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1964-04-07 第46回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月七日(火曜日)    午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 臼井 莊一君    理事 安藤  覺君 理事 椎熊 三郎君    理事 正示啓次郎君 理事 高瀬  傳君    理事 古川 丈吉君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君       菊池 義郎君    鯨岡 兵輔君       佐伯 宗義君    竹内 黎一君       福井  勇君    三原 朝雄君       森下 國雄君    赤松  勇君       田原 春次君    帆足  計君       松井  誠君    山本 幸一君       川上 貫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 大平 正芳君  出席政府委員         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         大蔵事務官         (為替局長事務         代理)     鈴木 秀雄君  委員外出席者         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局次長)  中川理一郎君         専  門  員 豊田  薫君     ————————————— 四月七日  委員田原春次君辞任につき、その補欠として松  井誠君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  経済協力開発機構条約締結について承認を求  めるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 臼井莊一

    臼井委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  この際、大平外務大臣から発言を求められておりますので、これを許します。大平外務大臣
  3. 大平正芳

    大平国務大臣 先般の委員会で取り上げられました国際見本市にまいりまする北鮮の方の入国につきまして、政府部内で取り急ぎ打ち合わせをいたしました。そのことを御報告申し上げます。  北鮮との人事交流の問題は、過去におきまして日韓関係影響を及ぼしたこともございますので、政府といたしましては貿易経済関係者を含めまして北鮮との人的交流問題については特に慎重に扱わなければならぬと考えてまいっておる次第は、御承知のとおりでございます。このたびの大阪の国際見本市見学のため入国を希望しておられる北鮮貿易関係者三名の問題につきましても、非常に困難な事情があるのであるが、他方北鮮からの貿易関係者入国を望む理由も実際問題として理解し得ますので、このような観点からさらに種々検討を重ねた次第でございます。しかしながら、遺憾ながら、日韓交渉が最も微妙な段階にある現在の時点ではどうしてもこのような方の入国を認めることはできないという結論に達したのでございます。  もっとも、政府としては、現在のような状態は必ずしも自然でないと考えております。いつまでもこのままの状態を続けるべきであると思っておるわけではないのでございまして、将来貿易関係者必要限度入国につきましても相当な考慮を払うべきものであると考えております。このような心がまえの上に立ちまして、かつ、日韓関係を含む諸般の国際情勢や、これとの関係におけるわが外交上の利害得失を慎重に考慮しながら、引き続きこの問題につきましては対処してまいる所存てございます。  以上、御返事を申し上げます。
  4. 臼井莊一

  5. 山本幸一

    山本幸一委員 いまの外務大臣答弁は、答弁としてはかなり親切を尽くしておると思いますが、私どもまだいささか理解できぬのですけれども日本政府の基本的な方針としては、中国以外の共産諸国といえども政経分離方針には変わりはないのですか。
  6. 大平正芳

    大平国務大臣 たてまえといたしましては、北鮮を他の共産圏と区別しなければならぬという理由は、私はないと思うのでございます。ただ、先ほどお答え申し上げましたように日韓交渉をやっておりまして、この目安がついてからというように考えておったのでございます。ところが、この日韓交渉というのが、私どもが予想いたしておりますよりずっと難航をきわめておりまして、この妥結までというようにいままでお願いしてきたのでございますが、なかなかこれが妥結ということに至らぬために、この間対北鮮との貿易関係の調整ということが非常におくれておるということは、私率直に認めます。そこで、この問題につきましては、ちょうどいま日韓交渉が御承知のようにきわめて微妙な段階でございますので、この時点ではとお断わりしておるわけでございまして、引き続き私どもは対処、検討してまいるつもりでございます。
  7. 山本幸一

    山本幸一委員 せっかくの答弁で、くどいようですけれども、いままで私は、法務大臣からも、官房長官からも、あるいはあなたからも、この三名の貿易代表入国について、これは日韓交渉めどがついてからというお話は一ぺんも承ったことはないのです。なるほど、北朝全体の問題については、俗に言う往来の自由、もっと厳格に言えば往来保障ということばを私は使いたいのですが、そういう問題については、たびたびお会いしたときに、これは日韓問題とかなり関連があるからというお話を承っております。私どもはそれすらもいささか納得できないのですけれども、なぜなら、それはあくまでも政治的な問題でなしに純然たる人道的な立場からあの往来保障を要求しているのですから、われわれは納得しませんけれども、しかし、政府側からそのような話があったことは私は認めています。しかし、この貿易については、先般私が質問の際に大平外務大臣に申し上げたように、外務法務合同理事懇談会の席上で、これは私だけでなくお立ち会いの諸君もおられますが、はっきり法務大臣は、これは自分がいままで感じておる政治的な問題には何ら関係はないと思う、全く純然たる経済問題であり、かつ北鮮貿易が年々歳々増加しておることもこの文書でわかった、したがって、この問題については、全く別個の立場から、政治的なことを全然抜きにして前向きにひとつ努力しましょう、こういう答弁をその席上でしておるのですね。私は、一国の大臣が、非公式の理事懇談会といえども、公式の委員会理事会といえども、やはり複数の人々のおるところであまりことばを変えてはいけないと思います。したがって、私は、特にがんこを売りものにしておる法務大臣ことばは変わっていないと信じております。そうだとするならば、なぜ日韓関係があるのか、私にはどうしてもわからないんですよ。日韓が微妙な段階にある、したがってそれら等も考慮してというお話ですが、日韓の微妙な関係といっても、現に北鮮側と取引しておる。その取引上の技術的な打ち合わせ専門知識交流、そういうことは絶対必要なことなんですよ。これは私は理屈じゃないと思うんですよ。先般申し上げたように、大型の機械穗積 七郎がいわゆる商談として進む限りにおいては、その機械の特徴お互いに説明し合わなければならないだろうし、あるいは技術的な点についても指導したり指導されたりしなければならぬだろうし、そういう点からいけば、貿易を全然やっておられなければ、私はいまのあなたの御答弁はもっともだと思いますが、現にやって、幾多の制限も廃止されて、年々増加しておるのだ。そこで、さらにそれをスムーズに進めるためには、どうしてもやはり技術交流あるいは専門知識交流特徴指導等いろいろ要ると思うのです。これは別にあなたのおっしゃる微妙な日韓問題と関連がないように思うのです。これはもう一つあなた方理解してもらわなければならないと思いますよ。なるほど、いまの御答弁では、今回に限ってという御答弁です。したがって、引き続いて近い将来のことについてはさらに検討する、あなたの答弁はまことによくわかります。純然たるものであるから、本来ならばこれを入れないということは無理があるのだという御答弁もよく理解できます。しかし、もう一歩進んでもらいたい。その入国させないことは無理があるのだ、この点で抽象的にはわかりますが、私はもっと自然に考えてもらいたいと言うんですよ。現に貿易をやっておるのだから、当然技術上の専門的な問題についての打ち合わせが必要なんです。しかも、貿易関係のない人が一人でも来るなら、それはあなた方にもその点について検討する余地がございましょうが、この間リストを御披露申し上げたように、北朝鮮国際貿促書記長、それから、北朝鮮の最も代表的な商社である金剛協同商社の副社長あるいは部長、そういう専門家だけが三人来るのですから、これはひとつあなた方もっと考えてもらわなければいけないと思うのです。これは九日から開かれるのですが、場合によれば二日や三日おくれることは一向差しつかえないと思います。もう少しやはり純粋な経済的な立場からお考え願う用意があるかどうか、これはひとつこの際もう一ぺん承りたいと思います。
  8. 大平正芳

    大平国務大臣 ざっくばらんに申しまして、日中貿易の場合は、私ども国民政府との間に外交関係を持っておりますが、この関係におきまして、日中貿易自体には国民政府も反対でない。ただ、これがプラント類みたいな長期の延べ払いを含むと、援助になるかならないかで、双方の見解が必ずしも一致していないといううらみはございますけれども貿易そのもので現在までやってまいりましたことに対して、基本的に先方は理解しているわけですね。今度、いまあなたが言われた北鮮との間に貿易があるじゃないか、私は、そのとおり、貿易をやっておる以上、貿易関係者入国できないなんということはきわめて不自然だと思うのでございます。そこで、いま日中関係においてある貿易関係のような関係が、日本北鮮の間にできて、これはふしぎでないわけでございます。たてまえとしては私はそう思うのでございますが、今度あなたがいま提起されたお三方の入国ということになりますと、これはその三名の方の入国だけにとどまりません。たてまえの問題といたしまして、これはやはり貿易関係者入国ということを将来ずっと保障してまいらなければならぬわけでございます。言いかえれば、北鮮日本との間の人的交流の問題について、一つの答案を今度出さなければならぬことになるわけでございます。いまの日韓関係というのは、いま国府と日本との間の関係のようなところまでまだ熟成していませんで、今後ずっと貿易関係者入国というものについて必要な方々の入国を認めてまいらなければならぬわけになりまするから、それを受けとめてまいるような了解までまだなっていないのでございます。理屈の問題でなくて、現実日韓関係のやり方というのはまだそこまでいっていません。法務省の問題というよりは、むしろこれは私どもの問題でございまして、私どもとしては、この目安は何とかつけたいということで、それまでともかくこういう問題をお互いに了解し合うように早くなりたいということで、日韓関係交渉を進めておるわけでございます。しかし、いつまでたってもできないのに、いつまでも待たすつもりかという疑問が起こると思うのでございます。そこが問題なんでございまして、その点につきまして、私どもとしては慎重にいま検討しておるんだというのが、いま私の心境なんでございまして、入管の問題と申しますよりは、私、外務省の立場としてそのめどをつけたらいいかという点について、非常に苦慮しておる段階でございます。
  9. 山本幸一

    山本幸一委員 大平さんの御答弁でかなり尽くされておると思うのですが、今度の三名の入国を許せば、当然貿易に関しては次に受けとめる用意を持たなきゃならぬ、全くそのとおりだと思うのです。私もまたその立場で御質問申し上げている。それはほかのことには触れておりません。また、ほかのことに触れようとは思わぬし、あくまでもケース別にぼくはものを申し上げておるつもりだから、したがって、三名の貿易代表が入れば、これはおのずから貿易に関してはやはり交流ができるようにしてもらいたい、こういう意味で先般来から申し上げているんだから、これはひとつぜひあなたもう一歩、——あなたと私の距離はあまり遠くありませんよ。もう一歩だから、そこはひとつくふうしなきゃいかぬ。単に日韓問題だけにこれをあなた自身がからませて、実際韓国がそれじゃ三名の貿易代表が入ることを本気になって問題にして、それが日韓会談に重大な影響があるかというと、私は、どう考えても、私が自民党立場から考えても、考えられぬことです。したがって、これはひとつ私はあなたに再検討を促したいと思うわけです。これは、あなた、きょうはできませんというだけの答弁でなしに、あなたほどの自民党の中で進歩的だと言われている人だから、せめてものを進歩的にもう少し考えてもらいたい。法務大臣反共主義のがりがりのわからず屋では話にならないと思う。あなたぐらいの人がおれば、法務大臣のそういう誤った考え方を説得する力を持たなければだめですよ。あなたの将来から考えたって、そのくらいの腹がなければ……。そういう点で、まだ日にちがありますから、ひとつぜひ私は再検討してもらいたいということ。  それから、もう一つ、私はこれ以上申し上げようと思いませんが、この間あなたに文句を言ったように、少なくとも私どもはこういう問題をできるだけこういう席上で議論することを避けようという努力をして、そして、いまあなたが答弁せられたような考え方政府にあるであろうという予想のもとに、かなり手続を積み重ねてきたつもりなんです。そういうふうだからといって、相手がそういうふうにおとなしく出ているからこれはもう返事はせぬでもいいという、そういう態度は私はけしからぬと思うのですよ。私は、だから、この問題はこの問題で本日のところ打ち切りますよ。しかし、まだ運営上の問題が残っていると思うのですよ。運営上の問題について、私が先般申し上げたように、理事合同懇談会を持ったのですから。それは非公式といえば形式的には非公式でしょう。しかし、実質的には非公式じゃないですよ。両委員長立ち会いで、外務委員長の座長で、しかもその場には法務大臣並びに関係者出席願って、そこで話をしたのですから、これはやはり国会運営一つですよ。そういうものがあなた方の態度によって否定されたという形になりますと、私に言わせると運営上の問題が残っているわけです。そういう態度ならば、私どもも今後国会全体の運営から言って、その態度に応ずる態度で私どもは今後処置しなければならぬ。この問題が残っているのです。これをだから明らかにしてもらいたい。これはひとつぜひはっきりしてもらわぬと、私はこの問題については引けないですよ。かりにいまの御答弁貿易代表入国云々の問題はきょうはもう触れぬにしても、その運営の問題については私は納得しがたいから、これはひとつ明確にしてもらいたいと思うのです。
  10. 大平正芳

    大平国務大臣 仰せのとおりでございまして、この問題は外務法務委員長立ち会いの上で、両委員会政府側との懇談という形で持ち出された問題でございまするから、したがって、政府側としても、そういうチャンネルを通してでないとお答えできないと思いまして、それで、私といたしましては、土曜日、外務省内でお打ち合わせをして、法務省と御協議いたしたわけでございます。法務委員長には御連絡がついたのでございますけれども外務委員長の御連絡がつきませんでして、法務大臣といたしましてはあなたがおっしゃったとおり、これは両委員長立ち会いの上なんだから、両委員長立ち会いの上で御返事すべきだと思うから、そういう手順をとろうということでございます。そういう手順をとって御返事申し上げ、御懇談申し上げることは、私は残っておると思っております。ただ、あなたも御指摘のように、九日に迫った問題でもございますから、そういう手順を踏んでいる間に時間がたちますと非常に恐縮でございますから、したがって、あなたなりあるいは関係者なりにはとにかく急いで、正式な返事というわけじゃございませんで、その内意はお伝えしておかぬといかない、そういうことを私としてやるように私の部下に命じたわけでございます。したがって、あなたが言われた法務外務委員会を通じての場というものは、まだ残っていると私は思っております。
  11. 山本幸一

    山本幸一委員 それは、あなたは事情を知らないのだ。そういう場を設けて、私が先般三日前にあなたに御質問をする前々日法務委員会へ行きまして、大臣がおりましたから、秘書官に向かって、国際見本市委員会、そこの発行した招待状の写し、それから、このような招待状は間違いありませんという証明書、こういうものをちゃんと示して、そして、これは四月九日でございますから日にちがありません、至急返事をもらわなければいけないということまで私は言っているのですよ。だから、あなたはいま思いつき答弁されただけで、まあひとつ山本理解してもらおうというようなつもりで答弁されただけですが、私のほうはそういう手続まで踏んでいるのです。それに、三日前に私が質問する日まで何らの返事がないということです。だから、両委員長立ち会いだから両委員長立ち会いの場をつくってやるというような、そんな形式論はあとから思いつきの話ですよ。私は、あなたはその場におられなかったから、あなたをこれ以上責めようとは思いませんが、ぜひ委員長に要求したいことは、きょうでもいい、あるいはきょうでいけなければ、次の定例日があさってかあしたか知らぬが、その席に法務大臣に来てもらって、この問題で私と法務大臣とが少しここで質疑応答をして決着をつけるまでは、この運営の問題だけは留保しますよ。それから、これが決着つかなければ、失礼ですけれども、私としては、今後外務委員会のいろいろな審議について協力することはできません。国会全般運営についても協力することは不可能です。相手をごまかして、のうのうと出席もしないようなばかな法務大臣があるものですか。そんな法務大臣は許すわけにいかぬですよ。したがって、私は委員長に要求します。必ず法務大臣出席してもらいたい。そして法務大臣が明確に自分の手落ちであったことを陳謝するか、それとも何らかの処置をとるか、それまで私はこの問題は留保します。
  12. 臼井莊一

    臼井委員長 ただいまの山本委員の御要求につきましては、後刻理事会ではかって善処いたします。  関連質問を許します。帆足計君。
  13. 帆足計

    帆足委員 ただいま山本委員から御要請がありましたことは、私ども聞いておりまして、情理兼ね備わる要請であるという感を受けました。外務大臣はただいま御丁重に、そしてまたやや前向きの御答弁をくださいましたことも了といたしますし、また、実際問題として論理を離れて多少の困難な点があるという事情は、現実の問題としてわれわれにも理解はできます。しかし、それはあまりにもその論理が離れ過ぎているというところに問題があると私は思う。一時は不倶戴天の敵といわれたソ連アメリカの間にすら今日は平和共存ということで、これが世界論理だけでなくて倫理になって、それがすでに国際連合の中心の最高の課題になっておる。そして、ソ連アメリカとの間にすら、経済交流文化協定まで行なわれている。また、自由とは何ぞや、自由、平等、博愛、これは有名なスローガンですが、すなわち、文化交流貿易の自由、人事の自由、これが自由世界の魂である。しかるに、自由世界を擁護すると言い、自由世界の寵児であるといわれている南朝鮮なり台湾なりが常に自由通商に反対しているということは、私はまことに遺憾である。自分の国の利害イデオロギーのために民族相争い、国境ができ、そして、それと争っておるという理由をもって、他の自由な国がその国と貿易をすることに対して障害を唱えるという心がけはファッショの思想であって、それは自由主義思想じゃない。しかも、奇怪なことには、台湾日本貿易をしても、中華人民共和国は何ら異議を唱えてもいないし、韓国日本貿易をしても、人事交流をしても、あるいは文化交流をしても、そういう平和のことであるならば、北朝鮮、すなわち朝鮮民主主義人民共和国はそういうことには一言の障害も言っていない。全体主義といわれ、そして共産主義といわれ、いわゆる自由世界から攻撃されているソ連なり、または中国なり、または朝鮮民主主義人民共和国が逆に非常に自由であって、南朝鮮の難民を救済するならどうぞ救済してください、人事交流貿易交流文化交流が平和的に行なわれるならば、そういうことは文句を言うべきことでない、そういう態度を逆に社会主義圏がとっておって、そうして、あなたたちが教育、補導というか、親善関係にあるはずの台湾韓国が、平和の貿易をしようとするのに、やきもちの度が過ぎてそれに文句を唱え、その文句にわれわれが屈してしまうことは、これは論理が許さないと思う。日本貿易の国ですから、貿易なくしてやっていけませんし、人類は、地上におけるいかなる国と貿易をしようと文化交流しようと、これは人間の基本的権利です。ましてや、国際連合に入っている国としては、それは当然国連憲章に規定しておるところであって、イデオロギー民族またはその他の障害によって差別さるべきでない。これは国連憲章に規定してある点であるし、日本の憲法が規定しておる点です。他の理由があるならばともなく、韓国の言い分に顧慮してというようなことであるならば、実際問題として外務大臣がお困りの事情はわかりますけれども、私は論理の許さないところであると思う。このことを外務委員会としての見識において明確にして進む必要がある。それゆえに、法務委員長なり外務委員長なりがこの問題についてはいつも好意的態度をとられて、そうして、こういう問題が起こりましたときには法務大臣なり外務大臣が処断しやすいような雰囲気と環境をつくることにいつも御協力くださるように常にわが委員会なり法務委員会がやっているのはそのためだと私は思うのです。御苦労のほどはわかりますけれども、第一は、人道の仕事においては、これはほとんど問題はないでしょう。第二は、経済の面において若干現実上の問題があるとするならば、ひとつ前向きの姿勢で、いまの山本委員の言を単に野党の攻撃とお考えくださらずに、当然のこととして御研究願いたい。特に、北朝鮮日本韓国とが貿易をすることに対して何も文句を言わないのに、韓国側のほうが自由世界と称しながらファッショ同然の繰り言を繰り返しておるということは、韓国のために、みずから卑しめて人これを卑しむということになりはしないかと教えさとすくらいの態度をもって臨んでいただきたい。
  14. 臼井莊一

    臼井委員長 発言者に申し上げますが、他の質問がございますから……。
  15. 帆足計

    帆足委員 以上、外務委員会の権威において論理を明らかにしておく必要がありましたから申し上げたわけでありまして、外務大臣は前向きの姿勢で臨まれて、ただ、現実問題としての処理に苦慮なさっておられるということであるならば、そのタイミングについてはわれわれは多少理解もしますが、今後、山本委員から提案されましたような手続をとっていただきたい、こう思う次第です。
  16. 大平正芳

    大平国務大臣 本日の外務委員会でこれ以上問題にならないから私どもネコババをきめ込むなんて、全然考えておりません。私どもといたしましては、この問題が提起されたときと同じ熱意をもちまして引き続き検討さしていただきたいと思っております。      ————◇—————
  17. 臼井莊一

    臼井委員長 経済協力開発機構条約締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。質疑の通告がありますので、これを許します。  川上貫一君。
  18. 川上貫一

    川上委員 私はOECD承認の問題について特に外務大臣にお聞きしたいと思うのですが、これは、ちょっと一見して経済的な内容を持った条約のように見えますけれども、相当根深い意味を持っておるものだと思うんです。  そこで、第一に、このOECDNATOとの関係はどういう関係にあるのか、これを大臣からお聞きしたい。
  19. 大平正芳

    大平国務大臣 NATOと全然関係ございません。
  20. 川上貫一

    川上委員 NATOとは形式的にも実質的にも関係ありませんか。
  21. 大平正芳

    大平国務大臣 さよう心得ています。
  22. 川上貫一

    川上委員 それはちょっと違うのじゃないですか。一九五九年の十二月十五日に、NATOは、秘密理事会で、ハーター国務長官の提案で、平和と安全の十カ年計画というものについての声明を出しておる。その後、御承知のように四カ国の会議があったのでありますが、その十二月の二十二日に、NATO理事会は、OECDの設立がNATO方針に従ったものであると、これを公式に確認しておるのですが、これはどういうことですか。
  23. 大平正芳

    大平国務大臣 私どもOECD条約OECD条約として問題にいたしておるわけでございます。また、OECDに加盟しておる各国は、それぞれ各国の権威において加盟いたしておるわけでございまして、OECD自体とNATOとの関係という御質問に対しましては、全然関係はないと言わざるを得ないと思います。
  24. 川上貫一

    川上委員 私がいま質問した一九五九年十二月二十二日のNATO理事会のこの確認、これはどうなんですか。認めますか、認めませんか。
  25. 大平正芳

    大平国務大臣 わが国はNATOに加盟いたしておりませんので、NATOでどのようにいたしましたか、私は承知いたしておりません。私どもといたしましては、OECD条約OECD条約として問題にいたしておるわけでございます。
  26. 川上貫一

    川上委員 そんなことを聞いておるのじゃない。私が読んだ、OECDの設立がNATO方針に従ったものである、——もっと詳しく言うてもよろしいが、私は時間がないから単直に言うわけです。こういう公式な確認を理事会がしておりますが、この事実を認めますか、こういうことを聞いておる。
  27. 大平正芳

    大平国務大臣 私が申し上げておるのは、わが国はNATOに加盟しておりませんから、NATOでどのようにされるか、別に関知するところではないわけでございます。また、OECDに加盟し同時にNATOのメンバーである国も、OECD条約にはそれぞれのお立場で入られておるわけでございまして、OECD条約そのものを問題にして、その是非を問うということが正しい態度だと思うのでございます。NATOでどういう決議をしたか、そういうことはOECDとは関係ございません。
  28. 川上貫一

    川上委員 どうも大平さんの答弁はおかしい。何も、日本NATOに加盟しておるからこの確認に責任があるかどうか、そんなことを聞いておるのじゃない。OECDというものはNATO方針に従ってつくったものである、こういうことをNATO理事会は確認しておるが、これを認めるかどうか、これを聞いておる。これは大事なことなんです。このOECDというものはNATO方針に従うたものだと理事会で言うておるのです。これを今度国会承認せい、こういう提案が出ておる。そこで、やはりわれわれとしてはこの関係を明らかにしなければいけない。NATOに加盟しておるしておらぬという問題ではないのです。だから、ここに公式に確認したことに責任を持ちますかどうかというようなことを聞いておるのじゃないのです。こういう確認をしておりますが、これがOECDなのですが、これでもOECDNATOとは関係がないと言われるのですか、これを聞いておるのです。
  29. 大平正芳

    大平国務大臣 それでもOECDNATO関係がないと思います。
  30. 川上貫一

    川上委員 NATO理事会が、関係があると言うておるじゃないですか。これを私は聞いておるのです。NATO理事会それ自身が、NATO方針に従ってこしらえたものだと言うておる。これなんです。
  31. 大平正芳

    大平国務大臣 NATOのことには私関知いたしません。
  32. 川上貫一

    川上委員 どうもコンニャク問答にはちょっと困ったものだと思います。これは大事なOECDの本質について私は聞いておるのです。一体、このOECDというものはこういう経過をとっておるのでしょう。NATO経済版、これは御承知のようにOEECにあった。このOEECとEFTAの対立が起こった。その結果、アメリカは困り果てて、この割れ目をつくろおう、このために、わざわざ国連の外にOECDというものをつくったのでしょう。この事実を認めますか、どうですか。
  33. 中山賀博

    ○中山政府委員 お答え申し上げます。  NATOOECD関係だと思いますが、NATOOECDとは関係がないということを一番端的に示すものは、OECDの加盟国の中にスイスとかスウェーデンとかオーストリアのような中立国がございます。これらの国は、もしもNATOとの関係がありますれば、決してOECDに入ることはないと思われるわけでございます。  それから、この成立の経緯でございますが、確かに、ヨーロッパにおきまして、一九五八年にEECが発足いたしまして、そうしてかなり目ざましい発展を遂げ、これに対抗してEFTAができる、そういうときに、一九六〇年一月に、アメリカ、カナダを入れまして大西洋会議がございまして、一九六〇年七月ごろ準備委員会ができたわけでございます。しかし、もちろん大きな意味ではヨーロッパとアメリカの橋渡しをするという意味を持っておりますけれども、一義的には経済的な問題でございまして、その点は、いま申し上げましたように、中立国が加盟して経済的な利益の伸長をはかるということに努力しておる点を見ても明らかだと思います。
  34. 川上貫一

    川上委員 いまエールとかスペインとかがNATOには入っておらぬとかいうようなことは、問題にならぬですな。エール、スペイン、どっちにもNATOの軍事基地がある。ちゃんときまっておる。このOECDに加わっておるものは、NATOの軍事基地があるか、もしくはEFTAに入っておるか、これだけ以外には入っておらない。それに今度カナダと日本アメリカが引っぱり込もうとしておる。また、あなた方はこれに喜んで入り込もうとしておる。これはNATOに入るのじゃありませんけれどもNATO経済版であるこれに入ろうとしておる。本質は同じものなんです。軍事的な面はNATOです。これの経済版はOEECであったが、これを変えてOECDにしたのです。これを私は聞いておるのです。この意味NATOとどういう関係があるかということを聞いておるので、これはどうなんですか、関係あるじゃないですか、全然関係がないと思いますか。実質的にこれは関係がある、こういうものじゃないですか、このOECDというものは。ここをはっきりさせませんと、この条約の本質がわからない。この点はどうですか。
  35. 中山賀博

    ○中山政府委員 私の申し方が悪かったかと思いますが、いまあげました国の名前は、スイス、スウェーデン、オーストリア、いずれも中立国でございまして、第三国の軍隊は入っておりません。
  36. 川上貫一

    川上委員 それはEFTAです。私は言うているじゃないですか。NATOの軍事基地のあるところか、EFTAに加盟している国か、これ以外は入っておらないじゃないかと言っている。これはどうですか。
  37. 大平正芳

    大平国務大臣 川上先生のおっしゃるのは、OECDのメンバーとNATOのメンバーは相当重複いたしております。そういう意味において、そういう事実上の関係はあると思います。私が申し上げておるのは、しかしながら、OECD条約というのはNATO条約機構とは全然別個の問題でございます。これは一つのクラブでございまして、全会一致で運営してまいるわけでございまして、いやなことはいやとして留保できるわけでございます。強制されるわけでも決してないわけでございます。われわれは、国会から与えられた権能の中で、このOECDのクラブに入りましてクラブ活動をやろう、もしそれがいままで与えられた権能以上にのぼる場合には、国会にまた御承認を仰ぐわけでございまして、あなたが御心配されるような懸念がないような仕組みにちゃんとなっておるわけでございます。
  38. 川上貫一

    川上委員 えろう心配しているように外務大臣言われますが、そうではなくて、この条約の本質を聞いておるのです。あなたはこれをごまかそうごまかそうとしておる。このOECDというのは、表向きただ経済関係条約のように見えるけれども、その底を流れておるものはそれだけじゃないではないかということを聞いておるのであります。それだから、NATO理事会で、OECDNATOの精神、NATO方針そのものを基礎にしているものである、こう言うておる。この関係をどうお考えになるかということを聞いておるのであって、この点については外務大臣お答えにならない。それは形式的にNATOOECDは違いますよ。そんなことを聞いておるのじゃないのです。その実際の内部関係において、NATO方針に従ったOECDであるか、NATO理事会がこう決議しておるじゃないか、これをどうお考えになりますかということを私は聞いている。このことによって、OECDというものは単なる経済問題を内容とするだけの条約じゃない、実質的にはNATOの精神に加わるものだ、これを聞いている。特にアメリカが、OEECの亀裂が生じて以来、NATO経済版として今度のOECDを持ち出した。これにカナダと日本を引っぱり込もうとしておる。それにあなた方は入ろうとしているのです。これは実質上NATOの根本精神に従ってここへ入ろうとしておるのじゃないか、また、入ろうとしておるのだ、これを聞いておるのです。わかりますか。
  39. 大平正芳

    大平国務大臣 そうじゃないと私は申し上げておるわけです。もしそうであるというなら、あなたのほうから立証していただきたいと思うのです。OECDの機関意思が決定されて、それがNATO的性格をどういうふうに持っておるのか、これはどうだという点を究明していただかなければ、頭からこれはNATO経済版だなんと言うて、何の権威をもってあなたは主張されるのですか。それだけの立証をする責任があなたのほうにあると思います。
  40. 川上貫一

    川上委員 大臣、何を言うておるのですか。あなたは私の最初の質問に答えぬじゃないですか。NATO理事会がこのようなことを確認しておるが、これはどうかと聞いておるのです。何が証拠で言っているかどうかの問題じゃないんだ。私のほうは問題を出しておるんだ。NATO理事会それ自身が確認しているんだ、公式に。OECDNATOの精神に従うものだと言うておるのですよ。何もこっちがいいころかげんのことを言うておるんじゃないですよ。どうしてあなた方はそんなことを言うのですか。
  41. 大平正芳

    大平国務大臣 それでは、OECD条約のどこにNATOの決議がうたわれておるのでありますか、それをあなたからお示し願いたいと思います。
  42. 川上貫一

    川上委員 OECD条約のどこにうたわれておるか、そんなことじゃない。私ははっきり聞いておるんだ。時間が惜しいからこれだけで押し問答しませんが、こういう答弁をなさっては違うと思う。国の政治というものは、国会答弁で言いのがれができさえすればいい問題じゃないのです。私の言うておるのは、このOECDの加盟は、表面上、形式上、経済的な内容を持った条約加盟だという形をとっておるけれども、その実質はそうじゃないんだ、NATO理事会がこうちゃんと言うておる、これを質問しておるのです。これはこの精神に入ろうとしておるんだ、こういうことを私は質問しておるんだが、外務大臣は五十分までですか。——外務大臣の時間がありませんから、この問題はこれ以上言うてもとてもらちがあかぬ。あかぬが、私が質問しましたことは、いいころかげんなあげ足を取りおるんじゃないです。この条約の本質を聞いておるのです。これに政府は答えなさらぬ。これを記録にとどめておきます。  その次に、この条約日本が加盟する前の決議、決定、勧告は二百三十二件だと思う。その後十四件程度があると思うので、合計二百四十六件ではないか。そのうちで、検討を要するもの、適用除外してくれと言うたもの、これが六十二件ある。そうすると、差し引き百八十四件ある。これは実質上加盟国にどういう拘束力があるのですか。
  43. 中山賀博

    ○中山政府委員 OECDのアクトは、合計で二百四十六でございまして、受諾したものは百七十七でございます。注釈つき受諾が八、適用外が十七、後日検討を約するものが四十三ございます。そこで、このアクトの内容はいろいろ多岐多様にわたっておりまして、一種の決定のようなかっこうをとっておるものもあれば、単なる勧告のものもございます。いずれにいたしましても、わが国としては法令の範囲内で適用していくというたてまえでございます。
  44. 川上貫一

    川上委員 どういう形で拘束力があるかということを聞いておる。
  45. 中山賀博

    ○中山政府委員 よく、言われることでございますが、OECDは一種のクラブでございまして、クラブの中の規則は政府といたしましては法令の範囲内でこれを実行できるものは実行するというたてまえでございます。
  46. 川上貫一

    川上委員 法令の範囲で実行できるものは実行する、これは条約に書いてありますから、それはわかるのですが、決議、決定、勧告の中で、法令をつくり変えなければならぬでもないというものもあるはずなんだ。その拘束力はどういうものかと聞いておる。
  47. 中山賀博

    ○中山政府委員 いま申し上げますように、この決議、勧告の中には、たとえばヨーロッパの国がアメリカの旅行者をもう少し盛んにヨーロッパに来させようというようなものもございますし、それから、もっとはっきりしたかっこうで申し合わせをしておるものもございます。したがって、法令の範囲内ということは、つまり、もし法令にきめてないことという御趣旨ならば、政府としてはできるだけその決定の方向でやっていきたいということだと思います。
  48. 川上貫一

    川上委員 そう聞いておるのじゃないのです。その答弁は非常に困りますね。条約の条文によって、拘束力のある決定をすることができる、こうなっておるのですが、そうでない勧告や決議もあるのです。これは実質的にどういう拘束力を持つかということを聞いておるのです。法文的に聞いておるのじゃない。実質的にいかなる拘束力を持つか、これを聞いておるのです。
  49. 中山賀博

    ○中山政府委員 先ほど申し上げましたように、条件つきで受諾したもの、あるいは適用外としたもの等もございますし、あるいはまた、後になってよく検討してこの適用するか適用しないかをきめたものもございますが、とにかく、百七十七項目につきましては、はっきり受諾をしておるわけでございます。したがって、これを守っていくということだと思います。
  50. 川上貫一

    川上委員 わかりました。これを守るという義務がある。そうすると、今後検討を要するもの、除外してもらいたいと言うたもの、それを残して、たくさんの決議、決定、勧告を認めて加盟する、それは守る義務があるというのですが、その内容を原文のままでここへ提出できますか。
  51. 中山賀博

    ○中山政府委員 OECDのアクトにつきましては、一応非公開ということになっております。というのは、内容が機密にわたるということではなくて、個々の内容を発表しますと、OECDはもともとが非常に自由な討議の場でございまして、自由な討議を妨げるということで、たとえば一つのアクトがきまりましたときには、これをどういうかっこうで発表するかということをそのつどきめることになっております。したがって、もしそれらのアクトの中で、全体の項目はすでに国会のほうに提出してございますので、その中で大体これはどういうことを言っておるのか、どういう内容のものかということがお尋ねがあれば、十分御説明することができると思います。
  52. 川上貫一

    川上委員 尋ねて聞きたいというのではない。外務大臣おられますが、原文のまま聞きたいのです。出ておるのは項目と要綱だけ。これは国会承認せいというのでしょう。承認しようがすまいが、どんなことの内容に加盟しよるのかわからない。これを全部明らかに聞かないで、承認・不承認の結論が出ますか。一体、何でもかんでもこれを承認して政府に白紙委任せいというのですか。この内容が明らかにならなければ、第一審議ができないじゃないか。これに賛成してよいか賛成できないのか、審議不可能だ。これは出しますか出しませんか。
  53. 大平正芳

    大平国務大臣 それは御参考までに国会に御提出いたしているわけでございます。必要に応じまして、御不審の点がございますれば幾らでも御説明いたします。
  54. 川上貫一

    川上委員 ここで説明してもらいたいと言っているのではない。これは条約ですから、これに加盟して条約に調印した以上は、国民は責任を負わなければならぬ。これをかわって国会承認するのです。どういう内容のものじゃったかわけもわからぬのに、どうして審議できるのです。審議できないじゃないですか。三百何十何件のものを認めて入ると言う。項目はわかる、聞いたら説明してやろう、しかし、中身はわからぬ、非公開だ、これは言われぬ、それじゃこれがよいのか悪いのかどうして審議するのですか。国会は審議できないじゃないですか。
  55. 大平正芳

    大平国務大臣 御審議の御参考のために出してあるわけでございまして、御不審の点がございますれば御説明いたします。
  56. 川上貫一

    川上委員 文書で絶対出せないというのですか、原文そのまま。要綱と項目じゃだめなんです。それじゃわからぬ、具体的にどういう決定があるのか、どういう決議があるのか、これが明らかにならなければ、私の言うているのは賛否の審議ができないと言うのです。わけのわからぬものを国会はどうするのです。
  57. 大平正芳

    大平国務大臣 私の考えでは、その百七十七というものを受諾いたしましても、国会から新しく政府が権能をちょうだいいたさなければ受諾できないという性質のものではない。既往におきまして国会から与えられた政府の権能の中で処理できる性質のものであるという見解でございます。しかしながら、この条約を御審議いただく場合に、どういう内容のものかという点、コードはどういう内容のものかという点につきましての御参考として国会に御提出申し上げることが適当だろうと思いまして出したわけでございます。先般の委員会でも社会党の方々からもお話がございまして、その項目をごらんいただきまして、そのうちで特に御指摘いただくものにつきましては、何さま大部なものでございますから、これが必要だと申されるものにつきましては御説明申し上げるようにいたしているわけでございます。決して包み隠しするつもりはございません。
  58. 川上貫一

    川上委員 これは、外務大臣、重要な問題です。国民は義務を負う。何を決定されたか、決議されたかわからない。  第一の質問は、中身が正式に言えない、こういう条約が一体ほかにありますか。  それから、一九六二年の秋に、経済政策委員会の第四作業部会の物価安定の諸政策という報告を第二回閣僚理事会に出しているはずです。これは賃金抑制の報告です。これは一体どう取り扱われておりますか。こういう問題は国内法を改正しなければならぬ問題ではない。いま政府答弁によると、決議、決定、勧告はこれを守る義務があると言うている。ここにたとえばこの一九六二年の経済政策委員会の第四作業部会、これの理事会決定があるとすれば、これは賃金抑制の決定なんです。これは何も国内法をつつく必要はない。しかも、一方においては、義務がある、こう言っておる。これは具体的にどうなりましたか。これは一つの例なんです。こういうものはわからない、どないことになったんやら言わないというんだから、この言えないところ、ここだけを私は聞いておる。国民はまるでつんぼさじきなんだ。それで、実際においては、国民の生活、日本経済に、義務を負うておるのですから、大きい影響を及ぼすのです。それを白紙委任せいという。この条約はお前ら国民には言わぬという。当局がやってしまう。中身は何ですか、それは言えないのだ、原則として非公開だ、こう言う。これに承認をせいというが、承認できますか。これは何かわけがわからぬ。  それですから、とりあえず私は、こういうような条約がほかの条約に何かあるかというのが一つです。いま一つは、経済政策委員会の第四作業部会の物価安定の諸政策、これが理事会でどうなったか、それを伺いたい。
  59. 臼井莊一

    臼井委員長 ちょっと発言者に申し上げますが、大臣の次の時間がまいりましたので、残余の質問は事務当局で答弁させますから、よろしく。
  60. 中山賀博

    ○中山政府委員 ただいま川上先生の御指摘の価格安定の諸政策という文書は、すでに公刊されております。それから。OECDの重要な文書はほとんどすべてコミュニケのかっこうで公表されております。ただ一つ申し上げたいのは、たとえば非常にこまかい規定がありまして、「一九六一年度についての職員積立基金の貸借勘定及び収支決算の承認に関する理事会の決定」だとか、あるいは「予算の暫定的配賦を承認する理事会の決定」、「OECD地区への近東のSAT−一タイプ口蹄病の侵入の防止に関する理事会の決議」等、非常に重要なものと、われわれとしてはそう緊急に必要がないものもございますが、重要なものにつきましてはコミュニケのかっこうで全部公表されております。
  61. 川上貫一

    川上委員 この価格安定の諸政策という報告、これはともかくも第二回の閣僚理事会に提出したのですが、閣僚理事会でどうなったのですか。
  62. 中山賀博

    ○中山政府委員 閣僚理事会ではこれを了承して公表いたしました。
  63. 川上貫一

    川上委員 その公表したのは資料に出ていますか。
  64. 中山賀博

    ○中山政府委員 手元にございますけれども、一部くらいしかございませんので、もし御希望ならばお見せしてもよろしいと思います。
  65. 川上貫一

    川上委員 それは出せるのですか。
  66. 中山賀博

    ○中山政府委員 公表されております。むしろ公刊されておるものでございます。
  67. 川上貫一

    川上委員 公刊されておらぬのに政府が入っておる決議、決定、勧告、たくさんあるでしょう。
  68. 中山賀博

    ○中山政府委員 重要なものはほとんど公刊されております。公表されております。
  69. 川上貫一

    川上委員 そんなことを聞いているのじゃない。重要なものであろうが重要なものでなかろうが、あなたは重要なものだとおっしゃるけれども、われわれは、重要か重要でないか、ものを見なければわからない。そこで、白紙委任せいというのかと言うのです。この条約は、これでは困るということを言うておる。重要である重要でないの選別は議会にさしてもらわなければ、承認できぬじゃないですか。それだから、全部の、重要非重要を問わず、決定、決議、勧告はここに出せるか出せぬかと言うておる。これを念を押しておる。絶対出せぬというのですか。はっきりしてください。もし絶対出せないというなら、審議できない。どうしても審議するのですか。いい悪いは何を基準に決定するのですか。あなた方の言うことを信用しさえすればいいのですか。こういう条約を国民に押しつけられて、国会ではめくらめっぽうにこれを承認する、あとは当局が白紙委任で何でもやってのける、必要なものは言うてやろう、ぐあいの悪いものは言わない、こういう条約は、ここを明らかにしてもらわなければ、われわれは審議できないということを言うておるんだ。
  70. 中山賀博

    ○中山政府委員 そういう趣旨から、実はOECDの機構の文書一覧表をつくりまして、国会に提出さしていただいたわけでございます。そこで、先ほど申し上げましたように、たとえば、機構の事務総長を任命する理事会の決議だとか、あるいは執行委員会に関する理事会の決議等々、一応ごらんいただければ、重要なものと重要でないものとがわかると思います。しかし、それもわからない場合もございますかもしれませんけれども、したがって、われわれといたしましては、重要と思われるものにつきましては、多くのものはコミュニケのかっこうで公表されておりますし、それからまた、 これはちょっとボーダーラインでどういうことかとおっしゃれば、内容について十分御説明する用意はございます。
  71. 川上貫一

    川上委員 ちょっと質問に答えられておらぬのですよ。重要なものは出してあるとおっしゃるが、重要か重要でないか、われわれにはわからぬと言う。出してないもので重要なものがあるかないかわからぬと言う。あなたのほうではないのだとおっしゃるけれども、それはわからぬ。それだから、私の質問しておるのは、あなたのおっしゃる重要・非重要、これにかかわりなく、全部の原文をここに出せますか出せませんかということを聞いておる。出せるなら出せる、出せないなら出せませんと言ってもらえればいいのだ。
  72. 中山賀博

    ○中山政府委員 くどいようでございますけれどもOECDの文書についてはこういうものがあるという一覧表を差し上げてありまして、その中を見ていただければ大体わかりますので、もし御希望ならば、どの文書でも御説明申し上げたいと思います。ただ、全部ということになりますと、きわめて広範なものになりますし、技術的見地から見ても、もしできれば御勘弁願いたいと思います。
  73. 川上貫一

    川上委員 あいまいで困るのですよ。広範なものがあるというなら、技術的な問題ですよ。これは原則非公開でしょうが。そんなら技術的に解決したら全部出せるのですか。ここを聞いておるのですよ。それから、必要があったら見なさいとおっしゃいますけれども、そんなこと言うておるのじゃない。この外務委員会の審議の過程で全部が出せますか、それは出せるのだけれども技術上なかなか困るとおっしゃるのか、原則上出せないとおっしゃるのか、これをはっきりしてもらいたい。
  74. 中山賀博

    ○中山政府委員 この文書の中に秘密はございません。ですから、御要求があれば出します。ただ、OECDの内部の規則で、多くのものはすでにコミュニケのかっこうで発表されておりますけれども、全文を、原文をそのまま出さないで、一応趣旨を説明するということにお互いにしようじゃないか、ということは、将来ともこの内部で会議をするときに、それのほうが肩が張らないで心やすく話せるという趣旨から出ておると思います。しかし、いずれにいたしましても、秘密はございません。また、御要求があれば出します。   〔「了解」と呼ぶ者あり〕
  75. 川上貫一

    川上委員 少しも了解しないです。秘密のものがあるとおっしゃったが、秘密のものがあるから公開できない、(「秘密のものはないと言っておるのだよ」と呼ぶ者あり)——政府当局が答えるので、君が答えるべきではないのだ。さきに政府のほうでは、決議、決定、勧告は、実質上守らなきゃならぬ義務があるとおっしゃった。しかし、秘密のものがあるから、またそのほかもあるから全部言えないとおっしゃる。それじゃ国民はつんぼさじきですかということを聞いておるのです、さらに、こういうような条約がほかに例がありますかということも聞いております。これもお答えにならぬ。これは重要な問題です。どうなんですか。
  76. 中山賀博

    ○中山政府委員 先ほどから繰り返して申し上げておりますように、この文書の中には、決定もあり、あるいは勧告もあります。勧告は、これは勧告でございますから、政府としていいと思えば従うし、いいと思わなければ従わない。決定につきましても、もちろんこれは法令の範囲内で政府としてはできればやるというたてまえになっておって、この文書は幾つかありますけれども、この中でもいろいろ性質は違っております。  そこで、先ほどからも申し上げておりますように、この提出いたしましたリストをごらんいただけば大体どういう内容かわかるわけでございます。秘密はございません。その秘密を守るために文書を公表しないと言っているわけではございません。したがって、これについて見たいとかあるいは話が聞きたいとおっしゃれば、いつでも御希望に応ずるようにいたします。
  77. 川上貫一

    川上委員 これは幾ら繰り返しても私は結論は出ぬと思いますが、条約というものは国民が義務を負うものなんです。この義務を負って条約をそこの会議で決定されるのです。その決定されたものは守る義務があると政府答弁している。しかし、その決定が国民の前には言われぬ。差しつかえのあるものは言わぬ。ところが、差しつかえがあるかないかという問題をだれが判定するのですか。国民がこれを全部見て、ここでいい悪いをきめる以外にどこできめるのか、この問題ではすべてのことを政府に白紙委任をせい、こういう条約なのか、こういう条約はほかにあるかということを繰り返し聞いておるのです。この簡単な答えがどうもできない。ぐるぐる回っている。私は繰り返して言います。ここが明らかにならなければ国会の審議はできません。いい悪いの決定はできぬじゃないですか。二百何ぼ認めているのです。これを認めたらいいか悪いか、中が何かわからない。出したりストを見ればわかるとおっしゃるが、それじゃわかりません。項目が書いてあるだけです。また、もう一つは、要綱が書いてあるだけです。そのほかには何があるかわからぬ。全文を見なければわからない。それを承認せよという。国会でそれができますかということを私は主張しているのです。むずかしいことを言っているのじゃない。まことに簡単なことなんです。これはどうなんですか。
  78. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 決定というものは、国民の権利義務に直接影響を及ぼすものじゃないのでございまして、加盟国が経済政策の上でそういうように調整していこうという趣旨のものでございます。しかも、加盟国政府に対する拘束も、先ほどから御説明いたしておりますように、法令の範囲内で実施できることだけだということでございます。  それから、こういうような国際機関で採択する文書を全部公表するということは、この機関のみならず、ほかの機構でも、まず例外であって、むしろ、機構で採択された文書は不公表、特に公表する必要があるものだけお互いに相談で公表するというのが一般の慣例であると思います。
  79. 川上貫一

    川上委員 あなたのほうは事実をおっしゃる切りなんです。私のほうでは、それでは国会の審議ができぬじゃないですか。事実のことは私はもう知っておるのです。それでは国会の審議はできぬじゃないですか。これを承認してよろしい、よろしくないということが言えないじゃないですか。これは白紙委任で承認せいとおっしゃるのですか。これは外務大臣に聞きたいが、おられぬからしかたがない。これどうなんです。事実あなた方は、当局でやっていなさるが、腹の中で心配はないですか、こんなものに入って。何かわからぬのです。国民は知らないのです。さらに、こういう条約がほかにあるかという質問に対してはまだお答えになっていない。どうなんです。
  80. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 この条約承認していただくことによって新たに政府が権能を授権していただくということはないのでございます。それが法令の範囲内でと申し上げておる意味でございます。  それから、先ほど、ほかの国際機構でも採択される文書を全部公表するということはないと思うと申し上げましたのは、ほかの機構も国際条約に基づいて設置されておりますので、ほかの条約でもそれが一般の慣例だと申したわけでございます。
  81. 川上貫一

    川上委員 原則として非公開という条約があるかということを聞いているのです。原則として非公開なものはありますか。
  82. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 条約が非公開ということじゃないのでございまして、条約に基づいて設置された国際機構の文書が全部公表ということはむしろ異例であろうと申し上げたわけでございます。
  83. 川上貫一

    川上委員 異例でよろしい。ほかにない。私がこんなことを聞いているのは、ただいいくらいのことを聞いているのではないのです。これはひどいものなんです。ここに、通産省の通商局の役人、名前だけはいま言いませんが、国際経済課の人です。これが、OECD加盟と日本経済、これを発表している。どう書いてあるか。最近国連はスピーチ・メーキングの場となって、さっぱりどうもならぬ、問題の実質的解決には十分役に立たぬ、その上に最近古い植民地が続々独立をしてまことにうるさい、そこで、OECDなるものをつくって、メンバーを制限する必要かあった、——秘密のクラブですな。大蔵省の為替局の役人、これも発表している。これも名前だけは言いません。調査課の人です。これは日本関税協会常務理事会で講演をしておる。最近ガットの中で後進国が非常にうるさい、うるさいことばかり言いよる、だんだん国の数もふえる、そこで、あらかじめ特定の国があらごなしをやっているのだ、——あらごなしですよ。これはどういうことなんです。国際的経団連じゃないですか。それで、中身は言わぬ、原則的に公開できぬものもある、明らかにこれは国際的経団連だ。そしてNATO経済版だ。これを牛耳っておるのはアメリカだ。これに持っていって今回カナダと日本を引っぱり込もうとしておる。日本政府はこれに進んで入ろうとしておる。そこで、国民には、白紙委任で、つんぼさじきで、めくら判で国会でこれを承認せいという。それですから、いままで承認したという二百何件のあの内容は実際はわからぬ。今後またどういう決定、決議、これができるかも、原則として公開はしないのだから、わからない。これを国会で認められますか。また、こういうような条約は、いまの答弁でも、これは普通ではないという答弁。ほかには例がない。事態はきわめて明らかじゃないですか。ことに、日本は、詳しゅう言いませんが、経済的にも軍事的にも政治的にもアメリカにいまのような状態になっている。このような状態のもとでこういうような条約に加盟してごらんなさい、どんなことになるか。しかも、繰り返して言うが、政府はこの決定、勧告、決議は守る義務があると言っている。これは、日本の国民を、実質上アメリカのヘゲモニーのもとにつくられたNATO経済版、これに押し込もうとしている。この条約というものは簡単なものじゃないと思う。これについて、私は、外務大臣がおられませんから、これについての返事をもらうということはしません、実際の仕事を担当する方々は、口ではいろいろ国会だから答弁なさると思いますけれども、腹の中ではひどいものだということはわかっているだろうと思う。  具体的に続けて二、三聞きます。こういう条約に加盟してごらんなさい、日本経済アメリカの民間資本の進出をどうして食いとめますか。これはどういう腹がありますか。
  84. 中山賀博

    ○中山政府委員 御案内のとおり、OECDの中に資本移動に関する自由化の規約がございます。その中に、たとえば直接投資の問題も規定されております。ただ、直接投資につきましては、この投資を受ける国の利益に害がある場合にはこれを制限してよいという条件が付されておりますので、こういう条項を活用して日本政府としては日本経済の円満な発達に資するものだけを入れればよろしいのであって、全部の外資をどうしても入れなければならぬということにはなっておらないと思います。
  85. 川上貫一

    川上委員 時間は何時までありますか。
  86. 臼井莊一

    臼井委員長 大体一時間を先生に取ってあります。
  87. 川上貫一

    川上委員 もうだいぶたちましたな。  さっき言いましたように、日本の政治、経済、軍事の状態というのは、御承知のとおりなんです。このOECDは、私がいま述べましたような性格を持ったものなんです。繰り返して言うが、これの決議、決定、勧告は守る義務があるのだ。これの親玉はアメリカなのだ。日本の政治はアメリカに事実上従属しておるんです。こういう状態のもとでどういうことをやられるかわけがわからぬ。これに加盟して、たとえば賃金抑制の決定をやられる。国民は知らない。たとえば海外援助の問題についての決定が行なかれる、勧告が行なわれる。守らなければならない。それを国民は知らない。質問したら答えるというようなことを言うけれども、これはもうつんぼさじきなんです。その結果、一つの例としてアメリカの民間資本が日本に進出してくる。一つの例を言っている。この一つを考えても、これをどうして防ぎますかということを聞いておるんです。外資法は全く骨抜きでしょう。どうして防ぐか。時間がもうないと言われますから、私は一つ一つ質問しませんが、今日でも、アメリカの資本の日本に対する直接投資は、この二、三年に昔の十倍以上になっておる。一九五〇年から一九五四年の五年間に一億四千万ドル入っておる。年々の数は言いませんが、六二年をごらんなさい、一年で六億八千万ドル入っておる。これでは日本経済はやられてしまいます。今日現在、もうエネルギー源はどうですか、全部外国資本に押えられておる。おかげで石炭山は全部つぶれよる。こういう条約にのうのうとして入ってごらんなさい、アメリカ資本は野放しに入ってくる。全部いかれてしまうじゃないですか。幾らアメリカのごきげんをとるというても、実質上NATOの精神によってつくられた経済版、私ははっきり言った、国際的経団連。政府の役人さえ言うておる、ここであらごなしをするのだと言う。どんなあらごなしをするのか、われわれには秘密だからわからぬ。そんなことに入っておって、一方にアメリカがおって、日本経済が将来どうなる。これを考えたことが一体あるのか。私は約束した質問の時間はいつでも守りたい。この問題は重要だから幾らでも私は質問したいけれども、時間がもうまいったという委員長のあれでありますから、これは厳守します。お互い同士の道徳ですから。この問題についてあなた方はどうお考えになるか。私はこれは外務大臣並びに大蔵大臣のお考えを聞きたい。国会でいいかげんなことを言うて、ちょっとひとつ質問して言質でも取ろうか、そんな気じゃない。きわめて重大な問題なんだ。しかも、このOECDの問題というのは、内容がむずかしいだけに、多くの国民の方々には内容が十分わかっておらない。その間にするっとこれが通ろうとしている。日本の将来、日本経済の将来、日本の独立、具体的には日本の外貨の問題、貿易の問題、日本の産業の構造、外国資本との関係の問題、これは重要なものを含んでおる。私はこの委員会ではそれらについて十分の討議が行なわれたとは思いません。きわめて不十分だと思うのです。私の質問も、時間がないし、きわめて不十分であります。不十分ではあるが、軽々しい問題ではない。皆さんは実際の事務関係を担当せられておる。政府、これは大臣がやっておる。実際考えてごらんなさい、いいくらかげんなことを言うて、こんなものに入っておって、将来どうなる。きわめて危険きわまる条約である、こう断定せざるを得ない。私はこれに対しては大臣がおられませんから答弁は要りません。私の考えを申し上げておいて、機会があればあらためて質問をさせてもらいます。  これで私の質問を終わります。
  88. 臼井莊一

    臼井委員長 松井誠君。
  89. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私は、きょうはこのOECDについて主として資本取引の問題についてお尋ねをいたしたいと思ったのですけれども、いまの川上委員の御質問関連をして、やはり最初に、この機構の文書の取り扱いについてお尋ねをせざるを得ない。  これは、この前私が、委員会が終わるときに、機構の文書の一覧表でははっきりしないので、具体的に私が特に知りたいと思った、それも綿密に検討した結果ではありません、ほんとうに簡単に目を通して、これは一体どういうものだろうかということで、疑問に思われる問題だけを特に資料の提出をお願いをした。それは、一つは漁業政策の問題であり、一つは欧州の原子力機構に関連をする問題。この二つとも資料をいただきましたけれども、実は非常に不十分であります。不十分だという理由を明らかにして次の質問に移りたいと思いますけれども、このいただきました漁業政策に関する理事会の決議、これは内容はきわめて空虚でありまして、具体的に漁業政策についてOECD諸国がどういう方針で臨もうとするのかという方向は全然わからない。この漁業政策については、OEECの末期に農業及び食糧に関する次官級委員会が行なってきた検討の結果の報告を考慮に入れるということがありますけれども、その次官クラスの委員会では一体何がどういう形で討議をされたのかというその点がない限りは、このアクトの要旨というものは全くわからない。これはもう少し具体的にこの内容を補充する資料がございますか。
  90. 中山賀博

    ○中山政府委員 いま御質問の西欧並びに北米における漁業政策に関する文書といたしましては、その内容がこういうように公刊されております。これをごらんいただければ、非常に詳しい考え方がわかると思います。
  91. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そういうものもやはり要望があれば具体的に委員会に出して検討の資料に少なくともするという態度が必要だと思いますが、もう一つ、この欧州の原子力機構というのですか、これについても、このいただいた一覧表の整理番号では五〇という番号の、この機構の具体的な運営なり目的なりをきめた文書がありますけれども、これも、いただいたのは全く要旨だけであって、具体的にこの原子力機構というものがどういう形で動いていっておるかということは、この資料そのものでは、ほとんどわからない。私は、このような問題が起きるというのは、最初にOECDについて私が質問をしたときに、条約承認権の問題について最初にお尋ねをしました。そして、そのときに、この了解覚え書きや、あるいは自由化規約、あるいは機構の文書、そういうものが単に参考資料にとどまって国会承認は必要としないんだというたてまえに対する疑問と反対の意見を申し述べておきましたけれども、やはり、こういう結果になるのは、そういう政府態度、せいぜい条約の正文と付属の議定書さえ出しておけば、あとは実はどっちでもいいんだという考え方がこういう結果をもたらすんじゃないかと思うのです。私は、もうあの議論はここでは繰り返しませんけれども、しかし、やはり、こういう国際的な機構というものが発達をして、そうしてその中に日本がこれからすっぽり入り込むというチャンスが多くなる。そうしますと、いままでのような形式的な条約論、——この機構の決定なり勧告なりというのは、従来のいわゆる条約の形式から言えば通常の条約締結の形式は踏んではおりません。しかし、やはりその中で非常にいわゆる重要な問題が扱われるということになると、やはり、従来の条約形式論から、これは国会の審議が必要じゃないんだという理屈を引き出してくるわけにはいかないんじゃないか。そういう従来の二国間の条約というものが基本であった当時の条約論を根拠にしては、なるほど、いま言ったような理事会の決定なり勧告なりは国会承認が要らないという形式的な結論は出るでしょうけれども、しかし、それが、現実には、先ほど来から川上委員がいろいろ言われておるような現実の問題が起きてくる。私がこの前資料を要求したときに、非公開だということばはございませんでした。私は、非公開だということばがあれば、それについていろいろとお伺いをするつもりでおったのですけれども、そのときには、非公開だということばはなかった。いまのお話を聞いておりますと、非公開だというのは、何か国会に対しても公開をしないという、それが非公開だという意味のようにお伺いをしましたけれども、私は、非公開というのは、そうじゃなくて、つまり対外的に公開をする必要はないという意味にすぎないのじゃないか、少なくとも国会が審議の必要上要るということになれば、やはり当然のことですけれども、公開をするというのが原則である、このように問題をやはりはっきりさしておかなければいかぬと思いますけれども、その点はいかがですか。
  92. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 日本語で言えば部外秘といいますか、そういう取り扱いの文書でございまして、御審議の必要上必要があればお答え申し上げますというのは、そういう部外秘のたてまえと御審議の必要を勘案してとり得る最大の措置でございまして、いままでいろんな国際機関に加盟しておりますわけでございますが、それで採択された文書を最初からいままでのものを全部出せとまあ御要求があったこともございませんし、今度の場合特に異例のことをいたしておるというわけじゃないと私は思います。
  93. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから、非公開というのは、国会に対して公開をしないというのがたてまえだという意味ではない、したがって、今度、当然、この文書の内容というものは、こういう表目だけでなしに、内容そのものを提出をすべきだったと思いますけれども、それができなかったという、それを合理化する唯一の理由というのは、二百に近いそういう文書だからだという単なる技術的な意味しか私はないのじゃないかと思う。その点をひとつはっきりさしておきたい。これは部外秘だということで、ほんとうに対外的に発表はできない、したがって、その部外秘ということが何か国会にまで波及をして、国会に対しても非公開がむしろ原則であるかのような考え方は、私は間違いだと思うんです。日本はもう軍事的な機密というものはない。したがって、秘密条約というものはあり得ない。そういうたてまえから言うと、国会に提出し得ない外交文書というものは、すでにそういったきまってしまった外交文書というものはあり得ない。そういういまのように御答弁があいまいだから、いま川上委員の言うように、NATOとのつながりというものをどうしても考えざるを得ないということにもなると思うのですが、いかがですか。
  94. 藤崎萬里

    ○藤崎政府委員 国会に対してひし隠しでおるということと、反対に、今度は全部参考資料としてでもそのままお出しすることとの間には、若干階梯があるわけでございまして、全部お出しするということになると国際慣行にも反することになるのじゃないか。そういうことをしたということがいままでの加盟国にわかりますと、お互いの信義を守らないということにもなります。しかし、それじゃひし隠しにするというわけじゃないのでございまして、審議の御必要に応じて必要なものは資料として提出するということでございますから、そこで、日本の国際的な立場といいますか、それと国会の審議上の必要というものをそういうところで調節するというのが、取り扱いとしては一番合理的なやり方じゃないかと思うわけでございます。
  95. 松井誠

    ○松井(誠)委員 このことであまり時間を実は取りたくございませんので、これだけにしておきますけれども、いまの御答弁ですと、やはり国会に対しても非公開が原則だというたてまえをとっておられると思うんです。私はこれは根本的には間違いだと思う。そうして、そういう考え方が生まれてくる一つ理由は、やはりこの決定や勧告が実質的にも形式的にも条約じゃないんだという間違った考え方があるのじゃないか。しかし、現実には勧告なり決定なりがその国を拘束する、そして間接的にしろその国の国民を拘束するということになると、これを議会に対して非公開だという原則を貫こうとする考え方は全く間違いだと思うのです。もう私は繰り返しません。このことについては根本的に反対であり、政府に再考を求めるというこの前の私の立場をもう一ぺん明らかにして、次に進みたいと思まいす。  この前、私は、OECDの本質について、これが、社会主義勢力との対決という、言ってみれば反共同盟という政治的な側面がこのOECDの本質だ、自由化という問題もさることながら、それと並んでというよりも、むしろそれよりもそういう政治的な側面のほうがその本質だという意見を私は申し上げました。これは必ずしも川上委員考え方と同じではございません。多少の違いはありますけれども、その政治的な側面こそがOECDの基本的な性格だと思いますけれども、きょうは主として経済的な問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  大体、OECDの問題は、一つは自由化の問題であり、一つは低開発国援助の問題であり、もう一つ経済成長という、三つの問題がOECDの目的になっておりますので、きょう私は、自由化の中で特に資本取引の自由化というものが日本経済に一体どういう影響を及ぼすであろうかという点についてお尋ねをいたしたいと思います。  そこで、最初は非常に事務的なこまかいことになるわけでございますけれども、大体私がお尋ねをいたしたいのは、了解覚書の中で、附属書Bの第二部、ここで特に留保について詳しい事情を述べて問題が並んでおりますので、そしてこれがまさに一番問題の条項だと思いますのでこれについてお尋ねをいたしたいと思います。  最初は直接投資の問題でありますけれども、この直接投資ということば自体が実は非常にあいまいであります。おまけに、日本の外資法や外為法とこの自由化の資本取引の項目の分け方とが非常に入りまじっておって一緒になっておりませんので、なおさら私らしろうとにはわかりにくい。そこで、この直接投資というものについては、この覚書では形式的には留保はないということになっておる。しかし、その覚書の第三部の直接投資というものについていろいろと日本政府立場を述べておるわけですけれども、これは実質的には留保だと言わざるを得ない。実質的には留保でありながら、しかも、正式には、この一覧表には留保ではない取り扱いをしておる。これは必ずしも日本だけではないようでございますけれども、これは一体どういう事情でこういう別個の取り扱い方をするのかということから最初にお伺いをいたしたいと思います。
  96. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 ただいま御質問にありましたように、直接投資については留保をしておりません。これは、先生御承知のとおり、直接投資につきましては、その国の経済上に重大な影響のある場合にはこれを拒否してもいいという一つのエスケープ・クローズがあるわけであります。それの解釈というのが非常に各国まちまちでもございますし、また、OECDにおいても、そういったものが一体いかなるものであるかということがきまっていないわけでございます。それから、話はちょっと前に戻りますが、直接投資の定義についても、必ずしもOECDにおいてどういうものが直接投資であるかということについてきまっていない、こういうことが実情であろうかと思います。日本がこれを留保しなかったというのはそういう事情があるわけでございますが、それでは一体日本経済上の非常に重大な利益を害される場合というのはどういうことを考えているのかということを書いたのが、了解覚書にございます三つの点でございまして、「(a)産業の発展の調整。特に中小企業に配意する。(b)完全雇用の維持。(c)国内的及び対外的な財政上及び金融上の均衡。」、こういうことを害せられる場合には、われわれは日本の国の利益を害すると認めるのであるということを宣言いたしまして、それを向こうが了解した、こういうことでございます。
  97. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、この8項の、日本経済に著しく有害な影響を与えるおそれがあるという、この問題の具体的な内容としては、対内投資については9項に書いてあると存じますが、それなのだ、こういう意味ですね。
  98. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 そのとおりでございます。
  99. 松井誠

    ○松井(誠)委員 直接投資といってもよくわからないのですけれども、いまの御答弁で、日本政府として直接投資というものについての考え方を持っておるということのようでありますけれども、この外国人の株式の取得についても、直接投資である場合と、そうでない単に利ざやを目的とするホット・マネー的なものである場合とがあるわけ、ですけれども、そういう株式取得というものについて、直接投資かそうでないか、経営参加的な株式取得かそうでないかという区別で日本の制度はできてない。ただ非居住者による日本の株式取得の点をとってみても、その間に直接投資的なものとそうでないものとは分けてない。しかし、この株式取得については、別項があって、部分留保を行なっている。直接投資については、いま言ったような事実上の留保を行なっておる。こういうことは非常に混乱を起こすのじゃないですか。政府の考えている直接投資の形態というのは、つまり、OECDの自由化規約に書いてある直接投資として取り扱うものはどういう形態の投資を言うのか、これは大体きまっておりませんか。
  100. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 先ほどお答え申し上げましたように、OECDの直接投資というものの定義でございますが、大体、経営参加を目的といたしました株式取得、あるいは支店とか分工場の設置、あるいは非常に長期の貸し付け資金でもって子会社に対する貸し付け資金、この最後の子会社に対する貸し付け資金というようなものを直接投資とするかどうかという問題は、各国で取り扱いが違うというようなことで、その点が必ずしもはっきりしてないわけでございます。日本の場合におきますと、外資法におきましては、いま先生のおっしゃいましたように、一応証券の取得ということで、直接投資であるか間接投資であるかということについて明確な差異がないわけでございますが、実際上の取り扱いといたしまして、たとえば、日本銀行に対して、市場経由のいわゆる間接投資的な株式の取得に対しましては、一人当たりその総資本の五%、あるいは公益事業等制限業種につきましては全体の総ワクが一〇%、あるいはその他の一般業種につきましては一五%以内ならば自由にこれを認めろという指令を出しておりまして、そういう点で、私どもは、実際上の取り扱い——実際上の取り扱いというのは行政上の取り扱いでございますが、において、明らかに経営参加と、そうでない市場経由のいわば間接投資、英語で申しますポートフォリオ・インベストメントというものの差をつけてあるわけでございます。現在、したがいまして、直接投資につきまして留保しなかったという点は、先ほど申し上げましたような経営参加的な株式取得というものを頭に描いて、それは留保しない。しかし、逆に間接投資的な、証券取引所において購入される株式というものについては、現在の日本には一五%、一〇%という制限がございますので、これを留保したということになっておるわけでございます。
  101. 松井誠

    ○松井(誠)委員 市場経由の株式取得でも、実質的には経営参加的なものもあり得るのじゃないですか。
  102. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 これは、市場経由の株式につきましても、実質上経営参加であれば、直接投資のほうに移りまして、その制限が適用されるわけでございます。たとえば、ある会社を乗っ取ろうというような意思をもって行なったものは、OECDのコードにおきましても、これは市場経由のいわゆるポートフォリオ・インベストメントとしては考えていないということになっております。
  103. 松井誠

    ○松井(誠)委員 ですから、同じ市場経由の証券取得でも、直接投資とそうでないものがあり得る。それを見分けるのは、やはり取得した株の比率、そういうもので見分けるのですか。
  104. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 一応の標準といたしまして、やはり取得した株式の比率というのはもちろん問題になると思いますが、しかし、それ以前にも、たとえば擬装して多くの名義をもってたくさんの人が買うというような場合においてもそういうことがあるということも考えられますので、そこいらはケース・バイ・ケースに考えなければなりませんが、私どもは、その点については見分けることはそんなに困難ではない、こういうふうに考えております。
  105. 松井誠

    ○松井(誠)委員 間接投資の株の取得、これは、いま言われたように、一〇%または一五%、それ以上のものについて留保をするということになる。しかし、いまのお話ですと、形式的には間接投資の形式をとるけれども実質は直接投資だというものの見分け方というものは、だいぶ自信のあるようなことを言われましたけれども、私、実際の取引の形態を知りませんからわからないのですけれども、大体これは会社の乗っ取りくさいぞということは、間違いなくわかりますか。
  106. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 現実に重役を幾人よこせというような要求があるわけでございますから、わかるわけでございまして、各国におきましても、たとえば間接投資については全然留保していない国におきましても直接投資は規制しているということは、逆に申しますと、その見分けはつくという判断のもとにおいてそういう形態をとっているわけでございます。しかしながら、日本の場合におきましては、むしろ各国よりも厳重に一〇%ないし一五%という制限を間接投資についてすらつけておるわけでございますから、各国よりもさらにやりよく規制ができる、こういうふうになっておるわけでございます。
  107. 松井誠

    ○松井(誠)委員 先ほど子会社に対する長期のローンというお話がありましたけれども、子会社に対するものであるかどうかということによって、直接投資かどうかを見分けるのですか。長期のローンは一般に間接投資だけれども、そういう特殊な場合には直接投資だというように区分けをするのですか。
  108. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 まだOECDでそういう一致した見解はないわけでございますが、OECD加盟国のある国においてはそういう考え方をとっておるわけでございます。
  109. 松井誠

    ○松井(誠)委員 日本においては……。
  110. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 日本においては、そういう考えはとっておりません。
  111. 松井誠

    ○松井(誠)委員 そうしますと、このローンについては一応留保なしですね。
  112. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 日本で、いわゆるインパクトローンでございますが、これはOECDの自由化コードの義務的なアイテムに入っておりませんので、私いまここで見ておりませんのでわかりませんが、要するに、A表とB表とございまして、これだけは自由化しろというのがございます。それには入っておりませんで、むしろ各国ともそういうことをエンデバーする、努力しろという、義務制が全くないところに入っておるわけでございまして、その限り全然留保の問題が問題にならないわけでございます。
  113. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その商業上のクレジットとそうでない金融上のクレジットというものを分けて、そうして、商業上のクレジットについては部分的な留保が行なわれる。この点についてちょっとお尋ねをしたいのですけれども、延べ払いの輸出、これはきょうの新聞でまたいろいろ問題があるようですけれども、これは、期間によるでしょうけれども、商業上のクレジットとして通常の場合には留保の中に入る。しかし、そういう形で、具体的に直接輸出と結びついたクレジットではないけれども、クレジットを提供することによって何か輸出を期待する、直接的には結びつかないけれども、しかし間接的には結びつくというようなものは、これはつまり商業上のクレジットかどうかという限界なんですけれども、その辺のところは、現実にこれはどっちのものかという判断によって取り扱いが違う。これは、具体的なめどというのですか、そういうものはどういうところに置くわけですか。
  114. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 先ほど私はっきり申しませんでしたが、OECDの資本移動の自由化に関する規約には、第二表というのがございまして、これはいわゆる義務規定でないわけでございますが、それにクレジット及び貸し付け金というのがございます。期間が一年をこえる金融上のクレジット及び貸し付け金でこれに関し証券発行の行なわれなかったもの、こういったものは現在の段階では自由化をするにはまだ早かろうということで、できればおやりなさいということになっているわけでございます。問題は、商業上のクレジットとそういった商業取引に関係しないクレジットとの境でございますが、もちろん、商業上のクレジットというのは、いわばものを売るためのクレジットでございます。それで、そこらの限界というものもなかなかむずかしいとは思うわけでございます。いずれにせよ、日本の場合には商業上のクレジットにつきましても留保しているわけでございまして、クレジットというものは規制できる、こういうふうになっているわけでございます。
  115. 松井誠

    ○松井(誠)委員 けさの新聞を見ますと、OECDのほうから、造船産業部会だとか、あるいは延べ払いの部会ですか、そういうものの会議が近く開かれる、日本がオブザーバーとして出席要請されるやの記事が出ておりましたけれどもOECDが考えている、日本をオブザーバーとして出席さして、延べ払いについて何がしかの、まあ規制ということになるかどうかは知りませんけれども、そういうことをしようとしている方向というものは大体どういうことですか。そうして、それにこたえる意味かどうか知りませんが、政府は最近、延べ払い期間十年まではやはり大体輸銀を通してやる、それから先は自己金融でやらせるというような延べ払いの方法をきめたというように伝えられておりますけれども、このOECDの招請の動きと、政府がいまきめられたと伝えられる延べ払いについての取り扱いの方法との間にはどういう関連があるのか。
  116. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 本日の新聞については、ああいう考えはまだ何もきめたわけでもございませんで、全然お答えすることもできないわけでございます。  それから、その前に、延べ払い信用に関する委員会というのは、自由化コードのいわゆる自由化の問題とは別な問題だと思っております。各国が現在やっておりますベルン・ユニオン等における輸出信用保険の情報交換といったようなものをOECDの場においてもどの程度やるかということが問題になっておるように聞いておりますが、まだ現在日本はそれにも参加しておりませんので、今後どうなるかにつきましては、私どもよりも、もし意見があれば外務省のほうからお答えさしていただきたいと思います。
  117. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これは新聞の記事ですから、わかりませんけれどもOECDから招請があるかという記事の中に、政府は、延べ払いについては、日本の場合には国家資金に頼り過ぎるということが非難をされるというように理解をして、しかし、日本の場合には資金の蓄積がないから、だから国家資金が当分やはり必要なんだという説明をする予定だということが載っておりました。ですから、OECDが延べ払いを問題にするのは、やはり、国家があまり保護をし過ぎるのじゃないか、自己金融でやらせるというたてまえをとってこようとしておるのかどうか、そういうことをお伺いをしたかったわけなんです。
  118. 中山賀博

    ○中山政府委員 OECDの中で延べ払いの作業部会というものができて、延べ払いの政策についていろいろ議論しているということは聞いております。ただ、わがほうとしては、これに参加しておりませんので、詳細なことはわかりません。ただ、考え方としましては、一方におきまして、非常に野方図な長い期限の延べ払いを与えることによって商業競争力を強化しようということ、そしてこれがむだな競争を激化するということは戒めようじゃないかという考えもありますけれども、他方において、やはり、今度は後進国等に関する関係では、むしろまたこれをある程度認めていかなければいかぬという考えもあるわけでございます。いずれにいたしましても、まだまだきわめて初歩的な議論をかわしている段階であって、そこから一つの型というか結論が出る段階ではないように聞いております。将来日本として入っていく場合のことにつきましても、本日の新聞に出ている点については、われわれは全然関知しておりません。
  119. 松井誠

    ○松井(誠)委員 OECD自体が延べ払いについてまだ具体的な方針がないということになれば、深くお尋ねをする必要もございませんので、その次の項目の技術援助ですけれども、これはいろいろ問題がありますけれども、きのうもちょっとお伺いをしましたから、省略をいたします。  その次の円ベース投資の問題ですが、これはこの間大蔵大臣から現在における総額をお伺いしましたが、あるいはわからないかもしれませんけれども、年度別の内訳はわかりませんか。
  120. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 年度別にどれだけ入ったかということでございますか。その詳細はよくわかりませんでございます。非常に詳しく調べればわかるかもしれませんが、実は、昨年の十一月に円ベース投資会社の調査をいたしまして、一応、現在の投資額の総額、あるいは過去の蓄積利潤等についての調査をしたわけでございます。ですから、その資料がございますから、それを順々に集計していけばわからないことがないわけでございますが、まだそういう作業をやっておりません。
  121. 松井誠

    ○松井(誠)委員 私がそういうことをお尋ねをするのは、去年の七月からそういうあれがなくなったわけですけれども、しかし、円ベースという特殊な方法で投資をする、そして、IMF八条国に移行すると一緒にそれか自由化をされるというめどをつけてどっと入ってきたのではないか。つまり、これからあと外国資本がどれだけ入ってくるだろうかという一つめどをつける意味で、円ベースという形で入ってきた資本の額を押えるということは、これから先の見通しをつけるという意味で必要じゃないかと思ったのですが、内訳はわかりますか。
  122. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 一月末日で締め切りました既往の円ベース投資に関する報告書を集計いたしました結果は、いわゆる円ベース会社が二百八十九社、円ベース会社に準じます在日支店が二百七十三社、円ベースの株式投資等というのが八百七十七件ございます。それで、それの総額でございますが、帳簿価格で一億四千万ドル程度ということになっております。それから、年間の利潤は、現在の収益状況に大きな変化がない限り、税引き後千三百万ドル程度と見られております。それから、過去の蓄積利潤でございますが、いままで円ベースでありましたから送金させなかったのでございますが、これが四千万ドル程度でございます。それで、事業分野でございますが、この中で製造業に属するものが、円ベース会社としては百二十社、製造業を行なっております支店が十三社、商事、貿易をやっておりますのが、円ベース会社で百九社、支店で百四十四社、その他に属するものが、円ベース会社で六十、支店で百十六社でございます。このように、円ベース投資の大体実態がわかりましたので、私どもは、IMFの八条国移行を契機といたしまして、四月一日以降に発生する利潤については、その事業年度が終了した際において、納税後の利潤を今後送らせる、いわゆる四月一日以降に発生した利潤でございます。それから、過去の蓄積利潤及び元木につきましては、これを非居住者円預金勘定に入れさして、年末の残高の五分の一、あるいは二千ドル、どちらかの多いほうを送らせるということにしております。年末ということでございますから、もし送金を希望する者がありましても、ことしの年末の残高の五分の一でございますから、来年の一月一日以降に送金が起こるということに相なろうかと思っております。それから、いま申し上げましたような数字は、いずれも帳簿上の数字でございますから、現在たとえば一億四千万ドルの元本があるといっても、現在それは全部設備資金なり運転資金に使われておるというわけで、直ちにそれが対外送金になるものではないというふうに考えております。
  123. 松井誠

    ○松井(誠)委員 これからあと、いままで入ってきた円ベースをどうするかという点については、この前も大蔵大臣に簡単にお尋ねをいたしましたので、それはそれでいいのですが、年度別の内訳というものは、いまの階段ではわからないのですね。  その次に、直接この留保の問題じゃありませんが、日米間の通商航海条約との関係についてお伺いをいたしたいと思います。御承知のように、日米通商航海条約は、国際収支上の理由でないと為替の制限というものはできないということになっておる。そして、八条国に移行してからは、国際収支を理由にして、制限することができないということになる。その条約上のたてまえから言えば、この自由化規約のような留保というものは何もなくて、為替制限というものは一切できないことになる。この日米間の条約と、こういう機構の条約との関係については、機構の条約そのもので書いておるように、そういう既存の二国間の条約というものはそのまま生きるということになっておる。そうすると、こういう自由化規約についていろいろな留保をしても、日米間においてはその留保というものは通じないのじゃないか、そういう疑問を持つわけですけれども、それはどうでしょう。
  124. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 御承知のとおり、OECD条約におきましては、直接投資あるいは間接投資について留保をしたわけでございます。したがいまして、OECD条約に関する限りは、私どもは依然として資本取引の規制はできる、こういうことになるわけです。御質問の趣旨は、日米通商航海条約で為替制限というのは国際収支の理由でなければできない、八条国になると国際収支の理由がなくなるからできない、しかもOECD条約には最恵国待遇があるから、しり抜けではないかという御趣旨ではないかと思いますが、私どもは、この点については、八条国になりますということは、IMFは御承知のとおり資本管理ということについては原則としてするということを認めているわけで、IMFがたとえばいろいろな国際収支上の制限理由がないと言う場合にも、資本取引について制限理由がないなどということは一言も言ったことがないわけでございます。いままでの理事会勧告におきましても、日本貿易について国際収支上の理由で制限する理由がないとか、あるいは貿易外の経常取引についても国際収支上の理由でこれを制限する理由がない、こういう判定をしたわけでございまして、資本取引については、私どもは、依然としてこれを管理する国際収支上の理由というものは、IMF八条国になりましても残っておる、したがいまして、日米間の関係におきましても、資本取引については国際収支上の理由というものは依然として残っているわけで、これを制限するということは日米通商航海条約上も十分できる、こういうふうに考えているわけでございます。
  125. 松井誠

    ○松井(誠)委員 その問題については、去年の十月が一応改定の申し出の時期だということで、やはりこの航海条約そのものも、そういう意味で、ひとつ国際収支上の理由はなくなっても産業保護の立場から制限をするという道を残すべきではないかという議論が出た。それが消えたわけですけれども、消えた過程において、いま言ったような形の議論があったことは私も承知はしておりますけれども、しかし、その議論は非常に何か形式論で、私は、率直に言えば、やはりアメリカに対してそういう改定を申し出るということが日本自体としては非常につらい、やりづらい、だから、これでもいけるのだという形で、何か論理的に無理につじつまを合わせたというような印象をいまでもぬぐい切れないのですけれども、いまの答弁はその当時の政府の一応の統一見解でしょうから、それについてはお伺いをするだけにいたしまして、最後に、もう時間がございませんので、一体こういう形で資本取引の自由化が進んできて、いままでと違って、ガットやIMFの問題とは違って、資本取引の自由というそういうものへ大きく窓を開いたわけですが、この結果日本経済に具体的にどういう影響を及ぼすだろうかという点をお尋ねいたしたいのでありますけれども、この間の大蔵大臣の話では、非常に楽観的で、技術援助なんかむしろ減ってくるというようなお考えのようでありました。これはほんとうならばこのあと大臣にお伺いするべきところでありますので、詳しいことはお尋ねをいたしませんけれども、また新聞記事になって恐縮ですが、三月末に短資の流入が非常に多くなった、そこで、そういうことを契機にして、その短資について、それが自由円という形になって、自由円について準備預金という普通の内部の預金と同じような形で準備預金の対象にする、そういう形で短資の流入というものをやはり何がしかチェックをする、そういう方針を大蔵省がおきめになったような記事が出ておりましたけれども、私ども心配をするのは、こういう資本取引の自由化ということで国際収支に具体的にどういう影響を及ぼすだろうか、特にそういうホットマネーが行ったり来たりして、現に今度四月になったらさっそく入った短資というものは出ていく、こういうものに対して日本政府は一体チェックをするという具体的な方策としてどういうものをお持ちなのか、そうして、それはこの自由化規約との関係でどういうことになるのか、この点をひとつ、大ざっぱでけっこうですが、お教えをいただきたいと思う。
  126. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 短資の規制は、IMFにおきましても、OECDにおきましても、これが国際的な金融協力の腐乱要素であるということで、適当な規正をするということについては全然問題がないわけでございまして、むしろ、自由化ということとは逆に、ある意味ではいろいろな操作によってそういったものの移動を安定させようという動きのほうが強いわけでございます。  それで、ただいま御質問のありました自由円について準備預金を別途つくるかどうかというような問題につきましては、もちろん検討に値することではあろうかと思いますけれども、現在全くそういったことを大蔵省できめたわけでもございませんし、ただ外国でそういったことをやっている国があるということから、ああいう新聞記事が、何か次にすることがあるとすればそういうことであろうという推測で書かれたものかと思います。
  127. 松井誠

    ○松井(誠)委員 どうも新聞記事はさっぱり初めから片っ端からあてにならぬということのようでありますけれども、私は、やはり、国際収支がどうなるかということが非常に大きな問題であるし、中小企業に具体的にどういう影響を及ぼすかということが非常に大きな問題であるし、さらにまた、日本のいわゆる経営権がどういう形で確保されていくか、日本の経営の自主性というものはほんとうに侵されないかどうかという問題も重要な問題であると思いますけれども、時間が来ましたのでもう省略をいたしますが、一点だけ、ちょっとその数字を、あとの質問関係もありますので、お伺いをしたいのですが、最近日本が導入した技術のロイアルティー、あるいは配当、あるいは貸し付け金の利子、そういうものの統計、ここ二、三年の統計をいまお持ちでしたら、簡単に数字をお教えいただきたいと思う。
  128. 鈴木秀雄

    ○鈴木説明員 暦年で申しますと、三十六年、利子配当が八千二百万ドルでございます。それから、特許料、ロイアルティー、これが一億一千万ドルでございます。それから、三十七年、利子配当が一億一千百万ドル、特許料が一億一千四百万ドル、それから、三十八年でございますが、利子配当、これが一億四千万ドル、特許料が一億三千万ドルでございます。
  129. 松井誠

    ○松井(誠)委員 それで、大事な質問は残りましたけれども、終わります。
  130. 臼井莊一

    臼井委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は明日午後開会の予定ですが、詳細は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後一時九分散会