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1964-04-01 第46回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会原子力政策に関する小委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十九年四月一日(水曜日)    午前十時二十四分開議  出席小委員    小委員長 中曽根康弘君       佐々木義武君    西村 英一君       福井  勇君    前田 正男君       渡辺美智雄君    岡  良一君       原   茂君    山内  広君  出席国務大臣         国 務 大 臣 佐藤 榮作君  出席政府委員         総理府事務官         (科学技術庁長         官官房長)   江上 龍彦君         総理府事務官         (科学技術庁原         子力局長)   島村 武久君  小委員外出席者         科学技術振興対         策特別委員   保科善四郎君         科学技術振興対         策特別委員   三木 喜夫君         原子力委員会委         員       駒形 作次君         原子力委員会委         員       兼重寛九郎君         原子力委員会委         員       西村 熊雄君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団理事         長)      石川 一郎君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団専務         理事)     甘利 昂一君         参  考  人         (日本原子力船         開発事業団理         事)      井上啓次郎君         参  考  人         (日本海事協会         会長)     山縣 昌夫君         参  考  人         (三井物産株式         会社常務取締         役)      太田 音吉君         参  考  人         (三菱商事株式         会社常務取締         役)      足立 一郎君         参  考  人         (三井造船株式         会社常務取締         役)      山下  勇君         参  考  人         (三菱造船株式         会社常務取締         役)      谷口 健八君         参  考  人         (三井物産株式         会社電気機械部         原子力課課長代         理)      安田 和雄君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  原子力政策に関する件(原子力船に関する問  題)      ――――◇―――――
  2. 前田正男

    前田委員長代理 中曽根委員長都合によりいまだお見えになりませんので、御依頼により私がかわりに小委員長の職務を行ないます。  それでは、これより原子力政策に関する小委員会を開会いたします。原子力政策に関する件について調査を進めます。  本日は、原子力船に関する問題について調査をすることといたします。  本問題調査のため、本日は参考人として日本原子力船開発事業団理事長石川一郎君、日本原子力船開発事業団専務理事甘利昂一君、日本原子力船開発事業団理事井上啓次郎君、日本海事協会会長山縣昌夫君、三井物産株式会社常務取締役太田音吉君、三菱商事株式会社常務取締役足立一郎君、三井造船株式会社常務取締役山下勇君、三菱造船株式会社常務取締役谷口健八君、以上八名の方に御出席を願っております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中にもかかわらず、本小委員会に御出席くださいまして、どうもありがとうございます。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。  なお、はなはだかってでありますが、参考人の御意見の開陳は、時間の都合もございますので、お一人約十分程度にお願いすることとし、後刻委員からの質疑の際十分お答えくださるようお願い申し上げます。  御存じのように、原子力技術驚異的進歩は、いまや船舶原子力推進を可能ならしめたのみでなく、経済性においても、近い将来、在来船に匹敵し得るものと期待されるまでに至っております。わが国世界第一の造船国であります。また、長期的には船舶原子力推進化が見込まれる現状にかんがみ、原子力船開発を進めることはわが国にとって重要な課題であろうかと存じます。  そこで、本日は参考人各位から舶用炉についてそれぞれの立場から率直な御意見をお聞きし、本問題調査参考にいたしたいと存じます。  それでは、発言の順序は私に御一任していただくこととし、まず最初に石川参考人より原子力船及び新鋭舶用炉について、事業的見地からの御説明と、あわせて海外現況日本計画について御意見を承ることといたします。石川参考人。   〔前田委員長代理退席、小委員長着席
  3. 石川一郎

    石川参考人 原子力船開発事業団は、多少ほかの公団あるいは事業団と違っております点がございますので、皆さんもすでに御承知のこととは思いまするけれども、一応先にこれを述べさせていただきたいと存じます。  まず原子力第一船の開発基本方針というものが政府のほうからお示しになりまして、この基本方針のもとに開発事業をやってまいるつもりになっております。その基本方針は、要するに、原子力の第一船をつくることでございまして、それは観測船であることはさまっておるのでございますが、そのほかにこれの試運転をする。それからまた、その船員等を養成することも入っておりまするし、またその後に、原子力の、燃料等始末をするまでのことはやりませんけれども始末をする途中までのことはやらなければならぬ、こういうことになっておりますので、この事業団仕事というものは、ちょうど造船会社の一部分と海運会社商船会社、それから清掃事業みたいな、そういうようなことを八、九年の間やって解散する、こういうことになっております。  それで、事業団はいろいろな種類仕事をやりますが、全部の人を雇うとたいへんなことになりますので、まずごく少数の人でかなめの仕事だけをいたしまして、そのほかの方面からいろいろお知恵なり経験等を拝借してやるつもりになっておりまして、顧問を十七、八人と、いろいろ技術のことを御相談する方々を五十名余りお願い申し上げまして、その時に応じまして御相談して進んでいく、こういうふうなことをやっております。  なお、現在は事務所がこの七月に移りますが、とりあえずガスビルに入っておりまして、その隣の海事振興ビルのほうに移るようになっておる状況であります。  現在は役員が五名のほかに、研究なり調査をしていただいたりする庶務の方が全部で五十数名おりまして、そういうふうな状況仕事をやっておるのでございます。  いままでやってまいりました仕事は、要するに大体の研究を、開発事業団といたしましてその研究方針に基づきまして、各事業会社が約九社、並びに原子力関係が約六社、そういう方々にこういう点をひとつ研究し、設計をしていただきたいということをお願い申し上げた段取りのところまで進んでおります。大体その設計が――基本的の設計でありますが、それが済むのが七月末となっております。あるいは七月の末にはむずかしいのじゃないかというふうに考えております。それができましたらば本設計にかかるということになっておりまして、そして造船会社なり、あるいは原子炉メーカーなりを指定をいたしまして、そしてそういう方々に本設計をやっていただいて、安全審査等もしていただきまして仕事をしていく、こういうふうな段取りで進んでおります。  なお、原子炉の問題が先ほどありましたが、どういうふうな種類原子炉を使うかということは基本方針のほうに政府からお示しがございますので、それを第一に取り上げまして、現在やっております。それは軽水型の炉を使えということになっておりますので、それを使うつもりでいま設計等をやっております。  ところが、最近になりまして、いろいろ新しい炉が、こういうアイデアがあるというような問題がどっさり起こってまいりましたが、その中で有望と思われるものはありますのですけれども、要するに今度のこの事業団事業というのは、できるだけ日本で炉をつくれということと、それからまた、日本技術ができるだけ向上するような方針でやっていけというような御命令もございますので、新しいものでまだ使っていないものを船に採用いたしまして、これが陸上ならば比較的簡単なんですが、船に使いまして、もし故障でもあった場合は非常に困るような立場に立つものですから、これは慎重にいま研究をしております。研究をしておりますが、現在のところは、われわれの総力はいままで御命令のありました軽水炉を開発するということの方面に力を尽くしておりますが、しかし、新しい炉の研究等につきましてもおろそかにしておるわけではございません。ひまひまを見まして、またいろいろな情報等もとりまして研究等はしておりますが、まだそのほうに乗り移るというような考えは現在のところは持っておりません。それに相当また手続、あるいは役所のほうの御命令等も必要でございますので、そういうことはまだ相当先のことと存じますが、研究はしておりますことだけを申し上げておきます。  なお、これらのことにつきましての詳細は、甘利君あるいは井上君がおりますから、そちらから御説明させていただきたいと思います。
  4. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どうもありがとうございました。  次に、山縣参考人より、新鋭舶用炉について、学問的見地からの説明と、あわせて海外現況日本計画について御意見を承りたいと思います。  特にお願いしたいのは、最近六三〇Aですか、そういうようないろいろな新しい型のものが出てきて、いままで政府が大綱をきめたそれとの関連においてどういうふうにこれをエバリュエーションすべきかというポイントを中心お話し願いしたいと思います。山縣参考人
  5. 山縣昌夫

    山縣参考人 順序といたしまして、いままでの開発いきさつをごく簡単に申し上げます。  昭和三十年に原子力船調調査会を私どもがつくりました。これは官民の合同機関でございます。その年に財団法人日本原子力研究所ができました。その翌年、三十一年に、当時の運輸技術研究所の中に原子力船研究室というものが設けられました。  こういう情勢になってまいりましたので、この三つの間にいろいろ協定と申しますか、連絡をしなければならぬ、こういうことを感じまして、ここにおられます当時の原研の副理事長であられた駒形さんと運研の所長の服部さんと私と三人でお会いいたしまして、いろいろ御相談申し上げた記憶がございます。  ただいま石川さんからもお話がありましたように、舶用原子炉というものはある程度特殊性等を持っておりまして、たとえば小型軽量である、あるいは陸上炉と違いまして、船の炉の場合には、極端な場合には船がしけにあいましたときは、外力が瞬間瞬間に非常に変わってまいります。陸上発電炉ならばコンスタントに回っておればいいわけですけれども、そういった特殊性舶用炉にございますので、したがって、原子炉動特性というものが非常に問題になってまいります。  そういったようなことを中心といたしまして、駒形さん、服部さんとお話をいたしました。むろん当時の原研の意気込みといたしましては、そういったものまでも原研でやるんだ、こういうお話を承りました。炉以外にヒート・エクスチェンジャーをどっちでやるかということは、そのときはっきりいたしませんでしたけれども、それからエンジン、さらに船、そういったものは運輸技術研究所でやる、こういうお話をした覚えがございます。これがいろいろあとで尾を引いてきているわけでございます。  その年に、例のドイツでもってGKSS原子力研究所が設立をされました。これはその前の年にできましたSKSS、これは原子力船研究協会といったようなものでございますが、これの実施機関としまして、ただいま申しましたGKSSができた。これはドイツ特殊事情でございまして、原子力潜水艦、そういったものの建造は禁止されております。また御承知のように、日本と違いまして、ドイツでは原子力研究を分散的にやっていくという方針をとっておりますので、そういったような事情GKSS原子力船研究所ができたのだと思います。例のプール型の実験炉を持ちまして、さらに動揺振動台、そういった実験設備中心にいたしまして、いろいろな研究をやっていく。OMRの研究もここでやっております。さらに最近に至りまして、実験第一船をつくるということがきまりまして、三十八年に起工いたしまして四十二年に竣工する、こういうことになっております。わが国事業団でいま計画が進行しております第一船に比べまして、いろいろの点で、炉その他違っておるのでございますが、現状におきまして、日本におきますものと非常に変わっておりますのは、いわゆる実験船にある程度この船は徹しておると思います。したがいまして、原子炉あとから取りかえるのも、わりあい楽に取りかえられるという考え方から、船の構造自体を中途でもって輪切りにいたしまして、その部分を取り去りまして、別につくりましたものをあとからすっとまた入れる。そういった交換をやるということを考えております。それから、燃料交換施設を船の上に持っておるということは、これは日本考え方とは違っております。日本では、陸上でやろう、こういうふうに考えてお進めになっておるようであります。  なお、米国におきましては、その前の年に、AEC・マラード・ジョイント・コミッティー、御承知のように、原子力船フェース・プログラムというものをきめております。フェース1、これを簡単に申しますと、短期計画と申してよいのではないかと思います。例のサバンナをつくるという計画でございます。三十三年に起工いたしまして、三十七年に竣工いたしております。それからフェース2は、いわゆる長期計画と申しますか、経済的な原子炉開発しようということでございまして、それ以来ずっとそれをやっておるわけでございます。  そういった海外事情もございまして、日本でもこの調査会では十分でないというので、これを三十三年に改組いたしまして、日本原子力船研究協会という純然たる民間団体をつくりました。つくりました直後、政府に対して要望書出しております。  それは大体二つに分かれまして、いわゆる短期計画といたしまして、原子力実験船をぜひつくるように措置していただきたいということを……。
  6. 中曽根康弘

    中曽根委員長 山縣さん、恐縮ですが、そういういきさつはみんな委員は知っているんです。いまぼくが申し上げた核心を話してください。十分間という時間があるのですから……。
  7. 山縣昌夫

    山縣参考人 そういうような状況であったわけですが、そこで問題になりますのは、そういった状況で進んでまいりますというと、日本におきましては原子力船開発の方向が、外国にはない特殊な状況で進んでおります。  一つは、先ほど冒頭に申し上げましたように、舶用炉原研でもって受け待つ、こういうことになっております。したがいまして、原子力船研究協会あるいは運輸技術研究所においては、どうしてもこの粕川炉調査研究ということに重点が置かれないで、いわゆる造船という面に主として重点が置かれる。また、このメーカーにおかれましても、発電実用に踏み切っておりましたが、船のほうはなかなか実用にまで至らないというので、舶用炉というものの開発にはメーカーさんもあまり関心を持っておらなかった。こういう状況でずっときております。この点は、ただいま申し上げましたように、外国とは非常に迷った状況にある。それから、ことに三十七年から三十八年にかけまして事業団ができるというようなことになりましたので、私どもやっておりました原船協におきましても、会員各位が、何と申しますか、将来の事業団のほうの仕事をというようなことから、どうも会員が熱が入らない。そのために、さらに舶用炉勉強がおろそかになったということが確かにございます。三十七年、三十八年にかけまして、約一年半、こういった面においてはブランクがあったと思います。  そういう国内状況におきまして、ただいまお話がございましたように、海外におきましてはアメリカGEの六三〇A、あるいはCEのUNIMOD、あるいはバブコック・アンド・ウイルコックスのCNSGあるいは、イギリス原子力公社のIBR、あるいはイギリスとベルギーの共同研究のブルケイン、こういうものがあります。これらのいろいろな設計につきましては、私ども詳しいことは存じませんが、いろいろカタログ等で拝見いたします範囲におきましては、いわゆる舶用炉としての適性ということに重点が置かれまして、いわゆる小型軽量という点に思い切った考え方設計をやっております。たとえばヒート・エクスチェンジャーをプレッシャー・ベッセルの中に入れるとか、そういったことをやっております。  特に注目すべきは六三〇Aだと思います。この六三〇Aは、いわゆる過熱蒸気を使うという点におきまして、従来の動力炉と非常に違った点がございます。いわゆる過熱蒸気を使いますれば、一般のボイラーでもって船を動かすという場合と同じような、非常に効率のいいタービン効率を上げることができるわけです。  そういうようないろいろな炉が出てまいりましたが、さて、これをどう考えるかという問題でございます。先ほど石川先生からもお話がございましたように、政府のあるワク原子力第一船についてのワクがございますし、したがいまして、事業団では原子力第一船の基本計画というものを二月に発表になっておりますが、そこでは、当然この六三〇Aというようなものは取り上げることができないということは、空気冷却ということでございますので、政府でお示しになりましたのは軽水冷却ということになっておりますので、当然六三〇Aというものは対象外となる。それから、小型軽量のために内装方式を先ほど申し上げましたような新しい炉はとっておるわけでございますが、これもいろいろまだ国内においては勉強が足りないというようなことで、一応これをお考えになっておらない。しかし、できるだけ研究をしてその成果を取り入れたい、こういうように発表されております。私ども科学者技術者といたしまして、十分将来の実用船に対して参考になるような第一船であってほしいわけであります。したがって、新しいいろいろな科学技術を取り入れていただきたいということを念願しておるわけでございますが、しかしまあ事業団といたしましては、民間の投資もございますし、いろいろ十分な御調査を前提としたものでなければならないということは当然だと思います。それからまた、この調査のためにあまり時間がたつということは、これも例の昭和三十六年の原子力船開発事業長期計画、これらにかんがみまして、ただいまの事業団の御計画はぎりぎりいっぱいでございますので、そういった調査研究のためにまた時間をとりまして竣工がおくれるということも困るわけでございます。  こういった事情から私考えますと、従来私いつも機会あるごとに申し上げておるわけでございますけれども国内における原子力船開発研究体制をできるだけ整備してほしい、こういうことでございます。これにはいろいろ案があると思います。  第一案といたしましては、事業団は現在のままといたしまして節一船関係業務だけに限定いたしますが、いわゆる私の申しました長期計画に対しましては別途に何か政府においても措置されたい、あるいは原研あるいは適当な研究機関その他民間企業体、そういったものに十分費用をお出しくださいまして、いわゆる長期計画実施ということを別途やっていっていただきたいということ。  第二案といたしましては、現在の専業団は第一船に業務が限定されておりますけれども、それのほかにいわゆるいま私が申し上げましたような長期計画に対応する業務もこの事業団でやっていただいたらどうか、こういうことでございます。この点に対しましては事業団法を本来ならば改正しなければならぬと思いますけれども、一応事業団法を拝見いたしますと、現在の事業団法でもやれないことはないと思います。要するに政府から事業団に対しましてのワクを、ただいま原子力第一船開発基本計画というものをお出しになっておりますが、そのほかにいまの長期計画に対応する開発研究基本計画というようなものを追加してお出しになれば、これはまかなえることと思います。  それから、第三案といたしましては、ただいま申し上げました実質的には第二案とほぼ同じでございますけれども事業団法を全面的に改正いたしまして新しい機関をつくる。特殊法人なら特殊法人をつくる。それでちょうどGKSSと同じように、原子力第一船を実験船としてその機関が保有する。さらに現在原研にございますスイミング・プールあるいは現在船舶技術研究所運研が名前を変えておりますけれども、そこにございます振動台、そういったようないろいろな施設をこの新しい機関が持ちまして、何と申しますか、原子力船研究開発の恒久的の中核体とする、こういう考え方もあると思います。  この三つの案がございまして、私従来からこの第三案というものをいつも主張しておったわけでございますが、すでに事業団もできておりますので、まあ第二案ならばわりあいに簡単にいくのではなかろうか。そういたしますと、ただいまの舶用原子炉開発というようなことも軌道に乗ってまいりますし、長期計画短期計画とたまたま分けて考えましたけれども、両方ともお互いに非常に密接な関係がございますので、当然これは一本的に計画を立案し実施するということもやっていったらいいのじゃないかと思います。それで、事業団法が切れました場合には、第二案を進めまして、ある時期に第三案に移行するということが考えられます。たとえば実験船が竣工いたしましたその機会、あるいは現在の事業団が解散する時期、こういったときに第三案に移ったらいいのではないか、こう考えております。  以上であります。
  8. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どうもありがとうございました。  次に、太田参考人にお願いいたします。私が先ほど申し上げました点について、特にいま政府が要綱を示し考え方と、それから新しく出てきた舶用のいろいろな炉に関するエバリュエーションの問題を中心に、情報がありましたら、御発言願いたいと思います。
  9. 太田音吉

    太田参考人 太田でございます。原子力船の問題のうちで、その主動力源になります原子炉につきまして、申し上げさせていただきたいと思います。  ただいま委員長から海外の各種のデータというお話がございましたが、私、三井物産といたしまして、米国のゼネラル・エレクトリックのオーソライズド・ディストリビューターとして活動しておりますので、通称GEとしてみなさんおなじみでございますが、GE開発いたしました、ただいまお話のございました六三〇Aにつきまして、お話しさせていただきたいと思います。  GE社ボイリング・ウオーター・タイプ原子炉をつくっているということを一般的に考えられておりますが、GEにおきましては、現在このボイリング・ウオーター・タイプをつくっておる部門以外に、強力な原子力部門を相当持っておりまして、こと舶用原子炉に関しましては、ボイリング・ウオーター・タイプだけでなしに、加圧水型、また液体金属冷却型、ガス冷却型というふうな、型式の範囲も広く、また数といたしましても世界におきまして最もたくさんな実績と経験を持っております。これは原子力潜水艦を除いた話でございますので、さように御承知願いたいと思います。  この六三〇Aの生まれましたいきさつを簡単に申し上げますと、一九五一年以来、アメリカ原子力委員会米国の空軍の依頼を受けまして、大型の航空機用の原子炉開発に着手したわけでございます。これは高温ガス冷却灯の開発でございますが、五一年から、もう十数年以前になりますか、始めました。ところが、六一年に至りまして、ロケットの発達が非常に盛んになったので、米国空軍といたしまして、大型航空機はもうやめようということになり、当時ケネディの判断によりまして、布告によりまして、大型の航空機自体が中止になり、したがって、これに伴いまして、航空機用の原子炉がやめになりました。  この前後から、これをひとつ民間に解除しまして平和的の利用にしたらどうかという考え方で、GEといたしまして全社的な知能を集めて、約四年間かかりまして開発いたしましたのが、今日出てまいりました六三〇Aなんでございます。  この航空機をやりました後に、米国原子力委員会また海運局並びにGEのほうで協議の結果、船舶用の推進機用として利用すべきだという結論に達したわけでございます。ただ、しばらくの間このいろいろなデータが秘密になっておりましたので、改良に相当日数がかかったのでございますが、昨年の八月に至りまして、この秘密が解除いたされまして、一般に公開されたわけでございます。GEといたしまして、この六三〇Aが舶用として最も優秀なものであると結論を出したわけでございますが、これはGE独断の結論でございません。米国原子力委員会、また海運局、また船舶設計会社あるいは船会社、これらがめいめい独自に舶用原子炉研究されておりましたが、それらの結果の御意見も同じくこれを慰められまして、はっきりした裏づけを得たわけでございます。  これは非常に目方が軽くて、小型でございます。そうして、過熱蒸気を発生する能力を持っております。八百八十トンの上に摂氏九百九十度という過熱無気を発生する能力を持っております。したがいまして、従来の油だきボイラーを使っております船のボイラーを取り除きまして多少手を加えれば、そのままそこにこの原子炉並びにボイラーを据えることができるという、形といたしまして軽便なものでございます。在来の蒸気タービンとかはそのまま使用することができます。  次に、ただいま軽量と申し上げましたが、軽量ということは原子力の炉の値段に大きく影響する問題でございます。御承知のとおりに、原子力の炉というのは、運転の費用は、燃料代は油より安い。ただし、一番問題は最初のイニシアル・コストなのでございますが、これが、非常に軽量であるがゆえに値段を下げる大きな要素となっておる次第でございます。また、小型でございますので、その製作、組み立てにあたりましては、工場内で一貫して組み立てができ、運搬も非常に簡単でございます。現場における、船内における据えつけも非常に作業が簡単でございます。また、燃料の交換におきましても、在来のものが相当長時日を要しましたに比べまして、数日間で取りかえができるということで、船全体といたしましての経済性を著しく向上する見込みを立てております。  軽量小型という一例を申し上げますと、ここにシャフトホースパワー一万馬力の原子炉並びにボイラーを組み立てましたユニットでございますが、これは原子炉の遮蔽も、圧力ベッセル、遮蔽、それからボイラー全部含めまして大きさが、大体円筒型で直経五メートル、高さ十メートルぐらい、重さ三百十二、三トンという設計データが出ております。  さらに一例をとりまして、現在御承知アメリカのサバンナ号でございますが、この馬力よりも大きい三万馬力の六三〇A型を例にとりますと、この重量は四百トンでございます。サバンナ号の現在の原子炉ボイラーの重量が二千四百トンでございますから、重量が約六分の一ということになっております。しかも馬力は、三万馬力と申しますとサバンナ号よりだいぶ大きゅうございます。  なお、安全性につきましては、これは気体冷却炉でございます。軽水を減速といたしました空気冷却炉でございますが、空気冷却炉のほうは本質的に軽水冷却よりも安全と一般に考えられております。また、小型であるために、突衝の事故あるいはいろいろな船内における安全装置の取り方というものに対して非常に楽でございます。小さいということはまた衝突の的が小さくて、破損のプロバビリティー、災害をこうむるプロバビリティーが少ないということもいえるわけでございます。  この六三〇Aの前身であります一号炉というのは、一九五四年から五六年の間に製作されまして、引き続き一九六一年まで運転されまして、この間に各種の実験をやり、試験データもとっております。ただ、当時は航空用として考えておりましたが、航空用に対して要求されておるデータというものは、相当きびしいものでございます。したがいまして、寿命があまり長くなかったということはいえるのですが、舶用といたしましては相当そういう要求データを下げることができますので、自然それが寿命と信頼性を増すことができたという結果を来たしました。  なお、この六三〇A型は将来における発展性を内減しております。たとえば現在の空気冷却でございますが、この空気を蒸気に変える、あるいはさらに技術が進めばヘリウムに変えるというふうなことによりまして、同じ炉で出力をさらに高めるということもできるわけでございます。また、現在の濃縮ウラン二三五にかわりまして、プルトニウムを使うというようなことも考えられるわけでございます。  なお、国産の問題でございますが、この原子炉と蒸気発生装置と含めましたユニットは、大体四〇%輸入、六〇%が国産ということが検討の結果可能と考えられております。タービンとか補機とか、これは全部国産でできることは申すまでもございません。また、この組み立てば一貫して日本の工場で行なわれます。現在受注後三十六カ月で納入できる。百時間の試験をして渡すという自信を持っております。燃料の寿命は、一回のチャージによりまして全出力で連続一万五千時間、約二年近くもつわけでございます。  米国におきまして、米国原子力委員会、海運局の依頼に基づきまして、船舶設計のオーソリティーでございますジョージ・G・シャウプ社、これがこの六三〇Aをつかまえまして、舶用としての経済の比較検討をやっております。その結果、現在としては六三〇Aが最も優秀なものであろうという結論が出ておるわけでございます。GEにおきまして、現在USメール・ラインとかその他の会社と具体的な商談を行なっております。また、ヨーロッパ、英国、西独なども、この六三〇Aの採用をきめたわけではございませんが、技術的の検討を始める決意をきめたと聞いております。  わが国としましては、先ほど石川さんからもお話ございましたが、海運界の将来、また、日本の産業として大事な船舶の輸出、こういう面から考えまして、世界の趨勢におくれないように、一歩でも先んじていくという必要を私ども痛感するわけでございます。  この六三〇Aは、現在すでにでき上がったものでございまして、決して紙の上の推測とか、あるいは希望としてとどまっておるものではございません。また、現実に各種のテストも行なったプルーブン・タイプの炉でございます。最も進歩した舶用原子炉として、これを原子力船開発の一環として、この研究、解明をお取り上げいただくことが、最も緊急必要なことではないかと考えております。また、これを御紹介申し上げるのが商社としての義務であると考えて、以上御説明申し上げる次第でございます。どうかよろしく御考慮を願いたいと思います。
  10. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どうもありがとうございました。  次に、足立参考人から、同様の御趣旨を御発言願います。
  11. 足立一郎

    足立参考人 ただいま御紹介にあずかりました三菱商事の足立でございます。いま中曽根さんから御指名がございましたので、私どもが扱っております原子炉につきまして、これから御説明申し上げたいと思う次第でございます。  三菱グループといたしましては、米国のウエスチングハウス社と技術提携を結んでおりまして、いわゆる加圧水型、ブレッシュアライズド・ウオーター・リアクター、ウエスチングハウス社におきましてはこれを閉回路軽水舶用炉と称しておりますが、この炉につきましては簡単に御説明を申し上げさせていただきます。  先ほど石川さんからも御発言ありましたように、船舶用としまして軽水炉型を取り上げるということは、政府方針といたしましてもほぼきまっております。ここに御列席の皆さまは、軽水型の炉につきましては先刻十分御承知かと思いまして、私から申し上げますのは、釈迦に説法の感もございますが、何と申しましても、軽水炉型と申しますのは、先ほど太田さんからお話がございましたが、GEのボイルド・ウオーター・タイプ、ウエスチングハウス社のPWRというのは世界で最も周知の炉でございます。  原子炉船舶に搭載する計画は、米国におきましては一九四八年にさかのぼるのでございまして、すなわち、一九四八年十二月にウエスチングハウス社は、米国原子力委員建設に関する契約を締結いたしまして、一九五四年世界最初の原子力潜水艦ノーテラス号が進水いたしましたことは、皆さま先刻御承知のとおりであります。その間、米国は官民協力のもとに搭載炉と全く同様なPWR炉を製作し、あらゆる実際的試験を実施いたしまして、その結果、安全並びに信頼性において十分なる自信をもって進水せしめるに至った次第であります。自来シーウォルフ、スキップジャック、ラファイエット等の潜水艦、エンタープライズ(航空母艦)、ロングビーチ(巡洋艦)、ベインブリッジ(駆逐艦)等の数十隻の原子力船にPWRが搭載されており、さらに現在世界各国において建造計画中の各種の一原子舶用炉は、おおむねPWRの理論に立脚しておる次第でありまして、私がことさら幾多の軍事用船舶を列挙いたしましたのは、これら特に過酷な運転状況を要求されるであろう船舶にことごとくPWRが搭載されておるという事実が、いかにPWRが安全度において、また信頼度においてすぐれておるかということを如実に立証するものではないかと存ずる次第であります。  PWRは、陸用と舶用とを問わず、同様の理論に立脚しておることはもちろんでありますが、前にも申し上げましたとおり、舶用においては、陸用炉以上の過酷な運転条件を満足するものでなければならないことは御承知のとおりであります。すななわち、船舶は隔離されたプラントとも見なされるものでありますので、特に安全性、信頼性を重視せねばならないと考える次第であります。  次に、ウエスチングハウスの閉回路軽水型PWRの設計上の特徴について、これから簡単に述べさしていただきたいと思います。  まず、先ほど申し上げました閉回路軽水型という名称からおわかりいただけるように、PWRは、一次側の原子炉系と二次側のタービンとは判然と隔離されており、原子炉系は完全な閉回路となっております。したがって、放射能が二次のタービン側に出ていくこともなく、また反対に、海水冷却の復水器の漏洩により二次系に混入した海水中の塩素分が一次側の原子炉へ行き、炉心の腐食を促進するというような懸念も一切ない次第であります。  いま御注意がございましたので、簡単な説明をいたします。その他幾多の点がございますが、この炉のいま申しました安全性につきまして、第二、第三第四の詳細につきましては省略いたしますが、この点につきましてはいま実用化されておる炉の中で最も安全な炉であるということを確信しておる次第でございます。その構造が簡単で、構成要素がコンパクトに配置されておりますので、きわめてがんじょうなものでございますので、船舶に固有な動揺、衝撃に十分耐えることができると信じておる次第でございます。  いま申しましたような次第でございまして、現在使われておりますもののいわゆるプルーブン・タイプとしまして、この炉が最も安全であるということは多言を要しないと思うのでございますが、さればといって、この炉が現在のままでもう十分最高のものであるということは、これまた言えぬ次第でございまして、いまいろいろ御指摘がございましたように新しい型の炉も出てくるのでございますが、ウエスチングハウスにおきましては、これらの将来の進歩につきましては常に十分の研究と努力を払っておりまして、今後の課題といたしましては、自己加圧方式の開発でございますとか、循環ポンプを省略をするとか、あるいは原子炉プラントの一体化、いろいろと考えられますが、これらのことを十分に研究課題としまして検討して、また実際に実験に移していろいろやっております。しかしながら、これらの問題は、一方舶用炉の場合におきましては、先ほどからたびたび申しておりますように、信頼性と保守の容易なことが必須の条件でございますので、これらも十分にらみあわせまして事を運ばなければならぬかと存じております。  こういうことで具体的な問題につきましては、幸いウエスチングハウスと三菱グループとは技術提携が正式にできておりますので、向こうでどんどん開発されたものは逐次こちらのほうに送ってまいっております。それから、私どもグループの研究ということもまたウエスチングハウスのほうに意見出し、むこうのほうでチェックしてもらうというようなことも現実に行なわれておりまして、この点は、原子炉の進歩に対しましておくれをとらぬように、ウエスチングハウスとこの上とも十分の連携を保って進みたいと思っております。  しかしながら、原子炉の建造、原子力船の建造というものは、初期において多額の開発の費用と長期の時日を要することは御承知の通りでございます。一社のみの能力でとうていなし得るものではございません。ことにわが国の海運政策の一環としまして政府の強力なる援助が望まれる次第でごごいますが、この意味におきまして、原子力船開発事業団が第一船の建造に着手されるということは、まことに時宜を得たものと御同慶に存ずるとともに、今後の政府のバック・アップのもとに、将来原子力船建造がますます盛んになることを念じてやまない次第であります。簡単でございますが、これで終わります。
  12. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どうもありがとうございました。  次に、山下参考人からは、以上の点について、特に日本造船業の将来あるいは技術的観点からの批判的意味を含めた意見を承りたいと存じます。山下参考人
  13. 山下勇

    山下参考人 山下でございます。  お話順序といたしまして、舶用機関の実際のあり方というものにつきまして、まずちょっと触れてみたいと思います。  舶用機関というものに課せられておる問題点、要するに陸上機関舶用化する場合にどういう点が基本的な問題点になるかというところに触れてみますと、これは当然容積が小さくて重量が軽い、われわれのことばで申しますいわゆる出力が高いということが望ましい。第二の点は、当然燃料消費量が少ないということが問題でございます。それからさらに第三番目で、しかも三番目でなくてきわめて重要なことは、信頼性が高くて保守が容易であることであります。大体陸上のものを舶用に使います場合には、この三つのポイントがいつも具備されなければならない、こういうことでございます。  一方、船舶自身の傾向から参りますと、まず船舶が水面を走っております関係上、スピードを上げて高い速力を持つようになりますと、抵抗が三乗曲線によってふえてまいりますので、非常に馬力がよけいになる。馬力がよけいになりますと、当然主機械の、重量、容積が大きくなり、消費量もふえてくる。そういうことになりますので、船舶の高速化に伴う一つの問題は、いつも馬力が急速に大きく必要になるということでございます。その点は、一つの解決策として最近叫ばれておりますのが水の中にもぐるということでございまして、水の中にもぐりますと、ある速力以上になりますと、抵抗が水上を航行するよりも減ってくる。そういう点で潜水船の魅力というものが出てまいります。一たび船が水中にもぐりますと、先ほどの三つの条件のほかに、いわゆる呼吸をしないエンジンというものが絶対の要件になってまいります。呼吸をいたしますと、いわゆる潜水艦がやっておりますシュノーケルを使うとかいろいろな操作が必要でございますが、そういう意味からいきまして、一たびもぐりますと、これは前に申し上げた三つの条件を無視いたしまして、どうしても呼吸をしないエンジンというものが絶対の要件になってまいります。この面におきまして、原子炉が登場するなり潜水艦に大規模に使われまして、現在先進国でつくられております潜水艦が全部原子力化いたしましたのは、まことに当然の話でございます。  われわれが当面論じておりますのは水上を走る船の場合でございまして、先ほど申し上げましたように、この場合にはどうしても馬力が大きくなる。最近の船舶の情勢から申しまして、船舶の大型化、専用化、高速化、この三つの動きというものが今後海運界の必然的な方向でございます。しかも、大型化し専用化し高速化する船が経済的に成り立っていく、そしてより安いサービスができるような船であるというためには、どうしても燃料消費量という問題は非常に大きな問題でございます。たとえば先ほどちょっとお話の出ました三万馬力というようなものを考えましても、現在相当開発の進んでおります粕川のディーゼル・エンジン、あるいは高温高圧のスチーム・タービンを用いましても、一日最小限度百十トンの燃料が要るということになります。これが四十日航海すれば四千五百トン、ある程度のリザーブを考えますと五千トンからの油を持たなければならないということになるわけであります。  こういう点で、原子力機関というものが出てまいりまして、これが一度装入されました燃料が二カ年あるいは三カ年にわたって消費できるということは、船の採算面からいいましてきわめて重要なことになるわけでございます。そういう点で、原子力機関が特に高馬力のものにおきまして従来の船と採算的に競争できるという答えが出るのも当然なわけであります。  そこで、われわれ舶用機関関係に従事しております者の立場から申しますと、どうしてもこういった在来のエンジンに競争できる、しかも安全性においてもこれに決して劣らないような原子力機関開発されてくるということが望ましいわけでございます。その面から言いまして、約十年くらい前からすでに、将来の舶用原子炉というものはどんなものになるだろうかということについてずいぶんディスカッションが行なわれておりますが、どなたの意見を総合いたしましても、最終的な型としては必ずガス冷却炉になるだろうということが言われております。現在でもそのガス・クールド・リアクターというものが最終的な舶用原子炉の型であるということについて異議を差しはさめる方は非常に少ない。ただ、この舶用のガス・クールド・リアクターというものを開発してまいりますのに非常に長い期間かかっておりまして、アメリカでも、先ほどGEお話がございましたが、一方ではゼネラル・ダイナミックスがずいぶん長い期間にわたってこれの開発をやっておる。技術的にすぐれたものでありますために、相当の長い期間の検討が費やされておるわけであります。われわれ舶用のほうに従事いたす者としては、この将来の型のガス・クールド・リアクターが、やはり日本におきましても取り上げられまして、早急に日本の将来のフロート・タイプとして、少なくとも陸上でもってこういうものの試験をすることを積極的に進められることが望ましいのではないか、こういうように考えるわけでございます。  先ほど太田参考人お話の中では、これを使いまして六三〇Aのほうではこれを熱源といたしまして、これに熱交換器を入れて蒸気を取り出していく。もちろん現段階におきましては、蒸気タービンの進歩というものが、非常に長い期間の経験を積みまして相当高い段階にある。一方、もしこのガス・クールドの原子炉から直接ガスを導き出しまして、直接ガスタービンを回すということができますと、全体としての系、システムもきわめて簡単なものになります。そういうことが最終的な姿としては望ましいわけでありますが、この面におきましては、いわゆるガスタービンの開発というものもあわせてやらなければならないということになるわけでありまして、最終の型としてはガス・クールド・リアクター・プラス・ガスタービンというものが当然最終の型でなければならないというふうに、私は確信しております。  原子力船の建造が取り上げられるような重要な時期になりまして、日本としてはぜひ世界に誇る海運国として、あるいは造船国として、そういった将来のビジョンに対して、こういう機会に一歩前進されますように、先ほど山縣参考人からお話のございました事業団の改組をなさるなり、何かの方法をもってその方向に進まれることを期待いたします。
  14. 中曽根康弘

    中曽根委員長 ありがとうございました。  次に、谷口参考人から、山下参考人と同様の趣旨においてお願いいたします。
  15. 谷口健八

    谷口参考人 私、三菱造船谷口でございます。原子力船並びに原子力船用炉の問題につきまして、私の見解を述べさせていただきたいと思います。  世界各国におきまして、戦後新しい動力源として原子力が取り上げられまして、多くの発電所が現在建設されております。最近の計画では、在来の発電所と発電原価ですでに競争できると称するものがあらわれてきておることは皆さん御承知のとおりであります。また、安全性につきましても、その信頼性が非常に増してまいりまして、中には人口の非常に多い都会のまん中に何十万キロというような大きな原子力発電所の設置計画がされておるという現状であります。  陸上のほうはそういうことでございますが、一方舶用動力源といたしましても、この原子力は、燃料の重量容積が非常に小さいということ、また燃焼に空気を要しない。すべての燃料は燃やすのに空気が要るのでありますが、原子燃料は空気が要らない。したがって、じゃまな煙突というようなものも要らなくなりますので、まず軍用ということが考えられまして、先ほど足立参考人その他の方から申し述べられましたように、米国ではすでに多数の潜水艦に応用しており、また航空母艦、巡洋艦、駆逐艦などにも応用しております。また、ソ連、英国等におきましても潜水艦に応用されているように聞いております。  次に、商船への応用につきましても早くから論議されておりまして、試作的ではありますが、ソ連の砕氷船レーニン号、またアメリカの貨客船サバンナ号の二隻が現に運航されております。陸上発電炉におきましては、石炭、重油に比しまして経済的であるということと、燃料資源の確保という点で主として魅力になるのでありますが、舶用におきましては、そのほかに、前に述べましたような燃料の重量容積が非常に少ないということが非常に魅力になるのでありまして、したがって、経済的要素をあまり重要視しなくてもよい軍艦ではまっ先に活用されているのであります。  商船用といたしましても、たとえば大洋を横断して遠いところへ燃料を補給しないで高速で走っていく客船といたしましては、在来の燃料では不可能であった船も計画することができるのであります。たとえば南米までノンストップで、しかも三十ノット以上で走るような船では、馬力が非常に大きくなりまして、これに要する燃料も、先ほど山下さんから申されましたようにばく大なものになりますので、船として成り立たないようになるのであります。これは原子燃料を使うことによって、こういう問題も解決できるのであります。しかし、ただいまではそのような船の需要は起こっておりませんが、将来は考えられることと思います。また、先ほどお話のとおり、潜水タンカーということも考えられますので、原子力を使えば非常に好都合考えます。  しかし、現在運航されているのと同じような船に原子燃料を使う、原子力を使うということにつきましては、まだ経済性という問題があります。原子炉を船に使う場合には、陸上発電所のものと少し条件が違いまして、陸上プラントに比較いたしまして出力が非常に小さい。陸上ではすでに二十万キロワットとか三十万キロワットとか、あるいは百万キロワットというような大きなユニットのものが建設されておりますが、舶用ではせいぜい何万馬力で、一けた以上小さいのであります。これが経済上非常に影響する。次にまた、雨量容積が陸上では無制限でありますが、船では制限される。また、船では動揺や出力変動に対する特殊の考慮が要る。また、安全性から申しまして、狭い船内であるということや、転覆、沈没など非常事態に備えて安全上の考慮を要するのであります。そのようないろいろな条件がありますために、現在では値段が相当高くなりまして、経済的にはいまのところ引き合わないという状態であります。  しかし、以上のような船に対する諸条件に対しましては、経済上は別にいたしまして、技術上の問題につきましては、原子炉に現在実績のある型式を採用しますならば、すでに解決されていると申し上げていいのであります。したがって、将来経済性さえ確立されますならば、海運界に原子力船が採用されることは必至であると考えまして、各国の船級協会もそれに備えて、それぞれ原子力船に対する暫定規制を発表しております。また先年、海上人命安全条約が改正された際にも、原子力船についての条項が第八章として新たに追加されているというような状況でございます。  したがって、連続八年間船の進水世界節一という、世界一の造船国でありますわが国におきまして、また船舶が輸出品の主要項目の一つとなっておるわが国におきましては、造船事業者といたしましては、一刻も早く経済ベースに乗るような原子炉開発が進みますことを願っておる次第であります。現在先進国におきましては、先ほどからもいろいろ話がありますように、いろいろ進んだ原子炉の型式の試案が発表されておるのでありまして、大体一九七〇年、昭和四十五年ごろには経済性のある原子力船が出現するのではないかという巷間の説もございますが、これはあながち実現不可能じゃないということもいえると存ずる次第であります。  このときにあたりまして、日本原子力船開発事業団が、アメリカ・ソ連に次ぐ第三番目の平和目的の原子力船の建造を実施されるということは、非常に時宜を得たものであると存ずる次第であります。われわれ造船業者といたしましては、この得がたい機会を利用させていただきまして、設計に建造に安全性の検討に、十分の経験を秋積ませていただきまして、来たるべき原子力船時代に備えて、造船国日本の名声を保持したいという考えでございます。  今般建造される予定になっております試験原子力船に積むべき炉につきましては、十分御検討の上、十分実績があり、安全確実で保守がやさしく、かつ、なるべく多くの部分が国産可能であり、またなるべく日本の多くの業者がその製造なり試験なりに参画できるような御考慮をいただいたほうがいいんじゃないかと考えております。  今回計画される原子力船の目的は、原子力船が経済ベースに乗って建造される時代も遠からずと思われますので、世界一の造船国であるわが国が、それまで原子力船に関して設計、製作、建造、運転、安全性、乗務員の訓練等に関しまして、経験、実績をすみやかにつくっておくということが主要点じゃないかと考えておりますので、この原子力船で将来の、これから開発されるところの原子炉の試験までも同時にやるということは、あるいはあまり適当な方法じゃないのじゃないか、そういうふうに私は考えております。しかし、また一方、さらに原子力商船時代に備えるために、経済的な炉につきましては別途国家として開発項目に取り上げられまして、諸外国の提案に劣らぬ炉を完成させていただけばまことにけっこうだと存ずる次第であります。このような炉の開発には多大の費用と人力、かつ時日を要するものと存ずるのであります。またかりに外国のものをこのまま持ってきて船に載せるという場合でも、実績のない型式のものにつきましては、やはり陸上におきまして、実際船で使うものと同様なプロトタイプをつくって運転して、十分な安全性を確認した上でないと、大切な人命にかかわる最も確実性を要するところの舶用機関として使うのは、適当ではないと存じております。いずれにしましても、舶用炉につきましても、陸上炉同様、国家の関心をこの上ともお願いする次第でございます。  以上、はなはだ簡単でございますが、舶用原子炉に対する私の基本的な考え方を申し述べさせていただきました。
  16. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人の御意見の聴収は終わります。     ―――――――――――――
  17. 中曽根康弘

    中曽根委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。福井勇君。
  18. 福井勇

    ○福井小委員 中曽根委員長がお礼申し上げられましたので、重複するようでありますが、御多忙なところを貴重な意見を開陳のためにお越しくださって、私からもお礼を申し上げたいと存じます。  幸い大臣が出席してくださって、おそらく他の委員会へすぐ出かけられてしまうというような心配がありますのでで、この機会を逸してはなかなか速記録に、日本全国にプロパゲーションしてもらう機会はなかろうと思いますので、一言お尋ねしておきます。  今日、この原子力船の問題にいたしましても、他の陸上原子力発電などにおきましても、どうも日本のここ一、二年の状況は、技術屋でない批評家の活字にあらわれるところでは、スローダウンというような活字が使われるようなことが間々ございます。政府当局におかれてはスローダウンに賛成かどうかということについて、これは真実ではなかろうと思いますが、大臣の御意見を一言漏らしていただきたい。
  19. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 原子力開発長期計画がございますので、政府考え方はスローダウンというようなことはございません。その計画に沿って進めてまいりたいと思います。
  20. 福井勇

    ○福井小委員 それで安心いたしました。まず大臣にその御意見を承っておけば、他の参考人方々にこれからお尋ねすることについて、非常に誠意が出るわけであります。  山縣さんの御発言の中に、原子力船についてのシステムが数例考えられる、小型軽量についてもいろいろ考えられているがというようなことについて、その名前をもう一度、私筆記しそこねましたので、レピートしていただけませんか。
  21. 山縣昌夫

    山縣参考人 私代表的に五つの例をあげました。まずアメリカ関係でございますが、先ほど来たびたびお話が出ておりますGEの六三〇A、第二番目にあげましたのはCE社のUNIMOD、それからアメリカのバブコック・アンド・ウイルコックスのCNSG、これはIBRの一つの形式でございます。それからイギリスでは、イギリス原子力公社開発しつつございますIBR、それからイギリスとベルギーで共同で開発しておりますブルケイン(VULCAIN)というのですが、この五つを申しました。
  22. 福井勇

    ○福井小委員 その山縣さんの御発言の中に、注目すべき六三〇Aというような御発言があり、そのヒート・エクスチェンジャーやあるいはタービンのエフィシェンシーについても言及がございました。  それはわかりましたが、そのGEアメリカの空軍と共同研究して、十億ドルの巨費を投じて、多年の歳月を費やして、秘密にしておるというのは軍事目的であったからだと思います。先ほど太田さんですか、お話し中に若干触れられておりますが、これが今度公開されて実用化しようとするという段階になっておりますが、その六三〇Aはどんな飛行機につけようとして当時やったものでしょうか。私たち技術家でありますので、技術面について伺うことが多いので、技術関係の方になるべくお答え願いたいと思います。
  23. 中曽根康弘

    中曽根委員長 この際、三井物産株式会社電気機械部原子力深長代理安田和雄君を参考人として追加し、意見を聴取することといたします。安川参考人
  24. 安田和雄

    ○安田参考人 具体的にどういう飛行機につけるかということはGEのほうから聞いておりませんけれども、非常に高速で航続距離の長い大型の飛行機に積むということで、いまこの六三〇Aを採用いたしました型は、その開発段階の一番最初の型に匹敵するやつでございます。航空機用のやつはさらに発達したやつをつくっておりまして、それを使うことになっております。
  25. 福井勇

    ○福井小委員 先ほどその関連の御発言の中に、ドイツやヨーロッパのほうに舶用として使おうとする段階にあるというような意味の御発言がありましたが、もう少し詳しく、どのぐらいになっておるかということが、漏らされたら漏らしていただきたい。私も六三〇Aについては、先般GEの副社長のお招きの席がありましたので、西村委員中曽根委員たちとともに、大体その内容については、われわれ技術家的に説明を受けましたから、ほぼそれは承知しております。先ほどドイツ、ヨーロッパのほうでも採用しかけておるというような御発言がございましたが、その実例をもう少し詳しく知らしていただきたいと思います。と申しますのは、ほかでもない、私最近ハイゼンベルグとも会う約束ができておりますし、ボーアの門下のグループともこういう問題について若干意見の打ち合わせをしたいといういま前提にありますので、参考のために、漏らすことができましたら教えていただきたいと思うのです。
  26. 太田音吉

    太田参考人 お答え申し上げます。  ただいまヨーロッパ、ドイツと申されましたが、イギリスのほうは、自国の関係もあり、どういうふうに計画が進んでおりますか、具体的のことはちょっと不明でございます。  西独に関しましては、GEを通じて聞きますところによりますと、六三〇Aを至急に研究しようという結論に達したようでございます。それで、四月の中旬にドイツから技術団がアメリカGEの工場に出かけるという予定だということを聞いております。
  27. 福井勇

    ○福井小委員 さしあたって、わが国原子力船の第一船として委員会が策定したそのフォームには六三〇Aは合致しないから、第一船はこれではできないという山縣さんのお話はわかりました。  そこで、井上啓次郎参考人にお尋ねいたします。同参考人はなかなかの技術の専門家でありまするから、専門的な事項をあまり長くやられては困りますから、簡単に願いたいと思いますが、第二船も、やはり先ほどの参考人のように、あなたの事業団でやることはお断わりですかどうですか。
  28. 井上啓次郎

    井上参考人 ただいまの御質問は、節二船に関するものだと思いますが、日本原子力船開発事業団におきましては、第一船の建造運航ということが唯一の目的であって、それが節二船に役立つということを確信しておるのであります。ただいまお話がございましたので、これに関連して申し上げますと、舶用炉の進歩というものは日進月歩といって差しつかえないと私は思います。二年半前に官民合同で原船協がつくられた試設計というのが日本でできた唯一の研究成果でございますが、それ以後の進歩は、ただいまもいろいろ参考人からお話のあったように、いろいろの型の式ができております。大きく分けて軽水減速炉の系統と空気冷却系統の二系統でございますが、この中で何をねらっているかといいますと、いまお話のありましたように、重量を減らす、容積を小さくする、いわゆる軽量小型化ということにねらいが一つあります。もう一つは、燃料費を少なくしよう、この二つでございます。  その中で、軽水冷却のほうでは、ただいま山縣先生からも御指摘がありましたように、CNSGとかUNIMOD、VULCAIN、この系統が軽水冷却系統でございます。空気冷却のほうは六三〇A、これは型式がそういう意味では変わっておるわけでありますが、ねらいは同じような舶用炉としての特性を十分生かしたものになっておるわけであります。  事業団が第一般の基本設計をする場合に、これらの炉はかなりの文献を入手いたしまして詳細に勉強いたしました。なお、甘利専務以下、三名が海外調査に行きまして、その成果も十分入れまして検討した結果、基本設計の骨組みをつくったわけでございます。したがいまして、現在われわれが持っておる考え方としましては、開発基本計画に示された安全性確保を第一にすること。第二は、なるべく国産化をすること。第三は、国内原子力船に関する技術を向上すること。この三つが具体的に可能なるような配慮を持ってやっておるわけでございまして、CNSGにしましても、六三〇Aにしましても、非常に特徴のある、見るべきものがありますけれども日本の現在の段階で考えた場合に、これをどの程度採用するかということになりますと、安全性あるいは国産技術という二つの柱から一つの制約がございます。したがいまして、第一船につきましてはある程度そこで線を引きまして、確実にりっぱな船をつくって、その経験を第二船に生かすというふうに考えておるわけでございまして、第二船につきましては、少なくとも事業団の現段階では考えてないといってもいい程度で、この第一船をつくることが第二船につながるのだというふうな確信をもって努力をしておるわけでございます。したがいまして、舶用炉につきましては、少なくとも内部的には非常な努力を用いまして勉強はいたしております。単にいま基本設計は終わったから、あるいは建造しておるからということで等閑に付するつもりはございません。内部的には大いに勉強をし、今後の日本原子力船時代に備えてそれが生きるように、第一船で実際の経験はやりますが、さらに学問的あるいは設計的な意味で勉強いたしまして、第二船以降に貢献させていただきたいと考えておる次第でございます。
  29. 中曽根康弘

    中曽根委員長 福井君、ほかに質問者がございますから、適当に簡潔にお願いいたします。
  30. 福井勇

    ○福井小委員 非常に残念でございます。私は、これだけのお歴々が見えたから、一時間ばかり教えていただきたい点がございますが、きょうは委員長の言を最大限尊重いたしまして、あと一分間くらいに制約することにいたします。  私は各お歴々の参考人の方や、また政府関係機関井上さんあたりにも申し上げておきたいのでありますが、おそいことならだれでもやります。いまある面では――ある血というのは、社会党の岡さんあたりの科学に非常に理解のある進歩的な方はそういうことはないのですが、ややもすると、よそで完全無欠なものができてからあとからついていけばいいじゃないかという、これは表現はへたですが、一口に申してそういう意見が頭をもたげまして、われわれ原子力平和利用の開発について最も熱心な者に水をぶっかけるようなことがたまたまありますので、井上さんや石川さんたちはどうか先達として、いまの井上さんのことばの中に節二船は考えておらないという表現がありましたが、その口うらからは、いや研究しておるということばが出てくる。これは間違っておりますから、第二船は考えておらぬということじゃなく、考えてもらわなかったら、あなた方の事業団は早くやめてもらわなければならぬのですから、それは取り消していただいて、心持ちを取り直していただいて、第二船も第三船もおれたちがやるのだというような気持ちで進んでもらいたいということを、一委員立場からお願いしておきます。  それでは、委員長の御指示に従って、一分間で片づけます。  原子力船の安全性について、たとえばサバンナ号が日本に寄港するというようなことについては、私はしろうとの連中という表現をしたいのでございますが、しろうとの連中が非常に要らざる心配をしております。その安全性について、これから第一船をつくる場合にだれがつくるか知りませんが、技術家出の方のほうがいいのでありますが、三菱造船あたりの御意見を簡単にひとつお話し願いたい。
  31. 谷口健八

    谷口参考人 お答え申し上げます。  安全性につきましては、技術の及ぶ限りを尽くして検討されておるものと思います。しかも、原子力委員会におきまして安全性を十分御審査の上、初めて建造許可されるものでありますから、私どもといたしましては不安は持っておらない次第であります。また、原子炉につきましては十分安全確実なものを採用になると思いますし、船としましては各船級協会の安全に関する規則もできておりますので、これに合格するものをつくれば十分船の安全性においても保証できるのじゃないか。また、数年前から科学技術庁の補助金をいただきまして、業界としても相当多数の実験研究をさせていただいておりますので、その成果も相当ございますので、これも安全ということに対して相当お役に立つのじゃないか、私どもこういうふうに考えております。
  32. 福井勇

    ○福井小委員 もう一つ、あと三十秒です。  足立さんの御説明で、三菱とウエスチングハウスとの提携の密接であるということはわかりました。それでは、先ほどの陳述の中で、潜水艦や巡洋艦や、もちろんサバンナ号も入っておりましょうが、足立さん個人として舶用PWRについて絶対の自信があるのかどうか。これは技術のほうの人にかわってもらってもけっこうでありますが、それだけお尋ねいたしまして、私の査問を終わることにいたします。
  33. 足立一郎

    足立参考人 お答えいたします。  先ほど私の説明がウエスチングハウスの代弁みたいになりまして多少誤解があったかと思いますが、私どもがウエスチングハウスと関係を持ちますまでにはいろいろの検討を加えまして、ここに至ったわけであります。  先ほど各参考人からお話がございましたように、原子炉の発達というものは日進月歩であります。欧米先進国のやり方におきましても、それぞれ懸命の努力を払って、よりよいもの、より進歩したものをやっておるのだと思います。この船舶用原子炉といたしましては、現段階におきましてはいろいろのことを考えまして、先ほども述べましたように、PWR型が最も安全であり、実用に適したものと私個人も確信を持っております。
  34. 福井勇

    ○福井小委員 こういうふうな時代に、どうか大臣におかれては、大臣は技術家ではありませんが、特に将来大きな責任を持たれると思いますから、研究過程においては必ずこういうものには犠牲があるということを十分に把握せられて、間違いのない研究に大きな費用を投ずることに特に御努力願いたい。  これをもって私の質問を終わります。
  35. 中曽根康弘

    中曽根委員長 山内広君。
  36. 山内広

    ○山内小委員 たくさんの参考人の方方からいろいろのお話を聞かせていただきまして、しろうとの私も非常に勉強になったわけであります。きょうは参考人の方が多いのですから、政治的なお話は避けたいとは思いますが、原子力委員長として長官がお見えになっておりますので、若干その点に触れて申し上げたいと思うのであります。  実は、いまいろいろの方々お話を聞いておる中に非常に奇異な感じが一ついたしました。と申しますのは、この原子力の商船を将来つくる、これはあくまでも平和利用という見地に立って、この平和利用のための舶用炉というものは、原研の大きな任務の一つになっておるわけであります。  ところが、その原研が現在どうなっておるかと申しますと、第四号炉がまだ完成しておらぬわけであります。こういう過程で、この事業団計画されておるものは、臨界までに七年もかかるそうであります。日進月歩の今日、それまでに解決する問題とは思いますが、外国のものをすぐ入れていく、平和利用、また日本科学技術を進歩させるという目的で、国もどんどん入れて、われわれも応援しておる。こういうときに、船だけは従来の船で、そうして原子炉のところだけを穴をあけておいて外国のものが入ってくるというのであれば、もう研究の余地がなくなる。その点は第一に非常に私は心配をいたすのであります。  しかし、先進国はもうすでにいいものをつくっておられるのですから、その力を利用することは、私ども当然だとは思いますけれども、あまりに船を急ぐのあまり、せっかくの日本原子力研究という基本的なものを度外視して、商業的に回るということになりますと、これはやはりたいへんなことだと思うのです。この点について、長官にまず最初にお聞きしておきたい。
  37. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいま原研仕事原子力船開発事業団を一緒にしてのお尋ねでございます。私自身かねてからここでたびたび申し上げておりますのは、原研のあり方の問題、ここで最も力を入れているのは一体何なのか、基礎研究なのか開発研究なのか、その二つでございます。原研の一部におきましては、基礎研究は絶対に必要なんだ、そういう意味において基礎研究にうんと力を入れる、こういう方もございます。同時に、原子力研究所を設けたその趣旨から見て、基礎研究を土台にして開発研究へ向かうべきものだ、この開発研究の二つの部門、これが発電所であり、もう一つは舶用である、そういう意味でございます。  今日までのところ、原研が予算的に制約を受けておりまして、なかなか思うようにいかなかった。したがって、ただいまの山内さんのような疑問が出てきます。でございますが、しかし、原子力研究所開発研究に力を入れておることは御承知のとおりでありますし、さらにまた、今後は一そうその方向へ行くべきではないか。これが過日来この委員会の問題にしております原子力研究所のあり方、それが今日はどこへ力の重点を置くかという、そういう意味の事態に変わっているのじゃないか、こういうことを申し上げておるのでございます。  原子力船開発事業団、これにつきましては皆さま方の御審議を得まして、すでにこれがスタートしておるわけでございます。これについては、私その当時は関係しておりませんけれども、しかしながら、皆さま方から十分御研究願い、そうしてまた、第一船がどういう形でどういう型をとるべきだ、こういうところのものはあったと思います。したがって、ただいまのような御批判はこれは少し酷ではないか、かように思いますので、原子力船開発事業団のやっておることについては十分の御理解を持って、そうしてこれを御声援願いたいと思います。  ただいま問題になっております注目すべき六三〇Aですか、こういうものについて、それでは事業団のほうでそういうものを全然無視してやっておるのか、こう考えますと、必ずしもそうではございません。過般来出かけられた際にも、これに触れてこられたようであります。しかし、その時期自身には十分の研究も遂げていない、また旅費その他において十分のものがないようでございます。  しかし、何らかくふうをして、石川さんにも申し上げておるのですが、やはり新しいものができる、そういう際の問題にもなっておる際だから、そういうものも一応研究してごらんなさい、実はこういうことを申し上げておりまして、ただいまのところ、各方面研究される。  そういう場合に、外国のものを持ってくる、これがいつも問題になるのですが、最初から自分たちのもの、自国のもの、これはなかなかないでしょう。おくれを取り返す意味において、外国のものを持ってきましても、それを自分たちの肉とする、血とする、それができればこれは非常に効果があるのだろう、効用があるだろう。そうして、今度はその実物による開発研究開発をする。そういうことで技術が進歩していくのじゃなかろうか。かように私は考えますので、ただいま外国のものをとってきたというだけで事足りる、かような批判はやや過ぎているだろう。私は事業団のやり方につきましてひとつ今後を見守っていきたい、かように考えます。
  38. 中曽根康弘

    中曽根委員長 山内さんにちょっと申し上げますが、山下参考人は午後急用があるそうでありますが、御退席願うことを御了承ください。
  39. 山内広

    ○山内小委員 私が何か事業団仕事に理解ないようなお話でありましたが、これは長官とんでもない、私の質問をはき違えておられる。  先ほどもどなたか、前の方が犠牲ということばを使われた。私は金銭上の犠牲は、これは金で済むことなら大いにどんどんおやりになったらよいのです。ただ私は、安全性の問題で非常に疑義を持っておるのです。私もこの事業団が設立した当時の模様は知りませんけれども、今回この委員会に入れていただきましたので、当時の会議録を一通り目を通してみました。当時原子力潜水艦の寄港の問題とからみまして、非常に放射能の問題が議論されておるのです。そのときのいろいろは、ここでは話が長くなりますから端折りますけれども、いまもって安全性という点では解決しておらないわけです。  たとえば、ここにも持ってきておるのですが、「船の科学」という相当程度の高いものですが、これにも「原子力船の安全基準について」といって、かなり長いものが載せられておる。船自体のこともあるし、炉自体のこともあるし、海上ですから、いろいろ先ほど参考人の方からお話があったとおりです。こうなりますと、私は日本の憲法からいって、人命の犠牲を払ってはいかぬということなんです。  ですから、金の犠牲なら、長官、政治力をもってどんどん出して、その点でやっていただきたい。ただ、安全性の問題で、了解のできないままに、もしこれが進められることになりますと、原子力潜水艦アメリカの要請は、ああいうことになりまして、ノーチラスは核武装するそうですから、今度七月に大臣が総理になられても、もうこの問題は承諾できないとは思いますけれども、今度はアメリカから炉を買ってきて商船にそれを据えつけ。それが同じように廃棄物をどんどんたれ流して海洋を汚染した。それが国民に迷惑を与え、将来の子孫にまでたたるということになったらたいへんです。そういう意味で、人の犠牲を払っては困る、金で解決できるものならそのとおりにやっていただきたい、私はそういうことなんです。そこで、これはあまり長くなりますし、時間も制限を受けておりますから、安全性のことはまた日を改めてお話しするか、または皆さんのほうで適当な資料があったら私に読ましていただきたいと思います。  もう一つ、経済性の問題であります。いろいろお話がありまして、現時点では経済がもたない。しかし、いろいろ研究は進んでおるから、将来にはもてる、そういう見通しのお話もありました。  そこで、今度は事業団の方にお伺いいたします。海洋観測船を第一船にとっていらっしゃる。こういうことになりますと、これは公共性はますます帯びてきますけれども、経済問題ではほとんど問題にならぬわけです。そうなりますと、この意味から、これは佐藤長官のよほどの手腕に期待しないと、どうしたってこれの維持経営、運航というものは、かりにできても成り立たなくなります。そういう意味で、経済性の問題も、実は私の手元にあるものを若干ここに持ってまいりました。これをもし商船として利用することであれば、保険料は非常に高い、建設費もかかる。燃料は確かに若干安くなるらしいですけれども、全般的にこういった経済の続く限りでは成り立たないということは常識ではないかと思うのです。  そこで、この観測船を選ばれて、将来この経営をどういうふうにするのか。でき上がれば適当な機関にこれをやって解消される。いまのお話では残す希望もあるようですが、解消される。これはやっぱり国が引き取るということになるのですか、どういうお考えですか。この点をちょっと参考にお聞きいたしたいと思います。
  40. 甘利昂一

    甘利参考人 いまのところは、九年後に適当なる機関に引き取る、こうなっておりますが、その前に二カ年間観測船としていろいろ実験をするということであります。その後の処置については、事業団としてはそういうことだけしか承知しておりません。それまでにおそらく政府や適当な機関でおきめになるということだろうと思います。
  41. 山内広

    ○山内小委員 もう大臣の退席の時間のようですが、この安全性の問題は、私は商船では原子力潜水艦よりも問題だと思う。かりに安全性があっても、でき上がれば自分の子供になるわけです。そして自分の港の中にいる。これは使わなければ、捨ててしまうわけにはいかぬでしょう。そういう意味では、これは無制限に一〇〇%安全に、これは事業団に水をさすのか油をさすのかわかりませんけれども、そこまで研究していただかないと、やはり将来の歴史に私ども汚点を残すことになると思う。そういう意味で、この安全性の問題は私は日をあらためてお聞きする機会もあろうかと思いますけれども、そのことだけを希望申し上げておきたいと思います。
  42. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 原子力の安全性、ただいまお触れになりましたように、放射能あるいは放射性物質の取り扱いの問題、これはたいへんむずかしい問題であります。しかし、この原子力平和利用という、また同時に、各国の学者とも、この安全性ということにつき、放射性物質の取り扱いということにつき、非常に慎重な態度で臨んでおります。これはわれわれのようなしろうとはなかなか考えられないことも考えていらっしゃるようです。  過日、私がイギリス原子力発電所を見ました際に、その安全度としては二〇〇%あるいは三〇〇%じゃないだろうか。実はその発電所を見まして、一体これは何に使うのだ、こういうものがありました。そうしたら、私の案内をされた嵯峨根さんが、ここではあまりそれを聞かぬでください、こう言っておられる。結局無用の長物をやっぱり考えた、そこまでいっておるようでございます。科学者自身が、新しい原子力というものについて、ともすると各方面から、ただいまお触れになりましたような点について、一体どうなっておるのか、なかなか説明のしにくい点もある。非常に専門的になると、これがだれにもわかるようにということはなかなかむずかしい。そういう意味で、どうも必要より以上の安全性を考えておるように私は見受けてまいりました。  したがいまして、今日原子力船というものが考えられる、そういう場合においても、その注意は十分はかられるだろう。ただ、情けないかな、科学者の言われることをそのまま私ども信用できない、あるいは疑いをもってそれを見ますと、どうしても最後まで解けないものが、十分理解し得ないものがある。これは場合によりましたら、私ども自身の知識の不足かもわかりませんけれども、それにいたしましても、とにかくもっとものわかりのいいように、すぱっと割り切れて処置ができないだろうか。これは私どもも要望しておるところでありますし、また、ただいま事業団計画しておられますものが、これは軍艦というようなものではございませんから、またそれが持つ安全性ということにつきましても軍艦より以上に注意はされているだろう。軍艦ともなると、あるいは戦闘力などに重点を置くがゆえに安全性が軽視されないだろうか、こういうような疑問もあるようでございます。しかし、これはいずれにいたしましても、だれでもが納得のいくように十分注意すべきことだ。そういう意味で、あらゆる科学者の御意見ども伺って、私どもしろうとも納得できるようにしてくれということを要望しております。
  43. 山内広

    ○山内小委員 質問をやめようかと思いましたが、そういう御回答が出ると、私はまたちょっと一言いわざるを得なくなる。  実は、この原子力第一船の概念図というのをあなたのところの科学技術庁の月報で私、見ました。これはごく簡略なものですから、このままでは批判ができませんけれども、私も東海村を見まして、佐藤長官と同じように、あれだけの完全なやはり施設をしなければ放射能の危険がある。これはわずか六千トンの船ですけれども、この概念図で見る原子炉の、これだけのキャパシティーで一体あれだけの必要な重い物質を隔壁としたものでこれを囲むことが可能なものかどうか、直感的に私はその点で心配が一つ出ておるわけです。  そうしますと、商船は、さっきもお話のありましたいろいろな船という困った条件、陸とは違う条件の中で、もし完全な遮蔽ができないということになったら、これはたいへんなことになるわけです。ですから、しろうとでなく、これはどこまでも学的にやらなければ、佐藤長官が御理解がいかぬでも完全なものは完全なんで、佐藤さんに簡単に説明してわかるために簡単に施設されたなら、これはたいへんなことになる。  そういう意味で、またこれは私も研究しますけれども、商船に粗末なものを使って、せっかく総理大臣になって次のときに、あいつのために日本の海洋をけがすような船をつくったなんて言われたら、これはたいへんなことだと思いますので、余談ですが、申し上げます。
  44. 中曽根康弘

    中曽根委員長 岡良一君。
  45. 岡良一

    ○岡小委員 船の話ですが、ちょうどこの事業団のときに原子力潜水艦の寄港問題で私ども非常に取り急いでおりましたので、あまり十分な審議は私どもできなかったし、勉強もできなかったのであります。  井上さんが、さっきからだいぶもの申したい顔をしておられますので、ちょっとお聞きしたいと思います。  私は、この九年かかるというのは、慎重といえば慎重だが、少し間延びし過ぎているような実は気がするわけです。そこで、先ほどお話のあったソ連の砕氷船、アメリカのサバンナ号とか、ただいま建造に取りかかろうとしておる西ドイツの船、あるいはいま計画中のノルウェーの船、こういうものは大体どのくらいな年月でつくろうという計画を持っておるのか、ひとつ御存じでしたらお伺いしたいと思います。
  46. 井上啓次郎

    井上参考人 いままでの情報で申し上げますと、西ドイツGKSSは船体の起工はすでにいたしました。この船は貨物船でございまして、一万五千トンの容積を持っております。すでに船体は起工はいたしておりますけれども原子炉のほうは、いまお話の出ましたCNSGというタイプを設計契約を現在しておる段階でございまして、その設計契約を終えて建造完了まで約三年かかるというふうにわれわれは聞いております。したがいまして、いつそれが完了するか知りませんけれども、少なくともいまから考えると三年ないし三年半後に原子炉が完成するというふうに考えております。  いままでのレーニン号にしましても、サバンナ号にいたしましても、船体自体は、六千トンなり一万トンでも、半年ぐらいあれば十分建造可能でございますが、原子炉は約三年というのが通例でございますので、その点は諸外国とも、これから始めましても三年ないし三年半後だと私は考えております。  事業団の第一船は、四十二年に臨界を予定しておりまして、引き渡しを受けるのは四十三年度という計画をもって進めております。
  47. 岡良一

    ○岡小委員 そうすると、事業団は五年というわけですね。引き渡しを受けるのは、原子炉が稼働する状態において船に備えつけられて引き渡しを受ける、こういうことですか。
  48. 井上啓次郎

    井上参考人 船は原子炉を含めて国内メーカーに発注いたしますので、いま申し上げました臨界に達してから試運転がございます。そして引き渡しを受けるということになっておりますので、いまからいえば四年後になるわけでありますが、実際の作業は、これから本契約をやりまして、安全調査がございます。工事を始めてから三年か三年半ででき上がるものと考えていただいていいのじゃないかと思います。
  49. 岡良一

    ○岡小委員 山縣さんにお尋ねいたします。ノルウェーで少し新しいタイプの舶用炉も青写真ができて、やがて建造というような段階にきているようですが、その間の事情を御存じありませんか。
  50. 山縣昌夫

    山縣参考人 ノルウェーでは、いわゆる原子力研究所がございます。これはずいぶん前からやっておりますが、いまだ決定的の炉はこれだという段階までいっておりません。でございますから、ノルウェーは、研究を始めましたのは、原子力船に関する限りわれわれより早かったのでございますけれども、いまのところまだ実際に船をつくるという段階にまでいっておりません。
  51. 岡良一

    ○岡小委員 実は私、昨年暮れですが、国産炉として天然ウラン重水減速というふうな型式をおきめになったものですから、ノルウェーに行って、聞いたことがあるのです。ノルウェーの原子力究研所では、責任者は船の青写真を私に示してくれました。四年後に六万五千トン、天然ウラン沸騰型重水炉、こういうタイプであるということで、現場も見せてくれました。  何かお聞きすると、いち早くサバンナ号のタイプを採用するということをおきめになったように私は聞いておりますが、やはりこういう各国の実情をもう少ししさいに調査されて、そうして最もよきものを――もし日本日本の独創的なアイデアでできればなおさらけっこうだが、独創的なアイデアをうんとしたって、各国の実情を見ることが大事でありますから、そういう御努力が一段とあっていいのじゃないか。いち早くサバンナ号タイプPWRにおきめになるというのは、日本原子力開発の重要なプロジェクトともいうべき舶用炉についてきめてしまうというのは、私は少し早計だと思うのですが、これは石川理事長、いかがでしょうか。
  52. 石川一郎

    石川参考人 これは実は原子力委員会の、政府のほうの問題でございまして、私らのほうはその命令を受けて立っておるということであります。理事長としては、そういう事情を申し上げるよりほかしかたがないと思います。
  53. 佐藤榮作

    ○佐藤国務大臣 ただいまのお話は、確かにそういう点があるだろう。過日来、事業団の方にもお話をして、いろいろ新しいものも出ておるから、十分研究されるように、こういうことを実は申し上げております。  ただ、原子力舶用炉は、ただいまちょうど日新月歩と申しますか、次々に新しいものができてくる。動力炉の建造自身になかなか日数を要しますから、どうもそういう点を考えると、もう少し何かあったのじゃないだろうか、あるいはまた、きめ方が早かったのじゃないだろうか、こういうことが場合によったら出てくるかと思いますが、それかといいまして、日新月歩のものを、完成するまで、一番いいものができるまで待つわけにもいかない。税時点において一番適当なものに踏み切ることもやはり必要なことであります。  しかし、今回きめるにいたしましても、皆さま方の御注意もありますし、また先ほど来申すような六三〇Aというような新しいものも出ておりますから、それも全部技術関係者が研究したらどうだろう、かようなことを実は申しておるのであります。ただ、どうも事業団自身といたしまして十分な旅費等がないようでありますので、そのやりくり等に苦労しておるようです。しかし、とにかく各方面を見まして、その時期における一番いいものを採用したのだ、そういう決定を技術者立場から納得がいくようにしておかないといけない問題ではないだろうか、私もかように考えております。
  54. 岡良一

    ○岡小委員 この前、東海発電所のコールダーホール改良型が導入されるとき、ちょうど中曽根さんが原子力委員長兼長官であって、中曽根さん御記憶だろうが、私ども非常に反対したわけです。反対をした理由の大きな一つは、そのときにすでに英国ではAGRというもののプロトタイプができつつあった。だから、これはもう少ししさいに検討する必要がある。入れること自体には反対はしないが、もっと成り行きを見つめる必要がある。おそらくAGRのプロトタイプの実験結果で燃焼率が非常に高い、あるいは耐用年数が非常に高いというものが出てくれば、いまコールダーホール改良型を入れても全く日本は過去の記念品をいただくことになる、この点自重を要するのではないか、ということを私は申し上げた。  この愚をまた繰り返してもらいたくない。おくれたから早く取りつくという考え方は、科学の分野では通用しない。おくれておればおくれておるほど、もっとみっちり各方面調査をし、情報を集めて、そして確信のある方向を見出して、そこで建造に取りかかるという態度がなければならぬ。おくれたからというのですぐ取りかかっていくという態度は、どちらかというと、せっかくの国費を多く使うことであって、白重すべきではないかと思う。  それから、六十億の予算が見積もられておるようですが、私があちこち聞いて回った範囲では、あの船一つつくるにはそんなにかからないと思うのですが、他の国はどのくらいでつくっておりますか。
  55. 甘利昂一

    甘利参考人 実際の、原子炉を含んだ船舶の建造に使われる費用は、いまのところ予算的には三十六億です。  この三十六億という費用は、諸外国の同じような馬力なりトン数あるいは船の種類として、客船は別にしまして、油送船とか貨物船とかそういうものと比べて、さほど差はありません。先般も、そういうことでノルウェーなりスエーデンなり、そういうユーラトムの関係の国々と話をしてみましたが、決して船価的には高くない。いまお話しの納期的にもそう長くない。多小長いという感じをする人もおりましたが、全般的に見てやはり第一船はこれくらいの納期が適当であろうということであります。
  56. 岡良一

    ○岡小委員 お話を聞いておると、佐藤長官にいろいろ申し上げたいことがありますが、これはあした原子力研究所の問題がありますので、その機会に申し上げたい。  ただ、山縣さんが触れられました安全性の問題についての答弁が、若干ふに落ちない点がありました。  第一が、原子力委員会の方にお尋ねいたしたいのだが、御存じのように、スイミングプールをいよいよことしから稼働いたします。あのスイミングプールは、要するに原子力船の遮蔽の実験ということになっております。安全性の一番大事な問題は、乗り組み員の安全性です。一体そういうふうなものが、ことしの二月から稼働されておると記帳しておるので、これは原子力船の建造が進められる過程において、十分この遮蔽の実験研究というものは進められなければならぬと思うのですが、そういういわばタイミングがスケジュールとしてできておるのかどうか。これは島村さんが一番御存じかと思うのですが……。
  57. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 お説のとおりに、現在のJRR4は主として遮蔽の実験をするという目的でつくられたものでございます。現在の状態でまいりますと、その炉を使った研究成果をもとにして現在考えられておる原子力第一船の遮蔽を設計するというふうには間に合わないんじゃないかと思いますけれども、諸外国その他の資料をもとにして設計されたものについて、あの炉を使ってそれを確めるというようなことはできると聞いておりますから、その意味であれはできたあとは全然用がないということではないと思います。
  58. 岡良一

    ○岡小委員 用がないわけじゃないんですが……。  そうすると、この原子力船開発事業団の第一船の遮蔽のための研究実験には、スイミングプール型のことしから稼働する原子炉がまあ別に必要ではない、そういうことなんですか。
  59. 兼重寛九郎

    ○兼重説明員 必要ではないということではございません。ことしから稼働するものが利用されるわけでございますが、四号炉はそれだけの目的でつくられたものじゃございませんから、あとあと役に立つと思います、そう申したのであります。
  60. 岡良一

    ○岡小委員 もう一つは、原子力船の安全性といえば、これは冷却水の排水とか、むずかしい問題がたくさんあるようです。こういう委員会の席上でお尋ねをする件ではないかもしれませんが、サバンナ号のサイトクライテリア、これは御存じだろうと思うが、相当厳格になっておるとAECが発表しておる。これはもし出力が少なければ、少なくともあの基準から勘案したものが日本においても採用されなければならぬ。  そういう点については、原子力開発事業団として、いわば乗り組み員の安全の次には寄港地の住民の安全性というものを考えなければならぬ。そういう場合にお考えになっておられるかという点を、この機会にお聞きしたい。
  61. 井上啓次郎

    井上参考人 事業団といたしましても、原子力船の安全性というものは非常に大きな問題と思いまして、十分積み上げて勉強をいたしております。もちろんその基準及びその審査というのは政府機関でおやりになりますから、その基本的なものはお示しいただけるわけでございますが、われわれは設計する段階から運航する段階まで全部を含んでおりますので、その点の全範囲にわたりまして詳細に積み上げております。  大きな考え方といたしましては、いわゆる緊急時、非常時における安全性と、平常時における安全性、この二つに分けて考えております。しかも、それはいまお話にもありましたように、船自体が持つ特性、いわゆる動揺、振動あるいは座礁、衝突、これから来る安全性対策、あるいは炉自身から来る安全性対策、これは陸上炉と同じような範囲がございますけれども、その衝突及び動揺に関連いたしまして十分考えなければいけません。したがいまして、この安全性というものは、陸上炉よりか非常に広範囲なものになっております。各国ともまだはっきりした確定的な規則はございませんが、暫定規則というものも出ておりますので、そういうものも十分参酌し、乗り組み員はもちろんのこと、第三者に対する災害が起こらぬような安全対策を何重にも講ずる予定でございます。  なお、いまお話がありました原子力船の寄港をする場合のポート・アナリシスと普通呼んでおりますが、その港における全般的な安全体制というものも、当然これは船自体と同時に行ないまして、その後の運用、運航及び停泊及び燃料交換、そういういろいろな措置措置に応じた安全体制としてその安全を期したいと考えております。
  62. 岡良一

    ○岡小委員 最後に、これはこの前原子力委員会に資料の御提出を願っておった停泊基準について、原子力潜水艦のものがなかなか困難であろうと思いますが、一応あなた方の概念でも方針でもけっこうですから、お示しを願いたいと思います。来週、再来週非常に必要になりますので、そのことをお願いしておきます。  それから、三井、三菱の皆さんが来ておられますので、私は非常にぶしつけなことを申し上げるのでありますが、きょうお話を承りまして、六三〇Aがいいか、あるいはまた事業団の候補として一応決定をしておるPWRがいいかというようなことについても、御見解を承りました。私ども専門家ではないものだから、そのいずれがいいかということは判断はいたしかねますし、おそらく委員会としても、そういう判断をすることは委員会の本来の仕事ではないと思うわけです。  ただ、私ども原子力産業会議から資料をいただいたり、イエロー・ブックをいただきました。その他若干の資料をいただいて、原子力産業に携わっておられる方々が非常に赤字に苦しんでおられる。これはやはり日本原子力の発展のために業界の皆さんとしては御協力を願っておる。まことに申しわけないことだと思います。  かと思えば、たとえば原研が必要とする資材等の入札なんかで非常に珍妙な数字を私は見るわけです。これは日本の国産一号炉なりCP5なんかの重水の入札にゼロ、ゼロと、ゼロというような、かと思えば、マイナス七十二万円というようなのが出ていたり、入札の価格を見ると、これには三井さんも三菱さんも参加しておられる。あれでは求めて出血をされるような気もするのですが、一体あのマイナス云々というのは、どういう計算から出てくるのですか。これはいつかひとつはっきりとお示しを願いたいと思っておったのですから、幸いおられますから、聞きたいのです。
  63. 太田音吉

    太田参考人 お答え申し上げます。  原子力開発過程におきまして、入札を行ないまして、これが政府におきまする予算が非常に少ないという例がございます。自然仕事はしたいし、値段は犠牲的でもやりたいということで、大いに各製造家とも勉強していたしておる次第でございます。商社でかってにきめるものでなしに、各製造家の意思によって出しておるものでございますが、ただいまお話しのマイナスという面は、ちょっと私自身どういう意図で出されましたかわかりません。ほかから出ましたので、よくわかりませんですが、ちょっと私自身といたしましては行き過ぎの感じがあると考えます。
  64. 岡良一

    ○岡小委員 確かにこれはおかしい数字を入札して、札が落ちて重水を入れることになれば、七十二万円ですか、おつりを差し上げようというような、こんな入札が一体あるのかどうか。これは現実かどうか、疑いたいような感じがするわけです。ひとつ原子力委員会のほうで一ぺんよくお調べいただいて、こういう商社はどういう意図でこういうことをやるのか、これをひとつ非公式にでもけっこうですから、聞かしていただきたいと思うのです。
  65. 島村武久

    ○島村政府委員 ただいま参考人のお答えの中に、政府の予算が少ないので、出血サービスと申しますか、そういうようなこともやらざるを得ないような場面があるようなお話がございました。そういう場合もあるいは間々あるかと思いますが、岡委員が御指摘になりました例そのものの例は私も存じませんけれども、ほかのケースでよく聞いております場合に、重水もその一つでございますが、輸入品でございます。明らかに向こうが渡す値段がはっきりいたしておるわけでございます。それより安いということはそもそもおかしい。運賃がかかり、いろいろ手数料が要り、マージンがあって初めて、日本原子力研究所なら研究所が買います妥当な値段というものが出るわけでございます。  従来私が聞いております例の中には、向こうの売り値そのまま、と申しますことは、言いかえれば運賃その他の手数料は全部ただにして差し上げますというお話、場合によりましては、向こうにお払いになります金額よりは低くてもようございますというようなケースもあったようでございます。  これは何も、政府なり原子力研究所に予算がなかったからそういうことであるわけではございませんで、多くの商社の競争の場合にそういうことが起こっておる。そういう傾向はしかしおもしろいことではございませんので、最近では、私が承知いたしておりますところでは、原子力研究所もそのような行き過ぎに価格は、一番安いからと申しましてそういうところにと落さないようにしておるということも聞いております。ただ、私が申し上げましたのは、例に引かれました重水自体の問題ではございません。その点につきましてはなおよく取り調べてみることにいたしたいと思います。
  66. 中曽根康弘

    中曽根委員長 いまの点は非常に大事な点であると思うので、原子力局において当委員会に報告してもらいたいと思います。いろいろなケースがあると思いますから……。
  67. 岡良一

    ○岡小委員 それは島村さんの御説明のとおりなんです。重水そのものの価格ではなくて、それに伴う運賃とか保険料とか、そういうものが金額が非常にくずれておりますから、そういうものをサービスをしようというまことにけっこうなおぼしめしと考えていいかもしれません。  ただ、このごろは、産業界の諸君も原子炉を持ったり、技術者を養成したり、いろいろいわば営業収入以外の支出があるわけですね。こういうものは、やはり原子力研究所というものがあるのだから、こういうところから大いにタイアップをしていただければ、むだな研究のための二重投資も要らないので、これは原子力研究所のほうで考えられていいことだと思います。  ただしかし、それにしても、三井、三菱といえば業界の巨頭なんです。日本原子力関係メーカーも商社もあるいは銀行も一本になった原子力トラストのようなものが、いま五つほどできておる。この原子力関係事業会社が多過ぎるのじゃないですか、日本現状では……。これは三井や三菱の皆さん、どうお考えになりますか。少し多過ぎる。これではとても皆さんにせっかく御協力願っても、皆さんの利益を保証するほどに日本の今日の原子力の発展の段階というものはなかなかいけるものじゃない。それをどうしても持ってこさせようとすれば、そこに無理が出る。日本原子力政策というものがやはり皆さんの意図によってある程度まで動かされなければならないという状態が出てくる。こういうことは、やはりまじめな学問の発展という立場からは、私どもは歓迎したくないと思うのです。少し多過ぎるのじゃないですか。英国なんか、コールダーホール改良型の注文が思ったよりないというと、五つが三つというふうに、ちゃんと見切りをつけて、業界自体が再編成をしている。日本では、仕事があるかないかもわからない先から旗を上げて、五つもできている。そういうような状態は、私は業界の諸君が十分に自粛をしてもらわなければいかぬと思うのですが、この点どう思われましょうか。率直な端的な御意見をこの際聞かしていただければけっこうだと思います。
  68. 中曽根康弘

    中曽根委員長 どなたか御発言がありませんか。――特に御発言がありませんから、御意見を承っておくことにいたします。  以上で質疑は終わりました。参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、本問題調査のためたいへん参考になりました。小委員会を代表いたしまして厚くお礼を申し上げます。  次会は明二日木曜日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後零時四十六分散会