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1964-09-10 第46回国会 衆議院 外務委員会 第36号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年九月十日(木曜日)    午前十時十二分開議  出席委員    委員長代理 理事 安藤  覺君    理事 椎熊 三郎君 理事 正示啓次郎君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       始関 伊平君    野田 武夫君       濱地 文平君    三原 朝雄君       岡田 春夫君    黒田 寿男君       田原 春次君    野原  覺君       平岡忠次郎君    帆足  計君       松井  誠君    山花 秀雄君       山本 幸一君    竹本 孫一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         国 務 大 臣 愛知 揆一君  委員外出席者         防衛政務次官  高橋清一郎君         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵政務次官  鍛冶 良作君         農 林 技 官         (水産庁漁政部         長)      山中 義一君         海上保安庁長官 今井 栄文君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 九月十日  委員田原春次君、平岡忠次郎君、山本幸一君及  び永末英一辞任につき、その補欠として野原  覺君、山花秀雄君、岡田春夫君及び竹本孫一君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員岡田春夫君、野原覺君、山花秀雄君及び竹  本孫一辞任につき、その補欠として山本幸一  君、田原春次君、平岡忠次郎君及び永末英一君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(米軍機墜落事件及び原子  力潜水艦寄港問題等)      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長代理 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際椎名外務大臣から発言を求められております。これを許します。椎名外務大臣。   〔安藤委員長代理退席、正示委員長代理着席
  3. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 去る八月二十八日政府米国原子力潜水艦日本寄港を正式に決定いたしましたので、この機会に本問題に対する政府考えを表明いたしたいと存じます。  政府は、原子力潜水艦安全性の問題について過去一年八カ月にわたって可能な限り最大限の資料と情報の入手につとめ慎重な検討を加えてまいりました。その結果、去る八月二十六日の原子力委員会におきまして、原子力潜水艦安全性につき最終的な確認が得られましたので、寄港を正式に決定することとした次第であります。米国原子力潜水艦が就航した当初におきましては、米国内のみならず諸外国においても、その安全性に対する若干の危惧が存し、各種の論議が行なわれたことは事実であります。しかしながら、その後約十年の間、原子力潜水艦世界の各地に寄港し、原子炉に関する事故放射能被害を一回も起こしたことがないという事実によって、現在においては原子力潜水艦は危険なものでないということが世界の常識となっていると申しても過言ではないと考えます。原子力潜水艦安全性を確保するために米国政府がとっている各般の措置、並びに日本寄港に際して日米両国当局が予定している処置につきましては、過日発表した文書によって明らかにしたところであります。特に、政府は、寄港を予定されている港湾においては寄港の前後に実地に放射能の検査を実施することとしているのであります。私は、これらの措置によって原子力潜水艦わが国においてもその安全性が実証されることを確信するものであります。  原子力潜水艦の出現は、航空機においてもジェット機プロペラ機に取ってかわりつつあるのと同様、科学の進歩に伴う当然の趨勢であります。原子力潜水艦日本寄港の問題も、このような人間社会の自然な進歩発展の一端を示すものにほかならないのでありまして、これにしいて政治的あるいは軍事的な意義を持たせようとする考え自体が不自然であると考えるのであります。特に、原子力潜水艦日本寄港わが国核武装への第一歩をなすものであるというがごとき考えは、明らかに誤りであると言わざるを得ないのであります。  世界情勢は東西間の平和共存の傾向を強めつつありますが、その根底には米国核戦争を抑止するための強大な核報復力を保有しているという事実を否定することはできません。しかし、このことはわが国核兵器基地となることとは全く関係のないことであります。このことは、現在の日米安全保障条約を締結するに際して、米国政府核兵器持ち込みに反対である日本政府立場承知の上で事前協議を約し、かつ、岸・アイゼンハワー共同声明において日本政府の意志に反して行動しないことが確約されている事実によって明らかであります。  なお、この機会に、いわゆるサブロックについて一言いたします。サブロックは、もっぱら敵の潜水艦を攻撃する兵器として米国海軍が開発中のもので、将来原子力潜水艦に装備することが計画されているものであります。当初この兵器の弾頭には核と通常火薬の双方が使用される計画でありましたが、その後この兵器はもっぱら核弾頭を使用するものであることが明らかとなりました。しかしながら、サブロック核兵器であろうと、あるいは核・非核両用兵器であろうと、核兵器日本政府の意図に反してわが国に持ち込まれないということは、終始一貫して変わらないのであります。現実の問題としても、各種の任務を有する原子力潜水艦にもっぱら敵の潜水艦攻撃目的とするサブロックが常に搭載されるものでないことは、わが国にあるF105戦闘爆撃機が水爆を搭載する能力を持ちながら実際には搭載していないのと全く同様でありまして、今回の原子力潜水艦日本寄港の決定が核兵器わが国への持ち込みを認めたこととなるとの論が当たらないことは自明であります。  わが国が安定した国民生活発展を期するためには、わが国の安全が確保されることが大前提であります。日米安全保障条約は過去十数年の長きにわたってこの目的に寄与してきたのであります。  安保条約には、実際に侵略が発生した場合に日米両国がとるべき行動が規定されております。しかし、過去においてこのような規定は一度も発動されることなく、日本の安全は確保されてきたのであります。戦争に対処することよりも、戦争未然に防止することこそ安保条約の本来の使命であります。そして、この間日米両国間の信頼と理解に基づく緊密な協力があったからこそ、この安保条約本来の目的が達成され得たことは言うまでもありません。今後においても、このような協力関係を維持することが、戦争未然に防止しわが国の安全に寄与するものであることを固く信ずるものであります。
  4. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 質疑の通告がありますので、これを許します。  安藤覺君。
  5. 安藤覺

    安藤委員 去る八日午前十時過ぎに、神奈川県下厚木市旭町の地先相模川の川原及び大和市上草柳館野工場へ、わずか三十分ばかりの間隔において米軍機が連続二機墜落いたした事件がございます。このときの現地の実情及び墜落原因等について当局報告を受けておられることと存じますし、また調査もいたしておられることと存じますが、この機会にその詳細を御報告願いたいと存じます。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 八日午前十時八分、F105米軍軍用機一機が横田基地南方十九マイルの相模川原墜落し、操縦士が死亡するという事件が発生いたしました。幸いに日本側には被害がありませんでしたが、操縦士は最後まで飛行機を安全な個所に誘導するようつとめた模様であります。この事故に引き続いて、同日午前十時五十八分、米軍厚木基地海軍機FCジェット機一機が同基地を離陸直後滑走路の北方約一キロの地点に墜落し、死者四名、負傷者五名を出したほか、家屋を焼失するというまことに遺憾な事故が発生いたしました。この事故発生については直ちに在日米軍より外務省に対して通報がありましたが、その直後、ライシャワー在京米国大使より本大臣に対して、このような重大な事故が発生したことについて陳謝の意を表明するとともに、犠牲者に対する米国政府の深甚なる哀悼の意の伝達方について依頼がありました。またラスク国務長官よりも同じく八日本大臣に対し、さらに九日にはジョンソン米大統領より池田総理に対し、このたびの米軍機の不幸な墜落事故を深く遺憾とする旨の陳謝と弔意を表明する旨の電報を受け取ったのであります。  政府といたしましては、このような惨事を引き起こした今回の事故をきわめて遺憾とするものであります。よって、政府は直ちに、これが対策として、まず米軍当局に対しまして、至急日米合同委員会事故分科委員会開催方を申し入れ、日米両国の間において直ちに今回の事故発生原因等につき究明するとともに、今後における事故防止対策検討を行なうよう申し入れいたしました。その結果、厚木地区における事故につきましては、昨九日第一回の事故分科委員会日米間会合が行なわれ、事故原因の究明と再発防止に乗り出した次第であります。事故による犠牲者方々、負傷された方々、さらに財産損害を受けられた方にはまことにお気の毒の至りでありますが、これらの方々に対する補償の問題につきましては、政府といたしましては防衛施設庁において十分の措置を講ずることにいたしておる次第でございます。
  7. 安藤覺

    安藤委員 ただいま詳細なる報告をいただきました。このたびの事故において亡くなられましたる三名の方々のみたまに対し私も心から哀悼のまことをささげますとともに、肉親を三名までも相次いで失われ、さらには五名の肉親重軽傷者を出し、一切の財産をここに瞬時にして吹き飛ばされて嘆きのどん底におちいられた館野さんに対し心からお見舞いを申し上げるとともに、目下入院中の五名の方々が一日も早く全快されまして、社会に復帰せられることを心からお祈り申し上げ、お見舞い申すものでございます。  そこで、ただいま御報告をいただいたのでございますが、去る五月にも東京都下町田市内米軍機墜落した事実がございまして、私その当時も政府当局の将来に対する心がまえ等々について御質問申し上げたのでございますが、このたびの米軍及び日本当局のとられました処置において、町田市内に起きたあの事件取り扱いとの間において甲乙ないお取り扱いをなさっておられるかどうか、この点をひとつお伺いしたいと存じます。
  8. 小野裕

    小野説明員 今回厚木におきまして起こりました不幸な事件につきまして、その御遺族の方、あるいは損害その他につきましての手当につきましては、先般町田におきまして起こりました不幸な事件のときの例に準じまして、できる限り丁重に、しかもさらに迅速を考えまして、いませっかく努力をいたしておる次第でございます。
  9. 安藤覺

    安藤委員 防衛庁にお尋ねいたしますが、大臣がきょうはお見えになっておられないし、政務次官もまだ入っておられぬということでございますから、局長からひとつかわってお答えを願いたいと思います。  そこで、お尋ね申し上げますが、過般の町田事故のときにおきましては、これはお住まい等も近い等の関係もございましたでしょうけれども、そういう意味でなしに、前防衛庁長官は、心からこの事故をいたまるるのお気持ちの発するところ、現地にまいられまして、心から霊を弔われるとともに、その遺族に対してお見舞いを申しておられるようであります。このたびは、御旅行中のことでありますから、そのことは大臣御自身ではおとり行ないができなかったことであろうかと存じますが、大臣にかわられて、前大臣のなされたようなお姿をお示しいただいておったかどうか、この辺のところについてお答えを願いたいと存じます。
  10. 小野裕

    小野説明員 ただいまお尋ねのございましたように、大臣御都合がございまして、まことに残念でございましたが、私は、当日事故が起こりました直後、いろいろその善後措置につきまして、とりあえずは役所におきましていろいろと手配をいたしたのでありますが、さっそく同日直後に、防衛施設庁次長以下を現地に派遣いたしまして、もとより、現地横浜施設局あるいは厚木防衛施設事務所、これは直ちに現地に集合して善後措置に当たったわけで、本庁といたしましても、事故発生の直後、次長現地に派遣いたしまして、現地のお見舞いなり、あるいは諸般の方策につきまして特に現地機関並びに大和市役所関係の方と緊密な連絡をとりまして、さらに夕方になりましてから私現地にお伺いいたしまして、関係機関関係各方面との連絡をさらに緊密にすると同時に、また、たまたま不幸なことになりました方々の仏が安置されておりましたお寺にもまいりまして、また重傷者が入院しておりました病院にもまいりまして、万般の手配を手厚くしていただけるように、関係者にお願いをしてまいりました。当日私が戻りましたのは深夜の一時でございました。私どもとしては、さらに昨日もまた次長を差し向けまして、局長現地に詰めておると思うのでありますが、交代で諸般手配に遺漏のないように心がけておる次第でございます。
  11. 安藤覺

    安藤委員 事務当局としてのお立場においてあらん限りの丁重な手続をお尽くしになったことはけっこうでございます。たまたま大臣が御不在でございましたから、前大臣のような形をとることができなかったことはやむを得ませんが、新聞紙上でもごらんになったでありましょう、また私も現地において御本人にお目にかかりましてお慰め申したのでありますが、御本人館野氏は半ば興奮の度が過ぎて異常な精神状態を呈せられるほどまでに相なっておられました。もとより当然なことであります。したがいまして、これを見まする近隣の人たち考え方も非常に同情的であります。かようなときにおいて、やむを得ない結果とは申せ、原町田の場合と今回の場合とにおいて精神的処遇においてすら甲乙があるかのごとき印象をお与えになることは、少なくともお考えにならなければ相ならぬかと存じまするので、大臣御帰京の上は、ひとつあなたからよろしくこの辺のところをお伝え願いたい。ことに、小泉大臣大臣就任をたいへん喜んでおられるお姿をしばしば新聞等で拝見いたしました。これはもとより当然であります。政治に志を抱いて代議士として当選して出たら、最高の大臣のいすを射とめて経綸抱負を実行するということはもとより喜びの限りでございましょう。小泉大臣の場合の喜びは少しく違った様相もあったようであります。ことに防衛庁長官として御就任になったことだけに、ことさらにお喜びになったようであります。これは一億国民の安らかな生計と毎日がわが掌中にあると思えば当然なことでありましょう。しかし、その喜びの反面には、かかる事態も時に起こるのだということは予想されなければなりません。かかる事態が起きたときには、この喜びをことごとくこの悲しみの中に打ち込んで対策を講じてやるというところのお心がまえでなければなりません。私はかように考えますので、どうか、小泉大臣お帰りの節は、あなたからこのことを特段の御配慮をもってお伝えを願いたいと存じます。  次に、私、お尋ねいたしたいと存じますのは、厚木市郊外の相模川原墜落いたしました現場を見ますると、その付近に、わずか百メートルか五十メートルぐらいしか離れていないところに民家が密集しており、あるいは工場が二つも三つも建っております。かろうじてこの工場人家密集地帯から離れて墜落いたしておるのであります。しかもその搭乗員は死亡いたしております。これは、しろうとながら察するに、何とかして民家から避けたい、何とかして人に危害を与えたくないとの切なる気持ちから、あらん限りの力を振りしぼってあの川原の上に脱出したのではないかと考えられます。これに引きかえまして、大和草柳墜落いたしましたる姿を見ますると、もう百分の一秒でも何とかがんばったならばあの人家を離れて——館野工場のすぐうしろオカボ畑続きになっておるのでありますから、安全地帯へ出られたのではないか。しかも、御承知のとおり、滑走して離陸しまして一、二秒間でありましょう。したがって、いかに上昇率のいい飛行機とはいえ、まだ千、二千、三千という高度には行っていなかったと思います。しろうとのことでございますから、これはあとから科学的に御説明いただいてもけっこうですが、五百か六百メートルくらいの上空ではなかったかと思います。にもかかわらず、航空士は二人とも落下傘で落下いたしております。無事であります。これが二千、三千という高度であったら落下傘でおりるということの余裕を持つことが考えられますが、五百か六百のところで落下傘でおりて、なおかつ無事であって、そして、もうわずかなところで民家を避けることができるという状態にありながら、避け得られなかった。ここらに、そんたくいたしますれば、飛行士心がまえの上において人命尊重観念いかんが多少なりとも左右しておりはしなかったか。仄聞するところによりますれば、厚木相模川原に落ちましたる飛行士のほうは、横田に所属しておって、長いこと日本に勤務しており、かなり日本人気持ちもわかっており、また日本人から受ける刺激によって人命尊重というものについての心のかまえができておる。一方厚木飛行場から飛び立って大和草柳に落ちた飛行機飛行士は、近時横須賀に入港した航空母艦艦上機飛行士であるということであります。これらの点を想像いたしますれば、あるいはその二人の人命尊重心がまえの上に若干の精神的開きがありはしなかったかと考えられると思いますが、これについてはしろうとの想像でございますから、科学的にどうこうという御答弁もあろうかと思いますが、これは答弁は要りません。ただ、日米合同事故防止委員会等をお開きになられましたならば、そのときには、どうかこのことを、日本人の一人としてこういうことを言う者があり、またわれわれも共鳴している者があることを知っているということをお伝え願って、アメリカ空軍の将来においての心がまえを一段としっかりしたものにするようにおはからいを願いたいと存じます。  次に、私は基地行政の問題について少しお尋ねいたしたい。このたびの大和草柳におけるあの事故現場に行ってみますると、私は、基地行政の上において盲点というか、欠点というか、大きな真空地帯があると考えられます。これについては何かお気づきになっておることがございますか。
  12. 小野裕

    小野説明員 今回事故がございました、ただいま御指摘のありました地区でございますが、滑走路延長上、いわゆる進入正面下に位置する場所でございますが、この部分にまだ相当住宅その他の施設があり、人が住んでおるということがございます。このことにつきましては、これを初めから禁止するというたてまえはございませんけれども、その状態が非常に心配な状態であるということにつきましては、私どもその感を深くいたしております。
  13. 安藤覺

    安藤委員 お答えをいただきまして、お気づきにはなっておられるようでありますが、その御答弁では満足いたしかねますから、私から解説して、さらに御覚悟のほどをお尋ねいたしたいと存じます。  現地についてこれを調査してみますると、墜落現場は、離着陸滑走路延長上空下として危険のために、去る昭和三十五年以来防衛庁におかれて地元民に勧誘せられまして、その望むところの者においては立ちのきをせられたい、立ちのきをせられるならばこれこれの補償をいたしましょうということで立ちのきを話し合われ、そして立ちのきが実行されておるのであります。たまたまこの飛行機の落ちましたそこは当地の二見保という方が住んでおられたところであります。そして二見保という方は当局とのお話し合いの上他の安全地帯に居を移しておられます。ところが、この二見さんのあいたあと宅地二見さんは館野さんという方に三十八年に売却いたしておられる。そして館野さんはここに蒲田あるいは川崎から工場を移してここで工場を営んでおられる。この事実を見まするときに、何かそこに私はまことにふかしぎなものを感ぜられます。古い子供のころを思い起こしますと、北海道のクマがシャケを石狩川でとってササへさしてかついでずるずる引きずっていく間に、うしろ結びがついていないのでシャケが落ちてしまったという話、まことにかような席でお話するのは恐縮でございますけれども、まさにこのとおりのことがこの基地行政の上において行なわれているのじゃありませんか。二見さんは立ちのかした。あぶのうございます。お立ちのきなさい、国家はこれに補償いたしましょう、そして二見さんは安全なところへ行った。その二見さんの立ちのいたあとへ、人間こそかわれ、他からそれを買い取って移ってこられておる。この方は不安全そのままでおられる。しかりとするならば、何らかここに、立ちのかれたあと住宅を建ててはいけない、工場を建ててはいけない、立ち入ってはいけないということの御処置がない限り、結びをつくっておかない限り、シャケは幾らでも逃げてしまうじゃないですか。これは二見保さんを責めるのじゃない。二見保さんの個人所有ですから、二見保さんが自分立ちのいてしまってあとを売ろうと貸そうと、それは御自由でしょう。このことには政府行政において何かの処置がなされなければならないのじゃないか。この点についてはいかがお考えになりますか。
  14. 小野裕

    小野説明員 今回不幸な事故にあわれました館野さんの工場敷地の問題でございますが、ただいま先生のお話につきましては、私実は別な報告を受けておるのでございます。お話のとおり、あの付近におられました方について移転のお世話をいたしたわけでありますが、その場合は、家屋移転いたしますとともに、その家屋敷地になっておりました地所は国のほうで買い上げまして、国有地としていま残してございまして、たまたま今度事故を受けられました館野さんの工場は、そのお隣の部分あとからお入りになった。これは私どものほうで全面的にあの地域を買収するということができませんので、とりあえず民家の御移転をごあっせんをし、その宅地分あと地はこちらでお引き取りをしたわけでございます。これはかわりの土地を入手されるためにも必要でございますが、それに隣接いたしております一般の農地その他、他の従来家屋のなかった部分については、実は私のほうでそこまでやはり手が届いておりませんので、そこはそういうふうな形で使われるようになったものと私は承知いたしておるのでございますが、そういう事情でございます。  それにいたしましても、あの立ちのきをお願いするような、あるいはごあっせんするような地区に新しく工場住宅が入ってくる、これは御自分の自由な見解で入ってこられるわけでございますけれども、こうしたことについてほうっておいていいのかということになりますと、従来の行政指導というものは必ずしも十分でなかった。その点につきましては私ども十分注意いたしまして、さらに現地の市町村あるいは農業協同組合、いろいろなそうした関係方々と御相談をいたしまして、そういうことの起こらないように今後十分事前努力をしてまいりたい、このように考えております。
  15. 安藤覺

    安藤委員 長官の受けておられる報告は多少違っておるというおことばでありますが、どういうふうな報告を受けておられるか知りませんけれども二見さんの立ちのいたあと館野さんが買って入ったことは間違いありません。これは本人も言うております。家の建っておったところはあるいはあなたのほうでそうなさったかもしれぬ。それに続くいわゆる野ら作業をする庭等に館野さんが入っておられるのか、その開きはあるかもしれませんけれども、いずれにしましても、引き続いておった土地に住んでおられるということは間違いありません。しかも、このたび物置きだけ破壊されておもやがかろうじて助かったのですが、それから間隔わずか六メートルばかりの高橋さんのおうちにも立ちのきを勧奨しておられます。勧奨しておられますが、高橋さんと補償条件が折り合わずに、高橋さんはいまなおそこにおられますけれども、物置きが今度やられてしまった。物置きの延長にはさらに二軒の新しい工場、食品工場と鉄工場が建っております。こうしたこの関係から、いずれにしましても、立ちのきを勧奨せられましたならば、その勧奨した範囲は土地ぐるみお買い上げにならなければいけません。そうすることによってのみ今度のような被害を防ぐことができようと思います。もしそれ、今度館野さんが立ちのかれて、また館野さんがその土地を他の人に一、二年のうちに売られて住宅が建ったらどうなるか。また政府はそれに補償して立ちのきを命ぜられる。何代これを重ねたならば解決がつくのでありましょう。いやおうなしにこういう理屈になります。野館さんはきっと、このほとぼりがさめたところで適当な人に売ります。安いから買います。買った人が家を建てる。館野さんは補償を要求するでしょう。そのとき補償をお与えになりますか。どういうことでしょう。
  16. 小野裕

    小野説明員 非常にむずかしい問題でございますが、従来私どもといたしましては御希望に応じまして移転のお手伝いをして差し上げるわけでございますが、大体ある時点の以前からいらっしゃるお方というのが従来の考え方でございます。この点については、そうは言ってもいろいろ事情が変わるわけでございますから、その後の方についても考えなければならないじゃないかという考慮はいたしておりますけれども、現在実施いたしましておりますものは、ある時点以前からお住まいの方ということで考えておるわけでございます。  さらに、大きな問題といたしまして、そういうような、いわゆる騒音区域といいますか、危険区域といいますか、こうしたところの土地は全部国で買い上げて安全地帯として確保しなければ意味ないじゃないかというお尋ねでごございますが、その点はそのとおりに存じます。ただ、何と申しましても、多数の飛行場について広大なそうした地域を処理いたしますことはなかなかたいへんなことでございますので、その点はおくれております。しかしながら、私どもといたしましては、現在できる範囲として、つとめてその区域内にある方々の御希望による移転についてごあっせんするとともに、今後少しずつでも買い上げの区域を広げていくということについていま検討をし、いろいろ計画をいたしておる次第でございます。
  17. 安藤覺

    安藤委員 従来から長く住んでおった者のみに限定しておるとおっしゃいますが、それは過去においてはそうでございましたでしょうが、今後においてはそれは間違いであります。飛行機が落ち、そして落ちた飛行機が危害を与えることは、十年そこに住んでおった人であろうと、三百年前から先祖以来そこに住んでおった人であろうと、きのう来てそこに住んだ人であろうと、同じように殺してしまいます。変わりありません。人命のとうとさにおいては、三百年前から住んでおった人ときのう移ってきて住んだ人と変わりありません。その考え方は改めていただかなければなりません。  もう一つには、騒音と危険と一緒にされてはいけません。騒音は騒音として被害を与えておりますけれども、人命に即時に及ぶものではございません。だから、ここは騒音と人命に危険な滑走路下とははっきり区別して御承知を願わなければなりません。この点はもう御承知なさっておると思います。  そこで、時間がすでに経過しておるようでありますから、演説調になるかもしれませんが、私はどんどんと申し述べてお答えをいただきたいと思います。  御承知のとおり、この滑走路先における農民たちについても立ちのきを勧奨せられまして、それは双方の合意の上ほとんど完成したようでございます。しこうして、その滑走路先に農民たちが毎日農場へ出て立ち働いておる。その上を通ることの危険性を農民たちそれ自体が早くから感づいて、不安を感じて、当局に、せめてこの滑走路先の危険なところだけ、千メートルから千五百メートルを買い上げてほしいという要望を出しておるのでありますし、かく申す私も幾たびかそのことを伝達したことでありますが、今日までそれが実現しておらないようでありますが、これは、たまたま昭和四十年度の予算概算もすでに算定され、大蔵省へも提示される時期にもなっておられますが、一体、この地域に対し、いますでに館野さんの姿が示すようなことは現実であるのでして、これがいつ何どき重ねて起こらぬとも限らぬこの危険区域に対していかなる態度をとられるか、その予算については何らかお考えになって、またこれに対して大蔵当局としてもいかようなお考えを持って対処していただくか、この点についてお答えをまず願いたい。  ついで伺いますが、かねて政府は、基地対策の根本方針として、問題ごと対策、すなわちそのつど解決策というものを打ち出しておられました。全般的な付近住民の安定基本法的なものをつくることに対してはあまり関心をお示しにならなかったのであります。今度の問題は町田市の墜落事故の場合と違いまして、たまたま滑走路先に落ちておるというこの事実を考えますときに、そのつどの解決ということではいけないのじゃないか。たとえば町田の市街に落ちたような場合においては突発的なことだとしていいが、ある程度まで予想されたこの事実に対して、そのつど対策ということではなしに、一応の固定した継続性を持った対策が立てられなければならぬのじゃないか。この辺についてのお考えをひとつお示し願いたいのであります。  それから、次に、いままで厚木基地周辺の方々は比較的基地に対して協力的でございました。騒音あるいは青少年の風紀の問題あるいは河川の汚濁の問題、さまざまな基地から受ける被害にあいましても、そのつどやはりそれぞれの条件を提示せられて交渉をし、できるだけ基地そのものの存在については多くのことを言うことを避けて、協力的にやってこられました。しかるところ、このたびの事件が起こるにあたって、さすがに、いままでこらえてきたけれども、これ以上はこらえ切れない、ついてはわれわれは基地の撤退を要求する態度に切りかえていかなければならぬという空気がほうはいとして起きてきております。申し上げるまでもなく、厚木基地にせよ、その他の基地にせよ、これは安保条約に基づいております。安保条約日本の安全と極東の平和のためにつくられております。こういった考え方のもとにおいて協力してきた人たちが、いまや、基地を撤退せよ、どこか他の人なき草原を求めて行ってくれ、こういう運動に転換してきました。いまさら人なき草原といったところで日本にはあるわけはございません。こういうことになってまいりますと、いや応なしに、基地の住民諸君は、今度はアメリカ空軍に対して直接さまざまな反抗運動を行なうことになってきましょう。それが治安を乱すというようなことであれば、警察庁が押えつけてしまうと言われれば事は簡単ですが、だが、日米合同して極東の安全を保障しよう、平和を守ろう、日本の安全を保障しようとする大精神を、この運動によって破壊する一端をつくり出していくことになりはしないか、アメ公ゴーホーム、アメリカ帰れ、こういう声があの厚木基地の兵隊はじめ将官に直接耳に響いていくとしたら、どういうことになる。外務省におかれては常にアメリカのみならずすべての国と感情の疎隔のないように調整しつつ努力しておられる。これは当然なことだ。だが、一方においてこれを、さいの川原ではございませんが、一方から鬼がたたきつぶす結果になっていったらどうなります。安保条約の精神は破壊される結果になりはしませんか。これらの点に思いをいたしますときに、この基地に対して、最小限基地人たちの要望であるところの、危険地域下の移転及びその移転したあと宅地及び移転したあとのその危険下にさらされた農地を買い上げて、この人々の安全を守ってやるという、安心をさせてやるということは、安保条約の精神を破壊するような結果になることに比べますれば、それが何億であろうと、九牛の一毛で、わずかの金である。ここに、大蔵省当局国民の血税を預かられて、これを支出するのにきわめて国民に忠実であるように注意して予算の支出をなされることはけっこうでありますが、一面この大きなものを失うということは国民の負託に報いられるところではないと存じますから、この点については、昭和四十年度予算編成にあたって、大蔵当局におかれましても、国民の税金を生かして使う、血の通った使い方をするという意味において、大乗的見解に立たれて、防衛庁の要求が過小であるならば、進んでさらにこれを増額せよとおすすめいただきたい。また、小野長官におかれても、三日前にこの現実を見られたのであります。三人の人が罪もなく過失もなくて命を失っておられ、あと四人の方々もはたして何人お助かりになるやもわからぬ状態にあります。これがまだ続く危険性があるのです。飛行機に幾ら落ちるなと言っても、どんなに精密につくられた飛行機でも落ちることは避けられない。もっとことばを詰めて言うならば、落ちることは必至だ。いつかはどこかに落ちるのだ。その落ちるのが離着陸のときに落ちる率が多いということであるとするならば、この大和市の離着陸の空のもとにおいては安全な生活ができないということが言えるのであります。どうかこの点については思い切って小野長官は御要求を願いたい。  さらに、基地交付金の問題でありますが、これは説明するまでもなく、あなたのお耳に十分入っておることと存じます。四十年度予算の要求にあたって、この点も十二分にお考えおきを願いたいと思います。  もう一つは、私は外務大臣に総理大臣にかわってお答えを願いたいと思いますが、先ほど来申し述べました中にも出ておりましたが、そのつど解決ということもけっこうでありますが、こうした経過を持った長期的なものについては、そのつど解決はできない。落っこちたら補償してやればいいんだということになれば、人命を金にかえればいいんだということに通ずる。そうじゃなくて、落っこっても安全なんだという行き方をしていただかなければなりませんが、そのためには、基地住民安定基本法ともいうべきものをつくることが、政府をして安んじてこのことを行なわせ、また国民をして安心せしめるゆえんだと思いますが、今後も、また現在も、そのつど解決でいこうというお考えでいらっしゃいますか。進一歩せられてとの方向にお進めになることを、これは総理大臣お答えになるべきですけれども、御入院中でございますので、椎名外務大臣からひとつ勇断をもって総理にかわってお答えを願いたい、かように存じます。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 基地付近の危険区域というものをなるべく少なくいたしまして、あるいは全部危険区域をなくする、そしてその付近住民の基地に対する協力というような一つの機運を出すことは、私はまことに大局的な見地から必要であろうと存じます。この精神はまたありがたくちょうだいいたしますが、これらの対策につきましては、とくと関係方面に伝えまして、また総理にもよく伝えまして、考えてもらうことにいたしたいと思います。
  19. 小野裕

    小野説明員 ただいまの、そうした危険地域の安全化ということについて思い切って踏み出せという御意見につきましては、私ども同感でございます。微力でございますが、最善を尽くしてその方向で努力をいたしたいと思います。
  20. 鍛冶良作

    ○鍛冶説明員 御質問の御趣旨は十分了承いたしました。予算については、四十年度の予算の要求があるそうでありますが、いま出たばかりでありまして、今後十分研究いたしまして、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  21. 安藤覺

    安藤委員 政務次官あとからおいでになって、私のさっき申し上げたことをあるいはお聞きになっておらぬかもしれぬから、ちょっと念を押して申しておきますが、今度の事故発生したところは、一ぺんここはあぶないから立ちのきなさいといって国家が補償して立ちのかした。立ちのかしたけれども、その土地までは国家は買ってない。ある部分は買ったけれども、だから、立ちのいた人は次の人にそれを売った。そしてその買った人はそこに鉄工所を建てた。そうしたらそこに飛行機がおっこちた。不安全なところに確かに落ちた。そうすると、今度は館野という人は立ちのいてまただれかに土地を売っていかなければならない。そうすると、幾度補償を出しても同じになる。だから、土地ぐるみ危険区域は買いなさいということなんだから、それをよく御了承願いたい。
  22. 鍛冶良作

    ○鍛冶説明員 御趣旨はよくわかりました。十分研究して、できるだけ御趣旨に沿うようにいたします。
  23. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 山花秀雄君。   〔正示委員長代理退席、安藤委員長代理着席〕
  24. 山花秀雄

    山花委員 お伺いしたいことはいま安藤委員のほうからもございましたので、重複を避けてお尋ねしたいと思いますが、先般原町田飛行機墜落いたしましたときに、安藤君も私も本会議池田総理大臣に質問いたしましたら、このようなことは今後は絶無にするように努力したいという答弁がございました。あれから後に一体どのくらいのこの種事件があったかということをひとつ御報告願いたい。
  25. 小野裕

    小野説明員 お尋ねは本年四月以降の米軍機による墜落事故というものはどうなっているかということであるかと存じますが、実は、本年の四月以降一昨日までの約半年の間に、米軍機といたしましては八機墜落がございます。ただ、そのうちで不幸にして人身事故に至りましたものは、原町田事故と今回の厚木事故、この二件であります。
  26. 山花秀雄

    山花委員 わずかな期間に、ただいま報告によりますと八機墜落をしたということです。大きな事故は原町田とこのたびの厚木大和だということですが、しかし、これは、短期間にこのように墜落するようなことは、技術がへたなのかどうかということになりますと、私は相当技術優秀者を搭乗員にしておると思うのです。そうすると、落ちる運命は否定することができないという実証をしておると思うのです。こういうような不安定な危険きわまりないものを日本の国土に存在せしめていいかどうかという一点であります。これはひとつ責任ある答弁を願いたい。私どもはこういう危険きわまりないものは日本の国土の安全から撤去をしてもらいたいということを要求しておるのでありますが、これについてひとつ政府の御見解をお述べ願いたい。
  27. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 危険なものを撤去するというおことばでございますが、危険な事故を発生せしめる主要原因をできるだけ探究いたしまして、そうしてこれを再び起らないように次々と努力してまいる、そういうことにつきましては、まことに御同感でございます。
  28. 山花秀雄

    山花委員 外務大臣、私の話を聞いてないじゃないですか。優秀な搭乗員を乗せてもこのような危険がたびたびあるということは、根本的に基地があるからだ、われわれ国民は不安定で危険きわまりない、こういう原因の基地を撤去する意思があるかどうかということを聞いておるのです。こういう重要な権威ある委員会で一問一答をやっておるのですから、耳を澄まして聞いて答弁をしていただきいた。再答弁願います。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 米軍基地は、御承知のとおり、日米防衛の見地から置かれておるのでございまして、危険は危険、防衛の必要は必要、なるべくそういう危険の起こらないようにつとめなければならぬ、かように考えるのでありまして、そのために、日米安保条約に基づく基地の問題を、根本的にこれを撤去するという考え方はできません。
  30. 山花秀雄

    山花委員 人口一千万以上の東京周辺に基地を置いて、危険をなるべく防止したい、そういうお考えでございますならば、安保条約の存在中でも、この基地人家のないところに移す、そういう努力と決意がおありかどうか、御答弁を願いたい。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういうところがございますればそういうことも考える必要があろうかと存じます。しかし、なかなかそういう土地は現実として見つからないのではないかと私は考えております。これは個人の考え方です。
  32. 山花秀雄

    山花委員 現実には見つからないといって、一千万以上、周辺を含めますと二千万以上の人口密集地帯にこういう危険がたびたび起こるようなものを存在せしめていいかどうかという点です。私はこれ以上追及いたしませんが、これは胸に手を当ててよく良識的に判断をしていただきたいと思います。  なお、先ほど安藤委員からもいろいろ質疑がございましたが、滑走路に近接する周辺地区の安全のために国費をもってこれを買い上げたらどうだというようなお話がございました。せんだって、これは施設長官もよく御存じだと存じますが、横田基地の騒音問題につきまして、堀向というところの住民が二百戸集団移転をしたいということを言っておられました。三日の日に米軍の要請により国会議員団が消音措置の視察に行ったと思うのです。そのときに同僚の小山議員から、今度はそういう問題のために五億円ほど予算を考えておるということを漏らしたということが新聞紙上で発表されておりました。施設長官も一緒に行ったと思うのでありますが、何かそういう予算的措置をお考えになっておるかどうかという一点をお伺いいたしたいと思います。
  33. 小野裕

    小野説明員 先般三日の日に小山先生がそういうようなことをお話しになったということは、新聞紙上では拝見いたしました。その席には私御同席いたしませんでしたので、事情を存じません。私どもとしては、堀向地区移転問題をどう処理するかという問題について鋭意検討中ではございますが、まだ方法とか金額とか、私どもとしては固まっておりません。そういう意味で、これは先生の御希望であり、御努力いただくお考えであろうかと拝察をしておるわけでございます。
  34. 山花秀雄

    山花委員 まだ防衛庁関係ではそういう腹をかっちりきめたわけではない、こう言われるのですか。そういう考えを持ってある程度大蔵当局に四十年度予算を要求する腹があるのか、あるいはまだそこまで腹がきまっていない、こう言われるのですか。どちらか明らかにしてもらいたい。
  35. 小野裕

    小野説明員 私どもといたしましては、解決をしなければならないということは考えております。ただ、具体的に非常に困難な事情が多々ございますので、いろいろ実情を調査し、あるいは地元の方々ともまたお話し合いもあろうかと思うのでありますが、要するに、すべての計画の根本になるいろいろな事情につきまして、いまいろいろ調査あるいは打ち合わせ、こういう段階にある、こういうことでございます。
  36. 山花秀雄

    山花委員 私はもとを聞いておるのです。いろいろ困難な事情のあることはよくわかっておるのです。ただ、基本的に態度をどうするかという点を聞いておるのです。あの滑走路の周辺にある堀向地区は、施設長官もよく御存じだと思う。いま安藤委員からもお話がございましたように、滑走路から少なくとも千メートルぐらいは安全地帯にしないと、不慮の災害が起きる。ところが、堀向はもう近接というか、くっついておるところで、御案内のとおりであります。福田防衛庁長官就任されたときに、二百戸ぐらいは集団移転をせしめなくちゃならぬというようなことも新聞紙上で一応発表したことは、施設長官もよく御存じだと思うのです。だから、そういう基本的な問題をきめてから困難な問題の解決のために努力するというのだったら話はわかりますけれども、いろいろ困難な問題があるから腹がきめかねるということは、私はこれは少し優柔不断だと思うのです。こういう点はひとつはっきりしていただかないと、飛行場の付近の住民の心配はつのるばかりであります。ひとつ安心感を与えてもらいたいと思います。やるのかやらないのか、どうかという点です。
  37. 小野裕

    小野説明員 私どもといたしましてはぜひ片づけたいと考えておるということは、申し上げたとおりでございまして、ただどういうふうにこれを実行するか、実施するかということについて、いろいろ検討をしておる、こういうことでございます。
  38. 山花秀雄

    山花委員 幾らやりたいといっても、先立つものは金です。そこで、予算要求をやるのかとどうかという点です。四十年度予算に、基地のそういう問題解決のために、額は私はいま言えないと思うのですが、そういう予算要求をやるのかどうか、そして、もしやるとすれば、これは大体いままで懸案の問題ですから、おおよその額も出てくると思いますが、額までは追及いたしません。やるのかどうか、この点はっりきしていただきたいと思います。
  39. 小野裕

    小野説明員 今日の段階では私ども従来のいろいろな方式で処理できるような移転につきましては、堀向地区につきましてもわれわれがこの程度と考えられる予算は計上いたしまして概算要求をいたしております。ただ、それは従来の方式でできる範囲でございます。その範囲をこえたものについて、つまり根本的な対策ということにつきましては、いま検討しておるわけでございまして、これによりまして、あるいは予算の追加要求と申しますか、その他の措置を講ずることになるわけであります。現地はそういう状況でございます。
  40. 山花秀雄

    山花委員 私は、希望として、ぜひある程度の金額、見積もりの予算要求をやってもらいたいと思います。  そこで、問題になりますのは、飛行機が飛ぶ高度の問題でありますが、これは法律的に民間航空なんかでは規制がございますが、ああいう特殊な基地飛行機には高度の規制の法規があるのかないのか、この際ひとつはっきりしていただきたい。
  41. 小野裕

    小野説明員 一般的に安全を保つための考慮を米軍側に求めておることは、これは共通の問題でございますが、いまお尋ねの横田の飛行場につきましては、特にこの航空規制についての合意がございまして、飛行機が出入りする場合は別でございますが、あの周辺を旋回するという場合には、ジェット機について二千フィート、その他の飛行機について千五百フィートというところで旋回をするということに協定をいたしております。なお、その他の地点、たとえば東京都の区部の上空等につきまして、あるいはその他市街地、人家密集地につきましては、大体千メートルの高さ、三千フィートの高さを飛ぶということに米軍内部で規定をいたしております。
  42. 山花秀雄

    山花委員 一般人家密集地帯では大体千メートルというようなお話でございました。そこで、離陸するあるいは着陸する場合には、正確に申しますとどの程度の規制をしておるのですか。
  43. 小野裕

    小野説明員 ただいまの着陸あるいは離陸等の際については、これは当然に自然の角度がございまして入らざるを得ないわけでございますが、その場合の距離は、たてまえとしては五十分の一のグライド・アングルと申しますか、五十分の一の角度で出入するというのがたてまえになっておりまして、その距離がふえますと、ところによりまして高度が変わってくるわけでございます。それから、着陸する等の際に周辺で待機をするというような場合には、ただいま申し上げました二千フィート、千五百フィートというところで待機をしまして着陸なら着陸に入る、こういうふうにきめておるわけであります。
  44. 山花秀雄

    山花委員 そこで、ちょっとはっきりしたいところは、五十の勾配ですね、それから、たしか私の記憶によりますと、大体六百十メートルぐらいの規制が行なわれておる、こう聞いておるのですが、その点いかがでしょう。
  45. 小野裕

    小野説明員 ただいまお話しの六百十メートルが約二千フィートになるわけでございます。
  46. 山花秀雄

    山花委員 そこで、問題になりますのは、長官も御承知のとおり、堀向地区は、これは現実問題として滑走路に接近しておりますから、それが保たれていないというのが現実なんです。そういう現実を看過していいかどうかという点であります。もしどうしても技術上保たれないということになりますと、そこは国が補償してある一定区間の空地をつくるというのが当然ではないかと思います。そういう関係から集団移転の問題がいま出てきておると思うのです。そうなりますと、当然予算措置をして安全を保障するというのが、これが政府としてのやり方じゃないかと思いますが、いかがなもんでしょう。
  47. 小野裕

    小野説明員 ただいま御指摘の堀向地区につきましては、これは進入路でございますから、当然にこれは、五十分の一のアングルということを考えましても、滑走路から五百メートルのところでは頭の上十メートルのところを通るということになるわけでございまして、もっと近いところでございますならば五メートル、三メートルというところもあり得るわけでございます。そういうような意味で、その規則が守られていないというわけではないわけでございます。ただ、後段のお話のように、そういうところは非常な心配があるではないか、どうにかしなければいかぬじゃないかということにつきましては、先ほどの安藤先生の御質問にもございましたとおりでございます。そういうような地域については、ほんとうにきれいにして安全地帯として確保することが望ましい、その方向でむろんいま研究をしておるということを申し上げたわけでございます。これは共通の問題でございます。
  48. 山花秀雄

    山花委員 せんだって原町田でたいへん御迷惑をかけた被害者に対して、政府は万全の措置をとると本会議席上でも池田総理大臣はじめ外務大臣、当時の福田防衛庁長官も明言をされたのですが、その後の経過について地元からたいへん私のところへ不満を言ってきておるのです。解決されていない、不人情だというような不満が来ておる。この点につきましては、こういう公式の席上で話をするよりも、直接じかに長官お話ししたほうがいい、こう考えまして、先日長官のところへ私はまいって、地元の未解決の問題についていろいろお話を申し上げた。そのとき長官は、それはまことに済まないことであった、さっそく話のわかる人、あまり下のほうの人では話がわからないから、相当高い地位の人で相手方を十分納得せしめるような人を本人のところへ出向かして了解を求めるようにする、こう言われましたので、私ども安心しておりましたが、その後どういう処置をとられたか、行ったか行かなかったか、この点はっきり御明答願いたい。
  49. 小野裕

    小野説明員 ただいまの件は、先般役所で先生とお話し合いをいたしまして、いろいろ事情も伺いまして、さっそく調査をいたしましたところ、ちょうどその前後にすでにお払いしてあるものもあり、直後に支払いをする段階になったものもありというような事情でございまして、これは御連絡申し上げたと思うのでありますが、さらに今後の方々についてよく事情をお話しするということにつきましては、その方々のうちで事情がはっきりしておるような方についてはまだお伺いしてない向きがあるようでございますが、特にいろいろ問題のあるようなお方のところへはお伺いして、その事情の御説明が済んでおる、こういうことでございます。
  50. 山花秀雄

    山花委員 詭弁はよしてください。あのときに三件か四件名前をあげて、これだけはひとつ何とかいたしましょうということで話し合いをしたのです。本日予定といたしましては予算委員会があることになっていて、これは明日に延びましたが、予算委員会で私はこの問題を質問したい、こう思いましたが、話がつけば、あえてこういう公式の席上で質問する必要はないのだから、それまでにひとつ誠意を示して、人を派して納得のいくように話し合いをしてもらいたい。たまたまこの八日にこの事件が起きまして、私はゆうべ地元の方に、防衛施設庁のほうからだれか来たか、こう聞きましたら、どこのうちも、まだあれから来ないという答弁です。これは一体どういうことですか。誠意ある態度ですか。お気の毒だお気の毒だと言って盛んにここで答弁されておりますが、何もやってないじゃありませんか。答弁を聞いておりますと、いんぎん無札じゃありませんか。私は単なる一個の国会議員として質問しておるのではないのです。日本国民立場から、政府国民の間に血の通うような立場から努力をしておるのです。この努力を踏みにじって、そして、話はわかっておるとか、やっておるとかというような、そういう欺瞞的な答弁はやめてもらいたい。はっきりしてください。行ったか行かなかったか。
  51. 小野裕

    小野説明員 私はそういうように申し上げたのでございますが、さらにいろいろ事情を調査して、その解決の促進をはからせまして、さらにそのうちで事情のよくおわかりになってくださるようなところはまだお伺いしてないところはある、しかし、非常に説明が必要であり、またいろいろ御不満も多いというようなお方についてはおたずねをしたと、このようにいま報告を受けたのでございますが、この点については何件かのお話がございましたので、さらに戻りましてからひとつ確かめてみたいと思います。
  52. 山花秀雄

    山花委員 私は、公式の席上ですから、ここではっきりしていただきたいと思うのですが、病院に入院していまだ呻吟をされておる方、回復をせず自宅で療養をされておる方、お金が来ないで立てかえ払いをして、これ以上もう払えないような窮状に立っておる方、名前を言いますと、豊島さん、山田さん、横田さん、それからまた一件あらわれてきたのですが、小泉さん、これは大工さんでありますが、これらのうちへ何日以内に防衛庁から話し合いに行かれるか、おたくの補償係のほうから話に行かれるか、誠意があれば答弁ができるはずです。ここではっきり答弁してください。
  53. 小野裕

    小野説明員 ただいま御指摘の方々に対しましては、さっそく今明日中に係員を伺わせます。
  54. 山花秀雄

    山花委員 時間が制限されておりますので、あまりしつこく質問をいたしませんが、私がなぜこの原町田の問題をこういうように質問したかと申しますと、今度の事件の解決をやはりすみやかに促進していただきたいから質問をしたのであります。  そこで、この際はっきりしていただきたいことは、この種事件に対し防衛庁がアメリカ当局と話し合いをして補償する項目をこの公式の委員会において明らかにしていただきたい。どういう問題だけを国としてアメリカと相談をして補償するのだという点だけを、項目的でよろしゅうございますから、ひとつ明らかにしていただきたい。
  55. 小野裕

    小野説明員 承知いたしました。これは書類をもちましてお届けいたしたいと思います。
  56. 山花秀雄

    山花委員 これは書類でなくてもわかるのじゃないですか。たとえば死亡者に対する死亡の何とか、けがした人は病院の何とか、あるいは慰謝料とか、項目は書類でなくてもわかるはずですよ。
  57. 小野裕

    小野説明員 ただいまお尋ねの点が人身被害の場合だけでございましたらお答えいたしますが、実は物件の賠償を含みますといろいろございますので、書類で差し上げましょうかと申し上げたのでございますが、人身関係につきましては、まず、なくなられましたお方に関連しまして、その遺族に対して遺族賠償、それから、なくなられました場合には、その遺族の方に対しまして慰謝料を差し上げます。それから、おけがをなさった方に対しましては、療養費を全額賠償、さらに、後遺症が残りますときには、障害賠償というような形でお見舞いを申し上げるわけであります。
  58. 山花秀雄

    山花委員 療養費の中には、栄養措置、医療費、付添看護婦の費用、それらを全部含めて、いわゆる常識的に医者にかかった期間の費用を全部払う、こういう意味ですか。
  59. 沼尻元一

    ○沼尻説明員 さようでございます。
  60. 山花秀雄

    山花委員 大蔵政務次官もおいでになっておられますが、先ほど安藤委員からもいろいろ質問をいたしまして、ある程度の予算を出さないとこの問題は解決できないということはおわかりになったと思いますが、ひとつ大臣に進言をしていただきたいと思いますが、御答弁願いたい。
  61. 鍛冶良作

    ○鍛冶説明員 予算が出ておらぬものは大蔵省で審議するわけにはいかぬと思いますが、しかし、出ますれば、御趣旨に沿ったことはやりたいと思います。
  62. 山花秀雄

    山花委員 いまこれは政務次官の御答弁ですから、大臣のところへいくとどうひっくり返るかわかりませんが、予算が出たら考慮するというまことに理解のある御答弁でございましたので、防衛庁のほうもちゅうちょなく、全面的に基本的に解決するようにひとつ的確な予算を四十年度に組んでお出しを願いたいということだけを申し上げまして、時間の関係がございますので、私の質問は一応これで終わることにいたします。
  63. 安藤覺

    安藤委員長代理 次に、前回の委員会において留保されておりまする派遣委員調査に基づく日韓関係諸問題について発言を許します。戸叶里子君。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもは七月議員派遣として李承晩ラインの視察にまいりまして、その後この委員会で何らかのめどをつけたいと思っておりましたが、いろいろな問題が出てまいりまして、なかなかそのところまで達しておりません。おそらくきょうも十分な時間がないのではないかと思いますが、この問題で一、二点だけ確かめておきたいと思います。  まず第一に、八月二十六日には六隻の漁船が拿捕されていたわけでございますが、その後二隻返されたというふうには聞いておりますが、聞くところによると、四隻が返されないで、また二隻のうち一隻はそのままになっているということも報道されておりますが、一体どれがほんとうでございましょうか。この点をまずお答え願いたいと思います。
  65. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 先週の土曜日に、韓国側の代表部より、宝幸丸、それから源福丸二隻を返すという通報がございまして、源福丸のほうは乗員がおりましたものでございますから自力で帰ってまいりました。前につかまりました宝幸丸のほうにつきましては、乗員がおらないものでございますから、どういうふうにして引き渡すかということについて打ち合わせをやっておりまして、こちらのほうでも絶えず督促しておりますが、現在承知しておりますところでは、まだその前につかまりましたほうの現実の引き渡しは済んでおりません。しかし、返すという意思表示は先週の土曜日には一緒にすでにございます。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 六隻の船のうちで源福丸だけを先に返したという、その理由はどういうところにあるのでしょうか。二隻返すなりあるいは六隻返すなりということができるはずだと思いますけれども、一隻だけ、しかも源福丸を選んで返したというその理由はどういうところにあるのでしょうか。
  67. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 特に先方は理由は申しておりませんが、おそらく、宝幸丸と源福丸の二隻が一番最近につかまったものでございまして、とりあえず、これが一番日韓関係を刺激しておりましたので、先方としてはこの二隻をまず返すということを政治的考慮から考えたんだろうと思うのでございます。そのうちで源福丸のほうは、乗員が三十六名おりまして、それが運転して帰れるので、とりあえず返した、宝幸丸のほうは、乗員がいない関係で、その物理的な引き渡しの問題についての打ち合わせがまだできていないということで、まだ物理的な引き渡しは済んでいない、そういうことのように了解しております。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣にお聞きしたいのですが、いまアジア局長がはっきりおっしゃったように、この二隻はごく最近で、しかも日韓会談を刺激した、こういうふうなことをおっしゃったわけですが、韓国の外交というのは大体そうだと思うのです。何かやってもらいたいときには日本の国を何かの形で刺激をする、刺激をする場合には漁船を拿捕する、こういう形で自分たちのほうに有利にしようとするのが韓国の外交だと思いますけれども、こういう点について椎名外務大臣はけしからぬことだとお思いになりませんですか。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もしそういうかけ引きでやるとすれば、まことに拿捕そのものがけしからぬのでありまして、それにまたいろいろな政略的な考え方を加味しておるとすれば、まことにけしからぬと思います。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことはお認めになって、それを黙認なさるのですか。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 黙認をしておるわけでは決してございません。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほど後宮さんがおっしゃいましたように、確かに、この二隻というのは、韓国のほうで自分たちのいろいろな条件を有利にするために政治的に拿捕したということが明らかでございます。この点はいまお認めになったとおりでございますけれども、そこで、この船を返された背後には、日本のいまの政府の要人が相当に動いて、そうしてこの船が優先的に返されたということも伝えられているわけでございます。ことに、親韓グループが政府に折衝し、韓国のほうと話し合って、そして返してもらったということさえ伝えられているわけでございますけれども、こういう点を外務大臣お認めになりますか。
  73. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私が就任しましてからはこれで二隻目でございますが、最初の宝幸丸でございますが、これにつきましては、表敬の意味で大使の訪問を受けましたときに、私は、いろいろ日韓の間に交渉案件があるのであるけれども、われわれはかような事件あとからあとから起こるのでは進められない、すみやかに返してほしいということを申しておきましたが、最近になってようやく返してもらった。源福丸につきましては、私は要人が特にそのために動いたというようなことは存じません。さきの宝幸丸も今回の源福丸も、とにかくけしからぬ、とにかくこれを返さなければわれわれとしては了解しにくい、こういうことでせっかくその実現と督促したことは事実でございますが、特に要人が動いた云々ということは私は承知しておりません。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、お伺いいたしますけれども、この前の前の委員会で私は問題にいたしましたが、韓国に対して純民間のベースで二千万ドルというものを一年間の据え置き、二年の延べ払いで大体きめてそれを発表されたと思います。それが、最近、どこをどうしたととか、二千万ドルが一年の据え置き、そうして四年間の延べ払いというように変わったように聞いておりますけれども、この辺のことは確かでございましょうか。それとも、二千万ドルの民間ベースは、さきに政府が御決定になったように、一年間の据え置きで二年の延べ払いという、その意思をお変えになっておらないかどうか、この点を伺いたいと思います。
  75. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 二千万ドルの対韓緊急援助を行なうことといたしまして、その条件につきましては、一応関係閣僚間で協議の結果、一年据え置き、二年の延べ払いということにいたしまして、これを韓国政府に案として示したのでございます。韓国側はこれに対しまして条件の緩和を強く要望してまいりました。そこで、目下政府部内におきましてさらに検討をしておるのでございまして、インドネシアに対して行なった同種の商品援助並みに条件を緩和するかしないかということについて目下検討中でございます。近いうちに閣議において協議いたしました上で最終的な決定を行ないたい、かように考えております。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、いま出されているインドネシア並みのその条件というものを検討中であって近く閣議で決定をしたいとおっしゃることは、いままできめられておりました条件というものは変え得る可能性があるということをお示しになるのですか。それとも、いままでどおりでいけると思うということですか。どっちに比重がかかっておりましょうか。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 別に対韓交渉に限らず、他国に対する経済援助の場合には、相手国とよく話し合いをいたしまして、そして向こうが受け入れるという了解のもとに計画を決定してきておるのでございます。それで、当初きめました一年据え置き、二年延べ払いというのは、一応先方に話し合うための案でございまして、まだ閣議の決定をしたわけでもございません。それで、これに対して向こうから非常に強い要望もありますので、この点は考えたほうがよかろうというような心組みのもとにただいま検討しておるような次第でございます。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣、ごまかされちゃいけないと思います。と申しますのは、はっきりと外交ルートを通して、一年据え置き、二年の延べ払いということはきめられ、発表されたはずです。私どもも、この委員会でその問題について、民間ベースの借款であるならばなぜ政府同士で話し合うかというような立場から質問をいたしました。そのときにはっきり、一年の据え置き、二年の延べ払いだということをお答えになっておるわけです。そのように外交ルートではっきりきめられたものが、その後検討をし直して、そうしてインドネシア並みにするとかというようにかってに変えられていいのかどうか。韓国との外交というものは大体こんなふうにしてやられているのじゃないかということを国民は非常に不安に思っているわけです。私自身でさえも驚きました。こういうふうな外交ルートできめられたものが、自民党の中のある人たちの動くことによってこういうふうに簡単に変えられていいものかどうか、これは基本的な問題だと思います。ですから、この問題だけでなくて、今後もあるし、また重大な先例をつくることでもあると思います。外交ルートがこんなふうにしてかってに変えられていいものかどうか、私はもう一度承っておきたいと思います。
  79. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまお話し申し上げましたとおり、この種のものは、相手国とよく話し合いをいたしまして、しかる上に決定するのでございます。そういう意味において、一応一年据え置き、二年延べ払い、こういう案を先方に提示をしたのでありますが、それに対して強い条件緩和の要望もございますので、この際これを緩和することに大体腹をきめまして、そして最終の決定を得べくただいま検討中でございます。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 私はきょうの外務大臣の御答弁に納得いたしません。なぜならば、外交ルートというものがそういうふうに無視されるというようなことが今後行なわれていくならばたいへんだと思いますのと、もう一つは、これは問題が韓国でございます。私どもが李承晩ラインを視察にまいりましたときに、現地の拿捕されている漁民の人たちの声はどうだったでしょうか。軟弱外交であっては困る、どんどん漁船が拿捕されているのに経済援助だなんていうことはけしからぬじゃないかという声が強く、そのことはこの委員会でも御報告したとおりでございます。ところが、それにも増して、その条件緩和というものが外交ルートを無視してやられたということになると、現地の漁民は黙っていられないと思います。ですから、そういうふうな人たちの声を代表して私はきょうは質問をしているわけですが、時間がないのでこの程度にいたしますが、こういう問題については、私は根本的な問題として了承しないことだけを申し上げておきたいと思います。  そこで、この漁船拿捕の問題を解決するには、今日の政府のそういうふうなあいまいな外交というものが災いをいたしておりますけれども、この前の委員会でも問題になりましたような具体的な今日の問題として、海上保安庁の巡視船というものの装備あるいは今後においての隻数をふやすというような、こういう御予定というものがあるかどうか。これは海上保安庁のほうでございますけれども、どの程度の計画をお持ちになっていらっしゃるかということ、そしてまた、予算をどの程度要求されているかということを簡単に説明していただきまして、もし長くなるようでしたら、あとで説明をしていただきたい、こういうふうに考えております。
  81. 今井栄文

    ○今井説明員 現在、韓国との関係におきまして李ラインを警備する巡視船につきましては、第七管区の巡視船を中心といたしまして、八管区並びに九管区の応援船を得まして、二十二隻を大体において李ラインの特別哨戒ということに当てております。韓国の海洋警備隊は、現在十三隻の警備船をもちまして逐次李ライン内に出てくるというような状況になっておりまして、私どもといたしましては、もちろん巡視船の全体が常時同海域内で活動するということは船の性質上不可能なことでございまして、したがって、それぞれ一定期間の交代制度をとっておるわけでございます。現在私どもの基本的な考え方といたしましては、一隻の警備艇に対して一隻の巡視船を常に配備して警戒するという、いわゆるワン・ツー・ワン・システムを採用いたしておるわけでございますが、最近警備艇の行動が非常に活発になっておるような状況でございまして、重要な地点におきましては、先方の一隻に対して二隻という、ワン・ツー・ツー・システムというものを部分的に採用いたしておるという状況でございます。なお、われわれとしては、地元の漁業関係者の御要望もございまして、現在他地区でもきわめて多忙な日常を送っておる巡視船ではございますが、でき得る限りの勢力を漁船保護のほうに当てたいということで、検討いたしておるような次第でございます。すでに現在一隻は最近において増配いたしまして、それが応援に行っておるという状況でございます。  なお、巡視船の予算でございますが、予算につきましては、詳細な面については後ほど先生に書面で御説明をいたしたいと思いますが、私どもとしては、従来の巡視船をできるだけ高速化する、御承知のように現在季ライン内に行っておる船は大体十五ノット程度が最高の巡視船でございますので、今度は少なくとも十六ノット以上の船をつくるというたてまえで、約十五億の巡視船の予算を来年度計上いたしておるような次第でございます。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 予算の面ではあとから書類にして出していただきたいと思いますし、現地からいろいろの陳情を受けてきておる問題点がまだありますので、その点はあとに回したいと思いますが、きょうは私はあと一、二点だけ原子力潜水艦のことについて伺いたいと思います。  政府から出されました「外国の港における合衆国原子力軍艦の運航に関する合衆国政府の声明」というのを見てみますと、「合衆国海軍は、通常、受入国政府当局に対し、少なくとも二四時間前に、その原子力軍艦の到着予定時刻及びてい泊又は投錨の予定位置につき通報する。」、こういうふうに書いてあって、「通常」、「ノーマリー」ということばが使ってあるのでございます。このことばを使っているのは、通報しない場合もあるという意味にとるのでございましょうか。それとも、どういうふうに解釈するのでしょうか。通報しない場合もあるのですか。外務大臣に伺いたいと思います。
  83. 竹内春海

    ○竹内説明員 理論的には、場合によっては通報がないこともあり得る、こういうことだと思います。
  84. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この合衆国政府の声明の中にもいろいろ問題があるわけです。このことはあとでこまかく伺うといたしまして、もう一つ伺いたいのは、「少なくとも二四時間前に」ということは、二十四時間より前ならどんなに前でもいいというように理解していいわけですね。  それから、もう一つは、日本ではすでに寄港を受諾したとなると、今度は実際に入ってくる二十四時間前にもう一度通告があるのかどうか、この点を伺います。
  85. 竹内春海

    ○竹内説明員 御存じのとおり、地位協定におきましては、米国の軍艦が施設・区域に入ります場合には通告を要しないことになっております。ただ、この原子力潜水艦につきましては、特別の取り扱いといたしまして、通常二十四時間、少なくとも二十四時間前に通告をいたします、こういう約束をしたわけでございます。したがいまして、二十四時間より多いことはもちろんございます。また、現実に入ってくる場合には、声明に言うところの通告がございます。
  86. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、伺いたいことは、この原子力潜水艦寄港地というのは、大体調べてみますと、大西洋には九カ国の二十四カ所になっており、太平洋では四カ国の七カ所のようでございますが、それらの国を見ますと、大体NATOの条約あるいはSEATOの条約に加盟をしている国のようでございます。そこで、スペインが寄港を認めているわけですが、スペインとアメリカとの間の関係は、何か特殊な条約を結んでいるわけでしょうか。どういうふうな形になっているんでしょうか。
  87. 竹内春海

    ○竹内説明員 私ども承知しておりまする限り、スペインとアメリカとの間に基地提供の協定があるようでございます。ただし、その中には、原子力潜水艦に関する特別の規定はない、このように承知しております。
  88. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、この日本の場合も、基地提供のあれはないわけですが、一応原子力潜水艦は認めるということになるんですね。スペインの場合は、基地提供の条約を結んでいて、原子力潜水艦寄港を認める、こういうことになるわけですね。それが一つと、それから、外務大臣に時間の関係でお伺いしたいのですが、いまお聞きのように、大体NATOなりSEATOなりに加盟をしている国に寄港をしているわけです。日本の場合には、政府の説明では、安保条約によって寄港を認めるということをおっしゃっているわけです。ところが、このNATOに加盟をしている国でも、デンマークは断わっているわけです。このことを外務大臣御存じだと思いますけれども、いかがでございますか。外務大臣に伺いたい。
  89. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 デンマークが断わったということは聞いておりますが、私の記憶するところでは、これは当初の、すでに十年近くも原子力潜水艦方々寄港しておりますが、当初の際でございまして、今日ではもはやそういうことがないようでございます。
  90. 戸叶里子

    戸叶委員 もはやそういうことはないというのは、どういう意味ですか。寄港を認めたのですか。
  91. 竹内春海

    ○竹内説明員 昨年デンマークの外務大臣がまいりました際に、記者会見でたしかで述べておると思いますけれども、この前断わったのは、原子力潜水艦が就航して間もなくのときであった、最近においては事情が異なっておると思うので、自分個人としては、受け入れても差しつかえないのではないか、このように申しております。現に、デンマークは、商船サバンナ号の入港につきましてアメリカと協定を結んでおるはずでございます。  それから、先ほど、スペインと日本との相違の点は、私、よく理解できなかったんでありますけれども日本の場合は、地位協定にはっきり、米国の軍艦は日本側が提供した施設に入れるという権利を包括的に与えておるわけでございます。スペインの場合には、原子力潜水艦についてそのような規定はないと私ども承知しております。
  92. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、いまお聞きになったように、デンマークは、個人としては外務大臣が認めてもいいと思うというふうな答弁で、まだ国としてはイエスの受諾を与えていないわけです。このことは問題であるかないかということはあとの問題になると思いますが、ここで問題になりますことは、日本政府自身がおっしゃっているのは、アメリカと日本との間には安保条約というものがある、したがって軍艦は当然入ってこれるのだ、ただ、原子力潜水艦というものは、日本の今日の国民感情から考えてみるならばいろいろ問題もあろうから、一応アメリカから通告するんだ、こういうふうな答弁で今日まで来たと思います。ところが、アメリカは、どこの寄港地に対しても二十四時間以前に、アット・リーストですから、少なくとも二十四時間前には通告しなくてはならないことになっているわけです。そうすると、日本の場合とほかの基地を提供している国とのこの通告には変わりはないじゃありませんか。日本の場合だけが何か通告しているようなことをおっしゃっていたのですけれども、そういうことじゃないではありませんか。
  93. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 NATOの諸国でも日本施設・区域に相当するようなものを特に別に約束しましてアメリカに提供しているものはあるわけでございますが、しかし、NATOの国のすべての軍港みたいなものがそうなっているわけではありませんで、現に、私よく存じませんけれども、デンマークなどには日本における米軍施設・区域に相当するようなものはないのじゃないかと思います。要するに、この二十四時間前に通報するというのは、施設・区域についてのことじゃなくて、一般的にアメリカが外国の港に入るときにはこうするということを言っているわけでございます。それを、日本の場合には、施設・区域であって実際はほかの艦船の場合には通告の義務がないのに、通告するということが特殊である、かような説明をいたしておるわけでございます。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 いまのあれはちょっとわかったようなわからないような問題なんですけれども、私どもがたいへんにふしぎに思いますのは、アメリカが原子力潜水艦寄港させる場合の声明として、「通常は」、「少なくとも」——私がとってもひっかかりますのは、ノーマリーということば、通常ということばと、少なくとも二十四時間以前にということばが非常に気にかかるわけです。したがって、これを逆に読めば、あるときには通報しない場合もある、それから、もう一つは、二十四時間前であるならばどんなに前でもいいということ、この二つに解釈できると思います。しかも、このNATOの加盟国でデンマークさえも断わっている。そうなってまいりますと、日本の場合でも、このいろいろな国民感情から考えてみて、デンマークと同じように、二十四時間よりもずっと前にそういうことを言ってきたのだけれども、断わる権利というものはあるのじゃないか、それとも、もっと安全性が確かめられなければならないのに、それを引き延ばしたり断わることによって特別日本に不利なことがあると考えられるようなことが起きたのかどうか、こういうことを伺いたい。NATOの中のデンマークが断ることによって何か特別不利な問題があったのかないのか、この寄港を認めている国は非常に有利であるとか、何かそういうふうなことがあるのかないのか、この点を伺ってみたい、こういうふうに思いますが、外務大臣いかがでございますか。
  95. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 デンマークのアメリカと持っております条約上の関係につきましては、私、手元に十分の資料を持っておりませんで、先ほど申し上げたとおりはっきりしたことはちょっと申し上げかねますが、少なくとも日本とアメリカとの条約関係におきましては、従来御説明申し上げておりますように、日本の開港に対してはアメリカの艦船は入港する権利が、これははっきり協定上あるわけでございます。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカがいろいろな国に寄港する場合に、こういうふうな点を気をつけるんだとか、それから、こういう点はこうするんだという声明を出していますね。それが日本にも来ております。日本の場合に違う点は補償の問題だけです。補償日本の場合はこうするんだ、ほかの国と違うようにしてあるわけです。この問題は次の機会に伺おうとは思っておりますけれども、これを見ましたときに、何か特別の不利な点がなければ、日本だって断わり得る可能性がデンマークと同じようにあるんじゃないかということを考えたのですけれども、デンマークと違って日本の場合には断われないのだというのは、施設・区域を提供しているからとおっしゃるのですか。すると、デンマークの場合はNATOの条約の加盟国ですよ。そういうのとどこが違うのですか。その点をはっきりさしていただきたい。
  97. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 施設・区域を提供するということと一般的な相互防衛の関係に入るということとは観念上別のことでございまして、わかりやすくするために申し上げますと、現に、安保条約の改定問題がやかましく議論されてきたごろには、有事駐留とかいうような考え方も一部にあったわけでございます。そういう場合には、これは防衛関係は結ぶけれども、常時米軍は駐留させない、つまり施設・区域は提供しないという考え方だっただろうと思います。したがいまして、NATOの加盟国であるから当然に日本安保条約上の施設・区域に相当するものがどこの国にもあるということにはならないわけであります。たまたま私デンマークの例のことはよく存じませんけれども、あまり有名な軍港も聞いておりませんので、あるいはそういうものはないのじゃなかろうかという想像をさっき申し上げたわけでございます。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がないですから、私はいろいろ聞きたいのですけれども、次の機会にしますが、ただ一点確かめておきたいことは、NATO、SEATOに加盟していない国、それからアメリカ・スペインのような軍事的な何か協定を結んでない国では、原子力潜水艦寄港というような問題を持ち出されたときに断わることは当然できますね。そういう場合には、特別の軍事協定を結ばなければ、あるいはNATOなりSEATOに参加しなければ寄港は認めないわけでしょう。この点だけをはっきりさしておいて、次の機会に私質問したいと思います。
  99. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 仰せのとおりでございます。
  100. 安藤覺

    安藤委員長代理 鯨岡兵輔君。
  101. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 戸叶委員から原潜問題についての質問がありました。私は自由民主党の立場から原潜問題について主として外務大臣にお尋ねをしたいと思います。時間があまりありませんから、きわめて簡単に質問をしていきたいので、明確なお答えをいただきたいと思います。  初めは文書によって事務上の問題について伺いますが、先般資料としていただきましたエード・メモワール、覚え書きの九ページによりますと、地位協定が適用されない場合には何々——いわゆる損害補償について、まず第一に、地位協定十八条の5(a)によって防衛施設庁米軍当局と行なうことになる、こういうふうになっているのですが、地位協定が適用されない場合には云々ということが書いてあるのですが、地位協定が適用されない場合というのはどういう場合ですか。
  102. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 原則論をまず申し上げますが、原子力潜水艦でも一般のアメリカの艦船の場合と同じ思想から来ているわけでございまして、地位協定の第十八条の補償に関する規定によりますと、一定の場合には地位協定に規定されておる補償の条項じゃなくてほかのアメリカの法律が適用されるとかいうことになっているわけであります。これは何かといいますと、小規模の海事損害を除くそれ以外の一般的な海事損害でございまして、これは地位協定の適用がないことになっておりますので、原子力潜水艦の場合にも同様というふうにいたしたわけでございます。
  103. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、地位協定が適用されない場合には、米国内法によって合衆国の公船法だとかあるいは合衆国の海事請求解決権限法だとかいろいろありますけれども、それらというものはどういうのかということを資料によって提出しておいていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  第三番目には、米国内法によって補償請求をするという場合には、被害を受けたものが直接やるのですか、それとも国家が代表してやるのですか、その点についてお答えをいただきたい。
  104. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 一般的に申しまして、従来は個人がやるということが原則になっておりました。しかし、個人が直接向こうに行くのは非常に困難であるという事情があるわけでございますから、そういう場合には日本政府がかわって、防衛施設庁にいろいろ請求を出してやってもらうという道が法律上開かれております。しかしながら、今度かりに原子力災害みたいなものが起こりました場合には、従来のそういう個々の請求案件みたいなものの取り扱いでは十分でないということがあり得ますので、外交交渉によっていつでもやり得るということで、今度の覚え書きにも示されているとおりに、そういうような形にいたしたわけでございます。
  105. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、念を押すようですが、個人の被害は、個人がやるのではなしに、外交交渉によって政府が代行してやってくれる、こういうことですか。
  106. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 なしにというと語弊があるかもしれませんが、外交交渉を本則に立てて、もし個人でどうしても自分でおやりになりたい方がある場合には、その道は開かれておるということでございます。
  107. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 核兵器持ち込みについて、これを日本に持ち込まないということ、日米間にはそういうことについて意思の合致している点がどういうふうになっているかということを外務大臣にお尋ねしたいと思うのであります。当委員会はもちろんですが、内閣委員会あるいは参議院の外務委員会において何度もなされた政府の回答によってすでに明白なことではありますけれども、私は、先ほど申し上げましたとおり、自由民主党の立場からあらためて再確認しておきたい、こう思うのであります。わが国核兵器持ち込みについて絶対にこれを拒否すると何度もこれを明白に表明しております。また、他方米国政府は、以上の日本の意思を尊重して核兵器持ち込みを強要するようなことはしないと言明していると思うのですが、このことについて、日米両国政府の問でどのように了解され、どのように確認されているか、さらに明確にひとつお答えを願いたいと思うのであります。
  108. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 安保条約の付属文書におきまして、装備の重要なる変更という場合には必ず事前協議する、こういうことが明記されております。装備の重要なる変更は、すなわち端的に申しますれば核兵器持ち込みというような場合を当然さすのでございまして、こういう場合には事前協議をする、事前協議の場合に日本がこれを欲しない場合にはその意思を無視して実行しない、こういうことになっておるのでありまして、日本といたしましては、たびたび総理が国会において言明しておるごとく、核兵器持ち込みを認めない、こういう方針を明らかにしておるのでありまして、このことはアメリカ側も先刻御承知のはずでございます。かりにこの問題を事前協議をしてまいりました場合には、それに対して拒否をする、入れさせない、こういう方針が確立しておる次第でございます。
  109. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 外務大臣の御答弁は主として安全保障条約六条に基づく交換公文についてのお話でありますが、そのほかに、一九六〇年の岸・アイゼンハワーの共同コミュニケ、すなわち、「大統領は、総理大臣に対し、本条約のもとにおける事前協議にかかる事項については、米国政府日本政府の意思に反して行動する意図のないことを保証した。」、こういうことがあるのですが、それも含めて考えてよろしゅうございますか。
  110. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようでございます。
  111. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それでは、もう一つ。私ども考えから言うと、去る三十年五月三十一日に、当時重光外務大臣と駐日米国大使のアリソン氏との間に、米国日本国の承諾なしには日本を原水爆の基地としないということを口頭で約束しているようであります。この口頭で約束したことの国際法上における権威、あるいはまたそのときに約束した口頭の約束が今日でも効果的であるかどうかという、この二点について外務大臣から明確にお答えを願いたいと思います。
  112. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは交換公文にこの趣旨がはっきりとあらわれておるのでありますから、今日においてもこのことは守られておるわけであります。
  113. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 重光さんとアリソンさんとの口頭の約束は交換公文にはっきりあらわれているというお話ですが、そうですか。
  114. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 そういういきさつが前にあったこともありましたので、それを念頭に置いて、安保条約の改定の際には、その趣旨をどこかへ盛り込む必要がある、それはこの交換公文の事前協議ということで盛り込まれておるわけでございます。
  115. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、そのときの口頭の約束は、これは別として、そういう精神が交換公文の中に入ったのだから、交換公文が生きているのであって、その約束はもう死んじゃったのだ、こういうことですか。
  116. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 旧安保条約が死んでおると同じ意味で、その口頭の約束ももう死んでおるわけでございます。新しい形に化体されて生きておるといえば言えるわけでありますが、そのものだけを取り出して言えば、死んでおるわけでございます。
  117. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それはちょっとおかしいんじゃないかな。なおひとつ御研究を願いたいと思います。これは交換公文に盛り込まれてあるから死んじゃったというような御解釈は、私はちょっと納得できないものがあります。そうすると、口頭の約束みたいなものはできないことになりますが、これは御研究を願いたいと思います。何かありますか。
  118. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私はそういう誤解が起こらないように答弁申し上げたつもりでありますが、旧安保条約が死んでおると同じ意味においては死んでいる、ただし旧安保条約は新しい安保条約に化体されて生きているわけでございますから、その昔の口頭の合意というのは事前協議というものに化体されて生きているということでございます。
  119. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それは私はやはり解釈が違います。それは旧安保条約は新しい安保条約になって生き返っているのですからね。生き返っているというのはおかしいかもしれないけれども、とにかくあるのだから、前の約束はそれだからなくなっちゃったというふうにお考えになるのはおかしいと思いますので、なお研究を願いたいと思います。  私としては、以上の三つの理由、すなわち、安保条約、それから岸さんのコミュニケ、それから重光さんの口頭の約束、そういうことによって、核兵器わが国への持ち込みは法的にも規制されておって、日本政府の明示の許諾がなければこれを持ち込むことができないと解釈するのですが、政府の所見をさらにあらためてお願いをいたします。
  120. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御説のとおりであります。
  121. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 私の考えのとおりだという明確な答弁が得られましたので満足いたします。  そこで、政府はたびたび核兵器持ち込みは絶対にないと言う。このことについては米国を信頼するのだと言うております。悪口を言う人は、信じなさい信じなさいというこのごろのはやり歌を言うて、そんなことはおかしいじゃないかと言いますけれども政府米国を信頼するという基礎は、前述した二つの文書並びに一つの口頭による約束、そういうことに基づいて信頼するのだと解釈してよろしいですか。
  122. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、日米安保条約というものを締結した相手方でございます。相手方をあくまで信頼して初めて条約というものが生きてくる、かように考えますので、さよう御了承願います。
  123. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、以下私が述べるような考え方が間違えているかどうかということをひとつ明確にお示しを願って、この点を明らかにしておきたいと思うのですが、政府は、日本の安全や極東の平和のために必要であるとの見地から日米間に安全保障条約を結んでいる以上、その条約に示されたことについて約束を守らなければならない、約束に示されたより以上のことを相手国がするのではないかと疑うことはしない、そんな方針のように受け取れるのであります。私は、政府のその考え方というか、態度は当然のことであると思うのであります。核兵器を持ち込まないということについては、すでに言明があったとおり、幾つかの国際的な約束があるのであります。この国際的な約束を誠実に履行するかしないかは、もはや当事国の誠意を信頼するよりほかに方法はないのであります。現在の国際社会には、まことに残念なことですが、超国家的な強制執行機関が存在しない。強制執行機関が存在しない以上は、現在の国際社会では、いかなる条約も、また国際的な約束も、これの履行は終局には当事国の誠意を信頼するよりほかに方法はないと思うのであります。そしてそれが現在国際社会の特質であります。法律に関することわざに、「条約は守らるべし」ということばがあります。それは国際法の基本の原則であります。しかし、「条約は守らるべし」、この法諺、法のことわざが履行されるかどうかは、まさに相手国の履行意思を信頼するかどうかということにほかならないのであります。したがって、原子力潜水艦核兵器を搭載して日本の港に入港するかどうかは、しないと約束した条約や国際的約束を信頼する以外に方法はないのでありまして、政府米国を信頼するというのは、米国との条約や約束を信頼するという意味で当然であると思うのであります。そこで、政府にお尋ねしたいことは、残念ながら超国家的な強制執行機関の存在しないことを特質とする現在の国際社会においては、当事国の誠意と信頼以外に条約や約束の履行の保証はないと考える私の考え方について、それでいいのか悪いのか、政府の明確な所信を伺いたいのであります。  さらに言うならば、この局面に立って、さらに屋上屋を重ねて何らかの取りきめとか協定とか口上書の取りかわしとか、そんなことをする必要を感じますか。そんな必要は少しもない。必要がありますか。たとえばサブロックを持ち込まないということについて特別な約束をしなければならないというように考えるか。そんな点についてお答えを願いたいと思います。
  124. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今日の状況、現状におきましては、超国家的な機関というものはないのでありますから、相手方をあくまで信頼する以外にはない、かように考えます。その点におきましては御説のとおり私は考えます。  それから、すでにそういうような大前提のもとに両国の関係が成立しておる限りにおいては、あらためて、サブロックを持ってこないとか、あるいはその他の核兵器を持ち込まないというようなことをそのときどきに言うということは、そういう大きな信頼のもとに両国が特別の関係を構成しておるということを忘れるか、あるいはそういうことに対する一つの危惧の念を特に強調するようなことになりまして、私は、かえってマイナスである、かように考えるわけであります。
  125. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 それでは次に移りますが、「通常の潜水艦」ということばが盛んに使われております。この間いただいたいろいろな文書の中にも「通常の潜水艦」とある。ポラリス潜水艦などは通常でないらしい。今度の潜水艦、ノーチラス型というか、そういうものは通常の潜水艦、こう言うのですが、その場合の「通常」というのは何か。先ほど外務大臣がおっしゃった装備の重要なる変更、これは安保条約、交換公文に言う装備の重要なる変更でない潜水艦、動力として原子力を使っても、それは通常であって、核兵器を持っていない潜水艦という意味での通常かどうか。通常の潜水艦とはどんなものか、その解釈ですね。それを伺いたい。  なお、重ねてお伺いいたしますが、その場合、通常とは何かということについての念を入れた取りきめなどをする必要はないと私は考えるのですが、政府はどう考えますか。
  126. 竹内春海

    ○竹内説明員 「通常の」といいますのは、原文英語をごらんいただきますとSSNとなっております。ただSSNでは国民一般の御理解をいただけない、このように考えましたので、通常の原子力潜水艦、このように訳したのでございます。  御存じのとおり、アメリカの原子力潜水艦は、大別いたしまして、ポラリス潜水艦と、それから私どもの申します通常の原子力潜水艦と、この二種類でございます。そこで、ポラリス潜水艦ではない、そういう意味で通常の原子力潜水艦、こう申したほうが国民の皆さんによりよく御理解いただける、このように考えてそのように訳しました。なお、核兵器との関連におきましては、そのアメリカ側の覚え書きにつきまして、先ほどの岸・アイゼンハワワー共同声明の趣旨を原子力潜水艦のところに関連しましてここで再確認しております。これでカバーされておるものと考えております。
  127. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、今度入ってくるということを許諾した潜水艦サブロックを積んできた場合には通常の潜水艦でないと考えてよろしゅうございますか。
  128. 竹内春海

    ○竹内説明員 この文章の構成から申しますると、最初のほうの通常の原子力潜水艦というのはSSNの訳でございまして、核兵器を持っておるかおらないかということには直接には関係ないわけでございます。ただ、覚え書きの第一ページ目の後段におきまして、核兵器を持ってくる場合には事前協議になるから、その場合には日本政府の意図に反して行動することはないということを再確認しておりますので、そういうものは入ってこないと私どもは了解しております。
  129. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 そうすると、サブロックは核弾頭を積んだ魚雷ですから、それを積んできても、通常の潜水艦ではあるがそのときには事前協議の対象となる、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  130. 竹内春海

    ○竹内説明員 そのように了解しております。
  131. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 わかりました。  最後の質問をいたしますが、今度日本の港に寄港することを政府が許した米国原子力潜水艦ノーテラス型そのものは核兵器ではない。核兵器でない以上、安保条約事前協議の主題とはならない。だから、この寄港を拒否することはできない。サブロックは核弾頭をつけた魚雷である。しかし、これは現在の段階では相当進んでいるかもしれないけれども研究中のものである。研究が一応完了すれば、いま通常の原子力潜水艦と言われているこのノーチラス型潜水艦に装備されるかもしれぬ。とすれば、それは通常の原子力潜水艦ではなくなって核兵器である。そうすれば、それは当然安保条約にいう重要なる装備の変更であり、当然事前協議の主題となるべきであって、それはそのときのことであると私は思うのであります。米国はないしょでこれを積み込むかもしれない、事前協議をきらってないしょで重要なる装備の変更をするかもしれない、サブロックを積み込むかもしれない、それが心配だから、そうしないという証拠を見せろ、そんなことを言うくらいならば条約を結ばなければいいのであって、条約を結んだ上でそんなことをとやかく言うのは、上品な国の態度ではないと私は思うのであります。原子力潜水艦そのものが危険ならば、第一乗り組み員が承知しますまいし、港がはなはだしく汚染される危険があるならば、いままで寄港した数多くの港から問題が起こるべきではないか。そういう点については、ことわざに言う、それはあつものにこりてなますを吹くのたぐいである。日本原子爆弾でやられたから、これはこわいという気持ちはわかりますけれども、だからといって、いまそんなことを言うということは、あつものにこりてなますを吹くのたぐいであって、時代の進歩に背を向けた保守的なやり方であると言わなければならないと思うのであります。しかし、問題なのは、それにしても、長距離原子爆弾を積み込んだポラリス型潜水艦だの、あるいは対潜用とはいうものの原子魚雷サブロックを積み込むことのできるノーチラス型潜水艦だの、気味の悪いものが、一方において原子爆弾の実験禁止の条約ができて幾らか安心している今日、あらためてあらわれてくるというようなこと、そこに国民の心配があるわけであります。そこで、政府は、まだまだ安心はできないが、そういう潜水艦が他国、たとえばソ連にもあって、それがどこそこにおる以上、それに対抗して米国潜水艦もそれぞれ適所に配置しなければ力のバランスが破れて世界の平和も極東の平和も保てないんだ、日本の安全と極東の平和のために条約を結んでいるならなおさらのこと、この米国考え方に自主的に協力することがすなわち日本が積極的に日本の安全を保つ道なんだ、そしてそれが日本の相互信頼を増す道なのだと日本政府の所信を強く内外に表明すべきではないかと私は思う。各委員会での質問に対する答弁がどうもこまか過ぎて事務的で、汚染がないとか、そういうこまかいことばかり言っておって、日本の外交が日本の利益のために骨身を削って汗を流しているその気魂がうかがえないのがまことに残念であります。条約があることだからなおさらのことでありますが、こうすることが日本の利益なのだと、許される範囲内で内外の情勢を国民に説明して国民を納得させる積極的態度を政府に要望したいのであります。この会議の冒頭に外務大臣から所信の表明がありましたけれども、この機会に力強い所信の表明を願いたいと思うのであります。
  132. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 詳細御説を承りましたが、一々ごもっともでありまして、何らこれに加除訂正すべきものがございません。そのとおりであります。
  133. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員 終わります。
  134. 安藤覺

    安藤委員長代理 野原覺君。この際野原さんに申し上げますが、外務大臣は四十五分に退席せられねばならぬ公務がございまして、まことに恐縮ですがそのおつもりでひとつ御質問をお願いいたします。
  135. 野原覺

    野原(覺)委員 原子力潜水艦寄港の問題につきまして重要な国会審議をする中で、外務大臣が途中で退席をしなければならぬということを私はきわめて遺憾に思うのです。しかも、閉会中の審議でもございますから、この委員会が十日にあるということは、これはすでにきまっておることですから、そうなれば、外務大臣の国会に対する責任は国政の審議にあるのであって、国政の審議という立場からいけば、私は、このような外務大臣の日程をつくられるということに対して大きな不満を覚えるのであります。  時間もありませんからお尋ねをいたしますが、先ほど来自民党の委員との間に質疑応答がなされておりましたが、この質疑応答を私は承っておりましてますますわからなくなってきた。まず第一にわからないのは、いま自民党の委員のお尋ねになりましたこの通常の原子力潜水艦ということです。政府側の御答弁によりますと、通常の原子力潜水艦、これは、まあ口上書、エード・メモワールあるいは情報文化局の発表すべてにこれが出てくるわけでございまして、私もこれは非常に疑問に思ったのでございますが、通常の原子力潜水艦とは何か、こういうお尋ねに対して、ただいま政府側は、SSNのことだ、こういう御答弁があった。SSNと書きますと国民の理解がしにくいから通常と直したのです、こういう御答弁もあったのであります。そこで、私はお尋ねいたしますが、では、通常の原子力潜水艦がSSNならば、通常でない原子力潜水艦というのがあるでしょう。何でございますか
  136. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 SSBN、すなわちポラリス潜水艦のことでございます。
  137. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、通常の原子力潜水艦はSSN、通常でない原子力潜水艦はSSBN、こういう定義を下されますが、この原子力潜水艦を持っておる国はアメリカなんです。アメリカでもそのような定義づけをしておるのかどうか、お尋ねいたします。
  138. 竹内春海

    ○竹内説明員 先ほど大臣から申し上げましたとおり、ポラリスはSSBNでございます。いまひとつ、一隻ございますSSGNというのがございます。これはレギュラスという短距離のミサイルを積んでおる原子力潜水艦でございます。そのほかに、私ども申しますいわゆる通常の原子力潜水艦、これがSSN。三種類ございます。一隻のレギュラスを積んでおるものを別といたしまして、大別いたしますと、ポラリス潜水艦とSSN、通常の原子力潜水艦の二つでございます。
  139. 野原覺

    野原(覺)委員 私の質問に答えてもらいたい。私はそういうことを聞いていないんですよ。アメリカでも、通常の原子力潜水艦はSSNのことだ、SSN以外の原子力潜水艦は通常でない原子力潜水艦だ、そう言っておるのですかと聞いておる。いかがです。
  140. 竹内春海

    ○竹内説明員 通常でない原子力潜水艦とは言っておりませんで、やはり、ポラリスタイプの潜水艦、こう申しております。
  141. 野原覺

    野原(覺)委員 SSNのことを通常の原子力潜水艦とアメリカでは言っておりますか。
  142. 竹内春海

    ○竹内説明員 そうは申しておりませんで、SSNそのままを使いますか、あるいは、攻撃用原子力潜水艦、こういうふうに申しております。
  143. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは外務大臣にお尋ねしますが、国民に理解させることができますようにというので通常の原子力潜水艦とあなたのほうでかってに変えてある。あなたはいま政府委員答弁をお聞きになったですか。アメリカは言っていないのですよ、通常の原子力潜水艦とは。私はここにアメリカの口上書の英文を持っておる。この英文のどこにも書いてない。英文のどこにも書いてないのに、今度和訳のほうを見ると、「通常の原子力潜水艦」としてある。英文では原子力潜水艦(SSN)と書いてある。それを国民向けの日本語に直した場合には「通常の原子力潜水艦」としておる。自民党員が質問したように、通常のということは何事もないのだ、心配は要らんのだ、こういう印象を与えるような作為的な訳を出しているじゃありませんか。これは私は国民に対するたいへんな愚弄だと思う。国会をばかにしておりますよ。私どもは英文を要求するから、英文が出るから、対照してみるからわかりますけれども、新聞にも「通常の原子力潜水艦」ということで、通常とは何でもないのだというふうに、アメリカも言っていないようなことをかってに、原子力潜水艦を持たない日本がそういうことばを使って、作為的に国民に何事もないのだというごまかしをやろうとするこの態度を、私は許すことができない。全く国会をばかにしておる。どう思いますか、外務大臣
  144. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 作為的に国民をあざむくというような意思で「通常の」ということばを用いたのではないのでございまして、原子力を推進力にしておるにすぎないというような意味を含めて「通常の」と、こうわかりやすく翻訳したのだろうと思います。その点は決して国民をあざむくとかあるいは国会を軽視するとかいうようなことは毛頭ございませんから、どうぞ誤解のないようにお願いいたします。
  145. 野原覺

    野原(覺)委員 だろうと思いますとは何ですか。あなたの責任でこの翻訳は出てきたのじゃございませんか。口上書要旨というのが出てきたのでしょう。アメリカ大使館からの口上書要旨にはないのですよ、「通常の原子力潜水艦」というのは。アメリカが使ってないものを翻訳していいのですか、いかがですか。アメリカの原文にないものを日本語に直すときにかってに直していいのですか。こういう重大な文書を。いかがですか。いいならいいとおっしゃってください、外務大臣
  146. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ差しつかえないと思います。
  147. 野原覺

    野原(覺)委員 よろしゅうございます。おそれいった外務大臣です。これは、私、時間もありませんから、あらためてあなたの責任は糾弾したいと思う。  そこで、防衛庁にお尋ねいたしますが、このSSNにはどういう型の種類がございますか。
  148. 海原治

    ○海原説明員 一般にSSNとして分類されておりますものの形による区分は七つございます。もしよろしければ全部申し上げますが、資料で提出したいと思います。
  149. 野原覺

    野原(覺)委員 参考までに、あなたの知っておるだけ申してもらいたい。
  150. 海原治

    ○海原説明員 先ほどのSSNでございますが、これは別名ではアメリカ海軍におきましてはアタックタイプということで分類されております。この第一艦が、最初に原子力の炉をつけましたノーチラス、これは一隻でございます。次に、これの二番艦としましてのシーウルフというのがございます。これも一隻でございます。三番目にはトライトンでございます。これも一隻でございます。その次に、四番目にタリビーというのがあります。これも一隻でございます。その次にはスケートの型、これは四隻。その次がスキップ・ジャック、これが六隻。最後が、現在この型にきまりまして建造中のスレッシャー型。スレッシャー型は四隻就航いたしましたが、御承知のように一隻沈没しております。この三隻の就航の月日はことしの一月でございますが、その後たしか二隻程度就役しておりますので、SSNの合計は現在十九隻でございます。
  151. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、これからわが国寄港してくるその原子力潜水艦ですね。これは防衛庁にお尋ねしますけれども、SSNの何型になるわけですか。
  152. 海原治

    ○海原説明員 これから寄港してくる船の型につきましては、全然予測がつきません。
  153. 野原覺

    野原(覺)委員 外務大臣、あなたのほうは情報文化局発表の二枚目にこう書いてあります。いいですか。「日本寄港することとなった米国原子力潜水艦は、いわゆるノーチラス型の通常の原子力潜水艦であって、ポラリス型の潜水艦ではない。」と書いてある。いま防衛庁の説明を聞きますと、ノーチラス型の通常の原子力潜水艦ではないようですね。この情報文化局の発表はうそを書いている。日本寄港することのできる米国原子力潜水艦はSSNだ。SSNにはノーチラス型もあれば、スキップ・ジャック型もあれば、この前問題を起こしたスレッシャー型もある。いまアメリカの海軍にはノーチラス型というのは一九五四年のたった二つしかないじゃないですか。試作艦として、実用艦ではなしに研究のために使った軍艦が二つしかない。したがって、もちろんこれにはサブロックなんか積まないことになっている。何事もない軍艦だ。ところが、このSSNが日本寄港するのに対して、ノーチラス型の通常の原子力潜水艦寄港するというこのことは間違いではないのですか。間違いなら間違いとはっきりしたほうがいいですよ。情報文化局の発表のこの文章はうそを書いているじゃありませんか。外務大臣、どうです。
  154. 海原治

    ○海原説明員 私の御説明に関連しましての御質問でございますので、委員長の許可を得まして私からお答えいたします。  私は、先ほどからSSNにつきましての御質問がございましたので、このSSNの中でどの型が来るかということについてはわからない、こういうことを申し上げました。外務省の発表は、先ほどアメリカ局長からもお話がございましたように、SSNが来るということだけでございまして、SSGN、すなわちレギュラスを搭載しているハリバット、それからポラリスを搭載しておりますポラリス潜水艦、これは来ないということでございます。  さらに、ノーチラスは二隻ということを先生おっしゃいましたが、ノーチラスという船は一隻しかできておりません。しかし、従来この国会の審議を通じまして、いわゆるノーチラスタイプの原子力潜水艦ということで取りまとめておりますものは、SSNタイプの船を全部総称しております。したがいまして、いわゆる通常の原子力潜水艦というふうに先ほど御質問がございましたけれども、「通常の」ということばが入りましたのも、これは、普通には、潜水艦というものは敵の軍艦を攻撃するもの、こういうことで一般的には観念しておりますが、ポラリスという潜水艦は敵の軍艦を攻撃するのではございません。中距離の弾道弾と一般に言われますようなミサイルを発射するような潜水艦でございますので、一般の方々には通常の潜水艦と言ったほうがわかりがいいということでそうなったものと私どもも解釈しております。そういうことでございますので、繰り返して申し上げますと、今後寄港するであろうSSNタイプの船の中でどのタイプのものが来るか、それはそのときになってみなければわからない、そういうふうに御認識になっていただきたい。
  155. 野原覺

    野原(覺)委員 どのタイプの船が来るかわからないのに、ノーチラス型と断定するのは間違いじゃないか。ノーチラス型というのは、私の調査では二隻だ。ノーテラス号というのは一隻しかない。これは試作艦としてアメリカがつくっておる。SSNというのは、あなたが先ほど答弁したでしょう。七つ型の種類があるでしょう。その七つある型の種類の一つがノーチラス型じゃないですか。そのノーチラス型が来るのですか。それが来るのだと言うのは間違いじゃないですか。そういう断定は間違いじゃないですか。いかがでしょう。
  156. 海原治

    ○海原説明員 私の御説明が不十分で申しわけないのですが、ノーチラスという名前のついた船は一つしかございません。しかし、従来政府が説明しております。その前にいわゆるということばをつけまして型をつけましたいわゆるノーチラス型の原子力潜水艦というものは、先ほど申しましたように現在十九隻就役しております。アメリカではSSNと言っているものでございます。したがいまして、今後日本寄港するものは、このSSNのいわゆるノーチラス型の原子力潜水艦。ノーチラステラスという名前のついた原子力潜水艦のほかに、先ほど申しましたようなタイプがございます。それを全部総称している、こういうふうに御了解願いたいと思います。
  157. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、なかなかあなたの意見は珍説ですよ。アメリカでもSSNのことをノーチラス型と呼んでおりますか、教えてください。これはアメリカの問題なんです。アメリカでそのSSNを総括してノーチラス型と呼んでおるのですか、いかがです。
  158. 海原治

    ○海原説明員 防衛庁の私どもとして承知しております限りにおきましては、アメリカでは別にノーチラス型とは呼んでおりません。
  159. 野原覺

    野原(覺)委員 これは、外務大臣、お聞きのとおり、あなたのほうはアメリカで言わないことをかってに、国民にわかりやすいという名のもとに、国民をごまかそうとして、この公文書というものは至るところ作為されておる。通常の原子力潜水艦というものはありはしない。日本寄港を求めてきておるのはこのSSN型です。これをしいて日本語に訳するならば攻撃型原子力潜水艦。アメリカでは攻撃型原子力潜水艦に対して戦略型原子力潜水艦ということばがある。これをポラリス原子力潜水艦と言っているので、サブロック、核爆雷を使って攻撃をする潜水艦を攻撃型原子力潜水艦。アメリカで使うようなことばをなぜ使わぬのですか。アメリカのSSNが日本人にわかりにくいというならば、日本語の攻撃型といういいことばがあるじゃありませんか。これを使わぬで、とんでもない通常の原子力潜水艦などというごまかしをしてきておる。こう言って、何とかしてこの原子力潜水艦寄港を実現させるためにごまかそうというのがあなた方の態度であります。私は久しぶりに外務委員会にやってきて、あなたの発言要旨のプリントを配っていただいて、先ほど初めて説明を聞きました。実はもうおそれ入ってしまった。あの説明を承りまして、もうお話にならぬです。たとえば、一々申し上げませんけれども、依然として、十年間に一回も事故がなかったから安全だと言う。十年間に一回の事故でもあってみなさい、大へんです。十年間に一回の事故もなかったと言いますけれども、何回も事故があったじゃございませんか。時間がありませんからきょうは指摘いたしません。あちらこちらで衝突をしたり、スレッシャー号が沈没したり、事故があったじゃありませんか。それを、一回の事故もなかったと言う。もちろんこれは人命に与える大きな被害事故、そういうものがなかったことをさすのでしょうけれども、あったら大へんでございますよ。たった十年間に大した事故がなかったからということだけで安全だなどというようなことは、私どもは納得ができないのです。そのほか至るところ、あなたの説明を聞くと矛盾と撞着に満ちたものばかりです。  そこで、私はきょうは相当質問したいと思って用意をしたのですけれども、時間がないので、一点だけ重要な問題をお尋ねをいたしておきたいと思う。それは、原子力潜水艦寄港予定港は横須賀、佐世保というふうに公文書にも書かれておるわけです。外務大臣にお尋ねします。外務大臣は国務大臣ですから、私が外務大臣と指定したのに委員長は政府委員を立たせることはやめてもらいたい。これは横須賀、佐世保に入港することが予定されておるとございますが、これ以外の港には入港することはございませんか。非常に重要な問題です。
  160. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようなことは考えておりません。
  161. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは考えていないけれども、アメリカのほうはどうです。これは入港しないとあなたは保証ができますか。断言ができますか。
  162. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカの要求しているのはこの二港に限っております。
  163. 野原覺

    野原(覺)委員 ほぼとは何です。ほぼ二港と言いますが、それはほんとうに二港に限定をしておる、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  164. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ほぼとは申し上げませんよ。佐世保と横須賀の二港に限定しております。
  165. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、アメリカは、日米安保条約の第六条、地位協定の第五条及び合意議事録、これを放棄したのですか。外務大臣、もう少し詳しく申し上げましょう。日米安保条約の第六条、地位協定の第五条及び合意議事録によりますと、米国の軍艦はあらゆる開港に入港することができることになっておるじゃありませんか。原子力潜水艦に限っては横須賀、佐世保だ、こういうふうになってまいりますと、アメリカとしては原子力潜水艦に限ってはあらゆる港に入港することができるという安保条約の条項については留保しておるのか、どうなっておるんです。これはいかがです。
  166. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、法律上は入港できるのでございますけれども、特に原子力を推進力として持っておるというこの一点が国民感情に非常な影響を与えますので、今回の原子力潜水艦の問題に関する限りにおいてはこの二港に限定して寄港を要求しておるのであります。
  167. 野原覺

    野原(覺)委員 現在はさしあたり横須賀、佐世保に限定をして要求をしておるけれども、本来のアメリカの権利というものは、いかなる開港にも入港することができる。この本来の権利は放棄したものではない、このように受け取ってよろしゅうございますか。
  168. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 二港に限定して寄港を要求しておるのであります。それで、われわれとしましてはこの二港に限定して寄港を許した、こういう次第でございます。
  169. 野原覺

    野原(覺)委員 寄港を要求しておるのは二港に限定しておるけれども、それは当面の問題ですね。さしあたり二港に限定して要求してきておる。将来は本来のアメリカとの協定によりましてどの港にも入ることができる、この権利をアメリカは放棄していない、こう了解していいかというんです。
  170. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 特別に権利を放棄するということはありません。ただ原子力潜水艦でございますので、これの国民感情に対する影響を考えて、二港に限定して申し入れをしておる、これに対してわがほうはこれを認可する、こういう現実であります。
  171. 安藤覺

    安藤委員長代理 野原君、時間が経過しておりますから、ひとつお願いいたします。
  172. 野原覺

    野原(覺)委員 権利を放棄したのでないとすれば、将来はどの開港にも入ってくる。あり得るわけです。権利を放棄したのじゃないのですから、原子力に対する国民感情を考慮して、さしあたり横須賀、佐世保とこの二港を指定しておるだけのことだ。合意議事録の権利は放棄していない。そうなれば、将来はどの開港にも入ってくる、このように理解して差しつかえございませんね。
  173. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 二港に限定して申し入れがございまして、われわれは二港以外には認める意思はございません。向こうの申し入れがないのですから。
  174. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたは二港以外は認める意思はないと言いますけれども、日米安保条約なり地位協定なり、それから合意議事録をよく読んでみてください。アメリカのほうはどう言っておりますか。また、あなた方は従来国会でこの委員会で何と答弁してきていましたか。この原子力潜水艦についてアメリカが寄港を要求するのは、何もその寄港を要求しなくても、アメリカは寄港できるのだという見解で来たじゃありませんか。そうでしょう。日米安保条約とはそういうものだという答弁をしてきたではありませんか。そうなれば、日米安保条約によってアメリカは将来はどこの港にでも入ってくることができるのだ、とにかくさしあたり二港に限定するのは国民の反発をおそれておるのだ、こういうことなんですね。私はこれはきわめて重要な問題だと思う。さしあたりの反発をおそれておる。だからして、アメリカは当然これはどの港にも入ってくることはできる。安保条約というものはそういうものです。  そのほか問題はたくさんございますけれども、残念でありますが、外務大臣の御都合もあるようでありますから、この辺で一応終わっておきまして、他日あなたに重要な質問は申し上げたい。
  175. 安藤覺

    安藤委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後零時五十一分散会