米協議委員会で討議をされて、そして日米琉の技術委員会では予算の面、もちろん日米協議委員会予算の大ワクの面が取り扱われてもいいですけれども、同時に政治的な問題も取り扱われて、そして日米琉技術委員会ではこまかい細目にわたって討議をする、こういうふうな形をとられるべきであると考えるのです。そうでないならば、沖縄の人たちのいろいろな悩み、問題というものが直接アメリカ交渉されるようなそういう機関が私は何もないと思うのです。ですから、そういう問題を取り上げて日本政府アメリカ話し合いをするという、そういう内容のものに当然進めていくべきだと思いますけれども、この辺についての総務長官のお考えはいかがでございますか。
  94. 臼井莊一

    ○臼井説明員 昭和二十七年以来当国会におきましても五回ほど沖縄返還の要望の決議が行なわれました。そのつど政府においてもアメリカ側に国会の決議の意向も伝え、また、その後岸総理がアメリカに行かれた場合にもその話も出たように聞いております。さらに、一昨昨年池田総理がアメリカへまいりました際に、なくなられたケネディ大統領とこの点につきましていろいろお話をいたしました結果、共同声明が出されました。その際に、沖縄は日本の領土であり、沖縄の住民は日本国民である、ただ、まあ潜在主権があるけれども、施政権というものはアメリカにあるという、そういう趣旨の声明が発せられました。翌年の一昨年には、いわゆるケネディ新政策の中に、この沖縄に関するいま申し上げたような趣旨がさらにふえんされて、そして、その中に、一日もすみやかに、早く沖縄が日本に返還されるような世界の情勢とかあるいはことに極東の情勢がそうなることを望むと、こういうことの趣旨が述べられておりましたが、しかし、それまでの間にも、沖縄の住民の福祉の向上、民生の安定、こういうことについては日米協力して努力をしていきたいということで、それがために、日本側援助アメリカ側の援助も、経済援助においても当然やってきたわけでございますが、そこで、それを実行する上において、いまお話しの日米協議委員会がことしの春第一回が開かれました。六月に第二回が開かれたわけでございますが、したがいまして、この日米協議委員会は、沖縄の住民の民生安定と福祉の向上について、経済援助に関することが協議の中心でございました。いまお話しのような施政権の返還、自治権の特に拡大というようなことにつきましては、それ以上の政治性を有する問題として議題の中心にはならない、こういうふうに私ども承知いたしております。さらにまた、その援助額の総ワク等のことについて協議委員会で話し合った結果、こまかいことについては日米琉技術委員会で沖縄においてこれを実際上に協議をして実施をしていく、こういうふうに考えておりますので、いまお話しのようなあまり政治性の高度のものについては、日米協議委員会において話し合うという機会はなかろう、こう考えております。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、政治的な問題を話し合う機関というものは一体どこにあるのですか。私は実はワトソン高等弁務官にお会いしたときにもその問題を取り上げました。そうしたら、高等弁務官がおっしゃったのは、これは外交的なルートを通すべきであるから、日本政府アメリカ政府と話し合えばいいというようなことを言われたわけなんですが、その協議委員会の性質そのものですよ。そうだとするならば、これはアメリカがそういうものを取り上げようとは言わないと思うのです。日本が当然それを主張すべきであると思うのです。ですから、そういう意味で、臼井総務長官のほうからアメリカに対して、やはりこの委員会では政治的な問題も取り扱うようにしようじゃないかということを申し出ていただかなければ、いつまでたってもそういう機関がないと思うのです。したがって、そういう機関の内容を持ったものにしようとする御努力をこれからしていただきたいと思いますけれども、そのことについてはいかがでございますか。いま長官のお話しになったようなことは、私はよく存じ上げておりますけれども……。
  96. 臼井莊一

    ○臼井説明員 いまのような相当高度の政治的な問題につきましては、これはやはり外務省を通じてアメリカと外交折衝によって交渉すべき問題であろうと存じます。そういう問題につきましては外交ルートを通じてあらゆる機会にひとつ進めるように努力はしてまいりたい、こう考えております。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 協議委員会でもそれを扱えるようにという申し出をアメリカにしていただけませんですか。これだけをちょっと伺っておきたいです。
  98. 臼井莊一

    ○臼井説明員 その点につきましては、まだわれわれの内部で相談できておりませんので、御意見十分ひとつ考慮をいたしてみたいと思います。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 ぜひその点を考えていただきたいと思います。そうでないと、やはり政治的な問題を定期的に扱えるというようなことが——定期的といいましても非常に期間の間隔が長いですけれども、期間の間がありますけれども、それでも何かそういうもので扱えるのだということになりますと、ある程度その問題を無視されないということになるわけで、促進させるということになるわけですから、どうかそういう政治的な問題も話し合う機関にしていただきたいということをお願いしたいと思います。  そこで、この予算の問題なんですけれども、実際現地へ行ってみますと、前に行ったときと表面的には変わっておりましても、内容的には、底流に流れておる面では変わっておりません。ことに、社会施設、社会保障の面では非常におくれているわけで、これは当然日本が、戦争の最先端に立って苦労をされたという沖繩の方のためにやるべきだと思いますけれども、そこで、今度の予算関係で、二十六億という予算の線が一応話し合いに出たわけですけれども、現地としてはそれでは足りない。それに対して、消化能力がないんじゃないか、こういうようなことをアメリカが言われたというので、その実情をよく調べてみましたところが、たいへんに手続を必要とするわけです。年じゅう覚書をやりかわさなければならないとか、あるいはまた琉球政府できめたことを民政府相談して日本にいるアメリカ大使館の許可を得て、それから日本外務省を通してまた同じ形で戻っていくというような手続の問題あるいはまた会計年度の期間がアメリカ日本とが違う、アメリカは七月からとか、そういったいろいろな面で予算が実際にきめられるのはたいへんおそくなるわけです。そういうことで、実施する上においてはいろいろな不便がある。覚え書きを年じゅう取りかわさなければならない、こういうふうな問題があるわけですが、今度のお話し合い予算の増額ということはおきめになりましたかどうですかということが一つ。もう一つの問題は、日米琉技術委員会というものができたのですから、その予算を実際にきめる上において、やたらに覚え書きを取りかわすとか、そしてまたあっちこっち回すとかいうような手数を省いて、その機関で全部やれるのかどうか。この問題を伺いたいと思います。
  100. 臼井莊一

    ○臼井説明員 予算援助のうちのアメリカ側から出されました要請額は、いま仰せのとおり二十六億五千七百一万六千円でございます。これにつきまして、増額についてさらに考えるかというような御質問だと思いますが、いまお話しのように、アメリカ側としても、ただ額ばかりふやしても消化し切れないのじゃないか、したがって、消化能力というものを考えて増額を決定しないといかぬということで、実は、この内容につきまして、はたしてこれがわれわれの考えている内容に適しているかどうかということを、ただいま事務当局でいろいろ仕分けしまして、こまかく分類して調べております。その上で増額が必要とわれわれが考えることについては、さらに協議委員会のほうにかけて、アメリカ側に要請したいと考えております。ただ、いまお話しの消化能力の問題で、昭和三十八年度の予算もまだ進行中ですし、三十九年度の予算どもきわめて少なく消化されている。そこで、私どもとしては、三十八年度の予算は少なくとも本年度中に消化するように、三十九年度の予算についても大半をやはり本年度中に消化してもらいたい。いまお話しのように、予算年度は日本の四月とアメリカの七月とは食い違いがありますから、たとえばこれが三〇%にいくかどうかは別として、ある程度繰り越されるというのは自然やむを得ないと思いますが、しかし、やはり相当消化してもらわないと、アメリカ側の言う消化能力という点もございますので、したがって、できるだけ近い機会に日米琉技術委員会を開いてもらって、三十八年度、さらに三十九年度の消化の見込み状態がどうであるかというめどをつけてもらう、さらにこれをもっと促進してもらうような会議を技術委員会で開いてもらって、その結果を待って、確かにこれくらいは消化できるのじゃないかという点が出た点につきましては、必要な額については、もっと増加すべきものがあれば増加を要請したい、こう考えております。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 増額されるというお考えのあることを伺いまして、たいへんいいと思うのですけれども、いまの消化の問題ですが、私がさっき申し上げましたようないろいろな不備な点、手続のややこしい点があるわけですから、この点をもっと積極的にお話し合いになっていただきたい、こういうふうに考えるわけです。  問題は、向こうに行って聞いてみますと、一体琉球政府態度が弱腰なのか、あるいはまた民政府あるいはアメリカの軍のほうの圧力が強いのか、日本政府が一体どういう態度で臨んでいるのか、こういうことが非常にわからないような状態になっているわけです。問題は、日本政府自体の沖繩問題に対する取り組み方という、その態度が私は一番大事だと思います。その点について一点だけ外務大臣にお伺いしたいのですが。一体外務大臣は沖繩問題についてはどういう取り組み方をされようとしているか、この基本的な方針だけ伺いたいと思います。
  102. 臼井莊一

    ○臼井説明員 ちょっとその前に、一つお答え漏れしている点がありましたが、いろいろ消化されない面については手続上の繁雑な点があるじゃないか、そういう点があるようにも聞いておりますので、そういう点もひとつ事務能率を琉球政府にもあげてもらう、アメリカ側にもできるだけこれを能率的にやっていただきたいということをわれわれのほうも申し入れてございます。この点については、渡航手続においても同様でありまして、渡航手続につきましては最近非常に改善されてまいりましたので、これらも逐次改善される、こう考えております。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 最後に臼井総務長官と外務大臣の両方に基本的な線をもう一つ伺いたいのですが、やはり沖繩の問題は超党派的な問題として解決していかなければ解決できないと思うのです。そこで、国会に当然特別委員会のようなものを設けて、そして十分審議をしていくべきではないかと思いますけれども、この点について総務長官のお考えはどうか、それをつくるための協力なりあるいは助言なりをしていただけるかどうかということが一つ。また、その点についての外務大臣のお考えと、日本の沖繩問題に取り組む姿勢、この問題も伺いたいと思います。
  104. 臼井莊一

    ○臼井説明員 その問題につきましては、私仄聞いたしますのに、何らかの国会においての問答の際に総理に対してそういう御質問があった際に、総理はいまのところそういう考えはないというようなことのようでございましたので、私としても、いまの点はそうお答え申し上げるよりしかたがないと思います。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは国会においてきめる問題でございますが、いずれにいたしましても、外務委員会においてこの問題が熱心に提起をされたということは、伝えたいと思います。
  106. 戸叶里子

    戸叶委員 もう私時間がないからやめますけれども、次の機会にゆっくり他の議員等ともやりますけれども、ただいまの御答弁は私は満足できません。たとえば、池田総理にそういうお考えがなくても、臼井総務長官は担当者として、しかも現地を見ていらっしゃったのですから、その超党派の委員会をつくるくらいの御熱意があってもしかるべきだと思う。総理がそうだからだめだというようなお考えはぜひなくしていただきたいと思いますけれども、この点を要望します。  それから、外務大臣は、外務委員会でそういうことをきめてくれるのだということですけれども、外交の姿勢というものは、やはり外務大臣がはっきりさせるべきであって、いまのような逃げ答弁をされるのでは、私は満足できません。アメリカの沖繩に対する考え方、あるいは沖繩問題をどう扱うか、そういう姿勢について一言だけ伺っておきたいと思います。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基地と施政権とは不可分であるということを言われておりますけれども、これはやはり段階をもって考える余地が多分にあると思います。でございますから、そういったような目標のもとに、やはりまず手元から、自治権の拡大から順次推進してまいるべきものと考えております。
  108. 臼井莊一

    ○臼井説明員 先ほどの戸叶先生の事務手続の問題でちょっと申し上げておきますが、これは改善されまして、従来は経済援助に関する事務手続が米民政府からアメリカ大使館、外務省を通じて特連局、総理府のほうに来たのでございますが、これが、中間を略しまして、米民政府から直接特連局のほうにまいりますから、そのことだけを申し上げておきます。
  109. 安藤覺

    安藤委員長代理 次に、岡田春夫君。
  110. 岡田春夫

    岡田委員 外務大臣が退席されては困ります。一問だけでいいのですから……。
  111. 安藤覺

    安藤委員長代理 これは理事会できめたことですから、そしてその問無理をして引っぱり出しているのですから、それが続いて二分三分ならやむを得ないが、人がかわるのなら、もうしかたないでしょう。
  112. 岡田春夫

    岡田委員 きょうの理事会がどういうことになっておったのか、その点をまず伺いたいと思います。
  113. 安藤覺

    安藤委員長代理 きょうの理事会におきましては、質問者は鯨岡兵輔君、穗積七郎君、戸叶里子君、永末英一君、川上貫一君のこの順位で質問をいたすことにいたしておりました。しこうして、この間外務大臣は十二時をもって退席されるという御了承を得ておりました。若干の時間の余裕を求めたのでありますが、どうしてもそれができないということでありますので、この点をかたく理事会において皆さま方にお願いして、御了承をいただいておったはずであります。しかるところ、その後において岡田春夫君が質疑の要求をいたされまして、たまたま戸叶里子さんのあと岡田さんが入られることになり、その時限においてちょうど正午と相なりましたので、外務大臣にやむを得ず退席をせられることにいたしたわけであります。この点御了承ください。それで、外務大臣を除くところの質問を御続行願いたいと思います。
  114. 岡田春夫

    岡田委員 外務大臣に対する質問を続行せいと言ってもいないじゃないですか。いない人にやれと言っても、できない。
  115. 安藤覺

    安藤委員長代理 外務大臣に対する質問を続行してくださいとは申しておりません。
  116. 岡田春夫

    岡田委員 そこで、理事会で発言の順序をきめるというようなことは、いままで、順序として政党の順序はきめるけれども、社会党の中の順序は理事会ではきめていないはずであります。私は理事を何回もやっておりますからよく知っております。
  117. 安藤覺

    安藤委員長代理 それは、党にお帰りになりまして、党の理事さんとよく御相談ください。私は、その点は、党の理事さんの御意見を代表としてここに受け取って編成したものでございます。
  118. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの問題ですが、委員会を運営することについて理事会でいろいろ協議するわけですけれども、その場合に、自民党のほうでどなたがする、社会党のほうではだれがするということは、一応そこの話にはのぼりますけれども、しかも、その時間のワク内で党のだれがしてもいいと私は思うわけです。そういう含みを持って臨んでいるわけです。きょうは、外務大臣に対する質問について、鯨岡さんが大体三十分か四十分というお話でございましたから、三十分か四十分程度で済むものと思いましたけれども質問をされて一時間五分くらいやられたわけです。そのあとへ今度は穂積さんが来れば、そのしわ寄せがどうしても次に来るわけです。岡田さんがどうしても外務大臣に一問だけしたい、あとあとの機会でもいいということでしたから、私も一生懸命時計を見ながら急ぎに急いで汗を流しながら質問したわけですけれども、ちょっと一問くらいのゆとりは持っていただけるというふうな考え方で実はやめたわけです。その辺の運営のしかたは、いまの委員長のおっしゃるのはどうも私は不公平ではないかというふうに思います。
  119. 安藤覺

    安藤委員長代理 お答えいたしましょう。  社会党の方々の御質疑の順序につきましては皆さま方におまかせいたしまして、穂積先生が自己の時間をつぶして戸叶先生にお譲りになり、そしてまたあなたにお譲りになっておられまして、その間委員長としては何らの干渉がましいことも申しておりません。おまかせいたしております。どうぞひとつお続けください。
  120. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、外務大臣に関することはあとに留保いたしまして別途にやります。ただ、委員長に申し上げておきますが、いまここで、私的ではございましたけれども、あなたの党の国会対策委員長の佐々木君と、十二時を少々過ぎてもいいのだという了解を実はしておったわけであります。あなたは御存じないから、きわめて事務的に外務省に協力する意味でなさったのだろうと思いますけれども、その点はとやかく私は言いません。だから、あと外務大臣が来ましたときにまたあらためてやります。  そこで、条約局長に伺います。私の質問の要点は、きのうの予算委員会質問の続きでありまして、したがいまして、外務省の答弁がきわめて不満足である、そういう点で質問を続行するわけであります。あなたのほうの御答弁がなかなか満足できない場合には相当時間をかけるかもしれませんから、御了解いただきたいと思います。  そこで、その問題点は幾つかございますが、きょうは一点だけにしておきます。事前協議条項と核兵器の持ち込み問題であります。  まず第一点は、事前協議というようなあのような条項が、ほかの国その他の場合において、日本においてもそのような事例が先例としてございますかどうですか。
  121. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 はっきり記憶いたしておりませんが、その当時調査したところでは、たしかイギリスについてあったように覚えております。
  122. 岡田春夫

    岡田委員 そのイギリスの場合というのは、核兵器の持ち込みの事前協議条項ですか。
  123. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 核兵器持ち込みではありませんが、何か核兵器に関したことであったと思いますが、はっきり記憶しておりません。
  124. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、ひとつあとでお調べを願って、資料として御提出願いたいと思います。  それから、日米安保条約並びに交換公文あるいはそれに関連する岸・アイク共同コミュニケその他のものでもよいのですが、いわゆる日本の防衛関係、こういうことに関する条約の中で、原子兵器という文言を使ったそのような条文上の規定がございますかどうですか。
  125. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私の承知いたしております限りでは、ないと思います。
  126. 岡田春夫

    岡田委員 日本の防衛関係の条約の一切の中には、原子兵器という規定は実はないわけであります。  それから、もう一つは、交換公文の事前協議条項の規定の中で、この前松井誠君が質問したことに対する答弁でありますが、装備の重要な変更という解釈の問題として、核兵器に関連する三つのことについては、これは話し合いができておる、了解事項になっておる、この点はしかし明文上そういうものが規定されたものではない、日本アメリカ当局の間の了解事項であります。この当局という意味は何でありますか。その了解という形はどういう形で行なわれましたか。その点を伺いたい。
  127. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 重要な装備の変更ということばが抽象的なものでございますから、したがって、これは実は核兵器の持ち込みのことである、その点ははっきり了解されておるわけでございます。さらに、それでは核兵器とは何ぞやということで、これは核弾頭はもちろん問題なく核兵器、それから核専用のミサイル、もっと具体的に言えば中長距離ミサイルというものは核兵器、それからミサイル発射基地はどうか、前もってそういうものを用意しておくことは、やはり核兵器持ち込みがいけないのだったらそれもいけない、そういうふうに、核兵器の持ち込みは事前協議にかかるということから、自然そういうふうに三つが出てきたわけであります。それが交渉の際の両政府当局間の意見の一致したところでございます。
  128. 岡田春夫

    岡田委員 その両当局とおっしゃるのはだれのことを言うのですか。しかも、そういう重要な装備は核兵器であるというようなことは文章上ないのだ。しかも、一体だれがアメリカのだれとそういう了解というか話し合いをやったのですか。そこら辺がはっきりしない。しかも、この点については、私きょうはできるだけ時間を倹約して、やりませんけれども、兼松参事官は、交渉の過程について了解したのでありまして、そのような文書はございませんと言っている。しかも、松井君が、六条の実施に関する交換公文の問題があるのではないか、あるいはその議事録があるのではないかと聞いたら、議事録さえございませんと言っておるわけです。それは事実ですか。まず第一に伺っておきましょう。
  129. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 核兵器についてはございません。沖繩について合意議事録があることは御存じのとおりであります。  それから、具体的にだれとだれの間かというお聞きでございますが、これは、はっきり申せば、当時の藤山外務大臣とマッカーサー大使交渉に当たられました。しかし、これは別に個人としてやられたわけではございませんで、外務大臣として、アメリカの駐日大使としてやったわけでございますから、はっきり両政府間の合意になっておるわけでございます。
  130. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、そういうことを文章としては明記しないということを了解するという、藤山外務大臣大使との間の了解事項に対する文書の交換もないのですか。
  131. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 そういうものは全然ございません。
  132. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、文章上のことは一切ないのですね。
  133. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 公表している以外のものはございません。
  134. 岡田春夫

    岡田委員 わかりました。それでは、文章上のものがないとするならば、少なくとも文章に基づく両者間の合意がないわけですから、法的な拘束力はございませんね。
  135. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 つまり、重要な装備の変更といいます場合には、これはいろんな解釈ができるわけでございますが、しかし、いままで核兵器を持っていないものが持つようになった場合に、それが重要な装備の変更に当たらないということはあり得ないので、これこそ一番重要な装備の変更でございますから、そういう御懸念は要らないと思うのでございます。これは、たとえば、いま軽機関銃しか持っていないのが重機関銃を持ったら重要な装備の変更かといえば、それは問題になる余地はありますのでしょうが、核兵器についてはその御懸念は要らないのじゃないかと思います。
  136. 岡田春夫

    岡田委員 じゃ、重要な装備イコール核兵器、こういうことですね。それじゃ、デービークロケットの場合どうですか。
  137. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私はあまり技術的なことは知りませんが、核兵器についてお互いに了解したことはさっきの三点であるということでございます。
  138. 岡田春夫

    岡田委員 デービークロケットというのは核兵器ですが、戦術兵器です。装備の重要な変更とアメリカでは考えておらないのです。こういうものはどういうようになりますか。
  139. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私どもが了解しておるところでは、戦術とか戦略とかいう観念ではなくて、先ほど申し上げたような観念のしかたをしております。
  140. 岡田春夫

    岡田委員 もう一度念を押しておきますが、文章上の規定がないとするならば、法的な拘束力がないというのは、少なくとも国際法上間違いないわけですね。私は、重要な装備イコール核兵器でございますなどという解釈は了解しません。今度は、いわゆる条約局長として、それじゃ、文章がなくても法的拘束力があるのだとおっしゃるなら一そういう先例をひとつお示しいただきたい。
  141. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 これは条約の解釈に関することでございますが、もしお互いの間の了解というものが協定の文言を越えてそれ以上の範囲について了解しているのだったら、御懸念のような点は確かにあるかもしれません。しかしながら、これは、その協定の一番肝心なところだけをしぼっておる、協定で完全に文言上カバーされておることでございますから、その御懸念は要らないのじゃないかということを申し上げておるわけでございまして、したがって、重要な装備の変更ということは、もうはっきりした、法律的に問題にならない文章にある合意でございますから、口頭だからどうだという御懸念はこの場合については少なくとも要らないのじゃないかということを先ほどから申し上げておるわけでございます。
  142. 岡田春夫

    岡田委員 そういう御答弁では、条約局長の御答弁としては私は受け取りません。条約解釈として一般的に伺った場合に、了解事項で、文章上の合意がなくて法的拘束力があるという御解釈は、どういう条約の本に書いてあるか知らぬけれども、私はどうしても一般論としてそういうことはわかりません。それに、第一、あなた自身はだれから聞いたのですか。事前協議がそれであるということは、あなた自身はだれから聞いたか知らないが、それについてあなたは、あなたが聞いておったアメリカとの考え方に違いはないという、そういう確かめ方をしたのでありますか。あなたの場合はまだいいですよ。これから十年間、あと七年もあるのだ。局長、あなたは七年間続けるわけじゃないでしょう。こうやってかわっていった場合、どうするのですか。これは重大な問題ですよ。こういうごまかしでは私は了解いたしません。  それから、先ほどから終始一貫して、法的拘束力がないということについて、法的拘束力があるのだとはおっしゃっておらない。御心配はございませんと言うだけであります。これは条約云々の問題じゃないようです。これだけ言っていてもしようがないから、もっと進めます。  最後は、椎名さんは、もう結局は信頼以外にないのだ、こういうことを言いましたね。結局そういうことになるんでしょう。結局、法的拘束力はないのだけれども、信頼以外にないのだということですね。
  143. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私事にわたりますけれども、私はこの条約の交渉には初めから終わりまで関係いたしておりましたので、いま申し上げていることは間違いないのでございます。  それから、大臣が、結局信頼関係にたよるほかないとおっしゃいましたのは、これは法的拘束力の関連でおっしゃっているのではないのでございます。法的拘束力があるこういうりっぱなものがありながら、それをこっそり破るようなことは絶対にしないと思う、そこを信頼関係で御説明になっているので、法的拘束力を疑ってそうおっしゃっているわけではないわけです。
  144. 岡田春夫

    岡田委員 あなたは再三おっしゃっていますが、それじゃ法的拘束力があるとおっしゃるのですか。そこは私はあまり詰めないつもりで言っているのですが、一般的に、条約上、文章上の合意なくして、了解だけで法的拘束力があるのですか。そんなことはあなたあまりこだわらなくったってわかっておりますよ。そこの点、法的拘束力があるとおっしゃるなら、ひとつその根拠も明確にしていただきたい。それから、そういう先例があるなら、ひとつその先例も明らかにしていただきたい。
  145. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 国家間の合意は、必ずしも文書によらないでも国際的に拘束力がある。これは国際法の本に書いてあることでありますから、私がここであらためて申し上げるまでもありません。しかし、そういう国際法の一般論によらないでも、この場合にはりっぱな第六条に基づく事前協議に関する交換公文というものがございまして、その文言からいいましても、核兵器の持ち込みなどを十分カバーし得るような、装備の重要な変更については事前協議をするという字句があるのでございますから、そこの点を御懸念は要らないと申し上げているので、御懸念が要らないというのは、法的拘束力がないからそういう説明のしかたをしているわけではないわけでございます。
  146. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ逆に伺いますが、核兵器の持ち込み云々ということを明文上そこに明記して何らかの条約上支障がございますか。
  147. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 条約上支障があるということはないと思います。
  148. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、なぜしないのです。そうしたほうが明確になっていいじゃないですか。あなた方がかねがねおっしゃっておるように、核兵器の持ち込みが事前協議の対象になるということを再三おっしゃるのならば、こんなに私が言ったりあなたが疑われたりする前に、書いたほうがいいじゃないですか。いまやったっていいですよ。いまおやりになったらどうです。
  149. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 御意見として伺っておきたいと思いますが、私の立場は、これで差しつかえないということでございます。
  150. 岡田春夫

    岡田委員 それは非常に問題があります。そこで、この点はまだ私は了解いたしませんが、きょうはこればかりじゃありません。もっと進みます。  昨日のあなたの御答弁に関連してですが、まず第一点、——原子力局長はお見えでございますか。サブロックというのはアメリカ原子力法の適用を受けますか。
  151. 村田浩

    ○村田説明員 御承知のとおり、私どものほうは国内におきます原子力の研究・開発及び利用に関連しまして内外の調査をいたしておりますが、そういう観点から、外国におきます核兵器については調査いたしておりませんので、御答弁いたしかねます。
  152. 岡田春夫

    岡田委員 あなたのほうでお出しになった「科学技術庁原子力局、昭和三十九年九月一日、千九百五十四年合衆国原子力法(仮訳)」というのがございますね。これはあなたのほうですね。
  153. 村田浩

    ○村田説明員 私どものほうで部内業務用の資料としまして仮訳をいたしたものでございます。
  154. 岡田春夫

    岡田委員 それでは伺いますが、十一条の定義の中で、dに「原子兵器」というのがございます。この「原子兵器」の中にはサブロックは含んでおりますか、含んでおりませんか。
  155. 村田浩

    ○村田説明員 核兵器につきましてのアメリカの定義の解釈につきましては、私のほうの所管ではないと思いますので、御答弁は許していただきます。
  156. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、この原子力法というものをお訳しになったのはあなたのところですね。部内資料。この「原子兵器」というものは、読んでみましょうか。「原子力を利用する装置で、その主たる目的が、兵器、兵器の原型または兵器の試験装置としての使用またはそれらの開発にあるものをいう。」、この中でサブロックは違うのですか。どうなんですか。そういうこともあなたのほうの所管外だからこの条項についての解釈はしないのですか。
  157. 村田浩

    ○村田説明員 そのとおりでございます。
  158. 岡田春夫

    岡田委員 どのとおり……。
  159. 村田浩

    ○村田説明員 私どものほうは、先ほど申し上げましたように、わが国の原子力平和利用の推進に関連しまして、部内業務用としましてアメリカの一九五四年原子力法を仮訳をいたしただけでございまして、その内容のうち私どもで必要なところをよく研究するためにつくったものでございます。したがって、関係のない部分につきまして、これを検討しあるいは解釈するというようなことは行なってもおりませんし、行なうべきでもないと思います。
  160. 岡田春夫

    岡田委員 しかし、どれが平和利用、どれが平和利用でないということを、それじゃどうやって区別するのですか。その場合に、あなたは当然ここの規定にある十一条の原子兵器というものはどういうものだという概念を持たないでどうやって区別するのですか。そんなつまらないことはよしましょうや。わかりきっていることじゃないですか。  それよりも、委員長に要求しておきますが、「千九百五十四年合衆国原子力法」という、これ非常に重要な法律ですが、ひとつ委員会の名のもとに参考資料として各委員に御配付を願うようにお願いいたします。  並びに、この仮訳ばかりでなくて、原文も配付するようにお願いいたします。
  161. 安藤覺

    安藤委員長代理 さっそく御要望のとおり取り計らうことにいたしましょう。
  162. 岡田春夫

    岡田委員 それでは、原子兵器の問題はそうおっしゃるならあれですが、今度はもう一度藤崎さんに伺います。  昨日、あなた、十一条の定義にあるWの「機密資料」、これは技術情報だけであるとおっしゃったが、それはどういうことでございますか。
  163. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 前後の関係からそう判断されるばかりでなく、この使ってあることばから言いましても、データなどとかいう字を使っておりまして、技術情報で間違いないと考えます。
  164. 岡田春夫

    岡田委員 そういうことをおっしゃらないほうがいいですな。技術情報だけだという明文上の規定は何もないじゃありませんか。  そこをそれじゃ具体的に伺いますが、あなたのおっしゃるとおりにあれしましょう。「(一)原子兵器の設計、製造」、これは技術かもしれませんね。それから、「(二)特殊核物質の生産」、「(三)エネルギーを生産するための」云云、これは確かにあなたのほうの技術の関係が主であるかもしれません。しかし、(一)の場合には、いま言った設計・製造といえども原子兵器ですね。しかも、そのあとの「利用」というのは、これはそれじゃ平和利用だけを意味しているのですか。
  165. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 ユーテリゼーションということばになっておるようでございます。核兵器の使用ということももちろんあると思います。
  166. 岡田春夫

    岡田委員 あるのですね。ここをはっきりしておきましょう。いわゆる核兵器の使用、すなわち軍事的な利用という意味でありましょうと思いますが、もう一度ここをはっきりしておきましょう。
  167. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 いまの使用ということば自体の意味で申し上げておるのでございますが、それはやはり前後の関係でわかってくることで、使用ということばは平和利用だけだというふうなことじゃないだろうと申し上げておるわけで、どこか具体的な条文をお示しになりましたら、そこではそれはどういう意味だろうというふうに私お答えできるかもしれません。
  168. 岡田春夫

    岡田委員 あなた御自身の答弁に矛盾があるじゃないですか。原子兵器を平和的に利用することがありますか。どうやって使うのですか。原子兵器を平和的にどうやって使うのですか。軍事的に使う以外ないじゃないですか。どうやって使うのですか。
  169. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 だから、原子兵器ということばがそばにあったら、それはもちろん平和的利用じゃないわけです。しかし、原子兵器ということばでない……(岡田委員「原子兵器の利用じゃないか」と呼ぶ)原子兵器の使用と書いてある場合には、それはもちろん原子兵器を戦争に使うことでございます。
  170. 岡田春夫

    岡田委員 だから、技術情報だけじゃないのですよ。原子兵器それ自体の技術的な情報の交換もあるでしょう。それは設計、製造、おっしゃるとおりですよ。そのあとの利用ということばの中には軍事的な使用も入るのです。入らないのですか。
  171. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 そこできのうの問題にも関連してくるわけでございますが、核兵器の使用という場合には、やはり、それをぶっぱなすといいますか、ことばがあれですけれども、そういうことが使用なのです。核兵器を装備することはそうは言わない。それは装備で、それは、核兵器の使用禁止とかいろいろことばはございますけれども、一般的に言って、使用というのはそういう意味には使われておらないと私は思います。
  172. 岡田春夫

    岡田委員 それはあなたのかってな解釈なので、それは私いま十一条だけしか言わなかったのですが、百四十二条のd項をごらんください。はっきり、「原子兵器の軍事的利用」と書いてありますよ。したがって、十一条の「利用」というのは、軍事的利用の問題です。装備ももちろん利用の問題に含まれるでしょう。持ち込みも当然ですね。持ち込みという概念も軍事的利用に含まれるでしょう。そういうことになるのじゃありませんか。含まれないとおっしゃるなら、その含まれない論拠をこの条文の中でひとつおさがしになって明確に御答弁願いたい。あなた条約局長なんだから、法律上はっきり言ってもらわないと、私のほうが条約問題をやって、あなたのほうが政治判断だけ言われたのじゃ、話にならないでしょう。
  173. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私はそう何でもアメリカの国内法まですみからすみまで知っておるわけじゃございませんので、それは御容赦いただきたいのですが、しかし、とにかく、きのうの岡田先生の御論旨は、事前協議の制度があってもこの法律でアメリカの軍人は積んでおることを日本政府には言えないのだから意味がないじゃないか、その軍人は死刑にされるじゃないか、そういう御論旨なので、おことばを返すようですが、そういう議論をされるのでしたら、この原子力法のどの条文にそれをはっきりしている条項があるかという挙証責任はむしろ先生のほうにあるのじゃないかと思います。私は、ざっとこの法律を読んだところでは、やはり技術情報というふうに解釈するのが至当ではないか、こう思うのです。
  174. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、私に挙証しろというなら、私がやりましょう。何だかさかさまになったですな。局長、きのうからやっているのだから、もう少し調べておいてくださいよ。そんなことでは困りますね。私が説明しますが、あなた質問するならしてもいいですよ。百四十四条で国際協力の規定があります。国際協力の規定のb項によって、「その国または地域防衛機構が国際取極めに従って合衆国と協力して相互防衛及び安全保障に実質的具体的に寄与している期間において大統領が協力案または提案された機密資料の通報が、国家の防衛と安全保障を増強し、これに不当な危険を与えないと決定した時にはいつでも、大統領は国防省に対し、委員会の助けにより外国または合衆国が加盟している地域防衛機構と協力し、かつ、当該国及び組織に次のことに必要な機密資料を通報する権限を与えることができる。」、そして、「(一)防衛計画の発展、(二)原子兵器及び原子力の他用事利用の雇傭者の訓練及びこれに対する防衛」、その他省略しましょう。これを見てあなたおわかりのように、大統領は国防省に対して委員会の助けによって次に必要な機密資料を通報する権限を与えることにはなっています。ところが、百二十三条によって、——読んでみます。「第五四条、第五七条、第六四条、第八二条、第九一条、第一〇三条、第一〇四条及び第一四四条による外国または地域防衛機構との協力は、次の条件を充すまではこれを実施してはならない。a、委員会または第九一条。項または第一四四条b項により締結される協力協定の場合において国防省は、協力協定案に対する勧告を添えて大統領に申請書を提出すること、かつ、その協定案の提案には、次の事項を含むものとする。(一)協力の条件、」、ここは省略します。「(二)協力協定において定められた機密保全とその基準とが維持される旨の協力当事国による保証」、(三)省略、「(四)協力協定において定められた場合を除き、協力協定により譲渡されるいかなる物質またはいかなる機密資料も、許可されない者あるいは協力当事国の管轄権外のものに対し譲渡せられない旨の協力当事国に保証」、訳が非常にまずいですが、だれがやったか知らぬけれども、条約局じゃないでしょう、きっと。ほかのところだろうと思います。「b、大統領が、協力協定案の実施を認可し、また協定案の履行が国家の防衛と安全保障を促進し、かつ、これに対して不当な危険を構成しないことを文書によって決定を行ったこと。」云々とありますね。先ほどあなたが私のきのうの質問を反駁されて発展させられたのでありますが、これによって、百二十三条に基づく協力協定の取りきめなしには機密資料の通報はあり得ないということは明確です。そこで、この機密資料の中に、あなたがおっしゃるように技術情報が入るのだということになれば技術情報は当然入る。技術情報にあらざる軍事利用の情報も、当然あなたの先ほどの御答弁から言うと入ることになります。したがって、この軍事的な利用の情報について、核兵器の持ち込みあるいは装備、これに関するものは含んでおらないということを、今度はあなたのほうが明らかに挙証していただかないと、この解釈では当然入るものとわれわれは解釈せざるを得ないわけです。  それでは、今度はあなたに挙証していただきたいのだが、核兵器の持ち込み並びに装備はこの中に含まないという何らかの——両国間における文書上の合意はないのだそうですか、しかし、原子力法にはこれは含まないという何らかのものがあるのでございますか。
  175. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 いま伺ったところでは、アメリカ政府がかりに日本に将来核兵器を持ち込もうとして事前協議をかけようとしても、それを国内法で妨げるというような条項がどんぴしゃりあるようにはどうも私受け取れませんでしたけれども、なおよく研究いたしたいと思います。
  176. 岡田春夫

    岡田委員 それじゃ、御参考までにもう一つ申し上げます。私意地の悪いつもりじゃないのですが、一ぺんに言っちゃって混乱をしちゃうといけないと思うので、一つ一つ申し上げるのですが、百四十二条をごらんください。百四十二条には、機密資料を解除して国防情報に留保するものがある。この国防情報こそがまさに私は核兵器の持ち込み、装備に関連する条項に該当していくのだと思います。この国防情報の関係をひとつお調べいただきたい。私はまだまだその点に関連して質問をしたいことがあるのです。たとえば、国防情報として指定されたものがはたして大統領以外に通報する権限が、あるのかないのかという問題もあるはずです。第七艦隊司令官が通報できるのかどうかという問題もあるはずです。これはその中に規定がありますよ。司令官がやれる場合はあり得るのです。ただし、司令官は、日本に対しては核兵器の問題を通報してもよろしいというアメリカの国内法上の手続がない限りはできないわけです。あなたがもし、司令官ができるのだとおっしゃるのならば、そこの点は明確にしてもらわないと困ります。アメリカの国内法の措置に従ってアメリカではこういう手続をしております。日本アメリカとの間の文書上の合意はございませんけれども、こういう点によっても明らかでありますという挙証をしてもらわないと困りますよ。そういう点を含めてひとつ御研究を願いたいと思います。今度原子力局の皆さんにも平和利用か軍事利用かの関連においてまたいろいろ伺っていく点もございますので、あまり長くやると私皆さんに御迷惑をかけますから、きょうはこれ以上やりませんけれども、全体としてひとつお調べください。しかし、これだけではないのです。原子力持ち込みを事前通告しないというのは原子力法だけではないはずですよ。そういう点も、条約局ですから、十分お調べをいただくことをお願いして、私の質問を終わります。
  177. 安藤覺

    安藤委員長代理 川上君、ごく短くやってください。
  178. 川上貫一

    ○川上委員 私は関連ですから条約局長に一点だけちょっとお伺いするんです。  事前協議という問題がいろいろに解釈されておるのです。また、これを非常にうまく活用されておるのですが、この前の委員会でも質問したのですけれどもアメリカの原子力法その他によって、原子兵器の所在位置は明らかにできない、これを明らかにしたら極刑に処せられることになっておると思うのです。そこで、原子兵器の持ち込みは事前協議をするのだ、ここが非常にあいまいな形になるのですが、これが実際できる場合はどういう場合でしょうか。たとえば、原子力潜水艦が原子兵器を持っておる、これが日本に寄港する、その時分に、この潜水艦は原子兵器を持っておるから云々という事前協議はできない。それから、第七艦隊のある一部が、まあ第七艦隊全部持っておると思うんだけれども、それは別にして、今度入る何々艦は原子兵器を持っておる、よろしいか、こういう事前協議はできない。これはアメリカの法律によってできない。所在位置が明らかになるから。そうするというと、原子兵器の持ち込みは前事協議をするというが、どういう場合があるか。ここでついでに、私は関連ですから繰り返して長く質問できませんが、アメリカ日本に対して全面的に原子兵器を持ち込んで原子兵器で在日米軍を武装するのだ、こういう一般的な場合のほかに原子兵器の持ち込みについて事前協議のできることがあり得るかどうか。この点だけ、具体的にこういう場合に事前協議があるということを言ってくださればいい。私はないと言っているのですから。
  179. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 現実問題といたしましては、日本は原子兵器の持ち込みについて事前に協議されてきても断わることはアメリカでももうよくわかっておりますから、事前協議をしてくることはないと思うのであります。ただ、理論上の問題としてお答えすれば、これは事前協議のこういう条文があるわけでございますから、これに従ってその持ち込みたいという前の相当な時期に事前協議してくるわけだろうと思います。
  180. 川上貫一

    ○川上委員 もう一問だけ。それは答弁にならぬのです。大体、初めから日本は反対するから持ってこぬのだ、これを前提にしてしまえば、事前協議という問題はもうなくなってしまう。持ってこぬ、これを前提にすれば。持ってくる時分には事前協議をするというのでこの交渉ができておるのでしょう。そうすれば、どういう時分に事前協議があるのか、事前協議するときはないのじゃないか、こういうことです。いまの条約局長の答弁では、これはちっとも明らかにならない。
  181. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 どうも私に質問されるのでそういう返事にならざるを得ないかと思うのですが、私は、実際問題としては事前協議をかけてこないだろう、しかし、理論上の問題として、この核兵器の持ち込みについて事前協議するのはこの持ち込みたい時期の相当期間前であろう、——適当な期間ですな。ただ、どういう場合に具体的にやるだろうか、どんなに極東があぶなくなったときにかとか、そういう点だと、どうも条約局長に向けて御質問になるのはちょっと適当じゃないんじゃなかろうか。もしそういう答弁を期待していらっしゃるならば、それは法律上別に定義づけるわけにいかないだろうと思います。
  182. 安藤覺

    安藤委員長代理 永末君。
  183. 永末英一

    ○永末委員 私は、ラオスの安定基金の問題と平和部隊の問題二点についてお尋ねしたいと思います。  先ほどの新聞紙上の発表によりますと、ラオスの安定基金の問題について、大蔵省が反対するからやめたんだ、こういう記事が載っておりましたが、この間の事情を明らかにしていただきたい。
  184. 西山昭

    ○西山説明員 ラオスの政府からは、同国の経済安定のために為替安定基金を設立いたしまして、日本もぜひ参加してほしい、こういう要望がかねてからございました。日本政府としましては、関係各省の間で、これの効果、これの必要性、その他鋭意検討中でございまして、まだ結論が出ていない状況でございます。
  185. 永末英一

    ○永末委員 外務省としては、方針は一応持っておられますか。
  186. 西山昭

    ○西山説明員 外務省事務当局といたしましては、ラオスの置かれておりまする国際的な環境その他を勘案いたしまして、やはり何ぶんの協力をいたしたい、こういう考えでおります。
  187. 永末英一

    ○永末委員 何ぶんのということですが、その規模等もおおよそ御計画になっておられますか。
  188. 西山昭

    ○西山説明員 それらの細目につきましては、まだ最終的な結論には達しておりません。
  189. 永末英一

    ○永末委員 その必要性の判断については、どの程度必要だと判断をしておられますか。ほかの省の反対があればやめてもいいんだという、こんな程度の態度か、それとも、ぜひこれを実現したいと外務省はお考えか、これを伺いたい。
  190. 西山昭

    ○西山説明員 事務当局といたしましては、極力実現いたしたいという気持ちでおります。
  191. 永末英一

    ○永末委員 これは政治判断にわたるようでございますから、外務大臣の出席される機会に私としてはこの問題をただしたいと思います。  平和部隊の問題に移ります。いわゆる平和部隊につきましては、本年度予算で各地に調査団が派遣をされました。いよいよ来年度の予算編成にあたって、この調査団の調査報告に基づいてどのように実施するかということをいま検討され、あるいはまた、すでに外務省としては予算の要求をしておられると思う。ところが、これまた、九月の中旬の新聞紙上に、本年度の平和部隊の派遣はやめた、こういうようなことが報道されましたが、その実情を明らかにしていただきたい。
  192. 西山昭

    ○西山説明員 いわゆる平和部隊につきましては、御承知のとおりに、日本といたしまして、青年を後進国に派遣いたしまして苦労をともにしながら経済建設、国家建設に協力をするという長所を考えまして、いかなる方式でやったら最も効果的であるか、また、はたしてやったほうがいいかどうかという基礎的な調査を行ないました上に、御指摘のとおりに、千五百万円の予算をもちまして、東南アジアに三班、アフリカに一班の調査団を六月に派遣いたしまして、その結果の報告を私どもは検討した次第でございます。その結論から申し上げますと、受け入れの後進国の各国は、異口同音に、非常な熱意をもちまして、技術協力の面の協力を要望いたしておりまして、必ずしもアメリカの平和部隊式のものを心から熱望しておるというわけでもないように見受けられます。もちろん、私どもとしましては、この種の計画を推進します場合には、アメリカ式の平和部隊にならったやり方をするとは初めから考えておりませず、日本としましてはどういうやり方がいいかという独自の案を検討したい、こういう考えを持っておりましたけれども、そのような結論でございますので、私どもとしましては、もちろん、この青年の後進国における共同の生活、そういうものの長所を大いに高く認めておるわけでございまして、しかしながら、これを現実に実施いたします場合にはどのような具体的な方法がいいかということにつきましては、調査団の結論等もあわせ考えまして、漸進的にかつじみな方法で始めたほうがいいのじゃないかというような考え方で、来年度の予算も要求しておる次第でございます。
  193. 永末英一

    ○永末委員 外務省としては、来年度は調査ではなくて実施をしたい、これで予算を要求しておられるわけですね。
  194. 西山昭

    ○西山説明員 来年度の予算の骨子は、非常に小規模に従来やっておりまする青年技術者の渡航というものと大体似たような角度から、これを若干規模をふやす形で要求をしておりまして、試験的にいろいろやってみまして、その結果、どういうぐあいにさらに検討し、あるいは充実していったらいいかというぐあいに進めたい、こう考えておるわけでございまして、なおまた、これを現実に実施いたします場合には、さらに実施の調査団を派遣いたしまして、受け入れ国と詳細にわたりまして了解を達成する必要があるかと考えておるわけでございます。
  195. 永末英一

    ○永末委員 先ほどからアメリカの平和部隊の話が出ましたが、ヨーロッパ各国でこれを実施し、もしくは実施しようとしておる国々のあることを御存じですか。
  196. 西山昭

    ○西山説明員 調査いたしております。
  197. 永末英一

    ○永末委員 この秋にアメリカの平和部隊の実施状況の調査をしに行く、こういう話があり、されたかどうか知りませんけれども、ヨーロッパ各国のこれらの問題に対する取り組み方は、その財政状況から見て、膨大な予算に裏打ちされたアメリカの平和部隊とは異なった形になっております。そういうことを調査しておると言われますけれども、ことしの調査団の派遣がアフリカ並びに東南アジアにばらまかれておる。しかも、その報告を見ましても、重点というものが一体どこに指向されるかということについて非常な疑問がある。アメリカの平和部隊のやっていることは見てこられたかもしれませんが、ヨーロッパ各国が行なおうとすることが一体どの程度参考にされて、いまおっしゃったような来年度の計画をしておるのか、この辺ひとつ伺いたい。
  198. 西山昭

    ○西山説明員 私ども、調査団を派遣いたしました前に予備的な調査を行ないまして、いわゆる平和部隊式な青少年を派遣しております各国、派遣国につきまして事情を聴取しますと同時に、受け入れ国のほうについても聴取いたしまして、相当予備的な基礎調査を行なった上に調査団を派遣したわけでございます。もちろん散発的に調査団を派遣いたしましたけれども日本といたしましては、基礎的な構想が固まっておりませず、また、基礎的な構想を固めるための予備的な調査団でありますので、具体的にこのケースこの  ケースにこうやるのだというような、あらかじめ予定された条件をもって調査団を派遣したわけでございませず、この調査団の結果を待ってわれわれは構想を考えよう、こういう前提でございましたので、若干、重点をどこに置くかというような点については総花的なうらみがあったかと思いますけれども、調査の性格から言って、ある程度やむを得なかったと思っております。  それから、来年度実施いたします予算がありまして、実施いたします前の先ほど申し上げました調査と申しますのは、今度は具体的に現実に人員を派遣します場合にどういうような相手国との了解あるいは取りきめをされ、どういうような形で実施するか、こういう現実的な調査でございまして、ことし派遣しました一般的な調査と異なった実施上の調査を私は申し上げた次第でございます。
  199. 永末英一

    ○永末委員 アフリカの事情を調査された場合には、デンマークやノルウェーが実施をしており、またしようとしていることについてのいろいろな御研究があったと思います。そういうことは御研究になりましたか。
  200. 西山昭

    ○西山説明員 私は一から十までこまかく申し上げる知識を現在持っておりませんけれども、各国におきましてその国に派遣されておりまするアメリカ以外の国の平和部隊の活動状況につきまして、在外公館と連絡してよく相手国政府とも話をしたと了解いたしております。
  201. 永末英一

    ○永末委員 アメリカの平和部隊の構想は、アメリカの全般的な一つの世界戦略の中で組まれておる計画である。したがって、その派遣される者の募集も、また訓練も、現地における役割も、違うわけであります。ヨーロッパ各国のほうはむしろ違う形でこれが行なわれる。特に社会主義政党の強力な推進のもとにこれが行なわれておるわけです。何もあなたに社会主義政党のことをやれと私は申しませんけれども、そのアメリカのやっていることの悪さ、悪いところというのは、大体現地へ行った調査団はみなよく見て帰っておると思う。それにもかかわらず、まだアメリカまで行ってアメリカの平和部隊の計画を調査しなければならぬですか。
  202. 西山昭

    ○西山説明員 私がたびたび申し上げましたように、日本としましては、日本事情に立脚しました特別の日本にふさわしい特殊の計画を考究したい、こう申し上げておるのでございまして、私どもは、アメリカのみならず、ほかの各国が後進国の経済開発に協力しておりまするいろいろな態様を客観的に調査いたしまして日本の活動に資したい、こう考えておるわけでございまして、私どもは、初めからアメリカと同じ方式でやるということは考えていない次第でございます。
  203. 永末英一

    ○永末委員 その最終的な見通し等がまだ固まっている段階ではないとは私は思いまするが、固まっていない段階において、いままで外務省がコロンボ・プランの延長としてやってまいった青年技術者計画、これをひとつふくらめてやろうと御決定になり、これに基づく予算を要求されるというのは、最初本年度予算においていわゆる平和部隊として調査団を派遣した趣旨とは大いに異なっている点が私はあると思う。この点についてはあなたはどうお考えになりますか。
  204. 西山昭

    ○西山説明員 調査団を派遣しますときのいろいろのかけ声といますか、いろいろの空気と若干違った結果になっておるかとも思いますけれども、私どもとしましては、長所があるものはあくまでも長所を生かしていきたい、しかし、国内の世論とかあるいは国内の空気とかいうものだけでこれを推進するわけにはまいりませず、相手国がある問題でありますし、また、相手国も後進国でなかなか微妙な心理的な状態にある国もございまして、そういうところを勘案いたしまして、最も適当な、最も現実的な方法で徐々に漸進的にやっていきたい、こういうぐあいに考えております。初めから日本式の平和部隊というものがスタートするという前提に立っておるわけではございませんが、私どもとしましては、その長所を生かしまして、後進国との協力に効果があるものは伸ばしていきたい、こう考えておるわけでございます。
  205. 永末英一

    ○永末委員 伺いますと、既存の青年技術者計画、これを強化拡大すれば足りるのであって、いわば鳴りもの入りでいわゆる平和部隊の創設をやろうとして調査団を派遣したが、しかし、その報告を聞いて、これはやめちまって、それで既存のものを拡大強化してやればいい、こういう結論に達したというお考えですか。
  206. 西山昭

    ○西山説明員 私どもはその辺の結論にはまだ達していないのでございまして、先ほどから申し上げますように、青年技術者というものが現実に各国に派遣されまして、数は少のうございますが、非常にアプリシエートされておりまして、私どもはさしあたりその式の方法でやります。ただし、国内的には、広く選考の基準を広げて、国内各層から適任者が集まりますような方法を考えてしかるべきではないか、こういうぐあいに考えておりますけれども、具体的な選考の方式その他につきましてはまだ検討中の段階でございまして、従来の青年技術者渡航を完全に同じと言い切るわけにはいかぬのじゃないか、こう考えております。
  207. 永末英一

    ○永末委員 それでは伺いますが、いままでの青年技術者計画では、ある時点に何人くらいの人間が行っておるのですか。ある職場ある部面にチームで行っておるのか、ぽつぽつと行っておるのか、どうですか。
  208. 西山昭

    ○西山説明員 現在におきましては、予算面では二十名以上の人員が確約されておりますが、現実には、予算の期間の問題その他がございまして、二十人全員は行っておりません。それから、二人で行っております場合もあれば、一人で行っておる場合もありまして、個々の状況によって違うような次第でございます。
  209. 永末英一

    ○永末委員 コロンボ・プランによって技術者も行っておる。それをふくらめた形で青年技術者が計画で行っておる。しかし、それは主として技術の指導援助をやるというので、個々ばらばらの形で行っておるわけです。これでは、いわゆる平和部隊を創設して一つの青年運動としてやっていこうという機運のもとに計画されたものとは全く違った発想のもとにつくられたものであって、これを少し人数をふやしてやろうということでは、当初の趣旨は全く私は失われてきておると思う。それなら、もうそれこそ、新聞報道したように、やめたんだということを言われても、これはしかたがないものであり、予算を要求したからこれを続けておりますということに私はならぬと思う。むしろ、いまの青年を派遣しようという考え方根本には、日本における青年の一つの考え方をこの一点で広げられるものがあれば広げようというのが発想の根拠だった。ただ日本が技術的に先進国であるから、ぽつぽつぽつとあちらこちら要請のあるところに送っていこうというのであれば、これはもう全然考え方が違うと思う。外務省は一体どっちの考え方で進めようとしておられるのか。
  210. 西山昭

    ○西山説明員 右か左かとはっきり割り切ることのできない要素が多分にございまして、私どもも、集団的にやってしかるべきところはやりたい、こう考えておりますけれども相手国関係もありまして、日本がこうきめたから相手国にこうやるのだという、押しつけてやるような性質のものではないと私は思っております。
  211. 永末英一

    ○永末委員 各国は各国の事情によって、あるところは漁業関係がほしいだろうし、あるところは技術者だけがほしいだろう。しかし、われわれがわが国として国民予算を使ってやろうとする場合には、一定のはっきりとした目標がなくてはならぬ。したがって、それぞれの技術者のほしいものには技術者を与えるいままでの計画はあるわけなんです。しかし、いやしくも平和部隊として打ち出した発想を完成させようとするなら、それにふさわしいわが国のほうの方針をまとめて、それを相手国相談をしながらやっていく、こういう発想でなくては、私は最初の計画はやはりなくなったと言わざるを得ないと思う。  そこで、一番大きな問題は、アメリカの平和部隊が失敗か成功か、いろいろ評価はございます。私どもは、成功ではなかったと思う。その一番大きな原因は、やはり、相手方の要求しておるものについて十分こたえ得ないような、いわばひとりよがりの派遣方法をとり、そうしてそれを個々ばらばらに派遣していったことにあったと思う。その誤りはあなた方もお認めになっていながら、今度は、後進諸国、新興諸国としては特に技術者の要請が強いものであるから、これを少し人数をふやしてぱらぱらとまけば、一応これで表面上は糊塗されるのではないか、こういう考え方では、せっかく起こった平和部隊を送ろうじゃないかという大波は消えてしまって、技術的な官僚的な行政措置だけが残る、こういうことになると私は思う。あなたはどうお考えですか。
  212. 西山昭

    ○西山説明員 アメリカの平和部隊につきまして私どもが調べた結果におきましては、何もかも悪いというのではございませず、長所も、受け入れ国は多分に認めておる点がございます。ただ、後進国としましては、何よりも、現状におきましては、日本から技術援助がほしい、技術の協力をしてもらいたい、青年が来られるのはけっこうでありますけれども、技術の裏づけもない人をよこしてもらうのではありがたさが足りない、ぜひとも技術の裏づけのある青年を派遣していただきたい、こういう要望が圧倒的に強いのでございまして、私どもはそれを実現する場合にどういうような形でやったら最も効果的かということを考えておりまして、初めのこういう規模で平和部隊をやるとかやらないとかいったことは、私ども白紙として考えておりまして、青年の特長を生かしたやり方をさらに検討していきたい、こういうぐあいに考えております。
  213. 永末英一

    ○永末委員 いまあなたは、白紙として考えてと、こういう御発言。ここらが問題だ。私どもは、一番あなた方に伺いたいのは、白紙ではいけない。やろうという運動なら、やろうとしてほしい。白紙に戻すのだったら、ことしの調査費は、だめだという結論を出すために調査団を派遣したということになる。これで終わりになってしまう。そうじゃないと思う。それは一年の計画でこれが実施できるかどうかむずかしい問題だとわれわれも最初から判断をしておった。そこで、先ほど言うたように、ヨーロッパ諸国は、日本政府があらかじめ考えたような大ぶろしきみたいなのは考えていない。やれるところからやろう、しかし、それは青年の運動としてやる、こう考えている。いまのあなたのお話のように、技術者を要求しているからやろうというのだったら、これは技術者派遣計画だ。何も青年でなくてもよろしい。ただ年が若い者でなくてはいけないからというだけの話になる。こんなものが国民予算を使って大いにやらなくてはならぬ問題かどうか。私は別問題だと思う。そういう点の考え方をはっきりまとめてもらわなければ、運動としてはこれは成功しないと思う。どうお考えですか。
  214. 西山昭

    ○西山説明員 私どもは、青年の強い運動というものが背後にありますことは、この計画を推進する上において非常に大きい力があると確信しております。しかしながら、運動というものと現実の計画というものとは、必ずしもそのまま両立するものではございません。各国の状況を見ておりましても、あるいは民間団体でやっておるところもありますれば、あるいは政府の規模でやっておるところもありまして、いろいろまちまちでございます。私どもとしては、日本としてどういうやり方が最もいいかということを鋭意検討しているところでございまして、さればといって、全く技術協力のみということは考えていないわけでございます。青年を派遣します場合に、もし技術協力だけなれば、現在のコロンボ・プランでガバーできるわけでございますけれども、青年を派遣いたしましてさらに後進国との関係を緊密にするという面からいきますと、いろいろの精神的な物理的な条件も考慮に入らなくてはなりませず、私どもは、単なる技術協力一点ばり、ただ大工さんがかんなで削ることを教えるということだけというぐあいには考えておりません。しかしながら、いろいろの精神面だけをあまりに表面に強調いたしますと、相手国との関係でやりにくい問題もある。こういう面もあわせて検討しておる次第でございます。
  215. 永末英一

    ○永末委員 いわゆる最初平和部隊をつくろうじゃないかということで起こった発想は白紙になっておるということは、ひとつこの機会に訂正をしておいていただきたい。一体、日本の若い者が、日本民族が東南アジアに対してどうやって一緒にこれらの諸民族と生きていくかという一つの手がかりとして、私どもの民社党はこれに替成をしてまいった。ところが、あなたのように、いままである予算上すでに計上されているものをふくらましていくという形で実施していくというのだったら、これは初めから問題は違うわけだ、そんな考えでばらばらと技術者を送ってみたところで、日本と東南アジアの各新興諸国との緊密な提携というものはできないと思う。この辺は、政治的な判断で、あなたがそれをされるか外務大臣がされるか、それは知らぬけれども、この辺は外務省としてはっきり目標を立てておいていただかなければ、ふらふらと予算を出されたからといって、これが国会の承認を得るとは私には思えない。私の主張したいのは、そういう一つの目標を持ってこれを日本の青年運動として持っていく。そのためにはやはり新しい団体をつくって持っていく。しかも、行く場合には、総花的にたくさんの国にいくのではなくて、まずでき得る実行可能なところに主力を注いで、初めは小規模でけっこうだ。それを成功させるように持っていくことを、外務省としては他の政府関係機関と協力して、これを一年、二年の間に成功さす。これができれば、あとの国にも広まっていくわけです。それを、いままでやってきたことを踏襲して、これをただ単に数量的に拡大するような方法では成功しない。いま申し上げました内容を含みながらひとつ御検討される意思があるかどうか、伺いたい。
  216. 西山昭

    ○西山説明員 いわゆる日本式の平和部隊というものは、具体的には基本的な調査をやってそれからきめようということでありまして、私どもはその背後にありますいろいろの推進される気持ちというものは十分に体得しておるつもりでございまして、単に機械等の技術の指導というのみならず、もう少し広い、青年が相手国の青年あるいは社会一般と密接に連絡して生まれる社会的・政治的な緊密性を加える効果というものは、私どもは大いに高く評価しておるわけでございます。しかしながら、現実の進め方といたしましてはそれだけでは動くものではございませんで、どうやったらそういうものが徐徐に確実に実施されるかということを念頭に置いて検討しておるわけでございまして、これを全然無視するとか、あるいはこれをそのまま活用するとかいうぐあいに言い切れる問題ではないのじゃないかと私は考えております。
  217. 永末英一

    ○永末委員 大体この程度で終わりたいと思いますが、青年運動としてやっていかれるならば、青年運動としてやっていかれるように組織をつくっていかれるべきだ。そのためには、いままでの既存の計画にこだわってはならぬ。私は精神運動をやれなんて言っておりません。私もいろいろな国々のことを見てもまいりましたし、ヨーロッパ各国、またわれわれの社会主義インター加盟の友党が何を一体計画してやるかも、つぶさに意見を交換してまいりました。したがって、日本の国としてやり得るところは、いま申しましたように、地域をアジアに限定してやるべきだ。そのやる場合には、いまのように運動として、しかも重点的に人数を投入してやるべきだ。何をやるかについては、農業であろうと、あるいはまた小さな機械工業であろうと、地域開発であろうと、ばらばらにせずに、重点を置いて、一つだけでもいいから成功させる。このことがどんなに日本の新しい平和の芽ばえについて、アジアにおけるわれわれの同胞諸国の信頼感をかちうるかわからぬと思う。そういう覚悟でこれを運営してほしいと思う。  そこで、これは私の希望でありますが、先ほどあなたが平和部隊の発想はもう白紙に戻ったのだと言われたのは、ひとつお取り消しになりませんか。
  218. 西山昭

    ○西山説明員 先ほどから毎々申し上げましたとおりに、基本的な調査をした結果を待って決定する、こういう初めからの思想でございまして、私どもは、初めから一定の既成観念にとらわれて、スタートの考え方がこうであったからこうであるというように弾力性のない考え方をとってやることは、かえって危険ではないか。もちろん、動機となりましたいろいろのことは十分に考慮しながら、いかにしてそのようなものは活用されるかということを将来の計画の実施にあたって念頭に置きながら着実に実施したい、こう考えております。
  219. 永末英一

    ○永末委員 私どもが主張しておるのは、何も固定観念を実現しなくてはならぬとは一つも考えておりません。ただ、あなたのほうは政府機関としていろいろ調査をなさった。われわれもわれわれとして、それぞれの地域にはわれわれの友党もあり、友好組織もある。われわれも研究してまいった。そこで、日本の国として予算を使って実施するからにはこういうことは望ましいと、われわれの政党の意見として申し上げておるわけである。ただ、重大なことは、最初の発想が白紙に戻ったという立場で今後計画を進められるならば、これはなくなったと同じでしょう。だから、白紙に戻ったとあなたがこの委員会で発言されたことはお取り消しになって、その積み重ねの上に計画をしていくんだということなら御協力ができるけれども、今度やるのはもう白紙に戻ったあとの計画だというなら、これは賛成できませんね。その点ひとつ明らかにしていただきたい。
  220. 西山昭

    ○西山説明員 私は、白紙に戻ったという趣旨のことは申し上げておりませず、調査の結果、そのようなものをどういうぐあいに効果的に実行できるかという精神をくみながら実施の方法を検討するということを申し上げておるのでございまして、初めから、こういうやり方でやる、こういう思想でやるというはっきりした固定の観念でスタートするという趣旨ではなかった、こう申し上げておるわけでございます。
  221. 永末英一

    ○永末委員 これで終わります。ただ、一言西山さんに要望しておきますが、あなたはやはり外務省の一部局の長ですから、その中でものをお考えだけれども、この運動は、運動として成功させることは、私は、現時点において日本にとって必要だと考えております。したがって、われわれも、最初見込みを立てたことがそのままやられなくてはならぬとは考えません。あなたのほうも、既存の、いままでやってきたこと、いまやれることだけにかかずらわないで、もう少し問題を長期に見て、もっと流動的な御計画を立てていただきい、また、われわれがそれを提案したときにはこれを受け入れる用意をしていただきたい、そうしてこれを成功させていただきたい、こういうぐあいに要望しておきます。いずれまた、具体化いたしましたら、われわれの見解、内容等を克明にひとつ申し上げます。
  222. 安藤覺

    安藤委員長代理 関連いたしまして岡田君から発言を求めておられます。
  223. 岡田春夫

    岡田委員 簡単ですが、予算の話が出たから、ひとつアジア局長に伺っておきたいのですけれども、サイゴンでは在留邦人がだいぶいるわけですね。その子供がだいぶいるわけです。ところが、それだけではなくて、この前の戦争のときにそのまま残った日本人がいるわけですね。その日本人と現地の人と結婚して、その間に生まれた子供たちがいるわけです。そういう人を合わせると、サイゴンの周辺だけでも二百数十人になるわけで、こういう人たちから、日本人の小学校をつくってもらいたいというたいへん強い希望が数年前から出ているようであります。私も現地にまいりまして、そういう人たちにも実際に会って、そういう話を聞いたのでありますが、ああいうところは日本人小学校をつくってあげたほうが私はいいと思うのです。そういうことをひとつ予算上も——これはアジア局の所管なんだろうと思うのが、ひとつ積極的に考えられたほうがいいのではないか。これは香港の場合もおそらくそうじゃないかと思います。何もサイゴンだけに限らないで、香港とかその他の地域も含めて、そういう日本人の小学校をつくって、その在留邦人その他に対してできるだけ便宜を供与してあげるということを、ひとつ外務省として積極的にお考えいただきたいと思うのですが、これについてどういうようにお考えになっているか。それから、予算上の措置は、来年度の場合どういうように要求されておるか。こういう点をひとつ伺っておきたいと思います。
  224. 後宮虎郎

    後宮説明員 岡田先生御指摘のとおりでございまして、ごらんになってこられましたサイゴンでも、日本語による教育は一週間二回大使館に集まってやっているような状況で、現地から学校の希望のあることも承知しております。アジア局所管地域は一番こういうケースが多いので、現在のところ、タイ、これが一番大きくて、学童が百六十九名ぐらいになっております。それから、ことしからビルマとインドとを細々と開きまして、だんだんとこういう施設を拡充していく方向で考えております。ただ、サイゴンにつきましては、現地の情勢、御承知のような状況で、少し見きわめる必要がありますので、まだ来年度の予算にはサイゴンのほうは組んでおりません。全般的には、だんだん、この次には香港、パキスタン等考えざるを得ない、そういうふうに思っておる次第であります。
  225. 岡田春夫

    岡田委員 そういう点はひとつサイゴンの場合もお考えいただきたいと思うのですが、いまあなたが語るに落ちて、サイゴンはたいへんな情勢であるらしいというのは、外務省もついにお認めになったようでありますが、これは、きのうの質疑応答でも、私どもと椎名さんと全くの違いの点で、外務省でも、ああいう情勢だから、もう日本人も引き揚げなければならぬ状態になっていると思っているだろうと思いますけれども、引き揚げないならば学校をつくる。引き揚げる情勢であるならば、引き揚げてから学校をつくってもしようがないから、そこら辺は十分お考えをいただきたいと思います。
  226. 安藤覺

    安藤委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後一時十五分散会