○帆足
委員 原子力潜水艦は航続時間が一週間もあるいはもっとそれ以上も水中にもぐれるわけでありますから、休養ならばハワイで十分できまするし、補給ならば他の場所でもできるわけで、ただいま
日本の国民は原爆ノイローゼといわれておりますが、私どもは原爆に対しては警戒し過ぎても別に恥でもなかろうと思っております。それほどおそろしいものです。
ソ連のロケットがキューバに置かれたときに、
アメリカはふるえ上がりまして、除いてくれと言いました。そのときのフルシチョフ首相の
答弁はふるっていて、なるほどおそろしいものです。おそろしいものを持ち込んだことは事実です、ですから、それではまた取りのけましょうと言って取り除いたわけです。したがって、原子力に対するる恐怖というものが大きければ大きいほどその人の頭脳がすぐれているとも言えるし、また必要な現代の国民感覚であろう。現に、バートランド・ラッセルでも、なくなったアインシュタイン博士、湯川夫婦等も現に同じことを主張されておることは御
承知のとおりであります。休息のためということならば、この国はスモッグも多いし、交通事故も多い。また、いま横須賀の事情を見ますと、休息に適当な場所ではありません。売春禁止もありますから、変なことをすることも、やがて取り締まりもオリンピックを
機会にきびしくなるように聞いております。また、
外務大臣に申し上げておきますが、これは事実といたしまして膨大なデモンストレーションが連続的に行なわれると思います。おそらく何十万というデモンストレーションが行なわれると思います。それが冷静的であるか感情的なものであるかという批判もあるでしょうけれども、私は自然発生的に安保以上のデモンストレーションが起こることを予想されると思います。休息のために来た
アメリカの兵士
たちが、やまとなでしこを求めて上陸したのに、赤旗の行列である、それから、赤旗ばかりでなく、いろいろな宗教団体の緑の旗、平和の旗が並び、ウエルカムということばのかわりにヤンキー・ゴー・ホームという声を聞くことはまことに痛ましいことではないか。また、今日の
情報を私が耳にいたしましたのでは、オリンピックの最中にこれに対する
反対デモンストレーションが行なわれる、原爆被害国として、原爆過敏症であるかもしれないけれども、原子力潜水艦をお断わりしたいという大デモンストレーションがオリンピックの最中に行なわれる、こういうことを誘発することは時期としてもあまり望ましいことでもないし、
外務大臣を非常に苦しい立場に置くことになると私は心配するものでございます。したがいまして、当初の約束どおりに、
外務委員会はまだ九月十日にも開かれるのでありますから、もう少し時間をかけて十分検討して、そうして、与党、野党立場が違いますから、最後の決断は、それは多数党である与党がする、それはやむを得ないことでしょう。しかし、論議は尽くしたということでなければならぬと思いますので、国会の
気持ちは尊重した、君らの言うことは大体協定の中に織り込んである、科学技術庁の役人と相談したということだけでは納得いたしかねます。きょうの朝日新聞、読売新聞の社説をもう一ぺん再検討していただけば問題点は詳しく列挙されているように思うのでございます。
そこで、
お尋ねいたしますが、
政府は二十八日にこれを
アメリカに回答するというふうに新聞は伝えております。もうそこまで迫っているのでしょうか。だとすれば、九月十日の
外務委員会では間に合わないわけであって、われわれは事がきまって通告が済んだあとに話を聞かされる。船は出て行く煙は残る。残る煙がしゃくの種、こういうことになれば、オリンピックを種にして火をつけるようなものである。私はありのままを国民大衆に訴えねばならぬという立場にあるわけですから、何とかひとつもう少し問題を慎重に検討していただきたい。
第一に、休息と補給のために寄るという理由ならば、ただいまの横須賀は休息に適当な場所でない、ハワイのワイキキ海岸こそ適当な場合である、こう答えればいいのであって、何を好んで——国民の中の大多数、投票にいたしましても、野党は三分の一、一千万票以上とっている。国民の三分の一がこういう原子力潜水艦をあまり感服しないと言うのに、休息と補給のために来るというのは、礼儀としても好ましからぬことではあるまいか。逆に反米感情に対して火をつけるようなことになる。
アメリカはもう少し
フランスや
イギリスの
態度に学ぶべきであって、私はやり方がへただと思うのです。四十男の成金みたいなところがありまして、やたらに心臓ばかり強くて、ドルをちらちらさせて、人に押しつけがましい。
アジアの一国でも成功しているかといえば、
アメリカが手をつげたところの李承晩の哀れな末路、ゴ・ジンジェムの末路、そして最後にはバーベキュー夫人などという魔女さえあらわれて、そしてやっと今後グエンとかいう将軍が出たかと思うと、こういう軍独裁政治はグエンではなくてとても食えぬということになって、大衆は暴動を起こしておる。そういうこともよく
考えなければならぬ。しかも、他面、われわれは原爆過敏症になっていることも事実です。確かにわれわれは原爆病患者です。一度原爆の放射能を受けた民族はもう陸海空軍にたよるような
気持ちはない。それは
日本の自衛隊が示しているとおりです。もう連隊旗はひるがえらず、進軍ラッパの音が聞こえても身ぶるいをするばかり。それはわれわれが原爆というものを知っておるからです。そしていまのような新憲法が生まれた。原爆ということを頭に置かずに新憲法を
考えれば、これは空理空論です。マッカーサーが言っているとおりなんです。小銃、機関銃、バズーカ砲を念頭に置いて
考えるならば、新
日本憲法は空理空論である、しかし、一たび原子力を念頭に置いて
考えるならば、新
日本憲法の志すところは
国連の志す精神と共通のところがある、これは原爆から生まれたものである、私は、全くそのとおりで、幣原さんが涙を流して敗戦の瞬間新憲法に
賛成された
気持ちはわかると思います。しかも、一発の原爆が六千度に沸騰したのに、いまでは百メガトンの水爆は六万度どころか、六十万度どころか、一億度に沸騰すると言われておる。一万四千キロのロケットができ上がって、ニューヨークにこれが落ちるならば、一発で一億度に沸騰して二万フィートの空、五十平方里にわたって、死の雨、死の灰が降ると言われております。こういう時代でありますから、原子力の問題に対してわれわれが慎重過ぎる、野党が声を大にして叫ぶということは当然のことでありまして、
政府は御自分で言いにくいでしょうから、とても野党のこの反撃に対しては押え切れないからと言っていただいてけっこうです。おそらく横須賀と佐世保は三十万か五十万の大衆で埋まってしまうでしょう。こういう
状況のもとではまずい、この責任は野党の責任だと言ってけっこうですが、よほど慎重な御
考慮が必要であろうと思います。したがいまして、きょうの
外務委員会を議会として、野党からこもごもこういう
質問が出、誠意ある批判が出たということを念頭に置かれて、そしてこれが日米のほんとうの互恵平等の今後の協力に役に立つかどうか
考えていただきたい。昔はモスクワに旅行すれば逮捕されて五年くらい懲役に入った。長いのは二十年くらいの懲役に入った。それが、いまではフルシチョフがワシントンを訪れ、また
アメリカの著名な政治家が逆にモスクワを訪れるというような世の中になっておるわけであって、そして平和共存、とにかくイデオロギーを越えて人類は地球を守らねばならぬというような時代を背景としておりますから、どうも
政府のこの原子力潜水艦に対するこんな受諾しそうな形勢は私は軽率であると思います。実は、朝日新聞に率直に書いてありますように、もう国民の
反対がきびしいし、
政府も、大平さんはのらりくらりするのがなかなかじょうずな方でありまして、議会の
答弁なども、都合の悪いときには小さな声でじくじく言っておられますが、速記録を読んでみるとなかなかうまいことを言っておられる。いかだ乗りだと称しておりましたが、いかだを岩にぶつけない範囲内で要領よくやられる。しかし、ぶつけないだけでは、ではどこまで流れていくかというと、行くところまで行って急湍瀑布の中に落っこちるかもしれませんから、やはりあるときには決断とそれを裏づけする良識が必要であります。私どもは切に新大臣にそれを期待したいのでありますが、確かに新大臣の立場はこの問題に対してつらいと思います。非常にむずかしいと思います。したがいまして、こういうむずかしいときは、やはり大平流にのらりくらりと延ばすことが一番いい方法であるまいかと、私は誠意をもって助言しているわけです。でないと、休息と補給のために来るといっても、われわれが横須賀、佐世保を全部占領してしまいます。これはおそらく自然発生的にそうなるでしょう。そうすれば、せっかく女の子を求めて上陸したのが、デモにぶつかって、そうして、生麦事件ほどの事件は、そういうことはさせない、そういうことはないように自制するでありましょうけれども、しかし、自分の友の国
日本と思って来、そして
日本の女の子はなかなかかわいらしいと夢見て来た水兵
たちを絶望させ、蛮族のごとく見えるような形でデモンストレーションが立ちふさがる、こういうことになることはもうたなごころをさすがごとしであって、その風景がまた全
世界にラジオ、テレビで放送される、こういうようなことはもう目に見えているわけですから、二十八日に
アメリカに回答するような軽率なことは、もう一ぺん良識ある皆さんの手で閣議で練り直していただきたい。そうして、
外務委員会の
機会は九月十日にもありまするし、またオリンピックもありまするし、臨時国会、また本国会もあるわけでありますから、十分納得を得てからにしていただきたい。夏休みに社会党の首脳部がいないときに一挙にさっとやってしまえばどうにかなるであろう、こういうお
考えでしょうけれども、
先ほども申し上げましたように、船は出ていく煙は残るというように、いいあんばいにはいかないわけでありまして、その憤激はオリンピック及び第一回目の原子力潜水艦の入港のときに爆発するであろうことは明瞭でありますから、とにもかくにも、二十八日前後に
アメリカに回答するということは、ひとつ誠意をもって野党の助言をいれて、そしてもう少し延ばしていただきたい。そして新聞論調もよくごらんくださって、幸いにして
アメリカに内諾を与えたというような明確な事実は新大臣はまだ承ってないということを聞いて、われわれはいまほっと胸なでおろした
気持ちでございますから、もう少し慎重にしていただきたい、こういうことです。お答えにくいならば、何か抽象論でもけっこうです。