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1964-08-10 第46回国会 衆議院 外務委員会 第34号 公式Web版

  1. 会議録情報

    七月十八日  臼井莊一君委員長辞任した。 ————————————————————— 昭和三十九年八月十日(月曜日)    午前十時二十二分開議  出席委員    委員長代理 理事 安藤  覺君    理事 椎熊 三郎君 理事 正示啓次郎君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君       宇都宮徳馬君    木村 剛輔君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       野田 武夫君    濱地 文平君       福井  勇君    三原 朝雄君       黒田 寿男君    田原 春次君       永井勝次郎君    山本 幸一君       永末 英一君    川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         国 務 大 臣 小泉 純也君  委員外出席者         防衛庁参事官         (防衛局長)  海原  治君         外務政務次官  永田 亮一君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      竹内 春海君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      齋藤 鎮男君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 六月三十日  委員福井勇辞任につき、その補欠として福田  繁芳君が議長指名委員に選任された。 同日  委員福田繁芳辞任につき、その補欠として福  井勇君が議長指名委員に選任された。 七月三日  委員宇都宮徳馬君及び福井勇辞任につき、そ  の補欠として田中榮一君及び纐纈彌三君が議長  の指名委員に選任された。 同月九日  委員竹内黎一君辞任につき、その補欠として川  崎秀二君が議長指名委員に選任された。 同日  委員川崎秀二辞任につき、その補欠として竹  内黎一君が議長指名委員に選任された。 同月十八日  委員愛知揆一君及び臼井莊一君辞任につき、そ  の補欠として福田篤泰君及び野田武夫君が議長  の指名委員に選任された。 同月二十四日  委員菊池義郎君、纐纈彌三君及び田中榮一君辞  任につき、その補欠として毛利松平君、始関伊  平君及び服部安司君が議長指名委員に選任  された。 八月一日  委員福田篤泰辞任につき、その補欠として宇  都宮徳馬君が議長指名委員に選任された。 同日  委員宇都宮徳馬辞任につき、その補欠として  福田篤泰君が議長指名委員に選任された。 同月十日  委員竹内黎一君、服部安司君、福田篤泰君及び  帆足計辞任につき、その補欠として木村剛輔  君、福井勇君、宇都宮徳馬君及び永井勝次郎君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員宇都宮徳馬君、木村剛輔君福井勇君及び  永井勝次郎辞任につき、その補欠として福田  篤泰君、竹内黎一君、服部安司君及び帆足計君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 六月二十六日  一、国際情勢に関する件 の閉会中審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(ヴィエトナム問題)  派遣委員からの報告聴取      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長代理 これより会議を開きます。  去る七月十八日臼井委員長辞任されましたので、理事協議により私が委員長の職務を行なうことになりましたので、よろしくお願い申し上げます。      ————◇—————
  3. 安藤覺

    安藤委員長代理 この際、椎名外務大臣及び永田政務次官よりそれぞれ発言の申し出がありますので、順次これを許します。  椎名外務大臣
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 去る内閣改造に際しまして、はからずも外務大臣の要職を汚すことに相なった次第であります。元来浅学非才の者でございまして、はたしてこの任務にたえ得るかどうか、まことに危惧の念を禁じ得ないのでありますが、魯鈍にむちうちまして職責の完遂に挺身いたしたいと考えます。つきましては今後各位の御鞭撻と御協力を切にお願い申し上げまして、はなはだ簡単でありますが、就任のごあいさつにいたしたいと思います。(拍手
  5. 安藤覺

  6. 永田亮一

    永田説明員 このたびはからずも外務政務次官を拝命いたしました永田亮一でございます。まことにしろうとでございまして、今後皆さまの御指導をいただきまして大過なく職責を果たしたいと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。(拍手)   〔安藤委員長代理退席、正示委員長代理着席〕      ————◇—————
  7. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 次に、日韓関係諸問題に関する実情調査にかかる派遣委員報告を求めます。安藤貴君。
  8. 安藤覺

    安藤委員 先般私どもは、李ライン問題等実情調査のため当委員会より派遣されまして、七月二十三日より六日間の日程で福岡県及び長崎県を視察してまいりましたので、ここに報告いたします。  派遣されましたる委員は、自民党安藤及び鯨岡の両委員社会党戸叶及び穂積の両委員、それに民社党永末委員の五委員であります。  まず二十四日福岡市において懇談会を開きましたが、ここには藤井福岡県副知事以下関係者多数出席のもとに活発な意見交換が行なわれました。まず、日中・日韓漁業対策西日本都市協議会より、日韓漁業協定締結の促進、安全操業確保李ライン水域における巡視船増強拿捕漁船損害に対する国家補償及び拿捕漁獲物日本市場における取引の問題について陳情があり、続いて各関係者よりそれぞれ意見の陳述が行なわれましたが、最も強調されましたことは、巡視船増強拿捕漁船損害に対する国家補償の問題であります。  申すまでもなく李ラインは不法なものでありますが、それ以上、漁業者にとっては死活問題であります。李ライン内で操業が危険であるからといって、生きるためにはそこに出漁しないわけにはまいらないのであります。拿捕の危険にさらされながら操業する者にとって唯一のたよりは巡視船による保護であります。巡視船韓国警備艇勢力は、後に述べますようにその隻数においてもその速力においても大体拮抗しておるのでありまして、このような状況のもとで多数の漁船保護について万全を期することは、巡視船がいかに奮闘いたしましてもはなはだ困難でありまして、漁業者側巡視船増強を強く訴えるのもまことにもっともであると感じられました。  また、拿捕漁船損害に対する国家補償の問題について申し上げますと、現在、漁船保険の制度がありまして損害をカバーしているとは申しますものの、この漁船保険戦争保険と同性質のものでありまして、その料率が高く、これに加入し得ない業者が多数おるわけであります。これらの漁船保険に加入していない者が拿捕されますと、その損害は大きく、再起もまた困難となり、つぶれる者も多いということでありまして、政府李ラインを認めていないから補償はできないという態度をとっておるようでありますが、抑留者に対しては見舞金を出しているのでありますし、拿捕されて破産のうき目を見る者が現実にあるわけでございますから、これに対しては何らかの救済の道を講ずべきではなかろうかと痛感いたした次第であります。  福岡市における懇談会終了後、直ちに巡視船「だいおう」に乗船し、李ライン付近海域視察するため博多港を出港いたしました。私ども視察のため巡視船を提供された海上保安庁の御好意、また終始行をともにされました川上本部長警備第二課長以下の方々の御苦労に対しましては、ここで深く感謝をいたす次第であります。  李ライン付近海域へは二十五日の早朝到着いたしましたが、あいにく満月で不漁日のため、出漁中の漁船は少なく、その操業状況視察し得なかったのであります。わずかに双眼鏡でながめましたり、レーダーをのぞいたりできた程度でありました。また、博多出港後一時間ばかりで韓国警備艇出動の報に接し、これと遭遇し得るかと期待したのでありますが、間もなく警備艇は針路を変じたため、これと遭遇することはできませんでした。  李ライン付近海域視察を終わって対島に向う途中、洋上において服務中の巡視船「くさなぎ」及び快速補助艇まつゆき」に出会い、その労をねぎらったのであります。  巡視船厳原に入港するまでの間に、川上本部長より巡視船警備状況についての説明を受けましたが、その概要を申し上げますと、第七管区に配属されている巡視船は現在十五隻、そのうち三隻は旧海軍艦艇老朽船のため、季ライン行動可能なのは十二隻、その速力は十三ないし十四ノットであり、これに対して、韓国警備艇は十三隻、その速力も大体同程度になっているので、現在の勢力比は一対一であります。一方、李ライン内で操業する日本漁船は、最盛期になると一月の延べ隻数二万隻をこしているということでありますから、第七管区の苦労は想像以上のものがあります。  最盛期においては手不足を感ずるので、他管区からの応援を仰ぐこともあるとのことでございますが、第七管区においては現有勢力でその任を全うするため非常な努力を払っているものと認められました。すなわち、あらゆる方法を講じて韓国警備艇の動静を把握することにつとめ、これに基づいて漁船に的確な警報を発して拿捕を免れしめ、もし不幸にして襲撃された場合には、乗り組み員を巡視船に移し、漁船を横抱きにして、あるいは韓国警備艇の進路を妨害し、あるいは急旋回を重ねる等のことを行なって、拿捕から免れしめるようにつとめ、最悪の場合においても、漁船拿捕されても人員に被害のないよう心がけているとのことでありました。なお、巡視船の奮闘の模様は、ここに第七管区から送っていただいた写真帳がございますから、これを順次ごらん願いたいと存じます。  巡視船の諸君が漁船保護のために十分に努力していることは認めますが、一そう保護任務を果たすためには、地元漁民が訴えているように、巡視船増強が必要であると感じました。  次に、対馬厳原における懇談会について申し上げますれば、厳原においては、長田対馬支庁長以下関係者多数出席のもとに開かれ、まず、斉藤厳原町長より、漁業者安全操業確保、道路・港湾の建設整備陸上空港建設及び医師不足問題の解決等について陳情があり、次いで、梅野対馬漁業協同組合長会会長より、漁業者を代表して、李ライン問題の早期解決安全操業の確立及び対馬沿岸漁業保護振興等について陳情があり、長崎県当局からもほぼ同趣旨の要望がありました。  続いて委員からの質疑の形で対馬島民の声を聞いたわけでありますが、そのうちおもな意見といたしましては、対馬漁船はほとんど拿捕されておりませんが、これは対馬漁船が小型であることがそのおもな原因であると思われますものの、対馬漁民の訴えるところでは、これは韓国漁民対馬漁民に対して特殊な親近感を抱いているからであると考えており、したがって、彼らに交渉をまかせるならば韓国漁業との入り会い漁業も必ずしも不可能ではないという考えを持つ者もあるということであります。第二には、対馬沿岸漁業者わが国の大資本漁業によって漁場を荒らされることを極度におそれており、李ライン撤廃には賛成しながらも、李ライン撤廃後大資本漁業の進出によって沿岸漁業の存立が脅かされるのではないかということから、むしろ李ライン撤廃危惧の念を抱く向きのある事実には特段の考慮が払われてしかるべきであろうかと思うのであります。  以上、視察模様について申し上げましたが、私どもの結論を要約して申し上げますれば、一つには、韓国による不法な拿捕の危険から漁民を守るには李ライン問題の解決以外にはないのであるから、この問題の早期解決のためにあらゆる努力を傾けるべきであるということであります。韓国の事情により日韓会談が中断し、いつ再開されるかの目途のついていない今日、漁民物心両面にわたる苦しみをこのままにしておくわけにはまいりません。この際、外務省といたされましては、李ライン及び日韓漁業問題の公正妥当な解決のために一段の努力をしていただきたい。他の諸懸案と切り離してこの問題を別途に解決する構想があってもいいのではないかとの考えも浮かぶわけであります。  二つには、韓国の不法な行為に対しては常に断固たる態度をもって抗議し、かつ対処していくべきであると存じます。現地漁民の訴えるところでは、韓国警備艇の活動が活発になって拿捕が盛んに行なわれる場合、外務省の強硬な申し入れがあったときは韓国の攻勢も鈍化しているという事実があるのであります。国交正常化の話し合いをしているときに漁船拿捕を行なうということでは、韓国の誠意を疑わざるを得ないというほかはありません。外務省といたされましては、このような韓国の不法な行為に対しては今後ともあくまで厳然として強硬な態度をもって対処してもらいたいのであります。  なお、現地の声といたしまして、一方において拿捕行為が続いているとき、他方において韓国に対する経済協力を持ち出す等の政府態度はまことに弱腰なりとの非難する声も強かったことをお伝えいたしておきます。  終わりに臨みまして、炎暑の中、御多忙のところ、私ども視察のためいろいろ御協力を下さいました方々に対して深甚なる謝意を表するものであります。  視察の詳細については、ここに報告書を用意しておりますので、委員各位にごらん願うため、これを会議録に載せていただくようお願いして、報告を終わります。(拍手
  9. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 なお、本件に関する調査の詳細につきましては、会議録の参照に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 正示啓次郎

    ○正示委員長代理 御異議なしと認め、さよう取り計らいます。   〔正示委員長代理退席安藤委員長代理着席〕      ————◇—————
  11. 安藤覺

    安藤委員長代理 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。  鯨岡兵輔君。
  12. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 いま安藤委員から李ライン視察報告がありまして、私も行ってきたのですが、非常に憤激する面もありまして、これらについては、外務大臣に、特に御就任早々でもありますので、ひとつ十分御意見を承りたいと思いますが、理事会の申し合わせによって、国際情勢のほうを先にやって、その後に外務大臣から李ライン問題についてわれわれの質問お答えを願うということになっておりますので、あえてそれをあと回しにいたしまして、あとで十分に質問を受けていただきたい。そのことをお願いを申しまして、その前に、最近くすぶり続けていたベトナム問題が、トンキン湾事件として急にその重要性を増し、極東の平和に重大な支障を来たすのではないかと思われますので、この点について、せっかく外務大臣がおられますので、二、三の質問をいたしたいと思うのであります。時間の関係もありますから、質問はきわめて簡単にいたしますが、意のあるところをおくみ取りいただいて、明快なお答えがいただきたいと思うのであります。  トンキン湾米国駆逐艦が浮遊していた。これに対してベトナム魚雷艇攻撃をしたかあるいはまた攻撃の態勢をとったか、まずそんなところから砲火を交えたということは、極東の平和という見地からまことに残念なことであります。もし米国駆逐艇がいたその地点公海上であるとしたならば、国際法見地からして、そんなことが事件の発端になるというのではまことに困ったことだと思うのですが、政府はこの点に関してどうお考えになっておられるか。これは言うならばこの問題の法律論であります。  第二の質問もついでですから続けて行ないますが、公海上にいるのにそれがけしからぬと言われたのでは困ることですし、また、これを排除するために直接的な武力の行動が行なわれたというのでは、これは危険千万なことであるといわなければなりませんが、それは法律的なことである、現下の南北ベトナム、ラオス、それに中国、そしてアメリカのこの方面における情勢は、決して平和的な零囲気にあるのではなく、むしろ一触即発の危険な情勢にあるとさえ言われているときに、たとえ公海上であるとはいいながら、北ベトナムと目と鼻の先のトンキン湾米国軍艦が航行するということは、それは危険の増大である、その意味でアメリカの今回の行為は挑発的な行為である、そう考え考えられないことでもないと思われますし、また、そのように報じている新聞も幾つかあるのであります。きょうの朝日新聞のインドなどの新聞論調を見ますと、明らかにそう言うておる。そういう点について政府はどのように考えておられるか。  この二点についてまずお答えを願いたいと思うのであります。
  13. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 過ぐるトンキン湾事件はまことに極東の平和、安全のために遺憾なことであると考えます。  そこで、公海上の攻撃ベトナムによって行なわれたかどうかという問題でございますが、わが国の置かれておる現状からいたしまして、この問題をみずから的確に把握する遺憾ながら手段はないのであります。ただ、同盟国アメリカ声明によりまして、われわれは同盟国声明をまず信頼する以外にはないのでありまして、やはり公海上においてベトナム攻撃があったものと考えておる次第であります。  それから、たとえ公海であっても、駆逐艦が航行するということは、これは攻撃を挑発する行為ではないかという点でございますが、あの地帯の最近置かれておる状況からいたしまして、哨戒のためにトンキン湾のある地点を航行しておったということは、これは決して先方の攻撃を挑発するという行為とは私ども考えておらないのでございます。
  14. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 そうすると、法律的には公海上である、その公海上で北ベトナム攻撃をしかけてきたというアメリカ声明を信頼する、二番目は、ああいう時点においてトンキン湾を浮遊するということは決して挑発的行為であるとは考えておらない、こういうお答えであります。  第二番目の質問に移ります。ベトナム問題についての第二番目の質問は、今回の事件に対して、政府は、アメリカのとった行動はやむを得ない行為であったという見解を公にせられておるのでありますが、ややもすれば、まことに残念なことですけれども政府アメリカ行為に対しては無批判に好意的なのではないかとさえ言われている今日、われわれとしてぜひ伺っておかなければなりませんことは、やむを得ない行為であったという声明の根拠は何であるかということであります。明快にお答えを願いたいと思います。
  15. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 哨戒のために公海を航行しておりまして、それに対して突如攻撃を受けたのでありますから、それに対して実力を行使してこれを排除するということは、これはやむを得ざる行為である、いわゆる自衛権の発動と申しますか、やむを得ざるものである、かように考えておるのであります。
  16. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 やむを得ない行為であったというお話、よくわかりました。あとでよく御質問申し上げますが、それならば、軍艦でない魚をとっている日本の船が公海上で拿捕されたり、連れて行かれて監獄にほうり込まれたりしているのはわが国であります。そういうことはそのままにしておいて、これはちょっと私はおかしいと思うのですけれども、それはそれで、政府見解はよくわかります。  ベトナム問題についての第三の質問をいたしますが、最近のこの方面情勢はきわめて不穏なものがあることは、大臣も御承知のとおりであります。もし間違えば極東は大きな不幸に見舞われなければならないのであります。これはわが国だって例外ではないと思うのであります。わが国も含めて極東は非常な不安におとしいれられるおそれが十分にある。日米間に結ばれた安保条約の第四条では、「極東における国際の平和及び安全に対する脅威が生じたときはいつでも、いずれか一方の締約国要請により協議する。」、アメリカ日本いずれか一方の締約国要請によって協議するとありますけれども、私は、もうすでにこの極東情勢というものはここにいうところの四条協議日米間にあってしかるべき情勢だと思うのですが、もうそれがなされておりますか。なされておらないとすれば、なぜなされておらないのか。いずれか一方というのですから、わが国からそれを最近において要請する意思があるかどうか。そういうことについて承りたいと思います。
  17. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 四条後段に該当する事態は確かに起こっておるのであります。それで、いずれか一方の要請によりということでございますが、この要請がなくても協議は進められてよいのでございまして、いち早くライシャワー大使総理会見を申し込んで来られまして、ジョンソン大統領のこの問題に対する声明の詳細について説明をし、その了解を求めたのであります。これに対して池田総理大臣事態の可及的すみやかな収拾を希望して、会見を打ち切ったという事実があります。また、一方、駐米武内大使ラスク長官を訪問いたしまして、そして、これらの問題に関するわがほうの意見すなわち、できるだけ問題の不拡大、そしてできるだけ早く円満に平和を回復するよう希望を申し入れ、向こうがこれを了承したという事実があるのでありまして、これらのことがすなわち四条後段協議に該当するものと考えております。
  18. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 どうもそれは通常外交ルートで、ライシャワー大使総理にお会いになっていろいろ国際情勢について話をし合ったとか、あるいはアメリカ大使向こうで話し合ったとかいうことは、通常外交ルートでやっているように思われます。それだったならば、通常仲よしにしているのですから、アメリカ日本との間は密接でなければならぬことは当然であります。せっかく安保条約四条で、そういうようなむずかしい情勢が起きたならば事前協議する、どっちか一方の要求によって協議をするということになっている。その四条規定が生かされてそこに会議が持たれておるのだというふうに受け取れないのですが、ほんとうにその四条規定でもって会議が持たれておるのだと考えてよろしいのですか。
  19. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 四条後段協議形式については別に取りきめもございませんので、これはあらゆる形式を取り入れて協議してかまわないのであります。さように解釈しておりますので、私がさいぜん申し上げました事柄はまさにこの後段協議に該当するもの、かように考えております。
  20. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 それでは、四条規定に基づいて会議が行なわれておるものと解釈しまして、次に移ります。  安保条約の第六条では、「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍日本国において施設及び区域を使用することを許される。」と定め、この六条の実施に関する交換公文では、「合衆国軍隊日本国への配置における重要な変更、同軍隊の装備における重要な変更並びに日本国から行われる戦闘作戦行動のための基地としての日本国内施設及び区域の使用は、日本国政府との事前協議の主題とする。」と定めておるのでございますが、このところ急にアメリカ在日艦隊空軍が南方の緊張地域へ移動を開始しているとの報道がしきりであります。これらはこの条約にいう「事前協議」の対象とはならないのであるか。この条約の中の四条及び六条並びに六条に基づく交換公文に関連する以上の二点ですが、先ほど四条のほうをお答えいただきましたから、六条並びに六条に基づく交換公文に関連して、これは事前協議対象ではないのか、このことについて伺いたいと思うのであります。
  21. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の事件が発生する前後において佐世保及び横須賀から第七艦隊所属艇船トンキン湾哨戒任務のために出港したことは事実であります。しかるに、第六条の場合は、作戦任務を持って日本施設及び区域を使用すると書いてあるのであります。ただ哨戒のためにトンキン湾に出港したということは第六条の事項に該当いたさないのでございまして、これは事前協議対象にはならない、さように解釈しておる次第であります。
  22. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 最近アメリカ在日艦隊空軍が南方の緊張の地域へ盛んに出ていく、これは哨戒任務であって作戦行動ではない、作戦行動でなければ六条並びに六条に基づく交換公文規定している事前協議対象ではない、こうおっしゃられるわけでございますが、作戦行動というと、そうすると、国交を断絶していよいよ戦争が始まってからのことであって、幾ら緊張しても宣戦布告をして戦争が始まらなければ、どんどん出ていったり何かすることは全然この対象にならない、こういうふうにお考えですか。
  23. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 宣戦を布告するしないの問題とは関係なしに、事実上の作戦行動の使命を帯びて、そして基地を出発する、こういうことをさすのでありまして、ただ、そういうことでなしに、哨戒のため、あるいはある地点に対する補給のためにというような場合には、いわゆる作戦行動任務を帯びて基地を出発したものではないということになるわけでございますから、これは二国間の宣戦布告の有無にかかわらない問題であります。
  24. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 お話はよくわかりましたが、どうもわりあいに事態を軽くお考えになっておられるのではないか、こんなふうに私自身は考えます。哨戒とかあるいは補給とか、そういう日常の行動ではない。もうすでにアメリカとしても本腰を入れてこの問題を解決しなければならないと考えておるやさき、その緊張地域への出動でありますから、大臣が言われているのは少し軽くお考えになっておられるのではないかという気持ちがいたします。いたしますが、そういうことであるならば・六条並びに六条に基づく交換公文対象ではないとおっしゃられるのはよくわかります。しかしながら、そういうふうな見解をおとりになるならば、なおさらのこと、あの四条情勢のほうの協議をもう少ししっかりやる、四条でやっているんだか何だかわからないようなことでなしに、四条に基づく協議というものをもっとしっかりやるということが双方にあってしかるべきではないか。そういうことを御遠慮なく日本としてはアメリカに要求することが、アメリカ日本の連帯感、手を結んでいく上においても必要なことではないか、こんなふうに考える。そうであればこそ安保条約の精神も生きてくるのではないか、こんなふうに思うのですが、いささかその点が遠慮なさっておるような傾向が見受けられて、残念に思うわけであります。  最後に、ベトナム問題に関連してお尋ね申したいと思いますことは、特に差し迫ったことではありませんけれどもわが国の外交の考え方、わが国の外交の大きな方針としてこの際ぜひ外務大臣にお聞きしておきたいと思います。すなわち、南ベトナムやラオスに米国軍隊や軍事顧問団などがいつまでもいるということは、たといその国において対立する思想や勢力のために政情が不安であるとしても、明白にそれは内政に対する干渉である、うちの中でどんなことがあろうが、アメリカが行くということは内政に対する干渉だ、そういう意味から、よその者は帰れ、アメリカ帰れ、帰ることが平和への近道である、内政の干渉はどんなことがあってもいけない、そういうような議論が北ベトナムや中国など、主として社会主義陣営のほうからなされていることは御承知のとおりであります。ところが、そう言いながら、南ベトナムの内部において武力で政権を奪い取ろうとする団体、これをベトコンと言うのですが、これに対して、それは民族の解放であるからまことにけっこうなことである、これに対してあらゆる援助をすることは社会主義国の連帯性のためにもそれは当然の義務でさえある、そういう見地から、武器弾薬その他の援助並びに軍事指導を公然と積極的に、北ベトナムにしても中国にしてもこれを行なっておるのではないか。アメリカが帰ることが平和のために必要ならば、社会主義国の連帯感に基づくこれら軍事的な援助の中止もまた平和のために必要であろうと私ども考えるわけです。社会主義国に連帯感があるのならば、同時に民主主義国の間にも連帯感があってしかるべきであると思う。そして、その連帯感に基づく援助行為はどんな援助行為であってもそれは平和的なものでなければならないと私ども考えておるわけであります。ベトコンに対する平和的ならざる援助をやめないで、アメリカだけ帰ればそれで平和が来るんだというような考えがよく理解できない。この点について政府はどのように考えておられるか、お答えがいただきたいのであります。すなわち、民族の解放のための正義の戦いと称してこれに武器などを援助し、強力積極的に軍事指導をするやり方、これは私は間接侵略と言いたいのですが、こういう間接侵略に対する国際政治上の正当性があるかというような問題について、日本政府考え方を中外に明らかにしておく必要があるのではないか、こんなふうに考えるのですが、お答え願いたいと思います。
  25. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お説のごとく、もしも社会主義国間に民族解放のための連帯責任というものがあるならば、自由主義国問において民主主義と自由を守るための連帯責任というものがなければならないのでありまして、その点はまことに御同感でございます。しかも、その連帯責任を遂行するにあたりまして、あくまで平和的でなければならない。もしもそれに武器等の援助をして、そして平和を撹乱するというようなことがもしあれば、これは決して正当なる連帯責任の遂行ではないと私は考えます。東南アジアにおける最近の情勢というものはまさにこの限界を越えた一つの責任行為のあらわれであるとすら考えてしかるべきではないか、かように考える次第でございます。
  26. 鯨岡兵輔

    鯨岡委員 ベトナム問題に関する私の質問は以上で終わりたいと思いますが、先ほど安藤委員から報告があった李ライン問題について重要な質問が残っておりますけれども、これは理事会の申し合わせで国際情勢の問題のあと回しということであります。しかし、ぜひ外務大臣にお聞きを願い、外務大臣から直接お答えをいただきたいことがありますので、あとにまた質問を保留させていただきます。  終わります。
  27. 安藤覺

    安藤委員長代理 戸叶里子君。
  28. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣、政務次官、そしてまた防衛庁長官、御苦労さまでございます。外務大臣はきょうは初めてでございますが、この委員会はたいへんなごやかな委員会でございますから、どうかお気をお許しになってお聞きを願いたいと思います。あまりかたくならないで御答弁を願いたいと思います。それと同時に、外務大臣のおことばを私どもは一言一句漏らすまいとして聞きたいのでございますが、ちょっと聞きにくいところがありますので、特に語尾のほうを、ますか、ませんかということをはっきりお答えをいただきたいということをまずお願いをしておきたいと思います。  トンキン湾事件は、当事者であるアメリカがおりまして、そのアメリカ日本との関係日米安保条約関係で非常に深いものがありますので、国民は安閑としていられないことは私が申し上げるまでもないことでございます。したがって、政府としてもよほど思慮深く扱っていただきませんと、非常にいろいろな問題が起きてくるのではないかと思います。ところが、残念なことに、今日までの政府態度を見ておりますと、どうも納得のいかない面がたくさんあるわけでございまして、私はそれらの点について二、三点質問をしてみたいと思います。  まず、トンキン湾公海アメリカの艦船が哨戒するということは国際法上は許されているかもしれませんけれども、しかし、アメリカが今日まで北ベトナムなりあるいは中共に対してとってきた敵対的な関係から見ますと、北ベトナムの沿岸付近に軍艦を派遣するということは政治的な見地からは適当とは考えられないと思いますが、この点はどういうふうにお考えでございますか。
  29. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 きわめて平和な状況であればあるいは適当でないという考え方もそこに浮かぶと思いますが、最近の東南アジアの情勢はまことにこんとんとしておりまして、決して何もかも問題はないということではなく、もう平和郷であるというようなこととはまるで正反対の状況ではないか。したがって、トンキン湾における公海哨戒としては、アメリカ軍艦といたしましては当然の行為でございまして、適当な限界を逸脱するものではない、かように考える次第でございます。
  30. 戸叶里子

    戸叶委員 平和な状態でないという状態をつくっておるのは一体どういうわけであるか、こういうふうなところまでも分析をされないで、一方的に平和な状態でないからアメリカ軍艦がそこら辺の公海にいてもいいのだというふうなお考えは、私はどうも納得できないと思います。なぜそういう状態になっておるかということをもっと深く考えていただきたい。先ほどもちょっと鯨岡さんが触れられましたが、もしかりに日本の付近の公海上に何かうるさい軍艦がうろうろしていたというようなことになりますと、非常に日本でも神経質になると思うのでございます。たとえば先ほどの韓国警備艇日本漁船をやたらに拿捕する、こういうことに対しましても、日本政府はやむを得ざると言って黙ってはおられない。まあ軍備のない日本ですから、何らかの形でこれをなくするようには努力すると思うのです。そういうふうに、そういうことをしないようにというふうに努力をすることによって、初めて私は平和な方向にいくと思うのですが、いまの外務大臣の御答弁では、平和でないから軍艦がいてもいい、こういう形ではますます緊張の激化ということに私はなるのではないかと思いますが、この点をもう少しお考えになっていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  31. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さきに東南アジア三国の平和維持に関する国際会議が開かれたことは、すでに御案内のとおりでございます。この一度、二度にわたる国際条約の趣旨が十分に各協約国の間において忠実に守られておれば、私は今日の状態とは少しく変わっておったと思うのでありますが、これが必ずしも十分に守られておらない。先ほども鯨岡委員からお話がありましたような状況でございまして、民族解放のための社会主義国家間の連体責任というようなことばで御表明がございましたが、そういったようなことがこの地方の平和というものを撹乱して、そうしていつ果てるとも知れないこういう現状でございまして、それがますます悪化の一途をたどっておるというのでございますから、いわゆる普通の平和郷ではない、こういうふうに私は申し上げた次第でございます。
  32. 戸叶里子

    戸叶委員 敵対国とみなしておる国の近くにアメリカ軍艦哨戒しておるというようなことから私どもは問題になると思うのでございますが、その問題はあとにいたしまして、もう少し具体的に入っていきたいと思います。  今日のいま起きておる状態のもとで、アメリカ北ベトナムとラオスのパテト・ラオに対する関係は、国際法上一体どういう地位にあるとお考えでございますか。もはや中立的な第三国的な地位ということは言えないと思います。明確に敵対関係、交戦団体となったと私は規定されると思うのでございますが、政府の法的見解はどうでございましょうか。
  33. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 御存じのとおり、アメリカ北ベトナムの政権もパテト・ラオというものも政府としても承認をいたしておりません。また、戦闘状態を宣言するということもないわけでございます。したがいまして、従来の国際法上の関係から言って、その間に戦争状態がある、何らの政治的な関係も法律上は生じ得ないわけであります。
  34. 戸叶里子

    戸叶委員 法律上は生じ得ないとしても、事実上はどういうことになりますか。やはり交戦団体としてみなされるわけでございますね、アメリカとの関係は。
  35. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 交戦団体ということばはやはり一つの国際法上の用語でございまして、それも適当な用語ではこの場合にはないと思います。ただ、おっしゃるとおりに現実に武力の衝突が起こっておる。これは事実でございまして、この事実に基づいて事態アメリカも安全保障理事会に持ち出しておるわけでございます。
  36. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、この場合には、戦闘状態あるいは交戦状態とは一言えないけれども、武力衝突がお互いの間に行なわれている、したがって、現在の時点において、アメリカとこのベトナム地域、北ベトナムとの間には、その間に交戦ということばは使えないとしても武力的な関係があるのだ、こういうふうに考えられるわけですね。そのことは、もしも北ベトナムが自由主義陣営の国であったとするならば、これは交戦状態と呼べるのだけれども、そうじゃないから一応呼べないのだ、こういうふうに考えるわけですか。
  37. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 大体仰せのとおりに考えておりますが、ただ、何と言いますか、国と国との間で通常の場合に全面的に戦争関係に入るというようなのとは、法律的に先ほど申し上げましたように性格は変わっておるのみならず、事実関係におきましても、アメリカは、この間やったことで、リミテッドということばを使っておりますが、それ以上は何もそういう武力の行使をいたしておらない、そういう意思がないことをまた明らかにしておるわけでございまして、そこに、国家と国家との間におけるような全面的な関係、武力的な関係は事実問題としても現在存在しておらない、非常に限定されたものである。その事実関係は、いまおっしゃった伝統的な、典型的な国家間の場合とは違うと思います。
  38. 戸叶里子

    戸叶委員 いまのお答えですけれども、国家問のものとは違うけれども、しかし限定された形において私が申し上げましたように言えるということはお認めになったわけですね。
  39. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私が最初に申し上げましたときに、法律的に違うということを非常に強調しましたために、それじゃ事実関係では国家間の場合と同じかという誤解を与えるといけませんので、念のために申し上げたわけでございますが、限定されておるというのは、事実関係においても限定されているということを申し上げたわけでございます。
  40. 戸叶里子

    戸叶委員 結局、北ベトナムアメリカとの間は、北ベトナムというものを政府としてお認めにならないにしても、決して友好的なものではない、何かそこに武力攻撃が行なわれているのだということを認めておられるわけです。そこで、今回日本政府は、今度のトンキン湾事件に対しまして、いち早く、新聞の報道するところによりますと、今回の行動は当然であるということを言われたのだけれども総理大臣なり官房長官がこれをやむを得ざるものと画されたといわれておるわけですけれども、そのやむを得ざるものというふうに規定されました理由、これを私は伺いたい。先ほど鯨岡委員からお聞きになりましたけれども、どうも私には納得がいかなかったのです。そこで、私はもう一度、やむを得ざるものとしてはっきりと、そのアメリカ声明を信じたから発表した、こう言われるわけでございますけれども、なぜそういう発表を軽率にされたのか、アメリカだけの側に立ってそういうことを言われるというのは、こういうふうな紛争が起きたときに、しかも日米安保条約関係日本が非常に重大な深い関係のあるときに、アメリカ声明だけでそういうものを発表したということが、一体今後において問題にならないかどうかということをお考えになったかどうか。しかも、ほかの諸外国は非常に今度のアメリカ行動に対して批判的な態度をとっておりますけれども、この問題についてどういうふうにお考えになるか、もう一度伺いたいと思います。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まず、官房長官談として発表したいきさつを申し上げますが、これは別に一方的な声明というような意味で発表したのではないのでありまして、この際日本政府態度というものをぜひ知りたいという各新聞社側の要求がありましたので、それでこの発表になったのであります。  それから、やむを得ない、こういうことを是認する根拠いかん、こういう問題でありますが、公海上で突如襲撃をされたのでありますから、これを実力をもって排除するという行為は、これはやむを得ざるものである、こういう考え方でございます。
  42. 戸叶里子

    戸叶委員 今回の日本政府の発表は、新聞社の皆さんから何とか態度を示してくれと言われたから発表したとおっしゃいますけれども、その根拠となるものが何であったかということが私たちは知りたいわけです。こういうふうな武力行使が行なわれるような場合には、必ずそこに何かあるわけでございまして、やはり一方的な意見だけを聞いて判断をするということは非常に間違いだと思う。たとえば、今度の安保理事会において、両ベトナムからの代表を呼んで意見を聞きたい、こう言っているのも、一体どういうわけで、どういうふうな形で攻撃が行なわれ、あのような騒ぎになったかということを調査するために、公平な判断を下すために、安保理事会はそういうふうに言っていると思います。ただ、日本政府のように、一方的に、アメリカ声明がこうであったからこうだということでは根拠にならないと思いますけれども、もう一度この点について伺いたい。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国際関係から言いましても、アメリカ北ベトナムは、これはまだ承認しておらない相手方でもございますし、それから、いわゆる日米安保条約の相手方であり、しかもその条約の内容に触れる事件でもございまして、やはり同盟国声明をあくまでとにかく一応これを信頼して、そしてそういう事実認識の上に立って判断を一応下すということは、これはその場といたしましては当然のことであると私は考えておるわけでございます。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁の中にも、同盟国声明を信頼して、その同盟国だけの事実認識の上に立っての声明ということになっているわけでございますので、私はたいへんにこの面で危険であると思います。しかし、それはそれで進めるにしても、それでは、やむを得ざる行為であるということを発表されるからには、日本アメリカとの間に安保条約があるので、その安保条約に基づく協力というものは当然義務化されるのだということは御承知の上でなすったことでございましょうね。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点はもちろん当然に出てくる問題だと思います。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 そこに私は非常に大きな問題があると思うわけです。先ほどから安保条約四条協議、六条による事前協議の問題についての御質問がございましたけれども、私どもの納得をするような答弁をいただいておりません。そこで、私はその問題をもう少し伺いたいと思いますが、たとえば、今度の事件で横須賀のアメリカ艦隊はほとんど出動して出払った。それは戦闘作戦行動ではないのだ、戦闘作戦行動に出た場合には事前協議対象になるけれども、そういうものでないから事前協議対象にはならないのだということを先ほど言われているわけでございますけれども、戦闘に第七艦隊が入らない、戦闘といいますか、武力行使をしないというような、使わなかったというようなはっきりとした根拠があるわけでございますか。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 たびたび申し上げるとおり、公海哨戒しているときに、はからずも北ベトナムから攻撃を受けたので、いわゆる自衛行為として実力をもってこれを排除したということが結果においては出てまいったのでありますが、横須賀なり佐世保なり進発する際には、さようなことは全然予期しないで、単なる哨戒任務につくために出かけた、こういうのでありますから、事前協議対象にはならなかった、こういうふうに解しております。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 横須賀なり佐世保を出る場合に単なる哨戒任務につくということであるから、事前協議対象にならなかった、こうおっしゃるわけでございますけれども現地へ行ってみまして、当然事情の変化ということで戦闘体制、武力行使ということに今度なったと思うのです。そういうふうな場合に事前協議の必要はない、こういうことになりますと、出ていく場合に戦闘作戦行動でなかったから向こうへ行って何をしてもこれはしかたがない、これでは私は事前協議の意味が全くないというふうに考えざるを得ません。私ども安保条約を審議する場合に、いろいろな形で事前協議対象になる場合を想定して質問をしましたときに、政府の答弁を伺って、それではまるで死文になるではないかということを幾つか指摘いたしました。いまの政府の御答弁を伺っておりましても、これはまさに私どもが申し上げたことがそのとおりであったということを示す以外の何ものでもないと私は思うわけでございますけれども、もしも戦闘作戦の目的で行かない場合に、現地において事情の変化で武力行使をしたというような場合は、これはしかたがないのだということでお見のがしになるおつもりでございますか。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事前協議でありますから、その進発の際に予期しなかった問題が起こったことは、さかのぼって——事後の協議を云々というようなことが条文にも書いてないようであります。どうも事前協議であって事後の善後措置というものは何もないのでありますから、実際問題としてあるいは了解を求めるというようなことがあるかもしれませんけれども条約の明文にはそれはうたっておりません。ただ、あの問題が起こりましたときに、ライシャワー大使総理を訪れていろいろな問題を話し合ったのであります。その中に入っておったかおらないか、おそらく私は入っておったのではないかと思うのでありますが、そういうことは条約上の義務として明示されておらないのでございます。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 それは私は今後においてもたいへん問題を残すと思いますし、日本政府態度がそういうことであったら、国民はびっくりすると思うのです。いいですか。こういうふうな大きな問題が起きていて、しかも日本の基地を使って、そして基地からアメリカ軍艦なりあるいは飛行機なりが出ていくわけです。その場合に、アメリカのほうでは戦闘作戦に出るかもしれないという気持ちで行くかもわからないわけです。にもかかわらず、ともかく向こうへ行こうというので出ていって、そうして向こうで、やむを得ざる行為というふうに政府がおっしゃるのですが、そういう形でもって武力行使をした、事前というのだから、あとのことは知らないのだ、これでは済まされるような問題ではないと私は思うのです。こういうふうなあぶないことを含んでいる事情の変化が起こりそうな場合にも、当然協議をするのが六条の事前協議である、こういうふうに私は考えますけれども、そういう考え方はいけないでしょうか。
  51. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 少なくとも文理解釈上は出てまいりません。それから、それを離れても、あるいはこういうことが起こるかもしらぬということを予想して前に手を打たなければならぬということになりますと、すべての場合に事前協議対象になるのでありまして、かようなことは条約の明文からは絶対に出てまいらないのであります。さよう御了承願います。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、事前協議というような場合は一体どういうときにあり得るのでしょうか。そんなことがあることがありましょうか。これも念のためにちょっと伺っておきたいと思うのです。
  53. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 戦闘作戦行動に関連する事前協議といたしまして、典型的な場合といたしましては、戦闘任務を与えられた航空部隊、空挺部隊、上陸作戦部隊等の発進基地として、日本施設区域を使う場合、こういうふうに考えております。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 その答弁は何度も聞いているのです。たとえば、今度のような場合に、トンキン湾に出ていく場合、第七艦隊がもしかしたら戦闘作戦に出るかもしれませんけれどもどうぞ御了承願いたいということでなければ事前協議にはならない、こういうふうに解釈していいわけですね。そこで、事前協議とういからには、イエス、ノーをはっきり日本で言えるということがあのときに議論になったわけです。ノーということも言えるんだということになると、おそらくアメリカのほうでは事前協議はしないと思います。この問題については、また安保条約事前協議の蒸し返しになりますから、私はここではいたしません。あとの機会にしたいと思いますが、そこで、先ほども触れました四条の問題だと思うのです。  四条の問題に対して、先ほど外務大臣は、ライシャワー大使総理会見をされて、そして説明がありましたから了解をいたしました、こういうことでございます。これは、外交的なルートで話し合うということと、それから今度の場合とは違うわけですか。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 四条後段協議も、外交ルートでやって一向差しつかえないのであります。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 四条協議外交ルートでやって差しつかえないというのは、どこから出てくるのですか。
  57. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 差しつかえないと申し上げましたが、むしろこれが普通であるのでありまして、協議の方法は何も書いていない。いかなる方法でもよろしい、こういうことでございまして、したがって、外交ルートによって協議するということが普通の形式になるわけでございます。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、四条協議というのは、外交ルートでやっても何でやってもかまわないんだ、こういうふうに外務大臣考えていらっしゃるのでしょうか。もう一度念のために伺いたいと思います。
  59. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そのとおりでございます。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 外務大臣は当時外務大臣でいらっしゃらなかったのですけれども安保条約を審議いたしましたときに、この問題についていろいろと各委員から質問がございました。四条協議についても、どういう形で協議をするのかということが議論の対象になりましたが、別に外交ルート四条協議になるという意見は一つも出ておりません。ただ出ましたことは、四条の平素から緊密に連絡をとる機関は、六条の安全保障協議委員会とは別の機関かどうかという質問をしたのに対して、検討しなければならないけれども、別個の機関が六条の安保委員会のもとにできる形になるというふうなことで、安保委員会の中で何らかの機関で四条協議をするということをはっきりと答弁をいたしております。このことと、いまの外務大臣の御答弁とは違うと思いますけれども、どういうふうにお考えになりますか。
  61. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 私そのときの記録をいま持っておりませんけれども、二国間において協議するという場合には、外交ルートを通ずる協議がむしろ本則である。しかし、これはほかの委員会とかその他の形式を用いることを排除するものではございませんが、原則は外交ルート協議である、こう解釈しております。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、あの当時に、外交ルートでするとかしないとかいう問題ではなくて、むしろ何らかの形で協議をするんだ、アメリカならアメリカのある人と日本なら日本の責任者とで協議をするんだ、しかもそれが安保委員会の中にある機関としてできるんだということを言われました当時の答弁は間違いでございましょうか。
  63. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 そういうものを排除することはないのでございまして、この条約の実施については非常なこまかいこともいろいろあるわけでございます。そういうものはずっと低いレベルでやったほうが適当なわけでございます。しかし、極東の平和、安全に脅威が起こっているとか起こっていないとか、起こった場合どういうふうにアメリカとしてはするつもりだとか、そういうような非常に重要な政治問題の協議につきましては、これは外交ルートによるのがむしろ本来の当然の姿じゃないか、かように考えます。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 私どもが当時理解したときには、単にアメリカの大使が日本に来て、こうこうでございますということで、日本がそれに対してああそうですかというように報告を聞くということが四条協議とは了解しておらなかったわけです。したがって、そういうふうな点についていまのようなことになりますと、今後におきましても外務大臣ライシャワー大使から、またほかの地域においてそういうような問題が起きるかもしれないし、あるいはまたいまのトンキン湾事件においての問題が起きてくるかもしれませんが、そういうときにアメリカはこういう行動をとりましたということで、ああそうですかということで一々その報告を受けるだけで了承するのですか。それともまた、今回のアメリカからの報告に対して日本としてはどういうふうな形の協議をおとりになりましたか、どういうふうにお話し合いをなさったか、この内容を差しつかえなければ聞かしていただきたい。ただ、アメリカからの協議といいますか、外交ルートでの話に対して、日本政府としてはそれではこうだといって声明を発表するというだけでは協議にならないと思うのですけれども、どんな協議をなすったかを伺いたいと思います。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大綱といたしましては先方から詳細の説明がありまして、これを聴取いたしました。そして結論においてはそれに対してできるだけ早く事態を収拾するという希望を提示して、そして終わったのでありますが、その詳細の点につきましてはここで詳細を申し上げるわけにまいらぬことを遺憾といたします。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは、声明に至るまでにはアメリカとの間に相当いろいろな話をしたというふうに理解をしていいわけでございますか。
  67. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 官房長官の発表の前には、いろいろ内容等につきまして話をしておるのでございます。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 その辺の内容で、全然国民に黙っておられますと、いろいろな面で誤解を招くと思います。したがって、四条協議事項は外交ルートで話し合いをしたのだということですが、アメリカからこういう通告があったときに、日本政府としては、当然そういうことはおやりなさいというふうに激励をされたのか、それともどういうふうな御意見を出されたか、この点を伺いたいと思います。
  69. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大体の結論としてはやむを得ざるものと了承したのでありますが、その内容の詳細については申し上げることができませんから、さよう御了承願います。   〔「それはもっともだ」と呼ぶ者あり〕
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 与党のほうからのやじもあったわけですけれども、言えないとおっしゃるのは私は伺おうとは思いませんけれども、ただ、今日のような、政府安保条約の六条なりあるいは四条なりというものを、私どもが理解しておる形と違うような、違うと申しますか、私たちが理解しておるような、あるいはまた国会で議論をしたような形をとらずに解釈をしておるというところに、私は今後において大きな問題を残すということを警告せざるを得ないと思います。たとえば極東の平和というような問題を考えてみましても、一体極東の平和なり何なりを脅かすものという判定のもとに協議をされたかどうか、こういうような問題も私は今後において問題になってくると思います。そういうことを伺いたかったんですが、おっしゃらないとするならば、何らかのときに秘密会でもいいですから私はぜひお話しを願いたいと思います。  そこで、もう一点お伺いしたいことは、先ごろ政府アメリカと南ベトナム要請によって五十万ドルの援助を決定したということがいわれましたけれども、これは外務大臣どういうふうになっておりますか。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま南ベトナムの民主の状況は、長い間の国内の戦乱のために非常な窮地におちいっておるような状況でございますので、いわゆる民生の安定と申しますか、人道上の問題からこれを放置すべきでない、かように考えまして、とりあえず五十万ドル相当の援助をすることに相なっておるのであります。その詳細を申し上げますか。
  72. 戸叶里子

    戸叶委員 けっこうです。五十万ドルの援助をすることになっておる、これは人道上の問題からであるというお答えでございました。そこで、先ほども話が出ましたように、いまアメリカ北ベトナムとの関係というものは、法律的なことばで交戦状態、戦闘状態とは言えないにいたしましても、武力行使をした関係にあるわけです。そういうふうなときに、南ベトナムだけを援助するというようなことになりますと、いやが上にも日本がその紛争の中に巻き込まれる可能性が非常に多い。ことに安保条約によって非常に危険な状態にさらされる可能性が多いときに、さらに援助をするというふうな形をとりますならば、私はこれはまずいと思います。ことに、人道的な立場とおっしゃるからには、これは南だけではなくて、両ベトナムに対してするとか、あるいは国際赤十字を通して援助をするならまだかりますけれどもアメリカ、南ベトナム要請によってその国だけにするというような、いたずらに日本が危険に巻き込まれるようなことをすべきではないと思いますけれども国際赤十字なり何なりを通して、そんなにお金が余っておるなら、すればいいと思いますが、この点はどうお思いになりますか。このことが人道上の立場から援助をすることになると思いますが、いかがでございますか。
  73. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 南北ベトナムのうち特に南ベトナム状況は非常に困窮しておるのでございまして、全くこれを座視するに忍びず、人道的な見地から緊急援助をするというふうに考えた次第でございます。
  74. 戸叶里子

    戸叶委員 私の伺ったことを御答弁願いたいのです。政府のお考えはよくわかっておるのです。私の聞きましたことに対する答弁をしていただきたい。人道的な立場というなら、むしろ国際赤十字を通して公平な形でやるべきではないかということなんですけれども、いかがでございますか。
  75. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 事実問題でございますので、私から補足御説明いたしますと、初め日本赤十字を通じて援助することも考えて、内々打診したのでございますが、日本赤十字のほうで、いろいろの事情からこれを断わられましたので、それで、別途、外務省の認めております人道的な団体に東南アジア文化友好協会というのがございまして、これを通じまして、そういう人道的、文化的のことに携わっておるこの団体をして援助の実務に携わらす、そういうふうにしたわけでございます。
  76. 戸叶里子

    戸叶委員 日赤が断わった理由は、南ベトナムだけの援助をしようとしたから断わったんじゃないですか。
  77. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 主として職員組合の反対によるものと了解しております。
  78. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじゃなくて、日赤が断わった理由は、南ベトナムに対する援助をしようとしたから断わったんじゃないですか。南ベトナムというふうに限ってしようとしたから、日赤は、人道主義的な立場で、もっと大きな考えから断わったんじゃないですか。
  79. 後宮虎郎

    ○後宮説明員 援助問題の実質と申しますか、価値、そこまで突っ込んだ議論は実事なかったのでございまして、日赤といたしましては、自分のメンバー、自分の職員が反対していることをともかく避けたかった、そういう事実上の便、不便の問題で断わってまいったわけであります。
  80. 戸叶里子

    戸叶委員 それはやはり、アメリカなり南ベトナムからの援助要請に対して日本がそれをやりますと言って日本赤十字に持っていったからだと思います。人道的な立場というならば、そういうふうな限られた国にするというふうな形をとらなければ、私は日赤は受けたんじゃないかと思いますが、この点のことをよく調べておいていただきたいと思います。  それから、最後にもう一点伺いたいことは、アメリカ北ベトナムのジュネーブ協定違反ということを非難をしておりますけれども、最初にこの協定の違反をしたのはどちらであるかということもどうか考えていただきたい。たとえば、南ベトナムかジュネーブ協定で規定されている統一選挙を破棄したのではないかと思います。この国際監視委員会の監視のもとに一九五六年七月に統一選挙をすべきであるということがきめられているのですけれども、それに対して実施されておらないというところにも問題があるのでありまして、アメリカがむしろ南ベトナムに対してこの統一選挙を勧告すべき立場にあるのではないか、私はこういうふうに考えますけれども、いたずらにおそれてそういうことをしないということは、非常にベトナムの国民を不幸におちいらせることであると思いますので、日本政府としては、アメリカに対しても、一つの問題を解決する方策として選挙をやらせるべきである、統一選挙を行なうべきであるというようなことをお話しになる御意思はないかどうかを大臣に伺いたいと思います。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 事態がもう少し静まりますならば、十分考究してみたいと考えております。
  82. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこれでやめますけれども、最後に、外務大臣は今後このトンキン湾をめぐる問題に対して日本としてはどういうふうなことをされようとしておるか。単にアメリカからの外交ルートでの発表があって、そうしてやむを得ざることであるというふうな発表だけで終わらずに、私は、何らかの手段に持っていくべきじゃないか、何らかの方法を考えて平和の方向に持っていく努力をすべきではないかと思いますが、どういうふうなことを考えていられるかを伺いたいと思います。
  83. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この地方の問題につきましては、御承知のとおり、ジュネーブ会議が二回にわたって開催されておるのであります。さようないきさつから言いまして、このラオス、ベトナムの紛争問題につきましては、この線に沿うて解決さるべきであるというふうに考えておるのであります。もちろん、日本といたしましては、アジアの一員といたしまして、要請があれば、いかなることをもあえて辞するものではありませんけれども、事柄の順序としてはジュネーブ協定の線に沿うてまず推進すべきものである、さように考えております。
  84. 安藤覺

    安藤委員長代理 穗積七郎君。
  85. 穗積七郎

    穗積委員 新任の椎名外務大臣、小泉防衛庁長官に敬意を表しながらお尋ねをいたしたいと思います。  ただいま鯨岡委員あるいは戸叶委員からお尋ねしたことに対する特に外務大臣の御答弁を伺って、あなたは経済官僚としては非常にすぐれた経験と御意見を持っておられるが、外交上のことについては、はなはだ失礼ですが、今度のトンキン湾事件についてただいまお話しになったような程度の認識と日本の立場を主張しておられるのでは、私ははなはだしく不満足に思うわけです。大へん失礼でありますけれども、率直にお尋ねをいたします。  まず第一に、このたびアメリカの作戦行動というものは、六月ホノルルで、東条内閣そこのけのようなインドシナ半島並びに中国に対する攻撃的な点を九項目にわたって決定をいたしました。これは、世論あげて、同盟国であろうとあるまいと、すべての国から非難を受け、アメリカの国内においても、このような軍部の決定というものは非常に危険であるというので、総スカンを食った。今度の事件というものは、われわれの仄聞するところでは、軍部を中心にいたしまして、たまたま十一月の大統領選挙を前にして、反対党の野党である共和党からは東条首相以上の反動的危険きわまるゴールドウォーターが圧倒的支持を得て出てきておる、そこで、これに対抗するために、あたかもジョンソンが、実は、ケネディ路線を云々と言いながら、すなわち平和の政治家であるかのような粉飾を示しながら、どんどんと危険な軍部の政策を採用いたしまして、そうしてみずからの責任と意思によって今度の作戦行動を命令しておる。今度の事件は、われわれ思い起こしますのに、あなたも御認識のとおり、これは、アメリカを先頭とする資本主義各国の経済成長がいまや過剰生産の段階に入りまして、この活路をいかに対外的に求めるかという、いわば満州事変前夜の当時に匹敵するような経済情勢になってきております。そこで、今度のトンキン湾事件というものは、関東軍が柳条溝、盧溝橋事件を暴力をもって行ないましたが、これに似ている非難すべき侵略的な行動であるとわれわれは強く感ずる次第でございます。そういう認識の相違でありますから、これは事実をもってどちらが正しいかを証明する以外にない。  そこで、まず第一に小泉長官にお尋ねいたします。椎名外務大臣は、ライシャワー閣下の御説明はこれを神の声として聞いて、彼のおっしゃることはすべて信用する立場をとらざるを得ないと言っておる。今度の事件極東の問題です。しかも池田内閣は東西問題、南北問題に対して積極的に自主的な外交政策をとっていこうという非常にたくましい声明をして立っておられる。そうであるならば、この事件というものが日本の安全とアジアの平和に重要な影響を及ぼすことでありますから、日本独自の立場に立って今度の事件の事実をまず情報としてキャッチする必要がある。これについてまず第一に小泉長官に伺いますが、先月末からあの行動を起こしましたアメリカの第七艦隊の公海における哨戒と称する挑発的な、しかも北ベトナムに対するホノルル決定に従った威嚇的な行為、これは何の必要があってあすこの公海に進出したか。明らかに行き詰まった南ベトナムの威信の回復と北ベトナム並びに中国に対する威嚇ではありませんか。そうしてあわよくば向こうから手を出すことを期待する、できなければそういうことをでっち上げる、それが事実でございます。  したがって、第一にお尋ねいたしますが、今度北ベトナム魚雷艇アメリカ駆逐艦攻撃を加えましたときに、南ベトナム軍艦北ベトナム地域の門前において幾つかの島嶼に攻撃を加えておる事実があります。そのときにアメリカの艦隊がこれを護衛し、共同の行動をとっておる事実がありますが、これは日本防衛庁は当然御承知であろうと思いますが、その事実についてはどうお考えでございますか。
  86. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 答弁に先立って一曹ごあいさつを申し上げます。  このたび私防衛庁長官に就任いたしましたが、外務委員会と防衛庁の仕事とは密接な関係がございまして、たびたび外務委員会にも出席をいたさなければならないことに相なるのでございます。どうぞ外務委員会の諸先生におかれましては、いままで同様、いな以上に何かと御指導、御鞭撻をお願い申し上げます。(拍手)  ただいまの穗積委員の御質問お答え申し上げますが、今回の事件について、防衛庁といたしましては、外電の報ずるところ、ただ平常のルートによるところのアメリカ側の連絡その他アメリカ側の声明、そういう情報を総合しておるだけでございまして、特に防衛庁自身として現地に派遣しておる者もありませんし、的確な断定を下す情報を得ることはできないのでございます。そういう各方面の情報を平常ルートによって得ましたアメリカ第七艦隊並びにいわゆる在日米軍の行動についての情勢防衛局長から答弁をいたさせます。
  87. 海原治

    ○海原説明員 ただいま御質問のございました南ベトナム軍艦、これに伴いまして第七艦隊の護衛云々のお話がございましたが、そういう事実を確認するということにつきましては、ただいま大臣からお答えがありましたとおり、私どもは何ら手段はないわけでございます。ただ、北ベトナムの放送ではそのようなことを従来からしばしば申しております。御存じのように、何ぶんにも離れたところでございますので、南北ともに、それぞれの主張と申しますか、考え方をいろいろなルートを通じて放送いたしております。それが事実であるかどうかということにつきましては、私どもは承知いたしておりません。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 続いて小泉大臣にお尋ねをいたしましょう。  いずれにいたしましても、特にわが国関係のある、いわば東西問題と南北問題の接点になっておるこのアジアにおける軍事的な行動を伴いまする政策については、これという事実を日本防衛庁としては独自な情報によって事実を知ることを希望し、これに対しては日本国独自の是非の判断をすることが当然だと思います。こういうことは大臣の自主的な願望としてはお持ちになっておられると思うが、御所見はいかがでございますか。
  89. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 先ほども申しましたとおり、防衛庁には統合幕僚本部がございまして、この事務局長が常時情報の収集またアメリカ側との連絡等に従事して、できるだけの的確なる情報を集めておることは事実でございまして、また、今後といえども、より的確な情報を収集して、日本独自の問題に対するところの見解を持つことは望ましいことでございます。今後といえども、もちろんその点に十分な努力は続けるつもりでございます。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 外務大臣にお尋ねいたしましょう。  ただいま安全の問題についての担当大臣小泉長官は、特に極東における作戦計画については、日本日本として独自な立場に立って方針と態度を決定すべきであるという御趣旨でございました。ところが、同盟国であるからという理由によってアメリカ行為は常にやむを得ざるものであるという声明、しかも外務省の原案においては、当然のことであると、これを完全にジャスティファイされた声明案をつくられた。この外務省態度というものは先ほどからの答弁の中で示されておりますが、同盟国アメリカの言うことであるから、これを信ずる以外にない、そうであるならば運命をともにしてもかまわない、こういう態度が終始一貫して示されるわけです。すなわち完全な奴隷的従属性です。そういう外務省態度というものは、こういう事態になりますると、はなはだしく危険である。のみならず、池田内閣が、これから東西・南北問題の接点に立って独自の外交方針をとろうとする国民に対する公約というものは、これは完全なる偽りではありませんか。行動の中で示してもらいたい。  お答えをいただく前に事実についてお尋ねをいたしましょう。  あなたは同盟国アメリカのライシャワー並びにラスクの報告であるからと言われましたが、同じあなたの信頼するアメリカの、しかも新聞記者ではない、国家機関である国会、ここにおいては、今度のアメリカのとった軍事行動は明らかに限定あるいは自衛の限界を乗り越えるものである、そういう意見がある。あなたの信頼するアメリカの国会の中においてすらこういう意見が出てきておるわけです。この事実はお聞きになりませんでしたか。外務省情報として御存じありませんか。まず第一に伺っておきましょう。
  91. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さような報道に接しておりますが、それはアメリカの国会のごく一部の議員の意見であると承知しております。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 特に、最初のときに攻撃があったと称することも、どこの国の軍艦であるかどうか、われわれはあったかないかすらその事実は確認できない立場におりますけれども、信頼すべき国際的な報道によりますというと、特に第二回のときには、アメリカの相当多数の世論ですら堂々と、このときは攻撃の事実がなかった……。しかも、第一回のときには、先ほど言いましたように、南ベトナム軍艦北ベトナムの鼻先の島嶼に対して幾つかの攻撃を加えた、それに対するベトナム側の自衛攻撃ではないか、こういう疑問と判断というものが出てきておるわけです。特に第二回の問題につきましては、これははたして向こう側から攻撃があったかどうかということに対して、新聞記者会見政府当局ははっきり示しておりません。示せないのです。この事実は外務省御存じですか。この事実を一体どういうふうに判断なさいますか。
  93. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いまの新聞記者会見云々の事例は、もちろんアメリカでのことでございますが、これは一部の新聞記者だそうであります。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 新聞記者じゃありません。そうではなくて、インタビューで、その質問に対して、政府当局のスポークスマンが答えられなかった。第二回目に北ベトナム魚雷艇から攻撃があったかなかったかという事実に対してすら、あるともないとも答えられない。この事実です。少数の新聞記者の意見ではありません。私は事実を言っているんだ。
  95. 竹内春海

    竹内説明員 記者会見におきまして、その点に対する政府側の答弁は、ウイ・アー・サティスファイということでございまして、すなわち、そういう事実があったということについては、われわれは満足に思って見ておる、——満足という意味は、そういう事実があったということを確信しておる、こういう答弁をいたしております。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 そうではありません。答えられなかったのです。非常に答えをあいまいにして、あったともないとも言っていない。  それから、もういずれにしても、ちょっと大臣にこの際、これからこの事件は継続しておるのですよ。さっきの随時協議事前協議のことも、最初の出動のときには哨戒の指令であったかどうか知りませんが、現在、ホノルルを初めとする第七艦隊なり、沖縄における空軍というものは移動しつつあるわけですから、継続しておる。これらは全部戦闘行為の指令を受けておるわけです。済んだことではない。これからのことですから、順を追って私はお尋ねをしておきたい。こういうことをお尋ねしておかなければならぬほど、あなたの態度は心配になってきておるんです。  というのは、第一は、アメリカの今度の行為は何による行為でございますか。侵略的行為だと私は思うのですが、何による行為でございますか。やむを得ざるとか、正当であるとかいう行為としては、何を根拠にして外務省は言われるんですか。明らかに侵略行為ですよ。
  97. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは自衛行為だと私は考えます。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 自衛行為であるとするならば、国連憲章五十一条による自衛行為でございますか。
  99. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さように心得ます。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 自衛行為については無制限ではあり得ない。この間砲撃があったかなかったかわからぬような、しかもアメリカの艦船はちっとも被害を受けていませんよ。実害を生じていませんよ。外務省態度についてお尋ねしたい。たとえば、百歩譲って、北ベトナムの艦船が、威嚇を加えたアメリカの艦隊、しかも南ベトナム軍艦が事実上島々を砲撃を始めた、そのとき共同援護作戦をとっておったアメリカの艦隊、これに対して一発、二発の攻撃があったと仮定いたします。その行為に対する今度アメリカのとったすべての戦闘行為が、はたして自衛行為の範囲に入りますか入りませんか。五十一条の規定というものはそんな無制限なものですか。奥地にわたってまで、しかも油の基地、すなわち経済基地まで爆撃する、しかも無防備地区を爆撃いたしております。そういう報復行為が、一体限定行為あるいは自衛行為として許されますか。明らかに侵略行為ですよ。大事なことですから、大臣から御答弁願いたい。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その攻撃に対して武力をもって排除したのみならず、そのよって来たる根拠地を攻撃したことは、やはり自衛行為の延長である、かように考えております。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 冗談言っちゃいけません。そんなことを言ったら、満州事変が起きましたときのリットン報告あるいは大東亜戦争のときの侵略行為、これは全部正当行為になります。何を根拠にして、これは正当行為であって、かのときは不正当行為であると主張されますか。これは私はこう解釈する。五十一条による自衛行為というものは、直接かつ緊急な実害を前提といたしております。しかも、それに対する報復行為というものは、均衡のとれた戦闘行為。今度の場合は実害は何らありません。それに、しかもその攻撃を加えたという北ベトナムの艦艇だけに攻撃を加えたんじゃない。これは北ベトナムの本拠まで入って爆撃をしておる。その爆撃は、経済基地あるいは無防備都市の人民に対してである。こんな行為が自衛行為として認められますか。五十一条の解釈をそんな解釈としてするならば、これはもう驚くべき解釈であります。東条内閣といえどもこんな解釈はしないでしょう。大問題でございます。われわれは、そんな答弁で絶対に承服するわけにはまいりません。自衛行為には三つの条件がありますよ。それは私の意見は誤りでありますか。五十一条の許されたる自衛行為、これも事実は、国連憲章の精神に反するといわれるもので、ダレスが無理やりに挿入した条項であります。これによって国連憲章の平和機構としてのその平和を保持するための共同防衛というものは、この機構というものは、精神というものは、大半くずれたと世間で批評されたことです。したがって、五十一条による自衛行為というものは、ごくきびしい条件のもとにおいてのみ許される。ですから、もう一ぺん言いましょう。それじゃ、あなたは、私の解釈を誤りだと言う勇気があるなら、根拠を示していただきたい。第一は、緊急かつ直接、それから、その報復行為というものは均衡のとれた行為でなければならない。それから、条約上の義務規定は、直ちに安保理事会に通報し、安保理事会行動を起こすまでの暫定的期間においてのみ自衛行為が許されておるという条件は、これはもう国際的に明確でございます。これをあなたはアメリカを弁護するためにかってに解釈して、そんなことをしておいて日本の安全とアジアの平和というものは守られません。両大臣からそれに対するお答えをいただきたい。五十一条の解釈、自衛権というものをそんな解釈で、これから憲法が改正され行動を起こされたらたいへんです。両大臣からお答えいただきたい。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカ側がとった行動自衛権の範囲内のものであると私が考える理由は、アメリカ自衛権の行使として合法的と認められた範囲をまさか逸脱することはあるまいという信頼からであります。それで、なお、これに対する法律の解釈につきましては、条約局長から申し上げます。
  104. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 法律論だけ限って申し上げますが、第一に、実害がなければならないという要件は、国際連合憲章の規定にもございませんし、従来の慣習国際法上もないと思います。  それから、第二に、均衡のとれたという表現が適当かどうかちょっと疑問でございますが、とにかく、とられる措置というものは必要最小限度にとどめられなければならないというのは仰せのとおりでございます。
  105. 穗積七郎

    穗積委員 それから、前のやつはどうですか。三つの条件、すべて外務省は了承でしょうね。直接・緊急、それから均衡、これは最小限度と言ってもいい。それから、国連常任理事国に直ちに通報して、それが行動を起こすまでの暫定的期間においてのみ自衛権が認められる。さっきの三つの条件。
  106. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 最初におっしゃった直接・緊急、それはそのとおりでございますから、特に触れませんでした。それから、最後の報告の点は、いま現にやったわけでございます。それから、第三の均衡のとれたということばでございますが、それよりは、むしろ必要な限度においてのみ許されると言ったほうがもっと適切じゃないかと思って、言い直したわけでございます。
  107. 穗積七郎

    穗積委員 他の点は認めますね。他の三つの点は全部条件は認めますね。間違いありませんね。
  108. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 いろいろの表現が違うところがありますので、私は私なりの言い方で申し上げているわけでございまして、実体的にはそう違わないかもしれませんが、先生のおっしゃったところをそのまま認めるというのは、ひとつかんべんしていただきたいと思います。
  109. 穗積七郎

    穗積委員 五十一条の自衛権、これは無制限なものではないのですよ。この条約五十一条をダレスが無理やり挿入したときの経過は御承知でしょう。彼は「ウオー・オア・ピース」の中でちゃんと書いておる。私が言うのじゃないのです。ダレスが言っておるのです。そのときに問題になって、それでこの自衛権というものについてはきびしい制限を加える。それを外務省はどう解釈しているのですか。無制限ではないでしょう。外務省の解釈しておる条件を言っていただきたい。国連に対する通報義務だけではありませんよ。
  110. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 現実のまたは急迫した武力攻撃が起こった場合に、それに対してこれを排除し国の利益を守るために必要な最小限度の実力行使をするということは、一般的な武力行使または武力による行為の禁止にもかかわらず、国際連合憲章上もこれが合法であると認められる、これが自衛権の根本の法理でございます。
  111. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 私も、国連憲章五十一条の精神を逸脱しないその範囲のアメリカ自衛権の発動であって、政府声明をいたしましたとおりやむを得ざる行為であったと考えております。
  112. 穗積七郎

    穗積委員 そこで、法の解釈について私は伺ったのであって、事実関係はこれから明らかにいたしましょう。  そこで、私はお尋ねいたしますが、ライシャワーから池田総理に通報があったのはいつですか。
  113. 竹内春海

    竹内説明員 八月五日の午後三時十五分に会議が行なわれております。
  114. 穗積七郎

    穗積委員 武内大使がラスクに会ったのは……。
  115. 竹内春海

    竹内説明員 ワシントン時間八月五日の午前十一時半であります。
  116. 穗積七郎

    穗積委員 アメリカ側が非常な、私がいま申しましたような侵略的な行動を積極的に北ベトナムの領土内まで行ないましたのは幾日でございますか。
  117. 竹内春海

    竹内説明員 東京時間の、アメリカ攻撃を行ないましたのは八月の五日の午前十一時……。ジョンソン大統領声明をいたしましたのはワシントン時間の四日の午後十一時三十分、デイライト・セービング・タイムでございます。
  118. 穗積七郎

    穗積委員 そうすると、ライシャワー大使の池田総理に対する報告というのは協議ではなくて事後通告にすぎませんね。
  119. 竹内春海

    竹内説明員 実際の攻撃ジョンソン大統領声明発表後若干おくれておると承知しておりますが、実際の措置がとられたあと会見が行なわれたことは事実でございます。
  120. 穗積七郎

    穗積委員 そうなりますと、外務大臣にお尋ねいたします。第四条のコンサルテーションは協議であるのか、または一方的通告であるか。日本語でいう協議は、相手方と協議をし、同意を条件といたしております。そうであるのかないのかということで論議が行なわれた。事実はいまお聞きのとおりです。これで見ますと、今度のあの重要な、アジアの平和に対して、日本の安全に対して重要な作戦行為を起こしますときに、一方的事後通告にすぎなかった事実を外務大臣は認め、しかもそれに満足をしておられるというのはどういうわけですか。それが伺いたい。すなわち、第四条による協議あるいは第六条による協議というものは全く一方的な通告にすぎない、事後通告でも満足である、こういうことをわれわれは承服するわけにはいきません。当時のあなたの先輩である岸さんすら、この協議というものはわれわれの同意を必要とする、こういうことを幾たびか明言されたわけです。つじつまの合う御答弁をお願いいたします。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 公海において予期しない不意の攻撃を受けて、そうしてこれに応酬をしたのでありますから、事柄の性質上事後であったことはやむを得ないと思います。
  122. 穗積七郎

    穗積委員 その後攻撃は継続しつつある。また、継続しようとしておる。部隊はどんどん現在でも移動しておる。これに対して、それじゃ、ライシャワー並びにラスクのインフォーメーションは、それらの行為すべてを包括をし、これからトンキン湾並びに南ベトナム、インドシナ半島においてアメリカがとるすべての作戦行動について事前に無条件の白紙承認を与えたわけですか。その後の事実を明らかにしてもらいたいのです。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 さようなことではありません。起こった事柄に対して説明をし、これに対する意見を述べたのであります。いまその問題が継続しておるかどうかということについては、必ずしもあなたと政府とは認識を同一にしておりません。
  124. 穗積七郎

    穗積委員 それじゃお尋ねしましよう。ライシャワー並びにラスクが日本政府機関に説明をいたしましたのは、通報したのは、どこまでの行動を言っているのですか。何月幾日までの行動を言っているのですか。何月幾日のどこまでの行動説明をして了解を求めたのですか。はっきりしておいてもらいたい。その攻撃行為というものは、その時点だけではありませんよ。その後続いていますよ。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大統領の声明の範囲内でございます。
  126. 穗積七郎

    穗積委員 大統領の声明をここで言ってもらいたい。何ですか、その中身は。大事なことです、これは。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 不意の攻撃を受けてこれに対処した、そして今後はなるべく不拡大の方針でおさめていきたい、こういうような趣旨の声明であったと記憶いたしますが、その範囲内の協議であったと思うのであります。
  128. 穗積七郎

    穗積委員 その声明をあなたは読んで、しかも、今度アメリカがとった事実行為、あの侵略的な行為、これを一体正当なものだとお考えでございますか。とても考えられない。  条約局長、さっきの解釈の問題ですが、この事実関係をさっき言った五十一条に合致する自衛行為の範囲であると考えられますか。このことについては、時間があまりないし、あとまた質問者もありますから、一緒に外務省から説明してもらいたいが、五十一条の自衛行為と、もう一つ、アメリカは今度は限定作戦ということばを盛んに使っている。これはわかったようなわからぬようなことばなんです。限定作戦とは一体いかなる意味ですか。どういうことを限定作戦というのですか。その限界を示してもらいたい。外務省の解釈はどうです。
  129. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 現在の事態について日本政府見解は、先ほど来外務大臣から御答弁になっているとおりでございまして、それ以上私がつけ加えることはございません。  自衛権の法理については、これも先ほど申し上げたとおりでございます。  なお、アメリカ側の声明のリミテッド、限定されたというのは、いままでとっているような措置が限定されたとアメリカでは考えているわけだろうと思います。
  130. 穗積七郎

    穗積委員 これは、防衛庁長官、あなたも御経験のとおり、かって関東軍あるいは北支駐とん軍というものもそうです。政府は不拡大方針であり、参謀本部の中枢の責任者も不拡大方針であった。ところが、第一線における事実行為というものが戦争をリード、拡大していったわけです。このことはお互いに苦い経験を持っているわけです。したがって、第一線における軍の戦闘活動の範囲というものは、条約解釈上はさっきも言ったとおり、それを、アメリカの言うことであるから、大国であるから、こわくてものが申せないという奴隷的事大主義で、アメリカの言うことが全部、さっき言われたように、解釈の中に入るんだ、正当性があると解釈するということでは、アメリカの一官僚としてはいいかもしらぬが、日本外務大臣、防衛庁長官の態度としては困るわけです。国民は、——私だけではありません。今度のことでも、国内における世論はどうです。われわれは一昨日まで地方を旅行しておりましたが、あげて、今度の行為は、アメリカの、何といいますか、関東軍にひとしいつくり上げではないか、挑発行為ではないかと言っておる。しかも、挑発行為どころか、北ベトナムの領土内に侵入をいたしまして、さっきも言ったように、必要最小限度じゃないですよ。油のタンクを爆撃したり、しかもそれの九〇%に打撃を与えている。それから、全然無防備な村落を爆撃して、無防備人民を死傷させておる。これが一体最小限度の行為ですか。そういうことによって、事実はどんどん戦争へ拡大していく。そして、安保条約五条で縛られているから、われわれは事実上戦争の中へ巻き込まれていく。あなた方はアメリカと死ぬならいつでも死んでけっこうだという考えかもしらぬが、われわれ国民はそんな考えは持っておりません。日本の安全とアジアの平和については独自な方針をとるべきだと思います。小泉大臣、椎名さんはアメリカとならいつ心中しても満足だという態度のようですけれども、あなたは独自な方針が必要だと言っておるんだから、それで言うなら、五十一条の自衛権の制限というものは、明らかに外務省の解釈どおりで、それから見たときに、明らかに最小必要な行為じゃなく侵略行為ですが、お認めになりませんか。おかしいよ。あなた、官僚でもないものがそんなことを言うだけの魂がないのですか。
  131. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 先ほど独自の見解と申し上げましたのは、各種の情報を総合し、防衛庁当局、また日本の立場においても、でき得る限り正確な判断をいたしたい、こういう情報についての意見を申し上げたのであります。また、たとえば北ベトナムの問題が挑発であるとかないとかと、いろいろな見解が述べられておりまするが、わが日本の立場はあくまでも中立でありまして、自衛隊というものはこれに介入すべきでないことは御承知のとおりでございます。かような見解から、この事件が起こりましても、私は、長官といたしまして、自衛隊には何らの指示もいたしておりません。また、指示する必要を認めなかったのでありまして、ただ平常どおりのルートによって情報を集めて、正確な判断を誤りたくないという、いわゆる注意をいたしておるだけでございまして、他国の紛争に対して、日本として、また日本の防衛庁長官が、いずれが是とか非とか、いずれが侵略である、いずれが侵略されたとかいうような軽々な判断を下すべきではないと考えております。
  132. 穗積七郎

    穗積委員 私は、実は当初、きょうの政府態度並びに——それは事実はアメリカから四条または六条の協議はなかった、そして今度の行為というものはアメリカだけ行為であり、今度もの行動は南ベトナム政府にも協議しなかったのですから、だから日本にもなかった、したがってその責任はアメリカのみが負うべきであるというふうに私は考えておる。その場合でも実は四条あるいは六条の協議事項に該当すると私は考えておりますけれども、それよりさらに深刻な問題は、いつかのライシャワー・池田会談というものは実は四条協議事項に当たる会談である、そういうことになりますと、しかも今度アメリカが侵略的行為をとったあの北ベトナムに対する攻撃すら日本は同意を与えている。あの行為に対して共同の責任を持っておるわけでしょう。防衛長官、どうですか。そうなりますと、それに対する向こう側からの正当な報復行為がわが基地に行なわれたときに、これに対する抗弁のしようはありませんね。この行為は侵略行為ではありません。もしアメリカの、油基地まで爆撃をする、無防備地帯まで爆撃することが正当行為であるというならば、しかもそれに対して日本は了解を与え、共同の意思でやったのだということでありますなら、まして安保条約五条がありますから、当然向こう側から、この第七艦隊並びに空軍というものは日本または日本の潜在主権のある沖縄から出動したものである、基地をたたく必要があるということになって、この行為は自衛行為に入るのです。そのとき、われわれは、侵略攻撃を受けたのではない、こちらから先に手を出したんだから、それに対する報復行為が正当行為として行なわれたのだ、こう解釈せざるを得なくなるじゃありませんか。  そこで、第四条による会談であったのかどうなのか。そういう受け取り方であるなら、継続してその後の一々の作戦行為、これについてすべて協議を受けることを要求する権利がある。その協議をせざるものについては、安保条約違反としてアメリカに抗議をし、その行為に対しては日本側は責任をとらない、ものの順序としてこういう態度を明らかにすべきでしょう。このことについて両大臣から所感を伺います。あなた方たいへんな錯覚を起こしていますよ。
  133. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほどから申し上げるとおり、今回のアメリカの武力行動は、大体において自衛権として認められる範囲内のものであるというふうに考えております。  それから、協議の問題は、不意に敵の攻撃を受けたのに対する自衛行為でありますから、したがって、事後にならざるを得ない。  それから、六条関係の問題につきましては、これは作戦行動の進発基地でなかったということから、これは事前協議の事項にならない、かように解釈いたしておるのであります。  これによって御了承を願いたいと思います。
  134. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 ただいまの穗積委員の御質問のことについては、外務省の所管でございまするので、私からの答弁は差し控えさせていただきます。
  135. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど戸叶委員あるいは鯨岡委員に対する外務大臣の御答弁の中で、今度のアメリカ行動が第六条交換公文にいう事前協議に該当するものではない、その理由は、出動するときの指示が戦闘作戦行為の指示ではなくて哨戒の指示であった、こういうことによって第六条の事前協議対象にはならないと説明をなさいました。続いて、もしそれが戦闘行為の指示でありますならば承前協議対象になりますか。
  136. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 戦闘作戦行動に従事することを任務として初めから出ていくということだったら、当然事前協議対象になるわけであります。
  137. 穗積七郎

    穗積委員 トンキン湾は、この条約にいう極東の範囲に入りますか。
  138. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 極東の範囲については、前から御説明いたしておりますとおり、フィリピン以北及び日本周辺、中華民国、韓国の支配している地域が含まれる、こういうことで御了承いただきたいと思います。
  139. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、トンキン湾並びに北ベトナムに対する攻撃、——あるいはその原動力は中国にもあるということが、今度アメリカの作戦行為のねらい、理由であったわけです。そうすると、今度のアメリカの作戦行為対象としておる諸地域、これはすべて安保条約極東の範囲の中に入ると解釈されますか。そこのところだけ聞いておきたいのです。
  140. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 トンキン湾が入るかどうかということは、一つ一つの地域、湾の名前とか島をあげて入るか入らぬかという議論に入っていきますから、これはちょっと差し控えますが、ただ、現在トンキン湾付近で起こっておる事態極東の平和・安全に脅威を与えるものである、これははっきりいたしておると思います。
  141. 穗積七郎

    穗積委員 そういう拡大解釈をすれば、今日は国際的な関係でございますから、原因がどこにありましょうとも世界じゅうに波紋を生じます。日本アメリカ軍の駐とんを許しておりますのは、世界至るところの事件、すなわち、日本アメリカの安全に関係のあることであるならば、あるいは極東関係のあることであるならば、それを取りしずめるためのアメリカの軍はすべて駐とんを許す、そういうことではないんですよ。両国の安全並びに極東の安全のためにのみ限定をいたしまして米軍の駐留を認める、こういうことになっているわけです。  そこで、私はお尋ねしますが、トンキン湾が入るか入らぬか、北ベトナムが入るか入らぬか、それを奥地へたどって行けば中国です。今度のねらいの最後が中国にあることは明確なんです。それが一体、日米両国の安全、極東の安全に関係があるという、この条約でいう極東の範囲の中に入りますか入りませんかと聞いておる。具体的ですよ。事件が起きているのですから。作戦行動がとられているんですよ。トンキン湾じゃない、アメリカ軍隊北ベトナムの領土内へ侵入しているんですよ。しかも連鎖反応で中国がやるならどこまででもやると言っているのだから。
  142. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 安保条約にいう極東という地域の概念につきましては、これは前に安保特別委員会政府が答弁いたしましたとおり、根本の趣旨が、日米のこの条約においての観念としては、在日米軍が日本施設及び区域を使用して武力攻撃に対する防衛に寄与し得る区域、こういう観念があるわけでございます。したがいまして、中共とか、そういう日本アメリカが安全に特別の関心を持っておるという地域でないものが入ってくることは観念上あり得ないわけでございます。ベトナムについても大体同様。私がさっきちょっと申し上げかねると申しましたのは、トンキン湾というような一つの地域の名前をおあげになりましたので、ちょっとそれはかんべんしていただきたい、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  143. 穗積七郎

    穗積委員 私の言っているのは、そういう解釈を聞いているのじゃないのです。その解釈にあたって、いま事件の起きております具体的な地域ですね。トンキン湾どころじゃない、北ベトナムまでも含む、場合によれば、将来発展すれば中国の一部までも含む、そういうようなことを安保条約極東の範囲として解釈してよろしゅうございますかということを聞いているわけです。私は地域を具体的に示しておるわけです。あなたの解釈に従ってここは入るのか入らないのか聞いているのですから。抽象的に、あの島はどうだ、この島はどうだと言っているのじゃないのです。いまアメリカが作戦行動をとりました地域は入っておるのか入っておらないのかということを聞いておる。入っておるとするならば、何を根拠にしてそういう解釈をされるか、こういうことです。
  144. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 極東というのは地域の観念でございますので、やはり地域的にお答えしたわけでございますが、ただ、あそこで起こっておる事態極東の平和及び安全に脅威を与えておる、——あれから極東の平和・安全が脅威されておらないと言い切ることはだれもできないわけだろうと思います。そういう意味で、四条なり六条なりでカバーされていると申しますか、あそこの事態四条協議対象になり得る、しかしそれは何もあそこの事態極東という地域の中に地域として入っておるからではない、こういう趣旨で御答弁しているわけでございます。
  145. 穗積七郎

    穗積委員 これは条約解釈のことですが、実は私はそういう拡大解釈は非常に危険だと思うのです。そんなはずはありません。その誤りは次の機会にただしましょう。きょうは両大臣出られて、まだ時間は十分にあるということでございましたけれども、まだ同僚の質問もありますから、大臣に対する質問に集中いたしますが、いまの解釈は私は誤りだと思うのです。  防衛長官にお尋ねいたしますが、最近アメリカの在日部隊の一部が撤収または他の地域へ移動しつつある。こういうことを通じまして、実は在日米軍、いわゆる安保条約の範囲に入る在日米軍の範囲について問題が起きておるわけです。当然起きるわけですね。これに対してまず防衛長官から伺いたいが、たとえば海兵隊の飛行部隊、特に問題になるのはそれだと思うのです。これは第七艦隊所属の、第七艦隊というのはホノルルがオリジナルな基地になっておる、そういう解釈で、この部隊は在日米軍としての対象に入るか入らぬかというような問題がこれから随所に出てくると思うのです。そういう意味で、一体在日米軍の限界、範囲というのはどういうものであるのか、まず防衛庁の解釈から伺っておきたいと思います。
  146. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 外務省の範囲でございますので……。
  147. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 在日米軍というのは、条約上定まった用語としてあるわけでございませんので、その観念としても条約上定まったものはないわけでございます。通俗に使われる場合には、日本国へ配置されているものをいうこともございますし、単に日本施設区域を使用しているだけのものをいうこともある。両方あるわけでございます。
  148. 穗積七郎

    穗積委員 それから、もう一つ、私は具体的な部隊を示してお尋ねしているわけですが、これは在日米軍の中に入りますか入りませんか。
  149. 海原治

    ○海原説明員 先ほど岩国の部隊についての御質問がございました。岩国にはアメリカの海兵師団の部隊が常駐いたしておりますが、これは、先ほどの外務省のほうの御説明の中の、常時編成的に配置されておる、そういうものでございます。なお、そのほかに、間々第七艦隊所属の飛行機で飛来するものもございますが、これも岩国の基地へ入りますと在日米軍司令官の区処を受ける。その意味におきましては、やはりこれは在日米軍、こういうことになります。
  150. 穗積七郎

    穗積委員 いまの御答弁は明確だと思うのです。そうなりますと、オリジナルな所属はどこであろうとも、両国並びにアジアの安全のためにその任務を帯びた部隊が日本に駐とんする場合、これはすべて在日米軍と解釈して、これらの行動、装備の変更等々については当然協議対象になるべきものである、こう解釈すべきだと思いますが、総括いたしましてそれでよろしゅございますね。
  151. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 重要な装備の変更ということだったら……。
  152. 穗積七郎

    穗積委員 いや、部隊のことを言っているのだ。その部隊そのものが安保条約対象になる在日米軍であるかどうかということを聞いているのです。部隊の装備のことはわかっています。
  153. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 在日米軍ということにとらわれないで、日本に来ればアメリカ軍は全部この条約の規制に服するわけでございます。それを在日米軍と言ってもよろしゅうございますが、常時配備されておる米軍だけがこの条約の規制を受けるわけではなくて、日本に入ってくれば当然にこの条約の規制を受ける、こういうことでございます。
  154. 穗積七郎

    穗積委員 そういたしますと、今度の作戦で日本の基地を使用いたしました部隊の行動というものはあったわけですね。
  155. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 基地として使用したという観念に該当しないのじゃないかと思うのでありまして、日本から出ていったものが何か向こうでの武力衝突にかかわりがあるかもしれませんけれども、しかし、日本からそういうような作戦行動をとるために出かけていったわけじゃありませんから、日本をそういう行動の基地として使用したという観念には私はぴたり当てはまらないような気がいたします。
  156. 穗積七郎

    穗積委員 時間がなくて残念でございますが、あと二点だけお尋ねしたいと思います。  第一、沖縄基地というものはこういう事件が起きますとアジアにおける重要な作戦のかなめになって、それに対する日本政府考え方あるいは処置のしようが非常に大事になってきていると思います。これには潜在主権があるということが言われておる。それで統治権はない。それから、もう一つ問題は、ここにおる八十万の人民は日本国民である。こういうところに問題があるわけですね。そうなりますと、たとえば今度のような戦闘行為が拡大いたしました場合に、一体潜在主権を持つ日本の沖縄基地に対する、あるいは沖縄人民に対する権利義務関係というものはどういうふうになりますか。たとえば、アメリカ行動に対しまして相手国からその重要な基地である沖縄に攻撃が加えられる、そこで日本人民が非常な被害を受けた、こういうことに対して日本政府は一体どういう発言権があるか。すなわち、権利義務関係を生じておるか。だから、言いかえれば、その攻撃の原因をつくりましたアメリカの沖縄基地を使う作戦行為について、日本事前に事実上の協議を遂げる主張権があるように私は思うのです。そうでないと、その報復攻撃が行なわれましたときの日本の沖縄に対する責任というものは全然果たされない。すなわち、潜在主権並びに日本国民に対する日本政府の権利も義務も全然生じない、こういうことになりますね。それではよくないと思うのです。それらに対する解釈をこの際伺っておきたいと思います。
  157. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 沖縄を作戦基地に使うことについて日本協議を要するかどうかという点でございますが、その点については全然法律上その要がないわけでございまして、立法、司法、行政の三権を持っております。ただ、今度は逆に沖縄に対して武力攻撃が加えられた場合にはどうなるかということにつきましては、現行の安保条約ができましたときに合意議事録が作成されまして、そこでは、「日本国がこれらの諸島に対する潜在的主権を有しているので、これらの諸島民の安全に対し日本国政府及び国民の有する強い関心を強調したいと思う。もしこれらの諸島に対し武力攻撃が発生し、又は武力攻撃の脅威がある場合には、両国は、もちろん相互協力及び安全保障条約四条規定に基づいて緊密に協議を行なう。武力攻撃が発生した場合には、日本国政府は、同政府が島民の福祉のために執ることのできる措置を合衆国とともに検討する意図を有す。る」、こういうことを日本側の全権委員が申し述べたのに対しまして、アメリカの全権委員が、「これらの諸島に対する武力攻撃が発生した場合には、合衆国政府は、日本国政府と直ちに協議し、また、これらの諸島の防衛のため必要な措置を執り、かつ、島民の福祉を確保するため全力を尽くす意図を有する。」、こういうことになっておるわけでございます。
  158. 穗積七郎

    穗積委員 私の言うことはそういうことではない。それは知っています、私は。そうではなくて、その原因のアメリカ行動について、原因を誘発するアメリカ行動について、私はこの際再検討する必要があるということを言っているわけです。そういう意味なんです。人民の福祉を云々ということは、安保条約が制定されました後の池田・ケネディ会談で了解事項になっておる。それをさらに発展せしめますならば、この際においては——起きたときの取りきめは知っていますよ、文書のやりとりは。それを聞いているのじゃないのです。その後、安保条約後池田・ケネディ会談で在沖縄の日本人民の福祉については責任を持ってやる、こういうことになっておるから、平時においては自治権の拡大、それから民生の安定、それからその他の民主的な自由権の確保でございますが、それだけでなくて、こういう事実が、情勢が発展いたしてきますと、その攻撃の事実が起きたことにどう対処するかということでなくて、その原因というものは一方的に起きるわけじゃないのですね。アメリカ行為が原因になる場合があるわけです。その行為に対する日本側の発言権の問題を私は聞いているのです。池田・ケネディ会談の趣旨というものは、この軍事的側面においてはそういうふうに発展せしめることが当然だと思う。外務大臣に御所感を伺います。
  159. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは一に同盟国に対する信頼関係に帰着すると思います。ただいまのところそういう場合にどう対処するかというような取りきめはございません。両国の信頼関係にあるものと考えます。
  160. 穗積七郎

    穗積委員 信頼関係すなわち従属。あなたのお考えは大体わかりましたが、非常に私は不満でございます。  そういうことについてはまた今後具体的な政策の中でいろいろ申し上げたいと思いますが、最後に、先ほども触れましたが、ベトナム問題解決の基本的なよりどころというものは、私は一九五四年のジュネーブ協定だと思うのです。同時に、それを完全に受けましたジュネーブ会議の共同宣言があります。これに対してアメリカは、共同宣言に署名をしないで、これを尊重する、この協定並びに宣言が実行されることに云々ということの単独宣言をいたしております。私の常識では、国連においてこれを取り上げるということは、これは中国でも非常な疑惑が生じておるように、ここにのみ移すということは時間かせぎになり、既成事実をでっち上げて、その前提の上に南ベトナム問題というのを第二の朝鮮問題にでっち上げちゃって、そうして、国連軍の出動であるとか、国連の管理下というようなものにしてしまって、一九五四年のこの尊重すべき協定並びに共同宣言というものを全く無視してしまう危険があると思うのです。したがって、ベトナム、ラオス、カンボジアの解決については、一九五四年のジュネーブ協定を尊重し、並びに、それに責任をみずから買って出ておりますアメリカ、ソビエト、フランスその他を含みますジュネーブ会議参加関係国があるわけですから、したがって、私は、ドゴールが提案いたしておりまするように、インドシナ三カ国の諸問題を解決するためには関係十四カ国会議、これが中心になるべきであると思う。のみならず、この取りきめによってきめられました監視委員会国際委員会、これも責任がある。発言権があるだけでなくて、これらの諸国は責任があると思うのです。したがって、日本としては、アジアにおける南北問題がこれからやかましくなるときですから、当然、私は、このジュネーブ協定、ジュネーブ会議に依拠して、これで今度の事件解決をはかる、この精神が一番正しい方針であると私は確信をいたします。  そこで、外務大臣にお尋ねいたしますが、一九五四年のジュネーブ協定並びに共同宣言というものは、これは今日の事態においてもなおかつ生きており、しかも尊重すべき協定であり共同宣言であると私は思いますが、大臣の御所感を伺っておきたい。
  161. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今日においてもこれは死んでおるわけではないと思います。
  162. 穗積七郎

    穗積委員 そうであるならば、池田総理も、それからあなたも、今度の事件は戦争の不拡大と早期の解決を要望すると言われた。そうである具体的な方針というものは、まずこのジュネーブ協定、ジュネーブ会議に依拠することが基本的であり、先行すべきものである。国連の安保理事会における審議というものは、これは並行、従属的なものである。インドシナ三カ国の問題を解決する根本的なよりどころというものは、私はこれであると主張すべきであると思います。そうであるならば、これを強く主張されることを希望いたしますが、これに対する外務大臣の御答弁をいただきたい。
  163. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいまの措置といたしましては、すでに安保理事会にかけられておるのでございますから、その成り行きを見る必要がある。国際会議も一つの案であります。案でありますが、これは十分の準備をする必要があるのではないか、かように考えている次第でございます。
  164. 穗積七郎

    穗積委員 それは誤りです。こういう混乱いたしましたときには、正しい論理、過去の事実を尊重してやることが一番早道なのです。私は、一九五四年のジュネーブ協定並びに共同宣言、これに権利と責任があるのですから、これに依拠して、これを中心にして発展せしむべきものであって、そうして、アメリカ行為がはたして五十一条による自衛行為であるか、侵略行為であるか、それは五十一条の規定によりまして国連安保理事会が審判をしたらいいと思う。別の問題です。ベトナム並びにラオス、カンボジア問題については、五四年にもうすでにその基本原則というものは関係諸国の間でこれが確認をされておるわけですから、私は、フランスの提案というものは、最も正しく、かつ効果的な提案であると思う。日本政府はこれを支持すべきだと思うのです。もう一ぺん、あなたの御答弁は誤っていますよ。
  165. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま申し上げたとおりでありますが、しかし、あなたの御意見も参考にいたします。
  166. 穗積七郎

    穗積委員 それに付随いたしまして、今度の事件を具体的に終息せしめるために、アジアの平和と日本の安全のために、日本独自に主張すべきことを私は提案をいたしたい。そうしてそれに対して外務省意見を伺いたいのです。  まず第一は、アメリカの戦闘行為の即時中止を要求すべきだと思うのです。そうして、公海などとへ理屈をつけて人の門口へ行って挑発的な行為をとることは直ちに中止し、これらのいま出動いたしております空軍海軍というものは、きっきの条約局長の五十一条の自衛権の範囲というものは必要最小限度に食いとめられるべきです。それをはるかにオーバーするような威嚇的な出動や、まして現在出ておりますものはこれを撤退すべきである。そうすることがアメリカのためにも日本のためにもアジアの平和のためにもなる。  それから、第三は、先ほど戸叶委員が主張いたしました南ベトナムに対する援助でございます。特にこの際でありますから、人道的なんというのは粉飾なんです。人道的でないから日本赤十字もこれに協力することができない。非常にへんぱな、政治性が多いからこれを拒否しておるわけです。したがって、この時期においては、そういう欺瞞的な人道的な粉飾をつけました南ベトナムに対する非常な危険な援助というものは直ちに中止すべきである、こう思うのです。  それから、第四番目には、今後のことでありますが、在日米軍の限界と在日米軍の行動に対する随時協議並びに事前協議については、この際厳格にアメリカに対して申し入れて、今後かってな行動をとり日本が第五条によって戦争に巻き込まれることのないように、アメリカの独善的な陰謀的な行為によって日本が巻き込まれるというような事実が生じないようにすべきだと私は思う。  以上、今度の事件に関連いたしまして、もう一ぺん整理いたしますと、第一点は、ジュネーブ協定に依拠すべきである、フランスの提案を支持すべきである。それから、第二は、アメリカの軍事行動、部隊行動を直ちに中止さすべきである。それから、第三は、必要以上の部隊はこの際ジュネーブ協定に従って撤退をする、それ以上の基準によるアメリカ軍隊は撤退をすべきである。在日米軍の限界と、それからそれに対する協議の問題については、もう一ぺんここで日米間でえりを正して話し合いをして、今後一方的な通報によってこういう重大な作戦に日本が引き込まれないように事前に手を打つべきであると私は考えます。  これらについて、できるかできないか、やる意思があるかないか、総括をいたしまして政府を代表して椎名外務大臣からお答えをいただきたいと思うのです。  以上をもって私の質問は終わります。
  167. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 お述べになりました四点については、この際伺っておきたいと思います。
  168. 安藤覺

    安藤委員長代理 田原春次君。
  169. 田原春次

    ○田原委員 関連して一点だけ御質問申し上げます。  先ほど来の問答を聞いておりますと、アメリカは限定作戦であると言っておりまするが、どの辺で解決になるかについては、全く日本国民は不安であります。国連の安保理事会に提出したとはいいますけれども、情報並びに出席とも北ベトナムは拒否しております。そうしますと、昔のさむらいの言うように、刀を抜くときは刀をおさめるときを考えて抜けというが、一体無制限に限定作戦が続くものであるかどうか、たいへん不安であると思います。したがって、ただ傍観するだけでなく、これが対策について池田政府考えるべきではないか。たとえば、先般来マレーシアとインドネシアとの間のボルネオの国境に対する紛争、これにフィリピンも参加いたしまして、東京会談を開いております。成果は必ずしもあがっておらぬようでありまするが、しばしば東京会談をする意思は三国ともあるわけでございます。日本はこれに対して会場を貸しております。私は、安保理事会への出席を拒否した北ベトナムに対して、同時に南ベトナムに対して、日本側があっせん役となって東京会談を開かすべきではないかと考える。みずからその席に出るか出ぬかは別といたしまして、両者の会談のあっせんをやるべきじゃないか。そのことは、刀を抜きっぱなしでいつおさめるかも知らないアメリカに対しても反省のよい機会を与えるのではないか、こういうふうに思いますが、椎名新外務大臣のまずとるべき態度、方策といたしまして、両当事国を東京に招き、会場を提供し、自由に討議をさせて一致点を発見させてはどうか。この点に対するお考えを承りたいと思うのでございます。
  170. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 限定作戦の問題でありますが、もうすでに、相手国から新しい挑発がない限りにおいてはやらぬという状況にただいまはおさまっておるのではないかと思いますから、おのずからそこに限界が出てまいっておる、かように解釈しております。  それから、北越が拒否した今日においては、日本に集めてあっせんすべきではないかというお話でございましたが、やはり、まず安保理事会の成り行きを十分に見きわめて、それから次にはジュネーブ協定の趣旨に沿うて適当な方法を考えるというようなことがその次の問題であると考えております。お話の点につきましては研究させていただきます。
  171. 田原春次

    ○田原委員 先日来の英字新聞、たとえば読売を見ましても、この問題に対してはアメリカの国民は非常に重要視して心配しておるようでございます。ひとりアメリカ政府だけが強がりを言っているだけでございまして、はたして国民全部がトンキン湾における攻撃を支持しているかどうか疑問であります。これは一方的な一部の政党の新聞にあらずして、ごく一般的なアメリカ市民の声でございます。したがいまして、私が申し上げますように、安保理事会に先立って、私的会談でもいいから、日本が進んで東京会談をあっせんすることは、実はアメリカの一般市民も安心することであるし、アメリカも引っ込みやすい時期が来ると思うのでありまして、研究するとは言われましたが、時期のあることでありますから、やはり今日東京会談の可能性について検討し、そして可能性ならばやるというくらいの決意を示してもらいたいと思うわけであります。もう一度、くどいようでありますが、椎名外相の御答弁を期待しておるわけであります。
  172. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結論を即答することだけはひとつごかんべんを願いたい。十分に研究いたします。
  173. 安藤覺

    安藤委員長代理 永末英一君。
  174. 永末英一

    永末委員 民社党といたしましても、今回のこの事件について非常に重大な関心を持っておりますが、ただいままでの大臣の御答弁を聞いておりまして。少し事態を正確にしたいと思うのです。  第一点は、ライシャワー大使が池田首相に会われたあの行為は、安保条約四条にかかわる随時協議だとわれわれは思いますが、大臣はそう解釈しておられますか。
  175. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御指摘のとおり、四条後段協議と解釈しております。
  176. 永末英一

    永末委員 同時に第六条でうたわれております事前協議対象として行なわれたかどうかの問題につきましては、大臣はどうもそれに該当しないようなお話でございましたが、第六条に関する行為だとは解釈しておられませんか。
  177. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第六条のいわゆる事前協議には該当しないものと考えております。
  178. 永末英一

    永末委員 そういたしますと、随時協議の場合においては、事態が発足いたしましてから協議を受けることがあり得るということを政府としては承認をしたということになりますか。
  179. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今度のような不意に起こった事件に関しましては、これはやむを得ざるものと考えております。
  180. 永末英一

    永末委員 この条約がかかりましたときに、いろいろな質疑を通して、第四条の随時協議でも同様合意がなければその協議は成立しないというぐあいにわれわれは政府から説明を受けておったと思うのです。しかし、いまの外務大臣の話では、事態のあるものについて同意があろうがなかろうが済んでしまったことだから終わりだ、通告と同じ意味だ、そういうものが第四条に含まれると外務大臣は解釈しておられるようでありますが、そう解釈してよろしいか。
  181. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 第四条協議でありましても、何か意見の一致、合意を要するような事項について協議した場合には、その協議の結果合意がなければならないということは、御指摘のとおりでございます。  今回の事態に関連しまして事前協議があったかなかったかという点につきましては、もともと今度の事態については事前協議の主題とすべき事柄が初めからなかったということになるわけでございます。つまり、日本から戦闘作戦行動は行なわれておらないと存じます。日本を基地としてそれに使っていないわけであります。
  182. 永末英一

    永末委員 政府事件が起こった四日間くらいのことを一括してごたごた答弁しておられるようですが、私は事を分けてお伺いしたい。一つは、最初に起こりました魚雷の発射、これに対する応戦、これが第一次事件。それから、魚雷を発射されたかどうかわかりませんが、駆逐艦、航空母艦等をもって北ベトナム国の魚雷艇数隻を攻撃した事件。第三は、アメリカの大統領がこの事件に関連をして積極的な報復を行ないますということを事前声明をいたしておる。そうして、一部関連施設に対して攻撃を実施するぞということの声明を発した後に、ライシャワー大使は池田首相に会っておるわけである。いままで起こったことだけではない。これから起こるべきこと、——一体積極的な報復というものがどういう性質のものであるか。これは、いまの外務省の答弁では、戦闘作戦行動ではない、こう言うのでありますが、国際法上、戦闘行為が行なわれ、それに報復行為を行なおうとする場合に、これが戦闘行為でないというようなことは私は聞いたことがございません。外務大臣は、池田首相に対してライシャワー大使が大統領の声明を伝えたと言われる。その中身は、これから起こり得べき、これから積極的な報復行為をいたしますぞという通告を受けておるではありませんか。このことは以後ではありません。事前並びにいま進行中のことである。このことについて、日本は軍事基地を提供している限り、やはりこれに対する御意見があろうと思う。この辺についてのお答えを願いたい。
  183. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 事柄の起こった順序は御指摘のとおりでございますが、最後の、アメリカ側から反撃した前にライシャワーが会っているではないか、そうしてそのことのウォーニングをしているではないか、これはそのとおりでございますが、しかし、それが作戦行動ではないと申し上げておるわけじゃなくて、その作戦行動といいますかオペレーションは、日本施設区域を使用して行なわれてはいない、したがって事前協議対象には初めからならない、こういうふうに御了解いただきたいと思います。
  184. 永末英一

    永末委員 四日の夜から五日の午前中にかけて横須賀からは第七艦隊所属の艦隊が出動いたしておる。アメリカ側としてはトンキン湾に起こったこの事件については大統領の方針に基づいて作戦行動が行なわれているとだれでもそういうぐあいに認めるではありませんか。しかるにかかわらず、いまお答えになっておるように、戦闘行動日本の基地を根拠地として行なわれてないと言われる。どこをたたけばそういうことが出てくるか。私はその辺のところが了解に苦しむのだが、外務大臣と防衛庁長官からお答え願いたい。
  185. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 第六条は、この第三次の報復爆撃が日本の基地を使用したものでなければ事前協議対象にならないことはいま申し上げたとおりでありますから、これは差しつかえないと思うのであります。
  186. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 事前協議対象は、御承知のとおり、第六条交換公文施設や基地に対する重大なる変更もしくは直接日本の基地からする攻撃作戦出動というものがその対象になるのでありまして、今回のことは、横須賀の第七艦隊のことも御言及になりましたが、第七艦隊はインド洋から中部太平洋、豪州の南端まで担当をして警備をいたしておるのが第七艦隊の平常の任務でございまして、今回の事件が起こって横須賀から大挙出動はいたしておらないのであります。いわゆる部隊配置というものの限定は、陸軍としては一個師団、航空部隊としても一個師団以上のものを配置するのを事前協議対象としておりまして、第七艦隊のごときは、事前協議対象としては一機動部隊ということばはいままで使われて、外務委員会等でも種々論議されておるのでございますが、一機動部隊と申しますと、やはり相当の、航空母艦何隻、駆逐艦何隻、あるいは支援艦艇が何十隻というような、いわゆる一機動部隊というのにふさわしい大きな攻撃力を持つ部隊でございます。それは今回の事件が起こってから横須賀、佐世保を出港いたしておりません。もう常時第七艦隊は先ほど申しましたような広い海域にわたって任務を担当しておるのでございまして、たまたま事件が起こってからは旗艦が出ていったという程度のものでございまして、一機動部隊の出撃という範疇に入らないものと解釈をいたしておるのでございます。
  187. 永末英一

    永末委員 外務大臣にお伺いしますが、一体、軍事基地を部隊が出るときに、どこへ行って鉄砲を撃ちます、飛行機を飛ばします、そんなこと言って出る部隊なんかありやしませんよ。黙って出ていく。あたりまえの話じゃありませんか。私が指摘しているのは、いま防衛庁長官の話がございましたけれども、旗艦が出るというのは、司令長官が先頭に立って参加するという決意がなければ旗艦が出ることはございません。そこで、目に見えるような航空母艦とかなんとかいうことは別問題として、横須賀では現に常時いままで停泊しておった船も全部出動させておるというところは異常な状態です。異常な状態はどこへ向けておるかといえば、北に向けておるのではなくて南に向けておる。南では戦闘作戦が行なわれておることは事実だ。私が外務大臣に伺いたいのは、問題をごたごたさせずに、随時協議ということを言われたので、随時協議の中にはアメリカ大統領の言われる積極的報復行為というものが通告になったはずだ。それならば、いままでやったことはいたしかたがないという答弁だけれども、その積極的報復行為がどこへ行くのかどうかということについて、軍事基地を使用させている日本政府としては重大な関心を持たなくちゃうそじゃないですか。その点について一体協議をされたのかされないのか、それを伺いたい。
  188. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 実際問題として、報復行為は横須賀あるいは佐世保を発進した部隊によって行なわれたものでないことはほぼ明らかでございます。それでありますから、事前協議対象にならないということを申し上げたわけであります。
  189. 永末英一

    永末委員 外務大臣、一つの艦隊がある作戦戦闘行為をやります場合にどれだけの支援艦隊が要るかということは、これはイロハのイの字でだれでも知っていなければならない。それがたまたま日本の横須賀から出たその何ばいかの船だけがそこの作戦行動地域に行って飛行機を飛ばさなかったとか、そんなことは理由になりませんよ。出ていった船はいつどこで何が起こるかわからないということを予期して出ていくのでありますから、軍事基地を貸している日本側としては、出ていく船がそこに巻き込まれるおそれがあるということは考えなければならぬと思うのです。いままで起こった、数はいかのアメリカの船がトンキン湾で起こした事件には、ここ一週間の間に日本の軍事基地からは出ていかなかったかもしれませんけれども、この事件が起こってから出ていくべきもの、あるいはこれからまたアメリカから中継して行くべきものは大体そこを指向していることは事実だ。であるならば、そういう一つの兵力の移動については、わが政府としては重大な関心を持たなければならぬと思いますが、あなたは関心を持たなくていいとお考えか、伺いたい。
  190. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 いつ幾日どういう船が出たかというようなことは、これは明らかになっておるのでございますが、ただ、兵力の移動それ自身が事前協議対象になるのではないのでありまして、いま申し上げたように、報復攻撃をこれからやる、それには日本のこれこれの基地から発進する船があるというようなことが報告されて、それに対する事前協議が行なわれる、こういうふうなぐあいになっておるのでありまして、せんじ詰めれば、結局はアメリカの信義の問題になるのでございまして、どういう意図を持ってやるかというようなことをせんさくしても、なかなかわからない。ここら辺になりますと、やはりどうしても信頼感の問題になりますが、とにかく第三次の報復攻撃には日本の基地を使用しなかったという心証を得ておりますので、事前協議対象にならない、かように考えております。
  191. 永末英一

    永末委員 外務大臣は重要なことを言われておるのですが、私も当初申しましたように、部隊が軍事基地を出ていくときには、われわれの船が鉄砲を撃ちますとか飛行機を飛ばすというようなことを宣言して行く船は一つもございません。しかし、作戦区域があり、その区域に向かって出ていく船は、いつ何どきそういう任務が与えられるかわからない。これは当然の話だと思うのです。しかし、そういうことはわからないし、せぬだろう、アメリカを信頼しておるから、たとえそういう大きな兵力の移動があっても事前協議にはならぬというのであるならば、一体第四条が随時協議であって日本が同意権を行使し得るような状態がありますか。その点をひとつ伺っておきたい。
  192. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 戦闘作戦行動に関して同意を要することというのは、先ほどから申し上げているように第六条に拾い上げてあるわけであります。ただ、第四条の随時協議の中には条約の実施に関することというばく然たる表現がございますので、そういうようないまの国際的な事件関係のないようなことで日本における軍隊の配置とかそういうようなことで同意を要することはあり得るわけでありますが、こういうような事件に関連して日本の同意を要するということは第六条に拾い上げてあることだけである、かように考えるべきだと思います。
  193. 永末英一

    永末委員 私は第四条の随時協議の内容について質問しているのに、答える人は第六条ばかり引っぱり出しておる。そんなことを聞いているのではない。第四条関係するいわば条約上の行為ライシャワー大使がやったと外務大臣は言われるから、それならば、日本政府としては、その中で当然——ライシャワー大使のほうから言って来た中には報復ということをやりますというようなことを言ったのに違いない。報復ということがどういうものか、そのために日本の基地がどういうふうに使用されるのかということくらいは、日本政府としてははっきり事態を明らかにして、そうして、同意すべきものならば同意されるかもしれませんが、同意すべからざるものについては同意しない、こういうことは一体できませんか。その点の心がまえをひとつ伺っておきたい。六条じゃありません。四条の随時協議の内容について伺っておきたい。
  194. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 先ほど御答弁申し上げたことで御了解いただきたいと思うのでありますが、協議の実態の内容については、先ほど大臣から御答弁になりましたように、ここで申し上げることは差し控えたいと思います。
  195. 永末英一

    永末委員 答えないと言ったらしようがない話ですがね。しかし、これは重要な問題です。安保条約はしり抜けになるのではないか。われわれが随時協議について質問した場合には、事前協議で必ず同意権がありますからそれでチェックできますという政府の答弁。いわんや、具体的なこんなむずかいし問題に立ち当たった場合に、いまの御答弁を聞いていると、アメリカさまを信頼して、何でもやってください、これでは国民は不安です。  もう一つ質問いたします。先ほど、極東の範囲ということで、政府が統一解釈したのは変えないということです。それならば、第四条はいわゆる極東の安全について脅威が生じたときに随時協議対象とする、こういうことになっておりますから、第四条にどこが引っかかっているのです。それをひとつ御答弁願いたい。
  196. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 極東の平和・安全に対する脅威が生じたということで第四条に引っかかってくるわけでございます。
  197. 永末英一

    永末委員 極東の範囲というのは地理的に一応明示されておる。しかし、トンキン湾のごときはその地理的に明示された範囲外である。しかし、問題は、われわれから考えれば、やはり、日本の軍事基地をこういうように使用するということは、政府が言明したあの極東の範囲にも波及するおそれがあるからと言うておるでしょう。だから、したがって、逆に解釈しますと、政府極東の範囲として統一解釈を下したけれども、あれは要するに問われたから統一解釈を下しただけであって、極東の範囲をことばをかえて言うならば、アメリカ国が日本の軍事基地を基地として作戦行動をする全域である、これが極東の範囲じゃありませんか。
  198. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 極東の範囲というのは、そういうぐあいにアメリカ行動する範囲を限定する趣旨でないということは、例の統一解釈の中にもはっきりうたわれておるのでございます。そういう趣旨じゃなくて、極東というのは、先ほども申し上げましたが、そこにおける平和・安全の維持に日米両国が特別に関心を持っておる地域、そういうことでございます。それの平和・安全を守るためにどういう行動が必要になるかということは、またおのずから別個の、その事態事態に照らしてきめらるべきことでございます。
  199. 永末英一

    永末委員 もう一つ聞いておきますが、第四条のこの随時協議を解釈するにあたって、今回はアメリカ側から協議要請があって日本政府がこれに応じた、こう解釈してよろしいか。
  200. 竹内春海

    竹内説明員 そのとおりでございます。
  201. 永末英一

    永末委員 今度は事前協議、これに関連をして伺います。  日本周辺の兵力移動が非常に激しく行なわれておる。沖縄の嘉手納地区の海兵隊はすでに進発を終わっておる。さらに、この周辺のアメリカの航空基地における移動も激しい。真珠湾から出ていく航空機も日本の航空基地を中継基地として使用している。こういう場合に、防衛庁長官は、第六条にかかわる事前協議対象になるとは思いませんか。
  202. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 直接の出撃作戦行動でありませんので、事前協議対象にはならないと考えております。
  203. 永末英一

    永末委員 この前の安全保障条約の審議の場合に、たとえば沖縄に立ち寄って休養していくようなアメリカ側の航空機があった場合には、事前協議対象になると政府は答えている。違いますか。
  204. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 原則はあくまで、日本から直接戦闘が行なわれている地域に行って、そこで戦闘作戦行動をする場合でございますけれども、それでは、途中わざとちょっと寄って、日本を基地にしたのじゃないというようなことが許されるかというと、そういうことは許されないので、やはり、もっと実態的に、日本戦闘作戦行動の基地として使用されたかは実態に即してきめるべきことだ、こういうふうに考えております。
  205. 永末英一

    永末委員 政府の答弁はどうも要を得ませんが、同僚議員がおりますので、ひとつ最後に聞いておきたいのは、いまトンキン湾で起こっておる事件、一応終わったようでありますが、しかし、何が起こるかわかりません。もう一ぺん起こる場合には——現に日本の軍事基地を使用されて、動いておるわけですね。あの地域を戦闘作戦地域としてお考えですか、そういうものが起こった場合。
  206. 藤崎萬里

    ○藤崎説明員 戦闘作戦行動が行なわれている区域におもむく部隊はすべて戦闘作戦行動に従事するものであり、それは日本の基地を使うものである、したがって事前協議対象になる、そういうことじゃないのでございまして、その部隊なり何なりが日本を基地として直接戦闘作戦行動に従事する、その発進基地として日本が使われる、そういう場合だけが事前協議対象になる、こういうことでございます。
  207. 永末英一

    永末委員 それまた重要なことであって、一体飛行機に色がついているわけでもなく艦船に色がついているわけでもありません。これは、私は戦闘いたしますと言って出ていくわけじゃない。一つの作戦をやるためには膨大な兵力量が必要であり、そういう兵力量は北へ行くわけでもなく、オーストラリアへ行くわけでもありません。ともかくトンキン湾で現実に起こっておる事件に対してアメリカが兵力移動をしておる場合、日本の基地を通過するようになるわけで、いま政府が言うように色分けをして、その大部分は戦闘作戦行動に行くのだけれども戦闘作戦行動するのでないから知らぬのだ、こんなことなら、安保条約は要らぬじゃないですか。外務大臣、どうお考えか。これから先そんなことで安保条約を運営していくつもりかどうか、最後にお伺いしておきたい。
  208. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 もしそれが単なる食糧の補給であるとかその他の軍需資材の補給のために行くという場合でございますならば、それは直接の作戦行動を起こすのではないから事前協議対象にならないという解釈をとっておるのであります。
  209. 永末英一

    永末委員 私は質問を終わります。しかし、トンキン湾事件がこのままおさまってしまうかどうか、未来の問題で、だれにも予断はできません。しかし、日本がいやしくもアメリカに軍事基地を提供しておる限りは、起こり得べきいろいろな時期をとらえ、事前アメリカの真意を確かめて、日本としては条約上持っている義務でありますけれども、その義務の範囲は国会で審議されたとおり非常に狭い範囲を区切って条約上の義務を承認したはずで、その義務の範囲以上の義務をわれわれは負うわけにはまいらぬわけでありますから、外務大臣、防衛庁長官は、この運営について十分慎重に、日本国民の生命と財産を守れるように運営していただきたいと要望しておきたい。
  210. 安藤覺

    安藤委員長代理 川上貫一君。
  211. 川上貫一

    川上委員 時間がないので、たいへん残念ですけれども、ごく短い質問外務大臣にいたします。  あなた方は、部分核停条約、これを国会の承認を求める時分にこういう説明をした。これは米英ソ三国などによる平和への決意のあらわれである、緊張緩和への第一歩である、こう説明をされておる。そうして平和ムードというものをたいへん礼賛されておる。これに対してわれわれは、アメリカ帝国主義の戦争屋としての本質は変わらない、全世界にわたる新しい植民地主義者、諸民族の独立と民族の解放を求める戦いに対する弾圧者、世界の憲兵であると指摘した。そうして、部分核停条約というものはこの野望をごまかすぺてん条約である、こうわれわれは主張した。あなた方はこのわが党の主張を強く非難した。笑った。しかし、今日どういうことが起こったか。トンキン湾を中心とするアメリカの無法な武力侵略ですよ。ベトナム民主共和国に対する悪らつなる主権の侵害です。われわれが指摘した正しさが事実によって証明されたと思う。これは明らかな事実なんです。  ここで私は聞きたいのですが、外務大臣は、やはりアメリカ政府というのは平和的で緊張緩和の政策を進めている、平和共存的でまことにおだやかなけっこうな政府である、こう思いますかどうか。これが第一点です。これは政府考えをお聞きしたい。  私は以下数点について政府考えを聞きたいのですが、時間がありませんから一括して質問をいたします。外務大臣はその一つ一つについて答弁をしていただきたい。  まず第一に、アメリカ政府北ベトナム及び中国の内海といって差しつかえのないトンキン湾に核武装の軍艦を持ち込んだ。南ベトナムの艦艇を指揮して先月の三十日以来ホングとホンメ両島に砲撃を加えた。その他数々の襲撃を加えながら、ついにジョンソン大統領は命令を下してベトナム民主共和国を大規模に空襲した。これは社会党の委員諸君がるる指摘されたとおりです。これはベトナム民主共和国に対する完全なる主権の侵害であります。これは論争の余地はない。ジュネーブ協定の完全なるじゅうりんです。公然たる侵略戦争です。この侵略行為アメリカ自衛権の発動だと言うておる。一体アメリカの本国よりどのくらい離れているか。一万数千キロも離れているトンキン湾、ここに起こった海上の一つの事件、この事件アメリカ本国の安全に脅威を与えると政府考えますか。安全に脅威を与える、このときに自衛権を発動しなければいかぬ。この点が今回の事件の主要な問題であります。自衛権の発動として、これを公に認めることができるか、これは重要な問題です。日本政府としてのこれに対する明確な見解をお聞きしたい。これが一点です。  それから、第二点。政府は、五日アメリカベトナム民主共和国に対して五時間も空襲を続けた、そのまつ最中にどういう声明をしたか。やむを得ないアメリカの措置である、こう言うた。これも社会党の委員諸君が指摘されたとおりです。大体アメリカ海軍が自分で言うているように、トンキン湾で先に発砲したのはアメリカ軍艦である。アメリカ駆逐艦だ。マドックスが先に発砲したと自分で言うておる。先に攻撃を加えておいて、それでどうしてアメリカ自衛権の発動と言えますか。自衛権の発動というものはこんなものですか。これは政府の、外務大臣考えを聞きたい。こんなことをしておいて、どうしてやむを得ないと言うのか。自分で鉄砲を放して、やむを得ない、何がやむを得ないのか。外務大臣、これはどう考えておられるか。一方的に相手国の本土を大空襲を行なって、当然の措置と、こう政府は言うておる。こんなことがなぜ当然の措置なのか。その理由、その声明の根拠、これを答弁してもらいたい。これは余分になりますけれども、ヨーロッパ諸国も笑うております。フランスのごときは非常に失望しておる。日本の軽率な声明と見ておる。  第三点。アメリカはこの問題を自衛権問題として国連に持ち込んでおる。自分がむちゃくちゃな侵略、許すことのできない主権の侵害をやっておいて、それをごまかそうとして国連へ逃げ込もうとしておる。そもそもインドシナの平和維持については国連ではありません。一九五四年並びに一九六二年に厳然として成立したジュネーブ協定があるのです。アメリカ帝国主義はここ数年来このインドシナ一帯におけるジュネーブ協定を公然と踏みにじった。これはもう世界周知の事実なんだ。われわれはこのアメリカ帝国主義のこの国際協定のじゅうりんに対してたびたび抗議をしておる。世界の平和的人民も抗議をしておる。問題は直ちにジュネーブ協定の当事国十四カ国が会議を開いてこの黒白是非を明らかにすべきである。国連に逃げ込ますべきでない。アメリカの投票機械になり下がっておる国連、中国が代表権を持たない国連、北ベトナムも参加しておらない国連、ここに持ち込もうとする。こういうことをさせるべきじゃない。この点については穗積委員からも質問がありましたが、答弁きわめてあいまいである。外務大臣は、国連に逃げ込ませるのがよいか、ジュネーブ協定当事国十四カ国の会議に託すべきか、これははっきりと御答弁を願いたい。これが三点です。  第四点は、特に重要なことは、この無法な侵略戦争に対してアメリカの第七艦隊は横須賀から出動しておる。空母を中心として二十六隻のうちの二十四隻までが出ていっておる。ほとんど全部が出動しておる。また、沖縄、本土の基地が利用されておる。ところが、きょう外務大臣はこういう答弁をなさっておる。これはアメリカの軍の哨戒行動であるから安保条約による事前協議対象にはならぬ、事前協議対象になるのは作戦行動の場合である、こういう御答弁。作戦行動、これは正確に言うならば宣戦布告後の軍の行動です。これが作戦行動。したがって、宣戦布告もない一切の在日米軍の軍事行動はすべて協議対象になる必要がない、こういう答弁、これはきわめて重大なことじゃないか。日本アメリカの意思一つによって実際に戦争に巻き込まれるまで何にも知らされない、何をやってもこれは哨戒、何をやっても軍の移動だ、何をやっても作戦行動ではない、これが日米安保条約の正体ではないですか。この正体を私はきょう外務大臣の口から明らかにされたと思う。この点はきょうの社会党並びにわれわれの質問を通じて明らかにされる最も重大な点だと思います。これはひとつはっきりとした御答弁を願いたい。これを明らかにしないというと、安保条約というもののほんとうの正体がわからない。これが正体なんです。事前協議とか随時協議とかいうのはごまかしなんだ。こんなことをやりはしないんだ。そうすると、日本人民が知った時分にはもう戦闘行為が始まって、日本は巻き込まれてしもうておる。宣戦布告なき日本の戦争突入、これはどういうことになるのですか。ここに日米安保条約の真の正体があるとわれわれは確認してよろしいと思う。  最後にもう一つだけ。今回の事件によってますます明らかになりましたが、一切の在日米軍基地並びに在日米軍の行動はもちろん日本の主権と独立に対する重大な侵犯です。日本とアジアの平和への脅威である。それだけじゃないです。日本人民の意思にかかわりはなく、アメリカの意思だけによって自動的に戦争に巻き込まれる根源は、在日米軍、在日軍事基地、沖縄、小笠原、第七艦隊、ここにあるんです。これはもう厳然たる事実なんです。私は小さい問題をあれこれと質疑をし、討論する必要はないと思う。問題の根本はここにあると思う。ここで私は外務大臣に聞くんですが、聞いてもろくな返事はせぬだろうと思う。ほんとうにこういうことを考えて、今日こそ政府が断固としてアメリカ軍による日本基地の使用を拒否すべきだ。われわれの多年の要求です。これをしない限りは、日本人民に知らせずして日本は戦争に巻き込まれてしまうんだ。ここに重大な問題がある。その考えがつゆほどでもあるのかどうか、とことんまで日本政府アメリカと心中するのか、この点を最後にお聞きしたい。  私の質問は時間がありませんので詳しくるる述べるわけにいかない。要点はこれだけである。その一つ一つについて御答弁を願いたい。
  212. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 自分の本国から遠いところで起こってきた事件に関して、これは自衛権の行使というのはおかしいじゃないか、こういうお話でございましたが、結局自由陣営に対して全体の責任を持っておるという認識から出てまいるのであろうと私は考えております。距離の遠近にかかわらないと思います。  第二点は、五時間も空襲した、これがやむを得ざる行為であったかどうかという問題でありまするが、時間のことはつまびらかにいたしませんが、少なくとも領海外、公海において突然攻撃を受けたのでございますから、これに関連する一連の米軍の行為はやむを得ざる措置であった、かように考えております。  第三点、自衛権の行使として国連に持ち込まないで、ジュネーブ協定にあくまで立ち戻るべきであるという趣旨の御質問でございましたが、ジュネーブの協定の精神は、もちろんなお生きておるのでございますが、だいぶ時間も経過し、いろいろないきさつもありまして、これを立て直して、そして関係国と協議をするというためには相当の準備行為が必要である、かように考えます。まずさしあたりの問題としては、国連の理事会において論議せられるのが至当であろう、かように考える次第でございます。  第四番目は、宣戦の布告がなければ作戦行動はあり得ないというお話でありましたが、宣戦布告の問題があるなしにかかわらず、作戦計画に基づき作戦行動任務を持って基地を進発するということは、これは事実問題としてあり得るわけでございます。そういう問題でなくて、単なる哨戒であるとかあるいは物資の補給であるとかいう任務を帯びて基地を進発する場合には、これはおのずから作戦計画に基づく作戦行動任務を持たないのでありますから、さような場合には事前協議対象にならないという解釈をとっているわけであります。  それから、一切の禍根は基地使用にあるから、基地の使用を拒否せよという御注文でありましたが、遺憾ながら、政府といたしましては所見を異にしております。
  213. 安藤覺

    安藤委員長代理 これにて散会いたします。    午後一時四十五分散会