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1964-08-26 第46回国会 衆議院 外務委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年八月二十六日(水曜日)    午前十時十九分開議  出席委員    委員長代理理事 安藤  覺君    理事 戸叶 里子君 理事 松本 七郎君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       佐々木秀世君    始関 伊平君       園田  直君    野見山清造君       福井  勇君    三原 朝雄君       森下 國雄君    黒田 寿男君       阪上安太郎君    田原 春次君       平岡忠次郎君    帆足  計君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  委員外出席者         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局法規課         長)      中江 要介君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         水産庁次長   和田 正明君         海上保安庁長官 今井 榮文君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 八月二十六日  委員竹内黎一君、毛利松平君及び松井誠辞任  につき、その補欠として佐々木秀世君、福井勇  君及び阪上安太郎君が議長指名委員選任  された。 同日  委員佐々木秀世君、福井勇君及び阪上安太郎君  辞任につき、その補欠として竹内黎一君、毛利  松平君及び松井誠君が議長指名委員選任  された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長代理 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  鯨岡兵輔君。
  3. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 先般李承晩ラインをわれわれは視察をいたしまして、そのことについては安藤委員から詳細に報告があったのですが、きょうはその質問をいたしたいと思うわけです。  あたかも、けさの新聞には載っておりませんが、きのうまた不法な、われわれに言わせれば海賊的行為が行なわれたということがラジオに報道せられております。これについてはあとで詳細に御報告を願って、その上に立ってひとつ政府決意を聞かせていただきたいと思うのですが、その前に私は、この日韓の問題にも関連を多少いたしますので、国連の問題について御質問を申し上げたいと思うわけです。  わが国の外交の基本方針は、政府があらゆる機会に言明しておるとおり、いわゆる国連中心主義であります。私は、当然そうなければならないし、それはとてもいいことだと思っているのです。しかし、そのためには国連決定に積極的に沿う決意努力わが国としては必要であろうと思われますし、ときにはイニシアチブをとって他国を動かすくらいの行動があってしかるべきである、こういうふうに思っておるわけです。その意味から二点の質問をいたしたいと思います。  去年の国連総会において、安保理事会議席を現在の十一カ国を十五カ国にし、非常任理事国を現在の六カ国から十カ国にすること、しかもそれをAA諸国とか東欧とかあるいはラテンアメリカとか地域に割り当ててきめること、そして、そのことに関する国連憲章改正については、一九六五年の九月一日までに各国批准を求めるという議決が、賛成九十六、反対十一、棄権五の、いわゆる絶対多数で採択せられたのであります。わが国はこの決議賛成をいたしたのでございます。ことしもいよいよ国連総会の時期が近づいておるのですが、このことに関してお尋ねしたい第一は、政府は、この十八回総会決議効力は今日もなお生きているもの、すなわち、あらためて十九回の総会議決しなければならないものではないと考えておられるかどうかということであります。関連してお尋ねいたしますが、もし継続性がある、議決は生きているとしたら、国連憲章百八条の憲章改正前段手続、すなわち「憲章改正は、総会構成国の三分の二の多数で採択され、」という条項を満たすものとして解釈していいのかどうか、政府考え方を明白にせられたいのであります。
  4. 星文七

    星説明員 ただいま御指摘のように、安全保障理事会の非常任理事国と、それから経済社会理事会理事国メンバーシップをどうかするという問題につきましては、日本国連加盟以来総会あるいはその他の場を利用いたしまして盛んに主張してまいった点でございます。これは私から申し上げるまでもなく、国連ができましたときには加盟国が五十一カ国、現在百十二カ国になっております。しかるところ、安全保障理事会、それから経済社会理事会メンバーシップは、国連憲章が発効した当時のままになっております。不自然であるということは申し上げるまでもないことであります。  お尋ねの、効力があるかという点でございますが、私は、先生がおっしゃったように、第百八条による部分的改正一つの手段である、その一つの前提であるということに解釈しておりまして、今度の総会で再びこれが討議されるようなことがありましても、別の決議ができればこれはおのずからまた別個の問題でございましょうけれども、私たちの解釈といたしましては、第十八回総会決議というものがそのまま引き続いているというふうに解釈しております。
  5. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 もし百八条の前段効力継続性がある、生きているものだ、再び十九回総会において議決する必要はない、ほかのことなら別だが、このことなら議決する必要がないというのであれば、後段の、各国は全部憲法に従って批准をしなければならないという、批准をするというような準備を政府としてはおやりになるお気持ちがありますか。
  6. 星文七

    星説明員 御承知のように、先ほども御指摘になりましたように、この第十八回総会議席拡大反対した国は、ソ連圏、それからフランスなど、十四、五カ国であったと思います。それから、英米、そういったところが棄権しております。部分的な憲章改正といえども、憲章の規定によりまして各国批准してそれが効力を発するためには、五大国の全部の批准をまじえて全加盟国の三分の二の批准が成立したときに効力を発生することになっております。そういう関係で、ソ連はその後態度を改めましたけれども、英米はそういった態度、これはもう少し慎重に審議する必要があるのじゃないかというようなことで棄権したと思いますけれども、フランスは依然として態度を変えてないようでございますので、この批准ということにつきましては、今後こういった改正効力が発生するに必須の条件になっております五大国状況というものをよく注意していかないと、軽々にわれわれが批准手続をとっても、かえって国会に御迷惑をかけることになるのじゃないかと思います。
  7. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それは考え方の相違ですが、私は、国連中心主義をとって積極的に国連考え方を推し進めていこうというのならば、百八条の前段は生きているのだ、これは問題ないのだというのだったら、後段のほうはどんどん推し進めてやっていく、そのくらいの積極性があってしかるべきものだと思う。まして、AA諸国の中には、きわめて少数ではありますけれども批准手続を終わって、いつでもいらっしゃいという態度をとっているところもあるのですから、そういうのが国連中心主義の積極的なやり方だと思いますので、私の見解はそういうふうに申し上げておきます。  去年の総会の際には、お話のとおり、ソ連はこの決議反対でありましたが、その後伝えられるところによりますとずいぶんと考え方が変わってきたように報ぜられております。また、米英諸国棄権いたしましたし、フランス反対である。これら安全保障理事会常任理事国反対棄権をしたのでは憲章改正はできないということはお話のとおりであります。総会決議の実行はこれで不可能になるわけですが、それらの諸国がなお去年の考え方を変えていないかどうか。いまちょっとお話がございましたが、政府情報としてどう考えておられるか、お聞かせを願いたい。  また、去年この総会決議賛成したわが国としては、棄権したり反対したりした米英仏並びソ連に対し、賛成者の立場から、その考え方を変えるように、もうそんな反対しているなんということは時代錯誤だから変えるように、積極的に働きかけがなされなければならない。そうでなければ、申し上げましたとおり、国連中心主義とは申せまいと私は思うのです。去年の総会以後どのような努力政府においてなされたか。わが国がこの決議賛成した以上、その趣旨が実現されるように努力することこそが一わが国賛成したのですから、それがわが国のなすべきことであるし、また、そのことが国連を強化することにもなるのであって、国連中心主義政策の一端にもなるのではないかと考えているのですけれども、政府はどういうふうにそのことを考えておられるのか、ここに明らかにしていただきたい、こう思うのであります。
  8. 星文七

    星説明員 全く先生のお考えと私同じ考えを持っておりまして、日本賛成した以上、この改正というものは一刻も早く効力を発生させたいというのがわれわれの希望でございます。しかし、先ほどもちょっと申し上げましたように、英米は昨年の総会では、もう一ぺんことしの総会でこの問題をやろうじゃないかというようなことで棄権したのであります。その後英米動きというのは情報をいまわれわれはとっていないわけでありますが、十九回総会もやがて始まろうとしておりますし、ただいま御指摘の、アフリカでは六カ国、それからアジアではタイ、ジョルダン、それから南米であるとかジャマイカでございますとか、六つの国が批准しておるわけでございます。こういった国々から、英米棄権した、ほかの国も二、三棄権している国もございますけれども、反対の国を含めて早くやろうじゃないかというような促進の決議といいますか、そういう動きも出てこないとも限りません。そういうときに、わが国としても、初めの政策に従いまして一刻も早く改正効力が発効するようにしていきたいと思っております。
  9. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 外務大臣にお願いいたしますが、いまお話しのようですと少々満足いたしますけれども、日本としては賛成したのですから、いまごろになって反対しているなんということは時代錯誤だ、でき上がったころといまとは全然違うんだからということで、アメリカとかイギリスとかフランスとか、比較的われわれと連帯性のある国に説くくらいのことが積極的になされなければ、日本国連中心主義だなんと言っていられないと思いますので、ぜひひとつ積極的にそういうふうにやっていただきたい、こういうふうに思うわけであります。  次の質問に移ります。  先月の六日にソ連から国連軍常設提案があったことは御承知のとおりです。このことに関して、先ごろの参議院外務委員会政府は、考慮中であるという御答弁があったようであります。  そこで、そのことについてお尋ねいたしますが、ソ連提案の要旨並びに今日ソ連がそのような提案をする真意を政府はどのように考えておられるか、また、この問題が十九回国連総会議題となると予想せられるかどうか、アメリカイギリスはこの提案をどう受け取っているか、それらについての御見解を明らかにせられたいのであります。
  10. 星文七

    星説明員 まず第一の御質問ソ連提案内容でございますが、かいつまんで申し上げますと、ソ連提案一つは、国際の平和と安全維持のために国連憲章の第七章の四十三条に従って正式のいわゆる国連軍というものを創設すべきであるということ。これは、スエズに出ておりますUNEFだとか、コンゴに出兵いたしました国連軍だとか、いまサイプラスに出しているああいう国連軍でなくて、憲章がもともと考えている、戦争脅威だとか平和の破壊というようなことがあったときに、まず経済的なそういう非武力的な政策、それがだめになったときにこの国連軍を動かす、そういう四十三条に従って正式の国連軍をつくりなさい、それが一点でございます。それから、国際の平和と安全維持に関する第一次的責任は安全保障理事会にある、したがって、国連軍創設とか使用というようなことは経費調達の問題までも含めて一切安全保障理事会決定すべきであるというのがソ連提案の第二点であります。次に、国連軍憲章の第四十三条のワク内で安全保障理事会加盟国との間の特別協定によって成立すべきであるというのが第三点。それから、国連軍には、東、西、中立、いわゆるトロイカと申しますか、三つのグループの諸国が参加すべきであって、この国連軍には五大国が参加するのは適当でないというのが第四点。それから、将来安全保障理事会国連憲章の要求に正しく応じて国連軍を成立さしてその経費調達等について決定する権限を持つ、安全保障理事会だけがそういうことを決定するということになればソ連は他の諸国とともにこの国連軍維持のための経費を負担する用意があるというのが、七月の六日わがほうに提出されましたソ連国連軍に対する見解でございます。  ソ連がいまこのような提案をなぜやったかという、そのねらいと申しますか、そういうことについては憶測の域を出ないわけでございますけれども、御承知のように、ソ連スエズ国連警察軍あるいは国連に出しました国連軍の費用というものについていままで一切支払いを怠ってきているわけでございまして、私の承知しております限りでは大体その滞納額が五千二百万ドルくらいに達している。これもこのままでいきますと憲章の第十九条に引っかかりまして、コンゴ経費とかスエズ経費とかいうものは国連の正常な経費であるという国際連合総会決議に基づきまして、この二年間の滞納分に達したということで第十九回総会からは投票権がなくなるということになるわけでございます。そういうこととも関連いたしまして、ソ連国連軍というものを提案してみて、これによって何とかいままでの経費滞納とそれによってソ連投票権の喪失を回避しようという一つの手がかりではないかというふうに思います。  もう一つの点は、最近カナダあるいは北欧諸国では、こういった国連軍というものとは別に、国連総会あるいは安全保障理事会要請があれば、自分たちの持っている軍隊の一部を常に国連要請にこたえるためにリザーブしておいてそれをすぐ出せるというふうな、国連待機軍というか、スタンドバイ・フォースというものを設定しておりますが、こういう動きに対して、ソ連としては何かひとつそれを封じたいというような気持ちもあるのではないかというのが、ソ連のこの提案をした一つの動機ではないかというふうに私たちは想像しております。
  11. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、ことしの十九回国連総会でその問題は出ますか。
  12. 星文七

    星説明員 その問題をお答えするのを忘れましたが、ただいまのところ議題としてはまだ仮議題も配られておりませんし、御承知のように議題というものはいつでも出せるわけでございます。その点はいまから憶測するのははなはだ困難かと思います。場合によっては出るかもしれないというふうに考えております。
  13. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 アメリカイギリスフランスはこの問題をどんなふうに受け取っておりますか。
  14. 星文七

    星説明員 アメリカイギリスなども、このソ連提案そのものを詳細に検討してみますと技術的に非常にむずかしいところがある、と申しますのは、初め申しました第四十三条に基づくいわゆる正規国連軍というものを、国連ができましてすぐこういうものをつくろうと一生懸命に五大国をはじめとしていろいろ協議したわけでございますが、結局そういうものがうまくいかないということになりまして、もう長い間この四十三条以下の条文というものは死文化してきたような状況でございます。そういう点に一つ難点があるということと、それから、こういう平和維持のために軍隊を動かすというようなことは安全保障理事会だけの専管である、総会はそういう権限がないということを主張しておりますが、そういうことになってきますと、安全保障理事会は御承知のように拒否権によって動かないというような事態も予想されますし、実際そういう事態がたくさんあったわけでございます。総会というのもこれに何らか活動していかなければ、——ソ連提案においてはそういうものを封じているということが一つ難点であるというのが英米の共通した意見である。しかし、ソ連の覚え書き全体を通じて見ますと、そのトーンというか、調子というか、それは東西間の融和というものを一つの起点として出発しているという点も見られないではありませんし、これがまたひいては、いわゆる正規国連軍ということじゃなしに、先ほど申しましたスエズとかあるいはコンゴというふうな、国連平和活動というものに対するソ連歩み寄りというものも見えないではない、これをすぐさまソ連提案ははなはだ非現実的であるということでこわしてしまうということじゃなくて、これと何とか交渉して、まず第一には、先ほど申しましたスエズコンゴ経費滞納ということについて、ソ連に金を出してもらうというふうなこととも一緒にからみ合わせてソ連と交渉したいというのが、英米のいまのねらいであるというふうに私は承知しております。
  15. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 この国連軍創設の問題については、アメリカイギリス安全保障理事会専管の問題であると考えておるということについては、後ほどまたお尋ねをいたしたいと思いますが、二年間のその滞納が、こういうことを新たに言い出したことによって何か棒引きになるということがねらいではないかと思われるということですが、どうして棒引きになるのですか。
  16. 星文七

    星説明員 私は棒引きになるとは申しませんでした。こういう正規国連軍というものを提案しておりますけれども、これがもとになって、いわゆるコンゴとかスエズに出兵している、ああいうことに対してソ連がいままで非常に否定的な態度をとっておりますけれども、何かそこに歩み寄りというものがこういうものを契機にして生まれてくるのではなかろうかということで、ソ連と交渉してみようというのが英米の腹ではないかということを申し上げたわけであります。
  17. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 政府は、ソ連提案に対して、参議院外務委員会で、考慮中であるというふうに御答弁になったようですが、それは否定的な考慮中ですか肯定的な考慮中ですか、もう少し具体的にその考慮中の内容をお示し願いたい。
  18. 星文七

    星説明員 考慮中と申しますのは、大体私がいま申し上げましたような諸点について考慮中というふうに解していただきたいと思います。
  19. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 非常に肯定的な、考えなければならぬ点も幾つかあるけれども、しかし非常に前進的な考え方であって、否定するものではないというふうに考えての考慮中であるというふうに解釈してよろしいですか。
  20. 星文七

    星説明員 私は、ソ連提案というものを頭から否定してかかるというのはあまりいい策じゃないというふうに考えております。
  21. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 国連軍創設については、憲章第四十三条の関連によって、安全保障理事会において審議さるべきものであるというふうに一応解釈されるのですが、国連総会でも審議して安全保障理事会に勧告するというようなことができるのかどうか、政府はどんなふうに考えておられますか。もしこの問題が安全保障理事会専管の事項であるというふうに考えるとしたら、理事国でないわが国意見はどのようにして反映をしたらいいか、肯定的な考慮をしておられてもそれを反映する方法がないように私は思うのです。もう一回言いますが、この問題がおっしゃられるとおり安全保障理事会専管の問題だとすれば、これはもうどうにもしようがない。総会においてこれを決議して、安全保障理事会に何か勧告でもできるというのなら何とかできますけれども、そうでないというのだったら、わが国はどういうふうにしてわが国のこのソ連考え方に対する意思を表明したらよろしいか、こういう問題なんです。
  22. 星文七

    星説明員 私の申しましたのは、国連軍創設して使用するということは、ソ連見解によれば安全保障理事会専管であるということを言っておるわけです。先ほど先生質問がありましたように、この問題が総会に出るかというお話ですが、あるいは出るかもしれません。そういうときに私どもが発言する機会というものは、われわれは安全保障理事会常任理事国では現在ございませんけれども、総会の席上その他十分われわれは表明できる場所がたくさんあるというふうに考えております。
  23. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 こういう問題について国連総会においてわが国意見を積極的に発表することができる、こういうふうにおっしゃるわけですね。わかりました。  ソ連提案では、常任理事国軍隊は出さないほうがいいんだということを言われておるのですが、この点に関しては私は私見としてはどうもおかしいと思う。その他の国の軍隊国連軍をつくる、五大国は入らないと言っておるが、政府はこの提案についてどんなふうに考えておられるのですか、御所見を伺いたいと思います。第二次世界大戦経験から、英米ソ仏中の五大国一つ心になれば世界は守れるという考えから、国連安全保障理事国にこれらの五大国が入っておるわけです。それらの国が入らないで、小国の軍隊ばかりで国連軍創設して、実効のあるものができるか、疑わしい点であります。さらに、もしソ連提案のとおり国連軍創設された場合に、これは憲章第四十七条によって、安全保障常任理事国参謀総長によって構成される軍事参謀委員会指揮下に入ると解釈していいのかどうか。もしそうだとすれば、常任理事国以外の国は、軍隊だけ出して、その使用については五大国参謀総長参謀委員会でもってやる、口出しは何もできない、軍隊だけ出す、戦死するかもしれない、そんなばかばかしいことでうまくいくだろうか。もしくは憲章を改めて参謀委員会構成でも変えるという考え方が並行して考えられているのか。政府はこれらの問題についてどのように研究しておられるか。意見を承りたいと思う。
  24. 星文七

    星説明員 まず第一点でございますが、ソ連の言う国連軍から五大国を排除しなくちゃいかぬという問題でございますが、これは、先ほど言いましたように、国連憲章ができましたときに、この国連軍をやろうというわけであります。常任理事国の代表からなる軍事参謀委員会というところではかった結果、うまくいかなかった。そういう一つ経験から、この五大国の間ではなかなかむずかしいからひとつはずそうというのがソ連のねらいじゃないかと思いますけれども、先生の御指摘のように、はたして、非常に大きな軍事力を持っておる五大国が入らないで、ソ連の言ういわゆる国連軍というものができるかどうか、私もその点では全く先生と同様な疑義を持っております。それから、第二点の軍事参謀委員会云々お話がございまして、安全保障理事会に代表されていないほかの国は全部委員会で縛られるのじゃないか、それはおかしいじゃないかというお話がございましたが、もともと国連憲章の立て方といたしまして、戦争、平和の破壊とか、平和の脅威というのがございまして、そういう事実を認定し、この場合にはもちろん拒否権がかかるわけでございますが、そうしてその上で制裁の措置をとる、まず経済関係、そういう点について非軍事的な制裁をする、これももちろん拒否権があるわけでありますが、それがだめだというときに、この軍事力いわゆる集団保障というものが出てくるわけであります。国連憲章のたてまえとしては、そういう場合に安全保障理事会決定があれば、つまり拒否権を使わないというそこで決定ができれば、ほかの加盟国というものは全部これに従わなければいけないというのが国際連合のたてまえであります。これは前身の国際連盟と一番違っている点は御承知のとおりであります。そういうたてまえになっておるわけでございます。
  25. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ちょっとよくわからないのですが、軍隊だけ出して、それで参謀総長がみな集まっている参謀委員会の——経済制裁や何かは別ですよ。いよいよ軍隊を出すという場合に、自分は何も意見を言えないで軍隊だけ出しているということで、うまくいくかどうかということです。
  26. 星文七

    星説明員 憲章の規定によりますと、それがもしこの四十三条に考えております正規軍ということになりますと、参謀委員会というものがもとになりまして、それから各国の兵力の拠出、それをどういうふうに使用するかということを、あらかじめ国連加盟国と安全保障理事会の間で協定を先にしておくわけです。それに従って動かすというのが国連憲章のたてまえになっております。
  27. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 なおこの点については十分にひとつ御研究を賜わりたいと思うわけです。せっかくいい案でも、そういう点でうまくなければ実行できないのですから。ただ、ソ連考えておる基本は、先ほどの、いままで協力しなかったということの埋め合わせみたいにも思えますけれども、考えておる基本は、国連の一番最初に考えた精神に基づくものだ、こう思うので、せっかくですから、ソ連提案の不備の点についてはわが国が積極的に考えて、これを他国に意見日本が十分に言うというくらいの積極性があってしかるべきだと思うのです。  国連軍ができるという場合に、わが国はこれに参加できると政府は思っておられますか、政府考え方をこの際明確にせられたいと思うのであります。現在の自衛隊が国際法上軍隊であるかどうか、海外派兵の可否等については論議のあるところだと思いますけれども、私の考えでは、わが国国連軍に参加しても憲法には必ずしも抵触するものではないと考えておるのです。問題の憲法九条においても、その前段に、「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、」とあります。さらに、国連憲章の前文五項には、「国際の平和及び安全を維持するためにわれわれの力を合わせ、」とあり、さらに、憲章一条一項には、「国際の平和及び安全を維持すること。そのために、平和に対する脅威の防止及び除去と侵略行為その他の平和の破壊の鎮圧とのため有効な集団的措置をとること」とあるのであります。そうして、そのために憲章四十三条では、その目的達成のために必要な兵力、援助及び便益を安全保障理事会に利用させるために特別協定を結ぶことになっているのであります。これはいまお話のあったところであろうと思いますが、以上のことから、日本国憲法あるいは国連憲章の目的、この両者は完全に一致していると私は思うのです。さらに考えてよいことは、わが国の憲法にいう戦争の放棄は国権の発動としての戦争であって、これは国連憲章の第二条四項においても明白に慎しまねばならぬこととして禁止されておるのであります。そこで、国際連合もしくは安全保障理事会決定に従って強制行動に参加するということは、日本の憲法にいう国権の発動ではなくして、国際連合の目的である国際の平和と安全を維持するための行動であるから、必ずしもこれは憲法に違反するものでないというふうに考えておるのですが、こういう考え方は間違えておるかどうか、政府見解を明らかにせられたいのであります。
  28. 星文七

    星説明員 本件はなかなか私限りで答弁できるような簡単な問題ではないと思います。条約局長も出席しておりますから……。
  29. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 では大臣からひとつ……。
  30. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 問題になっておる国連軍創設は、従来各国が持っておった軍隊とはやや次元を異にする問題であろうと思われます。したがって、この提案にはきわめて示唆を受ける面が多いのみならず、かなり含蓄のある問題でございまして、これらの問題につきましては、十分にこの精神をくみ取って、そして具体的にわが国がこれにどう対処するかというような問題につきましては十分に研究をしたい、かように考える次第であります。
  31. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 国連ができたときに、初め出与えて、もう再び戦争をすまい、そのためにはこういうものをつくらねばいかぬ、そういうことをやってもまた乱暴なやつが出てきたときにはこうするのだということを考えて、それがうまくいかなかった。それがずっと今日までごたごたが続いておる。それでソ連がこのごろになってこういう提案をなさったという、こういう事態の中においては、日本がこういうものができたときに入ることが憲法に抵触するのかしないのか、私は、やはりはっきりした考え方日本になければいかぬ、そういう意味でお尋ねをするわけでありまして、何もきょうここで明らかに違反するとかしないとかということをきめていただかなくともいいですけれども、私は、いまの事態においては、もうきめて、日本としては国論を統一するくらいのことがなければ、国連中心主義だなんということを言っておられないと思うのです。  ついでながら伺いますが、「時の法令」という書物によると、林内閣法制局長官がこのことに関して、国連軍軍隊というものは警察的な任務を持つものである、警察的な任務を持つ国連軍ないし国連警察軍への参加ということは憲法第九条に抵触することはないということである、つまり、こういう国連軍ないし国連警察軍は、国際紛争解決の手段としての戦争、武力による威嚇または武力の行使を目的とするものではなく、したがって、いわゆる海外派兵ではないし、また、こういう国連軍などへの参加はわが国が戦力をもつという問題でもない、ただ、ここで問題となるのは、自衛隊法との関係で、現在の自衛隊にはこういう国連軍ないし国連警察軍参加というような任務が与えられていないから、そういう点だけ考えれば憲法に抵触するものではないということを、林内閣法制局長官が書物に明確に書いているのですが、この考え政府考えとして受け取ってよろしいのですか。どうですかそこの点を伺います。
  32. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これはあくまで林君の個人的見解だと思います。ただ、本件は、先ほども申し上げましたとおり、いわゆる次元を異にする問題として示唆において含蓄において非常に豊富なるものがございます。この点は十分に研究をしたいと考えております。
  33. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 次元を異にするということはどういうことかわかりませんが、私は必ずしも次元を異にしないと思っているのです。もう非常に具体的な差し迫った、日本国連中心主義をとる以上はきめておかなければならない重大な問題だと思うのですが、どうかひとつ、政府におかれましては一日も早くこういう考え方をきちんときめて、他国が何か言ってきたから、それからあわてて研究するというようなことのないようにお願い申し上げたいと思うのであります。それが国連中心主義というものだと受け取っております。  ソ連提案についてはなおその真意が明白でない点があるけれども、国連憲章の規定からも、憲章四十三条に基づいて国連軍のできることは望ましい。いままでのように、規約に基づいた国連軍ではなくて、お話のように、何となく臨時的な——スエズへ行ったのもコンゴへ行ったのも、みんな臨時的なものだ。あんなものじゃだめだ。それでもしソ連の言っておることに不備があるとしたならば、むしろ積極的に、こういうようにして、こういうぐあいでやるべきだというようにイニシアチブをとって、国連の中で日本国の言っておることはやはりりっぱなものだと言われるような積極的な行動を望むわけでございます。  さて、李承晩ライン問題ですが、前段が少し時間をとりましたので、はしょってやりたいと思いますけれども、李承晩ライン問題をお聞きする前に、きょうの新聞には載っておりませんが、きのうですか、またあったそうですから、その問題について御報告を願いたいと思います。
  34. 今井榮文

    ○今井説明員 私から今暁李ラインで発生しました漁船拿捕の概況を御報告申し上げたいと思います。  拿捕されました船は、まき網漁船の第二十八源福丸、総トン数七十九・九トンでございます。船主は長崎市の東洋漁業株式会社、乗り組み員は船長以下三十五名でございます。  事件が発生いたしました場所は、済州島の北東の約十六マイル、ちょうど済州島と巨文島の中間の地点でございまして、時間は、二十六日、本日の午前一時七分ごろでございます。相手船は韓国警備艇の八百六十七号艇でございまして、概況は、当該警備艇が巨文島の基地に入港いたしておりまして、それからもう一隻の警備艇がやはり同じように中に入っておりました関係上、昨日来私どものほうの巡視船「くろかみ」、それから「くずりゅう」の二隻で港外においてその警戒に当たっておったのでありますが、夜間を利して、厳重な通信管制を行ない、しかも灯火管制をして、ひそかに巡視船の目のつかないような形で脱出いたしまして、その漁区に拿捕に向かったものと思われます。僚船の第二十五源福丸からの連絡によりまして、直ちに「くろかみ」が現場に急行いたしまして、三時ごろ到着いたしまして、八百六十七号艇に追尾して、これに対して巡視船自体として釈放を強く要求をいたしておる最中でございますが、応答なく、現在釜山に向けて連行中であるというのが状況でございます。  私どもは事件が起こりましてさっそく外務省に御連絡を申し上げまして、外交的に厳重な抗議をしていただいて釈放方を要求しておるというのが現状でございます。
  35. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 日韓会談はなかなか向こうの政情によってうまくいかない。そこで、まあそういうふうにうまくいかないのでは向こうもお困りだろうから、ひとつ経済援助は別個にやってやろうというようなことをいま政府がお考えになっておるやさきに、そういう不法な海賊行為が行なわれるということは、まことに心外であり、もうわれわれは憤激をいたすのであります。そういう憤激の立場の中から私は御質問を申し上げるのですから、ひとつ明快な御答弁を以下お願いをいたしたいと思います。  ただ、海上保安庁の方が非常に恐縮しておられますけれども、私は自分で行ってみて、海上保安庁の人はほんとうに一生懸命やっている。向こうの船とこっちの船と能力においても隻数においても同じくらいですから、一生懸命やっておるその保安庁の御苦労に対しては、まことにもうたいへんなことだと思います。何かこうえらい恐縮して、またつかまっちまいました、私の責任ですというふうに思われることはごうもないと私は考えます。政府は、国際法上からも国際慣行の上からも認めるわけにはいかないのだと何度も何度も声明しているにかかわらず、現実にはこの李ラインというものは存在し、その存在を立証するかのようにわれわれの同胞が拿捕され、そのために生命を失った人もあるのです。財産が不当に奪われているのです。そしてそれはきのうもきょうもずっと続いて、またやったのです。李宣言のなされたのはいまをさかのぼる十二年前です。一九五二年の初めのころであります。韓国官憲による日本漁船の拿捕は、それより五年も前、すなわち一九四七年に始まっているのです。だから、通算すればもう十五年もこの不法な海賊行為が行なわれているのです。その間われわれにして言わしむるならば常識では考えられないところの不法な海賊行為が行なわれている。わが国と韓国とは昔からの関係があります。民主主義陣営にあるという連帯感もあります。それらから、一日も早く日韓会談を妥結させたいと私どもは思いますし、また、独立後日の浅い韓国の立場に対しても十分理解もし、同情すべき点は同情もいたしますので、折衝の任に当たっている方々の御労苦に対しては少しも敬意を惜しむものではありませんけれども、だからといって、十五年もの長い間不法な海賊行為をがまんして見のがしているということは常識ではないと私は思うのです。戦争は終わった、もう戦後じゃないと政府は言うけれども、われわれは戦争が終わったとは思っていないという、われわれが視察の際聞いたこの現地の声は政府不信の声であります。日韓会談は韓国の政情によって引き延ばされているのであります。政府は、日韓会談で、この他のことをも含めて、李ラインの問題も全部ひっくるめて一ぺんに解決する方針のようですけれども、それでは今後も引き続いて相当長期にわたって、この海賊的行為の前に同胞の生命と財産とをさらさなければならないということをわれわれは覚悟しなければならないのであります。それでいいとお思いですか、明快にお答えを願いたいのであります。  ついでに関連してお尋ねいたしますが、この際一日も早く日韓会談を進める努力を継続しながら、一方において、これと並行して、暫定的にでも漁業の安全操業に関する協定というか取りきめをしたらどんなものだろう。ひっくるめて全部を一度にすることは理想かもしれませんが、現地の漁民はあまりに気の毒です。韓国に対する同情もけっこうですけれども、それよりも現地の日本人漁民に対する同情のほうが日本の政治としてはより大事だと思うのですが、この点に関する政府考え方を明らかにせられたいと思うのであります。
  36. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国際法上あるいは国際慣行・慣習上もまことに不当きわまる行為であることは言うまでもございません。一日も早くかような状況を正常に戻すことに努力を払っておるのでございますが、日韓会談の他の事項と切り離してこの問題だけを取り上げて解決するという解決の方途が、もしもはっきりしておれば、これも一つの方法でございますけれども、これだけを切り離して解決するということは非常に困難である、至難である、他の日韓会談の諸問題とともに解決するのでなければ、十分な解決の方法は、これはやっても徒労であろうというような見解にわれわれはあるのでございます。と申しますのは、他の問題はすべて、何と申しますか、こちらのほうから与えるというような立場の、まあそういうことばが適当であるかどうかわかりませんけれども、日本のほうで何がしか受け取るというものはこの漁業問題だけでございます。でありますから、他の問題と切り離してこの李ラインの問題が両国の間に円満に進むということはどうしても期待できない。この問題を解決しようとすれば、他の問題とも一緒に進める以外には方法がない、かような考え方でございます。
  37. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 一ぺんにやるというのじゃなしに、暫定的にでも、一年とか二年とかいう暫定的な期限をきめて、暫定協定というようなことも、大臣、できないものでしょうか。
  38. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 過ぐる機会において赤城農林大臣もこの漁業問題については相当な努力を払いました。その交渉の内容から言いまして、暫定的にでもこの問題を解決するということはまことに至難な状況でございまして、まことに遺憾でございます。
  39. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、第二の質問に移りますが、九月に入ったら日韓交渉が始まるとのことですけれども、過去の経験から申しますと、会談が始まりそうになったり始まったりすると、不法拿捕という海賊行為が通常よりも一そうひどく行なわれるのであります。きのうやったのも、もう近くあるからというのでやったのじゃないかとわれわれは勘ぐるのですが、われわれの常識から申しますと、このくらい驚くべきことはないのであります。先方の真意がどこにあるか疑わざるを得ないのであります。これから仲よくやろうじゃありませんかということで話し合いをしておる最中くらい不法な海賊行為をやめるというのが、私は常識的であろうと思うのであります。そこで、提案をいたしますが、会談をやっている最中に拿捕事件があったら、会談はこちらから中止するというくらいの強腰でなければなるまいと思うのです。そしてそれは当然過ぎるくらい当然なことだと思うのですが、この点政府はそのような処置をおとりになる決意があるかどうか、そのことについてお伺いをいたします。
  40. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 御趣旨はまことに御同感でございますが、何しろ相手のある問題でございますから、なかなかこれは……。
  41. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 同感というのは私はどうもいただけないのですが、同感ならば、それはもうむしろ当然なことじゃないかと思うのです。あなたのほうも独立後間もないのですからこれから仲よくやっていきましょう、お困りになることがあればお手伝いいたしましょう、そういう話し合いをやっている最中ぐらい、どろぼう行為はやめたらいいじゃないですか。それをやっている最中になおさらよけいやるということは常識的でないと思うのですが、そんなことをやったらもう話はしない、これは個人間の話だってもうきわめて常識的だと思うのですが、いかがでございますか。もう一回お答え願います。
  42. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 会談の最中に拿捕行為が行なわれますと、自然に会談の空気も非常に悪くなりまして、おのずから会談の進行が鈍る、場合によっては中止される、従来ともこういう経過であったようでございます。
  43. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 これはもう大臣に言いませんけれども、国民はなぜそんなことをやっていなければならぬのかと思います。ですから、どうかひとつお願いですから決意を示して、もうそういうことをやったら、帰ってくれ、もう話はしないというくらいの大決断をひとつ持っていただきたい、こういうことをお願いいたします。  先日、私が福岡にまいりましたときに、現地の者が一番憤慨しておりましたことは、拿捕された船の中にあった魚を日本に輸出してよこしたのです。知らぬこととはいいながら、日本ではお金を出してそれを中央市場に並べてしまったのであります。どろぼうをしておいて、そのとった家にその盗んだ品物を売りに行ったのですから、これは驚くよりほかはありません。これはまるで落語のような話ですけれども、笑いごとじゃないのです。日本国の恥であります。これだけばかにされれば言いようがありません。  そこで、政府お尋ねいたしますが、宝幸丸事件に関して政府のとった処置、外交的にどういう強硬な手段をとったか、これを明らかにしていただきたい。宝幸丸事件というのは、宝幸丸がつかまったときに、その中に入っていた魚を、魚の箱のまま輸出してよこしたから、そこで問題になったと思いますけれども、箱を違えてやれば、魚にしるしがありませんから、わかりません。そこで、私が政府お尋ねしたいのは、箱を入れかえて、今日までもこんなことがあったのではないか。いままでは、われわれの同胞が命がけでつかまえた魚が奪い取られて、その漁師は監獄にほうり込まれて、その上その魚が輸出せられて、われわれがお金を出してそれを買ったというようなばかばかしいことはなかったと外務大臣は断言できますか。もし断言できないとするならば、そんなことでいいというふうにお思いになりますか。経済協力と言いますけれども、私は、独立後日なお浅い韓国のもろもろの事情は理解もしますし、十分同情もいたします。隣国としてそれは当然のことであるとさえ思いますけれども、しかし、だからといって、こんな仕打ちをがまんしなければならない理由は少しも認めません。この海賊行為を韓国が続けるならば、その間韓国からは魚は買わない、経済援助もいいでしょうけれども、少なくとも漁業に関するところの経済援助というものはしない、それだけの強力な態度日本の外交になかったならば、ますますばかにされると思うのですが、この点に関する政府の御見解を明らかにせられたいと思うのでであります。
  44. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 お話までもなく、就任早々の際に韓国の大使が私のところに他の用事で見えたのでありますが、その際にも、この問題を進める上においてもとにかく拿捕した船舶を返してもらわなければ話が進められないということを実は私から強調をいたしたのでございます。それに対して大使いわく、すでにそういう手配はとってあるはずだけれども、まだ解放されませんかという話があったのであります。冗談じゃない、まだ解放されておらぬということを話しましたところが、さっそく手配をいたしますということでございましたので、安心しておりましたが、いまだに解決が得られないという現状でございまして、これは、私も国民の一人といたしまして、そのあまりに不届きなことに対しては、全く平静な気持ちではもちろんおられないわけでございます。この魚の問題については、農林大臣が事情を調査した結果、確かに拿捕した船の魚を日本に売っておるのだから、こういうようなことは見のがしてはならぬというようなことで、この問題については農林大臣の直接の話も聞いております。お心のうちは私は同感でございまして、そういったような国民の声を背景にして、今後とも強く韓国との折衝を続けたい、かように考えておる次第でございます。
  45. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 国民の声を背景にして強く交渉するというお話でございますので、これは了承いたしまして、第四番目に、私はきわめて重要だと思われる点についてお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど国連の問題のときにもお話を申し上げたとおり、わが国の外交方針は何をおいてもまず国連中心主義だとわが国は国民に約束をいたしておるのであります。国際紛争を解決する手段として武力を用いないと憲法で中外に約束をしているわが国としては、国連中心主義は当然というよりも、それ以外に方法がないのです。去る五月十三日、巡視船「ちくご」が韓国警備艇にカービン銃を突きつけられて連行された事件も、船足のおそい漁船への報復をおそれたこともありましょうけれども、武力を用いて紛争を解決しないという憲法の精神にのっとったとも言えると思うのです。そういうふうにして十五年の長い間海賊行為は続き、拿捕された船が三百十八隻です。船を返してくれなければ話はできないよと大臣が就任早々言われたそうですか、三百十八隻もつかまっているのです。帰ってきたのもそのうちぼろ船だけ帰ってきた。いい船はとられちゃったのです。不当に抑留された漁民は三千八百十七名、これが全部監獄に入れられた。そうして、うち八名は向こうで死んでいるのです。今日もそれが続いて、あしたもあさっても、九月に予定されている農相会談ごろにはますます不法な海賊行為は激しくなると予想されておるのであります。だから政府日韓会談を急ぐのだと言われるでしょうけれども、私がふしぎでならないのは、なぜこのことを国連中心主義だというわが国国連に持ち込まないのかということです。国連憲章第六章「紛争の平和的解決」第三十三条の一項には、「いかなる紛争でもその継続が国際の平和及び安全の維持を危くする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。」と明示されておるのであります。また、三十七条には、「三十三条に掲げる性質の紛争の当事者は、同条に示す手段によってこの紛争を解決することができなかったときは、これを安全保障理事会に付託しなければならない。」と書いてある。三十三条や三十七条による手続によって紛争を解決するのが、国連加盟国、国連中心主義の国の義務であるとも言えると思うのであります。当事者の会談によって解決できる見込みがあるならそれでもいいでしょうけれども、過去十五年の長い間にわたる不法な海賊行為です。それでも当事者の話し合いにのみこの海賊行為の解決をなぜゆだねるのか。国連中心主義わが国が、国連加盟国が、その継続が国際の平和及び安全の維持を危うくするおそれあるこの海賊行為に対して、国連がそうしなければいけないと規定してあるそのことをなぜしないのですか。北方領土の問題だってそうだと思いますが、私は、そんなことでは国連中心主義じゃない、こういうふうに思うのです。国連の庇護のもとにその存立を全うし得たとさえ思われる韓国に対して、適切妥当な勧告を国連にしてもらうよう、なぜわが国は処置しないのか。この点についてお考えをひとつ明らかにしていただきたい。なぜ国連にこのことを持ち込まないのか、これを明らかにしていただきたいと思うのです。
  46. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国連に加盟するからしないからというのではございませんが、韓国は現在国連にまだ加盟しておらない。のみならず、国連による解決よりも韓国との相対の二国間の交渉のほうがより有効である、さように考えてやっておる次第でございますが、なおこまかい点につきましては、事務当局からお答えを申し上げたいと思います。
  47. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 李ラインの設定当初におきまして、拿捕の状況等を資料として国連のメンバーに配ったりしたことも実はあるのでございます。しかし、いま大臣が申されましたとおり、わがほうの取り分になる漁業問題につきましては、やはり向こうの取り分になるほかの問題と一緒に日韓会談のワク内で相対ずくで話し合いをするほうが有効だ、どうせ持ち出しても向こうは出てこない、そういうような結果になると思いまして、現在までのところ二国間の話し合いでやっているわけでございます。それのほうが効果的だろう、歩どまりを考えまして、そういうふうに考えたわけであります。
  48. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 歩どまりを考えて、そのほうが有効的だろうとおっしゃいますけれども、十五年も長い間やって、三千八百人もつかまっちゃっているのです。船は三百十八隻もとられたんですよ。それでもまだ有効だというふうにお考えになるのは考え違いじゃないか。アメリカにひとつ中に入ってくれろと言うてもいいでしょうし、国連に頼んでもいいでしょう。私は、そういうことをやらないのは国連中心主義じゃない、日本のやっていることは違う、こういうふうに思うので、そのことを申し上げたのです。  時間がありませんから先を急ぎますが、李ライン問題について五番目に質問いたしたいことは、何度も申し上げましたけれども、日韓会談がなかなか思うように進まないのは、あげて韓国の政情によるものとわれわれは理解しておるのであります。中断せられたままになっている漁業問題に関する交渉も、中断の原因は韓国の政情が原因であります。幸いにも先ごろ来韓国の政局も落ちつきを取り戻して、この九月には農相会談が再開されるということを聞いておりますが、常識的に友好裏にどうか会議が進まれるように私どもは願うのであります。ただ、ここで私がお尋ね申したいことは、前々この会談で日韓双方でなかなか妥結しなかった専管水域、これは漁業のための専管水域なのでしょうが、これがこの九月の会談で幸いにももし双方が折れ合って妥結したというような場合における李ライン問題であります。すなわち、専管水域が一致すれば当然李ラインはなくなるというふうにわれわれは思っているのですが、こういう考え方は間違いないのでございましょうか。李ラインは李ライン、専管水域は専管水域、そういうことであるならば、そんなばかばかしい会談はやる必要がない、こういうふうに思うのですが、そういう心配は絶無であるかどうか、明らかに御見解を発表していただきたい。もう専管水域がきまっちゃったあと、平和ラインというものがまだあるんだということを韓国は言わないかどうか、この見通しについて明らかにお返事が願いたい。
  49. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 専管水域と李ラインというものは両立しないものでございますから、専管水域の問題がきまれば李ラインは解消するものであります。
  50. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 専管水域の問題は非常にむずかしいけれども、これが何とかうまくいけば李ラインというものは自然消滅して問題なくなるというふうに解釈してよろしいのですね。−よくわかりました。けれども、李ラインは平和ラインも含めてですよ。それでいいですか。平和ラインというものもない……。
  51. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そのとおりであります。
  52. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それから、今度は要望ですけれども、最近の沿岸漁業は、私どもが視察して全く振わないということを見てまいりました。大きな規模で大量に魚をとるというやり方が盛んになればなるほど、魚族の乱獲という問題と沿岸漁業の問題がますます深刻になってまいります。李ラインの有無にかかわらず、これは問題であります。将来本格的に魚族保護という立場からまじめに日韓の間でこのことが問題にならねばならぬと思うのですが、その際には、大資本の遠洋漁業だけを対象にしないで、どうか零細な沿岸漁民のことを十分に考慮に入れられるよう、これは農林省に対して申し入れるべきことであると思いますけれども、これから行なわれます外交会談という立場でお願いを申し上げておく次第であります。  第二番目にお願いしたいことは、犠牲者に対する補償であります。李ラインというものはないのだということで、もう李ラインはないんだから、そこでつかまっちゃったらどうこう言うわけにはいかないというようなことを言われたやに聞いておりますけれども、しかし、それにもかかわらず、何かやっていることはやっている。しかし、それは決して十分ではないのです。船は韓国にとられて、国の援助だけでは再建できずに、ついに業務を離れていかなければならなくなった者も少なくない。申しようによっては、弱い日本の立場、弱い日本の外交の犠牲者であります。政治はこれらの犠牲者に対して手厚い保護、援助を与えなければならないと思うのです。与えるのは当然であると思います。新しい外務大臣は特にこのことに御留意願いたいと思うのであります。  次に、先ほどもちょっと申し上げましたが、海上保安庁の人員並びにその船舶についてであります。韓国警備艇は十三隻と言われております。この十三隻がかわるがわる出動しているのです。これに対してわが国の巡視船は十五隻でございます。そして常時出動可能の隻数は三分の二に当たる十隻内外であると言われております。仕事の性質から申して相手側の倍に相当する隻数が少なくとも必要であると思われるのに、これでは骨が折れてとてもたまったものじゃないと思って私どもは帰ってまいりました。これは社会党の視察の方々も同じ意見であります。しかも、韓国の船は最近その装備を増強して、スピードもずいぶん増してきたし、何か持っている大砲なんかもいままでよりももっといいものを持っている。レーダーなんかももっといいものを持っている。無線機もいいものを持っている。いままでと同じようなことが今後も続くとすれば、くやしい国辱的なことが続々と予想されるのでありますから、今後もいままでのような会談をずっと続けていく、それが一番いい方法だということでやっていくということであるならば、この装備の面について充実してやることができないものか、私はそういうふうに思うのです。このごろは商船だって十五ノットも二十ノットも出る船は決して珍しいことではない。それなのに、十三ノットか十四ノットくらいで、これが一番早い巡視船だなんていうことを言っているのではとてもだめだ、巡視船という以上は日本の経済力でそれにまさるものができなければならない、できないのはふしぎだ、こんなふうに思うのです。その辺のところは誠意をもって事態を重視して解決に努力されるように、この警備している人のお骨折りということも十分に考慮に入れてやっていただきたい、こういうふうに御要望を申し上げる次第であります。  質問を終わります。
  53. 安藤覺

    安藤委員長代理 答弁はいいですか。
  54. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 いいです。
  55. 安藤覺

    安藤委員長代理 松本七郎君。
  56. 松本七郎

    ○松本委員 昨今の報道機関の報ずるところによりますと、かねて国民の注目いたしておりましたアメリカの原子力潜水艦の寄港について、政府は総理の裁決を仰いで最終的な回答をするやに聞いておるのであります。現に、過日の参議院における外務委員会で、野坂参三議員の質問に対して、きわめてあいまいでありますけれども、外務大臣は、この野坂さんの、すでに事務当局は先方に回答しているのじゃないか、またそれを公表する予定を立てておるのじゃないかという質問に対して、否定されておらない。したがって、これらの経過、並びに一部伝えられておるように事務当局はすでにアメリカ側に向かって回答したのか、また、する用意があるのか、そういう点について正式にひとつ外務大臣から御説明願いたい。
  57. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この問題につきましては、一昨年の一月米国側から原子力潜水艦の寄港について申し入れがございまして以来、主として安全性の問題について米国側と話し合いを続けてまいりまして、その中間的な経過は昨年の国会において報告をされたとおりでございます。その後におきましても、安全性の問題についてはさらに解明する必要があることを認めまして、引き続いて米国側に各種の照会を続けてまいっております。その結果は、安全性の検討がただいまにおきましては最終段階に入っていることは事実でございます。しかし、いまだ正式決定には達しておらない。かような経過でございます。
  58. 松本七郎

    ○松本委員 その安全性の検討が最終段階に来ていることは事実だと言われるのは、それは日米両国で最終的だ、こう言われるのですか。アメリカだけの問題でしょうか。
  59. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いや、日米両国においてでございます。
  60. 松本七郎

    ○松本委員 それではちょっといままでの国会での政府の公約なり答弁と少し違うんじゃないですか。すでに大臣も引き継ぎを終わっておられるのだから、詳細に御存じだろうと思うのですけれども、いままでの政府日本の国会を通じて日本国民に約束したことは、当初はアメリカ側が安全を保証すればそれでいいような意見政府は述べたことはあります。けれども、それではいけない、やはりこれは日本の学界その他でも非常に心配しているのだから、日本が自主的にアメリカの資料を十分取り寄せて安全性を確認して初めてこれは安全性が保証できるということになるのだ、こういう論議が何回も繰り返された結果、最終的には、日本の学術会議を中心にした専門家あるいは原子力委員会その他に十分これを検討さした結果を尊重するという確約が得てあるのですが、その点はどうなんですか。
  61. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 すでに原子力委員会の研究にも付しておるわけでございまして、それらの研究の結果に基づいて、再三アメリカ側に対して各種の質問を提起をしておる。そういうようなことで、日本におきましてもこの安全性の問題につきましては十分に専門家の意見を徴しておる、こういう状況でございまして、これらの両国の研究が今日においてはほぼ最終段階に達しておる、こういう状況でございます。
  62. 松本七郎

    ○松本委員 政府日本の各界の意見を徴したというけれども、それは事実われわれはまだ全然報告を受けておりません。いつどういう機関にはかられて、どういう結論が出ているのですか。概略だけでも知らしてください。
  63. 竹内春海

    竹内説明員 外務省といたしましては、科学技術庁の専門的意見を徴しております。
  64. 松本七郎

    ○松本委員 それは、単なる科学技術庁と外務省でなしに、広く日本の学界その他憂慮している方々の意見も徴するという約束なんですよ、国会に対する政府の約束は。そういう処置は何らかされたのですか。
  65. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 広く学界に公表して意見を徴するというようなことにつきましては、私はまだ聞いておりません。いま申し上げましたように、科学技術庁の付属機関である原子力委員会、これは権威者が集まっておることは御承知のとおりでございます。それらの意見を十分に聴取してまいっておるわけでございます。
  66. 松本七郎

    ○松本委員 日本学術会議のほうはどうですか。
  67. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 学術会議には諮問しておりません。
  68. 松本七郎

    ○松本委員 そういう重大な落ち度がある。これは国会の審議の状態を一体椎名さんどのくらい調べられたのですか。あのやかましい論議があったときに、湯川博士を中心にたくさんの学者の方を参考人としてわざわざ両院に呼んで、そして、その結果、学術会議を中心にして十分政府はひとつ日本側の専門家の意見も徴します、そしてそれは国会に報告することになっているのですよ。そういうことをせずに、いま最終段階に来ているということをかってに政府できめられたのでは、これはとんでもないことです。そういう点、今後もっと慎重に考えていただく御用意があるかどうか。
  69. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 一般の学術会議でございますか、そういう所属の人たち意見ももちろんあったようでございますが、政府のほうといたしましては、科学技術庁を通じて、原子力委員会が最も権威のある機関でございますので、その意見を徴しておる、こういう状況でございます。
  70. 松本七郎

    ○松本委員 それはちょっと国会の運営としては非常に問題になりますが、それはさておいて、科学技術庁の意見というものは国会に報告されないのですか。あれだけ国会で関心を持って政府に十分説明を求めておるのに、その政府意見を求めた科学技術庁の意見すら国会には出ておりません。
  71. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この安全性の問題についての不安と申しますか、懸念を解消することについては、もちろん万全の努力をしてまいりたい、かように考えておりますので、国会に対して十分なる報告をいたしますと同時に、国民に対しましてもその安全性の解明につきましては十分にタイムリーにPRをして、その趣旨を徹底するようにいたしたい、かように考えております。
  72. 松本七郎

    ○松本委員 それでは、具体的には次の臨時国会あるいは通常国会の適当なときに、なお十分日本側の安全性についての結論を説明していただいて、その上で最終的な回答をされる、こう理解していいですね。
  73. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この原子力潜水艦、ただいま問題になっておるのは推進力に用いるというだけにとどまっておるのでございまして、これが日米安保条約の範囲内において活動する限りにおきましては、当然日本に他の軍艦と同じように寄港する立場にあるのでございまして、これは政府の責任においてこの運びをすることができるのであります。しかしながら、国民がこの安全性について非常な不安を持っておるという現状にかんがみて、その事後においてタイムリーにこの解明を、国会を通じあるいは他の適当なる方法によって国民に安心を与えるような方法をとりたい、かように考えております。
  74. 松本七郎

    ○松本委員 安保条約のことはまだ聞いていないのです。それは御答弁の必要があれば御答弁されるのはけっこうなんだけれども、私の質問しておる焦点はちゃんと答弁してもらわなければ困る。だから、国会通じて十分——さっきから問題になって、以前から問題になったのは、原子力による推進力そのものの安全性がやっぱり問題なんですよ。だから、それについてはアメリカ側の保証だけではなしに、日本で十分国民が安心できる材料を国会にも提供され、説明をしてほしいということになっておるわけですから、それを十分国会を通じてやるといまここで言われた以上は、臨時国会なりあるいは通常国会でこれらについてわれわれの納得のいく説明をされた後でなければアメリカに対しては回答しないということは、ここで確約できますか。その点をはっきり言ってください。そうしないと先に進めない。あいまいじゃ困る。そこをはっきり言ってください。
  75. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは政府の責任においてなすべきことでございまして、事前に国会にかける必要はないのでございます。ただ、現実に寄港までの間に十分に国民の間に不安が解消いたしますように、国会に対しても、また国民に対しても十分にその安全性につきまして解明をするという考え方を持っております。
  76. 松本七郎

    ○松本委員 そういう抽象的な、国民の不安を解明する手段さえとればいいような、そういうふうにすりかえちゃ困るのですよ。現に具体的にはこの国会で長い間論議になったのです。あなたも言っておられるように、一昨年アメリカの申し入れがあってからずいぶん論議された。その過程で、もう少し日本側の意見というものがまとまったらちゃんと国会に報告して——つまり、国会の承認とか、そういう形式的な問題を言っているのじゃないのです。国会であれだけ論議した以上は、日本側で安全性についてどれだけ保証できるか、国会に報告する政治的な義務があると私は思う。あれだけの論議の過程を経ているのだから。だから、ほんとうに国会を尊重する意思がいまの政府にあり、外務大臣にあるのなら、その国民を安心させる、解明させる方法として、やはり国会で論議されたことを尊重して国会に報告したその上で、私は最後の回答をすべきだと思う。これは形式的には確かに政府の責任でしょう。しかし、この問題に関する限りは国会で論議してきたのです。そして政府もそれを確約してきたのです。それを尊重しないで、別な方法でここでやるということになれば、それだけのやはり別の新しい事情なり理由について、われわれが、ああそうですか、そういう緊急な事態ならばこれはやむを得ないであろうという納得のできるような説明なしには、そういうことを省略するわけには私はいかぬと思う。そういうことをやられては、これは国会軽視になりますよ。ですから、その点をちゃんと新しい大臣から聞いておきたい。先ほどから言っているでしょう。ほんとうにいままでどおりのやり方で国会を尊重してやっていただくことを貫くためには、臨時国会なり通常国会できちっと報告をされた後でなければ、——それは報告して承認まで至らないかもしれませんよ。論議を見なければわかりません。しかし、これは政府の責任でやるということになれば、そのときはまたその時点で論議しますけれども、一応そこまではここで約束していただかなければ、私どもは過去の論議の責任がとれません。
  77. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまお答え申し上げたとおり、国会においては安全性の問題に懸念があるので非常な真剣な論議が戦わされたことは、もちろん十分にこれを尊重いたしまして、さればこそ、十分に時間をかけて、この安全性の解明の点につきまして、国内の権威ある機関の意見を徴し、その意見の結果に基づいてアメリカに再三照会をしてまいったのでございまして、その検討の結果、政府として安全性について確信を得るに至れば、当然寄港は認めるべきものであると考えておるのでございます。これと同時に、いかなる経過によっていかなる点についてそういう確信を得ておるのか、そしてほんとうに安全性が確保されるかどうかというような点につきましては、国会にも詳細に御報告申し上げ、なお関係方面に十分に趣旨を徹底するような方法を講じたい、かように考えておる次第でございます。
  78. 松本七郎

    ○松本委員 ですから、それを事後報告にしないで、いままでの国会の論議の経過から言えば、やはりほんとうにこれを尊重される気持ちがあれば、事前に報告すべきだと思う。大平外務大臣は、スレッシャー号の事件の調査を十分にされた上で、結論を得てからでなければ回答しませんとまで答弁しているのですよ。必要があれば全部速記録を調べてまとめてあなたにお目にかけます。ですから、臨時国会か通常国会までわずか数カ月待てば済むことです。何でいま急いでそういう手続を経ないで政府の責任で回答しなければならぬ事情が生じたのか、そこをひとつ聞かしてください。
  79. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 急に云々というようなことはございませんで、別段アメリカ側の特別の催促があったわけでもございません。ただ従来の経過に従って今日まで事柄を運んでまいりまして、そしてようやく最終段階に達した、こういう実情でございます。
  80. 松本七郎

    ○松本委員 それでは、しばらく待てるのですね。その程度のことなら、あと数カ月待てば臨時国会なり通常国会が開けますけれども、それが待てないのですか。アメリカに対する回答のことを言っておるんですよ。日本政府が結論を出しても、それは早く出されようがおそく出されようがわれわれは何も言わないが、問題はアメリカに対する回答をいつするかというところが問題なんです。数カ月待っていただけますか。
  81. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 安全性についての確信を得れば、これ以上問題を遷延する必要を認めませんので、これはこれとして処理したいと考えております。
  82. 松本七郎

    ○松本委員 それでは、国会に何ら報告しないでやっていいと言われるのですか。
  83. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国会の論議の趣旨については十分にこれを尊重いたしまして、そして時間をかけて解明の点に努力してまいったのでございまして、決して国会を無視するというようなことは毛頭考えてもおりませんし、十分に国会の論議を尊重したつもりでございます。でありますから、これを処理すると同時に、詳細に書面等によりまして国会のほうに御報告申し上げ、そして国民全般に対しても不安動揺のないように手配をいたしたい、かように考えております。
  84. 松本七郎

    ○松本委員 それでは、スレッシャー号の調査の結果だとか、それから科学技術庁の意見だとかその他も、一切がっさい詳細に報告は事後であってもされるおつもりですか。
  85. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろんでございます。
  86. 松本七郎

    ○松本委員 これは前から論議したことですから繰り返しませんが、政府は単なる推進力の問題だと言われるけれども、私どもは、アメリカのポラリス戦略体系の一環として配置されるということは間違いないと思う。ノーテラス型潜水艦がその任務を果たす上に寄港そのものは重要でないにしても、そして兵隊が休息するために寄港する程度のものであっても、もっと重要なことは、ポラリス潜水艦の戦略体系の一環としてこれが働く任務を持っておるということです。ですから、サブロックの問題もずいぶん国会で論議されたけれども、それが積んでないときはどうのこうのとしきりに言っておりますが、そういう論議は繰り返しになりますからここでは省略しますが、ただ、ポラリス戦略体制が、今日のアジア情勢の中で、私はかなり日本政府が回答を急ぐことと関係なしとは考えられない。そういう国民の心配があればこそ、それをもし否定されるなら、なおさら国会へ事前に詳細に報告されて、そして最後回答されたらいいと思う。私はアジアの最近の情勢とこれは関係なしとは思わないのですが、その点の外務大臣の御意見を聞いておきたい。
  87. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先ほどもちょっと申し上げたとおり、この時期は自然にかような最終段階に到達いたしたのでありまして、別にアジアの不穏の情勢と関係があって、そのために特に回答を急がれておるとか、結論を急がれておるというような事実は毛頭ございません。
  88. 松本七郎

    ○松本委員 いまのアジアの情勢では、そのポラリス潜水艦との関係での心配が当時より以上につのってきておるわけですから、そういう状態にあるときに、政府は、もし関係がないなら三、四カ月延ばすぐらいのことは考慮してもいいのじゃないですか。どうですか。それも振り切って政府の責任で回答されると言われるならば、われわれの心配はますますつのるばかりです。そういう心配を少しでも解消するための努力は、いろいろ国会の論議その他でももう少し意を配っていただいたらどうですか。外務大臣がそれが真意なら、それはあとで困られますよ、ほんとうに関係がないと言われるなら。しばらく三、四カ月もとどまって、国会に詳細に報告された後に回答してくださったらどうでしょう。いかがです。
  89. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 重ねて申し上げますが、これは自然に、慎重にやった結果この段階に来たのでございまして、これは一体、アジアの情勢が今後平静に落ちつくのか、あるいはもっとひどくなるのか、そういう問題とは全然関係がないのでございますから、特にこれを繰り延べる必要はないと考えます。
  90. 松本七郎

    ○松本委員 幾らそう言われても、われわれの心配はつのるばかりですから、これは早急に回答しないでもう一ぺん十分再検討する努力をしてほしいことを要望しておきます。これはたいへんなことになりますよ、もしここであなたが回答されるというようなことに踏み切られると。その結果、これは予定されておる横須賀だとか佐世保で反対運動が盛り上がるばかりでなしに、一部では何かオリンピックのムードに便乗してこれをやってしまおうという意図さえあるように伝えられておるんですよ。そういうふうに、これが正しくつかんでいるものか勘ぐりか、それは知りませんけれども、だんだん国民の不満はつのるのですから。だから、自然に時期がそうなったというなら、政府の責任においてしばらく延ばされていいことであるし、そういう不必要な混乱を避けることはできるはずです。オリンピックのように国際的に非常に信頼を高める絶好の機会を、そういうふうに政治的な問題をそのオリンピックのムードに便乗してやられるということで、その結果国論が沸騰するということになるならば、せっかく日本の自主的な威信をオリンピックを契機に高めようというときに、台なしになってしまうでしょう。そういう影響も少し考慮してもらいたい。この運動は、佐世保、横須賀、当該地ばかりじゃないと私は思うのです。激しく反対運動が起こってきます。それを十分予想してもここで踏み切って回答されるおつもりですか、どうでしょう。
  91. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう政治的考慮を一切加えないで、ただ安全性の解明という問題を慎重に取り扱ってきて今日の段階に来たのでございますから、これは延ばす必要はない、かように考えます。
  92. 松本七郎

    ○松本委員 それは外務大臣の発言としてはおかしなことです。安全性自身は直接政治性は持っていないかもしれないけれども、そのこと自体が政治的な問題になったればこそ、国会であれだけ論議されたのじゃないですか。  それでは、私はこの際もう一つ聞いておきたいのは、新大臣ですから、私どもの今後の論議にも非常に重要な関係がありますから聞いておきたいと思いますが、きのう南ベトナムでああいう大きな政変が予想されるような事態になりまして、グエン・カーン大統領も辞任、それから暫定憲法も中止というような事態になったのですが、日本政府は、先般もここで論議されたように、いろいろな援助物資を送るというような協力体制をとっておるようですけれども、一体南ベトナムの状態を平和的に落ちつけるために日本政府のなすべき役割りというものについて新大臣はどういう考えを持っておられるのか。まだ具体的な固まった意見はないとしましても、こういう緊迫した情勢ですから、せめて概略でもこの際聞いておきたい。
  93. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 この問題は御承知のとおり非常に長い間のいきさつを経た問題でございますので、やはり、そのいきさつに基づいて、そのラインに沿って解決策が立てられるべきものであると考えておるのでございまして、すなわち、一九五四年のジュネーブ協定の精神に基づいて行なわるべきものである、かように考えるわけでございますが、しかし、それからさらに相当の年数もたち、いろいろな経過がそこに入り込んでおる関係もございまして、決して簡単ではないと思うのでありますが、やはり、あの精神に基づいて休戦をし、それから基地あるいは外国軍隊の撤退とかいったような順を経てあの地方の平和回復と進んでいくべきだ、かような考え方を持っております。もちろん、日本といたしましては、アジアの一員として、もし事態要請するならばいかなる努力も惜しむべきではないと考えておりますが、まずもって、ジュネーブ協定の精神に基づいて、その線に沿う亀解決の道を進むべきだ、かような考え方を持っています。
  94. 松本七郎

    ○松本委員 大臣の言われるように、ジュネーブ協定の精神を尊重して、しかもアジアの平和のために、またベトナム国民の利益のためにも何らかの役を日本が果たそうとすれば、どうしてもこの際アメリカの軍事的な介入というものをやはりみんなして排除する、これが緊急な必要事ではないでしょうか。南ベトナムでさえそういう気風が強くなってきているのですから。それに引き続いて中立の問題もいろいろありましょうけれども、そういうことは今後の発展に待つとして、さしあたりはやはりアメリカの軍事的な介入をやめる。アメリカ自身がもう国内で軍事的な行動の失敗というものを認めておるのですから、いろいろな評論家の論を見てもそういうふうな観測がだんだん強くなってきている。やはり、日本がこの際積極的にアメリカに対して、アジアの平和のためにあまり軍事的な介入をしないという方向に持っていく努力を今後私は新大臣にやってもらいたいと思うのです。この点どうです。
  95. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 アメリカの介入は南ベトナムの要請によって行なわれておるものでございますが、こういったような軍事介入の必要がなくなるということがもちろん望ましいのでございまして、そのためにはやはり北ベトナムのゲリラといったような問題も解決いたしまして、そういう軍事介入が一切なくなるというような事態になりますことはまことに望ましいことであると考えております。
  96. 松本七郎

    ○松本委員 いま南ベトナム政府要請と言われるけれども、ああいうクーデターが起こり、そして国民から遊離し、また今後どうなるかわからない、そういう政府アメリカが協力するということが事態を紛糾させる根本だと思う。ですから、ああいう事態になったら、むしろそういう関係を断ち切って、そしてすべて国内の自然な勢いにまかせて国内の解決にまかせる、外部からの一切の干渉その他は排除するということのほうが事態を平穏にする近道だと私は思うのです。ですから、何らかそういう新しい打開の道を日本が率先して少しアメリカにも説得するというような役を買って出ていただきたいということを新大臣にひとつ注文して、私の質問を終わります。感想だけ聞いておきたいと思います。
  97. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国内は国内にまかせるということも、まあ時によりけり、あるいは場合によるのでございまして、それがどうも隣国に非常な不安を与える、そういったようなことでありますれば、それは国内の問題でありしかも国外の問題でもあるということにもなるのでありまして、一がいに国外のものは手を引けばよろしいんだということにも私はなるまいかと存じますが、十分に研究をいたしまして善処いたしたいと考えます。
  98. 安藤覺

    安藤委員長代理 戸叶里子君。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 私ども李ラインを参観いたしましていろいろな問題を実地に見たわけでございますが、先ほど、この問題につきまして、一緒に行かれました鯨岡委員から急いで質問をされたわけです。まだ具体的な質問に対する回答もいただいておりませんし、また、私どもといたしましても、もう少しいろいろ質問をしなければならない問題がたくさんあるわけでございますので、李ラインの問題につきましてはあらためてまた日をとっていただきたいと思いますが、ただ、問題として一、二点だけ指摘しておきたいことは、先ほど鯨岡委員が言われましたように、韓国のほうでどんどん警備艇を性能もよくし、そしてまたそれをふやしているときに、日本のほうで海上保安庁の方がたいへんに御苦労をされているにもかかわらず、十分な予算がないために、どんどん拿捕されているというような面が見られるわけでございまして、この点は先ほど鯨岡委員が言われましたとおりお考えになっていただきたいということが一つ。それから、もう一つの問題は、漁業に従事していられる方々は、非常に貧困のために、非常に高い網や船をとられてしまいまして再び立ち上がる能力がなくなってしまっている。何とかしてあげようと思って係の人が行ってみると、こじき同様の姿で、どこへ行ったかわからないというような姿もあちこちにあるといわれております。こういうふうな問題もぜひ政府として当然考えるべきだと思います。  それらの問題を合わせて私はこの次に質問いたしたいと思いますが、一点だけ、先ほど鯨岡委員が触れられたことでこの際質問をしておきたいことは、現地の漁業に従事していられる方々の非常にきびしい意見といたしましては、一方において漁船が拿捕されているにもかかわらず、経済援助なんということは考えないでほしい、こういうふうなことを言われたわけです。ところが、それにもかかわらず、この間の新聞を見ますと、二千万ドルの経済援助をするのだ、しかもそれは一年間の据え置きで二年間の延べ払い、こういうようなことが報道されておりまして、これは韓国がのめないのだというようなことも書いてございました。私は、日本の漁船が拿捕されたということをけさラジオで聞いておりまして、この問題で韓国は有利にするためにまたこういうことをしたのかというようなことさえも考えられたわけで、これらを考えてみますと、やはり、鯨岡委員が言われましたように、はっきりと、漁船を拿捕するようなときには日本と韓国の間の話し合いなんかしないのだ、こういうき然たる態度をとっていただきたい。もう現地に行ってみますと、そういう意思が非常に強くなっており、日本の今日の外務省の韓国に対する弱腰の態度というものを非常におこっておりますので、こういう点を特に考えていただきたいと私は要望したいのですが、この二千万ドルの経済援助というものは一体どういう性質のものであるかということを、この際確かめておきたいと思うのです。一応、三億ドルの無償、二億ドルの有償、一億ドルの民間の借款、こういうものを話に乗せておきながら、今度二千万ドルという経済援助が出てきたというのは、一体これはどこのワクに入るのか、国民は非常に疑惑に思っております。どういうふうなワクに入るのでしょうか。
  100. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 いま報道されております経済援助のほうは、これは請求権問題の解決と関係がございます三億の無償、それから二億の政府借款の問題とは全然別のものでございまして、隣邦といたしまして現在の韓国の経済困難度を救う、特に、工場の稼働率が五〇%内外に落ちている、これを動かして雇用の増進等に貢献する、そういうものでございまして、全然請求権問題の解決とは関係のない援助というたてまえでございます。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 それは民間ベースによるものですか。
  102. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 通常の民間ベースの借款でございます。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 民間ベースによるものを、どうしてそれに政府がタッチなさるのですか。
  104. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 これは従来とも前例も他の国の場合にございます。実際の契約、たとえば工場のパーツを買うとかあるいは原材料を買うとかいう契約自体は、民間ベースで日本のメーカーなり輸出業者と向こうの当事者との間でなされるのでございます。その意味で純然たる民間の契約なんでございますが、その大ワクについて政府がこれを容易にするという精神的な援助の問題でございまして、法的には全然民間ベースの契約でございます。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、焦げついたような場合にはどうするのですか。政府は全然タッチしないわけですか。  それから、もう一つは、なぜ一年の据え置き二年の延べ払いというようなことを政府自身がいろいろとサゼストされているのか、介入し過ぎるのではないか。全然民間だけのものなら、いままでもいろいろ輸出にはやっていると思いますけれども、そういうものとは別個の形で今回これが特に出てきたという理由がわからないのですが、その点を解明していただきたい。
  106. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 従来とも、たとえば昨年インドネシアにやはり同じような状況があって千二百万ドルの緊急の援助が原材料でなされました。これも輸銀を使いまして、民間ベースの延べ払いの援助と申しますか、延べ払いの輸出がされたわけでございますが、そのときも、ああいうふうに特別に苦しくなっております国に対する援助的な色彩がありますので、やはりあのときも年限それから利率等について政府で一定の基準をきめまして、そのワクの中で各個の民間メーカーが契約に当たりました。ですから、民間ベースの延べ払いあるいは信用供与でございましても、そのアウトラインと申しますか、外ワクについて政府が一定の基準を示すということは、従来とも例があったわけでございます。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 焦げついた場合にはどうされるかということと、今度出された条件というものは、あくまでもこの条件どおりに主張せられるのかどうか、この点をはっきりしていただきたい。
  108. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 焦げつきました場合の第一次的の回収の責任は、当然これは各契約当事者である民間商社の問題になってまいります。  それから、条件につきましては、いま新聞に報道されましたような条件をこちらから提案いたしまして、まだ向こうで検討中でございまして、近く何らかの回答があると思いますので、現在の段階においては情勢が明らかでないのであります。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 大臣、いまの点、お聞きになったとおりでございますけれども、こういうふうな問題にいたしましても、結局日本から韓国に何らかの形で援助をしようという気持ちでやっているわけです。しかるに、一方におきましては漁船を拿捕するという、こういうふうな状況にあるわけですから、どうか、漁船を拿捕する場合には話し合いには応じない、このくらいの強い態度をもって臨んでいただきたいと思いますけれども、この点の御決意のほどをはっきり伺いたいと思います。
  110. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 先ほども申し上げましたが、現在の韓国大使に対して、この前の拿捕事件がございまして、そのときに向こうからいろいろな話を持ってきたのでありますが、今後両国の間で話を進める上において、こういうようなことがときどき起こって、そしてその解決がいつまでも延びておるようなことでは全然話が進められないのではありませんかということを強く主張いたしましたのでございますが、大使も実は意外に考えておったようでございまして、この点は今後も強く韓国に対して申し入れたい、かように考えております。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 こうした李承晩ライン関連する一連の問題については次の機会にして、原子力潜水艦の寄港問題について二、三伺いたいと思いますが、あと帆足委員も時間をいただきたいということでございますから、簡単に質問をしたいと思います。  いま松本委員との質疑応答を伺っておりますと、私どもは非常に納得のいかない点がたくさんあるわけです。たとえば、原子力潜水艦の日本寄港につきましては、アメリカでも、もう日本に寄らないでもいいではないか、こういう意見さえも起きているということを私どもは知らされておりました。国会でも論議がありましたように、安全性の問題について、あるいはそのほかの問題で国民が非常に不安に思っているために、政府のほうでも考えていたと思います。当のアメリカでさえもそういう慎重論が出ていたやさきに、今度の東南アジアのいろいろの問題の起きているさなかに、突如として日本で原子力潜水艦の寄港を受ける、こういうふうなことが出てまいりますと、やはり私どもの不安はつのるばかりだと思います。先ほどの御答弁を伺っておりますと、危険であるかないかというような点について具体的に検討をした結果、まあだいじょうぶという判断がついたので、一応アメリカに返事をする、しかし、それと同時に、あるいはそれよりあとに国民の不安を解消するための努力をする、こういうふうな御答弁でございまして、これを受け入れる、寄港を認めるという返事をする前には、国民に対して、今日までのこういう点がこうなっている、学者の人たちの心配はこうだ、こういうふうな安心感を持たせるような、そういうふうな何の努力もしないで、一応これを受け入れるのだというふうな印象を受けたのですけれども、私はこれは逆ではないかと思う。国民の不安を除くには、アメリカに聞いてみたらばこうこうこうであった、学術会議の人たち意見はどうであろう、そういうことを打診した上でなければこれは受け入れるべきものではない。こういうふうに思いますけれども、椎名外務大臣の御答弁は、まるで逆に国民に不安を与えるような答弁をされておりますけれども、この点をもう一度はっきり聞かしていただきたい。国会に報告もしない、国民にも、いままでのいきさつ等について、またアメリカに問い合わせの内容について何にも報告をしないで、アメリカのほうに回答をやって、あとから国民を納得させるのだ、こういうような答弁をされておりましたけれども、そのとおりでございますか。これは私はたいへんな問題だと思います。
  112. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 国会において安全性の問題に関して非常に真剣な論議がございましたので、本来ならば安保条約の範囲内において寄港するのであれば当然これは認めなければならぬはずのものでありますけれども、この国会の熱心なる論議の状態にかんがみて、日本政府といたしましては、この寄港を延期いたしまして、そして長い時間をかけてこの安全性の問題についてたびたび専門家の意見を徴し、その結果に基づいてアメリカに数次照会を出しまして、慎重を期してまいったようなわけでございます。それで、検討の結果、もう最高の権威者のお集まりである原子力委員会意見も十分に徴し、もはや安全性についてはだいじょうぶであるという確信がほぼつきかけてまいりましたので、政府の責任においてこの問題を正式に処理いたしたいという心組みでただいまいるようなわけでございまして、十分国会の意思は尊重をいたしまして、なおこの問題の正式決定と同時に国会に対しまして詳細な経過並びにその内容を御報告いたしまして御了解を得ると同時に、関係の民間方面にも十分にPRいたしまして、絶対に安全であるという点の趣旨を徹底させまして、そして寄港ということの日を迎えたい、かように考えている次第であります。
  113. 戸叶里子

    戸叶委員 私の伺っているのは、決定と同時にではなしに、安全であるか、こういうことを問い合わせたらこうであるということは決定すると同時に発表されるのでしょうから、それを先に発表されて、あとで国会に出すというふうにできないものでしょうかということ。それを同時にするというのは一体どういう理由からでしょうか。この点をもうちょっとはっきり、同時にするというわけを伺いたいのと、もう一つは、社会党では、この前原子力潜水艦寄港の問題が大きな問題になってきましたときに黒金官房長官に申し入れをいたしております。その申し入れについて、スレッシャー号のような事件が起きたのだから、その事故の原因がはっきりしないうちは寄港は認めないというふうな御返事をはっきり黒金官房長官からいただいているわけです。ところが、その内容の返答もないうちに、しかもそういう不安をそのままにしておいて、入港を認めておいて、そして今度は報告する、その逆のやり方をなさる理由はどういうわけでしょうか。それを、私どもが申し上げますように、国民の不安をなくすために、逆に先に発表しておいて入港を認めるというようなことは考えられないのかどうか、どういうわけかをお伺いいたします。
  114. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 再三申し上げるように、もともと、日米安全保障条約の範囲内において行動するアメリカの軍艦の寄港は、一々これを認める認めぬということは問題にいたしておりません。今度も、この原子力潜水艦は推進力に原子力を用いているというだけのことでございまして、他の軍艦と同じように、もう向こうの必要に基づいて寄港する、あるいは出港するということができるのでございますけれども、しかし、日本の国民の原子力に対する特別な感情、感覚と申しますか、そういうものを懸念して慎重に取り扱ってきたのでございまして、本来は、そういう取り扱いになりましても、これは政府の責任においてこれを処理すべきものでございまして、事前に一々国会にはかってきめるという性質のものではないのであります。でありますから、国会の非常に熱心な論議を尊重して、そして長い時間をかけて再三照会をいたしまして今日の段階に達したのでございまして、もはや安全性の問題についてはごうまつも不安がないという確信を得ましたならば、これは政府の責任においてこれを認めるということにいたしまして、そして、一方国会の論議もありましたので、詳細なる報告を国会に送って御了解を得たい、同時に国民に対しましても十分に不安のないようにPRをしたい、こう考えている次第であります。
  115. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことはよく知っております。時間がないですから私どもの聞いているとおりを返事していただきたいと思うのですが、大臣はたいへん横道にそれておしまいになって、私どもの伺っていることをそのまま受け取っていただけないのです。  そこで、時間がないので次の質問に移りますが、普通ならば安保条約によって原子力潜水艦も当然日本は入港を認めなければならないのだ、しかしアメリカ側が日本の国民の感情をおもんぱかって、原子力潜水艦に限って特に日本に通報いたします。こういうことなんだということは、いままでのたびたびの委員会においてもはっきりとお答えになっていらっしゃることです。そこで、お伺いしたいことは、佐世保と横須賀の二つの港に限ってだけの申し入れがあったのかどうか、それから今後においても原子力潜水艦の寄港というたびに通報があるのかないのか、今度だけすれば今後においては入港の通報をしないのかするのか、この点もはっきりとお伺いしたいと思います。
  116. 竹内春海

    竹内説明員 アメリカ側からは、横須賀、佐世保に限って入港したいという申し入れでございます。それから、原子力潜水艦の入港にあたってはそのつど事前に連絡いたします、こういうことになっております。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 今度日本に入ってくる原子力潜水艦というのは、ポラリス型を除いた攻撃用の原子力潜水艦ということになるわけですね。そうしますと、その攻撃用原子力潜水艦にはサブロックをつけるのだ、そのサブロックには核、非核が両方あるということになっているのですが、表向きはアメリカのほうから今度また原子力潜水艦を寄港いたしますと次にも通報してくるわけですね。しかし、その場合に、それが核、非核どっちかわからないわけで、アメリカを信用する以外何ともできないわけですね。そういうところにも非常に国民の不安があるわけです。ですから、話し合いをする段階において、査察とまではいかないにしても、原子力商船と同じように、何かはっきりと日本政府がそれを見ることができるようにしてほしいくらいの申し入れをしてもいいと私は思うのですが、それは全然なさらないのかどうか。軍の秘密をお守りになるのでしょうからあなたのおっしゃるとおりに信用しますということで、黙って引き下がっていらっしゃるのかどうか。この点も国民の不安の一つでございますから、伺っておきたいと思います。
  118. 竹内春海

    竹内説明員 アメリカ側から日本に寄港させたいと申し入れてまいりました潜水艦は、御指摘のとおり攻撃用原子力潜水艦に限るということでございまして、ポラリス潜水艦は寄港させないということを申しております。このことは昨年ギルパトリック国防次官がまいりましたときにも記者会見でその趣旨を述べております。サブロックにつきましては非核、核両用でございますけれども、核弾頭をつけて日本に入ってくるという場合には、当然安保条約の付属交換公文によりまして事前協議の対象になるわけでございまして、それにつきましては、一九六〇年の一月に岸・アイゼンハワー共同声明におきまして、アメリカ政府は事前協議に関する事項に関しては日本政府の意向に反して行動することはない、こういう保証をいたしておりますので、私どもはアメリカ側の最高責任者の公式の言明というものに信頼をしておるわけでございます。
  119. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう点を私は伺っておるのじゃなくて、日本側として、非常に国民が不安であるから一応この核武装しておるかしていないかというようなことを見るような方式も考えてほしいというようなことをお申し入れにならないで、もうアメリカの最高責任者が言われたことであるから頭から信用するのだ、こういうことで交渉されていたわけでございますね。これも念のためにちょっと伺っておきます。
  120. 竹内春海

    竹内説明員 一般国際通念といたしまして、軍艦の内部を査察するということは不可能であります。私どもは、先ほど申し上げましたとおり、アメリカ側の公式の言明というものを信頼しております。
  121. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことは私ども知っております。ただ、アメリカでさえも、国民の感情をおそれて、そうしてわざわざ日本に入港の通報をしてきておるのですから、国民の不安を除くためには、ありとあらゆることを条件として出してもいいではないか。それを、国民の不安を除くことよりも、アメリカのほうを先に信用するというその態度に私はどうも気に入らないところがあるわけです。ことに、佐世保と横須賀というようなところに選んだわけでありますが、これはどうせ第七管区に入れられるわけです。この間のトンキン湾事件にいたしましても、第七艦隊がみんな向こうに行くわけです。そうすると当然原子力潜水艦も利用されるということ。あるいはポラリス潜水艦が太平洋に配置されるということになったということを聞きましても、非常に国民は不安に思っておるわけです。したがって、こういう不安を取り除くあらゆる手段を講じてからでなければ入港を認めない、こういう強い態度をもって臨んでいただきたい。きょうのこの委員会で私どものほんとうに真剣にそういうことを申し上げておる点を外務大臣はどういうふうにお考えになるのか、もう一度伺いまして、私はまだ質問がたくさんありますけれども、同僚議員の質問が残っておりますので、この程度でやめたいと思います。私たちはほんとうに国民を代表して心配しておりますので、外務大臣はこの不安というものに対してどうお考えになるのかということをもう一度はっきりと解明していただきたいと思います。
  122. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 もちろんこの国会における非常に真剣な論議を尊重いたしまして、今日まで時間をかけてあらゆる角度から質問を出しましてアメリカの回答を求めたような次第でございます。今後におきましても、この不安がもちろんこれで解消されるとは考えられません。その点を十分に考慮いたしまして、国会はもちろんのこと、各関係方面に十分の説明をいたしまして、いやしくも不安のないように努力をいたしたい、かように考えております。
  123. 安藤覺

    安藤委員長代理 帆足計君。
  124. 帆足計

    ○帆足委員 私はかって経済界におりましたので、仕事の上からも、また公の仕事の上からも、新大臣とは、私の先輩であり、ごじっこんの間柄であるわけであります。したがいまして、新大臣に御就任なされて、国家国民のために保守政党の立場からもまた平和に貢献されることを期待し、慶祝に存ずる次第ですが、しかし、政治の問題は国民の大義に属する問題でございますから、忌憚ない御質問を申し上げたいと思います。  もちろん、たとえば、日本の外交の上でも、貿易の問題とか、その他人道の問題とか、党派を越えて与党と語り合い、また政府と協調すべき問題も多々ありますけれども、遺憾ながら、この原子力潜水艦の問題につきましては、私ども、日本国民の苦い経験を代表いたしまして、賛成いたしかねる立場にある次第であります。したがいまして、ただいまの外務大臣の御答弁はまことに不満であります。  そこで、逐次お尋ねいたしたいのですが、きょうの朝日新聞をお読みになりましたか。また読売新聞の社説にも詳しく出ておりますが、すでに七月に新大臣御就任の前に日本政府は非公式に原子力潜水艦の寄港についてこれを受諾するという回答をしておる、こういうふうに新聞は伝えておりますが、これはどういう意味でございましょうか。そのことを国民すべては憂慮しておりまするし、新聞の社説もほとんど筆をそろえて心配をしておる問題でありますから、その点をまずお尋ねをしたい。
  125. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 それは私どもまだ聞いておりません。
  126. 帆足計

    ○帆足委員 まだそこまでまいっていない、そしてアメリカに対して正式な回答をしていないということを聞きまして、それではまだ政府にある意味ではわれわれは助言をし、——われわれとても常識のある人間ですから、やみくもに何でも反対しておるのではないのでございます。したがいまして、この権威ある外務委員会におきまして問題点を指摘いたしまして政府の再考慮をお願いしたいと思うのでございます。  外務大臣は、これはほんの漫談であったでしょうけれども、原子力商船のできる時代であるから別に心配はないではないかという談話もございました。そこで、私はお尋ねしたいのでございますが、商船の場合ならば、御承知のように、構造学上からも原子力の危険性に対して相当軍艦の場合よりももっと細心の考慮を払っておりまするし、また核兵器の問題もありませんし、検査の問題なども楽でございます。しかし、軍艦の場合、攻撃用潜水艦の場合には、まず原子力の危険性に対する許容量の問題もおのずから商船の場合と異なるように聞いておりまするし、また放射能残渣の排出はどうなっておるか、また核兵器の装備、また核兵器が備えつけられ得る準備装備などの点がありとするならば、やはりそれは他国の報復を受けるおそれがありますから、ちょうど首のないマネキンを置いて首さえちょっと置けばいいというような装置になっておるとするならば、これはボーダーラインの問題としてやはり憂慮にたえない。たびたび当委員会においても指摘された点でございます。したがって、商船の場合とはやはり違う点があるのでございますから、慎重を要するのですが、これらの点についてはことごとく検討をなされたのでしょうか、伺っておきたいと思います。
  127. 竹内春海

    竹内説明員 いろいろ問題の点は事務的に検討したつもりでございます。
  128. 帆足計

    ○帆足委員 いままで私どもは具体的にここで審議しまして、これらの問題の一つ一つについて政府答弁が、政府みずから認めて不十分である、十分な材料を持っていない、したがって、この外務委員会においてもっと、とにかく最後の結論はどうであるにしろ、十分技術的にも審議しようという約束になっていて、湯川博士はじめ各学識者に来ていただいて衆参両院の外務委員会で検討したわけです。まだその検討の途上にあるわけです。  そこで、具体的にお尋ねいたしますが、攻撃用原子力潜水艦が日本に寄港したいという理由はどういう理由でありましょう。
  129. 竹内春海

    竹内説明員 この点は、昨年の中間報告でも資料として差し上げましたとおり、補給と人員の休養というのが目的であります。
  130. 帆足計

    ○帆足委員 原子力潜水艦は航続時間が一週間もあるいはもっとそれ以上も水中にもぐれるわけでありますから、休養ならばハワイで十分できまするし、補給ならば他の場所でもできるわけで、ただいま日本の国民は原爆ノイローゼといわれておりますが、私どもは原爆に対しては警戒し過ぎても別に恥でもなかろうと思っております。それほどおそろしいものです。ソ連のロケットがキューバに置かれたときに、アメリカはふるえ上がりまして、除いてくれと言いました。そのときのフルシチョフ首相の答弁はふるっていて、なるほどおそろしいものです。おそろしいものを持ち込んだことは事実です、ですから、それではまた取りのけましょうと言って取り除いたわけです。したがって、原子力に対するる恐怖というものが大きければ大きいほどその人の頭脳がすぐれているとも言えるし、また必要な現代の国民感覚であろう。現に、バートランド・ラッセルでも、なくなったアインシュタイン博士、湯川夫婦等も現に同じことを主張されておることは御承知のとおりであります。休息のためということならば、この国はスモッグも多いし、交通事故も多い。また、いま横須賀の事情を見ますと、休息に適当な場所ではありません。売春禁止もありますから、変なことをすることも、やがて取り締まりもオリンピックを機会にきびしくなるように聞いております。また、外務大臣に申し上げておきますが、これは事実といたしまして膨大なデモンストレーションが連続的に行なわれると思います。おそらく何十万というデモンストレーションが行なわれると思います。それが冷静的であるか感情的なものであるかという批判もあるでしょうけれども、私は自然発生的に安保以上のデモンストレーションが起こることを予想されると思います。休息のために来たアメリカの兵士たちが、やまとなでしこを求めて上陸したのに、赤旗の行列である、それから、赤旗ばかりでなく、いろいろな宗教団体の緑の旗、平和の旗が並び、ウエルカムということばのかわりにヤンキー・ゴー・ホームという声を聞くことはまことに痛ましいことではないか。また、今日の情報を私が耳にいたしましたのでは、オリンピックの最中にこれに対する反対デモンストレーションが行なわれる、原爆被害国として、原爆過敏症であるかもしれないけれども、原子力潜水艦をお断わりしたいという大デモンストレーションがオリンピックの最中に行なわれる、こういうことを誘発することは時期としてもあまり望ましいことでもないし、外務大臣を非常に苦しい立場に置くことになると私は心配するものでございます。したがいまして、当初の約束どおりに、外務委員会はまだ九月十日にも開かれるのでありますから、もう少し時間をかけて十分検討して、そうして、与党、野党立場が違いますから、最後の決断は、それは多数党である与党がする、それはやむを得ないことでしょう。しかし、論議は尽くしたということでなければならぬと思いますので、国会の気持ちは尊重した、君らの言うことは大体協定の中に織り込んである、科学技術庁の役人と相談したということだけでは納得いたしかねます。きょうの朝日新聞、読売新聞の社説をもう一ぺん再検討していただけば問題点は詳しく列挙されているように思うのでございます。  そこで、お尋ねいたしますが、政府は二十八日にこれをアメリカに回答するというふうに新聞は伝えております。もうそこまで迫っているのでしょうか。だとすれば、九月十日の外務委員会では間に合わないわけであって、われわれは事がきまって通告が済んだあとに話を聞かされる。船は出て行く煙は残る。残る煙がしゃくの種、こういうことになれば、オリンピックを種にして火をつけるようなものである。私はありのままを国民大衆に訴えねばならぬという立場にあるわけですから、何とかひとつもう少し問題を慎重に検討していただきたい。  第一に、休息と補給のために寄るという理由ならば、ただいまの横須賀は休息に適当な場所でない、ハワイのワイキキ海岸こそ適当な場合である、こう答えればいいのであって、何を好んで——国民の中の大多数、投票にいたしましても、野党は三分の一、一千万票以上とっている。国民の三分の一がこういう原子力潜水艦をあまり感服しないと言うのに、休息と補給のために来るというのは、礼儀としても好ましからぬことではあるまいか。逆に反米感情に対して火をつけるようなことになる。アメリカはもう少しフランスイギリス態度に学ぶべきであって、私はやり方がへただと思うのです。四十男の成金みたいなところがありまして、やたらに心臓ばかり強くて、ドルをちらちらさせて、人に押しつけがましい。アジアの一国でも成功しているかといえば、アメリカが手をつげたところの李承晩の哀れな末路、ゴ・ジンジェムの末路、そして最後にはバーベキュー夫人などという魔女さえあらわれて、そしてやっと今後グエンとかいう将軍が出たかと思うと、こういう軍独裁政治はグエンではなくてとても食えぬということになって、大衆は暴動を起こしておる。そういうこともよく考えなければならぬ。しかも、他面、われわれは原爆過敏症になっていることも事実です。確かにわれわれは原爆病患者です。一度原爆の放射能を受けた民族はもう陸海空軍にたよるような気持ちはない。それは日本の自衛隊が示しているとおりです。もう連隊旗はひるがえらず、進軍ラッパの音が聞こえても身ぶるいをするばかり。それはわれわれが原爆というものを知っておるからです。そしていまのような新憲法が生まれた。原爆ということを頭に置かずに新憲法を考えれば、これは空理空論です。マッカーサーが言っているとおりなんです。小銃、機関銃、バズーカ砲を念頭に置いて考えるならば、新日本憲法は空理空論である、しかし、一たび原子力を念頭に置いて考えるならば、新日本憲法の志すところは国連の志す精神と共通のところがある、これは原爆から生まれたものである、私は、全くそのとおりで、幣原さんが涙を流して敗戦の瞬間新憲法に賛成された気持ちはわかると思います。しかも、一発の原爆が六千度に沸騰したのに、いまでは百メガトンの水爆は六万度どころか、六十万度どころか、一億度に沸騰すると言われておる。一万四千キロのロケットができ上がって、ニューヨークにこれが落ちるならば、一発で一億度に沸騰して二万フィートの空、五十平方里にわたって、死の雨、死の灰が降ると言われております。こういう時代でありますから、原子力の問題に対してわれわれが慎重過ぎる、野党が声を大にして叫ぶということは当然のことでありまして、政府は御自分で言いにくいでしょうから、とても野党のこの反撃に対しては押え切れないからと言っていただいてけっこうです。おそらく横須賀と佐世保は三十万か五十万の大衆で埋まってしまうでしょう。こういう状況のもとではまずい、この責任は野党の責任だと言ってけっこうですが、よほど慎重な御考慮が必要であろうと思います。したがいまして、きょうの外務委員会を議会として、野党からこもごもこういう質問が出、誠意ある批判が出たということを念頭に置かれて、そしてこれが日米のほんとうの互恵平等の今後の協力に役に立つかどうか考えていただきたい。昔はモスクワに旅行すれば逮捕されて五年くらい懲役に入った。長いのは二十年くらいの懲役に入った。それが、いまではフルシチョフがワシントンを訪れ、またアメリカの著名な政治家が逆にモスクワを訪れるというような世の中になっておるわけであって、そして平和共存、とにかくイデオロギーを越えて人類は地球を守らねばならぬというような時代を背景としておりますから、どうも政府のこの原子力潜水艦に対するこんな受諾しそうな形勢は私は軽率であると思います。実は、朝日新聞に率直に書いてありますように、もう国民の反対がきびしいし、政府も、大平さんはのらりくらりするのがなかなかじょうずな方でありまして、議会の答弁なども、都合の悪いときには小さな声でじくじく言っておられますが、速記録を読んでみるとなかなかうまいことを言っておられる。いかだ乗りだと称しておりましたが、いかだを岩にぶつけない範囲内で要領よくやられる。しかし、ぶつけないだけでは、ではどこまで流れていくかというと、行くところまで行って急湍瀑布の中に落っこちるかもしれませんから、やはりあるときには決断とそれを裏づけする良識が必要であります。私どもは切に新大臣にそれを期待したいのでありますが、確かに新大臣の立場はこの問題に対してつらいと思います。非常にむずかしいと思います。したがいまして、こういうむずかしいときは、やはり大平流にのらりくらりと延ばすことが一番いい方法であるまいかと、私は誠意をもって助言しているわけです。でないと、休息と補給のために来るといっても、われわれが横須賀、佐世保を全部占領してしまいます。これはおそらく自然発生的にそうなるでしょう。そうすれば、せっかく女の子を求めて上陸したのが、デモにぶつかって、そうして、生麦事件ほどの事件は、そういうことはさせない、そういうことはないように自制するでありましょうけれども、しかし、自分の友の国日本と思って来、そして日本の女の子はなかなかかわいらしいと夢見て来た水兵たちを絶望させ、蛮族のごとく見えるような形でデモンストレーションが立ちふさがる、こういうことになることはもうたなごころをさすがごとしであって、その風景がまた全世界にラジオ、テレビで放送される、こういうようなことはもう目に見えているわけですから、二十八日にアメリカに回答するような軽率なことは、もう一ぺん良識ある皆さんの手で閣議で練り直していただきたい。そうして、外務委員会機会は九月十日にもありまするし、またオリンピックもありまするし、臨時国会、また本国会もあるわけでありますから、十分納得を得てからにしていただきたい。夏休みに社会党の首脳部がいないときに一挙にさっとやってしまえばどうにかなるであろう、こういうお考えでしょうけれども、先ほども申し上げましたように、船は出ていく煙は残るというように、いいあんばいにはいかないわけでありまして、その憤激はオリンピック及び第一回目の原子力潜水艦の入港のときに爆発するであろうことは明瞭でありますから、とにもかくにも、二十八日前後にアメリカに回答するということは、ひとつ誠意をもって野党の助言をいれて、そしてもう少し延ばしていただきたい。そして新聞論調もよくごらんくださって、幸いにしてアメリカに内諾を与えたというような明確な事実は新大臣はまだ承ってないということを聞いて、われわれはいまほっと胸なでおろした気持ちでございますから、もう少し慎重にしていただきたい、こういうことです。お答えにくいならば、何か抽象論でもけっこうです。
  131. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 じゅんじゅんとありがたい御忠告をいただきました。別に、最終段階に来ておるということは申し上げましたが。正式にはまだ決定に到達しておりませんので、二十八日云々というようなことにつきましてはお答えする段階ではございません。御親切な御勧告は十分に承っておきます。
  132. 帆足計

    ○帆足委員 とにもかくにも、政府がまだ正式にアメリカに通達してないという事実が明らかにされまして、これがラジオ、新聞で伝えられますれば、国民はほっと一安心というところでしょう。同時に、二十八日に正確にアメリカに回答するということにもなってない。したがって、内外の世論を見ながら、もう少し再検討していただきたいということを強く要望いたします。  時間も迫っておりますから、あと一言ですが、それは南ベトナムの状況につきまして一言申し上げたいのです。  もう李承晩支配下の南朝鮮と同じような状況になっておりますから、これにつけ加えることもないのでありますが、私は外務省の勉強が足らぬと思うのです。たとえば、南朝鮮の問題は、私はいつもそう言っているのです。政治的危機ではなくて経済的危機である。二千万の人口に対して、鉄がほとんど一トンもない、石炭も一トンもない、水力電気もないような南朝鮮がやっていけるはずがありません。李承晩たらずとも、私が南朝鮮の総理大臣であってもうまくいかないでしょう。また、アメリカの人口が一億数千万ありまして、どれほど金持ちでありましても、二千万のこの経済上の立地条件の基礎のない国民を豊かにすることは不可能です。したがいまして、これは経済的、立地的にむずかしい。したがいまして、この問題の解決はやはり国際連合にまかせる以外にとるべき方法がない、こう私は思っております。南ベトナムにつきまして、数年前マンデスフランスが思い切ってこのどろ沼から足を引いて国際連合またはそれに準ずるゼネバ会議にまかせようとした。これはフランスが苦しんだあげくのことです。もしフランスがアルジェリア独立に対しまして近衛公のような優柔不断の態度をとったならば、フランスはひどい目にあっていたと思うのです。しかし、ドゴール将軍は宇垣将軍と近衛公と一緒にしたような政治力がありまして、マンデスフランス、フォール氏のような秀才を、日本でいえば松本重治氏みたいな人材をうまくブレーン・トラストに糾合して、ついにいわばアルジェリア関東軍板垣を弾劾に処して、アルジェリアの満州事変を食いとめた。まことにみごとな態度で、フランスながらあっぱれである、こう思っておる次第でございます。  外務大臣は「おとなしいアメリカ人」というあの英国の作家グリーンの書いた有名な小説をお読みになったでしょうか。あれは映画にもなっております。あれ一冊お読みになればもう質問の必要もないのですが、長い間通産省にいらしたからそちらまで読書の範囲が及んでいないかもしれませんけれども、「おとなしいアメリカ人」のことは御承知ですか、ちょっと伺っておきたい。
  133. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 存じません。
  134. 帆足計

    ○帆足委員 読んでいらっしゃらない。「アラビアのロレンス」を読まずしてアラビアを論じたら、これはまことに不幸なことで、「おとなしいアリカ人」を読まずしてここで南ベトナムのことを論議するとしたら、まことにうら悲しい、こう言わざるを得ないと思います。
  135. 安藤覺

    安藤委員長代理 なるべく簡潔にお願いします。
  136. 帆足計

    ○帆足委員 外務委員会というのは一番教養の高い委員会ですから、やはり文学も哲学も必要である。しかし、人生は短いですし、ぼつぼつ腹もすいてきましたから、簡単にします。  そこで、南ベトナムの問題については、新大臣はこれから対策をお練りになるところですから、やはりゼネバ会議の精神、それから国連精神、そちらのほうにひとつ傾いていただきたいと思います。私は、外務省当局が事をなさるにあたっては、やはり英国の意見を相当参考にされたらよかろうと思います。またフランス意見、そしてバランスをおとりになることが、保守政党としても平和のために必要である。アメリカと一緒になってどろ沼の中に入っていくことは、今度のグエン事件で皆さん骨身に徹したのではないでしょうか。たとえばトンキン湾で事件がありました。東洋のことばに、瓜田にくつを入れず、李下に冠を正さずということばがありますが、トンキン湾まで入ってくれば問題が起こることはあたりまえであって、これはアメリカが瓜田にくつを入れ、李下に冠を正して、ついにどろぼう呼ばわりされた事件であって、私はことさらアメリカを非難するものではありませんけれども、公平に審判官として見て、これはアメリカが判定負け、そこへグエンに対して大暴動が起こりましたから、いよいよアメリカは南ベトナムの問題では発言権はなくて、むしろ十数カ国会議にまかせるべきであろう、こう思うのでございます。もし逆にメキシコ湾に中国またはソ連の軍艦、駆逐艦がまいったとしたら、アメリカはどんなに言うでしょう。おのれの欲せざること人に施すことなかれ。そうすると、そういうような中間地帯はどうすればいいか。外務大臣は、国内にゲリラ戦がなくなり、それから何もかもなくなって、国連精神でうまくいけばいいということを言われましたが、ゲリラ戦があるかないかは国内の問題であって、自由だと思うのです。日本も明治維新のときはゲリラ戦があった。悪い政権があるときは国民が憤激するのはあたりまえです。アメリカは南北戦争のときにゲリラ戦がありました。私はワシントン三百年祭に行って驚きました。フィデル・カストロそっくりな顔をしたのが森の中からあらわれて、おかしいなと思ったのですが、そうしたら、それはワシントンのゲリラ部隊でした。したがいまして、ゲリラ戦があるということはその国の政治が悪かった証拠でありまして、そういう混乱した地帯に対しては国際連合の協力を求めて解決すべきであって、特定の国が特定の勢力の維持のために自己の武力を使うことは、それがソ連であれ、またはアメリカであれ、慎むべきであって、そういうような紛糾した、ただれ腐った地帯に対しては、外からの干渉をやめて、国際連合があたたかく、外からそういう雑音の入るのを避けて、自然に水が流れ、沈でんするところに沈でんさせるようにする、その道は平和、中立、独立という道に、また自由の道に近いものであろうと思いますが、そういう心がまえに対して、われわれはあまりにも愚かであった。政治と外交についての理性のないこと、もう過去に顧みまして、大東亜戦争で道をあやまったのですが、同じような病気は今日でも残っておると思います。したがいまして、外務省当局としては、南ベトナムの問題に対してもう少し慎重であってもらいたい。トンキン湾事件などに対しても冷静にこれを観察して、そうして、ははあと思い当たる筋があるというくらいの情報を正確に把握しておいていただきたい。この問題については、たとえばゼネバ会議の精神で解決すべきであると私ども思っておりますが、外務省当局としては国連精神に立脚するというその精神を貫かれる意思があるかどうか、一言確かめておきたい。
  137. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 アメリカといたしましても、御承知のとおり、究極的にはやはり政治的な解決によらなくてはいけないということは政府当局も承知しておりますし、向こうのニューヨーク・タイムズ等にもそのとおりの論説が出ておるようでございます。われわれといたしましても、究極的には軍事一辺倒ではこの地域の問題は解決し得ない、問題は政治的解決をするための条件がいかに成熟するかというところにかかっているわけでございまして、そういうタイミングのつかみ方等につきまして慎重に情勢を検討しておる、そういう段階でございます。
  138. 帆足計

    ○帆足委員 それでは、もう一分間です。これが最後です。私どもはまだアメリカに原子力潜水艦の入港許可の正式回答はしていないことを了解して欣快にたえません。第二に、われわれとして、政府がもうほとんど態度をおきめになりかかったところであったでしょうけれども、さらに諸般の状況をよくお考え願いたい。特に、潜水艦から久しぶりに出てきて一ぱい飲もうという哀れな退屈した潜水艦乗り組み員の心情をも了察されて、これとデモンストレーションと衝突するようなばかげたことのないように。それはデモというのはただ抽象論であって、そういうことで政府をおどすわけでありませんけれども、しかし、休息と補給ならば、この原爆ノイローゼの国に対して、アメリカとしてはやはり軽率な態度をとっていただきたくない。また、ただいま御質問いたしました放射能の残渣は一体どういうふうに処理されておるか、または、商船の場合と違って、軍艦の場合の放射能許容量、これについても、合衆国標準局便覧第六七号の記録を示したからそれでよかろうというような軽率なことじゃなくて、原子力委員会にかけて、また原子科学者の意見を十分聞いて慎重な態度をとっていただくことをわれわれは期待して、そうしてきょうの次元においては政府は軽率なことをなさらないということを期待して、質問を終わりたいと思います。
  139. 安藤覺

    安藤委員長代理 戸叶委員より議事進行に関し発言を求めておられます。これを許します。
  140. 戸叶里子

    戸叶委員 今後の議事進行にも関係がありますので、大臣にぜひ聞いていただきたいと思います。  それは、一点といたしましては、先ほど質問の中に申し上げましたけれども、御答弁をいただけなかったのですが、社会党が第一野党として公式な立場で黒金官房長官に申し入れをいたしましたことですが、スレッシャー号の事故の問題が解決しないうちは入港というものは承認しない、認めない、受諾しない、こういうふうな御答弁をされておりますので、その点もよくお調べいただきまして、その約束を実行していただきたい。それが一つ。それから、もう一つは、入港の受諾の返事を向こうに出す前に、いま帆足委員も触れられましたように、放射能の許容濃度がアメリカ日本とが違っていたというような問題がどういうふうになったとか、あるいは事故を起こした場合の補償の問題がどうなっているとか、それからまた、海水の汚染の問題でこういうふうに一致点に達したとか、そういったような資料を少なくともこの外務委員会には受諾の前に出していただきたい。このことを外務大臣に要望をいたしたいと思います。これを委員長、おはかりいただきたいと思います。
  141. 安藤覺

    安藤委員長代理 御要求の資料については、外務省、提出できますね。
  142. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 たびたび申し上げるように、この問題は、国会の論議を十分に尊重いたしまして、時間をかけて安全性の解明に努力いたしまして、そうして今日の最終段階を迎えたわけでございます。それで、いよいよ安全性について確信が得られますならば、これは政府の責任において決定したいと存じます。これと同時に、国会に対しまして、いまお述べになりましたような諸点等につきまして十分に解説をいたしました書類を提出して、御了解に訴えたいと存じます。  なお、これと同時に、一般の民間の各方面に対しましても、不安動揺のないような十分な手段を講じたい、かように考えております。
  143. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの問題ですけれども、黒金官房長官のお約束は、やはり政府として責任ある野党第一党に対してお答えになったことですから、この約束は私は履行すべきだと思いますけれども、これはどういうふうにお考えになりますか。委員長も当然履行すべきものだとお思いになると思います。社会党としても、それをうやむやにされるということになりますと、たいへんなことだと思いますので、この点ももう一度はっきりさしていただきたい。  それから、いまの大臣のお答えでは、どうも入港を受諾してから委員会にその資料を出すというようなことですが、私がお願いをしているのは、要求をしておりますのは、受諾する前に少なくともこの委員会ぐらいにはお出しになるべきではないかということを言っているわけですけれども、この点、もうちょっとはっきりさしていただきたい。だめかいいか、その点をはっきりお答えをいただきたい。
  144. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 いまお答え申し上げたとおりでございます。
  145. 安藤覺

    安藤委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次回は来たる九月十日午前十時より理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後一時三分散会